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辺境を薙ぐ魔狼の剣

#ダークセイヴァー #辺境伯の紋章

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#辺境伯の紋章


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 ――空を覆う暗雲を衝くようにそびえ立つ、峻厳なる霊峰アウグスタ。
 かつて、名も忘れられた神の領域であったこの山の麓に、人々の暮らす集落があった。

 この世界の支配者であるヴァンパイアたちの目すら届かぬ、遠き辺境の地。
 圧政と迫害から逃れて来た人々にとって、この地はまさに安住の場だった。
 決して豊かではなくとも、理不尽な死に怯えることもない、穏やかな暮らし。
 そんな日々が、いつまでも続きますようにと、彼らは今日も山に祈りを捧げる。

「貴様達に怨みは無い。だがこれも主命だ――死んで貰う」

 ――それが、儚き希望であったことを、彼らは知ることになる。
 現れたのは亡霊のごとき騎馬の軍勢。そしてそれを率いる1人の戦士。
 美しき白狼の鎧を纏い、一目で業物と分かる太刀を携えた、勇壮なる佇まい。
 だがその双眸は妖しく煌き、禍々しき殺気と人ならざる者の気配を放っていた。

 戦闘――否、惨劇の幕が開き、集落の住民はまたたく間に絶望の底に堕とされた。
 騎馬の蹄が人々の営みを踏み躙り、断末魔の悲鳴と鮮血が大地を染め上げていく。
 抵抗する余地など、微塵もなかった。それほどまでに彼の戦士の力は圧倒的だった。
 剣狼が太刀を一閃すると、大地が割れ、山が削れ、塵芥のように命は消え果てた。

「この力……この力があれば、私は……」

 屍で埋め尽くされた集落の廃墟に、剣狼の声だけが風に乗って虚ろに響く。
 その胸に張り付いた宝石――辺境伯の紋章が、不気味な輝きを放っていた。


「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵たちの前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「ダークセイヴァーの辺境に『辺境伯』と呼ばれる極めて強大なオブリビオンが現れ、軍勢を率いてその地に住まう者たちを探している――という事件を予知しました」
 辺境伯は身体のどこかに「辺境伯の紋章」と呼ばれる「寄生虫型オブリビオン」を宿し、通常のオブリビオンよりも大幅なパワーアップを遂げている。いったい"誰"がそんなものを与えたのかは不明だが、敵の目的が支配下にない人類の抹殺なのは確かである。
「今ならばまだ辺境伯が人々の居住地を発見するまでに時間があります。至急現地に転移し、敵軍を迎え撃つ準備をお願いします」
 そう言ってリミティアは用意してきた資料を広げて、今回の依頼の詳細を語り始めた。

「辺境伯の標的となるのは『霊峰アウグスタ』と呼ばれる高山の麓に広がる集落です」
 この山はかつて狂気に堕ちた異端の神によって支配され、人間はおろかヴァンパイアすら立ち入れない不可侵領域と化していた。しかし猟兵たちが山頂に座する神を討伐したことで、この地にはヴァンパイアの支配から逃れてきた人々が集まり居住地を築いている。
「辺境ではかなりの規模のある集落ですが、人口に比して防衛戦力はそれほどでもありません。生活にそこまで余裕がなかったのと、これまで敵のノーマークだったのもありますが――辺境伯の軍勢と、何より辺境伯自身の圧倒的な力には太刀打ちできないでしょう」
 猟兵にとっても正面きって戦うにはいささか荷の重い大軍だ。そこでリミティアは集落の住民を避難させたうえで、霊峰アウグスタの山中に敵軍を誘い込み、有利な状況を予め作ったうえで迎撃する作戦を提案する。

「異端の神の神域だった霊峰アウグスタは、現在も峻厳な地形の多い難所です。大軍相手に少数での防衛戦を行うのにはもってこいの要害でしょう」
 ここに陣地を築いて防衛線を敷くもよし、地形を利用した奇襲を仕掛けるもよし。大軍での行動を大きく制限できるだけでも猟兵側にとって大きく有利になるのは間違いない。
「そのためには進軍する辺境伯軍の偵察を行い、軍容や進路をなるべく正確に把握すること。そして山中のどこで潜伏し、迎撃するかのポイントを定める調査が重要になります」
 幸い、敵の到達までにはまだ時間があるとリミティアのグリモアは予知している。万一に備えて住民たちを集落から避難させるのも含め、猟兵たちが手分けして準備を行えばまだ間に合うだろう。

「残念ながらリムの予知では辺境伯軍の詳細については掴めませんでした。判明しているのは辺境伯が『剣狼』と呼ばれる人狼の戦士だということだけです」
 生前から優れた剣士であった彼は「辺境伯の紋章」を与えられたことで、まさに一騎当千の武勇を誇る強大なオブリビオンと化している。その行動原理にはただ人類を殺戮するだけではない別の理由があるようにも見えるが、その詳細は現状では判然としない。
「強敵ではありますが、この剣狼を撃破し、辺境伯の紋章を収集することができれば、彼に紋章を与えた者の正体に――より上位の吸血鬼の存在に近付けるかもしれません」
 ダークセイヴァーの世界を闇で覆い、100年に渡り人々を支配し続けているヴァンパイアたち。その勢力の全貌は未だ捉えきれてはいないが、もしかすればこの事件がオブリビオンに染め上げられた勢力図を変える契機になるやもしれない。

「敵は強大です。しかしそれは猟兵の牙が敵の喉元に近付いている証なのかもしれません。どうかこの一戦に勝利し、人々を救い、次の戦いへの希望を繋いでください」
 リミティアはそう言って説明を終えると手のひらにグリモアを浮かべ、ダークセイヴァーへの道を開く。霊峰アウグスタの麓に暮らす人々を守り、強大な辺境伯を討つために。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回の依頼はダークセイヴァーにて、辺境の集落を迫りくる『辺境伯』の軍勢から守り、辺境伯を討つのが目的になります。

 シナリオに登場する霊峰アウグスタは、拙作『狂える神に終焉を』(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=18989)にも登場した舞台になります。
 前作と直接繋がりは無いため、リプレイに目を通していただく必要はありません。
 かつては神域として畏れられ、今なお峻厳な地形が多いですが、ヴァンパイアの支配領域に無いため麓には圧政から逃れてきた人々の集落が築かれています。

 第一章ではこの集落に迫る辺境伯軍を迎撃する準備を行います。
 敵は大軍なので、霊峰の山中で迎え撃つのが基本方針となります。そのために必要な敵軍の偵察、迎撃ポイントの準備、住民の避難などをこの章で行ってください。

 第二章は霊峰アウグスタを戦場とした、辺境伯軍との集団戦です。
 現時点での詳細な戦力は未知数ですが、一章での準備が万全であれば、またその準備を活かすプレイングであれば、優位な立ち回りが取れるでしょう。

 第三章では軍団を率いる辺境伯本人との決戦になります。
 優れた戦士としての能力を寄生虫型オブリビオン『辺境伯の紋章』によって強化されており、極めて強大ですが、力の源である紋章は弱点でもあるようです。
 辺境伯を倒して紋章を捕獲することができれば、今後の展開につながる手掛かりになるかもしれません。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『辺境伯迎撃準備』

POW   :    襲撃を行うポイントに移動し、攻撃の為の準備を整える

SPD   :    進軍する辺境伯の偵察を行い、事前に可能な限り情報を得る

WIZ   :    進路上の村の村びとなど、戦場に巻き込まれそうな一般人の避難を行う

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

クネウス・ウィギンシティ
※アドリブ&絡み歓迎
「噂の辺境伯軍相手ですか、やってみましょう」

【SPD】偵察

●偵察
「敵の人数、武装、構成、この辺りが分かれば多少は楽になりますか」
 霊峰の山間部の岩の隙間を利用(【地形の利用】)して、身を潜め(【迷彩】)先行偵察を敢行します。

 自前の『サーチドローン』を展開し、自動【操縦】モードで上空から敵の映像を【撮影】。敵戦力を分析する狙いです。
「さて、飛行対策はされているのか……」

 最後にUCを発動してワナを山中の岩の間に仕掛けておきます。
「CODE:CYCLOPS。単眼の狩人よ、出番ですよ」
 セントリーガン(固定砲台)を幾つか準備しておきます。

 最後に自分の武器を整備します。


ドゥアン・ドゥマン
猟兵として、惨劇を防ぐべく
…それに。別の場所だが、以前狂える神を葬送した
吸血鬼達が何を目論んでいるのか。一連の繋がりを我輩も知りたい

猟兵方と連携し備えよう
住民方には村に籠って貰うよう頼み、村ごとの拠点防御を推す
その方が護りやすい故

戦場の準備と偵察の担当をば
戦闘知識と野生の勘、地形の利用で、
進軍路及び迎撃に良い場所を割り出す
影の獣となり疾く地を駆け、
集落周りと予想進路の要点に囁骨釘を打ち込んでおく
広範囲からの攻撃に対応できるよう、
生命力と地の念を吸収し、溜め。戦いに備えよう
異変あれば念が届き、知れる筈

民方にも抜け道等は無いか聞いておきたい
…彼らも不安だろう故。晶燈を貸そう
少しは、和らぐやもしれぬ



「噂の辺境伯軍相手ですか、やってみましょう」
「猟兵として、惨劇を防ぐべく尽力しよう」
 強敵の出現、そして人々の危機と聞いて、この依頼に参加表明したのはクネウス・ウィギンシティ(鋼鉄の機構師・f02209)とドゥアン・ドゥマン(煙る猟葬・f27051)。迫り来る『辺境伯』の軍勢を迎え撃つために、霊峰アウグスタに猟兵たちが集う。
 予知された襲撃の時までまだ猶予はあるが、けして多くはない。限られた時をけして無駄にはすまいと、現地に転移した彼らはさっそく戦場の準備と先行偵察を開始する。

「敵の人数、武装、構成、この辺りが分かれば多少は楽になりますか」
 サイボーグであるクネウスは黒鉄のボディを山間部の岩の隙間に潜ませ、迷彩機能をオンにして霊峰の風景と同化しながら、自動哨戒型飛行ドローン「D6ID」を展開する。
 高度なAIと射撃武装、そして何より高精度のカメラを搭載したそれは、遠隔地の情報を居ながらに伝えるクネウスの"目"として、ダークセイヴァーの闇夜を翔ける。
「進軍路及び迎撃に良い場所を割り出すのも必要か」
 そのドローンの直下、疾く地を駆けるのは【墓場影絵】を発動したドゥアン。己が肉体を影に変え、獣となりて陰影から陰影へと渡る彼は、研ぎ澄まされた野生の勘と溜め込んだ知識を武器に、敵軍が進撃してくるであろう方面に当たりをつけていた。

「……見つけたぞ」
 山の影と同化しながら、ドゥアンがふと疾走を止める。細められた青い視線の先には果たして、地を真っ黒に染め上げる規模のオブリビオンの軍勢が進撃する光景があった。
 その数は数百――あるいは千に届くやもしれない。軍を構成する主な戦力は、騎馬も装備も影のように黒い異形の騎兵。誰一人として声を上げず、人形のように隊列を乱さず、馬蹄の音だけを静かに響かせながら、着実に霊峰の麓に近付いてきている。
『さて、飛行対策はされているのか……』
 その光景はドローンを通じてクネウスの眼にも届いていた。自動操縦モードの「D6ID」はひっそりと敵軍上空へと移動し、その軍容をカメラに収める。発見される危険は承知のうえだが、ここで分析に足るデータを持ち帰らなければ偵察に出た意味がない。

『装備を見たところ遠距離攻撃の手段には乏しそうですね。使用するユーベルコードによっては分かりませんが……』
 敵騎兵の武装は剣や槍や鞭といった近接戦用の武器が主体。その他には死霊らしき影が随伴している。騎兵、あるいは指揮官の『辺境伯』によって召喚されたものだろう。
 騎兵と死霊で構成された軍勢は休むことなく行軍を続けるが、その移動速度はそれほど速くはない。敵の目的は「この地に存在する反抗勢力の殲滅」であり、その情報が予知されていることも、猟兵たちが迎撃準備を整えているのも知らないためだろう。

『敵情の把握、それに進軍路の予測は立てられました。一度戻りましょう』
「ああ。だが帰るついでに仕込みはさせてもらおう」
 ドローンを介しての通信にドゥアンはこくりと頷いて踵を返しながら、襤褸布の中より取り出した「囁骨釘」を地面に突き刺す。この釘には地に宿る念や生命力を吸う力がある――墓守である彼の力を補助し高めるための道具のひとつだ。
「異変あれば念が届き、知れる筈」
 吸い上げた大地の力を溜め込みながら、自らの撤退路――裏を返せば敵の予測進路の要点へと、次々と釘を打ち込む。もしこの上を邪なるオブリビオンや死霊が通れば、大地の嘆きが彼の耳に聴こえる。間接的に敵の進軍状況を把握できるはずだ。

「今、戻った」
「ご無事で何よりです」
 ドゥアンがクネウス本人と合流した時、彼は敵を迎え撃つためのワナを仕掛けている最中だった。2人での偵察情報から割り出した迎撃に適したポイントで、自身の武装をユーベルコードにより複製している。
「CODE:CYCLOPS。単眼の狩人よ、出番ですよ」
 強力なアームドフォートを搭載したセントリーガンを数機、山中の岩の間に設置。いざ敵軍が接近すれば、これらの火砲は容赦なく火を噴き敵を薙ぎ払うだろう。中世的な歩騎主体の軍勢相手には、こうした近代兵器による防衛線は極めて有効なはずだ。

 ――こうして迎撃準備を整えた2人は、次に霊峰アウグスタの麓にある集落を訪れた。
 この地にかつてない危機が迫っていることを、何も知らない人々に伝えるためである。
「どうか落ち着いて聞いて欲しい」
 ドゥアンは朴訥に、だが誠実な口調でこちらに接近する『辺境伯』軍の脅威を語る。
 これまで吸血鬼の支配から免れてきたところに、いきなり大軍勢が攻め寄せてくると聞いても、本来なら俄には信じられなかっただろう。しかしクネウスがドローンで撮影していた敵軍の映像を見せられれば、疑う余地はなかった。

「貴殿らの無事は吾輩らが必ず守る。どうか吾輩らを信じ、指示に従って貰いたい」
 護りやすさを考えれば、住民方には村に籠って貰うよう頼み、村ごとの拠点防御を推すのがドゥアンの理想だった。しかし敵をある程度山中に引き込むのが前提の作戦である以上、迎撃ポイントの内側に避難させる必要のある住民もいるのが実情だった。
 ドゥアンはそちらの"避難"については他の猟兵に任せ、自身は村落や迎撃の要所を"防衛"するための備えを確かなものとするべく、囁骨釘をその周辺に打ち込んでいく。
(あれ程の大軍が相手となれば、広範囲からの攻撃に対応できるよう、備えよう)
 役割を分担し、残された時間で出来る限りのことを。淡々と釘を打ち続ける墓守の猫人の近くでは、鋼鉄の機構師も自分の武器を整備し、来たるべき時に備えている。

「……別の場所だが、以前狂える神を葬送した。吸血鬼達が何を目論んでいるのか。一連の繋がりを我輩も知りたい」
「『紋章』とやらを辺境伯に与えたのが何者なのかも、気になるところです」
 今だ全貌も目的も明らかにはなっていない、ダークセイヴァーのヴァンパイア勢力。
 この戦いに勝利すれば、その真実の一旦を――手掛かりだけでも掴めるかもしれない。
 かつて狂える神に支配された地に、再び迫る戦火の気配を、ふたりは肌で感じていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

雛菊・璃奈
懐かしいね…且つて異端の戦神が住んでいた神域…。
もし、あの戦神が狂わずに今も民を守護していたら、ここも安全だったのかな…。

「高い!」
「険しい!」
「何か厳か!」

ラン達には人々の避難をお願い…。
わたしは以前ここに来た経験を活かして、敵が軍勢で侵攻して来る際に最も効率の良いルートを予測…。
道中に【呪詛、高速詠唱、全力魔法】による幻影攪乱の呪術を展開する呪符を仕込み、敵を攪乱…。
幻影による同士討ちや道を踏み外しての滑落、罠への誘導等を行うよ…。

更にルート上に【unlimited】を封じた呪符【呪詛、高速詠唱、全力魔法、誘導弾、呪殺弾】を罠として逃げ場の無い狭所や足場の悪い崖等に配置し、迎撃するよ…。



「懐かしいね……且つて異端の戦神が住んでいた神域……」
 以前は狂える神を討つために訪れた霊峰の頂を見上げながら、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)はぽつりと呟く。当時は人を寄せ付けぬほどに荒れ狂っていた気候は随分と穏やかになっていたが、その峻厳さは今だにかつての戦神の威容を偲ばせる。
「もし、あの戦神が狂わずに今も民を守護していたら、ここも安全だったのかな……」
 その"もし"が過ぎ去った過去への郷愁であることは、彼女自身にも分かっていた。
 在りし日には戦場にて信徒を加護する勇猛なる戦神は、すでに骸の海へと去った。
 かの狂い神に引導を渡した1人として――今、この地を守ることのできる猟兵の1人として、璃奈は自分にできる限りのことを尽くす。

「高い!」
「険しい!」
「何か厳か!」

 狂神討伐戦には参加していなかったメイド人形のランたちは、初めて見る霊峰アウグスタの威容に目を丸くしている。あの時のような荒天でないとはいえ、初見の者がこの山を登るのは少々苦労するだろう。
「ラン達は人々の避難をお願い……」
「「「りょうかい!」」」
 璃奈はメイドたちに麓での避難活動を任せ、自らは以前ここに来た経験を活かして険しい山道を登っていく。敵が軍勢で侵攻して来る際に、最も効率の良いルートはどこか、頭の中で思い描きながら。

「この辺りかな……」
 比較的傾斜がなだらかで、道幅も広く多勢での進軍が可能。過去の知識からそういったルートを予測すると、璃奈は幻影撹乱の呪術を付与した呪符を道中に仕込んでいく。
 行軍が可能とはいえ難所には変わりない。敵軍がここを通りがかった瞬間にこの呪術を展開すれば、撹乱としての効果は大きいだろう。同士討ちの誘発、他の罠への誘導――もしそれで敵が足並みを乱せば、そのまま道を踏み外しての滑落もあり得る。

「呪われし剣達……わたしに、力を……」
 さらに璃奈は予測したルート上に無数の魔剣・妖刀を放つ【unlimited curse blades】を封じた呪符を罠として作りあげる。これまでに配ってきた幻影の呪符が敵を撹乱するのが目的なら、こちらは撹乱された敵軍を確実に仕留めるための布石――故にその符は逃げ場の無い狭所や足場の悪い崖等、迎撃に適したポイントに配置される。

「これでよし……後は待つだけ、だね……」
 呪符の設置を完了して山中から麓のほうを見下ろしてみると、胡麻粒のような大きさの人々が安全な場所に籠もり、あるいは避難していくのが視える。そして彼方からはまるで大地に落ちた影のように、真っ黒な塊がじわじわと近付いてくるのも視える。
 あれこそが件の『辺境伯』の軍勢だと確信した璃奈は、銀色の双眸をすうと細め――この地を二度と荒らさせはすまいと、静かな決意を秘めて山中に身を潜めるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

榛・琴莉
ヴァンパイアでさえ厄介だと言うのに、辺境伯の紋章憑きとは
厄介ごとが尽きませんねぇ…それはどこの世界も同じことですけど

万全の状態での迎撃、そして紋章を回収する為にも、まずはUCで【情報収集】に努めましょうか
『鳴菅』で展開した電脳空間を周囲に投影します
【迷彩】もかけて、敵に悟られぬよう
仕事ですよ。Ernest、Harold
Ernestは上空から、Haroldは分散して地上から敵勢力の【偵察】を
人数から武装まで、しっかりお願いしますね
山中における機動力も予測しておいてください

強敵相手です、くれぐれも侮らなぬよう
Ernestも、迷彩をかけているとはいえ油断しないでくださいよ
見つからないことを最優先に



「ヴァンパイアでさえ厄介だと言うのに、辺境伯の紋章憑きとは。厄介ごとが尽きませんねぇ……それはどこの世界も同じことですけど」
 絶えることのないオブリビオンの脅威に、ガスマスクの下でふうとため息をつく榛・琴莉(ブライニクル・f01205)。猟兵も確実に実力をつけているはずだが、対する敵の脅威も日に日に増していくように感じられて、気を抜けない戦いばかりである。
「万全の状態での迎撃、そして紋章を回収する為にも、まずは情報収集に努めましょうか」
 ガスマスク「鳥の巣」の内蔵アンテナ「鳴管」を発信器として、自らの周囲に電脳空間を展開。現実に投影される情報の渦に迷彩効果もかけて、少女は行動を開始する。

「仕事ですよ。Ernest、Harold」
 進軍する敵に悟られぬよう細心の注意と距離を保ちながら、琴莉が起動するのは【飛翔捕食】。電脳の海より羽ばたく鳥のアバターと、コートの中から這い出る不定形の水銀が、宿主の求めに応じて密やかに偵察を開始する。
「人数から武装まで、しっかりお願いしますね」
 AIにして電子の鳥である「Ernest」は上空から、小型UDCの群体である「Harold」は分散して地上から敵勢力に近付き、その全てを詳らかに調べていく。彼らの解析した情報はマスクのレンズや電脳空間に投影される形で、琴莉の元にリアルタイムで伝達された。

「主な編成は騎兵と死霊、数は騎兵だけでも千近く……ですか」
 明らかになっていく敵戦力の詳細は、やはり正面から相対するには厳しいという予測を裏付けるものだった。まるで影のように生気のない騎兵たちは、異常なほどに統率の取れた動きで、列を乱さず規律を保ったまま、緩やかだが着実に集落に迫っている。
 幸いと言えるのは弓矢や銃などの飛び道具を持った敵が少ないこと。銃撃戦を得意とする琴莉としては近接主体の敵は与し易い相手になる――敵にそれを補うだけの機動力やユーベルコードがあった場合は、また別の話になるが。

「山中における機動力も予測しておいてください」
 琴莉が指示を出すと、すぐさまレンズに浮かぶデータと数字の数々。平地において騎兵は最高の機動力を発揮するが、険しい山岳地においては逆に小回りが利かなくなる。随伴する死霊の群れも、行軍速度から予測される敏捷性はさほど高くないようだ。
 人ならざる密偵たちは優秀な"目"となり"耳"となり、精度の高い情報を提供してくれる。更に接近して詳細に調べるかという彼らの提案に、しかし琴莉は首を横に振った。

「強敵相手です、くれぐれも侮らなぬよう」
 敵勢力の陣容は割れても、それを率いる『辺境伯』の力は強大だ。より多くの情報を得るリターンよりも、欲をかいて此方の存在に気付かれるリスクを琴莉は重くみた。
 現状、猟兵側が持つ最大のアドバンテージは、こちらが迎え撃つ準備を進めていることを敵勢力に知られていない点にある。今はまだ、この優位を手放すには早すぎる。
「Ernestも、迷彩をかけているとはいえ油断しないでくださいよ」
 夜空の色に紛れて羽ばたく鳥に釘を刺しつつ、琴莉はここまでに集まった情報を整理し撤収のタイミングを見計らう。辺境伯軍の兵力、武装、編成から予測侵攻ルートまで――調べられる限りの事を調べた後、彼女らは音もなく仲間の元に戻るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
ようやく人間が手に入れた人間の土地、生活、尊厳
必ず守り抜きます

敵勢力の【偵察】に向かう
【地形を利用】し、【目立たない】位置で観察
【トリニティ・エンハンス】で全身に風の魔力を纏い、足音や匂いによる察知を防ぐ
強化された【視力】と【暗視】で敵勢力の規模、陣形などを【情報収集】
野生の鳥や小動物にも協力をお願いする(動物と話す)

しかし……辺境伯、ですか
爵位持ちが出張って来るとは、吸血鬼どもも本腰を入れてきましたか
今まで害虫扱いだったのが、ようやく明確な敵として認識されたわけですね
く、ふふふ……いけませんね、脅威度が上がっているというのに……面白くなってきました
叛逆の牙、必ずその喉元に突き立ててやります



「ようやく人間が手に入れた人間の土地、生活、尊厳。必ず守り抜きます」
 それは集落の人々と自分自身にかけた誓いの言葉。敵勢力の偵察に向かうオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)の瞳は、闇夜の中で黄金に煌めく。
 【トリニティ・エンハンス】により風の魔力を全身に纏った彼女の足音や匂いは、外側に漏れることはなく。身を潜めるのに適した地形を発見すると、目立たないよう岩のようにじっと敵の接近を待つ。

「あれが辺境伯の軍勢ですか……」
 やがて地平より姿を現したのは、闇そのものが動いているような漆黒の軍勢だった。
 オリヴィアは闇をも見通す強化された視力を以て、敵勢力の規模や陣形を目に焼き付けていく。見たところそれは千近くの騎兵とそれに随伴する死霊で編成されており、一般的な行軍用の縦隊を組み、ゆっくりとした速度で霊峰に向けて進軍している。

「貴方たちもどうか協力をお願いします」
 自分ひとりではこの規模の軍勢を把握しきれないと判断したオリヴィアは、山野に生きる鳥や小動物にも助けを求める。オブリビオンにこの地を荒らされたくない想いはどんな生き物も同じなのだろう、彼らは任せろとばかりに偵察を引き受けてくれた。
 獣ゆえに高度な理解や判断力に乏しい点はあるが、その小さくて怪しまれにくい"目"は、敵勢力に近付いてその規模を把握するうえで大いに役立った。

「しかし……辺境伯、ですか。爵位持ちが出張って来るとは、吸血鬼どもも本腰を入れてきましたか」
 動物たちと共に偵察を続けながら、オリヴィアは誰にも聞かれることなく独りごちる。
 ヴァンパイア社会においてどういう位置付けかは知らないが、辺境伯とは通常、乱多く治めるに難しい要地を任せられる爵位だ。その性質上、能力のある者でなければ辺境伯は務まらず、此度の敵に与えられた『辺境伯の紋章』もそれを裏付けている。
「く、ふふふ……いけませんね、脅威度が上がっているというのに……面白くなってきました」
 これまでにない類の強敵の出現にオリヴィアの心は昂ぶり、口元には笑みが浮かぶ。
 あの傲慢な吸血鬼どもが有力な手勢に『辺境伯』という力と地位を与えてまで、人類を排除せんとしている。その動きから彼女が感じ取ったものは――敵の"焦り"だ。

「叛逆の牙、必ずその喉元に突き立ててやります」
 自分たちが刻んできた足取りは、確かにヴァンパイア打倒という目標に繋がっていた。
 ふつふつと湧き上がる高揚感は、秘めたる牙をさらに研ぎ澄ませる。オリヴィアはその瞬間を待ちわびながら、今はじっと敵情の観察に徹するのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルカ・ウェンズ
善良なタフガイや善良な美少女を優先して避難させたいけど、寄生虫型オブリビオン『辺境伯の紋章』も気になるし情報は大事だから【偵察】をするわ。

相棒の宇宙昆虫に【騎乗】して空から静かに敵に接近して、虫の本を使って呼び出した昆虫型機械生命体の群れに敵を偵察してもらい敵がどこまで近づいているかや、数、武装、隊形、発見時刻、移動速度、そして出来れば『辺境伯の紋章』の位置を昆虫型機械生命体に教えてもらい、それを私が味方に知らせるわよ。

敵に気づかれたら【残像】が見えるような速さで逃げて、もし避難させるのが終わってなかったら善良なタフガイや善良な美少女を優先して避難させるわよ!



「善良なタフガイや善良な美少女を優先して避難させたいけど、寄生虫型オブリビオンも気になるし……」
 自分の趣味嗜好のどちらを優先するか考えた結果、最終的に「情報は大事だから」という理由でルカ・ウェンズ(風変わりな仕事人・f03582)は敵勢力の偵察を選んだ。
 様々な虫を使役し、虫を愛する彼女にとって『辺境伯の紋章』は興味深い対象だ。あわよくば戦う前に確認しておきたいと、相棒の宇宙昆虫に乗ってさっそく出発する。

「あれが辺境伯の軍勢ね」
 仲間たちが予測した進軍ルートを辿ってみると、そこには大地を黒く染め上げるほどの大軍団がいた。黒い騎兵と死霊の群れで構成されたそれは、まるで地獄の底から這い上がってきたように生気のない、不気味な軍勢だった。
「ゴーリー・セントジョン・エドワード」
 ルカは上空から静かに敵に接近すると、【本の虫】を使って呼び出した昆虫型機械生命体の群れに偵察を命じる。知りたいのは敵の数、武装、隊形、発見時刻、移動速度、そして『辺境伯の紋章』の位置――戦闘前に集めるべき情報は山のようにある。

「だいぶ集落に近付いてきてるわね」
 敵軍の移動速度は緩やかなものだが、まっすぐに霊峰の麓にある集落に向かってきている。どうやら敵もその辺りに人々が暮らしているという事実は把握しているようだ。
 速度を上げないのは大軍であることもあるが、そもそも急ぐ理由が無いのだろう。連中はまだ自分たちの存在が猟兵に知られ、迎撃準備を進めているとは知らないはずだ。
「それでもこの分なら丸1日と待たずに到着されそうね」
 縦隊を組んで一糸乱れぬ行軍を続ける千の騎兵と死霊の群れを見下ろしながら、ルカはおおよその到着予想を立てる。そこに散っていた昆虫型機械生命体の群れから、敵の指揮官らしい者を見つけたという情報が伝わった。

「あれが……」
 細心の注意を払って近付いた先でルカが見たのは、白い鎧に全身を包んだ1人の剣士。狼を模した兜を被っており顔を窺うことはできないが、佇まいだけで手練と分かる。
 その鎧の上から張り付くように、大きな宝石のブローチのような"何か"が、剣士の胸元に触手を食い込ませている――それを目にした直後、剣士の頭がふいに上を向いた。
「!!」
 兜の奥で妖しく煌く双眸と目が合った――かどうかは分からない。気取られたと感じた瞬間にはもう、ルカは全速力で宇宙昆虫を飛ばし、その場から離脱していたから。もし剣士が何かを見たとしても、それは夜空に浮かぶ黒い残像だけだったろう。

「危ないところだったわ」
 追手が来ないのを確認して、ふうと額の汗をぬぐうルカ。ヒヤリとはしたものの、敵の指揮官である辺境伯を発見し『辺境伯の紋章』の位置まで確認できたのは大きい。
 この情報を味方に伝えるために集落に戻ってみると、そこではまだ住民が避難している最中だった。彼女の見た敵の進軍速度からすると、あまり避難が遅れるのは不味い。

「はい、善良なタフガイや善良な美少女はこっち!」
 万が一にも戦いに善良な人々が巻き込まれないようにと、ルカは避難の手伝いをする。
 その優先順位は多分に本人の嗜好が含まれているが、宇宙昆虫と機械昆虫の群れによる飛行能力と運搬能力は、彼らをスムーズに移送するために力を発揮するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
辺境伯の軍勢が来るときいて、悩み聞くカレー屋の店主カビパンは燃えていた。軍勢(客)の為に第二号支店を作っていたのである。
するとそこに霊峰アウグスタに暮らす人々がやってくるではないか。

「何をしてるんですか?」
「悩み聞くカレー屋支店を作っているのよ」
「???」

カビパン一連の謎行動を見ていた人々は

『アンタ馬鹿じゃないのか!?こんな所に客が来るわけないだろ!!』

――と叫びたかったが、何か(外見上)怖くて何も言えない。
我々には理解できない深い考えがあるんだろう、と無理やり自分を納得させて帰った。

完成した第二号支店は、峻厳な地形で一本道となっている場所のど真ん中に建てられ、邪魔臭くも最前線の砦となった。



「え、もうお客さん近くまで来てるの? だったら急がないと!」
 猟兵たちが偵察に迎撃準備にと奔走するなか、山の中で日曜大工に勤しむ女が1人。
 彼女、悩み聞くカレー屋の店主カビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)は、辺境伯の軍勢が来ると聞いて燃えていた。彼女は軍勢(客)のために、ここにカレー屋支店の第二号を作っていたのである。

「何をしてるんですか?」
 するとそこにやって来たのは霊峰アウグスタに暮らす人々。辺境伯の軍勢から逃れるために山中に避難してきた彼らの当然の疑問に、カビパンはこともなげにこう答える。
「悩み聞くカレー屋支店を作っているのよ」
「???」
 何を言っているのかさっぱり分からない。どうもこの女が建てているのは食事処らしいが、それをこんな山の中で開店する理由が不明だし、店の中で彼女がコトコト茹でているうどんも、煮込んでいるカレーも、この世界の住人からすれば未知のものだ。

『アンタ馬鹿じゃないのか!? こんな所に客が来るわけないだろ!!』

 ――と、カビパンの一連の謎行動を見ていた人々はそう叫びたかっただろうが、何か外見からして偉そうだし、何よりやっている事が異様すぎて怖くて何も言えない。
 カビパンは自分の店とカレーについて熱く演説してみたが、同意を得られる気配はない。ちなみに彼女のこだわりにより、当店のメニューはカレーうどんのみである。
 さっぱり理解できなかった人々は「我々には理解できない深い考えがあるんだろう」と無理やり自分を納得させるので精一杯だった。

「えぇっと、(色んな意味で)危ないので気をつけてくださいね……?」
「はい。あなた方もいつでも来てくださいね。通りすがりも、冷やかしも大歓迎!」
 帰っていく人々を呑気に見送りながら、再びカレー屋とカレー作りに勤しむカビパン。
 だがこれも女神の思し召しというやつなのだろうか。完成した第二号支店は、峻厳な地形で一本道となっている場所のど真ん中――敵軍の侵攻上の要衝に建てられていた。
 どこまでカビパンが狙っていたのかは分からないが、霊峰アウグスタに攻め入る辺境伯軍は、これより先に進みたくば嫌でもカレー屋に入店せねばならないのだ。こんなトラップは恐らく前代未聞(であってほしい)だろう。

「掃除も済んだ! カレーも揃えた! あとはお客を待つだけ!」
 香ばしいカレーの匂いを漂わせながら、カビパンはのんびりと来客を待つ。
 邪魔臭くも最前線の要害となった、悩み聞くカレー屋という名の砦の中で。

成功 🔵​🔵​🔴​

ブラミエ・トゥカーズ
この世界は暗く湿って…なんとも快適な所であるな。

異世界の吸血鬼の眷属であるか。
正面から堂々と、人を喰らうと。
いやはや品の無い。

【WIZ】
特に特殊な事をするでなく、見つかりにくい場所、逃げやすい場所に人々を誘導する。

貴公ら、ここにいると危ないぞ。

人を怖がらす生態を持つため、他者から死角になりやすい場所、逃亡に適した経路などを見つけやすい。

特に吸血鬼であることは隠さない。
礼なら、貴公の血を一舐めか、ワインの一瓶でも良いぞ。
怖がったり驚いてくれるのが一番であるがな。
おっと、そのニンニクはやめてくれたまえ。



「この世界は暗く湿って……なんとも快適な所であるな」
 幽世からこの地を訪れたブラミエ・トゥカーズ("妖怪"ヴァンパイア・f27968)にとって、日光の失われた夜闇の世界はとても居心地のいい場所だった。種族が異なれども同じ"ヴァンパイア"と呼ばれる者達が覇を握った世界なのだからそれも当然か。
 だが、いくらこの世界の夜が快適だからと言って、そこに住まうヴァンパイア共にまで彼女が好感を抱いているかと言えば、それはまた別の話である。
「異世界の吸血鬼の眷属であるか。正面から堂々と、人を喰らうと。いやはや品の無い」
 旧き魔にして狩猟貴族としての品格を尊ぶブラミエにすれば、辺境伯とやらの行いは粗暴に過ぎる。無益な暴虐でいたずらに人の命が失われるのは、妖怪としてあまり好ましいことでは無かった。

「貴公ら、ここにいると危ないぞ」
「ひっ……!?」
 集落にいる人々に声をかけると、彼らはみな恐怖に顔を引きつらせて悲鳴を漏らす。それも当然だろう――一目で上流階級のものと分かる服装も、吸血鬼としての特徴も、ブラミエは何ら隠すことなくありのままの姿でいるのだから。
「ここから少し山を登ったところによい隠れ場所がある。余が案内してやろう」
「え、えぇ……?」
 だから、彼女が優しげな笑みを浮かべてそう口にした時の、人々の驚きと困惑もひとしおだった。なぜ吸血鬼であるはずの彼女が自分たちを助けるのか? 見かねた他の猟兵が「彼女は味方だ」と説明しなければ、疑心暗鬼に陥っていたかもしれない。

「人の足ではこの山道は迷いやすかろう。余の後ろについて来るといい」
 妖怪として人を怖がらせる生態を持つブラミエは、翻って他者から死角になりやすい場所、逃亡に適した経路などを見つける感覚に優れていた。悠然とした態度で人々を先導し、辺境伯の軍勢から見つかりにくい場所へと彼らを誘導していく。
「あ……あの……ありがとうございます……」
「礼なら、貴公の血を一舐めか、ワインの一瓶でも良いぞ」
 恐る恐るといった様子で住民がお礼を言うと、彼女は冗談めかしつつも本気の口調で応える。そんなことを言えば余計怖がられるのが分かっているだろうに――だが、妖怪であるブラミエにとっては、怖がったり驚いてくれるのが一番の報酬なのだ。

「ご……ごめんなさいっ。助けに来てくれたのに、怖がったりして……」
「構わぬ。何ならもっと怖がっても……おっと、そのニンニクはやめてくれたまえ」
 幽世を居所として以来、久しく味わうことのなかった新鮮な"人の恐怖"を満喫するブラミエ。だが人を怖がらせはするし血も吸いはするが、過度に傷つけたり殺す事は滅多にしないのが西洋妖怪"ヴァンパイア"としての彼女の生き様である。
「さあ、着いたぞ。恐怖の一夜が無事に明けるよう、ここで震えて待つといい」
 何事もなく人々を避難場所まで送り届けると、御伽噺の吸血鬼はにやりと牙を覗かせて笑い――まるで夜の暗闇に溶けるように目の前から姿を消す。決して忘れられることのないだろう"恐れ"と"記憶"を、人々の心にしっかりと刻みつけて。

成功 🔵​🔵​🔴​

フレミア・レイブラッド
【虜の軍勢】で戦闘班として雪花、ハーベスター、ジョーカー、エビルウィッチ、異国の少女剣士、光の断罪者、『雪女』雪華、黒い薔薇の娘たち、レッサーヴァンパイア。
準備班として罠うさぎ(3羽)、邪悪エルフ、万能派遣ヴィラン隊(多数)を召喚。

峻厳な地形という事だし、軍勢の侵攻ルートは限られるので、準備班の罠うさぎとヴィラン隊は【えげつない多段トラップ】や【あらゆるニーズにお答えします】で敵の侵攻ルート上に罠の設置。
邪悪エルフは【灰は灰に、倒木は下僕に】でゴーレム製作して配置を指示するわ。
戦闘班はわたし自身と共に戦闘に適した位置で待機して待ち伏せね。

どれだけの軍勢だろうと、必ず止めるわ。行くわよ、みんな!



「わたしの可愛い僕達……さぁ、いらっしゃい♪」
 迫り来る辺境伯の軍勢から人々を守るための迎撃準備。そのためにフレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)が呼び寄せたのは、魔城スカーレットに住まう自身の【虜の軍勢】だった。
「おねぇさま、みんなで来たのー」
 雪女見習いの「雪花」を筆頭に、戦闘力に長けた者や、事前準備に役立つスキルを持つ者。多くは見目麗しい姿をした十数名の眷属が、霊峰アウグスタの麓に集結する。
 軍勢にはこちらも軍勢で対抗する。数のうえでは流石に比較にはならないが、フレミアの眷属はいずれも個性的な能力とユーベルコードを秘めたオブリビオンたちだ。

「峻厳な地形という事だし、軍勢の侵攻ルートは限られるでしょう」
 招集した軍勢の中からフレミアはまず、罠の扱いに長けた「ダンジョン罠うさぎ」と多様な技能を持つ「万能派遣ヴィラン隊」たちに、敵の侵攻を阻む罠の設置を命じる。
「罠を仕掛けるのなら任せて!」
「あらゆるニーズにお答えします」
 偵察や調査に向かった猟兵たちのお陰で、敵の侵攻ルートはかなりの段階まで絞り込まれている。罠うさぎたちはそこに敵を拘束し、さらに追撃する二重の罠を仕掛け、派遣ヴィラン隊はメイド服を翻しながら多種多様なトラップを作り上げていく。

「邪悪エルフはゴーレムを製作して配置を」
「仰せのままに」
 続いてフレミアは戦闘要員の眷属たちに周辺の木々を伐採させ、褐色の肌をしたエルフの術士がそれを素材として【灰は灰に、倒木は下僕に】でゴーレム兵を召喚する。
 この山の中ならばゴーレムの体素材に困ることはない。こうして増強された戦力はうさぎたちが仕掛けた罠と同様に侵攻ルートに配置され、敵の到来をじっと待ち構える。

「残りの戦闘班は、わたしと共に待機して待ち伏せね」
 辺境伯軍の迎撃のために集められたのは、雪花、ハーベスター、ジョーカー、エビルウィッチ、異国の少女剣士、光の断罪者、『雪女』雪華、黒い薔薇の娘たち、レッサーヴァンパイア。これだけの眷属が城の外で一堂に会するのもそうあることではない。
 この人数が存分に戦えるだけの場所の選定は難しかったが、幸いにも戦場を決めるアドバンテージは猟兵側が握っている。戦闘に適した位置にめいめい眷属らは身を潜め、フレミアもまた愛槍ドラグ・グングニルを手に姿を隠す。

「どれだけの軍勢だろうと、必ず止めるわ。行くわよ、みんな!」
 主たる吸血姫の力強い号令に、眷属たちが気迫を漲らせながら応じる。例え何者が相手でも絶対に負けはしない――それが、集いし彼女らの間で統一された想いだった。
 敵影は今だ見えず。だが、会戦の気配が着実に近付いてきているのをフレミアは感じ取っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
霊峰アウグスタ…久方ぶりに聞く地名ですが、人類砦として芽吹いているようで幸いでした
なればこそ、ここで『辺境伯』に摘み取らせはしません

装着したUCで飛行し、住人の避難の誘導や補助を行います
荷車や馬車のトラブルがあれば●怪力とワイヤーアンカーの●ロープワークで保持、乗員や家畜ごと運搬
慣性制御で彼らの負担も少ないでしょう

しっかり掴まっていてください
余裕ある方はご家族を離さないように

ひと段落付きましたが避難場所との往復でエネルギーはほぼ空
対艦砲も撃てる回数は僅かですね

前回の地形の記憶と●スナイパー知識から使用後の接近戦、逃走ルートも加味し敵軍に出血強いる狙撃・砲撃地点選定
対艦砲を据え付け敵襲に備えます



「霊峰アウグスタ……久方ぶりに聞く地名ですが、人類砦として芽吹いているようで幸いでした」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は以前、狂える神を討つためにこの地を訪れた時のことを思い出す。当時は人を寄せ付けない魔境であったここが人々の拠点として発展しているのを見ると、あの戦いの意義を改めて感じられる。
「なればこそ、ここで『辺境伯』に摘み取らせはしません」
 戦神の死という礎の上に築かれた人類の砦。それを守り抜くことこそが此度の自らの使命であると任じて、機械仕掛けの騎士はまず住人の避難誘導と補助に向かった。

「重い荷物での移動に難儀している方はおられますか? 私がお力になりましょう」
 【戦機猟兵用全環境機動型大型標的攻撃試作装備】を装着し、増設したブースターとスラスタによる飛行能力を得たトリテレイアは、集落から避難する人々に声をかける。
 それまで平穏に暮らしていたところに突然の敵襲ということもあって、住民の避難にトラブルは少なくない。中でも目立ったのが荷車や馬車で山道を移動しようとして、逆に立ち往生になってしまうケースである。
「坂道がこんなにきついとは思わなくて……馬もすっかりばててしまいました」
「でしたら、私が代わりに車を曳きましょう。皆様は荷台にどうぞ」
 トリテレイアは機体に搭載したワイヤーアンカーを荷車に巻きつけて保持すると、ブースターの出力を上げて乗員や家畜ごとそれを持ち上げ、避難場所まで運搬していく。

「しっかり掴まっていてください。余裕ある方はご家族を離さないように」
「は、はいっ」
 機械の騎士に吊り下げられて空を飛ぶという初めての体験に、人々の多くは目を丸くするか、あるいは不安そうに青ざめている。しかし、あらゆる環境での三次元機動を想定した追加装備の完成制御機能は優秀で、乗り心地そのものはすこぶる快適だった。
「到着です。お荷物の忘れ物がありませんように」
「えっ、もう着いたんですか……? ありがとうございます!」
 地上を行くよりも遥かに短い距離と時間で目的地に到着したトリテレイアは、口々に感謝する人々と荷物を降ろすと、また補助が必要な人々を探して山間部を飛び回る。
 空飛ぶ機械騎士の姿は地上からもよく見えたようで、多くの人々が彼のおかげで無事に避難場所まで辿り着くことができた。

「これでひと段落付きましたが……」
 集落と避難場所を何度も往復するうち、試作兵装のエネルギーはほぼ空になっていた。単に飛行するだけならともかく、激しい高機動戦闘を行うのはこれでは難しい。
「対艦砲も撃てる回数は僅かですね」
 トリテレイアは現在の装備状況から最適な戦術を再計算すると、前回この山を登った時の地形の記憶とスナイパーとしての知識を頼りに、侵攻してくる敵軍を狙撃・砲撃する地点を選定することにした。

「逃走ルートも加味して、出来るだけ敵に出血を強いることのできるように……」
 トリテレイアが降り立ったのは、そんな敵の行軍ルートを射程に収められる切り立った崖の上。彼はそこの岩肌にアンカーで機体を固定し、槍型の対艦砲を据え付ける。
 これでいつ『辺境伯』の軍勢がやって来ても、迎え撃てる準備は整った。機械騎士は完璧な狙撃体勢を取ったまま微動だにせず、巌のように静かに敵襲に備えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セシリア・サヴェージ
敵軍がいかに多勢で強大であっても、人々を護る為ならば退く訳にはいきません。集落に敵が足を踏み入れる前に終わらせます。

事前に住民の方から周辺地形の【情報収集】を行った上で戦略を練りましょう。
得られた情報と私が持つ【集団戦術】の知識をもとに敵の進軍ルートを予想します。

その上で敵軍がこちらの有利になるルートを選択するよう工作していきます。
具体的には木々をなぎ倒す、地面を陥没させるといった【地形破壊】を用いて進行不可能な場所を作り、敵が迂回するように仕向けます。
そして向かう先には罠を仕掛け防衛線を張り、と言ったところです。

私達に敗北は許されません。事前準備は抜かりなく徹底的にやりましょう。



「敵軍がいかに多勢で強大であっても、人々を護る為ならば退く訳にはいきません」
 暗黒の鎧を纏いて勇ましく、セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)はそう語る。正しき闇の力を以て、弱き者を護る剣となり盾となる――暗黒の剣にそう誓いを立てた彼女にとって、この戦いから背を向けるという選択肢は初めから無い。
「集落に敵が足を踏み入れる前に終わらせます。どうか皆様もご協力を」
 霊峰アウグスタにある集落を訪れた暗黒騎士は、住民たちに情報提供を求める。たとえ戦う力がなくとも、この地に根を張り暮らしてきた人々の知識は、防衛戦において重要な意味を持っていた。

「どうかお願いします、騎士様……私達の村をお守り下さい……」
「ええ、必ずや」
 懇願する人々に力強くそう応えながら、セシリアは戦略を練る。住民から収集した周辺地形の情報に加えて、偵察に出た猟兵たちが集めた敵軍の情報も共有されている。それらと自らが持つ集団戦術の知識を元にして、彼女は敵の進軍ルートを予想する。
「千人規模の軍隊にこの険しい地形となれば、進軍可能なルートも絞られますね」
 その上で、こちらにとって有利になるルートはどれか。そこを敵軍が通るようにするにはどうすれば良いか。熟考したうえで計画を立てると、騎士はすぐに集落を出立した。

「少々地形を変えてしまうことになりますが、人命の為に目を瞑って貰いましょう」
 敵軍の予想進路上にあるとある山道までやって来たセシリアは、己の半身とも言える暗黒剣ダークスレイヤーを振るう。漆黒の斬撃が木々を薙ぎ倒し、大地を斬り裂く。
 破壊の嵐とも言うべきそれが収まった時、山道は破壊された木々や土石で塞がれ、地面は陥没し、もはや道と称するのも憚られるような有様と化していた。
「これでこの道を敵軍が進行するのは不可能ですね」
 どこか満足げな口調でセシリアはそう呟くと、暗黒剣を収めて別の山道へと向かう。
 情報によれば敵軍の編成に工兵の類はいない。ここまで破壊された道を騎馬が通れるようになるまで復旧するのには途方もない労力がかかるし、それをするくらいなら敵も迂回を考えるだろう。敢えて通行可能なルートを残しておき、敵がそちらを選択するよう誘導するのが、彼女の作戦という訳だ。

「私達に敗北は許されません。事前準備は抜かりなく徹底的にやりましょう」
 セシリアは入念に他のルートを潰してまわったのち、残されたルート上には罠を仕掛けていく。確実に敵軍がそこを通るように仕向けた上で、絶対に仕留めるために。
 多くの人々の命がかかったこの戦いの責任の重さを、彼女は強く感じていた。敵軍到達までに残された1分1秒を惜しむように、暗黒騎士は霊峰に防衛線を確立させていく。

成功 🔵​🔵​🔴​

シェーラ・ミレディ
以前の悪天候は鳴りを潜め、今では領主に虐げられることのない場所として人々が生活を営んでいると聞いていたが。防衛戦力に乏しいのは如何ともしがたいなぁ。
これまでにオブリビオンを倒し、開放してきた地も見回る必要が出てくるが……さて、まずは目の前にいる住人らの避難に注力しようか。

敵がやってくる方角とは別の方向へ、人々を避難させよう。
「折角得られた安住の地を侵されることに憤るのも無理はない。何故執拗に狙われ、殺されねばならぬと嘆く声もあろう。吸血鬼は、憎いな……」
「だが、耐えてくれ。ここは僕らに任せ、今は逃げるんだ!」
UCを使って動く活力を与え、行動を促すぞ。

※アドリブ&絡み歓迎


ウーナ・グノーメ
連携・アドリブ◎

「峻厳たる山嶺……守りには良いのですが、逃亡には向いていないのです」
「わたしは人々を誘導する役を主に担うのです。精霊達よ、目覚めて」

UCによって下級精霊を召喚し、彼らと共に手分けして、一般人の避難を行う。

「人々の避難は30もいれば十分なのです。残りは情報収集を手伝うのです」

敵の総戦力が明らかでない以上、情報は極めて重要だ。
精霊達の【情報収集】によって、進軍ルートの予測や、迎撃のポイントを計算する作業も並行して行う。
妖精が持つ、強い【第六感】も鍵となるだろう。

「大地の妖精として、山々を味方につけた戦いで、負けるわけにはいかないのです」

精霊達に指示を出しながら、妖精はそう呟いた。


アリステル・ブルー
「その依頼僕にも協力させてくれないかな?」
故郷の世界なのだ、乗らない手はない。それに…辺境伯を倒していけばいつか、こうなった元凶に辿り着けるかもしれないのだ。
人が自由を取り戻せるきっかけになるならば、僕がやるべきだ。

そうだなぁ、僕は現地では住民を安全な場所に移動させるね。
万が一敵がやって来た時に備えて…住民に聞いたり、偵察や追跡で良い場所を探したりするよ!
いない方が良いけどもし怪我して動けない人がいるならUCを使って治療するね。
うん。多少の疲労なんて、皆の為ならどうってことないよ。

後はそうだね、手伝いが必要そうな猟兵さんがいたら僕はサポートにまわるね!

(アドリブ連携歓迎です)



「以前の悪天候は鳴りを潜め、今では領主に虐げられることのない場所として人々が生活を営んでいると聞いていたが」
 記憶に残っていた風景とは随分と様変わりした霊峰アウグスタの様子を実際に目の当たりにすると、シェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)の心にも感慨が湧く。あの戦い以降、この地が人類の砦として順調に発展していたのは何より――だが。
「防衛戦力に乏しいのは如何ともしがたいなぁ」
 圧倒的な支配力と戦力を有するヴァンパイア勢力に対して、やはりまだこの世界の人々の防衛力は脆弱と言わざるを得ない。『辺境伯』という強敵は想定以上だったとしても、この状態ではいずれこの集落が危機に陥っていた可能性は高いだろう。

「これまでにオブリビオンを倒し、開放してきた地も見回る必要が出てくるが……さて、まずは目の前にいる住人らの避難に注力しようか」
 憂慮すべき事は尽きないが、今は辺境伯の軍団が来る前にこの地に住まう人々の安全を確保するのを最優先とするシェーラ。それに同意するようにこくりと頷いたのは、フェアリーのウーナ・グノーメ(砂礫の先達・f22960)だった。
「峻厳たる山嶺……守りには良いのですが、逃亡には向いていないのです」
 険しい地形や細い山道は敵の進軍を阻みもするが、住民の移動を困難にもしている。
 突然敵襲を伝えられた動揺もあって、全体の避難はなかなか進まないのが実情だった。
「わたしは人々を誘導する役を主に担うのです。精霊達よ、目覚めて」
 ウーナは自身との結びつきが深い砂の下級精霊を【砂漠の斥候】として召喚する。翅の生えた砂玉のような姿をした彼らは、召喚者と共に手分けして住民たちの避難を助け、安全な場所へと先導していく。

「この依頼僕にも協力させてくれないかな?」
 と、そこにやって来たのはアリステル・ブルー(人狼のクレリック・f27826)。この世界は彼の故郷であり、そこに暮らす人々を守る依頼と聞けば、乗らない手は無い。
 それに――辺境伯を倒して『紋章』を集めていけば、いつか、この世界がこうなった元凶に辿り着けるかもしれないのだ。
(人が自由を取り戻せるきっかけになるならば、僕がやるべきだ)
 人の好い笑顔の裏に確かな決意を秘めて、彼はこの依頼に臨んでいる。まずは、辺境伯率いる軍勢に生命を奪わせないために、住民を安全な場所に移動させるのが第一だ。

「ここは安全だと思っていたのに、また逃げなきゃいけないなんて……」
 猟兵が敵軍を撃退するまでの一時的なものとはいえ、集落から離れなければならない住民たちの足取りは重い。元々、吸血鬼が支配する土地から圧政に耐えかねて逃げ出してきた彼らにとって、ここはようやく辿り着いた平穏の砦だったのだ。
「折角得られた安住の地を侵されることに憤るのも無理はない。何故執拗に狙われ、殺されねばならぬと嘆く声もあろう。吸血鬼は、憎いな……」
 人々のやりきれない悲憤の想いを汲み取って、シェーラは噛みしめるようにそう語る。この夜闇の世界を支配するヴァンパイア共の悪逆と非道は、彼自身も何度も目に焼き付けてきた――それこそ悪態などは舌が擦り切れても語り尽くせまい。
「だが、耐えてくれ。ここは僕らに任せ、今は逃げるんだ!」
 【戯作再演・口は舌禍の門】。敵への怒りや憎しみに共鳴するシェーラの言葉は住民たちに共感を呼び、動く活力を与える。アメジストのような瞳に宿る闘志を見た彼らは、自分たちの怒りをこの少年に託すことを決め、悔しさを堪えて集落を後にした。

「きゃっ……」
「大丈夫かい?」
 避難の途中、山道を歩いていた小さな子どもが躓いて転ぶ。すぐさまそこに駆けつけ、手を差し伸べたのはアリステル。人好きのする穏やかな物腰と優しい笑みは、迫り来る脅威に怯える人々の心を解すのに一役買っていた。
「膝を擦りむいているね。少しじっとしてて……風よ、友を癒やしておくれ」
 子どもがケガをしているのを見た彼が【癒やしの風】を吹かせると、小さな膝小僧から流れる血がすぐに止まる。その代償による自身の疲労など、皆を無事に避難させるためなら、どうってことも無かった。

「もう痛くない? 歩けるかな?」
「うん! ありがとう、お兄ちゃん!」
 ぱっと明るい笑顔を見せる子どもに、アリステルもまた笑みを返し。そこにウーナが率いる砂の精霊が、こっちだよと言うようにぱたぱたと翅を羽ばたかせてやって来る。
「山は道を間違えやすいのです。迷子にならないよう気をつけるのです」
 集団からはぐれる者がいないよう精霊たちが手分けして見て回っているお陰で、避難中の脱落者はまだ出ていない。地の妖精が前を先導する一方で、険しい道程に息を荒げる者たちを、後ろからシェーラが鼓舞しながら背中を押している。
「もう一息だ、頑張れ」
「ああ……頼むぜ坊主。俺たちの分まであいつらに目にもの見せてくれ……!」
 任せておけ、と力強く首肯する人形の少年。それを見た人々は安心したように笑う。
 この調子でいけば予想された辺境伯軍の到達までに、住民の避難は完了するだろう。

「人々の避難は30もいれば十分なのです。残りは情報収集を手伝うのです」
 仲間と共に避難を手伝う一方で、ウーナは他の精霊を周辺の偵察に向かわせていた。
 敵の総戦力が明らかでない以上、情報は極めて重要だ。辺境伯軍の進軍ルートの予測や、それを食い止める迎撃ポイントの計算――並行して考えるべきこともまた多い。
「開戦までにどこまで戦場を把握できるかが勝負なのです」
「ここの人たちも気になることを言っていたよ」
 そこに現れたアリステルが、避難中の住民たちから聞いたこの辺りの地形について話す。万が一にも敵がもう来ていないかと、周辺の偵察と確認も行ってきていたようだ。
 現地民から提供された情報と精霊たちが集めてくる情報。それを元に思案を重ねたウーナは、最後は勘で敵の進軍ルートを選定する。勘とはいっても妖精の持つ強い第六感は、ただの当てずっぽうなどとバカにできるような精度では無い。

「大地の妖精として、山々を味方につけた戦いで、負けるわけにはいかないのです」
 精霊達に指示を出しながら、ウーナはそう呟いた。声に含まれるのは妖精としての誇りと自信。それを聞いたシェーラも、アリステルも、負けられないという想いは同じ。
 敵がやってくるのとは別の方角へ人々が避難する中、戦いの時は刻一刻と迫っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

フン…人の営みが出来るとすぐに取りついてくるとは、まさに寄生虫だな

まずはUCを発動し、鳥型のドローンを召喚する
接近されると丸わかりだが、空遠くからならば少し大きめの鳥と区別がつかないだろう
これを何機か飛ばす事で敵軍の概要を看破しよう
進軍ルート、装備、部隊の編制…そこを探り出して味方と共有すればより有利に戦闘を進められるはずだ

流石に、辺境伯と言うだけあってかなりの戦力だが…
幸い、地の利はこちらにある

敵の進軍ルートが予想出来たら、近くの岩場や森林等にドローンを隠すようにあらかじめ配置しておく
数は半分ぐらいだな

強大な軍だろうと挟撃されれば浮足が立つ
そこを狙えば、必ず奴らを崩せるはずだ


夜霞・刃櫻
アドリブ・連係歓迎
あっしに出来そうな事は偵察くらいでやんすね!
オレの初めての仕事っすけど、しっかり情報を抜き取ってくるっす!

UC【夜霞の警笛】を使って、夜の「闇に紛れて」敵軍を「偵察」します
「忍び足」で「目立たず」に、「情報収集」出来るでしょう
見つかってしまったら、『ヘイズ・グレネード』で「目潰し」と「時間稼ぎ」をして逃げます。「逃げ足」には自信アリ、チンピラっすから
偵察兵は情報を生きて持ち帰るのが仕事でやんす!

当然得られた情報は作戦が練られるように公開します



「フン……人の営みが出来るとすぐに取りついてくるとは、まさに寄生虫だな」
 辺境伯軍襲来の報を聞き、初めにキリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)が口にしたのはそんな言葉だった。執拗なまでに人の営みを、幸福を、平穏を破壊し、絶望と死をもたらさんとする吸血鬼どもの所業には、怒りと嫌悪がつのるばかりだ。
「とにかく今は急いで迎撃の準備を整えないとな」
「あっしに出来そうな事は偵察くらいでやんすね!」
 思案するキリカにそう応えるのは夜霞・刃櫻(虚ろい易い兇刃・f28223)。"くらい"とは言うものの、開戦前に敵軍に接近し情報を入手するのはとても重大な役目であり、口調のノリこそ軽いものの、彼女もそれをよく理解していた。

「オレの初めての仕事っすけど、しっかり情報を抜き取ってくるっす!」
 刃櫻は【夜霞の警笛】を使って身体を霞に変異させると、夜の闇に紛れて敵情偵察に出発する。それに合わせてキリカも軍事用カスタムドローン【シアン・ド・シャッス】を召喚し上空からの偵察に向かわせた。
「『猟兵』より『猟犬』に告ぐ……」
 カモフラージュ用に鳥型にデザインされたドローンは、接近されれば丸わかりだが、空遠くからならば少し大きめの鳥と区別がつかない。何よりも無人での遠隔操作可能という点で、この偵察任務にはうってつけの装備だろう。

「敵さん、見つけたっすよ」
 予測された進軍ルートを辿ることしばし、刃櫻は霊峰へと向かってくる黒い軍勢を視界に捉えると、息をひそめて慎重にゆっくりと近付いていく。霞と化した彼女は足音ひとつ立てず、月明かりさえない闇夜の中ではほとんど透明人間に等しかった。
(馬に乗ってる兵隊さんが多いっすね。あとはオレのお仲間みたいな連中っすか)
 見たところ軍の編成は騎兵と死霊の二種類。弓持ちや大砲などは見当たらず、白兵戦に特化した軍勢のようだ。行軍中でも誰一人として隊列を乱さず、私語も発さず、ただ蹄の音だけを立てて進撃する様は、まるで葬式の行列のようだと刃櫻は思った。

「流石に、辺境伯と言うだけあってかなりの戦力だが……」
 行進する敵軍の様子はドローンを通じてキリカにも伝わっていた。上空からの俯瞰で捉えた限り、辺境伯軍の規模は千を超える。その全てがヒトならざる者だとすれば、一般人には荷が勝ちすぎるのは勿論、猟兵でも正面から相対するのは得策ではない。
「幸い、地の利はこちらにある」
 敵を大軍の優位を活かせない山間部へと引き込んだうえで迎え撃てば勝機はある。そのために重要な敵軍の概要と進軍ルートを看破するために、キリカはドローンを接近させる。

(ん、アイツだけ他の連中とは毛色が違うっすね?)
 一方で地上にいる刃櫻は、霞の身体を活かして敵陣に潜り込んだところ、敵軍中央で白い鎧に身を包み、白馬に跨った1人の剣士を発見する。その手に持った壮麗な太刀といい、全身よりほとばしる鬼気迫る気配といい、明らかに他の兵士とは格が違う。
(この男が『辺境伯』……っと)
 狼を模した兜の奥で、剣士の眼光が微かに揺らめく。ただ視線を動かしただけのようにも見えるが――刃櫻の鋭敏な危機意識は、その瞬間背筋をぞわりと震え上がらせた。

「――そこに誰かいるのか」
 剣士の視線は明らかに、闇の中でほとんど見えない筈の少女の位置を見つめていた。
 刃櫻は何も答えず、即座にポケットから取り出した「パンク・ロック・ヘイズ・グレネード」を地面に叩きつけ、野兎のようにくるりと踵を返した。
(偵察兵は情報を生きて持ち帰るのが仕事でやんす!)
 炸裂する閃光と音響。闇夜の静寂に慣れきった耳目にとってその衝撃は大きかった。
 剣士が咄嗟に目を覆い、騎馬が嘶き、兵士たちが騒ぎだす混乱を突いて、刃櫻は一目散に逃走する。普段からチンピラまがいの刹那的な生き方をしているゆえに、ヤバいものからトンズラするための逃げ足には自信があった。

「ふー……ちょっと冷や冷やしたっす。ただいまでやんす」
「無事で良かった。しかしこちらは助けられたな」
 まんまと敵軍から逃げおおせて帰ってきた刃櫻を、安堵した様子でキリカが迎える。
 地上で起きた騒ぎは結果的に敵の注目をそちらに引きつけ、上空への警戒を薄れさせることになった。そのお陰でドローンも無事に情報を集めて帰還できたようだ。
 2人は地上と上空それぞれの視点から探り出した情報を公開・共有し、敵軍の全容を把握すると共に進軍ルートの予想を立てる。偵察に出ていた他の猟兵からのものを含めて、これだけ多くの情報が揃えば、さらに有利に戦いの備えを取ることができる。

「私達の見立てだと、敵は必ずここを通るはずだ」
 予測したルート上にある岩場や木陰等に、キリカは武装ドローンを総数の半分ほど隠すように配置しておく。いざ敵軍がここを通れば、猟兵と共に奇襲を仕掛ける手筈だ。
「強大な軍だろうと挟撃されれば浮足が立つ。そこを狙えば、必ず奴らを崩せるはずだ」
「いいっすね! アイツらのぎょっとする顔が見られそうで楽しみでやんす」
 キリカの練った作戦に、刃櫻は愉快そうに笑う。逃げるしかなかった先刻の借りも、ここでなら十分に返せそうだと――迫る戦いの予感が、霞の怪奇人間を昂ぶらせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セシリー・アリッサム
WIZ
こんな所が、あったんだね
でも今は避難のお手伝いをしないと

逃げ遅れた人がいないか空を飛んで探すよ
怖がって動けない人がいれば
励まして手をつないで一緒に逃げるよ
大丈夫よ、わたし達が来たから
戦いが終わるまで、上手に隠れててね

住民の避難を確認したら
罠を仕掛けられそうな場所を探すわ
例えば道の辻とかに……見つからないようにね
高速多重詠唱で束縛の罠の呪文を唱えて
敵が通り過ぎる所で脚を取る様な、そういうのを
お馬さんが相手ならその速さを抑えてしまえば
きっと有利に戦えるだろうから

それにこの感じ、気のせいじゃなければ
辺境伯は、きっと……
大丈夫、わたしは、覚悟は出来てるもの
自分を奮い立たせて、敵の音がする方を見る



「こんな所が、あったんだね」
 峻厳な霊峰に寄り添うように築かれた集落を、セシリー・アリッサム(焼き焦がすもの・f19071)が興味深そうに眺めている。辺境ゆえにこれまで見過ごされてきた、人々の安住の地――こんな形でなければ、もっとゆっくりと滞在してみたかった。
「でも今は避難のお手伝いをしないと」
 恐ろしい辺境伯の軍勢は、もうすぐ近くまで迫っている。万が一にも取り残される人が出ないようにと、少女はふわりと空に浮かび上がって避難路の確認へと向かった。

「うぅ……ひっく……ぐすっ……」
 夜風に紛れた微かな声を、狼の耳が聞きつける。見れば親御とはぐれてしまったのだろうか、まだ幼い女の子が道端にうずくまって泣いている。ひとりぼっちの心細さと、迫りくる死の恐怖のふたつは、幼子の足をその場に縫い付けるのには十分すぎた。
「大丈夫よ、わたし達が来たから」
 そんな子どもの元に降り立ったセシリーは、優しい微笑をたたえて手を差し伸べる。
 触れ合う手と手のぬくもりと、やわらかな励ましの言葉。立って、という囁きに導かれて、恐怖の呪縛がほんのすこし和らぐ。

「こっちにきて。パパとママにもすぐに会えるわ」
 ちくりと胸を刺す痛みには気付かないふりをして、しっかりと手をつないで避難場所へと向かう。幼子は泣きはらした顔でこくんと頷き、ぎゅっと手を握り返してくる。
 果たして2人が辿り着いたその場所には、既に多くの人々が身を寄せ合っていて――その中には子どもの名前を叫ぶ男女の姿もあった。
「お父さん! お母さん!」
「メアリ! あぁ、良かった、無事だったのね!」
 抱き合う親子の姿を見て、セシリーはほっと安堵の笑みを浮かべ。もう逃げ遅れている人がいないのを確認すると、呪杖「シリウスの棺」を手に再び空へと浮かび上がる。

「戦いが終わるまで、上手に隠れててね」
「うん! ありがとう、おねえちゃん!」
「なんとお礼を申し上げればいいか……!」
 笑顔で手を振る女の子と、深々と頭を下げる両親に見送られながら、避難場所を後にするセシリー。誘導を終えた彼女が次に行うのは、敵を迎え撃つための罠の設置だ。
 例えば道の辻のような、必ず敵が通るであろう場所に。見つからないように気をつけて、素早く幾重にも束縛の罠の呪文を唱える。
(お馬さんが相手ならその速さを抑えてしまえば、きっと有利に戦えるだろうから)
 偵察に向かった猟兵からの情報によれば、敵軍の編成はほとんどが騎兵だそうだ。指揮官である『辺境伯』自身も白い馬に乗って進軍していたという目撃情報もある。
 そこで彼女は敵が通り過ぎる所で脚を取る様な、機動力を封じるための罠を幾つも路々に仕掛けていく。

(それにこの感じ、気のせいじゃなければ、辺境伯は、きっと……)
 依頼を受けて、この地にやって来たときから感じている胸騒ぎ。グリモアが予知した情報と、偵察隊が目にした『辺境伯』の姿を聞かされるたびに、セシリーの胸の奥でそのざわつきは大きくなり続けていた。
「大丈夫、わたしは、覚悟は出来てるもの」
 敢えてそう口にしたのは、自分を奮い立たせるため。杖を握りしめる手に力がこもる。
 ふと平地の方から吹いてきた風が、微かな蹄の音を運んでくる。戦わなければならない"過去"が近付いてくるのを感じて、セシリーはじっとその方角を見つめるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…霊峰アウグスタね。ええ、覚えているわ
彼の神が護っていた地を蹂躙なんかさせない。決して…

UCを発動して一般人と同程度まで能力や存在感を封印
体内に限界突破した魔力を溜めた後、
闇の救済者を名乗り礼儀作法を心がけ集落で情報収集と鼓舞を行う

…すみません、少し良いでしょうか?
私は闇の救済者…英雄である彼らを支援する者です

…異邦人である猟兵様達は土地勘が無いので、
迎撃に適した場所をお教えいただければ…

…例えば大軍の動きが制限される谷間の道
例えば矢弾を射かけるのに適した高台…

…敵を討つ力は無くても、闘う事はできます
だからどうか諦めないで。皆の力をあわせれば、
この世界の闇を晴らす事だってできるはずだから…



「……霊峰アウグスタね。ええ、覚えているわ」
 かつて、この地には神がいた。誇り高き戦神でありながら信仰を失い狂気に染まり、霊峰を不可侵の地と成さしめていた狂える異端の神――それに引導を渡した時の記憶を、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は忘れていない。
「彼の神が護っていた地を蹂躙なんかさせない。決して……」
 眠りについた彼の神の分まで、この地の安寧のために戦おう。オブリビオンの侵略から無辜の人々の生命と平穏を護ることは、彼女自身の誓いにも適うことだった。

「……すみません、少し良いでしょうか?」
「あなたは……ここでは見ない顔ですね?」
 リーヴァルディが集落の住民の避難場所を訪れると、人々は何者だろうかと問いかける。黒い装束にすっぽりと身を包んだ銀髪の少女は、とても儚い存在に感じられた。
 それは【限定解放・血の鎖錠】により、彼女が自らの力を封印しているためだった。身体能力も魔力も一般人と同程度にまで落とした状態で、少女はこう名乗りを上げる。
「私は闇の救済者……英雄である彼らを支援する者です」
 英雄、すなわちこの地の救済のために現れた猟兵のことは、すでに集落の人々も知っている。自らがその一員であることは隠し、敢えて支援者という謙虚な振る舞いで接したのは、彼らの目線と立場により近付くためだ。

「……異邦人である猟兵様達は土地勘が無いので、迎撃に適した場所をお教えいただければ……」
 礼儀作法を心がけながら、住民から情報を求めるリーヴァルディ。たとえ戦う力はなくとも、この地で暮らしてきた彼らの土地勘は防衛戦において重要な知識となる。
「……例えば大軍の動きが制限される谷間の道。例えば矢弾を射かけるのに適した高台……」
「それなら……知ってるかもしれねぇ」
「わ、わたしも……!」
 手を上げたのは弓と矢を担いだ狩人。それに山菜摘みを生業とする女。山の恵みを受け、山と共に生きてきた人々は、それゆえ山中の地理に詳しく、リーヴァルディの希望に合致する場所にも心当たりがあった。

「けど吸血鬼相手に、俺たちの知識なんて役に立つかどうか……」
「相手はすごい大軍だって聞きました。本当に勝てるのでしょうか?」
 避難所に籠もる人々の多くは不安に苛まれていた。ここの住民は元々吸血鬼の圧政に耐えかねてこの地に逃れてきた者――敵の残酷さと強大さは身に染みて理解している。
 そんな彼らに、リーヴァルディは穏やかに、それでいて芯のある言葉で訴えかけた。
「……敵を討つ力は無くても、闘う事はできます」
 戦場に立つことだけが闘いではない。持てる力や知識を使って英雄たちを支える、そういう闘い方もあるのだと。それは戦場と同じくらい重要で価値のある"闘い"なのだと。

「だからどうか諦めないで。皆の力をあわせれば、この世界の闇を晴らす事だってできるはずだから……」
 能力を制限した今のリーヴァルディだからこそ、その言葉は人々の心に強く響いた。
 ひとりの少女の真摯な呼びかけはさざ波のように伝播して、勇気という名の火を灯す。
「……分かった。俺たちの知ってる事は全部伝える」
「ここは私たちの村だもの。私たちも守りたい!」
 口々に上がる勇ましい言の葉。ただ守られるだけだった人々の目が輝くのを見て、リーヴァルディはふっと優しく微笑む――その身の内には【血の鎖錠】により戒められ、限界を超えて溜めこまれた魔力が、解放の時は今か今かと渦巻いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナギ・ヌドゥー
敵軍がまだ居住地を発見できていないならチャンスです。
こちらに有利な地まで誘い込めるかもしれない。

まずは敵軍の偵察に向かいます。
数、進軍スピード、主力と辺境伯と思われる者を見極めましょう。
姿形を確認できれば寄生虫とやらをどこに宿してるのか【第六感・野生の勘】で【見切り】推測できるかも……?
危険ですが少し近付いて辺境伯を観察してみます。
もし見つかったら即逃げますよ【逃げ足】
追って来るなら狭い地形まで【おびき寄せ】ます。
無計画に大軍でやって来た事を後悔させてやりましょう。



「敵軍がまだ居住地を発見できていないならチャンスです。こちらに有利な地まで誘い込めるかもしれない」
 向こうがまだ此方のことを把握していない状況を最大限に活かすべく、ナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)は敵軍の偵察に向かう。隠密行動に適したシャドウスーツを着用し、息を潜めながら闇の中を駆けるその姿は、まるで影と同化するかのよう。
 ほどなくして彼は霊峰アウグスタに近付いてくる、漆黒の大軍と出くわすことになる。誰一人として列を乱さず粛々と歩を進める、葬列のごときオブリビオンの軍勢と。

(山を目印にして進んでいるようですが……まだ居住地の正確な場所は知らないはず)
 ナギは見つからないよう気をつけながら敵の情報を探る。辺境伯軍を構成する兵は影のような騎馬に跨った者と、呪詛を纏った死霊とがいるが、主力となるのは恐らく前者。その騎数は千に達しようかという程で、数だけでなく統率も取れているようだ。
(進軍スピードは聞いていたより速いような。ぼくたちの存在に気付いた……?)
 偵察に出た他の猟兵からの情報とも比較して、敵の進軍が速まっていることに彼は気付く。相手がただの一般人だけではないと知って向こうも警戒を強め始めたか――だが、それは遅かれ早かれ分かること。ここまで知られずにいたのが寧ろ僥倖だ。

(あとは辺境伯と思われる者を見極めることができれば)
 危険であることを承知の上で、ナギはさらに敵軍に近付く。かの辺境伯の姿形を確認できれば『辺境伯の紋章』とやらをどこに宿してるのかも推測できるかもしれない。
 "それ"を発見すること自体は、さほど難しいことではなかった。黒ずくめの騎兵の中でただ一騎のみ、白い馬に跨り白い鎧を纏った戦士がいる。狼を模した兜を被っているため顔は見えないが、あの男がこの軍団を率いる『辺境伯』に違いあるまい。

(ん……? あの鎧の胸の部分……)
 ナギの視線は辺境伯の白鎧の胸部に輝く、真っ赤な宝石に引きつけられた。一見すると鎧の飾りのようだが、彼の第六感と野生の勘は言いようのない"嫌な気配"を感じる。
 あの宝石が『辺境伯の紋章』なのだろうか。もうすこし近付いて観察してみようと一歩前に踏み出す――その時、兜の奥の眼光がこちらを向いた。
「――斥候か」
「!」
 見つかったと悟った時にはもう、ナギの身体は反射的に動いていた。ここで辺境伯とその軍勢相手に正面きって戦うのは余りに無策、即座に撤退するに決まっている。

「でも、簡単に逃がしてはくれないですよね」
 遁走するナギの背後から聴こえる馬蹄の音。強化人間の身体能力であれば振り切ることも不可能ではなかったが、ナギは敢えて追っ手に追わせるままにして走り続ける。
 どうせならこの窮地も有効活用する。彼は道幅が狭くなっている険しい山の地形へと逃げ込むと、そこに追っ手を誘い込んでから身を隠した。

「これで敵はこの辺りに居住地があると思うはず」
 追跡者たちが本陣へと報告に戻れば、敵は大挙して押し寄せてくるだろう。数の優位を活かすのに難しく、さらに猟兵たちが万全の迎撃準備を整えている、この場所に。
「無計画に大軍でやって来た事を後悔させてやりましょう」
 内に秘めた殺戮衝動を滲ませながら、ナギは薄く笑みを浮かべる。今宵、この地を染め上げるのは罪なき人々の血ではない――愚かなる辺境伯とその軍勢どもの血だ。

成功 🔵​🔵​🔴​

クリスティアーネ・アステローペ
【SPD】諸々歓迎

進軍ルートを確認する先見がいるでしょうしそれを捕まえてお話ししましょうか
あまり大声を出されても迷惑ですし【月の鍵】による剣狼の姿の幻視と剣狼の声の幻聴で報告を聞いて、今回の襲撃の目的や規模、作戦の確認を取りましょう
どのルートを通るのか、どのくらいでの到着が見込めるか
どのくらいの規模、備えでの進軍か、目的は何か…

余裕があれば幻視・幻聴を仲間のものに作り替えて
彼らの装備や剣狼に対してどう思うか、なんかも聞いてみましょう

一通り終わったら…どうしようかしら
今のと同じ報告はしてほしいですし、聞いた情報の伝達もしたいし…そのままお帰り願うのがいいかしら?



「進軍ルートを確認する先見がいるでしょうしそれを捕まえてお話ししましょうか」
 辺境伯軍の到来が迫るなか、クリスティアーネ・アステローペ(朧月の魔・f04288)が目をつけたのは敵の本隊ではなく、軍の"目"となる先駆けたちの存在だった。
 偵察に出ていたある猟兵が囮となって引きつけた敵の小部隊。彼らが報告のために本隊へと帰陣する道すがら、回り込んだ処刑人は【権能覚醒「月の鍵」】を唱えた。

「力は此処に 私の瞳は悪夢を綴る」
 琥珀色から紅色に変化した瞳から、支配の魔力が放たれる。その視線に射抜かれた騎兵たちには、立ちはだかったクリスティアーネの姿が白馬に跨った剣狼に見えていた。
「報告を」
 耳に聴こえる言葉も女性の声ではなく、兜の中でくぐもった男性のもの。魔眼による支配下に置かれた者にそれを現実と区別する術はない。目の前の幻視と幻聴は他ならぬ彼らの記憶と知識から綴られたものなのだから。

「……敵の斥候は逃しました。しかし何処へ逃げたかは掴んでいます」
 影法師のような黒尽くめの騎兵たちは、幻とも気付かずに己らの指揮官に報告を行う。
 クリスティアーネはそれを聞くことで、敵がどのルートを通るのか、あとどのくらいの時間での到着が見込めるかといった進軍計画をもれなく把握することが出来た。

「……では、じきに到着するか。その前に改めて作戦の確認を行う」
「はっ」
 幻覚の剣狼に問われるままに、騎兵は今回の襲撃の目的や規模についても語りだす。
 長らく異端の神の支配下にあり、ヴァンパイアの統治における空白地帯となっていたこの地を制圧する。同時にヴァンパイアの統治に従わない人間共は、見せしめの意味も込めて一人残らず殲滅する――それが此度の辺境伯軍の行動目的とのことだ。
 そのために用意された兵力は千人規模。一般人を虐殺するには過剰なほどの戦力だが、自分たちと同等の力を持った敵対者への備えはあまりされていないようだった。

「人間共から希望の芽を摘み取り、隷属と死と絶望を与えるのが我らの使命」
 そう語る騎兵の態度から感情らしきものは窺えず、誰に問うても同じように答える。
 本当に影法師のようだと、クリスティアーネは思う。彼らの装備や剣狼に対してどう思うか聞いてみようと、幻視・幻聴をお仲間のものに変えてみたところ――。
「…………」
 沈黙。同族で語り合うことなど何もないというように。どうもこの騎兵は個々の意思というものが希薄であり、ただ盲目的に主に従う、それが本能のようなものらしい。
(どうりで統率が取れているはずだわ)
 偵察から帰ってきた仲間の報告を思い出す。おそらく彼らは主が命じれば如何なる非道にも手を染めるし、死ねと言えば死ぬだろう。"兵"というよりも、これは"駒"だ。

「さて……どうしようかしら」
 一通りの情報を聞き終えたところで、クリスティアーネはこの騎兵の扱いを考える。
 ここで始末するのは簡単だが、先見が帰ってこなければ敵軍も警戒を強めるだろう。
「今のと同じ報告はしてほしいですし、聞いた情報の伝達もしたいし……そのままお帰り願うのがいいかしら?」
 ここで見聞きした幻や自分が話したことは全て忘れさせ、何事もなかったように帰還させる。まだぼうっとしている様子の騎兵らは、ふらつきながら本隊に駆けていった。
 それを見送ったのちにクリスティアーネはすぐさま踵を返し、仲間たちのいる霊峰に向かう。この情報を皆と共有し、迎え撃つ準備を整えるために。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『シャドウライダー』

POW   :    戦力補充
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【シャドウライダー】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
SPD   :    人馬一体
自身に【世界に蔓延する絶望】をまとい、高速移動と【その移動により発生する衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    代弁者
【鞭を振るい、死した人々】の霊を召喚する。これは【怨嗟】や【現世への未練】が転じた【呪い】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 敵軍の偵察、住民の保護と避難、迎撃体制の構築。限られた時間の中で全ての準備を抜かりなく終えた猟兵たちは、万全の状態で『辺境伯』の軍勢を待ち受けていた。
 夜の闇が最も深くなる時間帯、それぞれの持ち場についていた猟兵は、遠方より霊峰アウグスタに迫る軍勢の影を、ついにその目で捉える。

「――ここが、かつて神がいたという山か」

 千に達する黒き騎兵と、付き従う死霊の群れ。それらを率いるのは白鎧の剣狼。
 彼――『辺境伯』は峻厳なる霊峰を見上げ、目前に広がる険しい地形を眺める。
 これより先は大軍での行進は困難となる。狭隘な山路では隊列は細く延びるか、隊を分散しての移動を余儀なくされるだろう。しかし辺境伯は躊躇うことなく命じた。

「進め。この地に住まう全ての人間を殲滅せよ」

 それが『辺境伯の紋章』と共にこの剣狼に与えられた主命。影のごとき騎兵たちはそれに従い、亡霊を引き連れ、鞭を振るいながら険しい山地を駆け上がっていく。
 ここまでの道中で感じた怪しい気配や斥候の存在から、自分たちを待ち受ける"敵"がいると辺境伯も気付いている。だがそれでも撤退するという選択肢は無かった。
 いかなる罠があろうとも正面から踏み潰し、蹂躙し、殲滅してこそ、人々の絶望は大きくなる。そのための大軍であり、そのための『辺境伯』という力なのだから。

「――絶望に沈め」

 兜の奥からそう紡がれた辺境伯の言葉こそ、他の誰よりも深い絶望に染まっていた。
 それに呼応するかのごとく進撃する千の騎兵『シャドウライダー』。しかしこの山岳地においては騎馬の機動力も、大軍による優位も、満足に活かすことはできない。

 全ては猟兵たちの作戦通り。死地に引き込まれた軍勢を、待ち伏せと罠が迎え撃つ。
 人々の安住の地をかけた霊峰アウグスタの戦いの火蓋は、ここに切って落とされた。
ブラミエ・トゥカーズ
ここに嘗ては神がいたと。
ならば、そこに土足で踏み入るのなら、バチが当たるのは当然であるな。

聖域、禁域、それは人が生きるために造った結界であるがゆえに。
自身すら人が生きるために伝承という型に封じられた存在であるがゆえに。

獣の如き貴公らに、恐怖を与えてみせよう。

【SPD】
とりあえず、真正面から。
霧に変化して回避。
ついでに病をばらまく。

狼になって馬の足を噛む。
蝙蝠にも変化し人に吸血、視界を遮る。
ついでに人馬問わず病を広げて行く。
なお、伝染病の為、シャドウライダー間でも感染する。
発熱、貧血、発疹、幻覚、狂乱、死。

ただの人々であっても対策、撲滅してきた病であるが、獣では助かる望みは無いようであるな?



「ここに嘗ては神がいたと。ならば、そこに土足で踏み入るのなら、バチが当たるのは当然であるな」
 そびえ立つ霊峰を背に侵略者共を見下ろしながら、悠然たる佇まいで呟くブラミエ。
 押し寄せるは騎兵の大群。絶望を身に纏い地を駆ける様は獲物を求める猟犬が如く。
 だが彼女の顔に恐れはない。御伽噺の吸血鬼は常に人に恐れられる者であるゆえに。

 聖域、禁域、それは人が生きるために造った結界であるがゆえに。
 自身すら人が生きるために伝承という型に封じられた存在であるがゆえに。

「獣の如き貴公らに、恐怖を与えてみせよう」

 【伝承解放・悪しき風と共に来たるモノ】。その身を霧に変化させたブラミエは妖風としか言いようのない生ぬるい風に吹かれ、真正面から敵軍へと向かっていった。
「敵襲……」
 その異様な気配を感じ取ったシャドウライダーたちは、騎馬の速度を上げて彼女を轢き潰さんとする。山岳の地形に機動を制限されているとはいえ【人馬一体】の騎乗術による移動速度とそれに伴う衝撃波は、人を肉塊に変えるくらいは容易なのだから。
 だが――相手をただのヒトと、纏うものをただの霧と侮ったのが運の尽き。無策のまま今の彼女に近付くのはむしろ最悪の選択だった。

「獲物と見れば迷わず飛び掛かるか。まさに獣であるな」
 ブラミエは騎馬との衝突をひらりと躱すと、霧に変化した我が身で敵軍を包み込む。
 "ヴァンパイア"という妖怪を形作る原典となったもののひとつ、それは悪しき風と共に死を運ぶ"伝染病"。その伝承の具現化である彼女の霧には、病の気が含まれている。

「何が……っ」
 目がかすみ、世界が歪み、あるはずのないものが視界を躍る。山の奥からは聴こえるはずのない声が木霊し、吐き気をもよおす異臭が鼻をつく。病の霧による幻覚症状だ。
 騎馬と兵士の動きが止まったのを見て、ブラミエは今度は霧から狼へと姿を変え、馬の足に齧りつく。
「ヒヒィーーーンッ?!」
 嘶きを上げた馬は気が狂ったように暴れだし、騎手を背中から振り落とす。
 強かに地面に叩きつけられた彼らの視界を覆ったのは、蝙蝠の黒翼だった。

「どれ、貴公らの血を賞味してやろう」
 狼から蝙蝠へと変化したブラミエの牙が、シャドウライダーの首筋を穿ち血を啜る。
 すると彼はたちまち血行不良を起こし、喉をかきむしりながら耐え難い苦痛に喘ぐ。
 霧、狼、蝙蝠。吸血鬼の三態による攻撃はいずれも病を発症させ、そして伝染させる。
 1人が発症すればたちまち10人、20人とねずみ算式に広がる感染力こそが、このユーベルコードの最も恐ろしい点であった。

「ただの人々であっても対策、撲滅してきた病であるが、獣では助かる望みは無いようであるな?」
 発熱、貧血、発疹、幻覚、狂乱、死。防疫の手段など持ち合わせずに侵攻して来たシャドウライダーどもに蔓延した病は、たちまちのうちに彼らの生命を奪っていく。
 旧き病たる魔は、その凄惨な光景を冷たい笑みを浮かべ、嘲るように見下ろしていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

フン、やって来たか…パーティーの準備は整った
奴らを盛大に歓迎してやろう

細く伸びた峡谷で迎え撃つ
デゼス・ポアを囮として敵の眼前に飛ばし、自分はパーソナルディフレクターの迷彩機能で透明化して待ち伏せる
デゼス・ポアの斬撃で敵を斬り倒し、切り立った崖の上から敵を狙撃
峡谷では馬の機動力も発揮できまい、逆にその巨大な体は良い的だ

さぁ、それでは貴族らしく狐狩りと行こうじゃないか

敵がUCを発動したら迷彩を解除し崖下に降下
敵後方に設置していたドローン達を起動させて挟撃を行う
攻撃の際は戦闘ヘリに合体融合して機銃掃射を行い、敵攻撃は合体を解除して回避
自分もドローン達と連携を取って敵集団を殲滅していく



「フン、やって来たか……パーティーの準備は整った」
 【シアン・ド・シャッス】と共にキリカが陣取ったのは、細く伸びた峡谷であった。
 ドローンの配置はすでに完了済みであり、彼女自身も携行式エネルギーシールド「パーソナルディフレクター」の光学迷彩機能を使って姿を消している。
「奴らを盛大に歓迎してやろう」
 万全の迎撃準備を整えた彼女の元に、地響きを立てて騎兵の大軍がやって来る。
 目論見通り、峡谷により左右の機動を制限され、縦列に長く伸び切った状態で。

「キヒヒヒヒヒヒヒっ」
 潜伏中のキリカに代わり、囮として敵の眼前に飛んでいったのは「デゼス・ポア」。
 奇異な笑い声を上げ、躯体から錆びた刃を生やした呪いの人形は、嫌でも目を引く。
「敵襲。殲滅する」
 錆刃を飛ばして斬り掛かるデゼス・ポア。数に勝るシャドウライダーは一斉に鞭を振るって人形を叩き落とそうとするが――その時、1発の銃声が峡谷に木霊すると、先頭にいた兵士が馬から滑り落ちた。

「さぁ、それでは貴族らしく狐狩りと行こうじゃないか」
 峡谷の上でキリカは静かに笑みを浮かべると、神聖式自動小銃"シルコン・シジョン"のトリガーを引く。聖書の箴言が込められた弾丸は、穢れた吸血鬼の配下どもを過たず貫き、消滅させる。
「峡谷では馬の機動力も発揮できまい、逆にその巨大な体は良い的だ」
 狙撃を行うには格好の状況とポジショニングで、次々と敵を撃ち抜いていく戦場傭兵。
 対抗しようにも敵軍に弓兵や銃士はおらず、また光学迷彩で透明化した狙撃手の位置を見つけるのも容易ではない。峡谷に反響する銃声がさらに特定を困難にしていた。

「馬を止めるな……突破する……」
 不利を悟ったシャドウライダーたちは【人馬一体】を発動し、一気にこの峡谷を駆け抜ける戦法に出る。前にいる足止めが人形一体のみなら強引に突破するのは不可能ではなく、開けた場所にさえ出れば反撃に転じられると判断したのだろう。
 だが彼らが絶望のオーラをその身に纏った瞬間、後方よりモーターの音を響かせて、待機していた【シアン・ド・シャッス】が一斉に起動する。
「『猟兵』より『猟犬』に告ぐ、速やかに眼前の獲物を狩れ」
 前方に意識を集中させていた騎兵の背後より浴びせられる銃弾の雨。同時にキリカも迷彩を解除して崖下に降下すると、ドローンたちと前後からの挟撃を仕掛けた。

「―――!!」
 全てはこの状況に至るための罠だったのだと、シャドウライダーはようやく気付いた。
 戦闘ヘリに合体融合したドローンの機銃掃射は容赦なく騎馬と兵士を薙ぎ払う。苦し紛れに敵が放った衝撃波も、瞬間的に合体を解除・分離することで難なく回避する。
 さらに前方から降り注ぐのは"シルコン・シジョン"の洗礼。完璧に嵌まったこの連携を打ち崩す術を、敵方は持ち合わせていなかった。

「我々の歓迎は楽しんで貰えたかな?」
 やがて戦場に木霊した銃声は鳴り止み、銃口からたなびく煙をふっと吹き消すキリカ。
 峡谷に踏み込んだシャドウライダーの部隊は、こうして一騎も残らず殲滅された。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
【吸血姫の契り】で眷属全員を超強化。

1章の罠とゴーレムで敵の足を止め、ゴーレムを壁にしつつ自身の雷撃魔術【高速詠唱、属性攻撃、誘導弾】と眷属の後衛組のUC(雪花【とにかくふぶいてみる】、エビルウィッチ【ファイアー・ボール】、光の断罪者【光の断罪者】、『雪女』雪華【氷柱散華】、黒茨の娘たち【クイーンの嘆き】)で狙い撃ち。
突破を図って弾幕を抜けた敵は前衛組(異国の少女剣士は【縮地法】、ハーベスターは【収穫の時や瞬時の首狩り】、ジョーカーは【ブラックレディやレッドドッグ】、レッサーヴァンパイアは【血統暴走】)で迎撃。
地形と事前準備を活かし、敵を殲滅するわ。

我が眷属達!我が敵にその力、知らしめなさい!



「フレミア・レイブラッドが血の契約を交わします。汝等、我が剣となるならば、吸血姫の名において我が力を与えましょう」
 敵の接近を確認したフレミアは、配下の虜の軍勢と【吸血姫の契り】を交わす。いよいよ開戦とあって奮い立つ眷属たちの力は、この契約によってさらに超強化される。
 迎え撃つ準備は万全。敵が千を超える軍勢であろうとも怖れるに足らず。辺境伯軍何するものぞと闘志を燃やす彼女らと共に、じっと山陰に潜んで機会を待つ。

「進め、進め、進め……!?」
 険しい山路を遮二無二駆け上がるシャドウライダーの騎行を阻んだのは、進路上に仕掛けられた罠の数々。罠うさぎ謹製の【えげつない多段トラップ】が馬を拘束し、騎手に追撃を仕掛け、同時に万能派遣ヴィラン隊お手製の罠が次々と作動する。
 予期せぬ事態に敵軍の足が止まったまさにその時、高貴なる吸血姫の号令が上がった。

「我が眷属達! 我が敵にその力、知らしめなさい!」

 前面に押し出されたのは邪悪エルフの作り上げた倒木ゴーレム。その巨体を壁としつつ、フレミアと後衛組の眷属による遠距離攻撃ユーベルコードが一斉に放たれる。
 吸血姫の雷撃魔法に、雪花の吹雪、エビルウィッチのファイアー・ボール、光の断罪者の破壊の光、雪華の巨大氷柱、黒茨の娘たちの黒き呪槍。その威力はいずれも血の契約により増幅した魔力で強化されており、平常時とは比べ物にならない。
「―――!!!」
 属性も手段も違うこれほどの猛威を防御・回避する手段をシャドウライダーは持ち合わせていない。虜の軍勢の初撃は完全な奇襲となり、敵部隊を一瞬で半壊させた。

「罠の準備に加えて奇襲の手際……我々の進軍ルートまで読まれていたとは……」
 初撃を生き延びたシャドウライダーたちは、ここがただの山ではなく、入念に自分たちを迎え撃つため準備された戦場であることを知る。だがそれは彼らを大して動揺させることではなく――斃れた仲間の骸を媒介として、すぐに【戦力補充】を行う。
「我々はただ主命を遂行するのみ。いかなる犠牲を払おうとも、全ては小事」
 原型すら留めず吹き飛ばされた死骸が寄り集まり、新たな騎兵を形作っていく。"個"の意思に薄い彼らにとっては、仲間の死も利用できるリソースでしか無かった。

「復活した騎兵を狙いなさい!」
 兵力を回復し向かってくるシャドウライダーを、眷属を指揮して迎え撃つフレミア。
 ユーベルコードにより蘇生された敵は、そのたびに戦闘力が低下することを彼女は見抜いていた。手足のごとくその意に従う眷属たちは、的確に弱兵を優先して狙い撃つ。
「止まるな……この距離に我らの勝機はない……」
 対するシャドウライダーは決死の突撃。騎馬の機動力を活かせる広さのないこの地形では、強引にでも接近しなければ勝機がないと彼らは理解している。弾幕に撃ち倒された仲間の屍を踏み越え、復活させ、ゴーレムの壁を突破し白兵戦の間合いに――。

「前衛組、前へ!」
 その瞬間、フレミアの号令に合わせて近接戦闘に長けた眷属たちが前線に飛び出す。
 縮地の歩法で斬り掛かる異国の少女剣士。超高速で大鎌を振るい首を狩り落とすハーベスター。灼熱の炎と死神の鎌で焼き斬るジョーカー。血統の力を暴走させ狂乱のままに暴走するレッサーヴァンパイア。こちらも契約により強化された身体能力を十全に活かし、突撃してきた騎兵を蹴散らしていく。
「後衛組は今のうちに後退。距離を取って前衛組の援護射撃!」
 フレミアは矢継ぎ早に指示を発して軍勢を操る。事前にこの辺りの地形を調べていた彼女たちには、後衛が身を隠すのによい場所も前衛が仕掛けやすい場所も全て把握している。土地勘のない山地で機動力を殺された騎兵とは雲泥の差だ。

「強い……!!」
 戦力補充も追いつかず、ついに1人の眷属も倒せぬまま殲滅されるシャドウライダー。
 吸血姫と契りを交わした虜の軍勢は、その精強さを戦果を以てここに示したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
部隊が進行して少ししたタイミングで事前に張った幻影の呪符を起動…。
敵を攪乱して敵の侵攻を乱し、敵が狭所や崖に入ったら魔剣の呪符を起動…。
敵集団を確実に削っていくよ…。
わたし自身は敵が幻影や魔剣の呪符で混乱している隙を突いて【unlimitedΩ】に【呪詛】で更に強化した魔剣の一斉斉射を追加で投入…。
ラン達も崖の上等の比較的安全地帯から暗器による攻撃で援護をお願いするよ…。

「暗殺は嗜み!」
「居合も!」
「メイドは強い!」

嗜み、なのかな…?

敵の呪いや怨嗟は魔剣で逆に取り込むか、【ソウル・リベリオン】で喰らい無力化し、死した人々の霊も解放…。
どちらにせよ、わたしの力に変えて無力化するよ…。



「とうとう来たね……」
 戦場となる山のあちこちに呪符を仕込んできた璃奈は、予測したルート上を駆けてくるシャドウライダーの集団を視界に捉える。その名の通り影のごとき騎兵が鞭を振るうと、死した人々の霊が現れ、怨嗟の声を上げながら騎行に付き従う。
 璃奈はすぐには仕掛けなかった。十分に敵を引きつけて一網打尽にするために――部隊が進行して来て少ししてから、タイミングを見計らって呪符を起動させる。

「敵襲……? いや、あれは……」
 巫女の呪符がシャドウライダーに見せたのは、背中を見せて逃げていく人々の幻影。
 彼らに与えられた命令はこの地に住まう人間の殲滅である。それらしき影を見つけたとあれば放置できるはずもなく、それまでの進路を変更して追跡を開始する。
 言うまでもなくそれは璃奈の計略のうち。身を潜めながら敵部隊の動きを見ていた彼女は、山中に現れては消える避難民の幻影によって侵攻を撹乱し、迎撃に適した場所に敵を誘い込んでいく。

「あなたたちはここで行き止まりだよ……」
 敵部隊が狭い峡谷の崖下に入った瞬間、璃奈は準備していた魔剣の呪符を起動。封じられていた【unlimited curse blades】が、逃げ場のない敵の頭上から降り注いだ。
「しまった、罠か……!」
 呪われし魔剣の刃に貫かれ、ばたばたと倒れていく騎兵と死霊。ここに至り自分たちが追ってきたものが幻だったと気付くシャドウライダーだったが、部隊の混乱を落ち着かせる間もなく追撃のユーベルコードが襲い掛かる。

「全ての呪われし剣達……わたしに、力を……立ち塞がる全ての敵に終焉を齎せ……! 『unlimited curse blades 』……!!」
 呪符に込められていた【unlimited】に対して、璃奈が唱えたこちらは極限まで呪詛により強化された"Ω"版。その刃を受けた者には、等しく「終焉」がもたらされる。
 曇天をさらに黒く染め上げるほどの魔剣の一斉斉射は、狭隘な地形に押し込められた敵を文字通り一網打尽にしていく。
「怯むな、反撃せよ……」
 それでもシャドウライダーは死霊を前に押し出して迎撃体制を立て直そうとするが――追い撃ちとばかりに夜陰を切り裂いて、崖の上からメイドの暗器が飛来する。

「暗殺は嗜み!」
「居合も!」
「メイドは強い!」

「嗜み、なのかな……?」
 主人である璃奈の戦いを援護するのだと気合十分のメイド人形ズ。果たして本当にそれがメイドの嗜みなのかは定かではないが、比較的安全な高所より放たれる投擲は、的確に敵の急所を捉えていた。
「ラン達はそのままお願い……」
 新手の出現に敵が動揺している機を突いて、璃奈は魔剣【ソウル・リベリオン】を片手に敵陣へと斬り込む。呪詛喰らいとも呼ばれるこの魔剣は、影の騎兵が呼び出した死霊たちへの対策だ。

「呪詛喰らいの魔剣よ……彼の者を縛る呪いを喰らい、正しき姿、正しき魂へ戻せ……」
 疾風のごとき一閃になぎ払われ、死霊の魂が解放されていく。さらに魔剣が喰らった彼らの怨嗟や未練はそのまま璃奈の力となり、新たな終焉の魔剣として展開される。
 間髪入れず放射される三度目の【unlimited】。罠と地形、さらには呪いさえも味方につけた魔剣の巫女たちの攻勢を受けて、敵部隊は撤退すら許されず壊滅した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
悩み聞くカレー屋の第二号支店は大盛況であった。
「もう駄目だ、俺死んじまってるし!」
「悩み聞くよ、カレーあるよ」
シャドウライダー達は意外と苦悩や未練が多かった。
カビパンは彼らの悩みを解決してやって、笑門来福招福軍配とハリセンを用いて少しずつ信頼(洗脳)されていった。
「すみません、従業員を募集してると聞いて…」
アルバイトも確保しながら、オブリビオンでも気兼ねなく通える店と成長。

「皆さんお待ちかね、カビパンリサイタルの時間です!」
「私、歌います!!」
その後、店内と近郊にいるシャドウライダーは消息を絶った。
また、邪魔くさいカレー屋から聞える奇妙な歌に恐怖し、緒戦の辺境伯軍は出鼻を挫かれることとなる。



「もう駄目だ、俺死んじまってるし!」
「悩み聞くよ、カレーあるよ」
 ここは霊峰アウグスタの山中にある「悩み聞くカレー屋」の第二号支店。開店ほやほやの店内に、シャドウライダーたちの愚痴とカビパンのいつもの口上が響き渡る。
 こんな所に客が来るわけないだろ、と思われていたカレー屋だったが、突撃してきた敵をギャグ時空に取り込むことで意外と繁盛していた。

「今の主君は部下の扱いが荒いし……いい加減疲れた……」
 本来のシャドウライダーは個々の意識が希薄なものだが、カビパンの領域(カレー屋)に取り込まれた連中は変な形で自我が芽生えたのか、溜め込んでいた苦悩や未練を吐き出しながらカレーうどんをすする。こいつら意外と苦労の多い連中らしい。
「うんうん、わかるわかる」
 カビパンはそんな連中の悩みを適当なアドバイスで解決してやり、右手に持った「女神のハリセン」でバシバシはたいて癒やしを与える。さらに左手に持った「笑門来福招福軍配」を扇げば、ひとたびでシリアスを飛ばし、ふたたびでギャグを呼び、みっつでギャグ世界が降る。
「なんか小難しい事とかどうでも良くなってきた……」
「なんでこの店カレーうどんしかないの? 天ぷらうどんは?」
 シリアスさんが完全退場させられた店内で、シャドウライダーたちは少しずつカビパンを信頼(洗脳)し、意識しないままギャグ時空に染まっていくのだった。

「すみません、従業員を募集してると聞いて……」
 悩みを打ち明けるついでに、とうとうアルバイトに名乗りを上げる者まで出る始末。
 鞭で呼ばれた【代弁者】の死霊たちも、いつの間にか一緒になって席についている。
 いつしかオブリビオンも気兼ねなく(?)通える店へと成長した二号店を、カビパンは満足げに眺めながら、おもむろに聖杖を手に取り。

「皆さんお待ちかね、カビパンリサイタルの時間です!」

 いいぞー、やれやれー、と期待半分冷やかし半分の声が騎兵たちから飛んでくる。
 彼らは知らない、カビパンの歌がいかなるものかを。彼女が絶望的にあまりにも酷い音痴であり、一度聞けば頭にこびりついて離れないデスソングの持ち主であることを。
 興味津々の客たちの前で、聖杖をマイクのように持った彼女はすうと息を吸って。

「私、歌います!!」

 ――その後「悩み聞くカレー屋」店内と近郊にいるシャドウライダーは消息を絶った。
 辺境伯軍は絶妙に邪魔くさい位置に立つカレー屋から聞える奇妙な歌に恐怖し、中に入った者が誰一人出てこない事実も鑑みて、大幅なルート変更を余儀なくされる。
 これにより、緒戦の辺境伯軍は矛を交えずして大きく出鼻を挫かれることとなった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜霞・刃櫻
【夜霞の赤頭巾】
あっしは貧弱な三下でやんすから、暗殺くらいしか出来ないっすよ
協力者がいるならお仕事しやすいでやんすね

「リーオ・ヘクスマキナ」さんがUCで高台?町?を作ってくれるので、その上で「目立たず」に待機
敵軍団が通りがかった所で足止めをしてもらうので、飛び降りてUC【夜霞の仕手】でレベル440になった「暗殺」を行う
凄い暗殺なのでバレないだろう
『キリング・エッジ』でシャドウライダーの首を斬って暗殺する
また、馬の首を斬って暗殺し、敵軍団のさらなる混乱を狙う
さらに『ヘイズ・グレネード』でスモークを焚き、「闇に紛れて」暗殺を続ける
バレたら「敵を盾にしつつ」、「逃げ足」で撤退
三下なので許して


リーオ・ヘクスマキナ
【夜霞の赤頭巾】

山岳地域での戦闘かぁ……。閉所と市街戦が専門なんだけど。ま、行けなくもないか
UCで空飛ぶ街と、赤頭巾さんの分霊兵を召喚。その数、330体ってね

夜霞さんとやらが戦場で上手いことシャドウライダーを潰してくれるらしいから、こっちは分霊兵達に地上で足止めや撃破を指示
散弾での弾幕や、ネズミをけしかけて敵の機動力を削ぐような戦い方をメインに、派手に戦って夜霞さんに注意が向かず、暗殺を狙いやすいように
霊達はともかく、シャドウライダー本体は分霊兵だとちょっと大変だろうしね

街を簡易的な空中拠点に使いつつ、俺本人は上空からライフルでの狙撃に集中
赤頭巾さん本人には、分霊兵の制御に集中して貰う



「山岳地域での戦闘かぁ……。閉所と市街戦が専門なんだけど。ま、行けなくもないか」
 霊峰に侵攻してくる辺境伯軍の陣容を、高所より見下ろしながら呟くリーオ・ヘクスマキナ(魅入られた約束履行者・f04190)。彼の傍らには、ゆらゆらと赤衣をたなびかせる邪神「赤頭巾さん」と、夜霞を身に纏った怪奇人間の少女――刃櫻がいる。
「あっしは貧弱な三下でやんすから、暗殺くらいしか出来ないっすよ」
 軍隊相手に正面きっての切った張ったなどご遠慮願いたいと言うことで、刃櫻が見つけた助っ人がリーオだった。当人の言によればこうした環境での戦いはあまり得意とまでは言えないようだが――彼にはそれを覆せるユーベルコードがある。

「行こうか、赤頭巾さん達。町からネズミが消える時、お代は金貨じゃなくて彼らの命で頂こう……なんてね?」
 【赤■の魔■の加護・「化身のロク:笛吹の子供達」】――リーオが召喚したのは宙に浮かぶ小さな町ひとつ。山地に突如として出現する、まるで御伽噺の中から切り取られてきたような町並みに、通りがかったシャドウライダーは一様に困惑させられた。
「何なのだこれは……?」
 その疑問に答える代わりに、空飛ぶ街から飛び出してきたのは鼠色のバンダナを巻いた「赤頭巾さん」の分霊兵、その数330体。闇夜に揺らめく赤い頭巾と外套、そして両手に持った大鉈と散弾銃は、彼女らの殺意を如実に表していた。

「撃破できればいいけど、無理をする必要はないよ。足止めさえしておけば、夜霞さんとやらが上手いこと潰してくれるらしいから」
 術式の核であるリーオは空中の町に残ったまま指示を出す。地上に降り立った分霊兵たちは不気味な笑みを頭巾の下で浮かべながら、辺境伯軍との交戦状態に入った。
 迎え撃つシャドウライダーは【代弁者】を発動し、怨嗟の呪いを発する死霊たちを率いて鞭を振るう。戦闘力にばらつきはあるものの、総兵力ではまだこちらが上だ。
「これは人に非ず。だが、障害となるのであれば排除する」
 突撃してくる敵軍に対し、ある分霊は散弾銃をぶっ放し、またある分霊は笛を吹いてネズミの群れをけしかける。派手な弾幕とちょろちょろ足下を駆け回るネズミで敵の機動力を削ぎ落とし、注意を引きつけるのが彼女たちの役目だ。

(協力者がいるならお仕事しやすいでやんすね)
 ドンパチを繰り広げる分霊兵と辺境伯軍の様子を、刃櫻はリーオの作った高台の町から眺めていた。偵察に向かったときのように、目立たず気配を殺すのは得意分野だ。
 今や敵の注目は完全に分霊たちに向いている。「仕事」をするには格好のタイミングを見計らって、彼女はひょいと町から飛び降りて【夜霞の仕手】を発動する。
「今日も張り切ってお仕事でやんす」
 すらりと黒鞘から抜かれた長ドスの名は「パンク・ロック・キリング・エッジ」。
 音もなく死角に着地し、近くにいた騎兵に一閃。ひどく慣れきった、食材に包丁を入れるような自然な手並みで――ことり、と標的の首が地面に落ちる。

「―――!?!!」
 敵は誰も気付いていない、ハーメルンの町から降り立った暗殺者の存在に。首をなくした骸が倒れるのを見てようやく仲間の死に気付くほど、刃櫻の暗殺は卓越していた。
 彼女はそのまますいすいと敵味方の死角を泳ぐようにすり抜け、再び長ドスを振るう。無造作にすら見える斬撃は、今度は騎兵らが乗る馬の首をすぱっと斬り落とした。
「何が……」
 起こっている、と。喋りきる間もなく、馬から落ちた兵もすぐに後を追うことになる。
 夜霞の暗殺者の跳梁に辺境伯軍は混乱をきたし、それは対峙する分霊兵にとっては付け入るべき隙となった。

「夜霞さんは上手くやってるみたいだね」
 SLG-8マークスマンライフルのスコープ越しに戦場を俯瞰するリーオの目にも、敵軍の統率が乱れる様子ははっきりと見えていた。この混乱に拍車をかけるべく、彼は空中の町から標的に狙いを定め、トリガーを引く。
「ぐぁ……っ!」
 木霊する発砲音と同時に倒れ伏すシャドウライダー。ひとり騎兵が斃れればそいつの呼んだ死霊も還る。数的不利を覆すには死霊よりも騎兵を削るべきなのは明らかだ。

「霊達はともかく、シャドウライダー本体は分霊兵だとちょっと大変だろうしね」
 地上の分霊たちにはそのまま敵軍への圧力と足止めを重視してもらい、自らは騎兵の狙撃に専念するリーオ。その隣では「赤頭巾さん」本人が分霊兵の制御に集中している。300超の分霊を軍として的確に動かすには、結構な集中がいるようだ。
「あの空飛ぶ町を制圧せねば……」
 辺境伯軍から見ても町が猟兵たちの簡易拠点となっているのは一目瞭然だった。あれを陥とせばこの戦況も打開できる――しかし翼なき彼らにそのための手段は無い。
 じりじりと劣勢に追いやられていく敵の陣中にて、さらに煙が上がる。ぜんぜんバレないのを良いことに、刃櫻が焚いた「パンク・ロック・ヘイズ・グレネード」だ。

「こんなに楽にいくとは思わなかったっす。拍子抜けでやんすよ」
 スモークの闇に紛れた刃櫻は、飄々と笑いながらシャドウライダーの暗殺を続ける。
 上手くリーオたちが注意を引きつけてくれていたお陰でもあるが、彼女自身の技量もまた疑いようはない。すっかり統制を失っている敵部隊の惨状がその証明だ。
 しかし――余りに上手く行きすぎると逆にボロが出てしまうのは、三下の性なのか。
「貴様……」
「うげっ、バレたっす!」
 運悪く敵兵の1人に見つかってしまった刃櫻は、一も二もなく全速力で撤退を図る。
 煙に紛れるだけでなく、近くにいた敵や死体まで盾にした、恥も外聞もない逃げっぷりはいっそ見事ですらあった。

「あれ、撤退するんだ?」
「三下なので許して欲しいでやんす」
 逃げてきた刃櫻を見て、リーオは首を傾げつつ彼女を空の町に回収する。まあ、彼女の暗殺は十分に敵軍を荒らしていたし、ここまで来れば勝敗は決まったも同然である。
 主力たる騎兵の多くを失った辺境伯軍の部隊は、そのまま攻勢に転じた分霊兵によって、跡形もなく殲滅されたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セシリア・サヴェージ
辺境伯もこちらの存在には気付いているはず。尚も兵を進めるのは大軍故の慢心か、それとも確かな勝算があってのことか。
いずれにせよこちらの準備は万端。敵には全滅の憂き目にあっていただきましょう。

まずは、ここより先へは行かせません。と敵部隊の前に立ち進路を妨害。UC【黒風の蹂躙】を発動して集団に【切り込み】ます。
【重量攻撃】で叩き潰し、【なぎ払い】に伴う【衝撃波】で【吹き飛ばし】、悉くを【蹂躙】しましょう。

この狭い道では敵も集団戦の有利はないと悟るでしょう。立て直しの為に撤退するのが得策ですが……逃しません。
予め仕掛けていた落石や丸太の罠を【念動力】で操作して起動。逃げ道を塞ぎ追い詰めます。



「辺境伯もこちらの存在には気付いているはず。尚も兵を進めるのは大軍故の慢心か、それとも確かな勝算があってのことか」
 侵攻を続ける敵軍を眺めてセシリアは呟く。既に各所では戦闘が発生し、相当の被害が出ているようだが、それでも敵は撤退の気配を見せていない。まるで恐れというものを知らないような騎兵と死霊の行進は、どこか不気味でさえあった。
「いずれにせよこちらの準備は万端。敵には全滅の憂き目にあっていただきましょう」
 元より剣を交えずしてお帰り願えるとなど思ってはいないし、1兵たりとも逃すつもりもない。死地へと自ら飛び込んできた辺境伯軍の前に、暗黒騎士は堂々と立ちはだかった。

「ここより先へは行かせません」
 敵の進路を塞ぐように立つ、黒き鎧と魔剣の騎士。あふれ出す暗黒の力は闇色の旋風となってその身を包み、人の限界を超えた力と狂気にも近い闘争心を彼女に与える。
 彼女はその衝動を抑え込むことなく敵集団に切り込む。そこから始まるのは全てを破壊する【黒風の蹂躙】だった。
「―――!!!」
 重量を活かした暗黒剣の斬撃が、先頭にいたシャドウライダーを騎馬ごと真っ二つに両断する。悲鳴を上げる間もなく裂けた骸を踏み越えて、振り下ろした暗黒剣を横薙ぎに払えば、漆黒の衝撃波が至近にいた敵を吹き飛ばしていく。

「強い……」
 たったの二太刀の交戦だけで、セシリアの力が敵を遥かに上回っていることは明らかだった。シャドウライダーが彼女に持ち得る優位性は【人馬一体】の機動力と数滴有利だが、そのどちらも狭隘な山路では十分に活かすことができない。
「我々はあなた方を待っていました。ここをあなた方の墓場とするために」
 セシリアが斬撃を振るうたびに、荒れ狂う暗黒の波動が悉くを蹂躙する。その戦いぶりはまさに一騎当千、嵐の如き狂戦士の暴威はもはや何者にも止められはしない。
 敵もこの場では勝算はないと悟り、立て直しのために一時撤退を図ろうとするが――。

「そう、それが得策ですが……逃しません」
 騎兵が踵を返した瞬間、ドドドドと地響きを立てて大量の岩石や丸太が山の上から降り注ぐ。この時のために予め仕掛けておいた罠を、セシリアが念動力で起動したのだ。
 敵は慌てて退避するものの、降ってきた落下物は彼らの後方の山道を完全に埋めてしまう。退路を失ったシャドウライダーたちの前から迫るは、猛る暗黒の狂戦士。
「……我らに勝機なし、か。見事」
 完全に追い詰められた敵部隊は、最後の抵抗とばかりに一斉突撃を仕掛けるが――その全ては黒風の嵐によってなぎ倒され、蹂躙され、1兵残らず駆逐されたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
【守護霊獣の召喚】で獅子に【騎乗】
黄金の輝きを纏って姿を見せる
揃いも揃ったり有象無象の軍勢どもよ!
千万無量集おうと、我と我が獅子一騎に及ばない!!

無論、そんなことはない
しかし真正面からこれだけの啖呵を切られれば、嫌でも注目せざるを得ない
仲間が動きやすくなるように目立つ(存在感・パフォーマンス)
獅子もまた咆哮(大声)をあげて威嚇する(恐怖を与える)

吶喊(ダッシュ)
聖槍を振り回して【ランスチャージ】、獅子の爪牙で食い破る、手当たり次第に【蹂躙】する

伝説の雪獅子は山から山へと飛び移るといいます
彼奴らの駄馬に出来て、あなたに出来ない筈はない
【地形耐性】【ジャンプ】で縦横無尽に駆け回り、高速移動に対抗


榛・琴莉
この状況でも撤退はなさそうですね
厄介な地形に攻め入るというのに、よほど自信があると見える
それとも玉砕も構わないんでしょうか

出来るだけ道幅が狭い場所を選び、そこから十分に距離を取り尚且つ狙撃できる位置に潜みます
敵の移動速度から、先頭の騎馬を貫くよう狙いと角度を計算、その足元にUC
魔力大盤振る舞い【全力魔法】で氷槍を大きく伸ばし、進路を妨害します
ただでさえ騎馬には辛い道。足並みが乱れてしまっては動き辛いでしょう。
こちらの位置を特定されない様に動き回りながら、
氷が砕かれたならもう一度。越えてこられたなら今度はそちらに

対人であれば、隊列を乱すのは有効打となりえますが…
どうなんでしょうねぇ、あの人たち



「この状況でも撤退はなさそうですね」
 道幅の狭くなった山中に潜み、琴莉は辺境伯軍と猟兵の戦いの模様を観察していた。
 現在の戦況は事前に迎撃準備を整えていた猟兵側が有利だ。敵方もこちらが待ち構えていることは勘付いていただろうに、まるで躊躇なく山岳地に踏み込んで来ている。
「厄介な地形に攻め入るというのに、よほど自信があると見える。それとも玉砕も構わないんでしょうか」
 これまでの戦闘を分析する限りでは、その両方のように琴莉には感じられた。
 自我の希薄なシャドウライダーたちは仲間を失おうとも怖れることなく進撃を続け、その将たる剣狼の辺境伯は、今だ後方より動じることなく指揮を下すのみだ。

「私が前に出て敵の目を引きつけます。あなたは後方から狙撃を」
 琴莉にそう告げて飛び出したのはオリヴィア。【守護霊獣の召喚】により呼び出した獅子に跨り、破邪の聖槍を握り締めた彼女は、狭隘な山路に入ってきた敵部隊の真正面から姿を見せる。
「揃いも揃ったり有象無象の軍勢どもよ! 千万無量集おうと、我と我が獅子一騎に及ばない!!」
 黄金の輝きを身に纏い、聖槍を掲げて高らかに啖呵を切る。その勇姿はいやが上にも注目を浴びるだろう。敵であるシャドウライダーでさえ、闇夜を燦然と照らす聖光から、目を離すことができなかった。

「覚悟せよ!!」
 勇ましく敵陣に吶喊する獅子とオリヴィア。力強く大地を踏みしめ駆ける獅子の咆哮は、恐れという感情の希薄なシャドウライダーはまだしも、彼らの馬を萎縮させるには十分な威嚇だった。
「……!!」
 初動の遅れたシャドウライダーを、突っ込んできたオリヴィアの聖槍が貫く。それは悪を穿ち、邪を破り、魔を切り裂く至高の聖具。影の騎兵など一突きで消滅させる。
 だが、いかに彼女が強大な力を振るおうとも、数はそれに勝る力だ。"千万無量集おうと"本当に及ばないかと言われれば無論、そんなことはない。オリヴィアが強気に前に出られたのは、己の力だけではなく、共に戦う仲間の力を信じているからだ。

「ここなら、よく見えます」
 前線にて大立ち回りを繰り広げるオリヴィアの遥か後方より、琴莉はアサルトライフル「Mikhail」を構えて狙撃体制に入る。ガスマスクのレンズ越しの視界には「Ernest」が羽ばたき、敵の移動速度から機動予測と照準・角度の計算結果が表示される。
「装填、ジャック・フロスト」
 弾倉内の弾丸に魔力を込めて【CODE:ジャック・フロスト】を起動。万に一つも味方に当てぬよう、慎重に狙いを定めて――すっ、と呼吸を止めて、トリガーを引く。
 放たれた銃弾は過たず、敵群の先頭にいた騎馬の頭部を貫通し、その足下に着弾する。
 直後、刻まれた弾痕から氷の槍が飛び出し、まるで剣山のように地面を埋め尽くした。

「これは―――っ」
 弾丸よりも数瞬遅れて届いた銃声で、シャドウライダーは狙撃手の存在を知る。だが彼らにはそれよりも、目前で進路を妨害する氷槍への対処をどうするかが問題だった。
「ただでさえ騎馬には辛い道。足並みが乱れてしまっては動き辛いでしょう」
 通常よりも魔力を大盤振る舞いした琴莉のジャック・フロスト。地面から長く伸びた氷槍はたとえ騎馬を串刺しにできずとも、騎兵の行動を大きく妨げる障害となる。
 まずはこの槍衾をなんとかしなければ進退さえもままならない。シャドウライダーたちは鞭を振るって氷槍を砕こうとするが、そこに金獅子とオリヴィアが飛び掛かった。

「我が守護霊獣よ、その爪牙を以て邪悪を引き裂け――!」
 氷の槍を跳び越え、驚く騎兵の頭上を取った獅子は、黄金に輝く爪牙で敵を食い破る。
 巨体でありながら驚異的な敏捷性。敵群のど真ん中に降り立てば、その背に跨ったオリヴィアもまた聖槍を振るい敵を蹴散らしていく。
「く……っ」
 無機質だったシャドウライダーの表情に焦りの色が浮かぶ。彼らは獅子の機動に追いつこうと【人馬一体】を発動し、穂先に切り裂かれながらも強引に氷槍を突き破るが――その直後、また一発の弾丸が彼らの元に飛来し、新たな氷槍を生成した。

「一度限りじゃないですよ」
 弾丸は前回とは別の方角から飛んできた。敵から十分な距離を取れて、尚且つ狙撃可能なポイントがこの辺りに幾つもあったのは、琴莉にとって何よりの僥倖だった。
 位置を特定されないよう、一度撃つたびに山中を動き回り、場所を変えてはまた狙い撃つ。何度砕こうが越えようが、すぐに新たな氷槍がシャドウライダーの騎行を阻む。
(対人であれば、隊列を乱すのは有効打となりえますが……どうなんでしょうねぇ、あの人たち)
 それが人外の敵に対する琴莉の唯一の懸念だったが――どうやら杞憂で済んだようだ。
 狭隘な地形と突き並ぶ氷槍という二重苦により、敵騎兵は完全に己らの強みを殺されている。氷雪の狙撃手が見る限り、あの戦場で十全に動けているのは1人と1騎のみ。

「伝説の雪獅子は山から山へと飛び移るといいます。彼奴らの駄馬に出来て、あなたに出来ない筈はない」
 険しい岩場と氷槍に囲まれた戦場を、オリヴィアと獅子は文字通り縦横無尽に駆け巡る。過酷な地形をものともしない力強い疾走は、敵騎兵の移動速度に拮抗――否、この状況下では完全に凌駕していた。
「人間の土地を、生活を、尊厳を脅かす者共を、一兵たりとも逃すものか!」
 猛る魔狩人の聖槍と獅子の爪牙が、容赦なくシャドウライダーたちを蹂躙していく。
 その咆哮に連なるように、山麓に響くは狙撃手の銃声。この戦線に踏み込んだ敵部隊が全滅するまで、それから然程の時間はかからなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…随分と多くの猟兵が集まったみたいだけど、
戦力比はざっと1対50…いいえ、それ以上ね

【血の鎖錠】を解除し吸血鬼化して浮遊しつつUCを発動
上空に限界突破した呪詛と魔力を溜めた真紅の月を召喚し、
敵全体の魂と生命力を吸収する月光を放つ先制攻撃を行う

…だけど、衆が寡を圧するなんて道理はないもの

お前達が相手をするのは、文字通り埒外の存在だと教育してあげるわ

大鎌を空中戦を行う“血の翼”を補助する黒刃翼に武器改造し、
全身を真紅のオーラで防御して超音速の早業で敵陣に切り込みなぎ払う

…怨嗟、未練、絶望。お前達が抱いている物は、
この切っ先が残らず持っていくわ

だからもう苦しむ必要は無い。眠りなさい、安らかに…



「……随分と多くの猟兵が集まったみたいだけど、戦力比はざっと1対50……いいえ、それ以上ね」
 【血の鎖錠】の封印を解除したリーヴァルディは、背中から放出される"血の翼"で空中に浮かびつつ戦況を俯瞰していた。各戦線で猟兵たちは奮戦しているが、千を超える兵力と【戦力補充】の能力を有する辺境伯軍の侵攻は今だ止まる気配を見せない。
「……だけど、衆が寡を圧するなんて道理はないもの」
 この程度の数的劣勢を覆せずして何が猟兵か、何が闇の救済者か。力の解放により吸血鬼化したリーヴァルディは妖艶な微笑を浮かべると、天に向かって手をかざす。

「……限定解放。血と生命と魂を捧げよ」
 限界を超えた魔力と呪詛がその身から解き放たれ【限定解放・血の神祖】が発動する。
 行進するシャドウライダーは見た。霊峰アウグスタの上空に出現する、深紅の月を。
 戦場を照らすその赤き輝きは、敵対する全ての者から魂と生命力を奪う妖光だった。
「ぐおぉぉォォ……!!」
 苦悶の呻きを上げる騎兵と死霊。そこに舞い降りるのは真の姿に変身したリーヴァルディ――紅き月光を背にしたその姿は、吸血鬼とも、あるいは異端の神とも違う、他を圧倒する存在感に満ちていた。

「お前達が相手をするのは、文字通り埒外の存在だと教育してあげるわ」
 リーヴァルディは手にしていた大鎌"過去を刻むもの"を黒刃の翼に変形させ、"血の翼"と合わせた二対の翼で天を翔ける。その飛翔速度は音速を超え、真紅のオーラで全身を覆っているために、敵からは流星のようにしか視えなかった。
「――――!!!!」
 迎撃はおろか、身構える暇もなく。超音速で切り込んできた神祖の刃翼になぎ払われ、シャドウライダーたちの五体がバラバラに吹き飛ぶ。骸の原型を保てればまだ良いほうで、中には心身を月光と黒刃に喰い尽くされ、跡形もなく消滅した者さえいた。

「……怨嗟、未練、絶望。お前達が抱いている物は、この切っ先が残らず持っていくわ」
 "過去を刻むもの"が変化した刃翼は、死者の想念を吸収して力に変える性質を持つ。
 敵を屠るたびにリーヴァルディの刃は鋭さを増し、オーラの輝きも更に強まっていく。
 シャドウライダーたちを現世に留める、ありとあらゆる負の想念。その全てを受け止め、背負い、血の神祖は鮮烈に戦場を翔ける。
「だからもう苦しむ必要は無い。眠りなさい、安らかに……」
 彼女の表情はけして敵意に満ちたものではなく。敵を討つという毅然とした眼差しの奥には、彷徨えるものたちへの慈悲がある。その刃にて倒れ伏した騎兵の骸は【戦力補充】のユーベルコードを受けても、二度と起き上がることは無かった。

「あぁ…………」
 自分たちに終焉をもたらす紅月の吸血鬼を前にして、彼らは最期に何を思ったのか。
 深紅の月光に照らされながら消滅していくシャドウライダーの遺骸は、どこか穏やかな表情を浮かべていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
作戦参加者の中に表情の固い方がいらっしゃいましたね
…猟兵が感じ取る『因縁』というものなのでしょうか

思案する前にあの大軍への対処です
少しでも削らねば

UCによる●情報収集で周囲の地形情報や狙撃環境は把握済み
対艦砲といっても所詮は点の攻撃
少ない弾数で大軍を討つ為に…

対艦砲を●ハッキングし●限界突破
軍勢が通る道の『上』…谷の壁面を光線で●なぎ払い
落石、地滑りで集団を一網打尽と同時に分断、進軍一時妨害
生き残って砲撃に気づき接近する敵集団と格納銃器の掃射と近接攻撃で応戦

軍勢が瓦礫を乗り越え始めましたか…潮時ですね

●投擲する煙幕手榴弾で●目潰し
遠隔●操縦で呼んだ機械馬に●騎乗し用意した逃走ルートから離脱



(作戦参加者の中に表情の固い方がいらっしゃいましたね……猟兵が感じ取る『因縁』というものなのでしょうか)
 砲撃陣地にて戦闘準備を整えたトリテレイアは、準備中に見かけた1人の猟兵のことを思い返していた。"宿敵"とも呼ぶべき縁のある『過去』と相まみえるときの感覚――彼自身も覚えがないではないその感覚を、あの少女は感じていたのだろうか。
「思案する前にあの大軍への対処です。少しでも削らねば」
 センサーが射程範囲内への敵接近を告げる。すぐに思考を切り替えたトリテレイアは設置した試作装備の槍型対艦砲を構え、演算とセンサーの感度を研ぎ澄ませてゆく。

(周囲の地形情報や狙撃環境は把握済み)
 【鋼の擬似天眼】を起動中のトリテレイアは、全てを見通すとまでは言わずとも、極めて高精度な情報収集を可能とする。解析にかける時間が十分あったこともあって、射程内で敵が通るであろうルートや狙い撃つべきポイントは全て頭に入っている。
 不安要素があるとすれば、彼の装備する砲は対大型標的用の武装であり対軍団用に用意された武器ではない、ということか。
「対艦砲といっても所詮は点の攻撃。少ない弾数で大軍を討つ為に……」
 砲撃用エネルギーの残量を確認しながら、彼は対艦砲のシステムに接触しハッキング。
 出力の限界を一時的に突破させ、砲への負荷を承知のうえでトリガーを引き絞った。

「何―――っ?!」
 槍型の砲身から発射された純白の光線は、進軍中の敵の『上』を通り越し――道のすぐ脇にある谷の壁面をなぎ払う。戦艦すらも撃沈する超威力の砲撃は山肌を大きく抉り、大量の岩石と土砂が雪崩のように崩れ落ちてきた。
「退け、退け……!」
 敵の軍勢は慌てて退避しようとするものの、狭い山路では反転することさえままならない。結果、逃げ遅れた多くのシャドウライダーが落石と地滑りに巻き込まれていった。

「敵勢力の進軍停止を確認。第一段階は成功ですね」
 1発の狙撃で見事に集団を一網打尽にしたトリテレイアは、すぐに次発の装填に移る。
 彼の砲撃は多くの敵を生き埋めにしただけでなく、大量の土砂と瓦礫で山道を封鎖し、その両端で軍勢を分断することにも成功していた。
「砲撃手がいる……潰せ……!」
 とはいえ敵も愚かではない。あれだけ派手な光線を放ったのだ、射線を辿ってトリテレイアの狙撃位置はすぐにバレる。辛くも落石から生き残った騎兵はまた同じことをさせるものかと、馬に鞭打って接近してくる。

「やはりそう来るでしょうね」
 実のところ強引に限界突破させた対艦砲で同様の砲撃を続けるのは困難だったのだが、向こうはそれを知るよしもない。分断された敵の攻勢はあくまで個々の兵士の判断によるものであり、統率が回復する前に叩くべきだとトリテレイアは判断した。
「お相手いたしましょう」
 対艦砲をその場に置いて、彼は機体各部に搭載した格納銃器を展開。散発的に襲ってくる敵騎兵を機銃掃射で蹴散らし、なおも接近してくる者は儀礼剣と大盾で応戦する。
 軍としての連携がなければ、1体1体のシャドウライダーの実力は猟兵に及ぶべくもない。砲撃阻止のために突出した騎兵らは、1人残らず山に骸を晒すことになった。

「軍勢が瓦礫を乗り越え始めましたか……潮時ですね」
 しばらくしてトリテレイアは、辺境伯軍が侵攻を再開したのをセンサーで察知する。
 それが大挙してこちらに押し寄せてくる前にと、彼は待機させていた機械白馬「ロシナンテⅡ」を遠隔操縦で呼び寄せ、収納スペースから煙幕手榴弾を取り出す。
「逃げる気か……待て……っ?!」
 追いすがろうとするシャドウライダーの視界を煙幕が覆う。その隙に機械騎士は機械馬に跨ると、用意してあった逃走ルートから悠々と前線を離脱するのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ウーナ・グノーメ
連携・アドリブ◎

【心情】
「全く迷いのない進軍。まるで自軍の損害を一顧だにしない、無茶な侵攻なのです」

妖精は、その破滅的な行軍に違和感を抱いた。

「或いは、そうせざるを得ない理由があるのかもしれないのですが……何にせよ、やることに変わりはないのです」

妖精は腕を上げ、指を滑らかに動かす。

「全ては塵。あなた方には実力を発揮できないまま、倒れて貰うのです」

【行動】
UCによって地盤を細かな砂にすることで、馬の蹄は沈んでまともに歩けないように。
加えて【念動力】の制御で地滑りや落石を引き起こし、敵に損害を与える。
強引に近づこうとする敵は【オーラ防御】、及び【念動力】による【吹き飛ばし】によって距離を取り対処。


ルカ・ウェンズ
敵が騎兵なら相棒の宇宙昆虫に【騎乗】して空から攻撃するわ。

まず【オーラ防御】で身を守り、それから空を飛べないだろう敵に【空中戦】を仕掛けるわ。変形式オーラ刀を銃に変形させてオーラの弾丸で攻撃して戦力補充をさせないように、ユーベルコードも使って敵を爆破しないと。

爆破させても原形を保ってるようなら仕事人の拷問具を使い、私の【怪力】で原形がわからなくなるまで破壊しないと。亡霊…敵が引き連れてきた亡霊はオーラ防御で拳を重点的に守り、殴りつけてみることにするわ。



「全く迷いのない進軍。まるで自軍の損害を一顧だにしない、無茶な侵攻なのです」
 不利と分かっている山中に敢えて踏み込み、猟兵の迎撃を受けて損害を増やしながらも、撤退の指示を出さない辺境伯と、仲間の屍を踏み越えて前進を続ける軍勢。砂漠の妖精ウーナは、その破滅的な行軍に違和感を抱いた。
「或いは、そうせざるを得ない理由があるのかもしれないのですが……何にせよ、やることに変わりはないのです」
 どんな思惑があろうと、彼らにはここで塵に還ってもらう。妖精は腕を上げ、指を滑らかに動かす。すると彼女の浮かぶ場所を起点として、土が、石が、砂に変わっていく。

「全ては塵。あなた方には実力を発揮できないまま、倒れて貰うのです」

 あらゆる無機物を砂に変換し操作する【塵への回帰】。険しい山地を駆け上がってきた辺境伯軍の行進を止めたのは、乾ききった砂漠へと変化した地盤そのものだった。
「何だここは……っ」
 細かな砂でできた砂漠の上では、騎馬の蹄は沈んでまともに歩くこともできなくなる。
 随伴する【代弁者】の亡霊とて、満足に動けないのは同じ。戦場の只中で立ち往生する羽目になった彼らが藻掻いていると、その頭上から黒い影が近付いてくる。

「敵が騎兵なら空から攻撃するわ」
 それは相棒の宇宙昆虫に騎乗したルカだった。翼を持たない相手に対して昆虫の飛行能力は優位に立てるうえ、ウーナが砂漠化させた地盤も空中にいれば何の問題もない。
 彼女は手にした「変形式オーラ刀」を銃に変形させ、動けない地上の敵に発砲する。黒いオーラの弾丸が騎兵に命中した瞬間、轟音とともに激しい爆発が起こった。
「カー・ディスク・ジョン」
 攻撃と同時に敵を爆破する【死がふたりを分かつまで】。相手が【戦力補充】で倒された仲間を復活させてくることが分かっている以上、遺骸を破壊してそれを阻止するのがルカの狙いだった。

「ぐぅ……このままでは、不味い……」
 砂漠に足を取られたまま、上空から一方的に射撃を受け続けるこの状況は、敵にとって最悪と言える。やむなくシャドウライダーたちは使い物にならない馬から降りて、砂をかき分けながら徒歩での進軍を試みるが、ウーナはそれを見過ごさない。
「ここから先には進ませないのです」
 彼女が再びすうっと指を動かせば、地響きとともに山が震える。砂化による地盤の緩みと念動力による制御が、局所的な地滑りと落石を引き起こし、敵軍に降り掛かった。

「が―――ッ!!」
 落石に頭蓋を砕かれる者、地滑りに呑み込まれる者。辺境伯軍の被害は拡大していくが、それでも彼らは鞭を振るって代弁者を呼び出し、死骸から戦力を補充し、どうにかこの砂の地獄を突破しようと足掻く。
「はい、残念」
 そんな彼らを絡め取るのは、鞭剣のような形状をした「仕事人の拷問具」。その使い手たるルカは上空よりにっこりと笑いかけながら、持ち前の怪力と宇宙昆虫のスピードで敵を引きずり回し、遺体の原型も残らないほど完膚なきまでに滅殺する。

「ううぅぅぅぅあぁぁぁぁぁぁ……!!」
 空と大地からの容赦のない攻勢に、堪らず亡霊たちも怨嗟を上げる。呪いの力を帯びた彼らの声は、聞くだけでも心身を蝕む攻撃だが――その程度で怯むような脆弱な精神など、この猟兵たちは持ち合わせていない。
「あなた方も、塵に還るのです」
 ウーナはオーラの護りで呪詛をシャットアウトし、念動力をぶつけて彼らを吹き飛ばす。砂漠へと押し返された亡霊は、抱え込んだ未練や怨嗟と共に砂の底に沈んでいく。
「別にこっちは恨みとかはないけど、大人しく寝てもらうわ」
 そしてルカの方はオーラで自らの拳を重点的に守ると、空中で勢いをつけて思いっきり殴りつける。オーラの拳がクリーンヒットした亡霊はばったりと砂漠に倒れ、やはり起き上がってくることは無かった。

「敵を……人間を……殲滅……」
 馬も亡霊も失い、シャドウライダーたち自身もまた、砂漠に呑まれ塵に還っていく。
 最期の瞬間まで、主から与えられた命を果たさんとするその姿は、鬼気迫るというよりは人形のように無機質であり――果たして彼らの"意思"はそこにあったのかどうか。
 いずれにせよウーナとルカがいる限り、辺境伯軍がこの砂漠を超えることはなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリステル・ブルー
連携アドリブ歓迎
他の猟兵さんが望むなら積極的に協力します!

上空に使い魔ユールを放っておくよ!
戦場全体を偵察してほしい。余裕があれば援護射撃、何か気づいた事があれば僕と情報共有して、内容は他の猟兵さんにも伝えるね。何もなくても大丈夫だよ。

僕はそうだな。
なるべく【闇に紛れて】有利な位置を取りつつ基本的にはUC【ジャッジメント・クルセイド】で騎馬を優先して狙っていくよ。機動力削げば味方もやりやすい、はず。落馬でもしてくれたらラッキーだね。
接敵された時のために黒の細剣は抜いておき、その時は応戦するよ。

ここを抜かれるわけにはいかないからね、がんばろう!
絶対に人類砦は守り抜く。


ドゥアン・ドゥマン
張りつめる大気が、静かで好い
この身も、一騎として。征こう

防衛する村々と避難先を巻き込まぬよう、
猟兵方と連携、挟撃に加わろう
まずは村の前方で軍勢を迎え撃つ
大軍だ。だが、共に戦う者達がいる
己もまずは、一拠点を護り抜く

騎兵の生命力を吸い、機動力を削ぐべく
囁骨釘で溜めていた黒煙を、
闇夜に紛らせ、雨雲の如く頭上へと
ひそやかに、喰らうように。雨夜へ招こうぞ

念の主は、かの霊峰
ヴァンパイアの支配を退け、今は人々の信仰を受ける地
侵略者を拒むなら、敵方はさぞ動きにくかろう

未練も怨みも。生きた分、あるのは道理
呪いもまた、生きた証の想いである
故。彼らの声に、耳を澄ませながら
尊き魂に。四方釘にて、眠りを捧ぐ葬送を成そう



「張りつめる大気が、静かで好い」
 紅い月が照らす夜空をじっと見上げながら、ドゥアンは戦の緊張を感じ取っていた。
 日常の平穏とは異なる一触即発の空気。それを運んできた"敵"の気配も、同様に。
「来ました!」
 静寂を破ったのは赤髪の青年、アリステル。彼が上空に放っていた使い魔の「ユール」が、ここに接近する辺境伯軍の部隊を確認したようだ。それを聞いた灰毛のケットシーは、兜のように被った「根の骸」の頭骨を、目深に被り直し。
「この身も、一騎として。征こう」
 ここより先に在るのは人々の暮らす集落と避難所。巻き込むわけにはいかない。
 この地の安寧を護り抜くために、ふたりの猟兵はすぐさま迎撃行動を開始した。

「見えたぞ……村だ」
 多くの犠牲を払いながらも進撃を続けてきた辺境伯軍は、ついに霊峰の麓に築かれた集落を発見する。そこに住まう人々を殲滅するのが、彼らが主より与えられし命令だ。
 しかし村の前方には1人の猟兵が道を塞ぐように立ちはだかっている。ここまで来れば一息に踏み潰してくれようと、シャドウライダーの騎行は速度を増した。
(大軍だ。だが、共に戦う者達がいる)
 対峙するドゥアンの心にはさざ波ひとつない。試されるのはこれまでに仕込んできた術法と仲間との連携。何十何百の兵士に襲われようと、迎え撃つための用意は万全だ。
 すっ、と彼が手をかざすと、予め各所に打ち込まれていた囁骨釘がカタカタと震えだす。大地から吸い上げられた念と生命力が黒煙となって立ち上り、雨雲の如く空を――軍勢の頭上を覆っていく。

「ひそやかに、喰らうように。雨夜へ招こうぞ」
 黒煙の雲よりしとしとと降りだすのは黒い雨。戦場の環境を変える【涙雨に伏す】。
 気が付かぬまま雨天の下に駆け込んできた敵勢は、濡れた地面に馬の足を取られた。
「ぐ……っ、これは、ただの雨では、ない……?」
 足回りだけでなく、雨に打たれた身体から力が抜ける。生命力を吸い取られている。
 闇夜に紛れる黒い雨。察知が遅れたのはシャドウライダーにとって大きな失態だった。

「今だ……!」
 その時、彼らの上空から雨に加えて眩い光と魔力の弾丸が降り注ぎ、馬体を撃ち抜く。
 それは、後方に潜んでいたアリステルの【ジャッジメント・クルセイド】と、その使い魔ユールによる援護射撃。黒い雨は彼らの姿を敵から隠すのにも一役買っていた。
「機動力削げば味方もやりやすい、はず」
 落馬でもしてくれたらラッキーだね、と嘯く彼の狙い通り、不意打ちで騎馬を仕留められたシャドウライダーは地に叩きつけられる。すぐに起き上がり、体勢を立て直そうとするが――まるで大気そのものが纏わりつくように、身体が思うように動かない。

「灯火に雨は降る」
 墓守ドゥアンが唱える詩は、この霊峰にかつて存在した異端の神へと捧げる弔歌。
 今だ残留する念を吸い上げた黒煙の雨は、この地を念の主が安らげる場所へ変える。
 ここはヴァンパイアの支配を退け、今は人々の信仰を受ける地――今、涙雨の降るほんのひとときの間だけ、霊峰アウグスタは在るべき神の聖地へと回帰した。
「侵略者を拒むなら、敵方はさぞ動きにくかろう」
 戦場に満ちた見えざる神の念が、辺境伯の軍勢を縛り付ける。地面に片膝をついたまま立ち上がることすらできないでいる敵の騎兵を見れば、その効果は一目瞭然だった。

「いい調子だね!」
 敵勢の動きが目に見えて鈍りだしたのを見て、アリステルは続け様に天からの光を浴びせる。ひとつところに留まるのではなく、雨天の闇に紛れて常に有利な位置関係を――前方にいるドゥアンと敵を挟みこむ形をキープして、攻勢を強める。
「このまま終わってくれれば楽でいいけど……」
 そこまで彼は楽観的なわけではない。油断なく距離を保ったまま様子をみていると、騎兵たちが手に持った鞭をピシリと唸らせ、【代弁者】の亡霊を召喚し始めた。

「新手です! 僕の方にもあなたの方にも来る!」
 アリステルが捉えた敵の動きは、上空にいるユールを介してすぐさま他方の仲間と共有される。青い鳥の使い魔から情報を受け取ったドゥアンは、襤褸布にしまっていた古びた四方釘を取り出し、近接戦闘の構えを取った。
「ううぅぅぅぅあぁぁぁぁぁぁ……」
 黒い雨に打たれながら、怨嗟の声を上げて襲い掛かってくる亡霊たち。この空間で行動を阻害されずにいるのは、彼らの本質が"侵略者"ではなく"犠牲者"である故か。

「未練も怨みも。生きた分、あるのは道理。呪いもまた、生きた証の想いである」
 ドゥアンは墓守として彼らの声に耳を澄ませながら、四方釘を組み合わせる。
 黒煙を纏う四本の釘が形作るのは、彷徨える亡霊たちを骸の海へ還すための武具。
「尊き魂に。眠りを捧ぐ葬送を成そう」
 静かな宣告と共に突き放たれた一撃は、導かれるように標的の胸を穿ち。
 その瞬間、亡霊の怨嗟はぴたりと止み、黒い塵となり崩れて消えていった。

「ここを抜かれるわけにはいかないからね、がんばろう!」
 対面にいるアリステルの方も、接近してくる亡霊たちを黒の細剣で迎え撃っていた。
 異端の血を啜る呪われた剣。その切れ味は世の理を外れた死者にも十全に発揮される。
「絶対に人類砦は守り抜く」
 口元には穏やかな笑みを。瞳には揺らがぬ決意を。敵を斬り伏せる太刀筋に迷いなく。
 亡霊たちを撃破した人狼は、そのまま本隊のシャドウライダーに向かって駆けていく。それに呼応して前方からも、四方釘を構えた墓守が挟撃をかける。

「っ……!!」
 黒き雨天の下、思うような力を発揮できない影の騎兵。それとは対照的に、同じ戦場にいるはずの猟兵たちの行動は妨げられず、むしろ普段より動きやすい位だった。
『――護るために、戦え』
 この地に眠る異端の神の念が、猟兵たちに力を貸している。狂神に成り果てる以前の霊峰アウグスタの神は、大切なものを護るために加護を与える戦神だったのだ。
 まさしく霊峰そのものを味方につけた猟兵が、侵略者どもに遅れをとるはずもなく。古びた四方釘が、黒の細剣が、村に迫った軍勢を1人残らず駆逐していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シェーラ・ミレディ
避難は終わった。あとは敵を迎え撃つだけだな。
どのような数で来ようと、あらかじめわかっているなら問題ない。
ことごとくを狩りつくしてやろうじゃないか!

『落花流水』で精霊を呼び出し、破魔の結界を張らせて不意打ちに備える。
僕自身は浄化属性の弾丸を乱れ撃ち、弾幕を張って敵を寄せ付けないよう立ち回るぞ。
ある程度撃ったら、敵との距離があるうちに闇に紛れて移動。銃声に寄ってきた敵を別方向から仕留める。
十字砲火……というには、時間差があるが。敵は軍勢というほどの数なのだし、簡単な作戦でもあった方が良いだろう。

僕の銃弾から、逃れられると思うなよ?

※アドリブ&絡み歓迎


クネウス・ウィギンシティ
※アドリブ&絡み歓迎
「気づかれようとやることは一つだけです」

【POW】

●戦闘
進撃時に分かれた一団を襲撃。状況如何によって、臨機応変に対応します。
自分の設置したセントリーガンや味方が置いた罠に誘引する狙いです。

「GEAR:CLOTHO。背面ブースター開放、ブースト!」
戦闘開始直後UCを発動し、飛翔(【空中戦】)。対航空戦力が乏しいと判明した『シャドウライダー』に空中から手持ちの【マシンガン】と【アームドフォート】の弾を可能な限り撃ち込みます(【砲撃】)。

「復活するというのなら、粉々に粉砕するだけです」
敵に一方的に攻撃しながら近くにあるであろうセントリーガンなり罠に誘導、少しでも数を減らします。



「避難は終わった。あとは敵を迎え撃つだけだな」
「あちらも警戒しているでしょうが、気づかれようとやることは一つだけです」
 幾つかの部隊に分かれて進撃してくる辺境伯軍を待ち受ける、シェーラとクネウス。
 シェーラは既に【彩色銃技・落花流水】を発動し、呼び出した精霊に破魔の結界を張らせて万一の不意打ちに備えている。クネウスも黒鋼のアームドフォートとマシンガンで完全武装し、戦闘の準備は万全である。

「GEAR:CLOTHO。背面ブースター開放、ブースト!」
 接敵を待たずして先んじて仕掛けたのはクネウスだった。【CLOTHO】を発動した彼の躯体は凄まじい推力で飛翔し、補足したシャドウライダーの一団を空中から強襲する。
 事前偵察の成果により、敵軍は対航空戦力が乏しいと判明している。容易く敵の頭上を取ったサイボーグより降り注ぐのは、雷鳴のごとき砲声と弾丸の豪雨だった。

「―――ッ!!!」
 突然の強襲を受けたシャドウライダーたちの被害は甚大だった。アームドフォート「ゲオルギウス」に搭載された狙撃銃の弾丸は的確に騎手の頭部を撃ち抜き、マシンガン「Sir Buster」の弾幕は漆黒の騎馬をたちまち蜂の巣に変える。
 反撃しようにも砲手であるクネウスは遥か空の高みにいる。太刀打ちできるような射撃攻撃手段を持たない彼らにできるのは、砲撃の範囲から逃れることしかない。
「止まるな、駆け抜けろ……!」
「逃しません」
 銃声に怯える馬に鞭を当て、全速力で山道を駆けるシャドウライダーを、弾幕を張り続けながらクネウスが追う。ブースターの飛行速度を考えれば追いつくのは容易なはずだが、彼は敢えて付かず離れずの距離を保ったまま、敵をある場所に誘引する。

「待っていたぞ。さあ、一曲お相手願おうか!」
 そこで待機していたのは【落花流水】を発動中のシェーラだった。傍らには見目麗しい精霊を侍らせ、両手に構えた精霊銃の銃口は、クネウスに追われてきた敵影をピタリと捉えている。
「伏兵―――!?」
 先頭の騎兵が後続に警告するよりも速く、銃撃がその眉間を射抜く。精霊による"浄化"の属性を付与された弾丸は、たった一発でオブリビオンに致命傷をもたらした。
 シェーラはそのまま4丁の精霊銃を曲芸のように同時に乱れ撃ち、弾幕を張って敵の進軍を寄せ付けない。上空からの砲撃に追い立てられたここまでやって来た騎兵たちは、ここに来て立ち往生する羽目になった。

「……止まるな。退いたところで待つのは死だ」
 前方からはシェーラ、後方上空からはクネウス。2人の猟兵による挟撃に嵌まった形になったシャドウライダーは、鞭を振って【代弁者】を召喚し、強行突破を試みる。
 怨嗟の呪いを放ちながらよろばい歩く死霊の群れは、精霊銃の弾幕によって次々と浄化されていくが、騎兵はそれを肉ならぬ霊の盾として、強引に距離を詰めていく。
「頃合いだな」
 それを見たシェーラは撃つのを止めて、まだ距離があるうちに闇に紛れて姿を隠す。
 元より視界の悪い山中だ。銃声と弾丸が飛んでくる方向を頼りにしてきたシャドウライダーには、一体彼がどこに行ったのかすぐには見つけられまい。

「『オラクル』攻撃開始」
「なに……っ!!?」
 標的を見失った辺境伯軍を代わりに襲ったのは、クネウスが設置していたセントリーガンの銃撃だった。上空から追い込み、シェーラが引きつける二重の誘導によって、敵は仕掛けられた罠の真っ只中に入り込んでいたのだ。
「ぐぁ……っ、まだ……!」
 四方八方から浴びせられる機銃掃射に、為す術なく撃ち倒されていくシャドウライダー。なんとかこの窮地を脱するべく、【戦力補充】を行い弾幕の切れ間を探るが――。
「復活するというのなら、粉々に粉砕するだけです」
 クネウスは肩部にマウントしたランチャー型アームドフォート「リア・ファル」の照準を地上に向けて、全弾発射。チャージされたエネルギーとミサイルによる圧倒的火力が、死骸の原型すら留めぬほどに敵騎兵を吹き飛ばしていく。

「っ、退避……退避せよ……っ!!」
 突破口を探して死にもの狂いで足掻くシャドウライダー――その無防備な側頭部を撃ち抜いたのは浄化の精霊弾。見れば、いつの間に移動していたのか、敵の正面から側面へと回り込んだシェーラがにやりと笑って精霊銃を構えている。
「十字砲火……というには、時間差があるが」
 銃声に寄ってきた軍勢を別方向から仕留めるという彼の作戦は、射手の味方と連携することでより完成度を増した。科学と神秘の力による銃撃の包囲網は、今や誘い込んだ辺境伯軍の部隊を駆逐しつつある。

「少しでも数を減らします」
 一兵も漏らさないという意思の元、惜しみなく手持ちの弾を撃ち込むクネウス。
 補充された戦力も召喚された亡霊も、その都度すぐに粉砕され、塵に還っていく。
「僕の銃弾から、逃れられると思うなよ?」
 そしてシェーラの放つ精霊弾は、右往左往する敵に吸い込まれるように着弾する。
 怨念も未練も一切残さない浄化の弾幕。そこから復活できるオブリビオンはいない。
 ――霊峰アウグスタに響き渡る銃声は、そのまま辺境伯軍の弔鐘の音となった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クリスティアーネ・アステローペ
いっそ清々しいほどの侵略ね
自分の支配地の人間を、というのよりよほどやり易い
評決を待つまでもなし、こちらも武力を以てお還り願いましょう
絶望に沈むのは果たしてどちらか。試してあげるわ

まぁ、ここは私の領地でも何でもないのですけれど
あっちも気にしないでしょうし、ね?

マルツェラの代替詠唱による《衝撃波》で《爆撃》
敵陣に穴をあけてそこに飛び込み《なぎ払い》
隙を作ったところで《多重詠唱》をしていた【咎を穿て、赫き杭】を《一斉発射》することで周囲の敵を《串刺し》に
動きを止めた敵の首はフランツィスカでまとめて刎ねてしまいましょう

斃れたところで起き上がるようですけど
止めておく方がいいわ。藻掻く時間が伸びるだけよ?



「いっそ清々しいほどの侵略ね。自分の支配地の人間を、というのよりよほどやり易い」
 悪びれもせず堂々と侵攻してくる軍勢を、微笑を浮かべ見つめるクリスティアーネ。
 ここはヴァンパイアの支配の空白地。そこに住まう人々を蹂躙し、力ずくで勢力下に治めんとするのは、何気にこれまでのヴァンパイアには見られなかった動きである。
「評決を待つまでもなし、こちらも武力を以てお還り願いましょう」
 魔杖短剣"空を仰ぐマルツェラ"を抜き放ち、朧月の処刑人は戦場に身を躍らせる。
 何十何百と群れを為そうが、雑兵如きに絶望するほどアステローペの名は軽くない。

「絶望に沈むのは果たしてどちらか。試してあげるわ」
 接近する騎兵の一団に短剣を突きつけ、鍔元に仕込まれた引き金を絞ると、触媒となる弾丸が炸裂する。それによって呪文の詠唱を代替したクリスティアーネは高度な魔術を瞬時に発動させ、爆熱の火球を敵に撃ち込んだ。
「―――!!!」
 炸裂した爆撃の衝撃波が、先頭を駆ける騎兵を吹き飛ばし、敵陣に穴を開ける。
 そこに飛び込んだクリスティアーネは断頭斧槍"救済者フランツィスカ"を振るい、居並ぶ兵士たちをその騎馬ごと真横に薙ぎ払った。

「まぁ、ここは私の領地でも何でもないのですけれど、そっちも気にしないでしょうし、ね?」
 颶風と共に散る鮮血の只中で、くすりと冗談めかして笑ってみせるクリスティアーネ。
 確かにシャドウライダーにとって、目の前に立ちはだかる者が誰であろうと関係のないことだ。この地に住まう全ての者を殺戮するのが、彼らに与えられた命なのだから。
「邪魔をする者は、何であろうとも排除する……っ?!」
 初撃で受けた痛手を立て直そうと、すぐさま隊列を整えていく影の騎兵。
 だがその瞬間、地面から無数の赫い杭が飛び出し、彼らを串刺しにする。

「贖え、己が血潮と痛苦を以て」
 クリスティアーネの"マルツェラ"が用意していた術はひとつでは無かった。爆撃の術と多重詠唱されていた【咎を穿て、赫き杭】が、時間差で敵軍に襲い掛かったのだ。
 それは一族の血潮と民の祈り、領地を侵す者への呪詛憤怒から作られた断罪の杭。非道なる侵略者を貫いたそれは、これ以上の進撃をけして許さない。
「ぐ、ぅ……っ」
 身動きを封じられたシャドウライダーたちが見たのは、振り上げられた断頭の斧刃。
 颶風纏いし"救済者"の一閃が、囚われし者たちの首をまとめて刎ね飛ばしていく。

「ま……まだ……だ……」
「斃れたところで起き上がるようですけど」
 【戦力補充】で首なしの骸を蘇生させようとする敵に、クリスティアーネは忠告する。
 たとえ復活しようが、咎を穿つ赫き杭に貫かれた者が、その縛めより脱する術はない。
「止めておく方がいいわ。藻掻く時間が伸びるだけよ?」
「があぁぁぁぁぁぁ……っ!!!!」
 藻掻けば藻掻くほど、足掻けば足掻くほど、杭は深く身体に食い込み、より大きな苦痛を彼らに与える。そしてまた首を刎ねられ、復活し、終わらぬ絶望の坩堝に堕ちる。
 死を受け容れることが救済だと気付くまで。処刑人は彼らの咎を裁き続けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セシリー・アリッサム
来たね……数は、結構いるかな
大丈夫、覚悟は出来てるから
己を鼓舞してふわりと空中浮遊――敵を罠の方へ誘う

罠に近づいたら【天狼覚醒】――加速して不意を打つ
きっとわたしに合わせて鞭を入れ早足になるでしょう……それが狙い
罠に気を張ることも出来なければ、きっと引っかかる筈、です

そして発動させた罠で詰まっている間に
再びこんな所へ来ない様にと、破魔の祈りを込めて
全力高速多重詠唱で敵を焼却――炎の属性魔法で一気に焼き焦がすわ
そうすれば、死した人々もきっと……天へと還れる筈

させないよ、ここの皆をあなた達の様にはさせないから
シリウスを煌々と輝かせて、ママとお揃いの花を咲かせる
ねえ、来ているんでしょう……私はここよ



「来たね……数は、結構いるかな」
 見渡した限りでも千を超えようかという辺境伯の軍勢を、セシリーはじっと見つめていた。いざそれを目の当たりにして感じるのは、高鳴る鼓動と言い知れぬ不安。それはあの軍を率いる者――"辺境伯"との対峙の時が近付くにつれ大きくなっていく。
「大丈夫、覚悟は出来てるから」
 繰り返し己を鼓舞し、口元をきゅっと引き結んで。まずはあの敵から、ここで暮らす人々を護るために――彼女は再び空に浮かび上がると、戦いの最前線へと向かう。

「わたしが、相手よ」
 注意を引きつけるために敢えて高度は上げすぎず、ふわりふわりと空を舞う人狼の少女の姿を、シャドウライダーたちは虚ろな双眸で捉えると【代行者】を呼び集める。
 彼らが主より与えられた"殲滅"の命令に例外はない。召喚した亡霊の群れと共に押し寄せてくる影の騎兵に対し、セシリーは威嚇程度の呪炎を放ちつつ後退する。
(そう、みんなこっちに)
 ここは罠を仕掛けた場所に近い。うまく軍勢をまとめて嵌めるには、ぎりぎりまで悟らせない必要がある――そのために彼女は自分自身を囮にして、敵を罠に誘い込む。

(そろそろ……!)
 つかず離れずの鬼ごっこを続けたすえに、頃合いを見計らってセシリーは【天狼覚醒】を発動。「シリウスの棺」に青白い炎が灯り、その背から一対の白い翼が生える。
 それは、彼女の身体に流れる母の血――オラトリオの力の解放。それまでは"浮遊"と表現したほうが良かった飛行のスピードが、不意に稲妻のごとく加速する。
「逃がすか……」
 それを見たシャドウライダーたちも馬に鞭を入れ、早足となる。まさにそれこそがセシリーの狙い――空中の相手に意識を向けたまま、足下の罠に気を張ることは出来ない。

「――――っ?!」
 細くなった道の辻に敵軍が踏み込んだ瞬間、発動するのは束縛の罠。見つからないようあちこちに仕掛けられていた呪いの鎖が、騎馬の脚に絡み、死霊の足を捕らえる。
 セシリーが想定していた通り、機動力を封じ込まれた軍勢は山道の途中で完全に詰まってしまい、進むも退くもままならない状態に陥った。

「させないよ、ここの皆をあなた達の様にはさせないから」
 セシリーは罠に掛かった敵軍を、毅然とした眼差しで見下ろしながら呪文を唱える。
 青炎を灯したシリウスの棺が煌々と輝き、黒髪には母とお揃いの白いアリッサムの花が咲き誇る。人狼とオラトリオのハーフ、天狼の力を魔を討ち滅ぼす力に変えて――。

「――焼き焦がす!」

 その一撃に込められたのは「再びこんな所へ来ない様に」という、少女の破魔の祈り。
 放たれた蒼白の業火は、立ち往生する騎兵と亡霊の軍団を包み、一気に焼き焦がす。
(そうすれば、死した人々もきっと……天へと還れる筈)
 天狼の娘の願いどおり、蒼き葬火は肉体を、未練を、怨念を、全てを燃やし尽くした。
 強者の捨て駒として使役されてきた彼らが、再び現世を彷徨うことはもう無いだろう。

「ねえ、来ているんでしょう……私はここよ」
 影の騎士たちを火葬したセシリーは、空に浮かんだままシリウスの棺を高々と掲げる。
 彼女の放った蒼炎は、遠くからでもはっきりと見えたはずだ――その輝きに照らされる、人狼とオラトリオの特徴を持つ今のセシリーの姿も"辺境伯"に見えているだろう。
 セシリーには確信があった。かの者はじきにここまで来る。その時こそが忘れもしない、己の『過去』と向き合うべき時なのだと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナギ・ヌドゥー
この狭い山路なら騎兵の突撃衝力はかなり落ちる。
高所から【誘導弾・制圧射撃】の【弾幕】を浴びせてやれば近付けまい。
掌より放つこの光弾は己が精神力
屍の山を積み上げる程、昂り威力も増す【限界突破】

それでも千騎ともなれば突破してくる者も居るだろう
ユーベルコード発動により我が拷問具の封印を解く
シャドウライダー共を【捕食】しろ!
魂をも喰らうのがこのソウルトーチャーだ
戦力補充などさせん
死体すら残さず喰らい尽くしてやれ
奴等に真の絶望を教えてやるのだ【恐怖を与える】



(この狭い山路なら騎兵の突撃衝力はかなり落ちる。高所から弾幕を浴びせてやれば近付けまい)
 こちらの思惑通りに山に誘われてきた辺境伯の軍勢を、冷たい眼差しで見下ろすナギ。
 迎撃準備はすでに万全。待機地点に近付いてきた部隊を捕捉すると、彼の掌に光が宿る。
「ここがアンタらの死に場所だ」
 常よりも酷薄で凶暴な――内なる殺戮衝動をさらけ出した口調で告げ。
 掌より放たれた光弾の雨が、シャドウライダーの軍勢に降り掛かった。

「敵襲……!」
 狭隘な山道を駆けるシャドウライダーに、高所からの光の弾幕を避ける術は無かった。
 先頭にいた数騎が斃れれば、後続の足も止まる。そこに狙いすました誘導弾の追撃が、着実に敵の戦力を削っていく。
「これだけいれば狩り放題だな」
 この光弾はナギの体内に埋め込まれた光線兵器「サイコパーム」によるものだ。
 屍の山が積み上がる程、彼の心は昂ぶり、それに比例して光弾の威力も向上する。
 彼の精神力が尽きない限り、シャドウライダーを襲う弾幕が途切れることはない。

「止まるな……前進せよ……!」
 それでも相手は千に迫る騎兵の軍勢。死を恐れぬ忠実なる"辺境伯"のしもべである。
 仲間の屍を踏み越えて、強引に弾幕を突破し距離を詰めてくる。損害を度外視した強引な攻勢だが、この状況においてはそれが正解だろう。
 だがそれしきでナギが狼狽えることはない。彼は片掌から光弾を放ち続けながら己が拷問具――咎人の肉と骨で錬成した呪獣「ソウルトーチャー」の封印を解除する。
「禍つ魂の封印は今解かれる――恐怖を知れ」
 使い手の血を代償として、覚醒する【禍ツ凶魂】。殺戮捕食態へと形状変化したそれは、身震いするほどに悍ましい咆哮を上げて、猛然と敵群に襲い掛かった。

「シャドウライダー共を捕食しろ!」
 ナギの命令に従い、影の騎兵へと喰らいつくソウルトーチャー。剥き出しとなったその牙は鋭く、肉を裂き、骨を砕き、血を啜り、皮も残さず全てを――そう、文字通りの"全て"を捕食する。
「魂をも喰らうのがこのソウルトーチャーだ」
 肉体への苦痛をも超える真の恐怖、それは魂すらも無に帰される拷問。封印の解けた拷問兵器はいちいちナギが指示を出さずとも、抑えこんでいた飢餓と殺戮の衝動を発散するように、自律駆動で目についた獲物を貪り喰らっていく。

「戦力補充などさせん。死体すら残さず喰らい尽くしてやれ」
 死神さえも鼻白むような凄惨なる殺戮を、ナギは笑みすら浮かべたまま眺めている。
 ソウルトーチャーが暴れまわった後には、僅かに残された血痕だけが、敵が存在した証となる。魂魄も死骸も捕食されては【戦力補充】で復活させることも不可能だ。
「――――ッ!!!」
 ただ命令に従うばかりだったシャドウライダーの表情に、初めて感情の色が浮かぶ。
 それは、絶対的な捕食者に目をつけられた被捕食者の感情――存在消失への恐怖。

「奴等に真の絶望を教えてやるのだ」
 悲鳴をかき消す呪獣の咆哮。むせ返るような血臭と死臭が戦場を満たしていく。
 連中が人間に与えようとしていた絶望など、これと比べればなんと生温いことか。
 今際の際に最大級の恐怖と絶望を刻まれて、影の騎兵は残らず呪獣の餌となった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『全てを失くした剣狼』

POW   :    神獄滅殺の太刀
【対象の死を願う怨念】を籠めた【極刀『禍色』】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【戦意と正気と寿命と免疫】のみを攻撃する。
SPD   :    召喚・白魔大帝
自身の身長の2倍の【蹴りだけで大地を割る事が出来る狂暴な白馬】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    神獣鎧装
防具を0.05秒で着替える事ができる。また、着用中の防具の初期技能を「100レベル」で使用できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠セシリー・アリッサムです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「――全滅か。露払い程度には役立つかと思っていたが」

 断続的に続いていた戦闘の音が止んだとき、辺境伯は己が軍勢が敗れ去ったと知った。
 霊峰アウグスタに攻め寄せたシャドウライダーは猟兵の奮戦によって一騎残らず撃破され、今や残存する脅威はただ1人――辺境伯その人を残すのみとなった。

 だが、全軍を失うという大損害を被ったにも関わらず、辺境伯の反応は冷淡なもの。
 寧ろ、せいせいしたと言わんばかりの気配さえ感じられる。彼にとっては千の軍勢など、大したものでは無かったということか。

「……問うが、猟兵よ。汝らはなぜこの地の人間を守ろうとする?」

 荘厳な極刀を手に、ついに自ら猟兵たちの前に姿を現した辺境伯はそう問いかける。
 兜のために表情は窺えないが――爛々と煌めく双眸からは狂おしい程の激情を感じる。
 鎧を身に纏っていても、ほとばしる炎のような殺意までは覆い隠せはしない。

「私にもかつては守りたいものがあった。この命にかえても惜しくない家族だ。だが、それは失われた――ヴァンパイアの領主の手によって」

 それは、この辺境伯の過去だった。敵である猟兵に語ったところで意味がないのは彼とて分かっているだろうに――あるいは、秘めたる激情を抑えきれなくなったか。

「愛する者も、誇りも、己の命も、全てを失った私に残されたものはただひとつ。だから私はここに居る。目的を果たすための"力"を得るために」

 剣狼の胸に輝くのは『辺境伯の紋章』。取り付いた者に絶大な力を与える寄生虫型オブリビオン。彼が辺境伯の地位についたのは、上位の吸血鬼に対する忠誠などではなく――ただ、仇敵を追い詰める手段を求めたがため。

「いつの日にかこの手で、全てを奪ったあの男に引導を渡す。そのためなら私は名を捨て、忌まわしい吸血鬼どもの走狗となり、いかなる非道にも手を染めよう。幾千幾万の民の嘆きとて、我が絶望に勝るものか!!」

 忌まわしき怨讐に囚われた、堕ちた戦士の成れの果て。それがこの辺境伯の正体。
 今や彼は、己が最も憎む相手と同様の存在となり、生者を蹂躙する災いとなった。
 どこに居るかも分からぬ仇敵を滅ぼすその時まで、彼は破滅の騎行をひた走るのだろう。敵も味方も無辜の命も、関わる全てを巻き込みながら。

「私はこの"辺境伯"を足がかりに、さらなる復讐の力を得る。その邪魔をするというのなら――猟兵よ、守るべきものを守れなかった絶望を、汝らも味わうがいい!!」

 剣狼の咆哮と共に『辺境伯の紋章』が輝く。怨讐の念と力の波動が大地を鳴動させる。
 先のシャドウライダーが千騎いたところで、彼ひとりの力にも及ばない。それほどまでに圧倒的な力を猟兵たちは感じ取っていた。

 たとえ軍勢を撃破しても、ここで彼を止めなければ霊峰に住まう人々の命運は尽きる。
 それどころか、これから先も数え切れないほどの人々が彼の暴虐の犠牲となるだろう。
 猟兵よ、忌まわしき怨讐の"辺境伯"を討て――霊峰の戦いはついに決戦の時を迎えた。
ウーナ・グノーメ
連携・アドリブ◎

【心情】
「復讐の是非について論ずるつもりはないのです。ですが、一つだけ」

小さな妖精は無表情のまま語る。

「復讐それ自体に意味はないのです。復讐とは己の人生と運命に決着をつけるためのもの。その先で何をするかが肝要なのです」

だが、その言葉は彼女の感情を雄弁に語っている。
即ち、憐憫と諦観。
答えられる筈がないと知りながら、彼女は復讐に狂う剣狼に問いかけた。

「あなたは復讐を成し遂げた後、何をするつもりなのです?」

【行動】
【第六感】で攻撃を感知し、【オーラ防御】で守りを固め、【念動力】による【吹き飛ばし】で接近を拒否。
徹底的に遠距離からの攻撃に徹し、UCによる数百の砂岩を絶え間なく叩き込む。


キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

フン…復讐に狂った戦士の成れ果てか
お前の振るう刃の先は永遠に仇敵には届かんだろうな

白馬に乗った敵へシルコン・シジョンのフルオートで制圧射撃
銃弾の豪雨で動きを止めたらデゼス・ポアを呼び寄せてUCの発動準備を行う

死した者達は今のお前を見ても喜びはすまい
お前自身がすでに憎むべき異形へと変わったのだからな

UCを発動
制圧射撃から復帰する前に錆びた刃を白馬へ斬りつけ、暴れまわる敵から距離を取りつつデゼス・ポアと連携して攻撃
敵本体ではなく、巨大な白馬を集中的に狙おう

守るべきものを守れなかった絶望か…そんなものは厭と言うほど知っている
だからこそ、この刃で守り抜く
お前達の望みを全て絶つこの刃でな



「フン……復讐に狂った戦士の成れ果てか。お前の振るう刃の先は永遠に仇敵には届かんだろうな」
 自動小銃"シルコン・シジョン"のマガジンを交換しながら、キリカは冷たく言い捨てる。
 怨讐の果てに見境を失くした剣狼の骸。その境遇に憐れむところはあれど、現在の"辺境伯"は彼女にとって躊躇う余地のない"敵"だった。
「復讐の是非について論ずるつもりはないのです。ですが、一つだけ」
 一方のウーナは無表情のまま語る。自らの周囲に幾つもの巨大な砂岩を浮かばせて。
 鋭利に尖ったその柱の先端は、まるで獣の牙のように辺境伯にピタリと狙いをつける。
「復讐それ自体に意味はないのです。復讐とは己の人生と運命に決着をつけるためのもの。その先で何をするかが肝要なのです」
 その言葉は表情よりもずっと雄弁に、彼女の感情を語っている――即ち、憐憫と諦観。
 答えられる筈がないと知りながら、小さな妖精は復讐に狂う剣狼に問いかけた。

「あなたは復讐を成し遂げた後、何をするつもりなのです?」

「――来たれ、白魔よ」
 やはり、答えはなかった。剣狼から返ってきたのは刺し貫くような視線と殺意のみ。
 同時に、嘶きと共に大地を割って、並外れた体躯の狂暴な白馬が戦場に召喚される。
 これ以上語ることは無いということか。【白魔大帝】に騎乗した剣狼を前にして、ふたりの猟兵は同時攻撃を開始する。

「撃ち抜く」
「牙を剥け」
 襲い掛かるは戦場傭兵によるフルオート射撃と、砂漠の妖精の【砂岩の連射】。
 聖別されし弾丸と砂岩の柱が次々と剣狼に叩き込まれ、その白鎧にヒビが入る。
「――この程度で。我が怨讐、止められると思うな」
 だが剣狼は破損した鎧を【神獣鎧装】で瞬時に換装し、鉛と砂の豪雨の中を突っ込んで来る。地形の悪条件は変わらぬのに、その速度はシャドウライダーとは雲泥の差だ。
 彼が最初の標的に選んだのはウーナ。鈍い輝きを発する極刀『禍色』の刃が、小さき妖精の身体を真っ二つにせんと襲い掛かる――。

「止めるのです。あなたは、ここで」
 鮮血と砂塵が散った。だが、馬上よりの斬撃はウーナの身体を僅かに掠めたのみ。
 妖精の第六感による危機察知能力と、オーラによる固い守りが、紙一重で刃を逸らし、彼女の命を繋いだ。
「復讐の先に何もない、運命の袋小路に迷い込んだあなたを、このままにはしておけないのです」
 受けた傷の痛みなどは気にも留めず。その両腕に装着した妖精の秘宝――牡羊座と牡牛座の「ゾディアックリング」が凄まじい光を放ち、目の前の敵が押し返されていく。

「!!」
 黄道の星座の力を借りて増幅された妖精の念動力、それは自身の体躯の十倍以上の白馬とその騎手を、まとめて吹き飛ばすほどの威力だった。落馬こそしなかったものの大きく体勢を崩した辺境伯に、ここぞとばかりに追撃の弾幕が降り掛かる。
「死した者達は今のお前を見ても喜びはすまい。お前自身がすでに憎むべき異形へと変わったのだからな」
 聖なる箴言が込められたキリカの弾丸は、辺境伯に確かなダメージを与えている。それは現在の彼が"魔"に属する者であるという疑いようのない証明。苦しむ剣狼にウーナも再び砂岩の連射を浴びせ、2人掛かりの猛射で"白魔大帝"の騎行を制圧する。

「泣き叫べ、デゼス・ポア。死者の落涙で錆びた刃を咎人に突き立て、消えぬ罪の報いを与えろ」
 制圧射撃から辺境伯が復帰する前に、キリカは呪いの人形による【咎人の錆】を放つ。
 老女が上げる断末魔のような、深い恨みに満ちた泣き声を上げたデゼス・ポアは、全身から錆びついた刃を放ち、剣狼の愛馬を切り裂いた。
「ぐぅ……ッ」
 白馬の馬体から血が滲むのと同時に、剣狼の口からも微かにだが苦悶の声が漏れた。
 人形の刃にまとわりついた錆は、虐げられし者たちの呪詛が形を変えたもの。それは咎人がこれまでに犯してきた罪の味を覚え、体内から侵蝕を始めていた。

「奴は召喚した馬と生命力を共有している」
「なら、的が大きい方を狙うのです」
 キリカの洞察は共闘するウーナにも共有され、2人の攻撃は"白魔大帝"へと集中する。
 ユーベルコードで生成された数百の砂岩は、絶え間なく標的の肉を穿ち、骨を砕き。
 聖句の弾幕と共に飛来するデゼス・ポアの錆刃は、一度捉えた獲物にさらなる苦痛を――その罪にふさわしい死を与えるために、その血肉を喰らうかの如く襲い掛かる。
「もう近付かせないのです」
 徹底した遠距離攻撃に徹する事が、この2人の採った戦法だった。騎馬の機動力を殺し、極刀の間合いに寄らせず、鎧纏わぬ白馬への集中砲火で、着実に敵の生命力を削っていく。

「守るべき全てを失った私が……復讐の後で、何をすると言うのだ……」
 砂岩と聖弾と錆刃の豪雨に晒されながら、怨讐の剣狼はぽつりと小さな声で呟いた。
 それは、最初に投げかけられたウーナの問いへの答えのつもりだったのかもしれない。
 彼の声は、底なしの怒りと憎悪と復讐心――そして絶望と哀しみに彩られていた。
「守るべきものを守れなかった絶望か……そんなものは厭と言うほど知っている」
 シルコン・シジョンのトリガーを引いたまま、噛み締めるような調子でキリカが言う。
 彼女もまた大切な者たちをオブリビオンに奪われ、絶望に心を焦がした者である故に。
「だからこそ、この刃で守り抜く。お前達の望みを全て絶つこの刃でな」
 憎むべき異形を狩る力――デゼス・ポアの放った刃のひとつが、白馬の首を切り裂く。
 血飛沫が白の馬体と鎧を赤く染め、兜の奥で剣狼が咳き込む。だが、爛々と揺らめく怨讐の双眸は今だ光を失わず。戦いはまだ始まったばかりだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリステル・ブルー
連携アドリブ歓迎
他の猟兵さんが望むなら積極的に協力します!

●行動POW
使い魔ユールには戦場の観察を頼むよ、余裕と隙があれば僕たち猟兵の援護を、無理はしないでね。
僕は黒の細剣を抜いて接敵。
狙いは紋章だけど…【鎧無視攻撃】で隙を生み出すだけでもいい、きっと他の猟兵がなんとかしてくれる!
【指定UC】を使用。燃やすのは敵だけ!反撃は【狂気耐性】でなんとかする。

僕は猟兵になれたけど、それはたまたまで圧政に苦しむ住民の1人だったかもしれない。だからこそ同じ世界の住民たちを、お前たちから守りたい。人は人らしく自由であるべきだ。
「守れなかった絶望、なんてよく言うよ、お前が新たに絶望を振りまいているくせに!」


ブラミエ・トゥカーズ
理由:
人の作る恐怖と色んな赤い飲料が糧である為。
彼の目的は同情する所はあるが、結局のところ弱者がさらに弱者を苛むだけと煽る。
人に寄生しないと存在できない自身を揶揄しつつ。

【POW】
真の姿:
容姿そのままに服装が血汚れた襤褸になる。
赤い病風を纏う人型。
戦意も正気もなくただ、寄生し結果殺す殺戮病原菌。
人が吸血鬼を忘れる時が自身の寿命。
病故免疫など持たない。
ただ、生き物を貪る悍ましい自然現象である。

てめぇみたいな犬が人間に勝てるわきゃねぇだろ?
同族を餌にしても敵を滅ぼし食らい、わしらを化け物に封じた化け物以上の化け物だぞ。

彼女と人の争いは何時だって幾多の屍の上に人が勝利してきたのだから。
アレ絡み歓迎



「余が人間を守る理由か。人の作る恐怖と色んな赤い飲料が糧である為だ」
 辺境伯からの問いかけに対し、ブラミエが語った返答は簡潔明瞭であった。人の存在なくして妖怪は生きられず、人を殺める人外のものを狩るのは生存戦略のうちである。
「貴殿の目的は同情する所はあるが、結局のところ弱者がさらに弱者を苛むだけであろう」
 相手を煽る言葉の裏側に、人に寄生しないと存在できない自身への揶揄が含まれていることを、辺境伯は知る由もない。ただ、弱者と罵られたことへの静かな怒りを露わにし、極刀『禍色』を握り締めるのみだ。

「そうだ、私は弱者だった……だから力が要るのだ。復讐を果たす、力が……!」
 深手を負った白馬より降りた剣狼が、ブラミエを睨め付けながら一歩踏み出した瞬間。黒の細剣を抜いて颯爽と前に飛び出したのは、人狼の青年――アリステルだった。
「ユールは戦場の観察を頼むよ、余裕と隙があれば僕たちの援護を、無理はしないでね」
 青い鳥の使い魔に手短に指示を出しながら、自らは剣の間合いへと接敵。間近で感じる総毛立つような殺気にも、けして怯むことなく敵を睨みつける。

「僕は猟兵になれたけど、それはたまたまで圧政に苦しむ住民の1人だったかもしれない。だからこそ同じ世界の住民たちを、お前たちから守りたい」
 幼き日に家族を亡くし、人狼病に罹った己を棄てることなく育ててくれた故郷の皆。彼らを含めたダークセイヴァーの人々が、闇に怯えることなく幸せな生活を送れるようになるのがアリステルの夢だ。それを阻む敵は誰であろうと許してはおけない。
「人は人らしく自由であるべきだ」
「その自由も、理不尽な力の前には儚く消える。かつての私のように」
 怨讐の双眸を煌めかせながら極刀を振るわんとする辺境伯。彼らの種族は共に人狼――だが重装備に身を包んだ剣狼よりも、武器防具ともに軽装なアリステルの方が、初動において僅かに速い。

「理不尽な力――その源になっている奴が、お前にその紋章を渡したのか?」
 狙うは胸に輝く『辺境伯の紋章』。宿主に絶大な力を与えるこの寄生虫型オブリビオンを傷つけられれば、剣狼の力を大きく削ぐことができる――無論、相手もそれを承知の上で、猟兵が紋章を狙ってくることを読んでいるだろうが。
(隙を生み出すだけでもいい、きっと他の猟兵がなんとかしてくれる!)
 疾風のごとく突き放たれた細剣の一撃は、紋章を捉えるよりも一瞬速く相手が身を躱したことで、白狼の鎧を貫くのみに留まる。手応えはあったが、致命傷には遠い。
 アリステルが剣を引くよりも早く、剣狼は刺さった刃を掴み取る。武器を手放して退くか、このまま拘束されるかの二択を迫ったうえで【神獄滅殺の太刀】を放つ構えだ。

「届かなかったな――」
「いいや、十分さ!」
 振り上げられた極刀を目にしながら、アリステルが叫んだ刹那。
 隙を見せた辺境伯の背後より、赤い風と漆黒の影が襲い掛かる。
「何――っ」
 それがブラミエであると、剣狼には一瞬判別がつかなかった。容姿こそそのままであるものの、高貴な麗人然とした服装は血汚れた襤褸に変わり、整った面貌にも凶暴な形相が浮かんでいる。それこそが彼女の真の姿――伝承に落ちた伝染病の本性である。

「てめぇみたいな犬が人間に勝てるわきゃねぇだろ?」
 口調さえもがらりと変えて、旧き病たる魔は剣狼に牙を剥く。否、この表現は正確ではない――伝染病たる彼女には戦意も正気もなく、ただ寄生しその結果殺すだけの殺戮病原菌が、赤い病風と【黒風鎧装】を纏い人型を取っているに過ぎない。
「ぐ、ぉ……ッ!!!」
 病の風に包まれた剣狼の口から苦しげな声が漏れる。兜のせいで見えないが、その顔は苦悶に歪んでいるだろう。名と体を与えられ、伝説にさえ昇華された病は、オブリビオンの肉体さえも容赦なく蝕む。

「っ、侮るな……!!」
 病の苦痛に耐えながら、辺境伯は極刀『禍色』を横薙ぎに振るう。死を願う怨念を籠めた【神獄滅殺の太刀】は、標的から戦意と正気と寿命と免疫を奪う必殺の太刀だ。
「我が絶望の力、汝らも味わってみるがいい!!」
 半月のような軌跡を描いた斬撃が、避ける間もなくブラミエとアリステルを同時に捉える――常人であれば、その一太刀で決着はついていただろう。だが、この2人は違う。

「守れなかった絶望、なんてよく言うよ、お前が新たに絶望を振りまいているくせに!」
 滅殺の太刀を受けたはずのアリステルの眼には、変わらぬ怒りの炎が燃えている。
 人狼病という病によって皮肉にも鍛えられた免疫力と、狂気への強い耐性が、彼の正気と戦意を繋ぎ止めていた。
「生憎わしはそれを受けるんじゃねぇ、与えて喰らう側なんだよ」
 ブラミエも皮肉げな笑みを浮かべて平然としている。彼女が寿命を迎えるのは人が"吸血鬼"の物語を忘れた時。病そのものである故に免疫も最初から持っていない。
 必殺のはずの一撃が不発に終わり、剣狼が瞠目した直後、2人の猟兵は反撃に転じた。

「何度でも言うぞ、てめぇは人間には勝てない。同族を餌にしても敵を滅ぼし食らい、わしらを化け物に封じた化け物以上の化け物だぞ」
 己への揶揄を含みながら、病の風が辺境伯を煽る。怪物という鋳型に嵌められた彼女は、人間の強さも恐ろしさもよく知っている――彼女と人の争いは、何時だって幾多の屍の上に人が勝利してきたのだから。
「この程度の"わし"さえ克服できない程度の輩に、人間が負けるかよ」
「ぐ、ぁ……舐める、な……!」
 肌が溶け、血が濁り、臓腑が腐るような壮絶な苦痛を味わいながら、それでも辺境伯は剣を取るが――再びそれが振るわれるよりも速く、空から青い魔弾が彼を撃った。

「よくやったユール!」
 空中に待機していた使い魔からの、格好のタイミングでの援護射撃。
 敵の構えが崩れた一瞬の隙を突いて、アリステルは素早く詠唱を紡ぐ。
「解放せよ。怒りを、憎悪を、醜い心の闇よ。そして敵を焼き尽くせ!」
 唱えるは【アンリーシュ】。この身に滾る負の感情――辺境伯への怒りや憎しみの全てを漆黒の炎に具現化させ、至近距離から全力で叩きつける。

「ぐ、おおぉぉぉぉぉぉぉぉ……ッ!!!?!」
 どれほど荒ぶっていようとも、その灼熱が怒りの矛先を誤ることは無かった。
 同じく至近にいたブラミエに燃え移ることなく、辺境伯のみを焼き焦がす闇の炎。
 黒風が煽ることでその火勢はさらに強まり、地獄の業火もかくやの炎の渦と化す。
 その中心にてもがく怨讐の剣狼の絶叫は、さながら地獄の囚人の様相であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
繁盛していた第二号支店が閉店の危機…なんてこった。

変な奴が「問うが、猟兵よ~」とか言っていたが、ショックで放心していたので聞いていない。
もうダメ…もう終わった。
そんな事を考えていたら変な奴の咆哮が聞こえる。
その時カビパンはキレて、なんだかハイになってきた。
周囲の雑音は全てカット!

「人生はロック、私はロックに生きるわ!!」
ロックになったカビパンが手元をみると、軍配がペンライト聖杖がマイクになっていた。
「私はロックンローラーアイドル!」
デスアイドルライブが開催。もう勢いとノリだけでなんでもやれる。
復讐?絶望?そんなことどうでもいいとばかりに、カビパンは力の限りLet It B〇を熱唱するのだった。



「繁盛していた第二号支店が閉店の危機……なんてこった」
 客のいないがらんとした「悩み聞くカレー屋」店内で、ひとり項垂れるカビパン。
 どうしてこうなったのかと言えば、それは間違いなく彼女の殺人リサイタルが原因なのだが、よく分かっていないらしい当人はただただショックで放心していた。
 どれくらいショックだったのかと言えば、外で鎧を着た知らない奴が「問うが、猟兵よ~」とか言っているのも聞いていない位である。

(もうダメ……もう終わった)
 もはや依頼のことなどさっぱり頭にない様子でそんなことを考えている間にも、カビパンを置いて事態は動き続けていた。霊峰を舞台に繰り広げられる激戦の中、ひとりの猟兵が放った攻撃が辺境伯に深手を負わせ、絶叫がカレー屋の中にも聞こえてくる。
 ――その時、カビパンは唐突にキレた。

「人生はロック、私はロックに生きるわ!!」

 悲しみが底を突いたのか、あるいは悲哀に浸らせてくれない現状に嫌気が差したのか。一周回ってなんだかハイになってきた彼女は何とも脈絡のない宣言をぶちかます。
 ロックになったカビパンが手元を見ると、いつの間にか軍配がペンライトに、聖杖がマイクになっていた。よく分からないがロックの女神の思し召しとかだろうか。
 何にせよこうなった彼女はもう止まらない。周囲の雑音は全てカットし、胸の中から湧き上がるロックの鼓動に心を委ねて、カレー屋のドアを蹴破り外に飛び出す。

「私はロックンローラーアイドル!」
「何だ貴様は……?」
 いきなり出てきた軍服の自称ロックンローラーに、さしもの辺境伯も困惑を隠せない。
 そんな彼をよそに開催されるのは、カビパンによるデスアイドルライブ。変な方向に吹っ切れてしまった彼女は、もう勢いとノリだけでなんでもやれる。
「これがロックの魂よ!」
 復讐? 絶望? そんなことどうでもいいとばかりに、力の限り熱唱するのは、UDCアースのさる伝説的ロックバンドが生み出した名曲。「あるがままを、あるがままに受け容れよ」というメッセージの込もった歌詞が、情感たっぷりのメッセージに乗せて戦場に響き渡る。

 ――惜しむらくは、彼女の歌唱力がカレー屋の客を全滅させた時と同レベルで、まったく成長していないという点か。せっかくの名曲もこれではただの音響兵器である。
「あ……頭が……割れる……ッ!」
 歌に籠められたメッセージ性とかさておいて、純粋に絶望的な歌声の酷さに悶絶する辺境伯。胸に張り付いた「辺境伯の紋章」まで一緒に苦しんでいるようにすら見える。
 が、今のカビパンにはそんなことさえ「どうでもいい」。本人が歌いきって気分がスッキリするまで、はた迷惑な【カビパンリサイタル】は続いたのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セシリア・サヴェージ
復讐の為に敵に与してまで力を得ようとするその覚悟は認めます。
ですが無辜の民を傷つけるならば、あなたは暗黒騎士たる私の敵です。

UC【闇の解放】を使用すると共に真の姿へ変身。
――来い、辺境伯。お前の進撃はここで終わりだ。

奴の極刀と私の暗黒剣。どちらも必殺の剣である以上、先に一撃を与えた側が有利になることは間違いない。
奴の攻撃を確実に【武器受け】しつつ、こちらの一撃を叩き込む好機を見極めるとしよう。

辺境伯の紋章が奴に力を与えているのならば一つ考えがある。
奴の攻撃の合間を縫って【怪力】を籠めた拳を紋章に叩き込む事でその機能を阻害する。
一瞬でも隙が生まれれば十分だ。【重量攻撃】で終わりにしてやろう。



「復讐の為に敵に与してまで力を得ようとするその覚悟は認めます」
 平時よりも幾分と低い声で、セシリアは暗黒剣ダークスレイヤーを構えながら語る。
 暗黒という諸刃の剣を手にした己のように、あの剣狼も『辺境伯の紋章』を授けられるために相応のリスクと覚悟を背負っているのだろう。それだけは認める。
「ですが無辜の民を傷つけるならば、あなたは暗黒騎士たる私の敵です」
「であれば、どうする」
 苦悶から立ち直った剣狼もまた、極刀『禍色』を構えながら問う。答えなど口にするまでもなかった――正しき闇の力を以て邪悪を断つ、それが暗黒騎士の使命なれば。

「暗黒よ……この命を捧げよう。私に全てを護る力を!」
 【闇の解放】の宣言と共に、セシリアの纏う鎧から封じられし暗黒の力が解放される。
 鎧と剣はよりいっそう禍々しい形状となり、彼女自身もまた真の姿へと変身を遂げる。
 質量さえ感じられるほどの重圧を放つ、その姿はまさに闇の化身。覚醒を果たした暗黒騎士は銀から赤に染まった瞳で敵を睨め付け、告げる。
「――来い、辺境伯。お前の進撃はここで終わりだ」
 精神さえも蝕む暗黒の影響か、その言動は普段よりも荒々しく。闇と共に全身に漲る殺気に、しかし剣狼とて恐れはしない。愛刀たる『禍色』を手に、無言で、かつ慎重に、間合いを詰めてくる。

(奴の極刀と私の暗黒剣。どちらも必殺の剣である以上、先に一撃を与えた側が有利になることは間違いない)
 荒れ狂う攻撃的な衝動に身を委ねながらも、セシリアの思考は刃のように研ぎ澄まされていた。彼我の剣の間合いに敵が踏み込んでくる刹那、迅雷の速さで放たれる極刀の斬撃に合わせ、暗黒剣を振るう。
「いかなる敵も、闇さえも、我が進撃を阻めはしない」
 死の怨念の籠もった『禍色』と、暗黒の力を纏ったダークスレイヤーが火花を散らす。
 肉体には傷ひとつ付けぬまま、対象の戦意を、正気を、寿命を、免疫を奪い去る【神獄滅殺の太刀】。一斬一斬が必殺となりうる辺境伯の攻撃をセシリアは確実に受け止め、反撃の一撃を叩き込むための好機を探る。

(辺境伯の紋章が奴に力を与えているのならば一つ考えがある)
 一合毎に大地が震えるような、嵐の如き剣戟を交わしながら、セシリアの視線は剣狼の胸に宿る寄生虫に注がれていた。あの紋章が力の源にして弱点でもある以上、その点への攻撃は相手も警戒しているだろう――だが、しかし。
(まだ奴に見せていない攻撃なら――どうだ?)
 何十合という攻防の合間を縫って、自らの拳に力を込める。暗黒騎士として身に付けた卓越した剣技を十分に印象付けた上での、徒手による攻撃――それは確かに剣狼の意表を突いた。

「何……ッ!」
 狙い過たず『辺境伯の紋章』に叩き込まれる暗黒の拳。真の力の覚醒により尋常ならざる怪力が籠もったその一撃で、ダメージを負った紋章の機能が一時的に阻害される。
 力の供給が途絶え、剣狼の動きが鈍る。その隙は一瞬だったが、セシリアには十分だ。
「終わりにしてやろう」
 真なる暗黒が齎す絶大な力と膂力、そして大剣そのものの重量をひとつに束ね。
 冷徹なる宣告と共に振り下ろされた渾身の一撃が、辺境伯の白き鎧を両断する。

「がは……ッ!!!!」
 致命の威力を秘めた暗黒の太刀は、鎧のみならず剣狼の肉体にも深手を負わせていた。
 切り裂かれた身体の出血は滝のように止まることを知らず。膝を突きかけた男は極刀を支えにしてどうにか踏みとどまる――まだ終わりはしないと、その眼光で語りながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クリスティアーネ・アステローペ
なぜ?簡単なことよ
状況こそ似ていたとして、見ての通り私には命がある
故に姓という鎖と誇りという制約がある
敵を退け、民を護る。それが我らの生業なればこそ
"手段を選ばない"なんて楽はできないの

そのためにも辺境伯の紋章には興味はあることですし、貰ってあげるわ
それと、仇のことも話しなさいな
まったく意味はないけれど、貴方を滅ぼした後でその復讐、代行してもよくってよ?


能の届く限りの夜から獣を創り出し複数方向から襲撃させると同時に
足元の一頭の上に足をかければ地表を泳ぐように移動するそれに乗って《闇に紛れ》ながら自身も強襲
獣の高さを利用し剣狼に直接《怪力》を込めたフランツィスカでの《なぎ払い》を仕掛ける



「何故……貴様達はそうまで命を張りながら、この地の民を守ろうとする……」
「なぜ? 簡単なことよ。状況こそ似ていたとして、見ての通り私には命がある。故に姓という鎖と誇りという制約がある」
 深手を負った剣狼からの再度の問いかけに、クリスティアーネはこともなげに答える。
 彼女は自国を侵したヴァンパイアへの逆襲を誓う者にして復讐代行人。故に剣狼の動機こそ理解はするが、彼女はまだ全てを捨ててはいないし、捨てる訳にもいかない。
「敵を退け、民を護る。それが我らの生業なればこそ、"手段を選ばない"なんて楽はできないの」
 法の執行者にして処刑人たるアステローペの姓を背負う限り、無法に堕ちることはけして許されない。それが名を捨てた剣狼の骸と、彼女の間にある決定的な違いだった。

「そのためにも辺境伯の紋章には興味はあることですし、貰ってあげるわ」
 "救済者フランツィスカ"を手に、辺境伯との間合いを一歩詰めるクリスティアーネ。
 敵は手負いなれど油断せず、さりとて過度の緊張にも縛られず、顔には微笑を浮かべ。
「それと、仇のことも話しなさいな。まったく意味はないけれど、貴方を滅ぼした後でその復讐、代行してもよくってよ?」
「……笑止。我が復讐、我が怨念、我が絶望は、誰にも委ねられはしない」
 兜の奥で、剣狼が皮肉げな笑みを浮かべたような気がした。その次の瞬間、彼は【召喚・白魔大帝】にて呼び寄せた白馬に跨り、クリスティアーネに突撃を仕掛けた。

「そう言われるだろうとは思っていたけどね」
 代行者としての礼節はこれで果たしたと、クリスティアーネは片手で斧槍を持ったまま、空いた手を地面に――正しくは山が月を隠すことで生まれる、夜の影に触れる。
「我、流るるものの簒奪者にして領を侵せしものへの誅戮者なり」
 唱えるは【消失する地平】。処刑人の指先が触れた影が揺らめき、蠢き、幾つもの獣の頭部へと変わる。彼女の権能が及ぶ限り、影の広さに応じてその数は増え続ける。
「然れば我は求め訴えたり。喰らえ、ただその闇の欲する儘に」
 創り出された魔獣たちは一斉に遠吠えを上げ、主の命ずるまま辺境伯に襲い掛かった。

「邪魔をするな」
 地平を埋め尽くす獣の群れによる複数方向からの襲撃に対して、辺境伯に動揺はない。
 騎乗する"白魔大帝"が蹄を踏み鳴らせば、地響きと共に大地が割れ、魔獣の頭が弾け飛ぶ。そして馬上から彼が振るう愛刀『禍色』は、一振りで数十もの獣を消失させた。
 単純な個々の性能で見れば、影の魔獣と辺境伯とでは力の差は歴然だろう。だがこの獣たちの真価は膨大な物量と低所からの攻撃で、騎馬の機動力を殺せることにある。

「足下ばかり見ていても、良いことは無いわよ」
「なに、ッ!」
 その間隙を突いて強襲を仕掛けたのはクリスティアーネ自身。足元に作り出した獣の一頭に足をかければ、その身は地表を泳ぐように移動する獣たちと共に滑走する。獣の作り出す闇に紛れてしまえば、敵に近付くことも容易だった。
「将を射んと欲すれば――なんて諺では言うけれど、回りくどいものね」
 狙うは敵将への直接攻撃。ダンピールの怪力を込めた"フランツィスカ"の一閃は、獣の分だけ高くなった足場と得物のリーチを利用して、過たず馬上の辺境伯を薙ぎ払った。

「ぐぁ……ッ!!」
 重く力強い斧槍の衝撃をいなし切れず、馬上から叩き落される辺境伯。それを見た魔獣は彼が身体を起こす暇もないうちに一斉に飛び掛かり、鎧の上から牙を突き立てる。
 生命力を奪う魔獣の牙にかかっては、さしもの剣狼も無事とはいかず。彼が体勢を立て直す頃にはもう、クリスティアーネは獣に乗って極刀の間合いから遠ざかっていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

シェーラ・ミレディ
僕はただ、人を守ることが正義だと信じるからこそ力を振るう。
ひとつでも多くの命を救うのが、正義だ。
……などと、答えるが。オブリビオンがそんな質問をするとはなぁ。
貴様らが襲わなければ、守る必要もないのだぞ!

『艶言浮詞』で音の精霊たちを呼び出し、衝撃波で攻撃させる。
鎧を纏っているのだから、装甲を問題としないような方法で攻めるだけだ。
──まぁ。本命は、精霊に対応した防具に切り替える瞬間なのだが。
着替えるためには、鎧がなくなる瞬間が極僅かといえど存在するはず。
その一瞬を見切ってクイックドロウ、辺境伯の紋章を狙い撃つ。

力の源だというその紋章、穿って見せよう!

※アドリブ&絡み歓迎



「僕はただ、人を守ることが正義だと信じるからこそ力を振るう。ひとつでも多くの命を救うのが、正義だ」
 何故人を守るのかという辺境伯の問いに対し、シェーラが語った答えもまた明瞭だった。
 他でもない己自身の信念にかけて人を救う。時に慇懃無礼と取られかねない尊大な物言いとは裏腹に、彼を動かすのは非常にシンプルな正義感だった。
「……などと、答えるが。オブリビオンがそんな質問をするとはなぁ。貴様らが襲わなければ、守る必要もないのだぞ!」
 怒りに眉をつり上げた面差しで、きっと辺境伯を睨みつける。被害者として蹂躙される痛みを知るはずの者が、加害者となって他者を踏み躙る。その理不尽を彼は許さない。

「幾千幾万の命をこの手にかけようと……私は復讐を果たすと誓ったのだ……!!」
 怨讐に取り憑かれた剣狼の耳には、いかなる糾弾も届かない。禍々しき極刀を手に近付いてくる敵を前にして、シェーラは【彩色銃技・口寄せ・艶言浮詞】を唱えた。
「おいで、僕に手を貸してくれ」
 山に散らばる土砂や岩石を依り代として、"音"の属性を司る精霊たちが戦場に現れる。
 クスクスと無邪気な笑みを浮かべて戯れるように宙を舞う彼女らの声は、音の衝撃波となって辺境伯に襲い掛かった。

「鎧を纏っているのだから、装甲を問題としないような方法で攻めるだけだ」
 いかに強固な鎧だろうと、音波――すなわち振動を完全に遮断することはできまい。
 装甲を無視して直接身体を揺さぶってくる衝撃波を浴びて、辺境伯の足が止まった。
「っ……これしきのことで……!」
 効いてはいる。だが致命傷にはまだ遠い。兜の奥から射殺すような眼光が、まっすぐにシェーラと精霊たちを見据えている。この鎧で音波攻撃を防げないのであれば、【神獣鎧装】にて新たな鎧へと換装し、対策を講じるまで――。

(──まぁ。本命はその、精霊に対応した防具に切り替える瞬間なのだが)
 剣狼の眼光に睨め付けられながら、シェーラもまた剣狼の一挙一動を見逃すまいと全感覚を研ぎ澄ませていた。鎧を一着無効化した程度で勝てるような優しい相手だとは、最初から欠片も思ってはいない。
(着替えるためには、鎧がなくなる瞬間が極僅かといえど存在するはず)
 【神獣鎧装】による防具の換装時間は0.05秒。瞬きするほどの間、敵は無防蟻となる。
 その一瞬を見切って銃弾を叩き込む――できるのか? などという疑問や不安は微塵もない。やると決めたら必ず成し遂げる、確固たる自信が彼にはある。

「神獣――」
「……そこだ!」
 敵がユーベルコードの構えを取った瞬間。それよりも刹那速くシェーラは銃を抜く。
 彼に実装された概念伝達型神経網「闇に紛れる盗人の業」は、稲妻のような卓越した速度の抜き撃ちを実現する。放たれた弾丸が狙うのは、鎧を捨てた剣狼の胸元――そこに輝く『辺境伯の紋章』。
「力の源だというその紋章、穿って見せよう!」
 0.05秒の戦いに勝利した彼の一撃は、過たず寄生虫型のオブリビオンに突き刺さる。
 宝石のようなその身体にピシリとヒビが入り、辺境伯の身体がぐらりと斜めに傾ぐ。

「ぐ、がは……ッ!!!」
 弾丸の到達から一瞬遅れて、辺境伯の身体を再び白鎧が覆う。しかしその間隙に付けられた傷が消えるわけではない。力の源である『辺境伯の紋章』にシェーラが与えた損傷は、そのまま辺境伯自身にも大きなダメージとなって反映されていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…復讐そのものを否定する気はないわ
奪われた者の気持ちは理解できるもの

…だけど、お前の怨嗟がどれだけ正しくても、
罪無き人々を犠牲にする事は許容できない

…復讐の手段を誤ったお前は此処で終わるべきよ
これ以上、その手を血で染める前にね

【吸血鬼狩りの業】により紋章から全身に流れる力を暗視
今までの戦闘知識と第六感から剣狼の闇属性攻撃を見切りUCを発動

攻撃を避け早業のカウンターで懐に切り込み大鎌を武器改造
怪力任せに魔力を溜めた手甲剣で穿ち、
限界突破した呪詛の爆発で傷口を抉る2回攻撃を放つ

…他者の血を流してでも望みを叶えんとする
その歪みを以てお前の在り方は決した

汝は吸血鬼。この世界に破滅をもたらす…私の敵よ



「……復讐そのものを否定する気はないわ。奪われた者の気持ちは理解できるもの」
 怨讐に狂う剣狼を見つめるリーヴァルディの瞳は昏く、表情は固く引き締められていた。
 彼女もまた多くのものを吸血鬼に奪われた。そして同じように奪われた者たちの無念を背負いながら戦ってきた。剣狼への同情や憐れみも、全く無いと言えば嘘になろう。
「……だけど、お前の怨嗟がどれだけ正しくても、罪無き人々を犠牲にする事は許容できない」
 復讐の相手をその手にかけるまで、どれほどの生命を踏み躙ろうとも彼が止まることは無いだろう。応報の力を求めて吸血鬼に与した時点で、彼の復讐は修羅道となった。

「……復讐の手段を誤ったお前は此処で終わるべきよ。これ以上、その手を血で染める前にね」
「終わりはしない……どれほどの血に染まろうとも、私の復讐はまだ終わっていない……!」
 背筋が凍えるような怨嗟の唸りを上げて、剣狼の総身に凄まじい力が漲っていく。その力の発生源――『辺境伯の紋章』から流れる力を、リーヴァルディは【吸血鬼狩りの業】を以て見極める。
(その紋章がより上位の吸血鬼から与えられたものなら……)
 彼女が受け継いだ業と、これまでに重ねてきた戦いの知識や第六感は、吸血鬼とそれに近似する存在を討つことに先鋭化されている。紋章から全身を巡る力の経路を"視る"ことができれば、次に相手がどう動くか予測することは容易かった。

「私の邪魔をするのなら、貴様も骸を晒すがいい!!」
 剣狼が放つは【神獄滅殺の太刀】。ただひたすらに相手の死を願う怨念を籠めた、極刀『禍色』による一撃は、肉体的な負傷よりも遥かに致命的な被害を対象にもたらす。
 さらに辺境伯としての力を得たことで、それは正しく必殺と呼べる威力に昇華されている。だが――その"吸血鬼の力"こそが、リーヴァルディに勝機をもたらした。

「……見せてあげる。吸血鬼狩りの覚悟を」
 極刀が振り下ろされる刹那、リーヴァルディの身体から膨大な量の魔力が溢れ出す。
 自らの全魔力を圧縮して全面解放する【吸血鬼狩りの業・絶影の型】。それは僅か83秒間しか持続できない、彼女の奥義にして決戦形態だった。
「な―――ッ」
 剣狼の眼には、彼女の動きが黒い影のようにしか視えなかった。一瞬の早業で必殺の一太刀を躱したリーヴァルディは、そのまま敵の懐に切り込むと、両手に構えた漆黒の大鎌を変形させる。

「……他者の血を流してでも望みを叶えんとする、その歪みを以てお前の在り方は決した」
 "過去を刻むもの"から"現在を貫くもの"へと変形した漆黒の手甲剣に、ありったけの魔力を注ぎ込みながらリーヴァルディは告げる。その瞳に、凛然たる決意を宿して。
 放たれしは全身全霊を賭けた渾身の一撃。手甲の先から伸びた黒き刃が、剣狼の白き鎧を穿ち、その身を貫く。

「汝は吸血鬼。この世界に破滅をもたらす……私の敵よ」

 その瞬間。限界を超えた吸血鬼狩人の力が、手甲剣の刃を伝って解き放たれ――吸血鬼に対する敵意と殺意、その全てを込めた呪詛の爆発が、辺境伯の体内で炸裂した。
「ぐ、ご、がああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!?!」
 衝撃を逃がす空間のない鎧の内側で、決戦形態のリーヴァルディの全力が直撃したのだ。甚大なダメージを受けた剣狼は喉の裂けるような絶叫を上げ、大地に膝を突いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルカ・ウェンズ
オブリビオンに言っても仕方ないけど狼が走狗になっちゃだめでしょ。
弱い吸血鬼から殺していって力を蓄えたり、味方を募って復讐しないと。

復讐する相手が吸血鬼だったとしたら対空戦闘もできると思うけど敵が召喚した白馬に騎乗して戦うのなら、私も相棒の宇宙昆虫に【騎乗】して【オーラ防御】で私と相棒の身を守り、絶望の福音を使い攻撃を回避しながら戦うわよ。

狙うのは敵の『辺境伯の紋章』いえ胸元に触手を食い込んでいる寄生虫型オブリビオン、これをオーラ刀で【怪力】に任せに切りつけるわ。これのせいで虫の評判が悪くなっから、ひたすらに切りつけるわ!切って駄目なら怪力で引き剝がすわ!



「オブリビオンに言っても仕方ないけど狼が走狗になっちゃだめでしょ」
 見境なき復讐者と成り果てた剣狼相手に、ルカが投げた言葉は冷静であり辛辣だった。
 咎人殺しである彼女はべつに復讐を否定はしないが、それ故に確実に目的を果たす手口を求める仕事人でもあった。
「弱い吸血鬼から殺していって力を蓄えたり、味方を募って復讐しないと」
 手段としてはしごく真っ当。しかし彼女自身も口にしたとおり、オブリビオンとなった相手にそれを言っても聞く耳は持たれないだろう――アレはもう、満たされない復讐心を世界に叩きつけるだけの、狂える獣だ。

「味方など必要ない……私の復讐は、私がこの手で完遂する……!」
 禍々しい剣狼の気迫に呼応するように、高らかに嘶くは【白魔大帝】。並外れた体躯を誇るその白馬は、騎手にも負けぬ凶暴な眼つきでルカたち猟兵を睨みつけてくる。
(復讐する相手が吸血鬼だったとしたら、対空戦闘もできると思うけど)
 相手が騎乗して戦うならばと、ルカも相棒の宇宙昆虫に乗って騎乗戦の構えを取る。
 彼女の手には漆黒の刀身を形成したオーラ刀。対する剣狼の手には極刀『禍色』。
 空中と陸上を駆ける黒の仕事人と白の剣士は、それぞれの最高速度で激突する。

「墜ちろ……!!」
 白馬と共に高々と跳躍し、横薙ぎに放たれる『禍色』の一閃。高度の差などものともしない並外れた運動力と剣技に対し、ルカは【絶望の福音】による先読みで対抗する。
 ユーベルコードが見せる10秒先の未来。それを元にして宇宙昆虫を操縦し、オーラの防壁で自身と相棒の身を守ることで、致命的な攻撃を辛くも凌ぐ。
「そこよ!」
 ルカはすかさず反撃に転じ、宙に浮いた辺境伯へ怪力任せにオーラ刀で切りつける。
 狙うのは『辺境伯の紋章』――敵の胸元に触手を食い込ませている寄生虫型オブリビオンだ。

「これのせいで虫の評判が悪くなっから、許せないわ!」
 虫を愛する者として、オブリビオンを強化する寄生虫など見過ごす訳にはいかない。
 虫全体のイメージダウンを防ぐためにも、とにかくルカは紋章をひたすら切りつける。
「ちぃ……ッ」
 辺境伯も紋章を狙われることは想定のうちだったろう。しかしこうも執拗に、かつ苛烈にそこを一点狙いで攻められては防御に回るほかにない。攻めの気配が緩んだのを逃さず、ルカはさらに激しく辺境伯に迫る。

「切って駄目なら力ずくで引き剥がすわ!」
 オーラ刀と極刀を鍔迫合わせながら、ルカは空いているほうの手を剣狼の胸に伸ばす。
 そこに張り付いている宝石状の寄生虫をむんずと掴み、力任せに引っ張ると、あまりの怪力に耐えかねたか寄生虫の触手がブチブチと千切れていく。
「いい加減に……しろッ!!」
 これ以上は不味いとみたか、辺境伯は騎馬を暴れさせて強引にルカから距離を取る。
 紋章は今だ彼を宿主としたままだ。だがルカが徹底してその寄生虫に与えたダメージは、辺境伯本体にもフィードバックされ、その力を大幅に削ぎ落としている。

「取れなかったのは残念だけど」
 有効打は与えたと判断したルカはそれ以上は深追いせず、こちらも空中に距離を取る。
 絶大だった辺境伯の力にも、少しずつ陰りが見え始めている。戦いの流れは猟兵たちのペースのまま進んでいた。

成功 🔵​🔵​🔴​

オリヴィア・ローゼンタール
我が絶望に勝るものか、だと? 勝るとも
貴様とて吸血鬼から見れば十把一絡げ、「幾千幾万の民」と変わらない
あまり自分以外をナメるな

怨念に対する防御(オーラ防御・呪詛耐性・狂気耐性)を纏う
【ダッシュ】で間合いを詰め、【怪力】を以って聖槍を叩き付ける
斬り打ち穿ち、縦横無尽に【なぎ払う】
極刀を【武器で受け】流し、ガントレットでの殴打(重量攻撃)やグリーブでの蹴撃(吹き飛ばし)を織り交ぜ、猛攻

距離が開いた瞬間、【終焉を呼ぶ聖槍】を発動、全霊の力で【投擲】
極刀も鎧装も突き穿ち(鎧砕き・串刺し・貫通攻撃)、狂乱する破壊の魔力(全力魔法・限界突破)を解放する
復讐なら地獄でするがいい、仇も同じ場所に送ってやる



「我が絶望に勝るものか、だと? 勝るとも」
 思い上がるなと言わんばかりの厳しい口調で、オリヴィアは敵の言葉を切って捨てる。
 長く吸血鬼と戦ってきたからこそ、連中の強大さも厄介さも彼女はよく知っていた。
「貴様とて吸血鬼から見れば十把一絡げ、『幾千幾万の民』と変わらない。あまり自分以外をナメるな」
「だろう、な……辺境伯などと呼ばれても、私は今だ連中の使い走り。ならばこそ、ここで止まる訳にはいかぬ……!」
 罅割れた『紋章』を指先でなぞり、怨讐の剣狼は愛刀『禍色』を構え直す。その刃を怨敵の血で染めるまで、彼の絶望は終わらない――或いは復讐を果たした後でさえも。

「汝の槍は私の絶望を超えうるか?」
「無論、問われるまでもない」
 剣狼の極刀が怨念を宿すのを見て、オリヴィアはそれに対抗するオーラの護りを纏う。
 腰を低く、聖槍を前に突き出すような構えから、大地を蹴って全力疾走。ひと呼吸するほどの僅かな間に、両者の間合いは詰まった。
「ならば示してみせろ!」
 烈帛の気迫と共に振り下ろされる【神獄滅殺の太刀】と、黄金に煌めく聖槍の穂先がぶつかり合い、火花を散らす。そのまま両者は激しい乱打戦へと移行し、一歩も譲らぬ攻防を繰り広げる。

(流石に手強いか)
 並外れた怪力で聖槍を叩きつけ、滅殺の太刀を紙一重で受け流すオリヴィア。斬り、打ち、穿つ、縦横無尽の槍捌きを見せる彼女に、剣狼も極刀一本で渡り合っている。
 一瞬でも気を緩めれば、怨念に染まりし刃は彼女の戦意を、正気を、寿命を、免疫を、根こそぎ奪っていくだろう。辺境伯の紋章がもたらす力とはこれ程のものか。
 だがそれしきのことで怖気付くオリヴィアではない。オーラの護りをより密として、聖槍を片手に持ち替えながら、握りしめるは「ホーリーガントレット」を纏った拳。
「受けよ、破邪の拳!」
 武具そのものの重量を乗せた白銀の殴打を、敵は極刀の刀身を盾にして受け止める。
 凌いだ――と思うのはまだ早い。オリヴィアは拳を引くと同時に「セイントグリーブ」を履いた脚を振り上げ、拳撃と同じ箇所に渾身の蹴撃を叩き込んだ。

「ぐぅ、っ!」
 間髪入れず二度の打撃を受けた剣狼は、その衝撃を流し切るることができず後方に吹き飛ばされる。彼我の距離が開いた瞬間、オリヴィアは聖槍を手に高らかに叫んだ。
「吼えろ、聖槍。万象を粉砕する嘆きの一撃を今ここに――!」
 その時、黄金の穂先に宿ったのは破邪の力ではなく、純然たる破壊の魔力。使い手の理性と善性を代償として、伝説に謳われし【終焉を呼ぶ聖槍】がここに再演される。

「復讐なら地獄でするがいい、仇も同じ場所に送ってやる」
 今にも暴発しそうなほどに狂乱する破壊の魔力を抑えこみ、失われゆく理性をぎりぎりで繋ぎ留めながら、オリヴィアは聖槍を大きく振りかぶり、全霊の力で投擲する。
 矢のように放たれた槍は、誘われるように剣狼に向かって飛んでいき――極刀による防御も、鎧装による装甲も突き穿ち、標的の肉体を串刺しにする。
「が、は――――ッ!!!!!!!」
 直後、槍に籠められた破壊の魔力が解放され、霊峰を揺るがす大爆発を引き起こす。
 一投で三つの国を滅ぼしたという伝説の聖槍――あくまで再現であるこのユーベルコードにそこまでの威力はなくとも、"対人"としては余りある破壊力には相違ない。
 爆心地の中心から現れた辺境伯は、鎧の砕けたボロボロの姿で、クレーターの底に膝をついていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
自分の復讐の為なら犠牲も厭わず、自分の絶望こそが至上。
身勝手な事を…!
自分の為に他者の犠牲も厭わない貴様は驕り高ぶる吸血鬼以下。
誇りを失い、罪無き人々を踏み躙るその弱い心と力…我が力で打ち砕いてあげる!

眷属達を全員下がらせ、【吸血姫の覚醒】を発動。

敵の極刀を警戒し、牽制の聖属性の魔力弾【高速詠唱、全力魔法、属性攻撃、誘導弾、属性攻撃】と重力属性の呪縛魔術も混ぜて放ち、敵を攻撃しつつ捕縛。
刀を受けない様に【見切り、第六感】で冷静に回避しながら高速で接近し、魔槍を高速連打で叩き込み、聖属性の魔力を込めた【限界突破】【神槍グングニル】でその胸元の紋章ごと貫いてあげるわ!

聖属性は苦手なのだけどね…。



「自分の復讐の為なら犠牲も厭わず、自分の絶望こそが至上。身勝手な事を……!」
 復讐以外の全てを蔑ろにする剣狼の辺境伯の行状に、フレミアは憤りを隠せなかった。
 貴女達は下がっていなさい、と眷属を全員退かせ、自らは怒りの形相で敵と相対する。
「自分の為に他者の犠牲も厭わない貴様は、驕り高ぶる吸血鬼以下よ」
 弾劾の言葉と共に発動するのは【吸血姫の覚醒】。その血に秘められた真祖の魔力が爆発的な勢いで解き放たれ、真の力に目覚めた吸血鬼の姫がここに降臨する。

「この、力は……そうか、汝も吸血鬼に属する者か……!」
 17~8歳程の美少女に成長を遂げ、背中から4対の真紅の翼を生やしたフレミアを見て、辺境伯の双眸が殺意に染まる。復讐のために誇りを捨て、上位吸血鬼の軍門に下ったとはいえ――依然として吸血鬼は彼にとって憎悪の対象らしい。
「私の邪魔をする者は、人であれ吸血鬼であれ、この『禍色』の錆となるのみだ!」
 禍々しき極刀に怨念が宿り、剣狼は【神獄滅殺の太刀】の構えを取る。一太刀で致命的な害をもたらすその刀を警戒したフレミアは、その身からあふれ出す魔力を光の弾丸に変え、牽制として雨のように撒き散らす。

「聖属性は苦手なのだけどね……」
 真祖に近付いた今のフレミアにとっては我が身をも蝕む聖なる魔弾。だがそれは死の怨念を力に変える辺境伯に対して、より効果的な攻撃属性であることも確かだった。
 自身目掛けて降り注ぐ聖なる弾幕を凌ぐために、極刀を振るい戦場を駆ける剣狼。
 だが、闇夜の戦場で一際目立つ光弾は、牽制と同時に本命を隠すためでもあった。
「そこよ」
「何ッ?!」
 光弾に紛れて飛んできたのは重力属性の呪縛魔術。光に眼を眩まされたために捌き切れなかったそれは、高重力の枷となって剣狼を捕縛する。

「誇りを失い、罪無き人々を踏み躙るその弱い心と力……我が力で打ち砕いてあげる!」
 敵の動きが鈍った刹那、フレミアは魔槍「ドラグ・グングニル」を構えながら距離を詰める。覚醒により超強化された飛翔速度は、他者の目には瞬間移動と見紛うほどだ。
 だが辺境伯とて並大抵の手合ではない。此方が隙を晒せば相手が近付いてくるであろうことを読んで、高重力の束縛に抗いながら神獄滅殺の太刀を放つ。
「そうだ、私は弱かった……だからこそ、強くならねばならんのだッ!!」
 もし、フレミアが怒りに判断を鈍らされていれば『禍色』に斬り捨てられていただろう――だが彼女は冷静だった。一太刀で逆転もありうる極刀への警戒を解かず、研ぎ澄まされた第六感で斬撃の軌道を見切り、紙一重で躱しながら懐へ飛び込む。

「力に執着するその浅ましさも、貴様の心の弱さだと何故気付かないの!」
 怒りを穂先に込めて繰り出されるフレミアの刺突。接近時にも見せた超スピードに竜種にも匹敵する超怪力を兼ね備えた魔槍の高速連打は、防ぐ間もなく標的の全身に叩き込まれる。
「がは……ッ!?」
 血飛沫を撒き散らし、ぐらりと体勢を崩す辺境伯。その機を逃さずフレミアは【神槍グングニル】を発動、圧縮した聖属性の魔力をドラグ・グングニルに注ぎ込んでいく。

「全てを滅ぼせ、神殺しの槍……っ」
 相性の悪い聖なる力を限界を超えて行使した反動か、フレミアの表情が苦しげに歪む。
 それでも彼女は毅然とした表情で、ありったけの力を魔槍へと注ぎ――極限まで圧縮された魔力は、聖なる光を放つ巨大な真紅の槍となる。

「その胸元の紋章ごと、貫いてあげるわ!」
 渾身の力を込めて放たれた聖なる神槍は、一条の閃光となって辺境伯を串刺しにする。
 その直後、解放された莫大な魔力は聖属性の爆発を引き起こし、邪悪なる剣狼と『辺境伯の紋章』を灼き焦がした。
「ぐおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……ッ!!!!!」
 爆発の中心で、耳をつんざくような絶叫を上げながら、吹き飛ばされていく辺境伯。
 その胸に穿たれた風穴と欠けた宝石が、彼が受けたダメージの大きさを物語っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

夜霞・刃櫻
【夜霞の赤頭巾】
その身に秘める使命は素晴らしいっすね!
手段が最悪でやんすけど!
『視えてない』奴は足元を掬われるでやんすよ!

リーオさん(f04190)が大技で気を引いてくれるようなので、「目立たず」「忍び足」で辺境伯の死角に潜り込む
物陰等があれば、その「影に紛れれば」より上手く行くだろう
必要があれば『ヘイズ・グレネード』でスモークを焚いて身を隠す

上手く潜り込む事が出来れば、UC【夜霞の仕手】でレベル600の「暗殺」を『キリング・ナイフ』を用いて行う
殺害出来なくとも「部位破壊」で深手を負わせる事は出来るだろう
でもやっぱりトドメさしたい(強欲

バレたら三下なので「逃げ足」で逃げます!
マジすまんゆるして


リーオ・ヘクスマキナ
【夜霞の赤頭巾】
……何故だろうね
あんたには、なんとなく親近感を覚えるよ

けど、その絶望を罪のない普通の人達に向けるその行いは!
見過ごせないかなァッ!!

SMGを構えて彼と対峙
前衛は赤頭巾さんに任せて、援護射撃とUC用の弾頭への魔力充填に専念

剣ではなく、二の腕や肩、腰、騎馬の胴体のような、狙いやすい場所を攻撃
赤頭巾さん本人には、彼との戦闘は若干の距離を空けて対峙するよう警告
後半2つは分からないけど、戦意と正気は削られるとマズいかも……?!

充填完了次第、ビーコン弾を。続けてUC弾頭を発射
……コレで倒せるとは、最初から思っていないんだよねぇ

さ、前座はこれにてお終い。後は本命の一撃をお願いするよ、夜霞さん



「……何故だろうね。あんたには、なんとなく親近感を覚えるよ」
 全てを失った剣狼を見つめるリーオの表情は、同情とも憐れみともつかない感情に彩られていた。その気持ちがどういったものかを説明するのは、彼自身にも難しい。
 "リーオ・ヘクスマキナ"として目覚めた4年前よりもさらに前、忘却のヴェールの向こう側から流れ込んでくる、胸を締め付ける感情。記憶喪失である現在の彼が、この想いに敢えて名を付けるなら、それはあの剣狼が抱えているのと同じ――"絶望"。

「けど、その絶望を罪のない普通の人達に向けるその行いは! 見過ごせないかなァッ!!」
 もう、悲劇を繰り返させてはならないと、リーオの心の中でさらなる激情が渦を巻く。
 記憶を喪っていようと、それは紛れもなく彼自身の意志。短機関銃「ACMP-9」を構えて敵と対峙する彼を守るように、"赤頭巾さん"も臨戦態勢を取る。
「その身に秘める使命は素晴らしいっすね! 手段が最悪でやんすけど!」
 そして刃櫻も、黒鞘の長ドスを敵に突きつけ、手榴弾を手元に弄びながら一喝する。
 霞のように虚ろい易い自分からすれば、何であれブレない信念を持った者は立派なものだ。だが、その使命のために無関係な人様に迷惑をかけて一瞥すらしないのなら――そいつはもう三下以下の、ただの外道だ。

「『視えてない』奴は足元を掬われるでやんすよ!」
 叩き付けられた「パンク・ロック・ヘイズ・グレネード」から、黒い煙が焚き上がる。
 偵察時には見破られた隠密術。だが今度は"探る"だけでなく"殺り"に行くと、にやりと笑みを浮かべながら刃櫻の姿は闇と煙に紛れていく。
「この程度の目眩まし……」
「おっと、俺たちもいるのを忘れずに!」
 気配を探ろうとする剣狼を妨害したのは、サブマシンガンの銃声とはためく赤マント。
 リーオと"赤頭巾さん"はそれぞれ後衛と前衛に分かれて、敵に連携攻撃を仕掛けた。

「いいだろう、まずは貴様らからだ」
 辺境伯は【召喚・白魔大帝】にて呼び出した白馬に跨り、大地を踏み鳴らしながら極刀『禍色』を振るう。ただ駆けるだけで大地が割れ、怨念の籠もった刃は触れるだけでも危険だと、リーオたちの本能に警鐘を上げさせるには十分だった。
「彼との戦闘は若干の距離を空けて対峙するようにね」
 警告を受けた"赤頭巾さん"はコクコクと頷きながら、一定の距離を保って炎の散弾銃を発砲する。それに合わせてリーオも後方からACMP-9による援護射撃を敵に浴びせる。
 狙うのは剣ではなく、二の腕や肩、腰、騎馬の胴体のような、狙いやすく、かつ装甲の薄そうな場所。全身鎧を纏った相手に闇雲に撃ったところで有効打にはなるまい。

「小癪な……」
 遠近から降りしきる弾幕に苛立ちを覚えた辺境伯は、まずは近くにいる"赤頭巾さん"から葬らんと【神獄滅殺の太刀】を放つ。間一髪で身を翻した邪神の目と鼻の先を、戦意、正気、寿命、免疫を奪う極刀『禍色』が掠めていく。
(後半2つは分からないけど、戦意と正気は削られるとマズいかも……?!)
 白馬の剣狼を相手に"赤頭巾さん"はよく足止めしてくれているが、それも長くは続かないのは明白だった。少しでも彼女の負担を和らげるためにリーオは弾幕を張り続け――その一方で、一発の銃弾に魔力を、この状況を打開する一手を仕込んでいく。

(うーん、ちょっと押され気味っすかね)
 リーオと"赤頭巾さん"の戦いの模様を、刃櫻は物陰に隠れながら静かに見守っていた。
 険しい山岳の地形は身を隠す場所に困らず、抜き足差し足忍び足で見咎められることなく辺境伯の死角に潜り込むことはできた。だがここからはより慎重にいかなければ前回の二の舞だ。
(短気は損気っす。リーオさんが大技で気を引いてくれるようなので、それまで待つでやんす)
 今はまだ煙幕も効いているし、じっとしていれば早々に見つからない自信はある。
 逸る気持ちを抑えながら、刃櫻は戦友を信じて打ち合わせした好機を待ち続ける。

「……よし、充填完了。待たせたね!」
 荒ぶる辺境伯の耐え凌ぐこと暫し――ついに反撃の時は来た。リーオは魔力充填を終えたばかりの弾頭をセットし、先ずは次弾誘導補助用の特殊ビーコン弾を発射する。
 発射されたビーコン弾は、狙い過たずターゲットの胸の中心に着弾し。それを見た"赤頭巾さん"は、続けて来る"本命"に巻き込まれないために全力で離脱する。
「何だ―――?」
 痛みのない微力な弾丸、そして突然後退しはじめた敵。辺境伯は二重の違和感を抱くが、時既に遅し――【赤■の魔■の加護・「化身のサン:魔法の終わる時」】の準備は既に整った。

「……この弾丸は、貴方という魔法に終わりを告げる『零時の鐘』だ」
 宣告と共に引き絞られるトリガー。放たれた広域殲滅用重魔術弾はビーコンの反応に従って、吸い込まれるように目標へと着弾――空間諸共、対象の存在を滅殺する。
「灰すら残さず消え去れェ!!」
「―――――ッ!!!!!」
 魔力の爆発が戦場を薙ぎ払い、目も眩むような凄まじい閃光の中に剣狼の姿が消える。
 相応の負荷と時間をかけて、かなりの量の魔力を注ぎ込んだのだ。並大抵のオブリビオンなら、これで跡形も残らない筈だが――。

「……コレで倒せるとは、最初から思っていないんだよねぇ」
 口元に皮肉げな笑みを浮かべるリーオの視線の先。そこには今だ健在な辺境伯の姿があった。恐らくは騎馬を乗り捨てて難を逃れたか――彼の乗っていた"白魔大帝"の姿はどこにもない。
「どうした……今ので貴様の切り札は終わりか?」
 愛馬を犠牲にした辺境伯とて、まったくの無傷と言うわけではない。だがここで彼を仕留め切れなかった以上、切り札を使ってしまったリーオにもはや打つ手はない。

 ――そう、"リーオ"には。

「さ、前座はこれにてお終い。後は本命の一撃をお願いするよ、夜霞さん」
「―――ッ!?」
 リーオがニィと笑ったその瞬間、音もなく、気配すらなく、刃櫻が剣狼の背後に立つ。
 剣狼とて警戒は怠っていなかったはずだ。リーオのユーベルコード弾頭を食らったあの瞬間を除いては――【夜霞の仕手】の嗅覚は、その瞬間の隙を逃さなかった。

「あの時のお礼参りでやんすよ、外道」

 振り返る間もなく突き放たれる「パンク・ロック・キリング・エッジ」。暗殺のみに特化された仁義なき刃は、鎧の隙間にするりと滑り込み、標的の急所を深々と抉る。
「ぐ、が……ッ!!!!」
 ぶるりと震えながら喀血する辺境伯。あと半歩、あと数ミリ刃を押し込めば、心臓を貫けるという手応えが刃櫻にはあった。殺害できずとも深手を負わせられれば良しと頭では分かっていたものの、ここに来てトドメを刺したいという欲が湧き上がる。

「これでトドメっす―――」
 ――だが。欲をかいて痛い目にあうのは三下の宿命とでも言うのか。刃櫻が刃を突きこむよりも一瞬速く、武器を逆手に持ち替えた剣狼が、後ろ向きのまま極刀を振るう。
「おわっと!?」
 間一髪、鋭敏な危険感知能力で身を引いた少女の鼻先を掠めていく必殺の一太刀。
 直前までの強欲さから一転、撤退に意識を切り替えた彼女は一目散に逃げていく。

「そこで逃げるんだ、夜霞さん……」
「マジすまんゆるして」
 土下座せんばかりの勢いで謝りながら脱兎の勢いで戦線離脱する刃櫻。苦笑するリーオだが、重魔術弾に魔力を費やした彼も、前衛と足止めを担当していた"赤頭巾さん"もそれを咎めたてるような理由はなく、作戦は成功したとして一緒に撤退していく。
 幸いにも追撃が来る様子はない。たった一突きでも、刃櫻が与えた傷は相当に効いていたのだろう――肩越しに振り返ったふたりが見たのは、血溜まりの中でがくりと膝を突く辺境伯の姿だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
その怨嗟の炎、仇も何もかも燃やし尽くすまで止まることも無いのでしょう
ならば私は、それを退ける盾掲げる騎士として立ち塞がるまで

誰かに全てを奪われ堕ちた戦士など…貴方一人でも多すぎるのです

甲冑関節部狙い至近距離格納銃器のスナイパー射撃で動作を牽制
その上で太刀を●怪力の●盾受けや●武器受けで防御し体勢の崩しを狙い
刃接近時の精神干渉は思考演算への●ハッキングと定義
演算速度を限界突破させ電子防御構築し対応

さて、私が言うのもおかしな話ですが

常に胸の紋章狙う動きをし、決定的な隙を●見切った際に防御の裏かく●だまし討ち

縁ある方との相対に兜は失礼にあたりますよ

頭部に剣を一振り
あと一撃で粉砕出来る程に兜に損害与え



「ッ、ぐ……まだ、だ……まだ、私は……」
 猟兵の猛攻を受けて血溜まりに崩折れながらも、極刀を支えに再び立ち上がる剣狼。
 どれほどの深手を負おうとも、兜の奥に灯る双眸の煌めきは消えることはなく。狂おしいまでの怨讐と全てを失った絶望が、彼の肉体を戦いへと駆り立てていた。
「その怨嗟の炎、仇も何もかも燃やし尽くすまで止まることも無いのでしょう」
 醜哀なるその姿に憐れみに似た情を抱きながら、トリテレイアは静かに語りかける。
 こうした手合いと対峙することは初めてではない。復讐を誓った犠牲者がやがて加害者と成り果て、終わらない破壊と殺戮に人々を巻き込んでいく、そんな悲劇も。

「ならば私は、それを退ける盾掲げる騎士として立ち塞がるまで」
「止められるものか……私の絶望は、誰にも止められはしない!!」
 堂々と正面から対峙するトリテレイアに対して、怨讐の剣狼もまた真っ向から挑む。
 振るうは怨念を籠めた極刀『禍色』。対象者の寿命や戦意等を直接削り取る【神獄滅殺の太刀】は、鉄壁の重装甲を誇る機械騎士にとっても恐るべき攻撃だ。

(誰かに全てを奪われ堕ちた戦士など……貴方一人でも多すぎるのです)
 剣鬼と堕した剣狼に、心の中で哀切の念を呟きながら、トリテレイアは機体各部に搭載した格納銃器を展開。甲冑の関節部を狙った精密射撃で、敵の動きを牽制する。
「ぬぅ、っ」
 弾丸の威力はそこまで高い訳ではないが、至近距離からの銃撃は対処が限られる。そうして動作を限定し、太刀筋を読みやすくした上で、斬撃の軌道上に大盾を構える。
「この怨嗟の太刀、受け止めてみせましょう」
 ずしりと響く刃の重さと、それ以上に精神へと掛かる未知の負荷とエラーが彼を襲う。
 ここで戦意と正気を失う訳にはいかない――トリテレイアは電脳の演算速度を限界突破。機械である己への精神干渉とは、即ち思考演算へのハッキングであると定義し、それに対応した電子防御を何重にも構築して怨念の侵蝕を防ぎ止める。

「さて、私が言うのもおかしな話ですが」
 無事に精神を防衛しきったトリテレイアは、剣狼に語りかけながら極刀を押し返す。
 ウォーマシンの怪力に押されて敵が体勢を崩せば、もう一方の手にて構えた儀礼剣で、胸に寄生する『辺境伯の紋章』を狙う素振りを見せる。
「ッ!!」
 剣狼にとってこの紋章は力の源であり生命線。当然、猟兵たちがそこを狙ってくるのも予測しているだけに警戒心は強い。バランスを崩しながらも刀を盾のようにして、紋章を守る構えを取るが――騎士の本当の狙いは別にあった。

「縁ある方との相対に兜は失礼にあたりますよ」

 辺境伯の紋章狙いと見せかけた上で、敵の防御の裏をかいた一振り。
 決定的な隙を晒した剣狼の頭部へと、儀礼剣の刃が叩きつけられる。
「が、は……ッ?!」
 あと一撃で粉砕できる程度に威力を調整された【機械騎士の精密攻撃】により、狼を模した兜は大きく罅割れ、内部へと伝わった衝撃は辺境伯の脳を揺らす。平衡感覚が狂い、ばたりとその場に崩れ落ちた彼に、しかし騎士は追撃を仕掛けなかった。

「縁ある、方、だと……? 一体、誰のことを……」
「きっと、貴方が誰よりもご存知の方の筈です」
 まだ確証はなくとも、彼も無意識には勘付いているだろう。夜空に輝くシリウスのように、山中で煌めいていたあの蒼い炎を見たのならば、それが自身の宿縁だと。
 今宵、辺境伯に引導を渡すのは自分ではない。焦がれているだろう"待ち人"との素顔での対面へと繋げるために、トリテレイアはそっとその場から引き下がるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ナギ・ヌドゥー
なぜ人を守るか?
義務だからだ、猟兵としてのな。
良き猟兵を演じ己を縛り続けなければ……
オレは自身の殺戮衝動に飲み込まれてしまうだろう。
怨念に囚われ堕ち果てたアンタみたいにはなりたくないのさ。

斬撃とソウルトーチャーの【捕食】による【2回攻撃】
標的はあの紋章だが白馬に騎乗されては狙いにくい
危険だがあの大剣を受け動きを止め隙を作ろう
【オーラ防御】にてダメージを最小限に抑え攻撃を受ける
と同時に体に巻いてある武器・邪絞帯を作動し【捕縛】
UC発動
ソウルトーチャーの骨牙にてあの紋章を穿つ!
一撃で致命傷にならなくても奴の「咎」を覚えれば充分
次の攻撃からより正確かつ強力に奴を貫ける



「っぐ……これほどの力を持って……貴様ら猟兵は、何故……」
「なぜ人を守るか? 義務だからだ、猟兵としてのな」
 崩れ落ちた辺境伯からの問いかけに答えたのはナギ。語る口調は、冷たく、酷薄で。
 今にも飛び出しそうな飢獣めいた気配を纏いながら、瞳にはまだ理性が残っている。
「良き猟兵を演じ己を縛り続けなければ……オレは自身の殺戮衝動に飲み込まれてしまうだろう。怨念に囚われ堕ち果てたアンタみたいにはなりたくないのさ」
 残虐な己の本性を律し、ヒトとして生きるための枷。それがあるからこそナギはまだ"こちら側"でいられる。どれほどの凶気に身を浸そうと、一線を超えるつもりは、ない。

「……怪物め」
 ヒトと獣の境に立つナギの有り様に何を感じたか、辺境伯は皮肉めいた調子で呟きながら【召喚・白魔大帝】を発動する。再び戦場に降り立った凶暴なる白馬は、主をその背に乗せて高らかに嘶き、大地を駆ける。
(標的はあの紋章だが白馬に騎乗されては狙いにくい)
 自身の得物と「ソウルトーチャー」のリーチを、敵の武器のリーチと騎馬の体格と比較し、ナギは戦術を組み立てる。長物を持った馬上の敵に攻撃を当てるためには、馬から引きずり落とすか――あるいはギリギリまで距離を詰める必要がある。

(危険だがあの大剣を受け動きを止め隙を作ろう)
 ナギが選んだのは後者だった。呪獣を待機させながら「歪な怨刃」を手に、突っ込んでくる騎兵相手に待ち受ける構えを取る。辺境伯とてそれを見れば「何か仕掛けてくる」とは勘付くだろうが、既に劣勢である彼に様子見という選択肢は無い。
「私と白魔の連携、耐え凌げると思うなよ……!」
 大上段より振り下ろされる極刀『禍色』。その名に違わぬ禍々しき怨念を纏った一刀を、ナギは全身にオーラを纏って受け流そうとする。感じたのは肩口に強い衝撃――その直後、白馬の蹄が殺人的な速度で彼の胴体を蹴りつけた。

「……それで終わりか?」
 ぽたり、ぽたり、と滴る血。極刀と騎馬による連続攻撃を受けたナギは、しかしまだ生きていた。オーラによる防御がダメージを軽減したのもあるが、それに加えて――。
「なんだ、この帯は……ッ?!」
 ――防御と同時に体に巻いてあった「邪絞帯」が作動し、辺境伯と白馬に巻き付いたのだ。血に染まった包帯の束縛によって"白魔大帝"は蹴り脚を振り切れなかった。そのお陰でナギは軽傷とまではいかずとも、ダメージを最小限に抑えられたのだ。

「次はこちらの番だ。行け、我が拷問具」
 そして敵の動きを封じられたこの好機を彼が見過ごす筈もない。待機していたソウルトーチャーの全身を突き破りながら射出された【禍ツ骨牙】が、辺境伯に襲い掛かる。
 狙いは無論、胸部に寄生する『辺境伯の紋章』。血塗られた骨牙が宝石状のそれに突き刺さり、ピシリと亀裂を走らせる。
「っ、ぐ……!!」
 寄生体が受けたダメージは本体にも反映されるのか、辺境伯から苦悶の声が漏れる。
 だがナギの攻撃はここで終わりではない。縛り上げた白馬を足場にして、肉食獣の如く、獲物に迫り。

「生ある者は皆、必ず咎を背負う……その重さにいつまで耐えられる?」
 禍ツ骨牙は敵の犯した「咎」の重さを記憶するユーベルコード。たとえ一撃で致命傷にならなくとも、咎人殺しであるナギの次撃はより正確かつ強力に、標的を貫ける。
 鋸状の刃を持った大鉈が、骨牙が穿った傷をガリガリと乱雑に抉り。さらに飛び掛かってきたソウルトーチャーが、今度は直接、その牙を辺境伯に突き立てる。
「ぐ、があぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!?!」
 斬撃と捕食による連続攻撃。「咎」を覚えられてしまった囚人に、逃れる術はなし。
 罅割れた『紋章』の破片と血飛沫を散らしながら、辺境伯の絶叫が霊峰に木霊した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

榛・琴莉
何故も何も、まだ失われていないからとしか
人々の命も、生きようとする意思も、生きたいと言う思いも
まだ尽きていない。だから守る
当然のことでは?

Ernest、辺境伯に『ハッキング』を
攻撃の瞬間だけ、私が『見切り』避けられる程度に鈍らせてください
電脳相手とは違いますが…貴方だって腐ってもUDCです、出来ますね?

『武器改造』で分散させたHaroldに魔力を込め、UCを起動します
拡散させて周囲の地面に配置し、辺境伯が近付いたら順次爆破して攻撃を
地面が割れたって不定形のそれには関係ありませんから
Harold、爆破したらすぐ戻ってください。次です
尽きることなく、絶えることなく
地に足をつく限り、逃がしはしません



「かなり弱ってきていますね」
 ライフルを構えて、観測手のように敵の状態を見極めながら、琴莉はそう呟いた。
 砕けた鎧を己の血で真っ赤に染め上げた、満身創痍の剣狼。その胸に宿る『辺境伯の紋章』も度重なる攻撃を受けて損傷し、大きく弱体化しているのが目に見えるようだ。
「この地の住人とは、縁もゆかりもない筈だ……なぜ貴様たち猟兵は、それを全力で守ろうとする……?」
「何故も何も、まだ失われていないからとしか」
 そんな辺境伯が絞り出すように口にした問いに、彼女はさも当たり前のように答えた。
「人々の命も、生きようとする意思も、生きたいと言う思いも、まだ尽きていない。だから守る」
 そのための力が自分にあって、助けを必要とする人がいるのなら、難しく考えることはない。彼らが冷たくなってしまう前に、与えられた雪華の力にて守り抜こう。

「当然のことでは?」
「当然か……ハハ……眩しいな、貴様らは……」
 回答を得た剣狼は、ひしゃげた兜の奥から乾いた笑いを漏らし。召喚した【白魔大帝】の拘束を引き千切ると、これまで以上の殺意を漲らせて、極刀を大きく振りかぶる。
「何も守れなかった、私には……力ある貴様らが、眩しい程に憎らしい……!」
 それが八つ当たりでしかない衝動だとは彼とて理解しているだろう。だが怨讐に囚われた剣狼にとってはそれこそが戦いを継続させる全て。大地を踏み砕きながら駆ける白馬と剣士は、またたく間に標的との距離を詰めてくる。

(Ernest、辺境伯に『ハッキング』を)
 間合いを詰められるまでの僅かな間に、琴莉はマスクの内側でAIに指示を出していた。
 戦闘補助AI「Ernest」に搭載された電脳戦用プログラム「鳥の群れ」。それを以てあの剣狼の脳に干渉せよ、と。
(攻撃の瞬間だけ、私が避けられる程度に鈍らせてください。電脳相手とは違いますが……貴方だって腐ってもUDCです、出来ますね?)
 逡巡の時間はなかった。『是』の意志を示したErnestのアバターがレンズの視界から消える。演算とハッキングの為に全てのリソースを回して、集中している証拠だ。
 よし、と小さく頷きながら琴莉は銃を構え直す。照準の先にいる標的はもう間近に迫り――この距離では彼女がトリガーを引くよりも、刀が振り下ろされるほうが速い。

「散れ――」
「――今です」
 極刀が少女を両断する、その瞬間。起動した「鳥の群れ」が辺境伯の脳内で羽ばたく。
 視界に走るノイズと青い鳥の幻覚。それらが敵の太刀筋を狂わせたのを見切って、琴莉は間一髪、致命の斬撃を躱し――そして反撃のユーベルコードを起動する。
「ヘイグロト、起爆」
 直後、彼女がいた足元の地面が爆ぜ、凍てつく魔力の爆風が辺境伯に襲い掛かる。
 それは【CODE:ヘイグロト】。魔力を込めた武器を任意のタイミングで起爆可能な爆弾に変える、彼女の隠し玉だ。

「これは……ッ、あの銃はブラフか……!」
 凍気の爆発を至近距離で受けた辺境伯の鎧姿は、凍てつく霜に覆われていた。彼自身へのダメージもそうだが、より近くで爆風を受けた"白魔大帝"の被害はさらに大きい。
 琴莉自身に気を取られていて気付けなかったが。よくよく地面を観察すればあちこちに、アメーバのような不定形状になった水銀のUDCが散らばっている。
「Harold、爆破したらすぐ戻ってください。次です」
 奇襲に成功した琴莉は油断することなく、起爆させた「Harold」を手元に呼び戻して魔力を込め直す。敵が他の猟兵たちと戦っている間に、戦場にはこうして彼女がヘイグロトを"装填"したUDC群が、分散して無数に配置されていた。

「爆弾など一度見切ってしまえば……!」
 辺境伯はかじかむ身体を強引に奮い立たせ、白馬に鞭打って騎行を再開するが。種が明らかになったところで拡散した「Harold」を見つけるのは容易ではなく、しかもそれは自律して動く。どこに幾つの爆弾が潜んでいるのか、把握するのは琴莉だけだ。
「地面が割れたって不定形のそれには関係ありませんから」
 暴れ回る"白魔大帝"の動きを冷静に見極めながら、近付いてきた瞬間に順次爆破。
 凍魔の爆風が吹き荒れるたびに、辺境伯の動きは徐々に鈍く、重くなっていく。

「尽きることなく、絶えることなく。地に足をつく限り、逃がしはしません」
 水銀が爆ぜ、凍風が荒ぶ。琴莉の指示ひとつで爆ぜる魔力は、執拗に敵を襲い続ける。
 やがて白馬は駆けるための体温さえ失い――決着の時が近付きつつあることを、少女は肌で感じていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

セシリー・アリッサム
違うよ
もう……終わったのよ
あの領主も、ママも――パパも

破魔の祈りを込めて
無数の炎を高速多重詠唱――まずは鎧を焼却する
大丈夫よ、覚悟してきたもの
自身を鼓舞して前へ出る

『辺境伯の紋章』さえ壊す事が出来れば
神獣鎧装で鎧を着け替える瞬間、鎧で炎を防いだとしても
少しでも当たればいい――【骸収逸蝕】を喰らわせられる
その紋章が焼き焦がされるまで、わたしの炎は止まらない!

そうすればきっと
あの人の――パパの歪んだ思いは無くなる筈
思い出して、わたしよ。セシリアよ
ママも、ここにいるから
領主も、皆でやっつけたから

だから、パパは失ってないわ
わたしはパパとママのおかげで
こうして生きているのよ
だから一緒に帰ろう、パパ……!


ドゥアン・ドゥマン
此処に立つは、我が生業故
…だが。恐らく、かつての貴方ならば
その問いの答こそ、その胸に抱いていた筈

骸の海の底に眠る、かつての貴方の願いに敬意を
此処に猛る、貴方の絶望に相対を
辺境伯。貴方を討つ

■戦闘
霊峰の護念、しかと
…お力、ありがたく。今しばしお借りする
あの剣を受けるには、より騎士らしくが相応しかろう故

拝領した生命力の黒煙を、巨大な骸の獣に仕立て騎乗する
戦馬に追走する為の、強いあぎとと肢が要る
四方釘を大剣と双剣に組み替え、
連携、隙を作るべく打ち合あおう
貴方にも、譲らぬものがあろう
ならば一合毎に。喰らいついてみせようぞ

捨てたという名を、覚えているのだろう御仁が此処にいるなら
別れの時間を、作れるように


雛菊・璃奈
大切な者を失った絶望なんて嫌という程知ってる…。
でも、わたしはそんな復讐に身を費やしたりはしない…!
わたしは二度と悲劇を起こさない様に…人々を守る為に戦う…!
貴方のそれは強さじゃない…単なる弱さだ!
これ以上の悲劇は…わたしが止める…!

【九尾化・天照】封印解放…!
二章で召喚した【ソウル・リベリオン】と神太刀の二刀を構え、光速で攻撃…。
禍色の怨念を逆に【ソウル・リベリオン】で喰らい無効化…。
リベリオンで剣狼を包む怨念を斬り裂き、神太刀で連続攻撃…。
怨念弱まった禍色をバルムンクの一撃で弾き、天照の光の力を集束させた渾身の一撃で胸の紋章ごと袈裟懸けに両断するよ…

貴方の復讐はお終い…もう、眠るといいよ…



「まだ……だ……まだ、私は……」
 猟兵たちと幾度となく刃を交え、激戦を経た"辺境伯"の姿は、今や無惨なものだった。
 ボロボロになった白鎧は今や真っ赤に染まり、愛馬たる白魔大帝も主に劣らず満身創痍。いかに"辺境伯"の力が絶大と言えども、この状態でもはや勝敗は決していた。
 だが、それでも彼は止まらない。怨讐によって妖しく煌く双眸の光は、今だ消えず。
「私はまだ終わらない! この手で、復讐を果たすまでは――!」
「違うよ。もう……終わったのよ」
 剣狼の言葉を遮ったのは、哀しみと切なさと――愛しさに満ちた少女の声。
 山風に揺れる狼の耳と一対の尾。そして母とお揃いのアリッサムの耳飾り。
「あの領主も、ママも――パパも」
 蒼炎を灯すシリウスの棺を手に。セシリー・アリッサムは"父"と対峙した。

「お前、は――――」
 兜に顔を隠されていても、その瞬間の剣狼の動揺は手に取るように分かった。瞠目し、食い入るような眼差しでセシリーを見つめる彼の態度は、これまでには無いものだ。
「いや……ありえない……違う……そんなことが……!」
 混乱をきたしたまま彼は極刀『禍色』を振り上げ、目の前の少女を斬り捨てようとするが――その刹那、光の速さで割り込んできたひとつの影が、致命の太刀を防いだ。

「大切な者を失った絶望なんて嫌という程知ってる……。でも、わたしはそんな復讐に身を費やしたりはしない……!」
 剣狼の『禍色』を受け止めたのは、魔剣『ソウル・リベリオン』と妖刀『九尾乃神太刀』。その使い手たる璃奈の姿は目も眩むほどの光に包まれ、髪と九尾は金色に染まっている。
「わたしは二度と悲劇を起こさない様に……人々を守る為に戦う……!」
 【九尾化・天照】を発動した魔剣の巫女を輝かせるのは、その魂に宿る信念の光。
 夜明けを告げる太陽のように鮮烈なその光は、闇に堕ちた剣狼をたじろがせた。

「何故だ、何故なのだ……! どうして貴様らは、そんなにも迷いなく! 希望に満ちた姿で! "人を守る"と、その自信は、一体どこから……!!」
「此処に立つは、我が生業故。……だが。恐らく、かつての貴方ならば」
 恐慌する剣狼の極刀は魔剣を押し返し、再度振り下ろされんとするが――再度、それを受け止めたのは黒騎士の大剣。真の姿へと変身したドゥアンは、泉のように澄んだ青の双眸で剣狼を見つめながら、厳かに告げる。
「その問いの答こそ、その胸に抱いていた筈」
 かつては"守る者"であったはずの男の信念は悲劇によって打ち砕かれ、怨讐によって塗り潰された。ならば、その絶望を骸の海へ鎮めることもまた、墓守としての務めだ。

「私の……私の守りたいものは、もう……ッ!」
 璃奈とドゥアンから刃と共に突きつけられた言葉は、剣狼をさらなる動揺に追いやる。
 その瞬間を、逃さずに。セシリーは意を決して前を出ると、葬炎の呪文を詠唱する。
(大丈夫よ、覚悟してきたもの)
 その心に迷いはなく、掲げる呪杖に込めるのは破魔の祈り。
 前衛2人が飛び退いた直後、顕現した無数の炎が剣狼を襲う。
「――まずは鎧を焼却する」
「ぐ、おぉぉぉぉぉぉぉッ!!?」
 灼熱の業火に包まれた剣狼の口からは苦悶の声が。激戦を経てすでに限界に達していた鎧は、その攻撃でボロボロに崩れはじめ――砕け散った兜の中から、セシリーと似た面影のある、壮年の人狼の顔が現れる。

「ッ……これしき……!!」
 セシリーの記憶にあるよりも、その男の顔はひどく憔悴し、絶望と怨讐で歪んでいた。
 それでも、それは見間違いようもない父の顔――娘の放った炎に焦がされながら、剣狼は【神獣鎧装】を発動し、新たな鎧をその身に纏おうとする。
「これ以上……いけない!」
 セシリーとてここで懐旧に浸って隙を与えるような、半端な覚悟で来たのではない。
 鎧が焼却され、新たな鎧へと付け替える瞬間を狙って、彼女は【骸収逸蝕】を放った。

「なん、だ……ッ!!?」
 無防備な剣狼に飛来したその呪いは、胸に寄生する『辺境伯の紋章』に的中する。
 直後、新たに燃え上がった蒼の炎は、これまでの比ではない熱量で紋章を灼いた。
「その紋章が焼き焦がされるまで、わたしの炎は止まらない!」
 上位吸血鬼より与えられた、宿主に力を与える寄生虫型オブリビオン。
 それをここで燃やし尽くしてしまえば、剣狼から辺境伯の力は失われる。
(そうすればきっと、あの人の――パパの歪んだ思いは無くなる筈)
 もう一度、父に自分の言葉を届かせるには、そうする他に手段はないだろう。
 セシリーの放った呪いの業火は、彼女が剣狼に近付くほど、激しく燃え盛る。

「ぐ、うぅ……やめろ……近付くな……ッ!」
 紋章を焦がす炎の痛みか、あるいはそれ以外の理由でか。苦しげに胸を押さえた辺境伯は、セシリーから離れるように【白魔大帝】に鞭を入れる。彼自身は知る由もないが【骸収逸蝕】の維持には有効範囲があり、術者から遠退く判断は適切だった――が。
「あなたはここから逃さない……!」
「貴殿の相手は、そこな娘御だけではない」
 即座に追走する2人の猟兵が、彼の進路を阻む。天照の封印解放によって光の速度を得た璃奈と、黒煙で仕立てられた巨大な骸の獣に騎乗するドゥアンは、白馬の機動力にもゆめゆめ劣りはしなかった。

(霊峰の護念、しかと……お力、ありがたく。今しばしお借りする)
 胸の内でドゥアンが呟くのは、この地から拝領したものに対する謝意。護法の【宣誓】により組み上げられた骸の獣は、彼を乗せたまま霊峰を荒らす者に牙を突き立てる。
 強靭なるあぎとが白馬の脚を捉え、騎行を封じる。渋面を作った辺境伯は極刀『禍色』を振り下ろすが、ドゥアンは大剣の形に組み上げた四方釘でそれを受け止める。
「骸の海の底に眠る、かつての貴方の願いに敬意を。此処に猛る、貴方の絶望に相対を」
 あの剣を受けるには、より騎士らしくが相応しかろう故にと、黒騎士の姿で語りながら。両者ともに譲らぬ鍔迫り合いのなかで、彼は大剣をさらに別の形に組み換える。
 拮抗した力関係がふいに崩れ、辺境伯の体勢が崩れる――その機を逃さず双剣が閃き。
「辺境伯。貴方を討つ」
 鎧を裂いた二筋の斬痕から、真っ赤な血飛沫が上がり、霊峰の大地を染め上げる。

「怨敵の同族に与してまで、私は力を得た筈だ……だというのに、どうして……!」
「貴方のそれは強さじゃない……単なる弱さだ!」
 追い詰められゆく我が身に焦燥を覚える辺境伯を、凛とした声で一喝するのは璃奈。
 光の速さで放たれた魔剣の一太刀は、辛うじて『禍色』の刀身にて受け止められた。
「弱さから貴方は力に縋り付いた……その怨念は、この魔剣が喰らう……!」
 極刀と鍔迫り合うは【ソウル・リベリオン】。シャドウライダーや亡霊たちの怨嗟を鎮めるためにも振るわれたこの魔剣は、『禍色』に宿る死の怨念さえも、同様に喰らい尽くしていく。
「なんだと……ッ?!」
 怨念の籠もっていない極刀に、それまでの脅威はもはや無い。返す刀で璃奈は剣狼本体にも魔剣の斬撃を浴びせ、逆手に持つ「九尾乃神太刀」との連続攻撃へと繋げる。
「これ以上の悲劇は……わたしが止める……!」
 もう誰も――この地に住まう人々も、そして生前の彼の"守りたかったもの"も。何ひとつとして傷つけはさせまいという璃奈の決意を前に、剣狼を包む怨念は斬り裂かれ、ついに馬上より弾き落とされる。

「ぐ、ぅ……まだ、まだだ……ぐぅぅぅぅぅっ!!!」
 落馬した剣狼は極刀を支えにして立ち上がろうとするが、紋章を焦がす蒼炎の痛みが彼を苦しめる。その炎の放ち手であるセシリーは、ユーベルコードを持続できる距離を保ったまま、一瞬も彼から目を離さない。
「果たさねば……ならぬのだ……何も守れなかった私は……せめて……復讐だけは……!」
 それでも彼は、悲壮とさえ感じられる決意を、血を吐くように叫びながら。輝きを失った『禍色』を構え、立ち上がる――そこに正面より挑むのは、黒騎士ドゥアン。
「貴方にも、譲らぬものがあろう。ならば一合毎に。喰らいついてみせようぞ」
「来るがいい……ッ!!!」
 死力を振り絞って繰り出される剣狼の猛攻を、四方釘の形状を適時組み換えながら捌く。息をつく間もないほどの激しい剣戟の最中にドゥアンが確認するのは、仲間との立ち位置――決定打を入れるための援護。

「今だ」
 幾度目かの交錯の末、四方釘から散った黒煙の残滓が、刹那のみ剣狼の目を眩ます。
 その刹那さえあれば、光速の域に達した璃奈には十分だった。流星と見紛うばかりの斬撃の軌跡が、剣狼の手より『禍色』を弾き飛ばす。
「貴方の復讐はお終い……もう、眠るといいよ……」
 魔剣の巫女が最後に構えたのは、屠竜の魔剣『バルムンク』。彼女が祀る魔剣の中でも秀でた鋭さを持つその刃に、天照の光の力を集束させ、乾坤一擲の力で振り下ろす。
 その一撃は、辺境伯を袈裟懸けに斬り伏せ――その胸に宿る『紋章』を、両断した。

『ギィィィィィィィィィィィィ――――ッ!!!!』

 虫の鳴き声にも似た絶叫が、戦場に響き渡る。それは『辺境伯の紋章』の断末魔。
 真っ二つになったボロボロの寄生虫は、蒼い炎の中で苦しげにのたうち回り――そして、灰の一欠片も残すことなく、この世より消え果てた。

「パパ……!!」
 剣狼の胸から紋章が剥がれ落ちた瞬間、セシリーは杖を放り捨てて彼のもとに駆け寄った。今にも息絶えそうなボロボロの身体にすがりつき、必死な表情で訴える。
「思い出して、わたしよ。セシリアよ」
「セシ、リア……本当に、セシリアなのか……?」
 セシリー――セシリア・ヴァイ・スピノサムの呼びかけを受けた剣狼の瞳に、光が戻る。それはこれまでの怨讐に染まったものとは違う、暖かな人間味のある眼差し。

「かつての己を、取り戻されたか」
 父と娘の"再会"を見たドゥアンは、武具を古びた四方釘へと戻し、静かに瞼を閉じる。
 捨てたという名を、覚えているのだろう御仁が此処にいるなら、別れの時間を作れるように。墓守としての礼法と祈りで、消えゆく御霊を暫しの間、この場に留める。
「せめて最後に、別れの言葉を……」
 璃奈もまた、呪詛喰らいの魔剣にてこの地に残留する怨念を鎮めながら、剣狼の最期を見守る。彼女の目にも、あの男が実体を保っていられるのはあと僅かに見えた。

「ママも、ここにいるから。領主も、皆でやっつけたから」
 時を惜しむようにセシリーは言葉を紡ぐ。父と同じように彷徨っていた母の『過去』をこの手で鎮めたこと。自分たち家族を引き裂いた復讐の相手――『大領主』を討ったこと。話したいことはいくらでもあるのに、今だけではとても語り尽くせない。
「だから、パパは失ってないわ。わたしはパパとママのおかげで、こうして生きているのよ」
 それでも、いちばん大事なことは――自分が、ここに居るという、それだけは確かに知って貰うために、少女はぎゅっと父の身体を抱きしめる。解けるように鎧は消え、触れ合う肌と肌越しに、とくん、とくん、と命の鼓動と暖かさが伝わっていく。

「セシリア……ああ、本当に生きていたんだな……」
「そうよ……だから一緒に帰ろう、パパ……!」
 ぎゅぅ、と強く強く、自分を抱きしめる愛しい娘の頭を、剣狼はそっと撫でる。
 力強い指先が、黒髪を梳る感触。それは間違いようもなく、在りし日の記憶と同じ。
「そうか……私は……守ることができたのか……」
 守るべきものは、ここに在り。復讐すべき相手は、他ならぬ彼女の手により因縁を断たれた。現世に執着する理由がとうに無かったことを悟った男は、ふっと穏やかに微笑み。

「立派になったな、セシリア……お前は、父さんと母さんの誇りだよ……」
 優しく娘を撫でる父の身体が、蒼い炎に包まれていく。それは世界の理を覆す為ではなく、歪められた過去を正す為の奇跡――可能性の炎。迷妄と怨讐の消え去った魂は、死霊術師であるセシリーの元に還る。
「私は、償いようもない罪を犯した……すまない、猟兵たちよ……どうか、貴方たちは私のようには……いや、その心配はないか……」
 最期のひとときで彼は猟兵への謝罪の言葉を紡ぎながら、眩しそうに目を細める。
 この者たちならきっと、守るべきものを守り抜ける。そう確信したがゆえに。

「感謝する……」

 その一言を最期に、剣狼――その真名、ロウ・ヴァイ・ランの骸はこの世を去った。
 かくしてこの日、1人の辺境伯が霊峰にて討たれ、1人の父親の御霊が娘の元に還った。
 霊峰アウグスタの平和は猟兵の活躍によって取り戻され――この地はこれからも長く、圧政より逃れし人々の安住の地として、発展を続けていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月12日
宿敵 『全てを失くした剣狼』 を撃破!


挿絵イラスト