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海へ還る日

#グリードオーシャン

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#グリードオーシャン


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 まだ陽が昇って間もない砂浜に、痩せた若者が裸足で現れた。年のころは17か、8か。粗末な衣服とざんばらの髪に風を受け、砂に足跡を刻みながら波打ち際へと進んでいく。
「あー、やっぱすげえ時化だな、こりゃあ……」
 嵐から一夜明けた朝の海は、猛烈な時化だった。だからこそ、頭領は試練を行うと決めたのだ。今日は、若者が手にしたその刀――メガリスを所有する資格があるか否かで、彼の運命が決まる日だ。
 若者の膝に、冷たい白波が勢いよく打ち寄せる。もっとだ、もっと前へ。腰まで水に浸かると、肝を冷やすような冷たい感触が、不思議と心地よかった。
 彼は海を愛している。そして、海と同じくらい、好きでたまらない人がいた。
「見ていてください、かしら」
 しろがねの刃を鞘から抜き払いつつ、丘の上に立つ人影に視線を移す。白い着流し姿が、豆粒ほどに見える距離からでもはっきりと区別できた。
「俺は――」
 帰ったら、二人で話をしようと約束した。そして伝えるのだ。胸に抱いていた想いを。
「あんたの、剣になりたい」
 若者の眼前に、飛沫を上げて真っ白な壁が迫る。歯を食いしばり、刀の柄を強く握りしめると、全身にこれまで感じたことの無い、底知れない力が漲ってきた。その力に突き動かされるように、刀を振りかざして波を待ち構える。
「――――ア」
 そして肚から声を絞り出し、獣のように吼えた。

「お疲れ様。……さて、今回の作戦について説明を始めようか。今回みんなに向かってもらうのは、グリードオーシャンにある島のひとつ、『津島』だ。そこで、ある事件が発生する」
 ある日のグリモアベース。作戦開始の告知を受けて集まってきた猟兵を出迎えたのは、ダンピールのガーネット・グレイローズ。彼女は光り輝くキューブ状のグリモアを手元で操作しながら、猟兵たちに語り始めた。
「事の発端は、ある海賊が行ったメガリスの試練だ」
 広大な海洋世界グリードオーシャンの各地には、所有者に絶大な力をもたらす呪いの秘宝『メガリス』が存在する。このメガリスを巡り、海賊とコンキスタドールは熾烈な争奪戦を日夜繰り広げているのだ。
「津島の海賊団が保有するメガリスは、『妖刀サザナミ』。水を操り、海を切り裂く力を持つという伝説の太刀だ。ある日、その所有者を決める儀式にツルギという若い団員が挑んだ。だが結果として儀式は失敗し……ツルギは死んで『うみなりさま』というコンキスタドールに生まれ変わったというわけだ。悲しいが、よくある話だ」
 メガリスの力は強大だが、同時に制御するための大きなリスクを伴う。メガリスを所有するためには、メガリスの試練に挑んで持ち主たる資格があることを証明しなければならない。それに失敗すれば、挑戦者は死亡しコンキスタドールへ転生してしまう。そして海賊達には、コンキスタドールになった仲間を自分達で討伐しなければならないという『鉄の掟』があるのだ。
「問題はそこからだ。海賊は自分達でケリをつけるつもりだったが、ここのところグリードオーシャンではコンキスタドールの力が勢いを増していてね。うみなりさまを王と崇める組織『里見水軍』に返り討ちにあった海賊は、女頭領の『カグラ』をはじめ皆生け捕りにされてしまった。このままでは、全員が処刑されてしまうだろう……そこで」
「我々が出向いて、敵を叩きのめせばいいんですね」
 猟兵の言葉に、ガーネットは小さく頷いて返答する。
「そういうことだ。カグラ一行は、里見水軍の本拠地である無人島に囚われている。まずは鉄甲船で現場に赴き、敵を蹴散らして海賊達を助け出してくれ」
 ツルギの行方は、団長のカグラが知っているだろう。救出に成功したら、海賊船を奪還した彼等と共にそのまま討伐に向かうことになる。
「無事にうみなりさまを撃破できれば、海賊はアジトに戻り、ツルギの魂を弔う儀式を行うだろう。そのときに彼らと交流を図って、宴に参加しても構わないよ」
 海賊は酒宴が大好きだ。仲間を喪っても、しみったれた空気で見送るのは好きではないのだろう。
「今回の作戦で津島の海賊と協力関係を結ぶ事ができたなら、いざというときに何かの役に立つことがあるかもしれない。恩を売る……という訳ではないが、お互いにとって悪いことではないはずだ。それに、うまい料理や酒が嫌いな人なんていないだろう? 楽しんでくるといい。では、早速準備を始めてくれ。支度が整ったら、出発だ!」


弥句
 こんにちは、弥句です。今回はグリードオーシャンにて、メガリスの試練に挑んだある若者とその仲間達についてのお話です。舞台はサムライエンパイアから落ちてきた「津島」。海賊団の規模は非戦闘員を含めて約50人。
 津島の海賊団では、入手したメガリスを制御する試練に年若い海賊が挑むことになっています。今回コンキスタドールになったツルギも、そんな若者の一人でした。メガリス「妖刀サザナミ」は持ち主に『水を操り、海を切り裂く力』を与える刀で、試練とは『時化の日に波打ち際に立ち、押し寄せる高波をぶった切る』という危険なものでした。
 第一章は集団戦。コンキスタドール「うみなりさま」を王と崇める集団「里見水軍」によって、海賊のメンバーは無人島に囚われ、処刑台に縛られています。島に乗りこみ、頭領カグラをはじめとする海賊たちを救出してください。カグラは妖狐の血を引く女海賊で、船上戦の名手でもあります。データ的には妖狐の海賊×鮫魔術師。
 第二章はボス戦。助けた海賊達と共に、かつての仲間ツルギが転生したうみなりさまの討伐に向かいます。ツルギは海賊の例に漏れず海をこよなく愛し、水泳と剣術を得意とする快活な青年でした。海賊達も猟兵ほど強くはないですが銃など武器を持っているため、プレイングで猟兵の援護や説得ができるかもしれません。ボスを倒せば、体内に封印されていたサザナミを回収することができます。
 第三章は日常パート。掟を果たした海賊のメンバーは、島に戻ってツルギを弔う宴会を行います。海賊のアジトは島の中に建てられた堅固な砦で、宴はカグラが住んでいる立派な屋敷の中で開かれます。メインはバーベキュー。他にも色々な酒と料理が振る舞われるので、存分に楽しんでください。もちろん未成年の飲酒は禁じられていますので、水かお茶、ソフトドリンクで我慢してください。ガーネットも多分その辺にいます。御用の際はお好きに声掛けください。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております!
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第1章 集団戦 『里見水軍』

POW   :    高波の一撃
【あらゆるものを断ち切る日本刀や槍】が命中した対象を切断する。
SPD   :    渦潮の囲い
【共に戦う多くの屈強な侍】と共に、同じ世界にいる任意の味方の元に出現(テレポート)する。
WIZ   :    戦場そのもの
【且つて倒した海賊の船や武器、復活した味方】を降らせる事で、戦場全体が【あらゆる船が浮かぶ大規模海上戦闘】と同じ環境に変化する。[あらゆる船が浮かぶ大規模海上戦闘]に適応した者の行動成功率が上昇する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




「……おかしら! しっかりしてくだせぇ」
「こんな奴らに負けるとはな……アタシも焼きが回ったか……」
 砂浜に沿うように打ち立てられた、簡易的な処刑台。そこに、数珠つなぎに縄で拘束された海賊たちが10人ずつ、計六度に渡って処刑される手筈になっている。
「……アタシのことはどうなってもいい。殺すなら殺せ! だが……こいつらは見逃してやってくれねえか?」
 処刑台に磔にされ、屈辱に耐えながらも手下達の命を案じるのは、飛翔する鶴が描かれた白い着流しにブーツ姿の若い女。乱れた褐色の髪の上からは、大きな狐の耳が覘いていた。彼女こそが津島海賊衆を率いる女頭領、カグラである。
「ならん。薄汚い海賊どもを、生かしておく道理などない!」
「貴様らの命を、うみなりさまに捧げるのだ! 光栄に思うがいい」
 カグラの願いを踏みにじるように冷たく言い放つのは、黒い甲冑に身を包んだ屈強な男達。海賊を異様に憎む彼等は、里見水軍と呼ばれる海の武装集団だ。ここは、彼等の拠点である無人島。彼等はコンキスタドール「うみなりさま」と化したツルギを自分達の王とみなし、その仲間である津島海賊衆の命を供物として捧げるつもりでいたのだ。
「それでは始めるぞ。槍をもてい!」
「……すまない、ツルギ。お前との約束、果たせそうにない」
 そしていよいよ、里見水軍の男達が処刑の支度を始めた。運ばれてきた長槍の穂先が、陽光の下冷たく光輝いていた。

 第一章は、「里見水軍」との集団戦になります。里見水軍の拠点である、無人島の海岸線一帯が戦場となります。戦闘開始直後の状況は、猟兵が鉄甲船で岸辺まで近づいているところから始まります。敵は海賊衆の処刑よりも猟兵の迎撃を優先しますので、猟兵の皆様は敵との戦闘に集中していただいて結構です。この戦闘に勝利すれば、海賊衆のメンバーを救出することができます。
 プレイングは、断章が追加された只今から受付開始となります。それでは、よろしく御願いいたします!
マチルダ・メイルストローム
薄汚いとは言ってくれるじゃないか。
あぁ、その通りだ! あたしは海賊、清く綺麗なつもりなんてさらさらないね! 文句があるならとっ捕まえてそこに並べてみな!

海上戦がお望みなら乗ってやるよ!
【ゴースト・フリート】を使用、7隻の幽霊船とそれに分乗する370人の亡霊海賊を召喚するよ。あたしもその中の一隻に乗り込んで指揮と操船をしよう。

あっちも素人じゃないがうちのあらくれどもも戦いじゃ負けちゃいない、それなら……親玉のいない船団にこのあたしが負けるもんか!
遠くの船は秘宝「メイルストローム」の力で海流を操って操船を妨害、大砲で沈める。近い船は接舷して切り込み、乗り込んで船員どもをたたっ切る!





 ――ザバァッ!
 猟兵達を乗せた鉄甲船は、荒ぶる高波を蹴立てて里見水軍のアジトへたどり着いた。無骨で逞しい鉄甲船の甲板に立ち、マチルダ・メイルストローム(渦潮のマチルダ・f26483)は赤い瞳で浜辺に打ち立てられた処刑台を眺めている。処刑台には既にカグラを始めとする津島海賊衆の面々が縛り付けられ、処刑執行の時を待っていた。
「……あれか。主のかつての仲間を、供物に捧げるってわけかい。趣味が悪いねぇ」
 髑髏の描かれた海賊帽をかぶり直し、マチルダは腰に提げた愛用の曲刀『メイルストローム』の感触を確かめる。すると、異変を察知した里見水軍が慌ただしく出撃し、猟兵を迎え撃つ準備を始めた。
「……あれは、黒鉄の船だと!?」
「津島の同盟勢力か!? ええい、迎え撃て!」
 今まさに海賊衆の処刑に取り掛からんとしていた里見水軍の兵士たちは、乱入者を見るや次々と船に乗り込み、海へと漕ぎ出した。
「あの船は……」
 磔にされてうなだれていたカグラが、ちらりと海の方へと視線を向ける。すると、里見水軍の船団が謎の鉄船へ向かって攻撃を仕掛けんとするところだった。
「薄汚い海賊風情が。海の藻屑にしてやろう! キサマらの命など、我らが王に捧げる価値も無いわ!」
 里見水軍がこれまでの戦いで滅ぼしてきた、グリードオーシャンの様々な海賊船や数々の武装が天から降り注ぎ、静かだった無人島が瞬く間に大規模な海上戦の舞台へ変わっていく。
「薄汚いとは言ってくれるじゃないか。あぁ、その通りだ! あたしは海賊、清く綺麗なつもりなんてさらさらないね! 文句があるならとっ捕まえてそこに並べてみな!」
 マチルダが船上で啖呵を切ると、鉄甲船の背後から続々と7隻の海賊船が姿を現した。濃霧の中から出現した船は、ひどく損傷したボロボロの外装に、所々が破れた黒い海賊旗ジョリーロジャーを掲げていた。
 そして、その甲板に蠢いているのは無数の白骨死体――否、幽霊船の乗組員たちだ。その数、総勢370体。
「海上戦がお望みなら乗ってやるよ!」
 これらの幽霊船は、マチルダが秘宝のガラス瓶の中に封じていたものだ。マチルダは鉄甲船から幽霊船へと軽やかに飛び移り、船の指揮権をゴースト船長から奪い取って戦いの準備を始める。
「見ろ、お前たち! あの船が全てあたしらの獲物だ! 幽霊船団ゴースト・フリートに、恐れるものは何もない! 命も財も全て奪い尽くせ!!」
 マチルダが船上で曲刀を振るうと、彼女の意志に呼応するように周囲の潮流が変化した。風と潮の流れに乗った幽霊船団は水上を滑るように航行し、激しい砲撃を浴びせながら里見水軍との距離を詰めていく。劣化が激しい船とは到底思えない戦闘力だ。
 やがて四方八方から水柱が立ち昇り、両軍入り乱れての壮絶な撃ちあいが始まった。轟音と共に火を噴くキャノン砲が甲冑武者の一団を薙ぎ払い、朽ち果てた屍骨の海賊たちがフックロープを引っ掛け、あるいは小舟から敵の船に飛び移って侵入を開始した。彼らはカタカタと嗤うように骨の身体を震わせ、カトラスとラッパ銃を手に斬り込んでいく。
 生者と死者が入り乱れ、怒号と銃弾が飛び交う船の上はたちまち修羅場と化した。振り下ろされる剛刀に骨の身体がぶち砕かれ、甲板に抑えつけられた鎧武者がカトラスで喉を掻っ捌かれて床を赤く染める。
「このあたしを……渦潮のマチルダを侮ったことを、骸の海で後悔するがいいさ! さあ、お楽しみはこれからだ!」
 船の積み荷から火の手が上がっても、マチルダが狼狽えることはなかった。黄泉の国より舞い戻った頼もしい手下たちは、サムライなどよりずっと強く、逞しい。曲刀を閃かせ、マチルダは手下と共に敵のただ中へと飛び込んでいった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

無情な儀式です。思う部分はありますが止めておきましょう。
犠牲になった青年の覚悟、部外者の私が汚したくありません。
今は一刻も早く、彼の大切な仲間達を救出する事を優先します

のんびりしている暇はありませんね。
我が騎士達にてこの場を収めてご覧みせましょう。
ホワイトナイツ。我が頼もしき騎士達。参集し、眼前の黒衣の群れを討ち果たしなさい。
横一列に陣形を整え、『ランスチャージ』にて迎え討つ準備を。
敵力量は分かりませんが、数ではこちらが勝っています。
一対一で戦う事を避け、複数対一で討ち取るよう心がけます。
敵の攻撃は強力です。油断せず『見切り』、氷『属性攻撃』で確実に骸の海へと還して差し上げましょう


セツナ・アマギリ
妖刀サザナミは是非とも頂きたいお宝だナ。
まぁ何はともあれ海賊の救助か……って、アレはもうピンチじゃないか?(遠目に処刑台らしき場所を見つめ)
さっさと片付けますか。

水面を凍らせて鉄甲船から飛び降り、コールドブレスで応戦。
おいおい、テレポートとか出来るワケ?
これはまとめて攻撃が吉か?
よし、UC発動。氷の精霊ちゃん、頼むぜ。うまいこと敵の足元一面を凍らせてくれよ。
この足止めで他の猟兵のサポートにもなると良いんだが。
っと、海風でダイヤモンドダストも発生したか。これは幸先良いゼ?

へぇ、頭領サンは美人だな。見せ場じゃねーか、頑張れ俺。
双剣でカッコ良く戦場を駆け抜けるゼ。

連携アドリブ歓迎!


エコー・クラストフ
……海賊を助けてやる義理はないが、ボクもオブリビオン共を生かしておいてやる道理はない。
神に捧げる供物というなら、相応しいのはお前たちの命のほうだろう。

できるだけ一度に多くのオブリビオンを相手取れる位置に飛び込み、一体ずつ斬っていく。
勿論後ろや側面から刀やら槍の攻撃を受けるだろうが……それは計算のうちだ。
【継戦能力】でその場から動かず、UCを発動。
ボクもこの剣も、血が流れれば流れるほどに強くなる。
この傷も何もかも、お前たちに返してやろう……! 報復の時間だ!





「おー、大砲ボンボン撃ちまくって、派手にやってんな」
 里見水軍の船団と、幽霊船団による激しい戦闘の模様を、セツナ・アマギリ(銀の魔器・f09837)は欄干にもたれて眺めていた。そんな彼の傍らに、藍色の髪の男がやって来る。夜明け前の空のごとき深蒼のコートを風になびかせるのは、魔法剣士のアリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)。
「戦況はこちらに有利なようですね。いかに精強な海軍とはいえ、海流まで操ることはできない。流石はセイレーンといったところか」
「ああ。水を操るといえば、妖刀サザナミ……是非とも頂きたいお宝だナ。まぁ、何はともあれ海賊の救助か……って、アレはもうピンチじゃないか?」
 トレジャーハンターであるセツナは、グリードオーシャンのお宝に興味津々だ。しかし、浜辺に設置された処刑台とそれに拘束された海賊たちの姿に、表情を一変させる。
「無情な儀式です。思う部分はありますが止めておきましょう」
 セツナが指さした方角へ目を向けると、アリウムが険しい表情で言葉を紡いだ。
「だな。そんじゃ、さっさと片付けますか」
 欄干にスコーピオン=ギフトのフックを引っ掛け、セツナは船の外壁を器用に滑り降りていく。もちろん、下は荒波渦巻く青海だ。
「む、危ないですよ。何をするんです?」
「まあ見てなって。――<銀の魔女>ルナに仕えた氷の精霊よ、俺に力を貸してくれ」
 セツナは、かつての主『ルナ』から授かった氷の魔力を体外へ解き放った。すると、海面を瞬時に凍結させる強力な冷気が発生し、セツナの歩みに合わせて海上に『氷の道』が生まれていく。
「……これは驚きましたね」
「寿命削る大技だからな? さあ、速攻でカタつけようぜ」
 腕をぐるぐる回し、セツナが船上のアリウムへ『こっちへ来いよ』とサインを送る。意を決してアリウムが船から飛び降りると、二人の猟兵は海に敷かれた氷のカーペットの上を走って上陸作戦を開始した。
「…………」
 そしてその様子を、物陰から静かに見守っている者がいた。

「よし、一番乗りは俺達だぜ」
「あの女性が、海賊の頭領ですか」
 海面に出来た氷の道を走り抜け、セツナとアリウムは島に上陸を果たした。生身で海を渡ってきた猟兵に、里見水軍の面々が驚きの表情を浮かべる。
「な……海を凍らせて渡ってきただと!? 貴様ら、メガリス使いか!」
「へぇ、頭領サンは美人だな。見せ場じゃねーか、頑張れ俺」
 セツナは処刑台に縛られたカグラを一瞥し、短剣『ルナ=アイン』を抜いて身構える。
「のんびりしている暇はありませんね。我が騎士達にてこの場を収めてご覧みせましょう――」
 アリウムが自身の魔力を消費し、かつてのウォーグレイヴ家精鋭騎士たちの魂を召喚する。すると、砂浜に光のカーテンが立ち昇り、その向こう側から白銀の鎧兜に身を固めた騎兵達が姿を現した。その数、総勢77騎。それが、横一列に並び隊列を組む。
「ホワイトナイツ。我が頼もしき騎士達。参集し、眼前の黒衣の群れを討ち果たしなさい」
 素顔を見せぬ騎士達は言葉を発することもなく、突撃槍の穂先を真っ直ぐ前に向けると、砂浜を疾走し突撃を敢行した。
「騎馬隊だと! これだけの数を揃えて、何処に潜んでおったのだ!」
「ええい、怯むな! 皆の者、槍を構えて密集するのだっ」
 大将の指示に応じて、どこからか里見水軍の増援が武器を手に取り現れた。甲高い馬の嘶きと野太い雄叫びが交錯し、両軍が激しくぶつかり合う。するとランスと馬の蹄に蹴散らされ、勇猛な侍達が次々と吹き飛ばされていった。

「……海賊を助けてやる義理はないが、ボクもオブリビオン共を生かしておいてやる道理はない」
 アリウムとセツナの後を追って、鉄甲船からやってきたのは灰色髪の少年……いや、少女。エコー・クラストフ(死海より・f27542)はオブリビオンに家族を奪われ、自身も一度命を落とした。今の彼女を突き動かしているのは、既に停止した筈の心臓とオブリビオンへの復讐心のみ。
「神に捧げる供物というなら、相応しいのはお前たちの命のほうだろう!」
 騎馬隊が突っ込み隊列を崩したところへ、エコーが抜刀して斬り込んでいく。彼女の愛剣は黒い刃を持ち、赤い雷を放つ呪剣『スプリテ・デ・サングェ』。エコーは単身敵陣に飛び込み、目についた敵に片っ端から斬りつけていく。
「おいおい、一人で突っ走っちゃ危ないんじゃないの?」
 魔銃『コールドブレス』で敵の頭を撃ち抜いたセツナが、突出するエコーの戦いぶりを懸念する。そして彼の危惧したとおり、敵に囲まれたエコーの体に、無数の刀傷がつけられていく。
「いかん……今いくぞ!」
 魔剣『氷華』で敵を斬り伏せたアリウムが、エコーを助け出すべく駆け付けようとする。しかし、エコーはそれを制止した。
「来ないで……どうせ心臓はもう動いていない。ボクもこの剣も、血が流れれば流れるほどに強くなる。この傷も何もかも、お前たちに返してやろう……! 報復の時間だ!」
 そう、エコーの剣は、彼女が傷を負い血を流すほどに切れ味を増す呪いの剣。周囲に飛び散った血を巨大な刃に変換すると、エコーはそれを勢いよく真横に振るい、複数の敵を一度になぎ払った。
「デッドマンってヤツか。まったく、無茶苦茶だぜ」
 セツナの操る氷の精霊がブリザードを生み出し、里見水軍を凍結させていった。そして彼はしなやかな身のこなしで敵をかいくぐり、ダイヤモンドダストを振りまきながらカグラ達の元へと駆けていく。
「アリウム! 俺は海賊達を助けにいくぜ。アンタはこの子を頼む! 放っとくと、力を使いすぎるかもしれねえからな」
「……わかりました。さあ、こっちへ。敵の数が多い、無理はしないことです」
 アリウムはエコーの手を引きながら、氷の魔剣を軽やかに振るって敵を葬っていく。
「止めないでくれ、まだボクは戦える……」
 全身から血を流しながらも、エコーは赤い雷を起こして敵を屠り続けた。常人ではとっくに意識を失っている筈のダメージでも、彼女は意に介さない。エコーの魂の衝動が尽きぬ限り、虚無の心臓は彼女が倒れることを許しはしないだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

木元・祭莉
【かんさつにっき】でー。

鉄甲船、久しぶりだー。
ねー、舳先に木元村の旗、立ててもいいかなあ?

水軍は海賊じゃなかったよね?
オブリビオン、なんでも変にしちゃうね、もー。

やあやあ、我が名は木元祭莉!
いざ尋常に勝負ー!

疾走発動!
旗を背に差し、飛び立つ!

かいせんはせいくうけんがだいじ。
なんか、母ちゃんがそんなこといってた!

アンちゃんが地上で突撃して。
コダちゃんがウサミミ呼んで攻撃開始したら。
おいらは上空から水軍の連携を切り離すように飛び回るよ。

如意な棒からの衝撃波で、範囲攻撃!
たまに急速転身して、ぐーで殴る!

おかしらー、助けに来やした!
さあ、ツルギを『助け』にいきやしょうぜー♪


木元・杏
【かんさつにっき】
本来なら、海の争いは海の者達のもの、とは思うけど

鉄甲船から望遠鏡で島の情報収集
処刑場の位置を確認し上陸と共に突撃

幅広の大剣にした灯る陽光からオーラ放出
処刑されそうな津島海賊団の人達をオーラ防御し庇いに入る

ごめんね、割り込ませてもらう
無駄な殺生は駄目

うみなりさまは王ではなく、王を守る剣(つるぎ)
…守りたかった、剣
まとめて返してもらう

【華灯の舞】
降る海賊船や武器等が海に着水する前に粗方撃ち落とし、まつりんの弾除けにも利用

津島の皆、着水した船使って?
海の戦いはプロに任せ、わたしは船をジャンプし移動
里見の者を縄で縛り上げていく

カグラ、この者達倒してしまう?
海の事は海の者に決めてもらう


鈍・小太刀
【かんさつにっき】

大切な人の力になりたい
分かるよその気持ち
メガリスが受け止めてくれたらよかったのにね
世界って残酷だ
(桜雨を胸に目を閉じて

それでも想いはきっと届いてる
助けに行くよ
貴方の大切な人を、仲間を、心を

桜雨に想い込めてUC発動
ホワイトランス(巨大イカ)と
グレートアンコウ(巨大アンコウ)達に
ウサミミ付け召喚

嘗て父と共に戦ったという海の仲間達
幾つもの戦争を乗り越えた彼らの背は頼もしい
海中から船底に穴を開け
上空から躍りかかって噛み砕く
今や海だけでなく空も彼らの領域だ

「私も負けないから!」
父の背を追う様に
彼らの背に乗り戦場を翔ける
刀の斬撃で衝撃波で炎の属性攻撃で
水軍達を骸の海へ還すよ

※アドリブ歓迎





「鉄甲船、久しぶりだー! ねーおっちゃん、舳先に木元村の旗、立ててもいいかなあ?」
 潮風が吹き抜ける甲板をうろちょろ歩き回っているのは、赤茶の髪をした人狼の少年。木元・祭莉(とっとこまつさんぽ?・f16554)は、屈強な水夫の男に『木元村の旗』を見せて、にぱっと笑いかける。
「旗ァ? 木元村ってどこの島にあんだよぉ?」
 白地に大きなマルが描かれただけの旗を見て、水夫は困惑気味。一方で祭莉の双子の妹、木元・杏(食い倒れますたーあんさんぽ・f16565)が望遠鏡を使い、目標である島の方角を観察していた。
「津島の海賊、あそこに捕らわれてる……。本来なら、海の争いは海の者達のもの、とは思うけど」
「それでも、放っとけないよ。お節介かもしれないけど、父さんだってそうすると思う」
 杏の傍らにいるのは、双子の幼馴染である年上の少女、鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)。
「大切な人の力になりたい、分かるよその気持ち」
 メガリスを使いこなすには、本人の資質が必要だ。しかし、資質があるかどうかは試練に挑むまでわからない。メガリスとはそういうものだ。
「メガリスが受け止めてくれたらよかったのにね。世界って残酷だ」
 試練に挑み、散っていった若者を偲ぶ小太刀は腕の中の玉手箱『桜雨』を大事そうに抱え、そっと目を閉じる。
「小太刀」
 彼女の心中を察したか、声を掛けながら服の袖をきゅっと掴む杏。
「……助けに行くよ。貴方の大切な人を、仲間を、心を」
「オーイ! 間もなく敵がやって来るぜ、嬢ちゃんたちぃ」
 感傷に浸る間もなく、戦いの時が迫ってきた。三人の若き猟兵は、いよいよ里見水軍の拠点へと上陸を開始する。決戦の始まりだ。

「おのれ、あくまで我ら里見水軍に刃向かうか!」
 里見水軍の将たちが高々と手を掲げ、船上で何事か祈りを捧げている。すると、雲の切れ間から次々と武装した船団が降下してきたではないか。
「総力を上げて、討ち滅ぼしてくれるわ!」
 船の種類も装備もバラバラでまとまりがないが、かなりの数である。これこそが、打ち倒した敵を支配下に置き、自在に召喚する彼らのユーベルコードなのだ。
「水軍は海賊じゃなかったよね? オブリビオン、なんでも変にしちゃうね、もー」
 ぷりぷりしながら、祭莉は体から白い焔を放出して戦闘力を高めていく。
「さあ、行くよみんな!」
 小太刀が『桜雨』に祈りを込めて蓋を開くと、その中に封じられていた海の仲間たちが姿を現す。
「ホワイトランス、グレートアンコウ! 私と一緒に戦って!」
 小太刀の呼びかけに応じ、姿を現したのは巨大なイカとあんこう。そしてそれらの頭部には、なぜか可愛らしいウサミミが付いていたのだ。イカとあんこうのタッグは、空中をウサミミ羽ばたかせてふよふよ飛行し、海賊船団へと向かっていく。
「頼んだよ!」
「……!」
 彼等海の仲間達は、かつて小太刀の父と共に戦った頼もしい味方だ。あんこうは大きなアゴを開いて里見水軍の船をバリバリ噛み砕き、イカはざぶんと海中に飛び込むと高速で遊泳し、鋭く尖った頭部で体当たりして船体に穴を開けていく。
「かいせんはせいくうけんがだいじ。なんか、母ちゃんがそんなこといってた!」
「あっ、まつりん。気をつけて?」
 白炎を噴き上げ、空を翔けながら敵へと向かっていく祭莉。杏は慌てて兄を目で追い、上空から降下してくる敵の増援部隊に指先を向ける。
「射て」
 手を真っ直ぐ突き出した杏の指先から、桜の花びらを思わせる白銀の光が迸って船体を貫いた。杏の援護射撃を受け、祭莉が敵軍の隙間をかいくぐっていく。
「コダちゃん、敵がそっちにいったー!」
「任せて!」
 ウサミミあんこうの背中に飛び乗り、小太刀が愛刀『片時雨』を抜き放つ。煌めく刃を陽光にさらすと、小太刀は上空から里見水軍の安宅船へと斬り込んだ。
「私も負けないから!」
 放たれる火矢を叩き落とし、突き出される長槍を弾いて捌いて、火炎を纏った刃をなぎ払う。父の背を追うように、少女は剣を振るい、襲い来る敵を業火の中へと葬り去っていった。

「ええい、怯むなっ! 負傷者を後退させ、陣形を組み直せ!」
 陸では、里見水軍の地上部隊が再編成に追われていた。そして遂に、猟兵たちの鉄甲船が、ついに島に接岸した。
「うみなりさまは王ではなく、王を守る剣(つるぎ)……守りたかった、剣。まとめて返してもらう」
 杏は素早く船上から飛び降りると、祭莉と共に津島海賊衆の救援に向かう。二人の頭上では、小太刀と海の仲間が飛行しながら戦っていた。二人に攻撃が向かわないように、砲撃を引きつけているのだ。
「あの子供たちは……ワシらを助けに来たのか?……この温かい光は何じゃ?」
 杏は『灯る陽光』を花弁のような形に変え、囚われている海賊たちの上から降り注がせる。それは流れ矢などから彼らを守る障壁となって、きらきら輝きながら周囲を滞空し始めた。
「やあやあ、我が名は木元村の木元祭莉! いざ尋常に勝負ー!」
「木元村だとぉ! どこの田舎だ……ぐわあっ!」
 槍や刀を構え、一斉に突撃してくる武者たち。しかし、ユーベルコードを発動させ勢いのままに突っ走る祭莉が相手では分が悪い。祭莉はぶんぶんと愛用の『如意みたいな棒』を回転させ、衝撃波を巻き起こして敵を纏めてなぎ倒していった。
「おかしらー、助けに来やした! さあ、ツルギを『助け』にいきやしょうぜー♪」
 迫りくる水軍武者を打ち倒し、祭莉と杏は海賊たちの元に辿り着いた。すると杏の人形『うさみみメイド・うさみん☆』が、持っていた短刀で彼らの縄を切り解放していく。
「あんた達は、メガリス使いか? アタシらを、助けに来たってのかい……」
「カグラ、この者達倒してしまう? 海の事は海の者に決めてもらう」
 夕陽色をした杏の瞳が、真っ直ぐに妖狐の女海賊を見つめていた。杏の傍らには、彼女が縛り上げた里見水軍の将が跪いている。
「ツルギは……アタシの大切な仲間だ。誰にも、利用なんてさせない。あいつの命を侮辱することは、絶対に許さない……!」
 そう言って低い声を絞り出したカグラの瞳が紅く輝くと、彼女の背後の海面から鮫の群れが次々と飛び跳ね、牙を剥いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『うみなりさま』

POW   :    生まれ故郷
【海水のブレス】を降らせる事で、戦場全体が【太古の海】と同じ環境に変化する。[太古の海]に適応した者の行動成功率が上昇する。
SPD   :    至る道
戦場全体に、【激しい海流】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
WIZ   :    加護の歌
【加護を与える鳴き声】を披露した指定の全対象に【この声を聴き続けていたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はサフィリア・ラズワルドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 物心ついた時から、海賊に憧れていた。俺もいつかでかい船に乗りこんで、あちこちの島へ宝を探しに出かけたいと思った。だから11歳で、故郷の島を飛び出した。そして、津島にたどり着いた。
 船の仕事はキツかったが、習ったことがちゃんとできれば皆褒めてくれた。自分の刀を手に入れたのは13の時。おかしら――カグラに剣の稽古をつけてもらう日が、本当に楽しみだった。
「ツルギか、男らしい良い名前だな!」
「次の稽古までにもっと強くなりな」
 カグラに褒めてもらいたくて、俺は必死で仕事を覚え、剣の腕を磨いた。カグラは怒ると怖いけど、普段は優しいし、それにとても美人だ。カグラは俺たちの自慢の頭だ。
 そしていつしか、俺はカグラの背を追い抜いていた。でもカグラは、相変わらず俺を子供扱いしてばっかり。なんでだ? 俺は仕事を殆ど覚えたし、実戦にも出た。泳ぎだって誰にも負けない。
 カグラの命令なら何でもできる。――そうだ、メガリスを使いこなせば、カグラは認めてくれるのかな。そうすれば俺は、ただの部下じゃなくて、カグラにとって特別な存在になれるかもしれない。……いつか一人の男として、カグラに。

 津島から北西、およそ300海里地点の洋上を、津島海賊衆の船が航行していた。里見水軍を破り、津島海賊衆の救出に成功した猟兵は、出航にあたって彼等の本来の目的に協力する約束を交わしていた。
 白い着流しを纏ったカグラの肩の上で、カラフルな羽毛のオウムが甲高く鳴く。
「――見えてきたな。ほら、あれがツルギだ」
 カグラが、船の前方を指差した。その海域のみ潮の流れが不自然に曲がりくねっており、幾つもの渦潮が発生していた。そしてその渦の中心に浮遊しているのは、青い鱗の巨大な海竜だった。
「まったく――随分デカくなっちまったな、ツルギ」
 そんな皮肉を溢すカグラの横顔は少し寂しげだった。だが、それも僅かな時間のこと。すぐに頭領の顔に戻り、部下達に指示を飛ばし始める。
「アタシ達の問題に巻き込んじまって、悪かったな。だけど、旅は道連れっていうしな。アンタ達も一緒に、ツルギの魂を見送ってくれねえか。それと、津島の宝――サザナミを持ち帰らなきゃならないからな」
 船に同乗している猟兵に、カグラが改めて協力を求めた。きっと彼等だけでは、今のツルギに勝つことはできなかっただろう。しかし、今ここには埒外の存在たる猟兵達がいる。
「ああ、今日も良い天気だな。空が青い……旅立つには良い日だ。なあ? ツルギ」

 第二章は、「うみなりさま」との海上戦になります。戦闘は津島の海賊船が、うみなりさまと接触した直後から始まります。
 海賊船は大砲を所有しており、カグラの指示によって適宜部下が発射します。カグラはフォックスファイア、海賊王の怒り、シャーク・トルネードの3つのユーベルコードを使用できます。共闘を希望する場合、彼女のユーベルコードをいずれかひとつだけプレイングで指定してください。
エコー・クラストフ
……ツルギ、か。
君がどんな人間で、どんな夢を抱きメガリスに手を伸ばしたのか、ボクは知らない。
同情もしない。君は不幸だが、君より不幸な奴なんていくらでもいるんだ。
……始めるぞ。オブリビオンと化した時点で、お前はすでにボクの敵だ!

船に乗って可能な限り接近する。
自分から海流を作ってくれるのならばありがたい。その水、利用させてもらうぞ。
敵の身体を取り巻く水滴から【一切の希望を捨てよ】を発動する。
ゼロ距離から飛び出す有刺鉄線と杭の攻撃だ。避けられると思うなよ。

……悪いが、ボクは……誰かと一緒に戦うなんて器用なことはできない。
だからボクは勝手に削るだけだ。お前の命を!


マチルダ・メイルストローム
津島の海賊船に同乗

あぁ、いい日だ。行くも帰るもこんな日がいい。
海の男の見送りだ、派手にやろうじゃないか!

海流の迷路かい、正しいルートを選ばなきゃ辿り着けないってことだろうけど、チマチマ避けるのはあたしの流儀じゃない。
海流はあたしに任せろ! このまま真っすぐ、最短経路で突っ込みな!
【メイルストローム・ルーラー】で海流を操る力を解放、迷路の海流を乗っ取って、船をうみなりさまへ向かわせる方向へ変えるよ。

接敵したらうみなりさまの体に飛び乗って、秘宝「メイルストローム」で接近戦だ。
カグラにゃフォックスファイアや大砲での援護をやってもらおうか。こんだけ敵がでかいんだ、誤射したら後で笑ってやるよ!





 海賊船の行く手には、巨大な海竜へと変貌したツルギが立ち塞がっている。グリードオーシャンの陽光が天から燦燦と降り注ぎ、蒼い海面とうみなりさまの巨体をキラキラと照らしていた。陽光を受けて光り輝く青い鱗は、見る者にある種の神々しさを感じさせた。
「――あぁ、いい日だ。行くも帰るも、こんな日がいい。海の男の見送りだ、派手にやろうじゃないか!」
 旅立つには良い日だと、カグラは言った。そうだ。どうせ見送るなら、明るく派手にやった方がいい――。マチルダは、同じ海賊のよしみでカグラの願いを聞き入れた。青い髪のセイレーンが、妖狐の女海賊に笑いかける。
「感謝するよ、『渦潮のマチルダ』。さあ、そうと決まれば戦いだ! いくぞ、野郎ども!」
「おおーーッ!!」
 カグラの号令の下、屈強な津島海賊衆がそれぞれの持ち場に就く。そして次の瞬間、海賊船から上がった仲間達の声に反応するように、うみなりさまが咆哮した。
「――――オオオオオオオオッ!!」
 低く響く咆哮を皮切りに、うみなりさまが潮の流れを操りはじめる。グルグルと絶え間なく変化し、近づく者を寄せ付けぬ海流の迷路。それはまさしく、海の神へと至る道だ。
「海流の迷路かい、正しいルートを選ばなきゃ辿り着けないってことだろうけど、チマチマ避けるのはあたしの流儀じゃない。海流はあたしに任せろ!」
「何か策があんのかい?」
 メガリスには、メガリスの力で対抗するのが流儀だ。マチルダはカグラの前で己が力の証たる秘宝『メイルストローム』を抜剣し、高く掲げる。
「まあ見てな。『渦潮』の由来、見せてやるよ!」
 船は荒れ狂う波を掻きわけ、海竜へと真っ直ぐに進んでいく。間もなく、大きな潮のうねりに差し掛かるだろう。
「このまま真っすぐ、最短経路で突っ込みな!」
 パイレーツコートを潮風にはためかせ、マチルダが曲刀を縦横に鋭く振るう。するとメイルストローム自身が眩い光を放ち、秘められた力を解き放った!
「おお、潮の流れが……均一に!」
 マチルダのもつ秘宝『メイルストローム』は、奇しくも妖刀サザナミと同質の力を有していた。海賊船は迷路の海流を強引に修正し、そのままうみなりさま本体へと接近していく。
「……ツルギ、か。君がどんな人間で、どんな夢を抱きメガリスに手を伸ばしたのか、ボクは知らない。同情もしない。君は不幸だが、君より不幸な奴なんていくらでもいるんだ」
 突き放すような口振りで、エコーが愛剣『スプリテ・デ・サングェ』に手をかけた。うみなりさまの巨体が、徐々に眼前に迫って来る。
「勿論、同情など必要ないさ。お前は、お前の信念を貫けばいいんだ」
 カグラが、周囲に狐火を浮かべていく。彼女の意志に応じて自在に操作が可能な、ユーベルコードの炎だ。
「ツルギは命を賭けて試練に挑んだのだろう。だから、こちらも命を賭けるのが礼儀。……それだけさ」
 すべては、エコーの心臓に眠る魂の衝動のままに。海賊稼業が務まるのは、底なしの命知らずだけだ。
「カグラ、援護を頼む。こんだけ敵がでかいんだ、誤射したら後で笑ってやるよ!」
「心配は無用。ウチの砲手は一流さね!」
 勇ましき海の女達が、海竜へと挑んでいく。耳を劈く轟音と共にキャノン砲が火を噴き、カグラの操る狐火が空中を乱舞する。盛大に降りかかる水飛沫を浴びながら、エコーは声を張り上げ叫んだ。
「……始めるぞ。オブリビオンと化した時点で、お前はすでにボクの敵だ!」
 巨大な敵に近づくのは危険を伴うが、時に敵の身体そのものが足場となることもある。二人の猟兵は船から直接うみなりさまの背へと飛び移り、頭部を目指す。うみなりさまは尚も海流を操り船を転覆させようとするが、撃ち込まれる火球と砲撃を浴びて苦し気に身をよじる。
「……悪いが、ボクは……誰かと一緒に戦うなんて器用なことはできない。だからボクは勝手に削るだけだ。お前の命を!」
 うみなりさまの周囲に漂う水の球。その中の一つから、エコーは錆びた有刺鉄線と杭を作りだした。大きく揺れ動く竜の背の上を疾走し、竜の首に狙いをつける。
「逝け、ツルギ」
 跳躍し、有刺鉄線を首に絡ませながら灼けた鉄杭を打ち込む。マチルダもまた、うみなりさまの首を斬りつけてダメージを与えていく。体を切り裂くと、傷口から血の代わりに大量の海水が噴き出した。竜が激しく暴れたことにより、エコーの体はバランスを崩して海へと振り落とされそうになる。
「くっ……」
「掴まれ! このまま飛び降りる!」
 落下の瞬間、マチルダがエコーに手を差し伸べた。二人の海賊はしっかりと片手を繋ぐと、それぞれの武器を持ったまま勢いよく着水した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

ブーツに魔力を込め『水上歩行』。眼前の敵が強大であろうともやる事は変わりません。
彼の覚悟と犠牲に敬意を。
彼の門出に雪の華を降らせていただきます。

水が多い。上手く私のUCと噛み合えば敵もやりにくくなるはず。
『属性攻撃』ホワイトブレスを敵周辺に『範囲攻撃』し、少しでも動きを妨害していきましょう。
海流が激しいのも辛いですね。おまけに足場も安定しない。『全力魔法』まで引き上げて、厚い氷を海面に張らせることができれば、他の味方にも有利かもしれません。
隙があれば手にした武器で斬りつけていきます。

この終わりは彼が望んだ終わりではないのでしょう。
こんな姿になって誰かに害を為す事もまた。
急ぎ決着を。


セツナ・アマギリ
湿っぽいよりは、楽しくいこうじゃねーか。
その方がイイだろ?派手に暴れるゼ。

カグラと一緒に戦うとするかね。今回の主役はツルギとアンタだからな。
俺はカグラのUCシャークに乗って、牽制の氷弾をうみなりさまの周りに撃ち込むぜ。
海が凍って見動き取りにくいだろ。

カグラに任せられたら、UC発動。
よぉ、ツルギ。お前サンは幸せものだぜ?仲間たちにこんなに想われてサ。なのに――まだ抵抗するのか?攻撃するのか?意味がねぇと思わないか?
質問しながら本体の魔器から双子座の星獣(見た目は少年少女)を召喚し、雷の嵐で攻撃させる。

さあ、最期はカグラの手で……アイツもそれを望むだろ。

アドリブ連携歓迎!





 海は青き竜の嘆きを表すかのように激しくうねり続け、船を揺れ動かして行く手を遮る。しかし、海賊達は一丸となって険しい荒波に挑み続ける。そして猟兵たちもまた、戦いに終止符を打つべく海原へと飛び出した。
「湿っぽいよりは、楽しくいこうじゃねーか。その方がイイだろ? 派手に暴れるゼ」
「なら、これを使うがいい! 空から近づけるはずだ」
 カグラが鮫魔術で呼びだしたサメの群れが、海賊船の周りをゆっくりと旋回し始めた。彼等の頭部には、なぜかチェーンソーの刃が生えている。理屈は分からないが、これで空が飛べる仕組みになっているらしい。するとその中の一匹が、ふよふよとセツナの元へ飛来してきた。
「…………」
 ガラス玉のような無機質な目が、じいとセツナを見つめている。早く乗れ、ということらしい。
「ちょっと失礼……」
 恐る恐る跨がったサメの表皮は、やはりざらざらしていた。鮫肌というらしい。セツナを乗せると、サメはフワッと浮き上がり甲板から飛び立っていく。
「よし、よろしく頼むぜ」
「…………」
 サメは返答しない代わりに、ノコギリの刃を力強く回転させた。セツナはサメの大きな背びれを掴み、うみなりさまの元へと向かう。

「彼の覚悟と犠牲に敬意を。彼の門出に雪の華を降らせていただきます」
 アリウムはブーツの靴底に氷の魔力を流し、足元を凍らせて海面に降り立った。うみなりさまは近づく者を拒むように泳ぎ、海流を操っている。水上を走って距離を詰めていくが、波が絶え間なく押し寄せてくるため安定した挙動が難しい。足を止めれば、たちまり押し流されてしまうだろう。
「集中していかねば……おや? あれは」
 上空を見れば、海賊船からサメの群れが飛来してくるのが確認できた。カグラが鮫魔術で生み出したものだろう。そして、そのうちの一匹に騎乗しているのはセツナだった。
「援護するぜ!」
 セツナは上空から氷の魔銃『コールドブレス』を発砲し、うみなりさまの周囲の水を凍結させていく。水温が低下し、海面が凍っていくことによって、うみなりさまの動きが徐々に鈍っていく。それを見計らい、海賊船から砲撃が撃ち込まれた。
「オオオオオオ……ッ!!」
 耳を劈く砲声とともに、うみなりさまの体に砲弾が叩き込まれた。被弾した部位からは海水が飛び散り、次々と崩れ落ちていく。メガリスの魔力により、うみなりさまの身体の大部分は水で構成されているらしい。
「よぉ、ツルギ。お前サンは幸せものだぜ? 仲間たちにこんなに想われてサ」
 ツルギの魂が解放されない限り、うみなりさまの元にはコンキスタドールが集まり続けるだろう。かつての仲間が各地の島を荒らしまわるのを防ぐため、海賊たちは自分たちの手で討伐し、決着をつける。それが、この世界に生きる海賊の掟なのだ。
「なのに――まだ抵抗するのか? 攻撃するのか? 意味がねぇと思わないか?」
 問いかけと共に、セツナは自身の本体である天球儀から『ふたご座の星獣』を呼び出した。少年と少女。男女の双子の姿をした星獣は、空中を優雅に飛び回りながら雷の嵐を振らせてうみなりさまを攻撃する。しかし、既にコンキスタドールとなり、理性を失ったツルギには、セツナの問いに答える力はない。
「この終わりは彼が望んだ終わりではないのでしょう。こんな姿になって誰かに害を為す事もまた。急ぎ決着を」
 モノクルの奥のブルーの瞳は、哀愁を帯びて竜を見つめる。当てどなく海を彷徨い続ける、若き海賊の魂を解き放つために。アリウムは素早くうみなりさまの体の上を駆け上がると、持っていた愛剣『氷華』で彼の鱗を貫き、切り裂いていく。刀身に帯びた強力な冷気が、癒えない凍傷を刻み付けていく。
「バカ野郎……カグラの気持ちに、気づいてやれっての!」
 苛立たし気に叫び、セツナはサメと共に体当たりを繰り出した。サメの頭部に生えたチェーンソーが高速回転し、うみなりさまの首の鱗を切り裂いて傷を負わせていく。それとともに、セツナはコールドブレスの氷弾をゼロ距離から撃ちこんだ。
「さあ、最期はカグラの手で……アイツもそれを望むだろ」
 自分がやるべき務めは果たした。ここからは、頭領の仕事だ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

木元・杏
【かんさつにっき】
海鳴りが聞こえる
低い唸り、激しさを秘めた雷の様な鳴き声
…うみなりさま、ツルギ
ーー王の剣

剣は王のもの
カグラ、貴女に迎えに行って欲しい
わたし達はその補佐を行う

【花魂鎮め】
オーラの防御を纏い、迷路を象りつつある海流を怪力も使い突き抜ける
まっすぐ、ツルギに向かって

この迷路はツルギの心そのもの
漣に至れず迷い彷徨う
だから出口はきっと貴方の胸(こころ)

うさみん☆、胸元へジャンプ
それを出口の目印に、津島海賊団に大砲を撃ってもらい、迷路をこじ開ける

そのまま灯る陽光からカグラへオーラを飛ばし防御を

カグラの怒り…未来を見通せなかった自分自身への怒りも、ある?
沢山の想いをツルギに渡してあげて欲しい


木元・祭莉
【かんさつにっき】の指定は『海賊王の怒り』だよ!

カグラ姉ちゃん、あれがツルギ?
……そっか。
それじゃ、迎えに行かなきゃだね!

接敵したら、海上に降り立って前に出る。
ふわりと回って、舞妓姿に。

ふわり、一射。
アンちゃんが突撃していったね。
だいじょぶ、こういうときのアンちゃんは強いから。

ふわり、一射。
コダちゃんも突っ込んでいったよ。
気持ちが逸って足元怪しいケド、やるときはやっちゃうからね。

加護の歌に乗せて、カグラ姉ちゃんの舞。
メガリスの試練の重さ、それを誰かに預ける勇気を舞うよ。

ツルギのかみさま。
儀式のときは、運が悪かったけど。
今回は大丈夫。
カグラ姉ちゃんを傷付けたりはさせないよ。

ホントに、よい天気だ。


鈍・小太刀
【かんさつにっき】

加護の歌…
護りたいってツルギの想いを感じるよ
それでも今の彼はコンキスタドール
護りたいと鳴けば鳴くほどに大切な人を傷付ける
それが悲しくて切なくて
せめてこの刀で邪心を斬って彼から削り落としたい
カグラを護りたいと願う彼本来の想いが
歪まず真っ直ぐに届くように

海水のブレスの大波を刀で武器受け
深海適応や水中機動で太古の海に順応しつつ
その中心を見切り、斬り裂き進み
うみなりさまの首へ桜花鋭刃
カグラ達の攻撃へと繋げる

ツルギ、カグラも貴方の事
一人前の海の男だってちゃんと認めてる
貴方の覚悟を認めたからこそ試練に挑む事を許した
そしてカグラもまた同じように覚悟を決めたんだ
だから
最後はカグラ、貴女の手で





 遠くから、海鳴りが聞こえる。それは激しくも哀切を帯びた、雷の様な獣の鳴き声だ。
「探したぞ、ツルギ」
 巨大な海竜に声をかける女海賊の声音は、柔らかなものだった。猟兵の目の前には、傷つきながらも追手を振り切ろうと抗ううみなりさまの姿が見えた。
「カグラ姉ちゃん、あれがツルギ?」
 祭莉がぱたんと尾を動かしながらカグラに問いかければ、彼女はああ、そうだよと短く答えた。
「決着をつけるんだ。アタシの手で」
「……そっか。それじゃ、迎えに行かなきゃだね!」
 今の祭莉にできること。それは、ツルギを迎えに行くカグラの手助けをすることだ。
「おおおおおおーーん……」
 海を大きく掻き回しながら、竜が啼く。その鳴き声はもの悲しく。原始的な歌に似たその声を聞いた者たちは、それをずっと聞いていたいという衝動に駆られそうになる。
「加護の歌……カグラを護りたいって、ツルギの想いを感じるよ」
「……うみなりさま、ツルギ――王の剣」
 杏と小太刀が噛みしめるように、その名を口にする。道中、カグラは三人に生前のツルギについて語ってくれた。彼は名前の通り、剣のように一本気な若者だった。ただ一人の主たる女性に仕え、振るわれる一振りの剣であろうとした。しかし、無情にもその願いが叶うことはなく。今や両者の姿は、海の中と船の上に隔てられていた。生者と死者――決して踏み越えてはならぬ境界線がそこにはあった。
「剣は王のもの。カグラ、貴女に迎えに行って欲しい。わたし達はその補佐を行う」
「かたじけない……船の準備はできたか!?」
 やがて船乗りたちによって、数人が乗船できる小さな舟が用意された。【かんさつにっき】の三人とカグラは、その舟に乗り込みツルギの元を目指す。

 小さな舟に乗り換えたことによって視線の高さが変わると、うみなりさまの体はさらに大きく見えた。近づいてくる小舟を認識し、頭上からうみなりさまが白い瞳でじっと見つめてくる。一波起きれば、容易に転覆させられそうな小さな舟。それでも、四人はやってきた。境界線を越え、彼に会いに行くために。
「ご覧じ入り奉り候へ――」
 舟の上で祭莉がふわりと体を転身させると、艶やかな舞妓姿へと変じた。
 舞を一指し。舞扇を開くと、祭莉は優雅な舞を踊りはじめた。題して、『津島のカグラ舞い』。サウンドソルジャーの腕のみせどころだ。
「この迷路はツルギの心そのもの。漣に至れず迷い、彷徨う……。だから出口はきっと貴方の胸(こころ)」
 船乗りから借り受けた木製のサーフボードに飛び乗り、杏は白銀のオーラを全身に纏って海面を突き進んでいく。押し寄せる高波に衝撃波をぶつけて切り裂き、潮の迷宮を駆け抜けていく。
「おい、一人でいって大丈夫か」
「だいじょぶ、こういうときのアンちゃんは強いから」
 カグラの心配をよそに、祭莉は一心不乱に踊り続ける。さっと振るった彼の扇から、白炎が放たれて道しるべのように飛んでいく。
「今の私に出来ることを……!」
 白炎を追いかけ、小太刀もサーフボードに乗って前へと進み出た。
「ツルギ、カグラも貴方の事一人前の海の男だってちゃんと認めてる」
 シャーマンの資質の為せる業か。竜と視線を合わせると、小太刀はツルギの意志を感じ取ることができた。彼は完全に理性を失ったわけではない。護りたいと鳴けば鳴くほどに、大切な人を傷付ける――小太刀はそれが悲しく、切なかった。
 運命は残酷だ。想いの強さや鍛錬の数だけでは、乗り越えられない試練もある。こればかりは、運や才能の要素もあるのだろう。それゆえにメガリス使いは数が少なく、人々から尊敬され厚い信頼を受けるのだ。
「コダちゃんも突っ込んでいったよ。気持ちが逸って足元怪しいケド、やるときはやっちゃうからね」
 嘆くうみなりさまが大きく口を開け、空へ向けて海水のブレスを大量に吐き出す。大量の水が天から落ちると戦場一帯に満ち、うみなりさまの周囲に張り巡らされて水のフィールドへと変わった。小太刀は『片時雨』を抜くと、刀身に闘気を込めて降り注ぐ海水を受け、薙ぎ払う。杏が太古の海の迷路を切り裂き、作り出した波の流れに乗って、さらに前へ。
「うさみん☆、胸元へジャンプ」
 杏の命令に応じて、彼女の操り人形『うさみみメイド・うさみん☆』がピョインとジャンプする。
「目印はここよ」
 杏のオーラを纏ったうさみん☆が、うみなりさまの胸元にピタリとひっつく。キラキラ銀色に光るうさみん☆の姿は、海賊船からも確認できた。
「おかしら達を、援護するんじゃあ!」
「撃て! 撃ちまくれ~!」
 船に備え付けた砲台から、轟音と共に援護射撃が放たれる。連続で海へと叩き込まれた砲弾が、盛大な水柱を作り『至る道』をこじ開け始める。そしてその道を、祭莉とカグラを乗せた小舟が突き進んでいく。
「貴方の覚悟を認めたからこそ、カグラは試練に挑む事を許した。そしてカグラもまた同じように覚悟を決めたんだ」
 うみなりさまの背に飛び移り、小太刀が『片時雨』を振りかざす。今小太刀にできることは、うみなりさまに変じたツルギの邪心を斬ることだ。カグラを護りたいと願う彼本来の想いが、歪まず真っ直ぐに届くように。一息でうみなりさまの背を駆け抜けて、うさみん☆の元へ。
「願いよ、届け」
 愛刀に祈りと願いを込めて、小太刀が跳躍しながら一刀を繰り出す。桜花鋭刃――祈りを込めた渾身の斬撃はうみなりさまの肉体を傷つけることなく、彼の荒ぶる魂のみを切り裂いた。そのまま海の中へと着水する、小太刀。遅れて落下してきたうさみん☆が濡れないように、水中でしっかりキャッチする。
「……最後はカグラ、貴女の手で」
 想いは託した。後は、カグラの手で幕引きを行うのみだ。小舟の上には、小太刀から借り受けた和弓『白雨』を引き絞るカグラの姿があった。
「ツルギのかみさま。儀式のときは、運が悪かったけど。今回は大丈夫。カグラ姉ちゃんを傷付けたりはさせないよ」
 想いを込め、祭莉はツルギとカグラに捧げる舞を踊る。メガリスの試練が持つ意味の重さ、そしてそれを誰かに預ける勇気を讃えて。
「――さらばだ、ツルギ。これがアタシからの……餞だ」
 全身に湧き上がるオーラを帯びたカグラは真っ直ぐにうみなりさまを見据え、決別の一矢を放つ。放たれた矢は狙い違わず竜の喉に突き刺さると、強力な破魔の光を発しはじめ。遂に限界を迎えた海竜の体は、大量の水の塊となって崩れ落ちていく。
『おおおおおお――――……』
 海鳴りのごとく、長く尾を引く鳴き声を辺りに響かせて、うみなりさまは消えていった。猟兵達の頭上へと、霧雨と化した海水が降り注ぐ。
 やがて雨がやみ、周囲に静寂が訪れたとき。不意に杏が叫んだ。
「カグラ!」
 水にぷかぷか浮いている杏が、黒い棒状のものを頭上に掲げている。それは、鞘に収まったままのメガリス――『妖刀サザナミ』だった。
「……ホントに、よい天気だ」
「…………」
 舞を踊り終えた祭莉が息を弾ませながら、傍らのカグラに向けて笑いかける。無言で佇むカグラの目には、一筋の涙が浮かんでいた。しかし、彼女の表情は晴れやかなものだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『南国BBQフェスティバル!』

POW   :    肉を焼く

SPD   :    魚介類を焼く

WIZ   :    何かこう、珍味的なものを焼く

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 猟兵の活躍によって、津島のメガリス『妖刀サザナミ』の奪還は成功した。船旅を終えた海賊船が島へ戻ると、島の住民たちは温かく猟兵を歓迎した。先に島へ戻った海賊によって、頭領カグラをはじめとする仲間の無事が伝えられていたのだ。
「本当に、色々と世話になったな」
 海賊の砦は、断崖に沿って築かれた防壁の中に建てられていた。砦に戻ったカグラは猟兵を海賊たちに紹介し、手厚くもてなすことを約束してくれた。
「今宵は、ツルギを弔う宴を開きたい。酒は飲めるか? うまい料理もあるぞ。楽しんでいってくれ」
 メガリスの奪還祝いと、ツルギの供養。その両方を兼ねた酒宴の準備で、砦の中は大忙しだ。漁から戻った船乗りたちが、魚や貝をどっさり積んで戻ってきた。海産物だけでなく、保存していた上質の肉もある。そして新鮮な野菜も。
 海賊たちは、宴をこよなく愛している。今宵のメインは炭火焼きバーベキューだ。きっと主賓の猟兵たちは沢山の酒や料理を勧められ、代わりに様々な話題を求められることだろう。自身がこれまでに体験してきた出来事を、彼らに語って聞かせるのもいいかもしれない。
 丸太で組まれた大櫓に火が灯されると、楽しい宴の始まりだ。皆で笑って、ツルギの魂を天へと送るために。
アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

先ずは酒宴のお手伝い。
串に肉や海産物、野菜を通す。お酒も必要ならば弱めたUCで冷やしますよ?
食事に口をつけ、勧められたお酒も悪酔いしない程度にいただく。
この酒宴は残された人々が心の整理をつけるものだ。新たに前へ進むための。
いい機会です。還ってしまった青年の思い出話を聞いてみたい。
私も彼の事を覚えておきたいから。こんなにも慕われる彼の事を。

メガリスの回収に嬉しく思う反面、一人の青年が海へと還ったことが堪らなく悲しい。
夜の海は酷く暗く、この胸に宿る悲しみを映したかのよう。
手を胸に当て、海へと『祈り』を捧げる。
彼の平穏と海賊さん達のこれからに安寧を。
この昏き航路に一筋の灯りがあらん事を。





 上着を脱いだ軽装となり、アリウムはせっせと宴会の準備に勤しんでいた。料理やキャンプファイヤーの燃料となる薪を運び、肉の塊をナイフで切り分け、野菜と一緒に串に通していく。グリードオーシャンは、年間を通じて温暖な気候だ。一時間も働けば、アリウムの体にじわり汗がにじみ始めた。
「手伝ってもらって、悪いなァ」
「いえ、私にできることがあれば、なんなりと。楽しい宴にしましょう」
 津島の海賊衆は非戦闘員も含めれば50人に及び、それに皆よく食べる。それらの食事を用意するとなると、人手は多いに越したことはない。
「冷えたお酒が入り用なら、私の魔法で冷やしておきましょうか」
 アリウムは酒の番をしていた海賊に声をかけると、麦酒の入った樽へ簡単な氷の魔法をかけて冷却し始めた。これで料理が仕上がる頃には、良い具合に冷えていることだろう。

 砦の敷地内で開かれた酒宴は、賑やかなものとなった。海賊は得てして宴会が好きだ。財宝の発見、仲間の誕生日、戦勝祝い、出産、そして死別……何かあった時は決まって酒を酌み交わし、同じ皿の料理を共に味わう。そうすることで、集団の結束がより固まる。今宵の酒宴は、残された人々が心の整理をつけるものだ。新たに前へ進むための。
「よう兄ちゃん。こっちで一杯どうだい!?」
「では、お言葉に甘えて」
 海賊達の輪に招かれたアリウムは、深酔いしない程度に酒を飲み、料理をつまむことにした。飾り気のない味付けだが、肉も魚も素晴らしくうまい。やはり、具材の鮮度が良いからだろう。よく冷えた麦酒を喉に流し込むと、すっきりした心地よい喉越しがアリウムを楽しませてくれた。酒を飲み干して一息つくと、戦いに疲れた体がゆっくりとほぐれていくのを感じた。
「いい機会です。還ってしまった青年の思い出話を聞いてみたい」
 アリウムは、ツルギのことについて海賊達に聞いてみたくなった。彼の事を覚えておきたいから。仲間からこんなにも慕われる彼の事を。
「ツルギのことが知りたいのか。そうだな、アイツは――」
「――最初に来た頃は、まだほんのガキだった。口の減らない、生意気な奴だと思ったよ」
「でも、妙に可愛げがあってな。ここでのしきたりを覚えてからは……誰より熱心に働くようになった」
 海賊達によって、今は亡きツルギの人となりが語られていく。こうして故人の話を肴に酒を飲むことが、彼等なりの供養になるのだ。
「おかしらも、あいつのことは目にかけてたみたいだからな。だからツルギも、おかしらの期待に応えようとしたんだろ……たぶん、内心は落ち込んでると思うぜ」
 アリウムが屋敷の縁側に視線を移すと、カグラは一人、静かに手酌で酒を飲んでいた。

 宴の輪を抜け出し、アリウムの姿は浜辺にあった。波打ち際に立ち、メガリスの試練に挑んだ若者に思いを馳せる。
「…………」
 妖刀サザナミの回収は成った。それを嬉しく思う反面、一人の青年が海へと還ったことが、堪らなく悲しかった。アリウムは瞑目すると手を胸に当て、静かに夜の海へと『祈り』を捧げた。
(彼の魂の平穏と海賊さん達のこれからに安寧を。この昏き航路に一筋の灯りがあらん事を)
 出会った日の思い出も、共に過ごした楽しき日々も、別れの哀しみも。闇夜に響く潮騒は、人々の想いを呑み込んで繰り返される。
 何度も、何度も。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セツナ・アマギリ
窓辺に腰掛けて葡萄酒をぐいぐい。
海を見ながら酒飲むとか、贅沢じゃねーか。
しかも炭火焼き!魚介が進むわ。
これはツルギの分も食べねーとナ。

お、ガーネットも来てたか。お疲れサン。
じゃ、暫し談笑でも。
最近の俺の残念な活躍でも聞くか?
遺跡で宝箱の罠にハマって酷い目にあったとか、狼型のゴーレムに追い回されてケツ噛まれたとか。おかげで宝ゲットならず……って、誰がいつもだって!?偶然運が悪かっただけだヨ。
ま、猟兵も色んな冒険してるんだわ。

メガリスも気にはなるんだが、
宝箱に入ったお宝の方がロマンがあるんだよナ。
別に金目のモノじゃなくても。

お、流星。
ほんと、イイ夜だな。なあ、ツルギ?


マチルダ・メイルストローム
あぁ、盛大に弔ってやろうじゃないか。

話を求められたらあたしが海賊になった時の話をしよう
あたしはそこそこ大きな港町の生まれでね、海に出るまでは普通の暮らしをしてきたと思ってるよ。

そしたら町の近海にでかい海竜が住み始めて船が出せなくなってね。こいつはまずいと思って、親父の船をかっぱらって海竜をぶっ殺しにいったのさ。
ま、ただの漁船なんざ一発でぶっ壊されちまったけどね!あっはっは!
そっから? そりゃもちろん銛を片手に海中で殺し合いさ。一晩くらい続いたかな?
もちろんあたしが勝った。で、その海竜が食ったメガリスと、ついでにその海竜も手に入れてあたしは海賊になったんだよ。
と秘宝「シー・ミストレス」を見せるよ



「海を見ながら酒飲むとか、贅沢じゃねーか」
 猟兵達は、頭領カグラの住む屋敷に招かれていた。セツナはオーシャンビューの窓辺に腰掛け、葡萄酒を煽りながら魚介のバーベキューを堪能している。
「しかも炭火焼き! 魚介が進むわ」
 浜焼きだ。アジや太刀魚の他、サザエやホタテといった貝類も津島の近海でザクザク獲れる。それらに粗塩やレモン汁、醤油をかけて存分に楽しむ。シーフードと、白ワインの相性は抜群だ。
「楽しんでいるかい?」
「お、ガーネットも来てたか。お疲れサン。ツルギの分も食べねーとナ」
 セツナの元に現れたのは、赤い髪のダンピール。グリモア猟兵のガーネットである。
「それじゃあ、こっちに来て一緒に飲まないか? ちょうどマチルダが来てるんだ」
 酒瓶をちらつかせ、ガーネットがくすりと笑った。

 セツナがガーネットにホイホイ付いていくと、そこではマチルダが人を集めて自身の武勇伝を語っていた。彼女が生まれ故郷の町で、メガリスを手に入れ海賊になった時の話である。
「――そしたら町の近海にでかい海竜が住み始めて船が出せなくなってね。こいつはまずいと思って、親父の船をかっぱらって海竜をぶっ殺しにいったのさ」
「た、たった一人で!?」
 すっかり出来上がっている海賊達は、マチルダの語りに釘付けだ。もちろん、彼女の勇猛な戦いぶりは彼らも直接目の当たりにしている。
「ま、ただの漁船なんざ一発でぶっ壊されちまったけどね! あっはっは!」
「そ、それから……!?」
 海賊のリアクションに気をよくしたマチルダは、もぐもぐと肉を噛みながら雄弁に語り続ける。これでもマチルダは未成年、まだ酒は口にしていない。
「そっから? そりゃもちろん銛を片手に海中で殺し合いさ。一晩くらい続いたかな? もちろんあたしが勝った。で、その海竜が食ったメガリスと、ついでにその海竜も手に入れてあたしは海賊になったんだよ」
 マチルダが手に取ったのは、その時入手した秘宝『シー・ミストレス』。倒した海竜を呼び出すことのできる、一人前の海賊の証である。
「海竜と一晩かけて戦うとか、マジパネエ」
「それが、姉御のメガリスか……!」
 すげえすげえと、海賊たちは黒光りする魔銃を食い入るように眺めていた。そこへふらりとやって来たセツナへ、マチルダは『よっ』と声をかける。
「セツナは、何か面白いネタはないのかい」
「ネタねぇ……最近の俺の残念な活躍でも聞くか?」
 セツナは普段、様々な遺跡の探索活動を生業としている。その過程でレアなお宝を手に入れることもあるのだが、当然遺跡の探索にはリスクがつきものだ。
「遺跡で宝箱の罠にハマって酷い目にあったとか、狼型のゴーレムに追い回されてケツ噛まれたとか。おかげで宝ゲットならず……」
「それはいつものセツナだな」
 煙草を吹かしながら、ガーネットがいいタイミングで茶々を入れる。すると海賊たちから、どっと豪快な笑いが起きた。
「って、誰がいつもだって!? 偶然運が悪かっただけだヨ」
 自身の名誉のために、これまでに入手したお宝の数々を並べて披露していくセツナ。それらの品々はグリードオーシャンのメガリスとは性質が異なるが、いずれも強大な力を秘めたセツナの愛用品だ。
「ま、猟兵も色んな冒険してるんだわ」
 見たことの無い異世界の財宝に、海賊たちは興味津々だ。
「メガリスも気にはなるんだが、宝箱に入ったお宝の方がロマンがあるんだよナ。別に金目のモノじゃなくても」
 きっと宝箱には、ゲットするまでの独特のドキドキ感があるのだろう。それにトラップが仕掛けられているのであれば、それを見抜いて解除するのは探索者の必須技能というものだ。
「あたしだったら、サッサとぶっ壊してこじ開けるけどねぇ」
「あはは、姉御ならマジでやりかねねぇ!」
 そして再び起きる大爆笑。そんな猟兵と海賊たちの賑やかな宴は、夜中まで続くのだった。
「――お、流星。ほんと、イイ夜だな。なあ、ツルギ?」
 語り疲れたセツナが空を見上げると、一筋の流れ星が闇夜を駆けていった。セツナの目には、それが荒ぶる海魔の体から解放されたツルギの魂のようにも見えたのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木元・杏
【かんさつにっき】
弔いの宴会だけど、笑ってお見送り
ん、楽しくお見送る……あ、ガーネットいた
片手にお酒と、もう片手に……お肉!(じゅる)
…ん、楽しく美味しくお見送る

大きな葉で包んで蒸した白身魚に、レモンを添えて
貝の酒蒸し、ミンチ肉やつみれはしいたけ、ピーマンたまねきに詰められ網焼き
出来上がったものは皆に配って回って
ん、お礼はいい……お肉の串刺しとかお魚丸焼きとかそのあたりで全然(頬赤らめ)

カグラや海賊の皆にお聞きする
ツルギは苦手な食べ物はあった?
わたし達位の年の頃、まつりんみたいに元気だった?
色んな話聞きたい

楽しく皆の話を聞いてる内にうとうと眠くなって

…妖刀サザナミ、あなたは誰を選ぶ?


鈍・小太刀
【かんさつにっき】

ガーネット居るかな?
お酒あるし絶対いるよね…いた!
お疲れ様
飲み過ぎ注意だよ

浜焼きの美味しそうな香りが♪
杏、よだれよだれ!

(ピーマンを祭莉んの皿に避けつつ
酒の肴に冒険譚?
そうだなぁ
家出した弟を探して世界を旅した話とか?

心配でどうしようもなかった時に
この桜雨がね、手を貸してくれたんだ
召喚に応じてくれた霊達の手は
熱を持たないのに温かかった
だからね彼らは私の恩人で大切な友達
お陰で弟も見つかったよ
成長したっていうのかな
立派な男の娘になってたや

カグラ達の話も聞きたい
ツルギとの出会いとか
共に戦った話とか
なんでもない日常とか
彼の想いは思い出と共に
これからもカグラ達の事を
きっと護ってくれるから


木元・祭莉
【かんさつにっき】だーい!

ん、おいちゃんたちも、お疲れー。
ガーネット姉ちゃんも、やほー、お疲れー。
ささ、飲みねえ食いねえー!

バーベキューにはね、『ぶぎょー』が重要なんだって!
材料を焼く順とか、火の強さとか、食べる人の速さとか。
よく観察しながら、全体の塩梅をしていくんだって。
おいら、立候補しまーす! まかせてー!!(しゅた)

カグラ姉ちゃん、食べてるー?
好きなモノあったら、言ってねー♪(お皿にひょいひょい)
おいらの世界ではね、死んだ親戚は神様になって見守ってくれるって言うよ!

アンちゃんのお料理をお手伝いしたり。
コダちゃんのピーマンをもぐもぐしたり。
真琴も連れてくればよかったね、カワイイ枠追加で!





 津島海賊の砦は、宴もたけなわ。辺りには網の上で肉や魚が焼けるいい匂いが漂い、海賊たちが賑やかに酒を酌み交わしている。【かんさつにっき】の三人も自分たちでバーベキュー卓を設営し、熱した網の上に様々な具材を乗せて調理を始めていた。
「弔いの宴会だけど、笑ってお見送り」
「そうだね。みんなで、賑やかにツルギを送ってあげよう!」
 杏が作るのは、オリジナルの魚料理だ。小太刀は、早速その手伝いを申し出る。
「ん……じゃあまず、皆で美味しい料理を作る」
 葉っぱに包んで蒸し焼きにした、大きな魚。これはレモンを添えて、食べる前にお好みで絞り汁をかけていただく。大粒の貝は酒蒸しに。そして肉を詰めた椎茸やピーマンが、網の上でこんがりと焼きあがっていく。
「バーベキューにはね、『ぶぎょー』が重要なんだって! 材料を焼く順とか、火の強さとか、食べる人の速さとか。よく観察しながら、全体の塩梅をしていくんだって。おいら、立候補しまーす! まかせてー!!」
 テンションの上がった祭莉はおおかみ耳をぴょんと立て、バーベキュー奉行に立候補。串に肉や野菜を刺して、手際よく網に並べていく。
「んー、浜焼きの美味しそうな香りが♪」
 火の通ったホタテがパカッと口を開くと、中から旨みあふれるエキスがジュワッと沁み出して。食欲をそそる魚介の匂いが立ち込める。
「杏、よだれよだれ!」
「あ、いけない……これは海賊の皆に振る舞うもの」
 それを眺めているうちに、杏は無意識によだれを垂らしてしまっていたのだ。

「よー、お疲れー!」
「ん、おいちゃんたちも、お疲れー」
 うみなりさまや里見水軍を相手に獅子奮迅の活躍を見せた猟兵達は、すっかり海賊たちに顔を覚えられていた。通りかかった男たちが祭莉に声を掛け、網の上から料理をひょいひょいつまんでいく。
「まつりん、もう有名人」
「ささ、飲みねえ食いねえー! お酒は無いけど!」
 祭莉が焼き上がった料理を勧めると、集まってきた海賊たちは次々と平らげていく。三人のバーベキューは、たちまち評判となった。
「ん~、うまいな。俺は貝の酒蒸しが好物なんだ! ごちそうさん!」
「ん、お礼はいい……お肉の串刺しとかお魚丸焼きとかそのあたりで全然」
 面と向かって料理の腕を褒められると、なんだか照れくさくなってしまう杏なのであった。
「……あ。そういえば、ガーネットも来てる?」
「ガーネット居るかな? お酒あるし絶対いるよね……ほらあそこ、いた!」
 小太刀は、年かさの海賊たちの輪の中に、見知った女性がいるのを見つけた。赤い髪のダンピール、ガーネットである。そしてその傍らには、白い着流しに羽織姿のカグラもいた。海賊砦の幹部達だ。
「……あ、ガーネットいた。片手にお酒と、もう片手に……お肉!」
「ガーネット姉ちゃんも、やほー、お疲れー。カグラ姉ちゃんもー」
 二人は酒を飲みながら話をしていたが、三人の姿を確認するとこちらへ近づいてきた。
「やあ、みんなお疲れ。見事な戦いだったそうだね?」
「ウチの砦は立派だろう? 今日は疲れただろうし、屋敷に泊っていくといい」
 カグラが一人で飲んでいたところを、ガーネットが連れ出してきたのだ。
「カグラ姉ちゃん、食べてるー? 好きなモノあったら、言ってねー♪」
「ん、ああ。それじゃ野菜をもらおうかな」 
 カグラが選んだのは、しいたけとピーマンの肉詰め。その鮮やかな緑を目にして、小太刀の眉がピクッと動く。
「うん、いい味だ。料理が上手なんだな」
「へー。そ、それはよかった……」
 小太刀がすすっと祭莉の皿に野菜を乗せると、祭莉は玉葱やピーマンをせっせと食べていく。
「野菜美味しいよねー♪」
「そういえば、お前さん達は色々な世界を旅してきたんだってね。すこしアタシに聞かせてくれないかい? 旅の思い出というのをさ」
 世界を渡り歩くという猟兵の生きざまが気になるらしく、カグラが面白い話題を求めてきた。
「酒の肴に冒険譚? そうだなぁ……家出した弟を探して世界を旅した話とか?」
 カグラのリクエストに応えて、小太刀は自身の冒険話を語り始めた。ある雨の日、小太刀の弟、真琴が突然いなくなったのだ。家の周りを探したが見つからず、居てもたってもいられなくなった小太刀は自力で真琴を探し出すことにした。
「弟を探して、世界を巡ったのか? それは壮大だな」
 そして猟兵の力を手に入れ……やっとの想いで再会を果たしたのだ。
「心配でどうしようもなかった時にこの桜雨がね、手を貸してくれたんだ」
 小太刀が取り出したのは、黒漆の玉手箱。様々な海の生物を召喚できる、小太刀の冒険の必需品だ。
「なるほど、それが小太刀のメガリスか……」
「召喚に応じてくれた霊達の手は、熱を持たないのに温かかった。だからね、彼らは私の恩人で大切な友達」
 小太刀が猟兵としての志を失わない限り、海の仲間たちはこれからも彼女に助力を続けるだろう。
「お陰で弟も見つかったよ。成長したっていうのかな、立派な男の娘になってたや」
「男の娘……?」
 怪訝な顔をするカグラ。それはおそらく、津島海賊衆には存在しない概念であろう。とにかく可愛らしい少年なんだよ、とガーネットがカグラに解説をしていた。
「真琴も連れてくればよかったね、カワイイ枠追加で!」
「そうかい、なら今度は一緒に来るといい。楽しみにしてるぞ」
 
「今度はカグラ達の話も聞きたいな。ツルギとの出会いとか、共に戦った話とか、なんでもない日常とか」
「ツルギはわたし達位の年の頃、まつりんみたいに元気だった?」
 海賊たちといい具合に打ち解けたところで、杏と小太刀はカグラ達に質問を投げかけてみた。ツルギがどんな若者だったのか、カグラ達から聞きたかったのだ。
「んあ、生意気盛りって感じだったなぁ。12、3くらいのトキはそこの祭莉みてぇな、賑やかな小僧だったよ」
「アタシが、ツルギに剣を教えたことがあったっけ。アタシの剣を受けるのに精一杯だったが、それでもあいつは嬉しそうにしてた。それからは、メキメキ腕を上げていったな」
 海賊に指さされ、祭莉がへへーと笑う。海賊達の口から語られる生前のツルギは、とても活力に溢れた若者だったようだ。
「ツルギは苦手な食べ物はあった? ピーマンとか」
「どうだろう……何でも食べていた気がするな。……あ、ナマコとウニが嫌いなんだった」
 海賊達はツルギが海の男として育っていく数年間の思い出を、酒を酌み交わしながら語り合った。その思い出もいつかは風化し、ツルギはやがて過去の人となる。しかし今日、人々の心には確かにその存在が刻み込まれた筈だ。
「……すまんが、墓を作るつもりはない。アタシ達は海で生き、海に還る……それでいいか? ツルギ」
 鞘を掴み、妖刀サザナミにぽつりと語り掛けるカグラ。少し酔いが回ってきたのかもしれない。
「おいらの世界ではね、死んだ親戚は神様になって見守ってくれるって言うよ!」
「神様か……あいつが見守ってくれるんなら、これからの船旅は心配要らなそうだ。あいつは泳ぎの名人だったからな」
 海賊たちの話を聞いているうち、杏の意識は次第に途切れ途切れになって。こくり、こくりと船を漕ぎ始める。
「それじゃ、私達はそろそろ休ませてもらうよ。おやすみ、カグラ!」
「子供は寝る時間か。ゆっくり休みな」
 杏の様子に気付いた小太刀は彼女の手を引き、屋敷の奥へと引き上げていく。振り向いてぶんぶんと手を振る祭莉に、カグラとガーネットが手を振って返した。
「……妖刀サザナミ、あなたは誰を選ぶ?」
 小太刀に手を引かれながら、杏がぽつりと漏らす。杏の肩にぽんと手を乗せ、小太刀は静かに答えた。
「きっと想いは受け継がれるよ。そしていつか、誰かの手に……。彼の想いは思い出と共に、これからもカグラ達の事をきっと護ってくれるから」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月14日


挿絵イラスト