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あゝ、竜よ(作者 七篠文
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 帝竜ヴァルギリオスが死んだ。それは、彼らにとって信じ難い知らせであった。
 竜の住まう地――群竜大陸。その脅威と戦うために、武を磨き高めてきた。竜を討つためならば、あらゆる禁忌に手を染めてでも力を求めた。
 しかしもう、彼ら【血の一族】が倒すべき竜は、いない。

 ――否。

 同胞が言った。これは罠だと。
 悪しき竜に懐柔された者たちが、我らを滅ぼさんがために戯言を流布したのだと。
 そんなことができるのは、世界を旅する冒険者どもしかいない。金に卑しい奴らが、竜の財宝に目を眩ませ、世界を裏切ったのだ。
 そうに違いない。血の一族は激怒した。必ずや、奴らを滅ぼさねばならぬ。震える眼が憎悪と殺意に塗れていく。
 そして彼らは動き出した。魔物の軍勢を率いて、闇夜を猛進する。
 狙うは、輝く泉の町【ミレイユ】。癒やしの力を持つ水を求めて、冒険者どもが甘味に群がる蟻の如く集う拠点だ。
 走る。進む。
 止まらない。
 潰せと、誰かが叫んだ。呼応し、皆が吼える。

 潰せ! 潰せ!! 潰せッ!!

 憤怒の声に、魔獣の咆哮が重なる。
 殺意の不協和音が月夜の空を侵していく。



 残党というのとは、ちょっと違う。
 困惑した様子で、チェリカ・ロンド(聖なる光のバーゲンセール・f05395)はそう言った。
「血の一族は……もともと、世界のために竜を倒そうとしてた人たちみたいね。まぁオブリビオンになっちゃってからは、真逆のことばかりしてるけれど」
 もともと、竜討伐のためなら生贄を差し出すことも辞さない連中だ。骸の海から現れてからは、より手段を選ばなくなったが、群竜大陸に立ち向かうという意志は一貫していた。
 しかし、帝竜はもういない。先の戦争で、猟兵たちが激闘の末に撃破している。
「それを、認めたくないんだって。竜たちがやられたってのは、帝竜ヴァルギリオスにお金もらった冒険者の嘘だっていうのよ」
 頬を膨らませるチェリカだが、その後に続く事態は極めて深刻だった。
「あいつら、モンスターをたっくさん引き連れて、冒険者が拠点にしてる町を襲うつもりよ。みんなを転送する頃には、もう戦闘が始まってると思うわ」
 泉の町ミレイユに夜襲を仕掛けた血の一族は、手始めにモンスターの大群をけしかけている。
 冒険者たちが奮闘しているが、如何せん敵の数が多すぎる。急ぎ駆けつけてやらねば、町は一夜にして墜ちてしまうだろう。
「まずは、冒険者と一緒に、モンスターの群れからミレイユの町を守ってね。敵を冒険者に任せられるくらいになったら、敵陣に斬り込んで本丸を倒すのよ」
 血の一族は街の光の届かない闇夜に紛れている。暗闇に対する準備をしたほうがよさそうだ。
 また、奴らの武術と連携は侮れない。引き連れてきた有象無象と同じ扱いをすれば、痛い目を見るだろう。
「町の泉には傷を治す力があるけれど……できるだけ、怪我はしないでね」
 心配そうに言ってから、チェリカが胸の前で祈るように手を組んだ。
「血の一族に、ヴァルギリオスたちを倒したみんなの力を見せてやりましょ! いってらっしゃい!」
 グリモアが、淡い光を放つ。





第2章 集団戦 『血の一族』

POW ●聖魔伏滅拳
【破魔の力を込めた拳】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD ●聖魔伏滅斬
【破魔の力を封じた剣や斧】が命中した対象を切断する。
WIZ ●血の福印
【自らの血】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 冒険者たちの喊声が、遠くに聞こえる。
 士気が頂点に達した彼らの勝利は、揺るがないだろう。もはや、猟兵たちが手を貸す必要はない。
 今、世界を守る戦士たちは、闇の中にいた。
 街道から外れた草原――幾本かの木が生い茂り、深い影を落としている。
 猟兵たちが、得物を抜いた。そうせざるを得ないほど、ここには濃密な殺気が渦巻いている。魔物どもとは比較にならないほどの敵意が、肌をひりつかせた。
「猟兵……。知っている」
 闇が語る。
 揺らめいた黒から現れたのは、褐色の肌に白い戦化粧を入れた者たちだった。
「なぜ知っているのか……分からない。だが、知っている。お前たちは、敵だ」
 素手の者、剣や斧を持つ者、杖に魔力を滾らせる者。男女ともに、防具は着ていない。布もほとんど纏っていなかった。
 血の一族は、その誰もが命を奪うことに躊躇いのない目をしていた。
 月が、雲に隠れる。深くなった闇に警戒を強める猟兵たちへ、血の一族は漆黒に沈みながら言った。
「お前たちは、あの卑しい戦士どもに加勢した。それはつまり……お前たちも、『竜を討った』と宣う者、ということか」
 猟兵たちは、答えない。視界が死んだ暗闇の中、囲むように近づく敵意がいつ仕掛けてきてもいいように、敵の動きに細心の注意を払う。
 その沈黙を、血の一族は答えと受け取った。
「……群竜大陸。そこは我らが征す地。お前たちのような下賤の戦士が足を踏み入れられる場所ではない。竜が、お前たちに斃されるはずがない」
 雲が晴れる。月明かりに照らされた血の一族は、その場から一歩も動いていないかった。
 奴らはその剣気だけで、動いていると錯覚させたのだ。
 間違いなく、手練れだ。
「猟兵よ。愚かな虚言を流布し、我らの成すべき使命を穢した報い……その命を以て、償うがいい」
 再び、月が隠れた。世界が闇に閉ざされる。
 草を踏みしめる音は、猟兵の出したものか、それとも――。

 空気が、揺れる。
 刃の奔る音が、すぐそばで聞こえた。