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水葬トロイメライ

#カクリヨファンタズム #鎮魂の儀

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#カクリヨファンタズム
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#鎮魂の儀


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●水底に沈む
 ――暗澹たる幽世の闇を、煌々と照らす銀の月。
 目映い光が空から射し込む、地上の池の水面には。ゆらゆらと、揺蕩う白い蓮の花。
 そして池に架かった真っ赤な橋が、一面に咲く蓮の花とのコントラストで良く映える。

「嗚呼……私の可愛い『坊や』たち。今までずっと、辛い想いをさせて、ごめんなさい。誰にも救ってもらえなかったその魂……私がこれから、鎮めてあげます」

 鮮やかな朱塗りの橋の上に佇む、一人の女性。
 彼女はその身に着物を纏い、両手には、物言わぬ髑髏を愛おしそうに抱き締めている。
 揺らめく池の水面を暫く見つめ、女性は愁いを帯びた眼差しで、頭上に耀く円やかな月を仰ぎ見る。
 ――居場所を失い、彷徨い続ける魂が、どうか天に召されて還れるように。
 そのことだけをただ願い、女性が唄を口遊む。
 その唄は、母が我が子をあやして寝かせる為の子守歌。
 ゆったりとした調子で紡ぐ優しい声音に呼応して、この地に彷徨う魂たちが、淡い光を放って彼女の許に集まってくる。

 ――さあ、おいで。
 もうこれ以上、苦しまなくても大丈夫。
 私がちゃんと、在るべき場所に送り届けてあげるから。

 女性の奏でる歌声は、亡き妖怪たちの魂を悼む葬送の調べ。
 歌い続ける彼女はやがて、連なる橋の上からその身を投じ、水中深くに落ちてゆく。
 そこは月の光が射さない、昏き水底。その奥に、妖怪たちの魂を祀る祠が眠っている。
 儀式が完成すれば、魂たちは浄化され、この地に生える花や草木の糧となる。
 後少し――彼女が思ったその刹那。突然視界が揺らぎ、巨大な影が女性を遮る。
 ――其れは不気味に光る八つの眼。
 こぽり、と吐き出す息は泡と消え、女性は溺れるように苦しみ踠き、水底の深淵に呑み込まれていってしまう――。

●泡沫の夢
 妖怪たちが住まう幽世の世界。
 この地に辿り着けずに死んでしまった妖怪は、『骸魂』と化して魂だけが彷徨い続けている状態だ。
 そんな行き場を失くした魂を、悼む妖怪たちが『鎮魂の儀』を行うことで、骸魂を浄化させているらしい。
「今回も、そうした妖怪たちが儀式を試みたのだけど……結果は失敗に終わったの」
 ノエマ・アーベント(黄昏刻のカーネリア・f00927)は表情を変えることなく淡々と、集った猟兵たちに予知した事件を語り出す。
 儀式が行われていたその場所は、蓮の花咲く水面に、太鼓橋が連なり架かる広大な池。
 そこは所謂『迷い路』で、橋の上を歩いているだけでは、同じ地点に戻ってしまう。
「橋はあくまで表面上の見せ掛けだけの場所。池を潜ったその先の、水底に眠る祠が本当の儀式場というわけね」
 儀式の主祭司たる女性の妖怪が、橋から飛び降り、祠に行こうとした最中、強大な骸魂に取り込まれてしまい、逆に彼女自身がオブリビオンになってしまったようである。
 その結果、儀式場には激しい障害が発生し、様々な予期せぬ変化が起きている。
「放っておけば、儀式に参加している他の妖怪たちも巻き込んでしまうわ。だから貴方達の手で、どうにか食い止めてほしいの」
 更なる被害を防ぐには、オブリビオンと化した主祭司を倒す以外に手段はない。
 従って、迷い路を抜けてオブリビオンの許に辿り着く。だがその為には、多くの困難を乗り越えなくてはならない。
 最初に猟兵たちの行く手を阻むのは、蓮の花に乗り移った骸魂のオブリビオン。
 外見は極彩色の人鳥の姿をしており、囀る声は子守歌を唄い、滅びを齎さんとする。
「彼らを倒していくのは勿論だけど、その際に、何か慰めの言葉をかけてほしいの」
 本来は儀式で浄化されるはずだった骸魂。妖怪たちの代わりに慈悲を施すことで、彼らの魂を救ってほしいとノエマは言う。
 そして説明を終えて、差し出した手に、黄昏色の輝き放つグリモアを浮かび上がらせ、猟兵たちを戦いの場へと誘うのであった。

 狂々(くるくる)と、廻る運命が導く先は、極楽浄土か桃源郷か、それとも――。


朱乃天
 お世話になっております。朱乃天(あけの・そら)です。
 幽世に彷徨う骸魂、還る場所無き哀れな彼らに、救いは果たしてあるのでしょうか。

●舞台について
 多くの骸魂が眠り、蓮の花が美しく咲き乱れるあやかしの池。
 太鼓橋から飛び込み、潜って水底を目指します。が、その前に様々な障害を乗り越えなければなりません。

●物語について
 第一章:集団戦『迦陵頻伽』
 第二章:冒険 『水占の辻』
 第三章:ボス戦『?????』

 描写は全体的に、心情重視の内容になるかと思われます。
 今回は集団戦とボス戦にプレイングボーナスが付きます。
 それぞれ骸魂への慰めや、主祭司との関係性を呼び起こさせるような言葉を添えて頂けると良いでしょう。

 二章では生じた変化によって、沈みゆく水の中で歪んだ夢を視せられます。
 三章では祠の中での戦いとなります。内部は別空間みたいな感じになっています。

●運営スケジュールについて
 第一章のプレイング受付は、7月2日(木)8時31分から開始とさせて頂きます。
 以降のスケジュールは、雑記やTwitterの方で適時お知らせしますので、そちらの方にもお目通しして頂けますと、大変嬉しく思います。

●その他
 同行者様がいらっしゃる場合、お相手の【名前】【ID】もしくは【グループ名】の記入をお願いします。
 また、シナリオへのご参加は、どの章からでも全く問題ありませんので、どうぞお気兼ねなくご参加下さいませ。
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第1章 集団戦 『迦陵頻伽』

POW   :    極楽飛翔
【美しい翼を広げた姿】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【誘眠音波】を放ち続ける。
SPD   :    クレイジーマスカレイド
【美しく舞いながらの格闘攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    迦陵頻伽の調べ
【破滅をもたらす美声】を披露した指定の全対象に【迦陵頻伽に従いたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ――幽世の世界に遍く闇を照らす月。
 空から射し込む銀色の光が水面を映し、虚空を漂う魂が、白い蓮の花へと乗り移る。
 すると花は輝きを帯び、花弁は極彩色の翅となり、人鳥一体の妖怪の姿に変化する。

 月明かり灯る水辺に極彩色の鳥が羽搏く光景は、そこが極楽浄土であるかの如く。
 池に架かった朱塗りの橋を渡って行けば、鳥の囀る声が歌となり、足を踏み入れし者を誘うように舞い踊る。

 ――寝ん寝ん、殺ろりよ。寝んね子、殺ろりと、寝んね死な。

 人鳥の美声が風に流れて響き渡る。だがその歌声は、聴く者に死を齎さんとする滅びの音色。
 此の地に至ることなく亡くなった、子供の妖怪たちの魂は、悲哀と憎悪を纏った怨念となって猟兵たちに襲い掛からんとする――。
鳴宮・匡
忘れられるのも、死ぬのも
怖かった、だろうな

……きっと、死にたくなんてなかっただろう
笑って幸せに生きたかっただろう

――切にそう願って、だけど叶わなかった命
“ひと”でない俺には、かわいそう……とは思ってやれない
でも、そのまま留まり続けることは苦しいだろうって
それだけは、わかるから

動きをしっかり見切り、格闘攻撃は初撃から回避
こちらの攻撃は、その攻撃動作の隙を狙う

悲しいも苦しいも、痛い、も
許せない、羨ましい、憎い、……なんでもいいよ

それを、わかってはやれなくても
受け止めて、忘れないでいることは、できるから

あるべき場所へ還れるように
静かに眠れるように
苦しい気持ちは全部、ここに置いていくといい

――おやすみ



 月光に照らされ、煌めく水面と蓮の花。そして極彩色の翅を羽搏かせる鳥妖怪。
 闇夜を舞うかのように飛来する、その姿は美しくも儚い影を遺した存在。
 この地に辿り着けずに行き場を失い、彷徨い続ける哀れな魂の成れの果て。
「忘れられるのも、死ぬのも、怖かった、だろうな」
 虚空を飛び交う人鳥を、憐れむような瞳で見つめる鳴宮・匡(凪の海・f01612)。
(「……きっと、死にたくなんてなかっただろう。笑って幸せに生きたかっただろう」)
 ――切にそう願い、されど叶わず潰えた命の終焉。
 鳥たちの華やかな見た目は、そうした生への願望の表れなのか。もし無事に生きていたなら、今頃は……などと想像しつつも、匡は決して彼らに同情しない。
「“ひと”でない俺には、かわいそう……とは思ってやれない。でも、そのまま留まり続けることは苦しいだろうって。それだけは、わかるから」
 幼少の頃から戦場に身を置き、夥しいほど多くの死を積み上げながら生きてきた。
 全ては生きる為に心を捨てた『ひとでなし』――匡はそのことを自覚しながら、武器を手に取り、オブリビオンと化した妖怪たちの魂を、ただ滅ぼす為に戦いを挑む。

『ねぇねぇ、ぼくと遊ぼうよ』

 鳥が囀るように声を鳴らして、迦陵頻伽が匡に向かって近付いてくる。
 極彩色の翅を翻し、月光を背に浴び、夜闇に舞う。映る姿は幻想的で妖麗で、その美しさには思わず見惚れてしまいそうなほどである。
 迦陵頻伽が一瞬のうちに距離を詰め、蹴りを繰り出し、趾の鋭い爪で匡を裂こうと攻撃してくる。
 しかし匡は少しも慌てることなく、冷静に敵の動きを予測しながら攻撃を見切り、爪が空気と肌を掠める寸前、上体を捻って身を躱す。
 そして振り向き様に拳銃を構え、攻撃直後の隙を狙ってトリガーを引く。
「悲しいも苦しいも、痛い、も、許せない、羨ましい、憎い、……なんでもいいよ」
 それらを分かってやれなくても、受け止めて、忘れないでいることだけはできるから。
 彼らが在るべき場所へ還れるように。せめて静かに眠れるように――。
「苦しい気持ちは全部、ここに置いていくといい」
 想いを込めて撃ち放たれた弾丸は、銃声が響くと同時、迦陵頻伽の眉間を貫いて。
 射落とされ、羽搏くことを止めた亡き骸は、昏き水の底へと沈んでいった。
 その最期を見届けながら、匡は冥福を祈るように小さな声で、たった一言呟いた。

 ――おやすみ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

響納・リズ
【アリア様(f05129)と】
まあ、アリア様も同じく、鎮魂のために向かうのですか? ならば、ご一緒いたしましょう。 私もあの妖怪達を救いたいのです。

話によると、お母様は生きて、この世界へ来られましたが、子供達の魂は未熟でここまで来られなかったようですわね。お母様の歌を歌いながら戦ってくるなんて……胸が締め付けられる思いですわ……。
アリア様が歌うのならば、私はこのフルートで鎮魂歌を演奏いたしましょう。
そして、UCを発動させ、オブリビオンではなく、本来のあるべき姿へと導いて差し上げますわ。きっと先に向かったお母様も同じ気持ちなはず。
大丈夫、怖がらなくてもいいのよ。ねえ、アリア様(にこ)。


アリア・アクア
リズ様(f13175)と
グリモアベースでお会いして、共に戦おうと約束したんです!

まあ、なんて美しい場所でしょう
こんな素敵な地なら、魂も眠りにつけますね
ええ、リズ様。主祭司の方の想いは、母が子へ向けるもの
私は親がいませんので、そういうのよくわからないんですけど……
でも、それがとても尊いものであるということはわかっているつもりです!

悲しすぎる歌声、なんとか救ってあげたい
だからあの子達に打ち勝つくらい、優しい歌を歌いましょう!
ふふ、リズ様もご一緒に!
UCを発動、召喚したフクロウと一緒に優しく温かい鎮魂歌を歌います
そう、大丈夫ですよ、魂は眠り、廻り、また出会えるもの
貴方達は、ひとりじゃありません!



「まあ、なんて美しい場所でしょう。こんな素敵な地なら、魂も眠りにつけますね」
 柔らかな銀色の月の光に照らされて、白い蓮の花が唄うが如く水面に揺れる。
 アリア・アクア(白花の鳥使い・f05129)は瞳に映る幻想的な景色にうっとりし、この地を彷徨う魂たちに思いを馳せる。
「まあ、アリア様も同じく、鎮魂のために向かうのですか? ならば、ご一緒いたしましょう。 私もあの妖怪達を救いたいのです」
 魂彷徨う死の池に架かる橋の手前で、響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)がアリアを見かけて声を掛ける。
 この場に居合わせた二人の想いは、ただ一つ。鎮魂の儀の失敗によってオブリビオンと化した魂を、自分たちが代わって救済すること――。
「話によると、お母様は生きて、この世界へ来られましたが、子供達の魂は未熟でここまで来られなかったようですわね」
「ええ、リズ様。主祭司の方の想いは、母が子へ向けるもの。私は親がいませんので、そういうのよくわからないんですけど……でも、それがとても尊いものであるということはわかっているつもりです!」
 鎮魂の儀を執り行った主祭司が、この地に至れず命を落とした我が子に対し、如何なる想いを注いだか。そのことを考えるだけで、二人は辛い気持ちになってしまう。
 だからこそ、哀しみを鎮める為にも、願いを必ず成し遂げる――強い決意を心に抱き、悲劇を繰り返させはしないと二人の少女が立ち向かう。

 ――闇夜に羽搏き、飛び交う極彩色の翅の群れ。
 零れる月の光を浴びながら、美しく華麗に舞い踊る、少年のような姿の鳥人間。
 橋を渡りし者を待ち受けるのは、オブリビオンと化した骸魂。迦陵頻伽がアリアとリズを視界に入れると、無邪気に戯れるように接近してくる。
『ねぇねぇ、お姉さんたち。ぼくと一緒に遊んでよ』
 嬉しそうに声を弾ませながら、迦陵頻伽が二人の周りをぐるぐる廻り。口遊む唄は呪力を宿し、聴く者たちの精神に働きかける。
 玉を転がすような澄んだ音色が響き渡り、少しでも気を緩めてしまえば、相手に心を魅了され、そのまま意識を束縛されてしまう。
「……何て切ない音色でしょう。お母様の歌を歌いながら戦ってくるなんて……胸が締め付けられる思いですわ……」
 その唄は、母が我が子をあやす子守唄。
 当時の記憶を反芻し、母の真似をするかのように唄う声色は、悲哀に満ちて痛ましいとすら思えるほどだ。
「悲しすぎる歌声、なんとか救ってあげたい。だからあの子達に打ち勝つくらい、優しい歌を歌いましょう!」
 歌が齎す悲劇の連鎖を断ち切る為には、こちらも歌で対抗するのみ。
 アリアが掌を広げて月に翳し、祈りを込めて念じると。想いに応じるように一羽のフクロウが空から現れ、アリアの腕に舞い降りた。
「アリア様が歌うのならば、私はこのフルートで鎮魂歌を演奏いたしましょう」
 そう言いながらリズはガラスのフルートを取り出し、口を添え、すぅっと息を吹き込み演奏を始める。
 リズが奏でる清廉な音色に、白薔薇の花弁が咲き乱れる。そして彼女の演奏に合わせ、アリアがフクロウと一緒に歌を紡ぐ。
 それはオブリビオンを永遠の眠りに誘う鎮魂歌。
 温もり感じる優しい声音が、風に乗り、白き花弁と共に空を舞う。
 魂を、本来在るべき姿に導く為に――花弁の嵐が迦陵頻伽の呪歌を打ち消し、アリアの魔力を込めた歌声が、相手の心を慈しむように包み込む。
「大丈夫、怖がらなくてもいいのよ。ねえ、アリア様」
「そう、大丈夫ですよ、魂は眠り、廻り、また出会えるもの……。貴方達は、ひとりじゃありません!」
 リズがにこりと微笑みかけると、アリアも声を揃えてオブリビオンを宥めるように説き伏せる。そして二人の力によって、迦陵頻伽は魂を浄化されて砂が崩れるように消滅し、静けさが再び舞い戻る。
「……きっと、先に向かったお母様も同じ気持ちだったでしょう」
 天に召される魂を、見守るように耀く月の光が示す先。リズは池の水面を見つめつつ、暫く物思いに耽るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
『鎮魂の儀』か。亡くなった妖怪の魂。
なんつーか…どうにも報われねぇな。

物騒な歌だ、と笑いながら迦陵頻伽の前に姿を現して。
なぁ、お前、子供の妖怪の魂が混ざってるんだろ?なんて言葉を掛けるぜ。言葉が伝わるとは思っちゃいねぇが…俺がやるべき事を伝えてやろうと思ってよ。内容は単純だ。――遊ぼうぜ。
子供だから、言葉通り。子供っぽく全力で俺を殺しに来い。手を出さずに【見切り】と【残像】で精一杯、遊ぶぜ。魂だけじゃもう遊べねぇだろ?
全力で体を動かせ。借り物の身体でも気が紛れるハズだ。
最後の一発は致命傷を避けて受けるぜ。一発ぐらいは当たってやらねぇと。
楽しかったぜ。また遊ぼうな。銃の引き金を引いて終わらせる。



「『鎮魂の儀』か。亡くなった妖怪の魂。なんつーか……どうにも報われねぇな」
 闇夜を照らす月の光を浴びながら、極彩色の翅をはためかせて水上を飛び交う鳥妖怪。
 カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)はその光景を目にしながら、哀れなものだと感傷的な気分になってしまう。
 このオブリビオンは、幽世に辿り着けず命を落とした妖怪たちの魂だ。それらを鎮めるはずの儀式に失敗し、醜い異形に変わり果てるなど、運命は実に皮肉なものである。
 鳥が囀るように奏でる唄は、彼らの為に母が唄ってくれた子守唄。
 切なく感じる旋律も、生ある者への殺意と憎悪に歪んだ、呪いの唄に変わってしまう。
 カイムはそれを、物騒な歌だと苦笑しながら、橋を渡って迦陵頻伽の前に姿を見せる。
「なぁ、お前、子供の妖怪の魂が混ざってるんだろ?」
 飄々と振る舞いながら、カイムが世間話をするかのように迦陵頻伽へ言葉を掛ける。
 こっちの言葉が通じるかどうか分からない、が相手の注意を引き付けるには充分だ。
 案の定、迦陵頻伽が声に釣られてカイムの方にやってくる。後はやるべき事を伝えるだけと、カイムが武器を構えて口を開いた。

 ――遊ぼうぜ。

 たった一言、それだけ云うと。迦陵頻伽は嬉しそうに燥いでカイムの周りを飛び回り、舞うかのような華麗な動きで襲い掛かってくる。
 その姿は子供が無邪気に戯れるが如く、だが対照的に殺意を前面に出して向かってくるのはオブリビオンとしての性なのか。
 カイムはすぅっと一つ息を吸い、敵の攻撃を見極めようと意識を集中。
 迦陵頻伽が超高速で飛来しながら、鋭い爪を伸ばして蹴りを繰り出す。しかしカイムは風の音から蹴りの軌道を察して身を躱し、こちらも負けじと素早い動作で残像を纏い、戯れに付き合うように手は出さず、回避に専念しながら暫く様子を窺っていた。
「また魂だけになってしまえば、もう遊べねぇだろ? 全力で体を動かせ。借り物の身体でも気が紛れるハズだ」
 少しでも現世で想いを晴らせれば。それがカイムなりの情けだろうか。
 もう思い残すことがないように――せめて最後の一撃くらいはと、敢えて受け止めようとするカイム。
 紺色のトレンチコートを翻し、避ける素振りを見せずに腕でガードしながら、肉を引き裂く痛みも耐え凌ぐ。
「――楽しかったぜ。また遊ぼうな」
 傷口から流れ出る血も構うことなく。二挺の銃を迦陵頻伽に突き付け、薄っすら笑みを浮かべてトリガーを引く。
 銃口が火を噴き、無慈悲な銃声が響き渡る。それは最期の別れを告げる、死の音色。
 やがて音が止み、静寂に包まれながら、空へと上る硝煙は――まるで魂が天に召されていくかのようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィルマ・アルメンディア
初仕事が地元とは思いませんでしたわ、母様達に派手に送り出して
もらった分気まずいですわね……まあそれはともかく


迦陵頻伽と対峙

あなたの歌声、とても綺麗ですわね。聞き入ってしまいますわ。
・・・・・・でも「それだけ」ですわね。
わたくしの胸にはいつも母様たちの子守歌がありますもの。
素っ頓狂で調子っぱずれ、眠気も吹き飛ぶ騒々しさの大合唱!
でもね、思い出すだけで幸せになれますのよ。

笑顔で伝える

あなたにも歌ってくれる方がいるのなら嘆きも涙も必要ありませんわ
行きなさい、そして生きなさい

送り火をあなたに捧げましょう
いつかまた出会えたならばあなたにも母様達を紹介しますわ
メイガスの称号に掛けて約束、ですわよ



 ヴィルマ・アルメンディア(月皇のメイガス・f28124)にとって猟兵としての初仕事。その舞台が故郷の幽世になるとは思いも寄らず、旅立つ時には母親が盛大に送り出してくれた分、もう戻ってきたことに却って気まずくなってしまう。
 しかしそれはそれ、ヴィルマはすぐに気持ちを切り替え、彷徨う骸魂たちを救うべく、最初の任務に力を注ぐ。
 月に照らされる池一面に咲く白い花。それと対比するかのような鮮やかな赤い太鼓橋。
 その周囲を飛び交う鳥たちは、極彩色の翅を広げて美しい音色の歌を囀る。
 まるでここが極楽浄土であるような、そんな印象すら抱かせるほど幻想的な光景だ。
 だがそれも、全てはまやかし――この朱塗りの橋を一度渡れば、そこは地獄の一丁目。
 ヴィルマはこの先何が起ころうと、覚悟を承知で最初の一歩を踏み出した。

 風が吹き、耳に聴こえてくるのは、オブリビオンと化した迦陵頻伽の歌う声。
 高く澄んだ響きは人の心を魅了して、意思の弱い者なら虜にされてしまうだろう。
「あなたの歌声、とても綺麗ですわね。聞き入ってしまいますわ」
 オブリビオンの歌にヴィルマは瞳を薄っすら閉じて、暫く耳を傾ける。
「……でも『それだけ』ですわね」
 本来は、歌い手の優しい想いが伝わるはずの子守唄。だが迦陵頻伽の歌には、そうした気持ちを微塵も感じることはない。何故ならば――。
「わたくしの胸にはいつも母様たちの子守歌がありますもの。素っ頓狂で調子っぱずれ、眠気も吹き飛ぶ騒々しさの大合唱! でもね、思い出すだけで幸せになれますのよ」
 ヴィルマが幼い頃に聴いた母の歌。お世辞にも上手だったとは言い難い、けれども我が子に対する愛情を、ヴィルマは今もはっきり覚えている。
 そのことを、満面の笑顔で迦陵頻伽に伝えるヴィルマ。
 死へと誘う呪いの歌にも、惑うことなく精神を集中させて魔力を高める。
「あなたにも歌ってくれる方がいるのなら、嘆きも涙も必要ありませんわ。行きなさい、そして生きなさい――」
 彼女の周囲にまばゆく灯る魔法の火。それは魔導の力が生み出す五十の矢。
「送り火をあなたに捧げましょう。いつかまた出会えたならば、あなたにも母様達を紹介しますわ。メイガスの称号に掛けて約束、ですわよ」
 ――せめて未練を残さぬよう、この世の最期の餞に。
 一斉に放たれた炎の矢弾に迦陵頻伽が撃ち抜かれ、劫火に包まれながらその肉体は灰と化し、跡形残らず消え散った。
 ヴィルマは魂が浄化されていくのを黙って見届け、瞑目し、どうか安らかなれと心の中で静かに祈りを捧げるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『水占の辻』

POW   :    ゆめまぼろしを真直ぐ見据えて沈む

SPD   :    目を閉じ耳を塞いで耐える

WIZ   :    過去より未来を信じて身を委ねる

👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 憎悪と殺意に塗れた歌声が止み、迦陵頻伽の魂を悼むように優しい風が吹き抜ける。
 静けさが戻った戦場の、迷い路の池に架かった太鼓橋の上。
 此処より先に進むには、池に飛び込みその奥底に眠る祠まで行かなければならない。
 しかも儀式の失敗の影響により、池の中には不可思議な歪んだ力が働いている。

 白い蓮の花が咲き乱れる水面を見遣れば、獲物が自ら掛かってくるのを待つかのように不気味に揺らめく。
 一度水中に潜ってしまうと、そこでは誰もが二度と醒めない夢を視る。
 沈み続ける身体は身動き取れず、心の奥に眠る記憶を元に、狂った悪夢が展開される。
 過去の思い出が、歪んだ形で再生されて、心も身体も水底の檻に囚われてしまう。
 こぽり、こぽりと浮かんだ水泡が、弾けて消えて、昏き闇の底へと堕ちるだけ――。

 月の光が一切射さない深淵で、如何なる手段で悪夢に抗い、耐えるのか。
 全ては貴方の、心と意思の強さ次第――。
 迷いを捨てて覚悟を決めたら、橋の上から身を投じ、後は全てを委ねるだけだ――。
鳴宮・匡
胸のうちの水底に封じたのは、大切なひとの思い出だ
長い黒髪の、背の高いひと
死にかけた幼い自分を拾って、生きるための術を教えてくれて
最期には、俺を庇って死んだひと

歪んで見える夢はどんなものだろう
あのひとに殺される夢だろうか
あのひとに置き去りにされる夢だろうか
あのひとに、嫌われる夢だろうか

ああ、どれもすごく怖いな
――でも、安心もしてしまうかもしれない

だって、俺にとって
“自分のせいであの人を死なせてしまった”という以上に
悪い夢なんてないのだから

――だけど、そうはならなかったし
それをずっと抱えて、それでも生きると決めたんだ

だから、歪んだ悪夢にも、消えない罪の意識にも
囚われて足を止めたりしないよ



 池に飛び降り、花を揺らして飛沫を上げて、身を委ねるように水中深くに沈んでゆくと――水面を照らす月の光も届かなく、昏い深淵の底へゆっくり静かに落ちてゆく。
 こぽこぽと、水底から溢れ出てくる水泡が、落ちゆく者に映して視せるは、泡沫の夢。
 水中を漂う鳴宮・匡(凪の海・f01612)の身体が無数の水泡に包まれて、瞳を閉じれば過去の記憶が瞼に浮かぶ。
 匡の胸の裡たる水底に、封じられしは大切なひとの思い出だ。
 長い黒髪を携えた、背の高いひと。
 死にかけた幼い自分を拾って、明日をも知れぬ戦場で生きるための術を教えてくれて。最期には――俺を庇って死んだひと。
 一切の光が射さない闇の中、聴こえてくるのは泡がこぽりと浮かんで弾ける音だけ。
 何も見えないはずの深淵で、匡の脳裏に景色がぼんやり浮かんで視える。
 そこは彼にとっては懐かしい、10を数えるより前から慣れ親しんできた戦場だ。
 銃声と爆音、怒号と悲鳴が響き渡り、夥しい血と屍の山が踏み場もない程埋め尽くす。
 そしてこの地獄のような光景の先には、きっと、あのひとが待っているのだろう――。

 これは水の呪いが視せる歪んだ悪夢。
 もしあのひとに逢ったら、俺は嫌われるだろうか。置き去りにされてしまうだろうか。
 それとも――殺されてしまうのだろうか。

 ああ、どれも怖いな――でも、安心もしてしまうかもしれない。
 だって現実は、“自分のせいであの人を死なせてしまった”から。
 故に自分にとって、それ以上に悪い夢なんてない。
 だから夢の中であのひとが殺しに来たって構わない。
 それでもずっと心に痛みを抱え、生きていくってことを決めたのだから。
 歪な夢も所詮はまやかし、迷うことなど何も無い。
 消えない罪の意識にも、囚われて足を止めたりなんてしない。
 戦時も平時も揺らぎなく、心を捨てた匡にとって、大切なのは過去よりも、今ある生を望むこと――。
 匡が銃を構えて、トリガーを引く。その瞬間――心の奥の水底に、雫が一滴零れ落ち、波紋が大きく広がる中心に、あの人の影が崩れ落ち、泡に呑まれて溶け込むように消えて逝く。
 その光景を見つめる匡は一体何を想うのか、それは彼の心の中しか分からない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
悪夢が俺を歓迎してくれるってわけだ。逃げるつもりもねぇよ。覗かせて貰おうじゃねぇか。

俺の見る悪夢は故郷、ダークセイヴァーで『売られた』過去だ。
食い扶持の為、生まれたばかりの妹を優先する為、両親はある組織に俺を売った。『必ず迎えに来る』と言った両親の顔が――この悪夢の中では歪んだ表情に見えた。
『お前は必要ない子だから』、そう言われた気がした。
それは両親の本心だったのかもしれないが…正直、今となってはどうでもいい。あの日以降、俺は両親とは会っていない。
――それがどうした?組織で地獄を見た。替わりに俺は猟兵としての力を手に入れた。親友を失い、家族を失い、今は力が残った。
見せてやるよ、俺の力の一端を。



 死者を弔い鎮めるはずの癒しの力に歪みが生じ、池に飛び込む者に呪いの力で醒めない悪夢を視せると云う。
 だがこの迷い路から脱出するには、池に潜って沈み込み、水底に眠る祠に辿り着くしか手段はない。
「悪夢が俺を歓迎してくれるってわけだ。逃げるつもりもねぇよ。覗かせて貰おうじゃねぇか」
 それなら堂々と受けて立つのみと、カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)が意気込みながら水面を覗き、橋の手摺に足を掛け、一片の迷いもなくその身を投じる。
 カイムの身体が水の中へと沈み込む。次第に光が届かなくなって周囲が闇に包まれて、昏い水底の淵に落ちながら、カイムは静かに瞳を閉じて、夢の中へと微睡んでいく。
 ――そこは彼の記憶の奥深く、夢に映りし景色は夜が支配する生まれ故郷。
 まだカイムが子供だった頃、彼には生まれたばかりの妹がいた。
 しかし明日をも知れぬ貧しい世界の生活は、あまりに過酷で残酷で。
 カイムの両親は妹の食い扶持の為、とある組織に彼を売ってしまう。
 あの時、両親はどんな気持ちでいたのだろう。ただ自分が売り飛ばされた現実だけが、カイムの心に影を落とし、当時の記憶の中の両親が、彼の目の前に現れている。

 『必ず迎えに来る』と言った両親の顔は、水が揺らめくせいなのか、醜く歪んだ表情に見えてしまう。
 『お前は必要ない子だから』――発する声は漠然としながら、口元の動きから、そんな風に言われたような気までしてきた。
 もしかしたらそれが両親の本心だったのかもしれない。だが正直、今となってはもはやどうでもいいことだ。
 あの日以降、カイムは両親とは会っていない。もう生きているかどうかも分からない。

 ――それがどうした?

 売られた組織でカイムはこの世の地獄を垣間見た。それでも生き延びる為、力を求めて闇の世界を渡り歩いた。
 親友を失い、家族を失い――その代償として得た力、それが今のカイムに残された物。
「見せてやるよ、俺の力の一端を」
 カイムが禍々しい魔剣を取り出し、振り翳す。己の内の渇望を、解き放つが如く黒銀の炎が荒れ狂い、夢の世界の両親を纏めて呑み込み、灼き祓う。

 地獄を味わい尽くした青年に、過去への未練は既にない。
 今は一人の猟兵として、己の信じる未来を歩むだけ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

響納・リズ
【アリア様(f05129)と】
いよいよ、この中に入っていきますのね……。
緊張しますがアリア様と向かい合って、両手で手をつなぎ、中に入っていきますわ。
「準備はよろしいですか、アリア様」
手を繋ぐことで、互いの体温を感じることができますから、夢であることはすぐに分かるはず。

夢の中では、まあ、私、5歳になってますわ。
両親から買ってもらったビスクドールのエミリーと遊んでいたら、お父様が突然、人形を奪って、壊すなんて……いえ、本当の思い出は……(手のぬくもりを感じて)困惑する両親と人形遊びをした思い出。
そんな思い出を悪夢にするなんて許せませんわ!
UCを使って強化した後、脱出し、互いに無事を確かめますわ。


アリア・アクア
リズ様(f13175)と

うーん、暗くて底が見えませんね
不安ですけど……
はい、リズ様!もしも身動きがとれなくなった時は、どうぞ私の手を引いてくださいね!
笑顔で手を繋ぎ、いざ水中へ

気付けば、目の前には一人の老婆
まあ、まあ、お久しぶりです!
かつての主の姿に駆け寄るけれど、反応はなく本を読んでいて
まるで存在を否定されるような雰囲気に、胸がきゅっとなる
……いえ、あの方はいつでも笑顔でした
私、忘れていません!
お別れしたことも、その先のことも……覚えてますから!

ぎゅっと手に力を入れれば、感じる温もり
ああ、リズ様……ふふ、私、懐かしい夢を見ていました
この手を繋いでいて、よかったです
さあ、先に参りましょう!



 眼下に広がる池は白い蓮の花に覆われて、どれだけ底が深いのか、ぱっと見ただけでは分からない。
「うーん、暗くて底が見えませんね。不安ですけど……」
 橋の上から身を乗り出して覗いてみても、先の見えない薄気味悪さにアリア・アクア(白花の鳥使い・f05129)は顔を険しく顰めて思案する。
「いよいよ、この中に入っていきますのね……」
 その隣では、響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)が緊張の面持ちで、紫紺の瞳に映した水面をじっと眺める。
 呪われた池の中に潜ってしまうと、一体どんな恐ろしい夢を視せられるのだろう。
 もしも自分一人だけだったなら、怖気づいていたかもしれないが、傍には心強い友達がいてくれるから。
 二人一緒なら、きっとどんな悪夢だろうと大丈夫――リズはアリアと向き合いながら、顔を見合わせ頷いて、両手をすっと差し出した。
「準備はよろしいですか、アリア様」
 静かな口調ながらも、秘めたる意志は迷いなく。リズの想いに応えるように、アリアも笑顔を返して互いの手と手を取り合った。
「はい、リズ様! もしも身動きがとれなくなった時は、どうぞ私の手を引いてくださいね!」
 手を繋ぎ、触れ合う肌の温もりは、とても優しく心地好く。互いの体温をずっと感じていられたら、夢の中であろうと恐れるものなどないはずだ。
 そうして二人は、橋の手摺に腰を下ろして、池に引き込まれるかのように身を投げる。

 ――こぽり、こぽりと、泡に包まれながら二人の身体が水の中へとゆっくり沈む。
 射し込む月の光の紗幕も、やがて届かなくなって深くて昏い水底の闇に落ちてゆく。
 揺らめく水に身を委ね、うねりに呑まれるように意識が次第に薄らいで。そのまま二人は眠りに就いて、それぞれの夢の世界が展開される――。

 そこは華美な装飾が施された屋敷の一室。
 リズにとっては懐かしく、見覚えがあるその場所は、彼女が家族と暮らした家だ。
「まあ、わたし、5さいになってますわ」
 鏡に映った自分の姿を見てみれば、それは子供の頃の自分自身。
 まだ小さく幼いリズが、遊んでいるのはアンティーク風の西洋人形。
 両親からプレゼントに買ってもらったビスクドール、リズはその人形を『エミリー』と名付け、嬉しそうに笑って話し掛けていた。
 そんなありふれた、穏やかで楽しいはずの日常だったが――突然歪みが生じて、過去の記憶が改竄される。
 人形遊びに興じるリズを見守っていた父親が、いきなり苛立ちながら、血相を変えて怒鳴り飛ばし、リズから人形を奪って取り上げる。そして彼女の前で床に力一杯叩きつけ、更には踏み潰したりまでする父親に、幼いリズは泣くことだけしか出来なくて。
 親からもらったとっても大事な贈り物。それなのに――無残に壊れた人形を、リズは切なく見つめるだけだった。
 本当だったら、こんなひどいことなんてしない。二人も一緒に遊ぼうと、リズの無邪気な願いに困惑しつつも、苦笑交じりに人形遊びをしてくれた。
 今も心の中に残る両親に対する想い出が、踏み躙られる悲しみに耐えながら。そっと胸に掌添えると、不思議と仄かに、陽だまりのような温かさが伝わってきて――。

 気が付けば、アリアの前には一人の老婆が立っていた。
「まあ、まあ、お久しぶりです!」
 嘗ての主の姿を目にした途端、声を弾ませながら駆け寄るアリア。けれども老婆は気付いてないのか、アリアに対する反応もなくひたすら本を読み耽っている。
 アリアがどれだけ呼び掛けようと、老婆は全くこちらの方を振り向かない。

(……私のことを忘れたのでしょうか。私は捨てられてしまったのでしょうか)

 老婆にはアリアの姿が見えていないのか、まるでアリアの存在自体を否定するかのような雰囲気に、胸が締め付けられるような息苦しささえ感じてしまう。
「……いえ、あの方はいつでも笑顔でした」
 アリアの記憶の中にある、老婆はどんな時でも彼女に優しく接してくれた。
 例え人の手により創られた生命だろうと、アリアの心は老婆によって育まれ、一緒に暮らした想い出は、何よりもかけがえのない唯一無二の宝物。
「私、忘れていません! お別れしたことも、その先のことも……覚えてますから!」
 ぎゅっと力を入れて握り締めた手に、熱く伝わる温もりは――水底に沈む前からずっと感じ続けていた、友たる少女の心の欠片。


……
………

「ああ、リズ様……ふふ、私、懐かしい夢を見ていました」
 目を見開けば、そこには老婆の姿は消え去って、白翼纏った少女の笑顔が瞳に映る。
 手から伝わる心の温もり、それが互いの悪夢を振り払い、呪いを打ち消すことができたのだ。
「この手を繋いでいて、よかったです。さあ、先に参りましょう!」
 それぞれ無事に戻ってこられたことに安堵しつつ、繋いだ手と手はそのままに、二人は深淵に眠る祠の扉を開くのだった。
 その奥に待つ、妖怪たちの哀しき運命を、悲劇の連鎖を断ち切る為に――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『水蜘蛛川姫』

POW   :    巻き捕る
レベル×1tまでの対象の【体に妖力を込めた蜘蛛糸を巻き付け、その端】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD   :    吸い取る
【鋭い牙での噛み付き】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【生命力を奪い自身の戦闘力を強化。敵は苦痛】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ   :    絡め獲る
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【耐刃性の優れた糸で出来た、頑丈な蜘蛛の巣】で包囲攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は十三星・ミナです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 こぽりと浮かんだ水泡は、心の中の記憶を映して視せる、うたかたの夢。
 歪んだ過去の悪夢に囚われて、未来永劫醒める事なき永久(とわ)の眠りの呪いにも、猟兵たちは見事に打ち勝ち、夢は儚く、弾けて消えた。
 光の届かぬ水中深くに沈んで落ちて、悪夢を払い、再び目を覚ました彼らが見たものは――水底の奥に密やかに眠りし、魂を祀る古びた祠。
 そして扉を開いたその中で、オブリビオンと化した主祭司が贄を求めて待っている。

「嗚呼……後もう少し、もう少しで元通りに蘇らせてあげるから。その為にはこの池を、もっと多くの血で満たさないと」

 贄を殺して生命を捧げ、流した血で池を真っ赤に染め上げる。
 彷徨い続ける我が子の魂を、救って鎮める儀式のはずが――。
 もし生き返らせることができたらと、心に生じた僅かな欲が、歪みを発生させて自身をオブリビオンに変貌させてしまったのだろうか。
 女性の下半身は巨大な蜘蛛の如くに醜く膨れ、禍々しい異形の姿にその身を堕とす。

 髑髏を愛おしそうに抱きかかえ、周囲に蜘蛛の巣を張り巡らせながら、女性は贄たる猟兵たちが飛び込んでくるのを、愉悦の笑みを浮かべて今や遅しと待ち侘びていた――。
カイム・クローバー
命の事を良く知ってるアンタが『元通りに蘇らせる』なんて願っちゃいけねぇんじゃねぇか?――予知であったらしいんだが、アンタは失われた命の魂に触れたんだろ?触れた魂は、『生き返りたい』って願っていたか?

魔剣を右手に顕現。妖力を込めた蜘蛛糸。あえて受けるぜ。
なぁ、叩き付ける前に俺の話を少し聞いてくれよ。その糸、只の糸じゃねぇようだ。けどよ、俺の紫雷も中々のモンでよ。
UCを発動させ、身体に奔る紫雷で糸を焼き斬るぜ。増強された戦闘力を使って魔剣の【串刺し】で手に持ってる髑髏を破壊するぜ。

アンタの子供ってのは橋で遊んだ子供達の事か?
元気一杯のわんぱく坊主でよ、…一発、良いケリ貰っちまったぜ(傷口をなぞり)



 記憶の波のゆりかごに、ゆらゆら揺られて、偽りの夢は泡のように弾けて消えて。
 水面に浮かび上がっていく水泡は、魂がまるで空を目指して羽搏くようで。
 猟兵たちは夢の中で視た想い出をそれぞれの胸に仕舞い込み、この地で繰り返される悲劇の連鎖を断ち切る為に、祠の奥で待つオブリビオン――『水蜘蛛川姫』と対峙する。

「命の事を良く知ってるアンタが、『元通りに蘇らせる』なんて願っちゃいけねぇんじゃねぇか? アンタは失われた命の魂に触れたんだろ? 触れた魂は『生き返りたい』って願っていたか?」
 還る場所なき魂たちに女性が願ったことは、ただ彼らが安らかに眠れることだけ。
 カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)はオブリビオンに対して、儀式を執り行った意味を問い掛ける。
 しかしこうした状況を生んでしまったのは、女性が僅かな迷いを持ったから。
 もしも子供達が生き返ったら――ありもしない現実を、捨て切れなくて彼女自身も異形に変わり果ててしまうという皮肉。
 そんな哀しき運命を終わらせようと、カイムは右手に魔剣を顕現させて、いつでも迎え撃つよう身構える。
「今の私に欲しいのは、目の前にいるお前たちの命。さあ、大人しく贄となりなさい」
 水蜘蛛の姫はカイムの言葉に聞く耳持たず。ただ自身の欲に忠実に、獲物を捕らえて殺すべく、糸を展開させて襲い掛かる――。

 五指から発する蜘蛛糸は、妖力が込められていて鋼のように頑丈だ。
 一度巻き付いたら容易く切れず、身体を締め付け、決して相手を逃さない。
 だがそれを承知の上で、カイムは敢えて避けずに蜘蛛の妖糸を受け止めてみせる。
 強靭な力で巻き付く糸は、肌に食い込み皮膚を裂き、赤い血が糸を伝って滴り落ちる。
 しかしカイムは表情一つ変えずに相手を見据え、飄々とした様子で口を開く。
「なぁ、叩き付ける前に俺の話を少し聞いてくれよ。その糸、只の糸じゃねぇようだ。けどよ――俺の『紫雷』も中々のモンでよ」
 その顔には余裕の笑みを覗かせて、カイムが秘めた力を発動させる。
 身体に奔る紫雷が、巻き付く糸の全てを灼き斬り、増強された力を駆使し、魔剣を揮ってオブリビオンに近付き――彼女が抱える髑髏目掛けて、刃を突き刺し、破壊する。
「アンタの子供ってのは、橋で遊んだ子供達の事か? 元気一杯のわんぱく坊主でよ……一発、良いケリ貰っちまったぜ」
 そう言って、迦陵頻伽に受けた傷口を、なぞってニヤリとほくそ笑む。
 哀しい想いをするのはここまでと、カイムは剣を握り締める手に力を込めた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

楊・宵雪(サポート)
自分が大将首を挙げるよりも、味方のサポートを重視

UC鍼治療での回復支援とUC七星七縛符で動きを止めるのを主に狙っていく

他、援護射撃、UCフォックスファイア、範囲攻撃での味方支援
部位破壊、気絶攻撃で弱体化
有効そうであれば属性攻撃や呪詛、破魔といった技能で
自分を無視できないようなチョッカイを出して味方のクリーンヒットに繋ぐ

空中浮遊でつかず離れず、攻撃を誘うように時々接近
オーラ防御や残像、生命力吸収で耐えながら敵の注意をひく


月詠・莉愛(サポート)
『あの……宜しくお願いしますね。』
 オラトリオのシンフォニア×聖者、15歳の女です。
 普段の口調は「丁寧口調(私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、独り言は「普通かな(私、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

大人しくて口数が少ないですけど、心優しく
動物や植物などの自然が好きな少女。
争い事は苦手ですけど、依頼の成功の為なら戦う事も厭わないです。

 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


野津・伽耶(サポート)
 オラトリオのブレイズキャリバー×アーチャー、53歳の男。普段の口調は「男性的(俺、君、呼び捨て、だ、だな、だろう、なのか?)」です。/武器は銃、素手での格闘もそれなり。無茶はせず戦闘中は表情は変えない。好戦的ではなくあくまでも義務と仕事の範囲で戦う。誰にでも、特に年下には友好的ではあり話し下手ではなく戦闘以外の時間では酒をのみ話す時間を楽しむ。アルコールには強いので泥酔はなし。戦闘以外ではあまり器用ではない。
/ユーベルコードは指定した物をどれでも使用。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



 幽世に至ることなく死んだ妖怪たちの骸魂、それらがオブリビオンと化してこの地に災いを齎そうとする。
 魂を鎮める儀式の失敗により、異形の怪物に変わり果てた女性の妖怪。亡くした子供を想うが余り、他者の生命までをも奪おうとする。そんな彼女の歪んだ願いを、未練を断ち切る為に猟兵たちはオブリビオンと化した母妖怪に戦いを挑む。
「我が子が死んだことを諦め切れず、生きてほしいと心の中で望むというのは、例え妖怪であれ人であれ、子供に対する母の想いは変わらないのですね」
 そうした母の愛情が、却って悲劇を招いたことに月詠・莉愛(銀の月を謳う・f16320)は同情するかのように憐れんで。オブリビオンの蜘蛛妖怪を切なげな瞳でじっと見る。
「だがそこに如何なる理由があったとしても、俺たちがするべきことは唯一つ……この地に仇なすオブリビオンを排除する、それだけだ」
 立派な体躯のオラトリオ、野津・伽耶(オラトリオのブレイズキャリバー・f03720)は感情に囚われることなく冷静に、猟兵としての務めを全うするのが使命だと。仲間だけでなく、自身の胸にも言い聞かせ、武器を手に取り立ち向かう。
「随分と威勢がいい贄ね。そのくらい粋がる方が、こちらとしても殺し甲斐があるわ」
 オブリビオンの蜘蛛姫が、猟兵たちを一瞥すると妖艶な笑みを浮かべて身構えて。周囲に張り巡らせた蜘蛛糸を、変幻自在に操りながら攻撃してくる。
 妖力宿した糸が幾何学模様を描き出し、蜘蛛の巣状に展開されて猟兵たちを包囲する。
 糸の強度は鋼のように頑丈で、さしもの猟兵たちでもそう簡単には逃げられない。
「だったら炎で灼くのは、どうかしら?」
 楊・宵雪(狐狸精(フーリーチン)・f05725)が白い狐の九尾をふわりと揺らして、宙に舞い、呪符に力を注いで投げ飛ばす。すると呪符は人の姿を象って、古代の戦士の霊を召喚させる。
「さあ、その蜘蛛の巣を燃やして頂戴」
 宵雪に命じられた戦士の霊は、手にした槍を回転させて炎を生み出し、紅蓮を纏った槍を振るって蜘蛛の巣の糸を灼き払う。
「有難う。さて、反撃と行こうか」
 宵雪の支援に例を述べ、伽耶はすぐさま弓を構えて矢を番え、弦を極限まで引き絞って手を放す。
 蜘蛛姫目掛けて撃ち放たれた矢は、風を纏い、白い鈴蘭の花弁となって。嵐のように渦巻きながら螺旋を描き、花弁の刃でオブリビオンを斬り刻み――舞い散る白に、鮮やかな赤が虚空に飛沫く。
 伽耶のユーベルコードを喰らって、オブリビオンの顔が苦痛に歪む。対する伽耶は、敵の反応にも一喜一憂することなく表情を変えず、相手を見据える眼差しは、刃のように冷たく鋭く、決して隙を逃しはしない――。

「……子供を亡くした悲しみは、私たちでは計り知れないものがあるのでしょう」
 心優しい莉愛はオブリビオンの気持ちに寄り添いながら、その深い悲しみを感じ取る。
 自然豊かなこの場所で、もっと子供と遊びたかっただろう。でもそれは、二度と叶わぬ夢となり、迷う心が今回のような悲劇を生んでしまったのだ、と。
「貴女の無念……私たちの手で晴らしてみせます」
 莉愛が祈りを込めて魔力を集中。その身に刻み込まれた十字架型の聖痕が、光を発して溢れ出し、彼女の身体を包み込む。
「援護は任せて」
 宵雪が莉愛に目配せしながら微笑んで。牙を剥き出し攻撃してくるオブリビオンに、素早い動きで残像を繰り出し、敵の注意を引き付ける。
「――光の矢よ、敵を貫き浄化させなさい!」
 オブリビオンの意識が宵雪に向けられている隙を狙い、莉愛の全身から無数の光の矢が発射される。
 白い翼を大きく広げ、清廉な三日月の柄のマントを翻し、まばゆく輝く光芒が、オブリビオンを呑み込むように相手の身体を貫き穿つ。
「くっ……くはぁ!?」
 莉愛の光の洗礼を浴びた蜘蛛姫は、血を吐きながら痛みに悶え、殺意を宿した双眸で、猟兵たちを憎々しげに睨むのだった――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ヴィルマ・アルメンディア
アドリブ・連携歓迎

(悪夢の元の記憶が無意識レベルでも無かったという事で)

着いたようですが……聞いていた話と違いがありましたわね。
この世界に流れ着く前の記憶すら見せてもらえないなんて
拍子抜けですわ……まあそれはそれとして、
きっちりカタはつけませんと
子を思う母の迷いにつけこむなんて許せませんわ


主祭司へ呼びかけ
貴女の想いを!貴女の歌を!これ以上踏みにじらせるものですか!
メイガスの称号に掛けて!

(戦闘ではUC使用し敵UCの網を燃やし隙をつくるのに専念)
わたくしまだ駆け出しですの、貴女を救えなくとも……
救う布石は打たせてもらいますわ!

骸魂分離させたら
おわかりかしら、私、怒っていますのよ。……逝きなさい!



 水中深くを潜っていけば、水底の奥に沈んだ祠が姿を顕わす。
 ヴィルマ・アルメンディア(月皇のメイガス・f28124)は過去の記憶を失っており、歪んだ悪夢を視せる水の呪いも、彼女に効果を及ぼすまでには至らなかった。
「着いたようですが……聞いていた話と違いがありましたわね。この世界に流れ着く前の記憶すら見せてもらえないなんて、拍子抜けですわ……まあ、それはそれとして」
 何はともあれ、元凶たるオブリビオンの許まで辿り着いたことには違いない。
 ヴィルマは気持ちを切り替え、表情を引き締め直してこの戦いに立ち向かう。
「きっちりカタはつけませんと。子を思う母の迷いにつけこむなんて許せませんわ」
 母妖怪が見せた一瞬の迷い、その隙を狙って巨大な骸魂が彼女を飲み込み、異形のオブリビオンと化したのだ。
 我が子を愛する気持ちは、妖怪も人も変わらない。だからこそ、願いを遂げられなくて悲劇を生んだ無念を晴らそうと、ヴィルマが魔力を高めて意識を集中。
「そう……あくまで抵抗するなら、こちらも力尽くで貴方たちを殺すだけ。その命、子供たちの為に戴くわ」
 妖艶な笑みを携えながら舌舐めずりし、水蜘蛛の姫が糸を伸ばして襲い掛かる。

 周囲に張り巡らされた蜘蛛糸が、幾何学模様を描いて飛翔して、ヴィルマを包囲し、絡め取ろうと迫り来る。
「貴女の想いを! 貴女の歌を! これ以上踏みにじらせるものですか! メイガスの称号に掛けて!」
 ヴィルマが気勢を上げて相手に呼び掛け、熱い想いを魔力に注ぎ、発する力は炎を纏って具現する。
 虚空に翳した杖から溢れる魔力の奔流が、炎の矢となり、二百二十五本もの炎の魔弾を全方向に乱れ撃つ。
「わたくしまだ駆け出しですの、貴女を救えなくとも……救う布石は打たせてもらいますわ!」
 迫る蜘蛛糸の網は炎の魔弾の集中砲火によって灼き尽くされ、ヴィルマは更に魔力を練り上げ、攻撃の手を緩めることなく撃ち続ける。
「おわかりかしら、私、怒っていますのよ。……逝きなさい!」
 燻る想いは怒りとなって、ヴィルマは溢れる力の全てをぶつけるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
動きの起点となる箇所――主に脚を集中的に狙って機動力を削ぐ
少しでも動きを鈍らせておけば、あとが楽だろう
牙での噛みつきは動きをよく観察して見切り、回避を試みるよ
隙が生まれたら、急所を狙って狙撃

――俺にも、生きていてくれたら、と思うひとがいる
悪夢の中に見た、大切だったひと
あのひとが生きて幸せになってくれるなら、自分なんていなくたってよかった

でも、命は還らないんだ
忘れないでいることは、きっと大切だけど
それに囚われることを、逝ったひとたちはきっと望まないよ

だからあんたも、それに囚われないでほしい
救いたいと思った、その願いを歪めてしまうのは
きっと、悲しい事なんだと思うから

……自己欺瞞かな
わからないけど



 不気味に蠢く巨大な蜘蛛の下半身。
 上半身の美しい女性の姿と相俟って、その奇怪な形状を際立たせる異形の存在。
 祠の中に潜む事件の元凶――水蜘蛛の姫を相手に、猟兵たちは次から次へと攻撃を繰り出す。
 鳴宮・匡(凪の海・f01612)は目を眇め、意識を集中しながら狙いを定める。
 手にした銃を敵に向け、銃口の位置を動かしながら、撃ち込む部位は――蜘蛛の脚。
 機動力を削ぎ、動きを鈍らせれば、少しは楽になるだろう。
 相手の挙動を観察し、仕掛けてくるのを待って見極め、攻撃直後の隙を狙う。
 銃を持つ手に力を込めつつ、匡は不意に夢の出来事を思い出す。

 ――俺にも、生きていてくれたら、と思うひとがいる。

 其れは水の悪夢の中に視た、匡にとって最も大切だったひと。
 あのひとが生きて幸せになってくれるなら、自分なんていなくたってよかった。などと自嘲しながら過去の記憶を振り返る。

(「でも、命は還らないんだ」)

 忘れないでいることは、きっと大切だけど。それに囚われることを、逝ったひとたちはきっと望まないよ――。
 亡くした生命は、二度とこの世に還って来ない。だから生命は尊いのだ、と。
 匡は迷いを振り切るように未練を払い、あのひとが託してくれた愛銃に、全ての想いを注ぎ込む。

「だからあんたも、それに囚われないでほしい。救いたいと思った、その願いを歪めてしまうのは――きっと、悲しい事なんだと思うから」

 何を戯言を、と言わんばかりに水蜘蛛の姫が牙を剥き、匡の首筋狙って襲い掛かる。
 匡は敵の足運びからその攻撃を推測し、動きを見切って身を躱す。
 水蜘蛛の牙は僅かに匡の肩を掠めるが、匡は構わずくるりと振り向き、相手の動作が止まった刹那――祈りを捧げるようにトリガーを引いて、銃を撃つ。
 響き渡った銃声は、生への渇望を叫ぶが如く。歪んだ想いを断ち切るように――死への楔を撃ち込むのであった。

「……自己欺瞞かな、わからないけど」

 二度と戻らぬ生命と分かっていても、それを想い続けることほど、辛くて哀しいものはない。
 せめて彼女の心が、その哀しみから解き放たれれば――そんな不幸なひとを見るのは、これで終わりにしようと、匡は再び弾を込め、銃を構え直して次に狙うは――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

響納・リズ
【アリア様(f05129)と】
なんてことでしょう……子供のことを想い、悲しんでいた方がこんなお姿に……。
いいえ、そのままにしておけませんわね。早く元の姿にお戻しして、差し上げないと。

白薔薇の嵐をメインに使いますが、どちらかというと、敵の攻撃を相殺して、蜘蛛の巣の除去等を行い、戦場の立て直しをする流れになります。
隙があった際に本体にも攻撃する形で。
アリア様が攻撃する際は、その援護も行います。

「泣いても笑っても、これが最後ですわ。さあ、始めましょう」
「アリア様、援護しますわ!」
「貴女がこんな姿になってはいけませんわ。子供達が悲しみます」
最後に余裕があれば、元に戻った妖怪さんを癒してあげたいですわ。


アリア・アクア
リズ様(f13175)と
いけませんお母様、為すべきことが変わってしまっています
母ならきっと、考えてしまうものなのでしょうけど
……残念ですけど、それは叶わぬ願いなんです

先に見た悪夢を思い出しながら
お母様、お別れの時なんです
私達が元の姿に戻しますから……しっかり、魂をお見送りしましょう!

クモの巣は頑丈なようですが、リズ様が対処してくださいます
リズ様、ありがとうございます!
支援を無駄にしないためにも、頑張りましょう!

UC使用、インコ達にくちばしや足で攻撃してもらう
クモの部分はインコさんが食べちゃいますよ?

全て終わったら、お子様の最後の様子をお話ししましょう
大丈夫、あの子達は安らかに眠ってくれますよ



「なんてことでしょう……子供のことを想い、悲しんでいた方がこんなお姿に……」
 我が子の死を悲しむあまり、もし生き返ったら、と叶わぬ願いを抱いてしまい、迷う心が更なる悲劇を生んでしまう。
 愛情ゆえに招いた事態、その張本人たる母親も、異形に変わり果ててしまった現実に、響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)は胸を締め付けられるような辛い気持ちで一杯になり、ただ虚しさだけが押し寄せてくる。
「いいえ、そのままにしておけませんわね。早く元の姿にお戻しして、差し上げないと」
 もし彼女を放っておけば、被害は他の妖怪たちにも拡大し、多くの犠牲が出てしまう。
 そんな未来は、誰も望んでいないはず。せめて母妖怪が、本来の自分を取り戻せるよう――それが猟兵であるリズたちの務めである、と。
 オラトリオの聖女は清廉なる純白の翼を大きく広げ、強い決意を心に宿して、元凶たる母妖怪――水蜘蛛の姫との最後の戦いに向けて気を引き締める。
「……貴女方も、私の願いの邪魔をするというのかしら? ならばその生命、子供の為の贄として、犠牲になってもらうわよ」
 水蜘蛛の姫は度重なる猟兵たちの攻撃を受け、既に満身創痍の状態だ。それでも我が子に対する想いの強さが、彼女に力を与えて戦う闘志を奮わせる。
「いけませんお母様、為すべきことが変わってしまっています。母ならきっと、考えてしまうものなのでしょうけど……残念ですけど、それは叶わぬ願いなんです」
 死んだ我が子を生き返らせる、などと歪んだ妄念に駆られる母妖怪に、アリア・アクア(白花の鳥使い・f05129)は非情な現実を突き付ける。
 例え猟兵たちを殺したところで、彼女の子供たちが甦ることなどありえない。
 だがオブリビオンと化した彼女は、正常な思考を失っており、狂った理性は衝動に従うがまま、破滅の道へと突き進む。
 アリアはここへ来る途中、水の夢の中で視た、嘗ての主と過ごした日々を思い出す。
「お母様、お別れの時なんです。私達が元の姿に戻しますから……しっかり、魂をお見送りしましょう!」
 大切なひととの別れは、哀しく、辛く。あの時、過去の記憶が歪な形で視えたのは――きっと母妖怪の迷いと心の叫び、その表れだったのかもしれない。
 だからこそ、余計に彼女を救ってあげないと。アリアは母妖怪の苦しむ心を理解して、彼女を蝕む邪悪な力を排除すべく、魔力を高めてオブリビオンに立ち向かう。

「誰が何と言おうと、私は想いを成し遂げる。その為に、邪魔する者は殺すだけ」
 水蜘蛛の姫の指から糸が伸び、虚空に幾何学模様を描いて蜘蛛の巣状に作り上げる。
 そして広げた蜘蛛の巣に、水蜘蛛の姫は血を注ぎ、糸に赤が伝って不気味に染まる。
 どうやら相手も死力を尽くし、意地でも二人を殺す心算でいるようだ。
「泣いても笑っても、これが最後ですわ。さあ、始めましょう」
 そんな水蜘蛛の姫の覚悟にも、リズは怯むことなく、負けじと気力を昂らせる。
「ええ、その通りです。リズ様、クモの巣の対処はお任せしました」
 リズが援護し、アリアがオブリビオンを狙い撃つ。二人は役目をしっかり決めて、後は作戦通りに動くだけ。
 二人の頭上に、巨大な血染めの蜘蛛の巣が、覆い被さるように降ってくる。
 強靭な糸は頑丈なだけでなく、水蜘蛛の姫の血を宿した妖力で、鋭利な刃の如く、捕らえた相手を斬り刻むほど強化を施されている。
 それでもリズは冷静に、ガラスのフルートを取り出し、魔力を込めて笛を吹き、奏でる音色は華やかに、風に運ばれ、想いを届ける。
「この薔薇のように綺麗に滅して差し上げますわ」
 母妖怪の心の痛みと同調し、溢れる光が音と重なり、真白き薔薇の花弁の嵐となって、迫る蜘蛛の巣の檻を薙ぎ払う。
 赫色の糸は白い花弁によって斬り払われ、鮮やかな紅白の彩が、舞って散る。
「リズ様、ありがとうございます! 支援を無駄にしないためにも……これで全てを終わらせます!」
 糸の脅威が取り除かれて、後はオブリビオンを討つのみだ。
 アリアは四葉のフルートを口に添え、リズの音色に合わせるように、玲瓏たる優しい調べを響かせる。
 するとその曲に、呼ばれるように71羽のインコがどこからともなくやってきて。
 カラフルな色とりどりの翅を羽搏かせ、オブリビオンの蜘蛛の半身を、鋭い爪や嘴で、切り裂き、啄むように集中攻撃。
 そして母妖怪に取り憑く邪悪な蜘蛛は、インコの群れに跡形残らず喰い尽くされて――母妖怪は元の姿を取り戻すのだった。

「大丈夫、あの子達は安らかに眠ってくれますよ」
 子供のことが心配で仕方なかっただろう、母の想いを労わるように、アリアがその後の様子を彼女に語る。
 そうしたアリアの言葉に、母妖怪は安堵したのか、二人に向かって薄っすら微笑み、光に包まれながら消滅していく。
 その時、一言『ありがとう』と、穏やかな声で、別れの言葉を、最期に遺して――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月22日
宿敵 『水蜘蛛川姫』 を撃破!


挿絵イラスト