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七日間の猛特訓!

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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「猟兵のみんな、よく集まってくれたな! アックス&ウィザーズで、オブリビオンに狙われている村を予知したぜ!」
 グリモアベースに集まる猟兵達へ『人間のガジェッティア』ロロック・ハーウェイが、事件の発生を告げる。
「この村は四方をだだっ広い平原に囲まれていて、攻め込まれ放題。俺達猟兵だけじゃ守るには人手不足なんだ」
 数日すれば周辺の都市からもまとまった援軍が来るのだが、敵の進軍ペースはそれより早い。
「そこで村からも有志を募り、民兵として戦いに参加するという話に決まったんだ! だからみんなには、たまたま村に滞在していた冒険者として村人達に戦い方を教え、防衛体制を整えて欲しいんだぜ!」
 襲撃までは七日の期間がある。それまでにできる限りの準備を済ませ、オブリビオンを迎え撃つのだ!

「今回志願した村人達は三つのタイプに分けられるぜ。どんな動きもそつなくこなせる『若者』タイプ。殴り合いには向かないけども、身軽で魔法の素養がある『村娘』タイプ。昔は神官や職人をやっていて、身体能力は衰えているけれども手先が器用だったり魔法が使えたりする『老兵』タイプ」
 それぞれが三十人程度のグループに分かれており、猟兵達は各グループごとに指導を行っていく事になる。
「三つのタイプはみんな性格や、得意な事や苦手な事が違う。長所を伸ばすか短所を塞ぐか、はたまたまったく別の技能を覚えさせてみるか。素質に合わせた訓練メニューを考えてやろうぜ」
 とはいえ、志願兵達はまったくの素人なので、あまり高度な技術や戦技を覚えさせるにも七日間では猶予が足りない。
 どの技能に習熟させていくか、どこまで教えるか、経過を見つつのさじ加減が大事だ。
 あれもこれもと手を伸ばすのもいいが、一つのグループにじっくり注力し、会話や交流を重ねていけば信頼も深まり、いざ戦いになった場合思わぬ機転を利かせたり、素早く指示に従ってくれたりするぞ。
「それと、村を防衛拠点として改築しないとな。つっても七日しかないから、半端に手をつけるより、村の四方にある門を守るための見張り台や柵……どこか一つを重点的に改造するにとどめておくくらいがいいかもだぜ」
 敵軍は村へ続く街道に沿って進軍してくる。
 そのルート上に罠を仕掛けて進行を遅らせたり、敵の数を減らしておくのもありだ。
 やり方次第では、侵攻までの残り時間も増えるかも知れない。
 襲来するのはレッサーデーモンという、山羊の頭部と脚部、そして烏の翼を持つ悪魔なのだが、この軍団は魔術師の召喚によって呼び出される場合が多い。
「けどこのレッサーデーモン達を呼び出した敵軍のリーダーについては、強力な魔術師という以外ほとんど情報がねぇ」
 民兵の訓練、村を改築、そしてできれば敵の首領についてもある程度偵察を行っておきたいところだ。
 敵勢の総数、ボスが村を襲う目的、その能力や弱点なども分かるかも知れない。
「やる事はいっぱいだけどさ、やっぱり最終的には、志願兵の働き次第で戦況が転がると思う。だからみんな、張り切って村人達をしごきあげて、たかが村だと侮ってるオブリビオンどもを、逆に叩きのめしてやろうぜ!」


霧柄頼道
 霧柄頼道です。よろしくお願いします。

●周囲の状況
 東西南北の門が存在し、四方を平原に囲まれ、街道で各都市へつながった村です。
 町へアクセスするための休息場所としても使われる場合が多く、宿屋や料亭が豊富にあり、様々な武器防具の蓄えもあります。

●各種タイプ
 『若者』グループ。村を守るため嫌々ながらも志願した村の若者達。
 剣や盾などの重い武装を扱え、身体能力も高くどんな場所でも活躍できます。
 全タイプで一番高い潜在能力を持っていますが、魔法の才能だけはありません。
 反面士気は低く、訓練をさぼったり抜け出そうとしたり、頭ごなしに怒られでもしたらすぐ心が折れて自信をなくしたりする、今時の若者的な性格。
 本人達いわく褒めて伸ばされたいらしいですが、褒めすぎてもつけあがります。綺麗なお姉さんが好きです。

 『村娘』グループ。頼りない男達には任せていられないと、故郷を守るため立ち上がった、血気盛んな村の女性達。
 ナイフや手弓などの軽い武装を扱え、身軽で魔法の素養もあり、料理なども得意です。
 反面直接戦闘能力は低く、訓練方法や戦場での運用には工夫が必要となるでしょう。
 全タイプでもっとも士気が高く、どんな過酷な鍛錬にも挑戦し、最後まで諦めません。

 『老兵』グループ。まだまだ若いもんには負けておられんと奮起した、豪気な老人達です。
 棍棒や杖などの軽い武装を扱え、武器の改造や兵器の作成及び使用、罠の設置など芸達者で、魔法も多少使えます。
 反面直接戦闘能力と伸びしろは低く、あまり長時間の訓練にもついていけません。ほどほどに休憩を挟みましょう。
 少し頑固気質すぎるため、実力のない目下の人間の指図は聞きたがらないので、指導を行うためにはまず猟兵達の力の程を示してあげるのがいいかも知れません。
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第1章 冒険 『民との共闘』

POW   :    戦力になるように訓練を施し、鍛え上げる。

SPD   :    罠を仕掛け、装備を整え、迎撃の準備を整える。

WIZ   :    戦いの心構えを説く。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

夜神・静流
若者タイプを指導。
「夜神静流と申します。皆様が生き残れるよう、出来る限りの事をさせていただきます」
あくまで物腰は柔らかく、丁寧に。礼儀作法・優しさの技能を使用。

彼等が生き残れるようにする事を第一に考えて防御や見切りの技術指導を。
相手の間合いや動き、心理を読んで、自分や仲間の身を護れるように。見切り・戦闘知識の技能を教えるような感じでしょうか。

「敵を倒しても、その代償に皆様が倒れてしまっては意味がありません。若い殿方である皆様は、戦が終わった後も村の未来を背負って立つ存在なのですから。相手をよく見て、ご自分やお仲間の身を護る事を第一に考えましょう」
と、自分が未来の村の代表である自覚を育てたい。


アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

「厳しい訓練だけが貴方達を救います。酷だと思うのでしたら抜けてもらってもかまいません」

戦い方を教えるのは村娘グループにし、早速実践練習に入ります。
座学、知識から入りたい所ですが、時間が足りません。
心の中で属性、炎や水、雷をイメージし、杖から打ち出す練習です。
勿論最初からできない事は分かっています。
最初は私の魔力を補助としつつ、魔法を練る感覚を掴んでもらいます。

訓練に手抜きはありません。
ついていけない方は去ってもらって結構です。
実戦で無意味に死ぬ方が減るのでしたら、慣れぬ厳しさを見せましょう。

空いた時間に気分転換の『料理』をし、他のグループに差し入れても良いかもしれませんね。


鞍馬・景正
難しい課題ですが、私なりの遣り方で最善を尽くしましょう。

◆訓練
【POW】
私は若者の鍛錬を指導しましょう。
彼らにしか出来ない役目があります。

提案するのはサムライエンパイアでも乱世に猛威を揮った長槍戦法。
集団で呼吸を合わせて振り下ろせば、素人でも鎧兜を砕ける威力を発揮し、守りにも強い。

槍を繰る速度は一人が早すぎても遅すぎてもいけない。
これを根気強く実演交えて指導します。

真面目に鍛錬に励んだ者は讃え、料亭で馳走を振る舞いましょう。
抜け出した者も次は期待すると言葉を掛けていきます。

本当に嫌なら、家族隣人が皆殺しになろうと一人で逃げているでしょう。
そうせず志願した以上、皆には勇者の素質があるのですから。



 村の広場には、兵士となるべく集められた村の若者達、三十名程度が立っていた。
 各自思い思いに緊張していたり、真っ昼間から特訓しなければならない事に辟易していたり、敵の大群を相手に一人で無双する場面を妄想していたりと、指南役となる者の登場を待っている。
「夜神静流と申します。皆様が生き残れるよう、出来る限りの事をさせていただきます」
 そこに現れたのは、夜神・静流(退魔剣士の末裔・f05903)である。
 物腰柔らかく会釈をし、未来の戦士となる若者達へ好もしげな視線を送る姿は、一見してたおやかなお嬢様にしか思えない。
「おお……可愛い」
「まじでこの子が教えてくれるのか……」
「役得かもなぁ」
 静流の洗練された礼儀作法や、柔和な雰囲気も手伝ってかさっそくでれでれし始める男ども。
 鼻の下まで伸びきった目線が注がれている事を知ってか知らずか、静流は落ち着いた口調で訓練内容を話し出す。
「まず今日は、皆様に防御や見切りの技術指導を行いたいと思います」
「へっ? なんかこう、すげー必殺技とか教えてくれんじゃないの?」
「戦いとはただ攻める事のみにあらず。相手の間合いや動き、心理を読み、自分や仲間の身を護れるようになってこそ、一流のつわものと呼べるのです」
 拍子抜けした風に間抜けな声を発した青年へ、静流はこれも必要な修行である事を諭す。
「敵を倒しても、その代償に倒れてしまっては意味がありません。若い殿方である皆様は、戦が終わった後も村の未来を背負って立つ存在なのですから」
「そっかー……そう言われるとそんな風に思えて来たな」
「ふーん。なんかさぁ、人をストレートにおだててる感じが逆に見下されてるみたいでちょっと鼻につくけど、言ってる事に一応筋は通ってるし、まあ納得はできるわな」
「えへへ、静流ちゃんに手取り足取り教えてもらえるなんて……」
「それと、これからは私の事は、先生と呼ぶようにして下さいね」
 はーい、とちゃらけた感じで元気な返事が返される。
 そんなこんなで、静流先生による敵の攻撃に対する対応術、その基本編のレッスンが始まったのだった……!

「相手の視線、剣先の動き、足捌き……一つ一つの動作に注目し、攻撃の軌道を予測し先手を打って回避する……それこそが見切りです」
「なるほど。よっしゃ俺が攻撃するからよ、お前ちょっと避けてみろよ」
「おわっ! い、いきなり斬りかかって来る奴がいるかよフツー……こいつマジありえねぇんだけど」
 めいめい広場に散らばり、練習用の木剣や木槍を手に、ペアを組んでの稽古が開始される。
 攻撃する方はぎこちない動きで、対処する方もわたわたと狼狽しつつ、最初は笑い混じりだったりすっ転んだり、勝手に座って休んだりと、割と好き放題な光景が続いていたが。
「やっべ、見切り失敗……っ!」
「避けられない時はこうやって剣を構えて、相手の攻撃を受け流すようにして下さい。力を込めるのではなく、衝撃の瞬間に合わせて引いて、敵の体勢を崩すように……っ」
「こ、こうですか……っ!?」
「そうです、そのまますぐに間合いを調整して、第二撃に備えて下さい。気を緩めてはいけませんよ……!」
 広場の中心で熱心に指導をする静流の姿もあってか、若者達のへらへらした態度は次第になりを潜め、その場の空気も引き締まったものになっていく。
「あ、あっ……静流先生とこんな接近して……うへへっ」
「――そこ、隙ありです……!」
「ぶほっ! き、効くぅ……!」
 まだ一部でろんでろんの輩もいたが、遅かれ早かれきつい一撃をもらって目を覚ましたり。
「相手をよく見て、ご自分やお仲間の身を護る事を第一に考えましょう。この村を、あなた達自身の手で守り抜くために」
「うおぉぉぉぉぉ俺は死なねぇ、死なねぇぞ!」
「ふんっ、てやっ! まだ幼なじみの娘とキスもしてないのに、○○のままで死んでたまるか!」
 全員の生存率を少しでも上げようと奮闘する静流の指南は、彼らの意気を奮い立たせ、良い成果を上げているようだ……!

 存分に汗を流した後、休憩を挟み、次なる先生役が若者達の前に登場する。
「鞍馬景正です。私なりの遣り方で最善を尽くしますので、よろしくお願いします」
 現れたのは鞍馬・景正(竜胆の剣・f02972)。
 これまた剣術を得手とする、端正な面持ちの武士である。
「なんだ、野郎かよ……」
「てか、すげぇ強そうなんだけど……」
「正直さ、もう俺ら教えられる事なくね? 敵軍とかワンパンで倒せるんじゃね?」
 ざわつく若衆。さっきまでの引き締まった気概は、ちょっとでも休むとリセットされてしまうようだが、まぁ適度に気を抜く事も不可欠だろう。
「あなた方にしか出来ない役目があります。それは何か分かるでしょうか?」
「知らね」
「えぇと……やっぱ敵をぶっ倒す事とか?」
「むしろ、村を守る事じゃね? 要するに敵を村に入れなければそのうち援軍も来て勝ちなんだしさ」
 はい、と景正は最後にセリフを発した若者へ頷く。
「何をおいても生き残り、大事な人達を守る事こそ、もっとも重要なのです。今回はそのために、故郷サムライエンパイアでも乱世に猛威を揮った長槍戦法を、お教えしていきたいと思います」
 サムライエンパイアで使われる槍とは素材も長さも違うが、この戦法において肝要なのは互いの連携を強めつつ守備を固め、敵を寄せ付けない点である。
 若者達は木槍を握って並び、景正のかけ声に合わせて素振りを始めた。
「早すぎても遅すぎてもいけません。呼吸を合わせ、全身を使って振るうのです。穂先に送り込まれる膂力と、柄部分を縦横に使う間合いの長さが、何よりの強みなのですから」
「くそ、やべぇな、槍に身体が持ってかれる……」
「おい馬鹿、こっちに向けんな! 目に刺さったらどうすんだよ!」
「景正先生、あんまり大声は出さないのに、なんか迫力あるよな……」
 休みを入れつつ、槍の型を伝授していく。基本的な動きだけでも綺麗に決まれば鎧兜を砕ける威力を発揮し、敵にとっては恐るべき脅威となり得るのだ。
「この技は皆さんの想像以上の威力です。このように……」
 と、時には景正が木槍を操って練習用の木人形へ真上からぶち込み、上半身を粉砕して見せる。
「すっげ……槍ぱねぇ」
「ま、まぁ、なかなかやるんじゃね?」
「……見ての通り、熟練した者が扱えば一撃必殺となり得ます。極められれば、もはや敵はいなくなるでしょう」
 長槍の持つ性能や動き、技の意味などを根気強く説明しつつ、いつしか若者達の動作もそれなりに様になって来たようだ。
「あー疲れた。ちょい俺、もう無理……」
「酒呑みてぇ……」
「そうですね、皆さん驚く程真面目に取り組まれたので、そろそろ休憩にしましょうか。どこかお勧めの料亭などがあれば、夕食を奢りましょう」
「おっ、マジで?」
「景正先生、太っ腹~」
「……先ほど黙って抜け出していたデンドさんも、ぜひご一緒しませんか」
「え、い、いいのか?」
 はい、と景正はわずかに目元を緩め、穏やかに頷く。
「あなたは筋が良い……むしろここでやめてしまうのはもったいない程です。それに本当に嫌なら、家族隣人が皆殺しになろうと一人で逃げているでしょう……そうせず志願した以上、デンドさんだけでなく、皆さん一人一人には勇者の素質があるのですから」
「ま、またまた~」
「けど悪い気はしないよな……」
「てか、静流先生も誘おうぜ」
 そういうわけで、今日の所は美味しいと評判の料理屋へみんなで繰り出す事になったのだった。

 時間は遡り、同日。
 アリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)は村内にある訓練場に集まった村娘グループを前に、自己紹介をしていた。
「アリウム・ウォーグレイヴです。挨拶は手短に済ませましょう、そうしている時間ももったいないですから」
 村娘達は緊張気味ではあるものの、男どもとは違って浮かれた気配もなく、目はやる気に満ちあふれている。
「なんでも来いってもんよ……!」
「男どもにはあの広場で充分。私達はちゃんと設備の整った訓練場で頑張るから」
「アリウム先生、結構イケメンね。腕の方はどうなのかしら……?」
 おしゃべり好きな娘達は、さすがにひそひそとした会話を止める事はできなかったが、そこはアリウムがこほん、と咳払いをする事で、自然と余計な私語も終わる。
「厳しい訓練だけが貴方達を救います。酷だと思うのでしたら抜けてもらってもかまいません」
「私達、絶対誰も抜けません! ……ね? まさか一人だっても抜けないよね?」
「当然よ。村でやった祭りの運動会の時、マラソンはみんなで手をつないでゴールしたもんね」
「そういう意味じゃないと思うけど……」
 アリウムが警告するように言葉をかけても、誰一人その場を立ち去ろうとはしない。
 ほどほどに緊張し、ほどほどにリラックスした、良好なコンディションであるようだ。
「では早速、実践練習に入りたいと思います」
「じ、実践って……」
「私達にできるのかなあ……」
「本来であれば、座学、知識などしっかりした理論から入りたい所ですが……あいにく、時間が足りません。なので、私の言う事を良く聞いて、その通りに試してみて下さい」
 はい、と若干の不安を覚えつつも、村娘達は素直に頷く。
 アリウムは練習用の杖を少し掲げ、同じように杖を持った村娘達へ説明を始める。
「心の中で属性……炎や水、雷をイメージし、杖から打ち出す練習です。……そうですね、皆さんが普段触れている料理の火や水、雷雨の時に耳にした稲妻などが想像しやすいのではないでしょうか」
「えっと……火をイメージ、イメージ……」
「えいっ、えいっ……! 出ない……全然……」
「私才能ないのかなぁ……」
 当然、やれと言って一朝一夕に習得できるものではない。
 村娘達の気合とは空回りするみたいに、誰一人として魔法弾を撃ち出す事ができずにいる。
 でも、アリウムとて彼女達が最初からできない、うまくいかない事など承知の上だ。
「最初は私の魔力を補助とするので、まずは魔法を練る感覚を掴んで下さい。才能のあるなしではありません。できると思う事です」
 試行錯誤する一人一人に助言をし、魔力を貸してとっかかりを与え、魔法というものを身体で覚えさせていく。
 そこに手抜きはない。誰かを無視する事もなければ、手加減もまたしない。
 平等に、己の知る魔法体系を、最短の形で吸収できるよう務める。
「ついていけない方は去ってもらって結構です。その方があなたのため、ひいては村のためでしょうから」
 安易に弱音を吐く相手には、アリウムも心を鬼にし、慣れないながらも厳しい言葉を浴びせる。
 実戦においての緊急時には、アリウムのサポートも届かない。それで無意味に死ぬ者が減るなら、最初から戦場に立たない方が誰にとっても何倍も良いのだ。
「ま、まだまだ! 私はまだやれる!」
「ねぇ見て見て! さっき一瞬煙が出たみたいに見えたんだけど!」
「アリウム先生の使ってる氷魔法とか、クールで格好いい感じよね……」
(「私の教えた通りに練習を続け、一心不乱に魔法を行使しようとするあなた方を、突き放したくなどない……私もせめて、できる限りの努力をしましょう」)

 そうして午前中から夕暮れまでをたっぷり練習に使い、空いた時間には気分転換に村娘達が料理の腕を振るって、アリウムとともに他のグループへ差し入れていく。
「今日は本当にお疲れ様でした。だいぶ魔力を消耗したでしょうから、みなさんゆっくり休んで下さい」
「ふふん。うちは料亭やってるから、このキノコシチューはひと味違うわよ~」
「べっ、別にあんたなんかのために作ったわけじゃないんだから……」
「うひょー、今夜は食べ放題だぜ!」
「むしゃむしゃ、はぐはぐっ……!」
 夕食を頂きに料亭へ集まる若者達。
 その中には景正の姿もあり、村自慢の料理へ舌鼓を打っている。
「この素朴ながら素材の味を活かした味わいは、身も心も温まるものがありますね」
 また別の席では、静流がでれでれした若者達に囲まれて食事を取っており。
「静流先生、また明日も、よろしくお願いしますよ~」
「はい。私でよろしければ、微力を尽くさせていただきますね」
 ちやほやされつつも、率直な好意の証と受け取り、天然ながら華麗に受け流していく静流であった。
 順調に特訓の進んだ一日目の夜は、こうしてゆっくりと更けていく……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

マイア・ヴェルナテッド
まずは『使い魔による追跡』で使い魔を飛ばし敵勢の偵察を行います。

 続けて村娘グループに魔法の手ほどきを行います。最初の2~3日で魔力運用の基礎を教えて最終日前までに魔法の矢を射出するタイプの魔法を命中精度重視で教育
 遠距離から確実に当てて近づかれる前にある程度数を減らす。前線で戦う若者衆の援護射撃などそちら方面で教えていきます。
「本日より貴方達に魔法の基礎を教えることになりましたマイア・ヴェルナテッドと申します。今日より2~3日で魔法の基礎を学びなおしていただいてある程度基礎が出来たら初球の攻撃魔法を習得して頂く。という予定になります」

偵察項目(上から優先)
・敵の現在地
・敵の総数
・敵首領の情報


ティオレンシア・シーディア
7日、7日ねぇ…
だいぶ時間ないし、相当突貫の詰め込みスパルタになりそうねぇ。
人に教えた経験なんてあんまりないけど、頑張るしかないわねぇ。

『村娘』グループを訓練するわぁ。
正直、前衛抜かれて後衛まで敵が来た時点でほぼ詰んでる様なものじゃないかしらぁ?
という訳で、遠距離武装に絞って訓練するわぁ。
いきなり近接戦闘させるよりは目があると思うのよねぇ。
最大射程から4分割くらいして、それぞれの範囲に〈援護射撃〉を〈一斉発射〉できるように訓練しようかしらぁ。

時間があったら差し入れに〈料理〉を作って、〈コミュ力〉を活用して各グループに面通しくらいはしてもいいかしらねぇ。

※アドリブ掛け合い絡み大歓迎


天星・零
【若者】グループ

『村を守るなんて大層なこと考えなくていいですよ。皆さんが諦めず大切なものを守れば自ずと村を守れますよ』

親身に付き合う【覚悟】を持って【情報収集】で身につけた知識を使って教える
個々に合う様に其々教え方や言葉を変えて教えます

特訓中、若者を観察し長所と短所を【情報収集】
長所と短所を理解させて個々に合わせて教える
褒めるだけではなく短所も言う


誰一人見放さず等しく接する
必要なら【鼓舞】や自分の【覚悟】、過去の依頼の経験などを話す

何があっても常に笑顔で対応(ただし笑顔でも言葉は優しいとは限らない)

怪我人はUCと手分けして治し、その際魔法を使わない応急手当や治療の知識も理解できる範囲で教える


夜神・静流
引き続き若者への指導を。
前回は相手の動きをよく見て、見切る事を学んでいただきましたが、今回はそれを攻めに活かす方法を教えようと思います。
技能は見切りに加えて早業・先制攻撃あたりでしょうか。

「『今から攻撃するぞ』という時が、実は一番無防備になるのです。その瞬間を見切り先んじて攻撃を当てる。これを【先の先】といいます」
後の先よりは此方の方が分かりやすいかと。

実際に彼等が攻撃しようとするタイミングに合わせて刀を突き付けて実演し、その後は二人一組で対峙させ、実際にやる・やられるタイミングの実感と、一瞬で勝負が決まる緊張感で実戦の空気を感じてもらいます。
訓練後は頑張った皆さんにお酌でもしましょうか。



 夜神・静流(退魔剣士の末裔・f05903)は、引き続き若者達の指導を行っていた。
「静流センセー、今日は何やるんですか?」
「普段ならだりぃ授業でもさ、静流先生の声ならいつまでも聞いていられるぜ……」
「前回は相手の動きをよく見て、見切る事を学んでいただきましたが、今回はそれを攻めに活かす方法を教えようと思います」
 静流がそう言うと、にわかに生徒達はざわめき出す。
「てことは、ついに技とか教えてくれちゃう系ですか!?」
「バッカおめー、前のだって技っちゃ技だろ、防御面の」
 相変わらず妙に緊張感がないが、静流もまた無理に鎮めようとはせず、こっちもこっちでマイペースに訓練内容を語り続ける。
「技能の区分としては、見切りに加えて早業・先制攻撃あたりでしょうか。いわゆる応用編というところですね。以前よりも難易度は高いですが、皆様ならきっと使いこなせると信じています」
「先生、皆様なんて堅苦しい事言いっこなしだぜ。もっとこう、お前らやるぞー、みたいにアゲてこうよ!」
「そ、そうですか……? それなら――皆さん、今日も一日、頑張りましょう……!」
 静流のちょっと恥ずかしそうな声とともに、おおー! と野郎共のかけ声が合わさった。
 というわけで、剣を持って若者達が並び、静流がその正面で刀を正眼に構える。
「『今から攻撃するぞ』という時が、実は一番無防備になるのです。その瞬間を見切り先んじて攻撃を当てる。これを【先の先】といいます」
「なるほど分からん!」
「分かれよ、静流先生直々のお教えだぞ!」
「ひょっとして、前のアレは【後の先】ってやつ?」
「正確に言えば、見切りに加えて反撃を打ち込み、流れを引き込んでこそを後の先と呼びます。ですが私が今まで教えたのは見切りや回避といった防御技術まで……これに合わせて、反撃の技を覚えられれば、一気に【先の先】【後の先】を習得できると思います」
「なぁるほど……理屈はよく分かったぜ」
「んじゃどうする。適当に斬り合って練習するか?」
「バカお前ら、その前にまず誰が先生にマンツーマンで教えてもらうか、その順番決めのが先だろうがッ!」
「今日はどなたか数人、私のお相手をしていただけますでしょうか。一対一で実演するよりも、その方が乱戦の空気などを肌身に感じられるでしょうから」
 途端、男どもは我先にと挙手して、静流のお眼鏡にかなうよう大声を出したりパフォーマンスをし始めた。
 その中から五人ほどを選び出し、まず一人目と対面した形で、双方の間合いを計り合う。
「……うおぉっ!」
 青年が剣を手に踏み込もうとした矢先には――あまりにもあっけなく、その喉元に静流の突き出した切っ先がつきつけられていたのだった。
「ま、マジか……全然見えなかった」
「へっ、お前は殺気が強すぎるから、あんなの俺だってできるぜ」
「いやいや、殺気がどうこうってレベルじゃなく……静流先生、速すぎだろ」
 刀を下ろし、静流は他四人にも微笑みかける。
「では、他の方もどうぞ、いつでもいらっしゃって下さい」
「う……うおおぉぉぉぉっ!」
「じじゅるぜんぜえェェェェェッ!」
 しかしまぁ、あふれる覇気とは裏腹に、誰も彼も似たりよったりの末路を迎え、軽く剣先で叩かれてばったばったと倒されていった。
「ぐはっ……まさか、い、一撃も、入れられないなんて……」
「へへ……気持ちいいほど手も足も出ねぇ。静流先生テクニシャンだぜ」
「凄ェなあの人、あんだけの男をあっさりいなしてやがる」
 見本を存分に見せた後は、例によって練習のそのまた練習。
 前回の特訓で培った経験を活かし、若者達は先の先の修練に奮起する。
「お、おい……早く打ち込んで来いよ!」
「お前こそ先に来たらどうだ? すっ、すぐカウンターしてやるからよ!」
「これそういう駆け引きじゃねぇから! 打ち合わないと始まらねーから!」
「いえ、それでいいのです。やる・やられるタイミングの実感と、静と動の感覚。一瞬で勝負が決まる緊張感……それこそが実戦の空気なのですから」
 向かい合うだけではぁはぁと息を切らし、腕をぷるぷると震わせる若者達へにこやかに笑いかけ、特訓模様を見ていく静流。
「ていうかさ、この立ち回りと景正先生に教わった槍術合わせりゃ最強じゃね」
「確かにな。理論上一方的に俺つえーできそう。……ものにできさえしたらの話だけど」
「静流先生、もう一本お願いします!」
「はい、私でよければいくらでもお相手しましょう」
「おい次は俺だ! 俺が静流先生にボコられてから膝枕されて介抱されてにこっと微笑みかけられてきゅんとして全回復してまた挑んで優しくやられて以下ループするんだ!」
「これがこじらせた○○のなれのはてか……」
 とっぷりと日が暮れるまで威勢の良い稽古は続き、なんとかかんとか形になって来た頃で、今日はお開きとなる。
「そうですね。今日は皆さんとても頑張りましたし、どこかお店に寄って、お酌でもしましょうか」
「うっひょー! し、し、静流先生にお酌してもらえるなんて!」
「やっべ……妄想しただけで昇天しそう」
 今夜も料亭の一つを占拠しつつ、静流と愉快な生徒達は飲み食いし、訓練の疲れを吹っ飛ばしていくのだった……。

 数日後、新たに若者達の指導役として現れたのは、天星・零(多重人格の霊園の管理人・f02413)である。
「天星零です。短い間ですが、よろしくお願いしますね」
 にこり、と控えめな優しい微笑みを覗かせる零に、若者達は当惑したり首を傾げたり、生唾を飲んだりしてざわざわした。
「美少年だな……」
「あんなガキも冒険者なのか?」
「お、俺……割といける気がする」
 何がだ。とにかく、零は引き続き若者達を見渡して、落ち着いた朗らかな調子で言葉をかけていく。
「きっとみなさん、大任を託されてとても緊張してらっしゃるはずです。でも村を守るなんて大層なこと考えなくていいですよ」
「マジか」
「いやでも、テキトーな俺らでもさすがにそこまで無責任にはなれねぇっつか……」
「いいえ、諦めるのとは違います。家族、家、財産、友人……そういったかけがえのない一つ一つのものを、最後まで守りきる……そういった決意と行動が、おのずと村そのものを守る事につながるんです」
「そっそういう事だったとは!」
「零ちゃんの話は分かりやすいねぇ」
「バカ、先生って呼べよ」
「いえ、どうぞお好きに呼んで下さい。僕はみなさんに戦いを教える役目こそ担っていますが、同時に仲良くなっていきたいとも思ってますので」
 フレンドリーに語る零に、若者達の緊張はほぐれ、零へ対しても親近感を覚えているようである。
「では、みなさんが今まで身につけた技術を、おさらいの意味を込めて見せて下さい。そうして足りないと思える部分を、僕が一緒に解決していきたいと思うので」
「へへっ、俺様の伝説級の槍さばきを見てびびれ!」
「お前のはせいぜい短剣止まりだろ……」
 そんなわけで、さっそく若者達は零を前に、慣れた動作の長槍戦法や見切りに回避、先の先及び後の先などを披露していく。
 鍛錬は欠かさなかったのかその動きはだいぶ習熟したものとなっており、一日目と比べても舌を巻く成長ぶりだ。
 とはいえ、全ての課題がこなせたわけではない。筋は良いが、せいぜいが素人に毛が生えた程度のもの。このまま実戦へ放り出すのはおおいに不安が残る。
 零は自信満々に剣や槍を振り回す彼らをじっと観察し、抱える問題点や悪癖を見極めていく。
「攻撃に関しては、みなさん素晴らしい素質をお持ちです。ですが見切り技術は、お互いが顔見知りという事もあって、なんというか危機感に欠けていると感じます。そうですね……ここからは試しに僕が相手になるので、対処してみて下さい」
 個性的な面々にも丁寧に接し、得意不得意に合わせて指導方法を変えていく。
「おいおい、そんなちっちゃいなりで俺様の槍に耐えられんのか? 先生様よぉ」
「遠慮なく、どこからでもどうぞ」
「へっ……後悔すグワアァァァッ!」
 力に慢心している相手にはほどほどに鼻っ柱を叩き折って初心に返らせ。
「どーせ俺なんか才能ないんだー……ちらっ。ないに決まってるー……ちらっ。……いやだな、誰か助けてくれないかなーちらっ。……ちらちらちらちらちらちらっ」
「そんな事はありません。あなたならきっと出来ます、二人三脚で頑張りましょう」
 ふぬけて自信喪失している相手には、親身になって声をかけ続けて鼓舞し。
「実際さぁ、こんなので本当に生きて帰れるのかねぇ? 零先生もぶっちゃけていいよ。俺らなんかに何かできるわけないって」
「……たとえ力がなくとも、必死に生き抜こうとする人々は、自分で思っているよりも大きな力を発揮するものです。過去の仕事でも、僕はそういった人をよく見て来ました。ですから、まずは最後までやり抜いてみませんか?」
「……ふぅん。あんたもただお気楽に笑ってるだけじゃないんだ。ま、俺達も死にたくないし? 付き合ってくれて感謝してるよ」
 激しく動き回って汗と泥にまみれながらも、零から笑顔は消えない。紡がれる言葉は的確に若者達が目指すべき先を示し、彼らもそれに応えてめきめきと腕を上げていく。
「いってぇ! 腕! 腕イッたってマジ!」
「ほんとかぁ? おおげさにわめいて訓練免除してもらおうとしてんじゃねぇの? 腕が折れたってのもあやしいもんだ、おらっ、ぐりぐりっ!」
「ぎぃやあぁぁぁぁぁぁぁッ!」
「ああ、あまり動かしては駄目ですよ。ちょっと見せて下さい……治療しますので」
 強くなればなるほど、怪我人が出る頻度も増える。そういった時にはすぐに最寄りの民家を借りて、零は負傷者の治療へ勤しむ。
「手間かけさせるにゃよ。ほらっ、さっさと生きたいと願えにゃ! ぐりぐりっ!」
「ぎょえええええええええッ!」
 人型の黒猫霊『アッシュ』も医療班に加わり、どんどん運び込まれてくる怪我人に魔弾を撃ちまくって矢継ぎ早に癒していく。
「休み時間では、魔法を使わない医療技術も、みなさんにお教えしましょうか。実際の戦場では、傷を負う確率は訓練の比ではありませんし」
「ひえぇ……」
「必死に覚えないとな……何なら戦いの訓練よりも」
 といっても大規模な外科手術とかではなく、とりあえず命をつなぐだけの止血、骨折した時の添え木の当て方など、応急手当の方法を教授する。
 これで、できるだけの事はしたはずだ。
 後は残る時間いっぱいまで、若者達が覚えきってくれるのを願うだけである――。

「それじゃあ、追跡よろしくね」
 マイア・ヴェルナテッド(ノーレッジデザイア・f00577)は訓練場に向かう道すがら、使い魔の蝙蝠を召喚し、侵攻してくる敵勢の偵察へと飛ばしていた。
 得られた結果いかんによって対応方法も変わる。使い魔にはできれば早く帰還してもらいたいところだが、戻って来るのは差し詰め訓練が終わる頃だろう。
「本日より貴方達に魔法の基礎を教えることになりましたマイア・ヴェルナテッドと申します。よろしくお願いします」
 今日も今日とて集まって来た村娘達に、マイアは礼儀正しく挨拶する。
「わあ、綺麗な人……」
「肌も白いし、あの日傘もおしゃれねぇ」
「お、お姉様と呼びたいわ……」
 ミステリアスな印象を備えるマイアに、村娘達はひそひそとかしましく囁き合う。
「今日より2~3日で魔法の基礎を学びなおしていただいて、ある程度基礎が出来たら初球の攻撃魔法を習得して頂く。……という予定になりますが、何か質問はありますでしょうか」
「あの~……はい!」
「どうぞ」
「私達、とりあえず魔法っぽいものは出せる感じになってるんです。なので理論とか座学とか、そういうのはスキップしてもいいかなぁと」
「そうそう。なんていうか直感とか身体で覚えちゃったのよね。でも、基礎って言われるとうーん……みたいな?」
 なるほど、とマイアは一つ頷いて。
「では、すぐに実践から入りましょう。まずは貴方達に正しい魔力運用の仕方を教え、最小限の消費で魔法を発動できるようになって頂きます」
「よろしくお願いします!」
 威勢良く村娘達が応え、マイアの授業が始まった。
「全員、杖は持ちましたか? 私の周りを流れる魔力を見て下さい。魔力とはただ爆発させればいいというものではなく、その流れを正常に使いこなして初めて、魔法が発現できるのです」
 基本中の基本とはいえ専門的な説明を根気よく続けて村娘達の理解を得つつ、指標となる初歩的な魔法を積極的に使って観察及び分析させ、魔法というものがどういうものなのか、その手ほどきを行っていく。
「なんか、マイア先生の持つ魔力がなんとなく分かる……気がしてきた」
「私も……なんだか変な感じ」
「でもマイア先生って、先生っていうより教官、みたいな雰囲気よね」
 理論を吹っ飛ばして直感的な部分のみでの学習は、だんだんと世界の変わるような感覚を覚える娘達に戸惑いをもたらすものの、そこは持ち前の根性やセンスで見事耐えきっているようだ。
「素晴らしいです。この短時間でここまでマスターできるとは……」
 しかし、簡単な基礎編を終える頃にはとっくに日没で、休息を取るために一旦解散という運びになったのだが。
「この本は魔力の矢に関して記してある魔術書です。明日までにできる限り読み込んで来て下さい」
「げっ、もしかして宿題……!?」
「うーん、文字読むの苦手なんだけどなぁ……」
 さすがに村娘達も苦い顔をしたものの、マイアから本を受け取って大人しく帰宅していく。
 訓練場に一人残ったマイア。と、そこに使い魔の蝙蝠が窓を抜けて戻って来る。
「おかえり。……様子はどうだった?」
 五感は共有しているものの、特訓中は意識も逸れる。直に敵軍を見て来た蝙蝠からも、大事な情報を得られるはずだ。
 どうやら、敵軍は現在、道のりの中盤くらいまで近づいているらしい。
 数は一部隊につき二十体程度。合計三部隊が手分けして、村の北、西、東の門をめがけて突き進んでいるのである。
 そして肝心のボスの情報だが――。
「敵はとある『墜ちた貴族』。かつてハーレムと称して何十股とかけ、その悪質さゆえに国から指名手配されたものの、結局足取りを掴めずそのまま姿を消した……でもいつの間にか死んでいて、オブリビオンとして蘇っていたのね」
 いわゆるペテン師である。けれどもオブリビオンとして得た魔法力や、女性を口説くための甘いマスクと口先の話術は侮れないだろう。
「詐術に引っかかる危険性もあるから、村娘のみんなには会わせない方がいいかしら……」
 しかし、奴はゴージャスでエレガントなご婦人方に飽き、新たな花嫁を求め、各地の村を襲っている。
 すなわち奴の目的は女をさらう事。それもマイアが担当しているような村娘達なのだ。
 裏を返せば、村娘達を囮とする事で、奴の隙を突ける可能性もある。
 どのみちボスの弱点は、一応頭に入れておくべきだろう。
 マイアは翌日以降の教育も、朝早くから村娘達を集め、魔法の矢を習得させるために励んでいく。
 威力よりも命中を重視し、牽制や動きを阻害するための攻撃に絞っていくのだ。
「遠距離から確実に当てて、近づかれる前にある程度数を減らす……他にも前線で戦う若者衆の援護射撃など、活用方法はいくらでもあります」
「えー……男どものフォローしろっての?」
「いいけど、あいつら大丈夫かなぁ……途中で逃げたりしそうなんだけど」
 そこは、彼らの方の指南がうまくいく事を祈るしかない。
 猶予はわずかだ。マイアは休む事なく、日暮れまで彼女達との厳しい時間を過ごすのだった。

「7日、7日ねぇ……だいぶ時間ないし、相当突貫の詰め込みスパルタになりそうねぇ」
 早めに訓練場に着いてから、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)はどうしたものか、と小首を傾げて思案する。
「人に教えた経験なんてあんまりないけど、頑張るしかないわねぇ」
 結局はなるようにしかならない、と気構えずにいると、村娘達が続々と揃ってくる。
「初めまして、ティオレンシア・シーディアよぉ。ふふ、そう緊張しなくても大丈夫よ、可愛い子達ねぇ」
 純朴そうな村娘達に好意的な微笑を送ると、その独特なゆる~い空気感と猫なで声もあってか、すぐに緊張も解けていく。
「ま、また個性的な先生が来たわね……」
「あの目……ちゃんと見えてるのかしら?」
「あへぇ……あのあまあまボイス、脳が溶けそう……」
 反応も上々のようだ。これならばただちに訓練へとりかかれそうである。
「ええと、これまでも何度か特訓を受けたと思うけれど、私としても正直、前衛抜かれて後衛まで敵が来た時点で、ほぼ詰んでる様なものじゃないかと思うのよねぇ」
「それはまあ……」
「残念だけどあたしらの装甲、紙みたいなもんだしね」
「他の鍛錬をしようにも、もう日はほとんどないわ」
「そうそう、いきなり近接戦闘させるよりは目があると思うのよねぇ」
 という訳で、とティオレンシアがぴっと指を立てて。
「ここからは遠距離武装に絞って訓練するわぁ。でも、今まであなた達がやってた魔法とは違って、弓の取り扱いを会得してもらうから、そのつもりでお願いねぇ」
「弓……弓かぁ」
「狩猟用のちっちゃいやつは使えるんだけど、それじゃ全然足りないわよね……」
「万が一魔力切れになっても、サブ武器としても使えそうじゃないかしら」
 そこでティオレンシアは村娘達を列に並ばせ、最大射程から四分割ほどの範囲に、一斉射撃ができるよう教え始める。
「リーダーが欲しいわねぇ。戦況全体を見るその子の合図に合わせて、各列ごとに一気に撃つの。他の列の子は、その間に次の矢を準備する……みたいな感じねぇ」
「それだと、リーダー役は大仕事ね……」
「他にも、至近、近距離、中距離、遠距離……といった具合に、敵との距離に応じて自在に射程を変えていくのもいいわねぇ。例えば後退する時とか、いざって場合に備えて覚えておくのも悪くないわぁ」
 前列が矢を撃ち込み、最後尾まで下がりながら次弾を装填する内に、次の列が射撃して、交互に時間を稼ぐという按配だ。何しろ人手不足なので、こうした自衛手段も時には必要となる。
「陣形だけは何があっても崩しちゃダメよぉ。指揮系統が混乱するだけじゃなくて、前線で戦ってる他の人達にまで、迷惑が広がっちゃうから」
「肝に銘じておきます!」
 訓練場に飛び交う矢の雨。ぎりぎりと弦が引き絞られ、娘達は汗だくになりながら陣形や合図のタイミングを覚え込む。
「そうねぇ、ちょっと力が入りすぎかしらぁ。魔法とは違うんだから、もう少し肩の力を緩めて……そうそう、フォームはそんな感じでいいのよぉ」
「あうぅ……せ、背中に胸が当たって、集中できないぃ……」
 ティオレンシア自身も彼女達が良く的を狙えるよう、撃ち方や姿勢といった基本的な事柄から、ちょっとしたコツに至るまでアドバイスしていき、訓練場には張り詰めながらも弛緩したような、形容しがたい不思議な空気が漂っていた。
「よーし……撃てェ!」
 そして迎えた演習では、リーダーが大きく声を張ると、並んだ娘達から無数の矢が発射され、次々と的の木人形を射貫いていく。
「やった、やったわ! どうですかティオレンシア先生! 奴を蜂の巣にしてやりましたよ!」
 ほとんどの矢は外れず、正確な軌道を描いて木人形へと突き立っている。
 控えめに言っても驚くべき成果だが。
「確かにいいのだけど……うーん。でも実際の敵は空を飛んでたり、動き回ってたりしているのよねぇ」
「へ……?」
「……もう一回、やってみましょうかぁ?」
「ええぇぇぇぇぇっ!」
 ティオレンシアとしては満足がいかなかったのか、コーヒーをおかわり、くらいのノリの軽さでやり直しを指示したり。
 その後もなんだかんだで数十回演習を繰り返し、木人形がやじりに削られて原型をとどめなくなり、そして村娘達がぐったりとなるまで文字通りスパルタな特訓は続いたのだった。
「ティオレンシア先生……もうちょっとマイルドな人だと思ってたのに……た、立てない……」
「な、何気に今までで、一番大変だったかも……」
「絶対あの人、あたし達素人じゃなくて自分を基準にして、メニュー組んでたわよね……」
「でも言うだけあって、私達、すごく弓うまくなってない?」
 そんな風に地べたで大の字に転がっていると、いつの間にか訓練場から姿を消していたティオレンシアが、冷たいジュースの注がれた器を持って戻って来る。
「あらあら、みんなお疲れ様。気がついたらもう外は夜だから驚いちゃったわぁ。時間が経つのは早いものねぇ」
「そ、それより先生、そのジュース……ごくり」
「人数分持って来たから、これで喉を潤して。私は夕食の準備をして来るから、しばらくゆっくりしててねぇ」
 大喜びで冷たいジュースに飛びつく娘達。もう外面など気にしないくらい、口から喉から干上がっていたのである。
「ていうか、ティオレンシア先生料理とかできたんだ。なんか意外……」
「これでもバーテンダーをやってるから、それくらいの心得は、ねぇ?」

 これまたいつの間にやら食材を手に入れていたティオレンシアが夕食を作り、村娘達へ振る舞いつつ、ついでに他のグループにも差し入れに向かう。
「こんばんはぁ。あなた達も、村のために毎日頑張ってるみたいねぇ。良かったら、これどうぞぉ」
「うおっ、綺麗なお姉さん! ……あっ、ああいや、俺には静流先生という人が!」
「うまそうな焼肉、魚介類のスープ、ガーリックトマトサラダ! やべっ、もう結構食べてたのに、また腹が減って来た!」
 男どもはいつものように、静流や零と料亭でくだを巻いていた。
「なんやかんや慌ただしかったけど、泣いても笑ってもこれが最後の晩餐かぁ……明日には来るんだよな、魔物ども」
「縁起でもない事言うなよ……きっとどうにかなるって」
「皆さんの頑張りは、誰よりも近くで見ていました。短い間ですが先生と呼んでもらえて、嬉しかったです」
「じじゅるぜんぜぇ……ぼ、ぼぐにどっでば、ぜんぜぇばずっどぜんぜぇでずぅ……!」
「お前バカ、泣きすぎだろ!」
「そういう感動の涙は、明日のために取っておいた方がいいですよ」
「零先生もありがとうございました! 最初は正直年下だと軽く見てましたけど、もうそんな事ないです、心の底から感謝してます!」
「無礼講だからって調子に乗りすぎにゃ!」
 アッシュまで現れて、てんやわんやの大騒ぎ。
 けれど、下手に思い詰めてふさぎ込むよりはよほどいい。
 それにこれは、勝利を見据えての宴会。決して、もうどうにでもなれとばかりの、自暴自棄から来る騒ぎ方ではないのだ。
 そして聞けば、マイアはすでに宿へ戻り、最後の最後まで村娘達のために、宿題の採点を行っているらしい。
 邪魔をするのもアレだが、あまり根を詰めすぎるのも良くないと、後でティオレンシアは部屋を覗いてみる事にした。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか……後はみんなを信じるだけかしらねぇ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『レッサーデーモン』

POW   :    悪魔の三叉槍
【手にした三叉槍】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    金縛りの呪言
【手で複雑な印を結んで】から【呪いの言葉】を放ち、【相手を金縛り状態にさせる事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    呪いの鎖
【投げつけた三叉槍】が命中した対象を爆破し、更に互いを【呪われた漆黒の鎖】で繋ぐ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 そして迎えた決戦当日。
 街道の向こうから襲来してくる、黒い影。
 山羊の頭部と翼を持った恐ろしい悪魔、レッサーデーモンの軍勢だ。
 敵軍は南以外の、北、西、東の三方向から押し寄せて来る。
 対して村側は各門に若者グループ、及び村娘グループから十人ずつを配置し、それぞれ二十人体制で迎撃する事になる。
 敗北条件は村へ乗り込まれ、住民に被害が出てしまう事。
 猟兵達は三つの門を行き来して民兵を支援しながら、全ての敵を撃滅すれば勝利となるだろう。
 若者達は敵との駆け引きや立ち会いに熟達し、長槍を使った強力な戦法も覚えている。
 村娘達はバリエーション豊富な属性を持つ、精密な魔力の矢を撃てるようになり、また統率の取れた援護射撃にも通じている。
 ここまでやれるだけの事はやった。後はベストを尽くすだけだ。
 こうしていよいよ、村の運命を決める開戦の火ぶたが、切って落とされる――!
アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

ここを死守できれば、より多くの人々を救うことができます。
そうすれば皆さん英雄ですよ、と『鼓舞』します。

私は猟兵の薄い門へ向かいましょう。
若者、村娘の指揮は他の猟兵にお任せをし、
この二つのグループの力を最大限引き出せるように動いていきます。
必要であれば援護射撃の補助や『属性攻撃』による『時間稼ぎ』、
ホワイトパスを使用して若者さん達と一緒に槍を奮ってもいいかもしれませんね。
お互いに『かばう』ことで、足りない個所を補えると良いのですが。

誰にも死んでほしくないというのは、この死地においては甘い考えだと理解しています。
それでも私は……。
可能な限り『激痛耐性』で『かばう』ことも視野に入れます。


鈴木・志乃
出遅れちゃったな…

援護に重点を置いて立ち回るよ
良かったら皆、私の手持ちの毒武器に塗ってね【毒使い】

指導できなかった老兵組が心配
若者も無理するかも
この二組に気を配りながら、オラトリオの羽で前線を飛び回るよ

声の音波による【衝撃波】で、ぶつかり合ってる横からダメージを与え、敵を撹乱する
狙われている人、隙のある人が孤立しないように割って入っていくよ

大怪我がいたら即後ろまで引っ張っていってUC
あんまり怪我人多いなら集団高速治療も厭わない
この為の聖者でしょ?

それでも血気にはやるバカがいたら怒るかな

お前が欠けたら意味ねーんだよ!
周囲がどんだけ悲しむか分かってんのか!?
ちゃんと生きて帰ってこいよ!【祈り】


天星・零
『さて、皆さんが頑張ってくれる前に。あっ、あまり驚かないでくださいね。』

UC【死した嘆きの魔女】で視認してる範囲内の敵を攻撃、成る可く村に近づく敵を減らし、村人の負担を減らす
(話はしないが咆哮の様な声は出す)


夕夜の人格に変えてØ、Punishment Blaster、グレイヴ・ロウで戦う

遠距離からPunishment Blasterを放ちつつ、同時に近距離からの攻撃も【フェイント】を入れながら行う
可能なら状況によって【零距離射撃】

万が一に備え【第六感】を働かせ、相手の呪詛には【呪詛耐性】を活かして対抗

戦いつつも村人達を確認、危険な状況なら加勢、必要なら庇う【覚悟】で助ける

口調はステシ参照


ティオレンシア・シーディア
さぁて、と。
やれるだけはやったし、フォローはするけど後は任せるしかないわねぇ。
自分から命を捨てるようなことはしちゃダメよぉ?
…死ななければなんとかしてあげるから。

基本は●千里眼射ちで〈先制攻撃〉と〈援護射撃〉ねぇ。
あらかじめ集中しておいて、●金縛りの呪言を使ってる相手に〈鎧無視攻撃〉の〈スナイパー〉でワンショットキルを狙うわぁ。
適宜〈2回攻撃〉や〈早業〉も使って攻撃させないように立ち回るわぁ。

●呪いの鎖の三叉槍が飛んで来たら〈クイックドロウ〉からの●封殺で撃ち落とすわぁ。
後衛に鎖で紐付けなんて冗談じゃないものぉ。

あたしにはこれくらいしかできないもの。
死なせないわ。

※アドリブ掛け合い絡み大歓迎



「さぁて、と」
 ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は軽く伸びをするように身体をほぐしてから、村娘達へと振り返る。
「いい? 自分から命を捨てるようなことはしちゃダメよぉ? ……死ななければ、なんとかしてあげるから」
「はい!」
「先生の教え通りに、やりきって見せます!」
 敵を倒すため、そして生きるための術は彼女達に教えた。
 やれるだけはやった。フォローはするが、後は任せるしかない。
「ここを死守できれば、より多くの人々を救うことができます。そうすれば皆さん英雄ですよ」
「よっしゃあ、やってやるぜ!」
 続くアリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)の鼓舞に、民兵達は士気を昂揚させている。
 やがてついに、アリウム達の前へレッサーデーモンの群れが、雁首揃えて現れたのだ!
「十秒よ。……いいかしらぁ?」
「おっけーです!」
「先生のアレ、やるんですね!?」
 クレインクィンを構えて、深い集中に入るティオレンシア。
 そして敵の群れがティオレンシアの射程距離に足を踏み入れた、刹那。
 ――無言のまま放たれた正確無比な一射が、呪言を唱え始めていたレッサーデーモンの眉間を穿ち、鮮血のアーチを噴き出させて即死させた。
「弓隊、構え……撃てェーッ!」
 直後、村娘達が雨あられと矢を撃ち込み、気勢を挫かれた悪魔の軍勢をさらに怯ませる。
「槍兵隊、攻撃開始!」
 号令とともに槍を持った若者達が進み出て、槍を一斉に突き出し敵を抑えていく。
 初陣にも関わらず取り立てて混乱もなく、流れるような彼らの柔軟な動きは、さながら鍛え抜かれた精鋭のようだ。
 アリウムはそんな民兵達の力を最大限引き出すべく、敵中へと果敢に突入。
「敵の足は私が止めます、その間に少しでも数を減らして下さい!」
「分かりました、奴らを袋だたきにしちゃいますね!」
「くらいなさい! 先生直伝のォ……見よう見まね、ほわいとふぁ~んぐ!」
(「それは教えた記憶がないのですが……いわゆる技を見て盗まれた、という事でしょうか」)
 苦笑しつつも、軽々と魔法を連射する村娘達の成長ぶりに安堵の念を覚える。
 そしてアリウム自身も触発されたみたいにホワイトブレスをぶっ放し、レッサーデーモンを近寄らせない。
 とはいえ、実戦経験のなさから前線を支える若者達にはあちこちほころびが見られるようで。
「見える、敵の動きが俺にも見え……うおっ!?」
 無意識の内に前へ出すぎたのか、四方から敵に狙われ、泡を食ってびびる一人の青年。
「敵も中々連携が取れているわねぇ。でも……」
 そこへティオレンシアが矢を連続で撃ち込み、敵二体の足を射貫いて地面へ縫い止める。
 続けざまにホワイトパスで自己強化したアリウムが迅速に割り込み、背中へ青年をかばい。
 突き出されて来る三叉槍を縦に構えた短槍で受け止めつつ、逆に踏み込みながら上へ跳ね上げ、がら空きになった悪魔の懐を槍で突き刺した!
 悪魔の断末魔と叫喚者の風切り音がハーモニーを奏でる。
「す、すみません、手間をおかけして……」
「あれは仕方ないわぁ、敵が一枚上手って事。あんまり気に病んじゃダメよぉ、あなたもいい線いってるから」
「は、はいっ」
 アリウムも肩越しにちらりと目を向けて。
「左右に回り込まれないよう注意して下さい。左側は私が担当します」
「りょ、了解! おらぁ!」
 青年もほどなく落ち着きを取り戻し、突撃してくるレッサーデーモン相手に打ち合いながら踏ん張っている。
「地上の敵には対処できているわねぇ……問題は」
 と、ティオレンシアがちらりと目を上げた先には、上空で三叉槍を構えた、一匹のレッサーデーモン。
 その槍には呪いが込められ、単なる攻撃で済むとは思えない。
「あの敵はあたしに任せて、みんなは前線をお願いねぇ」
「はい!」
 不穏な気配を察しつつも、ティオレンシアを信じてそれぞれの仕事を果たす村娘達。
「悪いけれど、この子達には指一本、触れさせないわぁ」
 その矢先、投げつけられて来る三叉槍!
 ティオレンシアもまた、懐から素早く抜き出したリボルバーを片手で構えると、躊躇なく引き金を二回引く。
 発射されたその弾丸は、槍とまったく同じ軌道に沿って飛来し、穂先をしたたかにぶっ叩いて金属音と小さな火花を散らせ、撃ち落としてのけたのである……!
「あたしにはこれくらいしかできないもの。……死なせないわ」
 驚愕するレッサーデーモンの額に、穴が空く。
 彼が最後に見たのは、槍を撃ち落とした弾丸を隠れ蓑にして飛んで来ていた、二発目の銃弾だった。
 一旦は崩れかけた陣形も、全員揃っての奮闘の甲斐あり、なんとか維持しつつ戦局はこちらの優位に傾きつつあった。
(「気を抜けば速やかな死。私を含めて誰が倒れたとしても、何もおかしくはない」)
 手塩にかけて育て上げた村娘達の援護を信じ、勇敢な若者達と並んで槍を振るいながら、アリウムは独白する。
(「……なのに、誰にも死んでほしくないというのは、この死地においては甘い考えだと理解しています」)
 さんざ生徒達に戦場の厳しさと過酷さを説いておきながら、自身がこれとは笑わせる。
「それでも。それでも私は……!」
 誰一人として失いたくない。心に嘘はつけない。
 その意志と覚悟を示すように、また一体、レッサーデーモンの巨体を、鋭い氷の一撃が貫いた……!

「出遅れちゃったな……でもここからやってやる!」
 鈴木・志乃(生者・f12101)も翼を羽ばたかせ、民兵達とともに必死に敵軍の猛攻を食い止めていた。
 最終日に至るまで指導できなかった老兵組が心配だったが、彼らは大事を取って今回参加してはいないため、安心していい。
 とはいえ後衛で射撃に徹する村娘達はともかく、常に前へ出ている若者達も気がかりだ。
 猛烈に鍛えられたとはいえ、彼らはまだまだへっぽこ戦士の域を出ていない。
 ここは志乃がフォローする事で、存分に活躍してもらおう。
「すげぇ、ちょっと刃先で斬っただけで敵がどんどん倒れていくぜ!」
「毒ってのは卑怯な気もするけどな……自分らの特訓を侮辱してる感じもして」
「そんなの気にしなくていいって。大体ここで勝たなきゃ、今までの苦労も台無しだよ!」
 若干気が引けている若者達へ、志乃が叱咤するように激励の言葉をかける。
 彼らは戦闘前、志乃の所持していた鈴蘭の毒などを、槍の穂先や剣先に塗りたくっておいたのだ。
 毒の量的に全員へ行き渡るのは無理だったが、それでも若者達の一糸乱れぬ長槍戦法や、機先を制する立ち回りと合わせてその効果は覿面。
 今の所、戦線離脱者もなく敵軍を削る事に成功している。
「ここで一息に盛り返せるように、横腹から派手に攪乱しよう……!」
 と、志乃はおもむろにコードレスマイクを取り出し。
 ――とんでもない天使のシャウトを、敵軍の横合いから叩き込んだ!
 それは単なる音波攻撃にとどまらず、実際に発生した衝撃波の二段構え。
 地面をドーム状に掘削しながら突き進む衝撃にレッサーデーモン達はぶっ飛ばされ、空を飛んでいた個体もまとめてでんぐり返りながら盛大に吹っ飛んでいく。
 敵の隊列に開いた穴を、間髪入れず村娘達が魔法を撃ち込んで広げ、さらに若者達が杭を打つように前進し、また一歩、敵軍を押し返していく……!
「お、おい、みんな待ってくれ。ちょっと俺、た、体力が……ぐえっ」
 けれど出遅れた若者の一人が、隊列を抜けて来たレッサーデーモンの呪詛をまともに食らい、地面へ仰向けに転がってびくんびくんと痙攣してしまう。
「大丈夫!? 意識ははっきりしてる……!?」
 ただちに降下した志乃が、白目を剥いている若者へ声をかけるも。
「て、天使が降りて来た……ニット帽かぶった天使だぁ……うへへ」
「ダメみたいだね……」
 錯乱している若者を抱え、羽を広げて一度後方へ。
「わっ、なにそいつ血だらけだけど大丈夫なの!?」
「抱っこされて気持ち悪い笑顔浮かべてるし、気色悪……」
「こっちは平気だから、前線の支援に集中して!」
 驚きの声を上げる村娘達を落ち着かせつつ、志乃は若者の治療にかかる。
「天使さま、お願いします……不安なんです、手をお借りしても……」
「こう?」
 がたがたと怯えたように震える若者の手を握りつつ、聖なる光を浴びせて傷や呪いを治癒していく。
「おお……こ、この包み込まれるような温かさ、柔らかさ……傷が、治っていく……!」
「その為の聖者だから。――もう立てる?」
「も、もうちょっと握ってて……」
 大丈夫そうだ。
 そうやって前線へ送り返している内にも、続々と負傷者が運び込まれて来る。
「一気に治すから、全員そこに並んで!」
「ええ……なんかすごい、作業感を覚えるんだけど……」
「俺もじっくり声をかけられながら回復されたいのに……」
 たわごとには耳を貸さず、若者集団をまとめて治療。
 さっさと行けとばかりに村娘達にせき立てられていく彼らとともに、志乃も再び空へ飛び立ちながら最前線へと舞い戻る。
「あれは……孤立してて危険かな、ちょっと自重させないと」
 飛行しながら襲って来るレッサーデーモンを音波攻撃で叩き落としつつ、志乃は一人だけむやみに突貫している若者へ声を送る。
「そこの! 早く隊列に戻って、囲まれたらまずいから!」
「うおおぉぉぉぉぉ俺は強い俺は強い俺は強い……!」
 彼は自分の強さや戦場の血の臭いに酔っているのか、聞こえていない風だ。
「一人だけ勝手な事されるとみんなに迷惑かかるから! 早く戻って! 戻れ!」
「うおおおおぉぉぉぉぉぉ食らえ俺の伝説乱舞ゥゥゥゥッ!」
 ぶちっ。
「聞けよッ!!!」
 マイクを手にした志乃の大音声が響き渡り、味方どころか敵のレッサーデーモンまで、心なしかびくっと竦んだみたいである。
「このっ……バカ! お前が欠けたら意味ねーんだよ! 周囲がどんだけ悲しむか分かってんのか!? ちゃんと生きて帰ってこいよ!」
 怒りに任せただけではない。彼の身を思いやる、心からの祈りを込めた叫び。
 するとその若者は攻撃の手をやっと止め、息を荒げながら空を振り仰いだ。
「す、すまない……ただちょっと、頭に血が昇ってて……」
「分かったら、さっさと戻る。……あんまり心配させんな」
 志乃に叱り飛ばされ、テンションがた落ちといったみたいに、敵陣を切り裂きながら取って返す若者。
 そこで悪友らしき男が背中合わせで戦いながら、にやついて言った。
「あーあー、怒られてやんの」
「うるせぇな! ……けどあんな風に怒ってくれたの、死んだお袋以来だからさ。……あの人の言うとおりだ。絶対、生き残らねぇとな」
「あれ、その反応、ひょっとしてお前……惚れた?」
「うっ、うるせぇな……!」
 青春である。

「さて、皆さんが頑張ってくれる前に……あっ、あまり驚かないでくださいね」
「なんだなんだ?」
「零先生、何か隠し球があるのか……?」
 二つ目の別の門では、準備万端といった風情で武器を握る民兵達の目の前で、天星・零(多重人格の霊園の管理人・f02413)が詠唱を開始していた。
「魂よ集え……空は翳り、地は呻く。腐敗する血肉……亡者が知るのは癒えぬ苦しみ。今一度の命を得、奈落の底に沈む、嘆きを解き放て!!」
 そうして彼らの目前に現れたのは、轟々と燃え盛る十字架に磔された、女性の怪物。
 そんな異形を直視したのだから、驚くなと前もって釘を刺していたにも関わらず、武器を放り出してぎええぇぇぇと叫ぶ、主に屈強な野郎ども。
「――~~~~~~ッ!」
 召喚された【死した嘆きの魔女】もまた、応じるかのように言葉にならない咆哮めいた声を発し、余計に若者達は浮き足立つ。
「すすすすすごいのが出て来たぞ!」
「鳥肌が立ってきた……」
「なんか俺、背徳的すぎて逆にいける気がする」
 何がだ。ともかく魔女を前面に立たせ、襲い来る敵へ対しての迎撃を務めてもらい。
「ま、そういうわけだからさ。みんなもあんまり気にしないで戦ってくれな!」
「気にするよ! 誰だお前!」
 いつの間にか夕夜の人格に変わった零へ、これまた若者達が目玉を飛び出させながら総ツッコみを入れる。
 彼らをなだめるのにも時間がかかったので、やはり戦闘前にこれらの手の内を見せておいたのは正解だったようだ。
「よ、よし、気を取り直しておっ始めるぜ!」
「――~~~~~~~~~~ッ!」
「ひえっ……」
 野郎共は一部を除いて微妙に魔女を遠巻きにしつつ、こちらが目視できる距離にまでやって来るレッサーデーモンの部隊。
 その姿を視認した魔女が、にわかに凄まじい咆哮を張り上げると――正面に魔法陣を展開し、その中から赤紫色の光を発する、禍々しい高密度のレーザーを照射した!
 村娘達の魔法がかすんで見える程の、強大な威力を秘めた極太の光条が暴力的に薙ぎ払われ、前列にいたレッサーデーモン達を端から端まで思うさま焼き尽くしていく。
 断末魔すら残さず呑み込む圧倒的火力に、ぽかーんと顎を落として立ち尽くす村の衆。
「気を抜いてる暇はないぜ、来るぞっ!」
 Øを構えて警告する夕夜に、彼らもはっと我に返る。
 魔女には引き続き敵を殲滅してもらいつつ、いよいよ敵軍との正面衝突だ……!
「奴らを村へ近づけんな! 殴り合う前にできるだけ殴っとけっ!」
 有言実行とばかりに、Punishment Blasterを持ち出した夕夜が、村娘達とタイミングを合わせてガンガン砲撃を開始する。
 凄まじい爆炎と黒煙に覆われながらも、着実に間合いを詰めて来るレッサーデーモン達。
 中には飛行し、夕夜達の対空砲火をかいくぐって来る個体もいる。
「だったらこいつは避けられるか……!?」
 そいつの着地点へめがけて、夕夜は地中からグレイヴ・ロウを突き出させた!
 幾多の血を吸った槍の骨はレッサーデーモンの死角から襲いかかり、たやすく串刺しにして絶命せしめた後、するりと音もなく地面へ潜り込んで次の機会を待つ。
「そっちは大丈夫か!? 援護するぜ!」
 Øを振り上げながら跳躍した夕夜が、若者を攻め立てるレッサーデーモンを背後からぶった斬り、そのまま出現させた二体目のPunishment Blasterで後ろから来る敵を零距離から撃ち抜く。
 胴体に風穴を開けたレッサーデーモンの向こう側から、さらに別の敵が複雑な印を組んでいるのが見えた。
「危ねぇ!!」
 夕夜はかばっていた青年を片手で突き飛ばしつつ、次の刹那には飛来してくる呪いの言葉を、地面から突き出したグレイヴ・ロウとØを構え、二重の盾として防ぎ止める。
「少し肩にかすめたか……けどこんくらい、てんで平気だな!」
「零先生、正直ちょっとうさんくさく思ってたのに、こんなに熱血な人だったなんて!」
「だから俺は夕夜だって!」
 普段の零とは違い、最前線で積極的に暴れ回るその勇姿に、若者達も新鮮な感銘を覚えたみたいに奮い立ってくれている。
 一歩も退かない村側の抵抗に、敵軍は相当な焦りを覚えつつあるようだ。
 戦いはより激しく、大混戦の様相を呈していく……!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

栗花落・澪
宗田と連携

加勢に来たよ
皆で乗り越えようね!(笑顔)

上空から四方の戦況を把握
敵の増援、不審な動きを確認し共有

圧され気味の所から
【歌唱】で敵の意識を引き笑顔で【誘惑】
囮として紫崎君のいる方に誘導
さ、流石に大群はある意味怖いっ!

魔法にはこういう使い方もあるってこと
見せてあげるね

まずはUCで牽制後、敵群の中程の位置まで飛び

敵が多い時はね…こうするんだよ!

風の【全力魔法】とUCを組み合わせながら高速回転
更に紫崎君の炎とも連携し
炎と花の刃による竜巻【範囲攻撃】で一掃

近づいたら火傷しちゃうぞ♪(ウインク)
わーん、言ってみたかっただけだもんー!
女って言うな!

村人に怪我人が出たら
癒しの力で【救助活動】に回るね


紫崎・宗田
澪と連携

護ってもらえると思うなよ
戦場に立つからには自力で足掻け

共闘する村人に告げるが信頼故
もしもの時は【庇う】

チビが不在中はクオンに空から敵の動きを見張らせる

敵の武器を弾き追撃を行う【2回攻撃】
炎の【属性攻撃】で範囲強化した【薙ぎ払い、範囲攻撃】
傷を受けたらUCで火力増し

あいつ…囮は危ねぇっつってんのに
誘惑はせめて味方だけに…いや、それも問題か
自分を護る事も考えろっての

万一澪が攻撃を受けた場合墜落防止に庇い
鎖に繋がれたら【怪力】で引き寄せ敵ごと叩っきる

澪の作戦に炎提供
しぶとい敵は竜巻が消える瞬間竜巻を目晦ましに
中から飛び出すように突っ込み薙ぎ払い

そういう事言ってると尚更女にしか見えなくなるぜ?


鞍馬・景正
◆準備
馬がいれば一頭拝借。
移動の際は【騎乗】し時間短縮。

◆戦闘
猟兵が不在か最も手薄な門に位置。
我が【拠点防御】の心得を生かす時のようです。

地形を見るにまず矢戦で漸減させるが得策とみた。

【紅葉賀】で射程に入った敵から射抜き、焔でその身を焦がす。
必要以上に延焼させぬように炎の壁を築き、敵の足止めと進路を限定。
【2回攻撃】も駆使して一体でも多く屠っていきましょう。

敵が接近すれば射撃は続けつつ迎撃を指揮。
若者たちは槍で打ち払い、娘方は弓や魔法で援護を。

敵の攻撃には我が身を盾に【かばう】
彼らは輩、傷一つ付けさせぬ。

劣勢なら他の猟兵に援軍要請。
逆に応援を求められ、私が離脱しても問題ないと判断すれば急行。


夜神・静流
●心情
少ない時間でやれるだけの事はやりました。後は信じて戦いましょう。

●行動
速度重視で一ノ太刀・隼を使用し、敵を片っ端から斬り捨てます。
金縛りの呪言に対しては、見切り・第六感の技能で発動しようとする瞬間を見切り、印を結んでいる間に早業・カウンターor先制攻撃・衝撃波を使用して発動を潰す。
仮に発動を許した場合は呪詛耐性・オーラ防御で対処。

村人達に対してはお互いに助け合って生存を重視するように指示。
敵の隙を作って攻撃できる方が攻撃したり、猟兵の助けを待つように。

戦場を移動する場合はダッシュ技能を使用します。

●真の姿
背中に純白の翼が生え、髪の色が黒→白に。


マイア・ヴェルナテッド
迫る敵群を前に村娘達に振り返り
「さてと、皆さんこれより卒業試験といたしましょうか。今日まで学んで来たことを実践し、どれほど成果を挙げられるか?それを見せて貰いますね?」
距離のあるうちに攻撃を開始させます。

距離があるうちは私も『呪詛』と『属性攻撃(闇)』『生命力吸収』を乗せた『全力魔法』の『ウィザード・ミサイル』を『高速詠唱』して『二回攻撃』します。
若者たちと敵が混戦を開始したら上記攻撃手段から『全力魔法』と『高速詠唱』を外して味方を巻き込まないように命中精度重視でいきます。



 残る三つ目の門にも、レッサーデーモンの群れは迫りつつあった。
「さてと、皆さんこれより卒業試験といたしましょうか」
 遠くに見える戦塵を前に、日傘を差したマイア・ヴェルナテッド(ノーレッジデザイア・f00577)が村娘達へ振り返り、口を開く。
「今日まで学んで来たことを実践し、どれほど成果を挙げられるか? それを見せて貰いますね?」
「はい! 私達の力、今こそお見せします!」
「この日のために必死に頑張って来たんだもん……大丈夫、マイア教官が私達の後ろにいるんだし、きっと大丈夫……」
「はぁ……。マイアお姉様、今日もお美しいわ……」
 彼女達も意気は充分、魔力も十全。後はマイアの仕込んだ通りに、魔法を披露するだけである。
 一方、若者達を指揮する前線には、鞍馬・景正(竜胆の剣・f02972)の姿もあった。
「地形を見るに、まず矢戦で漸減させるが得策……ここは手はず通り、お味方が敵を減らしその退路を断つまで、この場を動かぬようにお願いしたい」
「村の女どもにいいとこを持ってかれないよう、俺達も奮闘しないとな」
「じゃ、合図の方は景正先生に頼みますよ。そういうのはさすがに慣れた人にやって欲しいんで」
 任されました、と景正は頷き、虎落笛を構える。
「敵は私達を甘く見ているはず。だからこそ、最初の一撃が肝心ですよ」
 マイアはそう言って、やおらに日傘を前へ掲げた。
「――では……始めて下さい」
 徐々に距離が縮まる中、敵軍がこちらの射程圏内へと押し入って来る。
 途端、村娘達は一斉に杖を振り上げ、レッサーデーモン達へあらん限りの魔法を撃ち込み始めた!
「手加減無用よ、消し飛ばしてやるぅ!」
「お姉様へのこの情熱、あんた達ごときに受け止めきれるかしら!?」
 才能を開花させた娘達の放つ魔力の矢は研ぎ澄まされ、精度と威力を兼ね備えている。
 加えて実戦という緊迫感が集中をより強めるのか、この上ない完成度でもってレッサーデーモン達に突き刺さり、敵勢の足を鈍らせていった。
 マイアも日傘をかざして使い魔を呼び出すと、呪文詠唱を補助させつつ魔導書を片手に、自らの紡ぎ出す魔法へ呪詛と暗黒、高速化など高度な魔術を次々上乗せしていく。
「今のところは及第点ですが、倒しきるまで一切の手を緩めてはいけませんよ」
 その宣言通り、マイアから嵐の如く撃ち放たれる、大量のウィザードミサイル。
 後出しで出されたにも関わらず、それらは村娘達の魔力の矢を猛スピードで追い抜き、レッサーデーモン達へ着弾するや否や闇色の炎で消し飛ばし、遠隔で生命力まで吸収していくのである。
「凄い……やっぱり次元が違う……」
「あの蝙蝠ちゃん達可愛いなー」
「腰が引けてる場合じゃないわよ、今の私達の精一杯を、マイア教官に見せるんだから!」
 村娘達もマイアの魔力に畏敬の念を抱きつつ、それ以上に味方でいてくれる事を頼もしく感じているのか、魔法に揺らぎは見られず、むしろ一層磨きがかかっていく。
 そして前線に立つ景正も、手にした剛弓の弦を引き絞っていた。
「――焼き滅ぼさむ、天の火もがも」
 撃ち出される矢。奏でるは、寒気のするような真冬の凄風。
 放たれた矢は赤々とした炎を帯び、一直線に空を切り裂きレッサーデーモンの顔面を射貫く。
 びくりとその場で硬直した敵は、一拍後に壮絶な火焔に覆い包まれ、芯まで焼き焦がされながらどうと仰向けに倒れ伏す。
 ぎょっとして立ちすくむ敵勢へ、景正は火矢をつがえては強烈な射撃を繰り返し、あれよあれよと街道一面、天まで届きそうな炎の壁が燃え広がっていくではないか。
 前も見えず、かといって延焼する炎から逃れようとすれば、味方を押しのけるしかない。
 わずかな進路を巡ってぎゅうぎゅう詰めに相争い、レッサーデーモン達は押し合いへし合いの足止めを食らっている。
 それでも先陣を切った数体が、強引に炎を突破して現れた。
 そこへここぞとばかりに待ち構えていた若衆が、一斉に長槍を叩き込む!
「トドメは娘方に任せ、その調子で敵を打ち払って下さい!」
「おらおら、ここは通行止めだ!」
「炎の中に帰りやがれ!」
 槍を自在に扱い、若者達は敵を炎の壁へ押し戻す。
 業を煮やしたさらに数体の敵が翼を広げて舞い上がり、上方から急襲をかけてきた!
「させるものか……!」
 景正は即時に飛び出し、振り下ろされる三叉槍の穂先を素手で掴んで止めて見せる。
「彼らは輩、傷一つ付けさせぬ」
 眼前へじわじわと迫り来る槍を、腕力だけで拮抗しながら、景正は手の皮が裂けるのも意に介さずに強く踏み込んで敵を持ち上げると、そのまま炎の方へと投げ返した……!
 マイアも前線を誤射しないよう一旦魔法の高火力と高速化を解除すると、空を飛ぶ敵に対して日傘をつきつける。
 そうしながらウィザード・ミサイルを急所へお見舞いし、一体ずつ撃ち落としていった。
「ここよりは皆さんも、命中精度を重視していきましょう。味方を巻き込んでは減点ですよ」
「ちぇー、でも男共ならちょっとくらい当たっても平気だと思うんだけど」
「おい女ども、もしも当てたら承知しねぇぞ!」
 やんややんやと騒ぎながらも、次第に戦線は安定して来る。
 このペースならさほど経たずとも、敵を壊滅させられそうだった。

 各戦場では白熱した戦いが繰り広げられ、そこに上空を飛翔する影がよぎった。
「大丈夫!? 加勢に来たよ、この局面も皆で乗り越えようね!」
 村人達の頭上に滞空したのは、愛くるしく表情をほころばせる栗花落・澪(泡沫の花・f03165)である。
「カワイイ!」
「カワイイ!」
「カワイイ!」
(「あいつの性別を知らねぇせいか、男どもは大喜びだな……」)
 アイドルの出迎えさながらに歓声のとどろく方へ、紫崎・宗田(孤高の獣・f03527)も駆け付ける。
「いいか、お前ら……いつも都合良く護ってもらえると思うなよ。戦場に立つからには自力で足掻け」
 得物を担ぎ、鋭い視線を送る宗田に、若者達は萎縮する。
「べ、別にそんな言い方しなくても……ぐすっ」
「俺的には~、そうやって水刺すような事言って~、士気下げるのはどうかと~……」
「みんな仲良くでいいじゃん……喧嘩はやめようよ」
(「め、めんどくせぇ……」)
 彼らが戦士として仕上がっているという信頼ゆえの激励だったのだが、草食男子達に体育会系のノリは合わないようだ。
「……みんな、前方に注目! 敵が来てるよ!」
 澪の叫びに、はっと顔を上げる宗田達。
 見ればレッサーデーモンの群れが粉塵を巻き上げ、低空を飛来しながら殺到してきている。
「いけない、敵が分散して村に侵入しようとしてる……紫崎君ならどうにかしてくれるだろうし、そっちに誘導しよう……!」
 澪も滑空しながらレッサーデーモン達の前へと接近し、その凶暴な面相に向け、思い切って歌声を響かせる!
「カワイイ!」
「カワイイ!」
 可愛いのだ。しかもサービスするみたいに腕をくるりと背中へ回し、軽く屈むような体勢でにこりと見とれるような笑顔を浮かべる。
 数瞬、ぴたりと立ち止まり、澪を見つめる悪魔ども。
 そしてその直後には、興奮したみたいに鼻息を荒げ、リビドーのままにわめき声を張り上げて、澪の胸へ飛び込まんと一斉に突っ込んでくる!
「わ、わわっ! さ、流石に大群はある意味怖いーっ!」
「お前なぁ!」
 ぴゅーっ、と宗田の脇を澪が駆け抜け、そこに続こうとするレッサーデーモン達を通せんぼするべく、宗田が怖い顔で立ちはだかる。
「ったく……テメェらもいきり立ってんじゃねえぞっ!」
「お、俺らの事っすかっ?」
「お前らでもねぇ、いいから戦え!」
 村人達と肩を並べ、炎を纏わせた巨大斧を豪快にぶん回す!
 澪の顔とか胸とか鎖骨とか足とかに気を取られていた悪魔の群れはその一撃で大多数が土くれみたいに吹っ飛ばされ、宗田はさらに後続の敵の刺突を斧で受け止めると、力ずくに地面へ叩きつけてぶち折る。
 無手になったレッサーデーモンへはすかさず若者達が槍を打ち込んで黙らせ、大振りの宗田の隙をカバーする形で動いてくれていた。
「あいつ……囮は危ねぇっつってんのに、誘惑はせめて味方だけに……いや、それも問題か」
「カワイイ!」
「カワイイ!」
「カワイイ!」
 問題である。
 また別の方向からレッサーデーモン達を引き連れて来る澪へ、宗田は素早く飛び込みながら背へ庇う。
「自分を護る事も考えろっての……!」
 投擲されて来る三叉槍を片腕で受け止め、ぎちぎちと巻き付いてくる鎖を怪力任せに引っ掴んで、そのまま自分の方へ引き寄せる!
「チビを捕まえたきゃ俺を倒してからにしな!」
 腕の傷口から噴き上がる火炎を斧へ宿すと、鎖ごとレッサーデーモンを地面へ引き倒しながら大上段から振り下ろし、両断しながら焼き尽くす。
「だいぶ集まって来たかな……よし!」
 軽く息を切らせながら、澪は気合を入れ直すようにぐっと拳を握り込む。
「魔法にはこういう使い方もあるってこと、見せてあげるね!」
 澪へ抱きつこうと両腕を広げるレッサーデーモン達へいたずらっぽく笑いかけ、すっと細く美しい指先を向ける。
 するとその先端から凄まじい勢いの花嵐が発生し、みるみる敵の群れへ降り注ぎ視界を塞いでいくのだ。
「敵が多い時はね……こうするんだよ!」
 澪自身もざわざわと髪や服を波打たせるように風を纏い、花嵐の勢いをますます上げ、そして羽ばたきながら敵中へ突っ込む!
 敵の真上を踊るように回転しながら花びらをまき散らし、軽く鼻先を触れあうような距離でレッサーデーモン達を攪乱する。
「――紫崎君、合わせて!」
「しゃあねえ、離れてろ!」
 宗田も澪の狙いを読み取っており、すでに武器へ充分な火勢を溜め込んでいた。
「おらぁぁぁぁッ!」
 そうして渾身の力で振り下ろされた猛撃は、まるで火柱のように花嵐へと燃え移り、敵部隊を呑み込んでいく。
 舞い踊る炎と花の刃――否、もはや竜巻に噛み砕かれるレッサーデーモン達は身悶え、燃え尽きては崩れ落ちていった。
 だが敵の中にも骨のある奴は残っているのか、燃え盛る竜巻を泳ぐように飛び回り、半ば炭化した姿で、なおも澪を捕まえて押し倒そうと迫り来る……!
 しかし同時、逆巻く火炎竜巻へ宗田もまた突っ込んでいた。
 澪に向けて飛びかかるレッサーデーモンの、その背後から焔もろとも飛び出して、ほとんど片手で斧を一閃。
 上半身を分割され、最後まで指一本澪に触れられなかったレッサーデーモンは無念そうなうなり声を上げて、その足下にばたーっと倒れ込んだのだった。
「ふふっ、近づいたら火傷しちゃうぞ♪」
 静かになった戦場で、腰をひねって可愛らしくポーズを取りながらウインクして見せる澪。
「そういう事言ってると尚更女にしか見えなくなるぜ?」
「わーん、言ってみたかっただけだもんー! 女って言うな!」
 馬鹿馬鹿しそうに肩をすくめる宗田を、涙目になってぽかぽか拳で叩く澪。
「カワイイ!」
「あっ、みんな怪我してる……優しく治療してあげるからね?」
「カワイイ!」
 澪に回復してもらいながら、目にハートマークを浮かべるだらしねぇ野郎共。
「いやお前ら……こいつ男だからな?」
「イイ!」
「イイ!」
「イイ!」
「アヒッ!」
「駄目だこりゃ……」
 その時、上空から他の戦場を確認していた子龍クオンが、慌てたみたいに鳴き声を上げる。
 澪もそちらへ行くと、どうやら他の門の一つが、敵に押され始めているようだった。
「いけない、誰か……余力のある人は、向こうの門へ救援に向かって!」
「承知しました、私が向かいましょう……マイア殿、ここはお願いしても?」
 景正の問いかけに、マイアは攻撃の手を止めずに頷く。
「こちらは問題ありません、皆さん優秀ですから……」
「片付き次第戻って来ます、それでは!」
 前もって拝借していた馬にひらりと騎乗し、景正は華麗な手綱捌きで疾駆し始める。
 宗田も門の守りは澪と村人達へ託し、大急ぎで駆け出すのだった。
 敵も戦力が減って来て、かなりの無謀な攻勢をかけている。
 村人に被害が出る前に、早急に大勢を決さねばならないだろう……。

「少ない時間でやれるだけの事はやりました。後は信じて戦いましょう」
 激戦区となっているその門の前では、疲労した他の猟兵や民兵と交代する形で、夜神・静流(退魔剣士の末裔・f05903)と数人の弟子達が敵軍と対峙していた。
「静流先生、何か作戦は?」
「斬って斬って斬り倒します。……あ、みなさんは陣形を崩さずに、門の守備に専念して下さいね」
 思い出したみたいに静流が付け加えて、それから改めてレッサーデーモン達を見据え。
 静かに腰の刀へ手を添えると、わずかに腰を落とす。
 ――ざわり、と空気感が変質した。
 静流の背中からは、日光を照り返してきらめく純白の翼が生えて来て……黒曜石を彷彿とさせる艶のある髪の色も、汚れのなさはそのままに雪のような白へと変じていく。
「う、美しいっ……」
「はふ……しずるせんせいは、てんしだったんだぁ……」
 思い思いに息を呑む若者達へ柔らかな一瞥を送ってから、静流は鋭利な視線でレッサーデーモン達を穿ち。
「……参ります!」
 一呼吸した次の刹那には、もっとも手近に迫っていたレッサーデーモンの懐深くに、静流は踏み込んでいた。
 漆黒の鞘を走り、瞬時に打ち出される愛刀、十六夜。
 敵の肉眼には捉えられない速度でもって、その一閃は肉を断ち割り骨を寸断し、駆け抜けた衝撃波がレッサーデーモンの身体を斜めに泣き別れさせていたのだった。
「あ、あれが先生の、本気……」
「どうしよう俺……今すげぇ感動してる」
 若者達からすれば、恐らく静流の手元がややぶれた程度にしか分からなかった事だろう。
 とはいえ相手もさるもの、静流を一番の脅威と見なしたらしく、多くの敵が肉薄してくる。
 けれど静流は無駄のない足捌きと、柳のような体裁きで入れ替わり立ち替わり、皮一枚で敵を翻弄しながらリズミカルに斬り捨てていく。
 静流の間合いに入るや否や物言わぬ血しぶきと化す味方の姿に、レッサーデーモン達も浮き足立っているようだ。
 その動きはまさに先の先、後の先。
 相手が違うだけで、静流がやっている事は、普段の若者達との稽古と何一つ変わらないのだ――。
 ここに至ってもまるで自分達に見本を見せるかのような活躍ぶりに、心を打ち震わせる若者達。
 これで奮起しないわけがなく、彼らも寄って来るレッサーデーモンを相手に、静流から学んだ技術を一つ一つ実行していく。
「これが……先の先だ!」
「バカお前、やみくもに斬りかかってどうする! 待つんだよ、まずは!」
「や、やべ、頭が混乱して来た……」
 気が急くのも仕方ないが、隙のできた若者には、敵が容赦なく三叉槍を投げ込もうとする!
 が、その出かかりへ割って入るように距離を詰めた静流が、下方からの斬り上げで槍ごとレッサーデーモンを斬り飛ばす。
 さらに剣先から放たれた衝撃波が背後に立つ別の敵も弾き飛ばし、動揺した敵軍が静流を中心に後退し始めていく。
「済みません先生、情けねぇところを……」
「いえ、とてもいい感じですよ。力を合わせて、落ち着いて対応していけばいいのです」
 良い点と悪い点を授業の講義みたいに伝えつつ、静流はそのまま何気ない足取りで踏み出し、そこから放たれる神速の斬撃がまた一体、敵を斬り倒す。
 身体が温まって来たのか、若者達の動きも精彩を帯び、持ちうるパフォーマンスを充分に発揮出来るようになっていた。
「遅いぜ……お前の動き、静流先生に比べたら亀みたいなもんだ」
「亀ってより山羊だけどな、相手」
「むしろ鳥じゃね?」
「どうでもいいわバカ、真面目にやれよ!」
 彼らの調子もいつも通りになって来て、緊張も適度にほぐれている。
 ただ、若者達は空から襲って来る敵への対処方法までは、まだ習っていない。
 すばしこく飛び回りながら複雑な印を結び、若者達の動きを封じようと目論むレッサーデーモン。
「……それで回避しているつもりですか?」
 しかしそんな敵を静流は冷たく見つめ、太刀を鞘へ戻してから、小さく呼気を吐き出す。
 敵がいよいよ呪言を発しようと中空で止まった、ごく短い間隙。
「一ノ太刀・隼!」
 瞬時に静流から放たれた巨大な衝撃波が、彗星の如く空を駆け抜け、レッサーデーモンへ真っ向から直撃する。
 衝撃波が走り抜けた後、上空で真っ二つになった悪魔の肉体が、ぼろっと地面へ落下していくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『墜ちた貴族』

POW   :    愛さえあれば
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【自身を慕い戦ってくれる墜ちた婚約者達を杖】から排出する。失敗すると被害は2倍。
SPD   :    婚約破棄
【一方的な婚約破棄宣言と冤罪】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【召喚した領民達による物理的断罪劇】で攻撃する。
WIZ   :    真実の愛
【真実の愛】に覚醒して【対象を花嫁姿に変えると共に自身は花婿姿】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は花巻・里香です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 午前中いっぱいをかけて、ようやく敵の全滅に成功した猟兵達と、村の新米兵士達。
 だがその折り、突然猟兵達の元に、村から急報が届く。
 ただ1カ所だけ敵の攻撃を受けていなかった南門に、何者かが迫っているというのだ!
 そちらへ急行すると、ちょうど門の正面に、いかにもゴージャスそうな貴族の優男が立っていた。
「ふふふ……僕のしもべ達を、よくも倒してくれたものだね」
 そいつは整った顔に悪意と欲望を入り交じらせた、不敵な笑いを張り付けている。
「あいつらを囮にこっそり村へ忍び込んで、花嫁達を連れて行くとっておきの作戦が、これでおじゃんになっちゃったよ」
 貴族は濁った目で猟兵達を品定めし、そして一度、杖先で地面をこつんと叩く。
「こうなったら君達を片付けて、堂々と花嫁達を連れて行くとしようかな!」
 あははははは! と自分に酔いしれた笑声を上げて、貴族は戦闘態勢に入る。
「村人に戦い方を教えたのは君達なんだろう? なら今度は、僕にもぜひご指導ご鞭撻をお願いするよ!」

 ついに現れた、悪魔達を率いる敵の首領、オブリビオンの貴族。
 こいつの目的は、村から女性をさらい、身も心も弄んで自分のものとする事。
 そんな狼藉を許すわけには絶対にいかない。
 ここまで犠牲を出す事なくついて来てくれた村の若者、及び村娘達も士気は最高潮だ。
 指示を出せば、絶好調の状態で一緒に戦ってくれるだろう。
 ちなみに村娘達は貴族に「ハハハ、口説き攻撃!」「キャー素敵!」みたいに誘惑されてしまうかも知れないが、これまでに猟兵達と培った絆で説得すれば、簡単に正気づかせられるぞ。
 猟兵達の力、そして民兵達の力を結集し、色欲と独占欲に堕落しきった貴族へ引導を渡すのだ!
鞍馬・景正
さあ諸君、子や孫にまで誇れる武勇伝を築くとしますか。

◆戦闘
騎乗のまま、敵に近寄り抜刀。
最後の指南と餞別に【鞍切】の打ちを披露しましょう。

これは私の父が騎馬武者の兜から馬の鞍まで、片手打ちに切断した事から名付けた型。

呼吸、間合、手の内……基本を基本のままに繰り出すだけで、あらゆるものを切り捨てる事が出来るのです。

……それは例え刀でなく、槍でも同じこと。

そこまで呼び掛けてから、【鎧砕き】の念も込め、渾身の【怪力】で敵の優貌を割る一撃をくれてやりましょう。

敵が怯めば即座に槍隊へ追撃を号令。

女衒同然の長袖流者を打ち倒し、 奴に誘惑された娘たちがいればその心も奪い返してやろうではありませんか、輩たちよ!



「フフフ……野に咲く純なお花達、僕と一緒においでよ。夢のような楽園へ連れて行って、幸せにしてあげるよ……?」
「やん、イケメン!」
「私を連れ出して、この世の果てまで!」
 さっそく貴族の口車に乗せられる村娘達。しかし、貴族に従うまま連れ去られようものなら、二度と村へ帰る事はできないだろう。
 そうはさせじと、馬の手綱を引いた鞍馬・景正(竜胆の剣・f02972)が、若者達とともに進み出る。
「さあ諸君、今こそ奴を討ち、子や孫にまで誇れる武勇伝を築くとしますか」
「まったく、あんなアオビョータン野郎に丸め込まれるなんて、村の一員として恥ずかしいぜ!」
「ハーレムとかマジ許せねぇだろ、潰すわ」
 割と私怨たらたらの口ぶりだが、若者達の戦意は飛ぶ鳥を落とす破竹そのもの。
 戦線離脱中の村娘部隊の穴を、今なら埋められるはずだ。
「ふふん、醜い男の嫉妬は怖いねぇ、そんなに僕の容貌が妬ましいかい?」
「笑止。では貴様のご自慢の優貌、この一撃にて断ってくれよう」
 敵の戯れ言を一言で斬って捨てた景正が、馬の腹を蹴る。
「最後の指南と餞別に、我が【鞍切】の打ちを披露しましょう」
 勢いよく疾駆し始めながら、後に続く若者達に見えるよう騎乗したまま抜刀。
「これは私の父が騎馬武者の兜から馬の鞍まで、片手打ちに切断した事から名付けた型」
「兜から鞍……!? そ、そんな人間離れした芸当が、マジでできるんですか!?」
「呼吸、間合、手の内……基本を基本のままに繰り出すだけで、あらゆるものを切り捨てる事が出来るのです」
 たゆまぬ鍛錬、磨き上げた武。斬れぬものなどないという信念。
 さながら一振りの業物の如く、そこまで己を研ぎ上げて初めて、その領域へ到達する事ができるのだ――。
「……それは例え刀でなく、槍でも同じこと」
 呼気を吐き出しながらそこまで呼び掛け、景正は把持する刀に意識を集中し、鉄塊をも切り裂かんとする強き念を込めていく。
「アハハハ、なんだか怖い顔をしているけれど、そんな風に脅かしたところで僕は倒せないよ。顔が悔しさに歪むのは君の方さ」
 一方の貴族は脱力し、景正の攻撃へ備えている。
 相手の技に身をさらし、あえて真正面から受ける事で無効化。
 直後に発動する激烈な反撃で、一息に敵を仕留める――それこそが貴族の必勝法だ。
 しかしその術は、あくまで必ず勝利できるという強固な意志に支えられて成り立つもの。
 だがこの貴族に、そんな高尚な志はない。
 常に自分が絶対的優位に立ち、敵を見下ろし足蹴にできると慢心しきっている。一見余裕があるように見えても、所詮それはまやかしに過ぎない。
 よってこの時、無言ながらも景正の発する凄絶なまでの剣気を肌身に感じ、貴族の表情はいつしか驚愕に歪んでいた。
「な、なんだ……なぜ、足が震えるんだ? ぼ、僕がまさか――恐怖しているとでも」
 貴族の言葉はそこで途切れた。
 突如として急加速して見せた景正が、瞬刻にして間合いをゼロにしていたからである。
「私の太刀を受けて、笑えるものなら笑ってみるがいい」
 刹那、武州康重を振り上げた景正が貴族めがけ、剛力を注ぎ込んだ一刀を、渾身のままに打ち下ろした――!
 その瞬間、貴族は脱力状態を維持するどころか、本能に負けて逃走の態勢へ入っていて。
 カウンターどころか、景正の一撃に対し、完全な無防備をさらしてしまい。
「ぐっ……ぎゃああぁぁぁええぉぉぉぉぉッ!?」
 頭から顔、胸部にまでかけて深々と綺麗な斬撃痕が刻まれ、一拍子を置いて醜い金切り声と鮮やかな血しぶきが迸る!
 良く手入れされたサラサラヘアーと秀麗な顔立ち。異性を惑わすための武器が、景正によって叩き壊されたのである――。
「あ……あぁっ、僕の、僕の顔があぁ……ッ!」
 鮮血に染められた貴族が頭を振り乱すと、その顔貌の半分は無惨に斬り潰され、原形を留めず醜い有様と成りはてている。
「さあ、遠慮はいりません! 女衒同然の長袖流者を打ち倒し、惑わされた娘方の心ももろとも奪い返してやろうではありませんか、輩たちよ!」
 貴族の脇を駆け抜け、すぐに馬首を巡らしながら景正が声を張る。
「よしきた行くぜ!」
「ざまぁねぇぜナルシスト野郎!」
 待ってましたとばかりに男衆がわっと襲いかかり、右から左から貴族を槍で滅多打ちにした。
 特に顔を執拗に狙っているのは戦略上合理的ではあるのだが、それ以上になんというか鬱屈した恨みというか、男達のいつもより必死の形相に深い闇を感じる。
「ぐ、くそっ……!」
 貴族が杖を振ると突風が発生し、その反動で若者達の包囲を無理矢理に抜けて、土埃へまみれながら転げ逃げていく。
「はっ、わ、私は一体何を……」
 すると、どうやら村娘達も無事に正気を取り戻したようだ。
「なぁに、あいつのあの顔! うわ、きっもー」
「やっぱ男は顔よねー、景正様最高!」
 そして浴びせられるドライな反応に、貴族のショックも倍増である。
「なんて事だ、なんて……っ!」
 ぎりぎりと悔しげに歯噛みしているが、しばらくすると平静を取り戻したらしく、強ばりながらも不敵に笑う。
「ふふ……やれやれ、大人しく僕の言う事を聞いていれば、みんな幸せになれるのになあ」
「まだぬかすか。では次はその身勝手な言の葉ばかりを吐く口を、舌ごと切り落としてくれる」
 馬上より鋭く睨み据え、チキ、と刀を握り直す景正。
 戦意が衰えぬのはこちらも同じ。貴族との戦いは、激しさを増していく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

結局は顔なのかと悲しみを顔に出さないようにしつつ、敵へ正対します。
下級悪魔とはいえ、あの数を率いる敵。油断はしません。
あの軽薄な言動に惑わされないように気を付けます。

恰好や言葉は貴族らしいですが、人さらいとは下賤のソレ。恥ずかしくないのですか?
とでも挑発し、村娘達ではなくこちらに意識を向けさせます。
少しでも怒ってくれれば、攻撃や思考が単純化し、御し易くなるかもしれませんから。
敵の目的に対して憤りを感じていた事も、口調がきつくなってしまった原因かもしれません。

戦闘では引き続き若者達と槍にて応戦します。
下らない敵の目的で誰かが死んでいたと思うと槍に力が入りますね。
許すことはできません。


ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

一応どんな奴かは聞いたけど…
要はコナかけまくって収集つかなくなったから全部放り投げてとんずらした、と。
なんというか…典型的な小悪党ねぇ。なっさけなぁい。

〇クイックドロウからの●封殺を〇先制攻撃の〇鎧無視攻撃で撃ち込むわぁ。
急所は人間と変わらないだろうし、〇スナイパーで〇一斉発射。
〇早業でリロードからの〇2回攻撃撃ち込まれて、、口を開いてるヒマあるかしらねぇ?

村娘達が口説かれちゃったら「もう7日くらい特訓してあげてもいいわよぉ?今度は手加減なしで」みたいなこと声かけるわぁ。

こんな奴相手に被害出したんじゃ片手落ちもいいとこだもの、息の根止めるまでは気を抜かないわぁ。



(「というか、結局は顔なのですか……悲しい物語です」)
 何とも言えない気持ちを胸にしまい込み、アリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)は貴族へ正対する。
 下級悪魔とはいえ、村一つを陥落させられるだけの数を率いる敵。油断はできない。
 おまけに緒戦から明るみになった、口の達者さ。
(「奴のあの軽薄な言動に惑わされないよう、女性のみならず私達も気を付けるべきですね」)
「ハハハ、今度は君が相手かい? 憂いを帯びた騎士とは、またマニア向けを攻めて来るねぇ」
「……恰好や言葉は貴族らしいですが、人さらいとは下賤のソレ。恥ずかしくないのですか?」
「なんだって……?」
「いえ、言葉の方もよくよく聞けば、ごろつきの妄言と大して差はありませんでしたね……立派な貴族の方々に失礼をば」
 ぴき、と貴族のこめかみに青筋が浮く。
 敵が標的としている村娘ズではなく、こちらの方に意識を逸らせば、それだけやりやすくなるというものだ。
「フフフ……そんな安い挑発に僕が乗るとでも思ったのかい? ――だったら実に残念で、同じくらい不愉快だよ……そのクール顔を吠え面かかせてやるッ!」
 効果は抜群である。頭が冷えるまでの間は、敵の動きも御しやすくなるはずだ。
 とはいえこうして言葉を交わして思う事だが、あんな貴族の下らない目的で誰かが死んでいたと思うと、握る槍にも自然と力が入ってしまう。
(「敵があくまで真面目な事も分かっているだけに、ますますもって許せません……」)
 つい口調がきつくなるのも、そうやって沸き上がる憤りのせいだが、自身まで頭に血が昇ってはならないと、アリウムは自制しながら慎重に距離を詰めていく。
「ふぅ。一応どんな奴かは聞いていたけど……要はコナかけまくって収集つかなくなったから全部放り投げてとんずらした、と」
 一連の貴族の無様さと滑稽さを目の当たりにしていたティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)も、呆れを通り越した哀れみの籠もった笑みで、くすりと小さく吹き出す。
「女の敵っていうかなんというか……典型的な小悪党ねぇ。なっさけなぁい」
「くっ、どいつもこいつもそうやって僕をバカにできるのは今のうちだよ! 少なくとも君達は僕の婚約者にはふさわしくないようだ……村娘ちゃん達への見せしめとして、処刑してあげよう」
 宣言しながら貴族が杖を掲げた矢先、アリウムとティオレンシアの正面に、邪悪なオーラを纏った領民達が召喚されて来る!
「あらあらぁ……この人達は?」
「僕を愛し、あがめ奉る理想の領民達さ! 僕が直接手を下すまでもない、君達は彼らによって断罪されるんだよ! さあみんな、そいつらは好きにしていいぞッ!」
「げへへ、久しぶりの獲物とは素晴らしい。おっしゃる通りに致します!」
「本当は圧政しまくっていたうちの貴族様をぶっ殺したいけど操られてできないのでお前ら殺す」
 そんな感じで口々に一方的な欲望を吐き出しつつ、武器を手に襲いかかって来る領民達!
「婚約破棄宣言といい、領民達といい、何もかも一方的すぎる……こんなものを愛と呼びたくはないですね……!」
「男は殺せ女を奪え! 楽しい殺戮略奪一揆! エヒャラハ!」
 得物は鋤や鍬といった農具が主だが敵の数が多く、ホワイトパスで強化されたアリウムを主軸に若者達と隊列を組んで、中距離を保ちつつ応戦する。
「おほっ、いい女ァ! ちょっと相手してくれよ!」
「悪いけれど……タイプじゃないわぁ」
 汚い視線を注いでくる変態相手には、ティオレンシアがリボルバーの照準を向けて。
 間髪入れず発射された銃弾が奴らの脳天やみぞおち、心臓といった急所を瞬きする間もなくぶち抜き、セリフの最中だろうとお構いなしに倒していく。
「さっきまでの悪魔と比べたら、てんで手応えがないわねぇ。これじゃ教材にもならないわぁ」
 武器で防御しようが銃弾はそれごと貫き、途切れぬ弾幕を浴びせて何もさせずに蜂の巣へ変える。
 槍で貫かれ、銃撃で眉間を吹っ飛ばされ、秒ごとにガンガン減っていく領民の群れ。
 貴族の表情は青ざめ、狼狽しながら杖を振り上げる。
「ま、まだまだ僕の領民はこんなものじゃないぞ! ほらほら村娘ちゃん達も、一歩も引かない僕達の高潔さと颯爽さに、無性にときめきを覚えないかいっ?」
「きゃあん、貴族様ったらス・テ・キ♪ もっともっと雄々しく強く、エ・レ・ク・チ・オ・ンしてえぇン!」
「そうだろうそうだろう、さあ領民どもへの増援をッ――!?」
 ダンダンッ! と貴族の両目へ一発ずつの弾丸が叩き込まれ、舌を噛み潰したような絶叫がこぼれる。
「ごめんなさいねぇ、あんまり隙だらけなものだから、つい撃っちゃったわぁ」
 素早くリロードを終え、小首を傾げて微笑するティオレンシア。
「いやぁっ、貴族様の美しいお顔がまたずたぼろにっ!」
「キャフン、立ち上がって、貴族様ぁ!」
「……あなた達も、それくらいにしないとぉ」
 ティオレンシアが村娘ズへ、ゆっくりと振り返った。
「もう7日くらい特訓してあげてもいいわよぉ? 今度は手加減なしで、つきっきりで」
「ちょッッッッッッッ」
 あの地獄を思い出したのか、すぐさま素に戻ってガタガタ震え上がる娘達。
「はぁっ……!」
 アリウムが突き入れた短槍が最後の領民を打ち抜き、寄りかかるような体勢でがくりとくずおれさせる。
「思えば彼らも、あの悪辣な貴族の奴隷にされた、悲しい方達なのかも知れません……」
 アリウムは領民の身体を支え、今しも息絶えようとする彼を看取り、最後の言葉に耳を傾けていた。
「うっ俺達は操られていたのでどうやら悪くなく、さっさと仇を討ちなさい」
「そ、そうですね……あなた方は悪くありません」
 何か釈然としないものの、とりあえず頷いておく。
 残るは貴族ただ一人。最初の頃の端麗な面立ちは見る影もなく、目元からはだらだらと出血が続いている。
「顔がぁ……僕の完璧な顔が……!」
「追い詰められても相変わらずの小物ぶりねぇ。こんな奴相手に被害出したんじゃ片手落ちもいいとこだもの、息の根止めるまで気を抜いちゃ駄目よ」
「ええ。あんな相手でも、オブリビオンには違いありません。最後まで油断せずかかりましょう」
「きっ、貴様ら、どこまでも僕をコケにして……目にものを見せてやる!」
 もう目はないが、奴を追い込んでいる事は間違いない。
 アリウムとティオレンシアは気を引き締め直し、貴族と対峙するのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

栗花落・澪
宗田、零と連携
呼び→紫崎君、天星さん

お姉さん達は危ないから
後ろから援護お願い

村娘を護りながら
風の【全力魔法】で紫崎君の火力上げ
炎の遠隔操作で奇襲
UC補佐

あいつの言葉は聞いちゃダメ
待ってるのは地獄だよ

村娘が安全そうなら
【空中戦】で素早く敵の側を飛んだり
【催眠、誘惑】を込めた【歌唱】で気を引き隙作り
味方への攻撃は極力庇う

☆万一WIZ受けたら
わーごめん当たっちゃった!
強化を気にしつつ
う…動きにくい、し…恥ずかしいし…
何この精神攻撃…!

空中援護継続
…見上げないでよ?

☆ネタが可能なら
・身長
・容姿(性別)
・女性蔑視発言
等を連呼された場合UC【女王の微笑み】
ごめん聞こえなかった。もう一度(淡々、辛辣)


紫崎・宗田
澪、零と連携
呼び方→チビ、零(夕夜)

なるほど…チビが嫌いそうな奴だぜ

おい、前線には出過ぎるなよ
今の力でやれる事をやれ
…援護、期待してっからな

若者共に告げてから敵に突っ込む

炎武器での【属性攻撃】
素早い接近戦で翻弄
攻撃の予備動作を【見切り】
炎を纏わせた【衝撃波】の斬撃を飛ばす

万一外しても
それで終わりだと思ったか?
チビの斬撃操作にニヤリ

UCの【2回攻撃】
大地直撃で足場を崩してから本体への攻撃で
敵のPOW技の成功率を下げる狙い

☆共通項
村娘共が敵に靡きそうなら
各自声掛け

☆ネタ含む場合
おい…あんまチビ怒らせんなよ
後で宥めんのめんどくせぇんだぞ
呆れながらも隙を伺い
万一澪に危害が向くようなら【庇う】


天星・零
紫崎さん、栗花落さんと連携

共通事項の行動は心掛け

技能は基本前章と同じで村人を守るよう立ち回る

UC【オルタナティブ・ダブル】で零と夕夜で戦う

『ふふ、駄目ですよ。モテないからって』「勝手に村人を奪うのはな。さて、ご退場願おうか?」

零は【毒使い】を活かしてマフェッドスレッド、グレイヴ・ロウ、Ø
夕夜は前章と同じ武器を用いて戦う
必要なら援護も


『割といける』発言の村人と絡ませてもok(本人達は村人がどんな反応をするかを見たいだけ)


栗花落さんが女王化したら

距離をとって微笑みつつ我関せずの顔で傍観、UC発動しディミオスと絡ませる
『なるほど、見かけによらないと言いますが‥実際見ると興味深いですね』と【情報収集】



「なんのまだまだ……顔がなくても僕にはこの美声がある! 神に祝福されし整った肢体がある!」
 貴族は魔法で目を治療しつつも、村娘達へ情熱的な囁きを送る。
「僕の言葉は甘い毒……一度抜けても次はあらがえないよ。さあ可愛い野ウサギちゃん達! 僕とハネムーンを楽しもう! 新婚初夜は身も心も熱くしてあげるよ、さあさあ!」
「きゃん、素敵ぃ!」
「男の良さってさ、要するに顔より中身よね!」
「逆境を跳ね返すその姿……こんなの惚れちゃうじゃなーい!」
 何度やられてもやたらポジティブに振る舞う貴族に、再び心を囚われそうになる娘達!
「あいつの言葉は聞いちゃダメ、待ってるのは地獄だよ!」
 栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が訴えかけるも、娘達はすでに目がハートだ。ダブルピースするのも時間の問題である。
「なるほど……チビが嫌いそうな奴だぜ」
「厄介な相手ですね。長期戦は危険かも知れません」
 舌打ちする紫崎・宗田(孤高の獣・f03527)と、注意を喚起するセリフとは裏腹に微笑みを絶やさない天星・零(多重人格の霊園の管理人・f02413)。
「まあいい。下手に声かけするより、野郎をぶん殴ってりゃ正気に戻るだろ。……おい、前線には出過ぎるなよ。今の力でやれる事をやれ」
 と、宗田は肩越しにちらりと目線を投げ、背後の若者達へそう告げて。
「……援護、期待してっからな」
 その後は振り向かず、小声で短く付け加える。
「え……今の、もしかしてデレた? デレちゃった?」
「いやいや、ワルしてる不良が時たま見せる優しさみたいなもんだろ……」
「カワイイ!」
「こいつら……っ!」
 ぴくぴくと頬を引きつらせ、宗田は怒りをぶつけるように貴族へ向かって行く。
「僕は紫崎さんを援護するので、栗花落さんは娘さん達の護衛をお願いできますか?」
「うん、任せて!」
 零の言葉に頷いた澪は、炎を纏って猛スピードで突っ込む宗田へ、風魔法を送り込む。
 吹きすさぶ風は宗田の火力を煽って増幅させ、敵の眼前へ辿り着く頃には、両手で振り上げた『剛壊刃〜龍〜』はもはや噴き上がる火炎放射のような状態であり。
「灰も残さねぇっ!」
 ぶち込まれた炎の塊が、貴族を頭から足の先まで呑み込んだ!
 手応えあり。どう見ても直撃である。
 なのに、その途端。
 だしぬけに人型の何かが炎の中から飛び出しかと思うと、燃え上がりながら宗田へしがみついて来た……!
「ねえぇぇぇぇ……あだじどあぞびなざいよぉぉぉぉ……!」
「ギョボギャハハッ! たのしい! たの死いっ! たの血ィッ!」
「殺す殺す殺す殺す殺す男は殺す殺す殺す殺す殺す」
 とっさに身をよじってふりほどくも、どうやら複数の女性と見られるそいつらは、口々に呪いの言葉を吐き散らしながら迫り寄って来るではないか。
「アハハハハ、彼女らはかつての僕の婚約者達! 色々あって結ばれる事はなかったけれど、地獄に堕ちてもなお僕を慕ってくれてねぇ。こうやって召喚したら、僕の代わりに敵と戦ってくれるのさ!」
「慕ってる……? 全然そうは見えねぇけどな!」
 むしろこの世の怨念に満ち満ちた、怨霊そのもののような様相だ。
「俺達も助太刀するっす!」
 宗田と若者達は円陣を組んで暴れ回り、這い寄ってくる忌まわしい婚約者達を相手に互角以上の接近戦を繰り広げるものの、貴族本体には手が出せずにいる。
「さてと。邪魔者はいなくなったし、改めて可愛い子ちゃん達を僕の手中に……」
 瞬間、貴族の左右から二つの影が躍りかかった!
「ふふ、駄目ですよ。モテないからって」
「勝手に村人を奪うのはな。――さて、ご退場願おうか?」
「へ……っ?」
 間抜けな声を発する貴族へ、零が猛毒の鉤爪で、そして【オルタナティブ・ダブル】で現れた夕夜がØで、それぞれ同時に打ちかかる。
 不意打ちの上にスピードの乗った鉤爪が貴族の背をしたたかに切り裂き、よろめいたところに真っ向から打ち込まれたØが、肩口へめり込んで肉を食い破っていく。
「ぐぇあああああぁっ……!」
「たっぷりの毒です。効くでしょう?」
「もう婚約者は打ち止めか? ならさっさと倒れろよな!」
 零と夕夜はその場にとどまり、交互に爪撃と斬撃を繰り出し、さらに貴族を攻め立てる。
 瞬く間に豪奢な衣服が血に染まり、貴族は血泡を吹きながらも杖を振り抜いた。
 小規模な爆発が巻き起こり、これにはたまらず二人とも後退を強いられる。
 その上夕夜はØを取り落とし、今は素手の状態になってしまっていた。
「小癪なガキどもめ、僕がしつけてやる!」
「やれるもんならやってみろ!」
 売り言葉に買い言葉を返した夕夜が手を伸ばすと、地面に落ちていたØがひとりでに浮き上がり、夕夜の方へ舞い戻っていく。
 そしてその途中にあった障害物――すなわち貴族の肩甲骨の間へぐさりと突き立った。
「ぼッッッ!?」
「よっし、狙い通り!」
「夕夜も中々計算高いですね……これは負けていられません」
「うぐぐ……何してるんだ婚約者の諸君! ぼ、僕を守りたまえ!」
 そこへ新たに追加された数体の婚約者達が、零と夕夜へ迫っていく!
「さっきからテメェ、背中ががら空きだぜ!」
 その頃には宗田達も敵を倒しており、巨大剣から放出された炎の衝撃波が、貴族へ向けて突き進む。
 ひゃっと情けない声を上げた貴族は慌てて横っ飛びに逃れ、すんでのところで回避した風に見えるも。
「それで終わりだと思ったか?」
 ニヤリとする宗田。
「やっぱり背中がお留守だよ!」
 その反対側で、飛んで来た衝撃波を風を操って止めた澪が、間を置かずに逆方向に回転させ、再び撃ち出す!
 風を乗せて威力を倍増させた一撃が、今度こそ貴族を捉えて炸裂、派手に吹っ飛ばしたのである。
「な、なんか貴族様、旗色悪くない?」
 魅了されていた村娘達も、続く貴族の醜態に徐々に正気を取り戻しているようだ。
「これならお姉さん達も無茶しないかな……僕もサポートに行こう!」
 と、翼を広げて飛び立った澪も、混沌とした戦場へ参戦していく。
「天星さん達が危ないかも……歌って敵の気を逸らさなきゃ」
 澪は婚約者達と渡り合う零と夕夜の側まで降り立つと、庇うようにしながら【催眠】及び【誘惑】を込めた声で歌い上げる!
「なァんなのよおぉぉぉぉごのぐぞがぎわぁぁぁぁぁぁッ!」
「その顔を寄越しなさい。声帯を寄越しなさい。骨を寄越しなさい。臓器を寄越しなさい。命を寄越しなさい。……寄越せ寄越せ寄越せ、――寄越せよォォォォォォォッ!!」
 何が敵の琴線に触れたのか、とにかく怖い。でもおかげで隙を作れたらしく。
「うおぉぉぉぉぉ腐れ婚約者ども、そこを代われェェェッ!」
「俺は夕夜くん派なんだァァァァ!」
 これまたおかしな方向にいきり立った若者達が突っ込んで囲みを破り、零と夕夜を救出にかかる。
 その隙に零と夕夜は背中合わせにグレイヴ・ロウを構え、円を描くように数回転。
 血と肉を求めて群れ寄る婚約者どもを、まとめて蹴散らした!
「皆さん、危ないところをありがとうございます」
「おかげで命拾いしたぜ!」
 零と夕夜が笑いかけると、特殊性癖の若者達は鼻血を吹いて昇天した。本望である。
「戦力が低下してるよ!」
 思わずツッコんだ澪へ、貴族の絶叫が重なる。
「婚約者達がみんなやられてしまった……愛する者に殉じる事こそ、真実の愛! 今僕は、真実なる愛に目覚めたのだ!」
 その剣幕にびくりと肩をこわばらせる澪に、鬼気迫る貴族が猛然と襲いかかった!
「真実の愛ィィィィ!」
 慌てて上空へ飛び上がるも、貴族から発せられた気持ちの悪い色合いの魔力に触れられてしまい、澪の顔色が変わる。
「わーごめん当たっちゃった! ……って、な、なにこれ!?」
 気がつくと澪の服は先ほどまでと打って変わり、純白のウェディングドレス姿へ変貌していたのだった。
「う……動きにくい、し……恥ずかしいし……下の方が、ちょっと……。スカートも半透明で透けてるし、うう、何この精神攻撃……!」
 顔を赤らめてもじもじする澪に、貴族は勝ち誇った声を上げた。
「よくよく見たら君は男じゃないか! アハハハ、男のくせにそんな格好にされて恥ずかしくないのかい? まるで本当の花嫁のように華奢で、なのに仕草や素振りで男を誘うような色気を漂わせているなんてねぇ、熟練の娼婦も顔負けの傑作だよ!」
「あいつ……命知らずだな」
 宗田がぼそっと呟いた直後。
 ――ドゴォッ!
 空から急降下した澪が、真下にいた貴族を勢いよく踏みつけ、そのまま地面まで倒した。
「ぎゃぼぉっ!?」
「ごめん。聞こえなかった。もう一度言ってみて。ね」
 そして、貴族は見た。見てしまった。
 うっすらとした微笑みを口元に張り付けながらも、笑ってない目で見下ろす、小さな女王を。
「なんて言ったのかな。もう一度言って欲しいな。ねえ。……ねぇ?」
 ぐいぐいっ、ぎゅむぎゅむっ。
「んはあぁぁぁぁぁっ!?」
 白いブライダルシューズ越しに律動する細い足裏が、マッサージでもするかのように貴族の下腹部をリズム良くぎゅうぎゅう踏みつけた。
 スカートからちらりと覗く大迫力の白い太ももを見せつけながら、何かを絞り出すような前後運動を加えて弄び、にゅっ、にゅっ、と体重をかける度に貴族の口から切ないあえぎ声が上がる。
「おい……あんまチビ怒らせんなよ。後で宥めんのめんどくせぇんだぞ」
 その光景に宗田はひたすら呆れを漏らし、若者達は生唾を飲み羨ましげに食い入って。
「なるほど、見かけによらないと言いますが……実際見ると興味深いですね」
「これがDVってやつか……こえぇ」
「あっぱれな女王ぶり……その調子で、無礼者を徹底的に調教し、何もかも搾り尽くしてしまえ。必要ならば、我が鎖も貸すぞ……?」
 距離を取って我関せずに笑い続ける零と、引きつった笑みを浮かべる夕夜。ついでに召喚されていたディミオスも、もっとやれと言わんばかりに鎖をがちゃつかせる。
 不規則に躍動する澪の華奢な足が、貴族の背筋にぞくぞくとした痛みと快感を送り込み、甘ったるい誘惑のオーラをねっとりと浴びせる。
 つま先が柔らかく食い込めば貴族はびくんと背中をのけぞらせ、踏みしだかれながら身も世もなく白目を剥いて舌先を突っ張らせた。
「あ、あひいぃぃ……っ! やめてえぇぇぇぇ……!」
「あーあ……何が貴族よ、中身もとんだヘタレじゃない」
「さっきまでの威勢はどこに行っちゃったのかな……なーんか幻滅ゥ」
 しかも遠巻きの村娘達から向けられる、軽蔑、侮蔑、豚でも見るような視線。
「そんな……そんな目で僕を見るなあぁぁぁぁっ!」
 その扱いは貴族にとって甚大な精神ダメージになったようだ。直接戦闘には参加していないものの、ある意味これも援護であろう。
 とはいえ貴族にもまだかろうじて意地があるのか、澪のすべすべとした肌触りの良い脛をあわあわ押しのけ、ふらつきながらも立ち上がり、怒気を込めて杖を構える。
「よくもこんな屈辱を……絶対に許せないよ!」
 だがその時には、宗田が大剣を手に貴族へ斬りかかっており。
「来るかい? けど君達が倒したのは婚約者を名乗るのもおこがましい面汚しの有象無象。僕の元にはまだ第二、第三の婚約者達が……」
「その手はもう食わねぇな!」
 思い切り得物を叩きつけたのは、貴族の立つ地面。
 激しい振動を流し込みながら土を粉砕し、クレーターを開けながら真上にいる貴族をよろめかせて。
 返す刀で振りかぶられたもう一発が、貴族の顔面を盛大に殴り飛ばした!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

マイア・ヴェルナテッド
村娘達に向けて避難勧告とまではいかずとも巻き込まれないように後方に下がっていてもらいます
「さてと、ここからは私達猟兵の仕事です。貴方達は無理せず下がっていてください」

攻撃参加前に必要とあれば『礼儀作法』『誘惑』を用いて相手の隙を作り他の猟兵の攻撃チャンスを作ります。無論、隙ができたら私自身も不意打ちを行います

戦闘
「貴方達には基礎を教えてきましたが最後ですし応用をお見せしましょう」

 敵と他の猟兵との戦闘を観察し『学習力』を活かして隙を見抜き『第六感』で行動予測、『呪詛』『属性攻撃(闇)』『生命力吸収』を乗せれる限り乗せた『全力魔法』の『シャドウファイア』を一つに束ねて『二回攻撃』し焼き払います



 百年の恋も冷めるような醜態を見せつけられ、村娘達もさすがにもう誘惑される事はないにしろ、揃って意気消沈しているらしく。
「はぁ……なんだかなぁ。男ってちょっと踏みつけてやれば、あんな風に悶えちゃうんだ……」
「気持ち良ければなんでもいいなんて、みじめねぇ……ぞくぞくしちゃう」
 彼女達の男に対する認識が、おかしな方向へこじれなければいいが。
「さてと、ここからは私達猟兵の仕事です。貴方達は無理せず下がっていてください」
「はい、教官。後ろの方にいるので何かあったら呼んで下さい、すぐ駆け付けますから!」
「あんなヘタレ、私達の分もいっぱい痛めつけてあげて下さいね、マイアお姉様!」
 この状態ならマイア・ヴェルナテッド(ノーレッジデザイア・f00577)の勧告にも素直に従い、村娘達は門を通って村内へ戻って行く。
 その間に貴族は必死に顔へ回復魔法をかけ、視力を回復させつつ昂ぶった興奮も鎮めて。
「さあ、僕の未来の花嫁達よ、今すぐこっちへ――っていない!?」
 彼女達はとっくに帰宅している。この場にいるのはマイア達猟兵と、ハーレム野郎死すべしのどす黒い殺意にまみれた若者達だけだ。
「貴方は私がお相手します。それとも私では……不足かしら?」
 と、マイアは生徒達の前ではしなかった女性的な口調を使い、軽く横顔だけを傾け、艶やかな流し目を送る。
「くっ、ま、まさか逆に、この僕を誘惑しようというのか!? あまり甘く見ないでくれたまえよ……これでも僕は海千山千!」
 口上の途中で、おもむろにマイアが片手を上げ、その絹糸が流れるような白く長い髪をかき上げつつ、ちらりと繊細なうなじを見せてから、気のなさげに吐息をつく。
「ぐああ……なんという、今までの女達にはない人外の美貌と洗練された高貴さ! 磨き上げられた大理石のようなきめ細やかな肌は染み一つなく、極上のルビーがはめこまれたけだるげな瞳は見る者の視線を引きつけてやまない! そして清楚な衣装と神秘的な雰囲気を纏っていながらも、その奥深くに閉じ込められたスタイルの良さは隠そうとして隠しきれるものではない! 構わないから僕と来たまえ!」
「お断りします。人を上っ面だけで判断する相手は眼中にありません」
 ばっさり斬って捨てたマイアは、愕然としている貴族めがけて、闇夜の日傘を差し向け――自身の周囲に黒色の炎を呼び出し始めた。
「高き王座に鎮座し天界との虚しき戦争を飽きることなく続ける冥府の王よ。契約に従い我が下に黒き焼尽の猛火を持て」
 詠唱が進むごとに炎は次第に勢いを増大させ、恐るべき呪詛の数々、濃密な闇の属性、生きとし生けるものの命を吸い尽くす力をそれぞれ宿し、黒い太陽の如く膨張していく。
「貴方達には基礎を教えてきましたが、最後ですし応用をお見せしましょう」
 後方で固唾を呑んで見守る生徒達へ肩越しに声をかけると、マイアは複数の黒炎を自らの手前で集束させ、日傘の先端で絡み合わせるように一つの巨大な火球へ造り替える。
「や、やめろ……やめろおぉぉぉぉッ!」
 そこまで来てやっと貴族も我に返るが、その時にはすでにマイアの大火球が、暴風を巻き上げて轟然と発射されており。
 一直線に突き進む黒い炎が、貴族に逃げる暇を与えず、暴力的かつ絶対的なスピードで丸呑みにして咀嚼する……!
「ぐ……わ、忘れたのかい? こんな真っ正直な攻撃……僕に反撃してくれと言っているようなものじゃないか!」
 しかし貴族もまた脱力状態でその大魔法を無効化し、杖の先から雨あられと婚約者達を射出する!
「ああっ、マイア教官が!」
「駄目、助けが間に合わない!」
 後方に下がった村娘達からも、悲鳴が上がる。
 けれども、マイアは涼しい表情を崩さない。
「もちろん知っています。ずっと観察していましたから……貴方がそうして防御する事も、反撃して来る事も……全て予測済みです」
「な、なんだって……!?」
 撃ち込まれて来るのは、婚約者ビーム、婚約者ミサイル、勝ち組ダンスフェスティバルなど婚約者シリーズが目白押しで、まともに食らえばひとたまりもない。
 だがマイアの眼前には、凄まじい魔力と質量を凝縮して滞空し続ける、もう一発の黒色大火球が呼び出されていた……!
「し、しまった、一発目はフェイク……っ!」
 貴族の声を遮るように、爆発的な壊音を轟かせて黒炎が迸る。
 飛来する婚約者達を余さず薙ぎ払い、焼き尽くし――攻撃後に隙だらけとなっている貴族まで到達するや否や、天まで響く大爆発を引き起こしたのである。
「魔法としても、戦術としても、これが応用というものです」
 日傘をぽんと手に当てたマイアは、声もなく大炎上する貴族をよそに振り返り、歓声を上げる村娘達へ最後のレクチャーを行ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜神・静流
誘惑に対しては殺気技能を使用。
私は質実剛健で誠実な殿方が好きです。
軽薄で外道、そして悪しき魔の者など以ての外。

四ノ太刀・氷雨で攻撃。
早業・属性攻撃・破魔・2回攻撃・範囲攻撃・先制攻撃orカウンターの技能を使用。

相手の技、●真実の愛に対しては呪詛耐性・恥ずかしさ耐性を使用。
絶対零度の視線と共に氷の剣技を三行半代わりに叩き付け、氷漬けにします。

青年達への指示
「そういえば、一番大切な事を教え忘れていました」
「このような悪しき妖は生かしておいてはいけません。見つけ次第、全力で抹殺するように。いいですね?」

赤丸三つ取得につき真の姿を更に解放。
全身が青白いオーラに包まれる。



 豪華な衣服は燃え落ち、目は半ば溶け、肌はただれ、髪型は焦げたアフロになり……貴族はもはや半死半生という有様だ。
 だが、夜神・静流(退魔剣士の末裔・f05903)は決して気を抜かない。奴が息絶えるその瞬間まで、残心はしても切っ先を下ろす事はないのだ。
「フフフ……どこまで僕の怒りに油を注げば気が済むのかな? まぁいい、生意気な君達の一人でもこちら側に引き込めれば、それで戦力は逆転するんだ……!」
 貴族はにわかに静流の方へ向き直り、自らのアイデンティティを証明するかのように、誘惑の魔法弾を飛ばして来た!
「……そんな小細工など!」
 対して静流は、自らに迫る魔法弾を睨み、腹の底から一喝。
 全身から殺気を込めた気迫を放ち、鼻先へ届く寸前で消し去ってのけたのである。
「ば、バカな……どうして僕になびかない!? 僕に従えば幸せになれる! 女として短くも華々しい、最高の生涯を終える事ができるんだぞッ!」
 唾を飛ばしてわめく貴族へ、静流は一つ息をつき、凛々しくも静かな声音で答えた。
「……私は質実剛健で誠実な殿方が好きです。軽薄で外道、そして悪しき魔の者など以ての外。そのような輩に、屈するわけがありません」
「そういう事だ……貴様、色目を使う相手を誤ったな」
「お前を倒し、村の平和を取り戻す! 俺達の絆にかけて!」
 静流の言葉を聞いて、急に劇画調で渋くなったり真面目に振る舞ったりする男ども。
「そういえば、みなさんに一番大切な事を教え忘れていました」
 と、静流が少し穏やかな口調で、しかし有無を言わせぬ鋭敏な気配を纏う。
「このような悪しき妖は生かしておいてはいけません。見つけ次第、全力で抹殺するように。――いいですね?」
「心得ましたぁぁぁぁぁぁ!」
「寝取り野郎に天罰を!」
「先生ェ、これで終わらせましょう!」
 心を一つに燃え上がる若者達と目を見交わせ合い、ふっと一瞬微笑む静流の姿に、さらなる変化が生じていく……!
 透き通った白い髪と神々しい翼はそのままに、全身が青白いオーラに包まれていったのだ。
「な、ならば死にたまえ! 冥土の土産に、君を花嫁衣装で送ってあげよう!」
「いいえ、死ぬのはあなたです!」
 若者達に後ろは任せ、一足飛びに駆け出す静流。
 貴族が乱射する魔法弾をジグザグにステップしながら躱し、半身をひねって紙一重に回避し、あるいは瞬時にかがみ込んでやり過ごし――一切の速度を緩める事なく、なお一層加速し続ける。
 その手に握るは万物を凍結させる氷刃。刀身を覆うように舞い吹雪く不吉な冷気を目にし、貴族も死にものぐるいで杖を振るう。
「させねぇぞ! 先生は俺達が守る!」
 ところが横合いから割って入った男達が盾となって食らい、次々とウェディングドレス野郎が増えていく。地獄絵図である。
「近づいたら勝てるとでも思っているのかい!? 甘いよ……美しく散れ!」
 それでもついに花嫁化光弾がかすめ、静流の格好が見惚れるような白無垢姿へと変えられてしまう。
 だが同時に、静流もまたその射程に貴族を収めていた。
「我が剣は氷。凍りつけ、四ノ太刀・氷雨!」
 到底花嫁には似合わぬ、けれども確かな美しさを兼ね備えた絶対零度の視線で敵を射貫き、全霊でもって太刀を袈裟懸けに振り抜く!
「ぐはあぁぁぁぁぁっ……!」
 三行半代わりに叩き付けられた必殺の一撃が、貴族の全身を刹那で氷漬けにし、さらに何重もの厚みのある氷像へ変えていく。
「バカな! 僕の情熱が……通用しないだなんて……!」
「罪業に淀んだ情熱など、私には届きません」
 白無垢姿にも動じず、落ち着いて刀を正眼に構え直した静流は、もがく貴族へ狙い澄まし、目にも留まらぬ神速の剣技を叩き込む!
 斬り、突き、払い、薙ぎ、斬り上げに斬り下ろし――技巧を尽くした、とどまる事のない烈風の如き連斬が、氷塊もろとも貴族を千々に斬り砕く。
「ぐわァァァ……! ――で、でもね、最後の最後に……この僕を拒絶した君の花嫁姿が見られたんだ。これはこれで、真実の愛、と呼べるはず……だから僕は、勝ったんだ……!」
 氷結した肉体がバラバラになり、顔だけになった貴族が、会心の笑みを浮かべて静流を見下ろし――。
「静流先生を見るんじゃねぇ、見るなら俺達を見ろォ!」
 ――そこに飛び出して来たドレス姿の男達が、筋肉を見せつけるようなポーズを取った。
「ぎゃああああああああやめろォォォォォ目が腐るゥゥゥゥゥゥ……ッ!」
 貴族は魂の底から断末魔を残し、今度こそ潰えたのだった。

 こうして悪の貴族は討ち果たされ、村には平和が戻った。
 若者と村娘達は一人も欠ける事のなかった互いの無事を労い合い、健闘をたたえ合い、それから協力してくれた猟兵達へ、揃って礼の言葉を述べる。
「本当にありがとうございました! 先生達のおかげで、この村は救われたんです!」
「俺達、これからも自分なりに鍛練を積もうと思ってます。もっともっと強くなって、いつか先生達の力になりたいと思うんで!」
「何かあったら、たまには顔を見せに来て下さいね! 離れていても、みなさんはずっと私達の先生だから!」
 この戦いを経て、彼らは肉体的な面でも、精神的においても一回り成長した事だろう。
 少し頼りがいの出て来たような、精悍になった面構えを見届け、猟兵達は見送りと称した大騒ぎの中で、村を旅立ったのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月27日


挿絵イラスト