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流言飛語のケダモノ(作者 木乃
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●噂話の作り方
「ほんとにさぁ、あのエリナさん? 都会育ちだかなんだか知らないけど、物を知らないにも程があると思わない?」
 閑散とした部落は、良くも悪くも平穏なものだ。
 事件の気配もなければ、少子化がすすんで成人祝いも出産祝いも滅多にない。

 見方を変えれば――彼女たちの『日々に変化がない』のだ。

 変化に餓えた者達にとって『噂話』はとても魅力的で。
 ――特に、余所からやってきた人間など格好の的だった。
 都会から嫁いできた女性、ともなれば特にそうだ。
「引っ越し初日には挨拶も来ないし、ゴミ出しの場所も確かめてないし、それに催事の打ち合わせにも遅刻してきたのよ? どんな教育を受けてきたのかしらねぇ」
 失笑まじりに言葉を重ねる老婆――瀧澤・ナヲエは部落の大地主の直系にして、いまや後継者の母。
 年功序列が根強い土地においては、絶大な影響力を持っていた。
 彼女が非難すれば、住民達も意向を自然と察していく。
 『あの女は私の意に添わぬ、気に食わない』と。

 あることないこと吹聴していれば、おのずと噂は本人の耳に入る。
 寄合所の前から逃げるように立ち去ったエリナ――望月・絵理奈は『事実と異なる』と怒りを感じていた。

 挨拶に来ない? 門前払いを受けたのは私なのに。
 ゴミ出しの場所? 看板もないのに分かるわけないじゃない。
 打ち合わせの遅刻? 聞いた時間よりもずっと早くに始めていたくせに。

「引っ越してきただけで、どうしてこんな扱いされなきゃいけないの? 年寄りだから偉いの? 地主の血縁だから偉いの? ……私がなにをしたっていうの?」
 自宅のドアを乱暴に閉めても収まるどころか、感情は膨れ上がる。
 ――理不尽だ。なにもかもが、理不尽極まりない。
 酷い。非道い。ひどいひどいヒドイヒドイ。
「……なんか、疲れちゃったなぁ…………ヘヒッ」
 絵理奈の体から次第に黒いモヤが溢れ、彼女は悪意ある怪異に変化していく。

●言葉は獣となり得る、その意味
「――というのが、UDC-HUMAN出現のいきさつです。生まれた土地で身分を決めてしまう、それも現代日本でですよ。一体いつの時代の価値観でしょうね?」
 肩を揺らして笑う李・蘭玲(老巧なる狂拳・f07136)は、普段通りに話を続ける。
「どうもUDCと化したエリナさんを狙って、邪教徒が周辺をうろついてまして。まずはそいつらを掃討してください。地元の人たちは『住民』だと思い込まされていますが、邪教徒を倒せば記憶から消えていくでしょう」
 なので、討伐自体は問題ない――すぐに一掃したほうがいい。
 蘭玲は補足を入れて本題に移った。

 今回のUDC-HUMAN、エリナは乗っ取られてすぐに山へ入るという。
「過疎が進んだ土地もあって、昼間の人通りは少ないです。おまけにエリナさんは山林を抜けた先の滝に身を投げる……入水自殺しようとしています」
 そのため道中で仕掛ければ、自殺はまず止められるだろう。
 問題はエリナ自身のほうだ。
「エリナさんは、理不尽な噂への悲しみに支配されています。ですが、UDCに変異したてで正気は残っているはず」
『仕方ない』と諦めさせようとすれば、反感を買ってしまう。
 《事情を踏まえた説得》あるいは《エリナを傷つけずに討伐》できたらベストだろう。
「手段は皆さんの腕の見せ所……ということで、作戦を考えておいてくださいね?」
 だが、エリナを救出できてもナヲエの流言飛語(りゅうげんひご)が続けば、同じ事の繰り返しになりかねない。

 蘭玲は満面の笑みを浮かべた。
「エリナさんを救出しましたら、ナヲエさんにきついお灸を据えてくださいな。ただし物理的な制裁はNGですよ? 彼女の影響力を逆手にとった方法が望ましいですねぇ」
 ナヲエが影響力を持つ理由のひとつは年功序列の上位者、つまり『高齢者』であること。
 もし無根拠な噂、ありえない話を口にし始めたとなれば……『ああ、ついにボケが』と思いやるのが人間というもの。
「いやぁ、楽しみですね……ボケたと憐れまれて、誰も耳を貸さなくなる光景。エリナさんの悪評もあっという間に立ち消えますよ」
 容赦ない制裁方法をあげながら、上品に笑っている蘭玲。
 これがクソババア発想か――手心を感じない姿勢に背筋が凍える錯覚を覚えつつ、猟兵たちはUDCアースへ向かう。





第3章 日常 『人間の屑に制裁を』

POW殺さない範囲で、ボコボコに殴って、心を折る
SPD証拠を集めて警察に逮捕させるなど、社会的な制裁を受けさせる
WIZ事件の被害者と同じ苦痛を味合わせる事で、被害者の痛みを理解させ、再犯を防ぐ
👑5

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●過ぎたるは及ばざるがごとし
 猟兵らの協力で救出されたエリナは、診療所として運営している最寄りのUDC関係機関で治療を受けることになった。
 しばし待合室で待っていると、看護師から奥の部屋に来るよう呼ばれて、組織の担当医から診断結果を通達された。
「望月絵理奈さんの命に別状はありませんが、UDCに憑依されていた影響とストレス性の神経症で、心身ともに衰弱していました。また栄養失調の疑いもあるので、今日は大事をとって当院で休んでもらおうかと」

 ひとまず身柄を保護できたと安堵する面々に、
「そのほうがそちらも動きやすいでしょう、この後?」
 医師は意味ありげな含み笑いを向けた。
「ナヲエさん、これからいつもの寄合所でいつものメンツとお茶会するけど……寄合所に行くとき、竹やぶの中を通らないといけなくてさ。人の気配はないし、静かなところだし……幻覚とか見えてもおかしくないんじゃないかなー?」
 ――そこで脅かしたとしても、他の住民に見られることはない。
 医師は暗に告げる。

 因果応報。
 善の業。悪の業。積み重ねてきた業は、いずれその身に返ってくるモノ。
 滝澤ナヲエ――傲慢なる老婆に、再起すら叶わぬ鉄槌を下せ。


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 補足情報。
 第三章では滝澤ナヲエへの制裁を行っていただきますが、以下の特殊ルールが発生します。

 ・物理的な制裁はNGです (怪我そのものが証拠となってしまうため)
 ・殺害してはいけません (同情を買ってしまう立場になるため)
 ・オープニング内やマスターコメントにもヒントがあります、
  参考にして頂いて構いません。
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 リプレイ執筆開始は『7/9(木)21:00~(予定)』です。
 よろしくお願いします!