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流言飛語のケダモノ

#UDCアース #UDC-HUMAN

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●噂話の作り方
「ほんとにさぁ、あのエリナさん? 都会育ちだかなんだか知らないけど、物を知らないにも程があると思わない?」
 閑散とした部落は、良くも悪くも平穏なものだ。
 事件の気配もなければ、少子化がすすんで成人祝いも出産祝いも滅多にない。

 見方を変えれば――彼女たちの『日々に変化がない』のだ。

 変化に餓えた者達にとって『噂話』はとても魅力的で。
 ――特に、余所からやってきた人間など格好の的だった。
 都会から嫁いできた女性、ともなれば特にそうだ。
「引っ越し初日には挨拶も来ないし、ゴミ出しの場所も確かめてないし、それに催事の打ち合わせにも遅刻してきたのよ? どんな教育を受けてきたのかしらねぇ」
 失笑まじりに言葉を重ねる老婆――瀧澤・ナヲエは部落の大地主の直系にして、いまや後継者の母。
 年功序列が根強い土地においては、絶大な影響力を持っていた。
 彼女が非難すれば、住民達も意向を自然と察していく。
 『あの女は私の意に添わぬ、気に食わない』と。

 あることないこと吹聴していれば、おのずと噂は本人の耳に入る。
 寄合所の前から逃げるように立ち去ったエリナ――望月・絵理奈は『事実と異なる』と怒りを感じていた。

 挨拶に来ない? 門前払いを受けたのは私なのに。
 ゴミ出しの場所? 看板もないのに分かるわけないじゃない。
 打ち合わせの遅刻? 聞いた時間よりもずっと早くに始めていたくせに。

「引っ越してきただけで、どうしてこんな扱いされなきゃいけないの? 年寄りだから偉いの? 地主の血縁だから偉いの? ……私がなにをしたっていうの?」
 自宅のドアを乱暴に閉めても収まるどころか、感情は膨れ上がる。
 ――理不尽だ。なにもかもが、理不尽極まりない。
 酷い。非道い。ひどいひどいヒドイヒドイ。
「……なんか、疲れちゃったなぁ…………ヘヒッ」
 絵理奈の体から次第に黒いモヤが溢れ、彼女は悪意ある怪異に変化していく。

●言葉は獣となり得る、その意味
「――というのが、UDC-HUMAN出現のいきさつです。生まれた土地で身分を決めてしまう、それも現代日本でですよ。一体いつの時代の価値観でしょうね?」
 肩を揺らして笑う李・蘭玲(老巧なる狂拳・f07136)は、普段通りに話を続ける。
「どうもUDCと化したエリナさんを狙って、邪教徒が周辺をうろついてまして。まずはそいつらを掃討してください。地元の人たちは『住民』だと思い込まされていますが、邪教徒を倒せば記憶から消えていくでしょう」
 なので、討伐自体は問題ない――すぐに一掃したほうがいい。
 蘭玲は補足を入れて本題に移った。

 今回のUDC-HUMAN、エリナは乗っ取られてすぐに山へ入るという。
「過疎が進んだ土地もあって、昼間の人通りは少ないです。おまけにエリナさんは山林を抜けた先の滝に身を投げる……入水自殺しようとしています」
 そのため道中で仕掛ければ、自殺はまず止められるだろう。
 問題はエリナ自身のほうだ。
「エリナさんは、理不尽な噂への悲しみに支配されています。ですが、UDCに変異したてで正気は残っているはず」
『仕方ない』と諦めさせようとすれば、反感を買ってしまう。
 《事情を踏まえた説得》あるいは《エリナを傷つけずに討伐》できたらベストだろう。
「手段は皆さんの腕の見せ所……ということで、作戦を考えておいてくださいね?」
 だが、エリナを救出できてもナヲエの流言飛語(りゅうげんひご)が続けば、同じ事の繰り返しになりかねない。

 蘭玲は満面の笑みを浮かべた。
「エリナさんを救出しましたら、ナヲエさんにきついお灸を据えてくださいな。ただし物理的な制裁はNGですよ? 彼女の影響力を逆手にとった方法が望ましいですねぇ」
 ナヲエが影響力を持つ理由のひとつは年功序列の上位者、つまり『高齢者』であること。
 もし無根拠な噂、ありえない話を口にし始めたとなれば……『ああ、ついにボケが』と思いやるのが人間というもの。
「いやぁ、楽しみですね……ボケたと憐れまれて、誰も耳を貸さなくなる光景。エリナさんの悪評もあっという間に立ち消えますよ」
 容赦ない制裁方法をあげながら、上品に笑っている蘭玲。
 これがクソババア発想か――手心を感じない姿勢に背筋が凍える錯覚を覚えつつ、猟兵たちはUDCアースへ向かう。


木乃
 木乃です! 今回はUDCアースよりお送りいたします。

『第一章:集団戦』
 UDC化したエリナを捕獲しようと『邪教の潜伏幹部』が動いています。
 部落に潜伏して際に住民は洗脳されて、ご近所さんだと思い込んでいますが、
 撃破すれば住民達の記憶からは消えていきます。

『第二章:ボス戦』
 UDC『悪意ある靄』に取り憑かれ、山内の滝に入水自殺しようと向かっています。
 変化したばかりで、正気はまだ残っている可能性がありますので、
 説得や本体を傷つけない方法が望ましいでしょう。

『第三章:日常』
 諸悪の根源である、滝澤ナヲエに制裁を。
 とはいえ、老人なので物理的な制裁は死にかねません。
 彼女に『信じがたい噂』『ありえない光景をみせる』など、
 影響力を逆手にとり、周辺住民が信じられないような状況を目撃させてやりましょう!

 ●人物情報
 望月・絵理奈(エリナ/26歳)
 旦那の地元へ嫁いできた女性。
 元銀行員で物腰も丁寧、キャリアも人格もしっかりした人物。

 滝澤・ナヲエ(87歳)
 部落の大部分を占める地主の直系血族。
 現在は息子に権利を相続したが、今でも地元民は頭が上がらない女丈夫。
 余所者を毛嫌いしており、エリナの入居にも快く思っていなかった。

 リプレイ執筆は『6月28日(日) 21:00~(予定)』です。
 それでは、皆様のご参加をお待ちしております!
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第1章 集団戦 『邪教の潜伏幹部』

POW   :    らっしゃい、景気はどうだい?実は噂なんだけどさ…
【何気ない日常のやり取りの中】から【急に事件に関連する重要そうな噂話】を放ち、【無意味かもしれない情報収集活動】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    アレさぁ、また挑戦してみたいね!
【一度失敗したイベントを今度は成功させる】という願いを【ご近所さんや同じ教団の信者】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
WIZ   :    いやあよかった、助けてください困ってるんだ。
【事情は知らないが自分と仲の良いご近所さん】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●思惑ありきの潜伏者
 梅雨のじめっとした空気、夏らしい熱気と日差しで現地は蒸し暑いものだ。
 そんな気候とは関係なしに暗躍する者がいる。
 ある者は酒屋の配送として。ある者は農家のフリをして。
 ある者は商店の店主として――狭い地域に潜りこんでいる邪教徒たち。
 洗脳された住民たちは違和感を覚えないようだが、第三者である猟兵から見れば明らかにおかしい点が目立つ。

 買ったばかりのような真新しいビールケースと軽トラック。
 汚れの少ない作業着や、農耕具の数々。
 反対に、汚れっぱなしの店舗は、年単位で放置されていたように見える。
「おや、見ない顔だね。どこから来たんだい?」
 人の好い笑顔を浮かべる中年の男から放たれる、猛烈な違和感。
 ……猟兵たちはこの場をどう対処するか一考する。

 ===
 ・補足情報。
 現在地は部落の外側、住宅の密集地や商店街から離れたエリアにいます。
 普通に戦闘する分には問題ありませんが、爆発音や地形が変わるほどの猛攻など、響くほど大きい音を出せば、誰かがが様子見にくるでしょう。

 潜伏する邪教徒は潜入に長けた者たちですが、末端の構成員クラスです。
 邪教徒はエリナを捕まえる準備をしており、よそ者(=猟兵)の侵入を防ごうと向こうから話しかけてきます。
 そのため、接触後からプレイングを考えて頂いて問題ありません。
 ===

 リプレイ執筆は『6月28日(日) 21:00~(予定)』です。
 よろしくお願いいたします。
乃董・鳩
「はろはろ、こんにちわ、ごきげんよう」

普段の感じで挨拶。手には商売道具の入った鞄。今日は部落へ玩具の訪問販売。
「最新もいいけど、やっぱり、アナログなのも、楽しいよね」
一つ無くしても予備が沢山あるオセロに地面に広げて遊べる大きな双六。
そして乱暴に使っても長持ち丈夫なトランプと、おすすめ商品をご紹介。
「試しに、このトランプ、おひとつ引いてみて?」
手品にも使えるやつだから、どれを引いてもJOKERなように細工。
気付けば相手を封印完了。騙しに引っ掛けは『遊び』の基本。
「最後のおすすめ、ご覧あれ」
自慢の散らかし箒を取り出して。殴って打ち上げ打ち落とす。
「それでは、来世での、ご利用を、お待ちしてまーす」



「はろはろ、こんにちわ、ごきげんよう」
 本人的にはいつも通りに、初めて目にする者には風変わりな挨拶を返す乃董・鳩(白濁した灰楽・f28073)に中年男は話を続ける。
「珍しいねぇ、若い子が一人でこんなところに。何しに来たんだい」
「今日はね、これ、どうですかって」
 鳩が手にする鞄から取り出したのはアナログ玩具。
 昔ながらのおはじき、ビー玉から折りたたみ式の将棋盤――けれど、それらはフェイクに他ならない。
「この辺の子供はもう携帯ゲーム機やら、スマホで遊んでる子がほとんどだからなぁ」
 ――だから買い手はつかない、場所を移した方が良い。
 そう暗に示すのは追い払いたいから。
 男の言葉に、鳩は「そんなこと、ないよ」ときっぱり。
「友達と集まったとき、手軽にできるし、足の悪い人は、おもちゃ屋さん、滅多に、行けないから。……最新もいいけど、やっぱり、アナログなのも、楽しんでくれるよ」

 自然な流れで『今日のおすすめ』と称し、鳩は大型商品を鞄からとりだす。
「オセロは、石の予備を、多めにご用意。双六は、地面に広げても、大丈夫」
 双六の盤面を出そうとした拍子に、鞄の陰からオセロの石が転がり落ちた。
 コロコロ転がる白黒の石は男の足下へ。鳩の布石、そのいち。
 双六のコマは取り出すときに定位置へ。鳩の布石、そのに。
「おいおい……こんなところで広げないでくれよ」
 困ったように男は白髪まじりの眉を寄せる。それを意に介さず、鳩は『仕上げ』にとりかかった。
「特に、今日のおすすめ。手品でも使える、長持ち丈夫な、トランプ」
 慣れた手つきでカードをシャッフルし、パラパラと入念に混ぜて、扇状に広げると。「試しに、このトランプ、おひとつ引いてみて?」
 はやく話を切り上げたくなったのか、鳩の勧めに対して、男は一息こぼすと一枚引いてみた。
 カードは不吉に笑う道化師、JOKER。
 絵柄を見た瞬間――男は指先も動かせず、声すら発することができなくなる。
 動揺する男の耳には鳩の声が自然と流れ込み、
「最後のおすすめ、ご覧あれ」
 ――噴煙が視界に飛び込んできたと思う間もなく、宙へ殴り飛ばされていた。
 次に目にしたのは、箒を頭上に振り上げる鳩の姿。
「チェック、メイト」
 全力の一打を受け、きりもみして草陰に突っ込む隠れ邪教徒を見送ると、鳩は出した玩具をささっと回収。
「それでは、来世での、ご利用を、お待ちしてまーす」
 騙しに引っ掛けは『遊び』の基本。
 フェイクに気づけなかった時点で、勝負は決していたと言えるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

山梨・玄信
成る程のう。小さな村の小さな権力者か。
年齢からすると、疎開して来た人との交流などもあったじゃろうに…。まあ、そこで何かあったのかも知れんが。

【POWを使用】
くだらん話に付き合う気は無いぞ。
いきなり気の放出を放って敵の会話を妨害するのじゃ。
何、わしは「手も足も」出しておらん。相手が「勝手に」吹っ飛んだだけじゃからな。
この方法で敵のUCは徹底的に妨害しつつ、敵が物理攻撃して来た時には見切りで筋を読んでオーラ防御で受け止めるのじゃ。

体勢を崩したり、不用意に近付いて来た敵には灰塵拳をお見舞いして止めを刺すぞい。
「わしはここに無駄話をしに来たのではないのでな」
「わしは別に『手出し』はしとらんぞ?」



「成る程のう。小さな村の、小さな権力者……『あれら』がいまだ活躍している地域ならば、さもありなんか」
 遠目に映る、数件のわらぶき屋根や土蔵造りの物置。
 あれらと呼ばれた建造物は現在も使われているのだろう。
 サムライエンパイアならばまだしも、UDCアースでも見るとは山梨・玄信(3-Eの迷宮主・f06912)も思わなかった。
(「年齢からすると、疎開してきた人との交流などもあったじゃろうに……」)
 そこでトラブルがあったのかもしれないが、差別意識を肯定する理由にはならない。
 どこかで断ち切らなければならないだろうに――玄信の思考を遮るように、中年女性の声が耳に入る。

「あら、見かけない子ね? 迷子になっちゃったの?」
 農作業用の日よけ帽子、柄物のかっぽう着やアームカバーと長靴……どれも使い込んだ様子はないのに、不自然なまでに汚れている。
 おそらく泥を自分で塗りつけたのだろう、その程度の小細工はすぐに解るもの。
『農婦です』といわんばかりの格好をしたご婦人は、人の好さそう笑みと声を向けながら玄信に近づこうとした。
「この辺、似たようなところばかりだものねぇ」
(「……白々しいのう」)
 あれも潜伏者の一人だろう。
 チラと一瞥をくれたのち、至近距離に踏み込んできた相手に、玄信は『気』を放つ。
 ――隠れ邪教徒は突如、くの字に突き飛ばされた。
「わしはここに無駄話をしに来たのではないのでな、三文芝居はよそで披露することを勧めるぞ」
 玄信は目もくれずに立ち去ろうとする。
 地べたに転げていた女はすぐに起き上がり、
「ちょ、ちょっと、考えなしに歩き回ると危ないから!」
 この場合、考えなしに歩いていたのは、間違いなく女のほうだろう。
 敵対勢力と気づき、女は懐に忍ばせていたナイフへ手を伸ばす。
 玄真の死角を狙って素早くナイフを振り上げ、
「『手出し』はしとらんというのに」
 自ら死地に飛び込む愚か者に、二度目の気を放つ。
 一度は体感した攻撃だけに衝撃を耐えようとするが、成人女性を数メートル飛ばすほどの衝撃だ。
 こらえようとして体勢が崩され、ようやく玄真が振り返る。
「――くだらん話に付き合う気はない」
 振り向くと同時に踏み込み、今度こそ鉄拳で制裁。
 下から突き上げるように繰り出された拳に、女の体は天高く飛び上がった。
「さて、滝はどの辺りじゃったかのう」
 わざわざ見て確かめるより、確かな手応えのほうが信頼できる――きびすを返した玄真は再び歩を進める。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

……邪教団、か。
まぁ、どっかでかち合うとは思ってたんだ。
UDC-HUMANを追っていれば自然とね。
正直、事件を知ってから押っ取り刀で集まってるような下っ端じゃ、
アタシのお呼びじゃないんでね。
さっさと振り切らせてもらうよ!

こういう手合いはやたらしつこいのが相場なんだよな。
だから『コミュ力』を逆に駆使して話しかけてくるのを躱しつつ、
適当な角を曲がったところで路地裏の『闇に紛れる』。
そのまま停めてあるカブに『騎乗』し、
【陽炎迷彩】で透明になったまま跳ね飛ばすよ!
相手が相手だからね、手加減はしないよ。
他の一般人には手を出さず、そのまま滝を目指す!


片桐・公明
【POW】

違和感を感じながらも話を聞くふりをして近づく
「ほぇ~。そんな噂があるのね。私はよそ者だけど、結構興味があるわ。」

「ところで私も外から情報を仕入れているのよ。」
「曰く。この村には、ものすごい力を持っている人がいるってね。」
「でもそれを狙う奴らが潜入していらしいわ。」
「目的は何かしらね。取り込むのか、それとも暗殺か。」

「どうしたの?顔が白いわよ?」
「もしかして力を狙って潜入したのってあなたなのかしら。」
「それはないわよね。だってもしそうなら、詮索する人はさっさと消すに限るわ。こんな風にね」
ギリギリまで近づいたところで死角から銃撃。確実に対象を殺していく

(絡み、アドリブ歓迎です。)



(「……邪教団、か」)
 数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は予感していた。
 いずれ己の歩む道に現れることを。UDC-HUMANという、人間から生じる怪奇現象に群がるだろうことも。
(「下っ端連中なんてお呼びじゃない、さっさと救出に向かわないと」)
「多喜ちゃん」
 思考の渦に飲まれかける多喜を、片桐・公明(Mathemの名を継ぐ者・f03969)の呼ぶ声が引き揚げる。
「ずっと考えこんでたみたいだけど、なにか気になるの?」
「大したことじゃないよ。片桐さんは引きつけ役、よろしくね」

 集落に接近すると、予知通りに3人の男が声をかけてきた。
 よそから来た若い女性に興味をもったように、軽薄そうな笑みを浮かべるが腹の底は知れている。
 ……年頃からすれば公明達は大学生ほど。
「ゼミで使うレポートの一環で」と答えて、男達が疑うことはなかった。
 レポート資料作成のために取材させてほしい――それらしい頼みを持ちかけると、男達は二つ返事で承諾。
「で、この辺にも八つに散らばった珠玉のひとつを持った青年がいたって逸話もあるんだよな」
「ほぇ~。そんな噂があるのね」
 害獣が出始めたという、取るに足らない噂に公明は愛想笑いを浮かべ、相づちを打つ。
 予想通り、どうでもいい長話になりそうな気配に、多喜が行動を開始する。
「あ……わりぃ、車に忘れ物してきたっぽいわ。ちょっと取ってくるよ」
 そそくさと元来た道を戻る多喜は一瞥し、公明もまた視線を受けて承諾の意を示す。
「大丈夫? 電波悪いから連絡とれなくなるかもよ?」
 一緒に行動しなくても良いのかと、色黒い男は一人残された公明に尋ねるが「大丈夫よ」と返し、
「ところで私も外から情報を仕入れているの……曰く、この村には『ものすごい力』を持っている人がいるってね?」
 含みのある笑みを浮かべた公明に、男たちは互いの顔を見合わせる。
 しらばっくれても無駄だと断言するように、公明は言葉を続けた。
「しかも、それを狙う奴らが潜入しているらしいわ。目的はなにかしらね……取り込むのか、それとも暗殺か」
「おいおい、一体何の話を――」
 男の言葉を遮るようにエンジン音が近づいてくる。
 だが、それらしき影は視認できない。
 それもそうだ……多喜の発動したユーベルコードによって、透明化しているのだから。

 ――ドドォォ……ンッッ!!
 強烈な衝突音とともに、二人の男が頭上に跳ね飛ばされていく。
「は? ……おい、どうした!?」
 残された邪教徒は仲間の元へ駆け寄り、揺さぶり起こそうとする。
 不自然な方向に手足が曲がっている時点で、存命している可能性は限りなく低いのだが。
 公明はゆっくりと歩み寄っていく。
「もしかして、彼女が望まず手に入れた力を狙っていたのって……あなた達なのかしら? それはないわよね。だってもしそうなら、詮索する人はさっさと消すに限るわ」
「ま、まさか、お前がやったのか!?」
 完全に不意を突かれた男は慌てて得物を取り出そうとする。
「答え合わせは必要ないでしょ?」
 銃口を男の額に押しつけた直後、鉛玉は男の脳髄を突き抜けた。
 力なく倒れた男から公明は視線をあげ、愛車の宇宙カブとともに戻ってきた多喜に手を振る。
「お見事な吹っ飛ばしぶりだったわ、多喜ちゃん」
「片桐さんが引きつけてくれたからだって。そんじゃ、先に行こうかね!」
 後始末は2人に変わって、組織の『専門家』が粛々と執り行うだろう。
 いまは風雲急を告げるとき。
 多喜と公明はUDC-HUMANと化したエリナの元へ急行する。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

グレアム・マックスウェル
絆の美名で飾り立てた同調圧力
巧妙にスケープゴートを作り出す閉塞社会
……煩わしいね
僕にはエリナの気持ちが分かるような気がするな

敵に接触したら、UC行使を誘うように話題を振る
「都会では何でもネットで解決できると思ってるでしょ?
でもこういう田舎の空気感は、実際に生で訪れてみないと分からないんだ
よかったら、ここのこともっと聞かせてくれないかな」

しかし敵の出方は先刻承知
流言飛語に惑わされはしない
近づいたところを命中率重視の【ヴァリアブル・ウェポン】で攻撃
超硬度の細長い針状に変形させたクランケヴァッフェで、敵の耳穴から脳へ突き抜けるように零距離から串刺しにして暗殺



 まるで猿山に群がるサルのようだと思った。
 絆の美名で飾り立てた同調圧力、巧妙にスケープゴートを作りだす閉塞的な社会。
「……煩わしいね」
 グレアム・マックスウェル(サイバーバード・f26109)は独りごち、胸に溜まった重苦しい感情ごと吐き出す。
 ただ、グレアムにはエリナの気持ちを理解できる気がした。
 怒りに満ちていてた嘆き。
 悲しみ、あふれ出る……たった独りで抱え込んだ『感情』を。

 彼に声をかけてきたのは30代後半くらいの女性だった。
 小綺麗な主婦に見えるが、スーパーなどの大きな店舗のない集落では、いささか大きすぎるバッグがグレアムに『潜伏者』だと確信させる。
「あら、そんな遠くから? けっこう大変だったわよね」
「そうだね。でも、都会では何でもネットで解決できると思ってるでしょ? こういう田舎の空気感は、実際に生で訪れてみないと分からないから」
 体験することが目的、と強調し「よかったら『ここ』のこと、もっと聞かせてくれないかな」グレアムは周辺について尋ねた。
 女は口元を手を当てて苦笑するが、本当に困っていたのかもしれない。
「そうは言っても、田んぼや山があるだけよ? コンビニだって車で行かなきゃだし、『下水道も今さら設置できない』って汲み取り車が来るくらいだもの」
 ――土地の開発は後回し。
 若者の多くは利便性を求め都市部へ移り、一部の老人は設備の整った福祉施設へ入所していく。
 そうして人口は減っていき、誰からも見向きされずに、時代の流れから取り残された。
「だからご近所の誰かが施設に入ったり、入院する話が出ると一気に噂が広まるもの。なんだか……他人の不幸で楽しんでいるみたいで、怖いでしょ?」
 グレアムのような青少年も数少ない――それもあって「あなたのことも明日には噂になってるわ」と女は断言した。
 そうして好奇心に任せた、自分本位な考え方が、滝澤・ナヲエという『ケダモノ』を作り上げたのだろう。
(「……醜悪な」)
 不便ではあるものの平穏な環境で、退屈しのぎになるドラマチックな刺激を求めて、他人の不幸には野次馬となって群がる。
 なんて傲慢で不合理なのか――身勝手な連中のせいで、エリナは死に追いやられている。グレアムは怒りを覚えた。

「なにか言った?」
 心の声が口を突いて出てしまったのか、聞き返す婦人にグレアムは首を横に振り、
「ああ、それより髪に羽虫が絡まっている――失礼」
 それらしい断りを入れ、グレアムは女の頭に手を伸ばす。
 グレアムの端整な顔が至近距離に近づき、そこそこ人生経験を積んだ女性としては嫌な気はしないだろう――それが最期に見る光景だと知ることはない。
 至近距離へ詰め寄り、グレアムは指先から針状のクランケヴァッフェを射出。女の耳から耳を超硬度の暗器で刺し貫く。
 針先を両耳から露出させ、脳を射られた女は千鳥足で後ずさる。
「あ、た、まさ…………そし、の……」
 勢いよく得物を引き抜くと、女は白目を剥いて倒れ伏す。
「――知れば知るほど嫌な場所だ、ここは」
 息が詰まりそうな感覚に、グレアムは不機嫌そうに溜め息をこぼした。

成功 🔵​🔵​🔴​

高柳・零
草野さん(f01504)と

POW
村八分…まだこんな事をしてるんですか?古過ぎますねえ。
「ええ。エリナさんにはまだ希望があるんです。絶対に邪教の手には渡せませんね」

「草野さん、ここに居るのは全て邪教徒のようです。遠慮は要らないですよ(小声)」
相手が何気ない会話をして来たら、いきなりとんでもない返事をします。
「自分の推しは天霧ですが、あなたは?」
敵が会話を続けようとして来ても、剣を抜いていきなりUCを発動して会話も敵も断ち切ります。
「こちらも急いでおりますので、話は切り上げさせて…もう聞いてませんよね」

アドリブ歓迎です。


草野・千秋
零さんと(f03921)
POW

理不尽な悲しみと憤りに包まれてしまったエリナさん
その悲しみ、辛さ、想像するだけで胸が潰れそうです
僕だってお店をやってる商店街の人にあれこれ言われたら
(首を振る)
いけません、今どき村八分なんて流行りませんよ
……お辛いですよね、救って差し上げねば

まずは潜伏した邪教の幹部からですよね
邪教徒達はエリナさんを捕まえようとしてるんですね
そんなのさせませんよ、ね?零さん
邪神、邪教は僕にとっても許せないものです
ええ、手加減はするつもりはないです
怪力、2回攻撃、UC【Mag Mell】で邪教徒を蹴散らします
敵攻撃は味方に被弾すればかばう
激痛耐性と盾受けで耐えつつ!

アドリブ等◎



 あぜ道を通りながら、草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)はエリナの心情に思いを馳せる。
(「僕だって、お店をやってる商店街の人にあれこれ言われたら」)
 恐ろしいことに、人間は聞き心地のよい『建前』で本心を隠せてしまう――もし陰で悪意に満ちた言葉をまき散らされ、孤立したとなれば。
 ……想像するだけで、胸が締め付けられるようだった。
 沈んだ様子の千秋に気づき、高柳・零(テレビウムのパラディン・f03921)が顔を上げる。
「村八分なんて、まだそんな事をしてる場所がUDCアースにあるとは……まさかテレビもダイヤル式なんでしょうかね千秋さん?」
 錆びついた価値観にあきれる零は冗談交じりに問いかけた。
 気遣う気配に千秋も小さく笑みをこぼし、雑念を払うように首を振る。
「いけませんね、今どき村八分なんて流行りません」
「ええ、エリナさんにはまだ希望があるんです。見殺しにはできませんし、絶対に邪教徒の手には渡せません」
 零の言うとおり、エリナはただでさえ慣れない土地で『よそ者』というだけで孤立させられている。
 それがどれだけ心細く、息が詰まるような状況であるか――想像を絶するもの。
「……お辛いですよね、救って差し上げねば」
 弱きを助け、悪を挫く――それが《ヒーロー》の在り方ならば、なんとしてもエリナを救いだしたい。
 千秋は改めて心に誓う。

 道を塞ぐように話しこむ男達を発見したのは、零と千秋があぜ道を抜けてすぐのこと。
「あからさまな進路妨害……草野さん、あそこにいるのが邪教徒のようです」
「彼らがエリナさんを捕まえようとしてるんですね……そんなのさせませんよ、ね? 零さん」
「ええ。なので遠慮はしませんし、する気はないです」
 軽く言葉を交わすと、零達は再び歩きだして男達に近づく。
 気づいた群れの一人が足音のほうに目をやり、ニコリと笑顔を作る。
「おや、兄弟で旅行かい? こんな場所にめず」
「自分の推しは天霧ですが、あなたは?」
「は?」
 零の訳がわからない返答に、男はすっとんきょうな声を漏らした。
 怪訝(けげん)な表情に変わった直後、零は抜刀する勢いで男を斬り倒す。
 反応される前に制圧しすべく、残る邪教徒にも飛びかかった。
「なんだこいつら!?」
「チッ、『組織』の連中か!」
 懐の短刀を抜いて零に仕掛けようとする者を、断罪戦士に姿を変えた千秋の拳が抉りこむ。
(「邪神、邪教……僕にとっても許せないもの……――!」)
 義憤をこめた千秋のダムナーティオーキックで断罪し、両名は一息に畳みかける。
 ……数多の死線をくぐり抜けた彼らにしてみれば、歯ごたえどころか朝飯前の運動にもならなかっただろう。
「こちらも急いでおりますので、話は切り上げさせて……もう聞いてませんか」
 死屍累々の邪教徒達に、零は「失礼します」と形だけの謝罪を送る。
 変身を解いた千秋とともに零は向こうに映る、なだらかな山を見上げた。
「早まってはいけませんよ、エリナさん」
 彼女が全てを失ってしまう前に引き留めなければ。
 立ち塞がる者はもういない。
 心折れたエリナを悪意から救いだそうと、千秋達は目的地に急行する。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『『悪意ある靄』』

POW   :    靄の姿は千差万別
命中した【己の一部である靄】の【形】が【様々な武器に】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD   :    この靄はあらゆるものを記録する。
【自身の体】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、自身の体から何度でも発動できる。
WIZ   :    精神揺さぶる靄
【悪意に満ちた記憶】を籠めた【黒い靄】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【精神】のみを攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠リン・イスハガルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●侵食する悪意
 前日に雨でも降っていたのか。
 腐葉土から放たれる湿気で、山中はひときわ蒸している。
 そんな中、素足が汚れるのも構わず、フラフラと歩く姿が見えた。
「わからない」『わかるはずない』
「なんでなの?」『なんでもよ』
「私がなにをしたの?」『なんででしょうね?』
 折り重なるように、一人の女性から二つの声が聞こえる。
 ひとつは絶望して嘆いたもの。
 もうひとつは追い詰めようと囁きかけるもの。
 黒い靄(もや)を噴き出すその人物こそ、UDC-HUMANと化したエリナだろう。

 前進を防ぐように回り込むと、エリナの虚ろな瞳が猟兵を捉える。
「どうして、どうして……」
 頰に残る涙の痕――UDC『悪意ある靄』は、エリナの精神までは乗っ取りきれていないらしい。
 だが、肉体に入り込んだ瘴気じみた煙霧は、敵を前にしてざわつき始める。
 ――ひたすら問いかけるエリナを救うために、用いるのは言葉か、己の力か。


 ===
 リプレイ執筆開始は『7月5日(日)21:00~(予定)』です。
 よろしくお願いします!
グレアム・マックスウェル
※アドリブ連携歓迎

【エレクロトレギオン】召喚
味方への攻撃を牽制するように展開し援護射撃
敵のWIZ攻撃には狂気耐性で抵抗

エリナは結婚を機にここに来た
普通なら夫だけでも彼女の味方につくはずなのに……この分だと夫の実家もナヲエの言いなりか、村八分を盾に脅されているのだろう
彼女のような真面目なタイプは、ネットの匿名掲示板に愚痴を吐き出すことすら罪悪感を感じてしまうのかもしれない
これではストレスで潰れる一方だ

ならその不満、恨みつらみ、思いきり僕たちに吐き出してごらんよ
ここなら奴らに聞かれない
僕もああいう思考停止した旧人類は気に入らないさ

……もしかしたら『機械仕掛けの神様』が味方をしてくれるかもしれないよ


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

よかった、いや良くないけど!
最悪の事態にまでは至ってないな……!
けれど、ただ祓うだけじゃダメだ、
第二・第三のエリナさんが現れちまう!
まずは彼女から、事情を聴かないと。
なぜ、この部落に来たのか。
ここで、何をしようとしたのか。

そう、聞かなきゃいけないのは
「起こった事」だけじゃない、「やろうとしていた事」!
部落の連中は「変化に飢えていた」んじゃない、
「変化を恐れていた」んだよ!
自分たちが変化に取り残されていると僻むだけで、
自分たちこそがその変化を妨げてる事に気付いてない!
エリナさん、ここがチャンスなんだよ!
アタシ達も力を貸す、ここの時計を進めよう!
そんな力に頼らずにさ!


片桐・公明
【SPD】
「UDC-HUMANってのは、あたしと似ている思うんだ。」
入水自殺しようとする道すがら、対面して話しかける。
「意味が分からなかったか。それはすまん、こっちの話だ。」

「で、それがあんたのやりたいことなのか?」
「ここに居場所がないから死ぬのか?」
「あんたは何も悪くないのに、自分で自分を殺すのか?」
受けた仕打ちに対して怒りを想起させるように語る
一言一言、毒を仕込むように
一歩一歩、対象にゆっくり近づく

対象の手を取り拳銃を持たせる
「本当に殺したいのは自分じゃないだろう?」
「怒りを抑え込むな。理不尽を許容するな。」

戦闘になってしまったらUCでひたすら回避に徹する。
(絡み、アドリブ歓迎です。)


乃董・鳩
「や。こんにちは」

箒に乗ってエリナの元へ。
憐むのはナシ。それじゃ何も解決しないしできない。
「虐めは、辛い。死ぬのも、辛い。幸せに、なるのは、難しい」
だから私はゲームをする。勝っても負けても、最後は楽しさ悔しさ全てを笑って終われるように。
エリナと遊ぶには靄が邪魔。
UC発動。オセロを蒔いてパネルを展開。
「禍福は糾える縄の如し。一歩ずつしか進めない双六人生」
良いも悪いも代わる代わる。どっちか続けば疲れてしまう。だから一回休みがある。
「疲れた、あなたに、プレゼント。一回きりの、逆転の、切り札」
勝っても負けても道化は必ず誰かを笑顔にする。
次は彼女が笑う番。
「最高の、コメディーを、見せてあげる」



「よかった……いや良くないけど!」
 滝の頂部から遠く離れた場所でエリナを捕捉したが、多喜の言うように楽観できる状況にはほど遠い。
『最悪の事態にはまだ至っていない』という事実確認が済んだだけ。
「や。こんにちは」
 古きよき魔女のように箒で滑空する鳩が立ち塞がり、黒い靄(もや)を放出するエリナも脚を止める。
 彼女の瞳は光すら飲み込む暗闇が満たし、操り人形のようにぐらぐらと揺れた。
「そこから出ていけ、その身体はお前のモノではない」
 グレアムの抗議にエリナは不思議そうに首をかしげた。
『どうして? 誰もどうにかしようとしないのに』
「そう、だから……うんざりしてるの」
 ――《男女、七歳にして同席せず》
 かつて性別で区別させられた名残もあってか、女の争いに男が、男のケンカに女が意見すると煙たがられることが多い。
 逆に《面倒だから関わりたくない》という者の、大義名分にもなっていた。
(「この分だと夫の家族もナヲエの言いなりか、村八分を恐れて動いていないな」)
 噂話がすぐに広まり、古くさい慣習が幅を利かせている土地だ。
 鼻つまみ者にされたが最後、明日からこの地で平穏な生活は送れなくなる。
 仮にネット上で愚痴をこぼせたとしても、一時的なストレス発散にしかならない。
 ……もはや我慢の限界だろうとグレアムは感じていた。

 多喜と公明も追いつくが、諦めの色濃い声色から手ごわい相手だと認識する。
「こんなになるまで追い詰められちまって」
「虐めは、辛い。死ぬのも、辛い。……幸せに、なるのは、難しい」
 やりきれない表情の多喜と対照的に、鳩は毅然とした態度で相対する。
 憐れんだところでなにも解決しない。
 せめて憑き物を落とすことが、猟兵にできることだから。
(「UDC-HUMANってのは、あたしと似ているのね」)
 どうしてそう思ったのかは、公明自身にしか解らない。
 だが物言いたげな眼差しに『あぁん?』粘っこい視線をエリナは向ける。
「……こっちの話だ。それで、これから《する事》があんたがやりたいことなのか?」
 入水自殺なんて、あんたの望むところじゃないだろう?
 本心を確かめるように、公明はゆっくりと近づいていく。
「ここに居場所がないから死ぬのか? あんたは何も悪くないのに、自分で自分を殺すのか?」
 問いかける公明の言葉に、エリナはキッと表情を険しくする。
「あなたに何が解るの!?」
 怒声が響き、驚いた野鳥たちが慌てて飛び去っていく。
 興奮した様子のエリナは目を血走らせた。
「何したって陰でコソコソ悪口言われて、何されたって被害妄想だとか、私に落ち度があるように言われて……仕事も娯楽も友人も、なにもかも置いてきたあげくの仕打ちがコレなのよ!?」
 悪意に蝕まれているためか、疑心暗鬼に捕らわれているためか。
 無防備に晒されたエリナの本心は、わずかな刺激にも過剰反応を示した。
「ならその不満も、恨みつらみも、思いきり僕たちに吐き出してごらんよ。ここなら奴らに聞かれることはない」
 グレアムは《それをもっと言葉にしろ》と促す。

 ――疑心暗鬼の中にいるエリナには、それは恐ろしい想像をかき立てた。
「聞いてどうするの、私が悪口言ってたって周りに言いふらすの?」
『火のない所から煙を立てられるのだもの、こいつらだってそうよ』
「もう、ほっといてよ……私に構わないで!!」
 悪意に満ちた言葉はネガティブな空想を煽り、悲鳴じみた叫びとともにエリナの肉体から黒い靄(もや)が四散する。
「手を出すつもりはないけどっ」
 もっとも近い場所にいた公明は《殺人鬼の最適解》で軌道を予測して木陰にもぐり、入れ替わりにグレアムのエレクトロレギオンが高熱線で相殺する。
 精神を持たぬ機械ならば、痛めつける部位はないに等しい。
「興奮、してる。動きを、とめないと」
 布石を投じ、パネルを展開しようとする鳩に、エリナの激情が牙を剥いた。
 攻撃だと思い込んだエリナは敵意を剥きだしにする。
「あっち行ってよ、私が何したって言うの!」
 飛来する攻撃より早く多喜が飛びつき、鳩とともに腐葉土に転がり落ちた。
 柔らかな土がクッション代わりになるが、湿った土が多喜の頰を汚す。
「わりぃ、怪我はないか?」
「だい、じょぶ。けど、攻撃は、やめさせないと」
「そりゃあたしも同感だよ。けど……まだやれることがある、ハズなんだ」
 力ずくで止めようとすれば《悪意ある靄(もや)》が解釈をねじ曲げ、扇動してしまう。
 それを聞いたエリナが逆上し、拒絶する――まさに悪循環だ。
(「考えろ、多喜……祓うだけじゃダメだ。それじゃあ第二・第三のエリナさんが現れちまう」)
 思考している間にもエリナはグレアムと公明へ攻撃を続ける。
 なんとか止めようと、多喜はまとまりきらない言葉をそのまま投げかけた。
「どうして、こんな所に来たんだ!?」
 自身の一言に多喜は糸口を掴む。

 どのような仕打ちを受けてきたか? 『起きたこと』は嫌と言うほど耳にした。
 ――だが、エリナの『ここへ来た動機』だけは知らない。
「こんなド田舎に来たがる奴なんて、よほどの人間嫌いか世の中が嫌になった奴だと思うけどさ。エリナさんは違うんだろ? その理由を教えてよ!」
 ……警戒心を隠しもせず、傷ついた獣のようなエリナは、臨戦態勢で手を止まる。
 恨み節のごとく彼女はポツポツと語り始めた。
「……きっかけは、お義母さんの病気。初めて来たときは、私にも優しくしてくれて……だから、脳梗塞で倒れたって聞いても、信じられなかった」
「それは夫から、ってことか」
 グレアムの言葉にエリナは「そう」短く肯定する。
「お見舞いにきて、嫌な感じはしたの。こっちの状況も構わず、周りはあれこれ聞きに来て……好奇心が透けてて、とても不気味だった」
 結局は他人事……地元民の道徳心にも問題はあるが、いま深追いすべき議題ではない。
 本題はその後にある。
「お義母さんは寝たきり、遠くに移動する体力もない……それで、地元の施設に入るしかなくて……最初は別れを切り出されたの。不自由させるからって……あの人、目玉焼きだって焦がすし……靴下も、裏返しで干すくせにさ」
 乾いた笑みを浮かべるエリナに、鳩はふと湧いた疑問を投げかけた。
「……あなたの、親は?」
「数年前に、亡くなった……だから気がかりは、自分だけ」
 そういった背景がエリナに決心させたのだ。
 夫の親孝行を、少しでも手助けしようと。

 ――身勝手だと、批判したい者もいるだろう。
 ――逃げればいいのに、と感じた者もいるだろう。
 けれど、人間は誰しも人知れぬ背景を抱え、その過程でさまざまな経験をしているのだ。
 嬉しいことも、悲しいことも。辛いことも、楽しいことも。
「私にはなにもないのに、周りから受けるのは陰口と嫌み……ねえ、どうして? どうして私が嫌な目に遭わないといけないの!? 私が何したってのよォッ!!」
 再び激昂するエリナの叫びとともに靄(もや)が放たれる。
 情緒不安定な彼女の思考をどうにか読み取り、多喜は靄(もや)をかいくぐってエリナに応えた。
「エリナさん、部落の連中は怖いんだよ――『自分の周りが変化していくこと』が!」
 見慣れた風景、見慣れた人々に囲まれることは安心できる……だが、形あるモノはいつか終わりを迎えていく。
 それは生命体である人間も含まれるのだ。
 老人達の見慣れた顔ぶれは、いま一体どれだけ残っているだろう?
 ――永遠に形あるモノなど、どこにも在りはしないのだ。
「当たり前にあったモノが消えて、知らないモノが増えていく。時代が進めば自然なことだろ? それなのに、自分たちが変化に取り残されていると勝手にひがんで、自分たちが妨げていることに気づいてない!」
 古きモノだけを重んじ、新しきモノを知ろうとしない。
 年の功にあぐらをかいているだけの人間ならば、時代から取り残されるのは必然だ――多喜はエリナに叫ぶ。
「ああ、ここの老人たちは《井の中のかわず》だ。都会からやってきたあんたは、まさに未知の存在だろう」
 靄(もや)を頭上にやり過ごしながら公明も話を合わせる。
 知ろうとする努力もせず、排斥することを良しとする世界に未来はない。
「それ以上、自分を押し殺すことはない。怒りを抑え込んで、理不尽を許容する必要はないんだ」
 興奮した気配のエリナにグレアムも呼びかけた。
「僕もああいう思考停止した旧人類は僕も気に入らない……第一、人生経験から多くを学んだ識者だからこそ、相手に敬意を抱かせるのさ。そうでないならただ老衰しているだけだよ」
 エリナが集落で理不尽さを感じるのも、年功序列より能力重視の価値観とグレアムは感じた。
 いまや残業手当を当てにする労働者は《給料泥棒》と呼ばれる時代だ。
 マジメな気質のエリナには、なあなあ主義による、ずさんと思えた場面も相当あったのではないか。
「禍福はあざなえる縄の如し。一歩ずつしか進めない双六人生……それでもさいの目、悪い目、続いてばかりは、楽しくないね」
 テーブルゲームに慣れ親しむ鳩にはよく解る。
 一万分の一の貧乏くじだろうと0.01%でも可能性がある以上、引き当ててしまう者は出てくる。
 ドン底からはい上がる過程の、全てを天運に任せてしまう者は、一流の賭博師でも滅多にいないだろう。
「私たちが、最高のコメディーを、見せてあげる……因果応報。業を重ねた老婆に天罰が下る、今世紀最大の喜劇をね」
 鳩たちの言葉に、悪意の化身があざけり笑う。
『調子がいいことばかり、そう言って騙すつもりに決まってるわ』
「お前に言ってんじゃないよ、引っ込んでな! ――エリナさん、ここがチャンスなんだよ。アタシたちも力を貸す、ここの時計を進めよう! そんなに力に頼らなくったって、世界は変えられるんだ!!」

 必死に呼びかける多喜たちの言葉に、エリナは苦悶の声をもらして頭を抑える。
「う、ぅ、うぅ……っ」
『ぽっと出の連中の言うこと、あなた聞くつもりなの? 後悔してからじゃ遅いわよ?』
 心の隙間に入り込んだ《悪意ある靄(もや)》だが、エリナの自意識が戻り始めているのか。
 再び迷いを呼び起こそうとするも、
「あ、あぁぁああああああああああ……――!!」
 板挟みとなり余裕を失ったエリナは錯乱し、獣じみた咆吼が山中にこだまする。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

草野・千秋
零さんと/f03921
UCで防御力を上げて
激痛耐性と盾受けで相手攻撃を耐え抜く
専守防衛

いじめをするだなんて人の痛みがわからない弱者のする事なんですよ
零さんの言う通り自分がいじめの標的になることを恐れていたのだと思います
でもそれを理由に人様を虐げていい理由になんてしてはいけない
しかもいい大人がだなんて僕はいじめをしていた側を軽蔑してしまいます
歳を経ているという立場からやっていい事ではないですよね

……僕も子どもの頃いじめられてました、両性愛者という理由だけで
でも、妹が「お兄ちゃんはそのままでいい」という言葉をくれたおかげで今も生きていけるんです
エリナさん、味方はここにいます
ここに駆けつけた僕達が


高柳・零
草野さん(f01504)と

POW
草野さん、ここが一番の頑張り所です。何としてもエリナさんを助けましょう

草野さんを庇いつつ「武器」をオーラを被せた盾と無敵城塞で弾きながら説得します

「事情は聞いています。酷い話ですよね、いい歳した人達がいじめをしたり、それを放置したり」
「いじめをする理由…これは恐怖の裏返しです。村人達は自分がいじめの標的になる恐怖。そしてナヲエさんは…自分の立場が危うくなる事への恐怖」
「家柄と年齢しか取り柄のないナヲエさんにとって、聡明なあなたは脅威だったのでしょう。ただ…こんな下らないいじめをしてくるのは…もうボケているのでないでしょうか?遠からずそれは露見するでしょう…ね」


山梨・玄信
【POWを使用】
敵のUCは見切りとオーラ防御で刺さらないように防ぎ、刺さっても激痛耐性で耐えてみせるぞ。
どんな状況になろうが褌一丁になって、オブリビオンがエリナ殿に与える邪心をUCで払うぞい。

「エリナ殿、お主は真面目で優しいんじゃろうなあ。じゃからこそ、迫害に追い詰められてしまった。お主の敵は、実はナヲエ殿ただ一人じゃ。戦えば言い負かす事も出来たのではないかの?」
「じゃが、優しいお主はそうはしなかった。そして、ご亭主と一緒にここから逃げ出す事も。全部自分で抱えてしまった。優秀で優しい故に嵌ってしまった。じゃからこそ、わしはこの状況が許せん」
「少しは人に頼ってみぬか?良い方法があるのじゃ」



「エリナさん、悪意に飲まれないで!」
「草野さん、ここが一番の頑張り所です。なんとしてもエリナさんを助けましょう!」
 千秋と駆けつけた零がオーラを被せたシールドで靄(もや)のしぶきを跳ね返す。
 詳細は省くが、脱ぎ力を極限まで高めて侠気あふれる姿になった玄信は、無差別に攻撃するエリナに、沈痛な面持ちを浮かべていた。
「エリナ殿……お主は、真面目で優しいんじゃろうなあ。じゃからこそ、迫害に追い詰められてしまった。真の敵は、ナヲエ殿ただ一人じゃったというのに……お主ならば、言い負かすことも出来たのではないか?」
 しょせん狭い世界で威張るしかない年寄りだ。
 多くの者と接する、窓口の経験もあるだろうエリナならば、言いくるめてしまうことも難しくないだろうに。
「じゃが、お主はそうしなかった。自力で起き上がれなくなった義理の母親と、ご亭主の将来を案じての決断……誰にでも出来ることではないぞ。じゃからこそ、わしにはお主を蔑める状況が許せん」
 豊かな生活を引き換えに、なにもない土地へ移り住むなんて愚かだ、と揶揄する者はいるだろう。
 だが玄信も含め、この場に居合わせた者の多くはエリナの決心に脱帽させられていた。
「事情は聞いています、エリナさん。ひどい話ですよね、いい歳した人達がいじめたり、それを見て見ぬふりをしたり……みっともないの一言に尽きます」
「ど、して、どうしてェェ……!」
 零の言葉に、後悔と憤りがぶり返してか、エリナは甲高く叫んで黒靄(もや)を飛ばす。

 まとめて飛来する靄(もや)に零は《無敵城塞》を発動、攻撃を一手に引き受けて超防御モードで受け止めていく。
「変化することを恐れたこともあるでしょう。それに加えて、村人達は自分が標的にされることの恐怖。そしてナヲエさんは……自分の立場が弱くなることの恐怖」
 怒りに吼え続けるエリナに、千秋は率直な言葉を投げかけた。
「理解できなくても仕方ありません。いじめをするだなんて、人の痛みが解らない弱者のする事なんですよ。零さんの言うように、自分がいじめの標的になることを恐れた……でも、それが《人様を虐げていい理由》なんてならないし、してはいけない」
 年功序列? 有力者の血族?
 そんなたまたま手に入ったモノが、弱い者を苦しめていい理由になる訳がない。
「いい大人が、自分の不都合を言い分に、他人を虐げるなんて……僕はそんな自分勝手な人を軽蔑してしまいます」
 厳しい言葉を使うのは、それだけ千秋にとって許しがたい蛮行でもあるからだ。
 感情論で他者をないがしろにする――そんな行為に《正義》など在りはしない。
「家柄と年齢しか取り柄のない老人にとって、聡明なあなたは脅威だったでしょうね……ただ、こんな下らないいじめを繰り返しているのは、ボケが始まってるんじゃないでしょうか?」
 ――遠からず、それは露見することになるでしょう。
 予言めいた言い回しで零は断言する。

 操作不能に陥ったのか、垣間見えるUDCの表情には焦りが見えた。
『どいつも、こいつも、綺麗事ばかり並べちゃって……虫酸が走るわ!』
「邪魔者はお呼びでないんじゃよ、さっさと退散せい!」
 邪気を落とそうと玄信は拳を振るい、エリナの精神にまとわりつく邪心へ直接攻撃を仕掛けていく。
 どれだけ誠実な言葉を積み重ねても、割り込んでエリナの心をかき乱すUDCに、零もやきもきしてしまう。
「あの横から惑わす言葉をどうにかしたいんですが!」
 聞き心地の良い言葉を悪意でねじ曲げるなら、悪意ですらねじ曲げられない言葉なら――千秋の告白までには、一瞬の躊躇いがあった。
「……僕も子供の頃、いじめられていました。好きな子のことでからかうなんて、思春期ではよくあるでしょうが……僕にとっては辛いことばかりでした」
 急に過去の話を始める千秋に、エリナは怪訝(けげん)な表情を浮かべる。
『なんの話してんの、あんた?』
「僕は……男性も女性も愛せるというだけで、いじめられました」
 陰口を言われたこともある。気味悪がられて、無視されたこともある。
 嫌がらせだって沢山受けて、思い返すのも嫌になる記憶のほうが多い。
「でも、打ち明けたときに妹が言ってくれたんです……《お兄ちゃんはそのままでいい》って。お兄ちゃんにとって大切な人がそれだけ沢山いるんだ、って……その一言のおかげで、今も生きていけるんです」
 ……エリナが千秋の背負うモノを知ることはない。
 だが、その言葉にある重みは理解できた――自分には解らないなにかが、この青年を動かしている。
 そこに綺麗も汚いもなく、善悪でかんたんに割り切っていい事情ではないことも。
「ふ、ふーっ、ぐぁっ……!」
「エリナさん、味方はここにいます。ここに駆けつけた僕達が、あなたの味方です!」
 本心をさらけだす覚悟に突き動かされて、黒い靄(もや)の残りカスはついに肉体から離れていく。

『くそ、もう少しで手に入るところだったのにっ』
「さあヌギカル玄信、制裁の時間ヌギ!」
「怪・物・爆・散じゃあ!!」
 地べたから突き上げるように放たれた玄信の正拳が、残された靄(もや)を一撃のもとに打ち払う。
 捨て台詞を吐く間もなく、霧幻の怪異は蒸した空気に溶け消えて、この場に姿を取り戻すことはなかった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『人間の屑に制裁を』

POW   :    殺さない範囲で、ボコボコに殴って、心を折る

SPD   :    証拠を集めて警察に逮捕させるなど、社会的な制裁を受けさせる

WIZ   :    事件の被害者と同じ苦痛を味合わせる事で、被害者の痛みを理解させ、再犯を防ぐ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●過ぎたるは及ばざるがごとし
 猟兵らの協力で救出されたエリナは、診療所として運営している最寄りのUDC関係機関で治療を受けることになった。
 しばし待合室で待っていると、看護師から奥の部屋に来るよう呼ばれて、組織の担当医から診断結果を通達された。
「望月絵理奈さんの命に別状はありませんが、UDCに憑依されていた影響とストレス性の神経症で、心身ともに衰弱していました。また栄養失調の疑いもあるので、今日は大事をとって当院で休んでもらおうかと」

 ひとまず身柄を保護できたと安堵する面々に、
「そのほうがそちらも動きやすいでしょう、この後?」
 医師は意味ありげな含み笑いを向けた。
「ナヲエさん、これからいつもの寄合所でいつものメンツとお茶会するけど……寄合所に行くとき、竹やぶの中を通らないといけなくてさ。人の気配はないし、静かなところだし……幻覚とか見えてもおかしくないんじゃないかなー?」
 ――そこで脅かしたとしても、他の住民に見られることはない。
 医師は暗に告げる。

 因果応報。
 善の業。悪の業。積み重ねてきた業は、いずれその身に返ってくるモノ。
 滝澤ナヲエ――傲慢なる老婆に、再起すら叶わぬ鉄槌を下せ。


 ===
 補足情報。
 第三章では滝澤ナヲエへの制裁を行っていただきますが、以下の特殊ルールが発生します。

 ・物理的な制裁はNGです (怪我そのものが証拠となってしまうため)
 ・殺害してはいけません (同情を買ってしまう立場になるため)
 ・オープニング内やマスターコメントにもヒントがあります、
  参考にして頂いて構いません。
 ===
 リプレイ執筆開始は『7/9(木)21:00~(予定)』です。
 よろしくお願いします!
片桐・公明
【SPD】
暗がりから現れて、殺意を隠さずにひたすら恐怖を煽る
二人とも黒いコートを着て、フードをかぶり、見えるように拳銃や妖刀を持っている
分「罪を償うときが来た。諦めて死を受け入れよ。」
逃げだしたら、2人いる利点を生かし、神出鬼没を演出する
本「どこに逃げても無駄。私は死そのもの。逃げること能わず。」
最終的に二人で挟み込み、逃げられないことを悟らせる
分「諦めよ。罪を償え。」
本「恐れるな。死は今、己の元へ」

分「…あれ?気を失ったか?」
本「じゃあ、ここまで。夜が明ける前に撤退するわよ。」
分「殺しちまった方が早いんじゃないか?」
本「相手は一般人よ、物理制裁はご法度よ。」

(絡み、アドリブ歓迎です。)


グレアム・マックスウェル
【エレクトロレギオン】に竹藪の中で目立たないよう迷彩処理を施し、ナヲエが通過するタイミングを見計らって、ボイスチェンジャーで低く歪めた「亡霊の呻き声」の音声を再生し「悪霊や人魂のCG」をホログラム投影して展開
逃げても無駄だよ。地獄の使者の残像は、執拗に獲物を追跡する

高度に発達した科学は、魔法と区別がつかない
心霊現象も種を明かせば、案外こんなものかもね

ナヲエ一人を罰しても、周囲の腰巾着が根本的に変わらなければいずれ同じことの繰り返しになるかもしれないが……
まあいいさ。「古い因習の馬鹿らしさ」が浸透すれば、いずれこの村も変わるかもしれない
彼女やエリナを嘲笑う「ただの人」たち
「明日は我が身」だよ


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

よかった……エリナさんは無事か。
後は奴ら全員にお仕置きを、って
ナヲエ婆さんにだけ絞れ、ってか?
なーるほど、それならアタシはちょいとばかし脅かす方にするかね。
実働は他のみんなに任せるよ!

なぁに、アタシがやる事は至極単純さ。
竹やぶの『闇に紛れる』様に『迷彩』柄に『変装』して潜み、
婆さんが通りかかったら「今、なんどきだい?」
と囁くように声を掛けるよ。
そうすりゃ【時縛る糸】でイイ感じにぼんやりするだろうから、
他のみんなも準備をしっかり仕込んでおくれ。
後はそれを何度も繰り返せば、
「時を聞かれる」事も過剰に怖がるようになるんじゃないかねぇ?



 ――夏に生ぬるい風が吹いたとき、それは幽霊の現れる前兆だ。
 かつての大人達が丁寧に夢を潰してまわった結果、『等身大の夢』しか見られなくなった、現代の子どもの中に、この迷信を信じる者はどれだけ居るのだろう?
 今でこそ、大気中の水分に熱がこもっているだけ、と科学的根拠を知る子ども達がほとんど。
 だが、それすら知らなかった、かつての子ども達にとって《不気味な出来事の前兆》だと信じられてきた。
 齢87となる滝澤ナヲエも、そのうちの一人だった。

 静穏な竹やぶを通り抜ける道中、ナヲエは杖突きながら、生ぬるい風にさらされる。
「やあね、いつもは涼しい風が吹いてるのに……嫌な感じ」
 誰に話すでもないナヲエの独り言は、竹やぶの暗がりに潜む多喜が聞いていた。
(「エリナさんは無事。それはホントによかったと思う……けど制裁はあのナヲエ婆さんだけって、ねぇ」)
 少し手ぬるさを感じるが、診療所から送り出してくれたグリモア猟兵の言葉を、心の中で反すうする。
 ――害虫を駆除するために、花壇に火を放つ必要はありません。
 花を食らう虫を殺すために火を使えば、花壇になにも残らないように、ナヲエを迎合する住人ごと制裁すれば、廃村までに追い込みかねない。
 そしてナヲエを追い込む《舞台装置》のひとつは、迎合していた住人達でもある。
 悪意なき悪事を反省させることは非常に難しいが、明日は我が身と自戒させることはできる。
 ……蜜を出すアブラムシさえ駆除すれば、蜜を集めに群がるアリも寄っては来ないのだ。
「ま、それならアタシなりの脅かし方もあるってもんさ」
 実働は他の者達に任せ、多喜はナヲエの元に近づいていく。
『……今、なんどきだい?』
「は?」
 囁きかける声にナヲエは振り返る――が、そこには誰もいない。
 それはそうだ。ナヲエの体感時間は多喜のテレパシー によって、84秒も止まっていた。
 一分以上の猶予があれば離脱はたやすく、ナヲエの脳が認識する頃にはなにも残らない。
 怪訝な顔で声のあったほうを見つめても気配はない。
 気のせいか、と思って数メートル歩くと『今、なんどきたい?』とまた声が。
 何度見ても誰も居ないし、歩きだせば呼び止められるを繰り返し。
「どこの悪ガキだい!? あたしを馬鹿にして、イイ度胸じゃないかい!!」
 多喜の予想より早く、ナヲエは杖を振り回して怒声をあげ始める。
 老人ゆえに『目に見えないモノが近くに居る』という、ホラー作品特有の緊張感を高める技法にかかりやすかった。

 そうして多喜が時間を稼いでいる間に、第一陣が到着する。
 ――ヴ、ヴヴ……ヴヴッ……――。
 どこからか流れてくる雑音に、鬼の形相を浮かべたナヲエが周囲を見渡した。
 ――ヴヴ、ッ、ォ、ォォォ……ォァァアAAAA……――!
 雑音に耳を澄ませてみると、それは低く歪んだ声だった。
 どこの馬鹿がやってるのか、引きずり出して確かめようとナヲエは雑音のほうにのっしのっしと歩み寄り、
『……GGGGYYYAAAAAAAAAAAAAAA!!』
「ぎゃああああああああああああああああああああああ!?」
 飛び出してきたのは、爛れて黒ずんだ男の死骸と人魂……の立体映像。
 グレアムの放つ、迷彩処理を施したエレクトロレギオン達が発しているものだ。
(「逃げても無駄だよ。地獄の使者の残像は、執拗に獲物を追跡する」)
 驚き叫ぶナヲエだが腰を抜かすことなく、慌てて竹やぶの出口へ向かう。
 仕掛けた側からすれば、こんな子供だましに騙されるなんて……と思わないでもないが、相手は心の準備もできていない状態だ。
「高度に発達した科学は、魔法と区別がつかない……心霊現象も種を明かせば、案外こんなものなのかもね」
 笹の葉のさざめく音に紛れながら、グレアムは見失わないように後を追った。
 追いつきそうだと思わせるギリギリの距離で、グレアムはエレクトロレギオンを指揮し、ナヲエを追い回す。
「ヒィ、ヒィ、いいいったい、なんだっての、あれはァ!?」
 老骨に鞭打ち、よたよたと駆けるナヲエを次に待ち受けていたのは――黒い外套を羽織る《二人組》
「罪を償うときが来た」  「諦めて死を受け入れよ」
 全く同じ声だった。
 双子だってそんなことはあり得ない。
 前門の虎、後門の狼――立ち塞がる二人組も、後方から迫る亡霊も老婆にとって末恐ろしいもの。
「な、なんなんだい、訳の、解らないことばっかり……!?」
 ヒィヒィと息をあげるナヲエは、通り道から外れて竹林へ飛び込んでいく。
 ――己を待ち受けている、幾多の恐るべき現象があるとも知らずに。

 殺意を放つ黒ずくめの二人組――公明と、闇色の分身体は拳銃を天に発砲し、妖刀で空を切って恐怖をさらに煽った。
「どこに逃げても無駄、私は死そのもの」
「逃げること能わず、愚行は恥の上塗りにしかならないぞ」
 神出鬼没の死神に、腐った肉をまとう幽霊と人魂……そして。
『今、なんどきだい?』
 時間感覚を狂わせる多喜のテレパシーを受けているとも気付かず、混乱するナヲエは本道から大きく外れていた。
「んなもん、自分で調べな!!」
 恐怖も多少の慣れを感じると恐ろしさも薄れるもの。
 そろそろ頃合いか、多喜がグレアムにサインを送り、グレアムは公明の元へエレクトロレギオンの一体を飛ばして、第二陣へ引き継いだ。
 去りゆく老婆を遠目に、公明の元に分身体がストンと降り立つ。
「……あんな婆さんくらい一捻りできるだろ、殺しちまったほうが早いんじゃないか?」
「相手は一般人よ、物理制裁は御法度よ。それに同情される要素は残すなってオーダーなの」
 誰かが傷をつければ、ナヲエの与太話に信ぴょう性をつけてしまう。
 それでは本末転倒といさめ、分身体が肩を竦めているところにグレアムと多喜が現れた。
「ナヲエ一人を罰しても、周囲の《腰巾着》が変わらなければ、いずれ同じことの繰り返しになるかもしれないが……」
「村八分を恐れて従わざるを得なかった、って可能性がある以上は《疑わしきは罰せず》しかないよ。私達が知っていることは、集落中にデマを撒いてエリナさんを追い詰めた犯人が滝澤ナヲエってことだけ」
 懸念を口にするグレアムに、公明はいさめるように口を挟む。
 他の住民達にとっても、影響力をもつナヲエは怖い存在なのだ。
 彼女の機嫌を損ねたり、意向を無視したという噂が流布すれば、翌日には集落で孤立する羽目になる。
「要はアタシらのやってることは《見せしめの下準備》ってことか……同情する気にはならないけどさ」
「もし《明日は我が身》と自戒できるなら、いずれこの村も変われるだろう……そのためにも、古い因習で縛り付ける《圧制者》には犠牲になってもらおうか」
 竹林の奥へと逃げ込んだナヲエの背はもう見えない。
 代わりに、さらさらと流れる笹の音に紛れて、ギュラギュラと怪しい音が微かに聞こえてきた。

 ――これはまだ、ほんの序章にすぎない。
 選民思想で圧政を強いてきた老婆への仕置きは、まだ始まったばかりなのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

山梨・玄信
【POWを使用】
ヌギカル☆プリティロッドを持ち、猪に引かれた戦車…ヌギカル☆ラブリーチャリオットに乗って華麗に登場じゃ。
多分ドン引きされるじゃろうが、気にせず褌一丁になってナヲエ殿の罪を裁くぞい。
3-Eバージョン(水着姿)の脱衣の国の女神(?)を召喚し、当てないように慎重に…しかしナヲエ殿の極力近くに…UCを発動させるぞ。
充分に脅したらチャリオットは仕舞い、女神(?)と共に飛空術(空中戦)で悠然と去って行くぞ。
こんな意味不明なものを見たと言い出せば、竜巻に驚いたナヲエ殿が幻覚でも見たと思われるじゃろう。

「これからお主に天罰を与える。心当たりは…あるな」

アドリブ歓迎、単独描写希望じゃ。



「ハァ、ハァ……な、何だったんだい、あの珍走団は……!」
 ほうぼうのていで逃げ延びたナヲエは、汚れるのも構わず、湿った地べたに四つんばいで呼吸を整えていた。
 今日は厄日なのか? それともあの迷信は本当だったのか?
 頭の中がなにも整理できていないナヲエを、次なる怪奇現象が襲う。

 ――……ラギュラ、ギュラギュラ……!
 なにかが猛烈な勢いで落ちた笹の葉をまきあげ、ナヲエの元に迫ってくる。
 だが、なぜ竹林の中で? その正体はすぐ目の前で脚を止めた。
 問題は――ナヲエには全く理解できない状況だ。
 数体の猪に引かれるメルヒェンな外観の戦車には、燦然と輝く《脱》の一文字!
 操者の手にはプリティ&ファンシーな装飾をちりばめ、先端には《脱》の一字が輝く棍棒を肩に担いでいる!
 そして……操縦者の玄信は、褌一丁だった。
「は……?」
 とても反応に困る様子のナヲエを玄信は戦車上から見下ろす。
「これからお主に天罰を与える。心当たりは……あるな」
「ふ、ふざけた格好して、なにのたまってんだい!? 天罰受けるようなことなんかしちゃいないよ!!」
 ――嗚呼、恐ろしきかな。この罪に対する意識の希薄さ!
 彼女と関わってきた者全てが過ちを正すことなく、また自らに過ちを正そうとも感がなかったのだろう。
 傲慢、増徴、独裁――もしかしたら、滝澤ナヲエはとっくの昔に『住民から見捨てられていた』のかもしれない。
 あとは関わった者達に団結するキッカケさえ生まれれば――玄信は勝機を感じ取る。
「そうか、ならば異端審問を始めるとしよう」
 悪意なき悪女への制裁に、玄信が招来させたのは光り輝く女神だった。

 ――アルダワ魔法学園の迷宮一角・スライムのプールに現れるという、水着姿の女神の幻影が降り立った。
「は? な、な……?」
『汝の罪を計りましょう――あなたは多くの者にその傲慢な感情や欲求を押しつけ、意に添わない者達を辱めました。そして、選民思想を集落の者にも強要し、陰から独裁していましたね?』
 厳格な裁判官のように、優しくも反論を許さぬ気迫でもって女神は審問し。
「わ、わたしは、……この土地に変なモンが入り込まないよう、注意してただけさね。 それのなにが悪いってのさ!? なんにも悪いことなんかないでしょ!!」
 よくもまあ、ていの良い言葉がホイホイ出てくるものだ。
 そうした機転の良さが、このババアを不利な状況から救い上げてきたのだろう。
 それでも、開き直ったセリフは『自身の行動を正当化している』以上の意味はない。
「では女神よ、審判を下すのじゃ」
 玄信の要請に応じ、女神は柔らかな微笑に冷ややかな視線を乗せて、光り輝く風を巻き起こす。
「こ、こんなの、おかしいじゃない!? どうしてわたしがこんな目に遭わなきゃいけないのよォォ!?」
(「……そのセリフ、エリナさんの前でも言えるのじゃろうな」)
 もはや枯れ落ちるだけの悪の華、いっそ手折られるより自ら散った方が幸せ。
 だが、誰かの幸せを奪う、それも感情的な理由でやっていたナヲエには、それでは手ぬるい。

 ――女神の放つ、竜巻の群れが竹を大きくしならせた。
 ミシミシと軋む音は竹が繊維にそって裂けている音。
 こけむした、湿り気の強い土がナヲエに降り注ぎ、土だらけになったナヲエは腰を抜かし、あっけにとられていた。
「……さあ在るべき場所へ戻るとしようか」
 チャリオットはなんやかんやで仕舞い込むと、玄信は女神の手を取って天に昇っていく……宗教画を思わす悠然と飛び去る姿を、ナヲエは絶句したまま、見送るしかできなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

高柳・零
草野さん(f01504)と

POW
ボケた人は昔と今が混同されてしまう傾向があります。趣味で作った戦車の出番ですね。

竹藪で八九式中戦車に乗って、ナヲエさんが来るのを待ちます。
来たら戦車を動かしてナヲエさんの進路を塞ぎ、戦車に乗ったまま出来るだけ低くて不気味な声でスピーカーから脅し文句を言います。
「もうジュウブンニイキマシタヨネ。チカゴロはワルさモシテルヨウデス死、オムカエにアガリまシた」

ナヲエさんが逃げ出したら、ゆっくりと確実に草野さんが居る方へ追い立てます。
「ニンゲン、死からハニゲラレませンよ」
草野さんの方へ行くのを確認したら、追うのはやめます。

「後は頼みましたよ、草野さん」

アドリブ歓迎です。


草野・千秋
零さんと/f03921

UCで音楽隊を召喚
普段はかわいい系の曲をこの人達には演奏させているんですけど、今回はちょっと趣向が違いすぎますね
零さんが戦車でナヲエさんを追い詰めたら音楽隊に教えた即興曲で更に追い詰めます

こびとの音楽隊はデスメタル調のごつい衣装
終始デスボイス


平穏に飽きた愚かな老人よ、過ちを犯し過ぎたな
老いた者は未来ある若者にとっての指標であるべきなのになんたることよ
誰もが最初は若造、過ちを侵したなら優しく手を取り指導するべきだろう
そこをお前は追い詰めた、若者の心を傷つけた罪は消せはしない、神は許さない
イエーイその愚かしい老人の名は!
NA・WO・E(ナヲエ)〜!

(ギュイーン)



 全力疾走を重ね、荒唐無稽な場面に何度も遭遇するハメになったナヲエ。
 齢90近い彼女にとって、体力も気力も大きく削がれるようなことばかりだった。
「今日は厄日だわ、そうに違いない……それにしたって、悪ふざけが過ぎる、わ……」
 杖を突くのもやっとな足取りのナヲエは、今日何度目かの絶句に陥っていた。
 目の前には再び戦車が立ち塞がったのだ――先ほどのような色物とは違う。
 八九式中戦車。ナヲエが成人する前に、満州事変、上海事変など多数の戦場を駆けた国産制式戦車だった。
「な、なんでこんなモノがここに……さっきから現れる連中の仕業!?」
 訳が解らないことばかりが続き、ナヲエはヒステリックにわめき散らす。
 スピーカーを起動する前に、零はナヲエの様子をじっくり観察。
「ふふふ、まさか趣味で作った戦車が役に立つとは……ボケた人は昔と今が混同されがちですからね」
 効果のほどが期待できそうだと確信し、スピーカーマイクを起動する。

「もうジュウブンニイキマシタヨネ? チカゴロは、ワルさモシテルヨウデス死、オムカエにアガリまシた」
 不気味な声で脅し文句をぶつける零に、しわくちゃな顔をしかめてナヲエは声を上げた。
「あ、あ、あんたも死神だってのかい! そんなのもう信じないわよ馬鹿!!」
「フ負府、損なこと言ッテモイイノデスカ? アナタの罪ハ地獄ノソコマデ知レワタッテイルノニ……アナタ、気ニイラナイ相手ダカラト、挨拶ニヤッテキタ女性ヲ追イ返シたデショウ?」
 零の言葉にナヲエはギクリと肩を跳ねさせた。
「ゴミ出シノシテイバショニ案内板モ立テズホウチ。打チアワセの時間モワザト遅イ時間ニオシエタ、アナタノ卑劣ナオコナイは地獄ノソコでも知ラレテイマス」
「あ、ぅあ……」
 あきらかに狼狽した様子のナヲエに迫るように、零は戦車を近づけていく。
 そのまま冥界送りにされると思い込んだのか、戦車と反対方向に逃げようと、残り少ない体力全てを注ぎ込もうとする。
 切迫した精神状態は零にとっても都合がよかった。
 ギュラギュラと走行用ベルトを響かせ、回り込むフリをしつつ誘導し、いよいよ千秋の元へ近づいていく。
「……後は頼みましたよ、草野さん」
 とにかくこの場を離れる以外にナヲエは思考が回らずにいた。
 戦車はとっくに追跡をやめていたのに――。

 ギュラギュラと独特の走行用ベルト音が近づいてきたことに気付き、千秋は音楽隊に視線を落とす。
「今回は趣向を大幅に変えた、あの人の為の一曲です。存分に聞かせてあげてください」
 千秋の言葉に、ベースの重低音やドラムを返事代わりに鳴らし、老婆の元へ一斉に向かう。
 ヘロヘロになりながら現れたナヲエは、まとめ髪もボサボサで土だらけ。
 だが、千秋たちの登場にこれ以上ないほど目を丸くした。
 ――居並ぶこびとの音楽隊はデスメタルを彷彿とする、ブラックTシャツにブラックジーンズ姿。

 地の底から這い出たような重いギターとベース音に、手数の多いスティック捌きでドラムが掻き鳴らされる。
「平穏に飽きた愚かな老人よ 過ちを犯し過ぎたな!
 老いた者は 未来ある若者にとっての指標であるべき なのになんたることよ!」
 千秋の歌声はうなるように悲しみ、苦痛に耐えた怒りのこもるデスボイス。
 がなり声で冗舌に語らいながらナヲエに全力をぶつけていく。
「誰もが最初は若造、過ちを犯したなら 優しく手を取り指導するべきだろう?
 そこをお前は追い詰めた 若者の心を傷つけた罪は消せはしない、神は許さない!」
 お前の行いは『全ては見られているのだ』と強調し、とどめのシャウトをたたき込んだ。
「イエーイ その愚かしい 《老人》 の名は!
 ――NA・WO・E〜!」
 耳をつんざくような甲高い雄叫びに、ナヲエはすっかり気圧されていた。
「もう、もう……わたしが、なにしたってのさぁ……!」
 ほとんど歩くような形で、その場から逃げていくナヲエの背を見つめながら、千秋は弦をひとつつま弾く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

乃董・鳩
「それじゃあ、れっつ、おどかしたーいむ」

調和が取れない迷惑プレイヤーには相応のペナルティを。
『地主の権威の威を借りる老害婆』が今回のキャラロール。
まずナヲエの顔をコピーして寄合所へ散らかし箒で先回り。
あらあらうふふこんにちわ、なんて適当に笑顔で中に入ってお茶をぐいっと一気飲み。
ナヲエが寄合所に来る頃まで気持ち下品に過ごす。
お菓子を汚く食べるとか、周りを食べカスだらけにするとか、無駄に大声でゲラゲラ笑ってみたり。
普段やらない、やり慣れないことだけど、頑張る。
時間を見計らって外に出る。同じ顔のまま本人とすれ違って挨拶。
『さっきまでここに居た自分とすれ違った』なんて話、笑い話にもならないね。



大規模多人数参加型RPG――俗に言う『MMO』という形式でもそうだ。
 味方を攻撃し始めるプレイヤーキラーをはじめ、レアアイテムの横取り。
 戦闘中にログアウトしたり、個人情報や公開前の実装データの引き抜き。
 いずれも運営会社の望む、あるいは利用者同士で築き上げていた『秩序』を故意に乱そうとする悪質行為だ。
 調和のとれない迷惑プレイヤーには相応のペナルティを――鳩は一人竹やぶではなく、ナヲエの目的地である寄合所を訪れていた。

 引き戸は施錠されておらず、田舎特有の防犯意識の低さを感じながら、鳩は六畳ほどの狭い個室にあがる。
 劣化の激しい和室には、薄汚れたちゃぶ台がひとつと、隅に薄っぺらい座布団が山積みされていた。
 誰も居ないことを確かめ、鳩は組織の協力者から借り受けたナヲエの顔写真を取りだす。
「それじゃあ、れっつ、おどかしたーいむ」
 グニャグニャと顔がスライムのように蠢き、写真に写る老婆と同じ顔つきに変わっていく。

 ――十数分後、複数の足音が近づいて引き戸の開く音が聞こえた。
「え、ナヲエさん?」
 お茶会のメンツは、ナヲエと同い年くらいの有閑マダムが数人。
 ナヲエ――に扮する鳩――を見つけ、一様にギョッと目を丸くする。
「もう、いらしてたのね?」
「うふふ、こんにちわ」
 すでに気味悪いモノを見るような、妙な空気が流れていく。
 女性達は銘菓のつまった箱をちゃぶ台に置き、お茶の準備をはじめた。
「どうしたのナヲエさん? いつもは『待たされるのは嫌だから少し遅れていく』って予定より少し後に来るのに」
 古くからの知り合いらしき短く白髪を切り添えた老婆が、普段と違う行動を気にかけて尋ねてきた。
「なに? 早くに来たら、いけないの?」
「……あなた、このあいだは『病院から帰るとき、息子が約束より5分も遅れてきたの。あり得ないわよね?』って言ってたじゃない」
 それは鳩の知らない情報だった。
 彼女達は『日頃のナヲエの素行や言動を熟知している』と言ってもいい。
 だからこそ、普段ではあり得ない行動というモノも、すぐに気がついてしまう。
(「これは……単純に、キャラロールだけ、こなしても、別人だって、気付かれそう」)
 普段やらない、やり慣れないことをしようとしているだけに、想定外の事態が起きうる気配に僅かな焦りを感じた。
 相手は行動パターンの設定された『村人A』ではなく、この集落で生活する『人間』――下調べなしで本人に扮したことで難易度が数段、跳ね上がってしまったらしい。

「アッハッハッハッハなぁにそれ? それより、今日のお茶菓子はこれ?」
 強引に話を切り替えようと、マダム達の用意した茶菓子の包みをビリビリと破りとる。
 中身のまんじゅうをパクリと頰張れば、舌の上に上品なあんの甘みが口いっぱいに広がっていく。
「…………」
 気にかけていたマダムは怪訝(けげん)そうな表情で、ナヲエに扮する鳩を凝視する。
 その後、お茶の準備が整ってからも、ご婦人方の会話よりお茶菓子をガツガツ食べたり、お茶を一気に飲むなど下品な振る舞いをみせていく。
 そのたび、寄合所の空気がいたたまれないモノに変わり、マダム達は互いに目配せする。
「はぁ~、なんだか眠くなってきたわ。お先に失礼するわね」
 頃合いを見て、ナヲエの振りを続ける鳩は寄合所を立ち去る。
 ――鳩の去った寄合所には濃厚な違和感だけが残り、内緒話をはじめるように老婆達は輪を狭めた。
「ねぇ、ナヲエさん……なんか変じゃなかった? いつもなら一人でずっと愚痴をこぼしてるのに」
「自分の言ってたことも忘れてたみたいだし、もしかして認知症?」
「前から短気だったけど、エリナさんが来てから妙にキツかったものねぇ……でも病気なら納得かも。息子さん大変になるわねぇ」
 互いに口にするのは、ナヲエへの疑惑の声。
 鳩は無事に危険な綱を渡りきったようだ。

●もっとも恐れるべきは
 UDC職員らが寄合所に仕掛けていた、隠しカメラの一部始終を、診療所の職員とともに猟兵達は確認した。
 職員はモニターを切って猟兵達に向き直る。
「おおむね目的通りの展開になったと思います。皆さんのみせた荒唐無稽な状況も説明したところで失笑されて、自分の発言すら記憶から抜け落ちたという複数の目撃証言。……信じるに値するモノが出ない以上、滝澤ナヲエの言葉に耳を貸す人は居なくなるでしょうね」
 職員も目に余るところを感じたのか、盛大な溜め息をこぼす。

 ――これだけで本当にいいのか?
 一部の猟兵達の視線に気付き、職員は神妙な面持ちをみせた。
「確かに他の女性らの言動も評価はできません。ですが。他者を厳しく罰しすぎれば、相互監視や密告が起こりうる……流言飛語、根拠のないデマだろうと人は鵜呑みにしてしまう」
 職員はそれが『もっとも危険な状況』だと言う。
 根拠のない噂のせいで迫害される――それはネット社会が成立した現代で、とくに恐るべき社会現象となりつつあるのだから。

 人間が無から有を生み出そうとするとき、新たな都市伝説も生まれるのかもしれない。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年07月13日


挿絵イラスト