疫病パレードへようこそ
楽しげな曲に合わせて、人々は踊り歌う。
――さあ、パレードのはじまりだ!
笛吹き男がそう叫べば、皆は楽器をかき鳴らし、歌い踊りながら道をゆくのだ。
赤い髪の女も、悲劇にまみれた男も――誰もが。
骸骨も、幽霊も、吸血鬼さえも!
何処からやって来たのか、誰もわからない。
そのパレードは、何処までも続いてゆくのだった。
●グリモアベースにて
「やあ、よく集まってくれたね」
グリモアベースの片隅、いつものカウンターの前で。
優雅にブラックティーを飲む黒月が、猟兵たちを迎えた。
「忙しいところすまないが、ダークセイヴァーからの依頼だよ」
ティーカップをカウンターに置いて、黒月は立ち上がった。
猟兵たちの顔を見渡して――ふっと微笑む。
「今回の依頼は、少しばかり……お祭り騒ぎなんだ」
エルの町。
そこはヴァンパイアの圧政もない、平和な町である。
と言うのも、猟兵の活躍によって解放された『辺境空白地帯』の、比較的新しい町だからだ。
「今回の事件は、この平和なエルの町で起こる」
辺境空白地帯を狙った『辺境伯』でも襲ってくるのかと思えば、そういうわけではないと言う。
では、一体どんな事件なのか――?
「皆は『疫病楽団』というのを聞いたことがあるだろうか?」
疫病楽団――慎ましくも平和に暮らす人々を探し出し、不治の病を感染させると言われるオブリビオンの群れのことだ。
それがエルの町に向かって進行中だと、黒月は言う。
仮にエルの町に疫病楽団が辿り着いてしまったら……町の人々は不治の病に冒され、数日待たずして死に絶えるだろう。
「この楽団がエルの町に辿り着く前に、倒してほしいんだ」
彼女の言葉に、猟兵たちは頷いた。
「すまないが、頼んだよ。――ああ、そうそう」
転送準備を始めながら、黒月は思い出したかのように付け加えた。
「今エルの町では『バップロー・カーニヴァル』という、夏祭りの真っ最中だ」
バップロー・カーニヴァルというのは、この時期に群れで移動する魔獣『バップロー』を狩る行事のことだ。ダークセイヴァーという厳しい環境の中で、肉は貴重な食糧だ。その中でも美味とされるバップローは、この時期に狩猟して1年分の保存食にされるというわけだ。
「狩猟が終わると、一頭だけ丸焼きにして、残りは塩漬けにするらしい。丸焼きはその場で食べるらしいよ。肉以外にも、様々なご馳走と酒が出るみたいだ。疫病楽団がやって来るのは今日の夜遅くだと予知しているから、是非とも参加してくると良い」
にこやかにそう言った黒月だが。
僅かに眉をひそめて言った。
「ああ、でもひとつだけ注意点が。このバップローだが、少し変わった習性を持っているんだ」
魔獣と言われる所以。それは『ひらひらした物に向かって氷のブレスを吐く』という習性があるということだ。
「狩猟に参加するなら、衣装には気をつけることだ。逆にひらひらした恰好で囮になっても良いし……そこは任せるよ」
バップローは魔獣ではあるが、オブリビオンではない。町の一般人でも協力して何十頭も倒せる程度の力しかないのだ。
氷のブレスさえ気をつければ、狩りを楽しむ余裕があるだろう。
「くれぐれも、祭りで飲み過ぎて疫病楽団と戦えない……なんことがないようにね?」
笑いながらそう告げた黒月の、グリモアが輝いた。
「さて、準備は良いかな? 転送しちゃうぞー。健闘を祈る!」
霧雨りあ
ダークセイヴァーからこんばんは、霧雨です。
今回は楽しいお話をお届けします。
●第一章
バップロー・カーニバル、お祭りです!
前半と後半で分かれているので、両方参加しても、片方だけでも問題ありません。
前半は、牛のような青い魔獣バップローを狩猟します。町人の手助けをしてもよし。バップローの囮をしてもよし。楽しく暴れてください。
後半は、バップローの丸焼きやご馳走を食べながら過ごすお祭りパートです。お酒もありますが、飲み過ぎるとこの後のオブリビオン戦がしんどいので程々に。
●第二章
疫病楽団との集団戦となります。
断章でも告知しますが、プレイングの内容は二点記載いただくことになります。
一点目:夜の町を出て、平原で疫病楽団を待ち伏せする(罠を張るなど)
二点目:疫病楽団との戦闘
●第三章
断章にて情報を公開いたします。
以下、プレイングで使えそうな情報を記載しておきます。
『疫病楽団』
不知の病をばら撒く厄介なオブリビオン集団です。
猟兵は短時間なら感染の心配はありませんが、町の人々は近くにいるだけで感染してしまうため、注意が必要です。
『町人』
以前この地を猟兵が開拓したこともあって、猟兵に対して非常に友好的です。
豪快で陽気な人が多く、水着でバップロー狩りに出る人もいるようです。
『バップロー』
見た目は青い牛。気性は荒く、ひらひらした物を見ると氷属性のブレスを放つ特性があります。敵意を見せると突進で反撃する模様。美味。
それでは、みなさまの冒険が良きものとなりますように。
第1章 日常
『魔牛捕獲作戦』
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POW : 正面から挑んで、捕獲する
SPD : 罠を仕掛ける
WIZ : 魔牛の習性を利用する
👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●バップロー・カーニバル
エルの町は、どこも鳥の羽や動物の角で飾り付けられ、いかにも『お祭り!』といった雰囲気だった。
「貴方たちも是非参加していってくださいね!」
「バップローは後で丸焼きにしますから、食べていってください!」
町人たちは、到着した猟兵たちを見ると、口々に声を掛けた。
バップロー・カーニバルは二部制だ。
午前中は皆バップロー狩りに出掛け、午後はバップローの丸焼きを囲んだお祭りを楽しむのだ。
――よもや、疫病楽団が近付きつつあるなどとは。
猟兵たちはこの祭りを精一杯楽しんで、町人を不安がらせないように立ち振る舞う必要があるだろう。
そして。
金の音が響き渡る。
筋肉隆々の水着の女性や、木製アーマーの男性など、実に様々な恰好で武器を手にした町人たちは、次々に町から平原へと出ていった。
猟兵たちも後に続く。
平原に出てみれば、バップローと思わしき青い牛が、遠くで群れを成していた。
「さあ、今年もたくさん狩るぞ!」
「冬を安心して越すためにもな!」
誰かがそう叫べば、そこかしこで歓声が上がる。
さあ、バップロー・カーニバルのスタートだ!
シーザー・ゴールドマン
疫病楽団か。まだ、残っていたのだね。
まあ、祭りを楽しんでから相手をしてあげよう。
前半
町人達の魔獣狩りを見物して楽しみます。
特に問題ないと思いますが、怪我人や死人が出そうな場合はフィンガースナップと共に衝撃波を放って助けます。
後半
バップローの丸焼きや酒を楽しみます。
お代は気前よく。
(金貨の類から宝石、あるいは物資、町人たちが望むものを)
アドリブ歓迎です。
アストラ・テレスコープ
わーい!お祭りだー!
楽しみだねー!
まずはハンティングだね!
近づかなければブレスも当たらないし突進もされない!
【視力】には自信あるから遠くから【スナイパー】するよ!
というわけでどんどん矢を射っちゃおう!
あ、でも町の人達の楽しみを奪っちゃったら悪いから、
みんなが戦いやすくなるようにトドメは刺さないで牛さん達の脚を狙うことにするね!
狩りのあとの丸焼きは遠慮なくいただきまーす!
フィーネ・ルーファリア
森にいた時は狩りをよくやってたけど、平原でするのは初めてかもしれないわね
せっかくだから私も狩りに参加させてもらいましょう
さすがに囮になるのは怖いから、風の魔法で強化した弓(【属性攻撃】)による【援護射撃】で町人の狩りを手伝いましょう(【スナイパー】【乱れ撃ち】も使用)
狩の基本は森でも平原でもそう変わらないはずだから、射手としての役目を果たすわよ
無事に狩りが終わったら町でのお祭りね
やっぱりメインはバップローの丸焼きなのかしら?
他にも美味しそうなご馳走がたくさんあるみたいだから、私もご馳走になるわ
この町が襲われるだなんてことは、今は誰も思ってないでしょうね
食べすぎにはきをつけて、敵襲に備えましょう
フィーナ・ステラガーデン
・両方参加
・バップロー?肉としか思っていない
・なぜかフィーナは檻の中からスタート(たぶん町の人か同じ猟兵に捕獲された)
・檻の中ではガチャガチャとしつつ「ニグゥ!!ウマソウナニグゥ!!」とさながら猛獣の如し。人語も怪しい
・狩りがスタートと同時に飛び出す(四足)
・殴る、蹴る、噛み付く、ウマイ!(テーテッテレー)
・町人か猟兵により撤収
・後半正気を取り戻す
祭りね!!ぷしゅー!まだまだ入るわよ!お酒もじゃんじゃん持ってきなさい!
節度?そんなものでお腹は膨れないわ!!
(だいたい何か不幸な出来事により飲みすぎを止められるような痛い目を見る)
(アレンジアドリブ連携大歓迎!)
ブラミエ・トゥカーズ
どこの国であったか、この様な催しがあったな。
人と共にあるなら遊びに付き合うのも一興であろうな。
狩りも貴族の嗜みであるしな。
【POW】
闘牛士のように牛を正面から挑む。
強化は攻撃力。
純粋に暴力的な腕力で牛を捕える。
吸血鬼であることは全く隠さない。
怖がってくれたら妖怪としての喜びによりさらに力強くなる。
日傘は不要なので従者に捕えた牛を運ばせる。なお、別途手間賃が発生。
祭前:
牛の血抜きを従者に手伝わせ、地を飲んでいる。
上品にグラスで。
祭:
固形物は食べられない為、ワインや血、赤い飲料を飲んでいる。
人で希望者はいれば喜んで頂く。
ニンニクやネギ等殺菌効果のある物があれば避ける。逃げる。
劇調に恐れながら。
インディゴ・クロワッサン
アドリブ連携大歓迎~
面白そーだし、参戦するぞー!
「あー… 氷のブレスかぁ…」
僕は前には出ないでおこうっと…
絶対ブレス誘発させちゃうもん…(風になびく髪の毛とマント
僕が傷付くのは問題ないけど…
「ま、獲物は多い方が良いよねー?」
UC:藍薔薇の加護 を発動して、同意した町の人の支援に尽力しちゃうぞー☆
「ん~、バップローのお肉美味しい~」
お腹いっぱいになるまで食べたくなるけど、ここはぐっと抑えて、保存食を増やしてあげないとね!
(ま、後で大群の群れが一つぐらい消えてても仕方ないよね!)
なーんて思惑は口にせず、お酒もほどほどにしつつお祭りを楽しむぞー!
※使用武器/技能はお任せ☆
シャルロット・クリスティア
WIZ
この町では野牛……まぁ、魔物も野牛と言っていいのかはわからないですけど……を狩るのですか。
故郷ではここまでの大物に手を出す余裕はなかったですね……。
とはいえ、普段の獲物はオブリビオンであれど、猟師の端くれ。
ここはひとつ、腕前の披露と行きましょうか。
平原と言えど、多少の木々や、それが無くとも背の高い草むらの一つ二つはあるでしょう。
外套を着こんで身を伏せれば、だいぶ目立たなくはなる筈です。
気付かれないように身を潜め……油断している遠い相手に単射で狙撃。
一発だと殺しきれないかもしれませんから、胴に一発頭に二発……くらいですかね。
貴重な食糧です。無駄に穴だらけにはしないようにせねば。
オリヴィア・ローゼンタール
カーニバル……今を生きる人々の逞しさですね、良いことです
前半
では私もお手伝いを
ひらひら……ヴェールとシスター服の裾で充分ですかね?
祭囃子に合わせて踊れば(ダンス)、【おびき寄せ】ることもできるでしょう
突っ込んでくれば正面からツノを掴んで捕獲、投げ飛ばし(怪力・グラップル)
槍を【投擲】して頭部を射抜けば、過食部位を傷つけずに済みますかね
後半
皆さん、お疲れさまでした
食事をご馳走になりましょう
自分で捕まえたバップローのお肉は美味しいです
お酒は飲めませんが、ジュースをいただきましょう
色んな世界で食事をしましたが、やっぱり地元世界の味は落ち着きますね
カイム・クローバー
魔獣を狩る祭りか。普通の人間でも協力次第で何十頭。猟兵が向かえば、かなり狩れるんじゃねぇか?
俺は前半部分、主に狩りの方を担当するぜ。バップローの進行方向に仁王立ち。コートの裾はバップロー集団の突撃してくる地響と風に僅かに靡くかもしれねぇが。
――上等。俺を踏み潰す気で来いよ。
右手に魔剣を顕現し、【属性攻撃】で黒銀の炎の【範囲攻撃】。氷のブレスを焼き払う。
魔剣を消失させ、二丁銃を取り出して【二回攻撃】と【クイックドロウ】で片端から眉間を撃ち抜いていくぜ。
銃弾は特別製。依頼報酬から差し引きだ。
十匹程度はワザと仕留めずに逃す。一年分の恵みだ。次も村に食料を恵んで貰う為に。
どうだ?こんなモンで足りるか?
ロータス・プンダリーカ
レティシャさん(f28126)と
何かこの町は活気がありますにゃあ
狩りと聞くと何かウズウズするにゃ
ボクらも魔牛狩りに参加するにゃよ
ひらひらはしてないけど
ふわもこの尻尾がゆらゆら
ぎゃにゃーーーっ!?(ブレスのえじき)
レティに溶かして貰いつつ
ボクの毛並みをカチコチにした罪は重いですにゃよ!?
至近距離まで近づいて、必殺のにくきゅうぱんち
我が秘拳を繰り出させようとは、手強い牛だったにゃ…(ふう)
ご馳走、にゃ!
腹が減っては戦は出来ぬと言いますにゃ
牛さんの命に感謝して頂きますにゃよ(手を合わせ)
この後疫病楽団が来るなんて思えない光景にゃ
小さな町の幸せを永遠の奈落に堕とす訳には行かにゃい
気合い入れとくにゃよ
レティシャ・プリエール
ロータス店長(f10883)と
初心者猟兵、緊張気味
オブリビオンの凶事、止めなくちゃね
え、バップロー退治?お祭り?
わ、わかってるわ!
頑張らないとね!
これが、バップロー……ちょっとこわい……
あっ、店長さん!
慌てて杖から炎を出して、尻尾の氷を溶かす
火加減、うまくいったわね?
うう、店長さんて、意外と好戦的……?
後方でおたおたしながら、UC使用
保存食にするなら足を狙って……えいっ!
ふう、そうね、でも店長さんが無事でよかったわ
お祭りなんて初めて
雰囲気に面食らいながら、倣って手合わせ、ご馳走をいただく
……おいしい!
そうね、この平和が壊されると思うと……
が、頑張るわ
でも店長さん、私が変なことしてたら、教えてね
田守・狼護
おっ、祭りか!
祭りはいいよなあ……楽しいし美味いもん食えるしな!
と、その前に牛追いがあるのか?
てか牛追い祭りか!
腕が鳴るな……!
じゃあまずはこいつで肩慣らしするか!
まずは真正面に立つ
そして腰を落として、目をじっと見つめる……我慢勝負だな
やつが痺れを切らせて突進してきたところを 太郎ガード!(かばう+花子の結界術)
怯んだところで角を掴んで……地面に頭を叩きつける!
でもって太郎と花子に首元狙ってもらっていっちょあがりよ!
さて、こいつ持っていて飯にしてもらえばいいんだな?
太郎、花子、今日は美味いもん食えるな!!
リーヴァルディ・カーライル
…疫病楽団。随分と倒してきたつもりだったけど、まだ残っていたのね
…まぁ、それはさておき。バップローの肉なんて何時以来かしら?
…他の世界に渡って色々な美味しい物を食べたけど、
例えどんな世界だったとしても、
故郷の世界の味が一番特別に感じられるものなのね
事前にUCを発動して全身を生命力を吸収する呪詛で覆い、
自身の能力や存在感を一般人程度にまで封印し、
体内に限界を突破する寸前まで魔力を溜めておく
“聖法衣”に着替え旅の女神官を装い礼儀作法を心掛け、
祭りに参加して村人と交流しながら舌鼓をうつわ
今年の祭りはどうでしたか?なんて、聞くまでも無いみたいですね?
…とても美味しかった。来年もまた食べに来ますね
メフィス・フェイスレス
ったく、せっかく血吸いの目が及んでない所だってのに
偶然じゃない?狙って誰かが呼び寄せた?……ありえそうね
そう考えると此処に限って血吸い共の影が見えないってのも逆に怪しいわね
聞いたヤツだけとの戦いだと思わない方がいいか
考えてたら腹減ってきたわね
時間はあるし狩りを手伝いにいくわ
数を稼げばそれだけ私の取り分も多くなるしね!
コートをはためかせ群れを誘き寄せUCを撃ち込むわ
大して強くないらしいし傷つけすぎると肉の質が悪くなりそうね
弾は鋭く小さく、貫通力を重視
込める毒は塩漬けと加熱で分解できるマヒ毒に調整するわ
沢山狩ったら丸焼きの数を増やして貰えたりしないかしら
一匹分丸ごと齧りつくのって浪漫よね
●序章~猟兵たちは狩りに赴く
「ったく、せっかく血吸いの目が及んでない所だってのに」
お祭り騒ぎの町中を、メフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)はアレコレ思案しながら歩いていた。
疫病楽団。猟兵によって多くが狩られたはずだが、まだ残っていたらしい。
「偶然じゃない? 狙って誰かが呼び寄せた? ……あり得そうね。そう考えると、此処に限って血吸い共の影が見えないってのも逆に怪しいわね」
――聞いたヤツだけとの戦いだと思わない方がいいか。
そう結論付けたメフィスの鼻孔を、ふわりと美味しそうな香りがくすぐった。
「……考えてたら腹減ってきたわね。時間はあるし、狩りを手伝いに行きましょうか」
周りを見渡せば、猟兵も町人も、武器を片手に平原へ向かっている。
バップロー狩りが始まるのだ。
「数を稼げば、それだけ私の取り分も多くなるしね!」
バップローの丸焼きに齧りつく自分を想像して、メフィスは俄然やる気になったのだった。
「何かこの町は活気がありますにゃあ」
町中を平原に向かって歩きながら、祭りの雰囲気に感化されたロータス・プンダリーカ(猫の銃形使い・f10883)の声も弾む。
長毛種の愛らしいケットシーは、ふわりと尻尾を揺らした。
「狩りと聞くと何かウズウズするにゃ。ボクらも魔牛狩りに参加するにゃよ」
同意を求めるように隣を見やれば、レティシャ・プリエール(西洋妖怪のレトロウィザード・f28126)は硬い表情で頷いた。
「ええ、オブリビオンの凶事、止めなくちゃね」
お祭りもバップローも記憶の外。レティシャの頭の中は『疫病楽団』のことでいっぱいの様子。
それもそのはず、レティシャはまだ初心者猟兵なのだ。
「……大丈夫かにゃ? 今はまだお祭りを楽しむ時にゃ。バップローを狩るにゃよ」
そんな彼女に、優しく声をかけるロータス。
レティシャは一瞬きょとんとする。
「……え、バップロー退治? お祭り? ……わ、わかってるわ、頑張らないとね!」
ロータスの指摘にあわあわしつつも、何とか体裁を取り繕う。しかし、夜色の髪に灯ったふわふわと揺れる青白い炎が、彼女の心を現していた。
ロータスはそれ以上何も言わず、にこにことレティシャを見守りながら平原を目指すのだった。
「わーい、お祭りだー!」
「祭りはいいよなあ……楽しいし、美味しいもん食えるしな!」
ロータスたちの後ろで、アストラ・テレスコープ(夢望む天体望遠鏡・f27241)と田守・狼護(田畑の守護神・f28068)が楽しそうに笑いながら歩いて行く。
町のあちこちから漂う素敵な香りは、彼等のテンションを更に上げていた。
「んーいい匂い! でもまずはハンティングだね!」
「と、そうか。その前に牛追いがあるのか。ってか、牛追い祭りか! 腕が鳴るな!」
一瞬食べ物だけに意識を取られていた狼護が、アストラに言われてバップローの存在を思い出して笑う。
そう、バップローはこのエルの町の保存食になるのだ。決して『ただ食い祭り』ではない。
「町の人たちは狩りをはじめてるみたいだよ!」
「うっし、俺たちもやるか!」
「うっし!」
意気込む二人は、足を早めて平原へと向かう。
その平原では、既に準備を終わらせた猟兵たちの姿もあった。
「カーニバル……今を生きる人々の逞しさですね、良いことです」
微笑んでそう告げるオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)の言葉に、シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)は頷いた。
「この町では野牛……まぁ、魔物も野牛と言っていいのかはわからないですけど……を狩るのですか。故郷ではここまでの大物に手を出す余裕はなかったですね……」
不思議な面持ちでそう言って、平原を駆ける町人たちを眺める。
ダークセイヴァーの民とは思えないような、強く希望に満ち溢れた表情で、雄叫びを上げながらバップローの群れへと突撃していく町人たち。
――平原は広い。ところどころに木はあれど、薄く生えた草は身を隠せる程のものではなさそうだ。
だからこその、真っ向勝負なのだろう。
「森にいた時は狩りをよくやってたけど、平原でするのは初めてかもしれないわね」
町人たちの戦いを視野に収め、フィーネ・ルーファリア(森の守護者・f27328)は目を細めた。木々の合間を縫って獲物を追うのとはわけが違う。しかし、ここでは森のように足を取られる心配はないという利点もあるのだ。
「しっかし、普通の人間でも結構狩れるんだろ? 猟兵が向かえば、かなり狩れるんじゃねぇか?」
フィーネの隣に並んで平原を眺めていたカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)が、そんな感想を漏らした。確かに、彼の『オルトロス』なら、一瞬で数十頭を殲滅できるだろう。
「ですが、貴重な食糧です。無駄に穴だらけにはしないようにせねば」
外套を羽織って準備万全となったシャルロットが、振り向いてそう告げた。今回『狩り』とは言え、倒せば良いというものではない。如何に綺麗に仕留め、多くを保存食にするかが重要なのだ。
「ああ、わかってるぜ。ある程度は仕留めずに逃して、来年も村に食糧を恵んで貰う必要があるもんな」
カイムはそう言ってニヤリと笑う。
戦闘準備は整ったようだ。
そんな四人の近くに、ひとつの檻が置いてあった。
中からは『グゥルルルル……』という獣のような唸り声が聞こえて来る。
「……どこの国であったか、この様な催しがあったな」
そんな怪しげな檻に腰掛けて、ブラミエ・トゥカーズ(”妖怪”ヴァンパイア・f27968)は赤い液体の入ったグラスを片手に、そう呟いた。
彼女の横には従僕――日雇いらしい――が付き従い、彼女のために日傘をさしている。
「人と共にあるなら、遊びに付き合うのも一興であろうな」
狩りは貴族の嗜みだ。ブラミエが参加しない道理もない。
グラスの中身――トマトジュースらしい――を飲み干して、ゆっくりと立ち上がる。
「おや、ブラミエ君も出るのかね」
丁度町を見物し終え、平原に出たシーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)が、そんなブラミエに声をかけた。
ヴァンパイアとダンピール。住む世界は違えど、雰囲気の似た美しい二人が並ぶと絵画のようだ。
『ニグゥゥゥ……』
――その雰囲気をぶち壊す声さえなければ。
シーザーの金の瞳が細められ、檻に視線を投げる。……聞き覚えのある声だった。
「ああ、これか? 余がここに来た時には設えられていたものだ。何やら魔女のような女が中におるな」
「魔女……なる程」
ブラミエの言葉に、口の端を上げてシーザーが納得する。それ以上は何も触れず、平原へと向かった。
男装の麗人ブラミエも、特段檻には興味を向けることもなく、自身の狩りへと向かうのだった。
●第一話~藍薔薇の花弁は若者に届くか
町を出たすぐの場所で。
心地良い平原の風に髪とマントをなびかせたインディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)は、うーんと唸って頬を掻いた。
視線の先では、町人がひらひらと旗を振り、そこにバップローがブレスを吹きつけている。
「あー……氷のブレスかぁ……」
自身の髪とマントは、間違いなくブレスの対象になるだろう。
「僕は前には出ないでおこうっと……」
仮に町人と一緒に戦いでもしたら、誘発させたブレスで皆氷漬け確定だ。
僕が傷つくのは問題ないけど、と口の中で呟いて。
インディゴはにこりと微笑んだ。
「ま、獲物は多い方が良いよねー?」
すたすたと平原を横切って、まだバップローと戦っていない町人たちに近付いた。どうやら成人したばかりの若者らしく、初めてのバップロー狩猟に戸惑っているようだった。
「や、楽しんでる?」
気さくに話しかけたインディゴに、何やら縋るような視線が集まる。
「ああ、初めての狩りなんだね? じゃあ、僕が支援するから一緒に頑張ろっか!」
にこやかにそう告げたインディゴが『どうかな?』と町人に問い掛ければ、彼らは嬉しそうに『はい、お願いします!』と叫んだ。
「そうこなくっちゃ」
インディゴが頷く。
――ひらひらと。
藍色の花びらが舞い落ちる。
それは、薔薇。彼の大切な藍薔薇の加護だ。
花弁は町人に勇気を与え、盾となった。
「す、凄い! 何だか戦える気がしてきたぞ!」
「よし、お前は向こうから回り込め! 俺はこっちから行く!」
若者たちは先程までとは違う表情で、バップローの群れへと向かっていった。
「そう、薔薇は裏切らない」
ふっと微笑んで呟いたインディゴの言葉は、誰の耳にも届かなかった。
●第二話~猫パンチはウィルオウィスプの炎に踊る
「これが……バップロー……」
レティシャが青い牛を見つめ、ぶるりと震える。
(……ちょっとこわい……)
口には出さずにそんなことを思うも、すぐにぷるぷると首を振って狩猟を開始する。
先を行くロータスは――やる気満々の様子だ。
「さあ、来るにゃ!」
さすがは長毛種。ふわもこの尻尾がゆらゆらふわふわ揺れる。
――バップローたちの目つきが変わった。
『ブモー!!!!』
雄叫びと共に放たれる氷のブレス。
四方から浴びせられれば、幾らネコ流格闘術『ニャン=カタ』の達人(達猫?)と言えども避けきることは不可能だ。
「ぎゃにゃーーーっ!?」
「あっ、店長さん!」
ロータスの尻尾は憐れ、カチンコチンの氷漬けだ。
レティシャは慌てて駆け寄ると、手にした杖から炎を迸らせ、ゆっくりと尻尾を溶かしていった。
「――火加減、うまくいったわね?」
溶けきったベタベタの尻尾を熱風で乾かしてやりつつ、レティシャはほっと一息。
しかし、ロータスは……。
「……ボクの毛並みを……カチコチにした罪は重いですにゃよ!?」
怒りに燃えていた。
その愛らしい手を振りかざし、ブレスを吐いたバップローに突進していく。
「これでもくらうにゃー!!!」
――てしてしてし。
繰り出されたのは『にくきゅうぱんち』――必殺のぷにぷに肉球による超高速かつ大威力の一撃(?)である。
「うう、店長さんて、意外と好戦的……?」
どんなカラクリか、ぷにぷにパンチでバップローを薙ぎ倒していくロータスを見やって、レティシャは溜め息をつくのだった。
「さて、私も頑張らないと」
先程までのちょっぴり怖い気持ちは忘れ、杖から青白い炎を幾つも放つ。
確実に忘れていそうなロータスとは違い、『保存食』であることを念頭においたその攻撃は、バップローたちの足元を燃やしていく。
『ブモー!?』
熱さに驚いたバップローたちが、どすんと横倒しになった。
「ふう」
これならやれそうだと頷いたレティシャ。
「……そうね、でも店長さんが無事でよかったわ」
優しい眼差しでロータスを見やれば。
「我が秘拳を繰り出させようとは、手強い牛だったにゃ……」
氷のブレスで攻撃して来たバップローをすべて倒し、ふうと一息つくロータスに、レティシャはくすりと笑うのだった。
●第三話~天体少女のハンティング
平原に点在する木の影に、ピンクの影。
「近づかなければブレスも当たらない!」
コズミックロングボウを携えたアストラが、ふふんと笑う。
「そして突撃もされない!」
視力には自信がある。
遠くのバップローの群れを瞳に映し、弓を引く。
矢を番える必要はないのだ。何故なら――。
「たくさん降り注げっ!」
叫んで矢のない弓を弾けば。
まるで星屑のような尾を引いて、きらきらと煌めく矢が幾筋も飛翔する。それはユーベルコード『星間尋矢』によって生成された、星の矢だ。
「っと、ちゃんと町の人たちの楽しみは取っておくから!」
彼女も忘れてはいない。
これは『エルの町のお祭り』だ。町の人たちの気持ちを大切に、狙うはバップローの脚。
恐ろしく遠くから飛翔した矢は、狙い違わず脚を撃ち抜いていく。
「やったね!」
アストラの思惑通り、うまく走れなくなったバップローに、町の人々がとどめを刺すべく立ち向かっていくのだった。
●第四話~吸血鬼は力持ち?
ブラミエが従者を従え、平原を行く。
ダークセイヴァーの空は暗雲に覆われているが、紫外線は降り注いでいる。UVカットの化粧品を塗っているとは言え、日傘は必需品なのだ――差すのは従者だが。
「人は恐れ伝えた。何をか分かるか? ――そう、吸血鬼は”力持ちである”ということだ」
従者にそんなことを言いながら、彼女は目の前に立ち塞がる大きなバップローを見やる。
その向こうで狩猟をしていた町人たちが、彼女に気付いて手を振った。
「ああ、猟兵さんだ」
「そちらのバップロー、頼みます!」
彼らの声に片手を上げて応えたブラミエは、武器を構えるでもなく、両手を軽く開いて腰を落とした。バップローは、彼女のひらひら揺れる衣装や髪に目の色を変え、猛突進を仕掛けた。
「……品が無いのが困り物であるがな」
ぽつりとそう呟いて。
真正面から衝突して来たバップローを、抱きしめるように捕まえた。バップローは全く身動き取れないどころか、地面から足が浮いている。
「凄い、なんて怪力!?」
町人は驚愕に目を見開き――そして気付く。彼女は吸血鬼だ、と。
「ひっ! あれはヴァンパイア!?」
怯えた声で口々に恐怖の言葉を撒き散らす彼らに、ブラミエは口の端を上げた。
――恐れられるはこの上ない喜び。
更なる力を漲らせた彼女は、そのまま魔牛を素手で殴り倒した。
「連れて行け」
そう従者に告げて。ブラミエは次の獲物へ颯爽と向かう。
――尚、従者にバップローを運ばせるには、別途手間賃が発生するとのことだ。
●第五話~シスターも力持ち?
「さて、私もお手伝いしましょう」
バップローの群れのひとつに狙いをつけたオリヴィアは、柔らかい微笑みを浮かべたまま無防備に近付いて行った。
「あの人大丈夫か?」
「シスターさん、無茶はいけないよ!」
その辺で狩猟していた町人が声をかけても、オリヴィアは『大丈夫ですよ』と返すのみ。
その黒いヴェールと修道服の裾を風にはためかせ、祭囃子に合わせてステップを踏む。
聖女の舞う姿に、戦う人々の手は思わず止まった。
「……すげぇ」
「あ、でも、バップローがっ!」
ひらひらと動く布に目の色を変えたバップローが、オリヴィアに向かって突進する。僅かに開かれた口の中では、氷の結晶がきらきらと見え隠れしている。
「お姉さん危な……え?」
叫びかけた若者の目が点になる。
オリヴィアは正面からバップローの角を鷲掴みしたかと思えば、そのままぶうんと投げ飛ばしたのだ。そして、いつの間にか手の中にあった黄金の穂先を持つ美しい槍を、倒れたバップローの眉間に狙い違わず投擲した。
瞬時に絶命するバップロー。
「可食部位は傷つけていません」
微笑んで振り返ったオリヴィアの目に映ったものは――怯えきった男たちと、憧れの眼差しを向ける女たちだった。
●第六話~影の主役、赤公爵
「ははは、オリヴィア君もなかなかやるね」
オリヴィアの活躍を遠巻きに見ていたシーザーは、笑いながら次の戦いを見物に歩く。
――このお方、自身が戦うことなく『狩猟祭り』を楽しんでいるのだ。
一般人のお祭りで、しかもこれだけの猟兵が参加しているとなれば、そういった楽しみ方も『有り』だろう。
とは言え、町の若者が無茶をしていれば、少しは手助けをすることもある。
例えば――。
少し離れた位置からフィンガースナップ!
パチンという軽快な音と共に放たれた衝撃波が、よろめいて倒れた青年に向かうバップローの進路を変えた。青年が起き上がる頃には、赤公爵の姿は既にそこにはなかった。
また別の場所で――。
町人に向かってフィンガースナップ!
パチンという軽快な音と共に放たれた衝撃波が、氷のブレスを受けて動けなくなっていた女性の衣服を削り、美しい氷アーマーを作り上げた。
「……え、なにこれ!? すごい、動きやすいわ!」
振り返った女性は、そこに誰も認められず首を傾げた。
――影の主役は、この人かも知れない。
●第七話~早撃ちBlack Jack
バップローたちの瞳が燃えるように輝く。
彼らの前には、黒いコートを風になびかせたカイムが仁王立ちしていた。
どこからか、ひらりと舞い込んだ蝶が通り過ぎるのを合図に、バップローたちが一斉にカイムへと突進する。彼らの口は、蒼い輝きを放っている。
「――上等。俺を踏み潰す気で来いよ」
不敵な笑みを浮かべたカイムは、魔剣を顕現させると同時に振り抜いた。放たれた黒銀の炎は、バップローたちが放った氷のブレスを瞬時に蒸発させる。
カイムの手からは魔剣が消失し、いつの間にか双魔銃オルトロスが握られていた。誰の目にも映らない早さで引き抜かれたオルトロス。手に収まると同時に魔弾が連射され、迫り来るバップローたちの眉間を撃ち抜いていく。
「銃弾は特別製だ。依頼報酬から差し引かせて貰うぜ!」
あっと言う間に牛盛りの出来上がりだ。
絶命したバップローに近付いたカイムは、ひーふーみーと数を数える。
――ざっとニ十頭と言ったところか。
「どうだ? こんなモンで足りるか?」
ちょうど後ろを通り掛かった村人に尋ねれば、無言で首をブンブンと縦に振った。
「よし、じゃあ運ぶか」
――ニ十頭の魔牛。
一頭あたりの体重は一トンを超える。
猟兵とは言え、骨の折れる作業である……。
●第八話~真神の狛犬戦法
平原を吹き抜ける風が、見つめ合う二人をさやさやと撫でていく。
腰を落とし、相対する魔牛の瞳をじっと見つめるのは狼護。
(肩慣らしと思ったが――これは我慢勝負だな)
バップローは、前脚で地面を掘るように蹴っている。荒い鼻息は、時折氷の結晶を噴出させていた。
(そろそろか……)
狼護がそう思った瞬間、バップローが突進をかけた。
真正面から猛スピードで突っ込んで来たバップローを素手で止める――かと思えば。
「太郎ガード!」
何と狛犬の太郎が飛び出した!
同じく狛犬の花子の結界術で強化された太郎は、バップローをボスンと弾き飛ばした。
目を白黒させてよろめくバップロー。
「今だ!」
狼護はすかさずバップローの角を掴み、思い切り地面へと叩きつけた。
そこへ太郎と花子が殺到し、首元にがぶり!
暫く藻掻いていたバップローは、ゆっくりと動かなくなった。
「よし、いっちょうあがり!」
完璧なチームワークだ。
「さて、こいつを持って行って飯にしてもらえばいいんだな? 太郎、花子、今日は美味いもん食えるな!!」
一人と二匹は重い巨体を手分けして担ぎ、意気揚々と町へ向かうのだった。
●第九話~エルフの狩りの心得
ぶるると鼻息を荒げて、バップローたちが駆けて行く。
「さすがに囮になるのは怖いわね」
フィーネは群れの様子を眺めていたが、町人の狩りの援護へ回ることにした。オブリビオンではないとは言え、一トンを超える魔牛が氷のブレスを吐きながら突進して来るのだ。囮役をやるには、それ相応のスキルが必要だろう。
風の森の守護者である彼女は、風を自由に操れる。手にした矢に風を纏わせ、森での狩りを思い出しながら平原を駆ける。
町人たちがバップローの群れを囲み、武器を手にして雄叫びを上げている。フィーネは平原を巡って、そんな人々の援護をして回った。
接近戦で奮闘していた町人が離れた隙に矢を射れば狙い違わずバップローの脚を撃ち抜き、仕留め残った怒り狂うバップローの群れを乱れ撃ちで制圧した。
「ありがてぇ!」
町人たちはフィーネに感謝しながら、バップローの群れをどんどん片付けていく。
「ふふっ、森での狩りが懐かしいわね」
射手としての役目を果たし、フィーネは楽しげに笑った。
狩りはまだまだこれからだ。
●第十話~安心安全なマヒ毒で
「ほんと、腹減ったわ」
メフィスは平原をのんびり歩いていた。
黒いコートが風になびく。その袖からは、ガトリング砲が覗いていた。
――それがまさか、彼女の腕が変形したものだなんて。町人は絶対に思わないわけで。
メフィスは町から離れ、町の裏手に回った。
そこには手付かずの群れ。
コートをひらひらさせながら近寄るメフィスに、バップローたちが殺気立つ。
「傷付け過ぎると、肉の質が悪くなりそうね」
しかも、彼らは大して強くないとの情報だ。普段の戦い方では、ただの肉塊にしてしまうだろう。
メフィスは、向かい来るバップローたちにガトリング砲を向けた。
撃ち出される弾は――マヒ弾。それも小さく鋭い貫通弾だ。
バップローたちの脚目掛けてばら撒かれた弾は、突き刺さった箇所から棘を生やして毒を注ぎ込む。
「塩漬けと加熱で分解できる毒だから、心配ないわ」
誰にともなくそう呟いて、動くもののいなくなった群れへと近付く。
バップローは麻痺して微動だにしない。
「……沢山狩ったら、丸焼きの数を増やして貰えたりしないかしら」
倒れたバップローの横腹をぺちぺちと叩きながら、そんなことを呟くメフィス。
彼女の脳内では、一匹分丸ごと自分のものになっているのだった。
●第十一話~猟師シャルロット
平原の中央に佇む木の影から、シャルロットはバップローの群れを見つめていた。
まばらに生えた草むらに、外套を着込んで身を伏せた彼女に気付くのは、勘の良い猟兵くらいだろう。
群れとの距離、二千三百メートル。
裸眼で見れば豆粒のような魔牛も、スコープを通せばはっきりと見える。
お祭り会場(狩場)となっている町の周辺から離れているため、バップローは油断して草を食んでいるようだった。
とは言え、この距離からの狙撃は非常に難度が高い。
「普段の獲物はオブリビオンであれど、猟師の端くれ。ここはひとつ、腕前の披露と行きましょうか」
ふうと深呼吸の後、時間が止まったかのように。
微動だにしないシャルロットは、群れの中の一頭に狙いを定めた。
静かにトリガーに手をかけ――バンッ。
マギテック・マシンガンから放たれた銃弾は、狙い違わず胴に一発。続いて頭に二発。
先刻、カイムたちと話していたように、貴重な食糧を穴だらけにしないよう、最低限の攻撃で仕留めたのだ。
その腕前、並の狩人には真似できない見事なものである。
「こんなものでしょうか……」
その後、数頭仕留めたシャルロットは、町人や他の猟兵と共にバップローを町へと運び込んだ。
町人たちは、こんな小さな少女がバップローを倒したことに、驚きを隠せない様子だった。
●第十ニ話~魔獣の魔女
そもそも、だ。
彼女は始めから『肉』としか思っていなかった。
バップロー=お肉。
簡単だ、幼子でもわかる。
檻の中に閉じ込められたフィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)は、普段の可愛らしい姿からは想像もつかない声で『ニグゥ!!ウマソウナニグゥ!!』と唸り声を上げていた。
尚、この檻を用意したのは匿名の猟兵とのこと。
『ニグゥゥゥ!!!』
そろそろ限界が近いのか、叫びながら檻をガシャーンガシャーンと揺らし始めたフィーナ。
先程まで上に座っていたブラミエはもういない。
そう、止めるものは何もない――。
バキィィィ!!!
よくわからない力で檻を破ったフィーナが、遂に平原に解き放たれた。
彼女の目に映るものは、バップロー(肉)のみ。
『ウルグァァアァァァ!!!』
猛獣の雄叫びを轟かせ、四足歩行で疾風の如き走りを見せる。
赤い魔女ではなく赤い魔獣は、一匹のバップローに狙いを定めた。
『gぽqうr9dぎおw2@@t!!!』
言葉にならぬ言葉と共に、繰り出されるのはまさかのグーパン!
そこから蹴る殴るの暴行を加え、フィニッシュは首元への噛みつきだ!
『ウマイ!(テーテッテレー)』
どこかで聞いたことのあるフレーズが流れる中、フィーナは生肉をもしゃもしゃと貪った。
――その後。
猟兵たちの尽力あって、魔獣と化した魔女は捕えられたのだった。
●狩りと謝肉祭の間で
コツコツと石畳に靴音を響かせて。
リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、町中を歩いていた。神官服を纏った彼女は、まるで聖女。すれ違う町人が思わず見惚れるほどの美しい少女だった。
――そう、外見は。
実際、現在の彼女は一般人程度の力しかない。それは、生命力吸収の呪詛を自身にかけているからだ。
その『裏側』で、彼女の魔力は限界ギリギリまで溜められている。そう、この後の戦いに備えて――。
平原から戻って来た町人と猟兵が、あちこちで謝肉祭の準備をしている。
リーヴァルディも、町の女性たちと一緒に、花や果物を飾り付けた。
町の中央では、バップローの丸焼きを作る準備が進められているようだ。ブラミエが従者にバップローの血抜きを手伝わせているのが見えた。
「……バップローの肉なんて、何時以来かしら?」
丸焼き会場を眺めながら――手は動かして――リーヴァルディは呟いた。
彼女はダークセイヴァーの出身だ。バップローは馴染みのある食材だが、猟兵になって各地を旅するようになってからは口にしていない。
きっと、皆で食べる食事はとても美味しいだろう。
そう思って。
リーヴァルディの口元には、自然と笑みが浮かぶのだった。
●終章~飲めや歌えの謝肉祭
猟兵たちの活躍もあり、運び込まれたバップローは十分な数になった。
当初、丸焼きにするのはニ~三頭の予定だったが、実際は十数頭が丸焼きにされることになったのだ。
「うっわー、すっごくおいしー!」
アストラが嬉しそうに肉を頬張る。
「これはうまいな! 太郎、花子、凄いご馳走だぞ!」
狼護と太郎&花子も肉を頬張る。
バップローの丸焼きは、人の顔程の大きさに切り分けられ、メイン会場のテーブルに所狭しと並べられている。
「アストラと狼護の顔が見えないわね」
フィーネは笑ってそう言うと、自分もバップローを手に取って齧りついた。
食べ切れそうにない量だと思っていたが、こうして食べてみると香辛料の香りが胃袋を刺激する。油もしつこくなく、どれだけでも食べられそうだ。
「あっちのご馳走も美味しそうね。目移りするわ」
フィーネはそう言いながらも、ふと疫病楽団のことを思い出した。この町が襲われるなんて、今は町の誰もが思っていない。
――今夜の襲撃に備えて、食べ過ぎには注意しなければならない。
隣にいるシャルロットも、食事量はかなり調整しているようだった。
「ん~、バップローのお肉美味しい~」
インディゴも大きな肉に食らいついて満面の笑みだ。
「お腹いっぱいになるまで食べたくなるけど、ここはぐっと抑えて、保存食を増やしてあげないとね!」
ちらりと視線を向けた先は、貯蔵庫。そこには、内臓を処理されたバップローが置かれている。明日の朝から塩漬け作業がはじまるらしい。
(ま、後で大群の群れが一つぐらい消えてても仕方ないよね!)
笑顔の裏でそんなことを考えつつ、葡萄酒をぐいっと飲むインディゴだった。
「ぷしゅー! まだまだ入るわよ! お酒もじゃんじゃん持ってきなさい!」
いつの間にか、正常な魔女に戻ったフィーナも、腹を満たすべく肉に齧りついている。
フィーネやインディゴとは違い、ひたすらに食べる構えだ。
「節度? そんなものでお腹は膨れないわ!!」
噛みつかんばかりの勢いでそう告げ、奥に置いてある手付かずの丸焼き(切り分けていないやつ)の元へ走って行く。
しかしそこには先客がいた――メフィスだ。
「ほんとに一匹丸ごと齧りつけるなんて。浪漫よね」
その細い体のどこに入るのかという勢いで、丸焼きを食べていくメフィス。
「一人で独占だなんてズルいわよ! 私も食べるわ!!」
フィーナも負けじと齧りつこうと――。
「あ、それ生焼けだから」
メフィスの麻痺毒が抜けきっていない肉に齧りついたフィーナは、そのまま夜まで痺れることとなったのだった。合唱。
肉の他には、野菜や果物だけでなく、手の混んだ料理も並べられていた。
「同じダークセイヴァーでも、土地によって様々な料理があるね」
シーザーが手を伸ばしたのは、生魚の料理だ。すり下ろした林檎と数種類のハーブで味付けされているらしい。
「それ、めっちゃうまいぜ?」
同じ料理を食べていたカイムがそう告げて、更にもう一口食べる。どこかの鬼の少女が好きそうな味付けだ。
「確かに美味しいね。レシピを聞いて帰るとしよう」
実際にそれを作るのは、青い髪の女性になるだろうが……。
シーザーは町の女性からレシピを貰うと、礼として宝石を渡した。
他にも、今回の祭りに参加させて貰った礼として、エルの町の町長に様々な物資を渡していたことは――誰も知らない。
シーザーの隣で、ブラミエはグラスの葡萄酒を傾けていた。
彼女は固形物が食べられないため、基本的には葡萄酒か、先程抜いたばかりのバップローの血液を飲んでいる。
「なかなかの美味であるな」
機嫌良く食事を採っていた彼女の鼻に、ふと恐ろしい香りが届いた。
「こ、これは……!?」
優雅な振る舞いから一転、椅子を蹴って立ち上がり辺りを忙しなく見やる。一般的には『食欲をそそる香り』らしいが、ブラミエにとってはただの恐怖の対象。
――そう、ニンニクである。
色とりどりの豪華な食事の至るところに、ニンニクは使われているようだ。
「余を殺す気か!?」
ブラミエは後退ると、一目散に町の外れへと駆けて(逃げて)行くのだった。
「……吸血鬼も大変だな」
ぽつりと呟いたカイムの言葉に、猟兵の何人かが首を横に振る。
――吸血鬼とひとことに言っても、様々な人種がいるのだ。
「ご馳走、にゃ! 腹が減っては戦は出来ぬと言いますにゃ。牛さんの命に感謝して頂きますにゃよ」
ロータスが手を合わせると、レティシャも倣って手を合わせた。
「い、いただきます」
お祭りが初めてのレティシャは、この雰囲気に面食らっているようだった。
「これがバップローの丸焼きにゃ」
中央テーブルから切り分けられた肉を持ってきたロータス。
レティシャが食べやすいように、小分けされた状態でお皿に盛ってきた。なんというジェントルマン。
「……おいしい!」
口に入れた瞬間、レティシャは驚きのあまり声を上げた。
その後、恥ずかしそうに小さくなる。
「うんうん、美味しいにゃ! これはなかなか食べられる味ではないにゃ」
ロータスも嬉しそうに舌鼓を打つ。
彼は勿論魚が大好きなのだが、バップローの肉はお世辞抜きにも美味しかった。
二人が満足するまで食べた頃。
「……この後疫病楽団が来るなんて思えない光景にゃ」
ぽつりと呟くロータス。
レティシャが顔を上げる。
「……小さな町の幸せを永遠の奈落に堕とす訳には行かにゃい。気合い入れとくにゃよ」
ロータスが強く告げれば、レティシャもこくんと頷く。
「そうね、この平和が壊されると思うと……が、頑張るわ」
疫病楽団はオブリビオンだ。バップローと比べると、強さは段違いだろう。
緊張した面持ちで、レティシャはそっと付け加える。
「でも店長さん、私が変なことしてたら……教えてね」
ロータスはにっこり微笑むと、大きく頷くのだった。
「皆さん、お疲れさまでした」
町人たちが集まる場所へ赴いたオリヴィアは、小さな子供からバップローの肉を手渡されて顔を綻ばせた。
「ありがとうございます」
口に運べば、旨味たっぷりの肉汁が口の中に広がる。
塩だけのシンプルな味付けだが、これがまた最高に美味しいのだ。
「自分で捕まえたバップローのお肉は美味しいですね。色んな世界で食事をしましたが、やっぱり地元世界の味は落ち着きます」
懐かしいバップローの味に、舌鼓を打つオリヴィア。
合わせる飲み物は、ワイン用の葡萄で作られた葡萄ジュースだ。
「ふふ、そうよね。他の世界に渡って色々な美味しい物を食べたけど、例えどんな世界だったとしても、故郷の世界の味が一番特別に感じられるものなのね」
先に町人たちと食事をしていたリーヴァルディが、オリヴィアに同調して微笑む。
「そう言って貰えると嬉しいねぇ。頑張った甲斐があるってもんさ」
昨日と今日の丸二日かけて、様々な料理を用意した町の女性たち。
町人だけでなく、猟兵も美味しそうに食べてくれることが非常に嬉しいようだった。
「今年の祭りはどうでしたか? なんて、聞くまでも無いみたいですね? ……とても美味しかった。来年もまた食べに来ますね」
リーヴァルディの言葉に、女性たちは『当たり前だよ、来ておくれよ!』と嬉しそうに笑うのだった。
猟兵と町人の楽しく幸せな時間は、この後日が暮れるまで続いた。
夜が更ければ――奴らがやって来る。
疫病楽団。不死の病を撒き散らすオブリビオンが。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『疫病楽団の幽霊楽師』
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POW : その疫病と演奏は人々の感情を狂わせ
【狂気に陥らせる演奏と疫病】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 世界を憎み蹂躙させる
【疫病を振りまく演奏】を披露した指定の全対象に【猟兵や世界に対し強い敵対】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
WIZ : そして虜になった者は人を止め、肉の怪物と化す
【疫病にかかりつつ、狂気に陥った人々】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
イラスト:井渡
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
夜更け――。
エルの町から出た猟兵たちは、平原を北に向けて進んで行った。
月明かりのない平原は暗く、不気味な気配に草木は怯えているようだった。
遠くから。
バイオリンの音色が聞こえて来る。
心地良いクラシックのようなその音楽は、風が止むと消える。
――それは疫病楽団の奏でる音楽に違いなかった。
まだここから距離はある。
偵察し罠を仕掛けよう。
先手を取り、有利な戦闘をするのだ。
準備は万全の状態で、奴らを迎えようではないか。
---
●補足
疫病楽団を迎え撃ちます。
エルの町からは遠い場所のため、町を気遣うような工夫は必要ありません。
リプレイは前半の待ち伏せパート、後半の戦闘パートに分かれます。
プレイングは両方でも、片方だけでも問題ありません。
地形などについて。
低木はありますが、草はほぼ生えていません。
夜更けのため、明かりは一切ありません。
遮蔽物のない暗闇の中での戦闘となります。
プレイングは7/18 8:30以降よりお送り頂けますと幸いです。
ブラミエ・トゥカーズ
この世界にも余に似た者はいたのであるな。
未だ現役の者よ。この敗北者が相手しようぞ。
【SPD】
待伏せ:
【蝙蝠】になって偵察。
ルートを確認、湿地帯や空気の澱んだ所で己を罠とする。
罠:
【霧】になって待機。
戦闘:
夜こそ己の時間。従僕は定時なので帰った。
演奏を封じる事を主眼とする。
【天候操作】にて湿気を上げ、音の響きを悪くする。
【霧】状態で楽団に幻覚を与え、演奏内容を狂わせる。
【狼】状態で傷つける事狙いで襲う。狂乱にて演奏を封じる。
自身を縛る吸血鬼伝承の元である赤死病を蔓延させる。
猟兵とは便利であるな幽霊でも病に冒せるのであるからな。
如何かな、この古臭い病は。
隣の者の血を飲めば楽になるぞ。
治らぬがな。
●仮面の伝承
漆黒の空に、音もなく羽ばたく蝙蝠が一匹。
夜と同化した其れは、ゆっくりと地平線を目指して飛んでいく。
「この世界にも余に似た者はいたのであるな」
音楽を掻き鳴らしてやってくるオブリビオンは、疫病を運んで来ると言う。彼女もそれによって縛られているのだ――吸血鬼伝承の元となった、あの恐ろしい疫病に。
蝙蝠姿となったブラミエは、ゆっくりと高度を下げた。
疫病楽団は地平線に沿ってずらりと横に並んでいるようだ。そこまでの距離やルートを確認すると、比較的起伏のある平原の一角にゆっくりと着地する。
そこでブラミエは人の姿に戻るかと思えば、そうではなく。
「――鬼の器に封されしは古き災厄。今ひとたびこの夜に零れ落ちよう。恐怖と共に」
そっと言葉を風に乗せれば、伝承は解放される。
黒い風が彼女を包み込み、蝙蝠は黒い風と混ざって霧となった。
平原のくぼみ、空気の淀んだそこに広がる霧は、近付きつつある疫病楽団を静かに待つ――。
そして、聞こえて来る弦楽器の音色は、切ないカルテット。
まるでこの世界を憎んでいるかのような、聞く者の心に訴えかけるその音色に、ブラミエは――。
「未だ現役の者よ。この敗北者が相手しようぞ」
笑う気配と共に、そう呟いた。
夜こそ、彼女の時間。
従僕は定時で帰ったが、最早必要としていないのだ。
ブラミエは天候を操り雨雲を呼んだ。辺りの湿度は一気に上がり、湿った風が楽団へと流れていく――それは幻覚を見せる風。
それまで空間を支配していた曲はいつしか曲調を崩され、美しいカルテットは聞くに堪えない雑音へと変化していった。
「頃合いか」
ブラミエは呟いて、霧から狼へと姿を変える。
夜を駆ける狼。その牙は、幽霊楽師たちの体を食い破って疫病をばら撒く。
「猟兵とは便利であるな。幽霊でも病に冒せるのであるからな」
狼が吠える。
「如何かな、この古臭い病は」
ブラミエの疫病――それは赤死病。
死装束を纏った仮面の人物ではなくとも、彼女を縛るその疫病が、楽団を死へといざなうのだ。
「隣の者の血を飲めば楽になるぞ。治らぬがな」
本来の姿へ戻ってそう告げる頃には、疫病をばら撒くはずの幽霊楽師が、疫病に苦しみ次々に倒れていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
アストラ・テレスコープ
よーし、美味しい肉のお礼はちゃんとしないとねー!
夜の戦闘なら私の【暗視】の見せ所だね!
偵察に協力するよ!
戦闘が始まったら、遠くから「流鏑流星」で先頭にいるやつを攻撃!
星の光で戦場が照らされれば夜でも少しは戦いやすくなるかな?
セプリオギナ・ユーラス
──疫病と聞いて。
いつからそこにいたのか、
◆正六面体
聞き逃せない
その単語だけは。
夜の暗闇よりもなお昏い霧から喚び出すそれらを配置する。
不意をつけるはずだ。
数も頼みになる。小さくとも能力はそこそこだ。……これは本来の用途と少し違うが、結論は同じだ。傷病者を減らす。それだけの為に在る。
さあ、【施術】を始めるとしよう。
疫病など振り撒かれてたまるか。医療をナメるな。
一人残らず、病巣の一欠片たりとも残らず駆逐[ちりょう]してくれる──!
「真っ暗でも大丈夫だよ!」
暗闇を駆けるアストラは、瞳に星々の煌めきを宿して。
夜目が利く彼女は、真っ暗な平原を苦もなく全速力で進んで行く。
「美味しい肉のお礼はちゃんとしないとねー!」
思い起こされるバップローの味は、やはり忘れられない。
美味しいものをたくさん食べた後は、きっちり働く!
「さて……あれかな?」
地平線の彼方に見えるのは、楽器を手にした――幽霊、だった。
「って、幽霊!?」
アストラが思わず踏みとどまる。瞬きをして、よーく確認するが。
やはり足はない。不明瞭な輪郭に、薄っすらと向こう側が透けた体は、もう紛うことなき幽霊だった。
「うーん、物理攻撃は効かなさそう?」
アステラは暫し考え――その耳に届く悲しげな音楽。
疫病楽団の奏でる曲は、心をざわざわさせる。
「……あまり聞かない方が良いだろう」
突然の後方からの声に、アステラが振り返れば――そこには眼鏡をかけた白衣の男が立っていた。
セプリオギナ・ユーラス(賽は投げられた・f25430)だ。『疫病』と聞いて、彼が放っておくわけがない。
「体に障る類の音だ……疫病の一種だろう」
響くセレナーデに、眉を寄せて囁く。
白衣以外は黒ずくめの彼は、闇に溶け込む正六面体のナニカを手の上に乗せていた。
「それ何?」
「医療用検査機だ。これで――不意をつく」
セプリオギナはそう説明すると、ユーベルコードを展開した。
瞬時に発生する、夜の暗闇よりもなお昏い霧。その中から現れたのは、彼が手に乗せていた正六面体と同じ機械端末の群れだった。
機械と言っても、もにゅりむにゅりとしたブラックタール特有の材質だ。
「……これは本来の用途と少し違うが、結論は同じだ。傷病者を減らす。それだけの為に在る」
優に300を超える正六面体は、セプリオギナの意思に従い地平線目指して静かに転がっていった。
「――さあ、【施術】を始めるとしよう」
正六面体の群れは、突然足元から湧いて出た――少なくとも、疫病楽団の幽霊楽師たちにはそう見えた。
しかし彼らに『驚く』などという感情はない。ひたすらに楽器を掻き鳴らし続けるのみ。
「愚かな……疫病など振り撒かれてたまるか。医療をナメるな。一人残らず、病巣の一欠片たりとも残らず駆逐[ちりょう]してくれる――!」
セプリオギナから迸る声に併せ、正六面体は一斉に幽霊楽師に襲い掛かった。
疫病など届かぬ彼らは、捨て身の一撃を食らわせて楽師を次々に薙ぎ倒していった。
「すごい、うまく先手が打てたね!」
セプリオギナの攻撃に、アストラが笑顔を向ける。
疫病楽団の勢力が弱まった今、彼女は弓を手にした。コズミックロングボウ、宇宙の力を秘めた武器だ。
それまでじっと集中していた彼女は、その想いを矢に込めて解き放つ。
「何処までも……飛んでけっ!」
星の煌めきが暗闇を切り裂いて突き進む。
アストラが放った流星の如き矢は、一直線に宙を進み、散り散りになった疫病楽団の先頭集団に突き刺さった。
「やった!」
まばゆい光は辺りを照らし、楽師たちを吹き飛ばしていくのだった。
照らし出された疫病楽団。
それは、地平線を埋め尽くすように――長い列を成していたのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
フィーナ・ステラガーデン
夜ね!!んーー!よく寝たわ!ここからはダンピールの時間ね!
んー、特に町の人を気遣わなくていいのよね?
じゃあーーやることは一つよ!全部ぶっ飛ばすわ!
暗闇は【アイテム:魔法的メガネ】をすちゃっと付けて対応!
出来れば仲間猟兵と共に動いて後衛を位置取るわ!
楽団が近づくまでに詠唱を開始してUCの太陽を巨大化させていくわ!
目立つから近づいてきたら、そのままどかーんと投げつけるわ!
ブラッドジュースをちゅーちゅーして第二波がきたらもっかいどかーんと繰り返す感じね!
演奏が怖いなら爆風と爆音で消し飛ばせば早いわね!
(アレンジアドリブ連携大歓迎!)
木霊・ウタ
心情
この世界でも平和な町ってあんだな
吸血鬼の支配は絶対じゃない
明けない夜はないってことを確信させてくれた
エルの町を絶対に護り抜くぜ
…肉は喰い損ねちまったけど
前半
音色から楽器の種類と数=敵人数や配置を把握
戦場となる地形の確認
敵が来る側に焔で穴開け複数の落とし穴
幽霊に無意味?
後半
炎を複数配置し灯に
生む影がより足元を見えなくするかもな
破魔の音色奏で敵演奏打ち消す
又空間の根源に共鳴&UCで紅蓮の爆炎起こし疫病焼却
楽師も紅蓮で包み灰に
楽団
音楽は人を笑顔にするもの
人を苦しめ害すなんて
きっと過去のあんたらなら
決して赦せないことだった筈だぜ
歪んじまって可哀想に
紅蓮に抱かれて眠れ
事後
鎮魂曲として楽団の曲爪弾く
フィーネ・ルーファリア
(後半の戦闘のみ参加)
耳に心地いい音楽だとしても、こんなところで聞いたら不気味にしか思えないわね
夜に狩りをすることはないからあまり夜目が効かないから、遠方からの援護ができないのが残念だけど、それでも手はまだ残ってる
それもとっておきのものが、ね
先に他の猟兵たちが張っていた罠にかかってった敵に対して選択UCを使用するわよ(【全力魔法】、【乱れ撃ち】)
集団の敵相手にはこれが一番効果的ですものね
夜目は効かないけど、近づけば【援護射撃】はできるから問題ない
風を矢に纏わせた【属性攻撃】による【乱れ撃ち】で【援護射撃】するわ
この先の街になんか行かせるものですか
ここから先は一歩も通さないわよ!
シーザー・ゴールドマン
近づいてくる音楽に耳を傾けて楽しんだ後。
さて、招かざる客である彼等にはお引き取り願おうか……骸の海までね。
空中から疫病楽団を観察。
彼等を余すことなく覆う様に『クノッソスの迷宮』を発動。
※全ては難しい場合は最も効率的な場所を選択
病原菌が残っては厄介だからね。
迷宮内部に聖なる炎を放って、彼等を焼き尽くします。
(属性攻撃:火炎×破魔×範囲攻撃)
アドリブ歓迎です。
オリヴィア・ローゼンタール
これが疫病楽団……相対するのは初めてですが、なるほど、禍々しい
後半パートから
私自身は【視力】【暗視】で夜目が利く
四肢と聖槍に炎を纏い(属性攻撃)、他の方の視界も確保
目に見えぬ音と病という攻撃は回避が困難
加護を身に纏う(オーラ防御・狂気耐性・毒耐性)ことで耐える
鬨の声(大声・鼓舞)をあげることで演奏の相殺を試みる
疫病楽団なにするものぞ! 前衛! 吶喊ッ!!
加熱された聖槍で病魔を斬り裂き、【全力魔法】で最大強化した【熾天流星脚】で蹴り砕く
私の仲間にはお医者さんがいます、その方に医療において大切なことを聞きました
即ち……加熱消毒!!
●焔は地平線を灼き尽くす
「んーー! よく寝たわ! ここからはダンピールの時間ね!」
直前まで寝ていたフィーナが、暗闇の平原を元気よく歩いて行く。
エルの町はもう見えない。例え月明かりがあったとしても、だ。
「ここまで来れば、町の人を気遣う必要もなさそうね!」
「そうだね、疫病楽団の音楽が町まで届くことはないだろう」
先を歩いていたシーザーが同意を見せる。
真紅のスーツを纏った赤公爵も、この暗闇の中では判別がつかない。
とは言え、存在感は凄いのだが。
「ああ、明けない夜はないってことを確信させてくれたエルの町を絶対に護り抜くぜ!」
フィーナと並んで歩く木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)が拳を握って力強く告げた。バップロー・カーニバルには参加出来なかったが、平原に出る前に見たエルの町は平和そのものだった――吸血鬼の支配は絶対ではないということだ。
「……肉は喰い損ねちまったけど」
ぽつりと付け加えた一言は、尻すぼみに消えていった。
やはりバップローの丸焼きを食べられなかったのは残念だったのか。
「……ん? 何か言った?」
フィーナが首を傾げても、ウタは照れ笑いして誤魔化すのだった。
「――そろそろ聞こえて来たようだね」
シーザーが立ち止まって二人に告げる。
「聞こえるって……何が? 何も聞こえないわよ?」
怪訝な表情でフィーナは言うが、シーザーは微笑を浮かべるのみ。
「んー……これは、弦楽器だ」
目を閉じて耳を澄ましたウタが、その『音』を感じ取る。
「ヴィオラ、チェロ、コントラバス……」
「え、アンタにも聞こえるの!? ちょっと、何で私だけ聞こえないのよ!?」
いつの間にかスチャッとメガネを装着したフィーナが目くじらを立てた。
暗闇を見通せる『魔法的メガネ』をかけて知的な雰囲気になったのに、全く以て台無しである。
「悪い、ちょっと静かにしててくれ」
ウタにそう言われて、どっかーんと怒り爆発……するかと思えば意外と大人しくしているフィーナ。
「……」
嵐の前の静けさ、と言ったところか。
シーザーが口の端を上げて見守っていたが、再び聞こえる『音』へと意識を向けた。それは――悲しい弦楽の音色。
「鎮魂曲、か」
シーザーが呟いて暗闇の先を見つめる。
フィーナとウタも、同じ場所を見やった。
そこに、彼らがいるのだ。
地平線を埋め尽くすかのように横一列に並び、弦楽器を奏で歌う疫病楽団が。
「何だか……数が多くないか?」
ウタが眉を潜める。明らかに楽器の音の数がおかしい。
とは言え、ここからではまだ姿を捉えることは出来ない。
気付かれる前に罠を張るか――ウタがそう思案していると。
「――さて、招かざる客である彼等にはお引き取り願おうか……骸の海までね」
シーザーはそう告げてふわりと宙に浮かんだ。
そのままゆっくりと上昇しながら、ユーベルコードを展開する。
地平線に向けて展開された其れは『クノッソスの迷宮』だ。厳かな迷宮が一息に形成され、地平線へと向かって行く。
さすがにすべてを飲み込むには楽団の列は長過ぎたようだが、多くを中へ取り込んだことは感じ取っていた。
入り口はたった一つ。展開を終えて地上に降り立ったシーザーの前にあるのみ。
「では、病原菌が残らないよう焼き尽くそうか」
静かにそう告げて。シーザーは右手を前に向ける。
そこに生まれた聖なる火球が、恐ろしい速度で迷宮へと撃ち込まれた。
火球は迷宮の中で尚も演奏を続ける楽団を、瞬時に灰へと変えていく。
――鎮魂曲を贈ろう。
シーザーの声は、彼らへ届いただろうか。
「さすがだな。じゃあ俺は……」
疫病楽団の奏でる音の変化を聞き分けられるウタは、大規模な掃討が行われていることを理解していた。だからこそ、シーザーの迷宮の外の連中を倒しに向かわなくてはならない。
ウタは迷宮の外壁沿いを駆けて行く――自身の炎を灯火にして。
「音楽は人を笑顔にするものだ。人を苦しめ害すなんて――」
サウンドソルジャーであるウタにとって、音は大切な相棒であり、癒やしたり鎮魂したりするものだ。
決して、病をもたらす物ではない。
少しずつ見えて来た楽団に、ウタは『ワイルドウィンド』を取り出した。
彼の奏でる破魔の音色が、疫病楽団の鎮魂曲――ウタからしてみれば、何が鎮魂曲だと言いたくなる――を掻き消していく。
そして変調させることで、彼の音楽と楽団の音楽が共鳴を始めたのだ。
「これが――本当の音楽だ!」
ウタが叫べば、空間が軋む。
そこへ放たれるユーベルコード『ブレイズフレイム』!
彼の炎は『地獄の炎』――断罪し憐れむ炎。
そんな紅蓮の炎は、爆音を上げて地平線を焦がしていくのだった。
「さあ、私の出番ね!」
シーザーとウタが戦う間、フィーナはじっとしていた――否、詠唱していた。
もう一度言おう。
あのフィーナが、ちゃんと、詠唱をしていたのだ。
「うるさいわね! とにかく、見なさいこれを!」
誰にともなく突っ込んでから、フィーナは視線を上空へと向けた。
そこには――巨大な黒い太陽が浮かんでいる。
もちろん疑似太陽なのだが、凄まじい魔力によって生み出された危険な塊である。
楽団までの距離は、ウタが配置した灯火のおかげで掴めた。
正直目立つので、早く攻撃したいと思っていたフィーナにとって、彼の灯火は非常に有り難かった。
「さっきは生意気なこと言われたから後でグーパンとか思ってたけど! 目印を作ってくれたことで帳消しにしてあげるわ! さあ、張り切って行くわよー!!」
物騒なセリフを言いながら、フィーナの腕が振り下ろされる。
複雑な魔法陣に従い、黒い太陽がズゴゴゴゴと地平線目掛けて落ちて行った。
「はいはい、逃げても無駄よ!」
フィーナは太陽が落ちる樣を見届けながら、輸血パックをチューチュー飲んでいる。次の太陽を生成するための補給だ。
ウタが戦う場所から東へ逸れた軌道を設定されたそれは、逃げ惑う楽師たちの中心で弾けた。
――巨大なクレータが形成された。
猟兵三名による先制攻撃は、疫病楽団に多大なるダメージを与えることに成功したのだった。
「派手にやっていますね」
オリヴィアが前方の戦いを見つめて呟く。
彼女の金の瞳は夜目が利くため、よく見通せるのだ。
「赤々と燃え盛る炎は見えるけれど……夜目が利かないから詳細まではわからないわね」
隣でフィーネが肩を竦めた。
アーチャーである彼女にとって、暗闇の中で遠方の敵と戦うことは至難の業だ。夜に狩りをする種族もいるが――彼女にはその心得がない。
この距離から、敵を撃つのは不可能だった。
「私が誘導しますから、大丈夫ですよ」
オリヴィアは優しくそう告げると、四肢と破邪の聖槍の穂先に聖なる炎を灯した。白く柔らかな炎が辺りを照らし出す。
この光量ならば、楽団の元まで安全に進むことが出来るだろう。
「ありがとう、助かるわ」
フィーネが微笑んで頷いた。
――二人は地平線を目指す。
「これが疫病楽団……相対するのは初めてですが、なるほど、禍々しい」
火の手が上がる中、オリヴィアが戦場を見つめて言葉を零した。
疫病楽団は、どうやら死霊によって構成されているらしい。
体が透き通った彼らは、炎に巻かれても尚、青白い顔で演奏を続けている。
「耳に心地いい音楽だとしても、こんなところで聞いたら不気味にしか思えないわね」
実際に、曲は良い。しかし場所も悪ければ、その音楽が運ぶ『疫病』も大問題だ。音色は聞くものの心を乱し、狂わせる。
オリヴィアが目を細めて前に出た。
(目に見えぬ音と病という攻撃は回避が困難……)
彼女自身は加護を身に纏っているため影響は受けないが、フィーネや周りで戦う猟兵への効果が危ぶまれる。
オリヴィアはすうっと大きく息を吸い込んだ。
そして――。
「疫病楽団なにするものぞ! 前衛! 吶喊ッ!!」
凄まじい声量で叫べば、楽団の演奏が乱れて効果が薄れる。
ここ一帯を覆っていた、何とも言えない空気が霧散したのだ。
周りの猟兵が何事かとオリヴィアを見たが、すぐに状況を理解して攻撃に転じる。
「さっきより空気が軽くなった……今ね!」
フィーネも矢を番えた。
しかしそれはただの矢ではない。
「我が敵を切り裂きながら、舞い踊れ!」
フィーネが叫んだ。
ユーベルコード『死の舞踏』によって、風の加護を纏った六百を超える矢が一斉に放たれ、空気を切り裂きながら楽団へと降り注ぐ――!
その後方で、オリヴィアの聖槍が唸りを上げた。
「猛き炎よ、我が脚に集い、破邪の流星となれ――!」
ユーベルコード『熾天流星脚』による聖なる炎を纏った足技で、次々と楽師たちを蹴り抜いていく。
フィーネのユーベルコードによって生まれた風が、オリヴィアの聖なる炎を広げていく。
疫病楽団は、確実に燃えていった。
「――私の仲間にはお医者さんがいます、その方に医療において大切なことを聞きました」
真剣な眼差しで、ふとオリヴィアが言葉を零した。
フィーネが彼女を見やる。
「――即ち、加熱消毒!!」
「えっ」
意外な言葉に、フィーネが思わず言葉を漏らす。しかし意外と的を得ているのではないだろうか。
フィーネはゆっくりと戦場を見渡した。
先陣部隊が仕掛けた炎と、オリヴィアの炎。
戦場は炎に包まれ――音楽は鳴り止んだ。
「そうね、加熱消毒」
フィーネは頷いた。
自身の風の力で、炎は広がっていく。
地平線を覆い尽くす程の疫病楽団――絶対に、エルの町へ行かせはしない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…っ、あの音は今の状態で長々と聞くものじゃないわね
風の精霊、お願い。悪しき音色から私を護って…
事前に音や臭いを"風精の霊衣"のオーラで防御して遮断し、
敵の音は気合いと"呼符"の狂気耐性や病毒耐性で耐え、
殺気を絶ち残像のように存在感を薄め闇に紛れ時を待つ
…不快な演奏の返礼に此方も奏でてあげるわ
お前達の音楽が聞こえないぐらいの銃声を…!
第六感が好機を捉えたら【血の鎖錠】を解除してUCを発動
『高速詠唱』術式を『早業』の『暗号作成』で超高効率化し武器改造
大鎌を魔銃に変化して限界突破した魔力を溜め、
傷口を抉る呪詛弾の連射の反動を怪力任せに押さえ込み、
敵陣を『乱れ撃ち』なぎ払う闇属性攻撃を放つ
カイム・クローバー
所構わず、かき鳴らすのは自信の表れか?自分達を止められる連中なんて居ない。嫌いじゃないぜ、そういう自信。
奇襲は他の猟兵に任せる。連中の正面に立って軽い拍手でもするか。
悪くねぇな。こんな無人の荒野で演奏なんて勿体ねぇぜ。骸の海でコンサートでもすりゃ、客も入るんじゃねぇか?
【挑発】交じりに、二丁銃を引き抜くぜ。
踊るのも得意だと聞いたんでね。俺もそこそこ自信がある。一曲どうだ?
【二回攻撃】に【クイックドロウ】で連中の持つ楽器を破壊する。数はそこそこ。一気に全部って訳にはいかねぇが、そこはUCの出番だ。ついでに踊りながら骸の海に還って貰おうか。
コンサート会場の席、俺の分ぐらいは確保しといてくれよ?
●銃弾は地平線に踊る
静かな音楽が、地平線の彼方から風に吹かれてやってくる。
猟兵たちの耳に届くその曲は、狂気。
「……っ、あの音は今の状態で長々と聞くものじゃないわね」
一般人に扮したリーヴァルディは、眉根を寄せて呟いた。
普段の彼女ならば、この程度の力など何てことはないだろう。
しかし今は、呪詛によって全ての力を封印している。
疫病楽団が奏でる曲が、彼女の脳を掻き乱す。
「風の精霊、お願い。悪しき音色から私を護って……」
風の精霊に呼び掛け『風精の霊衣』を纏えば、加護によるオーラが彼女を包み込んだ。『呼符』もある――狂気への耐性はこれで何とかなるだろう。
リーヴァルディは殺気を絶ち、宵闇の中へ沈んだ。
――その時が来るまで。
平原から果ての疫病楽団を眺め、カイムは不敵な笑みを浮かべて佇んでいた。
「所構わず、かき鳴らすのは自信の表れか?」
前の演奏が終わり、続いて始まったのは先程までとは全く違った曲目だ。
楽しげな弦楽を奏でる疫病楽団――まるで、カイムを挑発するかのように。
「自分達を止められる連中なんて居ない。嫌いじゃないぜ、そういう自信」
カイムはそう言って笑うと、ゆっくりと彼らに近付いていった。
この距離から見ても、疫病楽団の規模は『果てしない』。
カイムの立つ位置から西側は、他の猟兵たちの活躍によって沈静化されてはいるものの。東側は彼方へ向かって楽師たちが並んでいる。先は……全く見えない。
――ま、俺は戦うだけだ。
カイムは楽団の正面に立って、軽やかな演奏に合わせた手拍子を始めた。
「悪くねぇな。こんな無人の荒野で演奏なんて勿体ねぇぜ。骸の海でコンサートでもすりゃ、客も入るんじゃねぇか?」
骸の海で――その一言で、演奏はより一層激しさを増した。
明らかな敵意の籠もった狂気の音色が、カイムへと魔の手を伸ばす。
しかしその頃には、カイムの二丁銃が彼らに向けられていた。
「踊るのも得意だと聞いたんでね。俺もそこそこ自信がある。一曲どうだ?」
告げると同時に双魔銃が火を噴いた。
素早い銃撃が瞬く間に楽師の持つ楽器を撃ち抜いていく。
軽やかなステップを踏みながら、カイムが舞う。
と、その時――。
「……不快な演奏の返礼に此方も奏でてあげるわ。お前達の音楽が聞こえないぐらいの銃声を……!」
機を伺っていたリーヴァルディが、闇の中から飛び出した。
自らを縛っていた『血の鎖錠』を解除した彼女は、凄まじい魔力の渦の中心に立っている。
「……限定解放。精霊言語修正、魔力錬成、術式圧縮……殲滅せよ、血の銃士」
そのままユーベルコードを展開すれば、彼女が手にしたグリムリーパーは魔銃へと形状を変化させた。
銃に込められる弾は、臨界ギリギリの魔力。
「喰らえ……!」
白い華奢な指がトリガーを引く。
暗号化した術式により超高効率で乱射される魔弾と共に、激しい衝撃が彼女を襲う。
通常なら腕が千切れそうな衝撃を、力で無理矢理に抑え込んで、リーヴァルディは連射し続けた。
暗黒のプラズマを纏って闇を切り裂く魔弾は、楽団へ着弾と同時にその身を塵に変えていく。
「ヒュウ! やるじゃねぇか」
口笛を吹いて称賛したカイムは、負けじとユーベルコードを展開する。
「――It's Show Time! ド派手に行こうぜ!」
クロスさせた銃が咆哮する。
マシンガンすら凌駕する連射によって、紫電を纏った銃弾が撒き散らされた。
「踊りながら骸の海へ還りな! コンサート会場の席、俺の分ぐらいは確保しといてくれよ?」
楽しげにステップを踏むカイムと、滑るように駆けるリーヴァルディ。
闇に踊る銀の髪と、怪しく光る紫の瞳――悪魔のように舞う二人のガンナーを止められるものは、最早誰もいない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メフィス・フェイスレス
夜目が利く私の強みが活きるわね
派手に狼煙を上げましょうか
闇に紛れ先行し低木の上に陣取り敵の規模と位置を確認
味方の傍に控えさせた飢渇を通じ情報を共有する
敵の進行方向に飢渇を地雷原として設置し楽団のど真ん中で起爆する
――敵の性質と町の安全を考慮すると、町から離れて迎え撃つべき相手、か
猟団長さんじゃないけど、なんかやな感じ
敵を倒したら味方に促してとっとと町に戻るわ
町を発つ前に指定UCを何体か警備として町に残しておいた事にしてもいい?
五感を共有してるから何かあればすぐに分かるわ
そっちに集中力をさくから戦闘には多分参加できないけど
取り越し苦労ならそれでいいけどさ 私の腹が無駄に減るだけ ま、念のためにね
ロータス・プンダリーカ
レティシャさん(f28126)と
暗い所の闘いなら得意とする所ですにゃ
おお、待ち伏せですかにゃ。良いアイデアにゃあ
ボク愛用のミカン箱より見えなくて良いにゃ
お手の物というか…狭い所に入るのは何か落ち着くにゃ(もぞもぞ隠れ)
…なんか聞こえてきましたにゃ
地平線の向こうから響いてくるかのような…
普通の人には抗えない、そんな音だけど
音楽を頼りに敵との距離をはかり
いよいよ近付たら布を取り払う
残念ながらボク達猟兵にはそんなものは聞かにゃい!
レティに合わせて挟み撃ち攻撃
炎の隙間を縫うように接近し、銃撃や拳で急襲攻撃
平和に生きる人々を葬列に加える訳にはいかにゃい
我が拳に賭けて、お前ら全部骸の海に送り返すにゃ
レティシャ・プリエール
ロータス店長(f10883)と
暗闇での待ち伏せなら私に考えがあるわ
遮光性の黒い布を用意
低木の影に潜み、布を被って疫病楽団が近付くのを待つわ
店長もここに隠れる?
猫なら身を隠すのなんてお手の物よね
音楽が近付いたら店長と共に立ち上がり
私の炎を一気に燃え上がらせて、燐光で視界を灼いてあげる
闇夜の幽霊なんて不気味だけれど、こちらも妖怪だからね、別に怖くなんてないわ
バップローの方が、よっぽど……(こほん!)
UCの炎操り攻撃
まとめて倒せそうなところには大きな炎を
逃げそうな者には複数撃ち出すわ
祭りが終わって幸せそうに眠る人々
明日の朝も、幸せに迎えてもらわなくちゃ困るのよ
だから、ここで消えてちょうだい!
●黄昏の葬列、魔性の音
暗闇に金の瞳が光る。
夜目の利くメフィスは先行し、疫病楽団が列を成しているのが見える辺りまで近付くと、そこに生えていた低木に身を潜めた。
「……あれね」
弦楽器を優雅に弾く楽師たち。
紅い髪の女や、白髪の少女など、実に様々な容姿の楽師は、一見一般人にしか見えなかった――足がないのを除けば。
「幽霊ってわけ」
メフィスが面白くもなさそうに呟くと、木から降りて平原を奔る。
気配を消して闇に紛れれば、もう彼女がどこにいるか誰にもわからない。
疫病楽団は、南に向かって進行しているようだ。
西側は炎に包まれ、時折紫の雷が光るから、別の猟兵たちが戦っているのだろう。
東側はまだまだ無傷。とは言え、列の終わりは地平線ギリギリに見えている。
観察しながら、メフィスは地雷を設置して回った。地雷と言っても、自身の飢餓衝動を黒いタール状の液体に変換した、言わば”自分地雷”だ。
「さあ、はじめようかしら」
――近付いて来る音色。
やがて楽団は、狂気を連れて暗闇の平原をやって来る。
それは、すべての人々にとって、抗えない魔性の音色。
「……なんか聞こえてきましたにゃ」
地平線の向こうから響く音に、ロータスは耳を傾けた。
「これは……何だか抗えない、そんな音だけど……」
「耳を塞ぎたくなる音楽ね……店長、聞かない方がいいわ」
レティシャの声で、ロータスははっと我に帰る。
二人は平原の遮蔽物のない場所にいる。
「そろそろ身を隠したほうがいいですにゃ」
ロータスがどう隠れるか思案していると、レティシャが不敵な笑みを浮かべた。
「暗闇での待ち伏せなら私に考えがあるわ」
そう言って、大きな黒い布を取り出す。
「そこの低木の影に潜んで、これを被って疫病楽団が近付くのを待つわ」
「おお、待ち伏せですかにゃ。良いアイデアにゃあ」
ロータスの言葉に少しはにかんだレティシャは、低木の側でバサッと布を被り、顔だけちょこんと出して彼を見た。
「……店長もここに隠れる?」
レティシャの言葉に、一瞬愛用のミカン箱に隠れるかとも考えたが、コクコクと頷く。
「ボク愛用のミカン箱より見えなくて良いにゃ」
「ふふ、猫なら身を隠すのなんてお手の物よね」
「お手の物というか……狭い所に入るのは何か落ち着くにゃ」
嬉しそうに黒い布へもぞもぞ入るロータス。
二人は木の影になった。
と、そこへ黒いタール状の塊がぽよよーんとやって来る。
「メフィスの連絡ね」
レティシャが黒い布を上げて、それを迎え入れた。
メフィスの声が疫病楽団の全容と、この後の作戦を伝える。
二人は頷きあってその時を待った。
――近付いて来る音色。
狂気の楽団が、やって来たのだ。
突然、彼らの足元で大きな爆発が起こった。
メフィスが仕掛けた地雷を踏んだのだ――足はなくとも、通過しただけで爆ぜるトラップ。
燃え上がった楽師たちが、瞬時に灰となっていく。
驚いた楽団は、蜘蛛の子を散らすように南へ向かって走った。
「掛かったわね」
メフィスは離れた場所から、飢渇を通じて状況を把握していた。
彼女は今戦えない。と言うのも、彼女はエルの町に置いてきたユーベルコード製の『獅子』と五感を共にしている。
戦えば彼が消えてしまう――それを許すわけにはいかないのだ。
これは万が一町に何かあった場合を危惧した結果だ。疫病楽団の性質を考えれば、町から離れて迎え撃つべき相手であることは理解している。
しかし――。
「猟団長さんじゃないけど、なんかやな感じだったのよ」
黒髪のキマイラの顔が脳裏をよぎる。
無駄に腹が減る――つまり、嫌な予感というやつだ。
「取り越し苦労ならそれでいいけどさ。ま、念のためにね」
メフィスは再び楽団と町の様子を監視し続ける。
「……来ましたにゃ」
「来たわね」
同時に呟いた二人は、目配せし合った。
そして、大きく布を払いのける。
「残念ながらボク達猟兵にはそんなものは聞かにゃい!」
ロータスが叫ぶ。
突然現れた二人に、楽団は驚いて立ち止まった。
そこに放たれる青白い炎。レティシャの燐光は、楽師たちの目を灼いた。
「闇夜の幽霊なんて不気味だけれど、こちらも妖怪だからね、別に怖くなんてないわ!」
言い放つレティシャ。
昼間に戦った魔牛を思い出し、『バップローの方が、よっぽど……』と言いかけて咳払いする。
ロータスがそれに気付いて微笑んでいたことには、勿論気付いていない。
楽団をキッと睨みつけると、青白い宝石を戴く杖を突きつけて叫んだ。
「祭りが終わって幸せそうに眠る人々……明日の朝も、幸せに迎えてもらわなくちゃ困るのよ。だから、ここで消えてちょうだい!」
レティシャはユーベルコードを発動させると、激しく炎を撃ち出して楽師たちを焼き尽くした。
ロータスはいつの間にか楽団の後方へ回り込んでいた。
向かい来るレティシャの炎の間を縫って、ニャン・カタによる素早い攻撃を繰り出せば、背後から鋭い一撃を貰った楽師たちが次々と倒れていく。
そして、いつの間にか引き抜いた虹色光線銃で、更に追い打ちをかける。
「平和に生きる人々を葬列に加える訳にはいかにゃい。我が拳に賭けて、お前ら全部骸の海に送り返すにゃ!」
――去る者は決して赦さない。
二人は疫病楽団を奈落の底へと追いやっていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シャルロット・クリスティア
低木はあれど草は無し……。
地面に罠を張るのは難しそうですね。
仕方ありません、敵の進軍ルートの予想と、そこから有効そうな狙撃ポイントを探すだけに留めるしかありませんか。
幸い、月明りも無い夜です。低木であれど、隠れるには十分でしょう。
目には自信がある。灯などなくともこちらはどうとでもなります。
演奏……ここまで文字通りの『楽団』というのも珍しい。
巻き込まれただけの人の被害は極力抑えたいところですが……極力、疫病の発生源……楽師に狙いを絞って、気づかれない位置から先手を取って狙撃しましょう。
数発撃ったら位置を把握される前に後退、別のポイントにてまた数発。
他の猟兵との戦闘に紛れられれば儲けものですね。
田守・狼護
祭りも終わって本番、ってとこだな
気ぃ抜かずにいくか
さて、待ち伏せだが……
夜目も鼻が利くからな、大した障害にはならん
低木に匍匐で近寄り、そのままで待機
太郎と花子は別ルートで近寄らせて待機
楽団が現れて、他の猟兵が仕掛け始めたら
俺たちも合わせて襲撃する
手当たり次第殴るつもりだが、敵UCを感じたら
防御の構えを。任せとけ!(かばう+オーラ防御+UC)
動けない間は太郎と花子が攻撃
攻撃の波が収まったら、UCを解除して、再び暴れまくる
疫病パレードだかなんだか知らんが、
祭りはもう終わったからとっとと還りな!
アドリブ歓迎
インディゴ・クロワッサン
アドリブ共闘大歓迎~
うーむむ、空高く飛んでの偵察って出来るかな…
UC:限定覚醒⋅藍薔薇纏ウ吸血鬼 を使えば飛べるから【狂気耐性】を発動させながら【空中浮遊】して【闇に紛れ】つつ、【暗視】でどんな状態か探れないかなー
勿論他の皆にしっかりと報告するよー
罠とかが一通り発動し終わったら、地上で戦ってる面々の邪魔にならない様に【空中戦】主体で立ち回ろうかな
Piscesの短剣部分を【スナイパー】で的確に【投擲】したら【ロープワーク】で鎖部分を操って回収したりとかー
Vergessenに持ち変えて【怪力/鎧砕き/鎧無視攻撃/部位破壊/範囲攻撃】を込めに込めた【衝撃波】を他の猟兵に警告しながら放ったりとか、ね☆
●それは冥府のカルテット
「うーむむ、空から偵察って出来るかな……」
インディゴは暫し考え、夜闇を見通した。
金の瞳が地平線に広がる炎を映す。
「みんな戦ってる」
疫病楽団は、まだ東の端に残っていた。
今も、その狂気の音色を奏で続けているのだ。
視線を戻す途中、平原に蠢く影に気付いた。
「あれは……」
闇に紛れて匍匐前進する男性。
茶色の髪から狼の耳が見える――狼護だ。
また別の場所では、静かに気配を消して走る小さな人影。
金の髪に青い帽子――シャルロットだ。
「なる程、じゃあ僕は空から行こう」
インディゴはにこりと微笑むと、小さく呟く。
「藍の血の片鱗を、今ここに」
彼の体内を巡る藍の血が活性化する。
背中が盛り上がって出現する一対の翼。
それを音もなく羽ばたかせ、一息に空へと舞い上がる。
宙から見る平原は、炎の海と紫の雷が奔る凄まじい戦場と化していた。
「わお、これは激しい戦いになってるねぇ」
本心かよくわからない飄々とした口調で呟き、ぐるりと旋回する。
楽団の残数と位置から、脳内でさくっと今後の方針を立てると、インディゴは二人の猟兵の元へ飛翔した。
「太郎、花子、見えるか?」
匍匐前進で低木の下までやって来た狼護は、相棒二匹を呼び寄せて前方を探った。
夜目も鼻も利くから、戦況はよくわかる。
猟兵がかなり押している――と言うより、あと一息というところまで来ているようだ。
しかし、戦場に響き渡る狂気めいた音楽が、一向に鳴りやまない。
「おっと、近付いて来るな」
二分化した疫病楽団の片割れが、ゆっくりと狼護がいる近くまでやって来ていた。
身構える一人と二匹。
と、その時。
空に気配を感じて見上げれば、そこにはインディゴが滞空していた。
「やあ。今空から様子を見て来たんだけど、近くの楽団は結構数が多かったよー。あっちに残ってるのは近くで潜伏してるシャルロットに任せて、僕たちで片付けちゃおう」
「なるほど、情報ありがとな。ならば俺はこいつ等と挟み撃ちするから、インディゴは空から援護を頼む」
腹ばいのまま告げる狼護に、インディゴは笑顔で応えて再び舞い上がった。
――あの格好、苦しくないのかなぁ?
インディゴの疑問は空へと消えた。
「じゃあ僕から行ってみよー」
銀の閃き。
インディゴの一対の短剣Piscesが投擲され、チェロを演奏する楽師二人を射抜いた。
伸縮自在な鎖に繋がれたPiscesは、すぐさま回収され、続く一投でビオラ奏者二名を射抜く。
「よし、今だ!」
それを合図に、狼護が暗闇から飛び出した。
握りしめた拳で、片っ端から楽師を殴り飛ばしていく。
上空と前方からの攻撃に、疫病楽団が取る道はひとつ。
即ち、届く敵を攻撃だ。
楽器を構えた彼らを目に映した狼護は、牙を剥いて笑った。
「任せとけ!」
そう言って発動したユーベルコードの力によって、彼は鉄壁の防御を得る。
楽師たちの狂気の演奏を、涼しい顔で受け流した。
その間、太郎と花子は楽団の背後に回り込み、演奏に集中している彼らの背中に牙を向ける。
「今がチャンスだねー」
インディゴも獲物を黒い直剣Vergessenに持ち替え、戦場へ向かって急降下した。そのまま軽く振り抜けば、凄まじい衝撃波が狼護ごと楽団を薙ぎ払った。
「ごめん、無敵っぽいからまとめて攻撃しちゃったー」
てへ、と笑って告げるインディゴに、狼護は笑って『大丈夫だ』と手を振る。
陣形を完全に崩された疫病楽団。
「勝負あったな。疫病パレードだかなんだか知らんが、祭りはもう終わったからとっとと還りな!」
ユーベルコードを解除した狼護が、残った楽師に再び拳で襲い掛かる。
花子の加護を受けた太郎も飛び掛かり、インディゴはVergessenを手に華麗に走り抜ける。
疫病楽団の断末魔は、冥府へ。
低木はあれど、草はなし。
罠を張るには難しいと判断したシャルロットは、先程インディゴから受けた情報を元に、月明りのない平原を素早く移動していた。
「敵の進軍ルートからいくと――あそこが良さそうですね」
有効そうな狙撃ポイントを認め、向かい合って並ぶ低木の間に身を隠す。
夜目の利く彼女は灯のない暗闇を見据え、そこにいるはずの疫病楽団を観察した。
――四人、だった。
彼らは憂鬱なカルテットを奏でている。
「演奏……ここまで文字通りの『楽団』というのも珍しい」
シャルロットは手早く狙撃の準備を進める。
西の方から時折聞こえる音は、インディゴと狼護が戦っている音だろう。そして残る疫病楽団は、あの四人のみ。
四人の楽師の後ろには、曲に合わせて踊る人影が見えるが、彼女の洗練された腕なら誤射することもない。
既に発動しているユーベルコード『蒼穹を映す瞳』――その空色の瞳が、一人を捉えた。
「……」
一瞬の静寂――そして、散る赤。
急所を狙った、確実な一撃。
残された楽師三人は、演奏の手を止めてシャルロットの姿を探す。
表情のない顔からは、焦りも恐怖も何も読み取れない。
諦めて再び楽器を構えた、その時。
まったく別の方角から放たれる銃撃。
またひとり、急所を撃ち抜かれて崩れ落ちる。
僅かに表情らしきものを浮かべ、楽師がシャルロットを探す。
しかし、見つかるはずもなく。
――タン、タンと。
静かな平原に銃声が二発。
同時にシャルロットが姿を現す。
残された疫病楽団がいた位置から遠く離れた場所で。
小さな少女は、銃を肩に担いで佇んでいた。
疫病楽団――弦楽団の曲目は、すべて終了した。
平原には静寂が訪れ、猟兵たちは勝利を収めた――かのように見えた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
第3章 集団戦
『疫病パレード』
|
POW : 安楽のレクイエム
【演奏される曲から毒属性の疫病】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 喝采のファンファーレ
戦闘力のない【人々を死に至らしめる呪い属性の疫病】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【感染者は倒れ、演奏をする亡者となること】によって武器や防具がパワーアップする。
WIZ : 終わらないパレード
自身が戦闘で瀕死になると【一瞬で他の亡者へと憑依する先導者の霊】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
イラスト:森乃ゴリラ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
弦楽団が燃え尽きた灰から、再び音楽が鳴り響く。
それは、笛の根。
――ピュールル、ピュールル……。
静かなフレーズにはじまり、だんだんと楽し気なフレーズが混じる。
スネアにアコーディオン……音が増えるに従い、闇の中から楽師が湧き出る。
彼らは今までどこにいたのか――弦楽団に隠れ、潜んでいたのだろうか?
しかしそれは、誰にもわからない。
様々な楽器を持った楽師たちが、笛吹き男を先頭に再び列を成す。
そして、どこからか仮面の男がやって来て、踊りながら叫ぶのだ。
「疫病パレードへようこそ!」
そう、再びパレードは始まった。
弦楽団とは比べ物にならない程の、恐ろしい狂気の音色を響かせて。
疫病パレードはどこまでも続いて行く。
目指す場所は――楽園(アビス)。
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●補足
再び疫病楽団を迎え撃ちます。
今度は戦闘がはじまった状態でスタートです。
疫病楽団は、二章の楽団よりも強くなっています。
彼らが奏でる音楽は、猟兵にも『不治の病の感染』の心配があります。これの対策を行えば、プレイングボーナスが加算されます。
地形は二章と変わりありませんが、クレーターが幾つか増えています。
プレイングは7/24 8:30以降よりお送り頂けますと幸いです。
フィーナ・ステラガーデン
またうさんくさい道化師が出てきたわね!
どれだけでて来ても関係ないわ!地平線ごと焼き尽くしてやるわ!
とりあえずなんか聴こえるあの音楽が町まで届くとやばそうな感じね!【第六感】
音が危ないなら音の出所を潰せばいいのよ!
というわけでUCで炎をいっぱい出現させて合体させることなく
楽器を持ってる楽師達の楽器を射抜くわ!なんなら楽師ごと焼いてしまっても構わないわね!
道化師は私は気にしないわ!あまりにうさんくさいけれどとにかく数がいるから他を全部焼き尽くして乗り移る場所を減らす作業にうつるわ!
数があまりに多いようならUCは2発でも3発でも撃つわね!
(アレンジアドリブ連携大歓迎!)
カイム・クローバー
道化師のご登場か。パレードの正体はコンサートじゃなくて、サーカスだった訳だ。俺はサーカスは好きになれなくてね。個人的に道化師は嫌いなんだ。
UDCで聞いた話がこんなトコで役に立つとは。疫病の正体ってのは『カビ』らしい。強いて言うなら毒属性のカビってトコか?
普通の炎ならUC製のカビを焼き払うなんざ不可能だろう。…生憎と俺の炎は普通じゃねぇがな。
魔剣を顕現し、刀身に黒銀の炎の【属性攻撃】を宿し、【範囲攻撃】で薙ぎ払う。疫病を焼き払い、綺麗な空気に変えるぜ。
空気が淀んでたみてぇだからよ、気を利かせたつもりだったが、マズかったか?(笑いつつ)
正直少し飽きて来たんでね。そろそろパレードも幕引きと行こうぜ。
●終楽章~炎をもたらす者
「道化師のご登場か。パレードの正体はコンサートじゃなくて、サーカスだった訳だ」
ため息交じりにカイムが肩をすくめる。
楽団の奏でる曲が盛り上がりを見せると、『ラリリラッラーララ』とコーラスまで入る始末。
――確かに、火の輪を潜るライオンでも登場しそうな……そんな雰囲気だ。
「またうさんくさい道化師が出てきたわね!」
フィーナは輸血パックを飲み切って魔力の補充を終わらせると、よっこいしょと立ち上がった。
ずらりと列を成すパレードを見やれば、多彩なジョブで構成されているのがわかる。団旗や松明を掲げる者、異国の衣装を身に纏って踊る女達、マントを翻して妖しい動きをする胡散臭い仮面の男……それが視界に入った瞬間、フィーナは目を逸らした。
――見なかったことにしたようだ。
「俺はサーカスは好きになれなくてね。個人的に道化師は嫌いなんだ」
素直な感想を漏らすカイム。
紫の瞳に疲れは見られない――そこにあるのは戦意のみ。
「どれだけ出て来ても関係ないわ! 地平線ごと焼き尽くしてやるわ!」
フィーナもやる気十分に、杖を振り回して叫ぶ。
そして戦闘開始とばかりに詠唱をはじめる彼女を制して、カイムが笑って言った。
「フィーナは知ってるか? 疫病の正体」
「正体? 正体も何も、疫病ってビョーキでしょ!」
予想通りの反応に、カイムは指を振る。
「UDCで聞いた話なんだが――疫病の正体ってのは『カビ』らしい」
「カビ!?」
思いも寄らない回答に、フィーナが怪訝そうな顔で再び楽団に視線を向けた。
「強いて言うなら毒属性のカビってトコか?」
カイムの指摘に、うーんと唸る。
フィーナの脳内では、緑のもこもこしたカビが蠢きながら楽しげな曲を演奏していた。
「つまり――」
「つまり、燃やせば良いってことよね!?」
二人の結論は、『焼き払う』だ。
「ユーベルコード製のカビだとすれば、普通の炎じゃ焼き払うなんざ不可能だろう」
「こっちもユーベルコードの炎で燃やせば良いってことでしょ! やってやるわよ!」
こうして、地平線は灼き尽くされることとなる。
「とりあえずなんか聴こえるあの音楽が町まで届くとやばそうな感じね!」
フィーナは視線を走らせて音の出所を探る。
しかし疫病パレードの楽師は点在しているらしく、一括で燃やすということは難しそうだった。
「ははーん、そういうことね! じゃあこうするまでよ!」
フィーナはユーベルコードを展開する。詠唱なしにボボッと炎が宙に灯った。
喰らう灼熱の黒炎――汚物を消毒する凄まじい熱量の炎は、光すら通さない漆黒。
それがフィーナの周りに81個生成された。
「狙うは楽師よ! なんなら楽師ごと焼いても構わないわね!」
物騒なセリフを吐きながら、フィーナは杖で楽団を指し示した。
「焼きつくせえぇぇええ!!」
叫び声に合わせて、まるで彼女から逃げるように黒炎たちが飛翔する。
向かう先は楽師の持つ楽器。それは、多くが木製の弦楽器や木管楽器だった。
そこへ黒炎が着弾すれば――楽師ごと火柱に包まれる。
「木はよく燃えるわね!」
フィーナは腕を組んで首を縦に振りながら――。
「って、なんか出てきたわ!!」
目を見開くフィーナ。
燃え尽きたかに思われた楽師から、ふわりと光が抜け出る。
それは宙を漂って、別の楽師の朽ちた体に吸い込まれていった。
「んー、嫌な予感がするわね……」
フィーナが呟くと同時に、朽ち果てたはずの楽師の体は再生し、何事もなかったかのように再び楽器を掻き鳴らしはじめた。
「なんですってぇぇぇ!? こんなのキリないじゃない!!」
フィーナの目が吊り上がった。
再びユーベルコードを詠唱し、どかーんと黒炎を弾けさせる。
「そもそも乗り移る場所を減らせば解決だってことに気付いたわ!」
ザ・殲滅作戦。
フィーナはひたすらユーベルコードを撃ち続けた。
――またクレーター増やしたよこの人……。
「派手にやってるな」
火を噴く怪獣の如き戦いを見せるフィーナを笑って眺めていたカイムは、その手に神殺しの魔剣を顕現させた。
「さて、俺も燃やすか。……生憎と俺の炎は普通じゃねぇがな」
ユーベルコード製のカビを焼くための、炎。
神をも殺す終末の黄昏――その紅い刀身が獲物を求めるように喘ぎ、黒銀の炎を噴き上げる。
「清浄な空気に変えてやるぜ」
余裕の笑みを浮かべたまま、カイムが腰を落とす。
疫病パレードは、猟兵など気にしていないかのように、楽しげに踊り狂ってエルの町目指して進んでいく。
「その余裕、すぐに消してやるぜ」
カイムはすっと息を吸うと、ぴたりと呼吸を止めた。
そして一閃――振り抜かれた魔剣。そこから迸る黒銀の炎が、辺りに漂う毒性の空気ごと灼き尽くす。
楽師も炎に包まれ、そこから抜け出た霊体もまた、瞬時に消滅する。
「空気が淀んでたみてぇだからよ、気を利かせたつもりだったが、マズかったか?」
笑いながら告げるカイムに、応える楽師はもういない。
「正直少し飽きて来たんでね。そろそろパレードも幕引きと行こうぜ」
黒銀の炎を宿した魔剣を構え直し、カイムは一歩踏み出した。
先頭の第一楽団は、二人の猟兵の炎で壊滅した。
続く第二楽団以降、地平線を埋め尽くすパレードに向けて、猟兵の快進撃がスタートしたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
木霊・ウタ
心情
未来は命の重みだ
今を生きる命が未来を創り上げていく
絶対に護り抜くぜ
感染
命を弄び蔑ろにする輩に絶対負けない
との誓い込め
破魔の曲奏で敵曲打ち消す
音色を空の根源に共鳴させて風を呼び&UCで
紅蓮の竜巻起こし疫病焼却
例え回避されても高熱が
楽器を歪め音階を狂わせ
空気を歪め音の伝導も狂わせ
敵曲減弱
戦闘
Wウィンドの呼ぶ烈風が炎を運び
迦楼羅の如く魔を喰らい薙ぎ払う
敵曲の旋律や
踊りのリズムから挙動を読み回避
回避困難時は炎壁で防御
仲間を庇う
傷は炎の物質化で塞ぐ
楽団
人を呪い殺す曲を楽しむとは
歪んじまって可哀想に
今、海へ還してやる
事後
安楽のレクイエムで送る
海で安らかに
んじゃ町に戻って肉喰おうぜ、肉
フィーネ・ルーファリア
疫病を撒き散らすだけの楽団なんて、本当にどうかしてるわ
音楽は本来楽しいものであるはずなのに、人を苦しめるのは音楽とは言わない
ここで食い止めなきゃ、この先の町がどうなるか分からないわね
私と周囲の猟兵達の周りに風の魔法で障壁を作って、疫病の呪いを防ぎましょう(【呪詛耐性】)
選択UCは引き続き同じものを使用、【全力魔法】の『風』の【属性攻撃】で一気にカタをつけるわ
打ち漏らした敵に関しては弓による【援護射撃】で確実に仕留める
私たちにも『不治の病の感染』の危険があるから、なるべく早く終わらせるように尽力するわよ
●終楽章~風をもたらす者
第二楽団は、金管楽器を掲げた楽師で構成されていた。
にこにこと笑顔を振り撒き、トランペットやサックスを吹き鳴らす彼らは、ほとんどが少年少女だった。
「疫病を撒き散らすだけの楽団なんて、本当にどうかしてるわ」
フィーネは弓を手に、厳しい表情で楽団を見やった。
音色が頭に響く。一般人であれば瞬時に発狂しそうな、そんな音階。
「音楽は本来楽しいものであるはずなのに、人を苦しめるのは音楽とは言わない……ここで食い止めなきゃ、この先の町がどうなるか分からないわね」
エルの町は遥か南だが、この規模の楽団が奏でる曲となると、一体どれ程の効果を秘めているかわからない。
フィーネの隣で、ウタも眉根を寄せていた。
「未来は命の重みだ。今を生きる命が未来を創り上げていく……絶対に護り抜くぜ!」
サウンドソルジャーの彼にとって、この音色を放置するわけにはいかなかった。
ウタは自身のギターを取り出すと、静かに爪弾く。
――命を弄び蔑ろにする輩に絶対負けない。
そんな想いを籠めた、破魔の曲。
音量ではなく、その性質が空気を震わせる。
フィーネは耳に心地の良いその音色を聞きながら、風の精霊に呼び掛けて巨大な障壁を作り出した。
風の障壁は、呪いの効果を打ち消してくれる。恐ろしい疫病から、猟兵たちの身を守るのだ。
「まずはあの音を打ち消す!」
ウタがギターを弾く手を早めれば、その音色が徐々に激しさを増していく。
空気との共鳴も強まり、フィーネの障壁の外側で、不協和音が響き渡った――疫病パレードの奏でる音楽が、ウタの曲によって歪まされたのだ。
しかし、小さな楽師たちは、楽しげに楽器を掻き鳴らし続けた。
ウタがゆっくりと障壁から出ていく。
歪んだ曲に晒されながら、彼は『地獄の炎』に包まれた。
「人を呪い殺す曲を楽しむとは……歪んじまって可哀想に。今、海へ還してやる」
そう告げるウタを中心に、紅蓮の竜巻が発生する。
地獄の炎から生まれた竜巻と音の共演は、辺り一帯を灼熱の舞台へ変えていった。
「凄いわね……巻き込まれたらこちらまで燃えてしまいそう」
フィーネが障壁の中から風を操り、空気の流れを変えた。
熱気は全て、楽団へと向かって流れるように。
障壁の内部は、清浄な空気と快適な温度で保たれている。
「さあ、早く終わらせましょう。障壁で防いでいるとは言え、『不治の病の感染』の危険性はあるわ」
他の猟兵たちにそう呼び掛けながら、フィーネはユーベルコード『羽刃:死の舞踏』を展開した。
彼女の周りに出現した美しい羽根。
先端についた風の刃が、薄い緑の光を放っている。
「タイミングは……ウタ次第ね」
彼女の視線の先で、ウタは文字通り炎になっていた。
彼の掻き鳴らす音は烈風を呼び、楽団に向かって紅蓮の炎が吹き付ける。
凄まじい熱の効果で空気も楽器も歪み、パレードから音が消えていった。
まるで迦楼羅焔の如き炎は、片っ端から楽師を喰っていく。
「……今ね」
後方から、フィーネが風の羽根を一斉に撃ち出した。
羽根は複雑な紋様を描きながら、ウタの炎とは逆方向から楽師へと向かう。
風を切って飛翔する羽根の刃は、楽師たちを斬り刻んだ。
「これもあげるわ!」
フィーネは弓を引き絞った。
風の加護を受けた矢が、羽根を追って次々に射られる。
まるで流星の如く降り注ぐ矢。
楽団は前方からの炎の竜巻と、後方からの風の矢に攻め立てられ、逃げ場を失った。
――それでも、楽師は笑顔のまま楽器を弾き続けている。
「まるで狂気そのものね……」
フィーネの呟きは、激しい風の音に掻き消えた。
第二楽団は、二人の風によって壊滅した。
灰となった楽師にレクイエムを奏でていたウタが、ゆっくりと立ち上がる。
「これが終わったら、町に戻って肉喰おうぜ、肉!」
爽やかな笑顔で告げるウタに、フィーネは優しく微笑んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メフィス・フェイスレス
当ては外れたけど予感は当たったという所かしらね
こいつらもしかして弦楽団を増殖させてる?
折角数を減らしてきたって言うのにネズミみたいに
どいつもこいつもヒトを食い物にしようとする!
毒は血液を操作して自前で抗体を作り、呪いは『呪詛耐性』で耐えながら
闇に紛れて接近、強襲するわ
疫病と呪いをばらまく奴が自分の力で倒れるわけがないわよね
だったらその耐性をお前達からいただけばいい話
腕から骨刃を束ねた顎門を形成して敵に頭から喰らいついて貪る
亡者を糧に復活するなら憑けるモノが跡形もなければいいのよ
倒れた骸は喰らって処理する
ちょっとはしたないけど丁度暗闇だし音を立てなければ味方にもとやかくは
言われたりしないでしょ
●終楽章~血をもたらす者
「当ては外れたけど予感は当たったという所かしらね」
ぞろぞろと列を成す疫病楽団に、うんざりした視線を投げかけながら。
メフィスは状況を把握すべく思考を巡らせた。
地平線に沿ってどこまでも続いた弦楽団の列は、確かに猟兵たちによって滅ぼされた。
音楽は鳴り止み、静寂の世界が訪れ――そして再び笛の音が鳴り響いたのだ。
その後は、気付けば彼らがそこにいた。
「こいつらもしかして……弦楽団を増殖させてる?」
折角数を減らしても。
それはまるで――。
「まるでネズミみたいに……どいつもこいつもヒトを食い物にしようとする!」
音楽でヒトを取り込み、パレードの列に加える――そんな疫病楽団は、ダークセイバーに蔓延るヴァンパイアと何も変わらない。
メフィスは自身の血を操作して、抗体を作り出した。
これで毒は効かない。
あとは疫病と呪いだが――。
「疫病と呪いをばらまく奴が、自分の力で倒れるわけがないわよね」
楽団の楽師や踊り子、道化師たちは、それらをばら撒きながらも平然としている。
つまり、彼らには耐性があると言うことだ。
メフィスは闇に紛れて平原を走った。ぐるりと楽団を迂回し、後方から奇襲をかける算段だ。
「その耐性、お前達からいただけば良いだけの話……!」
メフィスは暗闇の中から、楽師目掛けて飛び掛かった。
腕を伸ばせば、袖から現れる骨刃の束、顎門。
怪物が口を開いたかのようなソレは、楽師の頭に喰らいつく。
――バキボキボキッ。
身の毛もよだつような音が、顎門から漏れ出た。
同時に、メフィスの体内には呪いと疫病の抗体が生まれる。
これで『不治の病の感染』の心配もない。
メフィスは周りに視線を走らせた。
突然の襲撃者に同様した様子もない楽団は、何事もなかったかのように音楽を掻き鳴らして平原を進んで行く。
足元に倒れる頭部のない楽師からは、ふわりと霊体のような光が抜け出て、辺りを漂っていた。そして他の死体を見つけると、素早く飛翔して憑依し、再び死体は楽師となったのだ。
「……つまり、亡者を糧に復活するわけ?」
呆れ果てた表情で呟いたメフィスは、ため息ひとつ。
「それなら憑けるモノが跡形もなければいいのよ」
何かを決意した声で。
メフィスは再び顎門を振るって楽師たちを襲った。
次々に頭部を欠損させて倒れる彼らを。
放置すればまた蘇ってしまうだろう。
その前に――。
「ちょっとはしたないけど丁度暗闇だし……音を立てなければ味方にもとやかくは言われたりしないでしょ」
ぽつりと呟いて。
彼女は骸に口を付けた。
それは静かな晩餐。
顔を上げた彼女の金の瞳は――怪しく輝いていた。
こうして、第三楽団は壊滅した。
死体がないという事実に――気付くものは誰もいない。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…お前達の姿が変わる事ぐらい知っているもの
今暫く付き合ってあげるわ。その音色がこの世界から消え去るまでね
"毒避けの呪詛"を付与して全身を病毒耐性のオーラで防御し、
常以上の殺気で毒に耐えて"血の翼"を広げ空中戦機動を行い敵陣に切り込み、
大鎌に魔力を溜めて武器改造してUCを二重発動(2回攻撃)
…来たれ、この世界を覆う大いなる力よ
我が手に宿りて、破滅を切り裂く刃となれ…!
大鎌が変形した大剣の柄に限界突破した長大な"闇の光"刃を形成
巨大な光刃を残像が生じる早業で怪力任せに敵陣をなぎ払い、
光に触れた者を"闇の結晶"で覆い封印する闇属性攻撃を行う
…アンコールは必要ないわね。疫病楽団の演奏はここで閉幕よ
●終楽章~闇をもたらす者
第四楽団の前に立ち憚ったのは、銀の髪の乙女。
「……お前達の姿が変わる事ぐらい知っているもの」
幾度となく疫病楽団と戦って来たリーヴァルディは、彼らの性質を良く知っていた。そして過去と同じように今回もまた、音色の変化と共に姿を変えたのだ。
「今暫く付き合ってあげるわ。その音色がこの世界から消え去るまでね」
そう告げる彼女は、その容姿からは想像も付かない程の殺気を放っていた。見る者を凍りつかせるその瞳は、『全てを消し去る』という明確な意思を見せている。
病毒耐性を得るための呪詛を自身に施し、漆黒の大鎌『過去を刻むもの』を手にしたリーヴァルディ。
猟兵たちを完全に無視して踊り進む疫病楽団目掛け、禍々しくも美しい血の双翼を広げて地を蹴った。
「……来たれ、この世界を覆う大いなる力よ。我が手に宿りて、破滅を切り裂く刃となれ……!」
リーヴァルディに集う魔力――ユーベルコードによって解放された吸血鬼のオドと精霊のマナが、ひとつとなって彼女の手に宿る。
大鎌はその形を変え、一振りの柄となって彼女の手に収まった。
刀身はない――否、集う魔力が刃を形成していく。
それは巨大な闇の光。
可視域を出た光(やみ)の刃は、リーヴァルディの力任せの横薙ぎに、残像を残しながら戦場を薙いだ。
その光に貫かれた者は"闇の結晶"に覆われ、封印される。
「これで、他者への憑依も出来ないでしょう」
反撃すら赦さない、闇の攻撃。
しかし音楽は鳴り止まない。
「……アンコールは必要ないわね。疫病楽団の演奏はここで閉幕よ」
リーヴァルディはそう告げて、不可視の刃の切っ先を楽団へと向けた。
――残る第四楽団の楽師は僅か。
猟兵を意識していないように見えて、曲のテンポが乱れているのは……彼らに焦りがあるからか。
リーヴァルディは激しく鳴動する魔力に抗い、再び剣を一閃させた。
撃ち出された衝撃すらねじ伏せ、更に返す刀で十字の光を作り出す。
それは疫病楽団の奏でる音を喰い殺し、楽師の体を光で飲み込んだ。
「これで、終わり」
静かに零れた言葉を拾い上げる者は、誰もいない――。
第四楽団は、銀の乙女により呆気なく終幕した。
血に染まる地平線。
後に残るのは――。
大成功
🔵🔵🔵
ブラミエ・トゥカーズ
病に奈落も楽園なんぞありえんよ。
何時か
バラ
解析され、
サラ
展示されるだけよ。
胡散臭い道化よ。魔のまま忘却に落ちた同類よ。
貴公が如何なる病かは知らぬが
ここがパレードの終わり、世界の果てである。
かつて地平を赤に埋め尽くした病が相手になろう。
【WIZ】
真正面から貴族らしく剣をもって戦う。
物理的な攻撃は避けない。
傷つけられたらその血も感染源にする。
戦場の亡者に傷口から血を撒く。
先導者、亡者問わす肉体を赤死病を感染させ、意思とは無関係に症状を発現させ、血を求める状態に変容させる。
出会い方が異なれば友であったかもしれぬな。
人に負ける事なく忘却と、人に負け何も出来ぬ弱者になるのとどちらが幸せであろうな。
●終楽章~病をもたらす者
ブラミエは再び歩み始めたパレードを見つめていた。
楽園(アビス)へ向かうと、仮面の男はそう告げた。
「病に奈落も楽園なんぞありえんよ」
彼女の声は、夜闇に消える。
響くのは、楽団が掻き鳴らす賑やかな音楽のみ。
その音楽は、疫病を誘発させる。一般人にとっては致死性のそれも、古き病魔には届くはずもなかった。
「いつか解析(バラ)されて、展示(サラ)されるだけよ……」
長い歴史の中で、どんな病気も医療が発展すれば解明される。
ブラミエは前方で踊る仮面の男に声を掛けた。
「胡散臭い道化よ。魔のまま忘却に落ちた同類よ。貴公が如何なる病かは知らぬが……ここがパレードの終わり、世界の果てである」
よく通る彼女の声に、しかし仮面の男は振り向きもしない。
――それでも。
「かつて地平を赤に埋め尽くした病が相手になろう」
ブラミエは告げずにはいられなかった。
第五楽団の正面に立ったブラミエは、剣を構えて佇んでいた。
双剣の麗人。貴族らしく、美しいフォームで。
強く踏み込みながら突き出された剣は、真っ直ぐに楽師を貫く。
「人に負ける事なく忘却と、人に負け何も出来ぬ弱者になるのと、どちらが幸せであろうな」
そう呟いて、次の楽師を切り捨てる。
彼女は、カクリヨファンタズムの吸血鬼。UDCアースに住まう人々から存在を忘れ去られ、感情(ショクリョウ)を失って幽世に渡った者だ。
そして、ワクチンに敗北した赤死病そのものでもある。
そう、伝承から生まれた存在――。
舞うように戦うブラミエの頬を、楽師が振るった爪が切り裂いた。
傷口から鮮血が飛び散り、地面を濡らす。
「――余は歌おう。嘗ての敗残者として。余は告げよう。未だ健在であることを。余は再び示そう。この赤き死の狂乱を」
まるで呪詛のように放たれた言葉は、災厄を呼ぶ。
彼女から流れた血は、触れた者に『死に至る貧血症状』を付与する。
戦場はたちまち、赤死病パンデミックに陥った。
それまで猟兵を気にも止めないで演奏し続けていた楽師たちは、突然苦しみ喘いだ。
ある者は全身から血を流し倒れ、ある者は隣り合う楽師に噛み付き、噛み付かれ、血を啜りあった。
疫病を殺す疫病――その恐ろしい世界の中心に立ったブラミエの表情は、闇夜に隠されて見えない。
「……出会い方が異なれば、友であったかも知れぬな」
静かに呟かれた言葉は、風に溶けて消えた。
疫病によって壊滅した第五楽団。
平原の土は彼らの血に染まり、闇夜の中で黒い花を咲かせたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
シーザー・ゴールドマン
第二楽章、いや終楽章の始まりか。
オド(オーラ防御×毒耐性×呪詛耐性)を活性化させて戦闘態勢へ。
さて、今度は少し体を動かすかな、と『破壊の魔力』でオーラセイバーを形成。戦場を縦横無尽に駆けつつ、剣を剛柔自在に振るって滅ぼしていきます。
敵POWUC
『維持の魔力』で強化されたオドで防ぎきります。
(気にした様子を見せません)
基本的に猟兵が多いので好きに運動(戦闘)して帰るつもりでいます。
ある程度、減らした後、視界に移るパレードを剣を横なぎに振るって衝撃波を放って一掃。帰還予定。
(衝撃波×なぎ払い×範囲攻撃)
アドリブ歓迎
●終楽章~終焉をもたらす者
「第二楽章、いや終楽章の始まりか」
シーザーは普段通りの笑みを浮かべて呟いた。
再び始まるパレード。その中央に位置する第六楽団の前に彼はいる。
東西に視線を走らせれば、そこかしこで火の手が上がっていた――疫病パレードの構成員は膨大な数のようだが、これだけの猟兵が参加していれば問題ないだろうと彼は考える。
先刻の戦いで、その場を動くことなく敵を殲滅させたシーザー。
今回は多少なりとも体を動かすつもりのようだった。
「まずは準備運動といこうか」
風もないのに真紅のスーツの裾が翻るのは、彼の魔力が活性化した証。
ふわりと前髪を揺らして、一歩踏み出す。
その大きな手に握られたオーラセイバーは、夜闇を照らす光となった。
吹き鳴らされる魔笛。
どこかの世界には、終末を告げるラッパを鳴らす天使がいるらしい。
この音楽は、果たして誰の終焉を歌うものなのか。
空気が赤く染まる。
紅を纏う公爵は、金の瞳を笑みの形に細めて戦場を駆ける。
まるでステップを踏むように、前へ、横へ。
オーラセイバーをひと薙ぎすれば、楽師は金属の楽器ごとその四肢を断たれ、灰となる。
――準備運動にもならないね。
楽器を弾くだけの楽師。
その横で踊る踊り子と道化師。
物理的な反撃もなく、ただ疫病を乗せた音楽を響かせるのみ。
オドを纏ったシーザーにとって、それはただのオーケストラ。
ふと足を止めて楽団の様子を観察してみても、シーザーを気にする様子もなく演奏を続ける姿がそこにあるだけだった。
「面白みもないか」
演奏が終われば、次の曲を。
楽しい曲から悲しい曲まで、弦楽団の時よりバリエーションに富んだラインナップではあるのだが――。
さすがにこれ以上、視聴を楽しむ気にもなれなかった。
「では、本番だ」
シーザーの笑みが深くなる。
オーラセイバーの刀身を形作る光が、一層輝きを増した。
シーザーが其れを無造作に横薙ぎにすれば、凄まじい衝撃波が生まれ、大地を抉りながら楽団の間を通り抜けた。
爆音が耳朶を打ち、空気の振動が体を伝う。
もうもうと立ち込める土煙が落ち着く頃には――楽団の姿は消えていた。
そして、シーザーの姿も――。
第六楽団は、こうして呆気ない終焉を迎えた。
運命のラッパが選んだのは、彼らだったのだろう。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロット・クリスティア
笛吹男の先導で、楽団は歌う……ですか。
生憎ですね。狙撃手に華々しいBGMは似合いませんよ。
静かに、密やかに。
彼らから遠く離れた一点で、照準を向ける。
彼らの音も、ここまでは届かない。
戦場は盤の上、狙撃手が陣取るのは盤の外。
一手を以て戦局をひっくり返す。駒ではなく、プレイヤーなのが狙撃手というものです。
やることは単純です。盤上を見、絶好のタイミングを伺い、狙撃する。
隙を見せたら、即座にその道化面を撃ち抜いてみせましょう。
宴というのは、存外に終わりはあっけないものですよ。
●終楽章~静寂をもたらす者
そろそろ夜明けだが、重く立ち込めた曇天はそれを感じさせない――地平線を埋め尽くす程の疫病パレードは、そんな曇天を吹き飛ばす勢いで、楽しげなメロディーを奏で続けていた。
ステップを踏んで楽器を掻き鳴らす楽師も、踊り続ける踊り子も、疲れなど知らぬと言わんばかりに、パレードは続いていく。
呪いの音楽は辺りに疫病を撒き散らし、エルの町へと向かうのだ。
――しかしそれも、遠く離れたこの場所にまでは届かない。
戦場は盤の上で、『彼女』が陣取るのは盤の外なのだから。
暗闇と、風。
柔らかい金の髪をなびかせ、短い草地に身を伏せる少女。鼻孔をくすぐる草の匂いも、今の彼女の意識には上らない。
静かに、密やかに。
疫病パレードに向けられた照準。
覗く空色の瞳が映すものは、盤上のピエロ。
やることは単純だ。隙を見せたら狙撃する。
絶好のタイミングでそれを行うだけだ。
――当てて、貫く。それだけのこと、出来ない筈がない。
引かれるトリガー。
その想いから創造された矢弾は、気が遠くなる程の距離を真っ直ぐに飛翔し、狙い違わず楽師を撃ち抜く。
「一手を以て戦局をひっくり返す。駒ではなく、プレイヤーなのが狙撃手というものです」
静かに告げて、次の一手を。
的確に撃ち抜き、次へ、次へ――。
「笛吹男の先導で、楽団は歌う……ですか。生憎ですね。狙撃手に華々しいBGMは似合いませんよ」
感情のない声音で呟いて、撃つ。
遠く離れた場所で、赤い華が咲く。
笛の音が消えても、シャルロットにはわからない。
元より音楽など聞こえていないのだから。
「宴というのは、存外に終わりはあっけないものですよ」
ゆっくりと立ち上がった彼女は、場所を変える。
誰にも悟らせない。
盤の外の狙撃手は、ただ淡々と。
疫病パレードを奈落へ追いやっていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
セプリオギナ・ユーラス
(嗚呼、くそったれ)
喉まで出かかった悪態をなんとか呑み込んで。人を射殺さんばかりの殺意が瞳に宿る。
──鏖殺だ
疫病は根から絶たねばならない。
後の感染者を無くすためにも全てを駆逐せねばならない。
不治の病がどうしたというのだ
そこに病があるのなら、そこにいのちを脅かすものがあるというのなら、その全てを殺さねばならない。
他の全てを生かすためにならいくらでも殺そう。何者でも殺そう。たとえそれが死体でも、自分自身でもだ。
方針:鏖殺
亡者含む動くものがいなくなるまで殺し続ける。
手持ちの薬品庫から薬を調合しておく。
「癒やし、助けるだけが医療ではない──」
言ったばかりのような気がするが。
「……医療を、ナメるな」
●終楽章~救をもたらす者
地平線に沿って踊る疫病パレード。
楽しげな音楽に合わせて、仮面の男の声が叫ぶ。
「我らはこの世界という鎖から解き放たれた!」
何故かよく通るその声は、音楽よりも頭に響くのだ。
セプリオギナは苛立たしげに、しかし外見は静かに、パレードを見つめていた。
彼の前に並ぶは、第七楽団。ほとんどが道化師で構成されたその楽団は、皆一様にニタリと笑い、不穏な気配を放つ楽器を手にくるくると踊っている。
視線はセプリオギナに向けられもしない。猟兵など気にしていない、そんな様子だった。
(嗚呼、くそったれ)
思わず喉まで出かかった悪態は、何とか飲み込んだ。
しかし、その人を射殺さんばかりの殺意を宿した瞳は、すべてを物語っている。
――鏖殺だ。
もしかしたら、その言葉は漏れ出ていたかも知れない。
しかしそんなことは、どうでも良かった。
疫病は根から絶たねばならない。
後の感染者を無くすためにも全てを駆逐せねばならない。
そう、皆殺しだ。
不治の病だからと言って、どうということはなかった。
セプリオギナにしてみれば、そこに病が――いのちを脅かすものがあるのなら、その全てを殺さねばならないからだ。
他の全てを生かすためなら、幾らでも殺せると。
例えそれが死体であったとしても――<自分自身ダトシテモ>――すべてを殺すのだ。
携帯用の薬品庫――そのサイズからは想像もつかない程の薬が仕舞われている――から、手早く目的の薬を調合する。
出来上がったそれを、メスのような鋭利な刃物に振りかけた。粘性のある液体は、滴ることなくベットリと刃に付着した。
セプリオギナがゆっくりと足を踏み出した。
闇色の瞳が、ゆらりと光る。
去りゆくパレードを決して赦しはしないと、そう告げるかのように。
セプリオギナの右手が閃いた。
刃は楽師を捉え、薄っすらと傷を付ける。
傷口からは激しく煙が噴き出したかと思えば、次の瞬間、楽師は赤い灰となって宙に消えた。
「癒やし、助けるだけが医療ではない──」
先にも告げた言葉だ。
だが、言わずにはいられない。
「……医療を、ナメるな」
――彼の殺戮(救い)は、動く者がいなくなるまで続く。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
道化が伝播させるは笑いであろうに!
エルの町には生の力が満ちている、死の舞踏はお呼びではない!
【転身・炎冠宰相】で白き翼の姿に変身、吶喊(空中戦)
ここより先には進ませない!
解き放たれる疫病は、聖なる炎(オーラ防御・毒耐性・呪詛耐性)を身に纏うことで防御
病毒が我が身を侵すこと能わず!
聖槍にも炎(属性攻撃・破魔)を纏わせ、【怪力】を以って叩き付ける
やはり加熱消毒は有効! 不浄を焼き尽くします!
貴様は口が利けるようだな
クラウンか? ジェスターか?
ジェスターならば主は誰だ、吸血鬼か、異端の神々か?
問答に応じる気がないならば加減は無用、叩き斬る!
●終楽章~白炎をもたらす者
第八楽団――道化師然とした楽師と、踊り子で構成された楽団。
疫病パレードの後半に位置する彼らの前に、銀髪金瞳のシスターが立ち塞がった。
普段の柔和な表情からは想像もつかないような厳しい視線を道化師に向けて、オリヴィアは大声で叫んだ。
「道化が伝播させるは笑いであろうに! エルの町には生の力が満ちている、死の舞踏はお呼びではない!」
彼女の言葉に、しかし楽師たちは目も向けない。
ただ楽しげに曲を弾き鳴らし、踊り舞うのみ。
時折聞こえる嘲笑は、仮面の男のものだろうか。
オリヴィアはそれ以上何も言わず、ユーベルコードを展開した。
「……天来せよ、我が守護天使。王冠を守護する炎の御柱よ。万魔穿つ炎の槍、不滅の聖鎧、そして天翔ける翼を与え賜え――!」
足元から噴き上がった金の炎が彼女を包む。
それは聖なる炎――その中から現れたオリヴィアは、白銀の聖鎧に身を包み、白く大きな翼をその背に授かっていた。
破邪の霊気を纏い、輝く炎を宿した槍を携えるその姿は――正に聖槍のクルースニク。
「ここより先には進ませない! はああああ!!!」
吶喊して地を蹴り、翼を羽ばたかせパレードへと突っ込む。
振り抜いた聖槍が、楽師たちを次々と屠っていった。
貫き、薙ぎ倒し、力任せに振り回した聖槍から、黄金の炎が辺りに撒き散らされる。その炎に触れた楽師は、じゅわっと音を立てて蒸発した。
「やはり加熱消毒は有効! 不浄を焼き尽くします!」
オリヴィアの攻撃が一層激しさを増し、第八楽団は先頭から順に瓦解をはじめた。
しかし、後方の楽師たちは全く気にする様子もなく、楽しげに演奏を続けている。
彼らが奏でる音楽。それは、不治の病を孕んだ不浄の音。しかしそれがオリヴィアに効果を及ばせることはなかった。
彼女の纏う聖なる炎が、すべての不浄を灼き尽くすからだ。
突如、楽団の最後尾から仮面を付けた男が舞い出た。
口は笑みの形のまま、わざとらしく丁寧にお辞儀する。
「ごきげんよう、可哀相なお嬢さん」
オリヴィアの瞳が、すぅっと細められた。
「貴様は口が利けるようだな」
翼を広げて一息に楽団を飛び越え、仮面の男に聖槍を突きつける。
「貴様はクラウンか? ジェスターか?」
ただのおどけ役か、宮廷道化師か――。
彼女の問いに、仮面の男は何も言わない。
体を折り曲げた姿勢のまま、顔だけが彼女を見ている。
「ジェスターならば主は誰だ、吸血鬼か、異端の神々か?」
じわりと聖槍が動く。
仮面の男を金色に照らす炎が、今にも彼を焼き尽くさんとしていた。
――楽しませるのは、誰のためか。
しかし、彼の答えは『無言』だった。
「問答に応じる気がないならば加減は無用、叩き斬る!」
オリヴィアが叫んで聖槍を突き出す。
貫かれた仮面の男は、それでも尚、嗤っていた――。
聖女の炎で壊滅した第八楽団。
地平線を埋め尽くしていたパレードも、残すところあと僅か――。
大成功
🔵🔵🔵
インディゴ・クロワッサン
「うっわ… 倒れても起き上がるのって厄介ー」
羽を二対四翼(真の姿)に切り替えて【空中戦】を続行するよー
「でもまぁ」
三日月藍染でちょっと深めに首筋を切ってから、UC:燃え盛る真紅の薔薇 を発動しつつ、敵の頭上を【空中浮遊】するよー
あ、敵の攻撃は【呪詛/毒/激痛耐性】と高度高めを維持する事で影響を減らすつもりだよ
他の猟兵は燃やさない様に気を付けつつ、担当のエリア全体に満遍なくUCの炎が広まったら…
「全部焼き付くしちゃえば…」
【浄化/破魔/焼却】で一気に燃やしちゃうぞー!(【範囲攻撃】
「問題ないよね♪」
ついでに淀んでた空気も少しはマシになったかな?
●終楽章~藍をもたらす者
パレードは、どこまでも続いていくかに思えた。
しかし、何事にも『終焉』はある。
弦楽団の燃え尽きた灰から、楽しげなピエロ姿の楽師が蘇る。
地平線に沿って再び列を成す楽団を前に、インディゴは静かに佇んでいた。
「うっわ…… 倒れても起き上がるのって厄介ー」
感情が籠もっているのかいないのか……インディゴはそう言いながらも、その姿をゆっくりと変化させていく。
背から生える、蝙蝠のような二対四翼。
金の瞳に光はない。
それはまるで――ヴァンパイア。
彼の前で楽しげに演奏する、第九の楽団。
彼らが奏でる音楽は、心に傷や闇を抱えた者が聞けば、自ずとパレードの列に加わりたくなるような、呪いに毒、そして不治の病――。
「でもまぁ」
言いながらインディゴは、藍色を基調とした拵の『三日月藍染』を自身の首元に当てた。
すっと引けば、そこから溢れる鮮血の如き薔薇の花弁。
真紅の花吹雪を従えて、インディゴは闇色の翼を広げて地を蹴った。
第九楽団の楽師たちの頭上を飛び越えると、ぐんぐん空へと昇っていく。
インディゴは辺りに視線を走らせた。
隣の楽団まで距離はある。他の猟兵が戦う姿は豆粒よりも小さい。
ここまで来れば、彼らの音楽も聞こえない――つまり、『不治の病』の効果も届かないだろう。
インディゴは滞空すると、自身を取り巻く真紅の薔薇の花弁を解き放った。
花吹雪は一斉に第九楽団へと降り注ぐ。
――それはまるで血の雨のようで。
一滴ずつ滴る雫のように、はらりはらりと降る花弁。それは楽師に振れた瞬間、炎を纏った。
炎は楽師に移り、一気に燃え上がる。
「全部焼き付くしちゃえば……」
ユーベルコードによる、燃え盛る真紅の薔薇の炎が、ゆっくりと楽団全体に広がっていく。
インディゴが意のままに炎を操れば、火の手は一気に加速した。
凄まじい業火は、楽師を次々に灰へと還していく。
最後まで歌っていたピエロの肩に座った少女も、焔に飲まれた。
「問題ないよね♪」
にこりと笑って告げる頃には、第九楽団の楽師はすべて燃え尽きていた。
静かになった平原の闇の中で、インディゴはゆっくりと翼を閉じた。
大成功
🔵🔵🔵
レティシャ・プリエール
ロータス店長(f10883)と
こちらが本陣ってわけね
ずいぶんと賑やかじゃない
でもそんなセンスのない音楽に惹かれる私じゃないの
語っている間に店長のUCが発動して、猫さんがやってくる
えっ……店長これは?癒しの効果があるの?
そ、そう。じゃあしょうがないわね、疫病対策ですものね……!
(抗えないもふもふと肉球ぷにぷに堪能し)
さ、さあ、これでいいでしょ!
そろそろ本気で行くわよ!
UC発動
狙うは道化師
敵が召喚で対抗してくるなら、炎を二分割して両方相手する
地平線を灼き尽くすまで私の炎は止まないわよ!
あなたが誘う先にあるのは、楽園じゃなくて地獄でしょ
そんなにパレードがしたいのなら、どうぞ一人でやってちょうだい!
ロータス・プンダリーカ
レティシャ(f28126)と
今度は道化ですかにゃ…!
成る程、この音色は心に闇を飼った者にはとても抗えないものですにゃ
けど、心を強く持つにゃ
ボクはみんなの幸せを願ってずっとずっと戦ってきたんだから!
ネコの手当て発動
仲間の猟兵達に魔法で喚んだ小さな幻影のネコさん達が各々ついて癒やしを与えますにゃ!
優しく甘い鳴き声にふわっとした触感に癒やしを感じてくれればそれでOK
猫の癒やし魔法の前に疫病なんて怖くないにゃ!
5分の1の早さの曲は最早音楽じゃない
手にした銃を道化に向け、レティの援護をするように撃つ
時には足下に向けた制圧射撃も交え
パレードはここまで
逃げ去る者は許さない。骸の海へ間違いなくお帰り頂くにゃ
●終楽章~パレードは奈落へ
地平線を埋め尽くす疫病パレードも、残すところ第十楽団のみとなった。
しかし残された楽団は、気にする様子もなく歌い踊り続ける。
仮面をつけた笛吹き男を先頭に、続く楽師はみな道化師姿。踊る女たちは異国の衣装を身に纏って。
――笛吹き男の肩に座る小さな女の子が、こちらを見た気がした。
「今度は道化ですかにゃ……!」
ロータスが楽団を見やり、油断なく姿勢を低くする。
レティシャも緊張した面持ちで身構えた。
彼女が先刻放った青白い焔に照らされ、二人の長い影が楽団と重なる。
間近で見るパレードは楽しげだが、その音楽は魔性。
狂気を孕んで二人に襲いかかる。
「成る程、この音色は心に闇を飼った者にはとても抗えないものですにゃ……けど、心を強く持つにゃ!」
金色の瞳に強い意思を灯したロータスが叫べば、レティシャは強く頷いた。
「こちらが本陣ってわけね。ずいぶんと賑やかじゃない……でも、そんなセンスのない音楽に惹かれる私じゃないの」
レティシャは再び楽団を燃やすべく、杖を構えた。
――例え不治の病を撒き散らす音楽であろうと、素早く燃やしてしまえば……。
勝ち気なブルーの瞳が、ゆらりと光る。
ユーベルコードを発動させようとした彼女の足に、突然柔らかい何かが触れた。
「ふぇ?」
思わず変な声を上げて硬直するレティシャ。
よーく足元を見れば、そこには――。
「ね、ねこちゃん?」
そう、ネコだ。それも滅茶苦茶たくさんの。
「えっ……店長これは?」
思わず隣を見やれば、そこには誇らしげに立つイケ猫の姿。
「ボクの魔法で喚んだ幻影のネコさんたちにゃ。猫の癒し魔法の前に、疫病なんて怖くないにゃ!」
にゃーん、なぉーんと甘い鳴き声を上げながら、レティシャに擦り寄るネコたち。
ロータスの声は、半分が幻影ネコの声に掻き消されてしまった。
「癒しの効果があるの? そ、そう。じゃあしょうがないわね、疫病対策ですものね……!」
(こ、これは確かに抗えない……っ)
ぷにぷにの肉球と、ふわっふわの毛並み。
大小様々な愛らしいネコにまみれ、スーパー癒やしタイムを満喫するレティシャ。
完全に緩みきった顔をしているが、本人にそのつもりはない。
「優しく甘い鳴き声に、ふわっとした触感に、癒やしを感じてくれればそれでOKにゃ」
ロータスがそっと優しく声をかけたところで、レティシャはようやく現実に戻って来た。
「さ、さあ、これでいいでしょ! そろそろ本気で行くわよ!」
こほんと咳払いして立ち上がった。
幻影ネコたちは去り、再び狂気の音楽が――。
「5分の1の早さの曲は、最早音楽ではないにゃ」
ロータスの告げる通り、彼のユーベルコードによって楽団の行動速度は5分の1まで落とされていた。
呪いを撒き散らす音楽は『ただの音』に成り下がったのだ。
味方はネコの幻影に癒やされ、敵は遅くなる。なんとも恐ろしいユーベルコードである。
「さすがね店長!」
レティシャはそう叫んで杖を掲げた。
青白い炎が杖から吹き上がり、彼女の周りで滞空する。
レティシャの瞳が見つめるものは、道化師。
楽団を先導する笛吹き男だ。
「行け!」
彼女の声に従い、炎が飛翔する。
ゆっくりと動く楽団に火の粉を振り撒きながら、炎は狙い違わず笛吹き男に直撃した。
燃え上がる火柱。しかし、笛吹き男の肩の少女が笑うと、男からするりと離脱した『魂』のようなものが、炎の外側で実体化した。
「させないにゃ!」
そこへロータスが素早く銃撃する。
虹色光線銃から放たれた弾丸は、分裂した笛吹き男の眉間を撃ち抜いた。
ロータスは止まらない。そのまま横へ銃口を移動させながら、凄まじい乱射を続ける。
レティシャも炎を操り、楽団は青い火の海に飲まれていった。
「地平線を灼き尽くすまで私の炎は止まないわよ!」
「パレードはここまで。逃げ去る者は許さない。骸の海へ間違いなくお帰り頂くにゃ!」
二人の声が戦場に響き渡る。
パレードは程なくして――静かに壊滅したのだった。
――ずっと二人で続けようよ!
動かなくなった仮面の男の上で。
白い少女が叫んでいる。
「楽園はすぐそこなのに……ねぇ、いやよ……お願い……」
涙はこぼれ落ちない。
それは人形だからだろうか。
「あなたが誘う先にあるのは、楽園じゃなくて地獄でしょ」
レティシャが言い放つ。
しかし少女は振り向きもせずに『お願い』と繰り返すだけ。
「ずっと……ずっと……ねぇ……」
「そんなにパレードがしたいのなら、どうぞ一人でやってちょうだい!」
疫病を撒き散らし、他人を巻き込んでまで続くパレード。
そんなもの、赦せるわけがない。
「……ボクはみんなの幸せを願ってずっとずっと戦ってきたにゃ」
ロータスが少女に近付いて告げた。
「みんなの幸せを壊すものは、どんな理由があっても許せないのですにゃ」
ぱっと少女が顔を上げる。
その顔に――表情はない。
――安らぎはどこ?
そう呟いて。
少女は、消えた。
●大団円
パレードは壊滅し、疫病の脅威も消えた。
エルの町は救われたのだ――もちろん、その先の町も。
猟兵たちは各々帰還する。
エルの町へ立ち寄った者もいるだろう。
心地よい風と、曇天ながらにも澄んだ空。
楽園になど向かわなくても、ここには『幸せ』がある。
――仮面の男は何を求め、白い少女はどこへ向かったのか。
それは誰にも知り得ないこと。
大成功
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