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【TST】凍凶塔の朝焼け

#キマイラフューチャー

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#キマイラフューチャー


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●地上に輝く五芒星
 キマイラフューチャーの遺跡群は非常事態に見舞われていた。
『それぞれ謂れのある五つの遺産にお参りをすれば願いが叶う』
 キマイラフューチャーの住人たちの間でそんな噂がささやかれている遺産郡、その全ての遺跡がオブリビオンに占拠されてしまったのである。
 このままでは、オブリビオンの願いが叶えられてしまうかもしれない。
 手遅れになる前に。全ての遺跡を取り戻さなくてはならない。
 グリモアは、不吉な予兆を告げていた。

 それは、旧きと新しきが共存する街に聳える白亜の巨大樹。
 それは、未曾有の災害の後に建てられた海風と共に在る塔。
 それは、極寒の地において人々を見守り続けたタワー。
 それは、長い争いの末に当時の人々が作り上げた心の支え。
 それは、人々の信仰の場であった広いステージ。

 彼らはささやかな願いを胸に、あるいは尊敬の意を込めて、それら遺産群をこう呼んだ。

 トーキョースカイスリーと。

●凍凶塔へ
「おう。待ってたぜ。最近は冷え込んできて辛い季節だな」
 納・正純は暖房の利いたグリモアベースの一室で猟兵たちを待っていた。
 人が揃ったのを確認すると、彼はさっそくと言わんばかりに作戦の概要を説明していく。
「実はな、キマイラフューチャーにあるいくつかの名所がオブリビオンに占拠されちまったんだ」
『それぞれ謂れのある五つの建造物にお参りをすると願い事が叶う』。
 それがキマイラフューチャーで現在流行っている噂の一つらしい。しかし、そんな噂がたつほどの人気な名所を放っておくオブリビオン達ではなかった、という事だ。
「五つの名所ってのは、『オエド空樹』『サツホロティービータワー』『コーベポー塔』『キョミズ・スゴイタカィステージ』、そして最後がお前らに行ってもらう『凍凶塔』だ。言葉の通り、そこそこ寒い場所らしい」
 今回オブリビオンの占拠から各名所を取り戻すべく、目的になっている場所は五つ。当然ながら、正純が送り出す『凍凶塔』以外の制圧も必要になってくるだろう。
 つまり、他の作戦に参加する猟兵たちとの中規模な協力作戦行動となる。また、五つある場所の幾つに参加してくれても構わないとのことだ。
「この五つの建物は、通称トーキョースカイスリーと呼ばれているらしい。五か所なのに何故この名前なのかは分からん。オブリビオンを倒したら、せっかくだし凍凶塔で観光でもしていったらどうだ? 肌寒いとは思うが、きっと眺めは抜群だと思うぜ」
 それじゃあ、と正純は説明を終えると、猟兵たちの健闘を祈ると伝えて締めくくった。
 いざゆかん、凍凶塔!


ボンジュール太郎
 お世話になっております。
 ボンジュール太郎です。
 この度は【TST】シリーズということで、総勢五名のMSによるシナリオになっております。
 他のシリーズへの参加もOKですので、気になったシナリオがあれば様々足を運んでみるのも良いかもしれませんね。
 私が担当するのは凍凶塔、相手はマグロとCDです。オブリビオンを退治した後は観光もできますので、よろしければそちらも併せて楽しんでください。

 このシナリオは1/26(土)から一気に執筆させて頂くつもりでおります。
 もしそれ以前に書ける場合はTwitterなどで連絡いたします。
 何卒、よろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『マグロ怪人ツーナー』

POW   :    止められない止まれない
【食べられるという恐怖心から無限のスタミナ】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD   :    そんなことより助けて欲しい
レベル分の1秒で【腕を振り払うことで自らに噛み付いてる猫】を発射できる。
WIZ   :    水を得たお魚
【水鉄砲】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を水浸しにし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●平和のために
 キマイラフューチャーの冠頭地域、その都心である凍凶。
 その中心部辺りになんか良い感じで赤い塔が立っている。何だアレは! 天にそびえて凍凶を見下ろしてきたその塔の名前こそ、そう、凍凶塔である!
 ビックリするほど寒いぞ! ホントに最近風が強くて寒い! 凍凶だからだ!
 トーキョースカイスリーの一つであるその電波塔は、333mもの高さを誇り、250m地点には展望台も用意されているハイパータワーだ! そこに今、二人の猟兵が平和をもたらすべく現れようとしていたーー!
柊・イルザ
5つなのにスカイスリーとはこれ如何に?
オブリビオンの願いが叶う、なんてことになって世界が滅んだりも厄介だもんねぇ
なんとか制圧しかえさないと、だね

まずは狐火でもって燃やしてみるねー
下手すると水鉄砲との撃ち合いになっちゃいそうだけども
ってこれ、水鉄砲が命中しちゃうとずぶ濡れ状態で寒くない?
……ちゃんと防水防寒の服装で行かなきゃね
結果:忍者装束に防水マント姿となる

さぁさ炎よ舞い踊れ
鮪の怪人こんがりと
猫さん達は逃げようね
っていうか、なんで褌なのさ!

等と歌うように踊るように狐火を周りに侍らせて戦います
楽しそうに戦わせてもらえると嬉しいかな


ブランシュ・シコ
【SPD】
わー、さむい。けっこうかなりさむいね。
凍凶塔で観光とかはいいかな。さむいから。
マグロの怪人て聞いたけど、マグロほとんどなくなくない?
きのせいかな。でもまあマグロ怪人だからマグロかー。

さっそくマグロの怪人走ってあばれてるから、『ダッシュ』でおいつくよ。
猫っぽい影っぽい猫っぽいを投げてくるのは『フライング』で見たから知ってる。
攻撃をよけてよけてよけて、疲れさせたらころぶんじゃないかな。
ころんだらブランシュの勝ち……じゃなかった。倒さないといけないんだ。

ころばなかったら足ひっかけたり、まわりをぐるぐる回ってビクビクさせたり、他の人に攻撃してもらお。
猫なくなって、疲れてたらすぐ倒せそうだし。



「5つなのにスカイスリーとはこれ如何に? ……ま、オブリビオンの願いが叶う、なんてことになって世界が滅んだりも厄介だもんねぇ」
「わー、さむい。けっこうかなりさむいね。凍凶塔で観光とかはいいかな。さむいから」
 柊・イルザ(妖狐の化身忍者・f12504)とブランシュ・シコ(白い人狼・f12074)はそんな凍凶塔に入り、普段は多くの来場者で賑わいを見せているチケットカウンター前に来ると、静かにそう呟いた。
 常であれば人もそこそこ入っているはずの飲食コーナーにも、キマイラたちの姿は全く見えない。返す人もいない彼女らの声は、凍凶塔の中で孤独に反響して、そして消えた。
「元は観光スポットらしいけど、こんなに静かになるもんか……なんとか制圧しかえさないと、だね」
「チョッッッッ!!! オッッッッッ!? (ちょっと待ちやがれオラァァン!??!)」
 いや、イルザの声に反応を返すヤツらが一人いた!
「デッッッッッ!?!? コッッッッッ!!!! (出来ッと思ってンのかよコラァァァ!!!!)」
「オッッッッッ!! イッッッッッ!!!! (オオオオオオオオオオオイ!! いてまうぞォォォォォォォアアアアアアアアアア!!?!?)」
 ……いや!! 何か結構な人数がいる感じだこれ! 飲食店の机の下に、お土産屋の棚の中に、チケットカウンターの天井に!
 それぞれの場所に隠れていたマグロ怪人たちが、彼女たちの登場に併せて一斉に姿を現したのだ!! そしてそれと同時にマグロ怪人たちをエサだと思っている猫たちも急に現れてきた! 急に絵面がうるさい!!
 彼らが何を言ってるかはあまり分からないが、しかし猟兵とオブリビオンが出会ったらやることは一つしかないだろう!! 舞踏(ダンス)である!! そういうことである!!

●この塔中に入ったら急にすごいうるせえ
「マグロの怪人て聞いたけど、マグロほとんどなくなくない? きのせいかな。でもまあマグロ怪人だからマグロかー」
「ウッッッッッ!! (ウッ! 痛いところを突かれたゼ……! ホントは俺達、天然じゃなくて養殖マグロなんだよな……!)」
 ブランシュは言葉の刃でマグロ怪人たちの魂のやらかいとこを的確に裂いていく!
 そして走っているマグロ怪人にぴったりと追走するではないか! オブリビオンを追いかけるネコも一緒である! ダッシュってすごい。この時マグロ怪人たちは本当にそう思った。
「ハッッッッッ!? ネッッッッッ?!! (速いじゃねェかこのガキィ! ネコもいやがるしよォ! 邪魔だコノヤロォォォォ!!)」
「猫っぽい影っぽい猫っぽいを投げてくるのは知ってるよ。もう、『フライング』で見たから」
「ニャーニャーニャー! (ギニャー! ヤメロニャー! エサの分際でオレサマたちを投げるンじゃないニャー!)」
 ブランシュのくり出すユーベルコード、【フライング】は、未来予知して対象の攻撃を予想し、回避する技! その分の寿命は代償として失われてしまうが、しかし、そのおかげで彼女は無傷であった!
 マグロ怪人たちが足元に群がってきたにゃんこたちを掴んで放つ攻撃は誰にもどこにもぶつからず、とりあえず無事だったにゃんこたちは戦闘に巻き込まれないよう逃げていく! 猫は賢いので!
「さぁさ炎よ舞い踊れ」
「バッッッッッ!! ヒッッッッッ!! (バカヤロウオメェ!! 火なんて持ちだしたらあぶねえだろうが!)」
 怪人たちは基本走っている! マグロだからだ!! 走るの止めたら息止まっちゃうからね!
 しかし、そんな怪人の動きを捉えられない彼女ではない! イルザの【フォックスファイア】は、彼女の力量分の魔力を狐火を変換、空間へと投影する炎の魔術!
「鮪の怪人こんがりと」
「マッッッッッ!! ミッッッッッ!! (負けんじゃねえ!! 水鉄砲で応戦してやればこれくらいよォ!!)」
 炎に追いかけられている彼らは常に汗だっくだくだ! それもマグロだからだ!! あと狐火熱いからね!
 彼らは水鉄砲を放って狐火を相殺しようと試みるものの、如何せん出力が違い過ぎる! イルザの狐火はちょっとした水も即座に蒸発させながら、怪人たちを焼きつくさんと迫っていくではないか!
「猫さん達は逃げようね」
「アッ……! コレマジヤバいやつだわこれ! アツいアツい! 死ぬ死ぬ! (アッ……! コレマジヤバいやつだわこれ! アツいアツい! 死ぬ死ぬ!)」
 そして猫に噛み付かれている! それもマグロだからだ!! 身が締まって美味しいんじゃないかな多分。
 しかし、イルザの炎は個別に操作が可能な魔法の火! 彼女は猫には危害を加えずに狐火でマグロ怪人たちを焼いていく! まずは一匹目! マグロ丸々一尾丸焼き一丁上りでい!!! Well-Done!
「クソがあ! キャラ付けのための口調なんてもうしてやらねえからなあ!!」
「俺らの水鉄砲ナメんじゃねェぞコラガキがアァ~~~~ン!??!」
 しかしその中の二匹が、ミディアムレア状態になりながらもイルザへ水鉄砲による反撃を行ってきた! 辺りはもう水浸しだ! さむい!
「……ちゃんと防水防寒の服装で良かったな」
 だが、既に忍者装束に防水マント姿となっていたイルザは全然寒くないのだ! すごい! 対策の賜物! 敵の攻撃にも全く怯まない彼女は歌うように踊るように、狐火を周りに侍らせて戦っていく!
 楽しそうに戦い、踊る姿はまさにバトルダンス! 彼女の周りの炎が周囲の水を蒸発させていくため、彼女は全くダメージを受けていない!
「っていうか、なんで褌なのさ!」
「うるせえ!! なんでだとォ?! そんなもん、俺らが単に変態だからだ!!」
「……っていうかヨ……! ゼエ、ハア……! 炎のガキも生意気だけどヨ、もう一人も相当……! ッてか、なんでアイツ疲れねエンだヨ!?」
「お……!俺、もう無理だワ……!」
 イルザの周りでマグロ怪人たちの攻撃(ネコ)を時にはスウェーで、時にはジャンプで、時には急加速で躱していくのはブランシュ! 彼女の無尽蔵なスタミナはマグロ怪人たちの追随を許さない!
 だんだん怪人たちの弾数(体に引っ付いているネコたちのこと)が少なくなってきたことを悟った彼女は、疲労の色が濃い怪人に急接近すると足を伸ばして敵の足にひっかけたり、敵の周りを超高速でぐるぐる回って視界を揺らしてやる!
 敵の中には、ブランシュの動きに翻弄されて転倒するものも多数出てきた!
「ころんだらブランシュの勝ち……じゃなかった。倒さないといけないんだ」
「大丈夫、それは任せて。動きが止まったなら、良い的!」
「アアアアアアアーーーーーッ!! 丸焼きになってまうやないけーーーッ!!」
「せめて!!! せめて西京焼きなどでいただいてくださる訳にはーーーッ!!」
 ブランシュが敵の動きをまとめて止め、そしてイルザが一気に敵を焼き払う!
 彼女たちの好守揃ったユーベルコードと立ち回りがあってこその作戦だ! 一階の敵を退治した二人は、展望台に向かうべく移動を開始するのであった!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エコリアチ・ヤエ
広場での戦闘か?広くて楽じゃねぇか。とりあえず猫になにかあっちゃいけねぇ。オルテナティブダブルでもう一人の自分を召喚し振り払われた猫をキャッチしてくか。
つーか、なんだ、占拠しようとして逆に猫に襲われてんのか?アホかこいつら。
隙があればファイブエレメンツソードを使って攻撃も仕掛けてく。頭の魚肉部分そげたら猫に投げて…腹壊すかな。悩ましい。
万が一敵が強いようなら戦闘用の人格に入れ替えることも考慮はしておく。
信仰の場をマグロの脂で汚すなんて、冒涜だろう。きっちり掃除してやろうぜ。


ウィーリィ・チゥシャン
怪人たちを落ち着かせて暴走を止める。

まず怪人たちの恐怖心を払拭し、「止められない止まれない」発動を阻止。
食べないから!
俺、料理人(見習い)だけど!
ほら、サンドイッチでも食べて落ち着けって。
(ウィーリィ特製のフレッシュなツナサンドを差し出し)

食べないから!
お前ら食用じゃないから!
もし止まらなかったら神火の竈の強火の炎で牽制し暴走を止める。
「我こそは料理人なりィィイイイーーーッッ!」

食べないから!
っていうかお前ら首から上しかマグロ要素ないし!
それでも止まらなければ実力行使で止めるのみ。
俺はみんなの笑顔が見たいだけなのに……!(悲痛な表情で)



●裁いて捌けマグロ怪人解体ショー
「待ちャァがれ!!! そこの褐色イケイケおじ! 絶対お前アレだろ! 裏社会系の場所に入る時に顔パスで済むタイプだろ! 知らんけど! 顔怖いこと気にしてたらごめんね!」
「そしてそこの中華料理大好きって見た目からして分かるっ子! どうせお前らも市場に出回らないような希少価値の高い部位を手に入れようと俺らの肉を欲しがってるんだろうが! アア!?」
「はァ……、またなんつーか、うるせえのが出てきたもんだな……」
 敵の首魁を目指して移動していたのはエコリアチ・ヤエ(多重人格者の戦場傭兵・f00287)。身に着けた貴金属類と刺青が見るからにいかめしく、かつ格好いい。
 そんなヤエの姿を見たマグロ怪人はもうビビりまくって走り回っている! まあ実際ぱっと見は怖いもんね。凍凶塔の床に彼らの脂汗が飛び散ってスゴいなんていうかきたない。
「大丈夫! 何をそんなに怯えているのか分からないが大丈夫だ! 俺達は君らのことを食べないから! 俺、料理人(見習い)だけど!」
「ヒエエエエエエエーーーーーッ!! 料理人だァ!?! オメーアレじゃねーかよォ! 鮮度のためなら俺らを生きたまま捌いたりするヤツだろ!!」
「しかもオメーちっちゃい子供ものど越しのためなら生きたまま丸のみとかするだろ!? 踊り食いとか言ってよォ!!」
 ただでさえビビっていたマグロ怪人たちは、ヤエと一緒に凍凶塔を登ってきたウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)の姿を見るともうなんかダメだ!
 全身から汗をまき散らしながら凍凶塔の少し開けたスペースで走り回ってはどたばたしている! スゴいみにくい!
「あー。んー、……ウィーリィ、どうする? もうやっちまうか?」
「そうだな、ちょっと待ってくれよ、ヤエ……。ほら、お前ら! サンドイッチでも食べて落ち着けって」
 まず怪人たちの恐怖心を払拭し、敵の攻撃を阻止しようとしたウィーリィが取り出したのは、そう! 彼特製のフレッシュなサンドだ!
 わずかに香ばしく香るバターと黒コショウの芳醇な香り、新鮮なタマネギの白、トマトの赤、キュウリの緑! 完璧な色合いだ! そしてメインの具材はーーーーーッ!!  「ツナ」だーーーーーッ!! ダメだーーーーーッ!!
「バカヤローーーーーッ!!」
「なんでそれで「よっしゃあこれを作る料理人ならいけるやん!」ってなると思ったんだよ!!」
「げ、ダメだったか……!」
「何でそれで行けると思ったんだ……! しゃーねえ、やるぞ!」
 凍凶塔の中央部、メインデッキに繋がる階段の前で、怪人たちは猟兵を止めるべく常時ダッシュ体制で挑みかかってきた! まあ若干私怨みたいなところはある。食うか食われるか的なね。
 階段じゃなくてエレベータで行けばって? エレベータは使えないんだ! 電力の供給が良い感じにアレしてるからね。それもこれも怪人たちが全部悪い。

「広場での戦闘なら、広くて楽じゃねぇか。ホラよ、狙ってきな!」
「ウオオオオオーーーーーーッ!! とりあえず今迫っている危機を攻撃手段に転化してやらァーーーーーッ!!」
 ファイブエレメンツソードを構えて佇むヤエに向かってマグロ怪人たちが仕掛けるのは「猫に魚の番(キャットバレット)」攻撃!
 まあつまりは寄ってきたネコを投げるというあれなんですけど。なんで攻撃手段として猫を投げてるんだろうか。分からない。不思議だね。
「ま、とりあえず猫になにかあっちゃいけねぇ。出て来な、『もう一人の俺』……!」
『おう、出番か? 今度の仕事は……って、おお? ……猫キャッチ???』
 対するヤエは【オルテナティブダブル】でもう一人の自分を召喚すると、マグロ怪人に振り払われた猫たちを二人でキャッチしていく! す、すごい!
「ウソだろなんだあの慈愛に満ち溢れた行動!!」
「あの悪魔どもをいとも容易く愛でることができるなんて……!?」
 ヤエとヤエの分身は、猫に何の衝撃も与えることなく柔らかく、かつ包み込むように猫を抱きかかえていくではないか! 逃がす寸前に喉をひと撫でしてやることも忘れない猫プロの如き所業! 猫好きと見た!
「だから落ち着けって! 食べないから! お前ら食用じゃないから!」
「うるせえ! 食用だろうが食用じゃなかろうが旨ければ人間は何でも食うだろうが!!」
「本当に食べないから! っていうかお前ら首から上しかマグロ要素ないし!」
「そうだそうだ! それに人間は強火かつバター醤油で炒めれば基本何でも食えると思ってるだろうが!! それが料理と言えるんですかね~~~???」
 その隣で食べられるという恐怖心から無限のスタミナを活かしてウィーリィの周りを肩を組みながらタップダンスして煽っていくマグロ怪人たち! ただただうぜえ! だが、マグロ怪人の料理に対する舐めた発言が彼の逆鱗に触れた!
「お前ら……そんなに見せたきゃ魅せてやるよ! 強火なんて馬鹿言うんじゃねえ! 我こそは料理人なりィィイイイーーーッッ!」
 ーー人類で最初に火を手にした人間はこう叫んだ。『我、料理人なりーー』と。キマイラフューチャー世界的に有名な「超理 is 過力」にもその記述がある。
 料理は火力だ。料理は火力だ!! 強火なんてまだ甘ェ、超強火で行け! 火を制する者が料理を制し、世界を制し、宇宙を制するのだ!!
 おやっさん! 俺分かってきたよ! すげえや! 鍋の上で野菜が踊ってやがるぜ! と。「超理 is 過力」、178頁3行からの抜粋である。
「ヒェーーーーーッ!! なんだよやっぱ料理人は恐ろしい奴じゃねえか!! こんがり焼かれちゃァーーーーーッ!!」
 ウィーリィの構える天霊大包丁から迸る業火が、マグロ怪人たちを焦がし、がっつり焼いていく! 彼の放つ強火の炎には怪人たちも形無しだ!
「つーか、なんだ、占拠しようとして逆に猫に襲われてて、しかもこんな実力で俺達にかかってきてんのか? アホかこいつら」
『言ってやんなよ、怪人のやることだ』
 その隙を見逃すヤエとその分身ではない! ウィーリィの業火が作り出した隙に、足並みを崩している怪人たちの群れに突っ込んでいくと、ヤエとその分身、一対のファイブエレメンツソードに炎の魔力がじんわりと充填していく。
 分身のヤエが右手の刃でマグロ怪人の攻撃を受け、本体がその隙に炎の刃で並みいる敵を切り崩していく! 鏡写しに刃を二本の腕で自在にくるくると回しながら繰り出される二人の乱舞!
 大きく薙ぎ、敵の攻撃を打ち払い、その後に一歩引いてからの斬り下ろし。分身と協力しながら二本の刃で敵の攻撃をいなすと、ひと呼吸ズラして敵の胴体に二度突きを放っていく!
「何だこいつらよォ……! 俺らを裁くとは神をも恐れねえ暴挙かよ……ッ!」
「でも……! これが捌かれ、調理される快感……?! 新、感、覚……!!」
 ヤエとヤエの分身が戦乱の中で妖艶にバトルダンスを踊る隣で、ウィーリィの包丁捌きも卓越した腕を見せていく! 敵の筋を流れるように斬り、慣れた手つきでうろこを落とし、堅い肉や骨は上手く叩いていくではないか!
 そして肉が柔らかくなった部分から斬り落とすと、強火で締めに入ったーーーーーッ!! マグロ怪人のぶつ切り焼き定食二人前完成だーーーーーッ!! おあがりよーーーーーッ!!
「なあウィーリィ、ちょっと余ったこの頭の魚肉部分、猫に投げても……腹壊すかな。悩ましい」
「刃を通してみた感じとしては問題なく食べられると思うから、あげたら良いんじゃないか? あ、待てよ、ネコだから……こうしたら……」
 怪人を倒したとはいえ、ウィーリィの表情は喰らい。アッ違う暗い。
 俺はみんなの笑顔が見たいだけなのに……! と悲痛な表情で言う彼の隣で、ヤエがネコにマグロの端切れをあげていた。うみゅあーみたいな「旨い」とも聞こえなくもないような気がする声を上げてそれを食べるネコたち。
 少なくともこの場にはネコの笑顔がとりもどせたので、それで良いんじゃないでしょうか。冒険は続く!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

クルル・ハンドゥーレ
ん、ここでオブリビオンに珍妙な願い叶えられてもアレやし、ちょい頑張ろか

あ、マグロがいっぱいおる!
ますますオブリビオンには渡されへんなあ
美味しそうや……
ん、鉄板は刺身とたたきかなあ
熱燗とも冷酒とも相性ええし
ステーキもエエよね!
ツナは、えっと…(警戒しつつ端末でレシピ検索)


戦闘
WIZ
UC巫覡載霊の舞

敵強化避けるため
よほど大ダメージ受けそうなん以外は
敵攻撃には見切り使わず
UCの攻撃力削ぐのんと武器受けであえて受ける
ちょ、なんかこの水、魚の匂いついてるやん
私の一張羅ー!

こちらの攻撃にはフェイント・匂い抜き血抜き期待の破魔・解体楽になりそうなマヒ攻撃をのせる

酒の肴ー!


祷・敬夢
極寒の地で戦うマグロか……なかなかカッコいいじゃないか!
とはいえ、無論俺ほどではない!
そう!この俺様のカッコよさを貴様に魅せてやろう!見惚れてトロくなるんじゃないぞ!!

プレイ・コントロールを使い、戦闘能力を上げるぞ
俺の最高のスピードにより、敵の攻撃を避けてカウンターを狙おうか

しかしツーナーがしかけてこなければ、こちらから行くぞ
お互いお見合い状態なんてカッコ悪いことにはなりたくないからな!

攻撃はそうだな……
敵は怪人ということにちなんでヒーローらしく攻撃といくか!
ビームにキック、パンチどれでもいいが、状況に応じて使おうとするか!


ヴァーリャ・スネシュコヴァ

なにい!? マグロが一人で走っているぞ!しかも一つではないぞ!? マグロがなんで走ってるかは置いといて……。
ならばやるべきことはただ一つ……俺も猫さんと一緒にマグロ怪人を追って、寿司ざんまいするぞ! 寿司パーティーだ!!

氷の【属性攻撃】で床を凍らせながら、トゥーフリ・スネグラチカで【ダッシュ】! スケートを得意とするこの俺の速さには叶うまい!
走って走って追いつきそうなくらいの距離に届いた時、【ジャンプ】+『雪娘の靴』で一網打尽だ!
マグロコラーッ! 大人しく寿司の材料になれ! 赤身中トロ大トロー!!(謎の叫び)



●目指すは最上階
「待ちな待ちな待ちな待ちな!!」
「お前ら猟兵をこの先に進ませるわけにゃいかねえぜ!! アァ~~~~~ン!??!」
 凍狂塔の展望台は二つある。その内の一つは今猟兵たちが階段で登ってきたメインデッキ。いわゆる大展望台と言われる最上階に繋がるそこは、凍狂塔の中心部だ。
 だが、猟兵たちをこの先へそうやすやすと進めさせる程マグロたちも足が遅くないのだ! 新鮮なので!
「あ、見て見てヴァーリャさん、マグロがいっぱいおる! これはオブリビオンには渡されへんなあ」
「なに!? どこだクルル……?! あっ、本当だ! マグロが一人で走っているぞ! しかも一つではないぞ!? ほら、敬夢も! あそこあそこ!」
「フッ……。極寒の地で走り、そして戦うマグロの群れか……なかなかカッコいいじゃないか!」
 走り寄って邪魔してきたマグロ怪人たちを前にして、しかし猟兵たちは焦らない!
 クルル・ハンドゥーレ(逆しまノスタルジア・f04053)、ヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)、祷・敬夢(プレイ・ゲーム・f03234) の三人はそれぞれ会話を楽しみながら余裕の構えを見せている!
「褒めるのはやめろやめろ! 照れるぜバカヤロウ! 敵とはいえこの野郎戦いにくくなるだろうがこの野郎! 確かに俺らは希少種だけども~~!? だけれども~~~!?」
「フッ……まあ実際?! この俺たちの走る流線型のフォルムと言い命がけの姿勢と言い、俺らがイケ魚なのは疑いようのない事実だがな??? 見抜かれちゃったな~~~! か~~~!」
 彼らの空気に当てられてか、マグロ怪人たちもどこか毒気を抜かれたような雰囲気を纏う! ちょっと褒められ慣れてないみたいな部分もあるのかもしれない!
 社会の荒波でその身を鍛えてきたのだろう彼らの表情は、唐突に与えられた自己肯定感に緩みまくりであった! 端的に言ってスゲえ調子に乗ってきた感があるぞ!
「ああ、お前らはカッコいい! ……とはいえ、無論俺ほどではない! そう! この俺様のカッコよさを貴様に魅せてやろう! 見惚れてトロくなるんじゃないぞ!!」
「マグロがなんで走ってるかは置いといて……敬夢の言う通り、コイツらは倒さなきゃならないんだよな? ……トロ……じゅるり」
「ん、せやねえ。ここでオブリビオンに珍妙な願い叶えられてもアレやし、ちょい頑張ろか。あ、ちょい待ってヴァーリャさん、よだれよだれ」
 そんな調子に乗ったマグロ怪人たちに向けてビシィと指を指し、更にカッコいい存在がいると宣言するのは敬夢! 彼のどこまでも自分に自信を持つその姿勢に、マグロ怪人たちは打ちのめされる!
「なんだ?! あの宇宙の果てまで自信過剰な奴は……!」
「あそこまで自信を持たれると「確かに……?」的な気分になってくるぜ……!」
 敬夢の隣で彼の発言にでてきた「トロ」という単語におおおっと反応するのはヴァーリャ。そして彼女の口元を拭ってやるクルル。彼女たちの視線は、どことなく敵を目にするものというか……!
「ヒィ、殺気……?! なんだこの圧倒的強者感?!」
「喰われる感がパねェよ……! これが弱肉強食の弱肉さんサイドの気分なのか……?!」
 そんな感じの戦いが地上150mで始まるのであった! 果たしてマグロ怪人たちはこの先生き残ることができるのだろうか!? 待て次号!

●次号です
「しっかし美味しそうや……。ん、鉄板は刺身とたたきかなあ? 熱燗とも冷酒とも相性ええし、ステーキもエエよね!」
「クルルはすごいいっぱいレシピを知ってるんだな、俺もお腹が空いてきたぞ! ならばやるべきことはただ一つ……俺も猫さんと一緒にマグロ怪人を追って、寿司ざんまいするぞ!  寿司パーティーだ!!」
「やだ……この人たち俺らを食う気満々が過ぎる……こわ……」
「バカヤローーッ! この戦い、怯んだヤツから負ける……! いや、喰われっちまうぞッ!」
 マグロ怪人と初激を交わすのはクルルであった! 彼女は敵からの攻撃を警戒しつつ、片手間に自身の持つ電子端末でおもむろに何かを検索し始める!
「え-、『ツナ』は、えっと……」
 彼女の端末に記されていく文字は、「ツナ レシピ 酒の肴」という文字列! マグロ怪人にとっては恐ろしさが過ぎる。
 だって人間でも目の前の怪物がいきなり「ニンゲン タベカタ シンセン」とか調べ始めたら怖いでしょ? 同じことだと思いますよ僕は。
「やめろやめろォ! それ以上調べさせてたまるかァ!」
 クルルのその行動に文字通り命の危機を感じたマグロ怪人は、それ以上させまいとして水鉄砲による攻撃を行っていく! しかし、敵の攻撃になにも対処しないクルルでは無い!
 彼女はユーベルコード【巫覡載霊の舞】を用いると、自身の身体を攻撃を軽減する神霊体へと変化させていたのだ! さらにはクルルの持つなぎなた、Kalmia latifoliaが自由自在に空を裂き、敵の水を斬り、大気中に雲散霧消させていく!
 花のように咲き誇るそのなぎなたの舞は、しゃくなげの香りを纏いながら敵の攻撃をはじき、散らすことで、敵の攻撃をほとんど無効化していく。これならばマグロ怪人たちの攻撃が外れた際の戦闘力向上の効果も意味を成さない! ……だが!
「ちょ、なんかこの水、魚の匂いついてるやん! 私の一張羅ー!」
「魚の匂いはどうして臭い!? それは俺らが生きてるからサ!」
 まさかであった! 敵の攻撃の魚臭さだけはどうにもできないのだ! クルルの纏うConvallaria keiskeiの香りでさえも、圧倒的な魚臭さの前には若干負けざるを得なかった! ちくしょう、何たる生臭さか!
「水鉄砲がどれだけ早くても、スケートを得意とするこの俺の速さには叶うまい! ……うわっくさっ! お前たち、すごく生臭いぞ!?」
「生きるってコトはヨ……臭いんだぜ……? さて、喰らえッ! この猫どもの群れをッ! 猫ふんじゃったらどうしよう(ネコがかわいそう)!」
 その隣で凍狂塔の展望台中を縦横無尽にスケートで走り、怪人たちの攻撃をすり抜けるように走るのはヴァーリャだ! 彼女は自身の属性魔法で自分の走る部分の身を即座に凍らせて、高速移動を実現していた!
 彼女愛用の氷のブレードを精製できる靴、トゥーフリ・スネグラチカを利用したダッシュを行う彼女に、次々と投げられていくにゃんこの群れ! かわいい~~。
 にゃーにゃーと鳴きながら丸まって飛んでくるネコたちの直撃を避けていくヴァーリャ! しかし、彼女もまたネコを凍らせないようにルート選びがなかなか大変な様子! この展望台はもう大変な有様だ!
「フッ、ツーナーよ、しかけてこなければこちらから行くぞ!」
「いや違うんだちょっと待ってくれ! なんかお前と一緒に来てる奴ら食欲が旺盛すぎるんだよ! アイツら怖いんだ!」
 ダメージこそないものの、オブリビオン主体で動いていく状況を、お見合い状態なんてカッコ悪いのはごめんだと言わんばかりに動かしていくのは敬夢!
 彼はユーベルコード【プレイ・コントロール】を使うと、自分自身をゲーム機で操ることにより、その戦闘能力を大幅に高めていく!
「遅いぞツーナー! 入力遅延でもあるのかと思うくらいになッ! →→!」
「ちくしょう、お前の相手をしてる暇は無いってのに……! なんだコイツ!? まるで歯が立たねえぞ!?」
 ものすごい勢いで敵に接近していく敬夢に、マグロ怪人たちも慌ててネコによる反撃を行う! しかし、敬夢は自身の入力する最高のスピードにより、敵の攻撃を紙一重で避けていくではないか!
 そしてネコ投げ(全体フレーム:16F)の隙を付くと、彼らの懐に入りこんで胴へ繋ぎの弱パンチ、そして怯みのデカい強パンチだ! 飛び道具見てから回避余裕でした! 
「さて、それではそろそろ〆てやろう! ヒーローらしく攻撃といくか! 俺様必殺! ウルトラッ! カッコイイッ! キィーーーック!! ↓↘→↓↘→+K!」
「ちきしょおお! 避けたいのに体が動きやしねえ! まるで硬直してるみてえだ! ……あとなんだか怪人的にこのキックは避けられえ気がする!」
 敬夢が放つ攻撃は正にFatal Counter! その状況でしか繋がらないコンボが、今繋がる!
 彼はよろけた怪人の腹に左膝の膝蹴りを喰らわせると、膝を付いた怪人の肩に右足を乗せ空中に飛びあがる! そして空中で縦に一回転した後繰り出されるのは、渾身のヒーロー跳び蹴りだーーッ!! そして爆発! 周りの怪人たちもこれには怯んだ!
「ぐわああああああ!! 怪人的にスゲえダメージーーッ!!」
「ヴァーリャ! クルル! 俺が作り出したCoolな一撃を活かす、最高にカッコイイ追撃……頼んだぞ!」
「敬夢さんが仕掛けてくれた今のうち! 酒の肴ー!」
 怪人たちが見せた大きな隙に乗じて、他の二人の猟兵も動いた! 苦し紛れに放たれる敵の水鉄砲の攻撃を、今度は見事に見切ってなぎなたでの攻撃を重ねていくのはクルル!
 踏み込みからの目の前の敵への突き、勢いを乗せたままフェイントを挟んで返す刀での隣の敵への斬り上げ! そして斬り上げの動きのままに飛び上がると、彼女は空中で身を捻りながら回転斬り下ろしを敵陣に向かって連続で放っていく!
 すでにダメージを負っているマグロ怪人たちの身体は、彼女の斬撃を喰らって何枚にも下ろされたも同然だ!
「すごいなクルル、俺もタイミングを合わすぞ! マグロコラーッ! 大人しく寿司の材料になれ! 赤身中トロ大トロー!!」
 クルルが敵陣の中で踊り、ヴァーリャがその外側から思い切り走って敵との距離に距離を詰めていく! 彼女はクルルの攻撃を喰らってまだ立っているマグロ怪人に狙いを合わせると、空高くジャンプして構えを取る!
「ちくしょぼぼぼ! かか……からだが、うごかねえべべべ!」
 マグロ怪人たちが動けないのも無理はない! クルルの刃に乗せられた破魔の力とマヒの力は、彼らの動きを止め、更には血抜きと臭み抜きの効果まで見せていた!
 であれば! で、あるのならば! ヴァーリャの【雪娘の靴】を止めるものは何もない! 彼女は展望台の中を連続で高速回転しつつ飛び上がりながら、足裏のブレードで見事マグロ怪人たちを捌いて見せた!
「チクショーー!! もう魚であることに懲り懲りだーーッ!!」
 哀れである! 怪人たちは次の瞬間には刺身へと姿を変えてしまった! 猟兵たちの完全勝利だ!

●微かなスズランの香りと共に
「うん、やっぱり! 新鮮なマグロは刺身がええねえ。臭みもないし、般若湯が欲しくなるわあ」
「こっちの寿司も美味しいぞ! 脂が乗っていてとても……ウマい! その……素晴らしいぞ!」
「凍狂塔の展望台で、暖かな陽射しを受けながら寿司を食べる俺……。フッ、どこからどう見ても決まりすぎているな!」
 マグロ怪人たちを倒し、わずかに休養を取る猟兵たち。その手にはそれぞれ刺身や寿司が握られている。箸や酢飯がどこにあったかは不明であるが、決戦前の腹ごしらえというやつだ!
 新鮮なマグロを味わう彼らの足元には、先ほどヴァーリャが踏まないようにしていたにゃんこたちの姿もある。辺りの生臭さもすでに消え去り、そこにあるのは微かなスズランの香りだけ。
 さあ、いよいよ敵のボスとの決戦だ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『シーディーメーカー』

POW   :    人生一発逆転!
レベル×1体の、【背負った負債】に1と刻印された戦闘用【ヴァーチャルキャラクター】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
SPD   :    レディースアンドジェントルマン!
予め【聴衆を盛り上げる司会進行を行う】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
WIZ   :    ジャックポット!!
【大量のカジノコイン】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を覆う程の紙幣が舞い飛び】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ネミ・ミミーニーズです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●その狙いとは
「マグロ怪人どもがやられマシタか……フン、まあ良いデショウ。どうせアイツらに期待などしていマセン。……歴史が変わっても、いつもある程度人に支持されている奴らなどニハ」
 凍狂塔の最上階。トップデッキに一人佇むオブリビオンは、忌々しげにそう呟く。
「ヤツらにはハングリーさが欠けてイタ……。だから負けた。怪人としての執念が弱すぎタノデス!」
 その口ぶりは、まるでマグロ怪人たちですら自分の同類とは思っていないかのよう。マグロという時代を問わない人気者を妬んでいるような口ぶりだった。
「私はCDメイカー。私はこの世にもう一度CD全盛期を取り戻して見セル! 手始めにこの凍狂塔を制圧し、他の名所も全て私が奪ウ! そしてCDの素晴らしさを、無能なキマイラ共に無理やりにでも押し付けてヤルのです!」
 彼の狙いは、どうやらCDをこの世にもう一度蔓延らせることらしい。時代の流れによって廃れるものは確かに存在する。
 しかし、彼の熱量は明らかに常軌を逸していた。時代の変遷とともに徐々に徐々に使われなくなっていくCDの現状が、無理やりに人々にまたCDを押し付けるとい哀しい発想を生んでしまったのだろう。
「私はCDを愛するもの。データ音源、ネットの圧縮技術や配信サービス! ダウンロードゲームにアプリゲームなんて笑わセル!! そんなモノ、CDのレトロ感には勝てナいトイウのに! 来なサイ、猟兵の皆サン! できるのなら、私にCD以外のデータ媒体の素晴らしさを教えてもらおうじゃないデスか!」
 彼はどうやら、心の底からCDを愛しているようだ。もし可能ならば、CDが廃れた理由や、ないしは他のデータ媒体やサービスが流行った理由や素晴らしさを示してやると効果的かもしれない。
 また、彼のCDへの愛に理解を示したりすることも良いだろう。もちろん、何も言わずに戦うことだって当然可能だ。
 猟兵たちは、凍狂塔の最上階へ今足を踏み入れようとしていた!
 決戦は、すぐそこまで迫っている!
エコリアチ・ヤエ
おうおう、データ音源に恨み妬みがあるのはよく分かった。だがあえて言わせてもらおう。
CDよりもレコードが至高だとな!レトロ感!わびさびの音!再生にかける一手間!どれをとってもCDには出せない究極のエンターテイメントがレコードには詰まってんだからな!

胸に下げる飾りに手を触れ、戦闘用人格へと入れ替える。
「おぬしには我のレコード愛をたっぷり味あわせてくれよう」
リザレクトオブリビオンで呼び出した死霊を敵のCDめがけ攻撃を仕掛けさせる。そちらに気をとらせてる間にファイブエレメンツソードの一本を敵の死角から飛来させ、剣を突き立ててくれよう。自身の守りは己の技術を駆使して避けるなり身を隠すなりしてやり過ごす。


パウル・ブラフマン
【SPD】
ども!MC.jailbreakいっきまーす☆

片手には何時ものハンドマイク
そして今日は特別に
ビッグスケールなラジカセを背負って登場。
オレの【パフォーマンス】で聴衆のハートを掻っ攫って
CDメイカーに対抗してみせるぜ。

おもむろに再生ボタンを押し、Lyrical murdererを発動!
Bring the beat!

レトロ感?ならこいつはどうだ
『カセットテープ』 So- Still No.1!
ラジカセとセットでHayterをSet on
ワンタッチ
Lock ONするラジオウェーブ
録音するんだ 震え声 LOVE SONG
酸いも甘いも帯に刻んだ
『カセットテープ』も愛すべき遺産

アドリブ&共闘大歓迎!


祷・敬夢
己の魅力を伝えるために戦う戦士……理解できるぞッ!
しかし、いや、ならばこそ!ここから先は解かるだろう!お互いの魅力を全力でぶつけるんだ!

貴様はカジノコインを使った攻撃をするようじゃないか!
奇遇だな、俺もだ!
一撃をカッコよく喰らわせてやるぞ!それこそが、俺様の魅力だ!
そう、俺の最大の魅力はこのカッコよさだ!
スタイリッシュかつクールに貴様の攻撃を躱し、一発コインをお見舞いしてやろう!

俺はこの顔が、身長が、性格が、心が、立ち振る舞い、ゲームセンス、戦闘、そう全てだ!全てに魅力が詰まっている!
貴様はどこに魅力がある?答えろ!俺をCDの良さで魅了しろッ!!
戦いを通して全てをぶつけてこい!俺もいくぞ!


ヴァーリャ・スネシュコヴァ

CD……CDって、何だ?(アルダワ生徒のため、電子機器についてイマイチ弱い)
お前の持ってるやつか? ちょっと貸してほしいのだ!
うーむ……あっ、ピーンと来た! こうやって指に嵌めて、くるくる回すんだな! 似たようなおもちゃ(ハンドスピナーのこと)を知ってるぞ!
違う? では何の為に?

……おおー!! これはすごいな! これを持っていればいつでも音楽が聴けてしまうのか!
これは便利だな! 俺も欲しいぞ!

……ん? しまった、戦いのことをすっかり忘れていた!
俺は敵に対して【ダッシュ】+【残像】を使用、素早く動いて残像を見せることで惑わせ、隙が出たところで『亡き花嫁の嘆き』を叩き込むぞ!


柊・イルザ
あらあらまぁまぁ、CDですって?
知っている? なぜCDが廃れたのか、何故今はデータ配信となったのか
CD音源にレトロ感? わかってないわね
CDは本当にただの記録媒体でしかないのよ、それこそメモリスティックと同じように
デジタル圧縮をかけたただそれだけの記録媒体だもの
貴方がもしもレコードを推すのなら、私も共感するんだけどな
だって、CDってのは究極にはデータを読み込ませているだけなんじゃない
その点レコードって良いわよね、圧縮まったく無しで針から音を読み込ませる究極のアナログなんだもの
CDは所詮デジタル媒体、レコードのような好事家は残らず消えるのみ、よ

と、七星七縛符で敵のユーベルコードを封じながら諭す



●音楽談義
「CD……CDって、何だ?」
「アナタ……! CDを知らナイのデスか?! オオオ、なんたるこト! ジェネレーションギャップもここまで来たンですネ……!」
 ヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)は、アルダワ生徒のために電子機器についてイマイチ弱いという面がある。
 CDという媒体自体を初めて目にしたのだろう彼女は、オブリビオンの言うCDとはいったい何だろうという顔でCDメイカーの持つ「それ」を目にした。
「お前の持ってるやつか? ちょっと貸してほしいのだ!」
「無論!! 知らナイ人にコソ教エルのが私たち怪人の本懐! これですさあ! さあさあ!」
 怪人も、何もCDを本当に知らない人物を無下に扱ったりなどという事はしない。その対象にCDという物を理解したい、という気持ちがあれば、猟兵だろうと教えることはやぶさかではないのだ。
 ヴァーリャからの申し出を断る理由もないと言わんばかりに、CDメイカーは彼女に押し付けるように手持ちのCDを渡していく。彼女は最初こそなんだこれという顔でCDを見ていたが、ややあって納得したような表情を見せた。
「うーむ……あっ、ピーンと来た! こうやって指に嵌めて、くるくる回すんだな! 似たようなおもちゃ(ハンドスピナーのこと)を知ってるぞ!」
「……ッ! チチチチチチちっがーーーーーーうッッッッッ! CDは大事ニ扱いなサイ!! ハンドスピナー?! 冗談ジャありまセン! いイですか、そもそもCDとイウ物は……!」
 だがCDの存在を全く知らない人物にとって、この光る円盤の用途がデータを保存する媒体だという発想は中々出てこないだろう。ヴァーリャがハンドスピナーと勘違いをしたのも、決して分からないことではない。
 CDメイカーは3/4キレくらいの割合で怒りながら、ヴァーリャにCDの成り立ちから説明を始めた! 長い! 長い上に分かりにくい! 面倒なオタクのそれだ! そんな様子を見かねてヴァーリャに声をかけるのは、エコリアチ・ヤエ(悪魔の呼び声・f00287)。
「違う? では何の為に? ……? なんか話が分からなくなってきたぞ?」
「ヴァーリャ、CDってのはな? 音楽を聴いたりするための電子機器なんだ。この円盤の中に、色んな情報が詰まってるんだぜ。音楽以外の情報だって詰まってたりするんだ」
「……? 分かったような、分からないような……。つまり、この円盤で音楽が聴けるのか? 本当かなあ……」
「……ハアハア……! 本当ですトモ! そこのアナタ、良く言ってくれまシタ! 完全なデータのみの音ではやはり音にも違いが出るというモノ! 音楽という娯楽を一気に普及させたCDこそが至高ナノです! というか、むシロ……!」
 オブリビオンの長いだけで初心者にはまったく優しくない独りよがりな説明を、ヤエは見事にまとめてヴァーリャに伝えていく。
 CDメイカーの説明は、確かに正確であり情報量はすさまじいものがある。だが、彼の話し方には「初心者に理解してもらおう」という気遣いがまるでなかった。どこまでも独りよがりな彼の説明は、ヴァーリャの耳には届かない。
「おうおう、データ音源に恨み妬みがあるのはよく分かった。だがあえて言わせてもらおう」
「あらあらまぁまぁ、CDですって? 知っている? なぜCDが廃れたのか、何故今はデータ配信となったのか」
「大きく出ましたネ、猟兵……! 良いでしょう! 申してみなサイ、アナタたちの思いを!」
 そんなCDメイカーの前へとそれぞれの持論を持ちながら現れるのは、ヤエと柊・イルザ(妖狐の化身忍者・f12504)の二人。
 どうやらCDメイカーの主義主張に思うところがあるようだ。彼らの目つきに迷いはなく、言うべきことは決まっていると言いたげな瞳でオブリビオンを捉える。
「ズバリ! CDよりも、レコードが至高だとな! レトロ感! わびさびの音! 再生にかける一手間! どれをとってもCDには出せない究極のエンターテイメントがレコードには詰まってんだからな!」
「わかってないわね。CDは本当にただの記録媒体でしかないのよ、それこそメモリスティックと同じように、デジタル圧縮をかけたただそれだけの記録媒体だもの。私もヤエに賛成だわ」
「……グ、ウウウウ!! こ……こ、これだから懐古厨という輩は……!! レコードから一歩進んだCDこそが至高! レコードは聞こうにも設備を揃えるのすら大変ではありマセんか! 良いでしょう! そこまで言うのならば聞き比べデす! ヴァーリャさん! アナタもしっかり聴いてイナさい!」
 懐古厨という言葉がどれだけ自分にも当てはまっているのか、CDメイカーは気付いていないようだ。自分の意見を変える気のない彼は、ユーベルコード【レディースアンドジェントルマン!】を用いて、凍狂塔の最上階に音響機器を召喚していく!
 CDはもちろん、レコードも再生できるそこで、彼はおもむろに音楽をかけ始めた! 最初はCDから! そして次にレコードもだ!
「……おおー!! ヤエ! これはすごいな! CDを持っていればいつでも音楽が聴けてしまうのか! これは便利だな! 俺も欲しいぞ!」
「フッ、そうだろう、ヴァーリャ……。ああ……、だが、やっぱ俺はこの胸に染み入るような情緒と風情のある音こそ至高に感じるな……。レコードはいいぜ……。あ、すまんエルザ、砂糖取ってもらえるか」
「はい、どうぞ。……ええ、同感。やっぱりレコードって良いわよね、圧縮まったく無しで針から音を読み込ませる究極のアナログなんだもの」
「ウ~~~ム……。やはり時代が進んだCDが至高ではありマスが、レコードの歴史を感じさせる深みのある音も悪くはないですネ……。データ音源もこう聞くと手間いらずで甲乙つけがたい……ハッ?!?!」
 CDメイカーセレクションで進んでいく音楽鑑賞タイムはどこまでも和やかで、オブリビオンがついでに召喚した紅茶を飲み、人数分のソファに腰掛ながら、彼らはしばし音楽という至高の娯楽に身をゆだねる。
 レコード……CD……レコード……CD……時にデータ音源……。うん……なんだか……やっぱ音楽って最高だな! 神だわ! ……と! そこでオブリビオンは正気に戻った! 危ないところである! 戦わずして事件解決するところだった!
「ク……!! 嫌みの無い純粋な好奇心と、深いレコード愛で私のカイジナイズ(このCD怪人のCD怪人たる要素)を弱めてクルとは……! やりマスね、猟兵! 良いでしょう! ここまで来たら、実力行使デス! アナタたちを倒して! 私はCDしかデータ媒体がない世の中をツクる!」
「……ん? しまった、戦いのことをすっかり忘れていた! そうだった、よし! ヤエ、一緒に戦うぞ!」
「応よ。頭の固いコイツには、しっかりと「お話」させてもらう必要がありそうだしな。イルザもよろしく頼むぜ」
「ええ、よろしく頼むわ。そうね、少し手荒くする必要があるみたい。意固地になったことを後悔させてあげましょう」
 たっぷりオブリビオンと意見を交わし合ったが、それでもやはりオブリビオンの主張は変わることが無いらしい! そんなこんなで戦いが始まるのであった!

●「好き」のぶつかり合い
「貴方がもしもレコードを推すのなら、私も共感するんだけどな。だって、CDってのは究極にはデータを読み込ませているだけなんじゃない」
「それを言いだしてしまえば、全ての音楽とは究極的にはただの音の羅列デス! 私はCDを愛する義務があり、そシテその愛を周りにも分からせることは、私の使命なのデス!」
 最上階。地上250mを走る風が、イルザのウェーブヘアを撫ぜていく。彼女はCDメイカーと並行して走りながら、互いに大量のカジノコインと霊札でけん制を行っていく!
 だが、CDメイカーのカジノコインは外れても彼に有利な効果を付与していく技だ。イルザは言葉で彼を挑発しながら、少しずつ少しずつ距離を詰めていく。
 まだだ、奴の手元にコインがある。まだだ、この風ではこちらの護符が飛ばされてしまいかねない。まだ、まだ、まだ——その時である! イルザの手助けをするべく走りこんだのはヴァーリャだ!
「何デスか……! あなたも、CDを否定するのですか!? コンな素晴らシイものを差し置いて、他の媒体が普及スルなんてアリえないというノニ!」
「お前が何を言ってるか、俺には全然分からないぞ!? お前が好きなものがすごいことは俺だって分かるのだ! そして、他の媒体があったからってそれがCDを貶めるようなことにはならないじゃないか!」
「……ッッッッッ! 黙レェェ!!」
 ヴァーリャはオブリビオンに反論を行いながら、残像を残すほどの速さで凍凶塔を風のように走る! 彼女の周りに降りだしたのは雪だ。ヴァーリャの魔力は氷の力! それが、凍凶塔上空の天候ですら一時的に変化させたのだ!
 素早く動いて残像を見せることでオブリビオンを惑わせ、言葉でも反論することで隙が作り出した彼女は、ユーベルコード【亡き花嫁の嘆き】を敵の頭に叩き込んでいく!
 空を舞い、地を駆け、宙で廻り、刃を届ける。ヴァーリャの行うトゥーフリ・スネグラチカの手慣れた一撃は、見る人を魅了させるような何かがあるほど洗練されていた。そして、攻撃を喰らったことで怯んだ敵へとイルザも走る!
「CDは所詮デジタル媒体、レコードのような好事家は残らず消えるのみ、よ」
「うるさいうるさいウルサイウルサイ! 私のCD愛が負けるハズがナイのです! ……グッ、小細工ヲォ!!」
 イルザの手元から投じられ、オブリビオンへと吸い込まれるように空を泳いでいくのは、彼女の護符。彼女のユーベルコード、【七星七縛符】だ!
 ユーベルコードを封じる能力のあるその護符たちは、イルザの正確な発動によって十全にその役割を全うしていく! CDメイカーはすでにユーベルコードを封じられてしまった!
 そこへ胸に下げる飾り、ドリームキャッチャーに手を触れながら現れるのはヤエだ。彼がその魔除の飾りを一撫ですると、先ほどまでの親しげな雰囲気はどこかへと消え失せ、代わりに現れたのは彼の裡に眠る戦闘用人格。
 四本のファイブエレメンツソードを宙に浮かせ、一本は指に柄をひっかけながら弄ぶようにくるくると回して勢いを付けていく。既に舞台は整っている。さあ、一説の幕を落とそう。
「聞けば聞くほど聴くに堪えぬな。おぬしには我のレコード愛をたっぷり味あわせてくれよう。よもや避けるとは言うまいな」
「レコードなンテ……レコードなんて……ク……! ク、ゥゥ、ゥ……!!」
 彼が使用するユーベルコードは、【リザレクトオブリビオン】。ヤエの手首でネクロオーブが瞬けば、それが彼らを呼ぶ証となる。死霊騎士と死霊蛇竜を呼び出した彼は、CDメイカーの持つCDに向けて彼らを一斉に放った!
 そしてCDメイカーが身構えた瞬間、ファイブエレメンツソードの一本を敵の死角から飛来させ、剣を突き立てていく! そしてまだだ! すでに敵のユーベルコードはヴァーリャとイルザが封じてくれた。
 ならば、さらにまだ! まだだ! ヤエは真正面から片手で回転させていた剣の遠心力を利用して横薙ぎを一つ放ち、もう一方の刃を取って縦に切り結ぶ! そして自身も半回転しながら空に浮かんだ二振りの剣を新たに取ると、それらもCDメイカーに突き刺していった!
「ギャァァァァァァァ!! ふざ……! フザ……ケルナ!! 猟兵如きがァ! 私と、私のCDに傷を付けるとはいい度胸デス……! なぶり殺しにしてヤルゾ、キサマラァッ!」

●「好き」の表裏
 オブリビオンと猟兵たちの戦いは、凍凶塔の最上階でなおも続く! そこに現れた新しい二人組は、お互いに自信満々という顔をして最上階に上って来るのだった!
「ども! MC.jailbreakいっきまーす☆ ……アレ、敬夢さんじゃないっすかぁ! こないだ振りっす! 改めまして、運転手のタコことMC.jailbreakことパウルでっす、今日はヨロシクオナシャス!」
「なんだ、パウルもこの塔を登っていたのか! フッ、こちらこそだ! 今回の敵は己の魅力を伝えるために戦う戦士……俺達には理解できるぞッ!」
 どこまでも陽気に笑み、同行者に声をかけるのはパウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)。そしてもう一人、自身に溢れた笑みを口元に浮かべて立つのは祷・敬夢(プレイ・ゲーム・f03234)だ!
 少し前にも同じステージに上がったことのある彼らは、軽く声をかけあうとオブリビオンに向き直る。彼の様子はどこか既に破綻しているような雰囲気を見せている。
「キキキ……! キサマらァ! 理解でキルというのなら! 私のCD愛の邪魔をシナいで頂きたいッ!! 邪魔するのなら……! シネッ!」
「それはできんな!! お前の意見は理解できる! しかし、いや、ならばこそ! ここから先は「理解る」だろう! お互いの魅力を全力でぶつけるんだ! 来いッ!」
「そういうこと! お前も怪人の端くれなら、オレらと全力でバトってみようぜ! Bring the beat!」
 電子の力を補強する能力を纏ったプレイ・エレクトロンを両手に構えるのは敬夢。そして愛用のハンドマイク、Herzを片手に構え、今日だけは特別だとビッグスケールなラジカセを背負うのはパウルだ。
 捕縛から解放され、ユーベルコードを再度使えるようになったCDメイカーは、今度は問答無用とばかりに彼らを打ち滅ぼすべく走り出した!
「貴様はカジノコインを使った攻撃をするようじゃないか! 奇遇だな、俺もだ! 見ていろ、一撃をカッコよく喰らわせてやるぞ! それこそが、俺様の魅力だ!」
「上等……、デス……! やってヤロうじゃないデスカ! 見なサイ、これがCDの魅力が生み出した財力であり暴力! 【ジャックポット!!】」
 敬夢に向けて怪人は数え切れないほどのコインが打ち出していく。時に避けられ、時に金属音を立てて散っては積もり、辺りにコインの山を築いていく! SAVAGE!
 一気に大量のコインを召喚する怪人に対し、敬夢が放てるのはあくまでも一発ずつ。しかし、彼が走りながら放つコインの速度は尋常なものではない!
 危ない時があっても敬夢は華麗にローリングで避け、避けきれないコインはバックステップしながら弾道を見切り、反対の弾道からコインを放って見事に相殺していく! 非常にスタイリッシュかつクールなアクションだ! SADISTIC!!
「これで分かるだろう! そう、俺の最大の魅力はこのカッコよさだ!」
「分からナイデス! それに、どうデモいい! 私のCD愛に比べて、キサマラの器の小さイコト! やはりレトロ感のあるCDが至高! 他はすべてゴミです! 良さを理解する必要なんてナイ、私の好きなCDサエあればそれでヨイ!」
 だが、それでもオブリビオンは怯む様子を見せない。むしろ敬夢の問いかけに対して増長したかのような勝手な意見を返すと、さらに打ち出すコインの量を増していく。
 そう、怪人にとってこの攻撃は外れても良いのだ。むしろ外れた分、自分の戦闘能力を強化できる!
「レトロ感? ならこいつはどうだ 『カセットテープ』 So- Still No.1!」
「何者だァッ! 私の目の前で、CD以外で音楽を鳴らすンジャァナイッ!!」
 しかし、猟兵もまた一人ではない。敬夢が敵の目を釘付けにしている間に、パウルもまた攻撃の準備を整えたようだ。
 一度彼がステージに上がれば、胸元のネックレス143がクールに輝き、パフォーマンスでオブリビオンの注目をを掻っ攫っていく!
 パウルはとても大きなラジカセにカセットテープをセットし、おもむろに再生ボタンを押す。そして、同時に【Lyrical murderer】を発動した!
 彼の高速ラップによる魂の攻撃が、イケてる音楽と共に始まるのであった!
「ラジカセとセットでHayterをSet on ワンタッチ Lock ONするラジオウェーブ」
「何ダ、その耳障りナ音はァッ! 要らない、イラナイ! 私の意に沿わない表現なンテ、イラナインダヨォ! 黙れェェェ!!」
 彼の繰り出すフルスロットルで捲し立てる超絶技巧RAPは、超高速連続で魂の攻撃を可能にする必殺の、いや必エモのユーベルコード!
 カセットテープの音源と共に、カセットテープの魅力を唄う彼の声は、CDメイカーの心を揺らして明らかにダメージを与えていく!
「録音するんだ 震え声 LOVE SONG 酸いも甘いも帯に刻んだ 『カセットテープ』も愛すべき遺産」
「ギ……ッ!! カセットテープ……だとォ!? そんなもの、時代の流れとともに見なくなっていっただロウが! 時代の流行についていけない文化に、意味ナンテナインダヨォ!」
 ダメージを受け、どこか歪んでいくオブリビオン。いや、もしかしたら最初から、彼の愛情は歪んでいたのかもしれない。
 彼が今言う反論が、どれだけの矛盾を生じているのか、きっと今の彼は分かっていないのだ。
「おい、オブリビオンッ! 貴様はどこに魅力がある? 答えろ! 俺をCDの良さで魅了しろッ!! 俺はこの顔が、身長が、性格が、心が、立ち振る舞い、ゲームセンス、戦闘、そう全てだ! 全てに魅力が詰まっている!
「CDの良さ……??? ソンナモノ……! 私が好きダカラに決まっテル!! 私の好きなモノは誰からも愛されナキャ意味ガナイ! そして他のモノだって、モウイラナイ! キサマラ猟兵も……早く、シネッ!」
「歪んでしまったか……。それでも良い、戦いを通して全てをぶつけてこい! 俺もいくぞ!」
 敬夢がわずかな慈悲と共に撃ちだすユーベルコードは、【クイックコイントス】。オブリビオンの思う愛情とは、いわば表と裏だ。好きになったものの裏には、必ず何か嫌いになったり、廃れていくものがある。そういう形でオブリビオンは愛を捉えている。
 だが、敬夢は違う。彼は表も裏も関係なく、魅力はただただそこにあって良いものだとオブリビオンに説いていく! 彼が放つコインは、1/19秒の速度でCDメイカーの胸へと直撃していく! 敵の心臓部、ど真ん中だ! SENSATIONAL!!!
「ガアアアアアアア……ッ! アアアアアアアアア!! 私ノ怪人とシテのアイデンティティ……! それを守り、布教サセルためなら……他のものナドイラナイ、そのハズ、なのに……ィ! ウア、アアアアアアアアアアアアアア!!」
 なぜ、私は負けているんだろう。CDメイカーの心の声は声にならずに沈殿し、いよいよ正気を失った彼は無差別に猟兵たちへと襲い掛かっていく!
 決着の時は、近い。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ウィーリィ・チゥシャン
「いや待て、お前勝手にCD終わらせるなよな!?」
別に心の底からCDを愛してる訳じゃないけど、それでも怪人の物言いには色々ツッコミたい。
「DLコンテンツが主流になっても記録媒体としてのCDはまだまだ現役だし、レトロ感とか言うならカセットテープやドーナツ盤はどうなるんだよ」
「つかお前、本当にCD愛しているのか?」

怯んだところに『属性攻撃』+『トリニティ・エンハンス』で炎属性と攻撃力強化を付与した大包丁で攻撃。
CDの弱点は、熱に弱い事だ!


クルル・ハンドゥーレ
美味しゅうございました、感謝(マグロに合掌
次のご馳走は何やろ?
…って、ご飯やないんやー

気を取り直し
へ?CDそないに廃れてるん?
えー、お手軽な物理的記録手段としては優秀や思うんやけどねえ
場所も取らへんし、ジャケットとかで色々工夫できて、それ見るんも楽しいやん
……あれ、本人が強調するほどのレトロ感とかあまり感じへん私は、もしやバ……
(愕然)

戦闘はWIZ
範囲攻撃+武器受けでコイン受け止め敵強化を避ける
UC七星七縛符で捕縛と敵UC封殺
回らへんCDは、ただのキレイな鳥避け円盤や!
あんたみたいに斜めの方に突き進んでもたCDは、媒体再生機から飛び出してもて傷だらけになってまうんがオチやー!止まり!(マヒ攻撃



●危険な愛
「いやいや、美味しゅうございました、感謝感謝。次のご馳走は何やろ? ……って、ご飯やないんやー」
「……ッ! お前も! お前モCDを見てそんな顔をスルのか! 聞かなくなっタCDを見るよウナ目で……! 残念そうな目で私を見るナァァァ!」
 マグロ怪人たち、ありがとう。拝みながら最上階に上ってくるのはクルル・ハンドゥーレ(逆しまノスタルジア・f04053)。
 その隣に立つのはウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)。どうやら途中で合流していたらしい。
 上がってきた二人を見て、怪人は先ほど他の猟兵たちにもそうしたようにもはや理性もほとんどなく襲い掛かっていく。
「へ? CDそないに廃れてるん? えー、お手軽な物理的記録手段としては優秀や思うんやけどねえ」
「いや、ほんとだよ! クルルの言うとおりだぜ! お前勝手にCD終わらせるなよな!?」
「ウルサイうるサイ! CDメイカーの私が一番CDを理解しテイルのだ! その私がCDは廃れたと言っテイル! 私がCDを救ってヤルノダアアアアア!」
 オブリビオンのいう事は最早筋が通っていないようにも聞こえる。彼が唱えるその言葉は、もはやCDを愛している人物が言うものではない。CDを守り、他の人に布教することに自分のアイデンティティを見つけ、依存してしまったものの言うことだ。
 彼はウィーリィに向け、戦闘用ヴァーチャルキャラクターを大量に召喚していく。それらは目の前の全てが憎いというような唸る声をあげては、ウィーリィを叩きつぶさんとして走り出していく。
「DLコンテンツが主流になっても記録媒体としてのCDはまだまだ現役だし、レトロ感とか言うならカセットテープやドーナツ盤はどうなるんだよ!」
「ウィーリィさんの言う通りやと私も思うけどなあ。場所も取らへんし、ジャケットとかで色々工夫できて、それ見るんも楽しいやん? ……あれ、本人が強調するほどのレトロ感とかあまり感じへん私は、もしやバ……」
「CDガマダ愛さレテいる!? CDがまダ現役?! ふっ、ふざっ、ふざケルナ! CDは廃れテイルんだ! ソンなコト……そんなコトは認めナイ! それを認めてしマッテハ、私は、ワタシはァ……ッ! 存在しナクても良くなッテしまうジャないかアアアアア!!」
 ウィーリィとクルルの言葉を受け、CDメイカーはわなわなとその身を震わせて怒りをあらわにする。彼らの言う言葉が真実だからこそ、彼女たちの言葉が本当だと分かっているからこそ、CDメイカーはその言葉に耳を塞ぐ。
 この言葉を真正面から受け、聞いてしまえば分かってしまうからだ。自分の愛が、いつしか依存へと変わっていたことに。自分よりも、猟兵たちの方がCDを愛しているというその事実に。
 彼の声にならない感情を代弁するかのように、生み出された戦闘用ヴァーチャルキャラクターはただただ叫んで、理性も無しに突撃を繰り返す。そこには合体も作戦もなかった。
「あんた、CDのことを愛してるって言うんなら……自分で廃れてるなんて、思ってても言わんほうがええんと違う?」
 クルルが愛用の薙刀であるKalmia latifoliaを振りかざし、敵の集団の中に走りこんでいく。自分の獲物のリーチに任せ腕を伸ばして突き、一度薙刀を戻して裂き、横に大きく薙ぎ払う。彼女が一度その武器を振るたびに、凍凶塔の最上階に薄紅と白の花びらが舞っては散って咲き誇る。
 あの武器が振るわれれば、誰かが倒れていく。そんなふうに感じた戦闘用ヴァーチャルキャラクターたちの脚が止まり、その隙に乗じて更にクルルは前進しては敵を倒していく。だが、敵の集団も馬鹿ではない。
「リョ、猟兵……シネェッ!!」
「後ろ……ッ」
 敵集団の中でもすこしだけ理性を残していたのだろう敵の群れが、目の前の敵を流れるように倒すクルルの背後から近付く。
 それに気付いた彼女は薙刀を振るいながら振り向き、目視で自分の背後の状況のみ確認する。そして、もう一度前に向き直って目の前の敵に猛威を振るう。まるで、後ろの敵など、心配する必要がないと言わんばかりだ。
「甘いんだよっ! こんな奴らで手を止める俺達じゃないぜ! そこだっ!」
「ギャァァァァァァァ!!」
 クルルが見たのは敵の集団だけではない。彼女の隙をリカバーするように、二振りの包丁にて敵に乱撃を放っていくウィーリィの姿も彼女は目にしたからこそ、クルルは背中を彼に預けたのだ。
 料理用とは別に分けてある包丁を構えるウィーリィが放つのは、高速の斬撃。いつも彼が料理の時に素材を斬るような速さで、敵の群れはみじん切りにされていく。
「小癪ナ……!! 使エナイキャラ共を倒シテ良い気ニならナイデくだサイ!! 【ジャックポット!!】」 
「させへんよ! あんたみたいに斜めの方に突き進んでもたCDは、媒体再生機から飛び出してもて傷だらけになってまうんがオチやー! 止まり!」
 怪人が放つユーベルコードは避けても敵の戦闘力を上げてしまう。ならばとクルルは高速で大量に飛び交うコインの嵐を、自身の薙刀で的確にさばいていく。
 彼女の操る薙刀は寸分たがわずコインたちを空に浮かしては刃で真っ二つにしていくではないか。クルルの武器受けの妙技があってこそ可能な絶技といえる。
 そして敵の攻撃をすべて無効化したまま、クルルはユーベルコードを発動する。【七星七縛符】。彼女の霊符、Nerium oleanderがCDメイカーを捕縛し、敵のユーベルコードを封じていく。
「回らへんCDは、ただのキレイな鳥避け円盤や! ウィーリィさん、やっちゃってー!」
「応! ありがとよ、クルル! つかCDメイカー! お前、本当にCD愛しているのか? 答えろ……よっ!」
「ウガアアアアアアア!! 私、ワタシハ……CDを……! CDがナイと、私は……! ワタ、シハ……CDを愛してた、つもりだったのに、なァ……」
 ウィーリィは決して心の底からCDを愛している訳ではない。それでも、怪人の物言いには色々ツッコミたいという思いが伺えた。料理を愛し、料理に真摯に向き合う彼だからこそ言える言葉が、動けないCDメイカーに突き刺さっていく。
 クルルのユーベルコードが、そして猟兵たちの言葉が、怪人の動きを止めていく。
 【トリニティ・エンハンス】で攻撃力を、そして持ち前の「料理」という炎を操る魔法を駆使し、ウィーリィは炎を纏った天霊大包丁で敵にトドメを刺していく。
「CDの弱点は、熱に弱い事だ! 怪人の三枚おろし、一丁上り!」
「アア……。私ノ、負け、……。CDを愛しているという、ただそれだけが、私ノ存在意義ダッタけれど……CDを愛する人々がこんなにいるなら、凍凶塔に願わずとも……私の願いは、……」
 ウィーリィの操る包丁が、クルルの攻撃でマヒし、動けない状態の怪人に音もなく刃を通していく。
 俎板の怪人はバラバラになりながらも、最後の最後にわずかに正気を取り戻したようだった。CDの未来は大丈夫だ。そんなことを確信したように笑うその表情は、炎で浄化されたかのようで。
 凍凶塔から暴力とオブリビオンが消えて、残ったのは夾竹桃の花びらのみであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 日常 『観光名所で遊ぼう』

POW   :    見所スポットをあれこれ回って、めいいっぱい堪能しよう

SPD   :    たくさん写真撮影や動画配信をして楽しもう

WIZ   :    名所の由来に思いを馳せながら観光してみよう

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●それから
「うわーー! お兄ちゃんたちが凍凶塔を解放してくれたんでしょ!? ありがとーー! お父さん、ほら、ほら! 置いてっちゃうよっ!」
「ああ、待ちなさい! こら、走らないで……! あっ、猟兵さんたちじゃないですか! 今回は本当にありがとうございます、おかげでうちの娘も楽しみにしてた景色が見れるって、もう大騒ぎで……!」
「本当に、猟兵さんたちには何とお礼をしたらいいのか……そうです! 今日は凍凶塔の施設で楽しんでいって下さい、お代は結構です!」
 オブリビオンを倒して観光名所に賑わいが戻っていく。凍凶塔の上から見る眺めを楽しみにしていたキマイラの子供が、猟兵たちにお礼を言っては最上階行きのエレベーターへと走りこんでいく。
 また、猟兵にお礼を言うのは子供や観光者たちだけではない。凍凶塔の従業員たちをまとめているキマイラも、君たちに心からのお礼を伝えていく。
「最上階からの景色を楽しむもよし、ご友人様と一緒に記念撮影をするも良し! 145mからの高さを楽しめるガラスウォークなんてものもありますよ! また、145m地点にはその他にもフードコートやカフェなんてものもありますから、町を見下ろしながらそこで一息ついてみるのも良いかもしれません! では、凍凶塔を心からお楽しみくださいね!」
 真冬の凍凶塔は寒い。しかし、そこに居るキマイラたちの心は温かいものがあった。君たち猟兵は凍凶塔にありそうなことであれば何をして楽しんでも良い。
 お勧めを聞いてみるのも良いだろう。オブリビオン退治の後に、観光を楽しんでいってくれ。
エコリアチ・ヤエ
WIZ
あーこの世界のこういう雰囲気はあまり得意になれねぇな。フードでも被ってやり過ごせる…かね。
はしゃぐ子供とか蹴り飛ばしたりしねぇように気をつけねぇと。
大はしゃぎしたり愛想笑いするようなタイプでもねぇしな、俺は。
しかし……新しく便利なもんは確かにいいんだが、古いもんも大事にはしてかねーとな。物ってのは代用のきくもんばかりでもねぇし……(長年大事にしてきているドリームキャッチャーに触れ思いはせる)
[アドリブなどOK]


柊・イルザ

塔が無事開放されて良かったですねー
じゃあ折角だから私もちょっと眺めを楽しんでみようかしら?
んー、ねぇそこの男の子、何か暖かいものでおすすめのものってある?
着込んでは来たけど、流石にこの高さだと寒いから温まりたいんだけど

145m地点で眺めを楽しむ為、近くを通ったキマイラの子におすすめの温かい飲み物や食べ物について教えて貰う
折角の異世界の未来のような世界、眺めをゆっくり楽しむのなら暖かくして楽しみたい
どこかカフェに入るもよし、展望スペースへ行くもよし
眺めの良い場所からこの平和な自分の生まれた世界とは違う場所を、じっくりと堪能させてもらおう
そんな報酬が貰えるなら、それは戦った甲斐あると言えよう


クルル・ハンドゥーレ
アドリブ・他の猟兵との絡み歓迎

WIZ
解放たっせーい!
うんうん、マグロとかマグロとか、キラキラ鳥避……CDとか、結構いろいろアレやったけど、解決してほんま良かったなあ
マグロの美味しさは勿論、CDメイカーのCD愛がちょい胸にキタし
ショップ巡って、ここのイメージ音楽CDなんかあったら買うて帰ろ

145m地点で外の景色を戦々恐々と眺める
空の樹、ゆうくらいやから、世界樹の似姿かなあ思て上ったけど……あかん、
戦闘中は感じんけど…高いとこ、めちゃくちゃ苦手!
え?なに、ガラスウォーク?
ちょ、ちょ、待って待って、いーやー!?
作ったヒトはどんなつもりでこれ建てたんやー!
(じたばた)


祷・敬夢
マグロ怪人、シーディーメーカー……俺は嫌いじゃなかったぞ!
やつらの意思を継ぎ、俺様のカッコよさをここらへんで布教していこうじゃないか!
既に準備は万端!俺様のキラキラブロマイドに、祷モデルのイヤーデバイス、ついでにそろそろバレンタインだからと用意しておいた俺の姿をかたどった16/1祷型チョコレートを配ろうか!
値段?俺を誰だと思っている!
天上天下全てを統べし、泣く子も黙る最強バトルゲーマー『プレイ・ゲーム』の祷・敬夢だぞ!もちろん、フリーだ!俺様のカッコイイ心意気を受け取るが良い!友達に自慢できるぞ!

ついでに配りながら、カッコイイ俺様とマッチする最高の景色を探すとでもするか



●空の樹に、笑顔の花が咲く
 凍狂塔の解放。それはすぐさま地元で話題となり、凍狂塔はいつも以上にキマイラたちで賑わっている。
 オブリビオンの暴虐から解き放たれた観光地を大切に思い、そして日々の楽しみの糧としていたキマイラたちが多かったことが伺える。
「解放たっせーい! うんうん、マグロとかマグロとか、キラキラ鳥避……CDとか、結構いろいろアレやったけど、解決してほんま良かったなあ」
「ええ、塔が無事開放されて良かったですねー。じゃあ折角だから私もちょっと眺めを楽しんでみようかしら? クルルさんはどちらに?」
「そんなら、私もイルザさんと一緒に行ってみよ! ええと、どこからの眺めが一番きれいなんかな」
 凍狂塔の解放を心から喜んでいるのは地元のキマイラたちだけではない。
 クルル・ハンドゥーレ(逆しまノスタルジア・f04053)と柊・イルザ(妖狐の化身忍者・f12504)の二人も、オブリビオンから観光地が解き放たれたことを喜んでいた。
 しかしそうは言っても凍狂塔は広い。さてどこから見て回ろうかと思案している様子の二人へ、キマイラの子供たちが声をかけていく。その顔は猟兵たちへの感謝の気持ちで溢れていた。
「なあなあ、姉ちゃんたち! 姉ちゃんたちがこの塔にいたワルもんを倒してくれたんだろ!? ありがとうな! やっぱここから見る眺めは最高だから、見れなくって寂しかったんだ!」
「俺知ってる! このかっこいいお姉ちゃんたち、りょーへーっていうんだぜ! 俺も将来ワルいヤツを倒せる大人になってみてー! 頑張ったらなれるかな?!」
「ふふ、ありがとうね。頑張ったらなれるよ、きっと。ねぇ、何かこの辺りで暖かいものでおすすめのものってある? 着込んでは来たけど、流石にこの高さだと寒いから温まりたいんだけど」
「あ、私も聞きたい! ここで眺めが一番よく見える場所ってどこにあるか教えて欲しいんやけど、どこかな? 私らここに来るの初めてなもんで、良かったらお勧めの場所教えて?」
 二人の猟兵へと送られる言葉は、紛れもなくそこに住むキマイラたちからのまっすぐな感謝の言葉。この場所に済み、この場所へ来ることを日々の楽しみとしているキマイラたちからの生の声だ。
 話を聞くに、どうやらこの子供たちは凍狂塔に何度も遊びに来ている様子。イルザたちがお勧めの観光スポットについて質問を投げかけてみると、子供たちは喜んで二人が希望する場所を教えてくれた。
「何だよお姉ちゃんたち! 凍狂塔に来たの初めてなのか!?」
「しょーがねーなー! お勧めの場所教えてやるよ!」
 そう言って駆け出していく子供たちの笑顔はまぶしい。この平和と活気は、猟兵たちの活躍によって得られた大切な結果の一つだ。ならば、今日くらいは大いに羽を伸ばしていくのも良いだろう。

「空の樹、ゆうくらいやから、世界樹の似姿かなあ思て上ったけど……。あかん、戦闘中は感じんかったけど……高いとこ、めちゃくちゃ苦手!」
「ふふふ……甘いぜクルル姉ちゃん! 窓から外を眺めてるだなんて序の口だぜ!」
 子供たちのおすすめ地点へと足を運び、145m地点で外の景色を戦々恐々と眺めるのはクルル。
 戦闘の最中に見せた彼女の冷静沈着な猟兵としての一面はそこにはなく、あるのは親しみやすいクルル・ハンドゥーレとしての一面であった。
 既に子供たちともそれなりに打ち解けたようで、彼女は凍狂塔の眺めを満喫しているようだった。……窓から大分離れた場所から、であったが。
「クルル姉ちゃん! 見ろー! ここが凍狂塔名物、ガラスウォークだー!」
「え? なに、この見るも恐ろしい道は……?! ガラスウォーク?! ちょ、ちょ、待って待って、いーやー!?」
「早くー! この先にいろんな店もあるんだからー!」
 子供たちは高さにおびえるクルルに構わず、ずんずんと先に進んでいってしまう。猟兵たちに道案内を頼まれたということもあってか、その足取りはどこまでも軽い。
 しかし、クルルの足取りは子供たちの速度に反比例するように重い。答えは単純だ。彼女が今渡っている道は、地上145mにある全面ガラス張りの道。
 一歩進むごとに否応なしに自分の足元が、その下の景色が、そしてその高さが目に入る。高い所が苦手な彼女にとって、この場所はオブリビオンよりも強敵だった。
「あかん! あかんよこれは! これは怖すぎる! 作ったヒトはどんなつもりでこれ建てたんやー! もうこれ以上進めんよー!」
「フッフッフ……! これこそ凍狂塔の洗礼!」
「ここに来たからにはこの場所は通ってもらわないとなー! 進むにしても戻るにしても、ここで高さに慣れてもらうのだー! がんばれー! クルル姉ちゃーん!」
「ひー! 渡るも地獄、戻るも地獄やー!」
 ガラスウォークを少し進んではじたばたしながら絶叫し、三歩進んで二歩下がるを地で行くクルル。彼女の叫びは悲痛なものであったが、しかしそこに重苦しい色はない。
 こう言ったアトラクションを怖がることもまた、平時でなければできないこと。子供たちの楽しげな声が、それを証明していた。

「イルザ姉ちゃん、着いたぜ! ここが凍狂塔でいっちばんのカフェだ! ……で、このカフェで一番のお勧めの席がここ!」
「これは……テラス風のスタンドカウンターね? へえ、窓から外の景色が一望できるんだ。おしゃれじゃない」
「気に入ってもらえたなら良かったぜ! すいませーん! 猟兵のお姉さんに紅茶一つくださーい!」
 普段からよく来ているのだろう、キマイラの子供たちがイルザをエスコートしていく。彼らにとって、彼女は紛れもなくかけがえのない思い出の場所を取り戻してくれた英雄だ。
 だからこそ、彼らにとって最も凍狂塔の眺めを楽しめる場所へと彼女を連れ、そしてもてなす。この行動は、彼らなりの猟兵たちに対しての感謝の表れなのかもしれない。
「お待たせしました、猟兵さん。145mにあるカフェからの眺め、子供たちと一緒に楽しんでいって下さいね」
 きっと猟兵たちが来るのを待ってくれていたのだろう、カフェの店員たちもイルザへと最大限の感謝を込めて給仕を行っていく。
 数分も待たずに運ばれてきたその紅茶は芳醇なアップルとシナモンの香りを放ち、一口飲めば先ほどまでの戦闘で冷えていた体が温まってくるよう。わずかにはちみつで甘さも付けてあるようだ。鼻から抜けていく後味の良い甘い香りが、味覚だけでなく嗅覚も楽しませてくれる。
「あら、良い香り。それに、この席も良い眺めね。ここがあなた達のお勧めの場所?」
「そうなんだ、俺達いっつもここでそれ飲むんだぜ! ここからの眺めが一番好きだから!」
「イルザ姉ちゃんに気に入ってもらって良かった、良い場所でしょ?! 俺達、ここ大好きなんだ!」
 どこかカフェに入るもよし、展望スペースへ行くもよし。眺めの良い場所からこの平和な自分の生まれた世界とは違う場所を、じっくりと堪能させてもらおう。
 最初はそんなふうに考えていたが、なるほどこれはお勧めの場所と子供たちが言うだけのことはある。眼下に広がるキマイラフューチャーの町並みはどこまでもにぎやかで、楽しげで。
「……美味しい。それに何だか、身体も温まってくるみたいね」
 紅茶の香りが、温かさが。ここに住む人々の喜びと、猟兵たちに対する感謝の気持ちが。イルザが守った平和という物をハッキリと認識させてくれるようで。
 こんな報酬が貰えるなら、それは戦った甲斐があると言えよう。彼女はそう思ってみるのであった。

●暖かくて、賑やかな
「あ、これってここのイメージ音楽CD? メロディがキャッチーやね……! せっかくの思い出だし、買うて帰ろ。……あれ?」
 猟兵たちにとって今回の事件はマグロの美味しさは勿論、CDメイカーのCD愛も多少は胸に来るものがあったのだろう。
 何とかガラスウォークの往復に成功し、凍狂塔の下層にある様々なショップを順番に巡っているのはクルルだ。そろそろ帰ろうかと思う彼女の前に、何やら人だかりができている。
「あーーーーーッ! 兄ちゃん兄ちゃん! 俺にもくれよーー! サイン! サインも書いて!」
「僕にも! 家に飾っておくんだ、ダッセえワルもんを倒した凍狂塔のヒーローの写真! 友達に自慢してやろーーっと!」
「待て待て待て! 大丈夫だ、数はある! それに坊主、マグロ怪人、シーディーメーカー……俺は嫌いじゃなかったぞ! あいつらは決してダサいわけじゃない! 俺様がここで俺様のカッコよさを布教してるのは、やつらの意思を継いでいるからでもある! もちろん、俺様の魅力を伝えるためでもあるがな!」
 人だかりの中心にいるのは祷・敬夢(プレイ・ゲーム・f03234)。彼は自分自身が映ったキラキラ光る装飾入りのブロマイドに、祷モデルのイヤーデバイスを、なんとその日凍狂塔に来ていた子供たちに無料で配布していたのだ。
 子供たちにとって最高にカッコイイヒーローである敬夢が、あろうことか彼のブロマイドや彼特製のイヤーデバイスを配っているのだ。男子女子に限らず、子供たちは敬夢の心意気に大盛り上がりで彼を取り囲んでいる。
「敬夢さん? なんだか子供たちに大人気やねえ」
「フッ、まあな! 子供たちに人気が出るのも予想通りだ! そして、そんな子供たちを楽しませてやるのも、猟兵の中でも最高にカッコイイ俺様の務め! 子供たちよ、まだまだこんなものではないぞ!」
「何々?! まだ何かあるの敬夢のあんちゃん! ……ウオオオオオオ!! すっげええええええーー!」
 クルルが見つけた時点で、子供たちは敬夢の足元で服を引っ張ったり、それぞれが勝手に話しかけたりと、すでに子供たちは全力で彼に遊んでもらっている状態だ。
 自信に溢れた立ち振る舞いと、崩れることのない敵に対するリスペクトの姿勢。そんなカッコイイ猟兵の敬夢に子供人気が高まるのも無理のないことだろう。
 そして敬夢は子供たちを楽しませるために用意してきたのだろう大量の箱から、彼なりのプレゼンを更に発揮していく。
「これこそ! そろそろバレンタインだからと用意しておいた、俺の姿をかたどった16/1祷型チョコレートだ! さあ、欲しければちゃんと並べよ! 怪我するんじゃないぞ!」
「「「「はーーい!!!」」」」
 敬夢の心意気に触れた子供たちは、しっかりと規則正しい列を作って彼のチョコを貰っていく。
 中には値段を気にしているのか、列に加わりたくとも親の許可がいるのではないかと不安そうにしている子供も散見されたが、それを見逃す敬夢ではない。
「そこの坊主! もしかして、チョコを貰っていいのか悩んでいるのではないだろうな!」
「えっ……で、でも……僕、お金持ってないし、お母さんもあまり無駄使いしちゃダメって……」
「フッ、俺を誰だと思っている! 天上天下全てを統べし、泣く子も黙る最強バトルゲーマー『プレイ・ゲーム』の祷・敬夢だぞ!もちろん、フリーだ! 何ならそのお母さんの分も貰っていけ!」
「えっ……! 良いの!? ありがとう、猟兵のお兄さ……ううん、敬夢さん!」
 俺様のカッコイイ心意気を受け取るが良い! 友達に自慢できるぞ! と声高に嫌みではない自己表現を重ねながら、細やかな気遣いも忘れない彼の周りが活気付くのは当然のこと。
 気付けば敬夢の前には長蛇の列ができており、彼のグッズやチョコを貰おうとする子供たちが目を輝かせて待機しているではないか。
「うわあ、すごい人気やないの! 敬夢さん、私も手伝おか?」
「助かる! では、列の半分はクルルに任せるとするぞ!」
「あっ、クルル姉ちゃんだ! ねえねえ、クルル姉ちゃんのグッズはないの? それなら、あとで一緒に記念撮影しようよ!」
「それは良いアイデアだな坊主! では、俺はこの配布が終わったらカッコイイ俺様と最高にマッチする、凍狂塔の最高の景色を探すとでもするか!」
「なんだよ敬夢のあんちゃん! そう言うことなら俺達も一緒に探してやるよー!」
 寒い凍狂塔の中にあって、しかし、猟兵たちの周りは暖かい。この暖かさこそ、このにぎやかさこそ、彼らが手にした活躍の結果。
 戦いから得ることの出来た、掛け替えのない時間である。

●凍狂塔の朝焼け
「イルザねえちゃん、今度はブリオッシュサンド頼もうぜ! 何味が好き!?」
「ばか! ねえちゃんはケーキの方が絶対に好きだって! モンブランが良い?! それともチーズケーキの方?!」
「あら、慌てなくて大丈夫よ、二人とも。他のお客さんもいるんだから、少しだけ静かにね?」
 イルザのいる145mにあるカフェから、賑やかで楽しげな子供たちの声が聞こえてくる。そのカフェの端の方にある席に、顔を半分ほど覆うフードを被って静かにたたずむ男の姿があった。
「あー……この世界のこういう雰囲気はあまり得意になれねぇな」
 獣の毛が装飾されているチョッキと、身体に刻んだ刺青が印象的なその姿は、エコリアチ・ヤエ(悪魔の呼び声・f00287)のものである。
 彼は何となくこの世界のこういった雰囲気に不慣れであるようで、どことなく所在なさげにしながら、カフェの静かな席にて紅茶を嗜んでいた。
 フードを被ってやり過ごしているのは、この喧騒の中ではしゃぐ子供などを蹴り飛ばしたりしねぇようにと彼が人一倍気を付けているため。
 このお祭り騒ぎの中では、走ってきた子供が彼にぶつかってしまう、などという事態も考えられる。筋骨隆々な上に上背も高い彼なりの気遣いという奴なのだろう。
「大はしゃぎしたり愛想笑いするようなタイプでもねぇしな、俺は」
「お客様、紅茶のお代わりをお持ち致しました。お注ぎさせていただきます。……差し出がましい口を挟むようですが、世の中様々なお客様がいらっしゃいます。無理に楽しもうとせずともよろしいかと。他のお客様の楽しさを壊さないとするその配慮に、私感服するばかりでございます」
 誰に聞かせるでもなく一人呟いていたヤエ。そんな彼の飲んでいたカップに入っていた紅茶が少なくなってきたタイミングを見計らっていたのか、カフェのマスターが紅茶のお代わりを勧めてきた。そして、どうやら話も聞いていたらしい。
「あ? なんだ、聞かれてたのか? 注いでもらわなくても結構だぜ、悪いなマスターさん。そこに置いといてくれ」
「いえいえ、そうは参りません。これは私から猟兵の皆様への感謝の気持ちでございます。何十年もの間変わることのなかった古臭い味ではございますが、どうぞよろしければ」
 どうやら、このカフェのマスターも他の従業員たちや子供たちと同様、猟兵たちへ感謝を伝えたかった様子。
 凍狂塔が出来てからずっと、同じ店、同じ味でやってきた彼なりの自慢の紅茶を、猟兵たちへの感謝の気持ちを込めながら空いたカップに注いでいく。
 古臭いものと卑下こそすれ、彼の淹れる紅茶は伝統的であり、そしてどことなく歴史を感じさせる深い香りを放っていた。
「ふうん? そういうことなら貰っておくかね、ありがとうよ。……しかし……新しく便利なもんは確かにいいんだが、古いもんも大事にはしてかねーとな」
「はい、本当に。本当に、そう思います。新しいものには新しいなりの。古いものには古いなりの良さという物がございますから」
 そう言って、長年大事にしてきている魔除の飾り、ドリームキャッチャーに軽く触れるヤエ。いつの頃からか一撫ですると人格を簡単に入れ替えることが出来るようになっていたこの飾りは、彼にとって思い出のある品だ。
 彼の重みのあるセリフを、カフェのマスターは落ち着いて、そして大事そうに聞いていく。この場所で何十年も同じ店を構えているからこそ、ヤエの言葉に思うところがあったのだろう。
「それに、物ってのは代用のきくもんばかりでもねぇしな……」
「新しいものが古いものに勝てぬ一点があるとすれば、それは恐らく……思いを馳せるという、その一点に尽きるでしょうな。古いものの中には、時にこれでなければという代用の利かぬ物が生まれる時もございます。私にとってはこの店ですな。お客様も、そういったものを持っておられるご様子」
 ヤエの言葉をしっかりと受け止めながら、マスターは彼の言葉にハッキリと同意を返していく。古いものに込められた思いは、時に新しいものに込められた価値を凌駕することもある。だからこそ、新しいものと古いものの価値には優劣を決めることなどできないのだ。ヤエのドリームキャッチャーが、凍狂塔のカフェの中で夕焼けを浴びていた。
 きっとこの町も、この塔も、いつか古いと断じられる時が来るのだろう。しかしそれでも、この観光地に込められた思いがある限り、ここが打ちこわしになることはないはずだ。込められた思いは、積み重ねた歴史は、それだけで新しいなにかに並ぶほど魅力的なトリガーピースなのだから。
 猟兵たちが守り救ったこの場所は、きっとこれからもキマイラたちの思いを受けながらいくつもの夜と朝を越えていくのだろう。
 オブリビオンの襲撃を受け夕焼けを迎えた凍狂塔で、その危機を救った猟兵たちが思い思いの時間を過ごしていく。もうここは大丈夫だ。凍狂塔から見える朝焼けは、きっとこの町でいつまでも輝いていることだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月13日


挿絵イラスト