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ままならぬ、この世界で

#UDCアース

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#UDCアース


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●偶然、そして偶然
 深き夜、マンションの屋上。
 黒羽色が虚空を泳ぐ。
 長い髪。解かれたそれが、風を受けてなびいている。
 持ち主は少女。うら若き、制服姿の乙女。
 その、人生最後の日。
 クラスでの孤立と中傷。生きているのがつらい。助けを求められる人がいないのがつらい。世界がつらい。
 だから、悲しみだけを友として。少女は、虚空へと身を投げた。
 人の身に、重力に抗う術は無く。ただ、待つのは地面。最初で最後のキスの相手。
 だが。良くも悪くも、世の中は、ままならぬ。
 少女を抱き留めたのは、冷たいアスファルトではなく、街路樹だった。
 枝に裂かれた肌から、血がこぼれる。それを浴びたのは、樹下の石碑。
 由来さえ忘れられた石碑が輝き、その中から蘇りしは、狂気の獣。
 悪しき存在すら予期せぬ目覚め。そう、世の中は、ままならぬ。

●依頼するもの、されるもの
 ヴェルタール・バトラー(ウォーマシンの鎧装騎兵・f05099)は、UDCアースでの事件解決を、猟兵に依頼した。
「偶然にも、UDC怪物が召喚される事件を予知いたしました。投身自殺を図った高校生の少女の血を浴びた事で、封印が解けてしまったようでございます」
 血が、封を解く鍵だったのだろう。あるいは、この少女の血に、何か特別な力があったのだろうか?
 ともあれ、封印の石碑から現れたのは、『離反者ランスロット』 。
「かつてUDCの謎に挑み、しかし敗れたものがオブリビオン化し、人々に徒なすものへと転じてしまったようでございます。理性も志も失い、獣と成り果てたランスロットには、引導を渡すよりほかありません」
 しかし、UDCランスロットの復活を察知したのは、ヴェルタールだけではなかった。
「同じく力の目覚めを感知した邪神が、ランスロットを同朋として迎え入れようと現れるのでございます」
 やってくるのは、邪神の眷属たち。もっとも、ランスロット撃破後に現れるため、合流されることはない。
「目的は失われた後ですが、かといって、オブリビオンが猟兵を見逃すはずもありません。降りかかる災難を払ってくださいませ」
 眷属は『強欲の傀儡・烏人形』。より上位のUDC、そして欲に操られた、憐れな人形達である。
 そして眷属、という事は、それを使役する存在がいる。
 黒衣の剣使、『ユウヒ』。
「人々に孤独感や喪失感を植え付け、不和や絶望を広げる……そんなUDCでございます。ランスロットを手駒に加える事で、人々により多くを失わせるつもりだったのでしょう」
 その思惑は砕かれることとなるが、この機を逃す手はない。ここで討伐しなければ。
「自殺を図った少女の救護は、私が手配いたします。皆様は、シュバッ、とUDCどもを討伐してくださいませ」
 不幸な偶然が、繰り返されることのないように。


七尾マサムネ
 邪神召喚は突然に。

●1章
 石碑より復活した『離反者ランスロット』 と戦闘します。
 戦場は、マンションの駐車場となります。
 ランスロットは理性を失い獣と化しているため、猟兵との戦いに気を取られ、周りに被害を及ぼすことはないでしょう。

●2章
 ランスロットを迎えに現れた『強欲の傀儡「烏人形」』と戦います。
 戦場は、1章と変わりありません。

●3章
 眷属の主、『ユウヒ』と戦います。目的を阻んだ上、眷属を倒してくれた猟兵の事は許しません。
 なお、この章での戦場は、マンションの屋上となります。

 それでは、皆様のご参加、お待ちしております。
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第1章 ボス戦 『離反者ランスロット』

POW   :    騎士は禍のまま無様に死なず
自身が戦闘で瀕死になると【狂気に飲まれる以前の、自身の理性】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    野獣の乱打/屠神の絶技
単純で重い【大剣による縦横無尽の連撃を放った後、止め】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
WIZ   :    『湖月の大剣』
【眩い光刃を展開した大剣から放たれる】【迸る光波の奔流で攻撃を行った後、】【大剣に残った余剰エネルギーを宿す事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ジェット・ラトリオックです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 夜の、駐車場。
 鋼の獣……自動車が整然と眠りに就く中、静かな咆哮が響く。
「が、ぐるるるぅ……」
 騎士の獣、UDCランスロット。
 何故今目覚めたのか、何の為に動くのか。
 過去も動機も失った成れ果てが、ただ、月下を彷徨う。そして、不意に。
「ぎ」
 狂騎士の視界に、人影が入り込む。猟兵だ。
 狂気がささやく。これは敵だと。
 敵は殺す。
 騎士道ではなく、オブリビオンの本能に従い、ランスロットは猟兵に牙を剥いた。
「ぎ、ぐがあああっ!」
 足と鎧が砕ける事さえ構わぬ、限界超過の大跳躍。
 殺すべき相手へと、ランスロットが乱心の剣技を披露する。
春霞・遙
人と人の関係ほど難しいものはないと思います。
いじめ、不登校、ネグレクト、そんな言葉にさえ表現されない些細なすれ違い。
そんな小さな石に躓いても人は簡単に死んでしまうのだから、UDC絡みの事件なんて、要りませんよ。

あなたももうこの世界の縁のほとんどを失ったのだから骸の海へ退場なさい。

小回りより一撃が大きいみたいですよね。
「目立たない」ように行動。遠距離から「暗視」スコープと【シャドウチェイサー】で戦況を確認して「援護射撃」や「武器落とし」を図ります。
接敵されたらできるだけ回避して隙を探します。運がよければ「零距離射撃」で「カウンター」。さもなければ無理はせず「闇に紛れる」ように身を隠します。



 月と、ほのかな人工光が照らすマンション。
 獣と化した騎士との戦場へと、春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)が足を踏み入れた。
「人と人の関係ほど難しいものはないと思います」
「ぐ……?」
 聞こえてはいるのだろう、騎士……ランスロットが首を傾げる。
 それを了解した上で、遙は語る。
 いじめ、不登校、ネグレクト……そして、言葉でさえ表現されない、些細なすれ違い。
「そんな小さな石に躓いても人は簡単に死んでしまうのだから、その上UDC絡みの事件なんて、要りませんよ」
「ぐ、るる……!」
「あなたも、もうこの世界の縁のほとんどを失ったのだから骸の海へ退場なさい」
 遙の言葉の連なりが何を意味するのか、獣にはわからぬ。
 だが、意志だけは伝わった。敵対、という。
「ぐ、らあああッ!」
 騎士『もどき』が、剣を振るう。
 刀身から迸る光が、周囲を照らし出すと、衝撃波の如く放たれた。
 とっさに身を翻し、消滅を回避する遙。
 武器のリーチ、そして戦闘スタイル。それらを加味すれば、相手は小回りより一撃一撃の威力に特化した攻撃を得意とする事がわかる。
「それなら」
 遙はバックステップ、その身を夜闇の内へと溶け込ませる。
 ミニバンの陰に身を隠し、影の追跡者を呼び寄せる。二手に分かれ、敵の動きを把握にかかった。
「ぐ、るる……!」
 遙を見失ったランスロットは、雑に剣を振り回しながら、周囲を闊歩する。
 ランスロットに、足音を消すつもりは欠片も無い。ゆえに、相手の居場所の察知は容易だった。
「ぐ、あッ!?」
 ランスロットが悲鳴を上げた。遙のライフルによる狙撃を受けたのだ。
 弾かれた剣が、虚空に円を描き、地面に突き立った。
 とっさに武器の回収に向かうランスロットを、第二射、第三射が襲う。
「ぎ、らぁぁぁッ!」
 ランスロットは、ひるむことなく剣を拾う。傷つくこともいとわず弾道を辿って、遙を発見。
 そのまま、蓄えていた光のエネルギーを発揮。剛力で、ミニバンを破壊する。
 だが、そこに遙はいない。影の追跡者との情報共有にて、既にその場を離れている。
 そして、背後から接敵すると、遙は、相手の腹部に拳銃を突きつけた。
「ぐ、あああッ!?」
 零距離からの射撃が、ランスロットの体を激しく震わせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

片桐・公明
【SPD】
分身と連携して戦闘

分身は妖刀で接近戦
本体は二挺拳銃で後方支援
分「オラオラ、どうした?騎士様にしては剣筋が単調すぎるぞ。」
本「あまり挑発するようなこと言わないで。」

連撃はぎりぎりで回避、または妖刀でいなす。
止めの一撃は大きく回避することで地形破壊に巻き込まれないようにする。

戦闘は以上を繰り返す。

本「やっぱり地形破壊は厄介ね。巻き込まれないでよ。」
分「誰に言っていやがる。あんな大技、食らう方が難しいってもんだ。」
(絡み、アドリブ歓迎です。)



 UDCランスロットは、一度に複数を相手取る戦いを強いられていた。
 1人は、片桐・公明(Mathemの名を継ぐ者・f03969)。
 そして、もう1人もまた公明。分身体だ。
 妖刀を振るう分身が、騎士獣の得意とするであろう間合いでの戦闘を挑む。
 刀と剣が、ぶつかり合う。りょ力も地力も、オブリビオン化したランスロットの方が上だ。
 だが、公明本体からの援護射撃が、分身の不利をフォローする。
 互いにカバーし合う、というより、接近戦担当の分身が自由に動く分、後方担当の本体がサポートする、という形に近い。
 いずれにせよ、2人の連携が、ランスロットを圧倒しているのは事実。
「ぎ、いいい……!」
「オラオラ、どうした? 騎士様にしては剣筋が単調すぎるぞ」
「ちょっと、あまり挑発するようなこと言わないで」
 分身の不敵な笑みと声を、公明本体が叱責する。
 構うものかよ、と、嬉々として乱刃を振るう分身。元より凝固した血に覆われたような刀身が、更なる血を求めて、ある意味芸術的な軌跡を描く。
 一方、本体は、分身に合わせる形で、二挺拳銃でのフォローを続行。
 だが、二対一の状況でも、獣の戦意を折る事は出来ぬらしい。
 間接の外れたような奇怪な動きで斬撃と銃撃を次々避けると、一気に切りかかった。
「ぐ、がぁっ!」
 人の身では繰りだせぬ、怒涛の連撃。
 人をやめる事で、ようやく邪神にも匹敵する力を得ることが出来たというのは、皮肉なものだと公明は思う。
 矢面に立つ分身は、妖刀で火花を散らし、相手の斬撃をいなし続ける。
 決定打を浴びせられぬことに焦れたランスロットが、剣をひときわ大きく振りかぶった。
 だが公明たちは、そのタイミングをこそ待っていた。
「が、ああああッ!!」
 渾身の一撃が、アスファルトを破砕する。
 出来たのはクレーター。停止中の自動車たちが飲み込まれる。
 だが、威力にリソースを割いた大味な斬撃は、分身に容易く回避された。嘲笑付きで。
「やっぱり地形破壊は厄介ね。巻き込まれないでよ」
「誰に言っていやがる。あんな大技、食らう方が難しいってもんだ」
 言うや否や、再度ランスロットへと切りかかる分身。
 これじゃランスロットと同類ね……。
 公明は溜め息交じりで拳銃を構え直すと、敵を撃つ。分身には当てぬように。

成功 🔵​🔵​🔴​

シャルロット・クリスティア
……ままならないものですね、本当。
彼女がなぜそれほどまでに追い詰められていたかは、知る由もありませんが……まずは、目の前の事から、ですか。

あぁまでなってしまえば、最早人というよりは獣。であるならば『狩り』ましょう。
狂っているが故に制御の外れた暴力は脅威ですが、だからこそ理性で戦術を変えてくることはない。
回避行動の合間を縫って射撃を浴びせ、動き方の癖を伺います。
攻め立ててくるか、被弾を嫌って避けに入るか……前者なら攻撃後の隙を狙い、後者なら回避経路を潰し追い詰めていける。
いくら強力な相手でも、戦い方には弱点がある……そこを衝く。

こんな凶獣を解き放つわけにはいきませんからね……ここで仕留めますよ。



「……ままならないものですね、本当」
「ぐ、るる……?」
 夜風とともに流れて来た呟きが、ランスロットを振り向かせる。
 声の主は、シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)。
 自ら命を絶つことを望み、しかし叶わぬものもいれば。
 求道の末、自らが忌むべき存在に成り果てるものもいる。
「彼女がなぜそれほどまでに追い詰められていたかは、知る由もありませんが……まずは、目の前の 事から、ですか」
「が、うう……」
 前傾姿勢の騎士の獣。
 シャルロットは、誇りも何も失った元騎士の姿に、憐れみを覚えざるを得ない。
「こうまでなってしまえば、最早人というよりは獣。であるならば『狩り』ましょう」
「ぐ、おおおおッ!」
 マフラーなびかせ、ランスロットが走る。
 シャルロットとの距離を征服すべく、急接近。
 まずは小手調べ。敵の間合いから距離を取りながら、シャルロットは、マギテック・ショットガンを放つ。
「ぐ、らあっ!」
 被弾を恐れるどころか、自ら危機のただ中に身を投じるランスロット。剣で弾き、あるいは体で受けるに任せる。
 攻撃は最大の防御。それを体現するかのように、ランスロットはひたすら剣を叩きつける。
 そしてひときわ大きく振るった剣が、アスファルトにクレーターを穿つ。
 狂気が、ランスロットの肉体の限界を越えさせている。しかし、如何に強大な力でも、それを御する理性あってこそ。
 ここまでで、シャルロットは見極めた。ランスロットの斬撃は、強じんにして速い反面、その太刀筋は、臨機応変とは程遠い。
 ならば、かわしようはある。
 再度の連撃が襲う。荒ぶる剣嵐の中、シャルロットが狙うのは、攻撃直後の隙。必 殺を放つべく、剣を振りかぶる直前を撃つ。
「が、あっ!?」
 スマートな機械鎧、その装甲が弾け、悲鳴が上がる。
 なぜ自分の攻撃が当たらぬのか?
 なぜ攻めていた自分が劣勢に追いやられているのか?
 疑問を抱えたまま、シャルロットの銃火にさらされるランスロット。その一挙手一投足が、見抜かれていると気づく由もない。
「こんな凶獣を解き放つわけにはいきませんからね……ここで仕留めますよ」
 ランスロットの鎧に刻まれる弾痕の数は、留まるところを知らなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

フォルク・リア
「ランスロットと言ったか。
偶然といえ、蘇ってしまったのなら。
此処で始末するより他にない。
せめて、これ以上その狂気を晒す前に。」

敵に先手を取られる前に【高速詠唱】で
冥空へと至る影を発動。武装を強化。
【念動力】で複数の武器の同時使用を可能とし
デモニックロッドから放つ闇の魔弾を
スカイロッド操った風で闇を拡散し【範囲攻撃】として
敵の操る光の奔流に対抗。光を闇で覆う。
敵を闇で包んだ隙を【見切り】
呪装銃「カオスエンペラー」により【呪詛】を纏った死霊を
撃ち出して【マヒ攻撃】等により敵の行動を制限。
「そう、俺はその狂った魂を狩り獲る猟兵。
お前の敵だ。」
最後に【全力魔法】を込めた
レッドシューターの炎で焼き尽す。



 猟兵との交戦が、誇り亡くした騎士の魂を追いつめる。
 猟兵の1人、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は、引きずる大剣で地面を削るランスロットへと語り掛ける。
「ランスロットと言ったか。偶然といえ、蘇ってしまったのなら。此処で始末するより他にない。せめて、これ以上その狂気を晒す前に」
「ぐ、ううう……」
 ランスロットは、身を低くし、大剣で下から切り上げる構え。
 だが、先に相対の主導権を握ったのは、フォルクの方であった。高速詠唱で呪術を成立させた。
 フォルクの背後、影が顕現する。
 同時に、念動力にて操られた武器が、中空に円陣を描く。
「が、あああッ!」
 月光を反射したランスロットの剣が、フォルクを狙う。
 すると、危機に際し、フォルクへ魔力がもたらされた。
 冥界とのゲート役たる影からそれを受け取り、喰らうと、黒杖『デモニックロッド』は、闇の魔弾を放った。
 ランスロットはとっさにかざした大剣で、それを弾く。思わぬ反撃に、ランスロットの攻撃のリズムが乱れた。
 フォルクの優勢が、冥界より新たな魔力を呼ぶ。次は、風呼ぶ杖『スカイロッド』へと。
 今度は先手を打たんと、ランスロットは光の斬撃を飛ばした。もはや光の洪水と呼ぶべきそれを、真っ向から受ける構えのフォルク。
 デモニックロッドの闇弾を、スカイロッドの風で拡散。闇の乱弾が、光の奔流を黒へと染め上げ、闇で覆い尽くした。
 ランスロットの姿さえも闇が飲み込んだ瞬間。
 今度は、呪装銃『カオスエンペラー』が銃声を響かせる。銃口から放たれたのは、死霊の群れ。
 闇を切り裂き、姿を現したランスロットを包み込むと、その動きを縛り付ける。死霊のもたらす呪詛に囚われたのだ。
「お、おお……!」
 束縛から脱しようと、死霊の束縛の中、必死にもがくランスロット。
「残念ながら、その程度で破れる代物ではないよ」
 フォルクは仕上げとばかり、自ら『レッドシューター』に指を通す。
「ぐ、ううううう……ッ!」
「いい怒りだ。そう、俺はその狂った魂を狩り獲る猟兵。お前の敵だ」
 フォルクが、黒手袋に包まれた指を鳴らす。
 冥界の魔力にて増幅された炎が、堕せる騎士の全身を飲み込み、焼き尽くす。
 鎧のみならず、その呪われし魂までも。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルパート・ブラックスミス
木乃伊取りが木乃伊に、などとさせるか。
騎士よ、汚名被る前にその凶行を止めてみせよう。

味方を【かばう】のも兼ねて短剣【投擲】で牽制、敵を自分に【おびき寄せ】真っ向勝負。
大剣で敵攻撃を【武器受け】し【怪力】任せに【なぎ払い】、返し刀で反撃する【2回攻撃】スタイルで応戦。
【学習力】で敵との【戦闘知識】を蓄積し動きを【見切り】つつ戦う。

獣気取りは辞めていい加減目を醒ませ。
騎士同士が対峙して名乗りも無いとはどういう了見だ、虚け。

瀕死に追い込んだならば【挑発】し【言いくるめ】。
ここまでで破損した鎧を修復する形で【指定UC】を起動、強化形態で一騎打ちの【決闘】に持ち込む。

来い。黒騎士ブラックスミスが相手だ。


鏡島・嵐
――ッ、初っ端から強そうな……!
狂った魔獣と化してる割には、芸達者そうなのがまた厄介だ……!
怖ぇ……けど、放っても置けねえよな……!

いつものことだけど、他の仲間を〈援護射撃〉で支援したり、相手が攻撃を仕掛けてくるタイミングを〈見切って〉〈目潰し〉や〈武器落とし〉で妨害したりして、戦闘を優位に運べるように持っていく。
敵が自分自身を強化するようならユーベルコードで対処。自分が攻撃を受けそうな場合は〈第六感〉で察知して回避を試みるか、〈オーラ防御〉で耐えるか。

……孤独ってのは、辛ぇよな。誰にも理解してもらえねえ、誰とも繋がりを作れねえってのは、うん。想像するだけで心細くなっちまうし。



「ぐ、ぎぃ……?」
 UDCランスロットが、首をあらぬ角度に曲げた。
 視線の先、闇が騎士の形をとる。
 暗闇から現れた騎士……ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)が、金属質の靴音を立てる。
「木乃伊取りが木乃伊に、などとさせるか。騎士よ、汚名被る前にその凶行を止めてみせよう」
「ぎ、がああッ!」
 ルパートの言葉を掻き消し、ランスロットが飛びかかった。
 初撃をそつなくかわすルパートに未練などないように、ランスロットは別のターゲットに向かう。
 ターゲット……鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は、傷ついてなお、殺気と覇気の衰えぬランスロットをしかと見つめた。
「――ッ、初っ端から強そうな……!」
「ぐ、るるう……」
「狂った魔獣と化してる割には、芸達者そうなのがまた厄介だ……!」
 オブリビオンと化す以前、対UDC用に練磨した技が、魂に沁みついていたのだろうか。
 迫りくるヘルメット状の兜の奥から、嵐は鋭い視線を感じる。
「怖ぇ……けど、放っても置けねえよな……!」
 嵐が決意を固めた瞬間、ランスロットが動いた。
 嵐は、敵から逃れつつ、調達した小石を弾として、スリングショットにて連射する。
 体を打つ衝撃は、ランスロットの嵐への怒りを増幅させる。
「が、ああああッ!」
 まさに獣の如き大跳躍で、嵐の頭上へたどり着くと、大剣を振り上げる。
 だが、剣目がけ、ルパートは、短剣を投擲。獣の直感か。ランスロットはジャンプ中に振り向き、短剣を剣で弾く。
 短い刃は、体を貫く事こそできなかったが、意識をつなぎとめる事には成功したらしい。
 再びルパートを獲物と定め。
 着地したランスロットは、そちらへと牙を剥いた。
「ぎ、らあああッ!」
 刃と刃、視線と視線が、火花を散らす。理性、そしてヒトというリミッターを解除された事で、ランスロットの力は、自壊を恐れず発揮される。
 しかし、ルパートも負けてはおらぬ。大剣握る腕に力を籠めると、相手の剣を押しのけ、斬撃を食らわせた。
 だがランスロットは、堪えた様子も無く、再びルパートに大剣を叩きつける。
 一撃一撃が重く、そして速い。次第に、ルパートの鎧に傷が増えていく。
 一方で、ランスロットの太刀筋は、単調でもある。騎士時代の名残か、剣を構え直す動作にも、一定の癖が見受けられる。そこが付け入るチャンス。
「ぐ、ぐ……」
 ルパートのしぶとさに焦れたランスロットが、突撃を仕掛けた。
 ランスロットが剣を振るう直前、先んじたルパートが、二連斬を浴びせた。
 敵が、攻撃の手を緩めた刹那を狙い、嵐が弾を繰りだす。狙うは、ランスロットの前進の原動力たる、足元。
 相手の速度とタイミングを合わせた着弾で敵の進軍を阻むと、続く射撃で、今度は大剣を狙う。
「が、ああああッ!」
 手放しかけた大剣を強く握り直すと、ランスロットが吠えた。力を込めた大剣から、迸る光。そのまま振り下ろす事で、光の柱が嵐を薙ぎ払う。
 だが、先ほどのわずかな隙に、嵐も次の一手を打っていた。
「!?」
 ランスロットの太刀筋が刹那、乱れた。嵐の代わりに、己の姿が立ちはだかったからだ。
 それは鏡。嵐の呼び出した魔鏡が、光をあまねく跳ね返す。
 余剰の光を浴びて強化された体でも、それをしのぐのは、至難であった。
 反射の光流にさらされ、ランスロットのアーマースーツが焼かれていく。
「ぐ、ぐぐ……」
 光の焼却を受けてもなお、ランスロットが膝を屈する事はなかった。
 それは、倒れぬという獣の本能か、魂の奥底に残る騎士の誇りか。
「なんて奴だ……」
 相手の底力に驚嘆する嵐を庇うように、ルパートが、敵に声を飛ばす。
「獣気取りは辞めていい加減目を醒ませ」
「ぐ、るる……」
「騎士同士が対峙して名乗りも無いとはどういう了見だ、虚け」
 蒼炎に包まれたルパートの鎧が、修復されていく。
 対するランスロットにも、異変が生じていた。
 立ち姿は、これまでと一転、凛として。
「そ、そうだ……俺は、騎士。ランスロットの名を負うもの……いざ、尋常に!」
「来い。黒騎士ブラックスミスが相手だ」
 束の間、理性を取り戻したランスロットに、応えるルパート。
 ぶつかり合う剣。交錯の後、ランスロットが膝をつく。
「こ、これなら任せられる……さあ猟兵、俺を殺せ。ただ独りで謎に挑み、敗れた弱者に引導を渡せ!」
 再び狂気に飲み込まれる寸前、騎士ランスロットが発した言葉に、嵐が唇を噛む。
「……孤独ってのは、辛ぇよな。誰にも理解してもらえねえ、誰とも繋がりを作れねえってのは、うん。想像するだけで心細くなっちまうし」
 嵐が語り掛けた相手は、身を投げた少女か。それとも、身を堕した騎士か。
 あるいは、その両方か。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ライカ・ネーベルラーベ
あはは、仕事だ仕事♪
死ぬつもりが死ねなくて、なのにいっぱい殺しそうなものを呼んじゃうなんて面白すぎてウケるハハハハ!

「――ぶっ壊れて黄泉帰った同士だし!あたしとも遊んでよヘルメット野郎ォオオオ!」

【半人半機の帰還兵】で底上げした身体能力でランスロットと打ち合うよ
相手の方が剣は早いけど、こっちは両手で2本扱えるし?
電撃の補助もあるから、一方的に負けたりはしない
一番重そうな止めの一閃が直撃しなければなんとかなるでしょアハハハハハハ!
ちょっとぐらい食らっても平気なのはあっちもこっちも同じみたいなんだし
バラバラになって動かなくなるまで付き合って貰おうじゃないかァ!



 思わぬ形で日常が喪失し、戦場と化した駐車場。
 そこに響くのは、剣戟、唸り声……そして笑い声。
「あはは、仕事だ仕事♪」
 ライカ・ネーベルラーベ(りゅうせいのねがい・f27508)は、嬉々として危機の化身と交戦していた。
「死ぬつもりが死ねなくて、なのにいっぱい殺しそうなものを呼んじゃうなんて面白すぎてウケるハハハハ!」
 ライカは、機械の義肢から繰り出すのは、双剣。
 剣と機関銃の合一武器でもって、騎士の獣を斬って、撃つ。
「――ぶっ壊れて黄泉帰った同士だし! あたしとも遊んでよヘルメット野郎ォオオオ!」
「ぎ、あああッ!」
 負けじとランスロットも、超常の剣技で応戦する。
 ライカを越える速度で剣を振るうが、ライカは双剣。加えて、奥の手もある。文字通り奥に秘められし竜の心臓が電撃を迸らせ、自身には加速を、相手には麻痺を与える。
 騎士の繰り出す単発の技は、いつしか連撃となり。
 ランスロットの連斬が、空気を裂く。対するライカは電撃で空気を焼きながら、全てをさばく。
 両者はタイミングを見計らっていた。
 ランスロットは必殺を繰りだす瞬間を。ライカは必殺をかわす瞬間を。
「ぐ、があああッ!」
 先に機を掴んだのは、ランスロットだった。
 ひときわ大きな咆哮と共に、次元さえ裂く斬撃が振り下ろされる。
 直撃寸前……ライカがその場から跳躍した直後、地面が陥没した。
 衝撃の余波に乗って、更に後退するライカ。それでも、笑い声は止まらない。
 たっ、と街灯に着地したライカを、首だけで振り返るランスロット。体の構造は、最早ヒトでも騎士でもない。獣ですらないかもしれない。
「まだまだ元気そうじゃないアハハハハハハ!」
「ぐ、るるるう……」
 ライカの反撃、そして、猟兵達との連戦で傷ついた体も何のその。
 ランスロットは、なおも殺戮に全力を注ぐ。その行為だけが、自分の存在証明とでもいうように。
 ライカもそれは望むところ。天井知らずの戦意に身を任せ。とことんまで、斬って、撃って。
「バラバラになって動かなくなるまで付き合って貰おうじゃないかァ!」
 力の代償として、笑顔で血を吐きながら。
 ライカはUDCをパートナーに、剣舞を演じ続けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ウーナ・グノーメ
連携・アドリブ◎

「人語を解さぬ程の狂気に堕ちて尚、剣を手放さない。生前は名のある騎士だったと見受けるのです」

オーラ防御で守りを固め、周囲の車やアスファルトをUCで砂に変えながら、妖精は呟く。
その声には憐憫でも同情でもなく、共感の感情が宿っていた。
自身も狂気に苛まれた過去がある故に。

強力な念動力で押し固められ、操られる砂は、剣にも盾にも、時には吹き飛ばされて矢にもなる。
自身の足が砕ける程の跳躍も、足元が細かな砂となれば十全には発揮できまい。

「あなたはわたしの苦しみを知っているのです。だから、あなたの苦しみは……わたしが終わらせるのです」

煌々と輝く月光と砂塵がぶつかり合い、狂戦士と妖精は共に踊る。



 ウーナ・グノーメ(砂礫の先達・f22960)の前に立つ騎士の成れ果ては、傷ついてなお、破壊を止める事はなかった。
 連戦をくぐり抜けた大剣は、既に刃こぼれし、ランスロット自身の血で濡れている。
 だが、剣はしかと握られたまま。体の一部であるかのように。
「う、ぐぐ……があッ!」
 どこか儚くも凛としたウーナの姿に引き寄せられるように。ランスロットが地面を蹴った。
 対するウーナは、両手をかざす。途端に、ランスロットの進軍を支える地面、アスファルトが砂化する。
「ぐ、がっ!?」
 足を取られそうになった瞬間、ランスロットは人知を超えた挙動で、後方へと跳躍。
 だが、ランスロットが着地点として選んだ軽自動車が、沈み込んだ。ウーナの力の干渉を受け、鉄も鋼も、砂へと散る。
 堅固な足場から一転、砂のクッションに受け止められることになったランスロットへと、妖精は呟く。
「人語を解さぬ程の狂気に堕ちて尚、剣を手放さない。生前は名のある騎士だったと見受けるのです」
 ウーナの声に宿るは、憐憫でも同情でもなく。
 ただ、共感。自身も狂気に苛まれた過去がある故に。
 砂地から身を起こしたランスロットを、新たな変化が襲った。
 周囲の砂が巨大な手となって騎士獣を握りつぶすと、その全身を押し固める。あたかも砂の牢獄のように。
「ぐ、おおおおおッ!!」
 ひときわ激しい咆哮とともに、ランスロットが砂牢を突破する。剣から発した光の奔流の力だ。
 だが、待ち受けていたのは、砂の盾。
 光剣にて穿った盾の背後、ウーナの見えざる力にて、砂の剣が振り下ろされる。
 ランスロットは、光の残滓で肉体を強化。剣を持たぬ方の五指にて、砂刃を掴む。
 負傷を代償に、強引に砂剣を握りつぶしたランスロットを、次は雨が襲った。矢の雨だ。
 大剣にて弾いても、元の砂に還るだけ。そして、足元をウーナの砂で支配されては、自身の足が砕ける程の跳躍もかなわない。
「ぐ、ぎ……」
「あなたはわたしの苦しみを知っているのです。だから、あなたの苦しみは……わたしが終わらせるのです」
 煌々と輝く月光と砂塵がぶつかり合い、狂戦士と妖精は共に踊る。
 そして。
 折れた大剣と傷ついた体が、宙を舞う。それが、騎士のラストダンス。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『強欲の傀儡『烏人形』』

POW   :    欲しがることの、何が悪いの?
対象への質問と共に、【自身の黒い翼】から【強欲なカラス】を召喚する。満足な答えを得るまで、強欲なカラスは対象を【貪欲な嘴】で攻撃する。
SPD   :    足りないわ。
戦闘中に食べた【自分が奪ったもの】の量と質に応じて【足りない、もっと欲しいという狂気が増し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    あなたも我慢しなくていいのに。
【欲望を肯定し、暴走させる呪詛】を籠めた【鋭い鉤爪】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【欲望を抑え込む理性】のみを攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ぐ、おお……」
 騎士の姿が、最期の咆哮とともに、闇へと溶けた。
 かくして、戦の音は静まった。
 狂える騎士の魂も鎮まり、束の間、夜は静寂を取り戻す。
 だが、出遅れた闇が来訪する。
 空を埋めるは、黒き翼持つ、人形の群れ。
 UDCランスロットの持つ強大な力。それを求めて来訪した、悪しきものの眷属。
「あら?」
「いない」
「いないわ」
 カラスの翼を生やした人形たちが、さえずる。
 この場に、求めるものは、既になく。
 何かを得たいと願う欲望は、行先を失う。
「奪ってくれたわね」
「なら、代わりにちょうだいな」
「いのちを」
 烏人形の欲望の矛先は、『宝物』を奪った猟兵へと向けられる。
フォルク・リア
「一足遅くて助かったよ。人形。
間に合わなくて残念ついでだ。
お前たちも此処で終わって貰う。」

【残像】での回避や月光のローブの
【オーラ防御】で敵の攻撃を凌ぎ
反撃の機会を【見切り】
スカイロッド、レッドシューター等で攻撃

欲望を暴走させる鉤爪。を受けたら【呪詛耐性】【狂気耐性】
で正気を保ち呪詛を分析。
「欲望の暴走。……後悔するなよ。
今の俺の望みはお前達を殲滅する事だけだ。」
血煙の様なオーラを纏った真の姿を解放。
己の力を全て込めた【全力魔法】のグラビティテンペストを発動。
自分を含めた周囲に超重力を発生させ敵を潰し
自分は僅かに己の周囲に集めた微粒子の力と血煙のオーラを
使い重力に耐える攻撃重視の戦術をとる。



 闇夜に舞うカラス。
 フォルク・リアは、夜空からこちらをうかがう烏人形たちを見上げる。
「一足遅くて助かったよ。人形。間に合わなくて残念ついでだ。お前たちも此処で終わって貰う」
「わたしたちの欲望に」
「終わりはないのよ」
 一斉に、襲い掛かる人形たち。
 空をテリトリーとする烏どもが、奔放にフォルクの周りを飛び回る。
「もらったわ」
 甲高い笑いとともに繰り出した人形の鉤爪は、しかし、虚空を刻むだけ。
「残像だよ。欲望に逸るあまり真贋を見極める事も出来ないようだ」
「きいいッ」
 次々とフォルクに殺到する、敵群。
 だが、術士を捕らえる事は叶わない。悠然と応じるフォルクは、月光のローブにて、爪撃をはじき返すことすらしてみせる。
「簡単に殺されないのは凄いけど」
「逃げてばかりじゃ狩られるだけ」
 防戦一方のフォルクに、次第に、烏人形たちが余裕を取り戻す。狩りを楽しむように、入れ替わり立ち代わり、攻撃を繰りだす。
 しかし、フォルクは待っていた。敵の攻撃が甘くなる時間帯を。
 そして、巻き起こった暴風が、烏人形たちを飲み込んだ。
 風弾や風圧に押され、思うように羽ばたく事のできない烏たちは、更なる猛威に晒される。
 風が熱を帯びたかと思うと、走る炎が、翼を焼いた。レッドシューターの炎が、風との相乗により威力を増したのだ。
「ただ丸焼きにされるくらいなら!」
 捨て身の一撃。
 一羽の奇襲が、フォルクに鉤爪を浴びせる。
「うふふ、これであなたも仲間ね」
 じくじくと、染みわたる呪詛。
 だが、不可視の魔手は、フォルクの理性を侵食することはできなかった。
「欲望の暴走。……後悔するなよ。今の俺の望みはお前達を殲滅する事だけだ」
 呪詛の解析を終えた瞬間。
 フォルクに接近していた人形たちが弾き飛ばされ、後方の同朋たちを巻き込んだ。
 真なる姿を解放し、血煙の如きオーラを纏ったフォルクが、詠唱を完成させる。
「吹き荒れよ、滅びの衝撃」
 グラビティテンペスト。
 発生した超重力の狂嵐が、烏人形たちを圧潰させていく。
 フォルク自身にさえ災禍をもたらす、全力の術式。
 だが、集積した微粒子の力と血煙のオーラが、重力の中、その身を保つのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロット・クリスティア
人の不幸に乗じて、貪りに来ましたか……まるで火事場泥棒ですね。
酌量の余地もありません。早急に、狩るとしましょう。

欲しいのなら、存分に差し上げましょう。
もっとも、命はあげられませんので……私から渡せるのは鉛玉ですが。

所詮は人形、関節部はどうしても機構が複雑化し、脆くなる。
空中から来るのであれば、踏ん張りも効かないでしょう。撃ち落とすことはそう難しいことではありません。
鉤爪の一撃は脅威ではありますが、であれば近づかれる前に仕留めるだけ。
私の早撃ちであれば不可能ではない。

……私の『欲』を言うなら、お前たちのような存在を潰すことです。
己の欲の為に人を食い物にする……それを討つことに、躊躇はしませんよ。



 貪欲に襲い掛かって来る烏たちを追い払いながら。シャルロット・クリスティアは言葉を紡ぐ。
「人の不幸に乗じて、貪りに来ましたか……まるで火事場泥棒ですね」
 しかし、悪事には、相応の報いがあるもの。
 その証明として、烏の獲物は、シャルロットたちによって簒奪された後だ。それも手の届かぬ場所に。
「もし望むなら、送って差し上げても構いませんよ。ランスロットのいる骸の海へ」
「いやよ」
「それはごめんだわ」
 シャルロットの挑発を受けて、烏人形たちが殺到する。餌を求めるひな鳥のように。
 しかし、可愛げのかけらもない烏たちを、シャルロットは冷徹な瞳で見返した。
「酌量の余地もありません。早急に、狩るとしましょう」
 シャルロットの決意をあざ笑うように、襲い来る烏の群れ。シャルロットの命をお宝に見立てて。
「ちょうだい、ちょうだいよ」
「それほど欲しいのなら、存分に差し上げましょう。もっとも、命はあげられませんので……私から渡せるのは鉛玉ですが」
 シャルロットの返答と共に、人形の翼が砕けた。正確には、その付け根部分。
 所詮は人形。稼働を担うゆえ、関節部の機構が複雑化し、脆くなるのは必定。
 加えて、空中から来るのであれば、踏ん張りも効かない。
 そして、シャルロットの腕前をもってすれば、動く標的を撃ち落とすことは、そう難しいことではなかった。
 マギテック・マシンガンが放たれ、硬質の音があちこちで響く。そのたびに、烏人形の残骸が、地面に散らばっていく。
「すました顔をしたところで」
「一皮むけばあなたも獣だわ」
 シャルロットがのぞく暗視スコープの向こう、鉤爪が来る。
 欲望を剥きだしにする呪詛を秘めた、斬撃。
 ならば、近づかれる前に仕留めるだけ。
 シャルロットの速射が、結界の如く接近を許さず、烏人形を撃ち落としていく。
「……私の『欲』を言うなら、お前たちのような存在を潰すことです」
 淡々と、確実に敵の数を減らしながら、シャルロットは告げる。
「己の欲の為に人を食い物にする……それを討つことに、躊躇はしませんよ」
 その言葉通り、トリガーは、無慈悲に引かれ続けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ライカ・ネーベルラーベ
今度は何……?
飛んでる……?空に、ソラに、わたしの、うえに
「そこは、わたしの世界だァァァァアアア!」

【舞え、勝利を誓うは鋼と雷の翼竜】を発動
空飛ぶ竜(の亡霊)に乗った竜騎兵として鳥共の相手をするよ
全員雷で焼いた上で、チェーンソー剣で挽き肉にしてやる
「落ちろ落ちろ落ちろ落ちろォ!ぶっ壊れた人形が!わたしの前で空に居られると思うなァハハハハハ!」
そうでしょう相棒!相棒!相棒!アハハハハハハ!

欲望の開放?何をバカな
からっぽで、バラバラで、何にもないわたしにそんなもの!
コイツらを殺すという衝動しか無いわたしに!



 ライカ・ネーベルラーベは、頭上に気配を感じた。それも、複数。
「きゃはは」
「獲物、獲物」
 夜空を見上げれば、そこには、翼を闇に溶けこませた烏の人形たち。
「今度は何……? 飛んでる……? 空に、ソラに、わたしの、うえに」
 何処かぼんやりと、中空の敵を見つめていたライカの双眼が……不意に、見開かれた。
「そこは……そこは、わたしの世界だァァァァアアア!」
 突然、スイッチが入ったように。
 ライカの咆哮が、夜の空気を叩いた。
 バイクが幻影をまとったかと思うと、鋼のボディから翼が生えた。竜の翼だ。
 騎竜にして機竜。竜の亡霊たる相棒を従えた竜騎兵が、烏たちの元へと翔けあがる。
「うそでしょ」
「飛んで来るなんて」
 空は自分たちのテリトリー。
 そう信じて疑わずにいた烏たちは、ライカの襲来に、動揺を隠せなかった。
 瞬く間に空を征服するライカ。相棒と共に神速で駆け抜けた後には、雷光が迸る。
 人工皮膚は焼け焦げ、内部機構は破壊され。烏人形たちは雷の餌食となり、地上へと落下していく。
「落ちろ落ちろ落ちろ落ちろォ!」
 アスファルトの上、部品を散らして動きを止める敵を見下ろし、高笑い。
 ライカの哄笑が響くたび、人形がスクラップに成り果てる。鋸剣が、行く手を妨害する人形を、『挽き肉』に加工していく。
「ぶっ壊れた人形が! わたしの前で空に居られると思うなァハハハハハ! そうでしょう相棒! 相棒! 相棒! アハハハハハハ!」
「もう欲望全開な気がするけど……そのまま欲望に落ちればいい」
 しゅっ。
 ライカの眼前を駆け抜けた一羽が、鉤爪を浴びせた。
 しかし次の瞬間、ライカに翼を分解され、撃墜される。
 理性を傷つけ、欲望解放の呪詛を埋め込む、魔の一撃。だが、ライカは、それを受けても、けろりとしていた。
「効いてない?」
「どうして」
 あからさまに動揺を見せる人形たちに、ライカが答えをもたらす。
「何をバカな。からっぽで、バラバラで、何にもないわたしにそんなもの! コイツらを殺すという衝動しか無いわたしに!」
 鋼と雷の翼竜が夜を駆け抜け。
 笑う雷光が、黒の人形を蹂躙していく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

片桐・公明
【WIZ】
敵の鋭い鉤爪を受ける公明
その敵をつかみ地面に叩きつけ、逃げないように足で押さえつけながら拳銃で撃ち殺す
それから目につく動体を狙い敵味方問わず撃ち殺そうとする
「みんな、みんな殺したい……いや、仲間は殺しちゃダメ。でも殺したい。」
傷付いた理性と強くなった欲望で苦しみながら拳銃を撃つ

理性が弱くなった隙をついて自身の闇が語りかける
『諦めろよ。今やっていることはお前の使命で可能なこと。
お前の欲望は敵味方問わない皆殺しだ。』
「うるさい。うるさいうるさいうるさい!!」
絶叫と共に敵にのみ狙ってUCを放つ

UC発動に全力を使った公明はその場で倒れる。

(絡み、アドリブ歓迎です。)


春霞・遙
人間であれば強く望むことがあるのは良いことですよ。でも、UDCの存在は許すことができませんのでどうぞ何を得ることもできないままにお帰りください。

基本的にはランスロットとの戦い同様に遠距離からの「スナイパー」として翼の付け根を狙って射落としたいですが、多数を相手に隠れてもいられないでしょうから【葬送花】でもって攻撃し、舞う花吹雪で視界の妨害をします。

理性を失ったところで私にはこなすべき仕事があるだけです。命令のままに人を癒しUDCを殺すだけ。人に仇なす烏の駆除の手は止めませんよ。
ああ、でもどうかその鉤爪は自殺を悩む人に向けないでくださいね。

アドリブ共闘お任せ



 マンションの壁から。電線の上から。
 片桐・公明ら猟兵を見下ろす烏人形たち。
「ふふふ」
「エモノよ」
 欲望という糸に操られた、憐れな傀儡。
 いや、それは、運命の糸に弄ばれる人間や猟兵たちも同じかもしれないと、公明は想う。
 欲望と死の匂い。ところ構わずまき散らす凶鳥たちへと、春霞・遙は言葉の銃弾を放つ。
「人間であれば強く望むことがあるのは良いことですよ。でも、UDCの存在は許すことができませんので、どうぞ何を得ることもできないままにお帰りください」
 だが、遙の警句にも、人形たちが欲望を止めることはない。
「あたしたちを手ぶらで帰すつもり?」
「あなたの首くらいちょうだいな」
 先を競って、遙へと迫りくる烏人形たち。その黒き鉤爪は、呪いの刃。理性を壊す欲望の毒がこめられているのだ。
 だから、遙は、敵の接近を許さない。
 障害物を生かして距離を保ったまま、拳銃のトリガーを引く。牽制射撃にて敵を足止めすると、遙はすかさずスナイパーライフルを構える。
 標的は鳥、狙うは翼の付け根。
「ぎゃっ」
 濁った悲鳴と共に、翼を破損した一羽が、落下していく。
「あたしたちにもちょうだいよ」
「命を!」
 一斉に跳びかかって来る烏たち。その鋭い鉤爪の1つが、公明を切り裂く。
 外傷はない。ただ確かな痛みが、公明をさいなむ。
「く……」
 だが、離脱を許さず敵の足をつかむと、地面に叩きつける公明。耐久力を超過して砕けた体から、歯車やワイヤー状の部品が散り、転がる。
 逃れようとばたつく烏人形を、公明は足で押さえつけながら、拳銃にて仕留める。
停止する人形から、挙動する人形へ。
 標的を変えた公明は、二挺の拳銃を連射する。残弾も狙いも深く考えず。それどころか、敵味方すら構わず。
 弾丸の一発が、遙のそばをすり抜けた。
 遙が見れば、さきほど喰らった烏人形の鉤爪。その傷から忍び込んだ呪詛が、公明の理性を痛めつけているようだった。
「ふふっ、欲望にのまれたのね」
「私たちと同じ」
 暴れる公明を見て、烏人形たちが笑う。
「みんな、みんな殺したい……いや、仲間は殺しちゃダメ。でも殺したい」
 公明の内側で、渦を巻く葛藤。
 傷付いた理性と、強さを増す欲望。両者の狭間で苦しみながら、公明は、トリガーを引くことをやめない。
 遙の声掛けを遮るように、烏人形たちが殺到する。
 例の鉤爪が、浅く腕を裂く。
 敵は多数。しかも上空から見張られ、身を隠すにも限界がある。それは遙も織り込み済みだ。
 今度は木の杖を手に取ると、迫る敵群へと突きつけた。容赦なく。
 遙は医師。患者に対応した器具や薬を扱うように、敵を駆除するのにも、適切な道具を選ぶ。
 杖の先端から溢れる光が、敵の視界を塗り潰す。
「めくらましのつもり?」
「本番はここからですよ。たっぷり味わってください」
 遙の回答どおり。
 虚空に、花吹雪が舞った。
 薄桃色の流動するヴェールが、烏人形たちの体を刻み、視界を遮り、遙の姿を覆い隠す。
「どこ?」
「どこなの?」
 獲物を見失い、混乱する人形たち。
『諦めろよ』
 軛から逃れつつある闇が、公明の理性に語り掛ける。
『今やっていることはお前の使命で可能なこと。お前の欲望は敵味方問わない皆殺しだ』
「うるさい。うるさいうるさいうるさい!!」
 絶叫。
 呪詛と闇をまとめて振り払うように。欲望を飲み込んだ理性が、銃の力を解き放つ。
 業火の大蛇が空をうねり、烏人形たちを蹂躙する。
 とっさに逃げ出そうとするも、あえなくその場で焼き尽くされていく。
「なんて欲望なの……ぎゃっ!」
 オブリビオンの群れだけが塵と還る中。
 炎に全力を注いだ公明は、力尽き、その場に倒れるのだった。
 今ならば、と牙を剥く烏人形の残党の前に、遙が立ちはだかる。
 遙も、先ほどの傷が疼くのを感じる。だが、理性を失ったとしても、遙にはこなすべき仕事がある。
 そう、命令のままに人を癒しUDCを殺すだけ。
「人に仇なす烏の駆除の手は止めませんよ。ああ、でもどうかその鉤爪は自殺を悩む人に向けないでくださいね」
 遙の葬送の花が、凶鳥の群れから、夜空を解き放っていく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ウーナ・グノーメ
連携・アドリブ◎

「欲しいものを欲しいと言うのは結構なのです。ですが、あなた方のやり方では、永遠に満たされることはないのです」

妖精は、飛び交う黒翼を見上げて嘆息する。
欲望に支配され、十分や満足という言葉を永遠に得られぬ、哀れな人形を嘆くかのように。

妖精はオーラ防御を展開し、再び無機物から砂の世界を作り出す。
念動力で攻防に用いるのは先程の騎士との戦いと同じだが、此度は念動力による吹き飛ばしが人形の接近を阻む。
更にその余波が砂嵐を巻き起こし、飛行を不安定にさせる。
万が一攻撃を受けても、狂気への耐性を持つ妖精が暴走する危険性は少ないだろう。

「御伽噺で語られるように、妖精は欲深い者には手厳しいのです」


鏡島・嵐
強そうな奴が次々出てくんのな。
……正直、ここまで体が震えるんは久しぶりだ。
でも、命を寄越せって言われてハイそうですかっていうわけにもいかねえ。ここは我慢のしどころだよな。

相手は空を飛べるし、なんとか地上に引きずり落とさねえとな。
〈スナイパー〉ばりに精度を引き上げた射撃で翼を狙い、墜とすことを試す。
それでも抵抗されると思うから〈目潰し〉で動きや抵抗を封じて、相手の攻撃を可能な限り防ぐ。
あとは、自分や手近にいる味方にユーベルコードを使って、場にいる敵味方の運気をコントロール。あとちょっとで当たった、或いは躱されたとかならこれで何とか出来るかも。
手近にいる味方には、適宜〈援護射撃〉を飛ばしておく。



「欲しい」
「欲しいわ」
 妖精……ウーナ・グノーメたちを取り囲む、黒き怪鳥……烏人形の群れ。
 胸の内に秘める事をしない、剥き出しの欲望が、ウーナに吹き付ける。
「欲しいものを欲しいと言うのは結構なのです。ですが、あなた方のやり方では、永遠に満たされることはないのです」
 ふう、と。
 妖精は、夜空を飛び交う黒翼を見上げて、嘆息。
 嗚呼、悲しきかな。欲望に支配され、十分や満足という言葉を永遠に得られぬ……なんと哀れな人形たちであることか。
 そうして、平然と敵と相対するウーナにならい。
 鏡島・嵐は、敵群から目をそらさぬよう、意識を押さえつける。
「強そうな奴が次々出てくんのな。……正直、ここまで体が震えるんは久しぶりだ」
「あらカワイイ」
「大人しくしていれば命しかとらないわ」
 勝手な事ばかり口走り、笑い声を上げる烏人形たち。
 命を遊具のようにとらえるUDC。
 しかし嵐は、それをしっかと見据え。
「命を寄越せって言われてハイそうですかっていうわけにいくか。ここは我慢のしどころだ」
 固めた決意とともに、嵐はスリングショットを構え、狙い撃つ。
「ぎゃっ」
 短い悲鳴と共に、一羽が落下する。嵐の一発が、狙いたがわず烏人形の翼を射抜き、地上へと引きずりおろしたのだ。
 一発必中。スナイパーの如き命中精度にも、人形たちはおののくことをしないようだ。
「少しはやるじゃない」
「鬼さんこちら」
 嵐を挑発、というよりはからかうように、飛び回る人形たち。
「欲望は最高だわ」
「生きてる実感をくれるもの」
 自らへ向けられた鉤爪を、砂の防壁にて防ぐウーナ。
 はしゃぐ烏たちへと、ウーナは冷ややかなまなざしを注ぐ。
 仮初の命にて動く人形たちの進軍は、ウーナのオーラの前に阻まれる。
 妖精にとって幸いだったのは、UDCアースも無機物に満ちているということだった。材料に困る事はない。
 そしてウーナはその超常の力の発現にて、命なきものを砂へと変換。
 妖精の導きに従い、舞い上がり、舞い踊る砂。飛び回る烏たちを、砂の世界へと招待する。
 ウーナへの接近を阻む砂塵にばかり気を取られていた人形たちを、突然の衝撃が襲った。
 砂の操作に用いていた念動力を、直接叩きつけたのだ。
 そして、衝撃波は周囲の砂にまで波及し、嵐を生み出す。
「これじゃうまく飛べないわ」
 ウーナの砂のフィールド。そこでは翼を懸命に動かしても、ひとところに留まる事さえ困難だ。
 標的が戸惑っている今がチャンス。
 嵐は狙いを変えて、射撃を繰りだした。翼ではなく、視覚に。
「ひゃっ」
「何をっ」
 嵐から目潰しを受けた人形たちは、空でじたばたともがく。その隙に、本来の狙いである翼を貫き、撃ち落としていく。
 猟兵を前に、何一つ奪い取る事の出来ぬ烏人形たちは、十分に力を発揮できない様子。
 反撃の好機を見出そうとするUDCどもは、しかし、ウーナの砂の餌食となる。
 なおも烏人形たちは爪を繰りだすが、ウーナの表情は一瞬たりとも揺るがない。狂気への耐性ならば、十分に。
 そして妖精は反撃する。
「御伽噺で語られるように、妖精は欲深い者には手厳しいのです」
 砂とオーラ。
 金色の輝きに包まれ壊れた人形を見下ろすウーナの姿は、さながら妖精女王の如き威容であった。
 敵をまた一羽撃ち落としながら、嵐はウーナへと、あるものを投じた。
「これ、なんなのです?」
 ウーナがしげしげと見詰めた嵐のプレゼントは、メダル。犬の絵が描かれたメダルだ。
「妖精さんにはちょっとおっきいかもな。けど、この絵は妖怪【禍福の忠犬シロ】。つけてりゃいい事あるぜ」
 簡単に説明すると、嵐は再び射手へと戻った。
「なあに、おもちゃ?」
「あたしにもちょうだいよ」
 お宝、アイテムと見れば、烏の欲望は刺激される。
 メダルを求めて殺到した烏たちは、しかし、『運悪く』、急な突風に吹かれた。
 バランスを少しばかり崩した瞬間を逃さず、狙撃する嵐。
 『偶然』、複数の人形が同一線上に並んだのを見逃さず、まとめて撃破する。
「どうだ、シロのご利益。さあ運試しといこうぜ。もっとも、アンタらは凶しか出ないけどな」
 幸運に護られた嵐たちとは反対に。
 烏人形には、厄災ばかりが降り注ぐのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
(UDCランスロットが消えた方へしていた略式の【祈り】を解き、敵へ向き直る)
奪われるのは貴様らだけだ。

UC【贄伸ばし絶えぬ火手】。
鎧から【炎】属性の鉛ロープを、短剣を先端に取り付け射出。
対象を【串刺し】にしそのまま【捕縛】、早贄にしてくれよう。
抵抗するなら【地形の利用】として【怪力】任せに振り回し叩きつける。

敵の攻撃は欲望を引きずり出す呪詛だそうだが。
先程の戦いで手傷を負った分、鉛(ち)が足りん。
ならば貴様らから【生命力吸収】で飢えを満たしにかかるのは道理だな?
傀儡人形に満足に詰まってるかは怪しいが、そこは数で補うとしよう。
【呪詛耐性】で敵味方の識別能力は保ちつつ手当たり次第に吸い殺して回る。



 騎士としての最期を迎えたものへの、せめてものたむけとして。
 UDCランスロットが消えた方へ行っていた略式の祈りを解き、敵へ向き直るルパート・ブラックスミス。
「なにしてるの?」
「なくなったものに用はないわ」
 ルパートの行為をあざ笑うのは、UDC烏人形。
 一口にUDCとまとめたところで、その由来も全く異なるものだ。
 ランスロットのように、取り戻すべき誇りは、この人形たちには、ない。
「奪ってあげるわ」
「エモノを横取りしてくれたお礼に」
「生憎と、奪われるのは貴様らだけだ」
 翼で闇を打ち、迫りくる凶鳥たちを、ルパートの炎の矢が迎撃した。
 否、矢ではない。先端に短剣を結わえた、炎宿す鉛ロープの群れだ。
 夜空翔ける灼熱の軌跡が、次々、烏人形の体を、翼を、貫く。串刺しにしたまま縛り上げれば、正に早贄の様相。
「ちょっと」
「あたしたちをおもちゃにするつもり?」
 必死にもがき、ルパートの束縛から逃れ出ようと抵抗する烏人形。
 簡単には処理されぬともがくその一羽を、ルパートは振り回した。
 強じんなロープに力を籠め、強引に敵の身を振ると、そのままマンションの壁面に叩きつける。
 思いのほか硬い音をまき散らし、人形が破砕する。
「そう簡単には捕まらないわ」
 物陰から、別の数羽が飛び出した。
 ルパート目がけ閃くのは、鋭い鉤爪。物理的な威力こそ弱いものの、その真価は理性を切り裂く呪詛にこそある。
 だが、ルパートは臆する素振りを見せぬ。
「ふむ……先程の戦いで手傷を負った分、鉛(ち)が足りん」
 平然と背後を振り返ると、五指を開いて敵を迎えた。
 がしっ、と、掴んだのは、敵の足。
「ならば貴様らで飢えを満たしにかかるのは道理だな?」
「なにを」
 ルパートの鎧の隙間から、青の炎が噴き出し、人形を照らす。
 引火した流動鉛が、烏のボディを燃焼させる。ただ滅しているのではない。相手の生命力、活力を簒奪、我が物としているのだ。
 物言わぬ骸と化した烏を横たえながら、ルパートは敵陣へと顔を向ける。
「やはり傀儡人形では物足りんか、ならば」
 数で補えばよい。
 戦場を駆け巡り、敵を呪殺して回るルパートの姿は、UDCすら戦慄せしめる光景であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ユウヒ』

POW   :    夢鍵・無明
戦場全体に、【異形の者達が徘徊する、邪神の夢 】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
SPD   :    禁鍵・呪禁
自身に【自身への攻撃を遮断する呪詛 】をまとい、高速移動と【対象の戦闘能力を封じる呪詛の鎖】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    冥鍵・夜見
自身の【蒐集した人間の魂 】を代償に、【召喚した精神と生命力を喰らう邪神の視線】を籠めた一撃を放つ。自分にとって蒐集した人間の魂 を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は祇条・結月です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 駐車場に、残骸が散らばる。猟兵たちに駆逐された烏人形たちのものだ。
 翼をもがれてもしぶとく駆動していたラスト1体も停止し、もはや動くものは猟兵たちをのぞいて誰もいない。
 ……はずだった。
「帰りが遅いはずだよ。骸の海まで道草を食いに行っちゃったんだから」
 若い男の声。
 いつの間にか、黒衣の男が現れていた。フードに隠され、その容貌はしかとは見えぬ。
「ランスロット……だったか。ちょうどいい玩具が手に入ると思ったんだけどな。残念だ」
 横に突き出した手に、黒の大剣が出現する。鍵にも似た、異形の刀身。
「折角来た以上、少しは絶望を撒いていかないと、ね。でも、ここは足場が悪い」
 砕けた烏人形の頭部を、乱暴に蹴り飛ばし。
 黒衣の男……UDC『ユウヒ』と呼ばれるものは、地面を蹴った。
 ただ一度。それだけの跳躍で、マンションの屋上まで到達する。
「来なよ猟兵。ここなら存分に戦える。全力で来てもらわないと、魂の芯まで絶望させられないからさ?」
片桐・公明
【SPD】
力尽きた状態からむくりと起き上がり、敵が行った建物の屋上を見上げる
そのままクライミングの要領で壁面を一気に駆け上がり敵と相対する
その表情、視線は先ほどまでとは異なり最低限まで冷え切り、そしてただただ殺意のみを発している
「さっきので"わたし"が力尽きたからな。代わりに"あたし"が出て来た。」
「そのせいもあって本調子じゃないんだ。だから、最初から最大出力で行くぜ。」

[真の力開放]
両の拳から発する焔が尾を引くほどの速度で敵に接近して殴りつける
敵UCはこちらのUCで対応し、鎖は攻撃タイミングを読んで回避
高速移動は銃撃で移動を制限したうえで攻撃を置いて対応する

(絡み、アドリブ歓迎です。)


ライカ・ネーベルラーベ
絶望なんか、オマエが撒かずともそこら中にあるんだよクソッタレがァー!
だからわたしは!わたしはァアアアアー!

敵が上に上がってしまったので、引き続き
【舞え、勝利を誓うは鋼と雷の翼竜】で飛行状態を維持
マンションの屋上に陣取る黒尽くめを破壊するよ
まぁ接近戦だと周りの連中の邪魔になりそうだし
ビルの周り旋回しながら、剣に仕込んだ機関銃を浴びせてあげよう……

「わたしは、殺す!オマエみたいなのを砕いて焼いて引き裂いて殺すんだよぉォー!」
なんで、なのかはもう忘れたけど
コイツを壊せばなんか思い出すでしょきっとねェェェ!

呪詛の鎖は剣で受けて、そのたびにポイ捨てすればいいし
換えはあるんだから



 力を使い果たし、昏倒していた片桐・公明。
 不意に、むくりと起き上がる。新たな敵の出現に呼応したように。
「……!」
 ランスロットや烏人形を越える高密度の気配を目指し、公明が動く。
 クライミングの要領で壁面を一気に駆け上がり、敵と相対する。
「ああ、来た来た」
 平然と公明を迎えるのは、気配の主……ユウヒ。
 猟兵ならば少々高い建物の1つや2つ、昇って来るのは当然、と言わんばかり。
「キミたちの絶望を手土産にさせてもらおうかな」
「絶望なんか」
 星瞬く空より、ライカ・ネーベルラーベの声が届く。
 黒衣の視線を飛び越え、屋上へと現れたのは、飛竜を駆る狂気の化身であった。
「絶望なんか、オマエが撒かずともそこら中にあるんだよクソッタレがァー! だからわたしは! わたしはァアアアアー!」
 ライカの絶叫と共に、チェーンガンブレードが暴れ出す。
 搭載された機関銃が、破壊の旋律を荒々しく奏でる。狙うはもちろん黒尽くめ。
 飛竜で建物の周囲を旋回しながら、ユウヒに銃火を浴びせる。浴びせ続ける。
 鍵剣で銃撃をしのぐユウヒを、睨む公明。その表情と視線は、先ほどまでとは違う。
 最低限まで冷え切り、ただただひたすらに、殺意のみを発する公明に、ユウヒは肩をすくめる。
「こっそり観戦させてもらっていたけど、少し違うな?」
「さっきので"わたし"が力尽きたからな。代わりに"あたし"が出て来た」
 ユウヒの疑問に、公明が素直に答える。
「でも、人形に狂わされて病み上がりなんだろう?」
「ああ、そのせいもあって本調子じゃないんだ。だから」
 公明の姿が掻き消えた。
「最初から最大出力で行くぜ」
 暗闇を、赤い軌跡が切り裂く。公明の両の拳から発せられる焔だ。虚空に尾を引くそれを、ユウヒに叩きつける。
「!」
 黒衣に包まれた体が、吹き飛ぶ。だが、大きく後退しつつ、フードからのぞく口元、笑みが絶える事はない。
 黒衣の上から追加でまとった呪詛が、ダメージを遮断しているのだ。
 屋上のフェンス際に追いやられたユウヒを、ライカが狙う。
 公明の領域を妨害せぬよう。むしろ、その攻撃の隙間を埋めるように。
「興味深いね。狂ってしまった奴に絶望を与えるにはどうするのがいいか……実験体にしてみたいよ」
 ライカの弾雨を浴びながら、ユウヒは剣を掲げる。狙う切っ先はライカではなく、遙か彼方……異界。
「来てよ邪神。その忌まわしさで世界を蝕むといい」
 夜が、裂ける。
 ユウヒの背後、暗闇から現れたのは、名状しがたき邪の塊。
 開かれた赤き瞳。無数のそれが、ライカと飛竜を射抜く。肉体も精神も侵蝕する、狂気の凶器がほとばしる。
「アハハハ!!! そいつ目力強すぎだねェー!」
 空間というか、概念そのものが弾ける音を聞きながら。
 ライカは、華麗な飛行を披露した。くるり、空中で側転を成し遂げ、空間を焼く視線から逃れる。
 一方、地上では。
 公明の射界から、ユウヒの姿が消える。
 高速の移動から繰り出すのは、呪詛の鎖。絡み取られようものなら、再び肉体と精神を蝕まれよう。
 しかし、公明もまた追随する。
 敵が鎖を、あるいは闇の力を振るう経路を予測。屋上という限りある戦場を走り、鎖を上下左右にくぐり抜けていく。
 互いに、姿見えぬ速度域での交戦。ぶつかり合う鎖と銃弾の散らす火花が、かろうじて激突地点を報せてくれる。
 しかし、次第にユウヒの動きがコンパクトに抑えられていく。ユウヒの着地点を予測した公明の銃撃が、移動範囲を制限しているのだ。
 そして、全方位へと放たれた鎖をかいくぐり。
 ユウヒの懐に入りこみ、至近から銃弾を穿つ公明。呪いの護りすら貫いて。
 吹き飛ぶユウヒの背後に、飛翔したライカが現れる。
「わたしは、殺す! オマエみたいなのを砕いて焼いて引き裂いて殺すんだよぉォー!」
 なんで、なのかはもう忘れた。
 けれど、ライカには確信がある。あやふやな癖に、信仰にも似た確信が。
「コイツを壊せばなんか思い出すでしょきっとねェェェ!」
 叫びを潰さんと、邪神の眼差しが、空間を薙ぎ払う。かすめたライカの剣が、瞬時に腐食。
 けれど、ライカは何のためらいも無く剣を手放すと、代替品に持ち替えた。
 そして、雷鋼の翼竜と共に突撃。一気にユウヒの間合いを侵食すると、すれ違いざま、その胴を薙いだ。背にした邪神ごと。
「く……邪神をも乱す狂気とはね」
「オオオ……」
 ユウヒが苦笑し、邪神の顕現が霧散する。
 ライカは、邪神を斬った剣を、無造作に放り投げた。呪詛に侵食され、呪いのアイテムに変わる前に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ウーナ・グノーメ
連携・アドリブ◎

「あなたが人形達の飼い主なのです? ペットの躾ぐらい、きっちりして欲しいものなのです」

妖精は軽口を叩きながら、結界術、オーラ防御を重ねた多層防壁を展開する。
そしてUCを展開し、数百に及ぶ鋭利な砂岩と共に、念動力でビルの屋上へと飛翔。
だが、多数の砂岩に紛れた妖精の姿を、敵が捉えるのは困難だろう。
多層防壁が光を歪め、蜃気楼の如き天然の迷彩となって、妖精の姿を隠しているのだ。
無論、妖精も周囲が見えなくなるが、優れた第六感がそれを補う。
果たして、邪神の『視線』とやらが妖精を撃ち抜けるかどうか。

「侮って良い相手ではないのです。望み通り、全力を出すのです」

無数の砂岩が、雨のように降り注ぐ。



 先行する猟兵たちを追って、ウーナ・グノーメは、屋上へと飛翔した。お供は砂岩の柱たち。その数、数百にも及ぶ。
 決戦場にて待ち受けるユウヒが、妖精の降臨を迎えた。
「あなたが人形達の飼い主なのです? ペットの躾ぐらい、きっちりして欲しいものなのです」
「何せ、放任主義なもんでね」
 妖精と、UDCの軽口が、前哨戦の如く、火花を散らす。
 そしてユウヒは、鍵剣を構え。
 ウーナは、斬撃、衝撃に備え、多層防壁を展開。
「侮って良い相手ではないのです。望み通り、全力を出すのです」
 更に妖精は多数……いや、もはや無数の砂岩に守られている。もはや要塞の様相。
 この守りを突破してウーナを捉えるのは困難。
 しかし、敵は、ランスロット以上の強者。
「行くよ、妖精さん」
 ユウヒが仕掛ける
 鍵剣でもって、護衛の砂岩を粉砕。奥に控える妖精を目指し、攻略していく。
 だが、ウーナの姿は依然見えぬ。先ほど張り巡らせた多層防壁の作用だ。
 光を歪め、蜃気楼の如き迷彩となって、ウーナの視認を妨げている。
 一方、ウーナもまた、自らの守護防壁により敵の姿を捉える事は叶わない。だが、砂岩の破壊が、殺意の匂いが、敵の位置を知らせてくれる。
「ずいぶん人見知りなお姫様らしい。なら、嫌でもその顔見せてもらうよ」
 唐突に。
 ユウヒは剣を振るうのをやめると、それを天高く掲げた。
 刀身から溢れ出す光球。これまでに手にかけ、嵬集した人間の魂を解放しているのだ。邪神への供物として。
「邪神の眼差しは世界の裏まで見透かす」
 ユウヒの呪言が、異界の門を開く。
 顕現せしは、黒き影。邪神の力の一端が、その魔眼にて、砂岩の要塞を見据えた。
 不可視の視線が、砂岩を抉り、オーラ防壁を侵食する。
 だが、超常にして尋常ならざる存在でも、妖精を撃ち抜くことはできなかった。
 邪神と言っても、所詮これは、片鱗に過ぎぬ。
「恥ずかしがりやの妖精さん、かくれんぼの時間は終わりだよ」
「残念なのです。鬼はあなたではなく、こちらなのです」
 ウーナの声と同時。
 ユウヒの頭上。無数の砂岩が、雨のように降り注いだ。
 わずかな逃げ場すら、かみころしながら。
 鋭い岩槍の歓迎が、ユウヒの黒衣を、ぼろへと変えていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
ユウヒを見るとその魂を蒐集する性質を見抜いた様に
苦々しく。
「本来なら来なくてよかった。
と言いたい処だが、
お前の様な人の魂を物扱いするヤツを始末する機会には
感謝するべきか。」

敵の持つ。蒐集した人間の魂の在処を【見切り】
【高速詠唱】【早業】で速度を極限まで高め
蒼霊焔視を発動。人間の魂を焼き邪神召喚を妨害。
(焼いてしまう魂達には悪いが
ヤツの良い様に扱われるよりはましと
思ってもらうより他にない。)

大剣の間合いに入らない様に注意し
蒼霊焔視の範囲を【範囲攻撃】を使用し徐々に広げ
ユウヒの魂も焼き、その隙に残った魂も燃やしながら
【念動力】で人魂の様に操りユウヒに襲い掛からせる。
「さあ、その魂。焼かせて貰う。」


春霞・遙
UDCを集めて絶望を拡散して何が楽しいのやら。
何を考えているのかは理解できませんけれど、危険であることには変わり無いでしょうしあなたも骸の海を覗いてきたらいかがです?

可能な範囲でお味方の手当てをします。
攻撃に関しては通常の攻撃は無効化されてしまいそうなので呪詛も含めた霊的なもの全て殺害する穢れを以て攻撃しようと思います。
【御霊滅殺符】の呪いと禁鍵とやらの呪い、呪いと代償が混じりあってどちらが先に倒れるでしょうね。
物理的な攻撃はなんとか回避したり杖で「武器受け」して逸らしたり耐えたいと思います。



 フォルク・リアは、対峙したユウヒを見るなり、苦々しい表情をのぞかせた。
 その、魂を蒐集する性質を見抜いた様に。
「本来なら来なくてよかった……と言いたい処だが、お前の様な人の魂を物扱いするヤツを始末する機会には感謝するべきか」
「この世の全ては物質さ。それにいちいち感情を乗せるなんて無駄な行為だ」
 フォルクの言葉を、笑い飛ばすユウヒ。
「……いや、感情は大事だな。絶望も感情のうちだしね」
 訂正と共に構えた鍵剣から、光が溢れるのを、フォルクは見た。
 ただの光ではない。ユウヒに殺され、剣に縛り付けられた人間の魂。その苦しみが念となって表れているのだ。
「ふうん、キミには見えているんだね」
 ユウヒが言うように、フォルクには見えている。魂の絶望の叫びが、解放を望む訴えが。
 人々の肉体は既に失われた。最早現世に還ることは叶わぬ。ならば、フォルクに出来る最善は。
 共に敵に向かう春霞・遙には、そこまで見通す事はできない。
 だがそれでも、ユウヒに囚われた魂たちが、絶望から逃れ出たいと苦悶している事はわかる。
 相対する敵は、まさに黒。武器から靴に至るまでを一色でコーディネイトしたユウヒに。遙は告げる。
「UDCを集めて絶望を拡散して何が楽しいのやら」
「『そういうもの』だと理解してくれればいいさ。猟兵に共感は求めないよ」
 肩をすくめるユウヒ。
 過去として焼きつけられたオブリビオンには、明確な理由など、必要ないのかも知れない。
「何を考えているのかは理解できませんけれど、危険であることには変わりありません。あなたも骸の海を覗いてきたらいかがです? あの人形たちと同じように」
「あいにくカナヅチでね。地べたに這いつくばっているのが好きなのさ」
 ユウヒの鍵剣が突き出された。
 遙はとっさのバックステップで回避と退避を行うと、フォルクにタイミングを譲った。
 突如、ユウヒの鍵剣が燃えた。
 いや、鍵剣に縛り付けられていた人々の魂を、フォルクが焼却したのだ。高速にて完了した詠唱、そこから放たれるユーベルコードによって。
(「魂達には悪いが、ヤツの良い様に扱われるよりはましと思ってもらうより他にない」)
 それは、フォルク個人の想いに過ぎぬ。
 しかし、魂たちが消える寸前残した気配は、安堵であった。……ように感じられた。
「供物がなくては邪神も呼び出せないだろう。それとも自身の魂を捧げるか」
「やってくれたね……なら、より深い絶望でお返ししないとね!」
 霊力の煙を振り払い、ユウヒが切りかかる。フォルクは敵の間合いから距離を取り、反撃する。
 ユウヒの黒衣が燃える。
 フォルクの視線が生み出す蒼焔は、剣や霊的防御さえも破り、ユウヒの魂に至る。
 圧倒されるユウヒ。だが、このまま倒されるとは思えない。遙は、次の一手に備える。
「お医者さんか。それならボクの事も治してくれないかな」
「申し訳ありませんが、私が診るのはお味方だけですから」
 遙につれない言葉を返され、ユウヒはそれでも笑う。
「ふふっ、まだエネルギーは残っている。今一度邪神を降ろす分くらいはね」
 剣を構え直すユウヒ。だが、解き放とうとした魂は、すぐにフォルクの炎に飲み込まれる。
 それだけではない。蒼炎に包まれた魂たちは、フォルクに助力するように、ユウヒへと襲い掛かる。
「魂を操るなんて、外道だね」
「お前ほどではないさ。さあ、その魂。焼かせて貰う」
 一斉に跳びかかった火球の群れが、黒衣を焼却した。
「くっ、せっかく集めた魂を……さすがに許さないよ」
 他者だけでなく、自身の魂さえも焼かれたユウヒが、鍵剣の別の力を解放する。
 呪詛がその身を包み、攻撃を受け止める。追い詰められた証拠ですね、と遙は、自分たちの優勢を確信する。
 ここが、正念場だ。そう判断した遙だが、生半可な攻撃では守りを突破するのは難しい。ならば。
 遙が取り出し構えたのは、白紙。だが、遙が力をこめるのに従い、呪言が焼きつけられていく。霊的なあらゆるものを殺害する、穢れの力。
 ある意味、ユウヒの持つ力と近似であるそれを以て、遙は立ち向かう。
 ぶつかり合う、呪力と呪力。
 互いの霊力を食い合う中、両者とも、その力の代償を払い続ける。
 ユウヒは口の端から、遙は双眸から。鮮血を流し、それでもなお戦う手を止めない。
 呪いと代償が混じり合い、先に倒れるのはどちらか。
 ユウヒの繰り出す鍵剣を、杖で受け、流し、打ち払いながら。
 遙に呪殺の力を叩き込まれたユウヒが、その体をくの字に折った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
ランスロット。挑み狂い堕ちた騎士よ。
貴様は己を独り、敗れた弱者と呼んだな。
ならばこの黒騎士がかつての貴様に続き、奴というUDCに挑もう。
奴を骸の海に還し、貴様への手向けに騎士の勝利を宣おう。

真の姿・青く燃える鉛の翼・UC【黒騎士呑み込む青き業火】展開。飛翔し【空中戦】だ。
迷路については異形の者達を大剣で【なぎ払い】倒した端から燃える鉛に変換、
その鉛で通路全体を覆うように【焼却】【範囲攻撃】で【蹂躙】、正面突破する。
ここまでで傷は塞がり鉛は満ち溢れた、【力溜め】【限界突破】した戦闘能力をもって接敵次第斬りかかる!

覚悟せよUDC。
『我ら』が騎士道、貴様の思うままにはなるほど易くはないぞ!



 遙か高層で待つ敵との決戦を控え。
 ルパート・ブラックスミスは、虚空に語り掛ける。
 いや、正確には海か。この世界からわけ隔てられた異次元……骸の海。
「ランスロット。挑み狂い堕ちた騎士よ。貴様は己を独り、敗れた弱者と呼んだな」
 ちりり、と鎧の間隙から、青の炎がこぼれ出る。
「ならばこの黒騎士がかつての貴様に続き、奴というUDCに挑もう。奴を骸の海に還し、貴様への手向けに騎士の勝利を宣おう」
 ルパートが燃え盛った。
 辺りに散らばる烏人形の残骸が燃焼し、鉛へと変わる。其れを糧として、生まれ出た翼が、闇を照らす。
 飛ぶ。
 空気を焦がして飛翔すると、屋上にて待つユウヒとの相対を果たす。
 互いにまとうは黒一色。
「今度は翼の騎士のおでましか。あの騎士もどきの代わりに持ち帰ってもいいかもな」
 ユウヒの軽口に、ルパートは、応えない。
「つれないなあ。そんなに早く絶望したいのかい?」
 ユウヒが足元に突き立てた鍵剣。それを起点に、空間が書き換えられる。
 屋上をベースに、展開するは巨大なる迷路。
 夜空まで覆い尽くす立体空間は、ルパートをも内部へ誘う。
 幾何学模様の如く入り組んだ通路から染み出すのは、黒の影。邪神の眷属か。それともユウヒの作り出した絶望の化身か。
 複数の犬をより合わせた異形たちを、ルパートの大剣が薙ぎ払う。塵と化して消える事も赦されず、燃える鉛へと転化した。
 そのまま鉛はルパートの力となって、通路を疾く駆け抜ける。なおも蠢く異形の群れを巻き込んで、迷路はルパートに攻略されていく。
 露払いを終え、翼にて、迷路を駆け抜ける青き騎士。鉛は、溢れんまでにその身に蓄えられた。そして、これまでの戦闘で鎧に刻まれた瑕疵も、既になく。
 高速にて抜けた先、黒衣の男が待つ。
 敵を視認した瞬間、全力を解き放つ。蓄積し、更には限界さえ突破した全戦闘能力をもって、邪悪を断つ。
「覚悟せよUDC。『我ら』が騎士道、貴様の思うままにはなるほど易くはないぞ!」
 ルパートの後背に、刹那、もう1人の騎士の姿が重なる。
 命を削る騎士の……否、騎士たちの一刀が、絶望をもたらすものを切り伏せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロット・クリスティア
黒衣の剣士……まったく、その出で立ち同様に性格も悪趣味と見える。
良いでしょう。付き合って差し上げますよ。

アンカーショットを用いて、自身の身体を巻き上げて奴を追います。
こちらとしても、遮蔽が少ない方が都合がいい。

マシンガンの斉射を叩き込みます。
これも極力急所狙い、殺すつもりで撃ちますが……まぁ、普通に考えて呪詛で阻まれるでしょう。でも撃つ。
無駄とわかれば、奴とて回避を気にせずこちらを攻めたててくる。自然、防御は疎かになります。
鎖をどうにか凌ぎつつ、追い込まれるふりでも演出しましょう。
そして相手が追い詰めたと思いこんだ瞬間、ショットガンに込めた魔素破却弾の抜き撃ちを。

……狩れると思いましたか?


鏡島・嵐
――ッ。
(恐怖で蒼褪める顔。がたがたと震える躰。それら総てを意志の力で覆い隠して――)
……言いてえことはそんだけか。
テメエが強いんは十分わかってる。そんだけの強さがあって、まだおっかねえ玩具を欲しがるって……どんだけ趣味悪ィんだ……!

視線で攻撃されるってのはやりにくいな。躱すのは難しそうだ。
なんとか〈第六感〉で隙を見つけて〈目潰し〉を狙った一撃を叩き込みてえとこだ。
〈フェイント〉混ぜたり、〈スナイパー〉ばりに精度を引き上げたりして、なんとか相手のペースを乱さねえと。
ユーベルコードでの相殺は、決定的なタイミングをモノに出来そうなら使うようにする。
他の仲間が近くにいるなら〈援護射撃〉も飛ばす。



 シャルロット・クリスティアの体を、アンカーショットが巻き上げる。
 難なく屋上という新たな戦場を訪れたシャルロットを迎えたのは、黒ずくめの男。
 漆黒、と言うにはいささか汚れている。猟兵たちとの交戦の結果によって。
「何度来ようが、ボクは倒れないよ。無駄な努力と知った時のキミたちの諦め、絶望もまたいいものだ」
「まったく、その出で立ち同様に性格も悪趣味と見える。良いでしょう。付き合って差し上げますよ」
 言うべきことを言い切ると、シャルロットはマシンガンの斉射を叩き込んだ。
 銃火をくぐり抜けたユウヒを待っていたのは、鏡島・嵐。しかし、その戦に臨む者らしからぬ様子に、ユウヒは酷薄な笑みを浮かべる。
「その顔……絶望もいいけど、恐怖もいいね。ボクがその感情を掻き立てている元凶なら尚更だ」
「――ッ」
 ユウヒの言葉に、奥歯に力をこめる嵐。
 その顔は、実際、恐怖で蒼褪めている。がたがたと震える躰。
 だが、嵐は、それら総てを意志の力で覆い隠す。
「こんな絶望がもっと広がったらと思うと……ワクワクしないかい?」
「……言いてえことはそんだけか」
 嵐の脚の、震えは止まらない。ただし今度は、怒りによって。
「テメエが強いんは十分わかってる。そんだけの強さがあって、まだおっかねえ玩具を欲しがるって……どんだけ趣味悪ィんだ……!」
「人間は、絶望や不安にもすぐ耐性をつけてしまうだろ? だから、常に新しい玩具が必要なんだよ」
 語るユウヒに、シャルロットの殺意がぶつけられた。
 牽制や足止めなどという、生易しいものではない。初手から急所を容赦なく狙い、仕留めるつもりの射撃だ。
 もっとも、この相手にはそれくらいで試射程度の意味合いになるようだが。
 屋上に、遮蔽物はない。シャルロットにとって、この戦場は都合のいい環境だった。
「飛び道具なんかで殺して楽しいのかい? 剣はいいよ。殺す感覚が手に伝わるし、痛みにのたうつ相手の顔も近くで見られる」
「その物言い……正しくこの世界の敵ですね」
 悪趣味を垂れ流すユウヒは、平然とシャルロットの方へ歩みを続ける。
 目を凝らせば、黒衣は呪詛によって守られ、弾雨をしのいでいるのがわかる。
「高性能なレインコートだろう?」
「だとしても要りませんね。呪詛まみれの服なんて」
 屋上を駆け回りながら、弾丸を断続的に放つ嵐。自分はもちろん、シャルロットにも近づかせない。
 すると、ユウヒの回した大剣が、虚空に刻印を浮かべる。
 嵐の眼前、空間を裂いて現れるのは、邪神……その膨大な力の一部。
 敵から眼をそらすわけにはいかない。だが、この禍々しき存在は、直視してはいけない類のものだ。ジレンマが、嵐を悩ませる。
「ッ!?」
 びくん、と。嵐の第六感が、跳ねるようにその体を動かした。
 直後、背後にあったフェンスが蒸発する。
「これが邪神の視線って奴か」
 見れば、ユウヒの背後、影の如き邪神の赤き瞳が、周囲を見つめている。
 視線というのは、いわば概念だ。射程距離の限界などあってなきが如し、予備動作も武器や術に比べれば皆無に等しい。それでも、嵐は抗った。
 強力な呪詛の護りを砕くべく、なおも射撃を継続するシャルロットへ、ユウヒが切り込んだ。
 金属音が鳴る。黒剣とガンブレードが会敵した音だ。
 ユウヒが操るのは剣だけではない。呪詛で編んだ鎖を袖から繰り出し、シャルロットを捕らえんとする。
 剣と鎖。二種を巧みに操作し、シャルロットを追い立てるユウヒ。
「そんな銃じゃボクの服には傷一つつけられないよ?」
 そして、勝利を確信したユウヒが、ひときわ大きく剣を振りかぶる。
 だが、刃がシャルロットを撫で切りにするより、銃声が響くのが先だった。
「な」
「……狩れると思いましたか?」
 冷えた声で問うシャルロットの手には、ショットガン。
 接近戦用カスタムのそれから撃ち出された魔素破却弾が、ユウヒの胸に風穴を開けていた。
「く……やってくれたね……!」
 シャルロットの逆襲により、堅牢な守りを突破されたユウヒ。そして傷は致命だ。
 よろめくその体にとどめを刺さんと、嵐が射撃を試みた。
「そんな豆鉄砲じゃ、ボクは殺せないよ」
「でもな、その豆鉄砲にテメエは倒されるんだよ!」
 そして嵐は、新たな一発を……。
 撃つのを止めた。フェイントだ。
 だが、ユウヒの方は反射的にガード体勢を取った後。盾としてかざしたのが大振りな剣ゆえ、構え直すには時間が必要だ。
 その隙を逃さず、嵐は、必中の一発を繰り出した。
 邪神の赤眼が、貫かれる。
「オオオォォ」
 身悶える邪神。
 残った瞳で嵐を射殺そうとする邪神が、瞬時に消し飛んだ。
「な……」
 自身の胸に開いた、二つ目の穴を見つめるユウヒ。
 嵐の鏡によって写し取られた邪神の力は、聖なる神のまなざしとなり。
 裁きとなって、邪悪を貫いたのだった。

「おかしいな、何処で歯車が狂ったのかな……こんなはずじゃなかったのに」
 黒き粒子となって、ユウヒの体が消失していく。
「けど、これが本当の死じゃないことは知ってるよ。世界を絶望させるのは、『次』の楽しみにとっておくさ」
 ははは、と無邪気ですらある笑い声を置いて。黒衣の絶望主は、この夜から消え去った。
 無事、戦いを終えた猟兵たちに、グリモア猟兵から連絡が届く。
 身を投げた少女……事件の発端となった少女が、UDC組織関連の病院に運ばれた事。
 そして、無事、一命をとりとめたという報せだった。
 目覚めた少女はこう言うかもしれない、「こんなはずじゃなかったのに」と。

 やがて少女は、この一件をきっかけとして、UDC組織に身を置くことになり、新たな生活をスタートさせることになるのだが……。
 それはまた、別の話。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月15日


挿絵イラスト