10
昨日、今日、明日

#UDCアース #UDC-HUMAN

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#UDCアース
🔒
#UDC-HUMAN


0




●某国、ストリート
 昨日はひどい日だった。
 でも、仕事をしたから、きもちいいくすりをいっぱいもらった。

 今日はひどい日だ。
 奴らが追ってくる!
 ボスのかたきうちだって……しらないよ!
 おれはくすりが欲しくてやったんだ!
 痛い!
 痛い! いたい! イタイ!
 腕がいたい! あしがいたい!
 からだがイタイ!
 やつらがおれをかこむ。
 くすり……きもちいいくすり! くすりがあれば……!
 ない?
 ない!?
 くすり、おとした!?
 くすりない!
 あしたどうすればいい?
 いま、どうすればいい?
 くすりくすりくすりksr……。

「同情はしない」
 男共の警戒の視線をものともせず、女は立ち上がり、缶を蹴り飛ばした。
「ツィクロンは好みか」
 突如、立ち込める煙に少年を囲んでいたはず集団がせき込み、距離を置く。
「空気中では効果が弱い。呼吸が苦しくなり、嘔吐がとまらない程度だ」
 煙の向こう側でマスクの女は外套を翻し、ストリートを歩く。
「……どうも、しゃべりすぎる。奴の癖でも移ったか」
 女の脳裏によぎった男の姿。
 自分の眉間が歪むのが分かった。
 それがひどく不機嫌で、心の奥より聞こえるくすりを求める声すら遮るほどだった。

 ……ああ、ストリートではよくあることだ。

●グリモアベース
「悪い報告がある、UDCが現れた。良い報告がある、速めに倒せば人になる――つまり人間がUDCに変身した存在、UDC-HUMANだ」
 グリモア猟兵、氏家・禄郎(探偵屋・f22632)は終始不機嫌な表情で語り始めると、その手はタイプライターを叩く。
「そっちの世界でもよくある話なんだろう? 薬欲しさに鉄砲玉をやり遂げたストリートチルドレン。それを追い詰めたマフィア達。落とし前を着ける直前、チルドレン――少年はUDCへと変貌した」
 出力された紙を猟兵に投げ渡しながら、グリモア猟兵の説明は続く。
「今なら、まだ間に合う。早急に変貌したUDCを撃退し、少年をもとに戻してほしい。勿論、途中で邪魔する者もいる、それを排除した上での行動だ」
 探偵屋は意識を切り替えるために、一度煙草を吸い、そして猟兵と向き直った。

「終わったら、後始末だ。少年と追いかけたマフィアの対処を任せる……ああ、分かってるよ、君達が何をどうしても、明日は変わらない。そういうところへ君達を送る」
 立ち上がり、レバーに手をかけるグリモア猟兵。
「だが、ここで仕事をしないと明日は来ない。これはそういう類の奴だ」
 レバーを降ろし、ベルを鳴らせば、ゲートが開かれる。
「私からは以上だ、時計を合わせたらすぐに動いてくれ。時間はあまりない」
 そう告げる男は猟兵から目を背けることはなかった……仕事の意味を分かっている故に。


みなさわ
 どんな結末だろうと明日は変わらない。だが今日、成し遂げなければ明日は来ない。
 こんにちはみなさわです。
 今回はUDCアース、法の及ばない土地の日常を守る話です。

●シナリオ傾向
 暗めのシリアスです。
 救うべきものは罪と薬にまみれ、追い詰めた者達は自分達の法と生き方で動いている。
 そして変貌したものは憎しみを持っている。
 そんな話です。

●第一章
 UDC-HUMANの周りに集うUDCとの集団戦です。
 舞台はスラム街を思わせるストリート。
 何も知らない人々は逃げ出していますので、避難など気にせず戦ってください。

●第二章
 UDC-HUMANとの戦いです。
 事情を踏まえた説得や、中にいる筈の本体を攻撃しないような配慮はプレイングボーナスの対象となります。
 プレイングボーナスを踏まえた行動や速やかな対処が少年を救うでしょう。

●第三章
 残されたのはUDC-HUMANだった少年とそれを狙うマフィアのはずです。
 対応はお任せします。

●人物
 少年:UDC-HUMANに変貌したストリートによくいる少年です。勿論、同じような少年少女は他にも居ますよ?

 マフィア:ボスを殺され、落とし前を着けるために少年を狙います。勿論、同じような組織は他にもあります。

●その他
 マスターページも参考にしていただけたら、幸いです。

 それでは皆様、よろしくお願いします。
148




第1章 集団戦 『星辰の狂気或いは真実を浴びたモノ』

POW   :    泡立つ狂気
戦闘中に食べた【一般人や同じオブビリオンの肉 】の量と質に応じて【全身を覆う丸い鉱物上の何かが爆発的に増加】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    泡立つ脈動
【脈動する異常に発達した筋肉 】【体内からあふれ出す泡のような鉱石状の何か】【鉱石があつまり結晶化した鋭い刃】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    泡立つ譫言
【UDCアース上に存在しない言語での譫言 】から【それを聞いた対象者の脳内に冒涜的な光景】を放ち、【沸き立つ強烈な恐怖の感情】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●昨日

 昨日はひどい日だった。
 クスリを目当てのガキがサタデーナイトの弾丸をありったけ。
 ボスは死に、ついでに壁程度の若いのも死んだ。
 マンホールの下にいるガキ共にヤクを与えて鉄砲玉。
 金のかからないヒットマン、足切りも簡単。
 ストリートじゃよくある手だ。
 だが、落とし前はつけなきゃならねえ。
 敵討ちという箔は明日の生活を変えるのに充分なのさ。

 ……なんて思っていたのは十分前か?
 今では訳の分からねえ、殺虫剤であしらわれた上にバケモノどもが出てきやがる。
 若い奴が俺を見る。
 分かってる!
 命が優先だ。
 じゃあ、この怪物の集団の中、どうやって脱出する。

 今日はひどい日だ……まったく。
ティオレンシア・シーディア
そこらの食い詰めに端金と雑な武器渡して鉄砲玉、ね。…足洗ったとはいえ、あたしも経験あるけれど。どこの世界でも、この手の連中のやることはそう変わらないのねぇ。
(まあ、実際効率だけならそう悪くないのがねぇ)

…ま、やること自体は単純ねぇ。一匹残らずブッ殺せばいいんでしょ?
考えること少ないから楽でいいわぁ。
なぁんか見るからに頑丈そうだけど。人型ならやりようはいくらでもあるわねぇ。
念のためエオロー(結界)で〇オーラ防御を展開、〇鎧無視攻撃の●射殺で片っ端からブチ貫いてやりましょ。

マフィアの連中は…ま、正直どうでもいいわねぇ。
興味ないし逃げるなり隠れるなり、助かりたいなら勝手に生き延びてちょうだいな。



●生き方

「そこらの食い詰めに端金と雑な武器渡して鉄砲玉、ね」
 ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)にとっては昔話。どこの世界でもこの手の連中のやることはそう変わらない。

 ……まあ、実際効率だけならそう悪くないのがねぇ。

 独白は心の中。誰にも聞こえず、聞こうとする者もいない。
 何故ならここは、無法が法のストリート。
 そして法は今、狂気に犯されているのだから……。

 ――カラァァァァッ!
 狂える無法の巣窟の中でティオレンシアの白い手がリボルバーに伸びた。
 円筒形のシリンダーが奏でるノッチの音が怪物どもの注意を引く。
「……ま、やること自体は単純ねぇ。一匹残らずブッ殺せばいいんでしょ?」
 返答は人には聞こえない叫びであった。
 だが狂気すらも彼女の前には無力である。
 異形の集団が、鉱石の刃で女を切り裂かんとした時

『ᛉ』――エオロー

 保護と結界のルーンが障壁と築き、人と人でないものを隔てる。
「考えること少ないから楽でいいわぁ」
 ルーンを刻んだ左手のゴールドシーンを胸に差し、右手に握ったリボルバーの引鉄を引く。

 射殺、またの名を――

 coup de grace
 最後 の 一撃!

 練磨に練磨を重ねた針を縫う狙撃が、鉱石に覆われた異形の急所を見切り、死に至らしめる。
「人型ならやりようはいくらでもあるわよねぇ」
 そこには慈悲など無かった
 人差し指が弓を弾き、親指が踊る毎に増えるのはただの骸、肉塊。
 いや、これこそが慈悲の一撃であったかもしれない。
 何故なら、この化物はただ、引き寄せられただけなのだから……。

「……」
 マフィア達に一瞥をくれると、ティオレンシアは愛銃のシリンダーを開放する。
 六つの真鍮が熱を帯びて転がる中、ポーチより新たな弾丸を取り出し、空洞へと叩き込めば、ストリートを進む。
 異形はまだ残っている。
 ならば、やるべきことは決まっているのだ。
 ガンスピンで握り直したオブシディアンが火を噴く度、狂気は死という法に正された。

 ――それが今の生き方だと言わんばかりに。

大成功 🔵​🔵​🔵​

山岡・智花
ありふれた悲劇とか、そのへんによくいる悪とか
ウチの故郷でもよくある話だったよ。この世界にもあるんだね
だから、こーゆー状況で手を差し伸べるのはウチ的にはフツーのこと
狸はアホだから、最終的に救えなくてもほっとけないんだ

狸の姿のまま戦う
敵との体格差を活かして、攻撃を回避しながら懐に潜り込むよ
足元をちょこまかジグザグ走りしながら近接すれば、敵は狙いを定めにくいはず!!

至近距離まで駆け寄ったら、UCで噛みつき攻撃
【化け術】で脚だけバッタの脚にして、急所の高さまで跳び上がって噛みつくよ
ひっぺがそうとするなら、ダガーをくくりつけた尻尾をぶんぶん振って抵抗だっ!
ウチ諦め悪い狸だからね
牙と爪で根気よく削るよ


木常野・都月
野良の人間の子供か。
狐なら巣立って間もない年頃か?
人間にも野生に近い人間がいるんだな。

自然界ならよく見かける光景だけど……子供が生きていくのは大変だ。
生きる力を身につけるか、死ぬしかないからな。

記憶がないまま意識が戻った、狐時代の俺もこうだったよな。
生きるのは、辛いよな。

とはいえ、助けないと、生きる選択すらできないか。

まずは、早い所周りのオブリビオンを一掃したい。

UC【精霊の瞬き】を氷の精霊様の助力で使用したい。

敵の攻撃は[野生の勘]で避けながら、[高速詠唱、多重詠唱、カウンター]で対処したい。
多重詠唱は、氷と風の精霊様の[属性攻撃]で、敵の強化攻撃を凍りつかせつつ、切り刻みたい。



●人と獣

「ありふれた悲劇とか、そのへんによくいる悪とか、ウチの故郷でもよくある話だったよ」
 山岡・智花(化け狸・f28106)の生まれた世界はもっと過酷であった。
 文明が失われた大地。
 狸のままなら喰われるが故に、人に化けて生きた狸は人が手を取り合うように、自らも悲劇に見舞われた少年を救うべく走る。
 それが智花にとっての選択。
 それが狸にとっての普通。
 例え報われない結果であったとしても……。

「野良の人間の子供か」
 一方で木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)の視点は違う。
「狐なら巣立って間もない年頃か? 人間にも野生に近い人間がいるんだな」
 文化に不慣れ故かストリートチルドレンを野良の子供と解釈した。
「自然界ならよく見かける光景だけど……子供が生きていくのは大変だ」
 それはまさしく獣の視点。
 都月の中の『人』まだは成熟しておらず、『獣』が意志と倫理を持ったに近い。
「とはいえ、助けないと、生きる選択すらできないか」
 だからこそ、助けに行く。
 生きるのは、辛い、けれど死ぬのはその辛さすら知ることが出来ないのだから。

「まずは、早い所周りのオブリビオンを一掃だ」
 結論が決まれば、狐の行動は速い。
 氷の精霊が煌めけば、異形へ撃ち込まれる一矢。

 セイレイノマバタキ
 精霊の瞬き

 それは刹那を超える速度。
 例え怪物達が厚い筋肉を持ち、鉱石によって身を固めても、速度を持った質量はそれを凌駕し、氷によって展性を失った身体は次に撃ち込まれる矢によって砕かれる。
 矢は一矢では無い。
 重ねる詠唱は複数、紡ぐ言葉もまた早く、精霊への助力を刹那に迫る時を以って実現させる。
 氷雪の嵐が、異形を凍らせ、切り刻み、刹那の氷が矢となって撃ち貫く。
 壊乱する怪物の集団の中を、今度は狸が飛び込んだ。

 走る智花、その姿は文字通りの狸であった。
 体格差は歴然、そのまま立ち向かうなら異形の振るう結晶化した刃にて切断されるだろう。
 だが、体格差ゆえに出来ることもある。
 何故なら、人型というのは足元に対しての防御に技術を必要とするのだから。
 狂気のままに振り回す刃では、知恵のある動物に翻弄されるのみ。
 そして――牙が怪物の急所を食いちぎった。

 インテリジェンス ビーストファング
 智慧 ある 獣の牙

 得意の化術にてバッタと化した智花の脚は高さという障壁を乗り越える跳躍力と速さを与える。
 最早、体格のハンデは消え、そこに残るのは賢い動物が得る、人外の優位。
「――!」
 それを遮らんと耳障りな咆哮と共に異形が一体、迫りくる。
 狸が尾を翻すと、煌めくのは白刃。
 顔を抑える怪物に向かって、智花の牙が先程以上に鋭く、正確に急所へ穿った。
「ウチ諦め悪い狸だからね」
 大地に着地する智花の言葉を聞いてか、異形共の一斉に飛び掛かる。
 だが、それは愚策。
 もはや、狸の爪と牙を止めることはできない。
 狐の氷によって混乱していた怪物達は瞬く間に、跳躍した賢い動物の餌食となった。

 人、獣。生まれは違い、生き方も考え方も違う、ただ一つ共通することは助けたい人間がいる……それだけであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

神酒坂・恭二郎
こんなのは有り触れた話だ
何処の世界にでも見かける話である
少年には少年の事情があり
マフィアにはマフィアの事情がある
是非を語れるもんでもない
ただし、そこにUDCが絡むなら、こちらにも出張る事情があるのが猟兵と言う物だ

「すまんね、旦那方。事情がお有りのようだが、こいつらの相手は譲ってもらうよ。ちょいとした因縁持ちでね」

マフィアを庇うようにスーツ姿で奴等との間に入る
【礼儀作法】で彼等の面子を潰さぬように語りかけ、コートを真上に投げ上げる

後は連中の刃を【見切り】、【覚悟】で引き付け【カウンター】の【早業】だ
異常発達した筋肉の勢いを利用し、蝦蛄拳で【吹き飛ばし】て回ろう

一呼吸おいてコートをキャッチする


荒谷・つかさ
どうにもややこしい事情があるみたいだけれど……まあ、とりあえず仕事を済ませましょうか。
一般人が逃げてくれてるなら、巻き込みは考えずに済みそうね。

敵群に突っ込みつつ【竜巻旋風神薙刃】発動
自らを刃の嵐と化して、奴らを片っ端からミンチにする
この時ミンチにした敵を残ってる奴らに食われないよう、端の方から順番に制圧
喰おうとして突っ込んでくるなら迎撃
背後には可能な限り通さない
突破されたなら「怪力」で以て捕獲して、そのまま未制圧な方へとぶん投げる

基本、他人の家のルールに口は挟まない主義だけど。
それのせいで私達の「仕事」が増えるっていうなら、対処はしないといけないのよね……面倒な。



●猟兵という仕事

 こんなのは有り触れた話だ。
 何処の世界にでも見かける話である。
 少年には少年の事情があり。
 マフィアにはマフィアの事情がある。
 是非を語れるもんでもない。

「ただし、そこにUDCが絡むなら、こちらにも出張る事情があるのが猟兵と言う物だ」
 神酒坂・恭二郎(スペース剣豪・f09970)がコートを翻し、ストリートへ足を踏み入れる。
 それが己の矜持かのように。

「すまんね、旦那方。事情がお有りのようだが、こいつらの相手は譲ってもらうよ。ちょいとした因縁持ちでね」
 恭二郎が腰を抜かしつつも異形へ銃を構えているマフィアの前に割って入った。
「何、悪いようにはしないさ」
 スペース剣豪としての渡世の生き方は礼儀の世界。
 故に相手の面子を立て、自らの腕を振るう。
 コートが舞い上がったと同時に怪物の咆哮が響いた。

 異形が走り、大地が揺れる。
 その音に混ざって聞こえる、小刻みなリズムはオックスフォードシューズの靴音。
 怪物が異常に発達した筋肉を活かして腕を振り回す中、フットワークを刻んで掻い潜る三つ揃い姿の恭二郎。
 その上体が揺れ、懐へと潜り込むと力強く大地を踏む。
「――シィッ!!」
 鋭く息を吐く音が周りを支配した。
 上半身を捻るウィービングによって溜められた捻転。
 それが解放され、放たれる一撃は――

 シャコ パンチ
 蝦 蛄 拳!

 水中の中でも銃弾並みの破壊力を持つ蝦蛄の特性を活かしたカウンターブローが、鉱石で覆われた異形の巨体をぶち抜いた!
 その一撃に怪物は遠巻きに見ていた同類を巻き込んで派手に宙を舞う。
「――ざっと、こんなものさ」
 降りてきたコートに袖を通し、恭二郎はマフィア達へ向かって笑った。


「どうにもややこしい事情があるみたいだけれど……まあ、とりあえず仕事を済ませましょうか」
 一方、荒谷・つかさ(逸鬼闘閃・f02032)も溜息と共に異形達へと視線を向ける。
 事情はどうあれ、為すべきことはなさねばならない。
 幸いにして人々は逃げており、巻き添えを心配することはない。
 ならば! つかさのすることは決まっている。
 そう! 敵陣に飛び込むのみ!

 ゴッド! ――両手に剣

 スラッシャー!! ――回転するは斬撃の

 タイフーン!!! ――嵐!!!

 その名は竜巻旋風神薙刃。
 絶望を祓い駆け抜ける剣の嵐が次々に異形を切り裂き、吹き飛ばす。
 その肉片を食らおうと怪物が走れば、嵐に引き寄せられ、新たな肉塊を作り出す。
「――!」
 人には聞こえない咆哮と共に異形が嵐を潜り抜ける!
 ……が、その頭を掴む腕があった。
 勿論それは羅刹の腕。
 つかさが自らの嵐へとそれを投げ込めば、竜巻にさらわれ空へ舞う異形。
 地より天空へ昇るのは――自らの身を螺旋回転させたつかさの姿。
 スピンのかかった刺突がギムレットの如く鉱石の肉体を穿ち、直後、回転が怪物を肉片へと変えた。

「基本、他人の家のルールに口は挟まない主義だけど」
 嵐が止み、着地するのは羅刹。
「それのせいで私達の『仕事』が増えるっていうなら、対処はしないといけないのよね……面倒な」
 呟くつかさがストリートを進む。
 道は開かれていた、神薙の嵐によって。


 生き方がある、事情がある。
 それに口を挟まないのが大人であろう。
 だが、オブリビオンがいるなら話は別だ。
 何故なら――それが猟兵の使命なのだから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

霑国・永一
いやぁここは素敵なルールがあるというのに流石はUDCアース、ロクな介入がない。それじゃ、まずは連中の屍の先に、狂気の明日を俺は見出すとしよう。

狂気の解除を使用するとしようかなぁ。
片っ端から遠距離から銃弾を、または接近してダガーを振り抜くとしよう。【盗み攻撃】
そうすれば奴らの強化は元通り、俺が代わりにその強化を受け継げるわけだからねぇ。おお凄い、俺の筋肉がムキムキになったし、よく分からない鉱石が刃になったよ。
それじゃ、この膂力と刃を以てズタズタの肉塊になれ(解除された個体を攻撃強化の一撃で叩き潰す)

うーん、見た目も狂気的だしいい強化だったなぁ。女子供には受け悪いかもだけどねぇ


ミネルバ・レストー
ホント、ひどい日だわ
こんなの、ただの厄介ごとの後始末じゃないの
マフィア連中の相手は後回し、UDC-HUMANに手を出すには
…まずは雑魚から蹴散らせですって?
めんどくさいわね、まったく

間合いを十分に取って、群れるUDCを一体でも多く
視界に収められるようにしましょ、「範囲攻撃」の布石よ
発動するは【戦女神の眼光】、捉えた個体はまとめて氷柱の餌食ってわけ

なあに?機械言語なら翻訳できるかも知れないけど
…ううん、できてもしない方がいいみたいね
めいっぱいの「演技」となけなしの「落ち着き」で
恐怖の感情を押し殺してみせましょ

ねえ、もう一度言うわよ
雑魚はお呼びじゃないの、さっさと消えて頂戴
――道を開けなさい!



●狂気と言う名の未来

「いやぁここは素敵なルールがあるというのに流石はUDCアース、ロクな介入がない」
 霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)が肩をすくめた。
 まるでこの惨状を解決することを惜しむかの振る舞いである。
「ホント、ひどい日だわ」
 そんな空気へのミネルバ・レストー(桜隠し・f23814)の冷たく一言。
 場の空気が少しだけ緊張を取り戻す。
「こんなの、ただの厄介ごとの後始末じゃないの」
 ミネルバ=ネリーにとっては大いに不満であった。
「マフィア連中の相手は後回し、UDC-HUMANに手を出すには……まずは雑魚から蹴散らせですって?」
 仕事における制約の多さと、マフィアを後回しにする判断に。
「しょうがないだろう? ここから目標まで遠距離に攻撃できるのはゲームだけだよ」
「……めんどくさいわね、まったく」
 落ち着かせようとしているのか永一が言葉を口にすれば、ネリーは悪態を口にする。
「それじゃ、まずは連中の屍の先に、狂気の明日を俺は見出すとしよう」
 普通の青年はオシャレ布なマフラーで口元を隠そうとして――タンスにしまったことを思い出して苦笑すると、刃物片手に歩く。
 こおりの少女もそれに続いた。

「狂気の解除を使用するとしようかなぁ」
 居酒屋でメニューを選ぶかのような気楽さで永一が握るのはロシア製を思わせる古臭い銃、そして刃物。
 火薬の破裂音と共に異形が一体、頭をのけぞらせ、そして倒れる。
 倒れた怪物の頭を無造作に蹴り、音もなく近寄る青年。
 次に振るわれた刃は別の異形の喉笛を切り裂いて、刃を赤く染める。
「……なるほど」
 そこに立つのは永一だったもの。
 鉱石上の何かと膨れ上がった筋肉、そして結晶化した刃。
 まさしく、目の前にいる異形そのものであった。

 Steel reinforcement
 盗み使う狂気の解除

 鉄の補強材の名を謳う、そのユーベルコードの特性は相手の強化の解除及び……自身への付与。
「おお凄い、俺の筋肉がムキムキになったし、よく分からない鉱石が刃になったよ」
 自らの変化に悦び、その性質を覚えればさっそく使いたくなるのが人の性。
「それじゃ、この膂力と刃を以てズタズタの肉塊になれ」
 普通の青年だったものが、強化を奪い取った異形へまず結晶化した刃を振り下ろす。
「ぐっろ……」
 異形と化した永一が暴れる様にネリーは顔を歪ませた。

 一方のネリーは怪物達に対し距離を置く。
 生憎と柔術の嗜みもない上に、肉薄して戦う必要もないのだから。
「――!!」
「なあに?」
 異形の叫び声に冷笑を返す少女。
 機械言語なら翻訳できるかも知れないが、その必要はないだろう。
 聞いてあまり良いものではないと分かっているのだから。
 案の定、脳内に恐怖が刻まれる。
 それに対し、ネリーは精一杯の演技で笑い、そして頭の中をクールにするのだ。
「雑魚はお呼びじゃないの」
 法則が――変わる。
 冒涜的な何かを叫ぶ怪物を降り注ぐ氷柱で貫けば、その口から咲くのは氷の樹。
「ねえ、もう一度言うわよ」

 Icicle rain
 戦女神の眼光

「雑魚はお呼びじゃないの、さっさと消えて頂戴」
 文字通りの氷柱の雨が少女の視界に入った怪物達の頭をしたたかに打つ。
「――道を開けなさい!」
 道は開かれた。
 氷と死によって舗装されて。

「うーん、見た目も狂気的だしいい強化だったなぁ」
 顎に手を添えながら、普通の青年に戻った永一が楽しそうにストリートを歩く。
「女子供には受け悪いかもだけどねぇ」
「ええ、最悪ね」
 一歩後ろを離れて歩いていたネリーが彼の期待に応えてやった。
 何もしなければ、これが未来となる。ならば言葉に棘も生える。
 心の中で渦巻く何かをしまい込んでネリーは歩を進めていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

叢雲・源次
【煉鴉】

…今回の任務…重要なのはUDC怪物の殲滅以上にUDC-HUMANの早急な対処…か
仮に救った所で、かの少年の未来が明るいものになるかと言われれば…いや…今は言うまい…まずは尖兵の殲滅だ。

(打刀の柄に手をかけて、構える。グウェンドリンは刀を使った実戦は初めてになるが…上手く行くだろう。才はある。あとは運と気概だ。それが無ければそれまでだ)

(インターセプター…アナライザー…起動。戦闘行動、開始。グウェンドリンの攻撃に合わせ、踏み込み。見極めるは丸い鉱物上の何かの『隙間』。そこを縫う様に電磁抜刀。電荷を纏った刃を装甲の隙間に滑り込ませその肉を断たんとする)


グウェンドリン・グレンジャー
【煉鴉】
こいつら……は、UDC。でも、この後ろ……に、控えてる、のは
(首を振り、鈴鹿御前を鞘から抜く。刀を持っての初めての実戦に、顔は普段以上に硬い)
……ゆこう、源次

目には目を、歯には、歯
私の、身体の半分……は、あなたたち、と、同じ、もの
先制攻撃で、炎の属性、乗せ、斬りかかる
お前らに、人食いも、共食いも、させない

攻撃来るタイミング、第六感で予測、回避
受けた攻撃、激痛耐性で、処理

複数体、集まってきたのを、狙って、Brigid of Kildare
自分の、炎属性の斬撃も、強化しつつ、広範囲の敵、狙い、切り払う
鉱物部分、ごと、焼き斬る

……話に、聞いてる、彼は……この、先、か
早く、行かなきゃ



●Blade

「……今回の任務……重要なのはUDC怪物の殲滅以上にUDC-HUMANの早急な対処……か」
 叢雲・源次(DEAD SET・f14403)の視界を塞ぐのは異形の群れ。どれも人の形はしているが、人の姿はしていない。
「こいつら……は、UDC。でも、この後ろ……に、控えてる、のは」
 グウェンドリン・グレンジャー(Moonlit・f00712)の視界にも同じものがいる。
「仮に救った所で、かの少年の未来が明るいものになるかと言われれば……いや、今は言うまい……まずは尖兵の殲滅だ」
 源次が視線を動かせばそこには硬い表情を浮かべる人ならずの少女。
 その手には古の乙女の名を冠した刀――鈴鹿御前が一振り。

 ――グウェンドリンは刀を使った実戦は初めてになるが……上手く行くだろう。才はある。

「……ゆこう、源次」
 緊張するグウェンの姿に男が思考すれば、少女がそれを打ち切るように行動を促す。

 ――あとは運と気概だ。

 これから始まるのは刃の競演。
 静と動、二つの刀をご覧あれ。

 先に動くはグウェン。
「目には目を、歯には、歯」
 炎を纏った刀を振り下ろせば、人に聞こえない声を上げ、異形は炎に包まれる。
「私の、身体の半分……は、あなたたち、と、同じ、もの」
 怪物達が肉を喰らうにも炎は強く、逆にその身を焼くほどの勢い。
「お前らに、人食いも、共食いも、させない」
 人ならずが走った。
 異形の腕を掻い潜り、白い肌を切り裂く痛みに耐え、飛び込むは集団の中。
「闇に、光を」
 光が人となって顕現した。

 Brigid of Kildare
 私生児の守護聖人

 ストリートの子供を災禍より守るために降臨した炎の聖女と共にグウェンが刃を振るった。
 その炎熱は鉱石をバターのように斬り裂き、そして骸を荼毘に付す。
 そこへ源次が走り込む、文字通り一刃の刀として。

 ――インターセプター…アナライザー…起動。戦闘行動、開始。

 腕時計型の戦闘補助デバイスが左目を模した高度演算デバイスが源次の世界を広げる。
 達人の領域に達したものは、経験則から情報を具現化する。
 もし、外部からの情報デバイスでそれを補正し、脳が全てを処理できるなら……目の前にいる異形の動きは手に取るように分かるであろう。
 予測される敵の軌道、そして一撃の為の最善のタイミング、それらを見極め、踏み込めば――もう阻むものは何もない。
 打刀の鯉口が切られた。

 電磁――linear
 抜刀――Blade!

 電磁誘導によって加速された抜刀が練磨された男の剣術によって、精緻な太刀筋が鉱石の隙間へと滑り込む。
 音は無かった。
 いや、音はした。
 怪物の上半身が落ちる音と下半身が倒れる音。
 それだけであった。

「……話に、聞いてる、彼は……この、先、か」
 異形共を切り払い、グウェンの目に見えるのは人の営みを失ったビル一つ。
「……ああ、そうだ……な」
 源次も同じ方向へ視線を向けた。
「早く、行かなきゃ」
 少女の言葉に男は頷き、刀を手にまた突き進むのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜


参ったね。
アタシが生まれた世界のはずなのに、
まるでここは別世界だ。
……けれども、UDC-HUMANが出たってんなら、
見過ごす訳にゃいかないんだよ。
兄さんら、ちょっとは事情を知ってるんだろ?
アタシのご機嫌角度はひとまず置いといて、
さっさと逃げ出しな!

こんな場所じゃ、法律もケーサツもあったもんじゃねぇよな!
カブに『騎乗』し、雑魚どもを跳ね飛ばすように
『操縦』しながら変異したあの子を『追跡』する!
『衝撃波』で『範囲攻撃』しながら、
【時縛る糸】も織り交ぜて封鎖されないように立ち回るよ!
2ケツしたい奴ぁ乗っとくれ!

……ボスの仇討ちに来た奴ら、唆した対立相手。
そして鉄砲玉のアイツ。
本当の敵は、どいつだ?


トリテレイア・ゼロナイン
巨大宇宙船の貧民街、銀河帝国よりは『大人しい』宇宙海賊
活動費の為の護衛に治安回復任務、賞金稼ぎの真似事
…騎士道など無力と味方にすら諭されたあの日

戦いは何時もそうですが、この地域は格別に愉快でない記憶データを想起させます

ですが、徒に眼前の命を散らされるのを許す法は私にはありません

センサーで周囲を●情報収集
敵と距離近く危険度が高いマフィア構成員を●見切りUC使用
彼らを●かばいつつ、●怪力シールドバッシュで弾き飛ばし

貴方達の手に負える相手ではありません
私の背に!

挙動分析による隙を逃さぬ格納銃器の●スナイパー射撃や近接攻撃の猛反撃で制圧

『過去』を倒す
騎士として命を救う
今出来る事は…それだけです



●今、出来る事

 宇宙バイクのマフラーから排気音が吠え。
 戦機のスラスターから燃焼された推進剤が噴射される。
「参ったね。アタシが生まれた世界のはずなのに、まるでここは別世界だ」
 数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)が形式番号JD-1725と刻印された宇宙バイクのスロットルを開放し、ストリートを走り抜ける。
「……けれども、UDC-HUMANが出たってんなら、見過ごす訳にゃいかないんだよ!」
「巨大宇宙船の貧民街、銀河帝国よりは『大人しい』宇宙海賊。活動費の為の護衛に治安回復任務、賞金稼ぎの真似事」
 ……騎士道など無力と味方にすら諭されたあの日。
 二輪の傍らを飛ぶトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)のシステムが近似の情報を引き出し、騎士へと提供する。
「戦いは何時もそうですが、この地域は格別に愉快でない記憶データを想起させます」
 トリテレイアの呟きはスラスターの音にかき消される。
「ですが、徒に眼前の命を散らされるのを許す法は私にはありません!」
 むしろ好都合であろう、推進剤を噴射し騎士は前に出た。
 何故なら、目の前に今、殺されそうな人間が居るのだから。

「貴方達の手に負える相手ではありません!」
 銃を構えていたマフィア達に襲い掛かる異形を大盾で吹き飛ばし、トリテレイアは叫ぶ。
「兄さんら、ちょっとは事情を知ってるんだろ?」
 追いつくように多喜のバイクがその場に停まった。
「アタシのご機嫌角度はひとまず置いといて、さっさと逃げ出しな!」
 語気荒めに男達を追い立てれば、視線は怪物達へ。
「こんな場所じゃ、法律もケーサツもあったもんじゃねぇよな!」
「だからと言って無法とは行きますまい、レディ」
 バイクの女を騎士が嗜める。
「そうだね……」
 多喜がスロットルを開放する。
「一気に突っ切るよ、2ケツするなら乗っとくれ!」
「いえ……いや、それも一考ですね」
 思考の後トリテレイアが荷台に跨る。
 戦機の重量にサスが沈むが構わなかった。
「では、レディは――」
「数宮・多喜ってんだ、よろしくな」
「では、私はトリテレイアと……では多喜様、このまま直進してください」
 バイクに跨った騎士のスラスターが吸気を開始する。
「露払いは私が担いましょう」

「わ!? わわわわーーーーっ!?」
 多喜が声を上げる。
 それはバイクというには暴力的で、騎士というには荒々しい何かだった。
 トリテレイアのスラスターによって加速された宇宙バイクは光に覆われ、地上スレスレを飛翔する。
 そして邪魔する異形は騎士の持つ銃器によって掃除され、振るう大剣が怪物の頭を叩き割る。

 Machine knights defense maneuver
 機械  騎士 の 防衛  機動

 襲い掛かる数だけ、行動を得るユーベルコード。
 トリテレイアが防御に徹すれば、それは無限の砲台へと変わり、あらゆるものを炎に呑み込む。
 炎の中、光るのは女のライディングテクニック。
 ほぼ暴れ馬も同然となった愛車をスターライダーは手なづけ、そして性能にふさわしい挙動を生み出す。
 バレルロール――螺旋のごとき軌道が異形の刃を潜り抜け、二人はビルへと飛び込んだ。
 ここへ逃げ込んだのは明らか、何故なら敵の姿も多く、ここへ導かれるように歩いているのだから。
 そこへ襲い掛かる怪物共、階段から飛び降りてきたのだろう。
 だが、多喜にとっては問題が無い。

 Cronus Dance
 時――縛る糸

 対象の主観時間を止める思念波が異形の動きを止める。
 あとは集団の向こうへとスロットルを捻るのみ、爆音を残して二人を乗せた一台の暴れ馬は怪物達を置き去りにしていった。

「……ボスの仇討ちに来た奴ら、唆した対立相手。そして鉄砲玉のアイツ」
 階段をバイクで駆け上がりつつ女は呟く。
「本当の敵は、どいつだ?」
「どちらにしても、我々の為すべきことは決まっております」
 後ろより、トリテレイアが返答した。
「『過去』を倒す、騎士として命を救う」
 猟兵として、騎士として。
「今出来る事は……それだけです」
 ――今、出来る事を!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

矢来・夕立
こんな場所で暮らしてるなら分かってんでしょうに。
今日と似た明日が来る保証なんかどこにもないって。

薄暗い通りなら、どこの世界でも慣れっこです。
《闇に紛れて》視界内にいるものを三秒観察。
不意打ちの形で【紙技・冬幸守】。
紙の方がまだお利口さんですよ。
ひとかたまり潰すか、他の方が潰せるだけのスキを作ったらまた隠れて移動。
ほかの集団を探して同じようにします。
有り体に言えば強化される前に後ろから刺す、といったところでしょうか。

どちらに同情をすることもありません。
けれど、無法者にも作法はあります。
そこへマナーを知らないヤツが大量に湧いては、纏まるものも纏まらない。
話はこれをお掃除してからですね。



●無法の生き方

 猟兵達がビルへ飛び込む中、それを追う異形はというと……消えていた。
 それに気づくものは猟兵の中におらず、怪物の中にも居ない。
 ただ……この惨状に取り残されたマフィアが一人。彼だけがそれを知った。
「おい、逃げるぞ」
「はい、逃げますけど!」
 男の言葉に部下が声を上げ、警戒しつつ下がり始める。
「馬鹿野郎! 全力で走れ!」
 男が怒鳴りつけると、部下が続くように走った。
「どうしたんですか、旦那!?」
「良いから後ろを向くな! 前見て走れ! 生き残ることだけを祈れ……関わっちゃいけないのがいる」
 男はただ、答えるのみ。
 こういう世界で生き残るには嗅覚が必要だ。
 それが……嗅ぎつけた。
 必要と任ずれば、躊躇いなく殺す『存在』へ。

 男達の背後、他のマフィアが取り残される中、異形の集団はまた一つ消えた。

「こんな場所で暮らしてるなら分かってんでしょうに」
 若者は何気なく道を歩き。
「今日と似た明日が来る保証なんかどこにもないって」
 土の上に転がる蝙蝠の千代紙を拾う。
 唸り声が耳に入り、若者が顔を上げると、怪物の集団がそこに。
「紙の方がまだお利口さんですよ」
 手慰みに蝙蝠におられていた紙を解き、一枚、投げる。
 マフィア達が、異形達が、その挙動に惹かれ舞う千代紙へ視線を向けた時、そこには若者の姿はない。
 代わりに蝙蝠の群れが怪物を喰らい尽くした。

 カミワザ フユコウモリ
 紙技・冬幸守

 操るは千代紙。
 名をを式紙、技は紙技。
「どちらに同情をすることもありません」
 どこからか声が響き、人が、異形が顔を動かす。
「けれど、無法者にも作法はあります」
 再び千代紙が怪物共の舞う。
「そこへマナーを知らないヤツが大量に湧いては、纏まるものも纏まらない」
 やはり後には何も残らなかった。
「話はこれをお掃除してからですね」

 矢来・夕立(影・f14904)の仕事は、全てが消えるまで続いた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『冬寂の紫毒『ウルフズヴェイン』』

POW   :    心も体も、凍えて終わる
【攻撃される前に強力な猛毒注射で刺した後、】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD   :    この中では誰しもが静寂を守る
戦場全体に、【人外にも有効な毒ガスが充満する汚染物質】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
WIZ   :    呼吸すらも凍りつく
【複数の症状が発生するガスグレネードの範囲】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はヴィクティム・ウィンターミュートです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●今日

 かすかに混じる汚水の臭い、硝煙の残滓、そして砂の混ざった土臭い空気。
 かつて仕事をしていた場所と違い不衛生極まりないが、ここは間違いなく『ストリート』
 命が気軽にマーケットに上がり、法律は金持ちの為にだけある。
 呼び水としては充分な舞台であった。

 そして、薬に溺れたチルドレン。

 読み書きもできず、その日の食事すらありつけず、苦しい現実より逃れるために薬に逃げた、良く居る少年。
 やがて薬が毒に染まり、世界からの逃避を願った時――私は目覚めた。

「どこも変わらないという事か」
 人の居なくなった雑居ビルの窓より、猟兵が突入するのを見下ろしながら私は呟いた。
 変わらない? 本当にそうか?
 いや、それよりも、今、何を為すべきかだ。
 ……決まっている、合流だ。
 我々はいつだってチームで動いた、独りでのランはリスクが大きい。
 だが……。
「お前は自分を見失っても、生きたいと願うのか」
 腹を撫でる。
 自分の肉体を作り上げた少年だった意識がノイズのように呼び掛ける。

 ――生きたいと。

 右手に注射器を取って、腹に刺す。
 偽薬だが充分だろう、ノイズが消えたことを確認すれば、視線を外へ。
 改めて確認しよう。
 何をすべきか?
 合流――それが正解なのだろう。
 だが、このストリートに何かを残すべきだと心が訴える。
 本来なら『彼』の指示を仰ぐべきだ。
 だが、今は私一人。
 それでもやらなくてはならない。
 何故なら、私は  の一員なのだから。

「用事があるんだ、通してくれないか」

 この階層に突入した猟兵に私は問いかけた。
 答えは聞くまでもなかった。
 ならば戦おう。

 今はまだ、  は名乗らない。
 ここに立つのはただのWolfsbane。
 和名はトリカブト、知られる特徴は――Venom

「このビルの各部屋には既に毒を仕込んだ。そして逃走路は複数ある」
 情報は武器になると誰かが言った。
 今はそれすら使おう。これが私の――

 First Run
 最初の仕事なのだから。
霑国・永一
成程、お仕事熱心で何よりだよ、UDC。
でも人様のルールに外部から介入はいただけないなぁ。
人のことは言えないけど、余所者は退場して貰うよ。
ああ、聞こえているかは定かじゃあないけど、中の少年(きみ)、本当に生きたいのならこの余所者に自分を盗まれ切らない様、意識を強く持つことだねぇ。薬などに負けている場合じゃないよ

では行くとしよう。…迷路かぁ、しかも嫌な空気だ。でも全てUCならば口元にこのダガー持って行って、毒ガスの力を吸い取りつつ、壁にもダガー当てて迷路を創り出した力吸い取って道を開こう。物理攻撃じゃないからね、硬さなど無意味さぁ。

さて、出られたのならば盗み攻撃で薬やら毒武器やら奪って無力化だねぇ



●Stealer

「成程、お仕事熱心で何よりだよ、UDC」
 最初にたどり着いたのは普通の青年だった。
「でも人様のルールに外部から介入はいただけないなぁ」
「……」
 霑国・永一とウルフズヴェイン。
 二人が間合いを探るように互いの動向を伺う。
「人のことは言えないけど、余所者は退場して貰うよ」
「……いや」
 距離を詰める永一にマスク越しに返ってきた返答は
「もとより、ここから離れるつもりだ」
 逃走の宣言。
 そして遮るように転がるのは――煙幕弾。
 煙はやがて壁を作り、青年の足元を毒の泥濘で満たした迷宮へと誘った。

「生憎と戦闘は得意分野ではない」
 声が響くのは、汚染物質から発生する毒ガスに満たされた戦場の向こう側。
「そして、今、最優先すべきはここからの脱出。なら時間を稼げばいい」
 その声もやがては遠くなる。
「入り口から帰ることを勧める。どちらにしても貴様が来る頃には私はいない」
「……嫌な空気だ」
 しかし独白とは裏腹に永一の顔には笑みが浮かんでいた。
「この迷宮は全てユーベルコードなんだろう?」
 手に持ったダガーに軽く接吻、そして刃を地面に落とす。
「ならば、盗めないものは」
 波紋が――毒の泥濘に広がった。
「ここにはないね」
 泥濘が、迷宮が、汚染された大気が消えていく……いや、地面に刺したダガーが奪っているのだ。

 Steal reflect
 盗み返す狂気の反射

 その特性の最たる点は――触れたユーベルコードの力を全て盗むダガーによって発動すること。
 つまり対象となったユーベルコードは盗まれ、その存在を失う。
「物理攻撃じゃないからね」
 短剣を拾い、笑う青年の視線の先には
「硬さなど無意味さぁ」
 部屋の出口で振り向くウルフズヴェイン。
「成程、貴様も分野は違うという事か」
 状況を分析したマスクの女が薬瓶を投擲する。
 瓶が割れれば、液体が空気に触れて化学反応を起こし、発生した殺傷性のガスがその場を覆うだろう。
「ああ、聞こえているかは定かじゃあないけど」
 けれど、それは永一の手の中に。
 そう『盗まれた』
「中のきみ、本当に生きたいのならこの余所者に自分を盗まれ切らない様、意識を強く持つことだねぇ」
 奪う者の哲学が奪われるものへと呼びかける。
「薬などに負けている場合じゃないよ」
 青年の右手がウルフズヴェインの右腕を抑え込む。
「……奪う者の声が届くと思うか?」
 マスクの女の声が変わった。
 冷静であった口調に感情が混ざる。
 その変化が永一の動きを止め、そして――部屋の非常ベルが鳴った。
 直後、仕込んでいたガスが室内に充満する。
 目を鼻を焼くような感覚、明らかな催涙ガス。
 咄嗟に青年が離れた時、そこには誰もいなかった。

「……逃げられたねぇ」
 薬瓶片手に永一が呟いた。
 階下は猟兵が確保している、ならばこの部屋を駆け抜け、屋上へと上がるしかない。
 追跡の網が狭まり始めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
(部屋の毒…出血、神経系なら無視可能
腐食系は●環境耐性で一時凌ぎ
電子の毒は自己●ハッキングで防壁構築…相対の時間をどれ程稼げるか…?)

貴方の存在無くば命潰えていた…少年の現状と恩人に刃向ける行為に思う所はあります

ですが、お通しする訳には参りません
人に仇成す『過去』を討つ
その為に私達はこの地に赴いたのですから

中身判らぬ注射握る手を●武器受け●盾受けで弾き防御
反撃の近接攻撃からの至近距離格納銃器発砲

やはり、お見通しでしたか

ワイヤーアンカーを発射し●操縦●だまし討ち
●ロープワークで捕縛

点から予想外の線のなぎ払い…対処しきれますか!

UCで拘束

●怪力をハッキングで制御
微細な力加減●見切り剣で表面削ぎ落し



●War=Machine

 ウルフズヴェインが通路を走り、近くの部屋へ飛び込む。
 通路から階段へ一直線に走りはしない、猟兵の数は多く、自分は一人。
 いかに攪乱していくかが勝負のカギになる。
 勿論、猟兵達もそれは認識していた。
 だから――部屋には戦機が一体、待ち受けていた。

「貴方の存在無くば命潰えていた……少年の現状と恩人に刃向ける行為に思う所はあります」
 実体剣を抜くのはトリテレイア・ゼロナイン。
「ですが、お通しする訳には参りません」
 剣と盾を構えるはまさに現代の騎士。
「人に仇成す『過去』を討つ。その為に私達はこの地に赴いたのですから」
「ならば問おう」
 短外套より伸びる腕には注射器。
「過去が成せなかった想い……貴様は受け継げるか?」
「……」
 答えは無かった。
 代わりに二人の歩みが戦いのそれに変わった。

 小刻みにフットワークを刻み、ウルフズヴェインが薬瓶を投げる。
「くっ……酸ですか」
「例え鉄の身であろうと、配合を変えれば『毒』足りえる」
 大盾に身を隠したトリテレイアへオブリビオンが継げる。
「そして――」
 盾を壁に騎士の視界からマスクの女が消えた直後。
「これも貴様にとっては『毒』だ」
 咄嗟に格納銃器を展開したトリテレイアの腕に注射器が刺さり、内部機器に反応した薬物が起電、流し込まれた高圧電流に耐え切れず、ヒューズが飛び、基盤が焼ける臭いが辺りに立ち込める。
「やはり、お見通しでしたか」
 呟く騎士の左腕は力なく垂れ下がり、ウルフズヴェインはバックステップで間合いを広げた。

 あとは逃げるだけ、それでウルフズヴェインはこの戦場での勝利を収める……。
「――ですが!」
 だが、勝負はまだ終わっていない!
 トリテレイアの腰から放たれたワイヤーアンカーが女を狙う。
 だがウルフズヴェインは難なくそれを避け、後退を始める。
「終わりだ」
「いいえ! 点から予想外の線のなぎ払い……対処しきれますか!」
 マスクの女が告げた宣告を騎士は拒んだ。
 薙ぎ払うように振り回すワイヤーによって。

 Wired・sub・arm・mode:stun
 腰部稼働装甲格納型・隠し腕

 通称WISAMSが鞭のようにオブリビオンに絡みつくと流れるは高圧電流。
「貴女の中に居る命、救わせていただく」
 動けないオブリビオンめがけてトリテレイアの剣が振り下ろされた。

「貴様を一つ勘違いをしている」
 ワイヤーごと、その身を皮一枚を削ぐような斬撃を受けながらも女は告げた。
「この身は貴様らが助けようとする少年が変容したもの、中にはいない」
「――!?」
 騎士の驚愕を見逃さず、ウルフズヴェインはその場を離れた。
「お待ちな……!?」
 突如、スプリンクラーが作動し、戦機を濡らした。
 毒ではない、ただの水。
 だが毒使いが使うことにより、それは心理的なトラップに足りえるのだ。
「――猟兵各位に伝達」
 騎士が通信回線を開く。
「目標の身体は少年が変容したとのこと、腹の中にはおりませぬ!」
 通信が伝わってくれれば……後を託すことしかできない現状に戦機は悔しさを隠しきれなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木常野・都月
その体は少年のものだ。
UDCのものじゃない。
その体から出て行け。

体と心を返して貰いたい。
きっと、野生や野良に限らず、生きたいという気持ちは、生き物の本当だから。

[野生の感、第六感]で周囲の状況に即座に対応するようにしたい。

まずは、敵が逃げないように、地の精霊様の[属性攻撃]を使用したい。
電磁場による重力操作で、動けない程度に押し潰したい。

敵の攻撃対策に、風の精霊様に頼んで、新鮮な空気を俺の周囲に集めて、迷路を抜けたい。
風の精霊様に出口に続く空気の流れを拾って貰いたい。

あと、毒を吸い込まないように気をつけたい。

UC【妖狐の通し道】を使用して、UDCから少年の体と心を可能な範囲で救出したい。


数宮・多喜


用事、ねぇ。
生憎だなぁ、アタシらにもあるんだよ。
……アンタにね。
離脱して、どこかに身を隠そうって腹だろうね。
逃がすもんかよ、アンタの元になったコ共々な……!

言葉を交わしに姿を一度でも見せてくれたなら好都合さ。
その邂逅の間にテレパスを繋ぎ、
そいつをレーダーのマーカーのように使って迷路の状況を『情報収集』し。
決して見失わないように『追跡』する!
ささやかだけど『毒耐性』もあるんでね!

テレパスを繋いだ本当の目的は、別にあるさ。
このテレパスで、元になった子供の意識へ話しかけ、
生きようとする意志を『鼓舞』する。
自分がいた証を何か残したいんだろ?
だったら、その力を捨てろ。
捨てた先に、「明日」があるのさ…!



●Fox&Telepath

「用事ねえ」
 上の階へ駆け上がったウルフズヴェインを待っていたのは数宮・多喜。
「生憎だなぁ、アタシらにもあるんだよ……アンタにね」
 オブリビオンに向ける視線は鋭いナイフを思わせ。
「離脱して、どこかに身を隠そうって腹だろうね」
 かける言葉は刃すら隠そうとしない。
「逃がすもんかよ、アンタの元になったコ共々な……!」
「その体は少年のものだ」
 多喜の言葉を継ぐように木常野・都月が口を開く。
「UDCのものじゃない。その体から出て行け」
 野生や野良に限らず、生きたいという気持ちは、生き物の本当。そう信じているから、狐は体と心を返して貰いたいと願う。
「……断る。だったら、あのマフィア達より先に少年を助けるべきだったな。そうすれば呼び水とはならなかった」
 だがウルフズヴェインは拒絶し、世界を理由にした。
「貴様達がこの街を変えようと願えば、こうはならなかった」
 マスクの女の視線にあるのは軽蔑、そして拒絶の迷宮が猟兵を隔てた。

「UDCを逃がす気はないよ」
「――!?」
 ユーベルコードによる汚染物質の迷路。
 もともとは多数の敵を殺すための罠であるが、今は逃走への武器となる。
 だが、オブリビオンが時間稼ぎの迷宮を発動させた直後、何かがウルフズヴェインを押さえつけるかのように動きを封じ、足元の床を陥没させる。
 それは都月が精霊へ願った御業。
 重力によって動きを封じられた女を捕らえるべく、二人は迷宮の中へ飛び込んだ。

「ナイスだ、木常野さん!」
 せき込む口元を抑え、多喜が進む。
「大丈夫か?」
 その様子に都月が心配そうに声をかけるがテレパスの女は笑みを浮かべて答えとする。
「大丈夫、テレパスのリンクを繋いだ……あいつの位置は嫌でもわかる」
「じゃあ、あとは風の精霊様に出口に続く空気の流れを拾ってもらおう」
 狐の言葉に頷き、多喜が先を進んだ。
 だが、せき込む数は徐々に増えていく……。

 暗い暗い闇の中、一筋の光と共に声が響く。
「なあ、あんた!」
 それは多喜が送る糸。

 テレパシー リンク
 超感覚探知

 闇の中、受け皿となった少年は糸を掴む。
「自分がいた証を何か残したいんだろ?」
「……ちがうよ」
 女の言葉を少年は拒む。
 そんな理由で生きてはいないのだから。
「その力を捨てろ。捨てた先に『明日』があるのさ……!」
「何を言ってるの?」
 少年が答えた。
「おれにはあんたがいっていることが分からない、くすり……くすりはないの!」
「――!?」
「当てが外れたようだな」
 割り込む声がした。
「薬に逃げたこいつに何を求めた? 腹も満たせず、生きる事の苦しさしかしらない人間に何も与えずに未来を求めるのが貴様達のやり方か」
 ウルフズヴェインの言葉は現実そのもの。少年が見てきたものをオブリビオンは知っていた。
「違う!」
 だが、多喜は声を上げる。
「何もしないままだったら、明日はない! だから……だから……」
 それ以上は言葉にならなかった。
 毒ガスと汚染物質に満たされた中、耐性だけで乗り切り、テレパスのリンクを張り続けた限界が来た。
 迷宮を抜けた時、テレパスの女は意識を手放し、コンクリートの床に倒れ伏した。

「貴様は上手く潜り抜けたか」
「風の精霊様が味方してくれた」
 ウルフズヴェインの言葉に風を纏わせて、都月が走る。
「次は俺の意志を通させてもらう」
 狐が拳を握り叩き込むのは祈り――少年の心と身体を救出しようと放つ妖気の一撃。

 ヨウコノ トオシミチ
 妖狐の通し道

「……届かなかった」
 拳はマスクの女に確かに届いた。
 だが意志に伴う代償は大きすぎた。
 故に都月はその場に膝を着き、オブリビオンはそこに立つ。

 二人を残し、ウルフズヴェインは上の階を目指す。屋上からならビル伝いに逃げられると信じて。

 ……たい。

「――!?」
 オブリビオンが腹に視線を落とす。

 ――戻りたい!

 それは少年の意志。
 道は開かれ、今はまだ蜘蛛の糸だが、それは確かに握られた。
 二人の猟兵の献身によって。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ミネルバ・レストー
通してあげたいわね、本音としては
いっそ「あなた」のままでいた方が
あの子も幾分か救いがあるようにさえ見えるから

でも、こちらもお仕事なの
ごめんなさいね
廃ビルならそこらに瓦礫くらいあるでしょ
「念動力」でそれを浮かせて「地形の利用」をするわね
注射するならどうぞお好きに、その一手の間に瓦礫を投げつけてあげる
その針を自分に刺すのかわたしに刺すのかは知らないけど
回避するのも別にいいのよ

本命は【探偵屋】
回避行動なり瓦礫の直撃なりで姿勢を崩してるところに一撃
「部位破壊」で狙うは利き腕の肩口
いい?致命的っていうのは何も文字通りの意味ばかりじゃないの
あなたの継戦が不可能になることを言うのよ

だって、生きたいんでしょ?


ティオレンシア・シーディア
うっわ科学毒?破魔とか解呪が通じないから地味に面倒なのよねぇ…
さすがに中毒で行動不能は勘弁ねぇ。ゴールドシーンにお願いしてラグ(浄化)とエオロー(結界)で〇毒耐性のオーラ防御を展開。〇時間稼ぎの一時しのぎ程度にはなるでしょ。

ゴールドシーンで描くのは孔雀明王と迦楼羅天の梵字。孔雀明王の権能は毒を祓い、迦楼羅天の権能は毒を喰らうもの。毒使いを相手にするにはうってつけでしょぉ?●黙殺の〇範囲攻撃で逃走経路を潰しつつ、一帯纏めて○浄化しちゃいましょ。

…例の子、どうしたもんかしらねぇ…
こいつブッ倒してからなのは当然だけど。あんまりあたしたちが横車押しても、きっとロクなことにならないのよねぇ…



●Master&Icegirl

「……例の子、どうしたもんかしらねぇ」
 ティオレンシア・シーディアがリキュールのように甘いトーンのボイスで呟き、考え込む。
「あいつブッ倒してからなのは当然だけど。あんまりあたしたちが横車押しても、きっとロクなことにならないのよねぇ……」
 だが、その思考は現実的だ。それこそイエローパロットのように。
「通してあげたいわね、本音としては」
 ミネルバ・レストーがコンクリートの破片を蹴る。
 その視線が一点を見つめて離さない。
 それは二人が居る部屋の入口。
 突然、扉が蹴破られると、転がり込むグレネードからガスが噴出する。
「いっそ『あなた』のままでいた方が、あの子も幾分か救いがあるようにさえ見えるから」
 ネリーの言葉は煙の向こう側に届いたかは分からない。
 だが、ウルフズヴェインは道を開くため、この部屋を毒で支配した。

『ᛚ』――浄化の
『ᛉ』――結界を
 今――ここに!

 即座に空を飛ぶのはシトリンのペンを形どった鉱物生命体ゴールドシーン。
 空に描くのは二文字のルーン。
 それがトリガーとなり障壁がガスを阻む。
「……アリガト」
「どうしたしまして。でも、破魔とか解呪が通じないから地味に面倒なのよねぇ……時間稼ぎの一時しのぎ程度が限界よぉ」
 そっけない態度で礼を述べるネリーに対し、ティオレンシアは状況を伝える。
「魔法使いという奴か」
 ガスの向こう側より声が響く。
「だが毒が切れると思わないことだ」
 金属が転がる音がもう一つ。
「私は呼吸器系をサイバネ化している」
「毒を撒き、わたし達の動きを止めたまま、逃げることが出来るって言いたいのね」
 ウルフズヴェインの言葉を聞き、こおりの少女が意図を見抜いた。
「それなら」
 ならばと糸目の女がシトリンのペンを握る。
「こういうのはどうかしらぁ?」
 虚空へ描かれるのは今までと違う文字であった。

『म』――毒を祓うは孔雀明王!
『क』――毒を喰らうは迦楼羅天!

「お経?」
「梵字よ、言葉一つが仏様を意味するのぉ……だから」
 ネリーの問いに答えるルーンの使い手。刻むサンスクリットが権能を発揮すれば、周囲は清められ、毒はただの空と化す。
「毒使いを相手にするにはうってつけでしょぉ?」
「――まだだ」
 ガスが晴れ、マスクの女の手に握られているのはグレネード。
 そう敵味方の区別をしなければウルフズヴェインはこの毒を三度放つことが出来る。
 だが、それを見逃すティオレンシアではない。
「ゴールドシーン!」
 刻まれるのは複数の魔術文字。
 それは門、それは砲。
 文字を通して放たれる刃、その総称こそが――

 Desire
 黙 殺

 魔道の才能無きものが望んだ力の顕現。
 幾何学模様を描き複雑に飛翔する刃がグレネードを吹き飛ばし、オブリビオンを制圧射撃の如く拘束する。
 そこへ――こおりの少女が歩みだした。

「逃走はさせないという事か」
「こちらもお仕事なの、ごめんなさいね」
 刃の暴れる中、はじけ飛ぶ瓦礫をキャッチしたネリーがそれを投げる。
 同時に短い外套が跳ね上がり、注射器が少女の腕に突き刺さった。
 腕を抑えて、その場に膝を着くネリー、そしてウルフズヴェインは飛んできた瓦礫を横っ飛びで避ける。
「ギムレットには……早かったわね」
 少女の発する軽口らしきものが女の耳を打った。
 オブリビオンが視線を向けた先には膝立ちでプラチナのリボルバーを構えるネリーの姿。

 Detective agency
 その名は――探偵屋

「いい? 致命的っていうのは何も文字通りの意味ばかりじゃないの」
 回避直後を狙った膝射の一発。
「あなたの継戦が不可能になることを言うのよ」
 少女の視界に映るのは利き腕を撃ち抜かれたウルフズヴェイン。
 その手から滑り落ちるように薬瓶が落ち、ガラスが割れる音がした。
「――!」
 呻き声一つ上げずに、オブリビオンは薬瓶を蹴り、走る。
 直後、割れた薬瓶から煙が発生して、二人の視界を遮った。
「だって、生きたいんでしょ?」
 煙が晴れ、姿の消えたウルフズヴェインへ向けて問いかけるネリー。
 ティオレンシアはそれを黙って聞いていた。

 救いはどこにあるのだろう?
 けれど、これにも終わりの時は訪れる。
 そう近いうちに……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

叢雲・源次
【煉鴉】

少々頭が回るタイプのUDCらしい…依り代の知恵か、それとも奴の性質なのか…まぁいい。邪神の眷属であるならば討つ。そして人に戻す。それだけだ。

(インタセプターによる階層内の広域走査を実行。トラップの位置把握、逃走経路の把握を試みると同時にアナライザーで網膜スキャン。視界内のトラップの正確な位置を確定させる)
>interceptor active...scan_start
>capture...analysis...complete

炎上注意だ。悪く思え。
(右義眼より地獄の蒼炎が溢れ出で、周囲に展開。その場から一歩も動かず蒼炎を操り毒を焼き払い経路の遮断を試みる)

グウェン、後は任せる…食うなよ


グウェンドリン・グレンジャー
【煉鴉】
あなたは、UDC?まだ、ヒト?
それとも、私みたいな、どっちつかず?……今は、お話、できない、ね
(鈴鹿御前を構え)

毒、受けたら、浄化で、解毒
Peacock Swallowtailで、呪殺弾……の援護射撃

Butterfly kissで、強化する、のは、攻撃力
心臓の刻印……私に、もっと、喰らうだけじゃない、戦う力、寄越して
(限界突破。刀を握る手に力が籠めて。野鳥めいた第六感で察知する。確証は持てないが、恐らくは)
なっちゃった子、多分、お腹に、いる

(浄化の力を刃に移して。踏み込む力に念動力でブーストを付けて、先制で斬りかかる。腹を避け、四肢を狙う)
あなたの、中に、いる子、ひとまず、返して、貰う



●Blaze Crow

「あなたは、UDC?まだ、ヒト?」
 片腕を抑えて部屋に転がり込んだウルフズヴェインへ、グウェンドリン・グレンジャーが問いかける。
「それとも、私みたいな、どっちつかず?」
「うるさい!」
 おそらくは初めてであろう。
 感情を見せることはあったがオブリビオンがここまで激情を露わにするのは。
 それほどまでに、傷は痛み、思考を遮るノイズが頭を打つ――生きたいと。

「……今は、お話、できない、ね」
「少々頭が回るタイプのUDCらしい……依り代の知恵か、それとも奴の性質なのか」
 刀を構えるグウェンの隣に叢雲・源次が立った。
「……まぁいい。邪神の眷属であるならば討つ。そして人に戻す。それだけだ。」
「チィッ!」
 舌打ちが響き、オブリビオンが転がるように移動し、体勢を整える。
 マスクの女の視界は入るのは距離を詰める女と後に控える男。
 直後、二つの注射器が飛んだ。
 戦いはもう始まっていた。

>interceptor active...scan_start
 左腕の情報端末がこの部屋の安全を確認する。
 どうやら、逃走経路だったらしい、トラップの類は無い。

>capture...analysis...complete
 だが、左目がスキャンした室内には危険物は二つ、自分とグウェンに迫る注射器。

「ぐっ!?」
 呻き声が漏れた。
 耐衝撃ベストの繊維間を貫き、左腕に刺さった注射器から打ち込まれた毒が源次の筋肉を溶解し、神経伝達を遮断する。
 だが……
「問題ない……炎上注意だ。悪く思え」
 炎が密室を支配した。

 Blaze blue
 蒼炎 結界

 右の義眼より溢れ出た地獄の蒼炎が辺りを炎を牢獄と変え、突き刺さった注射器を焼き、逃走経路を塞ぐ。
「悪く思うぞ」
 軽口だろうか、それとも本気だろうか。
 マスクの女の言葉を聞いた直後、硝子瓶が割れ、炎と反応した催眠ガスが男の呼吸器を侵食し、意識を刈り取っていく。

「グウェン、後は任せる……食うなよ」

 全てを少女に託し、男は意識を手放した。

 一方、託されたグウェンの体内に見たされた浄化の力は、突き刺さった注射器の毒を拒む。
 直後、カラスアゲハを模したPeacock Swallowtailが薬液に満ちたシリンダーを吹き飛ばし、青白い燐光を弾丸としてウルフズヴェインへと放つ。
「――ッ!?」
 呪殺の燐光を警戒し、動きを止めるオブリビオン。
 そこへ少女は飛び込んだ。
「心臓の刻印……私に、もっと、喰らうだけじゃない、戦う力、寄越して」
 Peacock Swallowtailが溶け込むように姿を失い、グウェンを青白い光で包み込む。

 カラスアゲハハネムラナイ
 Butterfly kiss

 ……お腹にはあの子はいないと聞いている――けど!

 疾走する中、思考が回転する、それは剣より速く、銃よりも速く、数式の証明を飛ばして答えを導き出す様。
 浄化の力を刃に込め、踏み込む力に念動力で加速すれば、その斬撃は何物も逃さない。
「あなたの、中に、いる子、ひとまず、返して、貰う」
 鈴鹿御前から肉を斬る感触が伝われば、ウルフズヴェインの利き腕はコンクリートの床を転がった。
「――っ!」
 呻き声一つ漏らさず、けれどバランスを失って倒れるオブリビオン。
 だが、咄嗟に残った腕でグレネードを投げれば、転がっていた腕は炎に包まれる。
 直後立ち昇るは毒に満ちた煙。
 猛毒が戦場を支配した。

 源次の炎は既に消え、残るは毒の煙のみ。
 グウェンは男を抱えて、部屋の外へと逃げた。
 仕事は十分果たしている。
 屋上で待っている仲間相手に片腕で勝てる道理はもうない。
 あとは……託すだけであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

荒谷・つかさ
生憎とこちらも「仕事」なのよ。
あなたには悪いけど、通すわけにはいかないわ。

【XGG00『機煌炎神』スルト】発動
召喚した機体と合身、鋼鉄の装甲を身に纏う
水中や宇宙での戦闘も可能なこの機体なら毒ガスの吸入は防げるし、刺突もちゃんと防御すれば装甲で弾ける筈
可燃性ガスが混じってればそれの燃焼エネルギーを取り込んでパワーアップといきましょう

準備が整えば、あとは突撃あるのみ
余りあるパワー(怪力)とドリルと炎で以て、壁をぶち抜き毒を焼き払いながら真っ直ぐに奴を追う
閉所で炎をぶちかませば、予測は出来ても回避は難しい
もし毒ガスが可燃性であったのなら、尚更よ

その策、全て力ずくで押し通らせてもらうわ



●Surtr

 生きなくてはいけない。
 ……何のためだろう?
 私が  の一人だから?
 それとも、肉の代わりとなった子供のノイズか?
 ……分からない。
 けれど……生き延びなければならない。
 例え、四肢を失ってでもやらなくてなならないことがあるはずだから。

「生憎とこちらも『仕事』なのよ」
 屋上へ上がったウルフズヴェインに立ちはだかるのは荒谷・つかさ。
「あなたには悪いけど、通すわけにはいかないわ」
 彼女の背後には別のビルの屋上。
 このまま走りすぎれば逃走は可能であった。
「……」
 仕事――その言葉がオブリビオンに冷静さを取り戻させる。
 ここから生き残ることが最初の仕事……ならばそれに徹するのみ。

 仕事に徹する気配。
 それをつかさは十二分に感じ取る。
 こちらを倒しに来てくれた方がまだ容易かったろう。
 けれど、相手は逃げるために行動し、技術もそれに長けている。
 ならば、どうするか……?
 だが、思考はそこで終わりを告げる。
 目の前のオブリビオンが駆けだしたのだから。
 逃げる者と阻む者、互いに手札を切る時が来たのだ!

 走るウルフズヴェインに待ち受けるつかさ、羅刹が何かをするより先に、その腕に注射器が突き刺さり、毒が腕を封じる。

 ――勝った!

 オブリビオンが勝利を確信し、つかさの横を通り過ぎる。
 あとはこのまま屋上を飛び越えるだけ。
 それだけで――次の目標へ向かって生きる事が出来る!
「合身!!」
 だが、その確信を叩き潰す声が背後より響いた。

 つかさは考えることを止めていた。
 諦めではない、放棄でもない、ただ……己を信じるが故の結論。
 詠唱と共に空に召喚される合身用機体、そこへ飛び上がれば人と機械は一つとなり、今、ここに参上するのは――

 XGG00!
 機煌炎神!!
 ――スルト!!!

「機煌炎神、見参!」
「――!?」
 オブリビオンが振り向けば、そこに立っていたのは3mの鋼鉄巨人!
 そして振り向いたのが仇になった。
 その隙を突き、巨人の放つ炎が逃げ道を塞ぎ、さらに――
「その策、全て力ずくで押し通らせてもらうわ」
 飛び上がったスルトが叩き込むドリルがビルの屋上に突き刺さり、足場の半分を削り取った!
 ウルフズヴェインは逃げ道を失い、つかさは巨人を隣のビルへ着地させ、その行動を牽制する。
 毒の影響もあるが、巨人で出来る事は済ませた。
 後は仲間に頼り、終わりを見守るのみ。

 終わりの時は二人の猟兵と共に来た。

大成功 🔵​🔵​🔵​

山岡・智花
相手がUCで迷路を作るなら、こちらもUCで攻略
一反木綿に化けて、なるべく毒ガスの薄い高さを飛んで追うよ
「こーゆー罠って、フツーは人間の顔を狙って出すはずだから……」
足元が安全か頭上が安全か【野生の勘】で見極めていく

戦闘も一反木綿のままで行う
尻尾を振る要領でひらひらフェイントかけながら、少年のいる腹を避けるようにナイフで攻撃
「その子から離れろぉっ!」

生きたい、って気持ちがあるなら
それを少しでも叶えるほうがきっと幸せって、ウチは思うから

彼が人間に戻ったら、気持ちが落ち着くまで黙って狸の姿で近くにいるよ
コンパニオンアニマルとかガラじゃないけどさ……こんな癒しでも、ないよりはマシだと思うからさ


神酒坂・恭二郎
綺麗事は抜きでいこう
ここはそう言う土地だ

「坊主。お前さんの未来は詰んでいる」
誤魔化さずに告げる
「薬でイカれてても分かる筈だ。お前さんが選んだ結果だ」
誤魔化させずに告げる

「だから、もう一度選べ」
刀を抜く
「そいつに全部を委ねて死ぬか、手前の選択を生きて死ぬかだ」
【覇気】を持って【覚悟】を問おう
己の意志で武器を手にした者には、持たねばならない矜持もあるのだ

戦闘方針は、斬撃の【乱れ撃ち】で【早業】
奴の回避UCに構わず、詰め将棋の如く建物の隅に【おびき寄せ】るのが目的だ
詰めは、雲耀の速度で【鎧無視攻撃】で壁ごと一閃したい

「生きたければ、動くな」

少年が全てを奴に委ねていないのなら、この指示を守れるはずだ



●Ayakashi raccoon&Space Ken=Go

「綺麗事は抜きでいこう。坊主。お前さんの未来は詰んでいる」
 ウルフズヴェインへ迫る二人の猟兵の内、神酒坂・恭二郎が開口一番、本音を口にする。
 ここはそういう土地なのだから。
 故に、一切の誤魔化しは無かった。
「薬でイカれてても分かる筈だ。お前さんが選んだ結果だ」
 故に、一切の誤魔化しを許さなかった。
「だから、もう一度選べ」
 恭二郎が刀を抜く。
「そいつに全部を委ねて死ぬか、手前の選択を生きて死ぬかだ」
 問うのは覚悟。
 己の意志で武器を手にした者には、持たねばならない矜持がある。
 これはそういう戦いなのだから。
「お前は優しいな」
 オブリビオンの双眸が猟兵をにらむ。
「けど遅い。もう遅い、全てはここで終わる」
 頭の中に響く生きたいという意思を抑え込み、ウルフズヴェインが告げる。
 猟兵、オブリビオン、そして少年――それぞれにとっての最後の時が始まった。

 マスクの女が最後に作り上げるのは汚濁の迷宮。
 壁自体が毒となり、気化した材質は毒ガスへと変わる。
「乗って!」

 ――トリプルどろんチェンジ

 自らの身を更なる化生へ変える術を以って、一反木綿と化したもう一人の猟兵、山岡・智花が促せば、スペース剣豪はその背に乗る。
「こーゆー罠って、フツーは人間の顔を狙って出すはずだから……」
「なら、ギリギリの高さだな」
 智花の言葉に恭二郎が答えを明示する。
 人の高さにガスを満たすなら、空気より重たいほうが良い。
 どんな身長にも対応できるうえに倒れれば濃度の濃い毒で止めを刺せる。
 渡世に生きるが故に、スペース剣豪は人の性を知り。
 末法に生きるが故に、一反木綿は生き残る術を持っていた。
 天井スレスレに飛び迷宮を抜けた先には、オブリビオンが一人立っていた。

 飛び降りた恭二郎が真正面から踏み込んで、斬撃の嵐を打ち込んでいく。
 ウルフズヴェインが身を翻して刃を掻い潜ると、注射器をその腕に打ち込み嵐を止める。
「その子から離れろぉっ!」
 だが、間髪入れずに飛び込んだ智花のナイフがオブリビオンの残り一本の腕を切り裂いた。
 たたらを踏むように後退するマスクの女。
 だが、あと数歩でビルより転落することに気づく。

 ――追い詰められた!

 オブリビオンがそう確信したのは、その首へスペース剣豪の一振り、銀河一文字が突き付けられた時。
「生きたければ、動くな」
 同時に一反木綿も距離を詰める。

 ――生きたい、って気持ちがあるなら。それを少しでも叶えるほうがきっと幸せって、ウチは思うから。

 その思いを込めたナイフがウルフズヴェインの脚に突き立てられ、オブリビオンの意識がそちらへ持っていかれた、その時――
 煌めくのは神酒坂風桜子一刀流!

 モガリブエ
 虎落笛

 雲耀の一閃によってマスクの女の首が刎ね飛ばされ、屋上へ落ちていく。

 ――アア

 全てを思い出したかのようにウルフズヴェインが声帯を失った唇を動かした。

 ――ヤハリ、オマエハコナカッタ

 それは誰に向けたものなのかは知る者はおらず、そして質量だった過去は大地に叩きつけられる前に塵となって霧散した。

 銀河一文字を鞘に納め、恭二郎が屋上から街を見下ろしていた。
 どこにでもある世界。
 どこにでもある土地。
 事件は終わり、後は人の仕事で終わらない……これはそういう仕事なのだから?
 分かってはいるが、それでも言葉に出来ない想いを胸に秘めて視線を動かせば、見えるのは横たわった少年の横に佇む狸。
 まるでコンパニオンアニマルよろしく、前足でじゃれつく智花。
 何もしないよりはマシだと信じるが故に、狸は少年に寄り添っていた。

 名乗らずの過去は死に、母体となった子供は生き残った。
 だが、話はここで終わらない。
 これから――そう、これからの選択も猟兵に委ねられているのだから。
 どのような答えが正しいのか。
 それを猟兵は選択することになる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『人間の屑に制裁を』

POW   :    殺さない範囲で、ボコボコに殴って、心を折る

SPD   :    証拠を集めて警察に逮捕させるなど、社会的な制裁を受けさせる

WIZ   :    事件の被害者と同じ苦痛を味合わせる事で、被害者の痛みを理解させ、再犯を防ぐ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●明日

「旦那、取引だ」
 UDC-HUMANの呪縛から解放された少年。
 彼を抱えてビルから出た猟兵へマフィアの一人が申し出る。
「そいつはこの街でやっちゃいけないことをした、落とし前は着けてもらわないとならない」
 くたびれたスーツの男は笑みを絶やさずに言葉を続けた。
「分かってると思うが、命には値段がある。勿論、俺もそいつも大した高くはねえ、けど奪った分は返してもらわんと釣り合いが取れない――そんなところだ」
 気の利くであろう部下が投げた鞄をマフィアが受け取り中身を見せるように地面に置いた。
「ドルだ。勿論、この国のじゃねえ。これでそいつを買う――それでどうだい?」
 交渉と言う名の演説はまだ続く。
「なあ、そいつを生かしておくのか? クスリに溺れちまった哀れなガキを……それとも旦那達はそいつの一生を見るのかい? なあ、ここにはマンホールを開けば一杯、同じようなガキが居るんだぜ。そいつらを見捨てて、そいつだけを救う……それで気が済むのかい? なあ、ヴィジランテやディテクティブ・ザ・ハンドみたいなヒューマニストなMANGA話はごめんだ、取引で済ませよう……なあ旦那、うちのバカがうっかり引鉄を触っちまう前に頼むぜ」

 無法にも法はあり、その上で彼らは彼らなりの流儀で動いた。
 君達がどうするかは、自由であろう。
 ただ、変わらないことは――明日は昨日と変わらない。

 それだけだ。
神酒坂・恭二郎
「あんたらの筋目は分る。交渉の内容も悪くない」
世慣れた調子で頷く
ボスを殺られてなぁなぁで済む訳が無い
一方的でなく出せる物を提示する姿勢も筋は通る

「だが、最後の一言が余分だったね」
脅しとは相手を選んでやるべきだ

キンと鍔鳴りの音が鳴る
【早業、範囲攻撃、鎧無視攻撃、部位破壊、優しさ】

「動くな」
【覇気】を込めて告げる
「お前さんらを斬った。だが10分だけ動かなければ、くっつくから安心してくれ」
信用しない奴も、銃に伸ばした手が落ちる事で分るだろう。後で拾って医者に見せれば、まぁ繋がる筈だ

「非礼の対価だ。あの坊主にちょっとだけ時間をやってくれ」
異邦人の介入はここまでだ

「後は好きに生きるんだな」
一言残し去ろう



●代償

「あんたらの筋目は分る。交渉の内容も悪くない」
 最初に一歩を踏み出したのは神酒坂・恭二郎。
 渡世の仁義を知るがゆえに、敵の面子すらまずは立てる。
「ボスを殺られてなぁなぁで済む訳が無い。かといって、一方的でなく出せる物を提示する姿勢も筋は通る……」
 しかし、その目に笑みは無かった。
「だが、最後の一言が余分だったね」
 その言葉にマフィアの眉が歪む。
 相対する者が持つ刃の鋭さを見誤った。それを悟った時にはすでに遅く。
 刀は鍔鳴りの音を終え、鞘へと収まった。
「動くな」
 剣豪の言には覇の気配。
 誰もがその言葉に逆らうことができなかった。

「……旦那、何をした?」
 マフィアのこめかみに冷たいものが流れた。
 彼は自身が背筋が凍る思いというものを今、体験している。
「お前さんらを斬った。だが十分だけ動かなければ、くっつくから安心してくれ」
「何をふざけてやがる!!」
 恭二郎の言葉を信じない若く血気盛んな男が銃を抜こうとして、手首から先が音もなく落ち、そして地面に転がる音が鈍く響いた。
「後で拾って医者に見せれば、まぁ……繋がる筈だ」
「……で、旦那は何がしたい?」
 剣豪の言葉に対し、男は悲鳴をBGMにしつつ、暗に問う。
 ――殺せる力を持つのに殺さなかった理由を。
「非礼の対価だ。あの坊主にちょっとだけ時間をやってくれ」
「……十分だ、その間は俺達は動かねえ。これで充分だろう?」
 恭二郎の言葉にマフィアが従う。
 動けないのもある。
 非礼の対価を支払ったのもある。
 だが、命を取らなかった恩と恥。
 その釣り合いの結果であった。

 全てを悟った剣豪はマフィア達に背中を向けると、仲間の横をすれ違い、一人去った。
「後は好きに生きるんだな」
 少年に選択肢だけを残して。

 それが神酒坂・恭二郎の選択であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霑国・永一
あっはっは、強硬手段に出るでもなく交渉から入るとは中々丁寧だなぁ。
ま、俺は最初から君たちのルールに介入するつもりは無くてねぇ。少年を一応は生かしたのも外部からルール無視して来たやつが気に食わなかったに過ぎない。金は有り難く貰って軽く散歩した後帰るよ。

さて、これでやっと時計の針は動いた。この少年がルールによる制裁で死ぬか、運よく生き永らえるか。せっかくだしこっそり結末でも見に行こう。愉しそうだ。
俺は止める気は毛頭無いけど、他のやつらはどうかなぁ。きっと正義を振りかざし、目の前の人を助けるとかするのかもしれない。正義の反対は別の正義でしかないというのに。ま、それも含めてエンターテインメントだ。



●観劇

「あっはっは、強硬手段に出るでもなく交渉から入るとは中々丁寧だなぁ」
 拍手と共に近づくのは霑国・永一。
 マフィア達が動けないのをいいことに、彼らの鼻先まで自らの顔を近づける。
「ま、俺は最初から君たちのルールに介入するつもりは無くてねぇ。少年を一応は生かしたのも外部からルール無視して来たやつが気に食わなかったに過ぎない」
 男達に背を向け、永一は転がっている鞄へと右手を突っ込んだ。
「だから金は有り難く貰っておくよ」
 札束片手に笑みを見せ、青年はその場を去った。

「――さて」
 そして場は変わり、倒壊したビルの屋上。
「これでやっと時計の針は動いた」
 そこに立つ姿は永一のもの。
「あの少年がルールによる制裁で死ぬか、運よく生き永らえるか。せっかくだし見物と洒落込もう……ああ、愉しそうだ」
 眼下でこれから起こるであろう劇場に青年の笑みは止まらない。
「俺は止める気はなかったけれど、他のやつらはどうかなぁ?」
 想像するのはマフィアが語った言葉――ヒューマニストなMANGA話。
「きっと正義を振りかざし、目の前の人を助けるとかするのかもしれない」
 あふれる感情、思わず口元を手で隠した。
「正義の反対は別の正義でしかないというのに」
 その下に見えるモノを見られるのが惜しいと思った故に。
「ま、それも含めてエンターテインメントだ」
 けれど、その目に嘲笑はない。
 心情はどうあれ、どんな結末であろうと見届けるという意思がそこにあった。

 これが霑国・永一の選択。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
(少年の治療は他の方にお任せする他ありませんね…)

まずは事務的なお話を

UDC-HUMAN…先の怪物への変異のプロセスは未だ謎のまま
組織にとって原因究明の為のサンプルは一人でも必要です
『過去』が『今』を脅かさぬ為、少年は『保護』させていただきます

そして極めて個人的で恐縮なのですが

弱者を搾取する貴方達が気に入らないのです

指を動かして結構
弾が出る前に制圧する理由が出来ます

過去の意志を受け継げるか…ですか

地下の子供達
潰せばこの地が無法の秩序から混沌と化すであろう組織の根
悪漢の打倒でめでたしめでたしとならぬ世で、只の戦機が、騎士が何が出来るのか

…それを探す為にも先ずは

「少年を引き渡すつもりはありません」


ミネルバ・レストー
取引っていうのはね、同じ世界で生きているもの同士でするものよ
少なくともわたしには、あなたたちのルールなんて関係ない

…まあ、受けた屈辱は同じ方法でしか晴らせないことも知ってるわ
知ってるだけ、乗ってあげる気はなくてよ

わたしにとって、その子がどうなろうが知ったことじゃないけど
しかるべき機関に引き渡して貴重なサンプルにはできるでしょう
一度バケモノになって生還した――理由はそれだけで十分よね?

【Ctrl+C & Ctrl+V】、手下の相手はもうひとりの自分に任せましょう
バカに拳銃を持たせるなんてしつけがなってないこと
死にたくなければわたしの邪魔をしないで頂戴
この案件はね、あなたなんかの手には負えないのよ



●信条

 そして十分の時が経った。
 マフィアの一人が銃を構える中、少年をかばう様に立つのは巨躯の戦機と小柄な少女。

「まずは事務的なお話を」
 先に口を開いたのは巨躯の戦機――トリテレイア・ゼロナイン。
「UDC-HUMAN……先の怪物への変異のプロセスは未だ謎のまま、我らの組織にとって原因究明の為のサンプルは一人でも必要です」
 無法の集団に組織という単語が通じるかは不明であった。
「またこのように人々を脅かさぬ為、少年は『保護』させていただきます」
 けれど、道理としては通じる言葉ではあった。
「わたしにとって、その子がどうなろうが知ったことじゃないけど」
 補足するようにミネルバ・レストーが発言する。
「しかるべき機関に引き渡して貴重なサンプルにはできるでしょう」
 けれど、その目は氷のように冷たい。
「一度バケモノになって生還した――理由はそれだけで十分よね?」
 そこに譲歩というものはなかった。

「取引には応じないってことかい?」
 無法に生きる男の目は鋭くなる。
「取引っていうのはね、同じ世界で生きているもの同士でするものよ」
 ミネルバ=ネリーがため息をついた。
「少なくともわたしには、あなたたちのルールなんて関係ない」
 明らかな拒絶。
「そして極めて個人的で恐縮なのですが」
 続いてもう一人。
「弱者を搾取する貴方達が気に入らないのです」
 トリテレイアが珍しく見せた感情、その価値を知らない者の空気が変わりはじめた。
 交渉が決裂に向かうなら、男達は戦争も辞さない姿勢であった。
 無法の中、法を貫けるのは強者だけ。
 リスクを勘案し、札束を用意した。
 しかし、それが無駄に終われば、あとは自らが強い存在であることを証明しなくてはならない。
 それが生き残るための方法なのだから……。
「指を動かして結構」
 だが戦機は牽制という見えない剣を喉元へ突きつけた。
「弾が出る前に制圧する理由が出来ます」
「……まあ、受けた屈辱は同じ方法でしか晴らせないことも知ってるわ」
 同じくネリーも剣を突きつける。
「知ってるだけ、乗ってあげる気はなくてよ」
 だが、それは見えない剣ではなく、ユーベルコードによる自らのアバターの召喚。
「死にたくなければわたしの邪魔をしないで頂戴」
 デジタルデータの少女が銃を持つ男の前に立ち、威圧する。
「この案件はね、あなたなんかの手には負えないのよ」

「で、そいつだけを救うんだな? また同じ奴が出てくるかもしれないというのに」
 自らの手で部下を制し、マフィアは答える。
「まあ、その方が旦那達には『都合がいい』か、そうだよな。それが道理だ」
「貴方の意見はどうあれ」
 言葉を遮ったのは騎士であった。

 搾取されるであろうマンホールチルドレン達、搾取し無法の秩序を維持するならず者たち。
 悪漢の打倒でめでたしめでたしとならぬ世で、只の戦機が、騎士が何が出来るのか……?

「少年を引き渡すつもりはありません」
 それを知りたいが故にトリテレイア・ゼロナインは選択した。
 そしてミネルバ・レストーも同じ選択肢を選んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

叢雲・源次
【煉鴉】

(支配構造、それがこの『世界』の根底でありルールだ。郷に入っては郷に従え…という言葉は嫌いではない。だが、このケースではそうとも限らん…クスリに溺れちまった哀れなガキとのたまうか…飛んだマッチポンプだ……無法者の法など知った事か)

この少年はお前達には引き渡さん…身柄は俺達が預かる
慈善事業などと勘違いするな。UDC-HUMANの被験者は少ないのでな

これは救いでは無い…有効利用だ
(本国のUDC組織ならば人道に乗っ取った上で扱うだろう)
随分と上から高説を垂れたようだが…取引とはいうのは戦力が拮抗して初めて成立する
引き金を引いてみろ…命までは獲らんが…

腕の一本二本ぐらいは覚悟してもらう


グウェンドリン・グレンジャー
【煉鴉】

(私は難しいことが分からない……でも、この大人が悪い人で、この子とはあまりよくない関わりがあるんだろうということは分かった。雌鴉の勘というやつだ)
その、クスリ、売ったり、配ったの、誰?

(読心術で男達の考えていることを読み、鸚鵡返しして反応を見る)

この子、貰ってく。ある意味、私の同類
有効活用、するから、あなたが、心配しなくて、いい
UDC-HUMAN、検体、貴重
(UDC組織にならツテがある。けど、非人道的な扱いはされないだろう)

……聞いてる?
(腰から生体内蔵式クランケヴァッフェの翼を生やす。長い尾羽でその辺の物を掴み、マフィアに直撃させないよう近くへ全力投擲。次は当てるぞという言外の威嚇)



●強行

 反発の意思を見せる猟兵は他にも居る。
 その中で叢雲・源次とグウェンドリン・グレンジャーの行動は、より直接的だった。

「この少年はお前達には引き渡さん……身柄は俺達が預かる」
 源次の言葉には有無を言わせない強さがあった。
 支配構造がこの無法の地の根底であり、ルールでもある。
 彼自身も郷に入っては郷に従えという言葉は嫌いではないし、郷に従って刀を抜くことで自らが何者たるかを証明することも厭わないであろう。
「慈善事業などと勘違いするな」
 だが、今回のケースは違う。
「UDC-HUMANの被験者は少ないのでな」
 クスリに溺れちまった哀れなガキ、と無法者は口にした。
 だが、それは男達の論理であり、マフィア達の世界が火をつけたマッチポンプだ。
 源次自身に言わせるなら――無法者の法など知った事か!

「その、クスリ、売ったり、配ったの、誰?」
 緊張する空気を和らげるようなトーンでグウェンが口を挟む。
 彼女は難しいことは分からないと称するが、それでも男達が子供を害するであろうことは雌鴉の勘とグリモア猟兵の説明で分かっていた。
「売ったのはそこいらのチンピラさ」
「チンピラ?」
「元締めは俺らの対抗組織だろうけどな」
「対抗組織? あなたたち、の、敵?」
「敵でなかったら……なんだと思うお嬢さん?」
 オウムと会話するようなリズムに苛立ちつつ、マフィアは問い返す。
「だいたい、わかった」
 だが、少女は問いに答えず、ただ呟き、そして――
「この子、貰ってく」
 拒絶の姿勢を見せた。

「てめぇら……」
 マフィアの眉が歪んだ。
 ならば、こちらもルールのためにやりあわないとならない、と言わんばかりに。
「ある意味、私の同類。有効活用、するから、あなたが、心配しなくて、いい」
「心配はしてねえ、有効活用は望んでいねえ、そっちの事情も考えてこっちは金をだした。だめなら殺すしかねえんだ」
「UDC-HUMAN、検体、貴重」
 無法者の論理をグウェンは一言で否定する。
「そう、これは救いでは無い……有効利用だ」
 一歩踏み込み、源次も同意の意を示し。
「随分と上から高説を垂れたようだが……取引とはいうのは戦力が拮抗して初めて成立する」
 そして、見えない刃を抜く。
「旦那、戦争をする気で?」
 スーツの男の言葉に敢えてマフィアは問う。
「引き金を引いてみろ……命までは獲らんが……腕の一本二本ぐらいは覚悟してもらう」
「つまりは……あのバケモノを殺した力を俺達に振るうってことだな?」
 ならず者が右手を上げる。
 その喉笛に黒い切っ先のような何かが突きつけられた。
「……聞いてる?」
 腰から生えた翼のような黒色の刃、それを武器にグウェンが確認した。

 それこそが煉鴉の選択。
 ――場は緊張に包まれつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

荒谷・つかさ
落とし前、ね。
私には鉄砲玉のコストをケチって暴発した、単なる自業自得にしか見えないけれど……まあそれはそれとして。
(出してきた金の額を鼻で笑いつつ)
桁が二つは足りないわね。
彼には価値がある……そう、我々の研究素材(モルモット)としてね。
あれだけの怪物を呼びだす力を見せたのよ。
ただ死なせるのは惜しいわ。
でも、そんな玩具で邪魔立てするというのなら――
(徐々に真の姿に変貌、にたりと微笑みつつ)
――あんたたちも、素材にしてあげようか?
(「怪力」で紙屑のように拳銃を握り潰して見せながら)

……まあ、全部ブラフだけど。

少年へは【破邪入魂拳】を使用
腹パン一発で薬を抜いてやる

今回は偶々よ
次からは上手くやんなさい



●素材

「落とし前、ね」
 張り詰めた空気の中、荒谷・つかさが歩み出る。
「私には鉄砲玉のコストをケチって暴発した、単なる自業自得にしか見えないけれど」
「どうも、いろいろと誤解があるようだが……ガキを差し向けてきたのは俺達に恨みがあるやつらだ。勿論心当たりが多い、だから捕まえて吐き出させるか、手向かうものがどうなるかを知らしめなきゃ、ここじゃ生きてけないのさ」
 マフィアが訂正し、土地の法を説く。
「……まあそれはそれとして」
 男の言葉を遮るように口を開くつかさ。
 その視線が鞄に落ちた。
「桁が二つは足りないわね」
「……ほう?」
 鼻で笑う羅刹に、男が興味深そうに言葉を返す。
「彼には価値がある……そう、我々の研究素材――モルモットとしてね」
「なるほど、素材」
 つかさの言葉にようやく無法者は少年の価値を見出す。
「あれだけの怪物を呼びだす力を見せたのよ。ただ死なせるのは惜しいわ」
「素材なら死体でも構わない……ならどうだろう?」
「生きていないと価値がないのよ。それでも、そんな玩具で邪魔立てするというのなら――」
 羅刹の黒髪から色が抜け、その両腕は魔性を見せる。
「――あんたたちも、素材にしてあげようか?」
 たじろぐマフィアにつかさは笑みを浮かべるのみ。

 呆然と様子を見つめる少年。
 なぜ、自分をここまで庇うのかが分からない。
 だが、それよりも今はくすりが欲しい。
 そうすれば、いやなこともなにもかも、忘れられるのだから。
 そんな思考を臓腑をえぐる衝撃が断ち切った。

「今回は偶々よ」
 女の声に少年が顔を見上げれば、そこには拳を握った鬼の姿。
 痛みはなく、あれほど欲しいと思ったくすりへの欲求は消えている。
「これからは上手くやんなさい」
「うん――そうすれば、また、きもちいいくすりをもらえるよね」
 純粋かつ何一つ変わらない言葉につかさの眉がわずかに歪んだ。

 これが荒谷・つかさの選択。
 たとえ心身の疫を除いても、環境が少年を苦しめる限り、また逃避を求めるであろう。
 だが、今は――この一撃が、それを変える鍵になるのかもしれない。
 答えは後程、語られるであろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

……必死で毒から回復してみりゃ、
こういう交渉現場たぁね。
ああ、気を悪くしたら済まねぇな。
アタシはあまりこういうのに慣れてないんでね。
でも、損得の天秤は弁えてるつもりさ。

アンタらが被った、ヤバいブツの総額。
そして失われた人命。
アンタらのヘッドのもそこまで買い叩かれても文句は言うなよ?
で、アタシらの動いた手数料。
そもそも法外って程じゃないだろ?このガキ一人分の値段ならさ。

そしてこっからが本番だ。
差額を埋める、アンタらのクスリのルートの情報だ。
大丈夫、アンタらを潰す気は「今」無ぇ。
対抗組織の畑も併せて『情報収集』し、
他国の政府にリークしておくよ。

人の世は人の法で裁かれな。



●本性

「……必死で毒から回復してみりゃ、こういう交渉現場たぁね」
 まだ緊迫する状態の中、次に出るのは数宮・多喜。
「ああ、気を悪くしたら済まねぇな。アタシはあまりこういうのに慣れてないんでね」
 空気を和ませるためか、多喜の口調は努めて穏やかである。
「でも、損得の天秤は弁えてるつもりさ」
「具体的には?」
 マフィアが問いかける。
 交渉が改めて始まった。

「アンタらが被った、ヤバいブツの総額。そして失われた人命」
 無法者の眉が動いた。
「アンタらのヘッドのもそこまで買い叩かれても文句は言うなよ?」
「……ほう?」
「で、アタシらの動いた手数料。そもそも法外って程じゃないだろ? このガキ一人分の値段ならさ」
 女は自分たちの値段を提示し
「差額を埋めようじゃないか。アンタらのクスリのルートの情報だ」
 その差額を要求した。
「大丈夫、アンタらを潰す気は『今』は無ぇ――」
 交渉は終わった。
 多喜は足を撃ち抜かれ、ならず者はその頭へと銃を向けた。

「こっちを見ろ」
 それは命令だった。
「俺達がなぜ、取引を持ち出したかわかるか?」
 二発目は男ではなかった。
「最初から旦那達が出てきたところを狙撃することもできた。そのための数も腕もそろえてる」
 部下が子供を狙って発砲した弾丸を猟兵達が庇う。
 その姿を視界に収めつつマフィアは言葉を続けた。
「けどな、リスクっていうのも考えなきゃならねえ。だから札束を用意した。お前らの強さに敬意を表してな」
 もう一発、次は庇っている猟兵に向かって撃ち込まれる。
「今回は脅される体で引き上げる方が安全だ。実際、そうするつもりだった」
 最後に放つのはマフィアの拳銃。
 それはうずくまる女の耳の傍の空間を貫き、衝撃が鼓膜を破る。
「だが、こっちのクスリや仕事の領分まで入り込むんなら、話は別だ。そこまで介入するのなら……子供を殺す、何も知らない野次馬も殺す、いや……お前等を一切狙わずに弱い奴を殺す」
 もう一度、男は視線を下した。
「こっちを見ろ。お前たちがバケモノじみた力で戦うなら、俺達は無法を以って戦う。お前達が殺すんだ。お前達が俺達の銃の引鉄を引く……正論は死にゆくやつに語れ。もう一度言う――こっちを見ろ」
 多喜が見上げれば、そこには冷たい目の男が一人。

 数宮・多喜の選択は彼らの本性を暴いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木常野・都月
俺はお金に興味はない。
任務としては、少年の心と体を元に戻した時点で終了だ。
あとは野良の人間同士の問題だと思う。

ただな…。

牙も生え変わってないような子供を餌として差し出す気はない。
野生の大人の人間なら、自分の獲物は自分で狩るべきだ。

逆に、野生のルールを子供が守らないのも不公平でもある。
ここで、この子供を助けたら、この子は野生で生きていけなくなる。

だから。

お互いこの場は手を引くのがいいんじゃないか?

お互い数時間手出しせず。

逃げたければ逃げればいいし、追いたければ追えばいい。

その後は、互いに平等な野生の獣同士だ。

子供と大人、両方に一定時間まで[オーラ防御]を付与したい。

後は好きに生きるといい。



●時間

 糸は切れ、ならず者たちは銃を構える。
 けれど、猟兵の時間は終わらない。
 互いを阻むようにオーラの壁が作り上げられ、その高く厚い障壁を椅子にして木常野・都月が座る。

「俺はお金に興味はない」
 都月が見降ろす先には放置された鞄。
「任務としては、少年の心と体を元に戻した時点で終了だ」
「もう遅い、旦那方! 俺もこいつらも止まらねえよ」
 狐の言葉を男が跳ねのける。
「確かにあとは野良の人間同士の問題だと思う。ただな……」
 だが、都月は無法者達の法に歩み寄りつつ
「牙も生え変わってないような子供を餌として差し出す気はない。野生の大人の人間なら、自分の獲物は自分で狩るべきだ」
 自らの意思を見せる。
「逆に、野生のルールを子供が守らないのも不公平でもある。ここで、この子供を助けたら、この子は野生で生きていけなくなる」
「旦那、分かりやすく言ってくれないか? 俺達はハイエナであることは変わらねえがハイエナの言葉を話してくれねえと通じないんだ」
「ああ、すまない。だから……」
 見上げる男に謝罪の意を見せ、そして。
「お互いこの場は手を引くのがいいんじゃないか?」
 狐は提案した。

「つまり時間を置けということだな?」
「そうだ、お互い数時間手出しせず。逃げたければ逃げればいいし、追いたければ追えばいい」
 意を察したマフィアの解釈に都月が頷きを返した。
「その後は、互いに平等な野生の獣同士だ」
「旦那達がガキを連れて逃げる可能性はどうなんだ?」
 無法者が見せる懸念。
 それは少年を囲むように形成されたオーラの壁によって証明された。
「後は好きに生きるといい」
 去り行く狐。
 その言葉に男は思考し、そして背後の部下へ振り向いた。
「お前ら、武器を収めろ。そして数名だけ見張りを残せ……帰るぞ」
 ざわめく部下を尻目に、無法者の頭目は歩く。

 ここが落とし所であることは、嫌でも分かった。
 子供一人に対する面子、戦いで消費される兵隊、そしてその後に食らいつくであろう土地のハイエナ共。
 ストリートで生き抜くには何を選択すべきか、それが分かるからこそ男の後ろには部下が付いて来るのだ。

 これが木常野・都月の選んだ行動の結果であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

山岡・智花
救いってのは、誰にだって公平に不平等なものなんだ
あのときはウチが助かって、今回はこの子にチャンスがきたってだけ
それが世の中ってヤツじゃん?

ねぇ、少年
今回は、あんただけが助かるんだ
その重みに耐える覚悟はある?
答えがイエスなら……ウチらは、あんただけを助けるよ

【化け術】で人間に化けて交渉
「カネならあるよ」
ドル札に化けさせた葉っぱを積み上げる
まーでも故郷のゴロツキどもならともかく、マフィア相手にこんな子供騙しが通じるわけないよね
透かしとか番号とか調べられたら一発でバレるっしょ
でも、その時間稼ぎがウチの狙い
「今だよ!」
偽札を調べてる間、相手には隙ができるはず
仲間が作戦準備を整えるだけの……ね



●選択

 公平と平等は成立しない。
 だから救いも誰にだって公平に不平等なものだ。
 山岡・智花という狸はそれを知っていた。

 ――あのときはウチが助かって、今回はこの子にチャンスがきたってだけ。それが世の中ってヤツじゃん?

 気が付けば人の姿となって、少年へと歩みよっていた。

「ねぇ、少年」
 オーラの壁に戸惑い、触っている少年の掌に重ねるように智花の掌も重なる。
「今回は、あんただけが助かるんだ」
「おれだけが……助かる?」
 少年の言葉に少女がうなづく。
「その重みに耐える覚悟はある?」
 その問いかけは今の少年にとって価値を見出すには難しいものかもしれない。
 それでも問わなくてはいけない言葉であった。
 でなくては、ここに立つ皆の努力は無駄になるのだから。
「答えがイエスなら……ウチらは、あんただけを助けるよ」
 智花の頭の中には助けるために知恵が回っている。
 ドル札に見せかけた葉っぱを積んで、時間を稼ぐのが良いだろうか、それとも少年に化けて、逃げるのがいいのだろうか?
 どちらにしても、決めるのは少年の意志だ。
 賢い狸にできるのは、それを手助けするだけ。
「おれは……おれは……」

 やがて、障壁は消える。
 誰もが自由に歩くことができ、そして追うことも逃げることも自由。
 その中で、舞い戻って来たマフィアは煙草を吸い終わると、転がっていた鞄を手に帰っていく。
 昨日が終わり、今日が終わり、そして明日が来た。
 無法の土地はストリートの法が今日も執行され、飢えた者は死ぬか、生きるか、搾取されるか。
 そして強い者は殺すか殺されるかのダンスを刃の上で踊る。
 そんな土地に一人、少年が居なくなったとしても、何かが変わることはない。
 また、一日が始まる。
 昨日、今日、そして明日へと。

 山岡・智花の選択で世界が変わることはなかった。
 少年が一人、生き残ったことを除けば……。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月13日


挿絵イラスト