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百鬼夜行、喧嘩祭り

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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●百鬼夜行
 それはいつの間にか建造された巨大なるリングというなのお祭り会場であった。
 周囲には妖怪たちが誘われるように群れ成して、引き寄せられていく。元々血の気の多い妖怪たち……というわけではないのだが、ロープで区切られたリングの中では大乱闘が行なわれている。
 小さい妖怪も大きな妖怪も、所狭しと駆け回り最後の一人になるまで戦うのだというように殴ったり蹴ったり頭突きしたり関節技極めたりと大騒ぎである。

 そんな大騒ぎを一段高い場所から見下ろすのは見目麗しい日本人形のような妖怪。化粧と上品な着物をまとい座している。
「妾は最も強き者との婚姻を望む。我こそと思う者は、いざ参られよ。見事最後の一人となりし者には祝福を。敗者には惨めなる呪詛を。さあ、さあ―――戦い続けるのです」
 お囃子がまるでリングの中に引き寄せられるように集まった妖怪たちをけしかけるようにして響き渡る。
 何かがおかしい。
 この場に引寄された妖怪たちは何かがおかしいと違和感を感じるが、それでもあの日本人形のように美しい妖怪の言葉には、とても魅力的に感じてしまうのだ。

 あれだけの美貌、あれだけの気高さ、ぜひとも嫁に欲しい! 妖怪たちは皆、その気持ちに支配され次々とリングの中へと飛び込んでいく。
 我こそはと思う力自慢も、そうでないものも皆、あの美しい妖怪の隣を手に入れようと躍起になって乱闘を続けるのだ。

「生命あるものたちは皆、美しいものが大好き。ならば、我等は見届けましょう―――」
 リングの周囲に華やぐような女性たちが控える。
 それは先程宣言した日本人形のように美しい妖怪を護るように控えた女武芸者たち。彼女たちは戦いに参加せずに乱闘騒ぎを見守るばかり……。

●喧嘩祭り
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを出迎えるのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
 頭を下げ、微笑んで彼女は猟兵たちに語りかける。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はカクリヨファンタズム。そう、妖怪たちが住まうUDCアースに隣接する世界です」
 先日の発見から幾度かの事件の解決を猟兵達に願ってきたナイアルテにとっては、もう他の異世界と変わりないものとなっていた。

「皆さんは喧嘩祭りというのをご存知でしょうか?」
 それは山車、曳山、神輿などがぶつかり合うように行う祭りの総称であり、喧嘩をしているように見えることから喧嘩祭りとよばれるようになったのだ。
 それがどうしたのだろうか?
 そう訝しむ猟兵たちの前でナイアルテはシャドーボクシングをするように拳の連打を見せる。空を切る拳の音。

 ―――なんで?

 猟兵たちの表情はまさにそう言っていたも同然であった。なんで今シャドーした?
「―――え……あの、喧嘩祭り、です……カクリヨファンタズムで行なわれている喧嘩祭り……一人の女性の妖怪を巡る男性による大乱闘を、そう呼ぶのでは……」
 ちょっとまって欲しい。
 ナイアルテの予知と、世間一般で言うところの喧嘩祭りにだいぶ相違がある。猟兵達は真っ赤になってしまったナイアルテをなだめ、詳しく話を聞く。
 どうやら、彼女が予知した事件……それは一つの大きなリングの中で行なわれる大乱闘のことを喧嘩祭りと呼ぶようであった。
 それは百鬼夜行・喧嘩祭りと呼ばれており、一人の女性の夫を決めるために我こそはと思う妖怪たちが集い、己の力を誇示する祭りであるというのだ。

「……え、と、その……このリングがおかしいのです。普段であれば、ここまで妖怪たちは皆集まってきません。というより、見物する方は多くても、実際にリングに乱入することなどあまりないのです。大体が一対一の決闘のようなものなので……」
 そう、このリング事態に何か絡繰があるのかもしれない。大乱闘に発展するほど妖怪たちがリングに上がることはないのだという。

「どうやらオブリビオンの仕業のようです……皆さん、どうかお願いいたします。この百鬼夜行……喧嘩祭りに乱入し、大乱闘を繰り広げている暴徒と化した妖怪の皆さんを諌め、この喧嘩祭りを裏で糸引く存在……オブリビオンをどうか打倒してください」
 そう言ってナイアルテは頭を下げて猟兵たちを見送る。
 今回の事件、どうにも一筋縄ではいかないようだ。だが、それでもオブリビオンの影があるのであれば、素早くこれを解決しなければならない。
 カクリヨファンタズムにおいてオブリビオンは世界の終わり、カタストロフを容易に引き起こせる存在である。
 これを打倒し、世界の終わりを―――カタストロフを防ぐのだ、猟兵!


海鶴
 マスターの海鶴です。
 今回は新しい世界、カクリヲファンタズムでの事件となります。御囃子聞こえるお祭り会場……リングに暗躍するオブリビオンを打倒するシナリオになります。

●第一章
 冒険です。
 お祭り会場であるリングには暴徒と化した妖怪たちが大乱闘を繰り広げています。
 一人の美しい妖怪を娶るために皆、半狂乱になって大乱闘に身を投じているのです。老いも若きも、上から下までバラエティ豊かな年齢層の男性の妖怪たちばかりです。
 みなさんはこれを諌めるなり、鎮圧するなりと様々な手段を講じてリングの外に妖怪たちを出さなければなりません。
 彼等はリングから放たれる謎の妖気に当てられているだけですので、凶暴な立ち振舞をしていますが、傷つけないように救出してあげてください。

●第二章
 集団戦です。
 お祭り会場の中心、リングから妖怪たちを外に出すと骸魂に飲み込まれオブリビオン化した妖怪たちが雪崩込んできます。
 この群体オブリビオンはリングの中で勝ち残った猟兵の皆さんを強者として讃えながらも次々と襲いかかってきます。
 またさらにリングに立ち込める妖気は強まり、大きく行動を阻害されることでしょう。美しい女性妖怪を娶りたい、その感情が老若男女問わずこみ上げてきます。
 ここは敢えて、敵の思惑に乗り、女性を娶りたいアピールなどをすればプレイングボーナスを得て、有利に戦うことができるでしょう。

●第三章
 ボス戦です。
 祭りの主催者であり、この大乱闘の優勝者の妻となる女性妖怪……もとい、オブリビオンと戦います。
 ここで明かされるオブリビオンの正体を得て、猟兵の皆さんはこれを打倒し、この邪悪な喧嘩祭りに決着をつけましょう。

 それでは、カクリヨファンタズムの一風変わったお祭りと共に皆さんのキャラクターの物語の一片と成れますようにいっぱいがんばります!
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第1章 冒険 『暴徒だらけの百鬼夜行』

POW   :    暴徒をねじ伏せるなど、気絶させる

SPD   :    暴徒に水をかけるなど、沈静させる

WIZ   :    暴徒を眠らせるなど、無力化する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「さあ、もっと。もっと、戦いなさい。妾を手に入れたいと思う者は、戦って己が最強を示しなさい」
 その言葉は、まるで甘く心の中へと入り込むような魅惑的な響きがあった。
 リングの中では妖怪たちが我こそはと大乱闘を繰り広げている。あまりの数の多さ、あまりの乱痴気騒ぎ。
 けれど、それを咎める者は誰も居ない。
 誰も彼もが、この喧嘩祭りの主催者である美しき日本人形のような女性妖怪の虜になっているのだ。

「戦って、戦って、どれだけ戦っても疲れ知らぬ者こそ、妾が愛すべき夫」
 微笑みとともに告げられる言葉は、あまりにも似つかわしい言葉であったが、それが気にならぬほどの魅力。圧倒的な蠱惑じみた声色。
 赤きモヤのような物体に座す日本人形のような女性妖怪は、大乱闘の血咽るような決闘に妖艶に微笑み、大乱闘の行く末を見守るのだった……。
村崎・ゆかり
綺麗なお嫁さんねぇ。あたしも欲しいけど。って何よ、アヤメ。その目は。あなたは別だってば。

さて、この馬鹿騒ぎを鎮圧しなくちゃね。
村崎ゆかり、陰陽師。参る。

「偵察」担当の黒鴉の式を空に放って、常に自分の周囲を見下ろし、死角を補う。
そして「浄化」を宿した魂喰召喚を薙刀に乗せ、妖怪たちの意識を刈り取っていくわ。
数体まとめての「なぎ払い」で効率よく。突っ込んでくる相手は「串刺し」に。
わざと隙を作って、妖怪を引き寄せてからの一撃も効きそうね。

さあ、どうしたの? この程度?
それならお嫁さんはあたしがもらっていくわよ!

はは、強がってても流石に疲れは溜まるわ。
後は他の猟兵に任せましょ。アヤメ、飲み物ちょうだい。



 祭り会場となったリングは異様なる熱気に包まれていた。
 吸い寄せられるようにして集まってくる妖怪たちは老若男女問わず、皆リングの傍に近づくだけで我先にと駆け出し、ロープをくぐるなり飛び越えるなりして参戦していく。
 もはやそれは大乱闘と言って良い惨状であった。誰も彼もが近くにいる者を殴ったり蹴ったりと、収集が付く様子はない。それどころか祭りの主催者である日本人形のような女性の妖怪は煽るように言葉を紡ぐのだ。
「見ているだけでは手に入らぬ。美しいもの、価値の在るもの、どれもこれが見ている手の内に落ちては来ない。掴み取らねば、得られるものは何もないのだから」
 ぐらり、ぐらりと視界が歪む。
 その言葉は心地よく、そして何よりも、その言葉の主を手に入れたくて仕方ないという感情が暴走してくるのだ。

 妖怪たちは次々とリングに上がり、青あざやたんこぶを作ったりしている。それでもなお、大乱闘から逃げ出すことはしない。それはもはや異常なる光景であった。

「綺麗なお嫁さんねぇ……あたしも欲しいけど」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は、その紫の瞳に映る主催者であり、この大乱闘の勝者の権利とも言うべき美しい日本人形のように姿をした妖怪をみつめる。
 心做しか見とれているように見えるのは気のせいだろうか。不満げな顔をした式神アヤメのジト目がゆかりに突き刺さる。
「って何よ、アヤメ。その目は。あなた別だってば」
 その視線にゆかりが慌てたように付け加える。その別だっていうことは、特別だっていうことなのでしょうか、とアヤメは拗ねたようにそっぽを向く。
 ああ、やらかしてしまったかもしれないと思いながらも仕事は仕事であると気持ちを切り替える。

「さて、この馬鹿騒ぎを鎮圧しなくちゃね。村崎ゆかり、陰陽師。参る」
 勢いよくリングに飛び込むゆかり。
 偵察のつもりではなった黒鴉の式と感覚を共有して空から俯瞰した視界を確保する。これだけの大乱闘だ。背後から、側面から不意打ちされるということは、むしろ警戒すべきことであろう。
 手にした薙刀を構える。
「急急如律令! 汝は我が敵の心を砕き、抵抗の牙をへし折るものなり!」
 ユーベルコード、魂喰召喚(タマクイショウカン)によって召喚された魂喰らいの式神が薙刀へと宿る。その一撃は肉体を傷つけることのない一撃となって、乱闘騒ぎに興じる妖怪たちを打ち据える。

 新たなる参戦者であるゆかり目掛けて妖怪たちが殺到する。
 なるほど、こうして俯瞰してみるとよくわかる。妖怪たちは新たな参戦者を即座に認識して消耗させようと集中して狙ってくるようだった。
 それを薙刀の一撃で薙ぎ払いながら、大立ち回りを続けるゆかり。
「さあ、どうしたの? この程度?」
 くいくいと指で手招きしながら挑発し、妖怪たちの視線を集める。確信に変わる。この妖怪たちの戦い方。明らかに全員がもれなく消耗させられるように妖気で誘導されている。
 勝者無き決着を、この祭りの主催者は狙っているのだ。

「思惑に乗るようで癪だけれど! それならお嫁さんはあたしがもらっていくわよ!」
 一斉に視線がゆかりに集まる。
 その言葉が引き金となったようにゆかりに殺到する妖怪たち。それらを薙ぎ払い、突き立て、打ち据える。
 猟兵であるゆかりであったとしても、殺到する大量の妖怪を御するのは至難の業であった。

 息が完全に上がってしまう前にリングロープの傍まで駆け抜け、そばにいるアヤメに手を差し伸ばす。
「はは、強がってても流石に疲れは溜まるわ。後は他の猟兵に任せましょ。アヤメ―――」
 飲み物頂戴、とゆかりが声をかける前に彼女の頬に冷たいスポーツドリンクの水筒が差し出される。
 ちゃんと答え聞いてないんですけど、と拗ねるアヤメも可愛いなぁ、なんてそんなことをゆかりは思うのであった―――。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヘルルーガ・レオノーラ
喧嘩祭りと聞いたら参加するしかないだろ!

とは言ったもののこの数を真面目に相手するなんて面倒くさいし喧嘩は強い奴とやりたいからな…

リングの一部を怪力でぶっ壊し存在感を出して乱痴気騒ぎを起こしてるバカどもの注意を引き大声で威厳を出しながら脅しをかける

死んでもいい奴からアタシの前に出な!

これである程度散れば良いが…まぁ、残った奴は実力行使しかねぇな。力のねぇ奴はリングの外に投げ飛ばして、強い奴は気絶する程度に殴って投げる

アドリブok



 喧嘩祭りという言葉を聞いて、まさしく今リングの中で行なわれている大乱闘を想像する者は血気盛んであるのだろう。
 本来であれば担いだ神輿や山車がぶつかり合う様を差して喧嘩のように見えることから謂れの付いた喧嘩祭りであるのだが、字面だけみれば、その世界の世俗を知らぬものにとってはまさしく大乱闘が正しく喧嘩祭りであるのだ。
「喧嘩祭りと聞いたら参加するしかないだろ!」
 威勢よく祭り会場であるリングに飛び込んだのは、ヘルルーガ・レオノーラ(獣を宿す者・f20348)。その真赤に燃え上がるような激情を現したような炎髪と鍛え上げられた肉体は、多くの妖怪たちの視線を釘付けにしただろう。

 そうでなくても、この喧嘩祭りの会場となったリングは、新参者を集中的に攻撃するような雰囲気がある。
 巨大な塗り壁のような妖怪が早速ヘルルーガへと襲いかかろうと、その巨躯で持って下敷きにせんと迫る。
「なんだい、アタシを真っ先に狙おうっていうのは、見上げた心意気だな!」
 しかし、下敷きにしようとした塗り壁妖怪の体を片手で支える圧倒的な膂力を見せつけるヘルルーガ。
 さらにそのヘルルーガ目掛けて襲い来る他の妖怪たち。
 多勢に無勢である。だが、それでもヘルルーガは泰然自若たる雰囲気を崩すどころか、不敵に笑うのだ。

 はん、と鼻で軽く笑う。ミシ、と塗り壁妖怪の石壁のような体にヘルルーガの指が食い込む。なんたる握力。その巨躯を片手、それも指の力だけで持ち上げ、自身へと向かってくる妖怪たち目掛けてぶん投げたのだ。
「とは言ったものの、この数を真面目に相手するなんて面倒くさいし、喧嘩は強い奴とやりたいからな……」
 だから、悪いな。とヘルルーガはひとまず謝罪した。宙を舞う塗り壁妖怪の巨躯。向かってきた妖怪たちを巻き込み、リングの一部を破壊しても止まらぬ塗り壁妖怪と他の妖怪たち。リングの外に出ると気絶したように、ぱったりと動かなくなった。
 どうやらリングの外に押し出せば、この妖気に当てられることもなくなるようだった。

「死んでもいい奴からアタシの前に出な!」
 景気よくヘルルーガが啖呵を切る。
 これである程度ターゲットが自分から散れば良いのだが……だが、それでも妖怪たちはヘルルーガに殺到する。
 どうやら、この妖気に当たられた妖怪たちは新参者を集中的に狙うようだった。それが続けば勝者無き戦い……つまりは参加者である妖怪たちを全て消耗させることが目的のような戦いを強いられているようだった。
 それはこの喧嘩祭りの主催者の思惑でもあるようだったのだ。

「まぁ、そうなるよな。なら―――実力行使しかねぇな!」
 襲いかかる妖怪たち。老いも若きも、老若男女関係なくリングに集う妖怪たち。力の弱い妖怪はリングの外に投げ飛ばす。
 これならば、弱い妖怪がいつまでもリングに残って傷つくことを防げる。さらに襲い来る力の強い妖怪……それはどうするのか。

 ヘルルーガにとっては単純明快であった。
「強いやつは―――気絶する程度に殴ってから、投げる!」
 豪快そのもの。
 一瞬でヘルルーガの瞳は対する妖怪の力量を推し量る。強い、弱い。ざっくりとしたものであるが、それは伊達に女戦士の一族の族長の娘ではないということだ。
 審美眼ならぬ審力眼とでも言うべきか。
 ヘルルーガの前に立つ妖怪たちは二度とリングの中に戻ってくることはなかった。なぜなら、弱い妖怪は遠くにぶん投げるし、強い妖怪は気絶させてからぶん投げるからだ。

 あまりにも豪放磊落なやり方に主催者も開いた口が塞がらない。
 単純であるが、強烈。ヘルルーガのデビューは瞬く間にリングを戦慄で覆い尽くしたのだった―――。

成功 🔵​🔵​🔴​

笹垣・まくら
うむー祭りも喧嘩も大好きだが、リングに上がるのは自分の意志であるべきだと思うのだな…
そして騒ぎを扇動しておきながら、高みの見物というのも頂けない
降りてきて戦…ん?勝ち抜くと闘えるということか?
きっとそういうことだな?よし!!

向かってくる妖怪も来ない妖怪も肉弾戦で受けては流し受けては流す。
私の刺々の拳は痛いだろうから、心持ち優しく握ろう。
体力を消費させて気絶させるか、戦意をへし折り正気へ誘うのが目的だ。
囲まれた時は手近な妖怪の身体を掴み、
UCで周りの者ごと巻き込み活路を開く。
疲労を見せた相手には、ハハハ大人しく見ているがいい!と
戦意を削ぐように鬼の形相でめちゃくちゃ恫喝するぞ。



 お祭り会場となったリングの過熱ぶりは凄まじいものがあった。
 あちらこちらから吸い寄せられるようにして妖怪たちがリングに集まってくるのだ。どこからか噂を聞きつけたのか、はたまたこの喧嘩祭りの勝者に与えられるという美しい女性の妖怪目当てで腕っぷしに覚えのある妖怪たちが集まったのか。

 どちらにせよ、この喧嘩祭りは人を、妖怪を集めるという点においては大成功といえるのであった。
「想定外の闖入者もいるようではあるが、善きかな。もっと、もっと妖怪たちを集め、戦い、妾を求めて争うのだ」
 日本人形のような見目麗しい女性妖怪は嬉しそうに笑う。
 その笑顔を見たものは、さらなる奮起でもって大乱闘に興ずる。だが、それはあまりにも不可思議なものであった。
 本来であれば、強い妖怪ばかりがリングに上がるはずであるのに、弱い妖怪、はたまた女性、老いた妖怪、まったく関係のなさそうな妖怪たちまで集まっているのだ。

「うむー……祭りも喧嘩も大好きだが、リングに上がるのは自分の意志であるべきだと思うのだな……」
 笹垣・まくら(セキレイ・f27550)は手にした棒付きキャンディのような食べ物をからころ口元で転がしながら、リングに近づいていた。
 その視線の先にあるのは、この戦いの勝者が得る、娶ることができるという日本人形のような女性妖怪の姿。
 その他者を扇動するようなやり口に、まくらは違和感を覚えていた。
「騒ぎを扇動しておきながら、高みの見物というのも頂けない」

 まくらにとって、そういうのはどうにも気に食わないのだ。
 真白の髪をかき揚げ、琥珀のような瞳が主催者である女性妖怪から離れない。
「降りてきて戦……ん?」
 降りてきて戦おう、と言いかけたのだろうか。そこまで言いかけて、まくらは気がつく。
 喧嘩祭りの主催者ということは、結局の所、決勝戦の相手ということになるのではないだろうかと。ならば、順当に戦いを勝ち抜けば、自動的にアレと戦えるということではないか。頭いいな私、とうんうんうなずく。
 多分違うという者は誰も居なかった。
 きっとそうことだな、よし!! と意気揚々とリングに飛び込むまくら。

 リングに降り立ったまくらを鮮烈に出迎えたのは、さっとうする妖怪たちであった。それまでリングの中で大乱闘を繰り広げていた妖怪たちは、新参者を見るやいなや、それまで取っ組み合いをしていた妖怪を放って、まくらへと殺到するのだ。
「私のトゲトゲ拳は痛いだろうからな……」
 優しく、優しく、と、まくらはかなりの力をセーブしながら向かってくる妖怪たちを肉弾戦で持って受けては流し、受けては流すを繰り返す。

 それでも妖怪たちはすぐに復帰してまくらへと襲いかかる。
 ふむ、とまくらは琥珀色の瞳を細める。これでは埒が明かない。それに体力を消耗させて気絶させるか、戦意をへし折り正気へと誘うのも骨が折れそうだ。
 それに完全に囲まれている。
「―――ならば、ちょいと、そこの」
 ちょうどよく居た手頃な妖怪の足を掴む。え、と思った瞬間にはもう遅い。
 まくらのユーベルコード、びったんびったんが発動する。それは名の通り―――足を掴んだ妖怪を軽々と持ち上げるのだ。入道妖怪の足を掴んだせいか、それはもう妖怪というよりも鈍器そのものであった。

 勢いよく振り回される入道妖怪。
 そこからはもうただの蹂躙劇であった。向かってくる者は全て鈍器の如き振り回しに寄って吹き飛ばされ、疲労していく。
 だが、このリングの中に立ち込める妖気のせいだろうか、それでも立ち上がろうとする者がいる。
 それはよくない。
「ハハハ―――!」
 笑う声がする。
 そこに在ったのは鬼の形相。白き鬼が疲労した妖怪たちを見ている。
 向かってくれば食う。
 そういうかのような凄まじい形相。
「―――大人しく見ているがいい!」
 まくらの恫喝の如き笑い声はリングに響き渡る。妖怪たちは妖気に操られているのも忘れて、一目散にリングの外に逃げ出していく。
 これで妖怪たちを徒に傷つけずに済んだとまくらは胸をなでおろすのだが―――。

「……けれど、そんなに一目散に逃げ出さなくてもいいのではないだろうか?」

成功 🔵​🔵​🔴​

政木・朱鞠
「楽しそうな事してるね!私も混ぜてよ…強ければ同性でも良いんだよね?」
まずはこの騒動の黒幕の近くに行くためには、ワザと目立つように振舞って主催者の印象に残る様にしないとね。
そのためにも妖気に中てられた一般の妖怪さん達を妖狐らしく派手に【挑発】してあげるよ。

【WIZ】
手荒な行動を取らない様、本来は回復のための眠り薬の『忍法・春眠香』で眠気を促して行動を鎮圧するよ。
曖昧な意識で暴れて無用な怪我をさせない様に、行動が緩んだ隙をついて打咎鞭『九尾〆下帯』で引き寄せて抱きしめる様に拘束したいね。
眠らせただけとバレる危険があるから、首筋を噛むふりをして【時間稼ぎ】でキスをしておくかな。

アドリブ連帯歓迎



 喧嘩祭りの御囃子が鳴り響く。
 それは喧騒と言ってもいいほどの騒々しいものであった。祭り会場であるリングには妖怪たちが入り乱れ、大乱闘の如き戦いが続いていた。
 老いも若きも関係なく、果ては性別すらも関係がない。拳で叩き合う者、髪を、衣服を引っ張り合う者……枚挙に暇がない。
 それだけ多くの妖怪たちが、この喧嘩祭りに引き寄せられているのだ。明らかに異常な事態であった。
「どんどん集まって戦っておくれ。強い者こそが妾を娶るに相応しい強き者。強きものでなければ、妾を手に入れることなどできようはずもない。だから、戦って、戦って、戦い抜いて―――妾の元までやっておいで」
 その言葉は蠱惑的であり、なんとも魅力的な声色であった。
 喧嘩祭りの主催者である日本人形のような美しい女性の妖怪が微笑む度に、リングには熱気が渦巻く。

「楽しそうなことしてるね! 私も混ぜてよ……強ければ同性でも良いんだよね?」
 リングに空より舞い降り華麗なる立ち振舞で一気にリングの注目を集めるのは政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)であった。
 彼女の美しい姿は、別な意味でもひと目を引くのだろうが、今はそれよりもリングに充満するような妖気に当てられた妖怪たちは、主催者である女性妖怪に向いているようだった。
 彼女がわざと衆目を集めるように登場したのにはわけがある。
 そう、この騒動の黒幕―――おそらく主催者であろう妖怪の近くに行くためには、ワザと目立つように振る舞って印象に残るようにしたほうが良いだろうと判断したのだ。

 そして、彼女は最も自身が妖狐らしく派手にリングにいる妖怪たちを挑発する。
 愛想を振りまくようにして彼女は周囲にアピールする。しかし、それ以上にリングに新参者が現れれば、それまで争っていた手を止めてまで新参者へと集まってくるのが、この大乱闘に興じる妖怪たちの特徴であった。
「手荒なことはしたくはないのよね」
 発動するのは、ユーベルコード忍法・春眠香(ニンポウ・シュンミンコウ)。秘伝薬の香煙が放たれ、彼女を取り囲んだ妖怪たちを次々と眠りへと誘い鎮圧していく。
「今は曖昧なまま深い眠りに身を委ねて……」
 彼女の言葉に従うように次々と昏倒していく妖怪たち。
 それは曖昧な意識のままに暴れて無用な怪我をさせないように朱鞠が配慮した結果だった。

 暴れようとした妖怪たちは次々と彼女の手繰る打咎鞭『九尾〆下帯』によって引き寄せられ、抱きつくようにして拘束する。
「もう少しだけこのままで、ね?」
 拘束した妖怪たちは、打咎鞭による拘束から逃れることはできない。
 徐々に秘伝薬の香煙によって深く深く眠りへといざなわれていく。ただ、このままでは朱鞠の思惑がバレてしまうかもしれない。

「ちょっとだけ、ね」
 傍から見ればそれは首筋に噛み付くような攻撃に見えたかも知れない。意地悪げに笑ったのは、朱鞠もまたこれが時間稼ぎに過ぎないとわかっていたからだ。
 彼女の他にも猟兵達はいる。
 彼等が自由に動けるように彼女は時間を稼いでいるのだ。
 噛み付くような動きは、その実キスをする程度のものであり、朱鞠にとっては児戯のようなものであった。

 ユーベルコードによって眠らされた妖怪たちは眠っている間、大乱闘によって受けた怪我は徐々に回復していく。
 これでこの邪悪なる喧嘩祭りから開放されても、無辜の妖怪たちが徒に傷つけられたということはないだろう。
「ふふ、良い夢を、ね」
 そう優しく腕の中で眠る妖怪を抱いて、リングの外に運び出す。
 彼女の視線の先には、リングを見下ろす主催者にしてオブリビオンであろう日本人形のような女性妖怪。
 必ずや、この祭りを止めてみせる。
 そう決意して、朱鞠は新たに眠らせた妖怪たちを抱えるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

須藤・莉亜
「楽しそうな事してるなぁ。僕も混ぜて?」
とは言ったものの、最初は敵さんではないのか…。うん、テキトーに縛って投げよう。

血界形成のUCを発動し周囲の無機物を血に、更にそれを媒介に無数の鎖を作り出す。
んでもって、作った鎖で暴徒達を縛り、リングの外へぽーいする事にしよう。
悪魔の見えざる手には深紅を持たせて、同じように暴徒をぽいしてもらっとく。
鎖を掻い潜ってこっちに来るようなら、周囲を飛ばせておいたArgentaで死なせないように殴る。動きが止まれば、そのまま鎖で縛ってぽーい。

「あー、早く敵さん来ないかなぁ。」



 喧嘩祭りの祭囃子につられてやって来る妖怪たち。
 彼等は皆、乱闘騒ぎをひと目見ようとやってきたのだったが、祭り会場となったリングに近づくにつれて吸い寄せられるようにして次々とリングに上がっていく。
 そこに法則性はなく、老若男女問わず様々な妖怪たちがリングの中で大乱闘に興じているのだ。
 まるで理性的ではない。
 リングを満たす妖気に当てられているとしか思えない彼等の行動は、この喧嘩祭りがただの催しではなく、邪悪なる企みに寄って行なわれているものであると証明しているようなものであった。

「楽しそうな事してるなぁ。僕も混ぜて?」
 祭囃子につられてやってくるのは妖怪たちだけではない。猟兵の中にも、喧嘩祭りを楽しそうだと思う者もいるのだ。
 須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)はリングの中に飛び込んで周囲を見回す。彼の獲物はいつだって、彼の言うところの『敵さん』……つまりはオブリビオンである。
 しかし、リングの中に存在してるのはオブリビオンではなく妖怪たちだけである。
 新参者である莉亜を妖怪たちは目ざとく見つけると、彼に向かって集中的に襲いかかる。

「……数は多いし、敵さんではないし……うん、テキトーに縛って投げよう」
 喧嘩祭りに参加しているとはいえ、彼等は無辜なる妖怪たちである。徒に傷つけるのは得策ではないと莉亜は判断する。
「この場全てを血で満たす。吸血鬼冥利に尽きるってものだよ」
 ユーベルコード、血界形成(ケッカイケイセイ)。それは彼の周辺に在る無機物を、ありとあらゆるモノに変化する紅い血液へと変換する。
 生み出したのは無数の鎖。

「んでもって―――」
 莉亜目掛けて襲い来る妖怪たちを紅の鎖が瞬時に束縛する。次の瞬間、鎖は拘束した妖怪たちをリングの外に投げ飛ばしていく。
 このリングを包み込む妖気が、彼等妖怪の正気を奪っているのと言うのならば、このリングの外に放り出せば事足りるであろう。
 何も傷つけなくても良い。

 だが、それでも殺到する妖怪たち。
 数が尋常ではない。彼一人が如何に優れた猟兵であったとしても数の暴力の前では本気を出さざるを得ない。しかし、それは杞憂に終わる。
 契約者を護る透明な悪魔の両腕、悪魔の見えざる手によって手繰る紅の鎖が莉亜のカバーしきれぬ死角を護るように配置され、死角を無くす。
「はい、ぽいっと……それにしたって数が多すぎる。明らかに何かこう、妖怪を集めてなにかしようって魂胆でしょ、これ」
 次々と妖怪たちを紅の鎖がリングアウトさせていく。
 それでも鎖の包囲を突破してくる妖怪たちには銀の槍で死なせない程度に殴打して、またリングの外に放り投げる。

 もう流れ作業と言えば良いのか、なんなのかわからない状態になってきた莉亜は徐々に己の中にフラストレーションが溜まってくるような感覚を覚える。
 つまらない。
「あー、早く敵さん来ないかなぁ」
 早く、敵さんの、オブリビオンの血が飲みたい。抑え込んでいる吸血衝動がうずくような気がした―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒髪・名捨
〇心境
私のために争わないで―。ならぬ。
私のために争って―。かよ。

女ってこえーな。

〇暴徒をねじ伏せるなど、気絶させる

はぁ。なんつーか。熱気がアレだが…何とかするとしますか。

『ジャンプ』でリングインっと。あ、寧々はその辺で見てて…え?寝てる。
ああ、そう(悲しそう)


対戦相手の攻撃を『見切り』回避しつつ、首筋にトンと『気絶攻撃』いや、いっぺんやってみたかったんだよな首トン。

1人倒したら注意引いたみたいだな。
『頭突き』や『踏みつける』など、格闘で『吹き飛ばし』ていく。
当然、手加減コミコミで気絶させるが…
途中で面倒になってきたわ。
『範囲攻撃』+『催眠攻撃』で気絶させる。

アドリブ歓迎



 喧嘩祭りのリングは大いに盛り上がっていた。
 いや、盛り上がっていたというよりは、盛り上げさせられていたというのが正しいのかも知れない。
 一人の見目麗しい日本人形のような女性妖怪を巡る喧嘩祭り。普通であれば、適齢期の男性妖怪ばかりがリングにあがるはずなのだが、どういうわけか老若男女問わず妖怪たちがリングの中で大乱闘に興じていた。
「もっと、もっと、集まるといい。妾を手に入れたいと願うのならば、戦って己の強さを誇示しなければ」
 日本人形のような女性妖怪の言葉は蠱惑的であり、魅力的な声の響きであった。
 その言葉を聞いた妖怪たちはリングの中で一層猛るように乱闘に身を投じていく。明らかに正気を失っているとしか思えない。

「私のために争わないでー。ならぬ。私のために争ってー。かよ」
 黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は、喧嘩祭りの行なわれている会場のリングを見遣って、マジかよ、と呟いた。
 女ってこえーな。
 それが彼の正直な感想であった。一人の女性を巡って男性が戦いを繰り広げる。物語か御伽噺でしか見たことのないような光景。
 それをたった一人の女性妖怪が主催者として君臨しているのを見れば、尤もな感想であったのかもしれない。

「はぁ。なんつーか。熱気がアレだが……何とかするとしますか」
 名捨の身体が大きく跳躍して、リングの中へと飛び込む。
 その真っ黒な体躯は、摩訶不思議な容貌の妖怪たちの中でも一際目立つ存在であった。彼が大乱闘の新参者であることも手伝ってか、妖怪たちの視線は名捨に集中する。
 頭に乗せた喋る蛙の寧々は、このままで危ないのでと、そのへんで見ててもらおうと手を伸ばすと頭の上が定位置であった寧々はすでにリングローブの支柱の上で寝ているではないか。
「……ああ、そう」
 寝てる。いいんだけど。言葉に出さないけれど、とても悲しそうな雰囲気が漂うのは見て見ぬ振りをするのが情けであろうか。
 だが、名捨へと襲いかかってくる妖怪たちには、そんな機微を感じ取れるはずもない。情け無用の拳が名捨の頭へと放たれ、当たると思った次の瞬間、彼の姿はない。
 拳は空を切り、すれ違いざまに放った手刀が妖怪の首筋を叩き、どさりと倒れ伏す。

「いや、いっぺんやってみたかったんだよな首トン」
 それは神業の如き妙技であった。放たれた手刀は過たず妖怪の首筋……らしきところに命中し、その意識を刈り取る。らしきところと表現したのは、妖怪も人型ばかりではないから。おそらく首だろうという場所に当たりをつけて、首トンしたのだ。
 一人の妖怪を一瞬で昏倒させた名捨にさらなる視線が集中する。
「一人倒したら注意を引いたみたいだな……好都合……―――って、なんか面倒になりそうな数が来たな……」

 そこからはもう名捨の独壇場であった。
 迫る妖怪たちに頭突きや踏みつけ、さらには格闘術による吹き飛ばしや投げ飛ばし……それはもありとあらゆる手段でもって妖怪たちを手加減込で気絶させまくっていた。
 彼の周囲には妖怪たちが山のように積み上げられ、彼の技量の高さを物語る。
 だが、やっぱり面倒になってきたのか―――。

「―――面倒くさい」
 一瞬の出来事だった。
 何をしたのか誰もわからなかった。瞬きをした瞬間、名捨を取り囲んでいた妖怪たちが全て地面に倒れ伏していた。
 ふぅ、と名捨は息をつくと、リングロープの支柱ですやすや寝ている寧々に駆け寄る。
 もう終わったんだけど、そろそろ起きないか、と名捨は余裕で妖怪たちを大乱闘の渦中から気絶という手段でもって遠ざけたのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御形・菘
美女を巡ってのバトル! ドラマチックで実に良いではないか!
とはいえ盛り上がるのは当人たちの勝手であるが、それに気の無い赤の他人まで巻き込むのはよろしくないぞ?

さて、では満を持して真打の妾、推参! 堂々とリングインだ!
安心せい、まさか妾が一般人を傷つけることなど絶対に無いよ
まあキマフュではイキって仕掛けてくる輩も時々居るが…それはそれなりにな?

わざわざ殺気をぶつけて恫喝し戦意をへし折るとか、トラウマを与えるようなことも望まんよ
向かってきた者から掴み上げ、ガンガンリングの外へと放り投げていこう
頭を冷やして出直してこい!
はっはっは、そして妾に傷をつけることができるなら、誉れと誇るがよい!



 古今東西、あらゆる世界において美女とは、世の男性の争いの種である。
 カクリヨファンタズムにおいても、それは変わらぬ価値観の一つであったかも知れない。喧嘩祭りの祭囃子が騒々しく響き渡る。
 祭り会場となったリングには次々と妖怪たちが吸い寄せられるようにして集まってきては、老若男女問わず様々な妖怪たちが大乱闘の渦中へと飛び込んでいく。
 それはあまりにも異常なる光景であった。
 どれだけ絶世の美女であろうとも、老いも若きもどころではなく、性差すら関係がないというのは、それがまともな祭りであるとは到底思えなかった。

「美女を巡ってバトル! ドラマチックで実に良いではないか!」
 だが、逆にそんなシチュエーションに滾る想いを募らせる者もいる。
 御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)にとって、この祭りのシチュエーションは心躍るものであり、画面映えするものであると思えたからだ。
「とはいえ、盛り上がるのは当人たちの勝手であるが、それに気のない赤の他人まで巻き込むのはよろしくないぞ?」
 盛り上がるは大変結構である。菘だって自身の動画が盛り上がり、画面がコメントで賑わうのは歓迎すべきことである。
 だが、無関係の人間や妖怪を巻き込むのは本位ではない。

 だからこそ、菘はリングの中に満を持して真打ちとして堂々の入場を果たす。
 動画ではここで盛大な入場曲も流すことにしよう。そんなことを思いながらも、その邪神の堂々たる姿は、一気にリング内の視線を集めることになる。
「わかるぞ。妾の威容が気になるのは。だが安心せい、まさか妾が一般人を傷つけることなど絶対にないよ!」
 一般人というか一般妖怪……? 細かいことを気にする必要はない。今は暴徒と化した妖怪たちを鎮め、安全に彼等をリング外に出すことが先決である。
 まあ、キマイラフューチャーでは粋がって仕掛けてくる輩も時々居るが……それはそれなりにな? と意味深な表現もあったのだが……。

 そんなことはお構いなしと言わんばかりに妖怪たちが菘に殺到する。
「ふふん! 見せてやろう、妾の握手力を! そして喜んでくれ! これがファンミーティングの頂点よ!」
 そう、彼女にとってさっきをぶつけることも、恫喝することもトラウマを与えることも、全てが違うと感じることであった。
 なぜなら、それは彼女自身が望まぬことであった。殺到する妖怪たちは、動画への参加者であり、未来の動画視聴者である。
 そんな彼等に徒に心身共に傷を負わせるのは、菘にとってナンセンスである。

 向かってきた妖怪たちの手を掴んで持ち上げる。圧倒的な膂力。それを可能にするのが、ユーベルコード、アルティメット握手会(アルティメットアクシュカイ)である。ファンミーティングと彼女は表現した。
 それはまさしく正しく握手会であった。
 がっしりと掴んだ手。次の瞬間妖怪たちはリングの外に放り投げられる。妖気充満するリングの外に押し出せば、この狂乱状態から抜け出すことも出来るであろうと判断したのだ。
「頭を冷やして出直してこい!」
 次々と、ちぎっては投げを繰り返す。百人組手ならぬ百人握手会。これぞアルティメット!

 このような状態になった彼女を傷つけることは誰にも出来ない。
 彼女もまた妖怪たちを傷つけず、次々とリングアウトに持ち込む。これぞ強者であり、邪神たる彼女の戦いであり、圧倒的動画映えである。
「はっはっは、妾に傷をつけることができるなら、誉れと誇るがよい!」
 その言葉は自信満々に、高らかにリングに響き渡る。
 その宣言通り、彼女は誰からも。誰にも傷つけられることなく、妖怪たちをリングの外に放り投げる、アルティメット握手会を無事終えるのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒覇・蛟鬼
此の手の長々とした戦いは好みません。
私の流派は『短期決戦』、『一撃必殺』が正義なので。
そんなわけで、パッと行ってパッと行かせて貰いますか。
■行
【WIZ】
彼等は半分狂乱状態に陥ってるようですな。
では半分残った理性に語り掛け、無力化してますかな。
先ずはリングに上って【殺気】を解放し、その場にいる全員の
注目を此方に向けさせます。

其処から【残像】を伴う鋭い蹴り技を見せつけ『私に討たれる事を
お望みですね?』と告げて【恐怖を与え】、ゆっくり接近。
此処まですれば、自らリングから降りる者が現れるかと。

踏みとどまったり、向かってくる者がいたら手押し相撲の
ように両手でポンと押し出しましょう。

※アドリブ・連携歓迎



 喧嘩祭りの大乱闘は、猟兵たちの参戦に寄って収まるかに見えた。
 だが、逆にヒートアップするように次々とリングに妖怪たちが集まってくるではないか。カクリヨファンタズムにおいて猟兵は妖怪たちにとって、己たちの姿の見える人気者である。
 その猟兵達が喧嘩祭りのリングで戦っているという光景は、下手な見世物よりも妖怪を集める要因になったに違いない。
 近くによってしまえば、妖気に当てられ吸い込まれるようにリングの中に躍り出てしまう。
 これもまた、喧嘩祭りの主催者の思惑通りだというのであれば、それは恐るべき手腕であると言えるものであった。

「此の手の長々とした戦いは好みません」
 荒覇・蛟鬼(鬼竜・f28005)にとって、今目の前で行なわれている喧嘩祭りの大乱闘の光景は好ましいものではなかったようだった。
 長々と続き、決着の見えない戦い。勝者も敗者もない。倒れ伏して、また立ち上がればおそらく彼等は死ぬまで戦い続けるだろう。
 見て分かるほどにリングに立ち込める妖気は、戦いを強要させるものであったのかもしれない。
「私の流派は『短期決戦』、『一撃必殺』が正義なので。そんなわけで、パッと行ってパッと行かせて貰いますか」

 そう言ってリングへと駆け出す。ロープを足場に大きく跳躍してリングの中央へと躍り出る蛟鬼。
 必然、周囲の妖怪たちの視線は蛟鬼へと集中する。
 そうでなくても、この妖気に当てられた妖怪たちは皆、新参者を集中的に狙うようであった。それは今まで眺めてきた中でわかっている。
 この大乱闘は勝者を決める戦いではない。敗者ばかりを並べ立て、山積するための催しでしかないのだ。
「ふむ、彼等は半狂乱状態に陷ってるようですな」
 妖怪たちの瞳に正気の光は宿っていない。それだけこの妖気の強烈さが鮮烈なのだろう。一気に己の身から放つ殺気を開放する。
 噴出する殺気は、妖怪たちの感覚にダイレクトに訴えかけるものであった。

「では半分残った理性……すなわち、恐怖を感じる正気に訴えるとしましょう」
 そこからは凄まじい速度であった。
 駆け抜ける姿は残像を残すほどであり、その殆どが妖怪たちの視界を眩ませる。あ、と思った次の瞬間には妖怪たちがバタバタと倒れ伏す。
 その恐ろしくも凄まじい技の冴え渡る蹴撃を見せつけるのだ。
「私に討たれる事をお望みですね?」
 それは恐怖を与えるには十分なものであった。けれど、それでもリングに充満した妖気が後退を許さない。
 それでも向かってくる妖怪たちが後を断たないのだ。

 蛟鬼は軽くため息をつく。
 妖気に当てられているとは言え、これだけの技を見て踏みとどまり向かってくる者がいるという事実にはカクリヨファンタズムもまだ捨てたものではないと思ったかも知れない。
 本来であれば、向かって来るものにはそれ相応の技で答えるのだが、それでも彼等は被害者のようなものだ。
 手押し相撲の要領で次々と両手でリングの外へと妖怪たちを押し出していく

「最初からこうすればよかったやもしれませぬな」
 リングの外に出れば妖気も影響を与えづらいだろう。リングの中での記憶が残っているかどうかは定かではないが、再びリングに戻ろうとする者がいないことを考えるに、己の放った技は無駄ではなかったことがわかる。

 次々と蛟鬼は妖怪たちをリングの外に押し出していく。
 周囲に集まって来ている妖怪たちも数を減らしている。このまま、この大乱闘が収まってくれれば、後は控えるオブリビオンたちだけである―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
老若男女問わず仲の良い男女の妖怪が喧嘩別れをし、夫婦の妖怪が口論の末に絶縁…
男性は皆リングに上がり、怒り心頭の女性もやがてリングへ……

控えめに言って、地獄絵図です

男女の仲を邪な方法で裂くなど騎士として言語道断!(拳プルプル)
なんとしてでも早急に対処し悲劇に終止符を打たねばなりません

侵入すれば集中攻撃されるようですが好都合
彼我の実力差も把握出来ぬ精神状態ならばこちらの行動誘導も容易です

センサーでの●情報収集で包囲を把握
敵集団の行動を誘導し●見切り攻撃を掻い潜り、制御した●怪力での投げ飛ばしや足払いでリングの外へ
女子供を外に出す際は厳に●優しくしなければ…

幼子まで巻き込むとは…
絶対に許しはしません



 喧嘩祭りのリングは、見るに耐えない光景が広がっているように、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は思えてならなかった。
 祭囃子に引き寄せられ、リングに近づけば妖気に当てられて老若男女問わずリングの中の大乱闘へと興じる。
 この大乱闘の末に仲の良い男女の妖怪が喧嘩別れをし、夫婦の妖怪が口論の末に絶縁……男性は皆リングに上がり、怒り心頭の女性もやがてリングへ……。
「控えめに言って、地獄絵図です」
 トリテレイアは機械騎士であり、ウォーマシンである。それ故に感情のもつれをほぐす術を持たないのかもしれない。
 一度破綻してしまった感情を再度同じものへと作り上げることは困難であり、不可能であるのではないかと思うほどであった。

 だからこそ、トリテレイアの拳は握りしめられ、ぷるぷると震えていた。
「男女の仲を邪な方法で裂くなど騎士として言語道断!」
 怒りに震えるトリテレイアの装甲がガチャガチャと音を立てる。それほどまでに彼の電脳の中にある騎士道精神とは相容れぬ光景であったのだ。
 どれだけ見目麗しい女性がいようとも、その誘惑をはねのけてこそ騎士であろう。そう彼の中の騎士道物語は叫ぶようであった。
「なんとしてでも早急に対処し、悲劇に終止符を討たねばなりません」

 その言葉とともにトリテレイアの巨躯がリングへと躍り出る。
 新参者を集中的に狙うというのは、先の猟兵たちの活躍でわかっていた。ならば、それを逆手に取って有効活用するのだ。
「彼我の実力差も把握出来ぬ精神状態ならば、こちらの行動誘導も容易です」
 アイセンサーが輝く。
 トリテレイアを取り囲む妖怪たちは様々である。本当に老若男女問わず、トリテレイアを取り囲んでいるのだ。

「操り糸はありませんが、鋼の人形劇を披露させて頂きます」
 一斉に妖怪たちがトリテレイアを襲う。
 刹那、彼のユーベルコードが輝く。機械騎士の傀儡舞(マシンナイツ・パペットダンス)、それは超常の域に達した予測演算と戦闘技術の粋を集めた、彼の電脳が導き出す精密攻撃。
 妖怪の集団を牽引し、繰り出される攻撃の尽くを紙一重で掻い潜る。ジェネレーターの出力をしぼりながら絶妙なる力加減で妖怪たちを怪力による投げ飛ばしでリングの外へ放り投げるのだ。

「―――む」
 そのアイセンサーが捉えるのは女性妖怪や子供の妖怪。彼女たちを傷つけるのは彼の騎士道精神が許さない。厳に。厳に。そう己に言い聞かせるようにトリテレイアのマニュピレーターやマッスルシリンダーが駆動する。
 優しくしなければ……その思いが彼のユーベルコードをさらに輝かせる。肉体を傷つけずに、彼等をリングの外へと放出するのだ。

 一瞬の攻防。されど、トリテレイアには永遠にも思えた精密動作。
 ぎちぎちと機体が軋む。
 それは異常動作ではあったが、己の電脳が怒りに震えているのだとトリテレイアは理解できたであろうか。
「幼子まで巻き込むとは……」
 アイセンサーが揺らめくように輝く。
 それは苛立ちか怒りか。どちらにしても、彼の電脳がアラートを刻む。
 だが、それを意図的に無視してトリテレイアはアイセンサーを輝かせ―――。

「絶対に許しはしません」
 この喧嘩祭りを主催したオブリビオンの目的がなんであれ、トリテレイアのやるべきことは此処に定まったのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『雷獣古桜』

POW   :    桜の枝の先には、桜の樹の下には
【首吊り紐や短刀】で武装した【呪われた自決者】の幽霊をレベル×5体乗せた【妖怪桜】を召喚する。
SPD   :    紫電一閃
自身の【雷光】が輝く間、【雷獣が変化した片刃剣】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    桜の癒やし・狂い花
【心地よい電流を帯びた桜の花吹雪】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。

イラスト:ekm

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 喧嘩祭りの会場であるリングから全ての妖怪たちをはじき出した猟兵達。
 ひとまず彼等の目的である妖気に当てられ、リングで大乱闘を行っていた妖怪たちの救出は相成った。
「見事にございます。真に強き者。これなる者たちは、まさしく姫様の伴侶となられるに値する者たち」
 どこか芝居がかった口調で女武芸者たちがリングに飛び込んでくる。
 彼女たちを見て猟兵達は直感で理解する。

 ―――オブリビオンであると。

 妖怪を飲み込んだ骸魂がオブリビオン化した存在『雷獣古桜』。
 古き桜の樹霊を飲み込んだ雷獣の骸魂が姿を変じた存在。本来であれば、人の行く末を見守り守護する存在であった桜の樹霊たち。
 けれどオブリビオン化した彼女たちは違う。
 守護するは主たるオブリビオン。そう、この祭りの主催者である日本人形のような見目麗しい女性妖怪だ。

「さあ、第一の試練。大乱闘を勝ち抜けた者たちに喝采を、そしてさらなる試練を―――。姫への愛、その行く末を見守るために我等と切り結びましょう」
 女武芸者たちが一斉に刀を構える。

 だが、一方で猟兵たちにも変化が訪れる。
 此の場に満ちた妖気が増している。先程までは妖怪たちが当てられていた妖気が猟兵たちにもまた弊害をもたらそうとしていた。

 心の内より湧き上がってくる感情。
 それは、あの主催者たる日本人形のような見目麗しい女性妖怪を娶りたいという感情。これが今まで妖怪たちを煽っていた原因なのだ。
 この感情にあらがっていては、猟兵も十全に力を発揮できない。思うままに感情を発露させ、群体オブリビオン『雷獣古桜』を討ち果たさなければならないのだ―――!
黒髪・名捨
〇心境

また面倒な能力を…。
え、寧々。浮気…いや、そんなこと言ってもなぁ(化術で美少女に変化した寧々に「踏みつけ」られつつ。)

〇行動

はあ、これ以上拗ねられると後が面倒なんだ。
やめて欲しい。切実に…。あと(ちらっと主催者をみて)
あのタイプは趣味じゃないです。心の底からごめんなさい(真顔で謝罪)

〇戦闘

幽霊の群かぁ。
寧々が見てるし頑張る。

女妖怪の呼びだした幽霊を『破魔』+『神罰』の『衝撃波』を『範囲攻撃』で放ってまとめて『吹き飛ばし』して女に接近するな。

よし間合いを取ったぞ。この距離は俺の距離だ。
全力の『覇気』を込めた『頭突き』で神砕で邪心…骸魂を砕くぞ。

なあ、寧々…いい加減機嫌を直してくれよ。



 桜吹雪が舞い散るリングに妖気が充満していく。
 それは対峙するオブリビオン『雷獣古桜』のユーベルコードによるものではなかった。今まで大乱闘を繰り広げていた妖怪たちを狂わせた妖気の濃度が上がったのだ。
 今まで猟兵には効果のなかった妖気であるが、ここにきて濃度が上がったことに寄ってついに猟兵にまで効果を及ぼし始めたのだ。
 喧嘩祭りの主催者―――その見目麗しい日本人形のような女性妖怪を眼にして、彼女を欲しない者は居ない。そう思えるほどに圧倒的なる感情の洪水が猟兵の心の内より湧き出てしまっているのだ。

「また面倒な能力を……」
 黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は嘆息する。……するのだが、どうしても視線は主催者である女性妖怪を追ってしまう。
 それを見ていた今まで眠りこけけていた喋る蛙『寧々』の視線が名捨の後頭部に突き刺さる。それはもう盛大にぶっ刺さった。
「え、寧々。浮気…いや、そんなこと―――」
 言ってもなぁ、とは言葉を紡げなかった。背後から思いっきり踏みつけられたからだ。誰に? オブリビオンに? 否。化術にて美少女に变化した寧々に踏みつけられたのだ。
 ひとしきり寧々はぐりぐりと名捨を踏みつけてから、どろんと变化を解いて再びリングロープの支柱に戻って眠る。時折薄眼が開いて名捨をじろりと見ているような気がする。

「さあ、強者よ。己が最強を持って、我等に姫への愛を示してもらいましょう」
 迫る『雷獣古桜』たち。
 女武芸者たる彼女たちが召喚したのは、首吊り紐や短刀を手にした自決者たち。それらがわらわらと名捨へと迫るのだ。
「はあ、これ以上拗ねられると痕が面倒なんだ。やめて欲しい。切実に……」
 なんて面倒なことをしてくれたんだと名捨は内心憤慨しているのだが、そんな暇はない。
 召喚された自決者達が各々持つ武器や縄を持って襲いかかってくるのだ。
 だが、名捨は慌てない。破魔の力宿りし神罰籠めた衝撃波を、襲い来る自決者達目掛けて打ち出す。
 その一撃は一斉に自決者達を吹き飛ばし、『雷獣古桜』たちへの活路を開く。

 寧々が見ているし頑張る。
 名捨の心の中に在ったのは、それだけであった。というか、違う。自分のタイプは主催者のような女性ではないのだ。
 ほんとあのタイプは趣味じゃないです。心の底からごめんなさい、と真顔で謝罪する始末である。

「間合いを取ったぞ……この距離は俺の距離だ」
 名捨のユーベルコード、神砕(シンサイ)が炸裂する。それは名捨の美徳と気合を籠めた覇気による頭突きの一撃。
 せまった『雷獣古桜』の邪心、その骸魂を砕く一撃は、彼女たちを飲み込んだ骸魂、雷獣だけを見事に砕き霧散させる。
 群体とはいえ、元は無辜の妖怪である。雷獣の骸魂から開放された彼女たちを抱えてリングの外に運び出す際、またもや半目の寧々と視線がかち合う。

「なあ、寧々……いい加減機嫌を直してくれよ……」
 そう言って詫びる名捨。
 寧々の返答は如何なるものであったのか。果たして機嫌は直ったのか。むしろ、何でご機嫌を取れば良いのかわからないまま、半目の寧々にじとっとした眼でしばらく名捨は見つめられるのであった―――。

成功 🔵​🔵​🔴​

村崎・ゆかり
ああ、あの妖怪をあたしのものにしたい。閨で、アヤメと一緒に愛欲の限りを尽くしたいわ。
そのためには、あなたたちが邪魔ね。きちんと戦う相手を見定めて、間違っても仲間の猟兵は攻撃しないように。

亡霊の始末なら任せてちょうだい。「除霊」「破魔」「範囲攻撃」の不動明王火界咒。
これで霊的レベルから亡霊を解体してあげるわ。
亡霊たちを火界咒で牽制しつつ、武芸者へと相対する。
剣の外の薙刀の間合いで立ち会い、「なぎ払い」と「串刺し」で体力を削っていくわ。
幻朧桜じゃあるまいし、桜はもう散る季節よ。
最後は武芸者も火界咒の炎に飲み込ませて、焼き払う。

さあ、二番目の試練もくぐり抜けたわよ。これであなたはあたしのものよね?



 こみ上げてくる感情を抑えてしまえば、十全たる力を発揮できない。
 それは正しい認識である。オブリビオンと対峙する以上、十全たる力を発揮できないのは猟兵としては致命的である。
 故に、この心の中に渦巻く感情は何一つ間違っておらず―――。

「ああ、あの妖怪をあたしのものにしたい。閨で、アヤメと一緒に愛欲の限りを尽くしたいわ」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)の感情は爆発していた。アヤメがジトっとした視線を送っていたが、彼女とて式神であり従者であり恋人である。
 主人たるゆかりがなんらかの妖気の影響を受けているのはわかっていたからこそ、何も言えないのだが、それはそれである。複雑な乙女心というやつである。
 オブリビオンに対して奮起する主人に何が言えるだろうか。もはや、野暮である。

「そのためには、あなたたちが邪魔ね」
 ゆかりの紫の瞳が群体オブリビオンである『雷獣古桜』を捉える。
 彼女たちは一斉に首吊り紐や短刀で武装した呪われし自決者達を召喚する。群体である強みを最大限に生かした戦い方。質で勝る猟兵を数で圧する。
 いつもどおりの戦法であるとも言えるし、それはもう使い古された戦い方でも在るとゆかりは心得ていた。
 それ以上に心に渦巻く感情を発露しなければ、どうにかなりそうだった。きちんと戦う相手を見定めなければ、この感情のままに仲間である猟兵まで攻撃しかねない。きちんとわきまえるだけの自制心は残っているのだ。

「亡霊の始末なら任せて頂戴!」
 ユーベルコード、不動明王火界咒(フドウミョウオウカカイジュ)によって投げつけられた白紙のトランプから噴出した炎が、亡霊たちを打ち払う。
 その炎は除霊、破魔の力が籠められており、亡霊である以上、この清めの炎に抗う術などない。
 ここに数で圧する戦いをしようとした群体オブリビオンたちの目論見は水泡に帰したのだ。解体されるように呪われし自決者たちが浄化されて消えていく。

 その炎は呪われし自決者たちを打ち払い、その召喚主である群体オブリビオン『雷獣古桜』とを隔てていた道を切り開く。
 一気呵成に駆け抜けるゆかりの瞳は、紫に爛々と輝いていた。
 目は冴え渡り、その力は一騎当千の如く。振るわれた剣を躱し、距離をとっては薙刀の間合いでのみ戦う。切り結ぶことすらさせてもらえずに群体オブリビオンである女武芸者たる『雷樹古桜』は、薙刀の一刀の元に霧散する他ない。
「幻朧桜じゃあるまいし、桜はもう散る季節よ」
 薙刀で体力を削りきった後は、再び噴出した不動明王火界咒の炎によって骸魂は浄化され、消えていく。

 桜の樹霊を飲み込んだ骸魂が消え失せれば、後に残るのは飲み込まれた妖怪だけだ。彼女たちをアヤメに任せ、ゆかりは見据える。
 主催者たる見目麗しい日本人形のような女性の妖怪を。

 この感情の爆発的な高まり。もうどうにもならないと感じる。
 その心のままに彼女は言葉を発するのだ。
「さあ、二番目の試練もくぐり抜けたわよ。これであなたはあたしのものよね?」
 爛々と輝く紫の瞳は、射抜くように主催者でありオブリビオンである女性妖怪を捉えた。
 だが、妖気が徐々に薄まってきたのか……冷静れになれば余計にアヤメのジト目が気になってしまうゆかりなのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

政木・朱鞠
なんて厄介な毒気なの…偽りの『愛情』ってわかっていても、抗いながら戦い抜くってのは無理かもね…。
この高まったあの妖怪を欲してしまう戸惑いを解消するために八つ当たりみたいで申し訳ないけど、さっさと君達にはオヤスミナサイして貰うんだよ…。

【SPD】
相手は多勢…手数で押し負けないようにしないとね。
牽制として『忍法・狐龍変化身』を使用して仮初めだけど真の姿の足部分を再現して機動力に特化した状態で翻弄しながら隙を狙い蹴り技での戦法を取ろうかな。
機を見て拷問具『荊野鎖』で【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の技能を使い雷獣古桜たちの体に鎖を絡めて【傷口をえぐる】で絞め潰す様にダメージを与えたいね。

アドリブ連帯歓迎



 喧嘩祭りの大乱闘騒ぎは一応の終息を見せた。
 だが、未だ妖気はリングの中に立ち込めており、次なるオブリビオンが猟兵たちを迎え討つ。一斉に現れたのは女武芸者の出で立ちをしたオブリビオン『雷獣古桜』。
 手にした太刀に紫電宿り、次々と猟兵達に襲いかからんとしている。

 それだけであれば歴戦の猟兵たちも苦戦することはない。だが、このリングの中を覆い尽くさんほどに立ち込める妖気の濃さが先程とは打って変わって濃くなっているのだ。
 体の内側から溢れ出るような感情。
 あの日本人形のような見目麗しい女性の妖怪を娶りたい。己のものにしたい。その欲求が次から次へと溢れてくるのだ。
 これが先程の妖怪たちを狂わせていたものなのだろう。
「なんて厄介な毒気なの……偽りの『愛情』ってわかっていても、抗いながら戦い抜くってのは無理かもね……」
 政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)は、己の体の内側から湧き上がる感情に戸惑いながらも、紫電帯びた『雷獣古桜』の放つ斬撃を防いでいた。
 一撃を防いだとしても、次々と襲い来る斬撃。
 相手は多勢である。手数で押し負けてしまっては、元も子もない。

「この高まったあの妖怪を欲してしまう戸惑いを解消するために、八つ当たりみたいで申し訳ないけど……! さっさと君達にはオヤスミナサイして貰うんだよ……抑えし我が狐龍の力…制御拘束術第壱式にて…強制解放!」
 ユーベルコード、忍法・狐龍変化身(ニンポウ・コリュウヘンゲシン)によって、彼女の脚部が仮初めではるが真の姿へと変異する。
 この状態になった彼女は機動力に特化した状態である。どれだけ多数の『雷獣古桜』が圧倒的な速度で斬撃を放つのだとしても、今の彼女を捉えることは不可能である。

 紫電よりも素早い朱鞠の姿は閃光のようであった。
 リングの中を駆け回り、時にロープを使っては変幻自在なる軌道でもってオブリビオンたちを翻弄する。
 蔓薔薇の如きスパイクの付いた拷問具『荊野鎖』を振り、一瞬で彼女たちをオブリビオン足らしめている骸魂を霧散させる。
「ほんと―――八つ当たりみたいでごめんね」
 次々と蔓薔薇が舞うように拷問具『荊野鎖』が撓り、オブリビオンたちを打倒していく。
 桜の花を散らすように、次々と骸魂である『雷獣』が剥がれ落ち、飲み込まれた妖怪である桜の樹霊たちが開放されていく。

 彼女たちをリングの外に解放しながら、朱鞠はリングの中を駆け巡る。
 その身の内に貯まりゆく欲求を発散させるように、彼女の圧倒的な機動力を生かした戦いはリングに美しい華として咲き誇るのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

須藤・莉亜
「なるほど、美味しそうな血を手に入れるには、まず君らを殺らないとダメな感じか。」
本命の前に一仕事といこう。それに障害が多いほど、手に入れた時は嬉しいらしいしね。

寿命を代償に、時喰らいのUCを発動。敵さんの動きを遅くし、一気に攻める。
僕は二振りの大鎌で敵さんらの動きを見切りながら斬り刻みつつ、たまに強欲髪で敵さんを拘束し、噛み付いて吸血。いっぱいいるし、一体くらいは吸い尽くして殺すのも面白いかな?味も気になるし。
奇剣とLadyを持たせた悪魔の見えざる手には、そんな僕をフォローしてもらっとこう。

「僕の飢えを満たしてくれそうなお嫁さんは欲しいねぇ。」
吸い尽くして、すぐ僕にバツがついちゃいそうだけど。



 喧嘩祭りの会場となったリングには、今や猟兵とオブリビオンしか存在していなかった。この祭りに参加していた妖怪たちは全て猟兵がリングの外に開放し、妖気に当てられぬように助け出していた。
 その甲斐があり、今猟兵達は遠慮なくリングの上で戦うことが出来るのだが……。
 今やリングの中は妖気がさらに濃厚になっている。先程までは感じなかった、あの主催者である見目麗しい日本人形のような女性の妖怪を欲する感情が胸の内側から、次々と溢れ出てくるのだ。
 意識していなくても心の中を埋め尽くしていく女性妖怪への想い。
 ほしいと思ってしまう。何をおいてもほしいと。

 それは偽りの感情であることを猟兵達は理解している。けれど、この妖気は猟兵たちの行動を阻害する。
「なるほど、美味しそうな血を手に入れるには、まず君らを殺らないとダメな感じか」
 須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)が対峙するのは女武芸者然としたオブリビオン『雷獣古桜』たち。彼女たちは紫電まとう斬撃を繰り出し、莉亜を追い詰めんとする。
 数が多い上に紫電まとう斬撃の攻撃の速度は上がる一方である。このままで押し切られてしまうかも知れない。

 だが、彼にとってこの程度の状況は窮地のうちには入らない。それどころか―――。
「本命の前に一仕事といこう。障害が多いほど、手に入れた時は嬉しいらしいしね」
 群れ成す『雷獣古桜』たちをして、ただの障害程度にしか認識していない。
 紫電がほとばしり、斬撃が舞う。しかし、先程から攻撃が一度も莉亜を捉えることはない。それどころか、かすりもしないのだ。
 何故だ、と気がついた時にはもう遅い。彼の瞳が輝いている。
 それはユーベルコード、時喰らい(タイムイーター)。彼に対峙するオブリビオンの行動速度を9分の1にしてしまう恐るべきユーベルコードである。

「時間なんて食べても美味しくはないんだけどね……けど、一気に攻めさせてもらうよ」
 手にした二振りの大鎌が瞬時にオブリビオンの動きを見切り、切り刻む。大鎌の振りは大きいが薙ぎ払う対象の多い集団戦においては絶大なる力を発揮する。
 さらに大ぶりの一撃の隙を付いてオブリビオンが襲いかかるが、莉亜に死角はない。強欲髪と呼ばれる変幻自在なる髪が絡みつき、オブリビオンの血を奪いさる。

「いっぱい居るし、一体くらいは吸い尽くしてもいいかな? あ、そっかカクリヨファンタズムのオブリビオンって―――」
 悪魔の見えざる手が構える奇剣とLadyと呼ばれる対物ライフルが火を噴く。
 味が気になるとオブリビオンの血を吸おうとしたのだが、なにせ数が多い。それ以上に彼の手数のほうが今は多いのだ。なにせ敵の速度は9分の1。だが、こちらの攻撃回数は9倍である。

 だが、血液を啜ろうとして止まる。
「―――元は妖怪なんだっけ。骸魂に飲み込まれただけ……か。吸い殺しちゃうのはダメだね」
 それにこの吸血衝動は本命に取っておいた方が良さそうだ。
 笑いながら、莉亜は骸魂霧散した桜の樹霊たちをリングの外に放り出す。これで本命のオブリビオンがやってきても遠慮なく戦えるというものだ。
 ああ、それにしても。

「僕の飢えを満たしてくれそうなお嫁さんは欲しいよねぇ」
 けど、どうだろう、と莉亜は思う。
 そんなお嫁さんがいたとしても、吸い尽くしてすぐに彼にバツが付いてしまうことだろう。
 それを思えば、吸血衝動はオブリビオンだけにとどめておいた方がいい。そう思いながらオブリビオンを次々と霧散させていくのだった―――。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
(プレイングボーナス放棄)

愛?
徒に他者の精神を弄び、災い撒き散らすモノへ告げる口など持ち合わせておりません
貴方達も姫君も討つには変わりなし
骸魂として骸の海に還り、妖怪達を解放していただきます

妖気と感情の重圧にUCでの限界突破で対抗

あまり侮らないでもらいたいものです!

幽霊達を格納銃器の●なぎ払い掃射で攻撃
近寄るものは振るう剣と盾で一掃しながら接近
敵集団の間隙を●見切り妖怪桜へワイヤーアンカー射出
●ロープワークとUCの●怪力で引き抜き、雷獣古桜集団へ鉄球宜しく振り回し一掃

絶世の美女であろうと、化け物であろうと…
悪意を撒くならば同じこと

雷獣の剣を拾い見下ろす『姫』へ●投擲
(弾かれる等お任せ)

御覚悟を



 それは唾棄すべきものであった。
 オブリビオンの語る言葉は偽りに満ちていると感じた。次に感じたのは己の理想であった。騎士として相応しいと判断した行い。それに殉じる。
 どれだけの不利を被ろうとも、その機体は燃えるように出力を上げていく。
 ―――機械人形は守護騎士たらんと希う(オース・オブ・マシンナイツ)。

「御伽噺に謳われる騎士達よ。鋼の我が身、災禍を払う守護の盾と成ることをここに誓う」
 その言葉は宣誓。
 実を内側から焦がすほとどの熱量を放つのは、主催者たる日本人形のような女性妖怪を欲するからではない。
 あったのは己の矜持のみ。トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、湧き上がる感情すべてに抵抗していた。
 偽りであろうと、一時であろうと、その感情に身を浸すことなど言語道断である。
「愛? 徒に他者の精神を弄び、災いを撒き散らすモノへ告げる口など持ち合わせてはおりません」
 剣と大盾を構える。
 対峙するオブリビオン『雷獣古桜』が召喚した呪われし自決者たちが雪崩にようにトリテレイアを襲う。やるべきことは変わっていない。どれだけの感情の波が己を襲おうとも、もはやトリテレイアが揺らぐことはない。

「貴方達も姫君も討つには変わりなし……骸魂として骸の海に還り、妖怪たちを開放していただきます」
 格納銃器が火を噴く。銃撃は凄まじく、まさしく薙ぎ払わん勢いで呪われし自決者たちを討ち果たしていく。彼等の一人たりとてトリテレイアに辿り着くことは叶わなかった。
 数で圧する。
 その目論見は、ユーベルコードによって身体能力の増大したトリテレイアには通用するはずがないのだ。

「あまあり侮らないでもらいたいものです!」
 一瞬の間隙。自決者たちの波が割れた瞬間、その隙間を縫うようにしてワイヤーアンカーが『雷獣古桜』へと放たれる。
 強化された出力のままにオブリビオンを引き寄せ、オブリビオンが鉄球そのものであると言わんばかりに振り回し、彼女たちをなぎ倒す。
 普段のトリテレイアの出力であれば、可能であったかどうかわからない。可能であったとしても、ここまで絶大なる力を発揮できなかったかもしれない。

 けれど、トリテレイアのアイセンサーが力強く輝く。
「絶世の美女であろうと、バケ斧であろうと……悪意を撒くならば同じこと」
 次々と霧散し骸の海へと還っていく『雷獣古桜』たち。その取り落した太刀を拾い上げ、トリテレイアはリングの外から、此処を見下ろす主催者たる日本人形のような女性妖怪へと投げつける。

 鈍い音がして、その太刀が弾かれる。
 日本人形のような女性妖怪を護るように紅い塊のような影が弾いたのだ。
「―――……なるほど。ならば、御覚悟を」
 アイセンサーがそれを捉えた瞬間、トリテレイアは悟る。
 この祭りを主催した意図。
 勝者のでない大乱闘。
 勝ち抜けした者たちをさらに披露させるオブリビオンたち。

 これは美しき姫を娶るための戦いではない。それに気がついたのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御形・菘
はっはっは、喝采に試練! 実に妾好みのイイ展開ではないか!
素晴らしいバトルを繰り広げてナイスな景品が与えられるならば、超頑張るしかあるまい!

さて、ビジュアルが少々アレな者たちは結構どーでもよい!
今、大切なのは桜の方だ!
右手で、眼前の空間をコンコンコンっと
はーっはっはっは! 更に世界へ彩りを与えてやろう!
…妾はちゃんと弁えておるのでな
桜はエモいが、妾とシステム・フラワーズの領分ではない!
なので、下萌えの草花を整えれば十分よ!

ボコる前に言っておくが、妾が刀や短刀を警戒してガードを固めるなどと考えてくれるなよ?
一撃必殺は妾の拳の方だ!
攻撃力のブチ上がった左腕の前に、エモくド派手にブッ飛ぶがよい!



 喧嘩祭りの会場たるリングには妖気が充満していた。
 それは大乱闘の最中以上の濃度で満たされ、猟兵達は心の中より湧き上がってくる感情に戸惑いながらも戦い続ける。
 オブリビオンである『雷獣古桜』たちがリングをとろこ狭しと駆け抜け、呼び出す呪われし自決者達が雪崩にように猟兵たちを襲う。
「喝采を。強き者たちに喝采を。けれど、姫を娶るには、さらなる試練を与えましょう」
 その言葉は大合唱のように女武芸者然とした『雷獣古桜』たちから放たれる。
 リングの中は、またも大乱闘のように混沌の極みに達しようとしていた。猟兵達が戦い、舞う姿はもしも動画で撮ったのならば、大変にエモーショナルなことになったのは疑いようもない。

 だが、最もこの場でエモいのは―――。
「はっはっは、喝采に試練! 実に妾好みのイイ展開ではないか!」
 御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)である。彼女にとって、この展開は好ましいものであった。大乱闘の末、さらに襲い来る試練たるオブリビオン。
 この戦いの末に見目麗しい日本人形のような女性妖怪を娶ることができる。それは動画を視聴する者達にとっても、菘にとっても、撮れ高抜群のエモーショナルな動画が撮れる絶好の機会なのだ。
「素晴らしいバトルを繰り広げナイスな景品が与えられるならば、超頑張るしかあるまい!」
 思わず左腕に力が籠もる。腕が鳴るとは、この事であると言わんばかりに高く掲げられた左腕。それは戦いの開始を告げる合図のようでもあり、オブリビオンたちの注目を集めるには十分なものであった。

 一斉に駆け出すオブリビオン『雷獣古桜』たち。女武芸者然とした彼女たちが呼び出すのは、呪われし自決者たち。彼等は首吊紐や短刀を手に次々と菘を襲わんと雪崩込んでくる。
「さて、ビジュアルが少々アレな者たちは結構どーでもよい!」
 その左腕で一気に呪われし自決者たちを薙ぎ払う。哀れなる自決者たちの姿は画面映しないのだ。
「今、大切なのは桜の方だ!」
 右手で眼前の空間をコンコンコン。それは異世界であるキマイラフューチャーに馴染み在る者であれば誰しもが知る動作であった。
 通称コンコンコン。システム・フワラーズ。その力を一時的に借りて、戦場を花々が咲き乱れるエモい空間に変えるユーベルコード。
 その名も―――!

 落花狼藉・散華世界(イキナリクライマックスバトル)!
「はーっはっはっは! 更に世界へ彩りを与えてやろう!」
 周囲に咲き乱れるは下萌えの草花。冬の枯れ土より芽吹く春の息吹たる花々が地面いっぱいに広がる。それはオブリビオン『雷鳴古桜』たちの放つ花吹雪と同じ春の美しさを象徴するような世界だった。
「……妾はちゃんとわきまえておるのでな。桜はエモいが、妾とシステム・フラワーズの領分ではない!」
 なので、これで十分よ! と菘の右手と左腕が広げられる。この光景、まさに人々の瞳を魅了する画面であろうと!
 この光景、演出の素晴らしさを前にすれば、この身から湧き上がってくる偽りの衝動など無意味である。

「ボコる前に言っておくが、妾が刀や短刀を警戒してガードを固めるなどと考えてくれるなよ?」
 菘の体からこみ上げてくるのは、偽りの衝動ではなく、己の生み出した画面映えの素晴らしさに感動する情動。いつでもどこもでも、いかなる時でも、彼女が考えるのは画面映えである。
 この美しい光景の中でバトル! その感動を受けて彼女の攻撃能力はうなぎのぼりどころではない。天に駆け上がる竜の如し!

「一撃必殺は妾の拳の方だ!」
 握りしめられた左腕。その異形にして巨大。偉業にして強大なる拳を持って、オブリビオンを討ち果たすのだ。
 振るわれた拳はまさしく一撃必殺。打ち据えられたオブリビオン『雷獣古桜』の身体が吹き飛び、骸魂が霧散していく。リングの外へと放り出される骸魂『雷獣』から解き放たれた『桜の樹霊』。
 ふむ、と菘は満足げにうなずく。
「―――これならば、妖怪を解放しながらエモくド派手にぶっ飛ばせる……ならば、疾くブッ飛ぶがよい!」

 百花繚乱、花々の花弁舞い散る世界に菘の拳が唸りを上げるのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『口寄せの篝火』

POW   :    甘美な夢現
【対象が魅力的と感じる声で囁く言霊】が命中した対象に対し、高威力高命中の【対象の精神と肉体を浸食する炎】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    怨嗟の輩
【吐き出した妖怪の亡霊】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    蠱惑の怨火
レベル×1個の【口や目】の形をした【魅了効果と狂気属性】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。

イラスト:山本 流

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はシエル・マリアージュです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 喧嘩祭りは佳境を迎えていた。
 リングにはすべてのオブリビオンを打倒した猟兵たちしか残っていない。もはや、残るオブリビオンは―――あの見目麗しい日本人形のような姿をした女性の妖怪のみ。
 猟兵達は気がついている。

 あの女性の妖怪は骸魂に『飲み込まれた妖怪』の一体に過ぎないのだと。
 ふわりと女性妖怪がリングに舞い降りる。
「まあ、まあ……なんと強き者たちがこんなにも残ったもの……これで猟兵でなければもっとよかったのだけれど」
 計画違いである。舞い降りた女性妖怪の影から真赤な物体が躍り出る。ぐらりと女性妖怪が地面へと倒れ込む。
 紅い球状の物体。そこには無数の眼と口が浮かんでいた。
 名を『口寄せの篝火』。

 その口が紡ぐ『言霊』にて妖怪を引き寄せ、惑わし無数の妖怪たちを飲み込んできた。その紅き球状の体は飲み込んだ妖怪たちの数だけ強力な力を保持する。
 だが、今回の祭りにおいて猟兵達がすべて妖怪たちを救出したがゆえに、想定以上の力は出ていない。
 それでも『口寄せの篝火』の力は強大そのものである。

「妖怪たちを飲み込めなかったのは残念であるが―――何、猟兵達すべてを打倒して改めて弱った妖怪たちを飲み込めば良い……」
 ケタケタと無数に球体の体に浮かんだ口が嗤う。
 無数の瞳がぎょろぎょろとリングに立つ猟兵たちの姿を捉え、つぶさに観察する。にんまりと眼が細められた。

「さあ、踊ろうぞ。すべてを飲み込み、すべてと同一になる。我が篝火は引き寄せ、引きつけ、妾なしでは生きて行けぬように……我こそがこの世界にある絶対なる光となるのだ―――!」
 猟兵恐れるに足らず。
 その瞳はまさにそう言うかのように妖気を放出し、世界からありとあらゆる光発するものを飲み込み、唯一の太陽たらんとする欲望を発露させる。

 このまま『口寄せの篝火』を放置すれば、カクリヨファンタズムから光は喪われてしまう。光喪われれば、生命は育めず自ずと世界の終わり―――カタストロフが訪れてしまうのだから―――!
黒髪・名捨
〇心境
猟兵畏れるに足らず?
その驕り。たっぷりと後悔させてやるぞ

〇戦闘

こいつは強敵なんで、寧々は下がってろ(髪の中に隠れる寧々に「ぇ、そこッ」)
てめぇとてめぇの部下のおかげで寧々の機嫌も悪いんで、その辺のカリも含めてまとめてブッ飛ばす。

攻撃を『オーラ防御』と『覇気』とを込めた覇気の『武器受け』で攻撃を弾きつつ、炎は精神は『気合い』と『破魔』。肉体は『火炎耐性』『激痛耐性』で耐えきる。
だが、懐にもぐればオレのターンだ。

『限界突破』これがオレの全力だ。
『神罰』『怪力』を込めた神無の特大パンチでブッ飛ばす。
あばよ。弱らなければ狩れない弱気骸魂。
お前は本当にくだらん敵だったッ
くらいなッ!!



 それは紅い太陽のようなオブリビオンであった。
 己の名を『口寄せの篝火』と呼ぶ、そのオブリビオンが発する光は自ずと妖怪を引き寄せる声質を持っていた。そうして何人も何人もの妖怪を取り込んできたのだ。
 喧嘩祭りの主催者たる日本人形のような見目麗しい女性妖怪もまた、取り込まれた妖怪の一人であった。

 彼女はまさに疑似餌であり撒き餌であった。
 妖怪たちを引き寄せ、互いに争わせ、弱ったところで取り込んでいく。そうすることでオブリビオンとしての力を強大なるものに変貌させてきた。
「妾が世界唯一の光。妾無しでは世界は存在せぬ。そのように妾は成り変わるのだ」
 その声は魅惑的な声色だった。
 何がなくとも首を縦に振りたくなるような危険な声。それこそがオブリビオン『口寄せの篝火』の力であった。

「その驕り。たっぷりと後悔させてやるぞ」
 光り輝く紅の球状の体。その球体に無数に浮かぶ瞳は、猟兵を侮っていた。恐れるに足らず。そういうかのような視線を受けて、黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)の真紅の瞳が輝く。
 ギシギシと体中の筋肉が軋む。必要以上に体に力がこもっている。それは強力無比、最大なる一撃を放つための準備。

「こいつは強敵なんで、寧々は下がってろ」
 その真紅の瞳は討ち果たすべき敵―――『口寄せの篝火』を見据えている。だが、目の前にしてわかる。あのオブリビオンは強大なる力を持っている。
 それだけ妖怪たちを飲み込んできたのだ。だからこそ、喋る蛙である寧々は危ないと声をかけたのだが、蛙の寧々はもそもそと名捨の髪の中へと入り込んで隠れてしまう。
 え、そこっ!? と名捨は思ったかもしれないが、彼に対する信頼があるのだろう。もしかしたのならば、先程までの態度はやりすぎだったとか、そういう可愛い理由もあったりしなかったりするのかもしれない。

 そんなことはつゆ知らず名捨は拳を鳴らす。
「てめぇと、てめぇの部下のおかげで寧々の機嫌も悪いんで、その辺の借りも含めてブッ飛ばす―――」
 その宣言にケタケタと神経を逆なでするような笑い声を上げながら、『口寄せの篝火』の球体に蠢く無数の口から放たれる炎。
 それは無数の炎の弾丸となって、雨のように名捨へと降り注ぐ。
 名捨の体を覆うオーラが炎の弾丸を防ぐ。だが、その炎は物理的に肉体を焼くだけではなく、精神をも蝕む炎。

 足を踏みしめ、大地を割る。
 構えた。
 たったそれだけのルーティンで名捨の心は研ぎ澄まされていく。どれだけ炎が彼の精神を蝕もうとしたとしても、これより行うことに一切の影響はない。
 それだけの精神性と気合……そして破魔の力を、その身は宿しているのだ。
「―――強大な力かもしれないが……耐えきれない、ほどじゃあない」
 肉体を焼く炎。
 それすらも克服してみせる。それができないで何が猟兵か!
 その拳が宿すは必殺を越えた必殺の一撃。限界など誰が決めた。他者が決めた限界など、ただの障害に過ぎない。
 その障害は乗り越えるためにあるもの。己の限界は己が決めた場所にある。そして、その限界を己が決めぬ限り―――。

「これがオレの全力だ―――」
 猟兵の力に限界はない。
 踏み込む。懐に潜り込んでしまえば、名捨の独壇場である。炎が名捨を包む。関係ない。痛みも、蝕む炎も、ただ拳を叩き込むという一心に身を投じている彼には意味がない。
 一瞬で踏み込んだ間合い。『口寄せの篝火』の球体に浮かぶ瞳と目が合う。
「―――あばよ。弱らせなければ狩れない弱き骸魂」
 放たれるは、神無(カンナ)。単純で重たい一撃必殺。放つは神罰代行の如き膂力に寄って放たれる拳。

「お前は本当にくだらん敵だったッ―――くらいなッ!!」
 名捨の拳がオブリビオン『口寄せの篝火』の球体にめり込む。ひび割れるようにして表面に裂傷が走り、その球状の身体が吹き飛び、地面に巨大なるクレーターのような、それこそ……爆心地のごとき戦いの痕を残す。
 それだけの一撃。

 たった一撃。それでも名捨の一撃はオブリビオンに絶大なる損傷を与えたのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
女の子の部分は餌を集めるための囮ってわけ? 気に食わないわね。女の敵は、あたしが討滅してあげる!

「火炎耐性」「呪詛耐性」でオブリビオンの炎に耐えつつ、「破魔」「浄化」の七星七縛符。面倒なユーベルコードは封じさせてもらうわ。

少女が本体の盾になろうとするなら、薙刀の石突きで「なぎ払い」、道を作る。
心の中で謝って、後でちゃんと謝罪しよう。看護はアヤメに任せる。
それじゃあ、ふざけたことをしでかしてくれた本体の篝火に、怒りをぶつけましょう。
薙刀で「衝撃波」と共に「なぎ払い」、「串刺し」にしてあげるわ。

終わったわね。女の子は大丈夫かしら?
ねえ、よかったら、あたしたちと一晩限りの恋人になってみない?



 猟兵の一撃を受けた紅の球体、オブリビオン『口寄せの篝火』。
 その体は絶大なる一撃を受けて大きくひび割れが走っていた。その裂傷からこぼれ出ていくのは、口や目の形をした炎。
 それは人魂のようにふわりと浮かび上がると、オブリビオンの周囲へと浮かび上がっていく。ユーベルコード、と気がついたのは村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)だった。

「妾の体が……! ひび割れる……! 完璧なる光にならんとしていたのに……! アァ……!」
 嘆く声が響く。
 それに合わせるようにカタカタと歯を打ち鳴らす炎で出来た口。目の形をした炎は明滅し、瞬きを狂ったように繰り返す。
 それは怒りに震えているようにも思えた。
「女の子の部分は餌を集めるための囮ってわけ? 気に食わないわね」
 ゆかりの推察通りであった。
 あの見目麗しい女性妖怪は、妖怪たちを効率よく集めるための疑似餌にして撒き餌。喧嘩祭りを主催したのは、妖怪たちを手っ取り早く弱らせ、飲み込むのに抵抗させないためだった。

 その腹づもりが、ゆかりの沸点を越えさせる。
「女の敵は、あたしが討滅してあげる!」
 放たれる炎を耐えながら、ゆかりは駆け出す。炎に対する耐性、呪詛に対する耐性はどちらも十分。ユーベルコードの炎を振り払い、ユーベルコード七星七縛符が宙に閃く。
 破魔と浄化の力籠められた護符が『口寄せの篝火』の球体の体へと張り付く。
 これで面倒なユーベルコードは封じた。だが、ゆかりの戦いはこれからだ。護符の効力を発揮し続けるためには、彼女の寿命が必要になる。
 長引けば、不利になるのはゆかりの方であった。

 だからこそ、ゆかりは薙刀を振るう。
「女の敵に悠長にかまっている暇は―――」
 ゆかりの薙刀が振り下ろされようとした瞬間、球体から伸びた触腕が倒れ込んでいた日本人形のような女性妖怪をつかみ、盾のようにしてゆかりへと突き出す。
「な―――!」
 刃が止まる。それは決定的な隙であった。しなる鞭のように触腕が翻り、ゆかりの体をしたたかに打ち付けようとして横から式神アヤメがゆかりの窮地を救う。

 その一瞬の交錯。
 ここで女性妖怪を『口寄せの篝火』から引き離さなければ、この後何度でも盾として使われてしまう。
 その判断は、正解であった。ゆかりの薙刀の石突で女性妖怪を薙ぎ払う。心の中で謝る。謝罪はいくらでも後で。
「アヤメ! 頼んだわ!」
 薙ぎ払いつつもアヤメへと女性妖怪を投げ飛ばす。あれだけツンツンしていたアヤメであるが主人でも在るゆかりの窮地にはしっかり助けてくれるのだからありがたい。

「それじゃあ、ふざけたことをしでかしてくれたあなたには―――!」
 怒りが湧き上がる。
 女性を不本意ながらも薙ぎ払ってしまったこと。諸々のことでアヤメが先程までツンツンしていたこと。その怒りがゆかりの心を駆り立てるのだ。
 振り払われた薙刀の衝撃波は、裂帛の気合と共に放たれ、その球場の体を横一文字に切り払う。
 その傷口をえぐるように突きが決まり、串刺しにしては『口寄せの篝火』から、どぼどぼと炎色をした体液が零れ落ちていく。

 ごう、と炎が舞い上がりゆかりの体は吹き飛ばされるが、式神アヤメがしっかりとフォローしてくれる。傍には盾代わりに使われた女性妖怪。
 よかった、とゆかりは思う。
 目立った外傷はない。石突でひっかけるように薙ぎ払ったから痕にもなっていない。
「傷になっていなくってよかった……本当に―――」
 骸魂に飲み込まれていたときの記憶は残ってはいないだろう。
 だからこそ、身に覚えのない傷跡が彼女に残らないことが、ゆかりは本当に嬉しかったのだ。
 戦いはまだ続く。けれど、彼女が目を覚ました時、きっとゆかりはまたアヤメからツンツンされてしまうかもしれなかった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

須藤・莉亜
「え、綺麗な方は敵さんじゃないの?マジで?あの目玉野郎が敵さん?」
綺麗な敵さんの血を奪えると思ったのに…。僕の期待を裏切った罪は重いぞ…。

伝承顕現【首なし騎士】でデュラハン化して戦う。
周囲に展開したArgentaを足場に、縦横無尽に移動しながら、敵さんに突貫し、右手に持った黒啜で衝撃波を放ち攻撃。悪魔の見えざる手は血飲み子と奇剣を持たせて僕のフォロー。
敵さんに近づけたら、左手に持った自分の首を近づけて全力で吸血して生命力吸収。あ、亡霊の方の味見も忘れずに。

「まあ、珍しい血も嬉しいんだけどね。」
これは吸い殺しても大丈夫なやつだよね?



 オブリビオン『口寄せの篝火』の球体のような体から噴出する炎。
 それは取り込んだ妖怪たちから奪った妖気そのものであった。そう、この場で繰り広げられていた喧嘩祭りも、全てがオブリビオン『口寄せの篝火』の企てであった。
 祭りの主催者である見目麗しい日本人形のような女性の妖怪は、疑似餌にして撒き餌だったのだ。
 妖怪たちを引き寄せる。そして、抗いがたい誘惑によって争わせ、互いに弱らせ続ける。後は抵抗できない妖怪たちを飲み込んでいけば、強大なるオブリビオンの誕生というわけである。
「アァ―――妾の妖気が漏れ出る……傷が、傷が塞がらぬ」
 猟兵たちの攻撃に寄ってひび割れた球体は、とめどなく妖気を撒き散らすようにして宙に浮かぶ。
 怨嗟の声を叫び続けながら、傷口から溢れ出るのは吐き出した妖怪の亡霊たち。飲み込み、取り込んできた妖怪たちであろう。
 球体に蠢く目や口がカタカタと煩わしい音を立て続け、亡霊たちに号令を放つ。
 猟兵を討てと。
 この玉のごとき体に傷をつけた猟兵達に万死をと。

「え、綺麗な方は敵さんじゃないの? マジで? あの目玉野郎が敵さん?」
 え、え、と残念な声を上げたのは、須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)だった。てっきり、あの綺麗な敵さん……つまりは、疑似餌にされていた女性妖怪がオブリビオンであり、その血を奪えると思っていたのだ。
 あまりのことに莉亜は、ぐらりと身体が傾ぐような錯覚を覚えた。残念極まりない。アレだけ我慢した吸血衝動はもはや暴発寸前であったというのに、ここに来て強烈なる裏切りを受けたも同然であった。
「僕の期待を裏切った罪は重いぞ……」

 轟音を立てるようにして、彼のユーベルコードが輝く。
 伝承顕現【首なし騎士】(デンショウケンゲン・デュラハン)―――それは自身にデュラハンの鎧を纏い、デュラハンへと姿を変えるユーベルコート。
 銀の槍が周囲に浮かび、足場とする。
 取り囲んだ銀の槍は、オブリビオン『口寄せの篝火』を逃さぬとばかりに浮かび、デュラハンと化した莉亜の体を持ってして、縦横無尽の軌道を描いて戦場を駆け抜ける。

「容赦はしない―――ここまで我慢してきて……!」
 手にした大鎌から衝撃波が放たれ、『口寄せの篝火』を守るように展開してた亡霊たちを切り裂き、道を開く。
 契約者たる莉亜を守る透明な悪魔の手が白き大鎌と奇剣を持ち、襲い来る亡霊たちを近づけさせない。
 肉薄する。
 彼の視界にあるのは、オブリビオンの姿だけだ。無数に浮かぶ目と目が合う。亡霊たちを切り裂いた際に得た血液の分まで増強された力が、その球状の体を斬りつける。
 血飲み子―――それは白き大鎌。振るう莉亜と味覚がつながっている不可思議なる武器である。

 その武器が切り裂いたオブリビオンの味は彼にとってどのような味であっただろうか。
 見た目美しいオブリビオンの血をと、思っていた彼にとって、ゲテモノの部類であろう姿をしたオブリビオン『口寄せの篝火』の血は―――。
「まあ、珍しい血でも嬉しいんだけどね」
 舌なめずりをする。
 ただの一撃では物足りない。お預けに次ぐお預けを食らってきたのだ。一撃加えた程度では己のうちから湧き上がる衝動を鎮めることなどできはしない。

「これは―――」
 こいつは、そう。吸い殺してしまっても大丈夫なやつだ。
 だから、加減なんていらない。
 これまでのフラストレーションをぶつけるように莉亜の大鎌による斬撃は、『口寄せの篝火』の球状の体をずたずたに引き裂くのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

政木・朱鞠
なるほど、騒動の黒幕のお出ましね…君を倒さないと可愛い子を甘やかし出来ないみたいね。
妖怪さん達を毒気で狂わせ、自分勝手な欲望を満たすために他人の体を好きに操った咎はここで幕引きとさせて貰うよ。
私の浄化の炎を篤と味わって火傷しながらオヤスミナサイ。

POW
口寄せの篝火の『甘美な夢現』に対して【フェイント】をかけて一の太刀をかわすように心がけてこちらの一手の隙を狙うよ。
武器は拷問具『荊野鎖』をチョイスして【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の技能を使って体に鎖を絡めて動きを封じたい。
心情的な攻撃なのかもしれないけど…『忍法・咎狐落とし』で骸魂に対して悪意を絞り出させる様にダメージを与えたいね。

アドリブ連帯歓迎



 ずたずたに切り裂かれた紅の球体が空よりリングへと落ちてくる。
 その姿はオブリビオン『口寄せの篝火』が変わり果てた姿だった。度重なる猟兵たちの攻撃の前に、強大であったオブリビオンは徐々に追い詰められている。
 喧嘩祭りの主催者であった見目麗しい日本人形のような女性妖怪は、このオブリビオンの疑似餌であり撒き餌であったのだ。
 蠱惑的で魅力的な声色。
 それは妖怪たちをリングに集め、争わせて弱らせる。弱った妖怪たちは骸魂である『口寄せの篝火』にとって飲み込むのに容易いものであったのだろう。
 だからこそ、ここまで強大なる存在へと変貌を遂げたのだ。
「あァ……妾の炎が、光が……もっと、もっと光を集めねば、唯一の光にはなれぬ……」
 嘆くような声が響く。
 その声はもはや魅力的な声ではなかった。ただの怨嗟の声。響く言霊は炎となってリングの中に充満していく。

「なるほど、騒動の黒幕のお出ましね……君を倒さないと可愛い子を甘やかしできないみたいね……」
 政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)は炎が充満するリングの中を駆けながら、その視線を紅の球体たるオブリビオン『口寄せの篝火』を睨む。
「妖怪さんたちを毒気で郭汗、自分勝手な欲望を満たすために他人の体を好きに操った咎はここで幕引きとさせて貰うよ」
 朱鞠目掛けて放たれる炎は肉体と精神を同時に蝕む。それに触れてしまえば、猟兵と言えど無事では済まない。
 炎を躱し、彼女のユーベルコード、忍法・咎狐落とし(ニンポウ・トガキツネオトシ)が発動する。
 浄化の炎が籠められた拷問具『荊野鎖』がオブリビオン『口寄せの篝火』の球体を捉えて離さない。

「咎に巣食いし悪狐の縁…焼き清め奉る!」
 そのユーベルコードは肉体を傷つけない。浄化の炎が焼くのは、咎人としての魂のみ。朱鞠にとっての咎人とは、つまるところ骸魂のみ。
 悪意ある骸魂さえ滅することができるのであれば、それ以外の取り込まれた妖怪たちは傷つけることはない。
 だからこそ、その悪意に朱鞠は攻撃を加えるのだ。
 拷問具の鎖が『口寄せの篝火』の体に食い込み、悪意を絞り出させるように引き絞られる。
 ミシミシと軋む音がして、その球体が歪む。

「アァ、ア―――妾はまだ、まだ終わらぬ、絶世の光ぃぃ―――!」
 炎が噴出する。それは悪意を絞り出したかのような『口寄せの篝火』の怨嗟であったかもしれない。
 骸魂の生前にどれだけのことがあったのかはわからない。けれど一度悪意に染まってしまえば、その骸魂を救うには疾く骸の海へと返す以外ない。
 だからこそ朱鞠の鎖に込める力が弱まることはない。

「私の浄化の炎を篤と味わって火傷しながらオヤスミナサイ」
 一際強く浄化の炎が拘束する鎖から放たれ、『口寄せの篝火』の球体を燃え上がらせる。
 その浄化の炎が悪意を焼き尽くし、清浄なるものへと変ずるまで消えることはない。悪意が悪意を呼ぶというのならば、ここで連鎖を断ち切らなければならない。
 もう二度と誰かの身勝手な悪意で泣く妖怪が出てはいけない。朱鞠は強くそう思いながら、引き絞る鎖に力を込めるのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
囮の女性は救助されたようで何よりでした

この世の全ては己が燃料と…
骸魂として歪み果てたその野望、阻む他無し
妖怪達の心身を弄んだ罪、骸の海への送還で清算していただきます

この声は…
生憎、私の思考は電子演算でして
(精神干渉を自身への●ハッキング行為と定義。UCで電子防御向上し排除)

真っ当な騎士であれば意志の力で精神を保つのでしょうが…

正面から歩いて接近
炎を向上した出力の●怪力で振るう剣盾の●なぎ払い●武器受け●盾受けで正面から切り裂き弾き捻じ伏せ乗り越え

どちらにせよその言霊と炎、私の防壁を簡単に抜けると思わぬことです

下がる篝火へ柄尻にアンカーを接続した剣を●投擲●串刺し
引き寄せ大盾殴打で地面に叩きつけ



 ぎちり、ぎちりとオブリビオン『口寄せの篝火』を拘束する鎖が軋んでいく。浄化の炎の力の籠められた鎖は、容易にはちぎれない。けれど、ユーベルコードの力にも限界はあるのだ。
 嫌な音を立てて鎖が砕けて散っていく。『口寄せの篝火』に止めはさせなくても、続く猟兵達がいる。
「妾の光ッ! 光がッ! 漏れていくッ! アアアァッ―――!」
 それは絶叫であった。
 その身を傷つけられ、鎖の拘束によって絞り出されるようにして噴出した紅い血液の如き炎。それは『口寄せの篝火』が、これまで集めに集め、取り込んできた妖怪たちの妖気そのものであった。

「囮の女性は救助されたようで何よりでした……」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、疑似餌であり撒き餌として使われていた見目麗しい日本人形のような女性妖怪が他の猟兵達によって救助されたことに胸をなでおろす。
 これで後顧の憂いは断たれた。
 今は飛躍であり、前進の時である。
「妾の―――妾の光ッ! 妾が燦然と輝くための―――! 返せ! 『それ』は妾のモノだ―――!」
 オブリビオン『口寄せの篝火』の絶叫が、球体の体に浮かんだ無数の口から発せられる。

「この世の全ては己が燃料と……骸魂として歪み果てたその野望、阻む他無し」
 トリテレイアの電脳に影響を及ぼすほどの絶叫。それがこのオブリビオンの強大なる力の所以であろう。
 だが、それでもトリテレイアの電脳を支配するのは、妖怪達の心身を弄んだ罪を断罪せよという思いであった。
 精算せねばならない。させなければならない。それはオブリビオンを骸の海へと還す他に贖うことなどできない罪。

 式典・要人護衛用銀河帝国製ウォーマシン(トリテレイアシリーズ・シリアルナンバーゼロナイン)。
 それがトリテレイアという機体。
 この声がトリテレイアの電脳に影響を及ぼすというのであれば、その影響を遮断できなければ、要人など護衛できようはずもない。それ故の能力、ユーベルコード。
「まっとうな騎士であれば意志の力で精神を保つのでしょうが……」
 だが、トリテレイアは違う。
 機械騎士である彼にとって、電脳、電算機能を保護するのは何をおいても優先されるべきものである。疲れを知らない機体であればこそ、その電脳は固く保護されなければ、守るべきものを守れなくなってしまう。

 一歩踏み出す。
 重い足音が響き渡る。策も何もない。ただ距離を詰めるために一歩を踏み出しただけだ。だが、それだけで十分であった。
 その一歩は、精神干渉を何一つ受けていないという証。
 トリテレイアの巨躯を薙ぎ払わんとする炎の一撃を手にした大盾と剣で振り払う。正面から、躱すわけでもなく態勢を変えるでもない。ただの一刀の内に切り払ったのだ。

「―――な、ア―――?!」
 効かない。
 己の炎が、人心乱す誘惑の炎が何一つ効かない。『口寄せの篝火』にとって、それは誤算であった。この能力だけを頼みに、ここまで強大になったがゆえに、それが崩された瞬間が最も―――脆い。
「どちらにせよ、その言霊と炎……私の防壁を簡単に抜けるとは思わぬことです」
 空中で逃げようとする『口寄せの篝火』へとトリテレイアの放った剣が突き刺さる。ただの投擲……であるはずがない。柄に接続されたワイヤーアンカーが、トリテレイアの絶大なる膂力と共に『口寄せの篝火』の球状の体を引きずり下ろす。

「これは―――真に勝手で、僭越ではありますが」
 空中から落下するようにトリテレイアへと迫るオブリビオン『口寄せの篝火』。それを迎え撃つは大盾。一直線に迫る球体を大盾によるシールドバッシュが襲う。横殴りにフックの要領で放たれた大盾による殴打が、その球体の体を地面へと失墜させた。

「―――操られた妖怪の皆様の分です」
 無辜なる妖怪達の怒りを体現するように機械の騎士はアイセンサーを揺らめかせる。
 それは確かに怒りという感情を現すには十分すぎるほどの輝きであった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒覇・蛟鬼
おや、これは何とも愛らしい御姿の球体ですな。
沢山の眼と刺々の身体が実に良さ気で(←美的感覚0)
特別に、その愛らしい御姿のまま送って差し上げましょう。
■決
常にあの『赤い球状の物体』を狙います。
着物の女性には、可能な限り攻撃を当てないように。

■闘
赤い球体に向かって、【ダッシュ】で接近するとしますか。
聞こえてくる声は【狂気耐性】で聞き流し、次の攻撃を
来ないようにさせてしまいます。

接近したら【残像】を見せつつ【フェイント】をかけながら
【嘗女の惑乱】で球体の身体を中指で突き、「身体が崩れ
落ちている」という誤情報を身体に流します。

ご心配なく、感覚だけですので実際には崩れていません。

※アドリブ歓迎・不採用可



 猟兵の一人の攻撃に寄って、オブリビオン『口寄せの篝火』の球体たる体は地面に失墜し、地面を抉るほどの衝撃でもって大地を揺るがせた。
「ア、ァ……まだ、まだ終わらぬ。妾は、妾は―――絶世なる光の輝き足らんと」
 その言葉が終わる前に荒覇・蛟鬼(鬼竜・f28005)は、その眼前に立っていた。ぎょろぎょろと『口寄せの篝火』の球体の中を忙しなく無数の口と目が動き回る。
 それこそがあの見目麗しい日本人形のような女性妖怪を疑似餌にして撒き餌として扱っていた本体なのである。

「おや、これはなんとも愛らしい御姿の球体ですな。沢山の目と刺刺の身体が実に良さ気で」
 蛟鬼の言葉は皮肉でもなんでも無かった。ましてや世辞でもなかった。
 単純に愛らしい姿であると、その本体たる『口寄せの篝火』の球体の姿を見て評したのだ。もしも、従者である濡姫が口を挟む機会があったのならば、美的感覚ゼロであると酷評したであろうが、彼女はもはや何度目かわからぬやり取りをするつもりはないと押し黙っている。
「特別に、その愛らしい御姿のまま送って差し上げましょう」
 その姿がどれだけ愛らしいものに見えていたとしても、蛟鬼にとってやるべきことは変わらなない。
 オブリビオンは疾く骸の海へと還す。
 ただ、それだけだ。

「妾の絶世たる光の価値がわかっているのに、何故妾に従わぬ―――!」
 その口から噴出する炎が蛟鬼を襲う。それだけではない、魅惑の声が彼の鼓膜を震わせる。
 だが心を震わせるには至らない。聞き流しているのだ。
「何故だ! 何故だ! 何故! 何故!」
 炎の噴出は止まらない。
 蛟鬼の体が残像を伴ってリングを駆け抜ける。炎はすべて残像を追って放たれ、尽くが当たらない。
 それが『口寄せの篝火』を苛立たせる。これだけ絶大なる力を誇っているのに、猟兵たちには何一つ通用しない。

「さあ―――?」
 おどけたような声色のまま蛟鬼が『口寄せの篝火』に肉薄する。
 それは一瞬の出来事であった。彼の中指が球体の体へと突き刺さる。それは致命的な一撃ではなかった。
 だが、その一撃は、『口寄せの篝火』の球体の体を次々と連鎖するように崩し落としていく崩壊の一手。
 ひび割れるように球体の身体が崩壊していく。
「く、崩れる……! 妾の身体が! 身体が!」

「ご心配なく、感覚だけですので……実際には崩れていません」
 にこやかな声が響く。
 蛟鬼の声は優しく、それだけで残酷なるものであった。ユーベルコード、嘗女の惑乱(ナメオンナノワクラン)。あらゆる近くに誤情報を流す一撃。
 此度、『口寄せの篝火』へと流し込まれたのは『身体が崩れ落ちている』という誤った情報。

 それは自身に絶対を求めるオブリビオンの欲望を根底から崩壊へと導く一手であった。
 絶叫は慟哭に、慟哭は悲哀を満ちた絶望へと変わる。その叫び声を聞きながら、蛟鬼は嘯く。

「あなたが今までそうしてきたように、私もあなたを欺いたのです」
 因果応報。
 今まで妖怪達を騙し、操り、取り込んできた『口寄せの篝火』へ意趣返しであった。どこか攻撃的な物言い。
 そこにあったのは、姿形の美醜など関係ない、己の責務をまっとうするためだけに振るう力―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御形・菘
はっはっは、絶対なる光とは大きく野望をブチ上げたではないか!
その心意気や実に良し!
そして、お主のような最高にイキった輩をボコるのが、妾のバトルの基本コンセプトよ!
あと「妾」が被ってるのが許せん!

右手を上げ、指を鳴らし、スクリーン! カモン!
はーっはっはっは! 今日も元気かのう皆の衆よ!
イイ感じに調子に乗った怪人が、此度の妾の相手だ!
精神攻撃とかしてくるようであるが、皆の声があればそんなの一切心配無用!
さあ歓声を、喝采を! 妾に存分に浴びせてくれ!

さて懸念は潰したが、炎そのものはどれほど威力があるのかのう?
最大火力をブチ込んでこい! 妾の進撃は、拳は、そんなもので止まりはせん! 砕け散るがよい!



「ア、ァ……妾の絶対たる光……絶世なる光が……すべてを遍く照らす光が―――」
 オブリビオン『口寄せの篝火』の悲哀なる言葉が響く。
 猟兵たちの度重なる攻撃に晒され、その体は崩壊へと進んでいく。だが、それでもまだオブリビオンとしての力は残されている。
 この力が残っている限り、オブリビオンである『口寄せの篝火』は何度でも光を集めることができる。この場を凌ぎきれば……猟兵たちから逃れさえできれば―――。

 だが、その醜くも生き汚い執念を終わらせるのが猟兵である。
 高らかな笑い声が、カクリヨファンタズム―――喧嘩祭りの会場たるリングに響き渡った。
「はっはっは、絶対なる光とは大きく野望をブチ上げたではないか! その心意気や実に良し!」
 御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)の右手が天に向かって突き上げられている。高らかな笑い声の主は、実に良い笑顔のまま撮影用ドローンを飛ばす。
「そして、お主のように最高にイキった輩をボコるのが、妾のバトルの基本コンセプトよ! あと『妾』が被ってるのが許せん!」
 パチン、と空に指を鳴らす音が響き渡る。
 それはユーベルコードのトリガー。

「スクリーン! カモン! はーっはっはっは! 今日も元気かのう皆の衆よ! イイ感じに調子に乗った怪人が、此度の妾の相手だ!」
 あと『妾』が被っているが、みんなはどっちが『妾』かわかるだろう! と威勢よく撮影ドローンのカメラに向かって邪神様の笑顔が飛ぶ。
 配信動画を見た視聴者が映る無数の空中ディスプレイが召喚され、菘のまわりに浮遊する。
 視聴者達は様々な種族がいる。老いも若きも性差も様々だ。菘の動画は、そんな大勢の人々を魅了して止まない。
 オーディエンスはすでに菘のものだ。
「精神攻撃とかしてくるようではあるが、皆の声があればそんなの一切心配無用! さあ歓声を、喝采を! 妾に存分に浴びせてくれ!」
 自信満々のいつもの邪神様! コメント欄は洪水のように応援メッセージが立ち並び、ボイスチャットからは菘への声援が飛ぶのだ。
 彼等は菘の勝利を確信している。
 負けるわけがない。それはこれまでの動画を通してきてわかっている。彼女がなんのために戦い、動画を配信するのか。

 それは皆の笑顔のためだ。

 それが幾多もの人々を、妖怪を集める彼女とオブリビオンの決定的な違い。
「さて懸念は潰したが、その炎はどれほどの威力があるのかのう? 最大火力をブチ込んでこい! 妾の進撃は、拳は、そんなもので止まりはせん!」
 放たれる炎。
 それは最も強大なる炎であった。
 その光景を見て、菘は恐れるどころか、不敵に笑うのだ。
「お主にも見えるであろう、聞こえるであろう? この感動を背負い、後押しされる限り、妾は最強無敵よ!」

 それはまさに、喝采よ、妾に降り注げ(エール・スクリーンズ)と声高々に宣言するようであった。
 生配信視聴者が映る空中ディスプレイから降り注ぐ喝采は、彼女の力を尋常ではない力で満たしてく。
 その拳に砕けぬものはなく。
 そして、防げるものなどない。

「―――砕け散るがよい!」

 その拳は裂帛の気合と共に炎をかち割って放たれた。
 防御も、何もかも貫通して左腕がオブリビオン『口寄せの篝火』の球体の体を完全に砕く。
 きらきらと降り注ぐ紅い火の粉が喝采のごとく降り注ぎ、カーテンコールのように巨大なる左腕が視聴者たちに応えるのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月04日


挿絵イラスト