届けこの声、あの人の元へ(作者 かやぬま
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#カクリヨファンタズム 


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#カクリヨファンタズム


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●あなたを呼ぶ、その声を
 会いたい。会いたくて、名前を呼んだ。
 けれども、いくら呼べども願いは届かなくて。
 行き交う人々の、仲睦まじげに交わす言葉が耳を打って仕方がなくて。

 それが、あまりにも羨ましくてたまらなかったから。
 ――恨めしくてたまらなかったから。

 だから、奪ってしまいましょうって。
 ――そう思っただけだった。

●会いたい人はいますか
 グリモアベースの一角で、ミネルバ・レストー(桜隠し・f23814)が大きく腕を振って猟兵たちを呼んでいた。また事件かと数名の猟兵が反応すれば、ミネルバは安堵の息を吐いてから言葉を紡ぎ始めた。
「ありがとう、気づいてくれて――ここでわたしがみんなを呼ぶんだもの、事件に決まってるのはさて置きとしてね」
 新しい世界が見つかったのは知ってる? と、事件の舞台を匂わせて。

「カクリヨファンタズム、聞いてた以上にとんでもない世界だったわ。何せ『声』という『声』が失われたっていうんだもの」

 幽世(かくりよ)から、一切の『声』が『消えた』という。住人たる妖怪たちはことごとく喋ることが叶わなくなり、それはまるで『沈黙の世界』のよう。
 先程のミネルバのようにある程度は身振り手振りでもやっていけるだろうが、それでも一切声を発することが出来ないというのは大問題だ。
「好きな人に想いを伝えるなら、言葉の代わりにハグでもいいでしょうけど……やっぱり、喋れないのは不便よね。歌が好きな妖怪だっているかも知れないし」
 ――そんな妖怪が居たとしたら、それこそ声が出ないなんてこの世の終わりよ。

 とにかく、軽率に世界の終わり――『カタストロフ』が起きるという噂は本当だった。
 当然それが起きるには原因、首謀者がいるのだろうけれど。
「どうやらね、幽世から『声』を奪ったのは『骸魂(むくろだま)』の仕業で間違いなさそうよ。それで、みんなの出番ってわけ」
 ミネルバの背後に浮かび上がるビジョンには、それはもう愛らしい茶まろのわんこが。
「この子は集団でわんわんって攻めてくるけど、見た目の愛らしさに油断しないでね。それで、うまく骸魂だけを倒せればこの子たちも無害な妖怪に戻れるから」
 あんまり殺意満々で行かないであげてくれるとうれしいわね、と小さな声で言って。
「事件の元凶はまた別にいるの。ちょっとハッキリ見えなくて申し訳ないけど、茶まろわんこと同じように……『誰かに会いたがってる』みたい」
 幽世中から『声』という『声』を奪うに至るまで、思い詰めているのだろうか。
 オブリビオンと言えども、この世界では骸魂に呑まれた妖怪であることには変わりなく。ならば、茶まろわんこ同様に上手く立ち回れば救ってやれる目もあるだろう。

「事件が解決したら、かくれんぼでもしてきたらどうかしら。もちろん、最後はきっちり見つかってあげて、相手を安心させてね」
 呼べども呼べども見つからずじまいなんて、さみしすぎるから。
 どうか、楽しいお遊びという形で丸く収めて欲しいと願うのだ。

「よろしくお願いね、みんなも、途中ではぐれたりしないように気をつけて」
 何せ、人ならざるものが棲まう『幽世』なんだもの。
 そう言って、六花のグリモアを輝かせながらミネルバは軽く手を振った。


かやぬま
●ごあいさつ
 初めまして、またはお世話になっております。かやぬまです。
 カクリヨファンタズムを舞台にしたお話をお届け致します。

●補足説明
 このシナリオで失われた概念は『声』ですが、猟兵の皆様および敵の骸魂たちは普通に会話ができます。深く考えずに振る舞って頂いて大丈夫です。

 第1章では、いっぱいやって来る茶まろわんこが相手です。わんこたちは『誰か』を探してさまよっている様子です、元々は無害な犬の妖怪ですので出来れば助けてあげて下さい。

 第2章は事件を引き起こしたボスの骸魂との戦いです、こちらも何やら事情がある様子。こちらは多少の会話が可能なようです、詳細は追って記載致します。

 第3章は無事『声』を取り戻した妖怪たちとのかくれんぼを楽しめます。
 もしも『ペア、もしくは団体でかくれんぼがしたい!』という場合にも対応出来るようにする予定ですので、こちらも実際に章が進んだ際の追記をお待ち下さい。
 なお、グリモア猟兵のミネルバにお声掛け頂ければ顔を出すことも可能です(お呼ばれがない場合は登場しません)、良きように使ってやって下さい。

●プレイング受付期間について
 MSページとツイッターの両方でご案内致しますので、恐れ入りますが一度ご確認の上お越し下さいますと大変有難いです。
 また、取扱説明書部分だけでも構いませんのでMSページの記述にもお目通し下さいますと嬉しいです。

 それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております!
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第1章 集団戦 『茶まろわんこ』

POW ●スペシャルわんこアタック!
単純で重い【渾身の体当たり】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD ●おいかけっこする?
【此方に近寄って来る】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ ●もちもちボディのゆうわく
全身を【思わず撫でたくなるもちもちボデイ】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●名前を呼ばれて、吠えて答えて
 会いたい、会いたいよ。
 どこにいるの? ……ええと、誰だったっけ?
 こんなにも会いたいと願うのに、肝心の『誰か』が思い出せない。

 いっぱい可愛がってくれて、いっぱい大事にしてくれて。
 ――そんな『誰か』に、会いたいのはまちがいないんだ。

●茶まろわんこと遊ぼう(バトルです)
 転移を受けて幽世に降り立った猟兵たちがすぐに感じ取ったのは、不自然なまでの静寂。そこに確かに妖怪たちの姿はあるというのに、誰一人として『声』を上げない。
 口をぱくぱく、必死に一点を指し示して何かを訴える様子に目を向ければ、麿まゆも愛らしい茶色の丸っこいわんこが群れを成してこちらを見ているではないか。
 小首をこてんと傾げて愛嬌を振りまくけれど、妖怪たちは一斉に首を振る。

 ――だまされるな、あいつらがやったんだ!

 身振り手振りや目線でそう訴える妖怪たちと茶まろわんことを見比べて、猟兵たちは決意する。
 今もなお周囲には仲間を増やそうとする骸魂たちが飛び交い、早急に対処しなければさらなる被害が予想される状況だ。

『わん、わんわんっ』

 つぶらな瞳で鳴くわんこたちは、元々骸魂に飲み込まれてオブリビオンと化したもの。ならば、元凶たる骸魂さえ倒してしまえば。

 ――どうやって? そりゃあ、気が済むまで遊び倒してあげてさ。
 ――隙を見せたところを、コツンと一発で解決ってなもんよ。

 まるでそう言いたげに、見守る妖怪たちがジェスチャーで教えてくれた。

 ※攻撃方法をご覧頂ければお分かりの通り、基本的に茶まろわんこは猟兵の皆様にじゃれついてくる感覚で攻めてきます。
 上手くあしらってあげて、攻撃はユーベルコードひとつでペチンという感じでオッケーです。
 もちろん、一応悪事に加担しているので、お仕置きもアリです。良きように!
薙殻字・壽綯
……静か、ですね。…静かなのは、好きです
私の声しか、響かない……この冷たい空間は、恐ろしいものです。ですが……孤独を思わせるから、無性に落ち着いてしまうのです

……愛嬌のある顔、ですね…。……もっちりとしていて、可愛いです。事前に説明がなければ、警戒しないのは難しいでしょうね。愛想が、あります
撫でたく、なります。ですが…声を盗られたくはありませんので…
かけっこ、しませんか? 走るのは、得意な方です
骸魂だけを吹き飛ばせるように、疲れたところを狙ってみます

………会いたい、人。かあ
彼女は、声なき世界を笑い、音なき世界に泣いた。の、かな……いえ、すみません、独り言、ですので
なんでも、なにも、ありません


●好ましき静寂
 カクリヨファンタズムの世界から『声』が消えたというのは本当で、そこに住人たる妖怪たちの気配は確かにあるものの、本来耳を打つであろうざわめきがまるで聞こえない。「……静か、ですね」
 だから薙殻字・壽綯(物書きだった・f23709)は、そう素直に口にした。
「……静かなのは、好きです」
 古き良きサイレント映画を見ているような――いや、その世界の中に入り込んだとさえ言える心地にそう呟くのだ。
「私の声しか、響かない……この冷たい空間は」

 ――恐ろしいものです。

 好ましい、しかし、恐ろしい。壽綯は確かにそう言った。
(「ですが……孤独を思わせるから、無性に落ち着いてしまうのです」)
 周りには確かに妖怪たちが存在して、己らを見守っているのだけれど。
 それをまるで感じさせない静寂が、まるでここに立つ己がひとりきりなのだと思わせる。
 一人が怖いというものがいる一方で、一人が落ち着くというものもいる。
 こと他人と距離を保ちたいと考える壽綯にとって、疾く解決せよと言われたはずの静寂の世界に、ある一定の理解を示してしまうのだ。

『わんわんわんっ』
 今、この世界に於いて声を発せられる存在は。
 壽綯たち猟兵と、オブリビオン――骸魂のふたつ。
 果たして、予知の通りにもちもちころりとした愛らしい風体の『茶まろわんこ』が、くるんと巻いたふわもこの尻尾をぶんぶん振って壽綯を見ていた。
 つぶらな瞳でこてんと首を傾げて、とにもかくにも構って欲しいというていである。
「……愛嬌のある顔、ですね……もっちりとしていて、可愛いです」
 今にも飛びついてきそうなわんことある程度の距離を置きながら、壽綯が呟く。
(「事前に説明がなければ、警戒しないのは難しいでしょうね」)
 そう、このわんこが対処すべき骸魂だと知らされていなければ、無警戒においでと手を出して手痛いしっぺ返しを受けていたやも知れないから。
 それだけ、茶まろわんこには容易く抗えぬほどの愛想があったのだ。

『わん、わん!』
 不意に、ただでさえもふもふしていて愛らしい茶まろわんこのボディが、こう……もちっとした感触をも帯びたように思えたのは、骸魂ならではの禁断の必殺技だろうか。

 ――撫でたく、なります。

 ソワッ。壽綯の手が無意識に上がりかけて、いやいやと踏み止まって首を振る。
(「ですが……声を盗られたくはありませんので……」)
 どんなに愛らしくても、相手は骸魂。今回の事件を引き起こした輩の尖兵でもある。
 気を抜いたら相手の術中に陥るのは必定、ならば――。
 ねえねえ、撫でてみない? と言わんばかりに身体を揺らすわんこに向けて、問う。
「かけっこ、しませんか?」
『……わぅ?』
 撫でてあげるのも良いけれど、犬はことさら人間と遊ぶのが大好きだろう。
 こう見えて走るのは得意な方だからと、壽綯はわんこにそう提案した。
 意図としては、存分に遊んでやってへろへろになった所を、骸魂のみを吹き飛ばしてわんこをまっとうな妖怪として救い出すことこそが狙い。
 野次馬の妖怪たちが、壽綯の意図を察して道を開ける。それに一礼して返し、壽綯は一歩先を行きながら、振り返ってわんこへと手招きする――『おいで』と。
 
『わん、わんわんっ! わんっ』

 あそんでくれるんだ! そう察したわんこがちまっこい四つ脚で地を蹴って駆ける。
 しかし侮るなかれ、足が短い犬種でもその走力は驚くべきものが往々にしてある。
 この茶まろわんこも――見た目からは想像もつかない速度で壽綯に迫る!
(「速い……ッ」)
 これもう何の勝負かわかんねえなという感じになりそうだったが、そこは壽綯も筋トレとストレッチを日々の習慣として取り入れる猛者である。簡単には負けない。
 そうして、キャッキャウフフしているように見えて実はお互いガチで走り回るという地味に壮絶な戦いが続き――遂に、わんこがこてんと横になった。息がめっちゃ荒い。

 ――ああ、楽しかった。
 ――こんな風に、遊んだんだっけ。

 もっちりボディが横倒しになっている様は、抗いがたい魅力を持っていた。
 だが、それも次第に効力が失われていき、ふわもこのボディに戻っていく。
 そんな毛並みをそっと撫でてやりながら、壽綯は独りごちる。
「……会いたい、人。かあ」
 はっはっはっはっ、わんこは息を整えるように舌を出して腹を上下させる。
「彼女は」
 もふっ、もふっ。柔らかい毛に埋もれていく手はわんこの温もりに包まれ。
「『声』なき世界を笑い、『音』なき世界に泣いた。の、かな……」
 遠い誰かを思う言葉で、自然と撫でる手が止まり、わんこが少しだけ顔を上げた。
 それに気付き壽綯が視線を合わせてやんわりと笑んで返す。
「いえ、すみません、独り言、ですので」

 ――頃合い、でしょうか。

 すちゃっとその手に握られたのは、無骨な短機関銃であった。本来ならば周囲の妖怪たちから息を呑む声が聞こえただろうが、それさえも今は封じられている。故に、無音。
 しんしんと降る雪のように、短機関銃はその先端から色褪せた南天の花へと姿を変えて、すっと静かに身を離したわんこの身体へと降り積もり――。

「なんでも。なにも、ありません」

 いつか、会いたい『誰か』のことを思い出して、願いが叶いますように。
 南天の花弁に覆い尽くされた茶まろわんこの身体は、次にざっと風が吹いて花弁が散った時には、微弱な力を持つばかりのわんこ妖怪へと戻っていた。
成功 🔵🔵🔴

逢坂・宵
【🐕】

会いたい誰かを思い出せぬもどかしさは、僕たちが想像するよりつらいものであるのでしょう

わんこ達に埋もれるザッフィーロに大人気ですね、と笑みつつ
身を寄せてくるわんこを撫でわしわしと擽ってゆきましょう

しっかりとした短い毛並みがメレンガとは違った感覚ですね
そうしているとわんこ達を押しのけるように身を割り込ませてくるメレンガに目を細め
伴侶の呟きには
はい、いったい誰に似たのでしょうね?と笑って
抱き込まれたならここにも大きな寂しがり屋のわんこがいますね、と見上げてみましょう

ええ、みなさん 会いたい人に会いに行きましょう
名前はわからなくとも、きっとその人に会えたなら
あなたがたは幸福を得るのでしょう


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
【🐕】

会いたい相手を思い出せない、か
…斯様な存在を邪険に扱える訳なかろう?
そう眉を下げやって来たわんこ達に押し倒されながらその身を撫でんと試みよう
…メレンガと違いなんだ、毛は短めなのだろうか?
そう毛並みに手を埋めつつ至近に居る宵へ視線を投げ行く―も
何やら茶まろわんこの間に割り込んでくるメレンガを見れば思わず口元を緩めてしまうやもしれん
…本当にお前は寂しがり屋だな
誰に似たのだかと、メレンガと宵を交互に見遣りつつ宵毎腕の中に抱き込まんと手を伸ばしてみよう

…お前達も会いたい者が居るならば斯様な所に居てはいかんのではないか?
あの世でゆっくり待ち人を待てるよう、送ってやる故
さあ、行ってこい


御宿野・メレンガ
【🐕】

御主人達と一緒にお出かけ!嬉しいです!
でも喋ったら御主人達びっくりしちゃいますからね!言葉は喋りませんよ!秘密なのです!
ふんすふんすと尾を振り御主人達を見上げ先導する…も
押し倒された青い御主人を見れば慌てて駆け寄ります
ああー青い御主人!大丈夫ですか!
黒髪の御主人も!ぼ、僕を見て下さい!とにゅにゅっと交互に柴わんこと御主人達の間に入りつつくぅんと鳴き声を
君達は会いたい人、思い出せないですか?
大丈夫です!きっと向こうで思い出しますよと柴わんこ達に【ガジェットショータイム】
ホルンから空に虹を描きますね!
えへへ、わんこは虹の元でお空で飼い主を待つって聞いた事あるです
だからね、きっと会えますよ!


●犬は結構やきもちを焼く
(「御主人達と一緒にお出かけ! 嬉しいです!」)
 浅黒い肌持つ青年と宵闇の星のような青年を先導するように、意気揚々ととてとて歩くのは御宿野・メレンガ(賢い動物のガジェッティア・f25514)。
 見た目は立派なコーギーだが、その身には肉球が彫られたスーザフォンを背負い、マーチングバンドのメンバーめいた礼装に身を包んでいるあたりがひと味もふた味も違う。
 そう、メレンガは人語を解するだけの知能がある――『賢い動物』であった。
 故あって、御主人達――ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)と逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)には、そのことは内緒にしているけれど。

(「でも、喋ったら御主人達びっくりしちゃいますからね! 言葉は喋りませんよ!」)
 秘密なのです! ふんすと鼻息ひとつ、メレンガはあくまでも一匹のコーギーとして四つ脚で先を行く。
 そんなメレンガを微笑ましく見守りながら、着実に歩を進めていた宵が噂の茶まろわんこの姿を認めて目を細める。
「……会いたい『誰か』を思い出せぬもどかしさは、僕たちが想像するよりつらいものであるのでしょう」
 会いたい人に会えない、という時点ですでにさみしいことだというのに。それが誰かも思い出せぬとあっては、もどかしさも相まってそれはとても辛いものに違いないと宵は思う。
 その点、己はひどく幸いなのだろう――そう思って視線を向けた先のザッフィーロは。
「会いたい相手を思い出せない、か……」
『わんわんっ、わんっ』
 茶まろわんこがひい、ふう、みい……五匹、ずらりと並んでいた。待って? こちらは二人と一匹だよ? 数でマウント取るの止めよう?

「……斯様な存在を、邪険に扱える訳がなかろう?」

 だが、ザッフィーロは漢前であった。眉尻を下げてそう言うと、一斉にわわんと体当たりを仕掛けてきた五匹のわんこ達を避けるでもなく払いのけるでもなく。
 その全てを受け止めて、押し倒され――たまらず尻餅をついた場所に蜘蛛の巣状のヒビが入るという地味に凄絶な事態に陥りながらも、その身を撫でるべく手を伸ばすのだ。
「大人気ですね」
 ふふ、と笑んでから宵が近付く。無闇に取り乱さないのは最愛の伴侶への信頼故か、数匹のわんこが撫でて欲しそうに身体をもちもちさせながら近付けばそれを受け入れる。

 ――もちっ、ふわっ、もふっ。

 元は無害な柴犬なだけあって、その毛並みは短くしっかりとしていた。両の手で一匹ずつわしわしとくすぐってやれば、茶まろわんこたちはくぅーんと切なげに声を上げた。
「……メレンガとの違いは何だ、毛は短めなのだろうか?」
 ザッフィーロも三匹のわんこに埋もれながら、逆にそれを良いことにもふり放題。
 茶色の毛並みに大きな手を沈めてそう問えば、いつの間にかすぐ傍に顔を近づけていた宵から返事が返ってくる。
「ええ、メレンガとは違った感触ですね――やはり、毛並みが」
 そこまで言って、遮られた。物理的に。メレンガだった。
(「ああーっ青い御主人! 大丈夫ですか!」)
 地形がちょっと破壊されているあたり、実は大丈夫ではないかも知れない。
(「黒髪の御主人も! ぼ、僕を見て下さい!」)
 何で他のわんことキャッキャウフフしているんですか、最愛のわんこは僕じゃなかったんですか!?
 そう言いたげに、メレンガはその身をザッフィーロと宵と、そして茶まろわんこたちの間に割り込むように入りつつ、くぅんとひとつ切なげに鳴いた。
 そんなメレンガを見遣って、ザッフィーロは思わず口元を緩め、宵は目を細める。
「……本当にお前は寂しがり屋だな」
 愛い奴め、という風にメレンガを見るザッフィーロの呟きに、宵が応じる。
「はい、いったい誰に似たのでしょうね?」
 そうくすりと笑って返せば、視線がぶつかったザッフィーロの両の腕が伸びてきて、あっという間にメレンガごと抱き込まれたものだから、これには宵も苦笑いで。

「――ここにも、大きな寂しがり屋のわんこがいますね」
 そう、紫眼を細めて伴侶を見上げた。

 メレンガがするりとザッフィーロの腕から逃れたのは、茶まろわんこと対峙するため。
 わんわんと吠えているだけのように見えて、犬同士しっかりと言葉を交わすのだ。
「わん、わんわん(「君達は会いたい人、思い出せないですか?」)」
『わうっ(『う、うん……』)』
 そこでメレンガが、スーザフォンの立派に咲いた朝顔から大きな虹を描き出す!
「わんっ!(「大丈夫です! きっと『向こう』で思い出しますよ」)」
 それはまるで空にかかった橋のよう――文字通りの、虹の橋だ。
 ほわあと口を開ける茶まろわんこたちに、メレンガは吠えて、告げた。
「わんわんっ!(「えへへ、わんこは虹の元で、お空で飼い主を待つって聞いたことあるです」)」

 ――だからね、きっと会えますよ!

『くぅん……』
 でも、となおも躊躇うわんこにはザッフィーロと宵が。
「……お前達も、会いたい者が居るならば斯様な所に居てはいかんのではないか?」
 ――あの世でゆっくり、待ち人を待てるよう、送ってやる故。
「ええ――みなさん、会いたい人に会いに行きましょう」
 ――名前はわからなくとも、きっとその人に会えたなら。

 黒い霧が立ちこめ、流星の矢が降り注いだその後には。
「あなたがたは、幸福を得るのでしょう」
 骸魂から解放されて、無害な柴わんこに戻った五匹の犬たちが、ころんころんと転がっていた。
成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴

ヘンリエッタ・モリアーティ
よろしい、遊んであげるわ。
 黄 昏 の 遊 戯 で ね !
まあ全力で犬と遊ぶってだけなんですけど

誰かを探してさまよっている、って。それって飼い主とかかしら
ウワーッ 渾身の体当たりがーッ!
なんのこれしき黄昏ガード。掴んでこねくりまわしてよしよししてあげましょうねヨォシヨォシ……!!

わっふわふし始めたところをお尻ぺんっとしまして
犬のしつけは頭を叩くのではなくおしりとかを叩くといいそうよ
はい、落ち着く。オーケー?
あのね、黒い服だからすごく抜け毛が目立つのよね
ウワーッ 大群が ウワーッ
なんのこれしき黄昏よしよし
この私、世界の為なら阿修羅になることも辞さないので
ヨォシヨォシ
…飼い主のこと教えてくれない?


●しつけのお時間です
 立ちはだかるはもっちもちの茶まろわんこ、その数両の指では数えきれず!
 立ち向かうのは悪徳教授の名を欲しいままにするヘンリエッタ・モリアーティ(円還竜・f07026)!
『わんわんっ、わん!!』
 くるんと巻いた尻尾を千切れんばかりに振って鳴くわんこたち。対するヘンリエッタは金の龍が刻まれたテンプルを持つ眼鏡の位置を直しながら淡々と告げた。
「よろしい、遊んであげるわ」

 ――ただし、私の『遊び』はいつでも全力。ついて来られるかしら?

 不敵に笑んだヘンリエッタが、鷹揚に両手を広げた。纏う気配は王者をも凌駕する、圧倒的な殺戮者のそれであり。
「絶滅よ――絶えて死ウワーーーッ渾身の体当たり!!!」
 それはまさに神々の黄昏(ラグナロク)、人と犬との一大決戦。わんこたちも一切の手加減なしのフルパワーで、次々とヘンリエッタ目掛けて突撃していったのだ。
 CV:竹立幾美様という破壊力バツグンの声で圧倒的なわんこ遊びを繰り広げるつもりが、まさか互角に攻め込んでくるとは骸魂わんこ侮れじ。
(「誰かを探してさまよっている、って。それって飼い主とかかしら」)
 教授らしく、探偵らしく、ヘンリエッタは思考を止めず。しかし、黄昏ガードも忘れずに。そう易々と体当たりを喰らってやる義理もなく、適当に一匹を引っ掴む。
「よしよししてあげましょうね~~~ヨォシヨォシ」
 わっしゃわっしゃと茶まろわんこがこねくり回されて気持ち良さげに身をよじる。
 そうしてわっふわふとし始めたあたりでヘンリエッタがわんこのお尻をぺしり!
(「犬のしつけは、頭を叩くのではなくおしりとかを叩くといいそうよ」)
 という訳で、叩かれたわんこはヒィンと一声鳴いて大人しくなる。
「はい、落ち着く。オーケー?」
 そんなヘンリエッタの腕の中で、右へ左へ身体をすり付けてくるわんこ。愛らしい仕草だが、ヘンリエッタは思わず眉間に皺を寄せる。何故なら――。

「……あのね、黒い服だからすごく抜け毛が目立つのよね」

 そうなのだ。どんな毛色の子であろうとも、多かれ少なかれ毛は抜ける。そして、それはどう足掻いても触れ合う人間の服にくっ付いてしまうのだ。
 こうなっては粘着テープの力なくしてはほぼ解決できない、後でしこたま付いた茶まろわんこの毛を自らの手で掃除する姿を想像して、ヘンリエッタはちょっぴり情けなくなる。
 だが、追い討ちをかけるかの如くさらなる茶まろわんこがヘンリエッタに迫る! しかも今度は一度にわっと飛びかかってきたではないか!
「ウワーーーッ!! 大群がッ、ウワーーーッ!!」
 もみくちゃにされながらも、いかなる原理か黄昏よしよし。これがガチの喧嘩だったら今頃集団戦の雑魚敵なんて瞬殺でしたね……わんこたちは命拾いしましたね……。
「この私ッ! よーしよしよし、世界の為なら……よしよし良い子、阿修羅に! よしよーっし!! なることも、辞さないのでッ! ヨォシヨォシ!!」
 決して腕を六本にするとか物理的に阿修羅になる訳ではない。だが、ヘンリエッタの黄昏よしよしがあまりにも高速だったものだから、そう見えてもおかしくはなかっただろう。
『ひぃん、ひぃんっ』
『くぅーん……』
 切なげに上がるわんこたちの声は、満足か服従か。多分、半分半分だろう。
 頭やら腹やら尻尾の付け根やらをよしよししてやりながら、円還竜は問う。
「……飼い主のこと、教えてくれない?」
『わぅ……』

 ――こんな風に遊んでくれる人であったことには違いなく。
 ――ああ、きっと、あれは自分を誰よりも大事にしてくれた人。

 一匹、また一匹と。ヘンリエッタにお尻をぺんとされた子から、文字通り次々と憑きものが落ちたかのようにこてんと転がっていく。
 その姿は、最早世界に害なす骸魂ではなく、愛らしい豆柴の妖怪であった。
成功 🔵🔵🔴

真宮・響
【真宮家】で参加



声が無くなるね。これは一大事だ。大事な思いってのは声に出してちゃんと伝える事が大事だ。アタシも子供達を育てる上でちゃんと言葉でコミュニケーションを取る事を重要視してきた。・・・歌を歌うものとしては声は大事だし。

うん、まずはこの茶色い犬をなんとかすればいいんだね。鬼ごっこでもするかい?手は抜かないよ。ほら、捕まえた。(犬を高い高いする)捕まえた犬を膝に乗せて鼻歌を歌うよ。無害そうに見えるが、悪い事してるんだよね・・被害が広がる前に炎の拳でポコッと。本来の姿に戻してやんないとね。


真宮・奏
【真宮家】で参加



声が無くなる・・・音楽一家の私達には死活問題ですし、気持ちを伝えるには言葉は大切です。・・・茶色のわんこに心惹かれますが、声を奪うのに協力している悪いわんこにされてしまっているのですね・・・

もふもふ大好きですので、突進大歓迎!!もちもちボディの誘惑にも進んで乗ります!!あ~・・・幸せ。抱き寄せようとして回避されても根性で抱き留めますよ!!・・・いつまでも遊んでいたいんですが、本来の無害なわんこに戻してあげませんとね。信念の拳でボコッと一発。


神城・瞬
【真宮家】で参加



声が無くなるのは僕達音楽一家に取っては致命的ですし、言葉に出さないとはっきり伝わらない気持ちもあります。茶色の犬の子達は骸魂に飲み込まれた被害者ですね。助けてあげませんと。

まず犬の突進を受け止めて転倒した奏を救出。抱き上げた犬に氷でつくった星の形のおもちゃをあげます。そして犬の群れに氷の星や月や花をぽいぽい。存分に遊ばせますね。いつまでもこうしていたいですけど、本来の姿に戻してあげませんとね。裂帛の拳を一発。元に戻ったら、また遊びましょうね?


●それはまるで、子守歌のような
 母である真宮・響(赫灼の炎・f00434)、その実娘である真宮・奏(絢爛の星・f03210)、そして血はつながっていなくとも苦楽を共にする家族である神城・瞬(清光の月・f06558)。
 真宮家の三人は、それぞれが何かしらの楽器や声楽を愛する音楽一家。
 カクリヨファンタズムから『声』が奪われたとあっては黙ってはいられない。
「『声』が無くなるね、これは一大事だ」
 異変が起きた後から、外部より転移を受けたからだろうか。幸いにして被害を被らずに済んだ響が、己の声を噛みしめるように言う。
 身振り手振りでも何とか、とは言うけれど。
(「それでも、大事な思いってのは『声』に出してちゃんと伝える事が大事だ」)
 そうして響は、女手一つで育て上げてきた愛娘と息子の姿をちらと見遣る。
(「アタシも子供達を育てる上で、ちゃんと言葉でコミュニケーションを取る事を重要視してきた」)
 果たして奏と瞬の二人は、どこに出しても恥ずかしくないくらいに立派に育った。
 そのこともあるし、と自分たちを見守るように取り囲み口をパクパクさせる妖怪たちを見回して、響は思う。
(「……歌を歌うものとしては、声は大事だし」)
 妖怪の中にも、陽気に歌うものはいるだろう。今頃、絶望的な気分になってはいないか。
 ならば、罪なきものを一刻も早く救ってやらねばと。眼前の茶まろわんこたちを見て響はふぅと息を吐いた。

『わんわんわんわんっ』
『わんっ、わんわん!』
 くるりと巻いた尻尾をちぎれんばかりに振って、しきりに吠えて何かを訴えかけるような茶まろわんこたちの声ばかりが響き渡る。
 こうも都合良く自分たちの『声』ばかりが残るのは、わんこたちの後ろに控える事件の黒幕の思惑あってのことなのだろうか。
 それにしても、と奏は瞬と顔を見合わせる。
「『声』が無くなる……音楽一家の私達には死活問題ですし」
「言葉に出さないと、はっきり伝わらない気持ちもあります」
 事件を解決するためには、かまって欲しそうに、しかしまるでこちらの許可を得るまではと我慢しているようなわんこたちを見て、二人は意を決するのだ。
「……茶色のわんこには心惹かれますが、『声』を奪うのに協力している悪いわんこにされてしまっているのですね……」
「ええ、茶色の犬の子達は骸魂に飲み込まれた被害者ですね」
 ――助けてあげませんと。そうして二人が母の方を向けば、視線がぶつかる。
「行くよ!」
 頼もしい母の号令と共に、茶まろわんこたちと真宮の戦士たちが対峙する――!

『わうわうわうわうわう!!!』
「もふもふ大好きですので、突進大歓迎!!」
 遂に遊んでもらえるのだという歓喜にすごく興奮したわんこが一匹、それはもうものすごい勢いですっ飛んできた。一歩前に出て両手を広げるのは奏だ。
「さあ!!!」
『わぉん!!』

 ――ズゴオォォォォ……ン。

 エキサイティングわんこの猛烈な突進を宣言通り真正面から受け止めた奏は、わんこもろともに宙を舞い――盛大に土の地面に押し倒された。
 奏を中心にするように蜘蛛の巣状のヒビが入っているが、流石猟兵埒外の存在。痛みなどまるで感じないかのようにキャッキャと動き回るわんこを、心底幸せそうな顔で抱き寄せるのに夢中だ。
「あ~~~……幸せ、いつまでも遊んでいたいんですが」
『わっふわっふわっふ』
 つぶらな瞳は、まるで『ずっと遊んでいよう?』と訴えかけてくるようで心が揺らぐ。
 だが、本来の無害なわんこに戻してあげませんとね。そんな『信念』こそが拳に篭もり。
 腕の中で己を見上げてくるわんこのちっちゃな額めがけて――ぽかり!
『きゃうん!』
 ころころころ、と。ぬいぐるみが腕から転がり落ちるように。
 茶まろわんこはお腹を見せて地面に寝そべり、すっかり大人しくなった。

「大丈夫ですか、奏?」
 一足先に役目を果たした可愛い義妹に手を差し伸べる瞬もまた、小脇に突進してきた茶まろわんこを一匹抱えていた。これまた足をバタバタさせてハッハッと興奮している。
「……だ」
 大丈夫です、これくらい。そう強がろうとした言葉は何故か出せずに。
「ううん、ありがとう……瞬兄さん」
 手が握られ、力強く引かれて立ち上がる。自分たちで最初に言ったから。
 ――言葉にしないと、伝わらないことがあると。素直さだって、大事なのだ。
「どういたしまして、さあ――後は任せて下さい」
 そう告げながら瞬は空いた片手に氷で出来た星の形をしたおもちゃをわんこに渡す。
『……!』
 わんこは瞬の腕の中で一心不乱に氷を舐め始めた。冷たくて前脚で抱え続けるのが難しいのか、まるでお手玉でもするかのようにちょいちょいしている仕草が愛らしい。
『きゅう~ん……』
『きゃいん、きゃいん』
 ぼくたちには? ねえ、ぼくたちには? そう言いたげに距離を置いているわんこたちにも瞬は柔らかく微笑んで、星だけでなく月や花を象った氷をぽいぽいと放ってやる。
『わんわん! わんわんわん!』
『わふわふっ、わんっ!!』
 放られた氷の贈り物に、茶まろわんこたちは大喜び。取り合うように鼻先をギュッギュと押し付けあって、自然とはちゃめちゃに入り乱れて大はしゃぎとなる。
 それをしばらく微笑ましく眺めていた瞬だったが、奏が先にそうしたように、わんこたちをあるべき姿に戻してあげないといけないから――腕の中のわんこを、拳でこつん。
 ぽろりと氷を取り落とし、文字通り憑き物が落ちたかのようにきょとんとした顔になるわんこ妖怪を、瞬はそっと地面に下ろしてやった。
「――元に戻ったら、また遊びましょうね?」

(「奏も瞬もいい調子じゃないか、これは負けてられないね」)
 母・響、いよいよ満を持しての出陣である。
「うん、まずはこの茶色い犬をなんとかすればいいんだね?」
 敢えて周囲の妖怪達に問い掛けるようにすれば、こくこくと首肯するものたちの姿。
 やはり『声』が出せないというのはよろしくない、一刻も早く解決しなければ。
 そう思いながら、響がわんこたちを見た。不敵に笑う歴戦の猛者の視線に、わんこたちが一瞬怯んだ。ひぃん、という声さえ聞こえたのだから相当だ。
「鬼ごっこでもするかい? 手は抜かないよ」
『きゃいん、きゃいん!』
 ――刹那の出来事であった。同意の声を聞くより前に、響は地を蹴っていたのだ。
 驚異的な瞬発力でもって踵を返し散り散りになろうとした茶まろわんこたちだったが、一瞬躊躇した一匹があっという間に響の腕の中にすっぽりと収まった。
「ほら、捕まえた」
『わんっ、わんっ』
 敵意はないと示すかのようにわんこを高い高いしてみせる響に、ホントにぃ? という感じの声で鳴いて返すわんこ。本当さぁ、と響は横座りになりながらその膝にわんこを乗せる。
「♪~~、♪~~」
 心地良い鼻歌が静寂の世界に響き渡れば、わんこはすっかり安心したように大人しく膝の上でちょんとお座りをして収まっている。
(「今のままでも無害そうに見えるが、悪い事してるんだよね……」)
 短い毛並みの頭部をひと撫でしてやって、次いでその頭に燃える拳をコツン。
「本来の姿にお戻り、もう悪い事はするんじゃないよ」
『わぅ』

 ――会いたかった『誰か』は思い出せなかったけれど。
 ――何だろう、とっても満たされた気持ちでいっぱい。

 ころん、ころん。無害な妖怪に戻ったわんこたちが、また数匹。
成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴

ジャガーノート・ジャック
◎神楽耶/f15297と

(仕事に赴けば 一方的な顔見知りが犬に埋もれて戯れている――いや、どうやら困窮してる様子か。)

(ザザッ)
"MOON FORCE"起動。
(行使対象を神楽耶に指定。空中に浮かせた後、自分の方に引き寄せ救助する。)

――要救助と見受けた為勝手ながら支援した。
容赦願いたい。
援護が必要ならば協力しよう。

(UCの行使対象を切替。骸魂と化した犬達を浮遊させ操作、空中散歩をさせてやる。
一頻り遊ばせた後、【焦羽挵蝶】へと誘導、もしくは犬同士をごっつんこさせ気絶させよう。)

礼の必要はない。
――骸魂さえ除けば今度は接触もできるのではないかと提案しておこう。触れ合いたければだが。
(ザザッ)


穂結・神楽耶
◎ ジャック様/f02381と

わんこと、遊べる…?
普通の動物には嫌われるんですけど、骸魂ならちょっとだけ遊べ…

きゃーーーっ!?
ちょっとパワフルすぎやしませんかーっ!?
ああああやめてくださいわんこ様方、羽織は美味しくないです刀なんて食べたらおなかを壊、
ほえ……?

(体が浮いた)
(大人しくされるがまましていたら顔だけ知っている知人だった)
(恥ずかしいところを見られたのでは?)
(でも仕事の場ですよね)
(切り替えようの真顔)
(深呼吸)

あ、ありがとうございます。助かりました。
動物ってパワフルですね…
この後は【焦羽挵蝶】で遠くから遊ぶことにします。
ジャック様に合わせて迷える骸魂をそのまま導いていきましょう。


●ワンちゃんはホントに元気ですよね
「わんこと、遊べる……?」
 いつ如何なる時でも刀を携えずにはいられないのは、それが己の『本体』なればこそ。
 穂結・神楽耶(あやつなぎ・f15297)は万感の思いを込めて、そう呟いた。
 実はこの太刀のヤドリガミ、常日頃から動物とはとんと縁が無い。その存在の在りようを本能か何かで察するのだろうか、普通の動物にはことごとく嫌われてしまうのだ。
 だが、眼前にずらりと並ぶ茶色の毛玉たちはどうか。これは――骸魂と化したモノ。

 ――ワンチャン、あるのでは?

 巻いた尻尾をびたんびたんと振る茶まろわんこたちを見て、神楽耶は息を呑む。
 そして、そっと身を屈めて懐へと迎え入れるようにそっと両腕を広げた。
「骸魂なら、ちょっとだけ遊べ……」
『わんわんわんわんわんわん!!!』
「きゃーーーーーーーーーっ!!?」
 ずどーん! 果たしてわんこたちは臆するどころか嬉々として神楽耶の懐へとどんどこ飛び込んできた。
 あまりにも猪突猛進という表現がぴったりだったものだから、三匹ほどのわんこたちもろとも神楽耶がくの字になって吹っ飛んでいき――野次馬の妖怪たちを巻き込きボウリングのピンのように吹き飛ばし、ようやっと止まる。
 だが、神楽耶は起き上がることが出来ない。何せ三匹のわんこたちがペロペロと神楽耶の頬を舐め回したり、服をグイグイ引っ張ったり、もみくちゃにしてくるのだから。
「ちょ、ちょっとパワフルすぎやしませんかーっ!?」
 好意的に接してもらえるのは決して悪い気はしない。しないが、限度というものがある。
 これにはさすがの神楽耶も気圧されそうになり、必死に抵抗を試みるが――。

 あれだけ盛大に巻き込まれておきながら野次馬根性とは恐ろしいと言うべきか、いまだ場に残った周囲の妖怪たちがハラハラ見守る中に、ネコ耳を思わせる形状の頭部持つ機械鎧姿の存在ひとつ――ジャガーノート・ジャック(JOKER・f02381)だ。
 聞かされていた通りの静寂の世界に、骸魂と猟兵の声だけが響くのも異なものだと思いながら降り立てば、まず視界に入ったのは一方的な顔見知りの姿。
(「犬に埋もれて戯れている――いや、どうやら困窮している様子か」)
 ジャガーノートのバイザーが赤く光り、重力消失たる超常の発動を示す。

 ――【MOON FORCE(ムーンフォース)】。

 すいと黒い指先を神楽耶に向ければ、あら不思議。
「ああああやめてくださいわんこ様方、羽織は美味しくないです刀なんか食べたらおなかを壊」
 これもうAV(アニマルビデオ)じゃないですかね……という様相を呈しそうになっていた所に、天の助けのように蹂躙されかけていた神楽耶だけがふわりと浮いた。
「ほえ……?」
 思わず間の抜けた声を上げてしまう神楽耶を己の方に引き寄せて救出に成功したジャガーノートが、ザザッとノイズが混じった音声で語り掛ける。
「――要救助と見受けた為、勝手ながら支援した」
(「……ああ、この方は」)
 顔だけなら知っている、けれど言葉は交わしたことがない『知人』。
「容赦願いたい」
 まるで瞑目するかのようにバイザーの光を落とす様を見遣りながら、神楽耶は思う。
(「もしかしなくても――恥ずかしい所を見られたのでは?」)
 正式な初対面、ファーストコンタクトの印象は大事だ。ああ、願わくばカットからのテイク2とは行かないだろうか。犬にもみくちゃにされている所を見られただなんて――!
「援護が必要ならば、協力しよう」
 そんな神楽耶の脳内でぐるぐるするものを知ってか知らずか、淡々と問うジャガーノート。抑揚のない、時折ザザッと混ざるノイズだけがアクセントの音声にハッとなる。
(「援護――そう、仕事。今この場は仕事の場ですよね」)
 重力の枷から解き放たれてふわりと浮く人間の肉体で太刀の本体を抱きしめながら、神楽耶は今日一番の真顔になった。さあ、切り替えて行こう――深呼吸をひとつ。

「……あ、ありがとうございます。助かりました」
「礼の必要はない、大丈夫ならば地上に降ろそう――さあ」

 重力を返すから、着地に備えよと神楽耶の手を取るべく差し伸べたジャガーノートの手。
 支えになれると確信した瞬間、ユーベルコードの対象を神楽耶からわんこたちへと変更――不意に戻る重力に、神楽耶はジャガーノートの手を借りながらしっかりと着地した。
 見れば、散々己を弄んでくれた無邪気なる骸魂どもは、今やふよふよと宙を泳ぐ毛玉の塊。やや短めの足をバタつかせて、尻尾はいつ千切れてもおかしくない勢いで振られ。
「空中散歩をさせてやる、こんな遊びは初めてだろう」
『わんっ、わんわんわん!!』
『わうっわうっ、はっはっはっ』
 神楽耶とジャガーノートが相手取る茶まろわんこたちは、ひときわ元気が良いようだ。
 立体的にくるくる宙を舞い、無重力体験を存分にエンジョイするわんこたち。
 ひとしきりはしゃいで息が切れ始めたわんこたちを見て、ジャガーノートが頃合いかと振り向かずに神楽耶へと告げた。
「――合わせよう、数体そちらへ送る」
「――はい、それでは今度は近寄らず、遠くから『遊ぶ』ことにします」

 迷える骸魂を導く送り火となれ――【焦羽挵蝶(コガレバセセリ)】!

 ジャガーノートがくいと指先を動かして神楽耶の方へと数体の茶まろわんこを送れば、神楽耶が喚んだ鈍い赤を宿す炎の蝶がその周りを包み込んで、骸魂だけを連れ去っていく。
 手近なわんこ同士は目線で操り、頭部を軽くごっつんこさせて気を失わせ、これまた無害な妖怪へと戻していく。
「動物って、パワフルですね……」
 常々縁があればとは思っていたけれど、まさか斯様に圧倒されるとは。
 そんな率直な感想を漏らす神楽耶に、ジャガーノートが振り返り言う。
「――骸魂さえ除けば、今度は接触もできるのではないか」
『え……?」
「と、提案しておこう」
 言うだけ言って、またくるりと背中を向けてしまうジャガーノート。尻尾が揺れた。

「ザザッ……れ合いたければ、だが」
「! それ、は」

 ノイズ混じりでも、今度はきちんと意図をくみ取れた。
 ああ――やっぱり、あの姿はバッチリ見られていたのだと軽く頭を抱える神楽耶。
 どなたか、お客様の中に記憶消去銃をお持ちの方はいらっしゃいませんか!
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

満月・双葉

えっ、これ、もふっても良いんですか?
良いなぁ、何と言うサービス
ダメージを負うと言うなら【激痛耐性】で耐えつつユーベルコードで回復するから良いのです
回復ですよ?
とは言え動けなくなったら悲しいですから可能な限り【野生の勘】で【見切り】するとしましょうか
思わず撫でたくなりますし、もうここは遠慮なくもふもふし、時々こちょこちょしてメッ!て言いましょう
眼鏡が外れて裸眼がさらされたら虹瞳の【生命力吸収攻撃】が発動しますがそれは不可抗力と言うことでひとつそのままもふらせてください
まぁほら、遠慮せず
何となく連れて帰りたい衝動にかられますが、ネコとカエルのマスコットが居るので…えっお前はペットじゃない?うっせ


荒谷・ひかる
なるほど、元々はそう悪い子たちではなさそうですね。
でしたら、なるべくやさしく対処してあげないと。

わんこの群れに近づいて、まずは一体と遊びましょう
あんまり動くのは得意ではないので、座ってわしゃわしゃ撫でたり毛づくろいしてあげたり
気持ちよくしてあげられれば、他の子達も寄ってくるでしょうか
なるべく多くの子と遊んで、近くに引き付けておきます

粗方いい感じに撫でモフしつつ集められたなら【本気の光の精霊さん】発動
杖の先端の精霊石を光の花弁へと変え、光の花吹雪でみんな包み込みます
攻撃対象は彼らに憑いた「骸魂」のみ、わんこたちの本体には傷一つつけません

びっくりさせてしまいましたか?
うふふ、ごめんなさい。


●むちむちもちもちわんころりん
 もふもふなのと、もちもちなのと、あなたはどちらがお好みだろうか。
 今、満月・双葉(時に紡がれた星の欠片・f01681)と荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)の前には、茶色の毛並みをもちっとさせてまるっとしたボディを見せつけてくる茶まろわんこたちの群れがいた。

「えっ、これ、もふっても良いんですか?」
『わんっ』

 双葉の問いに、いいよと言わんばかりの元気な吠え声で返すわんこ。
「なるほど、元々はそう悪い子たちではなさそうですね」
 ニッコニコで尻尾を振りまくるわんこたちを見て、ひかるが顎に軽く手を当てた。
「でしたら、なるべくやさしく対処してあげないと」
 そうしてチラリと隣の双葉を見れば――ああ、もう既にもちもちしている!
「良いなぁ、何と言うサービス」
 もっちもっち。今の茶まろわんこたちには、こちらが何をしてもダメージは通らない。
 その代わりとして、茶まろわんこたちはぴくりとも動けないのだ。
 即ち――触りたい放題ッ! 故に、遠慮など不要ッ!!
 双葉は存分にわんこをもちもちもふもふして、時に喉元をこちょこちしては「メッ!」と大きな両耳をもちーんと引っ張ってみたり。
 わんこはいわゆる無敵状態でされるがままなので、双葉の眼鏡がズレたのもひとえに双葉自身が勝手にエキサイティングし過ぎた結果であり。
 裸眼を晒したことによる魔眼の効果さえも、もちもちボディの無敵の壁を破ることはできず。内心でセーフセーフと言いながらわんこをこねくり回し続けるのだ。

「荒谷さんもどうです、まぁほら、遠慮せず」
「は、はい……」
 様子を見ていただけで躊躇していた訳ではなかったが、折角勧められたならば乗っておかねば。そうしてひかるも歩を進めて、もちもちボディで迎え入れてくれた茶まろわんこのうち一体にそっと触れる――もちっ。
(「極上の手触り……っ」)
 もっと、こう、毛並み的に、ごわっとした感触を想像していたものだから。
 手に吸い付くようなもっちり感に、思わず驚きで目を見開いてしまうひかる。
(「あんまり動くのは得意ではないので、追いかけっこをせずに済むのは助かります」)
 触ってもらえたのが気持ちいいのか。ご機嫌で尻尾を振るわんこの前にひかるは座り込むと、思い切りもちもちボディを撫で回しては毛並みが整うように丁寧に指を入れる。
『くぅーん、くぅーん』
『わおん! わんわん!』
 猟兵の側からすればわんこのもちもちボディも気持ちいいが、堪能される側のわんこからしてみても撫でてもらえるのは心地良かったのだろうか。
 たまんねえ~とでも言いたげな声を上げるわんこにつられるように、他のわんこたちもボディをもちもちさせながら次々とひかるに身を寄せてくるではないか。
「きゃ、ま、待って下さいっ、順番に……ひゃあ!?」
 うわあ何かおしくらまんじゅうみたくなっちゃったぞ。うーんこれは密です。
 ともあれ、ひかるの目論み通りに茶まろわんこたちは大集合してきたのだ。

「光の精霊さん……あなたの本気を見せてあげてっ!」
 ――【本気の光の精霊さん(ライト・エレメンタル・オーバードライブ)】!

 精霊杖【絆】の先端に嵌まった精霊石が、きらきら輝いて光の花弁と化してやがて花吹雪となる。
 それは茶まろわんこたちをあっという間に包み込んで、骸魂のみを連れ去って行く。
 後に残されたのは、無害なわんこ妖怪のみ。
「何となく連れて帰りたい衝動にかられますが……」
 心なしか骸魂だった頃と比べてシュッとしたボディになったようなわんこ妖怪を見ながら双葉が呟くと、懐と肩からねことカエルのマスコットさんとが顔を出した。
 肩の上でシュッシュと、カエルのマスコットさんが何やらジェスチャーをすれば。
「……えっ、お前はペットじゃない?」
 うっせ、と。憎まれ口ひとつ叩いて、双葉は反対側の腕を伸ばしてカエルのマスコットさんをピンと指で弾いて吹っ飛ばしてやった。
 大丈夫、カエルのマスコットさんは強いから。この程度は問題ない……はず!

「びっくりさせてしまいましたか?」
 そんな漫才めいたやりとりを尻目に、ちょっとシュッとしたようなわんこ妖怪にひかるが優しく声を掛けた。
 すっかり普通の妖怪に戻ってしまったわんこは、吠え声を出せないけれど。
「うふふ、ごめんなさい」
 それも、じきに解決してみせますからねと。そっと頭をひと撫でしてやった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

桜雨・カイ
◎(SPD)
気が済むまで遊べばいいんですねっ、行ってきます!(にこにこ顔で速やかに行動)
追いかけっこがしたいのですか?わかりました全力で遊びましょう。

ある程度遊んだ後は休憩がてらわんこ達をなでます
調査ですからね、これは(もふもふ)

……会いたい人が、いるんですか?
私の会いたい人は…やっぱり主です。
もしかしてこの骸魂も飼い主が恋しいのかも。

あなた達は名前は覚えていますか?
もしも思い出せるなら、そっとなでながら一匹づつ名前を呼んでみます。
思い出せなくても気持ち良くなるようなでてやります。
少しでも飼い主との思い出を思い出せるように…

依頼もわすれてはいないので、最後にはこつんと一撃して倒します。


インディゴ・クロワッサン
もふもふ。
「もふもふわんわん…」
僕の声が無事だとしても、周囲は気にしてないよ。珍しいね!(笑)
「たまには…癒されても良いよね…」
【WIZ】
もちもちわんこに突撃だー!
UC空間内は快適だけど、UDCアースに買い出しに行くと、とっ(中略)っても暑いんだもん!!!
「あーーー…」
わんこを撫でくり回して、もふもふのお腹に顔を埋めたら
「もふもふ…わん………わ…」
安らかに寝落ちしてると思うよ!
UDCアースの日本の夏が暑すぎて、最近寝不足だったんだよねぇ…
それはもう気持ち良く寝てるね!(笑)

あ、僕が寝落ちたぐらいのタイミングでUC:怠惰なれ が発動するだろうから、ポコポコ殴りはUCにお任せだよ☆


●エクストリーム追いかけっこ
 愛くるしくて丸っこいボディの茶まろわんこたちは、まだまだその勢いが衰えない。
 ならばその分猟兵たちの出番でもあるからして、インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)と桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)が転移を受けて降り立った。
「もふもふわんわん……おお、ホントに僕の声は無事だ」
 ここ幽世ではすっかり『声』が失われたと聞いていたけれど、猟兵たる自分たちや事件を引き起こした骸魂たちのみがそれから逃れているということには、何かしらの意味があるのだろうか。
 そう思いながらインディゴが己の『声』の無事を確かめると、その隣ではカイが元気いっぱいそうなわんこたちを見て青い双眸を輝かせていた。
「気が済むまで、遊べばいいんですねっ」
 そうしてビシッと片手を挙げると、インディゴに向けてニコニコ笑顔。

「――行ってきます!!」

 宣言するなりカイは茶まろわんこの群れ目掛けて猛然と駆ける! わんこたちは『追いかけっこだ』と察したのか、一斉にむちむちのあんよで走り出す!
「追いかけっこがしたいのですか? わかりました、全力で遊びましょう!」
 高く結った髪をなびかせて、カイがぽてぽてと走るわんこたちを追いかけ回す。なお、わんこの走る速さは見た目以上に意外と速く、成人男性の肉体を持つカイが全力を出してようやく息が切れたわんこに手が届くという程度には速い。
 捕まったわんこは大人しくカイの足元にまとわりついて、撫でて欲しいと言わんばかりに見上げてくる愛くるしさである。
 そんなわんこに足を取られつつ、数匹の逃げるわんこたちを次々と捕獲していくカイの周りには、戦利品ならぬ確保したわんこがどっちゃりと。
 そのうちの一匹をしれっと持ち上げて、インディゴが己の方に引き寄せる。
 わしゃわしゃと茶色の毛並みを撫でくり回して、もふもふのお腹に顔を埋めて。
「もふもふ……わん……わ……」

 ★寝落ちた――!!!

 日頃の疲れが溜まっていたのだろうか、インディゴはそれはもう安らかに眠っていた。大丈夫? 永眠してない? カイが不安げに覗き込もうとしたその時だった。
 ユーベルコード【怠惰なれ(ホーホムート)】――発動。
 異世界の夏の暑さで連日寝不足だったというインディゴの熟睡は、まさに非戦闘行為。
 それに呼応して藍薔薇の花弁が次第に数を増やしていき、興味本位で近付いてきた茶まろわんこを包み込む。骸魂のみが在るべき場所へと還されて、残るは無害なわんこのみ。
「……大丈夫、そうですね」
 カイがインディゴの無事を確認すると、改めて追いかけっこで友情を育んだかも知れないわんこたちに向き直る。
「調査ですからね、これは」
 そう誰ともなしに言い訳めいたことを言って、カイはわんこの毛並みにそっと手を埋める。もふもふ、もふもふ。休憩がてらの、至福の時だ。
『きゅん、くぅん』
『はっはっ、はっはっ』
 わんこたちも嬉しそうにしている、こうして見れば何の害もなさそうなのに。
 ふと、わんこたちの事情が気になって、声を掛けてみた。
「……会いたい人が、いるんですか?」
『わぅ』

 ――一緒に遊んでくれた『誰か』に会いたくて。
 ――どうしても思い出せないけれど、なんだか満たされた気分で。

 犬が恋しがる相手など、飼い主だろうと相場は決まっているもの。
「私の会いたい人は……やっぱり『主』です」
 だからカイは、この骸魂はみんな飼い主が恋しいのだろうと推測する。
「……あなた達は、名前は覚えていますか?」
『くぅん?』
 わんこたちは一様に首を傾げる。この様子だと、恐らくはそれさえも覚えていないのだろう。もしも覚えていたのなら、その名を呼んであげたかったけれど。
 名を呼ぶ代わりに、一匹一匹の頭を、背を、丁寧に撫でてやる。

 ――ああ、思い出した。
 ――こんな風に、よく頭を撫でてもらったっけ。

(「依頼も、忘れてはいませんので」)
 骸の海へと還るべきもののみ、引き剥がすように。わんこの頭を、こつんと打った。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

木常野・都月


犬って、こんな可愛い種族もいるのか?

俺が知ってる犬は、筋肉ムキムキで、飼い主に優等生顔で尻尾振ってる感じだったけど……

いや、合体してる骸魂の方が可愛いのかもしれない。
可愛いオブリビオンは他所にもいた。
引き剥がしたら元の犬に戻るはず。

尻尾を齧られないように気をつけながら、立ち回りたい。

そ、そんな可愛い顔したってダメだ……。
俺は犬より賢いはずだ……騙されるものか……。

尻尾はダメだ、お前達は牙が長い。
俺の尻尾は玩具じゃないぞ。

い、犬のくせに。
可愛い。

俺は、妖狐なんだぞ。
狐じゃ……獲物じゃない。

尻尾が…俺の尻尾が…毟られる!

UC【精霊の矢】を氷の属性でベチッてやりたい。


御桜・八重


「ハグ…?」
ネリーちゃんの物言いに、頭を捻りながらもカクリヨへ。

「…天国っ!」
着いて早々わんこまみれ。
思い残すことは無いと言わんばかりの表情で、
わんこの海に沈みゆく御桜・八重…

完。

「じゃなくってぇっ!」
ガバアっと跳ね起き、わんこに話しかける!
「あなたたちの会いたい人って、誰?」

言葉は通じなくても心意気!
身振り手振り、全身でわんこたちに話しかける。
「ふんふん、昨日エサをくれたおばさんに会いたいの?」
(わんこ:違う違う)

「わかった! でも、このまま会いにいったら大変なことになっちゃうよ」
よーしとわんこを一纏めに集め、
「ちょっとだけ我慢ね♪」

【スクワッド・パレヱド】!

衝撃波で骸魂だけを弾き飛ばす!


●話せば分かるとは言いますが
 木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)の知識にある『イヌ』という存在は。
「……こんな可愛い種族もいるのか?」
 もっとこう、筋肉がムキムキで、飼い主に優等生顔で尻尾振ってる感じだった。
 大丈夫? 都月くん、過去に犬と何かあった?
「いや、合体してる骸魂の方が可愛いのかもしれない」
 ぶんぶんと首を振って、思考と現実の整合性を取ろうと必死になる。
(「そうだ、可愛いオブリビオンは他所にもいた。引き剥がしたら元の犬に戻るはず」)
 都月は大真面目に考えて、眼前の愛くるしいまるまるとしたわんこたちを見据えた。

(「ハグ……?」)
 都月に一歩遅れて、御桜・八重(桜巫女・f23090)が『声』を奪われた幽世に降り立つ。
 どうやら、ハグとは何だろうという疑問が抜けないままやって来てしまったらしい。
 だがそれもすぐに吹っ飛ぶことになろうとは――眼前に広がる、茶まろわんこの姿!

「……天国っ!!」

 八重の姿を認めて、アッこれは構ってくれる人だと言わんばかりに、尻尾を振りながら次々とわんこたちが突進を仕掛けてくる。
(「ああ、着いて早々わんこまみれ」)
 短いあんよからは想像もつかない程の猛スピードで、八重まっしぐら。
(「思い残すことなんて、あるわけない」)
 ダイブ、ダイブ、ダイブ。わんこが八重に、無邪気に飛びかかり――。

 ~完~

「――じゃなくってぇっ!!」
 ええっ!? 失敗判定出さなきゃいけないんですか!? などとヒヤヒヤしていたので安心しました! という訳で八重さん復活です!
 ガバアっと跳ね起き上にかぶさっていたわんこたちを蹴散らしながら、手近な一匹をもふっと掴んで話し掛ける。
「あなたたちの会いたい人って、誰?」
『きゅぅん……』
 心なしか耳が垂れ下がった気がした。何を言っているのかはさっぱり分からないが、そこは心意気で何とかするのだ。身振り手振りを駆使して、全身で対話を試みる。
「ふんふん、昨日エサをくれたおばさんに会いたいの?」
『きゃん!(『違う違う!』)』
 もしかしなくても、こちらの言葉は伝わっているようだ。あとはやっぱり気合いかと八重が盛大に両腕を広げて質問を続ける姿を、都月は震えながら見守っていた。
(「油断すると尻尾を囓られるのに……俺は油断しないからな、気をつけて行くぞ」)
『わぅん』
「うわぁ!!?」
 いつの間にか、都月の背後に茶まろわんこの一匹がちょこんとお座りしていたのだ。
 ズザザと距離を取ってわんこと対峙する都月。冷や汗ダラダラである。
「そ、そんな可愛い顔したってダメだ……俺は犬より賢いはずだ……騙されるものか……」
『わっふ?』
 無意識にブワワと膨らんでしまった都月の豊かな尻尾に、わんこは自然と興味を示す。
 それに気付いた都月が、ほらやっぱりという風にひときわ大きな声を上げた。
「尻尾はダメだ、お前達は牙が長い! 俺の尻尾は玩具じゃないぞ!」
『きゅぅ~ん……』
 叱責されたと思ったのだろうか、わんこは目に見えてしょんぼりしてしまい。
 まろ眉が愛くるしいわんこが、耳と尻尾を垂らして小さくなってしまうから。

(「い、犬のくせに。可愛い」)

 ――都月は、完全に絆され始めてしまった。
「俺は、妖狐なんだぞ。狐じゃ……獲物じゃない」
 ぽて、ぽて。そう表現するしかない位に愛らしい足取りで近付いてくるわんこ。
「尻尾が……俺の尻尾が……」
 震える手をゆるゆると持ち上げる。
「――毟られるっ!!」
『きゃうん!?』
 氷の矢が一本、茶まろわんこを貫いた。丸っこい身体が、宙を舞う。
 これは正当防衛なんだ、そうだ、俺は悪くない――そう呟く都月の目の前で、骸魂だけが引き剥がされた無害なわんこ妖怪が、ぽてんと地に落ちた。
 その姿は、ちょっとだけシュッとして、確かに程良い筋肉がついていた。

「わかった! でも、このまま会いにいったら大変なことになっちゃうよ」
 はい、おいでおいでーと両手でわんこたちをかき集める八重。
 言葉が通じなくとも、ボディランゲージひとつで結構何とでもなるものだ。
 そこへ、ググッとタックルの要領で身構えた八重が声を掛けた。
「ちょっとだけ、我慢ね♪」

 さっきのお返しとばかりに、猛然とわんこの群れに突進していく八重――これこそが【スクワッド・パレヱド】!
 茶まろわんこの丸っこいボディが、ボウリングのピンみたいに派手に宙を舞った。
 衝撃で、次々と骸魂だけが在るべき場所へと還っていく。
 ぽてぽて、ころん。解き放たれたわんこ妖怪に囲まれた八重は。

「やっぱり、ここは天国……っ!!」

 わんこの海に、沈みゆく――。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

雷陣・通

(口をパクパクとさせた後)

……あ、声出るんだ

おっし、じゃあ勝負だわんころ!
え、探し物?
見つけにくいものか?
わっかんねーけど、任せとけ!

『大雷神』――発進!!
インターフェースにRyzinを使っている、この大雷神なら高いところから探せるし、手の上に大量のわんころを乗せられるぜ!

……いたか! よし、そこへ行こうぜ!
ライトニングケーブルフルパワー!
全速前進!

†ライトニングに探すぜ†

あ、でも、声を奪ったのはいけないから
お前ら全員、一発殴っとくからな!
(ぽかり!)


●探し物は何ですか
 幽世中からありとあらゆる『声』が失われたというのだから、そこに足を踏み入れた己もまた『そうなる』のではと考えるのは至極当然なことで。
 だから、雷陣・通(ライトニングボーイ・f03680)は転移を受けて真っ先に口を数度パクパクさせて――。

「……あ、声出るんだ」

 そう、はっきりと声帯を震わせてしっかりと『声』を発した。
 いかなる仕組みかは分からないけれど、どうやら事件の元凶たちと、外からやって来た猟兵たちについては理の外側にあるらしい。
 よく分からないけど――ヨシ!
 そういう訳で、通はずらりと並んで仲良く尻尾を振っている茶まろわんこたちを指さす。
「おっし、じゃあ勝負だわんころ!」
『わぅん!!』
『わん、わんっ!!』
 すると、わんこたちは前あんよで地面を掘るような仕草で何かを訴えかけてくる。
 それをしばし眺めて思案した通は、不意に脳内を電流が走るような感覚を覚えた。
「――探し物? 見つけにくいものか?」
 ど、どどど動物会話の技能もないのにどうして!?
「わっかんねーけど、任せとけ!!」
 分かって、なかった――! わんこたちも何だか不安そうだぞお!

『わうぅ……』
「大丈夫だって、いいこと思いついたんだよ」
 何やかやで己の周りに集まってきたわんこたちの頭をわしゃりと撫でてやると、通はバッと反対側の手を天高くかざす。

「来いっ! 大! 雷!! 神ッ!!!」

 するとたちまち雲が立ち込め、稲妻が光り――雷鳴が静寂を切り裂いて、轟音と共にはちゃめちゃにデカいロボットが召喚されたではないか。
 ホントに男の子ってこういうの好きねえ! わんこもキャッキャとはしゃいでますよ!
 コックピットから照射された謎の光に吸い込まれるようにロボへと搭乗する通。
「インターフェースに『Ryzin』を使っているこの『大雷神』なら高いところから探せるし……」
 近未来的な計器類の青いバックライトに照らされながら、通はコンソールを叩いて言う。
「ほらこの通り、手の上に大量のわんころを乗せられるぜ!」
『わんわん、わんっ!』
『わふっ、わふっ』
 大雷神が膝をついて身を屈め、両手ですくうようにわんこたちを迎え入れれば、ちぎれんばかりに尻尾を振ってわんこたちが集まってくる。
 よいしょ、と言ったかどうかはさておき、すっくと立ち上がった大雷神の大きさは桁違い。カクリヨファンタズム中の何よりも大きいだろう。
『わうわう、わんわん』
『きゅぅん、くぅん』
 文字通り、世界中をも一望できそうな高さで。
 見える景色がことごとくミニチュアのようで。
 それでも、わんこたちは頑張って探したのだ。
『……わんわんわん、わんわん!!』
「……いたか! よし、そこへ行こうぜ!」
 正直な所、とある方角へ向けて吠えているだけに過ぎないので、探し人がいるとは限らないのだが、それでも行ってみる価値はあるはずだ。
「ライトニングケーブル、フルパワー! 全速前進!!」
 めっちゃ充電できそうな名前のケーブルから動力の供給を受けて、巨大な大雷神がズシンと一歩を踏み出す。

 ――ここまでして、探してくれるなんて。
 ――きっと、この人はいい人なんだろう。

「任せな――†ライトニングに探すぜ†」
 コックピットの中でめっちゃキメ顔をした通だったが、わんこには届いただろうか。
「あ、でも!」
『わぅ?』
 おもむろに通が大雷神の中から飛び出して、腕を伝ってわんこたちの元へ。
 そうして拳を振り上げると――ぽかり!

「『声』を奪ったのはいけないからな! お前ら全員、一発殴っとくからな!」
成功 🔵🔵🔴

香神乃・饗
【鳴北・誉人(f02030)】
誰かに会いたいんっすか?それって俺じゃないっすか?(冗談めいて
えー、誉人じゃないっすよ(むうと唸る
なんて
へへへ、いっぱい遊ぶっす!

おいかけっこいくっす!
待つっす!
へっへっへ、逃がさないっすー!
誉人のほうに追い込むよう追いかけまわす

おやつがあるっす!
UDCアースの骨のおやつっす!
ぎゃー!
わんこまみれになる
くすぐったいっしゅ!ほわほわぬくぬくっしゅ!
埋もれても笑って撫でてやる

誉人にも骨を分け
誉人のおやつは後でっす
くすくす笑う

めっちゃんこたっぷり遊んでやったら
まだまだ骨のおやつはあるっす!さ、ついてくるっす!
追わせて増やしておいた苦無でぽこぽこぽこっと骸魂を討ち取るっす


鳴北・誉人
饗(f00169)と

わんこどもに話しかける饗に張り合う
饗じゃねえな、俺だよ!な、わんこ!俺と遊ぼォぜ!

座り込んでわんこを待ち構える
力いっぱい来られてもメーワクだからオーラ漲らせて身構え

いっぱい撫でさせろ、もふっと感を堪能してえ
わしゃわしゃかァいがってやる
はあ、かァいい、やらけえ…!

饗の持ってるおやつ分けてもらう
わんこまみれになっても喜んでなすがまま
だあっ、ふはっ舐めんな!もォ!
うめえ?そんなうめえの?骨か…
どんな味がすンだろォ味見――ジョーダンだよォ、食わねえ食わねえ!

ほら饗が行っちまう
追いかけねえと
わんこどもを嗾け俺に背を向けたところで抜刀
刃を返して剣刃一閃
遊ぶだけじゃダメなんだってよ、残念


●目いっぱい遊びましょう
 たくさんの仲間たちが、たくさんのやさしい人たちに構ってもらって幸せだけれど。
 肝心の会いたい『誰か』は誰一人として思い出せないまま。
「『誰か』に会いたいんっすか? それって、俺じゃないっすか?」
 しゃがみ込んでそんな茶まろわんこたちの顔を覗き込むようにしながら、冗談めかしてにししと笑う香神乃・饗(東風・f00169)に、わんこたちは一瞬怪訝な様子を浮かべた後。
『わぅん、わんわんっ!』
『わふっ、わふっ!』
 言われてみればこの人かも知れないと、割とあっさりその気になって尻尾をぶんぶん。
 それを見て割り入るように身を乗り出すのは鳴北・誉人(荒寥の刃・f02030)だ。俺を忘れてもらっちゃ困ると言わんばかりに、饗を取り囲むわんこたちへ負けじと声を掛ける。
「饗じゃねえな、俺だよ! な、わんこ! 俺と遊ぼォぜ!」
「えー、誉人じゃないっすよ」
 大人げない相棒に向けて何言ってんすかというむくれ顔をするも、それは決して不快なものではなく、饗の表情はすぐにくしゃっとした笑顔へと変わるのだ。
「……なんて。へへへ、いっぱい遊ぶっす!」
 ――みんなで一緒に、楽しく遊ぼう!

『わんわんわん、わんっ!』
『わうわうっ!!』
 誉人と饗の周りには、結構な数のわんこたち。どうやら、体当たりをして遊んで欲しそうな子と追いかけっこで遊んで欲しそうな子とで意見が割れているようだ。
 傍目にはキャッキャとじゃれ合っているように見えて、地味に揉めている。ヤバい。
 饗が誉人に目配せをすれば、心得たと頷きあう。そして饗がまず一歩踏み出して、短いあんよでお互いをていていやっているわんこたちに呼び掛けた。
「さあ、追いかけっこいくっす! 逃げないとすぐ捕まえるっすよ!」
 ぐわーと両手をわざとらしく掲げてみせれば、わんこたちはたちまち散り散りになって走り出す。それを早速追いかけ回す饗の軌道は――それとなく、それとなく、わんこたちをひとかたまりにして、座り込みオーラを纏い両手を広げて準備万端な誉人の元へと。
「へっへっへ、逃がさないっすー!」
『きゃわん、わんわんわん!!』
『はっはっはっはっ!!』
 わんこたちは追いかけっこを存分に楽しんで興奮した声を上げる。時折興奮のあまりにその場でくるくる回ってしまう子までいるものだから、そういう子は饗が宣言通り捕まえて小脇に抱えながら、なおも狙いの場所へとわんこたちを追い込みにかかるのだ。
(「おいおいおい、ちょっと待てよ……饗、勢いつけすぎじゃねェか?」)
 地響きさえ聞こえんばかりのわんこたちが、全力で誉人目掛けて駆けてくる。その後ろでは饗がそれはもう良い笑顔でサムズアップをしていた。

 ――誉人、あとは任せるっす!!
 ――饗おぉぉぉぉぉ!?

 力いっぱい突進されてもメーワクだからとあらかじめ張っておいたオーラの力がなかったら即死だった。そんな勢いで、弾丸か何かのようなわんこの突撃を次々と喰らう誉人。
 数匹受け止めたところでたまらず仰向けに倒れ込むも、なおもわんこ盛りは止まらない。
『きゃんきゃんっ!!』
『わんわんわんっ!!』
 追いかけてもらって体当たりもできて、両方を堪能したわんこたちはご満悦。
 己の上にてんこ盛りになったわんこたちを、誉人は何とか手を伸ばしてわしっと抱いた。
「この、いっぱい撫でさせろ……もふっと感を堪能してえ」
 わしゃわしゃかァいがってやる――そんな固い意志と共に、茶色い毛並みに手を埋める。
「はあ、かァいい、やらけえ……!!」
 控えめに言ってクッソ重いが、可愛いから許しちゃう。
 そんな誉人の元へ、ようやく息を整えた饗が何かを手にしてしゃがみ込んだ。
「じゃんっ、おやつがあるっす! UDCアースの、骨のおやつっす!」

 ――ワンちゃんが大好きなヤツ~~~!!!

 商標とか色々あるのでその辺はどうかお察し下さい的な骨のおやつ。持ってきたのはひとつだけれど、二つ四つとあら不思議。超常によってたちまち増えていくではないか。
『わわわわわわわ!!!』
「ぎゃーーーーー!!!」
 おいしいおやつにまだ上があるのかという程興奮を高めたわんこたちが、どっと饗へと殺到する。ああ、あっという間にわんこまみれだ。
「た、誉人ー! これを!!」
「おう、分けてもらうぜ」
 もふもふわんこに圧倒されながらも、何とか骨のおやつを誉人にもお裾分け。
 受け取って残ったわんこたちに差し出せば、それはもう嬉しそうにがじがじと囓る。ついでに誉人もペロペロされる。
「だあっ、ふはっ舐めんな! もォ!」
「くすぐったいっしゅ! ほわほわぬくぬくっしゅ!!」
 二人して丸っこいわんこにまみれながら、されるがままになったり、撫でてやったり。
 ふと誉人は骨のおやつを見て呟くのだ。
「うめえ? そんなうめえの? 骨か……」
 どんな味がすンだろォな――口元に骨を近づけようとして。
「誉人ー!?」
「ジョーダンだよォ、食わねえ食わねえ!」
「誉人のおやつは、また後でっす」
 そう言って、饗は八重歯を見せて屈託なく笑った。

 これだけ遊び倒してあげれば、もう十分だろうと。
「まだまだ骨のおやつはあるっす! さ、ついてくるっす!」
 最後までしあわせなままで、おくってあげましょう。
「――ほら、饗が行っちまう。追いかけねえと」
 しっしっとわんこたちを相棒の背中に向けてけしかけると、駆けていくその背中へ。
 すらりと抜刀、そうして――一閃。
「遊ぶだけじゃダメなんだってよ、残念」
『わぅ……』
 ぽて、ぽてり。丸い身体が次々と横たわって地面に転がって、元のちょっとだけシュッとした体型をしたわんこ妖怪へと戻っていく。
 饗の周りに集まったわんこたちは、苦無でポコポコ骸魂だけ退治されて同じように。
 苦しみが無い、とは良く言ったものである。みんな、安らかな寝顔をしていた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

城島・侑士
【桃栗】


おいおい犬かよ
嫌いじゃないけど猫の方がよかった
…と少々テンションが下がったと同時に隣で聞こえるくしゃみ
深青!
お前…犬でもアレルギーが!?
アレルギー持ちの深青と犬を至近距離にするわけにいかない
コレをつけてお前は向こうから様子を見てろ!(ファンシーなキャラものの使い捨てマスク)
それは女房から貰ったものなんだが
ちょっと俺にはさぁ…

来い、犬っころ
遊んでやるよ
口笛で犬を誘き寄せる
こらこらこら!
飛びつくな飛びつくな
ジャケットが汚れる!
靴を噛むなー!
顔を舐mべべべっ
犬達にもみくちゃにされる
やっぱり猫がいい!
俺がディフェンダーの如く抑えるから
犬たちの隙をついて深青は鬼神変…じゃねぇUCで俺を助けて!


壱季・深青
【桃栗】◎
犬…犬だ
俺…犬好きだ
もふりたい…ギュッてしたい
もふって…なでなでした…した…ぶしゅん!

俺は…猫も…犬も…触れない運命
アレルギーという名の…敵が潜んでいる…から
あ、パパさん…マスクありが……かわいい
これ…ウサギ?…犬?
(気にせず装着)
ママさんからの…プレゼント?
さすが…センスある

うぬぬ…パパさん…なんて羨ましい
あんなに…もふもふして…ペロペロさせて
俺…できないのに…できないのに

こうなったら…パパさんを…(刀を構え)…じゃなかった…犬を
パパさんが…抑えている間に…黒曜の導で防御力あげる
なんで防御力かというと…なんとなく…アレルギーだし(?
俺の攻撃…当たったら…ごめんね、パパさん(てへぺろ


●ソウジャナイ案件と動物アレルギー
 探していたはずの『誰か』という大切なことを忘れてしまった茶まろわんこたち。
 けれども、それはそれとして。『誰か』と過ごした思い出を想起させる猟兵たちとの触れ合いは……んん? 戦闘? まあいいか! とにかく、悪くないみたいです。
「犬……犬だ」
 ぽやんとした声でわんこたちを見て、壱季・深青(無気力な道化モノ・f01300)が呟く。
「俺……犬、好きだ」
 口元が襟巻きで隠れているものだから、あくまでも推測だけれど。きっと、深青は柔らかい微笑みを浮かべていたに違いない。

 ――もふりたい、ギュッてしたい。
 ――もふって……なでなでした……した……。

「おいおい犬かよ、嫌いじゃないけど猫の方がよかった」
 割かし酷いモノの言い方――!! なおこの畜生発言は城島・侑士(怪談文士・f18993)さんによるものです。よっく覚えておきましょう。
「……っぷしゅん!!」
「深青!」
 若干テンションが下がってしまった侑士の耳に飛び込んできたのは、親子共々仲良くしている深青の盛大なくしゃみの音。
「お前……犬でもアレルギーが!?」
「俺は……猫も……犬も……触れない運命」
 アレルギーという名の敵が潜んでいるから――そう息も絶え絶えに侑士の腕の中で心底無念そうに声を絞り出す深青。
 こればかりは仕方がない、当人だってなりたくてなった訳ではないし、誰も何も悪くないのだから。然るべき対処を行って立ち向かうより他にない。

(「アレルギー持ちの深青と犬を至近距離にするわけにいかない」)
 藍の瞳をキッと正面に向けたまま、侑士は懐からおもむろに薄桃色の何かを取り出した。
「あ、パパさん……マスクありが……」
「コレをつけてお前は向こうから様子を見てろ!」
 そう、侑士が深青に手渡したのは、ファンシーなキャラクターモチーフの使い捨てマスクだった。深青は初めて見るキャラクターだったので、まじまじと見てしまう。
「かわいい……これ、ウサギ? ……犬?」
 俺にも分からん、と言いたげにゆるりと首を振って、侑士は何やかやでマスクを装着した深青を確かめると、身体を支えながら立たせてやった。
「それは女房から貰ったものなんだが、ちょっと俺にはさぁ……」
「ママさんからの……プレゼント?」
 ほう、と感心した声でマスクにそっと触れる深青。
「さすが……センスある」
「だろう、俺の最愛の女房だからな」
 隙あらば惚気ていく、うーんこれは旦那の鑑。これにはわんこたちも敵わないと、くーんくーんと鳴くばかりだった。

 さて、と気を取り直して、くいくいと指先で誘う仕草をする侑士。
「来い、犬っころ。遊んでやるよ」
 そしてぴゅいっと響く口笛が合図となって、わんこたちが侑士に殺到する――!
『わんわんわんわんわん!!!』
『はっはっはっはっはっ!!!』
 何しろずっと遊んで欲しくて、でも何となく勝手に飛びついたら悪い気がして、自発的に待てをしていたわんこたち。お許しが出て大興奮だ。
「こらこらこら! 飛びつくな飛びつくな、ジャケットが汚れる!」
 来いと言ったのはそちらだと言わんばかりに、わんこたちが次々と群れる。遂には数の暴力で侑士に尻もちをつかせるに至ってしまう。
 こうなったらもうやりたい放題、ぼくと遊ぼう、いやぼくとだ、という感じでわんこたちによる城島父争奪戦が始まる始末だ。
「く、靴を噛むなー! 顔を舐めっべべべべっ」
 ああ、最愛の妻が磨いてくれた革靴が! 抗議しようとした口ごと舐められて、わあ!
「うぬぬ……パパさん……なんて羨ましい」
 侑士としては絶体絶命の危機なのだが、深青からすれば羨望のまなざし以外向けようがない光景。あんなにもふもふして、ペロペロさせて、そんなの、自分には。
「俺……できないのに……できないのに……っ」
「ああああ、やっぱり猫がいい!!」
 その点猫ってすげえよな、基本的に放置プレイで気が向いた時だけ寄ってくるんだもん。

 それでもうらやましいものはうらやましい、腰に佩いた刀に手をかけて深青が呟く。
「こうなったら……パパさんを……」
 えええええ!? ちょっと思い詰めすぎでは!?
「……じゃなかった、犬を」
 セーフ! 骸魂さえ退治してくれればセーフ!!
 深青の気配に気付いた侑士が、渾身の力で首をもたげて叫んだ。
「いいか、俺がディフェンダーの如くこいつらを抑える!」
「うん……パパさんが……抑えている間に……」
 そこで深青が【黒曜の導】で防御力を上げていく――防御力? 攻撃力ではなく?
(「なんで防御力かというと……なんとなく……アレルギーだし」)
 お、おう! そういうことなら、分かりました!
「深青は犬たちの隙をついて鬼神へ……じゃねぇ前世の記憶が! 俺を助けて!!」
「羅刹……神薙使い……ウッ頭が」
 二人して何やら意識が混濁しているようで、刀を構えて近付く深青の足取りも怪しい。
 大丈夫? ホントに侑士さんごとぶった切っちゃわない?
「俺の攻撃……当たったら……ごめんね、パパさん」

 てへぺろ☆

『きゃわぁん!!』
『ひぃーん!!』
 何やかやで、わんこたちは無事骸魂の支配から解放されて、ちょっとシュッとしたわんこ妖怪に戻されました。
 侑士さんがズタボロになるという、貴い犠牲と引き換えに――。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

栗花落・澪
【犬兎】

かわいいっ…(両手で顔を押さえてぷるぷる
こほん。まぁでも声を奪われるのは見過ごせないね

うん、だからさ
なんとかする
遊ぼう夏輝君!全力で!!

元々楽しいことも動物も大好きなもので
信頼してるからね、捕獲は任せたよ

ほら、おいでおいでー
君達が満足出来るまで可愛がってあげる
鬼ごっこに付き合ってあげたり
両手でわしゃわしゃ撫でたり
いい子だねーよしよし
見てて夏輝君!

趣向を凝らして【指定UC】で兎化
犬達の動きを封じつつ同じもふもふ動物としての魅力で【誘惑】し興味を引きつけ
背中に乗って夏輝君に前足で後はよろしくアピール
僕も【催眠術】を乗せた光魔法の【範囲攻撃】で
この子達の感じる痛みを抑えるよう手伝いますかね


小林・夏輝
【犬兎】

んふふ、澪きゅんが悶える気持ちもわかるけどにゃー
(悶える澪に横目でニヤニヤ
澪にとって声は大事だもんな
詠唱も、歌も…だろ?

なんとかねぇ…んで、策は?

遊ぶ気満々の澪に苦笑い
ま、頼りにされちゃ仕方ねぇな
護衛としても、昔トリマー目指してた身としても
やってやるよ
全力で!

いつでも【庇え】るよう澪も見張りつつ
★タオルをズボンに挟んで逃げ回りながら
さりげなく★時計のワイヤーで罠を張り
澪の催眠を行き届かせるため
犬の行動範囲を限定していく

ん?どうした澪きゅ…ン゛ンッ
兎と犬のもふもふ空間に思わず悶えつつ
澪の催眠が効いたら澪を退かして【指定UC】でまとめてぺちん

待って澪きゅん
戻るの俺がもふってからにして…(悶


●どう見てもお前の方が可愛いんだよなあ案件
 まだまだいるよ! まるっともちもち、茶まろわんこたち!
 それを間近で目撃した栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は、顔を覆って震えていた。
 今にもくずおれてしまいそうな澪を、人懐こい笑顔で見守るのは小林・夏輝(お調子者の珍獣男子・f12219)。
「んふふ、澪きゅんが悶える気持ちもわかるけどにゃー」
 敢えて正面からではなくて、横目でチラチラ盗み見るのは夏輝なりの気遣いか。
「澪にとっては『声』は大事だもんな――詠唱も、歌も……だろ?」
「……こほん。まぁでも『声』を奪われるのは」

 ――見過ごせないね、夏輝君の言う通り。

 だから澪はしっかりとわんこたちを見据えて言うのだ。
「うん、だからさ。なんとかする」
「なんとか、ねぇ……んで、策は?」
 具体性に欠ける行動はリスクが大きい、だからそれがどんなに大切な人の言葉でも、そこはしっかりと線引きをして夏輝は問うのだ。
「遊ぼう夏輝君! 全力で!!」
「……っ」
「夏輝君、元々楽しいことも動物も大好きでしょ? 信頼してるからね」
 これには夏輝も苦笑い、どんなに見た目が愛くるしかろうが相手は突き詰めれば骸魂、オブリビオンだというのに。
 でも。
(「ま、頼りにされちゃ仕方ねぇな」)
 後頭部に回していた両腕を下ろして、ぱしんとひとつ打ち鳴らす。
「護衛としても、元トリマー目指してた身としても――」
 そうして、ぐっと拳を澪に向けて突き出せば。
「やってやるよ、全力で!!」
 こつん、と。返された拳とがぶつかり合った。

 澪がちょんとしゃがみこんで、迎え入れるように両手を広げてわんこたちに呼び掛ける。
「ほら、おいでおいでー」
 さあ、満足するまで可愛がってあげる! それに誘われるようにわんこたちが次々と澪の元に集まっていく。もっちもちになったボディは、とっても触り心地が良い。
 わんこたちが動かない(動けない)のを良いことに、もっちもっちと両手で撫で回しながら澪は自分を見守ってくれている夏輝の方をチラリ。
 そんな夏輝は、澪の元へと行きそびれた子を誘導するようにタオルをズボンに挟んで逃げ回り、密かにわんこたちを澪の超常が及ぶ所まで移動していた。
「いい子だねーよしよし、見てて夏輝君!」
「ん? どうした澪きゅ……ン゛ン゛ッ」

 ――発動せよ、【正義のうさもふ】。

 それは、絶対正義――『可愛い』の権化。桜色の垂れ耳兎へと変身した澪は、主目的のわんこたちだけでなく、味方の夏輝までガッツリ魅了してしまったのだ。うーんこれは罪。
 大丈夫? わんことうさぎってケンカしない? と思われそうだが、そこに広がるのはほんわか癒し動物動画とか銘打たれてSNSでバズりそうな微笑ましい光景。
 実の所、澪の凄まじい威力を誇る誘惑の力と催眠術とが併用されているのもあるが、まあまあそこは伏せておきましょう。
 澪ことうさつゆりんは、手近なわんこの背中にぴょんと飛び乗って、器用にも前脚でクイと夏輝に合図を送る――『後は任せた』と。
「待って、待って澪きゅん、これ終わっても少しだけそのままでいて」
 手と口を同時に動かす器用さで、一生のお願いを告げながらも発動するのは【バトルキャラクターズ】!
 ちっちゃなトイ・ソルジャーズは一体一匹をノルマとするように、ぺちんぺちんとわんこたちのお尻を叩いては骸魂だけを退治して回る。
『きゃうんっ』
『わっふ!!』
 澪の催眠の効果か、さほど痛みを感じることもなくわんこたちは無害な妖怪へと戻っていく。

「夏輝君?」
「ストップ、ストーップ! 戻るの俺がもふってからにして……!!」
 あらかたわんこたちが大人しくなった所で、澪が普通に変身を解除しようとしたところに、夏輝がいよいよ自分に正直に改めてお願いをした。
 桜色の垂れ耳兎は、うわあという風にひとつ首を振って(垂れ耳が揺れた)、お金取るよという顔をしてみせた。

 ――良かったね夏輝君、お金払えばもふらせてくれるって!
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ヨシュカ・グナイゼナウ
【エレル】

この棒を投げればよろしいのですか?
はーい、では行きますよ!ロカジさま。てい!
わ、空中キャッチ

あ、戻って来ました
わー!偉いです!流石エンパイアいちの伊達男!眉毛も最高に決まってます!イケメン!
わんこさん達も興味深々ですね

はいっ!アイネさま、投げて下さい!わたしも上手くキャッチして見せます!
そこのわんこさん、わたしと勝負です。どちらがあの棒を先に取ることが出来るか
お、お?鳥が棒を!わー、待ってくださーい

あははは!中々に足が速い!負けてしまうかも!
あ、取られた

流石ですねえ、とっても良い足をお持ちです
少し撫でても良いですか?毛がみっしりとしていますね
それではお疲れ様、おやすみなさい
よいゆめを


アイネ・ミリオーン
【エレル】

犬が、いっぱい
まろ、って響きがかわいい、です

流石、ロカジ
今日も、眉毛で電波が、元気です
偉いです、よ
…………もっと元気良く、褒めた方、が、良いんでしょう、か

ヨシュカから渡された棒、を、投げましょう
最初は普通に渡された棒を投げていたものの、徐にUCを使用
ドローン代わりに、鳥型で良いですか、ね
枝を、持たせて飛ばしたら、躍動感、溢れる、追いかけっこが見られる、かもしれません
低空飛行で、飛ばしましょう
……わ、速い
思ってた、より、速いんです、ね、君たち
こんなに、ころころしてる、のに

あ、わ、あの、ケーブル、ケーブル引っ張らないで、ください
戯れ付くのにも慣れた頃、そっと話し掛けながら、おやすみなさい


ロカジ・ミナイ
【エレル】

おやおや可愛いわんこちゃんたちだこと
茶まろわんこっていうのかい?そう
犬はいいよね、アホみたいな顔しててもべらぼうに賢いからね、犬科は

君らもアレできるかな
ポーンってしたのをダダーってしてホイってするやつ
手本を見せようか?
ヨシュカに投げてもらった棒を自慢の俊足で追いかけ
華麗に空中キャッチして届ける
はい、ここで沢山褒めちぎっておくれ
寄せやい照れるじゃないか

ヨシュカもアイネも上手だね
鳥を召喚するとは最先端の取ってこいじゃないか!
楽しそうだろう?茶まろくんらも一緒にどうだい?

戻ってきた子は褒めそやして撫でくりまわして
散々触り倒した頃に仕上げの頭ポンポン(ユベコ入り)よ
バイバイ骸魂のおまじないさ


●上手に取れたら、褒めてあげましょ
 骸魂たるふわもこわんこたちと、妖怪に戻ったわんこたちとの数差が逆転しつつある。
 喜ばしいことではあるのだが、しかし当初の予知で聞かされていた丸っこくてもちっとしたわんこたちと、まだまだ遊びたいと思う猟兵たちが居るのもまた事実。
 だってこうしてロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)は、良き友たるアイネ・ミリオーン(人造エヴァンゲリウム・f24391)とヨシュカ・グナイゼナウ(明星・f10678)と共に、わんこと聞いて! と馳せ参じたのだから。

『わんっ!!』
『わう……?』

 あそんでくれるの? とでも言いたげに、こてんと首をかしげた茶まろわんこたち。ちょーんと前あんよを揃えてお座りして、ロカジたちの様子を見ている。
「おやおや可愛いわんこちゃんたちだこと」
『わふっ』
「茶まろわんこっていうのかい? そう」
 まるで傍目からはロカジとわんこが意思の疎通を図っているかのように見えたものだから、ヨシュカとアイネが思わずロカジの背に隠れるようにひそひそ話。
(「ロカジさま、わんこさんとお話ができるのですか」)
(「確か、わんこの名前、は、グリモアベースで、聞かされていたはず、ですから」)
 それを知ってか知らずか、ロカジはわんこたちを眺めては顎をひと撫でしてニヤリ。
「犬はいいよね、アホみたいな顔しててもべらぼうに賢いからね、犬科は」
 きっとこのわんこたちも、ぽわわんとした顔をしながら色々と思惑があるのだろう。
 そうでなければ、こんな一大事に呑気に加担したりはするまいと。
 なお実際イヌは賢く、逆にネコは案外抜けている。どっちも可愛いですね。
(「犬が、いっぱい。『まろ』、って響がかわいい、です」)
 きっと麿眉のような模様から来た呼び名なのだろう、それはとてもキュートだった。

「君らもアレできるのかな、ポーンってしたのをダダーってしてホイってするやつ」
(「「語彙力……!!」」)
 身振り手振りを交えながらロカジがいうのは、ああ多分『投げた棒をキャッチして戻ってくるアレ』のことなんだろいうなあと察しながらも、ヨシュカとアイネが顔を覆う。
 色々と、以心伝心。なればこそ、手本を見せようかと振り返ったロカジと視線がぶつかったヨシュカはすかさず用意してきたいい感じの棒を掲げて言う。
「この棒を投げればよろしいのですか?」
「そそ、思いっ切り遠くに投げておくれ」
 では、とヨシュカが棒を持った手を思い切り振るって――。
「はーい、では行きますよ! ロカジさま、てい!!」
 めっちゃ飛んだ。だが、ロカジも負けてはいない。即座に地を蹴って棒の落下地点目掛けて自慢の俊足で追い掛ける! 巻き起こった風に、アイネのケーブルが揺れた。
「とうっ!」
 きれいな放物線を描く棒を、勢いに乗ってそのままジャンプしたロカジが空中で華麗にキャッチ。シュタッと着地するや、持ち主に返すかのごとくヨシュカの元へと。
「あ、戻って来ました」
「はい、ここで沢山褒めちぎっておくれ」
 あれだけ全力で動いたのに、息切れひとつ見せないロカジは実際すごい。
 だからアイネもヨシュカも、自然と賛辞の言葉を紡ぐのだ。
「流石、ロカジ。今日も、眉毛で電波が、元気です」
「わー! 偉いです! 流石エンパイアいちの伊達男! 眉毛も最高に決まってます! イケメン!」
 褒めてる? 褒めてるよ! ロカジさんへの眉毛の賛辞は、ボディビルダーへのキレてる並に褒めてるんです! 背中に鬼神が宿ってるんです!
 アイネはふと、目をキラキラさせながら熱く褒めるヨシュカを見て思う。
(「……もっと元気良く、褒めた方、が、良いんでしょう、か」)
 そして、アイネなりにぐっと両の拳を握って、ケーブルを揺らして、言った。
「――偉いです、よ」
 二人の様子にロカジはニコニコご満悦、手をひらひらさせてこう返す。
「寄せやい、照れるじゃないか」
 褒めろって言ったの自分じゃん、というのはさて置いて。

 ヨシュカがふとわんこたちの様子を窺えば、尻尾をちぎれんばかりに振っていた。
(「わんこさん達も、興味津々ですね」)
 ロカジのチュートリアルが効いたか、明らかに『ぼくもやる!』という顔である。
 そしてさらにアイネの方を見ると、何やらうずうずしている様子。ヨシュカはちょっと悪戯っぽい顔をしながら、そんなアイネに棒をそっと渡した。
「……これ、を」
「はいっ! アイネさま、投げて下さい! わたしも上手くキャッチして見せます!」
 ヨシュカのターンはまだまだ終わらない、手近なわんこを一匹指さして言う。
「そこのわんこさん、わたしと勝負です」
『わうっ!?』
 突然勝負を挑まれたわんこがビクッとするも、すぐにスチャッと身構えれば。
「どちらがあの棒を先に取ることが出来るか――いざ!!」
「は、はい――投げま、すっ!」
 あらん限りの力でもって、アイネが自力で棒をていっと投げる。ヨシュカが軽やかに、わんこが猛然と、それぞれ棒目掛けて走る!
「あははは! 中々に足が速い! 負けてしまうかも!」

 ――ばっ! ヨシュカが地を蹴って宙を舞う。
 ――だっ! わんこが身体中のバネを活かして飛ぶ。

 そうして空中で交差する人と犬。果たして、勝負の行方は――!?
「あ――取られた」
 棒は、わんこの口にくわえられていた。ヨシュカの声音が本当に残念そうなあたり、真剣に勝負に挑んでいたことの証だろう。動物は大好きだけれど、それはそれ。
 アイネの元に律儀に棒を戻しに寄っていく茶まろわんこをヨシュカと二人で撫でてやると、見守っていたロカジが両手を打ち鳴らす。
「ヨシュカもアイネも上手だね」
「いえ、わんこさんもうひと勝負です……!」
 何しろわんこはまだまだたっぷりいる、勝負相手には困らない。だからヨシュカは、リベンジマッチという名の触れ合いタイム・おかわりに出たのだ。
 ここでアイネは思案する。普通に手で投げるだけでは、最早彼らは満足しない領域にまで足を踏み入れてしまったのではなかろうかと――!
 気が付けば、すいと片腕を天高く掲げていた。瞬く間に発動する超常は【Code-001(ヒトツ)】、虚空から鳥型のドローンを召喚する。
(「ドローン代わりに、鳥型で良いですか、ね」)
 この高性能鳥型戦闘機に、あくまでくちばしに枝をくわえるだけの仕事を託し。
 それはきっと、とてもアクロバティックな追いかけっこが見られるに違いない。
「おお、鳥を召喚するとは最先端の取ってこいじゃないか!」
 これぞ快男児、というていでロカジが笑いながらわんこたちに呼び掛けた。
「楽しそうだろう? 茶まろくんらも一緒にどうだい?」
「木の棒ならたくさんありますからね、今度は負けませんよ!」
 ヨシュカも屈託のない笑顔で、いつでも駆け出せるように構える。
「では、行きます、ね」
 すい、と。掲げていた腕を下ろすのが合図。機械の鳥が低空飛行するのに合わせて、大量のわんこたちとヨシュカとがデッドヒートを再開した。

「……わ、速い。思ってた、より、速いんです、ね、君たち」
 先立って勝負に挑んだわんこを、思わずもふもふするアイネ。
(「こんなに、ころころしてる、のに」)
「な? 犬科はすごいのさ。よーしよしよし、偉かったぞお」
『きゃうん、きゃうん』
 ロカジに褒めそやされて、嬉しそうに身をよじる茶まろわんこ。自分から回転してくれるものだから、全身くまなく撫でくりまわせるというもの。
 散々もふり倒して、頃合いかと見れば、仕上げの頭ポンポンにはちょっとした超常が。
『わっふ……』
 骸魂だけを送り還して、残るのはちょっとシュッとしたボディの茶色いわんこ。
「ロカジ、今のは」
「――バイバイ骸魂のおまじないさ」
 それを聞いて安堵の笑みを浮かべたアイネが、不意にぐいと身体を引っ張られる感覚に襲われた。
「あ、わ、あの、ケーブル、ケーブル引っ張らないで、ください」
 いたずらっ子のわんこには、ロカジを真似て――頭をポンポン。

 地を蹴って、何よりも誰よりも高く、ヨシュカが舞う!
「取りました――!」
『わんわんわんっ!』
 やるじゃねえかお前もなという風に、棒を取ったヨシュカがあっという間にわんこまみれになる。
「流石ですねえ、とっても良い足をお持ちです」
 丸っこくてもちもちしているだけではない、驚くべき脚力をも誇るわんこの足に触れる。
『わっふわっふ』
「少し、撫でても良いですか?」
『わんっ!!』
 多分『いいぞ!』と言ったのだろう、ヨシュカの身体に前脚を次々と乗せてくるわんこたちにそっと触れる――十字の亀裂が入った掌で。
「ああ、毛がみっしりとしていますね」
 率直な感想を述べつつ。黄金の幻覚は巡りゆく。
 ぽてん、ぽてんと、わんこたちがその場に安らかに倒れ行くのを見て。

「それではお疲れ様、おやすみなさい」

 ――よいゆめを。
成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴

泉宮・瑠碧
わんこ達、可愛いです…
…でも、
会いたくて、逢えないのは…寂しいですね
遊んだら、少しは…
気が晴れるでしょうか

その場へしゃがみ、おいで、と腕を広げて
わんこ達を招きます

来た子は、もふもふ撫で
頭や背中の他、首の下や耳の後ろ等
わんこの手では届かない所も、撫でます
もちもちでも変わりなく、転がればお腹も
眠るのなら、ぽんぽん撫でて子守唄を

わんこ達の、あいたい願いは…
飲み込んだ骸魂達の願いでも、あるのでしょうか

私は、清澄結界で浄化を
わんこ達と、骸魂の、寂しい気持ちが和らぐ様に
骸魂が…寂しい気持ちを、広げませんよう

終えれば
骸魂達が、穏やかに眠れる様に祈り

わんこ達の所為では、無くても…
妖怪の皆へ、一緒に謝りましょう


●清らかなる癒しを、あなたへ
(「わんこ達、可愛いです……でも」)
 猟兵たちがこうしていっぱい遊んでくれるのは楽しいけれど、それでもやっぱり胸のどこかに会いたい『誰か』が分からない空虚があるのもまた事実。
 だから、くぅんとひとつさみしげに鳴いてしまえば、泉宮・瑠碧(月白・f04280)は困ったような顔になるのだ。
(「会いたくて、逢えないのは……寂しいですね」)
 何がしてあげられるだろうと思う。こてんと首をかしげてこちらを見ているわんこたちに向かい合いながら、瑠碧はおもむろにしゃがみ込んだ。

「……おいで」

 そっと両手を広げて、己の懐へと招き入れる。それまでは『待て』だったのか、律儀にちょーんと前脚を揃えて座っていたわんこたちが、ぽてぽてと駆け寄ってきた。
『わん! わんわんっ』
『わふわふっ、わふっ』

 ――懐かしいなあ、こんなこと、いつかもあったっけ?

 わんこたちの胸によぎるのは郷愁、それに素直になって我先にと瑠碧の元へと走る。
「……ふふ」
 集まってくる毛玉たちに、思わず笑みをこぼして、瑠碧は順番にもふもふと撫でてやる。
 頭や背中だけでなく、首の下や耳の後ろなど、わんこたちが普段自力では弄れない場所まで丹念にくすぐるように撫でれば、気持ちよさそうな鳴き声が聞こえた。

 ――はっ、でもこの人は違う。いけない、いけない。

 まるで申し訳程度の反撃ではあったが、一応わんこたちも骸魂のはしくれ。
 タダではやられてなるものかと、その身をもっちもちの無敵なボディに変えて次々その場に転がった。
「お腹が、出ています」
 あらあら、まあまあ。足の短い犬種のわんこがぽてんとひっくり返っている姿はあまりにも微笑ましくて、毒気を抜かれるよう。
 こちらの敵意が一切通じないとあらば、そしてその間に身動きが取れないとあらば。
 むき出しのお腹を存分にもちもちしてあげましょう。
 ああ――焼き立ての食パンの中のようにもっちもち!
『くぅー……』
『くぁ……』
 瑠碧の撫でる手つきがあまりにも優しくて心地良かったものだから、わんこたちはすっかり夢心地。わんこも寝言を言うんだという感じですぴすぴ、すやすや。
 寝落ちでユーベルコードが解除されるというのも本来ならば間抜けな話かも知れないけれど、わんこたちならご愛敬というもの。
 もちもち無敵モードが解除されてころころ横になるわんこたちに向けて、そっと立ち上がりながら瑠碧は思う。
(「わんこ達の、あいたい願いは……飲み込んだ骸魂達の願いでも、あるのでしょうか」)

 ――おくりましょう、子守唄のように。

 胸の前でそっと両手を組み合わせ、瞳を閉じる。
 清き水が、穢れのみを流して行きますように――【清澄結界(クリアー・サークル)】。
 水柱がいくつも立ち上り、結界を成し、囲われたわんこたちが次々とシュッとなっていく――骸魂から、解放されていく。

 ――わんこ達と、骸魂の、寂しい気持ちが和らぐ様に。
 ――骸魂が……寂しい気持ちを、これ以上広げませんよう。

 祈りましょう、骸魂達が穏やかに眠れるように。

『……くぅーん』
 ちょっとシュッとしたボディになった無害なわんこ妖怪は、強いて言うなら豆柴めいていて。そんな利口な彼らなら、分かってくれるだろう。
「あなた達の所為では、無くても……」
 迷惑をかけてしまったことは、事実だから。
「妖怪の皆へ、一緒に謝りましょう?」
『わぅ』
 遠巻きに見守っていたいまだ声出せぬ妖怪たちへと、わんこたちはぺこりと頭を下げた。
大成功 🔵🔵🔵

六道銭・千里
◎●
…妖怪か…
俺の祖先は妖怪を昔祓ってたらしくてUDCを妖怪って呼んどったんやと思っとったけど……
はてさて、本物も祓っとったんやろうか?

まぁ、個人的なあれこれはええわ
とりあえず声やな…声で驚かせる妖怪ってのは多いもんで
そういう妖怪達にとっては死活問題やろ…
ってことで頑張らせてもらおうか


…んで、あれかぁ……
人懐っこいって言ったらすねこすりが思い浮かぶけど犬やねんなぁ…

銭貫文棒に式神、一反木綿に巻き付いて貰って旗のように
それを振って意識を向けさせる

後は闘牛の要領やな…突っ込んできたら避けて
また、旗を振って…
茶まろわんこが疲れてきたら、そのままコツンと銭貫文棒で終わらせて
はい、お疲れさんっと


クーナ・セラフィン
気軽にカタストロフの危機とか危ない世界だねー。
でも今も存在してるなら何だかんだで乗り越えて来てるって事だ。
絶望には遠い、さあ悪のオブリビオン退治と行こうじゃないか。

対峙。
…調子狂うなー。どうみても善性寄りというか無邪気というか。
あ、でも無垢は罪という考えもあるし。というか私にはナチュラルに脅威。
大きさはどうしようもないしにゃー。
そこは猫の軽やかさでジャンプジャンプダッシュ!
捕まったら玩具にされるとの危機感胸に、全力でじゃれつき回避。
なんかもちもちになったら背中にライドオン、動かないなら安心だし。
もちもち堪能しつつ、遊んで隙を探してUCの綺麗な花弁の嵐で攻撃、元に戻そうか。

※アドリブ絡み等お任せ


●軽率にカタストロフ
「妖怪か……」
「キミ、如何にも関係者って感じだね?」
「俺の祖先は妖怪を昔祓ってたらしくて、UDCを妖怪って呼んどったんやと思っとったけど……」
「ふむ、興味深いね――『本物』も祓っていたかも知れないじゃないか」
「せやなぁ、そうかも知れんな」
 六道銭・千里(冥府への水先案内人・f05038)が、ここ『カクリヨファンタズム』が発見されたことで己のルーツを振り返れば、人の生き様にひどく興味を寄せるクーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)が食いついていく。
 無論、興味本位という訳ではない。この青年が新世界の発見と共に知った事実が、願わくば良きものでありますようにとの願いを込めてのことだ。

「まぁ、個人的なあれこれはええわ」
「いいんだ?」
 長くなりそうだ、それに――仕事の時間だ。名残惜しそうなクーナも、身の丈ほどありそうな茶まろわんこたちを眼前にして、羽根帽子を被り直す。
「うん、気軽にカタストロフの危機とか危ない世界だねー」
 己の思惑ひとつで世界中から『声』という『声』を奪ってしまうだなんて。
「とりあえず『声』やな……『声』で驚かせる妖怪ってのは多いもんで」
 そういう妖怪達にとっては、死活問題やろと千里は思う。

「でも今存在してるなら、何だかんだで乗り越えて来てるって事だ」
「ああ、ってことで頑張らせてもらおうか」
「そう、絶望には遠い。さあ、悪のオブリビオン退治と行こうじゃないか」

『わんわんわんっ!!』
 猟兵(人間とケットシー)対茶まろわんこズ、ファイッ!!

 ――ちょーーーん。
 変な所で律儀なのか、わんこたちは基本的に勝手にじゃれついてきたりはしない。
 今までも一貫して、猟兵たちが何らかのアクションを起こして初めて行動するのだ。
「……んで、あれかぁ……」
「……調子狂うなー」
 千里とクーナの率直な感想であった。
「人懐っこいって言ったらすねこすりが思い浮かぶけど、犬やねんなぁ……」
「どうみても善性寄りというか、無邪気というか」
 わっふわっふと尻尾を振りまくるわんこたちを一言で表現するなら、そう『無邪気』。
 こんないたいけなわんこを一撃で良いからとはいえ叩かないといけないなんて!
「あ、でも『無垢は罪』という考え方もあるし」
 というか私にはナチュラルに脅威、大きさはどうしようもないしにゃーと肩をすくめるクーナは繰り返すがケットシー、その身長は42.9cm。千里の膝にも届かない。
 ぶっちゃけた話、キャッキャと悪気無しにじゃれつかれたら――死を意味するのだ!
 ならばと千里が取り出したるは「銭貫文棒」、それに使役する式神「一反木綿」を巻き付けさせて足跡の旗にして、大きく振ってわんこの気を惹き付ける。
(「闘牛の要領やな、突っ込んできたら避けるから、その隙に」)
(「有難う、捕まったらそれこそ文字通り玩具にされるからね」)

『わんわん! わん!!』
『わおーーーーん!!』
 ヒャアもう我慢できねえという感じで、いよいよわんこたちが千里の振るう旗目掛けて猛然と駆ける! 短いあんよでひた走る!
「すごい勢いやな……! っと!」
 ぴょーんと跳躍した丸っこい塊をひらりと躱した千里の先にはクーナが。
 勢い余って突進してくるのも、あらかじめ分かっていればお手の物。そこは猫の軽やかさでジャンプ、ジャンプ、ダッシュ!
 優雅に華麗に見えるけれど、内心クーナは必死だ。それこそ、捕まったらアウトだから。
 千里が旗でわんこたちを次々いなす中、クーナの命懸けの回避行動は続く。

『わぅ』
 ――こてん。おもむろにわんこの一匹がこてりと転がり、そのままもっちりとしたボディと化して動かなくなった。
(「チャンス!」)
 それを見たクーナが、ここぞとばかりにもちもちボディのわんこへとライドオン。今のわんこはピクリとも動けないはず、ならば安心してもちもちを堪能できるというもの。
「何や、もうへばったんか」
 へっへっへっへっと息を荒げて、ちょ、ちょっと休憩と言わんばかりの茶まろわんこの可愛い頭部を銭貫文棒でコツン。はい、骸魂だけがこれでお終い。
「はい、お疲れさんっと」
 クーナは大丈夫だろうかと何やらもちもちしている方を見れば、舞い散る雪混じりの花吹雪。突撃槍の先端からごうごうと吹き荒れる!
「【風花は舞い散り(カザバナマドイ)】――さあ、元に戻ろうか」

 ――いっぱい遊んでくれて、嬉しかったなあ。
 ――きっと『誰か』も、そんな人だったんだ。

 ころん、ころん。骸魂から解放されたわんこ妖怪たちが次々と転がった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

パラス・アテナ
黒い毛並みの犬がいるね
尻尾を振りながら駆け寄ってくるのは

「ーバレット」

呼ぶ声に吠える声
アタシの最初の相棒犬
ガキの時分アタシと一緒に傭兵隊に所属して
軍用犬として鍛えられ
流れ弾からアタシを庇って死んだ犬

突進する姿に指示を出す
アタシの仕草にピタッと止まる
続けて指示を

伏せ 立て 歩け 座れ

アタシの指示に完璧に従う姿に思わず笑みが漏れる
座ってキラキラした目で見上げるバレットに指示を

来い

力いっぱい駆け寄ってすり寄ってくる毛並みを思い切り撫でて褒めてやる
よしよしよくやった
ちゃんと覚えていたね

一頻り遊んでやったら立ち上がり離れてステイの指示
優しい目を見据えながら銃弾を一発
会えてよかったよバレット
骸の海にお還り


●戦女神の相棒犬
 茶まろわんこはまるで判を押したようにみんな『茶色』をしていたけれど。
 一匹だけ残されたわんこを見て、パラス・アテナ(都市防衛の死神・f10709)は僅かに目を見開いた。

「――バレット」

 黒い毛並みには見覚えがあった。尻尾を振りながら駆け寄ってくる、その姿も。

『わんっ!!』

 パラスの呼び声に応えるように吠える声――ああ、間違いない。
(「アタシの、最初の相棒犬」)
 どうしてこんなところに居るのかは分からない――否、分かりたくない。
(「ガキの時分、アタシと一緒に傭兵隊に所属して、軍用犬として鍛えられ、流れ弾からアタシを庇って死んだ犬」)
 無念か。悔悟か。怨恨か。それとも。
 だがどうだろう、突進してくる黒いわんこはひどく無邪気で。
 だから、試したくなった。

「待て」
 ――ぴたっ。キキッと急ブレーキをかけるように四つ脚で踏ん張って止まる。
 それは間違いなく、パラスの指示に従っての行動だった。
 ならば。

「伏せ」
 ざっ。
「立て」
 がばっ。
「歩け」
 とっとっとっとっ。
「座れ」
 すちゃ。

「ああ――」
 己の指示に『完璧に』従ってみせる黒いわんこの姿に、戦女神が思わず笑みをこぼす。
 座ったまま、キラキラした目で見上げる『バレット』に、再び指示を出す。

「来い」

 がばっ! 力いっぱい駆け寄ってすり寄ってくる毛並みを、存分に撫でて褒めてやるパラス。かの冷徹なる戦女神がこのような姿を見せるなど、知る者は居るのだろうか。
「よしよし、よくやった。ちゃんと覚えていたね」
『わんわんっ!!』
 千切れんばかりに尻尾を振って、『バレット』はパラスの頬を舐めた。

 腰の白い銃に手をかける――悟られないように。
 それでもこの子は聡いから、気付いているかも知れないね。
「バレット、ステイ」
 距離を取る。これから起きることの全てを知りながら、なおも従う利口なわんこ。
 どこまでも優しい目をした黒いわんこを、かつての相棒を見据えて――。

 ぱぁん。

 こてん、と転がったわんこの姿は、黒い毛並みをしてはいるが、別のわんこ妖怪に変わっていた。骸魂のみを撃ち抜くとは、そういうことだ。

「会えてよかったよバレット、骸の海にお還り」

 ――今度こそ、本当のさよならになりますように。
大成功 🔵🔵🔵


第2章 ボス戦 『彷徨う白猫『あられ』』

POW ●ずっといっしょに
【理想の世界に対象を閉じ込める肉球】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD ●あなたのいのちをちょうだい
対象への質問と共に、【対象の記憶】から【大事な人】を召喚する。満足な答えを得るまで、大事な人は対象を【命を奪い魂を誰かに与えられるようになるま】で攻撃する。
WIZ ●このいのちをあげる
【死者を生前の姿で蘇生できる魂】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠香神乃・饗です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●『ネコマタ』
 よくある話。
 老齢の主人が孤独死して、食うに困った飼い猫が遂にはその屍を――そういう話。
 猫又という妖怪は、UDCアースの各地に伝わる伝承でもしばしば生きた人間を喰らって化けたり屍体を喰う算段を立てたりしているが、この白猫も例に漏れず。

 ただ。
 白猫『あられ』は、不運なだけだった。

 最期の瞬間までご主人様は優しかったし、その遺体を喰うに至ったのもあまりの空腹に耐えかねてのことだし、何より『あられ』は――『自分が何をしたか理解していない』。
 大好きだったご主人様が返事ひとつしなくなってしまった理由が分からない。
 いつも食べていたおいしいごはんが出てこなくなった理由が分からない。
 そうして――自分が今、どこにいるのかさえ分からない。

 おんもは危ないからと、家の中で過ごすようにと言われて生きてきた。
 けれどもどうしても窓の外の世界が気になって、窓辺をカリカリしていたら。

 ――わかったわかった、梅雨が明けてお天気になったら、お出かけに行こうね。

 ねえ、起きて。ご主人様。
 外を見せてくれるって、約束じゃない。

 ねえ、ねえ、ねえ!

 ああ――この声が届かないのは、きっとみんなが『うるさい』から。
 声が届くあなたたちはいいわよね、でも少し黙ってて。
 世界がしんとなれば、誰にも邪魔されず、きっとこの声はご主人様に届くから。

 白猫『あられ』は、にぃあにぃあと鳴いて、会いたいと願うのだ。
クーナ・セラフィン
ああまったく。
キミには他の声の全部が雑音なんだろうね。
限られた世界の住人、だからこそとても煩わしく感じてしまう。
けれどね、私達も同じように声を届けたい人がいるんだ。
…キミが会いたい人に会わせる事はできない、それだけはゴメンねと謝る。

そして突撃槍を振るう。
肉球の一撃に注意しつつ風のルーン記した符で風を操り、突撃槍のレンジ保ちつつ攻撃。
その願いは悪ではないのかもしれない、けれど私が討つべき敵ではある。
だからせめて苦しまないように、風の符の突風で隙を作り一気に距離を詰めUCの一撃を喰らわせる。
憑かれた妖怪は救出し、彷徨う魂に介錯を。
…キミのその先にキミの待ち人がいる事を願おう。

※アドリブ絡み等お任せ


六道銭・千里
◎●
まぁ、俺がやることは変わらんわな
カタストロフが起こるんを止める。ただそれだけや

敵のUCは『破魔・除霊』の力を宿した冥銭を『投擲』して
相殺を狙ってみるわ
相殺できん分は銭貫文棒で打ち落とし&御縁玉の盾形の結界【オーラ防御】で『盾受け』

声を奪っても結局声は届きはせえへん
まぁ、この骸魂に理解できるか……やけどな
哀れな飼い猫に魂の救済を…
霊符弾で終わりや


あの世で飼い主に会えたらええな
とりあえず、おやすみってな


●『ナインライブズ』
 にぃあ、と。二股に分かれた尾を持った白猫が鳴いた。
 静寂の世界によく響く鳴き声は、しかしいくら鳴けども届かない。

『どうして』

 首輪代わりに巻かれた組紐についた鈴が揺れて、ちりんと音が響く。
 声も、鈴の音も、自分だけのものにしたのに――何で見つからないの?

「ああ、まったく」
 そんな白猫『あられ』の様子を見遣って、灰色の毛並みが美しいケットシーたるクーナ・セラフィンが少しばかりうつむいた。
「キミには、他の声の全部が雑音なんだろうな」
 その声を聞き届けたか、あられが一度鳴き止んでクーナの方を見る。
『……外から来たのね、だから声が出せるの。じゃまをしないで』
 口を開いたのはにぃと鳴く仕草、しかしクーナには確かにそう聞こえた。
 大好きなご主人様に会いたい一心のあられには、きっと。
「限られた世界の住人、だからこそとても煩わしく感じてしまう」
『……』
 クーナの発する言葉には応えず、ただ音もなく身構えるあられ。それを見て、クーナもそっと白雪と白百合の銀槍に手をかける。
「けれどね」
 ぐっ、と。槍の柄を握る手に力がこもる。
「私達も同じように、声を届けたい人がいるんだ」

 ――しゃらっ。

 銀槍が閃き、切っ先が白猫を指した。
「……キミが会いたい人に会わせる事はできない」
 それだけは、ゴメンねと。そう呟いたクーナの横に、六道銭・千里が並び立った。
「まぁ、俺がやることは変わらんわな――『カタストロフ』が起きるんを止める、ただそれだけや」
 右手で「冥銭」の名を持つ一文銭をじゃらじゃらと弄びながら、淡々と告げる千里。
 二人の猟兵の様子から、どうしても思い通りには行かないと悟ったのか。白猫は背中を丸めて二本の尾を膨らませ、威嚇の姿勢を取った。
『じゃまを、しないで』
 もう一度、強く念を押すように繰り返す白猫の金眼が、まずは千里を見た。
「――っ」
 思わず一歩後ずさる千里の様子を、クーナが訝しがる。
 千里にのみ見える『ソレ』は、六道銭の陰陽師として祓ってきた魑魅魍魎の類。
 ああ、あいつら生きとったん頃はこんな姿やったんか、などとぼんやり思うも、それに呑まれる千里ではない。
 それこそ、こういった幻術の類を使う『妖怪』など、山ほど相手にしてきたのだから。
「悪いなあ――俺、慣れとるんよ。こういうの、はっ」
『……!!』
 言い終わるかどうかのタイミングで、手にしていた冥銭を投げつけ、在りし日の姿で己が眼前に立ちふさがる妖怪たちを次々と除霊の力で浄化していく。
「片付いた、かい?」
「ん、もうちょいや」
 何となく、嫌な気配だけで状況を察する他ないクーナの問いに、振り返らずに千里が片手をひらひらさせる。もう片方の手には「銭貫文棒」が握られていた。
「せい、っ!!」
 どう見ても害がなさそうな普通の女性を打ち据えるのに、抵抗がなかったとは言わない。だが、この攻撃の仕掛けが分かっている以上は躊躇などしていられない。
 故に千里は、冥銭の棍を振るいながら思うのだ。

(「声を奪っても、結局声は届きはせえへん」)
 五円玉でできた霊符をぴんと弾けば、円形の結界が展開されて主を守る。
(「まぁ、この骸魂に理解できるか……やけどな」)
 これ以上『黄泉がえり』をけしかけようと、己には効かぬという意思を込めて。
「哀れな飼い猫に……魂の救済を」
 ここではない世界で、今度こそ飼い主に会えたらいいと。
 そう願って放つ【霊符弾】は、散弾銃のように白猫の身体を撃ち抜いた。

 ――が。

『う、う……ごしゅじん、さま』
「なん……やて……!?」
 これで終わりと思ったはずの一撃が、たちまちのうちにその痕跡を消してしまう。
 穴だらけになったはずの小さな体躯は、元の白い毛並みを取り戻していた。
 これには千里も思わず声を漏らし、そうしてすぐに思い至る。それは。
「……『猫に九生あり』、か」
「なるほどね――では、次は私が行こう」
 次はクーナが突撃槍を振るう番だ。ルーンの魔術符をもう片方の指の間に挟んで、必殺の超常を放つべく一気に距離を詰めるべく、長靴で地を蹴った。
『うるさい、うるさい! これじゃあ、ご主人様が来てくれない!』
 白猫が前脚をすいと上げて、クーナを迎撃しようと構えを見せる。
「その願いは悪ではないのかもしれない」
 もう一人の符使いが刻むは風の力。腕を振るえば暴風が吹き荒れて、白猫の身体が容易く浮き上がる。
「――けれど、私が討つべき敵ではある」
『にゃ……』
 風に翻弄される、見た目はごくごく愛らしい飼い猫。
 きっと、別れの直前まで大切にされていたのだろう。
 だから、せめて、苦しまないようにと。

「動かないでね?」

 銀槍に刻まれた白百合が輝き、一気に距離を詰めた誇り高き騎士が手向けの一撃を放つ。たとえこれがまだ、致命の一撃とはならなくとも。
 果たして槍の穂先に突き刺さり一度は動きを止めた白猫は、予想通り再び動き出す。
 身をよじって逃れ、間合いを取って猟兵たちを睨み付ける白猫に、千里とクーナは顔を見合わせて嘆息した。これは、長丁場になりそうだと。

(「……いつか、キミのその先に。キミの待ち人がいる事を願おう」)
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ザッフィーロ・アドラツィオーネ
【🐕】

…暗い家の中一人で、か
否、お前達と会う前の事を少々思い出して居てな
箱の中一人過ごした時も肉を得た後所有者を亡くした後一人過ごした日々ももう過去の物だが…気持ちは解る故、手を出さず説得を試みよう

お前の主人は天寿を全うし人が言う神の元へと召されたのだろう
静かな世になったとてお前が此処に留まる限り届きはせん
…お前も、解るだろう

もし肉を得た後共に過ごした赤毛の所有者が現れれば【影渡り】で避けつつ宵とメレンガを『かばい・武器受け』
記憶の中の者を呼び出したとてかつて在ったその者ではなかろう…惑わされはせん
歩いてくる宵とメレンガには笑みを向け己も二人の元へ
ああ。本当に…帰る場所という物は良い物だな


御宿野・メレンガ
【🐕】
もしご主人達がいなくなったら寂しくて悲しくて同じ様に僕も探すと思うから
だから…出来れば助けてあげたいですと二人を見上げくぅんと鳴き声を

黒髪のご主人の猫君に続き僕もあられ君の所へ
あのね、どんなに静かになってもここからはきっと届かないと思うんです
ご主人はきっとお空で待っててくれると思うのです。お外にでて、迎えに行ったらいいですよ?
そう小声で説得しつつも、もしご主人達と同じ形の何かに攻撃されれば尾を後ろ足に入れつつ抵抗を
ご、ご主人は僕を攻撃しないです!も、君達誰ですか!
もしあられ君が成仏する時は【ガジェットショータイム】にて虹を天にかけつつご主人の元へ
えへへ、僕の居場所もご主人の所ですよー!


逢坂・宵
【🐕】

そうですね、ザッフィーロ
僕もその気持ちには覚えがあります

器物をかくあるべく扱ってくれた主人
それから様々な者の手に渡り、最後に宿神として目覚めたあと育ててくれた主人
かれらにもう一度会いたいという気持ちは、今もまだ心のどこかにあります

あられさん、あなたのご主人さまはこの世界にはいらっしゃいません
かれの言う通り、神の御世にいるのでしょう
大好きなご主人さまはきっと向こうであなたを待っていらっしゃいます

【コード・モルゲンロート】であられさんと同じぐらいの体躯の黒猫を召喚し、導くように歩かせましょう
もし記憶に残る最後の主人が召喚されれば首を振り
ザッフィーロとメレンガの傍へ
僕の居場所は、ここですから


●『オーバーザレインボウ』
 灯りもなく、カーテンも閉め切った暗い部屋にひとりきり。
 そんな白猫の在りようを想像して、ザッフィーロ・アドラツィオーネは暫し立ち尽くして、黙って『あられ』と向かいあっていた。
 逢坂・宵は愛しいひとを、御宿野・メレンガは愛しいご主人をそれぞれ案じ寄り添えば、ザッフィーロはゆるりとひとつかぶりを振った。
「……否、お前達と会う前の事を少々思い出して居てな」
 蒼玉の指輪こそがザッフィーロの本体にして、それは幾多の人々の手に渡った。
(「箱の中一人過ごした時も、肉を得てから所有者を亡くした後、一人過ごした日々も」)
 今となっては、もう過去のこと。今は大切な存在に恵まれてはいるけれど。
 眼前の白猫の境遇は理解できるが故に、無碍にせず言葉を尽くそうと思うのだ。

 宵にとっては、ザッフィーロの一言だけで十分だった。
「そうですね、ザッフィーロ」
 会いたい、という言葉が胸を刺すようで。
「僕もその気持ちには覚えがあります」
 精巧な作りをした天図盤は、かくあるべしと慈しむように扱われた。
 そうして様々な者の手に渡った果てに、ヤドリガミとして宵の化身たる身を得てから、そんな己を育ててくれた人がいた。
 幾多の出会いがあり、もう一度会いたいと願う人もいる。それは、心のどこかでまだ種火のように残っているのだ。

 メレンガにとっては、宵とザッフィーロこそが至上の主人。
 見上げる二人が、もしもいなくなってしまったとしたら?
(「寂しくて悲しくて、あられ君と同じ様に僕も探すと思うから」)
 だから、くぅんと鳴き声ひとつ。メレンガは訴えるのだ。
(「出来れば、助けてあげたいです」)
 宵も、ザッフィーロも、メレンガを見て――笑んで頷いた。

『あなたたちも、じゃまをするの』
 鳴き声は確かににぃあ、とだけ聞こえるのに、不思議と言葉が理解できる。
 そんな白猫に、厳然たる事実を伝える時が来たのだ。
「お前の主人は、天寿を全うし人が言う神の元へと召されたのだろう」
『……なに、言ってるの』
 ザッフィーロの言葉に、まるで意味が分からないという風に首を振る白猫。
 指輪の司祭はまるで教えを説くように、言葉を紡ぐ。
「静かな世になったとて、お前が此処に留まる限り、届きはせん」
『それ、は』
 ああ、確かに鳴けども鳴けどもご主人様は返事をしてくれなかった。
 そもそも『ここにはいない』のだとしたら、納得はいくけれど――。
「……お前も、解るだろう」
『じゃあ、じゃあ……ご主人様はどこにいるの』
 小さな脚で地を踏みしめる白猫に、次に語り掛けるのは宵。
「あられさん、あなたのご主人さまはこの世界にはいらっしゃいません」
 明確に、白猫の疑問に答え。残酷ではあるが、知らねばならぬ事実を伝える。
「かれの言う通り、神の御世にいるのでしょう」
『かみ、さま』
 それは、幽世とは遠い光の国。死したる魂が導かれる場所。
 そして『あられ』は図らずも道を踏み外してしまった故に、今はまだたどり着けない。
「大好きなご主人さまは、きっと向こうであなたを待っていらっしゃいます」
 宵の紫眼が、決して逸らされることなく白猫を見据えていた。
 それは他ならぬ言葉への誠実さの証。白猫を思うが故の行動。

『うそ――うそ、うそ』

 だが、白猫はちりんと鈴を鳴らして否定する。
 かみさまなんて知らない、別の世界なんて知らない。だから、受け入れられない。
『うそつき、みんな、だいっきらい!』
 ごう、と。怒号の圧が駆け抜けていった気がした。思わず各々身構えた二人と一匹が次に見たものは――それぞれが、違っていた。
 ザッフィーロの前には、人の身を得てから共に過ごした懐かしき赤毛のひと。
 己を文字通り『育てて』くれた恩人は、しかし今や短刀をかざして迫り来る。
「抵抗するか、ならば……っ」
 ザッフィーロの足元の影がぞわりと身を這うように包み込むと、短刀は明後日の方向を空振りしていく。
 それを見て指輪の司祭は腕を振って、忽然とその姿を消した。
 宵の元には、忘れじの『最後の主人』が立っていた。
 しかし宵は迷うことなく首を振り、メレンガの元へと歩み寄る。
「――僕の居場所は『ここ』ですから」
 柔らかく笑んだアストロラーベを襲う凶刃を、突如現れた指輪の司祭が受け止める。
「記憶の中の者を喚び出したとて、かつて在ったその者ではなかろう……」
 惑わされはせんよ、そう言って短刀を弾き返すと宵とメレンガの元へと。
「ああ、本当に……帰る場所という物は良い物だな」

 みゃあ、と。『あられ』とは異なる声音の鳴き声が響いた。
 宵が召喚した魔法生命体――体躯は白猫とほぼ同じの、黒い猫だった。
 行っておいで、と背中を軽く撫でられて、猫と共にメレンガが歩き出す。
「あのね」
『なによ』
「どんなに静かになっても、ここからは届かないと思うんです。ご主人はきっと、お空で待っててくれると思うのです」
『空で……?』
 それは思いもしなかった、そんな風な声をしていた。
 天国や神の御許という概念的な表現を、よりかみ砕いたメレンガの説明は効いていた。
「はい! ですから、お外にでて、迎えに行ったらいいですよ?」
 気持ち声のトーンを落として、まるで取っておきの情報をひそひそ話で伝えるように。
 それは背後のご主人たちに人語を聞かれぬようにとの配慮でもあったのだが。
『……』
 白猫がジトッとした目をした気がした。メレンガと目が合った瞬間、背後で見守ってくれているはずの宵とザッフィーロが、禍々しい気配で現れる。拙い幻術だ。
「ご、ご主人は僕を攻撃しないです! き、君達誰ですか!」
 困惑するメレンガは、後ろ脚の間に尻尾を入れてすっかり怯えてしまうが、自らの言葉に励まされるようにぶんぶんと首を振る。

「そうだ!」
 静寂の世界で、ちょっと澱んだ感じの幽世の空に、大きな虹を架けるメレンガ。
『なあに、これ?』
「虹です、この先にきっとご主人もいると思います! だから、その時が来たらあの虹を目指していって下さい!」
 そう言い残して、メレンガは二人の主人のもとへと駆けていく。

(「えへへ、僕の居場所もご主人の所ですよー!」)
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

荒谷・ひかる
あられちゃん……
飼い主さんが亡くなられたことにも、違う世界に流されてしまった事も、
悪いものに憑りつかれて、この世界を滅ぼしそうになってることも『わからない』んですね……
わたしがしてあげられること……何が正しいかは、わからないけれど。
今は、迷ってる場合じゃないですよね。

【光と風の精霊日和】発動
爽やかな風と心地よい日光は、日中……昼間の再現
死者蘇生できる魂もいわば霊魂、夜間の存在
昼間は限りなく力を喪うはず

その上で、あられちゃんを連れてお外をお散歩しましょう
元の世界とは違いますが、ずうっと見たかったはずの外の世界です

飼い主さんについては、他の人にお願いします
わたしには……説明できそうにありません


満月・双葉

約束は呪いに成りますよね…

ご主人のこと大好きだったのですね
沢山遊んでもらったのかな
よし、閉じ込められたことですし少し遊ぼう
死ねと言う命令以外なら何でも付き合う
沢山遊んで満足したらご主人の所に行きましょうね

僕の声は出ないかも知れないけれど、目が雄弁に語るでしょうか
どんなにダメージを負おうが、目があれば何とか成りますから
痛みは【激痛耐性】で何とか耐えましょう
猫は好きですから、好きあらばそっと抱き締めたり撫でたりしてみたいです
寂しいね、大好きな人が居なくなるのは悲しいよね

僕もペットを遺して居なくならないようにしなくては…
えっ、カエル、お前はペットじゃない?
解ったよしつこいな


●『陽だまりの中』
 幽世の空に虹が架かり、しかしそこを目指す意味をいまだ白猫『あられ』は理解できない。にぃあ、とただ鳴くしかない白猫を、荒谷・ひかるはただ見つめるばかり。
「あられちゃん……」
 飼い主が亡くなったことも。違う世界に流されてしまったことも。
 悪いものに憑りつかれて、世界ひとつを滅ぼしそうになっていることも。
「『わからない』んですね……」
『ご主人様、ねえ、どこ?』
 ひかるの呟きも届かぬほどに、白猫は主への執着を見せる。
「約束は、呪いに成りますよね……」
 そんな様子を見かねたように、満月・双葉が苦々しく言う。
『ねえ――いっしょに外へ行こうよ』

 ねえ。ねえ、ねえ!
 白猫の悲しげな鳴き声が、静寂に包まれた幽世に響く。
 当然ながら、返事は返ってこない。
(「わたしがしてあげられること……」)
 何が正しいかは、わからないけれどとひかるが一歩前に踏み出す。
 それを見た双葉もまた、意図を汲んで動き出す。
(「今は、迷ってる場合じゃないですよね」)
(「ええ、行動あるのみです」)
 にぃ、と鳴き続ける白猫の前に、そうして二人はたどり着いた。

「ご主人のこと、大好きだったのですね。沢山遊んでもらったのかな」
 しゃがみ込んで、極力目線を低くしながら双葉が問い掛ける。
『猫じゃらし……上手に動かしてくれた』
 鳴き声は言葉となって、不思議な意思の疎通を成立させる。
 己の声が出ないかも知れないと思っていた双葉は安堵する。
『ねえ、あそんでくれる?』
 不意に、白猫の前脚が持ち上がった。肉球で双葉をぺしんと打ち据えようとした、その時だった。
「はい、遊びましょう――素敵な場所で」
 ひかるが胸の前で両手を組んで、祈るように目を閉じる。
 するとたちまち音を失った幽世に爽やかな風が吹き、暖かな心地良い光が降り注ぐ。
 その名は、【光と風の精霊日和(エレメンタル・ナイスデイ)】。精霊の助力によって、周囲を快晴時の屋外と同じような環境に塗り替えてしまう超常だ。
 どこか怪しげな空模様をしているカクリヨファンタズムの天を、日中――昼間の再現で上書きするという離れ業をやってのけるのだから恐ろしい。
(「死者蘇生できる魂もいわば霊魂、夜中の存在」)
 ひかるは突然陽だまりに放り出されて呆然とする白猫を見つめる。
(「昼間は、限りなく力を喪うはず」)
『……にぁ』
 突然のことに戸惑う白猫に、ひかるがそっと手を差し伸べた。
「お散歩を、しましょう」
 晴れた日の窓辺を思い出させるぬくもりに、主が見つからぬ焦燥感にかられていた心が少しだけ解れたような気がした。
 だから、白猫はおずおずと前脚を出して先導するひかるの後に続いた。
「ふふ――元の世界とは違いますが、ずうっと見たかったはずの『外の世界』です」
『これが……』

 ――外の世界は危ないと聞かされていたけれど。
 ――ああ、なんて素敵なんだろう。

『ねえ……やっぱり、ご主人様といっしょに散歩がしたい』
「……」
 それを言われると胸が痛む。ひかるには、どうすることもできないから。
(「わたしには……説明できそうにありません」)
 困った視線を双葉に向ければ、それを受けた魔眼の娘は眼鏡をかけ直して頷く。
「……おいで、少し遊ぼう」
『それ、なぁに?』
 双葉が懐から取り出した「渾天儀」に――正確にはそれが放つ光に、白猫は興味津々。
「死ねとかいう命令以外なら、何でも付き合いますよ」
 そう言いながらも、地面に光を落としてそれをヒュンヒュン動かす双葉は確実に遊びの主導権を握っていた。
『にぃっ!』
 猫はレーザーポインターなどの光に良く食い付く。まさかその要領で父親の宝物が役立つとは思わなかったが、まあいいかと双葉は巧みに光を動かし続けた。
 やがて息が上がってきたのか、光を追う速度が落ちてきた白猫にそっと近付く。
(「猫は好きですから、隙あらばそっと抱き締めたり、撫でたりしてみたいです」)
 白い背中を撫でて、そっと両手を差し入れて、持ち上げて抱え上げる。
『……ご主人、様』
「……寂しいね、大好きな人が居なくなるのは悲しいよね」
 純白の毛並みに顔をそっとうずめると、陽だまりのいい匂いがした。

 あの虹の向こうに、きっと『あられ』のご主人様はいるのだろう。
 納得してあちらに向かうまで、もう少し時間は必要だろうけれど。

「僕もペットを遺して居なくならないようにしなくては……」
 そう呟いた双葉を、カエルのマスコットさんがペシペシと叩く。
「えっ、カエル……お前はペットじゃない?」
 こくこく。カエルのマスコットさんがものすごく頷く。
「……解ったよ、しつこいな」
 ――お前は僕の魔力の一部だ、死ぬ時は一緒だろうな。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

栗花落・澪
【犬兎】
この場合…どうなんだろうね
知る事が幸せなのか、知らないままの方が幸せなのか
あられちゃんが救われるなら
悪役でもなんでも買って出てあげたいけど
それほどに、大好きだったんだろうから

せめて君の望みを一つ、叶えてあげる
綺麗な景色…君が憧れた外の世界
僕が代わりに見せてあげる

睡魔は敢えて自分の手に火の魔法を当てる事で耐え
【指定UC】を発動
【破魔】の光で優しく浄化を狙いながら
そっとあられちゃんに呼びかける

ここは天上世界(に寄せた場所)
君のご主人様に一番近い場所
ここからならきっと、君の声も届くよ
僕達も一緒に【祈る】から
君とご主人様が出会えるように

えへへ…ごめんね夏輝君
でも僕は心配しなくて大丈夫だよ


小林・夏輝
【犬兎】
…俺なら、だけど
もうこの世にいない飼い主のために待たせ続けるくらいなら
ちゃんと知らせてやりたいかな
それ以外の部分は伏せるとしても
自由にしてやりたいだろ

敵のSPD技対抗用に【指定UC】を保有
澪の大切っつったらあいつ
俺だと澪になりそうなんだけど
いやぁどっちも不利だにゃー!
けど、俺も澪も、どんな質問にも正直に答えるよ
いつでも澪を【庇える】ように準備はしておくけどな
澪を護るのは、今だけは俺の役目だから

1人分で足りないなら3人で呼ぼうぜ
周りの騒がしさにも負けないくらい
俺らも届かせてやりたいんだ
お前の声

あぁ…あと澪の動きも全部見てっからな
無茶すんなよなーったく…
後でちゃんと治療するからな


●『祈りと願い』
 人のぬくもりと、陽だまりの心地良さ。
 それは白猫『あられ』の心をわずかながらに解していた。
 けれども、その一方で会いたい気持ちもまた際立ってしまう。
 だって、元々の約束は――いっしょに外に行こうというものだったから。

 栗花落・澪が、小林・夏輝に向けて問う。
「この場合……どうなんだろうね」
 知る事が幸せなのか、知らないままの方が幸せなのか。
「……俺なら、だけど」
 常のお調子者の顔を潜め、夏輝は真剣なまなざしで澪を見る。
「もうこの世にいない飼い主のために待たせ続けるくらいなら、ちゃんと知らせてやりたいかな」
 全てを詳らかにする必要はない、要点以外は伏せるとしても。
「あられちゃんが救われるなら、悪役でもなんでも買って出てあげたいけど」
 それほどに、大好きだったんだろうから。
 そうでなければ、『こんなに』なってまで探し求めたりしないだろうから。
「俺も同じだよ……自由にしてやりたいだろ」
 だから、二人は顔を見合わせ頷いて、白猫へと向き直った。

 先んじて白猫の方へと歩を進めた澪を、いつでも庇えるように夏輝が追う。
『……ずっと、呼んでるのに。ご主人様、返事をしてくれないの』
「……っ」
 ただ、会いたいだけなのに。その願いが、世界を滅ぼすから。
 止めなければ――どうすればいい?
「せめて」
 ぎゅっと拳を握りしめ、澪が声を絞り出す。
 小首を傾げる白猫にしてあげられる、たった一つの奇跡。

「君の望みを一つ、叶えてあげる」
 澪の白い翼が広がると同時に、色とりどりの花弁がぶわっと舞い踊った。
 どこか古びた雰囲気に包まれていた幽世に、鮮やかな色が宿っていく。
『にゃぁ……ああ……!』
 人はそれを【心に灯す希望の輝き(シエル・ド・レスポワール)】と呼んで賛美する。
 色彩豊かな世界は、一切の悪を赦し清める天上の景色。
「綺麗な景色……君が憧れた外の世界。僕が、代わりに見せてあげる」
 白猫の骸魂としての本能が抵抗を示したのか、澪の前におぼろげな人影が見えると同時に強烈な眠気が襲う。
「く……っ」
 ここで屈するわけには行かないと、自らの掌に炎を宿し――もう片方の手の甲に押し当てた。熱い。熱いが、意識ははっきりとした。
 ああ、これは火傷をしたなと思いながら、安いものだと笑ってみせる澪。
「ここは、君のご主人様に一番近い場所」
『ご主人様に? ほんとう?』
「そう、ここはあの虹の向こうにある世界を似せて作った、天上世界」
 ここからならきっと、君の声も届くよと。
 見上げる白猫の頭をそっとひと撫でして、澪はそっと両手を組んで目を閉じた。

 骸魂と化した白猫は、相手の記憶を読み取って、そこから大事な人の幻影を生むという。夏輝も、例外ではなかった。
 眼前に現れたもう一人の澪と向かい合って、夏輝は変な汗をかいていた。
(「ある程度予想はできてたけど、こんなん圧倒的に不利にゃー!」)
 そう、夏輝は澪に色々な意味で弱い。まずもって殴って倒せと言われても難しい。
 何かバットでフルスイングしてぶっ飛ばすつもりらしいですけど、できるん?
(「ぐぬぬ、本物の澪を護るためなら――見た目なんかに惑わされたり」)
『夏輝くん、僕のこと――好き?』
「!!!!!!」
 どんな質問にも正直に答えるつもりだった。だが、これはあまりにも直球すぎる上に意味深が過ぎてかえって答えに困るヤツだった。控えめに言ってヤバい。
『ねえ』
「ばっかやめ、顔、顔が近いアアーーー偽者なのにおんなじいい匂いがするゥ!!」
 どうしてつゆりんがいい匂いするって知ってるんですか? 白猫は訝しんだ。
「ねえ、あれもうそろそろ勘弁してあげてもらえるかな」
『にぃ、せっかくおもしろそうだったのに』
 しょうがないにゃあ、と言わんばかりに、白猫は幻影を引っ込めた。
 汗を拭ってよろよろと澪たちの方に近付きながら、夏輝はそれでもきちんと告げた。
「なあ、一人で足りないなら三人で呼ぼうぜ」
『え……?』
「周りの騒がしさにも負けないくらい、俺らも届かせてやりたいんだ――お前の声」
 どうして、一緒に呼んでくれるの?
 そう問う前に答えをくれたものだから、白猫は思わず虹の方を見る。
「君と、ご主人様が出会えるように」
 そう願い、祈る。遠くない未来に、どうか叶いますようにと。

 それとなく火傷の跡を隠しながらそっと立ち去ろうとする澪を、夏輝が目ざとく呼び止めた。
「無茶すんなよなーったく……見せてみ?」
「何のこ……ひゃっ」
 半ば強引に掴まれ引っ張られた手首の先には、誤魔化しようがない痛々しい火傷の痕。
「後でちゃんと治療するからな」
「……ふぁい」
 夏輝に念を押され、申し訳なさげに答える澪であった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

御桜・八重


あられの肉球にそっと触れると、たちまち世界が変わる。
…ご主人様といっしょに行きたかった、外の世界。

「ねえ、あなたはおんもで何をするの?」

水たまりでしぶきを散らしたり。
カタツムリの角をつついたり。
雨上がりの虹を見上げてひっくり返ったり。

きっと、楽しいよね。
知らないことがたくさん。
素敵なことがいっぱい。
でも、それは。

「ご主人様といっしょに、見たかったんだよね」

涙を堪えて優しく手招き、あられをそっと抱きかかえる。

【桜吹雪化身ノ舞】

その身を桜吹雪に変え、あられを芯に渦を巻けば、
骸魂が吸い出され、霧散する。

「いつか、あなたの見たもの、聞いたものを
全部ご主人様に伝えられるように…」
精一杯、生きようね。


雷陣・通
ずっと、一緒にか……

お前、声が聴きたかったんだな
会いたかったんだな
でもさ、もう終わりの時なんだ

俺達はずっと生きられないし、にゃんころは違う生き方を選んじまった
もう会えないんだよ

……このままだったら!

任せろ、お前の声は聴いた
だからこそ、俺は来た
大丈夫だ、お前の願いをかなえてくれるやつが必ずいる!
そこへ、行こう

大丈夫だ、お前が作ったこの世界
それを破壊するために俺が居るんだから

「ライジン!」
「電撃!!」
「キィーック!!」

†其蹴技試割如†

破壊するのはこの理想の世界!
行くぜにゃんころ、ルールなんて関係ない
会いたいときに会いに行くのが――そう、お前の役目だ!


●『あるひとつの結末』
 虹の向こうの世界を示され、そこでこそ願いが叶うと諭された。
 憧れた、あたたかな陽だまりの世界を教えてくれた人たちを信じたい。
 けれどこの身は骸魂、それを白猫『あられ』が意識しておらずとも。

 ――その事実は、小さな身体を縛り付けてなお離さないのだ。

「ずっと、一緒にか……」
 雷陣・通が眉根を寄せながら呟いた。
 それは、叶わぬ願いだと知ってしまっていたから。
『ご主人様は本当にあの虹のむこうにいるの? どうして返事をしてくれないの?』
 つぶらな瞳で問うてくる白猫の姿に胸を締めつけられる思いがして、知らず通は唇を引き結ぶ。
「……お前」
 拳を握りしめて、何とか声を絞り出す。
「声が聴きたかったんだな、会いたかったんだな」
 二股の尾が何も知らない様子で揺れて、それが通の目にはあまりにも残酷に見えて。
「でもさ、もう――終わりの時なんだ」
 小首をかしげた白猫の、首の鈴がちりんと鳴った。
「俺達はずっと生きられないし、にゃんころは違う生き方を選んじまった。もう会えないんだよ」
 すぅ、と息を吸って。吐き出す勢いに任せて、通は叫んだ。

「……このまま、だったら!!」

 そう。今のままでは、駄目なのだ。
 骸魂としての白猫『あられ』ではなく、ご主人様が愛した『あられ』として。
 そのことを知る、もう一人の猟兵が――御桜・八重が、静かに前へ進み出た。
 白猫の前にそっと手を差し出せば、つられるように前脚が乗せられ、肉球が触れる。
 するとたちまち世界がぐるりと回り、その色を、景色を変える。

「ねえ、あなたはおんもで何をするの?」

 問い掛けた八重が背負う景色は、雨上がりの世界。
 少し離れたところでは、通も腕組みをして返事を待つ。
『え、えっと』
 外の世界のことなんて、話でしか知らなかった。
 連れて行ってくれるということだけに気を取られて、何をしたいかまで考えていなかった。だから、白猫は言いよどんでしまうのだ。
「水たまりでしぶきを散らしたり」
 そして、代わりに八重が教えてあげるのだ。
「カタツムリの角をつついたり」
 おんもでは、こんなに素敵なことがあるのだと。
「雨上がりの虹を見上げてひっくり返ったり」

 ――どうしてだろう、楽しい話をしているだけのはずなのに。

「きっと、楽しいよね。知らないことがたくさん、素敵なことがいっぱい」

 ――声が震えるのを止めることができない。どんどん、視界がにじんでいく。

「でも、それは」
『……にぃ』
「ご主人様といっしょに、見たかったんだよね」

 涙を湛えたまま、八重は白猫を優しく手招きする。
 大人しくとことこ歩いてくる白猫をそっと抱きかかえると、まるで魔法か手品かのように、八重の身体が桜色の光に包まれ――一瞬で絢爛豪華な桜吹雪と化した。
 白猫を中心に渦を巻く【桜吹雪化身ノ舞】は、骸魂であるがゆえの執着を浄化するように舞い踊る。
「いつか、あなたの見たもの、聞いたものを、全部ご主人様に伝えられるように……」

 ――精一杯、生きようね。

『ご主人様に、伝える』
 初めて見る桜吹雪に目をまあるくしながら小さく鳴く白猫に、今度は通が笑いかけた。
 もう、難しい顔はしない。どうすればいいのか、分かっているから。
「任せろ、お前の声は聴いた。だからこそ、俺は来た」
 胸を軽く叩いて、力強く。
「大丈夫だ、お前の願いをかなえてくれるやつが必ずいる!」
 幽世にはおよそ似つかわしくない、しかしだからこそひときわ輝く虹を指す。
『みんな、ご主人様はあそこにいるって』
「ああ、そのためにはこの世界にこもってちゃダメだ」
 白猫の骸魂としての力で生み出された、理想の世界。
 八重も既に指摘しているが、ここには致命的な不足がある。

 ――この世界には、ご主人様がいない。

 だから。
「それを破壊するために、俺が居るんだから」
 夢の時間は終わり。本当の意味で願いを叶えるための第一歩を、踏み出すために。

「ライジン!」
 紫陽花に彩られたブロック塀を蹴り上げ宙に舞う。
「電撃!!」
 そのままくるりと一回転。
「キィーック!!」
 右脚を思い切り伸ばして、強く強く地面を割る――【其蹴技試割如(ライトニング・ブロークン・キック)】!

 世界に、景色に、文字通りヒビが入る。まやかしの世界の終わりが来たのだ。
 造作もなく立ち上がった通が、手を差し伸べながら言う。
「行くぜにゃんころ、ルールなんて関係ない」
 桜から人の身へと戻った八重も、同じように手を伸ばしながら笑った。
 骸魂だから、悪者でなければならないなんていうルールは、もう関係ない。

「会いたいときに会いに行くのが――そう、お前の役目だ!」
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

木常野・都月


そうか。
信じられないけど、人に飼われてる猫は、死を知らないのか。

[動物に話す]で、猫に話しかけたい。

君と一緒にいた人間は、君の家族は、もうここにはいない。
死んで、骸の海に逝ってしまったんだ。
生きてるものしか、ここにいてはいけないんだ。
だから、もう食べ物も持ってこない。
どんなに他の声を消しても、声は聞こえない。
君がいつか骸の海に行く日まで、会えないんだ。
俺のじいさんもそうだったように。

猫に憑いた骸魂を倒したい。

UC【精霊の矢】を氷の精霊様の助力で使用、猫に憑いた骸魂を攻撃したい。

敵の攻撃は月の精霊様チィの[カウンター]で対処したい。
月の精霊様は幻や狂気を司るはず。
きっと眠気にも対抗できるかも


薙殻字・壽綯
……羨ましいですね。こんな感想を抱くのは、良くないことだと思います
しかし、愛する者の最期に立ち会えて。亡骸に縋れて、口に含めて。……それを理解できないのは、残酷なことです
……静かになって、声が届けば。どれだけ良いことか。どれだけ、救われるか

……ただ、会いたいだけなのに。どうして、命は終わるのでしょうね
それも唐突に、何も知らせず、自らも知らぬうちに。生き人を置いていく
生き人は、泣くばかり。それでも、僕は前よりマシになったけど……それでも、悲しみは消えないことを、知っているつもりです

……私は、貴方を思えども、思う故に手にかけることしか、できません
……どうか、どうか。ご主人のもとへお行きください


●『カクリヨバトル』
 白猫『あられ』には、これまでにたくさんの手が差し伸べられた。
 会いたい人に会うための正しい手段、その説明、何も分からないでいた身を縛る『骸魂』という在りようから解き放つための第一歩。
 幽世の空に架かる虹へと白猫が向かうためには、骸魂としての『あられ』を倒し、ご主人様が愛した『あられ』としての姿を取り戻さなければならない。
 誰かが、成さねばならない――そのために、猟兵たちはここにいるのだ。

「そうか」
 漏れ出た言葉に込められたのは、純粋な『理解』。
 木常野・都月は、眼前の野生を知らぬ獣をじっと見つめた。
「信じられないけど、人に飼われている猫は、死を知らないのか」
 人間の庇護の元生きる動物――愛玩動物と称されるものたちは、幼くして親元を離れて人の手で育てられ、人より先にその天寿を全うすることがほとんどである。
 白猫のように、不幸にも主人に先立たれる例は少なく、また野生に身を置くものが知る苛烈な生存競争とも縁遠い。
『にぃあ……』
 これから自分はどうなるのか、どうすればいいのか、本当にあの虹の向こうに行ってもいいのか。未だ逡巡する白猫が、都月の顔を見て、鳴いた。

(「……羨ましいですね」)
 化生に成り果ててまで愛する者を探し求める白猫の姿を見て、薙殻字・壽綯は思う。
 思うが、それは容易く口に出してはいけないものだと自制もする。
(「こんな感想を抱くのは、良くないことだと思います」)
 だから、心の中でのみ白猫へと羨望さえ抱く。
(「しかし、愛する者の最期に立ち会えて。亡骸に縋れて、口に含めて」)
 背徳であろうか、倒錯であろうか、しかしそれは向ける情が深ければ深いほどにきっと誰かが首肯してくれるであろう――そんな、ひとつの愛のかたち。
(「……それを理解できないのは、残酷なことです」)
 他ならぬ己自身が愛する者を喰らったという事実を、どう受け止めるか。
 理解した上で煩悶するならばまだしも、この白猫は何も知らないでいる。
 他の猟兵の手前、知らせぬ方が良いのだろうか。ああ、それにしても。
「……静かになって、声が届けば。どれだけ良いことか」
 壽綯がようやく声を発した。静寂の幽世に、それは良く響いた。
「どれだけ、救われるか」
 白猫の首元の鈴が、ちりんと鳴った。

 都月は、豊かな狐の尾を揺らしながらしゃがみ込み、白猫に話し掛けた。
「君と一緒にいた人間は、君の家族は、もうここにはいない」
『だから、返事をしてくれないのね?』
 白猫の言葉に都月は頷き、続ける。
「死んで、骸の海に逝ってしまったんだ」
 その命を終えたものは、時を刻むことを止め、過去として世界の外へと排出される。
 過去の集積体、その名も『骸の海』。生を止めたものは、すべてそこへと還る。
『……それは、あの虹の向こうの世界のこと?』
「……ああ、だから、生きてるものしか、ここにいてはいけないんだ」
 わずかな沈黙は、都月にも骸の海がどんな場所なのかを断言することができないから。
 ただ、事実だけを誠実に伝えることに心を注いだ。
「だから、もう食べ物も持って来ない。どんなに他の声を消しても、声は聞こえない」
『……』
 二股の尾が揺れる。ゆっくりと、左右に。
「君がいつか骸の海に行く日まで、会えないんだ」

 ――俺のじいさんも、そうだったように。

 命あるものは、いつか終の時を迎える。
 それを理解できないというのならば、教えてあげるのが道理だろう。

『死ぬ……いなくなってしまう、こと』
 会いに行っていいのだと言われた。きれいな虹の向こうで、もしもまた会えるのなら。
 ひと声鳴いた白猫に、壽綯が言葉を掛ける。彼なりの、精一杯で。
「……ただ、会いたいだけなのに。どうして、命は終わるのでしょうね」
 それも唐突に、何も知らせず、自らも知らぬうちに――生き人を、置いていく。
 別れにも色々あろうだろうけれど、例えば病で命の灯火の限りを知らされるとか。
 「行ってきます」といつものように送り出した人が、還らぬひととなることだってある。
 突然の別れは、覚悟が出来ていない分、遺された生き人を深く深く抉るのだ。
「生き人は、泣くばかり。それでも、僕は前よりマシになったけど……」
 詳らかにはしないけれど、白猫の境遇に理解を示す壽綯。
「それでも、悲しみは消えないことを、知っているつもりです」
『……かなしい、これが……』
 胸を締めつけてやまない、感情に名前がついた。
 白猫の二股の尾が、しゅんと垂れ下がる。

 都月と壽綯は、それぞれ得物を構えた。
 事情はどうあれ、骸魂を倒さねばならないのだけは事実なのだから。
「……私は、貴方を思えども、思う故に手にかけることしか、できません」
「骸魂を、倒させてもらう」
 まずは都月が、氷の精霊様の力を集めて矢の形に変え、白猫を狙う。
『っ……!』
 反射的に、白猫が都月の眼前にかつての恩人たる老人の姿を生み出す。
 穏やかな夢を見せようというのか、しかし都月は既に『知っている』。
「一度死んだ人は蘇らないし――蘇ってはいけないんだ。チィ!」
 白い月の精霊『チィ』が、ひと声鳴いて幻影を打ち消した。
 月の精霊が司るのは幻と狂気、ならば使い手たる都月がそれに呑まれることはない。
 そして、氷の矢が白猫の小さな体躯を貫いた。
『にぃ……っ』
 縋るように前脚を差し出す白猫に、壽綯はゆるりとかぶりを振った。
「……どうか」
 墓荒しのハイエナが叫ぶのは、一人ぼっちの孤独。
 それは情愛を代償に、白猫をしたたかに打ち据えた。

「どうか。ご主人のもとへ、お行きください」
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

穂結・神楽耶
◎ジャック様/f02381と

――例えば、理想通りに己を呼ぶ声がして。
理想通りの姿があったとして。
それが本当に願った通りの相手なのか、確認するすべはない。

だって。
姿も、声も、微笑みも。
記憶のひとつ残らず燃やし尽くしたから、声が届くはずがない。

ねぇ、穂垂。今は儚き我が背柱。
あなたが在るのなら、わたくしは今ここにいない。
いくら理想の世界だって、“そうはならない”んですよ。
総てを燃やしたわたくしに、
理想に溺れる資格はないんです。

──失礼、お見苦しいものを。
ここで見聞きしたものはお互い内密ということで。
ええ、では。
とっとと理想(あくむ)にはお帰り願いましょう。

【神業真朱】──未練の悉く、断ち散らせ。


ジャガーノート・ジャック
◎神楽耶/f15297と

喩えば、どうしようもなく愚かな過ちを犯して、一度酷く泣かせてしまった人に
もう一度笑って欲しいと思う事は
輪をかけて愚かな願いだろうか。

それでも君の泣顔が目に焼き付いて離れないから
こうして"僕"は
愚かな理想を前にして
理想的な君の赦しの言葉を聞いているのだろう

『いいんだよ、●●。だからずっと一緒に』と。

嗚呼でも
『ミコトメモリ』
そして愚かな僕。
"そうはならない"んだ

記憶を無くして
呼び方も
呼ばれ方も
未だ思い出せない僕に
その安寧に身を委ねる資格はないのだから

(――ザザッ)
――機密として貰えるなら
"本機"も願ったりだ

強化した予測力を用い
敵の行動ルーチンを洞察、狙い撃つ。(ザザッ)


●『ビューティフルワールド』
 白猫『あられ』は、骸魂としての部分のみを的確に攻撃されながらも、なお倒れることなく四つ脚で地を踏みしめていた。
 白猫はいまだ骸魂に呑まれたオブリビオンであるがゆえに、対峙する猟兵へと半ば無意識に攻撃を仕掛けてしまうのだ。
 本当は、あの虹の向こうへと走るのが正しいと、分かっているのに。

『ごめん、なさい』

 か細い鳴き声が聞こえた気がして、次の瞬間――ジャガーノート・ジャックと穂結・神楽耶は同時に景色が歪む感覚に襲われた。

 ――喩えば。
 どうしようもなく愚かな過ちを犯して、一度酷く泣かせてしまった人に、もう一度笑って欲しいと思う事は。
 ――輪をかけて『愚かな』願いだろうか。

 0と1で構成された世界は、映像にも音声にもノイズが走る(ザザッ)。
 ジャガーノートの眼前には、小さな王冠を戴く可憐な少女の姿があった。
 目に焼き付いて離れないのは、確かに泣き顔だったはずなのに。

『いいんだよ、■■■■■■■。だから、ずっと一緒に』

 こうして『僕』は、『愚かな』理想を前にして。
 君の、理想的な赦しの言葉を聞いているのだろう。

 ――嗚呼でも、『ミコトメモリ』、そして愚かな『僕』。
 黒豹頭の電脳人は、かぶりを振って甘い幻想を振り払わんとする。

『キミの記憶を、一緒に紡ごう』
 メイクメモリアの名を体現する少女へと、しかしジャガーノートは手を伸ばせない。(「記憶を無くして、呼び方も、呼ばれ方も未だ思い出せない『僕』に」)
 ましてや、その安寧に身を委ねる資格などないのだからと、そう――。

 この話は、ここでお終いなんだ――【Did not become so.(ソウハナラナカッタ)】。

 有り得た未来にして、そうはならなかった未来は。
 セーブポイントからやり直しでもしない限り、たどり着くことは出来ない。

●『リザレクション』
 ――例えば、理想通りに己を呼ぶ声がして。理想通りの姿があったとして。
 それが『本当に願った通りの相手なのか』確認するすべはない。

「だって」
 神楽耶は一度瞑目して、そして目を開く。
「姿も、声も、微笑みも」
 太刀の乙女は、確かに笑んでいたけれど。どこか、泣きそうな顔をしていた。

 ――記憶のひとつ残らず燃やし尽くしたから、声が届くはずがない。

 ここは、とても平和だ。懐かしの、神社の境内を思わせる。
 全てを呑んだ業火の気配など微塵も感じさせず、ただ静謐さばかりがあった。
「ねぇ、穗垂」
 眼前に立つ、今は儚き背柱へと語り掛ける神楽耶。
「あなたが『在る』のなら、わたくしは今――ここに『いない』」
 護られなければ、自分が潰えていた。つじつまが合わないのだ。

 共に在れたら、どんなにかしあわせだろうとは理解できる。
 けれども、神楽耶は差し出されたしあわせを受け取ろうとはしなかった。

「いくら理想の世界だって、『そうはならない』んですよ」

 ――総てを燃やしたわたくしに、理想に『溺れる』資格はないんです。

 神楽耶の表情は、今度こそ常の凜としたそれに戻り。
 対する背柱の娘が、泣きそうな笑みを残して、景色と共に薄れていった。

●『見なかったことに』
 ジャガーノートと神楽耶とが、それぞれ『そうはならない』とまやかしから逃れてきたのもほぼ同時、非常に言いづらいことではあったが――互いの様子は、見えていた。
「――失礼、お見苦しいものを」
「(――ザザッ)」
 ノイズ混じりの返事に、神楽耶はそっと唇に人差し指を当てて提案する。
「ここで見聞きしたものは、お互い内密ということで」
「――機密として貰えるなら、『本機』も願ったりだ」
 ジャガーノートの尻尾を模したバランサーが揺れて、珍しくクリアな音声が響く。
「ええ、では」

 ――とっとと理想(あくむ)には、お帰り願いましょう。

 すらりと抜き放たれた神楽耶の本体たる「結ノ太刀」が閃いて、白猫の眼前の空間を切り裂いた。その真髄こそ、【神業真朱(シンゴウシンシュ)】。
 間髪入れず強化された予測力で、ジャガーノートが逃れようとする白猫の動きを完全に読み切って、熱線銃で後ろ脚を撃ち抜いた。

『なぁ……』
 か細く泣く白猫を、哀れとは思うまい。
 今のままでいることの方が、余程哀れなのだから。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

アイネ・ミリオーン
【エレル】

逝ってしまった人、と、遺されたもの、と
良く見る光景だと、思うの、は、出身世界故、かもしれません
何しろ、あの世界には、遺されたものがごろごろと転がっては、また、次々と無くなって行きます、から

僕には、良く、分かりません
見慣れたもの、と思ってしまう、から、ヨシュカのような、優しい問い掛けも、出来ません
ロカジと一緒に、少し離れて、見ていましょう、か
……まあ、ロカジもちょっと思う所が、ありそうに見えます、けれど

戦いには、問題なく参加します、よ
僕、あんまり優しくない、ので
生き残るために、敵を倒す事に、呵責はありません、から

さ、終わりに、しましょう
逢いたい人、が、居るなら、立ち止まらずに、黄泉路へ


ヨシュカ・グナイゼナウ
【エレル】

はじめまして猫さん。あなたのお名前は、なんとおっしゃるのですか?
そう、あられさまとおっしゃるのですね。かわいいお名前。わたしはヨシュカと申します
少しお話しませんか?あなたの事、あなたのご主人の事

梅雨が明けたら、お出かけに。それは素敵な約束ですね
雨が終わった後の景色は、キラキラでそれはとても綺麗なのですよ!

あなたのご主人は、少し先にお出かけしてしまっただけ
だから追いつくためには、こんなとこから出ないといけませんね
あなたはきっと迷子になって、初めてひとりになってこわかったのでしょう?
わかります。わたしもとてもこわかったから

ずっと気を張っていてお疲れでしょう
だから少しだけおやすみなさい


ロカジ・ミナイ
【エレル】

…なんだい、猫又かい
僕は猫は得意じゃなくてね
それっていうのも猫又に痛い目に遭わされたからなのさ
かわいい顔と猫撫で声にはもう騙されてやらないんだから

けども…
ヨシュカが取り合ってやるってんなら
その間は邪魔しないよ

猫を視界に入れないように
壁にもたれて一服でもして待ってるけど
ヨシュカのやわくてあったかい問いかけがどうしたって耳に入る
――こわかったのかい、ふたりして

……
遺される気持ちは、わからないでもない

永久に上書きされない幸福ってのは
シールみたいにこびりついちまって
取り返しがつかなくなるもんだ
僕の脳にも何枚か貼ってある

命の短い方がなんぼか得よ
おやすみを言うなら手を貸そう
僕らなら慈悲なく出来る


●『カレイドスコープ』
(「逝ってしまった人、と、遺されたもの、と」)
 アイネ・ミリオーンにとって、それは『良く見る光景』と言えた。
 一度は滅びを迎えた世界は、人にも物にも等しく『残酷』で。
(「何しろ、あの世界には、遺されたものがごろごろと転がっては、また、次々と無くなって行きます、から」)
 アポカリプスヘル、という世界がある。
 とあるラボで『造られた』アイネは、無数の屍の上に立っている。
 ――最早、命ひとつ喪われる都度嘆いていては、きりがない。そういう世界なのだ。

 猫。共に旅をする猫がいるヨシュカ・グナイゼナウは慣れたもの。
 白猫『あられ』を見て、真っ先にしゃがみ込んで目線を合わせようとした。
 それをちょっぴり苦々しく見遣るのはロカジ・ミナイ。何故なら。
(「……なんだい、猫又かい」)
 ――僕は猫は得意じゃなくてね、それっていうのも猫又に痛い目に遭わされたからなのさ。
 口には出さず、ただ思い起こすのはほろ苦いどころではない思い出。
 かわいい顔と猫撫で声には、もう騙されてやらないんだからと身構えるも。
(「けども……ヨシュカが取り合ってやるってんなら、その間は邪魔しないよ」)
 そんなロカジの様子を知ってか知らずか、ヨシュカは優しく白猫に話し掛けた。

「はじめまして猫さん。あなたのお名前は、なんとおっしゃるのですか?」
『……あられ。ご主人様が、そう呼んでくれてた』
 小さな鳴き声が返事となれば、ヨシュカは笑顔でひとつ頷いた。
「そう、あられさまとおっしゃるのですね」
 かわいいお名前、と言い添えて。
「わたしはヨシュカと申します。少しお話しませんか? あなたの事、あなたのご主人の事」
『……』
 この人は、わたしの話を聞いてくれる。
 わたしに話を聞かせようとするんじゃなく。
 そう思うと、自然と鳴き声が発せられた。
『……おんもに出たかったの、一度でいいから。でも、今出ると雨っていうもので濡れちゃうからって。もう少ししたらお天気になるから、そしたらって』
 まるで堰を切ったように、主との約束の話をする白猫を、ヨシュカはうんうんと頷きながら聞いていた。
「――梅雨が明けたら、お出かけに。それは素敵な約束ですね」
 十字の瞳孔を持つ瞳を細めて、感嘆の声を上げる。
「雨が終わった後の景色は、キラキラでそれはとても綺麗なのですよ!」
『きら、きら……』
 ほわあという声を上げる白猫に、ヨシュカはにっこりと笑んでみせた。

 白猫とヨシュカのやり取りを視界に入れないように、どこか懐かしい町並みの適当な壁にもたれて一服しながら時間を潰すロカジの元に、アイネがやって来た。
「僕には、良く、わかりません」
 ぽそりと呟くように、アイネが漏らす。偽らざる本音だった。
「見慣れたもの、と思ってしまう、から」
 ヨシュカのような、優しい問い掛けも、自分にはとても出来ない。
 だから、しばしロカジの傍にいることを選んだ。
(「……まあ、ロカジもちょっと思う所が、ありそうに見えます、けれど」)
 顔をそむけて紫煙を吐く男を見遣って、アイネはそっと肩を竦めた。

 先立たれるということを、ヨシュカは知っている。
「あなたのご主人は、少し先にお出かけしてしまっただけ」
 どう向き合えばいいのかを、知っている。
「だから追いつくためには、こんなとこから出ないといけませんね」
 空に架かる虹が美しく、消えずに待ってくれている。
「あなたはきっと迷子になって、初めてひとりになってこわかったのでしょう?」
『……こわい』
 ヨシュカの言葉を、白猫が繰り返す。
 胸が締めつけられる心地を、そう呼ぶのかと。

「わかります。わたしも、とてもこわかったから」

 ヨシュカは笑みを絶やさなかった。この時ばかりは、さみしげだったけれど。

(「――こわかったのかい、ふたりして」)
 見えなくとも、聞こえる。静寂の世界で、『声』を許された存在のやりとり。
 ヨシュカのやわくてあったかい問いかけがどうしたって耳に入るものだから、ロカジは思わず特徴的な眉の根を軽く寄せた。
(「……」)
 ふぅ、と。肺に取り込んだ煙を吐き出す。
(「遺される気持ちは、わからないでもない」)
 ――永久に上書きされない幸福ってのは、シールみたいにこびりついちまって、取り返しがつかなくなるもんだ。
 無理に剥がそうとすると酷く痕が残るし、そもそも剥がせないことだってある。
(「僕の脳にも、何枚か貼ってある」)
 ロカジはそれを剥がそうとしたのか、そのまま呑み込んだのか。
 裡に秘めたまま生きていた男のそれを、暴くのは無粋というものだろう。

「ずっと気を張っていて、お疲れでしょう」
 ヨシュカの言葉が、合図となった。立ち上がったヨシュカの元に、煙草を片付けたロカジと、見守っていたアイネとが近付く。
(「僕、あんまり優しくない、ので」)
 白猫は、不思議と抵抗する素振りも見せず、ただ三人を見上げていた。
(「生き残るために、敵を倒す事に、呵責はありません、から」)
 アイネは一度瞑目して、そして目を開く。
「さ、終わりに、しましょう」
 ――逢いたい人が居るなら、立ち止まらずに、黄泉路へと。
「命の短い方がなんぼか得よ」
 口調からは想像できないほどの重みを以て、ロカジの言葉は放たれる。
 遺されるよりは遺していく方が、そう思ってしまうのも無理はない。
 ――おやすみを言うなら手を貸そう。
(「僕なら慈悲なく出来る」)
 ヨシュカの顔から、初めて笑顔が消えた。
 引き結んだ唇を解いて、おくる言葉を告げる。

「だから少しだけ、おやすみなさい」

 白猫の小さな体躯が、こてりと転がった。
 痛みはなく、けれど、確実に骸魂を蝕む超常によって。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

城島・侑士
【桃栗】


呑気に猫かわいいと言える状況じゃなさそうだ
除霊を生業としている知人が「動物と子供の霊は話が通じにくい」と言ってたが
果たして俺達の言葉があの猫に響くだろうか
深青
あの猫が声を奪うのをやめてくれなかったら
その時は…わかるな?

お前の声が主人に聞こえないのは外がうるさいからじゃないし
お前の声が小さいからでもない
主人の命が終わったからだ
命が終わる、というのは
お前の声を聞くことができなくなることだ
子供に言い聞かせるように言う
妖怪達は悪くない
勿論お前も
お前の主人も悪くない
…奪った声を返せるか?

現実を受け入れられない猫からの八つ当たりは
来ると思うのでオーラ防御で付き合う
深青
マスクはちゃんとつけとけよ!


壱季・深青
【桃栗】◎
猫………俺マスク…外せない
パパさん…大丈夫…俺わかって…わかっ…っぶしゅ!
(鼻水ずずっとすすりながら、離れて話を試みる)

ご主人は…外が静かになっても…起きない、よ
パパさんも…言ってる…命が終わったって

ご主人は…遠くに行っちゃったんだ
キミには…会えないところ…ずっとずっと…遠くへ
でも…遠くに行っても…きっと心配してる…はず
キミを残して…突然お別れしたから…さよなら…言えてないから
だから…キミから…さよならを…言ってあげると、いいよ
その声は…きっと…絶対に…届くから

もし…攻撃がきたら…第六感と野生の勘で…躱しつつ
相手はする…けど
できれば…最後まで…戦いたくはない、ね

(UCで防御力上げる)


●『シーユーアゲイン』
 猫又という妖怪は、少なくともこのカクリヨファンタズムに住まうものどもに限っては無害な存在であった。伝承でうたわれる人の血肉の代わりに、過去の思い出や追憶を喰らう程度の、気まぐれな猫に過ぎない。

 妖怪の身でありながらそれを隠し、人に愛された茶トラの猫又がいた。その来歴に、幽世にたどり着けずに死んでしまった同じ妖怪――『骸魂』と化した白猫『あられ』が引き寄せられて、呑み込んだことがこの事件の発端であった。

 ――会いたい。ご主人様に、会いたい。

 ただその一念で、世界から『声』という『声』を奪った。
 己の声のみが響く世界で、喉も枯れよと鳴いて呼んだ。
 けれども、返事はなく。待ち人はここにはいないよとの声ばかり。

 きれいな虹の向こうで待ってる、そう背中を押されたけれど。

『……いたい』
 からだが、いたい。
 白い毛並みはぼさぼさで、薄汚れて、傷だらけで、足元がふらふらする。
『今のままじゃダメって、どういうこと』
 ムクロダマ? ムクロノウミ? 還る? どこへ?

 ――ごしゅじんさま。ねえ、たすけて。

 にぃあ、と。か細い声が響いた。

「……呑気に『猫かわいい』と言える状況じゃなさそうだ」
 念願の猫が登場したは良いが、事態は一刻を争うと一目見て理解できた。
 城島・侑士と壱季・深青は並び立ち、共に白猫と対峙する。
「猫……」
 動物アレルギーの深青は、茶まろわんこの群れをどうにかいなしてひと安心していたところに引き続きの白猫を見て、愛らしい色柄のマスク越しに呟いた。
「俺、マスク……外せない……」
「ああ、深青。マスクはちゃんとつけとけよ」
 息苦しいかも知れないが、と侑士が深青の肩をひとつぽんと叩き、そして呟く。
「除霊を生業としている知人が『動物と子供の霊は話が通じにくい』と言ってたが」
 果たして、俺達の言葉があの猫に届くだろうかと。

 最善は尽くすが、万が一のその時は。

「……深青、あの猫が『声』を奪うのをやめてくれなかったら、その時は」
 わかるな? と侑士の藍の瞳が瞬くのを見て、深青がこくりと頷く。
「パパさん……大丈夫……俺、わかって……」
 そして、何故か突然のけぞって――。
「っぷしゅ!!」
 ずずー。盛大にくしゃみをひとつ、そして鼻水をすすりながら、間合いを取る深青。
 動物アレルギーは、いよいよ深刻だった。

『……どうしたの?』
 くしゃみをする深青の声に、白猫は聞き覚えがあった。
 ご主人様がいなくなってしまう直前に、しきりに聞こえた音。
 白猫にはそれが何なのか、何を意味するのかさえ理解できなかったけれど。
「大丈夫、それより……」
 白猫が一歩近付こうとするのに合わせて一歩後ずさりながら、深青は侑士を見た。
 視線を受けて侑士は頷き、割って入るように立ちはだかって口を開く。
「お前の『声』が主人に聞こえないのは、外がうるさいからじゃないし、お前の声が小さいからでもない」
『……』
 死という概念を、これまでにもいろいろな言葉で説明されてきた。
 それを、侑士は子供に言い聞かせるように、丁寧に告げた。
「主人の命が、終わったからだ」
 命あるものが、いつか必ず迎える時のこと。
「命が終わる、というのは。お前の『声』を聞くことができなくなることだ」
 おしまいの時が来たら、そこから先は何もできないこと。
 だから、と。深青が言葉を継いだ。
「ご主人は……外が静かになっても……起きない、よ」
 距離を保ってマスク越しに言葉を伝えるのは苦しいけれど、それでも深青は頑張った。
「パパさんも……言ってる……命が終わったって」
『いのち……』

 天に召された。神の御許へ。虹の向こうへ。骸の海へ還った。
 それが何を示すのか。
 もう、いない。ここには、いない。
 なにもできない。なにもしてあげられない。

「ご主人は……遠くに行っちゃったんだ」
 虹を横目に、深青が切々と言葉を紡ぐ。
「今のキミには……会えないところ……ずっとずっと……遠くへ」
 でも、どうか悲しまないでと青い目を細める。
「遠くに行っても……きっと心配してる……はず」
『ごしゅじん、さまが?』
「キミを残して……突然お別れしたから……さよなら、言えてないから」
 白猫が、一歩後ずさる。
 自分はこれまで、自分の気持ちばかりで動いてきたけれど。
 ご主人様がどんな気持ちだったか、考えたことがあっただろうかと。
 自分の身に何が起こったかさえ分からずに、ただ必死だっただけとはいえ。

 不意に、深青の分もとばかりに侑士の手が白猫の頭を撫でた。
「妖怪達は悪くない。勿論お前も、お前の主人も悪くない」
 誰も、何も悪くないのだ。だから、自分を責める必要なんてない。
 成すべきことはただひとつ。
「……奪った声を、返せるか?」
『……』
 ちりん、と。白猫の鈴が鳴った。
「キミから……さよならを……言ってあげると、いいよ」
 その声は、きっと、絶対に届くから。
『……っ』
 ぶるんと身体を震わせた白猫が、にぃーぁと長く鳴いた。

「あ、ああ……声が! 声が出るぞ!」
「本当だ、しゃべれる!!」

 一部始終を遠巻きに見守っていた妖怪たちから、文字通り歓喜の声が上がる。
 たちまち喧騒を取り戻した幽世で、本当に自分の声は届くのか。

「なあ、あの虹の橋まで一緒に行こうぜ!」
『え……っ』
 妖怪から突然声を掛けられ、困惑の声を上げる白猫。周囲の妖怪たちは次々とそれに同意し、虹の橋へと白猫を導こうと列をなす。
「――偉いぞ、きちんと『声』を返せたな」
「行っておいで……ご主人様に、会えたら……いいね」
 侑士と深青も、穏やかな笑顔で白猫を送り出す。

 おずおずと歩き出す白猫を、たくさんの妖怪たちが先導して歩く。
 その様、まさに『百鬼夜行』。
 いずれたどり着く虹の橋のたもとには、とある猟兵が見せた天上世界。
 草木萌ゆる、丘や谷でたくさんの仲間たちが戯れるその世界で。
 白猫はそこで今度こそ見つけるのだ――最愛のご主人様を。

『ごしゅじんさま、ごしゅじんさま!!』
「あられ、済まなかったねえ……黙って置いていってしまって」

 虹がすうっと消えた後には、一匹の茶トラの猫又が。
 何がおこったのかしらという顔で、ちょこんと座っておりました。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵


第3章 日常 『かーくれんぼ、しーましょう?』

POW辿り着くのに体力や腕力がいる場所に隠れる
SPD時々移動して場所を変えながら隠れる
WIZ見つからない場所を考えてから隠れる
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●声を張り上げ、さがしましょ
 かくして、世界から『声』が失われるという一大事は、猟兵たちの活躍によって無事解決した。
 元々自分たちの姿が見える猟兵たちに非常に好意的な幽世の住人たる妖怪たちは、大喜びで救世主たちの凱旋を讃えたのだった。

「ねえねえ、かくれんぼをしようよ!」
「ああ、声が出せるって素敵! そうよ、私たちが鬼ね」

 せっかくだから少し遊ぼうと、妖怪たちが猟兵たちの周りを囲む。
 どの妖怪と遊ぶかは自由だし、仲間うちでかくれんぼを楽しんでもいい。
 十数えて、もういいかいと確認し、もういいよと返って来たら探し始める。
 見つけたら、みいつけたと宣言してめでたしめでたし。

 舞台は、ノスタルジックな昭和初期の町並み。
 あなたは誰と、どんなかくれんぼを繰り広げますか?

●補足など
 妖怪に探してもらう場合は、好きな妖怪を一体指定して下さい。
 お任せの場合はかやぬまの方でいい感じの妖怪を連れて参ります。
 ペアやチーム内でかくれんぼをする場合は、誰が鬼かの指定をお願いします。
 ※ミネルバを指定して頂いてもOKです、ドローンでガチめに探しに行きます。

 ユーベルコードでガチに隠れに行くのは禁止とします、技能はフル活用OKです。
 ただ、最終的には鬼が見つけられる程度にお願いします。遊びだからね!

 プレイング受付期間はMSページとツイッターをご確認下さい。
 なお、今回からMSページがほぼ全部更新されておりますので、どなた様も一読のほどをよろしくお願い致します。
薙殻字・壽綯
POW

……いいなあ。(この結末は、すごく、喜ばしい。だからいいなと口に出せる
同時に、僕は、白猫が羨ましい
だから、だろうか。良かったとは、言えないのは)

………、…っ良かっ、た。……うん、良かったのです
これで、これは、声に出さないと、あられさんに伝わりません、から

……え、あ。はい。かくれんぼでしたね
えっと……隠れるんですね? 僕、いえ私が。か、隠れます。今すぐ…!

ど、どこにしよう。木でも、登っておこうかな
……なんだか、子供に戻ったみたいだ
かくれんぼは、こうしてドキドキするものだったなあ

…………ああ、声が出る。聞こえもする。この世界には、音がある
賑やかなのも、好きだな。そこには、静穏があるのだから


●壽綯さんvs提灯お化け
 猟兵たちの手を引いては、やれ自分と遊ぼう、いや自分だと妖怪たちが次々とやって来ることの何と賑やかなことか。
 そんな喧騒の中で、薙殻字・壽綯は近付いてきた一つ目の提灯お化けにそっと触れると、小さな声で呟いた。

「……いいなあ」

 わんこは満たされて、あられは主人と会えて、幽世は元通り。
 この結末は壽綯にとっても素直に、すごく喜ばしいと思えたから。
 だから、『いいな』と口に出せた、けれど。

(「だから、だろうか」)

 同時に――『僕』は、あの白猫が羨ましい。
 本来ならば、別の言葉があるだろうに、すんなりとそう言えないのは。

「よかったねえ、みんなのおかげで一件落着だよ」
 上下にぱっくりと割れた部分が口のように動き、自然と両手で掲げ持つような形になっていた提灯お化けが、長い舌を出しながら壽綯にそう言った。
「……」

 良かった。……ああ、そうか。

「……、良かっ、た。……うん、良かったのです」

 これで、これは。声に出さないと、かの白猫に伝わらないから。
 訥々と、しかしはっきりとそう告げた壽綯の手から、提灯お化けがすいと逃れた。
「さあ、兄さん、かくれんぼの時間だよ!」
「……え、あ。はい、かくれんぼでしたね」
 自在に宙を舞う提灯お化けは、舌をべろんと出して楽しい時間の幕開けを告げる。
「おいらが十数えるからさ、それまでに隠れてくれよな」
「えっと……隠れるんですね? 僕……いえ『私』が」
 はい、今すぐにと壽綯が踵を返すと、いーち、にーいと数え始める声が響く。
 律儀にも町並みのブロック塀に向けてぴったりとくっついて視界を塞いだ提灯お化けの数え声が終わらぬうちに、隠れられる場所を見つけなければ。

 壽綯は辺りを見回す。ここは住宅街なのだろうか、路地沿いに塀が続き、そこかしこに庭に生えていると思われる樹木が顔を覗かせていた。
(「ど、どこにしよう。木でも、登っておこうかな」)

 ――ごーお、ろーく。

 十数える間とは、存外少ないもので。最早迷っている場合ではないと意を決して、壽綯は目についたそこそこ立派な木の上に登るべく、とある住居の敷地にお邪魔すると、木の幹におもむろに足を掛けた。
(「……なんだか、子供に戻ったみたいだ」)
 ぐんぐん視界が高くなっていくのが何だか楽しい。あの提灯お化けは大きな一つ目を持つし空も飛べるから、見つかってしまうのも時間の問題かも知れないけれど。
(「かくれんぼは、こうしてドキドキするものだったなあ」)
 童心に返る、とはこんな心地のことを言うのだろうか。

「もーいーかい!」
 提灯お化けが声を張り上げれば、太い木の枝におさまった壽綯も返す。
「もー、いーよ……!」

 ……。
 ……ああ、声が出る。聞こえもする。この世界には、音がある。

(「賑やかなのも、好きだな」)
 鬼が己を見つけるまでのしばしの間、息を潜めて思うのだ。
(「そこにこそ、静穏があるのだから」)
大成功 🔵🔵🔵

木常野・都月

※妖怪はお任せします。


かくれんぼ。
人を探す事は任務であったけど、自分が隠れるのは、滅多にない。
そして、遊ぶからには、楽しくやりたい!

まずは他の妖怪と同じ程度の嗅覚や聴覚にしてもらいたい。
風の精霊様、調整、お願いします!

妖怪相手なら、変身は有りでもいいかな。

よし!初めてのかくれんぼ、楽しむぞ!

いかに自分が耳と鼻頼りに生きてるか、良く分かる……。
思わず鼻と耳が勝手に動くんだ…初めて知った。

まずは隠れる場所を探したい。

隠れる前に見つかりそうなら、狐に変身して、通りがかりの狐になりたい。

あとは、どこか、茂みの木陰か木の上に隠れたい。

あ、なんか凄いドキドキする。
いつ見つかるか分からないってドキドキだ!


泉宮・瑠碧
大丈夫なら、茶まろのわんこ
…犬の妖怪とかくれんぼを

鼻が利くでしょうから、出来れば我慢してねと
つい、使っても構いません
後は純粋にかくれんぼ

瓶のケースが積まれた後ろに隠れて
もういいよ

隙間から覗いて、黙ってますが…
通り過ぎる姿が可愛くて、つい、小さく笑い声

見付かったら、凄いね、偉いね、とわしょわしょ撫でて褒めます
…ねえ、わんこさん
あの白猫が、ご主人様と幸せに過ごして居ると、良いですね
怖い目に遭っても…妖怪の皆も、優しくて…
君も…皆と一緒に、寂しくない様に、過ごしてくださいね

あと、あの、わんこさん……
駄菓子屋って、知っていますか?
知っていれば、お帰りの際、ご案内して貰いたいの、です
…お土産、買いたくて


●瑠碧さん&都月くんvs茶まろわんこ
 ――かくれんぼ。
(「人を探す事は任務であったけど、自分が隠れるのは、滅多にない」)
 木常野・都月は、率直に言ってワクワクしていた。
(「そして、遊ぶからには、楽しくやりたい!」)
 知らず豊かな尻尾を揺らし、さてどの妖怪と遊ぼうかとぐるり見渡した時だった。
 
「犬の妖怪……茶まろわんこさんは、いらっしゃいますか?」
「わん、わんっ!」
 泉宮・瑠碧の呼び掛けに、少し前に聞いたばかりの元気良い鳴き声が返る。
 そこには間違いなく、骸魂の支配から逃れて無害な妖怪に戻ったわんこたちが。
「お前たち……」
 無邪気にじゃれついてくるわんこたちに囲まれて、都月が声を上げる。
「鼻が利くでしょうから、出来れば我慢してね」
 茶まろわんこを指名した瑠碧も笑みをほころばせて、お手柔らかにとひと撫で。
「そうだ、わんこは鼻が利く……!」
 それを聞いてハッとなった都月が、風の精霊様を手招きで呼んでお願いする。
 犬の五感と狐の五感ならば、その必要はなかったかも知れないけれど。どうせなら、フェアに勝負がしたいから。
「風の精霊様、調整、お願いします!」
 願いは、鬼となる妖怪たちと同じ程度の五感にしてもらうこと。
 お安いご用と風がひと吹きすれば、都月だけでなく瑠碧にまでその効果が及んで、精霊様の粋な計らいに二人顔を見合わせた。
「ああ、これなら――つい、使っても構いません」
「わんっ!!」
 ころころとしたボディながらも俊敏な動きで、わんこたちが瑠碧と都月を囲んで走り、そうしてみっしり集まってわん、わんと吠え出した。
「あれは……数を数えているのでしょうか」
「きっとそうだ、もう」

 ――勝負は、始まっている!

「よし、初めてのかくれんぼ、楽しむぞ!」
「ええ、お互い頑張りましょうね」
 武運を、と言うようにひとつ頷き合って、二人は別々の方向へと走り出した。

(「いかに自分が耳と鼻頼りに生きてるか、良く分かる」)
 意図せず勝手に動く鼻と耳に、都月は初めて思い知る。
 生き死にがかかっている訳ではないので、幾分か気が楽だ。いや、それどころか心が弾んで仕方がない。さあ、どこに隠れてみせようか?
(「……妖怪相手なら、変身は有りでもいいかな」)
 黒い毛並みが美しいギンギツネそのものの姿に『化けた』か『戻った』か、妖狐たる都月が化身する。
「わん……わぅ」
 こちらを見ないように身を寄せ合って吠えていたわんこのうち一体が、何やら気配を察知したのか、くるんと巻いた尾を振って振り返ろうとした。
 それにすぐ気付いた都月は、敢えて堂々と素知らぬ顔で横切っていく。
(「俺は通りがかりの狐、通りがかりの狐……」)
 幽世には化け狐などそれこそいくらでもいるだろうと踏んで、敢えて姿を晒す。
「……わん、わん」
 そろそろ吠え声が十を数えようとしていた。都月はえいっと手近な茂みに飛び込む。
「わおーーーーーん?」
 きっと『もういいかい』と言っているのだろう、都月は準備が整ったと声を返す。
「ケーーーーン!」
 狐はコンと鳴くと人から聞いた時、内心『そうだったのか』と驚いたことを思い出す。
 自分の鳴き声がどんな風に聞こえるかさえも、考えたことがなかったから。
 ともあれ、ひと鳴きしたあとはそっと身を潜めるばかり。
(「……あ、なんか凄いドキドキする」)
 かさりと音一つ立てないように身を低くしながら、しかし胸の昂りは隠せない。
(「いつ見つかるか分からないって、ドキドキだ!」)
 わんこが数匹、己が隠れる茂みの前を通り過ぎて行くのを見送りながら、興奮と緊張とで尾を振ってしまいそうになるのを都月は懸命に堪えた。

「もう、いいよ」
 空っぽのビール瓶が収められたケースが山と積まれた一角を見つけた瑠碧は、その陰にそっと身を隠して返事をした。
「わんっ」
「わんわんっ」
 わんこたちが一斉に駆け回り、予想通り鼻をひくつかせながら――しかしどこか明後日の方向へと向かっていくのを、瑠碧は物陰の隙間から見守っていた。
(「……可愛い」)
 口には出さぬよう、けれどくすりと漏れる笑い声だけは許して欲しいと。
 ケースの山がわんこたちの初期位置から程ない場所にあったためか、それがかえって盲点になったのだろうか。
 わんこたちはなかなか瑠碧を見つけられずに右往左往、見守る瑠碧の方がだんだん不安になってきた頃合いで――。
「わん! わんわん!」
「ああっ、見つかった」
 やや後方の茂みから、人間の姿をした都月がわんこたちに囲まれてまろび出る。
 あらあら、と口元に手を添えていた瑠碧の所にも、程なくしてわんこの包囲網が完成した。
「わんわん、わん!」
「わぅん!!」
 ケースの山を覗き込むように愛らしいわんこたちが顔を出せば、見つかってしまいましたねと観念したように両手をそっと上げる瑠碧。
「凄いね、偉いね。よく分かったね」
 その周りに集まってくるわんこたちを、わしょわしょと撫でて褒めてやりながら、瑠碧はそっと話し掛ける。
「……ねえ、わんこさん」
 まるまるとした茶まろわんこの身体は、とても撫で心地が良い。
「あの白猫が、ご主人様と幸せに過ごして居ると、良いですね」
「……くぅん」
 自分たちが何かおかしな夢を見ていたような時に、声を掛けてきた白い猫のことは確かに覚えていて、わんこたちは少しさみしげに鳴いた。
「怖い目に遭っても……妖怪の皆も、優しくて……」
 けれど、そんな白猫を主の元へと送る道を共にしたのも覚えている。骸魂と成り果てたものが、幸せに包まれて、在るべき場所へと還ったのを見届けたのだから。
「君も……皆と一緒に、寂しくない様に、過ごしてくださいね」
 わしょっ、と。やみつきになりそうな毛並みに手を埋めて、瑠碧が心からそう願う。
「わん!」
 その願いに応えるように、茶まろわんこは元気良くひと声、鳴いた。

 茶まろわんこたちに囲まれて、最初に集まった場所へと戻ってきた都月と瑠碧。
「あと、あの、わんこさん……『駄菓子屋』って、知っていますか?」
「だがし、や?」
「わう! わんっ」
 それはなあにという顔で問う都月と、知っているよと言わんばかりに尻尾を振るわんこたち。
 早速着いて来てという風に歩き出すわんこたちを追いながら、瑠碧が都月に説明する。
「駄菓子屋というのはですね……お手頃なお値段で、色々な種類のお菓子が買える、素敵な所です」
「……お菓子!」
 都月の尾がぴんと立つ。それは確かに、素敵な所に違いない。
 わんこたちに導かれて、いざ行かん、駄菓子屋へ。
 お土産を買って、還りましょう。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ジャガーノート・ジャック
◎神楽耶/f15297と
鬼役:一章のわんこ達

(ザザッ)
む?何をしているか、か?見ての通り光学迷彩(※技能:目立たない×迷彩)を……

そうか。(迷彩スイッチを切る)――この姿で土管に収まるのもなかなかシュールではないか?

然し何処か懐かしい景色だ。見覚えなどある筈もないのに。

過去は懐かしむモノか。
悪くない。「忘れられた」モノがこうして穏やかに過ごしている事含め。(自分が忘れた物を思うと、ちくりと胸が痛むが)

――そうだな。
存分戯れると良い。
(犬に見つかり熱烈接待を受ける神楽耶をバイザー越しに生暖かい目でみつつ、自分も犬をわしゃわしゃし)
慣れてる?そうだな。大型の犬猫は昔も今もよく遊んだ。(ザザッ)


穂結・神楽耶
ジャック様/f02381と

ええと、ジャック様? いったい何を…
光学迷彩?
かくれんぼに使うにはオーバーキルですよ…
ちゃんと見つかるかもしれない隠れ方をしてください。
土管とか。
フェンスとか。

む?
まあこの世界、UDCアースで忘れ去られたものが来る世界ですものね。
エンパイア出身のわたくしには馴染みないものが多いですけれど…
「過去」は懐かしむものでしょう?
概念的にそういうもので出来てるんじゃないでしょうか。
勝手な妄想ですけどね。

──はい難しい話終わり!
こんな機会じゃないと動物と戯れられませんからね!
わんこ様方、よろしくお願いします!
もーいいーよーっ!

(なお、着物が目立つ色の為あっさり見つかる模様。)


●ジャガーノートくん&神楽耶さんvs茶まろわんこ
 駄菓子屋へと猟兵を導く一団とはまた別に、ころころと群れを成す茶まろわんこ。
 それを鬼役にと指名したのはジャガーノート・ジャックと穂結・神楽耶だった。
「わんわん、わん! わんっ」
 遊んでくれるとあらば喜んでと、駆け回って元気良く吠えるわんこたちを二人並んで微笑ましく見ていたら、神楽耶の隣ですぅとジャガーノートの気配が――。

「……ええと、ジャック様?」
「(ザザッ)む」
 神楽耶が声を掛ける先には――『誰も居ない』。だが、声とノイズは返ってくる。
「いったい、何を……」
「何をしているか、か? 見ての通り光学迷彩を……」
 幽世の景色に文字通り完璧に溶け込みその姿を消したジャガーノートに向けて、神楽耶は肩を竦めて軽く首を振り、たしなめるように告げた。
「かくれんぼに使うにはオーバーキルですよ……ちゃんと見つかるかもしれない隠れ方をしてください」
 ガチで隠れに行くと、見つけられない鬼が泣いてしまうからと。
 もうちょっと、こう、手心というものをですねと神楽耶がろくろを回す手つきをする。
「そうか」
 そういうものだったかとジャガーノートが迷彩のスイッチを切れば、しなやかな黒豹の姿が現れる。
「具体的には?(ザザッ)」
「土管とか、フェンスとか」
「――この姿で土管に収まるのも、なかなかシュールではないか?」
 神楽耶はともかくとして、機械鎧に身を包んだ己が土管の中で息を潜めるという有様は、わんこたちに少なからず衝撃を与えてしまわぬだろうか。
 ジャガーノートなりの配慮もあったのだが、ニコニコ笑むばかりの神楽耶からは最早圧のようなものさえ感じられて、大人しく言うことを聞こうと思うのであった。
 そんな二人の周りを、あそびましょとくるくる回るわんこたち。
 さあ、さあ、かくれてください。
 みごと、みつけてみせますから。
 愛らしいわんこたちが十を数えるために駆けていくのを見送って、黒豹と太刀は身を隠す場所を求めて踵を返した。
「互いの声が届く範囲で隠れるのも、ルールですからね」
「……かくれんぼとは、色々と難しいのだな」
 道中、神楽耶から更なるお作法を説かれて、ジャガーノートは眉間に皺を寄せられたならばきっとそうしていただろうという顔をした。

 それにしても、と。都合の良い場所に公園があったものだと二人は思う。
 そこかしこに足場がついた半円状のドームは、身を隠すのにちょうど良い。
 仲良く土管に身体をねじ込むのも悪くはなかったけれど、せっかくだからと出入り用の穴から先んじてドームの中に入ったジャガーノートが、後から覗き込む神楽耶に手を差し伸べてエスコートをした。
 大小さまざまな大きさの穴が開いているから、上手いこと身を潜めなければ。
 窓のように開いた穴から見える幽世の景色をデジタル処理しながら、ジャガーノートが呟いた。
「然し何処か懐かしい景色だ。見覚えなどある筈もないのに」
「……む?」
 互いに違う方向を見ていた。神楽耶はまた別の景色を見ながら、言葉だけを返す。
「まあこの世界、UDCアースで忘れ去られたものが来る世界ですものね」
 エンパイア出身のわたくしには馴染みないものが多いですけれど、と言い添えて。
 それでも、ひとつだけ確かに言えるのは。

「『過去』は、懐かしむものでしょう?」
「……」

 過去は常に現在、そして未来に追いやられ、骸の海を行き場とするが。
 意思あるものは常に抱くのだ――『郷愁』を。
「過去は、懐かしむモノ――か」
 バイザーの明滅を限界まで絞り、鬼に悟られないように。
 ジャガーノートもまた振り返らずに、器用に身を隠しながら言った。
「悪くない。『忘れられた』モノが、こうして穏やかに過ごしている事含め」
 己が忘れたモノを思えば、ちくりと痛む胸に黒豹がこつんと額をドームの内側に軽く当てるも、太刀の乙女はそれに気付かぬふりで言葉を紡ぐ。
「概念的にはそういうもので出来てるんじゃないでしょうか――勝手な妄想ですけどね」
 ずるる、と。ドームに背を委ねてややずり落ちながら、神楽耶もまた身を隠した。
「――はい難しい話終わり! こんな機会じゃないと動物と戯れられませんからね!」
 音は立てずに、軽く掌を打ち合わせる仕草だけで切り替えるようにきぱっと告げる神楽耶の目は真剣そのもの。
 本体が纏う気配故か、常は動物となかなか触れあえない神楽耶にとって、合法的にわんこと遊べるというこの好機を逃すわけには行かない。
(「わんこ様方、よろしくお願いします!」)
 さあ、さあ、おいでなさい。
 見つけられるものなら、見つけてごらんなさい。

「もー、いいーよーっ!!」
「わんわんわん! わんわんっ!」

 なお、神楽耶の見事な柄の赤い着物が幽世の景色にはあまりにも鮮烈で。
 ドームの穴からちらと見えたそれだけで、あっという間に見つかったそうな。

「あ、あは、あははは! 見つかっちゃいました、ジャック様!」
 悔しいどころか待ってましたと言わんばかりに、茶まろわんこたちにもみくちゃにされる神楽耶をバイザー越しに見遣るジャガーノートの視線は、生温かかった。
「――そうだな、存分戯れると良い」
「きゃあ、くすぐったい……あはは、容赦ないですね」
 入れ替わり立ち替わり、たくさんのまるっこい茶まろわんこたちがもふもふと神楽耶にすり寄っては膝に乗ろうとしたりするものだから、撫で返すのも難しい。
 一方のジャガーノートは、器用にわんこたちを一匹一匹丁寧に撫でては満足させて順にいなしていく。おお、これは相当わんこの扱いに手慣れていらっしゃいますね?
「慣れてる? そうだな。大型の犬猫は、昔も今もよく遊んだ」
 ザザッ。ノイズを走らせながら、ジャガーノートはわんこを撫で続けた。

 懐かしいと思う心こそが、この世界を、住人たちを生かしている。
 なればこそ、ジャガーノートも神楽耶も、それをどこか心地良く思うのだ。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

氏家・禄郎

ミネルバを指定で

「おいおい、ネリー……なんでも本気になるのは……ほら、ね?」
そんなことをつぶやきつつ、私は郵便ポストの中に入って走って逃げるよ
ほら、ドローンなら、金属の向こう側の熱源までは探知できないはずだし……うん、そうだよね?

っと、来た来た
さあ、街角で直立不動だ
普通にしていれば、私は郵便ポスト
この街並みになじむ、ノスタルジックな円柱形のやつだ
大丈夫、大丈夫
気づかれないものさ、ほら(ぱかっ)

……
…………
………………

ヤア、ネリーサン、ボク、ロクロウジャアリマセンヨ

だめ?
ですよねー?


じゃあ、捕まったから戻ろうかネリー?
途中、話す時間くらいはあるだろう?


パラス・アテナ

鬼はミネルバさん希望

かくれんぼね
童心にでも帰ったつもりで隠れようか

隠れながらかくれんぼに帰る童心なんざ無いことを思う
うんと幼い時分は厳格な両親に躾られてきたし
アルダワから転がり落ちた後は遊ぶ間もなく戦ってきた
何の因果か戻れた時には
家も家族も災魔にやられて跡形もなくなってた
そんな気はしてたけどね

建物の屋上に隠れていたら見つかって
年若い猟兵を眩しそうに見上げる

ミネルバ
アンタは今、幸せかい?

アタシの知り合いにミネルヴァって女がいてね
戦って戦って、全部を失って死んじまったよ
同じ名を持つアンタが幸せになれたなら
せめてもの手向けになるかと思ってね

つまらないことを聞いて済まないね
ババアの戯言だ。忘れとくれ


●禄郎さん&パラスさんvsミネルバ
「かくれんぼ、ね。童心にでも返ったつもりで隠れようか」
 不敵に笑むパラス・アテナが鬼役に指名したのは、これまで猟兵たちの転移に専念してきたグリモア猟兵のミネルバ・レストーだった。
「パラスはお疲れさま、力を貸してくれてありがとう」
 オブリビオン――骸魂の脅威が去った今ならば、ミネルバも息抜きが出来る。
 ぺこりとパラスへと一礼してから、しかしすいと掲げるのは花の形をしたドローン。
「でも、わたしを鬼に指名したからには手加減なしよ?」
「おいおい、ネリー……なんでも本気になるのは……」
 ほら、ね? とたしなめるように声を掛ける氏家・禄郎(探偵屋・f22632)に、じろりと視線だけを返してミネルバは切り返す。
「あら禄郎、重役出勤だなんていいご身分だこと」
 本音を言えば、己の予知に誰がいつ助力してくれてもそれだけで嬉しいけれど。相手が相手だけに、つい憎まれ口を叩いてしまうのだ。
「手厳しいね、ようやく都合がついたから駆けつけたのに」
 ハンチング帽に手をやって、禄郎が苦笑い。そんなやり取りを見守っていたパラスが、肩を竦めながら助け船を出すように口を開く。
「最先端の技術まで持ち出して、本気で勝負を挑まれるとあっては腕が鳴るね」
「……ありがと、それじゃ早速始めましょ」
 十数える間はとドローンを一度引っ込め、踵を返すとミネルバは目を閉じて早速十を数え始める。
 禄郎はパラスに会釈で一礼すると、いそいそと何かの準備を始めた。
 それを訝しんでいる猶予はないと、パラスもまた身を隠す場所を探した。

 ――己に、かくれんぼに返る童心があるのか、否か。
 できるだけ高い所をと探した末に、パラスが目を付けたのは火の見櫓だった。
 まるで敵から身を隠すような手際の良さで、躊躇なく梯子を昇っていく。
(「うんと幼い時分は厳格な両親に躾られてきたし」)
 だから、近所の友達と遊んだとかそういう記憶がそもそもない。
 ただ、『一般的な子供とはそういうものだ』という知識だけがあった。
(「アルダワから転がり落ちた後は、遊ぶ間もなく戦ってきた」)
 実際にパラスが歩んできた人生のほとんどは、戦に明け暮れる日々で。
 こうして生き残ったことは果たして僥倖なのか、それとも。
(「何の因果か戻れた時には、家も家族も災魔にやられて跡形もなくなってた」)
 そんな気はしていたし、実際現実と向き合った時も驚くほど冷静な自分がいた。
 櫓のてっぺんに据え付けられた半鐘を眺めながら、パラスが腰を下ろす。
「……もう、いいよ。そう、言うんだっけか?」
 随分と近くなった黄昏時の空に向けて、死神と呼ばれた女が呟いた。

 世界によってはひどく懐かしい、いっそ存在さえ知らぬ若人もいるやも知れぬ『Pillar Box』。祖国を二つ持つ禄郎にとって、英吉利では今も親しまれている丸形ポストはこの幽世に良く馴染む。
 そう、だからこそ『その辺にあったもの』で己がすっぽり入れるくらいの丸形ポストを用意してしまうことは、造作もなかったのだ。
 ポストが足を生やしてそそくさと立ち去る様は、中々にシュールだったけれど。
(「ほら、ドローンなら、金属の向こう側の熱源までは察知できないはずだし」)
 ……うん、そうだよね? そうであって欲しい、そうだと信じて。
「もーう、いーいかーい?」
 鬼役の少女の声がする。距離は十分、声が届く限りはセーフだ。
「もう、いいよ」
 投函口から声を返す。きっと届いただろうから、いよいよ捜索の始まりだ。
 ミネルバは事前に『自分はドローンを使って探す』と宣言していた。
 手の内を律儀に明かすとはなるほど君らしい、と思いながら禄郎はスッと何食わぬ顔をして街角で直立不動になる。
(「っと、来た来た」)
 ぶぅん、と駆動音を立てて飛来するドローンに察知されぬよう、じっとその場に立つ。
(「普通にしていれば、私は郵便ポスト」)
 なにいってだこいつ、と言ってはいけない。これは真剣なかくれんぼ勝負なのだ。
 それに確かに、赤い丸形ポストは幽世の町並みに良く馴染むノスタルジックな存在。
(「大丈夫、大丈夫。気づかれないものさ――ほら」)
 しばし周囲を確認していたらしきドローンが飛び去ったのを確認して、ひと息つくためにポストのてっぺんをぱかっと開いた、その時だった。
『……』
「……」
 眼前に、飛び去ったはずのドローンが。いや、もう一機いたのか。
『誰が、飛ばすのは一機だけって言ったかしら』
「……ヤア、ネリーサン」
 電子音声が響く。搭載カメラ越しに射抜かれているような心地で、思わず片言になる。
『あなた、今すごい格好になってるわよ。スクショ撮っておきましょうか?』
「……ボク、ロクロウジャアリマセンヨ」
 目の辺りまでを残して顔を引っ込めつつ、苦し紛れにそう言うけれど。
『ダメ、見つけたわよ禄郎。今タッチしに行くから、それまでに元に戻っておいてね』
「だめ? ですよねー?」
 たははと苦笑いで、禄郎は思う。
 ――これ、どうやって脱ごう?

 花の形のドローンが飛来する。しばし町並みを一望するように飛んでいたが、それはじきにパラスが身を潜めた火の見櫓にまで高度を上げるだろう。
『パラス、みいつけた』
「おや、早いね。でも、実際に触れられるまではセーフなんだろう?」
『ご名答、今向かってるわ』
 かつん、と。櫓に昇ろうとする気配を感じる。
 けれどパラスは中空に浮くドローンを、眩しそうに見上げた。
 かつん、かつん。途中でやや立ち止まる様子が見受けられるのは、高さに怯んだか。
 それでもようやく桜色の髪の少女が顔を出したのを確認して、パラスは腰を上げずにおもむろに問うた。
「ミネルバ。アンタは今、幸せかい?」
「……え」
 唐突な言葉に言葉を失うのも無理はないと、パラスは空を見たまま呟く。
「アタシの『知り合い』に、ミネルヴァって女がいてね」
 ――戦って戦って、全部を失って死んじまったよ。
 ――二者択一を迫られた結果、最善を尽くしたはずなのに報われなかった女の話。
「同じ名を持つアンタが幸せになれたなら、せめてもの手向けになるかと思ってね」
「……」
 ミネルバは、返事の代わりに櫓に立ち、そっとパラスの肩に手を置いた。
「つまらないことを聞いて済まないね、ババアの戯言だ。忘れとくれ」
「ううん……ミネルヴァさんに、伝えて頂戴」
 ゆるりとかぶりを振って、ミネルバは戦女神に向けて笑んだ。
「しあわせよ、わたし。戦うことしか能がないと思ってたけど、今はとってもしあわせ」
「……そうかい」
 なら、早くお行き。
 そう、櫓をおっかなびっくり降りていく娘を見送った。

 ――じゃあ、捕まったから戻ろうか、ネリー?
 ――ごめんなさい、まだご指名が残ってるの。
 くすくす笑いながら、言葉を交わす。
「なら、途中に話す時間くらいはあるだろう?」
「それくらいなら、平気よ」
 いけない、忘れてたと。ミネルバは手を打って、禄郎の手にそっと触れた。
「……みいつけ、た」
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

荒谷・ひかる
かくれんぼ、ですか。
うふふ、こう見えて小さい頃は最後まで見つからない事に定評があったわたしです。
折角ですので、捜索ガチ勢のミネルバさんに勝負を挑みますっ!

隠れる場所は雑草がたくさん生えた空き地のベンチの下
雑草が目隠しになりますし、足元って気を使わないと案外見逃しがちですから
ということで……もういいよーっ!


なお、ひかるの知らないうちに精霊さん達が勝手に動いて色々と欺瞞工作を働いている模様
例:隠れ場所から遠くへ誘導するように風で草木がカサカサ揺れる、足跡を消すように少量の水がさりげなく流れる等
実は幼少時見つかりにくかったのもこのせいというオチ
ただし精々子供騙しレベルなのであっさり見つかるでしょう


御桜・八重


ネリーちゃん、勝負だっ!

ふふふ、ご近所一と謳われたわたしのカクレンボ術、
果たして見つけられるかなー?

木の葉を隠すなら森の中。
人を隠すなら人の中。
「妖怪さんだけどね」

ドローンの影に注意しつつ、
小柄な体躯を活かして妖怪さんの陰から陰へ。
こうして隠れポイントを絞らせないのが秘訣なのだ!(ドヤァ)

そして…

◆勝ち
こっそりネリーちゃんの後ろに忍び寄り、
「隙アリっ」
わきの下をコチョコチョ!
「あはは、モニターばかり見てるからだよー♪」

◆負け
く、フェイントをかけてくるとは…負けたー!
…ネリーちゃん、その笑いはナニ? 記録映像?
(年頃の娘がこれはどうかと目を覆わんばかりの
あられもない隠れ方の数々)

判定はお任せ♪


●ひかるさん&八重さんvsミネルバ
 精霊に愛されし娘、荒谷・ひかる。
 幼かりし頃、かくれんぼに興じていた頃を思い出せば、最後まで見つからないことに定評があった己の姿がよみがえる。
 桜の力を振るう娘、御桜・八重。
 桜舞う世界でご近所一と謳われたカクレンボ術には自信があった。
 だから、挑んでみたくなったのだ。捜索ガチ勢を名乗る娘に。

「ミネルバさんに、勝負を挑みますっ!」
「ネリーちゃん、勝負だっ!!」

(「やっば、ガチ勢来ちゃった」)
 呼び止められた場所は広い空き地、同じようにかくれんぼに興じる妖怪たちの団体が数組。これは――手強いぞとミネルバの本能が察知した。
 ふんすと胸を張る二人の少女に、結った髪を揺らして負けじと返す。
「いいわよ、受けて立つわ。ルールは……言うまでもないわよね?」
「もちろん、正々堂々とかくれんぼです」
「ドローンでも何でも、かかって来いだよ!」
 年の程が近い少女三人が、キャッキャウフフとしているように見えるだろうか。
 否――これから始まるのは、互いの持てる技量を出し尽くしての真剣勝負!
「ドローンを出すのは、二人の『もういいよ』を聞いてからね。それまでに、上手く隠れて頂戴。まあ、すぐ見つけてあげるけど」
 勝負事となるとつい熱くなってしまうのを隠しきれないミネルバに、望むところとばかりにひかると八重が同時に頷いた。
 それを見て、鬼役のミネルバが目を閉じ顔を覆って十を数え出す。
 隠れる二人は、互いを見遣って一度頷くと、散った。

 ひかるが目を付けた場所は、空き地のベンチの下だった。
 雑草が生い茂り、いい目隠しになりそうだ。
(「足元って、気を遣わないと案外見逃しがちですから」)
 もそもそとベンチの下に潜り込めば、草の匂いがとても近い。
 何だか懐かしい心地になるようで、ひかるは安心して身を隠すことが出来た。
 これならそう簡単には見つかるまい、今までだってそうだったのだから。
 ――そんなひかるが知らぬ間に、精霊さんたちが動き出していた。

(「木の葉を隠すなら森の中、人を隠すのは人の中」)
 八重は自分たちと同じくかくれんぼに興ずる妖怪たちに紛れるように、まずは一つ目小僧の陰に隠れた。
(「――今回隠れるのは、妖怪さんの中だけどね」)
 一つ目小僧もお仲間の意図を察したのか、黙って匿ってくれた。
 だから準備は万端と、声を上げたのはひかるとほぼ同時。

「「もーいーよーっ!!」」

 顔を上げてくるりと正面を向いて、ミネルバが鋭く周囲を見回す。
 ひかるも、八重も、全く気配がない。
(「さすが、あれだけ自信満々だっただけあるわね」)
 ――かさり、かさかさ。
(「……物音」)
 風の精霊さんが、ひかるが隠れているベンチとは異なる方向で草木を揺らして誘いをかけたのだ。
 だが、ミネルバはそちらを一瞥しただけですぐに視線を戻す。
(「それに、水」)
 まるで何かを隠すように、ちょろちょろと流れた水の跡も精霊さんの心遣い。
(「ねえ、かえって不自然だとは思わないのかしら?」)
 思わない、精霊さんは良かれと思って施した偽装工作なのだから。
 今までだって、それでひかるを陰ながら助けてきたのだから。
「小さい頃に見つかりにくかった、って言ってたわね」
 ドローンを放ちながら、ミネルバが足を向けた先は、ベンチの方。
 まっすぐに近付いてくる足音に、ひかるがびくりと身を震わせた。
 ぶぅんと飛んで行くドローンは別の方角へと、ミネルバは自らの感覚でひかるの居場所を見破って、おもむろにベンチの下を覗き込む。
「ひかる」
「ひゃっ!?」
 くすくすと笑いながら、ミネルバはひかるにそこから出てくるようにと促した。
「素敵な仲間ね、今回は残念だったけど――頑張ったわねって伝えて頂戴」
「え? ええ……?」
 精霊さんの助力に、ひかるは本当に気づいていないものだから。ミネルバの言葉にも戸惑ってしまうが、見つかったことは事実なので、もそもそと這い出る。
 草まみれになってしまったひかるにそっと触れて、みいつけた、と。
「さあ、八重を探しましょ。決着をつけてあげる」
 ドローンが捉えた映像を確認すべく、ホロビジョンを展開するミネルバ。
 空き地では、他の妖怪たちがかくれんぼに興ずる声が飛び交っていた。

(「ドローンはいちいち目で見てたら捕まっちゃう、影で把握しなきゃ」)
 地面に不自然に落ちる影がないかに気を払いながら、八重は妖怪たちの陰から陰へと渡り歩く。
(「ふっふっふ、こうして隠れポイントを絞らせないのが秘訣なのだ!」)
 バレないようにそっとドヤ顔をする八重。隠れた場所から移動するのはアリなのかという疑問が浮かばなくもないが、ダメとも言われていないからセーフである。
「ちょっと……どういうこと? さっきは一つ目小僧の近くにいたのに」
 記録画像とリアルタイム画像とを何度も見比べるミネルバが、思わず困惑の声を上げる。最初は一つ目小僧、次は唐傘お化けと、確認するたび八重の居場所が変わるのだ。
(「人のことは言えないけど、小さな身体を活かして隠れてるってワケね」)
 無意識に爪を噛みながら、食い入るようにモニターを見るミネルバは、気づかなかった。そばにいたひかるはいち早く気づいたけれど、当然黙っていた。

 ――こっそりと、八重がミネルバの背後に忍び寄っていたのだ!

「隙アリっ!」
「きゃう!?」

 八重がえいっとミネルバの脇の下に手を入れて、思い切り手指を動かしてくすぐる。
「あはは、モニターばかり見てるからだよー♪」
「やだ、やだやめっ……」
「八重さん、ナイスです!」
 仇を討ってくれたも同然の八重にひかるが賛辞を送れば、花がほころぶような笑みで返す八重。
「もう、ホントやめて……くすぐった……っ」
 目に涙を浮かべて必死に身をよじるミネルバに満足したか、八重は手を離して聞いた。
「ねえねえ、これでもう一回ネリーちゃんが鬼になるルールってアリ?」
「うぅ……今回はナシ、キリがないもの」
 その代わり、また今度機会があればリベンジさせて頂戴と。
 負けず嫌いの少女は、浮かんだ涙を拭ってそうお願いした。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

●届けこの声、あの人の元へ
 妖怪たちと猟兵たちのかくれんぼは続く。
 童心に返ったような心地で、どこか懐かしい町並みを舞台にして。
 歴戦のかくれんぼ猛者から、初めて経験するものまで。
 さまざまな工夫を凝らしては身を隠し、しかし鬼たちは巧みに見つけてくる。

 ――ああ、たのしいなあ。
 ――声を上げて、気持ちを伝えるというのが、こんなにも素敵なことだったとは。

 見つかってもうらみっこなし、互いをたたえ合い、夕暮れ時の町を行く。
 今はもう消えてしまった虹の向こうでも、あの白猫は幸せにしているだろうか。
 きっと、そうでありますように。誰もがそう願いながら、日常へと帰っていく。

『かえりましょ』

 もうすぐ、日が暮れる。
 在るべき場所へと皆が戻り、取り戻した平穏を噛みしめる時。

 さあ、さあ。
 願わくばこの平穏が、末永く続きますように。

 ――きっと、また別の騒動が起きるだろうけれど。
 その時はまた、声の限りに猟兵たちを呼ぶといい。
 強くて優しい彼らは、きっといつでも来てくれる。

最終結果:成功

完成日2020年07月31日
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