血みどろの夏祭り
#UDCアース
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●奈良の、とある山間にて
その神社はいつ頃、建立されたのかは分からない。
ただ兎に角、古いことだけは分かっている。境内に鬱蒼と茂る樹々のみならず、神社の敷地全体を覆う森林が昼間でも陽光をほとんど通さない闇を創り出していた。
この神社を中心として、小さな集落が形成されている。住民はいずれも精気に乏しく、日々の糧を得る為にと毎日農作業に励んでいるが、大半が老齢の為、限界集落に近しい様相を呈していた。
だがどういう訳か、夏祭り近辺の数日だけは妙に活気に満ちる。
神社に祭られている何某という神をお迎えするのだと、集落のひとびとは両眼を爛々と輝かせるのだ。
ある夏の日──ひとりのヒッチハイカーが、奈良の山奥から山奥へと移動していた。
年若い女だ。二週間の休暇を取って、奈良の古刹や歴史のある神社等を訪ねて廻っていた。
ヒッチハイカーの女がその集落を訪れた時、丁度、件の夏祭りが盛況を迎えようとしていた。
「おや、お嬢さん。見かけん顔やね」
集落に住まう老人のひとりが、疲れた笑顔を見せてヒッチハイカーの女に声をかけた。ヒッチハイカーの女は集落にたった一店舗だけ営業している商店で、安物の握り飯を購入したところであった。
「えぇと……ここの神社は、どんな神様を祭っているんですか?」
ヒッチハイカーの女は特に警戒もせず、屈託のない笑みを見せて訊いた。
老人は心底嬉しそうな表情で、にたぁっと唇の左右の端を吊り上げた。
●祭られているのは?
グリモアベースの狭いブリーフィングルーム内で、アルディンツ・セバロス(ダンピールの死霊術士・f21934)は呼び集めた猟兵達の前を行ったり来たりしながら、何度も低く唸っていた。
今回セバロスは奈良の山奥に存在する無名の集落に、UDCの気配を感じ取っていた。だが、その姿ははっきりとは見えず、どこにUDCが潜んでいるのかがよく分からないのだという。
「怪しいのは、その集落の中心にある神社なんだけどね……どんな形で潜んでいるのかが分からないんだ」
セバロスは心底申し訳無さそうな表情で頭を掻いた。
こんなことじゃあグリモア猟兵なんて失格だなぁ、などとぼやきながらも、その瞳にはある種の鋭さが宿っていた。
先ずは兎に角、件の集落を訪問してUDCの居場所を探り出して欲しいと言葉を続けた。その集落は決して排他的な雰囲気は漂わせていないものの、外部の人間が足を踏み入れると、以後、一切の消息を絶つことが多いという話であった。
或いは、集落そのものが怪しいかも知れない。
案外、UDCやその眷属は目に見える形で既に姿を見せているのかも知れない。
セバロスは、くれぐれも気を付けて、と猟兵達に気遣うような視線を投げかけた。
革酎
こんにちは、革酎です。
物凄い久々にシナリオをお届けします。
謎多き、みたいな出だしですが、そんなに難しいお話ではありません。
あからさまに怪しい集落とその住民。そして何の神様を祭っているのか分からない奇妙な神社。
叩けば簡単に埃が舞い上がるようなところですので、然程苦労せずにUDCと遭遇するところまで話が進んでいくでしょう。
第一章は、集落と謎の神社を巡って、UDCの居場所を突き止めて下さい。
第二章は、UDCの眷属との集団戦。
第三章は、親玉UDCとの対決です。
第1章 冒険
『古の祭』
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POW : 集落で祭りの準備に参加する
SPD : 邪教団の信者を捜索する
WIZ : 祭りの由来や歴史を紐解く
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
月読・美琴
「邪神に関連のある神社ですか。
退魔師として見過ごすことはできません。
退魔師としての初仕事、見事果たして見せましょう」
まずは怪しい集落の人々の反応を見るのが一番ですね。
普段、神社の巫女として働いている時の服装(ミニスカート状になった袴の巫女服)で集落を訪れましょう。
「私は月読神社という神社の巫女なのですが、こちらの神社で夏祭りをしていると聞きまして、何かお手伝いできないかと……」
神社の内情が分かればいいですし、断られても向こうから何らかの行動をしてくるでしょう。
それまで村の見物をしているふりをして、邪神の気配を探ったり村人の様子を観察したりしましょう。
(ドジっ娘なので村人に対して油断しています)
春霞・遙
うちの地元も祭りの時期になるとどこにこれほどの人がいたのかと首をかしげるほどに人が集まる地域、あります。
もしかしたあれもなんぞUDCの仕業だったりするのでしょうか?今度個人的に調べてみましょう。
シャドウチェイサーに鍵のかかった公民館や図書館や権力のありそうな古そうな家に侵入させて怪しい人、歴史といったものを探らせます。
私は折角なので祭りを楽しんだり人に話を聞きたいです。
景色や建築物などを「撮影」しつつ、神社縁起について記されているような看板を探したりします。
どなたか声をかけてくださるようならお話を聴きたいですね。
アドリブ共闘お任せします。
朱酉・逢真
眷属《獣・鳥・虫》からこの辺りで生息してそォなンを喚びだして神社に向かわせよう。眷属たァ意識がリンクしてんでね。野良猫や野良スズメがいても気にはなるめえし、そっちに目が行きゃア蚊やコバエなんざ気にもとまるまいよ。
俺は俺で集落に行くさ。自白剤めいた《毒》を創って風にのせ集落を包もう。特製の手製さ、後遺症もなんも残らん。最近来た客の知り合いのフリでもして、その居場所と“神社に祀られてる神様”ンことを聞こう。
こちとら専門家だ。毒がきいてっかどうかくらい見りゃわかる。効いてねえってんなら、そいつァ実にあやしいじゃねえか。なあ?
桜雨・カイ
POW
消息を絶ってしまった人達が無事でだといいのですが……はやく集落を調べに行きましょう
まずは聞き込みから始めます
自分も旅の途中に訪ねてみたという感じで集落に入り、周囲の人達に聞いてみます。
お祭りとはどのような事をするんですか?
とても楽しそうですね。なにかこのお祭りにいい事でもあるんですか?
折角だから私も参加してみたいですね。
何かお手伝いできる事はないですか?重い荷物など運ぶなど力仕事出来ますよ。
手伝いながら、できるだけ内部に出入りできないかやってみます。
あとは周囲の会話を【聞き耳】で聞いたり、姿を消した女性に関するものがないか【情報収集】してみます
アドレイド・イグルフ
WIZ
……ンンム、不気味なところだ!嫌な予感しかしない
祀ってそうだぞ、UDCを。……利益があったとして、どんなものなんだろうなア
まずは地形や構造物など、周囲の様子を確認する。
て回っているうちに住民と出会えたならば、会話して情報を引き出してみようじゃないか
挨拶は大事だからな、爽やかに行こう。相手も笑顔ならこっちも笑顔で対抗だ……!
最後は神社を調べた後に、改めて、先に見ていた周囲を見回す。何か、あればいいのだが……
やっぱり、住民は全員グルなんだろうか。騙されてたりとかじゃあ……ンググ、どっちだ…?!
神代・凶津
相次ぐ行方不明者に祭られてる神様が正体不明の神社、怪しさ満点じゃねえか。
「・・・消息を絶った人が無事だといいのですが。」
行ってみないと分からねえが余り期待しない方がいいかもだぜ、相棒。
まずは、集落で情報収集だな。
相棒は修行中の巫女で修行で各地の神社を巡っている的な設定で住人に話を聞いてみようぜ。
俺はただの仮面の振りをして黙ってるが、何だかヤバい空気が漂う集落だ。
俺も目を光らせてるが十分に気を付けろよ、相棒。
「・・・此処に歴史ある神社が在ると聞いてきたのですが。」
「今は夏祭りの時期なのですね。」
「ここの神社はどの様な神様が祭られいるのですか?」
【技能・情報収集】
【アドリブ歓迎】
陰白・幽
【POW】
ふむふむ、今回は行くと帰ってこなくなる村か〜、どんな場所なんだろ……まあ、行けば何か見つかるよね〜
村に行ったらとりあえずは観光客の振りをして、準備のお手伝いをしながら村の人に混ざって行動してみるよ〜
怪力を生かして重たい物を運んだり、身軽さを生かして高いところのものをとったり飾ったりだね〜
手伝いをしながらお話なんかをしてお祭りの注意事項や行っちゃいけない場所があるかそのまま聞いてみよっと
お手伝いをしたら、行っちゃいけない場所とか人が避けている場所、逆に人が多くいる場所とかを探してUDCの正体を探っていくよ〜
……神様は神様でもよくわかんない神様だし、つまみ食いをしても罰は当たらないよね〜
その集落には入り口らしい入り口というものはなく、山間の細い国道を進んでいると、いつの間にかぽつぽつと民家が見え始めて、漸く集落に入ったのだなと気づく程度である。
だがこの日は、集落に入る手前から微かに祭囃子の音が風に乗って流れてくる為、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)は既に自分達が集落内に足を踏み入れたことをすぐに察した。
「……消息を絶ったひとが、無事だと良いのですが」
異形の仮面を抱きかかえる様にして路面に佇む巫女装束の神代・桜(かみしろ・さくら)は、薄曇りに遮られる午後の陽射しを見上げながら、そっと呟いた。
(行ってみないと分からねえが、余り期待しない方がいいかもだぜ、相棒)
声、或いは意識の音ともいうべき言葉の羅列が、桜の手にした仮面から流れてきた。
桜も油断は禁物と表情を引き締め、いよいよ集落の中心へと足を向けようとしたその時、不意に背後から元気な声が飛んできた。
「あ、こんにちは。もしかして、ご同業の方ですか?」
振り向くと、桜と同じく巫女装束ではあるが、真紅のミニスカートの様な袴を身に着けている年若い少女が佇んでいた。桜が名乗ると、相手の少女はぺこりとおじぎした。
彼女は、月読・美琴(月読神社の退魔巫女・f28134)と名乗った。
「月読神社から参りました。実は今回が、退魔師としての初仕事になります」
はにかんだ笑みを浮かべて頭を掻く美琴。桜は微笑ましいものを感じたが、凶津の方は幾分の危なっかしさを覚えていた。
ひとつの集落に無関係の巫女ふたりが同時に現れるというのは、偶然にしては奇妙過ぎるかも知れない、ということで、桜は美琴と共に集落に入ることを決めた。最初からふたり連れならば、そう怪しまれることもないだろう。
「えぇと、月読神社……でしたね。では私も今回は、月読神社で修行する巫女という体で御一緒しましょう」
かくしてふたり(プラス、一体)は、肩を並べて路面が傷んでいる細い国道を、集落の中心へと向けて歩いていった。
夏祭りが開催されている最中の集落内は、確かに人出は多い。だが、決して活気づいているとはいえない。
畑や民家の間を散策しながら、春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)はふと、小首を捻った。
(子供の姿が全然、見えないな)
如何に限界集落に近いとはいえ、出会う住民は悉く老人ばかりであった。その老人達も生気はほとんど感じられず、遙が挨拶がてらに声をかけても無視されるか、辛うじて返事と思しき唸り声のような意味不明な言葉が返ってくるばかりで、今のところ、誰を相手にしてもまともな会話が成立していなかった。
「よぉ。どンな感じさね?」
古びた民家の角から、朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)が音も無く姿を見せた。普段から少々のことでは決して動じない逢真だが、この集落はどうにも勝手が異なるようで、ほんの微かに困惑の色が紅い瞳の奥に見え隠れしている。
遙はシャドウチェイサーを放って集落内の目ぼしい建造物を密かに調査させていたのだが、彼女が期待したような怪しい人物や歴史に関連しそうなものは何ひとつ見つけられなかった。が、逆に何も無さ過ぎるというのが却ってこの集落の異常さを増長していた。
「おかしいんです。この集落……活気が無さ過ぎるとか、そんなレベルじゃありません。ひとの生活の気配そのものが皆無に等しいんです」
「矢張りそうか。いや、俺も軽い毒みたいなのを流してみたンだがね。どうにも反応がありゃしねぇ」
「え……そんなことをしてたんですか?」
逢真がサラっと白状したとんでもない台詞に遙は目を白黒させたが、逢真は落ち着いた素振りで掌を掲げて曰く。
「ンまぁ、ちょい待ちねぇ。毒っつぅても健康に害するようなモンじゃぁねぇンだ」
要するに自白剤と同等の効果が生じるのみで、肉体や健康、精神を害する程のものではないとの由。同時に逢真は眷属の野良雀を飛ばして集落内や神社付近を捜索したが、今のところ遙と同じく、これといった成果は出ていない。
「ここの住民。やっぱおかしいな。お前さんがいうように、生活感がまるで見えてこねぇ」
毒にも反応せず、夏祭りも形ばかりで賑わっているとはいい難い。遙が分析したように、人出が多いというだけに過ぎなかった。
夏祭りは集落の中心に鎮座する神社で開催されている。
祭囃子らしき楽曲が風に乗ってはいるものの、誰かが演奏しているという訳ではなく、何らかの録音媒体から機械的に垂れ流しているだけであった。
その神社を前にして、アドレイド・イグルフ(ファサネイトシンフォニックアーチャー・f19117)はひとり腕を組んで渋い表情を浮かべていた。
集落の地形や構造物は決して特殊なものではなく、日本の至る所に存在する同様の集落と、何ひとつ変わりは無かった。
だが住民の様子がどうにもおかしい。フレンドリーさは欠片も見られず、出会う老人は全て不愛想の塊のような連中ばかりであった。
「私達に対して全く関心無し、ですね」
悩まし気な表情のアドレイドの傍らに、桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)がそっと歩を寄せてきた。
アドレイドもカイも偶々集落を訪れ、夏祭りが開催されていることを知った余所者という体で、興味本位という雰囲気を醸しながら聞き込みを続けていたのであるが、どの老人も不愛想極まりなく、得られた情報は余り多くなかった。
「商店が一カ所のみ、というのも妙な話だが、自給自足の集落というなら、それも分からんではないか」
「でも、家を建てたり補修するには建材が必要でしょう。なら何らかの収入手段があり、税金の申告もしている筈なのですが……」
カイの疑問は、この集落が外界と絶縁に等しい状態にある、という点であった。アドレイドがいうように、自給自足で食糧の心配は無いのかも知れないが、日本国内に居住する以上、行政との繋がりが無いとは考えられない。
と、そこへ小さな子供の姿が神社前の屋台周辺を徘徊するのが見えた。老人しか居ない集落で、その姿は矢張りどうしても目立つ。陰白・幽(無限の可能性を持つ永眠龍・f00662)だった。
幽は美味そうな匂いに誘われて、串に刺さった肉が炙られている炭火焼コンロの前に立っていた。屋台の店員は集落の老人らしいが、客であろう幽が屋台の前に立っても、愛想の欠片も見せない。
この時、カイとアドレイドは顔を見合わせた。ふたりは連れ立って幽と同じ屋台の前に立ち、串に刺さった肉をじっと凝視する。
「あれ……お兄さんとお姉さんも、お祭りのお手伝い?」
幽曰く、集落の老人は不愛想ではあるが、夏祭りの手伝いを申し出るとそれなりに仕事を割り振ってくれたらしい。尤も、大半が神社周辺の掃除や屋台建材の運搬程度で、大した作業内容ではなかったのだが。
だが不愛想なのは相変わらずで、会話らしい会話も無かった為、幽自身としては空振りだったかも、と頭を掻きながら遅い昼食にありつこうとしていた。
「ねぇおじいさん、このお肉、一本ちょうだ……」
幽がそこまでいいかけた時、カイがさっと掌を幽の口元に当てて言葉を遮らせた。何事かと驚きの視線をカイへと向けた幽だが、カイとアドレイドは神社から僅かに離れた生活道路の角へと、幽を引きずっていった。
「何? ボク、何か悪いこといっちゃったかな?」
「いえ……あの肉は、何の肉か分かりましたか?」
カイの問いかけの意味が分からず、幽は怪訝な表情を浮かべる。美味そうな匂いの肉だったが、それが何か問題あるのだろうか。
だがここで、アドレイドが不気味な台詞を口にした。
「確かこの集落の食料は全て自給自足だった筈。だがどこにも、豚や牛、鶏の姿は無かった。じゃあ、あの肉は一体何だ?」
幽は、漸く事態の重要性を理解した。
単なる串焼肉の屋台だと思っていたが、実はそう単純な話ではなかった、ということか。
カイ、アドレイド、幽の三人が尋常ならざる問題にぶつかっていたところへ、逢真と遙が緊張した面持ちで合流してきた。
「この集落……矢張り異常です」
遙曰く、シャドウチェイサーが集落内の畑のそこかしこで大量の血溜りの痕跡を発見していたのだ。人間でいえば致死量に匹敵する程の血液が、そこで流されていた筈だった。
更には集落の西の端に発見した駐在所は、少し前までは住民が居たらしいのだが、内部は荒れ果て、中途半端な生活の痕跡が残されているだけであったらしい。つまり、ある日忽然と駐在官とその家族が姿を消した、という風に見て取れたのだ。
そのような異常事態を果たして、行政が放置しておくだろうか。
そして何より不気味だったのが、各民家内に無造作に放置されていた、若者や中年層向けの衣服や鞄、荷物等の類であった。どう見ても、この集落に住まう老人達が用いるようなものではない。中には最新のスマートフォンやタブレット端末が、電源の入った状態で散乱しているところもあったらしい。
一方、逢真の眷属はこの地域一帯を調査して飛び回ったが、野生動物はどこにも見当たらず、鹿や猪の類は一頭も発見出来なかったという。
「あの屋台の肉はつまり、鹿猟や猪猟で獲った肉でもねぇってこった」
集落全体が異常だ、と逢真は遙の分析に同意した。
遙が、自身のスマートフォンに撮影した動画を一同に披露する。神社縁起についてついて記されている看板が映し出されていたが、その看板には一面に真っ黒な染みがこびりついていた。
医者として、遙は直感した。この染みは凝固した血液だ、と。
「確か、あとふたり程、猟兵が派遣されていましたっけ」
思い出したように、カイが神社方向に視線を走らせた。
アドレイドと幽が倣って目線を移動させると、丁度桜と美琴が今にも崩れそうな古い鳥居を、神式の礼に則ってくぐろうとしているところであった。
嫌な予感が、その場の全員の脳髄を刺激した。
合流した方が良い──まずはカイとアドレイドが神社方面へと走った。
幽は、件の串焼肉の屋台に怪訝な視線を送ってから、遙と逢真を振り仰ぐ。ふたりも事態の切迫を敏感に察知し、幽に頷き返した。
戦いの火蓋が切られるのは、時間の問題であろう。
桜と美琴は神社の境内に入った瞬間、背中に冷たいものを感じた。
明らかに邪神の気配であったが、一方から流れ出てくるのではなく、周辺一帯に充満しているといった方が正確かも知れない。
他の猟兵達が感じたように、この集落の住民はいずれも不愛想極まりなかった。その為、情報収集といえる程の成果はまるで無かったのだが、いざこうして神社に足を踏み入れてみると、既にこの集落全体が手遅れなのではないかと直感することが出来た。
そして、異変は既に生じていた。どういう訳か、集落の住民たる老人達が、桜と美琴を包囲するような形で神社に集い始めていたのである。
いずれの顔にも生気は無く、不気味な作り笑いが浮かんでいる。どの老人の目もどんよりと曇っており、ひと言でいえば白濁していた。
(こいつら……全員、死んでるぜ)
凶津の驚くべき分析に、しかし桜は決して驚かなかった。が、美琴はあわあわと狼狽えており、もしもこのまま乱戦に突入してしまえば、最初にすッ転んでしまうかも知れないような勢いだった。
「死んでいるのは、この集落の住民だけではなさそうですね」
桜は既に、理解していた。
この集落を訪れた余所者はその後、一切の消息を絶ってしまっているのだという。それもその筈だ。凶津も、そして桜も同時に理解していた。
行方不明者は全員、殺されているのだ。
そしてその亡骸は見事に処理されている。この亡者老人達の食料、という形で。
美琴には分からなかったが、桜と凶津はあの串焼肉の屋台で炭火にくべられていた肉が、人間のものであったことを即座に察知していた。
年若いヒッチハイクの女のものと思しき霊の気配が、その串焼肉の周辺に漂っていたのである。恐らくその女は殺害され、遺体を解体された挙句、串焼肉の食材にされてしまったのだろう。
最早、是非もない。
この集落全体が、UDCと化しているようなものであった。
成功
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第2章 集団戦
『暴走老人』
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POW : プリウスミサイル
【プリウス】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : 筋違いの怒り
全身を【触れた者を蝕むどす黒い瘴気】で覆い、自身が敵から受けた【と思い込む侮辱への怒り】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
WIZ : 理不尽なクレーム
【理解不能な屁理屈と聞くに堪えない罵詈雑言】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:V-7
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
老人達は、本性を剥き出しにした。
鉈や包丁を手に取り、猟兵達に襲い掛かろうとしている。
だが彼らは猟兵達を敵と見做している訳ではない。自分達の食料として、猟兵達を狩ろうとしているのだ。
亡者特有の胆不敵さと見るべきか。
夏祭りはいよいよ、血みどろの地獄と化そうとしていた。
川村・育代
もう死んでるんだったら、もう一度殺しても問題ないわね。
幽霊海賊団を呼び出して遠距離からの海賊船からの砲撃で浮き足だったところへ220人の海賊に突撃させるわ。
海賊相手にご自慢の屁理屈や罵詈雑言が通じるか見物ね。
うちの海賊たちはそういった手合いをかえって面白がって嬲り者にするのが大好きなのが揃ってるけどね。
ラッパ銃の的にされたり、カトラスで切り刻まれてなお減らず口が叩けたら褒めてあげる。
あたしも勿論、船長として先頭に立って突撃をかけるわ。
『総員、攻撃準備!!』
神代・凶津
やれやれ、囲まれちまったか。
夏祭りにしては物騒極まりないな。
だが、魑魅魍魎の相手は慣れてんだよッ!
いくぜ相棒ッ!
「・・・亡者達の討滅しますッ!」
先ずは千刃桜花を展開して俺達を包囲している亡者共をなぎ払うぜ。
破魔の力が宿った桜花の刃をたっぷり味わいなッ!
包囲を突破したら花弁を薙刀に戻して各個撃破だ。
敵の攻撃を見切りつつ叩き斬ってやる。
複数の敵がかかってきたらまた千刃桜花を展開するぜ。
「・・・殺された人達の無念を晴らします。」
おうよ、相棒。
コイツらをぶちのめして、社に籠っている黒幕を引き摺り出してやろうぜッ!
【技能・破魔、なぎ払い、見切り】
【アドリブ歓迎】
朱酉・逢真
あァらら。まいったねこりゃ。俺ぁ直でバトるンはニガテなんだよなぁ。
だから眷属《鳥》からデケェの出して、乗っかって空に逃げらぁ。つまっとこ元人間だろう。飛べる理屈はねえさ。投げたりジャンプしたりはすっかもしれんが、鳥に空で勝てる道理もあるめぇよ。
いままで生きたやつらを食ってきたんだ。今度はてめぇらがメシになる番さ。
来なァ、ちびども。食い放題だぜ。俺のこいつらはとくべつでね。フツウのイナゴなら食わねえようなもんも食っちまう。ひひ、飢えてンでね。鋼も骨もかじり尽くして、血の一滴も遺さねえさ。
ああ、猟兵を襲わねえように結界張っとかんと。任せな、得意技さ。
春霞・遙
そう、予知に出てきた女性も既に殺されてしまったのですね。いたましいことです。
放っておけば犠牲者は増えるのでしょうし、生存者なしとなればUDCを退治た後の封鎖もやむを得ないでしょう。
規模によっては大量殺人か大規模災害か。
後方から全体を見渡して支援します。
「援護射撃」としてどなたかの背後に忍び寄る者があればその足や武器を持つ手を撃ったり、【紙片鋭刃】を使用し紙飛行機や紙手裏剣で近づく敵を裂いたり。
体勢を崩す人がいれば手を引いたりもしましょう。
様子を見る限り逃げようとする敵はいないでしょうが、討ち漏らしがないようにも注意をしておきますね。
弓削・柘榴
美琴と
美琴が行ったところは、ここであってるかの。
まったく、あちきになにも言わず行くとは水くさい。
保護者(自称)としては、心配するのじゃ。
と……ふむ。あれかの。
とはいえここは、素直に行くより、
美味しいところを見計らうのがお約束よの。
美琴がピンチになるまでは、
【目立たない】【忍び足】【闇に紛れる】を使って、
こっそりとつけていくぞ。
ここぞ、という場面で【鬼門開放】を発動して、
さっそうとピンチを救うのじゃ。
できれば、少し高めのところから、かっこよく現れたいの。
「あちきに黙ってでかけたりするからじゃぞ?」
さて、おやじども。
あちきの美琴に手を出そうとはいい度胸じゃ。
骸の海に還る覚悟はいいな?
月読・美琴
柘榴師匠と
「ええっ、そんなっ、まさか集落がすでに!?」
仲間たちから事情を説明され、あまりの事実に狼狽えてしまいます。
退魔師として幼い頃から修行をしてきて、こういうことがあると教えられてはいましたが、いざ目の当たりにすると脚が震えてしまいます。
「ですが、こういう方々を鎮めるのが私の務めですっ」
【巫覡載霊の舞】で神聖な舞を踊り神霊を身に宿し衝撃波で攻撃しますが……
「きゃあっ」
老人たちの瘴気に侵食されて危機に陥ってしまいます。
そこに現れたのは……
最近、月読神社にやってきて、私に修行をつけてくれている柘榴師匠!?
「そ、その、私も一人前だって証明したくてっ……」
助けられ自分の未熟さを思い知るのでした。
陰白・幽
まさか被害者がが食べものにされていて、それを食べさせられそうになるとは……もう許さないぞ〜
もうすでに多くの被害者も出てるし、これ以上被害を出さないためにもしっかり倒すぞ〜
おじいさんたちが敵なんだよね、思いっきり力で押していくよ〜
基本は鎖付鉄球をぶんぶん振り回しておじいさんたちを蹴散らしていくよ〜
近づかれたときには尻尾で足元を刈って思いっきり蹴りを入れていくよ〜
車で突っ込んでくるときにはボクもUCで対抗だよ、正面から猫眠拳でニャンマクラーを叩きつけるよ〜、車がうまく止められたら鉄球で追い討ちをして粉々にしていくよ〜
ふう、一仕事したらお腹が減ったけど……まだやることがあるよね……ふうぁ〜
その集落に辿り着いた時、川村・育代(模範的児童・f28016)はふと、小首を傾げた。
(あれ? お祭りやってたんじゃなかったっけ?)
グリモアベースでは確かに、そのように説明を受けた筈なのだが、今は祭囃子が聞こえないどころか、寧ろ妙に殺伐とした唸り声の塊の様な音が風に乗って響いてくる。
(まぁ、いっか。兎に角行くだけ行ってみよっと)
路面の傷みが激しい細い国道をてくてくと歩きながら、しかし育代は、既に事態が大きく変化していることを敏感に察知し始めていた。
(こりゃあ、もしかしたら……)
育代の感覚が、彼女に警鐘を鳴らしている。このまま無防備に集落内へ足を踏み入れるのは、危険に過ぎるだろう。背中に何かぞわっと粟立つような、嫌な冷たさを感じる。
幸い、集落へと続く国道の脇には幅広の大きな川が流れている。環境としては、悪くない。
「……出ておいで、海賊達」
育代が右腕をさっと横薙ぎに軽く振ると、その川面に忽然と、一隻の巨大な船影が出現した。
同じ頃、集落内の神社周辺は無数に近しい老人共と、猟兵達の熾烈な乱戦が展開されていた。
「あァらら……参ったね、こりゃ」
朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)は咄嗟に呼び出した眷属の巨鳥を急降下させると、鉤爪鋭い足に飛びつき、そのままVの字を描くように急上昇させて地上との距離を取った。
「わりィな。俺ぁ、直でバトるンはニガテなんだよなぁ」
逢真が苦笑を向けた先で、春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)が小さく肩を竦めていた。遙もまた、乱戦に巻き込まれまいとして老人共の攻撃の隙間を掻い潜り、陰白・幽(無限の可能性を持つ永眠龍・f00662)の怪力による助けを得て、鳥居上へと位置を移していた。
「ありがとうッ! これで、大体の敵が視界に収まったよッ!」
「お姉さんも気を付けてねッ! このおじいさん達、何してくるか分かんないからッ!」
鎖に繋がれた鉄球を豪快に振り回しながら、幽は頭上の遙に余裕の笑みを返した。
遙は遙で、鳥居の上から他の老人共と猟兵達の動きを逐一観察し、味方が窮地に陥るようならすかさず援護射撃を叩き込む態勢を取った。
そして早速、幽の背後から凶相を満面に浮かべたふたりの老人が鉈を振り上げて襲い掛かろうとしている。遙の掌から、一枚の紙手裏剣が空を切って、そのうちのひとりの手首を斬り落とした。予想はしていたが、血飛沫はあがらない。
(矢張り、死んでいる……)
切断口からはどろりと黒く粘り気のある液体が滴り落ちるのみだ。医者の目線から見ても、この老人共が全て動く死体の如き怪物であることが、これで証明されたようなものであった。
一方、もうひとりの老人は上手く幽の背後を取ったつもりであったらしいが、幽の方は既に敵の動きなど想定済みだったらしく、その足元を白く伸びた尾で簡単に薙ぎ払った。転倒した老人は幽の鋭い蹴りを喰らって弾き飛ばされ、他の老人を巻き込みながら緩い坂道で雪崩を打った。
一方、境内では神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)を戦闘面として顔にかけた神代・桜(かみしろ・さくら)が、薙刀を構えてじりじりとにじり寄る包囲網と相対していた。
(やれやれ、囲まれちまったか……夏祭りにしては物騒極まりねぇが、お生憎様、こちとら魑魅魍魎の相手は慣れてんだよ……さぁいくぜ、相棒ッ!)
「……憐れな亡者達。討滅しますッ!」
桜が鋭く叫ぶと同時に、彼女が手にした薙刀の刃部分が文字通り、薄桃色の花弁の塊と化し、次の瞬間には周辺の空間を一斉に舞い散る桜吹雪で埋め尽くした。
破魔の攻撃力を宿す桜花の嵐が、老人共の奇妙な悲鳴ともいえぬ悲鳴のような呻き声の連鎖を誘う。凶津と桜を包囲していた亡者の群れは次第に距離を空けてゆき、薙刀を縦横に振るうだけの十分な空間的余裕を創り出すことが出来た。
(さぁて、こっからが本番だ。ひと暴れといこうか)
「……殺された方々の無念を今、ここで晴らして進ぜます」
薙刀の柄を小脇に抱え、いわば居合の態勢で正面の老人共を睨み据える。だが老人共は桜に対して一切の恐怖心等は抱いていない様子で、狂ったような形相で濁った視線をぶつてくるのみであった。
ほんの数秒間で一気に形勢を五分へと持っていった凶津と桜だったが、その傍らでは、月読・美琴(月読神社の退魔巫女・f28134)が未だに驚愕と混乱に呑み込まれたままであった。
一応、得物たる薙刀を構えて迎撃の態勢を取ってはいるが、脚が震え、腰がやや浮いている。とてもではないが、このままでは老人の群れを撃退するなど到底不可能であろう。
(こ、こんなことが……集落全体が既に、UDCの手の内に……ッ!?)
話には聞いたことがあるし、頭では理解していたつもりだった。だが、実際にこうして目の当たりにしてしまうと、矢張り心理的な衝撃は大きい。少なくとも経験の浅い美琴にとっては相当にショッキングな現場であるといわざるを得ない。
「で、ですが……こういう方々を鎮めるのが、私の務めですッ!」
美琴は自身にいい聞かせる様に敢えて声を大にすると、幼い頃から重ねてきた退魔師としての修行の成果をいよいよここで発揮した。
そのしなやかな体躯がほとんど瞬間的に神霊体へと化し、流れる様な舞いを披露し始める。衝撃波が、今にも襲い掛かろうとしてくる老人の群れに襲い掛かり、その出足を鈍らせた。
(や、やった……これならッ!)
一瞬、美琴の頬に笑みが浮かびかかった。が、その表情はすぐに驚愕の色へと凍り付く。老人の群れが、美琴から受けた衝撃波を引き金にして、逆にどす黒い怒りの瘴気を放ってきたのである。
「きゃっ!」
再び、形勢は逆転した。
美琴は瘴気の渦に呑み込まれ、身動きが出来なくなってしまった。このまま包丁や鉈が次々と振り下ろされ、憐れな犠牲者達と同じ運命を辿ってしまうのか。美琴の中で、絶望の念が破裂した。
だが、美琴に向けられようとしていた凶刃の群れは、遂にその役目を果たすことは無かった。
神社本殿の屋根の上から醜悪な悪鬼の群れが一斉に飛び掛かり、狂気に満ちた老人共を次々に薙ぎ倒していったのである。
思わず美琴は内心で、あっと声を上げた。見たことのある光景──否、見慣れ過ぎる程に見慣れている光景だった。
「やれやれ……何をやっておるのじゃ」
「あ……柘榴師匠ッ!?」
尻餅をついた姿勢のままで、本殿上を見上げた美琴は妙に裏返った声でその名を呼んだ。
弓削・柘榴(月読さんちの猫又さん・f28110)──月読神社で、美琴を鍛えてやっている退魔師の師匠であった。
柘榴は片膝を立てて屋根の上にのんびりと座していたが、やがてのっそりと立ち上がるや、軽い身のこなしで境内の湿った土の上へと舞い降りてきた。
「あちきに黙って、こんな物騒なところに出かけたりするからじゃ」
「で、でも、その……私も、一人前だって証明したくって……」
しどろもどろに弁解する美琴の言葉はしかし、それ以上は柘榴の耳には入ってこない。柘榴の意識は既に、狂気に満ちた老人の群れへと向けられていた。
「さて、おやじども……あちきの美琴に手を出そうとは、中々良い度胸じゃ。当然、骸の海に還る覚悟は出来ておろうな?」
落ち着いてはいるが、その声音の奥底には美琴もこれまで聞いたことが無いような凄みがあった。
美琴は安堵の吐息を漏らしたが、同時に、己の不甲斐無さを悔いた。結局こうして、師匠たる柘榴の手を借りなければならなくなった。
一体自分は、いつになったらひとり立ち出来るのだろうか。
だが今は、己の脆弱さに身悶えている場合ではない。この集落を覆い尽くすUDCの影を討滅せねば、また新たな犠牲者が生まれてしまう。
兎に角この場は、柘榴と共に醜悪にして凶悪な怪物どもをことごとく平らげる必要があった。
平らげる、といえば、まさに文字通り老人共の亡者としての肉体を喰らい尽くそうという動きがあった。
逢真が召喚した、大量のイナゴの群れであった。
「さぁ来なァ、チビ共。喰い放題だぜ」
巨鳥の背に位置を変えて上空を悠々と舞っている逢真が、さも楽しげに指示を出す。すると、トラック一台分に匹敵する体積の黒い集団が、一気に地上へと降下した。
「おっとと、猟兵を襲わねぇようにしとかねぇとな」
巨鳥の背の上で苦笑を浮かべつつ、何かのおまじないを仕掛けるような仕草を見せる逢真。するとイナゴの群れは見事に猟兵だけを避けて幾つかの群れに分かれ、包丁や鉈を振り回す老人だけにまとわりつき始めた。
「うひゃあ……こりゃ、ボクなんかよりもかなり食いしん坊だねぇ」
またひとり、老人を薙ぎ倒した幽が心底呆れた様子で、イナゴの獰猛な食欲を横目で流し見た。
その時、そこかしこで、しわがれた声が聞くに堪えない罵詈雑言の嵐が巻き起こった。柘榴の放った悪鬼や、凶津と桜が巻き起こす花弁の嵐が一部封じられたようにも見えたが、形勢を逆転するには至っていない。
(うむ……もう一手が欲しいところだな。こいつらを押し切るにはあとひと押し、必要だ)
桜が薙刀を振るう傍ら、凶津は冷静に戦況を分析していた。
その時、頭上から遙の予想外の声が響いた。
「支援砲撃が来ますッ! 皆さん、一旦退避をッ!」
幽や桜が何事かと鳥居上を振り仰いだが、遙は地上の彼らには目もくれず、集落脇を通る川面に視線を集中していた。その紺碧の水面上には、育代が召喚した巨大な船影がゆらゆらと漂っている。
育代当人はマスト上に佇み、遙に対して大きな仕草で手信号を送っていた。
一斉砲撃を叩き込むという合図だった。
何が何だかすぐには理解出来なかった猟兵達だが、遙の真剣みを帯びた声には真剣な響きが感じられた。最初に桜と幽が離脱し、次いで柘榴と美琴が遙の支援を受けながら境内から飛び出てゆく。
その直後、神社周辺に次々と爆発が生じた。
「おいおいおい、こりゃまた随分派手だなァ……けど、打ち上げ花火も悪くねぇな。いや、大砲か」
巨鳥の背の上で、逢真が唇の端を僅かに釣り上げた。その見下ろす視線の先では、育代が幽霊海賊の大軍を率いて上陸し、集落目掛けて怒涛の勢いで殺到しようとしている光景が展開されていた。
「総員ッ! 攻撃ッ!」
先頭を駆ける育代が大音声で山間の湿った空気を揺らしに揺らした。
カトラスとラッパ銃を携えた幽霊海賊が総勢200名以上、細い国道や生活道路を埋め尽くすような勢いで老人の群れへと殺到してゆく。
凶津が欲しいと桜に囁きかけていた最後のひと押しが、漸く現れた格好であった。
集落は最早、夏祭りではなく大乱戦の場へと変貌を遂げた。
亡者と幽霊が互いに斬り合い、片方は昏倒し、片方は消滅するという凄惨な地獄を演出し始めた。
一方、猟兵達も幽霊海賊が討ち漏らした老人共を片っ端から始末してゆく。
道路という道路は骸の山で押し潰され、屋台や民家は次々と破壊されていった。だが、この集落自体が既にUDCの巣窟だった。
この破壊に心を痛める必要など、欠片も無かった。
老人共は斃され、喰われ、叩き潰された。
十数分にも及ぶ大乱戦ではあったが、それもやがて収まり、先程までの喧騒が嘘の様に、不気味な静寂が集落全体を押し包んだ。
「うーん、お腹空いたなぁ」
一戦終えて、幽が呑気に小腹をさする。
だが、猟兵達は知っていた。まだ本当の敵が、控えている。その圧倒的な瘴気が、神社本殿の真下から漏れ出ようとしているのを、誰も見逃さなかった。
成功
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第3章 ボス戦
『楽園』
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POW : 孵卵
【触れれば対象の素材を問わず同化する肉片】が命中した対象に対し、高威力高命中の【同化欲求以外の思考を阻害する饐えた甘香】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 出生
全身を【絶えず分泌する粘液】で覆い、自身が敵から受けた【拒絶の感情や行動】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
WIZ : 胎動
【強制的な同化性能】を籠めた【自在に変形し操作する全身の肉塊】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【楽園への拒絶、忌避感】のみを攻撃する。
イラスト:FMI
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ルーダス・アルゲナ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
それは、神と呼んで良いものかどうか。
亡者たる老人、或いは集落の住民と呼ぶべき者共が崇め奉っていた何かが、神社本殿を真下から突き上げ、破壊するようにして姿を現した。
よく分からない、何か。
だがそれは結局のところ、猟兵達にとっては単に討ち倒すべき敵。
UDC以外の、何者でもなかった。
朱酉・逢真
ああ、おいでなすったなぁ。俺はそのまんま、鳥に乗って避難してしつつお相手すらぁ。
煙管を吸ってフゥと吐く。いきな、小魚ども。同化っつってもこっちは煙、楽園へのうんたらなんざはなっからねえのさ。触れりゃあ芯から凍り付く。ぐにゃんぐにゃんと動くってんならちょうどいいだろう? 攻撃手は十分に足りてんだ。《宿》の…体の弱い俺は補佐に回るさ。
もしほかのおヒトが囚われそうになったら、眷属どもを向かわせて盾にしよう。
ナニモンかァ知らねえが、てめぇに縋るやつらが確かに居た。なら“かみさま”だ。都合よく使われ、いらんとなりゃア討伐される。俺たちはそン程度のもんさ。俺とてめぇの差なんざ、猟兵か《過去》かってだけさ。
神代・凶津
これが神様だと?笑わせてくれるぜッ!
まあ邪神って呼ぶにはピッタリだがなッ!
「・・・退魔師の奥義が一つであの邪神を祓いますッ!」
おう相棒、【破邪・霊光弓】を使うのか。
んじゃ、気合い入れていくとするかッ!
敵は触れただけでもヤバそうな見た目をしてるし遠距離から攻略するぜ。
敵の攻撃を見切りつつ場所取りをして霊光弓の一撃を何発も叩き込んでやる。
こっちや味方に攻撃が向きそうになったら式神【ヤタ】を使って気を反らしながら援護射撃するぜ。
「・・・あの邪神は絶対に逃しません。」
おうよ、相棒。
これ以上の被害は見過ごせねえしなッ!
【技能・破魔、見切り、スナイパー、式神使い、援護射撃、呪詛耐性】
【アドリブ歓迎】
弓削・柘榴
美琴と
神じゃと? いいところ出来の悪い幽魂じゃろ。
おやじどもといいその首魁といい、趣味の悪いやつらじゃ。
とりあえず【結界術】と【呪詛耐性】は発動しておくかの。
「美琴あまり近づくな。取り込まれると面倒じゃ」
と注意しようとしたときにはちょっと遅くて。
攻撃をしかけ『楽園』にとりこまれかけていた美琴を、
【式神使い】で【闇猫】に命じて助け出させよう。
「それはあちきのじゃ。返してもらうぞ」
『楽園』から美琴を助け出したら、
【闇猫】にはそのまま『楽園』を攻撃させるぞ。
美琴が復活したら、いっしょに連携して相手を刻んでいくかの。
相手を刻みながら、闇猫には
「『柱』があるはずじゃ。探して潰せ」
って、命じるぞ。
月読・美琴
柘榴師匠と
「これが神……いいえ、この村をこんな風にした邪神!
月読神社の退魔師が代々戦い続けてきた敵なのですね!」
刀袋にしまっていた神器『天叢雲剣』を取り出し構えます。
この刀こそ、月読神社に伝わる御神体。邪神を斬り裂く神器です!
「受けて下さい、月読神社に伝わる退魔の技を!
神器解放・第一段階!」
【神器解放】で『天叢雲剣』の封印を解放。
無限複製によって無数の神剣を召喚し、邪神に射出します。
「やりましたかっ!?
きゃああっ!」
攻撃して油断したところに邪神から攻撃され、肉塊に取り込まれてしまい……
「これが……神様の世界?
人々が苦しまずに暮らせる楽園……」
取り込まれかけた所を柘榴師匠に助けられるのでした。
春霞・遙
これに触れてみんな動く肉になってしまった、か。
厭わしい見た目への拒否感ごとドロドロに溶かされて、生きたまま呑まれるのと、殺されて喰まれるのはどちらの方が幸せだったでしょう。
戦力は揃っていそうですし、敵が精神に影響をきたすのならお味方が敵に引きずり込まれないよう後詰に徹しましょうか。
香の影響は村中に満たされている可能性もありますし、思考力や拒絶する意志を回復させるという意図で【生まれながらの光】を使用します。
肉の塊は避けるか射撃で撃ちおとします。
「ははぁ。漸くおいでなすったなぁ」
上空を旋回する巨鳥の背の上で、朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)は呑気な仕草で煙管を吸口を軽く咥えた。
高みの見物という訳でもないが、本殿直下から出現した奇怪で醜悪な怪物に対し、逢真は嫌悪感よりも好奇心の方が優ってしまうのか、のんびりと覗き込むように視線を落とした。
地上では、猟兵達が巨大なUDCに果敢なる挑戦を仕掛けようとしている。勿論、逢真としてもただ傍観するつもりなどは端から無かった。
煙管を口元から離し、ふぅっとひと息、煙を吐き出す。
すると、どうであろう。煙から変化した雪催の煙魚が群れを為して巨鳥周辺を縦横に跳ね、泳ぎ、踊る。そして地上に獲物を発見するや、獰猛な勢いで急降下していった。
「楽園へのうんたらなんざぁ端っから無ぇのさ。触れりゃあ芯から凍り付く。ぐにゃんぐにゃん動くってんなら丁度良いだろうな」
逢真の挑発とも取れる台詞を後に残し、煙魚の群れは境内で暴れ回る巨大UDC目掛けて、一斉に殺到していった。
「ちょっと、便乗させて貰いますね」
鳥居上からどのタイミングで距離を取ろうかと考えていた春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)が、煙魚の群れが丁度防御壁となるような格好で邪神へと突進していくのに合わせて、石畳上へとひらりと舞った。
(あれに触れて、皆、動く肉になってしまった、か)
石畳上に着地し、素早く反転しながら遙は肉塊の邪心にちらりと一瞥を送る。
あの忌まわしい外観への拒否の念ごと、どろどろに溶かされて生きたまま呑まれるのが良いか。
或いは、殺されて喰い尽くされるのと、いずれが良かったのだろうか。
「細かい感想は、後回しにしましょうか」
己自身に対して苦笑を漏らしつつ、遙は邪神との距離を取った。戦力は揃っているだろうから、ここで無理に前へ出る必要は無い。
但し、敵の放つ攻撃が味方の精神を破壊しようものなら、そこは遙の出番であろう。
一方、境内では神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)の鬼相を面として纏った神代・桜(かみしろ・さくら)が、得物を薙刀から破魔弓へと持ち替え、撃ち出される肉塊の波状攻撃を巧みに躱しながら境内の外側へと走り出していた。
接近戦は危険だ、との凶津の判断に従い、桜は遠距離攻撃に切り替えたのである。
(はははッ! あれが神様だってかぁッ!? 笑わせてくれるぜッ! ま、邪神って呼ぶにゃあピッタリだろうがなぁッ!)
「……退魔師の奥義がひとつで、あの邪神を祓いますッ!」
傑作だとばかりに哄笑を撒き散らす凶津とは対照的に、桜は至って真剣そのものだ。
桜が手にした破魔弓は、既に解放された霊力であらゆる攻撃力が相当な威力に増幅されている。神を名乗る不遜なUDCを浄化するには十分な破壊力が具わっていた。
「……あの邪神は絶対に逃しません」
(おうよ、相棒。これ以上の被害は見過ごせねぇしなッ!)
凶津の言葉が終わるか終わらないかというタイミングで、桜は式神ヤタを放ち、邪神UDCの周辺を滑空させた。敵の注意が逸れた瞬間、破魔弓からまさに文字通り、矢継ぎ早に次々と矢が放たれる。
邪神は声無き声をあげた。それは苦痛の悲鳴か、憤怒の怒号か、或いは獲物を見つけた嬌声か。
いずれにせよ、敵は確実に打撃を受けてはいるが、しかしまだその生命力には陰りは見られなかった。
桜が雨あられと撃ち込む矢の弾幕に、邪神が必死の抵抗を見せている。その隙を衝いて、月読・美琴(月読神社の退魔巫女・f28134)は横合いから一気に距離を詰めようとしていた。
「これが神……いいえ、この村をこのような地獄に変えた邪神ッ! 月読神社の退魔師が、代々戦い続けてきた敵なのですねッ!」
美琴の手元からは、抜き放った天叢雲剣の刃が放つ神々しいまでの光が四方に飛び交う。
「受けて下さいッ! 月読神社に伝わる退魔の技をッ! 神器解放……第一段階ッ!」
「おい美琴ッ! 余り近づくなッ! 取り込まれると面倒じゃぞッ!」
その時、僅かに後方へと退いた位置から弓削・柘榴(月読さんちの猫又さん・f28110)が警鐘の叫びを放ったのだが、美琴の鼓膜には響いていなかったらしい。そのまま美琴は切っ先を上段に構えたまま、邪神の懐へと走り込んでいってしまった。
相変わらず邪神は、凶津の霊力が乗った桜の矢の連弾に立ち向かおうとしているが、しかし美琴の接近に気づいていない訳ではなかった。
美琴が剣を振り下ろし、刃を肉塊の中へと切り込む。手応えは、確かにあった。
「や、やりましたか……あぁぁッ!」
美琴の悲鳴が、肉塊の内側に向けて絹を引くように吸い込まれていった。
何とも心地良い、楽園への誘い。
このまま全てを忘れて身を委ねても良いのではないか。あらゆる苦痛を忘れ、身も心もとろとろに溶かし尽くされるような快感の渦。
だが、美琴の精神を蝕もうとしていた偽りの快楽はすぐに、激痛へと変じた。
「もう大丈夫ですよ」
境内の外側にて、美琴は遙の腕の中ではっと目を覚まし、慌てて上体を起こした。何が起きたのか、すぐに理解出来なかった。
最後に聞いたのは、柘榴師匠の、
「それはあちきのじゃ。返して貰うぞ」
という声だったような気がする。
後で知ったことだが、美琴は邪神に呑み込まれようとしていた。そこへ柘榴師匠が闇猫を使役して美琴を救出し、そのまま攻撃に転じていたのだという。
危うく邪神に喰われようとしていた美琴の精神を回復させたのは、遙であった。遙が施術に用いた生まれながらの光が、美琴を現世に呼び戻したのである。
遙は美琴の回復を見定めてから、ゆっくりと立ち上がった。
現在邪神は、桜の矢の連弾、逢真の煙魚、柘榴師匠の闇猫等に翻弄されてはいるが、まだ倒すには至っていない。
「もうあとひと押し、というところですね」
遙も援護射撃を加える為に、紙片を数枚、掌の中に収めた。美琴も立ち上がろうとしたが、まだ精神の回復が万全ではないのか、足元が僅かにぐらついた。
「まだもう少し、休んでおるのじゃッ!」
降り注ぐ肉塊の雨を躱しながら、柘榴師匠が叫ぶ。あの状況で美琴の身を案ずる余裕があるというのが、とても信じられなかった。
その時、邪神の頭頂部付近を逢真が操る巨鳥が注意を引くように旋回し始めた。
「ほぅれほれ。魚料理はもう飽きたかぁ?」
更に別の煙魚の群れを増援に送り込み、邪神への挑発を仕掛ける。甘い香りが逢真に襲い掛かるが、逢真はまるで素知らぬ風で明後日の方向にぷいっと顔をそむけた。
「毒の知見者に、んなもん効く訳ゃ無ぇだろうが」
からからと笑いながら、煙管で己の首筋を軽く叩く。
邪神は獰猛に唸り、肉塊を周辺にばら撒くが、それ以上に桜の放つ矢の連弾が邪神の醜い体躯を容赦なく削り続けた。
(もうちょっとだな……どれ、ひとつ気合入れていってみよぉかぁッ!)
凶津の檄に応えて、桜は更に弦を引く手を速めた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
陰白・幽
……はっ!お腹が減ってて反応が遅れちゃった。
あれがおじいさんたちの親玉なんだよね〜見てるだけで食欲が失せそうだよ〜
皆の攻撃攻撃でできた隙をついて鎖と鋼糸を使ってぐるぐるにして逃げれないようにしてやるよ〜、同化を使って武器の無力化をされそうなときは鎖を地面に突き刺したり何かに巻きつけて同化をしてもすぐに動けないようにしてやるよ〜
……同化をする時に幸せな気分にしてるのか〜……喰らわれ、奪われる者の思いさえ奪うのか……卑怯者め……
……まあ、何はともあれぶっ飛ばしちゃうんだけどね〜いっくよ〜
睡眠時間と満腹度を限界まで代償にした全力の踵落としで敵を彼方へ吹き飛ばす
お腹減ったけど、ここ食べ物ない場所だよ〜
アドレイド・イグルフ
うわあビジュアルが、スゴい!!?
ぶよぶよしてるな……邪神らしいな…
……ふうむ、弱点はどこだろうか。ドローンで探りを入れつつ散弾銃で応戦しよう
コアが存在すればそこを突くが、まずは肉片を残さず細切れにするのが先だと、ワタシは考える
触れられたら先の老人たちみたいになるのか……
敵とは距離はとってはいるが、攻撃が飛んできたら即座に対応できるように弓も手にかけておく。最悪ドローンを囮にしてでも回避に専念するぞ
虚偽・うつろぎ
アドリブ連携等ご自由にどぞ
通りすがりに邪神発見伝
UDC!UDC !
やっぱこういう姿のUDCがそれっぽくて良いよね
どちらにしろ自爆するだけなんだけどね!
登場即自爆
とにもかくにも速攻で自爆することが最優先
自爆さえできれば台詞も活躍もいらぬ!
ただ自爆するためだけに現れる存在
技能:捨て身の一撃を用いてのメッサツモードによる高威力な広範囲無差別自爆
射程範囲内に敵が1体でもいれば速攻で自爆する
自爆することが最重要
なので敵がいなくても自爆するよ
近づかない動かない一歩も動かず即自爆
大事なのはスピード
そう、スピードなのですぞー
捨て身の一撃なので自爆は1回のみ
1回限りの大爆発
自爆後は爆発四散して戦闘不能さ
ドローンが、ぶよぶよと弾力のある巨大な肉塊の頭上と思しき周辺を、ぐるぐると徘徊する様に飛び回っている。アドレイド・イグルフ(ファサネイトシンフォニックアーチャー・f19117)が弱点を探る為に、敢えて接近飛行させているのだ。
「ふぅむ。弱点はどこだろうか」
如何にも邪神らしい外観だ、などと変なところで感心していたアドレイドだったが、散弾銃を腰だめに構えて引き金に指先をかけるその表情は、真剣そのものだ。
心臓部であるコアが存在すれば一撃で倒せるのだろうが、まずは襲い来る肉塊を片っ端から撃ち落とし、少しずつ肉を削いでゆくのが効果的であろう。
「お姉さん、プランはありそう?」
アドレイドの傍らに立った陰白・幽(無限の可能性を持つ永眠龍・f00662)が、幾分むっつりとした表情で邪神をじっと睨み据えたまま訊いた。
特に何も無いとアドレイドが短く応じるとや、幽はならばとばかりに、鋼糸を両手からたなびかせながら邪神の懐へと駆ける。
流石に無謀だと驚嘆したアドレイドだったが、幽の神速を思わせる脚力なら、肉塊を躱しながらの接近戦も可能だと即座に納得した。
(同化かぁ……面倒臭い相手だな)
この時、幽は多少複雑な気分であった。
敵は同化の際に、喰らう相手を幸福な気分で満たす。喰われる者は、その思いさえ奪われる。
(……卑怯者め)
何となく、腹が立ってきた。だが、冷静さを失う訳にはいかない。
幽は気を取り直して邪神を睨みつけた。
仮に同化を発動されたとしても、幽には作戦がある。その為に持ち出した鋼糸だ。幽は他の猟兵達がこれまでに加え続けてきた打撃で動きが鈍っている邪神相手に、最後の仕上げを仕掛けようとしていた。
「おぉ、成程」
散弾銃を構えたままのアドレイドが思わず、嘆息を漏らした。幽は鋼糸で邪神の巨体をいつの間にか縛り上げつつあった。鋼糸だけでは足りない箇所は、更に鎖を持ち出して動きを封じる。
食欲が失せる程の不気味な化け物ではあったが、幽の身体能力に影響を及ぼす程ではない。アドレイドはドローンが送り付けてくる上空からの映像も駆使し、邪神の動きをつぶさに分析した。
「成程……コアは背面、やや上方」
幽に動きを封じられた邪神は肉塊を分解して何とか呪縛から逃れようとしているが、肉塊が分離しない部分が一箇所だけあった。
そこが、コアだ。分離したくても出来ない、唯一無二の心臓部だ。
勝負どころだとアドレイドが散弾銃を構え、幽が腰を落として蹴り足を低く地に這わせる独特の構えを取った瞬間、思わぬ闖入者が現れた。
虚偽・うつろぎ(名状しやすきもの・f01139)であった。
通りすがりというにはかなり無理のある通りすがり方であったが、それでも一応うつろぎは通りすがった。通りすがりついでに、盛大に自爆してみせるのもうつろぎの美学だ。
言葉は要らぬ。ただ、美しく散るのみ。メッセージも前振りも無く、いきなり邪神の真正面に接近するや、高威力の無差別衝撃が境内を襲った。
幽とアドレイドは慌てて後退し、うつろぎの見事な自爆っぷりを呆然と眺める。
そして、散った。
うつろぎは、爆散の中に己を見事に表現してみせた。
何だったんだろう、と考えてはいけない。これがうつろぎ。自爆の匠だ。
そのまま戦闘不能となり、地べたでぷすぷすと黒煙を噴き上げるうつろぎだったが、幽とアドレイドは思わぬ強力な援軍に力を得た。
「遠くじゃなくて、地の底にぶっ飛ばしちゃおうかな~」
幽は手近の樹木を足場にして上空へ舞い、邪神の背面付近へと跳んだ。瞬間的に凄まじいまでの睡魔と空腹感が襲い掛かってきたが、幽は構わず踵落としを放った。
必殺の一撃が、コアを激しく震動させた。そのまま邪神は轟音を響かせながら地面に半分近く、めり込んだ。そこへアドレイドが更に散弾銃を至近距離から叩き込む。照準は、たった今幽が踵を叩き込んだ箇所だ。
邪神には、反撃の力が無かった。うつろぎの自爆で生命力の相当部分が奪われていたからだ。
更にアドレイドは散弾銃を撃ちまくった。これがとどめだと、いわんばかりに。
それから、件の集落はどうなったのだろうか。
猟兵達が去った後、奈良県の役人が訪れて発見したのは、ひとっこひとり居ない廃村だったという。ただどういう訳か、盛大に破壊された神社跡らしきものだけが、妙に生々しい戦闘の痕跡を伺わせた。
数日前、そこで猟兵達が邪神やその眷属共を相手に廻して派手な立ち回りを演じたことなど、誰も知る由が無い。
「……お役人も、大変だね」
その様を、幽は遠巻きに眺めながら手にした焼き鳥を旨そうに頬張る。勿論、この肉は間違いなく鶏肉だ。
「あの集落で命を奪われた者達にとっては、悲しい記憶でしかないだろうけどね」
アドレイドが珍しく、神妙な面持ちで小さくかぶりを振った。
名も無き集落は、永遠にその存在を忘れ去られた。
多過ぎた犠牲と共に。
成功
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