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暴海のワイルド・ハント

#グリードオーシャン

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#グリードオーシャン


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●渦を巻く
 その海域は、幾つもの潮流がぶつかり合い、常に荒れているのだと言う。
 暴れ回る水面は、その上を往くものにことごとく襲いかかる。
 常ならば、避けるのが常道のその海であるが。
 しかし、危険と儲けは往々にして表裏一体というもので。
 その海には、多くの者が流れ込む。
 潮の流れに乗ってきた微生物や、それを追って小魚が群がり、更にそれを追って大魚もやってくる。
 あるいは、どこかの海域から流されてきたか、もしくはこの海域に無謀にも挑み、そして沈んで行った誰かの忘れ物も沈んでいよう。

 ……そんな海で『それ』が生まれてしまったのは、もしかすると必然だったのかもしれない。
 ざぁざぁと雨が降り、時折走る稲光が水面を照らす。
 その水面に映ったのは、小ぶりな漁船くらいには匹敵するかのような巨大な魚影。
 メガリスを喰らい暴君へと変貌を遂げた、この海域の主である。

●よーそろ
「海で遊びたい時期に申し訳ないんですけどね」
 季節は夏。
 グリモアベースでも、海だ水着だなどと涼しく楽しい話題に飢えている今日この頃ではあるが、シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)が持ってきた話題は海でこそあっても、あまり手放しで笑っていられるものとは言い難かった。
「グリードオーシャンの海中にコンキスタドール……オブリビオンの反応を捉えたので、退治をお願いしたいんですよ」
 そう言ってグリードオーシャンの世界地図を広げるシャル。
 こうして改めて見ると、ずいぶんと探索範囲も広がったものだと感慨深いところだが、そこはそれ。
 示す場所は未探索のエリア。行動範囲が広がったことで予知に引っかかるようになったのだろう。
「荒れていることで有名なグリードオーシャンの海ですが、予知が確認された場所は、その中でも特に複雑な海流を描いているみたいなんです。
 正直なところ、鉄甲船でも余所者である我々では荷が重いと言わざるを得ません」
 そこで、と。シャルは問題の場所にほど近い一つの島を指差す。
「ハニーヤード島、と言うらしいです。
 その名の通り、緑豊かな島で蜂蜜作りが盛んなんだとか」
 文明レベルとしては、アックス&ウィザーズの田舎町が近いだろうか。
 緩やかな草原や田園、潮風を受けて回る風車も見える。
「まずは問題の海域を迂回してこちらに上陸します。
 現地の海賊と接触して、協力を取りつけてほしいんです。彼らにとっては庭のような場所です、潮の流れにも詳しいかと」
 縞の海賊と一口に言っても幾つかの派閥はあるようだが、オブリビオンの影響で迂闊に海に出ることが出来ない現状、その殆どは街の酒場にたむろしているのだと言う。
 上手く事が運べば、自慢の海賊船で戦場まで連れて行ってくれることだろう。
 それが不可能でも、最低でも航海の案内くらいは取りつけたいところである。
「もっとも、危険の伴うコンキスタドール退治です。簡単に交渉を運べるとは思わない方がいいでしょう。
 安全のために私は待機になっちゃいますが……その代わり、方法は皆さんに一任しますので」
 ただでさえ危険の伴う海に、強大なコンキスタドール。
 そのリスクに見合う『価値』を提示できないことには、協力を取りつけるのは難しいだろう。
 とはいえ。海賊たちの側としても、海に出られないと言うのは文字通りの海の男にとってすれば死活問題だ。
 島の近海に潜むコンキスタドールを退治してくれると言うのは歓迎すべきことに違いない。
「それでは、船出と行きましょう。
 今回も簡単な仕事ではありませんが、皆さんの航海の無事を祈っていますよ」
 あ、もちろん酒場によると言っても未成年の方は飲酒禁止ですからね!
 そう締めくくったシャルのグリモアの光の向こうに、鉄甲船の甲板と蒼く広がる大海が見えた。


ふねこ
 晴れの海もいいけど嵐の海もかっこいいよね。
 どうも、ふねこです。船子ではないです。
 実は初のグリシャンシナリオをご案内して行こうと思います。
  例によって、更新タイミング等の大雑把な目安はマスター自己紹介にも随時書いていこうと思いますので、そちらもよろしければご確認くださいませ。
 以下、補足情報になります。

 第一章では、ハニーヤード島の酒場にたむろしている海賊に、問題の海域まで案内してもらうように交渉していただきます。
 オブリビオンのせいで漁や遠征にも出られないため、その存在や場所は知れ渡っているのでそこについては説明の必要はありません。
 荒くれどもの溜まり場なので、多少の騒ぎは日常茶飯事です。派手に器物を壊したりしなければある程度は大目に見てもらえるでしょう。
 ちなみに名物は蜂蜜種。

 首尾よく船を出せたら、第二章以降は船に乗っての洋上戦となります。
 自信のある方は船から飛び出しても構いませんが、風も波も荒れていますのでご注意を。
 まぁ、船に留まっていても甲板は揺れるでしょうが。

 それでは、皆様のご参加お待ちしております!
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第1章 冒険 『海賊との交渉』

POW   :    力を示して従わせる。腕っぷしか、あるいは財力か

SPD   :    協力することによる利を示す。これは勝てる賭けなのだ

WIZ   :    相手のプライドを刺激する。海賊の誇りを見せてもらおう

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

マリューズ・アビスマリア
お友達のサンディ(f26305)と一緒に参加よ。
海を鎮めるお仕事、頑張りましょうか。

酒場で蜂蜜酒を頂きましょう。
…普段口にしない味わい、不思議な感じだけど…美味しいわね。
サンディ、貴女はどう?

その合間に海賊っぽい人達に目星をつけ、頃合いを見て接触。
海に出ず屯してるのは何故、という処からコンキスタドールの話題に進め、その討伐を請け負うから船を出すようお願い。
とはいえ、私のこのナリじゃ不安なのも当然よね。一勝負するとしましょ。

死招く海月で触手を強化、相手の足を払ったり関節極めたりして制圧するわ。
海賊ですもの、この位なら大丈夫よね?
実力を分かって貰えたら改めて協力をお願い。

(アドリブ歓迎)


サンディ・フィッシャー
マリューズ(f26351)と参加。アドリブ歓迎

ハッ、アタシら向けの依頼ってやつだなマリュー。とりあえずは交渉ってやつかね。こういう輩は舐められたら負けだ。ガツンと一発見せつけてやろうじゃないの。

酒場にはいったらまずは肉と酒だ。飲みながら話せそうなやつに目星をつけるぜ。

目星をつけたら早速交渉だ。素直に受けるなら良し。女二人と舐めてるようだったら…。少し力を見せつけてやるかね。肉は食ってるしユーベルコードで少しひねってやれば向こうもわかんだろ。力比べといこうかね?

おい、マリュー。そっちは…。おいおいアタシより酷いことになってないか?アンタ意外と容赦ねーからな…。



 ハニーヤード島。
 そう呼ばれる島、その海を一望できる場所に建てられた酒場は、まだ日も高い時間であるにも拘らず、多くの人で賑わっていた。
 元々、海賊なんてものは我欲に忠実なタイプが大半を占める人種である。
 そうそう軽率に海に出ることが出来ない現状を考えれば、この混雑度合いも無理もないところなのかもしれない。
「ハッ、アタシら向けの依頼ってやつだなマリュー」
「そうねサンディ。海を鎮めるお仕事、頑張りましょうか」
 その一角で小さな丸テーブルを挟む、褐色肌の人間と海月の下半身を持つ深海人の女性二人組。
 サンディ・フィッシャー(輝く欲望・f26305)とマリューズ・アビスマリア(Lullabyss・f26351)。
 ともにグリードオーシャンの出である友人同士、海の荒くれ者たちの集いの中にあっても、すっかり違和感なく溶け込んでいた。
 二人のテーブルの上には、酒と肉。定番だ。
「…普段口にしない味わい、不思議な感じだけど…美味しいわね」
 マリューズが口をつけている蜂蜜酒。
 蜂蜜と水を混ぜて発酵させただけという単純な製法の酒であり、そのイメージから甘ったるいものというイメージを持ちがちだが、香りはすれどそこまで甘さばかりが強いと言うわけでもない。
 どちらかというとビールに近いような感じだ。
 一方でサンディが舌鼓を打っている肉はというと、いささか大味でこそあれどボリュームがあり、大の男もこれなら満足できよう。
 とは言え。
 何も二人は単に飯を食いに来たわけでは、もちろんない。
 その目は油断なく、周囲の様子を伺っている。
 こういう輩を相手にするときは、舐められたらその時点で負けだ。
 所作の一つをとっても、あまり不用心に隙を晒すわけにはいかない。
 ただでさえ余所者の女コンビ、視線はどうしたって集めるものだ。
 無遠慮な視線をさっきからいくつも感じているし、そこでビビらずに強気な視線を返してやることだって、荒くれ者の中ではある種の礼儀にもなろう。
 そうした中で屈強な男が二人ほど、「良い食べっぷりだな嬢ちゃん達」と、ニヤついた笑みを浮かべて話しかけてくる。
 よしよし釣れたと、サンディとマリューズは内心で笑い合う。
「えぇ、お酒も料理もとてもおいしくて。普段からここまで人気なのかしら?」
「ま、今はちょっとばかし、海が荒れてるせいってのもあるがな」
 導入としては上々だ。
 ここからオブリビオン……コンキスタドールの話題を引っ張り出すのは造作もない。
「じゃあ、私達がそいつを倒すから、そこまで船を出してくれる……っていうのはどう?」
「っは、馬鹿言っちゃいけねぇよ。今まで何人も向かっては、返り討ちになってんだぜ?」
 まぁ、そうなるのも当然の事だろう。
 いくらなんでも海賊が誰も挑戦すらせずに諦めている筈などないし、ましてやこちらは20歳前後の女二人。
 一般的な感性で言えば、無謀なことと思えるだろう。が、だとすれば話は簡単だ。
「んじゃ、力比べと行くか?軽く捻ってやるよ」
 サンディが立ち上がり、刺青のはいった肩を挑発的に鳴らしてみせる。
 それを見て、相方に背中を叩かれた男が、シャツの袖をまくる。
 力比べとなれば、手っ取り早いのは腕相撲だ。
 料理をどかし、両サイドにサンディと男が立ち、野次馬が周囲を囲む。
 審判役を買って出た別の男が合図をすると同時に、サンディは己の腕に力を込めた。
 ――なるほど、手ごたえは確かに強い。
 腕っぷしに自信があるのは決して虚勢というわけではないんだろう。……だが、あくまで『一般的な海賊』の範疇だ。
 造作も……ない。
 だん、とテーブルを揺らす音と共に、男の手の甲が叩きつけられ、歓声が上がる。
 悔しげな男の視線を満足げに受けながら、サンディはニヤリと周囲に向けて笑って見せる。
 その視界の隅に、友人の姿を見つけ……。
「……いやマリューお前、なにやってんだよ……」
「ちょっと私も、実力をわかってもらおうと思って」
 実際のところは、騒ぎに乗じてセクハラの一つでもと思った誰かに絡まれただけなんだろうが。
 その軽率な行動の結果――マリューズの海月の触手で関節を極められ床でビクンビクンしている海賊一名――に、思わず笑みは苦笑に変わった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

織座・このみ
●このみ
実はこの世界は初めてなんですよねぇ……

……えぇと、ただでさえ交渉事は苦手ですしぃ、海賊の方との交渉は他の方におねがいしましてぇ、
あたしは交渉の成功とその後の船路の無事を祈って、
人気のないとこで舞を奉じてますn………姉様?

※内心・思考の口調は、プレイング記述の話し言葉と違い、訛り気味
人前では狐面外さない
協力、アドリブ歓迎

●姉様
『あの子は交渉なんかはダメでしょうからぁ、あたしだけでも手伝いますよぅ』
えぇ、あたしだけ酒場に向かいますよぅ

とはいえ……あたしたちを運べば海は拓かれるのに、みすみすその機会をドブに捨てる臆病者、みたいに挑発して発奮させるのがせいぜいですかねぇ?


荒谷・ひかる
まずは彼らに正面から向き合い、コンキスタドール退治への協力をお願いします。
多分、ただの小娘だと侮られて笑われるでしょう。それで構いません。
そこで改めて、力を示します。
(【幻想精霊舞】発動、打ち合わせ通りに精霊さん達に動いてもらう)
大地を揺らし炎を舞わせ、風を吹かせ水を操り、草木を生やし稲妻を奔らせ氷を造り、暗闇に閉ざしてから光で照らします。
ちなみに力を示すだけなので、見てくれは派手でも損害は無し(せいぜいコップが倒れる程度)
そうして改めてお願いします。
「戦う力ならこの通り、あります。でも、海に出る力はありません。どうか、皆さんの力を貸してください。そして、共に勝利を捥ぎ取りましょう?」


ナミル・タグイール
絡みアドリブお任せ無理せず
金ぴかお酒にゃ!素敵にゃ!もっと寄越せデスにゃー!(酒飲み豪遊猫)
キラキラだし甘々だし最強のお酒にゃ。いいところデスにゃ。

お酒飲んで満足したし帰るにゃ。
…じゃないにゃ!そういえばお宝(メガリス)がナミルを待ってたデスにゃ!
宝物庫につながるミミックに手を突っ込んで、でっかい銀ピカお宝や宝石を出しまくるにゃ。(金ぴかは出さない)
海賊ならこういうの好きなはずデスにゃ?好きなのあげるからナミルをメガリスのところまで連れてってデスにゃ!
(実は全部ヴァルギリオスの財宝だからモンスター化するかもだけど…海賊なら強いし大丈夫のはずにゃ)
全部金貨2000枚の価値のすーぱーお宝にゃー!



 ざざーん、ざざーん。
 それなりに人口の多いハニーヤード島、勿論港だって相応の規模のものが存在してはいる。
 だが、島の外周全体を港にするわけにもいかないのは自明の話。
 複雑な潮流を描き、簡単に荒れる海の荒波を受けた岩壁は大きく削れ、切り立った地形を生む。
 そんな断崖の上で、狐面の少女が一人、鉾鈴を手に身を翻す。
「四方山の 人の守りにする鉾を 神の御前に 斎い立てたる 斎い立てたる」
 彼女――織座・このみ(半身は焔となりて傍らに・f04890)は、交渉事は決して得意とは言えない。
 なのでそちらは仲間に任せ、その間せめてもとこうして海に安全祈願として舞を捧げていた。
 こんな所かと、額を流れる汗をぬぐい、さて仲間たちはどうだろうかと後ろを振り向いたところで……。
「……あれ?」
 ――姉様?
 いつも一緒の半身の姿が無いことに、今になって気付いた。

 そのころ。
「もっと寄越せデスにゃー!」
 酒場の中でジョッキ片手に大声を張り上げる猫一匹。
 艶やかな黒毛に煌びやかな金装飾を身に着けたナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)が浴びるように蜂蜜酒を飲みまくっていた。
 蜂蜜酒は良い。
 芳醇な香り、上品な甘み。
 いやそれよりも、なによりも色が良い。輝く黄金色。素晴らしい。
 割とガバガバ基準な金ぴか大好き猫であった。
 元よりいろんな種族がいるグリードオーシャン、人間サイズの猫獣人という時点では多少珍しくとも自然な存在ではあろうが、注目は集めまくっていた。主に会計大丈夫なのだろうかという意味で。
 そんな中、酒場の扉が開かれる。
「お邪魔しまーす」
 そこにいたのは、額から一本角を生やした小柄な羅刹の少女、荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)。
 小柄で華奢、一見するとこの場には似つかわしくないか弱い女の子。だが、傍らに控えた炎の身体の狐面の女性が、この少女が只の小娘ではないと伺わせるには十分で……。
「……あれ?」
 ひかると狐面の視線(?)が合う。
「……こんな精霊さん居たっけ?」
 違う違う、とでも言いたげに首を振る狐面。
 ちょうど入り口の前で鉢合わせした、妹ほっぽりだして一人乗り込んできたこのみの姉様だった。
 まぁそれは良い。目的は一緒だ。
 即ち、コンキスタドール撃破の為に船を出してほしいと、そう言う事である。
 ひかるは小細工という選択肢を捨てる。ここは正面から頼み、そして力を示してやるのが筋だろう。
 当然、頂上の存在っぽいものを(ひかるとは無関係なんだけど)連れているとはいえ少女一人。何を馬鹿なことをと一笑されるのが自然な反応。
 だからこそ、手筈通りに。
 注目は十分に集まっている。ならば、と。
 ……建物が軋む。床が揺れる。
 カタカタと、テーブルに乗った食器が音を立てる。隙間もないのに、風が吹く。
 何が起きたと、店中に動揺が広がっていく中、ひかるだけは自慢げな表情を浮かべて。
 合図をするように片手を挙げれば、ふっと店の中が暗闇に包まれた。
 ひときわ大きなどよめきの中で、小さな火花(と姉様の炎、あと丁度会計やってたナミルの金ぴか)がよく目立つ。
「戦う力ならこの通り、あります」
 光が戻り、静まり返った店内を改めて見渡して、ひかるが口を開く。
「でも、海に出る力はありません。どうか、皆さんの力を貸してください。そして、共に勝利を捥ぎ取りましょう?」
 ざわざわ、ざわざわ。
 これなら或いは、という考えが海賊たちにも表れ始めているか。
 あちこちで相談の声が上がり始める。
 手ごたえは間違いなく在る筈だ。
 であるならば、更にもうひと押し。
 じゃらり。
 海賊のテーブルに、銀細工の宝飾品がどさりと積み上げられる。
 思わず海賊の視線がそちらに伸び……それを置いた猫の手を見た。
「好きなのあげるからナミルをメガリスのところまで連れてってデスにゃ!」
 ナミルであった。
 まだまだあるデスにゃ、と、傍らに置いてあったミミックに口を突っ込んでは、どんどん宝の山の笠を増やしていく。
 海賊ならお宝だって好きだろう。ナミルのその予想は、単純であるが的確であった。
 いいの? いいデスにゃ。
 海賊の瞳に通貨マークが浮かぶのを見て、ナミルはほくそ笑む。
「(実は全部ヴァルギリオスの財宝だからモンスター化するかもだけどニャ)」
 狐面越しに姉様の視線がナミルに突き刺さったような気がした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ティエル・ティエリエル
ねぇねぇ、ここって蜂蜜が名産なの!
あっ、違った!お仕事の話に来たんだった!

海まで案内してくれたらボク達がコンキスタドールをやっつけてあげるよ!って話しかけるけど
やめとけやめとけ小さなお嬢ちゃんじゃ丸呑みにされてお終いさとか言われるよ!
ボク、丸呑みされるほどノロマじゃないよ!

そんなこと言って、本当はおじさん達荒れた海にいけるような腕じゃないんでしょ!とかプライドを擽っていくぞ☆
怒ってボクのことを捕まえようとしてきても華麗な「空中戦」で全部避けちゃうよ♪
どうだ、ボクは全然ノロマじゃないでしょと有言実行!

次はおじさん達が有言実行する番だよ♪
いつまでもここでお酒飲んでたらせっかくの腕が鈍っちゃうよね♪



 酒場に漂う甘い香り。
 くんくんとティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)が鼻を鳴らす。
 酒に加工されているとはいえ、その香りは間違いなく、慣れ親しんだ蜂蜜のそれだ。
 蜂蜜と一口に言っても、花の種類や蜂の性質によって千差万別の味をもたらすティエルの大好物、どうしても興味は惹かれるところであるが……。
「あっ、違った!お仕事の話に来たんだった!」
 そうだそうだ。猟兵の本来の仕事を忘れてはいけない。
 名産品ということは、この後口にする機会だっていくらでもあろう。
 どうにかこうにか、意識をそちらから逸らすことにする。
 フェアリーには羽根があるとはいえ、嵐の中を飛んでいくのは流石に無茶ってものだ。
「……というわけで、海まで案内してくれたらボク達がコンキスタドールをやっつけてあげるよ!」
 てな具合に、手近な海賊の食卓に降り立って胸を張ってみせる。
 しかし、海賊から帰ってくるのは失笑ばかりだ。まぁ、当然と言えば当然なのかもしれないが。
「やめとけやめとけ、人間だって食っちまうこわーいやつなんだ。嬢ちゃんなんか一口で丸呑みになっちまうぞー」
「ふん。ボク、丸呑みされるほどノロマじゃないよ!」
 大きさばかりが強さではないとはいえ、結局外見的に一番指針にしやすいのがそれである。
 とは言え、ここで引き下がっていては話が進まない。
「はーん、わかった。そんなこと言って、本当はおじさん達荒れた海にいけるような腕じゃないんでしょ!」
「んだとぉ!?」
 海賊の腕が伸びる。
 広げられた掌は、筋肉も皮の厚みも、よく使いこまれているなとティエルは思った。
 だからと言って捕まってやる義理はないが。
 ひょいひょいと、二度三度と振るわれる手の、指の合間を抜けていく。
「どうだ、ボクは全然ノロマじゃないでしょ!次はおじさん達が有言実行する番だよ♪」
 すっかり仲間内の笑いものになってプルプル震える海賊の目の前でホバリングして、改めて胸を張る。
 こうしてひらひらと浮いている生意気な小娘に有言実行されたとあれば、プライドの高い海賊にとってみれば辛かろう。
 悔しいが認めなければなるまい。ただの少女ではないと認めたうえで、海賊としての意地を見せる必要がある。
 対抗心にも似た火が目の前の相手の瞳に浮かんだのを見て、ティエルはニヤリと笑って見せた。

成功 🔵​🔵​🔴​

野良・わんこ
【しゃにむにー】【ワイルドハント】
わんこはどれだけ酷い目にあわせてもよい

おシノギと海賊姿で飲んでいます。未成年ですからねっぽいもので。
入ってきたワイハン連中にウザ絡みします。
「おいおい、半グレのガキが女連れで酒場たぁ良い御身分ですねえ!」
知り合いだろ系の発言は全無視。
「おいおまえら、こいつを半殺しにしたら女共はくれてやりますよ!」
周りの雑魚チンピラを焚き付けます。

乱闘の途中からしれっとワイハン側に回って全員ぶちのめしましす。
「はっ! 雑魚が勝てると思ってるんですか! ほら、きりきりここらの潮の流れに詳しいやつを紹介するんですよ」
「船? 船は自前のがあるんですよ。ねぇおシノギちゃん」


白斑・物九郎
【ワイルドハント】
【しゃにむにー】ともアドリブ等含め絡み希望


・化術使用で海賊ルックをキメて酒場へエントリー
・わんこのムーブなんかは「マジ自由ですわなコイツ……」って眺めてる
・よき頃合で演説をブつ


『ワイルドハント』、白斑物九郎
この海域の主を狩りに来た
なんでわざわざ言いに来たのか、って?
海へ挑みもしねえでクダ巻いてる輩のツラ拝みに来てやったんスよ

怨敵をよそ者が狩ってったら、おたくらどんな気分ですよ?
平和になったぜバンザーイ、ってか?
腹と頭にハニー・シロップ詰まってんのかこの甘ちゃん共がァ!

――テメエらに価値をくれてやる、ボンクラ共
勝利の美酒を真実味わいたけりゃ、俺め達のワイルドハントに着いて来い


メフィス・フェイスレス
【ワイルドハント】●POW 絡んでくる奴らをこっちの力を誇示する為のダシにさせてもらいましょうか。 目立つ席で料理をかっ食らいつつ絡んできた奴に 「狩りに出る前に腹ごしらえは基本でしょ。それに、別にアンタ達が精を付ける意味もないんだからいいじゃない。こんなとこで何をするでもなく腐ってる穀潰しなんだし、食い物の無駄」と煽る。 こっちが武器でも突きつけられたら武器を不意に噛み砕いて 「ナマクラ味。陸で干されてる間に刃の研ぎ方も忘れた訳?」 って言い捨てつつプッ、と武器の破片を相手の足下に吐き出す。 他の味方に絡んでる奴を止める場合はソイツの眼前に骨手裏剣を投げて割って入る。


シノギ・リンダリンダリンダ
【しゃにむにー】
【ワイルドハント】ともアドリブ等含め絡み希望

「おやおやぁ?猟団長様ご一行じゃないですかぁ?」
別に喧嘩腰じゃなく、ちょっと酔って楽し気にちょっかいをかける
先に酒場に入り、宴会をして海賊たちと仲良くなる
一緒に飲むのは特に荒くれが多そうな派閥

「今喋ってた人達もこの海の異変を解決しにきた人達です。きっと他の派閥に力を貸すで…あれあのなんで喧嘩してあれ、あの…あー…」
わんこ様たちの喧嘩をなすすべなく見守る

「……はい、あります。大海賊“強欲”のシノギの船が。よかったですね。他より一歩勝利に近づきましたよ?」
力無い笑みを浮かべる

わんこ様、ワイハンに協力するなら初めからそう言えばいいのでは?


ニコリネ・ユーリカ
【ワイルドハント】
海賊が集まる酒場へ
新参者なら特に目を引くだろうけど其でいい
集まる視線の中に好戦的で侠気のある者が居ないか探すの
私、男を見る目はあるのよ
一番カッコイイのはウチの猟団長(ボス)だけどね!

酒場では持ち前のコミュ力で情報収集を
必要ならお酒の相手もしてあげる
お酒は饒舌と誇りを煽るもの
海賊船自慢をする船長
操船に覚えのある操舵手
海流と地形を知り尽した航海士
何より海に出る勇気のある男を見つけて交渉を
見返りは何かと聞かれたら、海賊たる譽れを

勿論実利もお話するわ(ゴニョゴニョ)
私達が海邪をやっつければ貴人方にも旨味はあるし
船を出した実績は他の海賊勢力に優位を取れる
蜂蜜より甘い汁を吸わせてあげるわ


白鳥・深菜
【ワイルドハント】

「さてと、やりますか」

酒場に入りまず狙うのは「トップを張ってそうな海賊」
その者に対して挑発的に協力を申し込む。

「私達には狩りたい嵐があるのよ。だから貴方達の力を貸しなさい」

こういう相手に大人しく下手に出るのは逆に無作法というもの。
だから、肉体言語(ケンカ)で話し合いましょう?
私、こう見えて血の気は多い方なのよ――楽しませてあげるわ。

殴り合いでは最初の内は回避に専念。まずは相手の手を引き出す。
十分引き出したと見極めたら【魔術師の直感】からカウンターで一撃狙い!
っと、傷を負わせないようには十分に手加減はするわね。

「――さて、力は見せたわ。後は貴方達の意志があれば、嵐は狩れるわ」


アノルルイ・ブラエニオン
【ワイルドハント】
立ち位置はムードメーカー!

旅団で酒場に入るとともにUC使用し演奏
注意を惹く……雰囲気作り!
そして仲間に喋らせる
乱闘時も演奏

いざ出発という時になって最後の一押しの【鼓舞】
リュートを弾きつつ語る
「海の漢達よ! 恐れることはない!
我等コンキスタドールを狩る超常の狩人ワイルドハント!
今こそ共に荒れる海に漕ぎ出し
生き様を示そう!
其処にロマンがある!
たとえ今を平穏に生きたところで
夢を追い続けることを諦めた人生は悲惨だ
さあ、本当の海の漢を我々に見せてくれ!
私はそれを、遥か未来まで語り継ぐだろう!」

仲間内で軽口や冗談を言ったりする性格
【しゃにむにー】にはツッコミをいれる
アドリブ歓迎


ウーナ・グノーメ
【ワイルドハント】

「海賊とは流れる者、止まることを知らない荒波の如く、吠え猛り強く生きる者だと聞いたのです。ですが、どうやらあなた方は流れることを止めてしまったようなのです。淀んでいるのです」

「……喧嘩を売っている? いいえ。わたし達が喧嘩を売るのは荒波の主。あなた方がこのまま淀み腐るつもりがないというのであれば、わたし達に手を貸すのです。大海原に我が物顔でのさばるデカブツを、始末してみせるのです」

海賊達を挑発する傍ら、精霊達を召喚して情報収集を行わせるのです。
時間は無駄にはできないのです。

「さあ、ワイルドハントの始まりなのです。山であろうと海であろうと、わたし達に狩れない獲物は居ないのです」



 さて、そんなわけで酒場の各所でえらく強い余所者……要するに猟兵の説得が始まっている。
 よその船が入港している話は当然、彼らの耳にも入っているし、それを考えたら、次から次へと現れた彼らが同じ組織の連中だと言うことは海賊側も理解できる。
 こいつらならばもしかしたら……という期待感は、確かに店の中に現れつつあった。

 ……が、一方で。
 酒と料理と馬鹿話。そんないつもの空気が完全に抜け落ちてしまったわけでもなく。
 大半の海賊たちは、彼らの事を頭に留めつつも昼間っからの宴会を終わらせられずにいた。
 今もこうして、吟遊詩人のリュートの調べをBGMにしながら、給仕の女性に酒を注いでもらう海賊の姿が……。
 ……あれ?
「ホー ヨー フフンフンフフーン」
「ささ、もう一杯どうぞ。その方がもっと話も弾むでしょう?」
 どっちも余所者だった。
 BGMを流しているのはアノルルイ・ブラエニオン(変なエルフの吟遊詩人・f05107)で、酒を注いでいるのはニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)という、どっちもれっきとした猟兵だった。
 すっかり溶け込んでいる。
「こいつの舵捌きと俺様の立派な船がありゃぁ、どんな荒波だって庭みたいなもんよ!」
「ふふ、頼もしいわ。やっぱり私の見る目に狂いはなかったみたい」
 本業は花売り、話の花を咲かせることだってお手の物。
 ニコリネの給仕と相槌に、海賊は上機嫌で乗組員、ひいては海賊船の自慢話も、溢れんばかりに流れ出る。
「ま、もっとも……」
 と。
 不意にニコリネの視線が酒場の入り口を向く。
「一番カッコイイのはウチの猟団長(ボス)だけどね!」
 その先にいたのは、白梟の有翼種の女性を伴った、斑猫模様の浅黒い肌の獣人であった。
「さてと、やりますか?」
「ン」
 海賊たちの視線が注ぎ込まれるのがよくわかる。それを一身に受けた斑猫を見やり、有翼種――白鳥・深菜(知る人ぞ知るエレファン芸人・f04881)が軽い調子で促せば。
「『ワイルドハント』、白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)。この海域の主を狩りに――」
「おやおやぁ?猟団長様ご一行じゃないですかぁ?」
「ア゛?」
 誰だ人がせっかく演説ぶちかまそうと思ってたところに。
 不機嫌さを隠すつもりもなくジト目をその声の先に向けて見れば。
「……おシノギは一体ニャにやってんですよ」
「いやちょっと、酒につられて」
 ああそう。
 既にほかの海賊面々と溶け込んで酒を飲んでるシノギ・リンダリンダリンダ(強欲の溟海・f03214)。
 まぁあいつも海賊なわけだし、こんな所にいてもまぁ不思議じゃない。ほっとこう。
 気を取り直して。
 そのまま飲んでろというジェスチャーをシノギに放りつつ、物九郎は改めて海賊たちを見やる。
 こいつもコンキスタドール狙いか。
 だがなぜわざわざ高らかに宣言しに来たのだ。そんな具合の無言の問いかけが突き刺さる。
 だが、そんな問いへの答えなどただ一つ。
「海へ挑みもしねえでクダ巻いてる輩のツラ拝みに来てやったんスよ」
 どよめきが走る。
 物九郎への視線の剣呑さがにわかに増すのを感じる。
「彼らもこの海の異変を解決しにきた人達ですよ」
 なんだか不穏な空気。
 フォローのつもりか、シノギが一緒に飲んでいた海賊に補足を入れようとする。
「きっと他の派閥に力を貸すで……」
「おいおい、半グレのガキが女連れで大口たたくたぁ良い御身分ですねえ!」
「わんこ様?????」
 しかしそのシノギのフォローは、あっけなく無に還った。
 他ならぬ野良・わんこ(灼滅者・f01856)という身内の手によって。
「きみ普通に知り合いだよね?」
「こんなチョーシ乗った若造には教育が必要ですねぇ!!」
「マジ自由ですわなコイツ……」
 アノルルイが思わずツッコミを入れるも、わんこ完全スルー。
 まぁ仕方ない。こいつのフリーダムさは今に始まったことじゃない。
 こいつもほっとこう……としたところで。
「おいおまえら、こいつを半殺しにしたら女共はくれてやりますよ!」
「ア゛?」
「へぇ、いいわね。こういう相手に大人しく下手に出るのは逆に無作法というものよ」
「ア゛??」
 あろうことか喧嘩を煽り始めるわんこ。
 そして真っ先にノリノリで反応し始めた深菜。
 猟団長、完全に流れに乗り遅れる図。
 酒場の中の空気は爆発寸前だ。流石にこれを止めるのは並大抵の事ではない。
 さぁどうする猟団長。
「……仕方ニャーですな」
 まぁ、そうなってしまえば仕方ない。このくらい荒っぽい方が我々らしいのかもしれない。
 となれば物九郎が言うべきことは一つだ。
「表出ろ」


「行っちゃいましたねー」
「火事と喧嘩は酒場の華ということかな。実際に燃えてもらっちゃ困るがね」
 ちゃかちゃん。
 ニコリネとアノルルイの見送りを受け、血の気の多い海賊とワイルドハント御一行様が店を後にして。
 酒場には、ずいぶんと増えた空席と共にある程度の平穏が戻っていた。
 外の喧嘩がどちらが勝つか賭けに興じるもの、本当に海に出るかを検討する相談声。
 そして、そんな喧騒などどこ吹く風で続く咀嚼音。
「よく食うな、嬢ちゃん」
「そりゃあね」
 がつがつ、がつがつ。
 店に残っていた海賊に声をかけられても、メフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)の食べる速度は緩まない。
 声の主に視線をよこすことすら面倒くさい。
 なにせ、この後に大仕事が待っているのだ。
「狩りに出る前に腹ごしらえは基本でしょ」
「あんたもやる気かい」
「当たり前よ」
 ここでようやく、メフィスは顔を海賊へと向ける。
 お前は何を馬鹿な事を言ってるんだと言わんばかりの胡乱げな視線付きで。
 文句の一つも言わせない、有無を言わさぬ何かが、その眼光には宿っていた。
「別にアンタ達が精を付ける意味もないんだからいいじゃない。こんなとこで何をするでもなく腐ってる穀潰しなんだし、食い物の無駄」
「んだとぉ!?」
 とは言え、そこまではっきり言われたらそりゃそうもある。
 特に血の気の多い連中は既に店の外まで行ってしまったが、それでも海賊。ここまでコケにされて黙っていられる奴がどれだけいると言うのか。
 ……逆に言えば、まんまとメフィスに乗せられた、とも言えるのだが。
「小娘と思って言わせておけばつけあがりやがって!表出ろ!!」
「良いわよ、あんた達の刃の味確かめてあげるわ。どうせ研ぎ方も忘れたなまくら味でしょうけど」
「テメェ!!」
 ガチャンと派手にテーブルを叩く音と、荒っぽい足音が数人分。
「さあ、本当の海の漢を我々に見せてくれたまえ!」
 などとどっちサイドへの声援かよくわからないアノルルイの歌声を背に、喧嘩のおかわりが投入されるのであった。


「海賊とは流れる者、止まることを知らない荒波の如く、吠え猛り強く生きる者だと聞いたのです」
 カウンターにちょこんと腰掛けながら、蜂蜜ドリンク(※ノンアル)をちびちび啜るフェアリーが一名。
 ウーナ・グノーメ(砂礫の先達・f22960)である。
 その視線の先には、すっかり人けのなくなってしまった酒場の風景。
 みんなドつきあいに行ってしまった。店内で暴れずに外でやってくれるだけ良心的なもんだが。
「嬢ちゃんもあいつらの仲間かい」
「なのです」
 カウンターに頬杖をつく店主と、空席になったテーブルに半端に残された料理を見やる。
 ……まぁ、帰ってくればまた食べるだろう。ほっとこう。
 残っているものと言えば……既にほかの猟兵に感化されて、航海計画を練り始めている一部の連中(と、アノルルイとニコリネとシノギ)くらいのものだ。
 良いことだ。
 まだ動こうとしない者がいたのなら、ウーナからも何か言ってやるつもりでいたのだが。
「流れることを止めてしまった淀みはもう残っていなさそうなのです。少し安心したのです」
 なにも、海賊に喧嘩を売るのが主目的だったわけではない。
 あくまでも喧嘩を売るべき相手は、我が物顔で海を支配する荒波の主。
 海賊側にしたって、このまま淀み腐るのは本意ではないだろう。
 であるならば、後は倒せるに足る力を見せつけてやればいいだけであり、それは今まさに表でやっている。
 そんな事を考えながら蜂蜜ドリンクをもう一口してると、窓の隙間からふわりふわりと飛んでくる砂粒……に羽根が生えたような形状の、小さな精霊たち。
「流石に海の方まではわからないですか。致し方ないのです」
 ウーナの周囲をふよふよ滞空する精霊を労いつつ。
 流石に砂の精霊となれば大海原まで偵察に出すのは難しいか。となれば、それこそ海の行軍は彼ら次第となるわけだが……。
「あ、帰ってきましたよ」
 ニコリネの言葉に、店主共々入り口に顔を向ける。
 ぞくぞくと戻ってくる人影。
 不機嫌そうな物九郎に、対照的に満足そうな深菜。さっさと食卓に戻って食事を再開するメフィスに凄まじく偉そうな態度のわんこ。
 そしてあちこち腫らした海賊連中。
 勝敗は……まぁ一目瞭然、聞くまでもなかろう。
「テメェ、煽っといて何食わぬ顔でそっち側つきやがって……」
「はぁー?わんこがそっちの味方なんて一言も言ってませんしぃー?」
「わんこ様、ワイハンに協力するなら初めからそう言えばよかったのでは……?」
 まぁ、そんな事だろうとは半ば予想していたが。
 やれやれとため息をついたシノギのツッコミには口笛で返し。
「――さて、力は見せたわ。後は貴方達の意志があれば、嵐は狩れるわ」
「わかったら、きりきりここらの潮の流れに詳しいやつを紹介するんですよ」
 深菜とわんこが急かし、最早口答えするのも無理と悟ったのか、海賊たちも大人しく従っていく。
 動きに支障のある者がいない程度には手加減も上手く行ったらしく、荒っぽくはあったものの目的は達成と言えるだろう。
「もちろん、見返りはあるわよ。海賊たる譽れと……勿論実利もね」
 ただ流石に見事なやられっぷりに気落ちしているのを見かねたのか、ニコリネが耳打ちする。
 驚異の排除による安全な航路の開拓に、海に眠る豊富な海産資源。
 そして、この状況下で『船を出した』という事実は確かな実績となり、他の海賊に対して優位を取れるものとなるだろう。
「船? 船は自前のがあるんですよ。ねぇおシノギちゃん」
「……はい、あります。大海賊“強欲”のシノギの船が」
 とまぁ、こうした余所者の海賊ばかりにそんな利益を独り占めされるのも癪だろう、ということも含めて。

「準備ができ次第、出発でさ」
 かくして。
 幾人もの猟兵を乗せた海賊船が、港に並ぶ。
「さあ、ワイルドハントの始まりなのです。山であろうと海であろうと、わたし達に狩れない獲物は居ないのです」
「海の漢達よ! 恐れることはない!
 我等コンキスタドールを狩る超常の狩人ワイルドハント!
 今こそ共に荒れる海に漕ぎ出し
 生き様を示そう!」
「いつまでも歌ってないで乗り込むのです。メフィスもいつまで食べてるんですか」
「あぁん私まだ途中なのだが!」
「せっかくテイクアウトしてきたのに……」
「血が騒ぐわね。まだ暴れ足りないわ」
 出港直前まで、バタバタと、賑々しく。
 狙うは海邪、コンキスタドールの首。
 この海の支配者が誰であるのか、思い知らせてやるために。
「――テメエらに価値をくれてやる。勝利の美酒を真実味わいたけりゃ、俺め達のワイルドハントに着いて来い」
 錨を上げ、帆を開く。
 我等イェーガー、嵐を狩る猟団なり。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『淵沫』

POW   :    残影
【屍と影の機動力に併せ、思念を読み取り】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD   :    群影
全身を【深海の水圧を帯びる液状の物質】で覆い、自身の【種のコンキスタドール数、互いの距離の近さ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ   :    奔影
【屍の持つ骨や牙】による素早い一撃を放つ。また、【屍が欠ける】等で身軽になれば、更に加速する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●黒嵐
 猟兵を乗せた、幾隻もの海賊船が海を往く。
 島を出た時は穏やかそのものだった空は、すぐに暗雲が垂れこみはじめ、降雨と雷鳴に彩られ始める。
 常に荒れ狂い、行く手を阻み、そして尚行く愚か者を喰らい、飲み込む。
 これがグリードオーシャンの海だ。
 その中を、喰らわれてなるものかと、逆に制してみせようと、海賊船は波に乗る。

 暗い、昏い海の底。その下で、なお黒く蠢く影があった。
 白波を立てる水面に揺らめき、その像を次第にはっきりと結ばせ、そしてそれは、水柱を立てて水上へと躍り出る。
 荒波に揉まれ揺れる甲板の上に立つ猟兵達の眼前に現れたのは、黒く粘つく影を纏った白骨の群れであった。
 大小さまざまな魚や海獣。それに加え、それに跨る人骨も少なからず見受けられる。
「こいつらはちげぇ。大方、奴に食われた連中が成仏できずにいるんだろうよ」
 海賊の誰かが、そう言った。
 その数は、これまでにこの海の支配者がどれほどの暴虐を繰り返してきたかを嫌が応にも伺わせるほど、多い。
 そして彼らは、水底に溜まった怨念の赴くままに、生者に牙を剥くだろう。
 しかし。ここで食われるようでは、征服者殺しなど夢のまた夢。
 こちらこそが『狩る者』であると、海賊たちに……そして、敗北者たちに見せつけてやれ。
ティエル・ティエリエル
WIZで判定

すごいすごーい!嵐の海もなんてことないぞ!
船に乗せてくれた海賊さんを褒め称えて、次はボクの番だとぴょーんと飛び出すね♪

雷鳴とどろく降雨の中、背中の翅を羽ばたいて「空中浮遊」、雨にも風にも負けずに白骨と対峙するよ!
骨や牙による素早い一撃もひゅんひゅんと飛び回って得意の「空中戦」で回避☆そんなノロマな攻撃なんて当たらないぞ!
白骨の群れの中を誘導するように飛び回って敵が一直線になったところでくるりとターン!
真正面から【お姫様ビーム】でまとめて薙ぎ払っちゃうよ♪

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


ナミル・タグイール
なんでも歓迎
骨いっぱいにゃ!でもお宝じゃないなら邪魔なだけデスにゃ。
全部どっかんしてこの船でお宝一番乗りするデスにゃー!

にゃー!飛んでるしすばしっこいしうざったいにゃー!(斧持ったままピョンピョン飛び回り)
早くお宝の所に行きたいのに邪魔するなデスにゃ!
全然攻撃当たらないしもう怒ったにゃー!
ムカムカを全部金ぴか斧に込めて【呪詛】フルパワーにゃ
最強のキラキラ斧になったら思いっきり【怪力】フルスイングして破滅の呪詛をばらまくデスにゃー!
直接切らなくても弱い敵なら効果あるはずにゃ
骨動かしてる黒い何かを全部消し去ってやるデスにゃ!
周りの人も呪いの影響受けたらごめんにゃ!
きっとすぐ良くなるデスにゃ(適当猫



「すごいすごーい!嵐の海もなんてことないぞ!」
 雨は降り止まず、雷は轟き、波はうねり船を揺らす。
 一般的な感性で言えば無謀とも言える中を、海賊船は突き進む。
 揺れはすれども、倒れはせず。
 それどころか、この悪天候の中で立っていられる程度の揺れで収めているのは、ひとえに船を操る海賊たちの操船技術の賜物だろう。
 暗く淀んだ空とは対照的に、ティエルの表情は明るい。
 それは生ける屍……骸骨たちを目の前にしても、揺らぐことはない。
 海賊たちが相応の力を見せてくれたのだ。ならばここは続くところ。言ってしまえば見せ場なのだから。
「次はボクの番だ!」
 フェアリーの羽根の燐光を潮風に乗せながら、ティエルは嵐の海へと飛び立つ。
 その瞬間、ほんの一瞬だけ悪寒が走ったのは……たぶん、後ろで立っていた黒猫のせい。
「ぴかぴかデスにゃー」
 どんより空でも無光でない以上、少しくらいは光を反射する。
 ナミルのひかりものセンサーに引っかかっていたらしい。
 まぁ骨は金にはならなさそうだし、自然とそっちに視線が誘導されてしまったのかもしれない。
 だが、それを抜きにしても若干羨ましくはある。
 嵐の海を渡るには辛いにしても、短時間であればティエルの空戦機動にはいささかの鈍りも見られない。
 水面を飛び出し、喰らいついてくる骸骨魚の突進を難なく躱し、身を翻しては次の一撃をレイピアで受け流す。
 フェアリー故の小ささもあるにしろ、その機動力は骸骨の群れと渡り合うには十分の力になる。
 その一方で。
「にゃー!飛んでるしすばしっこいしうざったいにゃー!」
 ナミルはというと甲板の上で跳ねていた。
 手にする黄金の斧も、先ほどから空を切るばかり。
 海賊たちの尽力があるとはいえ、嵐の船上はどうしたって揺れる。
 安定感の欠けた足場で大振りの得物は、どうしたって狙いにはブレが出る。そうしたところで機動力の高い敵だ。
 こうなるのも致し方のないところではあるか。
「誘導したげよっか?」
「にゃにゃにゃにゃ……!」
 煽りか純粋な厚意かは判断のつきかねる所であるが。
 骨の攻勢を捌きざまに近くを飛んでいくティエルを羨まし気に見送りつつ、ナミルは歯噛みする。
 埒が明かぬ。こちらは早くお宝をゲットしたいと言うのに。
 ティエルの剣から一直線にビームが放たれるのが見えた。
 影を貫かれ、落ちていく無数の骸骨たち。
 戦果は十分、ティエルもテンション高く、満足げだ。
 ……あくまでティエルに限った話ではあるが。
「……もう怒ったにゃー!」
「ふぇっ?」
 猫、キレる。
 怒りと焦りと若干の敗北感がない交ぜになった感情が、ナミルの黄金斧に集っていく。
 真面目に戦っていただけの自分に何の落ち度もないのは明白だが、それでも何かデカい一発の気配は感知できたティエルが、ナミルの後ろに退避する。
 そのおかげで、都合よく目の前に集ってくる骸骨の群れ。
「いい加減にそこを退くデスにゃーー!!!!」
 フルスイング。
 狙いなぞ適当だ。とにかく全力で、あらん限りの力を以て、黄金斧を振り抜く。
 刃自体は当たらない。元より当てられていなかったのが、怒りで雑になったエイムで当てられる筈もない。
 だが刃に乗った呪詛は、大気を裂いた一振りで伝搬し、骨を操る影を侵食し、滅ぼしていく。
 所詮は残留思念、残り滓が動かしているだけだ。強大なコンキスタドールはともかく、この程度であればあまりに強い呪いは直接でなくとも影響は受ける。
「さっさと行くにゃ。これでお宝一番乗りデスにゃ!」
「ま……まぁ、倒せたんだから問題なしだよね、うん!」
 ともあれ。怨念すらも潰えてぼとぼとと水底へと還っていく白骨を見送って、船はまだまだ進んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

白斑・物九郎
【ワイハンA】
●POW


●現地海賊へ
おたくらは波を読むのと操船とに集中してなさいや

化け物なんざ居ねえと思え
こっちゃの面子で全部まとめて狩り尽くしてやりまさァ


・ニコリネ/白鳥/ウーナと共に、現地海賊の船に同乗しいざ出航
・船首らへんに海賊ルックでエッラそうに陣取って行く手を見据える

・L95式スマートフォンを頭に押し当て電脳魔術遠隔受領
・【狩猟の魔眼】+【野生の勘】で、周囲の波風といった流動要素から敵群の動向まで片端から網羅し予見

・そんな己の思念を読んだ敵に、保有中の圧倒的情報量(情報収集+限界突破)を【狩猟の魔眼(状態異常力重視)】でブーストした【殺気】と共にブチ込み、精神活動をバグらせてやる企図


ニコリネ・ユーリカ
【ワイハンA】
足場となる海賊船の操船は船長にお任せ
航海士も操舵手も腕達者を連れてきた自信がある
悪魔の海を從えてこそ大海賊と発破をかけ
船首楼甲板に立ち水柱を見据える

骨牙の攻撃は躱すよりシャッター棒で受けて往なし
船に被害が及ばぬよう射線を反らしましょう
味方の配置に配慮した立ち回りを心掛ける

狩りも漁も手順があるわ
私は獲物の機動力と推進力を削ぎましょう
敵が攻撃時に水面から顔を出す瞬間を狙い
燐光の花冠【Kryptonite】を掛けてあげる
迷える魂が戴く冠は軈て桎梏に環鎖に
屍を喪っても速度は増さず、防禦力だけが減る筈

私達は暴海の捕食者
ワイルドハントが通った後には骨片ひとつ残らない
敗北者は骸の海に還りなさい


白鳥・深菜
【ワイハンA】

「さてと、やりますか(2回目)」

私は【蒼空の槍の魔神】と共に敵の前に踊り出し、
敵の群れをかく乱していくわ。
敵陣に「切り込み」ながら自身に注意を集め、
誘導しては「見切り」で回避。
まずは回避に専念しつつ、少しずつ敵の群れを分割していく。

そうしているうちに、敵への弱体化が積みあがっていく。
それにより、十分力押しができるくらいには弱って来るはず。
そこを「範囲攻撃」で「なぎ払い」!

「集団戦術は厄介なれど、それ故に隙は分かりやすいのよ」


ウーナ・グノーメ
【ワイハンA】

「意志なく漂う悲壮な骸。此処ではない、あるべき海へと還してあげるのです」

甲板に舞う妖精が、哀歌の如く言の葉を紡ぐ。

「削がれる程に、奪われる程に叫びが止まらないのであれば、わたしは与えるのです。死の静寂を」

ニコリネのUCによって防御力が削がれた屍の体へと、念動力による吹き飛ばしを加えて大幅に加速させた、鋭利な砂岩を撃ち込むのです。

砂岩は穿つのみならず、その体へと突き刺さり、重石となって動きを鈍らせるのです。

彼らの速度増加は、この枷によってによって相殺できる筈なのです。

「王は告げる、まだ足りぬと。ワイルドハントの行軍は終わらないのです。標的となったもの全てが、根絶やしにならない限り」



 ざぱん、ざぱんと水柱が上がる。
 生者の臭い、獲物の気配を嗅ぎ付け、死した軍勢が水底より浮上する。
 そんな魑魅魍魎がはびこる海域に、真っ直ぐに突入する船がまた一隻。
 船首楼、甲板上に立つ四人の猟兵が、その様をねめつける。
 この船、あくまでも借り物の筈なのだがそこは気にしてはいけない。
 凄く『自分らの船です』感をこれでもかと醸し出しているが気にしてはいけない。
「おたくらは波を読むのと操船とに集中してなさいや」
 ――化け物なんざ居ねえと思え。こっちゃの面子で全部まとめて狩り尽くしてやりまさァ。
 その先頭、物九郎が海賊に檄を飛ばす。
 心配すべきは、船が沈められることただ一点。
 それさえクリアできるのならば、あとはどうとでもなる。
 それは甲板の四人全員の共通認識であり、『嵐の猟団』を名乗る自負でもあろう。
「悪魔の海を從えてこその大海賊。ふふ、人選はバッチリね」
 船は揺れども、立てぬほどでも無し。
 己の仕事を十二分にこなし、危なげなく海域へと船を進める海賊たちに、ニコリネがクスリと笑い。
 あとはやるだけ。いつもの通りだ。
「意志なく漂う悲壮な骸。此処ではない、あるべき海へと還してあげるのです」
 ただ、死してなお残った執着だけを身に纏う嘗ての敗者たち。
 ウーナの言葉に乗っていたのは、憐憫であろうか。
 きっとそれも、当の彼らにとってはどうでも良いことなのだろう。彼らのがらんどうの目には、猟兵たちも海賊たちも、すべからく『獲物』としか映っていない。
「さてと、やりますか」
「それさっきも言ってなかったですか?」
「気にしないの」
 ならば、狩り返す。
 ウーナの苦笑を背に、深菜の足が甲板を蹴った。
「『空を駆けよ得物――」
 紡ぐは創造魔術。
 己の得物を、天駆ける槍へと変えて。
「――獲物は彼方にあり』」
 骨の猟団への、先陣を切る。
 無論、無策で突っ込んだところで多勢に無勢。深菜一人では当然狩り尽くせるわけもなし。
 あくまでも『今の』彼女の役割は、攪乱と牽制だ。
 漁であっても、猟であっても、物事には順序というものがある。
「えぇ、いい感じに釣れてくれたわね。猟団長?」
 その中でも、船、ひいては甲板に留まる者達を狙うものはゼロではない。
 だが、密度は比べるまでもないほどに薄まっている。対処は容易い。
 喰いついてくる骨魚をシャッター棒で打ち払い逸らしながら、ニコリネが背後に控える物九郎を見やる。
 そんな物九郎は、スマートフォンを頭に当てて、何やらどこかと通信を取りつけているようで。
「エル。ザミエルシステム、遠隔起動」
『了解。データリンク、バイパス開放。同期完了、周辺環境の解析を開始』
 スマホ越しに聞こえる機械的な声。
 電脳魔術、遠隔受領。今この瞬間より、物九郎は現実世界を電脳から支配する存在へと変わる。
『――解析完了。予測演算リアルタイム更新開始。情報精度推定97%』
「フィードバック!」
 『魔眼』越しに、演算情報を現実世界に重ね合わせる。
 波の高さや方向、そこから来る船体の揺れ。敵の数、出現予測位置、推定攻撃方法。
 ありとあらゆる未来予測が、手に取るようにわかる。
「場は作ってやった。テメェら、キリキリ働きなせぇよ」
「はいはい、仰せのままに!」
 攻撃の密度は深菜のおかげで薄い。
 船体へのダメージを避けながら、他の事に行動を割く余裕は十二分。
 そして狙うべき場所もまるわかり。
 であるならば。
 ニコリネがふわりと水面に投げかけるのは、燐光を放つ花輪の冠。
 飛び出してくる骨たちのまさに頭上に掲げられた冠は、死者を弔う葬送花にも似る。
 そしてそれは確かに、現世を未だ彷徨う彼らを、この世界から送り出すものという意味ではあながち間違いでもないと言えよう。
 冠は桎梏となり、そして環鎖として有り様を縛る。
 戴冠した骨の軍勢の動きが、目に見えて鈍る。
「さ、どうぞ」
「はいなのです」
 視線の先で舞うは砂嵐。
 海の上で有ろうともお構いなしに、それは渦を巻く。
「削がれる程に、奪われる程に叫びが止まらないのであれば、わたしは与えるのです。死の静寂を」
 ウーナが謳えば、砂は岩となり、そして槍となる。
 砂礫の妖精が告げる。『牙を剥け』と。
 突き穿つ。突き立てる。
 深々と粘る影に突き刺さった鋭利な砂岩は枷となり、骨の軍勢を縛り付けるのだ。
 勝ち筋は、此処に整った。
「殺れ」
「えぇ」
 度重なる枷、高精度の演算予測。それに加えて、強制的に相手へと叩き込む情報量飽和によるオーバーフロー。
 ここに残り必要なのはただ一つ。火力だ。
「行きなさい、『蒼空の槍の魔神(ヘルブラウ・ランツェ)』!」
 物九郎の号令のもと、深菜の剛槍が敵軍を薙ぎ払う。
 砂に塗れ、花を抱いた骸たちが還るのは、水底か、大地か、或いは。
 いずれにせよ。
「私達は暴海の捕食者。ワイルドハントが通った後には骨片ひとつ残らない」
「王は告げる、まだ足りぬと。ワイルドハントの行軍は終わらないのです」
 彼らの狩りは、まだ終わらない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アノルルイ・ブラエニオン
【ワイハンB】
了解だキャプテン・シノギ!
我らの力、協力者達に見せてやろう!

海の漢達よ、聞くがいい
我等は此れより更に強大なる敵に挑み、勝利してきた!

その一端を今、ここで語ろう……
『帝竜ヴァルギリオスの語り』

船に向かってくる敵への迎撃を優先
八属性のうち、毒は使用しない
雷光闇土は水中の敵に
炎氷は水上・空中に出た敵に
水は強烈な水圧で近くまで来た敵を押し退ける

水は防御に回っているが大味ゆえ本体が危険かもな!
仲間に頼りたい所だ(ダメージ描写許可)

範囲は広いが、巻き込まれるようなマヌケはワイルドハントにはいまい!
万一巻き込まれても自力で切り抜けるだろう(遠慮無し)

アドリブ・他キャラ絡み歓迎


野良・わんこ
【ワイハンB】
わんこはどのように扱ってもよい

「かーっ! 雑魚が何匹かかってこようと余裕ですとも!」
海月分身の術で無数のわんこの群体に変貌。
「「「群れには群れ!!」」」
しゃにむにの大砲で援護するもの、ビームガンで遠距離から攻撃するもの、念動力で相手の動きを阻害するもの、ごぼうで近接戦を挑むもの。
集団ごとに連携を取って数を減らしていく。群体なので意思統一はお手の物である。
「アバーッ!!1」
突然わんこの一人が倒れる!
「ぺろっ、これは毒霧! おのれメフィスちゃんわんこごと敵を始末するつもりアバーッ!」
敵の群体もろとも死んでいくわんこ達!
UCを解除して一人に戻ると群体分の毒がまとめてきて七孔噴血して死ぬ


メフィス・フェイスレス
【ワイハンB】
「なんか親近感を感じるわね」/コートを近くの船員に「皺付けたりしたら齧るから」と睨んで脅しつつ投げ渡して【醜翼】を発動。飛翔して向かってくる敵の迎撃に向かう/「群れてる奴は個々の生命力は弱いものよ、ならば散らせばいい話」血霧を味方を識別しつつ展開し目玉付きで追尾する【微塵】ミサイルをばらまきドッグファイト/「ん?まちがえたかしら……」吸収した生命力からわんこ味がしたのでピンポイント誤爆した事に気づいて首をかしげるも「まぁ死にはしないでしょ、わんこだし」でスルー/「志半ばで終われない未練。分かるわよ、痛いほど」「でもそれで今生きる者に牙をむくなら、私の敵」 /アドリブ・絡み歓迎


シノギ・リンダリンダリンダ
【ワイハンB】絡み、アドリブ歓迎
【越流せし滄溟の飛蝗】で召喚した海賊船に他の海賊たちを乗せておく
操縦は死霊海賊、その他の細事は海賊たちに任せます
私の死霊です。同じくらいの航海術を持っているので荒天くらい楽勝でしょう

「足りません…数多の死霊を従えようと、怨霊をぶつけてこようと!ワイルドハント【海賊担当】、“強欲”のシノギ!大海賊を前には、まだ足りませんよっ!」

大きな敵には船の砲撃。魔力をこめた属性攻撃の砲弾を叩き込む
小さな敵には死霊海賊たちによる船上戦。様々な武器で武装した彼らによる蹂躙の時間です
数多の死霊によれば集団戦闘、仲間への援護はお手の物

さぁ、蹂躙と略奪です!根こそぎやっちまいましょう!



 嵐を往く幾隻もの海賊船。
 その殆どは、ハニーヤード島を出立した現地の船であるが、その中に一隻、見慣れぬ船があった。
 船首には祈りを捧げる骸をあしらった像を配し、あちこちからボロ布を垂らして船体を隠し、張られた帆も盛大に破れたその姿は、見るからに異質な印象を傍目に与える。
 今にも沈みそうながらしかし、荒れ狂う嵐の海を物ともせずに突き進む様は、さながら幽霊船の如くであり……事実、それは『幽霊船』に相違なかった。
「操縦は私の死霊が、その他の細事は皆さんに任せます」
 名を『海賊幽霊船シャニムニー』。
 猟兵にして海賊である『“強欲”のシノギ』が擁する海賊船である。
 幽霊と言えど、海と共に在る海賊船に住まう者。その操船技術は今を生きる海賊に引けを取るものではない。
 足りないのは、現場に対する知識だけ。それも現地の海賊の協力を取りつけた今はクリアしたとなれば、最早ここも庭。自らの縄張りみたいなものである。
 それにしても、と。
 シノギは迫る骨の大群を見やる。
「足りません…数多の死霊を従えようと、怨霊をぶつけてこようと!ワイルドハント【海賊担当】、“強欲”のシノギ!大海賊を前には、まだ足りませんよっ!」
「「「まったくです!群れには群れ、雑魚が何匹かかってこようと余裕ですとも!」」」
「  」
 シノギがそっち見た。何なら二度見した。
 大量のわんこ(猟兵)がハモって啖呵を切っていた。
 ……まぁ、彼女はそう言うモンだという結論に達した。
「ま、いいです。……さぁ、蹂躙と略奪です!根こそぎやっちまいましょう!」
「了解だキャプテン・シノギ!我らの力、協力者達に見せてやろう!」
 長たるシノギの号令に、アノルルイの声が応じる。
 我ら猟兵、これまでに幾度となく視線を潜り、そしてそれを超えてきた者。
 この程度の障害がなんだというのだ。
「海の漢達よ、聞くがいい。その一端を今、ここで語ろう……!」
 再演というには、いささか相手は役者不足であろうが。
 なに、所詮は引き立て役。猟兵の力を示すのならばそれならそれで構わぬと言うもの。
 これより吟遊詩人が語るは、魔法と剣と竜の世界。
 かの帝竜ヴァルギリオスの戦いのキオク。
 八つ頭の竜の幻影が、言の葉を核として浮かび上がる。
 風が吹き、波がうねる。
 渦巻く水面に雷が降り注ぐ。
 総ての生命を拒絶するかのような圧倒的な暴力。その中でも、猟兵が歩みを止めることはない。
「九十度回頭!右舷全砲門、砲撃用意!」
「あいあいさー!」
 嵐の中でも、幽霊海賊船の動きは淀みなく。
 ヴァルギリオスの幻影の暴威の中をなおも突き進もうと足掻く骨の軍勢に、幽霊海賊船が砲門を向ける。
 て
「撃ーッ!!!」
 斉射。
 シノギの一声に合わせ、わんこ(複数)が一斉に砲弾を叩き込む。
 直撃弾の魔力光が爆ぜるたびに、粉々になった白骨が暴海の中へと飲み込まれていく。
「砲撃手以外の亡霊とわんこ様は白兵戦用意を。抜けてきますが、悉く返り討ちにしてやりましょう」
「まーったく往生際の悪い連中ですねぇ!」
 甲板が俄かに慌ただしさを増していくその中で。デッドマンが一人、空を見やる。
「(なんか親近感を感じるわね……)」
 死肉を繋ぎ合わせることで生まれた己と、死してなお骨となっても執念で動き続ける彼ら。
 死者が意思を持っている存在と思えば、確かにそう離れていないのかもしれない。
 しかし、道を阻むのならば。
「皺付けたりしたら齧るから」
 羽織っていたコートを、近くにいた海賊に放る。浅黒い継ぎ接ぎの肌が、嵐に晒される。
 その肩甲骨が、ミシリと音を立てた。
 突き破る、異形の骨。それは文字通り、彼女の翼へと変じて。
 甲板を蹴る。飛ぶ。嵐を切り裂いて、空より迫る骨の軍勢へと。
 海賊船の砲撃能力は十二分だ。それに戦場にも相応の戦力はある。海から迫る分は、そちらに任せておけば余程の事が無い限り問題はない。
 ならばメフィスが対応すべきは、空へと逃れた者達。
 複数と言えど、言ってしまえば仕留め損ね。対応できない数ではない。ドッグ・ファイトを挑む。
「全部まとめて、喰い尽くしてあげる」
 両手を振るい、放たれるのはタール状に黒く淀んだ弾丸。
 ともすれば、その骨の軍勢が纏う影と本質はほぼ同じなのかもしれぬソレを、誘導ミサイルの如くばら撒いていく。
 空にはメフィス、かと言って迂闊に逃げ降りようものなら、シャニムニーの砲火に晒される。
 もはや逃げ場はない。喰らわれ方を選ぶのみだ。
 黒弾が骨を穿ち、生命の残滓を吸い尽くし、そしてメフィスへと還りその力を吸い上げていく。
 まさに蹂躙と言ってよい様相だった。
「グワーッ!!」
「わんこEが死にました!!」
「このひとでなし!!!!」
「死んだやつは肉壁にでも使っといてください」
「ちょっとシノギちゃんこれ後でフィードバックくるんですけdグワー!!」
「いやはや、賑やかなことだね!!」
 なんか甲板でメフィスの攻撃の余波を喰らっているわんこ(一部)もいたけど。
 まぁ、少々敵味方の識別を間違えたかもしれないが、なんとかなるだろう。わんこだし。
 隠し味程度に思っておこう。
 甲板のわんこからの呪いの声はスルーしつつ、メフィスは骨の軍勢に向き直る。
「志半ばで終われない未練。分かるわよ、痛いほど」
 同族とは言わぬまでも、死してなお止まれぬ有り様は理解はできる。
 それでも。
「それで今生きる者に牙をむくなら、私の敵」
 また一つ。
 メフィスの黒弾に食らいつかれ墜ちていく骨が砲撃によって砕け、荒れ狂う海の中へと消えた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

サンディ・フィッシャー
引き続きマリューズ(f26351)と。アドリブ歓迎

やられた奴らの成れの果てってやつかね。こういうのの供養だとかはマリューの分野だし、アタシは優しくなんざできねーぜ。

荒れた海に飛び込んで気配を消し、マリューが作るチャンスを静かに待つ。マリューの攻撃で拘束されればそこに追撃を入れ、回避されたら安心したそこを叩く。アタシは漁師でもあるんだよ。モリの一撃を打ち込むチャンスはいくらだって待ってやるさね。

アタシはマリューと違って同情はしねーがよ、…まぁ、代わりに仇はとって、花くらいは供えてやるよ。だから安心して死にな。

おい、マリュー。何笑って見てんだよ。ツンデレ?ちげーよ!?


マリューズ・アビスマリア
引き続きサンディと。
アドリブ歓迎。

コンキスタドールの犠牲者が、死にきれず新たなコンキスタドールに…というわけね。
それなら、これも脅威という以上に。倒さなければいけないわね。

攻撃は基本的に母なる海の抱擁を使用。それに深淵鏡から放つ光弾(【誘導弾】)での牽制を絡めて回避行動の牽制とするわ。
これだけ荒れる海の中、自然の波と私が起こした波の区別は果たしてつくかしら?
命中したらそのまま波で締め上げて拘束、サンディが追撃しやすいようにしましょう。

その最期は無念だったことでしょう。でも、もう悲しむことはないわ。
貴方達に安らぎを。海の底でお眠りなさい、ね?

…ふふ、サンディも何だかんだ言って優しいのね?


織座・このみ
●心情
……ずいぶんな方が被害にあったとは聞きましたがぁ、怨霊となられてるんですねぇ……


●行動
ユーベルコード:神玉降臨
を使いますよぅ

揺れ動く海賊船の甲板であろうと、姉様と二人で鉾先鈴を手にそれを感じさせない、【祈り】を込めた神楽を舞いますねぇ
神玉の【降霊】への奉納でもありますがぁ、なにより彼らへの慰霊のためにもぉ
「ずいぶんと無念だったでしょうがぁ、今は静まり下さいませぇ」

そうして、怨みも動きも沈めましたらぁ、あとは、ほかの方々にお任せいたしますよぅ


※内心・思考の口調は、プレイング記述の話し言葉と違い、訛り気味
人前では狐面外さない
協力、アドリブ歓迎



 降雨の音、波の音。そして鳴りやまぬ雷鳴。
 様々な音が交錯するなかでも、その鉾鈴の音色はよく耳に通った。
 しゃらり。しゃらり。
 荒波に揺れる海賊船の甲板の上で、二人の狐面が舞を演じる。
 不安定な足場であろうと、それを感じさせぬ淀みない動き。
「(……ずいぶんな方が被害にあったとは聞きましたが)」
 とめどなく溢れてくる骨の軍勢。
 その中の何割がコンキスタドールの手にかかって沈んだ者達なのかはわからぬが。
 それでも、相当な数が海に呑まれていったのは想像に難くない。
 このみが舞うのは、確かに神霊へ捧ぐ神楽に相違ない。
 だが、今はそれ以上に、彼らの安らぎを祈って、捧ぐ。
 無念だったことだろう。悔しかったことだろう。
 だがその感情は、今となっては害悪にしかなり得ない。
 だから今は、どうか鎮まって、安らかに逝けるよう。
 このみが捧ぐ祈りは、鉾鈴の音色を通じて染み渡っていく。
 凝りに凝り固まった怨念は、それだけでは眠れぬほどに淀んでいれど、それでも、少なからず効力はあったのだろう。
 骨の軍勢の動きが少しずつ緩やかになっていく様を、このみも、そして彼女たちも目の当たりにしていた。
「もう悲しむことはないわ」
 船首に立つマリューズが、海を泳ぎ回る骨魚の群れを見やる。
 その中には、人らしき骨の姿も見える。
 鉾鈴の音色を背に、彼女もまた、己が一族の役目を果たさんがため、三叉槍を掲げた。
 海に死した生命たちに安らぎあれ。
 ただの脅威の排除という以上に、犠牲者が新たなコンキスタドールとなり、それが新たな犠牲者を生むと言う負の連鎖を断ち切らんがために。
 波がうねる。
 元々が荒れ狂うグリードオーシャンの海の中で、更に意思を以て、水が揺れる。
 母なる大海の流れが、水底より這い出ようとする死者たちを繋ぎ止めるのだ。
「(始めたな)」
 その海の中で、銛を手にしたサンディが動く。
 水中では、このみの鉾鈴もマリューズの祈りも耳にはあまり届かない。
 だがそれでも、身体では感じられる。
 潮の流れ、淵沫たちの動き、そして言葉に形容できない何かが、それを知らせてくれる。
 現にこの、海中であろうと複雑で荒れ狂う潮流の中、サンディが無事に身を潜めていられたのも、マリューズの海流を操る力に依るものは大きい。
 そして、その力がいよいよ目に見えた効果を及ぼし始め、明確に敵の動きが鈍った。
 暴海に呑まれた者達の成れの果て。
 供養だとか鎮魂だとかの作法は、サンディには解らない。こういうのは相棒の領分だ。
 だから、己は己のやれることを。
 鎮魂の祈りによって動きが鈍り、そこを海流に捕らえられた一際大柄な骨魚。
 その内に淀む粘性の影目掛けて、銛を突き入れる。
 ぶよぶよとした奇妙な手ごたえと共に、影が爆ぜた。
「(アタシはマリューと違って同情はしねーがよ)」
 影は骨同士をつなぎ止める役割も担っていたのだろう。
 バラバラと崩れ、海底へと堕ちていく骨を最後に一瞥し、サンディは息継ぎにと海面へと戻っていく。
「……まぁ、代わりに仇はとって、花くらいは供えてやるよ」
「ふふ、サンディも何だかんだ言って優しいのね?」
 水面から顔を出したサンディの独り言が、船上のマリューズに聞こえていたかは定かではないが。
 それでもそれっぽいことはお互いに感じ取ったのだろう。
「おい、マリュー!何笑って見てんだよ!」
 ツンデレとか、そんなんじゃねーからな!!
 そう言い残して再び海中へと戻っていくサンディを笑顔で見送るマリューズ。
 その様がほんのすこし可笑しくも楽しげで、後ろでこのみが小さく吹き出していたのは、ここだけの話。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『壊遊魚・魔旗魚』

POW   :    吶喊旗魚
全身を【蒼白いエネルギー】で覆い、自身の【戦意】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    狂乱旗魚
自身の【蒼輝鰭】が輝く間、【自身】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    飛翔旗魚
召喚したレベル×1体の【旗魚】に【魔剣】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は死之宮・謡です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●大海を喰らう者
 水底から這い出てきた怨霊たちは、かくして再び沈み、骸の海へと還った。
 ほんの一瞬の休息を経て、猟兵を乗せた海賊船は件の海域へと足を踏み入れる。
 殴りつけるような荒波が、船体を揺らす。
 降りやまぬ雨が、甲板を濡らす。
 ざぁざぁと、海面に打ち付ける雨の向こう。その奥に、黒く巨大な影を見た。
「おいでなすったぜ!」
 観測手の声が響き渡ったのと、その影が海面を飛び出し、その姿を露にするのはほぼ同時だった。

 カジキ、という魚をご存じだろうか。
 旗魚、嘴魚などとも呼ばれる、上顎が槍のように鋭く伸び吻を形成する大型の肉食回遊魚で、食用やスポーツフィッシングの対象として知られているものだ。
 『奴』の姿はそれに似ていた。
 しかしその体躯は、一般的なそれの全長が1mから3m程度であるのに対し、この巨大旗魚は『全高』でそれを超える。
 いったいどういう経緯でこれが生まれたのか。メガリスの影響を受けたが故か、あるいはこうであったからこそメガリスに選ばれたのか。
 いずれにせよ、この怪魚がこれまでに幾多の船と海に生きる者達を葬ってきた元凶に相違なかった。
 荒天の下、蒼雷の如きオーラを身に纏い、海中と変わらぬと言わんばかりに魔旗魚が飛翔する。
 勢いのままに船体に叩きつけられた吻が、甲板を砕き船を大きく揺らす。
 直後、激しく上がる水柱が、狩りの始まりを告げた。
織座・このみ
●心情
これが、元凶だったんですねぇ……


●行動
ユーベルコード:神風招来
を使いますよぅ

再び姉様と二人、常と変わらぬ神楽を舞いますよぅ

此度の舞は、風神様への請願の【祈り】の舞
怨念を鎮めた、荒波と暴風を越え続けた彼らの御霊を、今この時ばかり眷属として戴けるよう

そうして招くは、神風を船とし暴風を曲刀や銛とした、この海に散った者たち
「あたしにできるのはここまでですねぇ。あとは、あなた方次第ですよぉ」
『あたしとしてはぁ、仇討成し遂げるくらいの勇猛さを期待しますねぇ』

※内心・思考の口調は、プレイング記述の話し言葉と違い、訛り気味
人前では狐面外さない
協力、アドリブ歓迎


ナミル・タグイール
にゃー。どでか魚にゃ。
これだけでかいなら中に入ってるお宝も期待出来そうにゃ!
解体デスにゃー!

海入りたくないけど誰かに取られるのも嫌だからにゃ!
追いつけないし、突進わざと食らって【捨て身】で敵にしがみつくにゃ!金ぴかお宝はナミルのにゃー!(勝手にメガリスを金ぴかと決めつける猫)
仲間の攻撃巻き込まれても我慢にゃー!こいつはナミルのデスにゃ!
【呪詛】【怪力】で欲望と体強化、斧と爪でざっくりしがみついて切り裂くにゃ噛み付くにゃ!
いっぱいチクチクガブガブしながら呪詛で戦意そいでやるデスにゃ。
お宝寄越せにゃ!!



「(これが、元凶……)」
 まるで海を割るかのような勢いで泳ぎ回る、巨大な旗魚。
 そのサイズ以上に、それが纏った『覇気』とも呼べるものを、このみは感じ取っていた。
 あれほどの存在であれば、確かにと思える説得力を感じさせる。
 今までどれほどの無謀な挑戦者を……あるいは巻き込まれただけの無辜の存在を食い散らかしてきたかは、先の戦いで嫌というほど知れた。
 故にこそ、彼女たちは祈りを捧ぐ。
 幾度となく荒波と暴風を越え続けた彼らと、それを見守り続けた海風の神へと。
 今この時だけは、怨念ではなく『英霊』として、今一度。
「あたしにできるのはここまでですねぇ。あとは、あなた方次第ですよぉ」
『あたしとしてはぁ、仇討成し遂げるくらいの勇猛さを期待しますねぇ』
 槍を、劍を、銛を。
 各々の得物を手に、風を纏う霊たちが、水柱とともに姿を見せた魔旗魚へと殺到する。
 突き穿つ。刺し貫く。まるで鎌鼬のように駆け抜け、その鱗に傷をつけていく。
 だが、それは彼の者の命を刈るには遠い。
 そのような刃を、幾度となく、容赦なく退けてきたからこそこの魔魚はこの海の王者として君臨しているのだから。
 文字通り、風を裂いて飛翔する魔旗魚。
 纏わりつく風霊たちを振り払うように身を捩り、海賊船のマストを圧し折らんばかりに尾が強かに叩く。
「にゃー、パワフルなどでか魚にゃ!」
 激しく揺れる船上で転がりながら、ナミルがその様を視線で追う。
 強靭で巨大な、常識離れした魔魚の巨体。
 まさに威容。そこからナミルが導き出す結論はというと……。
「これだけでかいなら中に入ってるお宝も期待出来そうにゃ!解体デスにゃー!」
 まぁ、最初から目当てはそれでしたからね。
 ともあれ。
 その為にはどうすべきか。巨体であれど動きは俊敏、方やこちらは空も飛べぬ身で大斧をぶち当てる必要がある。
 誰かに倒してもらうなんて選択肢は、最初からない。取り分がなくなる。
 であるならば。
「金ぴかお宝はナミルのにゃー!」
 まだメガリスが金ぴかと決まったわけではない……というこのみのツッコミは当然間に合うはずもなく。
 ナミルの身体は海中へと飛び出していた。
 泳ぐのは嫌だが、取り分無しはもっと嫌だ。横取りなどされてたまるか。
 その純粋なまでの欲望がナミルを動かす。
 そうして自ら飛び込んできた相手をかの魔魚が見逃すはずもなく。
 身動きが不自由なナミル目掛けて、豪速での突進が迫る。
 躱せるはずがない。どうにか身を捩らせ、腹に風穴が空くのだけは避けたが、それでも脇腹を抉られ、傷口に海水がとても滲みる。
 だが……そのリスクを考えても尚、捕まえた。……いや、捕まったのか?まぁいい。密着したことには違いない。
「お宝……」
 振りほどかれぬよう、鱗と鱗の隙間に猫爪を突き立てて、残った片手で黄金斧を握り込み、そして……。
「寄越せにゃー!!」
 執念の結実とも呼べる一撃を。
 黄金斧の刃を、その分厚い皮膚に、叩きつけた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

野良・わんこ
【ワイハンB】
カジキ漁といえば銛ですよ!
銛はないですが銛の代わりになるものならあります!

むにー号の船首に立ってカジキを探す。
見つけ次第覚醒心基を使用。
銛代わりにするのはレーザーブレード! 日本刀! ごぼう! イムラブレード!
まずは相手を弱らせねばなりません。
船に結びつけたバベルの鎖を結んだごぼう類を命中させ、船を曳かせて体力を削りましょう!
わんこ自身も鎖を引っ張ったり緩めたりしましょう。
竿はなくとも漁ですよこれは! 手釣りじゃああああ!!
いけそうなら鎖を引いて甲板上にカジキを引き上げてしまいましょう。
海から上げてしまえばこちらのもの。三枚おろしにしてやりますよ!


シノギ・リンダリンダリンダ
【ワイハンB】
ついに現れましたね海の主! なるほど立派な姿です

船内、全ての船員。猟兵や自分の死霊海賊、そして乗り込ませた海賊全員に向けて大声を上げる
さぁ、略奪の時間です!!蹂躙の時間です!!
この海を、我が物顔の魚から取り戻しましょう!
この程度のオブリビオン、敵ではないと屠りましょう!
皆さまは今、まさに!大海賊の船員です!大海賊の船員ならば、この程度の魚!!
さぁ!!海賊の時間です!死猟の蹂躙(ワイルドハント)を始めましょう!

【大海賊の呪い】を全員にかけつつ、鼓舞し、全ての人員を以て戦う
海賊たちはあくまでも援護に徹させ、死霊海賊は得意の船上戦
砲撃に銃撃の雨あられ
私も一発くらい殴りにいきますか


アノルルイ・ブラエニオン
【ワイハンB】
角笛を高らかに吹き鳴らす
これはワイルドハントの到来を告げ知らせる先触れの音色
それだけには留まらず、それ自体が周囲をワイルドハントの狩場に変化させるユーベルコードでもある!

我ら来たれり!
狩猟の時ぞ!

UCの効果が発動したのを確認後、自らも弓を取る
船上を【ダッシュ】で駆け巡り攻撃を避けつつ攻撃の機会を【見切り】有利な場所から矢を射て【貫通攻撃】する!
「矢よ! 汝が真に暴虐の嵐をも乗り越えるワイルドハントの矢であるならば、今ぞ行け! 風を切って、貫けよ!」

あとUCの効果はA班にも及ぶ描写があると嬉しい!



 波の音。雨の音。雷の音。
 戦場と化した暴海には、多くの音が響き渡る。
 その中で、ひときわ高らかに響き渡る音色があった。
 角笛だ。
 勇壮な角笛の音色が、戦場に響き渡っていた。
 それは先触れの音色。
 ワイルド・ハントの到来。
 狩りの始まりを知らせる音色だ。
「我ら来たれり!狩猟の時ぞ!」
 アノルルイが高らかに歌い上げる。
 これより語られるは、嵐の猟団の狩り。それと……。
「猟というより漁気分の奴もいますがね」
「おやおや」
 隣にいたシノギがくいと船首を顎で指し示し、アノルルイがそちらをつられて見やれば。
「カジキ漁といえば銛ですよ!」
 銛はないですが銛の代わりになるものならあります!ほらほら!!
 そんな事を言いながら、レーザーブレードやら刀やらゴボウやら、様々な刀剣類(ごぼうは刀剣類か?)に何やらごつい鎖を括り付けたわんこが、気合十分な雄たけびを上げていた。
 まぁ、銛に比べると些か抜けやすいような気がするが……ああまで盛り上がっているところに水を差すのは少々野暮な気もする。
 いったん海中に姿を消した件の魔旗魚であるが、いかんせんあの巨体だ。見つけることはそう難しいことではない。
 わんこが渾身の力で刃を投げ放つ。
 一つ、
 二つ。
 次々と背中に突き刺さる刃。繋がれた鎖がピンと張り詰める。
「うぉっしゃぁぁぁかかりましたよォー!!」
「いやぁ楽しそうだねぇ」
「ちょうどいいんで、演説の間じゃれててもらいますか」
 強烈な引きに船ごと引っ張られるが、まぁそれは良い。
 流石にこの大質量ごと暴れ回るのはいくらあの怪魚でも体力を消耗するだろうし、このシャニムニーはその程度で壊れるほど柔ではない。……ハズだ。
「ま、流石に海の主。 なるほど立派な姿ですが……」
 大きく揺れる船上ですっくとシノギが立つ。
 そして、アノルルイの角笛にも劣らぬ声を張り上げる。
「さぁ、略奪の時間です!!蹂躙の時間です!!」
 その声の向く先は、この船のすべて。
 猟兵も、死霊たちも、今回限りに同乗している海賊たちも。そのすべてに向けて。
「この海を、我が物顔の魚から取り戻しましょう!この程度のオブリビオン、敵ではないと屠りましょう!」
 たとえ今この瞬間だけでも、彼らはすべてこの船の乗組員。
 であるならば、それは間違いなく大海賊『“強欲”のシノギ』の配下であり、我等が海賊船シャニムニーの一員なのだから。
 その大海賊の一味であるならば、この程度の魚が何だと言えよう。
 あの角笛の音を聞くがよい。
 あれこそが、我らの到来の証である。
 ここは我らの狩場であり、であるならば奴はただの獲物以外の何物でもないのだから。
「さぁ!!海賊の時間です!死猟の蹂躙(ワイルドハント)を始めましょう!」
 シノギの声に追従する雄たけびが、大きく空気を震わせる。
 嵐と怪魚による船の揺れが、その雄たけびによるものだと錯覚しそうになるほどに。
 だが、それでいいのだ。我等の力が、この海を震わせるのだ。
「で、いつまで遊んでんですが」
「一人で今まで手釣りで格闘してんのにその言い草はないんじゃないですかねぇ!?」
 一分間で60秒の寿命を縮めているくらいに本気のわんこを以てしても、一人で相手するには荷が重いほどに魔旗魚の体力が底なしなのは見るまでもないところであるが。
 であるならば話は簡単だ。全員でかかればいい。
「海賊諸君は砲座を。亡霊達とアノルルイさんは白兵戦の用意」
「心得た!」
「砲座、奴が身体を見せた瞬間に遠慮なく浴びせてやってください」
 元より、海賊というのは目敏いものだ。
 浮いた魔魚の身体、その瞬間を逃すことはない。
 雨あられと降り注ぐ銃撃、砲撃。流石の怪魚もこれにはたまらず身を捩り、遂にその身を船上へと躍らせる。
「っしゃぁフィーーッシュ!!」
 それは単に、力尽きたのではなく鎖を千切るよりもこちらを仕留める方が早いと踏んだだけなのだろうが。
 それでも、その様はまさにわんこの一本釣りのよう。
「汝が真に暴虐の嵐をも乗り越えるワイルドハントの矢であるならば……!」
 そこへ、容赦なくシノギと彼女率いる白兵部隊がその刃の雨を降らし、アノルルイの矢がそれを後押しする。
 荒れ狂う刃の嵐。だがその中で、魔旗魚はなおも斃れてはいなかった。
「あーーーダメです!バレました!!」
 暴れているうちに、銛代わりにしていたわんこの刃が引き抜けた。
 これ幸いと、魔旗魚は大暴れに暴れ周囲の亡霊を蹴散らし、海の中へと飛び込んでいく。
「っち、逃がしましたか」
「いいや、そうではないだろう?」
 こつんと己の角笛を指でつついてニヤリと笑うアノルルイに、視線を向けたシノギも思わず口角を上げる。
 それはそうだ。考えるまでもないことだった。
 猟団を構成するのは、なにもこのシャニムニーだけではない。
 ワイルド・ハントは、未だに奴を逃がしてなどいないのだから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ウーナ・グノーメ
【ワイハンA】

「確かに大物なのです、一本釣りには相応しい獲物なのです」

フェアリーと比較すれば体格差は更に激しく、まるで鯨が相手かのよう。

「しかしながら、わたしは見ての通り非力なのです。今回はサポートに徹することにするのです」

魔旗魚は魔剣を持つ旗魚を大量に召喚してくるようなのです、わたしもとっておきの精霊を召喚して応戦させるのです。

「目覚めて、砂の精霊達よ」

彼らは一撃で倒されるのですが、数はざっくり計算しても5倍はいるのです。
そして倒されると爆発するので、周囲の旗魚を蹴散らすには丁度良いのです。
更に結界術とオーラ防御によって、旗魚の攻撃と爆発から船を守るのです。

「ワイルドハントの時間なのです」


白斑・物九郎
【ワイハンA】
●POW


“天国では狩りが出来ない”
あの世行きを拒絶しろ
集え、者共
俺めのコトはキャプテンと呼べ
――ワイルドハント号、出航ォ!


・【砂嵐の王・死霊大隊Ⅱ】発動
・第2章で「海を読んだ」経験を踏まえ、此度はユーベルコードの船を繰り出し自ら操船

・魔旗魚を船首前方に捉えるように船体を回頭、騎馬決闘ばりにこちらからも突っ込む
・接敵迄の牽制には臼砲群を山なりに放ち、いざ交錯する瞬間には【野生の勘】で数瞬先を予見し操舵
・狙いは「直前ですれ違いざま、魔旗魚の横腹目掛け船体側面の側砲群を全砲門発射」!

・魔旗魚が飛んだらこっちも船を飛空艇化させ追撃、同じく騎馬決闘を誘う
・陸海空対応汎用狩猟船の本気見せたる


ニコリネ・ユーリカ
【ワイハンA】
ターバンを巻き、下っ端の海賊ルックに早着替え
キャプテンが舵を握るワイハン号に乗船
狩猟好きの幽霊を兄貴分と仰いで挨拶した後、砲撃手に加わる
持ち前のコミュ力とゴマすりで連携を強化し、船長の手足の如く働く
返事は元気にアイアイサー!

海賊なら歌わなきゃ
砲音に負けず大声で歌唱
砲弾にUCで四属性を付与し、被弾時のダメージを増大させよっと


ヨーホーヨーホー
たのしい略奪(弾運び)
げんきに蹂躙(弾詰め)
せっせっせ

ヨーホーヨーホー
狩猟だいすき(砲撃)
釣漁さいこう(斉射)
せっせっせ

ヨーホーヨーホー
今日の晩ご飯は大きなカジキ
焼炒煮揚なんでもイケる
照り焼きなんてどうかしら
照り焼きなんてどうかしら(二回言う)


メフィス・フェイスレス
【ワイハンA】
「でっかいわねぇ、食い出がありそうだこと」
戦域の上空を旋回しながら舌なめずり、しかけてやめて
「皮算用なんて三流よね。狩人を名乗るなら理性は氷の如く。狩る前から牙を剥けばその隙に獲物を取り逃がすもの」
旗魚が決定的な隙を晒すまで上空で待機するわ
旗魚が船の上空に飛翔して船員を攻撃しようとしたら
「身の付イた魚ァアアあ!!」
と咆吼しながら旗魚の真上から垂直に降下して、
腕の骨を集結させて獣の顎門を形成した捕食態を旗魚の頭部~角あたりを目がけ振り下ろし、
勢いのままワイハン号の甲板に着地する
戦い終わりにわんこにフレンドリーファイアの詫びに飢渇饅頭を差し出すわ
「ごめんね、はいこれ食べて(※善意)」


白鳥・深菜
【ワイハンA】

「さて――」

狙うは相手の「隙」への、致命的な一撃。

自身は海賊船のマストの上を陣地とし、狙撃手として蒼銃を構える。
銃口に魔力をチャージし、相手の隙を穿つ瞬間を待つ――

動き方としては
「味方の攻撃を初撃として、自身が蒼銃で次撃を放つ」
但し、次撃を放つのは攻撃が当たって怯んだ直後――ではなく。

「……」

その初撃を受けた後に、
敵の『旗』が真正面からこちらに飛んでくる時。

「――狩るべき時は、ここよ」

その時こそ狩猟者の魔弾は放たれる。
その頭から尾までを真っすぐに、最短距離で穿つ「貫通攻撃」として。

「―― 【狩猟せし命に終焉を】」



 角笛の音色が聞こえた。
 戦場に響き渡るその音色は、狩りが未だ終焉を迎えていないことを意味する。
 それは獲物の生存を意味してはいるが、それと狩りの失敗は同義ではない。
 単純な話だ。
 『追い立てる者はまだまだいるぞ』という、ただそれだけの。
「確かに大物なのです」
 あぁ、間違いはない。ウーナの言は的を射ている。
 だがそれは、狩れぬ相手という事ではなく。
「一本釣りには相応しい獲物なのです」
 小物相手はつまらぬと言う話。
 狩場は覚えた。
 波も、風も、掌握した。
 ここは既に、ワイルドハントの角笛が響き渡る、己の狩場だ。
「俺めの事はキャプテンと呼べ」
 ならば猟具を借りることも無し。己の得物で狩ればいい。
 『砂嵐の王・死霊大隊Ⅱ(ワイルドハント・ネクロトライブ)』。
 天国では狩りが出来ぬ。故に現世に蘇る。
 それは狩り狂いが乗組む狩猟船。
「――ワイルドハント号、出航ォ!」
 物九郎の操船の下、嵐の猟団が魔旗魚へと挑む。
 船首は真っ直ぐ。魔旗魚の巨体へと照準を向けて。
 回り込むような面倒な真似は不要。
 真正面。それはさながら騎兵の馬上槍の如く。
 ぞわりと、波が湧きたつ。
 ミサイルの如く空に打ち放たれるのは、無数の旗魚。
 無論、ただの魚ではない。コンキスタドールたる魔旗魚の力を分け与えられた、親玉よりは幾分小さくとも、立派な眷属、手下たち。
 それらは尋常の旗魚同等のサイズと言えど、それでも1メートルは優に超える。
 飛翔する質量弾としては何ら不足するものではない。
「ウーナ!」
「了解なのです」
 狙うは大物。小物、雑兵などを相手にしている暇はない。
 露払いは、ウーナが受け持つ。
 ただでさえ小さく非力なフェアリー、巨大な魚と戦うのは生半可なことでやれるものではない。
 だからこそ、ウーナは己の役割をサポートに絞る。
「目覚めて、砂の精霊達よ」
 ふわりと無数に浮かぶ、羽が生えた砂色の球体。
 ウーナの使役する砂の精霊たちが、飛来する無数の旗魚を迎え撃つ。
 ぶつかる。爆ぜる。
 その爆ぜる一撃は魔旗魚には届かぬものの、代わりに取り巻きの邪魔立ても許さない。
 ワイルドハントの狩猟船と魔旗魚、その一対一の状況を作り出す。
「右舷砲撃手、格闘戦用意」
「アイアイサー!」
 ニコリネの上機嫌な返事が返る。
 いつの間に着替えたのやら、頭にターバンも巻いて雰囲気はバッチリ。
 形というものは重要だ。一体感は気分的にも連携をスムーズにさせる。
 他についた亡霊の乗組員たちとにっこりとアイコンタクト。準備は完璧。あとは撃つだけ。
「♪ヨーホーヨーホー たのしい略奪
 げんきに蹂躙 せっせっせ」
 先頭の最中でありながら、砲座には陽気な歌声が響く。
 戦場であれど死地には非ず。勝てる戦の何を恐れよう。
「♪ヨーホーヨーホー 狩猟だいすき
 釣漁さいこう せっせっせ」
 魔旗魚の巨影が近づく。
 まだだ。まだ引きつける。
 最大戦速。それは向こうも同様に。
 正面衝突まで、あと3……2……1……。
「右舷斉射ァ!!」
 物九郎の手が、舵を左へ切る。
 魔旗魚の鰭が、側舷装甲をガリガリと音を立てて削る。
 だが直撃ではない。この程度でワイルドハントは沈まない。
 ヨー ホー ヨー ホー。
 揺れの中でも海賊たちの歌は止まず。
 ぶつかり合い、擦れ合う中の横っ腹に、魔力のこもった砲弾がひとつ残らず叩き込まれていく。
 爆音の中で、歌声は未だ響く。

「さて……!」
 同じころ、メインマスト。
 船体が大きく揺れ動く中、蒼銃を片手に柱にしがみつく深菜は、魔旗魚が横腹に至近距離砲撃を余さず叩き込まれる様を確かに見ていた。
 直撃、しかも至近距離。
 これでダメージが通らない筈がない。だが、砲撃を受けながらも後方へと抜けていくかの怪魚は、まだ闘志を滾らせ反転にかかるところだった。
 ずいぶんとまぁ、タフなことだ。
「食い出がありそうだこと」
 深菜の真横で、そんな呟きが聞こえた。
 上空を飛翔しているメフィスが、同じように魔旗魚の隙を伺っているのだ。
 さぞ身の締った肉をしていることだろう。
 脂の方はどうだろうか……と、思わず思考が逸れかける。
 だが、それにはまだ早い。獲物を前に舌なめずりなどと。
 やっていいのは、狩ってから。今はまだ、仕留めることに全力を注がねば。
 狙うべきは、決定的な隙。
 その一瞬を嗅ぎ逃してはならない。
 確かにワイルドハントの砲撃は、奴を怯ませるに足るダメージを与えただろう。だが、まだ足りぬ。
 船も既に回頭は始めている。それでも、小回りは(あの巨体にも拘らず)魔旗魚の方が圧倒的に効く。
 船体を傾け舵を切っている時には、魔魚は既にその照準を甲板の船員たちに定めていた。
 反転攻勢。
 切り返しは、比べようもなく相手に分がある。反撃など叶うはずがない。
 ……だからこそ。
 攻撃に集中するこの瞬間だからこそ、隙が生まれるのだ。
 我慢の時は、ここまでだ。
「身の付イた魚ァアアあ!!」
 食欲を、狩猟本能を、解放する。
 喰いたい。喰いたい喰いたい喰いたい喰いたい。
 メフィスの右腕がミシミシと音を立てる。
 重力に任せ……否、骨翼の加速も上乗せして、墜ちる。
 飛翔した魔旗魚がその身を甲板に躍らせようとしたその瞬間。丁度形成を終えた骨の咢が、魔旗魚の脳天に叩きつけられる!
 不意の方向からの衝撃に、確かに魔魚の身体がバランスを崩すのを、間違いなく
深菜は見た。
「――狩るべき時は、ここよ」
 距離は近く、隙は十分。
 十全にエネルギーを溜め込んだ蒼銃に不備はない。
 ―― 【狩猟せし命に終焉を】。
 海を割く一撃が、魔旗魚の身を抉る。

 鮮血を散らし、甲板に叩きつけられても尚、そのコンキスタドールは終わらない。
 ただの生命であればとうに散ってもおかしくはないであろうに、なおも荒れ狂うのはそれこそが海の支配者たらんとするものの意地か。
「終わったら、わんこに飢渇饅頭でも詫びに持って行こうかしらね」
「あれの料理はどうしましょう、照り焼きなんかどうかしら?」
「呑気なもんですわな……」
 とは言え。終焉の時は近い。
 そう確信に足る手ごたえは、間違いなくあった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

ティエル・ティエリエル
WIZで判定

わわっ、なんだあれ!すっごく尖がってるよ!あんなので刺されたら大変だ!
船に突撃されたら大変だと海賊船の上から飛び出して攻撃するよ!

魔旗魚に襲い掛かろうとしたら旗魚がいっぱい出てきた邪魔されるよ!
「空中戦」と「見切り」で避けながら近づこうとするけど嵐の中だとちょっと大変だ!

これは……ちょこまかせずに一気に突撃した方がよさそうだ☆
嵐が追い風になるタイミングを掴んで【お姫様ペネトレイト】で一気に突撃しちゃうぞ☆
邪魔する旗魚はお姫様オーラで全部吹っ飛ばして行っちゃうよ♪

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


雷田・龍子
POW
人派ドラゴニアンの龍子は上空で様子を窺う。
「随分大きなカジキですね。捕らえてカジキ料理として頂くとしましょう」

相棒のドラゴネットに【援護射撃】を任せて、魔旗魚の攻撃は【残像】や【見切り】で回避を試みる。
そしてすれ違いざまにユーベルコード「剣刃一閃」での切断を試みる。
魔旗魚がどんなに速く飛翔してもその巨大さであれば回避できる筈。仮に攻撃を受けてしまった場合はアイテム「ドラゴンコイル」でダメージを自分の攻撃力として変換する。

「とりあえず三枚おろしです」



「うわー……あんなので刺されたら大変だ……!」
 傷を負いながらも、なお暴れ荒れ狂う巨大な魔旗魚。
 鰭は最早巨大な刀。吻に至っては、そこらの騎兵槍にも劣らぬ鋭さと強靭さだ。
 これまでに幾隻もの船、ありとあらゆる敵対者を海の藻屑へと変えてきたと言う話は、決して誇張表現などではない。
 フェアリーであるティエルが直撃を万が一でも喰らってしまったらと思うと……想像もしたくない。
「いやしかし、随分大きなカジキですね。捕らえてカジキ料理として頂くとしましょう」
「何人分あるだろうねぇ」
 とは言え、近くを飛んでいた雷田・龍子(人派ドラゴニアンの全力お姉さん・f14251)の言葉に思わずそんな事を考えたりもするけど。
 それにしても、だ。
 嵐の中を飛翔すると言うのは、存外に難しい。
 複雑な気流、降り注ぐ雨。そして敵は巨大と言えど高速で飛翔する。
 ドラゴニアンとフェアリー。有翼種である二人は船を離れての空中戦を演じる。
 悪天候を差し引いても、戦場に留まるよりもリターンが取れると踏んだのだろう。事実、それは間違いではない。
 だが、間違いではないとは言っても簡単かと言うとそう言うわけでもないのだ。
「うわっ、とと!」
 飛翔する無数の旗魚。
 コンキスタドールの取り巻きが、さながら巨大な誘導ミサイルの如く殺到する。
 あれを潜り抜けて接近するのは、簡単なことではない。
「仕方ありませんね……ドラゴネット、援護を!」
 龍子の銃槍が小竜へと転じる。
 こちらには剣もある。純粋に手数が増え、牽制をしてもらえれば少なからず密度は減らせるだろう。
 だが、それでも全部とは言わない。この状況で下手な追いかけっこは無駄に体力を消耗するだけだ。
 となれば。
「ちょこまかせずに一気に突撃した方がよさそうだ!」
 ティエルが出した結論は、少々のリスクを承知の上での強襲。
 どうせ隙を伺うにしてもじり貧であれば、強気で一撃を入れに行く方が賢明であろう。
 取り巻きからの横槍も、すべてを受け持ってしまえば撃墜も免れないだろうが、単純に猟兵二人にターゲットが分散され、その上で小竜からの牽制があれば。
 行けると踏む。ふわりと羽根から燐光が舞った。
 風上を取る。追い風を受け、その身をさらに加速させる。
「このまま一気に体当たりだー!!」
 お姫様の煌びやかなオーラを全身から発し、長い長い尾を嵐の中に残しながら、ティエルが飛ぶ。
 どういう理屈かはともあれ。一匹に引き程度の横槍はそのまま弾き飛ばし、更に飛ぶ。
 ぎゃりぎゃりと、レイピアが魔旗魚の鱗を削り、肉を抉り取っていく。
 無論、大質量の魔旗魚がこの程度の事で止まる筈がない。
 突き抜けて行ったティエルを後ろに残して、なおも空を進む。
 そしてその先にいたのは……。
「……来ましたか」
 龍子が大剣を構える。
 あの巨体の体当たり。見えてはいても躱しきるのは難しい。
 だが、直撃を貰わないようにするのは簡単だ。射程外に逃れるのは難しくとも、中心点を避けるだけでいいのだから。
「とりあえず三枚おろし……とは簡単にはいかないでしょうが」
 すれ違いざまに刃を立てる。
 威力は他ならぬ魔旗魚の速度が上乗せしてくれる。斬れぬことはない。
 引き裂かれた腹から血を尾のように残して、水柱と共に魔旗魚の巨体が海中へと消えていく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

マリューズ・アビスマリア
引き続きサンディと。

あら、これはなんとも見事な旗魚。
サンディ、これは貴女の領分っぽいわよ。
勿論、私もきっちりお手伝いはするけれどもね。

深淵よりの誘いで長魚の群れと巨大蛸を召喚。
長魚に光を放たせて敵が召喚する旗魚と戦わせつつ、本体には蛸の触手での拘束を試みるわ。
寧ろ締め上げるつもりで。
私自身も【空中浮遊】しつつ、セレニアに冷気の【ブレス攻撃】をさせたり、変身させた三叉槍から電撃を放ったり(【属性攻撃】)して召喚される旗魚の掃討に当たろうかと。
生き残った長魚達はボスに当たらせて生命力を更に削り、サンディのトドメに繋いでいこうかと。

「貴方に罪は無いのだけれど。せめて、海の底で安らいで」


サンディ・フィッシャー
マリューズと参加 アドリブ歓迎

旗魚とはまたおもしれぇ得物が来たもんだ!漁師舐めんなよ?仕留めてやるぜ!!

マリューが取り巻きを相手するならアタシは獲物に集中するぜ。海中で息を潜めてチャンスを待つよ。マリューが牽制で足を止めたら背後から銛(海神殺し)をぶっ刺してやるさ。

そこからは根比べさね。アタシの銛でアイツが死ぬのが先か、アイツがアタシを振り落とすか、根比べといこうじゃないか!


仕留めたらマリューを美味い飯作る店にでも連れてってやるかね。魚がうまいとこにな。…なんだよ、アタシの店で良いのか?変なやつだな。しゃーねぇ、もう1匹旗魚を仕留めにいこうかね!



「これはこれは……」
 ふわりと船から身を躍らせ、海面すれすれを浮遊しながら、マリューズは嘆息する。
 水中に潜った巨大な魔旗魚。
 幾度となく猟兵の攻撃を受け、傷つきながらもまだ斃れず。
 いったん海の中に潜って行ったその様も、あれは逃げではなく、ただ『慎重になっただけ』と言った様相だ。
 コンキスタドールへと変じた影響も少なくはないのだろうが、それを考えても凄まじい闘争心である。
 だが、その闘魚ですら慎重にならざるを得ないほどに追いつめたのもまた事実。
「貴方に罪は無いのだけれど」
 だが、海を荒らし、死を振りまくのであれば……ここで終わらせる。
 せめて、海の底での安らぎが齎されんことを。
 水底で、影が蠢く。
 魔旗魚より幾分小さく、それでもなお巨大な影が、ゆらりと這い出てくる。
 それは、巨大な蛸だった。
 深海より、朧げに揺らめく長魚の群れを引き連れ、かの巨大魚を引きずり込まんと、その身を伸ばす。
 させるものかと、傷ついた主を守らんと、旗魚の群れが迎え撃つ。
 魚群がぶつかり合う中、傷ついた魔旗魚と巨大蛸もまた。
 いくらダメージが重なっているとはいえ、敵は強大なオブリビオン。
 強靭な蛸の八つ脚ですら、振りほどくことは決して不可能ではない。
 だが、それもマリューズは承知している。
 あくまでも自身はお膳立て。
 海の主たる魚に引導を渡すのは、猟師と相場が決まっているのだから。

「(面白れぇ)」
 海面ほどには無いにせよ、激しい潮流で荒れる海の中、サンディは純粋にそう思った。
 今までにない大物。相手にとって不足は無し。猟師の血が騒ぐと言うものだ。
 相棒も、汲んでくれている。
 だからこそ、取り巻きは長魚の群れと、そして上から降り注ぐ雷撃が相手をし続け、魔旗魚に巨大蛸が挑む様を、その目でしっかりと見ていた。
 恐らく、しばらくもしないうちに蛸は引き剥がされるだろう。
 それほどの相手だ。いくら傷ついていようと、そのくらいの力はある。
 ……だからこそ、自身が決める。
 その為に、今の今まで息を潜め、機を待ったのだ。
 注意が蛸に逸れ、確実に死角から狙える、この瞬間を。
 剥がされる蛸の脚の間を潜り抜け、水を蹴る。後方下、鰭も無く、鱗も薄い下腹に、狙いを定める。
 身を捩るそこへ……サンディは、手にした銛を、深々と突き入れた。
 魚は鳴かない。ただ苦痛に身を捩り、暴れ回る。
 波打つ。強烈な水圧がサンディを襲う。
 だが、その手は離さない。しっかと足裏で魔旗魚の腹を踏みしめ、突き刺した銛を握り込む。
 ここまで来たら、あとは根比べだ。こいつが死ぬか、自身が振り払われるか、どちらが先か。
 身を捩り、鰭を振り回し、暴れ狂う旗魚。
 そのあまりの暴れように近づくこともできない取り巻きが、また一匹、マリューズの雷撃に沈む。
 ……そして。
「(……っは)」
 その力が少しずつ……本当に少しずつ抜けていき、遂に魔旗魚はその動きを、止める。
 ……獲った。
 到底一人では引き上げられぬ主の巨体を、蛸や長魚の力も借りてどうにかこうにか引っ張り上げて、サンディはようやく水上に顔を出して、大きく息を吸い込んだ。
「お疲れ様、サンディ」
「まったくだ。帰ったら美味い飯屋でも連れてってやるよ」
「私はサンディのお店でもいいけど」
「……変な奴」
 これはもう少し食材を狩っていくべきか。
 そんな事を考えながら、サンディは苦笑するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月09日


挿絵イラスト