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つまり辞表で殴ってOKな素敵な世界ねサンキュー猟書家!

#アリスラビリンス #猟書家

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#猟書家


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 その男は一切の前触れなく、アリスラビリンスの一角に現れた。
「紳士淑女の皆々様、ご挨拶もなく押しかける無礼をどうかお許しくださいませ!」
 アポなしの割にやたらとデカい声と態度で、黒いジャケットに黒いキュロット、黒いタイツ――とにかく黒尽くめでやたらと丁寧なお辞儀を披露する男に、目の下にクマを作った黒髪ショートカットの『アリス』はぼんやりと「ああ、敬語使えるだけこいつはマシだ」と思っていた。
 アリスは疲れていた。最近アリスラビリンスに現れたばかりの新人アリスである。この世界に来る前の記憶は綺麗さっぱりないのだが、とにかく何にせよ壮絶に疲れていた。
 日課はオウガへの警戒を愉快な仲間達にお願いして、柔らかい草の生えてる場所とかもこもこのキノコとかを見つけてとにかく寝ることである。何ならチョッキとかを着た動物姿の愉快な仲間達が抱き枕になってくれたりした。みんな優しかった。
 しかし彼らの警告もなく、突如現れたのがこの黒尽くめである。
「ですがこの一介の猟書家(ビブリオマニア)の自慢の蔵書、是非是非ご覧になっていただきたい! それこそが我が本懐、例えばこの一冊――」
 ぺらぺらと喋りながら男が手に持っていた本を開いた瞬間、アリスは周囲の愉快な仲間達ごと見たこともない場所にいた。
 石造りの廊下には何だかゴテゴテとした装飾、明かり取りの窓から見える太陽には、何やら矢印と共に『2』と書いてある。ちょうど自分達の前方、廊下の伸びている方向と、矢印の向いている方角は同じようだが――?
「こっちに行けってことかな?」
「じゃないかなぁ」
「あえて反対に行ってみる?」
「でも2しかないから間違ってたらなんか怖い」
 愉快な仲間達との話し合いの末、とりあえず矢印通りに進むことにして数十歩。
「ちょっとあなた! そんなところでぼんやりしてないでちゃんとドレスにアイロンを掛けてちょうだい!」
「へっ?」
 なんか性格の悪そうなドレスの女性が現れた!
「明日は宮中での大晩餐会で」
「はぁ」
「明後日はサロンで新作スイーツを楽しむお茶会で」
「へぇ」
「明々後日はナントーカ伯爵家の初摘みワインを囲む夜会が!」
「日程のカロリーが高いですね」
「なっ!? い、今まで大人しくしていたから見逃していたものを、生意気な!」
 いらっ。
 黙って聞いているアリスの額に青筋が浮かぶ。
「私が太っているとでも言いたいの!?」
「いえ日程の話ですが」
「もういいわ! お母様に言って叱っていただくからキィィィ!!」
 青筋を浮かべたアリスよりも先にドスドス音を立てて廊下の向こうに去っていく女性。
「……何だったのかな」
「ねぇねぇアリスちゃん、なんか数字進んでるよー」
「あ、ほんとだ」
 ふと太陽を見上げると、数字が『9』まで進んでいる。
「割と勢いよく進むね!?」
 ――もしかして、進むと『ストーリー』も進んでる?
 はたと気がつくアリス。そういえば、猟書家とか名乗る男が本を開いたらここにいたんだっけ。
 本のタイトル……なんか、見かけたような……?
「えーっと……確か『家族じゃないから遠慮もないもん! ~継母と異母姉達ができたけど使用人扱いされてるのでいっそ辞表を叩きつけます!~』とかそんな感じ……なるほど!!」
 ごそごそとポケットを探ってみるとあった。
『辞表』とデカデカと書いてある封筒が!

「なるほど! ストーリーが進むと辞表を叩きつけてやめれるんだ! どこかの『お前の代わりはいくらでもいるんだ』って言うくせにやめようとしたら『代わりを見つけるまで退職は許さない』とか言う会社じゃないんだ! よし進もう全力で進もうこの辞表をあのいけすかないお局感ある顔に叩きつけてやる! いやっほうサンキュー猟書家ぁ!」
 廊下をスキップで進もうとするアリスに、愉快な仲間達は顔を見合わせて。
「……いいのかなこのまま進んで」
「アリスちゃんが今までで1番楽しそうだし、いいんじゃない?」
 とりあえず後を追っかけることにした。

「この『アリス』さんの推測した通り、これは猟書家(ビブリオマニア)の持っている本の中の世界。矢印通りに進めばページが進みますが、もしも戻ると現実感を失って徐々に『本の中の登場人物』になってしまいます」
 興味深いですね、と楚良・珠輝は呟いた。最近サクラミラージュで出した文庫本へとチラチラ視線を落としている。この物語にも人が入り込むことができるのか、とか考えているようだが、今回の事件とこの本は全く関係ない。
「この『アリス』さんは放っておいてもガンガン進んで行きますが、行く手にはオウガも待ち受けています。さしたる戦闘能力のない彼女では、どこかでやられてしまうでしょうし……ストーリー上の中の障害に足止めを食らう可能性もあります」

 というわけで、と珠輝はぴっと画面の1つにファンタジー風の屋敷の内部を映し出した。丁寧に(※画像はイメージです)と字幕が入れてある。
「まずは彼女に追いついて下さい。おそらく彼女は20代半ば、服装の傾向はUDCアースの日本に近いのではないかと思いますが、彼女自身が自分のプロフィールも含めたアリスラビリンスに来る前の記憶を失っています。複数の動物姿の愉快な仲間達と行動を共にしていますね」
 戦闘力は、全員合わせて1番弱い猟兵1人分に満たないレベル。
 ただし全員逃げ足は割と速く、本の中の『戦闘番地』と書かれた場所に出るオウガ相手なら何とか逃げ切れる。物語のラスボスに当たる強大なオウガ相手だと、流石に逃げ切れない可能性が高い。

「『アリス』さん達と合流し、物語を進めてオウガ達を倒し、本の最後まで到着し、アリスラビリンスに脱出、ここまでが今回の依頼です。転移する先は既に本の中、彼女の近くとなります」
 よろしくお願いします、と一礼し、珠輝はクッキーを1つ口に放り込むとそのまま転移の準備に入るのだった。


炉端侠庵
 こんにちは、「前回と割と同じノリでは?」と今になって気付いた炉端侠庵です。
 今回はアリスラビリンス、猟書家(ビブリオマニア)の本の中での冒険となります。
 なお猟書家はシナリオ本編には出てこないのでご了承ください。

 第一章は冒険、『家族じゃないから遠慮もないもん! ~継母と異母姉達ができたけど使用人扱いされてるのでいっそ辞表を叩きつけます!~』という物語から想定される感じの事件やイベントやトラブルが起きていますので、ばーんっと解決して仲間になってください!
 このシナリオの『アリス』はアリスラビリンスに来る以前の記憶はありませんが、無意識に感情が影響されたりトラウマに頭を抱えたりします。どうもだいぶブラックな環境に身を置いていたようです。
 なおトラブルの内容はプレイングに記載していただければだいたいそんな感じのことが起きます。ただし『戦闘番地』以外では戦闘にはなりません。

 第二章は『戦闘番地』でのオウガ集団戦、第三章はラスボスに当たるオウガとのボス戦となります。
 それではどうぞよろしくお願いいたします!
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第1章 冒険 『これがわたしの――辞表』

POW   :    気合や肉体で指導する。

SPD   :    速さや技量で指導する。

WIZ   :    魔法や知識で指導する。

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鈴木・志乃
ブラック企業は根絶する、イイネ?
私CFでの配信者名『ブラック』だけどな!!!


はいはいドレスのお直し? そんなにバクバク食べなきゃいーんじゃないですかねぇ……ま、私に任せて下さいな
UC発動、変装とパフォーマンス技術でここら辺はちょちょいのちょい、ですよ。これでも現役のCFの役者です、なめんじゃないですよ?
とゆーかこれオシャレじゃないですね、適当に改良させて頂きます
体型隠すんならこっちのが良いですね、はい出来上がり

まったく、で、いい加減こっちの話聞いて貰えます?
こんな人間の尊厳を踏みにじりまくったブラック労働環境、私は許しませんよ。今すぐにでも時評叩きつけてやる……
がんばりましょ、アリスさん


村崎・ゆかり
酷いタイトルの本もあったもんだわ。最近の、内容をそのままタイトルにする風潮って、要するに作品タイトルに出来るだけのキャッチーな言葉が作れないからじゃないの?
まあいいか。どうせこんな本は視界に入れないし。

じゃ、アリスのお手伝いといきましょ。
初めまして、アリス。あたしは村崎ゆかり、陰陽師。善意の押し売りに来たわ。よろしくね!

さあ、器物覚醒で掃除道具を式神にして、さっさとお掃除を終わらせましょう!
アヤメはお茶の準備よろしく。みんな、仕事は式神に任せてお茶を楽しみましょ。

継母だか義姉だかがいちゃもんつけに来たら、その時が辞表パンチの出しどころよ。用意はいい?
所詮は本の中のルール。従う必要なんてない。


アリス・セカンドカラー
お任せプレイング。お好きなように。
汝が為したいように為すがよい。
指定UCマイルールを実行すべく式神使いで六法全書を擬人化した六人組の式神六法さんを召喚し、変身した私の真の姿が公然わいせつ罪として神罰で更生施設(結界術)送りになりました……うん、私がいなくても六法さんに任せておけばオールオッケーだから大丈夫大丈夫(震え声)。
六法さんの法律知識と不義への神罰が色々解決してくれるでしょう。六法さんは柔らか頭なので対応は柔軟にしてくれるわ。

リアルでは添え状を同封して内容証明郵便で退職届けを郵送しましょう。やり方は六法さんが教えてくれます。
でもその前にオウガに辞表パンチしてスッキリしましょ♪



「ブラック企業は根絶する、イイネ?」
 はい、鈴木・志乃さん。ブラック企業は反逆です。
 実際、労働力の安価な搾取は経済の停滞につながるからね!
「まぁ私、キマイラフューチャーでの配信者名『ブラック』だけどな!」
 まーまーほらそこはそれ!
 志乃さん割と戦争のたびに、過労で沈む寸前というか沈んだ後まで戦ってる気がするけどそれもまた!
 それ!
「法を守るが正義、破るは不義。ようこそ、私の定めた法が支配する結界術の中へ♪ルールを破る悪い子には神罰よ☆」
 ぴしっと人差し指を立てるアリス・セカンドカラー。
 ちなみに法と書いてルールと読み。
 神罰と書いておしおきと読む。
 さっそく式神使いの能力で六法全書を元にした6人の式神こと『六法さん』を呼び出して、ユーベルコード『私が法☆』を執行すべく真の姿へと変身、(自分の)ルールを守り(自分にとっての)不義を正すという誓いの元に、さぁ六法さんへと指示を飛ばそうとした瞬間。

 ぴっぴー。
 軽快なホイッスルの警告音。
「すみませんその格好は公然わいせつ罪に当たりますので神罰対象となります」
「えっ私の法なんですけど!?」
「今回は私達が法(ルール)運用につきましては委託されておりますので」
「そんなぁ!」
「では更生施設へと隔離しまーす」
「ぴえん!!」
 速攻で結界術により構築されたVR式更生施設に送り込まれるアリス。
 ちなみに真の姿がどれだけやばかったのかは皆様のご想像におまかせします!
「……うん、私がいなくても六法さんに任せておけばオールオーケーだから大丈夫大丈夫」
 微妙に震え声でアリスは呟くと、早速矯正施設で大変露出の少ない服装(夏なので通気性は良好)に着替えさせられた上で机の上の作文用紙に反省文をしたためる羽目になったのであった。

 さて、そんな事件が起きている間に。
「酷いタイトルの本もあったもんだわ。;最近の、内容をそのままタイトルにする風潮って、要するに作品タイトルにできるだけのキャッチーな言葉が作れないからじゃないの?」
 村崎・ゆかりは肩を竦めた。今ちょうど入っているこの本のタイトルの話である。
 作者、また作品を提供する側にとって、作品を代表するようなタイトルを付けるよりも簡単である。そういう側面は確かにある。
 ただそれ以上に『タイトルでとりあえず読むか判断できる』という部分で、読者側に需要があったのも事実なのだろう。
 個人的にはタイトルで気になった文庫本を手にとって、表紙を開いてカバー袖に書いてあるあらすじを確認して読むか決めるのが私は好きです。
 閑話休題。
「というわけで初めまして、アリス。あたしは村崎ゆかり、陰陽師」
「えっ陰陽師ってあの安倍晴明とかの」
「だいたいそうよ」
 堂々と胸を張るゆかり。隣で頷く張らなくても豊かな式神のアヤメ。
 ちなみにいわゆる安倍晴明時代、すなわち平安時代の陰陽道から現代の陰陽師たるゆかりに至るまでは、ベースとなる宗教の変遷や発展を経たり、西洋魔術などとの技術交流があったりと、術の質も数も向上している。ある意味で東洋総合魔術みたいな部分があるのが陰陽道なので、発展の幅も広いのだ。
 そんなわけでこんなこともできる。
「急急如律令! 汝ら、我が下知に応じ、手足の如く動くべし!」
 ユーベルコード『器物覚醒』、掃除用具に式神を憑依させて勝手にお掃除をしてくれる付喪神へと変貌させる。こういう日用品に式神を宿らせ物品に合った方法で使役するというのは、西洋のウィッチクラフト、いわゆる魔女術の得意分野の1つと言えるだろう。
「すごい!」
「お掃除が勝手に進むよー」
「これぞファンタジーに燦然と輝く全自動掃除機……!」
 感動に目をきらきらさせる愉快な仲間達と『アリス』。
「ちょっとあなた、まだドレスの手入れは終わってないの!?」
 その間にドスドスと足音も荒くやってきた異母姉の手からは、志乃がドレスを取り上げていた。
「はいはいドレスのお直し? そんなにバクバク食べなきゃいーんじゃないですかね」
「あ、アンタ誰よ!?」
「大丈夫現役です」
 ちなみにキマイラフューチャーの役者として現役、である。
 とはいえ役者には不可欠な変奏、そしてパフォーマンス技術があれば、ドレスの直しなどその応用だ。
「ま、ここら辺はちょちょいのちょい、ですよ」
「あらいい腕してるわね……」
「とゆーかこの部分オシャレじゃないですね。適当に改良させて頂きますね」
「えっあっお願い」
「体型カバーするんならこっちの方が良いですね、はい出来上がり」
 針と糸を取り出してささっと縫い目の緩んだ部分を補強して、さらに首元や二の腕をあまり目立たないようにしつつ夜会服あるあるの肌出し部分は少しバックの切り込みを深くして、体型が目立ちにくい背中部分で魅せていくスタイル。
「あーらこの子の雇ったお針子かしら! 本当にいい腕ね!」
「いやそういうわけじゃないんですけどちょっと話を」
「早速侍女に着替えを頼まなきゃ!」
 どっすどっすどすどす、と振動ごと遠ざかっていく足音。溜息つく志乃。
「みんな、仕事は式神に任せてお茶を楽しみましょ。アヤメはお茶の準備よろしく」
 わかりました、と一礼し、慣れた手付きで茶器を用意し小さなお茶会の準備をするアヤメ。
「志乃さんも一緒に、ね?」
「うん……こんな人間の尊厳を踏みにじりまくったブラック労働環境、私は許しませんよ。今すぐにでも辞表叩きつけてやりたい……ありがとうねゆかりさんもアヤメさんも、アリスさんと仲間の皆さんお邪魔します……」
 疲れた顔で頷いて席につくと、アヤメの淹れた茶と甘い菓子でようやくほうと一息ついた。『アリス』や愉快な仲間達もわいわいとそれぞれの席でお茶とお菓子を楽しみ、いっときのお茶会が幕を開ける。
「ちなみに実際には添え状を同封して内容証明郵便で退職届を郵送しましょう」
「えっ直接渡さなくていいんですか!?」
 六法さんの説明に目を丸くする『アリス』。
「はい、退職の意志を2週間前に表明している場合、それを止める権限はありません」
「そうなんだ! 代わりの人も連れてこなくて大丈夫なんですか?」
「ええ、法的拘束力はないので安心して下さい」
「よかったー!」
「でもその前にオウガに辞表パンチしてスッキリしましょ♪」
 いつの間にか『アリス』の隣の席につき、優雅にお茶を啜るアリス。
 反省文は書き上げた。
「ええ、継母だか義姉だかがいちゃもんつけに来たら、その時が辞表パンチの出しどころよ。用意はいい?」
「う、うん!」
「がんばりましょ、アリスさん」
「ありがとうございます、皆さん……!」
 愉快な仲間達にはたくさん優しくしてもらったけれど。
 他の人から優しい言葉をかけられたのは久しぶりで、思わず『アリス』は涙ぐむ。

 ――折り悪く、もとい折よく!
「ちょっとあなた、今日の私の部屋の掃除はしたの!? ちゃんと隅から隅まで全部、アクセサリーの金具1つも残さず磨き上げたのかしら!?」
 飛び込んできたさっきとは別の異母姉にがたんと『アリス』は立ち上がり。
「――所詮は本の中のルール。従う必要なんてない」
 ゆかりがカップを置いて静かに頷く。
「唸れ! 使用人扱いなら辞めさせていただきまぁす! これが私の――辞表だああああ!!」
 そして『アリス』は、全身全霊の辞表パンチを異母姉の横っ面へと叩きつけたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『意地悪な三姉妹』

POW   :    長女の飽くなき食欲
【あらゆる物を貪り尽くす暴飲暴食モード】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    次女の罵詈雑言の嵐
【悪意と侮蔑に満ちた心ない悪口】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    三女の羨みの手
自身が【羨望心】を感じると、レベル×1体の【相手の物を無理矢理奪おうとする無数の腕】が召喚される。相手の物を無理矢理奪おうとする無数の腕は羨望心を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 そんなわけで一気に進んだページ数と共に。
『戦闘番地』と優雅な書体でドアプレートに書かれた部屋の中は、どう考えても優雅ではない光景でいっぱいだった。
「お、おねーさま達がいっぱいいる……!?」
 そう!
 この本の中では『アリス』の異母姉である三姉妹が『たくさん』いたのである!

「ああ、物足りない。まだ食べたりない。いっそ……」
「はぁみすぼらしい。どうしてあなたはそんなにも間抜けな顔を晒していられるのかしら?」
「あらそれちょっといい黒髪ね! ちょうだい!」
 部屋のあちこちから襲いかかって来る三姉妹。
「これ地毛だから! 地毛だから無理です!!」
 そして『アリス』はとりあえず三番目の姉(の1人)が伸ばした手から必死に逃げていた。
 むしり取られたら困るからね!

 というわけでここからしばらく続く『戦闘番地』を乗り切り駆け抜けるのが、ここからの本のページを進む方法である。
 ん? 別に倒してしまっても?
 もちろん構わないのでよろしくお願いします!
村崎・ゆかり
『戦闘番地』に入ったわね。もう茶番は沢山だし、一気に討滅しちゃいましょう。

「高速詠唱」「全力魔法」炎の「属性攻撃」「範囲攻撃」「破魔」「浄化」の不動明王火界咒で、まとめて焼き払う。

長女の攻撃の的にならないよう、その場に立ったまま符を飛ばすわ。
防御は、「全力魔法」の「オーラ防御」。

『アリス』をいじめてきた報いはしっかり受けてもらう。
……『アリス』がどう思ってたかは知らないけど。

アヤメは分身で攪乱お願いね。オウガっていっても戦闘慣れしてるわけじゃなさそうだし、何とかなるでしょ。
とどめが刺せそうなら片付けちゃって。

さて、このオウガ達が片付いたら、次のシーンは何になるのかしらね?
本当、楽しみだわ。


アリス・セカンドカラー
お任せプレイング。お好きなように。
引き続き式神六法さんがメインで。この手の話だと『アリス』ちゃんの逆ハーメンバーとして継母継姉達にざまぁする役どころだけど……逆ハーはともかく復讐ざまぁは私好みじゃないのよねぇ。
と、いうわけで神罰結界術の更生施設で身も心も驚きのシェイプアップをしていただきましょう。邯鄲之夢的に結界術の中では一晩で一生分の体験が可能だから二章中にきちんと終わるわ。
なんということでしょう! あれほど醜かった三姉妹が以下略。
やりすぎたかな?驚きのビフォーアフターってレベルじゃねぇぞ!っ感じにこれ完全に別人だわぁ、オウガとしてのアイデンティティーを失って骸の海に返っていくわね。


鈴木・志乃
アリス、ちょっと動かないで。
ちょっと全力で轢き殺すから……ねっ!!


UC発動
念動力と高速詠唱でスーパーカー、発進
敵を延々轢き殺す暴走マシンへと変化させる。
激突して破損しても良いけど、その時は大爆発起こすだろうから皆近寄っちゃだめだよ? 一応全員にオーラ防御展開しておくけどね。

あらゆる物を貪り尽くすそうだから、そこら辺の食べ物、飲物に念動力で手持ちの毒を仕込んでおくのも良いかもね。罠使いの本領発揮ってやつよ。
ブラック企業は消毒だ、炎上だ
アリスも現実に帰ってから無事に労基に訴えられると良いんだけど……

今のうちに教えてもらえるなら猟兵特権の諸々使って、裏からあれこれ手ェ回すんだけどね
はは私黒いな


鬼桐・相馬
何とか合流できそうだ。

【POW】
まずは[獄卒の金砕棒]をフルスイングし敵集団を横に[なぎ払い]アリス達を救出。
彼女達を背に[かばい]ながら戦闘する。

外側から敵集団を追い込む立ち回りをすればアリス達の背後は安全になる、それを意識しながら金砕棒で纏めて[範囲攻撃]。
暴飲暴食モードは[戦闘知識と野性の勘、視力で見切り、武器受け]する。そのまま腰を入れ[怪力]に物を言わせた[カウンター]で派手にふっとばそう。他でモード発動した敵の目標物にもなる。
頃合いを見てUC発動、一気に片を付けよう。

アリスの様子を確認し金砕棒を渡してみようか。少々重いが。
遠慮しないなら、この辞表(物理)も彼女達に叩きつけてみるか?



 意地悪な異母姉達――オウガ達の群れに向き合ったまま、鈴木・志乃は静かな声で告げる。
「アリス、ちょっと動かないで」
 その声に含まれた『圧』めいたものに、自分に向けられた感情ではないとわかっても『アリス』は思わず動きを止めた。
 あとアリス・セカンドカラーも一応止まっておいた。
「ちょっと全力で轢き殺すから……」
「えっ待って今とても物騒な言葉が」
「ねっ!」
「なぁああああ!?」
 ユーベルコード『走り屋』――極めてシンプルに、爆走ヒーローカーを武器とする攻撃技である。
 すなわち轢き飛ばす。
「飛ばしていくよ!」
 しかも思考をほぼリアルタイムで念動力に反映させることで完璧な制御を実現、敵を延々と狙って轢き殺す立派な暴走マシンにした結果がこれである。次々に響き渡る甲高い悲鳴、爆発音と共に四散する意地悪三姉妹(たくさん)。
「ひええぇ見敵必殺……」
「激突して破損しても良いけど、その時は大爆発起こすだろうから皆近寄っちゃだめだよ?」
「はひっ!」
 思わず見入っていた『アリス』を中心に、愉快な仲間達まで全員が全力で何度も頷いた。
 一応志乃が全員にオーラ防御を展開しているが、轢き飛ばされれば最低でも痛いし最悪お星様になるかもしれない。
「アヤメ、気をつけてね」
「なぜ私だけ」
「あたしはここから動かないから。アヤメは分身で攪乱お願いね」
 んーまぁ確かにという顔で、式神のアヤメは主にして恋人たる村崎・ゆかりに頷いた。何だかんだ言いつつ心配されるのは満更でもない様子で、苦無を両手に飛び出していく。
 その後ろでゆかりはさっと白紙のトランプ――彼女の『符』を取り出した。
 一枚ではない。むしろ数枚とかいうレベルではない。半デッキほどもあろうかという束を親指と人差指、中指で保持し、その唇が咒を紡ぐ。
『ノウマク サラバタタギャテイビャク――』
 そして真言を唱えつつ手首のスナップで一気にかっ飛ばした。
 符の扱いは慣れているし、それ自体にもゆかりの呪力は染み込ませてある。そして『不動明王火界咒』は強い破魔と浄化の力を持ち、不浄なる者を焼き尽くさんと絡みつく。
 念のため『アリス』達を背にして半円状に投げれば、どう散ってもオウガに当たる。オブリビオンたる彼らは不浄の塊のようなものだ、当たるそばから燃え上がる。一応志乃の暴走マシンの周囲とアヤメの向かう辺りは早めに鎮火させておいた。
「『アリス』をいじめてきた報いはしっかり受けてもらう」
 そう静かに呟いて、後方の気配をゆかりは伺った。その間にもアヤメは分身の術を使ってまとめて数体のオウガを相手取りつつ、隙あらばさっさと倒してしまっている。そして志乃の暴走マシンの気配がしたらさっとジャンプ、軌道から外れて次の敵の集団へと飛び込んでいく。
「す、すごい……! 負ける気がしない!」
「それフラグぅ!」
 感激したような『アリス』に思わずツッコミを入れる志乃の声が半ば重なる。
(……『アリス』がどう思ってたかは知らないけど)
 主人公ポジションに配されているらしい『アリス』は、けれど本の中にいる時間、すなわち彼女達にいびられてきたのは僅かな間だ。すぐに猟兵達が割って入ったのもあって、心に負った痛みは大きくはないように見える。
 ――けれど。
「さて罠使いの本領発揮、ブラック企業は消毒だ」
 志乃がせっせと念動力で『鈴蘭を活けていた水』を、飲食物を中心に長姉オウガ達の周辺へと仕込んでいく。
「ぐっふぅ!」
 鷲掴みにしたケーキをかっ食らったかと思えば次の瞬間痙攣して倒れる長姉。鈴蘭は可愛い見た目に反してその全てが強い毒を持ち、活けた水すらも毒化する。
 明らかに『毒を消す』ではない。『毒で消す』の方である。
「そしてさらに炎上だ、っと」
 同時進行で爆走ヒーローカーで次姉やら三姉やらがんがん轢き飛ばしつつ、ふと志乃も思いを馳せる。
(アリスも現実に帰ってから無事に労基に訴えられると良いんだけど……)
 おそらく『アリス』の真の修羅場は、出身世界に帰った後にあるのだろう。
 本の世界から出て、さらにアリスラビリンスにあるだろう自分の『扉』を見つけたその先に。
(今のうちに教えてもらえるなら猟兵特権の諸々使って、裏からあれこれ手ェ回すんだけどね)
 おそらく『アリス』の出身世界であるUDCアースは、猟兵達の存在が表沙汰になっているわけではないのでその影響力は限られる。とはいえ決して小さな力ではないのも事実。
 さらにいえばその力を使っての『やり方』には詳しい方だと自認している。『アリス』の記憶が失われており、アリスラビリンスに来る前の境遇の話はほぼ無意識とか勢いでしか出てこないのが1番のネックかもしれない――。
「はは、私黒いな」
 ちょっと遠い目して呟く志乃である。
 いやーブラック企業を潰すためにはそれ以上の『ブラック』が必要ってことである。
 きっと!

 さて。
「この手の話だと『アリス』ちゃんの逆ハーメンバーとして継母継姉達にざまぁする役どころだけど……逆ハーはともかく復讐ざまぁは私好みじゃないのよねぇ」
 セカンドカラーの方のアリスはそう呟いていた。周囲ではまだ六法全書の式神たる六法さんがしっかりと控えている。
 なおアリス本人が保護観察中であるという説もある。真相はおそらく六法さん達とアリスだけが知っている。
「と、いうわけで神罰結界術の更生施設で身も心も驚きのシェイプアップをしていただきましょう!」
 建築とか美容とかそっち系バラエティの顔でアリスはにっこり笑ってみせた。
「邯鄲之夢的に結果術の中では一晩で一生分の体験が可能、なので二章中にはきちんと終わります!」
 カメラ目線とメタ発言、それに真の姿まで全解放で解説役を務めるアリス。
「えっ更生施設逆戻り? 再犯? そんなぁ……」
 ユーベルコード『私が法☆』、それはルールを守り不義を正すという誓いによって、強化された真の姿に変身するという技である。
 しかし!
 六法さんはあくまで六法全書の式神なので!
 六法全書で定義されたUDCアースの日本法に従うのである!
 もはやアリスが真の姿を晒して連行されることと引き換えに六法さんがいろいろ頑張ってくれるユーベルコードに見えなくもない。
 しかし!
「あっ大変! 六法さんの引っ立てを掻い潜った三姉妹達が一気に『アリス』ちゃんを人質に取ろうと!」
「えっうわホントだ後ろにいる! 定時3分前になぜか追加の作業を持ってくる上司とか同僚みたいに!!」
 思わず『アリス』の叫んだ内容に、志乃やゆかりは涙しかけた。
 もちろんアヤメがすぐに『アリス』を庇う位置に向かおうとし、志乃が暴走ヒーローカーの進路を向け、ゆかりが再びまとめて持った符を掴む――けれど、それよりも一瞬先に。
 凄まじい重さの風切り音。
 骨を砕くような打撲音。
 そして、その一撃で開いた道を駆け抜けて。
「何とか合流できたな」
 鬼桐・相馬は普段通りの真顔で、けれど安堵したような声色でそう頷くと、後ろに回り込んでいたオウガ達から『アリス』と愉快な仲間達を守るように立ちはだかった。

 というわけで真の姿のアリスごと一纏め分のオウガ達が神罰結界ブートキャンプに連行された後。
 とりあえず志乃が片っ端から暴走マシンで轢き飛ばすフィールド、ゆかりが不動明王火界咒を束で叩きつけまとめて燃やし尽くす火の海、そして重く空気を裂く音が鳴るたびにオウガが砕け散ったり吹き飛んだりする相馬周辺と、戦場が『アリス』と愉快な仲間達を中心にだいたい3分割されていた。
 全員広範囲攻撃なので分担した方が速い。討ち漏らしはだいたい志乃の毒で散るかアヤメが後ろから掻っ捌いている。
 幸運か不幸か志乃が毒を仕込んだものに当たらずアリスに突撃してきた長姉オウガに、金砕棒を振り抜いた勢いを殺さぬまま相馬がふっと二歩、前に踏み込んだ。この手の暴走めいた動きをする敵が、速く動くものを優先して狙うというのは相馬の戦闘経験が脳で考えるより先に理解している。
 振り抜いた金砕棒を掴もうとした手がちょうど二歩分空を切る。反対の手が相馬の動きを認識し掴みかかるところを、その豪腕で引き戻した金砕棒が受け止める。あらゆるものを貪るといえど、全てが棘で覆われた武器が手に刺されば、それは。
「ギャアアアアアア!!」
 獣のような悲鳴に構わず、棘で捕えた手ごと、そのでっぷりとした身体ごと相馬はオウガを引き寄せ――フルスイングで吹き飛ばす。落下先にいた妹オウガ達を巻き込んで消し飛ぶ長姉オウガ。
 ――敵の輪が狭まっているのを感じる。今ならば相馬の前方のオウガ全て、そしてゆかりと志乃が担当している分も半数程度が射程に入る。
「すまない、カバーを頼む」
「わかったわ。アヤメ」
 相馬の呟きにゆかりが頷き、すぐさま主の意を組み呼び戻されたアヤメが相馬の守っていた一角を預かる。志乃がすっとそれを見てヒーローカーを相馬が向くのとは正反対の方向へとかっ飛ばした。
「感謝する」
 そう静かに礼を述べると、その脚力任せに相馬は地面を蹴った。
 獄卒の証たる金砕棒を振りかぶり、残ったオウガ達の中心へと飛び込み――着地の勢いと共に漆黒の金砕棒が白き炎を纏う。
「痛いぞ、覚悟してくれ」
 落下による重力と、ただ振り下ろす腕力の生む一撃――ユーベルコード『獄卒裁定』、それは何より単純な裁きであった。
 すなわち破壊する。
 天獄の豪炎にて燃やす。
 金砕棒の真下にいたオウガなどもはや痕跡すら残らなかった。周囲の地面を伝った衝撃が、続けて襲いかかる白い裁きの獄炎がオウガ達を喰らうように滅ぼしていく。あとはもう、ほぼ散り散りになった敵の掃討戦であった。

「なんということでしょう!」
 ちゃんと予告通り出てきたアリス・セカンドカラーがさっと手を差し伸べる。
「あれほど醜かった三姉妹が神罰結界術の更生施設でご覧の通り……やりすぎたかな?」
 首を傾げるアリスの横で、しかし六法さん達はこれでいいのだと満足げな顔をしていた。
 しかしもはや驚きのビフォーでアフターとかいうレベルではない。テレビ放送だったら別人を連れてきたのでは疑惑から確信になって炎上しようというレベルであった。
 神罰結界ブートキャンプ凄まじい。
 その見事なまでの大変身に醜い三姉妹としてのアイデンティティを失ったオウガ達は、さらさらとその姿を薄れさせ、砂のように消えていく。
「これが……」
「本当の……」
「私達……!」
 しかしその顔は幸せそうだったので、善行と言えるのではないだろうか!
 多分!

 さてアリスさんのマイルール裁きが綺麗に片付いている間に。
「この辞表も彼女達に叩きつけてみるか?」
「えっ物理」
「良かったらでいいが」
「むしろいいんですかって重っ!!」
 こちらでは『アリス』が相馬から金砕棒を受け取っていた。いい加減オウガの数も両手で数えられるくらいになってきたからできる一幕である。
 しかし重い。
 金属バットを二回りくらい太くして全面に棘をつけて、さらにその全てを空洞なく金属で作りました、という見た目に相応しいだけの重量。相馬だからぶん回しているのである。
「野球のバットと同じように持ってくれ」
「あっはい……えっ重くなくなった!?」
 無論持ち方で変わったとか、重量が調整されたとかそういうわけではない。
 単純に相馬が柄の先端側に片手を添えて、ほぼ全重量支えているのである。
 そしてちょうど目の前には一矢でも報いんとばかりに迫ってくる最後のオウガ。
「せーの、で振る」
「せーの、ですね!」
『アリス』の腕力を計算に入れつつ相馬がオウガとの距離を測る。当たらなくても自分が盾になれば絶対に彼女を庇えるだけの自信はある。
 けれど、『当てさせる』自信とて同じだけ、ある。
「せーの」
「とりゃあああっ!」
 女性としては低い、気迫を全力で籠めた叫びと共に『アリス』が金砕棒を振る。重さは相馬が支え、向きと速度は『アリス』が定め、最後のフルスイングを決める。
 ――どおおおおんっ!!
「っしゃあっ!」
 吹っ飛んだ先で白炎の大爆発が起きる。それを見た『アリス』は両手で思い切りガッツポーズを作り、愉快な仲間達は惜しみない歓声を浴びせるのだった。

 戦闘番地、という表示がぱらりとページのめくれる音と共に消え、数字が進む。
「さて、次のシーンは何になるのかしらね? 本当、楽しみだわ」
 ゆかりが挑戦的に口端を吊り上げた、次の瞬間。
 ぱらり、ぱらり、太陽に書かれた『ページ数』が幾度も進み――そこは石造りなのに紅く、荘厳で広い一室に。
 矢印とは反対方向に広い、謁見の間とでも言うべき空間へと変わっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『赤の女王ユリーシャ』

POW   :    ショットガン・シャッフル
自身が装備する【トランプ型の刃物 】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
SPD   :    ブラック・ジャック
レベル×1体の、【胴体 】に1と刻印された戦闘用【トランプの騎士】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    ハイ・アンド・ロー
質問と共に【伏せられたトランプ 】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠渡月・遊姫です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「よくぞここまで辿り着いたな――仲間を集め、障害を乗り越え、こうして玉座に手をかけんとする場まで来られたこと、称賛に値する」
 窓からは、太陽に書かれた数字と矢印がよく見えていた。
『295』。
 一冊の文庫のクライマックスが訪れるであろうページ数である。
「問おう。我が元に来る気はないか」
 そしていつの間にかすぐ前にあった赤い玉座で、全身に赤を纏った女が微笑んでいた。
「……あなたのところに行ったら、どうなるの?」
 静かに、猟兵達に守られながらも、自分も愉快な仲間達を守るように立って尋ねる『アリス』。
「そなたと同じ勇気ある娘達の戦いに招待しよう、最後の1人が決まるまでの素晴らしい戦いへ」
「デスゲームじゃん!」
 重々しい雰囲気をかっ飛ばす勢いで思わず『アリス』はツッコんだ。
「それも真に強き存在を決める永劫の戦いへ」
「デスゲーム通り越してデスマーチじゃん!!」
 怒涛の連ツッコミ。
「帰らせていただきます」
「どうやって?」
「定時で!!」
 方法になってない。
 労働基準法としては大変正しい姿勢だが!
「ふ……無理にでも参加してもらう方法はある。そなた達は、本のページ通りここに辿り着いた」
「そうだけど」
「もしもページを『戻った』としたら――それはこの本の『登場人物』に近づくということだ」
「は!?」
「つまりこの本の中で永劫の戦いに」
「さ、さては貴様ブラック企業だな!」
「ああ、名乗っていなかったな。我が名は赤の女王ユリーシャ」
「あ、赤だから黒いんだ!!」
 まあうん、帳簿が赤くなるとね。
 業務形態がブラックになるのよくある話だよね。

 ちなみに矢印は玉座の方に向いている。
 そしてページがめくれると同時に玉座のすぐ前にいた『アリス』達と猟兵達の後ろには、かなり広い空間があった。
『赤の女王』は、本の中の世界の法則を知っている。ページを戻る、すなわち『矢印と逆方向に向かう』者は、いつしか本の登場人物になってしまうということを。
 この広い空間はそのためにある。すなわち物理的に矢印と逆方向に『アリス』や猟兵達を弾き飛ばすことで、ページを戻らせ本の中に捕らえるために。

「わかったか? そなたらは進むか、我がものになるか、それしかない。そして――」
 ゆっくりと、女王は玉座から立ち上がる。
「進むというならば、我はそれを阻もう」
 互いの望む『物語』を懸けて。
 最後の戦いのページは、開かれた。
村崎・ゆかり
赤の女王か。『アリス』の物語を締めるのにこれ以上の相手はいない。
あなたもトランプを使うみたいね。負けてられないわ。

そういうわけで、まずは一枚、不動明王火界咒。「高速詠唱」「全力魔法」炎の「属性攻撃」「破魔」「浄化」を乗せて。この通り、種も仕掛けもありません。

状況が進むのに合わせ、火界咒を生み出す呪符を撒きながら、赤の女王めがけて特攻をかける。
薙刀を振るいながら、傷ついた赤の女王の討滅を目指す。
「なぎ払い」の円運動から、一旦引いてからの「串刺し」に繋げて。
アヤメも隙があれば狙っていって。

アリスを捕らえてたのはこんな奴だったわけだけど、辞表パンチいってみる?

アリスの旅は続くのよね。この先に幸いを。


鈴木・志乃
オーライ、女王様
あんたと真正面から勝負する理由はないな
ブラック企業なんて退職届出したって、素直に受け取るようなところは無いんだから。

高速詠唱で自分達の後ろにオーラ防御を展開
これ以上後退しないように壁か盾でも張っとくよ
理不尽には理不尽を。UC発動
そのトランプも無機物のハズだ。無機物なら問答無用で変換させてもらう。今まで問答無用で人を働かせてきたんだ、当然だよなぁ?

UCでアリス達が解放されて暴動を起こす幻想を生もう
苛立って動きがブレた所を見切り、全力魔法で攻撃だ

戦闘終わったらアリスにUDCEでの連絡先渡しとこうかな
何かあったら保護して、なんなら私の超絶ホワイト職場紹介しよう


アリス・セカンドカラー
お任せプレイング。お好きなように。
汝が為したいように為すがよい。
む、このままでは式神六法さんが無力化してしまう。カートゥーンアニメ的な世界を結界術で構築して六法さん(ギャグ)なデフォルメ姿になっていただこう。え?今回は法的に問題なくなったけどギャグなら天丼ネタは外せない?そんなー。
多重詠唱の罠使いでフロア移動魔術トラップを設置、ページを戻されそうになったらトラップを発動させることで進む方向に戻すわよ。そして、カートゥーンキャラ化した六法さん達のカートゥーン的な悪戯(神罰)トラップが赤の女王を襲う。アニメだからギャグで済んでるがリアルでやったらエグい内容の悪戯が多いわよねカートゥーンアニメって。



「赤の女王、か――」
 村崎・ゆかりが呟く。UDCアースにおける物語『不思議の国のアリス』では、不思議の国の中でも最大の理不尽として君臨する『ハートの女王』。それを連想させる名と姿を持つこのオウガは、まさにアリスラビリンスにおける『アリス』達の敵と言うに相応しい。
 そして今回の『アリス』の物語のラスボス、最後の障壁としても。
「まぁでも!」
 鈴木・志乃がすごくイイ笑顔を見せる。そりゃもう満面の開き直りスマイルだった。
「オーケイ、女王様。あんたと真正面から勝負する理由はないな」
「おや、それは逃げるということか?」
「いいや?」
 口元はにっこり笑ったまま、すっと笑っていない目を開く。
「正攻法じゃないってだけだよ、ブラック企業なんて退職届出したって、素直に受け取るようなところは無いんだから」
 ほんっとね!
 いや逆にパワハラで自己都合退職に追い込むとかいうタイプもあるけどそこはそれ。みんな違ってみんな悪。ブラック企業は滅ぶべし。
 というわけで。
 僅かに光を照り返すようなオーラが猟兵達、そして『アリス』と愉快な仲間達全員を背後の空間から区切るように、一面の壁となって張り巡らされた。たとえ吹き飛ばされようが投げつけられようが、受け止めて支えることのできる柔らかな魔力防壁。
「あ、じゃあちょっと結界術に借りるわよ。このままでは式神六法さんが無力化してしまうのよね」
 さらにその区切られた空間に、アリス・セカンドカラーが結界術を構築――目に見える世界を『塗り替える』。
 具体的に言うと。
 この空間の情景と式神六法さんの姿が、カートゥーンアニメ作画へと変わった。
 単なる作風の変更と言うなかれ!
 ギャグでなければ許されない正義というのもたくさんあるのだ!
 ちなみにアリスの真の姿も今回はカートゥーンアニメ的デザインとなっているので、罪状的には問題なく――がし。
「え?」
 がし。
「お約束ですので」
「えっ待って」
「ギャグなら天丼展開は必須ですよね」
「六法全書が不文律を推奨するっていいの?」
「はい問答無用ー」
「そんなー」
 今シナリオ3章連続3回目の結界術更生施設送りになるアリス。見事な皆勤賞である。
 ちなみに連行されつつも念のため、志乃の魔力防壁と併設でフロア移動魔術トラップを仕込んでおいた。無理やりオーラ防壁を破ってページを戻されてもきっちりこの位置に戻ってくる優れもの。
「戦場にも労働環境にもセーフティネットは必須だからね」
 いろいろと(様々な)世界の闇を覗いてきた顔で、志乃は頷いた。
 ちなみに彼女が今所属しているのは超絶ホワイト職場なのでご安心いただきたい。
「アリス、自分の世界に戻ってきたら連絡してくれていいからね。何ならうちの超絶ホワイト職場紹介するから」
「あっありがとう! 頼りにしてます!!」
 ぐっと握手を交わす『アリス』と志乃。
 そしてその間、赤の女王にはゆかりとアヤメがしっかりと対峙していた。
「あなたもトランプを使うみたいね。負けてられないわ」
「ほう……そなたもカード使いか」
 ゆかりが取り出した符――普段通りの白紙のトランプに、赤の女王もぱらりと手の中にデッキを広げてみせた。
 当然こちらも普通のトランプではなく、手札で勝負する気などない。お互いに。
「まずは一枚」
 すっと二指で保持したトランプ放つと同時に真言、白紙のトランプに不動明王の咒力が宿る。
「この通り、種も仕掛けもありません」
「……小癪な」
 叩き落とそうとした女王の掌に、絡みつくように炎は破魔と浄化の力を宿して燃え上がった。明らかに『魔』であり『不浄』たるオウガ、すなわちオブリビオンにとっての弱点をはっきりと貫く一撃であるが、しかし女王の顔にはまだ余裕がある。ふっと手を払うと炎が消え、その手で女王はおよそ4セットほどもあろうかというトランプを一気に頭上へと投げ上げた。
「さぁ全てを紅く染め上げろ、我がトランプ達よ!」
 200枚を超えようかというトランプが降り注ぐ――その1つ1つが刃だ。女王の意志に完全に準じて動く刃、けれど。
 それを止めたのは風だ。
 いや。
 トランプそのものを、風と化していたのだ。
「理不尽には理不尽を。今一時銀貨の星を降らせる、世界の祈りの風よ」
 ユーベルコード『流星群』。
 人の善意が報いられんことを、そう願い生み出された童話を体現するかのように、無機物を媒体として生み出された祈りと浄化のその風は、世界に幸福な幻想を纏わせる。
「そのトランプも無機物のハズだ。問答無用で変換させてもらう」
 その手を翳し、志乃はニヤリと笑ってみせた。
「今まで問答無用で人を働かせてきたんだ、当然だよなぁ?」
「おや、我は報いたぞ?」
 その風が生み出すのは解放されたアリス達が暴動を起こすという幻想。真っ当にその働きが報いられる、そのために戦えることは、世界にとって幸福に他ならないと志乃は思う。酷使する側である赤の女王にとっては不幸であるとしても。
「勝者には新たな戦場を、新たな活躍の場を」
「やりがい搾取すぎる」
 ぼそっと『アリス』が呟いた。多分同じことを言われたんだろう。
 ベストを着たウサギがそっと彼女の頭の上に乗って、その手でぽふぽふ彼女を撫でて慰めていた。
「ノウマク サラバタタギャテイビャク――」
 志乃の生む風の流れに乗せるように、ゆかりが次々に不動明王火界咒を乗せた白紙のトランプを投げ放つ。女王が刃のトランプを追加しようが、混ざり合い志乃のユーベルコードと互いを打ち消し合うのを恐れることはない。
 いかなる呪符であれ材質としては紙。
 紙は、有機物である。
 ちなみに志乃の『流星群』から零れ落ちた刃のトランプは、六法さん(カートゥーンアニメ的ギャグキャラデザイン)達が怪しい処刑器具っぽいトラップとか嘘発見器っぽいトラップを使って思いっきり赤の女王に打ち返していた。
「アニメだからギャグで済んでるけどリアルでやったらエグい内容の悪戯が多いわよね、カートゥーンアニメって」
 三度目のお勤めを終えたアリス・セカンドカラーがしみじみと呟く。多いよねギャグ補正だから生きてるよねってレベルのやつ。
「忌々しいな……女王たる我をここまで煩わせるとは」
 志乃に向かって赤の女王がトランプを1枚投げつける。刃ではなく普通のトランプだ、クラブの3。
「ハイ・アンド・ロー!」
 そしてもう一枚、志乃から見て裏向きに投げつけられたトランプ。
「ハイ!」
 間髪入れず叫び、掴み取ったトランプをひっくり返す。ハートの7。
 ハイアンドローではあまり関係ないが、クラブはスートの中では最弱である。数字としても2が出なければ『ハイ』で負けることはない。
 本来ならば8、7、6といった判断に迷うようなカードを最初に提示するか、自由にカードを操れるというなら2枚目のカードを2にすべきなのだ。
 赤の女王たる彼女が、トランプを繰る手が鈍っている。志乃とゆかりは視線で軽く頷きを交わすと、志乃が展開する『アリス』達の幻影を遮蔽代わりに薙刀を片手に、符を片手に掴んだゆかりが飛び出した。半歩後ろを続いて走るアヤメがゆかりまで届こうというトランプを苦無を投げて弾き返し、左手の符を一気に火界の咒へと化して投げるとゆかりは両手で薙刀を掴み直す。
 走り込みながらの薙ぎ払い、一歩引きながら手繰り、そのまま再び踏み込んで貫かんばかりに突き出す。抉るように捻った刃の傷に向けて、志乃が全力魔法を叩きつける。避けようとした赤の女王の足元にいきなり現れたトラバサミががぶりとその動きを止める。いい仕事したと後方で頷く六法さん。
 その間にもう片足を、アヤメの苦無が縫い止めていた。
「アリス、あなたを捕えてたのはこんな奴だったわけだけど、辞表パンチいってみる?」
「えっいいの!? 行く!」
 怖いもの知らずか開き直りか、ともあれ志乃がオーラの鎧で『アリス』を守り、六法さん達がアリス・セカンドカラーの合図で罠を取り払って女王までの道を作り、トランプを投げつけようとした腕をゆかりが薙刀の柄で受け止める。
「っらあああ!!」
 封筒をぐしゃりと掴んだ、腰の入った全力のパンチが赤の女王の横っ面を殴り飛ばす。
 それはオブリビオンへのダメージとしては微々たるもの、ほとんど誤差でしかないものだ。
 それでも。
「そのような細腕に何の意味が」
「あるんだよ!」
 そう、『アリス』がその意志を。
 行動へと移し、臆せず叩きつけた。
 そのことが――1番の意味だ。
 彼女がこのアリスラビリンスでの旅を続け、さらには己の扉を見つけて現実へと戻った後まできっと『アリス』を支えてくれる、1番の意味なのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリス・セカンドカラー
お任せプレイング。お好きなように。
汝が為したいように為すがよい。
描写のメインは『アリス』でアリスは狂言回し役で。

いいわ、最後はあなたが決めなさい。そのための『力なら貸してあげる』とGET A GLORYで技能値840にした所持技能を『アリス』に貸すわ。あ、演説の言葉は向こうに着いたら退職の為にやるべき行動よ。間違った行動で失敗してもこまるしね。
私は『アリス』のサポート。ページを戻されそうになったらフロア移動で戻し、ダメージを負ったらサイコヒーリング(念動力/医術)で治しましょう。ま、『力を貸した』今の『アリス』なら全部自力でできるでしょうけど。
さ、辞表パンチ神罰で決着をつけなさい。


鈴木・志乃
アド連歓迎
あれ、まだ倒れてないの。
結構強い攻撃ブチ当てたと思ったんだけどな。

……そっか、そうだね、最後の一撃はアリスじゃないとね。
この絵本は、主人公がブラック企業をぶっ倒す物語だもの。
アリスが最後に華々しく活躍しないと、意味ないよね?

UC発動
祈りと催眠術を乗せた歌で結界を展開。
さあ、アリス、好きな物を願って?
大量の辞表? サビ残だらけのタイムカード?
タイムレコーダーそのままぶん投げるって手もあるね。
他所の企業との契約書を火種にしてあいつを燃やしてもいいかな。
物理的にどうにかしたいならハンマーも出せるし……

心は自由だよ
何処へだって行ける
貴方は自由に生きて行けるんだ
さ、貴方は一体何がほしい?


鬼桐・相馬
「ハートの女王」か。ならば「騎士(鬼)」が裏切りアリス側につくのもクライマックスとしてはアリじゃないか?

【POW】
戦闘開始と同時にUC発動するが、この姿は意識が朧げになる。前もって己にアリス達を守ることをよく言い聞かせ、彼女達にも言っておこう。
悪い支配者は玉座から引きずり下ろすのが定石、アリス達の盾となり不退転の心で挑む。

敵の攻撃は[戦闘知識と野性の勘で見切り]炎を纏わせた腕で受け[カウンターで焼却]。
ブラック企業というなら嘗ての門番業もなかなかだった。そんな記憶を蘇らせつつ[怪力]を以て敵をこの爪で[串刺し]に。

立ち向かう事も逃げる事も、戦略として大いに有りだ。行動に移せた自分を褒めてやれ。



「『ハートの女王』が敵、か」
 ぽつりと鬼桐・相馬は呟いた。刻印や武器へと流していた己の『悪意』は充分――己を『獄卒』へと戻すために。
「ならば騎士が裏切りアリス側につくのも、クライマックスとしてはアリじゃないか?」
 獄卒の『衛兵』としての在り方は、確かに一種の『騎士』にもまた近いと言えるだろうか。
 ゆえに――獄卒としての姿を現せばその意識は幾らか朧げとなるので巻き込まれないように、と告げてから、相馬はその瞳の色をふっと和らげた。
「立ち向かう事も逃げる事も、戦略として大いに有りだ。行動に移せた自分を褒めてやれ」
「……うん」
 頷いた『アリス』の力強さを増した瞳に頷いて、相馬は武装へと分散させていたその力を解放した。『アリス』、愉快な仲間達、猟兵達、己が守らなければならない、絶対にその爪に巻き込んではいけない存在の姿を目に焼き付けて、傷つけないと心に刻み込んで――その肉体に宿る力を解放する。ユーベルコード『闕烙鬼』。
 そしてそこには黒肌を輝く紋様が走り、爪と角には紺青の炎を燃やす鬼の巨体が現れた。
「……すごい、鬼だ」
 ぽつり呟いた『アリス』の視線に嫌悪はなく、むしろどこか親しみが籠もっていたのは――神秘に触れたことはなくとも『鬼』という存在が一種の隣人でもあるような文化を持つ、UDCアースの日本出身であるからなのだろうか。
 鬼の獄卒と化した相馬の意識は半ばこの姿が持つ記憶と溶け合いつつあるが、けれどわかる。
 この瞳を。
『アリス』を、『アリス』を守る皆を。
 守ることが、今の使命だ。
 物言わぬ黒の肉体に青纏う鬼は、ゆるりとハートの女王に向き直った。

「いいわ、最後はあなたが決めなさい。そのための『力なら貸してあげる』」
 アリス・セカンドカラーは、仮初のものとはいえ自分のと同じ名で呼ばれる『アリス』へとにこりと笑顔を浮かべた。

「ちなみに元の世界に戻ったら『録音やメモ書きで具体的なパワハラの証拠を残しつつ自治体の労働基準監督署に駆け込んで相談実績を作り、その上で退職願は到着2週間後の日付で郵送してあとは多分溜まってる有給休暇を消費して過ごせばOK』、さぁ私の力を『貸してあげよう』――GET A GLORY!」
「勉強になります!」
 グッとガッツポーズしたら、念動力が発動して女王の頭にシャンデリアがぶつかった。
「えっ」
 真上にあったわけではないそれを、確かに自分が動かしたという実感があった。
「この……力は……」
 己の手を見つめる『アリス』に、後ろでアリス・セカンドカラーがニィと笑う。どう見ても黒幕の顔をしているが、ユーベルコード『GET A GLORY』はあくまで彼女の所持する技能を超高レベルにして貸すものにすぎず――いやごめんやっぱ充分黒幕だった。
「……そっか、そうだね。最後の一撃はアリスじゃないとね」
 結構強い攻撃を当てたと思ったんだけど、と考えていた鈴木・志乃も、納得がいったと頷く。
「この本は、主人公がブラック企業をぶっ倒す物語だもの」
 そう言うと途端に世知辛くなったなこの物語。
「アリスが最後に華々しく活躍しないと、意味ないよね」
 ユーベルコード『晴れ舞台』、祈りに催眠効果を乗せた歌が広がっていく。そこは敵の武器が『アリス』の望むものに変わる結界――この物語で『アリス』がラストダンスを踊る舞台。
「ここは貴方の為の舞台。さあ、アリス、好きな物を願って?」
 それは大量の辞表でもいい。
 定時で切らされたタイムカードとサービス残業の動かぬ証拠でもいい。
 何ならタイムレコーダーぶん投げてもいいし、他社との契約書で女王を燃やすのもいい。物理的に。たぶん!
「あと物理的にどうにかしたいならハンマーも出せるし……」
「よしもう全部乗せで!!」
 ラーメン屋とか海鮮丼屋のようなテンションで叫ぶと、アリスの周囲に展開されるのは大量の辞表。
「いっけー辞表! 従業員一斉退社による業務停滞からの廃業を見せてやれ!!」
 女王のトランプから『アリス』の武器へと化したそれが、一斉に赤の女王に襲いかかる。
「調子に乗るな、護衛の力でここまで『生き延びた』だけの小娘が」
 赤の女王の視線が鋭さを増す。もはや脅威たる猟兵達を倒した後にゆっくりと本の中の住民にしてやればいい哀れな獲物ではなく、己の前に立つ敵としての『アリス』に。
「そうだよ、生き延びた。睡眠時間足りなくてやばい死ぬって思っても、ここからジャンプで仕事行かなくていいなって思っても! 生き延びたんだ!」
 トランプが次々にタイムレコーダーに変わり、そのまま女王へと返っていく。
「そしてここでもみんなのおかげで生き延びてる! 生きてれば! これからも生きるために――」
 さらにはパワハラ証拠のタイムレコーダー。スマートフォンに証拠を流し込んでSNSに公☆開!
「この本からもブラック職場からも逃げられる! 逃げるために、戦うぞあたしはーーーー!!」
 怒りに満ちた女王の視線を遮るように、相馬がすっと巨体で攻撃を受け止める。腕に纏わせた炎が燃え上がり、その炎が女王の身体までも届く。
(ブラック企業というなら、嘗ての門番業もなかなかだった……)
 この舞台は『アリス』が、まず己の運命の1つに決着をつけるために。そのために相馬は、その身を彼女のための防壁と化す。傷より伝った炎とてダメージも与えているだろうが、それよりも目眩ましとしての役割が大きい。
 元々『本来の相馬』であっても、嗜虐や闘争の本能は他の者よりは強い。ゆえに逆に理解できる。この戦いに『アリス』が直接決着を付けることの意味を。

 盾は相馬が。
 武器はアリスが。
 そして『アリス』のための舞台は志乃が。

「完全にお膳立てではないか、失望したぞ『アリス』」
 苛立ったような赤の女王に、『アリス』は『ヒヤリ・ハット報告書』の束をぶん投げた。1枚書くのに30分以上かかる無駄すぎる書式に変えられて全然機能しなくなったやつである。
「お膳立てでも! 何でも味方につけて戦うのが! ブラック企業の労働者の正しいムーブなんだよ!」
 後ろでアリス・セカンドカラーと志乃がめちゃくちゃ深く頷いていた。
 相馬は忍耐力が強すぎてそもそも逃げるとかいう発想が普通になかった獄卒なので、とりあえずハイ・アンド・ローを乗せて投げられたトランプを叩き落としておいた。ちなみに一度に4デッキくらいぶっ放されてる刃のトランプも、アリスが認識して自分の武器にできる程度の数まで相馬が爪で弾いたり炎で壁を作ったりして間引きしている。
「忌々しい――!」
 そう女王が相馬をページの戻る方角にかっ飛ばそうとしても、志乃が展開した防壁が受け止めてアリスがさっさとフロア移動罠を発動させて再び女王の前へと送り込む。
(ま、『力を貸した』今の『アリス』なら全部自力でできるでしょうけど)
 ユーベルコード『GET A GLORY』は、とりあえずちょっとでもアリス・セカンドカラーが齧った技能なら超ハイレベルにして貸与できる割とヤバい技である。
 つまり技能だけなら今の『アリス』はアリス・セカンドカラーより強いのだ!
 志乃が舞台を整えてくれたおかげで投げてきたトランプは片っ端から自分の武器にできるので、『アリス』ももはや好きな物をぶん投げてダメージを蓄積させる念動力砲台と化している。

「心は自由だよ、何処へだって行ける、貴方は自由に生きていけるんだ」
 さ、――貴方は一体何がほしい?
 志乃の囁きは優しくアリスのささくれだっていた心を癒す。愉快な仲間達との生活はもちろん疲弊していた心身へと休息と癒しを与えてくれていたのだが、事情を知った上で味方してくれる人々の存在はアリスを強くしてくれる。
「心だけじゃない、私に搾取されない自由と職場選択の自由とあと有給も自由に取りたいよね! とりあえず石の上にも三年ブラック企業にも三年論よ滅びよ!!」
 飛んでいくデカい石と分厚い新人研修資料。
 いわゆる大声で自己否定し続けさせたりして思考力を奪うやつ!
「さ、辞表パンチ神罰で決着をつけなさい」
 ぽん、と後ろからアリスが『アリス』の肩を叩く。少女らしい風貌に蠱惑的な、けれど今は純粋に応援の笑顔。
 3回(自分のユーベルコードの余波で)更生施設に送られたとは思えない綺麗なやつ。
「志乃さんこれ、まず借りるね!」
 取り出したのは先程受け取った志乃の連絡先。きっと己の世界に帰った後に勇気を与えてくれるそれに、情熱とか気合いとか殺気とか元気とか覇気とかついでに精神攻撃とか恐怖を与えるとか、ひたすらアリス・セカンドカラーから受け取った技能を籠めて、『アリス』はそれを大事に胸ポケットへと収める。
 そしてトランプの1枚を辞表へと変えると、右手にぎっちりと握り込んだ。
 グラップル840。
 決闘840。
 ステータス画面的にはヤバい数字が並んでいる。アリスから借りた力をフルに引き出すべく、『アリス』は身体が動こうとするに任せて駆け出す。
 気配を感じた相馬が、ギリギリまで注意を惹き付けてからすっと身を引いた。女王の眼の前に『アリス』が拳を振りかぶり――、

「滅びよブラック企業! 私、本日より2週間後を以って辞めさせていただき2週間は有給消化期間とさせていただきますっ!!」
 今は、今だけは、素人の拳ではない。
 技術を貸してもらい、舞台を整えてもらい、己が戦う間ずっと守ってもらった。支援フル乗せもう何も怖くない。訴訟に持ち込まれても勝てる。まず無料の弁護士相談に駆け込める!
 そんな気迫と共に辞表を握り込んだ拳が――赤の女王の頬をイイ音立てて凹ませた。
「――借りた力といえど、そこまで使いこなすとは見事」
「赤の女王……」
 切れた口内から血を吐きながら倒れる女王に、思わず『アリス』が手を止める。否定され続けた経験が、少しでも褒め言葉となれば温かなものと受け止めてしまう。
 それが、最後の一撃を、トドメを躊躇させる――
「ゆえにやはり我が戦いの舞台へとそなたを招待し」
「労災しか起きない!」
 あ、踏んだ。
「あっしまった辞表パンチでキメそこねた!」
 さらさらと消えていく赤の女王を前に思わず叫ぶ『アリス』の肩に、アリスと志乃がぽんぽんと手を置く。
 僅かに残った悪意を武装へと再び流し、相馬がすっと元の人型へと戻った。
「……歩み出すのは自分の足だ。だから……」
 ふ、と鉄面皮の中で、鬼の獄卒でも人型でも変わらない金色の瞳だけが柔らかに笑んだ。
「悪くない『スタート』だ」
 そう、物語がエンディングを迎えても、『アリス』の旅はこれからも続く。アリスラビリンスで、そしておそらくは己の世界に戻った後にも。
「この先に、幸いを」
 猟兵達と、『アリス』と愉快な仲間達、その姿がそれぞれ薄れていく。グリモアベースへの帰還転移が猟兵達を呼び戻し、そしておそらく『アリス』達はまたアリスラビリンスへと戻っていくはずだ。
「ありがとう、本当にありがとう……またね!」
 手を振ったアリスに振り返したり、声を掛けたり――それぞれの返事を最後に、ぱたん、と本を閉じるような音がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月23日


挿絵イラスト