0
しあわせにおぼれて(作者 ion
18



 ……逢魔が時。
 元より人ならざるものたちの住むこのカクリヨファンタジアにおいても、この時はそう呼ばれているのだという。そもそもが現世と対なる名で呼ばれるこの世界ならば、昼と夜の交わるこの時間に、境界の揺らぐものは何か。
 ここはかつて忘れられた者たちや、その末裔が集う世界だ。『現代』という括りを伴って常に歩み続ける星から綻びた幽世は、時が止まったようにその時の姿を留めている。
 かの星の者たちがこの世界を眼にすることがもしもあったのならば、見たことも無い筈の街並みをこう形容することだろう。――懐かしい、と。
 入り組んだアーケード商店街の通り。辺りを照らす灯籠。過去を積み重ねて出来たような、不思議な郷愁漂う世界。だが過去の面影を色濃く残すこの世界は、同時に過去から生ずる存在――オブリビオンと表裏一体でもある。

 今この時刻、帰路に就く妖怪たちの上、なにか淡紅色のものが落ちてくる。
 ひらり、はらりと舞うそれは、空を揺蕩う花弁のようであり、海を微睡む泡のようであった。
「わあ、きれい」
 二足で歩く犬のような姿をした子どもの妖怪が、手を伸ばしてそれを取ろうとする。
 ――と、その『なにか』がちかりと光った。眩しさに目を細めた子供は、だがその直後、その目を力なくつむり、ぱたりと地面に倒れてしまう。
『なにか』はその数を劇的に増やしていた。通りを歩いていた妖怪たちはみるみるうちに地面に倒れていく。明らかに異常事態なのに、みな幸せそうな貌で眠っていた。
 やがて眠る妖たちの中から、むくりと起き上がる者達が現れる。夢遊病のような仕草で身体を起こしたものたちの背には、極彩色の翼が宿っていた。


「カタストロフってのは幸いにも見た事はねェが、放っとくとそれに近い状況になりかねねえんだ」
 赤い角に、傾奇者めいた派手な和装。ジャスパー・ドゥルジー("D"RIVE・f20695)がそう告げた。
「カクリヨファンタズムのある一角で『花』が大量発生した。空から大量の花弁が降ってくるんだ。そいつに触れると『抗い難いしあわせな夢』に襲われて目を覚ませなくなる。
 それだけじゃねえ。あるべき姿を狂わされた眠りの世界には骸魂が充満している。こいつが妖怪たちを呑み込むとオブリビオンになっちまうんだ」
 さいわい、呑み込まれた妖怪たちはオブリビオンを斃すことによって救出が可能だ。だが『花』の広がりは早く、全貌も知れぬこの世界すべてが眠りの世界へと変貌するまでそう時間はかからないという。

「早急にこの『花』をもたらした元凶を叩くべきだな。幸い親玉は一体。骸魂によって新たに誕生したオブリビオン達を叩いていれば、眠りの世界を阻害するあんたらを邪魔しにくる筈だ」
 問題は、とジャスパーは云う。
「この『花』の効能は恐らく、猟兵達にも及ぶ。力の弱い妖怪たちと違って即座に眠りに落ちる程ではねェけど、幻覚くらいは見るかもしれねえ」
 その詳細までは予知は及ばなかったと、申し訳なさそうに頭を掻くジャスパー。
「花の力はたとえ嗅覚や視覚を遮断しても襲い来る。全く影響を受けずに進むというのはおそらく不可能だ――ま、あんたらなら問題はねェって信じてるぜ」
 そしてジャスパーは花に満たされた領域へと猟兵達を転送すべく、ゲートをひらくのだった。





第3章 ボス戦 『水底のツバキ』

POW ●届かぬ声
【触れると一時的に言葉を忘却させる椿の花弁】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD ●泡沫夢幻
【触れると思い出をひとつ忘却させる泡】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ ●忘却の汀
【次第に自己を忘却させる歌】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
👑11

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠黎・飛藍です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 花の馨が一層強くなる。
 泡のように曖昧だったしあわせの花弁は、奥に進むにつれてはっきりとその姿を現す。
 ……椿だ。
 ぽとんと落ちるのではなく、嵐となって舞っている。

 その中心に、女がいた。
 女と形容したが、その下半身には脚がなく。きらきらと光る鱗の先、羽衣を思わせる鰭が悠然と虚空に揺蕩っている。

『ゆめは、おしまい』

 女の唇がそう動いた。
 女の放つ花弁。泡。そして歌声。その全てが、猟兵の記憶を奪いにかかる。
 しあわせの記憶を。

 夢を魅せるのは、人の幸せな記憶こそが彼女の糧なのだろうか。
 しあわせは、覚えておきたい? それとも――……。

===========================
 もしも切り捨てたい記憶があるのなら、相手の術にかかるのも一興でしょう。忘却に抗っても、術中に嵌っても、プレイングに不利は生じません。ご自由にどうぞ。
 プレイング募集:7/12(日)朝8:31~7/14(火)夜23:59ごろまで。
===========================