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短冊に籠めた願いと呪い

#UDCアース #呪詛型UDC

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 7月7日。七夕。
 UDCアースの日本では、笹に願い事をしたためた短冊を飾る風習があるのだという。

 おおきくなったら、大統領になりたい。
 けんたくんと、けっこんしたい。
 ぶどうになりたい。

 おおよそ叶う筈もない願いも短冊は受け止めてくれる。
 結果がどうであれ、何かを未来に夢見ることは人間に与えられた希望であり、そして。

 ――呪いでもあった。

●七夕祭り
「UDCアースで、人々が突然消え去る事件を予知しましたわ」
 エリル・メアリアル(孤城の女王・f03064)が猟兵達に向かって、そう切り出した。
「この季節、UDCアースでは『七夕祭り』というのが各地で行われているようですわね。そういうお祭りでは、短冊にお願い事を書いて笹に飾るのが風習なのだとか」
 エリルが一枚の小さな紙をひらひらと揺らせてみせた。
「今回事件が起こったお祭り会場では、備え付けられた髪とペンで、参加者が好きなようにお願い事を書くことが出来るんだそうですの」
 そうして飾られた笹に、自分で飾る。様々な願いを下げた笹は、お祭りの間中ずっと掲げられるのだそうだ。
「そして、その短冊に願いを書いた人が次々と消える……というわけですわ」
 エリルが短冊をふっと風に乗せた。

 願いを書けば人が消える――。では笹がUDCなのか? そういう疑問が生まれたが、エリルは首を振る。
「その笹は、何の変哲もないただの笹。このUDCは、人の願いや希望……そういったものに反応するようですわね」
 つまり、願いごとを短冊に書き、願う動作。これがUDCを引き寄せる要因なのだ。
「ですから、皆様も現場に着いたら、七夕祭りを堪能してくださいまし!」
 重苦しい気分から一転、エリルは明るい口調でそう告げた。
「この事件はまだ予知の段階。今お祭りに向かい、皆様が七夕祭りを一番に満喫すれば、UDCの標的は全て皆様に向けられますの!」
 楽しむことこそが一般人への被害を抑え、UDCの撃破に繋がる、という寸法だ。
「ね? 楽しまない手はないでしょう?」
 エリルがうきうきと言う。確かに、全力で楽しむことのほうが効率は良さそうだ。
「け・れ・ど」
 急転直下、エリルの口調が冷たく、鋭くなる。
「UDCが皆様を襲ったら……ご注意くださいまし」
 短冊に願いを書いた者を、UDCは異空間へと誘い込む。
「その異空間は、短冊に書いた皆様の『願い』や『希望』を読み取り、それを踏みにじる狂気の幻覚を皆様に次々と見せてきますわ」
 願いであれば、志半ばで心が折れるような現実。
 希望であれば、それを打ち砕く絶望。
 でもそれが叶わなかったら? 叶うわけがないと知らしめられたなら?
 願いとは、恐怖を与える『呪い』でもあるのだ。
 そして、その呪いばかりが増幅されれば、人はいずれ心を壊す。
 願いなどしなければよかった、希望など持たなければよかった、と。
「そうやって心を壊して、UDCは人々を取り込もうとしている……ということですわね」
 エリルがふぅ、と息をついた。
「とても悪趣味ですし、皆様の心を傷つけてしまう可能性もありますわ。それでも――」
 エリルは、猟兵達にしっかりと目を合わせ、言う。
「勝って、UDCを討ち倒してくださいまし」
 強い願いの籠った言葉である。
 その願いと共に、エリルのグリモアが輝く。
「皆様、がんばってくるんですわよ!!」


G.Y.
 こんにちは。G.Y.です。
 今回はUDCアースで七夕を楽しむシナリオになります。

 第1章では、七夕祭りを全力で楽しんでください。
 お祭り会場には短冊とペンが置いてありますので、恥ずかしがらずに願い事を書いて、笹に結び付けましょう。
 願いが強ければ強いほど、UDCを引き寄せるエネルギーになりますので、一番の願い事を書くと良いでしょう。
 ただし、叶わないとわかっているような願いであっても、想いが強ければUDCは反応します。

 第2章では、UDCの力によって異空間を彷徨うことになります。
 第1章で願ったことが『叶わない』幻覚を次々と見せてきますので、それでも挫けない思いの強さを発揮して突破しましょう。
 第2章からの参加でも、どのようなことを願ったのかをプレイングに記載していただければ問題ありませんので、気にせずご参加いただければと思います。

 第3章ではこの事件を引き起こしたUDCとの対決です。
 悪趣味な相手には全力で相手をしてやりましょう。

 それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております!
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第1章 日常 『笹の葉に願いをこめて』

POW   :    身体にまつわる願いを書く

SPD   :    技量にまつわる願いを書く

WIZ   :    精神にまつわる願いを書く

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

大町・詩乃
【WIZ】

お祭りや行事は良いですよね~♪
人が生きていく以上、日常生活で色々とあります。
だからお祭りや行事で発散し、「明日から頑張るぞ」という活力を得る。
素敵な人の営みだと思います♪

それを邪神が使用するのなら許せません!
皆さんが七夕祭りを楽しめるよう頑張ります!

願いが強い程、邪神を引き寄せる、ですか。
私の願いなら…(みんなが笑顔で暮らしている風景を想像し)、
「世界と人々が平和でありますように」と短冊に書いて笹に飾る。
どこかで見た標識ですが、その理念は崇高だと思いますので。

後は七夕祭りに興を添えられる様、【楽器演奏】で響月を使って雅楽の曲を演奏。
七夕祭りに集まった皆さんが楽しめるように吹きます。



 さらさらと笹の葉が揺れた。
 きらびやかな装飾に緑が映え、その中に願い事が書かれた短冊が既に下げられていた。近所の幼稚園や小学校の子供達だろう。たどたどしい字で、様々な願いが書かれている。
「お祭りや行事は良いですよね~♪」
 大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)はそんな笹が掲げられた七夕祭りの会場を歩いていた。
 通りには屋台が立ち並び、美味しそうな匂いが立ち込める。人々は思い思いに通りを歩く。そこには、自然と活気が満ちているように感じられた。
「人が生きていく以上、日常生活で色々とあります……だからお祭りや行事で発散し、『明日から頑張るぞ』という活力を得る……素敵な人の営みだと思います♪」
 詩乃はこう見えてヒーローズアースで奉られている神である。世界の違いはあれど、このような風景は愛おしく思えた。
 でも、だからこそ。
「それを邪神が使用するのなら許せません!」
 この営みが続くよう、七夕祭りが無事に終わり、楽しめるように。
 詩乃はそう決意して、問題の笹の前へと立つのであった。

「願いが強いほど、邪神を引き寄せる……ですか」
 詩乃はペンと短冊を取り、考えを巡らせる。
「私の願いなら……」
 浮かぶのは、すべての人々が笑顔で暮らしている風景だ。どの世界であっても笑顔を浮かべる人々の姿。
「世界と人々が平和でありますように……」
 さらさらと短冊に願いを籠めて笹へと下げる。
 どこにでもある、ありふれた願い。それでも、その理念理想は誰もが持ち合わせる崇高なものだ。
 短冊を下げた瞬間、おぞましい気配が詩乃の背後に迫るのを感じた。
「……感じます。邪神の気配」
 しかし詩乃は落ち着き、龍笛を取り出し、吹き始めた。
 清らかな音が、七夕祭りの会場に響き、彩を添える。
(七夕祭りに集まった皆さんが楽しめるように……)
 その願いをも取り込んで、UDCは詩乃を誘う。

 龍笛の音がふと消えた。
 そこに一人の人間がいたことに、人々は気が付かないまま七夕祭りは続くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鉛・鐵斗
祭りか!祭りは好きだぜ!屋台はあるか?ヤキソバ食いてぇ!

ふうん。短冊に願いを書くのか。
一種の呪詛みてぇなもんか?
それになんか懐かしい感じと…妙な胸騒ぎがすんな。

ま、とりあえず書くか。
一番の願いなぁ…ん~

●行動→精神にまつわる願いを書く

『いずれ俺の過去が明らかになりますように』

…っと。
まぁ、一番っつったらこれだよな。記憶ねぇし!
それに初仕事だしな。これからの目標も掛けてって事で!


(正直、持ってた生徒手帳じゃあ名前と生年月日くらいしか解んなかったしなぁ…)

…あ?

あー、七夕。7月7日。
誕生日だったのか、俺の。
それで懐かしい感じがしたのか

●アドリブアレンジその他おまかせ


春霞・遙
願い事、願い事……特別なものではないですが、いつも短冊に書くのは大体同じですね。
『子供たちが健やかに成長できますように。病の子供が治りますように。助からなくともせめて苦しいことがありませんように』

他の方の短冊を覗くのも良いですが、他の飾りを吊るしましょうか。
ちょうちんや網飾りや星や、織姫と彦星なんてのもできますよ。
みなさんの願いが叶うといいです。



「祭りか! 祭りは好きだぜ! 屋台はあるか? ヤキソバ食いてぇ!」
 鉛・鐵斗(星望む幽鬼・f28410)は七夕祭りで賑わう通りを見て、目を輝かせた。
「この様子ならなんでもありそうですね」
 春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)も隣で歩きながら、祭りの様子を楽しそうに眺めている。
(願い事、願い事……)
 遥は今回の事件を考えながら、願い事を考える。
 その時、遥の脇を子供達がすれ違った。子供達は笑いながら、次に行く場所について相談をしているようであった。
 その様子に、遥はふっと微笑んだ。
(特別なものではないですが……)
 いつも願うことは同じ。これまでに書いた短冊と同じことを書けば良い。遥はそう思い、願いをはっきりと決めるのであった。

「おい、あれか? 今回行くのは?」
 鐵斗が指をさす。その先には、風に揺れる笹があった。近付くとテーブルが出されており、短冊とペンが置いてある。
 鐵斗はその短冊のうち一枚を取って、表、裏とぺらぺらめくって眺める。
「ふうん。これに願いを書くのか。……一種の呪詛みてぇなもんか?」
 『新しい妖怪』である鐵斗は、過去の記憶が無い。どうやら以前は人間で、死後妖怪になった……という話だが、詳しいことは分かっていない。だから、七夕についての記憶も失ってしまっているようだが……。
「なんか懐かしい感じと……」
 ざわりと、心に直接触れられるような冷たく気持ちの悪い感覚が、鐵斗に襲い掛かった。
「妙な胸騒ぎがすんな」
 何もない背後を一瞥し、鐵斗は再び短冊に手を伸ばす。
「一番の願いなぁ……」
 鐵斗が頭を悩ませていると、隣の遥は迷いなく書き認める。
『子供たちが健やかに成長できますように。病の子供が治りますように。助からなくともせめて苦しいことがありませんように』
 それが遥の一番の願いなのだ。医師である彼女にとって、それは自分の身よりも大切なのだろう。
「ん~……じゃあ俺は」
 そう言って鐵斗が書いたのは『いずれ俺の過去が明らかになりますように』。
「まぁ、一番っつったらこれだよな。記憶ねぇし!」
 そう言って笑う鐵斗。猟兵としての初仕事である今回は、これからの目標も掛けて、そのように願う。
 彼は記憶が無いことを気にする素振りをあまり見せない。だが、その裏では未練や怨念を抱いている。記憶が戻ればその想いが晴れるのか、それとも、その想いが晴れれば、自分という存在をはっきりと知ることが出来るのか……それは鐵斗自身にもわからない。
 短冊を括り付けてから、鐵斗は遥を見る。すると、まだ折り紙で何かを作っているようだった。
「飾りを足してるのか?」
「えぇ、ちょうちんや網飾り、星……織姫と彦星なんかも出来ますよ」
 出来た飾りを下げて、遥は言う。
「ここにかけられた短冊……皆さんの願いが叶うといいです」
 その言葉に、鐵斗は自分の短冊を見返した。
 自分は、この願いを叶えることが出来るだろうか。
(正直、持ってた生徒手帳じゃあ名前と生年月日くらいしか解んなかったしなぁ……)
 と、生徒手帳を見返す。そこには鉛・鐵斗という名前と、7月7日と記されている生年月日。
(……あ?)
 思わず鐵斗は二度見する。
「あー……七夕。7月7日」
 合点がいった、という具合に鐵斗は笹を見上げる。
「懐かしいわけだ」
 その時……ぞわりとした嫌な感じが増幅するのを感じた。
「来ましたね」
 遥にもそれは感じたようだ。願いに反応するUDCが現れたのだ。
 闇に包まれるように、二人が消える。

 祭りの喧騒はそんな二人の消失など知る由もなく、楽し気に響いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

天樹・咲耶
裏人格のサクヤ(中二病)です

「七夕の願いね!
そんなの悩むまでもないわ!」

短冊と筆を手に取り、こう書くわ!

『私が世界を征服できますように!』(無駄に達筆)

「ふふふ、どうかしら!
これで、この私サクヤが世界を征服することが約束されたわ!」

けれど、分かってるわ。
『機関』のやつらが、私の野望の実現を黙ってみている訳がないことくらい、ね。
きっと、この七夕会場にも『機関』のエージェントが紛れ込んでいて、私の願いを妨害しに来るに違いないわね。

いえ、もしかしたら、私の世界征服を阻むために、未来から殺人ロボットが送り込まれてきているかもしれないわ。

「ここは、周囲への警戒を怠らないようにしないといけないわね!」



 賑わう七夕祭りの通りの影を、一人の少女が歩く。
「ふふ、私にはわかっているのよ……」
 その少女は片目に眼帯、右腕に包帯。一見すれば怪我人のようであったが、その態度にそれらしさは一切感じられない。これはつまり『中二病』というやつだ。
「疼くわ、この右腕に封じられし邪竜が……どうしよう、抑えられないかもしれない」
 そう言いながらも怪しげに笑うその少女、天樹・咲耶(中二病の二重人格・f20341)は絶賛中二病中だ。
 いや、中二病の別人格が存在しているのだ。猟兵たる彼女はもう、どこまでが本当でどこまでが嘘かの境界線が曖昧だが、その態度、その性格、絶対に後年頭を抱えてうずくまるタイプの言動であることは間違いなかった。
 周囲の気配を探り、目的地へと進んでゆく。
「分かっているわ……『機関』の奴らがこの会場に紛れ込んでいるくらい……!」
 そういって慎重に……と思いきや、案外堂々と目的の笹へと歩いてゆくサクヤ。
(七夕の願いね! そんなの悩むまでもないわ!)
 サクヤにとっての願いはたった一つだ。果てしなくシンプルで、果てしなく大いなる野望である。
「だからこそ、わたしの野望の実現を黙って見ている訳がない、というわけよね」
 サクヤは意味深に立ち止まってそう呟いた。まるで背中に目があるような、背後に迫る者に強い意識を向けた呟きだ。しかし背後には誰もいない。
「……フッ、逃げ足だけは早いのね」
 背後の気配が無いと知るや、サクヤはそう言って笹へと向かってゆく。
 そして、テーブルに置かれた短冊とペンを取ると、腕を無駄にクロスさせてペンのキャップを抜く。
「私の願いは……こうよ!」
 掲げた短冊には、やたらと達筆な文字で『私が世界を征服できますように!』と書かれていた。
 そう、サクヤの願いは世界征服。もちろん、これを邪魔する者は多い。特に『機関』は必ず妨害をしてくるに違いない。既にエージェントは人混みの中に紛れ込んでいるはずなのだ。
「……いえ、もしかしたら私の世界征服を阻むために、未来から殺人ロボットが送り込まれてきているかも……!」
 なんたる洞察力! だが、既に目標は目の前。あとは掲げるだけ。邪魔はさせない――!!
 サクヤは笹に短冊を……かけた!
「ふふふ、どうかしら! これで、この私サクヤが世界を征服することが約束されたわ!」
 様々な妨害を乗り越えて、サクヤは成し遂げたのだ!
 だが、喜ぶサクヤの背後に突如、不穏な空気が渦巻き始めた。
「えっ!? まさか、こんな新兵器を……!?」
 これはUDCの攻撃である……が、ともかく、サクヤの強い願いに反応したUDCは、彼女を異空間へと取り込むのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

草野・千秋
願いを書けば人が消える?
物騒な話ですね
なんにしてもUDCが関わる事件なら猟兵として見過ごせません
一般人さんの被害を抑えるためにすること……
七夕を思いっきり楽しめばいいんですね?
それは喜んで(にこにこ)

ええと、それにしても何を願いましょう
僕ワガママなので願い事が多すぎます
でも自分の事は自分で叶えなくちゃ
うん……、と
『亡くした妹と夢の中で逢えますように』
でしょうか
最近夢見が悪いのもありますが
あの子に久しぶりに会いたいなあって
もう夢の中でしか逢えませんしね

(空を見上げ)
彦星さんと織姫さんも天の川で逢えているでしょうか
僕は幸せな人を見るのが好きです
夜空に人々の幸福を祈る



「願いを書けば人が消える? 物騒な話ですね」
 草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)は事件の概要を思い返していた。
 たった今千秋が歩いているこの七夕祭りの会場のうち、とある笹に願いを吊るした人物が消える事件が予知されたのだ。
 UDCが関わる事件であるならば、猟兵としては見過ごせない。一般人に被害を抑える為にも、このUDCを誘引する作戦が行われることとなったのだ。
 その作戦とは……。
「七夕を思いっきり楽しめばいいんですね? それは喜んで」
 にこにこと笑顔になりながら、千秋は人混みの中に紛れてゆくのであった。

 さて、ひとしきり楽しんだ後、千秋は問題の笹の前へと立った。
 備え付けられたテーブルに、色とりどりの短冊とペンが置いてある。それを一つずつ手に取ると、千秋は何を願うか悩み始めた。
「僕ワガママなので、願い事が多すぎます……でも」
 思い描いた願い事の中でも、自分が叶えられるものは自分で叶えなくては。そう心に決めると、悩んでいた時間が嘘のように筆が走る。
『亡くした妹と夢の中で逢えますように』
 千秋は短冊にそう書き記すと、空を見上げた。
(最近夢見が悪いのもありますが……あの子に久しぶりに会いたいなぁ)
 二度と現実では会うことの出来ない肉親の顔を思い浮かべる千秋。――せめて、夢の中だけでも。ささやかだが強くそう願ったのだ。
「彦星さんと織姫さんも、天の川で逢えているでしょうか」
 そう呟くと、今度は祭りに参加する人々の姿を見る。
 誰もが幸せそうな顔をして、思い思いの時間を過ごしている。その顔を見るのが、千秋は好きだった。
 だが、間もなく、この時間を奪おうとするものが現れる。

 ぞくりと悪寒が走った。
 そして間もなく、千秋の姿が消えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『邪神狂気領域』

POW   :    狂気にて狂気を喰らう

SPD   :    理性にて狂気を制する

WIZ   :    本能にて狂気を破る

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 暗闇の中、声が聞こえる。
 暗闇の中、大切なものの姿が見える。

 だが、それは間もなく途切れる。
 だが、それは間もなく壊れる。

 抱いた願いは希望と、恐怖を与える。
 もし願いが叶わなければ?
 もし願いを叶えることが出来なければ?
 その願いは、強ければ強いほど、恐怖によって前に進むことを躊躇わせ、絶望によって踏みにじられる。

 この世界に迷い込んだ者達は、そういった願いの終焉を目の当たりにし、心を壊すのだ。

 これは、UDCの作り上げた空間である。
 これは、幻想である。
 だが、これは起こりうるかもしれない残酷な現実でもある。

 猟兵達はそれぞれの持つそれぞれの願いと、今、立ち向かおうとしていた――。
鉛・鐵斗
真っ暗だ。足が重てぇ。
聞こえてきたのは…俺の声?

「俺にゃ無理だろ。前にも後ろにも進める訳ねぇ。俺の時間はとっくに終わってんだ」
…そうだな

「思い出した所で何もできねぇよ。俺はもう居ない人間なんだからよ」
そうかもな

「明らかにしたい過去って何?そんなもの本当にあったかい?」
何ってそりゃ、俺たちの…何だっけ
今の声、俺じゃねぇ
聞き覚えはあるけど思い出せねぇ…ごめん、忘れちまって

俺は…過去があったことすらも忘れて行くのか?

●行動→本能にて狂気を破る
だーーッ!しゃらくせぇめんどくせぇらしくねぇ!

進まなきゃ過去もわからねぇ!
こんな所で地縛霊になるのはごめんだ!俺は、進むぜ!

●アドリブアレンジその他おまかせ



 闇の中で、鐵斗の身体が揺れる。
(真っ暗だ。足が重てぇ)
 目は空いているのか、いないのか。手足は動いているのか、いないのか。
 自分の知覚さえも闇に溶けたような感覚に思考もぼやけて消えそうになる。
 静寂。何もない空間。

 ――死。

 それを自覚した時、鐵斗は声を聞いた。
「俺にゃ無理だろ。前にも後ろにも進める訳ねぇ」
(これは……俺の声?)
 鐵斗は目を凝らそうとした。だが、何も見ることは出来ない。
 耳を澄ましても、静寂。直接頭の中に声が響く。
「俺の時間はとっくに終わってんだ」
(……そうだな)
 鐵斗は、自分自身の言葉に頷き返した。
「思い出した所で何もできねぇよ。俺はもう居ない人間なんだからよ」
(そうかもな)
 返す言葉が見つからない。
 諦めの感情が鐵斗の胸にじんわりと染みはじめ、思考が鈍ってゆく。
『いずれ俺の記憶が明らかになりますように』
 短冊に書いた言葉は、叶えられない。叶えられるはずない。
 だって俺は……。
「明らかにしたい過去って何? そんなもの本当にあったかい?」
 再び、声が問う。
(何ってそりゃ……俺達の……)
 鈍りきった思考はとりとめがなく、言葉にしたい言葉すら出てこない。
(なんだっけ)
 結局、思考は言葉にならずに沈んでゆく。だが、ほんのわずかに、違和感があった。
(……今の声、俺じゃねぇ)
 違和感に気付いた鐵斗は、考える。
(聞き覚えはある……けど、思い出せねぇ……)
 それでも、まだ頭に靄がかかったような感覚に囚われる。
(俺は……過去があったことすらも忘れていくのか……?)

 ――嫌だ。

「だーーー!!!」
 鐵斗が叫んだ。
「しゃらくせぇめんどくせぇらしくねぇ!!」
 身体が輪郭を取り戻す。声が出る。耳が聞こえる。感情が戻ってくる。
「進まなきゃ過去もわからねぇ! こんな所で地縛霊になるのはごめんだ!」
 闇が晴れてゆく。願いが再び、鐵斗の力になる。
「俺は……」
 いまだに何もわからない過去。思い出せない過去。
 だが、思い出したい声がある。これ以上過去を忘れたくない自分がいる。
 ならば。
「俺は、進むぜ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

草野・千秋
SPD
これは幻覚か?
それとも現実か?

幻に現れたのは亡くした筈の妹
邪神の邪教徒に襲われ失ったはずの妹
おじいちゃん、おばあちゃん、母さんの次は妹が餌食になって

目の前に繰り返されるは忌まわしい血なまぐさい記憶の再生
あの時僕は改造される前で何も抗うすべを持たなかった
……やめてくれ、僕にこれ以上悲しいつらい事を思い出させるのは
今も耳元で聞こえるんだ
『お兄ちゃん助けて』『お兄ちゃん』って
何も、何も、出来なくて、ごめんね

でも今は僕は人々の信頼を背負うヒーローを目指す者
UDCなんかに僕は心は壊させはしないッ!
この悲しい悪夢を、幻覚を打ち破ってみせる!
勇気で我を取り戻す



 最初に気が付いたのは、血の臭いが鼻を突き刺したこと。
 次に気が付いたのは、耳元で助けを呼ぶ声。
(これは幻覚か? それとも現実か?)
 千秋は狼狽しながら、その空間を呆然と眺めていた。
『亡くした妹と夢の中で逢えますように』
 千秋の願いは、この上なく歪な形で、叶えられようとしていた。
(違う、僕が願ったのは、こんなものじゃない)
 見たかったのは、妹の笑顔だった。せめて夢で、幸せだった頃のように、と。そんなささやかな願いのつもりだった。
 だが、膝をつく千秋の前に立っていたのは、恐怖に怯えきった顔で助けを求める妹の姿だった。
 言葉を交わす暇さえなく、妹は邪教徒によって惨殺される。
 血の臭いが鼻を刺す。その血は残ったまま、倒れたはずの妹の脇に、妹が立っていた。
(……やめてくれ)
 今しがた行われた凶行とまったく同じ光景が広がった。
(おじいちゃん、おばあちゃん、母さん……!!)
 何度も、何度も繰り返される。目を逸らすことも出来ず、大切な人が何度も、何度も無惨な姿に変わる。
(やめてくれ! 僕にこれ以上悲しい……辛い事を思い出させるのは!)
 目を閉じ、耳を塞ごうとする。
 だが、血の臭いは消えず、耳元で声が響く。
『お兄ちゃん、助けて』
『お兄ちゃん』
 言葉が響くたび、千秋の心は罪悪感で膨れ上がった。
(何も、何も出来なくて……ごめんね)
 あの日を境に、千秋は変わってしまった。身体は作り変えられ、髪の色も抜けた。
(あの時僕は、何も抗うすべを持たなかった……)
 その後悔は千秋の心に深く突き刺さって、おそらく抜けることはないだろう。
「でも……」
 苦しみと悲しみを乗り越えて、抗う力を手に入れた。
「今は、僕は人々の信頼を背負う……ヒーローを目指す者!」
 何度も繰り返される光景を見つめ返しながら、千秋は立ち上がった。
 自分のような者がこれ以上増えないために。こんな光景をもう二度と見ないために。
「UDCなんかに僕の心は壊させはしないッ!」
 千秋が叫んだ。
「この悲しい悪夢を、幻覚を打ち破って見せる!!」
 激しい咆哮に、空間がひび割れ、砕け散る。
 割れた空間と共に、千秋の記憶が見せた光景も遠ざかって、消えてゆく。
 その時。

 ――一瞬、妹が笑ったような気がした。

「……はっ!」
 見間違いかもしれない、だが、それでも、勇気が漲る。
 そして、空間が粉々に砕けた。この悪趣味な光景を生み出したUDCを倒す為、千秋は前へと進むのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

大町・詩乃
【WIZ】

狂気の幻覚…。
争いが起きた。
老若男女関係無く、理不尽な死が平等に人々に舞い降りる。
残るは荒野に散らばる夥しい骸達。

(幻覚は詩乃の苦い記憶を呼び覚ます)
人は、いえ神も他の生命も争いを繰り返す。
神話や歴史がそれを証明し、私自身、何度も見てきた。
一番辛かったのは私を信じてくれる人同士が争った時かな。
どちらにも、それなりの理由が有るのが一層悲しくて泣きました。

(しばし沈思した後、毅然と顔を上げ)
私なりに過去を乗り越えてきたのです。
この程度で私を壊せると思うな、邪神!

UCの攻撃力強化と【神罰・浄化・破魔・光の属性攻撃・全力魔法・範囲攻撃】、何より詩乃の強い意志を以って、邪神狂気領域を消滅する!



 これは、かつて起きた出来事である。
 人々は争い、死に、荒野に骸が転がった。
 その様子を、詩乃はじっと見つめていた。遠い過去の記憶だ。
「人は……いえ、神も他の生命も争いを繰り返す」
 詩乃は自らの記憶から呼び起こされた光景を眺め続ける。
「神話や歴史がそれを証明し、私自身、何度も見てきた」
 眼下には、再び争い合う人々の姿があった。
『アシカビヒメ様の為に』
『アシカビヒメ様よ、我等をお守り給え』
 二つの対立する勢力は、互いに詩乃を信奉しあっていた。
「……」
 争いは何の理由もなく生まれるものではない。対立する者達、そのどちらにも理由があって、だからこそ詩乃は深く悲しんだ。
 涙がこぼれた記憶が呼び起こされる。
『世界と人々が平和でありますように』
 詩乃の願いは、この世に生を受けた者である限り為しえないものなのだろうか。詩乃は自問自答する。
 だが、争い合う運命であるなら何故、人々は笑うのか、助け合うのか。
 それはきっと、争い合う者達であっても、いつか平和へと至る道がどこかにあるからではないのか。
 しばらくの沈黙の後、詩乃は顔を上げた。
「……この程度で私を壊せると思うな、邪神!」
 詩乃は詩乃なりに、これまでの過去と向き合い、そして乗り越えてきた。
 叶わない願いなどない。薙刀を大きく掲げ、神力を高めてゆく。それらの力は、詩乃の強い意志に共鳴し、遥かに強大な光へと変貌していた。
「はぁあああっ!!」
 ――一薙ぎ。
 描いた軌跡から、空間が両断された。詩乃の記憶の風景は消え去り、闇が光に侵食され、消滅してゆく。
 残るは、この事件を引き起こしたUDCを打ち破るのみ。
「これより、神としての務めを果たします!」

成功 🔵​🔵​🔴​

春霞・遙
たくさんの子どもたちが苦しみながら去っていく世界。それはね、『現実』っていうんですよ。

望まれて生まれてきたのに産声を上げることもできずに抱いてもらえないままたった一週間足らずの生を終えていく子だっている。
まだお母さんに甘えたい盛りなのに薬の副作用に苦しみながらも笑顔を見せてくれて、産後のお母さんと生まれたばかりの妹のいる家に帰れなくて夜毎泣いてる子だっている。
痛い痛いと呟きながらみんなに見守られて息を引き取った子だっている。

すべての命を助けたいと願っても、この手からは零れていくばかり。
これまでも、これからも。

だから、こんなぬるい狂気で立ち止まってなどやるものか。



 闇の中、遥は静かに『その光景』を見つめていた。

『子供たちが健やかに成長できますように。病の子供が治りますように。助からなくともせめて苦しいことがありませんように』

 短冊に下げた願いが、目に浮かぶ。
 それが『叶わない』光景が今、遥の前に広がっている。

「たくさんの子供たちが苦しみながら去っていく世界、それはね……」
 遥は誰に言うわけでもなく、呟いた。
「『現実』っていうんですよ」

 UDCアースで医師を生業としている遥にとっても、その『光景』を見慣れた事は無い。

「望まれて生まれてきたのに産声を上げることもできずに抱いてもらえないままたった一週間足らずの生を終えていく子だっている」
 叶わないと理解していて、なお求める願い。
「まだお母さんに甘えたい盛りなのに、薬の副作用に苦しみながらも笑顔を見せてくれて、産後のお母さんと生まれたばかりの妹のいる家に帰れなくて夜毎泣いてる子だっている」
 その子供の笑顔と涙に濡れた表情が交互に入れ替わるように映される。
「痛い痛いと呟きながらみんなに見守られて息を引き取った子だっている」

 それが、彼女が立ち向かう現実。
 願いとはかけ離れた世界で彼女は戦い続けていた。

「すべての命を助けたいと願っても……この手からは零れていくばかり。これまでも……これからも」
 遥が手を伸ばす。赤ん坊を象った光のシルエットが遥の手に抱かれる直前で、歪み、崩れ、指の隙間から零れて闇へと溶けてゆく。
 何度願っても、その願いは叶えられない。だが、彼女はその願いを胸に抱く。
 遥がそう願い、戦ったからこそ救えた命があった。願いがあったからこそ、立ち向かうことが出来た。
 必要なのは、願いを叶えることではない。叶えるために戦うことこそが、本当に必要なことなのだ。
 遥の手に、一滴の光が残った。それは、その手で救えた希望のように見えて、遥を立ち上がらせる。
「だから、こんなぬるい狂気で立ち止まってなど……やるものか」
 闇がひび割れ、光が零れる。
 遥はその光に向かい、迷わず歩いてゆく。
 これからも『現実』と戦い続ける、その為に――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天樹・咲耶
表人格の咲耶(優等生)です

「はっ、ここは……?
さては、またサクヤが勝手に任務を受けたのですね」(咲耶はサクヤと記憶を共有していません)

周囲を見回すと……

「サクヤ帝国建国祭っ!?」

周囲の人々がサクヤコールを叫んでいます。
一体何がどうなってるんですかっ!?(絶賛大混乱

「ちょっ、やめてくださいっ!
私はサクヤ帝国皇帝なんかじゃありませんっ!
普通の人生を送って、ささやかに暮らしたいんですっ!」

ですが、そこに突如『機関』のエージェント達が現れます。
帝国民は捕まり崩壊していくサクヤ帝国。
豪華な宮殿は崩れ去り、私は何の能力も持たない一般人として生きていくことに。

「え、えーと?
まあ、帝国なんていらないですし?」



 どちらが天で、どちらが地か。
 立っているのか、倒れているのか。
 浮いているのか、沈んでいるのか。
 感覚のはっきりしないその闇の中で、咲耶は意識を取り戻す。
「はっ、ここは……?」
 足元がおぼつかな世界で、咲耶はキョロキョロと辺りを見渡した。
 笹に願いを掲げていた時とは随分と様子が違う。咲耶はふと覚えた違和感を辿って目元に手をやると、見つけた眼帯を迷わずに外した。
「さては、またサクヤが勝手に任務を受けたのですね」
 咲耶が溜息を一つついた。

 多重人格である咲耶は、中二病的な性格をしたサクヤと対の存在である。
 二人の記憶は共有されず、おとなしい表人格の咲耶はサクヤの行動に振り回されることが往々にしてあった。
 まったくもう、と思いつつもまずはこの闇の中を抜けなくてはならない。咲耶が周囲を見渡すと、光がさし始めた。
 眩しさに目をこらし、咲耶がその光景を覗き込む。
 賑やかな音楽、上がる歓声、そしてスカイツリーから降ろされた超巨大な垂れ幕に書かれていた文字は――。
「……サクヤ帝国建国祭っ!?」
 咲耶が思わず叫んだ。気が付けば彼女は宮殿のバルコニーに立ち、眼下には隙間もないほどに敷き詰められた人々が、一様に咲耶を見上げている。
『サークーヤッ! サークーヤッ!』
『サークーヤッ! サークーヤッ!』
 咲耶を見上げる人々が一斉にサクヤコールを始めた。
「い、一体何がどうなってるんですかっ!?」

『私が世界を征服できますように!』

 サクヤはそう願い、笹に掲げた。
 それでは、願いが叶ってしまったのではないか? いいや、そうではない。

「ちょっ、やめてくださいっ! 私はサクヤ帝国皇帝なんかじゃありませんっ!」
 サクヤコールを止めない人々に咲耶が叫ぶ。
「私は……普通の人生を送って、ささやかに暮らしたいんですっ!」
 そう。表人格の咲耶にとって、願っていた『ささやかな暮らし』は叶っていないのだ。
「はっ?」
 突如、人々が騒ぎ始めた。
「『機関』のエージェント?」
 エージェント達が帝国民を捕らえると、どういうわけか街並みまでも崩壊してゆく。
 あれよあれよという間に帝国は崩れ去り、宮殿もバルコニーも闇の中へ消えた。
 サクヤがもし今目覚めていたならば、泣いて叫ぶほどに惨い光景だろう。
 これもまた『願いが叶わない幻覚』であった。
「え、えーと……?」
 しかし、今その場にいるのは咲耶。ぽかーんとした表情で、崩壊を見守り続ける。
「まぁ、帝国なんていらないですし?」
 結果、ノーダメージであった。

 全ての世界が崩壊すると、猟兵達を覆っていた闇も崩壊を始めた。
「え、え、なんですか?」
 咲耶が戸惑う。UDCの作り出した狂気を与える闇が晴れたのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『黄昏の救済・分霊体』

POW   :    あの浜辺でみんなが待っている。痛みを得た君を。
【輪郭の内側から押し寄せる血色の波】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を亡者の這い出る黄昏の浜辺に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD   :    その痛みが、君の生きている証。痛みこそ命の意味。
【子供のような笑い声と共に皆で踊り狂うこと】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【地形ごと黄昏の浜辺に取り込ん】で攻撃する。
WIZ   :    苦痛に満ちたあの浜辺で。さぁ、一つになろう。
【激痛を呼び覚まし、法悦に変える赤い雨】を降らせる事で、戦場全体が【輪郭の内側と同じ、苦痛に満ちた黄昏の浜辺】と同じ環境に変化する。[輪郭の内側と同じ、苦痛に満ちた黄昏の浜辺]に適応した者の行動成功率が上昇する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「あの浜辺でみんなが待っている。痛みを感じた君を」
 紙ぺらのような姿の奥に真っ赤な浜辺と、怪しい瞳が猟兵達を見つめていた。
「その痛みが、君の生きている証。痛みこそ命の意味」
 猟兵達を取り囲み、抑揚のない声で語り続ける。
 これが、狂気の世界を生み出したUDCであろう。
 心を壊し、痛みと悲しみにくれる者を甘い言葉で惑わし、そして『同じ』にする。
 おそらく先ほどの幻で心が折れていたのならば、その言葉もすんなりと受け入れてしまっていたであろう。
 だが、猟兵達はみな幻に打ち勝ってここにいる。
 UDCの言葉は、空虚でしかない。
「苦痛に満ちたあの浜辺で。さぁ、一つになろう」
 知ってか知らずか、機械的に言葉を紡ぐUDC。その名は『黄昏の救済・分霊体』。
鉛・鐵斗
ようやく姿見せやがったな。
イイ趣味してんぜ、全くよぉ!

●戦闘→WIZ
●UC→連鎖する呪い
お手々繋いで仲良しか?そんならまとめてぶっ飛ばす!
具体的には霊障とか念動力でガーッと範囲攻撃して、UCと呪詛で呪う!!


逢魔ヶ時っつーのは妖怪も動きやすいけど、俺は雨が嫌いでね。ま、傘は常々持ち歩いてんだけどな……っこの雨イッテェな!?
ぐ……頭切ったか?……違う、この感じ、俺は頭をかなり強く打った事がある?痛い、けど、何か思い出せそうな……
もっかい雨に……いやいやいや、ダメだダメだ耐えろ俺!今は!アイツらを!ぶっ飛ばすのが!先だァ!!

●アドリブアレンジその他おまかせ



「ようやく姿見せやがったな。イイ趣味してやんぜ、全くよぉ!」
 鐵斗が黄昏の救済達へと啖呵を切る。
 敵はくるくると舞いながら、鐵斗の上空で舞う。紙のような身体の一枚一枚が手を繋ぎ、円を描くように舞い続けた。
「お手々繋いで仲良しか? そんならまとめてぶっ飛ばす!」
 鐵斗から禍々しいオーラが膨らみ、黄昏の救済達へと向けられる。だが、その一瞬早く。
「苦痛に満ちたあの浜辺で。さぁ、一つになろう」
「……!」

 気が付けば鐵斗は浜辺にいた。
「……なんだ、ここは?」
 突然の変化に驚いたものの、鐵斗は冷静に状況を分析する。
 おそらくは上空を舞う黄昏の救済達が呼び出した世界だろう。
「なぁるほどな……逢魔ヶ時っつーのは妖怪も動きやすいけど……俺は雨が嫌いでね」
 ぽつぽつと振り始めた赤い雨に鐵斗は持っていた傘をさそうとした。その時、ポツリ、と手に雨粒が当たった。その瞬間、鐵斗に激痛が走る。
「イッテェ! ……この雨イッテェな!?」
 痛みに耐え、傘を広げる。だが、ざんざんに降る雨は、鐵斗が傘をさすよりも早く彼の全身を濡らす。
「ぐっ……!!」
 頭に襲い掛かるズキズキとした激痛に思考が鈍り、視界が霞む。やっとのことで傘をさして難を逃れたものの、痛みが引く様子はない。
「頭切ったか……?」
 ずきん、ずきんと痛みが脈打ち、霞んだ視界の先に何かが見える。
「いや、違う……」
 その光景には、何か見覚えがある気がした。
「俺は……頭をかなり強く打ったことが……ある?」
 だが、もやがかかったような記憶の断片は、輪郭が無くて、まるではっきりとしない。
「痛い、けど、何か……」
 鐵斗は半ば無意識的に傘の外に手を伸ばそうとした。
「何か……思い出せそうな……」
 痛みに触れれば、もう一度。そんな考えが頭をよぎった瞬間、鐵斗はハッと我に返った。
「いやいやいや、ダメだダメだ耐えろ俺!」
 傘から出ないように上空を見上げる。
「今は! アイツらを! ぶっ飛ばすのが!」
 霊障が赤い浜辺の世界に広がる。雨をも吹き飛ばし、鐵斗は天に手をかざす。
「先だァ!!」
 霊障がかまいたちとなり、黄昏の救済達を切り裂く。その傷がうじゅりと敵に刻まれると、突如空から落雷が降り注ぐ。
 傷を目掛けて雷が落ちる。その衝撃で黄昏の救済の身体が焼け、広がってゆく。
 散り散りの灰になると、赤い浜辺は元の空間へと戻っていた。立ち尽くす鐵斗の前に、ひらりと黄昏の救済達の破片が舞い込んだ。
「さぁ、一つに……」
「チッ、やっぱり雨は嫌いだぜ」
 それをぐしゃりと握りつぶし、鐵斗はひとり、呟いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

春霞・遙
一緒に苦しむ人を増やしたい気持ちは分かりますし、あなたたちがこちら側の存在であればいくらでも寄り添いましょう。
でも、あなたたちの本当の願いはその痛みから解放されることなんじゃあないですか。
いつまでも苦痛の中に生き続けなくていいんですよ。

その激痛は受け入れる。亡者に手を伸ばし「手をつなぐ」。苦痛に満ちた生から解放するつもりで攻撃の手は手加減はなしで。
【竜巻導眠符】で痛みのない夢の「誘惑」に誘い、「恐怖を与える」ことがないよう一撃で終わるように頭部に狙いを定めて「零距離射撃」。



「苦痛に満ちたあの浜辺で。さぁ、一つになろう」
 抑揚のない声で黄昏の救済達が語り掛ける。赤い雨が降りはじめ、遥は世界の終焉のような浜辺に立ち尽くしていた。
 そこにはかろうじて人の形を留めている程度の亡者達が彼女を手招きしており、空から降る雨にさらされると遥の身体に激痛が走った。
「……一緒に苦しむ人を増やしたい気持ちはわかりますし……あなたたちがこちら側の存在であればいくらでも寄り添いましょう」
 遥は痛みに耐えながら、亡者のもとへと歩き始める。痛みに屈服し、彼らと一つになろうというようには見えない。
「でも……あなたたちの本当の願いは、その痛みから解放されることなんじゃあないですか」
 亡者たちは言葉を止めた。無言で互いを見合わせたが、遥の言葉の意味を理解できないでいた。いや、理解できないのではない。理解したくないのだ。それを理解してしまえば今までの苦痛にあふれた自分を否定することになると心の底で感じていたからだ。
「いつまでも苦痛の中に生き続けなくて、いいんですよ」
 遥がゆっくりと手を伸ばす。その優しい手に、慰めの心に。亡者は手を伸ばし返した。

 ――あたたかい。

 亡者たちの心に、遥の言葉が響き渡る。
 そうだ、本当はこの痛みから解放されたかったのだ。
 それが出来ないから、その苦痛をわかりあえるものを増やしたかったのだ。
「痛みのない夢へ、誘いましょう」
 遥の符の束が風に舞った。竜巻のように吹きすさぶ符に、手加減の意図は感じられない。
 符の嵐が、亡者たちを飲み込んだ。すると亡者たちは痛みを忘れ、ゆっくりと目を閉じてゆく。
 遥が銃を抜き、眠りについた亡者達の頭部を撃ち抜いた。
「夜の帳が下りてくる、魔法の砂も吹いてきた。さあさおやすみ、眠りなさい」
 倒れゆく亡者達の数に比例するように黄昏の救済達の輪郭が崩れ、赤い浜辺が消え去った。気が付けば、遥は元の空間に戻ってきていた。

 ――アリガトウ。

 風の向こうから、そう聞こえた気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天樹・咲耶
裏人格のサクヤ(中二病)です

「はっ、ここはっ!?
私のサクヤ帝国はっ!?」

気がついたら、謎の浜辺に変な生き物。
おかしいわ。
私が笹に願った世界征服の夢が叶ったはず……!
そうじゃないということは……

「なるほど、謎の生き物、あなたが『機関』の刺客ね!」

ならば何も容赦する必要はないわ!

「我が右手に封じられし邪炎竜よ。
今こそ封印から解き放たれ、その力を示しなさい!」

右手の包帯(ドラッグストアでまとめ買い商品)を解いて、アビスドラゴンを召喚!
【邪竜獄炎咆】で『機関』の手先を倒すわ!

「さて、残る問題は……これよね」

解放したアビスドラゴンは私にも制御不能。
暴れ疲れるまで右腕に戻ってくれないのよね……(遠い目



 ざざん……ざざん……。
 波の音が聞こえる。いつの間に気を失っていたのか、咲耶は砂浜で目を覚ました。
「ん……」
 生温く肌触りの悪い風に咲耶が顔を上げる。
「はっ、ここはっ!?」
 砂を振り払うことさえ忘れて、咲耶が立ち上がる。
「私のサクヤ帝国は!?」
 咲耶が叫ぶ。どうやら今は裏人格のサクヤのようだ。
「むむ……!」
 サクヤは顔で左目を隠すようなポーズを取る。ここ数時間、いや、数分間かもしれないが、とにかくその間の記憶がない。
 そのうえ、今サクヤがいるのは謎の赤い浜辺に、空を舞う紙切れ。
「……おかしいわ」
 何か裏があるに違いない。だってサクヤは笹に世界征服の夢を願ったのだ。願いは叶うはずなのだ。
「そうじゃないということは……」
 サクヤが紙切れを見上げる。黄昏の救済達は、サクヤを囲むように、抑揚のない声で呟いた。
「あの浜辺でみんなが待っている。痛みを得た君を」
 ざぁ、と輪郭の内側から赤い水が流れ落ちる。どうやらこれが『黄昏の浜辺』を作り出した元凶らしい。
「なるほど……謎の生き物、あなたが『機関』の視覚ね!」
 ビシィッと人差し指を突き付けてサクヤが叫ぶ。黄昏の救済達は意に介さずに周囲を赤い血の海で染めてゆく。
「ふん、聞く耳もないってことかしら。ならば何も容赦する必要はないわ!」
 サクヤが右腕に巻かれた包帯を取り去ると、手を天に掲げる。
「我が右手に封印されし邪炎竜よ! 今こそ封印から解き放たれ、その力を示しなさい!」
 サクヤの右腕から、炎が噴きあがった。それは渦を巻き、邪竜の姿へと変貌する。
「アビスドラゴン、邪竜獄炎咆よ!」
 その言葉に従い、邪竜アビスドラゴンが炎を吹いた。地獄を思わせるその炎の勢いは黄昏の救済達ごと海を蒸発させ、代わりに一面火の海に染め上げる。
「みんな……待って」
 一枚が炎の中に消え去り、敵は一時的にではあろうが一掃できたようであった。
 だが。
「さて、残る問題は……これよね」
 激しく炎を吐き続けるアビスドラゴンを呆然と眺め、サクヤが呟いた。
「鎮まりなさい、邪竜よ! 役目は終わったわ、おとなしく……!!」
 しかし、邪竜はサクヤの言うことなど一切耳を貸さずに周辺を燃やし尽くしてゆく。
「あぁ……」
 ここがUDCの作り上げた異空間で良かったかもしれない。サクヤは遠い目をして、邪竜が暴れ疲れるのを見守るのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

大町・詩乃
千秋さん(f01504)と

分霊体ですか…、本体を倒せないのは残念ですが、人々の為にもここで決着を付けましょう。

敵UCの攻撃には、詩乃もUC発動して空中を舞って回避(UC発動が間に合わなければ、【空中浮遊・空中戦】で回避)。
そのまま【地形破壊・光の属性攻撃・全力魔法・浄化・破魔・高速詠唱・範囲攻撃】による光の奔流を放って、亡者の這い出る黄昏の浜辺を浄化・消滅します。

千秋さんの攻撃と連携し、別方向から【空中戦】で上空から邪神に接近し、煌月による【光の属性攻撃・神罰・破魔・浄化】を籠めた【なぎ払い】で斬り伏せます!

邪神の攻撃は【第六感・見切り】の回避と、天耀鏡による【盾受け・オーラ防御】で防ぎます。


草野・千秋
詩乃さんと(f17458)

『痛みこそ命の意味』ですか
でも本当なら痛みなんて味わいたくないですよね
甘いでしょうか
今回は分霊体ですがそれも邪悪の一つ
確実に撃破しないとですね

『勇気』で敵に立ち向かいます
僕はヒーロー、邪悪を倒す者だと名乗りを上げて『挑発』
敵側の注意を自分に向けさせ、詩乃さんへ攻撃が被弾することを防ぐ

UC【Fly me to the Moon】で飛翔
亡者の這い出る黄昏の浜辺から離れつつ
サイバーアイの『視力』でしっかり相手を観察し
『空中戦、スナイパー、2回攻撃、一斉発射、範囲攻撃』で攻撃
敵攻撃は味方に及ぶなら『かばう』
自分に被弾するなら激痛耐性、盾受け



「あの浜辺でみんなが待っている。痛みを得た君を」
 どろどろとした赤い血が、海のようにその『輪郭』から染み出て地面を濡らした。大地はみるみる禍々しい砂浜へと変わり、むせかえるような臭気が辺りに立ち込めた。
 空を舞うのは黄昏の救済。それらはあくまで分霊体と呼ばれるものであり、本体は別にあるようだ。
「本体を倒せないのは残念ですが、人々の為にもここで決着を付けましょう」
「えぇ、今回は分霊体ですがそれも邪悪の一つです」
 詩乃と千秋は背中合わせに立ち、それらへと向き直るのであった。

 ぼこり、ぼこりと周囲から亡者たちが這い出て、生気も感情もない声色で猟兵達を海へと引きずり込もうとする。
 それを咄嗟にかわして詩乃が空へと舞うと、黄昏の救済達が逃がすまいと飛び掛かる。
「くっ……速いですね」
 黄昏の救済達は詩乃の反撃を許すまいと追撃をしかける。その『輪郭』からごぼごぼと赤い海が溢れ、詩乃へと放たれようとしたその時。
「こっちだ! ダムナーティオー推参! お前達……邪悪を倒す者だ!」
 輝ける銀の鎧に身を包んだ千秋が叫んだ。その挑発に一部は千秋へと狙いを変え、血の海を放つ。詩乃と同様、亡者の手が這い出して千秋の脚を掴もうとする。
「ナノマシン活性化……! 飛べ!」
 亡者の手が空を掴んだ。千秋はスレスレで飛翔すると、一気に黄昏の救済へと距離を詰める。千秋のサイバーアイが黄昏の救済を捉え、蒼銀の刃が貫く。
「その痛みが、君の生きている証。痛みこそ命の意味」
 消えゆく黄昏の救済が呟いた。
「……本当なら痛みなんて味わいたくないですよね」
 そんな風に考える自分は甘いのだろうか。そう思いながらも、残りの敵へと向き直る。
「助かりました……! 人々を世界を護る為、全力でお相手致します!」
 詩乃の身体から若草色のオーラが溢れ出す。
「浄化……いたします!」
 オーラが光の奔流となって、黄昏の浜辺を破壊してゆく。それに巻き込まれるように、黄昏の救済達が浄化され、燃え尽きてゆく。
「あの浜辺でみんなが待っている。痛みを得た君を」
 だが、黄昏の救済も抵抗を試み、血の海でその浄化の光を覆い隠そうとする。
「危ないっ!!」
 空中へと飛んだ千秋が身を乗り出した。詩乃の盾になるようにその背で血を受け止める。
「ぐぅっ!」
「千秋さんっ!」
 詩乃が叫ぶ。千秋は痛みに耐えながら、詩乃に呼びかける。
「まだ来ます!」
「!」
 その言葉に反応し、詩乃が天耀鏡をかざす。直後、血の波が鏡へと打ち付け、詩乃は九死に一生を得る。
「このおおおっ!」
 傷もそのままに、千秋が『ordinis tabes』を取り出すと、周囲を取り囲む黄昏の救済達へと乱射する。銃弾を受けた黄昏の救済は弾け飛び、急速に数を減らしてゆく。
「最後の……一太刀です!」
 すかさず詩乃が薙刀を天に掲げた。若草色のオーラが収束し、激しい光を放つ。
「神罰を受けなさい!」
 その言葉と共に放たれた一薙ぎが、残る黄昏の救済達を切り裂いた。
「……ともに……ひとつに……」
 最後の1体が、光に飲まれながら呟いた。

 ――気が付けば、猟兵達は七夕の会場、あの笹の前に立っていた。
「邪神の脅威は去ったのですね」
 詩乃が安堵したように呟く。
 呪詛型UDCによる事件は、誰も知らないうちに幕を閉じたのだ。
 掲げられた願い事は何事もなかったかのように風に揺れ、千秋はそのうちの一つ、自分の書いた願いを目にする。
「いつか、今度は幸せな夢で……」

 願いは呪いである。もし願いが叶えられなかったら? そう思うと恐怖がこみ上げ、願いを叶えようとするあまり、恐ろしい道に進んでしまうこともある。
 だが、同時に願いは希望である。願いがあるからこそ人は先に進むことが出来、叶うことのない夢であっても、それを胸に生きる者へ未来を与える。
 笹は、そんなたくさんの願いを乗せてさらさらと音を立てた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年07月15日


挿絵イラスト