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UDC【アンディファインド・カード】ゲーム!

#UDCアース

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#UDCアース


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●【アンディファインド・カード】
 六畳間ほどの大きさの部屋で、机を挟み、二人の男が睨みあっていた。
 一人は眼鏡をかけた学生風の男。
 もう一人は……なんか膨れ上がった頭の、ヤバい見た目の男だ。
 机の上には【アンディファインド・カード】と描かれた、数十枚のカードの束が置いてあった。
 膨れ上がった頭の男は、ゆっくりとそのデッキからカードを一枚引いた。
「クックック……我が手にあるのは『ナイトメア・アリス』。
 人を悪夢に引きずり込み、魂を喰らって生きる恐るべき邪神だ。
 さあ青年よ。どう対処する?」
「……言いくるめだ! 僕より美味しい魂があるからそっちに行って!」
 学生がそう言うと、男たちは考えるモードに入った。
 しばし、静寂が場を支配する。
「……はいドーン! 彼女は生きる為に魂を喰らう!
 美味とか不味いとか関係ないのだ!」
「……なん……だと……!?」
「さあどうする青年。手は打ち止めか? ン?」
 青年の額に脂汗が浮かぶ。口は震えるが、声は出てこない。
「……終了! 貴様は私を納得させられなかった!
 さあ青年、対価を払ってもらうぞ!」
「やめ、やめろォォォォ!」
 ずりずりと、膨れ上がった頭の男が、青年を引き摺って行った……。

●グリモアベース
「……皆さんは、カードゲームで大喜利なんてやったことがありますか?」
 グリモアベースの中で、困った顔で女性が言う。
 彼女はノルナイン・エストラーシャ。ミレナリィドールのグリモア猟兵だ。
「カードゲームは、カードを使って遊ぶ遊戯。
 一方大喜利は、お題を貰って色々言う演目です。
 何故これが結びついたのかわかりませんが……これを見て下さい」
 彼女は懐から、一束のカードを取り出した。
 パラパラと中身を見せるが、そのどれもに、何となく悍ましい絵が描いてあった。
「これは【アンディファインド・カード】。UDCアースで流行っているカードなんですが……見ての通り、邪神や眷属の絵が描いてあります。
 そのうえ、【アンディファインド・カード】は邪教団が絡んでおり、事件も起こっているとか」
 ノルナインはため息を吐き、言葉を切った。

「さて、今回はUDCアースに向かってもらいます。
 【アンディファインド・カード】の大会が行われているのですが、その敗者が誘拐されているのです。皆さんには大会に出場して、この事件を探って貰いたいと思います」
 ノルナインはそう言うと、カードをぺらぺらと捲った。
「【アンディファインド・カード】のルールは簡単。
 カードマスターがカードを引いて公開、プレイヤーがカードに描かれている邪神にどう対処するかを宣言。
 カードマスターが対処方法に納得すればプレイヤーの勝利。
 納得しなければ、プレイヤーの敗北です。
 ではカードゲームばかりをするのかって? そうではありません。
 相手は邪教団、恐らく大会の後に戦う事になるでしょう。カードゲームからリアルファイトです」
 彼女はそこで言葉を切った。

●こんなのカードゲームじゃないわ! ただの口プロレスよ!
「カードゲームに限らずゲームは楽しむためにあります。
 それを用いて誘拐など、許される事ではありません。
 ですから皆さん、邪教団をこらしめてやってください。どうぞよろしくお願いします」
 そう言って、彼女は一礼した。


苅間 望
 カードゲームはお好き? なら大喜利は? 口プロレスは? 言いくるめは?
 全部お好き?
 結構。ならどうぞ挑戦してみて下さい……このヘンテコな闇のゲームに。

 はい、初めまして or こんにちは。苅間望です。
 今回はUDCアースで【アンディファインド・カード】なるカードゲームに挑戦してもらいたいと思います。
 このカードゲームは、数十枚で一つのデッキとなるカードを用いて行う、複数人でやるゲームです。
 ルールは簡単。まずカードマスターと、プレイヤーに分かれます。
 カードマスターはデッキからカードを引いて公開(引く枚数に言及はありませんが、1~4枚が推奨されるようです)。
 プレイヤーは1~4(場にあるカードが上限)枚のカードを指定し、それにどう対処するかを宣言します。
 カードマスターが対処方法に納得すれば、プレイヤーの勝利。
 納得しなければ、プレイヤーの敗北です。
 え? カードマスターが何言っても納得しないかも、ですって?
 ご安心を。彼らはこのゲームを狂信しているため、必ず公平に思考します。
 カードゲームばっかりするのかこのシナリオはァ! というお声もありそうです。
 それもご安心を。カードゲームが終わればリアルファイトが始まります。

 という訳で、どうか猟兵の皆さん、興味があれば挑戦をしてみて下さい。
 心よりお待ちしています。

 ちなみに、ですが。二つほど補足事項を。
 まず一つ目。
 このゲームは協力して対処する、という事が可能なので、フレンドや旅団の仲間と一緒に参加しても面白いかもしれません。「私とこの人の技能があれば、こいつには対処できる!」などがあれば、是非提案してみて下さい。
 そして二つ目。
 邪神カードを同時に複数指定するメリットは何なのか。これは同士討ちを図る事もまた、対処方法のひとつであるからです。

 皆さんの様々な発想、お待ちしております。

『アドリブなどについて』
 基本的に何も無ければ、少しアドリブが入ります。
 ※OKとあれば、アドリブが多めに入ります。
 ※NGとあれば、プレイングに従い、出来る限りアドリブを排します。
 ※絡みOKとあれば、私の一存で他の猟兵さんと絡ませたりします。
 ※絡みNGとあれば、一人で対処してもらいます。
 協力してプレイする! という場合は、「この旅団の人とやる!」とか、「この猟兵さんとやる!」というのをプレイングに書いてもらえると助かります。
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第1章 冒険 『一般人を守れ!神様危機一髪!』

POW   :    邪神はボール!<踏みつけ>や<捨て身の一撃>などでとにかく攻撃して切りぬける。

SPD   :    邪神すら惑わせてやろ。<誘惑>や<言いくるめ>などあの手この手でむしろ小間使いにしてやろう。

WIZ   :    邪神だと?食べてしまってもいいのだろう?<大食い>や<料理>などで食レポして納得させる。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●闇のゲームの始まりだ!
「クックック……ようこそ皆さん……」
 頭の膨れ上がった、もう見た目からして邪教団のヤバい奴……と言った男が、転移してきた猟兵を出迎える。
「ここは【アンディファインド・カード】の大会を行っている。お間違えは無いかな?
 ……よろしい、それでは皆さん……中へどうぞ。クックック……」
 頭の膨れ上がった男は、そのまま猟兵を部屋の中へと案内する。
 そこは十二畳間ほどの、かなり広い部屋だ。
 しかし真ん中に机が置いてあるだけで、他に家具は無く……なんだかひどく、殺風景だ。壁には邪神のポスターが貼ってあり、悍ましい瞳が部屋に入ってきた人を出迎える。
「……さて。【アンディファインド・カード】のルールはご存知かな?」
 彼はそう言うと、一枚の紙を手渡した。
『①カードマスターとプレイヤーに分かれる。
 ②カードマスターはデッキからカードを1~4枚引いて公開。
 ③プレイヤーは場に有るカードを1~4枚指定し、どう対処するか宣言。
 ④カードマスターのジャッジ』
 彼はじっくりと猟兵を見回した後、告げる。
「さあ皆さん。それでは【アンディファインド・カード】を始めたいと思う」

●ドローカード
「まず一枚目……」
 男がカードを一枚引いた。
 現れたのは、一つ目の黒々とした球体。恐ろしい見た目をしている。
「これはゲイザー。直径二メートルほどの球体の化け物だ。
 体当たり、目からレーザーという攻撃手段を持ち、大きな瞳が弱点だ。
 視界がある間は、多くの魔法を無効化できる……この影響を受けないのは、闇属性の魔法だけだ。
 言語は通じ、会話もできるぞ」
 ぺらり、と男はカードを置いた。

「では二枚目……」
 男がカードを一枚引いた。
 現れたのは、可愛らしい、金髪の幼女だ。しかし何だか禍々しいオーラを纏っている。
「これはナイトメア・アリス。見た目通りの幼い子供だが、人を悪夢に引きずり込む。
 精神的に強い相手が苦手で、あとは筋肉ムキムキな人も嫌いなようだ。肉体能力は見た目通り。
 いざとなれば魔法を用いて攻撃する事が出来るが、それほど強くはない。
 言語は通じ、勿論会話もできる。性格が悪い事を除けば大体見た目通りだ」
 ぺらり、と男はカードを置いた。

「では三枚目……」
 男がカードを一枚引いた。
 現れたのは、タコのような頭部を持つ、中々悍ましい見た目の人間だ。
「これはオクトパシー。水陸両用の邪神の眷属だ。
 触手でぺちぺち攻撃したり、呪詛を放つことで攻撃する。雷属性と刺突系攻撃が弱点だ。
 変な訛りがあることを除けば、言語は通じるし会話もできる」
 ぺらり、と男はカードを置いた。

「では四枚目……」
 男がカードを一枚引いた。
 現れたのは、全身から触手を生やしている、冒涜的な人形だ。
「これはテンタクルドール。邪神の眷属が人形に憑依したものだ。
 触手でぺちぺち攻撃したり、凄まじい膂力を用いて攻撃する。光属性と魔法が弱点だ。
 見ての通り人形であるため、言語は通じない。気を付けるように」
 ぺらり、と男はカードを置いた。

「さあ、皆さん……この四枚のカードから指定して、どうか対処してみて欲しい。
 クックック……楽しみにしているよ……」
 頭の膨れ上がった男は、喉の奥で笑った。
久遠寺・遥翔
面白い。それなら俺は一枚目のゲイザーを片付ける。
まずは体当たりを警戒。相手の動きを見切り距離を取る。
それさえもらわなきゃどうとでもなるからな。
そして目からレーザーを発射するときがチャンス!
鏡でレーザーを反射し、相手の瞳に返すぜ!
奴は自分自身の光線で視界を奪われるんだ。
その隙に俺はこの自慢の拳、焔黒掌をゲイザーの瞳に叩き込み、
一気に焼き尽くしてやる。
どうだいカードマスターさんよ。俺の行動に納得のいかない部分はあったかよ?

※アドリブ、絡みOK


漆島・昂一
…UDCアース(うちの世界)でUDCのカードが流行ってんのか、よりにもよって。世も末……にはさせられねえしなぁ…やるか

ルールは一見するまでもなく簡単だが、簡単すぎるってのもやり方を考えさせられるな…

【POW】
対処するってんならやっぱ武力行使だろ。
ゲイザー選択、飛び道具と銃を使って攻撃する、2回攻撃だ。狙い目としちゃまず飛び道具を投擲、次に本命の銃でスナイプ…レーザーを撃てる瞳は一つなんだ、どっちかは当たるだろ。

懐のAIのニミュエにヘルプ出したって〈こういうゲームはまわりで見ていても楽しいわね。〉…要はスルーかテメー

(アドリブOK、大歓迎です)


紅月・美亜
【アドリブ・絡みOK】
 有象無象の区別なく全て波動砲で吹っ飛ばせば解決だ! ……何、納得できない? 仕方ないな。
「Operation;MULTIPLY、発令。先に言っておく、嘘はつかない方が身の為だ」
 これは保険だ。判定を詐称させないためのな。嘘を言わなければ害はないから問題はないだろう? ではゲームを始めよう。
「まずゲイザー、ジャミング機を使って接近して弱点の目にパイルバンカー帯電式H型で一撃。アリス、メンズビーム。オクトパシー、ライトニング波動砲で一発。漆黒の番犬を舐めるな。テンタクルドール、ロックオンレーザーでポイント倍点」
「何だ、ゲーム的対処不可等とは聞いてないぞ。全部実行できるしな」



 男の前に立ったのは、三人の猟兵だった。
「面白い。受けてたとうじゃないか」
 そう言うのは、久遠寺・遥翔。
 灰色の髪に赤い瞳が特徴的な、背の高い青年だ。すらりとしていてスタイルが良く、猟兵でなければモデルや俳優にも見えるだろう。
「……UDCアースでUDCのカードが流行ってんのか、よりにもよって。世も末……にはさせられねえしなぁ……やるか。ルールは一見するまでもなく簡単だが、簡単すぎるってのもやり方を考えさせられるな……」
 頭を掻きながらそう呟いているのは、漆島・昴一。
 黒髪に琥珀色の瞳だけを見れば、普通の男に見える。しかし元PMC所属という事も有り、身体は鍛え上げられている。眼光は鋭く、じっと場に並んだカードを見つめていた。
「私はゲームが好きだ。それで十分だろう。華麗に勝利を収めてみせよう」
 自信に満ち溢れた表情でそう宣言するのが、紅月・美亜。
 紫の髪に赤い瞳、色白の肌……そんな彼女はダンピールだ。背の高い男二人に挟まれてはいるものの、堂々とした立ち振る舞いだ。
「クックック……まずは君たちが参加、という事かな?」
 聞くまでも無い事だ。男の言葉に、三人の猟兵は頷いた。
「俺は一枚目のゲイザーを片付けるぜ」
 遥翔がそう言うと、他の二人の猟兵も反応した。
「俺もゲイザーを選択するつもりだ」
「同じく私もだ。尤も、私は全カードを対象にするつもりだが」
 その言葉を聞き、男は少し考えた。
「……ふむ。ではまず、一人ずつにプレイしてもらいたいと思う。勿論協力プレイも可能なので、そちらが望むのならば協力でも構わないのだが……一人でカードを指定し、対処するというのが基本的なプレイでね。皆さんにはまずそれをお見せしたい」
 男の言葉に、三人の猟兵は頷いた。
「……よろしい。それではまず、一人ずつプレイしてもらおう。
 見ている人は、このゲームの雰囲気を感じ取ってほしい。プレイするのに役立つかもしれないぞ……クックック」
 男は喉の奥で笑いながら、ゲイザーのカードを机中央に置いた……。

●久遠寺・遥翔vsゲイザー
「ではゲイザー、おいで」
 男がパチンと指を鳴らすと、ぽふんと煙があがり……カードに描かれているゲイザーの、縮小版が現れた。
 本来のゲイザーは直径二メートルほどだと書いてあるが、この縮小版は直径三センチがいいところだろう。
「……おいおい、言葉で戦うんじゃなかったのか?」
 遥翔が言うと、男が答える前にゲイザーがぷにぷにと動き始めた。
《僕とお兄さんが武力でガチンコ勝負したら、どう考えても僕の負けでしょ!? 見てよこのマスコットみのある小ささ! 指で押し潰されちゃうよ!》
「……彼は私の代わりに、言葉で反応してくれる。ルールの判定は私が行うが、実際にどのくらい影響があるのかは、彼らミニチュア版の話す言葉で判断してみてくれ。テンタクルドールは喋らないが……まあ何とかなる」
 男はとんとん、と机を叩いた。
「それでは始めよう。君の名は?」
「久遠寺・遥翔だ」
「では久遠寺……アンディファインド・カードを始める。君の選択したカードはゲイザーだ。どう対処する?」
「まずは体当たりを警戒。相手の動きを見切り距離をとる。
 それさえもらわなきゃどうとでもなるからな」
 遥翔の言葉に、ゲイザーはむくれた。
《このお兄さん超厳しいんですけど! んー、被弾覚悟で突っ込んでいってもいいんだけど……見る感じ近距離が得意なインファイターっぽいよね。相手のレンジ内で戦うのは嫌だなあ》
「こらゲイザー。レンジじゃない。射程距離だ」
《だって射程距離って言いにくいじゃん。それに近距離武器の射程ってなんだよ!》
 ゲイザーはくるくると回って文句を言うが、ぴたりと止まってじいっと遥翔を睨んだ。
《よし、射程の長さは強さ! 目からレーザーだ! びびびびー》
「その瞬間を待っていたぜ!」
《何ぃ!?》
 遥翔は高らかに宣言した。
「懐から鏡を取り出し、レーザーを反射させる! 相手の瞳に返すぜ!
 お前は自分自身の光線で視界を奪われるんだ!」
《な……なんだって……!? グワー! 熱い、目が熱いよ!》
 ゲイザーはぎゅうっと目をつぶった。
「よし! その隙に俺はこの自慢の拳、焔黒掌をゲイザーの瞳に叩き込み、一気に焼き尽くしてやる。
 はぁあぁあッ、燃えろぉッ!!!」
《ぐわあー!! 熱いぃぃぃ!!!》
 ゲイザーはぽっと燃え上がり、ぷしゅうと音を立てながらぺちゃりと墜落した。
「どうだいカードマスターさんよ。俺の行動に納得のいかない部分はあったかよ?」
「……勿論、君の勝ちだ、久遠寺」
 男は拍手をしながら、遥翔を見つめた。負けたとはいえどこか楽しそうだ。
「近距離攻撃が主体となる君は、上手く立ち回り、射程の有利を覆した。鏡でレーザーを跳ね返すというのは見事な案だ。体当たりではダメだと思わせ、レーザーを誘うのもまた見事な立ち回りだ。自分の得意な事を行うための策と、それを実行するだけの力……綺麗な、いやスタイリッシュな回答だった」
「何かそんなに褒めてもらうと、変な感じだな」
 遥翔は頬を掻いた。

●漆島・昴一vsゲイザー
「さて、次は君にやってもらおう」
 男は昴一を見つめた。
「すまないねお嬢さん。君を最後にするのは悪意あっての事じゃない。全てを対象に選んだ君に、大トリを務めてもらいたいと思っての事だ……」
 そう美亜に頭を下げつつ、再び昴一に向き直った。
「君の名は?」
「俺は漆島・昴一だ」
<そして私はニミュエ>
 ふと彼の懐から、女性の声がした。
 彼の支援AI、ニミュエだ。
<臨場感ある説明とくるくる動く敵キャラクター、すごいと思わない?>
「そうだな。けどUDCアースでUDCのカードだからな……」
<流行ったら世も末ね。見てる分には良いんだけど>
「プレイしろよ。俺を支援してもいいんだぞ」
<……こういうゲームは、まわりで見ていても楽しいわね>
「……OK。要はスルーかテメー」
 昴一は頭を掻きながら、男に向き直った。
「準備は良いかな?」
「おう、問題ない。始めようか」
 その言葉を聞くと、男は頷き、パチンと指を鳴らした。
《えっ、また僕ぅ?》
「ご指名だ、ゲイザー。人気者だな」
《人気者は辛いよ。者じゃないけど。眷属だけど。人気眷属!》
 再び現れたゲイザーは、くるくると回りながら言い……そしてぴたりと止まった。
《……おっ、今度は傭兵さんか。銃とか持ってるのかなあ。射程有利、なんて言えなさそうだ》
 ふにふにぷにぷにと、不安そうに膨れたり縮んだりしている。
「何かUDCって感じがしないな。マスコットキャラみたいだ……まあいい。
 対処するってんなら、やっぱ武力行使だろ。まずは飛び道具を投擲だ」
《おっ、いいぞ。どうやって対処しようかな、避けようかな、撃ち落とそうかな。うーん……撃ち落としちゃえ! びびびびー》
「隙が出来たな……二回攻撃だ」
《何ィ!?》
 ゲイザーは驚き、一つしかない目を大きく見開いた。
「飛び道具は囮。本命はこっちだ。銃で一つ目を狙ってスナイプするぜ」
《ぺやっ! 痛いっ!》
 謎の擬音を放ち、ゲイザーはぎゅうっと目を瞑った。
《けどまだ動けるもんね! 記憶に従って傭兵さんが居たところに体当たりだ!》
「目が見えてないなら当たらねえだろ。
 避けながら銃剣アビスバヨネットを剣に変形させて、それでカウンターだ」
《んぐうううううう!! 痛い!!》
 ゲイザーは呻き、ぺちゃりと地面に墜落した。
「さて、カードマスター。俺の行動はどうだったか?」
「……君の勝ちだ、漆島」
 男は拍手をしながら、楽しそうに昴一を見つめた。
「今回はお互いに長射程の攻撃を持っていた。君は飛び道具を投げて相手の気を逸らす事で、本命の銃でのスナイプの成功率を高めた持っていた武装が銃剣というのも良い点だったな。接近戦になっても対応できるのだから……自分に出来る事をしっかりと理解している、丁寧な回答だった」
<良かったじゃない。沢山褒められて>
「はいはい。それじゃ席を譲らないとな」
<はいは一回>
「小言は後だ」
 昴一とニミュエはそんな風に言い合った。

●紅月・美亜vsオールカード
「さて、お待たせして申し訳ないね、お嬢さん」
 男は美亜の方を向き、頭を下げた。
「構わない。クックック、終わるのはすぐだからな」
 美亜はそう言うと、ばっと宣言した。
「有象無象の区別なく全て波動砲でふっ飛ばせば解決だ!」
「……現実的に可能とは思えないので駄目だ」
「何。納得できない? 仕方ないな」
 美亜は鼻を鳴らし、席に着いた。
「Operation;MULTIPLY、発令。先に言っておく、嘘はつかない方が身の為だ」
 ぼう、と……小さな戦闘機が無数に現れて、男の周りを飛び回った。
「……成程。嘘を吐けば攻撃が行われる訳か。判定を詐称させないための保険……という訳だな」
「その通り。質問は後程行う……嘘を言わなければ害はないから問題は無いだろう?」
「構わないよ」
 男は戦闘機が跳び回る中、焦りも何も見せず応えた。
 パチン、と指が鳴り、全てのカードから縮小版の邪神たちが現れた。
「こちらの準備は出来た」
「ではゲームを始めよう」
 美亜はそう言うと、矢継ぎ早に攻撃宣言を行った。
「まずゲイザー、ジャミング機を使って接近」
《……何ィ! 視界が乗っ取られた! 僕の目を盗んだな!》
「そのまま弱点の目にパイルバンカー帯電式H型で一撃」
《グワー!? 効くぅ!?》
 ぺちゃり、とゲイザーは地面に墜落した。
「アリス、メンズビーム」
《メンズビーム!? や、いやー! むさくるしいの男のビームなんてきらーい!》
 とてっ、とアリスはこけて地面に倒れた。
「オクトパシー、ライトニング波動砲で一発。漆黒の番犬を舐めるな」
《オフッ、電気はあかんて……痺れるゥ!》
 ぼん、とオクトパシーは帯電して焦げ、倒れ伏した。
「テンタクルドール、ロックオンレーザーでポイント倍点」
《 『回避できません』 》
 言葉が書かれたテロップを持ったまま、テンタクルドールはひっくり返る。
《 『くやちい』 》
 ダイイングメッセージを残し、テンタクルドールは動かなくなった。
「…………何という力押し。何という火力の高さ……何という恐ろしさ。こんな事があり得るのか」
「何だ、ゲーム的対処不可等は聞いてないぞ。全部実行できるしな」
 驚愕の余り目を見開いた男に向かって、美亜は事もなげに言った。
「持てる火力を一点投入するのもまた策略だ。違うか?」
「……その通り。全く持ってその通り。凄まじい力強さ、見せて貰った。相手に応じて武装は変えて対応している……手数が大変豊富なのだな。自分の持てる札を全力で投入するのもまた、一つの作戦だ。実に豪快な回答だった」
 男は苦笑し、拍手をした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​


「……それにしても、中々良い滑り出しだ。自分の得意な事をするために策を用いた者……技術と立ち回りで相手を上回った者……そして持てる力を全力で投入した者。どれも回答としては素晴らしい。優劣つけがたい」
 男は楽しそうに笑う。
 顔が膨れ上がって中々ヤバい見た目なので、笑うとホラー映画の悪役のようだ。
「ここで私は一つアドバイスをしてみよう。自分の有利を押し通す事が出来れば、相手に勝ちやすい。だからそうするために、色々考えてみるのも面白いぞ。そう言った意味では、先ほどの三人の回答は、方向は違うものの、指針を指し示してくれるだろう」
 男は言葉を区切り、ニヤリと笑う。
「……勿論、私のアドバイスや前例を大きく覆すような行動をとる事も出来るだろう。このゲームは発想次第で多種多様な色合いを見せてくれる……私はそれが見たいんだ」
 そう言う男の瞳は、どこか遠くを見るようだった。
 ……男は頭を振り、顔を上げた。
「さあ諸君! ゲームを続けよう!」
神原・響
ナイトメア・アリスに対処します。
様々なUDCと関わった事によって磨かれたコミュ力と言いくるめを用いて口説きます。
悪夢の中でも、呪詛耐性と地形を利用することで有利に立ち回りましょう。

アドリブOK



「それでは、次は私が行きます」
 そう言って前に出たのは、神原・響。
 黒い髪に黒い瞳……どこから見ても間違いなく日本人の彼は、UDCエージェントでもあった。机の上に並べられたカードを鋭い眼光で見渡し、きらりと眼鏡が光る。
 そして彼の隣には……少し不思議な童女が居た。足首まで届くほどの黒い長髪に、赤い瞳……彼女はどこか浮いていた。
 ……物理的に、浮いていた。
『妾は特等席で見ていてやろうかの』
 少女……いや、響と共に暮らすUDC、『黒の女王』はくすくすと笑った。
「ふむ。では参加するのはそちらの青年かな?」
「はい。私です」
 頭の膨れ上がった男が見つめ、響は頷きで返した。
「よろしい。君の名は?」
「神原・響と言います」
「では神原……君が選択するのはどのカードかな?」
「この少女、ナイトメア・アリスを指定します」
 響は、ちょっと禍々しさがありつつも可愛らしい、金髪の幼女が描かれたカードを指差した。
「……よろしい。それではゲームを始めるとしよう……クックック」
 男は喉の奥でくぐもった笑い声を立てた。

●神原・響vsナイトメア・アリス
「ではアリス、おいで」
 男がバチンと指を鳴らすと、ぽふんと煙があがり……カードに描かれているナイトメア・アリスの、縮小版が現れた。食玩かカプセルトイのように、手乗りサイズの小さな金髪幼女だ。
《あたしをご指名ね! 良い度胸だわ!》
 ナイトメア・アリスは自信満々に、無い胸を張って響を見上げた。
「さて、彼女は悪夢に人を引きずり込む眷属だ。悪夢は彼女のテリトリーだから気をつけなければならないぞ……と、私が改めて言うまでも無い事か」
 男は苦笑し、響を見つめた。
「さて神原。アンディファインド・カードを始めよう」
「分かりました。それではまず、悪夢に自分から向かいます」
 響は臆することなく宣言した。狼狽えたのは男の方だ。
「何と。自ら敵の領域に入りに行くとは……」
《おにーさんから来るなんて、馬鹿ね! 引きずり込む手間が省けるわ!》
 ナイトメア・アリスは勝ちを確信したかのように、物凄く晴れやかな笑顔を見せた。
「念のため言っておくが、悪夢の中では行動にペナルティがかかる。戦闘行動などは制限される上、ナイトメア・アリスの方が有利になるぞ」
「問題ありません。私も様々なUDCに関わった身……少女の作り出す悪夢くらいなら、いくらでも対処できます」
 そう。彼には呪詛耐性や破魔があった。加えて、催眠術を嗜む事から無意識についての知識がいくらかあり、そこから悪夢についての知識を導き出す事も出来た。『今その場にあるもの』を使う地形の利用術にも長ける彼にとって……悪夢はそれほどアウェーではなかったのだ。
 ……という事を、男が分かったかどうかは定かではない。
 しかし男は、公平に正確に判定しなければならない、という制約があった。
「……成程。君にとっては悪夢は特に問題ない領域という訳か」
《えっ!? うそうそ、だってあたしの悪夢なんだよ? 本当にそうなの?》
「カードマスターの私が言うのだから間違いない。彼にとって君の悪夢は児戯に等しい。殆ど効果は無いと言っていいだろう」
 男が無慈悲に宣言すると、ナイトメア・アリスはころんとひっくり返ってじたばたした。
《うにゃー! ここあたしの悪夢なんだもん、あたしの場所なんだもん!》
「そう怒らないでくださいお嬢さん。笑っている方が可愛らしいですよ?」
 響がナイトメア・アリスを見つめて微笑んだ。
《……んにゃ、なんか……予想と違う。なんかこう、ぐわーってお仕置きしに来るかと思ったのに……なんで優しいの?》
 ナイトメア・アリスは戸惑った。
 彼女は人に仇なす存在。悪夢へ引きずり込み一方的に攻め立てるのが、彼女の戦法だ。
 それなのに、響は悪夢の中で平然としており……しかも敵である彼女に優し気な言葉をかけている。
「アリスさんは悪夢の中で暮らしているんでしょうか?」
《ん? うん、あたしの拠点が悪夢の中にあるんだよ。人の夢の中で暮らしてるの》
 ナイトメア・アリスは、この時点で響に対して魔法を打って攻撃する……という事は出来た。出来たが、彼女はその道を選ばなかった。
 彼女は人と真正面から話すという事が無かった。故に少しだけ……興味を持ったのだ。
「悪夢の中で暮らしているんですか。他に人はいるんでしょうか?」
《んーん。いないよ。あたしだけ。後はあたしが引っ張って来た人だけ》
「……一人では寂しくはありませんか?」
《……寂しい?》
 そう言われて彼女は考えた。
 彼女は悪夢の中で一人暮らす。時折人を引きずり込んで、ぺちぺちと一方的に玩具にして遊び倒す……その瞬間はとても楽しい物だった。
 しかしそれ以外の時間は?
《……ちょっと、寂しいかも。誰も居ない悪夢で、一人でずうっと積み木を立てたりドミノ作ってるの》
「賽の河原積みのような事をしているんですね……けれどそれなら、一人より二人で遊ぶ方が楽しいと思いますよ。私はいくつか遊びを知っていますから……」
 響はそこで一旦言葉を区切る。
「……私と一緒に遊びませんか?」
 そして、そう言って微笑んだ。
《…………うん! 遊ぶ!》
 ナイトメア・アリスは天真爛漫に笑みを返し……しゅう、と煙となって消えた。
「……お見事! 自ら彼女の住まう悪夢へと足を踏み入れ、彼女を口説き落とすとは……なるほど確かに、力をぶつけ合うのが対処方法ではない。言葉を用いて言いくるめるのもまた、有効な手段の一つだ」
 男は拍手をしながら、響を見つめた。
「さて、それではカードマスター。私の判定はどうでしょうか?」
「勿論君の勝ちだ、神原。ナイトメア・アリスは攻撃する意思を失い、君に興味と好意を抱いた。その時点で彼女は敵ではなくなった……故に君の勝ちだ」
 男はそう言って、楽しそうに笑った。

成功 🔵​🔵​🔴​

マイア・ヴェルナテッド
他参加者との絡み及びアドリブ可

対処の相手は『オクトパシー』

効くとは思いませんが警戒心を解く程度の効果を期待しての『誘惑』
相手に悪感情を抱かせないように『礼儀作法』
相手との会話の選択肢で地雷を踏まないための『第六感』
会話の節々から相手の癖や嗜好などを把握し『学習力』での記憶
これらの要素を踏まえてオクトパシーとの会話、和平交渉を試みます。

「勝利条件は対処する。であって、撃破する。ではない。そうですね?学術の徒して異種族の事とても興味がありますし対話が成立する知能があるならばむやみに争う必要もない事は相手にもわかるでしょう。」

どうしようもない場合のみ『属性攻撃(雷)』を乗せた攻撃でバッサリいきます。


モルツクルス・ゼーレヴェックス
【WIZ】【アドリブ大歓迎】

なぁるほど、必ずしも暴力でぶっ倒すことが勝利条件じゃないってことっすね!

「オクトパシー殿を指名するっす!」

自分のプレイングで男を「満足」させてみせるっす!

現れたオクトパシー殿にまずはお辞儀
【礼儀作法】を用いて煽てるっす
そんでもって、対して強くもない自分がオクトパシー殿と戦うなんて無謀
なんで、別の勝負をして欲しいと提案
「酒飲み勝負」先に寝た方の負け
ガンガン飲ませるっす

【コミュ力】の軽妙トークで楽しませ
【料理】で酒に合う肴を提供

【学習力】と【情報収集】で、オクトパシー殿の好む話題に対応!

さて、自分が酩酊して来てもオクトパシー殿が余裕の場合
【睡眠雲】っす!
バレないように!


闇之雲・夜太狼
SPDで行動
アドリブ・絡みも歓迎!

邪神のカードゲーム?
すっごくおもしろそう!やらない手はないよね!
誰にしようかな~♪
三枚目のオクトちゃん、君に決めた!

あ。戦う前にちょっと待ってよ!
言葉が通じて話が分かるなら、まずは話し合うべきじゃない?
さっきは三枚目って言っちゃったけど、オクトちゃんはよく見ると二枚目だな、って
俺はね、本当は戦うなんて嫌なんだ!
それでも戦わなきゃいけないからさ
まずは、正々堂々を誓って握手しよ?

と、【コミュ力】で【言いくるめ】を図り接近
左手を差し出し握手に応じたら、手を取り仕込んだエレメントシューターで雷の【属性攻撃】を【だまし討ち】!
ダメだよ~?左手の握手は気をつけなくちゃ~♪



「なぁるほど、必ずしも暴力でぶっ倒すことが勝利条件じゃないってことっすね!」
 そう言って前に出たのは、モルツクルス・ゼーレヴェックス。
 黒い瞳と黒い髪。それだけを見れば普通の人間に見えるかもしれない。しかし彼の背中に生える白く神々しい羽が、彼は人間ではなくオラトリオだということを教えてくれる。加えて『成せば成る』と書かれた特徴的なハチマキが中々に目立つ。
「邪神のカードゲーム? すっごくおもしろそう! やらない手はないよね!」
 そしてもう一人、赤い瞳の少年が前に出た。
 彼の名は闇之雲・夜太狼。狼の耳と尾を持つ、人狼の少年だ。
「私もやります」
 更にもう一人、マイア・ヴェルナテッドが足を踏み出した。
 赤い瞳に白い髪。そして余り肌を露出させない服……という西欧人形のようなダンピールの女性だ。
「クックック……盛況だな」
 男は三人を眺めてにやりと笑った。
「君たちの選択するカードは何かな?」
「オクトパシー殿を指名するっす!」
「あっ俺も! 三枚目のオクトちゃんに決めてる!」
「私も、オクトパシーに対処するつもりです」
 三人とも、三枚目のカード、オクトパシーの方を見た。
「ふむ……少し考えさせてほしい」
 男は『考える人』のポーズをとり、暫し無言になった。
「……申し訳ない、一人ずつやって貰っても構わないだろうか。オクトパシーは複数人を相手取れるほどの能力を持っていない。恐らく三対一ではどうやっても一方的な展開になってしまうだろう。もちろん、君たちがそれを望むのなら私は止める事はしないが」
 男が申し訳なさそうにそう言うのを聞いて、猟兵たちは頷いた。
 それを見て、男は頭を下げた。
「すまないね。協力プレイが出来ると言っておきながら、一人ずつやらせてしまうというのは……カードマスターとしての実力が足りない証拠だ……おっと、今からゲームをするというのに、これでは湿っぽくなってしまうな。すまない」
 男は気分を変えるかのように、頭を振った。
 膨れ上がった頭がぶんぶん震え、中々凄まじい光景だ。
「さて、それでは誰から始めようかな?」
「まずは私がやらせてもらいます」
 席に着いたのは、マイアだった。

●マイア・ヴェルナテッドvsオクトパシー
「さてお嬢さん。君の名は?」
「マイア。マイア・ヴェルナテッド」
 マイアの言葉を聞いて男は頷き、パチンと指を鳴らした。
 カードの上にぼふんと煙が上がり、オクトパシーが現れた。頭をタコにすげ替えた人間の男性、というような見た目をしている彼は、中々悍ましい姿をしていた。ミニチュアだからいいものの、これが本来の大きさで街を歩いていたら大騒ぎだろう……キマイラフューチャーならば、受け入れられるかもしれないが。
《おっ! わいのご指名か。待っとったで!》
 何だか奇妙な訛りがある話し方で、オクトパシーが言った。
 彼はぐっと親指を立てて、マイアを見上げている。
《にしてもベッピンさんやな! こんなベッピンさんに指名されるなんて、わいも嬉しいで!》
「私語が多いぞオクトパシー。さてマイア、準備は良いかな?」
「先に聞いておきます。勝利条件は『対処する』であって、『撃破する』ではない。そうですね?」
「その通り。そのルールに関して正確に述べるなら、『敵意ある行動を取れなくなるように対処する』となる。従って、撃破することでそもそも行動できなくなるようにするのも一つの回答であるし、説得する事で敵意を失わせるというのも一つの回答だ。今までの例で言うと、最初の三名は撃破という手段を取り、先ほどの青年は口説くことで敵意を失わせたな」
 男の言葉を聞き、マイアは頷いた。
「さて、他に聞くことは無いかな? 準備に問題は無いかな?」
「いつでも大丈夫です」
 マイアの言葉を聞き、男は高らかに宣言した。
「ではアンディファインド・カードを始める! さあ、どう対処する?」
「学術の徒として、異種族の事にはとても興味があります。なので会話を試みます」
《オウ! なんやわいを口説くつもりか! ちょっとやそっとじゃ折れんで!》
 オクトパシーは強気に言葉を返す。
 それに対して、マイアは丁寧に礼を返した。
「私たちにはお互い会話を行う事が出来ます。今こうやって対話が成立しているのが良い証拠です。そうであるならば、お互いの事を良く知り、歩み寄る事もまた可能ではないでしょうか?」
 そしてマイアは上目遣いで、オクトパシーを見上げた。
 上流階級出身であり、しっかりと身についている礼儀作法が、彼女の立ち振る舞いからひしひしと感じられる。加えて美麗なダンピールの申し出とあれば、誘惑されない男は少ないだろう。
《オウ! なんちゅう可愛い上目遣い! よっしゃ、色々お話しようでベッピンさん》
「寛大な対応、ありがとうございます」
 マイアは微笑みを返した。
《とは言えどんな話しようかいな。わいら種族が違うから、共通の話題っちゅーもんがないで》
「そちらの色々な事を教えて下されば、と思います。どこで暮らしていらっしゃるのか、どういう神様についているのか……など」
 マイアは第六感を働かせ、相手の悪感情を刺激しそうにない話題を取り上げていく。
 オクトパシーはどっかと地面に座り、にこやかに応えた。
《おっしゃ良い話題やな。そんじゃ教えたる。わいらは見ての通りタコや。水陸両用やけど、基本的には海の底に住んどる。わいの出身地は瀬戸内海の方や。中々ええ場所やで》
「なるほど。あなたたちは集落を持つのですか?」
《あるで。海の底の王都……っちゅーと大げさやな、まあ大きな街がある。で、地上にも人目から隠れられる位置に、ちっこい集落がある。果物や野菜なんかは地上やないと取れんからな。んで海の底の街では日がな一日大騒ぎ》
「大騒ぎ……というと、何故ですか?」
《わいらの神、大いなる海の主に捧げるお祭りや。海の中でも燃える特殊な火種を使って、色んな飯を捧げて、お祭りや。毎日やるんやで、これ》
 オクトパシーは懐かしそうに、そして実に楽しそうに笑った。
 そしてその間、マイアは彼の発言と様子から、彼の性格を推測していた。
(交流に否定的な人ではないですね。自らの出自に誇りを持っており、集落を愛している様子がうかがえます。自信家でもあるようですね。となると、和平交渉も出来そうです)
 そう考えた彼女は、頭の中で言葉を組み立て、紡いだ。
「私たちは、お互いに分かり合う事が出来ると思います。こうやって色々と話す事も出来ますし……むやみに争う必要はないと思いませんか?」
《オウ! 何言うとるんや。そんなんダメやで。わいらはバケモン、人間と対立するもんや》
「人と歩み寄る事が出来れば、神に捧げるお祭りは、より豪華になると思いませんか? 集落を広げる事も出来るでしょう。様々な文化を取り入れる事も出来るでしょう。もちろん、それがあなた方にとって嫌なものであれば拒めば良いのです」
 そこでマイアは、一旦言葉をためた。
「……選択権はあなたにあります。あなたが自分の意志で決断するのです」
《……ふむ》
 オクトパシーは、ひげをもしゃもしゃと掻く要領で、タコ足をうにうにと掻いた。
 暫し何事かを考えていた彼は、やがて顔を上げた。
《ベッピンさん、気に入ったで。一方的に押し付けるんなら跳ねのけるつもりでおったけど……わいらに決めさせてくれるんなら、考えたるわ》
「では、とりあえず今のところは、敵対は無し……と言う事で構いませんか?」
《ええで。確かに争わんでもいい道があるかもしれんな……ベッピンさん、ありがとな》
 オクトパシーはそう言って背を向けると、しゅうと煙のように消えていった。
「……実に見事だ。礼儀を守り相手を尊重するところから始まり、会話を行って癖や嗜好などを把握していく……そして得た情報を使って、丁寧に説得していく。口説き落としや言いくるめとはまた違う、相手と対等の位置に立ってからの説得だ。良い物を見せて貰った」
 男は拍手をしながら、楽しそうに笑った。
「カードマスターさん。私の結果はどうですか?」
「勿論君の勝ちだ、マイア。君の話術によって、オクトパシーは敵対の意思を失った。間違いなく君は、オクトパシーに対処した……とても良い回答だった」
 男はそう言って頷いた。

●モルツクルス・ゼーレヴェックスvsオクトパシー
「では次は自分がやらせてもらうっす!」
 そう言って、モルツクルスが席に着いた。
「では青年。君の名は?」
「自分はモルツクルス・ゼーレヴェックスっす!」
「よろしい、モルツクルス。では準備は大丈夫かな?」
「問題ないっすよ」
 モルツクルスの言葉に、男は頷き、パチンと指を鳴らした。
 カードの上にぼふんと煙が上がり、再びオクトパシーが現れた。
《オウ!? なんやまたわいか、今日は忙しい!》
「人気者だぞ、オクトパシー。ああ先に行っておくが、さっきの結果は考慮しないで改めて判定を行うように」
《ん、分かっとる。そうやないとゲームにならんもんな。さっきはベッピンさんに説得されたが……この兄ちゃんはどないしてくるかな?》
 オクトパシーはじいっとモルツクルスを見上げた。
 モルツクルスは、ぴしりとお辞儀をした。
「自分はモルツクルスっす、宜しくお願いするっすよ、オクトパシー殿!」
《オウ、礼儀正しい人は好きやで、宜しゅうなモルツクルス》
「ありがとうっす。それにしても、オクトパシー殿……中々強そうっすよね。身体は鍛えてたり?」
《海の底での暮らしやからな。自然と力がつくもんや。ほれ!》
 オクトパシーはまんざらでもない、という感じに腕をまくり、力こぶを作ってみせた。
「おお、凄いっすね。聞いた話では、呪詛を操る事も出来るとか」
《できるで。まあわいらの神様の力やけどな。けどわいと同レベルで使えるのはそうおらん》
 中々嬉しそうに、オクトパシーは言った。
「それで、対して強くもない自分がオクトパシー殿と戦うなんて無謀……と思う訳っすよ」
《オウ! まあ兄ちゃんは頭使う感じがするしな。となるとわいの勝ちか?》
「いやいやいや! そうじゃなくて、別の勝負をしてほしいっす!」
《別の勝負……?》
 オクトパシーはうにうにとタコ足を掻いた。
「そう。別の勝負……酒飲み勝負っす!」
 モルツクルスは高らかに宣言した。男はこの申し出に感嘆の吐息を洩らした。
「……なるほど、別の勝負方法を持ち出して勝敗を決める……と。発想の勝利だな。問題ない」
《お、カードマスターからの許可が出たで。おっしゃあ! 酒や! 一杯飲んだる!》
「乗り気っすね! いいっすよ。ルールは簡単、酒を飲んで先に寝た方の負けっす!」
《オッケーや! それじゃ焼酎で行くで》
 オクトパシーはカードの上にどっかと座り、ニヤリと笑った。
 傍らには、どこからか取り出した焼酎の瓶の、ミニチュアが置いてある。
《……わいは結構強いで?》
「頑張るっすよ!」
「さて、これはアンディファインド・カードであるため、実際に飲むわけでは無い。そのため、私が君の体質を分析して、一杯毎にどれくらい酔ってきたか、というのを告げる。それを参考にしてほしい。ちなみに結構度が強いモノだ、という事にさせてもらう。オクトパシーはミニチュアの焼酎を飲むから、よく観察しておいてくれ」
 男が一旦割り込み、そう説明する。モルツクルスは頷いた。
「ではまず一杯目。まだ平気だな」
《んー美味い! 酒が身体に染み渡るで!》
「良い飲みっぷりっすね! 酒の席の経験が多かったりするんすか?」
《おうよ。わいらは毎日毎晩、神に捧げるお祭りやっとるからな。自然と慣れるもんや……この通り!》
 オクトパシーがグイッとグラスを飲み干した。
「おお、それなら酒の強さはかなりのもんっすよね。街で一番とかっすか」
《それくらいかもしれんなあ。大体お祭りでも、わいが一番最後まで飲んどるからな。ほれ兄ちゃんも飲め飲め》
「二杯目。問題なし」
 男が告げるのを聞きつつ、モルツクルスは少し考えた。
(多分っすけど、この感じだと間違いなく、オクトパシー殿の方が酒に強いっすね……彼の酒のペースを上げるには、どうするか……)
 彼は暫し思考し、方針を決めた。
「よし、オクトパシー殿。酒の肴にこんなのは如何っすか。これはレンコンの柚子コショウ炒めっす」
《オウ! ええなこれ、柚子の香りが爽快や。コショウのピリッとした辛さが堪らん!》
 オクトパシーはグイッとグラスを飲み干した。
「そしてこんなのも。辛いばっかりではないっすよ、みりんや鰹節で旨味たっぷりに味付けした松前漬けに、炙ったホタテを乗せて……」
《炙ったホタテの香ばしい匂いがええな……松前漬けの味が染みて美味い!》
 オクトパシーはガンガングラスを空にしていく。
 ……が、中々酩酊した様子はない。
「五杯目。そろそろ酔ってきたな。平衡感覚がそろそろ危うい」
 男はそう告げ、モルツクルスはオクトパシーを見つめた。
(……マジっすか。この調子だと自分が負けるっすね……では最後の手段!)
 モルツクルスはオクトパシーに再び酒の肴を提供し、気を逸らしつつ……詠唱を始めた。
「……魔なる力よ、安らぎよ、深く暗き眠りを与えよ」
《……んお。飲み過ぎたかいな。目がしばしばするで》
 オクトパシーは目を瞬かせて呟いた。そしてグラスから焼酎を飲み……こてんとひっくり返った。
 ぐごお、と大きないびきをかき始める。
【睡眠雲】。催眠効果が込められた雲を放ち、睡眠状態に陥れるモルツクルスのユーベルコードだ。
「……勝敗は決したな」
 男がそう言うと、オクトパシーはぼふんと煙のように消えて行った。
「自ら勝負の方法を提案し、勝敗を決めるというのは良い発想だった。その上で自分に出来る事を考え、上手く勝負を運んだ……『眠ったら負け』というのは、君の最終手段もあっての事なのかな?」
「そうっすね……使うとは思ってなかったっすけど」
 モルツクルスの言葉に、男は楽しそうに笑い、拍手した。
「君の勝ちだ、モルツクルス。発想の勝利という言葉は、君にこそ相応しいだろう。見事な回答だった」

●闇之雲・夜太狼vsオクトパシー
「さて、待たせてすまなかった」
「ん、大丈夫だよ。他の人のも見てて楽しかったから♪」
 男が頭を下げ、一方夜太狼は笑いながら席に着いた。
「さて、君の名は?」
「俺? 俺は闇之雲・夜太狼。よろしくね!」
「……アンノウンか。良い名前だな」
 男はふと微笑んだ……が、すぐにその微笑みは消えた。
「では闇之雲。準備はいいかな?」
「勿論~」
 夜太狼の回答に男は頷き、パチンと指を鳴らした。
《オウ!? またわいが指名か!? わいは自分でも知らんうちにハリウッドスターにでもなったんか?》
「それは過言だな。さて、ではアンディファインド・カードを始める!」
《宜しゅうな、オオカミ少年》
「俺にはちゃーんと、闇之雲・夜太狼って言う名前があるんだよ」
《ええやんオオカミ少年で。人の名前覚えるの苦手なんや、許してえや》
「じゃあ許すよ♪」
 夜太狼が言うと、オクトパシーはにかっと笑った。
《ほんで少年、何してくるんや? 説得か酒飲み勝負か! 勿論、普通の勝負でもええで……ていうかそろそろ身体動かしたいな》
「あ。戦う前にちょっと待ってよ!」
《何や?》
 オクトパシーは不思議そうに夜太狼を見上げた。
「言葉が通じて話が分かるなら、まずは話し合うべきじゃない? さっきは三枚目って言っちゃったけど、オクトちゃんはよく見ると二枚目だなって」
《オウ! 少年、わいのかっこよさが分かるか! ええ目を持っとるなあ。それにしても三枚目のカードに二枚目か、良いセンスしとるな!》
「でしょでしょ?」
 夜太狼は子供のように笑った。
「そんでさ、俺はね、本当は戦うなんて嫌なんだ! それでも戦わなきゃいけないからさ」
 そして夜太狼はすっと左手を差し出した。
「まずは、正々堂々を誓って握手しよ?」
《オウ! なるほどな。正々堂々か、ええ言葉や! 気に入ったで!》
 オクトパシーはにかっと笑い、手を差し出した。
《そんじゃ正々堂々を誓って握手……》
「えーい♪」
《オウ!?》
 瞬間、手を伸ばしたオクトパシーがビリビリビリ! と痺れた。
 それを見ていた男も、思わず噴き出した。
「ぶっ、クックック……成程! 華麗なだまし討ちだな!」
《あ、あふぅ……電気は……あかんて……》
「ダメだよ~? 左手の握手は気をつけなくちゃ~♪」
 こてんとひっくり返ったオクトパシーを見下ろしながら、夜太狼は笑った。
 彼の左手には、エレメントシューターが仕込まれていた。それを握手した瞬間に使って、ばちりと雷属性の攻撃を打ち込んだのだ。
 オクトパシーはその一発で大分手痛いダメージを受けたらしく、ひっくり返ったまま動かなかった。
「あ、これで勝ちなの?」
「その通り。君の勝ちだ、闇之雲」
 男は楽しそうに笑い、拍手をした。
「相手の油断を誘い、握手した瞬間に電撃を流し込むだまし討ち。シンプルだが、それ故に素晴らしい回答だ。相手をおだてた上で正々堂々勝負するための握手、などと言えば、それくらいは……と思うものだ。オクトパシーはそう思って、見事に罠にはまった訳だ」
 男は思い出し笑いのように、クックックと喉の奥で音を立てた。
「それにしても、ここまで見事なだまし討ちは中々見ないな。アンディファインド・カードは、邪神に対処するゲームだ。故に策を凝らし撃破する者や、説得や言いくるめをする者はいるのだが……だまし討ちは少ない。これもまた発想の勝利だと言えるだろう」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『不定形少女』

POW   :    あたまはこっちにもあるよ
自身の身体部位ひとつを【自分が擬態している少女】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD   :    みんなとかしちゃうよ
【触手状に伸ばした腕】が命中した対象に対し、高威力高命中の【衣服を溶かす溶解液】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    いっしょになろうよ
【全身を不定形に変形させて】から【相手に抱きつくために伸ばした身体】を放ち、【少しずつ溶解させていくこと】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●猟兵vs不定形少女
「……さて君たち、猟兵……オブリビオンを倒す者たちよ」
 男はふと顔を上げ、部屋の中に居る猟兵たちを見渡した。
 ……男は今、間違いなく”猟兵”と、そして"オブリビオン"と言った。
「アンディファインド・カードは楽しかったかな? 楽しんでもらえたら双方にとって良いのだが。そうでなければひとえに私の力不足だ」
 男は立ち上がり、カードを懐にしまいこみ、机を片付けた。
「……さて次は、実際に実力を見せてもらう時間だ。アンディファインド・カードでは現れた邪神のカードに対処してもらったが……今度は実際に私が召喚したモノに対処してもらうとしよう!」
 パチン、と男が指を鳴らした。
 すると、ぬるり、ぬるり、と。床から粘液が染みだし、形を作り出した。
「形を持たぬ粘液よ……不定形なる形を持つ少女よ、現れよ!」
 男の声と共に、粘液は形を作り……少女、というような見た目をとった。
「さあ猟兵たちよ。君たちは実際に邪神に……いや、オブリビオンに対処しなければならない存在だ。そうだろう? 今ここに現れたのは、私の力によって呼び出された邪神の眷属のようなものだ。中々可愛らしい見た目をしているが、もちろんそれだけではないぞ」
 男はにやりと笑った。
 ……再び、ぬるり、ぬるりと粘液が染みだす。
 部屋の中に何人もの不定形少女が現れる。
「第二ラウンドだ! この少女たちを撃破してみせろ! 君たちになら出来るはずだ!」
 高らかにそう叫び、男は部屋を抜け、建物の奥へと入っていった。
「……私は奥で待っているよ。クックック」
 バタンと扉が閉まり、同時に不定形少女たちが動き始めた……!
モルツクルス・ゼーレヴェックス
「こりゃまた、かわいらしい敵っす……出来ればお酒でも、と行きたいとこっすけど……」

【ウィザード・ミサイル】を【高速詠唱】で素早くセット

「そうは行かないのが現実の嫌なところっす!」

ファイヤ!

この狭い部屋で味方を妨げずに弾幕攻撃【コミュ力】力でみんなのやりたいことを察して【範囲攻撃】のノウハウをもって実現するっす!

「さあ、やるとなったら、とことんやるっすよ!」

炎の【属性】を強化して、的確に不定形少女達に威力を伝える

「カードゲームの方が、楽しいっすね……」

戦いなんて、ゲームに限るっす

そうは行かないのが、嫌なところなんすけどね
現実と、オブリビオンの


神原・響
「そこを通していただけませんか、私はまだ、彼女と遊ぶ約束を果たしていませんので」
『むぅ、少し妬けてしまうぞ……。まぁ、童たちのようなモノに付き合う、酔狂な愚か者じゃからなぁ、仕方あるまい……貸じゃぞーこの唐変木』

女王の影を解放します。億千万の影の茨によって、少女達を侵食して此方側にして、道を開けさせます。

アドリブOK


マイア・ヴェルナテッド
他参加者との絡み及びアドリブ可

さて、ゲームの時間は終わりましたが目の前のオブリビオンに「対処」するとしましょうか。

【戦闘】
まずは他の猟兵が戦っているところを観察して敵の行動パターンを『学習力』で把握、分析します。
敵の行動パターン等の把握出来たら『呪詛』『属性攻撃(闇)』『生命力吸収』を乗せた『全力魔法』の『黒薔薇の嵐』の『二回攻撃』で殲滅します。


久遠寺・遥翔
「次の手札はそいつってわけか。いいぜ、その勝負乗ってやる。俺の手札はこれだ。焔黒転身ッ!」
異形の黒騎士に転身して戦闘開始だ

「確かにかわいい見た目だが騙されるかよ。不定形じゃねえか」
美少女でもスライムと一体化するのはごめんだ
触手攻撃は見切って双剣で切り払いつつ
獄焔砲による遠距離攻撃を主体に戦うぜ
炎だから水に弱いってことはないが、溶解液に耐性があるわけでもない
極力相手の攻撃は光の盾で受けるか
空中戦技能とダッシュ、ジャンプを駆使した機動力で避けるようにするぜ


闇之雲・夜太狼
アドリブ・絡み歓迎

褒められたのは嬉しいんだけどさー、俺たちを知ってたんだねー
もー!ネタバラシのお楽しみを奪うなんて!
とんでもない大罪だよ!大悪党だよ!

さて、このスライムちゃんたちもカードにいるのかな?
萌え系も押さえるだなんて商売上手!ま、レアリティは低そうだけどね
スライムちゃんたちは……うん、俺たちを飲み込みたがってる?

まずはCODE:RHWを使い、合体で巨大化したウルヴズを待機させて
で、スライムちゃんに捕まったら……もう、遅いなぁ!自分から捕まるよ!
感触はどうかな?息、苦しいかな?溶けたら痛いかな?

一通り味わったら……さあ、ウルヴズ!俺ごと飲み込んで!
ここから我慢比べだ!(【火炎耐性】持ち)


漆島・昂一
まあバレるか、カードゲームが似合うナリじゃねぇからな。
ともかく情報通りのリアルファイトだ、本領発揮といこうか。

「仕事だ、ニミュエ。」
戦闘直前に【纏神】発動。
シャドウフレームで自身を強化してバヨネットで敵を射撃。
"異本紙片"【LIGHTNING】を使った【アビスバレット】・攻撃回数重視の、雷撃弾で攻撃だ。粘液にも数にも、これならいい"対処"になるだろ。
スナイパー、属性攻撃技能も使用する。

UDCの「目」を通してだけ姿絵が見える"異本紙片"、UDCカードと別物とはいえ―

「"UDCのカード"が出回るとか―本当、よりにもよってだろ!」

(連携、アドリブ歓迎です)


紅月・美亜
【アドリブ・絡みOK】
 攻撃を受けないようにアンカーを使って高所に張り付く。生憎、私自身には全く戦闘能力が無いからな。その分、前に出る必要も無いのだが。そして、
「では実戦で立証しよう……Operation;R、発令!」
 全てを一機に統合した次元戦闘機を発艦。今回の機体は上部に持続式圧縮波動砲を装備した戦闘機である。狙撃機からの派生であり射程距離も申し分ない。
「そう、有象無象の区別なく全て波動砲で吹き飛ばせば解決だ。薙ぎ払えッ!」
 瞬間的な威力を犠牲に照射範囲と持続時間を強化した持続式圧縮波動砲ならば物理攻撃に耐性がありそうなスライムでも簡単に蒸発させられるだろう。



●隊列形成
「褒められたのは嬉しいんだけどさー、俺たちを知ってたんだねー。
 もー! ネタバラシのお楽しみを奪うなんて! とんでもない大罪だよ! 大悪党だよ!」
「まあバレるか、カードゲームが似合うナリじゃねぇからな……」
 男が入っていった扉を見ながら、闇之雲・夜太狼が怒って言う。それに応えるように、漆島・昴一が呟いた。
 確かにあの膨れ上がった頭の男は、ホラー映画の悪役か、そうでなければオブリビオンそのものとでも言った方が良い見た目をしていた。
「けど目の前に居るのに対処するのが先だな」
「そうだね!」
 二人は各々ユーベルコードを展開する。
「やるぞ……ニミュエ!"Mark on…"…纏神ッ!"Face up, to SHADOW/DEEPS/CURSE"」
 昴一はレイザーを装着してシャドウフレームを装備……投入したシーカーにUDCの情報を読み込ませ、強化装甲を纏う。
「『オオカミがきたぞ!!』……な~んてね♪」
 夜太狼は17体のオオカミ型の炎を放ち、それを一つに纏めて巨大な炎の狼を作り上げた。

 他方。不定形少女を見据えて武装を構える者たちもいた。
「次の手札はそいつってわけか。いいぜ、その勝負乗ってやる。俺の手札はこれだ。焔黒転身ッ!」
 久遠寺・遥翔は掛け声を叫ぶ。すると、彼の体は焔に呑まれ……異界の黒焔で編まれた鎧を身につけた、異形の黒騎士に転身した。
「そうですね、目の前のオブリビオンに『対処』するとしましょうか。私の手札を見せるには、少々時間が必要ですが……」
 そう言うのはマイア・ヴェルナテッド。日傘型の魔杖を握り、不定形少女たちをじっと見据えていた。
「あの男め。波動砲では出来そうにないなどと言って……実戦で立証してみせよう。私の手札を見せてやる」
 紅月・美亜は男の去った方を睨みつけていた。
「ちょっと待ってくれ、美亜の手札って波動砲か? 有象無象を吹き飛ばす?」
「無論。実戦で出来るという事を立証させなければならないからな。まあ私自身には全く戦闘能力が無いからな、少しカバーをしてもらう事にはなるだろう」
「私も、敵の行動パターンを把握、分析してから攻撃します。なので、それまでは守って欲しいです」
「……なるほど、じゃあ前に出て気を引かねえとな。触手位なら何とかなるぜ」
 悠翔は双剣を取り出して構えた。

 ……そして更に他方。不定形少女を、真っすぐに見つめる者たちも居た。
「そこを通していただけませんか。私はまだ、彼女と遊ぶ約束を果たしていませんので」
 神原・響は不定形少女を、そして男が去って行った方を見つめていた。
 そんな彼の隣に居る、ふわふわと浮いた童女『黒の女王』は、少しむくれていた。
『むぅ、少し妬けてしまうぞ……まぁ、童たちのようなモノに付き合う、酔狂な愚か者じゃからなぁ、仕方あるまい……貸じゃぞーこの唐変木』
 むくれてはいるもの、余り怒ってはいない様子だ。
「こりゃまた、かわいらしい敵っす……出来ればお酒でも、と行きたいとこっすけど……」
 気乗りしない顔で、モルツクルス・ゼーレヴェックスは呟く。
 しかし、不定形少女は応えず、ゆらゆらと近付いてくる。
「……言葉では駄目ですか。ならば仕方ありません、実力行使です」
「戦いなんて、ゲームに限るっす。そうは行かないのが嫌なところなんすけどね」
 二人は思い思いに、武器を手に取った。

 七人の猟兵たちは、大まかに位置を変えて隊列を作った。
 最前衛に名乗り出たのは闇之雲・夜太狼。そして双剣で触手に対応できる久遠寺・悠翔。彼らが前線で少女たちの動きを止める。
 中衛に当たる位置には、神原・響と『黒の女王』、漆島・昴一。二人とも特殊な武装を用いて攻撃するため、前過ぎず後ろ過ぎず……という位置に居る必要があった。
 後衛にはモルツクルス・ゼーレヴェックス、マイア・ヴェルナテッド、紅月・美亜。彼らは戦場を見渡し、観察しながら攻撃を行う……もしくは、大火力の攻撃を溜めて放つ。
 ……そして彼らと不定形少女の戦いが、始まった。

●中衛の先制攻撃
 最初に動いたのは、響と『黒の女王』だった。
「頼みますよお姫様!」
『よかろう! お前の敵は、童の敵だ。存分にもてなしてやろう!』
 笑いながら不定形少女を見据えた『黒の女王』は、周囲から影の茨を出現させた。
 茨はぞわぞわぞわ、と周囲を侵食し……不定形少女たちへと染み込んでいく。そうして味方につけようという寸法だ。
『……む。全員乗っ取れると思ったんじゃがな』
 黒の女王は、不満げにそう呟いた。影の茨は何体かを乗っ取り、敵たちの進軍を押しとどめた……が、それ以上は出来なかった。
「いえ、十分です。今の私たちには、多くの仲間が居ます」
「その通り。一人で全部やられちゃ、俺たちの仕事が無くなっちまう」
 銃剣アビスバヨネットを構えた昴一が、そう呟いた。
「仕事だ、ニミュエ」〈分かってるわよ〉
 シャドウフレームで強化された彼は、”異本紙片”【LIGHTNING】をアビスレイザーへと読み込ませ……雷撃弾となった【アビスバレット】で敵を撃った。
「この手の道具には慣れっこなんだよ!」〈威張るトコロ? そこ〉
 アビスバヨネットから放たれた【アビスバレット】は、不定形少女にあたり、弾けていく。
 バチバチバチ、と電撃が辺りに放たれ、それが連鎖していく……。
「粘液にも数にも、これならいい”対処”になるだろ」
「そのようですね。敵の動きをかなり妨害できているみたいです」
 痺れた不定形少女たちは、目に見えて動きが鈍くなった。雷撃弾だけではじけ飛んだ個体もある。
「それにしても……”UDCのカード”が出回るとか――本当、よりにもよってだろ! UDC組織は何してんだよ!」
「全くです。私たちで止めなくてはなりません」
『……童、あのカードの中に入っとるのかのぅ。ちょこっとだけ気になったのじゃ』
「多分ないと思いますよ、お姫様」
 むぅ、とむくれる黒の女王をよそに、前衛の二人が動き始めた……。

●前衛の激突
「さて、このスライムちゃんたちもカードにいるのかな?
 萌え系も押さえるだなんて商売上手! ま、レアリティは低そうだけどね」
 うにょうにょと群れるスライムの群れに近付き、夜太狼が言う。
「確かにかわいい見た目だが騙されるかよ。不定形じゃねえか」
 伸ばされた触手を双剣で切り払いながら、悠翔が答えた。
「おっと。スライムちゃんたちは……うん、俺たちを飲み込みたがってる?」
「かもな、そんな気がするぜ。美少女でもスライムと一体化するのはごめんだ……っておい!?」
 夜太狼がスライムの群れに突っ込んでいくのを見て、悠翔が声を上げた。
「大丈夫大丈夫! ちょっと飲み込まれるだけだから気にしないで♪」
「おいおい、ほんとに大丈夫なのかよ……? ならそっちの方は任せたぜ!」
「りょうか~い♪」
 そう言うと、夜太狼はプールや海へダイブするかのように、スライムの群れに飛び込んでいった。
 つるつるぷるぷるとした感触が全身を覆っていく……やがて口や鼻が覆われ呼吸をしにくくなり、酸性の液体が肌に触れる刺激が彼を襲う。
(なーるほど。ピリピリはするけど、身体は溶けないね。でも息が出来ないのは流石に辛いなあ……ってか、服が溶け始めてる、こりゃ大変!)
 彼は目を開き、予め出しておいたオオカミ型の炎を見た。
(さあ、ウルヴズ! 俺ごと飲み込んで!)
 ばくん、と、レッドホットウルヴズが不定形少女ごと飲み込んだ。
 ……やがて、熱に耐えきれなかった不定形少女は、じゅうじゅう音を立てて形を崩していった。
「……ありゃ。あんま熱には強くないのかな。蒸発しちゃった♪」
「お、マジか。そりゃ良いニュースだ!」
 悠翔はダッシュ、ジャンプを交えて立体的に回避しながら答えた。
 隙を見つけ、焔黒剣を不定形少女達へと向ける。
「悪逆を喰らえ、煉獄の焔ッ! 獄焔砲(ケイオスフレア)ッ!!」
 轟、と焔黒剣が内包する異界の焔が噴き上がった。
 その漆黒の魔炎は、目の前に居る不定形少女たちを焼き……蒸発させていく。
「本当だな、それを調べる為に飲み込まれたのか?」
「まあね~。でも感触を味わいたかったのも本当だよ?」
 悠翔の言葉に、夜太狼は無邪気な笑顔を返した。

 そして彼らの間を縫うように、大量の魔法の矢が不定形少女へと殺到した……!

●後衛の支援・敵を滅ぼすもまた支援
「さあ、やるとなったら、とことんやるっすよ! ……ファイア!」
 魔法の矢を放ったのは、モルツクルス。
 狭い部屋ながら、味方を妨げないようにしっかりと戦況を把握し、皆のやりたい事を察知する……その上で、味方を巻き込まないように範囲攻撃を行ったのだ。魔法の矢は、前衛中衛の誰にも当たらず、それどころか射線を妨害もせず、華麗に敵へと殺到する。
 敵に命中した魔法の矢は、当たると燃え上がった。じゅうじゅうと音を立て、不定形少女たちは形を崩していく。
「単体では小さな火力かもしれないっす。けどこれは炎の属性が強化された魔法の矢……そしてスライム殿の弱点もまた炎!」
 高速詠唱で紡がれた無数の【ウィザード・ミサイル】が、どんどん相手に打ち込まれて行く。
「……成程。敵の行動パターンはおおよそ把握できました」
 自身の持つ魔導書を見ながら、マイアは呟いた。
【Mind's Desire】。彼女の学んできた知識、技術が自動で記されていく魔導書だ。新しいページには、不定形少女の行動パターンや弱点などが記されていた。
「私も準備は出来た……手札を見せる時だな、Operation;R、発令!」
 アンカーで高所に張り付いていた美亜も、そう言ってユーベルコードを展開した。
【Operation;R】。17機の次元戦闘機が出現し……それが全て一機に合体し、発艦していく。
「今回の機体は上部に持続式圧縮波動砲を装備した戦闘機である。狙撃機からの派生であり射程距離も申し分ない……これが私の手札だ!」
 戦闘機は、数が減り奥へと押し込まれた不定形少女へと照準を合わせた。
「それでは私も合わせましょう。咲き誇るは黒き薔薇――」
 マイアは呪詛や生命力吸収を乗せつつ、自身のユーベルコードを展開していく。
 彼女の装備武器が、次第に無数の黒い薔薇の花びらに変わっていく。
「全て吹き飛ばせば解決だ。薙ぎ払えッ!」
「――死風と共にいざ舞踊れ!」
 二人の猟兵の攻撃が、不定形少女へと殺到した。
 一方は【Operation;R】。持続性圧縮波動砲が、不定形少女たちを蒸発させていく。
 他方は【黒薔薇の嵐】。無数の黒い薔薇の花びらが、不定形少女たちを切り裂いていく。
 細切れになり、凄まじい熱量を浴び……不定形少女たちは跡形も無く消えて行った。
 ……ズゥン。と、ついでに奥の扉も蒸発していった。
「……む? やりすぎてしまったか?」
「この後は奥へ行くのですから、構わないと思います」
 大穴が開いた壁を見つめて、二人の猟兵は顔を見合わせた。
「ううん。カードゲームの方が、楽しいっすね……」
 跡形もなく消えてしまった少女たちを思い、ふとモルツクルスが呟いた。
「戦いなんて、ゲームに限るっす。そうはいかないのが嫌なところなんすけどね、現実とオブリビオンの」
「私もゲームは好きだ。特にシューティングゲームが大好きだ、アレほど素晴らしいジャンルはこの世に存在しないと言っていいだろう……」
 モルツクルスの言葉に、美亜が振り向いた。
「しかしキミ自身の言う通りだ。我々は猟兵であり、現実でも敵を討つため戦わなければならない。そうだろう。そうでなければ危険だからだ」
「……そうっすね。けどカードゲームに出て来たのもUDCっすよね。なんで敵はわざわざこんな事をしたんすかね……もしかしたら、何か他の方法があったんじゃ、って思っちゃうんっすよ」
 モルツクルスにも、オブリビオンに対する憎悪や、悲嘆が無いわけではない。ただそれ以上に疑問が強かった。
「……でも確かにそうですね。敵は……あの男の人は、何故わざわざこのような催しをしたのでしょう?」
 マイアも不思議そうに言った。
「アンディファインド・カードに負けた参加者を誘拐している、と言うような話でしたが……彼は私の見たところ、卑怯な手段を使った様子はありませんでした。わざわざ『カードゲームのルールに従っている』んです。そこがすごく不思議です」

●敵の思惑は何?
「信仰している邪神に従っている……と言う説はどうだ? カードゲームのルールに従う事で、邪神に信仰心をみせる、と言うような構図ならば不自然ではない」
 美亜が言うと、戦闘が終わって一旦集まった猟兵たちが各々に意見を述べた。
「そんな神が居るのか? 俺は『UDCのカードを広める事で何らかの利益を得たい』っていう考えだと思うが」
「俺もそう思うな~。イラストとかがあんまりエグくないし、広まるのを見込んでるっぽい感じがするよ」
 そう言うのは、昴一と夜太狼。
 彼らは『アンディファインド・カードが広まる事そのものに意味があるのでは?』と考えていた。
 UDCアースにおいて、UDCとは秘するべき存在。そのヴェールを取り払えば、世界はより狂気へと近づくだろう。
「俺は美亜の意見に賛成だな。人を誘拐したいなら、俺たちを強引に負けさせればいい。でもそうしなかったってことは何かある。邪教団の意図が働いてるんじゃねえの?」
「私もそう思います。カードゲームのルールに従わなければならない理由があるのだと思います」
 悠翔とマイアはそう言った。
 彼らは『アンディファインド・カードのルールに従うのが何らかの意図に適うのでは?』と考えていた。
 そうでなければ、わざわざこのような催しをする必要がない。そこには確かに、『カードゲームをしなければならない』という何らかの強制が働いている。
「……これがテストであったとすればどうですか?」
「どういうことっすか?」
 響の言葉に、モルツクルスが聞き返す。
「これはUDCと言う存在を目にしたときにどう反応するかを見る、そんな反応テストのような気がします。カードマスターは邪教団の人間と思わしき人。そして彼の判定は常に公正で平等でした」
「それも一理ありそうっすね。でも自分は、あの人はカードゲームを楽しんでいたようにしか思えないっす。一人のカードマスターとして、或いは一人のプレイヤーとして……ん?」
 モルツクルスはふと考えた。
「……そう言えばなんであの人は敗者を誘拐するんすか? 何のために?」
「……答えはこの先にありそうだぞ」
 先に扉に開いた大穴を覗いていた美亜が、そう呟いた。
 ……その先にあったのは、造幣局のような……あるいは新聞社のような、無数に紙をすり続ける、奇妙な施設だった。
 何人もの人が、そこで働いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『膨らむ頭の人間』

POW   :    異形なる影の降臨
自身が戦闘で瀕死になると【おぞましい輪郭の影】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    慈悲深き邪神の御使い
いま戦っている対象に有効な【邪神の落とし子】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    侵食する狂気の炎
対象の攻撃を軽減する【邪なる炎をまとった異形】に変身しつつ、【教典から放つ炎】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●頭の膨れ上がった男曰く
 施設の奥には、頭の膨れ上がった男が居た。
 入って来た猟兵たちを見渡した彼は、ニヤリと笑った。
「さて君たち、猟兵よ、オブリビオンを倒す者たちよ……ようこそ我が教団の拠点へ」
 男は立ち上がり、猟兵たちに一礼した。
「改めて自己紹介を。私は元UDC組織のエージェントだ……UDCに取り込まれたなれの果てだがね。私の名前も、UDCの名前すらも、最早意味を為さない……」
 そう言うと彼は、懐から【アンディファインド・カード】を取り出した。
「このゲームは、私がUDCに対処するために考案したものだ。ゲームと言う形でUDCに触れ、やがて来たる恐るべき時に備える。そう言う目的のもと作り出された……が、これは少々異端過ぎた。私はこのゲームを作る過程ではまり過ぎてUDCに取り込まれ……こうなったと言う訳だ。今の私はUDCの為に労働力を、そして信仰を集める機械だ……だから安心してほしい、誘拐した者の命は奪ってはいない」
 そして男は……哀しみに沈んだ目で猟兵たちを見た。
「……それでは第三ラウンドだ。私が直々に相手をしよう。何、ゲームと同じだ。私はカードマスターからUDC役になっただけの事」
 男はニヤリと……哀しい笑みを浮かべた。
「クックック。それでは始めよう、そして終わらせよう。いや……終わらせてくれ。こういう形でなければ……私は……」
 男はそこで口をつぐんだ。
 自分の作ったゲームにとって、その発言は相応しからざるものだ、と思ったのだろう。
「湿っぽいのは駄目だ。敵役として高らかに宣言しよう。かかってくるが良い猟兵たちよ! 私がここに立ちふさがって敵となる! 君たちはそれを撃破できるだろうか!」
 男は叫び……そして構えた。
 悲哀と狂気にまみれた男は……最後の理性をもって、猟兵たちに対峙した。
モルツクルス・ゼーレヴェックス
「勝利条件はカードマスターの撃破?違うっすね!猟兵の勝利とは!オブリビオンの排除と人の笑顔っす!」

【三つの術】が必要だ
高難度の術を三つ、完璧に使いこなす必要がある

まずは【鷹の眼】
この看破する力で男の身体構造を【学習】

後方で観察に徹して【情報収集】特に【侵食する狂気の炎】をよく視る

十分に情報を集め「救える」と判断したなら前に出る

「さっきの炎、自分に撃ってみるっす!……魔法ってものを、ご覧にいれる」
奇跡を【祈って】臨む!

【現象回帰】で防ぎ【魂魄掌握】

【高速詠唱】で二つを同時に、繊細に合わせる!

「契約において命ずる!戻れーーーーー!」

魂を掌握し、因果に干渉し
「人」と「オブリビオン」に戻してみせる!


神原・響
アドリブ、絡みOK。
私も、一歩間違えば貴方の様になっていたのかもしれませんね……。
同じUDC組織の一員として、貴方に終わりを約束しましょう。

走って接近しつつ、二丁拳銃に聖言刻印弾を込めて打ち込んでいきます。
銃弾を撃ち尽くしたら、黒鉄刀を使い糸で男を拘束し吊るし上げます。
再びリロードし、男からUDCが分離するまで聖言刻印弾を撃ち続けます。
分離したUDCは姫様に食べてもらいましょう。

これで、邪神の信徒としての貴方は終わりです。もう一度、貴方の力を貸してくれませんか?


紅月・美亜
「気が付くと、UDCになっていたと言う事か……良いだろう、その悪夢を終わらせてやる。Operation;R、発令!」
 全機合体後し、今度は別の機体を形成する。漆黒のボディに刻まれた猟犬のエンブレム。
「そして何度でも証明しよう。Rは姿形を変えながら、何度でも人類の脅威を打ち破って来たのだと」
 漆黒の猟犬が装備した細く鋭いレーザーで邪神を切り裂き、異形を削り取る。
「暗黒の森の番犬。唯一の未帰還機……だが、悪夢を払えなかった訳ではない!」
 味方の攻撃中にチャージを行い、然るべきタイミングでライトニング波動砲を放つ。
「Rの波動砲は全ての悪夢を射抜き、消し飛ばすッ!」


久遠寺・遥翔
そうか、あんたも戦ってたんだな
いいぜ、その勝負乗ってやる
「さぁ始めるとしようぜ! 俺たちとあんたの最後の決闘を!」
魔焔解放で真の力を解放、ヘルフレアライザーへと変身して戦う
「俺の手札は魔焔解放! この身を、悪逆を喰らい邪神を屠る焔そのものへと変える!」
あくまでカードゲームの体裁で行動を宣言して戦い抜く
それがこの男への餞になると信じる
相手の攻撃を見切り光の盾で受け、二刀流によるカウンター二回攻撃を叩き込む戦闘スタイルだ
黒剣で生命力を奪いながら相手が倒れるまで戦い続けるぜ


マイア・ヴェルナテッド
他参加者との絡み及びアドリブ可

オブリビオンがゲームと言う体裁をとる以上は『礼儀作法』をもってそれに付き合うとしましょう。
その上で先の世を憂いた偉大なゲームマスターに敬意を表しこの悪夢…いえ、ゲームに終わらせましょうか。

【戦闘】
敵と他の猟兵との戦闘を観察し『学習力』を活かして隙を見抜き『第六感』で行動予測、『呪詛』『属性攻撃(闇)』『生命力吸収』を乗せれる限り乗せた『全力魔法』の『シャドウファイア』を一つに束ねて『二回攻撃』し焼き払います


闇之雲・夜太狼
アドリブ・絡み歓迎

なるほど、元エージェントだったんだね
なかなか衝撃の事実だし、俺たちを知ってた件は不問にしよう
ゲームの形にしたのは、本当にそういうのが好きだったからだろうね……
最後まで俺たちを楽しませようとするその姿勢、まさにゲームマスターの鑑だ
俺も付き合わせてもらうよ

でもさ、こちらは数じゃ有利だけど、手を少し明かしちゃったんだよね
俺なんかだまし討ちが好きだってバレちゃってるでしょ?
だからきっと警戒されるし、正攻法は自信無いし

会話途中にCODE:WC発動
意識誘導を無視すればそれも良し
振り返ればその隙をつき【クイックドロウ】でMAG射出グーパンチ!

短い時間だったけど、なかなか楽しめたよ
ありがとね



●さもなくば頭は狂気で一杯に
「そうか、あんたも戦ってたんだな」
 男を真っすぐと見据えて、久遠寺・悠翔は言った。
 オブリビオンと化してなお、カードゲームに従い生き続けた男は……理性と狂気の狭間で、確かに戦っていた。
「なるほど、元エージェントだったんだね。なかなか衝撃の事実だよ」
 男の独白を聞き、驚きを隠せない闇之雲・夜太狼。
 男は、アンノウンという単語に反応していた。名前を失った彼は、この単語で何を想ったのだろうか。
「私も、一歩間違えば貴方の様になっていたのかもしれませんね……」
 隣に浮かぶ『黒の女王』を見ながら、神原・響は呟いた。
 同じUDC組織の一員、同じUDCエージェントである彼は、男の姿に『そうなっていたかもしれない自分の未来』を見出した。
「気が付くと、UDCになっていたと言う事か……良いだろう、その悪夢を終わらせてやる」
 男の変異した頭部を睨みながら、紅月・美亜は言った。
 シューティングゲームを崇拝する彼女は、そこに何かを見てとった。
「先の世を憂いた偉大なゲームマスターに敬意を表し、この悪夢……いえ、ゲームを終わらせましょう」
 敬意を払い、真っすぐ男を見据えてマイア・ヴェルナデッドは言った。
 男はあくまでも『カードゲーム』という体裁を崩さない。ならばそれに応えるのが礼儀というモノだ。
 そして……。
「皆、ちょっと相談があるっす」
 モルツクルスはちらりと男を見て言った。
「作戦会議か。許可しよう」
 男が頷くのを見ると、モルツクルスは猟兵たちに向き直った。

●猟兵たちの作戦会議
「……自分は、あの人を救いたいっす」
 聖者であるモルツクルスは、真剣な表情でそう言った。
 カードマスターは未だ理性を保っている。それならば、何か『対処』する事が出来るのではないかと考えたのだ。
「出来るならば、私も試してみたいです」
 そう言ったのは神原響。同じUDCエージェントとして思う所があるのだろう。
「悪夢を払うか。私も出来得る限り手伝うぞ」
「この悪夢からあの人を救えるのであれば、私も」
 美亜とマイアも乗り気だった。
「皆乗り気だな。それなら俺も策に乗るぜ、方法はどうするんだ?」
「俺も乗るよ~。あの人嫌いじゃないし、助けられるならやってみたい」
 悠翔と夜太狼も頷いた。
「皆感謝するっす……作戦はこんな感じっす」
 モルツクルスが皆にざっと作戦を説明する。皆は頷きを返した。
「……さて、作戦会議の首尾はどうかな?」
「ばっちりっすよ! それなら最後の勝負を始めるっす!」
 男の言葉にモルツクルスが返す。
 猟兵たちと男が向き合った。

●猟兵vs『カードマスター』・
「それでは始めよう、第三ラウンドを……」
「ところでさ、あれはなんだろうね?」
 男の言葉に、夜太狼が被せて後ろを指差した。男は思わず「ん?」と振り向いた。
「隙あり! MAG射出グーパンチ!」
 拳を握った、手型のパーツがしゅっと飛んだ。
 【MAG(マジックアームガッチャー)】。手型のパーツ付ワイヤーと、射出・巻き取り機構がついている不思議な銃だ。遊び心に溢れた夜太狼らしい武器だが、威力は見た目ほど甘くはない。
「ぐっ! そう言えば搦め手が得意だったな、君は!」
 男は目を光らせ姿を変えた。手に持った教典(ルールブック)から炎が溢れ、体が覆われていく。
「それではお返しだ、私の炎は手加減しないぞ!」
「おっと、そいつは危ないな!」
 男が教典から炎を放つ……が、それは途中で光の盾で阻まれた。
 悠翔が間に入り、炎を盾で受け止めたのだ。
「なるほど、私の炎を受け止めるか!」
「俺も負けてられないからな。俺の手札は魔焔解放! この身を、悪逆を喰らい邪神を屠る焔そのものへと変える!」
 悠翔は真の姿を解放していく。
 焔黒剣レーヴァテインと融合し、彼の体は異界の黒焔に包まれていく……。
「魔焔解放(オーバーライズ)――ヘルフレアライザーッ!!」
 掛け声と共に、爆発にも似たエネルギーの発散が起きた。
 その中心地に堂々と立つのは……焔黒騎士ヘルフレアライザー。
「炎を身に纏い鎧と為すか……似た者同士と言う訳だな」
「そうだな、さあ行くぞ!」
 悠翔は、いやヘルフレアライザーは剣を二本構えて男に向かった。
 男は炎を飛ばして攻撃するが、光の盾に阻まれる。一方ヘルフレアライザーの黒剣は男を切りつけ……炎を奪っていった。
「っ……! 吸収されるとはな! これならどうだ!」
 男は炎を変形させ鞭を作り上げた。盾を回り込める武器で攻撃するつもりなのだろう。
 が、その鞭はレーザーと弾丸によって撃ち抜かれ、弾き飛ばされた。
「Oparation;R、発令!」
「……命中した!」
 援護したのは美亜と響だ。
 一方の美亜は【Oparation;R】によって、先ほどとは違う機体を作り上げた。漆黒のボディに、猟犬のエンブレムが刻まれた機体……漆黒の猟犬だ。装備された細く鋭いレーザーが、鞭を撃ち抜いた。
「何度でも証明しよう、Rは姿を変えながら、何度でも人類の脅威を破って来たのだと……そしてこの機体は暗黒の森の番犬。唯一の未帰還機……だが悪夢を払えなかったわけではない!」
 他方の響は、【対UDC50口径改造二丁拳銃】に【聖言刻印弾】を装填し発砲していた。黒金の二丁拳銃から放たれた弾は、見事に男の手に命中した。
「同じUDC組織の一員として、貴方に終わりを約束しましょう」
 弾丸を撃ちながら、響は男へと接近していく。
「ッ……見事な連携だ、だがこれならどうだ! 落とし子よ現れろ!」
 男は教典をめくる。ぱたりと教典から炎の塊が零れ……無数の腕を持つ怪物へと変貌した。
「これは相手に応じて変化する落とし子だ! 対多数防衛戦に適応した姿だ、まだ私は止まらない!」
「……それは駄目です」
 男が怪物の後ろへ隠れようとしたその瞬間の隙を捉え、マイアは魔導書を用いて魔法を唱えた。
「高き王座に鎮座し天界との虚しき戦争を飽きることなく続ける冥府の王よ。契約に従い我が下に黒き焼尽の猛火を持て……!」
 ざぁっ……と、マイアの周りに黒い炎が現れた。一つ一つが禍々しく、黒よりも深い闇の色を放っている。
 そしてそれが一つに集合し……大きな炎を形作った。
 その隣では、美亜の出した機体、暗黒の森の番犬もエネルギーをチャージしていた。
「ッ……アレはマズい、落とし子!」
「おっと、させないぜ」「私たちをお忘れなきよう」
 男は落とし子に防御姿勢をとらせようとする……が、ヘルフレアライザーと化した悠翔と、響がそれを封じにかかった。
 ヘルフレアライザーの全力を込めた剣戟が振るわれ、落とし子はそちらを向いた。その瞬間、響が袖から黒鉄刀を投擲して振り回し、鋼糸で男と落とし子の両方を縛り上げた。
「終わりです、カードマスター。私の手札は【シャドウファイア】、冥府の炎で焼き尽くします!」
「こちらもチャージが終了した。私の手札は【Oparation;R】、Rの波動砲は全ての悪夢を射抜き、消し飛ばすッ!」
 美亜とマイアが、同時に技を放った。
 ライトニング波動砲が、冥府の闇色の業火が、男を襲う……!
「ッ…………! 見事……実に、見事だ……!」
 膨大な熱量で煙が上がる中で……男は、未だ立っていた。
 満身創痍でなお、彼は猟兵たちをじっと見据えた。
「……っぐ、私の炎を……落とし子を蒸発させるほどの……甚大な熱量……! なるほど確かに、波動砲も……アリな訳か……」
 男はがくりと膝をついた。
「……最早私に力は無い……とどめを刺せ。そうすれば、君たちの勝利だ」
「いいえ、違うっす」
 男の言葉に首を振りながら、モルツクルスが前に出た。
「さっきの炎、自分に撃ってみるっす! ……魔法ってものを、ご覧に入れる」
「……最後の一矢と言う訳か。面白い。君は面白い男だ……」
 モルツクルスの言葉に、男は笑った。教典をめくり、再び炎を呼び起こしていく。
「……私を倒せば終わりだというのに……違うとはどういう事だろうな」
 男は呟き、邪なる炎をモルツクルスへと飛ばした。
「勝利条件はカードマスターの撃破? 違うっすね! 猟兵の勝利とは! オブリビオンの排除と人の笑顔っす!」
 モルツクルスは集中し……心の中で祈り、詠唱した。
「ニワトリ、コトリ、卵へ還れ。タマゴよタマゴ、明日に孵れ……そして汝に告げる。我に触れるな。この言葉は契約である。その是非と善悪を問わず、履行は約束されたもの……重ねて告げる、我に触れるな」
 高速詠唱の技術を持つ彼は、通常の数倍という速さで詠唱を進めた。
 すると……彼に届こうとしていた炎は、空中で止まり、逆再生をするかのように男の方へと飛んでいった。
「……なっ!?」
「契約において命ずる! 戻れえええええええ!」
 【現象回帰】と【魂魄掌握】を高度に合わせた、強引な因果律操作の術……モルツクルスが行ったのはそれだ。
 炎は男に命中すると、パッと弾け……見る間に男を覆っていった。
「……っぐ、これは一体何なんだ……!?」
「カードマスター殿。まだ生きていてもらうっすよ。まだ……人として生きていられるっすから!」
 バン、と爆発が起きた。
 男の膨れ上がった頭部が爆発して分離されていく。男の頭部は人に、分離された頭部は奇妙な触手を形作った。
「……さて、最後は私たちです。頼みますよ、お姫様」
『よかろう!お前の敵は、童の敵だ。存分にもてなしてやろう!』
 前に出た響が言うと、黒の女王がその奇妙な触手へ影の茨を伸ばし、飲み込んでいった。
『……童の中で存分にな!』
 黒の女王はぺろりと舌を出した。
 ……奇妙な触手は、そして男の膨れ上がった頭部は、跡形も無く消え去っていた。

●ゲームエンド
「……これは、私は……私は何故生きている、今何が起こった?」
 男は起き上がって猟兵たちを見た。今の彼は、紛れもなく普通の人間だった。
「オブリビオンの部分だけを倒したっすよ」
「その通り。カードマスターさん、あなたはもう人間です」
 モルツクルスと響がそう言うと、男はぺたぺたと自分の頭を触った。
「……ない。治っている……私は、元に戻ったのか……!?」
「そうだって言ってるじゃん。最後まで俺たちを楽しませようとしてくれた、カードマスターちゃん♪」
「悪夢は払われた。キミは再び、自分の道を歩むのだ」
 感動か驚愕か、大きな感情で震える男に、夜太狼と美亜がそう言った。
「…………ああ……私は、確かに人だった。そして今から……また人としての道を歩めるのか」
「そうだぜ。俺たちとあんたの決闘は終わり。それと同時に、あんたとUDCとの戦いも終わったんだぜ」
「悪夢は終わり、ゲームも終わりました。お疲れ様でした」
 涙を流す男に、悠翔とマイアは労いの言葉をかけた。
「……感謝する、猟兵たちよ。私は……私は、それ以外に言う言葉が無い。ありがとう……最悪の悪夢の中の、最高のゲームだった」
 男は泣きながら猟兵に向き直り、頭を下げた。

●後日談
 こうして、UDCアースに流行る謎のカードゲーム、【アンディファインド・カード】は発売中止となった。攫われた被害者たちも解放され、各々の生活に戻っていったようだ。勿論記憶処理は為されており、彼らの言葉で、世界を覆う狂気のヴェールが剥がされる事は無いだろう。
 ……しかしただ一人の例外、首謀者にして犯人だったカードマスターだけは、全ての記憶を持ったうえで、UDC組織へと復帰したという。現在はアドバイザーとなり、UDC組織を影ながら支えている……という話だ。
 彼は今でもゲームを愛している。
 ゲームを愛する故にUDCに憑りつかれたとはいえ……ゲーム故に正気を保ち、そしてかけがえのない経験が出来たからだ。

 アドバイザーとしての彼は、必ずある一つの事を教えていた。
「最悪の悪夢でも、光明が差す事はある。だから諦めるな。諦めないことこそが、私たちにとっての戦いなのだ」
 猟兵たちの事を思い出しながら、感謝の念を抱きながら……彼はそう言うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月03日


挿絵イラスト