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見よ、世界は煌きに満ちている

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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●よるはいらない
 カクリヨファンタズムにおいて、世界の終わり―――カタストロフは容易に訪れてしまうほど、不安定である。
 たった一つの骸魂が世界そのものを覆しかねないのだ。
 そしてまた一つ世界の終わりへと導かんとする骸魂ヴォルヴァドスが極彩色の炎の姿のまま揺らめくように降り立つ。
 そのまま誘われるように、導かれるようにして揺らめく極彩色の炎ヴォルヴァドスは、ある一つの霊廟へと降り立つ。
 本来死者を祀る霊廟であるが、此処には信仰の喪失により眠りについた竜神の少女が住まう廟なのである。

 骸魂は生前に縁のあった者へと引き寄せられ、取り込んでオブリビオンと化すことがほとんどである。
 かの骸魂ヴォルヴァドスが霊廟にて眠る竜神と生前如何なる縁があったのかは余人に窺い知ることは出来ない。
「―――夜が来るから、眠りにつかねばならない。君の眠りは夜がある限り晴れることはない。夜を払おう。夜を消し去ろう。その瞳がまた我の炎を見てくれるように」
 それは身勝手な欲望であったのかも知れない。
 夜が開けたからと言って、竜神の少女が目覚めるとは限らない。そこにあったのは、どうしてもひと目彼女に己の炎を見て欲しいという欲求だけであった。

 極彩色の炎が眠る竜神の少女を飲み込んでいく。
 ゆらり、ゆらりと揺れる炎が竜神の少女を抱きかかえるように空中へ浮かび上がらせる。
「君の眠りを妨げるもの……夜を払おう。夜を消し去ろう。煌々とした光だけが満ちる世界……暮れぬ日差しの中で、君の目覚めを待とう」
 骸魂に飲み込まれた竜神の少女の瞳が見開かれる。その瞳は生前の瞳ではなかった。煌々と燃える炎を映し出すかのような真っ赤な瞳。
 一歩踏み出す度に霊廟が燃えていく。久方ぶりに得た身体。
 しかし、思った以上の感慨は得られなかった。得るつもりもなかった。ただ、骸魂ヴォルヴァドスの心の中にある欲求のままに世界を燃やす。煌々と夜の来ぬ世界を作り出すために、その力を振るうのだ。

「我が名はヴォルヴァドス。『焚きつけるもの』ヴォルヴァドス―――目覚めぬ君よ、夜を駆逐し、煌き満ちる世界で我が炎を今一度、見てくれ」

●せかいのおわりときらめきのせかい
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを出迎えるのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
 彼女はいつものように微笑んで頭を下げて語りかける。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はカクリヨファンタズム。妖怪達住まうUDCアースに隣接する世界です」
 カクリヨファンタズムは骸魂に飲み込まれたオブリビオンによって常に世界の終わり―――カタストロフの憂き目にあっている。
 それを救うことが出来るのは世界に選ばれた戦士である猟兵だけだ。

「ある霊廟が燃え落ち、そこに眠っていた竜神の少女が骸魂に飲み込まれてしまいました。オブリビオンと化した彼女は世界の尽くを燃やし尽くさんと炎と破壊の力を振りまいています」
 そのオブリビオンに呼応するように霊廟の周りには多数の骸魂がジャックライトと呼ばれる生命の炎がオブリビオン化した存在が跋扈しているのだという。
 それは人魂というにはあまりにも強烈過ぎる鮮烈なる炎でもって幽世を照らし続けているのだ。

「今回のオブリビオンがカクリヨファンタズムから消し去ろうとしている概念は『夜』です。竜神の少女に取り憑いた骸魂は生前彼女と縁があったようですが、どのような間柄であったのかは不明です。ですが、この骸魂は竜神の少女が目覚めないのは夜があるせいだと思いこんでいるようなのです」
 それ故に『夜』という概念を消し去れば、眠り続ける竜神の少女が目覚める……故に光の弾幕飛び交う『閃光の世界』にカクリヨファンタズムを変えようとしているのだ。
 それはまさに世界の終わりである。
 日の落ちない世界は、いずれ生命のバランスを崩してしまうだろう。そうなってしまえば、カクリヨファンタズムは光しか存在しない、ある意味で死の世界となってしまうだろう。

「それは阻止せねばなりません。急ぎ解決し、次々と飲み込まれていく妖怪達を救うためにオブリビオン―――『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスを討ち果たしてください」
 ナイアルテは再び頭を下げる。彼女が出来るのは猟兵たちを転移し、それを維持することまでである。
 実際に戦う猟兵たちのことを考えれば、頭を下げるだけでは飽き足らない。再び頭を上げたナイアルテは、少しだけぎこちなく微笑んで言うのだ。

「気が早い、と言われるかもしれませんが、戦いが終われば取り戻した日常を妖怪の皆さんと謳歌することもできます。今回僭越ながら私がご用意させて頂いたささやかですが、打ち上げは―――」
 彼女が言うには今回は戦いが終われば、戦い終えた猟兵たちへのささやかであるが慰労があるのだという。
 珍しく彼女が張り切って抑えた会場とは。

「―――妖怪メイド喫茶です」
 多くの猟兵は、一瞬固まってしまっただろう。なんで? と疑問に思った者もいただろう。だが、ナイアルテの顔は自信に満ち溢れていた。が、猟兵たちの反応を見て、自分がまたもや外してしまったということを自覚したのだろう顔を真赤にして、違うのです、と言い訳を始めた。

「そ、その、カクリヨファンタズムでは妖怪メイド喫茶が非常にブームであると言うのです。妖怪達が集う不思議な喫茶店でおくつろぎいただければ、皆さんの疲れも癒えるかと思いまして……その猫又さんや雪女さん、ろくろ首さんも、すごい勢いで進めてくださったので……!」
 なるほど、現地の妖怪達に押し切られたか、言いくるめられたのだろう。
 だが、予約してしまったものは仕方ない。こうなれば、世界を救いメイド喫茶を満喫する他ない。
 ナイアルテの真っ赤な顔がゆでダコになってしまう前に、猟兵達は次々と転移していく。
 真っ赤な顔のナイアルテは三度頭を下げて猟兵たちを見送るのだった。

「いってらっしゃいませ、ご主人さま……うぅ、またも作法をいい忘れてしまいました……」
 どうしていつもワンテンポ自分は遅れてしまうのだろうと自己嫌悪しながら、ナイアルテは猟兵たちの活躍を祈らずにはいられないのだった―――。


海鶴
 マスターの海鶴です。
 今回はカクリヲファンタズムでの事件となります。世界を滅ぼすもの、オブリビオンの企みに寄って『夜』という概念が奪われようとしています。これを阻止し、世界の危機を救うシナリオになっております。
 またボスであるオブリビオンを打倒した後、3章においては猟兵の皆さんへのご褒美としてカクリヨファンタズムでの日常を楽しむことが出来ます。

●第一章
 集団戦です。
 飛び交う骸魂によってオブリビオン化した妖怪達を倒し、助けてげましょう。
 オブリビオンはジャックライトと呼ばれる生命の炎がオブリビオン化した存在です。炎による強い攻撃を放つ集団敵です。
 一体一体に遅れを取ることはないでしょうが、夜空を昼のように照らすほど数が存在していますので、油断なく。

●第二章
 ボス戦です。
 事件の元凶たるオブリビオン『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスを打倒しましょう。
 このオブリビオンの存在に寄って、カクリヨファンタズムは今、夜であっても昼のごとき明るさを持つ常昼の世界へと変貌しています。
 影もなく、どこもかしこも明るく照らされた煌々たる世界となっています。
 このオブリビオンを打倒し、妖怪と世界を救いましょう。

●第三章
 日常です。
 オブリビオンを打倒したことによって、消えた概念『夜』が戻っています。
 夜のメイド喫茶でしばしの憩いを楽しんで頂けます。妖怪メイドたちのおもてなしを楽しんでもいいですし、なんだか微妙に間違っているメイド喫茶を正すべく、己もまたメイドになりきって指導してしまうのもよいでしょう。
 様々な過ごし方があると思いますので、思い思いにカクリヨファンタズムの少し懐かしくもあり、おかしみもある世界の日常を楽しんで頂けたらと思います。

 それでは、カクリヨファンタズムに訪れる世界の終わりを阻止し、日常を謳歌する皆さんのキャラクターの物語の一片となれますようにいっぱいがんばります!
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第1章 集団戦 『ジャックライト』

POW   :    クリムゾンフレイム
【自身の体から噴出する炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【真紅の巨大な】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    カーマインブレイズ
自身に【輝きの強い炎】をまとい、高速移動と【超高温の熱波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    スカーレットファイア
レベル×1個の【怪火】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。

イラスト:透人

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 世界から『夜』の喪われた世界とは、こんな世界であるのかと思うほどに煌々とした明かりに照らされた世界―――それが今のカクリヨファンタズムであった。
 建物が照らされて出来る影ですら、世界を飛び交う光の弾幕が塗りつぶすように輝き照らす。

 そんな中、溢れかえった骸魂が次々と妖怪達を飲み込み、オブリビオンへと姿を変えていいく。
 ジャックライトと呼ばれる赤き人魂の如き輝きを放つオブリビオンたちは一斉に世界を光で見たさんとする。それは世界から『夜』という概念を一層し、終わることのない昼の世界を生み出さんとする走狗であった。

 暗き闇を恐れるのが生命の本質であるというのならば、光照らそうとするのは生命として正しいことなのかもしれない。
 だが、強すぎる光、あまりにもまばゆい光もまた生命を害するものである。
 闇は暗き虚でもあるが、安らぎの黒でもある。
 その安らぎなく光ばかりに包まれれば、生命は生命として維持できなくなってしまうのもまた道理。

 弾幕のごとく飛び交うジャックライトを打倒し、この世界の終わり―――カタストロフの元凶たるオブリビオンを打ち倒さなければならない。
『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスがいる霊廟は遠く煌々と炎に包まれている。
 そこに至るまでには、ジャックライトが邪魔をしてくるだろう。

 なんとしても、この状況を打破しなければ、猟兵に癒やしの時間はやってこないのだ―――!
ラス・セレブライト
夜空が消えてしまったら〜星と光の竜神ラスセレブライトさんはとても困っちゃいますね〜
同じ竜神としてかの少女も放ってはおけませんし〜世界の危機ですし〜私が行くしかないようです〜

☆星の力
星型の防御結界で身を守りながら〜優しい星の光纏う神罰ミゼリコルディア・スパーダで攻撃よ〜

眩い光ばかりでは〜人々は道行く先すら見えず惑ってしまうのよ〜だから〜優しく照らす淡い光が必要なの〜
それに〜夜の暗闇を恐れる必要なんてないの〜だって〜誰にでも〜どんな時も〜私の星光があまねく全ての生命を照らし導いてあげるんだから〜。

☆アドリブや絡みも歓迎よ〜



 世界から『夜』の消え失せた世界、それが今のカクリヨファンタズムである。
 無数の骸魂が空を飛び回り、次々と妖怪達を飲み込みオブリビオンと化していく。彼等は皆、一様にジャックライトと呼ばれる赤い炎の人魂のような姿へと変貌し、世界を光で持って照らし続ける。
 そこには一切の闇、影を許さない徹底した輝きがあり、何処を見ても煌々とした光り輝く世界となっていた。

 弾幕のごとくジャックライトが飛び交う空に星々の輝きはなく、あるのは白一色に染まり上がった世界のみ。
「夜空が消えてしまったら~星と光の竜神ラスセレブライトさんはとっても困っちゃいますね~」
 その世界を目の当たりにして、ラス・セレブライト(星と光の竜神・f28442)は困ったと言う割に柔和な微笑みで持って世界を見つめていた。
 カクリヨファンタズムが世界の終わり―――カタストロフの危機にひんしている以上、彼女とて嘗ては邪神たちと戦い、人々を見守ってきた自負がある竜神であるから、これを見過ごすことなどできようはずもない。
 それに、と彼女は続ける。
「同じ竜神として、かの少女も放ってはおけませんし~世界の危機ですし~私が行くしかないようです~」

 彼女ののんびりとした口調とは裏腹に、ラスは一気に駆け出す。
 己を星型の防御結界で守りながら、彼女が燃え盛る霊廟……今回の事件の元凶たる『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスへと至らんとするのを阻もうとするジャックライトの放つ炎を防ぐ。
 怪火は、雨のようにラスへと降り注ぐが彼女の防御結界を貫くことはできない。
 それを見たジャックライトたちは一斉に己たちの放つ怪火をまとめ上げていく。炎に浮かぶ数字が次々とカウントされ、大きくなってくにつれ、炎もまた強大なものへと変わっていく。
「眩い光ばかりでは~人々は道行く先すら見えず惑ってしまうのよ~だから~優しく照らす淡い光が必要なの~」

 ラスの手にした星の杖が振るわれる。
 星をかたどった装飾に蒼い竜石のはめられた身の丈ほどもある長い杖。彼女にとっての神器である。
 それを振るった瞬間、彼女の力が顕現する。
「優しい星の光纏う神罰~ミゼリコルディア・スパーダ~」
 それは星の杖が振るわれる瞬間、竜石が描く幾何学模様に反応するように飛翔する魔法剣。
 ジャックライトが放つ炎を散り散りに切り裂くように無数の魔法剣が、炎を切り刻み小さくしていく。それは彼女の言葉通り、眩すぎる強い光は必要ないのだというように優しく諭すように炎を小さくしていく。

「それに~夜の暗闇を恐れる必要なんてないの~」
 振るう星の杖の軌跡が、再び幾何学模様を描く。
 淡く輝く光の軌跡は優しく、彼女の心根を現すかのように強烈なる光を放ち続ける煌々たる世界に浮かび上がる。
 彼女は星と光の竜神である。
 彼女にとって光と闇は同時に司るものでもある。星の輝は暗闇の如き夜空にあってまばゆさを増す。光は闇を色濃くし、その安らぎを強くする。
 ならば、彼女の描く力とは―――。

「だって~誰にでも~どんな時も~私の星光があまねくすべての生命を照らし導いてあげるんだから~」
 生命を見守る神の一柱。
 それこそがラスの本質。導き、照らす。
 時に暗闇の安らぎもあり、傷つけるものではない。飛翔する魔法剣が幾何学模様を描き、一瞬でジャックライトたちを切り刻んで霧散させていく。
 それは彼女が霊廟へと至る道を切り開き、駆けていく傍から次々とオブリビオン化した妖怪達をすくい上げていく。

 彼女の言う、遍く全ての生命を照らし導くという言葉に偽りはない。
 かつてのような力は喪ってしまったけれど、未だ彼女の神性に一片の陰りもない。それを証明するように、彼女は一条の光となって、元凶たるオブリビオン目指して駆け抜けていくのであった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
世界は陰陽で出来ている。ただ光にのみ心奪われ闇を押し潰すなら、それは容易に原初の混沌に戻ってしまう。
陰陽の理を手にする陰陽師として、見過ごすわけにはいかないわ。

相手は炎の化身か。火界咒抜きで行くしかなさそうね。

巫覡載霊の舞で神霊体となって、「全力魔法」の「オーラ防御」と「火炎耐性」で守りを固めてから、ジャックライトの防衛線に切り込む。

薙刀で「なぎ払い」「串刺し」にして、離れた相手は「破魔」の「衝撃波」で遠当てを。
霊廟までの突破が最優先。ジャックライトを排除して作った道を、高速移動で駆け抜ける。どうせなら最短距離――屋根の上を駆けましょう。

下手に飛鉢法で飛んだら集中砲火。地道に脚で距離を縮める。



 世界とはバランスを取り合うことで成り立っている。
 そういう意味ではカクリヨファンタズムの持つ世界のバランスは危ういものであったかもしれない。
 たった一体の骸魂が世界の中にある概念一つを消し去ろうとするだけで世界の終わり―――カタストロフが引き起こされてしまう。言ってしまえば、今のカクリヨファンタズムは器に水を張った状態のようなものだ。
 どちらかに傾いてしまえばこぼれ落ちる水。
 一度傾いてしまえば、水はあふれるようにしてこぼれ落ちていくしかない。

 故に、今現在カクリヨファンタズムを包み込む光の乱舞は、世界という器にはられた水がこぼれ落ちようとしているさなかであると言えよう。
「世界は陰陽で出来ている。ただ光にのみ心奪われ闇を押し潰すなら、それは容易に原初の混沌に戻ってしまう」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は光の弾幕のごとく世界中に溢れかえたジャックライト……オブリビオンの姿を認めながら呟く。
 彼女が見据えているのは燃える霊廟。
 此度の事件の元凶たるオブリビオンは、その霊廟に居る。ならば一直線に向かって、この煌々と輝く世界を取り除かなければならない。
「陰陽の理を手にする陰陽師として、見過ごすわけにはいかないわ」
 手にした薙刀とともにユーベルコード、巫覡載霊の舞にて神霊体へと変身する。そのきらびやかな姿は、この煌々たる世界においてもなお、眩いものであった。

 次々と襲い来るジャックライトの放つ怪火の炎。
 雨のように降り注ぐ炎の弾丸は、ゆかりにとって馴染みの深いものであった。
「相手は炎の化身か。火界咒抜きで行くしかなさそうね」
 彼女にとって炎とは慣れ親しんだ力である。降り注ぐ炎の雨を前にしても立ち竦むことはない。己のみを護るオーラに力を込める。
 火炎への耐性はすでに獲得している。守りを固め、炎の雨の中を一直線に霊廟めがけて駆け抜ける一本の弓矢となりながら、ゆかりは駆け抜ける。

 手にした薙刀から放たれる衝撃波が宙を舞うジャックライトの体を捉え、薙ぎ払う。離れた敵は破魔の力籠められし衝撃波によって撃ち落とされ、ゆかりの薙刀の餌食となる。
「やっぱり一体一体は大したことない―――! 数を頼みにするのであれば!」
 放たれる衝撃波を横薙ぎに振り払いながら、ゆかりは進む。
 優先順位は霊廟への到達。
 首魁であるオブリビオンが打ち倒されれば、あふれるように増え続ける骸魂が妖怪を取り込んでオブリビオンとなることも止められる。
 敵の撃破は最大に。しかし、進む距離は最短に。
 それが言うが易しということは、ゆかり自身もよくわかっている。だが、それでも、バランスを崩した世界がどれほど保つのか、どこにも保証はない。

「なら、やることは一つ! 最速最短迅速に!」
 ゆかりは神霊体となったことで、さらなる力を得ている。
 カクリヨファンタズムのどこか懐かしさを感じさせる街並み、その屋根の上を飛び跳ねるように駆け抜け、直線距離で霊廟へと至ろうとするのだ。
 当然ジャックライトたちの猛追が始まるが、ゆかりにとっては敵を薙ぎ払いながら進む最大の戦果と最短の距離を手に入れるため避けては通れぬ道である。

「下手に飛ぶと集中砲火だしね……ここは地道に、けれど大胆にね」
 振り払う薙刀から放たれる衝撃波は次々とジャックライトたちを霧散させ、骸の海へと還していく。
 神霊体として強化されていなければ難しいことだった。
 凄まじい力には当然のように代償があるものだ。寿命を削る戦いではあるが、ゆかりにとっては目算の付いた戦いでもある。
 既に霊廟はその紫の瞳に捉えている。

「見えた―――!」
 ジャックライトの大軍を切り払い進む、ゆかりの戦いの軌跡は一直線に引かれた閃光のように。
 ここまで来れば、ジャックライトの猛追も振り切ったも当然である。
 視線の先には、燃え盛る霊廟、その先にあるオブリビオン―――『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスとの戦いがすぐそこまで迫っているのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

戸波・明厳
・夜のない世界のう。なんともまあ風情のないことじゃ。
さて、かの骸魂共は猟兵の力で調伏できると聞く……お前さん達はどんな味がするんだい?

・少々「駆け比べ」をしてみようではないか。餓羅鬼や、その尽きぬ飢えをもってわしの身体を動かせ。さて、足は互角。ならば「早業」の腕はどうかの? 加え、「生命力吸収」を用れば…ほれ、わしはピンピンしておるが向こうはお疲れモードの出来上がりじゃ。後は確実に追い詰め、削り、斬ればええ。

・炎の妖を「捕食」するのは初めてじゃのう……ふん、熱いが「味」は他のオブリビオンと変わらぬか。まあ、先ほどの駆け比べで失った精気の足しにはなったわい。

※アドリブなど歓迎です。



 世界に昼と夜とが存在するからこそ見える景色がある。
 朝と夜の間。夕と夜の間。
 あの光景を見て心震える者は幸福である。心が豊かであろうから。そして人はそれを風情であると呼ぶこともある。
「夜のない世界のう。なんともまあ風情のないことじゃ」
 そう言ってカクリヨファンタズムに訪れた『夜』という概念の喪われた世界を見回すのは、戸波・明厳(飢えし怪剣・f26720)である。煌々と光り輝く閃光の世界へと変わっていくカクリヨファンタズムにおいて、光の弾幕のごとく、溢れかえった骸魂たちは次々と妖怪達を飲み込み、空を覆う。

 光によって生み出された影一つすら許さぬとばかりに建物や人に出来る影を虱潰しにオブリビオン、ジャックライトは照らし出すように燃え盛る。
 赤き人魂の如きオブリビオンの姿は世界のどこかしこでも見ることが出来るほどに数が多いのだ。
 これらを打倒し、この事件の元凶たるオブリビオン―――『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスを打倒せねば、この煌々たる閃光の世界は終わらせることができない。
 この先行の世界の後に訪れるのは世界の終わり―――カタストロフである。
「さて、かの骸魂共は猟兵の力で調伏できると聞く……お前さん達はどんな味がするんだい?」
 浮かぶ赤き炎のごとき人魂たるジャックライト。
 明厳の言葉に反応するように、次々と彼等の身体が白熱していく。まばゆき輝きは太陽のごとく強烈なる熱波を持って彼を襲う。

「少々『駆け比べ』をしてみようではないか。餓螺鬼や、その尽きぬ飢えをもって、わしの身体を動かせ」
 己の携えた妖刀餓螺鬼が怪しく輝く。
 それはユーベルコード、妖剣解放。妖刀に秘められし怨念を身に纏うことによって、高速移動を可能とする。
 今や彼の速度は襲い来る熱波と同じである。彼を捉えるには熱波の伝わる速度は足りない。次々と襲い来る熱波を躱しながら、明厳は軽やかに宙を舞う。
「―――さて、脚は互角。ならば、『早業』の腕はどうかの?」
 手にした妖刀がひらめき、怪しき残光を切り残す。
 放たれた斬撃の数々はジャックライトの炎の身体を切り裂き、その身に秘めたる生命力を尽く奪い尽くしていく。

「ほれ、わしはピンピンしておるぞ。疾く次なる業を放たねば―――」
 妖刀の斬撃と衝撃波、さらには生命吸収の力を用いた攻撃はジャックライトたちを確実に疲弊させていく。
 そこへ止めの斬撃を切り放てば、空に舞うは霧散して消えゆくオブリビオン、ジャックライトの残光である。
 切り捨てたジャックライトの炎の残滓が明厳の口元に漂う。

「これこの通り……と、んむ」
 ぱくりとそれを口にして咀嚼する。
 妖刀が切り捨てたオブリビオンからも生命吸収と同じ要領で食らう事はできるのだが、それは人の姿の名残であろう。
「炎の妖を『捕食』するのは初めてじゃのう……ふん、熱いが『味』は他のオブリビオンと変わらぬか」
 わずかに手が震える。
 それは妖刀の力を開放したユーベルコードにて消費した己の生気の消耗を知らせるサインであった。
 絶大なる力を保つ妖刀ではあるが、常に彼に飢えを与え続ける。それは生気を代償として力を振るう不死ではあるが不老である彼にとっては捨て置けぬ問題。

 だが、それはこうしてオブリビオンを切り捨て、捕食することに寄って解決できる。
「まあ、先程の駆け比べで喪った精気の足しにはなったわい」
 楊枝を口に加え呵呵と笑う。
 さて、と彼の視線が改めて捉えるのは燃え盛る霊廟。そこにこそ本当に打ち倒さなければならない事件の元凶たるオブリビオンがいる。
 先触れとなったジャックライトたちの味はイマイチであったが、本命のオブリビオンは如何なる味か。
 それを思い、明厳は戦場となった煌々たる閃光の世界を駆け抜けるのであった―――。

成功 🔵​🔵​🔴​

四王天・焔
《狐姉妹》で参加
SPD判定の行動
アドリブ歓迎

■心情
夜があるからこそ、明日の朝が眩しく輝くんだよ。
夜を消し去るなんて、させないよ。

■行動
白狐召還符(UC)を使用して、白狐様に騎乗して戦うね。
白狐様からの上から、【ランスチャージ】で敵に突撃して
【串刺し】や【なぎ払い】で複数を纏めて攻撃するね。
また、白狐様の方も狐火を【属性攻撃】で高め、【範囲攻撃】で
敵を一気に倒していくよ。
「どっちの炎の方が強いか、試してみるかな?」

燦お姉ちゃんとも息を合わせて、協力して戦うよ。
「さぁ、一緒に行くよー!」

敵のカーマインブレイズには、
此方も【見切り】で避けたりしつつ
避けきれない時は【火炎耐性】で耐える様にするね。


四王天・燦
《狐姉妹》

夜のない世界か…
(盗賊にとって死活問題じゃないか)
なんて妹の前では絶対言えねーな

火遊び大好きな狐姉妹が祭りに参加しない手はないね

先ずは間引きましょ。
時限爆弾・カウントダウンを群れの中に投擲。
引火・爆発でぶっ飛ばすぜ。
「たーまーやー♪花火は夜に限るけどね」

焔に合わせてアタシも漆式で紅狐様に騎乗して蹂躙だ

熱波を紅狐様諸共にオーラ防御・火炎耐性で防いで突撃。
「そこのけそこのけ狐が通る!」
紅狐様も炎属性だ、多少の熱さなんのもの…踏みつけ!
アタシも神鳴で馬上ならぬ狐上から薙ぐぜ

焔の薙ぎ払いで一掃できるようおびき寄せる。
ジャンプで薙ぎ払いの範囲から抜けて焔に任せた。
「あは、ナイス除霊(物理)だ」



 煌々と光り輝く人魂の如きジャックライトと呼ばれるオブリビオンが弾幕のごとくカクリヨファンタズムを閃光の世界へと染め上げていく。
 それにより『夜』という概念はカクリヨファンタズムから消失していき、何れ『昼』しかない世界へと成り果てるだろう。光しかない世界において生命が正常に正しく育つことはない。ならば、それは正しく、世界の終わり―――カタストロフである。
 カクリヨファンタズムにおいて世界の終わりは、こんなにも容易く引き起こされてしまう。それが幽世という不安定な世界においては骸魂が妖怪を飲み込むことに寄って生まれるオブリビオンによる仕業である。

 そこらじゅうを飛び交うジャックライトの弾幕を避けながら、四王天・焔(妖の薔薇・f04438)が、この事件の首魁たるオブリビオン『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスがいる燃え盛る霊廟を目指して駆け抜ける。
「夜があるからこそ、明日の朝が眩しく輝くんだよ。夜を消し去るなんて、させないよ」
 閃光しかない世界において、朝日のまばゆさ、美しさは感じられることはないだろう。それはひとえに夜という暗闇があるからこそ、朝の空ける情景は尊いのだ。

 一方、そんな彼女と共に行動する姉妹である四王天・燦(月夜の翼・f04448)はまた別の想いであった。
「夜のない世界か……」
 彼女の瞳に映るのはどこもしかこもが光り輝き影一つない世界。建物の影があったとしても、そこにすらジャックライトが煌々と明るく照らし影を塗りつぶしていく。
 それはどこにも暗がりのない、四角無き世界であった。
 盗賊にとって死活問題じゃないか、という言葉を彼女は飲み込んだのは、妹である焔の手前言えぬ言葉であったからだ。
「火遊び大好きな狐姉妹が祭りに参加しない手はないね……まずは間引きしましょ」
 お手玉のように手にした時限爆弾・カウントダウン。箱型をした小型の時限爆弾だが、様々な科学技術が駆使され作成されたものだ。
 それを集まってきたジャックライトの群れの中へと放り投げ、引火させる。猛烈な勢いで爆風が引き起こされ、彼女たちの目の前で様々な爆発の色や煙を噴出させる。

「たーまーやー♪ 花火は夜に限るけどね」
 燦はご機嫌で爆発の起こる様子を花火見物のように明るい言葉で飾る。
「いつみても奇麗だよね。さあ私も負けてられないよ。符よ妖の郷への扉を開け。おいでませ白の御狐様」
 その隣で焔は、ユーベルコード、白狐召還符(サモン・フォックス)にて呼び出された蒼い狐火を吐き出す白狐に飛び乗る。
 白狐がひときわ高く鳴くと蒼い狐火が当たりに撒き散らされる。ジャックライトより放たれた熱波を躱し、一気に駆け抜けた。
 手にしたドラゴンランスを構えて駆け抜ける姿はさながら騎兵のごとく。

「アタシも合わせて―――御狐・燦の狐火をもって贄となせ。紅蓮の鳥居潜りて、おいでませ紅狐様!」
 対を成すように劫火を撒き散らして現れるは紅蓮の狐。ユーベルコード、フォックスファイア・漆式(フォックスファイア・セブンス)によって呼び出された紅蓮の狐に焔と同じように燦は騎乗し戦場を駆け抜ける。
 熱波を躱すと言うよりは、その身に宿った火炎への耐性、オーラを纏った防御により弾丸の如く疾駆でもってジャックライトたちを踏みつけ、砕いていく。
 同じ炎と言えど、劫火に敵う道理などない。
「そこのけそこのけ狐が通る!」
 手にした迸る紅の電撃放つ刀、神鳴でもってジャックライトたちを斬り伏せていく。徐々にジャックライトたちを集め、一箇所に集中させていく。

 その立ち回りは姉妹ならではの連携であったことだろう。
 燦と紅蓮の狐がジャックライトたちを囲うように一箇所に追い立て、そこに待ち受けているのは、焔と白狐。湛える蒼い狐火は、その威力をどんどん溜め込むことによって増大させていく。
「どっちの炎が強いか、試してみるかな?さあ、一緒に行くよー!」
 お姉ちゃん! と焔が避けんだ瞬間、限界まで溜め込まれた蒼い狐火が噴出する。それは一箇所に集められたジャックライトたちを一網打尽にするには十分すぎる一撃であった。
 薙ぎ払うようにジャックライトたちは狐火に焼き尽くされ、跡形もなく霧散して消えていく。

「あは、ナイス除霊だ」
 燦は快活に笑って、妹に賛辞を送る。除霊の後に括弧で閉じて物理、とは言わないのが華だろう。
 彼女たちは一網打尽にしたジャックライトたちが消滅することに寄って生まれた燃える霊廟への道を切り開き進む。
 その先にはこの事件の元凶たるオブリビオンがいる。
 世界を閃光の世界へと変え、世界の終わりへと導かんとするオブリビオンを一刻も早く打ち倒さなければならない。
 二人は共に白と紅の狐に乗り、戦場を駆け抜けるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

水鏡・怜悧
詠唱:改変、省略可
人格:アノン
「よくわかんねェけど、寝るときは暗い方がイイなァ……喰いでもなさそうだし纏めて潰してやるぜ」
UDCを纏い黒い狼のような姿になる。毛並みに氷属性を這わせ、高速で敵の中心に突っ込んで空中戦だ。纏った冷気で片っ端から氷漬けにしてやるぜ。炎の軌道は野生の勘で捕らえつつ、直撃しそうな炎にはUDCの液体金属をぶち当ててかき消す。
倒しきれなかったヤツは液体金属を伸ばして貫き、打ち払う。
「霊廟ってのも良くわかんねェけど。そっちに行った方が楽しめそうだな」
炎が邪魔なら氷を降らせて消火しつつ、速度を落として霊廟に向かうぜ。



 眩き世界は、目もくらむような閃光の世界であった。
 生命、生物にとって光とはなくてはならないものであるが、過ぎれば毒となることは言うまでもない。生物の肌は光と闇が交互に訪れるからこそ、体の中で調和とリズムを正しく刻む。
 それは時として暗闇の中で体を休めることも必要であるということだ。
 だが、今カクリヨファンタズムにおいて『夜』という概念は消失しようとしていた。
それは『夜』の概念を疎ましく思うオブリビオンによって引き起こされた事件であり、世界の終わり―――カタストロフを意味していた。
 事件の元凶、オブリビオン『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスを打ち倒さなければ、カクリヨファンタズムに夜は来ない。昼しかない世界に生命は育まれないだろう。それはつまる所、生命の存続の危機である。

「よくわかんねェけど、寝る時は暗い方がイイなァ……」
 そんな世界を見回して、水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)の多重人格者として宿る一つの人格、アノンの緑色の瞳が輝く。
 光を受けて輝くのはいいが、彼としては眠るときまで明るいというのは、どうにも耐えられそうにもなかった。
 ユーベルコード、黒き獣の狂走(クロキケモノノキョウソウ)によって身に纏うのはUDCの液体金属でかたどられた黒い獣の姿。
 その瞳は輝く世界ではなく、すでに獲物であるオブリビオン、ジャックライトの煌々たる輝きを放ち、轟々と燃え盛る炎を捉えていた。
 次々と襲い来る炎を躱し、その黒き毛並みに氷の属性が付与されていく。
「喰いでもなさそうだし、まとめて潰してやるぜ……」

 その姿は黒き疾風そのものであった。
 身に纏った冷気は炎であったとしても、凍結させるほどであり、空中戦をいどむ彼にとっては容易い相手であった。
「そんな生っちょろい炎で―――!」
 放たれる炎は強烈なものであったが、毛並みが捉えるわずかな大気のゆらぎを感じ取り、次々と躱していく。
 例え、直撃コースを受けてしまうほどに大量の炎が放たれたとしても、彼には関係ない。その身に纏う液体金属がすべて炎を遮断する。

「そら―――!」
 身に纏う液体金属が触手のようにジャックライトへと伸び、その体を貫き、時に鞭のようにしなって打ち払う。
 次々とジャックライトたちは霧散し、骸の海へと帰っていく。飲み込まれていた妖怪たちも無事なようであった。
 そんな彼の視線は、燃え盛る霊廟にあった。
「霊廟ってのもよくわかんねェけど。そっちに行った方が楽しめそうだな」
 ジャックライトたちの炎は打ち払えば払うほどに、あちこちへと飛び火していく。それは彼の霊廟への道程を邪魔するものであった。
 だが、彼は慌てない。
 何のための氷属性をまとう毛並みであるか。

 大気中の水分を凍りつかせ、次々と燃え盛る道を鎮火し、速度を落としつつ霊廟へと向かう。
 目指す先にあるのはオブリビオン、『焚きつけるもの』ヴォルヴァドス。
 その力の全容は未だわからないが、それでも怜悧は楽しげに獣の顔を笑わせる。喰いでがあるやつだといい。
 そうであれば、力の振るい甲斐もあると、獰猛に笑いながら戦場となった街を駆けていくのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
昔に遭遇した宇宙船内の人口太陽や照明システム異常
『昼』も『夜』も無い…とはある意味で私の故郷を彷彿とさせますね

センサーでの●情報収集で敵位置を●見切り、脚部スラスターでの●スライディング移動で異なる方向からの同時攻撃を防止
放たれる炎をUCを起動した大盾で●盾受け

効果は薄いでしょうが変形して反転し●目潰しとなれば十分
その隙を逃さず接近し●怪力で振るう近接武器で●なぎ払い
同時に遠間や空中の敵は格納銃器の●スナイパー射撃

骸魂から妖怪達を解放

(落下する妖怪受け止め地に下ろし)

機械種族は兎も角、この環境は自然や生命にとって余りに脅威
速やかに解決しなくては

…例え、ある意味での善意で引き起こされたとしても



 閃光の世界。
 それは『夜』という概念の喪われた世界であり、昼しか存在しない明るい世界であった。
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は僅かであるが、その有様に既視感を覚えていた。
 彼はこのような光景を知っている。
「昔に遭遇した宇宙船内の人工太陽や照明システム以上……『昼』も『夜』もない……とはある意味で私の故郷を彷彿とさせますね」
 彼の言うところである故郷はスペースシップワールドである。
 宇宙船の中に広がる広大なる土地……それだけ巨大なる宇宙船の中で、この世界カクリヨファンタズムに今まさに起こっている異常はある意味で同じものであったのかもしれない。

 アイセンサーが周囲の情報を収集していく。
 この閃光たる世界には、弾幕のごとく無数のオブリビオン、ジャックライトが飛び交っている。まるで影という影を光で塗りつぶさんとするように煌々と燃え盛り、明るき世界を作り出していた。
「ふむ―――数は無数。ですが、首魁たるオブリビオンが座す霊廟の位置を見れば……」
 トリテレイアの構えた大盾が楔方へと変形する。それは衝角のような姿であり、彼自身が弓矢の鏃のようになることであった。
 それこそが彼のユーベルコード、個人携帯用偏向反射力場発生装置 (リフレクション・シールド・ジェネレータ)である。
 その鏃の如き切っ先となった大盾には偏向反射力場が形成され、この形態となった彼に触れられる者はいない。

 脚部スラスターが火を噴く。
 ジャックライトたちがトリテレイアの目論見を看破し、次々と炎を噴出させ、雨のように降らせる。
 だがもう遅い。
 すでにトリテレイアは情報分析は終えている。敵の位置も、どう機動すればオブリビオンであるジャックライトたちを殲滅し、素早く首魁であるオブリビオン『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスの座す霊廟へと至れるのか、シュミレートは完了しているのだ。

「宇宙で騎士を名乗るなら当然の芸当です」
 アイセンサーが光り輝き、スラスターを吹かせながら一気に戦場を駆け抜けるトリテレイア。
 それは解き放たれた一つの矢であった。構えた大盾は全ての炎を弾き飛ばし、格納銃器は次々とジャックライトたちを打ち据え、叩き落としていく。
 切り結ぶように交錯したトリテレイアとジャックライトは、彼の振るう剣によって両断され、骸の海へと還るほかなかった。
「―――妖怪の保護まで行っておきましょう。だいじょうぶですよ」
 骸魂より開放された妖怪達を抱え、トリテレイアは安全な場所へと彼等を下ろす。一見それは遠回りの道であったかもしれない。
 けれど、それはトリテレイアにとっては正道である。

 己が尊び、矜持とするのが騎士道であるというのならば、弱きものは無条件で救うべき者たちである。
 それに、何より、この閃光の世界は疾く終わらせなければならない。
「機会種族は兎も角、この環境は自然や生命にとってあまりに脅威。速やかに解決しなくては……」
 そう、光しかない世界は、生命ある生き物にとっては過ぎたるものである。必要不可欠なる光ではあるが、過ぎれば毒にもなるのだから。

 だが、それでも、とトリテレイアは思う。
 此度の事件、その元凶たる骸魂『焚きつけるもの』ヴォルヴァドス。骸魂は生前縁のあった妖怪に引かれるようにして取り込み、オブリビオンへと姿を変える。
 これは彼にとって憶測でしか無い。
「……例え、ある意味での善意で引き起こされたとしても」
 そこに意味を介することは無意味であったかも知れない。
 だが、トリテレイアの掌は多くを取りこぼさないようにと務めなければならない。そのために彼の体は人間よりも大きく作られているのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『焚きつけるもの』ヴォルヴァドス』

POW   :    私を……止めて……お願い……
自身の【骸魂に抑え込まれている良心の抵抗】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    銀禍戦塵『タイラント・アームズ』
【身体を包む『銀色の靄』が様々な武器や防具】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    煌竜狂乱『ディザスター・ブレイズ』
【魂まで焼き尽くす炎のドラゴンオーラの頭部】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。

イラスト:蒼殊まどか

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠リミティア・スカイクラッドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 カクリヨファンタズムの一角、かつてUDCアースにて邪神と戦い封じた者たち……竜神が生命の糧である信仰を喪って以来、カクリヨファンタズムにて眠り続けている霊廟は、今や燃え盛る炎に包まれていた。
 そこは閃光の世界へと変わり果てようとするカクリヨファンタズムにおいて、一際輝いていた。
 もはや真白。
 漂白された世界のごとく、その霊廟の周辺は地形の起伏すらわからぬ白一色の世界へと成り果ててていた。

「まだ―――目覚めないのか。君よ、これだけ明るいというのに……」
 その竜神の少女の周りにまとわりつくような極彩色の炎が揺らめく。
 何故、何故、と疑問の感情が浮かぶ度に炎が揺らめいて、立ち上っては萎むのを繰り返している。
『焚きつけるもの』ヴォルヴァドス。
 それこそが、この霊廟にて眠り続けていた竜神の少女を飲み込んだ骸魂の正体である。

「朝がくれば、眠りは終わるはずなのに。それでも君は目覚めない。光が足りないからか? まだ、もっと、もっと光を―――」
 骸魂となった彼には気がつくことができない。
 竜神の少女が何故眠り続けているのか。
 それは糧たる信仰がないからである。UDCアースは文明の発展を告げ、徐々に竜神への侵攻を喪った。
 力を喪うと同時に、彼等の存在を維持するための糧すらも喪ったのだ。

 彼等にとって信仰とは祈りであり、願いであった。
 それなくば、彼等竜神は存在することすら難しい。
「もっと、もっと光を―――。世界を遍く光で満たして、君よ、もう一度私を見ておくれ」
 その願いはもうきっと叶うことはないだろう。
 極彩色の炎に操られるままに竜神の少女は、その強大過ぎる炎と破壊の力を世界に振りまき続けるのだから―――。
村崎・ゆかり
竜神の眠りを妨げ、無理矢理起こすなんて最低ね。神は時が来れば目覚めるもの。オブリビオンの好きにはさせない。

身体を傷つけるのは抵抗があるわね。オブリビオンの魂だけを斬りましょう。「式神使い」魂喰召喚。
「浄化」「破魔」「除霊」の「属性攻撃」で、薙刀を振るい「なぎ払い」「串刺し」にしてあげる。

攻撃の受けは薙刀を回転させて生み出す「衝撃波」で。カウンターでそのまま反撃に繋げるわ。
取り込まれてる竜神に目を覚ますよう呼びかけて、動きを鈍らせてもらう。
力を増すのと討滅されるリスクと、どっちが上かしら?

最後は、「高速詠唱」「全力魔法」「浄化」「破魔」「除霊」炎の「属性攻撃」を乗せた不動明王火界咒で締めよ!



 揺らめく極彩色の炎が蠢く。
 未だ世界にあふれる骸魂。それらはすべて火の玉のごとき光となって世界を照らし続ける。どこまでもどこまでも遍く全てを照らし出さんとする光は、オブリビオン『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスの意志に呼応するかのように明滅すらせずに閃光でもって世界を彩り続ける。
 そこの願いに一片の曇りもなかったのかもしれない。
 あったのは己を見てほしいという純粋なる願いであったのかも知れない。その方法が間違っていたとして、猟兵以外の誰が正せるだろうか。
 骸魂は生前縁のあった妖怪へと取り憑く。
『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスは一体、竜神の少女とどのような縁があったのだろうか。その問いかけに応える者はいない。
「たったひと目、もう一度見て欲しいだけであるのに……目覚めない」

 それは悲哀の籠もった言葉であった。けれど、それを村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は容認できない。
「竜神の眠りを妨げ、無理矢理起こすなんて最低ね。神は時が来れば目覚めるもの。オブリビオンの好きにはさせない」
 対峙するゆかりが構えるのは薙刀『紫揚羽』。
 紫に煌めく刃は、閃光の世界にあってもなお輝きを増す。
 オブリビオンと言えど、少女の姿をした竜神を傷つけるのは抵抗があったゆかりは、ユーベルコード、魂喰召喚(タマクイショウカン)を発動させる。
「急急如律令! 汝は我が敵の心を砕き、抵抗の牙をへし折るものなり!」
 その刃に宿るのは魂喰らいの式神。
 肉体を傷つけず、刃が切り裂くのは戦闘に対する意欲や抵抗心を支える魂魄のみ。浄化の力、破魔の力、除霊の力、ゆかりが持てる全ての力を宿した刃は、オブリビオンとなった骸魂とて、怯むものであったかもしれない。

「好きにはさせない。好きにしたいわけではない。ただ見て欲しい、それだけであるというのに……」
 嘆きの言葉は閃光の世界に飲まれて消える。
 圧倒的な力を宿した刃の前であっても、『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスはひるまない。どちらの動きが合図になったのかわからない。
 それは一瞬の出来事だった。

 竜神の少女の身体が動いたと思った瞬間、その腕がゆかりへと伸ばされる。
 とっさに薙刀を回転させて生み出さす衝撃波で受け流さなければ、ゆかりは傷つけられていただろう。受け流すと同時に攻撃を加えるのがカウンターだというのであれば、ゆかりの薙刀はくるりと回転を加えながら放つ斬撃を見舞う。
「取り込まれたままでいいの! 目覚めない目覚めないって、世界には光ばっかりになってしまう! 陰と陽! そのバランスが崩れれば幽世と言えど世界の終わり―――カタストロフを迎えてしまうわ!」
 ゆかりの言葉は、確かに竜神の少女の心まで届いた。
 その証拠に『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスの炎が揺らめく。だが、動きが一瞬止まっただけで、その力はますます持って強大なものへと変わっていく。

「揺らいだ―――! なら、最後は、不動明王火界咒で締めよ!」
 放たれる炎は浄化と破魔、除霊の力を籠められし炎。
 閃光に包まれていた世界がわずかに陰る。燃える霊廟の炎が弱まったように感じた。
 これならば、押せばなんとかなる。
「これでもわからないっていうのなら―――」
 その手応えを感じたゆかりによって、再び放たれる魂喰らいの斬撃は、『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスの意志を、世界を終わりに導かんとする歪んだ望み、感情のほつれを切り捨てるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

戸波・明厳
【女神と守人】

・わしはラスと共に在り、そして戦おうぞ。

・ラスの慈愛をかの骸魂の耳に届かせるには、ちぃとばかしヤンチャがすぎるようじゃの。

・ラスの詠唱が終わるまでは「囮」か「餌」か、とにかく骸魂の前で動き、その攻撃を斬り払い、我が女神を守る。骸魂が生み出した武器や防具の残滓を「捕食」し「生命力吸収」し、その力を全て我が手足に注ぎこんで対抗するぞい。

・よいか、骸魂よ。この少女に必要なのは純なる信仰。それさえあればこのような灼熱の光は必要ないのじゃ。共に在らんとするなら祈れ。この少女の幸せだけを願うのじゃ。さあ、ラスの慈愛にわしの願いも乗せてもらおう……その傲慢、わしの一太刀で斬ってくれようぞ。


ラス・セレブライト
【女神と守人】
私は〜明厳さんと一緒に戦うわ〜

☆願いと祈り
「もうお辞めなさい〜いくら世界を眩しくしても〜彼女が目覚める事はないのよ〜
彼女は私と同じ竜神〜光ではなく〜願いや信仰の力がなければ〜世界に存在出来ないの〜」
そう、けれど彼は彼女が目覚めるのを願っている、けれど誤った願いは信仰ではなく傲慢となり彼女の力になっていない。
だから、私は彼の願いを正しく導いてあげましょう。
結界術による拠点防御で自身を守りながら多重詠唱でUCを詠唱し威力を高める、この隙は明厳さんにカバーしてもらうわね〜。
詠唱が完了したら祈りと優しさを込めた神罰スターライト・ドラゴンブレスで彼の傲慢を焼き尽くし、願いだけを導くの〜。



 燃える霊廟を包み込む極彩色の炎は、オブリビオンである『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスの力と連動しているようであった。
 猟兵のはなった斬撃の一撃は、その魂魄を傷つけ、骸魂として竜神の少女を取り込んだ力の拮抗を大きく崩すものであった。
 それ故に、今霊廟に燃え盛る炎は以前よりも勢いを衰えさせている。
 さらに言えば、世界の終わり―――カタストロフへと傾いていた閃光の世界に所徐々にだが陰りが見え始めている。

「何故だ。何故、夜明けを止めようとする。朝になれば、君は目覚めるはずだというのに」
『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスの悲哀に満ちた言葉が戦場に響き渡る。それは切なる願いであった。
 ただ、己を見て欲しい。
 ただそれだけであった。だが、それは我欲である。世界と己の欲望を天秤にかけて、己の欲望を取った者が引き起こすのは世界の終わりである。
 だからこそ、猟兵はこれを止めなければならない。同じ世界に生きる者たち、妖怪達全てを我欲の渦に巻き込むわけにはいかないのだ。

 燃え盛る極彩色の炎。
 竜神の少女を取り囲む銀の靄が大小様々な武具へと変化していく。大斧、槍、剣……それはあまりにも強大なる力であった。
「もうおやめなさい~いくら世界を眩しくしても~彼女が目覚める事はないのよ~彼女は私と同じ竜神~光ではなく~願いや信仰のちからが無ければ~世界に存在できないの~」
 閃光の世界の中で、ラス・セレブライト(星と光の竜神・f28442)の願いが響き渡る。それは事実であり、現実であった。
 どれだけ『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスが光を願ったとしても、竜神の少女は目覚めることはない。
 だが、その言葉が届かぬほどに理性を喪った『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスは銀の靄で作り出された武器を願い放つラスへと振り下ろさんとする。

「ラスの自愛をかの骸魂の耳に届かせるには、ちぃとばかしヤンチャがすぎるようじゃの」
 妖刀「餓螺鬼」によって振るわれた武器を受け止めるのは戸波・明厳(飢えし怪剣・f26720)であった。ラスの言葉は確かに慈愛に満ちたものである。
 言葉の端々から感じるのは願いであった。
 だが、その言葉は理性なきものには届かない。明厳にとって、ラスを傷つけさせるのは本意ではない。
 彼女の剣であり盾である。超高速で放たれ続ける銀の靄の武器の斬撃や刺突を受け流しながら、明厳は時間を稼ぐ。

「超高速の斬撃―――我が女神を守るためには」
 ユーベルコード、妖剣解放。怨念が開放される。それは手にした妖刀の力を身に纏うということ。凄まじき力の代償はあれど、己の精気が糧となり、時を稼ぎ、己を捧げる女神を守ることができるのならば、それは善きことである。
 どこにも恥じることはない。
「よいか、骸魂よ。この少女にヒウ用なのは純なる信仰。それさえあれば、このような灼熱の光は必要ないのじゃ。共に在らんとするなら祈れ―――」
 銀の斬撃と妖刀の斬撃が幾千も繰り広げられる。
 衝撃波が閃光の世界で煌き、その度に光の屈折により斬撃の線が歪んでいく。
 銀の靄を吸収し、その生命を糧としながら明厳の手足は時を稼ぐことに注力し続ける。妖刀が食いつぶしていく己の精気の速度が上がる。
 だが、それがなんだというのだ。

「この少女の幸せだけを願うのじゃ」
 自分の背後にはラスがいる。己が奉ずる女神。その慈愛に己の願いも乗せる。
 そうでなければ、互いの剣閃は拮抗できない。それほどまでに強い願いであったのだ。だからこそ、それは―――。

「貴方は彼女が目覚めるのを願っている、けれど誤った願いは信仰ではなく傲慢となり彼女の力となっていないのよ~」
 ラスの言葉が静かに響き渡る。
 そう、その願いは傲慢であった。
 己の我欲のままに願うのは、純然たる願いではない。しかし、それは誤っているだけである。取り返しのつかない道ではない。
 ならば竜神たるラスはどうするべきか。それはもう決まっている。
「だから、私は貴方の願いを正しく導いてあげましょう」
 ラスの多重詠唱が始まる。ユーベルコードの輝きがましていく。それは明厳の守りがあるからこそ出来る詠唱であった。
 無限に威力の上がる光の力。前方に展開した星型魔法陣が幾度も煌き、閃光の世界にあってなお、その輝きを知らしめんとする。

「かつて邪神をも打ち負かした私の全力……見せてあげるわ~」
 甲高い音が響き渡る。それは絶対的な力の奔流が世界に産声をあげる音であった。星型の魔法陣が世界に煌き、その姿を顕現させる。

 其は、スターライト・ドラゴンブレス(ホシノヒカリノトイキ)―――。

 かつて邪心を討ち果たした力。
「その傲慢、わしの一太刀で斬ってくれようぞ」
 防御の姿勢を取ろうとした銀の武具を切り裂く明厳の斬撃。
 その背後でラスの掲げた星の杖が煌めく。一瞬の閃光がほとばしった。
「貴方の傲慢を焼き尽くし、願いだけを導くの~」
 願いの権化、ラスの放ったブレスは一直線に閃光と共に走り抜け、『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスを打ちのめす。

 閃光の世界を切り裂き、その一条の光は光しか無かった世界に一条ではあるが星空の暗闇を取り戻した。
 極彩色の炎も、そこまでは及ばない。
 揺らめく炎のちからは更に削ぎ落とされ、ラスと明厳の言葉通り、その我欲たる傲慢―――『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスを打ちのめすのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

四王天・焔
《狐姉妹》で参加
SPD判定の行動
アドリブ歓迎

■心情
とうとう現れたね、この事件の元凶。
あのオブリビオンを倒して、夜を取り戻すよ。

■行動
白狐召還符を使用して戦うね。
敵のタイラント・アームズに対抗すべく、動きは最小限に抑え【目立たない】様にする。
敵からの攻撃は、無理に避けず【盾受け】や【オーラ防御】で受け流し
自身が動かない様に注意。
また、【火炎耐性】で熱にも対策を怠らない様にするよ。

攻撃時は、白狐様の上からドラゴンランスを【2回攻撃】で攻撃し
【マヒ攻撃】も織り交ぜながら戦う。

焔も、燦お姉ちゃんと一緒に
竜神が目覚める様に【祈り】を行うね。

「さぁ、明るい世界はお終いだよ、これからは夜も楽しまないと」


四王天・燦
《狐姉妹》

ぺこりと一礼
稲荷神とは違えど善神に礼は尽くすぜ

女の子を斬るのは不本意だが、適度に神鳴で攻撃し本命の罠を隠す
真威解放を発動させ、罠使いで鋼糸を複製・網を張るぜ

銀禍戦塵が発動したら、焔に隙を作ると合図を送る
罠の傍で謎の動作付き詠唱をして誘導
搦め取ってやる
糸が切れるまでに決着つけるべく、焔のランスに符術の武器改造で電撃属性攻撃を付与

「願わくば竜神様に一欠けらの力を残してあげてよ」
破魔でヴァルヴァドスを祓うぜ
一言、アンタの御陰で竜神様と会えたと礼を述べる

稲荷神の巫女だけど竜神様に祈りを捧げてみるよ
一晩だけ―メイド喫茶に赴く間だけでも起きていられるように、ね
神ではなく一人の女の子に向けて、だね



 骸魂が溢れかえり、閃光の世界へと変わり果てたカクリヨファンタズム。
 その空はどこを見ても眩いばかりの光に包まれた世界であった。しかし、猟兵の攻撃に寄って、その光しか無かった空に一直線に切り裂かれた闇色の夜空が現れる。
 極彩色の炎と銀色の靄に包まれていた竜神の少女を飲み込んだ骸魂『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスの咆哮が響き渡る。
 悲哀であったのか、それとも痛みによる絶叫であったのか。
 否、どちらでもない。
 あったのはただの憤怒。切り裂かれた夜空は『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスにとっては望まざるものであり、このカクリヨファンタズムから消し去ろうとした概念である。
「あ、ァ、ああアッ! 日が暮れる! 夜の帳が降りてしまう! せっかくの朝だというのに! 」
 それは絶望の声であった。自分が成そうとしたことが例え世界の終わり―――カタストロフを引き起こすのだとしても、彼にはもはやそれしか執着するものはなかった。

「とうとう現れたね、この事件の元凶。あのオブリビオンを倒して、夜を取り戻すよ」
 ユーベルコード、白狐召還符(サモン・フォックス)によって召喚されし蒼い狐火を吐き出す白狐にまたがった四王天・焔(妖の薔薇・f04438)が『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスを見つめる。
 彼女にとってオブリビオンとは打ち倒さなければならない元凶である。白狐にまたがりドラゴンランスを構えて、襲い来る銀の武具を受け止め、受け流す。
 本来であれば、彼女は自身の機動力を生かして撹乱するのも手であったことだろう。『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスのユーベルコードは、銀色の靄を武具に変え、素早く動くもの目掛けて攻撃の連打を加えてくる。

 それ故に、彼女は足を止めて、放たれる武具の一撃一撃を受け止めいなすのだ。
「稲荷神とは違えど善神には礼を尽くすぜ……」
 女の子を斬るのは不本意だが、と四王天・燦(月夜の翼・f04448)は頭を下げて一礼する。
 それは目の前のオブリビオン『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスに取り込まれた竜神に対する敬意であった。取り込まれたとは言え、その体は竜神の少女のものである。そこに敬意を持てないでは、彼女の矜持に泥を塗るのと同じであった。
「絡め取ってやる―――焔!」
 それは一瞬の出来事であった。
 彼女のユーベルコード、真威解放・デストラップ(ハイパー・デストラップフィールド)によって複製された鋼糸―――デストラップが次々と戦場となった燃え盛る霊廟に網を張る。

 超高速の連打を受け流し、受け止め続ける焔に合図を送った瞬間、彼女と共にドラゴンランスが煌めく。
 一瞬の連撃。
 その槍の穂先に触れた者は、例外なくその動きを麻痺させる力を持つ。放たれた槍のニ連撃は確実に『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスの動きを止める。
 さらに雁字搦めにするのは、燦の張り巡らせた鋼糸の網。
 それらは麻痺した『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスの体に絡みつき、例え麻痺から立ち直ったとしても、もがけば藻搔くほどに、その身に食い込んでいく。

「アアアアアアッ! 終わらせない! 夜明けは終わらせない! 彼女が目覚めるまで! この朝は―――!」
 絶叫が聞こえる。
 焔の放った槍の連撃を受けてなお、麻痺から立ち直り、己の敵である猟兵を打ち払わんと超高速の銀の靄に寄って生み出された武具を振るう。
 だが、その攻撃が振り下ろされることはなかった。張り巡らせた鋼糸が全ての武具、そして『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスの体に食い込み、動きを止める。
 だが、その妄執の凄まじさたるや、眼を見張るものがあった。
 鋼糸が軋む音が響き渡る。あれだけ大量の鋼糸で拘束しているというのに、引きちぎらんばかりの勢いで『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスは動こうとしている。

「糸が切れるまでに決着を! 焔、行くよ! 願わくば竜神様に一欠片の力を残してあげてよ」
 燦の符が焔のドラゴンランスに電撃の属性を付与する。
「焔も、燦お姉ちゃんと一緒に祈るよ!」
 電撃帯びた焔のドラゴンランスが煌めく。
 それは閃光の世界にあってもなお、輝く破魔の力。竜神の少女を取り込んだ骸魂の力を削ぎ、彼女たちの願い、祈りを持って竜神たる少女の力と成そうと放たれた槍の一撃は、銀の靄で出来た武具を焼き切り、その身を穿つ。

 二人の願いは最初から最後まで骸魂に囚われた竜神の少女の目覚めであった。
 その願いは『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスと同じものであったが、性質は違うものであった。願いは祈りに変わる。
 彼女たちが願ったのは、彼女たちのために竜神の少女を目覚めさせることではない。
 竜神の少女のためだけに願われる願いは、正しく彼女の糧となるだろう。
 目覚めるには足りない僅かなものであったかもしれない。

 けれど、それでも焔は言わずにはいられなかった。
「さぁ、明るい世界はおしまいだよ、これからは夜も楽しまないと」
 焔の言葉に燦は頷く。
 神ではなく一人の女の子として、僅かな時間でもいい、竜神の少女が楽しめるような、そんな喜びにあふれた目覚めになってほしいと。

 振るわれた槍の一撃は銀の靄を振り払って、閃光の世界を穿ち払う。
 極彩色の炎の中で、『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスの絶望の咆哮が響き渡るのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
私の言葉では止まらないのでしょうね…

暫く立ち回り

段々、強く…竜神の力を引き出している…?
(センサーの●情報収集で表情の微かな変化●見切り)
(力が増すと共に少女の意識が表出している? 危険な橋ですが…)

UC戦闘行動で『あと一歩で倒せる』と思い込ませ続け骸魂を戦闘に没頭
意識覚醒促進

能力と良心の抵抗最高潮となる敗北寸前
自己ハッキングで限界突破
良心表出促進する為の一撃を繰り出し請願

どうか、この愚かしくも哀れな骸魂に告げてもらえますか
要らぬ世話だと、望みはしないという引導を!

動揺した骸魂一閃

意識無き女性を操るは論外ですが、強要するもまた罪

刹那の間
目覚めても固く閉じられたその女性の瞳

…それが貴方への罰です



 絶望の絶叫が響き渡る。
 それは己が欲するものが手に入らぬと嘆く幼子のような咆哮であった。
「アアッ! また、夜が! 夜がまた来る―――! 明るくなければならないのに! 朝が来なければならないというのに! 目覚めぬ君を迎えねばならないというのに!」
 その声の主は骸魂『焚きつけるもの』ヴォルヴァドス。
 しかし、その取り込んだ竜神の少女の瞳がわずかに開く。それは猟兵たちの願いが祈りに変わり、彼女の糧として取り込まれた証拠であった。
 僅かであるが、確かに彼女自身の瞳が開いたのだと分かる。わずかに動く手は、彼女の意志であり、『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスのものではない。
「オオ―――! 目をっ! 目を開いた―――!」
 だが、それを見ることは『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスにはできない。なぜなら、今は竜神の少女を取り込み、その眼すら己という同一であるからだ。
 少女の意志が表層した瞬間、一気に膨れ上がる『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスの力。極彩色の炎が世界にひらめき、あちらこちらで極彩色の炎の柱が立ち上る。

「段々、強く……竜神の力を引き出している……?」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)のアイセンサーが捉えているのは、極彩色の炎。次に取り込まれているはずの竜神の少女が浮かべた苦悶の表情であった。
 そこに一定の法則を見出したのだ。
 オブリビオン『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスの支配に抵抗を示すと、オブリビオンとしての力が増している。それはあたかも宿主である竜神の少女の力を引き出しているようであった。
 同時にそれは『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスにとっては、僥倖そのものである。

「危険な箸ですが……ここまで来れば、後一歩―――!」
 機械騎士の傀儡舞(マシンナイツ・パペットダンス)。それは超常の領域まで高められた予測演算。彼の電脳が導き出す解はもはや未来予知である。
「どうか、この愚かしくも憐れな骸魂に告げてもらえますか。いらぬ世話だと、望みをしないという引導を!」
 そう、『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスのやっていることは我欲そのものである。他者を目覚めさせるという目的の裏にあるのは、己を見てほしいという我欲だけである。
 それは他者にとって、確かに利益を生み出すものであったかもしれない。
 しかし、純粋ではない。
 純粋ではない不純なものは、常に他者ととの関係に傷を落とす。円滑に互いのことを分かり合うことなどできなくなる決定的な錆を生み出す傷を。

「何を―――! 望んでいる! 彼女も! 我も! 目覚めを望んでいるのだ―――!」
 その声は骸魂『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスのものだろう。だが、その言葉とは裏腹に、竜神の少女の意識は否を突きつけるものであった。
 身体の動きに精彩を欠くのが見て取れた。抗われている。トリテレイアは距離を詰める。
 振るう大盾の一撃を受けて、『焚きつけるもの』ヴォルヴァドスの身体が傾ぐ。極彩色の炎が吹き荒れ、トリテレイアの装甲を溶かそうと荒れ狂う。

「―――私、は。此処にいる、よ―――ヴォルヴァドス」
 それが一瞬の隙にして、最大の好機であった。
 その言葉は竜神の少女の言葉であった。かつて在りし竜神の少女。その意識が表出し、ヴォルヴァドスの名を呼ぶ。
 いいのだと、目覚めを望んでもいいのだと。
 けれど、こんな形では望んでいないのだと。誰かを傷つけるやり方では、何も手に入れられないと。

「意識無き女性を操るは論外ですが、強要するのもまた罪」
 刹那の瞬間、振るわれた剣の一閃が骸魂を切り払う。
 肉体を傷つけず、その身を覆う骸魂だけを斬りつける絶技。それは彼がウォーマシンだからこそできた芸当であった。
 アイセンサーが捉えたのは、最後の瞬間、瞳を閉じた竜神の少女の姿だった。霧散していく骸魂。それを見送ることもできずに、竜神の少女の少女は再び眠りに落ちていく。

 刹那の邂逅であったのかもしれない。
 もしかしたのならば、竜神の少女もまた骸魂との再会を願っていたのかも知れない。けれど、今回それは間違った形で為されようとしていた。
 間違ったやり方は、間違った結末しか産まない。
 それをトリテレイアはわかっていたからこそ、オブリビオンが消滅し、炎の消え失せた霊廟に竜神の少女を再び横たえる。
 正しき祈りがいつか彼女を目覚めさせるかもしれない。
 けれど、トリテレイアは思うのだ。

 間違った道筋を行ったのが罪だというのならば、竜神の少女が目を覚まさないのは―――。
「……それが貴方への罰です」
 霧散し、骸の海へと消えていった『焚きつけるもの』ヴォルヴァドス。かの迷いし魂に告げられた禊であったのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『妖怪メイド喫茶にようこそ!』

POW   :    周りの妖怪たちと楽しくお茶しましょ

SPD   :    わたしがメイドの何たるかお手本を見せてあげる

WIZ   :    今日はゆっくりまったりくつろぐの

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 煌々と燃え盛る極彩色の炎は消え失せ、世界に再び『夜』が戻ってきていた。
 空には星が輝き、月光が優しくカクリヨファンタズムの何処か懐かしい街並みを淡く照らしている。
 骸魂たちに飲み込まれていた妖怪達も日常を取り戻し、彼等を救ってくれた猟兵たちをおもてなししようと、夜の妖怪メイド喫茶へと案内してくれる。
 竜神の少女は再び霊廟で眠りについた。目覚めることはできないかもしれないが、それでも彼女の心には猟兵たちの祈りと願いが蓄積していることだろう。
 いつの日か再び相まみえることもあるかもしれない。
 それを願いつつも―――。

「おかえりなさいませ、ご主人さま!」
 メイド喫茶では、雪女に猫又娘、ろくろっ首が様々なメイド服に身を包み、給仕してくれる。ただ、なんというか、どことなくレトロな雰囲気もあるし、微妙に間違っているような気もする。
 妖怪達にとって猟兵は己たちの姿の見える貴重な存在。
 黙っていれば、続々と集まってきて、各々が思うメイドの奉仕をしてくることだろう。

 彼、彼女たちの間違ったメイド喫茶観を正すのも良いだろうし、そのままの妖怪達のおもてなしを堪能するのもいいだろう。
 希望するならメイド服だって貸し出してくれるし、なんだか不思議な妖怪パワーでオーダーなメイド服を着せてくれることだってするだろう。

 兎にも角にも、不思議で何処か懐かしいカクリヨファンタズムのメイド喫茶を楽しんで、次なる事件の解決への癒やしとするのだ―――!
村崎・ゆかり
ふう、カクリヨファンタズムにもメイド喫茶なんてあるのねぇ。新しい妖怪が持ち込んだのかしら?
まあいいわ。楽しませてもらいましょ。

アヤメは……今回メイドの側? いいけど、あなたのご主人様はあたしだけだからね?
分かればよろしい。

チーズケーキを1ホールと、たっぷりの緑茶をちょうだい。ミルクとお砂糖も忘れずにね。

来た来た。これを切り分けて。
アヤメ、あなたも一緒に食べなさい。一人じゃさすがに多いわ。
いいじゃない。横に突っ立てられると落ち着かないのよ。あたしの気分の問題なだけ。あなたの意見は聞いてないわ。

うん、絶妙な焼き加減。腕のいいパティシエがいるみたい。
緑茶はたっぷり甘くして。うん、ケーキによく合う。



 戦い終えた戦士には休息が必要である。
 それがどのような戦いを経てきたのだとしても、その心身に刻まれた疲労は次なる戦場へと向かうにしたとしても、一時の暇がなければならない。疲れ知らぬ戦士は強靭なのではない。
 箍が外れているだけだ。
 だからこそ、猟兵達は煌めく閃光の世界と成り果てようとしていたカクリヨファンタズムを救った後、妖怪達に大喜びで迎えられ、半ば強引に引っ張られるようにして彼等の歓待を受けるのだった。

「ふう、カクリヨファンタズムにもメイド喫茶なんてあるのねぇ。新しい妖怪が持ち込んだのかしら?」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)はユーベルコード、愛奴召喚(アイドショウカン)によって呼び出した式神のアヤメと共に妖怪達に連れられたメイド喫茶へと足を運んでいた。
 店内はネオンカラーの証明が明滅し、ミラーボールが光り輝いていたりと、区画区画で装いが違うようでった。ただ、ゆかりたちが通された一角は、なんというか、とてもバブリーな雰囲気が漂っている。
「……まあいいわ。楽しませてもらいましょ」
 考えるだけ無駄であると彼女も悟ったのだろう。妖怪達のやることなす事は、人間の常識の範疇に収まらない物が多い。ならば、楽しんだもの勝ちである。

 あら……? と周囲を見回す。傍にいた式神アヤメの姿がない。どこに、と思った瞬間、横合いから彼女の耳元に囁かれる言葉。
「おかえりなさいませ、お嬢様」
 いきなりの不意打ちに心臓が跳ねるのを自覚しつつ、声の主であるアヤメをゆかりは頭のてっぺんからつま先まで視線を下ろす。
 そこにはまごうことなきメイドとなったアヤメの姿があった。
 正統派、と言えばいいのだろうか。ロングスカートの清楚な装いのメイドとなったアヤメを見てまず最初に発した言葉は。
「アヤメは……今回メイドの側? いいけど、あなたのご主人様はあたしだけだからね?」
 一瞬紫の瞳にじぇらっと炎が揺らめいた気がした。
 他の者に給仕することなど絶対にあってはならないという確固たる意志が煌めく瞳であった。
「わかりました、ご主人さま……ふふ。ご注文はございますか?」
 そんなゆかりの態度に満足したのかアヤメは、またもや耳元でささやくようにオーダーを取ろうとする。む、とゆかりは考える素振りをしてからオーダーを口にする。
「チーズケーキを1ホールと、たっぷりの緑茶をちょうだい。ミルクとお砂糖も忘れずにね」

 周囲は様々な妖怪メイドたちで溢れかえっている。
 多種多様な姿の者がいるのも妖怪の特徴であろう。こうして見ていると、雪女や猫又娘など、確実に女性性とわかる妖怪だけではなく塗り壁などの性別不詳な妖怪もメイド服を着ているものだから、思わずお冷を吹き出しそうになる。
 そうこうしているとアヤメがホールケーキとお茶を持ってやってくる。
「来た来た。これを切り分けて……と、アヤメ、あなたも一緒に食べなさい。一人じゃさすがに多いわ」
 え、とアヤメが困惑する。
 メイド、という職業になりきっているのだろう。主人たる者の横に座るというのに抵抗があったのかも知れない。
 けれどゆかりは構うこと無くアヤメの手を引いて隣に座らせるのだ。

「いいじゃない。横に突っ立ってられると落ち着かないのよ。あたしの気分の問題なだけ。あなたの意見は聞いてないわ」
 そんなことをいいつつもごきげんな顔をしているのは隠しようがない。
 しようがないんですね、と苦笑いだけれど、微笑みながらアヤメも隣に座ってケーキを頬張る。
 酸味と甘みのバランスが絶妙である。下地のクッキー生地もしっとりとして美味しい。
「うん、絶妙な焼き加減。腕のいいパティシエがいるみたい」
 時に食べさせあったりしながら、きゃいきゃいとした雰囲気の中二人はゆっくりと息をつく。
 こうした時間は何もよりも貴重なものである。
 緑茶はたっぷり甘く、ケーキに合うのだと微笑み合う時間。それは、どんな光にも負けぬほどに眩い輝きを放つ思い出となってゆかりの心に刻まれていくだろう。

 いつの日か、この日のことを思い出して笑いあればいい。
 振り返ればそこには、いつだって世界に煌きが満ちていると、ゆかりはもう知っているのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラス・セレブライト
【女神と守人】
私は〜明厳さんと一緒に過ごすわ〜

☆ドラゴンメイド
明厳さんが〜私のメイド姿を見たいらしいから〜メイド服を着て彼とデートするわね〜
彼にはいつも信仰して貰ってるし〜先の戦いでも守ってくれたから〜代わりに私は彼の願いを何でも叶えてあげるのよ〜

明厳さんは〜こういうお洋服が好きなの〜?
呼び方もご主人様〜とか〜言った方が良いの〜?

私は人間の好きな事とか〜生活とか〜よく分からないから〜彼が願う事はぜ〜んぶしてあげるつもりよ〜。
うふふ〜私にとって彼は大切な信者で〜可愛い人間達の中でも〜特に大切な愛しい我が子みたいなものだから〜。
もちろん彼が願うなら〜恋人や奥さんみたいな事だってしてあげちゃうわよ〜


戸波・明厳
【女神と守人】
ラスとのんびりすごして、甘えようかのう。

・方針:WIZ

・めいど喫茶……昔あった社交喫茶みたいなものなのかのう。ともあれ、折角じゃからラスにお願いしてメイド服を着てもらおうかの。

・なんと、これは愛らしく美しいのう……では、ここは「あ~ん」で何かを食べさせてもらったり、膝の上に座ってもらったり、あるいは膝枕をし合ってのんびりするかの。

・ラスはわしにとって信奉する女神じゃ。彼女に出会うことでわしは救われた……願わくば、かの竜神の少女にも、あの骸魂にも救いがあらんことを。

・そしてラスは我が母にして恋人にして妻……わしはそう思ってしまっておる。思うたからには、彼女に尽くす。改めて誓おうぞ。



 生きとし生けるもの全ての間にある関係性は多種多様である。
 様々な種族が存在し、相互に関係しあっているのならば、そこに生まれる関係性もまた独特なものであろう。
 このカクリヨファンタズムにおいてもそれは顕著である。様々な妖怪達がUDCアースから幽世に移動してきた際に同じように色々な文化が流れ込んできている。
 そのひとつがメイド喫茶である。

 大仰なことを言ったが、ようは楽しければいいのである。妖怪達は基本的にそんな連中ばかりであるから、メイド喫茶と言っても店内は様々な雰囲気に塗れていると言ってよかっただろう。
 雪女や猫又娘などはメイド服を無難に着こなしているが、塗り壁や性別不詳な妖怪達までもがメイド服に身を包んでいるのだ。色々目も当てられぬ様子ではあるが、戸波・明厳(飢えし怪剣・f26720)はそれもまた風情であるかのう、などと考えていた。
 厳密に言えば気もそぞろというやつである。
「めいど喫茶……昔あった社交喫茶みたいなものなのかのう。ともあれ、折角じゃからと願い出たが……」
 彼が気持ちそわそわしているのは、共に戦ったラス・セレブライト(星と光の竜神・f28442)を待っているからである。
「明厳さんは~こういうお洋服が好きなの~?」
 その声に明厳が振り返ると、そこにいたのは竜神メイドならぬ、ドラゴンメイド!
 店内では妖怪達による着付けも行っており、ラスのスタイルにあうメイド服を見繕ってくれていたのだ。
 いつもの装いとは異なる趣。神々しいいつもの彼女の雰囲気は衰えることなく後光すら輝いて見えたことだろう。

「呼び方も御主人様~とか~言った方が良いの~?」
 小首をかしげて微笑む様子はいつものラスであるというのに、着ている服が違うだけでこれほどに違って見えるものなのだろうか。
「なんと、これは愛らしく美しいのう……」
 正直な感想を述べる明厳。
 彼にとってラスは信奉する女神である。彼女に出会うことで彼は救われたのだ。
 それは奉ずる神に捧げる感情以上のものであったかもしれない。このような関係であったのならば、かの竜神の少女も、骸魂もまた救いがあったのかもしれないと思わずにいれない。

「こほん。では、ここは『あ~ん』で何か食べさせてもらったり、膝射の飢えに座ってもらったり、あるいはあ膝枕をし合ってのんびり……」
 全部声に出ている。
 しかし、ラスは呆れること無く微笑みを絶やさない。
 彼女にとって人間の好きなこと、生活などはよくわからないことが多い。
 けれど、彼女は明厳が願うことは全部してあげたいと思うのだ。
「うふふ~なんでもしてあげちゃうわよ~」

 そこから二人のついた席……一区画は、それはもう甘い雰囲気が充填されたかのような様子であり、他のメイドたちは近づこうにも近づけないほどに完成された雰囲気と成っていた。
「はい、あ~ん」
 ラスの手ずから明厳はケーキやらをたべさせてもらったり、膝の上に乗ってもらったりと至れ尽くせりである。
 明厳はラスにとって大切な信者である。可愛い人間たち、と彼女は表現するが、その中でも特に大切な愛おしい我が子のようなものであるのだ。
 だからこそ、彼が願うことはなんでもしてあげたいと思う。そう、願うのならば恋人や奥さんみたいなことだってしてあげてしまいたいとさえ思うのだ。

「あ~ん……うむ。うまい。やはりラスの手ずから食べさせてもらうのは違うのう」
 至福の時である。
 膝上に感じるラスの暖かな重さと柔らかさを感じる。明厳にとってラスは奉ずる神である以上に、母であり恋人にして妻でもあると感じている。
 あらゆる感情がないまぜになった感情。
 それを愛情と呼ぶのであれば、まさしくそれであったことだろう。
 そう思ったからには彼女に尽くす。それは全身全霊をかけて行なわれるべきことである。

 改めて誓う。
 それは宣誓であり、誓約。互いの生き方は違うかも知れないが、重なる部分は道となって交わるだろう。
 これからどのようになっていくのかは神たるラスであってもわからない未来であろうし、明厳にとってもまた同様である。

 けれど、彼等の瞳に映るのは世界の輝き。様々な感情や関係に満ちている。
 その道行きを明るく照らすのは、複雑怪奇なる彼等の感情。
 ならば、見よ、世界は煌きに満ちている―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

四王天・焔
《狐御縁》メンバーで参加
SPD判定
アドリブ歓迎

■心情
妖怪メイド喫茶だー、楽しみだね。
無事にオブリビオンを倒した、自分たちへのご褒美って感じかな。
まぁ、焔はメイドの方になって、皆におもてなしする側になるけど。

■行動
和ゴスメイド服を身に纏い、皆に【料理】の技能で
カキ氷を作ってあげるね。
「サクサクの氷だよ、この暑い季節には最高のスイーツだと思うよー!」
カキ氷のシロップは、全種類かけして、虹色のかき氷を作ってみようかな。
「さぁ、皆さんお召し上がれ」

燦お姉ちゃんのオムライスも美味しそうだなぁ
「一口で良いから、ちょっと分けてくれないかな?」

後は皆で楽しく、メイド喫茶を楽しもうね。


ルルチェリア・グレイブキーパー
《狐御縁》
アドリブ歓迎

燦さんのお誘いで、妖怪メイド喫茶にお邪魔するのよ。
私は客としてゆったりくつろぐわ。

燦さん達のメイド姿が可愛いわ!
特に焔さんの和ゴスメイド姿が様になってて素敵よ!
あら、燦さんが幼い姿に?
燦“ちゃん”もとっても可愛いのよ!

燦さんのオムライス美味しそうね
え?これ油揚げ!?全然気づかなかったわ…
まさかの紅生姜で美味しくなぁれ!?
あ、チーズは沢山入れて欲しいのよ。
うん!美味しいのよ!燦ちゃん有難う!

焔さんのカキ氷は色鮮やかで綺麗!
シロップ全種がけカキ氷、一度食べてみたかったのよね
食べるのがちょっと勿体無いけど、頂きます。
冷たくてサクサクで美味しいわ!やっぱり夏にはこれよね!


四王天・燦
《狐御縁》

夜雀さん、歌は良いけどそれ歌声喫茶だ
猫又さん、メイド喫茶は七輪で秋刀魚は焼かない
垢舐めサービスはNG

「だー!もっと萌えキュンだろ」
手本となるべく妖狐姉妹でメイド業だ
客も呼んでる

「おかえりなさいませ御主人様あ」(*^▽^*)
ルルを お も て な し
特製オムライス(卵でなく油揚げで包む)に美味しくなぁれ×2と紅生姜で♥を描く

あれ、焔の方がウケてる?
妖怪も焔を見てる?

負けじと可愛さ狙いで三変化
五歳児に変身し上目遣いご奉仕だ
「ルルお姉ちゃん美味しい?」
特製チーズも召し上がれ
焔にも、はいあーん
妖怪達にもご奉仕
お触りNG

楽しい一夜
世界は煌きに満ちている

龍神娘も何時か来るよう妖怪達に祈りを頼むよ



 カクリヨファンタズムのメイド喫茶は大忙しである。
 普段は妖怪達が勝手気ままに運営しているのであるが、今日だけは違う。人の瞳には映らない存在、妖怪が見える猟兵達がいるのだ。
 妖怪達にとって己達を見ることの出来る猟兵は大変な人気者なる存在だ。ただ、そこにるだけで人だかりが出来てしまう。
 骸魂が世界に満ち溢れ、世界の終わりのような閃光の世界へと変わり世界の終わりを迎えかけていたというのに、もう彼等は気にした様子もなくワイワイガヤガヤと騒々しい限りだ。

 そんなメイド喫茶において忙しく動き回るのは、四王天・燦(月夜の翼・f04448)であった。
「夜雀さん、歌は良いけどそれ歌声喫茶だ。猫又さん、メイド喫茶はしちりんで秋刀魚は焼かない……垢舐めサービスはNG!」
 彼女は微妙に間違っている妖怪メイド喫茶に本来の姿であるメイド喫茶を教えようと躍起になっていた。
 妖怪達はみんなある程度適当というか、なんとかなるさと思っている節が多々見受けられた。そのせいで収拾のつかないごった煮のようなメイド喫茶へと妖怪メイド喫茶は成り果てていたのだ。

「妖怪メイド喫茶だー、楽しみだねー」
 そんな風に、四王天・焔(妖の薔薇・f04438)も思っていたのだが姉妹共々メイド服に着替えて妖怪達にメイド喫茶とは何たるやを教え込むことになってしまって大変である。
 とはいえ、焔の着替えた和ゴスメイド服は妖怪達の目にも魅力的に写ったのだろう、皆こぞって真似したがるものだから益々もって妖怪メイド喫茶は大盛況である。
 オブリビオンを無事に倒した自分たちへのご褒美だと思っていたのだが、メイドとしてもてなす側に回るのも、これはこれで楽しいのだ。
「だー! もっと萌えキュンだろ」
 姉である燦の逼迫した声が上がる。これはフォローに回ってあげないとなぁと焔は思いながらメイド喫茶を切り盛りしていく。

 そうこうしている内に彼女たち姉妹の友人であるルルチェリア・グレイブキーパー(墓守のルル・f09202)が招かれてやってきた。
 燦の連絡で誘われてやってきたルルチェリアはお客として、この妖怪メイド喫茶にお邪魔しているのだが、思っていた以上に四王天姉妹のメイド姿に喜びの声を隠せなかった。
「おかえりなさいませ御主人様あ」
 燦が早速焔と共にルルチェリアをおもてなしである。
 彼女たち二人のメイド服は姉妹ならではの装いであり、誰がどうみても立派なメイドにほかならない。
 和のテイストが入り込んでいるのもまた、高得点であろう。ルルチェリアのメイド審美眼が鋭く光る。
「燦さんたちのメイド姿が可愛いわ!」
 開口一番である。
 彼女は満面の笑みで、二人のメイド服を見れただけでも眼福であると大満足の表情。
 早速おもてなしという風に目の前には特製オムライス。しかし卵ではなく、油揚げで包んであるのだ! さらには美味しくなぁれかける2という具合に紅生姜でハートマークまで描かれており、そのおもてなしの精神は天井知らず。
「特に焔さんの和ゴスメイド姿が様になってて素敵よ!……え、これ油揚げ!?全然気が付かなかったわ……それにまさかの紅生姜で美味しくなぁれ!?」
 オムライス(油揚げ)の効果は絶大であるのだが、燦にとっては妹である焔の方がウケているというのがなんとも負けず嫌いな心を燃え上がらせてくれる。

 ルルチェリアだけでなく、他の妖怪達の視線をもかっさらっているではないか。
 そんな焔は次々と和ゴスメイド服らしくかき氷を作り出している。これからの季節には、この涼味がありがたい。
「サクサクの氷だよ、この暑い季節には最高のスイーツだと思うよー!」
 次々に手際よく出来上がっていくかき氷の山。
 器にそびえる氷の山は照明を受けてキラキラと輝いている。その様子と焔のメイド服姿に妖怪達もルルチェリアの視線も釘付けである。
 一気にシロップを全種類駆けてレインボー!
 わ、とメイド喫茶が湧き上がる。
「さあ、皆さんお召し上がれ」

 ぐぬぬ、と燦は己の姉としての意地を見せ、ユーベルコード、妖狐三変化(フォックステイル・トリオ)によって天真爛漫な五歳児へと姿を変えた燦。
 いつもとは違うギャップ。
 上目遣いのメイドによるご奉仕が炸裂する!
「ルルお姉ちゃん美味しい?」
 特性チーズをたっぷりとかけて、出来上がったオムライス(油揚げ)をはい、あーん!
「うん! 美味しいのよ! 燦ちゃん有難う!」
 効果は抜群だ。
 蕩けるような美味しさがルルチェリアのお口の中いっぱいに広がって幸せが体中を駆け巡っていく。両隣に二人のメイドを固めてもらっての、あーんのなんという贅沢さだろう。

「焔さんのかき氷は色鮮で綺麗! ……シロップ全種がけカキ氷、一度食べてみたかったのよね。食べるのがちょっともったいないけど、いただきます!」
 ルルチェリアは焔からもらったレインボーカキ氷の山にスプーンを入れる。
 もったいないと言ったけれど、それはそれ。これはこれ。憧れの全種シロップがけカキ氷はキンキンに冷えた冷たい氷が喉を通り抜けていく喉越しに悶えるように体を震わせる。
「冷たくてサクサクで美味しいわ! やっぱり夏にはこれよね!」

 そして、燦と焔はというと、特性オムライスをおねだりする焔に、はいあーん、と手ずから食べさせてあげる姿が見受けられていた。
「一口で良いからって言ったけれど、もっと欲しいって思っちゃうくらい美味しいねー」
 焔のほっぺたはホクホクである。
 そんな可愛らしい妹の姿を眺めて燦の心もホカホカしている。皆でメイド喫茶を楽しめていると感じられる想い出。
 三人にとって、この想い出はいつかきっと煌めく宝石のように眺めることができるかもしれない。
 それを思えば、この夜のメイド喫茶も捨てたものじゃない。

 だって、夜であるからこそ世界は煌きに満ちているとわかるのだから。
 そして、いつの日にかあの竜神の少女もまたメイド喫茶を楽しめたら良い。その祈りがいつか、願いとなって叶えられる日が来るだろう。

 だから、今日も、明日も、いつの日にかも。
 竜神の少女に捧げられる祈りが、彼女の開いた瞳を煌き満ちる世界で彩ってくれると信じるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
もてなしを無下には出来ないものの居心地が…
(奉仕に不慣れ)

おや?

(来店客に礼儀作法がなってないと怒る西洋妖怪がいて)

メイド喫茶はスタッフとの触れ合いやパフォーマンスの鑑賞が主目的の筈ですが…(世界知識、行ったことは無い)
本格派だと認識に齟齬があったようですね

お任せいただけますか
騎士としてご助力いたします
ああ、服は結構

大変失礼いたしました、旦那様、お嬢様
ここからは私が引き継がせて頂きます

夕食のお時間ということで、スリランカの茶葉…癖なくお食事に合うキャンディを選ばせていただきました

(接客)

いってらっしゃいませ、旦那様、お嬢様

…さて次に備えて接客マニュアルの作成に

…これは騎士で無く執事なのでは!?



 慣れないものというものは、誰にだって存在するものである。
 世界が違えば、生活様式だって違うであろう。さらに種族が異なれば、人と同じ姿をしていたとしても些細な文化の違いが争いの火種となることがある。
 それをよくしっているのが数多の世界を渡り歩く猟兵という存在である。
 彼等は世界を見た。人を見た。
 あらゆる世界の文化は多種多様であり、豊かである。
 違いを認めること、それが多様性の第一歩である。

「もてなしを無下には出来ないのも居心地が……」
 カクリヨファンタズムは閃光の世界より、元の幽世へと戻っていた。あれだけ眩しかった閃光の弾幕飛び交う世界はなくなり、今は星明りだけが世界を照らしている。
 光の少ない世界が心地よいものばかりであるとは言えないが、それでも心が安らぐはず……だったのだ。
 だが、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、ウォーマシンである。
 誰かに、何かに奉ずることはあっても奉仕されるということには不慣れであった。妖怪達は皆、己の姿が見える猟兵という存在が大変気になる。つまりは人気者なのだと。我先にとメイド喫茶のメイド妖怪達がトリテレイアを奉仕をしようと、立ち代わり入れ替わり、あれやこれやと世話を焼いてくるのだ。

 その光景自体は微笑ましいものであったのだが、慣れないものというのは、高度な電脳を持つウォーマシンであっても戸惑いの方が大きい。
 さてはてどうしたものかとタイミングを見計らっていると、メイド喫茶の一角で怒声が上がる。
「―――おや?」
 アイセンサーが、声の方向を捉え、その集音装置が怒声が飛んだ席の声を拾い上げる。
 どうやら来店した客に対して礼儀作法がなってないと怒る西洋妖怪がいたようだった。なるほど、と得心が行く。
 メイド喫茶と言えど、様々な種類がある。
 幽世においてメイド喫茶とは、そこまで厳格さを求めるものではないであろうし、雰囲気を楽しむ妖怪達にとっては礼儀作法の一から十までを完璧にこなす必要はないと思っていたのだろう。

 そこに西洋妖怪が現れれば、己の思っていた価値観と違うメイド観に怒ってしまうというのもまた理解の及ばないことではなかった。
「メイド喫茶はスタッフとの触れ合いやパフォーマンスの干渉が主目的のはずですが……」
 行ったことはないが、彼の電脳データベースにはそう記されている。どうやら西洋妖怪の思い描くメイド喫茶とは本格的なものであったのだろう。
 そこから生まれた齟齬によって生まれた諍いというのは、案外尾を引くものである。ならば、それを仲介し、調停するのまた世界を行き来する猟兵の努めであろう。

「おまかせ頂けますか。騎士としてご助力いたします……ああ、服は結構」
 戸惑い妖怪メイド達に助力を申し出るトリテレイア。
 じゃあ、メイド服を……と言われたが、サイズ合うのかという以前に男性性であるトリテレイアにメイド服は色々な倫理観やらなんやらがそれを許すわけもなく。

 す、と足を踏み出す。
 足運びは理想/模倣の騎士(イミテーション・ナイト)によって引き上げられた技能を完璧な振る舞いに寄って表現していた。
 礼儀作法、そのどれもが凍結されていたデータより解凍されたものがインストールされている。プリセットを引き出し、こなすなど機械騎士にとっては朝飯前である。
「大変失礼いたしました、旦那様、お嬢様。ここからは私が引き継がせていただきます。夕食のお時間ということで、スリランカの茶葉……癖なくお食事に合うキャンディを選ばせて頂きました……」

 そこからはトリテレイア無双である。
 ありとあらゆる礼儀作法のインストールされた電脳がはじき出すは完璧なる立ち振舞。その姿、その所作、全てが一級品である。
 彼の接客に満足した西洋妖怪たちは足取り軽く退店していく。ふぅ、と一息つくよより前に彼は次なる問題に向けて接客マニュアルを用意しようとして、ふと思い至った。
「……これは騎士ではなく執事なのでは!?」
 そこに気がついてしまったか。
 電脳に衝撃が走ったようであった。騎士のつもりで接客していたつもりが、いつのまにか執事にすり替わっていた……意図せぬエラー。だが、それは愛おしむべきエラーであることをトリテレイアはまだ知らないのかも知れない。

 それこそが、世界に満ちた煌き。
 電脳の火花が見せる一時の幻想であるのかも知れない。けれど、その煌きは美しいと思えるのだけの経験をトリテレイアはすでに獲得していたのだった。

 故にトリテレイアは世界にこの言葉を送るだろう。

「見よ、世界は煌きに満ちている―――」

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月14日


挿絵イラスト