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あゝ、竜よ

#アックス&ウィザーズ #戦後

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#戦後


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 帝竜ヴァルギリオスが死んだ。それは、彼らにとって信じ難い知らせであった。
 竜の住まう地――群竜大陸。その脅威と戦うために、武を磨き高めてきた。竜を討つためならば、あらゆる禁忌に手を染めてでも力を求めた。
 しかしもう、彼ら【血の一族】が倒すべき竜は、いない。

 ――否。

 同胞が言った。これは罠だと。
 悪しき竜に懐柔された者たちが、我らを滅ぼさんがために戯言を流布したのだと。
 そんなことができるのは、世界を旅する冒険者どもしかいない。金に卑しい奴らが、竜の財宝に目を眩ませ、世界を裏切ったのだ。
 そうに違いない。血の一族は激怒した。必ずや、奴らを滅ぼさねばならぬ。震える眼が憎悪と殺意に塗れていく。
 そして彼らは動き出した。魔物の軍勢を率いて、闇夜を猛進する。
 狙うは、輝く泉の町【ミレイユ】。癒やしの力を持つ水を求めて、冒険者どもが甘味に群がる蟻の如く集う拠点だ。
 走る。進む。
 止まらない。
 潰せと、誰かが叫んだ。呼応し、皆が吼える。

 潰せ! 潰せ!! 潰せッ!!

 憤怒の声に、魔獣の咆哮が重なる。
 殺意の不協和音が月夜の空を侵していく。



 残党というのとは、ちょっと違う。
 困惑した様子で、チェリカ・ロンド(聖なる光のバーゲンセール・f05395)はそう言った。
「血の一族は……もともと、世界のために竜を倒そうとしてた人たちみたいね。まぁオブリビオンになっちゃってからは、真逆のことばかりしてるけれど」
 もともと、竜討伐のためなら生贄を差し出すことも辞さない連中だ。骸の海から現れてからは、より手段を選ばなくなったが、群竜大陸に立ち向かうという意志は一貫していた。
 しかし、帝竜はもういない。先の戦争で、猟兵たちが激闘の末に撃破している。
「それを、認めたくないんだって。竜たちがやられたってのは、帝竜ヴァルギリオスにお金もらった冒険者の嘘だっていうのよ」
 頬を膨らませるチェリカだが、その後に続く事態は極めて深刻だった。
「あいつら、モンスターをたっくさん引き連れて、冒険者が拠点にしてる町を襲うつもりよ。みんなを転送する頃には、もう戦闘が始まってると思うわ」
 泉の町ミレイユに夜襲を仕掛けた血の一族は、手始めにモンスターの大群をけしかけている。
 冒険者たちが奮闘しているが、如何せん敵の数が多すぎる。急ぎ駆けつけてやらねば、町は一夜にして墜ちてしまうだろう。
「まずは、冒険者と一緒に、モンスターの群れからミレイユの町を守ってね。敵を冒険者に任せられるくらいになったら、敵陣に斬り込んで本丸を倒すのよ」
 血の一族は街の光の届かない闇夜に紛れている。暗闇に対する準備をしたほうがよさそうだ。
 また、奴らの武術と連携は侮れない。引き連れてきた有象無象と同じ扱いをすれば、痛い目を見るだろう。
「町の泉には傷を治す力があるけれど……できるだけ、怪我はしないでね」
 心配そうに言ってから、チェリカが胸の前で祈るように手を組んだ。
「血の一族に、ヴァルギリオスたちを倒したみんなの力を見せてやりましょ! いってらっしゃい!」
 グリモアが、淡い光を放つ。


七篠文
 どうも、七篠文です。
 今回はアックス&ウィザーズです。戦後シナリオとなります。無双系。
 竜を倒す使命に呪われ、竜の死を受け入れられない戦士の一族と戦います。

 一章は、血の一族が率いてきたモンスターの大群と衝突します。
 輝く泉の町【ミレイユ】は堅牢な防壁に囲まれているものの、防衛戦力は冒険者任せのところがあり、突破されると非常に脆いです。
 転送された先は夜の平原で、ミレイユの門から数百メートル先です。すでに百を超える冒険者が戦闘を開始していますので、彼らと共闘し、敵を撃破してください。
 モンスターは、油断しなければ冒険者でも十分勝てる強さです。ただ、数が尋常ではないため、苦戦しています。
 得意な戦法で大いに暴れて、冒険者を鼓舞してください。
 敵の種類などは、幕間にて説明します。

 二章は血の一族と決戦。一章に比べると遥かに強い敵です。油断せずボコボコにしましょう。
 舞台が暗闇なので、視界を確保するための策を用意するとボーナスがつきます。

 三章はミレイユの泉で傷を癒やしたり遊んだりします。
 なお、三章ではチェリカが泉の周りをウロウロしているので、なにかあれば声をかけてください。

 各章とも、幕間を投稿してからプレイング募集を開始いたします。



 特に記載がなければ、七篠はアドリブをどんどん入れます。
 希望があれば、下記をプレイングの頭に組み合わせてつけてください。
 アドリブOK…「ア」
 アドリブすくなめ、なし…「ア小」「ア☓」
 連携OK…「連」
 ソロ希望…「ソ」
 負傷OK…「傷」

 ステータスシートも参照しますが、見落とす可能性がありますので、どうしてもということは【必ず】プレイングにご記入ください。

 それでは、よい戦いを。皆さんの熱いプレイングをお待ちしています!
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第1章 冒険 『月夜の反撃戦』

POW   :    前線に立ち戦線を押し上げる

SPD   :    罠を仕掛け敵の侵攻速度を遅らせる

WIZ   :    通路を確保し負傷者の後送を行う

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 打ち上げられた魔法の光球が、ミレイユの門前を照らし出す。
 街道は、すでに血に塗れていた。その多くはモンスターによるものだ。
 刃が閃き、炎や雷が炸裂する戦場は、一見すれば人間が優勢に見えた。だが、中には傷つき倒れた冒険者の姿もある。討てども討てども押し寄せる化け物の群れは、彼らの体力を否応なしに奪っていくのだ。
 ここにまた、死に物狂いで戦っていた新米の剣士が、膝をついた。
「くっ、もう――」
「ここで倒れては、死ぬぞ! 一度退け!」
 老いてなお力強い眼光の弓使いが、剣士を下がらせながら矢を射る。吸い込まれるようにゴブリンの眉間を穿った矢に、しかし達人弓師の表情は厳しかった。
「……このままでは、持たんな」
 地上ではゴブリンを先頭に、オーク、トロール、リザードマン、サイクロプスなどの亜人、巨人が進撃する。スライム、デスワーム、ウルフ、マンティコアなどの魔獣も加わり、街を物量で押し潰さんとしていた。
 夜の空は遥か上空まで、セイレーンやハーピー、ガーゴイル、ロック鳥といった、翼を持つモンスターに埋め尽くされている。
 対して、冒険者は百を数える程度。戦局は極めて厳しかった。
「誰か……助けて……!」
 上空へ火球を飛ばしながら、魔法使いの少女が涙声で呟いた、その時。
 ミレイユの門が眩く輝いた。
 宵闇を消し飛ばすように溢れる光から、戦士が現れる。その数は冒険者たちに比べれば、いかにも少ない。
 だが、魔物どもは彼らに恐怖した。数少ない天敵の出現にひるみ、二の足を踏んだ。

 光より降り立つ彼らこそ、染み出す過去を正し、世界を救う戦士。

 猟兵――竜を討ちし者。

 敵の躊躇いを好機と見た冒険者が、一斉に鬨の声をあげる。
 世界を翔ける輝きが、反撃の狼煙と化す。
レイチェル・ルクスリア
闘争の中でしか生きる意味を見いだせないなんて哀れだな。
どんな理由があろうと、打つべき敵を違えた貴様らに情けをかける余地はもう無いわ。

……さて、早速転送先にやって来た訳だけれども、大分逼したご様子ね。

モンスターの大軍団相手にどこまで残弾が持つか怪しいところだけど、先ずは前線を押し上げて行くわよ!

持てる武器は惜しみなく全て使い切るわ!弾が無くなったらちょっと辛いけどナイフを使った格闘戦にチェンジしてゴブリンなりオークなりを蹴散らしていきましょう!!

ア・連orソ・傷



「……哀れだな」
 レイチェル・ルクスリア(畜生なガンスリンガー・f26493)は、そう断じた。闘争の中でしか己の生きる意味を見出せない一族の、なんと惨めなことか。
 だが、レイチェルの顔に同情の色はない。自動小銃【エーケイ・トゥエルヴ】の安全装置を解除しつつ、吐き捨てるように言った。
「どんな理由があろうと――討つべき敵を違えた貴様らに情けをかける余地は、もうないわ」
 先陣を切るゴブリンの一団に向けて、小銃に取り付けられたグレネードランチャー【グラナーテ・サーティーフォー】を射出する。放物線を描いて飛んだ四十ミリ炸裂弾が、赤い火を撒き散らした。
 小さな亜人が爆散し、それを合図に吶喊、ライフルをぶっ放す。激しい銃声と共に飛翔する銃弾が、モンスターの群れを次々に穿つ。
 だが、敵の数は膨大だった。早くも撃ち切った弾倉を破棄、装填し直し、レイチェルは舌打ちした。
「なるほど、だいぶ逼迫したご様子ね。どこまで弾薬が持つか――怪しいところだけど」
 猟兵の先頭を走る彼女には、役割があった。即ち、前線を押し上げることだ。
 持てる武器は、全て使い切る。出し惜しみをしてやるつもりなど、毛頭なかった。
 グレネードランチャーとライフルの火線が、ゴブリンとトロールを爆砕し、撃ち貫く。マガジンが空になっても数が減った気がしないが、それでもレイチェルは次の弾をセットし、前に出る。
 足を止めて防戦に徹すれば、負ける。勝つためには、攻勢に出るしかないのだ。誰かが前に出なければ。
 空から飛来するハーピーの爪を掻い潜り、真下からの連射で射殺。落ちてくる血と死体を払いのけ、飛び掛かってきたゴブリンの頭蓋を零距離射撃で粉砕する。
 冒険者たちが、彼女の奮闘に触発されて鬨の声を上げた。猛進する戦士たちに、津波の如き魔物の進軍が、勢いを弱める。
 剣戟の音に混じる異質な銃声は、しかし冒険者たちにとって前進を促す力強い戦太鼓となった。
 激闘の中で、もう何度空のマガジンを捨てただろうか。体が軽くなるのは、きっと残りの弾倉が少ないことを意味しているのだろうなと、レイチェルは戦いの最中に思った。
 引き金を引くと同時に高く飛んだグレネード弾が、上空で爆ぜる。直撃を受けたガーゴイルが死に、岩石となって敵の頭上に降り注ぐ。
「もう一発――」
 まさぐり、最後の炸裂弾だったことに気づく。即座に切り替え、ライフルの弾丸でスライムを飛び散らせ、その奥で牙を剥くウルフを蜂の巣にする。
 血に塗れる髪とスーツに不快感を覚える暇もなく、レイチェルは空になったマガジンを放り、ライフルを背中に回した。こちらも弾薬が尽きた。
 躊躇いなくナイフを引き抜く。CQCの構えを取り、下卑た笑いを浮かべるゴブリンやオークの喉元を、容赦なく斬り裂く。
 仲間を殺され喘ぐように叫ぶ邪悪な亜人どもに、彼女はしかし、奴ら以上に残虐に笑った。
「ちょっと辛いけど……やりようはある。さぁ、苦しんで死にたい奴から、私の前に立ちなさい」
 斧を振り上げていたゴブリンが、逡巡した。その目に確かな恐怖が揺れていることに気づいて、レイチェルはもう一度、凄みのある笑みを浮かべた。

成功 🔵​🔵​🔴​

リオン・ゲーベンアイン
ア連、傷×
「さて、正にこの状況に最適なユーベルコードをつい最近得たんだよね...--そう言うわけで、ただ安らかに息絶えると良い」
と、詠唱を開始すると同時に弓を変形させて橙と紅蓮の色彩を放つ太陽神の形態に変えた後UCを起動。
まず一の矢を上空に放ち、その矢が擬似的な太陽となり闇夜を照らし、視界を確保する。
そしてその太陽からオブリビオンのみを焼き付くす聖火が戦場に降り注ぐ。
更に太陽炉を弓に搭載。それによって産み出されるエネルギーを精密な狙いで薙ぎ払う。
「さて、このまま援護狙撃を続けるかな...じゃあ傷を癒すね」
と、最後に太陽神の癒しの魔術で冒険者の傷を癒す。



 魔法の光球に照らされているとはいえ、戦場は今なお宵闇に覆われている。
 世界に降り立ち最初に見えたものは、その空を覆う膨大な数のモンスターだった。地上に目を向けると、そこにも大地を埋め尽くす魔物の大群がいる。
 なるほど、と、リオン・ゲーベンアイン(純白と透明の二つの無垢を司る弓使い・f23867)は頷いた。
「正にこの状況に最適、だね」
 新たに得たユーベルコードを試す、絶好の機会だ。彼女を猟兵たらしめる【無名の神弓】を持ち上げ、視線は真っすぐ魔物の群れを見据えたまま、呟く。
「ここは人界。人が生きる一つの地平に太陽は九つも要らぬ――」
 詠唱に合わせて、弓が橙と紅蓮の輝きを放つ。燃え盛る炎にも似た形状へと変化していく神弓から凄まじい力を感じながら、リオンはさらに高らかに声を上げた。
「故に至高の太陽王よ、人の世に常春をもたらすべく神撃を実行せよ」
 弦を引き絞る。出現した光の矢が、視界を純白に染めるほどに煌めいて、空へと放たれた。
 矢はその先にいたロック鳥を貫き、勢いを落とすことなく天へと駆けのぼり、巨大な光の球体となった。
 その姿は、まさしく天日。疑似的な太陽の出現により、アックス&ウィザーズの大地が白昼と化す。
 空を見上げたサイクロプスが、こけおどしだとばかりに咆哮し、狼狽えかける魔物どもに発破をかける。勢いを取り戻して進軍する敵に、リオンは目を細めた。
「ここからだよ――ただ安らかに、息絶えるといい」
 変化は、直後に起きた。リオンの生み出した太陽から、灼熱の炎が降り注いだのだ。頭上からもたらされる聖火の裁きは、オブリビオンだけを徹底的に焼き尽くす。
 燃えて力尽きたハーピーやセイレーンが空から堕ち、地上では火だるまとなった魔獣が悶え苦しみ、最後の抵抗を示す亜人たちは、次々に冒険者たちに狩られていく。
 苦悶の絶叫を響かせるモンスターどもに、リオンは容赦なく弓を引く。搭載された太陽炉から産み出される莫大なエネルギーが精密な狙いを持って放たれ、進路上にいたリザードマンやトロールを薙ぎ払う。
 上空と地上からの無慈悲な陽光は、戦線を確実に押し上げる結果となった。好転する状況に勇む冒険者たちの背を見守りつつ、次なる矢を引き絞る。
「さて、このまま援護狙撃を続けるかな……ん?」
 ふと、気づく。戦況は変わったものの、こちら側も無傷ではいられなかったらしい。負傷し、撤退を余儀なくされた冒険者が見えた。
「傷も癒さないと、ね」
 矢を一度収め、弓を背負って、リオンは太陽神の魔術を用いて、傷ついた彼らの治癒に回った。悔し気に痛みを堪える女剣士の傷を癒しながら、微笑む。
「大丈夫、すぐ治るから。焦る必要ないよ」
 空に浮かぶ疑似太陽は未だ猛威を振るい、猟兵と冒険者の勢いは、いよいよ高まっている。
 無限と錯覚するほどの敵の数だが、勝利は必ずこちらの手に収まるだろう。そのことを、リオンは確信していた。

成功 🔵​🔵​🔴​

馬県・義透
ア連
第四人格『不動なる者』
一人称『わし/わしら』
武器:黒曜山
四人で一人の複合型悪霊。四人は生前、戦友だった。

受け入れられぬから、このような手段に…。ふむ。
帝竜戦役時には、『わしら』はまだ猟兵ではなかったが、これも何かの縁だろう。

まずは単純に手数を増やす。
【それは兵のように】…60ほどか。
目標は、そこら中にいるモンスター。遠慮なく放て!

わしはわしで、前線に出てモンスターをなぎ払おう。
もし、危うい冒険者がいたら、【かばう】【盾受け】で間に入る。
このような戦場は、生前以来である。血が騒ぐのも、仕方なかろうて。
四人ともに駆けられぬのが、残念なほどだ。



「受け入れられぬから、このような手段に……。ふむ」
 思うところはあるが、それ以上の言葉を、今は控えた。
 件の戦役時にまだ猟兵の身ではなかった馬県・義透(多重人格者の悪霊・f28057)にとって、彼らの悲嘆は他人事だ。理解できるとは思わない。
 だが、ここに立った。そのことには意味があると、義透は確かに思った。
「竜との戦の折、『わしら』はまだ猟兵ではなかったが……これも、何かの縁だろう」
 漆黒の剣、【黒曜山】を抜く。視界を埋め尽くすモンスターどもを静かに見据え、義透は端的に言った。
「まずは手数を増やす」
 声とともに、幾人もの弓足軽が現れる。その数、六十。義透を中心に陣を展開し、無言で弓を構え矢を引いて、主の合図を待つ。
「目標は、言うまでもなかろう。そこら中にいるモンスターだ、どれでも構わん」
 掲げた黒剣、その切っ先を、敵の方へと突きつける。
 そして、義透は力強い眼光を放つその目を、にわかに見開いた。
「遠慮なく――放てッ!」
 一斉に撃たれた大量の矢が、狂ったように前進するゴブリンとオークに突き立つ。脳天を貫かれて斃れた死体が障害となり、つっかえる後続が、苛立たし気な声を上げた。
 黒曜山を手に戦場を駆け、斬り込む。戦斧を振り上げたオークに一閃、その腕を落とし、返す刀で胴を薙ぐ。蹴り飛ばし、背後から奇襲をかけようとしていたリザードマンの首を、一刀のもとに刎ねた。
 反転、握りつぶさんと伸ばされていたトロールの巨腕を掻い潜り、喉元に黒い切っ先を突き立て、即座に引き抜く。夥しい血が地面に振りかかる頃には、義透の姿は次の敵にあった。
 若い槍使いの腹筋を喰い破ろうとしていたウルフを蹴り飛ばし、倒れたところで胴を両断してから、振り返る。
「無事かね」
「す、すんません! 助かりました!」
 頭を下げて戦いに戻る槍使いに微笑み、また剣を振るう。仲間とと共に夥しい数の敵に挑む感覚は、実に懐かしいものだった。
「……思い出すな」
 それは、生前の記憶。かつて共に戦った、あの戦場。どうして忘れられよう。
 願わくば、またあの時の四人で。一瞬過ぎったその願いは、一閃のもとに斬り捨てた。今や馬県・義透は、四人で一人となっているのだ。
 複合型悪霊。この身がいつかまた分かれる時が来るのか、それは果たして分からないが、少なくとも、今ではない。
「ならば、その時まで――」
 飛び掛かるセイレーンの羽を斬り落とし、落下してきたそれの頭を突き刺して、引き抜く。血を振り払って、正眼に構える。切っ先の向こうにいる敵を見据え、義透の表層に立つ第四人格【不動なる者】は、優しく囁いた。
「――共に、在ろうぞ」
 内なる友が頷いたのを、義透は確かに感じた。
 黒曜山が放つ美しき黒の煌めきが、その証拠だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

露木・鬼燈
うんうん、わかるよ。
竜を殺せないのは辛い。
でもね…遅いのが悪い!
竜みたいな極上の獲物はみんな狩りたいもの。
もたもたしてたらこーなるのは必然。
それなのに思い込みで街を襲うとは、ね。
憐れではあるが、それはそれ。
きっちり始末してあげるですよ。
まずは数の差を埋めようか。
<傀儡廻し>
敵の死体は戦力として運用。
とーぜん使えなくなったら自爆させるですよ。
呪詛で肉体を爆薬へと変えてドカンとね。
使える死体はいくらでもあるから。
むしろ傀儡の活躍で増えてるからへーきへーき。
戦闘不能になった冒険者とか猟兵は後方へ退避させる。
まぁ、攻撃以外の使い方もあるとゆー事で。
無理矢理動かしてるから負荷がかかるけと死ぬよりはマシ。



 夥しい数のモンスターが群がる中、露木・鬼燈(竜喰・f01316)は腕を組み、深刻な顔で頷いた。
「うんうん、分かるよ。竜を殺せないのは辛い」
 もしも自分が血の一族の立場だったなら、きっと穏やかな気持ちではいられなかったことだろう。彼らの気持ちは、痛いほどによく分かるのだ。
 とはいえ――。
「遅いのが悪い!」
 一言で断じて、担いでいた魔剣【オルトリンデ】を地面に叩きつける。
 竜のような極上の獲物は、誰もが狩りたいと思うものだ。連中の存在が証明された時点で、狩人が群がることは必至。
 猟兵同士でさえ、取り合いのような状況になっていたのだ。行動を起こさなかった連中に、とやかく言われてやる筋合いはない。
「きっちり始末してあげるですよ」
 一足で敵陣に飛び込み、魔剣を蛇腹剣に変形させて、一閃。絡みつくような漆黒の刃が、オークやリザードマンを切り裂き貫き、息の根を止める。
 暴れがいのある数の敵だが、さすがに一人で戦線を保てるとは思っていない。オルトリンデを振るいながらも、鬼燈は次の手に出た。
「まずは、数の差を埋めようか」
 足元から伝播した百足型の呪詛が、伏したモンスターの骸に染み込む。ぼんやりと赤く輝いた死体は、糸で操られているかのような動きで立ち上がった。
 忍法、傀儡の術。またの名を、傀儡廻し。
 動く屍となった魔物たちは、かつての仲間に反転し、同胞に斬りかかる。
 緩慢な動きだし、敵は躊躇なくかつての仲間の死体を潰しにかかるが、殺す数だけ武器になるのだから、戦力としては十分だ。
 ゴブリンの傀儡が、サイクロプスに持ち上げられる。頭蓋を握りつぶされ、さしもの呪詛もその力を失うかに見えた。
 だが、操る死体がすぐに使い物にならなくなることも、鬼燈の計算のうちだった。完全に頭部を破壊された瞬間、傀儡ゴブリンの体が爆発した。
 炎上を伴う爆破はサイクロプスの腕と顔面を吹き飛ばし、そのままのけ反り倒れた一つ目の巨人は、すぐに百足の呪詛に喰われ、新たな操り人形と化す。
 その結果に、鬼燈は満足げに頷いた。
「うん、いいね」
 見れば、あちらこちらで限界を迎えた傀儡の爆発が起き、巻き込まれたモンスターが空でも地上でも死んでいた。その度に、新たな死体が鬼燈の手駒となっていく。
 使える死体がいくらでもあるのはいいものだと、死霊術師のようなことを考えながら剣を振るっていると、背後で悲鳴が聞こえた。
 女性だ。猟兵ではない。敵を斬り裂いてそちらへ向かって見ると、ヒーラーらしき女が倒れている。
 周囲の敵を手早く倒して傀儡に変えつつ、女を抱き起す。意識がない。
 数秒迷ってから、鬼燈はヒ―ラーの口に百足呪詛を流し込んだ。
 気を失ったままふらりと立ち上がった女ヒーラーは、覚束ない――というよりも、異常な動きの――足取りで、撤退していった。どう見ても足首を捻っているので、目が覚めたら大変痛いだろうなと、気の毒に思った。
「……まぁ、死ぬよりはマシっぽい」
 助けたのだから、文句は言うまい。一人そう納得し、鬼燈は命無き魔物を率いて、未だ一割も倒せていないだろうモンスターの大群に、嬉々として飛び込んでいった。

成功 🔵​🔵​🔴​

サフィリア・ラズワルド
POWを選択

た、食べ放題だあああ!!この前ダークセイヴァーでも食べ放題したけどあれは魔獣一種類だった、今回は想像以上にモンスターの種類が多い!やったぁ!

【白銀竜の解放】で四つ足の飛竜になり戦前へ、向かってくる敵を仕留めて食べます。町への被害を考えて炎は使わずにひたすら食べます。
逃げるモンスターは放っておきます。私のことを竜だと勘違いして逃げる個体なら町の人達がさくっと倒せると思いますし。

『食べます?食べたいモンスターがいたら取っておきますよ?遠慮なさらずに!』

でもこの後に控えてるオブリビオンにはきっと私が“竜”ではないってわかるんだろうなぁ。

アドリブ協力歓迎です。



 サフィリア・ラズワルド(ドラゴン擬き・f08950)は、思わず唾を呑んだ。
 魔物の大群。これほどの規模は、なかなかあるものではない。その種類も、魔獣から亜人、果ては巨人族や翼を持つモンスターまで、多岐に渡る。
 猟兵の加勢により激戦は徐々に冒険者たちが優勢になっているが、それでもなお戦況が膠着するほどの数だ。
 サフィリアは、もう一度唾を呑み込んだ。
「……た」
 震える唇で、呟く。立ち尽くす彼女を心配そうに見ている魔法使いの視線にも気づかないありさまだった。
 目が輝く。呑み込み切れない唾が、思わず口の端から零れる。
 もう、我慢はできなかった。
「食べ放題だあああっ!!」
 歓喜の叫びとともに、サフィリアは少女の体を竜へと変じさせた。突如目の前に出現した白銀の竜に、魔法使いが情けない声で腰を抜かすが、やはりそちらには気づかない。
 四つ足の飛竜となったサフィリアが、躊躇いなくモンスターどもへと猛進する。人間側から突撃してくるドラゴンの姿を、ゴブリンが指さし何か喚いている。
 その頭から、いただいた。炎を使うと町に飛び火しそうなので、生食である。
 ゴリゴリと何かが砕ける音とともに咀嚼し、飲み込む。上等な味ではないけれど、食べ放題ならこんなものだろう。
 蜘蛛の子を散らすように逃げていくゴブリンは、放っておくことにした。本物の竜と見紛うようなら、冒険者でも十分に狩れる。あまり美味しくなかったので、未練もない。
 巨体を唸らせ尻尾を振り、トロールやらリザードマンやらを弾き飛ばしながら振り返る。直後、鱗を叩く強烈な力を感じた。
 サイクロプスだ。巨大な棍棒が、肩口に叩きつけられている。少々痛かったが、サフィリアは食欲が勝った。
 いただきますの咆哮と共に、首に食らいつき噛み砕く。飛び散った鮮血と共に項垂れるサイクロプスを押し倒し、右前足で抑えつけて胴体に牙を立てる。
 竜の体にとってみれば、巨人の一体程度はオードブルに過ぎない。完食まで、そう時間はかからなかった。
 地中から飛び出してきたデスワームは、頭から咥えて啜るようにして食べた。食感は麺類に近い気がしたが、味はゴブリン以下だったので、なんだか損をした気持ちになった。
 戦場のど真ん中で食事に勤しむサフィリアの周りから、冒険者が離れていく。巻き添えを食わないようにということだろうが、もしかしたらと、彼女は顔を上げた。
『……食べます? 食べたいモンスターがいたら取っておきますよ? 遠慮なさらずに!』
 竜哮となった声ではうまく話せなかったが、それでも意味は伝わったらしく、腰を抜かしたままの魔法使いが、「いいです」と首を横に振った。もったいないことだと思った。
 喊声止まぬ戦場で食べ放題を楽しみ、もう何匹目かも分からないハーピーを一飲みにしたところで、サフィリアはふと宵闇の奥に目を凝らしす。
 血の一族。奴らの姿は見えないが、その視線は感じていた。
 竜を討つための一族と聞く。ならば、彼らは――。
(きっと、わかるんだろうなぁ)
 翼と尾を持ち白銀に輝く鱗に覆われたこの姿が、“竜”ではないということを。

大成功 🔵​🔵​🔵​

春乃・結希




転送と同時にUC発動
緋色の翼から焔を撒き散らせながら前線へ突撃【焼却】
お手伝いに来ましたっ
とりあえず敵を倒せばいいんですよね?
こういう頭使わないやつは得意なんです
頑張ろうねっ、『with』!

数だけの相手に、『with』と私が負ける訳ないです
背負う翼の後押しと『wanderer』での脚力強化での【ダッシュ】で
戦場を駆け回り、『with』を振り回します【怪力】【重量攻撃】
痛みなんて気にしない【激痛耐性】
傷は焔が塞いでくれる
止められるものなら、止めてみろ

諦めないでください!絶対に勝てますっ
仲間と、何より自分自身を信じてください
心が砕けない限り、私たちが負けることなんてないんです!


トゥーリ・レイヴォネン
【ア連傷】
【面白そうな展開であればプレイング無視OK】

「……いいね。分かり、やすい……」

目標
・出来るだけ沢山のモンスターをひきつけ、ついでに沢山殺す

行動指針
・連携先の作戦があれば従う
・作戦がない、もしくはソロである場合、何の策も無いまま前線の更に奥へと、ゾンビの足取りで散歩するようにまっすぐ歩く
・近づいて来た順に、肉きり包丁、素手、歯、落ちている獲物から石、モンスターの死骸も使って、お世辞にも美しいとは言えない肉体を酷使した戦闘を行う
・機敏でもなく頭も悪い、あるのは無駄に頑丈な身体と、痛みに只耐えられるだけの意志

心情
・頭を使わないで戦える戦場、口に出しこそしないが悪くないと思っている



 転移の輝きから、眩い緋色の炎が溢れる。
 それは、一対の翼だった。燃え盛る焔が、羽ばたきに少女を乗せて世界に飛び出した。
 飛翔した緋色の翼は、光球に照らされるミレイユの門前を朱く照らし、冒険者の頭上を越えていく。
 眼下でモンスターと激闘を繰り広げる戦士たちに、翼の少女――春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は声を張り上げた。
「お手伝いに来ましたっ!」
 降下し、見上げたオークが斧を振り上げるよりも早く、手にした愛する大剣【with】を叩きこむ。絶大な重量を誇る漆黒の刃は、亜人の巨躯を容赦なく叩き潰した。
 力任せに振り回される得物に、ゴブリンたちが慌てふためいて退いていく。着地した結希は、剣についた血を振り払い、両手に握りしめる。
「とりあえず、敵を倒せばいいんですよね?」
「そう、らしいね……」
 問いかけたつもりはなかったが、後ろから返ってきた答えに、結希は振り返った。血色の悪い白髪の少女が、感情の読み取りにくい金の瞳を、群がる敵に向けていた。
 血塗れの肉切り包丁と両手を見るに、もう相当数を倒していると見える。息は上がっていなかった。
 赤黒く汚れた手でマフラーの位置を直しつつ、デッドマンの少女、トゥーリ・レイヴォネン(タナトスのオートマトン・f26117)は頷いた。
「確かに数が多いけど……分かり、やすい……」
「そうですね。こういう頭使わないやつは得意なんです!」
「……」
 口に出すことはしなかったが、トゥーリは結希の笑顔に概ね同意だった。余計なことを考えなくてもいいのは、気が楽だ。
 オークが一斉に咆え、従えるゴブリンやウルフが二人に群がる。互いに一瞬目を合わせてから、結希とトゥーリは同時に敵へと飛び込んだ。
 作戦などない。力技で数を減らすことだけに集中する。風を巻き起こして唸る黒き刃の恋人に、結希は愛おし気に言った。
「調子がよさそう。頑張ろうねっ、『with』!」
 にこやかな表情から振るわれる豪快な剣技は、指揮を執るオークの顔面を砕けた血肉に変える。ぐらりと傾いて倒れた巨漢に、モンスターが激昂した。
 怒りの矛先は、トゥーリに向けられた。肉切り包丁を手にぼんやりと歩く少女は、特にウルフにとって格好の獲物だ。
 二匹の巨狼が、小柄な少女の首を噛み砕かんと飛びついた。しかし、その牙はトゥーリに届かない。
 右から狙ったウルフは頭を包丁で叩き割られ、左の狼は、突き出された小さく白い拳に牙を砕かれて死んだ。
 ウルフの死骸を放り捨て、トゥーリはやはりのんびりと、まるで散歩でもするかのように歩いていく。
 敵は自分たちのアドバンテージが数にあることを理解していた。ゴブリンが何匹も棒やら斧やらを振り上げて、白い髪の少女を解体せんと迫った。
 強烈な振動が、トゥーリを襲う。骨まで響く衝撃はしかし、鈍い痛みを与えるだけだ。
 手応えがあったにも関わらず平然としている少女を、ゴブリンが恐ろし気に見上げた。目が合い、トゥーリはマフラーを下ろす。
 口を開けた。後は簡単だった。悍ましい悲鳴の後、喉を喰い破られた亜人は痙攣して死んだ。
 仲間の無残な最期に恐怖立ち尽くす亜人に、トゥーリはゴブリンの死体を無造作に叩きつけた。固い頭が鈍器となって、肉塊がさらに一つ増える。
 トゥーリは理解していた。自分は機敏でもなく頭も悪い。あるのは無駄に頑丈な身体と、痛みに只耐えられるだけの意志のみだ。
 だから、それだけで戦うのだ。心に過ぎる戦いへの恐怖は、苦痛によって抑え込めることを、彼女は知っていた。
 淡々とした殺戮が繰り広げられる一方、揺らめく緋色の翼と共に剣刃の暴風を巻き起こす結希は、リザードマンの一団と衝突していた。
 野蛮さと無謀さが武器のゴブリンと違い、狡猾で、知性がある。結希の体についたいくらかの刀傷が、面倒な相手である証拠だ。
 だが、痛みなど気にしない。流れ出る血は焔が包み、止めてくれている。
 愛する剣と共にある彼女は、幾人もの鱗の戦士を叩き切り、引きちぎりながら、ただ前へと進み続ける。
 奥に構えるサイクロプスが叫び、上空からハーピーとガーゴイルが飛来した。頭上から繰り出される爪を漆黒の刃で受け止め、薙ぎ払う。剣が通過した後に夥しい羽根と血が舞い、死体となった翼の魔物が落下する。
 隊列を整えたリザードマンどもが、盾を前面に構えた。結希の突撃力を警戒していることは明白だった。
 だが、戦法を変えるつもりなどない。結希は口元で笑った。
「止められるものなら――止めてみろ」
 接近し、踏み込み、横薙ぎの一閃。暴虐の嵐と化した【with】の黒刃は、リザードマンの盾ごと奴らを轢き潰し、戦場をどす黒い赤で染めていく。
 結希とトゥーリは、暴れに暴れた。黒い大剣が唸り、肉切り包丁が無慈悲に振るわれるたびに、魔物の死体が積み重なっていく。
 だが、それでも敵の数は圧倒的だった。永遠に湧き出しているのではないかと錯覚するほどに。
 結希は背後を振り返った。エルフの弓使いが、膝をついていた。「もう、だめ」と、か細い声が聞こえた。
 駆け寄って、立ち上がらせる。
「諦めないでください! 絶対に、勝てますっ」
「でも……」
「心が砕けない限り、私たちが負けることなんてないんです!」
 剣の切っ先で示した先では、トゥーリがいた。淡々と襲い来る魔物を斬り、砕き、恐れを顔に出すことなく、無造作に次の獲物を探して歩く。
 彼女の恐怖心との戦い方は少々特殊かもしれないが、いずれにしたって、負ける時はいつも心が先に折れるのだ。
「仲間と――何より、自分自身を信じてあげてください」
「……」
 立ち上がり、エルフは矢を引き絞った。その姿に頷いて、結希もまた戦線に戻る。
 合流した結希に、トゥーリはまるで町で出会ったかのように言った。
「順調?」
「えぇ。私たちは、きっと」
 その言葉の裏には、冒険者への不安が潜んでいた。彼らの心が折れてしまわないか、心配なのだ。
 何となくそれを感じ取れたトゥーリは、考えかけて、すぐに止めた。できることは、ただ一つしかないと思った。
「ボクたちが、片付ければいいよ」
「……そうですね。うん、そうですよね!」
 揃って、得物を構えた。共に動くが、示し合わせる作戦など、ありはしなかった。
 そこにあるのは、二人の力と意志――即ち、強さだけ。
 それだけがあれば、永遠にだって戦い続けられる気がした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

上野・修介
※連ア歓迎
「猟兵です!助太刀します!」
まず味方であることを冒険者達に伝え、動ける人達に街の守りに徹してもらう。

「来い。次は俺が遊んでやる、駄犬共」

まずは敵味方の戦力把握【視力+情報収集】
総数と配置を確認し味方に共有。

基本的には地上の敵に専念。

得物は素手喧嘩【グラップル】
UCは攻撃力強化。
【ダッシュ】で相手の懐に肉薄し一体ずつ一気に確実に始末。
こちらに敵を引き付けるよう【挑発】しながら、常に【フェイント】を掛けつつ【ダッシュ】で動き包囲されるのは回避する。

可能なら広域火力持ちの味方の前に誘導し一網打尽に。

街と冒険者達に攻撃が及ぶなら身を盾にする【覚悟】で。
腹を据えて【勇気+激痛耐性】推して参る。


トリテレイア・ゼロナイン
ア連

機械馬に●騎乗しUC使用
槍と馬の●踏みつけ、航空戦力には格納銃器の翼狙い●スナイパー射撃
センサーでの●情報収集と●暗視で戦況を把握しつつ派手な突撃で敵軍の勢い挫きつつ冒険者達を●かばい

前線を押し上げます
負傷者は後退を、打撃力に優れる方は私に続いて敵を掃討!
…ミレイユに、冒険者に勝利を!

あの大物は冒険者には荷が重そうですね
馬から飛び降り、銃器の●なぎ払い掃射で横槍入れる小物掃討
突撃速度乗せた●怪力でランスを●投擲し撃破
戦闘続行

オブリビオンとして変質した以上、行動や思考に論理性を求めるのは酷ではありますが…

終わらせねばなりませんね、彼らの戦いを
これ以上の流血、騎士として許容しかねます



 激闘のミレイユに、巨大な蹄音が響く。白銀の機械馬【ロシナンテⅡ】に騎乗したトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、群がる魔物どもを撥ね散らかしながら疾駆する。
 オークとサイクロプスが混合する一団に、冒険者たちが苦戦している。迷わず、突撃した。
 若い剣士を砕かんと振るわれたオークの戦斧を盾で受け止め、トリテレイアは背後に乗る男に叫ぶ。
「頼みます!」
「承知したッ!」
 機械馬の背から跳んだ上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)は、落下の勢いを利用したかかと落としを、巨漢の亜人に叩き込んだ。
 脳天を割られ、傾いたオークが、倒れる。その様を目の前で見た剣士は、修介に恐る恐る尋ねた。
「あ、あんたらは……」
「猟兵です。助太刀します!」
 後続のオークに拳を向けつつ、叫ぶように答える。馬上から上空に格納銃器を放ち、ハーピーの翼を撃ち抜いたトリテレイアもまた、スピーカーのボリュームを上げて声高に言った。
「前線を押し上げます! 負傷者は後退を、打撃力に優れる方は私に続いて敵を掃討!」
「怪我しても動ける人は、町の守りに徹してください! 前線は俺たちが引き受けます!」
 何者かも分からないが、冒険者たちは二人の戦士が強者であることを直感で見抜き、従った。先ほどの剣士が、怪我人を率いてミレイユへと戻っていく。
 それに頷き、獲物を逃がさんと雄叫びを上げるオークとサイクロプスへ、修介は向き直った。鋭い眼光が、殺気を迸らせる。
「……来い。今度は俺が遊んでやる、駄犬共」
 言葉が伝わったのかは分からないが、挑発は確実に聞いた。激昂した魔物たちが、牙を剥き目を血走らせて、修介とトリテレイア、冒険者たちに群がる。
 見渡してみても、モンスターの総数は分からない。トリテレイアのブレインを以てしてもカウントが難しい数だ。
 一方、味方の戦力は少ない。だが、腕利きの冒険者に猟兵が加わった今、二人ともに敗北への危機感は覚えなかった。
 オークの足元から現れたウルフとゴブリンが、素早くトリテレイアに飛び掛かる。それらを機銃掃射と剣の一閃で瞬時に撃破し、血に塗れた刃を天高く掲げた。
「ミレイユに、冒険者に勝利をッ!」
 魔力の光球に照らされた剣の輝きが、冒険者たちの喊声を生む。勢いづいた人間たちは、遥かに巨大なオークとサイクロプスにも恐怖することなく、猛進した。
 その先陣を切る修介は、足下から飛び出したデスワームの牙を躱し、両腕でその体を締め、引きちぎった。うねる死体をオークの顔面に叩きつけ、ひるんだ瞬間に飛び膝蹴りを顎に叩き込む。
 もんどりうって倒れた巨躯の魔物の心臓に拳を打ち、内部に伝播した衝撃に鼓動を止められたオークは、二、三度痙攣して事切れた。
 息を整えた瞬間、修介は鋭い叫びを聞いた。
「修介様、回避を!」
「ッ!」
 言われるままにバックステップ、直後に自分がいた場所へ、巨大な斧が突き刺さった。
 サイクロプスだ。斧を地面から引き抜き、担いだ巨人が、口元に下卑た笑みを浮かべる。
「……こいつは、別格だな」
「冒険者の皆さんには荷が重そうですね」
 機械馬から降りたトリテレイアが、剣を収めて槍を手にする。盾を構え、取り囲む雑魚には目もくれず、単眼の巨人を注視する。
 息を全て吐き切った修介が、無駄な力みを取り除き、一切の意識を拳へと集中させていく。
 瞬間、サイクロプスが咆えた。斧を振り上げ地面に叩きつけ、大地が揺れる。それが合図だった。
 修介が、先に仕掛けた。横薙ぎに振るわれた大斧をスライディングで避けて接近、立ち上がった時には、すでに敵の懐にいた。
 巨人の分厚い腹筋に、渾身の拳がめり込む。凄まじい反発を見せる感触を、修介は気合で押しつぶした。
「はぁぁッ!」
 踏み込む。地面が砕け、勢いを増した拳から放たれた衝撃が、サイクロプスの臓腑を揺るがす。
 使える同胞の危機に、オークとゴブリンが修介へと群がる。だが、鳴り響いた銃撃音と共に、それらは一瞬で蜂の巣となった。
 機銃掃射を終えたトリテレイアは、今もよろめく巨人に向かって加速、スラスターの勢いを力に変えて、ランスを投擲した。
 臓腑を破壊されたサイクロプスが、それでも斧を振り上げようとした刹那、大きな単眼にランスが突き刺さり、後頭部から内容物を撒き散らして倒れる。
 冒険者から歓声が、モンスターからは悲鳴じみた咆哮が上がるが、どちらにも反応していられない。トリテレイアが再び剣を抜き、地面から染み出し現れたスライムの核を貫いた。
「喜ぶ暇もありませんね」
「喜ぶほどの相手でもないでしょう」
 拳のバンテージを強く巻き直した修介が、飛び掛かったゴブリンの顎ををアッパーカットで砕きつつ言った。確かにそうだと、トリテレイアは頷いた。
 この先には、本命がいるのだ。無数のモンスターどもは、前哨戦に過ぎない。
「血の一族――オブリビオンとして変質した以上、行動や思考に論理性を求めるのは酷ではありますが」
「話し合いが通じないことは、彼らが証明していますから」
 端的な修介の応えに、頷く。もとより手段を選ばぬ連中だったと聞くが、竜を討たんとしていたのは、世界とそこに住む大切な人を守るためだろう。
 こうして冒険者を襲うことだって、歪んでしまった彼らの正義なのだ。そう思うと、騎士としてやるせない気持ちになった。
「……終わらせねばなりませんね。彼らの、戦いを」
 竜を巡る悲劇と、そこに流れる血は、騎士として許せるものではない。必ずや、討たねばならないのだ。
 モンスターどもが、追い付いた後続の力を得て猛る。重なり響く悍ましい声に、修介はしかし、耳を貸さなかった。
「伝えに行きましょう、トリテレイアさん。竜を倒す力は――俺たちと共にあったということを。彼らに」
「えぇ。無論ですとも」
 二人の目は、地平と空を埋め尽くすモンスターの、その先を見ていた。血の一族が待つであろう、暗闇の彼方を。
 猟兵に続けと息巻く冒険者と共に、修介とトリテレイアは、魔物の津波を打ち砕いていく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

キリカ・リクサール
ア連

残党と言うよりもはや亡霊だな…笑えん話だ

シガールQ1210とシルコン・シジョンを構えて敵集団に切り込んでいく
小型の敵は雨のような乱れ撃ちで範囲攻撃
大型の敵は正確なスナイプで頭を吹き飛ばして倒す
さらにオーヴァル・レイも起動し、死角にいたり冒険者を襲うモンスターをビーム線で貫いていく

まったく、随分と熱烈な歓迎だな
それじゃあ、お楽しみのピニャータ割りといってみようか

UCを発動
冒険者達が苦戦している敵影の濃い所へ、80個に分裂させたオーヴァル・レイによる豪雨のようなビーム線を一斉発射
冒険者達を助けて、敵を殲滅していく

やれやれ、随分と薄汚いくす玉達だが…
フン、パーティーは盛り上がったから良しとするか



 血の一族。彼らの話を思い出し、キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は鼻を鳴らした。
「残党というより、もはや亡霊だな……笑えん話だ」
 右手にVDz-C24神聖式自動小銃【シルコン・シジョン】、左手には強化型魔導機関拳銃【シガールQ1210】を握り、キリカは戦場を悠然と見回す。
 冒険者や猟兵と激闘を繰り広げる魔物を見るに、一個体の能力は高くない。だが、話に聞いていた以上に数が多く見えた。
「さて――やるか」
 一歩踏み出し、低い体制のまま疾駆して機関拳銃を前面に突き出す。
 発砲。撃ちだされた竜をも穿つ弾丸が、女冒険者を喰らわんとしていたウルフを撥ね、その奥から走り寄っていたゴブリンたちもろとも撃ち貫く。
 連続した発砲音は、その一発ごとにモンスターの命を喰らい尽くす牙だった。
 十を超える亜人と魔狼を倒したところで、弾が尽きた。マガジンを外しながら、シルコン・シジョンのトリガーを引く。
 正確な狙いを持って放たれた弾丸は、怪力のままに暴れるオークの眼球を潰し、悲鳴を上げさせた。すぐに冒険者が幾人か群がり、剣や槍で止めを刺す。
 死ぬまで見守ることもなく、キリカは次の狙いを定める。詠唱する魔法使いの足元から染み出すスライムが、その核を出現させた瞬間、大口径の弾丸に粉砕され、水と化して死んだ。
 シガールQ1210にマガジンを装填し終え、味方の死体を踏みつぶして進むモンスターどもを見据えて、彼女は思わず苦笑した。
「まったく、随分と熱烈な歓迎だな」
 余裕はあるが、埒が明かない。冒険者たちの士気のためにも、一つ派手な戦果が必要だと感じた。
 ならば、とっておきがある。キリカは青い卵型の球体を取り出し、空に放った。
「それじゃあ、お楽しみのピニャータ割りといってみようか」
 魔法の光球に照らされて輝く青い卵は、眩さを増したかと思うと、突如分裂し、飛翔した。
 広範囲に展開された卵――浮遊砲台【オーヴァル・レイ】が、激しく明滅する。ガーゴイルやセイレーンが警戒せよと叫ぶが、冒険者たちと戦うゴブリンたちの耳には届かない。
 そして、結果がもたらされる。八十個に分裂したオーヴァル・レイから、拡散ビームが放たれた。
 それはあたかも、豪雨の如く。冒険者を避けて、一帯の魔物を悉く貫き、焼き払っていく。それは上空にいる羽付きのモンスターも同様だった。
 体を焼かれて斃れるオークやゴブリンを見て、キリカは呆れたようにため息をつく。
「やれやれ、随分と薄汚いくす玉達だが――」
 モンスターどもは、かなりの数がビームに貫かれて死んだ。中には致命傷で済んだものもいるらしかったが、深手を負った魔物など、熟練の冒険者の敵ではない。
 一瞬で有利になったことで士気も急激に上昇し、この時だとばかりに得物を振るう冒険者たちに、口元に笑みを浮かべる。
「パーティーが盛り上がったのなら、良しとするか」
 最高の舞台は、ここからが本番だ。二丁の銃を腰だめに構え、過熱する死の舞踏に銃弾のメロディーを叩きこむべく、キリカは引き金に指をかけた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロラン・ヒュッテンブレナー
「ア・連」

なんだか、悲しい人たちなの
でも、オブリビオンになっちゃう何かがあったんだね
できれば攻撃したくないけど、他の人たちを巻き込むなら…撃つの

防壁の上に立って前線に出てる人たちを電脳空間から【追跡】して
相手の【情報収集】なの

一つ目のUC【集まり来るは隣人の群れ】で防壁の上に狼型の使い魔を召喚
砲台みたいに整列するね
【多重詠唱】で2つ目のUC【狙い定め撃つ破滅の光】を各使い魔から撃てるように準備

モンスターが居る場所の情報が入ったら【乱れ撃ち】で援護するね
相手の遠距離攻撃は、防壁に【オーラ防御】の【結界術】で防ぐの

近づけさせないの
この町を壊させないの!
(故郷の隠れ里がこうなった時を思って奮い立つ)



 輝く魔法の光に照らし出される戦場、その向こうには今も、宵闇の黒が広がっている。
 そこに、彼らはいるのだ。群竜大陸を滅ぼすために生き、叶うことなく過去となり、現世に染み出してなおその使命を果たせなかった、彼らが。
「……なんだか、悲しい人たちなの」
 闇の向こうから戦況を見ているだろう血の一族を思い、ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は一人、防壁の上から呟いた。
 オブリビオンとなってしまった何かが、彼らにはきっとあったのだろう。そう考えると、できることなら攻撃したくないという想いも湧き上がってくる。
 だが――血の一族は今や、人類と世界の敵だ。
「他の人たちを巻き込むなら……撃つの」
 それが、少年ロランの決意であった。
 前線に立つ冒険者や猟兵の情報が、電脳空間から伝わってくる。彼らが戦っている場所の地形や、モンスターの種類、そのレベル。
 必要な情報は得られた。ロランは防壁を包み込むように魔術式を展開し、口早に詠唱した。
「我が言の葉において、内なる門より、汝ら集結せし。盟約において、我が命、遂行せん――」
 魔方陣の輝きが、狼の形に集束する。防壁の上に均等に整列し、戦場を睨む使い魔の姿は、あたかも砲台のようだった。
 主たるロランにとっては、まさしくそのつもりであった。彼は使い魔の魔術を展開したまま、重ねるように新たな魔術を発動させる。
 目を見開いて、淡々と――それはまるで機械音声のように――感情なく、言葉を連ねる。
「対消滅術式展開、ターゲットロック、ヒート・コールド、ミキシング。レディ」
 ロランの手と使い魔たちの口元に、照準器に似た魔術陣が現れる。戦場に立つ魔法使いが思わず振り返るほどに魔力が凝縮された陣は、ただ静かに合図を待っている。
 冒険者たちの援護をと思った瞬間、ロランはこちらに飛び込んでくる黒い影を見た。ガーゴイルだ。
 夥しい数の岩石悪魔が、飛翔しながら口腔に炎を渦巻かせている。こちらが結界術を発動させるのと、ガーゴイルの火球が放たれるのは、ほぼ同時だった。
 無数の火炎が町を焼き尽くさんと迫り、それら全てを結界で受け止める。炎は防いだが、ここを突破されてしまえば、町に危険が及ぶ。
「これ以上――近づけさせないの!」
 ロランは躊躇いなく、自身と使い魔に施した魔術を放った。熱波と冷気から成る破壊消滅の輝きが、彼の手と狼たちの口から迸り、ガーゴイルを容赦なく呑み込んでいく。
 断末魔の叫びを上げる暇もなかった悪魔どもは、その存在を完全に消滅させられ、地面に落ちることすらなかった。
 だが、その向こう。戦場の空から、次なる敵が飛翔してくる。ハーピーやセイレーン……数は、先程よりも多い。
 戦慄しながらも、ロランは唇を噛んで勇気を振り絞った。
 背後には、町がある。震えて朝日を祈る人々がいる。その事実が、彼に故郷を想起させた。
 もしも、あの隠れ里に同じことが起こったら。そう思うだけで、魔力が体の芯から溢れてくるようだった。
 魔方陣が、激烈に煌めく。紫の双眸が、宝石の如く輝いた。
「この町を――壊させないの!」
 解き放たれた莫大な魔力が、破壊の光となって空を奔る。町目掛けて飛ぶモンスターを喰らい、地上の魔物にも降り注ぎ、理からの消滅をもたらしていく。
 守るのだ。人を傷つける呪われし病に身を侵されても、人が好きだと思えるから。
 防壁から伸びる幾筋もの消滅光は、ロランの強い決意――その具現だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

灰神楽・綾
【梓(f25851)と】ア・傷
うわぁ、ゲームの中で見たことあるような
モンスターが大集合だね
……で、こいつらと延々殺し合えばいいの?
たまらないお仕事じゃないか
あはは、ちゃんと言いつけ守れるかな

まずは自身の手を斬りつけUC発動
Duoを構え敵の大群の中に突っ込む
強化したスピードを活かして
殺られる前に殺る、そんなシンプルな戦法
敵が集まってきたところを狙って
両手のDuoを大きく振り回し範囲攻撃で一気に薙ぎ払い
敵の多少の攻撃はガードせずに激痛耐性で耐え
攻撃直後の隙を見逃さず斬りつけカウンター
むしろ多少の痛みは俺にとって良い栄養剤さ
空を飛んでたり遠距離攻撃したりする面倒な奴らは
念動力でナイフ投げつけ黙らせる


乱獅子・梓
【綾(f02235)と】ア
ったく、完全に手段と目的が
逆になってしまっている連中だな
……って、ここにも居たな
手段が目的になっている奴
本命と戦う前に余計な傷を増やすなよ
軽く忠告はしておくが止めはしない

数が多いならこちらも数で勝負だ
UC発動し、各属性を網羅したドラゴン達を召喚
敵の特性に合わせた属性攻撃ブレスや物理攻撃で対抗
よく燃えそうな奴らは炎で焼き尽くせ
素早い奴らは凍り付かせ動きを封じろ
空飛ぶ奴らは雷で打ち落とせ、竜巻を起こして巻き込め
硬い鱗を持つ奴らは体当たりや噛みつきで破壊(鎧砕き

綾が無茶していないかにも気を配る
怪我も厭わず暴れるだろうからな…
死角から迫っている敵が居たらドラゴンをけしかせ援護



「うわぁ、ゲームの中で見たことあるようなモンスターが大集合だね」
 激闘のミレイユにありながら楽し気に言った灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は、「ねぇ?」と隣に立つ男に視線を送った。
 その男は、銀の髪を掻き揚げて、厄介なことになったとばかりに眉を寄せた。
「ったく、完全に手段と目的が逆になってしまっている連中だな」
 血の一族についてだ。彼らに思うところがないではないが、今知り得る情報では、同情の余地などない。
 いつでもドラゴンたちを召喚できるよう集中しながら、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は保護者として、綾に言った。
「本命と戦う前に、余計な傷を増やすなよ」
「えっ?」
 驚いて振り返った時には、すでに綾は手を斬りつけていた。流れ出た血が二振りの大鎌【Duo】に零れる。
 彼のユーベルコードだ。戦う上で必要なのだろうことは分かってはいるが、何やら嫌な予感を感じて、梓は頭を抱えたくなった。
「……頼むぞ、綾。無駄に消耗はするなよな。こいつらが本丸じゃないんだからな」
「分かってるよ。こいつらと延々殺し合うんだろ? たまらないお仕事じゃないか」
「……」
 梓は頭を抱えた。
 綾もまた手段と目的が入れ替わっていることについては極力考えないようにして、群がる敵を観察する。
 ゴブリンとそのペットであるウルフ、オーク。サイクロプスが小隊長のような役割をしているらしい。リザードマンは統率の取れた動きで、冒険者を翻弄している。空にはハーピーなどの翼魔が飛び交っていた。
 なにせ数が多い。ならば、取るべき選択は限られていた。
「こちらも数で勝負といこうか」
 梓が指を鳴らした瞬間、彼の周囲に光が渦巻き、色とりどりのドラゴンが出現した。右手を敵へと差し向けて合図とし、七十七の竜が一斉に飛翔する。
 ブレスを吐きながら突撃し、オークとリザードマンの一団に食らいついた竜たちは、布を纏うオークを燃やし、リザードマンは冷気で凍てつかせ、その動きを封じていく。
 ドラゴンを見たモンスターたちが、怒りの叫びを上げた。それは、血の一族の感情を代弁しているかのようだった。
「まぁ、怒ったところで――だけどね」
 呟いた綾が、地を蹴った。次の瞬間には、彼は敵陣の上空にあった。
 空を舞うように跳躍しながら回転し、その流れでハーピーを切り裂き、着地。遅れて降り注いだ血の雨の中、突如降ってきた鎌の男に、オークたちが一斉に斧を振り上げた。
「来るかい? ちゃんとついてきてね」
 くすりと笑って、腕を振るう。かなりの重量があるはずの大鎌が、小枝でも扱うかのような速度で薙ぎ払われた。
 痛みすらなかっただろう。綾を取り囲んでいたオークたちは、その頭を横に両断されて、くぐもった呻き声と共に倒れて死んだ。
 角の生えたリザードマンが、何事かを咆えた。号令の類なのだろうか、鱗の亜人たちが一斉に綾を取り囲む。
 腕を伸ばして振り回す二本の大鎌は広範囲を薙ぎ払い、黒と赤の装飾をさらに血に染め、縦横無尽に暴れまわった。
 しかし、無傷ではいられない。飛来したセイレーンの鋭い爪が、肩を切り裂いた。守る素振りすらも見せなかった綾は、痛みを無視して鎌を振り上げ、逃げようとする翼の魔物を叩き切る。
「……面倒だな」
 上空のモンスターもそうだが、地を這うように襲ってくるウルフやゴブリンも、容易に間合いを詰めてきた。速度は遥かにこちらが上だが、如何せん数が多すぎて、対処しきれないことがある。
 どうしたものかと考えていると、空から炎と稲妻のブレスが降り注ぎ、綾を囲むモンスターを薙ぎ払った。
 梓のドラゴンだ。幾体かを引き連れて駆け付けた彼は、開口一番、叱りつけた。
「綾! お前俺の話聞いてたか!?」
「あはは、言いつけ、守るつもりだったんだけどね」
「ったく。軽い怪我だからいいものを……。こっからは二人で動くぞ、いいな」
「分かったよ、君に合わせる」
「なに言ってんだ。俺がお前に合わせるんだよ」
「うーんまぁ、じゃあお互いに合わせるってことで」
 敵に囲まれながらも軽いやり取りの後、綾は念動力を纏わせたナイフを、上に放った。空から火球を吐き出さんとしていたガーゴイルの頭蓋を貫き、暴走した炎の魔法が爆ぜる。
 それが、戦闘再開の合図となった。梓のドラゴンたちが一斉に咆哮し、ブレスで戦場を蹂躙する。
 竜が放つあらゆる色の輝きの中、綾が大鎌を無慈悲に振るい、大小さまざまなモンスターを等しく処刑していった。
 迸る雷光と空をかき乱す暴風の渦が、翼を持つ魔物から自由を奪い、混乱の中に死をもたらす。ブレスの中を生き延びたサイクロプスは、梓を潰さんと斧を振り上げた瞬間、その頭部を竜牙に噛み砕かれて斃れた。
 次々と積み上がっていくモンスターの死体は、綾にとって格好の足場となった。跳躍すれば、二振りの大鎌が届く。
「これはいいや」
 笑いながら、斬。夥しい血飛沫が上がり、ハーピーの亡骸と共に着地したところを、赤竜【焔】がブレスで援護してくれた。
 接地の隙をカバーしてくれたことに、綾は満足げに頷いた。
「うんうん。俺たち息がぴったりだね。梓」
「……やっぱり俺が合わせてんじゃねぇか」
 ぼやきつつも、悪い心地ではなかった。この調子なら、綾が必要以上に傷つくこともなさそうだ。
 そんなことを考えて、梓はふと、激闘の中でも保護者意識が抜けない自分に、苦笑を零した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ナァト・イガル
【銀葉】ア/連/傷

(戦場と冒険者たちを見やり)良かった、間に合って。グリモアに感謝ね。
「良く頑張ってくれたわ。さぁ、救援が来たわよ!」
この【歌唱・楽器演奏】の技量を以って、皆を【鼓舞】する勇壮な戦歌を奏でましょう。
同時に【祈り・多重詠唱】を込めてUC『小夜啼鳥の凱歌』を発動。
召喚された光の鳥の群れを周囲へ送り出して、冒険者と猟兵に癒しと強化を付与して援護するわね。
ついでに数ある”救援”の姿も照らして、猟兵の力を見せつけてやりましょうか。
私自身は聖痕の光の矢で、飛んでいる厄介な敵をなるべく狙うように心がけるわ。

戦いは、心が折れたら負けだもの。戦場に立つ吟遊詩人として、皆を支えないとね!


雨音・玲
【銀葉】ア/連/傷
どれだけ頭数集めてやがるんだ???
いつもなら広範囲の殲滅術式で
『『ドカン!!』』だけどな…
こうも入り乱れての攻防戦は味方も巻き込んじまう

咽返るような血の香りに眉を顰めながら
静かに瞳を閉じて集中、「魔力溜め」を「リミッター解除」
俺の後ろには守るべき人達がいる…ココから先は行かせねぇ!!
『…今仮初の姿を与えん!』

右手に込めた「属性攻撃」で生み出した業火の「弾幕」ひとつひとつが
UCの効果で炎を纏い翼の生えた騎士の姿へ

『ザッ』とその場に膝をついて号令待つ彼らに激を飛ばす

お前たちにとっては初陣だ!
今から悪夢を終わらせる!!
遠慮はいらねぇ行くぞお前ら!!
一気に戦線を押し上げるぞ!!



 夜の戦いは激化を極めた。
 魔法の光球だけではない、猟兵の攻撃も加わった数多の光に照らし出される戦場は、今や冒険者と猟兵、モンスターが入り乱れた激戦となっていた。
 冒険者たちの中には、相当数の撤退者が出ている。もしかしたら、死人もいるかもしれない。だというのに、血の一族が率いてきた魔物どもの勢いは、未だに衰えを知らない。
「……どれだけ頭数集めてやがるんだ?」
 雨音・玲(路地裏のカラス・f16697)は歯噛みした。ただ数が多いだけならば、広範囲の殲滅術式で一掃できたはずだ。しかし、こうも乱戦になってしまっては、仲間を巻き込みかねない。
 戦線は膠着している。しかしそれは、猟兵の加勢による影響が大きい。冒険者たちの限界は近いのだ。
 猟兵が守りたいのは、町の人々だけではない。彼らもまた、助けねばならない。だが、彼らの戦う意思を止めることもまた、できない。
 咽返るほどの血の臭いが、冒険者のものかもしれないと思うと、自然と眉が寄る。
「……くそ」
 思わず拳を握りしめた時、美しい弦楽器の音色が聞こえた。次いで、女の声も。
「大丈夫、まだ間に合うわ。グリモアに感謝ね」
 振り返った先にいたのは、黒髪と黒い肌――そう表現すべきか、玲には分からない――の女がいた。戦場に似つかわしくない吟遊詩人装束の女、ナァト・イガル(さまよえる小夜啼鳥・f26029)は、躊躇いなく前線へと歩き出す。
「冒険者たちの心が疲弊しているのなら、それを奮い立たせるのが私の役目。彼らの『町を守りたい』という想い……私は、叶えてあげたいわ。玲さんは、どうかしら」
「……」
 目を閉じて、玲はゆっくりと深呼吸した。息を吐き切って、自分の心と向き合う。
 そうだ。想いは、彼らと同じだ。後ろにいる守るべき人々に、魔物の指一本触れさせるわけにはいかない。
 拳を握る手に、別の力が籠るのを感じる。
「そうだ……! ココから先は行かせねぇ!! そうだろ、ナァト!」
「えぇ、もちろん」
 微笑んで、ナァトは弦を掻き鳴らし、声高らかに言った。
「冒険者の皆、よくがんばってくれたわ。勇敢なるあなたたちに、私の歌を捧げましょう!」
 ナァトの【シンフォニックデバイス】が、その美しい声を拡大する。
 戦士を鼓舞する勇壮な歌は、冒険者たちの背を強く押した。今一度鬨の声を上げた彼らは、必ずや勝ってみせるとばりにモンスターの大群を押し返す。
 歌声は、玲の心も打った。力強く、魂が震えるようだ。そう思った瞬間、彼の肩に、光り輝く鳥が舞い降りた。
 さぁ、行こう。そう言っている気がした。一人頷いて、玲は漲る魔力の限界を超え、その力を解き放つ。
「――今、仮初の姿を与えん!」
 足元から浮き上がった炎が、玲の前で姿を変える。揺らめく焔は鎧を象り、その背からは赤く燃え盛る翼を生やした騎士となった。
 整列し、一斉に膝をつく焔の騎士に、玲は力強く言った。
「さぁ、お前たちの初陣だ。今からこのミレイユに訪れた悪夢を終わらせる!」
 顔を上げた騎士たちの、燃える瞳が主を見る。そこに灯る無機質ながらも強い戦意は、やはり、熱い。
「遠慮はいらねぇ。行くぞお前らッ!」
 その号令を待っていたとばかりに、騎士たちは一同に剣を捧げ、敵へと向き直り、隊列を組んで突貫した。
 先陣を切る玲のもとへ、今もナァトの歌が聞こえる。彼女は一人で大丈夫だろうかという想いが過ぎったが、信じて、心配を切り捨てた。
 ゴブリンの一匹が、炎の騎士を率いる玲に気づいた。何事かを喚いて味方に知らせ、オークやスライムが攻撃態勢を取る。
 躊躇うことなく、ぶつかった。拳に炎を纏わせてスライムの核を打ち抜き、飛び散る粘液を振り払い、その奥にいたゴブリンを蹴り飛ばす。
 炎神の軍勢が無慈悲に魔物を掴み、斬り、燃やし尽くす。頭上から攻めあぐねているハーピーが、その歌声で冒険者と猟兵を魅了しようとした。
 だが、ナァトの歌は、呪いをもたらす魔物の歌よりも強い。光り輝く鳥たちが歌に合わせて飛ぶと、町を守る戦士たちは力を増し、雄叫びを太くしていく。
 戦場の空に遊ぶ光の鳥は、その眩さで猟兵たちの戦いをも照らし出した。竜を屠った勇士を目にした冒険者たちは、感動し、奮起した。負けてはいられぬと、強く強く得物を振るう。
 肉体的な疲労は、この瞬間、戦況を左右するものではなくなった。
 戦線の後方でその様子を見守っていたナァトは楽器を優しく掻き鳴らしてから、微笑んだ。
「戦いは、心が折れたら負けだもの。さぁ、戦場に立つ吟遊詩人として、皆を支えないとね!」
 楽器を自動演奏に切り替え、歌は継続しながらも、掌に浮かんだ聖痕を空へと振るう。その奇跡に沿って、優しく温かな光が生み出された。
 光は矢へと姿を変えて、空を覆う翼の魔物へと飛翔した。冒険者と猟兵の頭を狙うガーゴイルどもが、次々に撃ち落とされていく。
 その援護射撃を、玲は最前線で見上げていた。
「ナァトか! 助かるぜ!」
 彼女の歌と光の鳥のおかげで、拳に纏う炎は今や、触れるだけでゴブリンどもを燃やし尽くす業火と化していた。炎の騎士たちもまた、噛みついたウルフが傷をつける間もなく焼け死ぬほどの焔を纏っている。
 リザードマンの顔面を殴り、灼熱の炎を浴びせてから、胴に肘鉄を食らわす。冗談のように吹っ飛んだ鱗の亜人は、火だるまとなってゴブリンの一団に突っ込んでいった。
 相当数の敵を倒しているはずだが、血の一族への道は、まだ見えない。いつ辿り着くのかも分からない。だが、玲に不安はなかった。
 仲間がいる。ナァトの歌がある。今ならば、この宵闇だって焼き払えると思った。
「その調子だ! 一気に戦線を押し上げるぞッ!!」
 炎神の軍勢が剣を捧げ、冒険者たちもが呼応して、剣や槍、斧、杖を振り上げる。
 戦歌に踊る赤き焔は、どこまでも、その勢いを増していく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

雛菊・璃奈
ア連

折角訪れた平穏をこんな事で崩させはしないよ…。

【unlimited】を展開し【呪詛】で更に強化…。
【呪詛、高速詠唱、情報収集】による探知呪術で敵味方の位置や状況を把握し、敵のみ目掛けて「一斉に斉射→再顕現」を繰り返してモンスター達を一気に殲滅し、敵の侵攻を阻むよ…。

後はモンスターと交戦してる冒険者達を助けながら、凶太刀の高速化で一気に最前へ出て、黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、なぎ払い、生命力吸収】…。
敵集団へ一気に呪力を放って敵を殲滅しながら勢いを削ぎ、そのまま再度【unlimited】の連続斉射で押し返していくよ…。

ここから先には進ませない…。先に入るなら、その代価は命で償って貰う…。



 雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は怒っていた。
 帝竜戦役が終わり、ようやく世界に平和が来ようとしていたというのに。ミレイユの町は今、安らぎの時を奪われようとしている。
 許せるはずがなかった。
「せっかく訪れた平穏を、こんなことで崩させはしないよ……」
 銀の瞳を輝かせ、見に宿る呪詛を解放する。黒い煙のような呪いの力は、璃奈の周りに浮かび上がると同時に、数多の魔剣へと姿を変えた。
 悍ましいまでの呪力を纏う剣たちを、モンスターの群れに向かって射出する。放たれた魔剣は、ゴブリンやサイクロプス、空を飛ぶセイレーンどもも、例外なく無慈悲に穿ち、切り裂いた。
 役目を終えた魔剣は、消えると同時に再び璃奈のもとに顕現した。もはや、躊躇ってやる理由などない。現れると同時に撃ち出し、モンスターどもを殲滅していく。降り注ぐ大量の剣に冒険者が面食らっているようだが、決して彼らの背を斬りつけるようなことはなかった。
 璃奈は腰に差した妖刀【九尾乃凶太刀】を抜き、左手には薙刀状の槍【黒桜】を手にし、大地を強く踏みしめた。
 凶太刀の呪力によって高速化した勢いのまま、押し倒された女魔法使いに群がるゴブリンどもに斬り込む。回転しながらの一閃は、刀と薙刀、双方の刃を一瞬で血に染めた。
 倒れる同胞に驚愕しつつも、ゴブリンとオークは飛び込んできた新たな若い女に狂喜した。群がる悍ましい手に、しかし璃奈の瞳は冷たく光る。
 刃が煌めく。伸ばされた全ての手が落ち、魔物の悲鳴は、すぐに首を落とされ声なき血飛沫の音へと変わった。
 一瞬で状況が変わったことに目を白黒させている魔法使いの腕を引き、璃奈は短く告げる。
「立って……」
「は、はい!」
「ここはわたしが引き受けるから……他の人の援護をお願い……」
「は、はいっ!」
 何度も頷いて、魔法使いの少女は服についた血を気にしながら走っていった。きっと、まだ戦い慣れていないのだろう。
 そんな彼女でも、町を守るために必死なのだ。ミレイユがいかに愛されているかが伝わってくる。璃奈の決意もまた、固く強くなっていく。
「ここから先には進ませない……!」
 黒桜の刃から迸る呪力が、薙ぎ払いと共に放たれる。黒き呪いが刃と化し、間合いを遥かに超えた範囲の敵を、容赦なく切り刻んだ。
 戦槌を振るうことなく両断されたサイクロプスの死体が、ゴブリンたちを下敷きにする。それだけ密集しているということだが、圧倒的な数も、璃奈にとっては殲滅しやすいという感想にしかならない。
 再度、魔剣を召喚した。さんざん同胞をやられた恐るべき光景に、ゴブリンとリザードマンの足が、止まる。
 それでもやはり、同情するつもりはなかった。
「わたしの後ろに行くつもりなら……その対価、命で償ってもらう……」
 豪雨の如く降り注ぐ魔剣に切り刻まれて、魔族の血肉が飛散する。リザードマンが同族に撤退の命令を出しているようだが、振り抜いた黒桜の呪詛が、その足を切り捨てて逃げ場を奪った。
 魔剣に貫かれて死にゆくオブリビオンたちを見ても、璃奈の胸は痛まなかった。
 彼女は優しく、決して冷酷ではない。だが今は――決めていたのだ。
 ミレイユの町と、冒険者を、世界を守ると。
 そう固く決意した璃奈の心は、いかなる魔剣の刃よりも、鋭く、強い。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド

私たちにとっては帝竜ヴァルギリオスの打倒は「この世界を守る」という結果を求めてのことであり過程。ですが、彼らにとっては違ったのでしょう。
オブリビオンとなり、この世界の敵になるのであれば……彼らも撃つのみです。

色々とやるべきことはありそうですが、私は敵の数を減らしましょう。適材適所ということで。

弓を手に防壁や見張り台などの戦場が見渡せる場所へ。
明かりもありますし、戦場から多少距離があっても問題はありません。
『スナイパー』の腕と『視力』で狙い、最大射程7km弱、80体以上を同時に射抜ける【霜天弓】でモンスター達を撃ちます。
特に上空の敵は対処できる人員も限られていそうですし、積極的に減らしましょう



 防壁の上から戦場を俯瞰しつつ、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は思考する。
 彼女たち猟兵にとって、帝竜ヴァルギリオスの打倒は、それによってもたらされる「世界を守る」という結果のための過程にすぎなかった。
 どの世界でもそれはほとんど変わらない。だから、それが当たり前だと思っていた。しかし――。
「彼らにとっては、違ったのでしょう」
 血の一族。今となっては知りようもないが、彼らもかつては、竜を倒し世界を守るため、必要な犠牲を覚悟で戦っていたのかもしれない。
 だが、今や彼らは、オブリビオンとなった。
「この世界の敵になるのであれば――彼らも、撃つのみです」
 氷の決意を胸に秘め、セルマは弓の弦を引き絞る。かつてこの世界で、彼女に思いもよらぬ二つ名を与えた弓だ。
 魔力の光と猟兵のユーベルコードに照らし出された戦場は、防壁からかなりの距離がある。戦線が押せていることは大変結構なことだが、弓の射程としては、あまりに遠いはずだった。
 だが、セルマは弦をなおも張る。番えられた矢は、戦場の魔物ではなく月の浮かぶ空へと向けられていた。
「霜天を切り裂くは、無尽の流星……!」
 一射、空を駆ける。放たれた直後に分裂した八十を超える矢は、蒼の輝きを放って天高く飛翔した。
 空中の水分を凍てつかせながら、セルマの矢が落ちていく。飛来する輝きに気づいたハーピーが、警告の絶叫を発した。
 だが、飛来する矢の雨は、避けられない。その身を凍結せしめる冷気を纏った鏃が、次々に翼を持つ魔物を撃ち落としていく。
 セルマはさらに矢を番えた。最大射程は七キロ弱。ここからならば、敵陣奥地の面制圧が可能だ。
 二射目の矢が、空を蒼く染める。氷を纏った八十以上の矢が、ひしめき合う敵の頭上を襲った。
 地上のモンスターは、盾や木の板、小型の魔物を使って、矢を防いでいるようだった。だが、迸る激しい冷気は無視できず、進軍の速度を著しく弱めていく。
 さらに、頼りにしていたのだろうセイレーンやハーピーといった翼の魔物が撤退を余儀なくされていることが、敵の士気を奪っていった。
「対策もなしに飛ぶからです。所詮は獣、でしょうか」
 独り言ちながら、さらなる矢を番えた時だった。
「天弓姫っ!」
 思わず目を見開いて、戦場を見渡してしまった。誰がその名を呼んだのかは分からなかったが、いつかの仕事で出会った冒険者がいたのだろうか。
 どうにも呼びなれない。まして、姫だなんて。にわかに火照った頬を張って、セルマは弓を握り締めた。
「……せめて、その名に恥じない働きをしましょう」
 堂々と、正確に、目標を穿つ。戦いの最中で行なってきたそのリズムに、磨きをかけるのだ。
 弦を引く。引き絞られた矢の鏃が、月の光を反射した。その輝きを見つめるうちに、セルマの雑念は霧散する。
 研ぎ澄まされる意識は、ただ一つの目的に集束していく。
 即ち、世界を守るということ。そのために、オブリビオンを討つ。敵が帝竜ヴァルギリオスだろうと、一匹のゴブリンだろうと、同じことだった。
 スコープはなくとも、セルマが狙いを定めた先にいるのは、撃つべき獲物だけなのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルムル・ベリアクス
冒険者の方々……ここまでモンスターを食い止めてくれていたのですね。でももう大丈夫ですよ。
傷ついた冒険者たちを退かせながら、フォーチュンカードで攻撃して敵の注意を引きます。
十分に引き付けたら、UCの出番です。「正位置の星」のカードを手にして詠唱し、隕石を降らせます!物量には物量を。周囲の敵を一網打尽にします。
戦場を火の海に変えてやりましょう。この隕石はあなた達を殲滅するまで止まりませんよ……。
炎の雨を潜り抜けながら、カードで敵を切り裂きます。
このUCには当たった敵の運命を予見する効果もあります。敵の攻撃方法や弱点がわかれば、冒険者達のサポートにも役立つでしょう。



 冒険者たちは、よく戦ってくれている。前線に立つルムル・ベリアクス(鳥仮面のタロティスト・f23552)は、心中で惜しみない称賛を送った。
 しかし、彼らの疲弊は否めない。負傷者は続出し、撤退を余儀なくされる者も多くいる。
 今も彼の目の前で、深手を追った戦斧使いが膝をついた。
 とどめを刺そうと混紡を振り上げたオークに、ルムルは【フォーチュンカード】を投擲した。刃の如き鋭さを得たカードは、導かれるように飛翔して、筋骨隆々な亜人の喉を切り裂く。
 血を撒き散らして倒れるオーク。すかさず駆け寄り、戦斧の男に手を差し伸べた。
「もう大丈夫ですよ。歩けますか?」
「あ、あぁ……すまねぇ」
「ここはわたしが引き受けます。撤退を」
「恩に切るぜ、兄ちゃん」
 足を引きずりながらも、戦斧の冒険者は迷わず撤退した。引き際を心得ている、熟練の戦士らしかった。
 敵の目が、ルムルに向く。同時に、複数枚のカードを取り出して両手に持ち、投擲した。
 カードはモンスターの群れに飛び込み、音もなく魔物の急所を切り裂いた。突如現れた無音の凶器に、ゴブリン共から悲鳴が上がる。
 次なるカードを構えた瞬間、向けられた殺気がするどくなったのを、ルムルは確かに感じた。
 サイクロプスが叫ぶ。奴は危険だ、始末しろと、オークやリザードマンに指示しているかのようだった。
 実際、魔物どもは一斉に得物を振りかざし、ルムルに向かって突撃を開始した。まるで、モンスターの津波だ。飲み込まれれば、ひとたまりもないだろう。
 だが――いい頃合いだと、思った。
 手にするカードの一枚、「正位置の星」を、敵に見せつけるように天高く掲げる。
「物量には物量を。……希望の星よ、輝く運命を見せるがいい!」
 瞬間、カードから放たれた眩い煌めきが、空へと駆け昇った。
 夜空が眩く明滅する。突然の異変に、ハーピーやガーゴイルが空を見上げ、そして絶叫した。

 星が、降ってきていた。

 飛来する隕石が、翼を持つ者も地を這う者も、等しく轟音のもとに打ち砕いていく。逃げ惑うゴブリンたちは、火の海と化した草原で炎に巻かれて息絶えていった。
 モンスターたちにとって、降り注ぐ星々はまさしく死の運命を決定づける、凶兆の輝きだった。
「この隕石は、あなた達を殲滅するまで止まりませんよ……」
 豪雨の如き火炎の中を、ルムルが疾走る。二枚のカードをナイフのように振るい、混乱の果てに隊列を乱したリザードマンの喉や動脈を切り裂いていく。
 カードからもたらされる敵の運命は、彼らの弱点を教えてくれていた。この一帯を制圧した後、冒険者に伝えられれば、戦況はなおこちらに傾くだろう。
 それこそが、正しき星のカードが示した彼らの『希望』となるのだ。
 魔物どもを死に至らしめる天来の輝きは、未来を示す星の瞬きであることを、ルムルだけが知っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

フォルク・リア
ア連

「まるで怪物の見本市だな。
なら、精々高く買ってやるさ。」
と武器を構えると
冒険者たちに
「俺が奴らを搔き乱す。
その隙に体勢を立て直してくれ。」

【念動力】で複数の武器を構えつつ敵の中へ
デモニックロッドの闇の魔弾の【範囲攻撃】で
先頭の敵を薙ぎ払い。
空中の相手はスカイロッドの空圧、風弾で撃ち落とす。
巨大な敵、特殊能力を持った敵には
拘鎖塞牢で力を封じた後、レッドシューターの炎で焼き払う。
等の攻撃を使い分け、敵に何をやっても無駄だという
【恐怖を与える】様に戦った後
誘いの魔眼を使って広範囲の敵にダメージ、呪詛を与えて
冒険者たちが攻撃する隙を作る。
「彼らも此処で戦って来た戦士だ。
あてにさせて貰うよ。」


エーカ・ライスフェルト
「ア」「連」「傷」
あれだけ倒されても、まだこれほどのモンスターがいるのね。
私は持久戦は苦手なのよね。
【念動力】を使った【理力矢】で、このあたりのモンスターを減らしてから冒険者に任せてしまいましょう。

「冒険者には当てないようするから、物騒な見た目だけど驚かないでね」(冒険者への発言)
【念動力】を鍛え直したら、邪悪っぽい感じの見た目になっちゃったのよ。どす黒くて濁っている感じに。

「よーし、モンスターには効いているわね。属性が悪だからちょっと……いえ凄く不安だったのよ」
まとめてサイキックを撃ち出して、モンスターがいない場所や時間をつくることを優先するわ。
少しずつ倒すより有利になると思うの。



 もう相当数、倒したはずだが。エーカ・ライスフェルト(ウィザード・f06511)は渋面を浮かべた。
 この戦いだけではない。群竜大陸でも、猟兵によってかなりの数のオブリビオンが狩られたはずだ。
 オブリビオン・フォーミュラを倒された奴らは、もう復活できなくなっているはずだが、目の前にはうんざりするほどの魔物がひしめいている。
「……見てるだけで満腹中枢が悲鳴を上げる光景ね」
「まるで怪物の見本市だな」
 並び立つフードの男、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)が苦笑した。
 そちらに半眼を向けて、エーカは気だるげに言った。
「しかも、まだ相当売れ残っているわよ」
「なら、精々高く買ってやるさ」
「クーリング・オフは――効かないでしょうねぇ」
 軽口など叩きながら、二人は同時に念動力を解放した。
 フォルクの周囲に、杖を始めとしたあらゆる得物が浮かび上がる。
「エーカ、俺と冒険者に援護射撃を頼めるかい?」
「言われなくてもそうするわよ。肉弾戦はパス」
 手をひらひらさせて言うエーカの頭上には、何やら禍々しい力を纏った理力が、稲光を放っている。
 穏やかな力ではないが、彼女は歴戦の猟兵だ。誤射はないだろうと見て、フォルクは頷いた。
 フードを靡かせ、走り出す。同時にエーカの理力が放たれ、空から冒険者たちを狙うセイレーンどもを撃ち落とした。
 オークの一団に斬り込んだフォルクが、疲弊している冒険者たちに端的に告げる。
「俺たちが奴らを搔き乱す。その隙に体勢を立て直してくれ」
「あ……あぁ」
 彼らは驚いているようだった。それは、フォルクの【デモニックロッド】から放たれる闇の魔弾とエーカの不穏なサイキックエナジーのせいだろう。どう見ても、正義の力とは言い難い見た目だった。
 戸惑っている様子は、後方のエーカからも見て取れた。というより、後退してくる冒険者たちが、先程からチラチラとこちらを見てくる。
 どす黒く濁った【悪】属性の理力は、見てそれと分かるほどに、悍ましいらしかった。とはいえそんな目で見られるのは、正直、少しショックである。
「……あなたたちには当てないようするから、物騒な見た目だけど驚かないでね」
 彼女としてはただ鍛錬しただけなのだ。得意分野の理力を伸ばそうと鍛えてみたら、気づけばこんな見た目になってしまった。
 見てくれはともかく、モンスターには効果があるらしい。それだけで、ほっと息をつく。
「よーし……。属性が悪だからちょっと――いえ凄く不安だったけど、使えると分かったら、もう躊躇う理由はないわね」
 桃色の長髪を掻き上げて、エーカはさらなる悪属性の理力を放つ。漆黒の落雷めいて降り注ぐ凄まじいサイキックは、ゴブリンどもを一瞬で雲散霧消させ、戦場にぽっかりと空間を作り出す。
 かと思えば、自在に操られるサイキックエナジーが地を這って、顔を出したデスワームやスライムを両断粉砕していった。
「これは……凄まじいな」
 理力が暴れるその中で苦笑しながらも、フォルクはあらゆる武器を同時に使用し、敵を圧倒していた。
 空を支配していた魔物たちは今、【スカイロッド】の風圧と風弾の前に、成す術なく翼を奪われていた。
 上空からの援護を受けられなくなったゴブリンどもは、いかにも脆い。闇の魔弾に撃たれ、エーカの理力に貫かれ、頭を抱えて逃げ惑う。
 その中でも、サイクロプスとオークは果敢だった。迫りくるサイキックエナジーを棍棒や同胞の死体で防ぎながら、フォルクの息の根を止めんと迫る。
 しかし、近づく殺気に振り向いた紫の瞳が輝いた瞬間、彼らの豪腕は封じられた。
 出現した巨大な棺桶は、一瞬魔物たちに閉じ込められる錯覚を与えた後、消えた。ダメージらしいものも直後、サイクロプスは棍棒を、オークは無骨な斧を持ち上げることができずに、だらりと腕を下げた。
 【拘鎖塞牢】。フォルクはそう呼ぶ。能力封じの魔具だ。
 こうなると、一方的だった。得物で頭を防げなくなった大型の魔物たちは、どす黒く光るサイキックに打ち砕かれて、倒れ伏していった。
 フォルクもまた、黒い手袋をはめた右手を、サイクロプスの顔面に向ける。かつて炎獣を封じた魔導書だったそれから、灼熱の業火が吹き出した。
 単眼を焼かれ、悶え苦しむ巨人は、脳髄まで焼き尽くされて死んだ。
 もはや空にも地上にも、逃げ場などない。二人の魔術師による慈悲なき戦いに、モンスターたちは恐怖した。
 その感情が、さらなる悲劇の引き金となる。
 突如として、戦場に無数の赤い眼が浮かび上がった。ぎょろりと向かれた眼球は、魔物どもを見据えて離さない。
 悍ましい光景に混乱したゴブリンが、棍棒を振り上げ目玉を潰そうとする。直後、気弱な亜人は白目を剥いて、狂ったように叫んで同族に殴りかかった。
 発狂は、至る所で始まった。真紅の眼光から漂う瘴気が、モンスターの精神を蝕み狂気へと誘っていく。
 もはや、魔物の軍勢の足並みは崩れた。
「……そろそろね」
 後方でエーカが一人呟いた刹那、今だ、と誰かが叫んだ。ついで、冒険者たちが勇み、一気に戦線を押し上げる。
 その様子を見ながら、再度理力を構築しながら、エーカは納得したように頷いた。
「うんうん、やっぱりここは冒険者に任せちゃえばいいのよね」
 できれば疲れたくはない。当然である。
 思いの向かう先はともかく、その考え自体はフォルクも同じだった。紅蓮の瞳が輝く中、喚声と共に得物を振るう冒険者に、静かな笑みを浮かべる。
「彼らもここで戦って来た戦士だ。あてにさせて貰うよ」
 この戦いの勝利が、いつか冒険者たちの自信となり、歌となり、伝わっていく。それこそが、この世界に必要なことなのだと、フォルクは思っていた。
 帝竜ヴァルギリオスが死した今、世界のために戦う主役は、世界に住まう彼らなのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
オブビリオン化って本当に厄介だね
ともあれ皆と協力して街を守るよ

UCで使い魔を召喚
呼び出す数は1体にして
その分超硬装甲の竜体を大きくしよう
そうすれば冒険者達を背後に庇えないかな

間違って攻撃されないように
僕達は味方だよと叫びながら
使い魔にモンスターを攻撃させて証拠を示すよ

多機能ゴーグルの暗視やドローンからの俯瞰図で戦場を把握
使い魔の巨体でモンスターの目を惹いて冒険者の負荷を減らそう

僕は近くを飛びつつガトリングガンの射撃で
討ち漏らしや回り込みが無い様に補助
数で押し負けそうになっているところでは
邪神の繰り糸で同士討ちさせて足止めするよ

ハーピーとか空の敵は
使い魔から金属片を射出
金属に変えて落として貰おう



 いかに崇高な人物でも、オブリビオンに身を堕としてしまえば、わずかな例外を除いて世界の敵となる。その光景を何度も目撃してきてはいるが、やはり、慣れることはなさそうだった。
「……厄介だね」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は絞り出すように言った。血の一族に手段を選ばぬ愚かさはあっただろうが、人類に牙を剥くことは、彼らの本意ではなかったはずだ。
 ともかく――今は冒険者や猟兵と協力して、ミレイユの町を守らねばならない。
「ここは、彼女の力を借りようか」
 呟いて、地面に手を触れる。邪神の力が大地に伝播し、盛り上がった土から無数の金属柱が立ち上がった。
 希少金属は形を変えて衝突し合い、融合し、一つの巨大な塊となった。さらに蠢き、巨大な竜と化す。金属の竜は硬質な翼を羽ばたかせ、モンスターの大群に向けて飛翔した。
 拮抗した戦いを繰り広げる冒険者たちの前に降り立ち、「よーし、いきますよー!」と冗談のように明るい声で尾を薙ぎ払い、オークやらゴブリンやらを蹴散らしていく。
 超硬装甲の巨大なドラゴンの出現は、当然ながら冒険者に驚愕をもたらした。
「ド――ドラゴンだぁぁぁ!」
「大丈夫、そいつは味方だよ!」
 攻撃の対象となりかけていたプラチナコピー・レプリカの頭上から、晶は飛行しながらガトリング弾をばら撒きつつ叫んだ。
 一瞬疑いの目を晶に向けた冒険者たちは、しかし金属質な竜がオークの頭蓋を砕き、射出された金属片でハーピーとガーゴイルを撃ち落としていく様子を見て、思案する。
 ドラゴンとの共闘など前代未聞だが、実際に白金竜は魔物の大群を一体で崩壊させていくのだから、本当ならば頼もしい限りだ。
 それに、突如参戦した異能者たちの実力は、彼らも十分に理解し始めていた。筋骨隆々の槍使いが、オークの喉を貫いた穂先を引き寄せ、血濡れのそれを高く掲げて叫ぶ。
「嘘かホントかなんざどうでもいい。空の嬢ちゃんを俺ぁ頼るぜ! 死にたくはねぇからよ!」
 興奮している戦士たちは、その声に呼応した。使い魔の竜と共闘する道を選んでくれたことに、晶は安堵する。
 猟兵と冒険者の奮戦により、モンスターの数はかなり減ってきている。しかし、まだ物量に圧倒されている場所もあった。
 ドローンからもたらされた俯瞰図で特定したポイントは、前衛がやられ、魔法使いが必死の抵抗を見せているところだった。
 いかに強大な魔法を使えど、接近戦が不得手な彼らは、トロールやゴブリンに蹂躙されてしまう。晶は即座に散らばる魔物の死骸へ人形化の呪いをかけ、邪神の力で操作した。
 心臓を貫かれて死んだはずのトロールが突如起き上がり、驚愕するゴブリンを叩き伏せ、頭を踏み砕く。まるでネクロマンサーにでもなった気分だった。
「……まぁ、実際そうだよね」
 空中で一人呟き、晶は【携行型ガトリングガン】を斉射しつつ魔法使いの前に降り立ち、彼らを後方へ撤退させた。
 金属の竜が、主から離れまいと駆け付ける。健気なことだが、超硬質な体でサイクロプスまで撥ね散らかしてやってくるのは、若干怖かった。
「ともかく、もう少しだ」
 この場を冒険者たちに任せられるようになるまで、今しばらく殲滅しなければならない。
 彼らの消耗は激しいが、士気は高いのだ。それを保ち、あるいはより高めていけるのは、猟兵しかいない。
 飛び上がり、竜の頭を軽く撫でてやる。
「もうひと頑張り。よし、いくか」
 町を喰らわんと押し進む魔物たちへ、晶は砲塔を向ける。
 ガトリングガンの銃声が木霊し、それに応えるかのように、プラチナコピーのレプリカが天高く咆哮した。

成功 🔵​🔵​🔴​

フランチェスカ・ヴァレンタイン
帝竜斃れど未だ世は定まらず、と。――何とも侭ならないものですねえ

などと遙か上空から眼下のスタンピードを見下ろしてため息一つ
俯瞰視点で戦局の芳しくない地点へ、月を背にしての急降下で強襲と参りましょう

降下速度を乗せた一撃でまずは巨人の頭を潰し、地表を舐めるようなランディングで斧槍のなぎ払って周囲の群れを蹴散らし
空いた空間へ屍を乗り越えて殺到する有象無象に向けて、マイクロミサイルの乱れ撃ちを

指揮個体をある程度間引いて群れの動きが鈍ってきましたら、頃合いですかね?
UCを多重装填で展開、夜天を埋め尽くし真昼の如く煌々と照らす、騎槍を象る光焔のファランクス
その流星群を、ええ。どうぞ心ゆくまで、ご堪能あれ?



 遥か上空――そこは、戦場を照らす魔法の光球よりも、ずっと空高く。
 月光を独りで浴びながら、フランチェスカ・ヴァレンタイン(九天華めき舞い穿つもの・f04189)は呟いた。
「帝竜斃れど未だ世は定まらず、と」
 諸悪の根源は絶ったが、それでもなお、世界にはオブリビオンが蔓延っている。
 ミレイユの町へと猛進し、冒険者や猟兵と戦いを繰り広げる魔物のスタンピードもそうだが、フランチェスカはそちらではなく、月の光すら届かぬ闇を見据えていた。
「――何とも侭ならないものですねえ」
 血の一族、というらしい。竜を討つことを至上の存在意義としていたらしいが、今や世界の敵だ。惨めなことだと思う。
 戦いの決着は近い。後方で治療を受けた冒険者たちが戦線に復帰したことも、戦況が好転した理由だろう。
 一度、羽ばたく。天使の如き白翼を輝かせる月を背に、急降下。目指すは、手薄になり押されかけている右翼。
 大地に向けて落下するフランチェスカは、ハーピーやセイレーンといった、彼女に似た翼を持つ者の間を、躊躇なく翔け抜けた。
 翼の魔物どもが警告の声を発するより早く、棍棒を振り回し暴れていたサイクロプスの頭に戦槌を叩きこむ。降下速度の乗った打撃は、巨人の頭蓋をあっけなく粉砕した。
 ひしゃげた頭部で何かを呻いて、サイクロプスが倒れる。リザードマンがそれを見上げた時には、フランチェスカは次の行動に出ていた。
 地表を舐めるかのようなランディングで、斧槍を一閃。亜人どもが彼女に気づくのと、その胴や首が斬り捨てられるのは、ほぼ同時だった。
 飛来した天使の悪魔が如き斬撃に、ゴブリンどもが浮足立つ。前線が混乱し、トロールの群れが苛立たし気に咆えた。
 さらに飛翔し、斬る、斬る、斬る。積み重なっていく骸は、すぐに魔物の足で踏み潰された。
「欲張りなこと。焦らずとも――差し上げますのに」
 微笑みなど浮かべて、マイクロミサイルを乱れ撃つ。何としてもフランチェスカと冒険者を喰らおうと殺到する魔物たちが、にわかに爆炎に包まれた。
 ウルフやデスワームなどの魔獣は、この炎によって完全に狂乱した。ゴブリンやトロールといった知能の低い連中もまた、混乱の極みに達する。
 しかし、サイクロプス配下のオークや、隊列を組むリザードマンは、今も冷静さを保っていた。冒険者が苦戦しているとしたら、奴らだろう。
「でしたら――間引くべきは指揮個体、ですね」
 ミサイルを面制圧から定点狙撃に切り替え、再度発射。指揮官らしき角突きのリザードマンやオークに檄を飛ばすサイクロプスが、無残にも肉片と化す。
 あの女を殺せと、死に際に巨人が叫んだ。しかし、彼らにとって大きな武器だっただろう統率力を失った今、残されたオークやリザードマンは、突撃以外に選択肢がなく、腕力だけが自慢のトロールらと変わらない。
 押し合いひしめき合って、魔物の動きが鈍る。その瞬間を、フランチェスカは待っていた。
「頃合い、ですかね?」
 天へと飛翔、月光を浴びつつ地へと体を向け、テールバインダー型重流体加速砲【アウトレイジ・ブラスター】を展開。
 砲口に、光焔が渦巻く。冒険者たちが何かを察知して、後退した。その様子に目を細めて頷き、魔物の大群へと目線を移す。
「騎槍を象る光焔のファランクス。その流星群を、えぇ。どうぞ心ゆくまで――ご堪能あれ?」
 輝きが、迸る。
 夜天を白昼の如く照らし出す光焔が、大地に直撃し炸裂する。爆砕の炎は、魔物どもをなす術もなく粉砕した。
 逃げる間もなく死にゆく同胞たちに、後続のモンスターが、とうとうその足を止める。それが、決定的となった。
 燃え広がる戦場を、冒険者が駆けていく。敵が大きくひるんだ今、勝負を仕掛けない手はないと判断したのだろう。的確な判断だ。
「……後は、彼らの取り分ですかねー」
 もとより、雑魚を散らすことは主目的ではない。フランチェスカは翼を羽ばたかせ、その向こうで待っているだろう本丸の元へと、飛翔した。



 戦況のバランスは、完全に人間側へと転じた。ゴブリンや魔獣たちはもはや戦意を失い、散り散りに撤退していく。
 残されたリザードマン、オークなどの知性ある魔物も、最後の抵抗を示してはいるが、冒険者の優位は揺るぎそうになかった。
 猟兵は、戦場の奥に広がる闇を見た。そこに、彼らがいる。姿は見えなくとも、もうはっきりと分かった。
 光の届かぬ草むらの奥で、じっと戦いを睨んでいた者たちの殺気は、間違いなく――竜を討ちし者たちへと向けられていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『血の一族』

POW   :    聖魔伏滅拳
【破魔の力を込めた拳】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    聖魔伏滅斬
【破魔の力を封じた剣や斧】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    血の福印
【自らの血】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 冒険者たちの喊声が、遠くに聞こえる。
 士気が頂点に達した彼らの勝利は、揺るがないだろう。もはや、猟兵たちが手を貸す必要はない。
 今、世界を守る戦士たちは、闇の中にいた。
 街道から外れた草原――幾本かの木が生い茂り、深い影を落としている。
 猟兵たちが、得物を抜いた。そうせざるを得ないほど、ここには濃密な殺気が渦巻いている。魔物どもとは比較にならないほどの敵意が、肌をひりつかせた。
「猟兵……。知っている」
 闇が語る。
 揺らめいた黒から現れたのは、褐色の肌に白い戦化粧を入れた者たちだった。
「なぜ知っているのか……分からない。だが、知っている。お前たちは、敵だ」
 素手の者、剣や斧を持つ者、杖に魔力を滾らせる者。男女ともに、防具は着ていない。布もほとんど纏っていなかった。
 血の一族は、その誰もが命を奪うことに躊躇いのない目をしていた。
 月が、雲に隠れる。深くなった闇に警戒を強める猟兵たちへ、血の一族は漆黒に沈みながら言った。
「お前たちは、あの卑しい戦士どもに加勢した。それはつまり……お前たちも、『竜を討った』と宣う者、ということか」
 猟兵たちは、答えない。視界が死んだ暗闇の中、囲むように近づく敵意がいつ仕掛けてきてもいいように、敵の動きに細心の注意を払う。
 その沈黙を、血の一族は答えと受け取った。
「……群竜大陸。そこは我らが征す地。お前たちのような下賤の戦士が足を踏み入れられる場所ではない。竜が、お前たちに斃されるはずがない」
 雲が晴れる。月明かりに照らされた血の一族は、その場から一歩も動いていないかった。
 奴らはその剣気だけで、動いていると錯覚させたのだ。
 間違いなく、手練れだ。
「猟兵よ。愚かな虚言を流布し、我らの成すべき使命を穢した報い……その命を以て、償うがいい」
 再び、月が隠れた。世界が闇に閉ざされる。
 草を踏みしめる音は、猟兵の出したものか、それとも――。

 空気が、揺れる。
 刃の奔る音が、すぐそばで聞こえた。
レイチェル・ルクスリア
ふぅ、やっと本命のお出ましね!

一族の悲願とやらが果たせなかったのはご愁傷さまとしか言いようが無いけど、だからと言ってこんな理不尽な言いがかりを吹っかけられたんじゃあたまらないわよ。

折角得た平和が許せず、闘争の中でしか生きられないと言うのであれば……いいわよ、私が闘いの中でアナタたちを終わらせてあげる、それなら本望でしょう?

さて、残弾が尽きてしまったので獲物のナイフ一本でヤツラの相手をしていくわよ。

逆手に持ったナイフで喉元を切り裂いたり、自慢の脚技で首をへし折ったりしてね。

幸いにも敵は人間の姿をしている訳だし、私の格闘技術が活かせるはず……!

傷○ソor連○ア○


キリカ・リクサール
ア連傷

フン…つまらん
何のことはない、先を越され置き去りにされた者達の遠吠えか

エギーユ・アメティストを装備し、デゼス・ポアを宙に浮かせて攻撃
素早く振るった鞭の先端にある鋭い紫水晶と哄笑をあげて宙を舞うデゼス・ポアの錆びた刃で敵を斬りつけて攻撃
斧や剣を投げつけられた場合は鞭やデゼス・ポアの刃で撃ち落とす

竜ではなく、守るべき民を手に掛けるか
お前達が往くべきは群竜大陸ではなく、骸の海だ

UCを発動
敵が破魔の拳を撃ち出したらカウンターで蹴りを叩き込む
さらに回し蹴りで吹き飛ばしたり、刺すような蹴りの連打で敵集団を倒していく

邪悪な竜は死に、この世界も滅びを逃れた
…お前達の使命は既に果たされたのだ、血の戦士達よ



 夜闇に満ちる敵の気配に、逆手のナイフを顔の前で構えたレイチェル・ルクスリア(畜生なガンスリンガー・f26493)は呟いた。
「やっと本命のお出ましね」
「フン……『竜が、お前たちに斃されるはずがない』、か。つまらん」
 レイチェルの後ろで、背中を守るようにして立つキリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)が、言葉の通り実に面白くなさそうに言った。
 紫水晶いの尖端を持つ鞭を手にしつつ、相棒とも呼べる人形【デゼス・ポア】を宙に浮かべて、彼女はいかにもくだらないとばかりに吐き捨てる。
「何のことはない、先を越され置き去りにされた者達の遠吠えか」
「まったく、そうね。一族の悲願とやらが果たせなかったのはご愁傷さまとしか言いようが無いけど、だからと言って、こんな理不尽な言いがかりを吹っかけられたんじゃあ、たまらないわよ」
「……そうか。お前たちはこの状況でも、竜を斃したとほざくつもりなのだな」
 正面から聞こえた、まるで血のようにどす黒く粘質な声に、しかしレイチェルは鼻で笑った。
「それはそうでしょう。事実だもの」
「……万死に値する」
 瞬間、空気が重くなるのを、二人は感じた。
 敵が来る。互いの死角を取られないようにしつつ、キリカとレイチェルは応戦を開始した。
 暗闇から投げられた手斧が、デゼス・ポアの体から生えた刃に撃ち落とされる。火花が散り、一瞬見えた敵影に、キリカが【エギーユ・アメティスト】を薙ぎ払った。
 鞭の尖端に踊る蠍の尾とも称される紫水晶が、上半身に何も纏わぬ男の筋肉を切り裂く。悲鳴を上げることはしなかったが、それでも敵は苦し気な呻き声を上げた。
 デゼス・ポアが、その苦痛に哄笑する。膝をついた男の肩から腰にかけて纏わりつき、錆びた刃で体を裂いた。
 ついに絶叫した男は、苦痛と死の絶望にのたうち回って死んだ。明らかに人智を逸した死にように、血の一族が警戒を強める。
 その背後で、レイチェルは布を一枚纏っただけの女剣士と刃を交えていた。暗闇の中でも、多少は目が効くおかげで、剣のわずかな反射光を逃さず、打ち返す。
 敵の得物と比べればいかにも短いナイフだが、卓越した格闘技術を以てすれば、互角以上に持ち込める。横薙ぎに振るわれた瞬間に懐へ飛び込み、腕を抑えて封じ込め、喉を切り裂いた。
 ぐらりと倒れる女剣士の向こうで、大男の斧が振り上げられている。
「シッ――!」
 口から洩れた息とともに放たれたのは、レイチェルの足だった。ナイフより遥かにリーチの長い蹴りが、戦斧の男の顔面を砕く。
 よろめいた男にもう一撃、今度は薙ぐような蹴撃を叩きこみ、太い首をへし折る。倒れた男が泡を吹くのが、暗闇でもはっきりと分かった。
 二人ともに夜目は効くものの、それでも敵の総数は分からない。闇雲に散らばれば不利になることは明らかだった。
 暗黙の連携に、血の一族は果敢に攻める。その殺気の矛先が、猟兵だけでなく、その向こうの光――ミレイユの町に向けられていることに、キリカは気が付いた。
「竜ではなく、守るべき民を手に掛けるか」
「守るべき民など、いない。我らは竜を討つ。それだけだ。その障害となるのなら、いかなる者であろうとも、我らの敵だ」
 返ってきた静かな声に、キリカは眉を寄せた。彼らがそこまで竜に固執する理由が分からなかったが、一つだけ、確かなことがある。
「お前たちが往くべきは、群竜大陸ではなく――骸の海だ」
「笑止」
 繰り出された輝く拳が、キリカの肩を掠める。破魔の力を宿す、直撃していたら骨を砕かれていたかもしれない一撃だが、当たっていないのならば問題はないと、敵の眉間にナイフを突き立てた。
 引き抜いて蹴り飛ばし、拳士はその背後にいた斧使いもろとも倒れ、斧の男は立ち上がることもできぬまま、デゼス・ポアの錆びた刃に気道を奪われた。
 立ち上がりざまに顔中を白く塗った女の腰を蹴りで粉砕し、再び元の位置に戻ったところで、背中越しのレイチェルが笑った。
「ふふ、アナタ、いい蹴りを持ってるわね」
「お前もな、レイチェル」
 二人は同時に、足を振り上げた。鞭めいてしなる蹴りが、得物を手に襲い掛かる敵を薙ぎ倒す。その全てが、急所を捉えた。暗夜の中に、いくつもの人影が倒れ、動かなくなる。
 レイチェルの鮮やかさとキリカの豪快さは対照的だったが、共に血の一族にとっては脅威の一撃であることは間違いなかった。
 己を凌駕する戦士たちを前にしても、しかし血の一族は、それでも認めなかった。
「……崇高なる竜伐の使命、穢させはせぬ」
「ハァ、またそれ? 嫌になるわね本当に」
 嘲笑して、レイチェルが闇夜でもそれと分かる金髪を掻き上げた。
「竜は死んだの。それを認めらえないということは、結局のところ――せっかく得た平和が許せず、闘争の中でしか生きられないと、そういうことよね」
「……貴様」
「勘違いしないで、別に悪いなんて言ってないわ。ただ、私が闘いの中でアナタたちを終わらせてあげると、そう言っているの。それなら、本望でしょう?」
 冷笑すら浮かべるレイチェル。一見すれば、血の一族たちの存在意義を踏み躙るかのような態度だが、その本質が別にあることを、キリカは察していた。
 予想以上に広い二人の間合いを警戒し、じりじりと近づく敵に向かって、鞭を構えつつ、静かに告げる。
「きっと、私の言葉は届かないのだろうが……邪悪な竜は死に、この世界も滅びを逃れた。お前達の使命は、既に果たされたのだ。血の戦士達よ」
 だからどうか、安らかに死んでくれ。最後の言葉は、飲み込んだ。
 竜伐に魂を奪われた者たちは、やはり聞く耳を持たなかった。殺意のままに、あらゆる武器を振りかざす。
「やるわよ、キリカ。それしかないでしょう」
「あぁ……分かっている」
 せめて、彼らを正しい眠りに。レイチェルに背中を押されたキリカは、一人心でそう念じた。
 漆黒の闇に閃いた鞭とナイフが、血の一族を打ち砕く。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リオン・ゲーベンアイン
先程と同じように疑似太陽を撃とうとした所を阻止されて慌てる...ように演技する。
(本命は神弓に搭載された精神感応型の赤外線と熱のセンサー...こちらだと馴染みの無い技術だろうけどね)
傍目から見たら『異能の域の尋常ではない夜目を有している』ように正確な狙撃を行っているように見えるだろうね。
寧ろ、竜を討つ為に研鑽を積み重ねていたこの人たちにとってはこちらの方が混乱するんじゃないかな?
「そして、『血の一族』よ...お前達がどう言い訳しようとワタシ達が『竜を討った者』であることには変わりない」
「『血の一族』よ、お前達も竜と同じくワタシ達猟兵が討つべき存在」
「わたし『達』がこの一矢で討滅する!!」



 静かな死をもたらす切っ先が、髪に触れる。身を捻って回避したリオン・ゲーベンアイン(純白と透明の二つの無垢を司る弓使い・f23867)は、弓に矢を番えて闇を睨んだ。
 光を拒んでいるかのような宵闇、その奥に潜む者の声が聞こえてくる。
「竜を屠る我らの武から、人の身程度で逃げられると思うか」
「くっ! 明かりを――」
 空へ向けて矢を放つべく、弦を引き絞る。しかし、殺意の刃が近づく気配に中断を余儀なくされた。
 迫る剣に仰け反るリオンに、血の一族は静かに告げる。
「無駄だ。お前が空に太陽を生む術を持つことは、先の戦いで知った。もはや、我らを照らし出せると思うな」
「……そうね。そうするわ」
 リオンは弦を引き絞った。鏃は闇の一点を示し、放たれた矢が躊躇うことなく暗闇に吸い込まれる。すぐに、くぐもった声と人の倒れる音が聞こえた。
 次いで、先程の低い声が幾ばくかの驚きを混じえた声で言った。
「……我らと同様、夜目が効くか」
「いいえ。お前たち以上に――よ」
 引き絞る矢の先に、確かにいる。浅黒い肌に、白い文様を描いた戦闘民族の姿が、そこにある。
 その視覚は、【無名の神弓】に搭載された精神感応型の赤外線と熱のセンサーによるものだ。今やリオンには、静かに渦巻く敵の殺気が、はっきりと見えていた。
 魔力を使わぬ未知なる技術に、血の一族が今度こそ驚愕した。
「なぜだ――!」
 番えられた矢が、天日の炎を纏う。赤く照らし出されたリオンの口の端は、笑っていた。
 放つ。避ける間もなく矢の直撃を受けた男が、炎上して転がった。
 声なき怒りの込められた斧や剣を避けつつ弦を引き、射る。矢が飛ぶ音の直後に、血の一族が燃え上がる。
 同族が死しても、敵は動揺することなく戦闘を続けた。低く重い男の声が、闇の平原に響く。
「……幻術を使う程度では、我らの大いなる敵を討つことなどできぬ。やはり、お前たちは竜を討ててはいない」
「お前たちがどう言い訳しようと、ワタシ達が『竜を討った者』であることには変わりない」
「よくもほざく。やはり猟兵は、我らの敵だ」
 かすめた刃が、リオンの長い髪をわずかに散らす。引きつけた敵へ、至近距離から矢を放ち、倒す。
 確保した視界での精密な射撃は、血の一族どもの踏み込みを鈍くした。まるで白昼のごとく闇を駆け、外すことなき矢を放つ少女は、彼らにとってまさに脅威だった。
「……血の一族」
 リオンは決断的に言った。
「お前たちも、竜と同じくワタシ達猟兵が討つべき存在」
 撃ち抜かれた者が赤く燃え、消えるまでの間、リオンと血の一族たちを闇から浮かび上がらせる。
 限界まで引いた矢が、灼熱の火炎に揺らめく。瞬きもせずに敵を見据えたまま、リオンは宣言した。
「わたし『達』が――この一矢で、討滅する!!」
 風を切る矢が、防ぐために突き出された敵の斧をも打ち砕き、持ち主の女の心臓を貫いた。
 紅蓮に燃え盛るリオンの炎。それは、この黒く濃い闇を払わんとする、猟兵の闘志そのものだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

春乃・結希
猟兵大嫌いって感じですね…
その気持ちよくわかります
…私も、『with』と私の旅の邪魔になるものは
全部潰してあげようと思ってるんですよっ

UC発動
闇は焔が照らしてくれる
敵が見え次第『with』を叩きつける【重量攻撃】
それでも視界は確実に悪いから、死角からも攻撃を受けるかもしれない
でも、今の私の反応速度とスピードがあれば対応出来る
『with』が間に合わなければ、『wanderer』で蹴り飛ばす
【怪力】に任せて、投げ飛ばすのもいいかもですね

あなた達の力は、こんなものですか?
猟兵を倒せないなら、竜なんて絶対倒せません
もっと全力で潰しに来てください
『with』と私は、死なない限り、負けませんよ【覚悟】



 ぞっとするほどの殺気。こちらに対して一粒の砂ほどの友好性もない視線。
 思わず、手にする恋人に縋るように、その柄を握りしめた。
「猟兵大嫌いって感じですね……」
 掌に伝わる鋼鉄の感触が、春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)の心を穏やかにさせてくれる。安堵しつつも気は抜かず、春乃は言った。
「その気持ち、よくわかります」
「……知った口を聞く。不快な女だ」
「そうですか? だってようするに、あなたたちのしたいことを邪魔すると思ってるから、私たちが嫌いなんですよね?」
 大剣一閃、闇から近づきつつあった血の一族を牽制し、愛する【with】を肩に乗せる。
 腰を落として斬りかかる体制になりつつ、春乃は目を細めた。
「なら、やっぱりわかりますよ。だって私も、『with』と私の旅の邪魔になるものは――」
 影が動く。濃密な殺意の刃が迫る。春乃もまた、踏み込んだ。
 敵の気配目掛けて振るう大剣に、明るい少女の声が踊る。
「全部潰してあげようと思ってるんですよっ!」
 吹き荒れる刃の暴風が、闇をも揺るがす。瞬間、春乃の背中から紅蓮の二翼が吹き上がった。
 赤の炎に照らし出された血の一族は、目を丸くしながらも冷静に、地を這うようにして距離を詰めようとする。
 速い。だが、間に合う。愛しい刃を、叩きつけた。その先にいた細身の戦士は、両手の刃ごと肉体を粉砕され、鮮血の中に死んだ。
 持ち上げたwithを、横薙に払う。重量を利用した回転斬りが、背後で手斧を振り上げていた筋肉質な女を両断する。
 炎に照らし出される鮮血は、両翼の熱波によって蒸発した。
 強制的に力を引き出しているせいか、早くも疲労が来る。だが、愛しい剣が見ているのだ。情けない姿を晒すわけには、いかない。
「やるよ、with! 私、もっともっと、戦えるから。見とって!」
 剣の重量のまま飛び遊ぶ春乃に、敵は攻めあぐねた。背から燃え立つ焔の翼も、血の一族の得物を遠ざける。
 だがやはり、敵は歴戦の武人だった。低姿勢で飛び込んだ少年のような体躯の戦士が、素手で春乃の首を掴む。
「ッ――!」
「死せよ、穢らわしき者……!」
 気道を潰される感触に恐怖しながらも、春乃は靴の蒸気魔導出力を限界まで高めた。
 白い蒸気を撒き散らす【wanderer】が、主の脚力を遥かに超えた威力と速度で、彼女の足を跳ね上げさせた。
 超加速の膝蹴りが、少年の腹部に突き刺さる。おまけとばかりに蹴り飛ばし、吹っ飛んだ少年は闇の中に転がって、見えなくなった。
 血の一族は春乃の危険性を確信した。息の根を確実に止めるため、拳、剣、斧、槍が、四方向から一斉に襲いかかる。
 殺意の闇に焔を羽ばたかせて、春乃はwitnと踊る。唸りの剣風が弧を描き、襲い来る死は鉄塊に粉砕された。
 瞬間、頬を掠めた矢が血を攫い、痛みをもたらした暗闇へ、恋人を振りかざす。
「いって! 『with』っ!」
 投げられた大剣が、さらに撃たれた矢を叩き折り、暗がりから狙撃する弓使いに突き刺さった。
 愛しい刃へ駆け寄った春乃は、柄を取り引き抜いて、血の滴る剣を敵へと向ける。
「あなた達の力は、こんなものですか? 猟兵を倒せないなら、竜なんて絶対倒せません」
「……竜」
 誰かが呟きを返す。宵闇に溶け込む敵意が、濃密になっていく。
 だが、彼女は恐れない。
 withが共にあるのだ。恐れる理由が、どこにあるものか。
「もっと全力で潰しに来てください。『with』と私は、死なない限り、負けませんよ」
 春乃の想いのままに燃え盛る紅き両翼が、巨大な漆黒の刃を輝かせていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

エーカ・ライスフェルト
「ア連傷」

尊卑で区別するなら私は明らかに卑よね。
私、根っこの部分は猟兵になる前と比べてあまり変わっていないし。

「オブリビオンになってでもという根性は評価するけど、挑発目的以外で尊卑だなんて戦士として恥ずかしくないのかしら」
戦士すなわち蛮族と個人的には思っていたりするわ(宇宙蛮族的思考)

「貴方達、まだ戦士ではあるのでしょう? このまま戦士として終わらせてあげるわ」

【理力の領域】で敵の進路上の地面をフォースオーラに変えて、足止めのための地形をつくるわ
その後はフォースと【念動力】で足止めと打撃ね
味方と連携できるといいな
「価値観が違っても目的が同じなら協力できる。昔の貴方達なら理解できたでしょうに」


雛菊・璃奈
ア連傷

…卑しい戦士?
あの人達はみんな、あの町をや町に住む多くの人達を守る為、必死に戦った…。
貴方達が過去の戦士だとしても、命を賭けて戦った彼等を貶める様な発言は決して許さない…!
そして、変質したとはいえ、自分本位で多くの罪無き人々を危険に晒したその罪…貴方達こそ償って貰う…!

珍しく怒り気味

【九尾化・魔剣の媛神】封印解放…!

終焉の魔剣を顕現し、黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、なぎ払い】と共に一斉斉射…!
敵集団をなぎ払いつつ、神速+凶太刀の高速化で斬り込み、凶太刀と神太刀の二刀やバルムンクで斬り捨て、呪詛と魔剣を振り撒き、他の猟兵と連携やサポートしたりして敵集団を相手取り、獅子奮迅で斬り捨てるよ…!



「……卑しい戦士?」
 血の一族から出た言葉を聞いて、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は自身の頭に血が昇るのを感じた。
「あの人達はみんな、あの町をや町に住む多くの人達を守る為、必死に戦った……。それを、あなたたちは卑しいと言うの……?」
「愚問。奴らは所詮、金に飢えた者。竜の秘宝を手にするためなら、いつかは戦えぬ者の命も売り捌くだろう」
「……」
 唇を噛む。呪槍【黒桜】を握る手が、震える。
 その肩に、そっと手が置かれた。落ち着いた女の声が、背中に聞こえる。
「戦士は皆蛮族、欲こそが戦う原動力。なるほど、あなたたちの言うこと、私は分かる気がするわ」
 少女の怒りが過剰にならぬようなだめつつ、誰よりも蛮族を自称する女――エーカ・ライスフェルト(ウィザード・f06511)は、闇の中から見ているであろう敵に向けて、口の端を上げた。
「でもまぁ、あなたたちの言い草は笑えるわね。群竜大陸に行きたい、誰より早く竜を倒したい……そんな欲に囚われた挙げ句、私らに嫉妬を向けている分際で、挑発目的以外で尊卑だなんて――」
 思わず、声に笑いが籠もる。滾る敵の殺意に、エーカはひるむことなく目を細めた。
「戦士として、恥ずかしくないのかしら?」
「……我らを侮辱するか」
「人にされて嫌なことは、他人にしちゃいけないものよ。ママに習わなかったかしら?」
 自分のことは完全に棚に上げて言いつつ、理力を高める。
 異常に高まる緊張感に、璃奈が呪槍を構え直した。
「来るよ……」
「援護するわ。好きなだけ暴れて頂戴」
「うん……!」
 刹那、闇が爆ぜたかのような錯覚と共に、あらゆる得物が一斉に二人へと振り上げられた。
 暗がりでよく見えてはいない。だが構わず、エーカは地面に手をついた。
 流れ込む理力が、大地を隆起させる。蠢く土が柱となり、壁となって、闇夜の戦いをさらに困難な物にした。
 その最中、璃奈は軽々と跳躍し、にわかに現れた月の光を背負い、身に宿る魔剣の力を解放した。
 九尾と化した魔剣の媛神が、黒き刃を振り上げる。
「貴方達が過去の戦士だとしても、命を賭けて戦った彼等を貶める様な発言は、決して許さない……!」
 薙ぎ払った黒桜の軌跡に、無数の魔剣が出現する。纏う力は、終焉。
 放たれた魔剣たちが、理力の土壁や柱に動きを阻害された血の一族を、次々に穿つ。もたらされる存在の終わりに、彼らは悲鳴も挙げずに倒れていった。
 璃奈を睨む敵の目は、死に際まで憎悪にまみれていた。なぜそこまでと、璃奈の胸中に疑問が生まれる
「……どうして……」
「璃奈さん、避けなさいッ!」
 突然聞こえたエーカの鋭い叫びに、璃奈はハッとして体を捩った。横腹を掠めたのは、マチェットだった。
 土の柱を足場に跳躍してきたのは、女戦士だ。急所を外し苛立つその背には、すでに魔剣が刺さっていた。致命傷を負いながらも、決死の特攻を仕掛けたのだ。
「……!」
 憎しみに囚われた者への同情が心に過ぎるが、右手に呼び出した妖刀【九尾乃神太刀】により、迷いごと切り裂く。
 落ちていく女の亡骸から、璃奈はすぐに目を逸らした。
 彼らは理不尽な死を撒き散らす存在だ。悲しみを生み出す者たちなのだ。
 斬らねばならない。璃奈は心に渦巻く熱い怒りを込めて、左手にもうひと振りの妖刀【九尾乃凶太刀】を召喚した。
 理力の足場は、絶え間なく変形する。エーカは九尾の少女が目まぐるしく変わる地形をうまく使ってくれていることに安堵した。
 敵の足場は崩し、璃奈が戦いやすいように地面を変化させつつ、背後へ向けて念動力を放つ。
 不可視の力で掴んだのは、暗殺を仕掛けようとしていた血の一族の男だった。喉を抑えられ、ナイフで抵抗を試みている。
 エーカは冷笑を浮かべた。
「いくら後方支援の魔術師だからって、殺気にくらい気づくわよ。あなた、アサシンには向いていないわね」
「ぐっ――竜ぁッ――」
 思わず、ため息をつく。あんな飛行トカゲのどこに心を惹かれているのか、エーカには毛頭理解できなかった。
 害をなすオブリビオンを、生かしておく理由はない。とはいえ、同じ戦う者として、最低限の敬意は持っていた。
 最後の会話だ。エーカは静かに言った。
「価値観が違っても目的が同じなら協力できる。昔の貴方たちなら理解できたでしょうに」
「お――前たちのような――! 下賤な輩に、我ら――の、使命は――!」
「……心の端まで骸の海に浸ってしまったのね。いいわ、せめて戦いの中で、このまま戦士として終わらせてあげる」
 掌を握り、念動力を強めていく。敵の喉が砕ける音が、闇に響いた。
 倒れた男に、もう興味はない。すぐに念動力の矛先を、璃奈を取り囲む血の一族へと向ける。
「さぁ、攻め続けましょう。竜を殺した証拠は、力で示すのが一番よ」
 言葉の通りに暴れ狂う念動力が、飛来する矢を撃ち落とす。その援護を受けて、璃奈は魔剣の嵐を呼びながら、一対の妖刀で遅い来る敵を斬り捨てる。
 いかに鍛えた者といえど、神にも迫る速さに達した彼女を捉えるのは至難だ。璃奈へと投げられた斧は虚しく空を切り、手斧の男は肩から横腹まで袈裟斬りにされて倒れた。
 剣を持ち帰る。二振りの刀に変わって現れたのは、魔剣【バルムンク】――竜殺しの剣。
「竜を倒したわたしたちの力……その目でしっかり、見てみるといいよ……!」
「ほざくな、獣人風情が」
 静かに激昂する敵の大剣使いが、隆起する足場をものともせずに踏ん張って、大ぶりに刃を振るう。
 暗闇の中にあっても、璃奈にはその剣がはっきりと見えた。バルムンクを一閃、衝突する。
 つば競り合いにすらならなかった。バルムンクの刃は敵の大剣を容易に砕き、その先にいる戦士を両断した。
 高く跳躍し、空中に展開される念動力に着地した璃奈は、エーカのもとへと引き寄せられた。
「貴女にしては、ずいぶんと熱くなってたわね。璃奈さん、怪我はないかしら」
「うん……エーカは……?」
「問題ないわ。あなたが敵の目をほとんど引いてくれたから」
 そういうエーカの背後に、いくつかの死体が転がっていることに、璃奈は気づいた。
 バックアップしつつ戦ってくれていることに感謝しながらも、バルムンクを構え魔剣の群れを喚び出す。戦いはまだ終わらないのだ。
 仲間を失っても動揺を微塵も滲ませない敵へ刃を向けたまま、璃奈は珍しくはっきりとした語気で言った。
「自分本位で多くの罪無き人々を危険に晒したその罪……。貴方達にこそ、償って貰う……!」
「そうね。骸の海でちゃんとごめんなさいが言えるように、しっかりと教育してあげるわ」
 二人の足元から、竜を葬る力が溢れ出した。
 呪詛と理力が、漆黒の闇に螺旋の渦を巻き起こす。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
それを成すべき使命だというのであれば、まずやるべきは事実の確認であると思いますが……
彼らはオブリビオン。その思考や行動も世界を滅ぼすものに誘導されているのでしょうね。

暗視スコープは持っていますが、この状況で視野を狭めるのは得策ではありませんし視界以外を頼りにしましょう。

弓を手に戦闘を。こちらが遠距離が得手というのは武器から分かるでしょうし、敵は接近して攻撃しようとするでしょうが、足音を『聞き耳』で察知します。
分かりやすく音を立てることでこちらの意識をそちらに向ける罠かもしれませんが……音が聞こえるほど傍にいる。それだけ分かれば十分です。
周囲83mを覆う【絶対氷域】で血の一族を凍てつかせます。



 成すべき使命に対して、それが誰かの手によって解決されている可能性があるのなら、まずやるべきは事実確認だ。
「そう……思うのですが」
 月の明かりが届かない平原には今、ひりつくような闘志が満ちている。しかし、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は、戦慄する気にもならなかった。
 認めたくない事実に、駄々をこねているだけだ。これではまるで、幼子ではないか。
 取り囲む気配が動く。褐色の肌は闇に溶けて見えにくいが、セルマは構わず弓に矢を番えた。
 敵はオブリビオンだ。その思考や行動も、世界を滅ぼす性質によって変質していると見て間違いないだろう。
 ならば。
「是非もありませんね」
 セルマの矢が、宵闇を裂く。揺らぐことなき一矢は、吸い込まれるようにして女呪術師の喉を貫いた。
 すかさず、二射目を放つ。こちらの視力が死んでいると見ていたのだろう斧の男が、手を撃ち抜かれ得物を落とした。追撃の鏃が、慌てた男の眉間を穿つ。
 確かに、彼女の視界は闇に閉ざされていた。暗視スコープを用いれば敵を視認できるだろうが、視野が狭まるのはよくないので、使用を控えている。
 今、彼女に世界を教えるものは、音だった。風を切る音、草を踏む音。それが彼女に敵の居場所を伝えてくれる。
 異常なほどの精密射撃で淡々と射られる矢に、血の一族は業を煮やした。セルマを囲むように陣取り、徐々に距離を狭める。
 その様子を気配で察知しながら、これは狩りのやり方だとセルマは思った。
「なるほど。獲物とは、こんな気分なのですね」
 八方を囲まれてしまえば、いかに正確な射撃ができても、距離を詰められる。近づけさえすれば仕留められると踏んでいるのだろう。
 接近戦がまるでダメだと思われるのは、些か以上に癪だが、セルマは不快さを飲み込んだ。
 敵に合わせてやる必要はない。奴らの想像力のなさを後悔させてやれば、それでいい。
 にわかに、風が吹いた。とても冷たい風だった。攻撃の気配に、血の一族が先制を仕掛けんと走り出す。必要以上に草を蹴散らす音が、セルマの耳を支配していく。
 撹乱を図るつもりなのかもしれないが、無意味だ。足音が聞こえる距離にいるということがだけが分かれば、彼女にとっては十分だった。
 踵で、地面を叩く。瞬間、空気をも凍てつかせる冷気がセルマを中心に渦巻いた。
 暗闇の中に、パキパキと硬質な音が響く。見ずとも、それが敵の凍りつく音だということが分かった。
 絶対零度の氷域が、周囲八十三メートルにいる全ての敵対者たちを、その身に流れる血流ごと氷へと変えていく。吹き荒ぶ冷気の中、セルマは目を閉じた。
「この領域では全てが凍り、停止する……。どのような怨嗟も、例外ではありません」
 耳を澄ます。死にゆく彼らの声は、もう少しも聞こえなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トゥーリ・レイヴォネン
ア連傷
面白そうな展開であればプレイング無視OK

「…いいよ、嫌いじゃない。ぼく達は敵、キミ達にとって、悪い、奴ら。それでいい、多分…それで、丁度いい」

目標
・先程の相手ほど楽ではないのは分かってる。自身の頑丈さと弱さを武器に、敵からの攻撃を引きつけたい

行動指針
・連携先の作戦があれば従う
・作戦がない、もしくはソロである場合、前述の目標を達成すべく、誰よりも前に出てヘイトをもらう
・UCを使用。敵UCに対し覚悟を持ってその身に受けながら、カウンターの形で拘束、もしくは態勢を崩して回る

心情
・まともに戦って勝てる相手じゃないのは分かっている。そんな場面は幾らでもあった。それなら、周りにやって貰えばいいだけだ


ルムル・ベリアクス
ア連傷

血の一族……凄まじい殺気です。流石、竜を倒そうとしていただけありますね。
でも人々を傷つけるのは許せません。決着を付けましょう。
UCで悪魔と融合し、怪物の如き姿の超強化体に変身します。
人を守るためなら、今は理性を失ってもいいでしょう。憑依した凶暴な悪魔の声に、今は身も心も委ねてしまいます。
多少の傷は厭いません。強化された肉体なら、仲間を【かばう】ことも可能でしょう。
鉤爪や牙で斬り込み、熱光線の【乱れ撃ち】で焼き尽くします。
回復が追い付かなくなる程に攻撃を加え続け、確実に撃破します。



 背筋をナイフで削られているかのような感覚が、ずっと続いている。闇の向こうで動く影に警戒しながら、ルムル・ベリアクス(鳥仮面のタロティスト・f23552)は頬を伝う汗に気づいた。
「血の一族……凄まじい殺気です。さすがは、竜を倒そうとしていただけありますね」
 気を抜けば、怪我では済まなそうな相手だ。力量に個体差はあるとしても、ルムルの勘が、敵の危険性を告げていた。
 しかし、ここで逃げ出すという選択肢はなかった。帝竜が滅びてなお、猟兵の背中には常に、この世界が背負われているのだから。
「人々を傷つけるのは、許せません。……決着をつけましょう」
 ルムルは一度目を閉じ、そして見開いた。赤い瞳が輝き、舞い降りた悍ましい力が身に宿るのを感じる。
 憑依した悪魔が、体の中を駆け巡る。筋肉が膨張し、細身だった体を凶悪な姿へと変化させていく。
 全身の血流が暴走している。充血する眼が、暗闇を見通す視力をもたらした。
 その目が、捉えた。
「ッ――!」
 血の一族の一人、細身の拳士が蹴りを放とうとしている。変化を終えるより早く仕留める選択は、魔物を狩り慣れている証拠だ。
 間に合うか。ルムルは悪魔に身を変えながら、歯噛みした。
 だが、その拳は止められる。ふらりと、まるで通りかかったかのように現れた少女の体に。
 庇い立った少女が、肩に鋭い蹴りの直撃を受け、崩れるように倒れた。
「トゥーリさんッ!」
 低く変質した声で、ルムルが叫ぶ。それを受けてか、倒れた少女――トゥーリ・レイヴォネン(タナトスのオートマトン・f26117)は、わずかに呻きながら立ち上がった。
「……大丈夫」
「しかし――」
「時間は、稼ぐから」
 焦るルムルを庇うようにして、トゥーリは両手を広げた。幼い姿に躊躇せず、拳士は乱打をトゥーリに叩き込む。
 全身を打つ衝撃が、冷たい臓腑を揺るがす。目を強く閉じ、口元を覆ったマフラーの下で、少女は歯を食いしばった。
 骨が砕ければ、立てなくなるだろうか。鈍い痛みの底で思考するトゥーリは、次の瞬間、耳元で悍ましい叫びを聞いた。
 悪魔を宿した男の巨大な腕が、少女の首をへし折らんと手刀を繰り出した拳士の胸を粉砕した。
 上半身が砕け、即死した男が倒れる。攻撃に身を晒し続けよろめくトゥーリを、獣じみた腕が抱えた。
「なんて無茶を……!」
「……平気。自分の、頑丈さは、よくわかってるから。それに」
 支えるルムルを遮って、トゥーリは淡々と言った。
「ぼくは、彼らの言うこと、嫌いじゃない」
 感じる殺気は、先程よりも濃くなった。仲間を無残に殺されたことで、ルムルとトゥーリは血の一族の目を否応なく引いたのだ。
 その視線に、トゥーリは納得に近いものを感じていた。
「ぼく達は敵、彼ら達にとって、悪い、奴ら。それでいい、多分……それで、丁度いい」
「……」
 その言葉に、ルムルは異形の身で静かに頷く。分かり合うことなど出来はしない。
 悪魔の声が脳裏に響く。心も体も引き渡せ、さすれば奴らを屠る力を与えよう――と。その誘惑に、今だけは乗ることにした。
 理性が飛んでいく。滾る血が、竜を討たんとする一族の血を欲する。もう、止めることなどできなかった。
 身も心も変化を終えた悪魔が、咆哮する。闇夜を払うかの如き大音声に、危機を察した血の一族が一斉に襲い掛かった。群がる敵の矛先は、トゥーリにもまた向けられる。
 あえて、彼女は前に出た。拳が、鈍器が、少女の体を砕かんと振るわれる。それらを、両手を広げ、目を逸らさずに受け切った。あばらの骨が折れた激痛が、脳を揺るがす。
 だが、トゥーリに武術の心得は、ない。まともに戦って勝てる相手ではないことは、初めから分かっていた。
 これが初めてではない。今までだって、何度もそうだった。そうした場面は、いくらでもあったのだ。
 だから、その解決策も、トゥーリは知っている。
「逝ね」という短い宣告と共に、大男が握り固めた両手を振り上げる。叩きつけられれば、頭蓋を砕かれるかもしれない。
 暗がりにぼんやり見えるその拳を、トゥーリはただ見上げ、呟いた。
「私がやる必要は……ない」
 瞬間、大男はその頭を巨腕に掴まれた。持ち上げられ、骨が砕ける音とともに、頭蓋が変形していく。
 激しく痙攣した後、頭部がひしゃげた男は動かなくなった。死体を放り捨てたルムルが咆え、トゥーリと自身に飛び掛かる敵に、強靭な鉤爪を振り乱す。
 鮮血が舞う中、理性を失っているはずのルムルはしかし、トゥーリを守るように抱えた。その口腔に輝く赤が、暗黒を照らし出す。
 それは、莫大な魔力だった。敵を見定めたルムルの咆哮と共に、熱光線が迸る。大剣を薙ぎ払わんとする女戦士を穿ち、さらにその奥で再生の血術を同族に施そうとしていた呪術師を焼き払う。
 貴重な回復手段の一人を失った敵は、これ以上の損害を出すまいと悪魔に仕掛ける。いくつもの刃が黒く硬い体に突き刺さるが、次の瞬間に乱射された熱光線の煌めきが、流血をもたらす全てのものを焼き払う。
 竜を討つためなら手段を厭わない血の一族からしても、二人は異常な戦い方だった。敵の攻撃にわざと身を晒す少女と、身を削る刃の一切を気にも留めない悪魔の連携には、互いの命を気にする様子がない。
 血の一族は猛攻を続けた。悠然と立つ少女の左腕に、戦槌が叩き込まれる。不快な音を立てて、トゥーリの腕がおかしな方向に折れ曲がった。
「うっ――!」
 激痛に眉を寄せながらも、やはり少女は動かない。追撃を仕掛けんとした戦槌の戦士は、割り込んできたルムルの牙に喉を裂かれて即死した。
 血の滴る口元を腕で拭い、悪魔の眼光が次の獲物を見回す。その前に立つトゥーリは、右腕を広げることで敵の殺気にその身を晒した。
 血の一族の動きが止まる。得体の知れない二人に攻めあぐねていることは、明らかだった。
「……化け物どもめ」
 誰かが呟いたその声は、冷徹な血の一族にしては、嫌に感情の籠った声だった。
 その通りだなと、トゥーリは思った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

雨音・玲
【銀葉】ア/連/傷
血の一族は、もともとはこの世界を救うために動いていた一族
方向性が大いに間違ってるけどさ
一族へ敬意を表して、正々堂々と戦うよ

選択UCを使用
選択技能は「決闘」「オーラ防御」「武器受け」「貫通攻撃」「怪力」
以上の5つをLV820へ変更、攻撃力重視を選択

騎士たちを背に、ジャージの上着を脱ぎ捨てて
一騎打ちの「決闘」を宣言
「やるなら拳でやろうぜ」とステゴロでの勝負を挑みます

「オーラ防御」で全身にオーラを纏い
「武器受け」の応用で拳で払うように攻撃を捌き
隙を突いて「怪力」で腕をつかんで引き寄せながら
鳩尾へ「貫通攻撃」とスピードを載せた拳を思いっきり突き入れます

「アンタとの勝負楽しかったぜ」


ナァト・イガル
【銀葉】ア/連/傷

雨音さんはそう言うけれど……私は、あまり良くは思えないわね。
だって『勇者の墓標』に血の一族の姿はなかったわよ。
自分たちが竜を倒したのにその功績を奪われた、というのならまだしも
自分たちが”竜を倒すはずだった”のに、というのは、皮算用にも程があるのではないかしら?
……その間に世界にどれほどの被害が出るかなんて、きっと考えたことがないのね。

彼らが勝つために手段を選ばないならば、決闘でさえ邪魔されるかもしれない。
UC『聖者の審判』の、複数の光の鳥を明かり代わりに飛ばしておき
周囲の怪しい敵意を現した者を迎撃するわ。
別に対複数でも雨音さんが勝つでしょうけれど、邪魔はない方がいいでしょう?



 闇に潜む敵のもとへと向かう道すがら、雨音・玲(路地裏のカラス・f16697)はこう語っていた。曰く、
「血の一族は、もともとはこの世界を救うために動いていた一族、なんだよな。方向性が大いに間違ってるけどさ……俺、一族へ敬意を表して、正々堂々と戦うよ」
 とのことだった。
 彼の想いを、否定するつもりはない。しかし、血の一族の性善説について、ナァト・イガル(さまよえる小夜啼鳥・f26029)は懐疑的だった。
 まず、その残留思念が『勇者の墓標』になかったことが一つ。それに、竜を倒した功績を奪われたというのなら話は分かるが、「倒すはずだった」などと宣うのは、あまりにも幼稚な皮算用と断ぜざるを得ない。
「いつまで準備をするつもりだったのかは知らないけれど……その間に世界にどれほどの被害が出るかなんて、きっと考えたことがないのね」
 玲に聞こえないように呟きながらも、ナァトは彼を支援することを決めていた。心証はどうあれ、戦わねばならないことに変わりはない。
 今、玲はとてつもない巨漢と対峙していた。わずかな月光に浮かぶその筋骨隆々なシルエットは、青年を酷くか細く見せてしまうほどだった。
 睨み合うこと、数秒。二人を取り囲む敵が動きを見せた直後に、玲がジャージの上着を脱ぎ捨てた。シャツ一枚となった彼は、右の拳を巨躯の拳士に向ける。
「選択――解放」
 呟くと同時に発動した付与魔術が、青年の能力を強引に引きのばす。全身に力が漲り、足下からは焔にも似たオーラが噴き出した。
 燃え上がる闘志は、魂の発露か。拳の先でこちらを睨む男に、玲は闇に似合わぬ爽やかな声音で言った。
「どうせやるなら、拳でやろうぜ。お前と俺、一対一でさ」
「……」
 男は黙して、周囲の弓師や呪術師に視線を送った。その狙いを二人の猟兵に向けていた敵が、得物を下ろすのが気配で分かった。
 ナァトは驚いた。オブリビオンに身を堕としても、彼らには戦士の誇りがあったのだ。思わず、息を呑んだ。
 浅黒い顔に白い戦化粧を施した巨漢が、拳を固めて腰を落とした。戦いの構えだ。玲は笑った。
「受けてくれて、恩に着るぜ」
「……参るぞ」
 衝突する気迫。ナァトは、もう玲を止めることができないと思った。思わず苦笑が漏れる。
「男の人って、ホント、仕方ないわね」
 ならばせめて、舞台づくりくらいは。何かを包み込むように掌を重ね、そっと解き放つ。
 溢れ出た光の鳥が、空を舞う。ほのかな光が、闇の草原を照らし出した。血の一族たちの顔が、はっきりと見える。
 目が合った瞬間、玲と巨躯の拳士は同時に踏み込んだ。互いの拳が、双方の顔面を捉える。
 揃って真逆の方向へ吹っ飛び、転倒、受け身を取って、走り、ぶつかった。
 拳、蹴り、投げ。体一つを武器にした攻撃の応酬が、薄く照らされた戦いの場に鈍い音を響かせる。気合いの叫びを放つ玲に対し、拳士は酷く冷徹に見えた。
 だがナァトは、敵もまた最初の拳で闘志に火がついていることに気づいていた。拳が刺さり、蹴撃に体を打たれるたびに、二人のボルテージは確かに上がっていく。
 今、この場で冷静なのは、ナァトだけなのかもしれない。
「……いいえ」
 自分で思ったことに、首を振る。玲と巨漢の戦いを見守っているのは、彼女だけではなかった。
 血の一族――目的を果たすためならいかなる手段も厭わぬ者が、玲を見ている。多くの者は決闘を見守るつもりでいるようだが、隙あらばその命を刈り取ろうとしている者もいる。それは、輝く鳥に照らされた眼光で分かった。
 玲と大男が、組み合う。強化された怪力を以てしても、実力が拮抗していた。オブリビオンと化したことで、敵もまた人智を超えた力を得ているのだ。
 力を抜けば、全身はバラバラに砕かれるだろう。歯を食いしばって全力を込める玲は、自身に向けられた他の殺気に気づいているのだろうか。
 もし察知していたとして、ここで第三者が乱入しても、彼ならばきっと、切り抜けるだろう。
 だが――ナァトはやはり、首を横に振る。
「それはやっぱり、野暮というものよね」
 輝ける光の鳥が、影から弓を引く血の一族へと飛来した。派手に爆散した光が、弓使いを消し飛ばす。
 光源の役割だけでない煌めく翼に、暗殺を目論む敵はナァトを厳しく睨みながらも、得物を下げた。
 それでいい。拳打の嵐で全身に痣を作る玲と拳士へと、ブラックタールの女は視線を移した。
 戦いは熾烈を極めた。図らずも、挑んだ巨漢は一族の中でも相当な実力者だったようだ。強烈な一撃の手応えはあれど、その体躯が揺らぐことはなかった。
 心臓を叩くような右ストレートが、敵の胸部にめり込む。一瞬目を見開いた巨躯の男はしかし、即座に膝蹴りを放った。
 内臓を粉砕されたかのような衝撃に、今度は玲が目を丸くして、衝動のままに血を吐いた。口元を拭い、思わず呟く。
「やるな……」
「……」
 男は応えず、黒く硬い拳を握り締める。
 このまま殴り合い続ければ、負けるのは恐らく玲だろう。それを彼は感じていた。付与魔術の負担が、じわじわと体に広がっている。
 ふと、視界にナァトが映った。その瞳に微塵の心配もないことを見て取り、口の端が上がる。
「……そうだな」
 息を吐き切り、ゆっくりと吸う。痛みが鈍化していき、意識が研ぎ澄まされる。
 まともに殴り合う時間は、とても充実していた。だが、いつまでも続けていられるものではない。
 決着をつける時がきた。深く腰を落として構える玲に、敵も同じことを考えたらしかった。
 互いにとって、最高の一撃を。沈黙の中で交わされた共通の意思が、その拳に込められる。
 踏み込んだのは、血の一族の巨漢だった。初めて咆哮した男の拳が、これまでとは比較にならない威力を以て放たれる。
 その間合いに、飛び込む。万物を打ち砕く鉄拳は、頬を掠めただけで、玲の頬を深く抉り、鮮血を舞わせる。
 だが、それだけだった。敵の拳は空を切った。瞬間、玲は目を見開いた。
「もらっ――たぁぁぁッ!」
 繰り出された敵の腕を、左手で掴む。尋常ならざる怪力で引き寄せられ、巨漢が初めて焦りを顔に浮かべた。
 右の手を握り固めて、敵の鳩尾へ突き刺した。皮を破り肉を貫く感触は一瞬、玲の拳は、巨漢の体躯を突き抜けて、背中へと飛び出した。
「――見、事」
 耳元で聞こえた巨漢の声に、やはり、と確信する。彼らは――少なくとも死闘を繰り広げたこの男は、道を間違えただけで、生粋の戦士だったのだ、と。
 血濡れの腕を引き抜いて、ゆっくりと倒れる大男に目を伏せる。
「……アンタとの勝負、楽しかったぜ」
「雨音さん」
 ナァトが呼んだ。振り返り、その意図を察して頷く。
 取り囲む血の一族が、再び武器を構えていた。決闘が終わった以上、彼らに敵を待つ理由は、もうない。感傷に浸る余裕は、なさそうだった。
 生ぬるい血に塗れた手の玲に、ナァトはそっと尋ねる。
「いけるかしら?」
「あぁ、問題ないよ」
 オーラを高めて、玲は消耗を隠すように力を込めた。
 光の鳥が、敵の殺気に充てられて、一段と輝いていく。見上げたナァトは、暗夜に流れる血がまだまだ増えることを、一人確信していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
ア連傷

『不動なる者』
…何も言うまい。我らは我らの務めを果たすのみ。
UCにて、この場で頼りになる者を増やす。
わしの役割は囮、といったところだろう。【武器受け】で少しでもそらせればいいが。
黒曜山は剣だけではなく、盾にもなる。面での攻撃もできるぞ?
さて、我らの連携、見くびるなよ?


第一人格『疾き者』 忍者
一人称『私/私たち』
対応武器:漆黒風

おやまあ、私ですかー。
たしかに、この場所は私が得意とするところですしねー。
背後からの奇襲は、お手のものですよー。
【暗視】は二人で使いつつ、私は【闇に紛れる】【暗殺】の技能駆使して戦いますよー。
でも、本当に…久しぶりですねー、このような戦場。


上野・修介
※ア連
「力を求め見失う、か」
憐憫のような、同情のようモノは感じる。

だが――否、だからこそ、この蛮行を止めなくてはならない。

「推して参る」

調息、脱力、戦場を観据え、敵の戦力、周囲の地形を確認。
相手の体格・得物・構え・視線・殺気・周囲の草の動きから拍子と間合いを量る。

UCは攻撃重視

闇に紛れようと相手の攻撃手段は近接武器主体。
狙うは『後の先』

その場から動かず、構えず。
柔術・合気を主体。
攻撃してくるタイミングを見切ってカウンターにて迎撃。
頭から地面に叩き付ける、或いは捕縛し動きを止め急所を打つ等で一体づつ確実に仕留める。

相手が仕掛けてこなければ挑発
「どうした。ただ突っ立てる相手が怖いのか?」



 敵意を剥き出しにする血の一族へ、上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)はしかし、怒りを抱くことが出来ずにいた。
「力を求め、見失う――か」
 心に過ぎるは、わずかな憐憫。握る拳に迷いなどないが、それでも、同情に近い感情を修介は覚えていた。
 その肩に、手が置かれる。
「何も言うまい。我らは我らの務めを果たすのみ」
 暗闇の中でも落ち着いた声音は、壮年の男のものだった。
 男――馬県・義透(多重人格者の悪霊・f28057)の『不動なる者』からすれば、彼らが追う夢への想いは、無垢な幼子のそれに近い。
 だが、正さねばならない。彼らは誤っているのだから。修介も同じ思いで、頷いた。
「この蛮行を、止めましょう」
「無論だとも」
 微笑んで、義透は己が身の内にいる三人のうち一人に呼びかけた。
 頼りになる者が必要だ。力を貸してはくれまいか。そう念じ、力を練り上げる。にわかに浮かび上がった影が、人の形を成していく。
 それは、義透と同じ顔かたちの、しかし雰囲気がずいぶんと違う男だった。
 第一の人格、『疾き者』。棒手裏剣【漆黒風】を手中で遊ぶように回しながら、飄々として言った。
「おやまぁ、私ですかー。ふむ」
 周囲を見回し、闇に紛れて間合いを取る血の一族の雰囲気を感じ取った彼は、面白げに首肯した。
「なるほど。確かに、この場所は私が得意とするところですしねー」
「わしが囮を引き受けよう。存分に暴れてくれ」
「よいでしょう。では――」
 揺らめく影のように、疾き者が消えた。瞬間、闇の向こうから液体の噴出する音が響く。
 暗殺だ。かつて忍びであった彼は、血の一族以上に奇襲を得手としている。
 見えない敵に翻弄されながらも、敵の目は義透と修介に向いていた。それもそのはずだ。二人は戦場のど真ん中において、ただ立ち尽くしているのだから。
 【黒曜山】を盾へと変えつつ、背後に立つ修介へと、『不動なる者』は尋ねた。
「どうかね?」
「いつでも」
「そうかね」
 短いやり取りの後も、構えもしない修介に、しかし義透は不安を覚えることはなかった。
 闇を飛び交う忍びに殲滅されるより早く、血の一族どもが二人に群がる。迸る殺気の暴風を身に受けながら、修介は静かに呟いた。
「――推して参る」
 闇から浮き上がる悍ましい戦斧の刃を、ただ見る。その場から、一歩も動かない。
 振り下ろされた刃は、何も抉ることはなかった。わずかに上体を逸らせ、そっと触れるようにして当たった左手が、その軌道を大きく逸らす。
 剛腕の一撃を無効化された斧の戦士は、白い戦化粧を修介に向けるより前に、首を掴まれ心臓に寸勁を叩きこまれ、静かに死んだ。
 倒れる仲間に、血の一族が憎悪の殺意を色濃くする。迫る女拳士の憤怒の蹴りは、あたかも鞭のようにしなり、巨木をもへし折る威力を誇っていた。
 圧倒的な剛の一撃。それは、柔の極みに達さんとしている修介にとっては、あまりにも容易いものに感じた。
 接触の寸前まで調息、破壊の脚を右の手で受け、威力を瞬時に殺し切る。驚愕に目を見開く女の顔面へと、手を伸ばす。
 掴んで、彼女を支えていた軸足を払い、後頭部から地面に叩きつける。何かが砕ける音がして、女拳士は呻いてから動かなくなった。
 不動の戦いで早くも二人を倒した修介に、闇から愉快気な笑い声が聞こえてくる。
「やりますねぇ。いやはや、本当に……久しぶりですねー、このような戦場は。人の武を見るのもまた楽しいものです」
「異論はないがな。しかし、見物に徹せられては困るぞ」
 漆黒の盾で敵の剣を受け止めた『不動なる者』が、苦笑いなど浮かべた。すぐに聞こえた「分かっていますよ」の声とともに、盾を斬りつけた剣士は背後から首を掻き斬られ、血の吹き出る喉を抑えて蹲る。
 その眉間に、棒手裏剣が突き刺さった。剣士が白目を剥いて斃れ、『疾き者』は死んだ敵を放り、再び闇へと溶けるように消える。
 血の一族からしてみれば、見える敵を狙わざるを得ない。しかし、凄腕の忍びは的確に隙をついてくるため、下手に仕掛けることも叶わなくなっていく。
 結果、訪れたのは膠着状態だった。ついに足を止めた血の一族へ、修介が挑発的な笑みを浮かべた。
「どうした。ただ突っ立ってるだけの相手が怖いのか? それとも、闇からの刺客に足が震えて動けないか」
「……侮辱するか、我らを」
「侮辱に値するだろう。戦士たるものが、戦意を失うなどと」
 鼻を鳴らした『不動の者』は、直後に盾を襲った衝撃に、「おっと」と目を細めた。
 破魔の力が迸る斧を振るったのは、まだ幼い少年だった。とはいえ、それは見た目の話だ。彼もまたオブリビオンならば、情けをかける理由はない。
 直後に少年のこめかみへ突き刺さった棒手裏剣が、『疾き者』もまた同じ想いであることを知らせていた。
 一方、剛腕で掴みかかってきた男の肩を外し、首に手刀を叩きこんだ修介は、敵への評価を改めていた。
 二人の挑発に乗るものは、少なかった。先ほどから挑まれては倒している血の一族たちも、闇雲に攻めているわけではない。呼吸の合間を的確についているのだ。
 いつまで、後の先を狙い続けていけるか。過ぎる懸念を、深い息とともに吐き出す。
「やれるまで、やるだけだ」
 この戦場、先に心を乱した方が負ける。敵が戦況に焦りを浮かべていない以上、今の優位がいつ崩れるかは、ここにいる誰にも分からないのだ。
 修介と『不動なる者』は背中越しに、そして『疾き者』もまた、血の臭いが満ちる闇の奥で、同じことを想い、覚悟した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

乱獅子・梓
【綾(f02235)と】ア・傷
さっきのモンスター達はドラゴンを見て
感情を高ぶらせていた
という事は血の一族も…

まずUC使用し、暗闇への適応力向上
これで一方的な不利では無くなるだろう
次に闇に紛れた敵を引きずり出す為…焔、任せたぞ
成竜の焔を戦場に堂々と立たせ
天に向け激しい咆哮、そして炎を放出
「竜は此処に居るぞ」とばかりに
音と光で存在感をアピールし敵を誘き出す
奴らが狩りたがっている悪名高き竜と
俺の焔を一緒にされるのは癪だがな
最初の被弾は免れないだろうが
激痛耐性で耐え切れ、お前なら出来る

綾の奇襲を合図に
零、出るぞ!と参戦
敵の足元へ氷の属性攻撃ブレスを浴びせ
地面ごと凍り付かせて動きを妨害し綾をサポート


灰神楽・綾
【梓(f25851)と】ア・傷
梓の考えを察し
さっきは俺を守ってくれたからね
焔がなるべく傷付かずに済むように
今度は俺がきっちり仕事しないとね

黒揚羽で身体を覆い、闇に紛れながら
焔の足元にじっと身を潜めておく
敵が焔に攻撃を仕掛けた瞬間、UC発動
「焔の身体を透過する」性質を与えた複数のナイフを
敵に向けて放射状に一斉に投擲
相手からしたら、突然ドラゴンの中から
ナイフが飛んできたように感じるかもね

零によって動きを抑えたところに
Emperorのリーチの長さを活かして
敵の拳が届かない位置から
薙ぎ払うように斬りかかる
治療され続けると面倒だから
一撃一撃に力溜めて少ない攻撃回数で
大ダメージを与えられるように心がけ



 時間は少し戻る。
 モンスターの残党を冒険者に任せ、血の一族が潜んでいる平原へ向かう時のことだ。
 乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は考えていた。モンスターどもが梓のドラゴンを見た時の、異常なまでの感情の昂ぶり。
 もし奴らが何らかの力で操られており、その精神が血の一族とリンクしていたとしたら――。
「奴らも……ということになるか」
「どうしたんだい、梓。難しい顔をして」
 横を歩く綾が、何やら充実している顔で言った。戦闘を心より楽しんだようで、羨ましい限りだと半眼を浮かべながらも、梓は考えていたことをそのまま話した。
 一通り話を聞いてから、綾は「なるほど」と顎に手を当てる。
「まぁ、竜を討つ一族を自称するくらいだから、それはあり得るだろうね」
「だよな。そういうわけでな、綾」
「いいよ」
 最後まで聞かず、綾はにこやかに頷いた。相棒が考えていることは分かったし、先の戦いでは守ってもらってしまったので、その借りは返さなければと思っていたところだ。
 それに、ただ暴れるよりは、そちらの方が面白そうだ。
「……今度は俺が、きっちり仕事しないとね」
「ありがとよ。期待してるぜ」
 互いの拳をぶつけ合う。
 奴らが待つ宵闇はもう、すぐそこだ。



 そして、今。
 紅を撒き散らすように羽ばたく蝶の群れの中を、咆哮し炎のブレスを吐くドラゴンが、闇の上を飛び交っている。
 血の一族は魔物と違い、興奮して叫ぶようなことはしなかったが、それでもやはり、「竜だ、殺せ」と息巻いて、【焔】に得物を向けている。
 すぐそばに立つ梓のことは、見えていないかのようだった。真紅の蝶の力により闇に適応した梓は、腕を組んで敵を観察する。
 焔のブレスに照らし出された敵の表情は、どこか光悦としていた。まるで何かに取り付いかれているかのようだ。
「……そんなに、竜殺しになりたいかねぇ」
 呆れたように呟いた視線の先で、焔が飛翔しながらの尾の一撃で、敵を薙ぎ倒す。剣ごと粉砕された同族に、血の一族は人懐っこい梓の竜を、完全に邪悪なるドラゴンと認識したようだった。
「あのドラゴンどもと一緒にすんじゃねぇよ」
 梓の不満気なぼやきは、悲しいかな、誰の耳にも届かなかった。
 焔が着地した。一斉に飛び掛かる血の一族の獲物が、鱗に突き立つ。苦痛を叫びで表現する姿は痛々しかったが、必要な傷だ。梓は唇を噛んだ。
「耐えろよ、焔。お前ならできる」
 竜にダメージを与えられる。その事実は、敵の勢いを加速させた。戦斧やら大剣やら、一撃の重い得物を持ち出した巨漢ども、威嚇する焔へと斬りかかる。
 しかし、幾人かの大男は、音もなく飛来した死によって、虚しく草原に倒れた。その喉元に突き立っていたのは、ナイフだった。
 一体どこから。血の一族に、動揺が走る。その様子を、焔の足元から見据えている者がいた。
 綾だ。【黒揚羽】を体に纏った彼は、竜が地に足を下ろした瞬間、その足元に滑り込み、身を潜めた。全ては、この瞬間のためだった。
 透過したナイフを焔越しに投げれば、敵からするとドラゴンの体から刃物が飛んできたように感じたはずだ。いかに暗闇の中とて、想定外の奇襲だった。
 浮足立った敵が体勢を整えるまで、時間はそうないだろう。待ってやる理由もない。梓は叫んだ。
「出るぞ、零!」
 闇に沈む草むらから飛び立ったのは、成竜化した焔からすればいかにも小さな、蒼い仔竜だった。
 敵の目が、ようやく梓に向いた。竜を使役している者を見て、露骨に目を血走らせる。
「やはり竜の手先か」
「我らが使命のもとに、その首もらい受ける」
「その罪、死して禊ぐがよい」
「竜と手を組むなど、恥と知れ」
「あーうるせぇな! 一片に言うな!」
 苛立った梓の声に反応するかのように、青竜【零】が群がる敵へ白いブレスを吐いた。
 草原が凍てつき、露と血に濡れる草むらは鋭利な刃物と化す。布を腰に纏う程度しか防具がない血の一族が、その進みを鈍化させた。
 それは、致命的な隙だった。足元の凍った草を剣で刈り取る時間など、綾が与えるはずがない。
「仕事はするって、言ったからね」
 軽い口調と共に、風が唸る。振るわれたハルバード【Emperor】の刃が、一度で四人の首を落とす。
 さらに、上空からは焔のブレスが襲う。氷に阻まれ炎に焼かれて、次々に血の一族が倒れていく。
 敵の切り替えは早かった。強靭な鱗を持つ竜とそれに守護される梓より、軽装かつ一人で立ち回る綾の方が叩きやすいと、狙いを変えたのだ。
 敵の殺気が向けられたことで、綾は心中で歓喜した。借りを返すと言った以上申し訳なさはあるが、奇襲を果たした時点でそれはチャラだと思うことにする。
「いいね。また、面白い戦いができそうだ」
「おい無茶はやめろって!」
 聞こえたらしい梓のツッコミは、この際無視する。
 細身の女拳士が、インファイトに持ち込もうと地面を滑るように走ってきた。凍った草むらに足を切られても速度を落とさないのは、大した根性だ。
 だが女の腕は、綾のハルバードに比べればいかにも短い。懐に飛び込まんとする拳士の胴は、彼女の拳が振るわれる前に、、無残にも両断された。
 息のある者を回復させようと、呪術師が血による呪詛を唱え始める。しかし、赤黒く禍々しい輝きが草原に広がった瞬間、焔と零のブレスによって、冷気と炎の直撃を受けた呪術師は言いようのない苦悶の中に絶命した。
 立て直せ、と誰かが言った。血の一族は今も静かに戦いを繰り広げているが、そうした言葉が出るほどには混乱しているのだ。
 作戦が見事にはまった形だ。そのことは、素直に嬉しかったが――。
「……綾の野郎、後で説教だな」
 世話役の苦悩は、やはり、尽きなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

露木・鬼燈
これはひどい。
世界をありのままに見られない。
自分の思いで歪めてみてしまうとは…
その有様では竜を狩るなどとても、ね。
間に合っても無為に死ぬだけだったかな。
つまり僕に斬られて死ぬことと何ら変わりない。
いや、街を襲うだけ害悪であったか。
殺人剣理<葬剣>
そんな奴らでもヒトとして葬ってやるだけ有情。
竜殺しの業をアレンジして使ってあげるサービス。
感謝してくれてもいいんだよ、なんてね。
血の一族の技術体系は竜を殺すために剛の技に偏っているっぽい。
柔の剣である<葬剣>には鴨なんだよね。
力の流れを誘導するように柔らかく捌いて一撃を。
ヒトなんてちょっと深く斬ってやればそれだけで死に至る。
竜に比べてなんと儚いことか。



 露木・鬼燈(竜喰・f01316)は、自分の中に冷たいものが下りてくるのを感じた。
「これはひどい」
 そう断ずる。
 血の一族どもは世界をありのままに見れていない。オブリビオンになっているから、という一応の理由はあろうが、それにしたってみっともないと思った。
 自分の思いで、見るべきものを歪めてしまっている。対峙する褐色肌の一族が、鬼燈に向けている歪な殺気が、その証拠だった。
 思わず、口の端が上がる。
「その有様で、竜を狩るなどとても――ね。帝竜戦役に間に合っても、せいぜい無益に死ぬだけだったかな」
「貴様……その口で、竜を語るとは。万死に値する」
 闇が動く。白い戦化粧が残像を生み、いくつもの刃が四方から鬼燈に襲い掛かった。
 紫の瞳が、煌めく。竜を屠るための力が両の手に結集し、二振りの剣を生み出す。
 一閃。切り裂かんと迫る敵の得物を弾き飛ばした。ただの一合で、血の一族は鬼燈を見る目を変えた。
 彼らには、嫌でも分かるのだ。同じ、竜殺しを名乗る者の波動が。
「どうせ竜に踏み躙られて死ぬのなら……今僕に斬られて死ぬことと、何ら変わりない」
 町を襲った彼らには、もはや同情の余地など残されていない。惨めで、哀れで、害悪だ。
 二本の刃を体の外に向けて、剣気で牽制しながら、鬼燈はなおも挑発するかのように言った。
「まぁでも、竜を目指す者同士。せめてヒトとして葬ってやるっぽい」
 土を踏み込む。敵が構える。
「――竜殺しの業で死ねる喜び、存分に噛みしめるですよ」
 草を蹴る音が、一斉に響く。群がる殺気に、鬼燈はあえて飛び込んで見せた。
 竜に背を向けることは、即ち死を意味する。懐に入り込まなければ、討てない。的が小さくなろうが、理屈は同じだ。
 鬼燈の身長の二倍はあろうかという巨漢が、戦槌を振り下ろした。左の剣で軽く振れ、力を地面へと流す。
 得物の軌道が逸れ、立て直そうとした巨漢は、胴を深く切り裂かれて倒れた。生死を確認するまでもない手応えだ。
 次いで槍の穂先がきた。鬼燈のリーチよりもはるかに長いが、竜の爪とはまるで比較にならない。軽い跳躍で柄に乗って、さらに跳び、空中で一回転しつつ首を刎ねる。
 着地と共に襲い来る投げ斧を、二つ弾いて一つは避け、その流れで右の剣を投擲、女戦士の頭蓋を穿つ。
 駆け寄って引き抜き、背後へ向けて左の刺突。ナイフを手に首を狙う若い男は、自身の喉元を貫かれ、切り裂かれるという結果に終わった。
 流れるような戦いは、鬼燈に利があった。それは実力の差というよりも、互いの武術の違いであった。
 血の一族は、技術体系を剛の技に絞っている。竜の鱗を砕くためなのだろうが、偏りが過ぎた。だから、鬼燈が見せた柔の殺人剣理【葬剣】を前に、手も足も出ないのだ。
 チームワークは大したものだが、彼らが「柔よく剛を制す」ことに気づかない限り、勝ちを拾うのは至難を極めるだろう。
 あぁ、それにしても。敵の皮を裂き肉を切り、臓腑を貫く感触に、鬼燈は思った。
 自分も含めて、ヒトは少し深く斬ってやればそれだけで死に至る、脆い存在なのだ。オブリビオンと化してさえ、この様なのだから。
「……竜に比べて、我らのなんと儚いことか」
 血みどろの剣を手に、鬼燈は詩人にでもなった気分で、闇の空を見上げて呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
ア  傷

私の名はトリテレイア!
誉れ高き黒竜の騎士と共に群竜大陸の一角を預かる領主が一人!

あの地で戦った全ての者の戦いを虚言と宣うその侮辱、この勝敗をもって撤回させていただく!

…無駄とわかっていても口上を述べたのは騎士の性でしょうか
余計に怒らせてしまいました

ですが、力を示す他に在り様に応える方法が無いのなら
全力を尽くすが騎士の礼儀というものです

センサーの●暗視と●情報収集で四方の包囲は把握済み
高速の拳を誘い●見切り最小限の動きで紙一重で回避
躱しきれなくば拳の側面を●武器受け●盾受けで弾いて逸らし
●怪力で振るう武器で反撃

只管に堅実な動作の繰り返し
その最後の踊り手となることで屠竜の力を証明しましょう



 彼らの言葉を聞いた時、機械の身に衝動が走った。
 盾を手に、剣を掲げて、高らかに名乗る。
「私の名はトリテレイア! 誉れ高き黒竜の騎士と共に群竜大陸の一角を預かる領主が一人!」
 群竜大陸の領主。その言葉は、血の一族たちの視線と敵意を集めるのに十分すぎる力を持っていた。
 悍ましいほどの憎悪に塗れる目を向けられ、しかしトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、口上を止めることはしなかった。
「彼の地で戦った全ての者の戦いを虚言と宣うその侮辱、この勝敗をもって撤回させていただく!」
「……愚かな。群竜大陸にはまだ、誰一人辿り着いていない」
 唸りにも似た低い声が、闇の中からそう返した。
 分かっていたことだ。彼らに真実を突きつけようと、無駄に終わろうことなど。しかし、それでも心のままに声を上げたのは、騎士の性だろうか。
 血の一族が、攻勢に出る。暗視センサーに映るその多くが、拳士だった。鋼鉄の体に素手とは無謀にも思えたが、敵は竜を屠るべく武を磨いた者たちだ。油断はできない。
 繰り出された拳が、盾に衝突する。衝撃が左腕まで伝わる。これぞ竜を討つ技だと言わんばかりの、渾身の一撃だった。
 応えねばなるまい。それが、騎士としての礼儀だ。
「参りますよ」
 戦術モードを変更、センサーで把握した戦場全域の事象を予測する。
 トリテレイアの動きが、突如緩慢になった。そのように、敵の目には映った。
 ここぞとばかりに繰り出される高速の乱打は、しかし鋼の巨体の急所を捉えることはできない。直前で見切られるのだ。
 それは、四方から一斉に攻撃を受けても同じだった。凄まじい技術で放たれる拳や蹴りは、時折掠めてトリテレイアのボディに傷をつけても、その多くは無価値な損傷だった。
 盾で受け、剣で流し、焦れた敵がさらに距離を詰めた瞬間、儀式用の剣が煌めいた。これまでの柔らかな動きとは一変、剛腕を以て繰り出された回転斬りが、囲む四人を叩き切る。
 まるで、自分たちの一秒先を生きているかのような剣士に、血の一族は舌を巻いた。未来から死をもたらされるかのような感覚が、彼らを戸惑わせた。
 闇に浮かぶ緑のアイセンサーが、トリテレイアの姿をより強靭な戦士に見せる。動きの止まった血の一族へ、彼は静かに言った。
「私に勝てないようでは……竜を討つなど、到底かないませんよ。帝竜は、私一人の力では到底敵わぬほどに、果てしなく強かった」
 刹那、背後から鋭い蹴りが放たれた。すでに予測されていたその攻撃を、トリテレイアはわずかにスラスターを吹かすだけで回避して見せる。
 怒りの籠った一撃だった。やはり、ドラゴンを倒したという類の言葉は、彼らにとって禁忌なのだろう。
 だが、事実は事実だ。この世界に、帝竜ヴァルギリオスはもういない。
「どれほど言葉を尽くしても、伝わりはしないのでしょう。ならばせめて――」
 蹴りを放った拳士を一刀のもとに斬り払い、血を振り払った切っ先を、敵へと突きつける。
「我らが見せる屠竜の力を以て、証明しましょう」
 共に戦った仲間の、名誉のために。
 トリテレイアは、誓いの剣を今一度、天へと掲げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
もう何を言っても聞いて貰えないんだろうね
だからこいつの力で倒させて貰うのが
僕の精一杯の手向けだよ

複製創造で創った金属柱を渡し
使い魔を更に巨体に成長させよう

竜を倒す為に練った業、見せて貰おうか
見た目が飛竜だからといって油断しない方が良いよ

使い魔は翼腕や尻尾による薙ぎ払いや
翼爪や足爪による切り裂き
体重を載せた体当たり
金属片の射出による金属化で戦うよ

希少金属は密度が大きいから
その一撃は見た目以上に重いよ

僕は多機能ゴーグルやドローンで空から監視して
使い魔にデータリンクで情報を渡そう
飛び道具は神気で防御

竜に跨って戦うのは浪漫なんだけど
あの大暴れにつき合うと
たぶん舌や胃や三半規管が酷い事になりそうだからね


サフィリア・ラズワルド
POWを選択

四つ足の飛竜のまま敵に問います。私が何かわかる?そうだよ、恥ずかしながら数年前まで本気で自分の事を竜だと思ってた、竜人は竜の幼体だって信じて生きてきたから、真実は残酷、それを受け入れる事ができるまで時間がかかるのはわかってる。

私は帝竜と戦った、一撃入れた、でも倒せなかった、途中で離脱した、死ぬかもしれなかった、何が言いたいのかわからない?こんな攻撃が帝竜に通じると本気で思ってるの?

『擬きすら倒せないのに?』

受け入れられないと言うならそれでいい、止まったままでいればいい、でも先に行こうとする私達の邪魔をしないで。

アドリブ協力歓迎です。



 四つ足の飛竜が、人語を放った。
『私が何か――わかる?』
 血の一族は答えない。ただ、得物や拳をこちらに向けて、警戒している。
 そこに、竜を前にしたという感慨はなかった。もう分かり切っていたことだが、やはり彼らには見抜かれているのだなと、サフィリア・ラズワルド(ドラゴン擬き・f08950)は心に影が下りたのを感じた。
「そうだよ、恥ずかしながら数年前まで、本気で自分の事を竜だと思ってた。……竜人は竜の幼体だって、信じて生きてきたから」
 しかし、違った。サフィリアは、竜ではなかった。
 残酷な現実を前にしたあの時のことは、今でも覚えている。受け入れられるまで、あとどれくらいの時間がいるのだろうか。
 それは、彼ら血の一族も、同じなのかもしれない。ドラゴンスレイヤーには決してなれない、彼ら。
 だが、決定的な違いがあった。サフィリアは、それでも――前を向いているのだ。
「竜を騙る魔物め。滅してくれる」
「そういうところだよ……君たち」
 戦いが始まった。ドラゴンに扮する紛い物――そう、血の一族は断じた――を狩るべく、岩をも砕く拳士が、跳躍からの踵落としを狙う。
 それを見て、サフィリアは「やっぱり」と呟いた。唸る尾が、攻撃姿勢のままの拳士を撥ね飛ばす。
 地面に突き刺さるようにして倒れた拳士は、動かない。仲間の安否を確認することもなく、血の一族は一斉に仕掛けた。
 爪を振るう。牙を立てる。敵の血肉を飛び散らせる度に、サフィリアの人としての命はすり減っていく。
 だが、今は構わないと思った。いつまでも目の前の真実から顔を背けようとする彼らにだけは、絶対に負けたくない。真の姿を示して、勝ちたい。そう思った。
 戦いは優勢かに見えた。しかし、竜を狩る技術を磨き上げてきた彼らは、大型動物を狩猟する狩人のように、精密な攻撃を仕掛ける。目を狙う槍や矢に、竜としての咆哮を上げた、その時だった。
 にわかに聞こえた巨大な翼の音に、血の一族が空を見上げる。
 闇夜の先にいたのは、金属の竜だった。サフィリアは絶句した。
「うわー、わらわらいますよ! やっちゃいますねー!」
 巨大な、それはサフィリアよりも大きな体躯。翼が空気を叩くたびに暴風が吹き荒れる。
 帝竜だ。そうだったはずだ。しかし、『彼女』は――。
「群竜大陸で、死んだはず」
「うん。まぁアレは本体が生み出したコピーのレプリカなんだよね」
 別の少女の声。今度は人間の姿をしていた。空を飛ぶ金髪の少女はすでに容赦なく血の一族に殴りかかっている金属竜を多機能ゴーグル越しに見ながら言った。
「竜に跨って……ってのも浪漫があっていいんだけど、三半規管が狂いそうでさ」
「……レプリカ」
「そう。さすがに本物は使役できないからね」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)の言葉を聞きながら、サフィリアは考える。つまり、やけに楽し気に襲い来る敵を弾き飛ばす『彼女』、プラチナコピーのレプリカも、本物の竜ではないということか。
 青い竜の鱗に、槍が突き立つ。血の一筋もにじませられない軟弱な刃を、サフィリアは蔑むように見下ろした。
 もう一撃と振りかぶる槍使いを、前足で押し倒して踏みつける。徐々に体重をかけ、苦しみもがく姿を前に、語る。
「私は帝竜と戦った。一撃を入れた。でも、倒せなかった。途中で離脱した。……死ぬかも、しれなかった」
 苦い記憶だ。たった一人では、本物の竜に及ばないと気づいてしまった。
 足元で死にゆく槍使いも、彼を助けようともせず剣や斧を振るう戦士たちも、皆、サフィリアの言葉を気にしていない。
 否、気づいていないのだ。
「何が言いたいのかわからない? こんな程度の攻撃が、帝竜に通じると本気で思ってるの?」
「我らの武は、竜を屠るため」
 血の一族の誰かが、呟いた。それは信念なのか、それともそうあって欲しいという希望なのか。
 サフィリアは足元の男を踏みつぶした。血が飛び散った草原から、金属製の竜へと視線を移す。金属片の射出で血の呪術師を切り裂いたプラチナが、楽し気に奇声を上げている。ほとんど、無傷だった。
 牙を折らんと飛び上がった拳士を噛み砕き、サフィリアは血の滴る口で、冷酷に言った。
「擬きすら――倒せないのに? 帝竜を討つことを舐めているのは、キミたちのほうだよ」
「……確かに」
 空中でプラチナコピー・レプリカと情報を共有する晶は、悲痛にも聞こえるその言葉に頷いた。
 血の一族は、強い。ミレイユの冒険者が彼らと戦っていたら、きっと惨敗していただろうくらいには。
 だが、晶も覚えていた。帝竜の強さは、記憶に焼き付いて離れずにいる。血の一族は――決して勝てないだろう。
「そもそも、見た目が思い描く竜ではないからって、油断している時点で、ね」
 サフィリアが女拳士の頭を、プラチナコピー・レプリカが呪術師の腹を、同時に喰い破る。咆哮したのも、また同時だった。
 だが、いかに言葉を連ねても、血の一族には届かないだろう。彼らが取り付かれている妄想も、決して晴れることはない。
 過去だからだ。血の一族は、今を生きていない。生きることは、できない。
「……もう何を言っても、聞いて貰えないんだろうけど」
 それは、酷く悲しいことに感じた。二体の竜形に打ち倒されていく敵の姿に、晶は一人、空の下で目を伏せる。
「僕にできるのは、コイツの力で倒させてもらうくらいだ」
 帝竜に挑むことはできなくとも、せめて、竜牙に討たれて死ぬ名誉だけは。それが、晶から彼らへの手向けだった。
 牙も爪も血に染めたサフィリアが、暗闇でもそれと分かるほどに竜の瞳を煌めかせ、血の一族を睨む。
「受け入れられないと言うならそれでいい。止まったままでいればいい。でも――先に行こうとする私達の邪魔は、しないで」
 静かに、しかし有無を言わさぬ力を秘めた言葉に、血の一族の足が、止まる。
 プラチナレプリカを介して、晶は敵の表情を垣間見、驚いた。
 サフィリアを見上げる彼らの顔は――まるで、本物の竜を前にした時のように、畏れに満ちていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ロラン・ヒュッテンブレナー
ア連OK
※狼変身してスニークする

教えてもらってた相手のUCを分析して他の人の援護をするね
【世界知識】

体の小ささと狼の習性を利用して相手の位置と地形を把握するね【情報収集】【学習力】
狼は夜行性だから夜目は効く【暗視】し、においにも音にも敏感【聞き耳】なの
それに、森や林はお任せ【地形の利用】なの

情報が集まったら詠唱開始【高速詠唱】
トラップで体力を、空気を介して魔力を奪い取る迷宮に閉じ込めるの
回復しようとすればあっという間に衰弱するはずなの
壁は全面を【結界術】と【オーラ防御】で強化しとくね

目標を無くして辛いのは分かるの
その為にたくさん失ってきたことも
でも、それを関係ない人に向けるのは、許さないよ



 激闘の宵闇を、子狼が駆ける。
 敵のユーベルコードは分析した。そのほとんどが力技だったので驚いたが、得られた情報を活かしてくれそうな仲間の元へと、ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は駆け続けている。
 狼となった彼は、優れた夜目と嗅覚、により、敵の死角を的確に突くことができた。風の音だけでも、敵のおおよその位置が割り出せる。
 だから、戦局が大きく猟兵に傾いていることも、よく分かるのだ。戦場を走り回りながら、それは当然のことだとロランは思った。
「あの人たち……強いけど、竜よりは弱いの」
 断定してしまうと可哀相な気もしたが、仲間とともに帝竜戦役を戦い抜いたロランは、素直な感想としてそう言わざるを得なかった。
 それに何より、彼らの心だ。猟兵と戦いながら、どんどん憎しみに引っ張られている。
 その原因が「竜を倒したと猟兵が嘘をつくから」ではなく、「竜を討てない自分たちを認められないから」であることも、血の一族の表情から、見抜いていた。
「……やっぱり、悲しい人たちだね」
 独り言ちる。しかし、手加減をするつもりはなかった。
 草むらの中で、ロランは人の姿に変化した。直後に展開された魔方陣が、凄まじい勢いで広がっていく。
「展開空間読み取り、定義完了。ラビリンスマップ、作成完了。広域錬成式、描画」
 淡々と、機械のように口早に唱える人狼の少年に、血の一族が気づく。あらゆる刃物が振り上げられるが、彼らの攻撃は、間に合わない。
「――ラビリンス、練成開始」
 魔方陣が光を迸らせる。大地を突き破って出現したのは、魔力が練り固まったかのように力を放つ、巨大な壁だった。
 結界を纏う壁は幾重にも重なり合い、内部を複雑な迷宮としていた。魔術式が走る壁は、ロランに敵の位置や状況を正確に教えた。
 壁の向こうで、閉じ込められた血の一族が出口を求めて駆け出す。焦りを浮かべた者から仕掛けられた数多のトラップにかかり、苦しみもがいている様子が、壁を通して伝わってくる。
 不可視の刃に足を囚われた剣士が、傷口を抑えて転倒する。すぐさま駆け寄ったのは、呪術師らしき女だった。
 呪術師は短刀で己の掌を斬り、その血を剣士の足に塗布した。何事か呪文を口走り、輝く力で治癒を試みる。
 だが、叶わない。ロランが形成した壁は、発動された魔力に反応、その悉くを吸収、衰弱させた。根こそぎ力を奪われた女が、力尽きて倒れる。
 トラップは加速度的に凶悪さを増していく。出口はあるが、迷い込んだ誰もが辿り着けずに息絶えていく。
 魔力を吸い尽くされて死にゆく寸前の呪術師が、何度も壁を叩いている。悔しさに塗れた顔をしていた。
 ロランは胸が痛んだ。「ごめんね」と、口から言葉が零れていた。
「……目標を無くして辛いのは分かるの。その為にたくさん失ってきたことも、分かるよ」
 同情してしまう。もしかしたら、彼らと共闘して竜に挑む未来もあったのかもしれないと思うと、ロランの心はきゅっと締め付けられる。
 でも。
 自分の服の胸元を掴んで、彼は強くはっきりと言った。
「それを関係ない人に向けるのは、許さないよ」
 平和の尊さを、知っているから。
 どのような理由があろうと、それは奪われてはならないものだということも、よく分かっているから。
 だからこそ、血の一族はここで、討たねばならないのだ。
 それでも溢れる想いは、言葉となって溢れるけれど。
「……ごめんね」
 迷宮で倒れ、動かなくなった呪術師に、ロランは呟いた。
 小さくもぶれないその声には、幼い猟兵の固い決意が秘められていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

フランチェスカ・ヴァレンタイン
彼の地であなた方一族のことを誰も――当の帝竜達ですら相対者を”血の一族”と見る言動が欠片もなかった。…それが結論じゃありません?
ええ、これでも全ての帝竜と矛を交えましたので

証言しますよ?などと道化を見るような目で見つつ
暗闇に対しては飛翔ビットの熱源サーチと勘で対処して、空中戦機動で応戦を
上空からの牽制砲撃で足を止め、光学迷彩で闇に紛れて死角から斧槍での強襲など、ヒット&アウェイで削っていくと致しましょう

確かにお強いとは思います、が… それでも、あの理不尽の権化を相手取れる程度ではありませんわねー

機動の裏で戦場に張り巡らせたUCの不可視の爆導索を一斉起爆で、夜天に花火を散らすと致しましょうか、と



 斧槍【ヴァルフレイア・ハルバード】の刃についた血を払いながら、フランチェスカ・ヴァレンタイン(九天華めき舞い穿つもの・f04189)は自分を取り囲む血の一族に目を向ける。
 暗闇は、もう慣れてきている。それでも彼らよりは見えていないのだろうが、何も視覚だけが感覚ではない。
 すでに斬った幾人かの死体を、敵は見もしない。かといって、同族を殺されたことに怒りは抱くようで、攻撃は苛烈を極めていた。
 何より、その憎悪だ。帝竜討伐を真実と認められぬらしいが、なんともはや、情けない限りだと、フランチェスカは苦笑した。
「彼の地であなた方一族のことを誰も――当の帝竜達ですら、相対者を”血の一族”と見る言動が欠片もなかった。かつての戦いで命をかけた勇者たちにも、あなた方はその名を連ねてもいない……これが、結論ではありません?」
「否。群竜大陸には、誰も踏み入っていない。踏み入れてはならないのだ。我ら以外は」
 拳を構えて言う男に、フランチェスカはやはり、口角を上げざるを得ない。オブリビオンになると、こうまで思考能力が奪われるものなのか、と。
「まるで道化……ですねぇ」
 踏み込む拳士の手が繰り出されると同時に、フランチェスカは空へと舞い上がった。
 飛翔ビットを展開、熱源を探る。猟兵の手によりもう相当数倒されているが、暗黒に閉ざされた草むらには、未だに敵が潜んでいた。
 砲塔を展開、発射する。闇を疾走る光焔が、爆破を以って血の一族を炙り出す。
 光学迷彩を纏い、フランチェスカは宵闇を味方につけた。敵からすれば、空に舞う白翼の女が消えたように見えるだろう。
 気配で察知される前に、仕掛ける。急降下し、地上すれすれを飛翔、未だに空を見上げている敵の死角から、斧槍を振るう。
 一閃のもとに切り裂かれた拳士が、死に際に手を伸ばす。しかし、フランチェスカの舞い散る羽根を掴むに終わった。
 夜目に自惚れた血の一族にとって、光学迷彩により姿を消した彼女は、天敵だろう。それでも気配を追って矢を射掛けてくるのだから、大したものだとは思う。
「確かにお強いとは思います、が――それでも、あの理不尽の権化を相手取れる程度ではありませんわねー」
 奴らは、強いなどという生温いものではなかった。全ての帝竜と矛を混じえたからこその実感だ。
 未だに竜伐の夢想に浸る血の一族どもは、幸せなことだとすら思う。
「まぁ、現実が非情なのは、ドラゴンとの戦いに限ったことではありませんし……ね」
 そしてその現実は、いつだって見えないところから、突然に突きつけられるものなのだ。
 例えば――届かぬ得物を振るう彼らの足元に、いつの間にか張り巡らされた、爆導索のように。
 起動、爆発。轟音を引き連れて巻き起こった炎と熱風が、大地を粉塵に変える。広範囲の大爆発は、直撃を受けた者のみならず、離れて戦う血の一族すら、振り向かせた。
 闇夜を煉獄に変える炎に、飲み込まれた者たちの怨嗟の声が入り交じる。そこには未だ、竜を討つのは我らだと、呪いのような言葉が漂っていた。
 フランチェスカは面白くもない道化たちを見下ろし、妖しく冷笑した。
「まだお分かりにならないのなら……ええ。証言しますよ? 帝竜たちの、鱗の形まで……」
 揺らぐ火炎に倒れた血の一族の声は、フランチェスカに答えることもなく、やがて消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
……まあ本能に突き動かされてる部分はあるんだろうけど……
せめて目の前の相手の実力評価ぐらいはしっかりして欲しいかな……
…いや、まあ証明すれば良いだけか…帝竜を倒した証明を…

まずは遅発連動術式【クロノス】により地面に仕掛けた拘束式術式罠と…
……術式銃【アヌエヌエ】による足下への銃撃で足止め…
…まあ銃撃は回復されるのだろうけど時間を稼げれば充分…
…【夜空の光は全て星】を発動…血の一族の集団に星剣を奔らせると共に集団を飲み込むように立体魔法陣を形成…
…即興冬寂術式【フィンブル・ヴィンター】を発動…その血は厄介だからね…まとめて凍り付いて貰おうか…


フォルク・リア
ア連傷

闇の中で目を閉じ
「群竜大陸を征すると言いつつ
やる事は己の薄っぺらなプライドを守る為の
虚勢を張るだけか。」
(決して前に進めないオブリビオンらしい)
と語りつつ敵の心の動きを【読心術】で読み取り
敵が襲い掛かるタイミングを待ち
感覚を研ぎ澄まし【第六感】で敵の攻撃に【カウンター】として
【高速詠唱】で真羅天掌を発動
火炎属性の竜巻を発生させ
敵を焼き、炎の光で視界確保。
極力そこから動かず敵の攻撃は炎で迎え撃ち防御。
ダメージの大きい敵を優先し火炎を集中、
治療の暇を与えずに倒しきる。
血の福印は炎で血を蒸発して妨害。
「俺一人ならともかく。
お前たちの妄言で仲間たちの死闘を蔑まれるのは
流石に我慢ならないのでね。」



 血の匂いが漂う草原。闇夜の戦いは、いよいよ終わりに近づいていた。
 たちこめる闇は、未だ黒く濃い。その最中で、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は目を閉じた。
「群竜大陸を征すると言いつつ、やる事は己の薄っぺらなプライドを守る為の虚勢を張るだけか」
「……まあ本能に突き動かされてる部分はあるんだろうけど……」
 眠たげに言ったメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)に、フォルクは「そうだな」と頷いた。
 オブリビオンの本能――それは、決して前に進めないという性質だ。未来に目を向けることができず、今を破壊することでしか己を証明できない、過去の骸。
 血の一族もまた、そうなってしまった。読心術により、フォルクはそれが嫌でも分かった。
 己の武を尽くしても勝てぬ相手を前にして、彼らはなおも竜に固執している。猟兵を殺し、竜に挑む一族の名誉を取り戻さんと息巻いていた。
 その様子は、どうやらメンカルも感じ取ったらしい。敵に悟られぬように遅発連動術式【クロノス】を地面に仕掛けた彼女は、呆れたように言った。
「せめて目の前の相手の実力評価ぐらいはしっかりして欲しいかな……」
「まったくだな。戦士の一族が、聞いて呆れる」
 フードの奥で苦笑を零し、フォルクが頷く。「だよね」とため息をついて、メンカルは重そうなまぶたをゆっくりと閉じ、首を横に振った。
「……いや、まあ証明すれば良いだけか……」
 にじり寄る気配に向けて、変わらぬ口調のまま、確信を突く。
「……帝竜を倒した、証明を……」
 その一言が、彼らの殺意に火をつけた。闇の奥から、一斉に二人へ襲い掛かる。
 しかし、そこはメンカルの世界だった。クロノスによる拘束式術式罠が発動、にわかに草原から溢れた光が、血の一族の動きを束縛する。
 敵の呪術師が、術罠にかかった同族へと己の血を振りまいた。血に触れた者が、わずかに速度を取り戻す。
「解除術式……違う、回復系統かな……」
 面倒だと思いながらも、術式拳銃【アヌエヌエ】を発砲、足を撃ち抜いて物理的に動きを止める。
 拘束術式の力も強めながら、メンカルは時を稼ぐ。血術で敵の傷は回復していくが、抑えられる敵から淡々と銃撃した。
 実際に血の一族を足止めできたのは、数秒にも満たなかったのかもしれない。だが、敵が焦れるには十分だった。
 拘束術式に苛立った血の一族が、強引に踏み込んだ。術式を振り払い、二人に得物が届く間合いに達する。
 褐色肌の女戦士が槍を構えた刹那、フォルクがフードの奥で目を見開く。
「飛んで火に入る……か」
 魔力が迸った。直後に吹き荒れたのは、炎の竜巻。渦巻く煉獄の業火が、女戦士のみならず、メンカルの術式に囚われている者全てを灼き尽くす。
 瞬時に重度の熱傷を負った同族へ、敵呪術師が回復を試み、己の血を撒き散らす。しかし、血液は灼熱に触れた瞬間に蒸発し、消えた。
 熱波に焼かれながらも、敵はフォルクに斬りかかる。死を覚悟した一撃を炎弾で迎撃すると、上半身のほとんどを火傷した血の一族の青年剣士が、死に際に叫んだ。
「竜は――我らの――!」
「我らの……夢とでも言う気か?」
 冗談めかして言ったフォルクに、青年剣士はわずかに口角を上げて、倒れた。動かなくなる剣士から、視線を外す。
 それが彼らの夢だったとして、否定をするつもりはない。だが、彼らに現実を否定されてやるつもりもなかった。
 深手を負った者から喰らい尽くす火炎。その中に、幾筋かの美しい光が煌めく。
 それは、星の如き刃であった。炎の渦の中を駆け巡るメンカルの星剣は、敵を切り裂きながら、何層にも重なる幾何学模様の立体魔法陣を描く。
 星剣の輝きは煉獄を飛び出し、熱風から逃げる呪術師をも囲むように、魔力の波紋を広げていった。
 やがて、炎の竜巻を支柱とする多断層の立体魔法陣は、血の一族を一人残らず巻き込むほどに巨大化した。
「その血は厄介だからね…まとめて凍り付いて貰おうか……」
 発動する。即興冬寂術式【フィンブル・ヴィンター】。フォルクの灼熱を取り囲むように、凍てつく吹雪が渦巻く。
 撤退を叫んでいた呪術師が、徐々に体を氷に蝕まれ、メンカルの宣言通り、立ったままの姿勢で血の一滴まで余すこと無く凍結した。
 天を灼く焔と大気を凍てつかせる吹雪が、やがて入り交じり、互いを打ち消すことなく一つの渦となる。夜明け前の草原に現れた地獄の竜巻は、囚えた血の一族から、とうとう悲鳴を引き出した。
 灼熱と冷気が同時に襲いかかる、矛盾的で耐え難い苦痛は、敵に自害すらもたらす。死を持って苦しみから逃れるために己の首を裂く男を見つめて、フォルクが言った。
「……痛みに屈するお前たちに、やはり帝竜は倒せない」
 その声には、静かな怒りが込められていた。メンカルはそれに気づいたが、振り返ることはしなかった。
 フォルクは業火の中心で、死にゆく血の一族に告げる。
「焼き尽くさせてもらう。俺一人ならともかく、お前たちの妄言で仲間たちの死闘を蔑まれるのは――流石に、我慢ならないのでね」
「……分かる……」
 短く同意を示したメンカルの魔法陣が、爆発的に輝きを増す。応えるように、フォルクの魔力が漲り、灼熱の業火はその紅蓮を色濃くしていく。
 滅びの二重螺旋は、術者の二人が敵と見なしたものを徹底的にこの世から滅していく。もはや、悲鳴も聞こえなかった。
 天蓋を貫く赤と青の大渦は、ミレイユの町からも認められた。モンスターとの激闘を制した冒険者たちが指差し見上げ、神官は天罰と恐れ、吟遊詩人が思わず歌に書き留めるほどの光景だった。
 そして、炎と氷はその役目を終え、やがて空へと消えた。
 静まり返った草原に、身を突き刺すようだった殺気は、もう感じない。
 敵はもういない。メンカルとフォルクは同時にゆっくりと息を吐き、荒れる魔力を鎮めた。

 遠い地平が茜色に染まる。
 世界が、光を取り戻していく。



 最後の一人は、老いた呪術師だった。
 半身を凍てつかせながらも死に損なった老呪術師は、震える手を空へと伸ばし、眩い朝日に戦化粧を施した目を細める。
 か細い声が、こぼれ出す。

「あゝ、竜よ――」

 羨望にも似た眼差しの先に、彼は何を見たのか。猟兵たちがそれを知ることはなかった。
 ただ、いくら伸ばせど竜に届くことのなかった手が落ちた時、この戦いが終わったのだということだけは、分かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『神秘の泉でのひと時』

POW   :    泉で泳いだり、水を飲んでみたりする。

SPD   :    泉やその周囲に咲く植物を調べたりしてみる。

WIZ   :    泉の畔で休みながら、景観や空気を楽しむ。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※マスターページにできることの詳細があります。

 朝日の眩い街道を凱旋した猟兵たちは、門に集った冒険者に、歓声で迎えられた。
 光と共に現れ、ミレイユの町を救うべく戦い、人知れず黒幕をも倒した猟兵は、英雄と讃えられた。
 町長は、夜通し戦い続けた猟兵と冒険者に、住まう人々を代表して謝辞を述べた。また礼として、癒やしの泉で心身を休めてほしい、そしてどうか、町からも歓待をさせてくれと頭を下げる。
 冒険者の全員が、また得物を振り上げ喜びを表した。

 泉の畔では大量の酒と食い物が振る舞われ、吟遊詩人は英雄歌を高らかに奏で、汚れた鎧や衣服を洗ってくれる町の女子供たちも加わって、癒やしの泉はいよいよ祭りの雰囲気となっていった。
 爽やかな陽光を反射する水面に、汚れた鎧を脱ぎ捨てた冒険者たちが、次々に飛び込む。傷に触れた水が輝き、瞬く間に治癒していく。
 笑い声の溢れる光景を見守っていた猟兵たちに、肌着で泉に浸かる女戦士の、「あなたたちも」という声がかかった。
 続くようにして、冒険者の誰もが声を上げ、手招きをする。
 英雄よ、死線を戦い抜いた戦友よ、この時を共に楽しんでくれ。
 癒やし、飲み、食べて歌おう。共に勝利を分かち合おう――と。

 断る理由など、どこにあるだろうか。
 猟兵たちは、仲間と顔を見合わせて、頷き、輝く水面へと歩き出した。
ルムル・ベリアクス
これが癒しの泉……!皆さん出迎えて下さりありがとうございます。これだけ賑やかだと楽しい気分になってきますね。
ぼろぼろになった衣服を魔力で水着に変え、泉に飛び込みます。そういえば、水に浸かるのって初めてかも……。泳げる人がいれば、教わるのもおもしろそうです。
傷を癒した後は、冒険者たちとお酒と食べ物を楽しみます。戦いの後のお酒って本当にたまりません。ビール、はちみつ酒、ワイン……。どれも絶品ですね!
あれ、いい気分で飲みすぎたかも……?吟遊詩人の奏でる歌の中、癒しの泉を眺めながら木陰でまどろみます。



 水に浸かるのは、初めてかもしれない。しかし、胸元まで身を沈めた感触は決して不快ではなく、むしろ心地いい。
 これも、揺蕩う泉水の力なのだろうか。ルムル・ベリアクス(鳥仮面のタロティスト・f23552)は、一人感動していた。
「これが、癒しの泉……!」
 治癒の力は、傷だけでなく体力をも回復してくれている。汚れてしまった衣服を魔力で水着に変えた時には、これほどのものとは思っていなかった。
 冒険者たちの泳ぎを真似て、漂うように泳ぐ。水底に足を下ろすたび、群生している水草がくすぐったい。
 実に、いい気持ちだった。燦燦と注ぐ太陽の光も温かい。身も心も癒されるというのはこういう感覚なのだなと、ルムルは目を閉じる。
 時を忘れてこうしていたいと思っていると、畔で歓声が上がった。冒険者による乾杯の声だ。
「お酒……ですか」
 呟いて、手元の水を掬い上げる。口に含むだけで甘みのある味が広がり、この水を用いた酒や飲み物は、きっとうまいことだろうと思った。
 ぜひ、賞味してみたい。興味のままに泉から上がり、水着を新しい服に変えて、ルムルは冒険者たちに混ざっていった。
 酒瓶を掲げる上半身裸の男が、こちらに気づいて振り返る。
「よぉ仮面の兄ちゃん! あんたもやるだろ?」
 瓶ごと差し出してくるのには思わず笑ってしまったが、「もちろん」と頷く。
 盃に注がれたのは、琥珀色の液体だった。濃厚な甘い香り、はちみつ酒だ。舌が期待にうずくのが分かった。
 気づけば自分を囲んでいた冒険者に合わせて高らかに乾杯してから、一口。舌に転がる味に、ルムルは目を見開いた。
「……!」
「うめぇだろ」
 代弁するかのように言った筋骨隆々な男に、ルムルは目を閉じて味の余韻を楽しみながら、首肯した。
「えぇ……。こんなにも、美味しいなんて」
「ミレイユの水は、ボトル一本で銀貨三枚になることもあるんだ。ここに居つきたくなるのも分かるってもんだな」
「そうですね。戦いの後にこんな素晴らしいお酒を楽しめるなら、いつまででも居たくなります」
 気づけば空になっていた杯に、横から現れた女――得物を置いてきてはいるが、恐らく戦士だ――が、ワインを注いでくれた。
 これもまた、美味。味わい深い果実の酸味と癒しの泉の水が、見事に溶け合っていた。チーズや肉料理が、実に合う。
 どれも、絶品だった。彼らの武勇伝や世界の不思議など、冒険者たちと語らうのもまた、良い肴だった。
 酒を注いで回っているらしい先ほどの女が、今度はビールを手にやってきた。もういい具合に酔いが回っているが、ルムルはつい彼らに合わせて、盃を差し出した。
「仮面のお兄さん、魔術師かしら? あの光から飛び出してきた人たちの一人よね」
「えぇ」
「すごく強かったわ。どんな冒険をしてきたの?」
「それは……まぁ、いろいろと……。ふふ、皆さんと変わりは、ありませんよ」
 熱っぽい頭では、うまく言葉がまとまらなかった。ルムルの脳裏に様々な戦いの記憶が蘇り、そのどれもが今の自分を作り上げているものなのだと、ぼんやり考えた。
 しかし、さすがに飲みすぎた。決して悪い気分ではないが、彼らに迷惑をかけても面白くないので、その場を離れる。
 木陰に腰を下ろし、泉を眺めた。はしゃぐ冒険者と猟兵の姿が見える。
「仲間とは――いいものですね――」
 呟いて、重くなっていく瞼に逆らえず、微睡む。
 吟遊詩人が奏でるリュートと英雄賛歌が、ルムルを心地よい夢の中へと誘っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
『不動なる者』のまま。

『疾き者』は「混乱させるといけませんしー。それに、『四人』で楽しみたいですからー」といって戻っていった。

こうなってからは『四人』で楽しむときには、誰か一人が表出していたからな…。
同じものを見て、同じものを味わう。そのようなことを。
だいぶと今の身体に慣れたようだが(身長が生前160、今181)

しかし、美しき泉よな。
…味覚は変わらぬ、色の見え方も変わらぬ。ただ、四人で卓を囲むことがないだけの話。
それでも、『我ら』は…真に終わるまで、『四人』で猟兵として駆け抜けようぞ。



『同じ顔がいたら混乱させそうですし、それに、『四人』で楽しみたいですから――』
 そう、『疾き者』は言った。確かにそうだなと、頷いた。
 馬県・義透(多重人格者の悪霊・f28057)は、手の中に揺れる強めの酒を揺らしながら、彼との会話を思い出す。
「そうだな。『四人』で、楽しもうではないか」
 飲み下したアルコールが、喉に熱をもたらす。その感覚に目を細めつつ、義透――その表層に現れている『不動なる者』は、同胞たちもこれを感じてくれている不思議に慣れている自分を認めた。
 故郷が滅び、四人の体が死んでから、漂っていた長き日々。あの頃は、こうしてまた人の楽しみを味わえるとは、夢にも思っていなかった。いわゆる生前とは形こそ違えど、僥倖と言っていいだろう。
 亡霊となってからも、人は慣れる生き物なのだ。一つの体で同じものを見て、同じものを味わうことにも、すっかり馴染んだ。
 かつての体に比べてずっと高い目線にも、もはや違和感は覚えない。
「……なかなかに、味わい深い我が身よ」
 魂は生きたままに、別の体で過ごすということも。この味を、四人で同時に味わうことができるということも。
 悪いことと断ずるには、あまりにも惜しい体験だ。無論、時折去来する寂寥の念は、否定できないが。
 生前。それはいいものだった。四人で駆けた日々は夢想と消えかけているが、それでも心震えたことは、忘れられようはずもない。
「だが――昔と変わらぬものもある」
 杯を傾け、肉を齧る。肉汁から溢れる旨味に、自然と口元が綻んだ。幾年、齢を重ねようと、例え死んでいようとも、美味いものは美味い。
 目に映る景色も、また。
 コバルトの空を反射する泉に、戦士たちが遊んでいる。男も女も、老いた者も幼い者も入り混じって、癒しの水を楽しんでいた。
「しかし、美しき泉よな」
 そう感じられる魂は、やはり生前のままだ。四人もきっと、そうだろう。
 見上げた空に漂う雲が、形を自在に変え、雨となって降り注いでも、常に水であり続けるように。
 義透の中に住まう四人もまた、それぞれの心をそのままに、ただ在り方の形を変えただけに過ぎないのだ。
 卓を囲み、盃を交わすことこそなくなったが、それでも四人は、あの日のまま――。
「変わらぬままに、変わる。それもまた、良きものよ」
 舌に踊る酒の如く、甘いも苦いも混じり合うからこそ、この世は面白い。それこそ、死してなお留まり続けるほどに。
 無論、永遠に続くものではないことは、理解していた。いつかは全ての命と同じように、正しく死を迎えねばならない。
「真に終わる、その時まで――『我ら』四人で、顕世を駆け抜けようぞ」
 世界を守る大志を掲げる、猟兵として。
 あの世に向かう膝栗毛としては、悪くない道だ。
「なぁ、皆……そうは、思わんか」
 掲げた盃に、日の光が反射し、強く煌めいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

露木・鬼燈
人の儚さに思いを馳せる。
なんてことは長々とするものではない。
己が武と向き合う時くらいでいいよね。
今やるべきなのは…
勝利の美酒、飲まずにはいられない!
戦いの後は肉を喰らい、お酒で喉を潤す。
こーゆーのが基本だよね。
泉の水を使った~みたいなのって特別感があってよし!
水の違いは料理にもお酒にも現れるからね。
全力で楽しまないと損なのですよ。
人の儚さ?憐れな敵?
そんなもの刹那で忘れちゃったよ。
美味いお酒の前には些細なことっぽい!
お酒は楽しく飲まないとね。
人もお酒も出会いは一期一会。
その期を逃さず楽しまないとね。
今日もとことんまで飲むのですよー。
僕は今、生を全力で楽しんでいる!
いい感じっぽい♪


キリカ・リクサール
ア連

町の方も片付いたか…大きな被害が無くて何よりだ
では、私も宴に参加しようか

癒しの力を持つ泉の水をふんだんに使った料理を主に楽しもうか
野菜や果物を軽く洗い、切って盛りつけたサラダはドレッシングがいらないほどに味が濃厚で、特有の青臭さや強い酸味をまるで感じさせないぐらいに食べやすい
水に漬けて血を抜いた肉も、ただ焼いただけなのにとても香ばしく、ふわりと柔らかいステーキに仕上がっているな
だが、一番驚いたのはこれだ
一見すると色の薄いスープだが、一口飲めば芳醇な香りと濃厚なうま味が口に広がる…
まさか、スープがメインディッシュになるとはな…
料理を楽しみながら、賑やかな街並みを眺めて、束の間の休息を楽しむか



 ミレイユの町に、大きな被害はない。歩いて見て回り、キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は安堵した。
「うまく守れたようだな」
 これで心置きなく宴に参加できるというものだ。安堵しつつ、癒やしの泉へと向かう。
 道中、商店が並ぶ通りがあった。今日のご馳走は全て町の予算から出ているらしく、どこの店舗も人が忙しなく出入りしていた。
 通りを抜けて坂を下ると、泉が見えた。舞い散る水しぶきの中に、冒険者と猟兵が遊んでいる。
 畔から漂う香りに、キリカの足は自然と誘われていた。草むらに置かれたテーブルに、大盤振る舞いの料理と酒が並べられている。
 大きなジョッキを手に盛り上がる冒険者の中に、キリカは見知った顔を発見した。
「おや、あれは――」
 椅子に乗ってジョッキを掲げているのは、額に角の生えた赤毛の男だった。
「勝利の美酒、飲まずにはいられないっ!」
「いいぞぉ角のあんちゃん! 飲め飲めー!」
 冒険者たちに煽られるまま、一気に酒を飲み干しているのは、露木・鬼燈(竜喰・f01316)だった。
 大した飲みっぷりだとわずかに苦笑しつつ近づくと、鬼燈がキリカに気がついた。手招きし、叫ぶ。
「おぉい、キリカさん! こっちで一緒に飲むっぽい!」
「そうさせてもらうつもりさ。しかし、ずいぶん盛り上がっているな、鬼燈」
「シリアスに浸るのは、己が武と向き合う時くらいでいいっぽい。戦いの後は肉を喰らい、お酒で喉を潤し、戦友と遊ぶ。こーゆーのが基本だよね!」
「やっぱアンタ、冒険者に向いてるよ! アタシとパーティー組んでおくれ!」
 ガタイのいい女戦士に詰め寄られ、鬼燈は「……いつかね!」とはぐらかしつつ、キリカにグラスを渡した。
 彼が注いだのは、ずいぶんと強そうな酒だった。一口飲み、これは胃に流し込むものではないと判断する。
「……うん、美味いが、私はチビチビいかせてもらおう。それより、料理の方に興味があるな」
 特に、鬼燈が食べているステーキ。ソースなどかかっておらず、おそらく塩だけで味付けされたものだ。
 咀嚼していた肉を飲み込み、鬼燈が意味ありげに口角を上げて、皿を差し出した。
「食べてみるですよ。ホンットに美味いから、覚悟してね」
「それは恐ろしいな。どれどれ――」
 促されるままに、フォークで刺す。それでまず驚いた。あまりにも柔らかい。
 口に運んで、また、目を見開く。
「――ッ!? ま、まさか……そんな」
 いかなる名牛もこの味には辿り着かないのではと思うほどに、濃くもしつこくない味わい。振りかけられたわずかなスパイスが、その味をより際立たせている。
 衝撃だった。一体どれほどの腕前のシェフが作ったのだろうか。まるで、舌だけ天国に昇ったようではないか。
 言葉にならない言葉が、キリカの口から零れ出た。
「なんだこの……これは、なんだ」
「すごいよね! しかもこれ、泉の水で血抜きして焼いただけっぽい」
「それは本当か? 恐ろしい水だな。一体どんな魔法が……」
 言いながらも、キリカのフォークは止まらなかった。添えられている野菜の、臭みのない味わいも相まって、ぺろりと完食してしまう。
 すぐに新しい皿が運ばれ、冒険者たちが回して食べていく。誰も、食い差しなどを気にしなかった。
 もう何杯目かも分からない酒を飲みながら、鬼燈が上機嫌に言った。
「泉の水を使った~みたいなのが、特別感があってよし! 実際、かなり影響してるしね」
「というより、別物に変わってしまうほどだな。野菜も洗っただけでこれなんだろう」
「水の違いは料理にもお酒にも現れるからね。ここのはかなり上等っぽい!」
 追加された酒瓶を即座に開け放つ鬼燈には、もう戦闘中に感じた人の儚さや敵を憐れむ思いはなかった。
 美味い酒の前で、そんなことを考えていられるわけがない。この時を全力で楽しむために、すぐに忘れた。
「人もお酒も出会いは一期一会。その期を逃さず楽しまないとね!」
 子供のような明るい声で言うと、体格のいい戦士が、その言葉を待っていたとばかりに杯を突き出した。
「いいこと言うじゃねーか、だが口だけじゃねーだろうな? 飲み勝負いくぞオラァ!」
「僕に挑むんだ? いいですよ、覚悟するっぽい!」
 唐突に始まった飲み比べに、場が一瞬で沸き立つ。俺も私もと盃が上がり、いよいよ騒がしくなっていった。
 乾杯、飲め飲め、倒れたぞ、水をぶっかけろ、また角野郎が勝った――。
 あらゆる言葉が飛び交う中で、キリカはしかし、それどころではなかった。
 彼女は感動していた。それは、老婆が配膳していたスープだった。
 酒のあてとしてはイマイチなためか、誰も手にしていなかった。あまり気の毒なので一杯もらったが、これが、実に、実に美味い。
「……こ、こんなことが……あっていいのか……!?」
 見た目で言えば、色の薄いスープだ。肉や野菜の料理と比べると、確かに華はない。
「だが、舌に転がしてみるとどうだ。芳醇な香りと素材の濃厚なうま味が口いっぱいに広がり、これはまるで……魔法じゃないか」
 気づけば口から出ていた食レポは、酔いの回った鬼燈や冒険者の耳に届いていない。が、そんなことはちっとも気にならなかった。
「まさか、スープがメインディッシュになるとはな。星がいくつあっても追いつかないぞ、この味は」
 ミレイユの泉がもたらす奇跡的な味わいに、キリカはすっかり心を奪われていた。
 老婆におかわりを所望するキリカの背後で、ついに全てのライバルを倒した鬼燈が、椅子に立って優勝商品の酒樽を高らかに掲げた。
「僕は今、生を全力で楽しんでいるっ! いい感じっぽい! 今日はとことんまで飲むですよー!」
 ドンと置いた優勝樽を開け、その酒をもとにまた飲み比べが始まるのだから、収拾がつかない。だが、止めようとするものもいなかった。
 歓声が上がる中、キリカもまた誰にも告げること無く、このスープを徹底的に味わい尽くそうと、心に決めた。
 戦士たちにとっては、束の間の休息。また遠くない日に、武器を取る日が必ず来る。その時に力となるのは、今日のような思い出だ。
 この場の誰もが知っているからこそ、彼らはこの楽しい一時を、本気で過ごしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロラン・ヒュッテンブレナー
※どこかでチェリカさんと合流希望

・・・・おわった、守れたんだよね?
いつの間にか、日も登ってる…
きれいなの

ごはんは…、あんまり食欲ないの
けがもしてないし汚れてもないし
あ、泉にちょっと、浸かってみようかな?

けがとか病気に効くんだっけ?
なら、治してくれるかも…
そんな事はないよね
でも、この泉の分析結果は、ありがたいかも
農業とかお薬とか、回復魔術に応用できそう

あとは、街を見て回ろうかな
社会見学なの
ここを、ぼくは守ったんだね
こんないい所を、壊そうとしてたんだね
ぼくの魔術は、役立ったんだね

あ、気持ちよさそうな公園がある
ふぅわ…
一休み、しちゃおうっと
(狼変身して丸まり)
おやすみ・・・



 泉の水面に揺れる太陽を見て、ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は目を細めた。
「きれいなの」
 戦いは終わった。守れたのだという実感はどうにも薄いけれど、冒険者たちの喜ぶ姿を見ていると、きっと間違いないのだろうとも思う。
 お腹は空いていないし、かといって怪我もしていない。服も汚れていなかった。けれど、せっかく来たのだからと、ロランは泉に浸かってみることにした。
「怪我とか……病気に、効くんだっけ」
 淡い期待が過る。もしかしたら、自分の中に疼く恐ろしい病気も、消えてくれるのではないか、と。
 だが、泉の水がもたらしたのは、減った体力と魔力を回復させるという効果だけだった。もとより大きな期待ではなかったが、やはり少し、落胆する。
「……そんな事はないよね。でも、この泉の分析結果は、ありがたいかも」
 土の痩せた生まれ故郷での農業や薬剤、回復魔法への応用も効きそうだ。サンプルとしていくらかをボトルに詰めていると、ロランはよく知る顔を見つけた。
 チェリカ・ロンドだ。今回の仕事ではもっぱら転送を役割としていた彼女だが、脅威がいなくなった上に祭と聞きつけて、飛んできたらしい。
 猫の水着を着て、泉の水面を足でパチャパチャとやっている。近づいて、声をかけた。
「チェリカちゃん」
「あ、ロラン! お疲れ様。手伝ってくれて、本当にありがとうね! 一緒に戦えればよかったんだけど……」
「役割だから、大丈夫なの。気にしないで。一人で遊んでたの?」
「うん、今来たところなんだけど、みんな酔っぱらっちゃってるもんだから。ロランに会えてよかったわ!」
 当然のように一緒に行動することにした二人は、しばらく水場で遊んだ。
 少し遠くまで泳いでみたり、水をかけ合ったりしてから、「そういえばこないだ、海に行ったわね」というチェリカの言葉で、ロランは確かにそうだと頷いた。
「同じようなこと、もう、してたね」
「えへ、今も楽しいけど。ロラン、この後どうする?」
「えっと、僕ね、ミレイユの町、見てみたいなって。社会見学なの」
 面白そうねとチェリカが笑って頷いたので、二人はさっそく泉を出て、町に続く坂を上った。
 畔の熱気は町にも届いていたようで、戦いに参加していない人たちまでもが露店を出し、出し物を行ない、歌ったり騒いだりしている。喧騒の中、はぐれてしまわないよう手を繋ぎながら、ロランとチェリカは通りを進む。
 元気で明るい、いい町だと、ロランは思った。ふと、呟く。
「こんないい所を、壊そうとしてたんだね」
「……そうね」
 チェリカが少し間をおいて、静かに答えた。
 血の一族。可哀想な人たちだった。とても悪いことをしてしまっていたけれど、今は安らかに眠ってくれているだろうか。そうだといいなと思いながら、またも、言葉が零れる。
「ここを、ぼくは守ったんだね」
「そうよ」
 今度はすぐに、明るい声が返ってきた。そちらを向くと、ダンピールの少女が微笑んでいた。
「ロランの力があったから、今、みんなは笑顔でいられるのよ。明日も明後日も、ずっと幸せでいられるの」
 ふわりと、心が軽くなった。口元が、自然と綻んでいく。
「ぼくの魔術は、役立ったんだね」
「うん」
「……そっか」
 ぽかぽかと温まる胸の中に、ロランは安心した。戦ってよかったと、心から思えた。
 通りを抜けて住宅街を歩き、賑やかな声が静かになってきたところで、ロランは耳をピクリと動かした。風の動きが、そうさせた。
「あ、気持ちよさそうな公園があるね」
「ホントだ。行ってみる?」
「うん」
 足を踏み入れると、そこは泉の畔に似た草むらと子供のための遊具、木陰のベンチだけがある、いかにも住人のための小さな公園だった。
 草むらに立ったロランは、吹き抜けた温かな風に、あくびを誘われた。
「ふぅわ……」
「あら、ロラン、眠い?」
「うん……ごめんね?」
「夜通し戦ってそのままだもん、泉に入ったって眠いもんはしょうがないわ。私だって……ふわ」
 口に手を当てて、チェリカも眠たげにあくびをした。どうやら、彼女も寝ずの番だったらしい。
 ならば、遠慮はいらない。ロランは狼に変身して、草原に丸まった。
「一休み、しちゃおうっか?」
「賛成! じゃ、私も」
 尻尾を揺らすロランの隣に、チェリカが寝転がる。大きく伸びをしてから、彼女はロランの方を向いて、小さく言った。
「おやすみ、ロラン」
「おやすみ……、チェリカちゃん」
 暖かな日差しの下で、二人は自然に微睡んで、眠りの中へと誘われていった。
 ロランは、夢を見た。
 今日のように麗らかな日差しが差す故郷で、大好きな友達と仲良く遊ぶ、それはそれは、楽しい夢だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

春乃・結希


泉の力で完全回復した私は、withと一緒にのんびり街を歩き、お祭りの雰囲気を楽しみます
お祭りはいいですよねー。みんな笑顔なのが一番ですっ

買い食いしたりしながら歩いていると
力自慢な冒険者さん達で、腕相撲大会が開催されてるのを発見!
はいはい!私も!私も参加させてくださーい!
…そんな細腕で大丈夫かって?やってみないとわからないですよ?

【怪力】で順調に勝ち進み、ついに決勝戦!
とうとうここまで来ました…私も本気出します
腕まくりして気合を入れ、いざっ
…お兄さん、強いですね…でも、私の方が…もっと強い!
ギリギリの勝負でしたが『絶対負けない』という気持ちで競り勝ちます
っしゃあー!さすが私!みんなありがとー!



 ミレイユの泉が持つ癒しの力は、相当なものだ。疲れはすっかり癒え、なんだか肌の調子までよくなった気がして、春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は上機嫌だった。
「ねぇねぇwith、私、ちょっとキレイになったと思わない?」
 背負う大剣に声をかけ、返事はなかったけれど、一番近くで見ていてくれる存在に、春乃は緩む口元を止められなかった。
 きっと、泉の畔に広がる祭りの雰囲気もあるのだろう。冒険者や猟兵、世話役の町人たちまで、誰もが明るかった。やはり、皆が笑顔でいるのが一番だと、春乃は心底思った。
 基本的に無料で振舞われているのだが、中にはちゃっかりと売店を開いている者もいる。実際、金を取るだけの品質らしく、買いに来るものは後を絶たない。
 春乃も並んで、肉野菜の串焼きと泉の水で作ったソーダを買った。どちらもとても美味しくて、思わず頬を手で押さえてしまったほどだ。
「んー……幸せ」
 すっかり祭りを満喫しながら歩いていると、ふと人込みを見かけた。また酒の一気飲みでもやっているのかしらと近づくと、どうやら違うらしい。
 地べたに置かれた酒樽の上で、男が二人、手を組み合わせている。肘をつく彼らの、おおよそ友好的な握手に見えない血走った表情を見て、すぐに分かった。
「腕相撲の、大会かな」
「おぉ嬢ちゃん、いいところに来たな。今始まったところだ、賭けるならこれからだぜ!」
 細身の男が言った。どうやら彼は出るつもりはないらしく、冒険者たちに賭けの誘いをして回っているようだ。
 なるほど、これは楽しそうだ。黒い肌の男が勝利し、勝鬨を上げたタイミングで、春乃は笑顔で手を上げた。
「はいはい! 私も! 私も参加させてくださーい!」
「……え?」
 先ほどの賭けの男が、あんぐりと口を開けた。集った人々も、今しがた勝った男も負けた男も、春乃を見て同じような顔をしている。
 やがて上がったのは、笑い声だった。次いで、「そんなそんな細腕で大丈夫か」「お子様コースは用意していない」と言った、明らかにこちらを小馬鹿にしている言葉の数々が聞こえてくる。
 しかし、春乃はふふんと鼻を鳴らして、袖をまくり、確かに細い腕を見せつけた。
「やってみないと、分からないですよ? それとも、私みたいな小娘に負けるのが怖くて、挑戦から逃げてるんですか?」
「……言うねぇ。そういうことなら、祭りの席だ! 思いっきり遊んでやろうじゃねぇか!」
 咆えたのは、勝利を収めたばかりの黒肌の男だった。春乃の二倍はあろうかという太い腕を、ドンと樽に乗せる。
 応えて、腕を組む。少女の柔らかな手の感触に、男が苦笑した。「折れちまうぞ」と言ったが、強気な笑みを浮かべて返事とする。
「用意はいいな? じゃあ始めるぞ――」
 ジャッジの剣士が、手を振り上げる。互いに握る手に力を籠め、場が一瞬静まり返った。
 そして、スタートの合図が出された、数秒後――。
 情けない男の悲鳴が、泉の畔に木霊した。

 回復の泉の効果は、一撃で手を負傷した男たちにとって唯一の救いだったが、心の傷までは癒してくれないようだった。
 結局順調に勝ち進んだ春乃は、気づけば賭けのほとんどを自分に集めて、今は最後の一人として名乗り出た巨漢と力をぶつけ合っている。
 誰もが「これ以上の剛力は、ミレイユにいない」と豪語するだけあって、大変な強さだ。押されてこそいないが、拮抗している。自分の腕が痺れるような感覚に、武者震いを覚えた。
「……お兄さん、強いですね……!」
「ふっ――んぐッ――!」
 巨漢に、言葉を話す余裕はなかった。ただ全力を尽くしていることが分かり、春乃もまた、『絶対負けない』という思いを、右手に籠める。
 そして次の瞬間、彼女はにわかに目を見開き、半ば叫ぶように言った。
「でも、私の方が……もっと、強いッ!!」
 叩きつける。衝撃で樽が粉砕され、溢れ出した酒の中に、巨漢はついに撃沈した。
 この瞬間、ミレイユ一の剛力の称号は、春乃のものとなった。想像すらしなかった事態に、冒険者たちが驚きと喜びの声を上げ、勝手に祝杯を上げ始めた。
 やんややんやと称賛の声をかけてくる冒険者に、椅子に立ち両手を振って応える。
「っしゃあー! さすが私! みんなありがとー!」
 ギリギリの戦い、と言ってよかった。全力を出した末に得た勝利は、とても心地がよく、美酒の代わりに差し出されたジュースの味もまた、格別だった。
 ふと、背中に温もりを感じた。陽光を受けた刃から伝わる優しい熱は、まるで祝福してくれているかのようだった。
「……ありがとう、with。見ててくれたんだよね」
 歓声に包まれる中、春乃はわずかに振り返り、愛しい剣に微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
最近暑いので、チェリカさんを誘い、3匹の仔竜達も呼んで(他、泉で水遊びする猟兵がいれば他の猟兵も)一緒に泉で水遊びしたり泳いだり…。

一足先に水着に着替えて泉に入ったところでふと悪戯心を発揮…。
【呪法・海王竜進化】でクリュウ(3匹で一番ヤンチャ、イラズラ好き)を進化…。
後からチェリカさんが来たところに泉から進化したクリュウがバッシャーンと盛大に登場。
登場と水を被って驚いたチェリカさん(の水着)をクリュウが引っ張って更に泉へバッシャーン
普段あんまり見せない様な悪戯心を発揮しつつ、みんなと水遊びを楽しむよ…(怒ったチェリカさんには後でドリンクとか氷菓子とかお詫びに奢ったり)

※アドリブ、絡み歓迎



 泉の水が疲れを癒してくれるのは、とてもありがたかった。だけれど、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)にとってそれ以上に嬉しいのは、水遊びができることだ。
 ここ最近暑かったし、戦闘で汗もかいている。早々に水着に着替えて、三匹の仔竜たちと一緒に冷たい感触を楽しんでいた。
 後から来た猟兵たちも、傷を癒すために泉に浸かり、水の掛け合いをしたりしている。混ざって遊ぼうかと思っていると、その中に今回の転送を担当したチェリカ・ロンドを見つけた。
 声をかけようとして、ふと思い立つ。悪戯心が湧いて出た。
「……ちょっと、驚かせてみよっか……」
 仔竜たちに笑みかけて、璃奈はユーベルコードをこっそりと使った。三匹の中で一番悪戯好きなクリュウを海竜へと進化させ、水の中に潜ませる。
 うまく隠れたところで、璃奈は大きく手を振った。気づいたチェリカが、満面の笑みで手を振り返す。
「あ、璃奈! 楽しんでる?」
「うん……。よければ、一緒に泳ごう……」
「もちろん!」
 まるで疑いを持たずに近づいてくるものだから、璃奈はほんの少しの申し訳なさと高まる期待に、胸を躍らせた。
 泳ぐチェリカの真下に潜むクリュウが、タイミングを見計らう。璃奈まであと数メートルというところで、一気に浮上した。
 突如水面を突き破って現れた竜。チェリカは驚いて転覆し、慌てて浮上した直後に、空から降ってきた水を頭から被った。
「ぎえええ! なになになんなの!?」
 作戦成功。だが、クリュウの悪戯は止まらない。大きな口で、チェリカが着る猫をモチーフにしたビキニのブラ紐を器用についばみ、引っ張った。
「どわああ! ちょっと待って、取れる! 見えちゃう! あぶっ――」
 水中に引っ張られながらも胸元を抑え、決死の抵抗を見せるチェリカ。璃奈はちょっと気の毒だと思いながらも、緩んで震える口元を抑えて黙っていた。
 数秒後、先に出てきたのはクリュウだった。泉から飛び出すや進化を解いて小さな飛竜に戻り、璃奈の頭に止まる。
 その後、水面から力なく現れたチェリカは、首から下を水に沈ませて水着をつけ直し、璃奈に向かって頬を膨らませた。
「もー! びっくりしたじゃない!」
「ごめんね……こんなにうまくいくなんて、思わなくって……」
「まさか、璃奈が悪戯してくるなんて思わなかった。町の男子みたいだったわ!」
「ふふ……よしよし……」
 むくれるチェリカの頭を撫でてやりつつ、璃奈は頭の上のクリュウと同じように、満足感に浸っていた。
 とはいえ、友達が機嫌を損ねたままでいるのは、やはりよくない。「あとで氷菓子を奢るから」と言うと、彼女は途端に笑顔になった。
「ホント!? もう仕方ないわねー、じゃあ許してあげる!」
「よかった……」
「でも、驚いたわ。璃奈に水着を取られる日が来るなんて」
「取ったのはクリュウだけどね……」
 そう言って、兄弟と羽ばたきながら楽し気に咆える仔竜たちを見上げる。クリュウは「してやったり」という顔で、チェリカを見下ろしていた。
 しばらく泳いで体の熱を冷まし、璃奈とチェリカは泉から出た。約束の氷菓子を買うべく、売店を覗く。
 果汁と泉の水で割ったものを凍らせた菓子を三つ買い、璃奈は一つを仔竜たちに、もう一つをチェリカに渡した。
 目を輝かせる少女と一緒に頬張ると、果実の甘味が驚くほど引き立った氷が、口の中で溶けていく。
「わ……これ、美味しいね……」
「うん、これはスゴイわ! なんていうか、ヤバいわ!」
 語彙が少ないチェリカの感動は、璃奈にも十分伝わったし、全面的に同意だった。ただ凍らせただけではなく、飴のような濃厚な甘みを感じられるのだ。
 食べようと思ったきっかけが悪戯だったことを思うと、作戦決行は間違いではなかった。そんなことを思ったが、せっかく機嫌が直ったチェリカには、黙っておくことにする。
 仔竜たちも喜んで果汁の氷を頬張り、璃奈もチェリカも、あっという間に食べ終えてしまった。口が寂しかったのでジュースも買って(これも大変に美味しかった)、二人と三匹は揃って草むらに腰かけた。
 少し暑いくらいの、心地よい陽気だ。他愛もない会話が弾み、あまり感情を表に出さない璃奈だが、今日はよく笑える日だなと感じられた。
「楽しいね……」
「そうね。毎日こんなだったらいいのに」
「うん……そう思うよ……」
 泉で遊ぶ猟兵や冒険者たちの姿を眺めながら、璃奈は微笑んで頷いた。
 小さな声で「また来たいな」と呟くと、「また来ましょう」とチェリカが言った。
 今度は他の友達も一緒に。そんな想像をすると、璃奈の心はぽかぽかと、太陽のように温かくなっていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レイチェル・ルクスリア
はぁあ……
あれだけの数を相手にすると例え雑魚とは言えど疲れるわね。
酷使した四肢が悲鳴を上げているのが分かるわ。

必死の思いで掴み取った勝利を謳歌したい気持ちは分からなくもないけど、ちょっと私は休ませてもらうとしましょう。

そんな感じでひとまず
泉の隅っこで身体を浸してクールに佇むわ!
別に戦場以外でのコミュニケーションが苦手っていう訳じゃ無いんだからね?

適当に泉の水を浴びつつ、楽しそうな様子を外巻きに見ていましょう。

絡みやアドリブは大歓迎よ!


エーカ・ライスフェルト
拙者、念動力しか使っていないのに筋肉痛で動けない侍……

いだだだだ、という感じで色気も何もない感じでうめいてるわ
野点傘を設置して、椅子に座り込んでる感じかしら

シルキーには簡単な料理でも頼みましょう
「そうね、肉料理をお願い。筋肉をつけたいし」
食材用の資金は私の財布(前回の報酬かも)から出すし、多く作ったら町の女性に振る舞ってもいいわよ

「あらチェリカさん、ひと皿食べていく?」
「健啖ねぇ。若さ、というより健康ね。羨ましいわ」
「宇宙船内の工場で作った食材とは全く違うのよね……。まだ慣れないわ」
「だから動けな……そうね、念動力を使えば良いのよね」(だから筋肉がつかないのです)



「はぁあ……」
 どうにも疲れた気持ちが抜けず、レイチェル・ルクスリア(畜生なガンスリンガー・f26493)は大きく息を吐き出した。
 いくら雑魚とはいえ、あれだけ大量の敵を相手取れば、疲労が溜まるというものだ。
 泉では今も、猟兵と冒険者が水と戯れている。畔での飲み会も盛況だ。
「必死の思いで掴み取った勝利を謳歌したい気持ちは分からなくもないけど」
 苦笑しつつ、喧騒から離れた場所で泉に身を浸す。癒やしの力は、レイチェルの疲れた精神までもを慰めてくれた。
 なるほど、悪くない。酷使し悲鳴を上げていた四肢の痛みが消えていく感覚は、冒険者がここに集う理由を物語っているようだった。
 水中の岩に腰かけ、半身浴を楽しむレイチェルは、遠くに聞こえる戦士たちのはしゃぐ声に微笑など浮かべながら、クールな自分をも堪能していた。
 童心に帰って遊ぶ彼らを、遠巻きに見守る――そんな大人の女性の気分を満喫していたのだが、ふと耳に入った声に、現実に引き戻された。
「あいたた、いだだだだだ……」
「……」
 腰痛に苦しむ老婆のように苦痛を訴える声は、しかし若かった。どう反応していいか分からない声に振り返ると、桃色の長髪が揺れていた。
 昨夜の戦いに参加していた猟兵であることは分かったが、本当に腰やら脚やらをさすりながらやってくるものだから、やはり、どういう顔をしたらいいか分からなかった。
 木々を渡り歩くようにして、ひぃひぃ言いながらやってきた女は、レイチェルに気づかず苦し気に独り言を発した。
「あぁもう、念動力しか使っていないのに、どうして筋肉痛になるのよ」
「無理して走ったりしたんじゃないの? 運動不足の魔術師さん」
 まさか返事が来るとは思わなかったようで、筋肉痛の女、エーカ・ライスフェルト(ウィザード・f06511)は、驚いて顔を上げてからバツの悪そうな顔をした。
「……あら、人がいたのね」
「えぇ、優雅なひと時を楽しんでいたわ。腰痛持ちの誰かさんが来る、つい今しがたまでね」
「ふぅん。一人で離れて、誰とも話せずにねぇ。確かに優雅なものだわ」
 バチリと何かが弾ける音が、二人には確かに聞こえた。
「……」
「……」
 半身を水に浸した女と、中腰で足をさする女が睨み合う。
 ややあって、エーカはため息をついた。
「まぁいいわ。ケンカしてもしょうがないし。ご相伴に預かっても?」
「どうぞ」
 言われるままに、エーカはスカートをまくって泉に入った。痛む足にそっと水を塗ってやると、それだけで痛みが引いていく。どの世界の湿布よりも効き目があると思った。
「あぁ……生き返るわ」
「それについては……同意するわね」
 二人揃って、「あぁ~」と息を漏らす。その姿は、UDCアースの銭湯に浸かるそれに近い。
 その時、二人は完全に油断していた。誰にも見られていないと思っていたからこそ、全身全霊でリラックスしていたのだ。
 だから、その声を聞いた瞬間、レイチェルとエーカは跳びはねるようにして驚いた。
「二人とも、お婆ちゃんみたいね」
「!?」
 二人して振り返ると、すぐ後ろに少女がいた。この仕事で転送役を担った、チェリカ・ロンドだ。濡れた髪が、もう泉で遊んだ後であることを教えていた。
 彼女は大人の女たちを見て、クスクスと悪戯っぽく笑った。
「こんなところにいないで、みんなのところに来たらいいのに」
「……お子様には分からない楽しみ方をしているのよ。別に、戦場以外でのコミュニケーションが苦手っていう訳じゃ無いんだからね?」
「レイチェルさん、聞かれていないことは答えなくていいと思うわ」
 首を振りつつ言ったエーカが、痛みのなくなった足を一度撫でて、水から出た。そのタイミングに合わせるかのように、彼女の使役する悪魔【シルキー】が、どこからかワゴンを引いてやってくる。
 手際よくテーブルなどのセッティングを済ませた家事の悪魔は、頼まれていたらしい肉料理を手際よく皿に盛り、主へと深く一礼した。
 エーカは満足げに頷いた。
「ご苦労様、シルキー。さぁ、筋肉をつけるためにも、お肉を食べなければね。お二人も食べていく?」
「いいの!?」
 いち早く反応したのは、チェリカだった。まだ成長期の少女だ。食欲は旺盛らしい。
 レイチェルは「ワインがあれば食べるのだけど」などと言った。本当は酒の味にこだわるタイプではないのだが、優雅に過ごすのだという意地が勝った結果らしい。本当にワインを出されてしまったので、エーカやチェリカと卓を囲むことにする。
 二人ともがあまり他者とつるむ習慣がないので、会話がなくなったらどうしようかと思ったが、おてんばな少女が肉を食べながらよく喋るので、それに合わせる形で会話が進んだ。
「えっ、じゃあ二人とも、二十四歳なの? 同い年なんだ!」
「そうらしいわね。今知ったわ」
 エーカが首肯する。そろそろ年齢というものを数えることに嫌気が差しつつあったが、同年齢となるとやはり親近感が湧くのは、面白いものだと思った。
 しかも話を聞くに、二人とも幼少期の環境が過酷で、生きるために手段を選ばずに今日まで来ており、戦闘においても容赦を知らず、悪事と呼ばれることに抵抗がないタイプだった。
「……レイチェルとエーカ、そっくりよね! 私、今どっちと話してるのか分かんなくなっちゃったわ」
「ちょっと、それくらい区別はつけてよ。私はエーカみたいに四六時中ドレスを着る趣味はないわ」
「そうよ。私だってレイチェルさんよりコミュニケーション能力が高いんだから。一緒にしないで」
「……」
「……」
 レイチェルが握るフォークが曲がり、エーカのグラスにひびが入る。バチリと何かが弾ける音が、また聞こえた。その様子を半眼で眺めるチェリカが、「ほら、似てるじゃない」と呟いたが、二人はきっぱりと無視した。
 一触即発の状態は、二人の疲労感を理由に無言で協定が結ばれ、解消された。
 エーカはチェリカの食べっぷりがあまりにも良いので、グラスを傾けつつ頬杖を突き、口元を綻ばせた。
「健啖ねぇ。若さ、というより健康ね。羨ましいわ」
「すごく美味しいわよ! ここのお料理、素材が全部泉の水を使ってるんだって」
「ふぅん。ミレイユだけじゃなくて、この世界の料理は宇宙船内の工場で作った食材とは全く違うのよね……。まだ慣れないわ」
「世界が変わっても食べていけるってだけで、ありがたいことよ。生き残れるんだから」
 甘味の強いワインを飲み干して、レイチェルは肉を咀嚼した。確かに美味い。だが、生焼けの状態なので日持ちはしそうにないなと思った。
 その後も適当な雑談を挟みつつ、エーカとレイチェルが二切れ、チェリカが四切れの肉を食べ終えたところで、この場はお開きとなった。
「ご馳走様。じゃ、私はこれで」
 レイチェルが立ち上がり、皆が集まる町の方とは真逆の方向へと歩き出す。「どこに行くの」とチェリカに問われ、彼女は肩越しに振り返った。
「一人になりたい時が、女にはあるのよ。お子様には分からないかもしれないけど、ね」
 むっと頬を膨らませる少女を置いて去る女の後ろ姿は、確かに大人の雰囲気が漂っているように思えた。
 一方、同じ年のはずのエーカは、「まだちょっと腰が痛むわね」などと言いながら、悪魔に後始末をさせていた。
「はぁ、年は取りたくないものだわ」
「大丈夫?」
「えぇ。念動力を使えば動けるわ」
 だから筋肉がつかないのだと内心で反省しつつも、不可視の力で自分を持ち上げつつ答え、チェリカと手を振って別れた。
 移動する道すがら、遠目に冒険者の女たちが水辺で遊ぶのが見えた。大変に、スタイルがいい。
 自分も決して、悪いわけではないけれど。思えばレイチェルの四肢も引き締まっていた。
「……筋トレ、しないと」
 一人呟いたエーカの決意を知る者は、いない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

上野・修介
※ア
まず周辺を探索し残敵確認と怪我人の搬送や周囲の片づけを行う。

「すみません。飲み物を頂けますか?……あ、お酒の入ってないので、お願いします」
(※下戸)

作業が終わったら、飲み物と食べ物を少し分けて貰い、ひとりでぼうっと泉を眺めながら、闘った『彼ら』を思い返す。

まかりなりにも、『今』の先を――更なる力を求め、日々鍛錬と思考を重ねる身としては、彼らの姿、在り方は『他人事』ではない。

「あれも、力を求めた果ての姿か」

……俺も大差はないのかもしれないな

拳に目を落とし『先生』の言葉を思い出す。

――思い、悩み、考え続けなさい。
――それをやめたとき、私たちは容易に修羅へ堕ちます。

「この拳の先、か」



 門外を一人で歩きながら、上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)は戦場に折れた刃などを回収しつつ、辺りの残敵確認を行なっていた。
 気配はない。実際目で見て回っても、もう敵の姿はなかった。予想はしていたことだが、どうしても念を入れておきたかった。
 あれだけ楽しそうに祭りを楽しんでいるのだ。オブリビオンに水を差されたくはない。
 警戒を終えて、ミレイユの町へと戻った。忙しそうな商店の通りを抜け、泉を見渡せる坂を下っていくと、次第に出店や飲み物などを配り歩く人が増えていく。
 猟兵と冒険者が入り混じって楽しんでいる様子は、この世界ならではと言えるだろう。見ていて心が和む光景だった。
 泉の畔までやってきたところで、若い女――戦士ではなさそうだ――が飲み物を進めてきた。並ぶグラスは、やはりほとんどがアルコールだ。
 修介は苦笑した。下戸なのだ。
「……お酒の入ってないので、お願いします」
「あら、可愛いのねぇ」
 そう微笑んで、女は果汁入りのグラスを差し出してくれた。背丈もそれなりに高く、体も鍛えていると自負する彼にとって、女の評価は少々気になるところだった。
 とはいえ、無理して酒を飲めばろくなことにはならないので、礼だけを述べて去ることにした。
 少し歩き、泉のそばに倒れた倒木に腰を下ろす。騒がしく遊ぶ冒険者と猟兵の声、吟遊詩人の歌が、遠くに聞こえた。
 ジュースを飲みつつ、泉を眺める。陽光を反射する水面を見るうち、闘った『彼ら』を思い返す。
 血の一族。その在り様は、曲がりなりにも『今』の先を目指し、力を追い求める修介にとって、他人事ではなかった。
「……あれも、力を求めた果ての姿、か」
 竜に挑むために、武を磨き続けた者達だった。しかし、狂った歯車は彼らから思考を奪い去ってしまった。
 力の向かう先。強くあろうとする以上は、常に考え続けなければならない課題だ。一歩踏み外せば、戦士はいつでも闇に堕ちることができてしまう。
「……俺も、大差ないのかもしれないな」
 独り言ちて、拳に目を落とす。傷の多い手を見ているうちに脳裏に蘇るのは、師の言葉だった。

――思い、悩み、考え続けなさい。
――それをやめたとき、私たちは容易に修羅へ堕ちます。

 修羅と呼べるであろう者とは、幾たびも戦ってきた。圧倒的な力を持ちながら道を踏み外してしまった戦士たちは、そのほとんどが虚しい結末を迎えている。
 力を求めたから滅びたのではない。彼らは、力に溺れたのだ。強さを履き違えてしまえば、身も心も人ならざる人へと成り果ててしまう。
 最期は討たれた彼らが、修介にはどうしても異常で特別な存在だとは、思えなかった。
 次は、自分の番かもしれない。この拳で、仲間を傷つけ、罪もなき人を殺める日が来る可能性は、決してゼロではない。
 だからこそ、辿り着かなければならないのだ。
「この拳の先――か」
 握り固めた右手を空へと突き上げ、眺める。すぐそばにあるというのに、どんな霊峰の頂よりも高遠で深大に見えた。
 しばらくそうして拳を見つめていた修介は、立ち上がり、ジュースを一息に飲んだ。
 結局、答えは変わらない。足掻き、もがいて、進むしかないのだ。
 拳が示す道を、ただ、前へと。
「……行くか」
 見果てぬ武の探求は、続く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

乱獅子・梓
【綾(f02235)と】ア
触れるだけで傷が癒える泉か
いったいどんな原理なんだろうな
出来るなら俺達の故郷に持ち帰ってやりたいくらいだ

お前らもよく頑張ってくれたな
特に焔、血の一族から受けた傷は
ちゃんと治しておくんだぞ
と、焔と零を泉の中に浸からせる
楽しそうにバタ足で泳いだり潜水したり
水遊びしている姿は見ていて微笑ましい

…おい、綾
他人事のように言っているが
お前も戦いの傷が残っているだろう
今のうちにお前も浸かっておけ
言う事聞かないと無理矢理泉の中に放り込むぞ

よし、傷が癒えたら美味いもんでも食いに行くか
…って反応速いなお前ら
美味いもんと聞いて勢い良く
肩に乗ってきた二匹の仔竜に苦笑しつつ
泉の畔へと向かう


灰神楽・綾
【梓(f25851)と】ア
ここは魔法の世界だからね
理屈では説明出来ないような
不思議な力が至る所にあるんだよ、きっと
この町の人達が積極的に戦えるのも
この泉のおかげなんだろうね

焔の傷、あまり深くないようで良かったね
焔のおかげで作戦が上手く行ったから感謝しなきゃ
本当は焔が攻撃を受ける前に
俺が割り込めたら良かったんだけどねぇ
と、先の戦いを振り返り

えー、梓は過保護だなぁ
この程度、放っておいてもそのうち適当に塞がるのに
あはは、そんな恐い顔しないでよ
これ以上あしらったら本当に投げ込まれそうだし
大人しく言うこと聞いて
まず手を泉に浸けてみる
優しく傷が癒えていく感覚が気持ちいい

仕事上がりの一杯ってやつか、いいねぇ



 揺蕩う水面に映る自分に、普通の水との差異はない。触れた限りも性質に違いはなさそうで、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は腕を組んで唸った。
「触れるだけで傷が癒える泉か……。いったいどんな原理なんだろうな」
「ここは魔法の世界だからね。理屈では説明出来ないような不思議な力が至る所にあるんだよ、きっと」
 岩に腰かけて言う灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は、不思議を不思議に留めることに、何ら違和感を覚えなかった。
 分からないものは、分からなくてもいい。ただ傷が治る効果があるという事実だけで、十分だと思った。しかし梓は気になるようで、何度も水に触れたり口に含んでみたりと、忙しい。
 数分後、諦めがついたらしい彼は、立ち上がって綾へと振り返った。
「……お前の言う通りみたいだな、綾。あんまり深く考えない方がよさそうだ」
「分かってもらえて何より。……この町の人達が積極的に戦えるのも、この泉のおかげなんだろうね」
 綾の目は、泉で遊ぶ冒険者と猟兵を見ていた。誰もが心からはしゃいでいる姿は、この泉が体の治癒だけでなく、精神的なモチベーションにも深く貢献していることを物語っている。
 生まれ故郷の世界にも、このような場所があるのだろうか。あったとして、とうの昔に吸血鬼に潰されてしまっていそうだが。梓はぼやいた。
「出来るなら、俺達の故郷に持ち帰ってやりたいくらいだ」
「あっという間に噂が広がるだろうね。領主の進攻待ったなし」
「ぞっとしねぇな」
 揃って苦笑する。いつかダークセイヴァーが平和になった時、こうした神秘を復活させることもあるのだろうかと、梓はぼんやりと思った。
 ふと、肩の赤竜が鳴いた。飛び回っていた青い竜も一緒になって主のもとにやってきたので、その頭を撫でてやる。
「お前ら、よくがんばってくれたな。特に焔、血の一族から受けた傷は、ちゃんと治しておくんだぞ」
 まるで自分の子供にそうするように優しく声をかけ、二匹の仔竜を泉の浅瀬に浸す。途端、炎竜【焔】の傷が眩い光に包まれて、瞬く間に治癒された。痛みもないらしく、焔は上機嫌に鳴いた。
 氷竜の【零】も体の調子がいいらしく、二匹はバタ足で泳いだり潜水したりして、仲良く遊んでいる。その様子を微笑ましく見守りながら、綾が言った。
「焔の傷、あまり深くないようで良かったね」
「あぁ。あの程度でやられる奴じゃないが、やっぱり怪我されるのはいい気持ちじゃねぇな」
「だね。本当は焔が攻撃を受ける前に、俺が割り込めたら良かったんだけどねぇ」
 夜半の戦いは、省みる点が多い。敵の動きを読み違えたわけではないが、焔との連携が完璧なものとはならなかったことには、悔いがある。
 もっとも、失敗はまだ成長できる証でもあるので、思いつめるようなことはしない。今後も梓と共に戦う中で、より高め合っていけることだろう。
 元気に泳ぐ焔と零を眺めて「よかったよかった」と言っていると、隣で梓が難しい顔をした。
「……おい、綾。他人事のように言ってるけどな、お前も戦いの傷が残っているだろ」
「ん? あぁ、まぁ傷と言えば傷か」
 確かに、綾は負傷していた。とはいえ大したことはないと思うし、実際血も止まっている。痛みも動きを阻害するほどのものではないので、気にしていなかった。だが、梓は気になるようだ。
「今のうちにお前も浸かっておけ」
「えー、梓は過保護だなぁ。この程度、放っておいてもそのうち適当に塞がるよ」
「いいから。言う事聞かないと無理矢理放り込むぞ」
 梓のサングラス越しに目が合い、これは本気だなと感じた綾は、苦笑しつつ立ち上がった。
「そんな恐い顔しないでよ。……投げ込まれるのは嫌だし、大人しく入りましょうかね」
 泉に近寄り、まずは手を泉に浸けてみた。感触は、やはり普通の水だ。しかし、焔の傷がそうなったように、綾の手に負った裂傷も、光に包まれ癒えていく。
 不思議な感覚だった。治癒魔法のそれに近いが、遥かに優しさを感じる。まるで、生かそうという大きな力が働いているようだ。
「うん……悪くないね」
 それならばと服を脱いで、綾はさっと水を浴びた。傷が癒えればそれ以上浸かる理由もないので、あっという間に上がってしまったが。
 なにも水遊びさせるつもりではなかったので、梓もその結果で満足だった。余計な包帯を巻く必要がないのはいいことだと、頷く。
「便利なもんだな。あー、やっぱ持って帰りてぇなぁ、この泉」
「その発想、うちの世界の領主どもと似てるよ」
「馬鹿、別に奪うなんて言ってないだろ」
 冗談を言い合いながら、綾は体を拭いて服を着こむ。ふと、その身に痛みを感じなくなっていることに気がついた。どころか、体力もすっかり回復している。
 調子がよさそうな相棒の姿に、梓もご満悦だった。
「よし、傷も癒えたみたいだし、美味いもんでも食いに行くか!」
「仕事上がりの一杯ってやつか、いいねぇ」
 普段は酒をあまり飲まない綾も、今日は乗り気だ。もし記憶が飛びそうになったら、泉の水で中和してやろうという魂胆だった。
 ここの料理は美味いらしい、と綾が言うと、二匹の仔竜が水辺から飛び出し、勢いよく梓の肩に乗ってきた。
 期待に輝く竜の目に、思わず苦笑する。
「食い物のことになると反応速いな、お前ら」
「たくさん遊んでたからね、お腹が減っているんだよ」
 竜の思いを綾が代弁すると、二匹は「キューキュー」「ガウガウ」と鳴いた。同意を示しているのだろうことは、言葉がなくとも分かった。
 これは消費が多そうだと、梓は覚悟を決めた。しかし、友らと美味い物を食うことは、彼も楽しみだった。
「まずはビールだな」
「基本だね。キンキンに冷えてるのでいこう」
「決まりだ」
 燦々と輝く太陽の下で、喉を潤す一杯を。気づけば仔竜たちより期待に胸を膨らませながら、二人は泉の畔――吟遊詩人が歌う中、酒と食事が振る舞われているテーブル群へと歩いていく。
 今日は、いい休日になりそうだ。
 この機会を逃さずにしこたま楽しもうと、並び歩く梓と綾は、そう心に決めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
ア連

(祭りを盛り上げようと人用ナイフ摘まみUCの応用で果実や木片を削って犬、猫、兎等動物を象り子供達に配り)
後は動作速度を…
(作業速度加速)
次は何をお作りいたしましょう?

竜、ですね

(竜という標を失い狂った血の一族
仮に、もし世に真の平穏が…戦う戦機の騎士など不要な「めでたしめでたし」が訪れたなら…潔く永い眠りにつきたいものです)

はい、どうぞ

後で私物の本に書き記す為、吟遊詩人の歌をセンサーで拾っていたことに思い至り

(新たな標を、目標を見出す…『生きる』とはその繰り返しなのかもしれませんね)

ああ、チェリカ様
何時もお疲れ様です

最近、出来た目標などは御座いますか?

私は、今は希望者に配り終わること、ですね



 泉へ続く坂の途中に、人だかりができている。そのほとんどが、子供だった。
 彼らが手にしているのは、木製の犬や猫だった。動物を象った木々は非常に精巧に作られていて、子供たちは「すごい」「かっこいい」「かわいい」「すごい!」と、少ない語彙で一生懸命に喜びを表現している。
 その最中にいるのは、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)だった。身の丈からすればいかにも小さな果物ナイフを摘まみ、これらの制作に勤しんでいる。
 初めはリンゴなどの固めの果物でも作っていたのだが、女の子が「うさぎちゃんがかわいそう」と言って食べられず、泣き出してしまったので、それからは廃材の木片に頼ることにしていた。
「さぁ、どうぞ」
 トリテレイアが差し出した小鳥の模型を受け取り、年のころ十歳くらいの少女が、空に掲げて目を輝かせる。その表情だけでも、盛り上げ役を買って出た報酬として十分だった。
 群がる子供たちのリクエストを順に聞いていた機械騎士の前に、男の子が立つ。彼は自分の番が来たと見るや、元気に言った。
「オレ、竜が欲しい! 強くて、かっこいいの!」
「竜、ですね。お任せを」
 頷いて作業に取り掛かり、大枠の形を作りながら、トリテレイアは夜半の戦いを思い出した。
 竜という目指すべき標を失い、狂った血の一族。存在価値を否定されてしまった挙句の、悲劇だ。
 考えるのは、いつか世に真の平穏が訪れた、その時のことだ。戦う時代に「めでたしめでたし」が訪れ、戦機の騎士が不要になったなら。
「……潔く、永い眠りにつきたいものです」
「なんか言った?」
 ドラゴンを所望する少年が、首を傾げた。「いえ」と首を横に振ってから、トリテレイアはあっという間に出来上がった、翼を広げた竜の木彫りを少年に手渡してやった。
 見せびらかす少年の周りに男の子たち集まって、賞賛の声を上げる。その様子に頷きつつ、泉の方へ向けていたセンサーを確認した。私物の本に書き記そうと、吟遊詩人の歌を拾っていたのだ。
 どれもトリテレイアが知る騎士物語と比べると、インパクトに欠ける気がした。だが、命短い人が、小さくとも目標を見出していく物語は、まさしく『生きる』ということを歌っているように思える。
「……その、繰り返しなのかもしれませんね」
 思案しつつ木彫りのリクエストに応えていると、彼を囲む子供たちの中に、よく知る姿を見かけた。この戦いで転送役を担った、チェリカ・ロンドだ。
 彼女は何やら難しそうな顔で、トリテレイアの手元を覗き込んでいる。自然と、声をかけていた。
「ああ、チェリカ様。いつもお疲れ様です」
 呼ばれて顔を上げ、目が合うと、チェリカはそのままの顔で言った。
「ねぇトリテレイア。あなた、魔法使えたっけ?」
「いえ。これは機械の身であることを最大限に活かしているだけです。出力、動作制御を応用して――」
「ふーん、機械ってやっぱすごいのね」
 熱心に頷く少女だが、恐らく何一つ分かっていないのだろうなとトリテレイアは思った。
 興味深げに木彫りが作られていくのを見つめるチェリカは、まだ幼い。子供たちに紛れても全く自然であることが、その証拠だ。
 ふと、トリテレイアは気になった。若くして猟兵となった者は多くいるが、まだ子供と呼べる年齢にして戦う立場となった彼らは、どのような未来を描いているのだろうか。
 あるいは、残酷な使命を背負っていたりするのかもしれない。ダークセイヴァー出身というから、なおさらだ。
 声のトーンを落として、トリテレイアは尋ねた。
「チェリカ様は、最近できた目標などはございますか?」
「目標? うーん、そうねぇ……あ、聖歌を上手に歌えるようになりたいかな。今度、うちの教会で発表会があって、練習してるのよ」
 真剣に悩む少女の顔立ち通りの、幼い答えだった。「そうですか」と頷きながら、微笑ましく思う。
 他にも夢があるらしく指折り数えていたチェリカが、おもむろにトリテレアを見上げた。
「トリテレイア、あなたにはどんな目標があるの?」
「私は……」
 ブレインに過ぎるのは、騎士になるという言葉。理想の在り方を目指せど、届く気配は未だない、目標。届くのかどうかも分からない、遠い遠い夢だ。
 そう語ろうとして、今はやめた。首を傾げて待っているチェリカに、笑いの混じった声とともに木彫りの動物たちを指さした。
「喫緊では、希望者にこれを配り終えること、ですね」
「なるほど。ふふ、大人気だものね、騎士様。じゃあ特別に、異世界の聖女様が手伝ってあげるわ!」
 こちらの想いを知ってか知らずか、からかうように言ってから、チェリカは完成した木彫りを子供たちに配り始めた。
 今にも動きそうな動物の姿に、いくつもの幼い笑顔が溢れる。泉の輝きよりもずっと眩いなと、トリテレイアは思った。
 頂きの見えない目標を叶えた時のことは想像もできないが、今は目の前の喜びを噛みしめよ。そうして、一歩一歩、前に進んでいくのだ。
 小さな目標を積み上げて、いつか見えた頂点に、手を伸ばせるように。
「恐らく――それが、正しい道なのでしょうね」
 トリテレイアもまた、この今に『生きる』存在なのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雨音・玲
【アドリブ大歓迎】
っはぁ~~今回はマジで疲れた…
一張羅がボロボロだわ
まぁミレイユの町民達の笑顔を見れたから報酬としては十分かな?

陽光の反射する癒しの泉に飛び込み
今回の戦いを思い出しながら
脱力しながらぷかぷかと水面に浮かんで傷を癒します

んっーこの泉マジですげぇな
身体バキバキでしばらく絶対安静かな?とか自己判断してたんだけど…
コレならまだまだ戦えるぜ―
ぐっぱぐっぱして身体をほぐした後に立ち上がり周辺の冒険者たちに声を掛けます

さてとー祝勝会しようぜ!!
潰れても寝かさねーぞ!飲んで食べて思いっきり騒ぐぞー!!!



 どうやら忙しいらしい友人と別れ、雨音・玲(路地裏のカラス・f16697)は一人、泉の畔を歩いていた。
「っはぁ~、今回はマジで疲れた……」
 右肩を回しながらぼやき、自分の服を見下ろす。せっかくの一張羅が、ボロボロになってしまった。
 だが、すれ違う人々の溢れる笑顔を見ていると、そうしたこともさして気にならなくなってくるから、不思議なものだ。
「ミレイユの人らが笑ってくれるなら、報酬としては十分かな」
 そう呟きながら、猟兵と冒険者が泳ぐ泉へと歩く。水の力なのか、この辺りの草は踏みしめると確かな抵抗を反してきた。
 服を脱ぎ、水着に着替えて、陽光が煌めく水面目掛けて、飛び込む。水が体に触れた瞬間、玲は疲労感が一気に溶けだすのを感じた。
 水中の底まで透き通った泉の中は、心地いい。いつまでも沈んでいられる気がした。
 ゆっくりと浮上して、体の力を抜く。ぷかぷかと浮かびながら、体の傷を癒すことに集中する。内蔵に負ったダメージまでもが、薄く消えていった。
「んっー、この泉マジですげぇな……」
 伸びなどしながら、しみじみとそう感じる。戦いが終わった時には、しばらくは絶対安静もありうるかもしれないと自己診断していた。
 だが、今はどうだ。まるで戦う前――いや、休日の朝にも似た爽快感に包まれている。
「これならまだまだ、戦えるぜー」
 水面で手を握ったり開いたりして、ついでに全身の筋肉もほぐしてから、玲は泉から出ることにした。
 畔の祭りはいよいよ盛り上がり、一時でも静まる気配を見せない。祝勝会と洒落こむのなら、今しかないだろう。
 玲は手短な冒険者の肩に、まるで古くからの友人のように腕を回した。
「よー! 飲んでるか!」
「おっ!? 誰だか知らねぇけど、飲んでるに決まってんだろ! お前も飲め、ほら!」
 無償で提供されているはちみつ酒を手渡され、ケラケラと笑いながらジョッキをぶつけ合う。流し込んだ甘い酒は、思った以上に強く、玲の喉に熱をもたらした。
 たまらない快感だった。酒の味も相当なものだが、この場の熱気が、玲の心に火をつける。
「うめぇー! もう一杯!」
「いいねぇいいねぇ、どんどんいきな!」
 酒注ぎの女が、溢れんばかりに琥珀色の液体を注いだ。もし夜戦を共に戦い抜いた彼女がいたら、止められていたかなと、玲は頭の片隅で考える。
 だが、発想を転換する。友人の分まで楽しんでやらなければ、男が廃るというものだ。今日は嫁も見ていないし、二日酔いを防止する泉も近くにあるので、遠慮をしないと決めた。
 二度目の乾杯をし、一気に酒を飲み干して、急激に熱くなっていく思考をそのまま叫ぶように発した。
「今日はとことん祝い尽くすぜ! 潰れても寝かさねーぞ! 飲んで食べて思いっきり騒ぐぞーっ!!」
「おっしゃぁぁぁ!!」
 特に意味のない同意がそこかしこから上がり、玲は冒険者たちのテンションを肴に、また酒を呷った。周りの冒険者が応えるようにジョッキを開けて、さらに注がれる新たな酒で、また乾杯。
 いつまでも続きそうなこのループは、実際に周囲の冒険者が酔い潰れ、ついには玲も机に突っ伏すことになるまで繰り返された。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フランチェスカ・ヴァレンタイン
鎧装を外したフィルムスーツ姿で畔に脚を浸してのんびりしているものかと
水着になってたらどうなっていたことやら…などと、冒険者やら街の男衆が虎視眈々といった様子でちらちら向けてくる特定の箇所への視線に苦笑いなど零しつつ

振る舞われた地元のお酒で舌を湿らせながら、声を掛けてくるそれなりに手慣れた男連中をあしらっている感じでしょうか

今はこの景色を愉しんでおりますので、そういったお誘いはご遠慮くださいな。
…はい? そうですねえ… お開きの後に気が向いておりましたら、ええ。――お待ちになるかどうかはご自由に?

そんなわりとオトナなやりとりを、いつの間にか側に寄って来ていたチェリカさんが目撃していたとか何とか(



 当たり前のことだが、鎧装を外していると、やはり体が軽い。なんとも言えない開放感だ。
 身一つの心地よさを感じながら、フランチェスカ・ヴァレンタイン(九天華めき舞い穿つもの・f04189)はフィルムスーツのまま、泉の水に足を浸していた。
 基本的に飛ぶことの多い彼女だが、バーニアや砲塔の都合上、腰や足に負担がかかりやすい。癒やしの水は、その疲労をも取り去ってくれた。
「ふふ……気持ちいい」
 微笑みながら、フランチェスカは水を手で掬い、自分の腰から足へとかけていく。
 魔法的な力で癒やされる感触を楽しみながら、泉の水で作られたというワインを口へ。香り高い味わいが、舌の上に踊った。
 手を背中の後ろについて、仰け反るようにして体を伸ばし、ほぐす。フランチェスカとしては何気ない仕草だったが、胸を反らしたその姿は、彼女の豊満なスタイルを嫌でも強調した。
 すぐに、視線を感じる。意識されないように周りを見れば、冒険者の男連中がその肉体美に目を奪われている。
 呆れたように笑いながらも、女の体一つであんなにも目を血走らせてしまう彼らに、可愛らしさすら感じる。
「まったく……仕方のない人たちですこと」
 呟き、そのまま泉を眺めつつ、美酒を楽しむ。一人で静かな時を――と思っていたのだが、すぐに幾人かの勇気ある男たちがやってきた。
 隣、いいかな。一緒に楽しもう。歌はどう。冒険譚を聞きたくはないか。
 強さを示し財力を見せつけ、知識や歌声を披露する。歴戦の強者たちは、あらゆる方法でフランチェスカを手に入れようとするが、その全てが玉砕していった。
 フランチェスカにとってみれば、それこそ数多の世界共通で男に誘われているので、こうした時のあしらい方には彼ら以上に慣れていた。
 最低限自尊心を傷つけないように、しかし端的に断っていく。次のチャンスを伺う者が後を絶たないのは、少し辟易した。
 今もまた、わざわざ鎧を着てきたらしい剣と盾の冒険者が、フランチェスカの隣に膝をついた。
「お嬢さん、もう嫌気が差しているとは思うが――」
 おや、と振り返る。これまで開口一番に自分のことを語る男ばかりだったが、彼はまず気を使ってくれた。
 話を聞くくらいなら、いいかしら。そう思って、微笑みを返す。これまでのない反応に、剣士はぐっと息を飲んでから、続けた。
「その、よかったら、一緒に町を歩かないか。案内したいんだ、君を」
「……お気持ちは嬉しいのですけれど、今はこの景色を愉しんでおりますので、そういったお誘いはご遠慮くださいな」
「そ、そうか」
 優しく断られた剣士は、しかし諦めなかった。数秒うつむき、顔を上げ、フランチェスカを真っ直ぐに見つめる。
「なら――祭りが終わった後、どうかな。君のことを、どうしても知りたい」
「……」
 胸の鼓動が、わずかに高鳴る。悪い気分ではなかった。
 少し考える素振りを見せてから、「そうですねぇ」と目を細める。
「お開きの後に気が向いておりましたら、ええ。――お待ちになるかどうかはご自由に?」
「!! ま、待つさ。いつまでだって、待ち続けるよ。これ、俺のいる宿だ。泉が見えるいい場所にあって……」
 口早に説明しつつ寝泊まりしている場所の地図を手渡され、フランチェスカにひとしきり話した剣士は、「待ってるから」ともう一度言ってから、立ち去った。
 小躍りするようにして遠ざかる姿を、可愛らしい子供を見守るように眺めていると、今度は少女から声をかけられた。
「フラニィ、友達と会う約束? もう少し残るなら、帰るの明日にする?」
 振り返ると、紫色の長いツインテールが揺れていた。予知と転送を担当したチェリカ・ロンドだ。
 目撃されてしまったらしいが、何もことに及んだわけではない。クスリと笑って、フランチェスカは空を見上げた。
「そうですねー、今日の夜には、素敵な景色を見せてもらえるそうですし……」
「え! なにそれなにそれ、いいなー!」
「ふふ……チェリカさんには、まだ少し早いですわ。立派なレディになってから……ね」
 唇に人差し指を当てて微笑する、その大人の余裕に、チェリカは頬を膨らませた。
 むくれる少女に「いつか分かる日がきますよ」と告げて、泉から足をそっと上げた。滴る水滴が、水面に幾重の波紋を作る。
「チェリカさん、悪いのですけれど、明日のお昼頃、また迎えにきてくださいます?」
「いいわよ。この町は楽しいものね! フラニィの気持ち、分かるわ!」
「……ふふ」
 意味ありげに笑うフランチェスカの想いなど知らずに、チェリカは「お菓子を見てくるね」と言って走っていった。
 小さな背中を見送って、口の端を緩めながら、独り言ちる。
「今宵は、いい夜になりそうですねぇ」
 一期一会の出会いだからこそ――。
 青空の向こうから訪れる、星降る夜の一時に、期待は膨らむばかりだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド

【街角】で参加
それでは、せっかくですし私たちもお祭りに……メンカルさん?

私では調査の助けにはなりませんし……調査に区切りがついた時に休めるよう食べ物と飲み物を貰ってきておきましょうか。
泉の水を使った飲み物や料理をもらってきて、泉の畔で足を浸けながら調査を見ていましょう。
飲み物や料理は糖分補給と自分の趣味を兼ねて甘い物を多めで。

泉の周りにこれだけの街ができるということはかなり以前から泉が湧いていそうです。
それでも高い治癒効果を持っていることを考えると、この世界でも貴重なものでしょうね。


メンカル・プルモーサ
ア 【街角】で参加
…さて。傷が治る泉か…これも興味があるね…ダンジョンで見かけるけどそれよりも効果が強力だ…サンプルを採取しつつ軽く調べてみようか…… (周囲に科学・魔術的な分析機具を展開)
……ふむ……科学的には水質が極上の普通の水と変わりなし……やはり魔術的要素だな…
…聖なる、と言うだけあって何かの加護か成り立ちも気になる…あとで古老にも話を聞いてみるか…
……んむ、セルマ…差し入れ?ありがとー…水質そのものがいいから料理も美味しくなってるね…
(もぎゅもぎゅ食べつつ)これだけの回復力はなかなか無い……興味深い…病気や呪詛の類に対してはどうだろうか…(目を輝かせながら調査を続行する)



 えらく賑やかだ。これまでも何度か冒険者と交流してきたが、彼らはいつだってそうだった。
 あのようにはしゃぐことはきっとできないだろうけれど、たまにしかない機会だ。セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は、連れ立って歩いているはずの友人に言った。
「せっかくですし、私たちもお祭りに……」
 反応がない。立ち止まって、振り返った。
「……メンカルさん?」
 名を呼んでも、返事がなかった。どこにいったのかしらと辺りを見回してみると、冒険者たちが水を掛け合う泉のそばに、灰色のウェーブヘアがしゃがみ込んでいる。
 服を脱ぐような素振りもないので、まさか泳ぐわけでもあるまい。近づいてみると、その少女――メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)が、ブツブツと呟いているのが聞こえた。
「……さて。傷が治る泉か……これも興味があるね……。たまにダンジョンで見かけるけど、それよりも効果が強力だ……」
 水に触れて具合を確かめ、ついでメンカルはごちゃごちゃと道具を広げ始めた。科学なのか魔術なのかは分からないが、何かしらの分析機具らしい。
 彼女らしいなと思いつつ、セルマは声をかけるのを止めた。手伝えるものではないので、調査に区切りがついたときに休めるよう、食事と飲み物を買いに行くことにした。
 静かに去っていくセルマに気づかず、メンカルはどっぷりと水質調査に集中していった。冒険者たちが異様な目で見ているのにも、気づかない。
 採取したサンプルを分析機にかけ、その数値を確認。表示されたそれを見て、新たな謎に直面し、腕を組む。
「……ふむ……科学的には水質が極上の普通の水と変わりなし……やはり魔術的要素だな……」
 メンカルはウィザードだ。いくつかの世界で使われている魔術系統を統合して、オリジナルの術式を編み出している。その中に、アックス&ウィザーズの魔術も含まれていた。
 だが、これは知らない。確かに癒しの力が働いているのに、発動の術式が見えず、魔法的痕跡すら残らないのだ。
「……聖なる、と言うだけあって、何かの加護かもしれないな……。成り立ちも気になる……。あとで古老にも話を聞いてみるか……」
 だんだんと楽しくなってきたメンカルだが、戦闘の後に休息を取っていないため、急にお腹が空いてきた。疲労は泉の水に触れた時点で回復したものの、こればかりは嘘をつけない。
 集中力が切れたところで、隣から聞こえた物音に気づく。
 見ると、セルマがいた。サンドイッチと飲み物が入った籠を抱えたまま、泉に足を浸してこちらを見ている。
「……んむ、セルマ」
「やっと気づきましたね。調査の首尾はどうですか?」
「んー……いいんだか、悪いんだか……」
 よく分からないものであることは、だんだんと分かってきた。そう語ったメンカルは、どこか悔し気だった。
 彼女が調べて分からないものを、セルマが分かるはずもない。なので、いつものように淡々と、糖分補給と自分の趣味を兼ねたクリームと果物ジャムのサンドイッチを差し出した。
「食べましょう」
「……差し入れ? ありがとー……」
 二人して、頬張る。無言で咀嚼し、ジュースを飲み、また食べて、同時に一切れを食べ終わったところで、メンカルが言った。
「水質そのものがいいから、料理も美味しくなってるね……ジャムサンドだけど……」
「これも泉の力、でしょうか」
「かもね……」
 口数少なく話してから、二つ目を征服にかかる。
 はた目から見れば、少女が無言の真顔でサンドイッチを頬張っているのだから、おおよそ楽しい光景には見えないかもしれない。だが、当の本人たちは十分に充実した時を過ごしていた。
 三切れ目に手を伸ばしつつ、メンカルは再び泉の水に気を取られ始めた。計器に目をやり、水を掬ってみたりしながらジャムサンドを齧るので、セルマはお行儀が悪いなと思った。
 もぎゅもぎゅと食べつつ、メンカルが目を輝かせる。
「これだけの回復力はなかなか無い……興味深い……」
「泉の周りにこれだけの街ができるということは、かなり以前から水が湧いていそうです。それでも高い治癒効果を持っていることを考えると、この世界でも貴重なものでしょうね」
「それは間違いないね……。もしかすると、勇者とヴァルギリオスが戦った時代にも、この水は回復薬として使われていたりしたのかも……」
 自分の仮説に対して、より一層心を踊らせるメンカル。楽しそうなのは結構だが、口の周りのクリームは拭いてほしいなと思いつつ、セルマは自分のサンドイッチを食べるのに一生懸命だったので、黙っておいた。
 指についたジャムを舐めつつ、メンカルが言った。
「……病気や呪詛の類に対しては、どうだろうか……。セルマ、ちょっと呪われてみてくれない……?」
「イヤです」
「そう……残念……」
 淡々としている割りに若干物騒なやり取りに、通りかかった魔法使いの男が、不思議そうに眉を寄せていた。しかし、彼女たちは楽しんでいるので問題ない。
 好奇心の赴くままに水のあれこれを調べ続ける少女のそばで、セルマは膝に頬杖を突きながら、その様子を眺める。
 機材でやっていることはよく分からないが、眠たげな顔の割りに活き活きとしているメンカルを見ているのは、不思議と飽きなかった。
 それから数十分。泉で遊ぶ冒険者がすっかり入れ替わってしまった頃になって、調査はようやく終わった。機材を撤収し始めた友人に、セルマが尋ねる。
「どうでしたか?」
「……やっぱり、ものはただの水だね……それ以上は、今は分からない……」
「そうですか。では、お菓子を食べに行きましょう。あちらでクッキーが焼かれているらしいですよ」
「いいね……。それも興味深い……」
 そそくさと広げた器具を回収し、二人は開いた皿とグラスを手に、真っすぐ菓子を配る女性のもとへと向かっていった。
 お互いの興味が赴くものを、お互いが尊重し合う時間。笑い声をあげることこそほとんどなかったけれど、セルマとメンカルにとって、それはとても楽しいひと時だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
ともあれ街が守れて良かったよ
折角だから祝宴に混ざって楽しもうかな
勇士達と勝利に乾杯
そして犠牲になった人がいるなら弔いも籠めて

見た目は若いけどちゃんと飲酒できる年齢だよ
ここなら珍しくないかもしれないけど

槍使いがいたら一杯奢ろう
僕の言葉を信じてくれて助かったよ
あそこで同士討ちになったら目も当てられなかったしね

邪神と使い魔はその辺で甘いものを食べて遊んでるよ
もちろん使い魔は超硬装甲は邪神の聖域に置いて人間大だよ
前者は何もしてなかったのにいい根性してるよなぁ

あら、ちゃんと晶に力を供給してましたの

チェリカさんに会ったら挨拶しておくよ
いつも予知お疲れ様
年齢的に一緒に飲めないのは残念だけど
果汁なら大丈夫かな



 変わらぬ朝を迎えられたミレイユは今、祝宴の活気に満ち溢れている。
 門の外には夥しい数のモンスターの死体があるはずだが、今のところ、冒険者たちにそれを気にする様子はない。泉に飛び込み飛沫を上げて遊び、上等な酒と食い物に酔っている。
 その鮮やかが過ぎるコントラストに戸惑いながらも、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は笑った。
「ともあれ、町が守れてよかったよ」
 一歩違えば、今溢れている笑顔が全て、絶望と悲嘆に暮れていたかもしれないのだ。そのことは、彼らと共に素直に喜びたいと思った。
 畔にいくつも設置されたテーブルに、食い物と酒が並べられている。せっかくの祝いだ、ごちそうになろうと近づいた。
 卓を覗き込むと、そこには色とりどりの料理が盛られ、戦士たちが豪快に取り皿に盛っては、口に放り込んでいる。もたもたしていると、なくなってしまいそうだ。
 自分の皿に肉を取っていると、対面に見た顔がいた。昨夜の戦いで出会った、槍使いの男だ。目が合って、相手も気づく。
「お、アンタは空飛ぶ竜使いの嬢ちゃん」
「はは、まぁその通りだけどね」
 あの場の見た目だけならば、だ。邪神の力を使役するなどと言えば余計な混乱を招きそうなので、詳しい説明は避けた。
「あの時は、信じてくれてありがとう。助かったよ。よければ一杯奢らせてくれないかな」
「あん? 俺ぁ別に、ただ死にたくなかっただけなんだが……まぁ、奢ってくれるってんなら、遠慮はしねぇぜ」
 自分に正直な男だ。晶は頷いて、並べられているものより上等な酒を売る商人のところで、エールを二杯購入し、一つを槍使いに渡す。
 乾杯、と盃を出すと、彼は眉を寄せた。
「……アンタ、酒飲んでいいのか? 子供にしか見えねぇが」
「はは、まぁそう思うよね。見た目は若いけど、ちゃんと飲酒できる年齢だよ」
「ドワーフかなんかか? まぁいいや、乾杯!」
 よくはないが、やはり説明が面倒なので、晶は苦笑しつつ乾杯に応じた。
 確かに、いい酒だった。甘露な味わいは、泉の水からもたらされているのだろうか。共に飲む者がいるというのも、美味しさの理由かもしれない。
 一杯飲み干したところで、仲間に誘われた槍使いは、片手を挙げて去っていった。名残惜しさを感じさせないさっぱりとした別れは、冒険者特有の気質だろう。
 ふと体が軽くなる感覚があり、晶は背後を振り向いた。そして、渋面を浮かべた。
 自分と同じ姿の少女が、甘味を堪能している。隣にいるのは、昨夜戦った使い魔――その中身の姿――だ。傍目から見れば、女の子が二人して菓子に舌鼓を打っているようにしか見えない。
 だが、晶は穏やかではなかった。
「……お前、何やってんの?」
「あら、見て分かりません? お菓子を食べていますの」
「そういうことじゃなくてさ」
 彼女は、晶の内に潜む邪神だ。最近は勝手に肉体を持って外に出るようになり、厄介なことこの上ない。使い魔も、彼女が召喚したのだろう。
「お前が出るのはもう諦めたけどさ。勝手に使い魔を呼ぶなよ」
「ご挨拶ね。この子は私の力で呼び出しているのだから、あなたのではなく、私の使い魔ですわ」
「……」
 返す言葉もないことが、実に悔しかった。とはいえ能力で敵う相手ではないので、黙認するしかない。
 むすっとして酒を飲んでいると、今度は別の少女の声がかかった。
「あ、晶! あと邪神もいるわね」
 後半はやや低い声だった。そちらを見ると、晶たちをこの世界に運んだチェリカ・ロンドがいた。邪神に対しては、少々警戒しているようだ。
 チェリカはまず、邪神少女に言った。
「ちょっと邪神子。なんでアンタがお菓子を食べてんのよ! 戦ったのは晶でしょ」
「変な呼び方しないでくださる? それに、ちゃんと晶に力を供給してましたの。使い魔の力は私の力。使い魔が労われるなら、私にだって報酬をもらう権利は、あって然るべきですわ」
「……そういうところは抜け目ないというか、いい根性してるよな、ホント」
 今でも心底呆れるが、邪神の傲慢さに慣れ切ってしまった晶である。一方で、チェリカは納得のいかない様子だった。
 結局彼女は、「邪神よりも多く食べる」ことで、相手を封じる作戦を取った。飲み物もなしでクッキーを食べている姿が苦しそうなので、果汁を泉の水で割った飲み物を持ってきてやる。
 オレンジ色の液体が揺れるグラスを、晶はチェリカへと差し出した。
「はい。いつも予知お疲れ様」
「ん、ありがと! といっても、予知は勝手に見えるもんだし、後はみんなを転送するだけなんだけど。むしろ、晶の方こそお疲れさま! ……いろいろと、ね」
 邪神を半眼で見つつ言うチェリカだが、当の神はと言えば、視線に気づいていながらこれ見よがしにクリームパイを食べていた。
 適当にあしらわれるて悔しそうなチェリカに苦笑しつつ、晶は自分の杯を掲げた。
「乾杯。一緒にお酒を飲めないのが残念だけど」
「気にしないで。大人になったら、お祝いしてね」
 違う色が揺れるグラスを、コツンとぶつける。
 爽やかな甘い香りが、青空へとはじけ飛んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サフィリア・ラズワルド
POWを選択

泉で傷を癒しながら考えます。血の一族、目的を失ってしまった彼らの存在、このまま忘れられてしまっては駄目だ、なら私が今すべきことはあの戦争の話を、彼らの敵がどんな者であったのか伝えること。

吟遊詩人の元へ向かい【白竜の角笛】を出して音の確認をしてから『先程の敵が目指していた帝竜と戦った戦争の話に興味はありますか?』周りに問います。了承を得たら角笛を吹ける人へ──渡そうとしたところで竜人男性がいつの間にか側にいて手を出していました。

貴方はこの前の猟兵さん?……これ?吹けますか?ちょっとコツがいりますよ?

無言で頷いて難なく吹いたので話を始めます。

アドリブ協力歓迎です。



 肌を伝う泉の水が、竜化の疲れを癒やしてくれる。その感触に浸っていたサフィリア・ラズワルド(ドラゴン擬き・f08950)は閉じていた目をゆっくりと開けた。
「……」
 心に過ぎるのは、暗闇の戦いで死した彼らだ。
 血の一族――目的を失ってしまった、哀しき戦士たち。その存在がこのまま忘れられてしまい、いなかったことにされるのは、ダメだと思った。
 残してあげなければ、あまりにも救いがない。髪から落ちた雫が作る波紋を見つめながら、サフィリアは呟いた。
「私が、今すべきことは――」
 水面に、記憶が揺れる。群竜大陸を揺るがす咆哮が、耳に蘇る。
 竜と戦った話をしよう、彼らの敵がどんな者であったのかを、伝えよう。そう決めた。
 泉から出たサフィリアは、畔で酒を飲み語らう冒険者たちのもとへと向かった。正確には、その中にいる吟遊詩人のところへだ。
 真珠のように輝く【白竜の角笛】を音の確認がてら吹くと、竜の鳴き声に似た音が鳴り、冒険者の目がこちらに向いた。リュートを奏でていた吟遊詩人も、その手を止める。
 突然目線が集中したので緊張したが、キュッと笛を握って、吟遊詩人に言った。
「あの、夜に戦った敵――黒幕の方ですが、彼らが帝竜を倒そうと思っていたことは、知っていますか?」
「……いや、知らなかった。そうだったのか」
「はい。でももう、帝竜はこの世界にいません」
「それは知っている。群竜大陸に乗り込んだ戦士たちが、見事撃破したと――風の噂で聞いた程度だが」
 冒険者たちは、血の一族と邂逅していない。その名を伝えようか迷ったが、やめた。彼らについて語ったところで、いつか風化してしまう気がした。
 だから、話すとすれば、やはり――。
「帝竜について、お話できます。私、群竜大陸に行って、戦いましたから」
 場がざわつく。まさか、とか、嘘だ、といった声が聞こえてくるが、真実かどうかよりも、今の彼らは刺激を欲していた。
 期待の視線を裏切れず、吟遊詩人が頷く。
「分かった。それで、僕に伴奏を頼みたい、と」
「はい! あとは、私の角笛を吹ける方を……」
 冒険者の中から探そうとしたサフィリアの前に、ぬっと白い手が差し出された。驚いて振り返ると、純白の鱗を持つ竜人の男が立っていた。
 彼のことは、知っていた。だが、名前や素性は知らなかった。
「貴方はこの前の猟兵さん? ……これ?」
 角笛を手に首を傾げると、竜人は頷いた。少々癖のある笛なので、サフィリアは困った。
「吹けますか?ちょっとコツがいりますよ?」
 示された笛に頷く、竜人の男。そこまで言うのならと手渡すと、慣れた手つきで構えた竜人は、ひゅるりと美しい音色を奏で始めた。
 驚愕した。自分でもこれほどの音を出せるだろうかと思った。それは、春の陽気のように優しく温かで、どうしてかとても懐かしいと感じる音色だった。
 結局誰かは分からないが、ありがたい。竜人に見つめられた吟遊詩人が慌ててリュートの音を合わせたタイミングで、サフィリアは冒険者たちに向き直り、深呼吸を一つ、朗々と語り出す。
 オベリスクを始めとした、群竜大陸に至る道。人知れず戦っていた猟兵たちのこと。
 大陸を発見、上陸し、怒涛の勢いで調査したこと。結果、帝竜ヴァルギリオスへの奇襲が叶ったこと。
 激戦の帝竜戦役。悍ましい地形。傷ついた仲間たち。倒れる巨竜。世界を揺るがすような咆哮、大地を砕くような一撃。
 そして――勝利。
 サフィリアの話は丁寧にまとまっていたが、彼女の言葉には確かな熱が宿っており、そのことが真実であると、揺れる紫の瞳が物語っていた。
 伝えたい。忘れてほしくない。帝竜がいたことを、帝竜を目指した人がいたことを。
 彼らが、そこに確かに生きていたということを。
「これが、竜の物語。どうか、忘れないでください」
 語り終え、一礼する少女に、拍手が送られる。作り話だと思われているかもしれないが、構わないと思った。誰かが語り継いでくれるなら、それでいい。
 竜人の男にも礼を言おうと振り返ると、彼はもうそこにいなかった。ただ、一杯の癒しの水と角笛だけが、テーブルに並んでおかれていた。
 彼は、皆に聞いた。誰もが、彼を見ていないと言った。
「……どこにいったのかしら。というより……誰、だったのかな」
 心に過る不思議な寂しさを感じながら、サフィリアは一人、無意識に空へと視線を巡らせた。
 青く澄み渡る空のどこからか、竜の鳴き声が聞こえた気がした。



 宴が終わる。
 冒険者たちが協力して畔を片付け、静寂を取り戻した泉に西日が差し込む頃、猟兵たちは世界から去った。
 血の一族という帝竜戦役が残した爪痕は、英雄歌となって、ミレイユに語り継がれていくことになる。
 だが、それは悲劇ではない。数多の戦士による勇敢な戦いによって、偉大な勝利を収めた叙事詩だ。
 泉の町を舞台とした、光と共に現れた竜を討ちし勇者の物語は、そうあろうとした者たちの魂をも、癒し慰めていくことだろう。
 例えそれが、過去に狂い世界を滅ぼさんとした、罪深き魂であっても――。

 ミレイユに湧く癒しの泉は、何人も拒まないのだから。

 fin

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月13日


挿絵イラスト