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欲望の眼差し

#グリードオーシャン #シャッツンゼル島

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#グリードオーシャン
#シャッツンゼル島


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●宝島
 その島は『シャッツンゼル島』と呼ばれる島であった。3本の爪痕が隆起したような三叉の鉾のような、そんな形をした島であった。
 島民たちの多くは、その島の起こりを知らない。仮に島の起こりを知っていたとしても伝承として残されたところどころ歯抜けになった御伽噺という名の情報だけであった。
 彼等は皆、平和に島の恵みを受けて生活していた。
 凪のように平坦な生活というわけでもなければ、嵐のような激しさがある生活でもない。只々穏やかな時間だけが流れる平穏な島であった。

「本当に彼等は何も知らないんだね。自分たちが生活している島の価値も、その成り立ちも」
 その平和そのもの『シャッツンゼル島』を見つめる者が居た。
『大海統べる災厄』ヨハンナ・グスターヴ。幼い容姿からはかけ離れた残忍なる海賊行為で知られるコンキスタドール……勿論賞金首である。
 だが、その賞金の額は破格という言葉では生ぬるい。天文学的な額の賞金は、その実力の凄まじさと恐ろしさを物語っている。
「価値を知らない無知はそれだけ罪さ。自分たちの平和の価値がどれほどの値打ちであるのかを知らないなんて、罪悪だ。それは度し難いことだ」
 平和な島の波間に紛れて海中を行く複数の宝箱。
 それはどこかの船から落ちてしまった荷ではない。その箱の中に潜むのはグリードミミック。宝箱に擬態したコンキスタドールである。
 彼等はメガリスを収集し、溜め込む習性がある。あの平和な島には縁遠いような怪物であるが、それこそヨハンナの言う無知である。

「あの島は―――そう、宝島さ。それもとてつもない、ね。ああ、楽しみだなぁ……これでもっとあの方に……メガリスを供物として捧げることができる」
 ヨハンナの義眼が輝く。
 それは邪心に魂を捧げることに寄って得た魔眼、メガリス『海魔の瞳』。
 その瞳に宿るのは簒奪者としての我欲を満たすことでしか得られぬ快感。すぐさまあの平和な島に押し入ってしまいたい逸る気持ちを抑える。
「ああ、だめだ。だめだ。だめ。我慢しなければ。せっかくの宝島だ。全て手に入れてしまわなければ―――ああ、なんて狂おしい時間なんだろう!」
 はやく、はやく、とヨハンナは爛々と『海魔の瞳』を輝かせる。
 その欲望の眼差しは、平和な島『シャッツンゼル島』を脅かさんと射抜くように見つめられていた―――。

●星を征く船
 グリモアベースへとやってくる猟兵たちを出迎えるのは、宝龍印・ヂュイン(バオロン・f26469)であった。
 彼女は笑顔で猟兵達に手招きする。こっち、こっち、と。
「や、みんな。集まってくれてありがとう。ところでみんなはもう水着なんかは用意できちゃったりしちゃったりしているのかな? あ、あたし? あたしはほら、一張羅が水着みたいなものだからさ」
 などと緊張感のない笑顔を浮かべながらヂュインはあまりにも予知との関係のない雑談に花を咲かす。
 水着コンテストが近いこともあるのだろうが、そろそろ……と一人の猟兵が言う。
「ああ、ごめんごめん。そうだよね。事件の予知について話をするね」
 手を合わせて謝りながらヂュインはウィンクする。

「みんなはグリードオーシャンについてはもうよく知ってると思うんだけれど、今回意見が起こる島はスペースシップワールドから落ちてきた巨大宇宙船の名残が島となった場所だよ。船首から海中に一直線に突き刺さって丁度、海面に大きな噴射口……スラスターっていうのかな? そのすっごく大きい噴射口が繋がったようにどういうわけか土壌が出来上がって生まれた島なんだ」
 名前を『シャッツンゼル島』。
 平和な島なのだという。その土壌の下に宇宙船があるとは思えないほどに普通の島となってしまっているようだった。
 青い海に白い砂浜……それはもう一般的に言うところの南国リゾートである。

「そう、一見すると普通の島だけど、みんなはわかるよね。その宇宙船が土台となって出来上がった島にはメガリスがたくさん眠ってる。勿論、地下……っていうか、真っ逆さまに海底に突き刺さってるスペースシップの中に、って意味だけど。その島は地上に生命反応がなくなってしまうと自沈する機構が備わっているんだ。そういうメガリスがあるんだろうね」
 だから、人が住んでいる以上『シャッツンゼル島』は沈むことはないのだという。
 そこで事件の予知と関係があるのだろう。ヂュインはこれは島民には内緒にして欲しいんだけれど、と前置きして言う。

「この島の財宝、メガリスを狙っているコンキスタドールが居るんだ。島の近くに船で着ているそうなんだけど、島にメガリスを収集する部下のコンキスタドールを放っている。そいつらをまずは倒して、親玉である『大海統べる災厄』ヨハンナ・グスターヴを打倒して欲しい」
 島民たちにコンキスタドールが迫っていると知らせれば、混乱は避けられない。
 だからこそ、まずは自由な海賊や交易商人、もしくは観光客などを装って島に訪れ、島民たちと交流を深めなければならない。
 交流が深まれば、もしものときにもスムーズに島民たちを避難させたりできるだろう。
 同時にメガリスを収集しようと影で蠢く配下のコンキスタドールの動向も知ることができるかもしれない。

「なので、まずは皆は島を楽しみながら島民たちと交流してね。コンキスタドールの動向を探りながらでもいいんだけど、どちらにせよ配下コンキスタドールは、そこまで知能が高いわけではないみたい。いずれ猟兵の存在を察知してあっちから襲いかかってくるかもしれないし」
 そうなれば、島は戦場になる。
 この配下コンキスタドールたちを叩きのめし、率いるボスであるコンキスタドールを倒して欲しいのだとヂュインは言う。

「今回、この島を狙っているコンキスタドール……『大海統べる災厄』ヨハンナ・グスターヴは、ものすごい金額の賞金がかかってる賞金首なんだよね。マジですごいよ。天文学的だよ、数字。それだけ油断ならないし、強い敵だよ。だから、油断なくね」
 そう言ってヂュインは猟兵たちを送り出す。
 欲望渦巻くグリードオーシャンにおいて、一際強い欲望を持つコンキスタドールが相手となるのは猟兵たちにとっても脅威である。

 だからこそ、予知でわかる範囲の情報を全て細かく伝えた。
 彼等ならば、この予知の情報を基に如何なる強敵も打倒してくれる。そう信じてヂュインは猟兵たちを見送るのだった―――。


海鶴
 マスターの海鶴です。
 今回はグリードオーシャンでの事件になります。財宝眠る平和な島を狙う欲望の権化たるコンキスタドールを打倒し、島を守るシナリオになります。

●第一章
 日常です。
 スペースシップワールドから落ちてきた超大型スペースシップが島へと成った『シャッツンゼル島』を舞台に、皆さんは自由な海賊や交易商人を装って鉄甲船にて島を訪れます。
 島を楽しみつつ、島民の皆さんと交流を図りつつ、有事の際への備えや、島に眠るメガリスを探して暗躍する配下コンキスタドールの動向を探りましょう。
 普通に南国の島のビーチを楽しむのもありです。

●第二章
 集団戦です。
 第一章での皆さんの動向によって状況は変化しますが、首魁である『大海統べる災厄』ヨハンナ・グスターヴの配下コンキスタドールとの戦いとなります。
 これを討ち果たし、島民たちを守りましょう。

●第三章
 ボス戦です。
 島のメガリスを狙って暗躍していた『大海統べる災厄』ヨハンナ・グスターヴとの戦いとなります。
 彼女は島に眠るメガリス全てを島の地下……スペースシップから配下コンキスタドールによって奪い尽くした後、上陸して島民たちを全て虐殺するつもりでした。
 さらに島全ての人間が死亡することによって発動するメガリスに寄って沈みゆく島を眺めることを望んでおり、その危険な欲望のままに行動しようとしていました。

 これを討ち果たし、その欲望を砕きましょう。

 それではグリードオーシャンの大海原に繰り出し、ビーチを楽しみつつコンキスタドールの野望を阻むシナリオとなります。
 皆様のキャラクターの物語の一片となれますようにいっぱいがんばります!
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第1章 日常 『青い海・白い砂浜・穏やかな午後』

POW   :    スポーツ・水泳、身体を動かそう

SPD   :    釣り・砂遊び、黙々と遊ぼう

WIZ   :    観賞・昼寝、ぼんやり過ごそう

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 そこはまさに南国のリゾートであった。『シャッツンゼル島』。
 平和な島である。
 あまりにも長閑であり、吹く風は潮風を優しく運んでくる。鉄甲船から見える範囲であっても、鉄甲船にのった猟兵たちに手を振ってくる島民たちの笑顔をみればわかる。

 ここがとても良い場所であると。
 こんなにも平和で過ごしやしい島を欲望に塗れた視線が睨めつけていることを島民たちは知らない。
 コンキスタドール……『大海統べる災厄』ヨハンナ・グスターヴの瞳が爛々と彼等の生命と海中に眠る巨大宇宙船内部に埋没したメガリスを狙っているのである。

 島民を危険に晒すことも、彼等を脅かすコンキスタドールも捨て置くことはできない。
 まずは南国の島を楽しみながら島民たちとコミュニケーションを取らなければならない。
 僅かな一時ではあるが、猟兵たちにも少しだけ早いバカンスが訪れようとしていた―――。
村崎・ゆかり
状況はさしずめ、猫に小判か。まずは乗り込んでみましょ。行くわよ、アヤメ。

「コミュ力」で島民に接触し、好印象を抱かせる。
こんにちは。私はあちこちの島を巡って回ってる暇人みたいなものよ。ここの島が面白いって話を聞いてやって来たの。
この島に伝わるお伽噺、聞かせてもらえるかしら?
話の内容とグリモア猟兵から聞いた島の成り立ちを合わせて、スペースシップワールド時代の有り様を想像するわ。
それからお礼を言った後で、島の様子を見て回る。「地形の利用」の観点から、上陸・襲撃しやすい場所の割り出しと、防衛線の構築地点の選定を行う。

迎撃の用意は調った。さあ、いらっしゃい、コンキスタドール。残らず討滅してあげる。



 海洋世界グリードオーシャン。
 この世界にはかつて海しか無かったが、異世界より落ちてきた島々に寄っていくつもの島が点在する欲望渦巻く海の世界へと変わっていった。
 大航海時代以上の技術は残らず消え去ってしまったが、呪われし秘宝―――メガリスによって成り立つものもある。
 勿論、今回の次元の舞台である『シャッツンゼル島』もまた異世界より落ちてきた島……いや、超巨大宇宙船の残滓である。
 垂直に海底に突き刺さった船体は、巨大なスラスター、噴射口を基盤にしてどういうわけか土壌を育んだ。今ではすっかり平和な島へと変わってしまった。

 だが、この島の地下は残滓と言えど異世界の超巨大宇宙船である。
 その宇宙船内部に秘められしメガリスの数は圧倒的であり、これを狙うコンキスタドールにとっては正しく『宝島』であった。
「状況はさしずめ、猫に小判か。まずは乗り込んでみましょ。行くわよ、アヤメ」
 ユーベルコード、愛奴召喚(アイドショウカン)にて呼び出された式神アヤメと共に鉄甲船より島に降り立ったのは、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)だった。
 彼女たちが鉄甲船より降りると、すぐに小さな子どもたちが駆け寄ってくる。
 島というある意味閉鎖的な環境において、外からやってくる交易の船や、その人員というのは興味の対象以外の何物でもなく。彼等にとってゆかりたちは友好的に接するに値する者たちであった。

「こんにちわー!」
 年の頃は十歳かそこらだろう、少年少女たちが二人を取り囲む。幸先がいい、とゆかりは微笑んで彼等に挨拶を返す。
「こんにちは。あたしはあちこちの島を巡って回ってる暇人みたいなものよ。ここの島が面白いって話を聞いてやってきたの」
 ひまじんー? ってなんだー? と少年少女たちはきゃっきゃと笑い合う。
 言葉の響きが面白かったのだろう。
 早速打ち解けた雰囲気になるのは、ゆかりの持つコミュニケーション能力あってのことだろう。ゆかりにとって知りたいことは、この島のこと。コンキスタドールが狙うのはメガリスであろうが、島の全容が知れれば配下のコンキスタドールたちを迎撃するのにきっと役に立つ。

「そう、暇人。ねえ、このしまに伝わる御伽噺、聞かせてもらえるかしら?」
 ゆかりの問いかけに、我先にと少年少女たちが手を上げて騒ぎ始めるものだから、耳が少しだけキンキンしてしまう。
 根気強く彼等の話を聞いていると、この島ははるか昔に3つの大きな横長のお皿だったのだという。
 そこに沢山の泥や灰が降り積もってやがて山になって砂浜が出来上がって3つであった横長の皿は互いに繋がり合って、三叉の鉾のような形のしまになったのだという。

 それは神様が天より遣わせてくれた恵みの土壌であり、そこで争いなく平和に暮らすことこそが自分たちに与えられた使命であり褒美であるのだという。
 と、要約すると、そんな御伽噺であった。
「……要約するのが大変だったわ……みんな一斉に喋りはじめるのだもの」
 アヤメが居なかったら、流石に話をまとめるのは困難であったことだろう。
 グリモア猟兵から齎された情報と合わせて考えるに、島の基本的な土壌はスペースシップワールドのものであろう。
 とするならば、この足元に続いているのは思った以上に巨大な宇宙船であるようだった。
「ありがとうね……と、アヤメ、島の様子を見て回りましょう」
 礼を告げてゆかりは少年少女たちと別れて島の様子をぐるりと見て回る。
 地形の利用という観点から考えると、この島を秘密裏に襲撃するというのであれば、どこから攻めるべきであろうか。
 三叉の鉾のようにこのしまには二つの入り江がある。潮の流れなどを鑑みるに、この入り江からコンキスタドールが侵入するのは想像に難くない。

「……大体の襲撃予測地点はわかったわ。あたしの読みが外れていなければ、襲撃されるポイントは入り江の二つね……」
 アヤメと二人で二つの入り江に絞って防衛線の構築を行っていく。
 急場しのぎのものであるが、いきなりコンキスタドールに襲撃されても島民たちを非難させるだけの時間は稼げるはずだ。
「迎撃の用意は調った。さあ、いらっしゃい、コンキスタドール。残らず討滅してあげる」
 ゆかりの紫の瞳は海原の波間に隠れるコンキスタドールを睨めつけていた。
 平和な島の時間をかげらせてはならない。
 あの少年少女たちの瞳が悲しみに塗れるようなことがあってはならない。その思いと共にゆかりは、コンキスタドールの襲撃に備えるのだった―――。

成功 🔵​🔵​🔴​

シル・ウィンディア
さーて、折角南の島来たんだし、今日はオフでのんびりー、だね
潮騒の音って、気持ちいいよね
こう、ざざーん、ざざーんて、子守歌みたいに…

のんびりしているように見せかけて
【高速詠唱】でシルフィード・チェイサーを使用
探すは、ここに眠っているメガリスのありかだね
それじゃ、シルフィード、よろしくー

情報がヒットするまでは、のんびり過ごすよ
誰かに見られても、のほほんとしているように見せかけないとね

ヒットしたら
散歩のふりして、目的の場所に移動するね


目的の場所に付いたら…
敵さんがいないかどうかを【第六感】をフル活用して感じるね

気配感じなかったらいいけど

感じたら…

気づかないふりして、立ち去るよ
お楽しみはまだ後だからね



 この海洋の世界におちてきた島々の中にはスペースシップワールドに存在する宇宙船が元になった島も少なくはない。
 ただ、今回の『シャッツンゼル島』は、その中でも特に巨大な宇宙船であった。なにせ、その宇宙船を進ませる推進力を生み出す3つのスラスターが皿のように海洋に浮かび、その巨大な船体は海底に垂直に突き刺さったままである。
 その皿のようになったスラスターの上に土壌が生まれ、3つのスラスターは繋がり一つの島へと成り変わったのだ。

 その島は美しくも穏やかな時間流れる南国の島を思わせるリゾートのようであり、そこに住まう人々もまた同じように穏やかな気性の人間たちばかりであった。
「さーて、折角南の島に着たんだし、今日はオフでのんびりー、だね」
 鉄甲船より降り立った猟兵の一人、シル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)は、周囲を見回す。
 白い砂浜は、この下に巨大な宇宙船があるのだと知らなければ、本当に穏やかな島にしか思えないほどである。耳をくすぐるよう波の音に誘われるように瞳を伏せる。
 聞こえてくる音に耳を澄ませた。

「潮騒の音って、気持ちいいよね……こう、ざざーん、ざざーんて、子守歌みたいに……」
 砂浜に立ち、波の音に耳を傾ける。
 穏やかな時間が流れていくし、時折聞こえてくるであろう島民の子どもたちのはしゃぐ声が耳に優しい。
 こんなふうに心安らぐ場所というのはとても得難いものである。

 シルはとにもかくにも、彼女の言った通りオフを満喫しているように見えるだろう。
 だが実際は違う。
 彼女のユーベルコード、シルフィード・チェイサーによって召喚された風の精霊『シルフィード』と五感を共有し、この島に眠っているメガリスの在り処を探っているのだ。
 それじゃ、シルフィードよろしく、と召喚した風の精霊に頼みシルはゆっくりとした時間を過ごしていた。
 島民たちにいらぬ心配をかけてはならないし、それがストレスとなるのもさけたい。一見のんびりしているように、のほほんとしているように見えていたのなら、シルにとってはそれが幸いなのだ。

「ほんと、慌ただしい時間より、のんびりゆっくりした時間がいいよねー」
 波の音は心地よく、島民たちも良くしてくれる。単純に外から訪れた人間というのが珍しいのもあるのかもしれないが、彼等は彼等なりに外からやってきたシルとのコミュニケーションを取りたいと思っているのだろう。
 軽く外の話をしながら、島民たちと会話を楽しむくらいの余裕はあった。
 だが、風の精霊シルフィードと五感を共有しているシルに、目的の場所を見つけたサインが送られてくる。
 それじゃ、しかたないか、と話を切り上げてシルは散歩をするフリをして目的の場所へと移動していく。

「……ふむふむ。メガリスが何処にあるのかって言ったら、やっぱり船体の中だよね
。入り口は埋まってるって思ってたけど、これって宇宙船の緊急脱出路とか、メンテナンスのハッチ……なのかな?」
 シルフィードが見つけたのは、3つの鉾のような形をしている島の一際くぼんだ盆地であった。どうやらメガリスの気配がするのは、この盆地のどこからか、というところまではわかっている。

 シルの第六感はこの地にまだ敵が……つまりはコンキスタドールが放った配下が到達していないことを告げている。
 気配を感じないということは、いないということにはならないが、それでも彼女の感じる範囲にはオブリビオンの気配がない。少し早すぎたかも知れないと思ったが、それでも、もしもコンキスタドールがメガリスを目指してやってくるのならば、此の地もまた敵の標的になる可能性がある。
「……む」
 そうこうしていると、彼女の感覚に引っかかるものがる。海の波間の向こう、波の間に煌めく光。きらり、と一瞬だが彼女の視界にひっかかる自然ではない人工物が輝いた光を捉える。

「……お楽しみはまだ後だからね」
 その光は確実にコンキスタドールのものであるとわかった。
 だが、あえてシルは気が付かぬふりをして、その場を立ち去る。敵にこちらが気がついていないと思わせるのもまた、戦術の一つである。
 気がついていないのと、気がついている、その決定的な違いをこのあとシルはコンキスタドールに思い知らせることになるだろう―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レクス・マグヌス
藤原・桔梗(f10098)と参加
WIZ

【心情】
グリードオーシャン、改めて世界が繋がっていることを意識する場所だな
呪いの秘宝で堕ちた魂に同情はするが、それでも島の人々を傷つけさせるわけにはいかない

【行動】
観光客を装って情報収集
「藤原さん…はしゃぐのは終わった後でも…ま、いいか」

「情報収集」「失せ物探し」を用いて、島民からスペースシップについての情報収集を行う
可能であればスペースシップの入り口を特定して、最終防衛線となる場所の確認をしておく

島の探索が終わったところで藤原さんと合流
多少付き合ってもいいかなということで祖国の「歌唱」を披露

藤原さん程は食べられないけど、バーベキューももらおうかな


藤原・桔梗
レクス・マグヌス(f07818)と参加
WIZ
【心情】
ここがグリードオーシャン!
一面の海に囲まれて、いかにもって感じの場所ですね
こんな場所でバカンスが出来るなんて楽しみですね♪

コホン
あ、いえ、目的はこの島を守ることでしたね

【行動】
観光客として、おニューではないけど水着姿で楽しみます
「料理」として砂浜でバーベキューの準備
「コミュ力」を用いて、興味を持ってきてくれた村人とお話して、仲良くなりたいです

焼いた肉を苦手な知性体なんていない筈です!


「良ければ、一緒にお食事しませんか?」

「バカンスに来たっていうことは、『何もしない』をしにきたんです。少しくらいのんびりしても大丈夫ですよ」

モリモリ食べましょう!



 貪欲なる海と海賊の世界であるグリードオーシャンにおいて、この『シャッツンゼル島』は平和そのものを象徴するかのような島であった。
 穏やかな波にさらされる白浜は太陽を受けて眩しく輝き、そこに住まう人々もまた同じような気性なのであろう、鉄甲船でやってきた猟兵たちを暖かく迎えてくれる。
 少年少女たちは物珍しげに猟兵達に接してはいたが、すぐに猟兵たちに笑顔を向けてくれる。どこもかしも友好的な人々ばかりであり、この島にコンキスタドールの脅威が迫っているとはとても思えない雰囲気であった。

「ここがグリードオーシャン! 一面の海に囲まれて、いかにもって感じの場所ですね」
 はじめてグリードオーシャンを訪れたのだろう、藤原・桔梗(四海の龍と共に征く・f10098)は、広がる海原と平和な島を目の当たりにしてそう感想を漏らした。
 共に訪れたレクス・マグヌス(嵐をもたらすもの・f07818)もまた同じ感想であったようだった。
「グリードオーシャン、改めて世界が繋がっていることを意識する場所だな」
 彼の言葉通り、グリードオーシャンは異世界より落ちてきた島々で構成される海洋世界である。彼等が降り立った『シャッツンゼル島』もまたスペースシップワールドから落ちてきた巨大宇宙船の名残。
 その残滓の上に土壌ができ、島へと変貌したということには驚きを隠せない。

「こんな場所でバカンスが出来るなんて楽しみですね♪……コホン。あ、いえ、目的はこの島を守ることでしたね」
 当初の目的はあるのだが、それでも多少は楽しめる時間があるのはありがたいことである。取り繕うように空咳をしてから桔梗はレクスの耳元に本来の目的を忘れていないことをささやく。
 それにレクスも頷きを返す。
「呪いの秘宝で堕ちた魂には同情するが、それでも島の人々を傷つけさせるわけにはいかない」
 そう、どれだけの理由があろうとも他人を傷つける者を見過ごしてはおけないのだ。

 二人は鉄甲船から降りると観光客を装って連れ立って歩く。
 桔梗はおニューではないが水着姿になって砂浜を楽しむ。その姿は年相応の少女であり、この島の雰囲気によくあっていた。眩しい太陽と、砂浜、それに桔梗の水着姿は島民たちにとっても新鮮なものであったのあろう。
「藤原さん……はしゃぐのは終わった後でも……」
 少年少女たちが駆け寄ってきて、ともにはしゃぐように海水を掛け合ったりして楽しんでいる様子をレクスは微笑ましげに見つめていた。
「ま、いいか」
 あんなに楽しそうにしている桔梗や子供たちを止めるのも忍びないし、それは野暮というものであろう。その間にレクスは島民の大人たちから情報を得るために、諸々の話を聞き出し始める。

 島民たちは大抵のことは話してくれる。逆にレクスのことも教えてほしいと情報の物々交換のように会話が成り立つのは、それはそれで新鮮であった。
 打算のない、ただの雑談めいた話であっても彼等は喜んで聞いてくれる。
 昔から立ち入ってはならない場所、子供たちだけでは入ってはいけない場所。そんな話を聞き出せば、それが御伽噺の体を取った警告であるとレクスはすぐに気がつく。
 この島にある幾つかある盆地、そこがどうやら巨大宇宙船のメンテナンス口であったり搬入口であったりした残滓であるようだった。
「なるほど……ありがとうございます。話せてよかった」
 レクスは礼を告げ、島民の大人たちと別れて桔梗の元へと合流しようと再び浜辺にやってくると、そこには島民の子供たちと砂浜でバーベキューの準備をしている桔梗の姿があった。

「焼いた肉を苦手な知性体なんていないはずです!」
 少年少女たちの前でそう力説する桔梗の周りには大勢の子供たちでいっぱいであった。彼女の持つコミュニケーション能力や人柄も相まってのことだろう。
 それにしたって子供たちに大人気すぎないか、とレクスは思うが、それも彼女の美点であろうと感じる。
「あ、こっちですよ。よければ一緒にお食事をしませんか?」
 もう準備はできているんです、と笑う彼女の微笑みはどこか穏やかな雰囲気を周囲の人間に与えていく。
 レクスは多少は付き合ってもいいかな、と思っていたのだが、桔梗の二言目に駄目押しされるように歩み寄る。
「バカンスに来たっていうことは、『何もしない』をしにきたんです。少しくらいのんびりしても大丈夫ですよ」

 彼女の言葉はレクスの気持ちを和らげたことだろう。
 彼は、その言葉を受けて祖国の歌を披露する。亡国の歌ではあるが、この島の人々にとっては異国の歌である。
 そこに滅びたか栄えているかは関係がない。その歌に籠められたレクスの思いが人々の心を揺さぶるのだ。

 レクスの歌が紡ぐ、平穏な時間を。
 二人と島民たちが食べたバーベキューの味は、きっと特別なものになっただろう。
 バカンス―――『何もしない』ことをする。
 桔梗の言葉通り、僅かな時間ではあるが穏やかな時間を過ごせたことは、戦いに生きる猟兵の心を慰め、癒やしたことだろう。
「さ、モリモリ食べましょう!」
 桔梗の朗らかな声が砂浜に響いた―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トゥト・アンクアメン
心情:
アマルナやメンフィス程ではないけれど良い土地だよ
豊かな土地に侵略者が湧いてくるのは摂理かもね。

行動:
【POW】
身分を偽るのは好きではないけれど海賊を装うつもりさ。
幸いなことに僕の【騎乗】する黄金戦車なら
砂漠や荒野でなくとも波に乗って上陸出来るからね。

さて島の住民達も犬や猫、若しくは鳥を飼っているに違いないから
合図があったら自分の飼い主達を先導して避難する様に【動物と話す】としよう。
動物達が先立って動けば非常事態だと認識するだろうしね。
まぁ、言う事を聞かない相手には【威厳】溢れる態度でOHANASHIするよ、うん。

動物達と仲良くなるついでに
子供達にかくれんぼに良さげな場所はないか聞こうか?



 数多くの世界が存在するのと同じように、この海洋の世界たるグリードオーシャンにもまた数多くの異世界の残滓……落ちてきた島が存在する。
 全ての欲望を内包するのが、グリードオーシャンの海であるというのならば、他よりも優れていたり、豊かであったりする島は、それだけでコンキスタドールの標的になるのは当然であったかも知れない。
 だが、それでもトゥト・アンクアメン(少年王・f26040)の瞳に映る『シャッツンゼル島』は平穏そのものな島であるように見受けられた。
「アマルナやメンフィス程ではないけれど、良い土地だよ」
 かの少年王の瞳の選定に過ちはない。
 黄金の戦車に騎乗し、海原に立つ波の上でさえ走破せしめる姿は、正しく海賊の様相であった。トゥトにとって自身を偽ることは好きではないのだが、いきなり王として来島したとしても、島民たちを徒に混乱に陥れるのと同じである。

 ならば、そこにまで民を気遣うのもまた王たる資質であると海賊を装うのだ。
「豊かな土地に侵略者が湧いてくるのは摂理かもね」
 黄金の戦車が砂浜に上陸すれば、『シャッツンゼル島』の島民たちから、どよめきが上がる。それは太陽の如ききらびやかたる黄金の戦車を目の当たりにするからではなく、トゥトの放つ威光にどよめいたのだ。
 大人たちはその威光の前に恐れ多くも話しかけるのをためらっていた。

 けれど、島であるというのならば、島民たちもまた犬や猫、他の動物たちと共存することもあるだろう。つまりはともに生きる者として寄り添っているであろうとトゥトは考えていた。
「ふむ。―――。―――……」
 少年王の呼びかけに島々から様々な動物たちが馳せ参じる。犬や猫がいるとは想像していたが、鳥や牛……想像を超える種類の動物達がトゥトの前に現れ始める。
 その様子を見て島民の子供たちはおおはしゃぎである。
「これは下知である。有事の際にはそなたらの主を先導し避難するように」
 動物と会話する能力を持って、彼等に有事の際……つまりはコンキスタドールの蹴撃が合った際には、先立って避難を誘導するように彼等に伝える。
 動物たちは合点承知という風に各々の鳴き声で応える。それはまさに動物たちの大合唱のようであり、見たこともない光景に大人たちは彼を敬う者として認知し、子供たちは興味津々と言った風の眼差しをトゥトへと向ける。

「まあ、言うことを聞かない相手にはお話しなければならないと思っていたけれど、うん。これはその必要はないようだね」
 王たる威厳とは常に溢れ出てしまうものであるが、不遜であっていいとも思ってはいない。
 動物たちとは仲良くなれたが、と子供たちの視線を受ければ微笑む。
「なあ、君たち。いつもかくれんぼ……かくれんぼはわかるよね。何かそういう遊びをするのに良い場所を知っていないかい?」
 その言葉に子供たちは我先にと手を上げる。
 あそこがいい、あっちがいい。
 一斉に浴びせられる言葉のシャワー。けれど、トゥトは動じない。堂々たる態度でもって、彼等の言葉が収まるまで待つ。上に立つものは、常に自信にあふれていなければならない。

「なるほど。それじゃあ、君たちのおすすめの場所まで連れて行ってもらおうか」
 かくれんぼの場所であるのならば、大人も知らないような秘密の場所もあるに違いない。そういった場所であれば、すでに遺跡とかしているであろう宇宙船への入り口や、すでに侵入したコンキスタドールが潜む場所のヒントにもなるやもしれない。
 手を引かれるようにしてトゥトは少年少女たちと共に、いつも遊ぶ場所へと連れて行くかれる。
 いつのまにか子供たちの集団の先頭となってトゥトは進む。

 子供たちの健やかさこそが、いつだって人の心を暖かくさせる。この平和そのものな島『シャッツンゼル島』において、この健やかさこそが真なる宝であるのかもしれない。地下に眠る宇宙船に存在するメガリスよりも、余程尊い宝物であると、トゥトはそう思ったのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
宇宙船のコアマシン製造原理が失われている故郷を思えば、この世界に多くの宇宙船が落着していることに何とも複雑な思いを抱いてしまいますね…
ですが、その多くがこの世界の命の揺り籠や故郷として役目を果たしているのは喜ばしいことでもあります

なればこそ、SSWの騎士として歪んだ欲望に島を沈めさせはしません

島ごとの伝承、民話を収集
本として纏め売り物にしている交易商人として島民と接触
礼儀作法に加え、私物の本のコピー品が商品として役立つ筈

伝承の調査の為にメガリス(と装ったUC)の使用許可を取って島の各所に●情報収集の為に配置
水中用装備も装着して潜航、海中にも置いておきましょう
敵の早期発見と避難誘導に役立つ筈です



 スペースシップワールドとグリードオーシャン。
 その2つの世界の接点として、スペースシップが存在している。かのスペースシップワールドにおいても宇宙船のコアマシン製造原理が喪われているのだとすれば、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)はそこに何とも複雑な思いを抱いてしまうのも無理なからぬことであった。

 この海洋世界においてどの年代に製造されたスペースシップであるかなどがわかれば、トリテレイアの電脳の中にあるデータベースと照合することは容易いかも知れない。だが、すでに機能を停止し、島へと成り果てたのであれば、それもまた無用の長物であった。
「漂流の果てにたどり着いた宇宙船……その多くがこの世界の生命の揺り籠や故郷として役目を果たしているのは喜ばしいことでもありますね」
 目の前に広がる『シャッツンゼル島』の平穏そのものな雰囲気と美しい自然を目の当たりにすれば、トリテレイアが抱いた感想は何一つ間違いではなかった。
 かつての機能や目的は果たせなくても、こうして別の世界にあって他の誰かの拠り所として存在することは、ある意味で本懐を遂げたといえるだろうから。

「なればこそ、スペースシップワールドの騎士として歪んだ欲望に島を沈めさせはしません」
 この島の地下……宇宙船であった内部に眠るメガリスを狙う欲望の化身、コンキスタドールによって、この島で起こる虐殺と略奪を見過ごせるわけがない。機械騎士として、猟兵として、トリテレイアの中の騎士道が叫ぶのだ。
 島へと降り立つトリテレイアを迎えたのは、島民たちの穏やかな歓迎であった。島という外界からの接触が少ない場所に置いては、通常よそ者というのは忌避されがちであるのだが、ここの島民たちは違うようだった。
 これならば、トリテレイアの目的も完遂するには難しくはないだろう。
「失礼。私は島ごとの伝承、民話を収集し本として纏め売り物にしている交易商人なのですが……」

 トリテレイアは己を交易商人として島民たちに紹介する。
 礼儀作法に加え、自身が持っていた本のコピー品を商品だと紹介すれば、説得力がますであろうと考えたのだ。
 だが、島民たちにとって本は見慣れぬ品であり、また島ごとの伝承、民話をまとめる意義も見出だせない。
 それでも、彼等は笑って快く受けてくれた。
 それならば島の長が知っているよ、とトリテレイアを島長の住居まで案内してくれる。彼等の心根の穏やかさがあればこそだろう。
 島が豊かであり、争いとは無縁であるのならば、人の善性もまたここまで発揮されるのだ。

「……これは益々持って、コンキスタドールの脅威に彼等を晒させるわけにはいきませんね」
 彼等の歓待、彼等の善性、それを踏みにじるのがコンキスタドールである。
 きっと彼等はコンキスタドールが襲撃してきたとしても、成すすべはない。だからこそ、トリテレイアたち猟兵がいる。
 島長に伝承や民話を聞き出しつつ、伝承の調査のためにメガリス……と装った自律式妖精型ロボ 格納・コントロールユニット(スティールフェアリーズ・ネスト)の使用許可を取り付ける。
 島長といえど、メガリスについては何も知らなかったようだった。
 だが、それでも快諾してくれたことには感謝しなければならない。トリテレイアは例を述べてから、複数の妖精型偵察ロボを島の各所に配置する。

「―――水中葉装備も装着して潜航させておきましょう。敵が海より来襲するのであれば、早期発見と避難誘導に役立つ筈です」
 次々と飛んでいく妖精型偵察ロボたち。
 あるものは上空から、あるものは水中を探索し、コンキスタドールの来襲に備える。確実に訪れるであろうコンキスタドールの襲撃。
 その機先を制するためには、何よりも先手を取らなければならない。

 何も疑わずに己を受け入れてくれた島民たちの優しさを守るため、また、己の故郷であるスペースシップワールドの残滓、その行く末を見守るためにも、トリテレイアはこの島を守ること、その決意を新たにするのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『グリードミミック』

POW   :    メガリス・ランページ
【纏ったメガリス全て】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
SPD   :    強欲の罠
【触手や巨大な口から敵を取り込み】【武器や装飾を奪って】【装備すること】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    ホシイ!ヨコセ!
レベル×1tまでの対象の【武器や装飾品】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。

イラスト:もにゃ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 それらは木箱であった。
 海の波間から漂うようにして『シャッツンゼル島』へとたどり着いた漂着物のようであった。だが、その内包せしは、不定形の怪物―――グリードミミック。
 あらゆるメガリスを求めて、衝動のままに行動するコンキスタドール。

 すでにその体の内側にはいくつものメガリスが内包されており、その力の源となっている。
 彼等は潮の流れに乗って、入り江から上陸するものもあれば、偵察に放っていた猟兵のユーベルコードにひっかかるものもいた。砂浜にたどり着き、そこから這い上がっていくものもいる。
 さらには岩場から盆地を目指して疾駆するものも……。

 もしも、猟兵がこの島にいなかったのだとしたら、瞬く間に島はグリードミミックによって制圧され、地下にある宇宙船内部にあるメガリスを全て奪いつくされていたことだろう。
 だが、今、ここには猟兵が居る。

 平和そのものの島を守らんと、彼等の持てる手段を持って迎撃の準備を怠らなかった。まるで彼等の居るところに誘導されるようにグリードミミックは引き寄せられたのだ。

 木箱の蓋が勢いよく開かれる。
 そこから飛び出したのは無数のメガリスに絡みつく不定形の怪物。ぎょろりと瞳を蠢かせ、その視線が捉えるのは猟兵たち。
「ホシイ! ホシイ! モット、モット、ホシイ! メガリスヨコセ―――!」
村崎・ゆかり
来たわね、コンキスタドール。
アヤメは島の人たちの方へ敵が向かわないよう、経路封鎖よろしく!

さて、「全力魔法」の「式神使い」で生み出した折鶴の式を「集団戦術」を使って使役しましょうか。戦いは数よ。
折鶴の式には、敵が徐々に一箇所にまとまるよう誘導させて、そこへ「全力魔法」雷の「属性攻撃」「範囲攻撃」「衝撃波」「なぎ払い」を乗せた九天応元雷声普化天尊の雷撃を落とす。
これで笑えない宝箱は片付いたかしら? まだいるなら、繰り返すだけね。砂浜が焦げ付くまで稲妻を落としてあげる。

数が減ったら、薙刀でとどめを刺して回る。アヤメ、そっちはもういいから、あなたも手伝って。
こいつらのメガリス、持ち帰れないかしらね?



 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)の読みは当たっていた。彼女が構築した入り江の防衛線は、潮の流れに乗って漂着してきたコンキスタドール、グリードミミックの上陸から即座に対応出来るレベルのものであった。
 彼女の懸念はまだある。
 コンキスタドールの侵入地点が此処だけではないかもしれないこと。これは他の猟兵たちもすでに動いているだろうから、大丈夫であると判断できる。
 もう一つの懸念。
 それは島民たちの避難である。そうだなくても敵の数は想像以上に多い。万が一己の構築した防衛線を突破されようものならば、島民たちに成す術はない。
「来たわね、コンキスタドール。アヤメは島の人達の方へ敵が向かわないよう、経路封鎖よろしく!」

 すでに彼女の式神アヤメは動き出していた。経路を封鎖することは、コンキスタドールの侵入を阻むと同時に、島民たちもまたこちらに近づけさせない意図があった。
 これより放つユーベルコードは地形をも変えてしまうほどに威力の高いものである。
 巻き添えを食わせるわけにはいかないのだ。
「その前に一箇所にまとまってもらいましょうか」
 手にしたのは折り鶴。それに息を吹きかけるようにして、空へと舞わせれば、それらは皆ゆかりの式神となって宙を舞う。式神となった折り鶴達が一斉にグリードミミックへと襲いかかっていく。
 一羽一羽の力はグリードミミックには及ばない。
「けれど、戦いは数よ―――後は、頭の使いようだけれどね!」

 折り鶴の式神たちは一斉にグリードミミックの群れを追い立てるように囲い込む。その意図を知ってか知らずか、グリードミミックの身に纏った数々のメガリスが巨大化していく。
 それは巨大なカットラスであったり、呪われし金貨であったり、様々なものを溜め込んだグリードミミックの身体を覆い尽くす。そして、その巨大化した身体で持って周囲を囲い込もうとする式神の折り鶴たちの囲いを突破しようと敵味方の区別なく暴れまわる。

「―――囲い込みが、崩される。でも、もう遅いわ! 九天応元雷声普化天尊! 疾っ!」
 彼女のユーベルコード、九天応元雷声普化天尊(キュウテンオウゲンライセイフカテンソン)が発動する。
 それは激烈なる落雷。
 全力の力を乗せた術式は凄まじい雷霆を一撃のもとに束ねて放つ。空気をぶち破る雷の一撃は、凄まじい轟音が遅れて響き渡る。
 閃光がほとばしり、その雷はグリードミミックたちの群れを一呑みにして消し去っていた。砂浜には大穴が穿たれ、焦げた臭いだけが、その場にコンキスタドールが存在していたことを物語っている。

「これで笑えない宝箱は片付いたかしら?」
 霧散して消えていったグリードミミックたち。あの一群が全てではないことはわかっている。そう思った瞬間、次々と砂浜に上がってくるグリードミミックたち。
 やっぱりね、と嘆息しゆかりは再び式神の折り鶴たちと連携し、ユーベルコードによる激烈なる一撃を打ち放っていく。
 そう、まだいるのなら、繰り返すだけだ。砂浜が焦げ付くまで稲妻を落としてでも、この防衛線は死守しなければならない。

 落雷の音が響き渡り、何度も繰り返したユーベルコードによる消耗は激しい。
「あとは―――アヤメ、そっちはもういいから、あなたも手伝って」
 経路を封鎖していたアヤメが戻ると二人で薙刀と苦無を構え、残敵を掃討していく。
 戦いの最中、あれだけ溜め込んだメガリスである。持ち帰れないかと一瞬頭によぎったが、あれはあれで呪われし秘宝である。
 何が起こるかわからないわよねぇ……など考えながらも、ゆかりはこの後に控えるコンキスタドールの首魁との戦いに備えるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トゥト・アンクアメン
心情:
ほほぅ、偉大なるファラオ達のピラミッドには
盗賊対策として似た様な罠があったと聞くけれど凄いね。

行動:
まぁ、子供達のお陰で上陸して来そうな場所は判ったからね。
後は待ち構えて【蹂躙】するだけだよ。
仮に其処が砂浜だろうと海上であろうと
浮遊する戦車に【騎乗】しているならば大差ないさ。

勿論、巨大化したメガリスの数々による猛攻は厄介であるけれど
攻撃の予兆を確認したらすぐさま距離を取って
【太陽王の大電球】即ち【神罰】を下せば欠片も残らないだろうね。

住民達は今頃無事に避難を終えているだろうし
戦いが終わった後は僕達の武勲を語るのもありかな。
君達も良い考えだと思わない?(スフィンクス達の背を撫でて)



 子供たちの笑い声が聞こえる。
 それはとても心地の良いものであったかもしれない。どんな世界においても、どんな国においても、子供とは宝である。可能性の塊と言えば聞こえはいいかもしれない。けれど、彼等がいなければ栄えるものも栄えることはなく、故に子供は宝であるのだ。
 だからこそ、健やかに彼等が成長するに必要なものがなんであるのかを、トゥト・アンクアメン(少年王・f26040)はよく知っていた。
 今、『シャッツンゼル島』に住まう少年少女たちが浮かべている笑顔、それこそが健やかなる心身を育むに必要不可欠なるものである。

 子供たちの笑い声が悲鳴に変わる。
 それは恐怖におののく声であった。トゥトが視線を向けた先にあるのは、宝箱の内側より湧き出るように膨れ上がった異形なる者。不定形の姿をしていながら、ぎょろぎょろと周囲を見回すように睨めつける瞳と、その体にまとわり付かせた剣や宝石、金貨などの財宝が一層膨れ上がっていく。
「モットホシイ! メガリス! メガリス! ニオウ! ニオウゾ! モット、モットヨコセ!」
 その声は欲望の権化そのものであった。
 コンキスタドール、グリードミミック。それらはこの島を狙うコンキスタドールの首魁が放った配下のコンキスタドールであることは間違いようがない。
「ほほぅ、偉大なるファラオ達のプラミッドには盗賊対策として似たような罠があったと聞くけれど、すごいね」

 自走し、自律し、無制限の欲望のままに呪われし秘宝……メガリスを捕食するコンキスタドール。徐々に膨れ上がっていくのは、その際限のない欲望を現しているのかも知れない。
「まあ、この子らのお陰で上陸してきそうな場所はわかっていたからね。さあ、君たちはお行き。此処より後には一体たりとて通しはしないから、真っすぐ行って、時には君たちと共に生きてきた動物たちもいるだろうから、彼等に導いてもらうんだ」
 共に案内してくれた少年少女たちを背にかばいながら、優しく言葉を紡ぐ。
 王であれば当然のことだ。
 子は宝。宝は王たる者の所有物。ならば、彼等はトゥトが保護しなければならない尊きものである。

「蹂躙するのに此処が砂浜だろうが、海上だろうと我が黄金戦車に乗っている限り大差はないさ」
 トゥトの騎乗する黄金の戦車は陸上海上を選ばない。膨れ上がるグリードミミックたちを見据え、その後に放たれるであろう連続攻撃の脅威を正しく分析する。
 あれだけのメガリスを取り込んだ群れであれば、確かに数で猟兵を圧することも可能であろう。
 だが、何も問題はないのだ。

「ファラオの中のファラオの神威を此処に。太陽王の御業に首を垂れよ!」
 ユーベルコード、太陽王の大電球(ラムセウム・デンデラ・ライト)によって世界を越えて現れるのは、デンデラ大電球。
 その御印の如き巨大なる大電球は、世界をまたいでなお、王の威光を知らしめるような輝きを放つ。過剰に発電され迸る光が、魔力の塊となってグリードミミックの一群を焼き払う砲撃を放つ。

 轟音が響き渡り、太陽王の神威を宿した裁きの炎が、グリードミミックの体を焼き尽くしていく。
「太陽王の大電球、即ち此れ神罰―――宝である子を害そうというのならば、欠片も残すわけにはいかない」
 続けざまに放たれる魔力砲撃は、次々と上陸してくるグリードミミックたちを焼き払い、吹き飛ばしていく。どれだけの数がいようとも関係がない。
 放ち、焼き払う。
 王にとって、これだけの敵であっても造作もない。

「住民たちは今頃無事に避難を終えているであろうし、戦いが終わった後は僕たちの武勲を語るのもありかな……君たちも良い考えだと思わない?」
 トゥトの傍に控える神獣クフ、カフラー、メンカウラーたちの背をなでながら、焼き払われていくグリードミミックたちを見やる。
 圧倒的すぎて、語るのもつまらないかもしれないな、と一瞬考えたが、そこは語り手の問題であろう。
 何問題はないな、と感じながら上陸してきたグリードミミックの一群を見事にトゥトは撃退することに成功したのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シル・ウィンディア
さて、ついに来たかぁ~
ここで幸せに暮らす人の為
メガリスを奪わせない為

さ、頑張りますかっ!

敵は数が多い…
そして、広範囲、っと

…よし、それならっ!

【空中戦】で飛んで加減速で【フェイント】を仕掛けて機動するよ
攻撃は腰部の精霊電磁砲を撃ちながら接敵して
接近後は光刃剣と精霊剣の二刀流でヒット&アウェイ!

回避行動は、上記機動に【残像】も生み出して撹乱しつつ回避だね

攻撃・機動・回避を繰り返しつつ…
空中機動中に【高速詠唱】で隙をできるだけ減らしてっと

さぁ、新しく編み出した、対複数戦用の魔法でお相手だよっ!

悲劇を砕くために…
エレメンタル・シューター…
全てを、うち抜けーーっ!!



 波間の向こうからやってくるコンキスタドールの数は圧倒的であった。
 木箱のような形。ダークセイヴァーやアックス&ウィザーズの世界であれば宝箱と呼ばれるような形をしたコンキスタドールの名はグリードミミック。
 その名の通り欲望の権化である。
 欲するはメガリス。もっと、もっとほしいと、その身に内包したメガリスの数もまた膨大であるのに、さらなるメガリスを求めて欲望のままにひた走る怪物。
 島のあちこちから上陸してくるグリードミミックを迎撃する猟兵達。数で圧倒するコンキスタドールを見事に抑え込んでいるが、カバーしきれない場所もあるのも事実である。
 その一箇所に控えるのは、シル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)である。ふわりと外套が翻り、彼女の身体が飛翔する。

「さて、ついに来たかぁ~……ここで幸せに暮らす人の為、メガリスを奪わせない為……さ、がんばりますかっ!」
 シルの体は空を舞い、変幻自在なる機動を持って駆け抜ける。急加速と急減速を組み合わせた空を舞う動きは地を這うグリードミミックに彼女の姿を捉えさせることをさせない。
 フェント織り交ぜた動きは、狙いを定めさせないばかりか彼女のその動きをまるで暴風のように大きく見せるのだ。
「まずは、数が多いっていうんならさ―――!」
 腰にマウントされた精霊電磁砲『エレメンタル・レールキャノン』の砲身が展開し、魔力砲弾の雨を降らせる。
 次から次に打ち込まれる魔力の弾は地を這うグリードミミックにとって対処のしようがない攻撃であった。

 さらに手にしたのは光刃剣と精霊剣の二刀。
 彼女の空を舞う動きと合わせて煌めく光の乱舞がグリードミミックの数を次々と減らしていく。捉えた、と思った瞬間には、すでにそこにシルの姿はない。
 残像を残して高速移動する彼女を今や、グリードミミックは一片たりとて捉えられない。
「さぁ、新しく編み出した、対複数戦用の魔法でお相手だよっ!」
 彼女の剣が閃く度に詠唱が重ねられていく。
 精霊たちに呼びかける声に力が集まっていく。幾何学模様を描き複雑に飛翔する火水風土の複合属性の魔力弾が形成されていく。
 圧倒的な数は、彼女の技量によるものだった。高速詠唱により、彼女の身体が空へと飛翔した瞬間に、ユーベルコードの詠唱が完成する。

「悲劇を砕くために……エレメンタル・シュター……」
 ユーベルコード、エレメンタル・シューター・アラウンドシフト。
 空に浮かぶは器楽模様を描く無数の魔力弾。彼女が放っていた精霊電磁砲の魔力砲弾の比ではない量の魔力弾が一斉に牙を剥く。
 放たれる魔力の奔流とも言うべき包囲は盆地に集まったグリードミミック全てを灰燼に帰すまで止まらないだろう。
 腕が振り下ろされれる。

「全てを、うち抜け―――っ!!」
 一斉にグリードミミックを襲う魔力の弾丸達。
 光の奔流となって流れ込んだ一撃は次々とグリードミミックたちを霧散させ、骸の海へと還していく。
 盆地でよかった、とシルは思った。
 もしも、ここが建造物や複雑な地形であったのならば、彼女の尋常ならざる魔力によって地形すら変えかねなかったことだろう。
 だが、それをしないためのエレメンタル・シューター・アラウンドシフト。

 一つ一つの魔力弾を制御下に置き、放ち続けるユーベルコード。
 それにより彼女はさらなる守るための力を手に入れたのだ。これであの島の人々の笑顔が守れるのならば、これ以上嬉しいことはない。
「さあ、上陸してこようものなら、まだまだ相手をするよー!」
 シルの魔力の奔流は尽きず、彼女の想いと共に戦場を駆け巡るのであった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
水中に妖精ロボの『網』を張って幸いでした
捉えたならば上陸させる前に撃破するのみ


水中用装備を身に着け海中へ
先の●情報収集で得た敵の分布頼りにUCの推進力利用した●水中機動で急行

発見次第●ランスチャージで●串刺し
●怪力で槍を振り回し遠心力で刺さった敵を抜きつつ、別の敵の攻撃を●盾受けで防御
センサーで上下左右の状況は●見切っています

●水中戦での小回りは確保済み
時に敵を●踏みつけ方向転換し翻弄しながら槍で撃破

動きが二次元的過ぎます
そんな体たらくで…通すとお思いですか

迂闊に島民が触れてコンキスタドール化は避けたいので残存メガリスも置き土産の水中用装備の誘導魚雷(●誘導弾)で破壊
次の上陸を企む敵の元へ急行



 用意周到である、ということはこういうことを言うのであろう。
 妖精型偵察ロボが放たれ、その妖精ロボ全機から流れ込んでくる情報の数々を並行処理しながら、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)はすでに水中葉装備を装着し終えていた。
 戦いの推移は妖精ロボが伝えてくる通りである。
 すでに島のあちこちで猟兵達がコンキスタドール、グリードミミックの上陸を防いだり、カバーしきれぬ場所を掻い潜って侵攻したとしても目的地に至る前に消滅させられていた。

 トリテレイアの目算どおりであれば、配下コンキスタドールを討ち果たすのも難しいことではない。けれど、念には念を入れることもまた大切なことである。
 ざぶんと音を立てて一気に水中へと没するトリテレイア。
 水中葉装備の感度は十分であり、すでにグリードオーシャンの海中での戦いは経験済みである。
「暴れ馬ならぬ暴れ槍ですが……御してみせましょう」
 艦船強襲用超大型突撃機械槍(ロケットブースターランス・ウォーマシンカスタム)を構え、穂先から傘状バリアを展開し、一気に海中を進む。
 急行すべきは海中より島へと上陸しようとするコンキスタドールの一群の排除。
 陸上では他の猟兵達が戦ってくれている。彼等ならば、島民を守りながら戦ってくれる。

 そう信じる心が推進力となってトリテレイアを進ませるのだ。
 コンキスタドール、グリードミミックの身体……宝箱のような木箱が海上に浮いているのを発見した瞬間、一気に間合いを詰めるトリテレイア。
 穂先に展開された傘状のバリアが一気にコンキスタドールの身体を穿ち貫く。
「ガ―――!? シタカラダト!」
 貫かれたグリードミミックを投げ捨て、放たれたメガリスを内包し、巨大化した別個体の叩きつけるような攻撃を盾で受け流す。
 一群の同様を逃さず、さらなる追撃で機械槍の餌食となっていくグリードミミックたち。彼等は宝箱に擬態しているがゆえに海上に浮かびながら進む他ない。
 海中を潜航し、三次元的な戦いをするトリテレイアの前に彼等は無力でしかなかった。

「動きが二次元的すぎます。そんな体たらくで……通すとお思いですか」
 すでにトリテレイアのセンサーは上下左右、三次元情報を全て電脳で処理しきっている。妖精型ロボが上空から海上に浮かぶグリードミミックたちの所在を伝え、海中から見上げる彼等を次々と骸の海へと還していく。
「島民の方々を護るため、やれることは全てやりとおしてみせましょう!」
 本来であれば、艦艇を強襲するための突撃槍。
 その最大出力に振り回されないのはトリテレイアの機械の体あってのことだろう。瞬く間にグリードミミックの群れを解の藻屑へと変えていき、ばらばらと身体が砕けていくうちに海中へと溢れていくメガリスさえもトリテレイアは水中用の誘導魚雷にて木っ端微塵に破壊していく。

「わずかに残ればメガリスと言えど、呪われし秘宝。それに島民の方々が触れてしまえば、コンキスタドールになるやもしれません。それだけはなんとしても避けなければ……」
 戦いのさなかであっても、常に心の中にあるのは護るべき民のこと。
 騎士道を志す、それに根ざした行動原理を持つトリテレイアにとって、それは当たり前のことであった。
 次なる上陸を目指すグリードミミックの一群を発見すると、即座に反転しトリテレイアは撃破を目指す。
 この平和な島々にメガリスという呪われし秘宝は似つかわしい。

 メガリスは確かに富をもたらすかもしれない。
 けれど、そんなものがなくても、島民たちが浮かべる笑顔に勝る宝物はない。
 そうロジカルではないことを考えながら、トリテレイアは暴れ槍をふるい続けるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

藤原・桔梗
レクス・マグヌス(f07818)と参加
WIZ
【心情】
この島の人々はとても平和な暮らしをしています
それを奪おうなんて、桔梗は許しません!

【行動】
島の人々に対して、避難を呼びかけます
「勇気」「コミュ力」「優しさ」を持って、島の人々に「自分たちは味方である」「危険なので避難してほしい」と伝える
グリードミミックに対しては、「串刺し」「衝撃波」で対抗

「危険なコンキスタドールが近づいています。すぐに避難をしてください」
「桔梗たちはコンキスタドールと戦う力を持っています。どうか、桔梗たちを信じてください」
「この戦いが終わったら、きっと祝勝パーティーを派手にやりましょう!」


レクス・マグヌス
藤原・桔梗(f10098)と参加
WIZ

【心情】
着たか、賊ども
生憎だが、この島を渡しはしない
「嵐よ起きろ、今こそ戦いの時だ!」

【戦闘】
島の盆地に向かうものがいないかを警戒しつつ戦闘
「残像」「フェイント」で攻撃を回避しつつ、「敵を盾にする」でメガリス同士の激突を狙う
「生命力吸収」、「属性攻撃」で牽制しつつ、「地形の利用」でグリードミミックが投げれるものの無い砂浜へ誘導

ユーベルコードで写し取った「ホシイ!ヨコセ!」を写し取り、グリードミミックが使うメガリスを奪い取って攻撃を行う
「そんなにメガリスが欲しいんだったら、メガリスの海に溺れると良い!」



 白い砂浜に悲鳴が上がる。
 それは海中より這い出てきた怪物―――コンキスタドール、グリードミミックを見つけた『シャッツンゼル島』の島民たちの悲鳴であった。
 砂浜で猟兵たちとバーベキューに興じ、遊んでいた少年少女たちの一人が腰を抜かして震える。
 初めて見る怪物。初めて襲われる悪意。それに足がすくんでしまったのを誰が責められようか。
「メガリス! メガリス! メガリスヨコセ! メガリスゥゥゥ!」
 咆哮する宝箱から姿を表した黒色の不定形の怪物。その身に纏うのは、今まで飲み込んできたメガリスの数々。刀剣であったり宝石であったり、はたまた金貨であったり。
 それらが膨らみ肥大化し、高く振りかぶられた拳が腰を抜かした子供へと振り下ろされる。
 無情にも無垢なる子供の生命が犠牲にならんとした時、『災厄』の名を冠する魔剣が閃く。その剣閃は災厄の名に恥じぬ鋭さでもって、その不定形の怪物の腕を斬り飛ばす。
 その名は『災厄』。悪の力を持って悪を屠る剣である。

「着たか、賊ども―――」
 その振るい手であるレクス・マグヌス(嵐をもたらすもの・f07818)の声が響き渡る。その場から腰を抜かした子供を抱えて飛び退る。
 親であろう島民に子供を預けて、レクスは声高らかに宣言する。
「生憎だが、この島を渡しはしない……嵐よ起きろ、今こそ戦いの時だ!」
 嵐の加護を受けし、サファイアの装飾が魔力の渦となって風を起こす。その赤い瞳が捉えるのは、次々と波間から上陸してくるグリードミミックたち。
 数は多い。けれど、彼一人ではない。

「危険なコンキスタドールが近づいています。すぐに避難をしてください」
 藤原・桔梗(四海の龍と共に征く・f10098)の声が響き渡る。それはユーベルコードが奏でる加護の祈り(カゴノイノリ)の響き。
 彼女の言葉は力ある言葉である。すでに島民たちと桔梗の間には友好の架け橋が結ばれている。食事をともにし、語り合い、笑いあった仲である。
 彼女の言葉は優しさと勇気を持って島民たちの心に染み渡っていく。
 小刀を構えた桔梗の言葉は更に続く。
「桔梗達はコンキスタドールと戦う力を持っています。どうか、桔梗たちを信じてください」

 だが、島民たちにとって桔梗とは友人であり、少女である。
 島の男達は彼女だけに戦わせるわけにはいかないと、彼女の前に立とうとする。けれど、桔梗はそれを優しく制する。
「いいえ、きっと大丈夫です。桔梗達にまかせてください。この戦いが終わったら、きっと祝勝パーティーを派手にやりましょう!」
 桔梗がレクスと共に駆け出す。
 島民たちは桔梗の言葉に従う。彼等とて、桔梗やレクスが心配ではないわけではない。身を案じている。それが背中越しにもよくわかる。
 だからこそ、桔梗とレクスは力を示さなければならない。

「ヨコセ! ヨコセ! メガリス!」
 膨らみ肥大し続けるグリードミミックの一群。対する猟兵はこの場に桔梗とレクスのみ。だが、何も恐れることはない。
 桔梗は小刀を構え、突きと九頭竜の力が顕現した衝撃波によってグリードミミックを薙ぎ払っていく。
 さらに彼女のユーベルコードによる演説を聞いたレクスは、さらなる力を、竜神の加護を得て、残像を残すほどのスピードに到達した体捌きでグリードミミックたちを同士討ちさせていく。
「レクスさん―――!」
 それだけで二人の間には意思疎通ができていた。
 グリードミミックが掴んで投げるようなものがない砂浜へと誘導する。二人の連携に寄って、島民たちからも、漂着物などが存在する砂浜からもコンキスタドールの一群を引き離す。

「モット、ホシイ! ヨコセ―――!」
 振り回される不定形の拳がレクスの剣に叩きつけられる。
 内包したメガリスの力であろう、その膂力は凄まじい。受けた剣よりも先に、レクスの身体がきしみを上げる。
 だが、それは彼の狙い通りであった。
「そんなにメガリスがほしいんだったら、メガリスの海に溺れると良い!」
 ユーベルコード、鏡の妖刀(ラーミナ・スペクルム)。
 それは防御したユーベルコードを借用するユーベルコード。
 災厄の妖刀が怪しく輝く。それは、防御したユーベルコードを完全に再現したという証。レクスの手がグリードミミックの内包したメガリスを掴み、一気に地面へと叩きつける。

 凄まじい音が響き、砂浜にめり込み霧散していくグリードミミックたち。
 桔梗の放つ小刀の一撃は、過たず骸の海へと還していく。その様子を見ていた島民たちからは喝采が飛ぶ。
 彼女たちの活躍に寄って誰一人として島民は傷つかなかった。
 それは得難い戦果であり、彼等の誰かが一人でも欠けては訪れない光景であったことだろう。
 二人はグリードミミックを全て打倒し、平穏の戻った砂浜にて島民たちに笑いかける。
 安心して欲しい。

 けれど、二人は知っている。
 コンキスタドールがこれだけではないことを。これより来襲する者こそが本命。この平和そのものの島を破滅へと叩き落さんとした首魁が来る。
 再び、彼等は戦うことになるだろう。
 悪意の塊は、いつも唐突にやってくる―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『大海統べる災厄』ヨハンナ・グスターヴ』

POW   :    喜べ、『褒美』は思いの儘だよ
自身の【略奪した天文学的な額の財宝を分配する事】を代償に、【最大でレベル×100体までの異形の海賊達】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【カトラスとマスケット銃による巧みな連携技】で戦う。
SPD   :    ボクの『旗』を見て無事で済むと思うのかい?
【海賊船からの感覚や勘では防げない偏差射撃】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に海賊旗を掲げて略奪の場として宣言し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    『瞳』が疼くんだ。この世界を滅ぼせと
対象への質問と共に、【義眼型メガリス『海魔の瞳』】から【知覚すれば精神汚染される悍ましき姿の邪神】を召喚する。満足な答えを得るまで、知覚すれば精神汚染される悍ましき姿の邪神は対象を【体と魂をも蝕むレベルの三乗本の巨大な触手】で攻撃する。

イラスト:らぬき

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は黒玻璃・ミコです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 その青く爛々と輝く瞳―――『海魔の瞳』は、いつも破壊と欲望に染まりきっていた。『大海統べる災厄』ヨハンナ・グスターヴ、天文学的な賞金額を持つ強大なるコンキスタドールである。

 彼女が奉ずる神は邪神。
 無辜なる人々の血と魂……そして、何よりも呪われし秘宝メガリスを奉ずることこそが、彼女にとっての最大の神へ捧げる祈りであった。
 けれど、それ以上に彼女が好ましいと思っているのは、悲嘆に暮れる人々の顔と、絶望に染まった嘆きだった。
『シャッツンゼル島』。それがスペースシップワールドより落ちてきた宇宙船であることはどうでもよかった。
 ただ、島民全てが死に絶えれば、あの島は自壊し沈んでいく。

「それをただ見たかっただけなんだけれどなぁ―――」
 とてもつまらなそうに呟く声が聞こえた、と思った瞬間、『大海統べる災厄』ヨハンナ・グスターヴの姿は白い砂浜の上に存在していた。
 いつのまにか砂浜の向こう、波間に揺れる海上に彼女の海賊船が悠々と存在し、その砲門が島を狙いつけていた。
 あれだけの距離を彼女は一足で飛び、砂浜へと音もなく降り立っていたのだ。

 たったそれだけで、どれだけ強大な力を持つコンキスタドールであるかが伺い知れるだろう。
 猟兵たちの背筋をひやりとしたものが滑り落ちる。間違いなく強大なコンキスタドールである、と認識できる。

「でも、役立たずの処分をしてくれたのには感謝してもいいかな。使えない連中だったけれど。しようがないから、君たち猟兵を滅ぼした後で、じっくり一人ずつ島民たちを殺していくよ。そうでなければ、フラストレーションが溜まってしまってしかたないからね」
 にっこりと微笑みながら、『大海統べる災厄』ヨハンナ・グスターヴは猟兵たちに向き直る。
 プレッシャーで空気が歪む。『海魔の瞳』が輝き、即座に戦闘態勢を取らなければ、生命がない。
 そう思えるほどの重圧が猟兵達に降りかかる。

 だが、それでも。
 それでも猟兵は臆するわけにはいかない。退くわけにはいかない。
 どれだけ巨大な敵であろうとも、打ち破らなければ、平和な島の平穏を食い散らかすように無残に引き裂かれてしまう。

 そんなことはさせない。
 猟兵たちの瞳には、ユーベルコードの輝きが力強く輝いていた―――。
村崎・ゆかり
海賊コンキスタドールの船長がようやくお出ましね。って、頭に『海賊』って付けると紛らわしい!
行くわよ、アヤメ。

「結界術」でギュスターヴの移動範囲を限定し、あたし達を倒さない限りどこへも行けないよう。

異形の海賊が現れたら、「式神使い」で生み出した折鶴の式神の群で「集団戦術」をとりながらギュスターヴの方へ押し返していく。
もっとも、数を呼びすぎたら結界の中で身動き出来なくなるけどね。

結界を目標座標として、「全力魔法」「範囲攻撃」雷の「属性攻撃」「神罰」の九天応元雷声普化天尊玉秘宝経を使う。効果範囲は結界内全域。逃げ場はない!

数を頼みにするなんて、さっきの強欲宝箱と一緒じゃないの? それでよく嗤えるね?



 白い砂浜に一人の少女が立っている。
 ただそれだけを見れば、彼女がコンキスタドールであるなどとわかるはずもなかった。けれど、その爛々と輝く青い瞳が、彼女を別次元の何者かであることを如実に物語っていた。
 その瞳はメガリス。呪われし秘宝であり、『海魔の瞳』と呼ばれる魔眼である。その瞳に寄って従わせる異形の海賊たちは次々と砂浜へと降り立っていく。
 その数はあまりにも多く、彼女―――『大海統べる災厄』ヨハンナ・グスターヴが率いる海賊船団がどれほどの規模であるか……途方も付かない数であることを示していた。

「喜べ、褒美は思うが儘さ。蹂躙し、破壊し、すりつぶしてしまおう。真っ赤なジュースにしてしまえばいいのさ。それができるだけの数だよ」
 メガリス『海魔の瞳』が輝く。
 圧倒的な数。それは前哨戦としてこの島を襲ったグリードミミックの比ではない。砂浜を埋め尽くす異形の海賊たち。
 それに退治するのは、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)である。式神であるアヤメと共に砂浜に降り立つ。
「海賊コンキスタドールの船長がようやくお出ましね。って頭に『海賊』って付けると紛らわしい! 行くわよ、アヤメ」

 二人は砂浜を駆ける。
 相手が数で圧するというのならば、その利を妨害するべきだと判断したのだ。
 しかし、その数は圧倒的すぎた。だからこそ、この海賊たちの首魁であるヨハンナを自由にさせるのはあまりも害が大きすぎる。
「アヤメは結界術―――私は、行きなさい、式神達!」
 結界術を張り巡らせるのは式神のアヤメに任せ、ゆかりは砂浜を埋め尽くさんとする異形の海賊たちを生み出した千羽は越えるであろう折り鶴の式神の群れで囲い込み、ヨハンナへと押し返そうとする。
「いくらなんでも、それは無理筋じゃないかな? 数を見てご覧よ。細い包囲網だけでいつまで持ちこたえられるかな?」
 ヨハンナの余裕綽々の声が響く。数で利するコンキスタドールにとって、一人の猟兵の力はたかが知れていると思っているのだろう。

 だが、ゆかりの狙いは常に殲滅、討滅である。
「数呼びすぎて、結界の中で身動きができなくなるでしょう!」
 折り鶴の式神による囲い込み、さらには結界術による封鎖に寄ってヨハンナを中心に湧き続ける異形の海賊たちはすし詰め状態であり、ゆかりの言葉通り、たしかにヨハンナを封じ込めることには成功していた。
「でも、これ以上どうするっていうんだい―――」

 そんなヨハンナの言葉を遮るようにして、ゆかりのユーベルコードの詠唱が始まる。凄まじい力がゆかりの言葉から顕現していく。
「九天応元雷声普化天尊!―――効果範囲の指定! 座標は結界内全域、固定! 逃げ場はない! 疾っ!」
 放たれるは天よりの一撃。
 周囲の視界が白一色に染まるほどの一撃。激烈なる落雷。
 迸る電撃は、結界内で荒れ狂うように蠢き、明滅する。それは、九天応元雷声普化天尊玉秘宝経(キュウテンオウゲンライセイフカテンソン)の一撃。
 単純であるが、明確なる破壊の一撃。
 それは結界内の異形の海賊たちを消し飛ばし、その中心に居たヨハンナの身を穿つ。

「数を頼みにするなんて、さっきの強欲宝箱と一緒じゃないの? それでよく嗤えるね?」
 強烈な雷霆の一撃は、砂浜の地形さえも変える。
 クレーターのようにえぐれた大地。周囲は土埃で何がどうなっているのかわからない。けれど、ゆかりの瞳は未だ輝き失われる青い光を捉えていた。
 一撃で倒せるとは思っていなかった。

 だが、その従僕たる異形の海賊たちを葬り去ることには成功していた。これでヨハンナの力の大部分を削ぐことはできたのだ。
 土埃の向こうで輝く『海魔の瞳』は、さらなる力の発露を見せ、ゆかりの張り巡らせた式神と結界術を粉砕し、さらなる戦いの激化を予見させるのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トゥト・アンクアメン
心情:
やはり悍ましき邪神の信徒と言うべきか。
セト神も大概な御方だったけれどこう言うのを崇める輩の気が知れないね。

行動:
まぁ、偏差射撃による制圧とは敵ながら素晴らしい。
でも其れは緻密な計算の上で敵の動きを予測する先の先の手法。
ならば【天候操作】によって引き起こされる
急激な下降気流や降り注ぐ雹の様な不規則な乱数さえも
全て予測し切る事が出来るかな?

そうそう【少年王の黄金戦車】を駆るのに夢中で言い忘れてたよ。
頼れる従者はスフィンクス達だけではないんだ。
【水中戦】や【船上戦】をも得意とする大蛇達が君の背後に居るよ。
残念ながら【神罰】も【蹂躙】も君だけの専売特許じゃないのさ、覚悟したまえ。



 凄まじき雷鳴が響き渡り、地形を変えるほどの一撃がコンキスタドール、『大海統べる災厄』ヨハンナ・グスターヴの身を打ち貫く。
 呼び出した異形の海賊たちを尽く滅ぼした雷撃の一撃であったが、土埃を振り払い爛々と輝く『海魔の瞳』がヨハンナの健在をしめしていた。
「あぁ……こんなにいいようにされるなんて、思っても居なかったよ……どうやら、君たちはボクにとっても、あの方にとっても驚異なる存在なんだね」
 ならば手加減なんてしていられないし、容赦もできない、とヨハンナの手が空へと掲げられる。

 それは合図であった。
「ボクの『旗』を見て無事で済むと思うのかい? 済むわけがない。当たり前のことだよね」
 その背後の海上に控えていた海賊船から放たれるは、偏差射撃。それは感覚や勘では絶対に防ぐことのできない砲撃であった。
 それは轟音とともに放たれ、直感に優れる者であれば、すぐさま感じ取れたことだろう。あれは防げない、と。

 だが、その不可能を可能にするのが王であり、猟兵である。
 その風は突然吹き荒れた。まるで嵐の前触れのように。
 吹き荒ぶ風が砲弾をそらし、荒れ狂う波間が射撃の精度を地に落とす。さらには雨風によって、砲弾の放物線を描く砲撃の弾道が乱れ、海中へと没するしかなかった。
「やはり悍ましき邪神の信徒と言うべきか。セト神も大概な御方だったけれど、こういうのを崇める輩の気が知れないね」
 天候操作。
 その神の御業の如き力を振るうのは、トゥト・アンクアメン(少年王・f26040)である。まごうことき無き王であり、神でもあるトゥトにとって天候を操ることなど造作もない。

「な―――、天候操作! そんな力を持つ猟兵がいるだと!?」
 ヨハンナは驚愕する。
 砲弾は放たれて直撃してもよかったし、万が一外れてもよかったのだ。砂浜へと着弾すれば、それだけで彼女の力を底上げする場となるのだから。
 だが、荒れ狂う海がそれをさせなかった。予想よりも砲弾の弾道を伸びず、海中に没するだけであった。

「まあ、偏差射撃による制圧とは的ながら素晴らしい。でも其れは緻密な計算の上で敵の動きを予測する先の先の手法」
 ならば、急激な下降気流や降り注ぐ雹のような不規則な乱数までをも予測し、制御できるわけもない。
 どれだけ世界が計算と理屈で成り立っていようとも、その膨大な情報を全て統括し、一瞬で判断を下せることは、そう容易いことではないのだ。
「ならば、神たるファラオの武勇を再び此処に。そしてファラオに刃向う愚か者に天罰を!」
 かの少年王の元に馳せ参じるは、三匹の神獣が牽引する少年王の黄金戦車(ケーヴィ・シックスティートゥー・チャリオット)。
 それに騎乗し、その威光を太陽のごとく知らしめる者こそ、神にして王であるトゥトである。

 それは一瞬であった。
 神獣が砂浜を蹴った、と思った瞬間ヨハンナの眼前には黄金戦車が迫っていた。まるで瞬間的に移動したかのように思えるほどの一瞬の距離の詰め方。
 声を上げる暇すら無かった。
 轢き潰すように黄金戦車がヨハンナの身体を散々に打ちのめす。
「グ、ァ―――!? っ、く……! なら、もう一度―――」
 だが、その手が振り下ろされることはなかった。ヨハンナの背後……そこに控えていた海賊船団は砲撃をするどころではなかった。

「そうそう、戦車を駆るのに夢中で言い忘れてたよ。頼れる従者はスフィンクス達だけではないんだ」
 トゥトは戦車の上から神獣たるスフィンクスたちの背中を撫でる。
 微笑む姿は余裕そのものであり、見下ろす視線は圧倒的超越者の視線であった。
 彼女の視線の先に在ったのは、海に合って蠢く闇蛇アペプ、アピペ、アポペの三匹の大蛇たち。彼等が蠢き、襲撃するのはヨハンナの海賊船団。
 軋む音を立てて、船体がきしんでいく。
 天候操作に加えて、大蛇の妨害。あれではどれだけ綿密に計算して砲撃を行うことなど不可能である。

「残念ながら神罰も蹂躙も君だけの専売特許じゃないのさ。覚悟したまえ―――」
 再び放たれる黄金戦車の一撃が、ヨハンナの身体を吹き飛ばす。
 トゥトの威光は圧倒的な力を持って、邪神奉じるコンキスタドールを打ちのめすのだった―――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

シル・ウィンディア
絶望を防ぐため、わたし達がいるっ!
略奪も蹂躪も、そんなことはさせないからっ!

機動は【空中戦】で飛んで加減速・ジグザグの【フェイント】を交えた空中機動
真正面からなんていってあげないんだからっ

攻撃は腰部の精霊電磁砲を牽制に使って接敵
二刀流の光刃剣と精霊剣で【フェイント】を交えた攻撃

敵攻撃は【第六感】を信じて
動きを【見切り】上記機動で回避

対UC
わたしはあなたの望む答えなんか持ってないっ!
この島から脅威を取り除くため
そのためにわたしはいるんだーっ!!

敵の攻撃をしのいだら…
【魔力溜め】を行いつつ上記機動
詠唱を開始し始めて
【限界突破】の【全力魔法】で選択UC

…船もろとも撃ち抜いても文句ないよねっ!



その小さな体が跳ね上げられしたたかに砂浜に落ちる。
 コンキスタドール、『大海統べる災厄』ヨハンナ・グスターヴ』 は猟兵たちの攻撃にさらされ、徐々に勢いを喪っていた。
 異形の海賊たちは雷撃に打ちのめされ、避けられぬはずの砲撃は天候操作によって吹き荒れる嵐によって妨害される。
 だが、それでも砂浜に落ちたヨハンナの体は立ち上がる。その瞳―――『海魔の瞳』が青く輝く限り戦いに終わりは来ない。
「これだけの力を持っていながら、己のために戦わない者……とても不愉快だ。自分のために戦えるものにこそ、世界の真実はあるのに。ボクがもたらす絶望は真実だというのに」
 立ち上がったヨハンナの体は、確実にダメージが蓄積している。だというのに、その体を取り巻く力の奔流は健在であった。
 強者であるからこそ、自由に振る舞うことを許される。
 強さこそが生を謳歌するために必要なものであり、前提条件であるのだとすれば、今まさに彼女は不自由のさなかにあった。

「絶望を防ぐため、わたし達がいるっ! 略奪も蹂躙も、そんなことはさせないからっ!」
 ヨハンナが見上げた先にいるのは、空中を変幻自在たる軌道を描いて飛ぶシル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)の青い髪と瞳であった。
 急加速と減速を繰り返す彼女のフェイントの混ざりあった緩急自在な動きは、容易に彼女を捉えさせないだろう。
 牽制ではなった精霊電磁砲の魔力砲弾が砂浜に土埃を舞い上げる。当たるとは思っていなかったけれど、それでもヨハンナをその場に釘付けにすることはできた。

 一瞬シルの姿を見失った瞬間、横合いから光刃剣と精霊剣のニ刀が襲い来る。斬りつけられ、噴き出す鮮血。
「ぐあ―――! 『瞳』が疼くんだ……君には聞こえないか、世界を滅ぼせという声が。世界は滅ぼさなければならない―――!」
 その爛々と輝く青き瞳から放たれた光は、悍ましき姿の邪神の存在をシルに知覚させる。
 その悍ましき姿は、人の精神を容易に犯し、傷つける。放たれた無数の触手がシルへと襲いかかる。
 その触手を空中に舞い飛び、躱し剣で凪原内ながらシルは距離を取る。
「わたしはあなたの望む答えなんか持ってないっ!」

 シルには邪神の声は届かない。
 猟兵であるからだとか、そんな理由ではない。徒に世界を滅ぼそうとする邪神。その目的がなんであれ、それは我欲の塊でしかない。
 どんな理由があったとしても、その結果人々が傷つくのであれば、それを許せぬという心がある限り、シルに邪神の声は届かない。
「この島から脅威を取り除くため、そのためにわたしはいるんだーっ!!」
 触手を躱し続け、空高く舞い上がる。
 魔力が溜め込まれたからだから発露するのはユーベルコードの輝き。限界を超えた魔力量はシルの体を焦がさんばかりに輝く。

「闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、悠久を舞う風よ、母なる大地よ、暁と宵を告げる光と闇よ…。六芒に集いて、全てを撃ち抜きし力となれっ!」
 紡がれる詠唱の言葉は力。
 力はあらゆる属性の力を編み上げ、一つに束ねていく。魔力を手繰る指先がジリジリと焼けていく。けれど、シルにとって、それは痛みではない。
 彼女にとっての痛みとは無辜の人々が傷つくことにほかならない。誰かが傷つけられるのを見ているだけなんてできない。
 彼女の手に集まった魔力は、ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラストの一撃となってヨハンナと背後に控える海賊船を一直線に結んで放たれる。

 凄まじい轟音を立て、海水を割って放たれた魔力砲撃はヨハンナもろとも海賊船を打ち貫く。
 海賊船は砲撃に寄って、その巨大な船体に大穴を空ける。
「……船もろとも撃ち抜いても文句はないよねっ!」
 手応えはある。けれど、まだヨハンナは健在であろう。魔力砲撃の一撃を受けてもなお、あの青い瞳は輝きを失わない。
 けれど、これでいい。
 シルは一人で戦っているわけではない。彼女の戦いが、他の猟兵達に紡がれていく。紡がれた戦いの連綿たる輝きが、必ずこの島に平穏を取り戻すはずなのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
(補給の為鉄甲船経由し水中から戦場に到着、センサーの●情報収集で音声や戦況把握し)

…絶好の●だまし討ちの機会ですね

●水中機動で海賊船船腹に肉薄
UC撃ち込み船内へ弾頭送り●破壊工作知識で威力調整し起爆
貯めている『天文学的な額の財宝』を根こそぎ吹き飛ばし
炎上する甲板に上り●怪力でメインマストへし折り海賊旗燃やし

(炎バックに)
善良な人々の命と財産脅かす海賊に情けは無用
故郷の宇宙海賊と同じく『家』と『商売道具』への攻撃は余程応えるようですね

そんな士気が最悪な状態で何が出来るというのです
この島の価値を解せぬ賊は
(乗り込むヨハンナと部下を怪力で持つマストで●なぎ払い叩きつけ)
骸の海に沈んで頂きましょう



 雷撃の音を聞いた。輝ける黄金戦車が駆け抜ける光景を見た。
 そして、今鉄甲船を経由し、補給を終えたトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が見たのは、一条の魔力砲撃が海賊船の巨大な船体に大穴を穿つ瞬間だった。
 彼のアイセンサーは常に戦場の状況を正しく分析し、統括していた。自分以外の猟兵たちの活躍は、そのまま戦果となり次なる最適の一手を彼に選択させる。
「……絶好のだまし討ちの機会ですね」
 海中より専用装備で戦場へとたどり着いたトリテレイアは、戦況からそう分析する。騎士としての誉れを考えるのならば、だまし討ちは恥ずべき行為であろう。
 だが、トリテレイアは機械騎士である。騎士であれという矜持をもってはいるが、それは他者―――護るべき人々に対しての矜持であり、誰かを傷つけ奪おうとするオブリビオン、コンキスタドールに対しては適応されるわけもない。

 確実に、けれど、迅速に。さらに最大の結果を持ってコンキスタドールに痛手を追わせるには、これが最善。
 船体に大穴を開けられて傾ぐ海賊船の船腹に肉薄し、小惑星爆砕用特殊削岩弾発射装置&起爆制御装置(アステロイドバスター・ウォーマシンカスタム)によって放たれた衝角にジェットが備えつけられた極太杭状爆弾。
 それが船腹に穿たれれば、内部で起爆し、その巨大な船体が大きく震えるようにして傾ぐ。
「……騎士の武器どころか、兵器ですらないのですが……効果の程は絶大でありましょう」
 内部で次々と爆発が引き起こされ、火薬庫が誘爆し、その船体に溜め込まれているであろう『大海統べる災厄』ヨハンナ・グスターヴの持つ天文学的な額の財宝を根こそぎ吹き飛ばす。

 その光景は異形の海賊たちの士気を大きく削ぐものであった。
 海中より船体に突撃し、一気に甲板へと駆け上がる。さらにウォーマシンの膂力でもってメインマストをへし折り、燃え盛る炎に海賊旗を燃やす。
 それはまさに悪夢のような光景であった。
 確かにトリテレイア一人では成し得なかったものであったかもしれない。けれど、彼の行った行為はあまりにも海賊たちの士気を削るものであった。
「善良な人々の生命と財産脅かす海賊に情けは無用。故郷の宇宙海賊と同じく『家』と『商売道具』への攻撃は余程堪えるようですね」
 トリテレイアのアイセンサーが捉えるのは、血相を変えて砂浜から海賊船へと飛び込んでくるヨハンナの満身創痍なる姿であった。

「よくもボクの船を―――! 機械傀儡風情が!」
 溢れ出る異形の海賊たち。燃え盛る炎を背にたつトリテレイアにはもうわかっていた。分け前たる天文学的な額の財宝も、もはや燃え尽きようとしている。
 それを証拠に呼び出された異形の海賊たちの戦意は乏しい。へし折ったメインマストを構え、トリテレイアは言う。
「そんな士気が最悪な状態で何が出来るというのです。そのたかだか機械傀儡風情にここまでしてやられた……その不手際を棚に上げるのは関心いたしませんね」
 一斉に飛びかかってくるヨハンナと異形の海賊たち。
 彼等の表情は憤怒にかられていた。トリテレイアの言葉通り、彼等にとって海賊船とは『家』であり『商売道具』である。
 その両方をいっぺんにダメにされてしまったのだから、その表情もわからぬものではない。
 だが―――。

「この島の価値を解せぬ賊は」
 手にしたメインマストの残骸を膂力で持って横薙ぎに振り払う。どれだけの異形の海賊たちがいようとも、ヨハンナにどれだけの力があろうとも関係がない。
 トリテレイアにとって成すべきことはたったひとつである。
 あの平和そのものである人々の島を護る。
 ただそれだけである。そこには猟兵、騎士といった役柄は関係がない。電脳ではなく炉心が命ずる儘に己の心に従った結果だ。
 振り抜いたメインマストにしたたかに打ち据えられ、ヨハンナと海賊たちは再び海賊船から砂浜へと叩き返される。
 海賊たち霧散し、消えていく。ヨハンナはまだ健在であるが、それでもすでに満身創痍へと近づいている。


「―――骸の海へと沈んで頂きましょう」
 燃え盛る海賊船の炎を背に負いながら、トリテレイアのアイセンサーが炎の影に輝くいた―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レクス・マグヌス
藤原・桔梗(f10098)と参加
WIZ

【心情】
お前の瞳がこの先、未来を見ることはない
お前に待っているのは、お前自身の破滅だ
「黙れ! そして、聞け! 我が名はレクス・マグヌス! 滅びし都の最後の王!」

【戦闘】
「狂気耐性」で邪神の精神汚染に対抗
「フェイント」「残像」「カウンター」によって触手に対して攻撃を仕掛ける
「生命力吸収」「属性攻撃」で隙を作り、ユーベルコード「破壊の剣」を叩き込む



「お前自身が滅べ、そうすればお前にとっての世界は完全に消滅するだろう。納得がいかないなら、僕がこの手で滅ぼしてやる」

「この島に欲望の眼差しを向けた、それがお前の過ちだ」


藤原・桔梗
レクス・マグヌス(f07818)と参加
WIZ
【心情】
邪神を召喚するメガリス
思っていた以上に恐ろしい相手です
でも、邪神を連れているのはあなただけではありません
九頭龍、力を貸して!
「桔梗で良いなら、お相手しましょう」

【戦闘】
「勇気」「優しさ」を持って精神汚染に抗い、逆に「恐怖を与える」
触手に対しては「結界術」で防御を行います
「祈り」によってユーベルコードを発動
戦う猟兵のみんなの支援に回ります
「あなたが世界を滅ぼすのなら、桔梗は世界を守るために戦います!」

【戦闘後】
戦いが終わったら先約通り、みんなでまたバーベキューと行きましょう♪
「料理」の準備は万端です



 その瞳は何のために輝くのか。
 ただ己の欲を満たすためだけに存在するのであれば、それは底しれぬ闇となって沈殿していくだけであろう。
 そこにあったのはある意味で信仰の輝きであったのかも知れない。己の奉ずる神が欲する故に、己はその欲望の尖兵となって働く。それこそが己の欲望を満たす最大にして唯一の手段である。
 ならば、『大海統べる災厄』ヨハンナ・グスターヴにとって真実とは常に悍ましき邪神がささやく言葉であったことだろう。
「世界を壊せ。世界を壊せ。己の欲望の赴くままに事を成せば、世界は破壊される……『瞳』が疼くんだ。この世界を滅ぼせと。だからボクは滅ぼす世界を、全てを―――!」
 青き瞳が輝く。
 その輝きの中にあるのは、ヨハンナが奉ずる邪神の姿。悍ましき姿から発せられる大量の触手が砂浜に打ちのめされたヨハンナを護るようにして展開し、対峙する猟兵へと放たれる。

「黙れ! そして、聞け! 我が名はレクス・マグヌス! 滅ぼし都の最後の王!」
 レクス・マグヌス(嵐をもたらすもの・f07818)の言葉が、その世界の破滅を望む声を遮る。最後にヨハンナと対峙するのは、藤原・桔梗(四海の龍と共に征く・f10098)と共に立つレクスであった。
 迸る覇気の籠められた言葉は、ヨハンナの瞳介在し顕現する邪神を遮る。
「桔梗で良いなら、お相手しましょう」
 彼女は祈る。
 邪心を召喚するメガリス『海魔の瞳』その恐ろしさを知っているからこそ、彼女は己の共とする九頭竜を頼る。
 対するコンキスタドールが邪心の力を恐怖させるために使うというのならば、桔梗は勇気と優しさを持ってそれに対抗する。
 その力の源にあるのは、彼女の心。彼女の勇気は彼女自身を奮い立たせ、彼女の優しさは誰かを癒やす力となる。

 張り巡らされた結界術が恐怖を与える触手を防ぐ。
 彼女にとって祈りとは誰かのために捧げるもの。
「あなたに力を……!」
 その祈りが顕現させるのは癒やしの波動。どれだけの傷を負わされようとも、彼女の祈りが続く限り、傷は傷たり得ない。即座に癒やす力は彼女のユーベルコード、癒しの祈り(イヤシノイノリ)によるものだ。
「あなたが世界を滅ぼすのなら、桔梗は世界を護るために戦います!」
 癒やしの波動を受けてレクスが砂浜を駆け抜ける。

 赤い瞳と青い瞳が交錯する。
「お前の瞳がこの先、未来を見ることはない。お前に待っているのは、お前自身の破滅だ」
 どれだけの恐怖が、狂気がレクスの心を汚染しようとも、その強き心の中にある強く一本芯の通った剣を汚すことは敵わない。
 襲い来る触手を躱し、残像すら残す超スピードで持って駆け抜け、その絶技たる剣技によって触手を斬り飛ばす。

 その触手による攻撃は嵐のような激しさであり、距離を詰めれば詰めるほどに苛烈に成っていく。
「滅ぼさなければならない! 世界が滅びれば、何もかもボクのものだ。狂気も苦しみも、痛みも何もかもボクが支配する!」
 ヨハンナの青い瞳が爛々と輝き、メガリス『海魔の瞳』の力の発露を強めていく。その瞳が見せる幻影―――悍ましき姿の邪神の姿はレクスにとって、恐れを抱くには値しない。
 その手にした剣は、己の生命を蝕む災厄。
 これを悪の力と呼ぶのであれば、レクスは悪を屠るために使う。それが彼の剣を振るう理由。

 振るう度に生命を苛むが、桔梗の癒やしの波動は即座にその生命を癒やす。
 彼女が背中を負ってくれる。それだけで、剣を振るう手は軽く、そして鋭くなっていく。
「災厄を解き放て! 今こそその力を振るう時!」
 手にした魔剣が輝きを放つ。
 ユーベルコードの輝き―――それは、破壊の剣(デストルクティオ・グラディウス)。
 放たれた斬撃は魔力を帯び、放出される刃となる。触手の波状攻撃を斬り伏せ、その最奥に存在する全ての元凶、『大海統べる災厄』ヨハンナ・グスターヴの姿を捉え、最大の一撃で持って両断する。
「お前自身が滅べ、そうすればお前にとっての世界は完全に消滅するだろう。納得がいかないなら―――」
 僕が此の手で滅びしてやる。
 魔剣が再び輝き、両断せしめたヨハンナの体をさらなる斬撃で持って骸の海へと還す。

「あぁ……なんで、ボクが……こんな、ところで……どこで、間違えたんだ」
 それは断末魔。
 意味をなさない言葉。だが、その言葉の意味を誰よりも理解するのはレクスであった。
「この島に欲望の眼差しを向けた、それがお前の過ちだ」

 こうして、『シャッツンゼル島』に再び平穏が戻ってきた。
 一時は欲望の眼差しを受け、コンキスタドールに狙われた島であったが、それも猟兵たちの活躍に寄って阻止された。
 ささやかながら浜辺ではバーベキューが催されている。誰もが笑顔で、誰もが傷ついては居ない。
 例え、傷を追っていたとしても桔梗の癒やしの波動は瞬く間に傷を塞いでしまっていたことだろう。
「料理の準備は万端です。桔梗におまかせ! 先約通り、みんなでバーベキューです!」

 彼女の明るい声が島と島民たちに広がっていく。
 この平和もまた欲望の海洋であるグリードオーシャンにおいては仮初のものであるのかもしれない。
 けれど、と思うのだ。
 どれだけの欲望の眼差しが再びこの島に向けられたとしても、何度でも護ればいい。そう思えるだけの優しさが、島に広がっていた―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月18日


挿絵イラスト