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温泉郷に常冬来たる

#カクリヨファンタズム #雪だるま #温泉

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#カクリヨファンタズム
#雪だるま
#温泉


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●潰えた希望
 豪雪吹き荒れる危険な山道を、編笠を被った妖怪達が歩んでいた。
「本当にこんな所に温泉郷があるの?」
「大丈夫、空から湯気が見えたみたい。きっとみんなも避難してるよ!」
 果たして森へと分け入れば状況は一転。吹雪は収まり、歩くにつれて辺りに湯気まで漂い始めたではないか。
 だが彼等の期待は呆気なく裏切られた。岩肌から覗いていたのは待ち焦がれた熱い湯ではなく、もうもうと白い煙を吐く氷の花畑。
 幽世から『概念』ごと消し去る大事変の前には、天然の温泉すらも無力だったのだ。
「そ、そんなぁ……」
 絶望のあまりへなへなと膝をつく彼等に、木陰から幼い少女の声がかけられた。
『飛んで火に入る夏の虫とはお主らのことよ』
 ひゅん。何かが風を切る音。
「わわっ!」
 ぱす、と一人の妖怪の体に当たり、音を立てて冷たく弾けた。雪玉だ。
 四方から投げつけられる大量の雪玉は、瞬く間に妖怪達を一人残らず雪のオブジェへと変えてしまった。
 やがて雪塊は生命を得たかのようにむくむくと動き――雪だるまの形を取る。
『行けい。里に隠れている奴らを襲うのじゃ』
『!!』
 雪だるま達は枯れ枝で出来た両腕を勇むように打ち振り、雪原へと踵を返すのだった。

●雪だるま式侵攻
「突然ながらカクリヨファンタズム、またもや滅亡間近でござる」
 そうグリモアベースで報告したのは四宮・かごめ(たけのこ忍者・f12455)だ。
「強力なオブリビオンが幽世を雪と氷で覆い尽さんと行動を開始したでござる」
 つい数分前まで幽世には未曾有の大吹雪が荒れ狂っていた。道は雪と風で閉ざされ、人里では降雪による被害が相次いている。『熱』が奪われた幽世は、夏が訪れない『常冬の世界』と化してしまうだろう。

 絶望的な状況の中、どこかへ避難しようとしている妖怪も少なくない。
「その最大の場所の一つが、とある温泉郷でござる」
 そう言ってかごめは地図を広げ、書かれている×印を指差す。
「森の中に天然の露天風呂が湧いているそうでござる」
 妖怪達の間では密かに話題になっている場所だった。生存が危ぶまれるほどの寒さを前に多くの妖怪達がそこへ向けて避難を開始したのは、本能だったかも知れない。だがこれは罠だ。
「ここで大量の妖怪達が骸魂に取り込まれたようでござる」
 敵は既に待ち構えていたのだろう。今は『剣客』雪だるまの軍勢がなおも妖怪達を取り込みつつ、山を下っている。このまま彼等が人里に到達すれば、被害はさらに拡大するに違いない。

 秘湯と最寄りの里との間に存在する一点をかごめは指し示す。
「丁度この地点が平坦な場所になっており、木々も無いでござる」
 ここで雪だるま達を迎え撃ち、里を危険から救うのが第一の目的となる。
 その後は黒幕の潜む森に向けて侵攻することが可能となる。あるいは自分から姿を現すかも知れない。いずれにせよ幽世を雪と氷で押し包んだ、強力な相手だ。

 全てが終わった後なら温泉も息を吹き返すだろう。
「バスタオルは此方で用意。水着もオッケーでござる」
 のんびりとした一時を過ごせるだろうとかごめは言う。

 黒幕が小さな温泉に目を向ける時点で、幽世の滅亡は秒読み段階に入ったといえる。だがまずは雪だるまを雪原で迎え撃つことが先決だ。
「近くに温泉があるとはいえ、怪我と凍傷にはくれぐれもお気をつけて」
 そう言ってかごめは印を結ぶのだった。


白妙
 白妙と言います。
 今回の舞台はカクリヨファンタズム。『熱』を奪われた世界を救うため、雪だるまの進撃を食い止め、黒幕を討伐するのが目的です。

 一章のプレイング受付開始は公開直後。二章以降は断章投下後となります。宜しくお願いします。

●第1章【集団戦】
『『剣客』雪だるま』との集団戦です。
 戦場は平坦な雪原。降雪はほぼ止み、条件は互角です。

●第2章【ボス戦】
『??????』と決着を付けます。

●第3章【日常】
 山中の秘湯で休みます。広い温泉もあれば、小さなものもあります。
 基本は水着着用・非混浴。
 水着KC非所持の方も水着の色や形などの記載があれば反映致します。
 異性同士の連携はご希望があった場合のみとなります。描写も健全寄りです。
 また、未成年の飲酒はNGとなります。
 四宮・かごめがいます。絡み相手が欲しい場合にどうぞ。

●補足
 この世界のオブリビオンは全て『骸魂が妖怪を飲み込んだもの』です。
 オブリビオンを倒せば、飲み込まれた妖怪を救うことが出来ます。
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第1章 集団戦 『『剣客』雪だるま』

POW   :    雪だるま式に増える
自身が戦闘で瀕死になると【仲間】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    抜けば玉散る氷の刃
【その手でどうやって持つんだかわかんない刀】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    雪合戦
レベル×5本の【氷】属性の【雪玉】を放つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

カタリナ・エスペランサ
常冬の世界か。寒いのは多少なら平気だけど……氷はあまり好きじゃないんだよね

ということで盛大に燃やしていこう!
《空中戦》で敵の有効な攻撃手段を制限して【暁と共に歌う者】発動
上空から《精神攻撃+催眠術+マヒ攻撃+歌唱》の歌声による呪縛と《属性攻撃+範囲攻撃+焼却》の炎嵐で纏めて《蹂躙》。
73の不死鳥を合体させて簡易の太陽代わりに、《天候操作》の要領で気温を上げれば《継続ダメージ》も狙えないかな
上空まで届く攻撃は《第六感+戦闘知識》で《見切り》回避するよ

骸魂から妖怪を助け出せたら戦闘と並行して《救助活動》
《ものを隠す+オーラ防御+結界術+拠点防御》で骸魂や冷気から保護する領域を形成して匿おうか


火土金水・明
「今回の事件の元凶と戦う前に、まずは目の前の相手を倒しましょう。」「もちろん、取り込まれた方達は助け出します。」
【WIZ】で攻撃です。
攻撃は、【先制攻撃】で【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【銀色の嵐】を【範囲攻撃】にして、『『剣客』雪だるま』達を纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【見切り】【残像】【オーラ防御】【氷結耐性】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでも骸魂達にダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。



 はぁ、と白い溜息を両手で受け止める。
「常冬の世界か」
 その呟きに微かに憂鬱そうな響きを滲ませたのは、カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)。
「寒いのは多少なら平気だけど……氷はあまり好きじゃないんだよね」
 多くの生物にとって氷結とは即ち死。永劫に続く冬は真の意味で停滞した世界をもたらすに違いないが、とりわけカタリナはそういった世界の在り方を本能的に嫌う。
 カタリナの目の前に広がるのは白銀の大地。広大な場所にも拘らず生命の気配が感じられない。その違和感はともすれば、しんしんと肌を刺す空気の冷たさを忘れさせる程のものであった。
 だが、ややあって地平線が動いた。
『剣客』雪だるまの軍勢が戦場に到着したのだ。それぞれが破れた編笠を深く被り、折れた氷の刀を背中に下げている。
 その時、白い雪原で静まっていた黒い人影が、はじめて動きを見せた。火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)だ。
「やはり今回の事件の元凶はまだ現れていないようです。まずは目の前の相手を倒しましょう」
 迫り来る彼等の様子を観察していた明は、漆黒のウィザードハットの鍔を片手で上げ、自身の判断を冷静に伝える。
「勿論、取り込まれた方達も助け出します」
 明は雪だるま達に取り込まれた妖怪達の身を案じてもいた。この世界の存続の為にも、戦いの中で妖怪達を速やかに救出する。明にはそのための心積もりと準備があった。まずは敵よりも早く術を叩き込む最適のタイミングを探るべく、敵との距離を慎重に測る。
 カタリナと明。二人によって、戦いの火蓋は切って落とされた。

『!!』
 雪だるまの先陣がカタリナに迫る。一気に距離を詰め、枯れ枝そのものにしか見えない腕で迅速の袈裟斬り。
 だが刀が鋭い円弧を描き切った時、カタリナは既に宙へと逃れていた。もう刀では届かない。
 ならばと雪だるま達が雪玉を手にした時、不意に視界で光が散った。
「“我在る限り汝等に滅びは在らず、即ち我等が宿願に果ては無し――”」
 カタリナの周囲を燃える翼を持つ鳥達――不死鳥が羽ばたいていた。彼等の囀りは何処か心に働きかけるような甘やかな響きで雪原を反響する。それが麻痺の呪縛の類であると雪だるま達が気付いたと同時に。
「“――来たれ我が眷属、焔の祝福受けし子等よ!”」
 ゴォ!! という音と共に、地上で巨大な火炎の嵐が発生した。
 嵐が収まった時、発生地点の雪だるま達は酷く型崩れしていた。相当な威力だ。
 他の雪だるま達が反撃とばかりに雪玉を送り込む。
「!」
 カタリナは体を捻って次々回避。辺りを飛び回る不死鳥達を一箇所に集めはじめた。収束する劫火は次第にその勢いを増していき――やがて一羽の不死鳥が姿を現す。そのプラズマの翼を悠々と広げれば、辺りの温度が急激に上昇を始めた。雪だるま達は動きを止め、体からポタポタと水を滴らせ始める。まるで第二の太陽だ。
 その時、溶けかけの一体の雪だるまの体を割って、一人の妖怪が姿を現した。河童だ。
『『『!』』』
 雪だるま達は白刃を抜き連ね、河童に向けて殺到する。
「ひえ……!」
 恐怖で頭を押さえる河童。
 びん! と何かが跳ね返されるような衝撃が空気を震わせる。
 訪れる静寂。おそるおそる目を開ける河童。
 刀は――降ってこない。
 果たして彼の周りには、カタリナの張った結界が展開されていた。
 雪だるま達はその結界を囲むように、刀を握ったままその体を完全に溶けさせていたのだった。

 銀色の嵐が雪原を埋めていた。
 自然現象ではない。上空から見れば実に整った幾何学模様を描いている。
 それは明の呼び出した無数の魔法剣であった。
 寒風に晒された雪だるまの体は決して脆くない筈だが、その刃は彼等を容易く穿ち、幾度も貫いている。
 この世界の骸魂のみを直接傷付ける、明の編んだ秘術だ。
 とある雪だるまの目前を牽制の魔法剣が掠める。雪だるまが目を奪われた刹那、続く剣の波に雪だるまはその体を断ち割られた。一斬。明が軽く杖を打ち振れば魔法剣の流れは逆方向へと。二斬。雪だるまはあっけなくその体を斬り潰される。その密度もさることながら、効果的に敵を襲うように計算された軌道だ。
「……わわっ!」
 崩れた雪だるま達の体から、ぼふ、と。一人の座敷童が這い出した。
「大丈夫ですか?」
 急ぎ駆け寄り、座敷童を助け起こす明。
「わ、私が見えるの……?」
「はい。ここは危険なので、ひとまずあちらへ」
 優しい表情で明はそう言うと、手袋を嵌めた手で包囲の薄い後方を示す。
 その先にはカタリナの張った障壁。脱出した妖怪達が集結しつつあった。
「あ、ありがとう……」
 座敷童はお礼を言い、とてとてと雪原を駆けて行った。
 なおも明の魔法剣は複雑な軌道を描き、雪だるま達を追い詰める。
 だが敵の中には剣の嵐を掻い潜り、包囲を抜けてくる者もいた。
 彼等が手に持つ雪玉を明へと一斉に放れば、矢が風を切るような鋭い音が響く。
 直撃。そう思われた瞬間。
 明の遥か後方で地面が弾けた。
「残念、それは残像です」
 同時に、予想だにしない方向から明の声がかけられる。
 雪だるま達がそちらへ振り返るよりも速く魔法剣の群れが彼等に追い付き、その体を引き裂いた。

 今や敵の先駆けは完全に瓦解した。
 明の展開する包囲網の中で身動きが取れなくなった雪だるま達を、カタリナが引き起こした急激な気温上昇が溶かす。
 時間が経つ程に勝敗の天秤は猟兵達の方へと傾いていく。
 あちらこちらで雪だるま達が力尽き、妖怪達が脱出する。
 二人は的確に連携し、妖怪達の被弾を許さない。
「少しでも骸魂達にダメージを与えて、次の方に」
「勿論! 盛大に燃やしていこう」
 地上と空。銀刃と熱。
 二つの波が合わさり、白い壁を押し返す。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鞍馬・景正
流石に、雪だるまと切り結んだ事はありませんが――。
しかし剣客と名の付く以上、如何様な太刀を振るうか確かめてみましょう。

◆戦闘
雪原で待ち受け、雪だるま達と遭遇すれば勝負を挑みましょう。

こちらも刀を遣う身、ひとつ技比べでも致しましょうか。
自信が無ければ、複数一度に参られても一向に差し支え無し。

鯉口を切りつつ、近くの雪だるまと対峙。

後は相手の出方を【視力】で観察し、攻める気配を【見切り】、それに先んじて【急湍】にて仕留めさせて頂く。

人相手と違い、意が読み難くとも、ただ習い覚えた術技と【第六感】の導きに従うのみ。

無事競り勝てれば、そのまま周囲の雪だるまにも連続して【早業】の太刀を浴びせていきましょう。



「流石に、雪だるまと切り結んだ事はありませんが――」
 熟練の剣士である鞍馬・景正(言ヲ成ス・f02972)にとっても、それは初めての体験であった。
 遠方を見遣れば、敵の一隊が景正に向けて距離を詰めてくる。
「しかし剣客と名の付く以上、如何様な太刀を振るうか確かめてみましょう」
 相手が心技体を備えた武人ならば、やることは一つ。
 やがて雪だるま達は景正を隙間なく取り囲んだ。景正は動じずに言う。
「こちらも刀を遣う身、ひとつ技比べでも致しましょうか。
 ――自信が無ければ、複数一度に参られても一向に差し支え無し」
『!!』
 景正の言葉を挑発と受け取ったか、腕に覚えのありそうな一体の雪だるまが、ずい、と囲みの中央に進み出た。
 静かに鯉口を切る景正。対する雪だるまは背中に背負った剛刀の柄に手を掛け、片手でびゅんびゅんと素振りをした。
 双方、対峙。
『……』
 雪だるまの表情は読み難い。そもそも刀をどう握っているかわからない上に、構えも切先を横に流しているようにしか見えない。何から何まで人と違う以上、思念があまり役に立たないのだ。
「――」
 だが彼等には彼等なりの剣理と、その限界がある。攻めの気配が皆無という事は、まずありえない。それは確か。
 故に景正は思考よりもむしろ直感の方を研ぎ澄ます。敵の攻撃を直前で捉え、後の先を取るのだ。
 息詰まる時間が流れる。
 ふと景正の目に、雪だるまの刀が微かに揺れるのが映った。
 焦り。そう看破した、次の瞬間。
 枯れ枝の腕が大きくしなった。袈裟斬り。
 その刀が弧を描いて景正の肩口に降りかかり――両断。
 景正の方が明らかに早い。気付けば雪だるまの体は上下に分かたれていた。
 抜刀術。
 雑念を振り払った、神速の一閃。
 雪だるまの上体が綺麗な切り口を見せて宙を舞い、周囲の味方にぶち当たった。
 どよ、と白い壁に動揺が走る。
 すかさず攻めに転じる景正。
 ざ、と地面を蹴り、一瞬で距離を詰めた。
「――参る」
 雪を散らし、白い光が幾条も奔った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギージスレーヴ・メーベルナッハ(サポート)
「ハハハハ!良いぞ、今ぞ戦争の時である!」
戦火に歓喜し高笑いを上げる戦争狂の娘。
「戦闘」ではなく「戦争」という点に注意。
一方で非戦闘員を戦争に巻き込むべきではないという分別もあり、これらの救助や保護にも積極的。

言動は常に大仰、態度は常に傲岸不遜。

「ヤークト・ドラッヘ」が使える状況なら、疾走しながら搭載火器を乱射する広域殲滅が主体。
これに「機甲武装・」とつくユーベルコードを絡め火力で圧倒。

これが使えない状況では「黄昏大隊・」とつくユーベルコードで召喚した兵士達を指揮しての集団戦術が主体。
状況に応じ、自身も「トーテンクロイツ」での射撃で攻撃参加。

アドリブや他PC様との絡みは全面的に歓迎です。



 銃声、エンジン音。そして哄笑。
「ハハハハ! 良いぞ、今ぞ戦争の時である!」
 堂々たる軍服を寒風に靡かせ、ギージスレーヴ・メーベルナッハ(AlleineBataillon・f21866)が戦場を疾駆していた。
 彼女が打ち乗るのは重機甲戦闘車「ヤークト・ドラッヘ」。そこに搭載された速射機銃を乱射することで、ギージスレーヴは広域制圧を行おうとしていた。
 雪だるま達が刀を抜き連ねて囲い込もうとするも、その度にギージスレーヴは半重力式の推進機構を作動させ、一気に加速。高笑いを上げながらそのまま遠くへと逃れ去る。
 同時に撃ち出された誘導ミサイルが、雪だるま達を纏めて破砕した。
「ハハハハ! ……ん?」
 多くの敵を打ち倒したギージスレーヴだったが、ふとあることに気付く。
 敵の数がなかなか減らない。後方を見遣れば、斃れた雪だるまの幾人かが、むくむくと起き上が……復活していたのだ。
「雪原の兵士は畑から採れるとはよく言ったものだ! 致し方あるまい!」
 騎乗するバイクを反転。追って来た雪だるま達に向けて、ば、と手を翳す。
 ――ドゴォ!!
 足下の雪を舞い上がらせる凄まじい衝撃と共に、ギージスレーヴの背後に巨大な何かが召喚された。
 過剰殲滅の四文字をそのまま形にしたかのような、武器の塊。規格外兵器。
 丸太の如き二門の巨大ガトリング砲が、殺意と共に敵を睨んでいた。
「兵装転送、接続完了。過剰火力の殲滅兵装、塵芥と化すまで味わうが良い!」
 刹那、耳をつんざく轟音。
 銃弾が灼熱の驟雨となって降り注ぎ、叩かれた雪が派手に舞い上がる。
 規格外の火力を前にして復活する余裕などある筈も無く、雪だるま達は呆気なく破砕された。
 赤熱した砲塔がようやく回転を止め、戦場に静寂が戻る。
 見れば雪上のあちらこちらに炎の泉が広がり、立ち上る大量の黒煙が空を埋めていた。
「ひいいいい!」
 ややあって、そこから悲鳴が響き始める。雪だるまの体から脱出した妖怪達だ。助けを求めるようにギージスレーヴに向けて駆けてくる。
「大勢は決した! これより民間人の救助に入る!」
 敵の大多数が打ち倒されたことを確認したギージスレーヴは巨大な戦旗を脇に抱え、そのまま爆音を轟かせて敵陣に突撃をかける。
 剣客同士の立ち合いならばともかく、『戦争』では彼女に分があるだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

春霞・遙
冬の露天風呂は最高なんですよね。寒いところであったかいお湯に入ると指先から痺れるように熱が広がっていくのが全身を癒してくれるようで。
でも、温泉を凍らせてしまうほどの冷気は流石に遠慮被りたいかなぁ。

【悪霊祓いのまじない】を使用してハシバミの枝に灯した熱で対抗できないかな。
遠距離では拳銃から「呪殺弾」を放って攻撃。雪玉も同様に撃ち抜いて防御。
近づくことができたら【悪霊祓いのまじない】で編笠や手の部分の枯れ枝に火を灯して熱を移します。
燃え上がることはないでしょうけれどこの世ならざる焔なら近くの氷を融かすくらいはできるでしょう。



『剣客』雪だるまの軍勢は駆逐されつつある。多少の落ち着きを見出せるようになった戦場の中で、春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)は自身の思い出を掘り起こしていた。
(「冬の露天風呂は最高なんですよね」)
 この先で凍り付いている温泉ではなく、おそらくはUDCアースなどで見られる、温かい露天風呂の思い出だ。
(「寒いところであったかいお湯に入ると、指先から痺れるように熱が広がっていくのが全身を癒してくれるようで……」)
 天然の湯がじんわりと体を温める。その喜びも、身に堪える冬の寒さがあれば、ひとしおとなるだろう。
「……でも、温泉を凍らせてしまうほどの冷気は流石に遠慮被りたいかなぁ」
 何事も程々が大事。白銀の世界を見渡し、思わず肩を竦める遙なのだった。
 そんな遙から、そこそこの遠距離、と言える場所を、雪だるまの一隊が横断していた。
「……」
 す、と。遙は腰から拳銃を抜いた。構え、一体の雪だるまに狙いをつける。
 発砲音が響いた。
『!!』
 振り返った雪だるまの顔を、呪詛を込めた鉛の弾が深く穿つ。
 なおも発砲。穴だらけとなった体から雪が幾度も飛び散り、雪だるまは遂にこてんと倒れた。一体目。
 だが仲間の雪だるまは慌てる様子もなく地面の雪を拾い上げ、素早く雪玉と化して銃撃に対抗しようとする。
 刹那、ぴゅんぴゅんと風切り音が響いた。
「――!」
 迫る雪玉。
 遙は照準を少しだけ上げ、撃つ。
 空中で、ぱしゅん、と雪玉が続けざまに破裂し、雪片と化してぱらぱらと地に落ちた。
 飛び道具を撃ち落とされ、雪だるま達の間に微かな動揺が走る。その隙を突いて遙は地面を蹴った。彼女の手には――ハシバミの枝が握られている。魔を退けると言われる、神聖な木の枝だ。
「夏至の夜を汚す悪しきものを追い払え――」
 遙がまじないの句を唱えれば、ハシバミの先端から微かな燐光が散り、優しい燈が灯る。
 ぐんぐんと視界に迫る雪だるま。彼等が刀を振り上げたのと遙の持つハシバミの先端が編笠に触れたのが、ほぼ同時。
 編笠の縁が、ぽ、と一瞬だけ赤く燃え上がるも、その火はすぐに消えてしまった。
 燃やすには弱いと見たか、構わず他の雪だるまが刀を振り下ろせば遙は体を捻って回避。
 ひゅ、と刀が空を切る。
 すかさず二の太刀を見舞おうとした雪だるまだったが……思わずその動きを止めた。
 目の前の仲間の顔が、あたかも編笠から熱を移されたかのように融けていたのだ。
 刀を振り下ろした姿勢のまま固まる。
「――ふッ!」
 間髪入れずに遙は雪だるまの手――木の枝に向けてハシバミの枝を振るった。
 ちり。と、触れた場所から音がしたかと思えば、その熱は枝から肩へと、肩から襟巻へと密やかに伝わり、たまらず雪だるまは刀を取り落とす。
 遙の操るこの世ならざる焔は、次々と魔を祓っていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『『雪女』碧麗』

POW   :    さ、動けぬうちにとどめでも刺すかの。
予め【対象を氷で動けなくする】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    ほれ、踊ってみせい。
【絶対零度の爆発を起こす氷柱の弾幕】を降らせる事で、戦場全体が【絶対零度の氷弾が舞う氷の花畑】と同じ環境に変化する。[絶対零度の氷弾が舞う氷の花畑]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ   :    少し本気を出すとしようかの。
【器となった妖怪が未来に得る筈の力】に覚醒して【大人の妖艶な雪女】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ポーラリア・ベルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 雪混じりの風が駆けた。
 一人の猟兵が不穏な気配を感じ、その場から飛び退く。
 次の瞬間、先程猟兵が居た場所には――巨大な氷の柱があった。
『ほう、避けたか』
 風が収まり、青い着物を着た一人の少女が姿を現す。
 雪女だ。
『猟兵共か。あやつらを退けるとは、やるではないか。
 どうやらわしが直々に出なければなさそうじゃの』
 幼い容姿とは裏腹な、どこか古めかしい口調でそう言う。
 それが虚仮脅しではない証拠に、その落ち着いた挙措動作の一つ一つから確かな雪女としての格が感じられた。
『この小娘も器だけは大したものよの。
 ――わしが徹底的に使ってやろう。この世界を完全に雪と氷で包むまで』

 ……どうやら年古りた雪女の骸玉が、雪女の少女を乗っ取り、その潜在能力を利用しているらしい。
 黒幕を倒し、幽世を守る時が来た。
アス・ブリューゲルト(サポート)
「手が足りないなら、力を貸すぞ……」
いつもクールに、事件に参加する流れになります。
戦いや判定では、POWメインで、状況に応じてSPDの方がクリアしやすいと判断したら、そちらを使用します。
「隙を見せるとは……そこだ!」
UCも状況によって、使いやすいものを使う形です。
主に銃撃UCやヴァリアブル~を使う雰囲気です。剣術は相手が幽霊っぽい相手に使います。
他人の事は気にしない素振りを見せますが、基本、不器用なので、どう接したらいいのかわからない感じです。
ですが、合せるところは合せたり、守ってあげたりしています。
特に女性は家族の事もあり、守ってあげたい意欲が高いです。
※アドリブ・絡み大歓迎、18禁NG。



 転送先で『『雪女』碧麗』との交戦を開始したアス・ブリューゲルト(蒼銀の騎士・f13168)は、その広い戦場を活かし敵の猛攻を凌ぎ続けていた。
 ざ、と身軽に雪の大地を蹴って後退すれば、次の瞬間には雪原を割って背丈程の氷柱が屹立する。
 飛び退いた先で。またその先で。氷柱はどこまでも追いかけてきた。
『こりゃ、大人しくせんか』
「……」
 それらのうち一つでもまともに喰らったが最後。アスは雪の大地に絡め取られ、碧麗に必殺の余裕をもたらすことになるだろう。
 何度も、何度も。雪原に大量の氷柱が立ち並ぶ光景の中、勝機を窺うアスとそれを追う碧麗のいたちごっこは続いた。
 幾度目の後退だろうか。着地と同時にアスの背中に、どん、と何かぶつかった。
 アスが振り返ればそこには――先程回避した氷柱の一つがあった。ぱり、と衣服の背中に氷が貼り付く感覚が走る。
 追い込まれた。あるいは誘導されたのか。
『かかか、どうした。もう後が無いぞえ』
「……」
 碧麗は着物の裾を垂らし、余裕綽々といった様子でアスに近寄ってくる。
『さ、動けぬうちに止めでも刺すかの……うん?』
 その時、アスの両足から異音がした。
 装填音。機械が引き出される音。他にも様々な音が入り混じった音。
 気付いた時には彼の両脚に内蔵された無数の兵器が、白昼の光を銀色に照り返していた。
 足元に気を取られていた碧麗だが、ガシャリ、と最後に真正面から響く音に顔を上げる。
 二丁の蒼い銃を向けたアスの鋭い眼光が、サングラスの奥で光っていた。
『ほう……』
 決して油断していた訳では無いが――この距離では避けられない。
 至近距離。それも背中の氷柱を支えに展開される一斉砲火。
「勝ち誇った瞬間が一番危険だ。……隙を見せるとはな」
 雪原に、開戦を告げる轟音が響き渡った。

成功 🔵​🔵​🔴​

鞍馬・景正
幼子を傀儡にするなど、妖と雖も道理に悖る所業。
大人しく引き下がる気が無いなら、こちらも容赦しますまい。

◆戦闘
氷漬けにされては、自在に刀も弓も扱えませんね。
それを逆手に取らせて頂きますか。

敵の冷気に抗う術がないよう振る舞いつつ、最低限、剣気による【結界術】で頭部まで凍て付かぬよう防護。

身動きが封じられ、雪女が此方に寄って来れば、【堅甲利兵】により我が手勢を招きましょう。

まず火縄による銃撃と轟音で怯ませ、畳み掛けるように弓矢での狙い撃ちを指示。

後は長槍による槍衾で粉砕と、【集団戦術】を駆使し追い込ませて頂く。

我が手足は凍て付いても、彼らという別の手足がいた。
そういう事です。



 雪原を走る影を氷柱がどこまでも追う。
 骸魂と化して幽世を滅ぼさんとする雪女『碧麗』。年齢相応の戦巧者とはいえ、この技を為すにはそれだけでは足りない。依代である少女の持つ潜在能力を徹底的に利用することで初めて成り立つのだ。
 とんでもない大悪党である。
「幼子を傀儡にするなど、妖と雖も道理に悖る所業」
 実直な性格の鞍馬・景正からすれば、そのような輩、実に許し難い。
『所詮この世は弱肉強食じゃよ』
「大人しく引き下がる気が無いなら、こちらも容赦しますまい」
 不敵にそう返す碧麗に対し景正の眼光が鋭さを増す。
『かかか、口ではそう言っていても逃げてばかりではないか』
 冷気に抗する術を持たない只の武人。少なくとも碧麗の目にはそう映った。手足を封じられれば弓も刀も握れないからこそ逃げ続けているのだ。そうした判断の下、碧麗はじわじわと景正を追い詰めていく。
 幾度かの後退の後、遂に勢い良く屹立した氷柱が景正の体を完全に包み込んだ。
 ――捕らえた。
『さ、とどめでも刺すかの』
 余裕綽々と言った態度で碧麗が景正の近くに歩み寄った、その時。
 ぱぁん!
 火縄銃の音が響いた。かなり近い。
『伏兵か!』
 その小さな肩を思わず跳ねあがらせた碧麗の叫びを掻き消すように、弓弦の音が鳴った。
 たちまち辺りを矢が飛び交い始める。
 気付けば、エンパイアの兵士達による包囲が完了していた。
 矢の幾本かが碧麗の背中に突き立つ。勢いで思わず前につんのめった彼女の視線の先では――完全に凍った筈の景正が、油断なく周囲の手勢に目を配っていた。
 景正は攻撃を受ける際に練り上げた剣気で最低限身を守り、その後は司令塔として指揮に徹していたのだった。そして景正が行動の自由を失っている分、彼によって招き入れられた兵たちは高い練度を持つ。
『――!』
 目前の景正に向けて乾坤一擲の一撃を見舞おうとする碧麗の横合いから――衝撃が襲った。
 槍衾がその小さな体を宙に持ち上げ、景正から無理矢理引き離したのだった。
 どしゃ、と地に落ちた碧麗へ、即座に矢の雨が降り注ぐ。
(「我が手足は凍て付いても、彼らという別の手足がいた。そういう事です」)
 巧みに兵を動かす戦上手は、戦場を意のままに出来るのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カタリナ・エスペランサ
――ふぅん。踊りがご所望かい?
こんな世界を見せてくれた返礼だ、存分に堪能するといい!

【失楽の呪姫】を発動、励起した魔神の魂で《焼却+オーラ防御+地形破壊》技能を強化
《封印を解く+限界突破+全力魔法》の劫火を纏いバリア代わりにすると同時に敵UCで変化した地形を《蹂躙+ハッキング+属性攻撃》、終焉の劫火に塗り潰していくよ

《ダンス+空中戦》の機動力で逃げ場を与えず《威厳+覇気+精神攻撃》、《恐怖を与える》事で敵の選択肢を奪うように立ち回ろうか
劫火の《範囲攻撃》では敵の能力を潰す事を優先。
敵自身への攻撃は狙いを骸魂に絞って《属性攻撃+貫通攻撃+スナイパー》の黒雷で撃ち抜き、依代は傷つけないようにしよう



 猟兵達と『雪女』碧麗との戦いは一進一退。個々の猟兵に対し氷結を狙っていた碧麗だったが、初めてその動きを変えた。
 彼女の周囲の空気が急激に温度を下げ、ちらほらと粉雪が舞い始める。
『ほれ、踊ってみせい』
 その言葉と共に、大量の氷柱が戦場に降り注いだ。
 地面に落ちると同時に――炸裂。
 たちまち白銀の爆風が地上を覆い尽くし、辺りを輝く雪片で霞ませる。
 やがて爆風が収まった時――雪原は輝く氷の花畑と化していた。
 天候操作。圧倒的なまでの『雪女』としての力の発露であった。
「――ふぅん。踊りがご所望かい?」
『うん?』
 声がする。氷霞の真っ只中から。思わず間抜けな声を返す碧麗。
 やがて靄が晴れた時、花畑の上に紅く輝く丸い何か見えた。
 そこにあったのは、カタリナ・エスペランサの姿。身を護るように自身の羽で体を包み、さらに強化した劫火のオーラを身に纏うことで氷の爆発に耐えていた。
 カタリナが滞空したまま自身の翼を広げれば、それだけで周囲の花畑がぱりぱりと音を立てて溶ける。彼女が纏っていたのは灼熱のオーラだけではなく、どこか常軌を逸した空気――魔の気配だ。
『あの爆発の中で生きていたとは大したものよ。だがいつまで続くかの』
 碧麗の言葉を裏付けするかのように、カタリナの白い肌の上を一条の鮮血が伝う。
 すぐさま碧麗は氷の花畑を蹴った。ざり、と雪下駄を鳴らし、馴れた様子で残された氷華の上を巧みに移動しようとする。持久戦の構え。
 カタリナの判断もまた早かった。翼を広げて氷の花畑の上を翔ければ、その後方では紅い劫火が氷の花畑を塗り潰し、碧麗の行動を大きく制限する。短期決戦の構え。
 花畑を逃げ回る碧麗と、その周囲を飛び回り選択肢を奪うカタリナ。絶えず移動を繰り返す両者の間で、緊迫した読み合いが続いた。
『さて、今度こそ終わりにしようかの』
 再び碧麗の周囲に冷気が収束し――刹那、大爆発が起こる。
 二発目が、炸裂した。
『やれやれ、流石に生き――むっ』
 ぶわ、と。
 碧麗の目の前で巨大な炎が燃え上がり、その視界を一瞬だけ赫く焼いた。
 隙を突いてカタリナは舞い踊るように翔け、後ろを取る。
 ば、とカタリナが手を翳せば彼女の周囲で、バチリ、と音が鳴った。
 代償と引き換えに得た三つ目の権能――黒い雷。
「こんな世界を見せてくれた返礼だ、存分に堪能するといい!」
 冷気を割って数条の雷が奔り、退路を断たれた碧麗に着弾した。
 守護が喰い破られ、服の焼け焦げる匂いが辺りに漂う。
 依代を避けて骸魂の身にダメージを負わされつつも、這う這うの体で氷霞の中へと逃れ去る碧麗。カタリナは再び追跡に入った。
 劫火と共に、黒雷が死の雪原を染める。

成功 🔵​🔵​🔴​

春霞・遙
自分が安心して暮らせる土地を広げたい気持ちはわかりますけどね、すべて同じにしてしまうのはつまらないと思いますよ。
暑さ寒さが苦手な人は各々心地よいところに。互いの領分を侵さなければ良いでしょう?

全身氷漬けは流石に御免被りたいので、凍結の攻撃は足元を縫い留められる程度で済むようにかわします。
動けなくされたら相手がユーベルコードを使用するまで自身のユーベルコードを封じ、拳銃による遠距離攻撃と杖で氷弾を弾いての自衛で時間を稼ぎます。
相手が戦闘力を増強したら接近できる隙を見せ、【退魔呪言突き】でカウンター。



 一歩飛び退けば、足裏にざくりと雪の感触。
 次の瞬間、目の前には澄んだ氷の柱が生まれていた。
『ほれほれ、避けてみせい』
 幽世を冬で押し包んだ『雪女』碧麗。彼女の気持ちは春霞・遙にとって、全く理解し難いというものでもない。
「自分が安心して暮らせる土地を広げたい気持ちはわかりますけどね、すべて同じにしてしまうのはつまらないと思いますよ」
 敵の攻撃を辛くも躱しつつ、遙は言う事を聞かない子供を諭すようかのように優しく語り掛ける。過激なやり方である事を指摘しながらも、その動機に対してある程度の理解を示すのだった。
「暑さ寒さが苦手な人は各々心地良いところに。互いの領分を侵さなければ良いでしょう?」
 幽世は絶滅を避けるために妖怪達が逃げ込んだ最後の砦でもある。例え自身がそこに辿り着けなかったにせよ、共存のために住処を分かち合おうという気持ち――寛容さを碧麗が備えた存在でさえあれば、今回のような事件は避けられた筈なのだ。
『長く生きると色々あってのう……ほれ』
「わ……!」
 一瞬の隙を突かれ、遙の足裏が凍結させられた。彼女の靴は凍り付き、地面にぴったりと縫い付けられてしまった。そのまま後方へと倒れ込む。
 碧麗の周囲では冷気が収束し――瞬く間に氷の弾が宙に形成される。
『さ、とどめでも……うおっ』
 続けざまに発砲音が響いた。
 遙が素早く拳銃を抜いたのだ。鉛球に撃ち抜かれた氷魂が仄蒼い粒子と化して掻き消える。
『悪あがきはよせい』
「――!」
 碧麗が残る全弾を遙に向けて嗾ければ、遙は弾切れした拳銃を捨て、今度は木製の杖に手を掛ける。
 瞬間、杖をぐるりと回せば氷弾は乾いた音を立てて弾き飛ばされ、遙の体には傷一つない。
 遙が抵抗を示す間に十分な力を溜め込んだ碧麗が一歩、また一歩と迫る。遂に間近にまで迫れば、彼女が発散する凄まじい冷気が遙の肌を撫で、髪を白く凍らせた。
『手間取らせおって。さ、今度こそとどめを――ごっ!?』
 碧麗の腹に、遙の杖が突き立った。
「長き刹那の無力を糧に。生者を屍に――」
 それは呪われた言葉。碧麗の体に叩き込まれたのは、長時間反撃しない事で、徹敵的に凝縮された恨みの念。
 串刺しにされたままの碧麗の体がぴくりと震える。
「――祝福を呪いに、強者は地に臥せよ」
 遙が唱え終えるなり、碧麗が溜め込んだ魔法的な加護の全てが反転した。
 体を縛り付ける呪い。森羅万象を侵す猛毒。時間を増す程に悪化するそれらが碧麗の体を一気に汚染してゆく。
『お、おのれぃ……!』
 杖から体を抜き、這う這うの体で撤退する碧麗。
 その場に一人残された遙は杖を雪の上に置き、長い長い息を吐くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

火土金水・明
「この方が今回の事件の元凶ですか、こちらも全力で迎え撃ちましょう。」「もちろん、取り込まれた方も助け出します。」
【POW】で攻撃です。
攻撃は、【先制攻撃】で【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【銀色の疾風】で『『雪女』碧麗』を【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【見切り】【残像】【オーラ防御】【氷結耐性】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでも骸魂にダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。



「あなたが今回の事件の元凶ですか」
 幽世を滅亡寸前まで追いやった『雪女』碧麗。その姿を目の当たりにしても、火土金水・明の胸にそこまで強い感慨らしきものは湧いて来なかった。ただ彼女に利用されている者がいれば無事助け出したいと、素直にそう思う。
『左様。ま、あと少しで邪魔が入ったがの』
 幼い容姿とは裏腹に、ふてぶてしくそう言う碧麗。
『おぬしら程度の障害、わしが直々に除いてやるわ』
「そのつもりならば、こちらも全力で迎え撃ちましょう」
 そう言って明は詠唱を始めた――と見るや、慮外のタイミングで何かが碧麗に向けて飛ぶ。
 魔力で編まれた、銀色に輝く剣が数本。
 横へと避ける碧麗。だがそのうち数本はフェイク。一瞬の判断の遅れから、本命の一本が彼女の腕を掠めた。
『ほう、特効か』
「その通り」
 軽く自身の腕を押さえる碧麗の白い肌を、一条の血が伝っていた。
 明の周囲に冷気が収束する。反撃の前兆。
 ざ、と柔らかい雪の感触と共に地面を蹴れば、明がさっきまでいた場所に氷の柱が屹立する。
 不安定な足場の上で、矢継ぎ早に繰り出される碧麗の凍結攻撃。ある時は技の出鼻を捉え、またある時は魔力の障壁で防ぎ止め。明はそれらを巧みに凌ぎ続ける。
『ほれ、捕まえたぞ』
 しかし遂に碧麗の言葉と共に――明が氷柱に閉じ込められた。
 氷漬け。そう思われた時。
『ん?』
 氷の中の明が、スゥ、と掻き消えた。
「そちらは残像ですよ」
『くくく、やりにくいのぉ』
 戦闘が続くにつれ、敵の狙いが少しずつ甘くなってきたのを明は看破していた。
 焦れか。それとも相次ぐ戦闘による疲労の蓄積か。あるいは銀の剣によるダメージが碧麗を蝕んでいるのか。その原因がいずれにせよ、好機。
 自身が氷柱に身を隠した一瞬を狙い、明はその向こうにいる碧麗に向けて狙いを定める。
「この一撃で――あの子を助け出す!」
 刹那、打ち出された剣が銀色の軌跡を描き、目前の氷柱を砕いて碧麗へと飛んだ。
『むっ!』
 気付いた時、銀の剣は見事に碧麗の胸を貫いていた。
 力を失い崩れ落ちる碧麗――今はその威圧感の霧散させた只の雪女の少女――の体を、明は横合いから優しく抱き止める。
「……」
 明が少女の容態を確かめればその肉体には傷一つ無かった。疲労の色こそあるものの、命に別状は無く呼吸も正常。あと少しすれば目を覚まし、動き回る事も出来るだろう。
 そっと明が少女の体を地面に横たえた時、彼女の周りでは音を立てて急速に雪が融け始めた。青々とした草木が急速に大地を埋め、あちらこちらで風に靡く。
 再び燃え立つ生命を祝福するかのように雲間を割いて陽射しが差し込み、明達のいる平原を眩しく染めた。
 それは常冬が去った何よりの証。
 猟兵達の手で、幽世に平和が齎されたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 日常 『幽世の秘湯』

POW   :    のんびりゆったり温泉に浸かる

SPD   :    温泉に浸かりながらちょいと一杯

WIZ   :    湯船が広いから泳げるかも?

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 夕闇が山並みを染めていた。
 雪融けはほぼ終わり、幽世に夏虫の声が戻り始める。
 目的を果たした猟兵達は、地図を頼りに鬱蒼とした森の中を踏み入れた。
 やがて前方には煙の立ち込める岩場が姿を現す。
 木陰から岩場を覗き込めば――温泉があった。
 岩間からとめどなく湧き出る熱い湯。そこから立ち上る湯気が猟兵達の頬と髪を撫でる。

 猟兵達の隣にいるのは、骸魂に囚われていた雪女の少女だ。
「あの……みんなを助けてくれてありがとう。私も後で足湯を使わせてもらうね」
 改めて猟兵達にお礼を言う少女。近くの里の出身らしい。
「じきに他の妖怪のみんなも来るだろうけど、騒がしくしないように言っておくね。
 何か欲しいものがあったら持って来させるから」
 だからみんな、ゆっくりしていってね。少女はそう言って微笑むのだった。

 森の茂みと天然の岩に囲まれた温泉。
 プール並みの広さを持つものから一人向けサイズのものまで大きさは様々だ。
 あるものは隣同士、またあるものは遠く離れて。山一帯に広く散らばっているらしい。
 人里離れた温泉郷で、猟兵達は暫し憩いの時間を過ごす――。
春霞・遙
夕日に虫の声に温泉なんてさいっこうのシチュエーションですよね。

森の中の温泉かぁ。
地元の温泉だときっと
「虫さんや葉っぱさんも温泉が大好きです。入っていたら網で救って外に出してあげてください」
なんて注意書きがあるんだろうな。

暖かくなった以上凍傷になるとは思わないけれど、氷に捕まった足先や指先をじんわりお湯の中でマッサージしたり、ストレッチしたり日頃の疲れを癒したいです。
他に人もいるし声に出しはしないけど、地元の温泉の歌でも鼻歌で歌いながらのんびりしますね。

『草津よいとこ 一度はおいで お湯の中にもコーリャ 花が咲くヨ』
『春はうれしや 降る淡雪に 浮いた姿がコーリャ 目に残るヨ』
なんてね。



 森の中にある温泉。
 その脇で春霞・遙は紅いサンダルをそっと脱いだ。
「夕日に虫の声に温泉なんてさいっこうのシチュエーションですよね」
 梢の隙間から斜めに差し込む鮮やかな茜色の光。辺りを反響するヒグラシの鳴き声。普段は味わえない秘湯の雰囲気に、遙は喜びで表情を輝かせる。何を隠そう、彼女は温泉が大好きなのだ。
 遙が着ていたのはセパレートとしては大人しめの水着。全体としては落ち着いた雰囲気ではありつつも、所々に白いレースなどの遊び心があしらわれている。何処か子供っぽい愛らしさを漂わせる遙には、とてもよく似合う。
「それにしても、森の中の温泉かぁ」
 遙が周囲を見回せばそこには見事に生い茂った樹と天然の岩。
(「地元の温泉だときっと、『虫さんや葉っぱさんも温泉が大好きです。入っていたら網で救って外に出してあげてください』……なんて注意書きがあるんだろうな」)
 管理する者とていない秘湯。最初に見つけた者が思いやりの気持ちからそんな看板を立てる事もあるだろう。しかしまさか幽世にまで。そう思った矢先。
「ん?」
 遙は思わず目を止め、次いで、ふふ、と笑う。湯煙の先にあったのは文字の掠れた古い看板。その傍の岩の上に置いていたのは、大きめの網だった。

 遙は温泉の縁に屈み込み、木の桶で湯を掬って体にかけ終わると、足先からゆっくりと湯船に身を浸した。
 たちまち温かい感触が遙の体を包む。
「……」
 思わず深い息をついてしまった。
 先の戦いで凍った靴に包まれた足の指先を、遙は両手で包んでマッサージ。ずんとした感覚に耐えつつも優しく撫で上げていけば、やがて足先は血行を取り戻し、健康的な赤みを帯びる。
 続いて足裏。ふくらはぎ。体の末端から中心まで、労わるようなストレッチを湯の中で続けていけば、全身のほぐれと共に日頃の疲れが少しずつ癒えていく。
 全身を心地良い疲労感に襲われながら、遙はとある歌を紡ぐ。

『草津よいとこ 一度はおいで お湯の中にもコーリャ 花が咲くヨ』
『春はうれしや 降る淡雪に 浮いた姿がコーリャ 目に残るヨ』

 他の人もいるからと口には出さず、鼻歌で歌われたのは、遙の地元に伝わる、温泉の唄だ。
 即興で紡いだ筈が、この上なく馴染んでいるような気がして。
「……なんてね」
 ついほくそ笑む。
 気付けばヒグラシの声は既に止み、入れ替わりにスズムシやマツムシの声が辺りに響く。
 去り行く夕日を静かに浴びながら、遙はいつまでも湯の中に佇んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カタリナ・エスペランサ
ふふっ、今回も大勝利! 皆も無事で何よりだね!
温泉も目当てだったから楽しみだ
実はアタシも数日前からお酒が飲める年になったんだよね! 文字通りの勝利の美酒、味わわせてもらおうか?
もちろん《料理・医術》の知識はあるから節度持って美味しく飲めるように意識はするよ!

温泉の皆に予め《コミュ力+礼儀作法+交渉》で話して許可が貰えれば装備[金糸雀]の《楽器演奏》をBGMに《歌唱》で軽く歌わせてもらいたいな
ゆっくり温泉に浸かれるような機会って普段はあまり無いからインスピレーションの良い刺激になるんだよね

かごめちゃんや雪女の子とか、可愛い子たちと一緒にこの休暇時間を過ごせれば嬉しいな!



 夕闇が辺りを包み込む頃、温泉郷を里の妖怪達が訪れつつあった。どうやら男女で分かれる手筈であったようで、とある大きな露天風呂に集まった妖怪達は皆うら若い女性の姿をしている。ほどほでに声を顰めつつも彼女達は今回の事件のこと――主に猟兵達の活躍――を中心に、話に花を咲かせているのだった。
「ふふっ、今回も大勝利! 皆も無事で何よりだね!」
 そこへカタリナ・エスペランサが姿を現した。彼女が着ているのはマリンブルーの上に南国の花々が咲き乱れるセパレートタイプの水着。その腰には黄色の不思議な文様が綴られた深藍色のパレオが揺れている。
「私達を助けてくれた人間だ!」
「すごい、本物の猟兵だ……」
「私もなりたい!」
 カタリナを中心に温泉の雰囲気が一気に盛り上がる。集まって来る妖怪達を前にそつのない対応を見せつつも、カタリナは自身の希望を伝えた。
「アタシ、旅芸人なんだ。一曲歌わせてくれないかな?」
「いいよいいよー」
「余興かんげー」
 岩の上に妖怪達が持ってきた行灯が並べられ、あれよあれよという間に即席の演奏ステージが出来上がってしまった。
 カナリア型のスピーカーが、ざざ、と音を立てたかと思えば楽しげなBGMを奏で始め、それに合わせてカタリナは澄んだ声で歌う。
 演奏が終わると同時に温泉中から拍手が響き渡った。
「わわっ! すごいすごい!」
「やんややんやー」
 カタリナにとっては軽い演奏ではあったが、彼女の高い音楽センスは妖怪達には大変好評であった。
 その時木陰から二つの顔が、かさ、と顔を出した。
「来ちゃった……」
「にんにん」
 盛り上がった温泉に興味を惹かれてやってきたのか、猟兵のかごめと、着物の袖で口元を隠した雪女の少女だった。
「もう大丈夫? 今夜は楽しい時間を過ごしてね! かごめちゃんも!」
「うん!」
「カタリナ殿もおつかれにんにん」
 一仕事終えたカタリナは汗を流すべく念願の温泉に浸かる。肩まで熱い湯に身を沈めた瞬間、心地良い陶酔感がカタリナの体を隅から隅まで弛緩させた。
「悪いね。演奏まで」
 隣で湯に浸かる一人の妖怪がカタリナに済まなそうに言う。
「いいのいいの。こういうのもインスピレーションの刺激になるからね」
 多忙なカタリナにとって、ゆっくり温泉に浸かる機会は骨休めであると同時に。創作の糧ともなる貴重な時間なのだった。
 ふとカタリナが見れば、彼女は自身の傍に徳利とお猪口を乗せたお盆を浮かべていた。
「いーだろ。やらんぞ?」
 一人で酒を煽る妖怪に向けて、カタリナもまた不敵な笑みを浮かべる。
「ふっふっふ、アタシも数日前からお酒が飲める年になったんだよね!」
 カタリナは数日前に誕生日を迎えたばかり。めでたく満二十歳を迎えたのだった。それを漏れ聞いた周囲の妖怪達から、わー、と歓声が上がる。
「飲もう飲もう!」
「ひゅーひゅー!」
 雪女の少女とかごめがお盆を次々と湯の上に流していく。皆で持ち寄っていたのか結構な量が温泉に浮かんでしまったが、カタリナは衛生兵としての知識から自身の酒量をある程度推し量ることが出来る。水面を流れる朱塗りのお盆のうち一つをカタリナは捕まえ、そこから徳利を取って傾けた。
「乾杯」
「かんぱーい!」
 皆と一緒に日本酒を煽るカタリナ。
 文字通りの勝利の美酒。その味が格別であったことは言うまでもない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鞍馬・景正
無事解決のようですね――重畳です。
では、すぐに発つのも無粋でしょうし、暫し休んでいきましょうか。


欲しいもの――ならば御厚意に甘え、酒が少しあれば申し分なく。

そして静かな湯で、凍っていた手足を温めさせて頂きましょう。

盃を傾けつつ、改めてこの世界の景色を眺めてゆるりと。
湯の温感と酒が巡れば、疲れも自然と溶けていくというもの。

しかしあの骸魂――慢心してくれたから良かったものを、抜かりなく仕掛けられれば危うかったのも事実。

刀も凍気にやられれば、途端に脆くなるという話を聞いた事がありますし……対策を考えておかねばなりますまい。

と、骨休みの心算が戦への思案になってしまいましたが、まぁ良いでしょう。



 先に訪れていた妖怪の案内を受け、鞍馬・景正は温泉郷を散策していた。身に付けているのは膝下ほどの長さの水着。きりりとした竜胆色をしており、白皙の肌も相まって、景正を茜色に染まる景色の中で一層映える存在としていた。
「ここは……どうでしょうか」
「――結構」
 人里離れた温泉郷。果たしてその端に位置する小さな温泉は、岩肌から湯船に向けてたぱたぱとお湯が流れ込む音と、ヒグラシの鳴き声だけが辺りに響く、とても静かな場所であった。
「あ、あの……本日はありがとうございました。何か灯りとか、欲しいものは……」
「――欲しいもの」
 気が済まなそうな表情を見せる妖怪に対し、景正。
「では――酒が少しあれば申し分なく」
「はい……ごゆっくり」
 女性の妖怪は乞われたものをその場に残し、深く頭を下げてから去って行った。
 一人残された景正が軽く掛湯をすれば、それまで凍り付いていた手足にほっとするような熱さが沁み通っていく。
 湯を覗き込めば水面には夕焼け色の波紋が広がっていた。
 ゆっくりと、景正は爪先から足、そして最後は体全体を湯の中に沈める。
 熱い湯が体を抱き止め、心地良い感覚に景正は全身と言う全身を弛緩させる。
「無事解決ですね――重畳です」
 深呼吸一つ。盃を傾け、景正は周囲を見遣る。
 視界を埋めるのは湯気に濡れた天然の岩と、見事な枝ぶりの広葉樹。それらが斜めに差し込む光に照らされる光景は、景正の胸に安らぎと一抹の郷愁を掻き立てた。
 次第に巡り出す酒も相俟って、景正の体から疲れが溶けていく。
「しかしあの骸魂――慢心してくれたから良かったものを、抜かりなく仕掛けられれば危うかったのも事実」
 手練れの雪女、碧麗。彼女との戦いの内容を己の内で反芻する。堂々とした戦いぶりを見せた景正だが、これも武人の性だろう。
「刀も凍気にやられれば、途端に脆くなるという話を聞いた事がありますし……対策を考えておかねばなりますまい」
 景正の愛刀は元と変わらない輝きを湛え、湯気を浴びない程近い場所で鞘に収まっている。とはいえ、戦いの流れの中で変質してしまう可能性があるのも事実。景正はなおも思案に耽る。
 羅刹の細く薄い首筋には幾つもの水滴が伝わり、空から落ちて来る茜色の光を反射してきらきらと輝く。気付けば黒い髪は湿り気を帯び、しっとりと濡れていた。
「……骨休みの心算が戦への思案になってしまいましたが、まぁ良いでしょう」
 景正は瞼を閉じ、夕陽を静かに浴びながら改めて杯を傾ける。
 まるで一枚の絵画のようなその光景は、暫し温泉で見られたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月05日


挿絵イラスト