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さよなら、スタアゲイザー

#サクラミラージュ #幻朧戦線 #籠絡ラムプ

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#サクラミラージュ
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#籠絡ラムプ


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 此処はサクラミラージュ、時刻は夜の8時を廻った辺り。
 今宵の帝都は夜更けにも関わらず、人手が多い。
 それもそのはず、今夜は天と地で盛大なスタアが煌めくめでたい夜。
 天上は満天の星々と天の川、そうだもうすぐ七夕だ。それに加えて、ナントカ座の流星群が流れるというのだから、市井の連中はしきりに夜空を見上げては、流れる光の軌跡に喜色溢れる声を上げていた。
 だが、地上の星も、流星群に負けないほど絶世の美しさを誇っている。
 なんせ、あの有名な遊郭の看板花魁こと『暁星(あけぼし)太夫』の花魁行列だ。
 此処半年で異例中の異例の大出世!
 古株の姐さん達を差し置いて、一気に頂点へ駆け上がっちまった稀代の美女。
 源氏名も、常に手にぶら下げた奇妙なラムプに由来するらしい。
 ホラ見てご覧よ、暁星太夫の星を見上げる憂い顔を。
 全く、絵になるったらありゃしないねぇ!

「……で、このランプが、問題の『籠絡ラムプ』ってわけだよっ!」
 グリモア猟兵の蛇塚・レモン(白き蛇神オロチヒメの黄金に輝く愛娘・f05152)が、予知の映像をグリモアから投影しながら、グリモアベースに集まってくれた猟兵達へ任務内容を伝達していた。
「籠絡ラムプは幻朧戦線が密かに市井にばらまいた『影朧兵器』で、所持者はランプの中に封じられた影朧を手懐けて、そのユーベルコードを自分のもののように利用しているんだよっ!」
 つまり、予知に出てきた暁星太夫は、籠絡ラムプの力で花魁の地位まで昇り詰めた。
 しかし、そのランプが影朧兵器だというのなら……。
「そうだよ。いずれ影朧は暴走して、使い手を含めた帝都の人々に多大な被害を及ぼすよ。そして、その暴走の時が、この後のイベントの最中に起きちゃうんだよっ! だから今回の任務は、暁星太夫の持つ籠絡ラムプの破壊だよっ! 結果、暁星太夫は全ての地位を失うことになるけど……そこは人命優先だし、影朧兵器の使用で裁きを受けることになるだろうね……っ?」
 して、どうやって籠絡ラムプを破壊するのか?
「いきなり花魁道中の列に突っ込んじゃ駄目だよっ! それこそ、こっちが暴漢扱いされちゃうからねっ? みんなは、籠絡ラムプが暴走する寸前まで、街中で情報収集するがてら、天体観測をして待機しててもらいたいなっ?」
 街の人々の噂を集めれば、暁星太夫の人となりが浮き彫りになるだろう。
 その噂を組み合わせれば、彼女が裏で良からぬことをしていると判明するはずだ。
 それを抜きにしても、帝都での天体ショウを純粋に楽しむのも良いだろう。
 七夕も近いため、早くも短冊で願いを書いて、幻朧桜に吊るす者達もいる。
「あとは、噂から導かれた暗部を暁星太夫に突き付ければ、彼女は暴走する影朧をみんなにけしかけてくるよっ! あとは影朧諸共、籠絡ラムプを破壊すれば一件落着だよっ! 色々と思うところはあるだろうけど、暁星太夫に正しい道を歩ませるためにも、みんなの力で事件を解決してほしいな……っ?」
 レモンのグリモアが輝きに満ちると、あっという間に夜更けのサクラミラージュの帝都へと転送されてゆく猟兵達。
 満天の星空と優雅な祭囃子、そして花魁道中。
 果たして、猟兵達は彼女を裁くのか、それとも、救うのか……?


七転 十五起
 サクラミラージュ、新たな影朧兵器の登場です。
 人間の欲深さと、その代償。
 真実を暴いた先にあるのは、星か、闇か?
 なぎてんはねおきです。

 第一章は【日常】です。
 帝都は今宵、流星群が観測できます。
 七夕も近いせいか、短冊に願い事を書いて、竹もしくは幻朧桜に吊るします。
 流れ星に願い事をするのも良いでしょう。
 ですが、本来の目的は『暁星太夫の噂の収集』です。
 上下関係の厳しい遊女の世界で、ここ半年で一気に底辺から最頂点である『太夫』にまで昇り詰めた彼女。誰もが認める絶世の美女ですが、どうやら色々な醜聞が付きまとっているようです。

 第二章は【ボス戦】です。
 第一章で得られた情報と証拠を突き付け、暁星太夫を公衆の面前で追求します。
 すると彼女は、籠絡ラムプの中から暴走した影朧を猟兵たちにけしかけてきます。
 周囲には一般人が大勢いるため、被害が出ないように戦闘に臨んでください。

 第三章は事後処理の特殊な【日常】です。
 詳細は断章追加時に明記します。

 それでは、愛と星と影朧の物語、お楽しみくださいませ。
 皆様のプレイングを、お待ちしております。

(プレイング受付は、第一章の断章追加以降でお願い致します)
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第1章 日常 『スタアゲイザー』

POW   :    願い事をたくさんする

SPD   :    願い事を素早く3回唱える

WIZ   :    願い事に想いを込める

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 綺羅びやかな流星群、笛太鼓が耳心地いい街の雑踏。
 その中を闊歩する花魁道中。
 先頭を征くは、有名老舗遊郭の花形であり看板遊女、暁星太夫。
 彼女は夜空の星を見上げる癖があり、その哀愁漂う雰囲気が男心をくすぐる。
「ようやく……ようやく、上を見上げる日々も、今宵で終わりんす……」

 絶世の美女である暁星太夫だが、半年前に身売りされてきた下女同然の身分。
 だが、持ち前の才覚と美貌を武器に、あっという間に客を虜にしていった。
 故に、その出世街道を妬む者も少なくはない。
 彼らは、又は彼女達は醜聞を虚実不明のまま市井に流し、帝都ではそれらを面白おかしく流布し続けていた。
「怪しい成金がパトロンになったらしい」
「ラムプを持った殺人鬼が、男の心臓を抉り出すそうな」
「暁星の客は、揃いも揃って気が狂ったかのように通い詰めるようになった」
 全ては宵闇の星の瞬きのように不明瞭で、街の灯り程度で霞んでしまうだろう。

 猟兵達は、その闇自体を暴くべく光を照らすのか?
 それとも、闇の中の星に手を伸ばすのか?
 君達の思いのままに行動するといいだろう。
アハト・アリスズナンバー
WIZ判定の行動 アドリブ絡み歓迎

花魁……レトロが続くサクラミラージュならではの光景ですね。
そんなものに頼らなくても、彼女はスタアまっしぐらな絶世の美女だというのに。何故、籠絡ラムプに頼る必要があったのでしょう。

今宵は流星群。私もここの人達に習って願いを込めた短冊を吊るしましょう。
「とてもいいお酒と出会えますように」
ふふ。私らしいお似合いの願いです。

さて、短冊を吊るし終えたなら暁星太夫の噂を探しに行きましょう。遊郭が多くある街にて【情報収集】です。
怪しまれるなら、ただの記者で暁星太夫の一面記事を任されたと答えましょうか。
……まあ、その記事が祝いの記事であるかは皆さんの噂次第ですけどね。


鹿村・トーゴ
流星群!
…ホラまた!流れ星が沢山降るんだ凄くね?(相棒のユキエは冷ややかな視線)
『見るだけでしょ?拾える訳でもないのに』
現実的だなーユキエ…
珍しいし星好きには堪らんのに
ま、色里に縁ない自分が太夫を見る機会もそう無い
半年で太夫に成り上がるなんて尋常じゃねー
何の星を拾ったのやら黒い噂も多いってよ

さて【情報収集】しよっか
道中を遠巻きに見る井戸端会議メインな人達の傍で短冊を書くフリで噂回収【聞き耳】
で、吊された短冊をチェック
遠回しに太夫の悪口とかないかな?
太夫の廓以外の店の前でたむろする男女に
今日は人が多いね
みんな太夫目当てかな?と話し掛けたり
今夜お茶挽で暇そうなお姉さんにも話し掛けてみるか

アドリブ可



 サクラミラージュ、帝都公認の花街は黒山の人集り。
 星を見上げる市井の人々、そして花魁道中を眺める見物客でごった返していた。
 その人混みの中を、アハト・アリスズナンバー(アリスズナンバー8号・f28285)は物珍しそうに見歩いていた。
「花魁……レトロが続くサクラミラージュならではの光景ですね」
 お目当ての花魁道中の先頭へたどり着いたアハトは、噂の人物である暁星太夫の姿をその目で見定める。
 東洋人らしい上品な目鼻立ち、しかし瞳に宿った輝きは、天上に瞬くどの一等星よりも強く光を放ち、そのギラギラとした野心と突けば崩れそうな鼻買い物腰のギャップに、どこか人々は魅了されているのだと、アハトは静かに分析してみせた。
「……なるほど。確かに、美しいですね。ですが、そんなものに頼らなくても、彼女はスタアまっしぐらな絶世の美女だというのに。何故、籠絡ラムプに頼る必要があったのでしょう?」
 小声でかつ手を片手で覆いながら呟くアハト。
 何処で誰が聞いているか分からない以上、本来なら言葉に発することは躊躇われるべきだ。
 だが、アハトの隣には、赤髪の羅刹の少年がいたのだ。
 アハトはむしろ、その彼に分からせるようにわざと呟いてみせたのだ。
「……半年で太夫に成り上がるなんて尋常じゃねー。何の星を拾ったのやら? 黒い噂も多いってよ?」
 少年……鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は、右肩に相棒の黄芭旦のユキエを掴まらせたまま、アハトの呟きに言葉を返した。
「お仲間か。俺は鹿村トーゴ。こっちはユキエだ。やっぱり、そっちも花魁道中見たさにここへ?」
「まぁ、そんなところです。やはり、本人の人相を一度確認すべきだと判断したまでですので」
「そっか。ま、色里に縁ない自分も、太夫を見る機会もそう無いからな。任務ついでにご尊顔を拝みに来たっつーわけ」
「なるほど、では、せっかくなので、協力しあって情報収集しませんか? 私はアリスズナンバー8号。個体名が必要ならアハトと呼称願います」
「アハトか。よろしくな? って、おいあれ!」
 鹿村は花魁道中の見物客の集団から離れると、夜空を指差して声を弾ませる。
「流星群! さっき月が落ちたかと思うくらいデカいのが流れたぞ! ……ホラまた! 本当に流れ星が沢山降るんだ、凄くね?」
「トーゴさんは、星が好きなのですか?」
 アハトの問い掛けに、鹿村は白い歯を見せるくらいに破顔した。
「ああ、大好きだ! 俺の故郷はここみたく電灯はなかったからなー、もっと硝子玉を散りばめたくらいにキラキラしてたっけか。でも、やっぱ流星群は迫力あるなー!」
 人は心惹かれるものを目の当たりにすると、誰しもが目を輝かせて夢中になる。
 それは猟兵でも同じことで、鹿村は今、その視界いっぱいに天体の神秘を収めようと目を見開いては指をさす。
 アハトも隣で静かに星を見上げ、星に何かを祈るような仕草をした。
「今宵は流星群。この瞬間の美しい光景は、二度とない神秘と奇跡の賜物でしょう」
 2人が暫く流星群に見惚れていると、オウムのユキエが呆れた口調で流暢に人語を発した。
『もう、いくら流れ落ちたって見るだけでしょ? 拾える訳でもないのに』
「現実的だなーユキエ……。流星群の遭遇自体が珍しいし、星好きにはこの瞬間は堪らんのに」
 鹿村は相棒の辛辣な言葉に対して、眉間にシワを寄せた。
 対して、アハトは首をニ、三度回して解すと、本来の目的へ話を戻す。
「まぁ、でも一理ありますね。いつまでもこうしてはいられません。トーゴさん、あの竹の下で後ほど合流しましょう。二手に分かれて情報収集するのです」
「そうだなー、名残惜しいけど、観光に来たわけじゃねーし……」
 鹿村は小さく溜息ひとつ吐いた後、アハトと別れて人混みの中へ消えていった。
 それを見届けたアハトは、短冊が吊るされた竹の前まで足を運ぶ。
「私もここの人達に習って願いを込めた短冊を吊るしましょう」
 短冊と筆を拝借したアハトは、スラスラと今の正直な気持ちをしたためた。
『とてもいいお酒と出会えますように』
 アハトは根っからの酒好きであった。
「ふふ。私らしいお似合いの願いです。異世界の酒と黒い噂を求めて、いざ参りましょう」
 アハトはペンと手帳を調達すると、新聞記者と身分を偽って行動を開始した。
「すみません。私、新聞記者でして。暁星太夫の一面記事を任されたのですが、何かネタになるような噂をご存知ですか?」
 アハトは通行人にインタヴューを敢行。
(……まあ、その記事が祝いの記事であるかは皆さんの噂次第ですけどね)

 鹿村は別の場所で短冊を吊るすふりをして、道中を遠巻きに見る井戸端会議メインな人達の噂に聞き耳を立てていた。
「暁星太夫……あのラムプ、昼でも片時も離さず持ち歩いているそうよ?」
「あのラムプから怪物が出てきたとか、幽霊が出てきたとか聞いたことあるわ」
「なんか、自分は人の心を知らない、だから恋をするとかいってるそうじゃない?」
 鹿村は噂の内容に頭を振る。
(やっぱり、何か後ろめたい事が暁星太夫にはあるようだね)
 鹿村はこっそりと、他人の吊るした短冊を盗み見る。
(さて、遠回しに太夫の悪口とかないかな?)
 軽々しい気持ちで手にとった短冊に、鹿村は背筋が凍り付いた。
『暁星太夫がうちの亭主を殺した。心臓を抉って殺した』
『誰でもいいから天罰を下してほしい。あいつは化け物だ』
 表裏にびっしりと恨み言が書かれた短冊を、鹿村はそっと引き千切って懐にしまい込んだ。
(あの太夫が殺人を? それも心臓を抉るとか穏やかじゃねーな)
 続いて、花街のもっとも賑わっている場所へ鹿村は足を運ぶ。
 案の定、暁星太夫に目もくれずに遊ぶような連中だ、いわゆる『アンチ暁星太夫』を掲げる者ばかりのようだ。
「あんな仕組まれた花魁道中なんて一銭の価値もねぇぜ!」
「その通りさ! だから、うちで飲み直していきなよ、若旦那ぁ♪」
 花街を歩けば、そこは暁星太夫の僻みや嫉みが蔓延していた。
(こりゃ……思っていた以上に業界受けは悪いようだな?)
 だが、太夫になるということは、その道の誰もが認めたと言わしめるようなことだ。
 なのに何故、ここまで暁星太夫は嫌われているのだろうか?
 鹿村は思い切って、太夫の廓以外の店のお茶挽きで暇そうな遊女に声を掛けた。
「今日は人が多いね。みんな太夫目当てかな?」
「アンタも暁星太夫かい? ったく、あの女、廓の番頭やら目上の連中を脅しているんだ!」
「へえ? その話、詳しく聞かせてくれないか?」
「別にいいけど、餓鬼にアタシを買えるだけのお題が払えるのかい?」
「え、話を聞かせるって、そういうことかよ……参ったな……元服しているとはいえ、俺はただ話を聞きたいだけだからな……」
 狼狽する鹿村に、遊女はからかうようにニタニタ笑みを浮かべる。
「じゃあ、一昨日来な? こっちはあのクソ太夫のせいでおまんま食いっぱぐれそうなんだからね? 客じゃないならあっち行った、シッシッ!」
 邪剣される鹿村。だがそこに救いの手が差し伸べられた。
「いいでしょう。同性の私でよろしければ、貴女を買いますが?」
 偶然、通り掛かったアハトが、金貨の入った革袋を差し出しながら言い放った。
 遊女は目を白黒させながら、おずおずと頷いた。
「……い、いいわよ。今、番頭を呼ぶわ」
 遊女が番頭に声を掛けている間、鹿村が唖然としたままアハトに尋ねた。
「どうしたんだ? その大金?」
「これですか。先程、その先の賭場で情報収集がてら、一山当てまして。ついでに怪しい奴を実力行使でねじ伏せて情報を吐かせたついでに『慰謝料』を頂いた次第です」
「それ、ただの賭博と恐喝じゃねーか……」
 遠くを思わず眺めてしまう鹿村に対し、アハトは淡々と答える。
「誤解です。美味しいお酒を堪能しながら、持ち前の私の豪運が爆発しただけなのに、あちらがイカサマだと短刀を突き付けてきたのです。やむなく、生命の危機に立たされた私は、アリスズナンバーランスで」
「まさか刺したのか?」
「いえ、殴りました。こう、脳天へ……ベコッと。ですので正当防衛です。その甲斐あって、かなり色々知ることが出来ましたよ」
 早速、2人は情報をすり合わせると、鹿村が得た情報のちょうど裏付けになるような内容であり、互いの噂の現実味が増していった。
「お客様、お座敷の準備ができましたよ?」
 番頭が2人を座敷へ案内してゆき、遊女からようやく情報を得ることが出来た。
 その遊女が語った情報とは……。
「あのラムプから幽霊を出して、廓の連中を脅して言いなりにしてたのさ! アタシは元はそこの世話役の下女だったんだけど、怖くてこの店に匿ってもらったってわけさ」
 だが不思議と追手も来ないし、悠々自適に暮らせているのが不思議だとも語った。とはいえ、誰も彼女の話を信じてはくれなかったそうだが。
「そして、そのランプを贈った相手っていうのが、首に鉄の輪を嵌めてたって話さ。……おふたりさん、超弩級戦力のアレなんだろう? 心当たりあるんじゃないかい?」
 それは、テロリスト集団『幻朧戦線』の証!
 思わず、鹿村とアハトは顔を見合わせてしまった。
 ちなみにその後、美味しいご飯とお酒を振る舞われ、2人はとても満足した。
 勿論、とても健全のまま2人は廓を後にした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

文野・ハナ
あゝ、綺麗だねぇ。
あの世界にはアタシも憧れたさ。
けどスタアの世界よりも大変だと聞くよ。

周りの人に何か話でも聞いてみようかね。
一番は行列を見ている人がいいかね。
【存在感】を使わせてもらうよ。
アタシは元スタアの文・野花さ。
ちょいと文豪の仕事で取材をしててねぇ。
あの暁星太夫について知っている事を教えちゃくれないかい?

暗い噂も聞こえているよ。
それについて知っている事はあるかい?
怪しまれたらより現実味のある作品を書きたいからって言いわけでもしようかね。
その方がアタシのファンが喜んでくれるのさ。

話が聞けたら七夕も楽しみたいねぇ。



 花魁道中の先頭を征く暁星太夫の姿を、人集りの中からじっと見守る女がいた。
 艶やかな織衣はフリルで飾り、漆黒の長い髪から桜の枝が左右から飛び出し、その枝先に桜を咲かせる桜の精こと文野・ハナ(よもすえ・f27273)。
 彼女は帝都で銀幕の幻影と呼ばれた女優……つまりスタアだ。
 ――ただし、現在は“元”が頭に付くのだが。
 現在は帝都の少女達に絶大な人気を誇るロマンス小説を執筆する作家として活躍中だ。
 そんなハナのもうひとつの一面、それが超弩級戦力と呼ばれる猟兵の仕事だ。
「あゝ、綺麗だねぇ。あの世界にはアタシも憧れたさ。けど、スタアの世界よりも大変だと聞くよ」
 ふわり、と夢見心地に微笑むハナは、暁星太夫の遠ざかってゆく背を見送った。
「さて、周りの人に何か話でも聞いてみようかね。ひとまず、暁星太夫目当てに集まった、この行列の中から聞き込み開始かねぇ」
 文野は周囲に群がる観衆へ声を掛けるべく、暫く行列を辿ってゆく。
 誰それ構わず聞いていては効率が悪い。
 故に、文野は自身の元スタアの存在感を発揮することで、観衆の方から出向かせるように仕向ける。
「あ、あの……っ! もしかして、ハナ様ですかっ?」
 近寄ってきたのは女学生と、その連れの友人達。
 彼女達の文野へ向ける目の輝きは燦然としていた。
 どうやら、文野の熱烈なファンのようだ。
 文野は穏やかに微笑み、口を開いた。
「アタシは元スタアの『文・野花』さ。ハナ様……なんて呼ばれていたのは、もう過去の話だよ……」
「知ってますとも! 今は売れっ子ロマンス小説家の『文・野花』先生ですもんね! 私、銀幕で活躍されていた頃から、ずっと先生の大ファンなんです! 既刊の作品、全部、初版で購入済みです! あ、先日出版された先生の新作も買いました! もう……素晴らしくて、思い出すだけで切なくて、涙が……」
「おやおや、こんな公然の面前で泣くのはお止しなさいな。でも、ありがとう」
 目を細めて口元を緩ませれば、女学生達はキャーキャーと黄色い声を上げて騒ぐ。
 すると、他の通行人も文野に気が付き、次第に彼女は大勢の人々に囲まれてしまう。
 だが、これこそが文野の狙い。
 自分のファンを引き寄せ、彼ら・彼女らから情報収集しようという試みなのだ。
 自身のファンならば、此方がお願いすれば口も軽くなるだろうという算段だ。
「実は、次の新作の構想に使うネタに、今宵の花魁道中をちょいと取材しているのさ」
「待って、先生の書く花魁モノのラヴロマンス小説……っ!?」
「構想の時点で傑作の予感……っ!」
 女学生たちが一気に色めき立つ!
 文野は内心、本当に書くかどうかは分からないけども、と付け加えながらも、女学生たちに尋ねる。
「それで、あの暁星太夫について知っている事を教えちゃくれないかい?」
「は、はい! 喜んで!」
 女学生達はそれからというもの、興奮しながら暁星太夫の噂についてしきりに語り出した。
 普通、遊女たちが太夫になるためには、長い年月をかけて、きちんとプロセスを踏まなくてはならない。
 幼少期に禿(かむろ)として芸や教養を養い、やがて新造となって初めて客を取る。
 だが暁星太夫が身売りされてきたのは現在18歳。遊女としてはやや遅めのスタートだ。
 にもかかわらず、禿を経験しなかった遊女……つまり留袖新造から初めて客を取り始めると、あれよあれよと男どもを惹き付け、その人気で絶大なる地位を半年で築き上げたのだ。
「まさに魔性の女……! 私もその1割でいいから、その手練手管をものにしたい……」
 顔を赤らめながら女学生は、ここまで一気に早口で語り尽くしてくれた。
 文野は暫し逡巡する。
(なるほどねぇ。確かに異例中の異例の出世とはこのことだね。もともと才覚や容姿に優れていたのもあるだろうが……)
 やはり、何らかの手段を用いて、一気に頂点へ駆け上ったと考えるのが自然か。
 文野は自然な流れで話を切り出した。
「しかし、暗い噂も聞こえているよ。それについて知っている事はあるかい?」
「えっと……」
 女学生達は顔を見合わせてしまった。
 よほど、人前では話す気が引けるないようなのだろうか。
 文野は彼女達の警戒心を和らげるため、すぐに言葉を発した。
「より現実味のある作品を書きたいからね、その方がアタシのファンが喜んでくれるのさ」
「で、ですよね! 華々しい光の舞台に隠されたドロドロの闇を描けるのは先生だけですとも!」
 思いの外に食い付きが良すぎた。
「……あの、これ、あまり大きな声では言えないんですが」
 そう前置きした女学生のひとりが、小声で話を切り出した。
「最近、暁星太夫から他の遊女へ鞍替えした男の人が、相次いで花街の周辺で殺されてるんです。しかも全員、心臓を刃物で抉られて持ち去られてるそうです……」
「へぇ? 一体、何のために?」
「そんなの殺人鬼じゃなければ分かりませんよ……。でも、たった1人だけ、辛くも逃げ果せた男の人がいるんです。その人が言うには……『暁星太夫に殺されかけた』『アイツは俺の心臓を握り鋏で抉り取ろうとした』って、しきりに喚いたそうです」
「……妙な話だね。暁星太夫は遊郭のから外へ自由に出られないじゃないかい」
 文野の言葉に、女学生は頷く。
「そこなんです。しかも、犯行は深夜に集中していて、目撃者も少ないので……結局、その男の人の被害妄想として警察は処理した、そうですよ」
「ふうん……」
 文野は思考する。
 明確な証拠がなければ、暁星太夫を名指しする必要はない。
 文野は女学生に事件現場の場所を聞くと、すぐさま急行。
 そのまま現場百遍の精神で捜査を開始した。
「……おや?」
 電柱の影に、何かが落ちている。警察はゴミだと思って回収しなかったのだろう。
 血のような赤い輝きを放つ、小さな石片を手に取る文野。
「コイツは……自然界のものじゃないね。周囲に硝子製のものは見当たらないし、おそらくこれはユーベルコヲドの副産物……つまり暁星太夫はユーベルコヲド使い、若しくは……」
 ラムプの中の影朧を手懐け、男にけしかけた?
「なるほど、有り得る話さ」
 彼女の秘密を知って逃げ出した男の口封じでもしたのだろうか。
 その目論見はどうやら失敗したようだが、どうにか世間の評判に救われた。
「でも、猟兵であるアタシの目は節穴じゃないんだ。さあて、コイツを暁星太夫に突きつける前に、短冊を吊るしに行くとするかね」
 ふわりふわりと、どこか夢見心地に雑踏を歩く文野。
 その手に握られた紅の結晶は、おどろおどろしい程に闇の中で輝いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

御園・桜花
「星を見るためにこんなに空を眺めたことはなかったかもしれません」

UC「蜜蜂の召喚」使用
花魁道中や観客の様子を蜜蜂に探らせる
気取られない程度の距離で
観客の会話
花魁の表情を観察する

空の蒼を眺めるために空を見上げる
下を向き続けないために上を向く
それ以外で空を眺めることはなかったかもしれない
夜は煌びやかな瓦斯灯にばかり目が行くから
水平な目線に興味はあっても
人の営みに関わらなそうな星は
意識したことがなかったなと実感した

『願いが叶いますように』
短冊に願いを書いて吊るす
皆の願いが叶うと良い
願いは人の生きる道しるべ
それが共存出来る願いならもっと良い

「見上げ続ける人生はお辛くありませんか…?」
花魁を見遣った



 桜色の長い髪を揺蕩わせ、桜色の和装パーラーメイドが夜空を見上げている。
 御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は、星が夜空を流れ落ちるたびに息を呑み、天体の神秘に魅せられていた。
「星を見るためにこんなに空を眺めたことはなかったかもしれません」
 独り言ち、ただただそれを見送る御園。
「星は、斯様なまでに煌めいていたなんて」
 御園は今まで、帝都の夜空に瞬く星に興味を示すことはなかった。
 むしろ日中に空の蒼を眺めるために空を見上げたり、下を向き続けないために上を向く事が主であった。
「それ以外で空を眺めることはなかったかもしれません」
 帝都の夜は、煌びやかな瓦斯灯にばかり目が行くから。それ以上へ目線を上げることなど考えもしなかった。
 水平な目線に興味はあっても、人の営みに関わらなそうな星の輝きを、御園は意識したことがなかったと実感した。
「そういえば七夕が近いのですね。私もひとつ、幻朧桜に吊るしてみましょうか」
 ボランティアの学徒兵達から短冊と筆を受け取った御園は、迷いなく願いをしたためてゆく。
 短冊には、達筆な文字でこう書かれていた。
『願いが叶いますように』
 だが、それを吊るそうとした時、誤って桜の枝からはらりと落ちてしまった。
 それを先程の学徒兵の一人である少年が拾い上げて届けてくれた。
「はい、お姉さん。此方をどうぞ」
「ありがとうございます。この黒山の人集りで踏まれなくてホッとしました」
 胸を撫で下ろす御園が短冊を受け取る。
 と、学徒兵の少年が何が言いた気な顔をしていた。
「……何か、私に?」
 御園が尋ねると、少年は不思議そうに言葉を発した。
「では、無礼を承知で。その短冊の願い……お姉さんの願いですか?」
「あら……」
 含みをもたせる言い方に、御園は目を少し見開いた。
「……そうですね。私の願いであることは間違いありません。私は、この桜の木や竹に吊るされた皆の願いが叶うと良いと願ってますので」
 御園の願いの内容に、少年は言葉を詰まらせる。
「お姉さん個人の、願いじゃないですね」
 だが御園は笑顔で少年へ告げた。
「願いは人の生きる道しるべ。それが共存出来る願いならもっと良いと思いませんか? 私はそれを、人の営みを、願っているのです」
 だから彼女は星に願わない。
 願いは、人それぞれの自分自身の意思と行動の結実なのだから。
 少年は腑に落ちたと言わんばかりに呆けたまま頷く。
「お姉さんのような慈愛に満ちた女性が、もっと帝都にいればいいのでしょうが。……実際、もてはやされるのは、暁星太夫のような女性なのでしょうね」
 その妙に棘のある言い方が、御園の心に引っかかる。
「暁星太夫のこと、嫌いなのですか?」
「……ええ。帝都桜學府でも、暁星太夫の黒い噂を少し調査していたのです。結局、証拠は何ひとつ掴めませんでしたが。腹黒い野心家は不気味です」
 少年が苦虫を潰したように顔を歪めた。
 御園は彼の手を優しく握ると、ニッコリと緑の眼を細めて笑ってみせた。
「大丈夫です。あとは、私に任せて下さいね」
「え。まさか、お姉さんは超弩級戦力の……」
 少年の手を離した御園は、再び花魁道中の見物客へと紛れる。
(予め放っておいた蜜蜂から、人々の声が聞こえていました)
 御園は現場に到着直後、ユーベルコード『蜜蜂の召喚』で、見され難く、自身と五感を共有する蜜蜂を群衆へ放っていたのだ。
 共有された視覚と聴覚から、暁星太夫の噂話を今まで掻き集めていた御園。
(殺人鬼、遊郭内の脅迫、幻朧戦線との接点。そしてあのラムプ。でも、彼女自身、日々の学を修め、芸事に励んでいたことも聞こえてきました。一体、何が彼女をそこまで駆り立てるのでしょうか?)
 蜜蜂はいよいよ、暁星太夫の頭の上まで到達する。
 気付かれないように闇夜に紛れた蜜蜂は、暁星太夫のかんざしのひとつにそっと止まった。
 すると、紛れもない暁星太夫の小さな呟きが聞こえてきたのだ。
「これで、わっちは正真正銘、天上の星になれたでありんす……。わっちを売った、ととさま、かかさまを、見返してやるために……」
 そして星を見上げる暁星太夫。
「だからもう少し、もう少しだけ持ち堪えておくれ、ラムプの姐さん……」
(今、小声でラムプに話し掛けましたね……?)
 間近に接近しなければ聞こえない声量。
 だが蜜蜂ならばそれを可能にし、遂に暁星太夫の心の声を御園は聞き取ったのだ。
「見上げ続ける人生はお辛くありませんか……?」
 御園は暁星太夫を憐れむ視線を送りながら、遠ざかるその背を見送るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リリィ・カスタード
お任せ/変更可/アドリブ・絡み歓迎

遊郭って綺麗な所だね~リリィちゃんも着物でオシャレして行くよ!
POWで願い事をいっぱい書いちゃお♪
お友達いっぱい作りたいし、美味しい物いっぱい食べたいし~、色んな世界に行きた~い!
あ!ちゃんと情報収集もしないとね?忘れるとこだった!
人もいっぱいいるし、【誘惑】で誰かお喋りしてくれないかな?
ゴシップって大好き!
暁星太夫って凄い人なんでしょ?花魁のことはよくわかんないけど最強でボスってこと?
あたしも憧れちゃうなー!
面白いお話が聞けたらオッケーばいばーい♪
あたしたちいいお友達になれたよねっ


フローライト・ルチレイテッド
WIZ分野でいきましょー。
アドリブ連携歓迎でーす。


近くの屋台とか食べ物屋さんとかを覗きながら話を聞いていきましょうー。
一応、話を聞き出しやすいように気持ち子供っぽく振る舞います。
実際知識として興味はありますしー。

というわけで、耳や尻尾で【存在感】を示しながら、相手の人をキラキラ【誘惑】したりしつつ、
【コミュ力】で話を聞いて【情報収集】してみましょー。
生い立ちとか、エピソードとか、興味があります。
内容によっては曲内のストーリーにできそう。

ぼくらもある種芸事分野になるのかな。
まぁ、話を聞く時はそのアタリの共通点?からも会話の糸口を探していく方向で。



 レトロな街並みのサクラミラージュ。
 花街を練り歩く花魁道中にかこつけて、その周辺では見物客目当ての屋台が軒を連ねていた。
「わぁ~! 遊郭って綺麗な所だね~! それに屋台もすごい数~!」
 目をキラキラと天上の流星群に負けず劣らず輝かせるリリィ・カスタード(だんぴーる🦇・f01018)が、思わず笑顔から八重歯を覗かせた。
「それじゃー、近くの屋台とか食べ物屋さんとかを覗きながら話を聞いていきましょうー」
 偶然、リリィと行動を共にすることになったキマイラのギター少年ことフローライト・ルチレイテッド(重なり合う音の色・f02666)が屋台通りを練り歩き始めた。
「待ってよ~フロちー! 今日のリリィちゃんはお着物なんだから、もう少しゆっくり行こ?」
 サクラミラージュに赴くにあたって、リリィは事前におめかしして乗り込んできた。
 鮮血を連想させる猩々緋色に染め上げた振り袖には、若草色の茎葉に映える菖蒲の花の絵柄。
 ツツジめいた桃髪をシニヨンにまとめれば、まるで薔薇の花のようだ。
 そこへ無秩序にかんざしを何本も刺せば、パンキッシュななんちゃって花魁の完成である。
 勿論、足元は高下駄を履いている徹底ぶり。
 オシャレに手を抜かない主義の女である。
 一方、普段通りロックテイストな衣装に身を包んだフローライトは振り返ると、リリィが追い付くのを暫し待った。
「ごめんなさい、こういう場所って実際、知識として興味はありますしー。どうもテンション上がっちゃいましてー」
「それな~! 分かりみが深いよ、フロちー! リリィちゃんもさっきからキラキラワクワクが止まらないんだよね~♪」
 リリィにとって、初めてのサクラミラージュ。
 しかも花街という大人の雰囲気たっぷりの場所は、つい先日に二十歳の誕生日を迎えた彼女にとって興味津々の様子。
「あのー、さっきからぼくのことフロちーって呼んでるのはなんでですかー?」
 と、ここでフローライトが小首を傾げた。
 リリィも小首を傾げて答える。
「だってー、フローライト君って呼ぶの、長いんだもん。だからフロちー! 駄目?」
「駄目、というか……こそばゆいですねー……」
「あたしのことも、気軽にリリィちゃんって呼んでいいよ! あ、リリィお姉ちゃんでもおけまる!」
「……リリィさんで、お願いします」
「えー」
 なんだかんだやり取りをかわしながら2人は屋台を見回ってゆく。
 その後姿は、歳が離れた姉弟のようだった。

「ねーねー、フロちー! 短冊に願い事書いて吊るそー!」
「いいですね、リリィさん。何をお願いしようかなー?」
 2人は早速、短冊にそれぞれの願いをしたためてゆく。
「あたしはねー? お友達いっぱい作りたいし、美味しい物いっぱい食べたいし~、色んな世界に行きた~い! そうだ、流れ星にも願っちゃお~! りゅーせーぐんだから、いっぱいお願いできちゃうもんねー!」
 短冊を合掌で挟みながら、うおぉーっと気合を入れて願いを込めるリリィ。
 そんなハイテンションな連れを微笑ましく見守る14歳のフローライト。
「ぼくらもある種芸事分野になるのかな。ぼくは、これからもバンド活動で多くの人達の心を揺さぶる演奏を続けていけるように……!」
 彼が所属しているバンド『Flawless Sign』で、ギタリスト“K”として活躍中のフローライト。今日も愛用のダブルネックギターをケースに入れて背負いながら散策中だ。
「フロちーのギター、聞いてみたーい!」
 リリィの言葉に、フローライトはちょっと複雑な心境で告げた。
「ぼくのユーベルコードは演奏が主体ですのでー。影朧との戦闘でお聴かせ出来ると思いますよ。……本当なら、影朧が暴走する前に止めたいところですけどねー?」
 予知の都合上、想定外の行動をすれば未来が変動してしまう。
 故に、この時点で暁星太夫の説得という道は閉ざされている。
「とはいえ、暁星太夫にも何か理由があるはずです。そろそろ情報収集をしてみませんか? 生い立ちとか、エピソードとか、興味があります。内容によっては曲内のストーリーにできそうですねー」
「そうだったー! ちゃんと情報収集もしないとね? 忘れるとこだった!」
 完全にリリィは観光気分で猟兵の仕事を忘れかけていたようだ。

 幸い、2人の容姿はとても整っており、どの世界に渡っても大多数が2人を美少年・美女を讃えるであろう。
 故に、2人は己の容姿を武器に屋台通りから花街中心まで連なる観衆達へ聞き込みをしていった。
「ねーねー? お兄さん? あたし、ゴシップって大好き! 暁星太夫って凄い人なんでしょ? 色々教えて!」
「ねぇ、お姉さん……? ぼく、暁星太夫の事をもっと知りたいんです……。何か、知ってることありませんか?」
「「うわ尊い……」」
 リリィとフローライトに話し掛けられた人々は、その美形ぶりに尊さを感じて口が軽くなってしまう。
 リリィの小悪魔カワイイ魅力と、フローライトの耳や尻尾は、サクラミラージュの民衆にとっては堪え難いほど心を動かされる要素であった。
「花魁のことはよくわかんないけど最強でボスってこと?」
 尋ねられた遊び人風の青年は盛大に笑い声を上げる。
「ははは! 今じゃお飾りみたいな格付けとか言うけど、それでもなろうと思ってなれるもんじゃないよ、ありゃ。国の役人でさえ、太夫の前では蛇に睨まれた蛙同然。羽振りが良くなきゃ、一瞥さえくれてくれないくらい気位高い存在さ!」
「すごーい! あたしも憧れちゃうなー!」
 リリィは頭の中に『太夫マジぴえん』と記憶。
「でも、それをイイことに、暁星太夫は役人と結託してるって話さ。役人共は暁星に見初められたくて、裏で巨額の金を動かしているとか?」
「えっ! それってヤバいよね?」
「ああ、こいつは立派な犯罪だ。あくまでも噂けどな、これが本当なら、帝都の役人が幾人も輪っぱ嵌められるだろうなぁ」
「うわー、ヤッバ……!」
 リリィは『太夫、ぴえん通り越してマジぱおん』と認識を改めた。
 一方、フローライトは、暁星太夫の在籍する遊郭の周囲の中見世でお茶を挽く遊女へ聞き込みをしていた。
「なるほどー。暁星太夫は芸事に熱心だったんですねー」
「そうらしいよ? あくまでも噂だけど、夜中まで琴の音が聞こえてきて、ちょっと迷惑だった事もあったねぇ。うるさくて寝られやしないよ」
「ということは、夜中に目が醒めたんですね?」
「嗚呼、そうさ。……そういや、夜中に青ざめた遊女が、その通りを何度か往来しているのを見たことがあるよ。そして、決まって必ず、暁星太夫の遊郭に吸い込まれてゆくのさ」
 フローライトは、その遊女の事が気になった。
「この辺りの遊女なんでしょうか?」
「あたしは見たことがないね。というか……あれはまるで幽霊だったよ。手にはでっかい握り鋏を持ってさ。恐ろしいったらありゃしなかったさ!」
「ふむ……。ありがとうございます、お姉さん!」
「役に立てたのなら光栄さね。嗚呼、全く。子供じゃなかったら、あたしのお座敷に招きたかったよ!」
 彼女もまた、フローライトの美少年オーラに心を撃ち抜かれた一人であった。
「あはは……。それはまだ数年後、機会が合えばって事でー」
 こうして、フローライトはリリィと合流し、2人の情報を合わせる。
 状況証拠だけだが、暁星太夫が野心を抱いて後ろめたいことをしているのは間違いなさそうだ。
「よーし! 最強のボスを倒しに行くよー!」
「指定された籠絡ラムプの暴走の時刻まであと僅かです。急ぎましょう」
 2人は花魁道中の先頭を歩く、暁星太夫の元へ急行する――!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『ただの女』

POW   :    愛ってなぁに?
対象への質問と共に、【心臓 】から【血で具現化させた心の結晶】を召喚する。満足な答えを得るまで、血で具現化させた心の結晶は対象を【心を貪る血の刃】で攻撃する。
SPD   :    心ってなぁに?
戦場全体に、【対象の心の淀み 】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
WIZ   :    だぁれ?
【疑念 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【血で具現化させた心の結晶】から、高命中力の【心を貪る血の刃】を飛ばす。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は榎本・英です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達は各々が集めた証拠を持ち寄り、花魁道中を征く暁星太夫の前に立ち塞がる。
 暴漢だと騒いで飛び出る男衆へ、暁星太夫は一喝。
「退きなんし! わっちは、この方たちと話する故、邪魔立ては不要でありんす」
 悟った表情で前へ進み出ると、しずしずと彼女は名乗りを上げた。
「暁星太夫と申すでありんす。以後、夜科に」
 その堂々とした存在感は、影朧の力がなくとも十分に発揮され、ただ力に縋っただけの愚者ではないことを猟兵たちに知らしめた。
「……で、仰っしゃりたいこと、はよう言ってくりゃんせ?」
 暁星太夫に促されるまま、猟兵達は集めた彼女の悪事の噂を問うた。
 ある者は彼女が殺人に関わっているのか、と。
 ある者は遊郭の関係者や客を脅しているのか、と。
 ある者は幻朧戦線との繋がりを問い掛けた。
 また、ある者は国の役人と結託して、何か悪事を働いているのか、とも。
「そんなの、ただの噂に過ぎないでありんす。ふふふ……」
 彼女は平然としているが、周囲のお付きの者達の動揺は激しい。
 明らかに暁星太夫よりも分かりやすい反応であった。
 だが、ある者が握りしてめいた赤い硝子のような結晶を見せ付けられた時、暁星太夫の表情が急に強張った。
「まさか……姐さん? よくも、しくじってくれたでありんすなぁ?」
 その声は怒りに震えていた。
 声は手元のラムプへ向けられていた。
 また、ある者は暁星太夫が呟いた内容を、一語一句間違えずに復唱してみせた。
 その瞬間、暁星太夫の血の気が急にサァ……と引いてゆく。
「そこまで、聞かれていたのでありんすか……!」
 わなわなと震える暁星太夫、突然、手に持っていたラムプを地面に叩き付けた!
「姐さん、元はと言えば、あんたがヘマしたから足が付いたでありんす! わっちの野望を邪魔するなら、もう姐さんは不要でありんす!」
 そう、彼女が叫んだ刹那。
 籠絡ラムプから、這い出てくるように出現したのは、青白い花魁だった。
「ひどぉい……わっちの力添えがなければ、そなたは未だに中見世の新造のままだったの言うのに。この……恩知らず……!」
 遂に影朧が暴走し、周囲の人々へ牙を向き始めた!
 突然の影朧出現に、現場は大混乱、恐慌状態に陥ってしまう!

「ねぇ? 愛ってなぁに? 心ってなぁに? わっちは……だぁれ?」
アハト・アリスズナンバー
WIZ判定の行動 アドリブ絡み歓迎

おやおや、ここに来て仲間割れ。それにしても役割を果たしたらすぐに使い捨てとは、花魁より任侠の方が活躍できたんじゃないですか?

まずは【救助活動】をして、現場の人達を避難させましょう。
人々に飛んでくる血の刃はUCを起動して相殺しましょうか。
皆さん慌てず逃げてくださいな。事の始末は猟兵が請け負いますので。

避難が完了したら、いざ本命。UCで飛ばした魔法剣を1本持ちつつ【ランスチャージ】で突撃し、貴方が誰かお答えしましょう。
貴方は誰かに愛と夢を与える人です。貴方に夢を求めて人々は金を稼いで、貴方に貢ぐ。
誰かのアリスになれた人、今はさよなら。魔法剣を発射し【貫通攻撃】です


氷咲・雪菜(サポート)
 人間のサイキッカー×文豪、13歳の女です。
 普段の口調は「何となく丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、
 独り言は「何となく元気ない(私、あなた、~さん、ね、よ、なの、かしら?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

氷や雪が好きな女の子で、好きな季節は冬。
性格は明るく、フレンドリーで良く人に話しかける。
困っている人は放ってはおけない。
戦闘は主にサイコキャノンを使って戦う。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



 遂に化けの皮が剥がれた暁星太夫。
 その彼女が手放した籠絡ラムプから這い出てきた、青い肌に青い髪の女。
 彼女は怯える観衆達に問い掛ける。
「わっちは、だぁれ?」
 観衆達へ問い掛けても、彼らに影朧の素性など知る由もない。
 故に、疑問の感情を与える事を許してしまう。
「ねぇ……答えてくんなまし?」
 観衆達の頭上に、血で具現化させた心の結晶を召喚させた女は、そこから心臓を貪る血の刃を射出!
 哀れ観衆は胸元を抉られて血みどろに!
 ……と、あわや大惨事にはならなかった。
「おやおや、ここに来て仲間割れですか」
 猟兵の中でもいち早く反応したアハト・アリスズナンバー(アリスズナンバー8号・f28285)が、ユーベルコードによって血の刃をパリング防御したのだ!
「対象をジャバヴォックと認識。ヴォーパルソード630本、正常稼働中。引き続き対象を削除します」
 幾何学模様を描き複雑に飛翔する、対怪物用に特化した魔法剣の弾幕が幾何学模様を描いて帝都の夜空を飛び交う!
「さぁ、みなさん。今のうちに慌てず逃げてくださいな。事の始末は猟兵が請け負いますので。攻撃はすべて、この『アリスオブヴォーパルソード』で打ち払ってみせましょう」
 避難を促され、観衆達の足が一斉に動き出す。
「落ち着いて、パニックにならずに逃げましょう!」
 救援に駆け付けた氷咲・雪菜(晴天の吹雪・f23461)も、観衆達の避難誘導を行っていた。……のだが。
「暑い……! 夏の蒸し暑さに、この人混みの密度……うぅ、やっぱり、夏は苦手なの……」
 冬が大好きな氷咲にとって、今の帝都の蒸し暑さは卒倒レベルの不快度である。
「すみません、金髪のお姉さん……。私はもう戦えません……。でも、困った人達は放っておけませんし、避難誘導はどうにか頑張りますので……、あとはこの子たちを、よろしくお願いします……」
 暑さでヘロヘロの氷咲がユーベルコード『絶氷双騎(アイスナイト・コンビネーション)』で呼び出したのは、氷咲と同等の実力を有する氷の剣騎士と氷の弓騎士だ。
「往きなさい、氷の騎士たち……。ああ、暑い……あ、冷やし甘酒、いいんですか?」
 氷咲は逃げる露天商のオッサンから冷やし甘酒を恵んでもらい、なんとか気力を回復させると、自身は避難活動に専念し始める。
 彼女を見送ったアハトは氷の騎士2人とともに、目の前の女と暁星太夫の2人と対峙していた。
「さて、暁星太夫さん。籠絡ラムプを使ったこれまで様々な悪事を働いてきたにも関わらず、役割を果たしたらすぐに使い捨てとは。ひょっとして、花魁より任侠の方が活躍できたんじゃないですか?」
「お黙りなんし! うぬらにわっちの苦しみなんて分かるわけないでありんす!」
 吠える暁星太夫に、アハトは無表情で言い放つ。
「ええ、分かりません。今、私の頭にあるのは、どうやってその影朧を倒すか。そして、戦闘後、祝杯に相応しい美酒を扱う店が何処にあるのか。この2つです」
 酒好きにとって、戦後の酒は影朧討伐と優先順位が同列である。
「では、私の美味しい酒の為に、貴方が誰かお答えしましょう」
 アハトは生成した魔法剣の一本をむんずと掴むと、女へ向けて言葉を発した。
「貴方は誰かに愛と夢を与える人です。貴方に夢を求めて人々は金を稼いで、貴方に貢ぐ。貴方に色恋を抱いたから、貴方に会いにゆく。生前の貴方はきっと、誰かにとっての『理想の女(アリス)』になれた女性だったのでしょう」
 だがその言葉に、女は首を横に振った。
「恋も、愛も、わっちには……判りかねるでありんす……だから」
 再び空中に召喚される心――今まで抉り出した男達心臓を模した結晶から、血の刃を無数に放つ!
「心を集めれば、理解出来ましょう?」
「なるほど、根本的にサイコパスだったのですか。一連の殺人事件も、この影朧の習性だったのかもしれませんね」
 アハトは魔法剣の弾幕で刃を弾き返しつつ、徐々に間合いを詰めてゆく。
 そこへ、氷の騎士2人が左右から挟撃!
 氷の剣騎士が左側から斬り掛かれば、右側から弓騎士が狙撃!
 目の前に集中していた女は、左右同時の攻撃を回避できず、その身に攻撃が直撃してしまう。
 絹を裂くような悲鳴が上がっても、アハトは手心を加えず、追撃をするべく駆け出した。
「愛や恋を理解出来ず、猟奇的なサイコパスだったとしても、遊女であった以上、貴方は誰かの寵愛の対象であったはずです」
 魔法剣の切っ先を力の限り突き出せば、その腹を一気に貫通させた!
「誰かのアリスになれた人、今はさよなら」
 アハトがその場から飛び退き、指をパチンッと鳴らした。
 次の瞬間、周囲を飛来していた魔法剣が、幾何学模様を描きながら、一斉に女の身体へ突き刺さってゆく!
 まるで剣山が如き様相となった女だが、自身の放った血の刃で魔法剣を弾き飛ばすことで、どうにか致命傷は回避できたようだ。
「……悪運の強い女ですね。ですが、避難誘導の時間は稼げたでしょうか」
 アハトは引き続き、観衆達の避難を行うべく戦場を一旦離脱。
 事後を他の猟兵達へ託したのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
【ソロ希望・SPD】
他人の幸福を妬んで陰口を叩く連中といい
影朧の力で昇り詰めておいてバレた途端に不要と言い放つ
暁星太夫といい……だから人間は嫌いなのよッ!!

でも、この影朧を救うのに憎悪は邪魔ね。
自身に【催眠術】をかけて一時的に人類への憎悪を弱め
影朧への慈愛を増幅する事で
心の淀みから迷路を作るUCを封じるわ

愛は抱擁。心は情。
闇を照らし、温もりを与えたいという想い。
私達は貴女を救うラムプになりに来たの

守護霊の憑依【ドーピング】で戦闘力を高め
【念動力】で引き寄せ【怪力】で抱擁。
『たのしいおしゃべり』と【誘惑・慰め】で
満足のイク答えを引き出し【生命力吸収】

貴女が誰なのか……
その答えは一緒に探しましょ?



 混沌と化した花街に、マントをコウモリの翼に変えて空から降り立つドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)。
 その表情は嫌悪感に満ちていた。
「まったく……他人の幸福を妬んで陰口を叩く連中といい、影朧の力で昇り詰めておいてバレた途端に不要と言い放つ暁星太夫といい……だから人間は嫌いなのよッ!!」
 空から舞い降りて悪態をつくドゥルールに、人々は怯えて自然と逃げ去っていってしまう。
「なによ、本当に失礼ね! ああ、もう最悪……ッ!」
 人間から迫害された過去を持つ彼女にとって、こうした人間の醜悪な部分は反吐が出るほど毛嫌いしている。
 だが、青い女を目の当たりにした途端、その表情は急に柔らかくなった。
「でも、貴女を救うのに憎悪は邪魔ね。落ち着いて、ドゥルール。アンガーコントールくらい出来なくてどうするの……!」
 ドゥルールは自身に暗示をかけることで、人間への怒りを抑え込んでゆく。
「ねぇ、心って、なぁに?」
 女の問い掛けは、ドゥルールの心の淀みを迷路化させるユーベルコードのトリガーだ。
 ドゥルールの周囲が、徐々に入り組んだ壁で覆われてゆく。
 だが、それは不完全なままで発動が止まってしまった。
「愛は抱擁。心は情。闇を照らし、温もりを与えたいという想い。私達は貴女を救うラムプになりに来たの」
 ドゥルールの影朧への慈愛の心が、人間への憎しみを上回ったがゆえに、心の淀みを具現化するエネルギー供給が不足しためだ。
 とはいえ、彼女の行動理念にある人間の嫌悪感は完全に払拭されたわけではないので、迷路化の阻止までは至らなかった。
「周りが迷路になってしまったのは残念だわ。私もまだまだね。でも、前向きに考えれば、貴女と密な空間で周りの目を気にせず愛し合えるてことよね?」
 ドゥルールは、今まで愛したオブリビオン達を守護霊として自身に憑依させると、自身の能力を底上げさせてゆく。
「あぁ――ンッ! みんな、私に力を貸して……♪」
 体内でうごめく守護霊達の気配に、ドゥルールはゾクゾクと背筋を震わせてしまう。
 そして敏感になった各感覚器官で、迷路内に潜む女の気配を察知!
「みぃつけた!」
 振り返り、ドゥルール自ら女へ飛びかかる!
 背後から忍び寄って、手に持った握り鋏でドゥルールの胸元を抉る算段だった女は、不意を突かれて抑え込まれてしまう。
「さぁ、『たのしいおしゃべり(インテラゲイション)』のはじまりよ♪ 身も心も、包み隠さず話しましょ♪」
 すると、迷路内に次々と現れるオブリビオンの亡霊達。それらは全て、露出の高い服を纏い、扇情的な態度で女に迫ってゆく。
「貴女が誰なのか……。その答えは一緒に探しましょ?」
 女を愛撫しようと、オブリビオン達の手が伸びる。
 だが、女はそれを握り鋏を突き出して脅してみせた。
「……それは、出来ぬ相談でありんす」
 女がふと、言葉を発した。
「わっちは、人を待っているでありんす。故に、お前さんの元には、魂の一片も捧げることは出来んのでありんす」
 女の言葉に、ドゥルールはショックを隠しきれない。
「私は、貴女のラムプになれないってこと?」
 恐る恐る尋ねる。
「左様でありんす」
 女は、初めて口元で笑みを浮かべた。
「わっちは人でなしでありんす。愛情を知らない、ただのモノ。記憶が霞がかって思い出せんが、わっちは、人でなしの小説家の男と会わねばならんのでありんす……」
「その男って一体誰よ?」
「それは知りなんし。けども、わっちがいずれ、その男に会わねばならぬ。会って、全てがようやく分かる気がするでありんす……」
「……はぁ。影朧になっても影響を及ぼす宿縁ってなによ。どんだけその小説家の男って、この人と因縁が深いのかしら?」
 ドゥルールはげんなりした様子で女から離れる。
 花魁の影朧との関係者なのだから、恐らくは複雑な感情がもつれた間柄なのかもしれない。
「寝取りプレイも悪くないけど、なんだかドロドロした関係って面倒よね……。きっとその男って人間だろうし。あー嫌だ嫌だ」
 そういいながら、女の青い髪を黒い稲妻で一房焼き切ってむんずと掴んだ。
「これで勘弁してあげるわ。……貴女の持つ能力の媒介くらいには使えそうだし、フラれたと思って、今回は引き下がるわ……」
 溜息ひとつを履きながら、怪力で迷路の天上を拳で突き破って脱出するドゥルール。
 女にダメージは与えることはなかったが、結果として周囲の観客の安全を確保し、女の心情を吐き出させることに成功したのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

御園・桜花
「彼女を姐さんと呼んだ暁星太夫なら、何か聞いていたかもしれません」
暁星太夫に短く確認

「貴女が貴女自身のことを知らぬなら。きっと誰も貴女のことは分かりません。太夫や格子のことを良く知る遣り手だったかもしれません。禿を経ずに太夫になる。本当に太夫であった方なら、そんなことを唆しもしないでしょうから。そして…篭絡ランプが壊れた以上、貴女は此処で終わりです。貴女の手に残るものはもう何一つありません。ですから…全てを置いて逝かれませ」
UC「幻朧桜の召喚」使用
彼女の嘆きを掻き立て忘却と浄化を

「今望んでも手に入らぬものを諦めて、転生を望んでみませんか。新たな生の上でなら、それは必ず貴女の手に入りますから」


フローライト・ルチレイテッド
アドリブ連携歓迎でーす。
尚、本体は格闘等の物理攻撃は一切行いません。

とりあえずキラキラ光って真の姿を解放。
攻撃は【地形の利用】で周囲の物を盾にしたり、【パフォーマンス】の身軽さでかわしたり、
疑問自体を世界へ愛と平和の歌を届ける【情熱】で振り払う。
かわせなければ【激痛耐性】で耐えたりして防御。

尊き祈りよ、天まで届け!遍く世界に平和と愛が満ちますように!

【楽器演奏、歌唱、パフォーマンス、精神攻撃】を駆使して指定UCを使用。
愛と平和を希求する心を付与して攻撃。

それがかつて人であったのなら。
愛のカタチを知っていたはず!
心の在り処を知っていたはず!

失くしてしまったものを、どうか取り戻して!


鹿村・トーゴ
曙星さん
さすが太夫、肝が据わってるね
けど詰め怠ってンなァ
そこで喚いちゃ台無しだろ

…いや
先ずランプの姐さんだな
少し距離を取り足止めと攻撃の為UCを敵へ
同時に観衆へこの場から離れろと叫ぶ
道中は恐らく大通り
前後に分かれて逃げて欲しいが
脱出容易方向へ相棒ユキエを飛ばす
『こっちよ』ってあの人達を誘導出来るなユキエ?頼んだよ【動物と話す】

さて姐さん
愛なんて若造のオレには満足な答えは返せねーが
自分より相手の身になって考えるし行動もする、て事じゃない?

話しつつUC蜂に追随し敵に接近
クナイで攻撃【忍び足/追跡/暗殺】
敵攻撃は被弾か【武器受け】で弾くが…
出来れば納得させられる。言葉を用意したかったよな…

アドリブ可


リリィ・カスタード
お任せ/変更可/アドリブ・絡み歓迎

はわ~綺麗なお姉さんが出てきたんだけど……!?
仲間割れ?ってやつぅ?
とりあえず人がたくさんいるから避難させないとだよねっ。人命最優先!
ユーベルコードで敵ちゃんの動きを少しでも封じられるかやってみるよ。
敵ちゃんが周りの一般人に攻撃しないよう、こっちに意識が向くよう話しかけてみちゃう。少しは【時間稼ぎ】になるかな?
ねぇねぇおねーさんたち喧嘩はよくないよ?ちょっと落ち着いてりりィちゃんとお喋りしてみない?あたしたち、良いお友達になれると思うんだけどなぁーっ。



 迷路が消失したところへ、4人の猟兵達が女を取り込む。
「はわ~綺麗なお姉さんが出てきたんだけど……!? もしかして仲間割れ?ってやつぅ?」
 リリィ・カスタード(だんぴーる🦇・f01018)は暁星太夫と影朧の女を交互に見ながら、今だ少なからず残っている野次馬達へ気を配る。
 鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)もまた、暁星太夫と女の動向に注視しつつ、自身へ2人の注意を向かせるべく言葉を発する。
「暁星さん……さすが太夫、肝が据わってるね。けど詰め怠ってンなァ。そこで喚いちゃ台無しだろ」
「くっ……わっちにはもう、姐さんの力を借りる必要はないでありんす! わっちにはこの国の上役や大臣が背後に付いているでありんすよ!」
 暁星太夫が負け惜しみを吠えるも、鹿村は困り顔で答えた。
「けどなァ、それを此処で暴露しちまったら、帝都の警察がその辺を嗅ぎ回るんじゃないか?」
「その時は幻朧戦線の先生に頼る手筈でありんす。もうそろそろ、わっちを迎えに来てくる時間が迫っているゆえに」
「最初から真っ黒って事か。そりゃあ此方も遠慮なく、そこの影朧を斬れるってモンだ」
 鹿村は懐から苦無を取り出して身構える。
「七針、お前たちの出番だな。女だからって油断するなよ?」
 途端、鹿村の身体が大通りから弾け、一直線に女へ向かってゆく!
「おい野次馬共、この場からすぐに離れろ!」
 叫びながら、ユーベルコード『虚蜂(ウロバチ)』を発動。
 見えない七匹の大型蜂を召喚し、女の周囲に展開させる。
 そして、相棒の黄芭旦のユキエに、鹿村は早口で頼み事をした。
「急いでくれ。『こっちよ』ってあの人達を誘導出来るな、ユキエ? 頼んだよ」
『まかせて。ほら、こっちよ、こっちよ』
 大通りという性質上、人の流れは前後へ引きやすい。
 だが、一部は細い路地に逃げ込み、そこからおソロ恐る顔を出す野次馬になっていた。
 ユキエはそんな彼らの頭を爪で引っかき、荒っぽくだがその場から立ち去るように促すのだった。
 そこへ放たれる血の刃の弾幕!
「悪りーな? それは通せねぇよ」
 不可視の巨大蜂達が刃を弾き返す!
「ぼくも加勢します! さあ、愛と平和のライブの始まりだよ!」
 フローライトをイメージした美しい色のダブルネックギターを掻き鳴らせば、帝都の夜空をバックにメロディアスなギターリフが炸裂する!
 その姿はキラキラと星屑を纏うように輝けば、フローライト・ルチレイテッド(重なり合う音の色・f02666)は真の姿を曝け出す。
「うっそ~!? フロちーが天使になっちゃったっ!」
 リリィが彼の真の姿に見とれてしまうのも無理はない。
 それは、純白のロリータ衣装に純白の翼、ボブカットだった銀髪は腰まで伸びた絹糸のような美しい御髪に変わり、まるで女神の花嫁姿の如き可憐で美麗な真の姿なのだから。
「リリィさん! いくらぼくが美しいからって、ボーッとしてないで下さい!」
 希望溢れるギターの音色を奏でながら、フローライトはリリィの自我を呼び戻す。
「あっ! そうだった~っ! とりあえず人がたくさんいるから避難させないとだよねっ。人命最優先! ありがとう、フロちー! さっすが親友っ!」
 慌てたリリィが、逃げ遅れた人を御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)と共に心の刃を防いでゆく。
「メイドたるもの、攻撃は銀盆で弾き返してみせましょう」
 御園の持つ破魔の銀盆は、なんと素材が退魔刀と同じ素材であり、退魔刀と同じ工程で鍛造された業物である。
 勿論、これで殴られると退魔刀と同じ効果を得られるという、特級メイドならではの武器なのだ。
「なにそれ、メイドさんのトレイ! そういうのいいなぁ~! あたしなんてそこにあった看板だよっ? わわっ! も~危ないってば!」
 飲み屋の立て看板を使い捨ての盾にして、どうにか心の刃を受け止めたリリィ。
 勿論、看板は数発受け止めた時点で大破してしまった。
「ちょっと、お姉さん! 危ないから飛び道具禁止だよっ! これで捕まえちゃうんだから!」
 リリィは念を足元に込めた瞬間、彼女足元が女へ向かって隆起!
 地面から飛び出した棘のある赤薔薇の蔦が、女と暁星太夫を取り囲むと、たちまち蔦は鳥籠の形を成して2人を閉じ込めてしまった!
「ねぇねぇおねーさんたち、喧嘩はよくないよ? ちょっと落ち着いて、リリィちゃんとお喋りしてみない? あたしたち、良いお友達になれると思うんだけどなぁーっ?」
「リリィさん、こんな時まで……」
 フローライトは、ぶれないリリィの言動に苦笑いをしてしまう。
「でもでも! 誰かを罵り合ったり、傷付け合ったって、それってラヴじゃないよっ? 愛が何かって? 貴女が誰かって? そんなの決まってるよっ!」
 ビシッと指を突き付け、リリィは自信満々に答えた。
「愛は仲良しって意味で、2人はリリィちゃんの親友っ! これしか勝たんっ!」
「おいおい、スゲーな。敵すら仲良くなろうっていうのかよ」
 様子を窺っていた鹿村は、リリィの言動に度肝を抜かれていた。
 だが、蔦を切断して女は脱出!
「わっちにはこの檻は狭すぎるわぁ」
「ヤッバ! 誰かやっつけてよ~っ! あたしは飛び道具、ちょっと苦手~っ!」
 心の刃から逃げ惑うリリィをかばうように、フローライトが前に出る!
「尊き祈りよ、天まで届け! 遍く世界に平和と愛が満ちますように!」
 ギターの音圧と歌に込めた情熱、そして彼の演奏と歌声自体が魔法となって心の刃を弾き返す!
 その音の魔法は、女の全身に浴びせられ、その身体を後ろに退かせた。
(ぼくの歌が効いてる! 一気に畳み掛けるよ!)
 フローライトの歌『Precious pray~尊き祈り』はサビへ突入!

「♪争い続くこの世を嘆き悲しみ
 ♪人々は平和と愛を望み祈った
 ♪教えて闇に浮かぶ希望はどんな色をしているの?
 ♪いつか叶うといいと願った」

 歌声を聞かせた相手に、愛と平和を希求する心を付与し、フローライトが歌い続けることによって、女の心の内から溢れ出す圧倒的な愛と平和への渇望を湧かせるのだ。
「ああ……あぁっ!? な、なんでありんすか? わっちの身体の中で、温かな感情が……っ!」
「それがかつて人であったのなら。愛のカタチを知っていたはず! 心の在り処を知っていたはず! お願い、失くしてしまったものを、どうか取り戻して!」
 フローライトの愛と平和を歌い上げる声に、女は頭を抱えて悶え苦しむ!
「わ、わっちは、こんな感情なんぞ、知らん……! う、うぅっ! おのれ、余計な真似を……!」
 苦しむ女へ、戦況を見守っていた御園が問い掛ける。
「ならば、貴方の怒りも嘆きも……此の地で得た全ての痛みと想いを、此処に置いて逝かれませ」
 御園は桜の精だ。
 そして彼女が操るユーベルコードは、咲き誇る幻朧桜の霊体を周囲に出現させることが出来るのだ。
「綺麗でしょう? これが、全てを癒し浄化する桜吹雪です」
「あ、あああぁぁぁ……っ!」
 桜吹雪を浴びるたびに、女の体が蒸発するように煙が上がってゆく!
 強制浄化によるダメージが入っているようだ。
 と、御園はふと、茨の檻に閉じ込められたままの暁星太夫へ問い掛けた。
「時に、彼女を姐さんと呼んだ貴女なら、何か聞いていたのでは?」
「……いいえ、姐さんは花魁になるための術や教養以外は、わっちに教えてくれなかったでありんす」
 首を振る暁星太夫の反応を、想定内だと言わんばかりに頷く御園。
 再び、もんどり打って苦しみ続ける女へ言葉を投げ掛けた。
「貴女が貴女自身のことを知らぬなら。きっと誰も貴女のことは分かりません。『太夫』や『格子』のことを良く知る『遣り手』だったかもしれません。禿を経ずに太夫になる。本当に太夫であった方なら、そんなことを唆しもしないでしょうから」
「いいや……わっちは、確かに太夫まで昇り詰めた、れっきとした花魁でありんす……!」
 苦しむ影朧の女は、誇りを持って反論した。
「ラムプの中に閉じ込められた時は、腹も立ったものだけど、あの小娘の野心に、わっちは乗ってやったでありんす」
「ですが、籠絡ラムプは暁星太夫の手から離れました。そして彼女は貴女を見限った。そして、今や私達に追い詰められた袋の鼠。貴女は此処で終わりです。貴女の手に残るものはもう何一つありません。ですから……全てを置いて逝かれませ」
「あ、ぅぐ……っ!」
 浄化が進み、更に苦しみ嘆く女。
 それが御園のユーベルコードの威力を更に増してゆく。
「今望んでも手に入らぬものを諦めて、転生を望んでみませんか。新たな生の上でなら、それは必ず貴女の手に入りますから」
「断るでありんす。まだ、会いたい人が、わっちには……っ!」
 その言葉に、鹿村が動く。
「そこのメイドさん。コイツはきっと浄化できねーよ。この世界に未練タラタラの様子だし、誰かに会いたがってる。きっと……宿縁ってやつだろうな」
 苦無を逆手に握り直す鹿村。
 その目つきには、絶対零度の殺意が漲っていた。
「そろそろ、終わりにしようか」
 再び鹿村の身体が縮地めいて弾ける。
 一瞬で女の目の前まで肉薄すると、苦無を一直線に突き出した。
「ああああああっ!」
 だが女も最後の抵抗を試みる。
「愛ってなぁに……!?」
 振り下ろされる握り鋏と血で具現化させた心の結晶の刃!
 それを鹿村は念動力で苦無を複数本操って弾き返す!
 徒手空拳のまま、拳を振りかぶる鹿村!
「出来れば納得させられる、言葉を用意したかったよな……けれど、悪りーな」
 空中から苦無が降り注ぐ。
 上空に待機していた相棒のユキエが、弾かれた苦無の一本をキャッチし、鹿村の眼前へ落としたのだ。
 それを掴み取った鹿村は、いきなりバックステップ!
 そのまま掴んだ苦無を女へ投げ付けた!
「“それ”が俺なりの答えだ」
 投げ付けられた苦無を、心の刃で弾く女。
 次の瞬間、女の周囲から大きな穴が開き、鮮血が吹き上がったではないか!
「……俺の攻撃は全部囮だよ。本命は、最初に放っておいた見えない蜂達ってこった。ま、愛なんて若造のオレには満足な答えは返せねーが、強いて言えば、自分より相手の身になって考えるし行動もする、て事じゃない? つまりさ、目の前ばっか、自分ばっか見てると、愛って見えねぇんじゃねーの?」
「ふ、ふふ……そういう、答えも、素敵さ、ねぇ……」
 全身が穴だらけになった影朧の女は、その場に崩れ落ちると、全身が炎に包まれていった。
 同時に、籠絡ラムプにも引火して一緒に燃えてゆく。
 茨の檻から開放された暁星太夫は、燃えてゆくラムプと女を、涙を流しながらいつまでも眺めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『籠絡ラムプの後始末』

POW   :    本物のユベルコヲド使いの矜持を見せつけ、目指すべき正しい道を力強く指し示す

SPD   :    事件の関係者や目撃者、残された証拠品などを上手く利用して、相応しい罰を与える(与えなくても良い)

WIZ   :    偽ユーベルコヲド使いを説得したり、問題を解決するなどして、同じ過ちを繰り返さないように教育する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 大通りに警官達と学徒兵達が押し寄せてきた。
 暁星太夫、いや、今や犯罪人の女と成り果てた暁星の身柄を拘束するためだ。
 この騒動に、観衆達は非難轟々、罵詈雑言の嵐を暁星へ浴びせる。
「テロリストに加担していただなんて、人間の屑だね!」
「いくらお前につぎ込んだと思ってやがる! 金返せ!」
「いっそこの場で処刑しろ!」
「さっさと失せろ、犯罪者!」
 中には暁星に石を投げつけ、直接その顔を殴る者まで現れる始末。
 その整った顔が投石で血みどろになってゆくさまを見届ける猟兵達。
 暁星は力なく座り込んでおり、警官達に抱えられてようやく立ち上がるほど憔悴しきっていた。

 猟兵達よ、どうか最善の方法を考えてほしい。
 暁星太夫に必要なのは、罰か。それとも、救いか。あるいは、全く別の方法か。
 道を誤った彼女へ道を示せるのは、本物のユーベルコヲド使いである猟兵達だけしかいないのだから。
ドゥルール・ブラッドティアーズ
【ソロ希望・WIZ】
真の姿で背中に黒炎の翼。
守護霊の【ドーピング】で更に強化

【属性攻撃】の落雷で人間どもを怯ませ
【ダッシュ・怪力】で暁星太夫を抱え【空中戦】で飛翔

他人の幸福を妬んで陰口。
全てを失った彼女に今が好機と袋叩き。
お前達こそ本当の屑よ!!

勧善懲悪? 便利な言葉ね。
なら人間から迫害を受けて育った私にも
人類を裁く権利があるわ

プラチナ:こんな連中やっちゃいましょう!
スカムキング:久々に暴れるかアシュリー

84人の霊と共に【呪詛・催眠術】で
人間どもを一夜限りの悪夢に誘い
【祈り】を籠めた包帯の【医術・早業】で暁星太夫を治療

……袋叩きにされる貴女が
昔の私と重なって見えただけよ。
精々あがいて生きなさい



 人間の集団行動心理は、理性ではなく感情を規範とする。
 目の前で思いも依らない事態に遭遇した時、人々は分かりやすい感情から発露してゆき、それがやがて全体へと伝播してゆくのだ。
 故に、目の前のスタア――暁星太夫の悪事が露見し、全てが崩れ去った一部始終を目の当たりにした人々の胸中には、深い『悲しみ』や『怒り』が渦巻くのが人間の性というものである。
「裏切り者!」
「この詐欺師!」
「逆賊はくたばれ!」
「どうして、こんな事を!?」
 稀代の星のような存在が、一瞬で犯罪者へと落ちた事態に人々は混乱し、とにかく憤怒で皆が我を忘れてしまいがちになる。
 既に一部は暴徒と化して暁星太夫への暴行を働き、警官と学徒兵達が彼らを抑え込むなど、まさに地獄絵図と化していた。
 と、そこへ、突然、天から降り注ぐ黒雷の鳴動が轟く!
 落雷の場所には、黒炎の翼をごうごうと広げ、此方も憤怒に顔を歪めるドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)の姿があった。
「……他人の幸福を妬んで陰口。全てを失った彼女に今が好機と袋叩き。お前達こそ、本当の屑よ!!」
 ドゥルールは背後にオブリイオンの守護霊達を憑依させつつ、暴徒達へ向けて黒雷を発射!
 爆発で観客達は吹っ飛べば、大通りは更に混沌を増してゆく。
 人々は我先に逃げようと、もみくちゃになってあちこちから悲鳴が上がり始めた。
「勧善懲悪? 便利な言葉ね。なら人間から迫害を受けて育った私にも、人類を裁く権利があるわ」
 そう告げた彼女の背後から続々とオブリビオンの亡霊達が受肉してゆくではないか!
「貴方達、久々に思いっきり遊んでいいわよ」
 ドゥルールは観客に集団催眠を仕掛け、オブリビオン達に無限に殺されては生き返る悪夢を見せ付ける。
 暴徒はおろか無関係の人々まで悪夢の巻き添えになり、大通りは死者は出ないものの、もはや花魁道中の跡形もない。
 その間に暁星太夫へ近付くと、ドゥルールは彼女を抱えて空へ逃亡を図ろうとする。
 だが、暁星太夫とドゥルールはの間に、多数の学徒兵が立ちはだかった。
「影朧を召喚したぞ! こいつが黒幕なのか!?」
「おのれ悪党! 帝都をこれ以上、混乱に陥れようとするなら許しません!」
「お前は完全に包囲されてるぞ! おとなしく投降しろ!」
 学徒兵達はドゥルールへ武器を突き付け、暁星太夫を守ろうとしている……!
 ドゥルールは一気にモチベーションが下がってしまい、学徒兵達へ嫌悪の言葉を投げ掛ける。
「あのねぇ……? 猟兵の中にも死霊使いやその類が居ることくらい分からないの……? だから人間は嫌なのよ……」
 ドゥルールの言い分はもっともだが、今は状況が悪すぎた。
 ここで騒ぎを起こせば、どんなに言い分が正しくとも疑いの目を向けられるのは当然の運びであり、ましてや受肉させたオブリビオン達を人々にけしかけた時点で彼女が『悪人』認定されてしまう状況証拠が揃ってしまうのだ。
 いくらドゥルールが人間嫌いとはいえ、今回はアプローチが完全に間違ってしまった。このままでは本当に首謀者として身柄を拘束されてしまうだろう。
(……駄目ね、これ以上は時間の無駄だわ)
 ドゥルールは黒炎の翼を羽撃かせて空を舞うと、暁星太夫へ向かって告げた。
「……袋叩きにされる貴女が、昔の私と重なって見えただけよ。精々あがいて生きなさい」
 帝都の空の彼方へ飛び去るドゥルール。
 彼女が離脱したことで、ユーベルコードは解除された。
 暴徒達の大多数が、皮肉にも先程のユーベルコードで正気に戻ったのであった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

アハト・アリスズナンバー
SPD判定の行動 アドリブ絡み歓迎
予め戦い終わってからすぐに【早着替え】で「有栖川ハチ子変装セット」に着替えておきます。

太夫を【救助活動】で治療しつつ、皆さんに一旦冷静になるように呼びかけます。そしてUCを起動。

さて、この騒動には更に多くの悪が関わってるとしたら?太夫一人で計画できるものではありません。先程太夫は言いました。「幻朧戦線の先生に頼る手筈」があると。しかもそろそろ迎えに来てくれるんですよね?つまり、この中にいるんですよ。太夫にラムプを渡し、全てを指示した幻朧戦線の先生様が。

……後は、学徒兵達の役目でしょう。
でも太夫。貴方の罪は法で裁かれなくてはなりません。
彼女を警察に任せます。


鹿村・トーゴ
…おいおい(滅多と怒らないがこの状況にはさすがに苛ついて)
この太夫、罰は受けるべきでも私刑はねーだろ?
ここで暮らしたり遊んだりしてるアンタ等なら苦界の苦労も逃げ出したい心持ちも解ンだろうが
せめて花街のアンタ等がいたぶるのは止せよ

…てか今でこの状況じゃ見通し悪りーぜ
脅しで成り上がった元遊女…牢獄で慰みに嬲り者にされない保証もないし

とと様かか様…か
信頼してた親に売られりゃ自棄にもなるよ
つまり天涯孤独で行くアテもない身
…個人的には太夫が頷けばどっかコッソリ手引きして逃がしてやりたいとこ
(偽装獄死して埋葬時に…とか)
ま、立場的にマズいけど
忍のオレも使い捨ての日陰者
同類相憐れむじゃねーけどさ…

アドリブ可


御園・桜花
「大正帝の御代は、私刑など罷り通らぬ法治の御代だと思っておりましたが…此処は何処の野蛮の園です」
周囲睥睨し威圧

UC「癒しの桜吹雪」使用
太夫も他の怪我人も等しく治療
「罪科は法廷にて数えられ処罰されます。我欲で他者を暴行するなら、貴方達も等しく咎人です」

店に来た当初太夫が喜んだ食物聞き収監先へ持参し渡す
「貴女のお名前と話を伺いに参りました。望まぬ職業、御両親への想い、話せぬことが色々おありでしたでしょう」

自分の名前と住所書いた紙渡し
「うちの大家は、言葉も話せなかった化物を店子に出来る業突く婆ですもの。寝るだけの部屋なら、四畳半に女2人でも充分でしょう。全部終わったら、私と一緒に女給でもしませんか」


リリィ・カスタード
お任せ/変更可/アレンジ・絡み歓迎

ちょっとちょっと!何でこうなるの〜!?こんなの全然気持ちいいハッピーエンドじゃないんだけどっ!
みんな暁星ちゃんを虐めるの禁止!だってもう暁星ちゃんはリリィちゃんのお友達なんだもん!
お金を注ぎ込んだお客さんだって、暁星ちゃんのこと大好きだったんでしょ?その時間とその時の想いは偽物じゃないじゃん!〜って思うんだけどぉ。
あたしも最近わかってきたよ!【優しさ】ってやつ!
とはいえ悪いことしたらちゃーんとごめんなさいしなきゃだねっ!そしたらみんなで仲良しハッピーエンド、でしょ?
暁星ちゃんもランプにお願いするより、一緒に短冊書いて、流れ星にお願い事しよ?


フローライト・ルチレイテッド
アドリブ連携歓迎でーす。
POW分野で

真の姿はそのまま。
とりあえず手始めに【範囲攻撃、楽器演奏、歌唱】を駆使して、
周囲の人も太夫さんも一緒くたに指定UCの戦意や悪意を払う光で無差別攻撃します。
少しは落ち着くはず。
その上でUC【ある木漏れ日の物語】で光の翼を広げ周囲の傷を癒やし
【存在感】を示しながら【情熱】的に【大声】で話をします。

「太夫さんは確かに道を誤ってしました、でも!もう力を失った彼女に、一方的な暴力を振るうのは間違ってます!」
「もしそれで望みが叶うとしたら、どれだけの人がその誘惑に抗えるでしょうか!」
「彼女は、裁きを受けるでしょう。でも。真に忌むべきは、彼女に道を誤らせた影朧兵器です!」



 御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)はにこやかに微笑みながらも、その胸中は怒りに満たされていた。
「大正帝の御代は、私刑など罷り通らぬ法治の御代だと思っておりましたが……此処は何処の野蛮の園です? 先程の猟兵といい、皆様といい、誰も彼もが手前勝手な言い分で他人を傷付けて素知らぬ顔。いい加減に恥を知りなさい」
 周囲を睥睨し威圧する御園。
 それに同調するように、鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)が珍しく語気を強めて不快感を露わにした。
「……おいおい? この太夫、罰は受けるべきでも私刑はねーだろ? ここで暮らしたり遊んだりしてるアンタ等なら、苦界の苦労も逃げ出したい心持ちも解ンだろうが。せめて花街のアンタ等がいたぶるのは止せよ」
「そうですよ! 太夫さんは確かに道を誤ってしました、でも! もう力を失った彼女に、一方的な暴力を振るうのは間違ってます!」
 真の姿を維持したまま、フローライト・ルチレイテッド(重なり合う音の色・f02666)が周囲の人々へ訴えかけた。
「ちょっとちょっと! 何でこうなるの~!? こんなの全然気持ちいいハッピーエンドじゃないんだけどっ!」
 そしてリリィ・カスタード(だんぴーる🦇・f01018)は暁星太夫へ駆け寄り、その額から流れる血液を拭い……密かに口の中へ。
 心の奥底では“人間なんて食料”という概念を持つ彼女。だが暁星太夫の血の味は、あまりにも悲しい感情に満ちた味わいであった。
「みんな暁星ちゃんを虐めるの禁止! だってもう暁星ちゃんはリリィちゃんのお友達なんだもん!」
 そう言って暁星太夫へハグをするリリィ。
 と、そこへ女学生風の袴姿にハンチング帽を被った猟奇探偵っぽい姿へ素早く着替えたアハト・アリスズナンバー(アリスズナンバー8号・f28285)が現れた。
「皆さん、静粛に! 静粛に! 私は有栖川ハチ子! 名探偵です! この事件の謎を解きに参りました……って、聞いてませんね?」
 暴力こそ止んだものの、今度は暁星太夫を庇い立てする猟兵達への非難の声が徐々に大きくなってゆく。
「なんであいつなんか庇うんだ?」
「とっとと警察に引き渡しなさいよ……」
「もしかして猟兵もグルなのか?」
 不安の感情が根も葉もない疑惑を生み出し、再び混乱のるつぼにハマってゆく観衆達。
 そこへ、鮮烈なギター音と閃光が花街の夜空を斬り裂く!

 ♪Ah たとえ 明けない夜でも
 ♪斬り裂き、飛んでゆこう oh yeah!
 ♪だからさ、心配しないで?
 ♪必ず、行くから!

 フローライトが『S.S.S.~悲しみ救う救世主』をギター演奏とともに歌い上げると、彼の背後から後光めいた煌めく虹色の光があらゆる法則を超えて観衆達へ照射!
 相手を助けたいという想いが籠められた七色の閃光を浴びた者は、病や毒、呪いや狂気、戦意や悪意だけに影響を及ぼすのだ。
 光を浴びた観衆達は、たちまち落ち着きを取り戻して平常心へ。
 真後ろにいた暁星太夫の傷も光の翼によって同時に傷が癒やされてゆく。
 彼が演奏の最中、ハチ子は持っていたどぶろくで傷を消毒し、御園はユーベルコード『癒しの桜吹雪』を展開。
「桜よ吹雪け、命よ巡り巡りて人々を癒す慈雨となれ」
 暴動と混乱で傷付いた人々全てを癒やすべく、幻朧桜の花吹雪が乱れ舞う。
 それがちょうどフローライトの演奏と相まって、花街の大通りは幻想的な雰囲気に包まれていった。
 一曲演奏終わったフローライトが、観衆達へ問い掛けた。
「皆さん! 人間はとても弱い存在です……! とても誘惑に弱く、犯罪だと思っていても魔が差してしまう、弱い存在なのです! 幻朧戦線は、そんな弱者に漬け込んで、影朧兵器であるラムプを授けたのです! なんて卑劣な手口なんでしょうか!」
 フローライトの力強い演説に、観衆達は無言で首肯してゆく。
 彼の訴えはまだまだ続く。
「もしそれで望みが叶うとしたら、どれだけの人がその誘惑に抗えるでしょうか! その望みが叶い、今抱えている苦しみから逃れられるのなら、それだけの人が幸福を願ってしまうでしょうか!? 本当に憎むべきは太夫さんではありません! 真に忌むべきは、彼女に道を誤らせた影朧兵器です!」
「フロちーの言うとおりだよ!」
 リリィもフローライトの演説を後押しするべく、周囲の人々へ声を張り上げた。
「お金を注ぎ込んだお客さんだって、暁星ちゃんのこと大好きだったんでしょ? その時間とその時の想いは偽物じゃないじゃん! ……って思うんだけどぉ。これでもあたし、最近わかってきたよ! 優しさってやつ!」
「罪科は法廷にて数えられ処罰されます。我欲で他者を暴行するなら、貴方達も等しく咎人です。お解りですよね?」
 御園は周りに睨みを効かせることで、これ以上暴徒が出ないように牽制している。
「ええ、暁星太夫の行いこそ間違っておりましたが、彼女自身、花魁としての矜持はきちんと持っていたようです」
 此処で、ハチ子は今まで集めた証言を元に、大胆不敵に推理ショウを披露し始めた。
「さて一つ、仮説を実証しましょうか。この名探偵、有栖川ハチ子に解けぬ不可思議などあり得ません」
 この言葉こそが彼女のユーベルコード『有栖川ハチ子に解けぬ不可思議など無し(ゼッタイスイリ)』の発動トリガーだ。
「まず、動機からご説明しましょう。暁星太夫がまだ籠絡ラムプに手を出す前……つまり留袖新造の頃から、彼女は太夫になるべく必死に芸事の稽古に励んでいました。その原動力になったのが、両親に借金の形として身売りされた際、彼女に芽生えた復讐心です」
「とと様かか様……か」
 言葉を漏らした鹿村は腕を組んで俯いている。
「……信頼してた親に売られりゃ、誰だって自棄にもなるよ。つまり、太夫……いや元太夫か? アンタは天涯孤独で行くアテもない身。結果を出さなければ明日もないと怯えて、必死に遊女の世界で生き抜いてきたってわけだな?」
 鹿村の問い掛けに、暁星は頷いた。
「もう、ありんす言葉は不要よね……。そうよ、のし上がらなくちゃ、私には、のたれ死ぬ未来が待っていた。だから、どんな手を使っても花魁になるしかなかったの。でも、本当なら花魁は、アタシみたいな身売りされた下女がなれる身分じゃない。何もしなければ、格子どまりで生涯を此処で終わらせてたでしょうね?」
 立ち上がった暁星は憑き物が取れたように清々しい表情を湛えていた。
「客である男達は知らないだろうけどね、一介の女郎なんて、扱いは野良犬同然なのよ。カビ臭くて汚い部屋で雑魚寝、毎日雑用で綺麗な着物を着るなんて絶対許されなかった。嫌な客相手でも寝なきゃならなかったし、客が取れなきゃ折檻されることだってしばしばあったよ。殆どの女郎が蔑まれ、悲嘆して、絶望しながら毎日死んでいるんだ! 華々しい女郎なんてほんの一握りの世界で。だからアタシは、アタシを馬鹿にする奴ら全員を見返してやりたかった……! だから、毎晩星を見上げて、アタシもあんな煌く星になるんだって、言い聞かせ続けて、やっと今日を迎えた……! なのに……」
 そして、ボロボロと悔恨の涙を零す暁星の吐露が続く。
「花魁になれば、野良犬は菩薩に生まれ変われるんだ! 皆がアタシに平伏し、アタシの情けを乞うためにちやほやしてくれる! どんなにお偉い大臣だろうが袖に振ることも出来るし、客を選ぶことだって出来る! そして、星の数ほど居る客の中から、金も粋もある本物の色男と一夜を遂げることも出来た……!」
「その殿方が、幻朧戦線の関係者だとしても?」
 ハチ子の言葉に、暁星の顔が凍り付いた。
「……なんで判ったのよ?」
「名探偵、ですから」
 どやぁ……と胸を張ってみせるハチ子。
「さて皆さん、この騒動には更に多くの悪が関わってるとしたら? 彼女一人で今回の計画、実現できるものではありません。先程、彼女は言いました。『幻朧戦線の先生に頼る手筈』があると。きっと、その殿方が彼女のいう『本物の男』なのでしょう。随分と羽振りよく振る舞い、彼女の心を誑し込んだのでしょうね、お陰で、今でも彼女はその先生とやらに首ったけ。しかも、そろそろ迎えに来てくれるんですよね? つまり、この中にいるんですよ」
 ハチ子は群衆の中の一点を指差しつつ、
「暁星太夫に籠絡ラムプを渡し、全てを指示した黒幕の男、幻朧戦線の先生様が……!」
 指を差した方向、群衆の中から頭巾を被った男が踵を返して駆け出してゆくではないか!
「あの男が黒幕です! 追って下さい!」
 ハチ子の叫びに、慌てて学徒兵達が追跡を開始する。
 その多数の背を見送ったハチ子は、初めての推理ショウを終えて肺の中の空気を一気に吐き出したのだった。
「……後は、学徒兵達の役目でしょう。でも太夫。貴方の罪は法で裁かれなくてはなりません」
「悪いことしたらちゃーんとごめんなさいしなきゃだねっ! そしたらみんなで仲良しハッピーエンド、でしょ?」
 ハチ子とリリィの励ましに、暁星は力なく微笑む。
「判ってるわよ。さぁ、連れて行って」
 警察に身柄を拘束され、留置所へ連行されてゆく暁星。
 だが、それを鹿村が制止した。
「悪りぃ。3分でいい。話をさせてくれねーか? 猟兵絡みの込み入った内容だから、アンタ達はちょっと離れてほしいだけど……」
 超弩級戦力の猟兵の頼みならば、と警官達はその場から距離を置いた。
 鹿村は深刻な顔で暁星へ言い聞かせる。
「おいアンタ。今でこの状況じゃ見通し悪りーぜ。脅しで成り上がった元遊女……その噂は留置所で持ちきりになるだろうし、牢獄で慰みに嬲り者にされない保証もないし」
「坊や、心配してくれるの? ありがとうね?」
 鹿村に身体を寄せる暁星。
 彼女の身体から麝香の香りが漂い、その体温に鹿村は緊張のあまり体を強張らせた。
「オイオイ、いきなり何を……」
「こうすれば、お互いの言い分を周りに聞かれないだろう?」
 暁星は元より頭のキレる女性であることを、鹿村は失念していた。
「……その割には詰めが甘かったよなー?」
「うるさいわね、慢心が招いた自業自得よ。笑えば?」
「いや、止めとくわ。時間もねーし」
「お利口さん。ホラ、何か言うことは?」
「ああ、そうだった。実は……」
 鹿村の言葉に、暁星は目を丸くして驚愕した。
 そして、気が触れたかのように笑い出したではないか!
「アッハッハッハ! ったく、坊や、正気?」
「……ま、立場的にマズいけど、忍のオレも使い捨ての日陰者でね。同類相憐れむじゃねーけどさ……」
「そうかい。それじゃ……“いってきます”」
「嗚呼、近いうちに“面会”に行くからな?」
 警官が戻り、暁星を連行してゆく。
 こうして、一夜の騒動が収束した。

 と、思われたのだが。

 一週間経過して七夕当日、猟兵達は未だにサクラミラージュへ滞在していた。
 あの後、暁星は異例の速度で起訴され、刑務所へ収監された。
 それを受け、御園が世話になっている大家を介して、猟兵達の作戦会議が行われていた。
「えーっ! 暁星さんの脱獄計画ぅ~!?」
「リリィさん、大声を慎んで下さい」
 計画を初めて鹿村から聞かされたリリィが腰を抜かしてしまった。
 御園はあの夜の後に鹿村から計画を聞かされ、一旦は反対したものの、結局、猟兵達の作戦会議の場所だけは提供するに留まった。
「……トーゴさん、改めて聞きますが」
「オレは本気だ。今夜、決行するよ」
 制止の言葉を振り切った鹿村の目を見た御園は、首を横に振って諦観の念を露わにした。
「……そうですか。私は、何も知りませんし、何も聞かなかったということで。では、面会に行ってきますね」
 そういうと、御園は支度を終えて暁星の収監先へと一足早く向かっていった。
 きっと呆れているのだろう。
 鹿村は思わず苦笑いを浮かべてしまった。
「みんな、実行犯はオレだけでいい。こういうのは忍の任務で慣れてるからなー? リリィとフローライト、それにアハトは此処で待機しててくれ」
 その言葉に、アハトが待ったを掛けた。
「待って下さい。その計画、証人がいないと成り立ちません。ここは……名探偵の出番ですね」
 シュバッと一瞬で有栖川ハチ子へと変装した彼女も立ち上がった。
「じゃあ、ぼくは慰問ライブと称して、刑務所内の人を一箇所に集めておきますねー? 警備が薄くなるはずですよ!」
「あたしはフロちーと一緒に歌っちゃおーっと!」
 フローライトもリリィも立ち上がる。
「はぁ……」
 鹿村は溜息を吐く。
 相棒のユキエも呆れたように、鹿村の真似をしてみせた。
「わかったわかった。ただし、ヤバくなったら全部オレがケツを持つからな?」
「「了解!」」
 こうして、猟兵達の『暁星脱獄作戦』が開幕する!

 一方、その頃、御園は暁星の大好物である有名和菓子店のみたらし団子を差し入れに、面会室で暁星と対面していた。
「あれから一週間。お変わりありませんか?」
「……まぁね。ここの“洗礼”にも、ようやく慣れたところよ」
 身に纏う衣服は安っぽい生地の小袖。
 花魁の絢爛豪華な着物と比べれば、落ちぶれた感じが色濃く出ていた。
 顔もやつれ、血色も悪い。
 彼女のいう“洗礼”とやら――鹿村が危惧していた事が起こっているのだろうと御園は心を痛めていた。
「差し入れ、ありがとう。看守さん、食べていいかしら?」
 看守が首肯する。
 暁星は安堵の表情とともに、みたらし団子を口に運んだ。
「お店の番頭さんが教えて下さりました。よくそのみたらし団子を買いに行かされていた、と」
 御園の言葉に暁星はコクコクと頷く。
「あの番頭さんね。今思えば、本当に申し訳ないことをしたわ」
 あっという間に一串を平らげ、2本目に手を付ける暁星。
「……で? 今日の用事は何かしら?」
「貴女のお名前と話を伺いに参りました。望まぬ職業、御両親への想い、話せぬことが色々おありでしたでしょう」
「ああ……そう言えば、本名を名乗ってなかったわね」
 2本目を口に放り込み、飲み込んだ後にボソリと呟いた。
「たま。猫みたいで嫌いなんだよね、アタシの本名」
「あら、可愛らしくて、私は好きですよ?」
 ニコニコと微笑む御園に、毒気を抜かれた暁星こと、たま。
 その後、取り調べで全て洗いざらい自白したこと、司法取引という扱いで減刑ができそうなことなどを御園に報告するたま。
 たちまち時間は過ぎ去り、面会終了の時を迎えた。
「最後に、たまさんの着替えと、これを」
 一枚の紙に、御園の氏名と住所が書かれていた。
「うちの大家は、言葉も話せなかった化物を店子に出来る業突く婆ですもの。寝るだけの部屋なら、四畳半に女2人でも充分でしょう。全部終わったら、私と一緒に女給でもしませんか?」
「……いくら司法取引で減刑確実とはいえ、刑務所を出てこられるの、最低でも3年は掛かりそうよ? それでも?」
「ええ、大歓迎です」
「そう……。それじゃ……“迎え”に来てくれるのを、楽しみにしているわね」
 たまは看守に連行され、牢の中へ戻っていった。
 刑務所を出た御園は、振り返ってたまを想う。
「さて。帰ったら大家に、部屋を開けてもらうように頼まないといけませんね……」
 エプロン姿の桜の精は、何も知らぬ素振りで帰路につくのだった。

 その日の夜。
 刑務所の内部は猟兵による慰安ライブで盛り上がっていた。
「まだまだいっくよー!」
「皆さん、盛り上がっていきましょうー! 次の曲はカバーソング! 『ヘリオライト』だー!」
 日々の刑務作業の疲れを吹き飛ばすような、希望に満ち溢れたセットリスト。
 リリィとフローライトは今や“共犯者”として、このライブを盛大に取り仕切っていた。
 勿論、受刑者達の心のケアを名目に真剣に演奏と歌唱に取り組む。
 そのおかげか、受刑者達はおろか、看守達もライブを観て涙するものが続出する。
「ふむ、音楽とは良いものですね。アポカリプスヘルでは、音楽を聞く心の余裕も乏しいですからね」
 警備の手伝いとして同伴したハチ子も、夢と希望を歌うナンバーに自然とと体を揺らしていた。
 その懐にある、金属の“爆弾”を確かめながら。

「よし、ライブの効果絶大だなー? 今のうちに……」
 鹿村が警備が手薄になった刑務所へ忍び込み、施設内を探索し続けて早半刻が過ぎようとしていた。
 受刑者の大半がライブを鑑賞しているため、牢の中は空っぽだ。
 ただ一箇所、たまが鉄格子越しに空を見上げていた。
「お客さん、わっちを買いに来たのかえ?」
 振り向き、おどけた様子で告げるたま。
 思わず鹿村は吹き出してしまう。
「決行が今日だって知ってたのかよ」
「あのメイドさんが来た時、なんとなく、ね?」
「本当に怖えーよ、アンタ……」
 鹿村は牢の鍵をこじ開け、中へ侵入する。
「悪りーけど、今、持ち合わせがねぇんだ。それに、オレはアンタを買いに来たんじゃねーよ」
 懐から取り出したのは、苦無だ。
 月の光に照らされ、鈍く輝くそれを、天上へ向けて振りかざす!
「アンタを、殺しに来たんだ」
 次の瞬間、鮮血が大輪の花めいて咲き広がった。

 突如の爆発に、ライブ会場はどよめいた。
 看守が慌てて駆け込んでくる。
「どうした!」
「暁星の牢が、爆破されたぞ!」
「なんだって!」
 看守達が一斉に牢へ向かってゆく。
 ハチ子もこれに追随して牢へ向かう途中、懐に忍ばせた鉄の輪をそっと牢の中へ捨てた。
「こ、これは!?」
「血まみれじゃないか!!」
 牢の壁には爆発で出来た大穴があり、牢の中は血溜まりで真っ赤に染まっていた。
 その時、ハチ子が自分で捨てた鉄の輪をおもむろに拾い上げる。
「観て下さい。この鉄の首輪を。恐らく、あの日、逃げた先生とやらが迎えに来たのでしょう。暁星を仲間に引き入れようとして」
 ハチ子の“迷”推理が看守の前で披露され始めた。
「ですが、暁星は司法取引をしておとなしく刑罰を受け入れると聞きました。そこで互いの意見が食い違い、先生は利用価値がなくなった暁星を惨殺したのでしょう」
「では、どうして遺体を持ち去ったのですか?」
 看守の疑問にハチ子は即答した。
「簡単な話です。先生は、利用するだけのはずだった暁星を本気で愛してしまったからです。だから、あなたたち看守の手に渡そうなんてもってのほか、完全なる自分の所有物にするべく彼女の遺体を持ち去ったのです。所詮は男と女の痴情のもつれ、といったところでしょうか」
 一見、荒唐無稽な推理内容。
 だが、ユーベルコードの効果で、看守達は嘘みたいに話を信じてしまった。
「なるほど! 流石、超弩級戦力の名探偵様!」
「先日のご活躍といい、その灰色の脳細胞に敬服致します!」
「いえいえ、褒めても何も出てきませんから」
 ハチ子は謙遜でもなく、ただの虚言を信じ込ませてしまったことに後ろめたさを感じていた。
(ですが、この血溜まりは計画内容では聞かされていませんでした。まさか、トーゴさん……?)
 一抹の不安を抱えつつ、その日の夜は明ける。

 翌朝、御園の元にたまがやっていた。
 たまの顔には、大きく刃物で刻まれた傷跡が残っていた。
「その顔の傷……どうしたのですか!」
「素顔が割れたらマズイだろ? 傷を理由に髪で顔を隠せば、たまの顔を凝視する奴がいなくなるし」
 連れ添いの鹿村が説明すると、御園は絶句していた。
「ですが……」
「いいんです。アタシが、望んだことだから」
 たまが口を開いた。
「この坊やが言うんだ。いっぺん死んだことにすれば、あとは何のしがらみもなく行きられるだろうって」
「本当なら偽装獄死して埋葬時に……って思ったんだが、本当に顔を刻んでくれと言われた時はびっくりしたよなー」
「そう言わなきゃ、坊やが自分の腕に苦無を突き刺して、血痕を偽造しようとしていたからね? どうせ血液鑑定でバレるだろうし、だったら本物のアタシの血をばら撒いたほうが信憑性あるってものよ。この傷は、アタシなりの落とし前さ」
「まったく……無茶なことを」
 呆れる御園は、2人を部屋に招き入れた。
 そこにはアハト、リリィ、フローライトが既に待っていた。
「傷の手当てはアハトさんとぼくが行いました。完璧にね?」
「飲んでもよし、消毒によし。どぶろくは万能説、ワンチャンあると思います」
 2人揃ってふんすっと胸を張ってみせる。
「たまにゃん、おかえりなさい~!」
 リリィのダイビングハグを受け止めたたまは、初めて笑顔がこぼれた。
「ただいま。アンタはほんとに親身になってくれるんだね?」
「お話したら誰だって親友だよっ、たまにゃん!」
「たまにゃんって……? それって、アタシのことかい?」
「そうだよ~! あたしたちはもう親友だよ、たまにゃん!」
 にへーっと人懐っこい笑顔をリリィは返した。
「そうだ! たまにゃん! ランプにお願いするより、一緒に短冊書いて、流れ星にお願い事しよ? って、流れ星も七夕も終わっちゃった! どーしよ!」
「別に良いのではないでしょうか? そんなこともあろうかと、この通り」
 アハトが短冊と筆をすすすっと机に置いてみせた。
「ささ、此方にお書きくださいませ」
「ありがたいねぇ。それじゃ、遠慮なく……」
 たまはさらさらと達筆な字で書き連ねた。

『幸せになりたい』

 その短冊を、御園は大家が飾っていた竹にぶら下げた。
 朝日を浴びて風に揺らぐ短冊を眺め、リリィは思わず喜びを口にした。
「これで正真正銘、ハッピーエンド! だね~!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月15日
宿敵 『ただの女』 を撃破!


挿絵イラスト