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幽世幻想譚 ~『雪女』は友達百人作りたい~

#カクリヨファンタズム

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 幽玄なる妖(アヤカシ)達の世界。猟兵達から『カクリヨファンタズム』と呼ばれる、その世界。
 『UDCアース』に隣接するその世界は、かつて人々の隣人であった『妖怪』達が集い、暮らす世界だ。
 今も止まること無く進歩する現代文明から忘れ去られた遺物で構築された地は、訪れる者達にどこか郷愁を抱かせる。
 ……そんな世界の、一角で。

『……ふふ、うふふ』

 囁き笑う、女の声が響く。
 その声を聞いた、里の男(当然、妖怪だ)が不思議そうな顔をして顔を上げた、その瞬間。

 ──ビュオォォオオオ!!

 白く冷たい『なにか』が、男の身体を一瞬で埋め尽くす。
 いや、その『なにか』が埋めたのは男だけではない。
 他の住人も、里を構築する数多の建屋も、それらを支える大地すらも。
 ……一切合切、その全てを。白い『なにか』──氷雪が、埋め尽くしたのだ。

『ふふっ。そう、これよ……!』

 その光景を空から見下ろし、女が嗤う。
 女の正体は、『雪女』と呼ばれる東方妖怪。この里の外れに住む、人付き合いがほんの少し苦手な妖怪だ。
 だが、その様子は明らかにおかしい。人付き合いが苦手とは言え、彼女も里の仲間の一人である。こんな凶行に及ぶ人物では無いはずだ。
 それに何より、この力。里を一瞬で凍り付かせる程の力は、彼女には無かったはず……?

『この力があれば……友達百人だって夢じゃないわぁ!』

 ……あ、これ明らかに『骸魂(むくろだま)』に憑かれてるな。と、この場に猟兵がいれば一発で見抜けそうな事を宣う雪女。
 残念な台詞を口走りながら嗤う女。そんな彼女の眼下で、人々の身体を覆った氷雪がもぞもぞと動き始めるのだった。



「お集まり頂きまして、ありがとうございます」

 グリモアベースに集まる猟兵達を迎え入れる、銀の輝き。
 ヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)のその表情は、常と変わらぬ柔らかな微笑み。
 ……どうやら今回も、それ程厳しい案件では無さそうだ、と。猟兵達の肩から力が抜ける。

「新たに見つかった世界、『カクリヨファンタズム』世界については、皆さんお聞き及びの事と思います」

 そんな猟兵達に向けて、ヴィクトリアの説明が続く。
 『カクリヨファンタズム』、縮めて『幽世』とも呼ばれるこの世界は、現代文明に忘れ去られた者達が暮らす世界である。
 だが忘れ去られた者達が、皆この地に辿り着くわけではない。幽世に辿り着けずに命を落とした者は『骸魂』と呼ばれる霊魂と化し、縁のあった他者を飲み込み……結果、オブリビオンと化してしまうのだという。

「そうしてオブリビオン化した『骸魂』の撃破を、今回皆さんにお願いしたいのです」

 ヴィクトリアが語るには、今回猟兵達が相手をする『骸魂』は元々人付き合いが苦手なボッチ気質であった存在であるらしい。
 そんな気質の『骸玉』が、流れ流れてこの世界に辿り着き。似たような気質の雪女を飲み込んで……。

「……膨れ上がった力で『異変』を引き起こした。というのが、事件のあらましになります」

 猟兵達が挑むオブリビオンが引き起こした異変は、吹き荒ぶ『氷雪』。
 オブリビオンの氷雪は既に里を、野山を、そこに生きる人々を。尽く凍り付かせてしまったらしい。
 ……これ以上放置してしまっていては、『幽世』全土が氷に閉ざされてしまうだろう。
 それは、防がねばならない。

「オブリビオンは、雪に埋もれた里の上に氷の屋敷を築き、そこを根城としています。
 皆さんにはその屋敷に直接乗り込んで頂いて、最奥に座すオブリビオンを撃破して頂く事になります」

 屋敷の入り口にはヴィクトリアが直接転移で送り届けるし、内部も広大ではあるが特に複雑な構造にはなっていないという。
 主であるオブリビオンを探して探索する手間は、特には掛からないはずだが……注意して欲しい点が、一点。

「屋敷の内部は、基本は氷で出来ているのですが……屋敷の作りが、かなり雑なようでして」

 オブリビオンの力によるものか、屋敷の建材である氷は頑健で、熱に溶ける事も無い。
 ただし、頑健なのは建材だけ。内部構造は結構雑であり、ちょっとした事で崩落する程に作りが甘いのだとか。
 ……その辺りを、どう警戒するか。考えておく必要もあるかもしれない。

「奥へ進めば、屋敷の主である異変の主犯、『薄氷』の雪女がいるはずです。
 同じ場所には彼女を護ろうとする『友達』もまた、いるでしょう」

 人付き合いが苦手な雪女と、ボッチ気質の『骸魂』のハイブリッドである今回の主犯である。
 その力で、取り巻きの『友達』を量産しているのは間違いないだろう。
 ……取り巻きと、主犯。連戦となるのを覚悟しておくべきだろう。

「……微妙にしまらない、と言った敵ですが。放置すれば、『幽世』の滅びに繋がりかねない危険な敵です」

 皆さんの御力を、お貸し下さい。そう言って頭を下げ……かけた所で。
 思い出した様に、ヴィクトリアが言葉を続ける。

「伝え忘れていましたが、『幽世』世界のオブリビオンは『骸魂』に飲み込まれた妖怪達が元になっています」

 それはつまり。上手く『骸魂』のみを倒せれば、飲み込まれた妖怪は救えるかもしれないという事。
 上手く説得出来れば、その可能性も高まるかもしれない。
 ……実際に戦う時には、色々と考えてみると良いだろう。

「それでは、改めまして……」

 ──皆さんの御力を、お貸し下さい。
 深く丁寧な礼をして、ヴィクトリアは猟兵達を現地に送り出すのだった。


月城祐一
 とーもだちひゃーくに(自主規制)
 どうも、月城祐一です。妖怪、幻想、弾幕……知らない子ですね(すっとぼけ)

 今回は新世界『カクリヨファンタズム』での依頼。
 ボッチ×ボッチなオブリビオンによる友達作りを阻止して頂きます。
 以下、補足です。

 第一章は冒険。
 氷のお屋敷を奥へ奥へと進んで頂きます。

 屋敷は氷で出来た和風屋敷。敷地や建屋は複雑では無いですが広大です。
 その最奥、大広間まで突き進んで頂くのが第一章の目的となります。

 屋敷の外側は非常に頑健。氷や衝撃で崩れる事はありません。
 ですがOPの通り、内部構造は非常に雑。ちょっとした事ですぐ崩落し、猟兵達の探索を妨げます。
 章の成功条件は、この『障害を突破すること』です。障害を超えるごとに、猟兵達は奥へと進んでいく事になります。
 力技か、身のこなしか、知恵か。障害を乗り越える手段は多々あるはず。
 色々と考えて見ると良いでしょう。

 第二章は、集団戦。
 異変の主犯である雪女の『お友達』との戦いです。
 敵の詳細については、章の進展時に公開となります。

 第三章は、ボス戦。
 異変の主犯、『氷雪』の雪女との戦いです。
 敵の詳細は二章同様、章の進展時に公開となります。

 二章、三章共に、敵オブリビオンは『骸魂』に飲み込まれた妖怪達です。
 上手く倒せば、飲み込まれた妖怪達は無事に救えます。
 戦い方を色々と考えてみると、面白いかもしれません。

 また、今回の異変は『氷雪』が吹き荒れる異変となっています。
 ……が、屋敷内にすぐ突入する猟兵には特にその辺は関係無いこと。
 ちょっとした防寒具の準備があれば、まぁなんとかなるでしょう。

 人付き合いが苦手な雪女に取り憑く、『骸魂』。
 ボッチにボッチが合わさり暴走する彼女を、猟兵達は止められるか?
 皆様の熱いプレイング、お待ちしております!
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第1章 冒険 『崩壊する建物』

POW   :    力技で崩れてきた壁や瓦礫を排除する

SPD   :    素早く移動して脱出する

WIZ   :    崩壊の速度や落ちてくる瓦礫の角度を計算して回避する

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 グリモア猟兵の案内の下、猟兵達が降り立った地は一面の銀世界だった。
 どこまでも広がる白。氷混じりの吹き荒ぶ風は肌を刺すように冷たく、生きとし生ける者を拒絶するかのよう。
 ……この氷雪は、放置すれば世界を覆う。そうなれば『幽世』世界は滅んでしまう事だろう。

 そんな事は、させはしない。決意を新たに顔を上げれば……そこにあるのは、氷の屋敷。
 外から見れば、広大かつ堅牢。不思議な力で熱でも溶けぬ、氷雪の地を統べる館である。
 だが、その内部は。グリモア猟兵によれば、内部構造は非常に雑で、ちょっとしたことで崩落のする可能性があるのだとか。
 ……恐らくは、異変の首魁が築いたのだろうが。建築物に関する知識は、相手には無いのかもしれない。

 ともあれ、この屋敷が異変の首魁が篭もる場所である。その最奥には当然、主犯であるオブリビオンがいるはずだ。
 猟兵達は意を決し、氷の館へと脚を踏み入れる……!
夜霞・刃櫻
アドリブ・連係歓迎
ボッチは辛いっすよなー
ここはあっしが頑張ってボッチの氷を溶かしに行くでやんす!

UC【夜霞の溟海】を使って海月型の霞になって飛んでいきます
使えない状況でも霞になって「逃げ足」を活用して身のこなしを活かしていきます
霞になってある程度は崩落を無視し『ヨーヨー』で素早く飛び移る
「偵察」「暗視」があるので周囲を観ての状況判断は出来そう

「偵察」で後々に繋がりそうなモノがあれば、拾っていくのも良いかもしれないが……
オブリビオンと骸魂が友達作りに使った資料があれば、精神攻撃出来そう

寒さは「氷結耐性」「環境耐性」で我慢します、チンピラはやせ我慢が得意


天津・麻羅
昔、とある世界の口伝で、「ともだちひゃーくにんできるかなー♪」とあったが、わしの年齢(あくまで外見的な年齢)では去年のうちに達成しておかねばならぬ事らしいが…いやはや同年齢(あくまで外見的な)で百人もトモダチ作られるとは昔から考えられんのう。わしの時代では八百万と言われておるが実際そこまでおらんしのう。クエスト関連でふれんどやら複数ピンやらあるが(メタ)、信徒はおるがなかなか心許せるものはおらんのじゃ。それはわしが唯一無二の全知全能の神であるから仕方ないのじゃ。まぁそれでもトモダチになりたいと言うものがおれば、少しは考えるかもしれないじゃぜ?(ちらちらと気配のある方を見ながら館を進む





「ボッチは辛いっすよなー。ここはあっしが頑張って、ボッチの氷を溶かしに往くでやんす!」
「うむうむ。その意気じゃ。そう言えば、とある世界の口伝で『ともだちひゃーく』……」

 ──グラッ! ガララッ!!

 雑談しつつの進軍の最中、天津・麻羅(神・f16621)が何事かを口ずさもうとしたその瞬間、『それ以上は歌わせねぇよ!?』と言わんばかりに天井が崩れる。
 崩れた氷が崩落し、麻羅の身に降り掛かる。

「うおっとあぶねぇ!?」

 が、間一髪。麻羅の頭上を漂っていた海月状の霞が見事にブロックし、事なきを得る。
 ……この霞は、夜霞・刃櫻(虚ろい易い兇刃・f28223)が変じた姿だ。
 霞の状態を保てば崩落は多少無視しても構わないだろう。刃櫻はそう考えて、变化を保っていたのだが……。

(流石に幼女を怪我させちまったら、世間体とかそういうのが……!)

 守る相手も猟兵ではあるはずだが、それでも年の頃二桁にもなっていなさそうな外見の幼女である。
 そんな相手を怪我させては、世間様からどんな目で見られるか。考えるのも恐ろしい!
 色々と書いたが、刃櫻の行動はずばり、『保身』の一言の為であった。
 使命感とか、大人としての覚悟とかでは無いのは、まぁ……三下なチンピラである刃櫻なので、致し方なしである。

「──ってか、冷てぇっす!」

 頭に乗ったままの氷を払い落とし、ぶるりと身震いするかのように震える刃櫻。
 耐性を活かしつつのやせ我慢はチンピラの得意技とは言え、冷たいものは冷たいのだから仕方ない。
 そんな刃櫻の姿に、肝心の幼女……麻羅はと言えば。

「おぉ。見事、見事。大儀じゃのー」

 と、カラカラ笑って手を叩くばかり。なんだかこの幼女、実に尊大である。
 まぁ、尊大に見えるのにもわけがある。実はこの幼女、こう見えても歴とした『神』の一柱であるからだ。
 別世界では小学生をしていた等と嘯いていたりするが、鍛冶を始めとした様々な分野を権能とする、本人曰く『全知全能の神』なのだとか。

「ふむ。で、話を戻すが。わしの(あくまで外見的な)年齢では、去年の内に友達百人を作るのは達成しておかねばならぬらしいのじゃがな?」
「はぁ……? って、あぶねっ!?」
「いやいや、(あくまで外見的な)同年齢で、百人もトモダチを作れるとは考えられんのう……」

 何やら語り始めた麻羅に対して首を傾げる刃櫻……が、直後また崩落してきた氷をヨーヨーで弾き、破片をその身で受け止める。
 そんな刃櫻の献身もどこ吹く風と、麻羅の語りは止まらない。

「わしの時代では八百万などと言われておったが、実際にはそこまでおらんし。ふれんどや複数ピンやら……信徒はおるが中々心許せるものはおらんのじゃ」
「いや、あの、センセ? ちょっとだけで良いんで自衛をってあだぁっ!?」

 そろそろ一人で瓦礫を捌くのもキツくなってきた刃櫻が悲鳴を上げるが、何やら違う次元から電波を受けたかのような単語も混じる麻羅の語りは止まらない。
 むしろここからが絶好調。こここそが決め時と言わんばかりに。

「それこれも、わしが唯一無二の全知全能の神であるから仕方ないのじゃがな!」

 自称、全知全能の神。渾身のキメ顔である。
 自分の発言を一切疑わず、まさに自分こそが全知全能にして唯一無二。
 そう信じて疑わぬというその表情は……まさに見事なドヤ顔と呼ばれる類の表情であった。

「ま、それでもトモダチになりたいと言うものがおれが、少しは考えるかもしれないじゃぜ?」
「はぁ、まぁ……うん、もういいっす……」

 奥から感じる気配を感じながら、歩みを進める麻羅。
 そんな幼女の周囲を一切顧みない前のめりなスタイルに、なんとか瓦礫を捌き切った刃櫻が疲れた様な息を溢しつつ、異変の主犯が友達作りに使ったかもしれぬ資料の探索を諦める。
 ……だってあの幼女、ガチで周囲を一切気にしてないし。これで放置なんぞしたら、それこそなんと言われるか……!

 我が道を征く神と、霞の刹那主義者。二人の珍道中は、もう少しの間続くのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

オリヴィア・ローゼンタール
友達欲しさにカタストロフとは……もしかして、この世界そのものが脆い、とかでしょうか?

白い和服の姿に変身
この姿なら、寒さへの抵抗力が上がります(オーラ防御・氷結耐性)

氷の上を滑るように駆け抜ける(スライディング・足場習熟・地形の利用)
倒壊しそうな箇所は氷柱を発生させて支える(属性攻撃)
柱と梁がズレて……いえ、そもそもあの柱、かなり歪んでいますね?

すでに崩落して大穴が空いていれば、【トリニティ・エンハンス】【天候操作】で追い風を起こして加速(ダッシュ)、上昇気流で強化した【ジャンプ】で飛び越える
天然のトラップと化していますね……
主の意図と無関係なので、構築パターンが読めないのは厄介です





「やっ──!」

 オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)の靭やかな肢体が躍動し、床に空いた大穴を飛び越えようと跳躍する。
 刹那、屋内を吹き抜ける強い風。オリヴィアが生み出した魔力の風は、彼女の身体を押す追い風となる。
 ぐん、と身体を押す感覚。跳躍の勢いは平時のそれを軽く上回り……。
 
「──っと!」

 見事、オリヴィアは大穴の向こう側へとその身を運ぶ事に成功する。
 跳躍と風で乱れた白銀の髪を整え、纏う艶やかな白の着物も整えるオリヴィア。
 
(全く、天然のトラップと化していますね……)

 だが、ふぅ、と。溢れたその息にはどこか疲労の色が見受けられた。
 ここまで数度、オリヴィアは崩落に巻き込まれていたが、その全てを見事に回避していた。
 それというのも。

「あ、あそこの柱と梁がズレて……いえ。そもそもあの柱、かなり歪んでいますね?」

 今もまた、目敏く柱や梁のズレや歪みを見つけた様に。注意深く周囲を警戒し、行動していたからに他ならない。
 そして、その上で。

「……ここを、こうして。よし……!」

 口元に手を当てたオリヴィアが指を震えば、解き放たれた氷の魔力が周囲の空気を凍らせて。たちまちの内に、大きく歪む柱を補強する氷柱へと姿を変える。
 ……そう。オリヴィアは目に見えて判る構造の欠陥を補強する事で、崩落を未然に防ぎつつ行軍してきたのだ。
 崩落を防ぎつつ、それでも崩落が生じた際にはその被害を最小限に抑え込む。オリヴィアの行動は、まさに理に適った物だった。
 とは言え、だ。

(主の意図と無関係なので、構築パターンが読めないのは本当に厄介ですね……)

 ここに至るまでに魔力を若干消耗してしまった事が、誤算と言えば誤算だろうか。
 グリモア猟兵の語った通り、屋敷の内部構造は非常に雑だった。まるで子供が雑に積み木を積み上げたかのような脆さを考えれば、最奥にいるはずの今回の異変の元凶に建築物に関する知識が無いのは本当なのだろう。
 つまり、ここまで多発する崩落の数々は意図されての物では無い。そしてそれ故に、パターンを読み取る事も出来ず……オリヴィアは、目につく脆そうな所を片っ端から補強する事を強いられてしまっていたのだ。
 ……まぁその結果、魔力の消耗はともかく身体の方は特に疲労は少ない。プラマイゼロ、と言った所だろうか?

「それにしても、友達欲しさにカタストロフとは……」

 ともあれ、今は先へ進む時。コメントに困るような理由でカタストロフを引き起こした元凶をどうにかする為には、奥へ奥へと進まねばならない。
 ……しかし、こんな理由でカタストロフが引き起こされるとは。もしかしてこの『幽世』世界そのものが脆いのでは……?
 そんな一抹の不安を抱きつつも、オリヴィアは順調に屋敷の奥へと進んでいくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミフェット・マザーグース
『桃蝶』のヒトと一緒にいくね(一人でもOK!)
すぐに壊れちゃう銀細工
キレイだけど、だれも住めないさびしいお屋敷
そーっと静かに入ったら崩れない?
崩れて前に進めないなら、崩して崩して、穴を開けちゃう?
でも、せっかくキレイな氷のお屋敷、できるだけそのままにしたいかも

「視力・情報収集・見切り」で屋敷の中を見て崩れる場所を予測して、できるだけ壊さずに済むように、みんなにも壊れる場所を教えるよ

UC【バウンドボディ】
それでも氷のお屋敷が壊れてガレキがふってきたら
ゴムみたいに伸ばした触手を束ねて、「怪力・盾受け・かばう」で弾くよ
道が通れなくなったら、先端をドリルにして「トンネル掘り」で進むね


ティエル・ティエリエル
【桃蝶】でいくよ!

ボッチってなんだー!
よく分かんないけど『骸魂』に飲み込まれた子を助けてお友達になってもらおうっと♪

ようし、飛べるボクが氷のお屋敷の安全そうな場所を先に探してくるよ!
背中の翅を羽ばたいて「空中浮遊」、氷の床に触れないように先に進んで「情報収集」してくるよ♪

それにしてもさむーい!でも、ボク寒いのなんかに負けないぞー☆
落っこちてくる瓦礫は【スカイステッパー】も使ってぴょんぴょん飛び跳ねて避けて進んでいくね♪
なんだか頑丈そうな場所を見つけたら一端みんなの元に戻って案内するね!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


アテナ・アイリス
『桃蝶』で参加。

へえ、ここが新しい世界なのね。久しぶりの冒険だし、ちょっと慎重に行こうかしらね。

本当に作りが雑ね。時間があったら自分で補強したくなっちゃうわ。
でも、今はまず奥に行くのが優先よね。、

落ちてくるがれきは、UC『守護女神の煌めき』と【見切り・第六感・残像】を使って、躱していく。
回りの仲間も、【武器受け・乱れ撃ち・早業・範囲攻撃・怪力】を使って、剣でがれきを弾き飛ばしていく。

ブーツの効果で、足が滑ることもないし、余裕よね、余裕・・・・・あれ?

※アドリブ、連携も大好物です。





「ボッチって、なんだー!」

 陽性の活気に満ち溢れた、ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)の黄色い声が、氷の屋敷に響く。
 いつも天真爛漫でお転婆なティエルである。そんなティエルからすれば、友達が少ない事を揶揄するスラングである『ボッチ』などという単語はよく分からない単語でしかない。

「よく分かんないけど、『骸魂』に飲み込まれた子を助けてお友達になってもらおうっと♪」

 そしてよく分からないからこそ、ティエルは自分のやりたいように動くのだ。

「それじゃ、ボクが安全そうな場所を先に探してくるよっ!」
「あぁっ、待ってティエル! 一人じゃ危な……あぁっ、行っちゃった……」

 背中の翅を羽撃かせ、キラキラ輝く鱗粉を撒き散らしながら翔んでいくティエル。
 その姿を止めようとしたミフェット・マザーグース(沼の歌声・f09867)の声は一足遅く、ティエルはもう遥か先に進んでしまっていた。
 がっくりと肩を落とすミフェット。そんな妹分の姿に苦笑を浮かべながら、姉貴分であるアテナ・アイリス(才色兼備な勇者見届け人・f16989)だ。

「ティエルなら大丈夫よ、ミフェット。あの娘がスゴイのは、ミフェットだって知ってるでしょ?」
「でも……うん、わかった。ティエルを信じる、ね!」

 友達を信じなさいと諭す姉貴分の言葉。項垂れていたミフェットがその言葉を聞けば、ほんの僅かな逡巡を見せつつも。最終的にミフェットはその顔を上げ、前を見る。
 ……『桃蝶』の面々、ティエルとミフェットとアテナの三人は、過去何度も冒険を共にした仲間である。その信頼関係は強く、そして深い。
 そしてそんな間柄であるからこそ、三人はそれぞれの資質を深く理解し合っていた。
 今回の、この状況ならば。ティエルが単独で動くことは問題ない。いや、むしろ『単独で動いた方が上手くいく』はず。
 そんな確信をアテナは抱き、アテナの言葉を聞いたミフェットもその思いを共有し、納得すれば。

「それじゃあ、ミフェットたちはゆっくり進んでいく?」
「そうね。確実に進んでいきましょうか」

 後は先行したティエルに恥じぬようにと、ミフェットとアテナも動くだけだ。
 熟練の冒険者らしく、まずは周囲の状況把握からと。アテナの視線が周囲を探れば……。

(……本当に、作りが雑ね)

 柱の長さは数カ所足りず、天井の梁を歪んで屋根を支えられているのが不思議な程。
 パッと一目見ただけで判る程の、雑な作りである。下手に床を踏んで圧が掛ければ、あの辺りはすぐに崩落してきそうだ。

(時間があったら、自分で補強したくなっちゃうわ)

 僅かに疼くそんな興味は、今は押し込める。そう、今は時間にそれ程余裕は無い。
 こうしている間にも異変は進行しつつある。異変解決の為にも、今はまず奥へ進む事が最優先なのだ。

(すぐに壊れちゃう、銀細工……)

 呆れたような息を溢すアテナ。
 その隣でアテナを真似る様に周囲を探るミフェットは、目の前に広がる光景に小さな感動を抱いていた。
 無秩序に積まれ、形成された屋敷の構造物。キラキラと輝く氷の輝きは、ミフェットの目にはとてもキレイに映っていた。
 だけれど、この屋敷はちょっとした事で崩れてしまう。ミフェットの目にも、どこが脆いかあっさり判ってしまう程に、脆いのだ。
 でも、折角の綺麗な氷のお屋敷だ。出来るだけ、このままにしたいけれども。

(……そーっと静かに入ったら、崩れない?)

 そーっと。ゆっくりと。足を進めて、床を踏む。

 ──キュッ……ッ!

 踏み締められて音が鳴る床。掛かった圧が床から柱、柱から天井へと伝わり……微動。
 ……良かった、これくらいなら大丈夫。そう思った、瞬間だった。

 ──ッ……グラッ、ガララッ!!

 天井が、梁が、柱が。崩れて、落ちる。ほんの僅かな微動にすら耐えられず、崩落したのだ。
 想定していたよりも遥かに弱かった屋敷の脆さに、思わず目を見開くミフェット。驚きが先行して、一瞬対処が遅れるが……。

「──守護女神の力よ、私達を守って!」

 凛々しい声がその場に響けば、たちまち閃く銀の輝き。アテナが二振りの魔力剣を抜き放ち、落下してくる瓦礫を打ち払ったのだ。
 その動きは、まるで何かに導かれるかのように迷いが無い。積み上げてきた戦闘経験を活かすアテナは瓦礫の落ちる先を即座に読み解き、考えるよりも早く身体が動けば瓦礫を切り払っていく。
 ユーベルコードの力もありはしたが……その姿はまさに、才色兼備の肩書通りだ。

「大丈夫、ミフェット……って、心配はいらなかったわね?」
「う、うん……!」

 降り注ぐ瓦礫を打ち払ったアテナが、ミフェットに振り向く。ミフェットのその姿は……傷一つ無い、健康体だ。
 ミフェットは、確かに反応が一瞬遅れてしまった。だがそれでも、ミフェットはただ守られていたという訳ではなかった。
 ゴムの様に伸ばした、触手の髪。その髪を重ねて束ね、自身とアテナを守る盾として控えていたのだ。
 アテナがこうまで思い切って動けたのは、万一の際にはミフェットのカバーがあると確信していたからこそ。
 ミフェットとアテナは、絆の力で降り注ぐ瓦礫から身を守ることが出来たのだ。

「まぁこれくらいは余裕よね、余裕……って、あれっ?」
「わっ、アテナっ!?」

 お互いの無事を確認しあい、剣を収めて歩みを進めるアテナだったが……次の瞬間、足元の氷の破片を踏み込んで体勢を崩す。
 グラリと揺れる姉貴分の身体を支えるべく、ミフェットは慌てて触手の腕を伸ばすのだった。



 一方、その頃。先行したティエルはというと。

「それにしても、さむーい!」

 氷の屋敷に満ちる冷気に、小さなその身体を震わせていた。
 だが、しかし。羽撃くその翅は止まらない。むしろ寒さを吹き飛ばしてやると言わんばかりに、一層強く羽撃いていた。

「でも、ボクは寒いのなんかに負けないぞー☆」

 パタパタと羽撃く小さな妖精姫。床を踏む事が無ければ、そこから生じる崩落は未然に防ぐ事が出来るはず。
 そんなティエルの考えは、今の所は上手くハマっていた。事実、ここまでティエルは一度足りとも崩落による足止めを受けてはいなかったのだ。
 ……だが、しかし。この屋敷の構造は、非常に雑だ。どれだけ注意を重ねようとも勝手に自壊し始める程に、脆いのだ。

 ──パキッ。

「──むっ!」

 ティエルの耳に聴こえる、何かが軋み、割れるような音。
 働く直感に従う様に、膝をグッと折り曲げて空中を蹴れば……。

 ──ガラララッ!

 天井から崩れ落ちてくる氷の塊。突然のその雨を、ティエルは空中を蹴って飛行軌道をズラして回避する。
 類まれな飛行技術と軽業を持つティエルである。ミフェットとアテナが感じた通りに、ティエルはその力を存分に発揮して見せたのだ。

「ふぅ、あぶなかったぁ♪ ……あっ!」

 降り注ぐ瓦礫を躱しきり、額の汗を拭うような仕草を見せるティエル。その表情が次の瞬間、何かを見つけた様にパッと明るく輝き出す。
 ティエルの視線のその先にあったのは、通路の突き当り。その先は立派な襖障子で仕切られており、中を伺う事は出来そうにない。
 ……だがよくよく見れば、襖の辺りだけは柱や梁もやけにしっかりしているような気がする。
 だとすれば……。

「……もしかして、あそこが一番奥なのかなっ? それなら、みんなに教えなきゃ!」 

 恐らくは、あの奥が目的地である大広間では無いだろうか。
 そう感じたティエルが再び翅を羽撃かせ、今来た通路を翔け戻る。
 小一時間程の後、ミフェットとアテナに合流したティエルのその表情は……鼻高々なドヤ顔であったそうな。

 ともあれ、猟兵達は氷の屋敷の最奥へと到達した。
 この襖の先には、異変の首謀者が潜んでいる。そして彼女の『お友達』もまた、控えているはずだ。
 戦いの時が近づいている事を、猟兵達は予感するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『『剣客』雪だるま』

POW   :    雪だるま式に増える
自身が戦闘で瀕死になると【仲間】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    抜けば玉散る氷の刃
【その手でどうやって持つんだかわかんない刀】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    雪合戦
レベル×5本の【氷】属性の【雪玉】を放つ。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 雑な構造の氷の屋敷を抜け、猟兵達は最奥を遮る襖障子へと辿り着いた。
 恐らく、この先に異変の首謀者が潜んでいるはず。踏み込めば戦いは避けられないだろう。
 準備は、良いか? 猟兵達はそれぞれに頷き合うと、襖に手を掛け……。

 ──スパーンッ!

 勢いよく、仕切りが開かれた。

『っ!? な、なにっ? なんなのっ!?』

 襖の先は、広間であった。柱や梁を見れば、道中の様な雑な作りでは無く中々に頑丈そうな作りであった。
 そんな広間の中心に、一人の女がいた。突然の闖入者に驚いたのか目を見開く彼女をよくよく見れば、長い銀の髪と白の着物が艶やかな、中々の美女である。恐らく彼女こそ、今回の異変の首謀者である『薄氷』の雪女なのだろう。
 だが、しかし。そんな彼女の周囲に鎮座する存在を見れば、その印象は困惑へと変わるだろう。

『ま、まさか猟兵っ!? そんな、折角『友達』を作り始めたばかりなのに……!』

 そう、彼女の周囲に鎮座していた存在は、彼女曰くの『友達』。
 大きい雪玉と小さな雪玉が二つ一組で積み重なったその姿、紛うことなき『雪だるま』である。
 ……勘の良い者なら、ふと違和感を抱くだろう。『雪だるま』の内側から、生者の気配があることに気付くかもしれない。
 そう、この『雪だるま』達は今は風雪に飲み込まれた里の住人たちの成れの果て。
 『骸魂』に飲み込まれてしまった、この世界に生きる哀れな妖怪達であるのだ。

『……そ、そうよ。まだ『友達』作りは始まったばかりだもの。誰だろうと、邪魔はさせない……!』

 そんな『雪だるま』達が、主である雪女を護ろうとするかのように。
 猟兵達の行く手を遮る壁となるかのように、動き出せば。

 ──やっちゃって! 私の『友達』たち!

 雪女の命が、下る。『雪だるま』達が、迫る。
 ……異変の首謀者をどうにかする前に、まずはこの『雪だるま』達をどうにかする必要があるようだ。
 猟兵達はそれぞれの武器を構え、戦いに臨むのだった。

 ====================

●第ニ章、補足

 第ニ章は集団戦。
 異変の首謀者である雪女の『お友達』こと、『『剣客』雪だるま』との戦いとなります。

 大きな雪玉と小さな雪玉が二つ一組となった、典型的な『雪だるま』スタイルが特徴的な敵です。
 可愛らしい見た目ではありますが、これでも立派なオブリビオン。油断は禁物です。

 断章で触れられている通り、『雪だるま』たちは『骸魂』に飲み込まれた一般妖怪達の成れの果て。
 普通に戦っても勝利は難しくありませんが、上手いこと『骸魂』だけを倒す事が出来れば、取り込まれた一般妖怪達を助ける事が出来ます。
 後味の良い結果を目指すのならば、戦い方に機転が求められるかもしれません。
 色々と考えてみると良いでしょう。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております! 

 ====================
ルク・フッシー
テフラさん(f03212)、レパルさん(f155740)と

取り込まれた妖怪は、雪だるまの内側にいるはず…妖怪だけを癒しながら戦えば、助けられるかも!
【修復描画】回復の力を持つ塗料を生み出します
あの骸魂は雪でできてるから、弾丸のように塗料を撃ち込めば中の妖怪だけに回復を届けられるかもしれません

レパルさんとテフラさんが凍ってしまわないよう、いくつかの回復塗料弾は2人に分け与えます

はあ、はあ…寒くて疲れて、凍りつきそうですけど…妖怪のみなさんのため、弱音を吐いてはいられません…!


レパル・リオン
テフラちゃん(f03212)、ルクちゃん(f14346)と一緒!

うわーっ、寒いっ!でも捕まった妖怪のみんなは、きっともっと寒いわ!助けるために戦わなきゃ!

【トリニティ・エンハンス】!焼き尽くすんじゃなく、暖かくて優しい炎のオーラを身にまとうわ!
そして雪だるまを優しくハグするわ!外側の雪だけ溶かして、中の妖怪を助けるわよ!

うおお、づめだい、づめだい…こおっちゃうぅ…(ぶるぶるぶる)
でもまけない…あたし、ヒーローだもん…それに、あたしには仲間がいるもん…
テフラちゃんとルクちゃんが回復してくれるから、どんなに寒くても怖くなんてないわ…!大丈夫、あたしがこの世界のみんなを助けるわ!


テフラ・カルデラ
ルク(f14346)とレパル(f15574)と同行
※アドリブ可

うぅ…すごく寒いです…いや、凍るほどではないんですけどね…
でも奥へ進むほど寒さが増していきます…
それで…雪だるまが相手なのですね!
ルクさんに倣って【癒しの鳴き声】で回復してみましょう!にゃ~ん♪
お二人もかなり無茶をしているようなのでそちらも回復しましょう!にゃ~ん♪





 異変の首謀者の命を受け、動き出す『雪だるま』達の戦列。
 もぞもぞ、としたその動きは中々に愛らしいが、彼等の正体はオブリビオンである。
 そして、この世界のオブリビオンであるという事は。

「あの『雪だるま』の内側に、取り込まれた妖怪達がいるはずですっ!」

 そう、ルク・フッシー(ドラゴニアンのゴッドペインター・f14346)が看破した通り、彼等は『骸魂』に飲み込まれてしまった被害者であるという事である。
 悪いのは、『骸魂』だけである。奴らだけを上手く倒せば、飲み込まれてしまった一般妖怪達は助けられるはず。
 臆病で緊張しがち。だが守るべき何かの為ならば、と。ルクの心は、熱く燃えている。
 だが……。

「うぅ、すごく寒いです……!」

 身体を震わせるテフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)の言葉の通り、氷の屋敷の最奥は非常に冷え込んでいた。
 とは言え、身が凍えるほどという訳では無いのが救いではあるが、備えが無ければ消耗は避けられないだろう。
 しかし、それでもだ。

「でも、捕まった妖怪のみんなは、きっともっと寒いわっ!」

 助けるために戦わなきゃ! と、レパル・リオン(魔法猟兵イェーガー・レパル・f15574)が気合を入れる。
 『骸魂』に飲み込まれてしまった被害者達の事を思えば、この程度の寒さになんて、負けてはいられないのだ。
 強い決意を露わにしたレパルの身体に、魔力が漲る。
 レパルの全身を覆った魔力の属性は、『火』。暖かく優しい炎のオーラで、『雪だるま』を溶かし中に囚われた妖怪を救おうと考えたのだ。
 漲る火の魔力を、冷たい氷を溶かすその力を全身に行き届かせて……。

「──えいっ!」

 もぞもぞぴょんぴょんと戦列から飛び出してきた『雪だるま』を、ふわりと抱き締める。

(うおお、づめだい、づめだい……こおっちゃうぅ……!?)

 瞬間、レパルの肌を冷気が貫く。全身に行き渡らせた魔力をもってしても緩和出来ないその冷気は、敵も超常の存在であるが故だろうか。

(ま、まけない……! あたし、ヒーローだもん……!)

 寒くて、冷たくて、痛い。飛び退きたくなる身体を叱咤するように、心の内でレパルが叫ぶ。
 どんなに恐ろしい相手だって、勇敢に立ち向かう。恐怖に心が怯えても、みんなの平和と笑顔の為に戦う。
 それこそが、レパルが目指すヒーローなのだから。
 ……それに。

 ──パパパッ!

「レパルさんっ、大丈夫ですか……!」

 降り注ぐ雪玉を、迫りくる雪塊を染め上げるかのように放たれた、ルクの塗料弾の力や。

 ──にゃ~ん♪

「おふたりとも、無茶は禁物ですよっ! にゃ~んっ♪」

 愛らしい猫の鳴き真似に力を乗せた、テフラの癒やしの力があれば。

「──あたしには、仲間がいるもん……っ!」

 こんな寒さ、なんて事はないっ!
 ルクとテフラ、二人の仲間の援護を受けて高まるレパルのやる気。
 連動する様に魔力が反応を示し、纏う火の魔力は『雪だるま』の纏う冷気を押し返し、包み込んで……。

 ──ジュワァァァァァ……!

 溶かしきり、遂には完全に消し去って。中に囚われていた罪なき妖怪を、見事に救い出す事に成功する。
 ……囚われていた者は、今は安らかな寝息を立てている。どうやら命に別状は無いようだ。

「寒くて疲れて、凍りつきそうですけど。囚われてる妖怪のみなさんの為にも、弱音は吐いてはいられませんね……!」
「ええ。でも、どんなに寒くても……怖くなんてないわっ!」

 肩で息をするルクとレパル。だが二人の目の輝きは、新たな敵を睨んで強く輝く。
 全ては、この世界の妖怪達を守る為。守るべきヒトを、みんなの平和と笑顔を守る為である。
 決意に燃えるルクとレパル。そんな二人を、テフラは暖かな笑みで見守っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

オリヴィア・ローゼンタール
「友達作り」が文字通り物理的な意味での「作り」とは……
友達とは対等な関係のもの、命令をしたりするのは……と、まずはこちらを片付けないと話も出来ませんね

白い着物の姿のまま(オーラ防御・氷結耐性)
あの手では、握りの向きも見分けられないので少々厄介ですね

【氷嵐神楽】で雪女の力を解放
強烈な吹雪(属性攻撃・天候操作)を起こして動きを止めさせ、増大したスピードで吶喊(ダッシュ)
全力で殴り抜かずに掠らせる程度に留め、纏わされた雪(骸魂)を【衝撃波】で【吹き飛ばす】
動きを止めて――吹き飛ばします!

迫る刀は氷柱を発生させて盾代わりにして防ぐ(武器受け)
氷柱や氷壁、追い風を利用して縦横無尽に駆け巡る(地形の利用)





「『友達作り』が、文字通り物理的な意味での『作り』、とは……」

 動き出した『雪だるま』達に対して、オリヴィアが浮かべた表情は困惑と呆れが混ぜ合わされた様な苦笑であった。
 『友達』とは、対等な関係性のもの。心を通わせ友誼を交わした果てに構築される、尊いものだ。
 だが、しかし。異変の首謀者と『お友達』はどう見ても上下の関係。これは明らかに、『友達』と呼べるものでは無い。
 ……そもそも、『物理的に友達を作る』というのがどうなのか、という思いもあったりするのだが。

 ──ヒュンッ!

 迫る殺気を感知して、オリヴィアがスッと身体を動かせば。元いた場所を風切り音が駆け抜ける。
 ……見れば、『雪だるま』が刃を振り抜いていた。どうやら今のは敵の斬撃であったらしい。

「……まずは、こちらを片付けないと話も出来ませんか」

 剣気を向ける『雪だるま』のその姿。その手でどうやって刀を持っているのかは判らないが、隙の無いその姿は成程、中々の腕前の剣士の佇まいだ。
 無論、勝てないとは思わない。全力を尽くせば、勝てはするだろう。
 だがそれでは、『骸魂』に囚われた哀れな一般妖怪の命が犠牲となってしまうはず。
 ……ならば、だ。ここは搦め手混じりの一手こそが正解であるはずだ。

「──氷の嵐よ、吹き荒れろ」

 力ある言葉を呟けば、オリヴィアの内に眠る力が解き放たれる。
 纏う衣服は、先程までと変わらぬ雪のような白の着物。
 オリヴィアは纏う衣服で力の方向性を変える力を持つ。そんな彼女が今纏う衣服に対応する力は、全てを凍らす絶対零度の力。
 その力は、異変の首謀者と同じ力。冷気を支配する、『雪女』の力であった。

「我が意に従いて、万象凍結の霊威を示せ──!」

 荒れ狂うオリヴィアの魔力。渦を巻くその力は周囲の空気を巻き込んで、極寒の吹雪を巻き起こす。
 ……敵が並の相手であれば、この吹雪で動きを止められるだろう。だが、敵はこの環境でこそ輝く存在である。
 極寒の冷気を受けて動きが一際機敏となった『雪だるま』の斬撃。全てを切り裂く一閃が、吹雪を裂いてオリヴィアに迫るが……。
 オリヴィアの身体には、届かない。

 ──ガッ、ギィッ!

 鳴り響く甲高い音。迫る斬撃を迎撃するべくオリヴィアが氷柱が盾代わりとなり、その斬撃を受け止め、氷に包んだのだ。
 ……そう。繰り返しとなるが、今のオリヴィアは『雪女』の力を纏っている。その力の格は、『雪だるま』達の主人である存在と並び立つものなのだ。
 そんな力を、その身に宿した今のオリヴィアならば……!

「──動きを止めて、吹き飛ばします!」

 『雪だるま』を構築する、雪玉……『骸魂』を吹き飛ばす事など、造作も無いこと!
 裂帛の気合と共に振るわれる、オリヴィアの腕。冷気により高まる身体能力で振るわれたその一撃は、周囲の空気を薙ぎ払う衝撃波を伴う一撃だ。
 そんな強烈な一撃を、刃を氷柱に食い込ませて身動きが取れぬ『雪だるま』の身体……ではなく。雪玉を掠るような軌道で振るえば。

 ──パァンっ!!

 生じる破裂音。なびくオリヴィアの銀の髪と白の袖を彩る様に、白の粉が舞い踊る。
 ……見れば、オリヴィアの眼前にいた『雪だるま』を形作っていた上半分の雪玉が吹き飛んでいた。
 代わりにそこにあったのは……囚われていた一般妖怪のその姿。今の一撃で、『骸魂』の力宿る雪玉が消し飛んだのだ。
 一般妖怪は気絶してはいるようだが、オリヴィアの耳に呼吸音はしっかりと聞こえてくる。
 とりあえずは一安心、と言った所だろうか。

「……さて。次はどなたですか?」

 絶対零度の力を纏うオリヴィアがゆらりと動けば、彼女の身体を包む氷雪もゆらりと動く。
 『雪女』のその力を十分に振るうオリヴィア。その力は異変の首謀者のそれとは違い、ヒトを救うために振るわれるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

夜霞・刃櫻
【アドリブ・連係歓迎】
ぶっちゃけ無理矢理お友達になろうって発想がボッチっす
お友達料が命とかおバカでやんすなぁ……
友達の作り方を教えてやるから待ってろっす!

UC【夜霞の爆窃】で幽霊蒸気機関車から約285体の爆窃団の幽霊を呼び出して戦う
幽霊蒸気機関車で敵を撥ね(このくらいじゃ死なないだろう)、爆窃団の幽霊の重火器で雪だるまが溶ける程に焼き払えば骸魂に呑まれた妖怪達も救えるのでは?
やり過ぎなら「武器改造」で重火器の弾頭に融雪剤を詰めておく
雪だるまの攻撃は幽霊の群れを盾にしてある程度は無視
幽霊達の「影に紛れて」おけば「目立たない」だろう

上手く行かなかったら「逃げ足」で逃げます
三下だもん許して





 ここに至るまで、どちらかと言えば刃櫻はこの異変の首謀者に対して同情的な心境であった。
 氷の屋敷を進む中でも、ボッチという状況に同情を抱き、その心を溶かしたいと思う程度には。
 だが、そんな刃櫻すらも。

「お友達料が命、とか。発想がボッチかつおバカでやんすなぁ……」

 直に見た異変の首謀者の振る舞いには、呆れを感じていた。
 というか、だ。無理矢理に友達になろうという発想がまずアレだし、何より別の猟兵が指摘したように友達作り(物理)とか言う発想はボッチさが極まり過ぎである。
 ……いや、そう考えると呆れよりも哀れさすら感じるようになってきたぞ? と、首を傾げる刃櫻の態度に。

『お、おバカですってぇっ!? っていうか私、ボッチじゃないし!』

 今はこんなに友達いるし!! と。地団駄を踏む雪女。
 ……ヒステリックに騒ぎ立てるその姿を見れば、どうやら図星を突けたらしい。
 三下チンピラな刃櫻から見ても判る程、相手は冷静さを欠いている。
 ならばこのまま、戦いの主導権を握ってしまうべきだろう。

「友達の作り方を教えてやるから、待ってろっす!」

 広間に響く、刃櫻の声。威勢の良いその掛け声に応じるように、蒸気機関の唸り声が聞こえて……。

 ──バキィッ! ドッ、ゴゴッ!!

 壁を突き破り、幽霊蒸気機関車が戦場に現れる。
 吹き飛ぶ建材。ついでと言わんばかりに『雪だるま』の数体が跳ね飛ばされれば。

『……はっ? ちょっ、えぇ……???』

 突然の事態に思考が停止したかのような表情を浮かべる雪女氏。まぁいきなり蒸気機関車がダイナミック・エントリーしてきたのだから無理も無かろう。
 とは言え、雪女が放心した事で『雪だるま』達の動きも止まる。敵に生じた大きすぎる隙は、刃櫻に大きな利を与える事になる。
 ……そう。刃櫻の攻撃は、これからが本番なのだ。

「──パンクにロックに、ミッション・スタートっす!」

 停車した機関車から駆け下りてくる、重火器で武装した人の影、影、影。その正体は、刃櫻の喚び出した爆窃団の幽霊だ。
 その総数、実に285体。抱える重火器を一斉に構え、その銃口を『雪だるま』達に向けて。

「Rock and Roll!」

 ──バババババババババッ!!

 刃櫻の号令一声。耳を劈く轟音と共に、込められた銃火が放たれる。
 銃弾の弾頭には、雪を融かす融雪剤が仕込まれている。降り注ぐ銃火の威力に、融雪剤の効力が合わされば……。

『や、やめっ!? わ、私の『お友達』がぁーっ!?』

 次々に溶け消え、水となって流れて行く『雪だるま』。そして雪が流れて消えれば、その内側に囚われていた妖怪の姿が次々と露わとなっていく。救助は幽霊達に任せておけば問題はないだろう。
 悲痛な声をあげる異変の首謀者の声が煩いが……とりあえず、今は無視しよう。

「雪は融解だぁー!」

 ヒャッハー! などという奇声を上げたり上げなかったりしつつ、『雪だるま』の戦列を溶かしていく刃櫻。
 その威力の前に、雪の塊は儚く溶け消えていくばかりであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アテナ・アイリス
【桃蝶】で参加。ソロOK。

骸魂の特徴は、ヴィクトリアから聞いたから、何とか妖怪を助けてあげたいわね。

まずは、【武器受け・見切り・オーラ防御・第六感・残像】を使って、骸魂の攻撃をかわしながら、妖怪たちに「あなたたちは独りぼっちではない」こと語りかける。

こんなことをしても、友達には慣れないわよ。さあ、わたし達を信じてよ。

少しでも、話が通じているようだったり、行動に変化が見られた瞬間に、UC『フェニックス・アサルト』を使って、フェニックスになる。
オブビリオンだけ浄化したら炎を消して、妖怪を救いだす。

連携・アドリブ、大好物です。


ミフェット・マザーグース
『桃蝶』のヒトと一緒にいくね(一人でもOK!)
雪だるまの中に妖怪さん、まるで本のこわい殺人事件みたい
出し入れがすごく楽そうだけど、友達を出し入れしちゃダメだよ!

ミフェットは髪の毛の触手をつかって雪玉を「見切り・盾受け」でガード
スキができたら「歌唱」と「楽器演奏」でUCを発動させて逆転を狙うよ

UC【楽器のオバケの演奏隊】
そっちが雪ダルマのお友達なら、ミフェットもお友達を呼んじゃうよもん
「歌唱」で楽器のオバケを呼び出すよ
みんなに合図して巻き込まないように、パーン!って管楽器の衝撃波!
お屋敷の中なら音響もバッチリ!
動きを止めてアテナに雪だるまを溶かしてもらうね


ティエル・ティエリエル
【桃蝶】についていくよ!ソロでも大丈夫!

むー、雪だるまは友達と作るから楽しいんだぞ!友達を雪だるまの中に入れるのは楽しくないよ!
それに、いくら夏でも雪だるまの中に入ったら寒くて寒くて風邪引いちゃうかも!
すぐに助け出してあげなきゃだね!

振り回される刀はひらりと空を舞う「空中戦」の動きで華麗に避けちゃうよ!
そのまま「カウンター」、「見切り」で雪だるまの中の妖怪さんの位置を特定して、【ハイパーお姫様斬り】で雪をそぎ落としていくよ♪

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です





 猟兵達の猛攻の前に、ある者は溶け消えて、またある者は砕け散り。
 あれだけいた『雪だるま』達の戦列は、最早片手で数えられる程。
 文字通りに全滅するまで、時間の問題と言った状態であった。

(ここまでは、妖怪達は無事ね……)

 戦況を冷静に見極めながら、アテナがちらと救い出された妖怪達の様子へと視線を向ける。
 出発前にグリモア猟兵が語っていた通り、今回戦うオブリビオンの中には『骸魂』に飲み込まれた妖怪達がいた。
 そんな哀れな被害者である所の妖怪達を、猟兵達はそれぞれに手を尽くし、ここまで皆無事に救い出す事に成功していた。正しく、首尾は上々と言った所だろう。
 ならば、前哨戦を〆る事になりそうな自分達もその成果に続かねば……格好が付かない、という物だ。

「まったく、こんな事をしても友達にはなれないわよ! さあ、わたし達を信じてよ!」

 飛び交う雪玉や斬撃を、その身に纏うオーラや携える魔力剣で打ち払うアテナ。語り掛けるその言葉の対象は……妖怪達を飲み込んだ、『骸魂』達だ。
 今回相手としている『骸魂』は、元々ボッチ気質な存在であったのだという。ならば、彼らが抱く蟠りを優しく溶かせば、と思ったのだが……。

『うっさいわね! アンタみたいな陽キャっぽいヤツの言葉なんて信用出来る訳ないじゃない!』

 ──やっちゃいなさい、『雪だるま』達!
 そう叫ぶ『雪女』の指示を受ければ、生き残りの『雪だるま』から冷気が湧き立ち、新たな『雪だるま』(の幻影)が現れる。
 どうやら、アテナの心遣いは『雪女』(を飲み込んだ『骸魂』)の心には響かなかったらしい。むしろ一層、頑なにさせたようにも見える。
 ……何が彼女をそんなに意固地にさせているのかは判らない。だがこうなっては多少手荒な手段を用いるのも、致し方ないだろう。

「そっちが雪ダルマのお友達なら、ミフェットもお友達を呼んじゃうよ!」

 顕れ出た『雪だるま』の幻影に対抗する様にミフェットが、ぱんぱんっ、と手を叩く。
 何かを喚ぶかのようなその手拍子。小気味の良いリズムのその拍子が部屋に響けば、ミフェットの周囲の空間が歪みだし……。

「──偉大な演奏家のみんな、力を貸してっ!」

 管楽器の幽霊を乗せた華やかなステージが、部屋の中に具現化する。
 トランペットやホルン、トロンボーン、チューバ、フルート、クラリネット。ステージを飾る楽器達は、多種多彩。
 だが、そのどれもが。

『……なによ、全部壊れてるじゃない! そんなガラクタで何をしようっていうの!』

 『雪女』の指摘の通り。そのどれもが、どこかが壊れたガラクタだった。
 嘲笑う『雪女』。確かに彼女の言う通り、壊れた楽器では綺麗な演奏などは出来はしない。
 だけれど……。

「──みんな、いくよ!」

 『楽しい演奏』なら、出来る!
 『雪女』の嘲笑を気にする事なく、ミフェットが指示棒代わりに触手をにゅっと動かせば。

 ──バーンッ!

 鳴り響いた管楽器達から放たれた衝撃波が、戦場を突き抜け反響する!
 耳を劈くようなその音は、控えめに言っても騒音。綺麗な演奏とは程遠い。
 あまりもの煩さに、耳を抑えてしゃがみ込む『雪女』。『雪だるま』達も目をくるくると回し右往左往の大混乱だ。
 だが、しかし。

(ふふっ、賑やかね!)
(ミフェット、楽しそうっ♪)

 ミフェットと心を通わす友人達、アテナとティエルはこの洪水のような音の中でも笑みを浮かべていた。
 確かに、この演奏は綺麗な演奏とは程遠い。それは二人もきっと、認めるだろう事実である。
 けれど、その音を耳では無く心で聞けば。こんな騒音も、何故だか軽やかで楽しげに聞こえるのだから不思議な物だ。
 ……きっと、心の底から『音』を『楽』しむミフェットと、そんなミフェットと心を通わせる二人だからこそ感じる境地なのだろう。

「……あっ! 今がチャンスだねっ!」

 そんな音楽に身体を揺らしていたティエルが好機に気付く。
 敵は動けず、右往左往している。『雪だるま』の戦列が、大いに乱れていたのだ。
 ──まさに、好機!

「雪だるまの中の妖怪さんも、すぐに助け出してあげるよっ!」

 乱れた『雪だるま』の戦列に、ティエルが突っ込む。
 背で羽撃く翅から舞い散る鱗粉は、ティエルの勇気と生命力の輝きだ。
 その輝きに引き寄せられるかの様に、混乱する『雪だるま』達の視線(?)が釘付けとなり……。

 ──ヒュンッ! ヒュッ、ヒュヒュンッ!

 鳴り響く風切り音が、数度。『雪だるま』がその手に構えた刃が振るわれ……その斬撃が全て、空を切ったのだ。

「ふふーんっ、おっそいおっそい☆」

 ひらり、ひらり。怪しく輝く刃を躱すティエルの顔は、自信満々のドヤ顔だ。
 先程の屋敷の探索の際にも見せた通り、ティエルは類稀な飛行技術と軽業を身上とする猟兵だ。
 そんなティエルからすれば、この程度の刃の速さなど、止まって見えるというものだ。
 そして、刃が止まって見える程に見極められるのであれば……。

「──いっくぞー! ハイパーお姫様斬りだぁー☆」

 中の妖怪の位置を見切り、光り輝くオーラの剣で雪を削ぎ落とす事など造作もない事だ。
 光り輝くオーラの刃。ティエルや仲間たちの戦意を示すその光が瞬けば。

 ──さくっ!

 刃を振るわれた『雪だるま』を形造る雪が削ぎ堕とされて、中の妖怪がその姿を現す。

『み、耳がぁ……って、あぁっ!? また『お友達』を! あ、貴方達! 早くそのちっこいのを……!』

 また一体、『雪だるま』が打ち崩されたのを目の当たりにした『雪女』の悲痛な声が部屋に響く。その視線は光の剣を振るうティエルへと釘付けになり、完全に視野狭窄に陥っていた。
 ……そう。『雪女』は、完全に見落としていたのだ。

「言ったわよね? ……こんな事をしても友達になんてなれないわよ、って!」

 再び響く、明るい女の声。胡乱げに『雪女』がそちらに視線を向け……その目はすぐに、驚きに見開かれる。
 そこにいたのは彼女が忌み嫌う『陽キャ』こと、アテナの姿。だがその姿は、常の彼女の姿では無かった。

『火の、鳥……?』

 そう、その姿は神話に謳われる『不死鳥』の如く熱く燃える姿へと変じていたのだ。
 ミフェットやティエルが敵を翻弄する中、アテナは何もしていない訳ではなかった。その身の魔力を練り上げ、敵が大きな隙を見せるその時を狙い続けていたのだ。
 そして、その時は来た。ミフェットの音楽が、ティエルの光が敵を翻弄し、掻き乱し……その隙は、もはや致命的!

「不死鳥の力、受けてみなさい!」

 裂帛の気合と共に翼をはためかせれば、凍れる広間を浄化の炎が満たしていく。
 燃え滾る炎は『雪だるま』の雪を『骸魂』の抱えた蟠りごと一瞬で溶かし、蒸発させて。
 ──炎が消えた後に残るは、倒れ伏した妖怪達の姿ばかりであった。

「ふふんっ、ざっとこんな所ね!」
「やったね、アテナっ!」
「ボクたちの大勝利だー!」

 その光景に、自分たちの勝利を確信し快哉の声を上げる三人。
 だが、しかし。

『む、むむむ……! よくも、よくも私の『お友達』を……!!』

 異変の首謀者……『『薄氷』の雪女』は、未だ健在!
 氷雪の異変。その最終章が、遂に幕を開けようとしていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『『薄氷』の雪女』

POW   :    吹雪
【吹雪】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    薄氷の折り鶴
【指先】から【薄氷の折り鶴】を放ち、【それに触れたものを凍結させること】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    氷の世界
【雪】を降らせる事で、戦場全体が【吐息も凍りつく極寒の地】と同じ環境に変化する。[吐息も凍りつく極寒の地]に適応した者の行動成功率が上昇する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は御狐・稲見之守です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




『む、むむむ……!』

 猟兵達の猛攻の前に、『雪女』の言う所の『お友達』……どう見ても配下であった『雪だるま』達は、遂にその姿を消した。
 中に囚われていた妖怪達も皆、消耗こそある物の命に別状は無い。猟兵達の機転が、大勝利へと繋がったのだ。
 ……だが。

『よくも、よくも私の『お友達』を……!!』

 そう。異変の首謀者である『『薄氷』の雪女』は、未だ健在だ。
 『雪だるま』を撃破し、囚われた妖怪達を救った猟兵達を見つめる『雪女』。
 その瞳に浮かぶ光は、恨めしげな色。その目の光を見れば、『自分こそが被害者である』と『雪女』が自認しているのは明白だ。

『……あ、そうね。減ったのなら、また増やせば良いんだわ!』

 そしてその上で、また新たな『友達作り』を宣言する『雪女』。
 あまりにも自分勝手なその態度であるが、それも彼女が『骸魂』にその身を飲み込まれているが故。
 『骸魂』のみを上手く討ち果たせば、元の里の仲間であった『雪女』に戻るはずだ。

『貴方達を、私の『お友達』にしてあげるわ! 感謝しなさい!』

 異変の首謀者『『薄氷』の雪女』との戦いの幕が、今まさに切って落とされようとしていた。

 ====================

●第三章、補足

 第三章はボス戦。
 異変の首謀者である『『薄氷』の雪女』との決戦となります。

 銀の髪に白の着物、冷気を身に纏う典型的な『雪女』スタイルの美女。
 攻撃手段も吹雪や凍結攻撃、寒冷地に適応した物へのバフなど、実に『らしい』構成です。
 見目の麗しさに惑われず、油断なく戦うべき相手でしょう。

 また特筆事項として、前章の『雪だるま』同様『雪女』もまた『骸魂』に飲み込まれた存在となります。
 『骸魂』のみを上手く倒せば、元の妖怪である『ちょっと人付き合いが苦手な雪女』を救う事が出来ます。
 救出手段に関する事前情報は、ありません。ですが救出する為に使えそうな手段は多々あるはずです。
 色々と考えてみると、面白いかもしれません。

 ボッチを拗らせた『骸魂』と、その力に引きずり込まれ飲み込まれた『雪女』。
 身勝手な理由で異変を引き起こした彼女の運命や、如何に。 

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております! 

 ====================
ルク・フッシー
レパルさん(f15574)、テフラさん(f03212)と一緒に

はぁ、はぁ…しまった…疲れて力が出ません…でも、戦わなきゃ…

て、テフラさん!?ボクをかばって…そんな…
レパルさんも…2人とも氷漬けに…ううっ…(泣き出す)

どうして…どうしてこんな事を!これじゃ2人と話せない…笑い合えない!こんなの、友達じゃないですっ!
うわあああーっ!

火属性を宿した緋色の塗料を戦場に塗りたくり、熱を発してじっくりと暖める事でオブリビオンを弱らせます
悲しくて、それでも取り込まれた妖怪を死なせないように戦うけど…も、もう限界です…体が、凍りつく…

でも、レパルさんが復活するまでの時間を稼げた…それで十分です…


レパル・リオン
ルクちゃん(f14346)、テフラちゃん(f03212)と一緒!

疲れたなんて言ってられない!果敢に突撃!
…ううー…でもやっぱり限界だったみたい…体が…カチカチに…動けない…

…あたし、凍っちゃった?けど…テフラちゃんが、ルクちゃんが頑張ってるのが見える…
…こんな所で止まってる場合じゃないっ!うおあああーっ!

真の姿に変身して氷を破る!暖かく優しい虹色の炎を放ち、ここにいる全員をあっためる!
そう、全員よ!雪女ちゃん、アンタの心も暖める!吹雪に負けず、雪女ちゃんを抱きしめるわ!
あたし達が友達になる!なってみせるわ!


テフラ・カルデラ
ルク(f14346)とレパル(f15574)と同行
※アドリブ可

皆さんかなり疲労が溜まっていますが…ここからが正念場です!
…ってレパルさんが凍って…このままじゃまずいのです

とりあえず説得を…
雪女さん!これは友達ではなく人…じゃなくて妖怪浚いなのですよ!
本当に求めていたのはこれなのでしょうか?本当はもっと…

あっ…ルクさんが危ない!?(咄嗟に庇い身体が凍り付く…)
ははは…こういうのは慣れてますから…とにかく…雪女さんを…止め…ない…と…
(ルクを庇うまま氷漬けにされてしまう)





 異変の首謀者、『『薄氷』の雪女』が、猟兵達をも『お友達』にすると宣言し、動き出す。
 そんな彼女の動きに動じるかのように、広間に雪が舞う。寒風が吹き荒び、広間を極寒の世界に変えていく。

「う、うぅー……! 体が、カチカチにぃ……」

 そんな極寒の環境を前に、テフラとルク、レパルの三人は翻弄されていた。
 三人は先程の『雪だるま』との戦いにおいて、その体力を大きく消耗していた。
 それでも疲労を物ともせず、果敢に突撃を敢行したのだが……。

「ご、ごめん……やっぱり、限か、い……」
「れ、レパルさん!?」

 その突撃は、極寒の冷気の前に勢いを止められてしまう。
 体の芯が凍り付き、止まってしまうレパルの動き。そうなってしまえば、後は吹き荒ぶ氷雪に身体を飲み込まれて……たちまちの内に、レパルの身体は氷に包まれてしまう。

(このままじゃ、まずいです……!)

 氷像と化すレパルの姿をチラと見て、テフラの胸中に危機感が浮かぶ。
 氷に飲み込まれてしまったレパルと同様に、テフラもルクも疲労は重い。このままでは遠からず、二人もレパルの後を追うことになるのは明白だ。
 だが、戦いはここが正念場。ここをなんとか耐えて見せれば、逆転の目はあるはずだ。

「……ゆ、雪女さんっ! こんなの『友達作り』じゃなくて、ただの人……じゃなくて、妖怪攫いですよっ!」

 そう感じたテフラの口から飛び出す言葉。『雪女』の所業を糾弾し、相手の行いを咎めるようなその言葉。
 『骸魂』に飲み込まれた元の存在の心を揺さぶれれば。そんな意図で叫ばれたその言葉を聞けば、果たして『雪女』のその表情に僅かな歪みが浮かぶ。
 ……言葉は、届いている。この調子で、もう少し揺さぶれば!

「あなたが本当に求めていたのは、これなのでしょうか!? 本当は、もっと……」
『──う、うるさぁい!!』

 だが、その揺さぶりは効き過ぎたようだ。
 テフラの言葉を遮る様な『雪女』の叫びと共に、広間を吹き抜ける一際強い冷気の風。

「ぅ、うぁっ!?」

 その風の前に、遂にルクの身体が限界を迎えた。氷に閉ざされ始めたその姿を、テフラのその目に飛び込めば。

「危ないっ!」

 反射的に動く、テフラの身体。ルクの身体を守る様に両手を広げ、吹き荒ぶ冷気に対する壁となる。
 そんなテフラの献身の甲斐もあってか、ルクの身体を閉ざそうとする氷の勢いは止まる。
 だが、しかし。当然そんな事をすれば、今度はテフラの身体が耐えられない。

(は、ははっ。こういうのは、慣れてます、から……)

 凍てつき氷像と化すテフラの身体。その姿を目の当たりにして、ルクの悲痛な叫びが広間に響く。
 その叫びを、テフラは凍りつく思考の中で聞いて……その意識を、失った。

『あはっ、ははっ! これで二人目っ!』

 『雪女』の口から溢れる、歪んだ歓喜の声。しかしその声は、ルクの耳には届かない。
 ……ルクの目は、凍りついたレパルとテフラの姿に釘付けとなっていた。
 凍りついた二人。これでは、二人と話せない。笑い合うことも、出来はしない。
 友達である二人が、こんな姿となってしまったその事に。ルクの心を悲しみが満たし……。

「──う、うわああぁぁーっ!!」

 遂に感情が、爆発した。
 悲しみは怒りを呼び、その怒りは火種となる。
 湧き立つ怒りの火。その火を力に変えて撒き散らしたのは、鮮烈な緋色の塗料だ。

『何──あつっ!?』

 塗料から溢れる激情。強い感情の込められた緋色には、極寒の広間を融かすような熱が篭められている。
 その熱に思わず悲鳴を上げる『雪女』。じわりじわりと溶け出す氷を再び固める様に、冷気の力が増していく。
 熱い激情と、極寒の冷気。相反する二つの力の鬩ぎ合いは……。

(も、う限界、です……)

 『雪女』の力に、軍配が上がった。
 凍りつき、動けぬ身体。白に染まっていく意識の中で、ルクは『雪女』の笑い声を聞く。
 響く笑い声は、勝利を確信したかのような明るいもの。その声を聞いても、もうルクの中に怒りは無い。
 ……何故ならば。

 ──ピシッ、ピキキ……バキィッ!

 氷に閉ざされていたレパルが、自由を取り戻した姿を確認したからだ。
 ……テフラも、ルクも。氷に閉ざされ動けないレパルの前で、頑張っていた。そんな友達達の頑張りを前にすれば。

「うおあああーっ!!」
『──!? な、なにっ!?』

 こんな所で、止まっている場合ではない!
 身体を封じる氷を音も高く打ち破れば、驚きに目を見開く『雪女』。
 良く見れば、レパルの身体からは、常以上の生気が満ち溢れているのが判るだろう。
 溢れる生気は虹色に輝き、暖かく優しく燃え立つ虹色の炎となる。
 その、炎を。

「全員、あっためるわ!」

 広間に満たす様に、解き放つ。
 部屋を照らす炎は、敵味方の区別無く。その場の全てを暖かく照らす。
 ……そう。敵味方の区別無く、全てである。

「雪女ちゃん! アンタの心も、暖める! あたし達が友達になってみせるわ!」

 声も高らかに飛び出すレパル。目指す先は、一直線。『雪女』のその身体だ。
 両の手を広げて、飛び込んでくるレパル。その突進を前にして……。

『い、いやぁぁっ!?』

 『雪女』の腕が、拒絶するかのように動く。
 纏う着物の袖がふわりと舞って、レパルと『雪女』が交錯し……二人の姿が、行き違う。

『ど、どうせそんな事を言って! 影で私の事を笑うんでしょっ!?』

 騙されないんだから! と、叫ぶ『雪女』。
 だが強い口調とは裏腹に、その表情はどこか困惑の色が浮かんでいた。
 恐らく、『元の雪女』と彼女を飲み込んだ『骸魂』に楔は打ち込めた、と。
 ……そう受け止めて、間違いは無いはずだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

夜霞・刃櫻
【アドリブ・連係歓迎】WIZ
ここまで来たらもう「(強敵と書いて)とも」っすね!
やったっすね!友達っすよ!友達なら間違った事を直してあげるでやんす!

「環境耐性」で寒さに耐えつつ、UC【夜霞の爆窃】で重火器武装の幽霊を召喚
幽霊達の重火器の火力と『○○・ランチャー』で戦場全体を(無理矢理炎で)焼いて暖めます
敵UC【氷の世界】を防げるだろうし、敵の心も暖められそう

ここまでやったんだからもう友達っす!
もう友達なんだからお前の攻撃は通用しないでやんす!(やせ我慢
だからこんな事は止めて一緒に遊びに行くっすよ!

自分勝手過ぎる?それがチンピラで三下、パンクでロックっすよ!!
失敗したら逃げる、許して


オリヴィア・ローゼンタール
友達とは互いに友情で結ばれたもの
仮にも友達が倒され嘆かない――あなたには他者への情が足りない

白い着物の姿のまま(オーラ防御)
氷壁を生やして折り鶴を防ぐ(氷結耐性)
ようやくお話ができますね
さて、友情を育むには同じ体験を共有するというのがあります
相手と対等になる、ということですね
そこで、UDCアースのコミックで見たことがあるのですが――

【破魔】の力を纏った拳による【鉄拳聖裁】で出し抜けにアッパーカット
――河原でタイマンの殴り合いというのは、特に効果的だそうです

氷壁は折り鶴に対してのみ
肉弾戦には肉弾戦でのみ応じる(カウンター)
友達とは、一方的に抑え付ける関係ではなく、こうして互いの拳が届く関係です!





 氷の広間を炎が照らし、極寒の空気を温めていく。
 だが多少マシになったとは言え広間はまだ寒いし、『雪女』の力があればすぐに元通りとなるだろう。
 ……そう。油断するには、まだ早い。だからこそ……。

「無理矢理にでも、暖めるっすよ!」

 もう一押しする必要があるはずだ、と。喚び出したままの爆窃団の亡霊達と共に、刃櫻が銃器を構える。
 構えた銃器は、分厚く幅広な銃口を持つ銃だ。そこから放たれた銃弾は大きく巨大で……。

 ──ズバンッ! バズッ! ズバババ!

 着弾すれば、爆ぜて炎を撒き散らす。
 刃櫻と亡霊達が構えていた銃の名は、擲弾銃。擲弾発射器とも呼ばれるその銃は、擲弾(所謂『手榴弾』だ)を撃ち出す事に特化した銃器である。
 そんな銃を数多く並べ、擲弾と、ついでに焼夷弾を撃ち込みまくったのだ。

『ちょっ!? 熱ッ、熱いっ!?』

 ……焼夷弾が発火すれば、その温度は数千℃に達する物もあるのだという。そんな高温を前にすれば、さしもの『雪女』の極寒の力も形無しと言った所。
 『雪女』が悲鳴を上げて逃げ惑うのも、致し方なしという状況であった。

「さぁ! ここまで殴り合ったんだから、あっしらは『強敵』と書いて『とも』と呼ぶ間柄! 友達っすよ、友達!」
『と、ともだち……?』

 だからこんな事止めて、一緒に遊びに行くっすよー! と、刃櫻が『雪女』へ呼ばう。
 そんな誘惑の声に、心惹かれたように『雪女』の肩がピクリと揺れるが。

『──って、こんな一方的に殴っておいて友達も何もあるわけ無いでしょ!? 身勝手が過ぎるわよ!』
「成程。確かにそれは、『友達』ではありませんね」

 その動きは即座に引っ込み、先程までの頑なな態度に逆戻りだ。
 『雪女』の言い分は、完全に己の所業を棚上げした物であった。そっちの方こそ身勝手が過ぎるではないか。
 ……そんな気持ちをグッと飲み込み、進み出たのはオリヴィアだった。

「……ようやく、お話ができますね」
『いっつつ……な、何よぉ……』

 熱にひりつく肌を擦る『雪女』を見つめるオリヴィアのその表情は、清楚かつ柔和な優しげな笑み。
 だがその瞳の奥は笑ってはいなかった。『雪女』のその所業にオリヴィアが抱いたのは……『哀れみ』であった。

(友達とは、互いに友情で結ばれたもの)

 先程、『雪女』が『雪だるま』に向けていた視線を、声を、態度を思い出す。
 仮にも友達と呼ぶその存在が倒れても、『雪女』は心の底から嘆いているようには見えなかった。他者への情が足りてない様に、オリヴィアには見えたのだ。
 ……だがそれは、『雪女』の事を考えれば致し方なくも思える。ボッチにボッチが組み合わさって拗らせたのが彼女であるのだから、その辺りの機微に疎いのは当然のことなのだ。

(ならば、教えねばなりませんね)

 同じ体験を重ねるという、楽しさを。同じ感覚を共有するという、喜びを。心を通わせるという、尊さを。
 眼の前のボッチに教えてやらねば、ならないのだ。

「友情を育むには、『同じ体験を共有する』というのがあります。相手と対等になる、という事ですね」
『はぁ……?』

 ピンと来ないのか、首を傾げる『雪女』。その仕草を見れば、オリヴィアは己の見立てが正しい事を感じ取るだろう。
 で、あるならば。これからやることは、一つのみ。

「……そこで、UDCアースのコミックで見たことがあるのです、が──!」
『は──ぶべっ!?』

 言葉と共に、オリヴィアが腰をグッと落とす。長く艷やかなな銀の髪が、纏う艶やかな白の着物が舞いはためく。
 翻る裾から伸びる靭やかな腕。その先の白く柔らかな手を固く握り締めて拳を作り──鋭い拳打が、放たれた。
 拳の軌道は、下から上への掬い上げるかのような一閃。俗に『アッパーカット』と呼ばれる打法の一撃は、『雪女』の顎を見事に捉える。
 ぐらり、と揺れる『雪女』の身体。その姿を見下ろしながら。

「──タイマンの殴り合いというのは、特に効果的だそうですよ?」

 微笑みを浮かべ、身構えるオリヴィア。
 ……嫋やかに見えて、その実はかなりの武闘派。
 オリヴィア・ローゼンタールという猟兵は、そういう少女であるらしかった。

『こ、このっ、よくもっ!』

 そんなオリヴィアの言葉に返ってきたのは、『雪女』の指先から放たれた折鶴だった。
 見るも儚い薄氷の折鶴。だがその内に秘められたのは、触れた者全てを凍り付かせる極寒の力だ。
 そんな力が、至近距離からオリヴィアに向けて放たれて──。

 パキンっ。

 甲高い音を立てて、砕ける折鶴。防いだのはオリヴィアの作り出した氷の壁だ。
 ……繰り返すが、今オリヴィアが纏う力は『雪女』のその力。同質のその力ならば、相殺するのも容易であるのは道理と言えるだろう。

『──はっ?』
「言ったではないですか。『タイマンの殴り合い』、って」

 だがそんな事とは露知らず、『雪女』の口からは思わず呆けた声が溢れ出る。
 そんな『雪女』に向けて微笑みながら、オリヴィアが腰を落として身構えて……片手の中指をクイクイっと動かす。
 かかってきなさい、と言う意味を篭めたその動きは、挑発としてはいかにも陳腐だ。
 だが想定外の事態に呆けた『雪女』には、その挑発は見事に刺さる──!

『な、舐めるんじゃないわよ!?』

 頬を狙って振るわれた『雪女』の拳。
 だがその打撃は腰が入っておらず、見るからに軽い。オリヴィアの眼から見れば止まって見える程だろう。
 そんな遅い一撃を。ギリギリまで引き付けて、首を振るだけの動きで躱して見せれば……。

「友達とは、一方的に押さえ付ける関係ではありません。こうして互いの拳が届く関係、です!」
『はぶぅっ!?』

 カウンター気味に放たれた平手の一撃が、『雪女』の頬を叩く。
 ……拳では無く平手であったのは、一方的な殴り合いを嫌ったオリヴィアの温情であろうか。

「な、なるほど! 実にパンクでロックな……!」

 そんなオリヴィアと『雪女』の殴り合いを、感じ入ったかのように眺める刃櫻の声が響いたりもしたが。
 心と拳を交えた交流は、このあとも暫し続き……『雪女』のその頬を、赤く腫れ上がらせる事になるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アテナ・アイリス
桃蝶で参加

友達ってのはね、自然にできるものであって、作るものではないわよ。

UC『プロテクション・フィールド』を使って、味方全体に氷属性から守るフィールド魔法を
唱える。武器受け、見切り、オーラ防御、第六感を使って攻撃を回避しながら接近し、友達の大切さについて
説得を試みる。

仲間に被害が及ぶまでは耐えて、解放できるように努力する。
いいえ、わたしは仲間を信じるわ。

アドリブ、連携大好物です。


ミフェット・マザーグース
わわわっ、ティエルがまっすぐ飛んで行っちゃった!?
ティエルが凍えたら大変!
とにかく雪女さんのUCを打ち消さなきゃ!

『桃蝶』のヒトと一緒にいくね(一人でもOK!)
雪女さんがティエルを狙わないように気を反らそう!
「歌唱・楽器演奏」で歌声に乗せた歌詞で注意を引きつけるよ

UC【一人ぼっちの影あそびの歌】
周囲を氷の世界にさせないように打ち消すね
ティエルが「骸魂」を見つけたら、アテナがトドメを刺してくれるはず!

♪冷たい冷たい こおりの世界
みんなが冷たくなっちゃえば みんなが冷たいお友だち
だけど冷たいお友だち ホントにホントのお友だち?
冷たくたって手をつないで 冷たくたってあったかい
それがホントのお友だち!


ティエル・ティエリエル
【桃蝶】についていくよ!ソロでも大丈夫!

【妖精姫のいたずら】で着物の中に飛び込んでこちょこちょ攻撃だ!
ぴゃあぁ、つ、冷たい!で、でもボクも負けないぞー☆
服の中をごそごそ移動しながら骸魂っぽいところがないか探すよ♪

雪女が限界に達したら、「どうだ!参ったか!」とぴょーんと服の中から飛び出してくるね!
参ったら迷惑かけた皆にごめんなさいして仲直りだよ♪みんなが怖い?大丈夫、ボクも一緒に謝ってあげるよ☆

それでも骸魂が抵抗して襲い掛かってくるならレイピアで骸魂に「捨て身の一撃」を叩き込んじゃうよ!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です





 心と拳を交える交流は、どれだけ続いただろうか。
 その結果は、赤々と腫らした『雪女』の頬が示していた。

『うぅぅ、痛ぁい……なんで私がこんな目に……』

 ブツブツと呟く涙目の『雪女』。その腫れた頬に自らの掌を当てれば、じゅわっと音が鳴る。どうやら腫れた頬を冷気で急速に冷やしているらしい。
 そんな、なんとも締まらない敵の姿を前にして。苦笑を浮かべながら、アテナが問う。

「まぁ、ああいう友達……友情の築き方もあるにはあるけど、どう?」
『どうもこうもないわよぉっ!』

 返答する『雪女』の声は、涙声だった。まぁこうまでボッコボコにされたらなぁ、とアテナの苦笑は更に深まる。
 けれど、先程の一連のアレコレを否定する気は、アテナには無い。アレもまた一つの友情の築き方であるのは、事実ではあるからだ。
 ……結構な荒療治である事も、また事実ではあるのだけれど。

「まぁ、何にせよ。友達ってのは自然に出来るものであって、作るものではないわよ?」

 だから、わたし達を信じてみて? と。先程拒絶されたその掌を、アテナはもう一度差し伸べる。
 ……異変の首謀者であるとは言え、『雪女』もまた『骸魂』によって狂わされた被害者だ。
 彼女に必要なのは、まず手を差し伸べる事のはず。アテナの考えは先程から一切ブレず、貫徹していた。

『ぁっ、ぅ。で、でも私、村のヒトを……」

 差し伸べられた手を見つめる『雪女』の表情が。目に輝く怪しい光が、揺らぐ。
 今の彼女の瞳には、アテナに対する敵意の色は薄い。むしろどこか、憧憬の色が垣間見えていた。
 恐らく、これが『雪女』の本来の姿。人付き合いが苦手だが、友達作りには憧れる。そんな引っ込み思案な性格の妖怪なのだろう。
 ……どうやら猟兵達の一連の行動は楔となって、『雪女』と『骸魂』の間に確かな亀裂を刻んでいたようだ。
 もう一押し、彼女を安心させれば……!

「大丈夫っ♪ 妖怪さん達はみんな無事だよっ!」

 揺れ動く『雪女』の背を押すように響いたのは、ティエルの明るい声。
 ティエルの言った事は、事実だ。事件の被害者に人的被害は無く、吹雪く氷雪も異変が解決されれば遠からず消えるはず。
 ……つまり、実質的な被害はゼロであるのだ。

「それに、もし迷惑かけたみんなが怖いんだったら……ボクたちも一緒に謝ってあげるよ☆」

 降り注ぐ陽光の様に、どこまでも明るいティエルのその声。
 その明るさは、『雪女』の人柄とは正反対の位置にあるものではあるが……今この段階では、その明るさこそが必要なものだった。

「そ、それなら……」

 ティエルの言葉に励まされ、アテナから差し伸べられた手へと。恐る恐る伸びる『雪女』の白い手。
 彼女のその表情からは、既に狂気の色が消えていた。
 ……だが、次の瞬間。

「──ぅあ! ぅうううう!』
「──! アテナっ! ティエルっ!!」

 突如藻掻き、苦しみだす『雪女』。その異変に最初に気付いたのは、ミフェットだった。
 危機を告げるミフェットのその声を聞けば、アテナとティエルは一息に『雪女』と距離を取る。
 『雪女』の身体から湧き出す、邪悪な力。その力は彼女の身体を包んでいって……。

『──こんな茶番になんて、騙さレナいわヨっ!!』

 豹変した『雪女』。少しずつ取り戻し始めていた彼女本来の自我は、塗り潰されてしまっていた。。
 どうやら彼女に取り憑いた『骸魂』が最後の抵抗を始めたらしい。
 歯を剥き出し、目を血走らせながら『雪女』が叫ぶ。

『みンな、ミンナ! 私の言ウことヲ聞ケば良いノよォ!』

 吼える『雪女』から溢れ出る、氷雪の力。完全に氷が溶けた広間の中に、再び雪が吹き荒ぶ。
 全てを白に塗り潰すその力が満ちれば、猟兵達は自由に動く事もままならないだろう。
 だが、しかし!

「障壁よ、我が仲間を守り給え!」

 凛々しく響く、アテナの声。
 生み出された魔力の力場は冷気を遮断する膜となり、アテナとティエル、ミフェットの三人を包み込む。

(──やっぱり、こう来たわね!)

 度重なる猟兵と『雪女』のやり取り。『お友達』に対する敵の反応。その全てを見て、アテナは一つの確信を得ていた。。
 すなわち、敵である『雪女』……いや、『骸魂』は。友達を作ると嘯きながら、その実『言う通りになる存在が欲しいだけ』なのだという事を。敵の性根、その本質を見抜いていたのだ。
 ……敵の本質は、まさに身勝手の一言。そんな敵が、依代となっている存在が離れる事を許す事は無いはずだ。
 ならば『その時』が来れば、きっとこういう展開になるだろう、と。積み重ねた経験から予測を打ち立て、アテナは備え……その予測は、見事に的中したのだ。

「──少しだけ、耐えなさい! すぐに助けてあげるから!」

 呼び掛けるその声の対象は、『雪女』。その内側に囚われた、最後の被害者だ。
 身勝手な『骸魂』から、彼女を救いたい。アテナのその決意を受ければ、二人の少女猟兵もまた決意を燃やす。

「よぉーし、いっくぞぉーっ!」

 が、その決意の炎の勢いが良すぎたか。とりゃー! と勇んで突っ込むティエルが、『雪女』の着物の中へと突っ込んでいく。

『チょっ、何……ひゃ、あヒゃひャァっ!?』

 威勢の良いティエルの突撃に身構えた『雪女』が、一瞬呆気に取られるが……次の瞬間、身を悶て笑い出す。
 ……一体、何が起きているのか。

『な、ナんでそんな擽っテ……ちょっ、そこはダメぇっ!?』

 その答えは、『雪女』の口から明かされ──今一瞬、素に戻ってなかった?
 と、ともあれ、ティエルが何をしていたかというと。ティエルは『雪女』の着物の内側に飛び込んで、その柔肌を弄り擽る『こちょこちょ攻撃』を仕掛けていたのだ。
 ……いや、ティエルは別に遊んでいる訳ではない。ふざけた行動の様にも見えるが、ちゃんとした理由がある。

(『骸魂』っぽい所、『骸魂』っぽい所……)

 衣服の中でゴソゴソと身体を動かしながらティエルが探すのは、『骸魂』の核。
 『雪だるま』達が、その雪玉が『骸魂』であったように、『雪女』の体表にもそういう場所があるのではないかと、ティエルはそう考えたのだ。

『こ、の……ンぁ!? ……イい加減に、しなサい!』

 だが、ティエルが今いる場所は文字通りの敵の懐の内。流石に肌が触れ合う距離ならば、アテナの護りの術の力は上回れる。

「ぴゃあぁっ、つ、冷たいっ!?」

 『雪女』の肌から漂う冷気が、ティエルの小さな身体を貫き、その芯を一気に冷やす。
 あまりの寒さに、一瞬意識が遠くなるティエル。だがそんな状態でも、ティエルは諦めない。
 何故ならば。どんな無茶な事をしたって、大事な友達がフォローしてくれると信じているからだ。

(大変、ティエルが凍えちゃう!)

 『雪女』の肌から、目に見える様な冷気が湧き立つ。その光景をその目で見たミフェットの目に焦りが浮かぶ。
 ティエルの身体は、小柄なフェアリーの中でも一際小柄。そんな小さな身体であの冷気に囚われては、一瞬で凍えてしまうだろう事はミフェットにも想像が出来た。
 ……大事な、本当に大事な、大親友。そんなティエルを凍えさせる訳には、いかない!

(雪女さんの気を、逸らさなきゃ!)

 ティエルを守りたい。その一念で取り出したテナーリュートを掻き鳴らす。
 響く楽想。冷たい空気を打消す様な優しげな音色に合わせて、喉を震わせ音を紡ぐ。

 ──冷たい冷たい こおりの世界
 ──みんなが冷たくなっちゃえば みんなが冷たいお友だち
 ──だけど冷たいお友だち ホントにホントのお友だち?

 ミフェットのソプラノボイスが、響く。
 紡ぐその歌詞は、敵の行動を揶揄するもの。そして、その行動を否定するもの。

 ──冷たくたって手をつないで 冷たくたってあったかい
 ──それがホントのお友だち!

 楽しい時は笑いあい、困った時は助けあい、哀しい時は一緒に泣いて。
 時には喧嘩もするけれど……手を繋ぎあえば、仲直り。
 それこそが『お友だち』なのだ、と。純真な少女の紡ぐ唄が、広間に響けば。

『グ、ゥ!? 力、が……! う、うるさひゃあっ!?』

 『雪女』の冷気の力は封じられ、その意識がミフェットに傾いて。
 ティエルが再び、動き出す!

「どうだー! 参ったかぁーっ!!」

 一層激しくなる『こちょこちょ攻撃』。冷気の力は封じられ、肉体は擽られてロクに動けない。
 まさに八方塞がりと言った状況に、『雪女』……『骸魂』が、遂に音を上げた。

 ──ヒッ、ヒィィィッ!!

「あっ、逃げたーっ!」
「アテナっ、今だよっ!!」

 『雪女』の身体から湧き立つ半透明の『何か』。間違いない。この半透明の存在こそが、『骸魂』だ。
 その正体に即座に気付いたティエルとミフェットが、声を上げれば。

「──これで、終わりよッ!」

 剣閃が、二度閃く。
 二振りの魔力剣が横に、縦にと振り抜かれれば、『骸魂』の存在は千々に裂かれて無に還るばかりだ。
 猟兵達は遂に、異変の首謀者である『雪女』を止め、彼女を狂わせた『骸魂』を撃破したのだった。



 冷気を操る強力な存在が消えた事でグラリと揺れ始めた屋敷を、猟兵達は後にする。
 当然その背には事件の被害者達と、今回の事件の中心にいた『雪女』も背負われていた。
 『雪女』も含め、事件の被害者はゼロ。猟兵達は完璧な形で異変を解決してみせたと言って良いだろう。

 ……その後、『雪女』が意識を取り戻し、自分がしでかした事の大きさを自覚すれば。きっと彼女は罪の意識に震える事になるだろう。
 けれど、そんな彼女に猟兵達が再び手を差し伸べれば……今度は彼女もその手をとって、村人達へと向き直るはずだ。
 最初はきっと、村人達との間に蟠りもあるだろう。だけれど猟兵達の媒と、猟兵達の献身により少しだけ前向きになった彼女が自ずと真摯に向き合えば……きっとその蟠りは、すぐに消えるはずだ。
 人付き合いが苦手な、『雪女』。酷い目に遭いはした物の、今回の事件は彼女にとっての転機になった。
 今後の彼女の未来は、良い方向に進んでいくはず。猟兵達の献身は、彼女の未来も変えてみせたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月14日


挿絵イラスト