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狂機妖精

#アポカリプスヘル #アイカワさん #ナカタさん

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#アポカリプスヘル
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#ナカタさん


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●嵐が来る
『しっかし……本当に完成するんすかねぇ、ココ』
『するんすかねぇじゃねえさせるんだよバカヤロウ!』
 欠伸を噛み殺すアライグマを一喝しつつ、羊のアイカワはずらりと並んだ巨大な設備を眺め溜息を吐いた。アライグマが言うのも分からなくは無い。何せ先日まで戦場だった場所――道路沿いとは言えそこかしこの凹凸が、尋常ならざる戦いがあった事を想起させる――こんな所に屋内農場を建てるだなんて、お上も全く無茶な事を言いやがる。
『そいやアニキ、何かマイハマでカチコミがあったとか?』
『ああ。ナカタの大将が追っ払ったみてえだが、何か獲られたとか言ってたな』
 先日彼らの本拠地でもあるマイハマ・エリアの拠点に急襲があったという情報は、既に周辺へ充分に知れ渡っていた。お陰で漁夫の利を狙う愚か者を仕留めるのに本隊は大忙しだそうだが、あのお猿の大将なら大丈夫だろう。それよりも、急襲を受けた際に発掘した偽神兵器を一つ盗まれたらしい。最も拠点の誰もが起動させる事すらかなわなかった代物だ。恐らく余程大層な事をしなければ、そう心配する類いの物では無いだろう。
『報告! 不明な車両が多数接近!』
『警報鳴らせぇ! ジェネレータ起動、バリアの準備!』
 不意に物見のアライグマから連絡が入る。小高い丘に設けた高所より見えたそれらは、複数台の黒塗りのトレーラー。よく見れば運転席にはひきつった笑顔の少女――戦闘用フラスコチャイルドらしき影が見て取れた。
(マイハマを襲った連中か? だとしたら厄介だ……それでも)
 やってやろうじゃねえかコノヤロウ。このシマのリーダーは俺だ。指示を飛ばし敵襲に備えるアイカワの胸中へ、久々に熱いモノが込み上げてきた。

「おはようございます。私はサクラ・メント、本作戦のグリモア猟兵です」
 ぺこりと会釈したサクラ・メント(ホワイトアンデッド・f28423)は表情を殺したまま、淡々と話を続ける。
「手短に状況を説明しましょう。先日マイハマ―フナバシ間に開通した道路沿いにて、大規模な農業施設の建設が始まりました。ここを狙う敵の撃退が主目的です」
 グリモアベースの会議室に集った猟兵達は、スクリーンに映るそれを見やり状況を把握した。時刻は正午過ぎ。天気は快晴、気象条件等は作戦行動に影響なし。戦場は凹凸のある地形だが空中から見渡せば位置は丸わかり。更に建造中の農業施設が十数棟連なっている区画がある。
「――敵はフラスコチャイルド型オブリビオンの集団。数は不明。何より厄介なのは白兵戦から射撃戦までこなし、ドローンや補助AIを用いた工作活動も出来る、かなりの手練れだという事です」
 続けてスクリーンに映された姿は、チェーンブレードと大型ガトリング砲を携えたA1世代と呼称される戦闘型フラスコチャイルドだった。これらは特に隠密性に優れ、一般人に紛れて活動出来るスリーパータイプの特徴も併せ持つ。
「またこの敵はマイハマの友軍施設より正体不明の偽神兵器――『竜の卵』と呼ばれている物を強奪し、所持しているそうです。これの詳細は不明ですが、危険な代物である事はまず間違いないでしょう」
 更にその襲撃に乗じて近隣の賊が暴れているらしく、現状マイハマからの応援は期待出来ない。アイカワは恐らく彼らが来るまで持ち堪えるつもりだったのだろうが、それでは最早遅すぎる――故に猟兵達が彼らを守り通さなければならない。

「この施設はアポカリプスヘルの民が築いた明日への希望そのものです。絶対に破壊などさせてはなりません。ああ、それと」
 ふと思い出したようにサクラが端末を操作し、スクリーン上に表示された農業施設の周囲に、薄い水色のレイヤーが重なった。
「戦闘開始と同時に施設へバリアが張られます。多数の一般人――色んな種族の人々がその中へ避難していますが、彼らは戦う事が出来ません」
 つまり、このバリアが破壊される、あるいはバリア内部に侵入されれば一巻の終わりだ。そうなる前に、全ての敵を殲滅しなければならない。
「どうかよろしくお願いします。ご武運を」
 ペコリとお辞儀をすると共に髑髏の瞳が輝いて、グリモアがゲートを開く。乾いた風が――血と硝煙とイオン臭が入り混じった戦場の風が、辺り一面に広がった。


ブラツ
 ブラツです。
 今回の舞台はアポカリプスヘルにて、
 農業施設へ攻め込む敵の殲滅が目的になります。

 本シナリオは当方が以前運営した三作品、
『さらば優しき友よ』『勇気の火を灯して』『未来へと続く道』
 これらの後日談でもありますが、直接の関係はありませんので、
 各リプレイに目を通して頂かなくとも全く問題はありません。

 第1章は集団戦です。敵フラスコチャイルド群を制圧して下さい。

 第2章はボス戦です。現時点で詳細は不明です。

 第3章は日常です。農業施設の復興作業ですが、第2章の結末で導入が変わります。

 その他、詳細はオープニングに準じます。
 アドリブや連携希望の方は文頭に●とご記載下さい。
 単独描写を希望の方は文頭に△とご記載下さい。
 同時描写希望時は何がしかの識別子の記載をお願いします。

 プレイングの募集は各章幕間追加後にお伝えいたします。
 募集期間前後に頂いたプレイングは流れる場合がありますのでご注意下さい。

 それでは、よろしくお願い致します。
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第1章 集団戦 『フラスコチャイルド再現型オブリビオン群』

POW   :    Quiet noise
【静穏型ガトリング砲から発射された砲弾 】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    戦術:欺瞞情報拡散
戦闘力のない【情報収集型無人機とダミーオブリビオン 】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【偽情報の流布などを行い、市民からの援助】によって武器や防具がパワーアップする。
WIZ   :    AntieuvercodePulse【AP】
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【疑似代理神格型演算支援システム 】が出現してそれを180秒封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ブラッディ・フェアリーズ
『何だテメェら……見ねえツラだな、アァ!?』
 アイカワがトレーラーから下りた少女達へ駆け寄って、その様子をつぶさに観察する。全身が傷だらけ、四肢の一部を機械化している少女達の姿はとても痛ましい。
『助けて! 中に入れて下さい!』
 両腕を組んで祈る様な姿勢で跪く少女。その前へそろりと近付いて、アイカワが声を掛けようとした刹那。
『お願いします! 中へ……入れろォッ!』
 少女の右腕が肥大化し――否、隠蔽していた大口径ガトリング砲がその姿を露にし、問答無用でアイカワへ鉛弾の洗礼を浴びせた。しかし、それらは届かない。
『中に入れろ、か――ンな事よく言えんなテメェ』
 アイカワは無傷だった。少女とアイカワの間には不可視のバリア――強力な防御フィールドが張られていたのだ。ここにあらかじめ備えられていた唯一の防衛装備。これが無ければ、こんな所に農場を作ろうなどと誰も思わなかっただろう。
『――バリアか!』
『そうだ。ビンゴだアライちゃん、出力上げろ!』
 了解! と勇ましい声がインカムに届く。囮としてあえて相手の出方を伺い、黒ならば徹底抗戦だ。それにこのバリアがあれば、簡単にここを破られはしない。
『そうか……ジジィの遺産はこの中だな!』
 ジジイの遺産と呼ばれる何かを手に入れる為、続々と少女達が集結した。しかし少女達の苛烈な一斉射に全く動じぬバリアを見やり、アイカワが不敵に告げる。
『頑張ってる様だが、アンタらの相手は俺達じゃあ無ぇみてえだぜ』
 時間切れだ。少女達の背後の空間が歪んで、徐々に見覚えの無い人影が一つ、二つと姿を現す。それこそが世界の埒外、骸の海を駆逐する唯一無二の存在。
『猟兵――!』
 地獄はここで終わりにする。終末にはまだ早い。

※注意事項
・プレイング受付期間 7/16(木)8:31 ~ 7/19(日)8:30 迄
・敵UC/SPD対策に失敗すると施設内に侵入されます
・敵UC/WIZで解析された猟兵のUCは第2章に持ち越されます
・NPCの援護はありませんが、バリアを張っているので気にせず戦闘して下さい
フィーナ・ステラガーデン

登場とほぼ同時に初手でUCを【高速詠唱】で打ち込むわ!
戦闘前の会話とか情緒とか知らないわ!先手必勝よ!
全部巻き込むつもりでドカーン!
まだ動くようなら追い討ちで【属性攻撃】火球を打ち込んで焼き払うとするわ!
ってあら?アイカワじゃない。ちょっと前ぶりね!ごぶぁっ!!(アイカワに近づきバリアに頭ゴン)
何よこれ!こんなのあったのね。ずるいわ!

まだ敵がいるようならそうねえ
【ダッシュ】で動き回って【ジャンプ】で飛んで
空中で狙われたらアイテムのオニキスで盾を召還してガトリングガンを防いだり目隠ししつつ
何度もUCでぶっとばすとするわ!
前回ろくに動けなかったから良い運動になるわね!
(アレンジアドリブ連携歓迎


春乃・結希
転送と同時にUC発動
アイカワさん達を見つけたら
邪魔な敵を弾き飛ばしつつみんなの所へ!
わーい、アイカワさーん!みんなー!(バリアに阻まれる)
っ…いてて…。すごい!何これ!

へー、これがみんなを守ってくれてるんですね
また後でもふもふさせてねーっ

バリアの外周に沿って、調子を確かめるように飛行開始
進路の敵やドローンに『with』を振るいます【空中戦】
うん、今日もいい感じっ。上げていくよ!『with』!
纏う風が激しくなるのと比例して速度も上がり、
8100km/hの超音速でバリアを周回飛行
音の壁を突き抜ける衝撃波も叩きつけながら
近づく敵を破壊していきます

みんなでここまで繋げた希望
絶対に壊させたりしないから!



●クロス・ファイア
 それは音よりも早く、空を裂いて現れた。
『アニキ! 空から女の子が!』
『違う……あれは!』
 迫り来る小さな影を見やりアイカワが叫ぶ。途端、衝撃を伴った爆音が、バリア周囲で攻撃を続ける敵の群れを容赦無く弾き飛ばした!
「わーい、アイカワさーん! みんなー!」
 遅れて聞こえたのは可愛らしい声――春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)が漆黒の大剣『with』を携え、片手をブンブン振りながらアイカワの方へと近付いてきた。しかしゴツンと鈍い音が響いて、結希は行く手を阻まれる。
「っ……いてて……。すごい! 何これ!」
『バリアだ!』
 自慢げに胸を張るアイカワ。見えない壁を興味深げに眺めながら、結希はにっこりと言葉を返す。この分なら本当に、守り切る事は出来るのだろうと。
「へー、これがみんなを守ってくれてるんですね」
『そういう事だ――後ろ!』
 不意に炸裂音が耳に届く。静穏型ガトリング砲だったろうか――音も無い厄介な代物だが、直撃さえ避ければどうという事は無い。ブンと片手で大剣を振り回し、ノールックで射線を遮る。途端、斜めに傾けた刀身が鉛弾の雨を事も無げに弾き返した。
「うん、今日もいい感じっ。また後でもふもふさせてねーっ」
 そのまま、ふわりと跳び上がって結希は姿を消した。遅れて聞こえた爆音が彼女が音速の壁を破った事を暗に示す。超常の衝撃が敵群を吹き飛ばして、一陣の風が再び戦場を蹂躙するのだ。

『凄い……って、アニキ! また空から女の子が!』
『ゲエエエエ!!!!』
 叫ぶアイカワ。視線の先には小柄な少女がひらりと舞って――着地と同時に辺りは火の海に包まれた。
「ってあら? アイカワじゃない。ちょっと前ぶりねごぶぁっ!!」
 フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)は恐るべき爆炎の超常を引っ提げてバリアに激突。吹き荒れる炎は敵群を飲み込むが、流石にバリアを突破する事は叶わない。しかしこの方の機嫌を損ねては、バリアすら飴細工の様に溶かされてもおかしくは無い。慎重に、慎重に言葉を選ばなければ。
「何よこれ! こんなのあったのね。ずるいわ! 壊していい?」
『よくねえよッ!』
 無理だった。必死の形相で懇願するアイカワ。このバリアは生命線、壊されては今も続く敵群の攻撃を耐える事など出来はしないだろう。そう、今も続けて攻撃されているのだ。
「……折角の再開を邪魔するなんて、これだからオブリビオンは!」
 オニキスの盾を展開して背後を守るフィーナ。動かないフィーナを制している心算なのだろうが――甘過ぎる。
「前回ろくに動けなかったから良い運動になるわね!」
 振り向きざまに手を翳し、放たれた炎が渦を巻いて大地を穿つ。ずらりと並んだ敵群を舐める様に横薙ぎに焼き焦がせば、辺り一面が瞬く間に真紅に染め上げられた。

「それじゃあ」
「――上げていくよ! 『with』!」
 続けて浮かび上がったフィーナも炎を噴いて空を飛ぶ。結希と交差する様に空を舞えば、互いが振るう得物で並居る敵群を続々と蹴散らしていく。最早幾ら増えようと、彼女らを止める事など出来はしない。
『あれが、猟兵の力……』
 先の教導とは違う本気の猟兵の戦いぶりに、アイカワ達は舌を巻いた。これなら本隊が付く前に、決着をつける事も出来るだろうと。
「みんなでここまで繋げた希望、絶対に壊させたりしないから!」
 地面擦れ擦れに飛行する結希が、すれ違い様に大剣で敵を斬り伏せる。その衝撃が周囲の敵を更に吹き飛ばして、身動きのとれぬそれらをフィーナの爆炎が焼き焦がす。その威は正に戦場の支配者――この地が誰の物であるかを示す様に、風と炎はひたすらに吹き荒れるのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アルトリウス・セレスタイト
解析も結構だが実証は困難だぞ


受ける攻撃は『絶理』『刻真』で自身を異なる時間へ置き影響を回避
此方の行動は目標が存在する時間へ向け実行
必要魔力は『超克』で“世界の外”から汲み上げる

天楼で捕獲
対象は召喚物含む戦域のオブリビオン及びその全行動
原理を編み「迷宮に囚われた」概念で縛る論理の牢獄に閉じ込める
高速詠唱を『刻真』で無限加速し戦域を覆うように即時展開
迷宮自体を『再帰』で無限循環して無数に重ね強度と自壊速度を最大化

内から外へは干渉不能、逆は自由な理不尽の檻だ
そして迷宮は迷うもの
攻撃手段も自壊し真っ直ぐは進めん
存分に憤れ

出口は自身に設定
辿り着くなら『討滅』の破壊の原理を乗せ打撃で始末

※アドリブ歓迎



●光の迷宮
 一方、炎を避けて回り込んだ敵群は未知の脅威と遭遇していた。
『――正体不明のエネルギー力場、か』
 バリアの穴を探す為に迂回していた別動隊が遭遇したものは、全てを捕らえる不可視の迷宮。破壊しようにも迂闊に触れれば自身を自壊せしめる恐るべき罠。既に何人かはその罠に囚われて姿を消して――滅ぼされていた。
『こんなもの、並列演算で……!』
「解析も結構だが実証は困難だぞ」
 せめて正しき道をとガトリング砲を斉射する敵群に、冷徹な声が響き渡る。この迷宮の主たるアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)――この世の理を超えた『原理』を司る超常の使い手。
『この声は、どこから!?』
『駄目だ、破壊出来ない!』
 その姿を断絶と保護の原理にて隠し、無限にも等しい力の循環が超常の迷宮をより盤石のものとする。されど時折聞こえる声、それが唯一の正しき道と信じて、敵群は我が身の犠牲を顧みず突き進む。たった一人だけでも、ここを突破しバリアの内側へ入り込めば勝ちなのだ。だからこそ、ここに留まる訳にはいかない。そして遂に、最後の一人が正解へと辿り着く。
『……そこか!』
「おめでとう、と言うべきか」
 声だ。やはりこの声の主が迷宮の出口なのだ。僅かに聞こえたアルトリウスの声を辿り、ルートを何度も再構築し、やっと彼の元へ――しかし解を得た所で、結末は何も変わらない。
「ここが終着点だ」
 その腹を青白い光が貫いていた。万象一切の終わりを告げる破壊の原理――敵の背後より現れたアルトリウスは、顔色一つ変える事無く目の前の骸を葬り去る。同時に超常の迷宮は解除され、乾いた風がびゅうと通り過ぎていった。それは全ての骸をあるべき所へ運ぶ様に、遠くへと渦を巻いて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カタリナ・エスペランサ

ふふっ、気骨があるのは良いね! とても良い!
さぁアタシも飛び入り参戦と行こうかっ!

UC【暁と共に歌う者】を発動、共に《歌唱》を響かせながら《空中戦》を展開しよう
この歌声はオブリビオン相手に《浄化+精神攻撃+催眠術+マヒ攻撃+継続ダメージ》の効果を発揮して隠れた敵まで炙り出す
《ブームの仕掛け人+鼓舞+誘惑+パフォーマンス》も兼ねて市民が敵への援助に回らないよう心を掴むよ

上空からなら敵の捕捉と狙撃にも有利だろうね
兎にも角にも施設への侵入阻止が最優先だ
《視力+聞き耳》を強化して《情報収集》、風纏う羽弾の《属性攻撃+誘導弾+スナイパー+暗殺+乱れ撃ち》と不死鳥の攻撃で確実に仕留めていこうか



●追撃者
「ふふっ、気骨があるのは良いね! とても良い!」
 カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)は眼下で奮闘する賢い動物達を見やり、口元を綻ばせる。
「さぁアタシも飛び入り参戦と行こうかっ!」
 希望は良い。だからこそ希望を汚そうとするオブリビオンは――絶対に許せない。変わらぬ強い決意と共に、魔神の化身は空を舞う。

『助けてくれ! 逃げ遅れたんだ!』
『早く、ここを開いて……』
 バリアを挟んで人々が対峙している。外周ではボロボロの衣服に身を包んだ人々が懇願を――戦場の外に隔離されたと涙ながらに語る姿は痛ましい。だが。
「騙されちゃあいけない。これらはね」
 凛とした声が響くと共に、空より炎を纏った鳥が飛び込んだ。それはカタリナの超常――途端、ボロボロの人々は瞬く間に焼き尽くされて正体を露わにした。
「御覧の通り、悪い手品の仕掛けだよ」
 ガラン、と機械の部品が転がり落ちて、彼彼女らが人の模造品である事が晒される。工作用ダミーオブリビオン――恐ろしく手の込んだやり口だが、正体が割れればどうという事は無い。その姿を見やりバリアの奥で人々が顔を引きつらせる。更にそれを眺める物体が複数、カタリナの更に上から羽音を響かせぐるりと旋回を続けていた。
「監視のドローンね、随分と手が込んでるな!」
 舌打ちしたカタリナはそれらへ羽根の礫を投げつける。途端、紫電と共に機械の鳥が続々と落ちていく。
『あれは……』
 陽光を浴びて羽搏く白き翼が、まるで闇を祓う様に炎を迸らせて、偽りと憎悪を次々と屠る姿を眺めていた人々が続々とある言葉を口にした。
『天使……?』
「さあ、この声が聞こえるならば、扉は決して開けてはならない」
 天使が歌う。声高らかに澄んだ音色が、溢れる怒りを引き連れて。
「悪い魔物が沢山いるから……ね!」
 そして炎が、闇なる軍勢を続々と撃ち滅ぼしていくのだ。希望の灯を絶やさぬ為に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雨咲・ケイ

では、私もお手伝いしましょうか。
あまり好ましくない状況ですし、
早急に片づけましょう。

【POW】で行動。

初手でアリエルの盾を輝かせて【目潰し】を狙います。
そして、そのまま敵陣に斬り込んで
闇陽を纏った【グラップル】による接近戦を仕掛けましょう。
回避の難しい敵の近接攻撃は【盾受け】を駆使して防ぎ、
隙があれば【シールドバッシュ】による
【カウンター】を狙います。
敵がガトリング砲を使用してきたら、
敵陣を攪乱するように動いて回避し
「よろしいのですか?お仲間に当たりますよ?」
と怯ませてから【魔斬りの刃】で反撃します。
被弾が見込まれる場合はルミナスから
サイキックエナジーを放って直撃を避けます。



●カウンター・グラップル
「敵の侵攻速度が随分と速いですね」
 風が舞い、炎が奔り、光が闇を塗り替える戦場――しかし敵の数は未だ膨大。徐々に戦線は押し上げられて、僅かな隙を見せれば戦況は途端に覆るだろう。
「では、私もお手伝いしましょうか」
 だからこそ、雨咲・ケイ(人間の學徒兵・f00882)は拳を握り締め戦禍へと飛び込んだ。
「あまり好ましくない状況ですし、早急に片づけましょう」
 兵は神速を尊ぶ――故に、この一番を是が非でも切り抜ける為に。

『敵襲! 四時の方位、数は1!』
『被せて止めろ! 畳み込め!』
 甲高いモーター音が唸りを上げて、火線が反転――迫る敵へ一挙に集中する。成程、圧倒的な暴力だ。だからこそ、潰し甲斐がある。
「よろしいのですか? お仲間に当たりますよ?」
『な!?』
 いつの間にか懐へ潜り込んだケイ。直線的な攻撃故、見切るのは容易い。盾を翳して直撃を防ぎ、そのまま滾る闘気が盾そのものを太陽の様に輝かせる。
『目潰しか! 怯むな、撃て!』
「乱戦で重火器を振り回すのは、良い手段とは思えませんね」
 不意の目眩ましに動揺した敵群が慌てて砲を振り回す。迸る火線はされどケイを捉える事は無く、音のする方位へ向けられた弾雨が続々と仲間を討ち倒していった。
「この様に、味方まで巻き込んでしまう」
『射撃止め! ブレード!』
 叫ぶ敵の声が轟いて――だがもう、遅い。低く屈んだ姿勢から跳ね上げる様に盾を振り回し、吹き飛ばされた敵に追撃の拳を当てる。その間隙に抜刀する敵群を見やり、ケイは空いた手をスラリと横薙ぎに振り上げた。
「この距離では外しませんよ――それに!」
 輝く手刀が、超常の魔斬りの刃が音も無く居並んだ敵群を斬り伏せた。そのまま飛蝗の様に飛び掛かり、チェーンブレードの軌道を念動で逸らすケイ。
「同じです。乱戦で長物は悪手」
 がらんと互いにの刃が絡まって敵群は足並みを乱す。その隙を光の刃が一つ、また一つと屠っていった。
 悪しきを正す超常の刃は一点の曇りなく、居並ぶ軍勢を無力化せしめる。それは正に達人の業前――戦女神が舞うかの如し。

成功 🔵​🔵​🔴​

メイスン・ドットハック
随分と手荒な敵のようじゃのー
じゃけどそういった手合いにはこっちも容赦する必要はないようじゃのー

欺瞞情報拡散を防止する為に情報収集型無人機には電脳魔術によるハッキングを仕掛けて逆にこちらで掌握
敵の情報をばらし、ダミーをあぶり出して情報に踊らされないように防止する
さらにUC「薔薇の魔女よ、雷と共に去れ」で帝竜ワームを雷雲の雲と共に召喚
雷と薔薇のブレスでフラスコチャイルドとダミーを速攻で攻撃していく
さらに逃げ場がないように雷雲の雲で捉えて足止めすることも忘れない
薔薇の香気の効果で身体が重くなる呪いも付与させて、敵の行動を阻害しつつワームに的確に攻撃していくように指示

やはり竜は強いのー

アドリブ絡みOK



●帝竜降臨
「随分と手荒な敵のようじゃのー」
 端末を目に掛けたメイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)は、そこかしこで火の手が上がる戦場を見やり溜息をついた。力技に工作に解析――何でもありの手合いじゃのー、と。
「じゃけどそういった手合いには、こっちも容赦する必要はないようじゃのー」
 さて、ぶちまわすけーのー。ゆったりと立ち上がり戦場の風を浴びて、メイスンは巨大な電脳魔方陣を虚空へと立ち上げた。

『おい、ドローンが!』
『汚染されたか! クリーンアップは!?』
 それは突然起こった。工作用ダミーと監視用ドローンが突如システムダウン。ノイズ混じりのコードを吐き続け続々と機能不全を起こしていたのだ。無理も無い――最初の戦争から(納得いかないが)常に前線で番を張っていた電脳魔術士だ。この程度のハッキングなど造作も無い。
『駄目だ、ダミーがまるでいう事を聞かない!』
『それどころじゃ無いぞ、見ろ……』
 不意に敵の一人が空を指差す。それまで快晴だった青空に暗雲が立ち込めて、雷鳴と共に青黒い巨大な影がゆっくりとこちらへ近付いて来た。
『あれは、竜?』
『誰か、起動出来たのか!?』
 そんな代物がここにいるとは聞いていない。であれば、味方の誰かが例の偽神兵器を起動させたとでもいうのだろうか。戸惑う一同に分隊長らしきものが一喝する。それは最悪の想定であり、真実だった。
『違う、敵だ……あの竜は!』
 雷が大地を穿ち、薔薇の香気が正気を奪う。フラスコチャイルドと言えど基本的な生体は人間と同様。ならば強弱の差があるだけで、竜の超常が聞かぬ訳が無い。
『あ……あ……』
 最早正気の言葉は無く、白塗りの仮面が意識を奪い去る。倒れ伏せた敵群を穿つ稲光が悪しき者どもを焼き尽くし、瞬く間に戦場は死骸の山と化していった。

「やはり竜は強いのー」
 培養体と言えど帝竜の一角。ついでにハッキングで敵のやり口はほぼ全て掌握した。後に続く事など出来はしない。轟く雷鳴が、竜の咆哮がまるで鬨の声の様に響き渡って。メイスンはのたりとその様を一瞥するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

柊・はとり


よぉ、援軍に来たぜ
俺は…そうだな、別の拠点の奪還者
『高校生探偵』柊はとりだ

外は他の猟兵に任せ
俺は施設内へテレポートさせて貰う
また始まったな…予想通りだ
UC【事件は現場で起きている】
つっても俺の意思じゃないが

何処まで戦場か知らないが天気は突然の雷雨
外界と遮断する事で敵の増援は阻止する
更に【天候操作】による落雷や豪雨で
中に居ながらにして敵を自動攻撃できる
精密機器はひとたまりも無いだろ

俺もこの『体質』には困ってるんで
弱点の指摘と立証は是非して貰いたいね
中に居れば俺の存在すら解らないだろうから
出来るなら、だがな

探偵が介入してくるとは思わなかったろ?
クローズトサークルへの適応ってのは
『生存する』事だぜ



●ディテクティブ
「よぉ、援軍に来たぜ」
『アァ!? 誰だテメェ?』
 アイカワはメンチを切って、突如バリアの中に現れた男をいつも通り威嚇する。誰だこいつは……敵か、味方か? 判断を誤ればここにいる大勢が危険に。だが真実は呆気なく判明した。
「まあ怒るなよ。俺は……そうだな、別の拠点の奪還者」
 男は臆する事無く、まるでそうする事が必然であるかの様に言葉を返す。
「『高校生探偵』柊はとりだ」
『ハイスクールなんざ伝説の類のものかと思ったが、実在したんだなぁ……デッドマン』
 呆れるアイカワを尻目に、涼やかに自己紹介を済ませた柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)は凄まじき雷雨に見舞われた外を見やり、不敵に口元を歪めた。
「フッ、探偵が介入してくるとは思わなかったろ?」
 探偵――旧時代ではあらゆる事件に介入し、その真相を暴いていたという。正に知の暴力装置、血を見る現世とは対極的な、文字通り伝説に等しい存在だ。
「そんな顔してるぜ、あいつら」
 はとりの視線の先では、忌々しげに探偵を睨む無数の敵群で溢れ返っていた。

『この天候じゃトレーラーまで戻る事も、合流する事も無理だ!』
『貴様か――この異常気象の主は! 止めてもらおうか!』
「出来るならそうしてるさ。まあ……」
 先の戦いで暴れた竜が、いつの間にか発動したはとりの超常を隠蔽したのだ。荒れ狂う稲光が精密機器に異常を齎し、瀑布の様な豪雨がほんの数m先の視界すら無慈悲に奪う。正にクローズドサークル――探偵の超常はあっというまに戦場を密室に変えていた。
「俺もこの『体質』には困ってるんで、弱点の指摘と立証は是非して貰いたいね」
 行く先々で事件が起こる。故に探偵――予想通りだ。自身の意志では無いにせよ、矢張りこうなってしまったと、諦め気味にはとりは嘆息した。
「で、一体何があるんだ――この農場には」
 そして事件には真相がある。この状況に適応出来なければ死あるのみ。証明出来るならばしてみるがいい――そしてそれは、自身も同じ。
『大したもんじゃねえ。このバリアの元になってる発電施設……』
 尋ねられたアイカワがぼそりと呟く。元々何も無かったここにある唯一の異常。それ故にここに農場が建てられたのだと。
『それが元オブリビオンって奴なだけさ』
「ほう」
 元オブリビオンのバリアとは興味深い。つまり、それを守り切れば証明終了――事件は、戦いは遂に分水嶺に差し掛かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

秋山・小夜
アドリブ歓迎 鈴木志乃さんと。

「あーらよっとぉ~ですよ。」

初っぱなッからユーベルコード【華麗なる大円舞曲】を発動し、戦闘を開始する。一応武器を持たない状態で戦闘する予定なので、拳と蹴りで戦闘。

やむを得ない場合には妖刀 夜桜を展開して戦闘する(正直今回はあまり使わないつもりです)。


「やっぱり、たまには暴れた方がストレス解消にいいですねっ!」


鈴木・志乃
秋山小夜ちゃんと
アド連歓迎


開幕UC発動
念動力でナノマシンを大量散布。無人機を高速詠唱と共にハッキングし情報の書き換えを行う。可能なら敵に不利な情報を流したり、無人機を敵にUターンさせてそのまま自爆(破壊工作)させたいな。機械を使うなら、これぐらいのことは当然覚悟してるよね?

素手で戦闘に行く小夜ちゃんには高速詠唱でオーラ防御を展開。壁としても盾としても機能させる。敵の砲弾、オーラ防御で弾き返して敵を攻撃出来ないか、ちょっとやってみよう。

尚、場の状況を見て必要なら油撒いて高速詠唱で発火→炎上
敵を足止めするファイアウォール(物理)を発生させる
こっちも命がけなんで。
武器もわざと温存してるしねー。



●ホワイト&ブラック
『早く、あの中にさえ入れれば!』
『工作用ダミーの展開は!?』
 視界を遮られた阿鼻叫喚の戦場で、オブリビオン達が怒声を響かせる。先の戦いで汚染された工作用の各種機材は何とか洗浄を終えたものの、荒れ狂う天候が十全な機能を発揮させないでいた。更に。
『……駄目だ!この雷雨でまともに動かん!』
「あーらよっとぉ~ですよ」
 不意に聞き慣れぬ明るい声が響いた。暴風が――否、竜巻の様な強大な暴力が、いつの間にか敵群の懐に入り込んでいたのだ。最悪の気象条件からの奇襲。風の様に舞う災厄が、しどろもどろに戦列を乱すオブリビオン達を追撃して、無慈悲な鉄槌を下し続ける。
「賑やかですねぇ。わたしも混ぜてもらいましょう――!」
 唸る拳が機械化した五体を砕き、轟く健脚が有象無象を吹き飛ばす。まるで超常の嵐のようなそれ――秋山・小夜(お淑やかなのは見た目だけ。つまり、歩く武器庫。・f15127)は丸腰で、果敢にオブリビオンへ立ち向かっていったのだ。

『な、何だアイツは!?』
『ドローン展開! 急げ!』
『駄目だ、再起動したが全く動かん!』
 情報を収集し至急の対策を――しかしそれは叶わない。明滅するランプが徐々にその光を失い、浮かび上がった鋼の鳥は瞬く間に鉄屑と化す。
「――機械を使うなら、これぐらいのことは当然覚悟してるよね?」
『なっ!?』
 それは鈴木・志乃(ブラック・f12101)が果たした超常の誓約。ゼロコンマにも満たない神速のハッキングが、ドローンと、しいてはダミーさえも無用の長物へと変えていったのだ。
『まだ居たのか、敵は!?』
 もう一人の敵の強襲に慌てふためくオブリビオン達。だがもう遅い――懐に入った二人の猟兵は、まるでワルツを舞う様に間断の無い連撃を加え続ける。暴れる小夜に銃口を向ければ、志乃が放つ闘気の壁が弾雨を遮り、志乃の神業が冴え渡れば、機械に頼る敵群は奇跡すら起こらない――そのまま燃やし尽くされて、一人、また二人と骸に還っていく。
「小夜ちゃん、程々にね」
「ええ――やっぱり、たまには暴れた方がストレス解消にいいですねっ!」
 ニヤリと口元を歪ませて小夜の華麗な円舞曲は更に加速する。愛刀を抜くまでも無い――その様子を見やり、志乃の捨て身の一撃が僅かに残るオブリビオンを確実に始末していく。
『早く、支援は……!』
 支援さえあれば戦況をひっくり返せる。だが荒れる天候と超常の妨害がそれを許さない。故に尋常のまま、哀れな骸は再び地に伏せる以外の選択肢が残されてはいない。大勢は圧倒的――後は白と黒の嵐が、全てを蹂躙していく様を見守るだけ。
「あらぁ。晴れてきちゃいましたよ」
『……そこっ!』
 不意に雲間から陽光が差す。その間隙にチェーンブレードを伸ばすオブリビオン。咄嗟の一撃――しかし遅かった。何もかも。
「悪いね、こっちも命がけなんで」
 武器だって温存している……この程度気が付かぬ訳が無い。戦場の支配者は彼女達なのだ。銃口から立ち昇る煙が終幕を想起させて――精霊銃が今際の際の一撃すら無慈悲に葬った。
 もうここに、彼女達の敵はいない。いつの間にか晴れ渡った空から差す日の光が祝福するかの様に、骸の上にそそり立つ彼女達をきらきらと照らしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルト・ヒートヘイズ


表に出るのは他の連中に任せるが……
『工作』ならもう少し丁寧にやって欲しいモンだがな……
怪しい動きしてる奴を【追跡】して、【指定UC】。そいつから頂くぜ。

発動?『数秒』あるなら充分だ。
偽物を紛れ込ませて誘導させよう、って魂胆なら『ろくに機能させなければいい』。
俺がコピーした『欺瞞』を紛れ込ませて、偽情報を誘導する。
俺の方のコピーに勝手に情報を流してくれるなら巧く使ってやるさ。
狙いは、『情報の撹乱の阻害』。

俺が矢面に出る必要は一応ありそうだが……そーいうときは気取られぬようにこっそり焼いて『潰す』だけ。

集団でやりゃあ工作が巧く行くとでも思ってんなら、お前らの扱う情報の諸刃っぷりを味わうといいさ。



●起動
「表に出るのは他の連中に任せるが……」
 アルト・ヒートヘイズ(陽炎の境界線・f16429)は破綻した戦線を眺めてぼそりと呟く。
「『工作』ならもう少し丁寧にやって欲しいモンだがな」
 その『工作』員たるダミーの連中はこれまでの戦いで殆どが無力化され、僅かにバリアの前で避難民を装う姿が散見される程度。紛れ込ませるには丁度いい……静かに目を閉じ、アルトの周囲に地獄の炎が迸る。
「ま、俺が矢面に出る必要は一応ありそうだが……」
 その時はその時だ。この程度蹴散らす事は造作も無い。炎が人の形を作り、偽りの工作員がいつの間にか敵の中へと紛れ込んでいた。

<バリア内部への浸透>
<バリア装置の確認>
<孵卵器の起動>
<竜を孵す>
(――随分と雑多な情報ばかりだが、孵卵器?)
 聞き慣れぬ単語に首を傾げるアルト。ダミー同士の情報網に紛れ込ませた自身の半身は、溢れる情報を一つ一つつぶさに把握していく。要はバリアの中に入り込んで、孵卵器とやらを動かすことが目的か。そして。
「竜、ね。例の奪った偽神兵器とやらか」
 そいつを潰せばゲームセットか? 下手な工作にかまけて駄々洩れの情報を精査して、アルトが妖しく目を光らせた。
「おっと、邪魔すンなよ」
 不意に背後へ炎が奔る。工作員の元締め――無事だったオブリビオンをノールックで始末する。そしてあまり長居は得策ではない、か。
「……それじゃあ仕上げに入ろうか」
 どちらにせよ孵卵器とやらに触れさせなければ良い。司令塔を失い呆然とする敵の工作員へ偽の指令を流し込み、アルト『達』はその場を後にした。それは敵の超常を模倣する業――工作してくるならば、工作し返せば良いだけの事。敵の目的は大体分かった――後はお前らの扱う情報の諸刃っぷりを味わうといいさ。

成功 🔵​🔵​🔴​

メフィス・フェイスレス

擬態しているのね
姑息極まりないけど確かに効果的だわ 悪辣な奴ら
でも一体何をそんなに焦ってるの? 

見た感じ飛んでる奴らはいなさそうだし、制空権を取らせて貰いましょう
的を絞らせないように拘束で飛び回りながら
翼を羽ばたかせて血霧を敵の集団が居る方向に撒き散らしつつ
「微塵に砕く」を身体から滲ませて地上に落として空爆を行う
時折急降下して上空に銃を構えて隙が出来たやつを骨翼と骨刃ですれ違いざまに切りつけていく
さらに爆撃で密集した相手を散らし、爆音と血霧の毒による呼吸困難を誘発して音声による連携行動も妨害していく

少し短気が過ぎたのが悪いわね
最初にもう少し深くまで踏み込んでいればまだ分からなかったのに



●掃討戦
「成程、擬態しているのね」
 姑息極まりないけど確かに効果的だわ。悪辣な奴ら……メフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)は高所より戦場を見下ろして思案する。でも一体何をそんなに焦ってるの?
「ま、見た感じ飛んでる奴らはいなさそうだし、制空権を取らせて貰いましょう」
 この世界の航空戦力は皆無に等しい。故に空からの一撃は限り無いアドバンテージとなる。疑問は溢れるが、先ずは目先の仕事を済ませましょう。ふわりと浮かんだメフィスはそのまま、まばらに散らばる敵を見やり異形の翼を羽ばたかせた。

『現状は……どうなっている?』
『工作部隊は全滅。陽動も封じられ、本隊も最早定員を満たしておりません』
 歯噛みする敵群はされど、武骨な銃器を構えて全周を警戒する。迂闊に飛び出れば圧倒的な猟兵の戦力に蹂躙されるだけ――今は乾坤一擲の機会を伺う他、残された道は無い。だが。
『て、敵機直上!』
『空だと!? ここが見つかったのか!』
「そういう事よ。よく見えるわ」
 この忌々しい目に、見通せぬものは無い。不意に無数の漆黒の礫が大地を穿ち、それと共に爆音が一帯を支配した。
『どこだ、敵は……!』
 ガトリング砲を高く掲げて対空斉射を行う敵群。されど真紅の血霧が視界を遮り、空を舞う異形――メフィスの姿を覆い隠す。射撃が止まればお返しと言わんばかりにタールの空爆が再開され、最早急ごしらえの陣地は地獄の坩堝と化していった。
『おのれ……まだだ、まだ……!』
「往生際が悪いわ。死ぬのは慣れているでしょうに」
 刹那、冷徹な声が耳に届く。そしてそれが今際の最後の記憶となった。疾風が――急降下したメフィスのすれ違い様の斬撃が瞬く間に敵の首を切り落とし、溢れる毒の血霧が彼女らに呼吸困難を誘発させて。
『どう……して……』
「それはね」
 ふわりと、朦朧とした意識で手を伸ばす敵の前に降り立つメフィス。鋭い骨の刃から滴る血がその威力を想起させて、オブリビオンは断末魔の悲鳴を上げた。
「アンタ達が『ここに居てはいけない』からよ」
 そして血霧に重なる様に、タールの様な禍々しい血の噴水が辺りを染めた。

「少し短気が過ぎたのが悪いわね――最初にもう少し深くまで踏み込んでいればまだ分からなかったのに」
 敵の本陣は瞬く間に壊滅した。最早残りは敗残兵ばかり……びゅうとふく風が血の臭いを運んで、少しだけメフィスは表情を曇らせた。

成功 🔵​🔵​🔴​

御形・菘

はーっはっはっは! 呼ばれてなくても妾、推参!
一度差し伸べ掴んだ救いの手を、妾は決して離しはせん!

右手で、眼前の空間をコンコンコンっと
はっはっは、ようこそ妾の統べる世界へ!
さてアイカワたちよ、先頃の言をきっちり証明してやろう
背には応援を受け、花々は地に咲き乱れる! 最高ではないか!
今この瞬間、妾は最強にして無敵の蛇神と成った!

とゆーことでお主ら、さあ存分に撃ってこい! ハチの巣にしてやるとか叫びながら!
妾は真正面から突っ込む! 邪神オーラは全身に纏い、防御に回しがするがな
接近されてしまったらアウト、実に単純であろう?
限界まで攻撃力のブチ上がった妾の左腕にボコられ、精々ド派手にブッ飛ぶがよい!



●全員集合
『やったか!?』
『あ、駄目それ以上言っちゃ……』
 猟兵達は恐るべきオブリビオンの大群を瞬く間に制圧せしめた。有象無象が骸となって、趨勢は決したも同然。その様子を見て農場を警備する賢いアライグマ達が続々と歓声を上げていた。
『気を抜くなよ。って……来たぞ!』
「はーっはっはっは! 呼ばれてなくても妾、推参!」
 だがこういう時こそ油断してはいけない。気を引き締める羊のアイカワの前に最後の使者か――否、恐ろしくも神々しい蛇神が降臨する。
『あ、あなたは……!』
「久しいな皆の者。一度差し伸べ掴んだ救いの手を、妾は決して離しはせん!」
 劣勢を覆したアイカワ達をバリア越しに見やる御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)の、慈しみに満ちた目は正に神か仏の様でもあった。蛇だけど。
「うむ。さてアイカワたちよ、先頃の言をきっちり証明してやろう――」
 そのまま振り返り残る敵を見やる菘。数はそれほどでも無い。だがこういう時こそ油断してはならぬ。故に先達らしく手本を見せてやろうとその口元を歪ませる。
「――歓迎するぞ、妾に挑む勇気あるモノよ!」
 ときめいて取れ高となれ! そして蛇の咆哮が世界を塗り替えた。

「背には応援を受け、花々は地に咲き乱れる! 最高ではないか!」
『一体何が起こっているのです?』
『オレに聞くな。オレに聞くな』
 菘の超常は世界を超越する花々の奇跡。コンコンと右手で空を叩けば、異界の世紀末が荒野に花開く。ようこそ妾の統べる世界へと菘が宣えば、大地は瞬く間に彩られて――その鮮やかな演出に、見る者全てが心を動かされる。正にエモーション……それこそが全て菘の力の源泉となるのだ。
「今この瞬間、妾は最強にして無敵の蛇神と成った!」
 故に世界は蛇神のもの。最早誰にも止める事など出来はしない。
「とゆーことでお主ら、さあ存分に撃ってこい! ハチの巣にしてやるとか叫びながら!」
『ふざけた真似を……!』
 圧倒的なパフォーマンスに心を動かされながらも、僅かに残る殺意を振り絞りガトリング砲を斉射するオブリビオン達。炸裂音の多重奏と共に凄まじき火線が菘に襲い掛かるも、蛇神はニタリと笑みを浮かべて全く動じる事は無い。
「ハッハッハ、効かん」
『何あれ』
『バリアだ』
 そうだ。溢れる邪神オーラがあらゆる攻撃を弾き返すのだ。ノリにノった菘に生半な攻撃など舞台を彩る照明も同然。そして音も無く這い寄れば、黄金の左が容赦無くオブリビオンを屠っていく。
「そぅれ……接近されてしまったらアウト、実に単純であろう?」
『貴様ッ!?』
 派手に震える砲口を右手で捻り潰し、残る左が威力を放つ。一つ、また一つと積み上がる骸を見てアイカワ達は改めて戦慄した。猟兵の力に、蛇神の凄まじさに。
「精々ド派手にブッ飛ぶがよい!」
 高々と拳が振り上げられて、最後の一人が見開き二ページめいた体勢で宙を舞う。その向こう――バリアにぶつかった骸がバチリと爆ぜて、農場の戦いはここに終焉を迎えるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『環境浄化・対変異兵器決戦用超大型偽神兵器』

POW   :    救世竜は乙女を贄とし/小型飛竜型偽神兵器一斉出撃
自身の【操縦者(フラスコチャイルド志願兵)の負担】を代償に、【自身内部の防衛も行う遠隔操作型偽神兵器群】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【大量生産と並行制御での物量・爪牙での捕食】で戦う。
SPD   :    乙女の慈愛は地に満ちて/全銃座斉射・浄化粒子散布
【操縦者が語る「敵を倒し環境を改善したい」】という願いを【巨大立体映像と大陸規模の電波ジャックで人】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
WIZ   :    果てに竜と乙女は過去に墜ち/Oストーム砲最大出力
自身の【勝敗無関係に翌日の操縦者(代替不能)の命】を代償に、【対人・対物銃座弾幕と共に口部砲の最大出力】を籠めた一撃を放つ。自分にとって勝敗無関係に翌日の操縦者(代替不能)の命を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はトリテレイア・ゼロナインです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●狂気の器
『……バリア解除。万が一ってのもある。警戒を怠るな』
 歓喜の声を上げるアライグマ達を尻目に、アイカワはバリアが解除された周囲を慎重に見渡す。しばらくしてゆっくりと動く影が目に入り、警戒しつつその方へ足を向けた。
『……まさか、負傷者か?』
 先の戦闘時に収容が間に合わなかった人員がいる可能性は考慮していた。幸い命に別状が出る程の怪我では無かったが、常軌を逸した戦いを目の当たりにした負傷者は、息も絶え絶えにアイカワへ質問を投げかける。
『なあ、戦いは……』
『ああ、終わった』
 もう戦いは無い。農場へ戻れば治療も出来ると励まして、負傷者を背負ったその時――悪意に満ちた声が響いた。
『それは良い事を聞いた』

『バリア発生装置――ジジィの戦車の残骸をあんな風に利用するとはな』
 アイカワの目の前で敵の残党が立っていた。機械の義肢は火花を散らし、全身を真っ赤に染めたその生命は最早風前の灯火。されど瞳に並ならぬ憎悪の炎を点して、農場の一点を――バリア発生装置らしき巨大なアンテナを睨みつけている。
『何をする気だ!』
『こうすんだよ。アレのホントの使い方――』
 刹那、義肢が凄まじき勢いで爆発――その勢いを利用してアンテナの、バリア発生装置へと辿り着いた残党が、最後の力を振り絞って死神爺が遺した浮遊戦車へ何かを捻じ込む。
『さあ目覚めろ、竜よ!』
 そして、この世のものとは思えぬ悲鳴の様な咆哮が、農場一帯に轟いた。

『おはようございます、マスター』
『能書きはいい。奴らを蹴散らせ』
 それは、天井に眩い光の柱を放ち、汚れ無き純白の翼を広げ飛び立った。
 それは、大蛇の様な長い胴体に、巨人めいた逞しい四肢を持っていた。
 それは、かつて世界を救う為に造られた、人類の希望……だったモノ。
『では、失礼します』
 厳かな電子音声が響き渡り――突如、白き竜より無数の触腕が放たれた。
『な……何を……まさか!』
 それに触れた敵――フラスコチャイルド群は、骸なる間際の者も全てが、一様に呆けた面を曝していた。ただ一人、彼のモノを目覚めさせた少女を除いて。
『多数の残存フラスコチャイルドを確認。確保、及び戦闘形態へ移行――』
 その触腕が薄緑の光を放ち、雁字搦めにフラスコチャイルド達を巻き上げる。まるで繭玉の様に竜の全身へと纏われて――そして、取り込まれた。
『最初から、こうするつもりだったか――ジジィめ!』
 何故ならば、この超大型偽神兵器はフラスコチャイルドを動力源とする禁忌のマシン。世界を愛し救わんとしたかつての搭乗者の記憶ごと歪められ、マシンはひたすらに、世界を――過去を取り戻す為にその暴威を振りかざす。
『こんな……所で……!』
 そして最後の一人が、希望に満ちた記憶に取り込まれ――この世界から葬られた。

『ああ、バリアが……』
 竜の出現と共にバリア発生器はそのエネルギーを全て失った。孵卵器とも呼ばれた通り、彼のモノを孵化させる為に全ての力を使い果たしたのだろう。だが。
『発生器は生きてる! 電力は俺が何とかする! だから!』
 生体電流はアイカワの十八番――後は、あの竜を叩く事さえ出来ればいい。命をとしてバリアを再稼働させたアイカワが、最後に叫んだ。
『頼む! アレを破壊してくれ! 俺達の……この世界の、未来の為に!』

※プレイング募集:7/22(水)8:31 ~ 7/25(土)8:30 迄
※先の集団戦で使用したWIZのユーベルコードは効果が著しく減衰します
アルトリウス・セレスタイト
数が減ったな
面倒は少なくなった訳だ

受ける攻撃は『絶理』『刻真』で自身を異なる時間へ置き影響を回避
此方の行動は目標が存在する時間へ向け実行
必要魔力は『超克』で“世界の外”から汲み上げる

破界で掃討
対象はオブリビオン及びそのユーベルコード
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無


高速詠唱を『刻真』で無限加速
多重詠唱を『再帰』で無限循環
「瞬く間もなく」天を覆う数の魔弾を生成、全てに『解放』を通じ全力で魔力を注ぎ干渉力を最大化

射出の瞬間を『再帰』で無限循環させ、正面から間断無い斉射で砕く
余地を与える気はないがユーベルコードも対象内
故に反撃しても飲み込んで消し飛ばす心算
火力と物量で圧殺する



●偽りの創世
「数が減ったな――面倒は少なくなった訳だ」
 高空に威容を示す白竜を見上げて、アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は静かに呟いた。倒すべき敵が一つならば、余計な気を回す必要も無い――ぼうと青白い光を全身に纏い、逸脱者は宙を舞う。
『警告。最大危険対象確認、全武装開放――』
 その先触れを感知した白竜がけたたましい音を上げて、花火の様な無数の火線を放ち始めた。その光はやがて一方向――アルトリウスの方へと集束し、彼の自由を奪うべく容赦の無い弾幕が、ハレーションの様に鋭く襲い掛かった。
「ほう……」
 圧倒的な物理的火力。だがその程度では逸脱者を捉える事など不可能。揺らいだ空間に溶け込む様に姿を消したアルトリウス――途端に白竜の周囲へ、全てを滅ぼす超常の蒼き光が間断無く放たれた。
『微弱な次元震動より事象の揺らぎを確認』
 光が薄皮を剥ぐ様に白竜の表皮を徐々に抉る。抉る傍から新たな表皮が生え変わり、傍目には蒼と虹色の極彩色が空を鮮やかに彩っていた。だがそれらは全て破壊の権化。流れ弾が施設に張られたバリアに当たる度、バチリと轟音と共に紫電が迸る。正に創世の神話じみた、破壊の嵐が世界を覆っていた。
『ライブラリより推定。約三千万通りの存在変動値から事象の根源への迎撃を開始』
 それでも、白竜は動じず。黙々と弾幕を張り、表皮を再生させながら姿を消したアルトリウスへ狙いを定める。先の戦いとは違う超常……されどその原理が元を同じとするならば、せめて異能の位置を辿る事は出来る筈。そして埒外の演算が導き出した条理への帰結は、世界すら滅ぼしかねない恐るべき破壊という答えだった。

「やれるとでも、そんな事が?」
 漆黒に揺蕩うアルトリウスが独り言ちる。存在を現世に固定させないという、断絶と万象の原理ごと己を消滅させるなどと。しかし、もしそれが出来るとしたら、恐らく答えは一つ。
『オブリビオン・ストーム砲、出力最大――』
 同じ原理を持つ他無い。あるいはそれに近しい波動――骸の海、オブリビオン・ストームと呼ばれるこの世界特有の『世界の根本を覆す原理』であれば、全てをひっくり返す事すら出来るかもしれない。
「成程、海を通す……」
 多次元の扉を開き、点と点を繋ぐ事が出来れば原理的には可能だ。そしてその余波は間違いなく、この世界の根本すら揺るがしかねない破滅を齎す。
『ディメンション・バタフライ・エフェクト――次元震動の影響範囲』
 白竜が甲高い鳴き声を――口腔内破滅砲の門を開く。薄暗い空間が、骸の海がぞわりと漏れて、一瞬にして周囲の空気が変容した。そして砲門が向く先には農業施設が。生命の破滅をもって骸の海との結びつきをより強固にし、原理ごと飲み込むつもりか。
『推定、本エリアの消滅』
「させるか」
 静かにアルトが吼える。そんな事を、いの一番でさせるわけにはいかない。ましてや自身を滅ぼす代償に、この世界ごと破滅に導くなどと――それ以上は、言葉にならない揺らぎが自身を支配した。たとえこの身を晒そうと、それだけは断固妨げる。
 白竜の身を穿つ無数の蒼き光が途端にその威を消した。直後、暗黒の嵐が白竜より放たれて、世界を白と黒のコントラストが覆い尽くす。しかしその破滅が施設に辿り着く刹那、モノトーンの創世は眩い蒼に包まれた。

「元より反撃しても飲み込んで消し飛ばす心算だ」
 それこそ超常の破界……埒外の破滅同士がぶつかり合って、世界は一変する。バリアの外の道路が、岩塊が、荒地が全て巻き込まれ、そこら中に歪な大穴が撒き散らされる。そして白黒の破滅が僅かに威力を無くした瞬間、蒼き光は遂に白竜すら飲み込んで、その巨体を地に叩き伏せた。
 無限光に代償を要する超常が敵う訳が無い。だがアルトリウスは直ちに追撃を始められない――面倒だが、放たれたオブリビオン・ストームを全て止めなければ、この世界に新たな脅威が蔓延する。蒼き光が四方へと飛び散って、災厄の嚆矢をひたすらに迎え撃つ。破滅には破滅を、創世には創世を。それぞれの存在を賭けた最後の戦いは、遂に幕を上げたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

春乃・結希


アイカワさんに頼まれたら、頑張るしかありません!
『with』と私でガラクタにしてあげますっ

空に浮かぶ竜を見上げ
…正直言ってカッコ良すぎる…私も乗ってみたい…
壊すのはちょっと勿体ないけど…この拠点を守る方が何百倍も大事だから

UC発動
緋色の翼で竜へ向かう
あの映像…今の私たちは悪者に見えてるというわけですね
なら、悪者らしく、正義の味方を叩き落としてあげます

翼から鋼鉄さえ蒸発させる焔を迸らせながら【オーラ防御】
巧みに翼を羽撃かせ、斉射の隙間を縫うように接近【空中戦】
全力で『with』を叩きつけます【怪力】【鎧無視攻撃】

正義は勝つとは限らないっていうやろ?
大丈夫…あなたの想いは、私達が引き継ぎます



●共に往く為に
『……この声が届く全ての命ある者達へ』
 地に伏せた白竜が震えると共に、無数の光の球が放たれる。それらは空中に巨大な映像を広げ、更にネットワークへ侵入。白竜が紡ぐ偽りの戦いの記録を映し出した。
「何か、凄い事になってます……けれど」
 春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)はクレーターに囲まれた施設の外で、凄まじき破壊の残滓を見やり呟く。埒外の戦い――猟兵とオブリビオンの戦いは、こうも恐ろしいものなのかと。そして見上げた視線の先には、白竜が描いた戦いの記録が。倒れ行くフラスコチャイルド、炎に包まれる都市、大破壊――この戦いだけでは無い、恐らくは彼の者が内包していた過去そのものが映されているのだろう。そしてその中に時折揺蕩う白竜が、決死の戦いぶりを見せ付けていた。
『世界は生まれ変わります。ですがそれを妨げる者達が……』
 まるで世界を救わんと奮戦する白竜。確かにかつてはそうだったのだろう。だが、今は――過去だ。骸の海に歪められた破滅への意志だ。しかしこれを見れば、何も知らぬ者は白竜へ救世を祈らざるを得ない。だが。
『……騙されるな……あれは……』
 声が聞こえた。施設の中から僅かに生きる回線を使って、何者かが抵抗の映像を流していた。バリアで歪んだ映像に乗せて、一人の羊が声を枯らして叫んでいる。
『だから……あれを……倒して……』
 ブツリと映像が途切れた。白竜による干渉だろう。だがその声は間違いなく、届いていた。
「アイカワさんに頼まれたら、頑張るしかありません!」
 がらんと漆黒の大剣を担いで、結希が雄叫びを上げる。途端、超常の焔の翼が広がって――悪しきに異を唱える様に、火柱が爆ぜた。
『お願いです。力を……より良き世界の創造の為に』
「『with』と私でガラクタにしてあげますっ!」
 白竜がふわりと舞う。それと合わせる様に、緋色の翼は空を駆けた。

「壊すのはちょっと勿体ないけど……この拠点を守る方が何百倍も大事だから」
 眼下に漂う白竜を見やり結希が呟く。流石、旧時代の決戦兵器。正直言ってカッコ良すぎるし、私も乗ってみたいかも。だが。
『この様に、彼等は世界を破壊しようと……』
「あの映像……今の私たちは悪者に見えてるというわけですね」
 世界を破壊しようとする輩に慈悲は無い。偽りの救世主を下す為に、焔は唸りを上げて元凶へと飛び込んだ。
「なら、悪者らしく、正義の味方を叩き落としてあげます」
 不意に無数の火線が結希を掠める。流石に気付くか……だが、この程度で怯まない。歪められた願いと私の想い、どちらが上かはっきりさせよう! 狙うは白竜の中心、星型のコアっぽい部分!
「そんな攻撃で、怯むとでも――!」
 声援を受けて立ち上がったのはあなただけじゃあない。秘めた願いは一緒でも、向いてる方が違うのならば決着を付けなければ。広がる焔の翼は鋼鉄の弾雨すら焼き溶かし、縦横無尽に駆け巡る結希に一矢を報いる事すら叶わない。瞬く間に白竜の懐へと飛び込んだ結希は、大剣を諸手で突き出し、勢いそのままにその中心へと差し迫る。
『この声が……届……く……』
「遅いわ。いいや、遅かったんよ……」
 金属がぶつかり合う甲高い音が響いた直後、ジジ、と空気を震わせて立体映像が姿を消す。それと共に白竜の声が収まって、辺りは再び静寂に包まれた。
「正義は勝つとは限らないっていうやろ?」
 結希の大剣が白竜の中心部分を貫いたのだ。ひび割れた結晶構造はされど、急速にその穴を埋める様に修復されながら、我が身を守る様に無数の触腕が結希に飛び掛かる。
「大丈夫……あなたの想いは、私達が引き継ぎます」
 ブンと大剣を振り回し悍ましい魔の手を遮る結希。その心で必死の思いで世界を救わんと戦った白竜の――過去の想いを受け止めながら。焔の翼を羽ばたかせ、少女は希望の火を灯し続ける。

成功 🔵​🔵​🔴​

メイスン・ドットハック
機械の竜とはまさにこのことじゃのー
フラスコチャイルドは可哀そうじゃけど、眠らせてやるのも慈悲じゃろーのー

弾幕と口部砲を撃たれる前にUC「23の雷雲の無限竜を制し者の権能」を発動させ、周囲を覆いつくす雷雲と、帝竜ワームと帝竜ワーム培養体と分身体を召喚
ワームに乗って、雷雲に隠れるように行動させ、弾幕を回避していくよう動き回る
そして分身体の方を囮にして、口部砲と共に雷のブレスで攻撃させ、相殺あるいはこちらがやられることも想定し、本体は反対側から偽神兵器を雷のブレスで撃墜させるよう、行動させる

残念じゃけど竜は一体ではないからのー

他の仲間も雷雲に隠れさせるのも可能なので、目くらまし援護
アドリブ絡みOK


雨咲・ケイ

なるほど、まさにこの世界を象徴するような
オブリビオンですね……。
しかし……先程の彼女達もかつては
浄化されたこの世界を夢見ていたのでしょうか?


【SPD】で行動。

バリアが再稼働したとはいえ
長引かせるわけにはいきませんね。
敵を施設から引き離すように動きましょう。
ルミナスからサイキックエナジーを放ち、
牽制しながら敵の注意を引き付けていきます。
敵の攻撃は【オーラ防御】と【盾受け】を併用して防御。
ダメージはスノーホワイトの薔薇の香気で癒します。

この世界を浄化するのはオブリビオンではありません。
この世界に生きる人々なのですよ。

施設から離れたら主に敵の銃座を狙って【光明散華】を
放ちましょう。



●竜が如く
「なるほど、まさにこの世界を象徴するようなオブリビオンですね……」
 雨咲・ケイ(人間の學徒兵・f00882)はズタボロになりながら空中に浮かぶ白竜を見やり、感心する様に声を上げる。破壊と扇動、確かに世が世ならばこの世界の決戦兵器として差し支えない、頼もしき存在であっただろう事が伺える。
「でも、フラスコチャイルドは可哀そうじゃけど、眠らせてやるのも慈悲じゃろーのー」
 その傍らでメイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)がしたり顔で呟く。ゴーグル越しに白竜の状況を精査しつつ、次なる手の前に叩き伏せる算段を――あのフラスコチャイルドが先の戦いの情報を同期しているならば、多少は手を変えるか。
「しかし……先程の彼女達も、かつては浄化されたこの世界を夢見ていたのでしょうか?」
「それは分からんのー。分かってるのは……」
 一枚の札で足りぬなら、それを増やせばいい。ケイの言葉に応じつつ、らしからぬ脳筋な計算結果に嘆息して、メイスンは中空に巨大な電脳魔方陣を再び顕現させる。現れたのは、先の戦いと同じ帝竜ワームの培養体。そして。
「奴はぶちまわすしかないって事じゃけ―」
 超常が新たな超常を呼び起こす。巨影はその威を増して――分身体を呼び出したワームが、二体の巨竜がまるで竜巻の様に、空高くへと駆け上っていった。

『エネルギー充填、88%……』
 機能中枢を司る結晶部分を修復しながら、合わせて破滅砲へのエネルギー充填を進める白竜。その周囲には一つ、また一つと光の球が姿を現し、続けてアジテーションを敢行すべくその威を解き放たんとしていた。しかし先の戦いで失った力は余りにも大きい――それでも、世界を諦めぬ白竜は再起を賭して身を震わせる。
『警告、超高エネルギー反応接近』
「機械の竜とはまさにこのことじゃのー。じゃが」
 不意に莫大なエネルギー反応を白竜が検知した。その頭上にはいつの間にか黒々とした雷雲が――その中を二つの巨大な影が、稲妻の様なスピードで押し迫る。
「所謂ダブルドラゴンじゃけー。さあ……」
「参りましょう。バリアが再稼働したとはいえ、長引かせるわけにはいきません」
 それこそメイスンが呼び出した帝竜ワームが二つ。その背に跨った二人の猟兵は漲る雷撃と共に、電脳ミサイルと念動の刃で白竜の機先を制する。瞬間、バチバチと飛び散った火花が両者の視界を覆い尽くし、漆黒に鮮やかな光が迸る。圧倒的な先制攻撃にそれでも、白竜は迎撃の弾幕を張りながら再び立体映像を空中へと浮かび上がらせた。
『ご覧ください……彼等はこのような……』
「させませんよ」
 弾幕の中を掻い潜り、ケイが銃座たる表皮の隙間へ超常の光を浴びせかかる。軌道を読み切れば躱す事も、そしてその根本を撃つ事も容易い。ましてやこちらも竜なのだ――白竜の迎撃だろうと梨の礫。張り巡らせた気のフィールドが、翳した盾が、豪雨の様な弾幕すら物ともしない。
 更に被せる様にメイスンが周囲に無数の電脳魔方陣を浮かび上がらせれば、途端に立体映像と扇動の音響を瞬く間に無力化せしめる。電脳魔法のハッキング――それこそ彼女の本分。生半な電子戦闘など、メイスンの足元にも及ぶ訳が無い。これでは僅かに集った祈りの力も、瞬く間に消費され尽くす。
「残念じゃけど竜は一体ではないからのー。それにハッキングは僕の十八番じゃけー」
「引き離せました。敵主砲は……」
 そして同じサイズの帝竜に追い回されては、さしもの決戦兵器も無事では済まされない。猟兵からの直撃を回避する機動を取り続ける内に、白竜はいつの間にか施設より遠くへと引き離されていたのだ。
「任せるけーのー。天地開闢の帝竜の名は伊達じゃない」
 最早これまで。半端ながらも十分に威力をしたためた破滅砲を放つ以外、この難局は切り抜けられぬ――そう判断した白竜が大口を開けた刹那、二体の帝竜が合わせる様に極大の雷のブレスを、白竜へ向けて解き放つ!
「銃座は私が!」
 牽制の弾幕は続けてケイが制している。これで裁きの雷を逃れる術は無い――瞬間、暗黒と白雷がぶつかって、再び世界は白と黒に包まれた。

『こ、の……』
 せめて雷のブレスが一つであれば耐えられただろう。だが二つの雷は一つが破滅砲を相殺し、一つは白竜の身を粉々に焼き砕いた。代償にしたフラスコチャイルドの遺骸を投棄して、次なる代償を取り込んで間一髪大破を凌ぐ白竜。バラバラに漂った自身の肉片を触腕で収集し、急ぎ修復を敢行する。その間、いつの間にか二体の竜は黒々とした雷雲の中へと消えていた。
「この世界を浄化するのはオブリビオンではありません……この世界に生きる人々なのですよ」
 空に響く凛としたケイの声が、残された薔薇の香気が、今を生きる者の意思を雄弁に物語る。決して諦めない――それはかつて自身と添い遂げた小さな生命と同じ様に、生命の光を白竜に感じさせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィーナ・ステラガーデン

なんかこの世界に似つかわしくない見た目ね!竜かしら?
アイカワに言われなくてもバラバラにしてやるわ!
なんか中に入ってる操縦者ひどいめにあってそうだけど
まったく気にすることはないわね!

そーねえ。とりあえず仲間と共に行動したいわね!
最初はどんなもんか【属性攻撃】による火球を打って様子を見るわ!
ちょっとやばそうな相手だと思ったら後衛にまわって詠唱を開始するわ!
前線は仲間猟兵に任せて仲間がピンチになりそうだったり
別にそーでもなく長時間維持できるならめいいっぱい【魔力溜め】をして
召還されてる兵器群もろともUCでズバーンとなぎ払うとするわ!


御形・菘

はっはっは、世界の未来とは大きく出たではないか!
だが素晴らしい! リーダーの志はそうでなくてはならん!
ならばお主らに見せてやろう、妾の本気を、覚悟を!

まずは側面に回り込むとしよう
砲撃の余波が後方、施設へ抜けては困るのでな?
とゆーことで、さあ浪漫と渾身をブチ込んでくるがよい!
覇気にカリスマ、諸々オーラで全力防御だ!

はーっはっはっは! 実に映える一撃であった!
しかし妾を先制で削り切るという、誉れ高き剛の者には成れなかったのう
そして! 唯一最高の機を逃したお主に、もう勝ち目は無い!
偽りの希望とともに、左腕によって砕け散るがよい!
…そもそも、他人の命を勝手に代償とする時点で敗北確定であったがのう!



●破滅を越えて
「はっはっは、世界の未来とは大きく出たではないか! だが素晴らしい!」
 一方その頃、バリアの向こうで息を切らして発電するアイカワの前に、大柄な蛇神――御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)が堂々と立っていた。
「うむ、リーダーの志はそうでなくてはならん!」
『ハァ……ハァ……』
「なんかこの世界に似つかわしくない見た目ね! 竜かしら?」
 その横、小柄な魔女――フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)が呆れた様子で遠くを見やる。視線の先には火花を散らす白竜の姿が。
『ハァ……なんで、出来るだけ……早く……オナシャス……』
「言われなくてもバラバラにしてやるわ!」
「ではお主らに見せてやろう、妾の本気を、覚悟を!」
 口元を歪ませて二人が笑む。子分の様な弟子の様な彼等を痛めてくれた借り、どれだけ倍返しにしてやろうか、と。

「って、早速何か一杯ぞろぞろと出て来たわね!」
 空を飛び先行したフィーナの前に、バラバラと無数の子竜が姿を現す。それはまるで白竜の現身の様な――いわゆる戦闘端末の類だった。それらが整然と居並び魔女を迎え撃つ姿は、正に神話の決戦の様相。
「まあ、全部燃やすけど!」
 だがそんなの関係無え。立ち塞がる物は全て焼き尽くす。これまでも、これからも。手にした花の杖から放たれた真っ赤な光が一閃――高密度に圧縮された炎の塊が、小竜の群れを焼き払う。それを躱そうと散開するも既に遅い。続けて放たれた無数の炎の礫が、まるで花火の様に飛び交う群れの尽くを爆ぜさせる。
「こんなもんかしら? って、何アレ!?」
 したり顔で白竜に視線を返したフィーナが見たもの――それは巨大な暗黒の球体。小竜を囮に、全てを滅ぼす破滅の光をしたためた白竜が薄緑のセンサを明滅させて、空を舞う魔女へと面を向けた。その時。
「フハハハ……足元がお留守だぞドラゴンもどき!」
 不意に白竜の側面から禍々しい波動が迫り来る。それは菘が放った超常の闘気――すかさず光の翼を広げてより高くへと舞い上がり、間一髪で菘の一撃を躱した白竜がその狙いを蛇神へと向ける。
『敵性反応確認……破壊する』
「とゆーことで、さあ……浪漫と渾身をブチ込んでくるがよい!」
 そして暗黒の破壊砲が轟音と共に、邪神が立つ大地を大きく抉り取った。

「はーっはっはっは! 実に映える一撃であった!」
 クレーターじみた大穴の中心、そこだけ異様に盛り上がったお立ち台のような場所で菘はニヤリと口端を歪ませる。凄まじき破壊の権化も、世界の果ての蛇神にしてみればちょっと痛いよく目立つ取れ高の小道具に過ぎない――張り巡らせた凄まじきオーラがその直撃を辛うじて防ぎ、ぴゅーぴゅーと噴水の様に血が噴き出しているようにみえるが妾は無事だ。そうなのだ。カリスマじみたスマイルで遠目に配した撮影ドローンに視線を送り、菘は更に言葉を続ける。
「しかし妾を先制で削り切るという、誉れ高き剛の者には成れなかったのう」
「ちょっと、危ないじゃない! 更に何か湧いて来てるし!」
 正にラスボス級風格。その周りを帽子を押さえて飛ぶフィーナが悪態を突き――破滅砲に抉られた大地から蘇ったオブリビオン、機械の獣の群れが猟兵達へと這い寄ってきた。
「それじゃあさっさと――汚物は消毒よッ!」
 でもそんなの関係無え。邪魔するならば……幾らでも焼き尽くす。瞬間、のらりと立ち上がった機械の獣達が続々と火達磨に――この世界はアポカリプスヘル。そうされて文句は無いでしょとフィーナはほくそ笑む。
「そして! 唯一最高の機を逃したお主に、もう勝ち目は無い!」
 続けて菘の左腕が――数多の怨みを封じた祭壇型兵装が展開し、漆黒の邪気が辺りを覆い尽くした。
「丁度いいわ、こっちもうんたらかんたら……」
 傍らでブツブツと呪文を唱えるフィーナ――途端に花の杖の先端が開き、尋常では無い超常の炎が、巨大な真紅の刃と化して解き放たれる。
『非常事態、代償交換――全端末開放、エネルギー充填……』
「偽りの希望とともに、左腕によって砕け散るがよい!」
「なぎぃ……払えぇぇえええ!!」
 そして折り重なった超常のオーラと真紅の刃が、竜巻の様に猛然と白竜を飲み込んで――そのまま、荒れ狂う暴威はその巨大な体躯を大地に叩きつけ、赤々と焼き尽くした。バチバチと飛び散ったオーラが白竜を縛りつけ、二度、三度とまるで鈍器めいた何かで叩き付けられる様に巨大な炎の刃が振り回される。端末は勿論粉々だ。こんなもの、何度も耐えられる訳が無い。
「……そもそも、他人の命を勝手に代償とする時点で敗北確定であったがのう!」
「何か中に入ってる操縦者酷い目にあってそうだけど、全く気にする事は無いわね!」
 ここが黙示録の地獄だ――色を失った大地は真っ赤に焼き尽くされて、漆黒が戦場を支配する。何度過去が立ち塞がろうと、幾らでも未来が叩き伏せてくれる。強き意志とヴァイオレンスが、遍く悪意を打ち破る――それはどの世界でも不変なのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

カタリナ・エスペランサ
アイカワにも無理はさせたくないしね
いいよ、正面から相手になろう!

《封印を解く+ドーピング+限界突破》して【失楽の呪姫】を最大出力で起動、光輪と六翼を備えた真の姿を強制励起。
嘗て未来の為に全てと戦った魔神の力だ、キミの相手にはぴったりだろう?

魔神の魂で《オーラ防御》を強化して概念的な影響を遮断、攻撃は《第六感+戦闘知識》で《見切り》回避
斉射や粒子散布は雷羽の弾幕と劫火の嵐で迎え撃つよ

サイズ差は《空中戦》の機動力で補う
屠竜刀に《武器改造》したダガーと蹴撃の《早業+怪力》、黒雷と劫火の《属性攻撃》で攻め立てよう

未来をいま背負ってるのはアタシたちさ
過去に墜ちた救世竜、旧き希望――今一度眠りにつく時だ!



●希望の翼
「随分と大変な事になっているみたいだけど……」
 立ち昇る炎と破壊の嵐を見やり、カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)は嘆息した。猟兵もさることながら敵も強大――故に、かつてない規模の戦いが続けられている。
「うん。アイカワにも無理はさせたくないしね」
 原形を全く留めていない地形、変質し過ぎた大気、そこかしこに撒き散らされた新たな破壊の残滓。どれ一つとっても生半な敵が相手では無い事が見て分かる。だからこそ、あの白竜は絶対に止めなければならない。
「――いいよ、正面から相手になろう!」
 端末にアクセス。拘束術式解除と共にブーステッド・オン――途端、三対の白き翼がカタリナの身を包み、眩い光輪が頭上に顕現する。自身の全てを開放し、超常の――魔神の力を上乗せする。最初からクライマックスだ。格好よく決めさせてもらおうか。

『……警告、高エネルギー反応発現。迎撃用意』
 カタリナの変異と魔神を宿した超常の力を感じた白竜はすかさず、光の球を三度周囲へと投げ放つ。先の猟兵との戦いはダメージが大き過ぎた。直ちに動くのは得策ではない――せめて力を蓄え、我が身を治す事が先決。だがそんな時間をカタリナが与える訳が無い。
「嘗て未来の為に全てと戦った魔神の力だ、キミの相手にはぴったりだろう?」
 稲妻の様な機動で肉薄したカタリナは、雷を纏った羽根を刃にして投げ放つ。それも一つでは無い――無数の稲妻の礫が三対の翼より降り注ぐ姿は天罰の如き。更には地を舐める様に劫火が覆い、倒れ伏せる白竜を焼き続ける姿は黙示録の一節の様だ。
『警告、ダメージ許容値を大幅に超過。緊急迎撃モード並びに急速修復モードを実行』
 爆発音と共に悲鳴の様な電子音が辺りに響く。ネットワークへの侵入速度が加速し、施設内の端末がけたたましいアラートを上げて……しかしそれも、徐々に薄れていく。
「未来をいま背負ってるのはアタシたちさ」
 湾曲した厳かな屠竜刀――変形したダガーと鋭い蹴撃が、次々と光の球を潰していく。その度に白竜の超常は、願いは、世界を歪める偽りの希望は力を失って――カタリナの齎した奇跡の前に、最早成す術も無い。
「過去に墜ちた救世竜、旧き希望――今一度眠りにつく時だ!」
 天使が叫ぶ。炎が爆ぜて雷が一帯に轟けば、光の如き速度で迫ったカタリナの蹴撃が白竜を襲う。羽ばたき、天に舞う事すら叶わない。狙うは中枢、胸部結晶構造に必殺の蹴りを――そして大地を揺るがすその一撃が結晶を粉々に砕いた時、白光がカタリナの視界を覆い尽くした。

「倒したか……?」
 手応えはあった。強靭な外骨格ごとバラバラにした自信がある。端末も、光の球も、何もかもが地に落ちてさらりと砂状に崩れていった。これで終わったか――否。蛇は自らの肉体を破り、蘇るモノ。
『――モード切替』
 突如、静かな電子音が響いた。雲間より差す陽光があたかもその遺骸を祝福する様に降り注げば、横たわる白竜の遺骸に亀裂が走り、新たな白蛇が中より現れる。
「仮死モードだったと!? 決戦兵器の癖に……」
 如何なる状況になろうとも勝利を諦めない。たとえ無様にその身を晒そうと、全ては明日の勝利の為に――旧世界を守るべく戦った古強者は、数多の代償を糧にこの場へと蘇った。
「見苦しい真似を。まあいいよ」
 アンコールならば受けて立とう――勝ち目のない戦いを覆すのは初めてじゃあない、伊達に暗黒世界を生き抜いてはいないのだから。再び羽ばたいた白竜を見据えて、ニヤリとカタリナは口端を歪めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

柊・はとり


こいつが人類の希望だと…?あり得ねえ
人命を犠牲にして得られるモノなんて録なもんじゃねえよ

コキュートス、お前の同類だぞどうすんだよ
『はい、柊はとり。私達は人類の希望です』

…ああ、クソッ、
俺の命なら幾らでも持ってけよ!

殺気と炎で多少減退が効くだろうが
砲撃をモロに受けたらどうなるか分かんねぇな
【第六感/見切り】で直撃は避けたいが
奴が施設を狙うなら負傷は【覚悟】して【かばう】
【全力魔法】で【氷属性】のバリアを重ね張りしアイカワを支援

コキュートス
腐っても希望だってんなら
あの嵐を喰らってやれ!

そう連発は利かねぇだろ
砲撃直後を狙い一気に落とす
『第三の殺人・十三階段峠』…
探偵の目の前で殺人が犯せると思うなよ


サエ・キルフィバオム(サポート)
猫かぶりな妖狐で、直接的な戦闘というよりも、情報を集めたり、不意打ちやだまし討ちのような奇襲を得意とします

猫をかぶってる時は「あたし」と自身を呼び、語尾に「~」が入るような間延びしたしゃべり方をします
真剣な時は「私」呼びになり、口数は少なくなり、語尾の間延びは消え、気に食わない相手には結構キツめの口調になります

「ごめんなさい、あたし道に迷っちゃってぇ~……」
子供らしく振舞って油断を誘う、色気を出して魅力で釣るなど、あの手この手を使います

「は?私がそんな事許すと思った?」
本性を現し後ろから絞殺糸を巻き付けるようなイメージです

基本的に行動はおまかせします
アドリブや絡み歓迎です
よろしくお願いします



●証明終了
「こいつが人類の希望だと…? あり得ねえ」
 柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)は再び空へと舞い上がった白竜を見上げて舌を打つ。確かにかつては希望だったのだろう。だがそれが今齎すものは、圧倒的な絶望だ。抗う事を許されない、圧倒的な破壊と暴力の嵐だ。
「コキュートス、お前の同類だぞどうすんだよ」
『はい、柊はとり。私達は人類の希望です』
 手にした黒鉄の柄が――偽神兵器のAIが淡々と解を述べる。私“達”――それは俺達の事か。あるいは、あの白竜と同じ偽神兵器の事なのか。だが不明な過程を証明している場合では無い。皮肉なのか真面目なのか、冷気を帯びた大柄な得物をゆったりと担いで、はとりは再び舌を打つ。
「……ああ、クソッ! だったら、俺の命なら幾らでも持ってけよ!」
 その解が『希望』である限り、俺達が成すべきはたった一つ。
「コキュートス、腐っても希望だってんなら――」
 瞬間、黒鉄がまるで巨大な結晶めいた超常の氷な刃を形成する。偽神兵器たるコキュートスの真の姿、命を喰らう嵐の剣が吹雪と共にその姿を顕現させた。
「あの嵐を喰らってやれ!」
 そして証明してやるのだ。白竜にその存在が過ちであるという事を……瞬間、不意に背後から甘ったるい女の声が聞こえてきた。
「クシュン! 何か大変な事になってるみたいですねぇ~」
 見れば派手なピンクの衣装をまとった妖狐の姿が。場違いな、それが第一印象。だがその佇まいに隙は無い。恐らくは同業か……それが二つ目。
「誰だあんた。悪いが取り込み中だ!」
 手にした化粧道具で胡乱にも身支度を始めた女――サエ・キルフィバオム(突撃!社会の裏事情特派員・f01091)を見やり、はとりは訝しんだ。この女はここを歓楽街か何かと勘違いしているのか?
「うーん、強いて言えばぁ~、今回は助手? みたいな?」
「だったら手伝え!」
 その称号はあんたの物じゃない。が、事件現場に必要なのはそう――探偵と助手。繋がった。この女も同業、だがあくまでサポートに徹するというのならばそうしてもらおう。
「言われなくても……」
 パタン、とコンパクト――実態は周囲を探る偽装ミラーだが――を閉じてサエが白竜を見やる。僅かに口元を歪ませて、懐より取り出したるは拳銃めいたレトロな形状のスピーカー。
「じゃあ証明開始よ、探偵さん」
 そしてキィンと響いた甲高いノイズと共に、最後の戦いが幕を上げた。

「あの攻撃がオブリビオン・ストームそのものであるならば」
 先制攻撃――白竜は有無を言わさず暗黒の塊をはとりとサエへ撃ち放つ。それはこれまでと比べて幾何か小さく見えた。だが戦場を制する事でこれ以上の抵抗を封じるというのならば、その選択に意味はある。グン、と大地にぶつかって大玉転がしの様に迫る暗黒が刻んだ轍から、ゾンビめいた無数のオブリビオンが同時に二人へと迫ってきた。既に分かってはいたが、やはりこの問題の……事件の鍵は、オブリビオンすら生み出す超常の暗黒を如何に封じ込めるか。
「存在変異が齎す破壊衝動と現実改変がその機能と仮定される」
 事実、その機能は既に発現している。ならば後はそれを無効化する為の証明――いつの間にか蒼炎がはとりの身を包み、まるで時が止まったかの様な冷たい風が、周囲に吹き荒れていた。
「だったら……って、ちょっと寒いんですけど!」
「同じものをぶつけてやればいい! それで相殺する!」
 聞けよ探偵! サエの抗議に耳も貸さず、はとりは吹き荒れる冷気を自らの拳に集中――冷気を孕んだ蒼炎が、絶対零度の火球となって暗黒へと打ち放たれる!
「――いやそれ証明なの?」
 でも、まあ、探偵が証明をするというならば、事件を解決する時だ。だったら少しだけそれを手伝ってやればいい。それで終了だ。ガチャリとスピーカーの出力を最大に上げて、サエは声を張り上げる。
「アイアムガーッズ」
 この腐敗した終末世界をどうにかしそうな美しい歌声が響く。如何なる超常現象すら覆す証明の物理攻撃を増幅するサエの歌声が、羽鳥の超常の蒼炎を更に肥大化し――そして。
「ただの冷気じゃない……熱は伝播するんだ」
「♪~ あ、バリアが」
 冷やされた空間が結晶化し、施設を包んだバリアへ覆い被さる様に氷のドームを重ね合わせる。こうすれば多少は敵の攻撃を遮る事も出来るだろう。全てを凍てつかせる氷のバリアが、一撃ぐらいはパリンと防いでくれるだろう。
「探偵の目の前で殺人が犯せると思うなよ。その暗黒ごと喰らってやる!」
「これがベスト、なのね。♪~」
 歌唱の合間にモノローグを入れつつ、探偵達が放った超常の一撃は迫る暗黒の破滅砲すら凍てつかせ、粉々に消し飛ばした。爆ぜた氷の礫はそのまま白竜の全身を穿ち、再生したての五体を冷気が蝕んで――そして、巨大な氷の彫像めいた姿へと変貌せしめる。

「――証明終了だ。その砲はもう使えない」
 かろうじで浮遊する白竜。だが全身を氷で覆われたそれが威力を放つする事は叶わない。
「ええ。でも……」
 しかし、全ての力を失った訳ではない。バラバラと崩れていく――凍らされて脆くなった表皮か――白竜の欠片が一つ、また一つと群れを成す様に集っていき。
「何か沢山来てるんですけどッ!?」
 叫ぶサエ。自ら戦う術を失った白竜は、五体を刻んで無数の眷属を呼び起こしたのだ。正に存在そのものがオブリビオン・ストーム。竜の骸より出でし小竜が、徒党を組んで探偵達の頭上へ迫る。しかしそれも織り込み済みだと言わんばかりに、はとりの眼鏡が妖しく光を反射した。
「次の事件か。いいだろう――コキュートス!」
『はい、柊はとり』
 証明を始めよう。何故ならば探偵がいる限り、事件は終わらないのだから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

編堵・希亜(サポート)
「……なに?」
「そうなんだ。」
「私は、私だよ。」

囚人服のようなものを着て、いつも黒猫のぬいぐるみを抱えた女の子。口数は少なく、人見知りで猜疑心は強いものの、猟兵としての仕事をこなすためなら、それなりに人と付き合っていける。
甘い物が大好きで、食べればすぐに機嫌がよくなる。嫌いなモノは、かつて自分のいたアリスラビリンスの世界と、それを連想させるもの。

戦闘では、自分ではあまり戦わず、自身に宿るオウガの『カイ』を戦わせたり、ぬいぐるみをバロックレギオンとして相手を押しつぶしたりする。

『カイ』は上等なドレスを着たラミアで、少し高飛車な話し方。宿主の身は守り、敵には容赦がない。『さぁ、敵はどこかしら!?』


アルト・ヒートヘイズ


成程、な。それだけ手厚く防御してぇってのは『中枢』の弱さの反証でもあるな。
問題はどれだけ兵器群を『すりぬけ』て内部のコクピットまで到達できるか、だが……逆に言えることがある。
『守りが手堅すぎる程中枢に近い』ってこった。
なら、地獄みたいな賭けに挑むのも悪くねぇ。外での戦いの合間を縫って、俺は『内側から』仕掛ける。

【指定UC】で全身を地獄の炎に変換。狙うは兵器の竜の中枢のコクピットだ。
只管に部品の隙間を縫うようにして進行、邪魔をするならば【鎧砕き】【償却】を絡めた【属性攻撃】で焼き払いつつ――

会いに来たぜ。『何も愛せなくなった』聖女様。
そんな聖女の末路は――言わなくても、分かるよな?

※アドリブ可



●強襲
「成程、な。それだけ手厚く防御してぇってのは『中枢』の弱さの反証でもあるな」
 アルト・ヒートヘイズ(陽炎の境界線・f16429)は飛び交う小竜――端末兵器を見上げてぼそりと呟く。全身を氷漬けにされて尚も抵抗を止めない姿に、兵器としての堅牢さと本体を守り抜かんとする強い意志――故にそこが弱点であるという明確な事実を感じ取った。
「問題はどれだけ兵器群を『すりぬけ』て内部のコクピットまで到達できるか、だが……」
 未だに奴は空中にいる。そして行く手には無数の小竜。これを潜り抜けなければ事は成せない……ならば。
「ねえ」
 思案するアルトの傍らに、ひょっこりと小柄な少女が現れた。その手には怪しげな黒猫のぬいぐるみ。
「あすこへ、いきたいの?」
「何だ、お前は」
 編堵・希亜(蛇に囚われた少女・f19313)は小首を傾げてアルトを見上げる。それを訝し気に眺めるアルトに続けて問いかける希亜。さながら、契約を持ちかける悪魔じみた様子に、痺れを切らしたアルトが言葉を返した。
「行きたいの? イきたいの?」
「ああ……そうだよ」
 俺はあそこまで辿り着きたい。地獄じみた賭けなのは元より承知。外での戦いの合間を縫って、俺は『内側から』仕掛ける――だがこのままでは、手数が足りない。
「だったら、手伝ってあげる」
 そして顔色一つ変える事無く希亜が答える。不意に少女の片腕がずぶりと盛り上がって――変容が、超常の蛇女の姿を顕現せしめた。
『敵はアレね。いいわ……遊んであげましょう』
 それは人を誑かす妖魔の様な笑みを浮かべて、じろりと空中の小竜を一瞥した。

「何て攻撃だ……本当に、死に掛けなのか?」
「死んで無いわ。生きても無いわ」
 白竜の端末、小竜達の攻撃は苛烈の一言だった。無数の光弾がアルトと希亜の行く手を遮り、抉られた大地が彼等の全身を阻害して。
『何故ならアレはオブリビオン』
「生者を糧に現世を滅ぼす、歪んだ過去」
 その中、ただ一人だけ楽し気に暴威を振りかざす蛇女――希亜に宿りしオウガの『カイ』が、八面六臂の無双ぶりを見せつける。立ち昇る青白き炎が次々に小竜を撃ち落とし、迂闊にも肉薄した個体を強靭な肉体で締め上げて、喰らう。さながら神話の怪物同士の戦いの姿。その様を見てアルトが舌打ちする。
「生者――それすらあの中には居ないだろうに」
 元より工作特化の自身ではこれだけの大人数を相手にするのは得策ではない。だがこうして敵を引き寄せられれば、自ずと進むべき道は見えてくる。遂に空へ浮かぶ氷塊――白竜の足元へ辿り着いた猟兵達はそれを見上げ、そして互いの目を合わせた。
「気を付けて」
「ありがとよ」
 僅かに小竜の迎撃が途切れた今、アルトの超常が――全身を地獄の炎の姿に変えたアルトが、カイの蒼炎に紛れて空を飛ぶ。氷漬けにされているならば、一点を穿ち中へと入り込めばいい。狙いは中枢、胸部結晶構造だった場所。再生したとはいえ先の戦いのダメージが残っていたそこには、内側へ入り込む為の隙間がまだ残っている。
「さぁて……仕事の時間だ」
 折角氷漬けになって機能を失っているんだ。寝た子を起こさぬ様慎重に、細長い穴を穿つように氷の中を進んだアルトの目の前には、薄緑に発光する結晶の中に囚われた少女――フラスコチャイルドが、まるで静かに眠る様に、両の目を閉じて佇んでいた。
「会いに来たぜ。『何も愛せなくなった』聖女様」
 かつては世界を救う祈りを一身に受けて戦っていたという。だが今はどうだ――祈りは途絶え、恐怖と怨嗟に塗れた悲しき救世竜。最早それに存在意義などあろうものか。
「そんな聖女の末路は――言わなくても、分かるよな?」
『愛……してるよ』
 しかし少女は否と答えた。愛はある。歪められようと、どんな形になろうと、内に秘められた記憶はこうして……。
『『『皆……みんな、愛してる!』』』
 不意に、棺の様な結晶が一斉に明かりを灯す。その中には先の戦いで倒れた無数のフラスコチャイルド群が、まるで替えのバッテリーの様に整然と立ち並んでいた。
「馬鹿な、これ全部が――!」
 全部、竜の記憶で塗り替えられた偽りの骸。たとえ一人倒れようと、次の少女が、その次の少女が、その身を賭して戦い続けるのだ。世界を滅ぼすまで。
『出口はこっちよ』
 不意に妖艶な声が届く。いつの間にか背後にはカイ――希亜の姿が。
「一体これは何だってんだ!?」
「たぶん、牢獄。過去と破滅に囚われた――夢見る少女の成れの果て」
 アリスだった自分も、こんな風になっていたかもしれない。世界を滅ぼすシステムに囚われた生贄として……でも今は違う。
「……一旦引く!」
 末路、成れの果て。我等は皆運命の囚人なのか――否。
「だが、必ず終わりにする!」
 それでも、と。二つの炎は再び戦場へと戻る。二度と過去には囚われぬと、己に刻んだ誓いを胸に。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

メフィス・フェイスレス
UCを使用して奴の首に食らい付くわ
そして内部のフラスコチャイルドの意識に干渉する

私はアンタ達の境遇は知らない
でも抗おうとしたんでしょうね そして裏切られた

アンタ達は死ぬわよ それは覆しようがない
選びなさい! 理不尽に振り回されるままコイツに喰われるか
それとも抗うために私に喰われるか!
どちらにせよアンタ達は死ぬ 残念だけど
でも私の手を取るなら最期に一矢報いた光景だけは見せてあげるわ

取り込んだ●AntieuvercodePulse【AP】を使用する
アンタの弱点は実証されてるわ
こうやって取り込んだ動力源を消費しようとした瞬間に引き抜かれる事
咄嗟に代償を選択し直そうとして動きに一瞬間が生まれ隙を晒す!



●妖精の見た夢
「いいタイミング、だったかしら」
 二人と入れ替わる様に――追撃に放たれた小竜の目を盗んで、メフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)は白竜の中枢へと忍び込んでいた。目的は動力源たるフラスコチャイルド。絶対無敵堅牢無比な正に移動要塞とも言うべき白竜――『環境浄化・対変異兵器決戦用超大型偽神兵器』の唯一の弱点を叩くべく、継接ぎの狩人は遂にその根源へと辿り着いたのだ。
「私はアンタ達の境遇は知らない。でも抗おうとしたんでしょうね」
 居並ぶ結晶の棺の奥、目を閉じて眠る少女達を見やりメフィスは続ける。薄暗い通路の中、大蛇の様にうねる配管を跨いで歩を進めて。
「そして、裏切られた」
 辿り着いた最奥、囚われの姫君の様に中央に鎮座する動力源――生贄の少女へと向かって、片手を翳して慈しむ様に言葉を掛ける。
「アンタ達は死ぬわよ。それは覆しようがない――だから」
 それはかつての自身と同じか。炉にくべられる薪の様に生命の火を燃やされる。それが戯れか戦いか……違いはたったそれだけだ。弄ばれた事に変わりはない。それでも、かつての彼女達には希望があった。人々の祈りがあったのだ。だから。
「選びなさい! 理不尽に振り回されるままコイツに喰われるか。それとも」
 救世の使者と人は言った。戦うだけのマシンと呪われた。ただ一つ、何と言われようと明確な意志――互いに歪められる前に抱いていた偽りなき純粋な思い。それは。
「抗うために……私に喰われるか!」
 大破壊という理不尽への抵抗、たった一つの矜持を胸に戦場を渡り歩いていたのだ。それはきっと、今も同じだ。
「どちらにせよアンタ達は死ぬ。残念だけどね……でも」
 故に選択せよとメフィスは宣う。自身がそうだった様に、彼女達に抗い続けるという結末を与えようと。
「でも、お前も我らの手を取るなら最期に、一矢報いた光景だけは見せてあげるわ」
 それが、妖精の見た夢の終わりだった。

「遅いのよ」
 目覚めた私は、私達と戦っていた。いや、私達はもうあそこには居ない。
「これが世界の選択なの、悪いけど」
 白竜が次の動力源を選ぶ――その瞬間に生まれる隙を私は逃さない。私は力の全てを振り絞り、竜は苦悶の咆哮を上げる。一瞬の静寂と入れ替わる様に轟音が、無数の爆発が白竜を内側から破壊する。破壊、破壊……あの時と一緒。だけど、あの戦いは無駄では無かったのだ。眼下に広がる無数の荒野、その中にぽつぽつと点在する人々の営みの光が、私達の成果だから。
「だから、ここでお仕舞い」
 ぐらりと巨体が傾いて、鋼の竜はバラバラと五体を崩していく。そのナノマシンが変容し、大地を養う肥料や、人々を支える鉱物や、生命を繋ぐ穀物や――ありとあらゆる資源へと自らを作り替える。それが、私の、私達の……最後の使命。

「オブリビオン・ストーム砲だなんて言ってたけど、これが本来だったのかしら」
 世界を作り替える忌まわしき破滅砲は姿を変えて、世界を再生する種々の資材となった。そこいら中のクレーターに散らばったそれらを集めるのは骨が折れそうだが、どれもきっと有用なものだろう。流星の様に降り注ぐそれらを見やり、メフィスはふぅと溜め息を吐いた。
 ともあれ、戦いは終わったのだ。被害は甚大。せっかく作った道路もボロボロ。それでも、途切れた道はもう一度繋げばいい。畑は耕せばいい。家は建てればいい。生きている限り、何度でも。それが、私達の本当の願いだったから。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 日常 『アポカリプスで農業を』

POW   :    力仕事を担当する

SPD   :    丁寧な仕事を心掛ける

WIZ   :    技術指導などを行う

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●資源確認、ヨシ!
『しっかし……本当に完成するんすかねぇ、ココ』
『……多分な』
 弱気っすねぇとからかうアライグマを羊が――アイカワが前脚で小突く。
 戦い終わって屋内農場は無事だったものの、周辺の道路は全壊。そこかしこに大小無数のクレーターが残されて、肝心のバリア発生装置が実はオブリビオンへの呼び水になっていたとあれば……たまったものではない。そんなモノを残す訳にはいかないと、戦い終わって直ちに破壊されたのも苦い思い出だ。
『まあ、落ち着け』
『大将、ですが』
 大将はやめろと猿の賢い動物――ナカタが嘆息する。マイハマ・エリアより遅れて駆け付けたアイカワの上司で、二足歩行戦車隊の隊長だ。
『大量の資材が手に入るんだろう? 俺も部隊も使っていいから、さっさとここを元に戻すんだ』
『ハッ、それ命令すか』
 鼻息荒くアイカワが愚痴る。その様子を見てナカタが笑い――違う、そうじゃないと優しく返した。
『いいや、願い……かな』
 もう誰も逃げずに済むような、立派な農場が出来ればと。
『ヘイヘイ、それじゃやりますかね』
 ハァ、と溜息を吐いてアイカワが立ち上がる。フラフラと歩いた先にはそう――君達が、猟兵がいた。
『――という訳で、助けて下さい』

※プレイング募集期間:現時点 ~ 7/31(金)8:30 迄
※フラグメントの選択肢は一例です。動物達にお願いをすれば大抵聞いてくれると思います。皆様の発想で自由にプレイングを掛けてください!
※クレーター探索を希望でしたら、それぞれに鉱物、穀物、肥料などがばら撒かれています。全て固形物です。他にも指定してもらえれば何かあるかもしれません!
春乃・結希
アイカワさーん!(ぼふっ
はー今日もふかふかだねー(もふもふもふもふ
あっ、withと私のカッコいいとこちゃんと見ましたかっ?
びゅーんどかーんって感じやったじゃろ?
戦闘中にバリア張れてたのはアイカワさんのおかげなんですよね
さすがアイカワのアニキ!ですねっ(近くの動物に振ってみる)

もふらせて貰った分、お仕事もします
私も前に道路作るお手伝いしたことあるんですよ
ただ砂利を敷くだけじゃなくて、えっと…ろば…路盤…?
とか言うのを作っておくと強度が増すんだぞって言ってた
瓦礫は『with』で砕いていくから、これもリサイクルしよー
アライちゃん達も手伝って貰えますか?

また絶対遊びにくるから
野菜出来たら食べさせてねっ



●祭りのあと
「アイカワさーん!」
 それは突然だった。空から女の子が――何か前にも似たような事があった気が――春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)がぼふっと羊のアイカワに飛び込んで、ふっくらと膨らんだ羊毛をもふもふと撫でてきた。
『って、おい! 仕事中! 仕事中!』
「はー今日もふかふかだねー……あっ、withと私のカッコいいとこちゃんと見ましたかっ?」
 突然の奇襲に焦るアイカワ。眺めるアライグマ。何というかリーダーの威厳が……でもそんな事意にも介さず、結希はアイカワを撫でまくる。ひたすらに。先程まで大剣を片手に戦場を跳び回った勇敢な戦士とはとても思えない、無邪気なその姿にアイカワは嘆息した。
『ああ。凄かった、としか言えねえ。あんな事早々出来るもんじゃねえよ』
「びゅーんどかーんって感じやったじゃろ? 戦闘中にバリア張れてたのはアイカワさんのおかげなんですよね」
 先の戦いで壊れたバリア発生装置の代わりに全力で電源の代わりを務めていたアイカワが居なければ、結希の言う通りびゅーんと豪快に戦い続ける事は難しかっただろう。褒められて恥ずかし気に鼻を鳴らすアイカワの姿を見て、結希は満足げにもふる手を止めない。
「さすがアイカワのアニキ! ですねっ」
『『『えっ、あっハイ』』』
 まるで最高級の布団の心地よさ――もふりながら、そのままくるりと首をアライグマ達の方へ向け同意を求める結希。それは、確かに、命を賭してバリアを起動し続けたアイカワの献身があってこそ。こくりと頷くアライグマ達を見やり、結希は満足げに笑顔を返した。あー、それにしてもこのもふもふは代えがたい。

「――私も前に道路作るお手伝いしたことあるんですよ」
 だが、今回はもふるのが目的では無い。やるべき事は施設の復旧……特に、破壊された道路を元に戻す事は、何よりも優先しなければ。道が無ければ補給もままならないのだから。激しい戦いに巻き込まれて寸断された道を見やり、結希はしたり顔で言葉を続ける。
「ええと、ただ砂利を敷くだけじゃなくて、えっと……ろば……路盤……?」
 亀裂が入り荒れ果てた跡を見ながら、必死にかつての記憶を掘り起こす結希。確か、少しばかり地面を掘り返してやって、砕石を埋め込めばそれが芯となって強度が増す……だったかな?
「……とか言うのを作っておくと強度が増すんだぞって言ってた」
 例え表層が剥がれても、路盤は残る――そうすれば再び道を造る事も難しくは無い。らしい。幸い素材になる砕石や瓦礫は山ほどある。大剣――『with』で片っ端からそれらを砕きながら、猫車を押すアライグマらの方を結希は見やる。
「アライちゃん達も手伝って貰えますか?」
『ハイ喜んで!!!!』
 手伝わない訳が無い。カサイから今まで最大の恩人の一人なのだから――それに逆らえばどうなるやら。猟兵が大体恐い事はもはや常識と化していた。せっせと砕かれた資材を運び込んで、削られた穴を補修していくアライグマ達。その様子を見て、アイカワはだらりと全身を伸ばす。流石に疲れた――それに、ようやく復興作業に手を付けられる、と。

「また絶対遊びにくるから、野菜出来たら食べさせてねっ!」
 施設近くの道を補修し終えた結希が額の汗を拭い、アイカワへ言葉を掛ける。
『ああ。俺達は草食だからな』
 その言葉にニヤリと笑みを返し、幸いにも稼働を続ける施設を見やりアイカワが続けた。
『ここの野菜でテッペン取るんだ……教わった通りに、美味い奴を作って見せるさ』
 食料の安定供給――自給自足が出来る様になれば、危険な行商も必要なくなるし、何よりここへ沢山の人が来るだろう。そうすればマイハマやフナバシにも負けない様な、大きな街が必ず出来る……そんな未来を夢想して、力強くアイカワは声を張り上げた。
「絶対だよ! それじゃあ作業再開!」
『って、ここのリーダー俺!』
 いつの間にかリーダーの座が――さっきから伸びていればこうもなろう――てきぱきと指示を下す結希に従い、アライグマがきびきびと働き出す。こんな風になるなんて、今までちっとも思っていなかった。俺達も変われるんだ……だから、きっと世界も変わる。そう信じて、アイカワも道路の補修に身を乗り出した。

成功 🔵​🔵​🔴​

メイスン・ドットハック
残念じゃけど、農場復興では技術的なものがのー
なので僕は輸送関連で力を貸そうかのー

農場復興チームのところにUC「隠れ家への小道」を使って、資材や肥料を届けてそれを猟兵やチームメンバーに配布していく
さらに邪魔の廃材や建材などは片っ端から電脳空間に仕舞い込んでいく

時間があればクレーターに赴いて鉱物・穀物・肥料などを電脳空間ごとに仕分けて回収し、鉱物・穀物はこれからの支援物資に、肥料は農場再建の物資に提供していく

また変わった物質やオブリビオン・ストーム関連の危険物資などはきちんと分別し他に行き渡らないように厳重封印して持ち帰る

こういうやばいのは隔離するのが一番じゃけーのー

アドリブ絡みOK



●物資回収作戦
「残念じゃけど、農場復興では技術的なものがのー」
 見渡す限り広がるクレーターを一つ一つサーチして、メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)は溜め息を吐いた。人は何故働かなければならないのだ。それは誰かが引き籠る為だ。その知らない誰かの為に、今回は仕方ないのー……畑を作るのはアレじゃし、散らばった資源の回収を手伝うかの、と、居並ぶ歩行戦車隊をちらりと覗いた。
『分かった。このポータルに運び込めばいいんだな』
 そのリーダー――猿のナカタがこくりと頷いた。皆まで言う必要は無い――命の獲り合いじゃなくても、歴戦の戦士たる者、眼を見れば何をすべきかは大体分かるものだ。現にメイスンの背後には超常の電脳区間が広がって、その先は農業施設へ直結した一種のショートカットと化していたのだ。
「うん。使えそうなモノを……そうだのー」
 ひょこひょことポータルの周りを歩き回り、電脳魔方陣でそれぞれにタグ付けをしていくメイスン。金属、肥料、弾薬、その他――分別して、小路の接続先をちょいちょいと弄れば、これで効率よく資材を運びこむ事が出来るだろう、と。
「兵站は戦争の基本じゃけーのー」
『おいおい、まだ戦争じゃないさ』
 少なくとも今は。微笑むナカタが手を上げて、続く歩行戦車隊に指示を飛ばす。器用にクレーターへ潜り込み資材を回収する動物達を見やり、メイスンは再び溜息を吐いた。

「これで一段落かのー。じゃが」
 流石に訓練された兵達だ。的確な動きで白竜の身が転じた資源は瞬く間に回収されていく。インゴットめいたそれぞれを発掘・運搬・回収と役割を分けて4分隊毎に運び出す。その動きから、彼等がもっと早く合流していれば、先の戦いもより優位に進められたであろう事は容易に想像出来た。
「あの兵器、何に使うつもりだったかのー?」
 その指示を出すナカタを見やり、メイスンがぼそりと呟く。事の発端――確かに孵卵器たるオブリビオンの残滓があればこそだが、あの白竜を要していたのは紛れも無くナカタ達だったから。
『耳が痛いな……アレがあんなモノだったなんて、流石に誰も知らなかったさ』
 肩をすくめて言葉を返すナカタ。メイスンの言う通り、使うつもりが無ければ発掘する必要すら無かった危険な代物。その言葉は暗に『他にもあるんじゃないか?』という疑惑を孕んでいる事が容易に察せられた。
『偽神兵器を利用した戦力再編計画――それ自体は結局、頓挫したがね』
 だから、隠しても仕方がない。昔日のある戦いを思い返し滔々と言葉を続けるナカタ。偽神兵器を狙われて襲われた事は何も今回が初めてではない。更に言えば、それを用いて自分達が何を成そうとしていたかなど……振り返るだけでも悍ましい、身勝手な未来予想図がかつてはあったのだ、と。
『その一環だ。使い道の分からないアレを発掘して、ただ保管していただけだよ』
「まるで戦争でもするつもりだった、みたいじゃのー」
 陽光がアメジストの肌を煌かせて、巨大な資材の上で足をぶらつかせるメイスン。丁度肩の高さ――大型の歩行戦車に搭乗したナカタと目線を合わせて、メイスンは僅かにじろりと睨みを利かせた。戦争――かつて宇宙の民の日常だった災厄(オブリビオン)の記憶。そういう事はもう沢山だ。だが、どの世界にも火種は至る所で燻っているという事かのー、と。その鋭い目つきにナカタは苦笑しつつ、言葉を続ける。
『そうだった。だが止めた。もうそういう事はしないと……約束したからな』
 だから、この戦いも望むべくして起こった訳じゃあない。それだけは信じて欲しいとメイスンへ語り掛けるナカタ。約束――もう逃げないと、戦争など起こさせないと誓ったからこそ、今の自分はここに居るのだと。
「それが一番じゃけー。まあ」
 くるりと作業員たちの方へ向き直り荒野へ着地するメイスン。それが聞ければ十分――過ちを繰り返す事が無ければ、特に何もする必要は無いからのー、と。だが。
「それでも戦争しなければならない時は、またボクらが来るけーのー」
 不意に端末が明滅し、大規模な異変を察知した。ここでは無い何処か――しかも同族が宇宙で悪しきを企んでいる、らしい、だと。いいだろう。人が安心して引き籠る為にぶちまわす相手が増えたのならば、いずれ手を下さねばなるまい。
「こういうやばいのは隔離するのが一番じゃけーのー」
『全くだ。争いごとはもううんざりだよ』
 目の前には偽神細胞の塊らしきインゴットが一つ――先の戦いで消えた彼女らの成れの果てか? もう一つ『危険』のタグをつけたポータルを展開し、メイスンはそこにヤバいのを隔離する。
「……まあ、これだけ集まれば十分かのー」
 いつの間にかポータルの連結先の倉庫には溢れんばかりの資材が積み重なっていた。きっとそれらは、いつかの明日を作り出す――そう信じて、メイスンは静かに作業に戻った。

成功 🔵​🔵​🔴​

メフィス・フェイスレス
えらく憔悴してるみたいね
頭が辛気くさいツラしてちゃ下の奴にも示しがつかないわよ?

飢渇で分身を生成して飛び散った物資の調査と回収作業にあたらせるわ
飢渇の輪郭があいつらの姿を象っているわね
とはいえ、残滓みたいなものだけど
此処を発つ頃にはそれも私の中に溶けて消える

ちょっと感情移入しすぎたみたいね
取り込んだ念に引っ張られてるのか、どうにももの悲しい気持ちになっちゃって
蘇った亡者と過去は背中合わせ、1つ間違えば容易に私も同じ所に堕ちる
引きずり落とされる訳にはいかない 分かってはいるけれど

割と疲れたから本当は私自身は休憩でもしてようかと思ったけど
どうにも落ち着かないから私も身体を動かす事にするわ



●記憶の澱
「えらく憔悴してるみたいね。頭が辛気くさいツラしてちゃ下の奴にも示しがつかないわよ?」
『――ああ。流石に少し疲れてね』
 施設の倉庫、次々と転移してくる物資を確認しつつ、一息ついていた羊のアイカワの元へメフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)がふらっと現れた。
「うん……手伝おうか。この数は大変でしょう」
 見れば大小様々なインゴット――それらは圧し固められた肥料だったり、鉱物だったり、見た目はさほど変わらずとも様々な種類の資源――を一つずつチェックしているらしい。その様子を見かねたメフィスの周囲にゆらりと漆黒の液体が漏れ出て人を象り、それらは動き始めると共にインゴットへぺたぺたと識別タグを貼り付けていった。
「飢渇の輪郭が――あいつらの姿を象っているわね」
『どうしてだ? そんな事が』
 よく見れば飢渇――衝動が実体化したタール状の物体は、確かに先の戦いで交戦したフラスコチャイルド群の様な輪郭を持っている。しかし彼女らに敵意は無い。メフィスの命に従って、黙々と作業を代行するだけだ。
「まあ、残滓みたいなものよ。ここを発つ頃には消えるわ」
 積み上げられた荷に腰を下ろして、不安がるアイカワへさらりと返すメフィス。全ては白竜の内部で取り込んだ彼女達の記憶、あるいは意思か。人々の為に生命を賭した、歪みの無い彼女達の本来が現象として形となったのだろう。
「……ちょっと感情移入しすぎたみたいね」
『襲撃者達の事か……?』
 僅かに覚えているのは、壊れ行く世界を必死で食い止めようとする生命の、抗う意思。泡沫に消える刹那の生命の衝動そのものが――オブリビオンとなる前の彼女達の心が、メフィスを介して発現している。こうして世界を立て直す事こそが、もしも生き延びる事が出来た彼女達が本当にやりたかった事なのだろうと、メフィスは言葉を続ける。
「どうにももの悲しい気持ちになっちゃって。うん――」
 だから、果たせなかった願いを――そして、歪められた意思を、双方を受け入れた己の中に渦巻く、祈りの様な呪いの様な名状し難い思惟をゆっくりと解き解して。それすらもやがては消えゆく定めならば、せめて跡形を残してやりたいと思ってしまったのだろうか。希望への飢渇が衝動となったのだろうか。だが彼女達は何も語らない。
「オブリビオン、蘇った亡者と過去は背中合わせ、一つ間違えば容易に私も同じ所に堕ちる」
 ただ黙々と作業をするだけ。私の意思と彼女達の想いがたまたま一緒だった――それだけなのだろう。
『でも、アンタは戦い抜いて、ここにいる』
 だからこそ引き摺られてはならないのだ。デッドマンは決して死者では無い。生還者なのだから。アイカワの言葉にクスリと笑い、いずれ消えゆく彼女達をちらりと見やる。殺す為じゃない、生かす為に生まれた生命だったのだ。だから。
『そして俺達は助かった。今はそれじゃ、駄目か?』
 それでいい。思いは秘めたまま、ゆっくりとメフィスは身体を起こして立ち上がる。戦いは終わったとはいえやる事は山積みだろう。休憩はこれで終わりだ。
「ちょっと体を動かしてくるわ。どこへ行けばいい?」
 背を向けたままアイカワへと尋ねる。陽光が照らす出口を見据え、メフィスはその先へと一歩踏み出した。

成功 🔵​🔵​🔴​

雨咲・ケイ

もちろん引き続きお手伝いしますが……
アイカワさんもお疲れのようですね。
この世界の方々のバイタリティの高さは
存じておりますが、腹が減ってはなんとやらです。

ここに新鮮なカレールーを用意してあります。
新鮮な素材を使って新鮮なカレーを作りましょう。
どのような世界であっても、どれほど疲弊していても
カレーを食べれば活力が湧いてくるのですよ。

お味は如何でしょうか?
やはり、このような世界だからこそ美味しい食事を
とる事はとても大切だと思うのですよ……。
え?カレーでなくてもいい?
いや、カレーは一晩寝かせたら更に美味しくなりますし……
(必死になってカレーの魅力を説く)



●それにしても、腹が減った
 猟兵を見送り再び現場へ戻ったアイカワは働く人達を見やり思案した。復旧作業を始めて早三時間。自分みたいに転々と色んな仕事をしていればまだ気も紛れるが、同じ作業を続けている皆の顔色を見る限り大分疲れが見えている。ここらで休憩にしてもいいかと集合を掛けようとした矢先、巨大な寸胴鍋を抱えた誰かがのったりとアイカワの方へ近付いてきた。
「アイカワさん達もお疲れのようですね」
『いや、アンタも……大丈夫か?』
 明らかにバランスを崩し今にも倒れそうな巨大な鍋の影から、ひょっこりと雨咲・ケイ(人間の學徒兵・f00882)がその顔を覗かせる。
「この世界の方々のバイタリティの高さは存じておりますが、腹が減ってはなんとやらです」
『確かに、俺も皆もそんな気分だろうな……』
 疲労によるエネルギー源の枯渇。有り体に言えば『お腹が空いた』のだ。ふらふらとアイカワの前に辿り着いたケイはどすんと鍋を地面に置いて、いつの間にか手にした褐色の固形物をアイカワへと見せびらかす。それは何だか香ばしい香りがする、不思議な物体だった。
「ここに新鮮なカレールーを用意してあります。新鮮な素材を使って新鮮なカレーを作りましょう」
『カレーだって!?』
『知っているのかアライさん!?』
 その言葉に目の色を変えて突撃するアライさん。したり顔で返事を返し、そしてうっとりと何かに思いを馳せている様子。その姿を満足げに見つめ、ゆっくりとケイが言葉を続けた。
「はい。どのような世界であっても、どれほど疲弊していても――カレーを食べれば活力が湧いてくるのですよ」

「お味は如何でしょうか?」
『美味い!』
『お替り!』
『バカヤロウ食い過ぎだ! 動けなくなるぞ!』
 日も陰り時刻は夕飯時。丁度良かったと設備で働く人々が、我先にと皆で作ったカレーの鍋の前に長蛇の列を成す。材料は幸い屋内農場である故に結構な量を用意出来た。ここで働く全員分を賄うには十分だろう。
「良かったです。やはり、このような世界だからこそ美味しい食事をとる事はとても大切だと思うのですよ……」
『いやラーメンとかでもいいっすよ』
『バカ! テメェ戦争を起こす気かコノヤロウ!』
 旧世界でこの国はカレーとラーメンが国民食として熾烈な争いを繰り広げたという、嘘だ真だか分からない知識を披露するアライさんが余計な事を口に出すアライちゃんを窘める。
「え? カレーでなくてもいい?」
 しかしその言葉に過剰に反応する者がいた。ケイだ。異世界から来たケイには少しばかりアライさんの言い分が理解出来た。だが違うのだ。
「いや、カレーは一晩寝かせたら更に美味しくなりますし……」
 カレーは……様々なスパイス、ハーブを調合する事により薬膳の様に体調に合わせて最適な調理が出来る。具材も豊富だ。ここには無かったが肉類があればより味わいが増すし、出来上がったモノを作り置きする事だって可能。栄養満点で美味しくバランス良く身体に良い料理となる。つまりカレーは万能食。スパイスの量で辛さを調整すれば好みの味に調整する事だって容易――その言葉を聞いてアイカワははたと閃いた。
『スパイス……そうか。俺達に足りないモノはそれか』
 ここで栽培しているものは野菜だけだ。確かに食うには困らないがいつまでもそれだけで良いとは思えない。何か別のモノを……その課題を解決する術が、ケイによってもたらされたのだ。
『ああ。ただ食い物だけ作っても駄目だ。こんな風に――』
 こんな風に食事に彩りを与えて、更に身体に良いモノを栽培すれば、きっとより良い生活に繋がるだろう。
『美味いモノを一杯、皆で食う為には腹に溜まるだけじゃあ駄目なんだ』
『つまりヤバい葉っぱを栽培するって』
『お前は言葉に気を付けろ!』
「確かにスパイスやハーブの一部はそういう物もありますが……」
 一騒ぎする賢い動物達を見やりケイが苦笑する。そうだ。食事の本質は只の栄養補給じゃない。こうやって皆で鍋を囲んで、美味しいものを食べて、心も身体も元気にする――そういうものだ。その為にはカレーが一番なのだ。それだけは譲れない。
「良かったらレシピを置いて行きましょう。あと必要な香辛料のリストを」
 カレーの素晴らしさに気付いた彼等ならもう大丈夫だろう。きっとこれから迫る苦難にも耐えられるに違いない。
「やはり、このような世界だからこそ美味しい食事をとる事は……とても大切だと思うのです」
 この様な世界だからこそ、大地の恵みに一層の感謝をして。祈りと共に頂いた生命を明日への活力へ変えるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カタリナ・エスペランサ
どうにか皆も無事らしいね。何よりだ
元々キミたちを助けに来たんだ、最後までしっかり力になるよ!

使うUCは【衛生兵特級資格】。もちろん人手が足りないところは手伝いに入るけど、今回のメインはそっちじゃないんだ
負傷者を治療する《医術》、皆の活動を支える基盤になる《料理》、手に入るもので整えられる《拠点防御》の技術をアイカワたち現地の住民と一緒に作業する中で伝えていこう
得手不得手はあるだろうから《第六感・情報収集・見切り》で適性を見極め《コミュ力+優しさ+ブームの仕掛け人+鼓舞》で励ましながら彼らがものに出来る限りの技術を伝授するよ

生きてさえいれば絶望なんて案外なんとかなるものさ
応援してるよ、これからも



●白衣の天使は忙しい
「どうにか皆も無事らしいね。何よりだ」
 夕餉も終わり、一息ついたアイカワ達の元へカタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)がふらりと姿を現した。
『ああ、お陰様でな。で……その恰好は?』
「元々キミたちを助けに来たんだ、最後までしっかり力になるよ!」
 しゃなりと背筋を伸ばして歩む神々しい姿は、見るだけで活力が湧いてくる様な天からの使者――先程までの猛々しい戦士の姿とは打って変わって、カタリナは白を基調とした清楚な、あるいは特徴的な身なりだった。
『いや、だから……その恰好は!?』
 頭には変わった形の帽子、肌を隠すぴっちりとした清潔感のある白衣姿に、何やら医療器具めいたモノを引っ提げて――それこそは旧時代から連綿と続く救急現場の戦装束。
「こういう時の正装さ」
 それはカタリナの超常を最大限に引き出す(であろう)――ナース姿であった。

『負傷者は幸い少ないですが、心のダメージが……』
「成程ね、あんな戦いを目の前で見せられたんだ。気持ちは痛いほど分かるよ」
 幸い救命室に大きなダメージは無く、僅かながら被災した人々がベッドで休んでいた。確かに施設がバリアに守られていたおかげで大怪我は無かったものの、猟兵とオブリビオンの凄まじい戦いを目の当たりにしてしまった一部の人達は、その心に大きな傷を負っていた。
『血が、女の子から、血がいっぱい……』
『地面が壊れて、あの時みたいに……』
 かつての大破壊を思い出して、あの恐ろしい日常が還って来たのかと恐れ慄く人達。オブリビオンの狙い通り、物理的な破壊だけが社会を崩壊させる訳ではない。
「大丈夫だよ、もうここは――あんな怖い事は起こらないから」
 その人々の手を取って優しく声を掛けるカタリナ。大丈夫、ここには強い人達が一杯いるよと心から励まして、合間に脈を計り投薬の指示を出す。身体が持ちこたえてくれればきっと心も元気になる。両方釣り合って初めて人は生きる事が出来るのだから――そして一人一人の往診を終えた直後、子供が大きな鍋を抱えてカタリナの前に現れた。
『すいません! この鍋とかどうすればいいですか?』
「うん、大丈夫……今行くよ。急ごしらえでも使えるモノはちゃんと残しておこう」

「こんな所か。レシピもあるようだね」
 先の夕餉で拵えた簡易キッチン諸々をてきぱきと分解して備品入れに。本来のキッチンもインフラさえ戻れば――猿の増援曰く、明日にも復旧するらしい――それで人々の腹を満たす事は出来るだろう。
「いいかい? 刃物を使わなくても出来る事はあるんだ。誰だってちゃんと役に立てる」
 子供達には野菜の下拵えの仕方を教えて、大人達には器具のメンテナンス指導を。幸い食材は豊富なのだから、これだけで十分稼働効率を上げる事が出来る。
「さて、後は……」
 一通り作業を終えたカタリナが視線を向けた先――解体されたバリア発生器があった方には、アイカワを始め作業員がたむろしていた。

『バリアが無くなった分どうすればいいか、正直悩んでいた』
「避難経路の確保と戦場の構築、これさえ出来れば被害は抑えられる」
 バリア発生装置自体が危険な代物と分かった以上、二度と同じものは使えない。そうなればこの施設が再び襲われた時にどう立ち回ればいいか……カタリナの提案はこの設備自体の役割に城塞と同じく、守る場所と戦う場所を設ける事だった。
「幸い敷地は広いしね。やれる事は沢山あるよ」
 攻城戦は初めてじゃあない。それにこの規模の戦場となれば、立ち回り次第では防衛側が圧倒的に有利になるのだ。
『随分慣れてんだな、アンタ』
「生きてさえいれば、絶望なんて案外なんとかなるものさ」
 そうしてこれまで生き延びてきた。そういう世界もあるのだと暗に含んで、カタリナは苦笑した。
「応援してるよ、これからも」
 言うと共にカタリナは元の姿に――閃風の舞手はきらきらと光を撒いて、天高く昇っていった。その姿はまるで天使の様だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

御形・菘
はっはっは、ならば皆で一緒に頑張ろうではないか
モチベーションが必要であろう?
ならば任せておくがよい! 声援を呼んでやろう!

そもそもギャラリーとか応援とか妾は何度も言ってきたが、お主ら架空のナニかと疑っておらんか?
まあ妾はそれでもアゲられるが…証明しようではないか!

右手を上げ、指を鳴らし、スクリーン! カモン!
はーっはっはっは! 知るがよい、リアルタイムでお主らを励ます者たちがどれほど多いことか!
他の世界ゆえ直接に手助けができなくとも、姿が見えなくとも、お主らは孤独ではないのだ
胸を張れ! そして手を動かそうではないか!

とゆーかお主らの動画、明らかに他より視聴数が多いから嫉妬してしまうぞ?



●遥かなるエール
 徐々に遠くへ姿を消していく天使の光跡をアイカワ達は呆然と見上げていた。だが、その直後に眩い光が日の落ちた現場を煌々と照らす事になるとは、この時には思ってもいなかった。
「盛り上がっておるようだな」
 そう、妾抜きで……何だいこの後スタッフロールが流れまーすみたいな綺麗な幕引きは! 瞬間最高視聴率狙いかおのれ……だが負けん。戦いはまだ終わってはいない! と息を荒げた御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)が、光を背後に颯爽と現れたのだ。
『あなたもここまで……何とお礼を伝えればいいやら』
「はっはっは、ならば皆で一緒に頑張ろうではないか。モチベーションが必要であろう?」
 妾も同じく務めを果たしに来たのだと大きく宣い、アイカワらの前にずりずりと巨体を運ぶ菘。浴びた光が煌いて菘をきらきらと輝かせる姿は天使――じゃなくて、神々しい蛇の神そのもの。
『しかしこんな時間、大した作業も出来ない……』
「ならば任せておくがよい! 声援を呼んでやろう!」
 聞いてよ。欲しいのはどちらかと言えば増援だよと出かかった言葉を飲み込んで――アイカワは仰天した。スクリーン! カモン! 菘が掲げた右手で指を鳴らすと共に、いつの間にか作業用照明では無い、尋常じゃない光量が辺りを照らしていたのだ。それは全て菘の超常――無数の生配信用空中ディスプレイだった。
「そもそもギャラリーとか応援とか妾は何度も言ってきたが、お主ら架空のナニかと疑っておらんか?」
 そこに映るのは動物じみた人の様な――キマイラと呼ばれる異世界の住人を始めとした、こちら側ではない人々の顔、顔、顔……リアルタイムで異世界と同期しているというのだろうか。興味深げにアイカワらを見下ろしては、時折歓声や拍手の音が聞こえてくる。
「まあ妾はそれでもアゲられるが……証明しようではないか!」
『一体、彼等は何を……』
 監視、じゃ無いだろう。更に言えば何を言ってるかよく分からない。言語体系が違うのだ仕方ないね。だが、彼彼女らの想いはディスプレイを通して分かる様な気がした。
「はーっはっはっは! 知るがよい、リアルタイムでお主らを励ます者たちがどれほど多いことか!」
『『『『『『Woooooo!!!!!!』』』』』』
 突如、豪雨のような歓声が大音響で響き渡る。光と音の洪水――その凄まじさに敵襲と勘違いした守衛を宥めつつ、アイカワは菘へ恐る恐る尋ねてみた。
『これが、あなたの力の源……?』
「左様。他の世界ゆえ直接に手助けができなくとも、姿が見えなくとも、お主らは孤独ではないのだ」
 妾もこうして、幾度と無く激しい戦いを潜り抜けてきたものよ、と鼻を鳴らして胸を張る菘。そして尋常では無い声援に恐縮するアイカワをじろりと覗き、菘はアイカワの前脚をぐっと握る。
「胸を張れ! そして手を動かそうではないか!」
 ここはお主らの世界。お主らがその気にならんでどうするのだと喝を入れる。その様子を固唾を飲んで見守る視聴者達――誰もが真剣に、アイカワ達の未来を案じてここに集ったのだ。
『ああ、姉ちゃんの言う通りだ。俺達が引っ込んでどうする――なあ!?』
『『『ハイッ!』』』
 アイカワの檄に規律正しくアライグマ達が返事をして、各々が早速作業に取り掛かった。瓦礫の撤去だけではない。機材の整理も、明日の準備もやらなければならない事は幾らでもあるのだ。煌々と輝くディスプレイの奥で、それを見守る視聴者の声援が止めどなく流れてくる。夢の様なゲリラナイトライブ配信――あと少し、頑張ろうという気持ちが動物達を奮わせた。

「とゆーかお主らの動画、明らかに他より視聴数が多いから嫉妬してしまうぞ?」
 実際凄かった。羊、アライグマ、犬、猫。特に指差し確認する猫が出る度奇怪な発声がディスプレイより漏れ出た。何がヨシだ。妾もそのくらい出来るわ!
『何となくだが、きっと俺達も世界を立て直した時に分かるのかもな』
 その横でアイカワが苦笑した。二人して丁度休憩中に、聞けば菘の世界も大破壊を乗り越えて逞しく生きる者達が沢山いるのだという。負けてはいられない……この世界だって、彼女達が驚く様な凄い復興を成し遂げてみせると、アイカワは鼻息を荒くした。
「そうよ、その意気込みが大事なのよ」
 ふと、菘の声色が変わったような……だが顔を上げて菘を覗き込んだアイカワの目には、いつもと変わらぬ蛇神の姿が見えた。
「何を呆けておる。ほれ……さっさと仕事に戻るぞ!」
 特にあの猫を越えねば溜飲が下がらん、と威勢よく飛び出した菘を見送り、アイカワも現場へと駆け出した。

成功 🔵​🔵​🔴​

柊・はとり


探偵がエピローグで農業始めるシーンとか
正直シュールすぎてないわとは思う
だがやらないとな…そういう世界になっちまったんだ

証拠品を目ざとく見つけるのは得意なんだがな…
失せ物探しの勘でクレーターの中から何かピンと来る物を探す
毎日芋ばっか食ってるから米が食いたい
このクレーター全部埋めんのも骨だし
いっそ田んぼにしとけば良くないか
穴掘る手間省けるし見た感じ荒野感減るだろ
来年米できたら俺にもくれ

コキュートスでクレーターを均して四角く水平な穴にする
何か不満そうだが知るか
お前は今日から鍬だ
後はまた都合よく雨でも降ってくればいいが
とりあえず祈る

あのオブリビオン共も再生を願ってたんなら
こういう時奇跡は起きるんだよ



●夜明け
 探偵の朝は早い。実地での現場検証に推論の考察、状況を確保する為の根回しにとやるべき事が余りにも多すぎる。だが今やるべき事は、そういう血生臭い事ではない。
「探偵がエピローグで農業始めるシーンとか、正直シュールすぎてないわとは思う」
 颯爽とした佇まいであちこちに刻まれた戦の爪跡――クレーター群を眺めながら、柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)は嘆息した。だが世界は変わってしまったのだ。非日常の殺人は日常となり、与えられた役割をこなすだけで生きる事も難しい。
「だがやらないとな……そういう世界になっちまったんだ」
 肩に担いだ大剣にぼそりと呟いて、はとりは一際目立つ巨大なクレーターの中へとその身を滑り込ませた。

「証拠品を目ざとく見つけるのは得意なんだがな……」
 物証になるあからさまに怪しいモノ――既にインゴット化した資源の数々は大半が施設へと運び込まれていたが、白竜がばら撒いたモノは決して大物だけでは無い。小さな物の中にだって、役立つものが必ずある筈――その仮説を実証すべく、先ずは自ら率先し現場の検証を、という訳だ。
「このクレーター全部埋めんのも骨だし……いっそ田んぼにしとけば良くないか」
 毎日芋ばかり食ってるからな。たまには米の飯が食いたいと――いっそ出来たら来年俺にも分けて欲しいくらいだ。思案しつつざっくりと検分を進めるはとりの手元が、大剣が不意に震え始めた。
『それは名案です。あなたが頭脳明晰な名探偵である事を忘れてしまう程に』
 震動し、流暢に言葉を返す大剣をはとりはクレーターにぶつけた。流石に水源も無いのにそんな事が出来る訳が無い。そのくらい承知の上だというのにこの大剣――コキュートスは時折余計な気を回してくれる。
「だけど、それが出来れば穴掘る手間省けるし、見た感じ荒野感減るだろ?」
『つまり……』
 コキュートスは人工知能を搭載した意志持つ氷の大剣だ。その意志が危険を察知したのだ。成程、理屈は間違っていないが違うそうじゃない、と。しかしニヤリと口元を歪ませたはとりに、その悲痛な思いは決して伝わらない。この顔は、いい考えを思いついた時のモノだ。止められる者などあろうものか。
「コキュートス、ここらの大気をちょっとだけ凍らせろ」

「まあ、流石に足りないか」
『分かっててやりましたよね今、分かって』
 うるさい、と言わんばかりにガツガツと大剣でクレーターを慣らすはとり。確かに凝集した水分が、溶けた氷が僅かに大地を湿らせたが、とてもじゃないが全然足りない。
「何か不満そうだが知るか。お前は今日から鍬だ。農具だ。大人しく人類の生産行為に加担しろ」
 人類の叡智を結集した人工知能搭載型近接格闘兵装に対し、さらりと恐ろしい事を言ってのけるはとり。だが決して、何の当ても無くそんな事をしている訳では無かった。
「後はまた都合よく雨でも降ってくればいいがな」
『本当にそんな事が起こるとでも……?』
 無論、一度や二度では無理だろう。だがこれだけ地形が変わっているのだ。どこかで氾濫した河川がここのクレーターと混ざる可能性だって、決してゼロではない。
「あのオブリビオン共も再生を願ってたんなら、こういう時奇跡は起きるんだよ」
 それにはとりは気付いていた。例え田んぼで無くとも、あの白竜がばら撒いた大小様々な資源の内――小さなモノは植物の種子。恐らくは大地を再生させる為に蓄えた、あるいは創造した、旧時代の人々の祈りそのもの。
「それじゃあ続けるぞ。世界を再生させる為に」
 本来は俺の役目じゃあない――だが、生きてしまったものが背負う業は、そうでもしなければ軽くはならないだろう。もう誰も死なせない為にも。

成功 🔵​🔵​🔴​

フィーナ・ステラガーデン

あん!?あんたらちょっとそこ座りなさいよ!
あんた頼み癖ついてない!?まず自分で考えてどうにかしようと動かないとろくな大人にならないわよ!
だいたいナカタもナカタよ!「願い」じゃないわよ!祈ってどうにかなるなら今頃ダークセイヴァーはダークしてないわよ!上司なら明確な指示しなさいよ指示!!なんかすごい力もってる猟兵なら楽になんとか出来るでしょ精神なんじゃないの!?あんたらの世界でしょ!?卑屈なのよ!ぶちころすわよ!?

というわけで私は手伝わないわよ!鞭を持って地道に働かせるわ!
クレーター?埋めなさいよ!
残骸が転がってる?運びなさいよ!!
ほらそこ!くたびれてんじゃないわよ!(地面にぺちーん!)



●嵐が来た
『さて……今日も一日やりますか』
 流石に明け方までとはいかなかったが、生配信の間中働き詰めだったアイカワ達はゆっくりと起床した後、力強い足取りで現場へ向かっていた。今日も施設外のクレーターを少しずつどうにかしなければならない。そしてそれを行う力が、今の自分達にはあると実感したから。
『あの人達が残したモノを、大事にしないとな』
『ウッス』
「そうね」
 唐突に鈴の音の様な可憐な声が聞こえた。その時、一部の賢い動物達に戦慄が走ったのは言うまでもない。
『遅くなりまし……ギャア!』
 遅れてやって来たアライグマが見たものは小柄な金髪の少女――いや、魔女。
「何よ。何驚いてんのよ」
『いや、だって、猟兵の皆さん』
「あっちで畑耕してるわよ! それより!」
 さらりと金のロングをかき上げて魔女が宣う。仕事前だというのに。
「あんたらちょっとそこ座りなさいよ!」
 そしてフィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)の命により、地獄の朝礼が幕を上げた。

『何で俺が……』
『逆らっちゃまずいっス』
 本来ならばマイハマへ帰還予定だったナカタも無理矢理引っ張られ、今やアイカワらと共にフィーナの前で正座している。アイカワは羊だが賢い動物なので正座ぐらいは出来るのだ。
「……まず」
 そしてジロリと全員を一瞥したフィーナが、早速アイカワに向けて花の様な杖から生えた鞭をピシャリと鳴らし、叫んだ。
「あんた頼み癖ついてない!?」
『はいッ!?』
 曰く、何事も先ずは誰かを頼る癖が付いていないか。確かに思い返してみれば大体猟兵に丸投げだ。しかし仕方が無いのだ。オブリビオン相手に一般ピープルだけでは――。
「まず自分で考えてどうにかしようと動かないと、ろくな大人にならないわよ!」
 そんな考えを見透かされたかのようにフィーナの一喝が轟いた。確かに言われるがままじゃ駄目なのはよく分かっている……つもりだった。実際はどうだ、あの戦いの後も助けてもらってばかり。このままではいけない、その意識を強く持たねばと魔女の言葉をアイカワは心に刻む。
「次、ナカタッ!」
『ハイ!』
 もうこうなったら付き合うしかない。猟兵の埒外さは十二分に知っているつもりだったが、この魔女はそれどころでは無い。規格外だ。何をするつもりなのだと内心身構えて、ナカタは一喝を待ち受けた。
「だいたいナカタもナカタよ! 『願い』じゃないわよ! 祈ってどうにかなるなら今頃ダークセイヴァーはダークしてないわよ!」
『え、ダーク……』
『突っかからないで下さいジンギスカンにされます!』
 早口小声でアイカワがナカタを咎める。要するにこのお方は『絶対に怒らせちゃいけない』タイプの相手らしい。いやもう十分怒っている気もするが、兎角、今は言葉を真摯に受け止めようとナカタは己を律した。
「上司なら明確な指示しなさいよ指示!! なんかすごい力もってる猟兵なら楽になんとか出来るでしょ精神なんじゃないの!?」
『……それは、確かに、ええ』
 確かに、マイハマであんな事があって、その威力をまざまざと見せつけられては――心のどこかで、彼等なら何とかしてくれるだろうという甘えがあったとしてもおかしくは無い。そんな思いがふと、ナカタの胸に訪れた。
「あんたらの世界でしょ!? 卑屈なのよ! ぶちころすわよ!?」
『ちょ、落ち着いてください……』
 息を切らすフィーナをアイカワが必死で宥める姿を見て、彼女がカサイで暴れた猟兵の一人か、とナカタは理解した。あのやる気のない羊を一人前に育てた功労者……だからこそ、彼の代わりに私へ怒りをぶつけたのだろうか。
『――気をつけよう。これで全部解決したわけじゃないからな。だろう?』
「そういう事よ。さあ、皮剥いでギョーザの具にされたくなかったらほらっ! キビキビ動く!」
『何か悪い意味で進化してる……』
『具材ありますからね。肉以外』
「そこのアライグマ! 可愛いからって調子に乗るんじゃないわよ!」
 ぎゃあぎゃあとわめく彼等と共に立ち上がり、一行はフィーナを含めて作業現場へと戻っていった。

『あの、ここらのクレーターどうしましょう……』
「クレーター? 邪魔なら埋めなさいよ!」
 鞭をピシャリと鳴らして答えるフィーナ。そそくさと持ち場へ戻るアライグマを見やり、そのまま鋭く現場を一瞥する。
『まだ残骸が沢山あるんですが……』
「残骸が転がってる? さっさと運びなさいよ!!」
 歯を剥き出しにして言葉を返すフィーナ。クレーターをどうにかするのは最終的に彼等が考えればいい。残骸が使えそうなモノならば回収すればいい。その判断を一々仰がなくても、目的があれば、どうすればいいか理解してきちんと動ける筈――フィーナはそう信じていた。だからこそ、彼等自身が考えて動く様にとフィーナは叫ぶ。
「ほらそこ! くたびれてんじゃないわよ! 昨日何を学んだっていうのよ!」
 信じているからこそ厳しい愛の鞭をフィーナは放ち続けるのだ。そうでなければ自身の故郷と同じ様に、いつの間にか底知れぬ闇に飲み込まれてしまうかもしれないのだから。そんな事は、絶対に起こしてはならない。
「自分で考えて行動なさい。それしかないのよ。働かなければ生き残れないのよ!」
『働かなければ生き残れない、か……』
『随分と働く様になったな、え?』
 鞭の音を耳にしてぼそりと呟いたアイカワを、歩行戦車越しにナカタが揶揄った。食っちゃ寝ばかりのぐうたら羊だったのが、随分と立派になった。そんな揶揄を払う様に脚を振って、アイカワはナカタへ告げる。
『そりゃそうですよ。寝てたらいつの間にかジンギスカンなんて真っ平だ』

「嵐が来る前にどうにかしなさい。次はもっと吹き荒れるわ!」
 戦いは終わった。だが日常は続く。この平穏ですらいつまでも続く保証はない。何故ならばここはアポカリプスヘル、地獄の最前線――紙切れよりも安い命になりたく無ければ、自ら懸命に生きる術を身につけなければならないのだ。フィーナの言う嵐とは、今まで以上の壮絶な戦いの事か。そうなる前に、生き残る為に、やれる事を精一杯成し遂げなければならない。
「だから、死ぬんじゃないわよ」
 その言葉を最後に魔女はふわりと姿を消した。僅かに花と、炎の匂いを残して。
『ああ、死なねえよ』
 それに、死なさねえ。皆が遺してくれたモノ――猟兵も、白竜も、俺達に生きる術を教えてくれた。だからそれに応えるのが――俺達の使命だから。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月03日


挿絵イラスト