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子供たちへの鎮魂舞

#カクリヨファンタズム #鎮魂の儀

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#カクリヨファンタズム
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#鎮魂の儀


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●祈り破れて
 たくさんの子供が犠牲になった。
 子供達の骸魂を悼み浄化するために、儀式を執り行う巫女に選ばれたのもまた、子供だった。
「……タンタン、みんナ、ごめんネ。ワタシ、ちゃんと、送るカラ」
 屍に等しく死に近しい少女は、死者の鎮魂に最も適した人選に間違いなかった。
 ……だというのに。
 鈴を鳴らし、祝詞を唱え、順調に進む儀式の佳境。
 少女は、ふいに瞠目して舞を中断し、儀式の依り代としていた大樹を見上げた。
「──! どうシテ……!」
 遠巻きに見守っていた妖怪達にざわめきが走る。
 呆然と少女が見上げる大樹の梢に、蛍のような小さな光が数多に灯り、明滅している。
 その光が、一挙に黒色へと反転した。
「だ、ダメ……みんナ、いけナイ……」
 制止の言葉を振り切って、黒い光は一斉に四方へ散った。
 悲鳴が上がった。大量の黒い光が妖怪達を追い立てているのだ。混乱が街中に広がっていく。
 少女は目にいっぱい涙をためてかぶりを振りながら、だめ、ダメ、と繰り返す。
「みんナ……ダメーーーー!」
 黒い光の群れに手を伸ばし駆け出した少女の額を、一回り大きな黒い光が背後から撃ち抜いた。

●グリモアベース:ゲネ
「新たな世界のことは諸君も聞き及んでいると思う。その名もカクリヨファンタズム! UDCアースの傍らに寄り添う、幽世の世界だ」
 ゲネ・ストレイ(フリーダムダイバー・f14843)はホロモニターにカクリヨファンタズムの情景を映し出した。様々な文化の様々な時代の景色がランダムに連なる、郷愁に満ちた不思議な世界。
「棲んでいるのはUDCアースの人々に忘れ去られた多種多様な妖怪達。ところがこの地球から幽世への移動も、決して楽な行程じゃないらしい。実際かなりの数の妖怪が移住に失敗して、死んで骸魂と化している」
 骸魂は妖怪をオブリビオン化する危険な存在。
 しかし妖怪達にとってはもともとは仲間だ。彼等は骸魂を心から悼んでおり、時折大規模移動に失敗した妖怪達のために「鎮魂の儀」を執り行うこともある。儀式が成功すれば、骸魂達は花や樹木の糧となって浄化されるそうだ。
「……が、成功があれば失敗もある。今回予知されたのは、まさしく儀式の失敗だ」
 ゲネはモニターを反転させ、こんもりとした山型の、古めかしい中華風の街並みを映し出して見せた。長々と続く坂や階段の周囲にごちゃごちゃと店舗がひしめき合い、蒼い夜空を大量の赤提灯が明るく照らし出している。
「この街には数度に分けて妖怪が移り住んだらしいが、最後のグループは移民に失敗して全滅した。子供型の妖怪の中でも、本当に年若い子供達がたくさん犠牲になったようだ」
 妖怪達は大いに悲しみ、犠牲になった子供らより少し年かさの、若いが有能な巫女を主祭司に立てて鎮魂の儀を執り行おうとしている。
 が、何かの要因で失敗に終わってしまうらしい。骸魂は暴走し、草花に取り憑いてオブリビオンとなったり、なんらかの障りをもたらすだろう。
「残念ながら儀式の失敗は防げない。しかしオブリビオンを撃破していくことで骸魂に呑まれた妖怪達を救うことは可能だ。オブリビオン化していない妖怪も障りによって暴れ出しているみたいだから、そちらも対処してほしい」
 ゲネはモニターを転送術式の光で満たして、勇ましく呼びかける。
「急ぎ現地に向かい、事態の収拾を頼む! いざ、古き良きノスタルジーの妖怪世界、カクリヨファンタズムへ!」


そらばる
 カクリヨファンタズム、鎮魂の儀事件。
 儀式失敗によって混沌と化した街を救ってください!

●第一章:集団戦『骸魂童子』
 儀式場に集まった骸魂達が、妖怪ではなく街の周囲の蓮の花に乗り移って、子供の姿でオブリビオン化しています。
 精神は移民時に犠牲になった子供らのもの。
 妖怪を飲み込んでいないので非常に弱々しい存在ですが、何かなぐさめの言葉などをかけてやれば、より対処しやすくなるかもしれません。

●第二章:冒険『妖怪横丁大騒ぎ』
 骸魂に乗り移られた街中の草花が障りを起こし、街の妖怪達が暴れまわっています。
 これらに対処しつつ、坂の上の儀式場を目指してください。

●第三章:ボス戦
 骸魂に飲み込まれた主祭司と戦います。

※カクリヨファンタズムのオブリビオンは「骸魂が妖怪を飲み込んで変身したもの」です。
 飲み込まれた妖怪は、オブリビオンを倒せば救出できます。

 執筆の進捗やプレイング締め切りなどは、マスターの自己紹介ページで呟いております。目安にどうぞ。
 それでは、皆さんの自由なプレイングをお待ちしています!
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第1章 集団戦 『骸魂童子』

POW   :    怪力
レベル×1tまでの対象の【尻尾や足】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD   :    霊障
見えない【念動力】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
WIZ   :    鬼火
レベル×1個の【鬼火】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●明るい街の、暗い袂で
 赤ちょうちんに明るく彩られた街は、蒼い夜に光り輝く山のように佇んでいる。
 その周辺は青く暗い泉に満たされ、街の入り口へ朱塗りの太鼓橋がジグザグと連なっている。
 儀式場から散開した骸魂達は、泉に浮かぶ幾輪もの蓮の花へと取り憑いた。
 骸魂に取り憑かれた蓮の花は、喪服めいた黒い着衣の子供型オブリビオン『骸魂童子』となって、橋の欄干の上に等間隔に佇んでいる。
 童子らの目は、深く閉ざされている。
「……さむい……いたい……」
「くらいよう……」
「みんな……どこ?」
「かーちゃんどこぉ……」
 胸を締め付けるような嘆きの声が、ぽつりぽつりと童子らの口からこぼれ落ちていく。犠牲となった子供達の声だ。
「……だれか、いるの?」
 橋の手前で水際を踏んだ猟兵の足音に、最も間近に佇む童子が暗い表情の顔を上げた。
 目は見えていないようだが、耳は聞こえているらしく、気配を察知する力もあるようだ。
「ねぇ……ここはさむいよ、くらいよ……だれでもいい……だれか、たすけてよぅ……」
 幼い悲しみが、苦しみが、痛みが、猟兵に牙を剥こうとしている。
 妖怪の身体を媒介していない童子らは、ひどく儚い存在。猟兵の力ならば退けるのは容易い。
 彼等の悲しみに触れて、少しでもその心を癒せたならば、戦いすら避けられるかもしれない。
 あたかも黄泉路の如き太鼓橋の道程で、童子らの物見えぬ眼差しが、猟兵達の選択を見つめている。
紫谷・康行
子供なら
遊ぶのがいいだろう
少しくらいやんちゃな方が子供らしいと言うもの
日が暮れて家に帰るときまでは
泥だらけで笑うといい

「君達と遊んであげよう」
そう声をかけて骸魂の前に立つ
「俺を捕まえられたらこれをあげよう」
手に饅頭を持ち鬼ごっこに子供を誘う

饅頭はいくつも用意して袋に入れておく

街を壊さないように気を付けて逃げ回り
上手く追いかけてきた子供には掴まってあげる
約束通り饅頭を渡し子供の頭を撫でようとする

ひとしきり鬼ごっこをして骸魂達と遊んだら
「そろそろ家に帰る時間だよ」
と言って無言語りを使い
彼らを無かったことにしていく
未来を、無かったことにする
彼らが街を壊す未来を

楽しかった記憶があるなら消えないといい



●鬼ごっこでお別れ
 しんしんと沁みる童子らの悲しみへと、紫谷・康行(ハローユアワールド・f04625)はまっすぐに踏み込んだ。
 欄干の上に立つ童子の前に立ち、閉ざされた瞳をひたと見つめる。
「君達と遊んであげよう」
「……ぇ」
 童子の暗い表情に困惑が浮かんだ。
 康行はとぼけたような笑顔で語り掛ける。
「子供なら遊ぶのがいいだろう。少しくらいやんちゃな方が子供らしいと言うもの。日が暮れて家に帰るときまでは泥だらけで笑うといい」
 犠牲になる前の子供らの日常を掘り起こすような言葉。
 そして差し出される、甘い香り。
「俺を捕まえられたらこれをあげよう」
 康行は饅頭を手に童子らをいざなうと、答えを聞かずに身を翻した。
 太鼓橋を行き交う康行の足音と、饅頭の甘い香り。
 童子らは本能的に、しかしどこか戸惑いも含んで、動きまわる康行を追う。初めは本気で掴みとろうとしては、軽々と避けられてを繰り返し……
 誰からともなく、小さな笑い声が上がった。
 勢い余って地面に突っ込んでしまった童子が照れ臭そうに笑う。思いっきり走り回る心地よさに、躱されて手が空を切る小気味よい感覚に、くすくすと笑い声が伝染していく。
 頃合いを見て、康行はわざと足をからげて隙を作ってやった。
 うまく距離を詰めてきた童子が全力で飛び込んでくる。康行の腰に抱き着いたその膂力は、オブリビオンの力ではなく、子供の腕力そのものだった。
「おっと、つかまった。じゃあ約束通りご褒美だ」
「わぁ、お饅頭……!」
 饅頭を受け取り、おとなしく頭を撫でられる童子の顔に、もはや悲しみの色はない。
 盛り上がる鬼ごっこ、途切れることのない笑い声。日暮れはとっくに過ぎているけれど、目の見えない童子らの視界には、きっと綺麗な夕焼けが映し出されているだろう。
 ひとしきり遊び、饅頭も配り終えて、康行は童子らに柔らかく笑いかけた。
「そろそろ家に帰る時間だよ」
 それは、彼らを無かったことにする虚無の言霊。
 未来を、無かったことにする。
 彼らが街を壊す未来を。
「……楽しかった記憶があるなら消えないといい」
 慈悲の籠った言葉に、童子らは澄んだ微笑みを返した。
「うん。遊んでくれてありがとう、おにいちゃん!」
 ぱっと光が瞬いて、童子らの姿は弾けて消えた。黒い光は白い光に反転し、天に上るように消えていく。
 桃色の蓮の花びらが光に散って、泉の水面を美しく彩った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

百鬼・葛葉
子供達のお世話ならおまかせですよっ!
…今回みたいなことも。さみしいことですが、私の管轄ですっ
大きく、大きく歌いながらゆっくりと歩いていきます
歌は祈り。そして悲しみを祓う破魔の力です
子供達を誘惑する、郷愁を誘う歌でおびき寄せて…集まったなら、みんなでおててをつないで歌いましょうっ
歌って、歌って…

さぁ、そろそろみんなで還る時間ですよ

最後の仕上げに、マリーツァと歌い上げましょう
この歌の聞こえる範囲はママの領域
私はあなたたちの本物のママではありませんが…どうか、ママの腕の中でゆっくりとおねむりなさい
次に目が覚めるときは…きっと、楽しいことがたくさん待ってるはずですっ!
だから、みんな…おやすみなさい



●子守歌
「子供達のお世話ならおまかせですよっ!」
 朗らかに名乗り出たのは百鬼・葛葉(百鬼野狐・f00152)。悲しげな童子達の佇む橋を見渡し、その笑顔に少しだけやりきれないものが滲む。
「……今回みたいなことも。さみしいことですが、私の管轄ですっ」
 葛葉は瞳を伏せると、深く深く息を吸い込んだ。
 肺に酸素を一通り循環させて……改めて開いた喉から、歌が解き放たれる。
 大きく、大きく歌いながら、ゆっくりと橋の上を歩む葛葉。透明な歌声が一帯に響き渡る。
 歌は祈り。そして、悲しみを祓う破魔の力。
 童子らが、誘われるように暗く伏していた面を上げる。目は見えぬまま、郷愁を誘う歌声を正面に捉えようと葛葉の姿を追いかける。
 やがてふらふらと、誰かが欄干を下りた。一人、一人とそれに続き、幾人もの童子が葛葉の後に列を為してついてくる。
「みんなでおててをつないで歌いましょうっ」
 葛葉は次の太鼓橋へと折り返す砂州にたどり着くと、童子らを振り返り両手を差し伸べた。
 手と手が、おずおずとつなぎ合わされる。葛葉を留め具にした童子の輪ができあがった。
 葛葉の歌につられるように、童子らの歌も重なっていく。歌って、歌って、たっぷり歌って……
「さぁ、そろそろみんなで還る時間ですよ」
 葛葉の歌が曲調を変えた。
 それはマリーツァ。子供達の健やかな成長を願う、母の祈り。
 歌声の広げる母性の領域が、童子の心を揺さぶっていく。童子らの閉ざされた瞳から、透明な涙が零れ落ちていく──
(「私はあなたたちの本物のママではありませんが……どうか、ママの腕の中でゆっくりとおねむりなさい」)
 葛葉の祈りに応じるように、童子らの姿が淡く透け始めた。
「おかぁ、さん」
 どことも知れぬ虚空を見上げて、童子の姿が次々に光に弾けて消えていく。
 残された黒い光は白に反転して、空を昇っていった。
「次に目が覚めるときは……きっと、楽しいことがたくさん待ってるはずですっ!」
 散りゆく光と蓮の花弁に彩られながら、葛葉は子供らの骸魂を見送る。
「だから、みんな……おやすみなさい」
 骸魂は星々のように蒼い夜空を彩って、静かに消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒覇・蛟鬼
あなた達は……お友達とはぐれてしまったのですか?
大丈夫ですよ。私があなた達を送り届けましょう。
そう、“お友達”の元にね……
■闘
最初は友好的に接し、相手が油断したところを仕掛けましょう。
妖怪が取り込まれていない以上、遠慮は無用ですな。
纏まっている骸魂たちを水面蹴り気味の【構え太刀】で蹴り払い、
【範囲攻撃】でその身体をばっさりと立ちますか。
残った者には「こちらへ来なさい」と告げ、【恐怖を与え】ます。

抵抗するならその腕を【グラップル】で止めて動きを阻害し、
其の場で【カウンター】させて頂きます。

私は嘘などついてはおりません。あなた方の“お友達”がいる
場所へ続く道を開いたのです。

※アドリブ歓迎・不採用可



●厳しき導き
 荒覇・蛟鬼(鬼竜・f28005)に、容赦してやるつもりはさらさらなかった。
「あなた達は……お友達とはぐれてしまったのですか?」
 最初の接触はあくまで友好的に。
 目を閉ざした童子の顔が、ゆるりと蛟鬼を向く。翳る表情の向こう側に、救いへの期待が浮かび上がる。
 そこに警戒心が潜んでいないことを確信しつつ、蛟鬼はあくまでも紳士的に呼びかけを続ける。
「大丈夫ですよ。私があなた達を送り届けましょう」
 無防備な蛟鬼に興味を惹かれたように童子らが集まってくる。
 たすけて、たすけて。ぼくらを帰して。訴える数多の幼い声。
「──そう、“お友達”の元にね……」
 蛟鬼の声が深みを帯びると同時、その姿が掻き消えるように沈んだ。
 瞬間、鋭い足払いが水面に満月を描き出すような見事な円を描いて、童子らを薙ぎ払った。すっぱりと乾いたものを断ち切る手応えと共に、童子の身体がパラパラと蓮の花弁となって散っていく。
 見えぬ目でも他の童子の消失を悟ったのだろう、残った数人が信じられないとばかりにかぶりを振りながら後ずさる。
「……どう、して」
「妖怪が取り込まれていない以上、遠慮は無用、ということですな」
 蛟鬼はきっぱりと断じた。それは竜神族の、神が神たるがゆえの厳しさと言えるかもしれない。
「さあ、他の子も。こちらへ来なさい」
 優しいような得体の知れないような呼びかけに、童子らに戦慄が走る。
 それは、まぎれもない恐怖。
 童子らは顔色を変えて鬼火と念動力を一斉に蛟鬼へ解き放った。
 しかし妖怪を媒介せぬ骸魂の力は知れたもの。蛟鬼は構わず突進し、見えざる闘気であっけなくそれらを散らしながら童子に組み付いた。
「うそつき……うそつき、うそつき、うそつき!」
 完全に捕縛された童子がわめき散らすが、蛟鬼は一切表情を動かさない。
「私は嘘などついてはおりません。あなた方の“お友達”がいる場所へ続く道を開いたのです」
 そしてそれこそが、彼らにとっても救いとなる。
 鋭い打撃音、散発する悲鳴、散る蓮の花。
 幾多もの黒い光が色を薄めながら蒼い夜に浮かび上がり、やがて白い光となって消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

瞬を拾った身としてはこういう子達は放って置けなくてねえ。あの時の瞬は両親の遺体と、里の人達の遺体の中で呆然自失してた。だから、在り得ざる存在だとしても、辛い気持ちは良く分る。・・・何とかしてやらないとね。

まず赫灼のアパッショナートで童子の子達を周りに集める。童子の子の頭を撫でて、優しく抱きしめてやる。寂しかったよね、もう大丈夫だ。良かったら童子の1人を膝に乗せて歌を歌ってやろうかね。最後は優しい子守唄を【歌唱】して送ってやる。おやすみ、来世でまた会えるといいね。


真宮・奏
【真宮家】で参加

寂しいですよね、お気持ちは良く分ります。私も1人になったら寂しいですからっ!!とても放って置けません。さあ、一緒に遊びましょう!!

童子の子達の輪に飛び込んで絢爛のクレドでくるくる踊ります。さあ、一緒に踊りませんか!!きっと楽しい気分になります。よければ手を繋ぎましょう!!お上手です!!

・・・少しは寂しい気持ちも晴れましたか?いつまでも踊っていたいけど、お別れです。送るのは満面の笑顔で。来世でまた会えたら、また一緒に踊りましょう!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

僕は里の壊滅で身内全て無くしましたし、母さんと奏がその場に現れなかったら・・・と思うとぞっとします。だから、この童子達の気持ち、痛い程良く分るんですよね。寂しいですよね・・・何とかしてあげないと。

まず童子の子達に草団子を渡してご挨拶。童子の子達を周りに集めて精霊のフルートで清光のベネディクトゥスで精霊を呼び出して、精霊と童子の子達を遊ばせます。その風景を見て思わず微笑みます。

名残惜しいけどお別れしなければいけませんね・・・精霊の皆と童子が還っていくのを見届けます。来世では、いい縁に恵まれますように。



●遊興のひとときをはなむけに
 蒼い夜に浮かび上がる太鼓橋の連なりに、ぽつぽつと佇む童子たち。
 その姿を見て、真宮・響(赫灼の炎・f00434)の胸には複雑な想いがあった。
「瞬を拾った身としてはこういう子達は放って置けなくてねえ」
 思わず零れ落ちた呟きは、傍らに立つ神城・瞬(清光の月・f06558)に拾われていた。
 二人の脳裏に、同じ光景が浮かび上がる。
 出会ったあの日。壊滅した里で、日常を共にしていた人々と両親の遺体の中で、呆然自失の状態にあった小さな子供。
 だから、辛い気持ちは良く分かる。たとえ、在り得ざる存在だとしても。
「……何とかしてやらないとね」
「……ええ」
 言葉少なに頷いて、瞬は響の後に続いた。
(「里の壊滅で全てを失ったあの日。母さんと奏がその場に現れなかったら……」)
 今でもぞっとする。寄る辺を無くした子供の……童子らの気持ちは、痛いほどわかる。
「寂しいですよね……何とかしてあげないと」
 呟きは、憐憫だけではない強さを響かせた。
 その声に引き寄せられるように、童子らの顔が真宮家の面々を向く。
「……だれ?」
「……だれ?」
「助けてくれるの? ……それとも」
「ぼくらを見捨てるの……?」
 口々に発される不安げな言葉は言霊となり、鬼火を闇夜に灯していく。
 そんな童子らの前に誰よりも真っ先に踏み出し口火を切ったのは、真宮・奏(絢爛の星・f03210)だった。
「寂しいですよね、お気持ちは良く分ります。私も1人になったら寂しいですからっ!!」
 奏の情緒はとても純粋だ。この場合は共感と正義感、その二つだけ。
「とても放って置けません。さあ、一緒に遊びましょう!!」
「あそ、ぶ……?」
 周囲の童子らに困惑の色が浮かぶ。
 響は奏の肩に手を置きつつ、童子らに語りかけた。
「まあそう急ぐもんじゃない、まずは他の子らを集めてからだ」
 深々と息を吸い込んだかと思えば、響の喉からたちまち見事な歌声が溢れ出した。
 聞く者の心を震わせる情熱的な歌が泉に響き渡る。知らず知らず歌い手を見ていたいという感情を覚え、童子らがふらふらと響の周囲に集まってくる。
 歌い終えたのちも余韻を響かせながら、響は童子らに歩み寄り、一人一人の頭を撫でてやった。
 童子らは響の顔を見上げるように、歌の消えていったほうへとぽかんとして顔を向けている。その無防備な子供そのもののたたずまいを、響はいとおしげに優しく抱きしめてやる。
「寂しかったよね、もう大丈夫だ」
 慈悲深い囁きに、自然と響への距離を詰めていく童子たち。
 瞬は怯えさせぬよう腰を落として童子らの顔を覗き込む。
「初めまして。僕らはあなたたちの敵じゃないよ。お近づきのしるしにこれをどうぞ」
 差し出されたのは持ちやすいように串を打たれた草団子。
 童子らは鼻をすんとうごめかして甘い草の香りを確認すると、それを素直に受け取っていった。甘味を口に運べばわずかずつ笑顔が零れる。警戒も緩んだようだ。
 瞬は精霊のフルートを取り出し、美しい旋律を奏でて精霊を呼び出した。
 精霊達が童子らの周囲を美しく飛び交う。
「わあぁ……」
「ひかってる!」
「ようせいさん? きれー!」
 目の見えぬ童子らにも、物質ではない精霊の姿はおぼろげな光に認識できるらしい。
 精霊達に誘われて、無邪気に遊び始める童子達。辺りに浮かぶ鬼火からも敵意は消えて、夜を照らす無害な明かりとなって周囲を彩っている。
 罪のないその光景を見つめて、瞬の口許には我知らず柔らかな微笑みが宿っていた。
「さあ、一緒に踊りませんか!! きっと楽しい気分になります。よければ手を繋ぎましょう!!」
 奏は無邪気な笑い声響く童子らの輪に飛び込んで、得意のダンスをくるくると踊る。
 童子らは手を引かれ、精霊達の光の力も借りて、目が見えないなりに奏の動きを感じながら一緒に踊る。最初はぎこちなく、少しずつ楽しげに、躍動的に。
「お上手です!!」
 明るく元気な奏の賞賛と、応えるような笑い声の連鎖。
 その様子を、響は膝に童子の一人を乗せて歌ってやりながら眺めていた。その周囲には、元気な遊びに染まぬ子らや嘆きの深い子らが響の歌唱に癒しを求めて、彼女にしなだれかかるように集まっている。
 踊り疲れたらしい童子の一人が、閉ざした目元をこすり始めたのを見て取り、奏は踊りをやめて声をかけた。
「……少しは寂しい気持ちも晴れましたか?」
 問われ、童子はきょとんとして……ゆっくりと、何かを呑み込んだような顔つきになって、自分の胸元を見下ろした。
 ……理解しているのだろう。どうすべきか。本当は自分がどうあるべきか。
 瞬もフルートから唇を引き離した。精霊達が名残惜しげに瞬きながら瞬の元へと戻っていく。
「名残惜しいけどお別れしなければいけませんね……」
「ええ……いつまでも踊っていたいけど、お別れです」
 鬼火だけが辺りを彩る蒼い夜。別れを惜しむ気持ちはあっても、童子らの顔に涙はない。
 もう悲しまなくても大丈夫。たくさん楽しんで、癒された経験を持って逝ける。
「……ばいばい」
 童子の一人がそう呟くと、たくさんの「ばいばい」が連鎖した。楽しかったよ、ありがとう、また遊ぼうね。前向きな別れの言葉がいくつもいくつも重なっていく。
 響が子守歌で童子らを送る。優しい歌声に背を押されて、童子らの姿が光に弾けて次々消えていく。大量に散る蓮の花弁。黒い光は白い光へ反転し、空へと昇る。
「来世でまた会えたら、また一緒に踊りましょう!!」
「来世では、いい縁に恵まれますように」
 奏は悲しみを吹き飛ばすような満面の笑みで。瞬は精霊達とともに穏やかに。夜空を見上げて光を見送る。
 子守歌が終わると共に、最後の童子は響は腕の中で形を失った。
「おやすみ、来世でまた会えるといいね」
 夜空へと去り行く幼子の魂を、親子は静かに見送った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
子供達を救えなかった自分の非力がとても悔しいのですが・・・、せめて鎮魂は成し遂げたいと思います。

響月による【楽器演奏】で子供達が好きそうな明るい曲を演奏します。
(楽器は竜笛ですが、ヒーローズアースで子供達に人気の明るい曲を選択)
『骸魂童子』さん達が要望出して来たら、それに応える様に様々な曲を。

『骸魂童子』さん達のリクエストに応えたら、次の曲として「眠り歌」を吹きます。
【楽器演奏】しつつ【浄化・破魔】もプラスすることで、子供達の骸魂を安らかな眠りに誘います。

眠った子供達に「どうか安らかに眠って下さい。そしていつの日か生まれ変わって下さいね。」と一人一人の顔を優しく撫でて、祈りを込めて。



●眠れ良い子よ
「こんなにもたくさんの子供が犠牲に……」
 悲劇を象徴するような泉の光景に、大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)は息を詰めた。
 救われなかった子供達がいる現実と、その現実を打ち破ることのできない自分の非力がとても悔しい。
「……せめて、鎮魂は成し遂げなければなりませんね」
 決意を胸に、詩乃は横笛の歌口にそっと唇をつけた。丁寧に息を吹き入れると、漆と金に装飾された美しい龍笛が軽やかな音をたてた。
 魂に染み入る音色が軽やかな旋律を奏で始めた。明るく、わかりやすく、子供達が好みそうなフレーズの反復を含む曲調。ヒーローズアースで子供達に人気のアニメーションの主題歌だ。
 心躍る笛の音に、パラパラと童子らの顔が上がる。
 詩乃は一曲奏し終えると、好奇心を覗かせる童子らへと微笑みかけた。
「お好きな曲があったら仰ってくださいね。私の力の及ぶ限り、心を込めて吹かせていただきます」
「……なんでも、いいの?」
 間近の童子がおずおずと声を上げた。詩乃が「はい!」と明るく返すと、童子は少し考えて、ゆきやこんこん、と呟いた。
 詩乃は即座にリクエストされた童謡を奏で上げた。手を叩きたくなるような弾むような曲調で子供心をくすぐっていく。
 気づけば詩乃の傍に幾人かの童子らが集まっていた。曲が終わるとすぐにリクエストが飛び交う。
 童謡、アニメソング、スーパーで流れるキャンペーンソング。詩乃はなんでも奏してみせた。知らない曲、題名が判然としない曲などは、童子に歌ってもらってそれに合わせて即興で曲を吹いた。当たっていれば拍手、はずれていたら笑い声。曲を通したコミュニケーションで、徐々に童子らと打ち解けていく。
 リクエストも出尽くした頃、詩乃は自分から新たな曲を提案してみせた。
「この曲は、私からの贈り物です。ぜひ聞いてくださいね」
 龍笛が奏で上げるのは、打って変わって穏やかで美しい「眠り歌」。
 心を寄せて聞き入る童子らに、瞬く間に眠気が伝染していく。あくびが上がり、船をこぎ、目元をこする。音色に乗せた浄化と破魔の力がその身を包み、骸魂が安らかな眠りへと導かれていく……
「どうか安らかに眠って下さい。そしていつの日か生まれ変わって下さいね」
 すっかり眠りについた童子ら一人一人の頭を、祈りを込めて優しく撫でる詩乃。
 蓮の花弁に弾けた童子らの骸魂は、白い光に反転して空を昇っていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

木霊・ウタ
心情
子供が犠牲とはやりきれないぜ

辛かったよな
家族や皆と一緒に暮らしたかったよな
未練があるのは当然だぜ

だからこそ
仲間だった妖怪たちを傷つけさせちゃダメだ
海へ送ってやらなきゃな

手段
中華風の曲をギター爪弾く
二胡風のアレンジでなんとか夜曲ってカンジで
もし童子たちが何か口ずさんでくれたら
それに合わせて奏でるぜ

思い出を引き出してやりたい
楽しかった記憶で心が一杯になれば
絆がしっかりと結ばれている事を思い出せたら
海へ向かう勇気が生まれる筈

こいつらは子供だけど
何をしなくちゃいけないのか
自分達がいるべき場所がどこか
きっと判ってる

UCで力添え

事後
泉の畔で
子供達から教えてもらったばかりの曲を
蓮の花に聞いてもらうぜ



●ふるさとを想いながら
「子供が犠牲とはやりきれないぜ」
 木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は橋を踏みしめ、欄干に並ぶ子供らを見渡した。
 だれ、見えない、たすけて。ぽつぽつと零れ落ちる悲しみが、胸を締め付ける。
「辛かったよな。家族や皆と一緒に暮らしたかったよな。未練があるのは当然だぜ」
 ウタは童子らに呼びかけながら、肩から下げたギターの弦をつま弾いた。
「だからこそ、仲間だった妖怪たちを傷つけさせちゃダメだ。俺が海へ送ってやるよ……!」
 情感を込めて奏でられるのは、ひずむような独特の高低音をうねらせる、二胡に似せた中華風の響き。それは古き良き時代の、郷愁を掻き立てる美しくも枯れた旋律。
 心の傷に触れるような音色に、童子らはぼんやりと耳を傾けている。
 二胡の響きの深く長い余韻の中で、童子の一人が口許を動かし始めた。
 歌だ。国籍不明の童謡……いや、民謡に近い響き。UDCアースでの、妖怪達の故郷の歌なのだろうか。
 歌は少しずつ他の童子らにも伝染していく。子供特有の、調子っぱずれだったり一本調子だったりする歌声が重なるにつれて、ぼんやりとメロディが浮かび上がる。
 ウタはその歌声に合わせてギターで伴奏を奏でてやった。探り探りのセッションは徐々に美しい調和を見出し、童子らの思い出を引き出していく。
「……ゆうやけこやけだ」
「おかーさん、むかえにきたよ」
「うちもだー」
 呟くような童子らの言葉に、明るい感情が滲む。閉ざした瞼の向こう側で、楽しかった記憶をたくさん思い出している。しっかりと結ばれていた絆を。
 それは、骸の海へと向かう勇気となる。
「今日もたのしかったね」
「ばいばいだね」
「うん、ばいばい、また明日ね」
 思い出の中で手を振りあって、童子らの姿は次々に光に弾けて蓮の花弁を散らし始めた。
 彼等は子供だが、理解している。何をしなければならないのか、自分達がいるべき場所がどこなのか。
(「きっと、判ってる」)
 ウタの歌声が、悲しくも前向きな旅の始まりに力を添える。
 いくつもの光が散りゆく中、最後に姿を残した童子が、猟兵を振り返る。
「ありがとう」
 最後の光が弾けて、蓮の花びらは風に散って夜を彩った。
 白い光が踊るように蒼い空へと消えていく。
 泉の畔に、ギターの弦が鳴く。
 喜び、怒り、悲しみ、楽しさ、郷愁。全てを乗せた童子達の民謡を、泉に浮かぶ蓮の花々だけが聞いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『妖怪横丁大騒ぎ』

POW   :    力づくで止める

SPD   :    鮮やかな手際で止める

WIZ   :    口先やふしぎなちからで止める

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●空騒ぎの坂を駆け抜けろ!
 街への潜入を阻んでいた童子らは、白い光となって還るべき場所へ還っていった。
 猟兵は太鼓橋の連なる道を進み、ようやく件の街へと足を踏み入れる。
 赤提灯に彩られ、青い夜に明るく浮かび上がる小山の如き街は、喧噪とさえ言えない騒擾のさなかにあった。
 飛び交う茶碗、横行する食い逃げ、取り上げられる妖怪キッズのおやつ。被害者も加害者もない、脈絡なく各々の感情が爆発するカオスである。
 骸魂の障りを受けて、妖怪達はすっかりおかしくなってしまったようだ。子供っぽい争いやらイタズラやらが街中を跋扈している。
 障りをもたらしているのは、骸魂に取り憑かれた街中のあらゆる植物だ。
 が、街中の植物を探し出して対処している暇はないし、そもそも大元である儀式場の大樹をどうにかしなければ解決にはならない。

 猟兵が為すべきは、「とにかく坂の上の儀式場に急ぐこと」。
 大暴れしている妖怪達の騒ぎをかいくぐり、降りかかる火の粉を払う程度に適度に無力化しつつ、坂道を駆け上がるのだ。
 坂の上の大樹の下で、骸魂に飲み込まれた主祭司が、猟兵達の助けを待っている。
木霊・ウタ
心情
正にカオスってカンジだぜ
妖怪や植物たちを元に戻してやりたいし
植物についた骸魂たちも還してやりたい

この先にいる主祭司の少女や
少女を取り込んだ骸魂も早く助けてやりたい
急ぐぜ

手段
坂の上目指して最短距離を全速で駆ける

爆炎をバーニアのようにふかして加速
騒ぎは爆炎跳躍で飛び越え
火壁で妖怪たちの進路塞いでその隙に通り過ぎる
もし殴られてもそのままスルーして進む
傷は獄炎で補う
捕まれたらちょいとだけ熱い思いをしてもらうぜ

屋根の上とかの方が邪魔は少なそうだ
爆炎で屋根とか塀へ上り駆ける
屋根から屋根へ爆炎跳躍し儀式場目指す

童子の骸魂と同じ
子供だもんな
そりゃ騒ぎたくもなるさ
待ってろ
すぐに助けてやる



●街を爆ぜる炎
「正にカオスってカンジだぜ……」
 罵声と茶碗その他が飛び交う坂道を見上げ、木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は両拳に獄炎を宿した。
 妖怪や植物たちを元に戻してやりたいし、植物についた骸魂たちも還してやりたい。
 この先にいる主祭司の少女や、少女を取り込んだ骸魂も早く助けてやりたい。
 ならば、真っ先に何をなすべきか。
「急ぐぜ」
 ウタは爆炎をバーニアの如くふかして加速、混沌の坂道を一気に駆け上がった。行く手を遮る喧嘩騒ぎは足元に爆炎の爆発力を得て大きく跳び越え、横道は火壁で防いで通行阻害しているうちに通過。
「なんだおまえ生意気に燃えやがって!」
 通り抜けざまにしょうもない因縁と拳が振ってきたが、ウタは避けることなく拳を頬で受け、それでも足は止めなかった。軽く裂けた頬の傷は炎で覆い、ついでにしつこく伸びてくる妖怪達の手を炎で軽く牽制してやりながら、全速力で駆け上がる。
 緩やかなカーブが前方に見えてきた時、ふと、正面の店舗の屋根が目に入った。
「上のほうが邪魔は少なそうだな」
 ウタは突進してきた妖怪を爆炎跳躍で軽く躱して、塀の上、さらに屋根の上へとテンポよく跳躍した。さすがにここまでついてくる妖怪はいない。たまに茶碗は飛んでくるが、可愛らしいイタズラのようなものだ。
「童子の骸魂と同じ子供だもんな、そりゃ騒ぎたくもなるさ」
 そう、妖怪達は直接取り憑かれてはいるわけではないが、障りをもたらしているのは街中の植物に取り憑いた骸魂……すなわち、子供達の魂なのだ。
 この大騒ぎも、全員が全員、子供達の影響で一種の幼児退行を起こした結果、節度が吹っ飛んだがゆえのお祭り騒ぎだと思えば筋が通る。
「待ってろ、すぐに助けてやる」
 大騒ぎの妖怪達と、その向こうにいる子供達の骸魂に誓って、ウタは屋根から屋根へと跳躍し先を急ぐ。
 街の家々の屋根上に爆炎が散発的に上がり、儀式場への最短の軌跡を描いていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫谷・康行
世界は朧気で
見えるものの半分は幻のようなもの

望むなら過去の日の思い出を
祭りの日の賑やかさを
今に映そう

コード・イン・メモリーを使い
この街であった楽しい日々、喧噪に包まれた日常、ばかばかしい事件を大袈裟に再現してまわりの気を引こうとする

道々で騒ぎを再現したホログラムを写し
自分はその横をさり気なく通り抜ける
全ては祭りの後
少し感傷の残る記憶

これより今を一つ
取り戻すため
忘れていないと誰かに告げるため
道の途中、その心をおさめるため

儀式場に向かいながら呟く
「世界の半分は本当で、半分は嘘だ。
なら、嘘と本当を合わせて世界と言う。
人の思いに形はないが、それはここに現れるだろう」

出来れば良い思い出をと、そう願う



●嘘も世界の半分
 紫谷・康行(ハローユアワールド・f04625)にとって目の前の喧噪は、世界の一つの側面でしかなかった。
「世界は朧気で、見えるものの半分は幻のようなもの」
 掲げた杖の先に、ほんのりと優しい光が灯る。
「望むなら過去の日の思い出を、祭りの日の賑やかさを、今に映そう」
 康行を中心にして、急速に広がっていく淡い光の力場。それは街の人々の前に幻想を映し出していく。
「はっ? なんだこれ!?」
「これ確か去年の夏祭りの……」
「そうだ! 儀式場に花火を運んでた一つ目一本足がそこの坂でこけて……」
 すると幻想の景色の中の一つ目一本足も、坂の途中で盛大にこけて顔から地面に突っ込んだ。
 その手に持っていた大玉花火が投げ出された先には火の玉小僧。もちろん結果は大爆発だ。地面をわっと広がる色鮮やかな火花。
 争いをやめて見入っていた妖怪達がどっと笑った。あの時は大変だった、人間だったら大惨事だったな、やっぱ一本足に花火運ばせるのは無謀だろ。笑いに彩られた思い出話が賑やかに飛び交う。
 そんな談笑の傍らを、康行はさりげなく通り抜けていく。
 康行の行く先々の妖怪達の前に、幻は現れる。この街にあった楽しい日々、喧噪に包まれた日常、ばかばかしい事件……そんな思い出をちょっとばかり大袈裟に再現したホログラム群。
 全ては祭りの後。少し感傷の残る記憶。
 これより今を一つ取り戻すため。
 忘れていないと誰かに告げるため。
 道の途中、その心をおさめるため。
 慌てず騒がず儀式場へと赴きながら、康行は呟く。
「世界の半分は本当で、半分は嘘だ。なら、嘘と本当を合わせて世界と言う。人の思いに形はないが、それはここに現れるだろう」
 出来れば良い思い出をと、そう願う。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
【WIZ】
アドリブ・連携歓迎

妖怪さん達を傷つけずに進まないといけませんし、怪我人を出さない様に私達が解決するまで大人しくして頂かないと。

少し考え、響月を取り出し、神事で吹奏する厳かな感じの曲を【楽器演奏】しつつ、【音の属性攻撃・マヒ攻撃・範囲攻撃・破魔・浄化】で、暴れる妖怪の皆さんを傷つけずマヒさせて、骸魂から解放します。
「少し休んでいてくださいね、私達が何とかしますので。」と妖怪さん達に語り掛け、そのまま響月を吹きながら進みます。

妖怪さんからの攻撃は、【第六感】で予測して【見切り】、天耀鏡による【盾受け】と【オーラ防御】で防ぎます。

「急いで解決しないといけませんね。」
と先を急ぎますよ。



●坂に響く笛の音
「妖怪さん達を傷つけずに進まないといけませんし、怪我人を出さない様に私達が解決するまで大人しくして頂かないと」
 大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)は少し考えこむと、不意に先ほどの龍笛を取り出した。
 息を吹き込み奏でるのは、神事を想起させる厳かな雅楽。
 荘厳な音の広がりは深く長く辺りに響き渡り、辺りで暴れまわる妖怪達の鼓膜を震わせていく。
「? ……なんだ、身体が……」
「う、動け……ない……」
 突如として全身の痺れに見舞われ、動きを止め、あるいは倒れこんでいく妖怪達。音に乗って破魔と浄化の力が浸透し、彼等を狂わせている障りを祓っていく。
「少し休んでいてくださいね、私達が何とかしますので」
 効果があったことを確かめ、まだ意識のある妖怪達に語り掛けてやってから、詩乃は再び龍笛を鳴らしながらさらに先へと進んでいく。
 その目前に、ふらりと現れる屈強な妖怪が一匹。
「くそっ……て、てめぇか……この痺れの原因は……!」
 喧嘩っ早いらしい鬼の一匹が、痺れを根性で無視して襲い掛かってきた。
 が、詩乃は直感的に天耀鏡を掲げてオーラを展開し、振り下ろされた屈強な拳をさらりといなした。
 大きく空振りした鬼は、結局痺れに負けてそのまま坂の途中で昏倒した。妖怪達は頑丈だ、倒れこんだ程度では怪我もないだろう。
 傷つけることなく妖怪達を無力化することも、一時的に障りを祓うこともできた。
 だが原因である儀式の失敗になんとか始末をつけなければ、彼等の痺れが晴れたところでまた元の木阿弥となるのは目に見えている。
「急いで解決しないといけませんね」
 決意を胸に、先へと急ぐ詩乃。
 龍笛の澄んだ音色が、丁寧に坂道を踏破していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

うわあ、何だこの騒ぎ。大元を断たないとダメか。ええい、面倒な。やるしかないか。奏、瞬、突破するよ!!

こうなったら奥の手だ。無敵の相棒を呼び出して、アタシの【ダッシュ】での移動に併せて妖怪達をぽいぽい投げ飛ばして貰う。少々手荒くなるが邪魔する奴がいたら【グラップル】で殴り飛ばしたり蹴り飛ばす。ごめんよ、手当は後でしてあげるから通してくれ!!ついでに子狐の茉莉も突撃させる。本当に厄介な騒ぎだね!!早く収束させないと。


真宮・奏
【真宮家】で参加

うわあ、混沌としてますね。この騒ぎを抜けて儀式場までいけと・・・頑張ります!!物凄く疲れそうですが。

蒼穹の騎士を呼び出してお手伝いして貰います・・・道を塞ぐ妖怪の方達に物理的にどいて貰う為のお手伝いです!!出来るだけ手加減して【グラップル】と【シールドバッシュ】で吹き飛ばして行きます!!ついでに狛犬の昴にも突撃させて、蒼穹の騎士にも突撃して貰います!!ごめんなさい、先を急ぐので、手当ては後でします!!さあ、急いでこの騒ぎの大元である大樹に行きますよ!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

これは物凄い乱痴気騒ぎですね・・・この騒ぎを抜ける必要があると。物凄い手間が掛りそうですが、儀式場行くには切り抜けないと。何とかしましょう。

まずは【範囲攻撃】で【結界術】を展開して妖怪の動きを止める事を狙います。結界術では抑えきれないようなら奥の手で矢車菊の癒しで強引に眠らせます。手荒な事をして申し訳ありません!!必ず儀式場の大樹はなんとか鎮めてみせますので、先にいかせてください!!



●真宮家進軍!
「うわあ、何だこの騒ぎ」
「うわあ、混沌としてますね」
 妖怪達の大騒ぎを見上げて、真宮・響(赫灼の炎・f00434)と真宮・奏(絢爛の星・f03210)母娘のリアクションは図らずもシンクロした。
「これは物凄い乱痴気騒ぎですね……この騒ぎを抜ける必要があると」
 神城・瞬(清光の月・f06558)は二人の傍らで冷静に思考する。
「物凄い手間が掛りそうですが、儀式場行くには切り抜けないと。何とかしましょう」
「大元を断たないとダメか。ええい、面倒な。やるしかないか。奏、瞬、突破するよ!!」
 苦々しく顔をしかめつつも腹を決めて、響は二人を鼓舞して先頭に立つ。
「この騒ぎを抜けて儀式場までいけと……頑張ります!! 物凄く疲れそうですが」
 奏が応えて気合いを入れながら響の隣に並び、瞬も大きく頷き二人の後に控える。
 真宮家三名、妖怪横丁に参戦だ。
「こうなったら奥の手だ。さあ、アンタの力を借りるよ!! 共に戦おう!!」
 響は召喚術を発動した。燦然たる輝きの中に浮かび上がったのは、自身の体長の二倍もある無敵の相棒。響自身の夫の姿を模したゴーレムだ。
「なら私も……! 力を借りますね!! 共に行きましょう!!」
 同じく召喚術を展開する奏。現れたのは目の覚めるような鮮やかな鎧の蒼穹の騎士。
 双方とも、呼び出した理由はただ一つ。
「それじゃ行くよ! 邪魔な妖怪は投げ飛ばせ!」
「もちろん出来る限り手加減はしてくださいね!」
 坂道を走り出す二人に併走する無敵の相棒と蒼穹の騎士。前方を占拠して殴り合いをしている狐と狸を相棒がぽいぽいっと投げ飛ばし、犬・猿・雉・鬼で囲んでいる雀卓を騎士がシールドバッシュで吹き飛ばし、妖怪達を物理的に蹴散らしていく。
「なんじゃあいつら!?」
「元気のいいよそ者じゃねぇの、俺らも混ぜろぃ! ──うおっ?」
 小物妖怪が多数、害意というよりはお祭り気分で寄ってきた。が、母娘に襲い掛かろうとした瞬間、ピタリと動きを止めた。
「手荒な事をして申し訳ありません!! 必ず儀式場の大樹はなんとか鎮めてみせますので、先にいかせてください!!」
 声を張り上げたのは響と奏の後に従ってしんがりを務めている瞬だ。手元では印を結び、展開した結界術を維持している。
 が、妖怪達には瞬の呼びかけなど耳に入っていない様子。
「わあ、結界まで使ってきたっ」
「でもぼくらにはこんなもん効かないよん」
 空を飛べる者や霊体は結界の範囲を避けたり無効化したりして、のらりくらり、虎視眈々と、喧嘩騒ぎに加わる隙を窺っているのがわかる。
 面倒な手合いだ。瞬は結界を維持したままに、今度は大量の花弁を周囲に解き放った。
「どうか、ゆっくりお休みください……青の矢車菊と共に」
 辺りに満ちるのは矢車菊の花吹雪。
 鮮やかな青色が妖怪達の視界を埋め尽くし、次々に睡魔に誘い落としていく。強引に与えられていくのは回復効果のある安眠。きっと目が覚める頃には問題も解決して、すっきりとした目覚めを味わえることだろう。
 と、今度はひときわ大きな人影がどしんどしんと坂を下ってきた。
「おぉん、なんだぁおまぇらぁ、さっきから目障りだぞぉ?」
 一つ目の大鬼だ。その巨体は無敵の相棒の背丈をも上回る。
 が、それが現れるや否や、無敵の相棒と蒼穹の騎士はその巨体に容赦なく組み付いた。
「ごめんなさい、先を急ぐので、手当ては後でします!!」
「ごめんよ、手当は後でしてあげるから──通してくれ!!」
「う、おっ? おぉぉぉぉぉぉぉーーーーーん!?」
 大鬼は見事背後に投げ飛ばされ、頭だけが地面に突き刺さって沈黙した。なかなかデンジャラスな態勢だが、まあ妖怪だし相当な石頭みたいだし、問題はないだろう。
「本当に厄介な騒ぎだね!! 早く収束させないと」
「さあ、急いでこの騒ぎの大元である大樹に行きますよ!!」
 子狐の茉莉と狛犬の昴も投入して、真宮家一行は坂の上へと突き進む。
 突撃するゴーレムと騎士、そして吹き荒れる花吹雪が、街をしっちゃかめっちゃかかき乱していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

百鬼・葛葉
ん…と、
とりあえず地形を利用してぴょんっと屋根の上とかに乗りつつるーとを確認しますっ!
ついでにそのるーと上で騒ぎが大きそうな…死傷者が出そうなとこがないか見て、そういう箇所に少しだけ救助活動ですっ
しゅぱぱっと神の見えざる手を伸ばして巻いてすぱいだーな狐になって高速移動ですっ!
ここでは常に破魔で障りを祓いつつ、あばれる子には糸でぐるぐる巻きでちょっとだけ生命力を吸収して大人しくさせて、こんらんしてる子にはコミュ力手をつないで落ち着かせて、さわぐ子には催眠術と言いくるめ、誘惑でめってやって他の場所の騒動とかの対処をお願いしますっ
現場には少し遅れますが…完全に見過ごすというわけにもいきませんもんね?


荒覇・蛟鬼
何という、“世を滅する者達”がそこいらじゅうに。
本来なら厳罰に処すべきですが……今はやめておきましょう。
大元が消えれば治まる事ですし、先を急ぐのが先決ですな。
■行
【WIZ】
巻き込まれないようにすっと抜けて、目的地に向かいましょう。
視線を向けられないよう、【ダッシュ】や【ジャンプ】を駆使して
ささっと抜けてしまいますか。

只、進行の邪魔になったりあまりにも捨て置けない状況に
遭遇した場合は、多少時間を割いてでも止めましょうかな。
妖怪達に向かって【殺気】を放ち、処罰の決行を仄めかす
言葉をかけて【恐怖を与え】、強引に止めるのです。

泣く子も黙る“地獄の獄卒”のお通りでございますよ。

※アドリブ・連携歓迎



●トラブルシューター狐と地獄の獄卒
「ん……と、まずは状況確認ですねっ!」
 百鬼・葛葉(百鬼野狐・f00152)は垣根や塀、積み上げられた木箱などを乗り継いで、ぴょんっと屋根の上に飛び乗った。
 儀式場に続く坂道は街に複数存在する。そのいくつかはすでに猟兵達が踏破済みで、おおむね騒ぎは収束したり強引にねじ伏せられたりしているが、まだ騒動が続いている道もある。
「よしっ、このるーとで進みましょうっ。あっ、あそこで大きな騒ぎがありそうですねっ!?」
 坂道の全体図と騒動の中心地をしっかりと頭の中に叩き込むと、葛葉はしゅぱぱっと天狐の見えざる手を射出した。極限にまで細く織り込まれた曲弦の糸だ。
 これを街灯の柱に投げかけ巻き付け、一気にダイブ。街のあらゆる設置物を糸で乗り継ぎ高速移動していく、あたかも蜘蛛のヒーローの如き狐である。
「現場には少し遅れますが……完全に見過ごすというわけにもいきませんもんね?」
 浄化の力を振り撒きながら、狐は一路、騒ぎの中心地へと。
 一方、同じ坂道を駆け上がる猟兵がもう一人。
「何という、“世を滅する者達”がそこいらじゅうに」
 荒覇・蛟鬼(鬼竜・f28005)は渋い顔つきで喧噪を横目に通り抜けていく。
「本来なら厳罰に処すべきですが……今はやめておきましょう。大元が消えれば治まる事ですし、先を急ぐのが先決ですな」
 飛んできた物品はさっと躱し、転がり込んできた樽や妖怪達は跳躍して躱し、すかさず走り抜ける。いちいち関わらずさっさと抜けてしまうのが吉というもの。
 が、しかし。
「──おォン、なんじゃこらワレェ!」
「文句あんのかコラァ、やんのかコラァ!?」
 聞き流すにはあまりに剣呑な言い争いが耳と目に飛び込んできた。
 あろうことか坂道を完全に塞ぐ形で、大勢の妖怪達が人垣ならぬ妖怪垣を為していた。
 騒ぎの中心にはにらみ合う二つの妖怪集団。取り囲む有象無象の妖怪達からは「やれやれ!」「やっちまえー!」の野次。ヤンキー同士の縄張り争いとその野次馬、といったところか。
 遠巻きには一触即発の危険な衝突に見えるが、近くに寄れば寄るほど、祭りの熱に浮かされた喧嘩遊びの様相であるとわかる。子供の遊戯だ。
「……浮かれておりますな」
 急ぐべきだが、現実として道を塞がれており、かつ捨て置けぬ程度には目に余る。
 蛟鬼は短い嘆息を零しつつ速度を落として騒ぎに歩み寄った。妖怪達に近づくほどに、発散されるていく存在感と殺気。
 いよいよ始まった殴り合い。ノリノリで野次を飛ばす妖怪達が、蛟鬼の殺気に気づいてヒェッと悲鳴を上げながら退いた。
「──これ以上の狼藉は許されませんぞ」
 突如現れた竜神の口より放たれた、重く厳めしい殺気混じりの言葉に、ヤンキー妖怪群達はつかみ合った姿勢のままピタリと殴り合いをやめた。
「なっ、なんだコラァ……ややややんのかコラァっ!?」
 顔色を真っ青にしつつも食って掛かってくる大将格の妖怪(かなり腰が引けている)を、蛟鬼の冴え冴えとした眼差しが射る。
「街中での悪口雑言に騒乱と暴力。冥府の処断を受けるに十分であると判じますが──如何か」
 ……泣く子も黙る“地獄の獄卒”のお通りである。
 その迫力、威圧感に、争いあっていた大将格の妖怪二人は声もなく腰を抜かした。
 と、その時。
「そのとーりっ! 今は争いあっている場合ではないのですっ!」
 現れたるは蜘蛛ヒーロー狐の葛葉。ぴょぴょーいと群衆の周囲を飛び回るや、中央で繰り広げられているお裁きに気づかずに大暴れを続けている手下達を糸でぐるぐる巻きにして生命力を軽く抜いていく。妖怪の簀巻きが、なすすべくなく辺りにゴロゴロと転がっていった。
「ほかにこんらんしてる子はいますかー? さわいでいる子はいませんかー?」
 声を上げつつなおもぴょんぴょんと喧噪の中を飛び回る葛葉。混乱している子供妖怪は手を繋いで言葉と笑顔と人当たりの良さとで落ち着かせ、勘悪くいまだに野次を飛ばしている妖怪の顔を覗き込んで催眠術と誘惑で言いくるめつつ「めっ」と叱って黙らせ、いったん正気を取り戻した妖怪を他の騒動の収拾に当たらせていく。
 狐の手によって次々トラブルシューティングされていく坂道を、威厳と殺気を発散しながら堂々たる足取りで登っていく獄卒。
 その一種異様な光景を、妖怪達はこわごわと見送るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『キョンシー木綿』

POW   :    キョンシーカンフー
【中国拳法の一撃】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    百反木綿槍
自身が装備する【一反木綿が変形した布槍】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    キョンシーパレード
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【キョンシー】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●繋がりあった異質な魂
 大騒ぎの坂道を各々に潜り抜け、鳥居をくぐり、儀式場にたどり着く猟兵達。
 その目前に広がっていたのは、妖怪の子供達が多数倒れこんでいる光景だった。息はあるようだが、深く昏倒しており、目覚める気配はない。
 そして、儀式場中央に鎮座する大樹と、その根元に座り込んでいる小さな人影がある。
 中華風の真っ赤な衣装に身を包んだ少女。顔色は見るからに悪く、死者のそれであるとわかる。そして、額には札のような何かが貼り付けられているようだ。
 キョンシーの少女だろう。なるほど、そもそもが生ける死体であるキョンシーならば、死者を鎮魂する主祭司にはもってこいの人材と言える。
「だれ? ……じゃましにきたひと?」
 少女は猟兵達を胡乱な眼差しで見やる。その口から零れた言葉は、少女というより少年らしい響きがあり、予知されていた本来の少女のたどたどしさは見受けられない。
 ……そう、主祭司は、骸魂に飲み込まれている。
 今キョンシーの少女の肉体を動かしているのは、鎮魂に失敗した骸魂の一つ。それもおそらくは主祭司自身と深い繋がりを持つ誰か……
 キョンシーがゆらりと立ち上がる。すると、額に貼りつけられているのは正確には札でないことが判明する。
 幅の広い包帯のような、白く長い布切れだ。しかも少女の周囲を取り巻きはためくほどに長い。
 猟兵達は直感する。このキョンシーを呑み込んだのは、一反木綿の骸魂であると。
「ぼくを祓いにきたみたいだね」
 猟兵達の表情の変化を見取り、キョンシーを呑み込んだ一反木綿……『キョンシー木綿』は呟いた。
「でもシェンシェンは渡さないよ。だって彼女が儀式を失敗させたんだ。だからずっと一緒だよ」
 子供っぽく断言して、キョンシー木綿は周囲を取り巻く一反木綿を禍々しいオーラで自在に操り、少女の身体を静かに地面から浮き上がらせた。
「じゃまするやつらは、しんじゃえ」
 膨れ上がる殺気は、ただ邪魔者を排除するという強い意志。

 キョンシー木綿はキョンシーの耐久力と一反木綿のスピードを併せ持つ強敵だ。飛翔するほどではないが、地面からある程度浮かび上がった形で素早く自在に動き回ることができる。
 その骸魂の境遇は、街の入り口で戦った『骸魂童子』とさして変わらない。
 しかしキョンシー少女と共に在り続けようとする堅い意志により、戦いは絶対に避けられないだろう。
 とはいえ慰めや揺さぶりの言葉に全く効果がないとも限らない。戦いのさなかに声をかけるか否かは猟兵次第だ。

 キョンシー木綿を倒せば、主祭司を助け出すことができる。
 主祭司を骸魂から解放すれば、事態の全ては収拾できるはずだ。
 街を、そして報われない骸魂達を救うため、猟兵達は最後の敵に立ち向かう。
真宮・響
【真宮家】で参加

身体が死んでる子に鎮魂をやらせるか・・・気持ちは分からないでもないが、死者が死者を鎮められるかね?まあ、キョンシーの子には罪は無い。お役目を果たしただけだろうし。元々気の毒な子だから、纏わりつく奴をなんとかしようか。

正面からいくと強烈な一撃を喰らうから【目立たない】【忍び足】で敵の背後を取り、背後から【怪力】【破魔】【除霊】【浄化】を込めた炎の拳で殴る。敵の攻撃は【オーラ防御】【残像】【見切り】で凌ぐ。この子がこれからも強く立って行くには、この布切れは不要だ!!退散しな!!


真宮・奏
【真宮家】で参加

憑りつかれてるキョンシーの方が何故死体になってしまったのか事情が気になりますが、お役目、お辛かったでしょう。一緒にいる長い布の方はお友達ですか?一緒にいたい気持ちは分かるんですが、もうこの世界にいてはいけない存在です。祓わせてもらいます。

【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】で防御を固めてから、【二回攻撃】【範囲攻撃】で煌く神炎を使用します。【破魔】【浄化】【除霊】も乗せてその執着ごと焼き尽くしましょう。こういうハプニングでしか共に居れなかったのは可哀想です。せめて私達は貴方の思いをおぼえていましょう。


神城・瞬
【真宮家】で参加

死んでいるから鎮魂に相応しいと。果たして死者に死者が還せるんですかね?疑問は残るんですが、主祭司のキョンシーのお嬢さんには何の罪もありません。ともすれば不適格かもしれない役目を果たそうとしただけですから。

纏わりつく長い布はお嬢さんの知己ですか?骸魂なら、祓うだけです。

敵は手数が多いですね。手数を増やしましょう。朧月夜の狩人を発動、狩人の攻撃に【誘導弾】【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】で追撃。更に攻撃に【破魔】【浄化】【除霊】を乗せます。敵の攻撃は【オーラ防御】【第六感】で凌ぎます。共にいたい気持ちは分りますが、貴方はこの世界にいてはいけない存在です。お許しを。



●対立
「身体が死んでる子に鎮魂をやらせるか……気持ちは分からないでもないが、死者が死者を鎮められるかね?」
 戦端を切る前に、真宮・響(赫灼の炎・f00434)は素朴な疑問を口にした。
 神城・瞬(清光の月・f06558)も頷き同意する。
「ええ、それは気になりますね。死んでいるから鎮魂に相応しいと。果たして死者に死者が還せるんですかね?」
 キョンシーは死体由来の妖怪であり、骸魂は妖怪の死者である。厳密には違う状態なのだろうが、とはいえ従来の死生観に則れば、キョンシーこそ鎮魂や浄化が必要な存在とも思える。そんな妖怪に鎮魂の役目が務まるのか? 当然の疑問ではあった。
「鎮めるとか還すとか、小難しい仕組みは知らないよ。でも、死者の心が一番わかるのは死者だろ。……ぼくらにとってはそれでじゅうぶん」
 キョンシー木綿は少し不快げに目を細め、低いところに視線を流した。
 何か秘めた思いをなぞるように。……悲しみを逃がすように。
「きみたちはぼくらの仲間を解き放ったんだろ。ならわかるはずだ。死者が救われるためのきっかけなんて、浄化のちからのあるなしとか、神様のおぼしめしとか、そんな大そうなもんじゃない」
 街の周囲の泉に、蓮の花の肉体を得て現れた『骸魂童子』達。
 猟兵は思い思いの方法で彼等の心に触れ、その苦しみから解き放ってやった。きっと主祭司に求められ、為そうとしていたことも、何も難しいことではない、同じようなことなのだろう。
 死者の気持ちを汲んでやることは、鎮魂において大いに意義のあることなのだ。
「生者が死者を慰められて、死者が死者を慰められないなんて誰が決めるんだ。……それとも生者様にはなんでもできて同然だけど、死者にはそんな力なんかないって?」
 空気が変わる。明らかに、キョンシー木綿の殺気がより深度を増したのがわかる。
「ムカツクよ、あんたたち」
 禍々しいオーラに煽られ、白布が大きく暴れまわり始めた。
「……なんか知らんが、地雷踏んだっぽいねぇ。儀式失敗の原因は他にあるってことか」
「街の周囲にいた童子たちとさして変わらぬ境遇……となると、もう少しセンシティブに接するべきでしたか」
 響と瞬のぼやきを聞きつつ、真宮・奏(絢爛の星・f03210)はまっすぐにキョンシー木綿を見つめていた。
「憑りつかれてるキョンシーの方が何故死体になってしまったのかの事情が気になりますが、お役目、お辛かったでしょう」
 すでに妖怪としての自我を得ている彼女の、人間だった頃の死因を掘り返しても詮無いこと。
 それにきっと、不相応な役目を押し付けられたとか、そういう話ではないのだと、奏は気づく。
 彼女はただ、辛かったのだろう。子供達が死んでしまったことが。そしてその中に、親しい人物がいたことが。
「一緒にいる長い布の方はお友達ですか? 一緒にいたい気持ちは分かるんですが、もうこの世界にいてはいけない存在です。祓わせてもらいます」
 毅然と表明し、奏は防御用の力場を展開した。盾を掲げ、剣を掲げ、全ての武具と防具の力を励起して即席の防衛拠点を気付き上げる。
 と同時、依り紡がれた一反木綿の布槍が大量に真宮家一同へと飛来した。
 布槍は一斉に奏が維持する力場の壁に突き立ち、それを突破しようと拮抗する。激しい発光が儀式場全体を明々と照らし出した。
「あれはもう耳を貸してくれる感じではないですね。一度制圧して少し大人しくしてもらわないと」
「だね。まあ、キョンシーの子には罪は無い。お役目を果たしただけだろうし。纏わりつく奴をなんとかしようか」
 なすべきは「敵を倒す」ことに変わりはないのだ。瞬と響は強烈な光の作り出す濃い暗闇に紛れる形で左右に散開した。
「こちらも手数を増やしましょう」
 瞬が呼びいだしたるは、多数の狩猟鷹『朧月夜の狩人』。
 鋼鉄の羽根による独特な羽音に、はっと視線を飛ばすキョンシー木綿。
「纏わりつく長い布がお嬢さんの知己ですか?」
 狩人達を攻撃動作に移らせながら、瞬は奏の投げかけた質問をもう一度繰り返した。
「だったら何」
 答えたのは明らかに少年の声。本体である少女の意識は、やはり応えてくれる状態にはないのだろう。
「骸魂なら、祓うだけです」
 瞬はきっぱりと断じ、狩人達を一斉に解き放った。
 襲い掛かってくる大量の鷹に舌打ちすると、キョンシー木綿は白布でその攻撃を凌ぎつつ、高速移動で逃げ回った。目にも止まらぬ拳法で狩人をいなし、あるいは打ち取り、儀式場を縦横無尽にめまぐるしく移動していく。
 が、それは狩人の相手にかかりきりになるのと同義。
「共にいたい気持ちは分りますが、貴方はこの世界にいてはいけない存在です。お許しを」
 瞬は杖を掲げ、強烈な発光弾を解き放った。それは最短軌道を描いてキョンシー木綿へと疾る。キョンシー木綿は狩人を退けた反動を利用して大きく横っ飛びに回避した。
 ──が、光は迷わずキョンシー木綿を追尾し、その胸部を正確に打ち据えた。
「──ッ」
 予期せぬ直撃にキョンシー木綿は息を詰めて動きを止めた。胸郭を潰す痛みに痺れが回り、強烈な発光に視界が塗り潰される。破魔と浄化と除霊の力が、骸魂としての存在を苛む。
 そして、無防備になったその背後に躍り出る、一つの人影。
「──よくやった瞬!」
「なっ!?」
 突如として現れた響の姿に瞠目するキョンシー木綿。しかし痺れを食い破って構えを取るだけの猶予はない。
 響は正面からの攻撃を避け、周到に暗闇に紛れて背後を取り、攻撃の機を窺っていたのだ。
 絶対に外さない、ここだという一瞬を。
「この子がこれからも強く立って行くには、この布切れは不要だ!! 退散しな!!」
 強力な意志を込めて、固めた拳が赤熱する。真っ赤に燃えて夜を疾る。目にも止まらぬ速さで、キョンシー木綿の背を強烈に殴りつける──
 轟音と共に石畳に叩きつけられるキョンシー木綿。白布とオーラの力で強引に身を起こそうとして、霞む視界の中央に白い輝きが灯ったことに息を呑む。
 ……初撃の布槍をコントロールする余裕はとっくになくなっていた。そう、発光弾を食らったあの瞬間には、もう。
「こういうハプニングでしか共に居られなかったのは可哀想です。せめて私達は貴方の思いをおぼえていましょう」
 力を無くした白布の舞うその中央で、奏は愛剣を夜空に立てて、刀身に宿る霊気を白熱させる。
「この炎が、未来を照らす灯りとなるように。──その執着ごと焼き尽くしましょう」
 神聖な白に煌めく炎が、鋭く横なぎに振るわれた剣風に乗ってキョンシー木綿を襲う。
 咄嗟に少女の身を守るように展開した白布が白く燃え上がり、輝く炎の中で絶叫が上がった。燃え上がった部分の白布を自ら切り離していくが、骸魂そのものに相当なダメージがあったのは見るからに明らかだ。
「狙い通り、ちったぁ大人しくなってくれたようだね?」
 少しばかり挑発的な響の視線に、キョンシー木綿は肩で息をつきながら、ただひたすらに敵意に満ちた眼差しを返した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
心情
大好きだった友達を苦しめるとか
そんなことタンタンにさせやしない
二人とも救うぜ

戦闘
爆炎で踏み込み
獄炎纏う焔摩天で薙ぎ払う
回避されても焔の剣風が木綿を燃焼

炎壁で武器受け
木綿へ獄炎が引火

仲間も庇う
破壊された部位は獄炎で補う

木綿
気持ちは判るぜ
友達と一緒に居たいよな

そしてこのままじゃ友達や皆が悲しむ

友達が大好きなら
シェンシェンの笑顔がみたいなら…
海で静かに休むんだ

主祭司
もう大丈夫だ
すぐに助ける

事後
儀式終了後
大樹の元で骸魂の子供らへ
童子達から教わった民謡を鎮魂曲として捧ぐ
安らかに

シェンシェン
笑顔で目一杯人生(妖生?を謳歌しながら
未来へ歩み続けること
それが何より友達が望んでいる事って思うぜ(ぐっ


百鬼・葛葉
街でのきゅーえん活動で少し出遅れているので…その遅れを活かして動きますっ!
まずは現場に向かいつつ遠目から相手のわざを確認
ついでにこの一帯に糸を張り巡らせて地の利を得るのですっ!
地表近くを浮かぶなら、私はその上に張った糸の上をぴょんぴょんしますっ!
糸に破魔を纏わせれば若干の行動妨害も出来て二度おいしいですっ!
そして相手の動きに合わせてペルセウスで技を打ち返しますっ
今回、出遅れ組の私の役割は戦う子たちへのふぉろーですっ

後は相手の郷愁を誘いそうなわらべ歌を歌って…
えぇ、えぇ。ままならないなら。せめて、あの頃のように。最期は満足するまで悪戯して、思い切りめってされて、それで皆の所へかえりましょうっ!



●裏表
 白布を切り離し繋げ直し、呼吸と態勢を整え直す少女の姿に、木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は目を凝らす。
 そこに重なっているはずの一反木綿の少年の姿を求めて。
「大好きだった友達を苦しめるとか、そんなことタンタンにさせやしない」
 キョンシー木綿がぴくりと反応した。探るような視線がウタに注がれる。
「二人とも救うぜ」
 ウタがきっぱりと断言したと同時、炎が勢いよく爆発した。
 ブースターの如き爆炎の加速を得て一足飛びに敵の懐へと踏み込むウタ。
 焔摩天の巨大な刃が獄炎の軌跡を描く。わずかに反応の遅れたキョンシー木綿は咄嗟にオーラを纏う白布を操り刃を受け止めた。
「気持ちは判るぜ。友達と一緒に居たいよな」
 白布を覆うオーラに刃の纏う獄炎で拮抗しながら、ウタは少女の目を覗き込み、その奥の少年へと語り掛ける。
「そしてこのままじゃ友達や皆が悲しむ」
「……」
 覗き込んだ瞳に何かが揺らいだ気がした。
 動揺を示すようにわずかに後退したオーラを、獄炎が一息に食い破った。白布が焼き切られ、纏いつく紅蓮の炎が延焼を広げていく。
「友達が大好きなら、シェンシェンの笑顔がみたいなら……海で静かに休むんだ」
「っ……うるさい……っ!」
 キョンシー木綿は苛立ちも露わに後方に飛び退き、布槍を放ってウタを牽制しながら素早く何かの印を切り始めた。
 その仕草に一瞬の躊躇が差し込んだのを、鳥居の上から敵の使う術を一通り観察予習していた百鬼・葛葉(百鬼野狐・f00152)は見逃さなかった。
「おやや? ちょっと迷いがありますかね……?」
 キョンシー木綿の周囲の空中に大量の呪符が展開し、一斉に辺りに散らばった。地面に気絶している子供達一人一人の額に吸いつくように貼りついていく。
 子供達が気絶したまま起き上がる。目は閉ざされたまま両腕を前に出して、ぴょんっ、ぴょんっ、と独特な跳躍動作で前後に移動する、即席キョンシー部隊の完成だ。
 しかし、キョンシー木綿の表情は明らかにすぐれない。それは、じっくりと相手の様子を見るポジションと態勢を獲得した葛葉だからこそ気づけた変化だった。
「あまり使いたくなかったわざ……って感じでしょうか。ほほう……街のきゅーえん活動で時間を使ってしまいましたが、たまには出遅れてみるもんですねっ! ならばっ」
 葛葉は敵が攻撃動作に入るより早く、即席キョンシー達の周囲に大量の糸を張り巡らせた。
 跳躍行進する即席キョンシーが糸に触れるや否や、糸に纏わせた破魔の力が子供達を操る不浄の力を呪符ごと引き裂いた。
 子供達は電撃を浴びたように硬直し、次々とまた地面に倒れ伏していく。
「……くそ」
 キョンシー木綿から零れる悪態は、微妙な安堵を帯びて見えた。
 そして、殺意に満ちた眼差しが再び猟兵を睥睨し、上方の糸の上でぴょんぴょんと跳ねている葛葉の姿を捉える。
「あんたか、この糸」
「はいっ! 今回出遅れ組の私の役割は戦う子たちへのふぉろーなのでっ」
「じゃまだよ」
 端的に会話を断ち切って、キョンシー木綿は即座に展開した布槍を猟兵めがけて一斉発射した。
 と同時、葛葉は瞬時にしてフライパンを創造した。
「そのわざは先ほど見ましたのでっ!」
 全力で振りぬかれたフライパンは、大量の布槍の芯を捉えてまとめて打ち返した。軌道を強引に捻じ曲げられた布槍が、他の布槍と激突して次々に相殺していく。
 キョンシー木綿はすぐさま布槍で波状攻撃を仕掛けていくが、火壁に遮られ、ぴょんぴょん躱されては打ち返され、ろくに効力を為していない。
「くそっ……くそくそくそ! なんでじゃまするんだ、ぼくらは一緒にいたいだけなのに……うるさいッ!!」
 鼓膜を震わす郷愁を誘うわらべ歌に癇癪を起こして、さらなる布槍を飛ばすキョンシー木綿。葛葉はまたあっけなく打ち返すと、歌を途切れさせてぴょんぴょん跳ねつつ声を上げる。
「えぇ、えぇ。ままならないなら。せめて、あの頃のように。最期は満足するまで悪戯して、思い切りめってされて、それで皆の所へかえりましょうっ!」
「──その通りだな」
 間近に上がった声にキョンシー木綿ははっと息を呑んだが、後の祭り。
 目前には再び懐へと飛び込んできたウタと、色鮮やかな獄炎の軌跡。
「もう大丈夫だ。すぐに助ける」
 キョンシー木綿の目の奥に、沈黙したままの少女の在処を覗き込んで、ウタは獄炎を叩き込んだ。焔の剣風が白布を巻き上げ切り離す猶予も与えず炎に巻いていく。
「笑顔で目一杯人生を謳歌しながら未来へ歩み続けること。それが何より、友達が本当に望んでいる事って思うぜ」
 だから早く自分を取り戻して、童子達から教わった民謡を鎮魂歌に、一緒に一反木綿を送ってやろう。
 燃える白布に囲われながら遠ざかっていく少女の瞳の中に、大きな揺らぎが生じたように見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

紫谷・康行
失敗には罪が
罪には罰が
あるわけじゃない

間違うこと、失敗することを
許してもいいんじゃないかな

彼女の代わりは出来ないけど
君を送ってあげよう

彼女は君を見送るために力を尽くしたはず
なら、その心を汲んであげるのもいいと思うよ

もしも、彼女のことが大切なら
まだ、助けられるからね

この剣はここに来るまでにこの街の夜の光とともに
たくさんの想いを受け取ってきた
騒がしくも心優しい者達の
君にその想いを返そう
君が安らかに休めるように

ここに来るまでにクロウネルの刃に蓄えられた光を使い相手を斬る
優しく、青白く光る刃を持って彼らを救おうとする

覚悟を持って相手の前に進み
自らを省みずに
額に張り付いた一反木綿だけを斬ろうとする


荒覇・蛟鬼
其の通り。あなた“だけ”をお迎えに上がりました。
さあ、どうぞ此方へ……あなたの“お友達”が向こうで
待ちかねておりますぞ。
■闘
抵抗しますか……では此方も行きましょう。
先ずは【第六感】を巡らせながら相手の動きを注視しつつ、
どのように仕掛けてくるか予測します。
仕掛けてきたら身体の動きを【見切り】つつ【グラップル】で
受け止め、急接近を。

至近距離まで近づいたら【嘗女の惑乱】を用います。
木綿の部分を人差し指で突き『身体が激しく燃え上がっている』と
感覚に誤情報を流し、似非炎【属性攻撃】を仕掛けます。
燃えはしませんが、精神を砕く一撃故何れ死に至るかと。

炎熱と共に、地獄へお帰りなさいませ。

※アドリブ・連携歓迎



●本心のある処
 黒い残骸がはらはらと幾片も落ち、地面に舞い降りる前に儚く燃え尽きていく。
 焼かれ、斬り落とされ、幾度となく継ぎなおされた白布は、それすなわち骸魂の消耗の証明だった。肩で息をつくのは少女の身体だが、ダメージのほとんどは一反木綿本体に届いているはずだ。
「そんなにぼくとシェンシェンを引き離したいのか……っ」
「其の通り。あなた“だけ”をお迎えに上がりました」
 猟兵を睨みやるキョンシー木綿に、容赦なく肯定を突きつける荒覇・蛟鬼(鬼竜・f28005)はやはり地獄の獄卒の鑑であろう。
「さあ、どうぞ此方へ……あなたの“お友達”が向こうで待ちかねておりますぞ」
「……。いかない。まだ」
 微妙な沈黙を置いて、拒絶を突っ返すキョンシー木綿。
 その周囲で再び蠢き始めた白布の動きを、蛟鬼は注視する。
 布槍──否、フェイントだ、オーラで少女の身体を操り一気にこちらへと突っ込んでくる。
 瞬間的に伸び迫った拳は蛟鬼の目前で翻り、入れ替わりに突き出した肘から体重の乗った強烈な一撃が繰り出される。
 しかし蛟鬼は細かな動作の全てを見切り、肘打ちをすんでで躱した。虚を衝かれて瞠目するキョンシー木綿の身体に即座に組み付き運動エネルギーを殺してやる。
「抵抗しますか……では此方も行きましょう」
 蛟鬼は押しとどめた少女の額に生えるように貼り付けられている白布を、人差し指でひと突きした。
「炎熱と共に、地獄へお帰りなさいませ」
 瞬間、少女の喉から金切り声が上がった。蛟鬼の身体を突き飛ばし、顔を抑えて苦悶の絶叫を迸らせる。取り巻く白布はのたうち回るが如く激しく波打っている。見た目は大きな外傷がないのにもかかわらず、痛い、熱い、という単語が切れ切れに猟兵の耳に届く。
「幻覚系の術、かな?」
 当たりをつけて紫谷・康行(ハローユアワールド・f04625)がちらりと視線をやると、蛟鬼は、ふむ、と否定ではないが肯定ともつかない反応を返した。
「単純なこと。『身体が激しく燃え上がっている』という誤情報を木綿の感覚に流し込んだのですよ。似非物の炎では燃えはしませんが、精神を砕く一撃故、何れ死に至るかと」
「なるほど……」
 すなわち、一反木綿がキョンシーに取り憑いている状況に、刻限が設けられたに等しい。
 ということは……
「……しね……」
 ……その刻限までの間、骸魂はいっそう激しい抵抗を示すだろう。
「しね、しね、しねしねしねみんなしねぇぇぇぇぇぇぇッッッ!!」
 纏いつき続ける苦痛に逆上し、キョンシー木綿は大量の布槍を無秩序に解き放った。
 しかし身体が燃え上がる感覚を拭い去れないのか、布槍の速度も威力も同時に飛ばしてくる本数も、明らかに衰えている。
「失敗には罪が、罪には罰が、あるわけじゃない」
 康行は布槍の軌道を余裕をもって躱しながら、苦しそうなキョンシー木綿に淡々と訴えかけた。
「間違うこと、失敗することを許してもいいんじゃないかな」
「……ちが、う……そんなんじゃ……」
「もしかして、最初から許していないわけじゃない?」
「っ、うるさいッ!」
 反射的に布槍と共に返された拒絶は、明確に図星をつかれたことを意味していた。
 それもやすやすと躱して、康行はなおも語り掛ける。
「なるほど、それなら話は早い。彼女の代わりは出来ないけど、君を送ってあげよう」
「うるさいってば……」
「彼女は君を見送るために力を尽くしたはず。なら、その心を汲んであげるのもいいと思うよ」
「……知ってる!」
 本音を吐き出したキョンシー木綿に、康行は小さな笑みを向ける。
「もしも、彼女のことが大切なら、まだ、助けられるからね」
 その手に引き抜かれるのは、青白い光を帯びた刃。
「この剣は、ここに来るまでにこの街の夜の光とともに、たくさんの想いを受け取ってきた。騒がしくも心優しい者達の」
 闇照らすクロウネルの刃を構え、康行の身体は一気に前方へと飛び出した。覚悟の宿った足取りが我が身を顧みず突き進む。布槍が腕や足をかすめようとも構わない。
 狙いはただ一点。額に貼りついた、一反木綿のみ。
「君にその想いを返そう。君が安らかに休めるように」
 優しく、青白く光る刃が、輝く残像を引いて真一文字に一閃した。
 はらり。
 ついに断ち切られた白布が舞い落ちていくのを、少女の瞳が戸惑いの色を浮かべて映し出していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
(骸魂に)あなたがタンタンさんですね。
シェンシェンさんはあなたに会えて嬉しかった。離れ難いと思ったのかもしれません。あなたも同じなのでしょう。
だから儀式が失敗したのかな?

お二人のお気持ちは判りますが、このままでは世界が崩壊に向かってタンタンさん達の様な犠牲者が出てしまいます。
ごめんなさいタンタンさん。ここであなたとシェンシェンさんの未練を終わらせます。

中国拳法は【第六感と見切り】で予測し、天耀鏡の【盾受け・オーラ防御】で防ぐ。
煌月に【破魔・浄化・除霊】の力を籠め、「生まれ変わって再会して下さい!」という【祈り】と共にUCで斬る。
肉体は傷つけずに二人の未練を断ち斬って、タンタンさんの転生を促す。



●未練を断ち切って
『……駄目だッ!』
 少女の喉を介さぬ声が響き、少女の周囲をいっそう濃いオーラが取り巻いた。
 少女の瞳から感情が抜け落ち、その手がひどく自動的な動作で素早く白布を自らの手首に括り付ける。
『離れない……絶対に!』
 少女の中にいられなくなってなお、骸魂の支配力はまだ残っているらしい。
「あなたがタンタンさんですね」
 大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)は、未だ執着を見せる骸魂に、穏やかに語り掛けた。
 ここまでの猟兵と彼とのやり取りから見出した、一つの解答を。
「シェンシェンさんはあなたに会えて嬉しかった。離れ難いと思ったのかもしれません。あなたも同じなのでしょう。……だから儀式が失敗したのかな?」
 白布が苦痛とは違う感情を映して震え、感情を失った少女の身体がぴくりとかすかに動いた。
 その反応が、答えの全てだった。
 詩乃は頷いて理解を示した。
「お二人のお気持ちは判りますが、このままでは世界が崩壊に向かってタンタンさん達の様な犠牲者が出てしまいます」
『……だから……だからなんだって言うんだッ!!』
 苦しげに激高した白布が、少女を操り弾丸の如く距離を詰めてきた。
 猛然と襲い来る拳法の仕草を、詩乃は冷静に予測し天耀鏡を掲げて的確にいなしていく。
 敵の一挙手一投足を見極める瞳には、静かな決意が灯っている。
「ごめんなさいタンタンさん。ここであなたとシェンシェンさんの未練を終わらせます」
 天耀鏡が燦然と輝いた。破魔のオーラに怯んだキョンシー木綿がぎこちなく動きを鈍らせる。
 詩乃は瞬間的に薙刀へと力を注ぎこんだ。
「生まれ変わって再会して下さい!」
 祈りを籠めて断ち切るのは、肉体ではなく、白布でもなく。
 少年と少女、双方の、互いへの『未練』。
 清浄な白の輝きが、儀式場に荘厳な光の柱を顕現させた。

●生きて
 そう、儀式失敗の原因は、むしろ主祭司である少女の側にあった。
 才能や能力ではなく、少女の「気持ち」の問題だったのだ。
 大切な友達が死んでしまった悲しみ。
 手ずから友達を送らなければならない立場への息苦しさ。
 友達と離れたくないという、純粋な想い。
 そんな未練が、一反木綿と子供達の魂を、この街に繋ぎとめてしまったのだ。
「タンタン……やだヨォ、行かナイでヨォ……」
 光の柱の中でひらひらと泳ぐ白布を、光の柱の外から握りしめて、少女は泣きじゃくっていた。
 完全に少女から切り離された白布は、しばし光にそよいだのち、ふいよふいよと少女の傍に集まり始めた。螺旋を描くその内側に、うっすらと透ける子供の人影が浮かび上がる。
「ぼくも離れたくなかったよ。……でも」
 人影の手が、白布を握りしめる少女の手に添えられる。
「送って。ぼくらを」
 ひどくつらそうに、けれどきっぱりと告げて、少年は少女の手を、白布から遠ざけた。
 たちまち大量の光に巻かれながら、少年は最期の言葉を投げかける。
「さよなら──生きて、生生(シェンシェン)!」
 転生を促す光は、白布を夜空の彼方へと巻き上げていく。
 呆然とそれを見送った少女は、物言わず顔を拭うと、ふらりとその場に立ち上がった。
 消えゆく光の柱の前で、少女は舞いを舞う。猟兵の歌う鎮魂曲を伴奏に、心の底から魂の安寧を願う舞いを、全力で舞う。
 死者に寄り添い、死者を慰め、次の生へと送り出す、見事な鎮魂舞。
 街のあちこちから黒から白へと反転した光の粒が舞い上がり、消えていく光の柱を追いかけるように、明るくなり始めた空へと昇っていく。
 雪降り積もる景色を逆回しにしたような光景を、猟兵達も、目を覚ました子供達も、正気を取り戻した妖怪達も、光が見えなくなるまで見送った。
 やがて空に姿を現した旭日は、儀式場に凛と佇む巫女の姿を照らし出し、一夜の事件の終幕を告げたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月15日


挿絵イラスト