7
幽世葬送曲

#カクリヨファンタズム

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#カクリヨファンタズム


0




●とある妖怪の独白
 ……幸せだったんだ。
 すごく、すごく幸せだったんだよ。
 人の世界から幽世に辿り着いて、行くあてのなかった私に、妖怪さん達は居場所をくれたんだ。
 それは食糧を得て生き永らえる以上の意味を持っていて、私に意味を与えてくれた。妖怪としてのアイデンティティを思い出させてくれた。
 それが、どうしてだろう?
 どうして、次々と、私に良くしてくれた妖怪さん達ばかりが亡くなってしまうんだろう。
 連続殺妖事件が発生して、もう五件目。
 私の手は、震えている。
 だって私には、大好きだった妖怪さん達が殺されたとされる時間の記憶だけが、何故かないのだから……。

 昭和の雰囲気の中に、どこか現代風の空気が混じり、妖怪にとっても懐かしさを感じさせる村の街並み。
 人間の真似をするように作られた商店街。
 でも私は、時折かけられる声にさえ、恐怖を覚えた。
 声の主に対してではない。自分に対する恐怖だ。
 私は商店街から、逃げるようにして立ち去るのであった。


「――事件の匂いがするのだ!」
 月詠・色葉(ロリ系焦熱妖狐のアーチャー・f03028)は、グリモアベースに集結した猟兵達に、そう言葉を投げかけた。
「それも、悲劇の匂いが色濃い……ように感じるのだ。なにせ、既に五件も続く連続殺妖事件についての予知だから、当然なのかもだけれど」
 妖狐である色葉の声色は、いつになく険しい。予知で語られた独白が、どれほどの悲嘆に暮れていたかを、聞く者に想像させるくらいには。
「だけど、この事件、悲劇を色葉達は終幕に導かなくてはならないのだ。そのためには、まずは情報が必要なのだ!」
 まず第一に、連続殺妖事件の犯人は、オブリビオンである。それも厄介な事に、普段は宿主の中に潜み、犯行時だけ宿主の記憶を奪ってオブリビオン化しているため、宿主には骸魂に取り憑かれている自覚はほとんどない。
「それでも、記憶がなくなっている事から、違和感は感じているようなのだ。そしてだからこそ、推理の材料を現場に残してしまっているのだ」
 その材料の一つが、犯人は女性である、というものだ。現場には、艶やかな長髪が二種類残されていた。一方は黒髪で、一方はピンク髪。これは恐らく、それぞれが宿主とオブリビオンどちらかのものだろう。
「また、殺妖犯行現場は全て妖怪さん達が暮らす家なのだ。誰かが押し入ったような形跡はなく、近しい関係性にある妖怪の仕業である可能性が高いので、近隣の妖怪さん――周辺には立派な商店街があるそうだから、そこで話を聞きつつ、殺されてしまった妖怪さんらと親しかった者らについての情報を得るといいのだ」
 そして不思議な事に、犯行現場である五軒の家は、全て立派な家だった、という情報も現時点で齎されている。
「ふむふむ、これも手掛かりになるのかな? 残りの手掛かりは現地調達し、犯人はどんな妖怪なのかを見事突き止めて欲しいのだ!」


ハル
 お世話になっております、ハルです。
 カクリヨファンタズム初シナリオとなります。

 流れとしては、一章では、商店街周辺にて犯人に関する情報収集。
 二章で正体を現したボスと戦闘。
 三章でボスの残した配下との戦闘となります。

 この連続妖殺事件の犯人とされる妖怪には骸魂に取り憑いており、骸魂は犯行時だけ正体を晒す形をとっているため、犯人とされる妖怪ですら詳しい状況は何ら理解しておりません。
 犯人を突き止め、猟兵達が眼前に姿を見せて状況を語れば、オブリビオンも自然と姿を現すでしょう。
 また、現在取り憑かれてしまっている妖怪は、オブリビオン(骸魂)を倒す事で救出できます。

 現場は、ノスタルジックな雰囲気漂う和風の村となっております。
 商店街には喫茶店や駄菓子屋など、一通り揃っているようです。
58




第1章 日常 『おいでませ、妖怪商店街!』

POW   :    なんだか美味しそうな物が売ってる…買い食いしよう!

SPD   :    なんや珍しい物が売ってんなぁ…それなんぼするん?

WIZ   :    何やら妖怪の子供達が遊んでるぞ…混ぜて混ぜて!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シャルロット・クリスティア
ここが幽世(カクリヨ)……。
なんだか不思議な場所ですね。おぼろげなのに、妙な居心地の良さも感じる。
ともあれ……まずは見て回ってみないことには始まりませんか。

被害者はどうも裕福そうな感じですかね。となると、買い物もよくしていたかもしれません。
駄菓子屋とかよりも、骨董品店のような、少し値の張りそうな場所に出向く方が、情報が入るかもしれませんね。

彼らの身の回りで最近親しくなった女性……となるとピンポイントすぎて不審がられるでしょうか。
最近変わったこととかなかったのか、程度の世間話で通じるような内容から、順番に情報を引き出せて行けるとよいのですが。



「ここが幽世……。なんだか、不思議な場所ですね」
 ダークセイヴァーとも、アルダワとも雰囲気の異なる土地に訪れ、シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)は辺りをしげしげと眺めていた。
 木造家屋の立ち並ぶ、よく言えば懐かしく、悪く言えば古めかしい商店街。それでも興味を惹かれてやまないのは、これらほとんどが、現代地球に起源を有するモノだからだろうか。
(「おぼろげなのに、妙な居心地の良さも感じます。人――ここで暮らす妖怪さんの影響もあるのでしょうか」)
 地球で生きる術を失いながらも、新天地での門出を迎えた妖怪らは、この幽世で懸命に生きている。その必死さもまた、現代地球で失われようとしているものの一つなのかもしれない。
 それでも、どこか商店街に陰のような靄が纏わりついているように感じるのは、決して彼女の気のせいという訳ではあるまい。
 シャルロットは商店街を一通り見て回り、連続殺妖事件についてを考える。真っ先に目についたのは駄菓子屋だが、彼女の足はそちらへは向かわなかった。
「被害者はどうも裕福そうな感じなのですよね。買い物もよくしていたかもしれませんが、それは駄菓子屋というよりも、骨董品店のような少し値が張りそうな場所の方が――」
 シャルロットは自然と、脳裏に浮かんだ一軒の骨董品店に向かった。
「おっ、いらっしゃい!」
 骨董品とはイメージが少々合致しない小柄な少女であるシャルロットに対しても、店主は愛想よく声をかけてくれた。
(「さて、いきなり殺妖事件の被害者達が、最近親しくしていた女性……について尋ねても、ピンポイントすぎて不審がられるでしょうから……」)
 シャルロットはしばし考えて、
「綺麗な骨董品ですね」
「ありがとう。お嬢さんのような子にそう言ってもらえると嬉しいよ」
「所で、商店街の様子に少し違和感があるようですが、最近何か変わった事でも?」
 その問いかけに「……あぁ」と、店主の表情にも影が差す。
「最近ね、物騒な事件が起きているんだよ」
「……詳しくお聞きしても?」
 そして首尾よく、事件の話題に持ち込む事にシャルロットは成功した。
 店主は少女に話す内容ではないと迷いつつも、事件について語る。それらはシャルロットの知る情報と似通っていたが、店主が女性の髪の毛について触れたタイミングで、彼女は被害者が最近親しくなった女性について尋ねた。
 すると――。
「ああ、彼らは皆、行くあてのない子供の妖怪を引き取ってたんだよ。女の子も何人かいたはずだから、髪の毛が見つかったのは不思議な事じゃない。ただ、ピンク髪の女の子は見かけた記憶がないんだよなぁ……」
(「黒髪が骸魂に取り憑かれた妖怪さん、ピンク髪がオブリビオンのものと考えて間違いないですね」)
 最後に店主は、興味深い事柄をシャルロットに告げた。
「あの子らを引き取ってからというもの、常連さん達は羽振りがよくなって、羨ましい限りだったよ。そういう意味でも、うちとしても亡くなってしまったのは大変残念だったねぇ。何より、いい人達だった」
「……素敵な骨董品を見させて頂いて、ありがとうございました」
 感慨深そうに語る店主に頭を下げ、シャルロットは店を後にする。
「子供の妖怪、引き取って以降、羽振りが良くなる……羨ましい、ですか。少しづつですが、見えてきたものがありますね」

成功 🔵​🔵​🔴​

天御鏡・百々
サムライエンパイアでは妖怪と言えば即ちオブリビオンの類いであったが……
この幽世では、妖怪こそが住人とはな
妖怪達が闊歩しているのは何とも奇妙に感じるが、それもまた面白きことだ

さて、そんな住民たる妖怪が殺される事件とは
犯人を突き止めて成敗せねばなるまい

様々な妖怪がいるようだが……
ふむ。付喪神を探して話を聞いてみるとするか
ヤドリガミとして、彼らには俄に親近感を感じるのでな

ピンクの髪というのは、妖怪であっても稀少ではないか?
そのような妖怪に心当たりはあるだろうか?

毛の妖怪というと毛倡妓や毛羽毛現が思い浮かぶが
そのような妖怪が関わっているのであろうか?

●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ、連携歓迎



(「サムライエンパイアでは、妖怪と言えば即ちオブリビオンの類であったが……」)
 どうやらこの幽世においては、そうした認識を改めねばならないらしい。天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)は、妖怪こそがこの幽世の主たる住人であるという事実に、奇妙さと面白さの混じった感慨を覚えていた。
 土地が変われば世界も、ある事象に対する見方も変わる。百々が諸国、世界を旅する醍醐味の一つとも言えるものだ。
「なればこそ、そんな面白き幽世を揺るがす事件が起きているのならば、犯人を突き止めて成敗せねばなるまい」
 百々は、店を商う者、行きかい者を眺める。当然ながら、彼らは人――ではなく、大抵が様々な妖怪達。
(「ふむ。付喪神を探して話を聞いてみるとするか。ヤドリガミとして、彼らには俄に親近感を感じるのでな」)
 器物は百年経ると化けると言う俗説がある。御神体として祀られていた破魔の神鏡である百々ほどの神階はなくとも、過去の遺物が集う幽世の事だ。探せば見つかるに違いない。
 そしてそんな百々の想像通り、付喪神との出会いは、商店街を散策しているとすぐに訪れた。
 唐傘お化け、提灯お化けに、鈴彦姫までと、多様な付喪神が幽世で暮らしているようだ。
「貴女様程の位階を持つお方にお目にかかれて光栄でございます」
「よいよい、我らは共に、元は人の助けとなる道具。その我らの間で、そのような世辞は不要だろう」
 どうやら、同じ女性の姿という事で、鈴彦姫が代表して応対してくれるらしい。百々としては、自分と同じく付喪神がこちらに親近感を感じてくれているらしい事は有難い事だ。
 ならばと、事件解決のために遠慮なく話を聞かせてもらう。
「この事件の裏には、ピンク髪の妖怪が関与しているという話なのだ」
 毛の妖怪というと、百々の脳裏に浮かぶのは毛倡妓や毛羽毛現。だが、それらとピンク髪というのがどうにも符号しない。
「希少な存在ではないか? そのような妖怪に心当たりはあるだろうか?」
 百々の問いに、鈴彦姫が少しの間、思案する。
 やがて、鈴彦姫は口を開いた。
「恐らくそれは、西洋、もしくは新たに生まれた妖怪の類だと思われます。幽世には多様な妖怪が暮らしておりますので……」
「なるほどな、我が知らぬのも無理からぬ事か。では、改めて聞こう。その妖怪に心当たりは?」
「……幽世に辿り着けなかった妖怪の中に、ピンク色の髪をした魔女がいた……という話はどこかで聞き覚えがございます。色恋に関する妖怪だったとか」
「色恋……宇治の橋姫のようなものか……」
 百々は付喪神らに感謝を述べ、その場を後にする。
 倒すべきオブリビオンの姿は、朧気ながら見えてきた。
 後は、そのオブリビオンが取り憑いている妖怪を見つけるだけだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

花嶌・禰々子
駄菓子屋さん、みーっけ!
棒付き飴やガム、ミニチョコを買って店先で食べながら
訪れる子供妖怪やお客さんに挨拶をしてみるわ

ねえねえ、お菓子の交換っこしない?
そんな話からはじめて、最近のこわーい事件について話を移す
でも不安がらせてもいけないから
もし何かあってもあたしがみんなを守ってあげる!と胸を張ってみせるわ

最近ひとりでふらふらしてたご近所さんとか居ないかな
特に女子
ううん。ほら、女の子がひとりきりだと危ないじゃない
ねえ店主さんも知らない?

お話を聞いたら次は上品な喫茶店に行ってみるわ
紅茶を飲みつつ話を整理したら何か思いつくかしら
もしかしたら次はこの辺りが狙われるかも、なんて
嫌な予感が当たりませんように!


ティエル・ティエリエル
WIZで判定

これ以上、被害者が増える前にボクが解決してみせるよ!
他の猟兵さんが調べた限りだと妖怪の子供の中に混じってるのかな?

妖怪の子供達が遊んでるのを見かけたら、「コミュ力」で「元気」に話しかけて仲間に入れてもらうね♪
しばらく一緒に遊んで仲良くなったら「情報収集」を開始!
最近、遊びに来なくなった子とかいないかそれとなく聞いてみるね!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です



「駄菓子屋さん、みーっけ!」
 花嶌・禰々子(正義の導き手・f28231)はご満悦だった。
 彼女の好物であるドロップや金平糖だけではない。手に入れた棒付き飴やガム、ミニチョコまでを店先のベンチで、両脚を楽し気にブラブラさせながら食す。これ以上の甘い幸福は、早々ないと言わんばかりの表情。
 そして、ふと思い立つと、彼女は隣に座る小さな妖精の女の子に、駄菓子をお裾分けしてあげる。
 すると、どうだろう? 
「これ以上、被害者が増える前にボクが解決してみせるよ!」そう強く意気込み、「むむむっ!」と、どこか難しそうな顔をしていた女の子の表情が、これまた俄に微笑みへと変わるのだ。
 その女の子こと――ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)は、上目遣いで時折、禰々子に駄菓子を催促しつつ、二人で駄菓子屋に訪れる子供のお客を待っていた。
「来たよ!」
 と、学校帰りだろうが、仲良し同士らしい子供の群れが駄菓子屋に駆けこんでくる気配をティエルが感じる。
 その瞬間、禰々子の琥珀色の瞳の奥にも、一瞬炎が宿る。
 禰々子もティエルも、外見は可愛らしい女の子。しかし心の奥には、二人共、熱いものを抱えている。
 ゆえに、そこからの動きは迅速だ。
「遊んでるの!? ボクも仲間に入れてー♪」
 ティエルがベンチから飛び立ち、自慢のコミュ力で子供達の群れに自然と馴染み、
「ねえねえ、お菓子の交換っこしない?」
 禰々子は駄菓子屋狙いの子供妖怪に狙いを定め、明るく挨拶をした。

「鬼ごっこだ☆ ボクをつかまえてみてーー!!」
 ティエルはどうやら、上手く子供の心を掴んでいるようだ。年頃としても、ほとんど違和感がないのだから当然だろう。
 対して禰々子は、事件について話題を移行するタイミングを計っていた。
 やがて禰々子は、子供妖怪を不安がらせないよう気をつけながら、切り出す。
「最近、こわーい事件が起こってるの知ってる?」
「……うん。僕達も暗くなるでに帰らないといけないんだ」
 ただの殺妖事件ではなく、連続だ。村が不穏な気配に包まれるのも当然だろう。
「もし何かあってもあたしがみんなを守ってあげる!」
 表情を不安そうに陰らせる子供達を元気づけるよう、禰々子はあえて笑みを浮かべ、バンッと胸を張った。禰々子の迷いない視線も手伝ってか、子供達の表情が和らぐのを感じる。
「ところで、最近ひとりでふらふらしてたご近所さんとか知らないかな。特に女子」
「どうして?」
「ううん。ほら、このご時世に女の子がひとりきりだと危ないじゃない。あっ、ねぇ、店長さんもそういう子、知らない?」
「「「…………」」」
 禰々子が放った質問に、何故か沈黙が返ってくる。
 これは何かあるなと禰々子が身構えていると、駄菓子屋の店主が口を開いた。
「その子達と仲が良かった女の子が二人、しばらく姿を見せていないんだよ。その二人は……実は例の事件の被害者の妖怪さん達に引き取られていた子達でねぇ――」

「えっ、パパとママが、次々と亡くなってるの1?」
 ティエルは仲良くなった子から、内緒話として打ち明けられた情報に、驚きを隠せずにいた。
「……二人の本当のお父さんとお母さんじゃないんだけどね」
 五人の被害者が全員、行くあてのない子供妖怪を引き取っていた善人であるという情報は得ていた。
 そして、それに最近様子がおかしく、姿を見せない子供妖怪達の友人が関係していたというのだ。
 最初に彼らの友人二人が引き取られていた被害者こそが、第一の被害者。次に引き取られた先の主人が第二の被害者。それが第三、第四、第五と、繰り返されている。
「た、た、大変だよ! じゃあ、その二人の内のどちらかが!?」
 ティエルは慌て、禰々子と目を合わせた。
「その二人は今、どこにいるの?」
 そして、ティエルは大事な事件解決のためのピースを尋ねるのであった。
 
「すっーごく重要な情報がきけちゃったわね」
 大正浪漫を感じさせるウェイトレスに給仕された紅茶を飲みながら、禰々子は喫茶にて情報を整理していた。
「骸魂に取り憑かれているのは、二人の女の子の内のどちらか。場所も特定できたわ。そろそろ、獄吏の花子さんの出番ね」
 この辺りが狙われる心配はなさそうだという事実に安堵を浮かべながら、禰々子は事件決着のために動き出す。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

メンカル・プルモーサ
ふーむ……殺人……妖怪だから殺妖事件か……ひとまずは聞き込みを開始しようかな…
…確か、犯人というか犯人に憑かれてる宿主は違和感を感じている、と言う話だから…
事件が起きてからは挙動が不審になってたりするかな…
…とは言え、事件が起きれば単純に不安になってる妖怪も居そうだから…
…ここは1つ、旅芸人に扮して不安になってる人を慰めたい、と言う名目で情報を集めるとしよう…
(【浮かびて消える生命の残滓】により折り紙で作った動物に生命を与えおいて、「折り紙の動物を操る芸人」に扮する)
…そして、特に不安というか挙動が不審になっている妖怪の目星を付けたらその妖怪を訪ねて反応を伺ってみよう…



「ふーむ……殺人……妖怪だから殺妖事件か……」
 眼鏡の奥の眠たげなブルーの瞳に、理知的な色が灯る。
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、改めて商店街を訪れていた。
(「……急がないと、いつ第六の妖殺事件が起こっても不思議じゃない。……確か宿主は違和感を感じている、と言う話だから……」)
 顔さえ合わせてしまえば、特定はそう難しくはないだろうと、メンカルは結論付ける。
 しかし、商店街といえど、人通りは少しばかり寂しい。活気も、さすがに普段通りとはいかないようだ。
「……これは予想通り、事件が起こって不安になっている妖怪も居そうだね。……ここは1つ、旅芸人に扮して不安になっている人を慰めたい、と言う名目で情報を集めるとしよう……」
 不安になっている妖怪の中には、もちろん件の取り憑かれていると思しき女の子も含まれている。精神的なダメージという意味においては、むしろ最も影響を受けているかもしれない対象だ。
「……さて――造られし者よ、起きよ、目覚めよ。汝は蜻蛉、汝は仮初。魔女が望むは刹那を彩る泡沫の夢」
 詠唱と共に、魔方陣が起動する。
 メンカルによって疑似的な命が吹き込まれた折り紙の動物が、彼女の意思を汲んで動き出した。
 動物は、その稀有な見た目と挙動によって商店街にいた妖怪達を呼び寄せていく。
(「……といっても、妖怪の中にあっては少しばかりインパクトは薄れてしまうかな……」)
 徐々に集まって来て妖怪達の口から、「新種の一反木綿か?」などと呟くのが漏れ聞こえ、メンカルは未知の対応と反応に「ふーむ」と唸り、同時に楽しさを感じる。
「……私は怪しい者じゃない。……折り紙の動物を操る旅芸人だよ」
 とりあえず仮の身分を名乗り、メンカルは折り紙の動物に頑張ってもらう事とする。
「おぉ、そんな芸があるのか!?」
「妖怪じゃないなら、どうやって折り紙を動かしてるんだ?」
 東方妖怪も多いためか、折り紙の身近さも相まって、メンカルのユーベルコードは好評のようだ。
 風の噂を聞きつけた、子供の姿もかなり多い。
 メンカルはその間も、眠たげな視線はそのままに、商店街を注意深く観察する。
 そして、
「……あれか」
 二人組の女の子を視界に納めた。
 二人はどちらも暗い雰囲気を纏っているが、その一方、黒髪の女の子は様子が特におかしい。視線を忙しなく彷徨わせ、常に何かに怯えているようだ。
「ん……よろしく。私はメンカル・プルモーサ」
 機を見て、メンカルは女の子に接触する。
「わ、わた、わたしは……ち、ちがっ……何も、知らっ……っ」
 瞬間、少女の怯えは、恐慌寸前まで膨れ上がる。
 しかし、メンカルは目を逸らさない。
「――大丈夫」
 そして、そう小さく告げた。
「……っ!」
「あっ、座敷童子ちゃん!?」
 怯える女の子が逃げ出し、残されるのはもう一人の女の子。
「座敷童子ちゃん、事件のせいでずっと怯えてて……!」
 メンカルはその女の子から事情を聞くと、
「……取り憑いている真犯人は、私達が排除するから……」
 徐々に遠ざかる女の子――座敷童子の背中を見てそう呟き、メンカルは後を追った。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『恋獄姫アヤラ』

POW   :    ウィッチクラフト・プロポーズ
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【呪い】属性の【愛の言霊】を、レベル×5mの直線上に放つ。
SPD   :    恋獄の縛り
命中した【恋】の【視線】が【対象を魅了する呪詛】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
WIZ   :    愛の結晶
無敵の【対象と自身との間に産まれたベイビー】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はナギ・ヌドゥーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●愛、食す魔女
 情報から居場所を特定した者、その背を追いかけた者。それぞれの手法で謎を追った猟兵達が合流し、辿り着いたのは村の一角。
 骸魂に取り憑かれた妖怪の、新たなる居住地と目される家であった。

「ごめんなさい……ごめんなさいっ! 私のせいだ、私のっ……うっうぅ……!」

 猟兵達が立派な屋敷という表現が相応しい家屋に踏み込むと、それを合図に市松人形にも似た、泣いて謝罪を繰り返す女の子の妖怪――『座敷童子』の存在を飲み込むようにして、オブリビオンが猟兵達の前に姿を現した。
 その狡猾さでもって大勢の妖怪を欺き、座敷童子の心をズタズタに引き裂き、文字通りの喰いモノとしてきたオブリビオンは、一言、「無粋ね」そう猟兵達に向かって吐き捨てる。

「座敷童子ちゃんは、きっと妾に感謝しているはずなのに。逞しく、頼り甲斐のある主人を『死』という永遠の愛で縛る事ができたのだから! それが、アナタ達のせいで全て台無し、自分達のした事が、おわかりかしら?」

 ピンク髪のオブリビオン『恋獄姫アヤラ』。

 愛情を食す魔女は常に愛で飢え、心惹かれた強き存在に死を求めて永遠とする事を至上とする。
 そんな魔女の価値観からすれば、実に悍ましい事に、彼女に取り憑かれていた座敷童子に訪れた悲劇も愛の一部。
 恩人も、心を預けた誰かも死んで永遠となったのだからハッピーエンド。
 座敷童子も喜んでくれただろうと信じて疑わない。

「もしアナタ達が強き存在ならば愛してあげる。妾流の方法で、ね?」
天御鏡・百々
汝が妖怪達を殺した犯人か!
愛は無理矢理押しつけるものでは無い
汝を討伐し、その座敷童子を助け出すとしよう

『ウィッチクラフト・プロポーズ』の詠唱には時間が掛かるようだな
ならば、先んじて攻撃するのがよいか
迎撃に中途半端な威力で放ってくるならば、しめたものだな

『清浄の矢』にて恋獄姫アヤラを狙撃する
追尾する光の矢、避けることなぞ叶うまいぞ
(祈り10、スナイパー10、誘導弾25)

呪われし愛の言霊は、神通力(武器)による障壁(オーラ防御103)で防御だ
我が破魔と浄化の力の前に、斯様な呪いなぞ効かぬ!
(破魔110、浄化20、結界術13)

●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ、連携歓迎


シャルロット・クリスティア
……やれやれ、どんな敵かと思えば……。
憑りつかれた彼女も不幸ですね。ただの我儘お姫様にこうも掻き回されては。
話の通じる相手ではなさそうです。早々に報いを受けて頂くとしましょう。

今回でかい得物は目立つので持ち込んでいませんが……大した問題にはなりません。
時間はかけません。ショットガンの抜き撃ちでお相手しましょう。
文字通りの目にも留まらぬ早撃ちです。視線に呪いを込めるよりも弾が届く方が早い。
この弾丸は呪いを穿つ特別製ですのでね。問答無用であなたを貫きますよ。

……押しつけがましい一方的な愛など、ただ傍迷惑なだけです。
早々に出て行きなさい。



「……やれやれ、どんな敵かと思えば……」
 恋獄姫アヤラを前に、シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)は呆れたように頭を振る。
 奇怪な連続殺妖事件と聞いて調査を重ねて見れば、現れたのは猟奇殺人鬼の見本のような存在。戦闘の高揚の中、シャルロットの見た目にそぐわぬ冷めた瞳は語る。「あなたのような手合いは、ダークセイヴァーで見飽きています」……と。
「妾を前にしてなお、その冷静沈着さを保てるのね。いいっ、いいわよっ!!」
 対して、強き存在に無条件に惹かれる魔女は、シャルロットに強者の面影を見たのか、背筋を震わせていた。
「やはり話の通じる相手ではなさそうです。憑かれた彼女も不幸ですね。では、早々に報いを受けて頂くとしましょう」
 やがて、魔術処理が施されたショットガンをシャルロットが音もなく構え、アヤラのネットリとした恋の視線が呪詛となってシャルロットを捉えようとした――その時。
「汝が妖怪達を殺した犯人か!」
 横合いから、怒りに身を震わせていた天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)が、――穢れしその魂、浄化してくれようぞ!
 聖なる祝詞を籠めた光の矢を放った。
「『抱きしめてあげるからじっとしていて?』詠唱中に攻撃するなんて、無粋だとは思わない? 」
「ああ、思うとも! 汝のように愛を無理矢理押し付ける輩を除いてはな!」
 百々が神弓より放った矢に、アヤラは咄嗟に対応しようとする。しかし短い詠唱では愛の言霊に十分な効力を乗せる事が出来ず、百々の攻勢を満足に喰い止められない。
「詠唱には時間がかかるようだな。中途半端な愛の言葉とやらでは、我は止められんぞ?」
「ッ!」
 アヤラは咄嗟の判断で、光の矢を迎撃ではなく躱してやり過そうと決める。しかし追尾する矢からどこまで逃げられるか見物だと、百々の赤い瞳が鋭く細まり、そしてシャルロットを見た。
 瞬間、隙を晒したアヤラに、目にも止まらぬショットガンの早撃ちが突き刺さる。魔素破却の印が刻まれた弾丸は、アヤラの防殻を紙のように切り裂いていた。
「――」
 猛烈な反動を物ともしない、神速にして正確無比な近接狙撃。目を見開いたアヤラの身体が、衝撃に浮き上がる。
「見事だ!」
「然るべき場所に当てただけです」
 百々の賞賛に、シャルロットがペコリと軽く頭を下げる。
「――それに、天御鏡さんこそ、お見事です」
 シャルロットが告げると、アヤラの肢体に追尾していた光の矢が突き刺さる。
「ああ゛! これこそ愛1 妾は今、アナタ達に愛を感じている! 『愛しているわ!!』」
「……実に嬉しくない愛の言葉だな。だがな、我が破魔と浄化の力の前に、斯様な呪いなぞ効かぬ!」
 アヤラの愛、即ち死なのだから、それはまさしく呪いと呼ぶほかないだろう。百々は具現化した神々の力の一端を解放し、強力な障壁を張って呪いを跳ね除け、次なる聖なる祈りを籠めた矢を放つ。
「先程、身をもって知ったでしょうが、この弾丸は呪いを穿つ特別製ですのでね。問答無用であなたを貫きますよ」
 視線に囚われると危険ならば、視線よりも早く弾丸をぶち込んでしまえばいい。シンプルかつ強力な回答が、弾丸となってシャルロットに本気の恋を覚え始めた魔女の肢体を跳ね上げ、視線を遮る。
「……押しつけがましい一方的な愛など、ただ傍迷惑なだけです。早々に出て行きなさい」
「汝を討伐し、座敷童子を助け出すとしよう」
 強さを見せれば見せる程に艶を増していくアヤラの哄笑を完全に聞き流しながら、百々の光の矢が穢れきったアヤラの魂を苛み、徐々に浄化していく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティエル・ティエリエル
SPDで判定

むぅ、お前の方こそ座敷童子ちゃんになんて酷いことしたんだ!
座敷童子ちゃんは何も悪くない!いっぱいいっぱい泣いてて、その子は全然お前なんかに感謝してないよ!

颯爽と背中の翅を羽ばたいて「空中戦」でアヤラに襲い掛かるよ!
恋獄の縛りの呪詛はママが持たせてくれたお守りの「呪詛耐性」が防いでくれるよ♪
そんな視線を向けてきても何も怖くないぞ☆
そのまま真っすぐ「捨て身の一撃」の【妖精の一刺し】でやっつけてやるよ!
これ以上、座敷童子ちゃんの大切な人を傷つけたさせたりしないんだから!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です



「座敷童子ちゃんになんて酷いことしたんだ!」
 視線に捕捉されてしまわれないよう、ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)は翅を羽ばたかせ、空中戦を仕掛けた。地上を移動するよりも的を絞りにくく、妖精であるティエルは小柄だ。
「あらあらあら、どこに行ったのかしら、妾の可愛い子」
「むぅ、ボクはお前なんかのものじゃないぞ!」
 時折ティエルの姿を見失う恋獄姫アヤラの視線による呪詛を掻い潜り、風鳴りのレイピアで斬りかかる。
「いいえ、強いアナタは、妾の可愛い子となるの。それに、座敷童子ちゃんに酷い事なんて、妾がいつしたと?」
「いっぱいいっぱい泣いてたじゃないか!? 座敷童子ちゃんは何も悪くないのに! 全然お前なんかに感謝してないよ!」
「勘違いしてもらっては困るわ。座敷童子ちゃんは、嬉しくて嬉しくて仕方なくて、泣いていたの!」
「――っ、絶対に許さないぞー!」
 ティエルはアヤラに向き直り、お守りの宝石を握りしめる。
(「ママ、ボクに力を貸して! 座敷童子ちゃんのために!」)
 そうすれば、ティエルはそこに大事な人の温もりを感じる事ができる。
 座敷童子は、この温もりを最悪の方法で手放す事を強いられた。
 他の誰でもない、アヤラの悪行によって。
 きっと座敷童子は、アヤラの内側に取り込まれた今も泣いているに違いない。
 ティエルはその慟哭を確かに聞き届け――。
「これ以上、座敷童子ちゃんの大切な人を傷つけたさせたりしないんだから!」
 もう、逃げるのはやめだ。
 ティエルは真っ直ぐ、アヤラに向かって直進する。
「妾の愛を受け入れてくれる気になったのかしら?」
 アヤラは無防備なティエルを歓迎するように、クスリと笑って熱視線を向ける。命中した対象を魅了する魔女の煉獄チャーム。一度恋に堕ちれば、そこは永遠に続く死への牢獄一本道。
「いっくぞーーー!! これがボクの全力全開だよ☆」
 視線が、捨て身で体当たりを繰り出すティエルに突き刺さる。一瞬、ほんの一瞬だけティエルの心に澱みが迸るが、すぐにそれらは彼女の母の愛によって解き放たれた。
 後は加速し、加速し、加速する。
 やがてレイピアは、アヤラへと到達した。
 一刺し。
 なれど、アヤラを過去へと送り帰す大きな一助となる一撃だ。

成功 🔵​🔵​🔴​

花嶌・禰々子
愛の形はひとそれぞれ
死が飾る終幕だってあるって事もあたしは認めるわ

バス停を構え、びしっとアヤラに突きつけて
呪いの言霊は射線を見極めて横に跳んで避ける
その際に風羽の髪に妖力を込めて針を飛ばして攻撃

けれどね、君!
座敷童子ちゃんにどう思ってるかちゃんと聞いていないでしょ
本当にあの子が君に感謝してるならあたしも止めないわ
でもあの子は泣いてた
あんな形でのお別れは望んでいなかったの

駆けて距離を詰めて三途の一閃からのシャンゼリゼで連撃
あたしは強いから君の愛だって受け止められるわ

きっとお話は平行線ね
だから勝負しましょ。君とあたし、どっちが強いか!

君の愛という正義がそこにあるなら――
あたしの正義も、ここにある!



「君の攻撃は厄介だけれど、見極める事さえできれば……!」
 花嶌・禰々子(正義の導き手・f28231)は、直線上に飛んでくる恋獄姫アヤラの言霊を見極め、左右に飛んで回避する。
「愛の形はひとそれぞれ。死が彩る終幕だってあるって事も、あたしは認めるわ」
 人の数だけ、妖怪の数だけ、それは確かに存在する。
 綺麗事だけで片付けられる程に世界は優しくはなく、同時に善悪で全てが語れる程に生命は単純ではない。
「でしたら、妾と共に永遠に――」
「――けれど!!」
 俄に喜色を浮かべかけるアヤラを制するように、禰々子は愛用のバス停をアヤラに突き付ける。
 加え、禰々子はこれ以上アヤラの口が愛を語らぬよう、折り紙の風車を飾った伽羅色の髪に霊力を流し、針に変化させて飛来させた。
「けれどね、君! 座敷童子ちゃんにどう思ってるかちゃんと聞いていないでしょ。本当にあの子の流す涙が、嬉し涙だったって言える!? 本当にあの子が君に感謝しているならあたしも止めないわ。でも、あの子の涙は、あんな形でのお別れは望んでいなかったもののそれだった!」
 花嶌・禰々子は、迷える骸魂や人々の道案内を主とする妖怪。理不尽な数奇や道筋を目にするのは慣れている。
 だからこそ、そんな自分の目を誤魔化せると思うなと、禰々子は一喝する。
「一撃必殺!」
 禰々子は一気に距離を詰めると、三途川と描かれた青のバス停を一閃させる。青のバス停はアヤラが防御のために差し出した片手を破壊した。そして、アヤラが態勢を崩した所を禰々子はシャンゼリゼ――黄色のバス停で連撃を加えようとする。
「『アナタを愛しているわ、心より。だから、アナタも妾を愛して』」
 だが、間合いを詰めた事により、アヤラの言霊への応対もほぼゼロ距離となっている。しかし、禰々子の瞳はいつまで経っても愛に染まらない。
「何故?」
 アヤラが疑問を口にした。
 すると禰々子は笑って、
「あたしは強いから君の愛だって受け止められるわ」
 そう告げた。
 禰々子にとって道案内は御手の物。たとえそれが、恋や愛といった迷宮であっても。
 畜生道を示すシャンゼリゼで、禰々子がアヤラを殴り捨てた。
「きっとお話は平行線ね」
「の、ようですわね」
 そこには先程から何ら認識を変えていないだろうアヤラがいた。赤い瞳はただ強者との恋を望み、愛した者に死を与えて永遠とする事を至高とする。
「だから勝負しましょ。君とあたし、どっちが強いか!」
 禰々子は傷だらけになりつつも死の求愛をやめないアヤラへ、再びバス停を突きつける。
「君の愛という正義がそこにあるなら――あたしの正義も、ここにある!」
 正義の綺羅星が、いつになく輝きを放っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

メンカル・プルモーサ
…うーん、死は愛じゃ無い…とか言う以前にあれだけきっぱり怯えてたのを感謝してるはず、と言う時点で言葉が通じる手合いじゃないね…
カタストロフを防ぐためにも…さっさと倒してしまおう…

…さて、●恋獄の縛りは視線によって敵を捕らえる…となれば…
…医療製薬術式【ノーデンス】で作った薬品を用いた煙幕を使って姿を隠して…
…心理隠密術式【シュレディンガー】で発見されづらくした上で…
…屋敷の扉や家具等の地形を利用して視線に囚われないように動くよ…
…そして戦いながら骸玉の位置の情報を集めて…
…【慈悲深く死神の手】で骸玉を抉るとしよう…その子を返して貰うよ…
…救出したら取り合えずは健康状態の確認かな…



「強い、強いわ! アナタ達、素敵よ! あぁ、今日はなんてよき日なの!? こんなにも愛すべき者に出会えるなんて! さぁ、妾の永遠のモノとなって!!」
 恋獄姫アヤラが、恋に狂っている。
 命の炎を燃やし尽しながら、魔女が愛を叫ぶ。
「……魔女、か」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、魔女――学園で教科課程を経た者の一人として、アヤラを早急に撃破してしまう事を決める。知的探求心を満たすための前段階は、とうに過ぎた。
「それに、……うーん、死は愛じゃない……とか言う以前にあれだけきっぱり怯えていた様子を感謝しているはず、と言う時点で。……あれが嬉し涙に見える時点で、言葉が通じる手合いじゃないね……」
 メンカルは情報収集を続けながら、既に対アヤラとして、一つの対策を見つけてあった。
「……煉獄の縛りとやらの対策法は……もう手中にあるよ」
「そう言わずに、妾の恋に付き合ってくださいな!」
 眠たげな、興味なさげなメンカルの様子に、アヤラはむしろ彼女を是が非でも振り向かせたくなったようだ。瞳の奥にハートさえ浮かべた視線が呪詛と化し、メンカル目掛けて殺到する。
「この煙は!?」
 ――が、次の瞬間、アヤラは瞠目した。視界が奪われたのだ。
「……医療製薬術式【ノーデンス】で作った薬品を用いた煙幕だ」
 アヤラへと、疑問の回答は滔々と煙の中から届けられる。
「ああ、いけないわ! 愛おしい姿を見せてちょうだい!」
 躊躇なく、恋するアヤラは煙幕の中へと飛び込んでくる。強さをみせれば、むしろ喜ぶのがアヤラの性質。
(「さて、彼女の骸玉はどこにあるか。……一応、見当はついているけれどね」)
 心理隠密術式でメンカルは居場所を特定されないようにしながら、屋敷の扉の影に身を隠し、時には家具を盾にしつつ、魔術で、術式拳銃で、アヤラの不意を突く。
 アヤラもまた、頭部への攻撃を防ぎながら、恋する乙女のようにメンカルを探し回り、愛の言葉を紡いでいた。
(「そう――両手、胴体、下腹部。これだけ猟兵の攻撃を受けながら、お前には未だに無傷の部分が一つだけある。……それこそが……頭部……」)
 確信を持ち、メンカルは煙幕の中、アヤラの背後を取る。
「空なる孔よ、開け、閉じよ。汝は切削、汝は虚現。魔女が望むは世界切り取る虚空の手」
 そして、術式――『慈悲深き死神の手』を展開。
 未だこちらに気づいていないアヤラの頭部の内部をイメージし、骸玉があるであろう部位だけを削り取るべく、魔力を術式に注ぎ込んだ。
「ア、アナタ!?」
 その間際、アヤラが焦りを見せる。
「……我儘だね。……恋した相手に死を求めるのは許容しても、求められるのは不本意かな? ……その子を返して貰うよ……」
「待っ――」
 制止の言葉を最後まで待つことなく、メンカルはアヤラの核を破壊する。
 それは呆気なく、本物の姿なき怪異の如く。
 幽世に辿り着けず、彷徨うだけの霊魂が滅びゆく。

 やがて、アヤラが飲み込んでいた『座敷童子』が解放され、メンカルは倒れこんでくる彼女の身体をそっと抱き留めた。
「……健康状態は……一先ず、大丈夫そうかな」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『輪入道』

POW   :    燎原火炎陣
【激しく回転しながらの】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【他の輪入道】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    紅蓮疾走
自身に【燃え盛る炎】をまとい、高速移動と【回転する炎の輪】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    ファイアホイールスピニング
【回転速度】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵達が意識のない座敷童子を安全な場所へと移送しようと準備していると、ふいに屋敷を猛烈な熱気が包み込み、事実その屋敷は燃えかけていた。

「よくも、よくもアヤラ様を!」
「許さんぞ、ここで滅してくれる!」

 現れたのは『輪入道』。

「このオブリビオン、もしかして村に住んでいる妖怪さん達!?」
 
 その輪入道の一体の面影に、どこか思い当たるふしのあった猟兵が、ギリッと歯を軋ませる。
 恋獄姫アヤラが死の間際に残した嫌がらせにして、愛した相手を殺したいという欲求を叶えるための最後の悪あがき。
 悔し紛れの村の住民達のオブリビオン化。
 猟兵達は怒りを宿し、再び戦いの準備を始める。
 オブリビオン化した妖怪達を救いだすため、座敷童子にこれ以上の悲劇を見せないために!
 アヤラが撒き散らした配下――輪入道の骸魂を滅し、輪入道へと飲み込まれて変化してしまった村人達を救うのだ!
天御鏡・百々
アヤラめ……往生際の悪いことだな
! あの鈴は……鈴彦姫殿も飲み込まれたのか!?
急ぎ輪入道を討伐し、住民を助け出さねばならぬな

どうやら高速移動や突進が得意な様子
ならば、それを封じてしまおうか
『惑いの封魔鏡』にて、輪入道達を鏡の迷路に閉じ込めてやろう

如何に回転を増したとて、この迷宮は簡単には突破はできぬぞ
方向感覚も狂わせるため、出口を見つけることも難しかろう

そうこうしている間に制限時間だ
昏睡した敵は真朱神楽(武器:薙刀)で討伐だな
(なぎ払い35、破魔110、浄化20、神罰5)

●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ、連携歓迎
●本体の神鏡へのダメージ描写NG



「アヤラめ……往生際の悪いことだな!」
 続々と、村人である妖怪達を飲み込んで姿を形成する骸魂――輪入道に、天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)は落ち着きある双眸に苛立ちを募らせていた。死してなお己が欲望を諦めないとは、その執念、厄介極まりないと。
 しかしその苛立ちも、輪入道の中の一体が身に着けていた鈴を見て、一気に沸騰する。
「あの鈴は……鈴彦姫殿も飲み込まれたのか!?」
「アヤラ様、アヤラ様! アヤラ様ーー!」
 聞き知った彼女の鈴の音。そして百々が紡いできた歴史に敬意を払ってくれた女性。同胞という訳ではないが、それでも親近感は覚えた。
 元より戦う理由は十分であったが――。
「座敷童子殿、今しばらく待っていてくれ」
 百々は火の手から逃した座敷童子の汗と涙で解れた髪を梳くと、輪入道に向き直る。
(「ふむ、どうやら高速移動や突進が得意のようだな」)
 高速で百々の周囲を回り、隙を伺う輪入道を、百々もまた観察する。
 やがて輪入道は、観察する百々の予測を裏切るように、猛烈な炎を噴き上げて突進を敢行した。速度だけでなく、炎の勢いもパワーも六倍と化して!
「鈴彦姫殿の身を借りて、アヤラの名を出すな。それにな、汝がいくら能力を上げようとも、封じてしまえばそれまでよ」
 そして百々は、厳かに一節を口にした。
「鏡よ鏡、邪なる者を惑わし、封じ込めよ」
「ンンンーーー!?」
 途端、百々に狙いを澄ましていた突進が、唐突に逸れる。そして気がづけば、戦場全体が鏡張りとなり、複雑な迷路と化していた。
「如何に回転を増したとて、この迷宮は簡単には突破はできぬぞ。悪しき汝らの方向感覚は狂わされ、出口をみつけることも難しかろう」
 迷路に囚われた輪入道らは、狂ったように暴れまわる。が、迷路は微動だにせずそこにあった。
「――制限時間だ」
 一分待たずして、百々が告げた。
 まるでその文言を合図にしたかのように、輪入道は一体、また一体と昏倒していく。
「さて、急ぎ住人を助け出さねばな!」
 百々は朱色に塗られた薙刀――真朱神楽に神の力を込め、苦もなく昏倒した輪入道を撃破、浄化していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロット・クリスティア
こうまで無数のオブリビオン……配下とも言って良さそうですが。
無理矢理に媚び諂わせて、お姫様気取りですかまったく……!

あまり時間をかけていてはこちらも危険ですね。
申し訳ないですが、手早くやらせて頂きます……多少痛いかもしれませんが、我慢してくださいよ。

回転数が上がれど、挙動自体は同じです。
走るにしろ回るにしろ、機動力は回転速度に比例する、であるならば『どの速度で回転しているか』さえ把握していれば、位置予測は可能。
後は、移動先に間違いなく弾丸を届けさせるだけ。私の腕なら難しいことでもありません。
無駄に苦しませることも無いでしょう。極力、一撃で仕留めたいところですが……。



 シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)は、牽制の意味も込めてマギテック・ショットガンから散弾を一発、二発と吐き出した。小気味よい音を奏で、輪入道を何体か屠るも、数で利する輪入道が徐々に回転速度までをも増強するにつれ、押し込まれかけている。
「こうまで無数のオブリブオン……配下とも言って良さそうですが!」
 シャルロットは、腹立たしい気持ちで一杯だった。
 何故なら――。
「我らがアヤラ様の敵に天誅を!」
「おいたわしや、おいたわしや、アヤラ様!」
 輪入道といえば、先程からずっとこの調子。あのアヤラの配下だとすれば、輪入道も魅了されているのだろう事はシャルロットにも容易に想像がつく。輪入道は幸か不幸か、殺す価値もないとアヤラに思われていたに違いない。
「無理矢理に媚び諂わせて、お姫様気取りですかまったく……!」
 その腹立たしさを経験で受け流し、彼女は輪入道の攻撃を躱し、ショットガンの引き金を絞るのだ。
「いえ、幸か不幸かなら……不幸には違いありませんか。あまり時間をかけていてはこちらも危険ですね。手早くやらせて頂きます」
 手探りの時間は終わりだと、ふいにシャルロットの視線が鋭さを増す。
「回転数が上がれど、挙動自体は同じです」
 輪入道のスピード、パワー共に序盤とは比にならない。
 しかし、銃弾が命中しさえすれば撃破は可能である事は証明済み。
「――で、あるならば。『どの速度で回転しているか』さえ把握していれば、位置予測は可能のはずです。飲み込まれてしまった妖怪の皆さん、多少痛いかもしれませんが、我慢してくださいよ」
 どうかご安心を、逃がすつもりはありませんので。シャルロットは小さく呟き、銃口を輪入道に向け、精神を研ぎ澄ませる。学んだ戦闘技術、魔術の全てを駆使し、殺到する輪入道へと銃弾を放った。
「ギャ!」
 と、轟音と共に輪入道の短い悲鳴が木霊する。
 そのシャルロットの狙撃は一見、見当違いの方向に向けて放たれているようにさえ見えた。しかし結果は、シャルロットが輪入道の動向を全て見切っていたかのように、銃弾は輪入道の進行方向上に置かれていた。
「移動先に間違いなく銃弾を届けさせる。私の腕なら難しい事でもありません」
 事も無げに告げるシャルロットの眼前で輪入道が倒れ、飲み込まれていた村人妖怪達が解放されていく。
 そして、残る輪入道が昏睡状態に陥ったのを見て、彼女は言った。
「無駄に苦しませることも無いでしょう。極力、一撃で仕留めたいと思っているんです」
 戦場に、銃声が響き渡る。

成功 🔵​🔵​🔴​

スピレイル・ナトゥア(サポート)
精霊を信仰する部族の巫女姫です
好奇心旺盛な性格で、世界をオブリビオンのいない平和な状態に戻して、楽しく旅をするために戦っています
自分の生命を危険に晒してでも、被害者の方々の生命を救おうとします
技能は【第六感】と【援護射撃】と【オーラ防御】を主に使用します
精霊印の突撃銃を武器に、弾幕を張ったり、味方を援護したりする専用スタイルです(前衛はみなさんに任せました!)
情報収集や交渉のときには、自前の猫耳をふりふり揺らして【誘惑】を
接近戦の場合は精霊の護身用ナイフで【捨て身の一撃】を繰り出します
マスター様ごとの描写の違いを楽しみにしている改造巫女服娘なので、ぜひサポート参加させてくださると嬉しいです!


ティエル・ティエリエル
SPDで判定

最後の最後まで悪さして!
でも、座敷童子ちゃんを悲しませないためにもみんな元に戻して見せるよ!

飛び回る輪入道に対抗して、ボクも背中の翅で羽ばたいて「空中戦」で戦うよ☆
高速移動しての攻撃や回転する炎の輪は小回りの利く分、紙一重で「見切り」、回避しちゃうよ!
すれ違いざまに「カウンター」で【ハイパーお姫様斬り】で車輪を真っ二つにしちゃうよ♪

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です



「最後の最後まで悪さして!」
 ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)を熱気で炙るように、燃え盛る炎を纏った輪入道が疾走している。
「わわっ、熱い! 熱いって――ばぁ! これでも喰らえー☆」
 高速で移動する輪入道が放つ、回転する炎の輪を紙一重で回避し、走り回る輪入道に対抗してティエルは羽ばたいた。そして、空中から擦れ違いざまにオーラの刃で顔と車輪を纏めて両断する。
「へっへーんだ♪ ボクはお前達よりも小回りが利くんだからな!」
 ティエルは薄い胸を反らして得意げな顔。妖怪を飲み込んでいた骸魂の消滅を感じ、笑みを見せる。
「でも、座敷童子ちゃんを悲しませないためには、みんなを元に戻す必要がある!」
 数体を順調に撃破するも、輪入道の勢いは未だ衰えしらず。
 ティエルがヒラリと輪入道の攻撃を見切って躱し、消耗を誘っていると、ふいに横合いから強化された輪入道が突撃してくる!
「っ、もう! まだこんなにいるの!? ……でも――!」
 しかし、ティエルはすぐに態勢を立て直し、身構える。妖怪や座敷童子を置いて、ここで引く訳にはいかない。

 そして、そんな覚悟に呼応するように、夥しい量の弾丸の連射が面攻撃となって、能力増強された輪入道の大群を堰き止めた。
「援護射撃は私に任せて下さい! 強化された輪入道は、私が請け負います!」
 その銃弾の嵐は、スピレイル・ナトゥア(蒼色の螺旋の巫女姫・f06014)の精霊印の突撃銃から放たれたもの。
 ティエルの背中側を守るようにしてスピレイルは戦場に割り込むと、
「この身を賭けて、輪入道に飲み込まれた妖怪さん達を救い出しましょう!」
「うん、もちろんだよ!」
 言葉と挫けぬ意思を交し合い、互いの敵に目を向ける。
(「とはいえ、私は弾幕や援護が基本的なスタイルです。そうすると、自然と戦い方は決まって来ますね」)
 強化された輪入道の特徴として、しかる後に昏睡状態に陥るというものがある。
「要はそれまで耐えればいいという事です! 土の精霊さん。力を貸してください!」
 突っ込んできた輪入道をオーラ防御で押し返し、お返しに護身用ナイフを突き刺していなしたスピレイルは、精霊術士としての術理を顕現させた。
 戦場全体が、土の精霊の力を宿した土で形成された迷路と化したのだ。
「……これでしばらくは持ちますか」
 迷路に右往左往する強化された輪入道から一旦視線を外したスピレイルは、今度はティエルが応対する輪入道に向かって弾幕を張る。
「ありがとー☆ いっくぞー!ハイパーお姫様斬りだー☆」
 ティエルとの戦闘によって消耗していた所に、弾幕によって追加の怯みを受けた輪入道らは、ティエルのオーラの刃によって次々と切り刻まれていく。
「迷路に嵌まった輪入道も、どうやら昏倒したようです」
「よーし♪ なら妖怪さん達を解放して、座敷童子ちゃんにみんなの無事を教えてあげるぞー!!」
 スピレイルとティエルは、手分けして昏倒した輪入道の骸魂を滅し、村人の妖怪達を救出した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

メンカル・プルモーサ
……うーん、往生際が悪い……住人が飲み込まれたかー……
……骸魂破壊して救出する必要があるね……

さて骸魂の位置は……あのあたりか…回転速度上がって全ての能力が上がってる…全ての能力、ね……
……【鳴り止まぬ万雷の拍手】を発動……知覚能力も上がってるのであれば効果覿面だろう……
……これで昏睡まで動きを止め続けられれば良し…止めきれなないにしても動きを封じてる間に骸魂の位置を把握して撃ち抜いてしまおう…
…座敷童子含めて、救出した妖怪達はひとまず物陰へと移動させておこう……
さて、後どのぐらい居るのかな…撃ち漏らしもないようにしないと…



「……うーん、往生際が悪い……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は大量の輪入道に包囲されながらも、瞼が重い様子を隠す素振りもない。
「……骸魂破壊して救出する必要があるね……」
 残された為すべき事は一つ。
 興味を惹かれた妖殺事件が半ば解決した以上。それ以外――この場においてメンカルが学ぶべき事項はもう存在しない。
「さて、骸魂の位置は……あのあたりか……」
 メンカルが視線を向ければ、アルゴスの眼や自作精霊AI。その様々な情報源が、彼女に輪入道の泣き所を教えてくれる。
 メンカルは、大幅に向上した回転性能を駆使して暴れ回る輪入道の連撃を、術式拳銃から放つ多種の弾により致命傷を避けつつ、隙を見てとある術を発動させた。
「観測せし虚像よ、沸け、轟け。汝は観客、汝は賞賛。魔女が望むは舞台を止めし大喝采」
 詠唱と同時、輪入道らは閃光と喝采に似た轟音の幻覚に包まれる。
「むっ! そんな光や音が通用するか!」
「……いつまでそう言っていられるかな……。……その後の展開は……私には既に見えているよ……」
 怯まずメンカルを執拗に狙おうとする輪入道に対し、メンカルは冷めた様子で返答する。
 そしてメンカルの言を証明するように――。
「ぐ、ぐあぁあああ!!」
 唐突に、輪入道は激しく身悶えた。
「……全ての能力――そこに知覚能力も含まれているなら……当然そうなる……」
 複数体の輪入道が視覚と聴覚を喪失し、動きが止まる。しかしアヤラの魅了が余程効いているのか、知覚能力を失いながらも一心不乱に戦闘を続行しようとする個体もいた。
「……アヤラだけでなく、お前達も往生際が悪いね。……哀れではあるけど……私は容赦しない……」
 見当違いの方向へ突き進む輪入道に、メンカルは骸魂の位置に狙いを定めて銃弾を叩き込む。骸魂の破壊を確認し、妖怪達が無事に解放されたのを見て、メンカルはようやくほっと安堵の息を吐いた。
 そして次は、昏睡した輪入道の処理だ。
 狙い澄ました術式拳銃から吐き出された銃弾が、骸魂を静かに貫通する。
 やがて全てを終えたメンカルは、救出した妖怪達を一時物陰へと移動させた。
「さて、後どのぐらい居るのかな……撃ち漏らしもないようにしないと……」
 周辺の安全の確保も兼ねて、メンカルは淡々とした様子で、輪入道の残党を狩りに行く。

成功 🔵​🔵​🔴​

花嶌・禰々子
最後の最後まで気は抜けないわね
でも大丈夫、あたし達に任せておいて

炎ならちょっと扱えるから慣れてるわ
輪入道の攻撃はバス停で受け止めて耐えてみせる
痛いけど、どんなに熱くたって平気、へっちゃらよ!

いくわよ、と
連れている霊障の魂と幽世蝶に呼び掛けながら
輪入道達にバス停を振るって妖力の標識を刻んでいく
さあ、悪霊くんに蝶子ちゃん
『楽園』への道案内をお願い!

霊は紫に、蝶々は紅く光って宙に揺らめく
ほら、綺麗でしょう
あたしには祈ることしか出来ないけれど、それでも!
願う気持ちは本物だって証明してみせるッ!

眠れ、眠れ。安らかに。
音を乗せて口ずさむのは骸魂達に贈る葬送の歌
この魂達がこれ以上、迷わないように。どうか――



「最後の最後まで気は抜けないわね。でも大丈夫、あたし達に任せておいて!」
 花嶌・禰々子(正義の導き手・f28231)が軽く振り返ると、そこには未だ意識を失ったままの座敷童子の姿が。そして座敷童子にとっての今回の妖殺事件は、ここで終わりという訳ではない事を禰々子は知っている。
(「幸福であればある程、ふいに訪れた理不尽っていうのは心に重く圧し掛かるものだから……。でも……!」)
 そう、でも。
 生きていれば、存在する事が許されているならば、誰にだって転機は訪れる。たとえそこが、地球と骸の海の狭間であったとしても。
「アヤラ様の本懐を果たすためにぃぃぃぃぃいいいい!!」
「っっ、炎ならあたしにもちょっと扱えるから慣れてるわ! 痛いけど、どんなに熱くたって平気、へっちゃらよ!」
 燃焼しながらスピンして襲い来る何体もの輪入道を、その都度禰々子はバス停で受け止める。熱波が押し寄せ、バス停を伝った熱が禰々子の両手を炙るが、彼女は怯まない。
「悪霊くん、蝶子ちゃん、準備はいい!? いくわよ――と!」
 どころか、禰々子は輪入道の猛攻を根性で押し返すと、連れている霊障の魂と幽世蝶に呼び掛けた。
「どりゃー!」
 すかさず反転攻勢に出た禰々子が、バス停を輪入道に叩き込む。
 すると、命中した個体に妖力の標識が刻まれていった。
「さあ、悪霊くんに蝶子ちゃん『楽園』への道案内をお願い!」
 紫色の彷徨う魂が集った霊障が揺蕩い、紅に光る蝶々が揺らめく。
「ほら綺麗でしょう」
「――――!」
 幽炎で保護してもなおチリチリと焼かれる肌を気にも留めず、禰々子が間近に迫る輪入道の狂気に満ちた目を覗き込む。
「あらしには祈ることしか出来ないけど、それでも! 願う気持ちは本物だって証明してみせるッ!」
 禰々子がバス停を振い、舞い飛ぶ悪霊と羽搏く幽世蝶が彼女に追随して追加攻撃で苛んでいく。
「眠れ、眠れ。安らかに。この魂達がこれ以上、迷わないように。どうか――」
 そして此岸と彼岸の狭間に立つ少女が奏でる葬送曲がフィナーレを迎える頃、あれだけ大量にいた骸魂は綺麗に消え失せようとしていた。
 禰々子は最後に残った残滓に笑顔を向け、小さく目礼で見送る。
「よーしッ! 後は村人さん達の無事を確認して、座敷童子ちゃんとすこーしお話するだけね!」
 とはいえ、あまり多くを語る必要はないだろう。
 ただ、どうにもならない時のために猟兵がいて、そして道に迷った時には喜んで手を差し伸べる妖怪もいるのだと、知ってもらうだけでいいのだ。
 駄菓子屋で手に入れたお菓子を土産に、禰々子は村人と座敷童子の元へ戻る。

 仕事を終えた全ての猟兵が揃い、村が賑やさを取り戻すまで、そう長い時間はかからなかった。
 その溢れる笑い声が、亡くなった被害者達の魂の癒しとなる事をその場の誰もが祈っている。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月11日


挿絵イラスト