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痩せた良いけど内臓が無いぞう!

#UDCアース

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#UDCアース


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●イケナイお薬
「ねぇ、叶恵…ダイエットを始めたなら、いい薬あるんだけど試してみない?」
「なにこれ?、市販の薬じゃないみたいだけど…」
「最近噂になってる痩せ薬よ、私これで5kgも痩せたし…それにとっても気持ちよくなれるの…」
「ちょ、ちょっと照美!、それ危ないお薬じゃないでしょうね!?」
「大丈夫よ、お手軽な値段だし、もう2週間も使ってるけど全然平気、健康そのものよ!」
「に、二週間で5kgも…ほ、本当に大丈夫なんでしょうね?」

 それから2週間後、照美は死んだ。
 変死だった、外傷は一切ないのに、内臓がごっそりと無くなっていて、お腹は皮と骨だけになっていた状態で発見された…そして、その死に顔は恍惚の表情を浮かべていたらしい。
 どうしてそうなったか、今の私には良く分かる…ああ、私の中が、中身が、何かに変わっていく、それが気持ちいい、それが蠢いている、気持ちがいい、脈動が気持ちがいい、ああ、それが、それが、出て行ってしまう、またあの薬を飲まなければ、またこれを宿さなければ、ああ、気持ちがいい、出る、出る出る出ちゃう出ちゃう出ちゃ……―――。

●ダメ、ゼッタイ
「いや、そんな薬飲んじゃダメじゃろ」
 予知の内容を説明した後に、頭を抱えながら花子はツッコミを入れた。
 確かにそんな怪しい薬を安易に飲むのは頂けないが、女性の痩せたいと思う気持ちはそれだけ強いということか。
「残念じゃが、UDC組織の調査の結果、既にこの薬の被害者だと思われる女性の遺体が複数発見されておる…後手に回ってしまった事は否めぬが、早急にこの薬の出処を探し出し、それを潰さねばなるまい」
 通常の危険薬物の取締ならば、現地の警察にでも任せておけば良い。しかし、この薬は明らかな異常性が認められた為、UDC案件と判断され猟兵達の出番となった。
「被害者の分布や行動範囲から、薬の売買が行われておる場所は、予知に出た娘が住む近辺のようじゃが、その販売ルートは掴めてはおらぬ…裏路地でその売人と出会えるとの話を聞いただけじゃ」
 また、現時点では叶恵は服用3日目、貰った薬を服用しただけの状態で、UDC組織によって保護されている。裏路地で出会えるとは彼女が照美から聞いた話だそうだ。薬自体も数錠だがまだ持っているらしい。
「これ以上の犠牲者を出さぬためにもいち早く販売ルートを潰さねばならぬ、多少の荒事ならばわしらUDC組織がフォーローするのじゃ、だが、多少じゃぞ、多少じゃからな?、フリじゃないからの?」
 一体、どんな事態を想定したのかは謎だが…花子は猟兵達の良心を信じて転送の準備に入る。
「では、現場まで転送してやるのじゃ…皆の健闘を祈っておるぞ」


マカロニ男爵
 お願いですから、薬根絶の為に街を更地にしますとかの無茶ぶりを辞めてください!、何にもしませんから!(無茶過ぎたら採用しないという意味で)

 はい、そう言う訳で初めましてこれが初投稿となります、マカロニ男爵と言うものです。
 この手の事は初めてで色々と拙い文章だとは思いますが、なるべく楽しんでいただけるように頑張っていきたいと思います。
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第1章 冒険 『友達の友達から聴いた話:痩せ薬』

POW   :    痩せ薬を売っている人を探し出して殴り込む。

SPD   :    痩せ薬の販売ルートを辿り調査する。

WIZ   :    痩せ薬に含まれているものや、服用を始めた女性を調べる。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アリア・ヴェルフォード
UDC組織のフォーローがありますから少しくらい無茶ができそうですね!
…横文字苦手なのでしょうか花子さん
ところで痩せ薬と太り薬ならどちらがマシなんですかね!

【SPD】
売人を恐か…拷も……聞き取り調査してもいいのですがここはスマートに行きましょうか!
確か路地裏が主な取引現場でしたね
そこを中心に見つけた売人を尾行するなり、接触して【コミュ力】で聞き出したりと【情報収集】して販売ルートしいては流通ルートを探ってみましょう



 現場に向かう前にアリア・ヴェルフォードはどうしても気になる事があったので花子に聞いてみた。
「花子さんって横文字苦手なんですか?」
「ぬ?」
「UDC組織のフォーローって」
「!!?」
 きょどった、恐らくは噛んだのだろう、誤魔化せてなかったかと言わんばかりに目が泳いでいる、豪快なバタフライだ!
「ゆ、ゆーでーしーの業界用語での、ふぉーなローがふぉろろろろろ…」
「あ、ごめんなさい、それでは行ってきます」
 思った以上にポンコツな反応を返した花子をこれ以上は追求しない、そんな優しさがアリアにはあった、うん、ごめんなさい、今後から気をつけます。

 転送された場所はUDCアースのとある繁華街の外れ、風俗店がポツポツと立ち並ぶ…アリアの様な少女が歩くには少々いかがわしい場所である。
(売人を恐か…拷も……聞き取り調査してもいいのですがここはスマートに行きましょうか!)
 さらっと、恐ろしい事を考えそうではあったが…実際の所、売人を脅す程度ならば問題はない、その人が本当に売人であるのならばだが。
 しかし、売人がただの末端であった場合、尻尾切りで元凶である薬の出処まではたどり着けない危険性がある…よりスマートに、それは売人を尾行して薬の出処まで案内してもらう事だ。
「よぉ、お嬢ちゃん…君ぐらいの年の子がこんな所を一人で歩いてるなんて、ひょっとして噂のお薬をお求めかい?」
 そんな事を考えながら裏路地を探索しているアリアに声がかかる、ここで女の子が一人、何かを探すように歩いてる様は、売人から見れば薬を求めている様にも見えるのだ。
「う、噂の薬って例の痩せ薬ですか!?」
「ああ、3錠だけなら手元にあるんだが買うかい?、1錠3000円だがな」
「え?、3錠だけですか?、それも聞いた話よりも高いのですが…」
 予知ではお手軽な値段と言われてたが、UDCアースの相場を考えると決してお手軽ではない、それに叶恵さんは三日服用してまだ薬を残していたのにどうしてなのか?
「いや、前までは安く卸して貰えたんだが、なんでも急に原料が手に入らなくなっちまったらしくてな数が手に入らないんだ!…本当だぞ?」
(あ、嘘ついてますね、この人…)
 何やら不味い所を突かれたので誤魔化している、そんな同様をアリアは僅かなコミュニケーションの中で見抜いた、ここに来る前にちょうどそんな誤魔化そうと必死な人を見た事が功を奏したのかもしれない。
「原料がですか?」
「ああ、モノが何なのかは知らないがガサ入れがあって手に入らなかったらしい」
「ガサ入れですか?、そう言った話は聞いたことないのですが」
「うーん、それは俺もないな、ここんとこサツが派手に動いたって話は聞かねーし」
 そう、この件で警察は動かない、UDC案件になった時点で組織から警察への介入があり捜査の手は及んでいないはずなのだ…動いてるとしたらUDC組織だけである。
「で、買うかい?」
「あ、はい」
 念のため、例の薬を3錠購入しておく、高くついたが料金はUDC組織に立て替えてもらえるから問題ない。

 その後、アリアは売人との取引を終え、その場を離れた後に、改めて売人を尾行を開始したのだが――。
「なっ!?」
 一旦はその場を離れ、距離をとってから、もう一度売人に追いついたアリアが見たものは、もう動かない売人であった。
(予知と同じ死に方、傷がないのにお腹の中身がありません…こんな短時間で?)
それと、予知とは違う点が二つ…売人の死に顔は恐怖に歪んでいる事、そして売人の付近には、白い…買った薬とソックリなカプセルが落ちていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

胡・翠蘭
「甘い話には裏がある……って、学校では習わないのかしらね」
別に私も通ってはいないけれど……それにしても、簡単に痩せる薬に惹かれる気持ちが分からなくはないから、被害者には同情するし犯人には憤りを感じるわね、ええ。

【SPD】
狙われてる対象は……ま、そういうこと悩みやすくて騙しやすそうな女子高生よね、きっと
第六感と野生の勘を頼りに……そういう話に食いつきそうだったり、知ってそうな子に話しかけて情報収集してみましょう
コミュ力あるし、あとは……誘惑もしたりして、上手く話を聞き出せたらいいわね
「飲むだけで痩せれるなんて……夢のような薬の話、私にも教えて頂きたいわ?」

情報を得たら、他の仲間に連絡して情報共有



「飲むだけで痩せれるなんて……夢のような薬の話、私にも教えて頂きたいわ?」
「え?、は、はい!」
 胡・翠蘭に話しかけられて慌てふためく女子高生の三人組、彼女たちは翠蘭が当たりをつけた女子高生の中で件の薬の噂で盛り上がっていた所だった。
「お、お姉さんには必要ないんじゃないかなーって私は思うのですけど」
「あらあら、ありがとう、でもの私も女、その手の話には無関心では居られないわ」
「お姉さんみたいな美人でも悩むのね…私ももっと痩せたーい」
 いきなり話しかけられて、警戒していた女子校生達も、翠蘭の話術に警戒心を解され、次第に色々話してくれるようになった。
 彼女達もダイエットに悩むお年頃、翠蘭の様な美人には悩みを打ち明け、その秘訣を取り入れたいのであろう、薬の情報を交えたダイエット談義に花開いた――ただ、一人を除いて。

「いろいろ聞かせてもらってありがとうね、でも裏路地に入っちゃダメ、女の子だけでは危険よ?」
「こちらも色々聞かせてもらってありがとうでしたー、はーい、入りません、ぶっちゃけちょっと怖いですし!」
 正直、グリモアベースで聞いた以上の情報は彼女達からは得られなかった、が…翠蘭の第六感が告げる。
 話している最中もずっと口を噤んでいたあの子、あの目は知っている怪異に触れ恐れる者の目、ずっと黙っていたあの子はきっと……

「ごめんなさい、また少し良いかしら?」
「え、えっと?」
 あの三人組の後を尾行し、友達と分かれて一人になった時を狙ってもう一度尋ねる…怯えたその目は翠蘭に一つの確信をもたらした。
「貴女は…持っているのね、噂の薬を」
「…っ!、ど、どうしてそれを!?」
 その怯えの核心を突かれ、少女は二歩後ずさる…その警戒を解すように翠蘭は優しく微笑み言葉を紡ぐ。
「甘い話には裏がある……って、学校では習わないのかしらね?」
「そ、それは…怖かったけど、でも、私…彼が最近、別の子とばかりで…それで…」
 痩せたかった、彼氏に見て欲しくてもっと美しくなりたかったと…出発前にも思ったことだが、痩せる薬に惹かれる心情は理解できる、女としてこの健気な心を踏みにじる奴に改めて憤りを覚える。
「私はね、本当のところそれを解決しに来たのよ…だから詳しく話を聞かせてもらえるかしら?」
 その怒りを胸に秘め、今は優しく少女を諭す…その優しさに答えるように少女はポロポロと涙を流した。
「助けて、怖い、怖いの…私、どんどんおかしくなっていく、怖いのにあの薬、止められないの…」
 翠蘭は時折少女を宥めながらも、話を…服用者の身に何が起こったのかを聞き取り始める。予知通りこの薬は痩せる効果があり、それには強い快感が伴う…ここまでは既知の情報だが、気になる話もあった。
「薬が減らない?」
「あ、完全に減らないわけじゃないんです…けど、時々床に落ちてたりで…増えるんです、買ったのは10錠だけだったのに、もう2週間も飲み続けて、それでも残ってるんです」
 薬が落ちているという話は、先ほど売人を調べた猟兵との情報と一致する、しかし増える?、薬が勝手に…それなのに数が少なくなっている?
 そんな頭の中に渦巻く疑問を整理しながら、翠蘭は目の前の少女を優しく抱きとめる。
「大丈夫よ、ちょうど貴女と同じような目にあった子も保護してるから、一緒に治療をしましょう?」
「はい、はい…お願いします、もう私…」
 少女の身柄と治療はUDC組織任せ、翠蘭は情報を仲間と共有すべく連絡を取り始めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

芦屋・晴久
【WIZ】
御手洗さんも大変ですねぇ。

痩せ薬ですか……そんな物があったら世の中に太ましい方は居なくなるんですよ。
私は【医術】知識の方から中の成分について調べてみますか、おおよそ録なものでは無いでしょうが。
その後、服用されてる方のデータを頂ければ私の式神、【高天奉隠者】でその方の様子、動向を調べてみましょう。

もしも異変が見つかったのなら即座に【言いくるめ】て服用を止めなければなりません、事前の【情報収集】はしっかりと行っていきます。

出来ればアリアさんの情報と照らし合わせて売人より先のルートを見つけ出せれば良いのですが……


ウィルトス・ユビキタス
痩せ薬か……。まあ美しくなりたいというのは分からんでもないがこんな怪しい薬を飲むこともないだろうに。

取り敢えずこの薬について調べなければな。
上から見て
横から見て
下から見て

一息に飲む

「ぺろっ、これは……毒!」
【毒耐性】とか【呪詛耐性】があるからへーき、へーき。
念のために【トリニティ・エンハンス】で防御力を上げておく。
感じたことを近くの猟兵に実況する。猟兵がいなかったら手記に書き残す。
「メ…ッセージ……で…す…
これが…せい…いっぱい…です
受け取って…ください…
伝わって……… ください……」

アドリブ、連携可。



「痩せ薬ですか、そんな物があったら世に太ましい方は居なくなるんですよ…と」
 UDC組織から配られた痩せ薬…白いカプセルの分析を始めるのは芦屋・晴久の言葉は暗にそんな物はないと言っている、そんな薬があるのならば世の太ましい人達は、皆救われる。
(おおよそ、碌なもんじゃないんでしょうがね…)
 しかし、そのような事態は起こっていない、それはこの薬は毒であるという事を意味する…しかも、診療所を持つ医者である芦屋でもちょっと見当が付かない類の効能だ。

「芦屋、何かわかったか?」
「全然分からない、という事がわかりましたかねぇ?」
「ダメじゃないか」
「そうでもありませんよ、これは完全に未知の成分で出来ているという事が分かりましたから」
「おお、なるほどな!」
 と、芦屋の答えに納得仕掛けているのはウィルトス・ユビキタス…頭脳労働をあまり得意としない彼は芦屋の検査の結果を待っていたのだ。
「いやいや、納得しないでください、未知が未知なままだから困ってるんですから」
「なんだと、じゃあやっぱりダメじゃないか!」
 そんなやり取りをしていた二人に連絡が入る、翠蘭が調べた少女の証言、そしてアリアが調べた情報、これらが皆に共有されたのだ。

「…は?、薬が勝手に増えるのですかい…いやー、有難いですね、素敵な効能です、薬代が丸儲けですよ」
「そんなこと言ってる場合じゃないだろ、俺にだって分かるぞ、そんな現象はおかしい!」
「まぁUDC案件ですからねぇ、おかしくない方が変でしょう…ですが、一つ仮説は出来ました」
「仮説?」
「ええ…薬が増えた状況はいずれも、薬を飲んだ後に発生しています、そして、薬を飲んだものは体重が減る、或いは内臓を全て持って行かれている…つまり」
 材料は人肉である、薬を飲んだものがその身を材料に薬を作り出していると考えれば確かに辻褄が合うが…
「実際に薬が発生する状況を見ないと何とも言えませんが、その線で調べてみましょうか…幸い、一度の服用では死なないようですし…被検体の観察が出来れば、色々とわかりますかねぇ?」
「見れば分かるのだな」
「断言は出来ませんが、しかし保護した被験者は深度が深刻そうですし…どうしたものでしょうかね?」
 芦屋はそう返しながらも、その目は、服用後に保護された者のデーターに向けていた、服用した効果が残ってる者はいないか…その動向、薬が生成される過程を調べるために――ウィルトスの動向からは目を離していたのだ。

 上から見て、横から見て、下から見て…一気に飲み込む、その話を聞いたウィルトスは速攻で被検体になる事を決断したのだ!、何と言う男気か!、何と言う脳筋か!
「うぼああぁぁぁ、な、なんぞコレぇ!!?」
「何でイキナリ飲み込んでるんですかい、アンタは!?」
 慎重派の芦屋からしてみればウィルトス行動は完全に想定外だった、だが、既に一回の服用では死なない事が実証されていて、服用の情報が欲しいのならばこの方法は確かにありだ、一般人よりも丈夫な猟兵ならば被害も少ないと予測できる――が。
「うんぬぉ、腹がぐるぐるして、何か痺れ…おうふっ!、快感ってこれかぁ!!」
「あー、もう!、男の喘ぎ声なんて聞きたくないんですよ!、何でこれが見目麗しいお嬢さんとかじゃ無かったんですかね!、訴えますよ!、需要考えて!?」
 いったい誰に訴えると言うのだ?、しかし飲んだ直後にこれだけの反応が出るのは意外だった…一見余裕層に見えるウィルトスも急激な変化にヤバイと思ったのか、ユーベルトコードを発動させる。
 トリニティ・エンハンスの炎の魔力、水の魔力、風の魔力を総動員で胃の防御力を向上させると同時にウィルトスは腹の底からこみ上げてくるものを感じた。
「おろろろろろろろ」
「おいおい、汚いですよって…なっ!?」
 ウィルトスを何か黒いものを吐き出した、小さいながらも幾本もの触手が絡み合う塊…それは吐き出されたと同時に排水口の中に驚くべき速さで潜り込み…
「顕現し臆せよ、カクレガミ」
 逃げられそうだった寸前の所で芦屋のユーベルトコード【式神招来・高天奉隠者】が間に合った、排水口に逃げる触手を透明の式神が追跡する。
「なんだよ、あれ…何処に行った?」
「追跡中ですよ…そして、奴の行き先に我々の目的地があるでしょう」
「薬の出処か?、なんでまたそう言い切れる?」
「いやーな仮説が当たってしまったからですよ、これは、このカプセルは最初から薬じゃなかった」
 そう、この白い楕円形は薬ではない、だが毒でもない、これは――
「卵だったんですよ、奴らのね…」
そして孵化した異形は、鮭が川に戻るがごとく、自分達の帰る場所へと猟兵達を案内する事になった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
かつて任務を共にした花子様の初めての予知、良い結果をお持ち帰りできれば良いのですが…。

【POW】
調査は不得手ですが、荒事なら騎士と振舞うものとして役立てることができるはず

他の猟兵が調べた薬の売人や生産、保管拠点に実力行使を行い情報を得てみましょう

最初は「礼儀作法」や「優しさ」で与しやすそうに思わせ、尻尾をつかんだと判断したら「怪力」による「だまし討ち」で情報を供出させます

怪しげな拠点があるとわかったらUDC組織のエージェント部隊を引き連れていわゆる「ガサ入れ」してみるのもよさそうです。
不測の事態があれば私が隊員を「かばい」ましょう



(あの建物ですか…)
 売人への実力行使は発見された売人の死亡によって不発に終わったが、触手が逃げ帰った地点が特定された事により、作戦は拠点への実力行使へと移っていた。
 触手が逃げ帰った先、それは裏路地の一角にある3回建ての小さなビル、看板は派手な出ていて、如何にもな衣装に着替えた客引きらしき男が一人、一見して風俗店のようにも見えるが、その客引きは客をまるで呼び込まない。
「トリテレイアさん、確認が取れました、あの店は市から営業許可は出ておりません…それを理由に踏み込めますが如何いたします?」
 ガサ入れ…如何に猟兵と言えども、あのビルを逃亡者も出さずに一人で制圧するのは厳しい、出入り口を塞ぐなどの人ではどうしたっているのだからUDCの機動部隊にも来て貰っていた―が…
「突入は少数で、他の皆様は出入り口を塞いでください、突入する人もいざとなったら私の後方へ迅速に下がるように…ここから先はUDC(アンディファインドクリーチャー)に遭遇する危険があります」
「了解しました、トリテレイアさん」
 UDC機動部隊にも緊張が走る、小さな触手が、異常存在が逃げ込んだ以上、ここはUDC(アンディファインド。クリーチャー)の巣窟である可能性が高いのだ、機動部隊と言えど、それと出逢えば無事では済まないのだから。

「な、何なんだアンタ達は!?」
「警察です、失礼ですがご主人ですか?、こちらの店舗は営業許可が出ていないとの通報がございまして」
「そ、そ、そんなはずはないですよっ!、確認してください!、市役所の玉田さんにっ!」
 異様なまでに必死だ、実際に許可を貰っていたらこうはなるまい…いや、そうじゃないにしても非合法の商売をやる者にしてはあまりにも狼狽え過ぎている、ならばここはあえて…
「そうなのですか?、おかしいですね…今確認しますのでお待ちください」
「……っ!!」
 信じたふりを見せてあえて嘘に乗っかってみると、案の定、男は猛ダッシュで逃げ出そうとした…が、ここはトリテレリアの方が役者は上、その行動をあえて引き出した所でその巨体の太腕でガッシリと掴み、男を地面へと押え付けた。
「なぜ逃げるのです?」
「は、離せ、こ、殺される…早く逃げないとあのお方に知られて俺もあいつみたいに!!」
「あのお方とは?、大丈夫です話してくれるのならば貴方は私が守りましょう」
「ほ、本当か、なら、なら!なら…ぁ…」

『それは無理だ』

――!?、何処からか声が響いた、目の前の男から?…半分正解だ、声は男の…腹の中から響いているのだ…
『…我が器ある場所に余は偏在す、余の命を果たせぬ無能には等しく死を』
 赤い、赤い泡を口から吐きながら、男を身を波打たせ暴れまわる、その恐怖に歪んだ顔に反して腹の内側から響く声は酷く冷静で、酷く冷酷だった。
 それから数瞬の間を置いて、一際大きく血を吐き出した後、男の口から黒い何かが
溢れ出す…報告よりも巨大な触手塊、それは素早く機動部隊員に襲い掛かり―
「させませんっ!」
すんでの所でトリテレイアによってその攻撃は阻まれた。
「皆さんご苦労様でした、後は私達猟兵に任せて下がっていてください」
「りょ、了解、御武運をトリテレイア殿!」
 このビルが元凶で間違いはない、他の仲間達も即座に駆けつけるであろう…敵の尻尾…いや、触手は掴んだ、後は倒すだけだ!

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『パープルテンタクルズ』

POW   :    押し寄せる狂気の触手
【触手群】が命中した対象に対し、高威力高命中の【太い触手による刺突】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    束縛する恍惚の触手
【身体部位に絡みつく触手】【脱力をもたらす触手】【恍惚を与える触手】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    増殖する触手の嬰児
レベル×5体の、小型の戦闘用【触手塊】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達が駆けつけたと同時にビルの奥からは風俗嬢だったと思われる『モノ』が溢れ出した、内臓が蠢いてるかの如く腹部が脈動し、恍惚の表情のまま硬直している頭部は生きている気配すら感じない、だがしかし、彼女らは内側から何かに動かされるように這い回りーそして触手塊が一つ、また一つを生み出される。
 この触手塊を一層せねばビルの内部には入れないであろう、戦闘開始だ!
胡・翠蘭
「あの薬の正体にも驚いたけど……全く、見れば見るほど醜悪な姿ですこと。狂わなければ、正視に堪えがたいですわ

【SPD】
彼らの攻撃を喰らったならそれで、避けれたならば……指先を舐めた感覚で、でも。
私のユーベルコードを発動させて、攻撃しましょう
私の中にも異形はおりますけれど……それは、まだ飼い慣らせていますから……ふふ
ああ、でも……人外の快楽というのも、堪らないのものね

快楽に飲まれてしまうのは結構なのだけれど、見えないとユーベルコードで狙えないから……もし触手に呑まれて目隠しされるなら、ガジェット振り回して攻撃しましょうか
数が多すぎてキリがないなら、宇宙バイクで轢き逃げてしまおうかしら、ね


クァン・リンドヴルム
出遅れましたが、参戦です。
触手群は《盾受け/8》でなんとか直撃を避けたいですね。
群がってきた触手を【ドラゴニアン・チェイン】でまとめてから、自前の斧で叩き切ってやりましょう。



「全く、見れば見るほど醜悪な姿ですこと…」
 眼前に触手塊は白く濁った粘液を滴らせながら、うじゅる…うじゅる…と這い回る。正視に耐え難いおぞましい姿、常人ならば、己が正気を疑うであろう狂気の光景を、翠蘭はその一言で吐き捨てた。
「気を付けてください、来ますよ!」
 緩慢に蠢く触手が動きを止め、その先端を翠蘭と、新たに参戦したクァン・リンドヴルムの方へ向ける。
 クァンがその噛み付きにかかる前の蛇のような動きに警戒して盾を構えた…その刹那、触手は群れをなし二人を絡め取らんと一斉に飛びかかってきた。
「させませんっ!」
 クァンは前に出て。手に持った巨大な盾、『オブシディアン・クリスタ・シルド』でその触手群を受け止める、触手群は盾に当たるとそれを絡みとり、続く太い触手でクァンを刺し貫く為に、盾を退かそうと一斉に引っ張り始めた。
「はあああっ!!!」
 しかし、その狙いは上手くいかない、巨大で重い盾は敵を叩き潰す凶器にもなる、触手の引っ張る力に、盾の重量とクァンの内に秘めた荒ぶる竜の力を乗せ、シールドバッシュで触手塊を叩き潰した。
「先ずは一匹…って、翠蘭さん!?」
 クァンと違い、触手群を回避しきれなかった翠蘭は、その美しい肢体を触手に絡め取られていた…妓楼での仕事着…しても使っている、美しい中華風の民族衣装も触手の粘液で穢され、濡れて張り付いたそれは…服の中に触手が入り込まれている様を浮き彫りにしていた。
「んぁ…ぁっ…」
 翠蘭の身体に更に触手が覆いかぶさると、翠蘭の体から力が抜けていく、人の身には強すぎる快楽の波に飲み込まれ、翠蘭の肢体は触手塊の中へと引き摺りこまれる。
(た、助けないと!)
 クァンが翠蘭を救出すべく、盾の裏側に装着されている短剣『オブシド・マジック・ガルド』に手をかけた瞬間。
「■■■ーー!!?」
 触手から…発声器官など見当たらない筈の化物が、この世のものとは思えない鳴き声を発した瞬間、蒸気機械、ガジェットが触手塊を内側から貫いた。
「人外の快楽というのも、堪らないのものね…ふふ、でも目隠しわ困るのよ」
 狂気の快楽、人を狂わせる筈のそれを受けてなお、翠蘭は理性を保っていた。
「私の中にも異形はおりますけれど……それは、まだ飼い慣らせていますから」
 翠蘭の不思議な色をした瞳が妖しく光を灯す、それに呼応する様に呼び出されたのは快楽で侵す淫らな触手、触手塊と限りなく近い性質を持つそれは、翠蘭のユーベルコード、【淫蕩の沼に引き摺り込みし触手の群れ】(バイオレンスオブプレシャス)。
「■ーーーッ■■!?」
「ええ?、な、なんですかこれ?」
 触手に触手が絡みつき、触手塊が…喘いでる?、触手ではなく触手が喘ぐ、そんな狂気に狂気をかけ合わせた異常事態にクァンの理解が追いつかない。
「この子を呼び出すのには『快楽』が必要なのよ、だから利用させてもらったわ」
「な、なるほど!?、で、でも今なら!!」
 理解が追いつかないが、触手塊の動きが止まったのだけは確かだ…このチャンスを逃すまいとクァンは内に秘めた竜の力を呼び起こす…竜の闘気がクァンから放たれ触手塊は翠蘭の触手ごと爆破され弾け飛…ばない!
「捕まえました、一網打尽です!」
 爆発して、なおも残る竜の闘気は鎖へと変換され、弾け飛ぶはずだった触手塊はオーラの鎖に縛られ纏められた。
「トドメです!」
「私も行くわよ」
 クァンの持つ大斧『リンド・エン・フォルグ』の一閃で纏め挙げられた触手塊はバッサリと横一文字に真っ二つ、そこへ翠蘭の宇宙バイク『男』が残った触手を引き潰す、頑丈でタフなすごいマシンだ!
「よし、これで…!?」
「残念だけど、まだみたいね…」
 目の前の触手塊を一掃した二人だが、気が付けば触手塊がまた増えている…男の死体、娼婦の残骸…それらを原料に触手塊達はまだ繁殖をし続けているのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

芦屋・晴久
【WIZ】アドリブ歓迎です

いやはや大事になってきましたねぇ。
栄養があればあるだけ繁殖するなんて場合によっては貴重なサンプルになりうるのですが、いや、こいつは持ち帰りたくないですけど。

冗談は置いておいてこの繁殖能力は厄介ですねぇ、少しばかり鈍らせておきましょう。
【五行相生】にて【破魔】の雷雲を展開、雷撃と傷跡から染み込む雨水で今よりは動きも鈍るかと。
私はこのまま護符による【属性攻撃】にて行動の阻害を中心に動きます。
後はお任せしますよ皆さん。

望まぬ身に変貌してしまった哀れな魂達よ、せめて安らかに鎮めて差し上げましょう。


トリテレイア・ゼロナイン
さて、UDCアースには「(女)騎士は触手に弱い」というジンクスがあるとかないとか
…男で機械の私には当てはまらないことを祈りましょう

触手相手に騎士道を云々するのも無意味でしょうし、ここは戦闘機械として淡々と処理していきます

向かってくる触手を「スナイパー」技能を活かし格納銃器で迎撃、数を減らします。接近戦に持ち込まれたら「武器受け」「盾受け」で触手をいなし、斬撃と盾の殴打で破壊します。
捕縛された際は、片足の格納スラスターを点火、もう片方の足を軸にして円を描くように「スライディング」、「怪力」と併せて引きちぎりましょう

心苦しいですが、触手の苗床となりそうな遺体は破壊して安全を確保しましょう…


アリア・ヴェルフォード
うわぁ…気持ち悪いですねこの光景…
ミミズが沢山絡み合ってるのを巨大にしたらこんな感じでしょうか…
何にせよ倒さなきゃ進めませんしやりますか!

【WIZ】
とはいえ近づきたくな…くなくないですね…
前衛を保ってくれる方もいそうですし援護に回りましょうか!
ええ!これは戦術です!決して好き嫌いしてるわけではありませんよ!
光属性のユーベルコードで増え続ける小型の触手を片付ける形で援護をしましょうか!
触手が飛んできても【見切り】で避けて皆さんの援護に集中します!



「UDCアースには(女)騎士は触手に弱いと言うジンクスがあると聞きます、アリア様はお気をつけて」
「いえ、私は騎士ではなく剣士ですから大丈夫ですよ、トリテレイアさん!」
 むしろ騎士(セイバー)は敵ですという謎の電波が届きそうだったとか、そうでもないとか…、兎に角、アリアは剣を持って触手と対峙した。
「う…」
 しかし、やはり気持ちが悪い、複数のミミズが絡み合っている状態を数段グロテスクにした上に、人を容易く飲み込むほどまでに巨大化したものが、この触手塊なのである。
「うぅ、近づきたくな…くなくない…」
「どちらなのでしょうか?、しかしアリア様、かの触手塊に無理に近づくのは得策では無いと私は判断致します」
「そ、そうですよね!」
 正直、近寄りたくなかったアリアにとってトリテレイアの提案は渡りに船であった。実際問題、快楽を与え、脱力してしまう触手に囚われるのは非常に危険だ、近距離戦こそ触手塊の間合いだと行っても過言ではない。
「これも戦術です!、行きますよ…集え聖光!、カオス・レイ!」
 アリアのユーベルコード【混沌閃光(カオス・レイ)】が発動、光か闇のどちらかの魔法の槍を多数展開する術式で、今回は聖なる光の槍を選択した。
「前衛はお任せします!」
 100本に及ぶ光の槍を展開し、近づく触手塊を次々と串刺しにしながらアリアはさり気なく前衛役をトリテレイアに押し付けた、いえ、戦術です、近寄りたくないからじゃありませんよ!…きっと。
「承知しました…が、まずは可能な限り射撃による殲滅と繁殖の抑制を!」
 そんなアリアの申し出を、騎士物語を行動規範とするトリテレイアは快諾するが…戦況を見て、ウォーマシンとしての冷徹さがある判断を下す。
「騎士道を鑑みれば言語道断なのですが…」
 トリテレイアのユーベルトコード【機械騎士の二重規範】、騎士道から外れた格納銃器に攻撃、『両腕部格納銃器・多目的速射砲』の銃身を伸ばし、精密射撃で触手塊を撃ち貫く。
 しかし…此度のトリテレイアの言う『言語道断』はさらに重い。現状、触手塊の温床となっている栄養源の破壊、即ち犠牲者達の遺体に対してもその放火は向けられていたのである。
「大丈夫です、立派な戦術です!、それに、化物の餌にされるよりかは強引にでも火葬してあげた方がまだマシですよ」
「…ありがとうございます、アリア様」
「礼なんていりませんよ…って、それよりもトリテレイアさん触手が来ます、来てますよ!」
「はい、アリア様は私の後ろへ!」
 二人の弾幕を掻い潜ることに成功した触手が襲いかかる、トリテレイアは素早く前に出て、伸びた銃身でその触手を受け止め、アリアは触手の動きを見切り、上手く躱しながら後方へと下がった。
「アリア様、もう少し離れてください!」
 アリアがある程度の距離をとったと同時にトリテレイアの脚部のスラスターが火を上げる、片足のみ点火したスラスターによって、トリテレイアの巨体はもう片方の足を軸にして旋回、大質量の巨大なウォーマシンの鉄脚が唸り声を上げて周囲の触手塊を引き潰した。
「更に追い打ちですっ!」
体内に宿す龍の因子によって、無尽蔵な魔力量を誇るアリアは、再度ユーベルトコードを発動し、残った触手塊を尽く撃ち抜いた――が…

「そ、そんな…」
「馬鹿な、死体は焼却したはずですのに…何故?」
触手塊はまだまだ減らない、栄養源は断った筈だと困惑する二人、その動揺を突くように触手群が襲いかかる。
「しまった!?…え?」
 動揺からの隙を突かれアリアは触手に絡め取られる…が、その触手は雷を帯びる護符によって即座に黒焦げにされた。
「おやおや、危なかったですねぇ…しかし、うむ、推測通りですか」
「芦屋様、助かりました…が、推測通りとは?」
トリテレイアの問いに不敵で胡散臭い笑みを浮かべ芦屋は答える。
「栄養源さえあれば繁殖できるなんて厄介でしょう?、だからそれをなんとかしよう思いましてね」
「栄養源の死体ならトリテレイアさんが…」
 先程の二人の動揺を誘った疑問、それを口にするアリアに芦屋は首を横に振って指し示す。
「栄養源、死体ならばまだありますよ…其処にね」
「…なっ!?」
 芦屋の指が指し示した場所で、触手塊は触手塊の残骸を苗床にして繁殖を始めていた…余りにも醜悪で、おぞましいその生命力にふたりは絶句する。
「本当に厄介です…が、お二人の戦いを見させて頂いて、漸く対策の目処が付きましたよ」
「対策…あるのですか?」
「ええ、繁殖の状態をよく観察すれば…繁殖が活発な死体とそうでない死体があるでしょう?」
 二人は見る、悍ましい触手、それが孵化する速度が死体によって大きく違う事を…
「私が倒した死体の繁殖が少ない?」
「その通りです、アリアが放った光の槍は『陽』の気質を持ち、淫蕩をもたらすあの触手は『陰』の気質を持つようです…そして、事前に調査したあのカプセル、いえ、卵でしたね、あれは五行において『土』に属すると判明しております」
 卵を構成する物質は未知なるものであったが、仲間が集めた情報と追加のサンプルから、その属性だけは看破する事に成功していた。
 胎内と生命を表す『水』の属性を喰らい発芽する性質は、五行における『土』に似た気質を持つと。
「えっと、長々と説明されましたが良く分かりません、簡潔に説明してください芦屋さん、そんなんだから胡散臭いって言われるんですよ?」
「一言多いですねぇ、まぁアホの子にも分かるように説明しますと、陰陽と属性さえわかれば、私の術でそれを打ち消せます…先程、雷撃の護符で黒焦げにした奴も増殖してないでしょう?雷は『木』、木剋土と言いまして『土』には強いのです」
「なるほど、触手の弱点が判明したのですね」
「すごく簡単に言えばそういう事ですねぇ、アリアはさっきの槍を、トリテレイアは電気か光、そう言った攻撃手段はあるますか?」
「特殊弾頭の中に鎮圧用の電撃弾でしたら」
「上等です、では私の術に合わせて二人共一斉掃射をお願いいたしますよ」
 二人に指示を出すと、芦屋は素早く陰陽の印を結び、今までの調査と戦いによって得られた情報を元に組み立てたユーベルトコード【五行相生】を発動させた。
 『破魔』の雷雲を展開、水生木、雨雲と雨の『水』属性は『木』属性の雷を威力を高め、そこに『破魔』の陽の気を載せ、触手の持つ脅威の繁殖力を打ち砕く。
「繁殖が止まった!?、行きますよトリテレイアさん」
「了解です、電撃弾装填…喰らえっ!」
 繁殖が止まった触手塊をアリアとトリテリアのユーベルトコードが打ち砕く、夥しい数に繁殖していた触手塊もその数を次々と減らしていった。
「私はこのまま繁殖を阻害し続けます、後はお任せしますよ皆さん」
 数を減らした触手塊は芦屋の秘術により増える事もない、後はもう残党を殲滅するだけだ!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ウィルトス・ユビキタス
体調が少し芳しくないが、戦闘だ。

装備している【イクリプス・フリティラリア】に【スチームエンジン】を使用して蒸気エンジンを搭載する。
そして発砲の反動を活かして高速戦闘を行う。
迫り来る触手をまとめて【なぎ払う】【範囲攻撃】を行う。
数が多ければ【ダッシュ】を駆使して回避、余裕があれば【カウンター】を狙っていく。

アドリブ大歓迎



「さて、俺も役目を果たさないとな」
 仲間の活躍によって触手塊の異常繁殖は止まった、自分も遅れを取るわけには行かないとウィルトスは『イクリプス・フリティラリア』を構える、変形機構を持つ、この武器は銃形態変形、射程外から触手塊を一掃する狙いだ。
「体調は少し芳しくないが、戦闘だ…【スチームエンジン】蒸着!!」
 『イクリプス・フリティラリア』にスチームエンジンが搭載され、只でさえ強力な弾丸を撃つ事ができる愛用の武器の威力が更に強化された…が、少々懸念がある。
 お腹の調子が悪いのだ、なんといってもあの卵を飲み込んで、小さいながらも触手を生み出したのだから仕方がない。仕方はないのだが、強力な砲であるが故に反動も強いこの武器に、更にスチームエンジンが搭載して放つとなると…
「ちくしょう!、やっぱ腹に響くぜぇっ!!」
 一発放つ度に、ガツンと衝撃が腹に響く…だが戦闘中だ、射撃を止めるわけには行かない、ウィルトスはこの射撃に攻撃以外にも、この強い反動を利用しての高速移動を行うなど、この武器を使い続ける戦術を選んだのだから根性で堪えるしかない。
(しかし、解せんな…)
 一発放つ度に、触手塊を爆ぜさせ反動による素早い移動で触手を寄せ付けない…そんな戦いを繰り広げながら、ウィルトスの脳裏に一つ疑問が浮かんだ。
(薬…いや卵か、一度飲んだだけでこんな事になるんじゃ一般人じゃ耐えきれんぞ?)
 そう、ウィルトスは一度飲んだだけで卵が孵化し、小さいながらも触手塊が生まれた…そんな恐ろしいものを、いくら快感が伴うからと使用を続けるか?、続けるにしても二週間以上ももつはずがない…猟兵であるウィルトスがユーベルコードによるガードまでしてもここまでの影響を受けているのだから。
「まっ、今、それを考えても仕方ねぇか!」
 砲撃を抜けて迫る触手、それに対して『イクプリス・フリティラリア』を鎌形態に変形し、砲の反動とスチームエンジンの推力を利用し超高速で旋回すれば周囲の触手はことごとく薙ぎ払われる。
「答えはあのビルの中にあるだろ、よし…お前で最後だ!」
 ビルを守護していた触手塊の最後の一匹、それにウィルトスの砲撃が見事に着弾し触手塊の群れは掃討された。

「それじゃ行ってみるか」
 ウィルトスは仲間と共にビルの中を進む、風俗店ではあるが、営業していた形跡は跡形もない。腐敗した肉片が散らり、黒ずんだ血痕が壁や床を夥しく染め上げる店に通う者など居たら流石にマニアックすぎるだろう。
(これは…かなり前から孵化が繰り返されていたんだろうな…)
 孵化の残骸だと思われるそれらの光景から、ウィルトスはこの事件が始まった時期を推察しようと周囲を目配せする…と、黒ずんだ塊が蠢いた、小さいが見覚えが有る、あれは――。
「俺が吐き出した触手塊だな、まだ生き残りが居たのか!」
 容赦なく、ウィルトスは『イクリプス・フリティラリア』の砲弾を自身が産みだしてしまった触手塊に放つ、が…
「は、弾いただとっ!?」
 コブシ大の小さな触手塊が、スチームエンジンが外された状態だったとは言え、あの強力な砲弾を防いだ…巨大な触手塊ですらそんな事は出来なかったのに。
「ソウカ、ソウカそウカソうか、ハはハハははハハハハハハハははははっ!!」
 黒い触手塊はその肉を歪に膨張させながら声を出した、声帯器官を作り出しながら喋っているのであろう、声はやがて鮮明に、ウィルトスに向けて告げたのだ…
「余を生み出してくれた礼を言おう、母上様」
 呼び込みの男、その腹の中の触手塊を通して聞いた声の主が、ウィルトスと猟兵達の前についに姿を現したのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『イネブ・ヘジの狂える王』

POW   :    アーマーンの大顎
自身の身体部位ひとつを【罪深き魂を喰らう鰐】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD   :    カイトスの三魔槍
【メンカルの血槍】【ディフダの怨槍】【カファルジドマの戒槍】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    ネクロポリスの狂嵐
【腐食の呪詛を含んだ極彩色の旋風】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠神楽火・綺里枝です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ふははははははは、素晴らしい、こんな小さな器でも余が実体化出来るとは…苗床の質でこうも違うのか」
 小さな触手塊が膨張し、遂には人の形を持った…その男は嬉しそうに、狂気の笑みを浮かべながら上機嫌に笑う。
「確か―猟兵とか言ったな、余は寛大だ、器を生み出す苗床を潰した不敬、赦そう」
 触手塊とは比べ物にならぬ威圧感を放ちながら、猟兵達に傲慢な言葉を向ける…器を生み出す、自身を顕現させるためにあの触手塊を繁殖させて居たのだ。
「余こそが、真なるファラオ…お前達には我が完全に権限するための器となる栄誉を授けよう」
 狂気の笑みのまま、猟兵達に迫る真なるファラオを自称する人の形をした化物…
「ふははははは、この時代風に言うならばぁ!、お前たちがママになるんだよぉ!!」
 …えぇ~?、なんで言い直しちゃったんだ、この自称ファラオの変態…ドン引きだがこのままでは君達の貞操が危ない、最終決戦だ!
フロッシュ・フェローチェス
ならお前は屍にでもなってろ。死ね、ただ只管に死ね。

背後から先制攻撃で散弾銃ブッ放ってやる。
避けられたならその後の行動を重心で見切り、クソッタレな顔面にメカブーツ底の跡刻んでやるよ。
更にガジェット・刻天炉可変……個人の持つ銃ではありえない、衝撃波の乗った砲弾をぶち込む。
――けどそれはフェイント、本命は体勢を崩し、奴に距離を取らせる事。
作った煙幕突き破って【選択したUC】を思い切り叩き込む。
潰れて死ねホント。

何か、あんなドロドロした触手からこんな奴が出て来るとか正直―――キャッ!?
ちょっ、何だこれ触手――わ、うお、危なっ!ってか来んな!
それはそれで健在なの!?……ホントいい加減にしろ!

※アドリブ可


アリア・ヴェルフォード
うわぁ…精神的に受け付けたくない…
こんなでも一応邪神の類なのでしょうか
まぁ外見的に触手よりはマシなのが救いですね!
さっさとこの変態を片付けて事件を解決しちゃいましょう!

【POW】
【属性攻撃】による【2回攻撃】を駆使して前衛として立ち回りましょう!
相手の攻撃には【見切り】で回避し【カウンター】のチャンスも伺っていきます!
頃合いを見て隙が作れたらユーベルコードによる大ダメージを与えてやりますか!


芦屋・晴久
【WIZ】
えぇ……ドン引きですけどこれ……
この方苗床にママと叫びながら繁殖していくつもりだったんですかね?

ともあれ油断は出来ませんねぇ、ふざけた言動ですがあの目には間違いなく異端の狂気が見られます。

皆さんここまでの戦闘で疲弊している事でしょう。【八咫五封陣】と【四神創奏】の術式を重ねて結界を作ります。
痩せ薬を見て少々思いついた事があります。こいつを私の【医術】を持って毒を仕込み、陰陽の力……陽たる【破魔】の力を封じ込めましょう。
これを奴の胎内に吸収させて私が【全力魔法】爆させます。
元はあれの卵、力が弱まれば少しでも自身を取り込もうとするでしょうからね。


クァン・リンドヴルム
……猟兵の体内から生み出されたオブリビオン、ですか。
厳しい戦いになりそうですが、頑張りましょう!
できれば他の方と共闘したいですね。
派手に盾と武器を鳴らし、私達を苗床にできるものならしてみなさい、と《挑発/12》します。
攻撃がこちらに向いたようであれば、【無敵城塞】で全て防御しましょう。
【無敵城塞】を使うと動けなくなってしまうので、《盾受け/8》の体勢を取りつつタイミングはよく見計らって使いたいですね。
騎士の真似事ではありますが、本領発揮といきましょう!



「えぇ…ドン引きですけどこれ……この方、苗床にママと叫びながら繁殖していくつもりだったんですかね?」
 今までの方向とは違った狂気、と言うか変態性を見せてきた元凶を見て、引き攣った表情で芦屋が呟く、他の猟兵達も同じ気持ちだろう。
「その通りだ、余は母を、真なる母を求めて続けているのだからな…あの女ではダメだ、あの売女は余を不完全な状態で産み落とした罪人だ、不完全であるが故に、余は侮られ、売女の夫…憎き、偽りのファラオに継承権を剥奪されたのだ、余こそが真なるファラオなのにだ!!」
(…うわぁ、つい、呟いじゃっただけで話かけた訳じゃないんですけどねぇ?)
 ただでさえ気持ち悪い奴なのに、なんか話しかけられた…正直、とっとと戦闘を初めて終わらせたいのに…と、芦屋は一歩引き下がりながら思った。
 話してる内容もアレだ、自分がダメだったのを産んだ母親の所為にして、お父さんにも王の資格なしと切り捨てらてた自称ファラオが『僕チン、もっとすごいんだもん』と駄々こねているだけの内容…それをなんか、思いっきり自己陶酔しながら、さも正当な事かの様に叫んでいる。
「あの男は偽りのファラオだ、木乃伊を作って眠りについても甦れない哀れな俗物、幾度でも、復活を果たす事が出来る我こそが真のファラオに相応しい、だから…完全なる王を生むためにお前たちをマ…」
 変なスイッチが入ったのか、延々と御託を並べていた自称ファラオの頭部が銃声と共にパァーンと弾けた。
「いいや、お前は屍にでもなってろ。死ね、唯只管に死ね」
 くだらん御宅は聞きたくないとばかりに、何時の間にか敵の背後に回っていたフロッシュが散弾銃を撃ったのだ。
(避けない…倒れない、いや!?)
 散弾で蜂の巣になった筈の頭部、その穴から触手がうねうねと生え、絡み合い、また元の形に戻っていく…この再生もだが、こいつの重心はおかしい…まるで――
「人の形は上っ面だけかよっ!?」
「痛いではないかぁ~、は・は・う・えぇぇぇぇっ!!」
 どろどろした触手から生み出されるなんて…などとは考えていたが、違う。重心を見極めようとして理解した、こいつの中身に骨や内臓はない。人の形をした革袋の中身は触手だ、触手は健在なのである。
「大人しく、余を産んで欲しいのだがなぁっ!!」
「遅い…って!?」
 自称ファラオの右腕が、巨大な鰐に変形しフロッシュに襲いかかるが、速さではフロッシュの方が上だ、その一撃を素早く回避した、つもりだったが…
「キャッ!?、ちょっ、何だこれ触手――わ、うお、危なっ!ってか来んな!」
 鰐の大顎の舌は無数の触手だった、これも上面だけである、噛み付く軌道とは違う、フロッシュに絡み付こうと伸びる舌の変則的動きと、気持ち悪さに、フロッシュとしては珍しい、可愛らしい悲鳴が思わず漏れてしまった。
「…ちっ」
「光と闇の奔流、受けてみよ!エックス・カリバー!」
 舌の想定外の動きに体勢が崩れ回避が遅れる、このままでは捕まってしまうと思った刹那、割って入ったアリアのユーベルトコード【聖光闇勝利剣】が大顎の鰐ごと舌を十字に断ち、光と闇の奔流がその周囲ごと自称ファラオの右腕を吹き飛ばす!
「やった…ってえええっ!?」
大ダメージを与えたと思った瞬間、急速に敵が遠ざかる…否、自分が物凄い速度で後ろに引っ張られている!?
 引っ張ったのはフロッシュ、そして、その理由も即座に視界に入った。
「また再生ですか!?、さっきの触手といい気持ち悪い上にしぶとすぎですよ!!」
「……ホントいい加減にしろ!」
 【聖光闇勝利剣】を受けながらも、アリアを捉えるべく伸びていた触手。それに、フロッシュが気が付き引っ張ったのだ…しかし、あの威力ですらたじろぐこともなく反撃、更に再生まで果たす、そのふざけた敵の身体に、思わず文句も言いたくなる。
「余は不滅なり、余こそ真なるファラオ、永遠の太陽なり!」
「そんな太陽、精神的に受け付けたくありません!、芦屋さん、この前のやつお願いします、再生も繁殖も似たようなものでしょう!?」
「確かに似たような原理のようですが…前のやつでは無理ですね、深さが足りません…まぁ、既に他の策は用意してありますが、先ずは奴の動きを止めないと無理ですかね」
「なら、私があいつを止めてみせます」
「クァンさん?、大丈夫なのですか!?」
 あの変態の足止め、それは、あの触手に身をさらす事を意味する…あれは魔の快楽を与える触手、あれに囚われれば無事では済まないはずだ。
「大丈夫です…あれを耐えた人見ましたから…全力で守りに入れば、私なら、あれを防げると思います」
「…わかりました、ですが…前の戦いのダメージも残っているでしょう、まずは回復を…其は四神の陰堕とし奉る共振の言霊…」
 芦屋のユーベルトコード【三之式・四神創奏】の詠唱と共に3人の内から力が沸き上がってくる、更に…
「金剋木!五行の理を以て、外なる災い打ち払わん!」
 ユーベルトコード【八咫五封陣】の結界の光が全員を包み込みその傷を癒す、二連続のユーベルトコードの発動、特に【八咫五封陣】は反動で強い疲労をもたらす…三人の全快を代償に芦屋は膝をついた。
「芦屋さん大丈夫ですか!?」
「大丈夫です、策は用意できていると言ったでしょう?、私の仕事はもう『スイッチ』を入れるだけなのですよね」
 膝を付いたまま、芦屋は胸ポケットから白いカプセルを取り出し、アリアに手渡す。
「これは…痩せ薬ですか?」
「はい、但し毒と爆弾入りですがね…奴の体に打ち込んで頂ければ私が『スイッチ』を入れてドカーンって訳ですよ」
「なるほど、仕掛けは既に仕込み済みという訳だな…で、私は何をすればいい?」
「フロッシュは後詰めを、しぶとい奴ですからね、これでも死にきれなかったら…」
「ああ、確り潰してやるよ」
 作戦は決まった、こちらの回復の最中も自称ファラオは余裕ぶってニヤニヤ笑っていただけである、慢心だけは王様クラスらしい。
「最後のお話は済んだかね母上諸君?、何も悲しむ事はない、余を孕む悦びをすぐに知る事になる…何も考える必要もない至福を授けよう」
 おそらく、もう二度と聞くことはないであろう『母上諸君』と言うパワーワードで呼ばれた一同、その中からクァンがまず先に前に出る。
「私達を苗床にできるものならしてみなさい!」
 派手に武器を鳴らしながら、クァンは自称ファラオを挑発する…その行為に自称ファラオは手を額に当て、呆れたような仕草を取った。
「嘆かわしい、実に嘆かわしいぞ母上、未だに余の偉大さを理解できないとはなぁ!!」
(かかりました!)
 呆れた仕草に挑発を読まれたかと焦りはしたが、この現実を見れない、自己陶酔型変質者が、こんな挑発されて我慢できる筈がなかったのだ。
「なかなか男好きする身体であるな、よし、存分に母になる悦楽を刻んでやろう」
「ふざけるないでください!」
 三本の魔槍が自称ファラオから放たれる…が、これも上面だけ、クァンの『オブシディアン・クリスタ・シルド』が三槍を弾き飛ばしても、槍はグニャリと曲がり触手群となって襲いかかる。
「そんな物で余の愛は防げn…ぶぎゅあっ!!?」
 曲がる触手が盾を避けてクァンの身体に絡みつく。捉えた!…と自称ファラオが思った矢先、クァンは盾を自称ファラオの胴体に叩き付けた。
「甘い、甘いぞ、母上ぇ!」
 その体を押しつぶしても、触手が這い出てくるのは止まらない、数多の触手がクァンに絡み付き、その形の良い胸を、美しい肌を、可憐な臀部をと舐めるように這い回る。
「うぅ、くぅ…ま、まだ!」
 ――負けない、触手に包まれても快楽に飲まれず反撃した人がいた、ならば自分も耐えられる、耐えなければならない…あと少し…『オブシディアン・クリスタ・シルド』が完璧に目標の体を地面に縫い付けるまで――
 クァンは悍ましい快感に耐えながら、盾を持つ腕に力を込め…ガコンという音とともに自称ファラオの胴体ごと、盾は地面に潜り込んだ。
「今!、【無敵要塞】発動!」
 その状態でクァンは【無敵城塞】を発動、ほぼ無敵の守りを誇るこのユーベルトコードは触手の魔力をも跳ね返す、動けなくなるというデメリットがあるが、敵を縫い付けた今なら問題ない、クァンは完璧に自身の仕事をなしたのだ!
「何故だ!?、何故余を拒む!?」
 触手の魔力が通じなくなっても、執拗にクァンを触手で攻める自称ファラオ…思い通りにならないとヒステリックになる、その性格が災いし、続いて迫るアリアへの対応が遅れた。
「クァンさんお見事です、私も続きますよ!」
「うぬぅ、ならばそちらの母上からぁぁっ!!」
 慌てて、触手で迎撃しようとする自称ファラオだが、縫い付けられ動きが制限された触手ではアリアは止められない、その動きを見切られ『聖剣Xカリバー』で一閃、普段なら対の邪聖剣で追撃であるが…今回は違う、代わりに握られた例の痩せ薬を聖剣で切り開いた傷口にねじ込んだ。
「ぐああっ!?、なんだこれはっ!?、卵…いや…ぐああああああぁ!?」
 痩せ薬…触手の卵がねじ込まれた瞬間、今までの再生の如く、卵はその肉体に馴染み込み取り込んだ…が、それは毒物だ、高い再生力が逆に仇となり、瞬く間に毒は全身に回る。
「芦屋さん、今です!」
「了解、『スイッチ』を入れます、アリアは下がって、クァンはそのまま無敵城塞で!」
 その言葉と共にアリアは離脱、次の瞬間…卵に込められた芦屋の全力の【破魔】の…『陽』の魔力が自称ファラオを内側から爆砕する。
 クァンの体は爆発の衝撃で飛ばされるが、無敵城塞のおかげで無傷だ…そして自称ファラオの体は…
「否、否、戻れ…余は蘇る、永遠のファラオ、真なるファラオなり、認めろ、余を認めろ認めろ認めろ認めろ認めろ認めろ認めろ認め認め認め認めろみとめみとめみとめみとめみとめぇぇぇぇぇ」
「全く、そのしぶとさだけは認めてますよ…」
 最初に猟兵に産み落とされた小さい触手塊に戻っているものの、まだ生きていた…必死に前の姿に戻ろうと喚き散らしながら蠢いていた。
「トドメですっ」
「ふざけるなぁぁぁっ!!!!、余は不滅の太陽なりィィ」
 小さな触手塊から極彩色の…いや、腐った肉片に浮いた脂の濁った虹色の様な光彩が、腐食の魔力を帯びたそれが、旋風の様に、周囲を、あらゆるものを朽ち果てさせながら吹き荒れる。
「こ、こんな切り札を…遠距離からなら!」
 アリアは光の槍を射出する、しかしそれは触手塊に届く前に朽ち果ててしまう、光の魔力でもなんでも、それは容赦なく腐蝕させてしまうようだ。
「そんな、瞬く間に朽ち果てるなんて…」
 ここまで来てトドメの攻撃手段はない、早くしなければ、しぶといアイツはあのダメージからも再生し蘇ってしまうかもしれない…そんな焦りをが芦屋、アリア、クァンの胸中に訪れる…そう、この3人だけに。
「瞬く間?…違うね」
 そう聞こえた、同時に吹き抜ける風、それを3人が知覚出来た時点で、既にフロッシュの【トリニダード・スコーピオン】は触手塊を捉え、その小さな体を弾丸の如く吹っ飛ばしていた。
「あくびが出るほど長い時間さ、アタシにとってはね」
 僅か148分の1秒、知覚すら不能な速度で蹴り飛ばされては、腐食の魔力も意味を成さない…皮膚一枚、腐食させる間もなく旋風は突破され、触手塊は壁に叩きつけられ、パンッと軽い音と共に砕け散った。
「よし、潰れて死んだな」
 最初に産み落とされた状態、あれが本体だったのか…もう復活するような兆候は見られない、太陽でも王でもないが、不滅と自称するだけのしぶとさをだけは確かに持っていた愚か者は漸く倒れたのだ。

「いや、もう最悪でしたね…外見だけなら触手よりマシかと思ったら結局触手でしたし!」
 やっと終わった、今回の仕事はいろいろ最悪だったとアリアはぼやく、触手はもう見たくはない、今日はちょっとタコとかイカも食べたくない気分だ。
「ホント、心底クソッタレだったよ…あんな奴の復活の為に犠牲になった奴には、流石に同情するよ」
 フロッシュも同意する、あの気持ち悪さと、いきなりの触手を前に見せた失態は思い出したくもない、ただ犠牲者には同情する…犠牲になっただけでも不幸だが、その結果がアレでは本当に浮かばれない。
「勝てて良かったですね、猟兵の体内から生まれたUDC…それだけで、あそこまでの力を持つなんて」
 しかも、唯一度だけの服用で生まれた小粒の触手塊…それだけであの異常な生命力を発揮するとはと、クァンは真面目に脅威を感じていた。
「いやでも、それで生まれたのがアイツで良かったってのはありますよ…しぶといだけで迂闊でしたしね、もっとマシな奴が同じ方法で生まれたら大変ですよ」
 そのクァンの話を聞いて芦屋は思う、変態で気持ちわるい奴だったが、人間的には三下だ…もっと頭の回るやつ、用心深いやつだったらもっと苦戦していただろうと。…まぁ、だからと言って、アレをもう一度思い返し、どう思うかといえば…
(あれは、ない)
 それぞれが自称ファラオの事を思い返してみても、やっぱりこの結論だけは変わらないであろう、ホント…あれは、ない。

 こうして、猟兵達の戦いは勝利で終わった、これでもう痩せ薬での被害者は出ないであろう、薬を服用してしまった者も元凶が倒されてからは快復に向かっている。
 猟兵達の活躍によって、世界の平和は束の間だが守られた…今はそれを喜ぼう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月25日


挿絵イラスト