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狐狗狸の厨においでませ!

#カクリヨファンタズム #狐狗狸のシリーズ

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#カクリヨファンタズム
#狐狗狸のシリーズ


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「せんせー、ニンジンが逃げたコン!」
「だから二股のニンジンには気を付けるよう言ったコン! 早く捕まえるコン」
「先生。誰かが南瓜に食べられています」
「冷静に報告してないで、助けてあげるコン!」
「せんせーい。このトマト、何かイラっとする顔してるコーン」
「だからと言って、一つ目トマトに目潰ししてはいけないコンっ!!」

 こんこん。ここん。
 賑やかな声の響くここは、妖狐のお里。
 既に平和を取り戻した世界で見かける妖狐たちとは、少し違って。もふもふふかふかな、狐そのものの姿をして。二本の足ですたすたと歩き、言葉を話して。
 お料理が大好きな狐たちの住む、この里の一角では、お料理教室の真っ最中だ。

「これじゃあダメだコン。全然料理が進んでないコン!」

 他の狐たちよりも、一回り大きな体格の『先生狐』が両手を鳴らして。集合だコンと、声を張り上げる。
 わらわらと集まってくる小柄な狐たちは、まだお料理修行中の子狐たち。

「みんなもっと気を引き締めるコン。今日は何の料理を練習してるコン?」
「はーい。猟兵にあげる鍋料理を練習してますコン」
 両手を腰に当て、少し鼻息を荒くしている先生狐の問いに、額に切り傷のあるやんちゃそうな子狐が答えて。

「その通りだコン。では、猟兵に料理を出してどうするコン?」
「はい。美味しい料理で、猟兵にぼくたちの世界を好きになってもらいますコン」
 今度は、眼鏡を掛けた子狐が、眼鏡の縁をキラリと光らせながら答える。

「正解だコン。猟兵は、我々が見える貴重なお客様だコン。ぜひとも我々の世界を気にいってもらい、長く滞在してもらうコン。その為には……」

 はいはい、はーい……と。
 細やかなレースのリボンで首元を飾る子狐が、ぴょんぴょんと飛び跳ねて。

「猟兵の胃袋を掴むコン!」
「握るコン!」
「潰すコン!」

 こん、ここんっ!
 子狐たちが、意気軒昂にふかふかの手を空高く上げた、その時。

「「「トンカラトンと呼べえええええ!!」」」

 狐たちの厨に、突然なだれ込んで来たのは、包帯ぐるぐる巻きの西瓜たち。
 いや、よく見るとメロンや南瓜も混ざっている。

「……どう見ても、トンカラトンではない気がするコン」
「うるせェ! お前ハ斬る!」
「コンっ!?」

 包帯スイカのなんとも理不尽な宣言と共に、何処からともなく沢山の刀が現れて。びゅんびゅんと厨中を飛び回り始めた。

「オレたちヲ収穫しロ!」
「そシて料理シロ! イッパイ喰え! 皮まデ喰エ!」
「トンカラトンと呼べ!!」

「「「うわーん、せんせー助けてぇー」」」

 傍若無人なお野菜たちに、逃げ惑う狐たち。
 厨の中は、大混乱の阿鼻叫喚と化すのだった。


「おなかのすくせかいに なってしまったのですよ」

 キマイラのグリモア猟兵――琴峰・ここね(ここねのこねこ・f27465)は、集った猟兵たちを見上げて。とっても困ったことになっているのだと訴えた。

 場所はカクリヨファンタズム。
 古今東西の妖たちが住むこの世界は今、とあるオブリビオンによって『満腹』が奪われ、危機に陥っているらしい。

 そこは、どれだけ食事をしても、満足を得る事が出来ない世界。
 一口食べ、飲み込んで。けれどまたすぐ口寂しくなり、食べ物に手が伸びる。
 何をするにも、間食しながらでなければ手に付かず。
 それでも結局満足できずに、ガチ食いしてしまう。

 まさに、無限間食地獄。
 いつの間にか無数の骸魂まで飛び交い始め、幽世終了のお知らせ一歩手前の状態だ。

「それもこれもぜんぶ ぽっちゃりねこさんの せいなのです」

 オブリビオン『寝惚堕ねこデラックス』。
 それが、今回の事件を引き起こしている元凶なのだと、ここねは言う。

 元々は、猫又の妖に骸魂が憑りついてオブリビオン化した存在なのだが。
 憑りつかれた猫又が、面倒くさがりなぽっちゃり系猫又であり、憑りついた骸魂もまた、引きこもりぽっちゃり系妖怪であったため、悪い意味で相性ピッタリであったらしく。
 立派なたぷたぷ下腹を備えた、ぽっちゃり系ヒキニート妖怪オブリビオンという、とんでもない存在が誕生してしまったと言う訳だ。

 ヒキニートであるがゆえに、中途半端にネガティブで。中途半端にポジティブな思考を備えたそのオブリビオンは、たぷんたぷんの腹を掴みながら思った。

 ――ウチの腹、ヤバくね? つかこれ、手遅れじゃね?
 いや。待て。

 世界中の妖が太れば、ウチが標準体型に……いや、スレンダーになれるじゃん!
 それならダイエットなんて必要ない。ウチって天才!

「……というわけで、『まんぷく』をうばったみたいなのです」

 そして、料理上手な狐たちの居る里は、妖たちを太らせるのに打って付けの場所として、真っ先に狙われてしまった。
 まずは、狐の里を襲撃してきた包帯西瓜たち――『吸血トリオトンカラトン』の集団を退けて欲しい。

 また襲撃現場に居合わせる狐たちは、ほとんどが子狐であり、あまり戦いに慣れていないため、ちょっとしたパニックを起こしてる。
 上手くフォローしてあげて欲しい。

「スイカわりがおわったら、わるいねこさんを たいじしてくださいなのですよ」

 『寝惚堕ねこデラックス』は、ぐーたらゆえに逃げも隠れもしない。
 だが、猟兵たちの脂肪と体重を増やす謎のオーラを使用してくる、一筋縄ではいかない相手だ。油断せずに挑んでもらいたい。

 なお、与えられた脂肪と体重は、オブリビオンを倒せば元に戻るので安心して欲しい。
 だが万が一、仮に、倒せなかった場合は……。

「ずっと、ぷにぷにりょうへいさんのままなのです」
 色んな意味で世界が終わる。

「でも、りょうへいさんたちなら ぜったいかてるのですよ」

 戦いが無事に終わったら、狐たちの里に顔を見せてあげるといいだろう。
 何せ子狐たちは、猟兵たちに食べてもらうための料理を練習していたのだから。

 もしも猟兵たちが一緒に料理してくれるのならば、子狐たちも張り切って料理を作ってくれるはず。
 狐たちの使う『お狐印のお鍋』は、材料を入れて狐火にかけるだけで、美味しい鍋料理が出来上がる不思議なお鍋なので、料理に不慣れな者でも安心だ。ただし――。

「カクリヨの『おやさい』は とっても『げんき』だったのですよ」

 厨中を走り回ったり、噛みついてきたり。
 妖世界のお野菜は随分と活きがいいので、『どうやって鍋に入れるか』が料理のポイントになりそうだ。

「りょうへいさんの おりょうり、ここねも たのしみなのです」

 けれど、美味しい料理は世界を救ったその後で。
 気を付けて、いってらっしゃいなのですよ…と。どこかのんびりとした声で、ここねは、猟兵たちを送り出すのだった。


音切
 音切と申します。
 途中からでも一部の章のみでも、気軽にご参加いただけましたら幸いです。

【1章】集団戦『吸血トリオトンカラトン』
 厨の中は、戦闘をするのに十分な広さがあります。
 また、普通のお野菜も走り回ったり飛び回ったりしていますが、
 オブリビオンは『包帯を巻いている野菜』のため、間違える心配はありません。

【2章】ボス戦『寝惚堕ねこデラックス』
 憑りつかれているぽっちゃり猫又は、オブリビオンを倒せば元に戻ってきます。

【3章】
 子狐たちと鍋料理を作ります。(食べるのみもOKです。)
 『お狐印のお鍋』に材料を入れて狐火にかければ、大概の鍋料理は美味しく作る事ができますが、
 落ち着きのない食材が、色々と妨害してくるので頑張ってください。
 また、この章のみ、ここねが同行しています。

主な困った食材:
『二股ニンジン』
  猛スピードで厨中を走り回る困ったニンジンです。
  とにかく走り回りますが、何故か厨の外には逃げません。

『二股大根』
 ニンジンと同じ走り回るタイプと、
 セクシーなポーズで微妙な空気にしてくるタイプがいます。

『お化け南瓜』
 ハロウィンでよく見る感じの南瓜が、噛みついてきます。
 頭にかぶりつかれると、自分を南瓜怪人だと思い込む呪いにかかります。

『一つ目トマト』
 目玉のあるトマトです。何かを訴えるように、目をウルウルさせて見つめてきます。
 目潰しすると風味が落ちるらしいです。

 それでは、よろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『吸血トリオトンカラトン』

POW   :    トンカラトンと呼べえええええ!!
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【主な対象に斬った者をトンカラトン 】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
SPD   :    吸血果実(西瓜や🍈)と野菜(🎃)+αな包囲網
召喚したレベル×1体の【吸血西瓜や🍈と南瓜、後友達の柿や蕪 】に【トンカラトンの包帯を纏わせ複数の刀】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
WIZ   :    しろよ、収穫!!!
自身の【肉体を敵の周りで超高速回転し平衡感覚を】を代償に、【凄まじい竜巻に収穫せず放置した怒り】を籠めた一撃を放つ。自分にとって肉体を敵の周りで超高速回転し平衡感覚をを失う代償が大きい程、威力は上昇する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

叢雲・凪
か弱き狐が困っている…ならばボクの出番だコン!(クワっ!と意気込み 腕組み仁王立ちでトリオトンカラトンに向かい合う) ※ 妖狐を意識して語尾にコンを付けている

どうも… ジンライ・フォックスだコン(【礼儀作法】で手を合わせて奥ゆかしくお辞儀)


生憎お前たちのような質の悪い野菜は家畜の餌か産業廃棄物にしかならないコン 全員まとめてミックスジュースにしてやるから覚悟するコン


やつらの動きは単調な上に自身の攻撃で平衡感覚すら失っている。軌道を読むのは簡単だコン。

【ダッシュ】【ジャンプ】【リミッター解除】を用いた高速移動で翻弄しつつ バランスを崩したところに【属性攻撃】【黒雷槌】を叩きこむ!

『天誅…』


御園・桜花
「初めて来ましたけれど…凄いですね…ハッ!?」
空腹の呪いにやられ走り回っていた野菜を両手で掴んでかぷっと食べ

「あの…くるくる回る分、隙が大きいのではないかと思うのですが…」
UC「召喚・精霊乱舞」使用
土属性の精霊呼び石弾でくるくる回る敵をどんどん撃ち抜いていく
敵の攻撃は第六感や見切りで躱す

「大丈夫ですか、子狐さん?これが終わったらみんなで美味しいものを作りましょう。だから怪我をしないように、ちゃんと隠れていて下さいね」

「大丈夫ですか?貴方達もあちらへ」
解放された妖怪は子狐達の方へ逃げるよう促す

「此の世で独りはお寂しかったことでしょう。何時か貴方達も此方に戻ることが出来ますよう」
骸魂を鎮魂歌で送る


木霊・ウタ
心情
愛らしい狐たちを助けるぜ

俺たちを料理しろっていう癖に
厨で暴れてるなんておかしいだろ
けど…骸魂も哀れだよな
必死でこの世界を目指して辿り着けなかった
さぞ無念だろうぜ

骸魂を海へ還し
呑込まれた妖怪たち(食材?
を解放するぜ

戦闘
狐たちを守るのを第一に
食材を守るのを第二として行動
火壁を展開し武器受けで庇う

獄炎纏う焔摩天で纏めて薙ぎ払う
鎧砕きで西瓜割り
刀も砕く

炎が包帯を燃やし
刃を炙り鈍らに
焼きフルーツにしてやるぜ

もし変えられた奴がいても
その度に同上で撃破だ

受傷時
返り血の獄炎を喰らわせてやる
で同上

事後
骸魂へ鎮魂曲
安らかにな

取り込まれた食材?たち>
大丈夫か?
美味しくいただくから
もう安心してくれよな(ぐっ



 ――野菜が走っていた。
 飛んでいた。跳ねていた。回っていた。そして、刀を振り回している。

「初めて来ましたけれど……凄いですね……」

 傍を走り抜けようとしたニンジンを、思わず掴み上げながら。御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)が、目を丸くする。

 不思議や神秘の体現である、妖怪たちの住む世界。かぷっ。
 きっと常識では測れない世界なのだろうと、思ってはいたけれど。もぐもぐ。
 こんなにも賑やかで、魔訶不思議が溢れる世界とは。もぐもぐ。

 そう思ったのは、桜花だけではないのだろう。かぷっ。
 駆け付けた猟兵たちの誰もが、一時、動きを止めてその光景に見入っていた。もぐもぐもぐもぐもぐもぐ……。

「あ、あの……どちら様コン?」
「……ハッ!?」

 料理台の影から猟兵たちを窺っていた狐に声を掛けられて。桜花は我に返り、手にしたニンジンを見つめた……元気に走り回っていたはずのニンジンは、もう葉っぱしか残っていなかった。

「まぁ、ニンジンが犠牲に……」

 罪のないニンジンが、犠牲になるなんて。恐るべし『満腹』の無い世界。
 ありがとうニンジン。さようならニンジン。
 生でも食べられる、優しい甘みのある君は、とても美味しかった。

 桜花がニンジンの犠牲を悼む間に、狐たちの方へと進み出たのは、叢雲・凪(断罪の黒き雷【ジンライ・フォックス】・f27072)。
 黒い狐面を被った凪の姿に、狐たちはいささか緊張を覚えたようだが。
 その狐たちに目線を合わせるように、膝をついて手を合わせて。凪がぺこりと丁寧にお辞儀をして見せれば。
「悪い奴らじゃなさそうコン……?」
 ひそひそと、そんな声が聞こえてくる。

「どうも。猟兵の、ジンライ・フォックスと言う者だコン」
 郷に入っては何とやら。妖狐たちに自分たち猟兵を受け入れて貰えるよう、語尾にコンと添えたのは、凪なりの誠意の形。

「あ、これはご丁寧に……猟兵?」
「猟兵って言ったコン?」
「猟兵なのコン?」

 そんな凪の誠意が伝わったのか、こんこんひょこり、と。
 調理台のあちこちから、一匹。また一匹と、小さな狐たちが顔を覗かせる。

「本当に、本当に猟兵なのコン?」
 猟兵たちの様子を伺う興味津々な目と、ぴこぴこ動く耳が何とも愛らしい。
 こんなにも可愛く、か弱い狐たちが困っているのだ。

「ならばボクの出番だコン!」
 猟兵としてのこの力、今使わずして何とする!
 高く飛びあがり、くるくると華麗な回転からの着地を決めた凪が、暴れまわる野菜たちに向けて声を張り上げる。

「生憎お前たちのような質の悪い野菜は、家畜の餌か産業廃棄物にしかならないコン」
「はァ? ナンだテメーは」
「ヲイ。アイツ斬っちまエ!」

 腕を組み仁王立ちしてみせた凪の目論見通りに、吸血西瓜たちの意識は、狐たちから凪へと移った。
 それと同時に、その勇ましい背中は子狐たちに希望を与える。

「猟兵ってなんかすげーコン」
「猟兵、頑張るコン!」

 子狐たちの声援を受けて、凪は戦いの構えを取る。
 包帯と刀を纏う、なんとも物騒な野菜たちにぐるりと周囲を囲まれながらも。凪がそれに臆する事はない。
 自分は今、子狐たちの希望を背負っているのだから。
 溢れる闘気は、黒い稲妻となって。バチバチと威嚇の声を上げながら、凪の体を覆う。

「全員まとめてミックスジュースにしてやるから覚悟するコン」

「なら、収穫しろヨォ!」
「腐るマデほっとくナァァァ!!」

 吸血西瓜たちがいっそう数を増して――いつの間にやら、柿や蕪までが仲間に加わり、刀を振り回し始めた。

「うわーん、こっちくんなコン」
「せんせー、たすけてコーン」

 暴れる野菜たちの恐怖に負けて、逃げ惑い始めた子狐たちに、その凶刃が迫る――。
 
「させないぜ!」
「うわっ、あっチィ!」

 間一髪のところで、噴き上がった炎の壁が、野菜たちを食い止めた。

「俺たちを料理しろっていう癖に、厨で暴れてるなんておかしいだろ」
 横合いから飛び込んで来た木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)が、すかさず子狐たちを背に庇い。巨大剣を振るう。
 その軌道は、西瓜の中心を的確に捕らえて。西瓜は包帯の尾をなびかせながら、綺麗な曲線を描いて吹っ飛んだ。

 だが、重たい風切り音をさせる巨大剣の勢いをそのままに、ぐるりと体を回転させた二撃目は――ガキンッと、鈍い音と共に止められた。
 果敢にも突っ込んで来た南瓜とメロンの刀が、ギリギリと。ウタの巨大剣と擦れ合い、嫌な音を立てている。

 更に呼び出された、宙に浮かぶ無数の刃が幾度も振り下ろされ、重い手応えがウタを襲うけれど。
 地をしかと踏みしめて、耐えた。

 暴れる野菜たち――その内に潜む骸魂には、無念も苦しみもあるのだろう。
 だからこそ、正面から受け止める。
 その無念や苦しみを、狐たちにぶつけさせはしないのだと。気合と共に足を踏み出し、巨大剣を振り抜いて。ウタは野菜たちを押し返した。

「大丈夫ですか、子狐さん?」
 ウタの攻防の間に、駆け付けた桜花が子狐へと声を掛ける。
 竦み上がっているその背中をそっと撫でれば、柔らかく暖かな毛並みの上からでも、子狐が震えているのが分かる。

「これが終わったらみんなで美味しいものを作りましょう。だから怪我をしないように、ちゃんと隠れていて下さいね」
 凶暴な野菜たちの視線を遮るように、庇いながら。
 ぽふぽふと安心させるように背を叩き、桜花が子狐たちを送りだす。

「わかったコン」
「猟兵、気を付けるコン」
 まだ少し、声を震わせながらも。子狐たちは桜花の導きに従って駆けていく。

「か弱い子狐を狙うとは……許さないコン!」

 凪の怒りに、黒い稲妻が爆ぜる。
 野菜たちが縦横無尽に飛び回る中をより派手に、より速く。より鋭く。
 振り下ろされる刀を、切り返しのステップでかわして。凪が野菜たちを翻弄する。

 野菜が自在に飛び回ると言っても、動きそのものは単純。
 刀の攻撃も、手練れの剣士のような鋭さはない。
 冷静に攻撃をかわして、攪乱してやれば必ず隙出来る――今だ!

「天誅」
「ガハッ!?」

 凪の拳が、黒く染まったのは、まさに一瞬の事。
 その黒き光を野菜たちが視認するよりも、早く。凪の拳は、吸血西瓜の体……そのど真ん中を抉るように打ち抜いた。
 稲妻は、水分たっぷりの体を突き抜けて。
 一泊遅れて、西瓜本体が後方へと吹き飛ぶ。

「やられたゾ!」
「畜生ッ!」
 半ば自棄になり、グルグルと回転を始めた野菜たちの周囲で、風が渦巻いた。

「しろよ、収穫!」
「畑デ腐ルのは嫌ダァァァァー!」

 魂の叫びと共に、渦巻く風は竜巻となって。
 普通の野菜たちも、狐たちも巻き込まんと、周囲の物を吸い寄せ始める。

 そんな暴風の最中に、ウタはあえて身を晒す。
 狐たちを助けるのは、勿論のこと。今、目の前で苦しんでいるオブリビオンは、彷徨う骸魂が妖怪を取り込んだ姿なのだから。
 この戦いは、狐たちだけではない。彷徨う骸魂と、それに取り込まれた妖怪たちも助ける為のものだと。

 ウタの心に応えるように、巨大剣を強く握るその右腕から、炎が吹き上がる。
 見幅の広い巨大な剣を覆いつくして、なお余る激しい獄炎は、野菜の纏う竜巻さえも真っ赤に染め上げて。

「焼きフルーツにしてやるぜ!」

 強く地を踏みしめて。力の限りに振り抜いた巨大剣は、竜巻の横っ面を叩いた。
 炎と炎がぶつかり合って。竜巻の中心に居た野菜たちを巻き込んで、巨大な焔が吹き上がる――。

「オイ、しっかりシロ!」
「何テ事だ。上手ニ焼けテやがる……!」
 ぶすぶすと黒い煙を上げて、転がった仲間の姿に、野菜たちにも動揺が広がった。

「あの……くるくる回る分、隙が大きいのではないかと思うのですが……」
「ナにぃ……グはっ!?」

 野菜たちがおろおろと動きを止めている隙に、桜花が呼び出すのは地の精霊。
 その加護により、ふわりと桜花の周囲に浮かんだ石は、弾丸のごとき速度で打ち出され。西瓜たちの硬い皮にも、容赦なく穴をあけていく。

 石弾に砕かれて。稲妻と炎に、真まで焼かれて。
 香ばしくも甘い煙を上げながら、焼き西瓜たちが次々と地に落ちていく。

 目を回して、ごろごろと転がる西瓜をそっとウタが支えてやれば。
「うぅん……オレたち何してたんだっけ?」
 包帯の取れた吸血西瓜は、困惑したように眉根を寄せた。

「大丈夫か? 美味しくいただくから、もう安心してくれよな」
「貴方達もあちらへ」
「お、おう。よく分からんが、そうするぜ」

 桜花に促されて。よろよろとしながらも、避難していく吸血南瓜たち。
 猟兵たちの素直に言う事を聞いてくれたと言う事は、憑りついていた骸魂は、離れたと言う事なのだろう。
 このカクリヨの世界を目指して、たどり着けずに命を落とした妖怪たちの魂。その境遇を想えば、普段は穏やかな桜花の瞳も、少しだけ悲しみの色に揺れる。
 『独りぼっち』。その暗さと冷たさを、よく知っているから。

「此の世で独りはお寂しかったことでしょう。何時か貴方達も此方に戻ることが出来ますよう」
 その唇が、旋律をなぞる。

 ――その美しい歌を、鎮魂の歌だとすぐに理解できたのは。
 ウタもまた、同じところに目を向けている者であったからなのかもしれない。
 望んだにせよ、望まぬにせよ。
 死という眠りから強引に引き上げられてしまった哀れな魂に、思う所があったから。

 猟兵として、倒せねばならない敵は、まだ残っている。
 事件はまだ、解決していないのだと、分かってはいるけれど。
 ウタの手は、弦をなぞる。

 せめて、この一時。居場所を失くした魂の嘆きが、少しでも和らぐように。
 桜の娘が紡ぐ歌に合わせて、弦の響きを送ろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティモシー・レンツ
カンカラトン、って野菜だっけ?(トンカラカンと言えてない)
まぁなんでも良いや、とりあえず君たちがカンカラカンにして操ろうとしている対象、全部復活するよ?(手駒を削る形でダメージを与える)

あとそっちの君は、水難の相が出て……顔に出てる?(顔か胴か区別できずに困惑)
まぁいいや、鉄砲水とか豪雨に気をつけてね?(見えた通りの占いとアドバイス)
あと、そっちの君は……火だるまになるみたい?(情け容赦無く占う)


林・水鏡
『満腹』を奪ったてそれある意味一種の餓鬼道じゃないか?まぁ、いつも空腹よりはマシじゃが。

トンカラトンてこんな奴だったかのう…。
パーツパーツは合ってるとは思うんじゃが…何で野菜になったんじゃろな。
あと吸血要素がぱっと見わからんのじゃが。
まぁええ、倒してやったらええじゃろう。

UC【破魔の白剣】で攻撃じゃ。
収穫されたいんなら畑でおとなしゅうまっとればよいものを…。
収穫と言うよりは即調理状態じゃが…これで満足してくれんかのぅ。


アリス・フォーサイス
ようし、スイカわりだね。
(いつのまにかスイカから奪った包帯で目隠しして棒をかまえる。)

みんな、スイカの位置を教えてね。
みんなの助言とオブリビオンの『情報』を探って、的確にたたきわるよ。

ちょっと、数が多いかな。ちびアリスを召喚。もちろんみんな、目隠しに棒装備だよ。

あれ?この感触は南瓜?まあ、いいや。つぎつぎいくよー。



「『満腹』を奪ったて、それある意味一種の餓鬼道じゃないか?」

 古風な口調とは裏腹に、見た目は少女にしか見えない林・水鏡(少女白澤・f27963)が、「はて」と首を傾げて見せる。
 このカクリヨの世界は、様々な時代の文明様式が、無規則に混在している場所ではあるが。
 飢えと渇きに満ちた世界になってしまったとあっては、穏やかな話ではない。

「オレたちヲ収穫シろォ!」
「喰え食エェー!」

 しかしながら、この『満腹』の無い世界。
 本物の餓鬼道とは違い、食事は問題なく出来るらしい。
 あくまで満腹になれないというだけならば、無限に空腹が続く世界よりはマシと言えるのかもしれない。
 それにしても……。

「「「トンカラトンと呼べえええええ!」」」

 グリモア猟兵に召喚されて、到着した厨の中は、混乱を極めていた。
 包帯を巻いた野菜が、刀を振り回しながら、飛び回っている。
 その刃から逃げるように走り回っているのは、包帯の巻かれていないニンジンやダイコンたち。
 そして調理台の影にちらほら見える黄色い影は、震えている小さな狐たちだった。

「カンカラトン、って野菜だっけ?」

 共に戦う仲間達と共に、現場へと駆け付けたティモシー・レンツ(ヤドリガミのポンコツ占い師・f15854)は、思い描いていたものと何か違う光景に、首を傾げた。

「トンカラトン、じゃな」

 しっかり名前を訂正しながらも、水鏡もまた同じように首を傾げる。
 包帯を巻いている。刀で襲い掛かる……しっかり要素は抑えてあるようなのだが。
 流石に野菜の姿では無かったような気がする。

 この世界では、骸魂が妖怪を飲み込む事でオブリビオン化してしまうのだから、トンカラトンの骸魂が吸血西瓜なる妖怪を取り込んだ……と考えるのが自然だろうか。
 それにしても、吸血要素は一体どこへ?

 水鏡自身もまた、この世界に住む妖怪の一人ではあるが。古今東西のあらゆる妖怪が住むこの世界では、あらゆる非常識が常識としてまかり通ってしまう。
 住人の一人と言えども、この世界の謎と不思議は尽きる事はなく。また、それらを一々常識で測ろうとしていては、この世界ではやっていけないのである。

「まぁええ、倒してやったらええじゃろう」
「まぁなんでも良いや」

 という訳で、猟兵たちの結論は一致した。
 何は無くとも、この迷惑な西瓜を倒す。その後に困った猫を倒せば、とりあえず世界は平和になる。
 その要点さえ抑えてしまえば、後は迷う事はない。

 折しも多くの世界では、太陽の光が強まり、緑の濃くなる季節。
 こんな時期に西瓜を相手にするとなれば、やるべき事は一つだろう。

「ようし、スイカわりだね!」

 アリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)が、元気いっぱいに号令を掛ければ、小さなデフォルメアリスが次々と現れて。
 「スイカわるですっ!」と、厨の中に散らばっていく。

 アリス本人はと言えば。
 いつの間にかゲットしていた包帯で目を隠し、棒を構えて。
「みんな、スイカの位置を教えてね」
 ぶんぶんと棒を振り回し、素振りも終えて準備は万全だ。

「ほう。現代の、人の子の遊戯じゃな?」
 ふむふむと、興味深そうにアリスの様子を眺めていた水鏡も、なればと白き剣を呼び寄せる。
 数え切れぬ剣が、水鏡の姿を覆い隠すようにずらりと並んで。
 中空をなぞるように、西瓜を指し示す水鏡の動作で、一斉に動き出した。

「この、白剣から逃れられると思うてか」

 いかに野菜たちが、縦横無尽に飛び回ろうとも。
 この白い剣は、それ以上の速さと複雑さで動くのだから。どちらが『狩る側』かは知れた事。
 『スイカわり』なる人の子の遊戯に詳しい訳でははいが、その文字の並びからして要は――。

「見事に割って見せればよいのじゃろう?」

 すぱっと。輝く白剣に触れた西瓜が、見事に真っ二つに割れた。
 そのあまりの斬れ味に、周辺の西瓜たちがビクリと体を固くする。

「ぐッ、動ケねぇ……!」

 白剣の動きを見切れずに、身動きの取れない野菜へとティモシーが迫る。
 しかし特に攻撃する訳でもなく、何故かじっと西瓜を見つめていたティモシーは、「おや?」と首を傾げて見せた。

「カンカラリンくん、女難の相が出て……顔に出て、る?」
「トンカラトンだゾ」

 吸血西瓜は冷静にツッコミを入れるが、ティモシーはそれどころではない。
 野菜の本体とは、それ即ち胴体。しかし今は顔が付いている。
 これを顔と定義して良いものか。やはり胴体なのか。そもそも、胴体に『相』とかあるのか?
 占い師として、たぶん重要な気がする問題に直面してしまった。

「トンカラリンくんのそれは顔? 胴体なのかな……?」
「とりアエず、トンカラトンな」
「リンカラトン?」
「お前、わざト――」

 間違っテルだろ、と。西瓜が怒りを叫ぼうとした、その時。
 ぶおん、と。良い風切り音を立てながら、振りぬかれた木製の棒が、西瓜の真芯を捉えた。
 もしこれが、金属バットと白球という組み合わせであったなら。カッキーンと、それは爽快な音を立てていた事だろう。

 しかし現実は残酷ながら、木製の棒と水分たっぷりの野菜であったがゆえに『ぶしゃり』と。
 なんとも生々しい湿った音と共に西瓜は吹っ飛び、真っ赤な果汁の尾を引きながら、綺麗な放物線を描いた。

「われたですっ」
「われたよー」
 べしゃっと地に落ちた西瓜の傍では、チビアリスたちがキャッキャと無邪気に飛び跳ねている。

「よーし、次だね!」
 西瓜をぶっ飛ばした当人であるアリスは、ぶんぶんと素振りをしながら次なる西瓜を求めて動き出す。
 ヒエッ……と、あちこちから息を呑む声が聞こえたような気もするけれど、気にしない。

「こんどは、こっちです」
「こっちこっち」
「スプーンもちますっ」
「右だね」

 ぶおん。
 再びの風切り音と共に、アリスの振るった棒が、しかと西瓜を捉える。
 これまた痛烈なヒット。
 低めのストレートに飛んだ西瓜は調理台の角のぶつかり、高く跳ね返って地に落ちた。

 ごろごろと。そのまま水鏡の足元に転がってきた西瓜は、完全に目を回している。
 憑りついていた骸魂が、離れたのだろう。包帯はすっかり消え失せて。ただの吸血西瓜へと戻った野菜は、まるで出血しているかのように口元から赤い果汁を滴らせていた。
 その様は、何となく誰かの血を啜った後のように見えなくもない。

「ふむ。吸血西瓜……とは、こういう意味じゃったか」
 どうやら名前だけで、実際に血を吸う妖怪ではなかったらしい。

「だから言ったのに。あ、そっちのコンカラリンくんも、女難の相が……というか、みんな同じ顔してる?」

 正直な所、みんな球体の野菜な上に包帯を巻いているため、オブリビオンたちの顔はどれも同じに見えてしまう。
 つまり全員に女難の相が出ているのだと、ティモシーは残酷な占い結果を告げた。

 ……ちなみに、戦場に集った猟兵の過半数が女性であるこの戦場において、敵に女難の相が出ているというティモシーの占いは、果たして本当に占いと呼べるのかという点について疑問が残るところだが。
 少女たちによる容赦のないスイカ割りに、次々と犠牲になっていく西瓜たちは、間違いなく女難に苛まれているため、この際、些細な疑問については横に置いておく事にする。

「セメて、トンカラトンと呼べええエエえ!」

 追い詰められた野菜たちが、滅茶苦茶に刀を振り回す。
 やられた仲間を操ろうと言うのか、その凶刃は、目を回して転がる西瓜たちへと向けられていた。

 だが、そう来ると分かっていれば、対策を打つことはできる。
 ティモシーの占いは、結果を予知するのではなく、結果を引き寄せる御業なのだから――。

「カンカラカンにして操ろうとしている対象、全部復活するよ?」

 愛用の水晶を片手に、ティモシーは最も残酷な占いの結果を告げた。
 これで、目を回している西瓜たちがトンカラトンとして復活する事は……。

「「「トンカラトンと呼べえええええ!!」」」

 目を回した西瓜たちが、カッと目を見開いて復活した。
 トンカラトンとして。

「あれ?」

 そう、確かに。ティモシーは占いによって結果を引き寄せる。
 ただし、占い通りの結果を引き寄せられるかどうかは、五分五分と言った所。まさに当たるも八卦、当たらぬも八卦。
 そして、こういった何ともコミカルな状況においては、一番肝心な所で真逆の結果を引き寄せるのは、ある種の『お約束』という奴なのである。

「ちょっと、数が多くなってきたね」
「収穫されたいんなら畑でおとなしゅうまっとればよいものを……」

 急激に数を増やし、勢いを増した野菜たちに、水鏡はやれやれと肩をすくめ、アリスはちらりと目隠しをずらして様子を伺う。
 どうやら相当に気合を入れてかからなければ、このスイカ割りはいつまでも終わりそうにない。

「みんな、目隠しに棒装備だよ!」
「はーい」
「スイカわるですー」

 アリスの号令と共に、それまでアリスの誘導に勤しんでいたチビアリスたちが、目隠しと棒を装備し始める。
 小柄ゆえに、威力も相応だが。集団でポカポカと叩かれれば、流石の西瓜もひとたまりもない。

「収穫と言うよりは即調理状態じゃが……これで満足してくれんかのぅ」

 西瓜に向かって突撃するアリスたちに続くように、水鏡が剣たちに力を籠めれば。
 白い剣は、器用にアリスたちの間をすり抜けて。
 細やかな模様を描きながら、西瓜を見事に真っ二つにしていく。

 ティモシーの珍妙な占いがあちこちで騒ぎを起こす中、少女たちのスイカ割りはまだまだ続くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セレシェイラ・フロレセール
狐さんたちの心遣いがとても嬉しい、嬉しいなほんとに
わたしはヒトと同じくらい幽世の妖怪さんたちのことも大好きだよ
だから、悪さをするオブリビオンはしっかり還さなきゃね
よーし、頑張ろー!

なんとイキの良いお野菜さんたち
え、走り回ったり飛び回ったりしてるお野菜の中に普通のお野菜まで混ざってるの?
幽世のお野菜ってすごい!
お野菜の物語を綴りたい!
じゃなくて、オブリビオンは『包帯を巻いている野菜』の方ね、りょーかい

ふふ、キミたちには彩の魔法を綴ろう
狙いは『包帯を巻いている野菜』たち
間違っても普通のお野菜に当たらないように注意を払う
準備おーけー、桜色の弾幕の展開だー


リゼ・フランメ
暴れ回る野菜と、止まることのない食欲ね
食べるっていうのは、作る人の心も受け止める事だと思うのだけれど
なんとも迷惑で凶暴なのかしら
しっかりと止めて終わらせないといけないわね

満たされるのは、心こそ、なのだから


ダッシュ+切り込みで厨房の中を高速で駆け回りながら相手を見つけ
破魔と属性攻撃で神聖なる火を宿した劫火剣エリーゼで斬り払い、その骸魂をこそ焼却
更に次へと
野菜自体に罪はないのだから、出来ればそれを操る骸魂だけを斬り裂いていきましょう

そして、立ち止まらず次へと
ふわり、ゆらりと早業+フェンイトで火のよう揺らめく残像を残しつつ

罪を灼き斬る炎刃と共に踊りましょう

後で食べるなら
ちゃんとしっかり動かないと、ね


弓削・柘榴
満腹を奪うとは……同じ猫又に連なるものとしても、見過ごせんの。

とりあえず今の狙いはトマトとニンジンでいくことにしよう。
ニンジンは好きじゃが、トマトは敵なので、どちらも掴まえて、いい感じにしてやるのじゃ。

ニンジンは望みどおり、収穫してやるぞ。
おまけに美味しく調理もしてやろう。どうだ?捕まる気になったか?
おとなしくするなら、マヨネーズをつけてかじってやるぞ?

まぁ、そう簡単にいうことを聞く感じではないな。
【鬼門開放】でニンジンの足を止めて、しっかり収穫じゃ。


トマトは、そのまま潰して……ん? 使うのか?
まぁ食材じゃしな、無駄にするのも忍びないか。
あちきに食べさせないなら、持っていって構わんぞ。



 本来、人々に美味しさと笑顔を届ける為にあるはずの場所は、今や混乱の坩堝と化していた。

 包帯を巻いた様々な野菜が、空中を飛び回り、刀を振り回す。
 笑顔どころか、子狐たちの悲鳴の溢れる場所となった厨の惨状を見つめて、弓削・柘榴(月読さんちの猫又さん・f28110)は、やれやれと溜息をついた。

「満腹を奪うとは……同じ猫又に連なるものとしても、見過ごせんの」

 骸魂に憑りつかれて、正体を失っているのだろうとは言え。
 『悪い猫又』等と言う言葉が巷に広まるのは、同じ猫又として愉快な話ではない。
 まったく情けない、と。小言の一つもぶつけてやりたい所だが。
 まずはこの厨の惨状を何とかする方が先決だ。

「では、仕事にかかるとするかの」

 柘榴の紅い瞳がキラリと光る。
 猫の動体視力を以てすれば、野菜たちの動きを見切るのもお手の物。
 狙うはそう、赤いやつ。赤いやつだ。
 キョロキョロと周囲を見回す柘榴の赤い瞳が、大きな目玉と見つめ合う。
 うるうると涙を滲ませた大きな一つ目のそれは、赤くて丸い姿をしていた。

「トマトはあちきの敵なのでな」

 よし、潰そう。
 柘榴の白い指先に、キラリと鋭い爪が光るのを見て。一つ目トマトはますます目をうるうるさせる。
 だがしかし、トマトは敵。慈悲はなし。

 今まさに、柘榴の爪がトマトに届こうとした、その時。
 しゅたたたたたた、と赤い何かが、猛スピードでトマトの横を駆け抜けた。
 柘榴の目は、その姿を見逃さない。
 「そこじゃ!」と、素早く伸ばした手は、見事に柘榴の好きなニンジンを捉える。

「さぁ、望み通り収穫してやったぞ」

 両手でしっかりとニンジンを拘束して、ふふんと笑う柘榴に。手の中のニンジンは、何かを訴えるように葉っぱをぶんぶんぶんぶんと、横に振った。

「なんじゃ。往生際が悪いのう」
「猟兵、そっちは違うコン」
「悪い野菜は包帯の奴だコン」
「む?」

 子狐たちの声に振り返ってみれば、「あれだコン」と、子狐たちが必死で空中を指差している。
 その指の先に視線を向けてみれば。
 そこに居たのは、包帯をぐるぐる巻きにして、刀を侍らせた異質な野菜の姿。

「え、走り回ったり飛び回ったりしてるお野菜の中に、普通のお野菜まで混ざってるの?」

 子狐達の声に釣られて、同じ方向を見上げていたセレシェイラ・フロレセール(桜綴・f25838)も、思わず声を上げる。
 何とも活きが良い野菜たち。てっきり、みんなオブリビオンなのかと思っていたのに。
 どうやらこの世界のお野菜は、普通の野菜さえも、元気に動き回っているらしい。

 柘榴の手に捕らえられたニンジンが、あっちあっちと示すように、その葉を包帯西瓜の方へと向けている。

「幽世のお野菜ってすごい!」
 その必死な様子に、思わずくすりと。セレシェイラの口元が緩む。
 走るニンジンに、空飛ぶカボチャ。様々な神秘が当たり前に存在しているこの世界には、もしかすると野菜たちの村などと言うものも、あったりするのかもしれない。
 楽しいお話が生まれて来そうな予感に、思わずうずうずしてしまう。
 けれど、楽しいお話を想像するのは――。

(暴れ回る野菜と、止まることのない食欲ね)

 セレシェイラの視線の先、いち早く飛び出したリゼ・フランメ(断罪の焔蝶・f27058)が、赤い髪を靡かせて西瓜へと迫る。

 今回、オブリビオンたちが引き起こしている事件は、言葉で表してみると、とても軽い事のように聞こえてしまうけれど。
 その実、とても質が悪いと、リゼは思うのだ。

 中空に浮かぶ西瓜目掛けて、軽やかに飛び上がり、真白の剣を振るえば。
 虹のように尾を引いた炎が、厨の中を明かるく照らし出した。
 体が重力に捕らわれたのを感じて、足元に目を向ければ。
 料理台の影で身を縮めて。必死で隠れている子狐たちの姿が見えて。

 ふわりと降り立った。その勢いを殺さぬように。
 掬い上げるように、剣を振り抜けば。二撃目の太刀は、さらに深く西瓜を刻む。

 料理を作ると言う事が、想いを込める事ならば。
 食べると言う事は、作る人の心を受け止めると言う事。
 もしも、このまま世界中の妖怪が飢えれば。あの子狐たちは、彼らに栄養を与えるだけの道具にされてしまうのだろう。

 そこには、満足もなく。感謝もなく。笑顔も存在しない。
 そんな世界になってしまう前に、ここで終わらせなければならない。

「満たされるのは、心こそ、なのだから」

 とても小さな。けれど、唯一口に出したリゼの呟きに。
 セレシェイラはこくりと、心の中で頷いた。

(狐さんたちの心遣いがとても嬉しい)

 一生懸命に料理を作ろうとしてくれた事。
 『おもてなし』しようしてくれた事。こんなにも、心がぽかぽかする。
 そんな暖かい気持ちが、奪われてしまうというのなら。

 楽しいお話を想像するのも。美味しいお料理を作るのも。
 全てはオブリビオンたちを還して、狐たちの里に平和を取り戻してからの話。

(よーし、頑張ろー!)

 頼もしい仲間の姿に、セレシェイラも気合を入れて。
 自分自身―ペン―を取る。

 ここに紡がれるのは、子狐たちの物語。
 野菜たちが賑やかし、ちょっと意地悪な猫と踊る、不思議な世界のお話。
 ならば、その神秘を壊さぬように。けれど誰も泣かないように。

「キミたちには彩の魔法を綴ろう」

 ペンは綴る。
 柔らかなお日様の光と。優しい花の香り。目覚めの季節を思わせる魔法を、色鮮やかに綴り上げる。
 それは術となり、成立し、花の蕾のような形を得て。
 桜色の魔法の弾がいくつも、セレシェイラの周囲に浮かび上がった。

 この物語を、めでたしめでたしで締め括る。その為にも。
 狙うのは、包帯を巻いた野菜たち。
 間違えないよう、よーく狙いを定めて。

「展開だー」

 セレシェイラの号令と共に、桜色が厨に舞う。
 中空を飛ぶ野菜たちは、当然ひらりとかわしてくるけれど。
 ぐるんとカーブを描いて。桜色の弾丸は、幾度でも。狙う野菜の元へと舞い戻る。

「ゲゲッ、しつけーゾ!」

 こうなると野菜たちも、もう子狐を狙うどころではない。
 桜色の弾丸に追い立てられながら、あっちにぴょんぴょん。こっちにふらふら。
 すんでの所で、弾丸をかわし続ける。

「……まぁ、そう簡単にいうことを聞く感じではないな」

 収穫しろというのなら、大人しく弾丸に捕まればいいものを。
 往生際の悪い野菜たちに、肩をすくめながら。柘榴がはらりと広げて見せたのは、幾枚もの札。
 扇のように広げたそれから、抜き取った一枚に、力を籠めれば。
 その呪符に描かれし文様が、妖しく光る。
 
「収穫の時間じゃ。出でて、喰らえ」

 柘榴の呼び声に、応えるのは悪しき鬼。
 実体無き門より現れた鬼たちが、野菜たちへとしがみつき。その体に齧りつく。
 
「イデデデデデっ!?」
「おとなしくするなら、マヨネーズをつけてかじってやるぞ?」

 野菜たちの慌てふためく様に、柘榴は愉快そうにころころと笑う。

「なら、しっかり火も通しましょう」
 ただし、その肉体ではなく。そこに憑りついている者に。

 赤い火の粉が舞う。
 軽やかに地を蹴ったリゼの体は、無尽に飛ぶ桜色の中をするりと抜けて。
 赤々と靡く髪と、舞い散る火の粉が重なって。赤い残像を生む。
 桜と炎の舞う中に、蝶の影を見たものは。次の瞬間、白い刃に貫かれていた。

「踊りましょう?」

 リゼが剣を振り抜けば、臙脂のケープがひらりと翻る。
 子狐たちの『もてなし』を、しっかり受け取るのならば。
 今はより早く、より軽やかに。罪を灼き斬る炎刃と共に、リゼは舞う。
 きっとそこには、みんなの笑顔と。心があると信じて――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
各地で様々なものが奪われているようですが満腹という感覚もとは
今はまだ大事になっていないようですが、その内に餓えになれば
深刻なものになるでしょうね

原因の骸魂の前に、まずはあの野菜を片付けましょう

子狐達には退避するように倫太郎殿と手分けして
指示をしながら戦闘に向かいます
よもや西瓜さえも倒す敵になるとは思いませんでした
倫太郎殿もお料理ができるのですから手早く料理しましょう

抜刀術『風斬』
攻撃回数を重視、2回攻撃となぎ払い併せて多くの敵を攻撃しましょう
気絶してしまった子狐が紛れているかもしれませんので
見切りにて動きを読み、トンカラトンを狙います

敵からの攻撃は残像にて回避、隙あらばカウンター


篝・倫太郎
【華禱】
……西瓜割り、なるほど
メロン割りと南瓜割りも出来そうだけど、まぁいいや
時期的には西瓜割りって季節だし

さってと、子狐コンコン、はちっと下がってな?
俺らを歓迎したいって気持ち、無駄にはしねぇからよ

胃袋掴むとか言う声も聞こえなかった訳じゃねぇけど
まぁ、気持ちは気持ちで大事デショ

拘束術使用
射程内の敵全てを鎖で先制攻撃と同時に拘束
拘束から逃れた敵は
衝撃波と鎧無視攻撃を乗せた華焔刀でなぎ払い
夜彦と手分けして確実に数を減らしてく

叩き斬るのは料理って言わないと思うけど

子狐を巻き込まないように注意して立ち回り

敵の攻撃は見切りと残像で回避
回避することで狐達に攻撃が向かう場合は
その場でオーラ防御で防いで凌ぐ



「各地で様々なものが奪われているようですが……」
 最近発見されたばかりである、この妖怪たちの世界。
 猟兵たちの間でも、既に事件を解決してきた者。これから赴く予定の者も多くおり、話題にも上りやすい。

 様々なものが、溢れかえったり。あるいは奪われたり。
 呼吸するように、超常現象の起こる世界であることは、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)も十分に知っているつもりであったが。
 よもや、満腹という感覚までもが奪われてしまうとは……。
 この世界の、果ての見えない可能性には、驚かされる同時に感心してしまう。

 食事によって、満足を得られなくなる世界。
 言葉にしてみると、それほど大事な異変ではないようにも聞こえるけれど。

 例えば、大事な人と。家族と食卓を囲む、その時間に。
 満足を得られない世界と言えば、どうだろう。
 それは、体ではなく、心の餓え。
 即効性こそないものの、確実に世界を蝕む脅威となるのだろう。

 ならば、この厄災の芽。小さい内に、狩らねばならない。
 ちらりと、篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)へと視線を向ければ。
 視線がぶつかる。その一瞬で、数多の戦場を駆けてきた二人の呼吸は、自ずと合う。

 先に飛び出した、倫太郎の放つ鎖が、野菜たちを締め上げる。
 いかに空中を動き回る野菜たちでも、厨中に鎖を巡らされては一溜まりもない。

 結界のように張り巡らされた鎖の中に、ぽっかりと空いた。たった一本の道。
 人一人が辛うじて通れる程度のその道を、夜彦が駆けた。
 まるで、鎖が見えているかのような動きだが、倫太郎の放つ鎖は、不可視のそれ。全く見えてなどいない。
 だが其処には、彼の放つ技が、自分の歩みを阻むはずがないのだという信頼がある。

 ゆえに、その足はいっそう強く地を蹴って。
 野菜が悲鳴を上げるよりも速く、抜き放った銀の煌めきはその西瓜の身を断った。

 力を失った西瓜が、地に落ちる。その間にも。
 夜彦は、周囲へと気を巡らせる。
 ここには猟兵たちだけでなく、戦う力の乏しい子狐たちも取り残されているのだ。

 料理台の端から、ちらりと覗く。隠しきれていない尻尾を見つけて。
 振り向きざまに、もう一体の西瓜を斬り伏せながら、そちら側を背に庇う。 

「でっかいのが行ったコン!」
「猟兵、危ないコン!」

 こんこんと、叫ぶ声に。倫太郎が一歩横に避ければ。
 そのこめかみスレスレを、刀の切っ先が過ぎていく。

 どうやら西瓜の一体が、勢いよく突っ込んできたらしい。
 あっさりと倫太郎にかわされて。そのまま倫太郎の眼前へと飛び込む形となった西瓜は、振り下ろされた薙刀の一撃にあっさりと沈んだ。

 振り返ってみれば、そこに居るのは二匹の子狐。
 調理台の影から顔を半分出して、上目遣いに倫太郎たちを見上げている。
 恐らく隠れているつもりなのだろうが。ぴんっと立った、ふかふかの耳がだいぶ目立っていた。

 応援してくれる気持ちは、ありがたいのだが。
 そのようにひょっこりと頭を出されては、いつ野菜の攻撃に晒されるかと、心配になるというもの。
 倫太郎は、こんこん警告してくれた子狐たちの頭をわしわしと撫でた。

「もちっと頭下げてな? 俺らを歓迎したいって気持ち、無駄にはしねぇからよ」

 そのまま、ぽふぽふと軽く頭を叩いてやれば。子狐たちは素直に頭をひっこめる。
 これで子狐たちが襲われる可能性も、少しは減るだろう。
 だが、改めて野菜に向き直った倫太郎の耳に、何やらひそひそこんこんと。話し声が届く――。

「猟兵、歓迎されてくれるコン?」
「胃袋つかめるコン?」

 ……今、胃袋つかむって言った?

 え、ダレの? 夜彦ノ?
 ドウイウコトナノ? サセネーヨ?

 いやいやいやいや。
 もう一度、気を引き締めて。薙刀を構え直す。

 妖怪とは言え、子供の言葉だ。そこは、御もてなしの気持ちという事だろう。
 今はそういう事にしておく。気持ち、大事。

 強く踏み出し、突き出した薙刀は、西瓜の胴体を貫いて。
 振り抜く反動のままに、夜彦の背中に、ぴたりと背を合わせれば。

「よもや西瓜さえも倒す敵になるとは思いませんでした」

 凛と通る夜彦の声が、倫太郎の耳をくすぐる。
 思わず零してしまった倫太郎の笑みは、背中越しに夜彦へと伝わったのだろう。

「倫太郎殿もお料理ができるのですから、手早く料理しましょう」
 そう言いながら、少し押し返された背中に、何だか窘められたような気分になって。
 倫太郎は、こそばゆいような。なんとも微妙な表情を浮かべる。
「叩き斬るのは料理って言わないと思うケド。どっちかっつーと……」

 太陽の日差しは、日に日に強さを増して。緑がいっそう濃くなった。
 じりじりと焼け付く肌を、そっと風が撫でれば。軒下で、ちりんと涼やかな音がなるこの時期に。相手にするのがスイカと来れば……そう。グリモア猟兵も、そう言っていた。


『スイカ割り』

 ……。
 何だろうか。

 『スイカ割り』という言葉が倫太郎の口から飛び出した瞬間、奇妙な既視感が二人を襲う。
 確か以前も、これくらい活きの良い西瓜を相手にしたことがあったような気がする。

 いや。それは果たして、本当にスイカであったのか。
 何故か記憶が少し曖昧だが、一つ思い出したことがある。
 西瓜割りとは、勢いこそ正義であると。

 再度、倫太郎の放った鎖が、ぶんぶんと唸りを上げて西瓜たちへと迫る。
 動きを止めた西瓜たちに、容赦のない衝撃波を浴びせれば。
 崩れた包囲網から、一陣の風が飛び出した。

 宵色の髪を靡かせて。夜彦の抜いた刃が、光の一線を引けば。
 その駆けた道には、見事な八等分となった西瓜たちが、転がったという――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
確かに、慣れてないと大変ですよねぇ。
『代償』で『満腹中枢の機能を失う【UC】』を所持しておりますから、良く解りますぅ(遠い目)。

『F●S』3種を展開、『FSS』は子狐さん達の護衛に、残りは私の傍らで交戦に使いますぅ。
そして【秤濤】を使用し『魅了』と『超重力空間』による[範囲攻撃]を『連続(=[2回攻撃])』で行いますねぇ。
『魅了』で子狐さん達に向かわせず此方に気を惹ければ十分、同士討ちを誘えれば最良でしょうかぁ。
続けて『超重力空間』で地面に押さえこめば殆どの動きが封じられる筈ですぅ。
後は『超重力空間』を強めての[重量攻撃]なり、『FRS』の[砲撃]なりで仕留めますねぇ。



 ふぅ……と。
 頬に手を当てて、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は大きなため息を付いた。

 『満腹』の奪われてしまった世界。
 今はまだ、奪われてからそれほど時間も経っておらず、影響も小さいようようで。
 この世界が、どれほど恐ろしい状況に置かれているのか、正しく理解できている者は少ないのかもしれない。

 だが、るこるは違う。
 それが、どのような結果を招くのか。その身をもってよく知っている。

(確かに、慣れてないと大変ですよねぇ)
 今この瞬間。
 この世界のどこかで、自分と同じ思いをしている者が出始めているのかもしれない。

 大人と言うにはまだ早く。しかし子供とは言い切れない、微妙な年ごろのるこるにとって、『カロリー』と『体型』という二つの言葉は、常に天秤の両端でゆらゆら揺れているもの。
 とても他人事とは思えないこの状況に、やはり溜息が零れる。

 だが、この状況を打破するための方法は、至ってシンプルに示されている。
 るこるは素早く、戦いの為のシステムを起動する。

 まずは子狐たちの元へ。
 るこるの駆ける間に、完全に立ち上がったシステムが光の盾を発生させて。

「もうだいじょうぶですぅ。盾の後ろに居てくださいねぇ」
「コン?」
「まもってくれるコン?」

 八枚もの光の盾が、しっかりと子狐たちを覆って。
 るこる自身もまた、野菜たちの接近を阻むように、子狐たちの前に立つ。

「トンカラトンと呼べえええええ!」

「また来たコン!」
「猟兵、気を付けるコン」

 子狐たちの声援を受けて。るこるは次のシステムを立ち上げた。
 電子存在である、るこるのデータに干渉し、その両腕に現れるのは巨大な砲門。
 さらには、空中にずらりと並んだ砲台――その数、十六基。

「うゲッ。何だアレ!?」

 その砲塔が、ガラガラと音を立てながら自分たちの方を向いている事に気付いて。
 西瓜たちも焦りを見せる。
 だが、退避するには、既に遅かった。

「逃がしませんですぅ」
 同時起動したもう一つのシステムが、光子の刃を具現化させて。
 いつの間にか、西瓜たちの後方へと回り込んでいる。

 前には砲台。後ろには光刃。
 進むも地獄。退くも地獄の西瓜たちに、るこるが最後通牒を突きつける。
 放たれた乳白色の波動は、厨中へと広がって。包帯巻きの野菜だけを、重力空間へと叩き落とした。

「うッ……ガッ、動け、ネェ……」

 るこるの両腕が、地に伏した西瓜たちへと向けられて。
「観念してくださいねぇ」
 その発砲音は、厨中へと響き渡った――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリシャ・パルティエル
アカネちゃん(f05355)と

満腹のない世界…
好きなもの食べ放題で素敵じゃないと思ったけど
いくら食べても満足できないのは困るわ
料理をずっと作らなきゃいけないし
作ってるそばからつまみ食いばかりしちゃう

元の世界に戻さなきゃね
そうねこれは戦いというよりお料理なのよ
UCで聖なるナイフを作って
アカネちゃんが切ってくれた食材を小さくするわ
これが半月切り
こっちは乱切りよ
そうそうアカネちゃん上手だわ!

子狐さんたちは安全な場所にいてね
余裕があれば切った食材を確保してもらえる?

トンカラトン?
料理さしすせそみたいなもの?
よくわからないけど…
そうね、みんなまとめてやっちゃいましょう
お望み通り美味しい料理にしてあげるわ


アカネ・リアーブル
エリシャ様・f03249と
小狐さん達をもふ…もといお守り致します

彼らはお料理されたがっているご様子
エリシャ様
久しぶりに料理を教えてくださいませんか?
包丁…は無いのでこの薙刀で
まずは半分に切ります
狙いを定めて「なぎ払い」
舞薙刀を横薙ぎに
続けて「2回攻撃」でくし切りに
こうでよろしかったでしょうか?

UCを使って来ましたら指定UC
お料理上手なエリシャ様をお讃え致します
この方は美味しいご飯を作れるのですよ
せっかく美味しく実ったのです
美味しく食べられたくはありませんか?

ところでトンカラトンとは何でしょう?
西瓜がトンで南瓜がカラ、舐瓜がトンですね!

美味しく実ったお野菜は
アカネ達が美味しく食べて差し上げますね



「オレたちヲ収穫しロォォ!」
「わーん、こっちくんなコン!」

 ケタケタ、こんこん。
 包帯巻きの野菜が、不気味に笑って空を飛び。
 小さな狐たちは、半べそをかいて逃げまわっている。

「子狐さんたちに意地悪をするのは、おやめくださいませ」

 駆け付けた厨の中は、想像していた以上の混乱と喧騒に満ちていて。
 アカネ・リアーブル(とびはねうさぎ・f05355)は思わず、野菜たちの前へと立ちはだかった。
 小さくもふもふな狐たちのピンチなのだ。このまま見過ごす訳にはいかない。

「みんなは、安全な場所にいてね」
 エリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)もまたアカネと共に並び立ち、子狐たちを安心させるように穏やかに声を掛ける。

「わかったコン」
「猟兵、ケガするなよコン」

 子狐たちが、わたわたしながら料理台へと身を隠す中、邪魔をされた野菜たちが怒りを顕わにする。

「オ前ら、邪魔すんナ!」
「トンカラトンと呼べェ!」
「「トンカラトン?」」

 ガチガチと口を開け閉めして、威嚇してくる野菜たちに。
 しかし二人は、きょとりと顔を見合わせた。

 トンカラトン。知らない言葉だが、印象に残る響きがある。
 この場所が厨――キッチンである事を考えると、料理に関する言葉だろうか?

「料理さしすせそみたいなもの?」
「いヤ、名前なんダガ」
「俺タチ、マイナーだったノかぁ……」

 首を傾げたエリシャに、地味に精神ダメージをくらいながら。
 野菜が思わず、素でツッコミを入れる。

「名前……」
 トンカラトン。何ともリズミカルな、見事な三拍子の響き。
 目の前に並んだ野菜トリオと、それは名前であるというヒント。
 ここから導き出される答えは――。

 アカネは表情を明るくさせて、ぽんっと手を叩く。

「西瓜がトンで南瓜がカラ、舐瓜がトンですね!」
「違ウわ!!」
「なるほど。名推理ね!」

 いやいやいやいや、と。
 野菜たちは首――もとい、頭を思いきり横に振って否定しているが。
 真実に辿り着く事が出来た。その達成感と爽快感に満たされた、アカネとエリシャには届かない。

「謎も解けた事だし、みんなまとめてやっちゃいましょう」
「エリシャ様、久しぶりに料理を教えてくださいませんか?」
 どうやら、彼らはお料理されたがっているご様子、と。
 期待に満ちた藍色の瞳で、アカネがエリシャを見つめる。

 初夏にまた一つ年を重ねたアカネは、また一段と大人っぽくなったように見えるのに。こうして、エリシャを頼ってくれる。その表情は、少女の頃のあどけなさが残っているようで。
 こんな風に頼りにされては、年長者として。お姉さんとして、張り切ってしまうというもの。

 先ほどから「だから違ウ!」とか、「西瓜と舐瓜が被ってるダロ!」とか。
 周囲がごちゃごちゃと、煩いような気もするけれど。
 今こうしている間にも、猟兵たちの活躍によって活きの良い食材はどんどん少なくなっていくのだ。

 料理は、手際が大事。周囲の雑音を振り払い、集中力を高めて。
 エリシャはその手に、迷える野菜を救うもの――聖なるナイフを具現化させた。

「よろしくおねがいします!」
 エリシャの姿に習って、アカネもまた包丁代わりの薙刀を構える。
 料理の心得……まずは基本編から。食材は、均等な大きさに切りましょう。

 静かな。横薙ぎの一閃。
 微かな風切り音の直後、西瓜がぱかっと上下に割れた。
 けれど、これではまだ大きい。大きすぎる。

 くるりと体を回転させて、西瓜の方へと向き直る。
 狙うは野菜の中心点。斜めからの切り下ろし。

「こうでよろしかったでしょうか?」
 更に返す刃で、逆袈裟に振り抜けば。
 見事に均一に切りそろえられた、くし切り西瓜の出来上がり。

「そうそうアカネちゃん上手だわ!」

 下拵えは完璧。あとは綺麗に盛り付けるのみ。
 最後の仕上げは、エリシャの出番。ここは先生として、良いお手本になりたいところ。
 具現化させたナイフをその手に。金色の目で、しかとスイカの切り頃を見極めて――。

 銀の光が、厨を駆ける。
 それはまさに、流星のように。瞬きの間に消えてしまう、一瞬の煌めき。
 光の消えたその後に。エリシャの手にしたナイフからは、ぽたりと。一滴の果汁が落ちた。

「見エな、カッタ……」
「これが半月切り。こっちは乱切りよ」

 力を失った西瓜が、地に落ちて。鮮やかな赤い切り口を晒す。
 フルーツ妖怪盛りの完成である。

「子狐さんたち、余裕があれば切った食材を確保してもらえる?」
「わかったコン」
「まかせるコン」
「待て。俺たちは吸血西瓜って妖怪で、あ゛ぁーー……」

 エリシャの呼びかけに、子狐たちがひょこりと顔を出す。
 猟兵たちが優勢なのを見て、どうやら子狐たちも元気を取り戻したらしい。
 オブリビオン化が解けて、元の姿に戻った吸血西瓜たちを、子狐たちは勢いよくごろごろと転がして運んでいった。

「お前ラ調子にノんなァァぁ!」

 既に自分たちに勝機は無いと、薄々感づいているのだろう。
 包帯巻きの野菜たちが、怒り任せに刀を振り回し始める。

 厨の壁や床。詰み置かれた普通の野菜たちが、次々と斬りつけられ。傷を負ってゆく。
 そんな悲しい光景に、アカネは少し頬を膨らませて。前へと進み出た。

「せっかく美味しく実ったのです、美味しく食べられたくはありませんか?」
「ウ゛っ……」

 アカネの呼びかけに、野菜たちがピタリと動きを止める。

「デも、俺たち……」
「収穫もサレナかったから、妖怪ニなったんだモン……」

 しくしくしくしく、と。すすり泣きを始める野菜たち。
 美味しく食べられたかった。けれど、収穫すらされなかった。
 どうやらこの妖怪は、そんな野菜たちの無念から生まれたらしい。

 そういう事なら……と。
 中々泣き止みそうにない野菜たちを安心させるように、アカネは優しく微笑んだ。

「この方は美味しいご飯を作れるのですよ」
「信じてくれるなら、腕によりをかけて料理させてもらうわ」

 自分の事のように、胸を張って主張するアカネの言葉に応えながら。
 エリシャは、ふと思う。

 この満腹の無い世界ならば。
 こんな無念を抱く野菜も、現れないのではないだろうか。
 そうであるなら、好きなものを食べ放題のこの世界は、素敵な世界のようにも思える。

 ……けれど。
 いくら食べても満足できないのならば。
 それは、『美味しく食べた』事になるのだろうか?

 美味しかったね、と笑って。ごちそう様も言えない世界。
 作る方だって、ずっと料理を作り続けなければならないのだ。
 つまみ食いだって進んでしまう。

(元の世界に戻さなきゃね)

 作った料理を、誰かが美味しいと言ってくれる。
 笑ってくれる世界に、戻すために。
 エリシャとアカネの賑やかなお料理は、捻くれた野菜たちをすっかりと使い切るまで、あともう少し続くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『寝惚堕ねこデラックス』

POW   :    ぱーふぇくとぼでぃ
自身の肉体を【物理攻撃を無効化するわがままボディ】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
SPD   :    たたかうのめんどー
【自身を含む対象の脂肪と体重を増やすオーラ】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
WIZ   :    みんないっしょになぁ〜れ
【自身を含む対象の脂肪と体重を増やすオーラ】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は雨音・玲です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちの活躍により、凶暴な野菜たちは見事に調理されて。
 狐たちの厨には、一時の平穏が訪れた。
 しかし、未だに世界からは『満腹』が奪われたまま。
 早く決着を付けなければ、また直ぐに新たなオブリビオンが現れる事だろう。

「猟兵、ほんとに行くのコン?」
「きっと怖い奴がいるコン。気を付けるコン」

 こんこんと。狐たちの声援を背にして、猟兵たちは駆ける。
 グリモア猟兵の予知によれば、この事件の元凶である『寝惚堕ねこデラックス』 は、狐の里のすぐ隣にある、猫又たちの里――『超高層キャットタワー』に居ると言う。

 既に、普通の猫又達は避難した後なのだろう。
 周辺に、一般の妖怪たちの姿は見えず。ただ、何とも奇怪な声だけが、響いていた。 

「んごぉぉぉ。んがががが。
 んごぉぉぉ。んがががが。
 んごご……」

 ……怪獣の唸り声かと思う。凄まじい声。
 なんとも嫌な予感に襲われながらも、猟兵たちはキャットタワーの最上階へと足を運ぶ。

「んごご……うがっ、がっ。
 そんなぁ……うにゃうにゃ……急に、告白とかされてもぉ~。
 ウチぃ、困る……わぁ。
 うぇへ。うぇへへへへへへへへ……」

 そこには、ぶよぶよボディの猫又がいた。しかも、爆睡していた。
 口元を涎でテカテカとさせて。何やら幸せそうな寝言を零しながら。
 ごろり、と。寝返りをうてば、服に収まりきらない脂肪が、たゆんと波打つ。

 ……うわぁ。
 ある者は心の中で。またある者は、思わず口に出していた。

 酷い。これは酷い。
 もう卑怯でも何でもいいから、このまま倒してしまっていいのではないだろうか。
 そう思った者も居たかもしれない。

 しかし、そんな願いも空しく、猟兵たちの気配に感づいたのか、オブリビオンがうにゃうにゃと目を開く。
 口元を拭い、寝ぼけた目を擦りながら。寝惚堕ねこデラックスが、ゆっくりと猟兵たちを見回して――。

「……あれ。石油王はどこ?」

 ……いけない。本当にグダグダになる予感しかしない。
 果たして、このオブリビオンを前にして、まともな戦闘は出来るのか。
 猟兵たちに緊張が走る。

 だが、油断してはいけない。
 寝惚堕ねこデラックスのふざけた態度はともかく、脂肪と体重を増やすオーラ自在に操る力は猟兵たちにとって脅威となるだろう。
 人によっては、精神へのダメージも計り知れない。

 寝惚堕ねこデラックスを倒してしまえば、脂肪も体重も全て元に戻るとはいえ。
 一瞬でも、たぷたぷボディになるのは耐えがたいという者は、オーラをかわすか、あるいは防ぐか。しっかりと対策を立てて挑む必要がある。

 色々な意味で、負けは許されない。
 猟兵たちの戦いが始まる――。
木霊・ウタ
キツネさんチーム

心情
…ったくなんて言うか凄いな
もとい猫又救出だ
行こうぜジンライ

戦闘
獄炎纏う焔摩天で薙ぎ払う

炎壁で武器受け
オーラを獄炎が浸食し焼却
仲間も庇う

わがままボディ
麻痺の隙に無効化上等で幾度もの剣撃や焔で畳みかけ
その体を融かし変性させ伸縮性や弾力性を削ぐ

ゴムってのは高温で融けちまうんだぜ?

連携
「応!」
露出したその奥に刺突
剣尖から地獄の炎を全開放
内部から焼き尽くす

DX
満腹を奪ったら
アンタだってもっと喰っちまうだろ
更に太るぜ?
標準にはならないな

事後
鎮魂曲を奏でる
骸の海で安らかに

猫又>
妖怪もメタボってあんの?
けどまあ
もしなりたい憧れの自分があるなら
そんな未来を紡いでいけるんだぜ
消えぬ情熱があれば


叢雲・凪
チーム名:キツネさんチーム

ウタ君もこの依頼を受けていたのか…
※凪とウタ君は度々連携している。

親玉は強敵だ連携していこう。

「どうも はじめましてヨコヅナ・オブリビオンさん ジンライ・フォックスです」(真顔)
寝惚堕ねこに向かい合い礼儀正しく挨拶(礼儀作法)

ブリーフィングでヤツのユーベルコードは把握している。
ボクの体重を増やされると速さを削がれる事になる… かなり致命的だ。

雷切(苦無)を投擲+マヒ攻撃+属性攻撃で投げつけ感電させる。麻痺させれれば十分だ。

この隙にウタ君と息を合わせて一気に畳みかける。

マフラーを解いて夜天九尾を発動 脂肪に数千発の拳を叩き込み…

「ウタ君今だ!!」(最深部を露出させる)



「……あれ。石油王はどこ?」

 寝ぼけ眼のまま、オブリビオンがむにゃむにゃと呟く。
 幾多の戦場を駆けた猟兵とて、これほど緊張感のないオブリビオンと相対する事は珍しいかもしれない。

「……ったくなんて言うか凄いな」
 どのような状況でも、自分のペースをあまり崩す事のないウタも。流石にこの状況には、「凄い」としか言葉が出ない。

「親玉は強敵だ連携していこう」
 猟兵たちの間に、呆れと困惑が広がっていく中で、凪がウタへと駆け寄る。

 日々、多くの事件が発生し。大勢の猟兵たちが、様々な世界を行き来する中で。一度共に戦った相手と、再び戦場を共にする偶然は、多いようで少ない。
 時には、同じ戦場に居ながら、互いに気付く事も出来ずにすれ違ってしまう事さえあるのだから。

「おう、猫又救出だ。行こうぜジンライ」

 振り返るウタが、凪の名を呼ぶ。
 一人の少女としてではなく、猟兵としての名前を。

 暗黒の竜巻と、強大なドラゴンが支配する地に続いて。
 こうしてまた、偶然に出会えたことは、嬉しくて。
 同時に、猟兵として並び立てる相手が居る事は、とても頼もしい。

 ウタの、その元気な掛け声に。ぐだぐだした空気に引きずられていた気持ちが、一気に引きしまる。
 こんな態度の相手でも、強敵は強敵。
 油断せずに、凪は戦いの構えを取る……その前に。
 
「どうも はじめましてヨコヅナ・オブリビオンさん ジンライ・フォックスです」
「ヨコヅ……えっ、ウチの事!?」

 ピシャーン、と。
 落雷にでもあったかのように、堕ねこデラックスが身を震わせて、くずおれた。
 言葉にならない声の代わりに、その悲しみを表すように、無駄な腕の肉がぷるぷると震える。

「あれ?」
 凪は至って真面目に。全く他意はなく、ただ丁寧に挨拶をしたつもりだったのだが。
 「ヨコヅナ」という表現が、稲妻のごとき鋭さで、堕ねこデラックスの心に突き刺さってしまったらしい。
 意図せず放たれてしまった、痛烈な先制攻撃であったが。

「ヨコヅナ違うもん。みんな、ひょろひょろなのがいけないんだ……」

 ようやくこれで、戦いの火蓋が切って落とされたようだ。
 ぶつぶつと、うわ言を零しながら。堕ねこデラックスの周辺に、奇妙なオーラが立ち上り始める。

 俊敏性は皆無のくせに、開き直りの速度だけは一級品であるらしい堕ねこデラックスの放つオーラは、瞬く間に膨れ上がって。
 猟兵たちを肥え太らせんと、容赦なく襲い掛かってきた。

 そのオーラの効果を、猟兵たちは既に知っている。
 堕ねこデラックスと対峙するうえで、最も警戒すべきものだと、誰もが認識していた。
 とりわけ、『速さ』を力とする者ならば、尚の事。
 一度でも喰らってしまえば、それは致命的な隙になると。本能の鳴らす警鐘のままに、凪は後ろへと飛びのいた。

 それとは対称、ウタの足は前へと進む。
 巨大な剣を、足場へと突き立てれば。刻まれし文字より炎が噴き出して。迫りくるオーラに立ち塞がる壁となる。

 天を衝く様に噴き上がる炎が、実体無きオーラを焼き焦がす。
 炎熱は、ウタの髪を揺らして。普段は見えない傷跡を、熱風が撫でていった。

「満腹を奪ったら、アンタだってもっと喰っちまうだろ」
「そ、そんな事……」

 炎の壁で、オーラを押し返しながら。ウタはしばし、堕ねこデラックスの言葉の続きを待ってみる。
 だが、堕ねこデラックスは明後日の方向に視線を泳がせるばかりで、言葉を続ける気配はなく。
 どうやら、己の自堕落っぷりに、それなりの自覚があるらしい。

「更に太るぜ?」
「う゛っ……」
 まるで、見えないナイフが突き刺さったかのように、堕ねこデラックスが胸元を抑えた。
「標準にはならないな」
「う゛ぅっ……聞こえない! ウチなーんにも聞こえないっ!!」
 すかさず放たれた追撃の一言に、とうとうクッションに顔を埋めて、耳を塞ぐ堕ねこデラックス。

 ――どんな理想も、情熱をもって進み続ければ。きっと、そこにたどり着けると。
 ウタはそう思うのだ。妖怪だって、そこに違いはないと。
 けれど、これでは……オブリビオンと化している、今のままでは。どんな言葉も届きそうにない。

 傍目からは、完全に肉団子にしか見えない姿だが。
 猟兵たちから視線が逸れ、耳まで塞いでいる今こそ好機。

 凪の放った漆黒の苦無は、風を切り、堕ねこデラックスの体へとめり込んで。
 ぽよんっと弾かれたその瞬間、堕ねこデラックスが「ぅに゛ゃ!?」と声を上げた。

 苦無の纏う黒雷が、その自由を奪って。オーラが消えたその隙に、ウタが駆けた。
 体ごと回転させて、回す剣が炎の軌跡を生む。

 ぷにぷにの体に、刃そのものは弾かれる。
 だがその炎熱は確実に、堕ねこデラックスを蝕んで――。

「ゴムってのは高温で融けちまうんだぜ?」
「えっ、ウチもしかして丸焼きにされてっ……」

 言葉は、途切れた。
 それよりも速く、漆黒に爆ぜる黒い尾を靡かせて。目にも映らぬ速さで飛び込んできた凪の拳が、堕ねこデラックスを捉えていたから。

 物理の攻撃である以上、堕ねこデラックスにダメージを与える事は出来ない。
 だが、ダメージは通らずとも。数え切れぬ拳が生む凄まじい衝撃が、堕ねこデラックスの巨体を空中へと跳ね上げて。

「ちょっ、ネコは焼いても美味しくなっ――」
「ウタ君今だ!!」
「応!」

 体を支えるものが何もない空中で、無防備になった堕ねこデラックスの巨体が、重力に引き寄せられて落ちてくる。そこに。
 ウタが突き出した巨大な剣は、深々と堕ねこデラックスの体を抉った。

 刃そのものでは、やはり。ダメージを与える事は出来ないけれど。
 その巨体の、最深部にまで届く刃に灯る炎は。堕ねこデラックスを中から蝕み、燃やし尽くす劫火となる。

 それは、迷える魂を骸の海へと還す。葬送の灯。
 その帰り道を照らすように。炎はどこまでも高く、燃え上がるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エリシャ・パルティエル
アカネちゃん(f05355)と

猫又って猫ちゃんの妖怪でしょ?
どうしてこんなぷにぷにに…
気まぐれを通り越して怠惰が過ぎるわ
みんなぷにぷにたゆたゆの世界はごめんだから
満腹を取り戻すわね

アカネちゃんありがと!
アカネちゃんまでぷよぷよの自堕落に?
しっかりしてアカネちゃん
今年は水着着てみんなで遊びに行くの楽しみにしてるから
こんな攻撃に負けちゃだめよ!

あとでちゃんと戻るらしいから…
ここは相手も強制的に運動させてあげないとね
アカネちゃんダンスが得意だもの
一緒に踊ってあげてくれる?

UCで真実を映す鏡を作製
これがあなたの今の姿よ
だらしなさが招いた結果
夢見るのも結構だけど
自分から動かないと石油王とも出会えないわよ


アカネ・リアーブル
エリシャ様(f03249)と
猫ちゃんの妖怪…
ガキにゃんこが取り憑いたのでしょうか?

オーラからエリシャ様をお庇いしてデラックスな体に
ぷよぷよです!頭も体も重くて動くのが億劫で
隣で一緒に自堕落してしまいます
おやつがおいしいにゃ

エリシャ様の声で我を取り戻し
今年はアカネも水着を新調したのです
着れなくなるのは嫌です!
ここはエクササイズですね!

UC発動
がんばって舞薙刀を持ち
精一杯翼を動かして空中をぼよんと加速
よいしょとジャンプして
折を見てランスチャージ&空中戦で攻撃
重い分加速がついて威力は上がるはずです!

はちきれんばかりの脂肪をつまんで
美味しいご飯がこんなにしてしまうのですね
満腹がない世界…なんと恐ろしい



 そのオブリビオンは、とんでもなくぷにぷにだった。
 揺れる霜降り、見えてるフォアグラ、さながら歩くリブロース。

「猫又って猫ちゃんの妖怪でしょ? どうしてこんなぷにぷにに…」
 想像以上のぷにぷに加減に、どう料理したものか……と。
 料理好きのエリシャも、流石に頭を悩ませる。

「猫ちゃんの妖怪……ガキにゃんこが取り憑いたのでしょうか?」
 アカネもまた、首を傾げながら。このカクリヨと隣り合わせの世界に居た、お菓子の大好きなもふもふ猫を思い出していた。
 確かに、毛色はよく似ているし、まったりとした目つきも似ているような気がする。

 真偽のほどは分からないけれど。
 とにかくこのオブリビオン――堕ねこデラックスを、何とかしなければ。カクリヨ世界に平和を取り戻す事は出来ないのだ。

「あーもう。たたかうとかムリ。めんどー」

 何とか突破口はないかと、戦いの構えを取る猟兵たちに。堕ねこデラックスは、気の抜けた言葉ばかり並べてくる。
 とても戦闘中とは思えない、緩み切った空気の中。静かに、むくむくと膨らんでいた堕ねこデラックスのオーラが、猟兵たちへと忍び寄って――。

「エリシャ様、危ない!」
「アカネちゃん!?」

 寸での所で、オーラの魔の手に気付いたアカネが、身を投げるようしてエリシャを庇った。
 気付いたエリシャが、アカネへと手を伸ばすけれど。時すでに遅し。

 ぷにっ。
 その手に、とても柔らかな感触を得て。エリシャは思わず、手をにぎにぎと動かしてみる。

 ぷにぷに、ぷよんっ。
 ほどよく弾力があって、とても柔らかい。
 まるで、大きなマシュマロのような、これは……。

「アカネちゃんまでぷよぷよに!?」
 咄嗟に掴んだ、アカネの腕だった。

 エリシャのよく知る、すらりとした姿は失われて。
 その手足も、お腹も。堕ねこデラックスに負けないくらい、ぷよぷよに膨らんでしまっている。

「これは……何とも……」
 急激に重たくなってしまった体に、感覚が付いていかない。
 よろめく体を、何とか支えようと。アカネはぷにぷにの足を、何とか動かしてみるけれど。
 一歩、二歩……三歩目で、もう息が上がってくる。

 体は思う様に動かないし、酸素も足りない。
 何だか頭もぼーっとしてきて……おっと、こんな所に可愛いネコさんクッションが。

「ようこそ、こっち側にー。あ、おやつ食べる?」
「おやつおいしいにゃ」

 ふかふかクッションの誘惑に負けて、ころりと寝転がったアカネに。
 すかさず、堕ねこデラックスがおやつの追い打ちをかける。
 スナック菓子に、チョコレート。甘いとしょっぱいの二重奏が、アカネを無限カロリーの世界へと誘う。

「しっかりして、アカネちゃん!」
 なんという自堕落。なんという怠惰。
 このままでは、取り返しのつかない事になる。

 季節は夏。
 多くの猟兵が、来たる水着コンテストに備えて、ワクワクしながら準備を進めている、この時期。早く世界に満腹を取り戻さなければ、水着姿をお披露目するコンテストは、ぷにぷにボディの展覧会と化してしまうかもしれない。

 もっきゅもっきゅと、お菓子を頬張るアカネは、頬袋を膨らませたリスのようで。
 実はちょっとだけ、可愛いとか思ってしまったけれど。
 楽しい夏を迎えるためにも、アカネに目を覚ましてもらわなければ――。

「今年は水着着てみんなで遊びに行くの楽しみにしてるから、こんな攻撃に負けちゃだめよ!」
「水着っ……!」
 エリシャの魂の叫びに、アカネはハッと、お菓子を貪る手を止めた。

 猟兵たちの間で水着コンテストの話題が上る中、アカネもまた、あっちも良い、こっちも可愛いといっぱい悩んで水着を選んだのだ。
 今はまだ大事にしまってある真新しい水着が、お目見えの日を待っていると言うのに。

 そっと、お菓子を脇に片付けて。アカネは、自分のお腹に手を伸ばす。
 ぷにぷにと、掴めた。
 掴めてはいけない場所のはずなのに、掴めてしまった。

「満腹がない世界……なんと恐ろしい」

 美味しいご飯に罪はないけれど。
 満腹のない世界では、美味しいご飯が世界を滅ぼすのだと、今分かった。
 このままでは、せっかくの水着も着られるかどうか……。

「これはエクササイズです!」

 絶対に、あの水着を着てみんなと遊びに行くのだと。
 アカネの心はめらりと燃える。
 ネコさんクッションに別れを告げて。何とか起こした体は、やっぱり重たくて。何とも怠いけれど。負けてはいられない。
 青い海と白い砂浜が、アカネたちを待っているのだ。

「その調子よ、アカネちゃん」

 エリシャの鼓舞を受けて、アカネは懸命に、背中の白い羽を動かす。
 ぽよん、ぽよんと、弾むお肉の反動も利用しながら。その負荷に負けないように、より高く跳ねて――。

「えー、何かやる気になってる?」

 たたかうのナシなんですけど、と。 
 堕ねこデラックスが、気だるげに『ルール』を告げる。
 懸命に体を動かすアカネの姿を見ても、どうやら堕ねこデラックスには何も響いていないらしい。

 むむむむ。
 これにはエリシャも、眉をしかめる。
 一緒に頑張る仲間がいれば、あるいは堕ねこデラックスも運動してくれるのではないかと、期待していたのだけれど。
 もしかするとオーラよりも何よりも厄介なのは、この『やる気のなさ』なのかもしれない。

 あぁ、偉大なる聖人よ。
 一体どうすれば、この困った猫ちゃんを救えるのでしょう。
 祈るエリシャの問いに、天が示した答えは――澄んだ鏡の形をしていた。

 聖人の奇跡を具現する御業によって、エリシャの手に現れた鏡。
 きっとこれは、誰かを救うには、時に厳しさも必要であるという天啓に違いない。

 鏡を構えた。ただそれだけで、堕ねこデラックスが「うっ」と怯む。
 けれど、心を鬼にして。エリシャはつかつかと堕ねこデラックスに歩み寄った。

「うわっ、知らない妖怪が映ってるっ」
「いいえ。これがあなたの今の姿よ」

 必死に顔を背けようとする堕ねこデラックスに。 全ては、そのだらしなさが招いた結果なのだと。先回りして鏡を突きつけるエリシャ。

「夢見るのも結構だけど、自分から動かないと石油王とも出会えないわよ」
「いーやー、現実が攻めてくるー」
「このままでは、楽しい夏が逃げてしまいますわ」
 
 さぁ、一緒にエクササイズです、と。
 いっそう高く飛びあがったアカネが、バトンのように薙刀を回してポーズを決めれば。
 その切っ先が、ピタリと堕ねこデラックスの方を向く。

「……え?」

 重力のままに、アカネの体が落ちてくる。
 真っ直ぐに。堕ねこデラックス目掛けて。

「ちょ、たたかうのはダメって――」

 どーん。
 言葉の先を待たずに、その体重さえも味方付けたアカネの強烈な一撃が、堕ねこデラックスを貫いた。
 確かに堕ねこデラックスは、オーラの力によって戦いを禁止していたはずだが。アカネがダメージを受けた様子はない。なぜなら――。
 
「これは、エクササイズですから!」

 堕ねこデラックスに、どっしりと乗っかったまま。
 えっへんと胸を張ったアカネの額には、爽やかな汗がキラキラと輝いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
途轍もない唸り声ですね
さぞ、猛獣のような大きな妖怪が眠って……

……これは、なんとも見事な……寝肥?
いえ、女性に対して失礼でした

私の第六感から油断はできないことと、特殊な力に触れるのは危険なようです
それに大きく伸びた際は刃は効かないようですね
攻撃を防いだ後に、反撃をしましょう

視力にて動きを確認、何か仕掛けるようであれば
速やかに水霊『紫水』の水壁にて防ぎましょう
倫太郎にも声を掛けて必要であれば一緒に

これで防ぎ切れるとは思いませんので、貫いてきた際には
武器落としと衝撃波にて攻撃の軌道を逸らして対処

攻撃を仕掛け終わった後、ダッシュにて接近
早業の2回攻撃、刃に破魔と浄化の力を付与させてカウンター


篝・倫太郎
【華禱】
なんつーか、うん
どんな骸魂なのか、考えちゃいけないな、これ

この状態でもちゃんと女性として扱うのな
夜彦のそういうトコすげぇ好き

状態異常力重視で篝火使用
詠唱と同時に
破魔と精神攻撃を乗せた華焔刀を用いた衝撃波で攻撃

物理無効ってな厄介……つか、ワガママ過ぎんだろ!
ワガママ過ぎるのに、戻るの速いとか可愛くねぇ……な!

敵の攻撃は視力を使って見切りと残像で回避
後、野生の勘もフル稼働してオーラ防御!
慢心はしねぇけど、念の為!
出来るだけ心は強く持って生きマス(謎決意※技能:覚悟)

あ、夜彦が敵のオーラ喰らいそうな場合は
オーラ防御使いつつ意地でもかばう

まぁ、どう考えても動き難そうなんで
避けるの最優先だけど!



「んごぉぉぉ。んがががが。
 んごぉぉぉ。んがががが。
 んごご……ふがふが……」

 地鳴りにも似た、腹に響くような声に。夜彦の眼光が、鋭さを増す。
 声の大きさから考えても、体格はヒグマ……いや、それ以上だと思われる。
 鬼が出るか蛇が出るか。
 柄に触れる手に、神経を集中させながら。最上階へと、足を進めれば……。

「……これは」

 そこに広がっていた光景に、一瞬、言葉を失った。
 牙もなく。爪もなく。想像していたような獰猛さは、影も形も見えず。
 全身が、何とも柔らかそうなぷよんぷよんに包まれた、不可思議生物の姿がそこにはあった。

「なんとも見事な……寝肥?」
「あー……」

 率直な感想を零す夜彦に、思わず納得してしまう倫太郎。
 面倒くさがりなぽっちゃり系の猫又が、骸魂に憑りつかれてしまったという話であったが。

 いくら何でも、これは酷い。
 一体何が憑りついたら、ここまでの状況になるのか。
 想像する事を半ば放棄しかけていた倫太郎であったが、「寝肥」という夜彦の感想に「それか」と思ってしまった。納得してしまった。

 真相は分からないけれど。少なくとも、今のオブリビオンの状況を見れば、限りなくそれに近しい骸魂であった事は確かだろう。

「……いえ、女性に対して失礼でした」
「この状態でもちゃんと女性として扱うのな……」

 目を覚ましたオブリビオン――堕ねこデラックスの言動と、辛うじて女性らしさが残っているボディラインから。その性別に気付いた夜彦が、律儀にも発言を取り消す。

 別に倫太郎とて、女性は女性らしくあるべきとか。そんな古臭い考えをしている訳ではないのだが。ここまで凄まじい姿を見せられると、性別以前に、もっと別次元のカテゴリでしか見られないと言うか……。
 夜彦の、どのような相手にも価値観がブレない姿勢には、改めて尊敬を覚える。

 そうこうしているうちに。気付けば、黒い雷と巨大な剣を操る猟兵たちによって、戦端が開かれている。
 このぐだぐだした空気に、いつまでも当てられている場合ではない。
 はやく世界に満腹を取り戻さなければ、このカクリヨの世界は滅びてしまうのだ。

 戦いへと意識を切り替えて、倫太郎が薙刀を振るえば。
 生み出された衝撃は、堕ねこデラックスの体に、むにっと喰い込んで……ぽよんっと弾かれた。

 えぇー……。
 刃から生じた、衝撃の波デスヨ? そんなゴム毬みたいに飛んでく?
 体、何でできてんの? ワガママ過ぎんだろ。

「しかも、戻るの速いとか可愛くねぇな!」

 何事も無かったかのように、あくびをしている堕ねこデラックスの姿に、早くも闘志を砕かれかけている倫太郎。

「倫太郎殿、少々言葉が過ぎるのでは」
「ほんと丁寧かっ! 夜彦のそういうトコすげぇ好き!」
 半ば自棄に、零れなくてもいい本音まで、ぼろぼろと零れている。

 そんな倫太郎の様子に、笑みを誘われながらも。今は戦いの最中。
 夜彦は油断なく、堕ねこデラックスへと視線を向ける。

 その緩んだ態度は、決して戦う者のそれではないけれど。
 倫太郎の力量を以てしても、傷一つ付けられない防御力は侮れない。おそらく、自分の刃も容易には通らないだろう。
 そして何よりも、夜彦の勘が、決して『それ』に触れてはいけないと告げている。
 堕ねこデラックスからむくむくと広がっていく、このオーラに――。

「来たれ、紫水」

 夜彦の呼び声に、こぽりと。水音で応えた精霊が、姿を現す。
 魚の姿をした精霊が、ゆらりとヒレを動かして。空中を掻く程に、水気が溢れて。
 零れ落ちる水が、オーラを止める壁となる。

 拮抗。
 こぽこぽと湧き続ける水が、オーラを押し返そうとするけれど。
 なかなかどうして、それが難しい。
 徐々に薄くなっていく水の壁。突破されるのは時間の問題だろう。 

 そこに、倫太郎が前に出る。
 倫太郎の勘もまた、このオーラに決して触れてはいけないと、そう告げている。
 告げているのだが。このままでは、夜彦が危ない。

 勿論、ぷにぷにボディにされても夜彦が夜彦である以上、そのカッコよさが揺らぐ事はないのだが。あのデ……ぽっちゃり猫又に、好きにされるのは我慢ならない。
 例え自分が、子供たちに二の腕をぷにぷにされる事になろうとも。父ちゃんは強く生きたんだぞと、胸を張れるように。
 覚悟を胸に、倫太郎は前へと進む。

 手にした刃に灯すのは、カミの力。
 それは災魔を祓い、喰らい、砕く力。ならばヒトを蝕み堕落させる、厄災そのものいえるこのオーラに、通らぬ道理はない。

 叩きつけるように、薙刀を振り下ろせば。
 痛烈な神力を孕む衝撃は、水壁を突き抜けて。真っ直ぐに、堕ねこデラックスへと奔る。

 オーラを割り裂きながら、堕ねこデラックスへとぶつかった衝撃波は、その脂肪の前にぽよんと跳ねた。

「うに゛ゃっ、いったぁ!?」

 けれど、纏いし神力が、堕ねこデラックスの隙を生む。
 オーラが消えた、その間に。
 夜彦の足は、地を蹴って。銀の刃は鞘を走る。

 堕ねこデラックスに時間を与えれば、彼女はいっそう守りを固めてくるだろう。
 力強く踏み込んだ、この間合い。
 夜彦の最も得意とするこの間合いで戦えるのは、恐らくこれが最初で最後だと。
 魔を砕き、怠惰を払う力を込めて。
 夜彦が静かに抜いた刃は、二条の光を生む。

「きゃぅっ!」
 それは堕ねこデラックス自身を守っていた、微かに残ったオーラを、容易く裂いて。
 一泊遅れて、そのぷよぷよの体に、衝撃が刻まれた。

 テコでも動きそうになかった、その巨体が。
 ぼよん、と。後方へ吹き飛ぶ。

 ――だからその体、何でできてんだよっ!

 夜彦の、渾身の攻撃を後ろから見届けた倫太郎の胸に、消えない疑問を残しながら。
 堕ねこデラックスは、べしゃりと地に落ちて。
 そのまましばらく、動かなかったと言う――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

弓削・柘榴
デブ猫は愛でる分には可愛いものじゃが、
これでもいちおう、使い魔であったころの誇りもあるのでな。
自分がああなるというのは、ごめんこうむるの。
「飼い猫でいれば、人気者にもなれたじゃろうに」

あの感じでは猫属特有の俊敏性も失われておるっぽいの。
【幻身変妖】で翼猫に変化し、空から攪乱しつつ【霊符】で攻撃じゃな。
「鍋のためじゃ、おとなしく封じられい」

相手のオーラは……
さすがにあの姿にされては飛べなくなるじゃろうし、喰らってしまうとちょっと危険じゃな。
【破魔】と【結界術】を使いつつ【闇に紛れ】て躱していくことにするぞ。

それにしても、見ておる夢が『石油王』とは、ずいぶんと俗世に塗れたものじゃな。


アリス・フォーサイス
あんな、体型になれるの?おもしろそう!

あえてオーラを受けるよ。
わぁ、たゆんたゆんのぼよんぼよんだあ。
肥満モードのちびアリスも追加だよー。

あの一撃は重くて痛そうだなあ。
ちびアリスを囮にしながら、こっちも重量級のパンチをおみまいしちゃうよ。

※ちびアリスのセリフ例
「わー。」
「あれー。」



 ぽよん、ぽよんと。肉が揺れる。
 堕ねこデラックスが体を動かすその度に、腕が。足が、ぷるぷると震えて。

「わぁ、たゆんたゆんのぼよんぼよんだあ」

 何とも柔らかそうな。マシュマロみたいなその姿に、アリスが楽しそうに声をあげる。
 堕ねこデラックスの常識外れな自堕落ボディも、アリスからすれば。日常には中々ない、ちょっと変わった『物語』の一つ。
 しかも、今回の物語は体験型。お話をただ辿るのではなく、実際にぷにぷにボディになる事が出来ると言うのだから。

「おもしろそう!」
 こんな美味しそうな物語なら、味わいつくすしかないだろう。
 アリスは無邪気に。そして無防備に、堕ねこデラックスへと駆け寄っていく。

「いらっしゃい。こっち側へー」
 そんなアリスを受け止めるように。両手を広げた堕ねこデラックスが放つオーラに、アリスの手が触れた、その瞬間。ぐるん、と。視界が揺れた。

「あれ?」

 わたわたと、手足を動かしてみるけれど。
 何だかいつもと感覚が違って、上手く動けない。
 堕ねこデラックスと同じように、手足はふっくらと膨らんで。
 けれどそれ以上に、まんまるに膨らんだ胴体が、まるで風船のよう。

 どうやら、急激に膨らんだ体のせいで、アリスは転んでしまったらしい。
 柔らかなお肉のおかげで、特に痛みはないけれど。頑張って手足を動かしてみても、大きな体がごろんごろんと揺れるばかりで。中々起き上がる事ができない。

 ころころ、ころりん。体を揺らして。
 反動をつけて、何とか体を起こしてみるけれど。

 ごろん、と。
 勢いよく転がり過ぎた体が、またおかしな方向を向く。
 ……何だかゲームみたいで、楽しくなってきた。

「よーし、ちびアリスも追加だよー」
「いいよー、みんないっしょになぁ~れ」
 アリスの呼び出す、小さなデフォルメアリスたちが、次々と堕ねこデラックスのオーラに包まれていく。
 ぽよん、ぽよん、ぽよん、ぼよん、たゆん。

「わー」
「あれー?」

 まあるい風船のようになった体で、ちびアリスたちがぱたぱたと手足を動かせば。
 互いの体がぶつかり合って、弾んで転がり。厨の中へと散っていく。

「デブ猫は愛でる分には可愛いものじゃが……」

 ころころぽよん、と。
 足元に転がって来たちびアリスを、拾い上げる柘榴。

 デフォルメ二頭身のちびアリスは、毬のようにまんまるで。
 抱える手に、むにゅむにゅと柔らかな弾力を感じる。
 このちびアリスや、猫本来の姿のように。小柄な動物ならば、ぼっちゃり姿も愛嬌があって可愛く思えるのだが……。

 改めて、堕ねこデラックスへと視線を向けてみる。
 柘榴と同じく猫又として、ヒトに近しい姿を取って。でっぷりと、クッションを圧し潰すように寝転がり、やる気のない言葉ばかりを零し続けるその様は……。

「自分がああなるというのは、ごめんこうむるの」
 
 やはり、ダメだ。
 愛嬌以前に、だらしなさの方が目立っている。

 使えるべき主を持つ者は、自分の評価がそのまま、主への評価となるのだ。
 例えその主が、既にこの世に居なくとも。
 主を知る者が、誰も居なくなろうとも。
 主が、だらしのない使い魔を持った陰陽師などと評される事は、柘榴自身が許せない。

「ようし。ちょっと動きのコツが掴めてきたよ」

 互いにぶつかり合い、弾き合い。厨中を転がり回っていたアリスとちびアリスたちが、徐々に堕ねこデラックスを包囲していく。
 膨らみ過ぎた体では、歩くのは難しいと判断したらしく。
 まんまるな体を利用して、器用にころころと転がって。
 堕ねこデラックスへ突撃していくかに見えた、その瞬間。

「ぐるぐるー」
「うわー」

 一部のちびアリスたちが、目を回して衝突事故を起こして。
 ぼよん、ぼよんと。ピンボールのように、弾き合い。飛んだちびアリスが、また違うちびアリスへとぶつかって。厨中を跳ねまわる。

「えー、なにー?」
 そんなちびアリスたちを、堕ねこデラックスがぼんやりと眺めている、その隙に。

「我が身に写せ」
 柘榴の姿が、揺らぐ。
 その背に現れた、翼を伸ばし。羽ばたかせ。その身は軽やかに、宙へと飛び出した。

 ぽよんぽよんと、弾むちびアリスたちを、時にかわし。時に受け止めながら。
 柘榴は、堕ねこデラックスの様子を伺うけれど。

「猫属特有の俊敏性も失われておるっぽいの……」

 個人(猫)差があるとはいえ、猫とは動きに敏感な生き物であるはずなのに。
 ちびアリスたちの動きを、目で追う事も出来ていない。
 まして、その影で動く柘榴の姿など、気付いてもいないだろうけれど。
 念には念をと、柘榴は自身の周囲に結界を敷く。
 
「おぬしも飼い猫でいれば、人気者にもなれたじゃろうに」

 その手に霊符を構えながら、ふと思う。
 そう言えば寝言でも、『石油王』などと言っていたし。
 そこまで俗世に塗れているのならば、いっそのこと妖力を隠して、一介の猫として過ごしていれば、こんな風に猟兵たちと対峙する事もなかったのだ。

 まぁ、例え飼い猫であっても。悪戯が過ぎれば、飼い主に叱られるもの。
 今回に関して言えば、子狐たちの料理の邪魔をして、猟兵たちから美味しい時間を奪ったのだから。
 猟兵たちには、堕ねこデラックスを叱る権利がある。

「鍋のためじゃ、おとなしく封じられい」

 はらりと、放った霊符は、ちびアリスたちの間を抜けて。
 堕ねこデラックスの体に、ぴたりと張り付く。途端。

「ふがっ!?」

 まるで、感電でもしたかのように。
 ビクリと体を震わせて、堕ねこデラックスが怯んだ。

「いまだ、とつげきー!」
「「「わー」」」
 そこに、アリスとちびアリスたちが、総攻撃を仕掛ける。

「ちょ、たたかうのナシー」
 慌てて、堕ねこデラックスオーラを展開するけれど。
 既にぷにぷに状態のアリスたちには、あまりに意味がない。
 それどころか、更に増した体重を乗せて。
 ごろごろと勢いよく転がるアリスの手が、拳を握る。

「ぷにぷにパーンチ!」

 どーん、と。
 アリスの重量パンチ――もとい、体当たりが。
 派手に堕ねこデラックスへと炸裂したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

林・水鏡
何というかまさしく「怠惰」を現したような姿じゃな。自分が痩せようとせずにみんなが太ればいいとか怠惰の極み。てかすでにたぷたぷぼでぃのおぬしが際限なく食べれば他が追いつくこともできんくないか?

我もそれなりに名のある妖怪と言うか聖獣じゃてたぷたぷボディになってしもたら他の者に示しが付かん【結界術】と【オーラ防御】でひたすら身を守るぞ!
攻撃を受けてる間に【式神使い】で折り紙の式神を飛ばして相手の隙ができたところへUC【破魔の白剣】じゃ!

もともと動きづらい体じゃ避ける事などできんじゃろ?


夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
あ、或る意味で平和そうな方ですねぇ。

何処までを『物理攻撃』とするかにもよりますが、『F●S』3種は『ビーム』ですし、無効化されそうなら『FCS』で『魔術性の弾頭』に切替えれば対応可能でしょうかぁ。

そして、相手の武器と思しき『脂肪と体重を増やすオーラ』には【遍界招】で対応、『他者への攻撃を私に移し替える「人形型祭器」』を召喚し、出来る限りの影響を私の体で引き受けますねぇ。
『反動で体型が一時変化する【UC】』を複数取得しておりますし、それが『肥満』で出た際は今のデラックスさんを遥かに上回る体重になりますから、慣れたものですので。
状況次第では、体重を利用し[重量攻撃]しても?



 もう、戦いは始まっている……はず、なのに。

「なんで邪魔ばっかすんの……ウチはただ、楽してスリムになりたいだけなのにっ」
 しくしくしくしく。
 猟兵たちの攻撃に、当のオブリビオン――堕ねこデラックスが泣き言を零す。

 ……果たしてこれは、本当に戦いなのか。
 事実として、世界が滅びかけていなければ。ここには無害な妖怪が居ただけだったと報告して、とっとと帰宅していた事だろう。

「あ、或る意味で平和そうな方ですねぇ」
「何というか、まさしく「怠惰」を現したような姿じゃな」

 こうも敵意らしい敵意を持たない相手だと、戦いを仕掛けるタイミングを見失ってしまう。
 るこるは少し困ったように、苦笑いを浮かべて。
 水鏡は、やれやれと息を吐いた。

「……ってゆーか。なんでみんな、そんなにひょろひょろなわけ?」
 微妙な空気の中、ぐるりと振り返った堕ねこデラックスが、目を眇めて唇を尖らせる。
 堕ねこデラックスの体型と比べてしまえば、大概の者は細いと認定されてしかるべきなのだが。
 ぐるりと順番に、猟兵たちの体つきを眺めていた堕ねこデラックスの視線が、るこるの所で止まった。
 
「あんたはちょっと惜しいけど……」
「あんまりジロジロ見られるのは困りますぅ」
 堕ねこデラックスの視線に晒されて、るこるは眉を下げて、肉付きのよい体を隠そうとする。
「まぁでも、お腹のあたりとか……もうちょっと、ウチと一緒になろ?」

 猟兵たちへと手を差し伸べるように、堕ねこデラックスが奇妙なオーラを放つ。
 それは、既に幾人かの猟兵が犠牲となり、ぷにぷに体型にされてしまった魔のオーラ。

 咄嗟に後ろに飛び退きながら、水鏡は哀れなオーラの犠牲者たちへと目を向けた。
 彼女たちは、そのぽよんぽよんな体で、一生懸命にエクササイズしていたり、きゃっきゃと転がったりしている。
 何だか、ぷにぷにボディを思い切り満喫しているような……。
 ちょっと、楽しそうに見える。

 ……いやいや。自分は今、何を想像した?
 我、白澤ぞ?

 ふるふると。水鏡は慌てて、首を横に振る。
 妖怪を見た目で判断するとは、全く愚かな事ではあるが。しかし、容姿が与える印象というものは、軽んじてよいものでもない。
 ただでさえ、人間の感覚でいけば『少女』と呼ばれてしまう容姿ゆえに、水鏡に失礼な態度を取る若者もいるのだ。
 その上さらに、ぷよぷよな姿になどされてしまっては、威厳もへったくれもない。

「自分が痩せようとせずにみんなが太ればいいとか、何という怠惰の極み」
 吉兆の印たる聖獣として、怠惰の象徴とも言えるぽよぽよボディは断固拒否せねばならない。

 水鏡が腕を振るえば、重ね合わせた衣より、はらりと護符が解けて。
 込めた霊力が護符同士を繋ぎ合わせて、結界を張る。

 オーラが、結界へとぶつかって来る衝撃は、まるで津波のようで。
 重い手応えに、水鏡は更に霊力を強く込めて。結界をより堅固にした。 

「てか、すでにたぷたぷぼでぃのおぬしが際限なく食べれば、他が追いつくこともできんくないか?」
「……え゛っ!?」

 水鏡の指摘に堕ねこデラックスが、顔をこわばらせる。
 本気で気付いていなかったのだろうか……いなかったのだろうな。本気で驚愕した顔をしているし。
 相手はオブリビオンなのだが。何だか、とても可哀想な子に見えてきた。

「そんなんウチ困るんだけどぉ~」
「でしたら、今すぐ追い付いて差し上げますぅ」

 るこるが人呼び出した人形型の祭器が、戦場へと散らばっていく。
 共に戦う猟兵たちと、迫りくるオーラを分かつように。
 立ち塞がったその人形が、オーラを受け止めて。
 みるみる、るこるの体が膨らんでいく。

 それは、あらゆる攻撃をるこるへと移す形代の人形。
 ゆえに、るこるの体は限界を知らぬように。人形がオーラを受け止める程に、膨らんで。
 むくむく。むくむくと……。

「お……おぬし、大丈夫かえ?」

 風船のように膨らんでいく、るこるの姿に、水鏡が心配そうに声を掛ける。
 その体積は、今や誰の目から見ても、堕ねこデラックスを追い抜いてしまっていた。

「大丈夫ですぅ。慣れたものですのでぇ」
 それでも、問題ないと手を振るるこるの声には、余裕が感じられた。

 ぽよんぽよんと、揺れる。常人ならば、既に歩く事も困難だろうお腹を抱えながらも。
 両の足で、るこるはしっかりと立ち上がる。
 起動した戦闘システムに、両手が固定砲台と化して。
 その体が更に重量を増しても、るこるが膝を折る事はない。

 るこるの持つ数多の技には、体型を変化させるものも存在する。
 その『肥満』に比べたら、これしきの脂肪。るこるの動きを鈍らせるには至らない。

「念のため、弾頭を換装しておきますねぇ」

 起動したシステムにより、両手の固定砲が魔力の光を帯びる。
 銃口はピタリと、堕ねこデラックスの方を向いて――。

「ちょっ、動けるぽっちゃりとかズル――」

 堕ねこデラックスの言葉を待たずに、るこるの砲台が火を噴いた。
 放たれた砲弾は、物理攻撃を弾くはずの堕ねこデラックスの体に深く突き刺さって。
 その巨体が、後方へと吹き飛んだ。

「もともと動きづらい体じゃ、避ける事などできんじゃろ?」

 受け身も取れずに、落下した堕ねこデラックスへと。
 水鏡が真白の剣を放つ。

 破魔の光を放つ剣が、細やかな文様を描いて。
 堕ねこデラックスの纏うオーラを、千々に切り裂けば。

「そろそろこのお肉、お返しさせて頂きますねぇ」
 たぷたぷボディを揺らしながら、るこるが駆ける。

「えっ、えっ……何ー?」
 堕ねこデラックスは、るこるの接近に気付いていない。
 吹き飛ばされて、仰向けになってしまった体をもぞもぞと起こそうとしているけれど。
 水鏡の飛ばした折り鶴たちが、それを許さない。

 ぼよん、と。るこるが飛んだ。
 その巨大な体からは、信じられない高さに飛び上がって。
 周囲の猟兵が、思わず目を閉じてしまう程の、すさまじい衝撃音が響く――。

 その派手なボディプレスの始終を目撃していた猟兵は、後にこう語った。
 それは砲弾が直撃するよりも、よほど痛そうな攻撃であった……と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「そこに在る以上願いを持つのは当然、共存出来ぬ願いであれば争い滅ぼし合うのもまた必然。でも…命の根源に近い願いほど、眩しく輝かしく…好ましく。ただ滅ぼすのが躊躇われるのです」

高速・多重詠唱で銃弾に破魔と火炎の属性のせ制圧射撃
敵の行動を阻害し仲間の攻撃補助
敵の攻撃は第六感や見切りで躱す
躱すせないと判断した攻撃は盾受け

敵が倒れ消滅する前にUC「幻朧桜夢枕」使用
「貴女が骸魂でさえなければ、怠惰も愛される夢も問題にならないのに。私達は貴女が飲んでしまった方を救わなければなりません。せめて貴女が望む愛される夢を…そして何時かまた、生者としてこの世界に」
子守唄歌い見送る

「目覚めた貴方の望みは叶いますよう」


リゼ・フランメ
夢や理想はどんなものでも素敵よね
どんなに高くて無理でも
不可能だと後ろ指を指されたとしても、その思いの輝きは大切

でも、それを目指す姿こそが本当に大事なんじゃないかしら
夢を描き、理想を追い求めて、駆ける姿こそがと私は思うから

「怠惰というのをしっかりと見ましょう」

私の道として
絢爛優美なる炎剣の舞踏を刻むべく


UCを発動させ、全力で空を駆け抜けましょう
放たれるオーラと攻撃は見切り、避けながら炎と化す羽根で相殺し

物理は無効化としても、破魔と属性攻撃で劫火剣へと宿し
飛翔速度を乗せ、怠惰の罪を焼却する炎の斬閃として、幾度となく切り込みを

駆け抜ける炎でと、縦横無尽に飛び交いながら
それこそ、夢を炎と翼で描くように



 ――……あれ。石油王はどこ?
 ――みんな、ひょろひょろなのがいけないんだ。
 ――たたかうとかムリ。めんどー。

 事件の元凶であるオブリビオン――堕ねこデラックスが、やる気のない言葉ばかりを並べてくる。
 対する猟兵たちの反応は、呆れている者。思わず苦笑する者と、様々だが。
 リゼは静かに、堕ねこデラックスの言葉を受け止めていた。

 みんなが太れば、それで自分の願いは叶うのだと。
 堕ねこデラックスが無差別に放つオーラを、後退しながら軽やかにかわして。
 壁際に追い詰められる……その前に、リゼの体はふわりと、空中へ飛び出した。

 はらりと、その背中より舞い落ちるのは、白い羽根。
 ひらり、ひらりと気まぐれに。軽やかに向きを変えながら。
 落ちて行く羽根が、堕ねこデラックスのオーラに触れて。
 実体無きオーラさえも焼き払う、炎と変わる。

 その背に現れた白い翼を。リゼが力強く羽ばたかせる、その度に。
 白い羽根は舞い落ちて。次々と、炎が上がる。

 あちこちで上がる炎に、堕ねこデラックスが慌てて手足をばたつかせている様を見ても。
 やはり、リゼの表情は静かなまま。

 どんなものであれ、夢や理想を持つ事は、素敵な事だと思うのだ。
 相手がオブリビオンであっても。それを笑おうとは思わない。

 夢を見て、理想を持って抗うのならば。
 正面から受け止めて。自分は、自分の道を示すのだと。
 リゼの手が、剣を抜く。

(そこに在る以上、願いを持つのは当然……)

 それは、桜花もまた同じ事。
 迫るオーラを、銀盆で弾き飛ばしながら。その緑色の目は、静かに堕ねこデラックスを捉える。

 ふかふかクッションに寝転んで、だらだらと時間を過ごしたい。
 美しい姿になりたい。素敵な異性に愛されたい。

 何とも都合が良くて。誰でも持ち得そうな、ささやかな願いばかり。
 妖怪のくせに、随分と人間じみていて。穏やかな日常を想わせて。
 微笑ましいとさえ思う。

 先ほどから、自分の身を守るばかりで。
 中々攻撃に転ずることが出来ないのは、そのせいだろうか。
 抱えた機関銃。その引き金に掛けた指が、とても重たく感じる。

 怠惰も、愛される夢も。それそのものに、問題はないのに――。

 桜花の目前で、炎が上がる。
 ハッと、視線を上げれば。目に飛び込んで来たのは、堕ねこデラックス目掛けて飛び込んでいく、仲間の猟兵――リゼの姿。

 羽ばたく都度、その身は更に速さを増して。
 その長い髪が、炎の軌跡のごとくたなびく。

 堕ねこデラックスとすれ違う、その一瞬に。
 振り抜いた刃は、赤い弧を描いて。深く、その身に喰い込むけれど。
 ずしり、と。手に跳ね返る反動の重さに、剣の軌道は乱れた。

 僅かに体勢を崩した隙、迫るオーラを、地を蹴ってかわす。
 空中で、体勢を整えて。再び剣を構えながら。
 その赤い瞳は、真っ直ぐにオブリビオンを見つめていた。

 夢を、理想を持って。高い空を見上げる事。
 それは、とても素敵な事だけれど。
 指をくわえて見上げるだけでは、意味がない。

 貴女は、そうして。
 羽ばたこうとする誰かの足を、掴むだけなの?

 問いは、言葉ではなく。この剣と、戦いを以て示す。
 手に握る真白の剣に、リゼが込める祈りは。赤く色づき、熱を放って。
 炎を纏う天使が、戦場に舞う。

 ――桜花の目の前で、猟兵とオブリビオンが戦っている。
 共存できない願いの為に、滅ぼし合っている。

 ささやかな願いでも。どこか愛らしく思える願いでも。
 現に、世界を滅ぼしかけているのだから、これは必然なのだと。
 その唇が紡ぐ言葉は、手にした銃に力を宿す。
 その銃口は真っ直ぐに、堕ねこデラックスへと向いていた。

「私達は、貴女が飲んでしまった方を救わなければなりません」

 人差し指に力を込めて、引き金を引いた。
 激しい反動と共に、放たれた無数の弾丸が堕ねこデラックスを怯ませて。
 舞い降りたリゼの剣が、深く、その身を穿つ。

 燃え広がって。高く上った炎が、戦いの終わりを告げて。
 名残火に赤く照らされながら、堕ねこデラックスの姿が、元の姿へと変化していく――。

 猫又へと戻りかけている、その手を。
 駆け寄った桜花が、そっと握った。

「せめて貴女が望む、愛される夢を……」

 桜の精とて。影朧でもない者に、癒しを与える事は出来ないけれど。
 夢でも、幻でも。せめて一時の、安らぎになれるのならばと。桜花は願う。
 そして、出来るのならば、いつかまた――。

「生者としてこの世界に」

 これは少し、欲張り過ぎた願いだろうか。
 けれど、その桜花の願いを否定する者も、笑う者も。此処にはいない。

 去り行く骸魂が、安らぎを得る事が出来たのか。
 誰にも分からないけれど。
 真摯に祈る桜花の背中を、リゼも静かに見つめていた。

 やっぱり、そうだ。
 誰かが無意味と言ったとしても。不可能だと後ろ指をさしたとしても。
 求め続けて。諦めずに追い駆ける姿は。こんなにも輝いている。
 それが、自分の目指すものの。追いかけるべきものの本質なのだと――目を伏して、思う。


 骸魂より解放された猫又が、目を覚まして。
 少しだけ体型のすっきりした猫又が、猟兵たちに平謝りする中で。
 優しい歌と、弦の音色が響いている。

 迷える魂は、無事、還る事が出来ただろうか。
 知る術はないけれど。

「目覚めた貴方の望みは叶いますよう」

 誰かが呟いた祈りは。
 何処までも澄んだ空の中へと、消えて行った――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『カクリヨキッチン!』

POW   :    食材がヨダレを垂らしてこっちを見ている。料理とは戦いだ!

SPD   :    食材は逃げ出した!料理は早さが命!

WIZ   :    正体不明の調理器具が現れた。料理は直感だ!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「あ、猟兵が帰ってきたコン!」
「帰ってきたコン?」
「ぶじコン?」

 こんこん、ぴょんぴょこ。
 狐の里に戻った猟兵たちは、あっという間に子狐たちに囲まれて。

「猟兵、お鍋食べるコン!」
「おれたち、厨をお片付けしておいたコン」
 代わる代わるに話しかけられ、もふもふな手で手を引かれては。
 如何な屈強な猟兵たちでも、抗うのは難しいというもの。あれよあれよと厨の中へ。

「これで料理が作れるコン」
 子狐の掲げる『お狐印のお鍋』は、材料を入れて狐火に掛けると、あっという間に美味しい料理が出来上がる、不思議なお鍋。
「猟兵も、お料理してみるコン?」
 子狐たちの誘いに乗って、カクリヨのお料理体験をしてみるもの、楽しいかもしれない。

 お鍋に入れる材料は、切らずに丸ごと入れてもいいし。食材に多少の過不足があっても、作る料理をしっかりとイメージ出来ていれば、お鍋が上手くカバーしてくれる。
 料理初心者や子供でも、安心して料理を作る事ができるだろう。

 最も、UDCアースで見かけるような、一般的な調理器具や材料は揃っているので、料理の心得がある者や拘りがある者は、鍋の便利さに頼らずに、自分の力で料理をしても構わない。

 だが、注意して欲しい。
 満腹を取り戻し、この世界は一見平和になったように見えるけれど。
 この厨のあちこちで、妖しい影が蠢いている。

 物陰から物陰へ、素早く駆け抜ける『それ』。
 あるいは、天井付近から猟兵たちを見下ろしている『それ』。
 他にも、他にも……。

 美味しく食べられたい。
 けれど、気安く食べられる野菜だと思われたくない。
 そんな、ちょっと捻くれた野菜たちが、料理を妨害せんと機会を伺っているのだから。

 材料を、鍋に入れる。
 ただこれだけの事が、意外と難しいかもしれない。
 果たして猟兵たちは、無事に美味しい料理にありつく事が出来るのだろうか……?
ティモシー・レンツ
見つけたぞ、くろ、ま……く……?
……あれ、道に迷ってた?

まぁいいや、オブリビオンじゃなくて野菜が相手でも変わりはないよね。
錬成…じゃなかった、たまたま持ってたカードを……45枚?操って、野菜の足止めをしたり勢いで切り刻んだりしようかな。
(数え間違いつつも54枚を操る)

切り刻んだ野菜を鍋に……トマト鍋でもできるのかなぁ?(鶏肉か魚肉あたりがあれば、ぶつ切りにして入れようと)



 地を蹴り。ティモシーは走る。
 早く、早く。この世界に満腹を取り戻さなければ。
 このカクリヨの世界は、終わってしまうのだ。

 この地に召喚された時に、見たような場所を通り過ぎ。
 一度歩いた事があるような気がする道を抜け。
 ティモシーは、その扉へと手をかけた。
 此処に、全ての元凶が――。

「見つけたぞ、くろ、ま……く……?」

「猟兵、遅かったコン」
「どこ行っていたコン?」
 そこに居たのは、きょとんとティモシーを振り返る子狐たち。
 その部屋の中では、何故かまたしても、野菜たちが飛び回ったり駆けまわっていて。
 子狐たちも鍋を手にして、行ったり来たりと慌ただしそうだ。

「あれ?」

 これは、どういう事だろうか。
 この事件の黒幕は、この駆けまわる野菜なのだろうか。
 確か、ぷよぷよボディのオブリビオンと聞いていたような気がするけれど。

「もしかして、道に迷ってた……?」

 首を傾げながら、ティモシーは狐の里を出た時の事を思い出してみる。
 確かに、仲間の猟兵たちと共に、出発したはずだ。
 何故か途中から、仲間たちの姿が見えなかったような気もするけれど。
 
 おや。
 よく見れば、その仲間たちの姿も見えるではないか。
 共に戦った猟兵たちが、ここに居る。という事は……ここが戦場で、間違いないはず。
 黒幕について、事前に聞いていた情報と、多少の相違があるようだが。

「まぁいいや、オブリビオンじゃなくて野菜が相手でも変わりはないよね」

 些細な疑問は捨て置いて、ティモシーが手をかざせば。
 幾枚ものカードが現れて、ふわりとティモシーの周囲に浮かぶ。
 一枚一枚柄の事なる、この54枚のカードが示す。野菜たちの運命は……。

「ええと、今日は外出しない方がいいかも……?」

 すぱん。
 言葉と共に、ティモシーが腕を振るえば。
 勢いよく回転するカードが、トマトを真っ二つに切り裂く。

 綺麗に等分に割れたトマトが、ころりとまな板の上を転がって。
「お鍋に入れるコン!」
 素早く駆けてきた子狐が、器用にお鍋で受け止めた。

「あ、そっちのじゃがいも君も、水難の相が……」

 呼び出した……いや、ティモシーいわく『隠し持っていた』カードが宙を舞う。
 くるくる回って、カーブを描いて。
 じゃがいも……を、微妙に逸れて。猛ダッシュ中のニンジンに、サクッとストライク。

「ニンジンも入れるコン」
 こてんっと倒れて落ちてくるニンジンを、子狐たちがしっかり鍋で受け止めて。
 しめじに、玉ねぎ。それに、一度は逃したじゃがいもも。
 しっかり角切りにして、次々お鍋に放り込んでいく。

 気が付けば、お鍋の中は野菜が山盛り。
 何も考えずに、手当たり次第に切り刻んでしまったけれど。
 これは一体、どんな料理になるのやら?

「トマト鍋でもできるのかなぁ?」

 しかしお鍋というからには、お肉も居れたい所。
 ティモシーがきょろきょろと周囲を見回すと、山と積まれた食材の中に、ピンク色の塊が見えた。
 その鮮やかなピンク色と、白く透き通るような脂身。
 肉だ。まごう事なき牛の生肉だ。

 ……そう言えば、この事件の黒幕は、確かぷよぷよお肉のオブリビオンであったか。
 という事は?

「見つけたぞ、黒幕!」

 テイク2のセリフを、バッチリと決めて。ティモシーがカードを放つ。
 回転速度を上げたカードたちが、瞬く間に生肉をスライスして見せて。
 ひらりと舞った薄切り肉を、子狐がすかさず鍋キャッチ!

 数分後。
 狐火でじっくりことことされたティモシーのお鍋の中には、トマトの風味豊かなビーフストロガノフが出来上がっていたと言う。

大成功 🔵​🔵​🔵​

杜鬼・クロウ
【金蓮花】アドリブ◎

前に料理得意って言ってたもんなァ?(圧掛けて
よし任せた!
ホントに手際イイな澪(手先は器用なので皮剥き感心

澪の料理を観察してると野菜が逃走
適当な調理器具引っ掴み野菜を追う

大丈夫か?(屈んで擦り傷部分見て
ったくドジだなァ(腰ポーチから絆創膏取り出し貼る
コレで平気だろ(頭ぽむ
俺からしたら子供だわ
おっと!今度こそ捕まえるぜ

第六感で先回りし確保

狐印の鍋で作ると何でも美味になるらしいが隠し味入れンのか?
…フーン?
そういうのは隠すなよ(イケボ
ハハ、澪を揶揄うのは楽し…って飴はヤメろや!?(甘味苦手
お前の口ン中に返すぞ!

最後は料理に舌鼓

いつもお前の料理食えてる誰かサンが羨ましいぜ(片目瞑り


栗花落・澪
【金蓮花】

【料理】なら任せて!
クロウさんも皮剥きくらい手伝ってよ?

お肉は先に軽く炒めよう
ごま油使うと風味が出るし…

テキパキ調理していたが
次はー、あっちょ逃げたぁ!

待って待ってと慌てて追いかけ
手が届く瞬間方向転換されぺしょっと転倒

…いたい(震え声

体はすぐに起こしつつ

僕子供じゃないんですケドー
拗ねたように言うも内心満更でもないので大人しく
あっ、隙あり!クロウさん捕まえて!(他力本願

調理再開
隠し味、は……僕の愛情

揶揄う言い方に細やかな反抗心で茶化し返すも
反撃され真っ赤に
っ…も、もーうるさいばかっ!ばかっ!
クロウさんの分だけ飴玉大量投入するからね!(嘘

恋人の事言われると恥ずかしくなって
いじわるぅ(もじ



「わーんっ、カボチャにかじられたコン」
「またダイコンが逃げたコン!」

 やって来たのは狐狗狸の厨。
 厨……の、はずなのだけれど。

 こんこん、ドタバタ。
 そこは何とも賑やかで。騒がしくて。
 陸上選手のような力強いフォームで走っているのは、どう見てもニンジンやダイコンだし。ふわふわと宙に浮かんでいるのは、どう見てもカボチャである。

 事前に、そういう野菜が居るのだと聞かされていなければ。オブリビオンかと、斬りかかって居たかもしれない。
 ただでさえ料理とは、それなりに手間とか暇とか掛かるもの。
 加えて、食材がじっとしていないとは。このカクリヨの料理とは、何と手のかかるものなのか。

 だがしかし、戦の勝敗が事前準備でほとんど決まるように。
 杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)の準備に、抜かりはない。

「前に料理得意って言ってたもんなァ?」

 口元にワザとらしい笑みを浮かべて、隣を振り向けば。
 果たしてその笑みに、気づいているのかいないのか。
 クロウからは頭のてっぺんしか見えない、小柄な少年がこくこくと頷く。

 二本の足で歩く狐に。騒がしい野菜たち。
 まるで絵本の中に来てしまったような、賑やかな光景に、琥珀色の瞳を輝かせながら。

「料理なら任せて!」
 栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は、気合十分に腕まくり。
 慣れないキッチンに、へんてこな野菜たち。けれどだからこそ、何だか楽しそうで。
 どんな調理道具があるのかと。心を弾ませながら、調理台の収納を確認していた澪だけれど。
「クロウさんも、皮剥きくらい手伝ってよ?」
 ふと、完全に傍観する態勢のクロウに気付いて。唇を尖らせる。

 まな板に包丁。フライパンに木べら。
 UDCアースで見られるような調理器具は、一通り揃っているようで。
 お狐印のお鍋に頼らずとも、色々な料理を作る事ができそうだ。

「ホントに手際イイな澪」
 包丁一本で、綺麗に皮をむき。トントンと軽快な音を立てる澪の手際に、覗き込むように眺めていたクロウが声を掛ける。
 それに対して澪から返って来たのは、不満そうな半眼の視線。

「皮剥き手伝ってって言ったのに」
 結局、剥くのも切るのも、ほとんど澪がやっている。
 下拵えは、もうこのニンジンで最後……。

「あっちょ、逃げたぁ!」
 澪の意識が、クロウの方へ向いていた。その一瞬の隙に。
 二股のニンジンが、ぴょーんと澪の手を飛び出して。
 華麗な着地からの、猛ダッシュを決める。

「待てー!」
 澪も慌てて、後を追う。
 いかにニンジンが素早いと言っても、猟兵たちにはリーチの長さがある。
 あっという間に距離を詰めて。ここだっと、澪が伸ばした手は。
 寸での所で、ニンジンを掴めずに空振った。

 急に向きを変えたニンジンを、気持ちは追いかけようとするけれど。体は急に止まれない。
 勢いそのままに、ぺしょっと。澪の体は地に伏した。

「……いたい」
 起こした体のあちこちから、じんわりとした痛みが広がっていく。
 痛みに声が震えるけれど、涙が零れるのは何とか堪えた。頑張った。

「大丈夫か?」
 麺棒を肩に担いだクロウが、顔を覗き込むようにして、澪と視線を合わせる。
 目が少しばかり潤んでいるけれど。見たところ、大きな怪我はしていなさそうだ。

「……ったくドジだなァ」
 赤くなった澪の膝に、花柄模様の絆創膏をぺたり。
 出血もしていないし、絆創膏で十分に保護できる程度の小さい傷だ。
 コレで平気だろ、と。その頭に手を置けば、潤んでいたはずの澪の目は、勝気な光を帯びて。その頬を膨らませる。

「僕子供じゃないんですケドー」
「俺からしたら子供だわ」

 そんな口を叩けるのなら、もう大丈夫だろう。
 ケラケラと笑うクロウに、拗ねた表情を作りながらも。もしも自分に兄が居たら、こんな感じだろうかと。
 膝に張られた可愛らしい絆創膏を見ながら、澪は思う。

 そんな微笑ましいやり取りを、調理台の影からこっそり覗く怪しい赤い影――存在をすっかり忘れられて、ちょっと寂しくなったらしいニンジンが、構って欲しそうに二人を見ている。

「あっ、あそこ! クロウさん捕まえて!」
「おっと!今度こそ捕まえるぜ」

 何となく、攻撃力が高そうと言う理由だけで持ってきたクロウの麺棒が、ぶぅんっと唸りを上げる。
 慌てて逃げようとしたニンジンを、掬い上げるように捉えて。そのまま麺棒を振り抜けば。
 ニンジンは赤い放物線を描いて。
「オーライだコン!」
 頭上に鍋を構えた子狐が、ぱたぱたと駆けて。すかさずニンジンを鍋キャッチ。
 これでどうにか、料理を再開する事が出来そうだ。


 ことこと、と。
 狐火の上で、鍋が小さく蓋を鳴らしている。
 それは、お狐印の鍋の便利さに頼る事なく、手間も暇もしっかり掛けた澪の力作。

 蓋を取れば、白い湯気が広がって。何ともいい匂いが漂ってくる。
 あとは最後に、隠し味で風味を……。

「狐印の鍋で作ると何でも美味になるらしいが、隠し味入れンのか?」
「隠し味、は……」
 鍋を覗き込みながらケラりと笑うクロウは、結局ニンジンを捕獲した時以外は、料理を手伝っていない。
 それでもこうして、澪が手間も暇も惜しまずに料理を仕上げているのは、たぶん澪の料理の腕を信じて、クロウはここに誘ってくれたのだろうと思ったからなのに。
 こう揶揄うように言われると、むくむくと反抗心が湧き上がってくる。

「僕の愛情」
 あえて、さらりと。さも当たり前のように、言ってみた。
「……フーン?」
 けれど、クロウの反応は、何とも素っ気ない。
 ささやかな反撃は、どうやら失敗に終わってしまったらしい。
 残念な気持ちを隠しながら、澪が味見をしようとした、その時。

「そういうのは隠すなよ」

 耳元で響く、重低音。
 完全な不意打ちに、ドキリと澪の心臓が跳ねる。

「っ……も、もーうるさいばかっ!ばかっ!」
 振り向けば、愉快そうに笑うクロウの姿がそこにあって。
 顔が熱い。きっと赤くなっているのだと、自分でも分かる。

「クロウさんの分だけ飴玉大量投入するからね!」
「飴はヤメろや!?」
 咄嗟に出た澪の反撃は、思いのほか威力があったらしい。
 明らかに声が揺らいだクロウの様子に、一矢報いる事が出来たと。澪はうんうんと、心の中で頷く。

 結局、出来上がった料理に舌鼓を打つ中で。
 クロウの発言に、またしても赤面させられてしまう事になるのは、また別のお話――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

林・水鏡
うむ!満腹も取り戻せたしよかったのう。
これでまたお腹いっぱい食べることができる。
腹八分目がいいと言うが育ち盛りはどんどん食べるとよかろう。まぁ、食べた分は動かねば先程のあやつのようになりかねんがの。

料理…正直に言えばあまりやったことがないのじゃが…。とりあえずあの辺で食べて欲しいんだか食べて欲しくないんだわからん反応をしとるやつらを調理するかのう。
ほれ、大人しく切られんか。
お主には美味しいスープになってもらわねばならんのじゃから。

鍋のおかげもあってなんとかできたのう。
ふむ、美味いか?それは良かった。
小狐達のお墨付きももらったし我も食べるかの♪



「待つコン!」
「にがさないコン!」

 こんこん、どたばた。
 狐狗狸の厨に、賑やかな声が響いている。

 それは、少し前まで響いていた、悲鳴や震えた声ではなくて。
 落ち着きのない野菜たちを追いかけて、行ったり来たりと。一生懸命で、とても明るい声。

 上手に捕まえた野菜を、子狐たちが掲げるようにして猟兵たちに見せれば。
 猟兵たちも笑みを誘われて、厨に笑顔が溢れていく。
 何とも騒がしくて、楽しそうで。
 この光景こそが、水鏡たち猟兵が守り通したもの。
 カクリヨの、本来あるべき姿なのだと思えば。

(満腹も取り戻せたしよかったのう)

 うむうむ、と。
 水鏡の胸にも、満ち足りた、暖かいものが広がっていく。

 幼き者らは、大きくなる事こそが仕事。沢山食べる事は良い事だ。
 だが、ただ食べてばかりでは、横にばかり成長してしまう。
 それこそ、堕ねこデラックスのように。

 いっぱい食べて、食べた分だけ、しっかり体を動かす。
 その点で言えば、子狐たちも、そして猟兵たちも心配は要らなそうだ。
 満腹を取り戻した今、折角ならば美味しい料理をお腹いっぱい食べさせてあげたい所だけれど。

 ……。

 調理台の上に置かれた、まな板と包丁を凝視したまま。
 水鏡は少しばかり眉根を寄せる。

 料理とは。既に完成したものが出てくるものなのだ。
 水鏡にとっては、そういうもの。
 だって聖獣だもん。病魔だって水鏡の前ではひれ伏すくらいには、偉いんだもの。

 ゆえに、自ら料理した事など、ほとんどないと言っていい。
 はて、最後に自ら作った料理は何であったか。記憶も曖昧だ。
 剣ならばいざ知らず。とりあえず握ってみた包丁が、何とも手に馴染まない。

 ……とにかく、食材を切ればいいのだ。
 あとは、『お狐印のお鍋』とやらが、何とかしてくれる……はず。

 水鏡が、目に着いたじゃがいもへと手を伸ばす……そこに。
 しゅたたたたた、と。迫りくる赤い影。
 力強い走りで飛び込んできたニンジンが、勢いそのままにじゃがいもをキック!

「なぬっ!?」
 じゃがいもは、水鏡の手を逃れて。厨の彼方へと吹っ飛んだ。
「おぬしっ、何という事を……」
 咎めるように、水鏡が振り返るけれど。ニンジンの姿は既に無い。

「……そういえば、ここの野菜が『元気がいい』のであったな」

 まぁ、野菜も子供も、元気がいいのは良い事だ……と。思っておく事にする。
 なにせ自分は年長者。大人の余裕というものがある。
 幼子のやんちゃに、一々腹を立てたりはしないのだ。

 気を取り直して、水鏡は次の野菜へと手を伸ばす。
 そこに、しゅたたたたたと。またしても迫る足音。
 はっと息を呑んだ水鏡が、慌てて玉ねぎを掴もうとするよりも、早く。
 駆けてきた二股ニンジンが、華麗なフォームで玉ねぎを遠くにシュート!

 ……。
 しばし、茫然と。玉ねぎの消えた手元を見つめていた水鏡の顔に、ふと笑顔が浮かんだ。

 確かに大人は、幼子のやんちゃ一々腹を立てたりはしない。しないのだが。
 大人とは、子供がやり過ぎた事をしたら叱り導いてあげるもの。
 人が調理しようとしている食材を蹴り飛ばしておいて、得意気な顔をしているニンジン(ニンジンに顔はないけれど、水鏡にはそう感じられる)には、教育的指導が必要だろう。

 両手を腰に。大きく息を吸い込んで。
「おぬしっ、食べて欲しいのか欲しくないのか、はっきりせぬか!」

 張りのある声で、ニンジンを一括すれば。
 姿勢を正すように、ニンジンが葉っぱをビクリとさせる。

「ほれ、食べられたいなら大人しく切られんか」
 勢いのまま、水鏡がまな板を指し示せば。
 あわあわと走ってきたニンジンが、ごろりとまな板の上に転がった。

「ニンジンが言う事きいたコン」
「猟兵ってすげーコン」

 子狐たちの、尊敬の眼差しを背中で受けながら。
 水鏡は、まな板の前に行儀よく並ぶニンジンたちを、次々と切って鍋に入れていく。

 ――数分後、出来上がった中華スープは、ニンジンの甘みがきいていて。
 子狐たちも、お腹いっぱいおかわりしていたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
キツネさんチーム

心情
子狐可愛いな
折角だから妖怪料理堪能しようぜ、凪

手段
猫又を誘う
確かに料理は面倒な時もあるけど
この鍋なら簡単そうだし
野菜を捕らえるのはいい運動になるぜ?

弦を爪弾き
楽しい雰囲気の曲を奏でる

皆の気分を盛り上げたいし
UCで手助けも

一番の狙いは野菜たち
野菜たちが逃げるのを止めて曲に合わせて踊ったり
(ミュージカルアニメ風
有名な料理番組のOPの曲を奏でたりして
「早く美味しく食べられたい!」って気持ちを盛り上げて
踊って行進しながらそのまま自ら鍋へ、ってのを狙うぜ

キムチ鍋
暑い時には汗かかなきゃな

猫又やここね
子狐や狐先生にも声かけ
やっぱ鍋は大勢で囲むのがいいぜ
辛いの大丈夫?>子狐

美味いコン(ぐっ


叢雲・凪
チーム名:キツネさんチーム

一件落着! ヨコヅナ・オブリビオンの脅威が去った今 妖狐達の提案に乗っておいしい鍋を作ろう!。

ここの野菜は活きが良いからボクは速さで捕まえていこう。(なぜか調理道具にあった虫取り網と大きな籠を背中に背負って)ウタくんの演奏におびき寄せられて跳ね回る野菜をどんどん背中の籠に放り込んでいくぞ!

そのあとはいよいよ調理だ。辛い物好きな身としては今の暑い時期…あえて激辛な鍋を作りたいな!丁度お誂え向きに【凶悪な顔つきのとうがらし(マンドラゴラめいている)】を捕まえたしね。

「では… いただきます! ん~~~ 美味しい!」(常人では悶絶するレベルの辛さをおいしそうに食べる凪)



「猟兵、お料理食べるコン」
「これでお料理作れるコン」

 こんこん、もふもふ。
 子狐たちと向かうのは、狐狗狸の厨。
 はやく、はやくと猟兵たちの手を引く、子狐たちの手は。ふかふかで、温かくて。
 彼らの平穏を守る事が出来て、本当に良かったと。心がぽかぽかしてくる。

「折角だから妖怪料理堪能しようぜ、凪」
「よーし、おいしい鍋を作ろう!」
 拳を握って気合十分な凪の隣で、ほらお前も……と、ウタが後ろを振り返れば。

「こ、ここが……美食の里と噂の、狐のお里、ですかに゛ゃ……」
 ウタに誘われて、共について来た猫又が、膝に手を当ててひぃふぅと、息を切らせていた。
 この里の元気がいい野菜たちを相手にすれば、運動不足も解消出来るのではと思ったのだけれど。
 どうやら、狐の里に来る道のりだけでも、猫又にとっては十分いい運動であったらしい。

「猫又も手伝ってくれるコン?」
「なら、はやく行くコン」
「にゃ゛ー、ちょっと休憩を゛ぉ゛ぉぉー……」
 悲鳴にも似た猫又の叫びと共に、妖狐と猟兵と猫又の――キツネさんチームの料理が始まった。

 音楽が、厨の中に響く。
 ウタの手が、弦を弾く度に。音は軽やかに響いて。弾んで。リズムを刻めば。

「お祭りみたいだコン!」
 子狐たちも、楽しそうに。節を合わせて、ぴょんぴょこと。
 手をふりふり。尻尾もふりふり。

 流れる音に合わせる歌詞は、楽しい楽しいお料理の歌。
 もやしに白菜、ネギにしいたけ。さぁさぁ次の食材は?

 それは俺だと言わんばかりに、ニンジンがぴょーんと飛び出して。
「もらった!」
 黒き雷が厨を駆ける。

 その手に握るは、虫取り網。
 最初は、なぜ厨にこんな物がと首を傾げたけれど。今ならばわかる。
 これは、元気いっぱいな野菜たちを傷付ける事なく捕獲する、まごう事なき調理道具。
 捕獲した野菜を逃がさない、収穫籠もその背に負って。
 戦闘態勢……ならぬ、調理体勢万全の凪が、厨を駆ける。

「まっ、待ってくださいに゛ゃぁぁ……」
 黒き雷光の尾を引きながら、軽やかに中空を駆ける凪の後ろを。息も絶え絶えの猫又が追いかけている。
「その調子だ、がんばれ!」

 凪の動きに全くついていけずに、右往左往するばかりの猫又を鼓舞するように。
 ウタは、弦のリズムを変えて。
 仔馬が駆けるように軽快に。吹き抜ける風のように気まぐれに。
 音の階段を上がって、下がって。まるでパレードのように。音が膨らんで、広がっていく。

 盛り上がる音楽に、野菜たちも次々と飛び出して。
 凪の振るう虫取り網が、びゅんびゅんと。合いの手を入れるように、風を切る。

「……あれ? 何だろう、これ」
 その振るった虫取り網から、奇妙な声が聞こえた気がして。
 凪が、がさごそと網を漁ると……。

「ギョロロロロロロロ……」
 何とも奇怪な声を上げる、赤い野菜が出て来た。

「りょ、猟兵っ!?」
「それ、ダメなやつだコン!!」
 その奇妙な野菜を見た瞬間、子狐たちの顔色が変わる。

 つやつやで、鮮やかな赤色。
 すらりとした、細長いフォルム。
 お化け南瓜のように体に浮かんだ顔は、眦を釣り上げて、こちらを威嚇しているようにも見える。

「何て凶悪な顔つきのとうがらし……!」
 キラキラと、凪の目が輝いた。
 季節は夏。この暑さに負けないように、作るのならば辛い鍋だと。ウタと二人で決めていたのだ。

「ギョロロ! ギョロロロっ、ギョギョロロー!!」
 この何とも不気味な声。気合の入った顔。色。艶。大きさ。
 どれを取っても申し分のない、立派なとうがらし。
 これから作る鍋に、これ程ぴったりな食材があるだろうか。

 先ほどから子狐たちが、「ヤバいコン!」「まずいコン!」「キケンコン!」と。こんこん騒いでいるのだけれど、運命の出会いを果たした凪の耳には届かない。
 意気揚々とお鍋にイン!

 ――ごぼっ。

「今、鍋が咽なかったか?」
「え、そうかな?」

 ことこと。
 ごぼごぼ。

 狐火の上で、鍋が音を立てている。
 ウタの鍋は、白い湯気を上げながら。凪の鍋は、赤い湯気を上げながら。

 子狐に、先生狐。猫又も、キマイラの少女――ここねも。
 お行儀よくテーブルについて、料理の完成を待っている。

「辛いの大丈夫?」
「へーきコン」
「ちょっとなら、だいじょうぶなのです」

 小さな子でも食べられるように、辛さ控えめのウタの鍋は大人気なのに対して。
 ごぽっ、ごぽっと。怪しい音を立てている、凪の真っ赤な鍋を椀によそったのは、作った凪本人だけ。
 その事に、気付いているのかいないのか。真っ赤に染まった椀を前に、凪はキラキラと目を輝かせて。
 両手を合わせて、いただきます!

「あつあつなのです」
「ぽかぽかするコン」
「そりゃ良かった」

 はふはふ、と。熱い息を零しながら。
 熱々の辛いお鍋を、みんなが口に運ぶ中で。
 「ん~~~ 美味しい!」
 凪も勢いよく、真っ赤な鍋を口に運ぶ。

「……見た目ほど辛くないのですかにゃ?」
 何とも幸せそうな表情で、鍋をかき込む凪の姿に、猫又が首を傾げて。
 赤いお鍋に、そーっと箸を伸ばしてみる。

 ふーふー、もぐっ。

「に゛ゃぁぁぁあ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁっ喉が! 喉がぁぁぁーー!!」
「誰か、水を持ってきてくれ!」
「急ぐコン!」

 白菜を一切れ、口に入れた猫又が。
 戦いの中でさえ聞いた事のない絶叫を上げて倒れた。

「……猟兵って、やっぱすげーコン」

 猫又が、ごろごろと悶え転がり。水を抱えた子狐が、右往左往する中。
 涼しい顔で、激辛鍋を完食して見せた凪の勇姿は、その後しばらくの間、狐の里で噂になったと言う。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

弓削・柘榴
『お狐印のお鍋』とはまた楽しみじゃの。

ここはやはり海鮮の鍋じゃな。
今の時期じゃと、うなぎ、といいたいところじゃが、好みとしてはどじょうじゃな。
この時期の柳川は絶品なのじゃ。

野菜は……ごぼうにネギとみつばは確定として、
そのほかにも、イモや葉ものなど入れてみてもいいかもしれんな。
割下で煮込めばなんとかなるじゃろ。

それにしても、じゃ。
美味い野菜というのは、なかなかないものじゃからな。
手に入れるのも一苦労というもの。

美味い! と自信のあるやつらがいてくれればいいのじゃが……。
ま、そこまでの自信のあるやつなどそうそういるとは思わんがな。

我こそは、と思うのならあちきの鍋にくるとよいぞ。
……玉ねぎ以外でな。



 ぐつぐつ、ことこと。
 厨のあちらこちらから漂ってくる、いい匂い。

 手の早い者たちは、既に食材の確保を終えて。
 狐火に掛けたお鍋が、かたかたと蓋を鳴らして湯気を上げている。
 食材を入れて、火にかけただけだと言うのに。
 洋風の料理。あるいは、甘味。
 鍋で作る事ができる、様々な料理があっという間に出来上がって。
 テーブルに並べられていく完成品に、柘榴の目に好奇心の光が宿る。

 これだけ多様な料理を作る事ができるのならば、自分は何を作ろうか。
 山にも海にも畑にも、実りの溢れるこの時期。
 どんな食材を使うがいいか、何とも迷ってしまうけれど。

 ここは、自分の心に正直に。
 肉と魚なら、魚だ。やはり魚がいい。
 今の時期ならうなぎ……と言いたい所だが。
 柘榴の心は言っている。
 同じ、すらりと長い胴体の魚でも、斑点模様と髭の一杯あるやつがいいと。

 そして鍋料理とくれば、作るものは一つだろう。
 しっかり煮て味を付けたどじょうに、ふんわりと絡む卵。
 夏の暑さに負けない元気をくれる、まさに旬の料理。

(この時期の柳川は絶品なのじゃ)

 作るものさえ決まってしまえば、後は迷う事もない。

「野菜は……ごぼうにネギとみつばは確定じゃな」
「お野菜もってくるコン!」

 柘榴の呟きに、子狐たちが素早く反応して。
 こんこんぴょんぴょこと、厨の中を駆けていく。

 定番の具材は、すんなりと揃える事が出来そうだけれど……。
 ふむ、と。柘榴は厨の中を見回して、僅かに首を傾げた。

 出来た料理は、子狐たちも猟兵も。みんなで食べるのだ。
 シンプルな柳川鍋も勿論美味しいけれど、もう少し具を足してみるのも個性が出ていいかもしれない。
 何せ食材は沢山ある。割下の味と相性のよい食べ物ならば、何でも美味しくなりそうだ。
 イモ類がいいか、葉物にするか……。

 不意に、にやりと。
 柘榴が口元に笑みを作る。
 横目でちらりと、物陰から様子を伺っている野菜たちを確認して、それから――盛大に、溜息をついてみせた。

「困ったのぅ……」

 ぼそりと呟いた……体で話しているが、その実、野菜たちに聞こえるように。
 それなりに大きな声で、柘榴が独り言ちる。

「お狐印のお鍋が、いかに便利な道具とて。料理は食材が大事じゃからな」
 柘榴が口元を袖で隠しながら、仰々しく再び溜息をついて見せれば。
 『食材』の言葉に、野菜たちがピクリと反応を示す。

「美味い野菜というのは、なかなかないものじゃからな……」
 手に入れるのも一苦労なのだと。柘榴が肩を竦めれば、厨のあちらこちらから、ざわざわと。
 風もないのに、野菜たちの騒めきが聞こえてくる。

「美味い! と自信のあるやつらがいてくれればいいのじゃが……」
 ちらりと、横目で様子を見て見れば。
 調理台の影から、柘榴を見つめている……と思われる、野菜たち。
 顔がないので、はっきりとは分からないが。半ば身を乗り出すようにしている様子からして、柘榴の話にばっちり食いついていると見ていいだろう。

 くすりと緩む口元を、袖で隠しながら。
 柘榴が、ダメ押しの言葉を紡ぐ。

「ま、そこまでの自信のあるやつなどそうそういるとは思わんがな。我こそは、と思うのならあちきの鍋にくるとよいぞ?」

 静寂は、一瞬の事。
 まず真っ先にニンジンが飛び出したのを皮切りに、野菜たちの大運動会が始まる。
 あるものは、二股の体を足のように動かして走り。あるものは空を飛び。またあるものは、ごろごろと転がりながら。柘榴の鍋を目指して一直線!

 まずは、フライングダッシュを決めた、ニンジンが一等賞。
 次いで、転がり込んできたジャガイモ、里芋、山芋たちが、順番にゴール。
 少し遅れて、白菜にネギに青梗菜……あっという間に、大行列が出来上がってしまった。

「猟兵、すごいコン!」
「しかしこれは、全部は入らんな……」
 あまりに無節操に食材を入れては、返って味を損なってしま……む?

 並ぶ野菜たちの列に、縦じま模様の茶色い姿を見つけて。柘榴が目を細める。
 赤い丸い奴も敵だが、こいつも敵。どうするか。
 今すぐこの爪でみじん切りに……いや、それだと目に染みる。
 どうしたものかと思案する柘榴の袖を、子狐たちがくいくいと引く。

「猟兵、たまねぎ入れないなら分けて欲しいコン」
「おれたちカレー作るコン」
「そういう事なら、持っていって構わんぞ」

 あちきに食べさせないならな、と。強く強く念を押して。
 柘榴と子狐たちの料理は、今しばらくドタバタと続くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リゼ・フランメ
【POW】
とりあえず鍋にいれればいいというものではない、のだけれど
まずは暴れてしまう食材たちをなんとかしないといけないわね

料理時代は実は苦手だけれど、簡単に出来るというのならばそれで
お狐印のお鍋、とはとても便利で助かるのだから、その分をしっかりと働かないとね

私は天井付近や他の場所からこちらを見ているものを相手取り、捕まえて見せるわ

狙うのは、こちらを見つめる野菜の中でも大型のものと一騎打ち
小狐たちでは対処の難しいものからね
素早い早業での一閃で、斬り伏せて逃げたり暴れられないように

「調理はリズムよく、素早く、というものね」

ふわり、するり、
そして、すとんとリズムよく踊るよう斬っていくわね



「こっちだコン」
「お料理つくるコン」

 こんこん、もふもふ。子狐たちが、リゼの手を引く。
 その手はふかふかで、暖かくて。振り払う気には、全く慣れないのだけれど。

 料理。この二文字に。リゼの表情は、今一つぱっとしない。
 狐たちの好意は嬉しいけれど、料理はどうも苦手なのだ。

 自分で作り、自分で食べるだけならば、まだいい。
 けれど今の流れなら、出来た料理はみんなで一緒に食べようと。そういう話になるだろう。
 誰かに食べてもらう料理となれば、不味いものを作る訳にはいかない。できれば、美味しいと思って欲しい。
 しかし、ただ材料を切って鍋に放り込むだけでは、美味しくならない事くらいは知っている。

 どうしたものかしら、と。涼やかな表情の下に、葛藤を隠しながら。
 子狐たちに導かれるまま歩けば、あっという間に狐狗狸の厨へ。

 ――オブリビオンは、ちゃんと倒したはずなのだけれど。

 そこに広がっていた光景に、リゼは僅かに眉根を寄せる。
 平穏を取り戻したはずの厨では、何故かニンジンやダイコンが好き勝手に走り回っているし、天井付近では不気味な顔を張り付けたカボチャが、ふよふよと飛び回っている。

「あの野菜をお鍋に入れるコン」
「動くやつに注意するコン」
 共にやって来た子狐たちが、鍋を抱えてあっちにこんこん。こっちにバタバタと。野菜を追って駆けまわる。
 どうやらこの世界のお料理は、リゼの思い描いていたものとは、随分と違うらしい。

 材料を入れて、狐火にかければ美味しい料理が出来上がるという、不思議なお鍋。切って入れれば美味しくなると言うのなら――光明が見えてきた気がする。

 真白の剣の代わりに、リゼは包丁を握る。
 普段とは全く違う刀身、間合いだけれど。これは料理。

「調理はリズムよく、素早く、というものね」

 余計な力を抜いて、流れるようにテキパキと。
 それがリゼの思い描く、理想の料理。
 何品もの料理を一度に作るような、達人ほどとはいかないけれど。
 トントンと、心地のいいリズムを刻む。あの包丁さばきのように。

 地を蹴って、ふわりとリゼが飛び上がる。
 狙いはカボチャだ。カタカタと口を開け閉めして、子狐たちを狙っている。
 噛みつかれれば、おかしな呪いに掛かるという噂もある、厄介な野菜。
 そのお化け南瓜の名に相応しい、大きな大きなカボチャに向かって。
 リゼの振るう包丁が、銀の一線を引く。

 やはり。戦いの時のそれとは、違う手応え。
 大きなカボチャの体格を前に、包丁では一刀両断とはいかない。
 けれど包丁は、リズムよく動かすもの。
 空中でくるりと、体勢を変えて。着地の姿勢からまるでバネのように、もう一度中空へと飛び出す。

 二度、三度。
 繰り返し、リズムを刻んで。カボチャを刻めば。
 サイコロ状になったカボチャが、パラパラと落ちていく。

「いっぱいだコン」
「ほくほくにするコン」
 黄色いカボチャの雨が降る中を、子狐たちは行ったり来たり。
 掲げたお鍋で受け止めて。
 これは中々、ボリュームのある料理が出来そうだ。

「猟兵、あっちのニンジンも捕まえて欲しいコン」
「煮物つくるコン!」
「分かったわ」
 ひらりとケープを翻し駆けるリゼの後ろを、子狐たちが鍋をもって、こんこんと付いていく。
 ほくほく甘い煮物の香りが漂うまで、リゼたちの料理はもうしばらく続くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・【POW】使用
・アド/絡◎

■行動
後はお料理、ですねぇ。
変わった食材も有るみたいですし、楽しみですぅ。

【豊饒現界】で[料理]を強化、手順等から悪戯されたら危険な場所は『FSS』でガード、残りは捕縛しつつお料理しましょう。

まずは「噛みついて来る南瓜」にタイミングを合わせて[カウンター]、そのまま捕獲して[料理]を始めますねぇ。
加熱してから皮をむいて潰し「パンプキンパイ」を作りましょう。

大根と人参も同様に捕獲し、此方は千切りにして、スライスオリーブ等と一緒にオリーブオイルと檸檬果汁と共に袋に入れて揉み込み、調味料で味を調えて「洋風なます」にしてみますねぇ。

宜しければ、お召し上がり下さいませ。



 猟兵たちの活躍によって、困った野菜たちも静まって。
 めんどくさがりな猫又も反省している。

「後はお料理、ですねぇ」 

 世界に満腹が戻った今、子狐たちも安心して料理が出来るというもの。
 るこるが、視線を巡らせれば。UDCアースで見るような近代的な調理道具から、木桶などの時代を感じさせる物まで。様々な文明がチグハグに重なり合っている、何とも不思議な光景に、好奇心を刺激される。

 そして、それらの道具の影で、ちらほらと。
 見え隠れする、怪しい影……。

「変わった食材も有るみたいですし、楽しみですぅ」

 果たして、このカクリヨの野菜で作るお料理は。どんな味になる事やら。
 るこるは手馴れた様子で、調理道具の準備を始める。

 包丁よし、まな板よし。
 それから、ボールにヘラに……。

「ニンジン、待つコン!」
「にがさないコン」

 必要な道具を並べていくるこるの足を、子狐たちのもふもふな尻尾が撫でていく。
 見れば、子狐たちが、尻尾をふりふり走り回っていて。どうやらニンジンと追いかけっこの真っ最中のようだ。
 厨の中とは思えない、何との賑やかな光景に、思わず口元が緩んでしまう。

 けれど、調理道具の中には、扱いに気を付けないと危険なものもある。
 野菜たちの悪戯で、包丁が落ちたりしないように。起動したシステムで、しっかりと手元をガードして。

 ぺちん。ぺちん、と。
 展開した光子の盾が、妨害せんと迫る野菜たちを跳ね返す中で、るこるは『それ』に狙いを絞る。

 盾と盾の隙間を、するりと抜けて。お化け南瓜がるこるに噛みつかんと、大口を開けたその時。
 えいっと繰り出した、るこるの包丁が、サクッと南瓜に突き刺さる。
「南瓜さんが通り抜けられるよう、わざと隙間を作っておいたんですぅ」

 お化け南瓜が、慌ててじたばたともがくけれど。深々と突き刺さった包丁が、抜ける気配はなく。そのまま、まな板の上へご案内。

 適当な大きさに切り分けて、熱を加えれば。甘い南瓜の香りが漂って来る。
 必要な材料と共に、滑らかになるまで混ぜ合わせれば。
 あとは生地に流しいれて、じっくり焼くだけ。

 この待ち時間をどうしたものかと、悩むるこるの足元で。何やら『ごちん』と不穏な事が響いて。

「あらまぁ、大丈夫ですかぁ?」
 見下ろして見れば。そこに居たのは、ころんと寝転がった二股ダイコンの姿。
 どうやら展開してあった盾に、勢いよくぶつかって転んでしまったらしい。

 これは捕獲する手間が省けた。
 スイーツもいいけれど。これだけ野菜があるのだから、何か副菜的なものも欲しい所。

「よかったら、そのニンジンを分けていただけますかぁ」
「もちろんだコン!」
 ニンジンを追いかけていた子狐に声を掛けて。揃えた材料を千切りに。
 今回は主に鍋料理が並ぶという話だし、ここはさっぱりと食べやすいものが良い。

 オリーブオイルで風味を付けて、レモン果汁でさっぱりと。
 食感を損なわないように、やさしく揉み込んで味を調えれば。

「洋風なますの出来上がりですぅ」
「洋風なのコン?」

 珍しい料理に、子狐たちも興味津々に小皿を覗き込んでいる。
 丁度、オーブンからは香ばしい匂いも漂ってきて……。

「宜しければ、お召し上がり下さいませ」
 楽しい。美味しい時間は、もうすぐだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・フォーサイス
食材を捕まえるところから料理は始まってるってことだね。
これは美味しい料理(お話)になりそうだ。

追いかけっこ?ようし、勝負だよ。
こっちはかくれんぼかな?見いつけた。



 子狐たちに導かれて、やって来たのは狐狗狸の厨。
 妖怪たちの、不思議なキッチン。

 オブリビオン達が暴れていた時には、あまり落ち着て見られなかったけれど。
 アリスが改めて、厨の中を見回してみれば。

 シンプルな調理台に、様々な調理道具は、UDCアースで見られるような物も揃っていて。現代の文明を感じさせるけれど。
 何故か木桶や樽が置かれていたり、食材が無造作に積まれていたりと。レトロな雰囲気も感じる。
 そして、何よりも不思議なのは……。

「ここの料理は、食材を捕まえるところから始まってるってことだね」

 そう。食材がじっとしていない事だ。
 まるで人間の足のように、二股に分かれたニンジンやダイコンは、他の世界でも見かけるけれど。
 それが本物の足のように動いて、走り出すなど。

 まさに『物語』の中の出来事。
 猟兵になって、沢山の世界を歩いて。数え切れないくらい、様々な物語を見て来たけれど。
 まだまだ世界は、アリスを楽しませてくれる。

「またニンジンが逃げたコン!」
「追いかけるコン」

 この物語は、もふもふな狐たちの日常のお話。
 落ち着きのない野菜たちを前にして、狐たちがあっちにこんこん。こっちにこんこんと、走り回る。ドタバタなお料理の話。

 ニンジンの赤に、カボチャの緑。狐の黄色。
 色彩豊かで、賑やかで。
 とても、とても美味しそうな料理―お話―の予感に。
 アリスの胸はドキドキと高鳴って。このままただじっと見ているなんて、勿体ない。

「ようし、勝負だよ!」

 しゅたたたたたと、走るニンジンに。ぱたぱたと追いかける子狐。その背中に目標を定めて。
 アリスも元気によーいドン!

「まてー!」
 あっという間に迫って来るアリスの声に、先頭を行くニンジンがビクリと葉っぱを震わせて。
 鋭いカーブで、調理台の影へと身を隠す。

「回りこむコン!」
「まかせてっ」
 アリスも素早く身を切り返して、調理台へと回り込めば。
 前にはアリス、後ろには子狐の挟み撃ちに、おろおろと足を止めたニンジンを、見事にゲット!

「猟兵、お鍋にいれるコン」
 子狐の差し出す『お狐印の鍋』に、さっそくニンジンを入れてみるけれど。
 いかに美味しい料理を作れる鍋とて、材料がニンジン一本だけでは心許ない。

「つぎは、どの野菜かな?」
 キョロキョロと、アリスが厨の中を見回せば。
 調理台の影から。あるいは調理器具の後ろから。アリスの方を窺っている、怪しい気配が沢山。
 ちらりと一瞬顔を見せたのは、トマトだろうか?

「こんどはかくれんぼかな?」
「猟兵、あっちにも何かいたコン」
「よーし」

 どんどん見つけていこう、と。
 アリスと子狐たちの賑やかな料理は、まだまだ続くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱狼】
ネロの人見知りを直す為にも様々な者との交流は大切です
友好的な仔狐達ならば、ネロを気に入ってくださるでしょう

挨拶を終えましたら食材狩りといきましょう
野菜を狩るなど、滅多にない体験ですからね
目立たないように行動し、視力、聞き耳で野菜を探します
ネロに気が向いている間に忍び足で接近し、抜刀術『落花椿』
野菜を斬ってしまえば料理の手間が省けるというものです

お鍋ですか
私はどちらも好きなのですが、今日はネロが居るのですし
彼に意見を聞いてみましょうか?

希望に合わせて倫太郎殿と料理をします
では、味付けは私がやりましょう
味見はお二人に、問題なければ頂きます

これは留守番をしている子達にもあげなくては、ですね


ネロ・ヴェスナー
【華禱狼】
オトウサン達ニ、来ルヨウニ言ワレタケド……キ、キツネ?
二人の後ろに回り込んで狐の様子を見る
仲良ク、交流、ダイジ……ガンバル
おずおずと仔狐達に近寄り
ボク、ネロ……ヨ、ヨロシクネ?

挨拶を終えて一息、二人の様子に首を傾げる
狩リ……?
ワ、ワワワ!何カ来テルヨ!?
理由を尋ねる前に素早く何かが過れば足をバタバタ
それが野菜に興味を持たせてしまったのか、集まる野菜におろおろ
オトウサン!ガ、ガンバッテ!

へとへとになりながら料理の様子を観察
オ鍋?エット……トマトノ、オ鍋、チーズ乗セルノ、好キ

良い匂いに鼻をひくひく
味見も美味しさのあまり口の周りをペロリ

オトウサン、オ家デモ食ベタイ
皆デモ、食ベヨ


篝・倫太郎
【華禱狼】
大事な大事な息子だから仲良くしてやってくれな?
仔狐達にそうネロを紹介したら
一先ず食材ハント

ふ、ふふふ……にがしゃしねぇぜ!
つー訳でネロの陽動に引っ掛かったのを捕獲
捕獲は弐式で召喚した神霊に任せる
んでも逃げるのは華焔刀でさくっと!

うっし!食材確保!
夜彦ー、何鍋にしよ?
味噌もいいし醤油もいいよな
悩んだら大事な息子に聞こう

ネロはどっちがいい?

ネロの希望を聞いて
食材を適度なサイズに切り分けたら鍋にぽぽい!
味付けは夜彦に任せよ
優しい味になるから

ネロ、ちっと味見
作ってるのを興味深く見てるネロに
掬い分けた具材を冷ましてから差し出し

ネロと夜彦のOKが出たら
いただきます!

んー?判った
家でも作ってやるよ



 もふもふと、もふもふが、見つめ合っている。
 正確には、興味津々な目をした子狐たちと、困ったように眉を下げた大きな黒狼が、大の男二人を隔てて、お互いの様子を探り合っていた。

(オトウサン達ニ、来ルヨウニ言ワレタケド……)

 知らないニオイが一杯する、知らない空間。それだけでも落ち着かないのに。
 そーっと、オトウサン達の足の隙間から、様子を伺ってみれば。
 二本の足で立つ不思議な黄色い生き物たちが、ネロ・ヴェスナー(愉快な仲間のバロックメイカー・f26933)の事をじっと見ている。

(キ、キツネ?)
 狐とは、こんな生き物だっただろうか。分からない。
 分からないものは、何だか怖い。

「狛犬族コン?」
「でも、えらそーじゃないコン」
「大事な大事な息子だから仲良くしてやってくれな?」

 ひそひそ、こんこん。
 ネロに興味津々な子狐たちの前にしゃがんで。視線を合わせた倫太郎が、にかっと笑みを浮かべる。

「猟兵の子どもなのコン?」
「じゃあ、猟兵なのコン?」
「ウ、ウン……」

 自信の無さそうな声。
 大きな大きな体から踏み出す一歩は、とても小さい。
 けれど世界は、ネロが知っているよりも、もっともっと広いのだと知って欲しいから。
 その人見知りは、やはり。ヒトの輪の中で、治されていくものだから。
 夜彦はあえて、口を出さずに。
 一歩一歩、小さく前に進んでいくネロの様子を静かに見守る。

「ボク、ネロ……ヨ、ヨロシクネ?」
「よろしくだコン!」
「猟兵なら、お料理食べていくコン」

 自己紹介の声が震えてしまった事なんて、子狐たちは気にしない。ぱたぱたとネロへと駆け寄って。気さくに声を掛けてくる。
 そのもふもふの手が、遠慮なくネロの体に触れてきて。
 その距離感の近さに、ネロの心臓はいっそうドキドキと震えだす。

「犬族も猟兵になれるコン?」
「お化け南瓜には気を付けるコン」
「嫌いな料理はないかコン?」
「エ……エット……」
 次々とかけられる言葉に、どう答えればいいか分からない。
 上手く言葉が出てこなくて、身を固くしているネロの足に、『わさっ』と何かが触れる。

「ワ、ワワワ!」
 慌てて、何かが触れた前足を上げてみるけれど。
 今度は後ろ足の方で『わさわさ』と……。
「何カ来テルヨ!?」
 しゅたたたたたた、と。陸上選手のような力強い走りで、ネロたちの足元を駆け抜ける。赤い影と白い影。
「二股ニンジンだコン!」
「ダイコンもいるコン」

 まるで揶揄うように、往復して攪乱しようとしてくるニンジンとダイコンに、ネロはわたわたと足を動かして。
 子狐たちも、ネロと一緒に右往左往。

「ふ、ふふふ……」
 待ってましたとばかりに、倫太郎が口元を吊り上げる。
 食材だ。活きの良い食材だ。
 しかも、育ち盛りの子供たちの胃袋も、十分に満たせるくらいには大量に居る。
「にがしゃしねぇぜ!」

 「待ちやがれ晩飯っ!」の、気合と共に放たれるのは、倫太郎の始祖たる神霊たち。
 まさか野菜狩りに駆り出されるとは、当のご先祖様たちも思っていなかっただろうが。そこは可愛い子孫のため、ネロへと群がる野菜たちを、次々とつかみ取りしていく。

「オトウサン!ガ、ガンバッテ!」

 ネロの声援を受けて、夜彦もまた野菜を狩るため、刃を構えた。
 しかし、これは異形退治ではなく、あくまで料理。
 ゆえに、その手の刃はいつもよりも刀身は短く、身幅は広く。
 等間隔に小さな穴の開いたその不思議な刃には、『万能包丁』と銘打たれている。

「野菜を狩るなど、滅多にない体験ですからね」
 呼吸を整え、気配を消して。夜彦は己が感覚を研ぎ澄ます。
 例え、相手が野菜であろうとも。
 例え、手にした獲物が調理道具であろうとも。
 刃を以て繰り出す業に、侍は手を抜かない。

 低い姿勢から、体重を乗せて地を蹴った。
 普段とは間合いの違う刃を、正しく野菜だけに振るって。夜彦は、静かに駆け抜ける。
 最後の一閃が、銀の尾を引いた後。一瞬の静寂の後、ぱらりと。
 三等分になった野菜たちが、地に伏した。

「うっし!食材確保!」
「猟兵、やっぱりすげーコン」
「これなら、お料理いっぱい作れるコン」
 確保した野菜たちを両手に抱えながら、倫太郎と子狐たちが喜びの声を上げる。
 その賑やかな様子に釣られて、ネロの口元も僅かに緩む。
 やっぱりまだ子狐たちと話す事は緊張するけれど、オトウサン達を褒められるのは、何だか誇らしくて。嬉しいから――。

「ネロはどっちがいい?」
「エ?」
 唐突に、倫太郎に顔を覗き込まれて、ネロはきょとんと首を傾げる。
 いけない。子狐たちの反応に気を取られて、話を聞いていなかった。

「何鍋にするか、夜彦にも聞いたんだが」
「今日はネロが居るのですし、ネロに決めて貰おうかと」
「オ鍋?エット……」

 味噌か、醤油か。それとも別のお鍋がいいか。
 二対の瞳に問われて、ネロは考える。
 でも、今日は目まぐるしいくらい色々な事があって、上手く思考が回らない。だから、シンプルに。最初の浮かんだ、好きなお鍋を言う事にする。

「トマトノ、オ鍋、チーズ乗セルノ、好キ」
「トマトなら、捕獲した野菜の中に居ましたね」
「じゃ、沢山入れて作るか」

 盛り盛りに積まれた野菜の山から、倫太郎ががしっとトマトを掴み上げると……そのトマトと目があった。
 大きな一つ目の付いたトマトが、うるうると目を潤ませて。倫太郎を見つめてくるけれど。
 倫太郎は気にしない。だって可愛い我が子が、トマト鍋を食べたがっているのだ。そのまま包丁でざっくざっく。綺麗にくし切りにしていく。

 一通り材料を切って、ぽぽぽいっと鍋に放り込み、火にかければ。
 ことこと。ことこと。音を立てながら。トマトのいい匂いが徐々に広がって。

 まだ、味付けはしていないのだけれど。
 湯気と共に広がる野菜の甘みが、何とも美味しそうで。
 ネロの鼻も、思わずひくひくと反応してしまう。

 そろそろ、具材に火が通っただろうか。
 後は仕上げを……といった所で、倫太郎が鍋の前から退く。
 夜彦を見つめる、その琥珀色の目は。どうやら「任せる」と言いたいらしい。

「では、味付けは私がやりましょう」
 塩胡椒を手に、夜彦が鍋の前へと進み出る。
 仕上げの工程はシンプルな作業とは言え、料理の味を決める重要な役割。
 匂いに敏感なネロが、素材の味を楽しめるように。塩と胡椒は、ふんわりと控えめに。けれどチーズは、こっそりと多めに。
 今日は、子狐たちとの交流を頑張っていたから。

 チーズが溶け始めると、鍋はいっきに風味を増して。
 美味しそうな匂いに、ネロはそわそわ。倫太郎のお腹も、空腹を訴え始めて――。

「ネロ、ちっと味見」 
 しっかり冷ましたトマトを一切れ。ネロの口へと運べば。
 夜彦オトウサンの優しさ溢れる味に、ネロの尻尾がぴょこんと上がる。

「オトウサン、オ家デモ食ベタイ」
 とろとろチーズに、トマトの風味が重なり合って。余韻まで美味しくて。
 思わず、口の周りをペロリ。
 こんなに美味しいお鍋なら、また食べたいし、何もよりも……。

「皆デモ、食ベヨ」
 みんなで食べると、きっともっと美味しい。
 美味しいねって、みんなが笑っていれば。心がぽかぽかするから。

「これは留守番をしている子達にもあげなくては、ですね」
 ネロの様子に、夜彦も口元が緩む。
 倫太郎と二人で作った鍋を、ネロがこうも美味しいと。思ってくれる事は、やはり嬉しい。
 そして同時に、欲が出てしまう。
 今日はお留守番の子供達も、こんな風に喜んでくれるのなら。その笑顔を見たいと思ってしまうのだ。

「判った。家でも作ってやるよ」
 テーブルに鍋を運ぶ倫太郎の後ろを、ネロが軽快な足取りで追いかける。
 こんな光景を、何度も。何度でも見られるのならば――。

 ささやかな夜彦の願いを乗せて、元気な声が厨に響く。
 みんな揃って、手を合わせて。大きな声で――いただきます!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アカネ・リアーブル
エリシャ様・f03249と

お腹のお肉をひとつまみ
二の腕のお肉もふたつまみ
エリシャ様!アカネは元に戻っておりますよね?
デラックスなままではありませんよね?

あの水着を着こなすには着る側に相応の体型を要求されるのです
UCはさておき美味しいおやつは食べてしまいました!
チョコとポテチとあれやこれ

エリシャ様!
ダイエット食の作り方をお教えくださいませ!

ここに美味しく食べるとお約束したお野菜たちが
これで美味しくてヘルシーな料理を作りましょう

エリシャ様と一緒に包丁を使って
楽しくお料理して皆でいただけば
ヘルシーダイエットメニューもごちそうです
子狐様達もご一緒にいかがですか?

子狐様達と一緒にダイエットパーティーです


エリシャ・パルティエル
アカネちゃん(f05355)と

ええ、ちゃんと元に戻ってるわ
ぷにぷにのアカネちゃんもそれはそれで可愛かったけど…!
夏と水着があたしたちを待ってるから
これを教訓に体型維持に努めないとね

ヘルシーな食事は健康にもいいもの
お野菜をたっぷり使いましょう
(料理お任せ)

食材たちは…なんだか騒がしいけど
捕まえるのは他のみんなに任せて…
あんなに収穫されたがってた野菜たち
美味しく料理してあげなきゃね

アカネちゃん
料理に大切なのは技術だけじゃなくて
食材や食べてくれる人への愛情が大事なの
子狐さんたちはもうきっとそのことをわかっているわよね?
デザートにはスイカとメロン入りのフルーツポンチ
さあみんなで美味しくいただきましょう



 猟兵と子狐たちの料理は順調のようで。
 厨のあちらこちらから、こんこん響く賑やかな声といい匂い。

 けれど、アカネは何故か、自分のお腹をぺたぺたと触って。二の腕もふにふにと――むむっ、むむむむ。
「エリシャ様!アカネは元に戻っておりますよね?」
 切実な目で、エリシャに問う。

 確かに、ぷにぷにぽよぽよだった時に比べれば。堕ねこデラックスとしっかりエクササイズをした体は、随分と軽く感じられる。
 体積だって、ちゃんと元に戻った筈なのだ……けれど。

「デラックスなままではありませんよね?」
 本当に、元に戻れたのだろうか?
 だって、一杯食べてしまった。そのカロリーは罪の味。悪い子気分で食べるお菓子は、何だかとても美味しくて。
 チョコとかポテチとか、あれとかそれとか。もっきゅもっきゅと頬張った。

「ええ、ちゃんと元に戻ってるわ」
 落ち着きなく、体を触って確かめるアカネを安心させるように。エリシャがその肩に手を置く。
 その肩回りも、腕も。もちろん、体も。たぷたぷだった頃の面影は、もう何処にも無い。

 もっとも、ぷにぷに姿のアカネは、ほっぺがとても柔らかそうで。お菓子を貪る姿は、小動物みたいで可愛かったのだけれど。
 その感想は、そっと心に秘めておく。
 だって、本当にアカネがあの姿になってしまったら。可愛いと思うのと同時に、困ってしまうのだ。

 夏はまだまだこれから。
 猟兵たちとて、時には戦いを忘れて。夏を思い切り楽しむ権利がある。
「夏と水着があたしたちを待ってるから、これを教訓に体型維持に努めないとね」
 暑い太陽の下、水着でみんなと遊べる季節は、夏だけなのだ。

 エリシャの言葉に、アカネがきゅっと拳を握る。
 折角の、真新しい水着。着る事も出来ないのは論外だとして、水着に着られたくはない。
 水着姿の、みんなの輝きに負けないように。胸を張って、あの水着を着こなせる自分でいたい。だって女の子だもん。

「エリシャ様! ダイエット食の作り方をお教えくださいませ!」
「そうね……」

 エリシャを見つめる、アカネの藍色の瞳に。燃える炎が見えた気がする。
 ダイエットは一日にしてならず。日々のヘルシーな食事が、美容と健康に繋がるのだ。
 あまり手間のかかる料理では、長続きしない……なら。

「猟兵、作る料理決まったコン?」
「お野菜、いっぱい捕まえて来たコン!」

 頭の中で、エリシャがいくつかのレシピを思い浮かべては消す中、子狐たちがぴょこぴょこと駆け寄って来る。
 子狐たちが抱える籠には、沢山の野菜たちが積まれていた。

 大人しく籠の縁に腰かけている、どうやら観念したらしい二股ニンジンに、大きな目で瞬きをするトマト。
 ごろりと横になった二股のダイコンが、足のように見えるその先端をくねっとさせている。

 トン、カラ、トンたちと――もとい、吸血西瓜たちと『美味しく食べる』と。そう約束した、このカクリヨの野菜たち。
 沢山沢山、使ってあげたい。

「……ミネストローネはどうかしら?」
 沢山の野菜をしっかり取れて。その時々で、食材を変えて楽しめるお料理。
 その主な工程は、切ってお鍋に入れる事。

 さぁ、あの練習を思い出して。今度はちゃんと、包丁で。
 とんとん。ととん。
 エリシャ先生の包丁が、軽快にまな板を叩けば。
 とん、ととん。
 アカネも続いて、リズムを刻む。

「アカネちゃん。料理に大切なのは技術だけじゃなくて、食材や食べてくれる人への愛情が大事なの」

 食べてくれる人に、美味しいと思って欲しい。笑って欲しい。
 そんな思いが、料理の手間を、手間ではなくする。
 愛情は、本当の意味で隠し味なのだ。

「子狐さんたちはもうきっとそのことをわかっているわよね?」
 エリシャがくすりと目配せすれば、子狐たちが「はい、はーい」と、元気よく手を挙げて。
「お鍋をことことする時に、おいしくなーれってお祈りするコン」
「いっぱいおいしくなるコン」
「それでは、一緒にお祈りいたしましょう」

 上手に切った食材たちを、お狐印のお鍋に入れて。
 子狐たちが灯す炎に、乗せてあげればコトコトと。
 エリシャとアカネそれぞれの鍋が、白い湯気を上げて蓋を鳴らす。

「おいしくなるコン」
「なるコン!」
 子狐たちと共に、愛情のおまじないを籠めれば。
 お鍋から、徐々にいい匂いが零れ始めて……。

「エリシャ様のお鍋……」
 自分のそれと、少し匂いが違う気がして。アカネが首を傾げると。ふふっと、意味ありげな笑みをエリシャが返す。
 そっと開けた、鍋の中身は――。

「わぁ、リゾットですね!」

 野菜だけでは物足りない子も、お腹いっぱい食べられるように。
 ミネストローネにトマトとチーズを追加した、エリシャ特性のアレンジ料理に、アカネの目が輝く。

「いい匂いがするコン!」
「子狐様達もご一緒にいかがですか?」
「いいのコン?」
「勿論です!」

 アカネのお誘いに、子狐たちがぱっと表情を明るくさせる。
 だってお料理は、みんなで食べるともっと美味しい。
 自分たちの作った料理を、美味しいと言って食べてくれるのならば、なおの事。

「フルーツポンチもあるからね」
 トン&トン……ではなく、ちゃんと妖怪ではないスイカとメロンを使ったデザートを運びながら。
「ミネストローネ、食べ過ぎちゃダメよ?」
 エリシャがウィンクして見せれば。
 子狐たちが、元気な返事と共にお行儀よくテーブルに着く。

 ――両手を合わせて、声を合わせて紡ぐ言葉は、美味しい時間の始まる合図。
 さあ、みんなで美味しくいただきましょう!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月30日


挿絵イラスト