ダニー・ボーイ・グリーン(作者 みろりじ
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 男の名はカウフマンといった。
 ファーストネームで呼ぶ者は居ない。それほど齢を取ったし、それが必要な相手ももう居ない。
 この荒くれた世界でそれほど長く生きられる事は、それだけの実力を持っているということだが、そんなカウフマンも年貢の納め時が来たことを知る。
 幾度となく抗争に明け暮れ、牙持たぬ者たちを守るために鍛え上げた技と知識を用いた。
 ところが、片足を失い、義足に履き替えた時から、カウフマンは戦う者としての精彩を欠くこととなった。
 癒えぬ傷、衰えた力。全盛とは程遠く、ただ日々、痩せ細っていく手足と余分な贅肉を帯びて重くなる身体を鞭打つ中、ついに前線を退く決意をする。
 しかし荒れ野を切り開く為に奮闘したその活力は、一線から退いたとはいえ遊ばせるわけにはいかない。
 血なまぐさい戦場から離れ、それでもなお危険を伴う仕事。
 それは、拠点の周囲に農場を作ると言うものであった。
 今までにない大規模な農場。それが成功すれば、ベースの生活は格段に向上するだろう。
 それだけに危険を伴う。
 農作物は貴重だ。狙うものは多いだろうし、何よりもオブリビオンストームがやってくれば全て御破算だ。
 だがやらぬわけにはいかない。
 元軍属のカウフマンには、生きるための希望として大義が必要だった。
 アスファルトの剥がれた大地を掘り起こして耕し、柵を立て芽吹くかどうかも怪しい種を撒き、辛抱の日々をいくつか過ぎる。
 そうして新芽がやがて双葉を伸ばし、茂る緑が風になびくほどになった頃、それはやってきた。
 おおよそ自然物には思えぬ駆動音。ホバーエンジンのけたたましい排気音。降ってくるのは恐ろしい武器を持った者たち。
 防衛責任者として既に慕われる、かつての戦場の英雄が、煤けた機関銃を握りしめる。
「ダニーボーイ、懐かしい戦場の匂いじゃねぇか。くそったれ」
 軋む義足で踏みしめる眼下には、汗水を垂らして育て上げた緑の大地がある。
 なんてこった。ここを戦場にしなきゃいけないのか。ふざけろよ。
 くすぶる老兵が、静かな怒りと共にコッキングレバーを引くと、絶望的な戦いへと身を投じる。

「とまぁ、こんな具合に、やって来るオブリビオンを倒すっていう、シンプルな話さ」
 グリモアベースはその一角、ファーハットにロングコートがトレードマークの猟兵、リリィ・リリウムは持参の資料と共に、依頼の内容を説明する。
 アポカリプスヘルでは、これまでの猟兵たちの活躍によって、絶望的な世界の中にあっても希望を見出す人々が増えてきた。
 今回もその中の一つであり、拠点の周囲に大規模な農場を築こうという話があったらしい。
 レイダーなどのならず者やオブリビオンの存在もあり、一筋縄ではいかないながらも、その農場は大した被害も受けずに順調に植物などを育てているという。
 陣頭に立つ老兵が、巧みに障害となる者を排除し、農作業に従事する者たちを守っているからのようだ。
「だが、今回の襲撃は、ちょっとオブリビオンの数が多いんだ。どうやら、オブリビオンを産み落とす生産プラントごとやって来てるみたいでね。
 さすがに老獪なおっさん率いる防衛隊だけじゃ抑えきれない。我々猟兵の出番という訳だ」
 収穫時期を狙いすましたかのような襲撃。まるで人が集まるところを感知したかのようなタイミングであるが、ひとまずやってくる集団敵をまずは撃退しなくてはならないだろう。
「敵は集団だけど、ある程度の数をやっつければ、生産プラント本体が出向いてくるだろう。奴の兵力も無限じゃないからな。
 でかい相手だが、君達ならやってくれると信じている」
 戦いの後は、その安全の確保としてもいいが、住民の手伝いをしてもいい。
 農作業を手伝うのもいいし、衰退する世に於いては、収穫物の用途を広く知らぬものもいるかもしれない。
 夏野菜に一家言あるならば、その腕を披露するのもいいかもしれない。
「いつの世も、畑ドロボウは大罪だ。我々で追い返してやろう。よろしく頼む」
 帽子を取って一礼すると、リリィはいつもの如く戦場への案内を開始するのだった。


みろりじ
 どうもこんばんは。流浪の文章書き、みろりじと申します。
 今回はアポカリプスヘルの農場を防衛、敵の撃破と農作業というお話です。
 フレームとしては、集団戦→ボス戦→日常というものを採用させてもらってます。
 ヒャッハーどもを倒したら、ボスが出現。それを倒して農業です。
 夏野菜。トマトのおいしい季節ですが、ナスやズッキーニといったウリ科もおいしいですね。
 特別なプレイングボーナスというものは今回は用意しておりませんが、農場近くなので、規模の大きい技を使ったり敵の攻撃で農場に多少の被害が出るかもわかりません。
 よほどのことがない限りは、大した被害にならないとは思いますが、うっかりすると収穫前に野菜炒めになってしまう可能性もあります。
 深刻に考える必要はないですが、ごま塩程度に覚えておいてください。
 それでは、皆さんと一緒に楽しいリプレイを作っていきましょう。
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第1章 集団戦 『レイダー・フュエルスピッター』

POW ●フュエルバースト
自身の【持つ燃料タンク1つ】を代償に、【タンクを投げつけ膨大な爆発力】を籠めた一撃を放つ。自分にとって持つ燃料タンク1つを失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD ●フュエルイグニッション
【ノズルから発射した燃料】が命中した対象を燃やす。放たれた【燃料は外れても地形に残留、衝撃で発火。】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ ●スティッキーフュエル
【ノズル】から【可燃性を失った代わり粘性を高めた燃料】を放ち、【対象の身体に絡みつかせること】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


シャルロット・クリスティア
ここまでの農場にするのは生半可な苦労じゃなかったことでしょう。
それだけの長い間持ちこたえたと言うだけで、防衛戦の巧みさが伺えます。
暇があればご教授の一つでも受けたかったものですが……今はそれどころじゃなさそうですね。

敵はその攻撃手段を燃料に依存している。
であれば、それさえ対処してしまえば無力化したも同然です。
燃焼とはいわゆる酸化反応。つまり酸素と結合させなければいい。
氷結弾と言えど、ポリタンクの表面くらいは貫通させられますから、タンクに打ち込んで燃料を内側から凍らせる。
固めてしまえば粘性も効果を発揮しないでしょうし。

あとは仲間もいますしどうとでもなる。こちらは片っ端から潰していきましょう。


ティラル・サグライド
やぁ諸君、今日は全く良い天気だと思わないかい?
これだけ天気が良いとお腹も減って美味しいご飯も食べたくなってくる物さ。
あぁ、言いたい事は伝わったかな?じゃ、頂きます。

さて、彼らはよく燃える物をお持ちだ。流石の私でも油だけってのは好きじゃないんだ。
だけどじっくりと焼き上げたのなら別さ。

手にした煙管に毒粉を入れ点火し一息。
そこで燃料タンクが投げつけられたのなら、大口開けて毒煙と一緒にソレと炎を刻印に取り込むよ。
さて、相手がびっくりしている所だけど、そろそろいいかな?
喉を焼く炎と煙で血液が無くなったおかげでお腹の刻印もしっかり大きく開いたんだ。
まき散らした煙で身動きも取れない?なら丁度良い。

頂きます。


 荒野を生き延びるため人々が寄り集まって、そうして成し得た拠点の一つ。
 鉄骨とコンクリートと鉄条網で手厚くバリケードを張ったその領域の外側には、かつては隆盛を誇って久しい街々があったらしい。
 その名残すら風と砂に押し流され、朽ちた建造物と剥げて凸凹になったアスファルトの姿も今は昔。
 今は丹念に瓦礫を撤去し、堅い土を掘り起こして栄養と送り込んでは土壌の改善に努めた。
 灰を撒き、堆肥を撒き、残存する知識を送り込まれた土壌が緑の兆しを見せ始める頃には、拠点の庭先には更に一回り広いフェンスが張り巡らされていた。
 農場を守るにしては、レイダーやオブリビオンの前にあまりにも心許ないが、それでも作業員の退避する時間稼ぎにはなろう。
「チッ、さっさと拠点まで下がるんだよ! ったく、こんなことなら、作業員どもにも銃を持たせくんだったぜ……」
 防衛隊へ指示を飛ばし、土嚢として積んだ堆肥袋に背を預けると、拠点防衛隊を率いるカウフマンは愚痴をこぼす。
 農作業に従事するものは、基本的に非武装である。いかに危険を伴わない農作業とはいえ、それはそれで重労働なのである。
 それに、あれもこれもというよりかは、役割を分ける方がいざというときの行動に迷いがない。
 長く戦場を離れ過ぎたか。ぬるま湯につかり過ぎたのか。
 敵の規模を見誤ったらしい。
 これは最悪、全滅も覚悟した方がいいかもしれない。
 不利な戦況をどうにか生き抜く術を考えるべく、湿気った煙草に火をつける。
 まだ慌てる様な時間ではない。作業員が拠点まで下がるには十分な余裕を持たせた。
 あとは、身体を張って農場と住民を守るだけだ。ついでに生き残れたら、運がいい。
 それが簡単にできりゃ、いう事は無い。
 そうして命を張る覚悟を決め、土嚢から飛び出そうとしたカウフマンは、慌ててその身を再び隠す。
 見慣れない奴らがいる。
「いやあ、なかなかいい光景だね」
 やや古めかしいレトロな服装、しかし所々に奇抜な意匠が設けられた、おおよそアポカリプスヘルでは見かけない装いの黒い立ち姿。
 ティラル・サグライド(覆水盆に逆集め・f26989)は、危なっかしくすら見えるほど優雅に農場の片隅を歩いていた。
 綺麗に整頓された畝から伸びる緑の光景は、それはそれで人工的でありながらも、牧歌的の域を出ない。
「はい。ここまでの農場にするのは生半可な苦労じゃなかったことでしょう。
 それだけの長い間持ちこたえたと言うだけで、防衛戦の巧みさが伺えます」
 その傍らで冷静な感想を述べるのは、シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)であった。
 努力家である彼女は、一から農場を切り開いて防衛し続ける事の難しさを、ある程度は想像できるようである。
 見れば、農場のあちこちにはトーチカの様な堡塁に見立てた堆肥や培養土を土嚢にして積み上げたものが散見される。
 いざというときに農具すら応用する合理性は、少ない物資を利用する上で学べることも多いかもしれない。
 尤も、彼女たち猟兵が戦いに駆り出される状況というのは、そのほとんどが出たとこ勝負になりがちではあるのだが……。
「シャルロット君は勉強家だね。私としては、こういうほのぼのしたところで紅茶を一杯、っていうのもいいものだと思うんだけどね」
「紅茶ですか。私も好きですよ。でも、ゆっくり一服できるのは、仕事を終えてからです」
 若干芝居がかったような気取った口ぶりのティラルの提案は魅力的だったが、オブリビオン達はすぐそこまで迫って来ているらしい。
 ごうっと、激しい炎が鉄条網を張ったフェンスを焼き切るのが見えると、シャルロットは緩みかけた口元を引き締めた。
「防衛隊の皆さんにも、できれば被害は出したくありません」
「ふふ、いいとも。頑張る女の子には、手を貸したくなるものさ。
 ……少し離れよう。巻き込んじゃ悪いからね」
「了解です。ご武運を」
 生真面目に目礼を送るシャルロットが長銃を手に駆けていくのをひらひらと手を振って見送ると、ティラルもまた農場の外側に向き直ってゆらりと歩き始める。
「……味方、なのか……? 噂に聞く猟兵ってやつか?」
 ただならぬ気配を持つ二人の女性。おおよそこの末期の世界に似つかわしくない格好のその目線が外側に向くを見て、カウフマンは胸を撫で下ろす。
 だが、それぞれ一人でどうするつもりなのか。
「ヒャッハァー! 獲物だぁー!」
 思案を塗りつぶすかのように、無粋な叫び声がフェンスを乗り越えてやってきた。
 フュエルスピッター。レイダーがいつしかオブリビオンと化して、その身に帯びたポリタンクから可燃性の燃料を炎と共に打ち出す。
 あらゆるものを燃やす事だけに心血を注ぐという、なんというか、こう、わかりやすい奴だ。
「やぁ、諸君、今日はまったくいい天気だと思わないかい?」
 そんな、明らかに話の通じそうにない耐火スーツ野郎に向かって、ティラルは親し気に、誰にもでもそうするかのように明るく微笑んでひらひらと手を振る。
「あぁん? 嬢ちゃん、逃げ遅れたのかぁ? 早く逃げなきゃ、真っ黒焦げだぜぇ?」
「ふぅん。これだけ天気が良いとお腹も減って美味しいご飯も食べたくなってくる物さ」
「あぁん?」
 マスク越しに下卑た視線を嘗めまわすかのようにティラルに送るフュエルスピッター。そんなことはお構いなしに、空を仰ぐ仕草でさりげなく自分を囲う敵の数を把握する。
 表情はあくまでもにこやかだが、この状況で怯えたり取り乱したりしない時点で奇妙な相手である筈だ。
 しかし、こんな状況で笑みすら浮かべ、あまつさえちょっと見ない服装で顔の半分を黒いヴェールで覆っているような女性相手に、集団心理が働いているのか、オブリビオンは侮る調子を崩さない。
 それを見て、こっそりと上唇を嘗めると、ティラルは愛用の煙管に火を灯し、それを優雅に一息。
 それがあまりにも堂に入っていたためだろうか。
 吹き付けた煙が毒を帯びていることに、鼻腔が焼けるような痛みを覚えるまでオブリビオンは黙ってそれを見つめるばかりだったが、毒煙に噎せ始めると、慌てたようにその場を離れ、一斉に備え付けたポリタンクを投げつける。
 彼らのポリタンクは、ファイアスターターながら丈夫に作られてはいない。小さな炎でも割と簡単に燃えて溶けて引火する。
 危険極まりないが、それを利用して燃料タンクごと燃やし尽くしてやろうというのだ。
 しかし、ポリタンクを燃やす炎を前にしても、ティラルはにこやかなままに、
「あぁ、言いたい事は伝わったかな? じゃ、頂きます」
 と、にこやかなティラルの口元が牙を剥き、大きく大きく開く。
 オウガブラッドである彼女は、その身に常に飢えを抱えている。
 自他ともに毒を撒く煙管を愛用する酔狂人である。煮えた油すら、彼女にとっては飢えを凌ぐ餌に過ぎない。
 体表には、彼女のその本質たるオウガを押さえつけるかのような刻印が浮かび、食らった炎、毒の煙すらその刻印が吸い上げていく。
「ふうう……やっぱり、普通の油より、火を入れた方が、何倍も……味わい深い」
 煤けたような息をつく。
 いくらオウガブラッドとはいえ、その身に帯びたのは体を害する炎と毒煙。
 喉を焼き、血を焦がすそれは、ティラルを無事では済まさない。
「な、なんだこいつは……!?」
 燃やすことに心血を注いできたフュエルスピッター達ですら、火に巻かれて尚も凄絶に笑う姿を正気とは見えていない。
 そうして、彼女が吐き出す吐息はやはり毒を帯びており、焼いて枯れた血液は、同時にユーベルコードの使用条件でもあった。
 その異様、偉容に気圧され、毒に蝕まれて動きを封じられたフュエルスピッターたちは彼女が変わっていく様を見ているしかない。
 ぶちりぶちり、と何かを引き裂くそれが、ティラルの腹部を開き、大きな口を開ける。
 強靭なベルトを幾重にも重ねた拘束衣でもあるその服の内側から押しのけるようにして出てきたそれは、【ブラッド・ガイスト】によって変貌した刻印。
「う、うわあああ!!」
「頂きます」
 開いた顎が、黒い口腔に呑まれていく。

「さて……ここまで引き付ければ、上等ですかね」
 敵の第一波。火を使う相手ならばと、シャルロットは、火の手が及ばぬよう、戦場を移して、自分が的になっても農場に被害が及ばない場所を意識して、かつ引き離しすぎないように距離保って、フュエルスピッターを引き付けていた。
「おうおう、嬢ちゃん。たった一人で、それもそんな銃で俺たちと戦おうってのかい?」
「へっへっへ、可愛らしいじゃねぇか。すぐに燃やしちゃ、もったいねぇ!」
 荒野の中に少女が一人。
 下卑た笑みを浮かべるオブリビオンが、その歪んだ性分を獲物にぶつけるのもおかしな話ではない。
 この世界では、ただ若い女性であるというだけで、恰好の的だ。
 だが、どのような形であれ、それが人道を遵守する確率は低く、路傍に転がる壊れた銃と変わらぬ扱いを受ける程度であろう。
 冷静沈着を旨とするシャルロットの目元にチリッと熱が帯びるところだったが、そんな安い挑発に乗るような性分ではない。
「そぉれ!」
 フュエルスピッターの注入ノズルから発射されたのは、燃えた燃料ではなく、燃焼性を落とした粘性の油そのもの。
 シャルロットの足元の地面をわずかに湿らせる程度のそれは、なるほど確かに迂闊にあたってしまえば、動きを封じるものであるのだろう。
 フレイムスロワーの使う油は、装甲車も蒸し焼きにできるほど長時間燃焼し続ける。それを可能にするため、油の粘性は高い。
「ケッケッケ、その白くて細い手足を一つずつ、火で炙っていったら、何本目で音を上げるのかなぁ?」
 なるほど、シャルロットの手足を封じて、少しずつ焼いていこうというのだ。
 燃やすことが好きな連中のやりそうなことだ。
「ふぅ……つまらない話をわざわざ聞いてしまいました」
 あまりにも実の無い話に嘆息し、シャルロットはマギテックマシンガンのドラムマガジンを交換する。
 まだ一発も撃っていないが、相手がその気なら、こちらもその気である。
「おっとぉ、そのデカブツをぶっ放すなら、注意した方がいいぜぇ。なにしろ、俺たちは可燃性だからよぉ、ヘヘヘ」
「ええ、お構いなく。もうわかりましたから」
 話を遮るようにして、シャルロットの銃が無造作にフュエルスピッターの燃料タンクを撃ち抜く。
「うおっ!? ホントに撃ちやがった!」
 ポリタンクに過ぎない燃料タンクはあっさりと貫通したが、十分な熱量を持つはずの銃弾は、その燃料を起爆させない。
 ユーベルコード【術式刻印弾・氷結】によって、凍結術式を仕込まれた銃弾は、命中と同時に銃弾を触媒として、撃ち抜いたポリタンクを一瞬にして凍結させてしまう。
 フュエルスピッターの攻撃は、その多くを燃料に依存している。
 であれば、それさえ対処してしまえば無力化したも同然である。
 燃焼とは即ち酸化反応。要するにまぁ、その化学反応を起こさせなければいい。
 魔術を扱うにしてはサイエンスに富んだ対策だが、そのために魔術を使うのだからなんら問題はない。
「ば、バカ言え! 不凍液の筈だぜ!?」
 低温に強い燃料というのももちろん存在する。しかし熱反応及び、凝固しないかといえば怪しいところである。
 まして、ユーベルコードによる凍結に、わざわざ対策しているような燃料などあるだろうか。
 燃料の凍結は、それを身に着けているオブリビオンの身体の各所にも及び始める。
「ぐ、が、身体が……!」
 身動きが取れないフュエルスピッターのその目の前に、銃口がつきつけられる。
「音を上げますか?」
「待っ……」
 返答を待たず、シャルロットは引き金を引いた。
 こんなものばかりを相手にして来たのか。
 本当に頭が下がる。
 暇があれば、かの防衛隊長の話も聞いてみたい気もするが、今は邪魔者を排除を急ぐことにしよう。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

アウラ・ウェネーフィカ
◎アドリブ連携歓迎
ほぅ……これはまた荒涼とした世界だな
他の世界に来たのは初めてだが、見た事も無い物だらけだ
この農場以外に自然が殆ど無いというのは、何とも落ち着かないが……
しかし興味深い
少し土や石を採取していくとしようか

■戦闘
あの背負った箱から液体を飛ばしての発火が主な攻撃手段か?
ならここは【UC】を発動
翼に雷を纏わせてから上空を飛翔、農場に近づこうとした敵に
雷撃を降らして攻撃を仕掛けよう
箱に引火して爆発させられるなら良し
それが無理でも脳天に落とせばダメージは大きいだろう

あとは敵の攻撃が上空の私に届くのかは分からないが
もし届いたとしても風魔法で更に加速
速さを活かして攻撃を【見切り】回避していこう


深島・鮫士
●お決まりの汚物は消毒だーってやつかい? 汚物はてめーらだ、きっちりと掃除してやっからかかってきな。

●敵の爆発攻撃は「野生の勘」で「見切り」、「早業」で回避。ついでに「空中浮遊」「空中戦」を用いれば誤って踏んづけることもねぇな。当たったとしても「オーラ防御」「火炎耐性」「環境耐性」「激痛耐性」で耐えるぜ。

●攻撃を躱しながらシャークショットで「範囲攻撃」「制圧射撃」を行いながら敵に肉薄して【一撃必殺】で斬り捨てる。敵が慌てて火炎放射すれば「カウンター」で後の先を取る。

●ああ、動きが見切れればタンクを投げた瞬間に「カウンター」射撃で未然に防ぐってのもありだな。そっちの方が農場への被害は少なそうだ。


 既に農場を囲うフェンスが壊される場所が出始める中で、農場の作物を区切る柵替わりに突き立てられた鉄パイプに、一羽の鳥が降り立つ。
 いや、鳥というにはやや大きく、鉄パイプのくびれには片足で停まるのが精いっぱいだ。
「ほぅ……これはまた荒涼とした世界だな」
 アウラ・ウェネーフィカ(梟翼の魔女・f25573)は、鳥の様な両の手足を惜しげもなく広げバランスをとると、腕を組むようにして翼腕をたたんで周囲を観察する。
 アックス&ウィザーズの森に住まう魔女である彼女は、アポカリプスヘルの荒んだ世界を訪れるのは、どうやらこれが初めてのようである。
 田舎者と言われれば、それはもうかなりの辺境暮らしで世間ずれはしているのだろうが、文化圏も何もかもが違う世界は、知的好奇心の塊である性分には目の毒である。
 よその家の農場というのも興味深いところだが、察するところ食料以外に用いる様なものは殆ど育てていないらしい。正直言ってアウラからすれば、それほど面白みのあるものではない。
 ただ、木々も池も緑も、ここには少なすぎる。
 森育ちとしてはかなり落ち着かないところではある。
 人は進化し続ける生き物だと思うが、いったい何があって文明がここまで荒廃してしまったのか。
 噂のオブリビオンストームというものにも、いつかは遭遇することになるのか。
 興味は尽きない。
 お仕事の途中ではあるが、いくつか土や石を採取しておこうか。
 ふわりと鉄パイプから飛び降りて固い地面に降り立つと、ローブが汚れるのも構わずサンプルを採取し始める。
 翼の腕でどうやって採取するのかとか、その辺りの無粋な話はこの際、置いておこう。
「おいおい、なにやってんだあんた」
「む、いや、思い出に土を少々……ん?」
 その背後に近寄る人影に声を掛けられ、素材の回収を終えたアウラが手や足元についた埃を落としながら振り向くと、その痩身がきゅっと細くなったかのように縮こまった。
 表情の薄い彼女は、びっくりすると一部のフクロウのように身を固くしてしまうことがたまにあるようだ。
「ん、どうした? ああ、ビックリさせちまったかね」
 アウラの前に立つ男、深島・鮫士(深鮫流活殺刀拳術創始者(自称)・f24778)は2メートル近い大男である。
 ただそれだけなら、アウラも驚いたりはしないだろう。
 肩パッド付の黒いなめし皮のベストに黒いジーンズ。筋骨隆々の体格。それ自体ならむしろ頼もしくさえある。
 しかしその肩の上に乗っているのは、古の支配者……とも言い伝えられている(諸説あり)ものに近い鮫であった。
「ああ、すまない。だが、あなたの顔が怖すぎる」
「そういうあんたは、正直すぎるだろ。生まれつきだよ、まったく」
 歯に衣着せぬアウラの言い様に、鮫士は肩を竦める。
 顔つきの厳つさはさんざん言われてきた。色々と損をしたこともある。だが、これまで悪意を持って罵ってきた連中とは異なり、アウラの言葉に悪意は感じなかった。
 お互いにキマイラ。目に見えぬ気苦労があるのは、なんとなく直感で理解できるのだろう。
 まあここで、お互いにここが辛い! とかそういうことを話している余裕はない。
「さて、おいでなすったようだぜ。ここはひとつ、共闘といかないか?」
「わかった。では、先に露払いといこうか」
 フェンスを越えてやって来るオブリビオン達の気配に、二人は目配せを交わすと、まずは手始めにアウラが翼を広げて飛び上がった。
 枯れ木の色合いを見せるくすんだ翼が力強く空を掴むと、一気に上昇してオブリビオン達のはるか上方を陣取る。
 どうやらオブリビオン、フュエルスピッターの攻撃方法は手にしたノズルに接続した燃料タンクから供給される燃料を噴射し、それを燃焼させて燃やすと言うもののようである。
 粘性のある燃料は、高温で燃え続けるため、たとえ装甲車の様な車輛やトーチカに籠っても蒸し焼きにされることだろう。
 流体を飛ばすというのは、その粘性が邪魔をするのだが、とくに空中を飛び回る相手には分が悪い。
 まして、風の魔法で加速しているアウラには、銃弾よりもはるかに弾速の劣るそれでは追いつかない。
 なるほど、だいたいわかった。
 あの燃料は可燃性の液体。それならば、と、アウラはユーベルコードを発動させる。
「暗雲照らす閃光よ。我が翼に宿りて、裁きを下す力となれ」
 【飛翔雷翼】。それにより翼に紫電を帯びると、凄まじいスピードで空中を滑空、迸る雷光がその爪先をオブリビオンへと穿つ。
「ぎぃやぁー!」
 奇しくもノズルをアウラに向けていたフュエルスピッターに、その雷が直撃し全身を激しい雷光が突き抜ける。
 火花の出ないベリリウム銅を採用したノズルとはいえ、降り注ぐ雷であちこちショートした機構は、それ以外のあちこちに火花を散らし、ポリタンクにも引火する。
 結果、雷を浴びた多くのフュエルスピッターが爆発炎上する。
「ヒュウッ、やる事が派手だねぇ。俺の分残ってるかな」
 露払いと言いつつ通り過ぎるあちこちに雷を落としていくアウラの様子を、首をこきこき鳴らしながら鮫士は口笛を吹く。
 その顔でどうやって口笛を? とか無粋なことを言ってはいけない。
 でたらめに雷を落としているように見えて、彼女の狙いはあくまでも農場に足を踏み入れようとする者のみを狙っている。
 さすがに農場に雷を落とすわけにはいかないらしい。
 だがそれに気づいたらしい他のフュエルスピッターが、先んじて農場に近い進路を取り始める。
 それを許すほど、鮫士に抜かりはない。
「おっと待ちな。お決まりの汚物は消毒だーってやつかい?
 汚物はてめーらだ、きっちりと掃除してやっからかかってきな」
 敢えて姿を見せ、挑発するように手で仰ぐ。
 鮫頭のその巨躯はそれだけで目立つし、高速で空を飛ぶ魔女などよりも狙いがつけやすい。
 それこそが鮫士の狙いである。
「焼き魚にされてぇのか、デカブツゥ!」
 安い挑発に乗ったオブリビオンが火炎放射で狙ってくるが、それを軽いステップで後方に飛び、更に姿を晒すように横っ飛びに回避する。
 それを好機ととらえた別のオブリビオンが更に火を放ってくる。
 空中では方向転換できない。だが、それは常識の範疇の話。
 空中とて密度を上げれば、蹴り付ける事ができる。そう、より速く蹴り付ければ、空気抵抗を蹴ることが可能なのだ。
 かなりの力技だが、そんな風にして空を蹴ることで、空中での無防備を敢えて晒し、尖った鼻先に感じる攻撃の兆しを読み切った鮫士は、タイミングを合わせて攻撃を凌ぎ、躱しざまに抜き放った短銃身に切り詰めたショットガン、シャークショットをぶっ放した。
「ぐあっ、や、野郎!」
 10ゲージの散弾、それもソウドオフはかなりの範囲を賄う。何体かは行動不能にしたが、それだけでは倒れない敵もいる。
 もとより一撃で全て倒そうなどと甘いことは考えない。
 食べ残しはしない。
 攻撃に反応してショットガンを放つ。これは確実な間合いに踏み込むための戦略でもあった。
 負傷しながらもノズルを構え直すフュエルスピッターが引き金を引くよりも前に、鮫士の空いた手が愛用の日本刀、活殺自在を抜き放っていた。
「フンッ!」
 すれ違いざまの【一撃必殺】がきまり、耐火スーツを切り裂いて血の花が咲くのを目の当たりにした他のフュエルスピッターが慌てて火炎を放とうとするが、そのノズルの先端をシャークショットの銃身が交錯して逸らす。
 荒っぽい使い方だが、そのおかげで開いた胴に更に日本刀が突き立てられる。
「くそぉ、これでもくらえっ!」
「むっ!」
 近づかれたらまずい、と感じたらしいフュエルスピッターが自身の燃料タンクを投げつけ、それをめがけて火を放つが、それに対しシャークショットで撃ち落とす。
 反撃に踏み込もうとした鮫士よりも早く、落雷がオブリビオンの脳天を直撃した。
「お邪魔だったかな?」
「いやぁ、ちょうど弾切れだった」
 空中で身を翻して見せるアウラの言葉に肩を竦めつつ、鮫士は散弾銃から薬莢を取り出して装弾し直す。
「ほぅ、本当に頼りになるんだな。あなたにも興味が出てくる」
「よしてくれ。そういう手合いにはウンザリなのさ」
 注がれる視線、その好奇心という種類のものには、あまりいい思い出がない。
 カチンと銃弾を補給したシャークショットをホルスターに納めつつ、心なし残念そうな雰囲気のアウラの視線を振り切るかのように、鮫士は次の戦場へと歩みを進める。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

ティエル・ティエリエル
WIZで判定

カウフマンさん達が一生懸命作った農場を荒らさせたりしないよ!

農場から飛び出して一目散にレイダーの群れに突っ込んでいくぞ☆
そしたらまずは大技をいっくぞー!
【妖精姫のタライ罠】で周囲の無機物、レイダーの装備なんかも含めてぜーんぶ金タライにしちゃうよ♪
そのまま相手の頭にえーいと落としてピヨピヨフラフラさせたところにレイピアを構えて「貫通攻撃」をお見舞だ☆

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


緋翠・華乃音
こういう相手なら戦いやすいな。
久々に猟兵としての仕事をさせて貰おうか。


狙撃手として可能な限り後衛に潜む。
前衛が討ち漏らした敵の処理をメインに、戦場全体を把握しつつ狙撃を行う。
必要であれば適宜狙撃ポイントを移動。

筋肉や骨格の駆動、呼吸のリズム、行動の癖や歩法などの一挙手一投足を見切り、迅速且つ適切に急所を狙う。
用いるべきは研ぎ澄まされた合理性と、最善を瞬時に選択する判断力。


 暴虐の嵐が吹き抜ける戦場と化しつつある農場……ではあったが、その農作物には奇跡的に被害は出ていない。
 奇跡というには少し違うだろうか。被害を出させていないというほうが正確かもしれない。
 奇跡というのなら、この場に救援に訪れた猟兵達の存在であろう。
「ふんふん……いいね、いいね。みんな、凄く頑張ってるね!」
 ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)は、その妖精の小さな体を農場の畑の中に潜めつつ、青臭い香りの中でその実りの程に喜んでいた。
 アックス&ウィザーズは常春の国の出身であるティエルからすれば、この荒廃した世界は見るも無残な様相であったが、そんな荒れ果てた大地にも、こうして緑は根を下ろして実りをもたらす。
 その命の営み、生命の力強さは、彼女の勇気の源にもなる。
 そして、それを踏みにじろうとする者は、ティエルにとって敵である。
「むむ! 来たなー! カウフマンさん達が一生懸命作った農場を荒らさせたりしないよ!」
 バイクのエンジン音……は遠いようだったが、乱暴な足音とレイダー特有の高いテンションの雄叫びが聞こえた。
 人はなぜか荒廃の世にあると「ヒャッハァー!」せずにはいられないのかもしれない。
 背の高く育ったトウモロコシ畑を突っ切って、ティエルはぷんすこと怒りの形相で飛び上がった。
「あれだなー!」
 そのままオブリビオン、フュエルスピッターの姿を捉えると、一目散に加速する。
 さすがに、複数相手に単身では、無謀ではないのか!?
 ──時はやや遡る。
 襲撃を受けている農場周囲に張り巡らしたフェンスからは遠く、どちらかと言えば農場の奥まった位置にあるそれは、農具や畑に使う資材などをまとめた資材置き場であった。
「思ったより、畑の生育がいいな……計算外だ」
 戦場からは離れた位置に到着した緋翠・華乃音(終ノ蝶・f03169)は、思った以上に視界が狭いことに、さして落胆した様子もなく肩を竦める。
 まあ、物の育ちがいいのは悪い事ではない。
 冷静に周囲を見回すと、ちょうどいい建物を発見した。
 さすがに拠点の防壁にまで下がるのは、余計な危険を及ぼしかねないが、資材置き場に併設されたプレハブのような掘っ立て小屋に上れば、十分に視界は確保できるだろう。
「よ、と……もう始まってるのか。出遅れたかな」
 戦場を見回せる位置につくと、華乃音は担いだケースからライフルを取り出しながら、目を凝らす。
 ダンピールにして特殊な組織によって殺人鬼となるべくありとあらゆる教育を施された彼には、その化外の血統も手伝って尋常ならざる視力が備わっている。
 戦況を見るに、最も脆そうな戦線を確認し、狩場を選定する。
 そう、スナイパーライフルを構える華乃音は、ここから敵を狙撃するつもりなのだ。
 敵の進行は、予想よりも早くない。
 波のように断続的な、それこそ優れた統率者による指揮があればこんな農場程度ではひとたまりもなかったろう。
 敵は複数とはいえ、彼らはあくまでも個人の裁量で動いているとみるべきだろう。
 そして彼らは、実に欲望に忠実だ。
「こういう相手なら戦いやすいな。うん?」
 防備の薄そうな地点に狙いを定めてライフルのスコープを覗く華乃音は、唐突にがさごそと揺れるトウモロコシ畑の茂みから姿を現したティエルの姿を認める。
 なんだ、他に猟兵がいたのか。敵ではないが……。
 まだ子供じゃないか。
 動揺が生まれそうになるのを潜める。動揺は仕事の邪魔だ。
 心配せずとも、猟兵であるならば、そうそう簡単に遅れはとるまい。
 それに、フェアリーの体格ならば、流れ弾に命中する心配も少ないだろう。
 尤も、そんなヘマはしないが。
「久々に猟兵としての仕事をさせて貰おうか」
 剣を構え一目散に敵に突撃するティエルを援護すべく、華乃音は銃把を握る。
「うおー! いっくぞー!」
「うおお!? なんだ、ちっこいのが来たぞ! 燃やせぇ!」
 超スピードで叫びながら突進するティエルの姿は、いくらちっこいとはいえ、オブリビオンにあっという間に発見されてしまう。
 そのまま迎撃するように火炎放射にさらされるが、とうに農作物エリアの外側。
 炎を撒かれても農作物が燃えるほどではない。
 キキーッと空中で制動をかけて、危ういところで前髪をちょっぴり焦がしつつティエルは、己の短絡をちょっとだけ反省する。
 さすがに炎の幕の中に飛び入るのは、いくら風の加護を持っているとはいえ無謀かもしれない。
 無茶ならいくらでもできる。それが若さと言うものだが、それにしたってもっとやり様はある筈だ。
 ティエルはこう見えても、沢山の依頼をこなしてきた。ただ突撃するだけの子供のままではいられないのである。
 相手は魔法を使わない。炎を作るのは、背中や腰に帯びた燃料タンクに依るものだ。
 それらは無機物。ならば、ちょうどいい魔法、ユーベルコードがある。
「みんな、ずっこけちゃえー♪」
 能天気な掛け声とともに【妖精姫のタライ罠】によって、周囲のオブリビオンの装備している燃料タンクがすぽぽんと消失し、一瞬のうちに変換される。
 それは変換されると同時に、フュエルスピッター達の頭上に出現する。
 金タライとなって。
「あだっ! い、いてぇっ!」
「へぎっ、な、なんだこりゃあ! あだだっ!」
 年末によくあるコントさながらの物量を誇る金タライの応酬。それも燃料を同時に失って炎も出せなくなった動揺も重なり、不意を突かれたフュエルスピッター達は、脳天に衝撃を受けて目の前に星を散らす。
「……やるな」
 その様子を狙撃ポイントから見ていた華乃音は、無茶苦茶ながらも合理的な手並みに思わず言葉を漏らす。
 そして、棒立ち状態のオブリビオンは、狙撃手にとっては格好の的であった。
「うっ……!」
「ぎゃっ!?」
 風を裂く小さな音と共に、次々と棒立ちのオブリビオンが頭を撃ち抜かれていく。
 うん? と小首を傾げるティエルだったが、遅れて聞こえてきた銃声に、遠くから誰かが攻撃したものであることにようやく気付く。
「手伝ってくれてる人がいるんだ……負けないぞ!」
 自分は一人じゃない。そう思うと、尚の事勇気が湧いてくる。
 愛用のレイピアを振りかざし、ティエルは奮起した様子で、くらくらと立ちすくむオブリビオン達にとどめを刺しに行く。
 一人では抑えきれないかに思えた戦線だったが、前衛を担うティエルと、後衛からスナイパーライフルで支援する華乃音のタッグは強力なようで、見る間に数を減らしていく。
 そんな中、最初のタライで気を失い、大の字で倒れていたフュエルスピッターの一人が、むくりと体を起こした。
 周囲には倒れ伏す自分と同じようなオブリビオン。
 そして戦い続けるティエルと、狙撃されて倒れる同胞。
「う、うわぁぁ……」
 それが選択したのは、逃亡だった。
「あ、まてまてー! 逃げるなー!」
 それにいち早く気付いたティエルも追跡しようとするが、周囲にはまだまだ敵が残っている。
 それに気を取られる間に、おどろくべき逃げ足を見せるフュエルスピッターは壊れたフェンスの外まで走り去ってしまう。
 もはや、通常に狙撃するのも難しい距離である。
 一長一短だが、対物ライフルほどの射程と威力があれば狙えるかもしれないが、無い物をねだったところで仕方ない。
 それに、ただの射撃だけが華乃音の全てではない。
「そう簡単には、逃がさない……」
 極めて合理的に、逃走するオブリビオンの挙動、筋肉や骨格の駆動、呼吸のリズム、行動の癖や歩法などの一挙手一投足を見切り、迅速且つ適切に急所に狙いをつける。
 だが、銃の射程だけが伴わない。
 それでも華乃音は冷静さを崩さない。
 合理性とは、常識の数値ではない。その範疇を超える、別の常識が、彼には備わっている。
 ユーベルコード【瑠璃の瞳(ー)】。それは異理の血統から派生した異能。
 異なる思考を並列に処理し、敵の動きを正確に把握しつつも、周囲に利用できる環境を観察し、瞬時に判断する。
 風向き、気温、障害物……その中に、狭いスコープの中にきらりと光るものを見出す。
 壊れたフェンス、そこにがらんと引っかかる、金タライ!
 乾いた唇をぺろりと湿らせ、吸気したまま呼吸を止める。
「――この瞳からは、逃れられない」
 マズルが火を噴く。
 ライフリングにより回転、安定する銃弾は狙撃用に流線形を保っているとはいえ、重力に逆らうことはできない。
 距離が伸びるほど失速し、緩やかに高度は落ちていく。狙撃距離が離れるほどに狙いが逸れるのは、周囲の環境うんぬんよりも、重力の影響が強い。
 だから限界射程と言うものがあるのだが、それすらも見切るのが化外の異能。
 撃ち出された銃弾が、フェンスに引っかかった金タライを踏み台にするかのようにしてホップする。
 降下する銃弾の弾速を落とさず、跳ねさせる事によって射程距離をさらに伸ばすというのだ。
 当然、跳弾させるわけなので、狙撃難易度は激増する。しかし、
「がっ!?」
 逃亡するオブリビオンの、その頸椎が爆ぜる。
 司令塔を失って崩れ落ちる姿をスコープ越しに認めると、ようやく華乃音は息を吐いた。
「ナイス、金タライ」
 小さな呟きに応えるかのように、フェンスに引っかかった金タライは、くわんくわんと衝撃で回るのだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

リカルド・マスケラス
「せっかくの農場をやらせるわけにはいかないっすよ~!」
そんなことを言いながらやってきたのはバイクに乗った狐のお面

「まずは雑魚のお掃除っすかね~」
宇宙バイクを【操縦】し、相手の横を走り抜け、挑発
「のろまに自分を捕まえられるっすかね? あれ? それとも頭の中にも燃料詰まってて言ってること分からないっすか?」みたいな感じで挑発し、こちらに敵意を抱かせる。畑に義骸のない場所まで誘導できればさらにベター
「考えなしに攻撃仕掛けると、痛い目遭うっすよ~」
程よく引き付けたらターンし、【視力】を込め、敵に【鏡魔眼の術】を放ち、自爆を促す。
「燃料がいっぱいあるからよく燃えるっすね~」


ミフェット・マザーグース
辺境の地をきりひらいた入植者
新天地をめざして宇宙に飛びだった移民船団
ここにいるヒトたちもおんなじ、最初に積もった雪のひとかけら

戦うのは苦手だけど、ミフェットもお手伝いしたいな
農場のまわりには、敵を止めるための塹壕とか罠とかたくさんあるはず
なかったら設置のお手伝い
あるなら「怪力・トンネル掘り・罠使い」でメンテナンスのお手伝いをするね

戦闘になったら後ろに下がって「歌唱・楽器演奏」でみんなを「鼓舞」するよ

UC【嵐に挑んだ騎士の歌】
♪銃弾の雨が降りそそぎ 火炎放射が大地を舐める
ひび割れた地面を踏みしめて
大地を耕し 大地を潤し 緑を育てるのは生きるため
決してあきらめないそのこころは 銃弾にもくだけない!


 時間はかなり遡る。
 どれくらい遡るかというと、それこそこの農場の周囲に張り巡らされたフェンスがオブリビオンに壊されるよりも前の頃。
「辺境の地をきりひらいた入植者。
 新天地をめざして宇宙に飛びだった移民船団。
 ここにいるヒトたちもおんなじ、最初に積もった雪のひとかけら」
 ゆるゆると口ずさむ歌声に合わせて、農場の周りをざくざくと掘り返す人影。
 ミフェット・マザーグース(沼の歌声・f09867)は、そのブラックタールの身体を少女の姿に留めながらも、髪に擬態した触手は時に硬質化してスコップのような切っ先で硬い土を突き崩す。
 元々都市だったらしい名残をそこらに感じさせる荒れ果てた瓦礫とアスファルトの散見する農場周辺の荒野であるが、少し掘り返してみると、その形跡は更に色濃くなる。
 建築物の土台や砂利の層。荒らされた地下保存庫。
 掘り返すにはあまりにも難儀な一帯をわざわざ掘り返すのは、短い時間でも比較的用意が簡単な罠のためであった。
 直接戦闘があまり得意ではないミフェットは、沢山のオブリビオンを相手にする方法として、罠で迎え撃つ方法を選んだ。
 瓦礫の荒野にも、罠を使った形跡が無いではなかった。
 それは、瓦礫の影に潜ませた対人地雷であったり、大型車輛の不要な侵入を阻む対戦車地雷などといったものであった。
 それはそれで効果のあるものだが、逆に言えば一度機能すればそれでおしまいである。
 人海戦術で罠を一つ一つ突破されたらと思うと、ミフェットは頑張らないわけにはいかなかった。
 とはいえ、一人で全部こなすのは難しいので、罠の点検と再設置は別の猟兵に頼むとして、彼女は別の手のかかる物の用意に専念するべく、こうして穴を掘っているのだ。
「ウェーイ、お疲れ~っす」
「あ、おかえりなさい。えと……どうだった?」
 フェンスを阻むかのように掘り進められた塹壕に、バイクのエンジン音が近づく。 牛頭のバイクに狐のお面が乗っかった無人のバイクは、しかしその厳つい様相とは裏腹に妙に軽薄な調子で、塹壕を掘るミフェットへと声をかけるのだった。
 それに対し、さして驚くでもないミフェットは、やや人見知り気味ながらもその仕事を問う。
 リカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)は、その仮面を本体とする猟兵である。
「言われた通り見てみたら、クサそうなところにはちゃんと罠ってるみたいっすね~。誘導すればかなり使えそうっす」
 妙にナンパで人を食ったような調子ながら、足取りが軽いのを活かしてリカルドは事前に設置されている罠の有無と、機能しない場合の再設置もミフェットに頼まれて請け負っていた。
 その口ぶりからすれば、防衛隊のカウフマン氏は、それなりの用意をちゃんとしていたらしい。
「これから、ちょっと大変だけど……手伝ってくれる……?」
「何を仰いますゥ~。せっかくの農場をやらせるわけにはいかないっすよ~!」
 おずおずと申し出るミフェットに合わせるかのように、リカルドはその仮面の影から小さな体を引っ張り出して薄い胸をどんっと叩いて見せる。
「さて、そろそろお客さんの出迎え……の前に、綺麗なおべべが埃まみれっすよ」
「あ、ありがとう」
 オブリビオンの来襲を感じ取った二人は、さて作戦開始! という前に、塹壕掘りで土埃に汚れたワンピースをパタパタとはたく。
 見た目には女の子同士で戯れているようにも見えるけど、そいつ男ですよ!
 チャラくて女性好きでお調子者ながら、ちょっぴり内気なミフェットに余計な気を回させないよう人型を選んで接するような、そんなチャラいにーちゃんが子供の前ではヒーローになるような一幕はともかくとして、二人はようやく作戦を開始する。
 即席で組んだ二人の作戦は、とてもシンプルだ。
「さぁ、まずま雑魚キャラのお掃除っすかね~。しっかり掴まってるっすよ~」
「うん、大丈夫!」
 力強いエンジン音を立てるバイクへと戻ったリカルドは、そのシートにミフェットを乗せて勢いよく走り出す。
 周囲に仕掛けられた罠のポイントを巧みに避け、風を切りながら瓦礫の合間を突っ切る二人は、勢い余ってオブリビオンの一団を斬り込むかのように通り抜けた。
「おおっ!? なんだ、なんだぁ!?」
 小さな女の子を乗せた牛頭のバイク。そんなものがいきなりやってくれば、誰だって狼狽するだろう。
「み、みなさん、こんにちはー!」
「あー、ここは自分に任せるっすよ、こほん」
 思わず真面目に挨拶してしまうミフェットをひとまず制して、リカルドは相手を挑発する文言を瞬時に考える。
「のろまに自分を捕まえられるっすかね? あれ? それとも頭の中にも燃料詰まってて言ってること分からないっすかァ? はい、ここで表情」
「へ? あ、えと……んべっ!」
 ヒーローならば、相手を煽ってこそ。ましてリカルドからすれば、挑発する文言については事欠かない。
 そして流れるように促されてミフェットも、ちょっと戸惑いながらあっかんべーっと精一杯の挑発を行う。
「な、なにぃ! こんの、クソガキぃ!」
 果たしてそれは効果があったらしく、いきりたつオブリビオン、フュエルスピッターは手にしたノズルを一斉に二人に向ける。
 だが、煽った手前、対応するのは早い。
 ぎゅいんと土煙を上げてバイクをターンさせると、一目散に逃走する。
 しかし全速力ではない。もしかしたら追いつけるかも。というくらいの絶妙な速度がポイントだ。
 つまりは、オブリビオンの挑発と誘導。二人の作戦は、とてもシンプル。
 罠に誘い込むために、あえて敵陣に切り込んだのである。
「ホラホラ、こっちっすよ~。ミフェットちゃんも、何か一言!」
「え、ええーと……おたんこなす!」
「うわっ、罵倒が渋いっす」
「まてまてーい!」
 そんな微笑ましい追いかけっこもつかの間のこと。
 追い立てるオブリビオンたちが罠を踏むと、あちこちで爆音が鳴り響き始める。
 対人地雷のベアリングが飛び交い、ボウガントラップで手や足が撃ち抜かれ、設置爆弾のワイヤーが途切れると同時に爆炎が上がる。
 それでも、かなりの数がリカルドたちを追いかけてくるのは、二人が先導する道にはトラップが無いことに気づいたからだろう。
 事前にトラップの位置を把握している二人は、当然それを回避することができるが、同時にそれは安全なルートを教えているようなものだ。
 だが、それは二人の猟兵も承知の上。
「そろそろ、ポイントっす。準備を」
「うん、あっちだね」
 そうして罠のあるポイントをある程度通過してオブリビオンの数を減らした二人は、やがて最初に塹壕を掘っていた辺りまで戻って来ていた。
 ミフェットはふと車上から髪の毛の触手を伸ばし、通り抜け様に塹壕から伸びたワイヤーをつかみ取り、手ごたえがあるまで引っ張ると、それを手放す。
 走行中の一行には、その地面の下からかすかに鳴る金属音に気づくことはない。
 直後、誘引されたオブリビオン達の足元が一斉に崩れ始めた。
 地中が唐突に爆ぜたのは、僅かな火薬による炸裂。そして、ミフェットが泥だらけになりながら掘っていたのは、なにも塹壕ばかりではなかった。
 最初に記載した通り、ミフェットはここいら一帯を掘り返したのである。
 表面上にはわからないほどのトンネルを掘り、その支柱に小さな爆薬を仕込んで。
 シンプルながら、大掛かりな罠。そこへ誘い込まれ、足元を失ったフュエルスピッターが土煙に囲われる。
 敵は、あの猟兵たちはどこへ行ったのか?
 その土煙の中で、カッと光る二つの輝き。バイクのヘッドライトか? いや、それは狐の面、そして輝く二つの双眸。
「考えなしに攻撃仕掛けると、痛い目遭うっすよ~」
 煽るような声には覚えがある。間違いない、あいつが敵だ。
「あそこにいるぞ! やっちまえ!」
 フュエルスピッター達は、こぞってそこへ向かって燃料タンクを投げそこへ火を放つ。
 いくらかやられてしまったが、それでも子供とバイク一台には過剰な火力だ。ひとたまりもあるまい。
 だが、確かに土煙の中でぎらつく双眸へ向けた投げたはずの燃料タンクは、気が付けば足元に転がっていた。
「あん?」
 どんっと、腰にぶつかって落ちたのは、やはり別のフュエルスピッターの燃料タンク。
 周囲を見回せば、やはりというべきなのか、お互いに向けて火炎放射のノズルを向けるオブリビオン達。
「ああ? なにやってんだ、てめぇら?」
 訳も分からず、敵にそうするのと同じように、ノズルを引くと、やはりというか燃えた油が容赦なく噴射される。
 【忍法・鏡魔眼の術】。土煙で不明瞭な視界の中、輝いてすら見えるその視線を受けた者たちは、こぞって敵対する猟兵を攻撃したつもりで、気が付けば自分自身を攻撃してしまう。
 これはそういうユーベルコードであった。
「て、てめっ、なにしやが……ぎゃああっ!」
「や、やめろ、敵はあっち、あっちぃ!」
 トンネルが崩落し、広い落とし穴として陥没した盆地の中では、火が立ち上がるほどの阿鼻叫喚の嵐となっていた。
「だ、ダメだ! あの目を見るんじゃねぇ!」
 あの目が、リカルドの仮面の輝きが認識をおかしくしている。と、フュエルスピッター達は珍しく感覚的にそれを理解するが、なぜか目が離せない。
 それは周囲の視界が利かない中であるというのもあるが、
「♪銃弾の雨が降りそそぎ 火炎放射が大地を舐める
 ひび割れた地面を踏みしめて
 大地を耕し 大地を潤し 緑を育てるのは生きるため
 決してあきらめないそのこころは 銃弾にもくだけない!」
 風に乗る歌声が、彼らの状況を悪化させていた。
 戦うことがやめられない。
 ミフェットの奏でる歌声【嵐に挑んだ騎士の歌】が、リカルドのユーベルコードを増幅させ、その歌声を聞いたオブリビオンすらも闘争心を煽られてしまう。
 戦場において、乱戦時の混沌は悲惨を極める。
「うおおお、燃やす、燃やすゥゥ!!」
「やめろぉ! 俺は味方だぁ! ぎゃああっ!!」
 まさに阿鼻叫喚の地獄。
 自らの炎で焼かれて火柱を上げる。思った以上に燃えてしまい、フェンスを傷つけることになりかねないが、これでかなりの敵を排除したはずだ。
 少なくとも、敵の進行を散発的なものに留めるくらいにはなったかもしれない。
 他にも猟兵の味方はいる。前哨戦としては十分すぎる戦果だろう。
「燃料がいっぱいあるからよく燃えるっすね~」
「ちょっと、煽り過ぎちゃったかな……」
 満足げにマスクの裏で軽薄な笑みを浮かべるリカルドは、ぽつりとつぶやくミフェットの言葉の向きについて考える。
 それは、さっきのあっかんべーの事なのか。それとも、ユーベルコードの事なのか……。
 ひとまず、言及したらそれはそれで怖い気がするので、追撃に備えることにした。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵


第2章 ボス戦 『暴走する生産プラント』

POW ●対象ヲ捕獲ホカク捕獲ホカク
【ナノマシン】を注入し、対象の【肉体】【神経】を過敏にし、改造を【肉体】【精神】に施すカプセルへ捕獲する【機械腕】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
SPD ●ナノマシン注ニュウチュウ入
【機械腕】で捕獲した対象に【注入器】から【対象の体内にナノマシン】を放ち、【カプセル内で改造処置を施す事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ ●改造カイゾウ改ゾウカイ造カイゾウ改造
攻撃が命中した対象に【カプセル内でナノマシン】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【追加ナノマシン注入と改造機械】による追加攻撃を与え続ける。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はクレア・ハートローズです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「すげぇな、猟兵ってのは……」
 身を隠した土嚢の影から這い出ると、畑に被害を出すことなくオブリビオンの集団を完璧に押し返したその猟兵たちの手際に、カウフマンは思わず感嘆する。
 戦闘ともなれば、農場に被害が出ることを想定していたし、事実、畑を囲うフェンスはもう新しく設置し直した方が早いくらいには壊されてしまったが、それほど激しい戦闘があったにしては、畑にはオブリビオンを一歩も踏み入れさせていなかった。
 こんなに強い連中がいるなら、誰か駐留してもらえば話は早いのに。
 そう思いつつ、カウフマンは己の弱気を叱咤する。
 臆病さは大切だが、そればかりに囚われるのもよくない。
「ケッ、野良仕事ですっかり錆び付いちまったかな……」
 自嘲気味に、やや重く感じた銃をベルトから降ろそうとして、唐突にそれを構え直す。
 アイアンサイト越しには大きな影しか見えないそれを遠目に、ええいこれじゃだめだとばかり、上着に差し込んだスコープを片手に遠くを見る。
「な、なんだ、ありゃあ……!」
 遠景に溶け込むには、その威容はあまりにも異質であった。
 でかい。遠目からでも、その大きさが想像できる。
 なぜかって?
 猟兵たちに追いやられたフュエルスピッター。敗走した幾人かのそいつらが、その機械の腕で、まるで虫でもつまむかのような気楽さで掴み取って、ひょいっと頭頂の穴に放り込んでいくのだ。
 ビア樽のような球形。そこから伸びる機械の手足。あんな巨大な機動兵器は見たことが無い。
 そしてその体表にびっしりと並ぶ透明なカプセルには、取り込んだオブリビオンの素体がなにやら奇妙な液体と一緒に詰め込まれていた。
 ずん、ずん、と、その重量を知らせるかのような足音が近づいてくる。
「くそ、どうしろっていうんだ……あんなバケモノ……」
 戦慄するカウフマンの義足が、ぎりぎりと振動に疼く。
『ブボボ、ビボボ……逃走は許可できない。再調整サイチョウセイ……』
 ノイズ交じりの電子音声が鳴り響き、自らがけしかけたであろうオブリビオンを、まるで物でも扱うかのように拾い上げてはカプセルに詰め込んでいく。
『改造カイゾウ……素体群、確認カクニン……捕獲捕獲ホカクホカク……人類改造計画進行中……改造カイゾウ……ポポリポポ』
 巨大なボディから降り注ぐかのような重低音。
 その圧倒的な質量の前にすくみ上りそうになるカウフマンだったが、その背後には人類の拠点がある。
 防衛隊の長たる自分がビビってちゃあダメだ。
「改造だ? ほざくなよタマゴ野郎。こちとら、天然物で勝負してんだよ」
 そう、背後には人類の拠点。その手前には彼らが手塩にかけて育てた農場が広がっている。
 大地に芽吹く生命を育み、それを食らうという生命の営み。
 それは、銃を持ち戦う事と、同じかそれ以上に生きているという実感を得る瞬間だった。
 あんなバケモノに好きにさせるわけにはいかない。
リカルド・マスケラス
「ひゃー、これはまたでっかい敵っすねー」
どんな敵だろうとまず軽口を叩いておくっすかねー

とりあえずは【神火分霊撃】で人型に擬態した炎を召喚し、敵にけしかける。自分はビーム砲の【なぎ払い】とミサイルランチャーの【一斉発射】で距離を開けて攻撃。敵に捕獲されないよう、バイクを【操縦】してこっちに攻撃が来ないようにする。

分身が敵に捕獲されてカプセルに放り込まれようものなら、炎に戻って内部から【属性攻撃】でダメージを与える。
「あー、ダメっすよ拾い食いなんかしたら。それともそのガラクタのオツムにそんなことも入力してもらってなかったんすかね?」
まあ、向こうが取り込まなくてもこっちから乗り込ませるっすが


 荒れ果てた荒野を、土煙を上げながらゆっくりと闊歩するは、足の生えた金属の卵。
 銃を撃てば人が死ぬタイプの世界において、それは素敵なファンタジーの産物などではない。
 側面にびっしりと改造人間入りのカプセルを備えた、その生産プラントを作成したのは、いったいどこのマッドサイエンティストなのか。
 それはまあ置いておいて、ひとまずの問題は、それがアホみたいにデカイことと、暴走してなりふり構わず生き物を引っ張り込んで悪さしようとしているということだ。
 かなり頭の痛くなるような文章だが、この状況を簡潔にかつ三度の飯より銃をぶっ放すのが好きなタイプに説明するにはこれくらいシンプルな方がきっとわかりやすい。きっと。
「ひゃー、これはまたでっかい敵っすねー」
 愛用の宇宙バイクによりかかるように腰を付けて、暴走した生産プラントを見上げるチャラいにーちゃんが一人。
 リカルド・マスケラスは、そのチャラいにーちゃんではなく、あくまでも彼が頭に括り付けている白狐の面こそがヒーローマスクたる本体であるという。
 だらしがなくて女好き。だけどちゃんとヒーローしてるから安心して!
 そんなリカルドは、相変わらずの軽口を叩くものの、そのあんまり真剣そうに見えない眼差しは、ちゃんと巨大なオブリビオンの特性を観察していた。
 巨大なだけで脅威ではあるが、もともと自走したりとかそういうために作られたものではないのか、生産プラントの歩みはとても緩慢でゆっくりとしている。
 あの大きさは、それに見合ったデメリットもちゃんとあるのだ。
「ひとまず、的を散らすのが定石っすかね。というわけで、ちょっと火遊びをば」
 にんにん、と言うかのように手で印を組んでユーベルコードを発動すると、その頭から仮面を剝いでバイクに乗せる。
 なんと、仮面を取った下からは更に仮面。人の姿は擬態に過ぎない。
 【忍法・神火分霊撃】によって作られたそれは、炎が人型に擬態したものであった。
 分身は更に火男のようにぽんぽんと火の玉を吹けば、別の可愛らしい女の子の姿など、大小様々の炎が人の形をとる。
 わざわざ人の姿をさせるのは、忍法と銘打つからというわけではなく、相手が人間を取り込んで改造する形をとっているからである。
「さ、準備完了。一人協力プレイっすよ~!」
 分身を生産プラントにけしかけると、肝心の本体のリカルドは、無人の宇宙バイクに取り付いて操縦する。
 宇宙バイクにマウントした武装を展開し、あたかも地上を滑走する分身たちを援護するかのようにミサイルランチャーを発射し、ビーム砲で薙ぎ払う。
『攻撃を確認……防御フィールド、機能不全……』
 どうやらオブリビオンも万全な状態とは言い難いらしい。
 フレキシブルな人類採集アームが起動して、白煙を引いて誘導するミサイルを防御するが、そのいくつかが腕をすり抜けて、本体に着弾する。
 外側に張り付いたカプセルが幾つか爆散するが、分厚い金属の体表にはあまりダメージがある様に見えない。
『ダメージ軽微ナレド、生産機能10%低下……』
 加えて、硬いお芋も中までふっくら焼ける遠赤外線照射も可能なビーム砲が追撃を仕掛ける。
 直線的なそれは、金属のアームで防がれてしまうが、続けて照射し続ければその部分が徐々に赤熱して変形し始める。
「よーし、その調子っす……ああ、オーバーヒートォ!」
 さすがに車載兵器と言えど、連続照射は熱量が上がってしまう。
 機能不全直前に強制冷却が始まってビームの照射がしばらくできない。
 生産プラントの守りが思った以上に固いため、思わず躍起になってしまった。
 だが、種は撒いた。
 相手の射程外から攻撃し接近させた分身たちは、もう生産プラントの足元まで迫っていた。
「接近して必殺忍法っすよー!」
 分身です。
「ウェーイ、一撃必殺っすよー!」
 それも分身です。
『人類確認……回収改造、開始』
「あーれー、捕まったっす~」
 ウザいくらいに騒いだのが功を奏したのか、分身たちはフレキシブルな人類採集アームに捉えられてしまう。
 アームでキャッチすると同時に注射器のような部品が伸びて、捕まえた対象にナノマシンを注入するという、とんでもない兵器だが、生憎と捕まえた相手は分身である。
「ぐっぐあー、やーられたー!」
 迫真の演技でナノマシンを注入され、ぐったりとした様子で分身たちは生産プラントの頭頂部に放り込まれてしまう。
 それを待ち受けていたかのように、分身たちが一斉に炎へと戻る。
 ぼんっ! と生産プラントの頭の穴から火柱が上がった。
「あー、ダメっすよ拾い食いなんかしたら。それともそのガラクタのオツムにそんなことも入力してもらってなかったんすかね?」
 それを遠目から眺める、仮面をつけたチャラいにーちゃんが、火を灯した指先をチッチッと揺らす。
 さすがに内部からのダメージは堪えたようだが、その巨体がいくらか機体を揺らして歩みを止めたのもほんの数秒。
 すぐに進行を再開し始める。
 まだ食い足りないらしい。なら、お代わりをくれてやるだけだ。
 腹いっぱいになるまで、こっちから乗り込ませるまでだ。
成功 🔵🔵🔴

深島・鮫士
【梟と鮫】

・なんともまあ、巨大ロボを呼ぶか戦車でも仕入れるかってな大きさだが、手持ちのカードで対抗できないわけじゃない。きっちりとスクラップにしてやんよ。それに、今回は最高の切り札も隣にいるしな。負ける気はしねぇ。

・アウラに「運搬」されるときは自身も「空中浮遊」「空中戦」を用いて彼女をサポート。防御は「オーラ防御」で自分と彼女をまるごと包んでおく。

・戦域に到着したら敵の攻撃をシャークショットや刀で迎撃、「野生の勘」「早業」「見切り」で回避しつつ、隙を見て肉薄して【蟻穴天破】を本体に打ち込む。

・その後はアウラのサポートに全力を注ぎ、全ての技能を駆使して彼女への攻撃は必ず未然に防ぐように立ち回る。


アウラ・ウェネーフィカ
【梟と鮫】
ほぅ……! これが、噂に聞くロボットか……!
雷の力で動くらしいが、実に興味深い

しかし、ここまで巨大な相手となると私一人では分が悪い
どうだろう、あなたの力は中々に頼もしい
ここはひとつ、また協力して戦うというのは?

■戦闘
まずは棘を避けて深島さんの肩パッドを掴み
飛んで【運搬】しながら敵に接近(【空中浮遊】)
この程度なら問題なく飛べる、多少疲れるが……

接近後、深島さんに【UC】を叩き込んで貰い
十分な効果が出るまではその場に留まりつつ【魔力溜め】をする
すまないが、機械腕の迎撃はお任せした

その後は私も【UC】発動
水の矢で傷を更に破壊すると共に水を浸透、そこへ更に
集束させた巨大な雷の矢を撃ち込もう


「ほぅ……! これが、噂に聞くロボットか……! 実に興味深い」
 人類の拠点の一つに攻め入ろうとする偉容。その凄まじい質量と、命の息吹を感じさせない無機的なフォルムに、アックス&ウィザーズの魔女ことアウラ・ウィネーフィカは翼の腕で顎をさする。
 森の中で隠遁暮らしが長かったせいか、独り言が多かったり口癖が梟みたいだったりするが、一人が全く苦にならない程度には、没頭しがちなようである。
 なんという強大さ。ただの建造物ならばいざ知らず、自立歩行するというのだから、いったいどのような材質をしていればあの大質量を支え得るのか。
 雷で動く機構というのも、彼女の外の世界では割と一般的だという。やはり世間には触れてみるものだ。興味に尽きないものばかりだ。
「考え込むのは後にしようぜ。ここで暢気に構えてたら、揃って合い挽き肉だ」
 傍らでアウラの考えを中断させたのは、先ほどまで共闘していた鮫頭の大男である。
 考え込むように顎を引いていたアウラとは対照的に、その流線形の鮫頭こと、深島鮫士は鋼鉄の卵を遠景から見上げていた。
「しかしなんともまあ、巨大ロボを呼ぶか戦車でも仕入れるかってな大きさだ。
 だが、手持ちのカードで対抗できないわけじゃない」
「ほう、あれを壊す気のようだね」
「応、きっちりとスクラップにしてやんよ。それに、今回は最高の切り札も隣にいるしな。負ける気はしねぇ」
 にやっと歯を見せて笑う鮫士の言葉に、アウラはぱちくりと瞬きする。
 鳥のように小首を傾げて、さも意外とでも言うかのように威を削がれた様子に、今度は鮫士が訝しむ。
「なんだよ。まだ俺の顔が怖いとか言い出すのかよ」
「それは否定しないが……ほうほう、いいとも。いいともさ。あなたはなかなに頼もしい。
 ここはひとつ、また協力して戦おうじゃないか」
 無表情ながらほんの少し口の端を上げて翼腕を差し出すアウラに、鮫士は複雑そうな顔をしながらも差し出された翼にグッと拳を合わせる。
 協力し、あのデカブツを討つ。
 しかしそうなると、まずどうやってあの巨体に取り付くかだが……。
「さて、あなたは……体重はどれくらいかな?」
「最近は量ってないな。ホオジロザメよりかはスリムだと思うぜ」
「ホオジロ……海洋図鑑があれば、貸してほしいな……まあいい。何とかやってみよう」
「なんとかって……あいだだだ!」
 唐突に体重の話をし始めたかと思うと羽ばたいて飛び上がったアウラに両肩の内側を掴まれて、鮫士は悲鳴を上げる。
 アウラの足は翼と同様、猛禽類のものである。獲物をがっちりととらえるための爪が両肩に食い込む。
「ま、待て、そこエラがあるから、肩パッド掴んでくれ」
「ほぁっ、そうなのか! わかった。ここだな」
 厚手のレザーと板金を組み合わせた肩パッドならば、鋭い爪も痛くない。
 ぎぎっとパッドが軋むのはちょっと心臓に悪いが、アウラのやろうとしていることは何となくわかった。
「なるほどな。俺を運んでくれるのか。しかし……別々に突っ込む方がよかないか?」
「最初の一撃を、確実に当てる。そのための策だよ。まあ、かなり体感的だから、その時になればわかる」
「ホントかぁ?」
 ふわぁっと徐々に体重を感じなくなる感覚が来ると共に、アウラの生み出す揚力には驚くべきものがあるが。
 それでも、一人で飛ぶ方がはるかにスピードは出るのだろう。
 どうにもその策とやらにピンとこないため、思わずアウラの方を見上げそうになったが、視界の端にひらっとなびくアウラのローブの裾が見えて、何かを察した鮫士は視線を目の前の生産プラントへと固定する。
 紳士(ハードボイルド)は覗きなんてしないのだ。
 余計なことを考える時ではない。
「むんっ」
 邪念を振り払うがごとく、鮫士は闘気を展開する。
 拳の頂を志すゴッドハンドたるもの、強敵(とも)との出会いや悲しみを背負うことで闘気を纏う。
 一種の防御膜にもなるそれを張ることで、被弾を避けようという考えであった。
「近づいてきたな。少し回り込むように飛ぶ。勢いをつけると同時に離すぞ」
「なるほど、読めてきたぜ!」
 風を掴むアウラの羽ばたきが力を増したのを感じた。
 直線ではなく、ゆるく円を描くような軌道を取れば、遠心力と慣性がより重たい方、つまりは抱えられている鮫士にかかる。
 さらに上昇から、下降する動きで滑空することによりさらに加速する。
 さすがに闘気のバリアを張っていても風圧が凄くて、話しているどころではない。
 それでも、戦う者の勘が、絶好のタイミングを教えてくれる。
「行け、鮫の!」
「おう、梟の!」
 がちんっと、肩パッドから爪が外れると、勢いに乗った鮫士が勢いよく射出される。
 弾丸の如く加速する肉弾。鮫士の前に生産プラントの機械腕が迎撃に出てくる。
『人類接近……捕獲開始……』
「おお、人類扱いか! 嬉しいね!」
 せっかくの勢いを削がれるわけにはいかない。迫りくる巨大な鉄の塊の腕を刀でいなすようにして受け流し、ショットガンで打ち払う。
 さすがに質量が違い過ぎるが、それだけに隙間を見出す事もできる。
 時に空中を蹴って軌道を変えたりもしながら、鮫士は巨体の体表に肉薄する。
 そして勢いを殺さぬまま、渾身の突きを放った。
「蟻の一穴、天下を破る……ってな」
 ──名付けて【蟻穴天破】。多重装甲と思われる生産プラントの装甲を穿ったその一撃は、確かに巨体からすれば蟻の巣穴程度の穴をあけたに過ぎない。
 だが、闘気を当てつけたその一撃は、最初の一撃を繰り返すかのようにその穴を傷つけ続け、徐々に傷穴を広げる。
「よし、決まった……うおっと!」
 食らいついた傷が確かにユーベルコードとしての効果を得たことを確認した直後、鮫士を捉えるべく機械腕が追って来ていたのを回避する。
 そしてその視線の先には、鮫士を発射した後に宙返りを打ったアウラがその場にとどまって、その両翼に魔力を溜めているのが見えた。
 開いた穴に追撃を加えようというのだが、そこへ機械の腕が伸びていく。
「そう簡単にやらせると思うかぁ?」
 詠唱中の彼女はおそらく無防備だ。
 そこへ迫る機械腕は、頑丈な自分が逸らさなければならない。
 腕を伝い、空を蹴り、機械の関節に銃弾を浴びせ、ありとあらゆる手段で、アウラに襲い掛かる機械腕を逸らしにかかる。
 だが、どれだけやっても最後の一つがアウラに迫るのを見て、ついに鮫士はその身を前にさらす。
「ぬぅぅっ!」
 巨大な機械の腕、その先端から突き出る注射器のような器具を、鮫士の肘と膝が挟み込むようにして受け止めていた。
「そろそろ、ネタ切れだ。頼むぜ」
「ああ、お待たせした」
 魔力を溜め、威力を高めたユーベルコードが発動する。
「属性魔法において、重要なものは応用力と発想力だ」
 複数属性を二種類まで、そして形状をある程度状況に応じて変化させるよう作り変えた、言うなればマジックミサイルの応用、【二重元素の矢】は、属性を絞ることで、相乗効果を得るものである。
 今回選んだのは、まずは水。
 高圧水流の矢は、鮫士が開けた穴を更に切り刻み、傷を深くする。
 そして二つ目の属性は、それと相性のいい雷。
 槍のように収束した雷は、もっとも伝導率の高い場所へと一直線に誘導される。
 つまりは、高圧水流でよく水の染みた個所へ。
 漏電する雷が巨体の体表にまでスパークを起こす。
 痙攣するような電気が迸り、生産プラントの巨体が尻もちをついたように地面へ擦る。
「やったか……?」
 動きを止めたかに見えた生産プラントだが、すぐに固まった体を動かし始める。
「チッ、ハードボイルドだぜ」
「固ゆで? 茹でて食えるようには見えないが」
「だな。生ごみの日にゃあ、出せるやつじゃねえ。こいつは粗大ゴミだ」
 微妙に噛み合わないような掛け合いをやりつつ、二人は同じようなタイミングで、戦いの構えを取り直す。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

ティエル・ティエリエル
SPDで判定

ミフェット(f09867)がいたから合流だ!一緒に頑張るぞ☆
改造は悪いことじゃないけどお前達になんて勝手にいじらせないよ!

どんな大きな敵でも怖がらずに突撃だー!
背中の翅で飛び回って捕まえてこようとする機械腕を「見切り」でひらりと回避だよ!
そのまま「カウンター」で関節部を狙って【ハイパーお姫様斬り】で切り落としちゃえ♪

ミフェットのUCの準備ができたら、スキをついて距離をとって巻き込まれないようにするね!
その後、ミフェットのお歌で強度が下がったカプセルもどんどん切り裂いて行っちゃうぞ☆

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


ミフェット・マザーグース
ティエルも来てたんだ?それなら一緒にあいつをやっつけよう!
猟兵たちの中に見知った顔を見つけて、勇気百倍!
パパーンと派手にやっつけちゃうよ!

UC【楽器のオバケの演奏隊】
リュートを奏でて「歌唱・楽器演奏・鼓舞」して楽器のオバケを召喚するよ
戦ってくれてるティエルや他の猟兵さん達の動きをよく見て、みんながマシンから離れた、誰も巻き込まないタイミングで、大きく息を吸って──……今!

トランペットにホルンにオーボエ、クラリネットにバリトン、チューバ!
文明と一緒に壊れた楽器達がパーンと空気をふるわせて衝撃波でマシンを攻撃!
ガラスのカプセル、センサー類、ボディにダメージを与えてスキを作るよ!


 ぎしぎしと鋼の足が歩みを進める。その足取りは随分と緩慢になった気がする。
 これまでの猟兵の攻撃で、その機械の巨体は、決して少なくないダメージを負っている筈だ。
 だが、生産プラントはそれでも歩みを止めない。
 その機械はもはや最初から暴走している。
 仮にそこに人類の拠点がなくとも、それならばそれとばかり、拠点をその巨体で踏みつけて通り抜けていくだけだ。
 そこに拠点ほどでないにしろ、人がいれば拾い上げて改造していくだけだ。
 おぞましき機械の歩み。
 たとえ、人類の拠点に人が集まっていることが、このオブリビオンを誘引しているのだとしても、それが仮になくてもこのオブリビオンは、どこかをいつも踏み潰している。
 今日か、明日かという違いに過ぎない。
「大きい……こんなの、どうやって押し返せば……」
 土煙と共に地揺れを引き起こすその威容を前に、ミフェット・マザーグースは若干、途方に暮れていた。
 これではまるで地上船だ。
 元より戦うことに積極的スタンスではないミフェットにとって、このサイズ差は如何ともしがたいものがあった。
 だが、放置もできない。このままでは畑が、人々の営みが奪われてしまう。
 押し返すだとか、そういう悠長なことを言っている場合ではないのだろう。
 壊してしまうしかない。
「ミフェットーーー!!」
 静かで冷たい決意。それを胸の前で手の中に握り込むと、ふと自分を呼ぶ見知った声が降ってきた。
 きらきらとした鱗粉を振りまく特徴的な小さな影。親友のティエル・ティエリエルだった。
「あ、ティエルー!」
 体当たりするようなスピードで飛んでくる日の出のような妖精の姿を見ると、ミフェットの堅かった表情がぱっと明るくなる。
 髪に擬態した触手でぼよんっと受け止めるのは、お互いに信頼している証であろう。
「同じところに居たんだね。一緒に、頑張るぞー☆」
「う、うん! 一緒ならきっと、やれるね!」
 先ほどまでの不安な気持ちはどこへやら。ミフェットはもはや元気百倍。やれないことはないとばかり、ぐっと両手を握りしめる。
 ティエルはすごい。
 妖精の小さな体をものともせずに、何十倍も大きな相手を前にしても一歩も引いたりはしない。
 時々その姿が無謀にも見えるけれど、時々その小さな背中が何十倍にも大きく見える。
 怖くない、ティエルと一緒なら。
「よぉーし……まずはやっぱり突撃」
「あ、まってティエル」
「あわわわ……どうしたの?」
 どんな巨大な相手にもひるまずに突撃を敢行しようとするティエルが加速しようとするのをミフェットが引き留めた。
 すっかり全速力を出すつもりだったティエルは、空中でキキーッとブレーキをかけて振り向く。
「ちょっと、ぱぱーんと派手なのをやるよ! その時が来たら、当たらないようにしてほしいんだ」
「派手なの!? うん、わかった!」
 言葉足らずな説明をするミフェットだったが、お互いに信頼があるためか、ティエルにはそれだけで通用してしまう。
 その純真さがたまに心配になるが、曲がりの無いその意志が強靭さでもあり、彼女の美点でもあると思う。
 偉大なる親友の背を見送り、ミフェットはユーベルコードの準備をする。
 取り出したるは一抱えほどのリュート。紋章のように刻まれたサウンドホールの意匠はオーツ麦の穂を現しているようでもある。
 軽く音合わせから、ぽろんとその弦をはじけば、ギターよりもやや高い音域の暖かい音色が辺りの雰囲気を一変させる。
 荒野に沈んだ色褪せた文明を想起させるかのような、懐かしさを思い起こさせるその音色に呼び寄せられるかのように、ミフェットを囲うように小さな光が集まってくる。
 それはやがて形を取り始める。
 懐かしい己を思い出すかのように、かつて愛した何かを作り出す。
 それは幾つもの楽器であった。
 トランペットにホルンにオーボエ、クラリネットにバリトン、チューバ!
 木管金管を問わず、それは半透明で宙に浮かぶ楽器の幽霊だった。
 無数の楽器幽霊たちに囲まれて、ミフェットはなおもリュートを奏でる。
 その楽器たちが最大の効果を発揮するその瞬間を待つかのように。
「うおー! おっきすぎて、全然近づいてる気がしないよー☆」
 一方のティエルは、生産プラントへ向かって全速飛行で突撃を敢行している真っ最中であるが、そのサイズ差はうっかり距離感を見誤ってしまいかねないほどにいかんともしがたい。
 全高を詳しく測ったわけではないが、生産プラントの大きさはだいたい20メートルといったところだろうか。
 ティエルからすれば、だいたい100倍近いサイズ差がある。
 そんなものを相手にしなくてはならない。にもかかわらず、その顔に翳りは無い。
 なぜならば、その小さな体の後ろ、精巧なガラス細工のような薄い翅の向こうには信頼すべき仲間と、守るべき人類がいる。
 立ち止まっている理由など無かった。
 だとしても、ただ一人の子供が抱くには、あまりにも過ぎた蛮勇とも見える。
『……人類を確認、捕獲開始……』
「あはは、ボクのこと、わかるんだね!」
 生産プラントが重苦しい電子音声と共に迎撃態勢をとって、いくつもの機械腕を展開すると、むしろティエルは表情を明るくする。
 自分はひょっとしたら、小さい方なのかもしれない。
 そりゃあ、そうかもしれない。もしかしたらそうなのかもしれない。
 皆がモリモリ食べるリンゴも、一個でお腹がいっぱいになる。
 ひょっとしたら自分の小ささは、誰かにとって大きな違いなのかもしれない。
 だけど、同じものを見て、同じように笑い合える。その笑顔に大小は無い。
 他と同じように、敵としてだが認識するオブリビオンの存在、その反応にこそティエルは喜びを覚える。
 それでも、負けはしない。
「いっくぞー!」
 ティエルの加速は止まらない。
 迫りくる機械の腕は、生身の人間を軽くつまめるほど巨大だ。
 ティエルにとっては、振るわれるその余波ですら脅威となり得る。
 しかし、その手にするレイピアには風の加護がある。
 気流を読み、気流を盾に、気流を得て、風を薙ぐその質量に逆らわずその圧に乗るようにしてひらりひらりと、折り重なる鉄腕の猛襲を回避していく。
 そして、
「ハイパー、お姫様斬りだーっ☆」
 振るわれる鉄腕の勢いに乗り、それを活かし、腕が伸びきったのを見計らってその関節部にレイピアの一撃を加える。
 オーラで増強され、その刀身を何倍にも伸ばした刃は、これまでの度重なるダメージも手伝ってその留め金を破壊されてしまう。
『アーム破損……回収率低下低下……』
 半ばから折れたアームが、まるでスローモーションのように落下していく。
 と、その時、ふとティエルの耳朶にぽろろんとリュートの音色が届いたような気がした。
 ああ、きっと今なんだ。
 歴戦の勘か、それとも信頼ゆえか。
 親友の攻撃のタイミングを察知したティエルは、咄嗟に折れて落ちていくアームの一部に張り付くと、剣を突き立ててその影に身を潜めた。
 すう、と、誰かが、ミフェットが離れた場所で息を呑むような気配がした。
「緩やかに奏でられる音の波、音階を駆け上がる鼓動、高く遠く空へ吸い込まれるラッパの雷鳴。偉大な演奏家のみんな、力を貸して!」
 集まった楽器幽霊たちが、ミフェットの号令の下で一斉に音を鳴らす。
 美しい音階、激しい演奏、それらの音の波が重なり、衝撃となり、うおんっと周囲を歪ませるような波を作り出す。
 その波は、生産プラントをして計測のできぬものであり、押し寄せる空間の振動はその体表に並ぶプラントの強化ガラスを破壊し、さらに計器類にも深刻なダメージを与えた。
「うわーっ、凄い音だー☆」
 その波が過ぎ去った後、思わず飛び出して大声を出しても、ティエルは自分の声が遠く感じる程だった。
 だが、それをまともに受けた生産プラントは、自身の足の付け根やアームの可動部が激しい軋みを上げるほど歪んでしまったらしい。
 今なら、本体に直接乗り込んでもいいかもしれない。
 とりあえず、涎のようにだらだらと培養液を溢れさせる壊れかけのカプセルは、全部斬り払っておきたい。
「よーし、もう一仕事だー!」
 ちょっとだけ耳がキンキンと遠いが、それにもめげずに、親友がつくったチャンスを活かすべく、ティエルはふたたび加速する。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ティラル・サグライド
ああ、ああ、待ちたまえ。ちゃんと準備はするから少しだけ待ってほしい。

暴れてしまわぬ様さっさと行動させてもらうね。
ナノマシン?慣れていることをされてもどうしろと?
でも飛んでくる機械腕は面倒だし踊り避けながら、先程解放した刻印に左手を突っ込み、必要分だけ捕食。

さあさあ待ち望んでいたものだ。彼方に見えるは大量の悪。ささ調べ並べ求め喰らっていこう。

ジャバウォック!!!

左目に潜み、待ち望んでいた怪物を解き放つよ。
さあ、あのカプセル内はどうなっているか。あの機械の中はどうなっているか、そもそも何でこんなことをしているか。すべて全てスベテ調べていこうじゃないか!!
その炎も私の口も沸き立つ好奇心も何もかも!


シャルロット・クリスティア
まったく、また馬鹿でかいのが……。

ああまでの巨体です、肉薄して内部から破壊出来れば楽なんですが、あのアームの量を潜り抜けていくのは骨が折れそうですね……。
アウトレンジからの援護に徹しましょう。幸い、射程なら十分にありますし、あの巨体であれば見失いようもない。

迅雷弾をセット。こいつであれば、機械腕の射程とは比べ物になりません。
接近する猟兵を捕まえようとするアームだろうが、表面に配置されたカプセルだろうが、脆い場所を片っ端から撃ち抜いていくとしましょう。
一人で撃破出来ずとも、相手の攻め手を緩め、付け入る隙を生み出すことくらいは難しくない。
戦っているのは、私だけではありませんから。


「まったく、また馬鹿でかいのが……」
「おや、淑女がそんな言葉を使っては、品が下がると言うものだよ」
 戦いはもはや佳境。ここいらで一気に畳みかけようと乗り出した二人の猟兵、シャルロット・クリスティアと、ティラル・サグライドが、生産プラントからやや離れた位置から、その巨大な影に辟易した様子で嘆息する。
「こんな戦場でまで、高級料理を楽しむ気分ではいられませんので」
「あら、あてつけがましい。だが、どうしてなかなかウィットを感じるよ」
 コッキングレバー引いて排莢し、あらためて長銃を構え直すシャルロットを後ろに、ひらひらと鷹揚に手を振ってティラルは生産プラントへと近づいていく。
 つかみどころのない、どこかお互いに許容しないかのようにも聞こえる掛け合いをしつつも、二人はお互いのポジションと攻撃の算段を感覚でとらえて実行に移す。
 前述したが、おそらくここで決まる。
 畳みかけるならこのタイミングをおいて他にないはずだ。
「ああまで巨体なら、中から破壊するのが定石ですが、あのアームはまだ脅威と言わざるを得ません」
 ならば、アウトレンジからの援護を行う。
 遠距離狙撃用の銃弾を装填しながら、シャルロットはちらと緩やかな足取りで生産プラントに歩いていくティラルを見やる。
 身体にオウガを宿すというオウガブラッドの爆発力。それを最大限に生かすのなら、やはり彼女が好きに暴れられる環境を整えてやるのが一番だろう。
 ともすれば、目下の目標は、あのアームというわけだ。
「責任重大ですね。でも、私は一人じゃない……」
 この場合は、一人じゃないというのが逆に責任を重くしてしまいそうだが、使命感は大きな動機になり得る。
 決意を固めるように、シャルロットは、足元の土をひと掬い口に運んですぐにそれを吐き出す。
 舌に感じたのは、淡い酸味。無味に近いダークセイヴァーの痩せた土と比べると、よく作り上げられていると判断できる。
 こうまで土を育て上げるのは、相当の苦労があったことだろう。
 沸き立つ唾液が口中に残る異物を洗い流そうとする。そのたびに、この土地に農場を拓いた者の目に見えぬ努力を認識する。
 ここでこれができねば、それが無駄になる。
 強い使命感が、銃を構えるシャルロットの集中力を高めてくれる。
「見えるならば、届きます。届くならば、当たります……!」
 抱くように構えたマギテックマシンガン。狙撃用のものではないが、扱う銃弾や、銃身部などに施した魔術式などを複合すれば、より広い範囲で戦える。
 そして、今回使用するのは、【術式刻印弾・迅雷】。
 着弾時に展開するタイプとは異なり、発射時に電磁誘導による加速を得る狙撃用の銃弾である。
 言うなれば、一時的にこの銃は電磁レールガンのような状態になるのである。
 狙いを定め、肺腑に空気を溜め、呼気を納めて感覚を研ぎ澄まし、凪いだ海のように冷静に、冷静に、引き金を引く。
 迸る雷光がプラズマ光の残滓をマズルファイアの如く引いて、超音速にまで加速した銃弾が生産プラントへと襲い掛かる。
『──人類を、カク確認、捕獲カク……カイ始……』
「ああ、ああ、待ちたまえ。ちゃんと準備はするから少しだけ待ってほしい」
 蓄積したダメージで、電子音声もだいぶ怪しくなってきた生産プラントを前に、無駄とわかりつつも手で制するような仕草をしつつ、ティラルは戦う準備を始める。
 とはいえ、先刻の戦いでその身の刻印には戦いの余波ともいうべき炎が残っている。
 それだけで戦えなくもないが、それだけで圧倒できるような相手とも思えない。
 フュエルスピッターの親玉というからには、この質量差はどうにもならない。
 それが常人ならば。
 さっそく、彼女を捕獲せんと機械の腕がけたたましい軋みを上げて襲い掛かってくるが、
 そこへ青白い電光が針のように数本突き刺さったかのように、金属音を残して消える。
「おやおや」
 掴み掛ろうとした機械の腕が、その途中で関節から壊れ始めて崩れていく。
 超高速徹甲弾に撃ち抜かれた関節や注入機関が自重に耐えられなくなり、崩壊していったのである。
 落下してくるその残骸をティラルは踊るように避けつつ、尚も前進する。
 わざわざ邪魔な手足をもいでくれるとは、サービスが利いている。
 いくつかの負傷やナノマシンの注入程度は覚悟していたが、これならば最低限のダメージで中枢へと臨めそうだ。
 尤も、ナノマシンなどというものには、ティラルは慣れっこのようだが……。
 アリスである彼女の深淵、それを覗き見るには、まだまだ紐解くべき謎が多いようである。
 そうして前菜を飛び越して、いきなりメインディッシュを前にしたティラルは、いかにも演技っぽく左手を燻らせるようにして指を稼働。
「さあさあ待ち望んでいたものだ。彼方に見えるは大量の悪。ささ調べ並べ求め喰らっていこう──」
 自分の腕、それが自分の意思で動くものであることを再認識するかの如く動かす左手を、先刻開いた刻印のある腹部へと突っ込むと、服と同時にそれが閉じて、ぶつんとちぎれた。
 【オウガ・ゴースト】。それをユーベルコードとして用いるためには、自身の肉体を供物としなくてはならない。
 それすら余興であるかのように、びちゃびちゃと血液がこぼれる手首が、拘束衣でもある黒いドレスによって圧迫止血されあっという間に血が止まる。
 その間にもシャルロットによる狙撃で、生産プラントはついに自身を移動させる脚部を破壊される。
 バランスが崩れ、倒れてくる生産プラントを見上げるティラル。
 その黒い装束に浮かぶような白い肌には、いつのまにか黒い笑みが浮かんでいた。
「──ジャバウォック!!!」
 ティラルの顔半分を覆うヴェール。左目に住まうオウガの姿で誰かを怯えさせまいと隠していたそれが、自ら帳を払う。
 つまりは、穏やかで友好的な様を一変させるそれが、表に出てくる。
 メルヘンを地獄に変貌させるアリス最大の怪物ジャバウォッキー。獣とも竜とも言われるその恐ろしい怪物と同じ名を持つオウガが、細長い竜の首をもたげ、青白い炎を噴出した。
 臆病なそれが呼びかけに応じて起きる時、その恐ろしい力が解放される時は、物語の終わり。
 炙るような炎が立ち上がったかと思えば、生産プラントは頭頂部に開いた穴をはじめ、あちこちから火を噴出し始める。
 はじめはその炎から逃げ出そうと体を持ち上げるも、直後に体を支えるアームや足を銃弾によって破壊されていく。
 あまりにも容易く見えるが、精妙な狙撃にも加え、これまでの戦いで生産プラントの耐久度は限界を迎えていたらしい。
 そして致命的になったのが、ティラルとジャバウォックの炎。
『限界耐久度突破……リアクターハイドロ消失……機能を維持できないナイ……撤退……テッタイ……』
 やがて、電子音声も聞こえなくなる頃、炎はようやく勢いを止め、
 左目に火を宿すティラルは、半分焼け落ちた生産プラントの残骸の中から顔を出す。
「うーむ……なかなか有意義な時間だった。うっかり色々焼き払ってしまったが、この中身はまだまだ調べがいがあるぞ!」
 手足や顔が煤だらけになるのも構わず、いつもよりもちょっとテンション高めで好奇心を抑えられないティラルは、敵を討伐したことよりも、そのデータの収集に興味が向いてしまっているようだ。
 その様子を、狙撃地点からようやくたどり着いたシャルロットも半ばあきれた笑みを浮かべて眺める。
 オウガが戦いを止めたということは、おそらくもうこの生産プラントが動き出すことはないはずだ。
 農場及び、人類拠点への脅威は、ひとまず去ったのだ。
 ちなみに、ティラルがこの生産プラントについて何を知ったのか、どのような行動目的を掴んだのかは、また別の話である。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵


第3章 日常 『アポカリプスで農業を』

POW力仕事を担当する
SPD丁寧な仕事を心掛ける
WIZ技術指導などを行う
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 かくして、農場を襲うオブリビオンの脅威は、ひとまずは去った。
 大量のオブリビオンを生産する移動プラントが、直接攻めてくるというイレギュラーは起こってしまったが、それは猟兵たちの活躍によって討伐され、農場には奇跡的に被害を出すことはなかった。
 この拠点にとって、この農場にとっては前代未聞の攻防……猟兵という存在が無ければ瞬く間に火の海と化していただろう農場には、この季節を旬とする夏野菜が収穫の時を迎えていた。
「よーしよし、随分と豊作になっちまったなぁ」
 古い文献と実地で以て試行錯誤を繰り返した農場に立つのは、この農場の防衛と責任者を兼ねるカウフマン氏である。
 拠点を賄えることを念頭に置いた大規模な農場。それだけに、収穫ともなれば人手が足りなくなる。
 さらに言えば、オブリビオン襲撃の被害は農場にこそ出ていないもののゼロではない。
 破損したフェンスも広い規模に及ぶし、荒野に横たわる巨大生産プラントの残骸も、そのまま放置していては誰に何をされるかわかったものではない。
 あれを餌に他のレイダーやオブリビオンが寄ってこないとも限らないのである。
 つまりは、そこにも人手を割かねばならず、拠点の人員を大量に投入しても、収穫に割ける人員がそれほど用意できない。
 良くも悪くも農業を始めたばかりのベースの面々は、収穫の仕事を嘗めていた。
「手作業じゃ、てんで間に合わんぞこりゃあ……まいったねぇ」
 額に浮いた汗をぬぐい、農場を見回すカウフマンはぼやくものの、その横顔は明るい。
 自身の作り上げた成果物。それが死体の山でないことが、直接的に人を生かすことに繋がることが、彼にとっては誇らしかった。
 猟兵たちは、彼を手伝ってもいいし、彼らの知り得ない知識を提供してもいい。
 依頼から帰還するまでのほんのひと時を、その成果を、彼らと同じように分かち合ってみてもいい。
ティラル・サグライド
さて、農場で収穫を手伝いたいというのはやまやまだけど、何か便利な道具とか知識とかがある訳でもないし。出来る範囲で力任せに収穫して潰しちゃったりするのもね……
という事でレイダーやオブリビオンの収穫。間違った、寄ってこないよう警備の仕事でもするよ。

さて、警備とはいっても相手は何処から来るか分からない。
という事で。右手で髪を上げて掻きむりながら考えよう。彼らも馬鹿じゃない、この広い範囲のフェンスを見ても全員で来るわけがない。足の速い奴を斥候に見に来て、そこからやるはず。という事ならここら辺の地形で待っていればいいかな。
さて、そんなことで来た様子なら、ジャバウォックと共にレイダー達を食べていこうか。


シャルロット・クリスティア
……あのデカいスクラップは、確かに放っておくと面倒そうですねぇ……。
言ってしまえば資材の山です。この世界においては結構なお宝と言えるでしょうが。
……そうですね。収穫の方は他の人にお任せして、私はそちらの様子でも見に行ってみましょう。

火事場泥棒がいないか警戒したり、使えそうな資材の選別などなど。
金属資源ですし、もしかしたら武装の一つ二つは見つかるかもしれません。
上手く行けば、防衛設備に転用もできるでしょう。
そもそも、拠点の損傷も直さなきゃいけないですから、その為の資材も見繕えるといいですね。

……暮らしを安定させるには、やることは山積みです。
未来への投資は、やれる時にやっておかねばね。


 人類の危機がひとまず去ったとはいえ、やる事は山積みである。
 荒れ野を拓いた大規模農場の収穫作業と奇しくも重なったのは、巨大オブリビオンの残骸。その撤去作業であった。
 農場の防衛及び監督を任されているカウフマン氏の管轄からは離れるが、拠点としてはそこに人員を割かずにはいられない。
 差し出せる人員は限られている。
 なにしろそこに横たわるのは、先進技術の名残。暴走していたとはいえ、前文明と言っていい超技術は、その残骸からでもどのような脅威を生み出すかわかったものではないのだ。
 故に、この戦いに参じた猟兵の多くは、より危険な残骸処理を手伝うことを選んだようだった。
 少年少女、たまにオッサンもいるが、比較的若い世代の者が多い猟兵達とは言え、その働きは重機を扱える一般人に勝るとも劣らない。
「シャルロットさん、こいつはどうですかね?」
 荒野に横たわる移動プラントの残骸を見上げる小柄な少女の名を呼ぶのは、拠点から駆り出された若者の一人のようだった。
 振り向いたシャルロット・クリスティアが指し示されるまま目にしたのは、丁寧に解体された生産プラントの部品の一部としてはかなり巨大な部類だった。
「脚部のパーツですね。あの巨体を支えていたパーツですから、凄く頑丈だと思います。油圧シリンダーも再利用できるなら、使いでは広いかもしれません」
 狙撃手としての目もあるシャルロットは、見張り役を買って出て火事場泥棒に目を光らせると共に、使えそうな資材の選別を手伝っている。
 いうなれば資材の山とも言えるプラントの残骸の選別は、拠点に持ち帰ってからでもいい気もする。
 しかしながら、もとがもとであるため、うっかり拠点でオブリビオンを作り出してしまったら目も当てられない。
 危なそうなパーツは念入りに解体して、場合によっては再利用できないよう破壊してしまうことも視野に入れている。
「やあ、シャルロット君。精が出るね」
「ティラルさん。そちらも、お加減は大丈夫なんですか?」
 資材の危険性について問い合わせてくる者たちが去ったタイミングを見計らったかのように、シャルロットに声をかけたのは、いつからそこにいたのかティラル・サグライドだった。
 その身にオウガを宿すオウガブラッドである彼女は、その身の内に憑依するオウガの力を使って生産プラントにとどめを刺したのだったが、その姿は神出鬼没であった。
 その折にオウガへの供物とした左手は、その身に帯びる黒い装束の内側に伸びるベルトが寄り集まって黒い手袋として左手を象っていた。
 中身がどうなっているのかは定かではないものの、その左手をひらひらと振って見せれば、シャルロットも懸念事項が一つ消えた様子であった。
「見たところ、火事場泥棒を警戒しているようだね。感心するよ。尤も、最初に泥棒に入ったのは私なんだが」
「そのようですね。一番危ないエネルギー供給源は、際限不能にまで壊されていました。
 それに、人体改造に関するデータの詰まった記憶媒体も粗方回収されていたように見受けました」
「目ざといね。とても勉強熱心だ。いやね、私もこういう身体をしてるものだからね。ちょっとだけ興味があるのさ」
「その手……元に戻せるんですか?」
「当てはあるよ。お茶を楽しめるくらいには元に戻す予定だよ」
 よそに聞こえないよう声のトーンを落として話すシャルロットにも構わず、のらりくらりとした様子で受け流し、来た時と同じようにティラルはひらひらと手を振りつつ離れていく。
 無事な方の右手で頭を掻きながら歩き去る後ろ姿を、シャルロットは呼び止めなかった。
 捉えどころがないようで、彼女もきっとやる事がある。それも、自分とおそらくは人々の利益になる形で。
 事実、頭を掻くことでユーベルコードを発動し、思案するティラルは、その思惑が正しいことを人知れず証明する。
 ベルトで補った手中には、砕けたガラス片。それは生産プラントの残骸から回収したカプセルの欠片だった。
 鼻腔一杯にその香りを嗅げば、ケミカルで奇妙な香りが、レイダーの生き残りを示唆していた。
 プラント破壊のどさくさに逃れたオブリビオン、レイダーはどうするだろう。
 状況を考えてみる。
 残骸回収と農場の収穫で、拠点の人員は手一杯どころか足りていない。
 そして先の襲撃で農場のフェンスは破損してしまっている。
 防衛の手が回り切らない今こそが、攻める側としてはチャンスという訳だ。
 それを追跡し、排除するのはいかにも猟兵らしい仕事の仕方と言えよう。
 尤も、彼女にはそれが必要不可欠であるのだが。
「ジャバウォック。よさそうな手があったら、残しておいてくれないかな。なに、体格に合わなくても少しずつリサイズしていくさ」
 左目に宿る竜と共に、オブリビオンの残党を処理しながら、ティラルはあくまでも演技がかった調子で、身体に帯びた刻印で以て敵を捕食していく。
 彼女はグールドライバー。その血肉を刻印で奪い、融合することで命を繋ぐ。
 言うなれば、これこそが、彼女にとっての収穫であったのかもしれない。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

深島・鮫士
【梟と鮫】

・ふー、なんとかデカブツはぶっ壊せたが、こりゃあ後片付けが大変だ。それに収穫もあるっていうし、ここは力仕事に精を出しますかね。まずはデカブツの破片を【一撃必殺】で小さく砕いてどんどん運んでいこう。資材の再利用はカウフマンの判断に任せるぜ。

・働いた後は当然「美味い飯」だろ! 収穫した野菜を使ってちょっと腕を振るってみようか。調味料の類が寂しそうだから、そこは缶詰を利用だ。ちょっとした工夫で結構イケるんだぜ?

・アウラは森の奥に住んでたそうだから、「料理」そのものに縁が薄かったかもしれねぇなぁ…これからも一緒に行動して色々やってみたいもんだ…って、ん? もしかして、俺、惚れた? まさかね。


アウラ・ウェネーフィカ
【梟と鮫】
ふぅ、ようやく倒せたか
一つ世界を超えただけで、ここまで未知の物に遇うとは
全く、世界というのは広く――そして面白い

■行動
見る限り、慣れない収穫に対する人手不足が特に厄介そうか
ここは余っている収穫用の農具を借り、それらに【UC】で
一時的に意思を与えて自律行動させる事で人手を補おう

後は適当な人間(カウフマン)に植物の有用な栽培方法でも
教示しながら――ん?

深島さん、だったかな? これは一体……料理?
いや、失礼、こんな凝った料理は初めてで驚いてしまった

どれどれ……(自律する食器に口に運ばせる)
ほぅ……ほぅほぅ! これは、何とも不思議で味わい深い!
こんな物まであるとは、やはり世界は興味深い……!


 戦いの終わった現場には、巨大なオブリビオンの残骸が横たわっていた。
 それは、言うなれば資材の山である。利用価値を見出す者は後を絶たないだろう。
 そうなる前に拠点に運び込んでしまうのがいいのだが、拠点回りは現在、農場の収穫真っ盛り。
 割ける人員が少ないのである。
 より戦いに長けた猟兵たちは、より危険度の高い残骸処理の方に回る者が多いようであった。
「ふんっ、ふんっ! よし、こんなもんかな」
 深島鮫士もまた、拠点の者たちに混じって文字通りにその辣腕を振るっていた。
 特徴的な鮫の頭をしたキマイラである鮫士だが、近年発見された深海人のようないわゆる水中の民というわけではなく、独特の鮫魔術や鋭いヒレを、今ところは持っていないが、この厳しい世界で培ったゴッドハンドへ至る武術はすさまじく、素手による【一撃必殺】をも可能としていた。
 鍛え上げた手刀は、無抵抗な無機物など恐れるに足らず。
 激しい戦いでひしゃげた生産プラントの残骸をざくざくと切り裂いていく。
 最初は愛用の刀・活殺自在を用いていたのだが、続けざまに金属を両断していくと刃こぼれが怖いので、面倒くさくなって素手での解体と相成った。
 素手で破壊できるのはあくまでも内部の建材程度のものだが、外殻に相当する装甲はさすがに手間がかかるが、そういうものはそもそも細かくするよりある程度の大きさのまま使うほうが都合がいい。
「ふー……こりゃあ、後片付けが大変だな」
 金属のチューブを腕力でまっすぐ伸ばして束ねると、それらをロープで結んで担ぎ上げる。
 そのワイルドな仕事ぶりに、周囲の一般人はぽかんと口を開ける。
 カプセルに培養液を供給していたらしい金属チューブは、雨どいほどの太さがあり、だいたい5メートル間隔で切断(素手で)されたそれの重量はだいたい一本辺り30キロ以上といったところだろうか。
 それをまるで麩菓子でも扱うかのような気軽さで束ねて担いで足取り軽く歩いて運ぶ姿は驚異的と言わざるを得なかった。
 そして無駄口を叩かず黙々と解体する姿は、ひたすら頼もしかった。
「ほう……確かに、人の手が足りないように見受ける」
 一方、農場の方では、防衛隊及び農業従事者たちが、多くの収穫物に四苦八苦していた。
 そんな農場の端、壊れて折れ曲がったフェンスの残骸にアウラ・ウィネーフィカは降り立った。
 手足が猛禽類のそれである彼女の姿に、農業に携わる一般人たちは身構えたものの、拠点を守るために戦ったことを知っている防衛隊は歓待する。
「あんたは確か……助っ人に来てくれた、猟兵とかいう……」
「ああ、手が足りていないように見えたものだから、また助っ人に来たというわけだよ」
「つってもなぁ。失礼だが、そんな体で農作業なんかできるのかね?」
 顎髭をさすり、言いづらそうに、何なら割と露出の高い装束を前にして目のやり場に困るカウフマン氏に不思議そうな顔をしつつ、アウラは然もありなんと肩を竦める。
 そして周囲に転がるフェンスの残骸を見やると、おもむろにユーベルコードを発現させる。
 魔術媒体である足に巻いたリングが怪しく光を帯びたかと思えば、【魔法生物の創造】によって、周囲の金属の残骸に疑似的な命が宿り、宙に浮いたそれらがぎりぎりと形状を変えていく。
 変じたのは鎌や鋏といった、小さな道具であった。
「身の回りのものは、こうして扱うことにしている。私にとっては日常だ。便利だろう?」
「なるほどな。これは確かに、手が増えたみたいだ」
 薄い表情にどこか誇らしげなものを感じさせるアウラの様子に、カウフマンはお手上げといった様子で農場を案内する。
 フェンスの残骸で作った農具は、既存の農具に比べれば即席な分お粗末な出来ではあったが、それでも効率は格段に上がり、特に網状の手押し車のような形態がかなり重宝された。
「時に、カウフマンさん。野菜の栽培間隔や摘果しているのを見るに、相当な勉強をされたように思うが、トウモロコシの葉や茎はそのまま処分されるのかな?」
「そのつもりだ。植え続けても土の質が悪くなるからな。掘り起こして燃やして灰にすれば、次の栄養になる筈だ。そうだろ?」
「根や角質化した茎などはそれでいいが、葉や若い茎は、刻んで発酵させるほうが効果が高い。腐葉土という、堆肥の一種なんだが……」
 作業をしながら、森の住人ならではの知識で、アウラは農業の知恵を提供する。
 腐葉土の材料は樹木の葉や枝であるが、この世界に森は無い。
 しかしトウモロコシなどの荒地栽培に適した植物は、還元性も高いことで知られる。
 植物を使った堆肥は、乾いた地方ならトウモロコシなどでもいいが、湿地などでは泥炭がそれに相当すると言われている。
 ここでの再現は難しかろうが、それもついでに教えておくと、カウフマン氏は妙に喜んだ。
 泥炭はおいしいウィスキーに欠かせないのだとか。
「おう、順調かい?」
 作業は滞りなく進み、農業のお話で意見を交換していたところ、鮫士が資材を抱えてやってきた。
「おおっ、あんたは……その顔、覚えがあるな。あんたもよく戦ってくれた」
「照れるから、あんまり言わんでくれよ。ちょっとした腕試しに過ぎんさ」
「腕試しってのは、そうやって資材を持ち歩くのも、そうなのか?」
「あー……いや、これは、あれだ。壊れたフェンスが目についたもんでな。せっかくだから直しておこうかと思って」
 体格のいい無頼を気取る鮫士も、歴戦の兵士であったカウフマン氏にあってはいつものハードボイルドもちょっとだけなりを潜めるらしい。
 彼の善性がたとえ物のついでであっても、礼を向けられる程度のそれであることには変わりない。
 そのためだけに働くほど勤勉ではないにしろ、恩義を言葉にしないほどカウフマンは薄情ではなかった。
 それにこそばゆいものを感じつつも、何処かやりにくそうに農場の外周整備をし始める鮫士。
 そこに温かいものを感じるアウラだが、表情が薄く、そもそも未知との遭遇と魔術触媒や素材を求めて世界を渡る彼女には、言葉にするのは照れくさいものがあった。
「チッ、これだけ働くんだから、礼くらい欲しいよなぁ? 野菜をちょっともらうけどいいよな?」
「おお、構わんぞ。一人二人増えても、今は問題ないしな」
 作業が一段落し、お腹が減り始める時間になると、鮫士は敢えて悪態のような言い回しをする。
 実は作業の合間で、いかにも酒飲みが好みそうな缶詰の存在を知ったのである。
 それについて聞いてみれば、一般にあまり受けが良くないためか、余り気味だったという。
 それならばと思い、鮫士はそれらを用いて野菜をおいしく食べる調理法を披露しようと考えたらしかった。
 一人旅の長い鮫士は、自分が飽きないように保存食を調理する知識と、その道具も持ち合わせていた。
「オリーブ缶にオイルサーディンか。オッサン、酒飲みだな?」
「日がな一日、土いじりだからな。娯楽が無いんだよ」
「これからは飯づくりも趣味にしなよ。調味料なんかが無くても、ちょっとした工夫で結構イケるんだぜ?」
 手際よく刻んだ夏野菜を、オイルサーディンとオリーブ缶の油で炒める。なんともシンプルな調理法だが、旬の夏野菜は、油で炒めるだけでもご馳走だ。
 おいしそうな香りは、周囲で作業していた者たちも集め始めた。
 そこにはアウラの姿もあった。
「深島さん、だったかな? これは一体……料理?
 いや、失礼、こんな凝った料理は初めてで驚いてしまった」
「いや、缶詰を使っちゃいるが、料理としちゃかなりシンプルなほうなんだが……食ってみるか?」
 そういえば、アウラは深い森育ち。「料理」そのものに縁が薄かったかもしれない。
 出会ったばかりで、何気なくコンビを組んで戦場を駆けてきたが、お互いのことをまるで知らないまでも意外に悪くない組み合わせなのではないか。
 興味のとっかかりを覚え始める鮫士は、柄にもなく惹かれ始めているのかとも思っていたが、当のアウラは惜しいかな目の前のアヒージョもどきに目を奪われてそれどころではない。
 どれどれと、自律する食器を器用に使い、野菜を口に運んでいく。
「ほぅ……ほぅほぅ! これは、何とも不思議で味わい深い!
 こんな物まであるとは、やはり世界は興味深い……!」
 ちなみに、キノコや香味野菜があるともっとおいしいよ!
 それはともかく、基本的に魔術以外はものぐさであんまりこだわりのないアウラだったが、これまでの体験は大変に得難いものであった。
 一つ世界を超えただけで、ここまで未知の物に遇うとは……。
 全く、世界というのは広く――そして面白い。
 未知の人々、未知なる技術、未知なる味わいに舌鼓を打ちつつ。
 そして、その満足げな顔つきになんとなく目を奪われる鮫士であった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

リカルド・マスケラス
「ここはパワー重視型バイクの面目躍如っすね」
とりあえず、残骸や収穫物の運搬は宇宙バイクの【怪力】で運び、収穫に人手を回せるようにする。一応、異世界で覚えた魔術的知識を用いた作物の育成法なども伝えようとは思ったが
「ここまで収穫できてるなら、育て方のアドバイスとかは不要そうっすかね」

あとは収穫した夏野菜を【料理】っすね。おいしく食べれば、次の収穫も待ち遠しくなって頑張れるってやつっす。夏野菜はパスタやピザもいいっすけど、角切りにしたものを炒めた後にトマト煮にしてラタトゥイユするのいいっすね。道具や調味料が足りないなら『簡易キッチンセット』から持ってく
「おいしいものを食べて笑顔になるのが一番っすよ」


ティエル・ティエリエル
ミフェット(f09867)が巨大生産プラントの残骸のお掃除するって言ってるからお手伝いだよ☆

ボクは機械のことよく分からないから適当に集めてミフェットに鑑定してもらうよ♪
「第六感」で有用そうな部品を見つけて、ちっちゃな体での「怪力」で持っていくぞ!
大丈夫、これくらいへっちゃらだー♪

んー!あんなに大きかったから役立ちそうな部品もいっぱいだね!
でも、いっぱいありすぎて持ち運ぶのが大変そうだ!
ようし、ここはボクの【フェアリーランド】の出番だね♪
全部この中にしまっちゃって拠点の資源置き場まで運んじゃうぞ☆

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


ミフェット・マザーグース
んー、んー……
壊れた生産プラントのお片付けをするよ
ティエルにお手伝い、お願いするね

WIZで判定
「怪力」で残骸を持ち上げて、「メカニック」で壊れてない部品を探すよ
電子部品、コンピュータ制御のものは、髪の毛の触手を端子に変えて「ハッキング」で危険を取り除くね
通信機能が生きてたら危険だから、通信装置は物理的に破壊して、他の同じようなオブリビオンに通信を送ってないか、危険はないかログを調べるよ
結果はしっかり農園のヒトとリリィに報告!

水を運ぶパイプ、照明に、ネジにスプリング、使えそうな資材を選り分けて、ティエルのフェアリーランドにどんどん吸い込んで貰おう!

最後にダメな資材のお片付けをみんなにお願いするね


 戦いの終わった荒野には、人々の呼び合う声と、
 タイヤが地面を擦るけたたましい音が鳴り響いていた。
 破壊されたオブリビオンの生産プラントをそのまま荒野に置きっぱなしにしていては、レイダーや他のオブリビオンに利用されてしまいかねない。
 ましてや、人類の拠点の目と鼻の先とあっては、二次被害を招きかねないというわけもあり、拠点に住まう人々はその残骸処理に追われていた。
 とはいえ、先進的な技術の塊であった生産プラントは、ネジ一本とて貴重な資源である。
 猟兵が力いっぱい叩きのめしたために、使えなくなってしまった部分は多分にあるが、脅威であった装甲版の一枚が、今度は人類を守る盾の一枚となるとあっては、人員を割かずにはいられない。
「はーい、みなさーん、タイミングを合わせてー……はい、がんばれ、がんばれ!」
 微妙に脱力感のある掛け声とともに、仮面をかぶった牛頭のバイクが、ワイヤーを引いて地面にめり込んだ生産プラントの巨体の一部を掘り起こしていた。
 人の力では容易に持ち上がらないものであるため、拠点に備えている運搬用の車両に混じって、リカルド・マスケラスはその本体である狐面を宇宙バイクに憑依させてけん引しようというのだ。
 多数の武装を格納し、スピードよりもパワーを重視したという彼の宇宙バイクは、一台で並の運搬車両のキャパシティを優に超えている。
 じゃあミサイルポッドやらビーム砲やら外した方がもっとパワーが出るのでは?
 そういう疑問も尤もだが、ここは有重力下である。武装の重量は、そのままマシンの車輪が浮かないウェイトにもなる。
 あとはマシンのトルクに物を言わせるばかりだが……。
「動いた! 動いたぞー!」
 誰かが声を上げたことで、引っ張り上げた部品を引くワイヤーが撓み、ずうんっと土煙を立てて倒れる。
 地面に突き刺さるように引っかかっていたパーツは、掘り起こしてさえしまえばあとは引っ張っていくだけなので、パワーはそれほど必要ないだろう。
 とはいえ、巨大なパーツをそのまま引きずるのもあちこちひっかけてしまいかねない。
 細かく分けて運ぶしかないとは思うのだが、表面装甲に匹敵するそのパーツを解体するとなるとかなりの重労働だ。
「ここはパワー重視型バイクの面目躍如っすね」
 しょうがないとばかり、リカルドが宇宙バイクを前に出そうとするが、その傍らを人影が二つすり抜ける。
 人影というにはちょっと凸凹だが、その姿には覚えがあった。
「んー、んー……これ、入るかなぁ?」
 周囲の一般人たちがざわっと沸き立つような声を上げる。
 黒髪の少女にも見えるブラックタールの少女、ミフェット・マザーグースがその髪に擬態した触腕で、件のパーツをよいしょっと持ち上げて見せたのだ。
「ちょっと大きいけど、へーきだよ☆ ゆーふぉーだって入れた事あるんだから」
 次に周囲の一般人たちが、どよっと不可思議な光景を目にして困惑する。
 巨大で頑丈な筈のパーツが、ミフェットの傍らの小さな妖精の少女、ティエル・ティエリエルの腰に下げたひときわ小さな壺の中に吸い込まれるようにして入っていったのだ。
 妖精ならば誰もが持っているというその壺は、独自の不思議な空間【フェアリーランド】に通じているという。
「そりゃあ……あんまりっすよー」
 注目を浴びていることに気づいた二人が、わーっとしたり顔をするものだから、これまで汗水たらしていたリカルド以下一般人の回収班の面々はぽかんとしてしまう。
 まあ頑張ったのは主にバイクだが。
 ともあれ、こんなものを見せられてしまっては、まともに仕事をするのが馬鹿馬鹿しくなってしまいそうだが、そこは猟兵のリカルド。冷静に方針の転換を促す。
「よっし、ここはお二人に任せるっす。ケガしないように注意するんすよー」
「ええっ、任せるって、こんな子供二人に!?」
「まぁまぁ、今はどこも手が足りねぇんですから。それに、あの二人なら心配いらねぇっすよ」
 食い下がる回収班を、チャラいにーちゃんの擬態をしゅるんと出現させたリカルドが持ち前のコミュニケーション力を発揮してなだめすかし、そのまま一般人たちを農場の方に誘導する。
 去り際に二人と目の合ったリカルドは、ぱちんとウィンクするとハイヨーっとばかりにバイクを走らせていった。
 実のところ、オブリビオンの残骸を何の精査もしないまま一般人に触れさせるのは危険がいっぱいである。
 仮にもフュエルスピッターのようなオブリビオン化したレイダーを大量に有していた生産プラントなのである。
 うっかり狩り残しがあっては、一般人に危害が及びかねない。
 咄嗟にそう判断したリカルドが気を回して、猟兵である二人に仕事を任せる形となった。
「よおし、それじゃあ、生産プラントのお片付けをするよ! わからないパーツは、ミフェットが見るから、どんどん持って来て」
「わかったー。これは?」
「えーと、それはねー」
 二人は手分けして、手始めに資材の分類をしていく。
 とはいえ、粗方の部品は既に解体されており、強固に守られている部位以外は持ち運びやすいように寸断されていたりもしていた。
 水を運ぶパイプ、照明に、ネジにスプリングなど、直接的に使えそうなものは、そのままティエルの壺の中に収納してもらった。
 残すは外殻などの一つのパーツが巨大なものだが、これらもほぼ問題なくティエルが収納してしまう。
「大丈夫? 持とうか?」
「大丈夫、これくらいへっちゃらだー♪」
 大の大人が数人がかりで持ち上げても腰を壊してしまいそうな部品であっても、ティエルはその小さな体のどこにそんなパワーがあるのか、自分で持ち上げて収納してしまう。
 ただし、フェアリーランドも万能ではない。
 先ほどのように地面に深く突き刺さったものなどは、それ単体では格納できない場合もある。
 どうにもその全容を認識できないと、壺に入るという確信が持てないらしい。
 とはいえ、容量ほぼ無制限、持ち運び数十から数百グラムというのは破格である。
 大きな荷物はひとまずティエルに任せて、ミフェットは電子部品の方面を見ることにした。
 電子戦も想定した兵器という背景を持つミフェットは、電子部品への造詣もある程度深く、ハッキングもお手の物である。
 本人が攻撃的な性格ではないため、基本的にはそういった能力は自衛の域を出ない使い方しかしないのだが、人に被害を及ぼしかねないオブリビオンの形跡があれば、この場で危険を排除しておく必要があるだろう。
 あちこちこまごまとした部品を漁り、髪の毛先を電子部品の端子に合わせて変形させてアクセスしては、通信などの危険性が無いか、記録を洗っていく。
 ブラックボックス化した記録を漁るうち、かの生産プラントが量産されていたらしいデータは見つかったが、相互に連絡をとっている形跡はなかった。
 完全にスタンドアローン化して暴走していたようだった。
 一人ぼっちだったのだ。自分と同じように。
「んー! あんなに大きかったから役立ちそうな部品もいっぱいだね!」
 感傷に浸りかけたミフェットを現実に引き戻すかのように、ティエルが明るい声を投げかけてきた。
 見れば、粗方の部品はほとんど無くなっていた。
「すごい、もう片付けちゃったの?」
「あとはミフェットの分だけだよ。それはいいの?」
 少し逡巡。しかしミフェットは、通信装置になり得るそれをぐしゃりと力任せに破壊してしまう。
「これはいい。有用だけど、うっかりしたら危ないからね」
「? ふーん、そっか☆」
 不思議そうに小首を傾げつつも、屈託なく笑う親友に、ミフェットはちょっと困った笑みを浮かべる。
 通信装置があれば、人々の拠点はきっと更に発展するかもしれない。
 だが、これがもしも他の個体とホットラインで通じていたりしたら、余計な危険を招きかねない。
 魅力的な資材ではあるが、彼ら自身の発展を願う他ない。
 そう思い立つと、残りの安全な電子部品をひとまとめにして、ティエルの壺に入れてもらう。
「おーい、迎えに上がったっすよー」
 そうして粗方の資材をまとめ終え、どうにもならない残骸を一か所にまとめた辺りで、リカルドが宇宙バイクで迎えに来た。
 まとめた資材は拠点まで持ち帰らなくてはならない。
 距離が遠いわけではないが、やはり巨大オブリビオンの残骸回収は、子供二人では重労働である。
 気を利かせたリカルドがリアシートを指し示してやれば、二人は笑顔で顔を見合わせる。
「わーい、乗ってくー☆」
「またお世話になるね」
「どーぞどーぞ、おっと、またおべべが汚れちゃってるっすよー。女の子がこんなに泥だらけにしちゃって、ンマーッ」
 そうして三人は、のんびりと荒野を往き、農場へと辿り着く。
 そこは軽くお祭り状態になっていた。
 何事かと怪訝な様子で顔を見合わせる女の子二人に、バイクを停めたリカルドはぎらりっとした視線を向け、バイクを降りる。
「ククク、二人とも、バイクから降りるっすよ……自分らは、君たち二人を待ち伏せしていたんすよ……」
「ど、どういうことー!?」
 わざとらしく肩を震わせながら笑うリカルドに、おろおろと不安げな表情のミフェットと、劇画調の陰影を浮かべてショックを受けるティエル。
 その二人の反応をよそに、リカルドはバイクに内蔵されている最終武装を展開させる。
 それは、簡易キッチンセット。
 野営も可能な程度には、調理に必要なあれこれが揃ったセットである。
 すうっと銀色の光を帯びるキッチンナイフ、そして眩いばかりに水を玉と弾く夏野菜。
「さあ、働き者の子供たちも、とくと味わうっすよ! 旬の野菜のラタトゥイユを!」
 いつのまにか身に着けたエプロン。振るわれる辣腕!
 魔法のような手際で料理をし始めるリカルドの姿に、お子様二人は目を輝かせる。
 そして沸き立つ群衆。
 こうまでなった経緯を簡単に説明するならば、
 残骸回収から、農場の収穫作業にシフトしたリカルドたちは、粗方の作業を終えると、ふと誰からか「この野菜をどうやったらおいしくなるか」という話題が出始めたのだという。
 そこで一人旅も多いリカルドが、持てる知識の中からパスタやピザといった例を挙げていくと、その手の料理にすっかり疎くなってしまったアポカリプスヘルの住人たちは、それらを是非とも味わってみたいというではないか。
 おいしく食べれば、次の収穫も待ち遠しくなって頑張れるってやつっすよ。
 そう思い至ったリカルドが腕を振るう内、半ばお祭り状態になってしまったというのだ。
 思った以上に騒ぎになってしまったので、一段落したらリカルドは、頑張り屋のティエルやミフェットも誘おうと、迎えに上がったのだという。
「んー! この煮込み、おいしいよー!」
「うん、うん!」
 拠点への荷物運びも、カウフマン氏への報告もひとまずは置いておいて、どちらかというと田舎の煮込み料理に分類されるトマト煮ことラタトゥイユに、二人して舌鼓を打つ。
 その子供らしい喜びようにリカルドもうんうんと頷きつつ、
「おいしいものを食べて笑顔になるのが一番っすよ」
 若干、キザったらしい笑みを浮かべるのだった。
 資材としても役に立ちそうにない残骸も片づけなくてはならないし、資材の事やオブリビオンの事、まだまだ細々とした仕事は残っているが、ひとまず今は、勝利の味を満喫しようと、三人は決め込むのであった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2020年08月02日
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