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果てた夢達に慰めを

#ダークセイヴァー #辺境伯の紋章

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#ダークセイヴァー
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#辺境伯の紋章


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●私の元に集まる物
 夢――それは願望の塊。
 ああなりたい、こうなりたい、またはこれをしたい等の様々な夢を抱き、人々は絶えず努力する。
 その姿は、いつ見ても美しい物だ。

 だけどそれを下らない物といい、抱いては簡単に捨ててしまう人も多数いる、その結果夢たちは行き場を失ってしまう。
 いつ見ても可哀そうだと私は思う……だから私は。

 近寄ってきた行き場なき夢達に、行き場を与える事にした。

●夢との死闘、その予兆。
「うん――よし全員いますね。
 皆さん、今回は集まっていただき感謝します。今回はここダークセイヴァーの世界にて、オブリビオンの出現が確認された為、招集をかけさせていただきました」
 グリモア猟兵の一人である少女が、その死んだような瞳で猟兵達が集まったのを確認すると、開口一番そう呟く。

「貴方達猟兵のお陰で、ここダークセイヴァーにも今私達のいる"人類砦"や別の区域にある"辺境空白地帯"の様な、人が安心して暮らせるような場所が増えてきて、とても嬉しく思っています。
 ですが、オブリビオンはそれを良き事だとは思わないでしょう、特に"人を恨むオブリビオン"はね」
 "人を恨むオブリビオン"――主に、"人から追放された事のある者の過去"や"人から見放された事のある者の過去"等から生まれるオブリビオンがそれに該当する。それらは極度に人を忌み嫌い、恨み、殺しにかかろうとする。
 それを例えに出したという事は……つまり。
「察しがいい猟兵もいるようですね、そうです。今回貴方達が対峙するのは『辺境伯』と呼ばれるオブリビオンの一体で、その中でも極度に人を嫌い恨んでいる物です。
 ちなみに『辺境伯』というのは、私達間では"紋章"と呼ばれている寄生虫オブリビオンがとり憑く事で生まれる存在の事を指します」
 "紋章"がとり憑いたオブリビオンの個体は、元から持っていた強大な力に加え、さらなる力が付与される。
 その付与される力という物は、我々の想像を遥かに凌駕しており、一度それを振るえば、カタストロフィが起こってしまう事は想像に難くない。
「先程も言った通り、今回の『辺境伯』や引き連れている他のオブリビオンは異様に人間たち集中して襲おうとしているようです。ならば、ここ"人類砦"も当然襲撃しに来るでしょう。
 この予測はほぼ間違いないと言って良いでしょう、故にここを迎撃の拠点として、今のうちにその準備をした方がいいと私は判断しました」
 いわば防衛戦といった所だろうか、と皆々が言うと少女は「正解」といった。
「ここから少し離れた広い空間――そこを主な迎撃地とし、武器の準備や敵軍の偵察、そしてこれが最も大切な事、それは"人類砦"にいる無力な民の避難作業です、誰も犠牲になってほしくはありませんからね」
 少女は小さな声でそう言った、恥ずかしかったのだろうか? と皆々が言うと、少女は「うるさいですね」と一蹴した。
「準備の内容は問いません、各々自由にやってもらって構いません。そして最後に『辺境伯』にとり憑いている"紋章"についてです。
 今後新たな被害が出ない様にする為、そしてダークセイヴァーを支配している上位種の存在を特定する為に"紋章"は可能な限り回収をお願いします。敵を倒して死滅した"紋章"を回収するだけなので、そんなに難しくはないでしょう」
 上位種――あくまで今回出てくるようなオブリビオンは、ダークセイヴァーを支配している存在の手駒に過ぎないだろう。だが、"紋章"はその上位種がとり憑けたとするならば、それを解析すれば貴重な手がかりになり得るだろう。

「……さて、あらかた説明したことですし、各々解散した後準備にとりかかってください。
 辺境伯……いえ、個体名『朽ちる夢』は、人々の叶えたい夢や欲望を糧として戦うようです、下らないですね。もし、夢を持っているのならば、戦う際には十分にお気をつけください、では」
 そういって少女は"人類砦"を一足先に去ってしまった。
 夢や欲望を糧として戦う……つまりこれは、人と夢との戦いだろう。
 夢を潰すのは心苦しいが、それでも私達は戦わねばならない。
 各々がそう心に想いながら、目的の迎撃地へと足を運ぶのであった。


神崎-Kanzaki-
 OPを閲覧していただきありがとうございます!
 初めてのマスター仕事であるが故、至らぬ点も多々あると思いますが、精いっぱい頑張りますので、どうぞ応援よろしくお願いします!

●一章
 オブリビオンの軍勢を迎撃するための準備期間となります。
 部隊は"人類砦"から少し離れた広い空間です、軍単位での戦闘ならば十分に足りる広さとなっています。
 つまり、罠や大砲等の設置も容易に行えます、また人類が済む場所から離れているがゆえに、少々荒々しい物を使っても、被害は出ないでしょう。

 最悪の事態に備え"人類砦"に住んでいた住民には一時的に避難してもらいます。貴方達にはその避難補助や呼びかけ等を行ってもらいます。
 迎撃等の作業が苦手という猟兵や夢を潰したくないという猟兵がいるのなら、そちらに回っていただく事も勿論可能です。
 戦闘はできなくとも、この仕事は非常に大切です。誇り持ってやりましょう!

●二章・三章
 捨てられた夢の亡霊達とそれを率いる辺境伯の『朽ちる夢』との戦闘です。
 連続して発生するため、大変な任務となるでしょう。

 捨てられた夢の亡霊は強化こそされていませんが、自身の諦めたくない夢の力を糧として貴方達猟兵に襲い掛かってくるでしょう、その力は尋常じゃないです。

 辺境伯である『朽ちる夢』はOPで少女が言った通り"紋章"の力によって強化されています。
 倒せば"紋章"は回収できるでしょうが、強敵であるがゆえに倒すのは非常に難しいでしょう。
 ですが貴方達は迎撃前に色々準備をしている筈です、有効活用して勝利を目指しましょう!

●その他
 OP公開から1時間後(2020/7/6 19:00~)にプレイングの受付を開始します。
 締め切りについては期日を設けません。
 次章移行時に関しては、移行した瞬間から受付開始した物として扱います。

 それでは果てしない夢達との戦い――開幕です。
 皆さんの熱いプレイングお待ちしております。
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第1章 冒険 『辺境伯迎撃準備』

POW   :    襲撃を行うポイントに移動し、攻撃の為の準備を整える

SPD   :    進軍する辺境伯の偵察を行い、事前に可能な限り情報を得る

WIZ   :    進路上の村の村びとなど、戦場に巻き込まれそうな一般人の避難を行う

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アリステル・ブルー
アドリブ連携歓迎
同意があれば他の猟兵さんを手伝うね
(UC指定してますが使わなくても良いです)

●WIZ
使い魔ユールを呼んで避難場所に最適な場所偵察してもらうね。必要なら視覚共有もするし、得た情報はみんなに伝えるよ。
住民にも心当たりを聞いてみて、自分でも偵察しながら最適な避難場所に誘導するよ! 同じ目的の猟兵さんいないかな。
まずは住民の安全第一ってね。

辺境伯、か…。
奴らも難儀なものだね。しかも人を憎んでるって? それはこちらのセリフなんだけどね。せっかく出来た人類の希望、奪わせはしないよ。
しかし夢か。僕の夢はこの世界の人が自由になる事。だから負けるわけには行かないんだ…。



●真の自由を目指す者
 "人類砦"に"辺境空白地帯"――ここダークセイヴァーにも、人が住める安全地域という者は次第に増えつつあった。だが今回の様に、オブリビオンが何度も襲撃を起こし、それを奪い去っていく。
 真の平和や自由という物は、いくら待てども訪れる事はなかった。

「辺境伯――か、奴らも難儀なものだね。人を憎んでるって? それらは僕達のセリフなんだけどね」
 アリステル・ブルー(人狼のクレリック・f27826)は、"人類砦"の中心で少女が話した事を回想しながらそう呟いた。
 今回のオブリビオンは人類を極度に憎んでいる――理由はわからない。だが、それと同じようにオブリビオンを僕達は憎んでいる、何度も平和で自由な場所を奪いに奪ってきたオブリビオンを、心の底から――。

「せっかく出来た人類の希望、奪わせはしないよ」
 アリステルは、魔力を込めた力で口笛を鳴らす。絶望に染まるダークセイヴァーの空、その彼方から輝く青い鳥が飛翔する。やがてその鳥は、アリステルの頭上に鳴きながら静止した。
「――良し、それじゃぁ近くにある比較的安全な場所を探してもらおうかな、よろしくね、ユール。さてと、僕も手がかりぐらいは探しておかないと……そうだ、すみません、この付近に比較的安全そうな場所って知ってるかな?」
 アリステルは、ユールと呼ぶ使い魔を偵察に向かわせ、周りの住民にも心当たりがないか聞いてみる、だが。
「これからどうなっちまうんだ……」
「怖いよ、死にたくないよ」
 周囲の住民の耳にも既に今回の襲撃の事が届いていたのだろう、絶望と混乱が入り混じった軽いプチパニックに陥っていた。
 当然である、この世界は何度もオブリビオンの襲撃にあってきた、この中にもかつて起きた襲撃から命からがら逃げてきた人だっているだろう、トラウマを持たないわけがない。
「まずいね、どうしようか」
 と、アリステルもいよいよ困惑したその時だった。
 自身の視覚が揺らぎ、やがて別の情景を映し出す……この感覚、これまでも何度か味わった事があるだろう。
 そう、使い魔であるユールからの視覚共有だ。映し出された情景は、かつて起きた襲撃地の様であった。かつて起きた猟兵とオブリビオンとの戦争地――なのだが、周りに敵対する物は存在せず、かつ今回の戦闘場所からも比較的離れている。
 アリステルはその事実に安堵し笑い、すぐさまユールに戻ってくるよう指示を送る。

 ユールが戻ってくるのに時間はかからなかった、これはかなり近い所にその場所はあったという事を示している。
 ダークセイヴァーを薄く照らす月を背後に舞い戻るその光景をアリステルと住民は静かに眺める。その光景はまるで人々に幸せを運ぶと言われている『幸せの青い鳥』の伝承その物であるかのようだった。
「よかった……。良し、皆さん急いで避難しよう、道はユールが教えてくれる筈だよ」
 人々は笑顔と活力を取り戻し、ユールの後を追う。アリステルもその光景を眺めながら、住民の避難誘導を続ける。
「僕の夢はこの世界の人が自由になる事。だからこの戦い、負けるわけには行かないんだ…」
 生きる希望を再び取り戻した住民を見て、彼は改めて心にそう誓った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

春乃・結希
私は絶望が嫌いで、絶望に人が屈するのを見るのも嫌で
この世界の闇を照らすにはもっと沢山の希望が必要だと思うから
この闇の中にあっても、希望を失わず、夢を持ってる人たち
そんな人たちが、私は大好きなんです

避難する人たちの不安を少しでも軽くできるように
終始明るく、自信たっぷりに声をかけます
必要であれば歩くのを手伝ったりしつつ
なんなら私が背負ったりして翔ぶこともできます【怪力】

大丈夫、絶対大丈夫です
この砦は、絶対に落とさせませんっ
私達、こう見えてもすっごく強いんです!
どんな敵が来ても、返り討ちにしてあげます
だからどうか、私達を信じて
みなさんの大切なこの場所にまた帰ってこられるように
少しだけ、時間をください



●彼女が一番愛してやまない物
 猟兵達が"人類砦"にいる人々の避難活動を始めようとした時にはもう遅かったのだろう、襲撃が起きる事を知った住民達は既に軽いパニックに陥っていた。
 死にたくないと足掻くか願う者、恐怖で足がすくんで動けなくなる者、そんな人々が入り混じった結果"人類砦"は、混沌と形容できるような酷い有様へと変貌していた。
 猟兵達は必至に説得し、避難するように伝える事だろう。しかし、混乱した住民達にそんな声など届く筈もなかった。
 どうしようか、と猟兵達は頭を抱える。その間にも、人々の混乱は増大してしまう。
 すると、この状況を打開すると言わんばかりに、一人の猟兵が住民達の前に現れた。

「皆さん! 大丈夫、絶対大丈夫です! この砦は、絶対に落とさせませんっ!」
 それは、春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)と言う猟兵であった。
 結希は、住民達にそう強く呼びかける、その声からくる説得力は先程の猟兵達の呼びかけとは比べ物にならない程であり、表情も住民達の絶望した表情とは真逆の、希望に満ち溢れた笑顔その物だった。
 だがそれだけでは住民達の不安なぞ晴れやしない。
 口で言うのは簡単だ、だがそれだけでは状況は一向に変わらない。結局は全て行動に起こさなければ意味がない。
 それでも結希は説得をやめなかった。
「安心してください! 私達、こう見えてもすっごく強いんです!」
 結希はそれを口だけだと思わせないようにする為、さっそく行動に起こした。周囲を見渡してみれば、至る所に足がすくんで動けない者や足が不自由な人がいた。
 結希はその人を背中に背負い、小さい子供に関しては片手で持ち上げ、そのままじっと空を見上げる。結希はその体型とは裏腹に、強い力の持ち主であった。
「よーし飛ぶぞー! 吹き飛ばされそうな物はしまって、舌を噛まないように気を付けてくださーい」
 そういうと、次第に結希の周囲で強い風が吹き荒れる。そのまま結希は目を閉じ、自分は強いんだという事を心の中で何度も呟く、その想いが決して途切れる事の無いように、何度も、何度も。
 やがてその声は届いたのか、結希はその吹き荒れる強い風のエネルギーで勢いよく上空を飛翔した、目指すは皆の生きる希望となる避難場所。
「ここからそう遠くないですね……皆さん着いてきてくださーい!」
 地上の住民達がついてこれるように、多少力を抑えつつ移動する。背後を見れば、先程とは違い少しづつ生きる希望を取り戻している住民達の姿があった。
 結希はそれを見て、少し安堵した事だろう。

 やがて目指していた地にたどり着き、結希は地上に足を降ろした。後ろを見れば、住民達も何とか到着することができた様だった。
 力が強いとはいえ、大人を背中に乗せ、子供を片手で背負い運ぶというのは少し荒業だったのだろう。結希の額は汗で濡れており、身体にも疲れがドッとのしかかる。
 住民達に大丈夫かと心配されるが、結希はこくりと頷き、皆の方を向いた。
「この通り……私達、すっごく強いんですっ! どんな敵が来ても、返り討ちにしてあげます! だからどうか、私達を信じて……皆さんの大切な"人類砦"にまた帰ってこられるように、私達に少しだけ、時間をください!」
 結希は必死に訴え願う。ここまでしてくれたのだ、誰がこの願いを拒否るだろうか。
 一人また一人と住民達は、結希と他の猟兵達を応援する言葉を投げかける。それを聞いた結希は今まで以上に良い笑顔で笑った。
 この状況こそ結希が一番好む物。希望を見失わず、ただ夢のために走り努力する、そして今の様に笑顔を絶やさず、笑い合えるような人のつながり、そこに絶望何て物は一切無い。
 そう、この希望に満ち溢れた物こそが、結希が一番愛してやまない光景なのです。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
“…人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を”

…これが私に託された想い。大切な人達から受け継いだ誓いだけど…
確かに、言葉を変えれば夢のようなものかもね

事前に周囲の第六感に干渉する“隠れ身の呪詛”を自身に施し、
小石のように存在感を消して闇に紛れ偵察に向かうわ

…人を怨むオブリビオン…成る程。怨霊の類いだったのね

貴方達がどんな存在で、どんな過去があるにせよ…
今を精一杯生きている人達を害するならば容赦はしない

戦闘知識を基に敵軍の進路や行軍速度を見切りつつUCを発動
敵の感情や能力を残像として暗視して情報収集を行い離脱する

…まさか死者の夢まで操れるなんて…
更なる災厄に育つ前に此処で討たないと…危険ね



●想いの回想
『人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を』

 辺境伯が率いる軍勢を確認しながら、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は一人心の中で回想する。
 昔自分に託された一つの言葉、掛け替えのない大切な人達から受け継いだ誓い――今となってはそれが、リーヴァルディを動かす強い原動力となっていた。
 今回の相手――辺境伯は、夢や欲望を糧として戦うオブリビオン。それを聞いたリーヴァルディは、改めてこの言葉について考える事になる。
 誓いの言葉。それに動かされるがまま、自分の為すべき事をする。言い換えれば、これが私の夢なのかもしれない。
 吸血鬼との戦いに敗れ、ダークセイヴァーは今や吸血鬼の支配下となってしまった。それ以降ダークセイヴァーに住まう人類に平和なんて物は一切訪れる事なんてなかった。
 リーヴァルディは許せないでいた。元々人類の地であった世界を奪い、挙句の果てには虐げようとする奴等の存在そのものが――。
 辺境伯に取り憑いた紋章……それを解析すれば、世界を支配する上位種の吸血鬼の居場所が特定できるかもしれないという、リーヴァルディにとってそれは願ってもいない事であろう。

「そのためにはまず、ここを突破しなければならない」
 周囲の第六感に干渉するという呪詛の一つ“隠れ身の呪詛"。それをリーヴァルディ自身に施す事で、自身の存在感を完全に消し去る事が出来る。呪詛の応用技の様な物であり、リーヴァルディは好んで使用している。
 そのまま辺境伯の率いる軍がある地点へと移動する、草木の影から顔をのぞかせてみれば、つい耳を塞いでしまう程に“何か"を嘆く怨霊共が無数にうごめいていた。
「…人を怨むオブリビオン…成る程。怨霊の類いだったのね。でも、貴方達がどんな存在で、どんな過去があるにせよ…今を精一杯生きている人達を害するならば容赦はしない」
 自身の誓いを再び再認識し、敵に向かい小声でそう吐いた。その誓いに動かされるまま、次に自分が出来る行動をとる。
 相手が人類を恨む存在であるというのならば、当然向かうであろう場所はその人類が多く存在する“人類砦"に他ならない。ならば軍の進路は、今いる場所から南西の道を直進するだろう、何せその道は戦闘するには程よい程の道幅で構成されており、それ以前に“人類砦"へ向かうとしたら一番の近道であるからだ。
 オブリビオンは無駄な事は一切しない生き物、それは長年の経験でわかりきっている事だ。
「つまり、今私がいる場所は“これ"を使うに最適な場所ね」
 ――限界解放。リーヴァルディはそう呟くだろう、やがてリーヴァルディから発せられる雰囲気は、吸血鬼その物へと変貌し右眼も真紅に染まっていく。周りが私一人で丁度良かっただろう。
 敵の全てを知り、自身を強化する血の赫眼《リミテッド・ブラッドゲイズ》。誓いを果たす為に、リーヴァルディが会得した魔眼の一種である。
 その結果、リーヴァルディは知る事になるだろう。
 ――あそこにうごめく怨霊は全て、辺境伯が操る“夢"その物であるという事を。
「…まさか死者の夢まで操れるなんて…」
 本当にこれは人と夢との戦いだった。夢という物が自身の持つ誓いと同義で扱うとするのなら、そこから発せられる力という物は計り知れないだろう、それは他の誰よりも自分が良く知っている。
「更なる災厄に育つ前に此処で討たないと…危険ね」
 あの数の夢が一斉に暴れだしたならば、どんな災厄が生まれるだろうか……少なくとも、世界が崩壊の道を辿る事態は免れないであろう。
 リーヴァルディは立ち上がり、迎撃地へと引き返す。他の猟兵にこのことを伝えるために。
 その道中、リーヴァルディは何度も心の中で例の誓いを復唱することだろう。あんな夢共なんかに自分の誓いが負けてたまるかという強い想いを込めながら……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラス・セレブライト
夢破れた人の残滓であるオブリビオンと、夢を見て明日を生きようとする人類砦の人達…どちらも私の愛しい守るべき人間達。
けれど今は、まだ生きて明日を求める彼らの願いを叶えましょう…人々の願いこそが、私の存在意義なのだから…。

☆やる事
私は避難する人々に寄り添い、彼らを守り誘導しましょう。
「皆さん〜私と一緒に安全な場所に行きましょうね〜」
優しく、穏やかに語りかけながら避難誘導して、敵がこのタイミングで仕掛けて来ないと分かっていても私の結界術で避難する皆さんを守ってあげましょ〜。
「安全なところに着くまで、私がずっと側にいるからね〜」
竜にはなれなくても、ふわふわ飛ぶ私の姿が少しは頼もしく見えるといいわね〜。



●だからこそ愛おしい
 自分の夢や願いのために生きようとする人々はいつ見ても愛おしい物だ。
 今回の襲撃の件を聞いて足がすくみそうになっても、なんとか避難しようとする人々の姿を見ながら、ラス・セレブライト(星と光の竜神・f28442)は心の底からそう思った。
 夢破れた人の残骸であるオブリビオン、そして今自分が見ている夢を見て明日を生きようと努力する人類砦の人々、どちらもラスにとっては愛おしく守護するべき存在だ。
 だけど前者は後者の愛おしい物を妨害する、護るべき者が護るべき者を壊そうとする。どちらも護るべき者だが、まずは壊されそうになっている人類砦の人々を護るのが先決だろうと、ラスは判断した。
「壊されてしまっては意味がない。人々の願いこそが、私の存在意義なのだから…」
 怖くても歩き、明日に向かって進むとしている人々を護る様に、ラスはふわふわと浮遊しながら、避難場所まで誘導する。
「皆さん〜私と一緒に安全な場所に行きましょうね〜」
 人々に呼びかけながら先導したは良いものの、自分が担当する人々の避難経路には、例の辺境伯が引き連れている他のオブリビオンが数体いると他の猟兵が報告しており、非常に危険な道となっている。
(来るとしたらそろそろかしら? ……でも)
 ラスは敵を確認する前に、人々の周囲に聖なる光で構成された結界を展開する。何の意図で……と普通の猟兵ならば思う事だろう、だが当然ラスなりの理由がある。
「安全なところに着くまで、私がずっと側にいるからね〜」
 ラスの結界は護るための物、しかしそれと同時に人々を安心させる物でもある。それを裏付けるかのように、この結界の光には傷をいやす力が働いている。
 その行いが功を奏したのか、結界内にいる人々は次第に活力を取り戻しつつあった、その表情からは恐怖なんて物はすっかり消え去っていた。
(竜の姿にはなれなくても…私のふわふわ浮く姿が頼もしく見えるといいわね~)
 ラスは先導しながらそう思うであろう、だがラスのその不安は杞憂に終わる事だろう。
 なぜなら、人々の眼にラスの姿は聖なる女神その物であるかのように、神々しく映っていたのだから……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノウェム・ノインツィヒ
POW/連携・アドリブ歓迎

この世界には初めて来たが……ふむ。避難活動は慣れている者達に任せて、我は連中の相手を務めるとしよう。個が脅威なのは変わらんが、群の足並みは揃わねば恐れるに足らず。連中の行軍速度を緩めさせる事から始めるとするか。

UC使用は、敵が範囲内に収まってからで、仮に漏れがあっても大多数を巻き込めればいいだろう感覚。使用後は此方の攻勢により足並みを崩した者を避け、調子を取り戻す等、気を引き締めようとしている者を中心に蹂躙。多勢に無勢である事も念頭に置きながら、暴虐の限りを尽くし、囲まれる前の離脱も心掛ける。(敵軍勢の進路を妨げる様に移動を開始。同時に詠唱も始める)



●与えるは救済
 遠くから聞こえる嘆き声、次第にそれらは此方へと近づいてきている。
「奴等が近づいてきているようだな。ならば、避難活動の方を任せ、我は連中の相手を務めるとしよう」
 敵軍の進路にて、ノウェム・ノインツィヒ(白壁ノ嫗・f24561)は一人で敵軍が近づいてくるのを待っていた。
 まだ迎撃の刻ではない、だが敵は少ないに越したことはないだろう。
 先手必勝――というべきなのだろうか、いかに敵の数を多く減らせるかが集団戦においての勝利の鍵となる、ノウェム自身が培った経験がそう告げていた。

 しびれを切らしたのか、やがて武器を担ぎながら小言で何かの詠唱をしつつ進路を歩みだした。普通の猟兵ならば自殺行為だと捉え、多勢に無勢だから止めろ言う者もいるだろう。それはノウェム自身もわかりきっている事だ。
 だが、かつて隔離国家の錬金術師によって生み出され、道具や兵器としての運用を計画されていたノウェムにとって、そんな状況など恐れるに足らずといった物であろう。
 歩みを進めていたノウェムはやがて足を止める。見つめる先の地平線には、辺境伯の率いる敵軍の一部が顔を覗かせていた。ここまで来ると、先程までは小さく聞こえていた嘆き声は耳を塞いでしまう程まで大きく聞こえる事だろう。
「成程――見た目から推測して、亡霊の類だろうか? しかし、そんな物は関係ない。敵ならば倒すのみ、それだけだ」
 ノウェムがそう告げると、敵軍のいる方向へ向かって激しい斬撃の衝撃波が迸った、道中の詠唱はこれの為だったのだろうか。
 彼女の内に秘めたる冷たき殺意が力となる《死に至らしめる夢の形(チャージ・オフ)》、それは彼女の持つ絶技の一つである。
 歩んでいた時間が長かったのが功を奏したのか、詠唱時間に比例するこの技は凄まじい威力を誇った。敵の大多数は断末魔を上げ消滅し、生き残った亡霊も苦しむような素振りを見せる。
 敵が弱ったのを確認したノウェムは勢いよく敵軍に向かって駆け出し、先程の攻撃を受けてもなお、まだ立ち上がる力が残っている亡霊を《ハルムベルテ》の斧部位で叩きつけ、背後に回ろうとした亡霊は反対側に備え付けられた槍部位であっけなく刺殺された。
「汝等が亡霊だというのなら、何か救済を求めているのだろう? ならばくれてやる、我が慈悲による破壊の救済を」
 ノウェムの戦い様は、正にノウェムの生き様を映しているかのようだった、道具や兵器として育てられた壮絶な過去が、今のノウェムを動かしている。そこに躊躇や躊躇いなど一切感じられなかった。

 あらかた蹂躙し終わった所でノウェムはようやく気付く。流石にやり過ぎたのだろうか、四方八方から他の亡霊の嘆き声が響き渡ってくる。
「やり過ぎたか……だが来た道はまだ安全そうだ。この状態ならば敵も暫くは行軍できないだろう。ならば、一先ず離脱するのが最適解だな」
 ノウェムは来た道を引き返し、その場を離脱した。その際、ノウェムは残された亡霊達に言葉等一切残さなかったという。
 まるでこれが当たり前であるかの様に……。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『その地に縛り付けられた亡霊』

POW   :    頭に鳴り響く止まない悲鳴
対象の攻撃を軽減する【霞のような身体が、呪いそのもの】に変身しつつ、【壁や床から突如現れ、取り憑くこと】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    呪われた言葉と過去
【呪詛のような呟き声を聞き入ってしまった】【対象に、亡霊自らが体験した凄惨な過去を】【幻覚にて体験させる精神攻撃】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    繰り返される怨嗟
自身が戦闘で瀕死になると【姿が消え、再び同じ亡霊】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

春乃・結希
……そう。あなたたちにも、夢があるんですね
でも、過去になってしまったあなたたちには
夢見る未来を叶えることは出来ない

私は違う
自分の力で、未来に進んでいけるから
私の想いの力で、絶対に夢を叶えてみせる
私の心は、こんなもので砕けたりしないよ
だって私の心は
世界中の誰よりも愛して、何よりも信じる
『with』が、護ってくれるから

叶えられない夢を引き摺り続けるのは、辛くない?
もう二度と、夢を見なくていいように
あなたたちの絶望ごと、焼き尽くしてあげる

UC発動【焼却】
希望の想いを溢れさせた焔と共に集団に飛び込み
『with』を振います【怪力】



●私には歩む事の出来る足と、共に歩む仲間がいる。
 刻が来る、その合図と共に地平線からオブリビオンの集団が顔を出す。
 嘆き声が耳に突き刺さる、その声を聞くと次第に心が蝕まれるような感覚を覚える。
『後少デ叶ッタノ二……!』
『マダ夢ヲ持ツ者ガ憎イ』
 声の内容と事前に報告された情報からして、あの亡霊全てが“誰かの夢"その物なのだろうと、春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は察した。
 そして、それと同時に結希はそれらを軽蔑する事だろう。
「たとえ貴方達が未だ夢に捕らわれていたとしても、過去の存在となってしまった貴方達に、それを叶えるという未来が訪れる事はないんです」
 強く言い放ち、結希は一歩歩みだす、夢うごめく地獄のような迎撃地へと。
「でも――今を生きる私は違います。貴方達とは違い、夢をかなえるという未来へと進む事の出来る立派な足があります!」
 結希の足は未来へと歩むための足――いいや違う、今を生きる人間全員がその足を持っているのである。そしてその足こそが、人を動かす原動力となっている、道を歩くにも足は必要である為、これは言いえて妙な表現だ。
『ウルサイ……ウルサイ!』
 亡霊は先程より大きい声で嘆き吼えるだろう。それはもはや呪詛そのものだった、その声を聞いた猟兵が次第に悶え苦しんでいく。
 すると結希は少女が言っていた言葉を思い出す。

『もし、夢を持っているのならば、戦う際には十分にお気をつけください、では』

 成程、夢を持っているからこそ、夢自身が叫ぶ言葉には耐えられなくなるのか――でも、あの時少女は"夢を持つ者は戦えない"とは言っていない。つまりは、夢に対する気持ちが亡霊の嘆き声に負けていなければ、対抗できるんじゃないかと推測した。
 結希は"そんなのに負けてたまるか"という強い想いを心に抱きながら、UCを発動する。
 絶望なんかに負ける事のない焔――その強さが自身の心に宿る想いの強さを物語っている。
「そのような絶望しかない夢をもう見なくて済むように――貴方達ごと焼き尽くしてあげます」
 その焔はやがて緋色に耀く一つの翼となり、奴らのいる道を一直線上に飛び回る。その時、結希の視線は目の前の地平線を見つめていた、まるで“夢をかなえる未来"を見つめているかのように。
 その翼から迸った“結希の夢の力を宿す焔"は、次第に周囲の亡霊を焼き尽くしていった、その時の断末魔は相当悲惨な物であった。
「叶えられないと知ってもなお、それを引き摺り続けるのは、辛くないかな?」
 残った残党は結希の背中に背負う漆黒の大剣で掃討する。『with』という名前を持つ結希の愛刀は、結希の心に答えるかのように、凄まじい力を誇った。
 やがて――結希の周りに亡霊は一体もいなくなっていた。
「私の夢の力が貴方達に負ける筈がない。
 何故なら私の心は、世界中の誰よりも愛して、何よりも信じる――この『with』が、護ってくれるから」
 残り一体の夢の亡霊が消えていく最中も、結希はずっとその先の地平線を、愛刀の『with』と一緒に眺めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロス・シュバルツ
アドリブ、連携可

少し出遅れてしまったけれど、まだ力になれる事はあるでしょう
まずは……その亡霊を倒すところからだ
彼らのような存在、捨てられた夢なんてこの世界では特に珍しくもない。誰だって、彼らのような存在を生む可能性はあるだろう

だから俺は、別に彼らを侮蔑はしない。……とはいえ、容赦をするつもりもないけれど
黒剣で切り込んで弱らせて隙を作り、【地を穿つ冥闇の火】大地から噴出する焔で呪いごと全て焼き払う

『オーラ防御』『呪詛耐性』で憑依を防ぐが、万が一取り憑かれた場合は試しに自傷を試みる
それで敵にダメージを与えられるなら躊躇わず『覚悟』を決めて自分を攻撃
ダメージは『激痛耐性』『継戦能力』で耐える



●無情なる者
 クロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)は遠くから亡霊の進軍を覗いていた。
「あれが亡霊――いや、捨てられた夢の亡骸か。あんな存在、この世界じゃ珍しくもない。誰だって、あぁいう存在を生み出してしまう可能性を持っている」
 クロスは、奴らの存在を"珍しくもない"と形容した。その際のクロスの表情に変化等なかった、勿論動揺もなく。
 それには理由があるのだろうか……その答えは彼にしかわからない。
「珍しくもない。だから俺は、別に彼らを侮蔑したりはしない。――そして勿論容赦もするつもりはない。何も感じないからね」
 遠くから覗くのをやめ、ゆっくりと奴らのいる場所へと近づくように歩みだす。その際に、クロスはとある武器の鞘にへと手をかけるだろう。
 【葬装】黒羽――クロスの持つ武器の一つであり、魔力次第では様々な系統へと変化させることのできる代物だ。
「少し出遅れてしまったけれど、まだ力になれる事はあるでしょう。その手始めに、まずは“アレ"を倒す」
『ソコヲドケッ!!』
 夢は嘆き吼える事で、クロスの進行を阻止しようとするだろう、その嘆き声は呪詛となり、クロスの心を蝕んでいく――事はなかった。
「幾ら嘆いた所で無意味だ。その声は俺に届く事などない」
 クロスの心を護り呪詛を防ぐ偽りの装甲――【虚装】影窮。それがクロスの心を閉ざし、逆に力へと変えていく。
「良いですね……力が滾ってきます。そろそろ本番と行きましょうか」
 クロスは自身に蓄積された力を解放し、UCの一つを解放する。
 
 ――万物を灼き払え、冥府より現れし黒炎!
 
 クロスがそう唱えた刹那、次第に大地が激しく揺れていく。奴等がクロスに向かって襲い掛かった瞬間――その揺れる地面を穿ち、そこから激しい炎が吹き荒れる。一つ、また一つと奴等が『嫌だ』やら『消えなくない』やら断末魔をあげていく。
 その炎に触れた物には呪いが付与される――夢に与えられる呪い、そんな物一つしかないだろう。夢と言う存在に、叶わないという未来を作られる事以上の呪いはないだろう。
「他愛もないな」
 奴らが完全に消えた事を確認すると、クロスはその吹き荒れる炎を完全に消去した、そこに残るはクロス只一人だけであった。
 夢に対して語り掛ける事もなく、無情に消し去るその姿は、まさに死神そのものであるかのようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノウェム・ノインツィヒ
WIZ/連携・アドリブ歓迎

普通なら廃墟にでも入って奇襲をかけるのが得策だが、亡霊相手に壁で囲われた場所は無意味か。さて、我は此処に居るぞ?汝等にとって忌むべき生者が此処に。

またか。煩わしいな。いや、違ったな……恨み言など聞くに値しない。汝等もまだ生を謳歌したかったのだろうに。だが死んだ。それが全てで紛れもない現実だ。己の弱さを吐露し、自らの末路を嘆き、過去へ救いを求めるなど我からすれば滑稽に映る。死を拒絶し、生を羨むだけの者が次の機会を掴めると思うな。……分不相応だと知るがいい。

UC使用は、地を切り裂き、廃墟を撫で斬りにし、己の存在を知らしめつつ、亡霊犇めく平地を練り歩きながら展開。



●冷たき刃
「先程数を減らしたというのに、まだ襲いに来るとは」
 ノウェム・ノインツィヒ(白壁ノ嫗・f24561)は迎撃地に接近してくる無数の亡霊共を眺めつつ、呆れた様に溜息をついた。
 早いとこそこらの建物の中に隠れる等して奇襲をかましておきたい所なのだが、亡霊相手にその策は通用しないだろう、非常に面倒な相手である。
 そんな相手に一番有用となりうる行動と言えば一つしかない。
「さて、亡霊共よ。我は此処に居るぞ?汝等にとって忌むべき生者が此処に」
 迎撃地の中心――敵が見つけやすく、かつ広い空間で迎え撃つに尽きるだろう。集団で一斉に襲ってきた方が、まとめて倒しやすいのでこちらとしても都合がいい。

 案の定、奴等はノウェム目掛けて嘆き声を吼えながら、襲い掛かってきた。亡霊という存在は、知能は無くただただ恨みに任せ襲い掛かってくるだけの奴等にすぎない。だが、恨み任せが故に力も強く、並大抵の猟兵でなければ、すぐ押し負けてしまう。
「煩わしいな――いや、違ったな」
 だが自分は違う。
 ノウェムは突き放すような眼差しを亡霊共に向ける。
「恨み言など聞くに値しない、汝らもまだ生を謳歌したかったのだろうが、死んでしまっては何も意味がない。
 それなのに自らの末路を嘆き、過去へ救いを求めるなど我からすれば滑稽に映る」
 慈悲無きその言葉を並べつつ、腰につけた氷塊の太刀に手をかける。哀れな亡霊共がその間合いへと入ると同時に、ノウェムも地面を蹴り上げ勢いよく駆け出す。

 地面を激しく裂いて奴等に威嚇をする、道中にある建物はまるで邪魔だというかのように、撫で斬って無理やりそこに道を作る。その様子に亡霊共も『奴は危険』と悟ったのか、ノウェムが想定していなかった程の量の亡霊共がノウェムに集中していた。
「少し多いか? いや、寧ろ好都合と言った所か」
 こちら目掛けて襲ってくる亡霊共を切り裂きながら、先程地面や建物を切り裂いた場所へと誘導する。多少逃した亡霊共もいるが、それらは他の者に任せるしかないだろう。
 自分が今できること、それは今この数の亡霊共を一掃する、ただそれだけだ。

 全ての亡霊がその場所へと入った事を確認した刹那、持っていた太刀を地面に刺し、UC発動の体勢へと入る。
「さあ……藻掻け、苦しめ、痛みを知れ。それが最初で最期の死となるだろう」
 ノウェムが呟いた瞬間、大地や建物――ノウェムの持つ氷塊で出来た太刀、無紋ノ太刀・凍絶が生んだ裂傷が鋭く巨大な氷楔に変形し、それらは全て亡霊共の身体を突き刺し、貫いた。
 これ程の数を葬ったのだ、その時発生した断末魔は鼓膜どころか耳その物が破裂してしまう程の絶唱だった。だがノウェムはそれでも表情を一切変えず、亡霊共を見下す様に冷たき視線を常に放っていた。
「死を拒絶し、生を羨むだけの者が次の機会を掴めると思うな。それが分不相応だという事を知るがいい」
 やがて亡霊共は消え去り、その場には絶対零度の氷楔とノウェムだけが存在していた。
 その姿を見た猟兵からは後に、冷酷無比な殺戮者と形容される程、その戦闘の様子は凄惨かつ非道な物であった。
 だがノウェムはそれを当たり前であるかのように、次の亡霊共を探しに足を進めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラス・セレブライト
哀しき亡霊達…彼らも本来なら救われるべき人々、私が守ってあげなきゃいけない人々。
もう彼らを私は守ってあげられない、けれどその魂を癒し解放する事は出来るわ。

☆死者に祈りを
「辛い事、痛い事、たくさんたくさんあったわよね
もう休んでいいから、ゆっくり眠っていいんだからね〜」
優しさの祈りを込めて空中からミゼリゴルディア・スパーダを放つわ〜。
自分の身を結界術で守って、散りゆく彼らの1人に1人を見つめて、骸の海へ還る瞬間まで慈しみの心で彼らを送るの〜。
「大丈夫、大丈夫、もう痛い事や辛い事はないわ〜
貴方達はもう大丈夫、貴方達は愛されているの〜
貴方達の事、ラスセレブライトは決して忘れないからね〜」



●死者に祈りを
 亡霊蠢く迎撃地で、ラス・セレブライト(星と光の竜神・f28442)は憐れんでいた。
 普段自分は皆々を護る存在、当然亡霊達もそれに値する存在だ。
 だが恨み持つ存在の亡霊となり、他の護るべき存在を傷つけるとなってしまった以上、もう護ってやることなんてできない。
「辛い事、痛い事、たくさんたくさんあったわよね。でも大丈夫、私がその魂を癒し解放してあげるわ。もう休んでいいの、だからゆっくり眠っていいんだからね〜」
 ラスは眼を閉じ、何かを祈りながら敵陣のど真ん中へと歩みを進める。他の猟兵はその姿を見て『自殺行為だ』といい、戻る様に言うことだろう。
 でも違う、ラスは自殺行為等と思っていない。なぜなら、亡霊達を解放するには光を持つ誰かが近くで祈り、安らかにその魂を弔ってあげるのが一番良い方法であるからだ。

 ラスが歩むのを確認した亡霊共は、そこ目掛けて嘆き声を吼え、身体を呪いの霞に変形しながら憑こうと試みるだろう。だが、それこそラスにとって一番都合がいい事であった。
「痛いのは一瞬だけですからね~」
 亡霊がラスに近づいた刹那、その頭上から無数の魔法剣が降り注ぐ。自身は事前に張った結界で身を護り、剣が突き刺さり消え去っていく亡霊共を眺めている。
 ただの魔法剣なんかじゃない、彼女の祈りの力によって、その剣が与える痛みはやがて、心の安らぎへと変えていく。
『アァ……ア……リガ……ト』
 亡霊共は次第に何かに対して感謝の言葉を並べ消え去っていく。亡霊と言う夢そのものの存在でも、地上に縛り付けられるのは不本意であったのだろうか? それはもう、ラス自身もわからない。
 でもラスは最後まで、消えていく亡霊達一つ一つに言葉を投げかけるのであった。
「大丈夫、大丈夫、もう痛い事や辛い事はないわ〜。
 貴方達はもう大丈夫、貴方達は愛されているの〜。
 貴方達の事、ラスセレブライトは決して忘れないからね〜」
 散りゆく亡霊共を見つめるラスのその姿は、他の誰から見ても『聖母』そのものであった事だろう――。

成功 🔵​🔵​🔴​

メリー・スペルティナ
メリー・スぺルティナ、ただいま見参!ですわ!
(到着後何故か迷子になって遅れたとは言わない)


想いだけが残されて、いえ「囚われて」かしら
まあそんな恰好で恨み辛みを言っていたら夢も何もないですわね……
ですが、それだけ無念や想いに塗れているなら好都合ですわ!

指を切り、流した血で魔法陣を描き「高速詠唱+捕縛+呪詛」を併用した上でUC【死の先を往く者よ】

想いを捕らえ切り離す紅き血の鎖で、
無念や心残り、抱えた「想い」を「その地に縛り付けられた亡霊」なんて辛気臭い過去から引っぺがして
心残りそのものをスパーンと奪い取ってしまいますわ!

……想いも無念も、わたくしが連れていきます
だから、貴方達はもう、おやすみなさい



●戦場駆ける呪鎖
「メリー・スぺルティナ、ただいま見参! ですわ!」
 多くの猟兵達と夢の亡霊共が犇めく迎撃地に、一人の猟兵がお嬢様口調で駆けつけてきた。
(迷子になって遅れてしまったなんて言えませんわ……)
 メリー・スペルティナ(暗澹たる慈雨の淑女(自称)・f26478)と名乗った女性の猟兵は、心の中に真実を隠しつつ自分の指を切って戦場を駆け抜ける。
 その指から流れる血はメリーの駆け抜けた道に沿って流れていき、やがてそれは一つの魔法陣のような図形を形成した。
(遅刻した分は取り戻さないといけないですわね……)
「夢という想いだけが残されて、いえ「囚われて」だったかしら? その様子で恨み辛みを言っていたら夢も何もないですわね……。
 ですが、それだけ無念や想いに塗れているなら好都合ですわ!」
 メリーの血で作られたその魔法陣は激しい揺れ、そして音と同時に赤く輝きだし、そこから無数の鎖が発射された。
 捕らえた敵の想いや心――それらを全て奪い去る事ができる呪いの鎖……なぜそのような物を持っているのか定かではないが、夢という想いに縛り付けられた亡霊相手には非常に有用な物なのは間違いない。
 端から見たら禍々しい物だが、メリーはそんな物お構いなしの様だった。
「夢とかいうその"心残り"のせいで縛り付けられているのですの? なら、そんな辛気臭い過去引っぺがして、奪い去ってしまいますわ!」
 戦場を迸るその呪鎖は、亡霊共の霞のような身体をしっかりと捕らえた。
『アァ……邪魔ダ!』
 亡霊共はその身体を呪いその物に変化しようとさせるが、呪鎖の呪いが強すぎるのだろうか? その鎖は決して身体から離れる事はなかった。
「……想いも無念も、わたくしが連れていきますわ、だから、貴方達はもう、おやすみなさい」
 メリーは亡霊共にそう言い残すと、勢いよく鎖を手前に引っ張り、そのまま亡霊共の身体を引き裂く。
 引き離された鎖には、何かオーラのような物が付着していた、こんな物先程までは存在していなかった。とするならば、これはあの亡霊共から奪い去ったものなのだろうか? 正体はわからない。
 だが、引き裂かれた亡霊共は次第に悶え苦しんだ。
『アァ! 私ノ、夢ガ! 大切ナ物ガ……!』
 成程、あのオーラは亡霊共の夢その物、またはそれに対する想いその物だったのか、それを奪い去られたとなったならば、あの亡霊共にはもう何も残す物などない。
 奪い去られた事で、この地に留まる理由など無くなった亡霊共はゆっくりと消え去り、やがてその場はメリーだけとなってしまった。
「ふふ、久々に楽しかったですわ」
 メリーはその消えゆく亡霊共を眺めながら、静かにそう言い放ち一礼した。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…ここから先は闇に覆われた世界にあって、
希望の灯火を胸に抱き今を生きる人々が集う地よ

…貴方達が如何なる夢を抱いていたとしても、
過去の存在が軽々に立ち入って良い場所ではないと知れ

左眼の聖痕で周囲の霊魂の存在感を暗視してUCを発動
限界突破した“血の翼”に大鎌を武器改造した刃翼で覆い、
全身を闇属性攻撃の呪詛のオーラで防御して突撃

…貴方達の夢は此処で終わらせるべきよ
その魂が、さらなる罪に穢れる前に…

超音速の残像が生じる早業の空中戦で切り込み、
怨霊の生命力(魂)を吸収する先制攻撃で敵陣をなぎ払う

その怨嗟も絶望も憎悪も夢も…全て私が引き受ける

…だから貴方達はもう苦しみ喘ぐ必要は無い
眠りなさい。安らかに…



●終わりを告げし者
『憎イ! 憎イ!』
『夢ヲ持チ、ノウノウト生キル貴様ラガ、憎イ!』
 亡霊共が嘆き声を吼え、猟兵達の精神を蝕んでいる中、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はその奥で様子を観察していた。
 その瞳は、夢に縛られるがままに暴れゆく亡霊共に、呆れたように暗く淀んでいた。
「…ここから先は闇に覆われた世界にあって、希望の灯火を胸に抱き今を生きる人々が集う地だと言うのに」
 ようやくリーヴァルディが迎撃地に向かって足を進める。左眼につけられた聖痕に力を込め、周囲の亡霊共の位置を暗視する。たとえ亡霊共が夢そのものだったとしても、結局は霊魂で構成されているに過ぎない。故に、霊体を探す時と同様の手順で何も問題はない。
「…貴方達が如何なる夢を抱いていたとしても、過去の存在が軽々に立ち入って良い場所ではないと知れ」
 リーヴァルディの周囲にいた猟兵は微かに寒気を覚えたであろう。それもその筈、彼女はその時、血で構成された翼を広げ、一時的に"何か"へと変貌しようとしていた。
 激しい妖力を放ったその翼は、リーヴァルディの身体、武器――全てを包み込み、やがて一つの羽衣《ヴェール》と化した。その翼は亡霊の恨み籠った呪詛や憑依を弾き、魔を穿つ刃翼、そう簡単に亡霊如きが破れる筈がない。
 天高く飛翔し、大きな月をバックにしながら地上の亡霊共を睨みつけ、大鎌をブンブンと振り回す。
「…貴方達の夢は此処で終わらせるべきよ。その魂が、さらなる罪に穢れる前に…。
 一切の望みを棄てよ!!」
 亡霊共の嘆き声に負けない程高らかに宣言し、残像さえ残す素早い速度で蠢く亡霊共を切り裂き薙ぎ払う。
 リーヴァルディの左眼の痕は、ただ亡霊の位置を特定するだけじゃない。見つめた亡霊共の生命力――魂の力を吸収する力をも持つ。故に、切り裂かれる頃には既に亡霊共はそれを避ける程の体力は残っていないのである。

 故に必殺――不可避の一撃。

 切り裂かれた亡霊共は苦しみ悶えながら嘆き声を上げる。
『アァ――憎キ人間共メ――!』
 左眼の聖痕によって生命力を奪われた亡霊共に、同じ亡霊を召喚するほどの力はもう残っていない。
 切り裂かれた傷痕から、紙の様に破れていき、やがて亡霊共は消滅していった。
「その怨嗟も絶望も憎悪も夢も…全て私が引き受ける。…だから貴方達はもう苦しみ喘ぐ必要は無い」

「眠りなさい。安らかに…」

 やり方は決して優しくはない、虐殺その物である。
 だが、夢そのものには罪はない。奴等も等しく誰かに抱かれた夢なのだから。
 故に、亡霊共に投げかけた最後の言葉は……。

 口調こそ厳しいものの、どこか優しげな言葉だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『欲望の粘土細工』

POW   :    偉大なる夢
【敵対者含むあらゆる人々の欲望を叶えたい】という願いを【自身を信仰する人々】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
SPD   :    ぺてん師と空気男
対象への質問と共に、【対象の欲望】から【対象が望むままの存在】を召喚する。満足な答えを得るまで、対象が望むままの存在は対象を【対象に望まれるままの行為】で攻撃する。
WIZ   :    悪霊物語
自身が【他人の欲望を叶えたいという願い】を感じると、レベル×1体の【他人の欲望が実態として現出した存在】が召喚される。他人の欲望が実態として現出した存在は他人の欲望を叶えたいという願いを与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はレティクル・ヌーベースペクルムです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「ふん――可哀そうな存在とはいえ、結局は小細工に過ぎなかったのか」
 亡霊共が悉く潰されていく様子に呆れたのか、遂に猟兵達の前に辺境伯が姿を現した。
 事前に言われた通り、辺境伯から発せられた力は想像以上の物で、鳥肌こそ立つ程であった。
「どうしてそう簡単に夢を潰せるのかしら? 不思議でならないわ。
 でも、結局貴方達も無意識に夢を抱き、それを原動力として動いている。
 それが私は大好物なの」

 辺境伯は貴方達に向かってたからかに告げるだろう。

「さぁ、夢の持つ本当の力って物を見せてあげるわ!」

 紋章の力を最大限に発揮し、周囲の猟兵達の心を蝕もうとするだろう。
 だが、決して負けてはならない。負けたら、この世界が滅んでしまう事など想像に難くない。
 そうして貴方達は立ち上がり、最後の戦いへと足を進めるのであった。
ノウェム・ノインツィヒ
SPD/アドリブ・連携歓迎

汝の常が他者の未来を摘み取っているというのに……我等に容易く夢を潰す理由を一体どの口で問うのやら。問わずとも答えを知っている筈だぞ?

戦争と同義だ。理不尽の押し付け合い、異なる思想の衝突、自己の証明。片方を押し潰し、己こそが正義だと、な。如何に正しかろうと相手に打ち勝てねば、抱いた夢は腐り落ち、戯言に成り果てるだろう。

敢えて言おう。我の夢は汝の一切合切を否定し、打ち滅ぼす。それだけだ。それに反し、汝はどうだ?叶えたい夢はあるか?我が完膚なきまで破壊せしめると確約しよう。心配するな、聞く耳ぐらいはある。……さあ、答え合わせだ。

UCは攻撃力重視。問答終了後、即座に展開。



●問おう
『どうしてそう簡単に夢を潰せるのかしら? 不思議でならないわ』
 辺境伯が皆にそう告げる中、一人だけそのふざけた言動に呆れ、先制攻撃を仕掛ける者がいた。
 そう、ノウェム・ノインツィヒ(白壁ノ嫗・f24561)だ。

「汝の常が他者の未来を摘み取っているというのに……我等に容易く夢を潰す理由を一体どの口で問うのやら」
『あら、随分と強気じゃない?』
 ノウェムは周囲が鳥肌立つ程の気迫を放ちながら告げるが、辺境伯は動じずに言い返す、たかが猟兵の放つ物なんかオブリビオンに効かない事は勿論想定の範囲内ではあるのだが。
『強気に立ち向かう疎かな猟兵さん? 貴方の夢は何かしら、教えて頂戴?』
「――そうだな」
 こんな質問、答える義理なんてないだろう。それもそのはず、オブリビオンが行う行動の大半は罠に他ならないからだ。
 夢は何か――ノウェムにとってその質問はくだらない以上の物であろう。自分にそんな大層な物等持ち合わせていない。
 だが奴は言った。"結局誰もが夢を抱き、それが今の行動の原動力となっている"のだと。それが正しいという事は、自分でもわかっている。それが何だと普通は思うのだが、ノウェムにとってそれは好都合だった。
 夢が今の原動力、ならば――。
「このような質問、答える義理等無いが……折角だ、敢えて言おう。我の夢は汝の一切合切を否定し、打ち滅ぼす。夢が今の原動力ならば、今の私の夢はそれ以外にないだろう?」
『なっ――』
 辺境伯が仕掛けてたであろう罠の術が作動し、ノウェムと瓜二つの"夢の粘土細工"が迎撃地中心に召喚される。
 それはまるで"狂戦士《バーサーカー》"であるが如く、ノウェムを睨み攻撃する――筈であった。しかしそれは、召喚された刹那直ぐにノウェムではなく辺境伯を睨みつけた。
 対象の望むがままに動き、攻撃する粘土細工――ノウェムが『我の夢は汝の一切合切を否定し、打ち滅ぼす事』と言ったのならば、当然粘土細工もそれに従うがままに行動する。辺境伯にとってそれは想定外の答えであったのだろう。
「折角だ、我からも一つ質問をしよう。汝にはあるのか? 叶えたい夢と言う物はあるのか? 聞かずとも、我が完膚無きにまで破壊せしめるがな。だが心配はするな、聞き耳ぐらいは持ち合わせている」
 次々に戦場を駆ける数多の問答。だが、その答えを出す前に、ノウェムと瓜二つの粘土細工は、周囲に大気を焦がす様な白焔の魔力と暴れ狂う雷霆の魔力を放出させ、それを纏う。答えなどには興味ない、それを言葉ではなく行動で起こしていた。
 それと同時に辺境伯に向けて放たれる凍てつくような殺気、それこそがノウェムが先程放った夢を表しており、即ち今の原動力となっている。
「「――さあ、答え合わせだ」」
 互いに同じ言葉を発し、愛用の武器片手に辺境伯を叩きつける。粘土細工も、望まれるがまま満足のゆくように、同じ行動をとる。ただ、本物《オリジナル》よりも、荒々しさはけた違いだ、流石は辺境伯が作り出した存在と言うべきか。

 やがて満足が言ったのか、粘土細工は次第に消滅していった。これには辺境伯も予想外であったのか、相当なダメージを受けた。
『とんだ異端者がいた物だね――』
 ノウェムはその言葉に何も返さぬどころか、睨みつける表情を一切変えなかった。
 戦いはまだ終わっていない、ノウェムは再び弱った辺境伯に向かって、その原動力を胸に戦場を駆けるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

春乃・結希
夢を叶えてくれるあなたは
優しいのかもしれない
でも、夢は叶えて貰うものやなくて、自分で掴むものだって、私は思います

私の夢は
思い出を振り返りながら、『with』だけが側にいて
楽しかったね。ありがとう。って伝えて、骸の海に還ること
…叶えてくれますか?

UC発動
何が召喚されても、惑わされたりしない
私が信じているのは『with』だけだから
羽撃く翼で一気に接近し
『with』を叩きつける【怪力】【重量攻撃】

猟兵として旅をすると決めた時から
いつでも最期を迎える【覚悟】は出来てます
私を骸の海に還せるものなら、還してみろ

あなたの夢は何ですか?
…亡霊と同じく、過去の存在であるあなたには
絶対叶えられませんけどね



●手を伸ばしても届かない物
「夢を叶えてくれるあなたは、優しいのかもしれない」
 猟兵達に牙をむく辺境伯を前に、春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)はそう言い放ちながら、その元へと歩み始めた。
『あら? 私の想いを理解してくれるのかしら?』
 辺境伯は結希の言葉を聞き、興味を抱く事でしょう。
 確かにそれは正しいのかもしれない、多くの猟兵達はそう思っている。だけど――どこかが決定的に間違っているのではないか? その疑問が何時まで経っても晴れなかった。
 でも――結希はわかっていた。
「でも、夢は叶えて貰うものやなくて、自分で掴むものだって、私は思います!」
 夢とは他人に叶えてもらう物なんかじゃない、それが善意であったとしても。
 自分で道を歩み、努力し、掴む。それこそ本来あるべき夢という物なのではないか、と結希は辺境伯に吐露した。
『そうかい? 私はそう想わないけどねぇ』
「もしそれが正しい事だったとしても、他人には叶えられない夢もあります。例えば――私の夢の様に」
 結希は背中に背負った大剣『with』の鞘に手をかけ、辺境伯を見据える。その手に込められた想いは、叶わぬ自分の夢に対する強き想い――今この戦場において、自分を鼓舞する為の材料は、それ位しか存在しない。
「折角なので教えてあげます――私の夢は、思い出を振り返りながら、『with』だけが側にいて、楽しかったね。ありがとう。って伝えて、骸の海に還ることです。貴方に叶えられますか?」
『骸の海に還る――とんだ歪んだ夢もあった物だ』
 辺境伯に憑いた紋章が光り輝き、仕込んでいた術が作動する。結希と辺境伯の目の前に、結希と瓜二つの存在が顕現される。
『貴方の望みが実体化した"粘土細工《夢》"――いいわ、その願い叶えてあげる。ならばまず死ぬ所から始めないとねぇ』
 脳は無く、ただただ夢の原動力だけで動かされるだけの人形――故に理性など無く、ただただ夢の為に前へと進み、邪魔な障害は排除するだけの醜い人形。
 結希は少し悲しくなった。
「猟兵として旅をすると決めた時から、いつでも最期を迎える【覚悟】は出来てます。だけど、それは今じゃないというのは自分が良く知っています。
 私を骸の海に還せるものなら、還してみろ」
 骸の海へと還る――友《with》に別れを告げ――その手を伸ばしても届かないような夢に縋り、己を鼓舞する。
 自分がそこへたどり着く時――自分はどうなっているのだろうか? その答えは誰も知らない、だけれどそれに近づく事はできるんじゃないかと彼女は思っている。
「何が召喚されようが、何が襲ってこようが、惑わされたりなんかしない! 私が信じているのは、この――」

『with』だけだから

 そう告げた刹那、結希の背中から凛凛と燃え盛る焔の翼が激しい音を立て広がる、これが自分の真――手を伸ばしても届かない場所に行き着く果ての真の姿。
『な、何だこれは――!』
 その言葉に返答を返すこともなく、ただ前へ、前へ、と羽ばたき、焔の羽を戦場に散らす。そして自分と瓜二つの存在と辺境伯を手に持った『with』で勢いよく叩きつける。その姿はどこか悪魔そのものであるかのように思えたのか、周囲の猟兵はそれぞれ震え上がった。
「ふぅ……そういえば、私は夢を語りましたが、貴方にも夢ってあるんですか?」
 どうしてか膨らんだ、素朴な疑問。
『――ハハッ、聞きたいの? 分かり切っているでしょうに――私の夢、それはそう! 叶わぬ夢達に救いを求めるこ「まぁ、亡霊と同じく、過去の存在であるあなたに、夢があったとしても叶えられないでしょうけどね」
 辺境伯が言い切る前に、結希はキッパリと言い放った。その時の笑顔は、可愛げでありながらもどこか恐怖を感じるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロス・シュバルツ
アドリブ、連携可

人もオブリビオンも、だれしも夢を抱き、夢を原動力として動く。あんたの言ってる事はきっと正しい
そして他者の願いを踏み躙る事が許されるとは思わないが……
自らの楽しみの為に人々を苦しめるような、吸血鬼達の行いを正しいとは思わないし、それを夢と言う事を俺は許容しない
何を言われても構わない。俺は他者の夢を踏み躙ろう

UC【赫の激憤】を発動、吸血鬼に変身すると共に半暴走状態になり、『オーラ防御』『呪詛耐性』『狂気耐性』をあわせて精神攻撃への耐性とする
UCで強化した身体能力に任せて黒剣を振るう

ああ、俺の願いは……オブリビオンを倒し、この世界を平和にすること
叶えられるなら叶えてみせろって話だ



●本当の意味で正しい事
 奴の言っている事は、全て正しいんだと思う。
 辺境伯の言う『夢は原動力』やら何やらを聞き、クロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)はそういう感想を抱いた。
 夢を捨てる事だって、決して許される事のない悲しい事であるし、その夢を踏みにじる事だって許される事のない。
 だけど――根本的な部分が違う。
「あんたの言っている事は正しい。夢は叶えられる物であるし、踏みにじられる何てことはもってのほかだ。
 だけど、あんたは根本的な部分が間違っている」
『どういうことかしら?』
 クロスは辺境伯の姿をじっと睨む。放った言葉に余裕そうな返事を返されても、彼は一切動じなかった。
 その睨む眼はいつの間にか真紅の色へと変化していた。
「いくらあんたが夢を救おうとしていようが、あんたが吸血鬼の種であることには変わりない。故に俺は、あんたが吸血鬼である限りあんたの行いが正しいとは思わないし、あんたの夢を認めるつもりなどない」
『随分と言い切るじゃない』
 辺境伯は疎かな人を見るかのような視線でクロスを見つめる。
 彼が今やろうとしている事――いや、先ほどの亡霊戦でやってしまった事は夢の踏み躙りに他ならない。それだというのに、彼は私に立ち向かおうとする。自ら過ちを犯すというのか? と辺境伯は思った。
『良いわ――貴様の覚悟、確かめてあげる』
 辺境伯は残りの亡霊――そして、クロスと瓜二つの"何か"が出現する。亡霊は先程と同じ夢の骸……だが、もう一つは。
『これも"夢"よ、貴様のね。夢は抱いていないと思っていても、人は誰しも夢を持つ。つまりこれは、それを具現化させた物よ』
「……そうか」
 その敵軍の様子を見据える瞳は、完全に真紅へと染まっていた。
『――チっ 来な!』
辺境伯も彼からの謎の強気気配を感じ取ったのだろうか? 夢の亡霊共の数を増やし、クロスと瓜二つの夢人形も例の紋章による強化を施した。辺境伯が警戒するのも珍しい事である。
「あんたと同じ吸血鬼の力だ――その人形が俺の夢と言うのなら、それも叶える為に動くのか。まぁいい、俺の願いは……オブリビオンを倒し、この世界を平和にすることだ。
 叶えれるなら叶えてみせろって話だ」
 手元の黒剣の鞘に手を駆け、辺境伯ただ一つ目掛けて戦場を駆け走る。障害となる亡霊や"自分の夢"は即座に叩き斬った。辺境伯も少し驚いた様子を見せた。
『貴様、先程夢は踏み躙られる物ではないと言ったな……今貴様がしている行動はなんだ? それらも夢なのだぞ? 愚かな猟兵だな――』
「必要な犠牲という奴なのかもな。確かにこれは夢だが、あんたの下僕でもある。俺は先程、あんたが吸血鬼である限りあんたが行う事は正しくないと言った。
 だから俺は斬る。その為なら、何を言われても構わない。その為なら、俺は他者の夢を踏み躙ろう」
 クロスの黒剣の切っ先は既に辺境伯の眼前へと迫っていた。吸血鬼と同じ力を借りて強化された力は、他の猟兵の力を遥かに凌駕していた。

 ――一閃。クロスは辺境伯の身体を深く切り裂いた。

『クソッ……愚かな猟兵が!』
 辺境伯は煩い金切り声で叫ぶが、クロスにその声は届きやしない。吸血鬼の力を借りた彼に、恨み言や狂気など無縁となっていた。
 故に、彼は辺境伯に返事を返さずに――。
 次、また次、と目の前に立ちはだかる亡霊達を切り裂き続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…簡単な話。確かに夢や希望は尊いものだけど、
この世界には叶えるべきで無い痴れた夢も存在する

…そんな事も解さずに夢を無分別に叶える在り方は許容できない

…汝はオブリビオン。過去より出でて世界を破滅させる…私の討つべき敵よ

【断末魔の瞳】を維持して敵が召喚した悪霊を聖痕に取り込み、
UCを発動して眼前に展開した魔力を溜めた暴走魔法陣に、
亡霊達の呪詛を取り込んだ大鎌を突き立て武器改造

…夢が好物と宣うならば存分に味わうがいい
これがお前が憐れみ小細工と称した者達が抱く夢…怨嗟、憎悪、絶望よ

大鎌を取り込み限界突破した黒炎のオーラで防御した黒炎鳥を放ち、
空中戦機動で敵に切り込み自爆して傷口を抉る闇属性攻撃を行う



●夢の力
 どうして夢を簡単につぶせるのか――確かにその答えを出すのは難しい。
 夢とは儚い物、それは多くの猟兵達が分かっている事だ、故にその答えを出すのに四苦八苦することであろう、それこそが辺境伯の狙い通りであった。
『答えが出せない見たいね? いいわいいわ、ならば永遠に悩み続けるといいわ。安心して、私がその間に貴方達の夢を叶えてあげるから』
 人が夢について悩む時、その者の夢の内容が鮮明に顔等の表に出る。辺境伯はそれを基に、夢そのものを一種の亡霊として具現化させ、猟兵達にけしかける。猟兵達も、仕方なくこれを蹴散らそうとするものの、先程の質問のせいで集中出来やしない。

 そんな状況下の中で、一人の猟兵が辺境伯に向かって鋭い言葉を突きつけた。
「…簡単な話。確かに夢や希望は尊いものだけど、この世界には叶えるべきで無い痴れた夢も存在する」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、悩める猟兵達を見て、呆れたようにそう告げる。辺境伯のこの言葉に反応したのか、周囲に散らしていた敵意を即座に、リーヴァルディへと集中させた。
『ふ~ん……それがわかっていながら、戦おうというのかしら?』
「ええ。例えどんなにソレが尊い物だったとしても、それを解さずに夢を無分別に叶えようとする在り方には許容できない」
 言葉一つ一つに、辺境伯への殺意を乗せる。
『別に分からない訳じゃないわ。夢は叶えられてこそ輝く物…故に叶うという事は素晴らしい事なの。故にそれが無差別だったとしても、それは美しい物のはずだわ』
 辺境伯は言葉巧みに周囲の猟兵を困惑させ、夢や願いを吐かせる。彼女の吐く戯言には、そのような術が施されているのだろうか? どちらにせよ、"自分には関係ない事ではあるが"。
 それに応えるかのように、周囲にはやがて亡霊――いや、夢が具現化した“何か"が、犇めくように召喚されていった。
『アァ! 世界ヲ、平和ニ!』
『英雄二ナルンダ!』
 暴走した夢は構わずその夢を叫び、周囲を暴れ散らす。猟兵達の力は次第に弱まっている、そりゃそうであろう、相手にしているのは自分の夢かもしれないのだから――。
 だが、リーヴァルディは一切動じなかった。その代わり――ただこの言葉だけを、辺境伯につきつけ、自身の持つ【断末魔の瞳】の眼前に、大鎌を掲げた。
「…汝はオブリビオン。過去より出でて世界を破滅させる…私の討つべき敵よ」
『へぇ…言うじゃない、言葉だけなら何とでも言える、さぁ! 貴方にこの夢達を潰せるかし……ら?』
 辺境伯の余裕は一瞬にして驚愕へと変貌した。
 当然だ、辺境伯の放った夢の骸は、段々と彼女の持つ鎌へと取り込まれていったのだから。
 夢を宿したその大鎌は辺境伯自身も鳥肌が立つ程の強大な力を放つようになった。
「…夢が好物と宣うならば存分に味わうがいい、これがお前が憐れみ小細工と称した者達が抱く夢…怨嗟、憎悪、絶望よ!」
 夢を取り込んだその聖痕が刻まれた大鎌を彼女は勢いよく振り回す、そこから放たれしは赤黒く染まった鳥の様な物。亡霊と同じく、夢の力を取り込み纏っている為、身の毛がよだつ程の存在感を放った物へと変貌を遂げていた。
 その姿はどこか闇の世界の不死鳥の如く――であった。

 その鳥を共に、戦場を駆けtる。立ちはだかってきた夢の骸は問答無用で叩き伏せ、不死鳥に触れた存在は纏った魔法陣の力で悉くはじけ飛んだ。
『バカな――夢が、ただの猟兵の術如きに推し負ける?』
「言っただろう? これは夢だ、お前が放った亡霊と同じように、な」
 そう言い放つ彼女は既に、辺境伯の眼前へと迫っていった。そして彼女は、辺境伯を見下す様に上から視線を送り、手にもっていた例の大鎌を勢いよく振り下ろす。
 魔法陣の影響だろうか? はたまた夢の力だろうか? この際どうでもいいだろう。それは辺境伯の横を突き刺した直後に、激しい爆発を引き起こした。
『クッソ……ッ!!』
 リーヴァルディは何も答えない、辺境伯を見下す視線は変わらないままだ。
 そして再び大鎌を振り下ろす。その様子に手加減という概念が垣間見える事は決してなかったという――。
「――くだらない」
 辺境伯がなんとか距離をとった刹那、リーヴァルディはこう小声でつぶやいた。
 そしてまた、その戦場を勢いよく駆けだしたのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ラス・セレブライト
夢や願いを力にする存在…そういう意味では私と彼女はそう変わらない。
けれど決定的な違いがある、それは…。

☆願いの力
「貴女は夢を喰らう者〜自らの糧や力として夢を奪う者〜そして貴女自身も恨みや憎しみという願いを発する者。
私は〜私は夢や願いを受けて力を得て顕現させる者〜されど私自身に願いは無く〜ただ願いや夢という祈りを受け顕現する者」
ゆえに私は砦にいる人々の願い、祈り、明日を生きるという夢を力として彼女と対峙する。
拠点防御さえなす強固な結界術とUCの詠唱を多重詠唱で並行して行い、身を守りながらUCの威力向上を計るわ。
「願いは祈り…その光をその身で感じなさい〜」
そして放つはスターライト・ドラゴンブレス。



●願いの力
 辺境伯は数多くの心強き猟兵達の猛攻によって、疲弊していた。しかし、それは猟兵達も同じだ。
 それもそのはず、この辺境伯は予想以上にしぶとい、これも“夢の力"という物なのだろうか?
『まだ終わらない――願いは、夢は、決して廃れないわ』
 決して散りたくない、決して果てたくない、そういう夢の持つ力を更に引き絞り、辺境伯は何度でも立ち上がる。
 夢で動く亡霊共も、それに応えるかのように嘆き散らし、夢の力で己を鼓舞する。勢いを増し、猟兵達に襲い掛かる。
 それを見て、ラス・セレブライト(星と光の竜神・f28442)は亡霊共をあしらいながら、辺境伯に向けてコクコクと頷いた。
「夢や願いという強大な概念を力にする存在…そういう意味では私と彼女はそう変わらない」
 ラスは辺境伯に向かい、ただ共感の言葉を投げかける。だが、それを見つめる瞳は、敵対的だという事を示唆するかのように鋭い視線であった。
『なら、分かる筈じゃない? 夢は叶える物であると、叶わなければならない物であると――』
 ラスは頷く。
「ええそうね。けれど、私と貴方には決定的な違いがある、それは…」
 ラスは自分の知り得る中でも強い防御力を持つ結界を多重にして辺境伯の目の前に展開し、答えを吐く。
「私は〜私は夢や願いを受けて力を得て顕現させる者〜されど私自身に願いは無く〜ただ願いや夢という祈りを受け顕現する者」
 展開した結界は数多くの人々を、そしてその者が持つ夢や願いを護る彼女のあり方を示す様であり、“何か"に支えられているかのように、どんどん巨大な物へと変貌している。
 亡霊共は、その結界を破壊せんと攻撃を叩きこむが、壊れる事など遂にはなかった。
『何だ……この結界は、たかが猟兵の結界を何故壊せぬ?』
 ラスは無視して、続ける。
「そして貴女は夢を喰らう者〜自らの糧や力として夢を奪う者〜そして貴女自身も恨みや憎しみという願いを発する者」
 例え同じ夢や願いを糧に戦う者だったとしても、それに対する扱いで差が生まれる、ラスが言った事を要約するとそのような内容であった。
 何物も踏みにじり乱雑に扱えば、使用者に応えようとはしない。それは勿論、夢にも言える事であった。
「ここにいる者の願いや夢――それらを踏み躙られるわけにはいかないわ~。夢や願いの力……それにより生まれる光をその身で感じなさい〜」
 数多くの夢や願いが背中を押し、今目の前の敵を穿つ力を与えてくれる。当然、今生を受けている者の夢や願いが、辺境伯に味方する筈もない。
 故に、ラスは今この場にいる者全ての夢や願いを担い戦っている。
「これが私“と皆"の全力よ~、くらいなさい、スターライト・ドラゴンブレス《ホシノヒカリノトイキ》」
 夢や願い、全ての力が収束した彼女の懇親のブレスが一閃、辺境伯の元へと迸った。それらは夢の亡霊達を一瞬で消し飛ばし、今すぐにと辺境伯の眼前へと迫っていた。
『――こんな所で、負ける筈がないわ!』
 辺境伯も負けじと、周囲の亡霊が持つ夢の力を持ち、それらに対抗する。だが、既に死滅した過去の夢や願いが、今を生きる活気ある夢や願いに対抗できる筈がない。ましてや、その夢や願いを背負える責任力ですらラスに劣っているのだから。
『そんな――バカな――』

 ブレスはそのまま辺境伯を巻き込み、地平線の彼方まで迸った。それらが晴れる頃には、辺境伯の姿はどこにもなく周囲を蔓延っていた亡霊の姿も消え去っていた。
 つまり、辺境伯は完全に消滅したのだろう。
「完全勝利、かしら~?」
 猟兵は湧きあがり、勝利の雄たけびをあげた。これが過去の夢に、今の夢が勝利を果たした素晴らしき瞬間であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月29日


挿絵イラスト