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絶海牢獄、ヨモツアミオリ

#グリードオーシャン

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#グリードオーシャン


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 それを知る者がいれば、第4環源13世代珪素性有機結合類β3型単分子強化素材なる材質で精製された壁が広がっているのだと、理解できるだろう。
 その名に意味はない。場所が違えば、その呼び名も形式も変わる、別名など幾万通りもあるだろう。それ程に複雑化した広大な宇宙世界からの落とし物。
 それが、円錐を逆さにして海に突き刺したような形の孤島。ヨモツアミオリ。
 その内部は多重の層が下部へと続くミルフィーユを円筒で繰り抜いたような形状を作っている。
 比較的な安全な入り口を確保する海賊達は、手に入れた奴隷を送り出していた。彼らが狙うのは、そこにあると言われているグリモア。
「ッあっぅ、ぎぁ!!」
 水没層と非水没層がまばらに交わっているヨモツアミオリの底へと向かう奴隷。数多くいるその奴隷の一人が、千切り取られて赤く染まる暗い水の中へと消えていく己の腕を見届けて、激痛に叫びを上げた。それに近くにいた深海人の奴隷がその体を掴んで壁へと押し付ける。
 のっぺりとした同色の壁が続く中に、明らかに異常な赤錆び、しかし澄んだ結晶が浸食している。
「……っ、おい! 早く結晶に触れ!」
「っぐ、ぅ……ッ!!」
 腕を失った奴隷は、その先を無くした肩をその結晶に押し付ければ、バギキッ、と乾いた音が響き、その肩に腕が形作られていた。
 いや、腕、というには硬質に過ぎるか。その色合いは壁の結晶と何一つ違いはなく、しかし、細かい澄んだ結晶の腕は、滑らかに奴隷の信号に従順に答える。
 ゴ、ッ! とむしろ生の腕であった頃よりも力強く壁を押し出せば、弾丸のように水中を駆け抜けていく。
「……逃げる……っ、ぞ?」
 深海人の奴隷を掴んで水を掻く奴隷の眼前に、しかし、その動きを知っていたかのように回り込んでいる、骸が浮かんでいた。
 その白い骸のうちから伸びた黒い鞭が、二人の奴隷の胴体を切り裂いて、鮮血に水を染める。一瞬のうちに絶命するような傷。
 だが、幸か不幸か、男の腕には赤錆びた結晶があり、その腕で深海人の腕を掴んでいた。
 乾いた金属音が重なり。
「……ッ、ガ、はぁッ!」
 切り裂かれた胸と腰をまるで直前まであった腹を再現した水晶が繋いで、二人の奴隷は瞬く間に息を吹き返す。
 その腕を伸ばし、前の、上の層へと逃れる為の超科学的な非物質ハッチを目指す。
 海賊が目指すもの。この現象を起こす水晶を生み出すもの。
 不死のグリモア。
 眉唾物のそんなものがこの最下層にあると、信じて海賊は、骸を被る影が蠢くこの牢獄へと奴隷を投じ続ける。
 最後は、朽ち、癒え結晶体の人型へと化し生き続ける。死も生も無い、奴隷の地獄。
 それが、このヨモツアミオリであった。


「つまり、比較的危険な入り口は、フリーパスだね」
 ルーダスは、つまりと言葉の後に、端的に言った。
 コンキスタドール『淵沫』の巣食う水没状態の層が近い場所は、海賊が占領しているわけではない。力に自身のあるものは、そこからメガリスを求めて侵入する事もあるらしいが、未だ最奥まで至った誰かがいない、ということからその全てが失敗している事は察せられる。
「だけども、猟兵たる君たちなら問題は無いと思うんだ」
 ルーダスは、何か案を投じない。息が出来ない水没層での戦闘もどうにかするだろうと、投げやりなようにも見える信頼を勝手に寄せている。
 というわけだ。ルーダスは言う。
「迫りくる淵沫の群れを排除しながら、この島の最奥を目指してくれ」
 そして、不死のメガリスの噂の解明と、コンキスタドールの排除。
 猟兵としての依頼は、それだけだ。とルーダスは締めくくった。


オーガ

 フレーバーが一杯ですが、要するに、水の中で戦ったりして下に進んでいく第一章になります。

 第二章は、最奥のボス。
 第三章は、脱出となります。

 各章に断章を挟みます。

 それではよろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『淵沫』

POW   :    残影
【屍と影の機動力に併せ、思念を読み取り】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD   :    群影
全身を【深海の水圧を帯びる液状の物質】で覆い、自身の【種のコンキスタドール数、互いの距離の近さ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ   :    奔影
【屍の持つ骨や牙】による素早い一撃を放つ。また、【屍が欠ける】等で身軽になれば、更に加速する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「出来るなら、奴隷も助けてやってくれ」
 猟兵達と乗り合わせた鮫の深海人ナガハマは、そう言った。
 この島が地獄と呼ばれる理由、いやそうと知られているのはここから逃げ出した奴隷も少なくないからだ。
 海賊の監視していない入り口もある、そこから逃れるのだ。コンキスタドールがいようと水晶に死ぬことはない。
 そうして、そのまま外へと逃れてどこかの島へと流れ着く事もある。だが、この島を離れれば水晶は、砕けて消える。それまで体を補っていた水晶が全て海水に攫われて、辿り着くのはその残骸だけだ。辛うじて一命を取り留めてもそれまでと同じように生活は出来ない。
 ナガハマは、それがこの島の水晶の親である最奥から離れたからだと告げる。
「不死のグリモアだか知らないが、それを取り出してどうするにも、ここに潜ってるやつらがくたばっちまう」
 あの少年の親も含めて。
「あんたらならどうにかなるかもしれない」
 ナガハマ自身、猟兵に治癒された一人だ。その効果は身をもって知っている。
 だからこそ、望みを猟兵へと託す。
 同様に乗り合わせた少年の家族もそこに囚われている。運が良ければ見つかるはずだ。
 ナガハマは鉄甲船を護ってもらう為に遺跡には潜らず、少年と少女とともに残る事になっている。
「危険な役回りを押し付けてすまねえ」
 そういって、頭を下げたナガハマに各々に反応をしめした猟兵達は、黒い闇を湛える遺跡の中へと足を踏み入れるのだった。


 第一章、水没層と非水没層が重なる遺跡の中を進みます。

 敵を倒しながら奥へと進んでいく、シンプルな場面です。

 フレーバーとして。
 水没層は、最深部に近づくほど多くなり、コンキスタドール淵沫の個体数も増加します。
 非水没層はコンキスタドールがいない層で奴隷たちにとってのセーフティゾーンとなっています。
 水晶化している人を助ける等も出来ます。

 好きにリプレイを書いていきます。
 それでは、よろしくお願いします。
ヴィクトル・サリヴァン
成程、地獄とはよく言ったものだ。
けど俺達なら何とかできる、そう信じてくれてる人もいる事だしね。
さあやれる限り頑張ろうか。

水没層では素潜り、水泳の技術活かし交戦避けつつ移動。
避けられないならUCで重力と渦を合成、渦の中心に敵を圧し潰して攻撃。
速度が上がっても根本的に逃れる力がなければ脱出無理だよね。

非水没層で奴隷発見したら活力の雷で治療行う。
そのままで治療できるならいいんだけど…無理なら結晶砕いてからかなこれ。
感覚無いならいいんだけども…
許可取った上で腕など生命維持に直接係らない部位が置き換わった人で治療できるか試し、その後胴体等に治療必要な人に取り掛かる。
一人ずつ慎重に。

※アドリブ絡み等お任せ



 巨大な魚の頭骨を被った黒い海藻にすら見える黒影が、滑るように視界を横切っていく。
 淀む暗闇が液体化したような水の揺蕩いに、上向きの鼻腔から水泡を膨らませてシャチのキマイラは、それが返ってこないかと身を乗り出そうとして、何かに気付いてその手を引っ込めた。
(っと、危ない危ない)
 突こうとした壁に見えた赤錆びた輝き。
 傷を癒し、体を水晶に作り替えるこの場所の特徴の起点たるそれ。ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は、それに触れようともしない。
(まあ絶対、危ないやつだよね。これ)
 触れないよう過ぎていった淵沫を確認しながら、横目でそれから感じる何か不吉な予感に僅かに背筋に冷たい物を走らせていた。
 壁を蹴り、太い尾を揺らして重い体も浮力に任せ、慣れた挙動で水中を進む。
(地獄か、成程ね)
 物陰や狭い部屋を通って上手く淵沫を避けて、遠くを過ぎていったその影を見送り、僅かに手を振った。
 中々に厄介なコンキスタドールだ。数が多い。というのもあるが、それ以上に感知範囲が広い。
 数度、距離を測り損ねて交戦した推論としては、こちらの動きを先読みしている節がある。思考を汲まれている感覚だ。
 右から攻撃を行う、というイメージをした瞬間にはそれに準じて動いている。同じように、淵沫を発見したという意識を、その察知の範囲で行ってしまえば即座に捕捉されてしまう。
 だが、ヒトの骨を纏う淵沫はほとんど見かけなかった。
 殺されたとして殆どが死なない。この島の内部へと立ち入れば死者も同然、既に死んだ者が死ぬことはない。終わらぬ患苦を与え続けられる。
 それで、奴隷の地獄。上手く言ったものだ、とすら思う。
 肯定する気にはなれないけれども。
 ――ゴ、ッ。
「ッ!」
 とその時、天井から水にくぐもった音が響く。上からの奇襲かと振り仰いだヴィクトルが見たのは。
「おい、あんた」
 スリムな宇宙服のようなスイムスーツに身を包む人間の姿だった。
「こっちだ」
 スーツの機能か、放たれる声を残して、彼は反転して開いた天井の奥へと消えていく。
「階層のハッチがこっちにある」と告げる彼に敵意は感じない。
 先ほどよりは狭い空間。恐らくは配管や設備のあった場所だろう道を進んでいく最中に、ヴィクトルは前の通路から流れてくる淵沫の姿を見る。
「……、くそあいつら」
 男も遅れて気付いたのか、進路を変えようとするのをヴィクトルは押し留めた。ハッチの場所が分かっているなら、ここで道を変えるのはメリットが少ない。
 ひくひくと尾の先を揺らす。
 数は三体。壁や天井は、この水圧にも一切破損していない。元宇宙船の耐久性は健在のようだ。
 瞬間、淵沫が一斉に加速する。狙いはヴィクトル達。
 ボ、ギュア!! と水幕を切り裂くそれに、ヴィクトルは手を翳す。届く。
 尾に揺らいだ水の渦流がイメージを明確にする。瞬間、一斉に離反せんとした淵沫を襲ったのは、強烈な渦だった。いやただの水流ではない。
 重力と合成した異常現象。水流の外からの斥力と内側の重力によって、先読みの動きすら意味を為さず、とたんに渦の中心に引き寄せられて、重力の咢が彼らを咥え込んだ。
 ゴ、ッバギッ!! と連続する歪な破砕の後に残るのは、それらが纏っていた骸の残骸。攻防すらなく、一方的に叩きのめして見せたヴィクトルに、成り行きを見守っていた男は、ゴーグルの下の眼を丸く見開いていた。
 淵沫を一纏めに圧し潰した後、ヴィクトルは導かれた二重のハッチを通って、久々に息をしていた。
 男が呆れたように言う。
「あんた、逃げてたんじゃないんだな」
「まあ、うん。いや、逃げてたけ、ど……」
 大気の中に戻り、漸く声を出して返すその言葉が、僅かに途切れた。
 この島、船にあった物か。スイムスーツの下から現れた、凡そ半身が結晶となっている肌にヴィクトルは目を見張る。
「――これは、重症ランク更新かな」
「あ? ああ、これか」
「うん、治療させてもらっていいかな?」
 と自らの体を指す男に、ヴィクトルは手に僅かに紫電を走らせる。
「治す、って」
「上の方でお腹が丸々結晶になってた人も治せたから、キミも」
 治せると思う。
 そう告げたヴィクトルに、男は右腕を差し出した。指の数本が結晶になっているだけの腕。
「見せてくれ」と確かめる視線を受けながら、ヴィクトルは雷電を走らせる。ビキ、キ、と砕ける水晶に変わるように、指が生える様に男は驚愕に目を見開き、拳を動かしてその調子を確かめた。
「どうかな?」
「……ああ、治ってる」
 信じられないとばかりに彼は、己の手を見つめている。
 だが、「それじゃあ、他の部分も」とヴィクトルが口を開くのに先んじて、男は「追いて来てくれ」と歩き出していた。
 振り返り、言う。
「治してやってほしい奴らがいる」
 その言葉に、ヴィクトルはそれが示唆する事を悟っていた。恐らく、彼がこうして助けたのはヴィクトルだけではなく、そして、ここから先にも後にも動けない奴隷がいるのだろうと。それも、恐らく彼と同等かそれ以上の重傷者。
「それは」
 中々骨が折れそうだ。ヴィクトルは呟いてその背を追うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
【pow】
アドリブ・連携・絡みも歓迎!

ふーん、こんなものがねえ
でもタダで治してくれるってわけでもないんだから便利なんだか不便なんだか
触れても安泰そうなら結晶をつんつんと
判断基準?勘とコモンセンス(第六感+α)!

さーてじゃあ奥を目指そうか!
餓鬼球くんたちとドリルボールくんたちを放って最短最速のルートを開拓しよう
同時に奴隷くんたちの安全エリアへの退避ルートもね!
安全そうでそれが最短最速ならトンネルも穿っちゃおう
采配の基準?それはもちろん勘(第六感+α)!

魚くんの相手は思考も本能も無い球体くんたちに任せよっと
どっかでこういうゲームがあったよね
通路一杯の大きな球が敵をパクパクたべてっちゃうやつ!



「く、そ……ッ、が!」
 拾ったパーツを継いで接いだ潜水スーツの内側から叫びが上がっている。誰かに助けを求める声ではない、そんな希望などは初めから持っていない。
 それはただ己を鼓舞する為だけの叫びだった。
 死んだ仲間をその腕に掴んで、放り投げるように壁に生えた水晶へと叩きつけて、振り返る。
 姿は見えない。だが、振り切ったわけは無いだろう。あの骸を被る怪物がそうそう獲物を見逃す筈がない。
「……く、ぁ」
 背後で水晶に浸食される仲間の声が聞こえる。死ぬ前に間に合ったらしい。意識が戻り次第ここを離れなければ、あの骸がまた――。
「へえ、ホントに触ったら治るんだ」
 襲い来る。
 そう考えた奴隷の耳が、そんな幼い声を不意に拾い上げていた。いや、かすかな物音をも拾わんと神経を尖らせていた奴隷にとって、それを拾わぬなど出来ない事だった。
「治ってる瞬間は初めて見るなあ」
 振り返る。
 失せた肌を覆っていく仲間の様子を食い入るように見つめるのは、声から想像しえた通りの幼い童子であった。
 桃色の髪に、黄金の瞳。
 拾った装備か、誰かに託されたか。首に着けて耳にヘッドホンのように水中に声を発する装備を付けた少年は、仲間から水晶の方へと視線を向けていた。
「……だ、れだ?」
 奴隷の一人か、細いその体でここまで来れるとは思えない。という思考と、次元を折りたたんだような物理的な距離に依存しない隔絶の向こうにあるような畏れの本能が、その声を震わせている。
「ボク? ボクはロニ・グィー」
 そう名乗る少年、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は、水晶へと伸ばそうとした手を引き込めて、こう言った。
「まあ、……神様だよ」
「――は」
 あっけらかんと神様、と言ってのけた少年へと、それまで奴隷の声を震わせていた感情が薄れていき、次に表出したのは嘲りと怒り、そして呆れだった。
 自らを神様と名乗るそれは、依然として周囲に警戒も見せず水晶を見つめている。
「……便利なんだか不便なんだか」決して触れようとはせず、しかし、その警戒に反して間近に顔を寄せ、仲間の晶体とそれを見比べる。「こうなっちゃうんだもんね」
「おい、うだうだ言ってねえで、早く――」
 ゾワリ、と、悪寒が走る。暗い底から何かが足を絡めて這い上がってくるような。
 死の恐怖。
 凍り付いたように強張る首を回して、喰らい水の向こうを見つめる。
 通路に浮かぶ骸の白と、影の黒。
 ああ、そうか。と奴隷は顔を顰めて悟る。全身を水晶に埋めて生きるか、死ぬか。
 これ以上、己の体を失いたくはなく、しかし、命を失いたくもない。
「うん、おっけー」
 そんな葛藤に惑う奴隷へと、一片の悲壮もないロニの声。
「じゃあ、特急で終わらせよう!」
 何を、と問うよりも早く、ロニの手から小さな球体が水中へと押し出される。浮遊するように水を進むそれは、ギュパ、ッ、と瞬く間に通路全てを埋める巨大な球体へとその姿を変えていた。
「……」
 唖然とする。その光景に、ではない。その球体の壁、速度を増して遠ざかっていくその向こう側から、ゴギャ、ッバギ!! と硬質な骨の砕けるような、そんな音にだ。
 それが通った後に、淵沫の姿は無く。
「多分、壁とか壊したらダメっぽいから、それは諦めてね!」
 神。その自称を、侮りなど出来ない。何事も無かったかのように、その五体満足の体を水中へと蹴り出したロニは、変わらぬ口調で飄々と告げた。
「どっかでこういうゲームがあったよね」
 パクパク、迷路で球が敵を食べてっちゃうやつ。「なんだっけ?」と問いかけるロニに、返事を反す事など出来るはずもなく。
 奴隷はただ曖昧に引きつり笑って、その後を追うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レイ・オブライト
ハ。なんとも親しみの湧く話だが

またか

死にながら限界突破で進む他ねえだろう
敵は発見次第仕掛ける
暴れてる間に、水中に適す他の奴が多くを救えんなら上等だ
敵の近接攻撃に合わせ殴るなりで砕こう
囚われてるだの話もあったな。壊して良さげな扉は壊すが
上下が非水没層(最低限上で判断)なら、天井や床を壊さねえよう属性攻撃(電気)で応戦
中の黒いのを焼き切ればなんとかなんじゃねえか

急ぎで割り入る必要がありゃ【UC】で速攻
ヤバい状況下の奴隷がいたり敵が階層突き破りかけてたり。んな場合だ
即死ぬ程でない怪我人は水晶に触れさせず担いで救助
だが
オレ自身死なねえつっても、時間切れまでには非水没層へ邪魔したいところだな

※諸々お任せ



 肺胞に沈み込んだ、暗い闇中を空気代わりに満たすそれを、雷電の熱に蒸発させては咳き込むように吐き出す。
 ゴボリ、と。
 逃げるように天井へと上ってはどこかへと這っていく泡の名残を、紫煙を揺らすように閉じた唇の隙間から吹き伸ばしていた。
 全身にうっ血が浮かんでは、拒むように火花が散っては生きた肌へと起き上がっていく。息の出来ぬ苦しみだ。全身の力が遠く失せて、代わりに無表情な痛みだけが全身を一つの肉塊へと変えてくような苦しみ。
 肺が、幾度出来もせぬ呼吸を求めて蠢いたか。嚥下した水の塊に咽せ、雷電がそれを排出させての繰り返し。
 砕けた白い骸が視界に浮かんでいる。握ったままのその破片の一つを砕き割れば、微塵に散った白は黒の帳へと消えていく。
 レイ・オブライト(steel・f25854)は、緩慢に落ちていく体に走る轟雷に命を叩き起こしながら、静かになった冷水の底に脚をつけては、蹴り出す。
 液体に満ちた地形は、知らぬものではない。例えば、以前の島で、水に似た力場に満たされた儀式場。そう遠い昔の話ではない、全く同じ感覚とはいかないまでも、レイに親しみを湧かせるには足る共通点だった。
 とはいえ、それに愉快な感情を抱けたのも上層でのみ。
 下部へと潜るほどに増えていく水没層に、その時よりも長い窒息に晒されれば、苦痛そのものに慣れたレイとしても鬱屈するものはある。
 水を掻く。
 壁を蹴る。
 それだけですら、体の自由が途切れるような緩慢な、しかし強烈な苦しみが脳を、肺を握りつぶしている。
 そうして、静かな水の中を進む、その時。
 どこかで音が聞こえた。
 水を伝うのか、壁を伝うのか。震動がレイの鼓膜をゆらす。
 人の声。
 それと、戦闘音。
「……っ!」
 それを知覚した瞬間に、レイの体は跳ね飛んでいた。水中に撒き散らした雷電の欠片が、眩く軌跡に傷痕を見せながら暗い通路を照らしつける。死にゆく体を轟く心臓で動かして駆けるレイの視界にその姿が漸くに映る。
 見えた。
 一人の奴隷、対して骸を被る黒い影、淵沫が五。
 それらが全て、奴隷を弄ぶようにその周囲を泳ぎ、そして、それをレイが見た瞬間に全ての淵沫の動きが変化した。
 まるで、レイが気付いた瞬間にそれを共有したかのように。迫る脅威へと淵沫がその黒い影を蠢かせた、その瞬間。
 ギ――。
 瞬く雷光が緩慢に揺れて進むような一瞬。その刹那。
 一体の淵沫に着弾したレイの両脚がその骸を壊して、迸る雷撃が幾条もの雷槍となって影を打ち払うよりも、更に疾く!
 ュ、カッ!!
 轟いた心臓がレイの体を突き動かしていた。足蹴にした骸に罅が走る。コンマ零秒以下の時間に砕け散るだろう足場を蹴る脚に、轟雷が駆け巡る。その衝撃が脚の布を吹き飛ばし、強靭な肉を裂き斬る程の過剰な活性のままに、レイの脚がその体を打ち上げた!
 音は追い付かない。感じたのは振動だった。
 猛烈な速度と水の抵抗に、拳を握った右肩が外れ、ぶれた指先が千切れ跳んだ、その振動。
「――ッ!!」
 気にしてなどいられない。これらが、思考を読み取り動くのであれば、奴隷を助けようとしているレイに対しての有効打は、奴隷を狙う事。
 この一瞬の有利を逃せば――奴隷は殺されていただろう。
 淵沫がレイを知覚して、時間にして一秒。レイが淵沫を全て撃ち倒した時間がそれだ。
 正しく瞬きの間に駆け抜けたレイは、外れた肩を強引に治し、気を失っている奴隷の腕を掴む。
 ハッチはそこにあった。油断したところを狙われたのだろう。
 開いたハッチから身を引きずるように、非水没層へと奴隷を引き上げたレイは、ふらついた脚にそのまま床へと倒れ伏しそうになるのを、寸前で持ちこたえた。
「……まだ、だ」
 抗いがたい睡魔に似た感覚の鈍麻に落ちる瞼を、割れた脚の傷に指を差し入れて走る鋭い激痛にこじ開けて、その奴隷の胸へと手を置く。
 ダグン、と跳ねる振動が伝わる。
 まだ動く鼓動に、ふ、と息を吐いて。
「――、……」
 ドサリ、と奴隷の傍へと今度こそ、崩れ落ちたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セゲル・スヴェアボルグ
さて、既に起こった事象に対して、どこまで効果があるかはわからんが……
とりあえず欠損と水晶を鎧の力で俺に移し替える。
面倒なので、できる限りの人数纏めてだ。
当然、その前にUCを発動しておくぞ。
再生すれば、そのうち水晶も勝手に取れるだろ。

回避されるのであれば、当たるまで攻撃を続ければいいだけの話だ。
奴隷たちの受けた分とアイツから受ける分のダメージを、きっちり熨斗付けて返してやるとしよう。
水中なら、重いもんでもぶん回せる。
抵抗?そんなものは知らん。
兎に角ぶん殴って、さっさとそこらの奴隷も救出せんといかんからな。
悪いが、海の藻屑と消えてもらうぞ。



 苦痛が胡座をかいた全身を貫いている。
「……ッグ」
 くぐもった声が、当人以外には聞こえないほど微かに噛み締めた歯の間から零れ落ちた。
 バキ、パキン――、と乾いた音が周囲から連続して発せられる。
 腕が半ば程から千切れ、即座に再生する。両大腿の先が潰れて消えて再生し、直後にその上から胸までが捻れて圧搾されては再生する。
 息は二度に一度乱れて意味を為さず、感じる明度が激しく移り変わって白と黒の転換を繰り返す。
 脳へと浴びせかけられる激痛、と呼ぶにもあまりにも激しすぎる痛み。セゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)は、そのあぎとの下を這う髭毛に大粒の汗を垂らしながらも、しかし、頑として動じず耐え続けていた。
 非水没層、集落といえるほどに奴隷が身を潜めるその中心で、彼は周囲の奴隷の体を侵す水晶が砕ける音を聞く。
 奴隷達には何が起こっているのか、理解は出来ないだろう。セゲルが身に纏う鎧の効果によって奴隷達の欠損を肩代わりし、即座に己を回復させている事など。
 時折、集中するように肘着いた体を身動ぎさせるのが、痛みと失った構造によるものだとも気付かない。
「ッ……」
 結晶化した腕が砕けて、生身の肌がそこに戻れば、その瞬間にセゲルの腕が引き千切られて潮煙が満ちるまでの数瞬、激痛がセゲルの脳を焼く。いや、潮煙がそれを回復したとてさも傷があるような幻の痛みは残っている。
 四肢だけでなく、頭から爪の先にまで延々と繰り返す痛みの嵐に、もはや本物の痛みか、幻痛かすら分からない。
 鎧の下、その生肌から内側に欠損していない場所など無かった。裸でその効果がもたらされているならば、とんでもなくグロテスクな光景を目にする事になるのだろう。
「……っォ、ぁ」
 時間感覚が鈍麻する。今、どれ程時間が経ったのか。内蔵が消える感覚に横隔膜が痙攣し、漏れでる声が水晶の破砕音に紛れて消える。
「――、ハ」
 だが、セゲルの口許には不敵な笑みが浮かんでいた。激痛が甘い感覚に変わったわけでも、それを快と錯誤している訳でもない。
 奴隷の地獄が、セゲル一人が抱えきれる程度の絶望でしかない、というのなら。
「……、ああ、生温いな」
 痛みに向き合っていた目を開く。
 いつしか激痛は、水晶の音と共に消えていた。後遺症のように全身に蟠る幻痛を、頭を数度振るい撥ね退けて、セゲルは寛闊と立ち上がる。
 掛けられる感謝の声に、手を上げ返しながらその手に槍を作り出し向かうは、次の層へのハッチだ。
 この世界に落ちて尚生きる、高度文明の名残が生者の接近に反応して道を開く。
 空気の感覚が消え、感じる重みが薄れてセゲルは水の中へと進み出る。
(……早速か)
 踊る骸に黒い影。
 手にした槍を浮力の恩恵のままに巨大化して、振りかぶる。
 回避されるのなら、多く振るう。
 液体の抵抗など引きちぎらんと、強引に邪魔を打ち破る。
 さっさと他の奴隷も救わにゃあならん。
 故に。
 その身に宿る力を出し惜しみもしない。
(悪いが、海の藻屑と消えてもらう――!)
 豪槍が海を震わせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリエ・イヴ
【🍯】
メガリスを求めて侵入する事も、ね
それだけで行く価値はある
なぁアトラム
海の中もお前がいれば迷わず行けるだろ
任せたぞ

人に為にと張り切るつもりはねぇが
そこにいるヤツらを放置する気もねぇ
何せ今はうちの船医サマと一緒なんでな
水没層にいるヤツを見かけたらぐいっと襟首を掴み未だアトラムの方へ
怪我してんなら獲物は近くにいるはずだ
口元に獰猛な笑み浮かべ
さぁ、どこから来るかと野生の勘を働かせる

敵の攻撃を見切り回避したら
アハ・ガドールをぶんまわして範囲攻撃
敵を蹂躙する
悪いが後ろに行かせるつもりはねぇ
アレは俺のなんでな
諦めて貰うぜ、なぁハニー?
攻撃を避けて近くに来るなら好都合【一撃必殺】たっぷり食わせてやるよ


アトラム・ヴァントルス
【🍯】
不死のメガリス、いいですね。
非常に興味がありますのでアリエと共に参ります。
そうですね、水中はセイレーンである私に道案内は任せてください。

道中、コンキスタドールに追われる奴隷の方に遭遇。
アリエ、すみませんがあの方怪我をしているようなので保護したいのです。付き合ってくれますよね?
こちらが真剣に頼むなら、彼は許すと信じている。
アリエが敵を引き付けてくれている間に奴隷の方の元へ急ぎ、非水没の場所まで運びましょう。

自分は医者でこれから治癒すると伝えて安心させ、
その後早くUC【ギタギタ血まみれ外科手術】を使用します。
肉体改造で強化することでこの場を生き残れるように。
こんなところで死なせはしません。



 不気味な静寂に包まれている。
 暗い波が上下左右に体を揺する。波が水面にだけ揺らぐ物ではないことは今更な話だが、この空間の閉塞感と暗さが相乗し、まるで巨大な手に握られ、揺さぶられているような不快な心地を与えてくる。
 いや、本当に彼を不快にさせているのは、その波の閉塞でも、静寂の暗さでもない。
「……あ、ぐ」
 呼吸器と発声機を兼ねたのだろうメットの下からくぐもった声が響く。
 怪我人、致命傷を負っていた奴隷が無重力に似た浮遊感が満ちる部屋の床に横たわっていた。
 その腹を埋めていた鋸で強引に水晶を砕き、肉と骨を無理矢理に繋ぎ合わせて、活性剤やらを混ぜ込んだ薬剤を投薬。
 治療と呼ぶには荒々しく、そして、不法性の見える処置だが、奴隷は僅かに血色を良くしている。
(……、呆れたものですね)
 アトラム・ヴァントルス(セイレーンの闇医者・f26377)は眼鏡の弦を押し上げて、踊る黒い髪を撫で付ける。
 その不機嫌のもとはそれだ。いや、奴隷自身ではない。
 奴隷を放り込んでは危険なばかりで殆ど意義を成さない探索を、続けるばかりの海賊への呆れが、原因だった。
 別に人道に反するな、という訳ではない。
 成果無く判を押したような策ばかりで資源を浪費し、その怠慢を常態化しているというその無駄に、呆れを覚えずにいられないのだ。
 憂うように細めた眼の睫毛が僅かに揺れる。振動がした。
 ああ、近くで錨を振り回している男がいるのだろう。その場のノリで行動を決める馬鹿だ。運だけはよく、それでなんとかやって来たという成功経験があるが故に、治しようがない。
 御しやすいが、その分他からも御されやすい。厄介を引き連れて来なければいいが。
 思案しながら、左手の調子を確かめるように数度握り込んだ。
 このまま、ハッチを越えて非水没層に避難させる。
 腕は問題なく動く。錆び付きは無いようだ。

 一方、己の船の船医に馬鹿だの運だけだのと思われているとも知らぬ当人、アリエ・イヴ(Le miel est sucré・f26383)は、予想通り、その錨を振り回していた。
 左腕に掴んだ、意識の無い奴隷を庇いながら、器用にも淵沫を迎え撃っている。
 とは言え、手立てが無さそうなら捨て置こうとすら考えていたアリエを留めて、彼らの保護を優先したのはアトラムだったりする。
 それに付き合ってくれと頼まれたから、治療の間露払いがてら他の奴隷を探している彼からすれば「お前が文句言うのか」と苦言を呈するような話だ。
 まあ、所詮は知る由も無い話。
 ギャ、ガララッ!! と火花散らすような音を重く響かせて鎖の輪が掻き鳴らされる。
「……、ッ」
 その先にある錨が、骸を纏う怪物。コンキスタドール、淵沫を砕き潰すが、その衝撃の間隙を縫い、最後の一体がアリエ目掛けて突貫する。
 ギュ、ゴァ! と波を裂き迫る淵沫にアリエは、握った鎖を引き抜くように錨へと強引な慣性をもたらしていた。
 淵沫を砕いて静止していたそれが豪然と淵沫の背後目掛け、駆ける!
 だが。
 瞬間、黒い触手めいた影が蠢いて勢いをそのままに鋭角を描くようにその軌道を変えていた。非生物的な動きに自らに迫る錨を受け止めた一瞬、アリエはその姿を見失い――。
 僅かに口から漏れた泡が、暗がりの白を映していた。
 背後、受け止めた錨を手放し、アリエは水を蹴り、銅を捻り、背中へと回り込んでいた淵沫へと、裏拳気味に鎖を握ったままの拳を突き出した。
 沈み。骸が砕け、その下の影へと破壊の一撃が撃ち込まれ。

「よお、待たせた」
 ハッチを潜り、腕に奴隷二人という釣果を纏めて抱えたアリエは、そこに待っていた船医へと軽く手を上げた。
「先にハッチ探してて良かったぜ。迷うとこだった」
「いえ、お付き合いいただき感謝いたします」
 ありがとな、と告げるアリエにアトラムは返答して、アリエが床に寝かせた奴隷を見つめていた。
「不死のグリモアなあ、お医者さんから見てどうだ?」
「……ただ澄んだ錆びにしか見えませんが、結晶が補完した内蔵の下部には異常のない消化物。血流も見えませんが、血管がその外部で繋がっていなくとも滞りなく循環しています」
 水晶を砕けば、傷は傷として再現される。それをアトラムが治療する間にその断面を観察はしていた。
 結論として。
「もし、これが全てグリモアの能力なら、不死のグリモアと言っても差し支えはないのでしょう」
「へえ、含んだ言い方だな?」
「……ぅ、あ」
 片眉を上げて聞いたアリエの声を、呻く声が遮った。
 気を失っていた奴隷が目を覚ましたのだ。アトラムは、奴隷の意識反応を確認しながら鋸を構え、アリエに言う。
 水晶が治癒を施しているのではないと。
「水晶は、大本の力を伝播させ拡大する中継点としての機能のように、私は思いますね」
 奴隷の肉を繋ぐ水晶の砕ける音が、二人の耳をつんざいた。
 ザ、ザ。と聞き慣れた音が微かに聞こえたような気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『潮騒』

POW   :    青い鳥
【朽ち続ける苦痛を伝播させ、心身を砕く叫び】を聞いて共感した対象全てを治療する。
SPD   :    不死鳥
【自壊と共に破壊を振り撒く、擦れる翼の羽音】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
WIZ   :    極楽鳥
【錆びた水晶を生成し、侵食させる砕けた欠片】が命中した対象を治療し、肉体改造によって一時的に戦闘力を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はルーダス・アルゲナです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 波の音が広がる。
 ザ、ザァ……、と反響を残して、水晶の擦れる音が潮の奏でる音のように寄せては返す。
 そこは、広い空洞だった。いや、周囲を見ればその空間が、幾つもの階層が崩れて出来た空間だと知れるだろう。
 赤錆びた水晶が覆う天蓋の下。
 瓦礫と水晶で作られた、鳥の巣のような広い空間に、鳥はいた。
 錆び澄んだ水晶の体を震わせ、潮騒を奏で。
 狂う意思のままに、幸福あれと声を震わせる。
 破壊と治癒を延々と繰り返す、かつてこの島に墜ちた災いが、広い箱庭でその翼を広げた。


 第二章、潮騒との戦闘です。

 痛いですが治ります。ご自由にプレイングください。
 好きに書きます。

 よろしくお願いいたします。
ロニ・グィー
【pow】
うーん、これは…持って帰れそうにないなあ
なんか反抗的だし、お話もできそうにないし
奴隷の子たちは他の子にお願いするとしてー……
じゃあ壊すね!

んもー!うるさーい!
そんなに痛いんならそれを和らげてあげるよ!
食べちゃえ!
って各種耐性で耐えながら餓鬼球くんたちにあの子の苦痛を食べてもらって和らげよう
おかわりが必要ならじゃんじゃん出すよ
効果があるようならさらにUC発動!
餓鬼球くんたちに追加でドリルボールくんたちも巻き込んだ嵐になってドーンッ!とぶつかってガリガリ粉砕するよ!ついでに食べさせて
どこまで再生できるか試してみよう!

あ、砂になるまで砕いてダメそうなら他の子たちに頼るよ


ヴィクトル・サリヴァン
…治療頑張りすぎて疲労が割と厳しいかも。
でも道中粗方救えたし、後は遭遇、治療されなかった奴隷がいない事を祈りつつ、もう少しだけ頑張ろうか。
…それにしても変わった場所、あと音だね。聞き入るとまずそうだ。

可能な限り速攻狙い。
高速詠唱からの水属性魔法で水の鞭を生成、潮騒に叩きつけ床か壁に叩きつけ隙を作る。
生じた隙を狙い銛を全力で投擲、その体を地形に縫い止めつつUC発動。
さあ盛大に噛み砕け、水のシャチならば破壊も苦痛も問題なし。
煩く叫ぶ潮騒の口、頭部を噛み砕け。
疲労に痛みは少々きついがここの奴隷に比べれば短いし。
彼らに恥ずかしい所見せられないからいつも通りのペースで立ち続けるよ。

※アドリブ絡み等お任せ



 風を切る音が叫びを放つ。
 震える体が潮騒となる。
「変わった場所だね」
 瓦礫が乱雑に一面に敷かれた床。数層分の瓦礫が水晶の上に積もっているらしいそれを踏みながら、シャチの獣人は赤錆びた空を飛ぶ鳥を見上げた。
「……あと、――音」
 場を埋め、反響して跳ねる声とも音ともつかぬ絶叫が全身に叩きつけられる。
 聴覚器官を貫いて、脳をざりざりと削り取るような不快が体中から湧き出でる。いや、不快、というよりも痛みか。
 あまり、この音に聞き入るのはまずそうだ、と判断しながらも耳を塞いでも、振動が蝕んでくるのだろう事は分かる。
 これまで治療した奴隷達からの話から、ある程度、その能力について把握が出来ている。
「っ、と」
 僅かにふらついた足元に、シャチの獣人、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は、疲労から来る眠気すら自覚して頭をふる。
 そんな彼の顔を覗き込むように腰を折る少年が問いかけた。
「ん、どうかした?」
「いや、この音結構クるなって」
 力を入れる、体を頭上から垂らす糸に引っ張り上げられるような状態を意識する。殆どの奴隷達は上層の非水没層に待たせてはいる。ただ、この恐らく最下層、この近辺にいた奴隷は、近くに潜ませている。
 この深さまでくる実力者。とはいえ、これの相手をさせられる程万全ではない。
「あー、うん。煩いよねえ」
 とピンク色の髪をした少年が、自分の腕の感触を確かめるように二、三度握りながら「じゃあ」と告げる。
「壊すね!」
「うん、――速攻でやろう」
 ヴィクトルは頷き、波の音を砕かんと、空の鳥を睨み上げた。

 あの子達の希望、みたいなもんだもんねえ。
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は、顔色に一つも出さずにヴィクトルに同情めいた感情を差し向けていた。
 道場というよりは、応援、に近いか。
 実質、助けた奴隷たちの治療をヴィクトルへと一任して、まあ悪く言えば放り投げた結果、救世主的な視線を向けられる結果となった上、ヴィクトルのおおらかな性格が災いしてかそれを自然体で受け止めている。
 故に、彼らに弱っている所を見せじと立っている。流石に間近にいれば、多少は分かる。
「もー、損しちゃって」と直接は言わない。ロニは小さく口に出して、首を傾げたヴィクトルに微笑んで見せる。
 いつもなら、「えー? なに強がっちゃってんの?」と煽り倒している気がするけれど、しかし、ロニの意識の大部分は、ヴィクトルには向いてはいなかった。
 握り、確認した腕から力を抜く。
 叫びが放たれた瞬間、その腕が砕けたのをロニは確かに見ていた。いや腕だけではない。腕から走った亀裂が胸を渡り、首にまで至った感覚が確かにあった。
 にも拘らず、そこに傷は無い。いや、傷はもう無い。
 砕かれて、肉と骨とに分断されたそれは、誰でもないあの潮騒に癒された。
「あー、うん。煩いよねえ」
 痛い。
 そう響いた声は、果たしてロニ自身のものか、それとも、その叫びを放ったあの鳥のものか。
 どちらにせよ、ロニの笑顔に僅かに険を覗かせたのは、その押し付けであった。
「じゃあ」
 メガリスだったとて、持って帰れそうにない。いや、違う。持って帰れそうかどうかなど考えてはいない。
 反抗的、話も通じそうにない。自分を押し付けてくるばかりの狂った性分。
 持って帰る気は、失せた。
「壊すね!」
 瞬間に現れるのは、真黒く蠢く球体の群れ。
 ゴ、バッ!! と一斉に潮騒へと全てを喰らう餓鬼球が殺到する!
「そんなに痛いんなら、それを和らげてあげるよ!」
 全部、食べちゃえ! 声に応じるように、奔る黒球たちが咢を開き、その赤錆びた体に食らいつく。
 ゴガ、ギャギャ!!
 砕ける音と、黒球に赤錆びた欠片が跳ねて、浸食しあう。潮騒にもたらされる苦痛を、その概念を喰らう餓鬼球と、絶えず崩壊し、朽ち続けるその在り方がせめぎ合っている。
 均衡が保たれる。だが、ロニの願うのは、均衡ではなくその崩壊だ。故に。
「……足りない、なら!」
 ヴィクトルと視線を交わす。笑んだ意味を彼は分かってくれるか、それは知らないけれど。
 削ぎ切る刃を前面に生やした球体を、彼がドリルボールと呼ぶ球体群を召喚し、全てを巻き込んで、ロニはその身を砂嵐へと変じた。
 空間をすら削り取るようなゾ、ボッ!! と凶悪な音と共に、細かい砂の集合体となったロニの意識を、絶叫が揺さぶる。
 粒の一つにすら破壊と治癒の、激痛を浴びせる潮騒にしかし、その勢いが止むことは無い。
 痛い。
 痛い。
 だとして、それでボクが止まらなきゃいけない理由にはならないのだから。
 豪然と、砂嵐が潮騒を包み込んだ。
 棘が砂が砕いた結晶を食らい、砕かれた結晶がロニの体を蝕み、癒し、侵していく。
 手応えはあっても、成果を感じられない。
 どれ程、その身を砕いて削ろうと、即座に再生をする。
「じゃあ、一回違う方法を試してみよっか」
 ギュ、ァと砂が瞬く間に渦巻、集束して、ヒトの形を取ったと思えば、それは色を帯びて、ロニの姿を取り戻し。
 そして、それと立ち代るように、巨大な鞭が振るわれた。透明な水が作り出す巨大な水流という名の鞭。

 ヴィクトルは、魔法で作り出した膨大な水量を率いながら、その瞬間を待った。
 砂嵐が晴れる、その瞬間を。
 ロニと交わした視線が語っていた何かに感じた、いずれ来る好機を見逃さないよう。
 そして、砂嵐が晴れる。
「……っ」
 突如消えた猛攻に、その翼が僅かに動揺したように動きを見定める、その間隙。ロニが包み込んだ砂嵐が叫びを、その水晶の反響を阻んでいた間に制御下に置いた膨大な水の塊が、詠唱を受け形を成した。
 駆けるその先端。暴圧とかした水流がビュ、ゴァ!! と鞭となって宙をたじろいだ鳥を過たず捉えていた!
 避ける事もままならず、膨大な質量の慣性に潮騒が地に叩きつけられ、しかし、即座に再生したその翼を広げた、その時。
 ひゅ、ガッ!
 一本の銛が、その擡げ上げた頭部へと突き立っていた。
 それを投げ放ったヴィクトルは、散った瓦礫から伝播する激痛のシグナルに牙を噛みながら耐え、上空へと振るった鞭へと詠唱する。
 疲労も、激痛も、視界を揺らがせるほどに刻まれてはいるが。
「……ここの奴隷の人達に比べたら、ほんの少しだ」
 擲った手を開くとともに、頭上に立ち上っていた水流が、一直線に潮騒へと駆ける。さながら弾丸と化したその先端が捻じれ、膨らみ、潮騒へと届くその間際にその姿は巨大なシャチへと変貌を遂げる。
「さあ、盛大に噛み砕け」
 崩壊の痛みを与える絶叫も、水には意味を為さない。砕けようと即座にヴィクトルの制御が瓦解を防ぎ。開かれた狂暴な咢が、その体が宙へと逃げるよりも早くその頭を。
 ゴ、ギン――。
 噛み砕いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レイ・オブライト
『痛い』は
……気色の良いもんじゃあねえな
ああそうだ、朽ちて癒えてを繰り返す永遠なんざ。その点においちゃ同情する
オレは喚くよかマシな使い潰し方を知ってるんで、共感はそこまでだが

(救うべきを救う)
覚悟を以て意識を保ちVエンジン限界突破。内に劈くスパーク音で周りの音なんか大して入ってこねえような、そんな気分だ
生じた電流の衝撃波を空間へ叩きつける
敵が射程内ならそのまま格闘で応戦、遠けりゃ鳥の上体を捉えられるまでに地形を破壊して足場形成
届いたなら【Vortex】叩き込む心算。代償は水晶化した部位全て。吹き飛ばす、この『痛い』のが数段いいし
幸いは与える側にまわったもんでな、わりぃが棄ててくぜ

※諸々歓迎


雪羽銀・夜
死も生も遠い。
不死のメガリス。あいつ自体がそうなのか。それともあいつが持ってるのか。

不死のメガリスなんてものを持ってんならどうやっても倒せないんだろうけど、やるだけやってみるしかないよな!

神様気取りなら、その生皮剥ぎ取ってやるぜ

くそ、いってえなあ!でも良い、いてえってのはこんなナリでも生きてるって事だもんな。

破片がトリガーってんなら、どだい避けれない。なら月光の結界術で浄化し侵食を抑えながら、白雫散花で削りとっていく。

夜も月も、ここにはねえのかも知れねえが、奴隷連中ほど大人しくしてると思うなよ

アドリブなど歓迎



 首を無くした鳥が落ちる。
 昼も夜も知らぬ空に、暗き夜を裂く光を持たぬ空に。
「あー! もう! 痛ッてえなあ!!」
 叫ぶ声があった。
 雪羽銀・夜(つきしろ・f29097)。夜空の肌に月光を纏う竜神。かつての童の姿のままに、声を発するそれは、放たれる叫びに呼応するように空間を震わせる。
 潮騒の叫びが、全身を砕いたはずだというのに、しかし、体に傷は無い。ただ痛みがあったという認識が、ストレスで脳を締上げているようだった。
 だが、それでも夜は笑っていた。
 だが、故にこそ夜は笑っていた。
「ああ、そうだな、痛えんだよな……」
 噛み締めるように、夜は己の体を埋める痛みに、感謝にも似た感情を芽生えさせていた。
 彼は悪霊である。
 だが――この体がエクトプラズムの塊であろうとも。
「こんなナリでも生きてるって事だもんな」
 その痛みが教えるのは、生きているという実感だ。
「だから、良いぜ――ただ」
 奴隷連中ほど大人しくしてると思うなよ。
 そう零した夜は、月光のきらめきを残し、夜を知らぬ空を統べる王へと駆けだした、その瞬間。
 ゴ、ッグァア!! と。
 真っ逆さまに堕ちる、頭を無くしたはずの鳥が羽ばたいた。強烈な風が、いや、猛風すら起こす、音の振動が周囲へと放たれる。
「……ッ!!」
 夜が、月光による結界を展開し、その威力を和らげた刹那に、嵐の如く吹く痛みの叫びの中を突き進んでいく、一人の猟兵を確かにその眼で見ていた。
 見間違いだろうか。その脚は地を蹴り上げては砕け散り、その脚を踏み出す瞬間には戻っている。
 いや、見間違いではない。首から腰までが裂け、しかし、血が溢れ出るよりも先に肉が傷を覆っていく。その治癒は、そして、その傷は、ただあの鳥が与えるモノだけではない事は明白だ。
「――!」
 何かを叫んだ夜の声は、その彼に届いてはいない。
 レイ・オブライト(steel・f25854)は、轟雷の最中に無音の極致にいた。己の息の音すら忘れるような激痛の荒波。
 脚を踏み出す。瞬間、暴れ狂う叫びの振動が踏みしめた脚を内から砕く。その亀裂が骨を渡り、肉を割り、肌を突き破るよりも早く。
 ズゴ、ァ!! と床となっていた巨大な瓦礫が、粘度のように拉げ崩れる。砕けた脚を胸の中心で脈打つ心臓が感覚を強制して流れを繋ぎ、鳥の歌が肉を繋いで再生する。
 夜の声は聞こえてはいなかったが、しかし、この激痛の中に夜が生を思うのであれば、レイは死を思う。
 スパークする。脳が爛れ溶けるように、全身が焼けた針に貫かれたように、激痛が絶え間なく襲い来る。
 朽ちて癒えてを繰り返す永遠。成程、この音が消えるほどの、色が消えるほどの、重さが消えるほどの、苦痛の嵐。それには同情する。
 だが、それでも、死はまだ来ないのだ。
 死はまだこの心臓を止めず、溢れ出る魂の生命は、レイの体を殺しながら生かし続ける。過剰な運動を過剰な機能で補い、その体を進ませる。
 バギキ、とヴィクトルが砕いた頭蓋を再生し始める潮騒は、その翼を広げ高みへと上っていく。落ちれば届くはずだった拳も届かない。
 ならどうする。レイに出来るのはその四肢を以て、壊し砕くのみ。
 出来る事はそれだけ。ならば、迷う事はない。
 ――壊し砕いて、道を作るだけ。
 空気すら泥濘む泥のようにレイの動きを阻むそれを引き裂いて、レイの腕が振るわれた。その指先が触れたのは、瓦礫の山に突き立ったこの島の破片。破片と呼ぶには巨大なそれは、比較して虫の如きレイの指が触れ、薄氷の如く亀裂を押し広げる。
 脆い。
 それは、砕けた己の腕にか、それとも、その衝撃に吹き飛んだ無数の瓦礫にか。爆裂した瓦礫が砲弾となって、潮騒の体を穿ち抜く。
 だが、その弾丸は潮騒にとっての負傷と呼べるほどの威力は無い。表皮を裂くばかりの弾丸が駆けた空を見上げ、夜は「はッ!」と短く笑いを放つ。
 夜の視界で、レイは空を駆け抜けていた。流星が降るかの空をその脚で、流星たる瓦礫を足場にして。
 僅かにレイよりも早く潮騒へと到達した瓦礫が、水晶の体を砕く。その破片が散り、レイの眼前に広がり。
(ああ、ありがたい)
 直後、レイの体にそれらが突き刺さるその寸前、無数の光の花びらがそれらを薙ぎ払っていった。
「それだけの破片、全身錆にする気か、デッドマン?」
 どこか冷えた声が、童の喉からまろび出て空を行く死人を届かぬ音で揶揄う。
 羽衣の形をした神剣。己が扱う月光の花びらへと変じたそれが破片を払い、そして、その動きを阻むように潮騒の翼を削り取っていく。
 赤錆た水晶と月光の花が舞い踊る中で、レイは音と色と重さを取り戻していた。風が耳を過ぎる、体は下へと引かれ、拳の亀裂は赤を覗かせている。拭いきれぬ水晶がレイを治癒している。
「わりぃが棄ててくぜ」
 だが、その生の感覚を、レイは返上する。瓦礫を蹴り飛ばし、レイは潮騒の背へと飛び乗っていた。
 ――幸いは与える側にまわったもんでな。言葉と共に拳を握る。
 鋭い羽がレイの脚を貫いた。触れた場所から水晶が瞬く間に両足を覆い、中身をも浸食せんとするのを、ゴ、ボ。と雷轟とは思えぬ音を立てた魂が否定する。
 腹を、胸を水晶が覆い、その拳へと至る。と同時に。
 裂帛の雷撃となった拳が潮騒に触れた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 冒険 『海底遺跡探索』

POW   :    息が続く限り根性で探索する

SPD   :    呼吸できる道具を持ち込み探索する

WIZ   :    遺跡を調査して効率的に探索する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 波の音が聞こえる。
 雨の如く崩れる轟音の中で、それを攫うように。
 強烈な一撃を受けた潮騒が、その体を幾つかの大きな結晶の塊へと変え、破砕していくそれは、床へと硬質な飛沫をぶちまけている。
 そんな豪雨の中、潮騒が、いや、滂沱と流れる水音が聞こえる。
 軋む音。
 金属が擦れ合い、歪な悲鳴が上がる。
 なんだ。
 疑問と共に確信を覚えて、猟兵達は天井を見上げた。
 それは、潮騒の体が床へと激突すると同時に、ほんの僅かな、小さな兆しとして現れた。
 ピシ――。
 赤錆の天井が、全体を反射光で煌めかせる。
 この足が踏む瓦礫が元々あった空間を、侵食し、埋め尽くし、そして、支えていた水晶が罅を叫ぶ。
 振動が教えている。重力に従い、水晶によって塞がれていた穴が、島という檻が破壊され、中に守られていた環境に異界が流れ込んでいるのだと。
 そしてそれは、今。
 ――ゴ、ッパア!! と赤錆びた空を裂いて、暗い海水が巨大な滝という名の破壊鎚となって降り注ぐ!
 猟兵達は瞬く間に沈む亡神の寝所の中で、一人の少女を見た。潮騒が砕けたその瓦礫の中心。
 その小さな掌に収まる程度のサイズの水晶柱を握る姿。声を発することも無く、傍にいたユウキと呼ばれるだけの少女。
 直後。
 頭に響いたのは、無数の人の声だった。まるでまだ僅かに周囲に残る水晶が、脳内に語り掛けるように。
『痛い』『嫌だ』『苦しい』『終われる』『帰りたくない』『帰りたい』『嫌だ』『会いたい』『死にたくない』
 そして。
『――助けて』
 息を呑む。
『緊急事態発生!! 緊急事態発生!!』そんな暇もなく、轟いたのは島全体に流れた音声だ。『各員は緊急時ガイドラインに沿い行動してください、緊急防護繭の使用を解除します。訓練未実習者は各所にある端末の指示に従い、退避してください。繰り返します。各員は――』
 直感する。
 頭に響くそれはこの島の、舟の中に残る奴隷達の声だ。
 そして、舟が彼らを助けろと叫んでいる。
 コンキスタドールは撃破した。
 だが、だとしても、猟兵達はまだ、彼らを救ってはいない。
 振り返る。少女の姿はそこには無い。
 だが、声は聞こえている。
 方角と距離と、数と生命の弱さ。それが声に乗って聞こえている。
 手段があるならば、助けても構いはしないはずだ。

●第三章、奴隷を回収し救助しながら塔を昇る場面です。

『伝播』のメガリスの効果によって救いを求める人の声や場所がわかります。

 宇宙船に搭載され機能を封印されていたAIによって救助の難易度を下げる緊急防護繭が解除されます。

 緊急防護繭は、第4環源13世代珪素性有機結合類β3型単分子強化素材によって作成された鞄くらいの大きさに収縮できる、なんかすごい丈夫で、なんかすごい生存に便利な機能を持った『なんかすごい繊維の泡』です。
 このシナリオにおける勝手な設定なので、便利グッズだと思って下さい。

 第一章で助けた人々もそれぞれ行動していたり、していなかったりします。上手い事指示を与えたり、とかもありかもしれません。
 提示したシチュエーションの中で、キャラクター性を見せつけていただけると、私がちょっと嬉しくなります。

 以上、好きに書きます。
 好きにプレイングください。
●補足

 繭に閉じ込めて、今まで水晶で塞がれていた壁の穴から放り出せば、勝手に水面まで上がっていきます。

 よろしくお願いします。
ロニ・グィー
【spd】
アドリブ・連携・絡みも歓迎!

ボス戦クリアーッ!からの脱出タイムってやつだね!
ボクそういうのって余計なとこが気になっちゃってよく失敗するんだよね

はいはい!聞こえてるよー!…ってなんか多くない?
んもー
手が、手が足りない…から増やす!
UCで分身を最大数まで増やして散開!
なんかいい感じにしてどんどん外に放り出してこう!
そこのボクはあっち!遊んでるボクは上!寝てるボクは起きて出入り口確保!以下略!
ふらふらいなくなった大量のボクたちについてはなんか適当に良心に従って行動することを期待するとして……
それじゃあ……かかれーーーーーっ!!!

お疲れ奴隷くんたち、みんな特別な夏休みを楽しめたみたいだね!



 悪夢のような光景だった。
「あっちの声は、ボクで」
「そっちのボクは上に、ボクはこのあたりで」
「何寝てるのボク!」
「んー、何で起こすのさ、ボク」
「水没して死ぬよ、ボク。じゃあボクは出入口確保ね」
「じゃあ、ボクはなにしてるの?」
「ボク遊んでるから」
「遊んでるからじゃないよ、一緒に上行くよ!」
「あれ? あっちにいたボクと、ソッチにいたボクは?」
「しらない!!」
「もー、まあボクだってボクなんだし、めちゃくちゃにはしないでしょ!」
 悪夢のような光景だった。
 奴隷は、目の前でかわされる会話の意味不明さに頭を抱えながら、状況を理解する。
 どうやら、あの球体を操る神様とやらは、その他の仲間と共にこの島を攻略してしまったらしい。そしてその結果島が壊れているので、巻き込まれる奴隷を助けようという事。
 ここまでは良い。そういう事なら、治癒を受けて水晶の浸食を脱している自分にとっては喜ばしい事だ。
 問題は、上記の会話が全て『別個体』のロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)によって交わされているという点だ。
 別個体。そう、一人でさえ、あの骸の怪物を蹂躙せしめた暴力の権化が複数体。見えるだけでも五十は下らず、しかも、聞きかじるに自由気ままに放逐された個体もいると。
「ひっ」
 得も言われぬ恐怖を証明するように、ピンク髪の一人が水晶の砕けひび割れた壁に凶悪な形状の球体をぶつける轟音が響き渡る。
「た、たすけ……」
 奴隷がいくら傷つけようと貫かれる事の無かった壁が、ある程度の抵抗を持ちながらもみるみる削られていく。ぱらぱら、と振動で瓦礫が、濁流に混ざっていくのを見ながら彼は涙目でこう呟いていた、呟いてしまった。
「はいっ、聞こえてるよー!」
「――ッ!」
「脱出タイムって、余計なとこが気になっちゃってよく失敗するんだよね」
 間違って正解ルートを選んでしまい、戻れなくなったハズレルートを探索しに行ったり、来る途中確認したけれど何もなかった何か意味ありげな空間を再確認しに行ったり、わざわざ最奥部分をもう一度確認しにいったり。ある種の人間には常識的な行動の話ではあるが、やはり奴隷にとっては理解の及ばぬ話でしかなく。
「……」
「ま、いいや」
 と冷や汗を垂らしながら曖昧な笑みを浮かべた奴隷の首根っこを掴んだロニに、彼は「ひいぃ……!」と情けの無い悲鳴を上げる。
「もう、助けてあげるってのに、失礼しちゃうなあ」と口遊むロニに、奴隷はその助けるというのが、ちゃんと生命が耐えられる範囲での救いなのかと疑念を覚えずにはいられない。
 どこかから投げられた白い何かを奴隷の傍で開封すれば、瞬く間に奴隷の視界が白く染まっていく。白い何かに包まれ、気付けば小さな球状の小部屋のような場所に詰め込まれていて――。
「お疲れ奴隷くん、みんな特別な夏休みを楽しめたみたいだね!」
「の、ぁああああ!!」
「うん、一丁上がり!」
 ロニが蹴り出した繭が広げた亀裂から飛び出していったのを見送り、別のロニが手を叩く。
「それじゃあ、かかれーーっ!!」
 発した号令に、ロニ達は一斉に駆け出していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レイ・オブライト
声が、聴こえた
【Arbiter】再生。儘、駆け出す

『終われる』……か
今じゃあねえだろ

手の多さでは貢献出来ねえ。オレは、なら、そうだな
辺りの崩壊で瓦礫の下敷きや閉じ込められた……なんてのを。そういった奴(特に生命の弱った者)を優先、声を頼りに殴る等で障害を破壊し合流
防護繭を使用して送り出す。他に取りこぼしがいないなら壁壊して時短しても構わんだろう
なにせ最後の一声まで付き合う気でいる。UCである程度身体能力も増してる筈だ、とっとと上階へ
無茶による負傷は再生任せで捨て置く。動けばいい
もし案じられれば、別に死にゃあしない、と
あんたらの生還が一番の薬ってやつだ

誰に約束したってわけでも、ねえが

※諸々歓迎



「あんた――ッ」
 奴隷の声は繭の中に千切れて消えた。
「……終われる、か」
 打ち出した拳に弾かれて、豪烈に壁の亀裂へと走っていく球体を見送り、レイ・オブライト(steel・f25854)は、聞こえた、伝播した声に吐き捨てる。
 水晶に繋がれた体に。
 死の終わりを歓迎する言葉を吐きながらも、壊れる体に水晶へと手を伸ばすことを止められなかった事は、数分前までのその体が物語っている。
 防護繭を撃ち出した拳を解きながら、レイはあの奴隷が最後に告げようとしたのだろう言葉を思い浮かべる。
 ありがとう、とも。助けやがって、とも違うのだろう。地面に落ちた、自分の胸から腕を拾いあげる。だらりと垂れるばかりの肉片の重さに、それが自分であるなど忘れそうになるほどだ。
 そんな体で、どうするんだ。だろうか。
 脚の大腿に細い瓦礫が突き刺さって地面につなぎ止められている。だけでなく。レイの体は、落ちてきた瓦礫に肩から抉られて、露わになった半ばに折れる肋骨に、臓物が引っかかっているような状態。息をしようにも穴の開いた胸腔が役割を果たさず、横隔膜が物言わず伸縮するだけ。
 肺が勝手に萎むのに合わせて吐いた言葉に継がれるものはない。紛れもなく致命傷、そのはずだった。
「――ッ」
 鈍い水音というにも物質的な濁音を零しながら、その断面を宛がった瞬間に、次の鼓動が来る。その他の全ての音を焼き払って、五感を潰す程の轟雷。心臓が跳ねる衝撃。
 力無くだらりと垂れるばかりの腕をつけたレイの真上。ゴ、ァ!! とその体を覆いつくすような迫る巨大な瓦礫が落下していた。死神の掌がレイを押し潰す寸前に、ギ、と歪な骨の音と共に、断面を合わせただけのはずの腕が動く。
 ただ、彼はその腕を真上へと掲げるように、突き出した。その掌が瓦礫に一瞬沈み、亀裂を生み、しかし柔い肉を食い破る重量に砕ける骨に、――更に、雷電が駆け巡る。
 雷が駆ける爆轟に粉々に跳ねる瓦礫の下。大腿を縫い留めていた瓦礫も吹き飛んで傷が塞がった脚を踏みしめ、レイはそれが落ちてきた空隙を見上げて、息を吸った。
 生あるもの、いつかは死ぬ。
 それを選ぶのは、生者自身ではない。死神か、それとも世界か、それとも人か。
 ともかく。
「今じゃあねえだろ」
 助けて、と叫ぶ声が聞こえる。だから助ける。
 死にたくないと叫ぶ声が聞こえる。だから生かす。
「別に死にゃあ、しない」
 割った瓦礫が作る坂に脚をかけ、諦めたように、終われるという声と同じ声で、嫌だと叫ぶ声が聞こえる。
 死ぬな、と叫ぶ声に頷いた。
 渦巻く声はやかましく、しかし、生きている事の証左だ。
 あんたらの生還が一番の薬ってやつだ。声に出そうとして止める。聞く者がいないのもあるが、言葉を紡ぐよりも先に、脚を踏み出す事を優先したのだ。誰に約束したわけでもないが、しかし、その声の一つが無くなるまで、その脚を止める気はない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雪羽銀・夜
アドリブ歓迎

崩れるのか、アイツが持ちこたえさせてただけだったんだな。

伝播に従って救助しながら脱出。オーラ防御で瓦礫と水を逸らしながら、声のする方へ急ぐ。

死にたくないなら死にたくないって言えよ。そしたら助けてやるからさ。

水晶が砕けて、傷になってる奴隷にUCで回復。
眠ったら治癒のオーロラをそのままに繭に包んで放り出す。

助け損ないがいないか、深淵の残党がいないか確認しながら、水没ギリギリまで探索していく。
ここまで来て、あの子の親がいないなんてオチ。やってらんないかんな。



「お前が、これを防いでたってことか」
 雪羽銀・夜(つきしろ・f29097)は、崩れる空を見上げて、月光に肌を照らし息を吐いた。
 それは、感嘆のそれか、呆れたそれか。それは彼自身判然とはしないものだった。潮騒を鳴らす鳥が保っていた世界。
 果たして、あれは自らが地獄を管理している、などと思っていたのだろうか。
 世界の終わりを思わせるような崩壊の中にあって、しかし、彼の周囲に瓦礫と濁流が降ることはない。
「……」
 奴隷が、薄らに開いた眼に見たのは、少年と、彼が発する月光が齎す、オーラの結界のような世界。緩慢にそれらが夜と自分たちを避けるように落ちていく幻想めいた光景だった。
「――ああ、生きてたか」
 振り返る黒い肌をした少年は、その奴隷の眼を覗き込んで事も無げに言う。
 にやり、とどこか冷たく笑みを浮かべた少年が辺りを舞う月光に手を翳せば、光が集まり、カーテンのようにその手の上で舞い踊る。
「なあ、死にたいか? 死にたくないか?」
「は」
 夜の問いかけに、奴隷は思わずその思考を硬直させてしまっていた。
 助けてくれたのだと思っていた矢先に、まるで今から自分を殺そうとしているかのような言葉に、その真意を量り切れない。
「死にたくないなら死にたくないって言えよ。そしたら助けてやるからさ」
 だが、その後に続いた言葉に、そんな心配は雲散霧消して消える。依然とし冷たく笑みを浮かべる夜は、しかし、初めから奴隷が死にたいといったとしてもそれを聞く気はなかった。
 ならば、なぜそんな意味のない問答を経たのかと言えば、もしかすれば、彼の竜神としての在り方なのかもしれない。
 願いを、望みを託され、それを叶えるという、権能。
「……死にたくない」
 絞り出すように、奴隷は夜へと告げた。震える声は、しかし揺れぬ確信を秘めた声だ。
「俺は、まだ、生きてたい……っ」
「ああ、分かったぜ」
 鷹揚に夜は頷いた、と同時に、その掌を泳がせる。その上に待っていた月光が奴隷の体を包み込み、その水晶が砕けた傷へと纏わりついた。
 奴隷の男が知覚できたのはそれだけだった。強烈な、しかし、不快を感じさせない眠気が男の意識を塗りつぶしていく。
 そして、最後に奴隷は自らが白い何かに包まれていくのを視界に収め――。
「一丁上がり、だな」
 夜は、そう言って、手をぱんぱんと叩いて、防御繭の球体を月光の流れに乗せて壁の亀裂へと押し込んだ。
 そうして、少し目を瞑って、聞こえる声を逃さぬよう集中した。
「……、ここら辺は、もういないか」
 目を開けて、夜は月光の結界を押し潰さんと周囲を埋め始めた水に、限界か、と悟る。
「まあ、まだ逃げるわけにはいかないもんな」
 あの少年の親が運悪く取り残されている、だなんて悲劇は、彼の望むところではない。
「まだまだ、頑張らないと、ってな」
 そう言って、彼は月光の結界を解除し、押し寄せる濁流から逃れるように跳躍していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクトル・サリヴァン
割と体力きつきつだけど水の中ならやれるやれる。
やれる限り全員助けようか。

UCで空シャチ召喚、救いを求める人の場所に向かわせ其々緊急防護繭のある場所まで誘導させる。
水空両用遺跡内の移動に問題なし、数を頼りに一人でも多くを救助。
説明時間も泣き言聞いてる時間もないから多少強引にでも。
俺が治療した人なら空シャチも味方って分かってくれるはず…
誘導できたら繭に入って貰い外へていっと放り出し海面へと。
…ユウキちゃん大丈夫かな。
ある程度奴隷の人達の救助の目途が立ったらあの子の救助に向かう。
ちょっときついかもしれないけど皆で帰るんだから。
海面浮上後は活力の雷で体力の限界まで怪我人の治療を。

※アドリブ絡み等お任せ



 ごぽり、と。
 緩慢に瓦礫が落ちる世界でヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は息を吐く。行きと同じ水中だが、油断すれば瓦礫に阻まれて抜け出すのが困難にはなるが、ヴィクトルの役目は、安全の確保である。
 そして、探索は――。
「……っが、は、げほ」
 一つ大波を起こすように、水を掻き分けてヴィクトルの目の前に現れたのは、一頭のシャチだった。既に水没した箇所も、声を漏らさず探らせる為に放った群体の一体。
 ヴィクトルが探索を任せた空シャチだ。
 その口と鰭にそれぞれ人を張り付けているそれが水面へと浮かび上がるのと同時にヴィクトルも、腰ほどまで既に水に浸食されつつある陸地に脚をつける。
「ああ! やっぱりアンタか!」
 力なく口に咥えられた人間を吐き出したシャチが水中に戻っていく。その鰭から飛び降りたのは、少し前まで半身を水晶に覆われていた人間だった。
 ヴィクトルが治療した男。あの集落周辺で見かけなかったので、他の誰かに助けられたのかと思っていたが、上層にいたらしい。吐き出された奴隷に腕を回して引きずり起こす。意識はないらしく、牙が幾らか食い込んだ傷だけでなく、恐らく水晶が砕けた傷からも血を流している。
「あの骸どもじゃないし、アンタっぽいから一か八か、くっついてきたんだが」
「うん、……話は後にしよう」
 知り合いを見つけて安堵したのか、早回しのような饒舌さで語り始めた奴隷に思わず緊張感が抜けて笑みを零しながらも、ヴィクトルは簡単にその治療を行う。
 その間にも水面が膨らんで、別のシャチが他の奴隷を吐き出していく。数人は意識があり、その口に捕えられた恐怖に打ち震えているのを宥めるのに、その男性が役立ってくれていた。
「……強引が過ぎる」
 ある程度顔が知れているようで、繭を送り出す最中にその説明やらをしてくれていた。
「だって、説明する時間とかないし」
「いや、まあ……」
 暴れたのか二体のシャチに咥えられて運ばれた、という恐怖から解放された喜びに、膝まで水に浸かる床に這いつくばるようにして咽び泣く大柄な男に、流石に可哀そうかなあ、と思い始めた頃には、声も聞こえず、そろそろここも危ないと急いでその男と手伝ってくれた彼を繭に包み込んで、離脱しようとした。
 その寸前。
「あ、そうだ」
 とヴィクトルは、繭を解除して自らその中へと籠ろうとした奴隷に尋ねる。
「女の子、見なかった? 十歳くらいの」
「十歳? いや、そんな奴はこんなとこ放り込まれやしねえぞ」
「うーん、そうじゃなくて、いやでも、見てないって事か」
 あの姿は、錯覚の類ではない。と確信している。最後の繭を送り出して、ヴィクトルは水没する暗い迷宮を振り返る。
『――助けて』
 あの時、最初に聞こえた小さな少女の声は、きっとあの子のもの。幼い力のない少女をこの地獄に連れ込んだところで成果は上がりようもないのは奴隷の彼が言った通りだ。
 その声が、ヴィクトルをもう一度だけ、崩れ去る地獄の闇へと投じさせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​


 結果として。
 少女の姿は見つからなかった。
 単身最奥へと辿り着いたという事を鑑みれば、あの瓦礫の下敷きになっていることは考えづらい。
 いや、希望的観測ではあるのだが、埋もれ崩れる下層から、間一髪ぎりぎりに脱出したヴィクトルは、そう信じるしかないのだった。
「……ああ、流石に限界」
 島の崩壊は、水晶のほとんど侵食の無かった天上部にも多大な影響を起こしていた。島の各所が沈み、縄張り争いを繰り返し、島を牛耳っていた海賊は大半が島を離れている。
 残った海賊も、島の攻略を行ったのが最近耳にするようになった『猟兵』なる勢力だと知り、大人しく手を引く事にしたようだった。
 元々長い住拠として想定していなかったのだろう、テント造りの町で猟兵達は、水面に浮かぶ繭を回収し治療を行っていた。
「はー、終わんないなあ!」
 と、いささかまだ元気のある声を発して夜は、月光のオーロラを振り撒きながら、運び込まれる繭に億劫な目を向ける。
「うん、でもまだまだ、はい追加ぁー」
「かあーっ!」
 分身したままのロニの一人が更に繭の中から、血に濡れた奴隷を引っ張り出せば、夜はしかし放っておく訳にもいかず、治療へと移る。
 夜の竜である彼が月光を扱うのは、デメリットがあったりするのだが、すぐさまに妖力を練るのは、竜神たる習性か。
「……というか、神さんよ」
「んー、なにかな?」
「また減ってない? てか、あそこで泳いでない?」
 似て非なる神という種族のロニへと夜は問いかけた。
 天真爛漫な、言い方を変えてしまえば傍若無人なロニの分身体はルーティン作業に飽きを来したらしく、徐々に働き手が減ってきている。
「んもー、僕だってそろそろかなって思ってたのに」
 と、悪びれもしない彼に夜はため息をついた。状況としては重傷者も片が付き、後は自然治癒に任せても、然して問題はないので。妥当な飽きと言えるかもしれないが。
「じゃあ僕も行ってくるね!」と堂々とサボりを宣言する彼が、そういった状況判断をした上での行動か否かが掴みきれないのだ。
 走り去っていったロニの背から、治療したばかりの男へと視線を移した、その時。
「……父さん!」
 と、見覚えのある少年が、女性を連れて彼に駆け寄ってきていた。

「……ああ、会えたか」
 レイはその声に、再会を喜ぶ親子の姿を見とめて、僅かに安堵し息を吐く。
「うん、良かった」とヴィクトルもその光景に頷く。
「……休め」
 重い瞼がさがり、眠気に抗っているのがありありと分かる様に、レイが思わずこぼした言葉にヴィクトルは力なく笑いを返す。
「うーん」
 渋る返事に、眉をひそめた。あまり無理をしても非効率だと、理解しているはずだと。
 疲労や負傷をマイナス方面へと突っ切れるレイと違い、ヴィクトルは普通の生者なのだから。
 だが、その声にはまだやるべき事がある、という響きがあり。
「……見たことは説明しなきゃだし、しておきたい」
 ヴィクトルの首がある方向へと向く。
「ああ……」
 それを見たレイは、納得した。
 困惑した様子のナガハマが、こちらの姿を見つけて近づいてきている。
「そうだな」
 最初の伝播の声。
 グリモアであるだろう水晶を手に取り、消えた少女。
 それを伝えなければいけない。

 救われた奴隷は、いや、救われた人々は、回復を待ちそれぞれに海を渡っていく。
 奴隷の地獄はここに、名実ともに崩壊したのだった。

最終結果:成功

完成日:2020年08月28日


挿絵イラスト