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願望に囚われし騎士~失ったモノは

#アリスラビリンス #『異界の剣聖』リヒター・ライヒハルト #NPC:クラリス #心情系 #探索 #宿敵撃破 #デスゲーム組

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#アリスラビリンス
#『異界の剣聖』リヒター・ライヒハルト
#NPC:クラリス
#心情系
#探索
#宿敵撃破
#デスゲーム組


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●逃げるアリスと人違い
 魔法のウサギ穴をくぐればそこは別の国。ここは複数の小さな『世界』が繋がり合う不思議な迷宮、アリスラビリンス。

 ここはそんなちいさな『世界』のひとつにある、レンガと石で作られた街……そこで『アリス』がオウガに追われていた。
 オウガは細い路地の邪魔な木箱を斬り崩しながら『アリス』を追う。
「なぜ、逃げるのですかメアリー。ようやく、見つけたというのに!」
 そう声を投げかけるオウガに対し、逃げる『アリス』はこう叫んだ。
「ですから、私の名はクラリスだと! 人違いです!!」
 路地を逃げ回る彼女だったが、身に着ける防具が重く長く走れない。……やがて彼女は建物の屋根へと追い詰められてしまった。
「もう逃げられませんよ。これまで斬り捨てた有象無象の『偽物』と違い、今度こそきっと、『本物』だ。さあメアリー、今度こそ君を離さない……」
 クラリスを追っていたオウガ、『リヒター・ライヒハルト』はそう言いクラリスへと近づく。
 彼はこれまでも、一方的な人違いで『アリス』を捕らえては偽物だと切り捨ててきた様だ。

 だが、追い詰められたクラリスは逃げ場が他にないと知ると意を決して隣の建物の窓へ飛び降りる。
「なんという無茶を!」
 オウガもすぐさま後を追ったが、その先に積まれた小麦の袋から舞い上がった粉が視界を覆った。
「これは……」
 舞う小麦を風の精霊で吹き飛ばした時には、既に追う『アリス』の姿は無かった。

●まずは逃げ隠れるアリスを探そう!
「集まってくださり、ありがとうございます! アリスラビリンスでオウガに追われている『アリス』の方を発見しました!」
 グリモア猟兵のユーノ・エスメラルダ(f10751)はグリモアベースに集まってくれた猟兵たちにぺこりとお辞儀をすると説明を開始する。

「場所は、石畳と石造りの街です。この街には藁で出来たカカシの『愉快な仲間達』たちが住んでいて、そんな街に、オウガがやってきました」
 ユーノは持ってきたノートへ、手にしたペンでざっくりと絵を描いていく。
 そこに描かれたのは精霊の魔法を纏う剣を持つ黒髪の剣士。
「最後に戦う事になるオウガ――オブリビオンは『『異界の剣聖』リヒター・ライヒハルト』さん。彼には生前とても大切な人が居た様です」
 その大切な人の名が、メアリーと言うらしい。
「ですが、守れなかった絶望が彼を追い詰め、後にオブリビオンとなったことで目に映る世界を憎むようになり、行く先々で破壊をしては見つけた『アリス』に想い人を重ねて捕らえ『人違いだった』と嘆き殺す様になりました」

 それは、喪失を埋めるような願望交じりの妄想と勝手な失望。
 その狂気はオブリビオンとなることで歪められて得たものか。あるいは生前の絶望により歪んでしまったものなのか――。

「彼は実戦で磨かれた堅実な剣術を身に着けており、精霊の召喚による属性の付与と組み合わせることで飛び道具の迎撃も行えます。手堅い戦い方に注意が必要な相手です。ですが……」
 しかしこのオブリビオンには『確かな隙』がある。それは……。
「ですが、生前に想い人を守れなかった未練がこのオブリビオンに願望からくる妄想を見せている事です……その願望を利用するにせよ、矛盾を突きつけるにせよ、そこには隙が産まれるでしょう」

 続けて描かれたのは、追われている『アリス』。
 その姿は茶色の長い髪を結わえて丸くまとめており、チェーンメイルやガントレット、グリーヴなどの防具をきっちり身に着けているがあまり旅慣れていない風貌をしている。
「彼女はクラリスさんと言います。装備は揃っていますが実力はあまり伴っておらず、身体能力も剣の腕も基礎が身に付き始めた程度の様です……そのため次にまたオウガに見つかってしまえば確実に捕まってしまいます」
 先ずは、息を潜めて隠れる彼女を保護することが最優先になるだろう。
「今は石畳の街のどこか……水場の近くでしょうか? 隠れられる場所に潜んで、休んでいる様です。『愉快な仲間達』もそれぞれ避難しているため、街中は閑散としているでしょう」

●失ったモノ、失われていくモノ
「街も今はそれほど破壊されていませんが、『アリス』の方が捕まれば遠慮なく破壊されてしまうでしょう……。大切なモノを奪わた方が、破壊で奪う側になるのは、悲しいことだと思います……」
 ノートをたたむとユーノは集まっている猟兵たちへと改めて向き直った。
「この喪失の連鎖を止めるためにも、どうかみなさんの力を貸してください」

 ユーノは祈りを捧げながら魔法を展開させた。この上に乗れば、目的の世界へ転移できるだろう。
「ユーノはみなさんを転移させなければならないので、同行はできません……。どうか、みなさまに武運と幸運がありますように……」


ウノ アキラ
 はじめましての方は初めまして。そしてこんにちわ。
 急に暑くなってきた気がします。熱中症には気をつけたいですね。ウノ アキラです。
 このオープニングに興味を持っていただき、ありがとうございます。

●お得情報
 マスター紹介ページにもあるとおり執筆は主に土日になるので、プレイングを安定して受け付けられるのが【毎週木曜の8時30分から土曜の午後まで】の間になりますことをご了承ください。
 章がクリアにならず引き続き参加を募る場合も木曜から土曜にかけてが採用しやすいです。
 他にもマスター紹介のページは一読頂けると文字数を少し節約できるかもしれません。

●依頼について
 アリスラビリンスの依頼となります。
 そして、今回は宿敵主さんが参加する可能性が高めです。
 一章が冒険。二章が集団戦。三章がボス戦となります。

 一章は探索パートです。
 アリスを探したり、周囲の地形を確認して戦いに備えたり等ができるでしょう。
 ここで何をするかによって二章と三章の開始時の状況に変化が出ます。

 三章のボス戦は、シナリオで扱うのが二度目となる宿敵ですが別個体なので前回戦った方への面識はありません。ご注意下さい。
 二章の敵が周辺をうろついてますが、特殊なことが無い限りは傍観している事でしょう。

 アリスは次のユーベルコードを会得しています。
 【デュエリスト・ロウ】
 【手袋】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。

 アリスの性格については以下のシナリオも参考になると思います。
『迷宮内のデスゲーム〜伸ばした手は〜』
 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=21799

 よろしくお願いしします。
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第1章 冒険 『蹂躙された街』

POW   :    隅々まで歩き回り、虱潰しに探索する

SPD   :    それらしい物陰などに目星を付けて素早く探す

WIZ   :    襲撃の痕跡から、オウガや「アリス」の動きを推理する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●襲撃された石造りの街
 石畳が広がる街は静まり返っていた。
 無事な建物も多いが、所々に崩れた建物もあり街の中央を流れる川にかけられたアーチ状の橋も複数あるうちのひとつは崩れてしまっている。
 住民であるカカシたちは大きな建物に避難している様子だ。

 オウガの姿は見えない。どうやら本能的に猟兵を『敵』と察知して身を隠し、様子を伺っている様子だ。
 ……今のうちに『アリス』を探そう。
マルス・ドメスティカ
 強化人間のスピリットヒーロー×マジックナイト、27歳の男です。
 死を覚悟した時は「男性的(俺、呼び捨て、だ、だぜ、だな、だよな?)」、普段の口調は「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


御門・結愛
メダルに封印されたユニコーンと契約したアリスナイトの少女。
UDCアース出身で、正義の味方に憧れており理想のカッコいいお嬢様を演じている。
悪党退治とメダル探しが目的。

「まずは、狙われているクラリスさんを見つけないといけないわね」
ベルトポーチからペガサスメダルを取り出し【天馬融合】を使用。
「あなたの出番よ!」
純白のドレスを身に纏い、背中から天使のような翼が生え、天馬の雷銃を装備する。
純白の翼で空を舞い、空中から探索します。
「どこにいるのかしら?」
ベルトポーチからユニコーンメダルを取り出し周囲の魔力感知を行います。
「ユニコーン、あなたなら少女の場所を感知できないかしら?」
「可愛い娘、好きでしょう?」



●川べりの地下水路
 石畳の街に石造りの家。
 削り出した四角い石を並べて積み上げ作られたその街はまるでUDCアースのヨーロッパの古い町並みに近い。
 平時であれば、美しい街並みと、生活を営む住民たちの姿を見ることが出来ただろう。

 街を訪れたマルス・ドメスティカ(強化人間のスピリットヒーロー・f23310)は地面に転がる石を拾い上げた。
 一部が白く磨かれたそれはかつて建物の壁だったもの。
「元の住民たちは、無事に避難出来ているでしょうか」
 壁が崩れた建物の中を覗けば、そこには生活の跡が見え隠れしている。
 事前に聞いた話によれば、この破壊行為は今は『アリス』を捕らえることを優先するために一時的に止まっているだけとのこと。
(であれば、『アリス』のためだけではなくこの街の住人たちの為にもオウガは早々に倒してしまいたいところです)
 この破壊の根源である、オウガを止める……そのためにも、まずはオウガが探している『アリス』を先に見つけることでイニシアチブを握りたいところ。
「確か水場……でしたか」
 住民の避難先を訪れ主な水場を聞いてみようと考えたマルスだが、教会のような形の大きな建物を目指す途中で街の中央を流れる川が目に入った。
「水場……ふむ」
 あごに手をあて少し考えると、マルスはおもむろに指を鳴らす。
 すると、マルスに後天的に移植された魔術師系の力の一端が発動した……そのチカラは、ユーベルコード『クロックアップ・スピード』。
「ついでです。この辺りのそれらしい物陰を隅々まで見ていきましょう」
 高速戦闘モードとなったマルスは爆発的に増大した速度で川べりと川沿いの建物に目星を付けて探していった。
「川の下の縁の方に、整備用なのか少し道のような段差がありますね……それに……」
 マルスは手すりの一部に、白い粉がついていることに気がついた。
「これは……小麦ですね」
 手すりから下を覗き込むと、そこにあるのは街の地下を流れているであろう地下水路への入口。
「なるほど……確実に追っ手を撒いたのであれば、潜むのに向いて場所かもしれません」
 そう呟くとマルスは自身の持つ暗殺に関する知識を用いて周囲に気配がないことを確認すると、川べりへと降りた。

 地下水路には魔法的な炎が点々と灯り中は定期的に掃除されているような綺麗さが保たれている。
 中を覗き込むと、マルスは身にまとう品の良い服が濡れるのも構わず地下水路へと入っていった。

●街の空
 ザッと高らかに足音が鳴る。
 ウェーブのかかった銀の髪が風になびき誇らしげにひるがえった。
 石畳の街にカッコよさげに現れたお嬢様、御門・結愛(聖獣の姫騎士・f28538)は腰に手を当てたポーズで街並みをぐるりと見渡すと今回の最初の目的を口にする。
「まずは、狙われているクラリスさんを見つけないといけないわね」
 事前に『水場の近く』『隠れられる場所』と聞いてはいるものの、目的の『アリス』の居場所は漠然としていた。
 しかし結愛には策がある。
「あなたの出番よ!」
 そう言うと結愛はスロットのついたベルト状のポーチから一枚のメダルを取り出した。
 それは天馬の力を宿した『ペガサスメダル』――ユーベルコード『天馬融合』が発動する。
「――『ペガサス』!!」
 声と共に結愛の衣服が純白のドレスへと変わる。同時に脇から吊り下げられるのは天馬の雷銃<<ペガサス・マグナム>>が収まったホルスター。そして、その背中には天使を思わせるような翼――。
 メダルの力で白き翼を得た結愛は、羽ばたきと共に空へと舞い上がった。

 雲のまばらな青空は見晴らしが良く、この世界の地平線までが見通せる様な気さえする。
 街の外は黄金に輝く小麦畑が広がっていた。
「どこにいるのかしら?」
 結愛は空から街を見下ろす。
 上空から見た街でまず目を引くのは、北のほうに見える教会のような大きな建物だ。北側は公共スペースなのか公園と思われる広場もあり全体的に広い。
 そして中央には街を東西に分けるように流れる川。
 街は南東の方面の損傷が激しく、崩れている建物が多い……。しかし東のある一点から破壊は止まっている様だ。
 恐らくあのあたりで『アリス』とオウガは遭遇したのだろう。
 そして、そこから西側にある橋が唯一崩れている橋となっている。

 空から見た図では、アリスは恐らくそのまま西へ逃げようとして橋を破壊され方向を変えたと推測できるが……そこからの足取りが掴みにくい。
「どこにいるのかしら?」
 結愛はポーチからさらにもう一枚のメダルを取り出す。
 それは一角獣の力を宿す『ユニコーンメダル』。
「ユニコーン、あなたなら少女の場所を感知できないかしら?」
 結愛はメダルに宿るユニコーンへと問いかける。
「可愛い娘、好きでしょう?」
 そう問いながら結愛が祈りと魔力を込めてメダルを撫でると『ユニコーンメダル』がブルブルとある方向へ引かれるように揺れだす。
「あっちね?」
 結愛はメダルが探知した何かに引かれて北側にある建物へと向かっていった。

 やがて結愛はその建物の地下に水汲み用の地下水路を発見する。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

マリオン・ライカート
&&&

・心情
…何だろう?
胸騒ぎがする

・行動
…兎に角今はクラリス嬢を探さないとかな?

瓦礫は気を付けないと危ないね
取り合えず何かしらの痕跡を追ってみよう
逃げる者の立場になって追いかけないと見つけられないと思うんだ

大丈夫かい?
久し振りだね、クラリス嬢
どうして君は追われていたのかな?
人違いか…迷惑な話だね

え?『メアリー』?
何だろう、妙に聞き覚えがある様な?

そうだ…それは「私」の愛称だった…気がする
「私」をそう呼ぶのは家族と…彼?
彼って、誰だっけ?
自分にとって大切な人?
じゃあ、その彼がエンパイアウォーやダークセイヴァーで見た幻覚の人?

え?
…ううん、何でもないよ
さあ、ここを抜け出そう
足元に気を付けるんだよ



●『メアリー』
 街を東西に隔てる川……そこにかかる橋のひとつが壊されていた。
 その川沿いの北側に木箱と食材が散乱する一角があり、その荒れた様子は路地の中に続いている。
 壊れた木箱が散乱する路地にマリオン・ライカート(Noblesse Oblige・f20806)は居た。
「逃げる者の立場になって……取り合えずもう少し他の、何かしらの痕跡があれば良いのだけれど……」
 そう呟きながらマリオンは路地を引き返す。
 この先は荷物置き場となった行き止まりだった。
 あそこから逃げるのであれば屋根へ登ることになるが、足場が悪く開けた場所ではいずれ追いつかれてしまうだろう。
(何処かで下へ飛び降りたはずだ……)

 引き返す路地には、追跡者が踏みつけた木箱の中身――トマトや魚の汁が靴底の形となり続いている。
 その歩幅が、そして足跡が、先ほどからマリオンに妙な感覚を呼び起こさせていた。
(……何だろう? 胸騒ぎがする)
「いや……兎に角、今はクラリス嬢を探さないと」

 マリオンがはやがて川沿いの手すりの小麦粉に気づき地下水路へと降りていく。
 その水路の先には、既に何人かの猟兵と合流した『アリス』のクラリスが居た。
「良かった、無事の様だね。大丈夫かい? 久し振りだね、クラリス嬢」
 マリオンはそう、クラリスへと声をかける。
「あなたも来てくれたのですね」
 すると心強い味方が増えたことに、クラリスは安堵の表情を浮かべるのだった。
「――私ではあのオウガに歯が立たず、しかしこのまま逃げても残される住民たちを思うと……どうしようかと、そう思っていたのです」
「そのオウガのこと、聞いても良いかな」
 路地で感じた胸騒ぎを思い出し、マリオンはクラリスを追っていたオウガの話を聞いた。
 話を聞いてみると、食料とするために追いかけていた様ではなさそうだ。
 基本的にオウガは『アリス』を餌とするために求め、追い立てるが……時折その目的からズレた変わり物も居る。
 どうも今回はその後者に当たる様子だ。
「……『メアリー』か……何だろう、妙に聞き覚えがある様な?」
(そうだ……それは『私』の愛称だった……気がする。『私』をそう呼ぶのは家族と……彼?)
 その時、路地で見かけた足跡が脳裏に浮かんだ。その見覚えのある歩幅に見覚えのある背中が重なる。
(かつてエンパイアウォーの最中に見た、『よく知るはずの死者の霊』。思い出すことが出来なかった、大切な人――)
「マリオン?」
 心ここに在らずといった感じでぼんやりしていたマリオンをクラリスの声が呼び戻す。
「……ううん、何でもないよ。彼を……オウガを倒すんだったね」
 いつものように振舞おうとするマリオンだったが、彼女の心は乱れていた。
(少しだけ思い出した。もしかして……彼は今、この街に――)

成功 🔵​🔵​🔴​

ロベリア・エリヌス
&&&

一度と倒されてるのに懲りないのね
…と、オブリビオンに言っても仕方ないのよね
彼らってコピー&ペーストなのかしら?
ペーストが幾ら倒されても関係ない代わりにフィードバックも無い…とか?
本当に『興味深い』わ

閑話休題
アリスを探さないと
こういう時は…これね
【クロックアップ・スピード】を使用
襲撃地点にし易い場所、逃げ易いルート、袋小路…
途中のそう言った場所をチェックしながら、水場を中心にアリスを探すわ
相手の地の利を少しでも削っておかないと後で大変だもの

あとは…そうね
石橋や建物の耐久チェックかしら?
ほら、橋を落としたり建物倒壊で圧殺したりとか出来たら楽でしょ?
逆に自分達がそうならない様に注意も出来るしね



●記録の蒐集
「――xx年xx月xx日。その塔の最上階の牢獄で相まみえたオブリビオンは、独りよがりな願望のために『剣』を振う騎士だった。誰かを護るために鍛えられた『剣』は、重なる絶望の先に歪んでしまったのだ――」

 ロベリア・エリヌス(recorder・f23533)は自身が『蒐集』した過去の記録を読み上げる。
「いちど倒されてるのに、また同じことをしているなんて……懲りないのね」
 呆れるように呟くと、ロベリアは物語を蒐集した本をパタンと閉じた。
「……と、オブリビオンに言っても仕方ないのよね。彼らってコピー&ペーストなのかしら? 張り付け先が幾ら倒されても影響はなく、その代わりにフィードバックも無い……とか?」
 興味深そうに考察をしながら石畳の街を歩いていくロベリア。
「閑話休題。『アリス』を探さないといけないのだったわ。といっても……とっくに誰か、猟兵が合流してるわよね」
 ロベリアはぐるりと周囲を見渡した。
 自身の持つ暗殺に関する知見を合わせても敵対する存在の気配は無い。
「だったら……今のうちに周囲の地形をチェックしておこうかしら。相手の地の利を少しでも削っておかないと、後で大変だもの」
 パチン、と指を鳴らす音が響いた。それはロベリアのユーベルコード『クロックアップ・スピード』の発動の合図。
 高速戦闘モードとなったロベリアは街中を進み路地や地形を確認していった。
 まず目につくのは街のあちこちにある、UDCアースでいうマンホールのような鉄の蓋だ。
 蓋を開けてればその下は水路となっており、それぞれの建物の水汲み場として地下室と繋がっている。
「川の水を街中に引いているのね。……『アリス』が隠れた水場って、ここかしら? 敵がここを知らないのだとしたら、逃走や襲撃に使えそうね」

 あとはその肝心のオウガが何処に居るかだが――。
「それは建物とかの耐久チェックしながら考えましょう」
 そう言うと、ロベリアはおもむろに両手持ちのハンマーを取り出した。
 削り出した四角い石を積み上げて作られた建物たちは、石膏で隙間を埋めているものの自重と木材の柱以外に自身を支えるものは見当たらない。
 それゆえに横からの衝撃には弱く、UDCアースのホームセンターで買える普通の両口ハンマーでボコッと崩れ、穴が空いた。
「あら、普通のブロック壁ね。見た目通りの技術水準と耐久度といった所かしら……」
 続けてロベリアは橋の耐久性を見ようと川の方へ移動する。
「見た目は普通の石のアーチ橋ね。さすがに上からの衝撃には強い……と」
 そう呟きながらハンマーを振り下ろすロベリア。
「これは下から上へ、強い力を加えないと駄目そう」
 街の構造や、建造物を調査していくロベリア。
 戦う時の手段を増やすため、彼女は周囲の情報を蒐集していく。

成功 🔵​🔵​🔴​

マキナ・マギエル
&&&

「実に興味深い。」

アサイラムからアリスを連れてくる…そのシステムとは果たしてどのような仕組みなのか
此度の来訪がそれを紐解く一助となれば良いのですが…

さて、肝心のアリスとやらはもう他の猟兵と接触したでしょうか?
少々時間を掛け過ぎてしまいましたので、アリスを探すだけではなく他の猟兵の痕跡を追うのも一興でしょう
小麦粉の跡、水辺、そして壊れた橋…成る程、地下水路ですか

さて、どうすべきか…
数を活かす相手に囲まれぬ為には地下水路は格好の場所とも言えます
…が、それは此方が十分に籠城出来る場合の選択肢です
持久戦を選択するにしても、退路を確保しなければ死兵となるだけです
合流後、水路を良く調べておきましょう


曽我部・律(サポート)
『この力を得たことは後悔していない……』
『私以外の人間が不幸になるところを見過ごすことはできないんでね』
『こういうのには疎いんだが……ふむ、こんな感じか?』
とある事件で妻子を失い、その復讐の為にUDC研究を続けているUDCエージェントです。ですが、UDCを強引に肉体に融合させた副作用として徐々に生来の人格は失われつつあり、妻子の記憶も彼らの写真によって辛うじて繋ぎ止めています。
多重人格者としての別人格『絶』は凶悪なオブリビオンの存在を察知すると、律に代わって表に出てきて戦います。その際、口調は『おい律……うまそうな匂いがするじゃねぇか。代われよ』みたいな凶悪な感じになります。



●調査と探求
 情報は多いほど良い。
 理解となればまた話は別だが、迷いかねないほど無数にあるその情報も別の情報で照らし選択していくことでまた見えてくるものもあるだろう。

 石造りの街に降り立ったマキナ・マギエル(機械仕掛けの魔術師・f05106)は周囲を見渡し、開口一番呟いた。
「実に興味深い」
 このアリスラビリンスという世界ではどういった要素が強いのだろう? 科学か、はたまた、魔術か――。
 マキナは先に動き始めている猟兵たちから情報を得るため、まずは他の猟兵との合流を試みようとした。
(アサイラムからアリスを連れてくる……そのシステムとは果たしてどのような仕組みなのか。此度の来訪がそれを紐解く一助となれば良いのですが……)

 そして閑散とした無人の石畳の街を歩く猟兵がもう一人。
「古い街並みとはいえ……UDCアースでの研究のフィールドワークに通ずるものがありますね」
 そう呟いた人物は、サポートとして来ている曽我部・律(UDC喰いの多重人格者・f11298)。
 彼の専門はUDCアースにおけるUDC怪物の研究だ。しかし時おりこうやって他の世界に赴くこともある。
(私以外の人間が不幸になるところを見過ごすことはできないんでね)
「警察の真似事……というほどでもありませんが」
 律は、自身の持つ追跡と失せ物探しの技能を活用し足音を立てないよう慎重に破壊の痕跡を見て回っていた。
「木のような比較的柔らかいものは『切断』された跡が見えますが……ブロックの壁は間接的な……神秘的な要素で破壊されているのでしょうか」
 現場に残された痕跡から相手の能力を推測するのは未知が多いUDC怪物を相手にする際に良く行うことでもある。
「精神に働きかけてくるような邪神の類よりは、対処はしやすいかもしれませんね……おや」
 慎重に覗いた崩れかけた建物の中――その床の土埃に足跡が残されていた。

●戦いに備え
「『アリス』は地下水路でしたか……そして、小麦粉の跡、水辺、そして壊れた橋…成る程」
 マキナはこれまで得た情報について考えてみる。
 これまで得られた情報は『アリス』の逃走経路。そして『アリス』を追っていたオウガの能力と性格がぼんやりと浮かび上がってくる。
 想い人と勘違いし手心を加えていたとはいえ、特別身体能力が高いわけでもない相手に対して有効な先回りや捕縛は出来ていない……。
 小麦の粉塵で見失ったところから察するに、周囲を探知する能力は特に低く一般人並と見て良いだろう。
 しかし同時に、建物や橋を破壊するだけの瞬間的なパワーもある様だ。
(さて、どうすべきか……数を活かす相手に囲まれぬ為には地下水路は格好の場所とも言えます。……が、それは此方が十分に籠城出来る場合の選択肢です)
 マキナは思考する。
 そこには律がその技能を用いて見つけた情報――恐らく『リヒター・ライヒハルト』が潜んでいるであろう場所――が大きな手掛かりとなっていた。
「地下水路……退路でもあり、こちらから攻める際の経路としても利用できそうですね……良く調べておきましょう」
 北に避難しているという住人たちの方にも、特に問題は起きていない様子だった。
 マキナは地下水路の内部を散策し、その構造の学習に励んでいく。

 ――時間が過ぎていく中、焦れる思いが募っていく。
 潜むオウガが放つ怨念にも似た歪んだ執着心が、新たなオウガを呼び乗せつつあった……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『たのしいおとぎばなし』

POW   :    残飯
レベル×1体の、【眼球】に1と刻印された戦闘用【人体模型】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
SPD   :    たすたすけたすけたすけにきたよ
【王子様と白馬の成れの果て】と共に、同じ世界にいる任意の味方の元に出現(テレポート)する。
WIZ   :    おいしかったもの
【プリンセス】の霊を召喚する。これは【恐怖を呼び覚ますけたたましい悲鳴】や【【溶ける体を見せつける事】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●二章についてのお知らせ
 一章へのご参加、ありがとうございます。
 以降はこのシナリオは平日であっても書けそうなタイミングで書かせていただきます。
(ですが採用しやすいのは木曜~金曜にいただいた分になりそうです。)
 途中参加も問題ありません。特に言及がなければ初めから居た扱いになります。
 よろしくお願いいたします。

●執着心が呼び寄せた、意思なき怪物
 メアリー……怪我をしてはいないだろうか。お腹を空かせてはいないだろうか。
 かつて、剣を習いたいと言ってきた君。
 時おり勇ましく芯の強い一面を見せては、理不尽へ立ち向かい周囲を振り回す事があった君。
 ぼやけた記憶が私を焦らせる。
 時間が、焦れる思いを募らせる。
 けれど、軽率には動けない。
 あの時と同じ失敗は、繰り返す訳にはいかない。

 嗚呼、ぼやけた記憶が私を焦らせる。

 潜むオウガはじっと潜んでいた。
 しかし同時に、怨念にも似た歪んだ執着を放ってもいた。
 この執着が新たな別のオウガを『呼び乗せる』……。

 ――ぬるり。
「プりんセす、まも、ル」
 青いスライムの様な怪物が何処からともなく街中に這い出てきた。
 それは地下水路も例外ではない――湧き出たオウガへ対処をしなければ。

 可能ならこのまま、街に隠れている『リヒター・ライヒハルト』と戦う準備を並行して進めるのも良いだろう……。
ニコリネ・ユーリカ(サポート)
あらあら、盛り上がってるわねぇ
お忙しい所、お邪魔しまーす!
新しい販路を求めてやってきた花屋です
宜しくお願いしまーす(ぺこりんこ)

~なの、~なのねぇ、~かしら? そっかぁ
時々語尾がユルくなる柔かい口調
商魂たくましく、がめつい

参考科白
んンッ、あなたって手強いのねぇ
えっあっヤダヤダ圧し潰……ギャー!
私も気合入れて働くわよー!
悪い子にはお仕置きしないとねぇ
さぁお尻出しなさい! 思いっきり叩いてあげる!

乗り物を召喚して切り抜けるサポート派
技能は「運転、操縦、運搬」を駆使します

広域では営業車『Floral Fallal』に乗り込みドリフト系UCを使用
近接では『シャッター棒』を杖術っぽく使います

公共良俗遵守


雲母坂・絢瀬(サポート)
ややおっとりめ、マイペース系関西弁女子ね。
臨機応変な柔軟さがモットーなんよ。
スキルやUCは使い時にはしっかり使うていく方針。
【見切り】【残像】【敵を盾にする】【フェイント】で相手を撹乱しつつ、間合いを詰めてからの【なぎ払い】が基本戦術やろか。
後は相手を【体勢を崩す】【武器受け】からのUCとかやね。
ヒットアンドアウェイ大事やね。
たまには【挑発】してもええかも。
UCは基本的には多数相手に【雪払い】【剱神楽】、とどめには【千霞】【天狼】、牽制や巨大な敵相手には【白灼の殲刃】、無力化狙う時は【火光】【三弁天】【鬼薊】ってとこやね。まあ柔軟に、やわ。
基本お任せのアドリブ大歓迎でよろしゅうお願いします。


マキナ・マギエル
&&&

「さて…、秘蹟を蒐集するとしましょう。」

『たのしいおとぎばなし』も一皮剥けば凄惨な悲劇でしかない、と?
随分と「良い趣味」です
しかしながら、それに付き合う必要も無いでしょう

さて、クラリス様
少々お手伝い頂けますか?
我々の守りを抜けて来る敵に「召喚を禁じる」というルールを宣告して頂きたい
そうすれば多少は凌ぎやすくもなりましょう

私は【ミレナリオ・リフレクション】で敵性存在のユーベルコードを相殺
数とは本来厄介なものですが、【学習力】を持つ私には悪手ですよ
手を明かす度に学習し精度を高める故に、一度見たユーベルコードに二度目はありません

氷結【属性攻撃】も駆使し、悲鳴も溶ける体も…共に氷に閉ざしましょう


ロベリア・エリヌス
&&&

『メアリー』が本名とは限らない…そんなパターンも在りかしら
恋人同士なら愛称で呼ぶ事もあるでしょうし

閑話休題

予想だとそろそろオウガの群が到着する頃ね
…地下水路を奇襲に利用するなら一度出た方が良いのかしら?
でも、聞いた感じだと『この』リヒター・ライヒハルトは索敵能力が低いみたいね
それなら此の儘の方が良さそうね

何だか不思議な生き物ね
これもアリスラビリンスならではの生物なのかしら?
可愛くはないけれど、興味はあるわ

ところで聞きたいのだけれど…
貴方達は何を以て「成れの果て」と定義するのかしら?
【其の答えを識るまで、僕は死ぬ事もままならぬ】のよ

…満足なんてしないわよ
これ、人の数だけ答えがある質問だもの


御門・結愛
ユニコーンメダルの力で少女を探索します。
地下水路の大きさ次第では飛行せずに走ります。
「厄介な相手まで湧いてきてるわね」
天馬の雷銃から小さな雷弾を連射し、一掃していきます。
「強力な一撃を撃ち込んじゃったら、みんなを感電しかねないわ」
人体模型を召喚したら
「……なんて、酷いことを」
スライムたちへ怒りを
「あなた達、許さないわよ」

相手が合体したら、雷銃にユニコーンメダルを装填します。
(ペガサスメダルで雷撃を強化したら危険すぎる。ここはユニコーンメダルで貫通力を強化して弱点を貫く)
「この一撃で終わらせてあげるわ」

少女にあったら優しく接します。正義の味方に憧れているため、お姉さんぶったお嬢様の演技をします。


マリオン・ライカート
&&&

・心情
その歩幅も、癖も全部…ボクは『覚えている』
ああ…そうか

これが『私』の記憶か

・行動
[SPD]
王子様と白馬の成れの果てだなんて…悪趣味だね

…知っているかい?
「彼」が教えてくれたんだけど、物語の王子様は決して諦めないのさ
だから、成れの果てなんて存在し得ない「のだよ」

<真の姿を開放>し、口調が「覚醒時は」に変化

大丈夫だよ、クラリス
君は私が護るさ

思い出したけれど、私は集団戦の方が得意でね
「Saint-Esprit de Lune」の精霊砲で【砲撃】と、それを推進力にした【ランスチャージ】を織り交ぜ、戦場を駆けるとしよう

折角、令嬢らしい口調を憶えたと言うのに…
そう思わないか?
我が愛しき騎士殿…



●地下水路での出会い
 石畳の街に石造りの家。
 まるでUDCアースのヨーロッパの古い町並みに近いこの街には川の水を各民家へ引き込む地下水路があった。
 街を東西に分けるように流れる川から引き込まれた水は、街の地下を通りやがて再び川へと戻る。
 オウガに追われていた『アリス』を探す猟兵たちは、それぞれの方法でこの地下水路へとたどり着いていた。

 街の北側にある建物……その地下に水場を発見した御門・結愛(聖獣の姫騎士・f28538)は、その水場から水路へと入っていく。
 手にするのは一角獣の力を宿す『ユニコーンメダル』。
 メダルが検知する場所へと進んでいく結愛は現状では真っ直ぐ『アリス』の元へ向かっていた。
 魔法的な炎が点々と灯る薄暗がりの通路で逃げるような足音が聞こえる。
「誰かいるのですか?」
 そう、声をかける結愛。
 音が反響し足音だけでは正確な方向はわからない。けれど、この声で足音の主は安心した様だ。
「オウガ、じゃない……?」
「今、そちらへ行きます」
 結愛はそう伝えると、メダルの導きのままに歩みを進める。
 やがて、結愛はクラリスを発見した。どうやら結愛が一番最初に合流出来た様だ。
 クラリスはチェーンメイルやガントレット、グリーヴなどの防具をきっちり身に着けておりその背は高い。
 しかしその顔立ちはまだ未成年のそれであり、年齢は結愛とそう変わらない様に見えた。
 少なくとも戦闘や冒険の経験では結愛の方がずっと上だろう。
 結愛はクラリスへ微笑みかける。
「もう大丈夫ですわ。わたくしが来たのですから」
 結愛は憧れの正義の味方として振舞うべく胸を張り、大人びたお嬢様であろうと努めた。
 決して不安を与えない様に。

「あら? 二人のうちどちらかが『アリス』ね。もう少しあたりを調べる時間があったかしら……」
 そう声をかけ姿を現したのはロベリア・エリヌス(recorder・f23533)。
 ロベリアの問いに、結愛はクラリスを手で示しこちらが『アリス』だと告げる。
 ロベリアは、そう、よろしく。とだけ答えると考え事を進めていった。
「『電脳ゴーグル』に周辺の地形データを打ち込んで地下水路のシミュレート内容を確認していたのだけれど……こんなに早く合流できるだなんて」
 そう言い、クラリスをジッと見るロベリア。
(『リヒター・ライヒハルト』が探しているらしい『メアリー』だけれど……その呼び名が本名とは限らない……そんなパターンも在りかしら)
 ロベリアの思考にあるのは、以前『リヒター・ライヒハルト』と遭遇した際に訪れた監獄の塔と、そこで見つけた日記。
(恋人同士なら愛称で呼ぶ事もあるでしょうし……)
 思考に耽るロベリアに対し、怪訝な表情をするクラリス。
「あの……どうかされましたか?」
「ええ、ごめんなさい。ちょっと考え事を。そのブローチ素敵ね」
 個への興味より物語への興味を優先してしまいがちなロベリアは、咄嗟にクラリスの首元にあるブローチを褒めて機嫌を損ねたくないことをアピールした。
 そんな些細なやりとりの合間に再び近づく足音がひとつ。
「良かった、無事の様だね。大丈夫かい? 久し振りだね、クラリス嬢」
 ここでマリオン・ライカート(Noblesse Oblige・f20806)も合流を果たした。

●情報の共有
 間もなくマキナ・マギエル(機械仕掛けの魔術師・f05106)も合流し、それぞれ知りえた情報を交換していく。

 結愛は上空から見た街の様子。
 街は南東の方面の損傷が激しく、東のある一点から破壊が止まっていること。
 そしてそのちょうど西方向で川にかかる橋が崩れていたこと。
 北の方には教会のような大きな建物があり、住民の『愉快な仲間達』たちが避難している様子であること。

 ロベリアは周辺の地図。
 街中を広く散策したこともありおよそ正確な地図が出来ていた。
 その配置は、上空から全体を見た結愛の記憶とも一致する。
 そして、建物の石壁はブロックを積み上げた程度であり意外と脆いことを付け加えた。

 次に情報を提示するのは、マキナ。
 共に周辺を調べた猟兵たちから集めた情報により今回の『リヒター・ライヒハルト』の能力を推測する。
 想い人と勘違いし手心を加えていたとはいえ、特別身体能力が特別高いわけでもない相手に有効な先回りや捕縛を出来ていないこと。
 そして現場の形跡から小麦の粉塵で見失った様子であること。
 これらから、移動、索敵の能力は並で捕縛の能力も無さそうだということ。
 そしてさらに、マキナが持ち寄った『リヒター・ライヒハルト』の現在の居場所という情報。
 ……南東側にある一つの崩れかけた建物の中にそれらしい足跡が見つかっておりそこに居るのではなかという推測が立っていた。

 結愛が上空から見た記憶とロベリアの地図から、リヒターが居そうな建物の位置を絞り込むとクラリスが気が付いたように呟く。
「この場所……私があのオウガと遭遇した場所の近くです。この辺りから急に大通りに出てきて、私を『メアリー』だって……」
 出会いの場所に未練を感じ、そこに潜んでいる様子だ。
「私ではあのオウガに歯が立たず、しかしこのまま逃げても残される住民たちを思うと……どうしようかと、そう思っていたのです」
 クラリスは自分の意志を告げた。
「私は、この街の住民のためにもこのオウガを、討ちたい。みなさん、どうか協力してくださいますか」
 そんな中、マリオンは……心ここに在らずといった感じでぼんやりしていた。
「……『メアリー』か……何だろう、妙に聞き覚えがある様な?」

 一通りの共有が終わったところでロベリアがこの先のことについて話を進める。
「それで、『リヒター・ライヒハルト』をどうするかだけれど……地下水路を奇襲に利用するなら一度出た方が良いのかしら?」
 敵の位置はわかった……後はどのように先手を取るかだろう。
 しかし悠長に考える時間は無さそうだ。

 ――ぬるり。

「プりんセす、まも、ル」
 青いスライムの様な怪物が地下水路に姿を現した。
「――っ!」
 その奇異な姿に思わず固まるクラリスの手を結愛は優しく握る。
「大丈夫ですわ」
 背に白き翼――ユーベルコード『天馬融合』によるもの――を宿した結愛はまるで天使の様で。その姿は見るものに不安を一掃してくれるような安心感を与えてくれていた。

●渦巻く思念が残すもの
「予想通り、群が到着したわね。実は少し前から街中でもちらほら見かけていたのよ」
 そう言いながら、ロベリアはこれまで集めた物語を記録した著書を手に戦闘態勢へと入る。

 ソレら青いスライムの様な怪物が、傷のついたディスク媒体のように途切れ途切れの声を発していく。
「たノしいおトギばナし。おいシかっタ。オうじさマ。たすけに、たすけたすけ」
 同時に、召喚される人体模型。
 異様に生々しい内臓を零れ落とし、欠けた頭で歩む姿はまるで食い散らかして途中で放置されたようなオウガの残飯。
「プりんセす、おウジ、おいシかっタ。めでたシ、めでたシ」
 お姫様のようなドレス姿で、猟兵たちと『アリス』を狙って近づいてい来ていた。
「……なんて、酷いことを」
 結愛は大人びたお嬢様としての振る舞いを忘れ不快感を露わにする。
「あなた達、許さないわよ」
 そう言うと、結愛は雷銃<<ペガサス・マグナム>>をホルスターから抜き雷撃の銃弾を撃ち込んでいく。
(けれど、強力な一撃を撃ち込んじゃったら、みんなが感電しかねないわ……)
 威力を抑えた素早い連射はスライムと模型たちをなぎ倒していくが、しかし倒すために数発打ち込む必要があり時間が少しかかってしまう。
 しかも。
「たすたすケたすケ、たすケにキたよ」
 と新たな別の召喚と共にその銃弾を防御しようとするスライムたち。
 王子様の様に見える服装をした新たな人形は、内臓がこぼれる白馬に乗り剣を引き抜くが……首を伸ばすとお姫様のようなドレス姿の人体模型をむしゃりと食べ始めた。
 同時に人体模型から発せられるけたたましい悲鳴。
 ――――――――!!!
 模型へと召喚された霊が、死の間際の追体験をさせられ苦しみの声を叫ぶ!
「オうジのなれノハテ。おイ、おイシかタ」
 こうして集まっていったスライムと人形たちは重なりあって結愛の銃弾を防ぎながら、絶叫を放ち場に居る者たちの精神を削っていく。

 かたちか崩れた不定形なソレらは、まるで何かの情念が染み出た存在に思える。
 そこに意志はなく残留する負の思いや記憶にオウガという本能が憑りついた残りモノの様だ。
 それ以上の思考は無く。それはまるでこのアリスラビリンスに渦巻く無念の叫び。

 スライムたちのぎょろりと蠢く目玉は何かを必死なほど見開かれているが、ただ蠢くのみ。
 その様子を静かに観察していたロベリアが呟く。
「ところで聞きたいのだけれど。今あなた達が言った『成れの果て』……どういった定義なのかしら?」
 ロベリアの疑問と共に現れた情念の獣が、召喚された人形たちへと牙を立てる。
 それはユーベルコード『其の答えを識るまで、僕は死ぬ事もままならぬ』により生み出された獣。
 情念の獣はスライムたちが集まる場所へと襲い掛かり、そのカタマリを散らしていった。
(……満足なんてしないわよ。これ、人の数だけ答えがある質問だもの)
「……それにしても、何だか不思議な生き物ね。これもアリスラビリンスならではの生物なのかしら?」

●再開するお伽話
 スライムの様な怪物が現れ始めたころ、マリオンの脳裏に、路地で見かけた足跡が浮かんでいた。
(『メアリー』……そうだ……それは『私』の愛称だった……気がする。『私』をそう呼ぶのは家族と……彼?)
 その歩幅には見覚えがあった。そして、散乱していた木箱の斬り口にも見覚えがある。
(その歩幅も、癖も全部……ボクは『覚えている』。ああ……そうか)
 見覚えのある歩幅に、見覚えのある背中が重なった。同時にかつてエンパイアウォーの最中に見た手毬の生み出す幻の声が耳に響く。
 そこから、いくつもの記憶が意識の中を駆け抜けた。
(これが『私』の記憶か)

 乱れる心が落ち着いていく。
 マリオンが顔をあげると既に戦闘は始まっており、臓器がこぼれる食べられかけのお姫様の人形と、その人形の元へ駆け付けてはお姫様を喰らう王子の人形という光景が広がっていた。
 全体としてはお姫様の人形の方が多く、集まってくるスライムのような怪物が次々と召喚しては水路を埋め尽くしていく。

 マリオンは真の姿を解放した。
 その金の髪は明るい茶色の長い髪へ変わり、服装も王子のような姿からプリンセスのような恰好へ変化する。
「大丈夫だよ、クラリス。君は私が護るさ」
 マリオンは斧槍の『Saint-Esprit de Lune』を構えると、斧槍から放たれる精霊の力の砲撃でロベリアの情念の獣をすり抜けた人形たちを吹き飛ばした。
「ぼーっとしてしまい、すまない! その分これから全力で戦場を駆けよう」
 そう言うと、マリオンは斧槍を構え突撃のために集中をしていく。
 その声に『ウィザードロッド』による氷結の魔術でスライムを迎撃していたマキナが反応した。
「ふむ……、ここを離れるのであれば秘蹟を蒐集するとしましょう」
 そう言うとマキナはユーベルコード『ミレナリオ・リフレクション』を展開する。
「もう十分に『学習』させてもらいました。……『たのしいおとぎばなし』も一皮剥けば凄惨な悲劇でしかない、と?」
 続けて召喚されたのは同様にアリスラビリンスでかつて散っていった霊たち。
 このユーベルコードは正確に全く同じユーベルコードを放ち、相殺する……召喚された霊たちの悲鳴が、敵が放つ悲鳴を打ち消した。
「……随分と『良い趣味』ですが……しかしながら、それに付き合う必要も無いでしょう。さあ、これで敵の主な攻撃は封じました」
 そして――。
 バチバチと薄暗い地下水路に帯電の光が明滅した。
 その放電の元は、結愛が『ユニコーンメダル』を装填した雷銃<<ペガサス・マグナム>>。
「この一撃で終わらせてあげるわ」
 ドンッ、という衝撃と共に一角獣の力を宿す弾丸が放たれた!
 その光の弾丸は、情念の獣が抑え込む人形たちの塊を消し飛ばす。
 そうして空いた包囲網の穴へ。
「てぇぇぇぇええい!!」
 マリオンが駆けて斧槍を穿った。
 道を塞いでいた群れがその槍に突き飛ばされ一時的に道が出来ていく。
「今です、行きましょう」
 マキナの合図に合わせ、一行は地下水路を駆けた。

●どんな時も、未来へ、希望へ
 一行は地下水路を駆けた。
 本能に釣られ猟兵と『アリス』を追いかけるスライムたちは、しかしその移動は遅く一度振り切ってしまえば逃げ続けることは出来る。
 クラリスも結愛に手を引かれつつ休み休み進んでいるが今のところ、追いつかれはしても囲まれる様子はない。

「あと200m程度ね、そこの角を曲がれば地上で見た大通りの下になるわ。そこを真っ直ぐ進めば着くわ。ただ……」
 地図と現在位置を照合し『電脳ゴーグル』でナビゲートをするロベリアが何かを言い淀む。
 そこにマキナがこれまでの状況から推測した予想を補足した。
「あのオウガの群れは、およそ意志がある様には見えませんでした……。もし見た印象のままであればあれは、何か執着によって呼び寄せられたもの――つまり」
 角を曲がると、そこには再びスライムたちの群れが蠢いていた。
「『リヒター・ライヒハルト』に近づくほどにその数も増える……ということですね」
「そんな……」
 唖然とするクラリス。後方から群れが迫っているというのに前方にもまた群れ……ここをどう突破したら良いのだろうかと青ざめる。
 マキナは念のために戦う術をひとつクラリスへ伝えた。
「さて、クラリス様。我々の守りを抜けて来る敵が居れば、デュエリスト・ロウ……つまり『召喚を禁じる』というルールを宣告して頂きたい。そうすれば多少は自分に迫る敵を凌ぎやすくもなりましょう」
 手が回らないかもしれないから自分は自分で守ってほしい……という頼みでもあった。

 しかしそのクラリスの不安を、年の近い二人が拭い去る。
 ひとりは正義の味方に憧れて大人びた態度をとる、ノブレスオブリージュのアリスナイト。
「大丈夫、そのためにわたくし達が来たのですわ。厄介な相手が湧いてきていますが、正義の味方は決して諦めませんもの」
 もうひとりは品行方正な騎士に憧れて真似てきた、王子然としたプリンセス。
「知っているかい? 『彼』が教えてくれたんだけど、物語の王子様も決して諦めないのさ」
 この様子にマキナは口元を緩めて呟いた。
「若いですね。では我々ももう少し頑張りましょうか」
「そうね。この物語は、こんな場所で終わらせていいものでは無いもの」
 そう言い、ロベリアは頭上のマンホールのような鉄の蓋を見上げる。
 そこの蓋からなら――。

 その時、エンジンの爆音と共に眩しいライトがうす暗い地下水路を照らした。
 なんと、四輪の車両が水路の水をかき分けモーターボートの様に爆走してきたのだ。

●そして物語は最後の舞台へ
 スライムのような怪物がひしめく地下水路……その水路の水場を、モーターボートのように進む車両が現れた。
「お忙しい所、お邪魔しまーす! 新しい販路を求めてやってきた花屋です!」
 それはサポートで訪れていたニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)が駆る車両……ユーベルコード『FAB』により『車輛の概念を超えた『アルティメットビークル』』へ変化した花車(5MT4WD)である。
 花をたくさん積んだまま水上を爆走する車両の、その屋根には同じくサポートとして訪れていた雲母坂・絢瀬(花散る刃・f23235)が乗っている。
「うちら間に合ったみたいやねぇ」
 絢瀬はのんびりした口調で微笑むと、刀の柄に手をかけた。
 その瞬間、彼女の周囲の空気が変わる。
「巣食う魔を払え――『魂違え』」
 車両の屋根で抜刀された居合の刀は鋭く白い剣気を放った。
 暗き地下水路に白き線が迸ると、その射線上の負の感情を切断されたスライムたちが存在を保てずに崩れていく。

 アルティメットビークルは一行の前に止まった。
 すぐさま運転していたニコリネが催促をする。
「ほらほら、乗ってください。目的地まで送りますよー。お代は、後でお花を買ってくださいね♪」
 クラリスを始めとした面々が水に浮かぶ花車へ急ぎ乗り込むと、そこで入れ替わるように絢瀬が飛び降りる。
「うち、こう見えて無塵流の免許皆伝してはってなー。簡単にやられたりしぃひんから、任せてもらってええよー」
 ほんわかと言う彼女だが、刀の鯉口を切り備える姿は既に臨戦態勢。
 そんな彼女へクラリスが何かを言う前に、花車は走り出した。
「舌噛まないでね、それじゃ思いっきりいくわよー!」
 ニコリネがアクセルを踏むと花車は一気に加速した。
 ひとり残った絢瀬は、周囲を斬りつける円状の斬撃を放つ。 
「しんしんと払え――『雪払』」
 無差別に周囲を切り裂くその斬撃は、集まり始めていたスライムのような怪物を一掃した。
「――それじゃ、手加減せず全力で行かはります」

 水上を加速していく花車。
 岸でスライムのような怪物たちが蠢いているが、こちらの速度に反応出来ておらず攻撃は届いていないかった。
 どこか楽しそうなロベリアに対し、マキナ、クラリスの両名が車酔いしそうなのが印象的だが……この速度なら30秒もかからないだろう。
 水上を走り揺れる車両に掴まり、マリオンはこの先に居る『リヒター・ライヒハルト』の姿に思いを巡らせていた。
(物語の王子様は決して諦めない……だから、『成れの果て』なんて存在し得ない)

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『『異界の剣聖』リヒター・ライヒハルト』

POW   :    『謹厳なる実戦の為の剣』
【実戦で磨かれ、鍛え上げた飾り気の無い剣技】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【防御や回避の傾向と癖】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD   :    『流麗なる儀礼の為の剣』
【衝撃波で周囲を薙ぎ払う、儀礼用の魔導剣術】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    『真に愛しき君の為の剣』
いま戦っている対象に有効な【属性を剣に宿す。更にその属性に応じた精霊】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はマリオン・ライカートです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●三章についてのお知らせ
 二章へのご参加、ありがとうございます。
 引き続き、木曜~金曜にいただいた分が採用率高めとなります。
 途中参加も問題ありません。特に言及がなければ初めから居た扱いになります。
 よろしくお願いいたします。

●自身すら見失った忘却の騎士
 焦れる思いを募らせ、『リヒター・ライヒハルト』はじっと潜んでいた。

 焦って軽率に動けば、彼女を……『メアリー』をまた、助けられなくなってしまう。
 彼女を助けようと焦るあまり、罪を負い、私を庇って彼女まで捕らえられてしまったのだ。
 こんなことは繰り返してはいけない。
 彼女さえ傍にいれば私はどうなってもいい。
 例え『自分がどんな人物だったかを忘れてしまって』も構わない――。

 放たれる怨念にも似た歪んだ執着が周囲にぽこりぽこりとスライムのような怪物を呼び寄せうみ出していたが、『リヒター・ライヒハルト』にとってそれはどうでも良いことだった。
 ――そう。なにやら騒がしい地下の様子も、どうでも良い。

 やがて地下から猟兵たちが現れると、彼は逃したクラリスが再び戻ってきた事実に喜び、打ち震えた。
 その隣に本物の探し人がいることも『思い出せず』に。
御門・結愛
正義の騎士を目指すものとして、闇を彷徨うあの人を、いえ『あの人たち』を解放してみせる!
「ユニコーンナイトの名に懸けて、この戦いを終わらせるわ!」
ペガサスからユニコーンへメダルを切り替え、退魔の聖剣を構え
「ただ倒すだけじゃ駄目!」
正気に戻さないと
「くっ!?やっぱり、強い……けど!」
「私は!苦しむ人たちを救う、騎士に、正義の味方になるんだから!」
目の前に光が集まりメダルを形作る
「私たちは必ず、あなたを救って見せる」
UC使用。姫騎士の姿で、アリスランスが変化した魔槍を構え
「対応される前に、勝負を付けます!」

隙ができたらユニコーンドレスに戻り、浄化の一撃を
「自分自身を、目の前にいる人を、思い出して!」


ロベリア・エリヌス
&&&

前回の『リヒター・ライヒハルト』の手紙は失われているけれど、内容自体は『記録』しているわ
中身全部が「本物である」保証はないけれど、真実の一端位は顕しているでしょ?

…リヒター・ライヒハルト
手紙を諳んじましょうか?

貴方は誰の騎士で、誰を護りたかったのかしら?
貴方の愛した、貴方を愛した『メアリー』はどんな人なのかしら?
そして、『メアリー』が愛してくれた『本当の貴方』は果たしてどんな人だったのかしら?

【其の答えを識るまで、僕は死ぬ事もままならぬ】のよ

その上で、今の自分の有様を顧みなさい

…これ以上出しゃばるのは止めておくわ
後は当事者同士が納得いく決着を付けなさいな

私はただ、この結末を蒐集するだけよ


マキナ・マギエル
&&&

「若さとは時に無鉄砲であるが故に、既定路線に収まらぬ可能性を持つものです。」

では【ガジェットショータイム】と参りましょう
ほう…「周囲に展開する透明なドーム状のガジェット」ですか
成る程
衝撃波をこれで受け流しつつ安全地帯を模索せよと言う事でしょう

衝撃波は形が変わる故に、一方向のみの防護である盾では防ぎきれませんが…
密閉空間でありながら視界も確保出来るこのガシェットならば確かに有効でしょう

ではクラリス様、どうぞ私の傍を離れません様…
御心配には及びません
敵の手を見る程に高まる【学習力】にて剣筋を憶え、じきに反撃すら可能となりましょう

その時は衝撃波の影響を受け難い雷【属性攻撃】を見舞うとしましょう


マリオン・ライカート
&&&

・心情
迎えに来たよ、『リヒト』

・行動
<真の姿を開放>
…せめて今だけは、君の「お姫様」で居させてくれ

私も君を喪う事に耐えられなくて、決して諦めない君の姿を真似していたよ
だからどうか、想い出してくれ
私の事を…
私の愛した、私を愛してくれた君の「王子様の様な生き方」を…

君は戦士としての生き方しか知らなかった私に、愛という光をくれた
だから『ボク』は、君から教わった生き方と剣で、二人の絶望と理不尽の枷を断ち切る
過去として斬捨てる為じゃなく、未来の為に!

いくよ、リヒト
『自由を我らに!』

最後にリヒトと【手をつなぐ】よ
ありがとうって伝えて、精一杯の笑顔で見送るんだ
…きっと、涙を止める事なんてできないけれど



●失ったモノは
 ――もしかしたら、彼なのだろうか。
 憧れた、物語の王子様のような彼。
 君とつりあいたくて、令嬢らしい口調も憶えたんだ。
 記憶を失ってなお君が忘れられなくて、その諦めない姿に憧れて、無自覚に君を真似てきたんだよ。
 求める君、我が愛しき騎士殿……!
 迎えに来たよ、『リヒト』。

 地下水路から階段を上がって壊れた民家へ駆けあがるマリオン・ライカート(Noblesse Oblige・f20806)。
 真の姿を解放した彼女は明るい茶色の長い髪をなびかせで急ぐ。
 ……そこには耐え忍ぶ様に椅子に座る『リヒター・ライヒハルト』がいた。
(間違いない。『彼』だ!)
「リヒ――――」
 マリオンが彼に声を書けようとしたその時。
「ああ、君から来てくれるだなんて。『メアリー』!」
 リヒターの目線はマリオンではなくその背後にいる『いちど逃したアリス』を見ていた。

 ――ああ。折角、令嬢らしい口調を憶えたと言うのに。
 『リヒター・ライヒハルト』は、マリオンに……『メアリー』に気がつかなかった。

「メアリーを返してもらいます。この街を犠牲にして、ようやく見つけたのですから」
「ですから、私は違うと何度も言っているでしょう!」
 アリスであるクラリスは否定をするのだが、しかしリヒターはその言葉を認めない。
「可愛そうに、脅されているのですね」
 そう言うとリヒターは剣を抜いた。
 かつて弱き人々を守るために振ったであろう剣が弱き人々へと向けられ。守る者へ傾けられた耳は守る者の言葉を拒絶し。その瞳と記憶は大切な人を捉えることが出来ずにいる。
 オウガとなった騎士は、かつての絶望により自分自身を失っていた。

「私も君を喪う事に耐えられなくて、決して諦めない君の姿を真似していたよ……謹厳で、礼儀正しくて。諦めない君を」
 マリオンの胸に悲痛な気持ちが広がる。
「だからどうか、想い出してくれ。私の愛した、私を愛してくれた君の『王子様の様な生き方』を。自分の望みのために誰かを犠牲になんてしない、その生き方を!」
 マリオンは想いを言葉にする。
 ようやく会えたという思いと、『成れの果て』なんて存在し得ないという思いと共に。

●届かない想い
 しかし思い出すには当時の絶望や喪失感が共に付きまとう――特にオウガへ堕ちてしまう程の絶望が。
 故に、彼は否定した。
「私を惑わそうとしてもそうはいかない!」
 否定の言葉と共にマリオンへ斬りかかるリヒター。……その刃は御門・結愛(聖獣の姫騎士・f28538)の持つ『一角獣の聖剣』によって防がれる。
「ユニコーンナイトの名に懸けて、この戦いを終わらせるわ!」
 続けてマキナ・マギエル(機械仕掛けの魔術師・f05106)による雷の魔術が『ウィザードロッド』から放たれた。
「どうやら言葉だけでは、オブリビオンとしての楔は解けない様です。ですが――」
 マキナの魔術はリヒターが召喚した土の精霊によって防がれる。しかし、そこには場を仕切り直す一瞬の間が生まれた。
「――ですが、若さとは時に無鉄砲であるが故に、既定路線に収まらぬ可能性を持つものです。クラリス様は私が守ります。お二人は、いま抱く思いをぶつけてみてください」
 クラリスを招くとマキナはユーベルコード『ガジェットショータイム』で透明なドーム状のシールドを展開するガジェットを作り出した。

 これまでのマリオンの様子に、この場の面々は『リヒター・ライヒハルト』との関係を察している。
 このまま戦って打ち倒すには、あまりに悲しい――だから。
「ただ倒すだけじゃ駄目!」
 結愛は声をあげ剣を振う。
 マリオンもユーベルコード『ドレスアップ・プリンセス』で自身を強化して祈りと共に蒼く美しい細身の剣『天光剣:Lumiere』を振った。
(想い出してくれ……せめて今だけは、君の『お姫様』で居たい)

 希望を引き寄せる一縷の糸を求める二人は、襲い来るリヒターの攻撃を凌ぐので精一杯だった。
「はぁっ!」
 こちらの放つ剣を跳ねあげ、受け流しては返される反撃の剣戟は鋭く、反撃の隙を与えてくれない。
「くっ!? やっぱり、強い……けど!」
「リヒト……っ!」
 ……徐々に押され始める二人。そこへ。
「貴方は誰の騎士で、誰を護りたかったのかしら?」
 ロベリア・エリヌス(recorder・f23533)の問いがこの場に響いた。
「貴方の愛した、貴方を愛した『メアリー』はどんな人なのかしら?」
 それはユーベルコード『其の答えを識るまで、僕は死ぬ事もままならぬ』によるもの。
 召喚された情念の獣が新たにリヒターへと襲い掛かっていく。

●かつて届かなかった手
 情念の獣が牙を立てオウガの『リヒター・ライヒハルト』を襲った。
 しかし情念の獣は美しき剣術で押し返されてしまう。
「その様なもので私を止めるつもりか!」
 魔導の力を宿す剣術は衝撃波を周囲に放った。マキナはその衝撃がクラリスを巻き込まないようにとガシェットのシールドを展開して防御する。
「ふむ、儀礼用でしょうか。剣の型そのものが魔術の起動になっていそうですが……こういう時でなければ是非ご教授願いたい技術です」
 その横でロベリアが別の新たな『記録』を取り出した。
「前回の『リヒター・ライヒハルト』の手紙は失われているけれど、内容自体は『記録』しているわ」
 それは別のオウガの個体として遭遇したリヒターの記録。
「……中身全部が『本物である』保証はないけれど、真実の一端位は顕しているでしょ?」
 情念の獣が加わりリヒターを抑える前衛は三人。何かを試すならこのタイミングだろうとロベリアが動く。

「『私のために、申し訳ありません。決して部下には手荒なことをさせないと約束します。……事実の確認が取れるまでは用意された部屋で過ごしていただくことになるでしょう。必ず、貴女を護ります。どうかそれまでご辛抱を』」
 諳んじていくのはその時見つけた手紙の一部。
 それによるとかつて、後継者争いに巻き込まれたメアリーはリヒターとの関係を利用されて牢に投獄されたらしい。
 目の前に助けを求める人がいれば真っ先に動く……そんなかつてのリヒターの性格を狙って仕掛けられた無実の罪。
 その罪を肩代わりして代わりに投獄されたメアリーだったが……リヒターはその状況に対してあくまで誠実に、事実関係を調べて真犯人を探す正攻法で解決しようとしていた。
 確かにマリオンの言うお伽話の『王子様』の様なヒーロー然とした生き方だった様だ。
 しかしその努力も虚しく彼女の処刑が言い渡されたことで、彼は形振り構わず自身の正しさを捨てることを決意する――。

「……黙れ! もうお前は何も言うな!」
 過去に触れられ、激昂するリヒター。
 強引にマリオンと結愛を弾き飛ばすと、その剣に光の精霊の力を宿しロベリアへと斬りかかる。
(今弾き飛ばしたのが、そのメアリーだというのにね……)
 そう心で呟くロベリアは情念の獣を向かわせ、盾として利用するが、その情念は精霊による浄化の刃で切り伏せられてしまった。
 刃がロベリアへ……というところでマキナのガジェットが剣を弾く。
「間に合いましたか……。成る程、こうなってしまった経緯は理解しました。後悔に囚われすぎている様ですね」
「ごめんなさい、ちょっと煽りすぎたみたい。助かったわ」
 ロベリアがそう言い後方へと下がる間に結愛とマリオンが追いついた。

●そのチカラは誰のため
 舞い散る花びらと共に飛翔してきたマリオンがリヒターを引き付けると、そこへ槍の『幻馬の魔槍』を携えた結愛の攻撃が加わる。
「私は! 苦しむ人たちを救う、騎士に、正義の味方になるんだから!」
(苦しんで失ってばかりの物語だなんて、悲しすぎる!)
 結愛の、助けたいと思う気持ちがメダル――『ヒポグリフ』を輝かせていく。
(正義の騎士を目指すものとして救いたい。彼だけではなく、呼び寄せられたスライム……いえ、『あの人たち』も解放してみせる!)
「私たちは必ず、あなたを救って見せる!」
 その力はユーベルコード『幻馬融合<<ドレスアップ・ヒポグリフ>>』。幻馬『ヒポグリフ』のによる風の力を纏い宙を舞いながら連撃を放っていった。
「く……!」
 その合間に突き出されるのはマリオンの蒼い細身の剣。
「君は戦士としての生き方しか知らなかった私に、愛という光をくれた。……だから『ボク』は、君から『教わった』生き方と剣で、二人の絶望と理不尽の枷を断ち切る」
 マリオンも覚悟を決めて、攻めへと転じる。
「過去として斬捨てる為じゃなく、未来の為に!」

 攻防が激しく入れ替わる中、そこへ――。
「お待ちなさい、危険ですよ!」
 マキナの静止を無視してクラリスが足を踏み入れた。
 防具を外しながらリヒターへと近づいていくクラリス。
 その武装解除を見たリヒターは怒りを収め落ち着きを取り戻していった。
「ああ、メアリー。貴女が本物のメアリーなら私は危害を加えない。どうぞこちらへ」
 着こんだ鎧の下に来ていた服は良い生地が使われており、ただの駆け出し冒険者ではないことが伺える……。
「――ずっと、悩んでいました。私に何ができるのかを。巡り合った皆に何をできるのかを」
 そう言いながら、クラリスはリヒターの剣の間合いの前で立ち止まる。

「私は、記憶がありません。自分のことさえ分からない。ですが……これだけは解りました。リヒター・ライヒハルト。貴方は『自分に嘘をついています』」
 投げつけられる手袋……それはユーベルコード『デュエリスト・ロウ』の発動トリガー。
「ルールを宣告します。『雑念を払い除け無心で戦いなさい』。まさか貴方ほどの使い手が出来ないとは言いませんね?」
 このユーベルコードには強制力は無い。しかし――その宣告は時と場合によっては挑発行為となる。
「……その言葉、後悔しても知りませんよ」
 リヒターの目つきが『異界の剣聖』のものへと変わった。

●喪失の後に残ったモノは
 カン、キィンと激しく金属がぶつかり合う音が響いた。
 実戦で磨かれ、鍛え上げた飾り気の無い剣技が前衛を務めるマリオンと結愛の二人を徐々に追い詰めていく。
 その剣筋は遊びがなく基本に忠実で真面目な剣。
(リヒト……やっぱり君は根っこでは何も変わっていない。だってその剣術は昔のままなんだから!)
 マリオンは細身の剣を突き出した。しかし、それは剣で受けて逸らされる。
 そこへ手首を返しさらなる突きを放つが……マリオンが放つ剣戟は、すべてが『初めから知っていた』かの様に防がれてしまっていた。
 この手慣れた対処に当のリヒター自身も驚愕する。
「何だ……この戦い方を、私は知っているのか……?」
 それはマリオンの戦い方をリヒターが熟知している証……武門の流れをもつ令嬢にかつて剣術の稽古をつけたのが、リヒター本人だったのだから。

 その様子を見ていたマキナは成る程と呟き目を細める。
「いくら本人が絶望の過去を否定しようとも、その剣技にかつての人柄が残った様に、染みついた経験が絶望と結び付かない方向から過去を呼び起こす……。考えましたね」
 マキナは時おり発生する剣による衝撃の余波をガジェットのシールドで防ぎながら、傍で戦いを見守るクラリスへ話しかけた。
「私には武の才はありませんでしたが……私も、誰かに剣の師事を受けたような気がするのです。だからかもしれません。それに……剣に現れていた戦い方が本当の彼なのだと気づいたのはつい先ほどです」
「『記録』の暴露で確信したということでしょうか。いずれ気付きそうではありますが……そういえば、もう答えは良いのでしょうか?」
 マキナはそう言い、ロベリアへ視線を移す。
「……これ以上出しゃばるのは止めておくわ」
 そう言って、ロベリアは肩を竦めた。
(『メアリー』が愛してくれた『本当の貴方』は果たしてどんな人だったのかしら? 私はただ、この結末を蒐集するだけよ)

 マリオンの剣は無心に剣を振るリヒターには届かない。しかし同時に、リヒターの表情には戸惑いが満ちていく。
 その度に『雑念を払い除け無心で戦う』というルールが破られ衝撃が態勢を崩していった。
 その隙に、ユニコーンドレスへと戻った結愛が『一角獣の聖剣』を軽く当てる。そして。
「自分自身を、目の前にいる人を、思い出して!」
 強い輝きが放たれた。その浄化の力は心の守りを貫通し精神に淀む呪いに似た絶望を和らげていく――。

●自分らしく
 剣の腕を挑発された『リヒター・ライヒハルト』は、絶望もメアリーのことも忘れ無心に剣を振った。
 しかしその最中に何故だか非常に懐かしい相手に気づく。
 この明るい茶色の長い髪をもつ少女――マリオン・ライカートの剣だけが不思議とひどく懐かしい。

 疑念が過る度にルールを破ったことによるダメージを受けるが、それは次第に威力が弱くなっていった。
 合間に放たれる二人の剣士の太刀筋は、いずれも正しく実直な剣だ。そして折れる気配を感じさせない。
 その性根が清く、そして強いことが伺える。
 何かを忘れている気がする。
 もはや無心ではいられない。

 ――リヒターが強い光を浴びたのはその時だった。
「自分自身を、目の前にいる人を、思い出して!」
 声と共に放たれる光。それが胸の奥につっかえるモヤを払っていく様に感じた。

 『リヒター・ライヒハルト』の攻撃が止まった。
 その変化に、マリオンは問いかける。
「リヒト……?」
 その時だ。
 これまで、ただそこに居るだけだったスライムのような怪物が一斉にマリオンを狙う。
「プりんセす、たすけに、たすけ」
「……っ!」
 反射的に構えるマリオン。しかし数が多い……無傷では済まないだろうとマリオンが覚悟をしたその時――光が奔った。
「怪我はありませんか、メアリー」
 それはリヒターの放った、光の精霊の力を乗せた一閃。絶望による狂気は薄れており、どうやら正気に戻ったようだ。
 しかし狂暴化したスライムたちは止まらない。
「オうじさマ。たすけに、たすけたすけ」
 マリオンとリヒターは背中合わせに剣を構え、迎え撃つ。
「まずは、周りを片付けましょうメアリー」
「わかった。いくよ、リヒト」
『自由を我らに!』

 ――呼び寄せる元を失ったスライムのような怪物たちは、増える事なくすぐにその数を減らしていった。
 戦いの終わった場でマキナは状況の分析をする。
「……呼び寄せる元になった負の感情が無くなったことがトリガーとなったのでしょうか? しかし……オブリビオンはよくわからないことが多いですね。そして……」
 マキナの目の前で、『リヒター・ライヒハルト』が消えようとしている。
「……絶望や敵意を克服したことでオウガとして保てなくなった……と言った所でしょうか。他の原因もあるかもしれませんが……今は他の説明が難しいですね」

「ああ……無事な様で何より」
 オウガとしての存在を保てなくなり消えそうになりながら、リヒターはマリオンへ微笑みかける。
 良く知る彼が戻ってきた。……しかし、同時に消えようとしている。この再開と別れに頬を涙が伝う。
「ありがとう」
 マリオンはそう言うと、リヒターの手を握った。
「私は多くのカッコ悪くて弱いところを見せてしまいました……。そんな私を、まだ想ってくれるのですか」
 その問いかけに、マリオンは精一杯の笑顔を向ける。
「言っただろう、君は戦士としての生き方しか知らなかった私に、愛という光をくれたんだ」
 リヒターは、愛おしそうにマリオンの涙をぬぐった。
「そんな所が君らしい。どうか、より良き未来へ――」
 リヒター・ライヒハルトはそう言い残すと、微笑みと共に消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月15日
宿敵 『『異界の剣聖』リヒター・ライヒハルト』 を撃破!


挿絵イラスト