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花は流れ、雫は弾む(作者 永夢ヨル
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「それっぽいモンスターの話が出てたから依頼を受けて来たんだけど、案内されてやるぜーって人いる?」
 グリモアベースにて。猟兵たちをぐるりと見まわしたカノン・チェンバロ(ジェインドウ・f18356)がやたら気やすく気楽な声をかけた。
「きれいな水源の近くでね。ひんやりと水に入ってお花見もできるお仕事だよ」
 ざっくりとした仕事概要に何人が腰を上げただろうか。



「もともとは近くの街の人たちの、隠れた憩いの場なんだってさ」
 仕事の話の始まりは、簡素な説明からだった。
「場所は水源が豊かな岩山のふもとのあたり……といっても到着するあたりは平坦なんだけど。碧く色づいた泉が広がってて、退治すべきモンスターのいる岩場にはその泉を越えなきゃいけない」
 泉の水源の周辺で花が満開になる時期で、水に乗って大量の花弁が流れて来るそうだ。その泉は山の水源の終着点、花びらが最後にたどり着く場所でもあるから、最終的に水面が全てといっていいほど埋まってしまうとか。
「水は凍えるほど冷たくはないし、とても澄んでるから汚れる心配もないよ。だけど花びらのあるところ……特に水際を歩くときは気をつけてね」
 理由を尋ねれば、“花びらで陸との境目がちょっと見えづらいから”との回答。
 山あいから流れて来る水に海のような波はない。しかし水源からの流れや空気の滞留のためなのか、かすかだが水が寄せて返すような動きをする。
 そのせいで少し陸地にも花弁が乗り上げていて、花びらごと地面を踏みしめたと思ったら水の中にダイブした、なんてことがある。それはちょっとあんまり楽しくない出来事だろうから。
「あ、水を汚したり土地を傷つけたりしそうな行動には気をつけてね。それと水底はかなり深さがバラバラだからボートとかで進むのはちょっとムリだと思う」
 気をつけなければいけないのは概ね環境や地形に影響を及ぼすことぐらいか。
 浅い場所を歩いて行くのはもちろん場所によっては深瀬もあるからそこは潜って進んでもいい。
 上流から下流までくだってきた流木には人が乗れるほど大きな物もあるので、そこに上れば水から少しのあいだ退避したり体を休める事もできそうだ。
 他にも探せば面白いものが見つかるかもしれない。
「もしかしたら岩場までの近道になる場所とかあったりしてね。わかんないけど」
 あったら楽しそうだよねなんて呑気な声をこぼすカノンの手のひらの上で、グリモアが光を灯しはじめた。





第3章 日常 『洞窟涼み』

POW細かいことは気にしないで涼む。
SPD光源を集めたりしてみる。
WIZ水に足を浸してみたりする。
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 街人たちのひそかな憩いの場。
 その付近にたむろしていたモンスターたちは無事に猟兵たちの活躍によって退治されたので、依頼の報酬がわりに一晩、その場所に立ち入ってのんびり過ごしていいという手はずになった。

 その場所というのは岩肌を貫通させたような洞窟。
 山頂から雪解け水が通り抜けてく場所のひとつで、水流によって長い年月をかけて削られてできたとみられている。
 入口はゆるやかで広く、奥に行くほど上ってゆく傾斜がある。さらに深く進んでゆくとだんだんと幅が狭くなって、花の群生の行き止まりにいきつくということだ。
 流水によってできた場所で今もくぼみなどには水が中を通っていっているのだが、それほど急な流れではない。また、どこも幅がせまく浅いので水に入っても流される心配はないだろう。
 流水は澄んでいるが、その流れには群生地から流れてくる花びらが散っているから誤って足を踏み入れる……という事もそう多くはないはず。
 洞窟の中でも危険な場所は景観を崩さないようにふさがれているから、出られなくなるようなところに迷い込む恐れもない。

 なぜ解放が夜なのかといえば、その時間帯が一番の“見ごろ”だからだろう。
 日没を迎えると花はぼんやりと青白い光をともし始めて、次の日の出までそれを見続けられる。光っている間は香りが強くなるのもその花の特徴で、甘さのなかに清涼感のある芳香で洞窟の中は満たされる。そして花に似た光を翅に持つ蝶が花に集まってきて、花の群生地は光がささなくても満月に照らされたときのような明るさになる――。

 この場所で気をつけて欲しい、と言われているのは。
 根づいている花にはさわらないこと。
 蝶が傷つく事はしないこと。
 水をひどく汚したり洞窟の形を変えるような行為はしないこと。
 それから、持ってきた物はちゃんと持ち帰ること。
 だいたい公序良俗を守れれば何かを持ち込んでもいいし飲食をしても大丈夫。水に流れている花弁は拾い集めても大丈夫だし、蝶は後で傷つけずに放せるならカゴに入れたりしてもいいし、水を口にしてもいい。
 水も空気も今の季節にしてはひんやりとしているから、人によっては少し肌寒いかもしれない。壁面に水がつたっていて水が垂れてくることもあるから気になる人は何か羽織ったり、濡れてもいい格好をしたり、水をしのげるものを持ってくるといいだろう。

 水の音が響く洞窟に訪れた猟兵たちは、季節の熱が遠いこの場所でどのように過ごして行くのだろう?



 洞窟の外は月あかり、洞窟の中は花あかり。夜間、日常の3章です。
 こちらの章だけのご参加も歓迎しております。
 POW/SPD/WIZは参考程度に、お好みのかたちでお過ごしください。
(プレイングは8月9日(日)10時以降に送信いただけるよう、ご協力をお願いいたします)