3
壊れた心を救うには

#UDCアース #UDC-HUMAN

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#UDCアース
🔒
#UDC-HUMAN


0




●『壊される日常』
 ―――絶望というやつはいつだって何気ない日常に潜んでいる。ほら、あなたのすぐ傍にだって......。

 いつもと変わらない日常、それは普段はただ怠惰に享受し、いざ失われてからそのありがたみに気づくものだ。
 それでいて壊されるときは理不尽なまでに突然で、備えなんてものはいつも不十分。その事実に多くの人は目を背け、昨日と変わらぬ今日が続くとただ盲目に信じている。
 そしてその日常が壊されるなんてことは、ほとんどの人にとって『いつか』のことかもしれないが、都会の道端に倒れ血を流している少女にとってはまさに『今』の出来事だった。
 ごく普通の交通事故。ひどく不幸で痛ましい、が、ごくごくありふれた類のものではあるだろう。ただ一つ違ったのは......。

「......ッ......許さない」

 口から血の泡を零し、つぶれた肺で呪詛を吐く。見てしまった、見えてしまったのだ。運転席に座る男が嗤っていたのを。後悔でも、恐怖でもなく、嘲笑を浮かべながら少女を轢いて逃亡した確信犯。霞む視界に今なおくっきりと残るその顔が、その悪意が、少女の日常を壊し、彼女の心を壊すには十二分だった。
 そしてひび割れた心の隙間につけ込むモノがいる。

『ねぇ、そんなに憎いのならワタシが力を貸してあげる』

 ―――だからその身体、頂戴な。

●『救済と裁きと』
「さて諸君。最近巷で噂のUDC-HUMANについてはもう知っているだろうネ?」

 人間がUDCに変身するとかいう例のアレダヨと雑な説明を交えながら、いつもの白衣で猟兵たちを迎えた石動・レイン(刹那的快楽主義者・f03930)。

「今回は交通事故にあった少女が、同じく交通事故にあった少女の怨念に憑りつかれてUDC-HUMANと化してしまった事件ダヨ」

 ただし、憑りつかれた側の少女の肉体はまだ生きている。そしてまだ完全にUDCと化したわけではない。つまり急げばまだ助けられる。それは人間に戻すことが可能だということ。

「だから急いでくれたまえヨ。道中では少女が完全なUDCとなる時間を稼ぐために邪魔する奴らも出てくるから、さっさと倒して救い出してあげよう」

 そして最後に、と一枚の紙きれを猟兵たちへと差し出すレイン。

「彼女を轢いた車の特徴とナンバー、そして運転手の写真ダヨ。天に代わってというのもなんだケド、目には目を歯には歯を、ついでに利子も付けて返してあげようじゃないカ」

 そう言って冷たく微笑み、レインは猟兵たちを送り出す。


外持雨
 外持雨です。初めましての人もそうでない人もよろしくお願いします。梅雨に入って最近雨多いですね。雨は嫌いじゃないですが低気圧で頭痛が痛い。

 さて今回の依頼は集団戦、ボス戦、日常の流れです。

 第一章:少女が完全にUDCになる時間を稼ごうと、UDCたちが邪魔してきます。そんなに強くはありません。数はおよそ20ほどです。

 第二章:UDC-HUMANとなった少女と戦い、彼女を倒して元の人間に戻してあげてください。特に難しく考える必要はありません。倒せば元に戻ります。

 第三章:月に代わって......というわけではないですがお仕置きタイムです。悪いことをしたやつには相応の痛い目を見せてやりましょう。

 進行状況や募集状況は適宜マスターページ等に記載していくのでご確認ください。

 それでは皆さんのプレイングをお待ちしています。
19




第1章 集団戦 『六一一『デビルズナンバーはくし』』

POW   :    悪魔の紙花(デビルペーパーフラワー)
自身の装備武器を無数の【白い紙製】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    悪魔の紙飛行機(デビルペーパープレーン)
【超スピードで飛ぶ紙飛行機】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    悪魔の白紙(デビルホワイトペーパー)
【紙吹雪】から【大量の白紙】を放ち、【相手の全身に張り付くこと】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

……オイ。もう一度確認させてくれ。
被害者は、「出血を伴う負傷をしてる」んだな?
いつも以上に一刻を争うじゃねぇか……!
道連れにさせてたまるかよ、ダチの二の舞はもうたくさんだ!

スピードを頼るなら【ゴッドスピードライド】でも良いんだけどね。
奴らが紙なら、燃やし尽くしてやる!
【人機一体】で『騎乗』しているカブを纏い、そのままメーザーの熱線乱射と『衝撃波』による多重『範囲攻撃』で強引にでも道を開き。
『ダッシュ』で一目散に彼女へ向かう!

お前らが折れるのは紙飛行機だけか?
芸が無いね、お前らの親玉の鎮魂の折り鶴にでもなってりゃ良かったんだ!
それができなきゃ道を開けろってんだ!


波狼・拓哉
…人を轢いて何が楽しいんだか。理解に苦しみますね。いやまあ理解する気もないですが

さてはて、やることは紙切れ突破して少女救って後は流れと…んじゃやりますか。現実が壊れたとしても精神まで壊す理由にはならないですからね

ミミック化け堕としな。ヒラヒラヒラヒラとうっとおしい。全部地に堕として焼却してやりましょう。鎖で網目状に広がって空間を制圧するようにお願いしますね

自分は衝撃波込めた弾でミミックから逃れようとするやつとかを戦闘知識・第六感で見切り狙い撃ちして翼を部位破壊でもしてやりましょうかね

メインはこの先ですので…此処で時間をかけすぎるわけにも行きません。蹂躙して押し通りましょう
(アドリブ絡み歓迎)



己の意思で空を舞う奇妙な紙飛行機は、さながらハゲタカといったところだろうか。今ここに、新たな同胞が生まれることを感知して、どこからともなく集まってきた紙の群れ。ただの紙切れごときと侮ることなかれ、これでもれっきとしたオブリビオンである。その名も、六一一『デビルズナンバーはくし』。

「被害者は”出血を伴う負傷をしている”んだな?いつも以上に一刻を争うじゃねぇか......!」
「まったくです。人を轢いて何が楽しいんだか理解に苦しみますね。いやまあ理解する気もないですが」

 どこか焦燥した顔の数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)に、冷静に戦場を確認する波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)。如何なる想いを内に持とうとも、猟兵である以上やるべきことは変わらない。

「さてはて、やることは紙切れ突破して少女救ってあとは流れと......んじゃやりますか......」
「ああ、ダチの二の舞はもうたくさんだ!」

 事態は一刻を争うと先刻聞いたばかりである。急がねば救出対象が討滅対象に早変わりなんてこともありうる現状、小賢しい策を弄する時間までもが惜しい。

 となれば、やることは単純で明快。ただ真正面から突っ切るのみ。

「さあ、化け堕としなミミック!ヒラヒラヒラヒラと鬱陶しいあいつらを」

 先手を切ったのは波狼だ。いくらオブリビオンでも紙切れである以上、燃えやすいという性質を持っているはず。
 波狼の傍に召喚されたミミックが燃えさかる鎖となって空を編む。網となって『はくし』を捉え、逃がすことなく灰燼へと変えていく。
 反撃として、紙の花びらが波狼と彼のミミックに飛んでくるも、その程度は見切るまでもない。今度は壁の様に編まれた鎖が紙吹雪の行く手を阻み、一瞬で燃え上がらせる。

「あいつらはできるだけ俺が集めておきますから。さあ、行ってください」

 前座は俺が引き受けたと、鎖の隙間から狙いをつけて銃爪に指をかける。衝撃波が込められた弾が容易く紙の翼を撃ち抜いて、『はくし』を地面へと堕としていく。
 やつらの注目を集めることで、後に続く数宮が少しでも少女に辿り着きやすくなるようにと、あえての大立ち回りだ。

「それじゃあ次はあたしの番だな!気合い入れろよ相棒!」

 握り拳を掌へと勢いよく打ち付けて、相棒の宇宙カブを身に纏う。人機一体となった彼女が姿勢を低くしてクラウチングスタートを決めると、波狼が敵陣にあけた穴へと一目散に駆け出していく。

 『はくし』の群れが集まって、一斉に数宮を邪魔しよう紙吹雪から白紙を放ち、四肢へと張り付かせてくるが、

「邪魔だ!」

 怒気の滲む声で、邪魔するものは容赦しないと、メーザーを放ち焼き払う。人機一体となった彼女が放つ高出力のメーザーは、掠めるだけで『はくし』から放たれる紙の束を燃やし尽くす。
 急げ、急げと心が急かす。”かつて”と重ねつつも、まだ間に合うのならとその手を伸ばす。
 だが敵はまだいる。執拗に彼女を邪魔しようと紙の束を放ってくる。流石の物量にいくら相性が有利であろうと押され気味となってしまう。

「お前らが折れるのは紙飛行機だけか?芸がないね、お前らの親玉の鎮魂の折り鶴にでもなってりゃよかったんだ!」

 業を煮やして叫ぶ。邪魔をするなと、道を開けろと。数宮の怒りに呼応するかのように、彼女の纏うパワードアーマーの温度が上がっていく。熱気が立ち上り陽炎で視界が歪む。それでもゴールだけははっきりと見据えて前へと進む。獄炎の鎧を纏った彼女はただそこにいるだけで『はくし』の攻撃を受け付けない。
 『はくし』も必死に紙を降らせるが、降らせる傍から燃やされていく。
 一歩、一歩と、確かめるように。アスファルトを溶かしながら走る。この少女は絶対に救って見せると。

「あちらは心配いらないみたいですね。それじゃあ......蹂躙して押し通らせてもらいますよ」

 まだメインとなるのはこの先だから、此処で時間をかけすぎるわけにもいかないと、そう言って波狼は獰猛な笑みを浮かべて、いま一度、二丁の拳銃を握りしめる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクトル・エセリアル
目には目を、歯には歯を・・因果応報と奴か。分かりやすくて何よりだね。

取り敢えずだ、端役には御退場願おうか。急ぐ必要があるのでね。

所詮は紙・・、焼却する方向で行くか。

まずは、初手UCを使用。2丁拳銃で【クイックドロウ】当てつつ注意を引きつけたら、背後に現れつつ武器入れ替えのペルグランデで【衝撃波】

弱った敵を中心にカエルムとソールに切り替え、強化された属性ルーンで炎の竜巻を作り出して綺麗に【焼却】だな。

(既に二人先行してるなら問題あるまい)邪魔されると面倒だ、入念にやるか。

【アドリブ・連携歓迎】


阿久間・仁
ケケケ、人間がUDCになっちまうなんて愉快な事もあるモンだ。……まァ俺も似たようなモンだな!?ヒャハハ!

紙飛行機だか紙吹雪だか知らねーが、紙が炎に勝てるわけねーだろ!
UC【魔人薙】で全部燃やしてやるよ。【範囲攻撃】【焼却】で視界に入ったUDCは黒焦げだぜ!ヒャハハ!

それでも炎を掻い潜ってくる奴がいたら大したモンだ。だがよ、俺は自分の炎じゃ火傷しねーんだ。言ってる意味分かるか?
つまり自分の体に火付けちまえば、おめェらじゃあ俺に触れる事すらできねーんだよ!
分かったらさっさと消えな、この紙屑野郎!ヒャハハ!



数も減らされてきたためか、『はくし』からの攻撃はさらに苛烈さを増していく。辺り一面、視界を覆いつくすほどの紙。どこを見渡してもただ紙の白さがすべてを覆う。
 だがその程度、猟兵にとってはさしたる障害にならない。なりえない。

「ケケケ、人間がUDCになっちまうなんて愉快な事もあるモンだ」
「目には目を、歯には歯を......因果応報というやつか」

 左手を燃え上がらせながら悪人のごとき形相で笑う阿久間・仁(獄炎魔人・f24120)。彼が一歩踏み出すごとにばらまかれた紙が燃えていく。
 阿久間の隣では、わかりやすくて何よりだ、と呟くヴィクトル・エセリアル(天上ノ外殻・f27757)がホルスターにしまわれた拳銃に手をかける。

「取り敢えずだ、端役には御退場願おうか。急ぐ必要があるのでね」

 言い放つと同時、抜き放たれた2丁拳銃が火を噴く。銃撃はあくまで『はくし』を掠めただけだがそれでも注意を引き付けるには十分だ。
 銃撃の主へとその翼を翻し、飛来する『はくし』だが、すでにヴィクトルはその場にいない。
 一瞬で『はくし』の背後へと移動したのは彼の技、『天上ノ技法』によるものだ。

「反応が遅いな」

 混乱。なにせいつの間にか背後を取られているのだ。一瞬なりと混乱してしまうのも仕方がないだろう。だがその混乱が致命的な隙となる。

 武器を拳銃から篭手へと切り替えて、勢い良く両腕を打ち鳴らす。ぺルグランデと名付けられた篭手から鳴り響く音は、衝撃波となって『はくし』の動きをかき乱す。

「おいおい、俺のこと忘れちゃいねーよなぁ?!」

 飛行を乱され、姿勢を崩した『はくし』を炎が飲み込んでいく。

「紙飛行機だか紙吹雪だか知らねーが、紙が炎に勝てるわけねーだろ!」

 全部全部燃やしてやると高笑いしながら左手の炎を一層昂らせ、紅蓮の花を咲かしていく阿久間。

「やはり所詮は紙か......」

 ならばとヴィクトルもまた武器を持ち変える。手にしたのはカエルムとソール、それぞれ風と火のルーンを付与された剣だ。

「さあ、燃え尽きろ」

 双剣を振るって起こすのは火災旋風。渦巻き立ち昇る炎の柱。逃れようとする『はくし』を容赦なく引き込み燃やしていく。

「後々に邪魔されても面倒なだけだ。入念にやらせてもらう」

 人為的に生み出された災害が、その渦巻く気流に捕らえた『はくし』を、灰すらも残さず喰らい尽くす。

 もはやこれまでと悟ったか、最後の一体となった『はくし』が上空から舞い降りる。熱気に乱された気流を乗り越え、その身を焦がしながらも炎の壁を貫いて、鋭利な翼で阿久間の喉を切り裂かんと。
 だがその刃は届かない。

「おうおう。おめぇ、根性あるじゃねーか」

 一直線に跳んできた『はくし』を空中で掴むと、にやりと笑う阿久間。

「けどな、それはただの無駄ってもんだ!ヒャハハハハハ!!!」

 左手だけではなく、全身から炎を吹き出す魔人となった阿久間に掴まれたまま、最後の『はくし』が燃えていく。
 その最期は存外にあっけなく。今ここに猟兵の道を塞ぐモノは消えた。

 ―――道は開けた。なれば次は少女を助けるために。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『流言蜚語の怪霊』バロックファントム』

POW   :    路傍の遺志(ロード・キル)
【元々装備していた】、あるいは【周辺地形】から【奪取した】【道路標識】による【近接攻撃】を放ち、【標識の内容に応じた様々な怪現象を起こす事】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    火難轟々(アンダー・ファイア)
【品性下劣な者達への恨み】を籠めた【呪炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【品行方正でない者は特に大ダメージを受ける】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ   :    公正世界誤謬(ジャストワールド・ファラシー)
【対象が己の戦法に自信を持っていればいる程】【自身の戦闘能力】が向上する。また、【呪炎】【道路標識】を用いた【超高速の連続攻撃】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠一郷・亞衿です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ―――辿り着く。

 手を伸ばした先に、静かに佇むのは少女か、あるいはもう......

「遅かったね」

 口元の血をぬぐい、振り返りながら笑う少女。否、その身はすでに『流言蜚語の怪霊』バロックファントムと化している。
 元の少女の意識はない。だが諦めない限り道は開けるもの。

 いざ、災禍を討ち払い、無垢な魂を救いだせ。
阿久間・仁
おう、来てやったぜ。さっさとその女の身体から出ていきな。嫌だってんなら力ずくだ。
まァそっちの方が分かりやすくていいけどよ!ヒャハハ!

てめェも炎使うのか!品行方正じゃねェと大ダメージだァ?ケッ、上等だぜ。
【火炎耐性】【激痛耐性】で真正面から無理矢理突破してやんよ!
【気合い】じゃ誰にも負けねェんだよ。ヤンキー舐めてんじゃねェぞ!

近づいたら【グラップル】で胸倉掴んで【頭突き】で【体勢を崩す】。
あとはUC【獄炎変化】で左拳を炎に変えながら、ひたすらブチのめすだけだ。
人撥ねて喜んでる野郎もクズだが、弱った女に憑りつくてめェも相当なクズだぜ。分かったらさっさと消えやがれ!



 ―――遅かったね。

 そう告げた少女の前に立ち並ぶ猟兵たち。各々の顔に浮かぶ表情は違えども、誰もまだ諦めてなどいない。

「おう、来てやったぜ。さっさとその女の身体から出ていきな。嫌だってんなら力尽くだ」

 そっちの方がわかりやすくていいけどなァ、などと阿久間・仁(獄炎魔人・f24120)は高らかに笑いながら拳を握る。
 握った拳に火が灯る。敵を砕き、己の意思を通すための力が。

「邪魔をしないでくれないかな?」

 少女にもまた火が灯る。怒りの炎を目に宿し、阿久間へと引っこ抜いたばかりの道路標識を槍の様に構える。そこにあるのは憤怒と憎悪。せっかく得た肉体を奪おうとする敵への―――猟兵への―――怒りと、彼女を生み出した者への憎しみ。
 道路標識が禍々しく燃え上がり、呪炎に縁取られた『止まれ』の文字がより一層浮き彫りになる。まるで彼女のの心の奥底を現すかのように。これ以上踏み込まないでと。

「てめェも炎使うのか!炎比べといこうじゃねェか!」

 相対する阿久間はただ、傲岸不遜に笑う。そんなこたァ知らねェと。ただ己が拳を握り締め、馬鹿正直に、ひたすら真っ直ぐに立ち向かうだけ。
 交差する拳と道路標識。鉄棒が肩にめり込み黒々とした炎が肌を焼くも、何するものぞと振り抜かれた拳は少女の頬を捉える。

「どうして......」
「ケッ!その程度じゃ痛くも痒くもねェんだよ!ヤンキー舐めてんじゃねェぞ!」

 殴り飛ばされた少女から零れる疑問。常人ならば鎖骨を砕かれ、腕を動かすだけでも激痛が走るはず。それでも目の前の男は立ち止まることなく向かってくる。それはもう気合ではなく狂気と呼んでもいいほどの域。

「根性入れろやァ!!!」

 この程度の痛みなど生ぬるい。倒れたままの少女に近づき、胸ぐらを掴んで立ち上がらせると今度は頭突きを入れる。堪らずふらつく彼女を今度は炎に変えた左拳で殴る。歯向かう隙も与えずにひたすら殴り続ける。

「弱った女に憑りつくてめェみたいなクズ、さっさと消えやがれ!」

 さらに一発。渾身の力を込めて繰り出した拳が胴を捉え、少女のなりをしたナニカは宙を舞う。

「嫌よ。せっかく手に入れた肉体だもの」

 だが、それでも。いくら少女のように見えようとも相手はオブリビオン。この程度ではさしたる負傷にもならない。少女を取り返すには、まだ足りない。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴィゼア・パズル
取り憑き悪さをする少女、か
しかしそれは外側だけだろう。其の「中身」は…何だ?
【空中戦・空中浮遊】常時発動
「…まぁ知った所で、なのですが」
戦法への自信にて攻撃力の上がった彼女へ【カウンター】
【範囲攻撃・全力魔法・2回攻撃】の魔滅福来

「火車、と言う妖怪をご存知ですか?
はい、死体を運ぶ妖怪です
偶然地獄とのご縁を頂きまして…この度力を借りる事が出来ましてね。…無垢な魂と身体を頂きに上がれればと」
狙うは分離を容易にする足掛かり
力尽くでも救える切っ掛けとなれば

「ああ、すみません。寂しさでメンタルを拗らせた意識体より、己を研磨しているモノに興味惹かれるタチでして」
骸魂の貴方には…それほど惹かれませんでした


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

おいコラ。
誰が何を手に入れたって?
ふざけんな、その身体はお前の物じゃねぇ。
彼女のもんだろうがよ。
さっさと、返してお前は還りやがれ。
人の世の理に、これ以上干渉するんじゃねぇ……!

敢えて、奴の放つ攻撃は甘んじて受け止めるよ。
「一時停止」「最高速度制限」「駐停車禁止」……
けどな、「一方通行」と「通行止め」は必死で避ける!
そうして、アタシの反撃の目を探る……!

「警笛鳴らせ」代わりの雄叫びを添えて、
高まったサイキックエナジーを携えた【魂削ぐ刃】を造り出し。
バロックファントムの核だけを目掛けて振り抜くよ!

お前が一番の障害だ、
早く彼女を病院へ連れて行かなきゃダメだろうがよォ!



「取り憑き悪さをする少女、か......」

 ふむ、と思案顔でヴィゼア・パズル(風詠う猟犬・f00024)が唸る。見てくれだけならばただのか弱い少女といってもいいだろう。だが果たしてその中身は......

「......まぁ知ったところで、なのですが」

 今の彼女はオブリビオン。下手な同情心は味方までも危険にさらすだけでしかない。ふっと浮かんだ憐れみは泡のごとく消し去って、努めて冷静に戦局を見極めようとする。

「おいコラ。遅かっただァ?その身体はお前の物じゃねぇ!」

 だが一方で、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)はただ感情を爆発させる。

「さっさとその身体を返して、お前は還りやがれ!」

 一歩、一歩と近づきながら。すでに死した者がこれ以上干渉するなと、想いを乗せて吠える。

「......嫌よ」

 ぽつりと、零れるように返されたのは拒絶。道路標識を肩に担ぎ、憎しみに満ちた視線を少女が向けてくる。

「どうして......」

 どうして。たった一言に込められた無数の意思、あるいは遺志。どうして邪魔をするのか。どうして復讐してはいけないのか。どうして同じ思いを抱いた人の身体を乗っ取ってはいけないのか............どうして、私だって奪われたのに......

 ―――どうして、私の時は誰も来てくれなかったのに、この娘の時は、この身体の時は助けが来るのか。

「邪魔を、しないで......」

 泣き叫ぶ心を押しとどめ、道路標識を振りかぶる。騒めく想いを一緒に乗せての八つ当たり。そう、それはもうただの八つ当たりでしかないのだろう。自身でそれを理解していながらも、結局誰かにぶつけるしかない。

 だから、数宮は躱さない。己の身をもって受け止める。目に移る文字は「一時停止」。それは来ないで、という心の内の発露だろうか。

 だが、それで止まったのは、止められたのは一人だけ。

「あまりそちらにばかり気を取られていると、どうなっても知りませんよ?」

 ヴィゼアが牙を剥いて笑う。いつの間にか空へと踏み出していた彼が呼び出した鬼たち。獄卒たちが放つ呪詛返しが、呪いを反転させる。縛られたのは、「一時停止」したのは数宮ではなく少女。

「偶然地獄とのご縁を頂きましてね......私なんかより、彼らの方がよほどあなたみたいな輩の扱いは慣れているでしょうから」

 ああ、私?私はあなたみたいなメンタル拗らせた意識体など、興味が砂ほども沸かないのでね。などと告げながら、ヴィゼアは空に腰掛け上から見下ろす。
 隙としては十二分。その間にも、まさしく自縄自縛に陥った少女目掛けて数宮が手刀を振り下ろす。

「邪魔なのはお前の方だろォオオ!」

 数宮の淡く輝く手刀が―――魂を裂く光の刃が―――肉体ではなく少女の意識を切り裂く。
 その反動で術が解けたのか、動けるようになるやすぐさま後ろへと飛び退る少女。
 一太刀で理解する。もう一度似たような攻撃を喰らったら、この身体から切り離されてしまうと。

 ―――そんなこと、あってはならないのに......

「もう遅いって言っているのに......」

 だから、嗤う。可憐な少女の見た目で、醜悪に顔を歪ませて嗤う。あくまでブラフでも、そうと悟らせぬために。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

波狼・拓哉
それは間に合わなかった時に言う言葉ですね
残念ながら今回は当て嵌まらないですよ…savvy?(芝居がかったように)

さあ、化け咆えなミミック
相手が精神体で助かりますよね
狂気で歪めてその体から外れやすくしてしましょう
…まあ、間違えて繋がってもすぐに繋がり切るだけで何とかなるはず
というか事故の恨みでおにーさんの方が持ってかれそう…止まりませんがね

自分は衝撃波込めた弾で標識の文字を優先して撃ち貫いたり、周りの標識壊したりしときましょうか

まあ、呪詛る気持ちは分からんでもないですが…車の傷跡って残りますからね
…正直リスク高すぎませんかね、法的にも死ねますし、一般的にも味方なくないですかね
(アドリブ絡み歓迎)



「もう遅い?それは間に合わなかった時に言う言葉ですね」

 虚勢を張る少女へと、待ったがかかる。

「残念ながら今回は当て嵌まらないですよ、savvy?」

 大仰な仕草で、まるで舞台の上の役者の様に、少女へと語りかける波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)。
 精一杯の虚勢など通じない。相手が怨霊だろうとなんであろうと、精神体の類ならばいくらでも打つ手があるというもの。

「さあ化け咆えなミミック!」

 少女が動くよりも先に、傍らの箱が龍へと変貌し咆哮を上げる。放たれた音圧は大気の壁となって少女を吹き飛ばす。目に見える変化はそれだけかもしれないが、ミミックの咆哮は炸裂した時点でお互いを狂気で繋ぐ。共有される狂気は伝播し、両者の正気を削っていく。
 撥ねられた瞬間の光景、苦痛、不安、寒気、暗くなる視界、そして恐怖。一瞬で繋がりを伝い流れ込んでくる感情の群れ。だが拓哉にとってはその程度、とうの昔に経験済みだ。笑顔のままでねじ伏せて、その程度と笑い飛ばせるほどでしかない。
 それに比べて、すでに死した身とはいえ復讐を企むほどには未だ『人間』な少女。どちらが先に音を上げるかなど明白だ。

「あぁああああああああ!」

 いったい何を見せられたのか、不定の狂気へと陥った少女は叫び暴れ惑う。ただ荒れ狂う感情にまかせて闇雲に道路標識を振り回す。もはや拓哉など目に映っていない。

「いやぁ......まさかここまで効くとはね」

 思いの外うまくいったものだと、拓哉は拳銃を抜き狙いをつける。少女が振り回す標識が頭上へと掲げられた瞬間、引き金を引く。道路標識に、一発、二発、三発。立て続けに命中した弾丸は衝撃波を放ち、標識を後ろへと跳ね飛ばす。つられて重心を崩した少女は受け身も取らずに倒れ伏す。

「まあ、呪詛る気持ちも分らんでもないですが......」

 少しばかりの同情はある。だがそれはそれ、これはこれ。
 地面に倒れたまま、意味不明な呪詛を吐く少女へとゆっくり近づくと、その存在を終わらせるべく拓哉は隣のミミックへと呼びかける。

「......さあ、化け喰らいなミミック」

 そっと静かに、唇から紡がれた言葉を聞いたミミックは、その姿を狼へと変え顎を開く。その牙は存在を喰らうモノ。いくら実体を持たない相手でも逃すことはない。
 狼の落とす影が、少女の影の一部を飲みこむ。ただそれだけで少女は喚くのをやめて静かに、まるで死んだように動きを止める。ただその胸の動きとわずかな呼吸音だけが、少女はまだ生きていると告げている。
 残ったのはただ巻き込まれただけの被害者。死者の残響はあっけなく喰われて消えた。

「さて、残るはお仕置きの方ですね」

 救急車を呼びながらも暗い笑いを浮かばせる。眠る少女に背を向けて、躊躇うことなくその場を去っていく。
 せめてあの娘の無念だけでも晴らしてやろう、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『人間の屑に制裁を』

POW   :    殺さない範囲で、ボコボコに殴って、心を折る

SPD   :    証拠を集めて警察に逮捕させるなど、社会的な制裁を受けさせる

WIZ   :    事件の被害者と同じ苦痛を味合わせる事で、被害者の痛みを理解させ、再犯を防ぐ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 悪因悪果、という言葉がある。読んで字の如く、悪いことをすればそれ相応の結果を招くという意味である。

「へっ......誰も証拠なんてもってない。警察だってわかるわけがない......」

 悪党、というにしては悪党に対して失礼であろう。まさしくただの小悪党というべき男は今更ながら自身の行動に不安を覚えているようだが......

「大丈夫、大丈夫だ。あそこはそもそも事故が多いくせにカメラの一つもない。あんな所にいたやつが悪い」

 反省の色は皆無のようである。

 ―――因果は巡る。善因には善果を悪因には悪果を。
波狼・拓哉
起きた事柄に対して何も残らないなんてことないんだよなぁ…UDC関係してりゃ稀にありますけど

物理的なのは他の人に任せて自分は再発防止、もとい心を折りに行く方向でいきますか

さてじゃあ、化け転がしなミミック
希望があるなら成功するでしょうね…【希望】はあんたのだろうと【成功】するのはおにーさんの方ですけどね
まあ、この後の人生同じように不安を言い聞かせて希望持ったら全部失敗する感じで…日常的にも支障でそうですね!知ったこっちゃねーですが

後まあダメ押しで言っとくなら見る人が見れば一発で人轢いたなって分かると思いますよ
無駄に自分に言い聞かせるくらいなら現実見た方がマシでしたね

(アドリブ絡み歓迎)


ヴィゼア・パズル
【白岩】

「ああ、任されたよ。」

上空から数宮の合図に応え、怒り狂った運転手が降りる前に車ごと【空中浮遊】軽く200〜300mほど浮かばせ
「…警察の方がマシだったかも知れませんね。」

解除。重力に任せコンクリートへ向かい、落とす。

【全力魔法・2回攻撃・属性攻撃】を応用し、地面ギリギリで急停車
精々フロントガラスへ頭や顔面を強かに打つ程度に留める
「ははは。貴方が轢いた少女は、もっと怖い思いをしていましたよ」

重力で失神するかも知れませんが…水を掛けて眼を覚まして頂きましょう。
「情状酌量と云いましてね。…警察や法は加害者を守る為の制度でもあります。…ね?「反省」は大事でしょう?」
では、二度目のチキンレースを


数宮・多喜
【白岩】

……あの子は、大丈夫そうだね。
なら、後は仕置きの時間だねぇ……!
別に構わねぇよ、あそこの事故を無視するならさ。
けどなぁ、「あそこすら」無視するって事は煽り耐性無いよなぁ?

適当なタイミングでカブに『騎乗』した状態で車道に出るよ、
アイツの前を塞ぐようにね。
もちろんコイツの制限速度は知ってるだろうね?
30キロ前後でトロトロと走るよ。
痺れを切らしてこっちに敵意を向けたならご愁傷さま、
【超感覚領域】は既に張り巡らせてるんでね。
運転してる車に強烈な電撃を放って、
電装系からエンジンコントロールまで吹っ飛ばしてやるよ。

そうして足止めが終わったらならさ。
ヴィゼアさん、煮るなり焼くなり好きにしてくんな?



「あの子は、大丈夫そうだね。なら、後はお仕置きの時間だねぇ......!」

 存分に痛い目を見てもらおうじゃないかと、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)はカブに跨り道路を眺める。情報通りならもう少しで対象の車両がこの道を通るはず......

「事故をわざと起こすような奴、煽り耐性はあるんだろうなぁ?」

 いや、そんなわけあるはずないか、なんてニヤリと笑ってキーを回し、エンジンをかける。そしてちょうどやってくる車の前へとタイミングよく割り込んでいく。
 カブの法定速度は30キロ。それを保ったままゆっくりと走り、車の前から動かない。相手が右に抜けようとしたら右へ、左ならば同じく左へと。あえて邪魔するように運転を続ける。

「ふざけやがって......馬鹿にしているのか?!」

 数宮の推測通り、ハンドルを握りながら憤慨する男。それもまた彼女の狙い通りではあるのだが。

「こいつも轢いてやろうか......」

 ふつふつと沸きあがる悪意。すでに一度したことなれば二度目からは敷居も低くなるというもの。無意識のうちにアクセルを踏む足に力がこもる。

 ―――それもまた、数宮の策の内。掌で転がされているということも知らず。

「アタシに目を付けたのがアンタの運の尽きさ!」

 悪意、殺意......すなわち敵意。それを敏感に感じ取る数宮のユーベルコード。それはただ敵意を察知するだけでなく相手の死角から電撃を放つこともできる。殺傷能力は抑えたものの、頭上から正確に放たれた雷撃は車のボンネットへと命中し、電気系統だけをこんがり焼き上げる。

「そんじゃ後はまかせたよ、ヴィゼアさん。煮るなり焼くなり好きにしな」

 もくもくと煙を上げながら、溶けたタイヤでアスファルトに跡を残して急停止する車。それを尻目に、ざまぁみろと手を振る数宮。まだまだ仕置きは始まったばかりなのだから。


「ああ、任されたよ」

 手を振る彼女の後姿こそが合図。待っていましたとヴィゼア・パズル(風詠う猟犬・f00024)は中の運転手ごと車を上空へと飛ばす。その高さはおよそ200メートルほどだろうか。猟兵ならばともかく、常人の身ではこのまま墜ちれば死は免れない。

「ひっ、ひぇえ......」

 運転手はというと、情けない声を上げながら縮こまっているようだ。なにせ扉を開けようとした瞬間に光景が切り替わり訪れた浮遊感。訳がわからずとも自分が今、車ごと空を飛んでいるという事実を受け入れざるを得ない。

「......警察の方がマシだったかもしれませんね」

 まぁ今更ですがと冷たい目で上空を眺めるヴィゼア。相手が落ち着いてきたであろう頃合いを見計らって、空中浮遊を解除する。
 それはつまり、車が重力に従って墜ちてくることを意味するわけで......

「うぁああああああああ!!!」

 浮遊感から訪れる落下の感覚。内臓だけが宙にとどまろうとする感覚に悲鳴をあげること数秒。地面へと叩きつけられる前に、死なない程度に減速して止まる。中で身体のあちこちをぶつけてアザばかりこしらえた男は逃げ出そうと扉に手をかけるも......

「誰がこれで終わりだなんて言いましたか?」

 再度の空中遊覧ツアー。それは天にも昇るほどで生きた心地がしないという評判だ。

「ははは。あなたが轢いた少女は、もっと怖い思いをしていましたよ」

 命までは取らないのだから優しいでしょう?などと告げながらまた車を紐無しバンジーさせるヴィゼア。

「悪かった!悪かったから!だからもうやめm......」
「おっと、つい加減が」

 何度目のことだろうか、ついには車の方が音を上げる。ボロボロになったフロントガラスを突き破って道路へと転がり、大の字になる男。

「これで『反省』はできましたか?」

 気絶した男へと水を掛けながら問いただすヴィゼアの気迫にあてられて、目が覚めるなり壊れたおもちゃの様に何度も首を上下させて頷く男。

「では私はこれくらいにしておきましょうか」

 次はないと釘を刺しながら立ち去っていくヴィゼアを、男はただ呆然と眺めるだけ。それでも次第になぜ自分が、などという逆恨みが湧いてくる。


「おーい、そこのおじさん。道路に寝転がってると危ないですよ?」

 そこへ声をかけたのは波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)。そう、まだ終わってなどいないのだ。

「おやおや、案外大丈夫そうですねぇ......」

 喉元過ぎればなんとやら。反省の色があまり見えない男が喚き散らすのをただ聞き流す波狼。

「まあまあ、ちょっと落ち着きましょうかね......さあ化け転がしなミミック」

 あまり反省していないようなら、それこそもう二度と運転する気が起きないように。一片の希望すらも手折り尽くすまで。
 ミミックから放たれた謎の力が見せる幻覚。それはこの先辿るかもしれない道で訪れるかもしれない失敗の数々。もしかした見せられた光景と同じ失敗をするかもしれない。延々と失敗だけを見せられて、いつしか「もしかしたら」は呪いとなり、希望は反転して絶望となる。
 可能性に縛られて、自分の心に捕らわれて、男はもうどこにも行くことができない。

「ありゃ......これは日常的にも支障がでそうですね!知ったこっちゃねーですが」

 心を完膚なきまでに折られて、絶望に蹲る男。おそらくもう二度と車を運転するどころか正気へと戻ることもないだろう。そんな廃人をにこにこと眺めながら、波狼は静かに耳元で囁く。

「あとですね。見る人が見たら一発で人轢いたなってわかると思いますよ」

 誰かが呼んだのだろう、救急車のサイレンが近づいてくる。いい加減退散する頃だと、最後にそっと告げると波狼もまたその場を後にする。

 最後の言葉は届いたのだろうか。答えを知るものは誰もいない。ただ救急車の赤いランプが辺りを照らすばかり。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月19日


挿絵イラスト