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送り火は再生の灯

#カクリヨファンタズム #鎮魂の儀

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#カクリヨファンタズム
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#鎮魂の儀


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●幽世の鎮魂際
「皆様、先日発見された新たな世界「カクリヨファンタズム」についてはもうご存知でございましょうか」
 フェイト・ブラッドレイ(DOUBLE-DEAL・f10872)は、グリモアベースの一角に集まった猟兵たちに向けてそう語り始めた。
「カクリヨファンタズムはUDCアースに隣接する世界。UDCアースで居場所を失った妖怪たちが生き延びるために移住した世界でもあります。……とはいえ、世界から世界への移動はあまりに困難。多くの妖怪が生きて辿り着くこと叶わずに『骸魂』と化してしまうそうです」
 『骸魂』は妖怪をオブリビオンにしてしまう危険なものでもあるが、妖怪たちは彼らを悼んでもいる。故に、時折世界移動に失敗して全滅してしまった妖怪たちの「鎮魂の儀」を行っているのだという。
「鎮魂の儀が成功すれば、骸魂は花や樹などの糧となって浄化されるらしいのですが……今回の「鎮魂の儀」は、失敗すると予見されました。集まった妖怪たちを救う為、皆様がたにはどうぞ儀式場へと向かってほしいのです」
 すでに儀式場では、集められた骸魂たちが妖怪ではなく草木に乗り移る形でオブリビオン化してしまっている。また、その影響により会場は植物生い茂る迷宮と化しており、儀式上に訪れていた妖怪たちを閉じ込めてしまっているようだ。
「カクリヨファンタズムにおけるオブリビオンは骸魂が妖怪、あるいはそれ以外のものに乗り移る、飲み込むことで生まれたもの。飲み込まれた妖怪はオブリビオンを倒せば救出することが出来ますし……骸魂に対してもなぐさめの言葉をかけるなどの働きかけを行うことは有効な手段です」
 まずは現場に向かい、骸魂が草木たちに乗り移ってオブリビオン化した存在を倒してほしいのだとフェイトは言った。彼らは妖怪を飲み込んでいない分力は弱いが、数が多い。
「その後に迷宮と化した儀式場を攻略しながら閉じ込められた妖怪たちを救出してほしいのですが……儀式の祭司を執り行っていた方が、行方知れずとなっておられます。もしかすると、骸魂に飲み込まれてオブリビオン化しているかも知れません。その時はどうか、骸魂ともどもその方をお救いくださるようお願いいたします」
 それでは準備が整いましたら、僕にお声掛けくださいませ――……。


遊津
 遊津です。
 カクリヨファンタズムのシナリオをお届けいたします。
 第一章集団戦、第二章冒険、第三章ボス戦の構成となっております。

 当シナリオはオープニング公開と同時にプレイングの受付を開始いたします。
 プレイングを送ってくださる際は、必ずMSページを一読いただきますようお願いいたします。

 ※カクリヨファンタズムのオブリビオンは「骸魂が妖怪(あるいは植物など)を飲み込んで変身したもの」となっており、飲み込まれた妖怪はオブリビオンを倒すことで無事に救出することが出来ます。
 また、骸魂に対しても慰めの言葉などをかけるとプレイングボーナスを得ることが可能です。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『骸魂火』

POW   :    光の御返し
【発光している身体の一部】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、発光している身体の一部から何度でも発動できる。
SPD   :    光の御裾分け
【発光している身体の一部】を向けた対象に、【高熱を伴う光線】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    この子は傷つけさせない
全身を【発光させ、防御力が極めて高い身体】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

浅間・墨
何時ものようなUC付与の斬撃で倒して救えますかね?
少し不安なので【閻魔】で邪心のみを斬り払おうと思います。
(早業、破魔、2回攻撃、限界突破、見切り)
この技なら返されても影響ないと思うので。

問題の会場は草木で視界が悪いようなので注意が必要ですね。
柄に手を乗せ何時でも抜刀できる状態で周囲を厳重に警戒します。
草木に偽装して襲ってくるかもしれませんから注意深く警戒です。
そして迂闊に草木は斬りません。オブリビオン化したものだけです。
斬ったら儀式に使うものも一緒に斬れていた…だと困りますから。
今回の刀は『井上真改』を使おうと思っています。
そういえば。骸魂も転生できるのでしょうか。
できるなら…嬉しいですね。



●ふわり光舞う
 ――くすくす、くすくす……。
ぼんやりと発光する花。それは本来その糧になるはずだった草花たちを逆に乗っ取り、オブリビオンとなってしまった骸魂たちだ。
 浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)は生い茂った草木で視界の悪い中、いつでも抜刀できるように身構える。
 儀式に使うものかも知れないから迂闊に草木を斬るわけには行かない、と考える墨は、くすくすと笑うオブリビオンだけを斬る為にじっと機をうかがう。
(このオブリビオン……いつものような、ユーベルコードを付与したもので斬ってしまって救えるのでしょうか?)
 僅かな不安が墨の心を動かした。
笑うオブリビオンたちが墨を取り囲む。その時初めて、墨は動いた。
「…………!!」
腰の鞘から滑り出すように抜刀された二尺三寸四分の大刀が、取り囲んだオブリビオンたちを一太刀のもとに斬り捨てる。
放たれた技は【閻魔】――その肉体に一筋の傷もつけることなく、相手の邪心のみを斬り捨てる技。
幾体かのオブリビオンが発光した体でその斬撃を受け止めた。
その光の中から先程墨が繰り出したものと寸分違わぬ太刀筋が彼女を襲う。
「……!」
 体に痛みはない。肉体を傷つける技ではないからだ。では、その心はどうか。
【閻魔】は邪心だけを斬る技。墨はこの技ならば返されても影響はないと思っていた。
果たして、本当にそうか――彼女の心の中にはひとしずくの邪心もなく、聖女のように澄み切っていると? 自分は半分魔の物と化してしまっている、とすら考えている彼女が?
人は誰でも邪しい心のひとつやふたつ持つものだ。それが普通だ。誰だってそうだ。
――本来ならば。
果たして墨の心がオブリビオンからの反撃に、何の痛みも受けなかったかはわからない。
それは彼女の心のうちだけのものであるからだ。
ただ何も言わず――もとより彼女は殆ど声を発さない――刃を抜き放ち、斬り捨て、くるりと身を翻して更にその刃でもってオブリビオンを斬り伏せてゆく。
血は流れない。身を切る技ではないからだ。
代わりに、草木の露が大刀の直刃を濡らしていた。
浅く早い呼吸が生い茂る草に吸い込まれていく。
(そういえば――……骸魂も、転生はできるのでしょうか)
 できるのなら、嬉しいと。
そう、墨は思った。

成功 🔵​🔵​🔴​

髪塚・鍬丸
任務了解した。御下命如何にしても果たすべし。

浅間さんの読みを頼る。彼等の能力は「複製・反射」か。
ならば。【早業】【ダッシュ】で彼等の群れの中心に飛び込む。
UC【神風の術】発動。
自身を中心に、邪悪な存在を塵に変える旋風が巻き起こる。

本来は防御の為の術。だが、【カウンター】【範囲攻撃】で攻撃の技に転じる。
広範囲に吹き荒れる【破魔】の力を込めた旋風が、オブリビオンと化した躯魂……即ち、躯魂に乗っ取られた草木を除いた邪悪のみを消滅させる。
複写しても無駄だ。このUCは、邪な攻撃や存在以外には基本的に無力。俺には効かん。

オブリビオンの侵食のみを消滅させる技、って事さ。
これで本来の姿に戻れるといいんだがな



●飃
 ――任務、了解した。御下命如何にしても果たすべし。
オブリビオンのぼんやりとした光から身を隠しながら、髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)は敵の行動と攻撃のパターンを収集し分析していた。
(浅間さんの読みを頼るか。彼らの能力は「複製・反射」……ならば、だ)
 す、と浅く息を吸い込んで。鍬丸はオブリビオンが群れなしてくすくすと笑いさざめく、その中心へと飛び込んだ。ざざざと草木が擦れる音が鳴る。
「……神成る風よ、荒れ――」
 鍬丸の体を中心に、はじめはかすかな、そして徐々に力を増した風が渦を巻いた。
【神風の術】。それは本来、防御のための技だ。自らを守る代償に、移動する術を失う技。しかしこの技は、破邪の風によって守られる技でもあった。
破邪の竜巻は、それに触れる悪しきものを尽く塵へと変える……鍬丸はそれを応用し、敵陣の真っ只中で使うことで攻撃の技へと転じさせたのだ。
 たちまちのうちに近くにいたオブリビオンが幾体も塵へ還る。直撃を免れた者たちが、その光る雪洞から風を巻き起こして鍬丸と同じ様に旋風を放ってくるが――。
「無駄だ。これは防御のための技。もとより邪な攻撃や存在以外には基本的に無力。故に、俺には効かん」
 鍬丸から巻き起こる風はオブリビオンから放たれた風を巻き込み、更に強さを増す。ざざざ、ざざあと草木が揺れて音を立てる。
 侵食する骸魂のみが塵と還っていく。
一歩も動かない、否、動けない代わりに竜巻を起こし続ける鍬丸の周囲で、オブリビオンたちがか細い悲鳴を上げる。塵に還った骸魂から解放された草木が、喜ぶように音を立ててさざめく。
 長くも短い、オブリビオンとの根比べの時間の後、鍬丸はようやくゆっくりとその場から立ち上がる。
 彼が動けるようになったこと。それは、その周囲、彼の風の及ぶ範囲からオブリビオンが残らず消え尽くしたことの証明でもあった。
それでもまだ、目をやれば遠くそこここにオブリビオンのぼんやりとした光が蠢いている。
さて、次はどちらへ向かったものか。
鍬丸の足は次の一歩を踏み出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

春霞・遙
この世界の鎮魂の儀の作法は存じ上げませんので、私にできる方法で送りますね。

【悪霊祓いの呪い】で植物に宿る骸魂を祓おうとします。
骸魂の憑いていない植物には火が移らないよう気をつけます。
攻撃が効かない状態になったら炎で囲むようにしてみましょうか。ただの植物なら光合成しないときは酸素が必要なはずですし、息切れを起こさなくともユーベルコードを解いたらそのまま炎に巻かれるよりほかないでしょう。
被弾は最低限で済むよう相手の攻撃は木の杖でいなしたり躱します。

榛に灯る篝火よ、死出の旅路の灯火となって彼らを導いてあげて。



●榛の火
「生憎、この世界の鎮魂の儀の作法は存じ上げませんので……私に出来る方法で、お送りさせていただきますね?」
 春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)が手にした榛の枝に炎が灯る。
「夏至の夜を汚す悪しきものを追い払え、聖なる炎を消す水の流れを探し出せ……」
 ぱちぱちと燃える枝が尾を引きながらオブリビオンに迫る。今は草木に宿る身であるオブリビオンたちは炎を近づけられてたまらず悲鳴を上げ、全身を発光させて防御形態へと転じた。
「これは困りましたね……、では、この炎が消えるのが先か、根比べと参りましょうか?」
 ただの草木には炎が燃え移らないように繊細に気を配りながら、遙は防御形態へ転じた発光するオブリビオンたちの周囲を燃える榛の枝で囲んでいく。
炎と煙で燻されたオブリビオンたちが光熱線を放ってくる。耐え続けるよりも先に炎の出どころ――遙本体を倒してしまおうと考えた者たちだ。
襲いくる熱線を逆の手で持った木の杖でいなし、時には躱し、遙はオブリビオンたちをゆっくりと火責めにしていく。
周囲を炎に囲まれ、いつ終わるとも知れぬ火責めに耐え続けるのは、オブリビオンたちにとって拷問にも等しい時間であっただろう。もとより彼らの防御形態は完全なものではなく、ユーベルコードを解除してしまった者たちから順々に炎に巻かれ、か細い悲鳴を上げながら燃え上がり、燃え尽きていく。あとに残るは細かな灰だけだ。
「榛に灯る篝火よ、死出の旅路の灯火となって彼らを導いてあげてくださいな」
 ぱちぱち、ぱちぱち、歌うような遙の声に応えるように榛の火が音を立てる。
また一体オブリビオンが耐えきれずに炎に巻かれ、榛の火に焼かれて燃え上がった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アルジェント・ルーティロ
連携、アドリブ歓迎

鎮魂の儀。ならば送り届けましょう。
【トリニティ・エンハンス】で攻撃力を増強し炎の【属性攻撃】で【なぎ払い】ます。
迷える魂を還すには炎。
志半ばで散ってしまった事には同情致します。だから私に出来る方法でその意を伝えるまでですね。
この後を考えるにあまり時間をかけるわけにもいかないようです、早めに片をつけましょうか。
「生憎、この世界の作法は存じ上げておりません…その辺りはご容赦を」


シル・ウィンディア
草木がオブリビオン化するなんて…
何でもありだね、ここ

元は草木だから、出来るだけ手荒なことはしたくないけど
そうはいかないか…

新しい魔法じゃちょっと威力が高すぎるから…
ここは、小回りの利くこれでっ!

基本機動は【空中戦】で飛び回って【フェイント】で緩急をつけて動くよ

回避は【第六感】で動きを【見切り】動くね
回避機動は上記機動に【残像】を生み出して撹乱だね
被弾時は【オーラ防御】で水属性を付与して防御

攻撃は、上記機動を中心に二刀流の光刃剣と精霊剣で切り裂いていくよ
属性攻撃【精神】で出来るだけ傷つけない様に…

一気に押すなら…
【高速詠唱】でエレメンタルドライブ・ダークネスっ!
さて、ここからは一味違うよ? 



●炎と闇が導く先
「草木までオブリビオン化するなんて、……なんでもありだね、ここ」
「聞けば、鎮魂の儀をなさっていたとか。ならば、送り届けましょう」
 カクリヨファンタズムの荒唐無稽さに唖然とするシル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)。アルジェント・ルーティロ(Cavaliere insanguinato・f17694)はルーンの刻まれた魔法剣を抜いた。
「生憎、この世界の作法は存じ上げておりません。そのあたりはご容赦を願いたいのですが……迷える魂を還すには、やはり炎でしょうかね」
 魔法剣に炎が灯る。
鈴蘭の雪洞を淡く光らせるオブリビオンを剣が斬り裂く。剣が纏った炎はうねり、波となり、周囲のオブリビオンたちに襲いかかる。
斬撃を受け止めたオブリビオンが、炎をまとった斬撃をアルジェントの剣捌きと全く同じ様にして切り返してくる。アルジェントは静かにそれを受け止めた。
「志半ばで散ってしまったことには同情致します……無念を晴らせるまでお付き合いしたいところですが、それだけの時間はないようですので」
 ぎりぎり、ぶつかり合う互いの刃が軋んだ音を立てる。
まだ迷宮化した儀式場に取り残された人々がいて、更に行方不明となっている祭司が骸魂に飲み込まれてオブリビオンと化している可能性が非常に高い今は、ひたすらに時間が惜しい。
「あまり時間をかけるわけにもいかないようです。早めに、片をつけましょう」
 拮抗が崩れる。アルジェントの剣に籠もる重さが増し、ぶわりと燃え広がった炎がオブリビオンを飲み込んだ。

 シルは上空へと飛び上がり、二刀を携えて眼下を見据える。
生い茂る緑の中に見えるぼんやりとした光、それらすべてがオブリビオンだ。
(元は草木だから、できるだけ手荒なことはしたくないけど……そうはいかないか……)
 光の集まる中に飛び込み、二振りの剣で薙ぎ払って再び上昇する。
シルを敵として認識した地上のオブリビオンから、白い光熱線が幾条も、幾本もの針が同時に突き立つように放たれる。それをスレスレのところで躱し、時には水を纏った剣で打ち払いながら、シルは空を飛び回る。
(新しい魔法じゃちょっと威力が高すぎるから、小回りのきくこれで……!)
シルが下降する度、か細い悲鳴を上げてオブリビオンが消滅する。精神を斬り裂く魔法をかけた剣による斬撃はオブリビオンの魂を斬り裂き、そのたびに悲痛な叫びが上がった。
(……できるだけ傷つけないようにしたつもりだったけど……もしかして、精神だけを攻撃するのは、逆に苦しめて……逆効果なのかも……?)
 それならば、と、シルはさらに上空へと翔ぶ。
「ここからは……一味違うよ!」
 各個撃破から殲滅へと切り替える。闇の精霊「ダークネス」の力を纏い、光刃剣と精霊剣、闇の色へと覆われた二振りの剣を構え。
「“闇の精霊よ、我が身に宿りて……光を、切り裂け!!”」
 剣が伸びる。否、剣が纏う闇の力が膨れ上がって、剣そのものが巨大化しているように見えているだけだ。しかしその力は地上から放たれた針山のような白い光熱線を、一気に斬り払うだけの力となる!
「エレメンタルドライブ・ダークネスっっ!!」
 シル地上すれすれまで下降する。両手の剣を薙げば、膨れ上がった闇の力が一気に地上のオブリビオンたちを黒く染め上げ、斬り裂いていった――……

「みんな、やった、のかな?」
 シルがぽつりと漏らした声に、言葉の返す者が一人だけいた。アルジェントだ。
「……どうやら、そのようですね」
 もう、笑い声はどこからも聞こえない。
光が消えた。それは、オブリビオンの集団をすべて倒したことを示していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『探索し、救出せよ!』

POW   :    敵を倒して襲われてる妖怪を救出する

SPD   :    罠を解除して罠に掛かっている妖怪を救出する

WIZ   :    痕跡を辿って隠れている妖怪を救出する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


第二章 冒険『探索し、救出せよ!』

 鎮魂の儀式には、多くの妖怪たちが訪れていたのだろう。
たすけて、という声が聞こえる。すすり泣く声が聞こえる。パニックを起こしたような叫び声すらも。
それらはすべて、入り組んだ迷路の中から聞こえてくる。
草木はドーム状に天井まで覆うように生い茂り、中にいる妖怪たちを救出するには猟兵たちも中へと入る事が必要だということがわかる。
閉じ込められているのは善良な妖怪たち。彼らを傷つけることはできない。
猟兵たちは、思い思いの場所から迷宮へと侵入しはじめた。
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 第二章について
第二章の目的は暴走し急成長して絡み合った草木によって作られた迷宮を探検し、中に捕らわれている妖怪たちを救出することとなります。
迷路には決まった入り口はなく、草木をこじ開けて侵入する形となります。
※基本的にそれぞれ別の場所からの侵入となり、同時採用の場合のみ、同じ場所から入ったことになります。(お誘い合わせの上でない場合、同時採用されるかはそれぞれのプレイングとタイミング次第です)
特に記述がない限り、すでに迷宮内に侵入した状態からリプレイを書かせていただきます。

 迷路内部にオブリビオンは一切存在しません。
中に閉じ込められた妖怪はさまざまです。
妖怪の性格などによっては、自衛やパニックから落ち着かせる・説得のために戦闘が必要な場合もあります。(POWの「敵」にあたります)
※どの能力値で判定するかは基本的にプレイングの内容から判断させていただきます
(プレイングから戦闘が発生したと判断される場合は基本的にPOWのものとして扱わせていただきます)が、プレイング内容と大きな齟齬が出なければ「WIZで判定」など書いておいてくださって構いません。
あくまでも第二章は「探索と救出」がメインとなっております。
必ず戦闘が発生する、妖怪全員が敵として襲ってくるわけではないことにご注意ください。

迷宮の壁や天井をユーベルコードや技能・武器などでまるごとぶち抜いて迷宮自体を破壊する方法はとれません。(出来なくはありませんが、中にいる妖怪に確実に被害が出ます)
迷路を探索して、閉じ込められた妖怪の保護を行う形となります。

プレイングには「どのように迷路を攻略するか、どのような妖怪に出会ってどのように保護するか」を書いて頂く形となります。
春霞・遙
無理やり壁を壊して進んで捕らわれている妖怪さん方を傷つけてしまうのはできれば避けたいので、狭い隙間を縫ってゆける【影の追跡者】を放って探そうと思います。
シャドウチェイサーなら相手が泣き虫の子供の妖怪なんかでも姿を見られて泣かせることが少ないのも良いですね。

ルート上の安全が確保できたら通れないところのみ【紙片鋭刃】で切り開いて進み、見つけた方を確保して外へ出ます。
救出した妖怪が泣いていたり怖がっているようなら折り紙で「パフォーマンス」を披露して「慰め」ようとおもいます。



●こどものおいしゃさん
 すでに日も傾きかけた中、遙はゆっくりと草木でできた緑の迷路を進んでいった。
(一刻も早く助けてあげたいのはやまやまですが……無理矢理壁を壊して進んでは捕らわれている妖怪さん方を傷つけてしまいますからね……)
 行き止まりで戻ることなく立ち止まった遙の影から“追跡者”が立ち上る。
“追跡者”は枝と枝の細い隙間に入り込み、どんどんと進んでゆく。
五感を共有する遙には、追跡者の視界に映るものが見える――視覚のみならず、聴覚も。
「ううっ、ぐす……ひっく……」
 小さな鳴き声を聞き届ける。
その方向へ追跡者を遣わせてみれば、茂みと茂みの間にまるい獣の耳と尻尾を生やした小さな少年が懸命に隠れているのが遙の視界にも映し出されて見えた。
「これは、早く迎えに行ってあげないと」
 迷路を抜けてゆく遙の足取りが自然、早くなる。
はやく、はやく。あの子を助けてあげなければ。
ユーベルコードで茂みを切り裂こうとも考えたが、ユーベルコードは2つ同時に使うことは出来ない。既に影の追跡者を召喚していた遙には新たなユーベルコードを使うことは出来ず、場所を覚えさせた追跡者との視界の共有を駆使して、逸る心を落ち着かせながら迷路を抜けることが精一杯だ。
そして遙は、ようやくその場所へたどり着く。
「おけがは、ありませんか?」
 遙の声に、うずくまっていた少年がばっと顔を上げる。その目に涙を一杯に溜めた妖怪の少年は、知らない大人を目の前にして身を固くした。
「大丈夫、だいじょうぶだよ。私はきみを助けに来たんだ」
 わたしは、こどものおいしゃさんだからね――
「おいしゃさん……? ぼく、どこもけが、してないよ」
「それはよかった。さあ、早くここから外に出よう。一緒においで」
 折り紙の風車を手渡せば、少年は差し出した遙の手をおずおずと、けれどしっかりと握り返してくる。
「おかあさんとおとうさんと、いっしょにきたんだ。だけど、ふたりともみえなくなっちゃって……」
「……そう、さびしかったね、がんばったね、えらいね」
「うん、ぼく、がんばった」
 ぎゅ、と握りしめてくる手は少しだけ震えている。
ああ、早く、この子を両親と再会させてあげなければ――。
出口はすぐそこ。遙は少年の手を、強く安心させるように握り返した。

成功 🔵​🔵​🔴​

アルジェント・ルーティロ
アドリブ歓迎

草木で作られた迷路、ですね。
まあ、とりあえずは声のする方へ。相手が人間ではないのは気楽ですね、容姿に関して何か言われることもないですし。

探し方は足跡、通路内の壁などの痕跡を辿って【追跡】します。
どんな相手がいるのか見当もつきませんがこの状況ですし説得というか【言いくるめ】が必要かもしれませんね。
「……落ち着きましょう、必ず外へは出られます」
罠等がありましたら出来る限り破壊しておこうと思います。
通りがかった後にかかられたら大変ですので。



●彼女にとっての騎士
 それは、草の擦れ合う音か。あるいは、草木の間を通り抜けた風が発した音か。
けれどもしかするとそれは、助けを求める誰かの声かもしれない。
アルジェントは迷路の中で立ち止まり、耳をそばだてる。先程はあちらから聞こえてきたそれは、今度は全く違う方向から聞こえてくるようだ。
 道なりに進み、分かれ道では音を聞き分け、あるいは地面を、壁を見て、誰かが通った痕跡の有る方へ。行き止まりに来てはまた先の分かれ道まで戻る。
迷路を進むというのはなかなかに大変なものだと息をつきながら、それでもアルジェントは安堵していた。
(相手が人間でない、というのは気楽ですね。この容姿に関して何かを言われることもないですし――……)
 銀色の髪、赤い瞳、血の透けるような白い肌に、とがった耳。ダンピールらしいその姿かたちに怯えられることも、石を投げられるようなこともないのだろう、この世界では。
 そんなことを考えながら歩いていたアルジェントは、つま先に引っかかる感触を得て足元を見下ろした。
「おっと、これは……危険、ですね」
 茨のような棘を持つ植物が絡み合って、トラバサミのような罠が作り出されている。
既に誰かが通ったのか、そこには血の染みのような汚れが付着していて。
これ以上怪我人を増やしてはいけないと、アルジェントは緑の罠を剣で切り落とした。
どうやら此処から先の迷路を構成する草木は細く、棘のある植物が多く含まれているようだ。そして、ここにはそこを通ったであろう誰かの痕跡が残されている――
アルジェントは躊躇いなく歩き出す。そちらから聞こえてくる音が、誰かの助けを求める声だと信じて。
そうして緑の中を歩き続けた行き止まりで彼が出会ったのは、ワンピースを赤い血で汚した、長く長く伸びた黒髪で顔を隠した少女。
「あなた、誰?」
 少女はアルジェントに問う。その声は怯えているように震えていて。
名乗ろうとした矢先、彼女はそれを遮るように口を開く。
「わたし、わたしじゃないのよ、わたしは何もしてないの。わたしがやったんじゃないの。そうじゃなくて、ねえ、一体何がどうなっちゃったの? わたしは鎮魂の儀式を見に来ただけで、こんなことになるなんて、あああの宮司の子は大丈夫かしら、あなた見た? 送るはずだった骸魂が、たくさん、色んなものを飲み込んで、わたしこんな所に閉じ込められちゃって、この屋根じゃあ飛ぶことも出来ないし足は痛いし、でも、でも信じて、これはわたしがやったんじゃないのよ、わたし……」
「――落ち着いて」
 アルジェントはぐっと少女の肩を抱き寄せた。混乱しているのだろう、その背中をゆっくりとさすって。
「落ち着きましょう。大丈夫です。必ず外へは出られます。あなたがやったのではないと、私にはちゃんと分かっていますよ」
 アルジェントに促されるままに深く息を吸い、吐いて、少女は抱かれた肩を震わせる。
「……怖かった」
「はい」
「突然いろんな事が起こったから、わたし、何かしちゃったんじゃないかって、わたし、不幸を呼んだりする……そういう妖怪だから、もしかしたらって、でも、」
「ええ、あなたのせいではありません。誰も、あなたを責めはしませんよ」
「ここから出られなかったらどうしようって、すごく心細かったの……!」
「大丈夫。わたしがあなたを、出口までお連れします」
 少女を抱き上げる。少女はきゃあ、と声を上げてアルジェントにしがみつく。
「こ、ここここ、これってお姫様抱っこ、えっやだわたし生きてるときだってこんなことされたことない……!」
 黒髪の下で顔を真っ赤に染める少女に、果たして彼が気づいたか。
「さあ、早くここを出ましょう」
 幽霊の少女を抱いたアルジェントは、まっすぐに自分が入ってきた迷宮の出口へと歩き始めた――。

成功 🔵​🔵​🔴​

髪塚・鍬丸
さて、助けるか
救出に専念する事で【忍術】発動。洞察、回避能力であらゆる罠の攻撃を無効化

「獣の妖怪」達の鳴き声を聞き取る。彼等からいくか
【動物と話す】要領で遠吠えを放つ。返事があれば【聞き耳】を凝らし【情報収集】
「技能」を、鬼神の如き「忍術」に昇華させるUC。迷宮の構造を音の反響で詳しく把握する、忍法『山彦の術』

彼らの元へ辿り着いたら罠の解除だ
待たせたな、暫く動かないでくれ
【罠使い】で罠の構造を【見切る】
下手に外そうとすると締め上げる類の罠なら、要所にクサビの様に手裏剣を刺し働きを封じ、忍者刀「双身斬刀」の高周波切断能力で妖怪を傷付けない様慎重に罠を切り裂き分解
もう大丈夫だ。他の仲間達も任せとけ



●彼は己を平凡と称するが
「ォォオオオオオン――」
 ――誰か、ここにいるのか。この声が聞こえはしないか。
鍬丸の喉から響き渡った遠吠えに、緑の迷宮のはるか向こうから応答があった。
『ウォォォオオオン――』
 ――これは、懐かしい言葉だ。誰ぞ知らぬが、爺が一匹、ここにおる。
――動けるか?
――難しいな。足を縛られてしもうておる。いや、稚拙な罠よ、十ばかり若ければ噛み砕いて壊していただろうが、まんまと嵌ってしまったわ。
――わかった。今から行く。
「さて、それじゃあ……助けるか」
 迷宮の何処かにいるであろう獣の妖怪とのやり取りのあと、鍬丸はその場から立ち上がる。歩みに迷いはない。
 先の遠吠えは遠方で足止めされていた妖怪との会話を果たしただけでなく、音の反響によって迷宮内の構造を細密に把握する役割をも果たしていた。
 これぞ、忍法「山彦の術」だ。

 迷宮をまっすぐ抜けた鍬丸の目に、青毛の狼が罠にかかっているのが見えた。よく見れば、その尻尾は根本から二つに分かれている。
『ほう、ほう、同属かと思えば、人間であったか。驚いた』
「すまないな。騙すつもりはなかったんだが」
『なに、こちらが勝手に勘違いしたまでよ』
 涼しい顔で話す狼の前足は、彼が話したとおり木の根の絡み合ったような罠に締め付けられている。根に棘が生えているのか、自力で抜けるのは困難なようであった。
「こいつは難だな。下手に外そうとすると締め上げてくる類の罠だ。こんなもんが植物だけで出来るなんてな……ちょっと待っていてくれ」
『うむ、爺は気だけは長いからな』
 絡み合う根の罠は狼の前足を捉えながら、まるで生き物のように伸び縮みしては彼を苛む。鍬丸は手裏剣を楔のように要所に差し込むと、懐から忍者刀を取り出した。
 忍びの技を異世界の科学で再現した高周波の刃が、確かな切れ味と感触を持って罠を斬り裂いていく。
「もう大丈夫だぜ、爺さん」
 ようやく解放された狼の前足に、鍬丸は軟膏を塗り、清潔な布を巻く。
『恩に着る』
「ところで、他に囚われている奴の心当たりはないか? そいつらも助けたいんだ」
『……ふぅむ……ちらりと見ただけだが、あちらの方に歩いていく影があったか』
「爺さんは……俺と一緒に来るか? 足はどうだ」
『問題ない、薬のおかげで歩くのに不自由せんわ。この爺を共連れにしていけ、その方が儂も迷わずにすむでの』
「そうか。……じゃあ、行こうか」
 そう言うと、鍬丸は立ち上がる。
狼もそれに倣う。一人と一匹は、迷宮を更に奥へと進んでいった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シル・ウィンディア
迷路はあんまり得意じゃないんだよなぁ…
迷っちゃうし

とはいえ、中に囚われている人を見捨てるわけにはいかないしね
さて、どうするかな

むやみやたらに動いても仕方ないから
耳を澄まして、物音や声を聞き逃さない様に…

物音や声が聞こえたらそちらに進んでいくよ

…な、何だろ、このパワフルな妖怪さんは?
えーと、落ち着いてー
わたしは、あなたを助けに来たんだよ?
って、わわっ!危ないからっ!振り回さないでっ!!

もう、聞き分けない子は…

ちょっと、お仕置きだね(にっこり)

腕力は強そうだから…
ここは、腕をとって抑えるか

【高速詠唱】でヘキサドライブ・ブーストで自己強化

相手の攻撃を腕一本で止めて抑えるね

…ね、お話しよ?(にっこり)



●時には力任せに
 聞こえてくるのは、泣き声の多重奏。
目の前に立ちふさがるのは、巨大な生きている岩壁。
(ううん、どうしよう……)
 シルは眉尻を下げ、困ったとため息を一つこぼした。

絡み合う蔦を斬り裂いて入り込んだはいいものの、シルも迷路は得意ではない。
(とはいえ、中に囚われてる人を見捨てるわけにもいかないしね……)
「さて、どうするかな」
 むやみやたらに動くのは良くないとわかっている。慣れない、しかも苦手だとわかっている迷路の中でそんなことをすれば、シル自身もまた救助を待つ身となってしまいかねない。
自ら作った入り口に立ち、あたりの音を聞き逃さないよう耳を済ませる。
――かすかに聞こえてきた泣き声を、尖った耳が聞き届ける。
「ええと……こっち、かな」
 行く手を塞ぐ緑の壁を、幾度も手にした光の刃で切り裂いて。シルは迷路をほとんど無視するかのように声のする方向へ真っすぐ進んでいく。
 しばしそれを繰り返した先、突然目の前に現れたのは岩の壁だった。
『なにもんだ、おめえさ』
 壁が喋った事によって、それが障害物でなく妖怪であることを覚る。
「ずっと泣いてたのは、あなた?」
『オラは泣かねぇ。泣くほど弱くねえ。泣いてたのはこいつらだ』
 壁の妖怪の背後に、デフォルメされた動物のような妖怪の子どもたちが数匹固まっていて。先程から聞こえていた泣き声の主は彼らなのだと知る。。
「よかった、わたし、助けに……」
『オラは弱くねえ、だから弱いもんいじめするなら容赦しねえぞ!』
「わ、わっ」
 敵意のこもった声で壁の妖怪がタックルを仕掛けてくる。どうやらシルのことを脅威と見なしているらしい。
(……もう、なんてパワフルな妖怪さんなの!)
「えーと、落ち着いて、わたしは、あなた達を助けに来たんだよ!?」
『そげなこと言って、オラぁだまされねえぞ!』
「わわっ!あぶない、危ないから!」
 岩石でできた腕がシルのいるすぐ横の草の壁を破る。とっさに飛び退いたシルのいた場所に、張り手が飛んでくる。
岩の妖怪から悪意は感じられない。後ろの子どもたちを守ろうとしているのはわかるのだが、迷路の中で緊張を強いられたのだろうか、頭に血が上っているようで、てんで話にならないのだ。
「もう、聞き分けない子は……ちょっと、お仕置きだね?」
 シルの唇がにっこりと弧を描いた。
「“六芒に集いし精霊たちよ――”」
『手出しはさせねえ、させねえぞ!!』
 シルの背中に二対の光の翼が生える。
猛スピードで突っ込んでくる岩の拳を腕一本でがっしりととらえ――妖怪の体が浮いた。
『お、おおおおお!?』
 ドスーン、という重い音がして、茂みの中に岩石の体が投げ出される。
「もう……ね? お話しよ?」
 笑顔のままのシル。古来より、怒らせたお姉ちゃんは怖いものだと話が決まっている。
と――。
『い、イワねえちゃんを、いじめないでけれ!』
『ねえちゃんは悪くねえだよ!』
『わああん!!』
 小さな妖怪たちがシルの回りに集まって、泣きながら壁の妖怪を庇い始める。
中には泣きながらシルの髪を引っ張ってくる子どももいる始末だ。
「もう……だから、わたしはあなたたちを助けに来たんだってば――!!」
 叫ぶシル。
彼女の言葉が聞き届けられるのは、騒ぎが収まるのを待ってからになりそうだった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

浅間・墨
何時もの癖ですが周囲の警戒をしながら進みます。
出会った妖さんに敵意がない場合はそのままで。
好意的な妖さんでも…私は緊張して上手く話せません。
けれど頑張って話してみます。はい。頑張ります。
話は…私が通ってきた道を教えるくらいですが。

もし。もし襲ってくる妖さんがいたら…。
この場合は【香呪『白梅香』】を使用します。
独特な匂いですがそんなにキツイ匂いではないはず…。
交渉も説得も苦手な私なので香で眠ってもらいます。
眠った妖さんは一人ずつ私が運んで救出します。
抱きかかえられる妖さんは抱きかかえて運びます。
私よりも体格がある方は…背負って運ぼうと思います。
…寝かせたのは…マズかったでしょうか…。重い…です。



●人見知りと引っ込み思案
 緑の迷宮の中を、墨は歩いていく。
予知によりオブリビオンはいないとわかっていても、警戒を解かないのは彼女の癖のようなものだ。
曲がり角は枝を折って標にし、行き止まりは刃で伐り払って、道を強引に作りながら、勘を頼りに進む。
けれど彼女には、懸念がひとつ。
(……ちゃんと妖さんと話をすることができるでしょうか)
 彼女は自分の声が嫌いだ。嫌悪している、と言い換えてもいい。
それ故に声を極力出さずに生活してきた彼女は、話し上手とはとても言えない。
出会った妖怪が好意的であっても、緊張して上手く話せる自信はとてもなかった。
(それでも、頑張らないと……)
 その考えに頭がいっぱいになっていたのか。そんな筈はない。警戒を解くことはなかった。それでも墨は、背後から話しかけられた。
『難儀なこった。お嬢ちゃん、そんなんでおれたちを助けようとしに来てくれたのかい』
 はっとして振り向けば、狒狒のような猿のような、そんな姿をした妖怪が草に体を埋め込まれている。
「……ぁ、の、……た、しは……」
『ああ、いい、いい。むつかしいなら無理に喋らなくても平気さ。おれは覚なんでね、お嬢ちゃんの考えてることは自然とわからぁ』
 覚――サトリ。その名前を持った妖怪は、“他人の考えを読み取る”という能力を持つ。
墨がそれを知っていたかどうか、けれどわかるのは、喋らなくても話が通じるということだ。
『早速だが、この通り罠にかかっちまった。おれを助け出してくれたら、この先少しだけ通訳をつとめてやってもいいぜ』
 ぺこり、と首肯した墨は、サトリの両手両足に絡みつく蔓のような植物を刀で伐り裂く。
『ありがとうよ。……さあ、行くとしようや。あっちの方に助けを必要としているやつらがいるのさ。それとも、おれは信用ならねえかい?』
「…………」
『なぁんて、な!おれは心が読める。そんな事を考えてないことくらいお見通しさぁ』
 幸い捕らわれていただけで怪我のなかったサトリは元気な様子で、墨を先導していく。
『こっちだ……おっと!』
 サトリが突き出した顔を獣の爪が掠めていく。さっと防御態勢に入る墨。
草木の茂る先にいたのは、デフォルメされた姿を持つ熊の親子――母子のようだった。
『おい、落ち着きなって、この娘さんはあんたらを助けに……ああ!全く!』
 すまねえな、とサトリは墨に向かって謝罪を述べた。
『あのおっかさん、頭に血が上っちまってるようだ。なにせ熊だからなあ、子どもを抱えた母熊が相手じゃあ、おれの話も通じやしねえ』
「……だい、……ぶ、です」
『うん? 大丈夫? 何か秘策が有るのかい、……っと、こいつぁ……』
 匂い立つ独特な、芳しい香り。墨から発せられる香呪、白梅香があたりに広がる。
香りに当てられた母熊の妖はたちまちに眠りこけ、後ろで守られていた子熊妖怪もすうすうと寝息を立てている。子熊は足に傷を追っていたようだったが、香の力ですぐに傷は癒えていった。
『こりゃあすごいもんだ。で、お嬢ちゃん、二人を安全な場所まで運ぼうってのかい?』
 頷いた墨に、サトリは手伝ってやるよ、と。子熊を抱く。
ふうふうと息を切らしながら母熊妖怪を背負って歩く墨。
『心を読まなくてもわかるぜ、お嬢ちゃん、重いって今考えてんだろう? 寝かせたのはちとまずかったかもしれねえなあ、ははは!』
「……重、ぃ、……です……」
 墨の言葉に、からからと軽やかに。妖怪は笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『フェニックスドラゴン』

POW   :    不死鳥再臨
自身が戦闘で瀕死になると【羽が燃え上がり、炎の中から無傷の自分】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    フェニックス・レイ
レベル分の1秒で【灼熱の光線】を発射できる。
WIZ   :    不死鳥の尾
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【炎の羽】で包囲攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「……く、うぅっ……ああ、ああああ……!
 鎮魂の儀式の祭司である龍神の少女は、耐えていた。
今ここに至るまで、己を飲み込み蝕んでいる骸魂を自由にはしないと、耐え続けていた。
けれど――いや、だからこそだろうか――
 草木の迷宮に置き去りにされた妖怪たちをすべて助け出した猟兵たちが少女のもとまで辿り着いたとき。
彼女の忍耐は限界に達した。
少女の瞳の色が変わる。取り憑いた不死鳥の骸魂に乗っ取られた証拠であった。
『ああ……あ、うああああ!!』
 逃げて、と少女の唇が動く。同時に骸魂の意志が猟兵たちに伝わってくる。
――もっと、もっと、生きたかった――
 炎が翼のごとく、否、翼として羽ばたいて、猟兵たちへと向かって火球が放たれる。
少女を自由にすべく。また、骸魂をも解放すべく。
猟兵たちの最後の戦いがはじまろうとしていた。
========================================
『フェニックスドラゴン』が現れました。
 戦場は儀式場の中心。祭儀を執り行う広場です。
大きく開かれた場所で、戦闘を邪魔するものは何もありません。

 竜神の少女はフェニックスの骸魂に乗っ取られ、自分では身動きの取れない状態です。
彼女を奮起させる言葉などをかけてながら、彼女を救い出すつもりで戦ってください。
----------------------------------------
 ※カクリヨファンタズムのオブリビオンは「骸魂が妖怪(あるいは植物など)を飲み込んで変身したもの」となっており、飲み込まれた妖怪はオブリビオンを倒すことで無事に救出することが出来ます。
 また、骸魂に対しても慰めの言葉などをかけるとプレイングボーナスを得ることが可能です。
----------------------------------------
 上記の通り、骸魂に対しても何か言葉があるとボーナスがあります。
フェニックスは悪意を持って動いているわけではなく、単純な『まだ生きていたかった』という思いで少女を乗っ取っています。
(そのため、「あの世に送る」というような言葉だけでは逆効果です。)
飲み込まれているのは妖怪であり、倒せば少女は救出可能です。
殺してしまうことを心配することはありません。
妖怪なので多少傷ついても平気なので気にしないで大丈夫です。
ただ、言葉をかけることは大切です。その上で、戦う形になります。
プレイングは「どのような言葉をかけた上で戦うか」を書いていただけると良いでしょう。

第二章で救出した妖怪は安全な所に避難していますが、声かけとして使いたい場合、連れてきていても構いません。
春霞・遙
死の運命を告げられた人はその事実を否定し、怒り、神にすがり、絶望した先にようやく受け入れられる。
なんて有名な著書にありますけれど、受容に至らないまま亡くなる人はきっと多いですよね。

残念ながら生きている私には残される側のことしか分かりません。
既に亡くなったあなたを受け入れることはできないけれど、その感情だけはみんなに伝えますから。
どうか安らかに眠ってください。

拳銃と符術で戦います。
【竜巻導眠符】で動きを鈍らせ、出来るだけ痛みのないよう急所を狙おうとします。
不死鳥の攻撃は符や射撃で穴を開けて、致命傷にならない程度に回避します。



●医者であるがゆえに
 ――死の運命を告げられし者は。
まず、その事実を否定する。
そして、なぜ自分だけがと怒る。
次に、神に縋り。
その次に絶望し――絶望の果てに、ようやくその運命を、受け入れる事ができる。
(なんて、有名な著書にありますけれど。受容に至らないまま亡くなる人は、きっと、とても多いのでしょうね……)
 遙は拳銃を構え。荒れ狂う不死鳥とそれに憑依された竜神の少女を見る。
不死鳥から伝わる思いは今持って一つ。
――死にたくなかった、もっと生きていたかった――
不死と名を冠せられる身であっても、それでも逃れられなかった死を、受け入れられずに荒れ狂う、いっそ哀れささえ感じるがむしゃらな羽撃き。
それをここに至るまで全霊で抑えてきた龍神の少女は、精魂尽き果ててぐったりとしているように見える。
それでも少女は生きていて。不死鳥は死んでしまっている。
医師であるならば――医師である遙には――優先するべきは、何をおいてもまだ生きている少女なのだ。
「残念ながら、私は生きている側の存在。生きている者のための医師。残される側のことしか、わかりません」
 不死鳥が羽撃き、炎を纏って燃え盛る羽根が幾何学的な軌道を描きながら遥に襲いくる。
――なぜ、どうして――
それはなぜ痛みを理解してくれない、なぜ救ってくれないのかと怒りをぶつけてきているようでもあった。
遙は手にした札に印を書き入れる。幾枚も綴られた札が、どこからか吹いてきた風に巻かれて舞い上がる。翻る。それは強力な眠りの符。
「既に亡くなってしまったあなたを、受け入れることはできません。できないけれど――その感情だけは、みんなに伝えますから」
――死にたくなかった、生きていたかった、もっと生きていたかった!!
遙の手の中の拳銃から打ち出された弾丸が、複雑な軌道で遙を囲む炎に孔を開ける、その僅かな孔を潜り抜け、風に乗って呪符が不死鳥に張り付けば、眠りに誘われる不死鳥の動きが鈍くなる。
 叶うならば、苦しみなく眠れるように。
出来る限り、痛みの無いように。
そう願いながら撃ち出された弾丸が、不死鳥を貫いた。
「どうか……安らかに眠ってください」

成功 🔵​🔵​🔴​

シル・ウィンディア
龍神の少女には
目一杯、その子を抑えていてくれたんだね
でも、あと少し、ほんの少しだけ力を貸して?
わたし達が解き放ってあげるからっ!
だから、頑張ってっ!

骸魂には

生きたかった
何かしたいことがあったの?
…それは、生きている人ができること?
あなたの代わりにできることなら
わたし達が代わりにしてあげるよ

だから…
その子を離してあげて?

言葉は伝えた
後は、解放してあげるっ!

【高速詠唱】と【多重詠唱】で水属性の【属性攻撃】を付与した
【オーラ防御】で攻撃を防いで

【魔力溜め】で魔力増幅
【限界突破】の【全力魔法】でありったけの魔力を総動員

…一撃で決めるよ
ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラストッ!
わたしのとっておきだーっ!



●命(ねがい)の最後(はて)に
「ずっと今まで、目一杯、その子を抑えてくれていたんだね……」
 不死鳥の骸魂に飲み込まれた少女にシルは語りかける。
少女の目は虚ろに開き、ぼんやりとした光を湛えている。
けれどシルは聞こえていると信じて彼女に語りかける――事実、聞こえている。聞こえているだろう。その筈だ。少女の指がピクリと動き、ぎゅっと拳が握られる。
「でも……あともうちょっと、ほんの少しだけ、力を貸して? わたし達が、解き放ってあげるからっ……!だから、頑張ってっ!」
 シルの呼びかけに、のろのろと少女は瞼を押し上げる。
今まで骸魂を抑え込む為に全霊の力を注いできた彼女にとっては、今や指一本自分の意志で動かすのも辛く億劫なことだろう。けれど少女は顔を上げ、シルの目を真っ直ぐに見て、
ゆっくりと頷いた。
「……ありがとう!」
 それで十分だ。シルはもう一度、今度は不死鳥へと向き直った。
複雑な紋様を描きながら、炎を纏う羽根がシルへと降り注いでくる。
「『あなた』は生きたかった……生きて、何かしたいことがあったの? ……それは、生きている人ができること?」
 魔法で幾重にも自らの周囲に水の膜を張り、降り注ぐ羽根――炎を受け止める。
「あなたの代わりにできることなら、わたし達が代わりにしてあげるよ……!だから、その子を離してあげて……っ!」
 不死鳥が大きく羽ばたいた。その意志が、炎とともに周囲へと、シルへと伝わってくる。
 ――生きたかった――
 ――もっと、生きたかった――
 ――この世界に辿り着くことの出来た他の妖怪たちのように――
 ――生き残って、生を謳歌したかった――!!
 ああ、とシルは嘆息した。唇から息が漏れる。
それは、出来ない。もう、その願いは。
この世界の生とは当たり前のように与えられるものではなく。生きる場所の亡くなった異世界から移動してきた、世界間の移動に耐えきった者たちが勝ち取り、その末裔が与えられたもの。
不死鳥はその生存競争に負けたのだ。既に、負けているのだ。それでもこの世界の妖怪たちは彼らのような者たちを「敗者」ではなく偲び、このように鎮魂の儀式が開いている。
生を謳歌したかった。それは、生き返りたいと願っているのと同じこと。
それを叶えることは、不死鳥を真の意味で「生き返らせる」事に他ならない。
シルたちには、どうしても叶えられない望みだ。
……シルだって、既に亡き人と会いたいと願ったことがある。
その為ならば他の誰かの同じ望みを断ち切ってしまってもいいと思ったことがある。
それは叶わなかった。それは叶う願いではなかった。だからわかる。だから知っている。
不死鳥の望みは、未練は叶わない。異世界で生きていけなくなって、世界を移動するために羽撃き続けた願いの果てに命を落として。その瞬間に、永遠に縛られたままだ。
「……ごめんね」
 言葉は伝えた。シルが不死鳥に言えるのは、もはやそれだけだった。
だから、後は――解放するだけだ。捕らわれている少女と、捕らえながら囚われている不死鳥、その両方を。
「“闇夜を照らす、光よ”“命育む、水よ”“悠久を舞う、風よ”……」
 六芒星の中に立つ。力ある言葉を一つ一つ紡ぐたびに、シルの中に魔力が満ち溢れる。
レールキャノンを構える手が震える。末端の血管が破れる。
限界を超えてうねる魔力の大きさに、細胞が耐えきれていないのだ。
薄く赤く色づいた涙が、左目からこぼれた。
そして、長い詠唱の時間が終わる。
「“六芒に集いて、全てを撃ち抜きし力となれ”――」
(……一撃で、決める!)
 ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト。
増幅され収束された一条の光、魔砲が不死鳥へと叩き込まれる。
 ――ああ――
 ――生きたかった、生きたかった、生きたかった――
 ――ただ、それだけなのに――
 ――どうして――
 直撃を食らった悲痛な不死鳥の叫びに、シルは強く手を握りしめる。
(……ごめんね)
 その願いを、叶えることはできない。

成功 🔵​🔵​🔴​

アルジェント・ルーティロ
助ける余地があるのでしたら迷うことは無いですね。
貴女が頑張ってくれたおかげで間に合いました、必ず助けます。

不死鳥の方も…本来の姿を考えれば現状は本意ではないでしょう。
生きたいという気持ち、理解はできます。だから…一度還り戻ってきなさい。
私達は…少なくとも私は、忘れず貴方を待ちましょう。
今度は仲間として出会えることを祈っています…私の祈りが通じるならば、ですが。

…真の姿に近くなったことで髪は伸び纏めていたリボンは外れ、、目の色はより血に近付いて…吸血鬼らしく、となるのでしょうか。
嬉しくはないですが。
【黒風鎧装】で強化した力で【闇夜虹】で斬りつけます。
「一度、休憩の時間ですね」

アドリブ連携歓迎



●忌むべきものへと変じても
 儀式上に駆けつけたとき、不死鳥の骸魂に飲み込まれ息も絶え絶えな少女の姿を見て、アルジェントの胸の中に浮かんだのはそれでも安心だった。
ずっと己を乗っ取ろうとする骸魂を抑えようと全霊を注ぎ続けて、既に動くことも満足にできない、それでもまだ――生きている。
助ける余地がある。そうであるのならば、彼が迷うことはない。
アルジェントは不死鳥の中に飲み込まれた少女へと一礼して告げた。
「貴女が頑張ってくれたおかげで間に合いました……必ず助けます」
 だからそれまで、後しばし。持ちこたえてください。
アルジェントの姿が変わっていく――それは、彼の本質、真の姿に近づいたもの。
白銀の髪は長く伸び、それを結わえていたリボンがはらりと地面に落ちる。瞳はより血の色に近いものとなり……もとより白かった肌が、さらに透き通るように白く。
思い浮かべる吸血鬼により近い姿を、アルジェント自身は決して望んではいない。けれど。
けれど、この姿が――より強力な力を彼に与えるのも、事実だ。
 不死鳥が羽ばたく。熱された空気がアルジェントの肌を炙った。
その熱と炎から守ろうとするかのように、漆黒色の風が彼を包み込む。
アルジェントは暗夜虹を握りしめた。その名の通り闇夜に掛かる虹のような波紋を持つ、黒い鉄で打たれた刀。
傷つけるための刃を手にして、彼は不死鳥へと語りかける。
「あなたの本来の姿を考えるならば、現状は決して本意ではないでしょう」
 不死――再生の象徴である筈のその身が死に囚われ、骸魂となってしまっている事など。
不死鳥が鳴く。啼く。
 ――生きたかった――
 ――ただ、生きたかった――
 ――他の妖怪たちのように、自分も生きて、その生を謳歌したかった――
「……その想い、その未練も理解は出来ます。だから……一度還り戻ってきなさい」
 そう、不死鳥は死と再生を象徴する存在であるのだから。
死に囚われ、生にしがみつくのではなく、死してもまた再び生に返り咲いてこその不死鳥。
その為には、死を一度受け入れなければならない。
それを拒むのならば……猟兵の手で、死を、執行しなければならない。
「私達は。……少なくとも私は。いつか還ってくる貴方を、忘れず待ちましょう。その時こそ、今度は仲間として出会えることを祈っています……私の祈りが通じるのならば、ですが」
 漆黒の旋風が浴びせかけられる炎を防ぎ、暗夜虹でそれを斬り裂いて。アルジェントの剣が、不死鳥を貫く。炎はますます燃え盛り、その中からもう一度不死鳥が起き上がって啼く。生きたかったと、生きたいと哮えながら、骸魂として死に囚われたままで。
 ――死にたくない、死にたくない、まだ生きたい――
 ――生きたかった、生きたかった、まだ死にたくない――
「いいえ――あなたは。もう、死んでいるのです。だから……一度眠りましょう。それから新しい生を始めましょう」
 私は、必ず貴方を忘れることなく、待ち続けますから。
アルジェントの手にした暗夜虹が、不死鳥の体を斬り裂いた。
炎が赤く、血潮のごとくに燃え盛る。
「一度、休憩の時間です」

成功 🔵​🔵​🔴​

髪塚・鍬丸
仲間は全員助け出したぜ
後はお前さんだけだ、俺達に任せてくれ
龍神に語りかける
狼の旦那にも付き合って貰おう。一声頼むよ

【飯綱の術】。無数の「風魔手裏剣」を展開
超音速で回転する【衝撃波】。熱は吹き散らされ、光は屈折し逸らされる
不死鳥の尾を【武器受け】、旦那も【庇う】

死して屍拾う者無し
忍の心得。死は絶対だ。言い訳も慰めも不要
心得ているからこそ、無念は痛いほど分かるよ
俺がお前さんだったら同じ様に死んでも足掻くだろうさ
だが、その体はこいつらの仲間のものなんだ。返してやってくれないか。
真摯に躯魂に声をかける

全風魔手裏剣で包囲攻撃。衝撃波の浸透ダメージで【貫通攻撃】
なるべく体に外傷をつけずにダメージを与えるよ


浅間・墨
無念さは…ひしひしと私の肌に伝わってきます。
幾つか過った慰めの言葉が心に届くかどうか…。
かえって逆の結果になってしまうかも…しれない…。
そんな怖いことを考えてしまって…上手く話せません。
こんな私は聞くことしかできない気がします。なので。
「…そ、…の辛…悲…さ…私にぶつけ…くだ…い…」

炎にどれだけ影響を与えられるかわかりませんが。
【黄泉送り『彼岸花』】で葬ろうと思います。
(早業、破魔、鎧砕き、多重詠唱、限界突破使用)
多少の火傷や装束の焦げは無視して攻めます。
相手の攻撃は見切りと第六感で極力回避します。
困難な場合は致命傷は避けるように身体を動かします。
今回は特に他の猟兵さんとの連携や協力必須です。



●夜を裂く風、夜に咲く花
 ――生きたい――
 ――生きたかった――
 ――わたしも、この世界で、皆のように生を、謳歌したかった――
不死鳥が鳴く。
一鳴きごと、その翼が羽ばたくごとに、熱気が墨のもとまで押し寄せてくる。
その無念さも、また。その熱と同様に、ひしひしと墨の肌で感じることができる。
いくつもいくつも、墨の頭の中に言葉が過る。この哀れな不死鳥へかける言葉を。
けれどどうしても、その唇は開かない。
墨の中の恐れ――慰めの言葉が、逆の効果になってしまうことを恐れる気持ちが蓋をして、上手く話すことが出来ない。
(こんな私には、聞くことしか出来ない気がします……)
 だから彼女は慰めの言葉の代わりに、ただ一言を口にした。
「……そ、……の辛……悲……さ……私にぶつけ……くだ……い……」
 痛みをその身で受け止める覚悟をした墨の隣で、鍬丸は口を開く。
「――死して屍、拾う者無し。忍の心得だ。……死は、絶対だ」
 それは拒絶の言葉に聞こえたのだろう、不死鳥は鳴き声を上げて羽ばたく。
炎が灼熱の光線となって降り注ぐ。それを断ち斬った、銀色の閃き。
墨の想いが、信じる想いの強さが生み出した、森羅万象――光さえも斬り裂く刃。それは彼女の手の中で、生まれたばかりの光を放っていた。
「悪い、ちょいとばかし任せた」
 墨に言い残し、鍬丸は不死鳥へと……否、竜神の少女へと駆け寄る。
「よく頑張ってくれた。仲間は、全員助け出したぜ」
 うっすらと少女のまぶたが開き、うつろな瞳が鍬丸を見上げた。
「あとはお前さんだけだ。俺達に、任せてくれ」
 鍬丸の背を追うように、一頭の老いた狼が顔を出す。
『聞こえておるか、嬢。爺は無事よ、助け出されて此処に居る。他の者達も安全な場所に居るでな』
 ああ、と、少女が息を吐き出す。
『もうひとときの辛抱だぞ、嬢よ』
 ありがとう――そう象るように、少女の唇が動いた。それは見間違いかもしれない。
彼女にそんな力は残されていなかったかもしれない。けれど、鍬丸は自分を見つめる瞳と確かに目があったことを確信する。そこには、確かな光が宿っていたことを。
 不死鳥が再び羽ばたく。墨が前に出るよりも早く、灼熱の光線が、鍬丸に襲い来る。
鍬丸は冷静さを失うことなく、風魔手裏剣を手にしていた。
「“霊……宿……動!”」
 幾つも幾つも打たれた手裏剣が、鍬丸の周囲に回転している。
超音速で回転する手裏剣が放つ衝撃波の前に、熱は吹き散らされ、光が屈折して逸れる。
これぞ、飯綱の術――。
「ぶじだったかい、旦那」
『うむ、この通りよ』
 老狼の無事を確認すると、鍬丸は狼を連れて後ろに飛び退る。
彼を追って来た幾条もの光線が手裏剣によって逸らされ、墨の刀によって切断された。
「私……受け……め、ます……!」
「任せた」
 墨の唇を読んだ鍬丸が頷いて、不死鳥へと向き直る。
――生きたかった、もっと、生きたかった――
「ああ、そいつはもう聞いたよ」
 不死鳥へと肉薄した墨が、光をも断つ刃で斬り裂く。
紅い炎が血の代わりに飛沫き、巻き上がった炎の中からもう一度不死鳥がはばたく――
熱と炎に炙られて焦げる装束を無視して、再び放たれた光線を刃が断ち切った。
「さっきも言ったがな。死は絶対だと。俺達忍の骨を拾ってくれる者なんかいないんだ。そう心得ているからこそ、お前さんの無念は、痛いほどわかるよ。俺がお前さんだったら……同じ様に、死んでも足掻くだろうさ。……だけどな」
 不死鳥が啼声を上げる。それは現世へと縋りつこうとする悲鳴のようにも聞こえた。
「その体は、こいつらの仲間のものなんだ。返してやってくれないか」
 老狼は凪いだ瞳で、じっと不死鳥を見つめ――やがて、乞い願うように頭を垂れる。
 ――わたしは――
 ――わたしは、まだ――
 ――まだ生きていたかったのに――
 不死鳥の鳴き声は、一層悲痛なものに変わる。
じゅ、と音を立てて焦げた装束をそのままに、墨は光線を両断する。もう何十回繰り返したかしれない。
けれど光さえ斬れるその刃でも――少女を斬るわけにはいかなかった。
何より、不死鳥に何度も復活を繰り返させてしまえば、飲み込まれている少女の体も保たないかもしれない。妖怪であるがゆえに頑丈だ、それでも彼女は疲弊しきっている。
不死鳥が一際高い声で鳴いて、今までにないほどの数の光線を発射した。
(これ以上後ろには……通し、ません……!)
 墨の手の中の刃が一つ一つ、目にも留まらぬ早業で以て光を断ち切っていく。
その後ろで鍬丸もまた、風魔手裏剣を打ち出していた。
防御を全て墨に任せた鍬丸は八十と一の手裏剣をすべて不死鳥の元へと送り、包囲する。
超音速で回転する手裏剣から放たれる衝撃が、少女の体に一切の傷をつけることなく不死鳥を吹き飛ばした。

 ――ああ、ああ――
 ――どうか――
 ――どうか、わたしも、いつか――

 それきり、不死鳥の声は聞こえなくなった。少女を取り巻く炎が、最後に一際眩しく強く羽ばたいて……そして、消える。それはこの世界にたどり着けなかった炎の、最期の輝きだった。ぐったりとした少女に、老狼が駆け寄る。
『嬢、だいじょうぶか』
『……だい、じょうぶ……儀式の準備を、しないと……』
『そんな弱った体で何を言う。儂らを使え』
 竜神の少女は、疲弊した体で丁寧に座ると、猟兵たちを見上げて頭を下げた。

 予定より大幅に時間は過ぎて、けれどまだ長い夜は終わらぬ頃。
世界にたどり着けなかった妖怪たちの果て、骸魂を悼む鎮魂の儀式は再会された。
家路へつく妖怪の手にした提灯の小さな灯が連なって、川のように流れていく。
骸魂に見立てた提灯の炎を、世界を移動してなお生を勝ち取った妖怪の暮らす家まで連れて帰るのが、儀式の最後の手順だ。

猟兵たちはその炎を、思い思いに見送っていた。
――送り火は再生の灯。
世界へたどり着けなかった悲しい炎も、いつか――
この世界に還ってくることができるのかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月19日


挿絵イラスト