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あの人は私といてくれるから(作者 樫木間黒
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●『 』
 私はいつも一人だった。
 家族はいない。皆死んでしまった。事故だった。
 今の私と一緒に住んでくれてる人は私を好ましく見てくれない。あんな人たちは家族ではない。
 友達もいない。家族がいなくてずっと俯いてばかりいる私を好きになってくれる人はいなかった。
 遊びに行ける場所なんて全然知らない。どうやったら明るい顔ができるなんて分からない。笑顔なんて、ちっとも楽しい気分になれない。できっこない。今だってほら、知らない場所に飛ばされて、わけのわからないままひとりぼっち。誰も助けに来てくれない。

 どうしたら皆が好きになってくれるのかな?
 どうしたら私と一緒にいてもいいって言ってくれるのかな?
 どうしたら、私の側から誰もいなくならないのかな?

 どうしたら、どうしたら、どうしたら――

「大丈夫」

 誰?

「ボクが隣にいてあげる」

 嘘つき。そう言って、皆笑わない私の前から去って行った。

「そんなことないよ」

 本当?

「君は独りぼっちで、独りぼっちは嫌だと思ってるでしょ? ボクも一人はキライ。ほら、ボクたちは考えることも一緒」

 …………。

「笑わなくてもいい。笑わなくても、愛は伝えられる。だからボクに愛をちょうだい?
ボクは君の代わりに笑って、君を愛すよ。だからボクを愛してくれない?」


●グリモアベース
「ぴょんぴょん、お客様ようこそだぴょーん♪」
 グリモア猟兵のネーデル・ホワイトレディ(時計とワンダーランドの案内人・f21780)がハンドベル片手に語り掛ける。
「今回のお客様のお仕事はちょっと難しいぴょん! アリスを誑かすオウガをぶっころ――げふんげふん、倒せってだけなら話は簡単だぴょんだけど……」
 ネーデルの説明によると、あるオウガが目に付けたアリスを同胞に勧誘しようとしているという事だ。アリスの名前は「花島 つつじ」。10歳の少女だが両親を失くし、孤独に過ごしていた記憶を思い出してしまい元の世界に帰還する意欲を無くしている。
 傷心の最中にオウガに「愛する」と――優しい言葉をかけられそちらに傾きかけているというわけだ。
 このままだとオウガを倒しても肝心の彼女は帰還を拒否してしまうだろう……というのがネーデルの話だった。
「だからお客様たちにはオウガを倒して、アリス様を説得して無事お帰りさしあげてほしいぴょん!」
 ついでに今回の転移では直ちにオウガとアリスの元へ飛べるが、アリスの扉までは彼女の心を写したかのような広い迷路が広がっている。迷路を抜けた先には扉を通せんぼするように蔓延っているオウガの群れがいるのでそれらもなんとか突破して欲しいとも付け加えた。
「今はオウガに頼りかけてるはずだけど、根っこが寂しがり屋ならお客様たちと話したがってくれるはずぴょん! がんばってアリス様の心を溶かして欲しいぴょん!」
 説得の仕方は各自にお任せする、という事だ。
 因みにオウガの外見はとある猟兵と酷似しているが同一人物というわけではないので構わず倒していい、とも言う。

「それではお客様御一行ご招待~だぴょん!」


●愛をください
 私の前に現れたのはきれいな、お人形さんのような子だった。
 その子は私を一人にしない、好きでいてくれると言ってくれた。

 手を伸ばす。優しく微笑んでくれた、その人へと。その人が何者か? 何故こんな所にいるのか? ――そんな事は、関係ない。
 あの人は私の側にいてくれると言ったんだ。それだけで私には……。


 足音が聞こえる。繋ごうとした手が離れる。誰かが、来た。





第2章 冒険 『不思議な迷宮』

POW壁を壊すなど道を作り出して出口を目指す
SPD迷宮の隅々まで探索して出口を目指す
WIZ迷宮の最適解を見つけ出して出口を目指す
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


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断章が入るまでプレイングの送信は暫くお待ちください。

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●迷った心に光を照らすように
 オウガは斃れた。

 残ったのは一人の少女。
 「隣にいてあげる」――そう言ってた人はいなくなった。けれどあの時みたいな深い深い絶望は襲って来なくて。

(薄情な人になっちゃったのかな)

 否、そういうわけではないような気がした。もらったクッキーを見る。空っぽだった心に別の物が入ろうとして、さらに別の物が入って来た。そんな気分。
 でも、彼らはずっとつつじの側にいられるわけではない。そうなった時は、いつかこの温かさもどこかに消えてしまうのだろうか?
 目の前に壁がある。所々空いてる隙間は迷路のようで。進みたい、けど進みたくない。そんな気持ちが見透かされているような気分になった。
四王天・燦
SPD

帰るのが怖いんだろ?
アタシ達が居る今に甘えたい…のかな?

アタシはつつじを護ることはできても、生涯を共には歩めないんだ
その特別なお相手はつつじが見つけに行かなきゃなんねーんだぜ

ドッペルのリボンをつつじの髪に結ぶ
彼女の分まで誰かに寄添い、愛し、絆を育んで生を歩みな
お前さんには未来がある
今を生きる者の権利さ
あと願わくば彼女を忘れないであげてくれ

アタシなりのオウガにしてあげられる精一杯
心底悪い奴と思えなかった―

笑いながら手を繋ぐ
分かれ道はつつじに進路を決めてもらうぜ
迷路の先なんて分からない
ただ選べばいいだけと勇気づける
間違えても引き返せば問題ない
まるで人生と同じ迷路だ
実は大したことじゃないのさ


 燦は気づいた。つつじが怖がっている事に、今与えられている優しさに甘えていたいという気持ちに。しかし現状に甘えてばかりでは進む事はできない。その事を諭しておかなければならない。

「アタシ達が居る今に甘えたい……のかな? でもな、アタシはつつじを護ることはできても、生涯を共には歩めないんだ」
 ぎゅっとこぶしを握るつつじ。頭でわかってはいても認めるのを拒んでいるかのようだ。彼女の心を写すように、迷路の壁が揺らぎだす。
「その特別なお相手はつつじが見つけに行かなきゃなんねーんだぜ」
「……いるかな?」
「いるさ、ちょっと待ってな」
 オウガから取ったリボンをつつじの髪に結う。オウガの髪型と結び方は違うがそれはつつじの髪によく似合っていた。
「このリボンの持ち主の分まで誰かに寄添い、愛し、絆を育んで生を歩みな。お前さんには未来がある。今を生きる者の権利さ」
「……私が」
 つつじがリボンに触れる。猟兵たちが投げかけた言葉の通り、あのオウガの誘いに乗った先が歪んだ安寧であっても必要とする、その言葉を投げかけてくれた事は嬉しかった。その事を思い出す。
「あと願わくば彼女を忘れないであげてくれ」
 つつじは燦の目を確かに見て、頷いた。

 燦がこのように説いたのはオウガに報いるためでもある。あのオウガを完全なる悪と断じられなかった。
(気持ちはわかる、からな――)
 寂寞とした気持ちを隠し、つつじに手を差し出す。つつじもその手を受け取った。
 向かうは迷路の出口。少し進むと分かれ道に行き当たった。
「進路はつつじが決めな」
「……でも、行き止まりかもしれませんよ」
「気にしなくていいぜ。アタシだって先はわからない。人生と同じさ」
「人生……?」
 身を強張らせるつつじに燦は笑いかけながら続ける。
「間違えても引き返せば問題ないんだ、難しく考えなくてもいいんだぜ。そう思えば大したことじゃないだろ――?」
 こくりと、頷いてつつじは道を選ぶ。選んだ先は道が自ら進路を開いたかのように次の道が進んでいた。
大成功 🔵🔵🔵

鈴木・志乃
UC発動
お? 食べないの、クッキー?(もしゃあ)
一流ホテルのパティシエの品だよ、普通に買ったら高いんだよ!(もしゃ)

気分が晴れないなら楽しいことを考えよう。
高速詠唱で花を咲かせて、虹をかけて、必要ならつつじちゃんをドレスアップさせて……そういう『UDCアースの女の子が夢見そうな魔法』を沢山、かけて行こう。
さながら私はシンデレラの魔女かな?

私も小さい頃一人ぼっちだったんだ
親も友達も知り合いも皆死んじゃってさ
今はまた、大切な人が沢山出来たけどね

彼女の出身世界での連絡先を渡す
生きてればまた、幸せになれるよ
どうしてもダメだったら連絡して、すっとんでく
貴女を不幸にするアレコレ、ぶっ飛ばしてやるから


 つつじはまだ志乃にもらったクッキーが食べられないでいた。それに対し、志乃はお道化るように別のクッキーを見せる。
「お? 食べないの、クッキー?」
 包装を破り、美味しそうに齧り付いてみせる。
「一流ホテルのパティシエの品だよ、普通に買ったら高いんだよ!」
 ここで食べないと損だよ、と言わんばかりに頬張る。つつじは堪らず唾を飲み込んだ。しかし、それでもと遠慮がちに口を開く。
「……怖いの。食べたら、縁がなくなってしまいそうで……」
「そっか」
 じゃあ、だったらと志乃はスナップを効かせて腕を振るう。すると何もない空中からぱっと花が咲いた。

「難しい事は考えなくていいんだ」
 また腕を振るう。花の次は虹が現れた。

「私も、小さい頃一人ぼっちだったんだ。親も友達も知り合いも皆死んじゃってさ」
「私と、同じ」
「そう同じなんだ」

 次はつつじの体の前に布をかけるようにジェスチャーを取る。すると瞬く間につつじの服はおしゃれなドレスに切り替わった。
「……すごいでしょ?」
「うん……まるで、お話に出てくる魔法使いみたい」
「そう、一人ぼっちの女の子はこうして魔法使いになって他にたくさん大切な人ができた。だからさ、同じな君も『失くしてしまうかも』って怖がらなくていい」
 動きにくいかな、とくすりと笑い、指を鳴らすとつつじの服が元に戻る。まるで一幕の劇が終わったかのように。代わりにつつじの手に連絡先を書いたメモを握らせる。つつじの出身世界からならこれで繋がるはずだ。

「どうしてもダメだったら連絡して。貴女を不幸にするアレコレ、ぶっ飛ばしてやるから」

 つつじは泣きそうな目で小さく「ありがとう」と呟く。志乃の耳に包装紙の破れる音と、クッキーを咀嚼する音が聞こえた。

「おいしい」

 クッキーの味と、か細い声が幼い少女の口の中に溶けて行った。
大成功 🔵🔵🔵