きみのいろ、きみのおと(作者 晴海悠
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#挿絵


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●風鈴市にせまる影
 ちりん、ちりん。音が風に揺れる。
 屋台の軒先に連なる鈴の音は、初夏のほとぼりを冷ますかのよう。
 ここはUDCアース、とある海辺の村。
 神社の境内にて開かれる風鈴市は、
 近隣、あるいは遠くから訪れる人たちで程よいにぎわいを見せる。

 りぃん、りぃん。
 耳心地のいい鉄の音と共に、三羽の燕がくるくると舞い。
 冷ややかな石の鈴の隣では、絵付けされた焼き物の鈴が木馬のようにゆっくりと回る。

 いつから愛されてきたのか。
 夏空に響む鈴の音は、いまも昔も人の心を癒す。
 足を止めて指さす、新婚夫婦の目の前で。
 硝子の中で泳ぐ金魚が、ゆったり緋色の尾をたなびかせる。

 ふいに、その音がけたたましく、割れんばかりに響き渡った。
 鳥の群れの地鳴きの如く、鳴り響く風鈴がよからぬものの到来を触れて回る。
 祭りの屋台を薙ぎ倒し、ハート形をしたチョコの怪物が暴れまわる。

 すっかり露払いのされた祭りの跡地、白く面を覆った鬼神が砂利を踏む。
「……」
 かの鬼は、何も云わぬ。
 旧き夫婦神の片割れは、いまや復讐鬼となり果てた。
 悪縁ばかりか良縁、命の糸すらも斬りて、その刀は血に染まる。

 かの鬼に、街を滅ぼそう等という目的はない。
 ただ、邪魔なのだ。探し求める妻以外の、すべてが。

 ゆえに、鬼神は刀を振るう。
 花も人も散らし、砂利道に紅の河を築く。
 愛しき者の姿を風の中に求め――。

 ぶつり、と。糸を断たれた硝子の金魚が、砂利の上に砕け散った。

●きみとのいと
 りぃん――。虚空のゆらぐグリモアベースに、らしからぬ音が響く。
 手に提げた風鈴を揺らしてみせたリグは、足を止めた猟兵たちに笑いかけた。
「UDCアースでのお仕事、首尾よくいけばお祭り観光つき。そんなご案内、いかがかしら?」
 リグが今回指し示す場所は、とある海沿いの漁村。
 魚がおいしく、縁ある神社がある以外は目立ったもののない、静かな田舎の村だった。
 近年の村おこしで催されたものは、風鈴市。
 湾の内側にあり、ほどよく風の吹き抜けるその村は、全国から集められた鈴たちが心地のよい音を奏でるのにうってつけの場所だった。
「有名ってほどじゃなくても、例年少しずつ人も増えてうまくいってるみたい……なんだけど」
 皆が猟兵として呼ばれた以上、その平穏が乱される事は言うまでもなかった。

 神社から車で数分ほどの、廃倉庫。
 そこに邪神教団の教徒が陣を敷き、オブリビオンの群れを引き寄せてしまうとの事だ。
「まずチョコの怪物が現れて、祭りをめちゃめちゃにしちゃうの」
 想いを果たせなかった乙女たちの無念から生まれた怪物は、何とかして自らを食べてもらおうと迫ってくる。
 悪意のみられない敵ではあるが、『骸の海産』のカカオが人体にいい筈がない。
 誤って一般人が口にすれば、二度と意識は醒めないだろう。
「幸いなのは、召喚される場所が廃倉庫の中ってこと。こちらから攻めこめば、人知れず無害化できるわ!」
 教徒たちは捕らえずとも逃げ果せるとの事だが、怪物たちはそうはいかない。
 禍根は断っておく方がいいだろう。

 チョコたちを倒せば終わりかというと、そうではない。
「強力な個体が現れるから気を付けて。邪神教団の本命はこっちみたい」
 古くは神として奉じられたはずのそれは、今や鬼神として現世を彷徨う。
 膂力たくましく大地を断ち割り、悪鬼羅刹と化せば陣風の如く触れる者を斬り捨て。
 そして何よりも恐るべきは、その神力である。
 悪縁のみを斬ってきたはずの刀で、仲を斬り裂かれようものなら。
「どんな縁でもばっさり斬られちゃうって噂よ。親子や仲の良い人同士で向かうなら気を付けて――最悪、互いの事をしばらく思い出せなくなるかもしれないわ」
 抗う術はないのかと問われれば、グリモア猟兵は少し考えた後でこう告げる。
「一番手っ取り早いのはどうにかしてかわすか、打たせない事かしら……あ、でも」
 ふと意地悪な笑みを浮かべ、彼女の言うには。
「いっそ神様が妬くぐらい、縁の強さを示してみせるのも手かもね?」
 自分でけしかけておいて、きゃーと照れる仕草をしてみせるこの猟兵、確信犯である。

 事がすめば、風鈴市は何事もなかったように開催されるだろう。
 祭りで見かけるイカ焼きや焼きそばにくわえ、目玉はなんといっても風鈴の屋台。
 音の澄んだ鉄の鈴に、精巧な硝子細工のもの。買うもよし、手に取り見て歩くもよし。
 初夏にふさわしい音を奏でる風鈴の市は、花火とはまた違った趣を味わわせてくれるはずだ。
 また、体験コーナーでは風鈴の絵付に挑戦することもできる。
 細い筆でガラスに絵を描くのは大変だが、世界にふたつとない自分だけの風鈴は格別の思い出になるだろう。

 依頼のあらましを語り終えたリグは、グリモアを手に浮かべゲートを開く。
 浮かび上がるゆらぎの向こう、さざ波の揺れる漁村の光景が広がっていく。
「さっきはああ言ったけど……切る、結ぶ。縁ってそんな単純なものじゃないと思うわ」
 心配を取り払うように、笑ってみせた彼女はこうも言い。
「切れちゃったら、また結べばいいのよ! 何度も糸を撚って縁を重ねるうち、きっと前より強く結べるわ!」
 軽くウインクをして、旅立つ猟兵たちの背に投げかけるように。
 いってらっしゃい! 明るい声と共に、グリモアの道は開かれた。


晴海悠
 お世話になっております! 晴海悠です。
 初夏の訪れを感じる神社の境内で、風鈴市が開かれています。
 しかし、市を楽しむには難を退けねばならないようです。

『プレイングの受付』
 各章の冒頭に短い文章を挟み、受付開始の合図とします。最初のみ、3章だけなど、お好きな形でお越し下さい。
 また、受付期間のご案内をマスターページに記載する事があります。特に3章は週末などに合わせ、可能な限りお受けしたいと考えています。よろしければご参照下さい。
(複数名の合わせプレイングは2~3名までならはりきって承ります!)

『1章 集団戦』
 デゾレ・ショコラ。
 叶わなかった恋の残滓が、チョコの姿をとって現れたようです。
 リプレイは廃倉庫にたどり着いた時点から開始し、邪神教団の教徒は何もせずとも逃げ出します。
(捕縛した場合、UDC職員が責任を持って身柄を引き取ります。捕縛の二文字だけで事足ります。一応一般人なのとお話が暗くなるため、命を奪う系のプレイングは採用を見送らせて頂きます)

『2章 ボス戦』
 禍罪・擬切。
 いにしえの時代に神として奉られ、いまや鬼神となり果てた夫婦神の一柱です。
 純粋かつ強力な技を持つほか、WIZの能力で立ち向かった場合には縁切りの刀で皆様の大切な仲を断ち切ろうとしてきます。
 対抗するには、冒頭でリグが述べたものが参考になるでしょう。

『3章 日常』
 神社の風鈴市でのひと時。
 色とりどり、形さまざまの風鈴を眺めたり購入できるほか、体験工房では風鈴の絵付け(硝子、陶器)も楽しんで頂けます。こちらからのアイテム発行はできませんが、思い出としてお持ち帰り頂ければ幸いです。
 一般的な祭りの屋台は出ているほか、神社にお参りもできますので、自由な発想でお過ごし下さい。
 なお、リグは呼ばれても登場致しません。最後まで皆様の物語として、お楽しみ頂ければと思います。

『その他注意点』
 皆様の関係性を大事に描きたいので、両片思いなど描写のご希望がある場合はプレイング内にて分かるようにして頂けると助かります。
 縁の解釈は親子・親友などご自由にどうぞ。カップルさんは種族・性別問わず大好物ですが、ロマンス以上の子どもにお見せできないやりとりはどなた様であっても採用を見送らせて頂きます。

 それではリプレイでお会いしましょう! どうぞ、いい思い出を育まれますよう。
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第1章 集団戦 『デゾレ・ショコラ』

POW ●おねがい、たべて!
自身の【体を食べて貰うという目的】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD ●わたし、おいしい?
【体当たり】が命中した対象に対し、高威力高命中の【溶かした自身の体の一部】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ ●このおもい、うけとって!
レベル×1個の【情念の強さに比例した威力の】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ゲートを抜けて間もなく、潮風の香りが鼻をくすぐった。
 神社にほど近い、使われなくなった廃倉庫。
 漁業用の格納庫だったそこには、うち捨てられた資材を残して広大な空間が開けていた。
 窓は少なく、内部の様子は外からでは容易にうかがい知れない。
 だからこそ、教団に目を付けられたのだろう。

 教団の描いた方陣から、茶色い何かがあふれでる。
 宙に描くハートの型を満たすように降り注ぐそれは、瞬く間に可愛らしいチョコの形に冷え固まる。

 『EAT ME』――わたしをたべて。
 想い人との縁を紡げなかった乙女たちの想いは、誰彼構わず愛を授ける魔物となった。
 無垢なその瞳は、恋する乙女のもの。
 しかし骸の海に長く浸された愛は、すでに毒も同じ。
 受け取ってしまえば、体の内から溶かされてしまってもおかしくはない。

 つぶらな目で迫るそれを、退けるべく――戦端は切って開かれた。
キャプテン・ハマーヘッジ
「無垢な少女達の恋心の残滓か…。その姿、捨て置くには忍びないな!」
宇宙紳士であるキャプテン・ヘッジハマーは、敵の真正面に立ちふさがる。
「それ程までに食べてもらいたいなら、この私があえてその思いを受け止めよう!宇宙紳士であるこの私、キャプテン・ヘッジハマーが…!!」あえて攻撃を食らうことで、他の猟兵たちを攻撃からかばいつつ、敵の暴走を止めようとします。


杣友・椋
▼アドリブ歓迎

足を踏み入れた廃倉庫
逃げ出す教徒たちに一瞥をくれ、小さく舌打ちする
……目障りな奴等
ぶっ潰してやりたいけど、今まず俺たちが相手をするのは――あいつらだ

黒槍を構え駆ける先は、群れた想いの残滓たち
おまえたちを受け止めてやりたい所だけど、
生憎あんまり甘いのは得意じゃない
それに「あいつ」以外のチョコレートは受け付けていないんだ
黒槍の一振りによる旋風で敵を薙ぎ払い
残った奴は得物で【串刺し】に

敵たちからの攻撃は【オーラ防御】【激痛耐性】で出来る限り耐えたい
人々を癒す風鈴市の無事の為、
この場所まで導いてくれた、世話になっている灰髪の彼女の為――
おまえたちを、今ここで倒さないといけないんだ


 鋼鉄を蹴破る音とともに、廃倉庫の扉が開け放たれる。
 見つかった事を悟り、足早に逃げ出す教徒たち。そして彼らと入れ違いに、姿を現した男が敵の前へと立ち塞がる。
「無垢な少女達の恋心の残滓か……その姿、捨て置くには忍びないな!」
 光遮る巨体。太く張るような声。彼こそは宇宙紳士、キャプテン・ハマーヘッジ(スペースノイドのブラスターガンナー・f28272)。自由を胸に誓い、冒険を愛して宇宙を駆ける、正義の好漢である。
 齢四十五にして冒険への憧れは色褪せず、今なお彼を突き動かす。そんな純真な心を持つ彼だけに、少女たちの無垢な思いは痛いほどに伝わってきた。
 どん、と厚い胸板を叩き、男は両腕を広げる。
「君たちの想い! この私、キャプテン・ハマーヘッジが引き受けよう!」
 熱く紳士的な彼の語りにも耳を傾けず、教徒たちは散り散りに逃げていく。危うくぶつかりかけた教徒に軽く舌打ちをして、杣友・椋(涕々柩・f19197)は去り行くその背を見送った。
「……目障りな奴等」
 ぶっ潰してやりたいとも思ったが、椋たちの前には先立つ脅威が控えている。
「今まず俺達が相手をするのは――あいつらだな」
 邪神と眷属たちを倒せば、ひとまず教徒たちの目論見は潰える。村に、祭りに被害を出さぬためにも、まずは目の前の眷属たちを倒す必要があった。

 逞しき巨躯を誇る熱血漢に、麗しき風貌を持つ竜の青年。
 想いを伝えるに不足はなしと見たのだろう――愛の押し売りをするように、チョコの姿をした眷属たちが二人へと群がる。
 押し寄せる彼女たちの想いを受け止めるように、ハマーヘッジが敵の真正面に立つ。
「ああ、その思い伝わってくるとも! それ程までに食べてもらいたいなら、この私があえて受け止めよう!」
 たくましい腕で体当たりを受け止めた瞬間、チョコたちの目が輝く。きらきら期待に満ちたその目は、わたし、おいしい? と問うようで。
 溶けたチョコの破片が溶岩のように降り注ぎ、味わう暇もなくハマーヘッジの巨躯を包んでいく……が。
「なんの、これしきっ……!」
 巨漢のキャプテンはそれら猛攻をものともせず、一身に引き受けてみせる。いつ止むとも知れぬ愛のアピールだが、彼は持ち前の体力を頼りに猛攻を耐えしのごうとしていた。
 すり抜けてきたチョコを、椋の持つ黒槍の穂先が捕らえる。串刺しにしたチョコの破片を振り捨てるように掃い、椋はあらためて愛に飢えた眷属たちを見据える。
「無碍にせず、おまえたちを受け止めてやりたい所だけど」
 長い睫毛の下、翡翠色をした双眸が細められる。優しい言葉と裏腹に、若き竜の意志は数多の想いを前にしても揺らがない。
 おいしく食べてもらえると思ったのか。カラースプレーで化粧をしたチョコが、自身の体をぱきりと割って椋へと差し出す。しかし椋は拒むようにオーラで身を包んで護りを固める。
 願うはチョコたちの想いの成就でなく、風鈴市の無事。いかに無垢な想いとはいえ、ここでなびく訳にはいかない。
「おまえたちを、今ここで倒さないといけないんだ」
 槍の先で距離を取った椋に、追いすがるようにチョコたちが跳ねる。しかし熱烈なラブコールを、阻む者がいた。
「ぬうおお……!」
 体中がチョコ塗れになろうとも構わず、巨漢の男が割って入る。その手には光線銃が握られていたが、ハマーヘッジが銃口をチョコたちに向ける事は決してない。紳士としての熱き誓いを胸に、ただただ敵の猛攻を耐える事でのみ防ごうとする。
「ここは私が引き受ける! 想いを全て受け止めてこそ、宇宙紳士というもの!」
 あり余る体力で攻撃を一手に引き受けるハマーヘッジ。頼もしい彼の援護に礼を述べ、椋が敵へと駆ける。
「生憎、あんまり甘いのは得意じゃない――それに」
 振るわれる黒槍の穂先が、颯をよぶ。一瞬閉じた瞼の裏に、思い浮かべるは一人の少女。
 天使の羽根宿す姿と似つかず、その心は感情豊かで、時にやきもち焼きで。不用意に好意を受け取ってしまえば、彼女の優しい顔がむくれてしまうだろうから。
「……あいつ以外のチョコレートは受け付けていないんだ」
 ただ一人の『本命』除いて、抱く瓢風の懐に入る事は能わず。砂埃をさらって渦巻く風が、チョコたちを想いごと骸の海へと運んでいった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

ピオニー・アルムガルト
チーム【もふごろ】
邪心教団の信徒達は人目がつかない所で何を企んでいるのかしら?もっとドーンっ!と構えてれば探すのも面倒じゃないのにね!あれ?何で逃げるのかしら、余計な手間がかかるじゃないのもう!
食べれないといっても食べ物を粗末にしてしまっては怒られてしまうわ!そうね、チョコをうっかり湯煎ではなく鍋で直火にかけてしまった少女風に原型がわからないぐらい【全力魔法】で燃やしてしまえばいいわ!
恋に焦がれ苦い想いと共に燃え尽きてしまいなさい!
…どんな味がしたのかしらこのショコラ。興味がないと言ったら嘘になるわね!


ホワイト・アイスバーグ
チーム【もふごろ】
ピオニーお嬢様お待ち下さい…いつも通り突撃して行ってしまいました。あの程度の相手ならばお嬢様が後れをとる事はないので心配はないですね。
少々出遅れてしまいますが、私の行動はお嬢様が戦いに集中できるよう邪神教団の信徒達の捕獲に向かいましょう。ここで逃がしてしまえばまた同じような事が起きて、面倒と言いながらも首を突っ込んでいくお嬢様ですから。
お嬢様。拾い食いはいけません。お祭りでは屋台も出ているというお話なのでどうかそれまで我慢してくださいませ。


 扉が蹴破られて一分も待たず、教徒たちは脱兎の如く逃走を図る。彼らの見事な逃げっぷりを見て、ピオニー・アルムガルト(ランブリング・f07501)は訝るように腰に手を当てた。
「人目につかない所で何を企んでいるのかしら? もっとドーンっ、と構えてれば探すのも面倒じゃないのにね!」
 こちらへ逃げてくる彼らの前に仁王立ちして、さあ来なさいと出迎えるが。教徒たちはピオニーを迂回するようにして茂みの中へと姿をくらます。
「あれ? 何で逃げるのかしら。余計な手間がかかるじゃないの、もう!」
 気が済むまで逃げたら待ってなさいよ、と言い残し、ひとまずの脅威を退けるべくチョコ退治に向かうピオニー。その後を、息を切らして一人の女性が追いかける。
「ピオニーお嬢様、お待ち下さい……ああ。いつも通り突撃して行ってしまいました」
 やや途方に暮れるように行方を見守るホワイト・アイスバーグ(ミレナリィドールの咎人殺し・f14288)。仕え、尽くす相手でもありながら、家族のような情を注いでくれるピオニーだが、あり余る無鉄砲さはどんなホワイトの制止も振り切ってしまう。
「あの程度の相手ならば、お嬢様が後れをとる事はないので心配ないのですが」
 そういってホワイトが向き直る先には、こちらの出方を伺ってこっそり逃げ出そうとする先の教団員たち。手に構えた拷問具、もとい、捕縛用のロープにびくりと教徒たちが身を震わせる。
「これもお嬢様に戦いに集中して頂くためです。ここで逃がしてしまえばまた、お嬢様が首を突っ込んでいくでしょうから」
 口では面倒と言いながら、彼女の主人は義を見て何もせずいられる人柄ではない。戦いに出遅れるのを承知の上で、ホワイトは教徒めがけて拘束具を投げていく。
 逃げようとした者にはロープを。援軍を呼ぼうとした者には猿轡をかませ、後ろ手に縛る。特製の拘束具を意のままに操る彼女に、教団員たちが敵うはずもなく。
「大人しくお縄について下さいませ」
 次々と舞うロープに、やがてその場に動ける者はいなくなった。

 一方、チョコたちと向かい合ったピオニーはというと。口々に食べてとラブコールを寄せるチョコたちを前に、対応に困っていた。
「うーん、困ったわね……」
 食べられないチョコ、とはいえど。食べ物を粗末にしては怒られるように感じ、どうにも気が咎めるのだ。せめて、罪悪感を感じずにすめばいいのだが。
「……そうだわ!」
 ポン。妙案を思い付いたように、ピオニーは勢いよく手のひらをうつ。
「原型がわからないぐらい全力で燃やしてしまえばいいのよ! チョコを湯煎じゃなく鍋で直火にかけてしまう少女ってよくいるものね!」
 果たしてそれは、よくいていいものなのか。ツッコミ不在なのをいい事に、ピオニーは指先で空中をなぞるようにして紅蓮の矢を紡ぐ。
 秋の紅葉よりも濃い紅が糸を引き、周囲の空気を燃やして赫々と輝く。軽く背を押すように指でつつけば、それは乱れ飛ぶ火矢となってチョコたちの身を取り巻いていく。
「恋に焦がれる苦い想いと共に、燃え尽きてしまいなさい!」
 次々と放たれる矢はチョコを溶かし尽くしてゆく、が。
 ふと、その溶け残りから香ばしいカカオの香りがして、ピオニーは指をくわえる。
「そういえば、どんな味がしたのかしら、このショコラ。興味がないと言ったら嘘になるわね!」
 動かなくなったチョコの欠片は、いかにも無害そうに見えた。ちょっとだけ、等と言い訳を唇が紡ぐ。
 胸騒ぎを覚えたホワイトが駆けつけてみれば、ピオニーは今まさに残りカスを口元へと運ぼうとしており。
「お嬢様。拾い食いはいけません。お祭りでは屋台も出ている様子、それまで辛抱してくださいませ」
「ああっ……もったいない……!」
 母親にたしなめられるように引きずられるピオニーの手から、ころりと転げ落ちたチョコの欠片が溶け消えていった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

ラハブ・イルルヤンカシュ
わかった
食べる
その想いごと存在を
欠片も残さず
「全部食い尽くす」

向こうから食われに来るなら好都合
[カウンター]で[大食い][生命力吸収][吸血][鎧無視攻撃]な[捕食]で、ホントに食う
有害なモノは[毒耐性]で無視
攻撃の類は[第六感][野生の勘]で避けるか硬くした鱗の[武器受け]で捌く
2種のドライバーで食った分だけ[魔力溜め]

【顕現せし暴食の悪魔竜】発動
三首魔竜姿の[怪力]で[蹂躙]するように
残りの敵も三つの首で[範囲攻撃]を加えた[捕食]を敢行

「押し売られるようなモノが愛であるはずがない。『これ』は歪められた想いの成れの果て。愛になり損なった重い何か」
別段気にするようなモノじゃない

教徒は終始無視


 黒のシスター服に身を包み、胸元にはくすんだ十字架。ラハブ・イルルヤンカシュ(悪魔でドラゴン・f04872)の長い睫毛が幾度も揺れる。
 逃げ出した教徒には一瞥もくれず、彼女の視線はチョコの魔物たちへと注がれる。届けられなかった愛を、想いを。今ここで食べて貰おうと、チョコたちは大挙して押し寄せる。
「わかった」
 静かに、けれど強い意思をこめ、ラハブの言葉が倉庫の中に響き渡る。
「食べる」
 彼女の言葉に、慈悲をかける意図は介在しない。あるのは尽きぬ食欲を満たす、その意思のみ。
 その想いごと、存在を――欠片も残さず。
「全部、食い尽くす」
 願い満たすような宣言に、チョコたちがわっと歓声をあげて襲い掛かる。

 ありったけのデコレーションでおめかしして彼女へと群がる、チョコの大群。向かってくるなら好都合と、ラハブは彼女をグールドライバーたらしめる刻印を体内で起動させる。
 毒もつチョコであろうと、彼女には意味を成さない。
 向かってくるそばから貪り喰らうが如く、噛みつき、引き千切り、咀嚼音を立てて飲み込み。ひたすら繰り返される単純作業のような動作で、ラハブは敵を迷わず胃袋へと収めていく。
 時折気まぐれに飛んでくる攻撃は鱗で弾き、体勢を崩したチョコを引っ掴んでは口元へと運ぶ。
 授けられたその力は、悲運か希望か。悪魔竜の胃袋が無尽蔵の飢えをもたらし、捕食者の烙印が渇きを満たす。
 彼女のそれは、もはや攻撃とは呼べない。喰撃、とでも形容するのが相応しい攻防一体の荒業を、体内でフル稼働する刻印が支えていた。

 次々と援軍が現れるにも関わらず、ラハブの暴食はその程度では収まらない。
 ついに、彼女の中で悪魔が目を覚ます。
 溜め込まれた魔力はラハブの姿を三つ首をもたげるような竜へと変え、彼女の『食事』は更に速度を上げる。
 腹の中で、囁きが聞こえる。おいしい? ねえ、おいしい? と。
「別段気にするようなモノじゃない」
 声を無視するかのように、胃袋の中ゆれるチョコへ更に別のチョコを被せる。
「押し売られるようなモノが愛であるはずがない。『これ』は歪められた想いの成れの果て」
 愛がまごころだと言うのなら、相手を無視した想いは愛と呼べようはずもなく。故に、チョコたちの想いを愛になり損ねたモノとして断じる彼女の動きに迷いはない。
「だから、これはただの食事。私の腹の中で」
 ――私の力になれ。
 念じるラハブの意思を受け、ごうん、と刻印が重い音を立てチョコたちを溶かしていった。
大成功 🔵🔵🔵

フローライト・ルチレイテッド
アドリブ連携歓迎です。

誰かの思いが、誰かの愛が、こんな形になってしまうのは残念ですけど…
だからこそ、なんとかしないと!

星屑よ、まだこない明日を明るく照らせ!

攻撃は【早業】と【パフォーマンス】で鍛えた身軽さでかわし、
【野生の勘、地形の利用】を駆使して、攻撃に包囲されないように、
資材の間等を立ち回ります。

同時に【楽器演奏、歌唱、範囲攻撃、パフォーマンス、精神攻撃】を駆使して指定UCを使用。

魂を震わせ、浄化する旋律のキラメキで攻撃?します。


自作歌詞カード(詠唱(サビ1)→サビ2)

闇空の中 キラキラ光る
無数の星達 想い乗せて飛んでゆけ
空を駆けて 世界を照らし出せ
さあ 輝ける未来の為

貴方の未来を照らすよ


キアラ・ドルチェ
叶わぬ恋の残滓…ですか
私はまだ恋した事ないけれど…縁紡ぐ白魔女としては放置できませんっ(そういえば父と母は小学生時代かららぶらぶだったそうですけど…ね。私似ませんでしたね、ちょっと悲しい

戦闘では他の方をヤドリギの祝福で援護回復です
ヤドリギで空中にハートマークを描いて…叶わなかった恋の残滓が安らぎを得ますようにって祈りながら
「白魔女の祝福を」

歪んだ愛が浄化されますように
変わり果てた想いが昇華されますように
祈りましょう、寄り添いましょう

そしてその想いを持っていた乙女たちが、新しい愛へと踏み出していますように、と祈りながら戦います

あと、こういう心を悪用する邪神教団の教徒は許せないので捕縛します


 闇にも光る銀の髪。首から提げるは、蛍石のような色をしたツインネックギター。
 ざっと倉庫の床を踏みしめ、麗しき風貌の少年が駆けつける。
「誰かの思いが、誰かの愛が。こんな形になってしまうのは残念ですけど……」
 少年の名は、フローライト・ルチレイテッド(重なり合う音の色・f02666)。想いをかき鳴らすようにして、長い髪を掻き上げ相対するものの姿を目に捉える。
「だからこそ、なんとかしないと!」
 少年と時を同じくして駆けつけたのは、白の魔女服に身を包んだ少女。愛くるしい風貌と裏腹に、悪戯っぽさを示すような八重歯が口元に覗く。
 ひしめくチョコたちを見て、少女――キアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)は、ふと思い馳せるようにこう呟いた。
「叶わぬ恋の残滓……ですか」
 手に握るは代々伝わる錫杖。胸に秘めるは、先祖より受け継ぐ魔女としての使命。
 今キアラの目の前にあるのは、歪められた不自然な想い。自然を司る魔法の使い手として、それらの所業は見過ごせるはずもなく。
「私はまだ恋した事ないけれど……縁紡ぐ白魔女としては放置できませんっ」
 そう気合を入れて、ぐっと握りこぶしをつくってみるものの。ふと胸をよぎったのは、仲睦まじき父母の話。
(「そういえば父と母は小学生時代かららぶらぶだったそうです……ね」)
 ちょっと社会勉強してきなさい、と旅に出されて気付けば二十歳。キアラの隣を埋めてくれる特別な『いい人』には、未だ巡り合えず。
(「どうしてそこは似なかったんでしょう」)
 ぷるぷる、と唇を引き結んだまま想いに耐え。悲しい目で、キアラは運命の過酷さにため息をつくのだった。

 言葉は通じなくとも、チョコたちにとって想いを手渡せる相手は歓喜もたらすものに違いなく。二人をありったけの『愛』で埋め尽くそうと、チョコたちが想いの丈をこめて次々に炎を放つ。
 うち捨てられた資材の上を伝って跳ぶように駆け、フローライトは飛んでくる火の粉を器用にかわしていく。
 宙に浮かぶ焔の軌道は、揺れ動くように見えてその実まっすぐ。乗せた思いの如く猪突猛進な攻撃を、キマイラの少年は柱を盾にして打ち消し、徐々に距離を詰めていく。
 ライブパフォーマンスで鍛えた体力は、飾りではなく。文字通り活きた感動を届けるため、舞台の上を駆けた経験が彼を支える。
 音が十分に届くところまで近づき、フローライトはギターを担ぎ直した。
「星屑よ、まだこない明日を明るく照らせ!」
 弦をかき鳴らすと同時、魂震わせる旋律がきらめく音符となり、倉庫内を乱れ飛ぶ。
 ――闇空の中 眩く光る 無数の星達 散りばめ空に飾ったら。
 空間を埋め尽くすような音の波。友のバンドより譲り受けた歌が、浄化のきらめきを宿して炎を打ち消していく。
「世界を輝かせよう、まだ来ない明日に……熱っ!」
 それでもかき消えなかった炎が、フローライトの髪を焦がすが――直後、ハートの魔法が彼の身を包み、額の熱ごと火傷の痛みを拭い去る。
 誰が癒してくれたのかと周囲を見回せば、悪戯っぽく笑うキアラの姿。彼女の操るヤドリギの祝福は慈愛を湛え、誰にも等しく捧げられる。
「ふふっ、私がいるからには怪我ひとつさせませんよっ」
 再び飛ぶ火の粉を見て、魔法のヤドリギが宙にハートマークを描く。受け継いだものは父の優しさ、そして母方に継がれた白魔女の矜持。
 キアラは祈る。歪んだ愛が、変わり果てた想いが昇華されるよう。そして、想いの持ち主たちが新たな愛へと踏み出せているように、とも。
 眼前で戦う少年はもちろんのこと、彼女の想いはチョコたちにも向けられる――できれば、叶わなかった恋心をも救いたい、と。
「あなたに、そして想い叶わなかったあなたたちにも――白魔女の祝福を」
 まごころをこめ紡いだハートは、花咲くように仲間の元へと届き。癒しきってなお溢れる慈愛の魔力は、周囲の空気の淀みすらも浄化していく。
 キアラの思いをしかと受け止め、フローライトは今一度歌に力をこめる。大きく息を吸い響かせる歌は、廃倉庫に幻想めいたステージすら描いてみせた。
 ――空を駆けて 世界を照らし出せ さあ 輝ける未来の為。
 幾何学模様を描いて音符が空間を満たし、彼のライブはクライマックスを迎える。

 ――貴方の未来を照らすよ。
 最後の歌詞のあと、余韻のようなメロディに思いを満たされたチョコたちが静かに消えていく中で。
「ていっ」
 逃げ遅れ、隙を見てこっそりと逃げ出そうとした教徒が、キアラの足元から伸びる蔓に捕まりドテンと転がった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

ティル・レーヴェ
ライラック殿(f01246)と

叶わぬ想いが転じた姿は
季節裏側の催事を思わす様
されどその裡に抱く想いも与うる愛も
歪に誰かの害となる前に受け止め浄化しよう

宿る力に害されぬ様
己に花影の硬貨を貼りつけて
あゝ甘味は食うて貰うが存在意義
その想いごと食ませて貰うよ

食むのがおなごの妾で済まぬなぁ
じゃが共に在る
彼自身にと望むのは遠慮して?
と口に指当て語りし其れは
妾の我儘

叶う限りにと願うも
祭りの分もこの腹空けておかねばな
一口ずつと加減して
増えし牙殿達の元へも誘おう
其処に在る優しさへと笑み向けて

あゝ
どの想いも甘く美味じゃよ
伝える言葉は彼女らと
此方見守る彼にも宛てて

破魔と浄化を歌に乗せ
巡り巡って
恋叶う日が来ますように


ライラック・エアルオウルズ
ティルさん(f07995)と

甘い祭めく姿には、
甘味好きとして惹かれるが
幾ら抱く想いが彷徨えども、
本命はひとつに限るべきだよ

それでも尚と望むのなら
少しばかり想い添うように、
恋心を味わってあげようか

『好きな人の話を聞かせて?』
恋話めく問いで好奇の獣放ち、
代わりと菓子の身食ませ
突進は《見切り》で回避して

ごめんね、僕は頂けない
君の恋心を受け取れる程、
素敵な男でも無いからさ
優しい彼女が菓子食むのが、
どうにも心配でならなくて
ついと獣増やす野暮な奴だし

――、……『趣味は?』
取り留めないのは御愛敬
出来る限りに多く担って
ちゃんと美味なのかい、
とは視線で彼女へ問うて

巡る先では全て受け止める、
王子様に会えると良いね


 甘い芳香をもたらすチョコの魔物と、甘い物に目がない二人を引き合わせたのは何処の女神か。叶わぬ想いが転じた姿は、とうに過ぎた如月の催事を思わせる。
「胸の内に秘めたる甘い想いは、何時の世も同じなのじゃなぁ」
 食べてと無邪気に迫るチョコに、ティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)はふと笑みをこぼす。元になった想いの無垢さ故か。忘却の海で魔物となり果てようとも、チョコたちの目に悪意の色は窺えない。
「甘い祭めく姿には、甘味好きとして惹かれるが」
 大の甘党を自負するライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)は、知己とチョコを贈り合い過ごしたその日の事を思い出す。籠めた想いの名が如何なるものであれ、それを愛しくこそ感じはしたが。
「幾ら抱く想いが彷徨えども、本命はひとつに限るべきだよ」
 いまや受け取って貰う事が目的となった数多の告白に、ライラックは窘めるように首を振る。
 案ずるような彼の言葉は果たして、届いているのか。方陣は次々とチョコたちを呼び寄せ、溢れかえる想いが倉庫を満たす。
「その裡に抱く想いも、与うる愛も。妾達が受け止めよう」
 歪み、誰かに害為す前に。服の袂を胸元へと引き寄せ、ティルは邪気を祓うように金鎖を鳴らして袖を振るう。
 ライラックもまた、彼女の言葉に頷くようにして並び立ち。
「それでも尚味わってほしいと望むのなら。……少しばかり想いに添ってあげようか」
 静かな靴音を響かせ、チョコの群れへと歩んでいく。

 甘い、落ち着いた声は、チョコたちの上に囁くように降り注ぐ。
「――好きな人の話を聞かせて?」
 ライラックが作品を書き溜めているメモ帳。未だ満たされぬ空白の頁より、『好奇心』の獣が実体を得て飛び出す。
 甘い恋心という、獣にとっての未知。好奇に駆られた獣は、満足な答えを得るまでチョコの身を貪り続ける。
 自身が食べる代わりにと呼び出した獣が糖分の過剰摂取にならない事を祈りつつ、隣へと目を向ければ。
 倉庫内に薄く射す光に、花影の硬貨がきらりと輝く。
「花影に隠れし其方の力、お借りするよ」
 ぺたりと懐に貼り付けたそれは、仇なす全てを無害化するもの。
 いたいのとんでいけと、癒花の隠れ子がコインの中から魔法をかければ、害為す力を癒しに変える加護としてティルの身を包み込む。
 敵の攻撃から身を護るためにも使えようが、隠れ子の力をもってティルの成す事はそれではなかった。
「あゝ、甘味は食うて貰うが存在意義。その想いごと食ませて貰うよ」
 食むのがおなごの妾で済まぬなぁと笑いかけ、ティルは降り注ぐチョコの欠片を一粒、ひとつぶ、味わうように口元へと運ぶ。
 ティルだけでなくライラックにも食べて貰いたいのか、時折チョコたちの視線が隣へも注がれる、が。
 ――其れは、遠慮して? と。見えぬところで人差し指を唇にあてがう。ハーブティーに花蜜を垂らすが如く、密やかに秘めたそれは、乙女の我儘。
 それでも、手をすり抜けていく無邪気な子達はいて。
「あゝ。待って給う……!」
 ティルの護りを潜り抜けたチョコたちが、ライラックへと殺到するが。
「……ごめんね、僕は頂けない」
 チョコたちはライラックに届く前に、音もなく喰われ消えていく。彼の護衛を務める獣は、いつの間にか二頭に増えていた。
 彼曰く、恋心を受け取れる程素敵な男でも無い、と。ひとまず無事なライラックを見て、ティルが胸を撫でおろす。
 これはティルの預かり知らぬ事だが、こっそり獣を増やしたのは今しがたではなく。身を護るためよりは寧ろ、優しい彼女が菓子の想いに応えようとするのを素直に見守れず、つい彼の方で受け持とうと喚んだのだ。
 好奇の獣をけしかけるべく、静かな声が再び降る。
「――趣味は?」
 取り留めもない投げかけになったのも無理もなく。彼の視線はチョコたちではなく、並び立つ彼女へと向けられていた。
 ちゃんと美味なのかい? と問うような眼差し。そこにはティルを案じる意図の他に、菓子好きとしての羨望が少しばかり混ざっていて。
 視線の意味を悟ったティルが、口元を拭ってふうわりと微笑む。
「あゝ。どの想いも甘く、美味じゃよ」
 想いを汲んで優しく笑むが、ティルの食は別腹と豪語するにはやや細く。祭りの分も空けておかねばと量を加減し、できる限りにとチョコたちの想いを昇華していく。
 やがて、想いを受け取ってもらえ満足したのか。一口ずつ欠けたチョコたちから、光が漏れる。
 旅立ちを見守る作家の目は、想いの行き着く先が見えているかのようで。
「巡る先では全て受け止める、王子様に会えると良いね」
 恋叶う日を願って紡ぐティルの聖歌に見送られ、光の粒が静かに消えていった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

オズ・ケストナー
清史郎(f00502)と

わあ、いいにおいっ

セイシロウは甘党、しってる(こくり)
あ、でもでも、食べちゃだめなんだよね
セイシロウ、おいしそうだけど食べちゃだめなんだよ(繰り返し)

ガジェットショータイム
とけたチョコレートは一滴のこらず型にながすよっ
身の丈ほどのゴムベラ
よーいしょっと
地面に立てたゴムベラを軸に、くるりと回って回避

セイシロウの桜に笑んで
さくらの花をトッピングだね

守られたのに気づけばお礼

だれに食べてほしかったかわすれちゃったのは
きみたちのせいじゃないものね
うん、セイシロウとわたしがうけとめるよっ

いただきますっ
ゴムベラがくわっと口開けて
ぱっくん

つぎはちゃんと、もらってほしいひとに届くといいね


筧・清史郎
オズ(f01136)と

俺は甘い物が好きだ
非常に好きだ(超絶甘党
随分と美味しそうな敵だが…食べては駄目なのか?(じー
…そうか、駄目なのか(ちょっぴりしょんぼり

食べられないのならば、では倒してしまおう(切り替え速い
おお、オズはお菓子作りか
オズが型に流したチョコを、舞わせたUCの桜吹雪で飾ろう(微笑み

食べて貰いたい気持ちは分かったが、少し頭を冷やして落ち着こうか
水属性の衝撃波を広範囲に放ち、情念の炎と相殺
オズへ向かう溶かしたチョコも同様に
オズが動き易い様、支援しよう

恋、はよく分からないが
甘味を贈られる事は俺はとても嬉しい(雅スマイル向けつつも攻撃

オズと共に、乙女たちの無念を解き放ってやろう(桜舞わせ


 甘く、心をくすぐるように。立ち込める芳醇なカカオの香りに、弾むような声が倉庫内に響く。
「わあ、いいにおいっ」
 歓喜に満ちる、オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)の声。友達を呼んでしばしばお茶会を開く彼にとって、食べ尽くせぬチョコの山は夢の光景でもあり。
 そして、駆けつけた甘党はオズだけではない。
「……甘味か」
 和の装いに身を包み、筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)は桜模様の扇子を静かに仰ぐ。細い眦の彼はまさしく、美男子といった風であったが。
「俺は甘い物が好きだ」
 その瞳は矢を射るようにまっすぐチョコたちを捉え、まるで告白のように言の葉を告げる。
「非常に好きだ」
 重ねて二度、迷いなく。大事な事は繰り返し言わねばならないというお約束である。
 オズが清史郎の方を見て、こくりと頷く。
「セイシロウは甘党、しってる」
 ふふふ、と楽しそうに笑いを浮かべたオズだったが、あ、と何かを思い出して声を漏らす。
「でもでも、食べちゃだめなんだよね」
「む。随分と美味しそうな敵だが、食べては駄目なのか……?」
 今度はおあずけを食らった子犬が餌を見つめるように、哀しみの色を湛え注がれる視線。
「セイシロウ、おいしそうだけど食べちゃだめなんだよ」
 大事な事は二度。躊躇いのない清史郎のこと、はっきり言わねば物は試しと食べてしまうかもしれないから、と。
「……そうか。駄目なのか」
 つとめて、優雅に。肩を落としたりせぬよう振舞う清史郎であったが、その声は心底名残惜しそうであった。
 しばしの間を経て、不意に清史郎の扇子が音をたてて開かれる。
「食べられないのならば、致し方ない。では、倒してしまおう」
 先程まで内心しょげていたとは思えぬ動きで、清史郎は桜花を乱れ舞わせる。
「わたしも、がんばるよっ」
 オズお得意のショータイム、此度呼んだのは身の丈ほどある大きなボウルとゴムベラ。溶けて飛んできたチョコの滴をボウルで受け止めかき集め、無駄にはしまいと型へ流し込む。
 続く体当たりはゴムベラをがしっと掴み、身を浮かせ。
「よーいしょっと」
 地面に立てたゴムベラを軸にくるりとかわせば、勢い余ったチョコはボウルの中へと沈んでいく。
「おお、オズはお菓子作りか。では、俺も」
 風に乗せて、花びらが舞う。扇子で繰る桜吹雪を型の上へと吹き流せば、ふわりと舞い散り桜チョコのできあがり。
「さくらの花をトッピングだね」
 機転を利かした連携プレイに、オズが喜びぴょんと跳ねた。

 身のこなしの軽やかなオズには、受け取って貰えないと思ったのか。今度は清史郎の方をめがけ、チョコたちが一斉に焔をよぶ。
 揺らめく想いの炎が、ぽぽ、と狐火のように灯って彼を取り囲むが。
「食べて貰いたい気持ちは分かったが、少し頭を冷やして落ち着こうか」
 細波を呼ぶかのように扇子を震わせれば、地面より湧いて出た清水が水塊を作る。弾けた水球の衝撃波は次々と情念の炎をかき消し、後に残るは焦げた想いの残滓のみ。
 広がる波はさらに遠く及び、オズへと向かう熱いチョコを飲み込んでばらりと砕く。
「ありがとうっ」
 守ってもらえた事に気づき、オズは笑顔でお礼を伝える。
 並み居るチョコたちは皆一様な動きで、二人を取り囲む。しかしチョコたちの想いに書かれた本当の宛名は、オズでも清史郎でもなかったはず。
「だれに食べてほしかったかわすれちゃったのは、きみたちのせいじゃないものね」
 人から人へと繋がれる、想いの矢印。皆が互いに結ばれれば幸せなのだが、現実の多くはそうではない。
 単に、巡り合わせが悪かっただけなのだ。
「恋、はよく分からないが」
 硯箱として在った百年余りを含めてみても、清史郎の持つ経験と感覚では恋心は分からず。ならば自分なりの視点で乙女たちの無念を解き放とうと、清史郎は言葉を紡ぐ。
「もし、俺ならば。甘味を贈られる事は、とても嬉しく思う」
 桜吹雪の手は止めず、しかし素直に告げられた言葉にチョコたちの心は華やぐ。
 想いの果てである彼女たちに、清史郎の言葉の意味は伝わらずとも――それでも嬉しいという言葉は、持ち主たちが想い人に求めた返事に、おそらく近い。
「うん、だからね。セイシロウとわたしがうけとめるよっ」
 オズの合図に、ゴムベラがくわっと伸びる口を開く。次こそはちゃんと、貰ってほしい相手に届くようにと。
「いただきますっ」
 ばっくん、と。一欠片も残さぬよう、大口を開けたゴムベラがチョコたちを飲み込んだ。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

花川・小町
【腐れ縁】
困った子達は纏めて捕縛

元は無垢な乙女心だったモノが、災禍に転じて悪用されちゃ忍びないわ
良からぬものとして不幸を振り撒く前に、鎮めましょうか

UCで神霊に変じ、オーラや耐性も重ねて揺るがぬ加護を
炎凪ぎ払うよう、大きく衝撃波放ち範囲攻撃
本体には真向から薙刀で直接破魔の一撃
一思いに終わらせましょう

あら――だって、ねぇ?折角なら愉しく遊びたいじゃない?
まぁまぁ、戯れ合いは後になさい
今の相手はあの子達――いじらしくも毒と成り果てた想いを、これ以上無下にするものじゃないわ

のらりくらりと逃れる男衆に代わり、せめて私は正面から武器で受け止め切って――断ち切るわ

ふふ、本当仲良くて何よりよ(笑って連携し)


呉羽・伊織
【腐れ縁】
後顧の憂い断つ為にも信者はさくっと捕縛

無垢なモノなら喜んで受け止めるんだがな
(なんてへらりと笑うも、視線は隙無く真剣に)
――悪いがコレばかりは謹んでお断りするしかない

敵動作探り見切り&残像で目眩まししつつ
水UCで炎相殺&各耐性でも緩和
早業の2回攻撃で、本体も無念も断つよーに両断
一撃が難しけりゃ闇毒UCも重ね牽制

ところで姐サンさ、珍しく誘ってくれたのは嬉しいヨ?
でもこの狐野郎はホント余計!ヒトを弄ぶの反対!
鳥肌立つ邪心しか感じねーわ、コイツも纏めて斬って捨てよーか!?
もしくはソコのチョコチャン、コイツの口に一撃食らわして封じてくれても良いぜ!

水と油だってのー!
(されど連携は事も無げに)


佳月・清宵
【腐れ縁】
信者は捕縛し外へ転がす

さて、元凶への灸は後で適役に任すとして、此方は此方の仕事に励むか
――燃え尽きる事すら叶わず燻る念は、せめて此処で綺麗さっぱり焚き上げてやろう

連れと死角消し合う様に立回りつつ残像で撹乱
序でに技潰し合わぬ範囲で、此方は炎に炎ぶつけ打消
合わせて敵動向探り見切り回避
最悪掠れど耐性で涼しい顔
本体の隙掴めば加減無しの送火を
自棄っぱちは終いにして、静かに海へと溶け還りな

おう、折角純粋に構って可愛がってやろうってのになぁ?
人の親切心を無下にすんなよ
ああ?寧ろテメェこそ普段あしらわれて振られっ放しの分、今ぐらい男見せて食らってやれよ

はっ、相変わらず正直だな
(言葉と裏腹の様に笑い)


 戦いも佳境を迎える中、最後に残っていた教徒が扉の隙間よりそろりと逃げ出そうとする。逃走を図るその足元に、影が落ちた。
「あら、困った子達ね。私たちに断りもなく出ていこうとするなんて」
 からり下駄音を響かせる花川・小町(花遊・f03026)。嫋やかな笑みと共に語り掛ける、彼女であったが。手には椿宿す薙刀、その切っ先は教徒へと向けられており――そして何より、目が笑っていない。
 怖れ慄いた教徒が二、三歩後退りをすれば、その背が別の誰かにぶつかる。
「まあ、後顧の憂いは断っておくってコトで」
「とりあえず転がすぞ」
 自身の運命を悟った顔も、ほんの束の間。微塵の抵抗も許されず捕らえられた教徒は、大地に転がり夏空を仰ぐ。丁寧に猿轡まで噛まされていたが、どの道白目を剥いている彼に言の葉を紡げるはずもない。
「さて、元凶への灸は後で適役に任すとして。此方は此方の仕事に励むか」
 手についた砂を掃い、佳月・清宵(霞・f14015)が倉庫内にひしめく敵を改めて見る。チョコの軍勢は刀で砕けば数こそ減れど、欠けた分を補うように方陣から染み出てくる始末。
 髪から片方だけ覗かせた清宵の紅眼が、厄介なものを見るように細められる。
 とはいえ方陣には亀裂が入り、増援の呼ばれる頻度も落ちている。恐らく後少しばかりを乗り切れば、際限なく見えた援軍も打ち止めを迎えるだろう。
「無垢なモノなら喜んで受け止めるんだがな」
 烏の濡れ羽のような黒髪を風に流し、呉羽・伊織(翳・f03578)はへらりと笑みを浮かべる。力みを感じさせぬ振る舞いは一見遊び人のようだが、そこは流浪の用心棒。眼差しは敵に、利き手はいつでも剣の鍔を弾けるよう添えてあり、軽薄な口ぶりとは裏腹に隙がない。
 美男美女を目にして我先に想いを手渡さんとするべく、色めき立つチョコ達が三人を取り囲む。
「元は無垢な乙女心だったモノが、災禍に転じて悪用されちゃ忍びないわ」
 そのように語る小町は、想いの込められたチョコたちに何か思う所のある口ぶりでもあり。身を華やかに彩る着物を翻し、扇子の先で唇に引いた朱を、つとなぞる。
「燃え尽きる事すら叶わず燻る念は、せめて此処で綺麗さっぱり焚き上げてやろう」
「悪いが、コレばかりは謹んでお断りするしかない」
 煙管燻らす清宵が片の袖を捲れば、伊織が懐に忍ばせた暗器に手をかけ。
「良からぬものとして不幸を振り撒く前に、鎮めましょうか」
 小町の薙刀の風切る音が、そのまま戦いの幕開ける合図となった。

 熱く、恋の情熱を滾らせるように、重なり合う焔が膨れ上がる。大きく塊を成し、三人を飲まんとする炎。その一撃を受け止めようと、まず小町が駆けた。
 戦巫女の舞は神霊の御霊を降ろし、いま小町の体は透き通るように神懸りの力を宿す。人智を遠く超えた、神の業。一たび薙刀を振るえば、その威は大きく炎薙ぐ衝撃波となり、次々と炎をかき消していく。
 忘れ去られる事を拒むように、再び群れを成す想いの炎。小町一人で捌き切れぬ炎を、後ろから飛ぶ救いの手が堰き止め、阻む。
「オレの技は、自由気儘が取り柄でな」
 左方、伊織が水の力宿す暗器を投じれば、突き立つ暗器からたちどころに飛沫があがり、水煙幕となって炎を弱め。
「気紛れ気分屋で押しに弱いってか?」
 右方、清宵の呼んだ狐火は恋の情念すら騙くらかすように飲み込み、火勢を次々と乗っ取っていく。
 炎と水、対極に位置する二つの力は、小町の両脇から膨れ上がる炎を押し留め護りを成していた。
「……ところで姐サンさ」
 不意に、伊織がじっとりと小町を横目で見て含みのある声を投げかける。
「珍しく誘ってくれたのは嬉しいヨ? でもこの狐野郎は何で居るのサ、ホント余計!」
 互いの手を知り尽くして見飽きる程の、切っても切れぬ腐れ縁。抜群の連携とは裏腹に、清宵と相席させられた伊織の内心は複雑で。ヒトを弄ぶの反対! と、頭の上がらない姉貴分に僅かばかり抗議の声を上げる。
「おう、折角純粋に構って可愛がってやろうってのに随分な言い草だなぁ? 人の親切心を無下にすんなよ」
 一方こちらは余裕のある清宵、身に迫る炎を妖刀で斬って捨てては伊織をけしかける言葉さえ紡いでみせる。
「あら……だって、ねぇ? せっかくなら愉しく遊びたいじゃない?」
 からりと笑う小町はこうなる事が分かりきっていた様子で、敢えて二人を伴ったと見えて。扱いやすい男を手玉に取るが如く、笑みと共に説き伏せては、ついでとばかりの軽やかなこなしで薙刀を振るい、焔を斬る。
「あンなぁ、笑ってみた所で鳥肌立つ邪心しか感じねーわ! コイツも纏めて斬って捨てよーか!?」
 姉貴分に敵わぬのを承知の上で、伊織は猛抗議と共に清宵を指差してみせる。
「もしくはソコのチョコチャン、コイツの口に食らわしてくれても良いぜ!」
 自身は決して食らうものかとばかり、残像を目くらましにして敵の攻撃を躱せば。
「ああ? 寧ろテメェこそ普段振られっ放しの分、今ぐらい男見せて食らってやれよ」
 清宵もまた敵の目を欺き、動きを読んでは迫る焔を躱していく。
 背中合わせに立つ二人は口こそ喧嘩すれど、互いの目は死角を補い合っており。下手に避ければどちらかに当たりそうな炎も、互いに届かぬよう斬って捨てては身に及ぶのを防ぐ。
 時折相手の髪を引っ掴んで「食ってやれよ!」「テメェからだ」と溶けたチョコを食わせようとするも、戦の合間にそれが成せるのは互いの息が合うからでもあり。
 仲睦まじき(?)様子を見かねた小町が、溜息まじりの笑いを漏らしてこう答える。
「ふふ、本当仲良くって何よりよ。でもまぁ、戯れ合いは後になさい? 今の相手はあの子達――」
 二人の男衆がのらりくらり身を躱すならと、迫る炎を受け止めるべく潔く踏み込み。
「いじらしくも毒と成り果てた想いを、これ以上無下にするものじゃないわ」
 迫る炎を薙刀で断ち割り、小町は敵の体へと破魔の力宿す一撃を届かせる。
「水と油だってのー!」
「はっ、相変わらず正直だな」
 抗議の声と共に素早く二度、伊織の太刀筋が目にも止まらぬ速さで炎を断てば、清宵の狐火が残り火を吸い込み、大きく膨れ上がる。
「自棄っぱちは終いにして、静かに海へと溶け還りな」
 隙を突いて広がる、加減なしの送り火。倉庫の床が炎で満たされ、中央に道が開ける。スタアの歩む花道の如く、大きく残されたその空間は小町が駆けるためでもあり。
「さあ、そろそろ。一思いに終わらせましょう」
 小町の薙刀が破邪の霊力で最後の炎を断てば、残火は最後の一片を飲み込み、思い残す事無く燃やし尽くす。
 乙女たちの無念は、白い煙となって倉庫の窓から天へと昇り――焼け焦げたカカオの香りと、軋んだ方陣だけが後に残された。
成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴


第2章 ボス戦 『禍罪・擬切』

POW ●伐
単純で重い【鬼神の名に恥じない破壊力】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD ●斬
【あえて邪神の力に飲まれる】事で【神として奉られる以前の悪鬼】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ ●切
【僅かに残った神力】を籠めた【縁切り刀】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【良縁、悪縁問わず1つの縁】のみを攻撃する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は榛・琴莉です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 軋む音を立て、地面に描かれた陣が割れる。
 土間のコンクリート諸共にひび割れたその亀裂より、漆黒のもやが立ちのぼる。

 役目を放棄した方陣が最後に呼び出したモノ。
 それは、白き面を被った鬼神であった。

 かの鬼は、何も云わぬ。鬼の心に、斬る事以外の執着はない。
 身体中に封じの杭を打たれて尚、その執念は凄まじく。
 ただ、自身の片割れに逢わんとする一心で、立ち塞がる一切を斬る。

 ぎらめく刃は地を断ち割り、鬼神の名に相応しき破壊をもたらし。
 邪神の力に身を任せれば、悪鬼羅刹として悉くを斬り。
 そして縁切り刀に神力を籠めれば、その刃は文字通り『縁を切る』。
 良縁、悪縁、切られるものは人によろうが、もしまともに受けようものなら。
 当面のあいだ、相手を思い出す事すら出来ぬやもしれぬ。

 力に依らば、破壊を上回る力を。
 速さに依らば、鬼神を超える神速を。
 精神に依らば、神力に負けぬ心――もしくは、切れぬ縁の強さを。
 それぞれ、示す必要があるだろう。

 太く骨ばった鬼神の手が、こちらを捉え。
 強く踏み込む音、吹き荒ぶ突風の如き風圧と共に、
 鬼神の太刀筋が猟兵たちへといま、振りかからんとしていた。
キアラ・ドルチェ
切られたのは「両親との縁」
え…思い出せない、大切な二人の事

何て事でしょう、思い出せない…私は、この世界で独りぼっちになってしまったの?

…いいえ、違うっ
私は覚えてる。父の優しい笑顔と頭を撫でてくれる手の感触を
母の植物を愛でる楽しそうな表情と柔らかなお出かけ前のキスを
母の白魔女の称号を継いだ、父の吸血鬼の血を継いだ
かけがえのない、大切なものと、想い出たち…

その運命の糸が貴方如きに断ち切れる筈がないっ!

「めっちゃ大切に育てられた箱入り娘なめないで貰えますかっ!」
…そのせいで彼氏さん出来てないけど(ぼそ
良いんです、いつか両親に素敵な人紹介してやるものっ!
そんな八つ当たりも込めて…
「森王の槍よっ!」


杣友・椋
▼アドリブ歓迎

あいつが本命か
激しく逆巻く風に思わず眉を顰め
眼差し遣る先は、縁を断つという其の刀

縁切りとかいうのも物騒だけど
もろに斬撃を食らったらそれこそ玉の緒が切られちまいそうだ

極力あいつと距離を取って戦闘するつもりで
空に手を伸べ、喚び起こすは攻撃力を重視した彗星
降り注ぐ偽物の星に奴を襲わせる
あの刀の一撃の威力には敵わないだろうが
少しでも奴を疲弊させ、戦友たちの助けになれれば良い

敵に迫り来られたら
得物の黒槍で牽制・【串刺し】
攻撃を受けた際は【オーラ防御】【激痛耐性】で対応

――大丈夫。縁は疎か命の糸も切らせねえよ
とある愛しい天使から受け取った連数珠をぎゅっと握り
力を貸してくれるよう心の内で願った


 烈風の如く、逆巻く風。窓越しに陽の光を受け、白刃が煌めく。
 彗星が尾を引くようなその軌跡は、時が止まったようにゆっくりと映った。ドラゴニアンの青年が何事かを叫んで手を伸ばすも、間に合わぬ。
「え……」
 ぶつり、と。キアラ・ドルチェは自身の大切な何かが断たれるのを感じた。
 斬り裂かれたはずの喉元を押さえるも、身体は無傷だ。不可解に思えたが、敵を目の前にして呆けてはいられない。急ぎ、対抗する呪文を編み出そうとして大きく頭上に杖を掲げ――キアラの手は、そこで止まった。
「何て事でしょう……思い出せない、なんて」
 代々伝わるヤドリギの魔法。その力は一体、誰から受け継いだものだったか。
 それだけではない。自身の纏うマント、受け継がれた血の由来――そして、旅のはじまり。忘れてはならない大切なものが、靄がかかったように思い出せない。
 魔女にとって、血縁は決して軽んじていいものではない。そしてそれ以上に、記憶の大部分を占める『居た筈の二人』は、キアラにとって欠かせない自身の一部だった。
「私は、この世界で独りぼっちになってしまったの……?」
 激しい動揺を隠せず、途中まで編まれた魔力が霧散する。
 ひとまず命こそ、無事ではあったが。目の前で見せられた厄介な技に、杣友・椋は眉を顰めた。
「あいつが本命……わざわざ喚ばれるだけの力はある、って事か」
 縁切り刀の持ち主は、元の立ち位置で再び仕掛ける好機を伺う。縁切る力も物騒だが、煌めく白刃はその光り様を見ただけで鋭利なものと分かる。
 骨身に食い込むその刀を、鬼神が如き力で振るわれればどうなるか。
(「危ねえな……もろに食らったらそれこそ、玉の緒が切られちまいそうだ」)
 最前線に立って戦いたいが、自身の得物はリーチを活かして振るうもの。万一の時には踏み込む覚悟を決めつつ、椋は空に手を伸ばす。
(「なるべく距離を取りたいが、倉庫の中じゃすぐに詰められちまう……なら」)
 近くは遠く、遠くは近く。距離感を狂わすだまし絵のように、空に偽の彗星を喚ぶ。
 速度を増した紛い物のほうき星が、鬼神へ向けて大きく尾を引く。真横から見ればいびつな星も、敵の眼には巨岩の如く映る。
 あの刀の一撃には敵わないだろうが、奴を少しでも疲弊させれば――椋の目に、警戒した鬼神が大きく飛び退るのが見えた。
 巻き起こる粉塵、続いてぱらぱらと降る砂粒の雨。僅か一撃で片付いたとは思えず、白魔女と竜の青年は固唾を飲んで見守っていた、が。
「……!」
 敵の地を蹴る音に、いち早く椋が気付く。キアラを庇い立つように割って入り、鋭い穂先で襲い来る太刀筋に備える。
 いつの間にか、鬼神は刀に黒い闘気を纏わせていた。食らってはまずい――直感に従い、椋は身を捻るようにして太刀を地面へと流す。足元に、地を揺らがす衝撃が走った。

 睫毛の砂埃をはらい、キアラは視界を確保する。そこには太刀の直撃を免れ、なおも戦う椋の姿があった。
(「……!」)
 キアラはその背に、誰かの姿を重ねていた。普段は優しくも、窮地にはマントを翻し駆けつけてくれた、懐かしき人。
「いいえ、違うっ……独りぼっちなんかじゃないっ」
 キアラの中で、懐かしい感覚が蘇る。
 優しい笑顔を向ける、男性の姿。頭を撫でてくれた、手の感触。植物を愛でながら笑みを浮かべていた女性は、まもなく旅立つキアラを見つけるとお出かけ前のキスをくれた。
 これが、父。これが、母。靄の中から息を吹き返すように、両親の姿が蘇る。
 白魔女の名と、吸血鬼の血。かけがえのないものは、今も失われず胸に宿る。
 鬼神を睨め付け、キアラは杖を手に取った。運命の糸が、貴方如きに断ち切れる筈がない、と。

 戦う椋の足元を、地鳴りと共に何かが駆けた。大地を這う蔦のような植物が、次々と脈打ち束ねられる。
「これは……」
 足元を駆けるその蔦が味方の力と分かり、椋は頼もしさを感じて連珠を握る。
(「大丈夫。縁は疎か、誰の命の糸も切らせねえよ」)
 魔力の糸で束ねられた、アクアマリンの数珠。愛しき人の髪色を思わす石は、椋の願いを受けて仄かに光る。
(「なあ、――。力を、貸してくれるか」)
 敵の懐へ駆ける寸前、呟いた名の甘い響き。その存在を思い出すだけで、四肢に力が漲り奮い立つ。
 鋭く、敵の身を穿った穂先は、鬼神を地面に縫い止めて離さない。離さないまま、ヤドリギの魔力が満ちるまでの時を稼ぐ。
 束ねられた植物の槍が、鎌首をもたげるように鬼神へと向けられる。それは万物をあるがままの姿に還す、慈悲深き大自然の槍。
「めっちゃ大切に育てられた箱入り娘、なめないで貰えますかっ!」
 そのせいで彼氏をいまだ持てた試しはない――今思い出しては集中を欠きそうな事実も、いっそ八つ当たり気味に魔力に織り交ぜて相手へとぶちまける。いつか両親に素敵な人紹介してやるもの、と。
「森王の槍よっ!」
 放たれた槍は、避ける事の敵わぬよう交差して鬼神の退路を断ち。樹木の槍の衝突音が、廃倉庫を大きく揺らがした。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

フローライト・ルチレイテッド
アドリブ連携歓迎でーす。

とりあえず真の姿を解放!

UC【Dream-ユメノムコウ-】を使用、周辺被害の軽減も兼ねてステージに変換して設営、味方を【鼓舞】します。
飛んでくる攻撃を【地形の利用】を駆使してステージで防ぎつつ、

ボリュームをどーんと上げて演奏、次の曲へ。

【楽器演奏、歌唱、パフォーマンス、精神攻撃、マヒ攻撃】を駆使して指定UCを使用。
オブリビオンに仁愛の心を齎す光で攻撃?します。

ぼくたちはか細い縁で繋がっているんじゃありません!
燃える魂で、【情熱】で繋がっているんです!
だから【情熱】が燃える限り、ずっと一緒です!

さあ思い出して下さい!貴方がかつて抱いていたであろう、情熱と愛を!


 樹木の槍との衝突からしばしの後。樹の瘤でできた檻の中から這いずり出るように逃れ、未知の力を警戒した鬼神が飛び退く。
 その鬼神へと投げかけられる、無邪気な声がひとつ。
「本当にそれでいいの? ってね」
 キマイラの少年の背には、いつの間にか大きな翼。真の姿を現したフローライト・ルチレイテッドはギターをかき鳴らし、自身の歌のワンフレーズを囁いてみせる。
 重なり合う、二つの弦のハーモニー。さすがにユーベルコードを連射する程の余裕はなかったが、代わりに幾重にもバーチャルレイヤーを投影して彼だけの煌めく舞台を形作る。
 光り輝くネオンのような線が、フローライトの真下に足場を形成する。高低差のあるステージとなったそれを飛び上がるようにして、少年は鬼神の振るう刀を次々と躱していく。
 ギターの弦をかき鳴らしては音波を浴びせ、敵には戦意の揺らぎ、味方には励ましを届けていく。
「聴いてくれてありがとう! それじゃ、次のナンバー行くよ!」
 ボリュームを大きく上げたフローライトのライブは、クライマックスへと突入する。蛍石のように色の移り変わる、光の音符。輝きが最高潮に達した時、少年の歌声が響いた。

 ――翼を広げ 空を行き 星夜を越えて 天まで 歌おう。

 姿を探して辺りを見張る鬼神をよそ目に、少年の歌は止まない。贈るナンバーは『輪廻-RequieM-』。かどわかされたように惑う鬼神を、仁愛の心もたらす歌が包み込む。

 ――輪廻を忘れて 声高く 歌おう 今宵限りでも 手を取って。

 淀みない声で響く歌が、鬼神の荒みきった心を揺り動かす。
 オブリビオンとはそも、質量持つ過去の海よりの侵略者だ。生者を憎み、停滞した過去へ引きずり込もうとする、滅亡をもたらす者の総称である。
 そのオブリビオンが仁愛の心を持てば、どうなるかは明白。戦いを厭い、他者を慈しむ心は世界の敵としての存在意義を強く揺らがしていた。
「ぼくたちはか細い縁で繋がっているんじゃありません! 燃える魂で、情熱で繋がっているんです!」
 観客に呼びかけるように叫ぶフローライトは、鬼神の心にも届くと信じて声を張り上げ続ける。情熱が燃える限り、ずっと一緒です、と。
 聞けば鬼神はかつて夫婦神だったという。片割れを探し続けるその心にも、訴えかける余地はある――その一縷の望みに、少年は賭けた。
「さあ思い出して下さい! 貴方がかつて抱いていたであろう、情熱と愛を!」
 ありったけの声と共に、幻想のスポットライトが鬼神を包む。目映い極彩色の光が彼の身を覆い、その動きを世界への叛意ごと封じていった。
成功 🔵🔵🔴

オズ・ケストナー
清史郎(f00502)と

そっか、あの刀が
セイシロウっ
警戒の呼びかけを

わすれたくない気持ちはある
たとえ生きる時間がちがっても
おぼえていれば、つながっていられる
だからわたしはどんなこともわすれない

でも
セイシロウなら

もしわすれたとしても、またはじめましてからでも
きっとかわらないでいられる
いつでもあの笑顔を向けてくれる
だからこわくない

思い切りよく懐に飛び込む
オーラ防御を駆使して軌道を逸らしながら回避
蒲公英の歌を歌って視線を奪ったら
その間にセイシロウがきっと

おわったらいっしょにおいしいものを食べるんだっ
ふふ、たのしみだねセイシロウっ

名前を呼べることがうれしくて
(ほら、わすれてないよ)
思い出を抱いて微笑む


筧・清史郎
オズ(f01136)と

元凶は縁切りの鬼か
ああ、油断せずに参ろう、オズ

俺は長年箱で在った故、何事にも執着は余り無い
けれど、ひととして過ごし、沢山の『縁』というものを知った
オズとの出会いや思い出もそうだ
確かにそれらは忘れたくはないな

だが、もしも一度切れてしまう事があっても
またきっと再び、同じ様に縁を結んでいることだろう
故に、恐れるに足らず、だ

オズの歌はこんなにも優しい
春の陽だまりに桜花弁と感謝を添えながら

俺に、その単純な攻撃が見切れぬとでも思ったか?
敵の一撃躱し生じた隙に、攻撃力重視の桜の斬撃を見舞ってやろう

ああ、美味な物を沢山食べよう
楽しみだな、オズ

名を呼ばれたら
自然と宿る微笑みと共に呼び返そう


 幾重にも纏わりつく光を振り払い、鬼神が刀を構え直す。隙の無いその構えを見て、オズ・ケストナーは息を呑む。
「そっか、あの刀が」
 鬼神の手に握られた白刃。あれこそがグリモア猟兵に伝え聞いた、縁切りの刀に違いないだろう。
「元凶は縁切りの鬼か」
 自身も刀の使い手だからか、筧・清史郎の視線は縁切り刀に注がれる。元は神気に満ちていたであろう、刀。いまやそれは悪縁のみならず、あらゆる縁を見境なく斬る凶刃と化していた。
 あらゆる道具は、使い手次第で白にも黒にも染まる。元来の使命を忘れ、邪道に堕ちた鬼神を見る、清史郎の胸中は如何なるものか。
「セイシロウっ」
 オズの呼びかけた警戒の声に、清史郎の声が重なる。
「ああ。油断せずに参ろう、オズ」
 つとめて、優雅に。私情を余人に見せる代わり、男は抜きはらう刀をもって答えとした。

 二人の間を分かつように、縁切りの刀が音を立てて空を切る。
 勝手知ったる二人の仲。たがいの目を見ずとも身を躱す方向は二手に分かれ、刃振るう鬼を翻弄する。しかし鬼の切るものは肉体でなく、二人に宿る縁。まともに受ければ、軽い手傷を負うよりも痛手となろう。
 長年硯箱であった清史郎には、物事への強い執着がない。それは彼の気質というよりはむしろ、ヤドリガミたる彼の生い立ちが深く関与していた。
 ヤドリガミの本体が宿る、器物。物は、人に所有される事こそあれど、何かを所有する事はない。自我を宿すまでは情を抱く事もなく、従って彼は人としては些か淡泊とも言える考えを持っていた。
 情に絆される事はなく、何事にも執着はあまりない。
 ――けれど。
 人の姿を得、人界と交わり過ごした年月は、清史郎の意識に変容をもたらした。
 沢山の『縁』というものを知った。沢山の人の想いに触れた。生粋の人間の抱く心と一切合切同じかは分からぬが、清史郎の胸には確かに今、忘れたくないと願う気持ちがあった。
 内に芽生えた想いの数々。オズとの出会いや思い出も、大事なその一つであった。
 刃交える清史郎の対岸、魔鍵を振るい援護するオズ。彼もまた、自身の心と向き合っていた。
(「わたしだって、わすれたくない」)
 人形にいつからか宿った、優しい心。たとえ異なる時間の流れに身を置こうとも、友との縁を、過ごした時間を。覚えていれば繋がっていられる。
 オズには優れた記憶力があった。決して忘れぬ自信があった。しかし刃の一撃を躱しながら、オズの心は同時に別の考えを抱く。
(「でも、もしわすれたとしても。セイシロウなら、またはじめましてからでも」)
 ――きっと、変わらないでいられる。
 それは、無垢なる信頼。たとえ二人の縁が刀で断たれようとも、彼ならば。分け隔てなく、いつもの笑顔を向けてくれる――だから、怖くない。
(「ああ。故に、恐れるに足らず、だ」)
 奇しくも同じ結論に至った清史郎は、蒼き刀に桜花を纏わせ、オズとは別の方角から鬼神と刃をかわす。その隙を突いてオズは踏み込み、鬼神の懐へ勢いよく潜りこむ。
「おわったらいっしょにおいしいものを食べようっ。ふふ、たのしみだね」
「ああ、沢山食べよう。楽しみだな」
 斬り結ぶ合間に未来への約束すらかわし、二人の攻防が鬼神を追い詰める。
 自身を狙って襲い来る刃を、オズが好機へと変えた。オーラの護りで迫りくる刀の衝撃をいなし、あさっての方へと振り抜かせる。
 植物の綿毛がすり抜けるように、ふわりと刃をかわし、そのまま両手を広げてくるくる踊る。
 ――てくてく 君が咲う 君が咲えば 僕の胸には勇気の花が咲く。
 諸手を広げ歌うオズのマーチは、春の陽ざしのように温かく力を分け与え。染み入るようなその歌に、清史郎は戦いの最中に僅かばかり目を閉じる。
(「ああ。オズの歌はこんなにも優しく、温かい」)
 唇が、無意識に感謝の句を紡ぐ。桜の花びらを纏わせ、清史郎は振るう太刀筋を覆い隠す。
 歌に気を取られた鬼神が振り向けば、既に刀は迫っていた。交差させるように縁切り刀を振るうも、鬼神の刀は僅かに届かず。
「俺に、その単純な攻撃が見切れぬとでも思ったか?」
 空振りし、隙だらけとなった鬼神の胴体に桜の斬撃が見舞われる。逆袈裟に蒼く駆け抜ける太刀筋の跡には、紅よりも鮮やかに桜の花が舞う。
 迷いなきその振る舞いに彼らしさを見た気がして、オズは思わず声を投げかける。
「セイシロウっ」
 戦いはじめと異なる喜色に満ちた声音で名を呼べば、変わらぬ笑みが期待通り返り。
 ――ほら、わすれてないよ、と。変わらぬ想いを証明するように、少年の笑顔が花咲いた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ピオニー・アルムガルト
チーム【もふごろ】
行動【spd】
縁を切るなんてなかなか面白い事が出来るのね!だけど簡単には私達の縁は切れないわよ!
まずは相手の動きを止める!芍薬の花弁により視界を遮ったりスピードを殺すわ!後はホワイト任せたわよ!

あれは昔幼き日。満月の夜。
宿敵のヴァンパイアに二人だけで遭遇してしまい私が一か八かで力を暴走。力の奔流に飲み込まれそうになった時、手を握り引き留めてくれたのがホワイトなの!握られたこの手は私の名に懸けてけして離しはしないわ!


ホワイト・アイスバーグ
チーム【もふごろ】
行動【wiz】
こう速く動かれては狙いがなかなか定まりません…。ここはお嬢様の出方を見て行動いたしましょう。

過去、何もなかった私の白い世界。だけどそれは中天に輝く太陽があってこそ白く見えると気付いた時…闇に飲まれそうな灯火に手を伸ばしたら…笑ってるお嬢様が手を握り返してくれていました。
人々が太陽がいつものように昇ると信じて疑わないように、お嬢様との縁は如何なる時も変わらないと信じております。

私達と貴方との縁はここまでのようですね。

『切』をUCの弾丸にのせ。

奥方様に会えるよう祈っております。それでは、ごきげんよう。


 度重なる攻防にも疲弊の色を見せぬ、鬼神。その頑強さと稀有な能力に、ピオニー・アルムガルトは興味津々の眼差しを注いでいた。
「縁を切るなんて、なかなか面白い事ができるのね!」
 元来物怖じしない性格のピオニーは、敵を前にしても陽気さを崩さない。だが確かに、形無きものを切る鬼神の力は広い世界を見渡せど、あまり見るタイプの力ではなかった。
「だけど、簡単には私達の縁は切れないわよ!」
 胸を張るように宣言するピオニー。その戦意を汲み取ってか、鬼神が動きを見せる。
 邪神の力に身を委ね、神として奉られる以前の悪鬼へと身をやつす。漆黒に飲まれた鬼神の剣閃が、風切る音を後に残して二人の間を駆け抜ける。
 すんでのところで刀を躱してはいたが、ホワイト・アイスバーグは攻めあぐねていた。
「こうも速く動かれては、狙いがなかなか定まりませんね」
 ホワイトの操る武器が銃である以上、無理もない。視界に映る敵ならば遠くからでも撃ち抜ける反面、近距離で目まぐるしく動かれれば武器の特性は活かしようもなく。
「……ここはお嬢様の出方を見て行動いたしましょう」
 そう決めて隣を見れば、ピオニーは今まさに攻撃に転じようとするところだった。
「花びら達よ、荘厳に吹き荒れなさい!」
 芍薬の花びらを風に舞わせ、敵の視界を遮るよう撒き散らす。風を纏いこちらへ迫りくる鬼神の肌に貼り付くように、薄紅の花びらが幾重にも纏わり、覆いかぶさる。
「後はホワイト、任せたわよ!」
 思いのほか早いタイミングでのバトンパスだが、鬼神の速度は幾らか落とせていた。ホワイトは短く頷き、お嬢様の為ならばと承諾する。
 思えば、この委ねられる感覚はいつからあったのだろう。慎重に敵の動きを見極めながら、ホワイトはかつての出来事を思い返していた。

 いまは遠き日、二人がまだ幼い頃の事。
 ピオニーの性格は今とさほど変わらず無鉄砲であったが、その明るさと行動力は周囲にとって支えでもあった。
 しかしそんな彼女と対照的に、ホワイトは自身の役目にまだ無自覚だった。
 窓辺から外を眺めれば、降り注ぐ日光がレースのように瞼に折り重なる。
(「ああ、私の日々はなんて何もないのでしょう。世界はこんなにも、白い」)
 白。それは清廉無垢な色であると同時に、無の空虚さを表す色でもある。ホワイトの過ごしたかつての日々。それは彩りのない日々でもあった。

 しかし、転機は訪れる。空に満月の輝く夜、運悪くも宿敵のヴァンパイアに遭遇したピオニーは迷わず叫ぶ。
「全力で行くわよ、ホワイト! こんな所で負けてられないわ!」
 宣言通り、命の炎を燃やして対抗するピオニー。髪は金に、瞳は赤に。容姿が次々と変じ、ピオニーの姿は人ならざる者へと変わっていく。
「これくらい、で……!」
 ピオニーの周りでプロミネンスが噴き上げる中、ヴァンパイアが気配をくらます。
 痛手を嫌ったのだろうか。いや、そうではない。
 必要がないと判断したのだ――これから自滅する相手に、わざわざ手を下さずとも良い、と。
「お嬢様……!」
 たまらず手を伸ばしたその日、ホワイトの真白き日々は終わりを告げた。世界が白いと感じたのは、中天に輝く太陽あってこそ。目の前の少女が照らしていてくれたから、己は白い世界のただ中に身を置けたのだ。
 力の奔流に飲まれそうなピオニーの手を、現世に引き留めるように掴む。笑って手を振り返してくれる彼女の存在がいかに得難く尊いかを、ホワイトはもう知っていた。

 絆を示すかのようにがちりと合わさる二人の手を、鬼神の刀が断ち切らんとする。
「握られたこの手は私の名に懸けて、けして離しはしないわ!」
 カチィンと、硬質な音が響き渡る。高らかにピオニーの宣言した通り、二人の手は縁切り刀の刀身に打たれても離れる事はなかった。
 手の中に、鉄でも仕込んでいたのか――その突拍子もない考えは、あながち間違いではない。
 いや、正確には。
「人々が日の昇るのを信じて疑わないように、お嬢様との縁は如何なる時も変わらないと信じております」
 ホワイトの握る、自動拳銃。手に隠されたその短い銃身が、見事に刃を受け止めていた。
 そしてその銃は文字通りのトリガー、鬼神にとっての運命の岐路となる。
「私たちと貴方の縁はここまでのようですね」
 写し取られた縁切りの力が、鬼神にそのまま跳ね返される。それは運命すら捻じ曲げる力となり、世界の宿敵として結ばれた縁にすら干渉する。
「奥方様に会えるよう祈っております。それでは」
 ごきげんよう。別れの言葉と共に、この場に居合わせた縁すらも断ち切る力が彼我の距離を遠のかせていった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

ライラック・エアルオウルズ
ティルさん(f07995)と
揃いの眸色の水晶ペンを懐に

貴方の記憶にあるのなら、
縁は失われては居ない筈
縁を手繰り結べば良いと、
ひとつ教えてあげねばね

ひと時でも縁が切れる事
想像したくはないけれど
逸れぬ為の目印として、
ふたりの縁を綴りゆこう

魔導書を手に唱えるは、
彼女がくれた友守る術
同じ名した花を降らして
戦場に青く描く舞台は
縁手繰る先、始まりの場所

力を添えて、想い出連ねて
縁解けても再び結べるよう
繋ぐ手は離さぬように、
どうか逸れず傍にいて

僕がひと時忘れたとしても、
“花”が唱えば想い出そう
強く結ぶ縁を感じて、
反して笑みは綻び咲いて

ほら、容易く切れはしない
命巡る先で、きっと貴方も
再び逢えると信じておくれ


ティル・レーヴェ
ライラック殿(f01246)と
懐に揃いの眸色のペンを添わせ

結んだ縁は切れぬのだと
若しもの先も結び直せると
鬼神殿にもそして『妾』にも
信じ紡いでみせたいの

記憶が消えうる若しもは
この身で知っているからこそ
戻れる術を失わない術を

彼が詞紡いでくれた唯一つ
其処に音を添わせて歌としたのは
如何な傷も異常をも癒し
彼護る事を誓った力
妾の想い、願いの形

喩え忘れたとしても
彼の為にと歌い紡いで
鈴鳴る春で導き護って
彼が彼の儘と在れるよう

そうして、ほら
出会いの地
彼の花
逸れず傍にの約束抱いて繋ぐ手も
全て想い出に満ちている

あゝ結び直せる
想い出せる
潤けた藤を綻ばせ
証に彼の名を呼んで

あゝどうか
其方も心安く
巡る命の先
縁辿れますように


 懐にさげた紫水晶のペンは、同じ欠片より生まれたもの。そして、二人の瞳の色を映したもの。
 身に宿す神秘、慮る心の深さ、傷つく人を前にして惑える優しさ。それらを一遍に湛えた色でありながら、ティル・レーヴェの瞳は迷いなく鬼神を見据えていた。
「如何に、大事に紡いだ縁であっても。其方の刀は切ると申すか」
 ティルの目にいま宿る色は敵意と云うには優しく、慈愛と云うには些か険しい。縁切り刀の秘めた神力に幾許かの不安を憶えつつも、その眼差しは怖れの先を確かと見つめる。
「さりとて妾は示したいのじゃ。結んだ縁は切れぬのだと、若しもの先も結び直せると」
 相対する鬼神に、そして自身に。信じ、紡いでみせたいと願っていた。
「嗚呼。貴方の記憶にあるのなら、縁は失われてはいない筈」
 言葉の続きを引き受けるように、ライラック・エアルオウルズが後を継ぐ。
 かの男は、兎角謙遜をしがちな性分だ。先のショコラの想いに触れた折も、自身を下げては衝突を避けた。
 作家のライラックにとって、内なる心と向き合う時間は代えがたい物。だからこれまでそうして、身に余る事はゆるりと躱してきた身であったが。
「縁を手繰り、結べば良いと。ひとつ教えてあげねばね」
 言葉尻を強くし、今この時は強き意志を露わにして立ち向かう。鬼神の握る刀に対し、此方が握るは書物とペンのみ。
 それでも負ける気がしないのだから不思議なものだ――世界の果てでなく自身の胸の内に眠る『未知』に際して、男は静かに笑う。ああ、よもや僕が。本と空想以外の大事なものを、見出そうとは。

 縁切り刀を手ににじり寄る鬼神にも、二人は退く素振りを見せない。
 いや、正直に言えば恐怖はあった。
(「ひと時でも縁が切れる事。想像したくはないけれど」)
 ライラックの手に、自身の名と同じ花の色したペンが握られる。それは、同じ紫水晶より分たれた片割れ。そして、二人が逸れぬ為の道しるべ。
 傍らのティルの手には、もう片方の欠片。ペンの形を手のひらに覚えさせるように、強く願っては握り込む。
 記憶が消えてしまう事の恐ろしさは、ティル自身が知っていた。だから戻れる術を、二人の縁を失わぬ術をと、贈り合った欠片を目印とした。
 鬼神は尚も迫り、二人の仲を引き裂かんと刀を握る。その姿を前に、星座宿す革表紙の魔導書が勢いよく開かれた。
 頁めくる音と共にライラックが唱えるは、ティルの授けてくれた力。
「今、綴ろう。ハッピーエンドの其の先も」
 青い花が散り、幻想の図書館が今ここに現れる。
 ライラックにとって、現実と虚構の境は些細なものだ。イメージの力ひとつあれば越えられる境界。その先から招かれた空想世界の友人たちが、癒しの力もつ心強い味方として二人を包む。
 彼ならではの優しい幻想。その祝福に笑みをこぼし、ティルは歌をうたう。
「歌いて護ろう。この身は、共に――」
 春の萌芽を思わせるように、幻想世界に花が咲く。
 その唄の原型は、傍らの作家の贈り物。ティルの為にと贈られた音なき詩に、ティルが自ら音を添えた。如何な傷も癒し、彼を護る事を誓った願いの力で、ティルは二人の身を包み込む。
 互いに護り、互いを癒し、二人の間に光の糸が結ばれる。縁が解けても再び結べるようにと、撚り合わせた糸は二重螺旋を描く。
 喩え忘れたとしても、鈴鳴る春で。繋ぐ手は、離さぬように。

 ――どうか逸れず、傍にいて。

 鬼神の刀が、刃こぼれの煌めきを残して押し負ける。少しだけ怖くて目を瞑ったティルが瞼を開ければ、彼女の視界の中で作家の目が笑っていた。
「ほら、容易く切れはしない」
 ひと時忘れたとて、花が唱えば想い出すだろうと。彼の目に安堵を覚え、ティルはリラの花――出会いの地と同じ花咲く光景に目を閉じる。
(「あゝ、結び直せる、想い出せる」)
 潤けた藤の瞳を綻ばせ、彼の名を短くよぶ。魔祓いの花が嵐のように舞い、鬼神の姿を覆い隠す。
 二人は強く願う。浄化もたらすその力が、鬼神をただ骸の海に帰すだけではない事を。
(「あゝどうか、其方も心安く」)
 巡る命の先、縁辿れますように――と。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

呉羽・伊織
【腐れ縁】
切れるモンなら寧ろぶった切ってほしーな?
このいけすかない狐との因縁を!
減らず口はどっちだ!
姐サンは寧ろ俺の心を一刀両断しにきてるよネ(遠い目)

兎も角!この呪詛以上に厄介に絡む悪縁はさておき――幸い、近頃は有難くも奇縁にだけは恵まれててな
易々切られる気もなし
まして切れるモノでもなし
(そう思える程に色々と、深く、強く、重ねてきた――良くも悪くも忘れ難い縁の数々の果て、この手の力に打ち克てるだけの心と覚悟にも結び付いた)

闇毒UCで刀持つ腕や足を鈍らせるよう牽制
更にフェイントや残像で撹乱も重ねつつ動作窺い、太刀筋見切れば花明で肉薄

切り払うなら、その心身を此処に縛るものこそを
早く、還ってやんな


花川・小町
【腐れ縁】
もう、そういうものは足掻く程に縒れて縺れて解けなくなっちゃうわよ?
それにうっかり良縁の方を断たれたら――いえ、失礼
そもそも伊織ちゃんはその手の話とは“無縁”だったわね

ふふ
まぁ何にせよ、私もね
切り捨てて忘れ去ってしまうには、あまりに惜しい縁と思う心は同じよ
(嗚呼、本当、見ていて楽しいわ――人の縁が織り成す綾錦の、何と目映きこと)

だから――
剣戟の見切りに努め、誰かに迫る刃は衝撃波で凪ぎ払い阻止
2回攻撃で武器落としも図り、隙あらば同時に一撃

一途な想いは素敵だけれどね
行き過ぎて、踏み外してしまったなら、放ってはおけないわ
海の向こう――片割れの元へ再び道と縁が繋がるように、鎮めて差し上げましょ


佳月・清宵
【腐れ縁】
随分な減らず口だな
まぁ切るに切れねぇ程、面白い程に捻れて絡んじまったもんだからなぁ?

はっ、傑作だ小町!
神刀よか痛烈な切味とは恐れ入る
其も其で切れねぇわな
元々無いもんばかりは如何しようもねぇ!

さて、俺としちゃ忘れたら忘れたで一興だが――否、まぁ切り捨てられちゃあ面白くねぇか
(折角此奴も人間臭く、面白ぇ面構えするようになってきたしなぁ?――とは語らずも、小町と笑い)

UCと残像を気紛れに散らし撹乱フェイント
合間に早業で麻痺毒仕込の暗器も投げ2回攻撃
動作阻害し剣筋見切り――後は図らずとも合うだろう

応、彼の怨念のみを綺麗さっぱり叩き切ってやろうか
俺達と切り結んでねぇで、さっさと縒り戻しに行けよ


 闇と毒を這わせた暗器が、次々と乱れ飛ぶ。手口の仄暗さと対照的にに、呉羽・伊織の飛ばす啖呵は相も変わらず、軽い。
「切れるモンなら寧ろぶった切ってほしーな? 主にこのいけすかない狐との因縁を!」
 妖狐の男を毛嫌いするような伊織の口ぶりは、ここに来てますますのものとなり。軽く喧嘩を売られた男は、ふんと鼻で笑って返事を寄越す。
「随分な減らず口だな」
「減らず口はどっちだ!」
 呆れたような佳月・清宵の言葉にも、伊織は引き下がる事を知らない。清宵が麻痺毒仕込みで斬りつけた敵の傷に、更に毒を重ねるようにして張り合っていく。
「もう、そういうものは足掻く程に縒れて縺れて解けなくなっちゃうわよ?」
 軽く二人――というよりまずは伊織を窘めるように、花川・小町はからからと笑いをこぼす。白粉と口紅で彩る下で、隠し切れぬ豪胆さが振るう薙刀より滲み出る。
 剣戟を見切り、清宵に迫る刃を弾く。返す切先で大きく胴を薙ぎ、神気に満ちた刃で凪をもたらすように鎮めていく。
「まぁ切るに切れねぇ程、面白い程に捻れて絡んじまったもんだからなぁ?」
 肩をすくめる清宵は、片手間に喚ぶように手をかざしては幻惑の狐火をもたらす。敵に斬られる瞬間、さっと浮かぶ火の明るさが増したかと思えば、鬼神の目には残像が焼けつき手に残るは霞を斬った錯覚のみ。
 誤魔化し、斬られぬ事に慣れた妖狐の男の戦いぶりに頼もしさを覚えつつも、小町はもう一人の方へと目を向ける。
「それにうっかり良縁の方を断たれたら――いえ」
 そこまで言いかけてそ、と目を背ける仕草。思わず触れてはならぬ腫れ物に触れたかのように、小町は急に配慮を見せ。なぜそこで止めるンすかと、流れを察して伊織が目の玉をひん剥くのが見えた。
「失礼。そもそも伊織ちゃんはその手の話とは“無縁”だったわね」
「姐サンは寧ろ俺の心を一刀両断しにきてるよネ!?」
 がっくり項垂れる伊織の横で、たまらず清宵がぶはっと肺の空気を吐き出す。
「はっ、傑作だ小町! 神刀よか痛烈な切味とは恐れ入る」
 くつくつと引きずるように笑いながら、清宵は暗器を振るう手を止めない。苦無を投げ、迫る刀閃をギリギリで躱し。唯一避け損ねた艶のある黒髪の先だけが、風のない倉庫にふわりと舞う。
「其も其で切れねぇわな。元々無いもんばかりは如何しようもねぇ!」
 嘲るような言葉を述べつつ、至近距離で戦う清宵と伊織の刃がかち合う事はない。暗器を投じ、伊織が脚を。清宵が腕を。示し合わせたような動きで鬼神の動きを鈍らせ、封じ込めていく。
 動きを鈍らせた甲斐あってか、鬼神の太刀筋は随分と見切りやすくなった。多少手傷を負うのは避けられなかったが、致命的な刃を避けて二人が二手に分かれれば、その先で待ち受ける小町が薙刀を振るう。
「兎も角! この呪詛以上に厄介に絡む悪縁はさておき――幸い近頃、有難くも奇縁にだけは恵まれててな」
 易々切られる気も、ましてや切れるモノでもない。そう語る伊織はこの関係に満更でもない表情を見せる。
 振り返るは、皆と過ごしたこれまでの時間。言葉を交わし、喧嘩をし。忘れようのない縁の結ばれたおかげで、この手の呪詛めいた力にも打ち克てる覚悟が備わったものだから、人生何が役立つか分かったものでもない、と。
 彼の言葉にふふ、と笑うような息が小町の口から漏れた。
「まぁ何にせよ、私もね」
 息をするように薙刀で斬り払い、小町は言葉を続ける。
「切り捨てて忘れ去ってしまうには、あまりに惜しいと思う心は同じよ」
 単に言葉のやりとりの愉快さだけではない。軽口を叩きながら、こんなにも息が合うなんて。この者たちは見ていて飽きず、小町の胸に彩りと心模様を運んできてくれる。嗚呼、人の縁が織り成す綾錦の何と目映きこと、と。
「さて、俺としちゃ忘れたら忘れたで一興だが――」
「応、忘れろ忘れろ!」
 途中入った伊織の茶々も意に介せず、清宵は先を紡ぐ。
「否。くれてやっても良いんだが、他人に切り捨てられちゃあ面白くねぇか」
 事を成すなら、己の手で。面すら見せぬ鬼神に切り捨てられては味気ない。それに、と心の中でつけ加え、清宵は伊織を見る。
(「折角此奴も人間臭く、面白ぇ面構えするようになってきたしなぁ?」)
 近頃はこの男の百面相を見るのが愉しみで、まだその機会を奪われるには惜しい。偶々近い事を思っていたのか。小町と目が合えば、彼女もまた笑っていた。唯の流浪人であった頃に比べ、伊織の見せる表情の何と人がましい事か。
 さしもの鬼神もこれまでの攻防に疲弊が見え、勝敗を決しようと急くのが見えた。迫りくる縁切り刀の太刀筋は、横薙ぎ一閃。見え透いて、それでいて鋭い踏み込みのせいで躱しづらい神速の太刀に、三人は恐れず飛び込んでいく。
「切り払うなら、その心身を此処に縛るものこそだろってナ」
 まず伊織が真下へ逃れた。刀に斬られたのは残像。低く姿勢を屈めた時には、既に暗器を幾つも放り。
「応。彼の怨念のみを綺麗さっぱり叩き切ってやろうか」
 清宵はといえば、大きく避けもせず剣筋のみを躱していた。狐火を相手の目に放ちて目くらましとし、更に小町が薙刀を斜めに突けば、弾かれて太刀の軌道は大きく頭上へと逸れる。
「一途な想いは素敵だけれどね。行き過ぎて踏み外してしまったなら、放ってはおけないわ」
 がら空きとなった鬼神の胴に、残る狐火と暗器が吸い込まれる。そして振るわれるは、神気をもたらし御霊を鎮める凪ぎの一撃。
「俺達と切り結んでねぇで、さっさと縒り戻しに行けよ」
「早く、還ってやんな」
 海の向こう――片割れの元へ再び、道と縁が繋がるように。胴を断ち割る小町の一閃が迸り、彷徨える鬼神を遠く骸の海へと送り帰していった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴


第3章 日常 『君を呼ぶ音に誘われて』

POW重厚な音や、熱血的な色で選ぶか
SPDリズム感のある音、涼しげな色がいい
WIZ澄み通った音を、柔らかな色を探す
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 海沿いの村に静けさが戻る。
 打ち寄せる規則正しい大波小波のリズムの他に、聞こえるは吹き渡る風の音のみ。
 ――いや、かすかに。

 りぃん。りぃ……ん。
 遠くから聞こえる、涼やかな音。
 風鈴市が、まもなく始まろうとしているのだ。

 戦いからしばしの後。
 市は何事もなかったかのように開かれるだろう。
 鈴の音は、さっきまでの騒動に素知らぬふりして響き渡る。
 きっと、だから心地いいのだ。

 小さな神社の境内には、所狭しとテントが並ぶ。
 祭りでよくある食べ物の屋台からは、鉄板でじゅうと焼かれた香りが漂い。
 そして何より、軒先に、店先の台に。
 ずらりと並べられた風鈴たちは、あなたの心を惹き付けるだろう。

 石の音。鉄の音。透き通った硝子の鈴には、鮮やかな花火や波模様。
 絵付けの体験工房も今なら空いていて、腰かけ心行くまで行えるだろう。
 何をするも自由だ。市は、すべての人に開かれている。

 紡がれ、護られた縁を祝うように。
 風鈴に描かれた硝子の水面を、夫婦の金魚が泳いでいた。

●三章プレイング受付期間
 7/19(日)朝 8:31~
宝海院・棗
屋台色々あって楽しそうだなー。

綺麗な風鈴の音で癒されつつ、屋台でおいしい食べ物を探してみよう!

たこ焼きでしょ、モダン焼きでしょ、綿飴でしょ・・・!あとはかき氷やチョコバナナ、カチ割りドリンクも!

あ、この風鈴、結構きれいじゃない?(カラフルな星の柄のもの)

お参りもしていこうかなー


 立ち並ぶ屋台。看板に描かれた目を引くポップな色合いの文字に、翠の瞳が左右に揺れる。
「色々あって楽しそうだなー」
 風鈴市が開かれると聞き、駆けつけた宝海院・棗(もち・ぷに・とろり。・f02014)。甘い物や味の濃いものに目がない彼女にとって、屋台の食べ物は食欲そそるものばかりだ。
 澄みきった風鈴の音に耳をすませば、胸の奥の癒される心地。そして屋台から漂う香りに誘われ、棗はおいしいものを探して練り歩く。

 まず最初に目に入ったのはたこ焼き。丸いくぼみの鉄板の上に生地のタネがじゅっと仕込まれ、続いて手際よく放り込まれるタコの切り身。つついて返す熟練の技は目にも止まらぬ速さで、足を止めた何人かの参拝客が思わず見入っていた。
「わ、こうやって作るんだねー」
 屋台の醍醐味は味のみにあらず。目の前でパフォーマンスを兼ねお披露目される調理過程は、目も鼻も刺激して食欲をそそる。
 やがて棗の元へやってきた舟皿の上には、ソース香ばしく鰹節おどるアツアツのたこ焼きたち。ふわふわとろりと焼き立ての生地に包まれたタコは、噛めば噛むほどに弾力を感じ、ソースや小麦粉と絡んで口の中に濃厚クリーミーな味わいを広げていく。
「おいしーい!」
 ぷにぷにひやりとしたほっぺを押さえ、こぼれ落ちそうな笑顔を浮かべる。
 海のそばで食べる、たこ焼きの味。すっかり気を良くした棗は、あれもこれもと屋台フードを購入していく。
 モダン焼き、綿飴、かき氷にチョコバナナ。屋台を全制覇しかねない勢いで手にした棗は、かち割りドリンクの屋台に差し掛かる。
「これは……氷に色がついてるの?」
 目を引いたのは、色付きの氷が入ったカップ。それも一色でなく、カラフルなアソートグミのように様々な色の氷が混ざっている。
「色だけじゃねえさ! ほうら見てな、こうしてソーダを注ぐとな」
 しゅわしゅわと弾ける炭酸水の中で、色が溶けだし混ざり合う。トロピカルな南国を思わせるドリンクは、棗の関心をひくに十分だった。
「わ、きれーい!」
 ドリンク片手に綿飴を頬張りながら通りかかったところで、耳元に再び風鈴の音が届く。手作り風鈴を売るその店で、ひと際彩り豊かなものが目に留まる。
「あ……あの風鈴、結構きれいじゃない?」
 自身の髪色のようにカラフルな星を散りばめたそれを、購入して大事にカバンにしまい込む。きっと家に帰ってからも、棗の目を、耳を楽しませてくれる事だろう。
「せっかくだし、お参りもしていこうかなー」
 ベンチで持っていたものを全部食べ終え、戦利品を手にした棗は神社の拝殿へと向かう。軽く小躍りするようにステップを踏み、紫の髪の少女の姿が鳥居の向こうへと消えていった。
大成功 🔵🔵🔵

ピオニー・アルムガルト
いやー、いっぱい動いたしお腹が減っちゃったわ!まずは色気より食い気、食べ物の屋台を端から端まで巡っちゃおうかしら!
風鈴の絵付けも出来るのね!せっかくだしホワイトと挑戦しましょう!私はホワイトに日頃の感謝を込めてあげるために名前の白い薔薇(アイスバーグ)を描こうと思うのだけど…やっぱり難しいわね!技術が追い付かない部分は気持ちでカバーよ!
お祭りの賑わいに軽やかな風鈴の音色。人が笑顔になれる世界は良いわね!


ホワイト・アイスバーグ
ピオニーお嬢様と同行いたします。
先ずは屋台巡りですが普段通りお嬢様の後に着いていきお世話をしたいと思います。食べ物でお口を汚されたり、動き回って浴衣を着崩されたりしますので、私としては目が離せません。
絵付けはお嬢様の花、芍薬(ピオニー)を描かせていただきます。あげる事もあり下手な絵は描けません(静かな闘志)。
風鈴の音で涼をとるとういう先人達の感性は素敵なものです。魔除けも用いられていたと聞きましたし、この音色が私達猟兵をここまで呼び寄せたのかもしれませんね。


 夜を待たず、紅白の布地に花火が咲く。着替えた浴衣の袖をふり、ピオニー・アルムガルトは屋台の合間を大股で歩く。
「いやー、いっぱい動いたしお腹が減っちゃったわ!」
 まずは色気より食い気と、食べ物の屋台を隅々まで巡る事にしたピオニー。元気いっぱいな彼女が人にぶつからぬ事を祈りながら、すぐ後ろをホワイト・アイスバーグが付き人として歩む。
「私は普段通りお嬢様の後についていきますね」
 屋台巡りには賛成しつつも、ホワイトの心は別のところにあり。
(「食べ物でお口を汚されたり、動き回って浴衣を着崩されたり目が離せませんから」)
 何せこのお嬢様、元気すぎるのが玉に瑕。好奇心を表すように人狼の尻尾がわずか揺れれば、数秒後にはもう駆けよっているのだから追う側の気苦労は計り知れない。
 はたして、ホワイトの懸念は現実のものとなった。
 わた飴にりんご飴、両手に持って頬張るピオニーは着る物の事など気にもかけない。浴衣の帯はずれ、戦利品を提げたために襟元ははだけ、見守る人の心地をはらはらさせてしまうのだ。
「お嬢様、浴衣が汚れています」
「あらやだ、りんごのスタンプがついちゃったわ!」
 からからと笑うピオニーをよそに、ホワイトは浴衣の汚れを水で湿した布で即座にふき取る。ひとまずこうしておけば、後で汚れを落とす時にもどうにかなるだろう。
「風鈴の絵付けも出来るのね! せっかくだしホワイト、挑戦してかない?」
「ええ。お嬢様がお望みとあれば」
 二人で体験工房の茣蓙をしいたベンチに腰掛ければ、そこに並ぶのは色とりどりの顔料。ピオニーが選ぶのは白のアクリル絵の具。それを少量ずつ筆に取り、下書きや裏紙もなしに白の薔薇を描いていく。
(「おっきく描くわよ! 日頃の感謝を込めてみせるんだから」)
 アイスバーグ――原名はその名に白雪姫の意味を持つという、孤高の薔薇。やわらかく嫋やかに咲く白一色を、綺麗に描こうとするのだが。
 哀しいかな、ピオニーのタッチは繊細とは真逆の元気なもの。筆の先で描き足すたびに、ガラスの上の白薔薇は野ばらのように太く、たくましく育っていく。
「やっぱり難しいわね! でも、技術が追いつかない部分は気持ちでカバーよ!」
 一方のホワイトは、そんなピオニーの声も聞こえぬほどに集中を見せており。
 描くのはやはり、芍薬の花。愛と忠誠を捧げるお嬢様の花とあらば、手を抜く事など許されるはずもなく。
 静かな闘志を燃やし、風に揺れる芍薬を描き上げた頃には、隣のピオニーは風に素足をあそばせており。
「あ、終わったのね? ホワイトったら、いくら声かけても気づかないんだから!」
「それは……失礼いたしました」
 新たに買ってきたかき氷を食べる二人の横。鮮やかに咲く薄紅の花の隣に、ざっくばらんに描かれた白薔薇が並ぶ。
 あたりに響くは、耳心地のいい鈴の音。余韻を残して長く響くその音は、邪気も暑さも遠く彼方へと祓ってくれる気がした。
「風鈴の音で涼をとる、という先人たちの感性は素敵なものですね」
 ふと、ホワイトが呟く。首尾よくいけばお祭り観光つき――そんな言葉につられて来たが、この海辺の村とホワイトたち猟兵を結び付けたものは何だったのか、と思いを馳せながら。
「古くは魔除けにも用いられていたと聞きました。もしかするとこの音色が、私達猟兵を呼び寄せたのかもしれませんね」
 だったら面白いわね、と弾んだ声が返る。細かい事を気にしないピオニーが選ぶのはいつだって、元気が出る物の見方で。
「お祭りの賑わいに軽やかな風鈴の音色。うーん、人が笑顔になれる世界って良いわね!」
 夏空に向日葵が、太陽を求めるように。うんと伸びをするピオニーの頭上で、透明な水面を泳ぐ金魚がぱしゃりと風に跳ねた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

オズ・ケストナー
清史郎(f00502)と

チョコバナナもぐもぐ
きれいな音っ
立ち止まる

絵付けと聞いたらわたわた食べ切り
セイシロウ、やろうっ
ふうりんに絵をかくの、はじめて

なにかこう?

セイシロウとはじめてたくさんおしゃべりしたのは
バレンタインだったな
げきからのおまんじゅう食べて
げんきいっぱいのわんことあそんで
とってもたのしかった

でーきたっ
幼い拙い絵で
わんことおまんじゅう
栞には、一緒に見た空色の花を描く

できた?
わあ、きれいっ

わたしのはこれっ
セイシロウにあげるね
いっしょのおもいでだもの

え、いいの?
ありがとうっ
わたしね、たんぽぽだいすき
さくらもいっしょだと、セイシロウがいてくれるみたい
うれしいな

よーし、つぎはあまいものだっ


筧・清史郎
オズ(f01136)と

一等甘いふわふわわたあめを手に
ああ、様々な色や形や音
目でも耳でも楽しめるな

絵付けか、良いな
ふふ、慌てて食べなくても大丈夫だぞ、オズ(微笑み
俺も風鈴には初めてだな

何を描くか暫し悩むが
オズの蒲公英の歌を思い返し
ふむ、では風鈴をタンポポ畑にしてみようか(器用で絵心あるが画風渋め
だが少し寂しい気が、と
描き添えたのは、満開桜と桜花弁

おお、オズの風鈴はわんこさんと甘味か、愛らしいな
では俺も、わんこさんと空色の花を栞に
(花とやけにリアルで渋い犬を描き

有難う、オズ
一緒の思い出か、とても嬉しい
では俺の風鈴はオズに
交換こだな(微笑み

またひとつ、良き思い出が増えたな
ふふ、甘味ならいくらでも


 昼下がりの市。空にはふんわり齧りつきたくなるような綿雲が浮かぶ。口いっぱいにチョコバナナを頬張っていたオズ・ケストナーは、聞こえてきた鈴の音に足を止めた。
「きれいな音っ」
 はんなりと柔和に微笑みながら、ふわふわのわた飴を手にした筧・清史郎もまた耳をすませる。
「ああ、様々な色や形、音。目でも耳でも楽しめるな」
 硯や筆と同じく、風鈴は古くから暮らしの光景として愛されてきたもの。暑気をはらう役目は毎年のつとめ――その繊細な音色が狂わぬよう、扱う者は敬愛をこめつつ注意を払う。風で触れて欠けぬよう合間をあけ、大事に軒に飾られたその姿に感じ入るように、清史郎の目が細められた。
 ふと視線を脇にやれば、軒先に出ている看板に目がとまった。
「ふむ。絵付けか、良いな」
 頭に「!」マークを浮かべ、わたわたと慌てながらチョコバナナを食べきるオズ。
「セイシロウ、やろうっ。わたしふうりんに絵をかくの、やったことないっ」
 自分だけの風鈴を手にできるまたとない機会。オズの心はすでに、風鈴へのお絵かきの事で占められていて。
 口端にチョコの色を塗りたくりながら食べるオズに、慌てて食べなくても大丈夫だぞと清史郎は微笑み。
「俺も風鈴に絵付けをするのは初めてだな」
 さて何を描こうかと考えを巡らせながら、清史郎はオズが茶色のリップを拭い終えるまで待つのだった。

 筆を手にしたオズが思い返すのは、二人はじめて沢山のことばを交わした日のこと。一年で最もカカオの香りただよう日に、二人が食べたものは。
(「げきからのおまんじゅう食べて、げんきいっぱいのわんことあそんだっけ」)
 冒険心あふれる思い出は、二人の間でかわした暗号。甘いばかりでない記憶の数々も、いまとなっては輝きに満ちている。
(「とってもたのしかったっ」)
 一方の清史郎は、風鈴の上に描くべきものを見定めるべく、絵具のついていない筆を悩みながら滑らせる。二人を繋ぐものは数ある中で、心躍らせるものは何か、と。
 不意に、隣から鼻歌が聞こえてきた。
 ――てくてく 君と歩く。
 それは、先ほども聞こえたオズの蒲公英のマーチ。うっかり声に出てるとは知らず、少年は楽しそうに歌を口ずさむ。知らずのうちに、清史郎は笑みをこぼしていた。戦いの最中、この優しい歌にどれほど勇気づけられたか、と。
(「では、風鈴をタンポポ畑にしてみようか」)
 絵筆でするすると器用に描くが、清史郎の描く絵のタッチは渋め。水墨画のように風流なタンポポたちが、透明なガラスの野原で風に揺れる。
(「上手く描けたが、どこか寂しい気がするな」)
 考える事また暫し。ふ、と何かを思いつき微笑む清史郎が描き添えたのは、満開の桜と風に舞う花びら。
 最後の線を描き終えた時、できたっと隣でも声があがった。
「セイシロウ、みてっ」
 わたしのはこれ、と手渡された風鈴には、縁いっぱいまで描かれたわんことおまんじゅうの絵。短冊の栞にはいつか一緒に見た空色の花が、元気いっぱいに咲いていた。
「おお、オズの風鈴はわんこさんと甘味か。愛らしいな」
 では俺も、と無地だった栞に倣ってわんこさんと空色の花を描けば、覗き込むオズの表情がすごい、きれいっと華やぐ。
「これ、セイシロウにあげるね。いっしょのおもいでだもの」
 そういってオズが自身の風鈴を手渡せば、有難うと受け取った清史郎が共に過ごした思い出を抱きしめるように腕に抱える。
「では、俺の風鈴はオズに。交換こだな」
「え、いいの? ありがとうっ」
 描かれた花とこめられた気持ちに目を輝かせ、オズの口元が喜びに彩られてほころぶ。
「わたしね、たんぽぽだいすき。さくらもいっしょだと、セイシロウがいてくれるみたい」
 ともに咲く。ただそれだけの事が嬉しくて、オズは風鈴を抱いたままその場で軽く踊ってみせて。
「またひとつ、良き思い出が増えたな」
「ね、つぎはどこいこう」
 笑顔の連鎖は、やむことなく。笑い合える時間は、二人が願うならいくらでも。
「よーし、つぎはあまいものだっ」
「ふふ、甘味ならいくらでも」
 再び屋台へと繰り出す二人を、並ぶ風鈴たちが扇風機の風に揺られ、手を振るように見送っていた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

フローライト・ルチレイテッド
アドリブ連携歓迎でーす。
境内の屋台をひとしきり回って一息ついたら、ちょっと高めの場所に登って夜風にあたりましょー。
軽くギターを爪弾きながら花火を見上げましょう。

僕たちに出来るのは、残酷なこの世界が 少しだけ、優しくなるよう。
悲しみ消えぬ世界も 希望の花は咲くはずと。
そう願いながら立ち向かい、戦い抜くコトくらいですが…
でもどうか。あの人がまた愛した人と出会えますように。

ぼくは夢見ることはしても、祈ることはしないけれど。
それでもどうか。あの人のように、悲しい夢に溺れながらさまよう人達が、少しでも減りますようにと、思わずには居られません。


 石段を登った先の小高い丘。そこでは行き交う人も殆どおらず、古びた分社の賽銭箱が口を開けて青空を仰ぐのみ。
 市の賑わいから離れ、白い綿雲と夏の空模様を眺めるのにうってつけの場所に、フローライト・ルチレイテッドは腰かけていた。
「ここまで来るとさすがに静かですねー」
 境内の屋台をひとしきり回って腹ごしらえもしてみたが、フローライトの心を満たすのはやはり音楽だ。背中から降ろしたギターを軽く爪弾き、吹き渡る潮風にメロディを乗せる。
 夏空は春の青よりもまぶしく色薄く、遠く海の上には入道雲が浮かぶ。噂に聞くには、夜には小規模な花火も上がるという。海辺の小さな村で上がる花火はどんな景色か。きっと、この高台からもよく見えるのだろう。
「……僕たちに出来るのは、残酷なこの世界が」
 ――少しだけ、優しくなるよう。
 途中から歌のフレーズを口ずさみ、ギターの弦弾く音が風に溶けていく。
「悲しみ消えぬ世界も、希望の花は咲くはず――と。そう願いながら立ち向かい、戦い抜くコトくらいですが」
 現夢、そう名付けたナンバーは彼の最初のアルバム「新世界」に収録されたもの。表題の表す新天地に、彼の鬼神は至れたのだろうか。
 先の戦いを振り返り、愛しい妻を探し求めてついぞ会えなかった過去の残滓へと思いを馳せる。
「でも、どうかあの人が。また愛した人と出会えますように」
 続きを未だない即興の歌で埋めながら、フローライトは遠く海の向こうへも届くように歌声を紡ぐ。
 ぼくは夢見る事はしても、祈ることはしないけれど。
「どうか、あの人のように。悲しい夢に溺れながら、さまよう人達が」
 少しでも減りますように――少年の願いを乗せるように、カモメの群れが遠く空の向こうへと飛び立っていった。
大成功 🔵🔵🔵

ティル・レーヴェ
ライラック殿(f01246)と

切れぬ縁を知った先
想い出重ねゆける喜び胸に
満ちる涼やかな音色へ耳傾けて
決して逸れぬとも知ったけど
手は繋いでいてもいい?

数多の風鈴が
彩、音と重なりゆくは
耳にも眸にも幻想めいて
不思議な世界へと導かれるよう

微睡めいた視線を向けるも
ふわり漂う香りにはっとして
ライラック殿!
これはあれ!たこ焼きの匂い!
空腹擽るソースの香に彼の手を引き
あ!りんご飴もある!
鮮やかな赤にも眸煌く
其方は何が食べたい?

今日という日の想い出に
涼やかな音も持ち帰りたいのぅ
誘い響く鈴の群れ
けれど選ぶ彩りは決めている

空に浮かぶ柔らかな雲
恒とする眸色の他に
妾は其処にも其方の姿を見たから
理由?其れはまたお話するよ


ライラック・エアルオウルズ
ティルさん(f07995)と

切れぬ縁を確信してか
何処か爪先はかろやかに
切れず続いた想い出と
共に聞く鈴音が嬉しくて

美しい音彩に聞き入れば、
夢見心地ともなるけれど
不思議と親しみ抱くのは
連なり揺れる硝子たちが
貴方の花と良く似てるから

合う視線が面映ゆくも
他へ向けば、つい笑って
食前の甘味となったけれど、
未だ空いた様子で何よりだ
では、僕は蛸焼きと林檎飴を
――腹の虫が鳴きそうだもの

ああ。ひとつ、連れて帰ろう
鈴鳴る度に今日を想えば、
夏の日も愛おしく感じるさ
それに、僕も形は決めている

僕が柔らかな雲である、
理由は想像付かないなあ
明かされるのを楽しみに
鈴蘭と似た形の子は、
秘めても知れるだろうから
見えないよう、隠して


 縁は異なもの、味なもの。紆余曲折を経たその後に、より強く合わさる糸の、摩訶不思議さよ。
「えへへ、ライラック殿。風鈴市じゃ! この時を楽しみにしておったよ」
 想い出をまた重ねてゆける喜びを胸に、ティル・レーヴェの足取りは地を確りと踏みしめる。切れぬ縁の、なんと心強きこと。先の戦いと打って変わって、いまや言葉交わしながら涼やかな音色に耳を傾ける余裕すら生まれていた。
「おや。ティルさん、くれぐれも僕を置いて往かないでおくれよ」
 意気揚々と歩むティルの様子に、ライラック・エアルオウルズはそう冗談めかす。隣を歩む彼もまた、途切れず続いた想い出や共に鈴の音を聞ける事が嬉しく、踏み出すつま先は何処か軽やかな自覚があった。
「ねえ、ライラック殿。もう決して逸れぬと知ってはおるのじゃが」
 一度立ち止まり、ライラックの顔を仰ぎ見る。なあに、ティルさん、と頭上から甘い声が降るのを確かめ、小さな唇でこう切り出す。
「……手は、繋いでいてもいい?」
 期待を寄せる眸は、潤けたまま。かわいい我儘を、風に溶かした。

 屋台の合間を歩く合間にも、ほうぼうから聞こえる鈴の音。美しい音色が重なり合い、初夏の彩りと共に耳元へ届く。
 ふたり、夢見心地。耳にも眸にも幻想めいて映る様はどこか現実離れした情景にも思え、不思議な世界へ導かれる錯覚すら抱かせる。知らぬ筈のこの景色に、不思議と親しみを抱くのは何故かと思うも、ライラックはすぐに理由を見出す。
(「嗚呼……成程。此れは、やれ、無理もないな」)
 軒に連なり揺れる硝子たちは、まるで貴方の――。
 隣に目を向ければ、鈴蘭の花宿す彼女が微睡むような瞳でこちらを覗いていた。
 交わる視線。鈴の音は遠く、代わりに鼓動がとくんと鳴る。瞳逸らせず、互いの紫に吸い込まれそうになる――が。
「……! ライラック殿!」
 ふわり、鼻をくすぐる香りにはっとしたティルが声をあげ、心は現へと引き戻される。何かと視線の先を問えば、言葉を待たずともその正体は分かった。
「これはあれ! たこ焼きの匂い!」
 食欲をくすぐるソースの匂い。瞬時にそちらを向く正直な心につい笑いつつも、ライラックは漂う香りに内心感謝を告げる。見つめ合う時間は面映ゆく、もう少しで顔に出るところだったのだ、と。
「思わぬ形で食前の甘味となったけれど、未だ空いた様で何よりだ」
 手を引かれて向かう先は、境内に立ち並ぶ屋台のテント。ヨーヨー釣りにお面の屋台を合間に挟み、残る屋台はみな美味しそうな食べ物が並ぶ。
「あ! りんご飴もある!」
 鮮やかな赤にも眸は煌めき、ティルはライラックへと尋ねる。
「其方は何が食べたい?」
「では、僕も蛸焼きと林檎飴を」
 腹の虫が鳴く前にと二人分のたこ焼きを買い、片方はソース、もう片方は葱香るポン酢のものに。先に林檎飴を頬張るティルに隠れ、ライラックは店員に何かを言付ける。花盛る乙女の手前、青海苔を省いてもらった事は彼と店員のみぞ知り。
 腹を膨らして再び歩き出せば、澄み渡る音色がいよいよ近くなる。
「今日という日の想い出に、涼やかな音も持ち帰りたいのぅ」
「ああ。ひとつ、連れて帰ろう」
 鈴鳴る度に今日の日を思い出せば、夏の日も愛おしく感じるだろう、と。誘うように響く風鈴はどれも魅力的だが、互いに選ぶものは決めていた。
 ティルが選んだ風鈴には、空に浮かぶ柔らかな雲が描かれる。聞けば、リラの花思わせる眸色の他に、柔らかな雲にもライラックの姿を見たのだという。
「僕が柔らかな雲、と……其れは、何故だい?」
 問われれば、ティルは柔らかく微笑んで。
「理由? 其れはまたお話するよ」
 白く柔らかな雲がライラックを思わす理由の明かされる日を楽しみにしつつ、作家の男は後ろ手に風鈴を隠し、鞄の中へとしまい込む。
(「嗚呼。僕はほんとうに、野暮な男だ」)
 楽し気に語る彼女の言葉に、頷き耳を傾けながら想いを隠す。鈴蘭と似た形の、この子を選んだ理由など。胸の内に秘めても、きっと知れてしまうだろうから――と。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

呉羽・伊織
【腐れ縁】
さてシゴトも済んだし解散で良いな!
オレは無縁じゃないコトを証明してくるから今に見…
姐サン、こんな時だけそんな顔してもオレはもう騙されないぞ!
いやまぁ二人で遊ぶなら吝かじゃないヨ?(わぁ無視☆)
でも折角の綺麗な風鈴(と浴衣美人!)達を前に、そこの狐の面なんて拝みたくもないだろ!
しかも口煩く無粋な不協和音まで放つし?
…まって姐サン嬉しいケド嬉しくないワ、ご無体な~!

(気付けば案の定両手が戦利品で塞がり)
あ~…姐サン?オレ手一杯なんでソレ一口食べさせ…喧しいぞ邪魔者、アンタはそこの激辛唐揚でも食ってホント口塞いでろ

…(まじまじと風鈴と見つめ合い)
いや可愛いケド、オレを何だと思ってんの!?


花川・小町
【腐れ縁】
ちょっと、愉しい時間はこれからでしょう?
それに私(の荷物持ちを手伝う大役)というものがありながら、目移りに行こうなんて酷いわ
(悲しげに俯き、続け様の言葉はさらりと流し)
もう、拝むならまずは何にしてもお社からよ
ほら、貴方も大人しくさえしてれば絵にはなるんだから、観念して良い子についてらっしゃい(逃がさぬ構えで伊織ちゃんの腕捕らえ)

(参拝後は早速屋台を巡りに巡り)
あら何か言った?(上機嫌でたこ焼を――自分の口に運びきり、あっさりと平らげて微笑み)
はいはい、二人とも仲良く大人しくね?

――ええ、もう心に決まったわ
私はあの大輪の花に彩られて高鳴る子を
伊織ちゃんは向こうのひよこ型なんて如何?
ふふ


佳月・清宵
【腐れ縁】
本当にてめぇは何しに此処に来てんだよ
証明どころかまた一刀両断されんのが目に見えてるってのに、熟懲りねぇ奴だな――序でにてめぇら、さっきから本音も全部顔に書いてあんぞ
然し平和な市に無事漕ぎ着けたってのに、(振られに振られ)硝子も斯くやという玉砕を見せようとは随分な趣味だ
――俺は打ち拉がれるてめぇの面を悠々眺めるも一興だがな?
其方こそ無駄吠えすんなよ

(気儘に風鈴の彩や音を楽しみつつ漫ろ歩き)
食い気序でにまだ食い下がるか、色々諦めろよ
黙って細波や風鈴に耳を傾けてりゃ良いものを、なぁ?

ところで小町、肝心の品は決まったか
なら俺は敢えて飾気無い鉄を
――“可愛い弟分”殿はその横の亀柄も良かろうよ!


 喧々囂々と、言い合う声。祭りともなれば喧嘩っ早い人が集まるのも世の常であるが、この者達はどうも違うらしい。
 聞こえてくる声に耳を傾ければ、大方の事情は見て取れた。
「さてシゴトも済んだし、解散で良いな!」
 犬猿の仲たる男と離れられて清々するとばかり、呉羽・伊織は背を向ける。元の木阿弥とはよく言ったもので、戦いの最中に見せた絆も平常運行はこの通り。ある意味それが平和の証、なのだろう。
「ちょっと、愉しい時間はこれからでしょう?」
 三人組を一人抜けようとする伊織に、花川・小町が制止の声を呼び掛けるも、伊織はその手には乗らぬと首を振る。
「いーや、この後どんな目に合うか大体知ってるからな! 兎も角、オレは無縁じゃないコトを証明してくるから今に見……」
「そんな。私(の荷物持ちを手伝う大役)というものがありながら、目移りに行こうなんて……酷いわ」
 浴衣の袖で顔を隠し、悲しげに俯く様は絵になっている……が、合間に何か聞き捨てならぬ本音が聞こえた気がして、伊織はますます口を尖らせる。
「姐サン、こんな時だけそんな顔してもオレはもう騙されないぞ!」
 なお古今東西の世を見渡してみても、このように宣うのは既に何度も騙された男ばかりである。
「本当にてめぇは何しに此処に来てんだよ」
 好いた惚れたの面倒事には我関せずと、佳月・清宵は切り捨てるように呟くが、伊織は黙ってろと過熱するばかり。
「いやまぁ、二人で遊ぶなら吝かじゃないヨ? でも折角の綺麗な風鈴(と浴衣美人!)達を前に、そこの狐の面なんて拝みたくもないだろ!」
 小町に向けてそう抗議するのだが、この女傑、微動だにせず。そよ風すら吹かなかった事にして押し通す彼女に「わぁ無視☆」と伊織のか細い悲鳴があがる。
「証明どころかまた一刀両断されんのが目に見えてるってのに、熟懲りねぇ奴だな……序でにてめぇら、さっきから本音も全部顔に書いてあんぞ」
 別に本当に口にしていたわけではないとはいえ。小町は伊織を引き留めるフリして眼差しは荷物持つその腕に、伊織は伊織で風鈴と言いつつ小町の艶姿を見ているものだから、隠す気すらないのである。
「然し平和な市に無事漕ぎ着けたってのに、硝子も斯くやという玉砕を見せようとは随分な趣味だ」
「はいはい、さっきから口煩く無粋な不協和音どうも!?」
「もう、拝むならまずは何にしてもお社からよ。ほら、貴方も大人しくさえしてれば絵にはなるんだから、観念して良い子についてらっしゃい」
 伊織の視線を躱す序でと、小町はがっちり逃がさぬよう伊織の腕をひっ捕らえる。傍から見れば仲良く腕組むように見せかけ、その実、袖で隠した部分では腕ひしぎよろしく関節をがっちり固めており。
「……まって姐サン、嬉しいケド嬉しくないワ、ご無体な~!」
 がっちりと捕らえられた伊織の背に、清宵が声をかける。
「俺は打ち拉がれるてめぇの面を悠々眺めるも一興だがな?」
 ぐるると獣めいた声漏らす伊織に無駄吠えすんなよと言い捨て、妖狐の男は小町の後ろ――伊織の醜態が一番見える位置へと伴うのだった。

 参拝を終えて屋台へ繰り出せば、伊織の両の手は案の定荷物で塞がった。
「いや、この量何サ!? 常識ってモンを考えとくれヨ!」
 ベビーカステラなどの可愛いものから射的で得た特等の景品ぬいぐるみ、小町の持てる豪運で引き当てたゲーム機に、景品が切れたからとなぜか渡されたヨーヨーすくいのプール(空気入り)――と、伊織の諸手は尋常じゃない荷で塞がっており、とても何か食べられる状態ではない。
 なお、ここまでの間に彼らは食事休憩など挟んでおらず、従って伊織の腹の虫は鳴りっぱなしであり。
「あ~……姐サン? オレ、手一杯なんでソレ一口食べさせ……」
「あら、何か言った?」
 振り返った小町は上機嫌で楊枝の先のたこ焼を自分の口に運びきる。更には「これかしら?」と食べ終わった後の舟(皿)を差し出されて「そうじゃなくて!」と悲鳴が上がる。
「食い気序でにまだ食い下がるか、色々諦めろよ。黙って細波や風鈴に耳を傾けてりゃ良いものを、なぁ?」
「喧しいぞ邪魔もの、アンタはそこの激辛唐揚でも食って口塞いでろ」
 清宵の言い草には即座に食いつくも、伊織と違って漫ろ歩きを満喫した彼に漂うは勝者の余裕。
「はいはい、二人とも仲良く大人しくね?」
 小町が柔らかく静止する――尤も、伊織を面白おかしく振り回しているのは彼女に他ならないのだが。
「ところで小町」
 最後の一個を食べ終える頃合を見て、清宵が風鈴市の方へと目を遣る。
「肝心の品は決まったか」
「――ええ。もう心に決まったわ」
 小町が選んだのは、大輪の花に彩られたひとつの風鈴。蒔絵のように縁を金で彩られた紅の花は、シンプルではあるが豪奢で見る者の目を引いた。
 花火柄も可愛いが、鮮やかさ見事さではやはり植物の花。手に取る心の高鳴るのを感じながら、小町はそれの入った箱を大事に小脇に抱える。
「なら、俺は敢えて飾気無い鉄を」
 清宵が選んだのは、ある産地の誇る鉄の風鈴。長く、尾を引くように響く特有の音は鉄風鈴の代名詞でもあり、家屋の何処にあっても心研ぎ澄ます音を奏でる。
「伊織ちゃんは向こうのひよこ型なんて如何?」
 小町がそういって指差したのは、いかにも幼児向けの小さいそれであり。
「――ハッ。“可愛い弟分”殿はその横の亀柄も良かろうよ!」
 失笑を禁じ得ずに清宵が隣の風鈴を指差せば、項垂れながらも伊織が抗弁する。
「いや可愛いケド、オレを何だと思ってんの!? あとそこの狐は後でさっきの廃倉庫ウラ来い!」
 浴衣美人の微笑む彼らの頭上、空はどこまでも青く、いかなる喧噪も飲み込んでいく。まるで、それすらも肯定すべき、世界の営みの一部分だと言うように。

 ――因みに。程なくして廃倉庫の裏で、まさか本当に細波の音に耳を傾ける(物理)事になろうとは、この時の伊織は知る由もなかったのである。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

キアラ・ドルチェ
折角なので、風鈴の絵付けに挑戦してみたいでしょうか
…あんまり手先器用じゃないんですけれど、ね

描くのはヤドリギ、そしてコウモリ
一生懸命、丁寧に、精魂込めて…
「むむむ、難しいのです…!」(ぺたぺた

完成したらじーっと眺め
…うん、中々良い出来じゃないですか!(自画自賛
吸血鬼の父の象徴蝙蝠と、森の魔女の母の象徴宿木が並んでてとても綺麗♪
よし、両親に手紙と一緒に送るです

キアラは元気にやっております
だから安心して下さいね
どんなに遠く離れても…運命の糸は繋がっている
そして貴方達の愛し子は今日も元気に頑張っておりますっ!

あ、自分のお土産も買わないと
買い食いしながら良さげな風鈴さん探しに…れっつごー!(ぐっ


 猟兵たちの中で、この日最後に工房を訪れた客。澄み渡る鈴の音に導かれ、一人の女性が顔を出す。
「ここが絵付けの体験工房、ですか……!」
 涼しげな初夏の装いに着替えたキアラ・ドルチェは、テントの内をそっと覗いてみる。
 そこには、風に揺れる色とりどりの風鈴たち。
 母から伝え聞いたおかげで日本の文化に馴染みはあったが、自身の手で絵を描ける機会はそうあるものではなく。ここまでの旅路の報告も兼ね、両親への感謝を形にしようと、キアラは密かに意気込んでいた。
「あんまり手先、器用じゃないんですけれど……ね」
 そう言いながら描くのは樹上で緑をたたえるヤドリギと、自由に空舞うコウモリの姿。時間をかけて丁寧に描こうとするも、年中若々しさを保つヤドリギ独特の緑は、思いのほか絵の具では表しづらい。途中もじゃもじゃのマリモになりかけて、あわてて黄色や白を上に足しては色味を直す。
「むむむ、難しいのです……!」
 真剣な眼差しで手直しをする様子を見かね、気を利かせたスタッフがキンキンに冷えた麦茶を差し入れてくれた。ありがとうございますっ、と礼を言って再びぺたぺた、根気強く色を重ねる事しばしの後。
 完成したものをじーっと眺め、キアラはやっと得心がいったようにポンと手のひらを打つ。
「……うん、中々良い出来じゃないですか!」
 吸血鬼の父の象徴たるコウモリと、森の魔女である母を表すヤドリギ。キアラにとってのルーツであり、両親との絆を表す二つのシンボル。それらが並び、寄り添う姿はとても綺麗で尊いものに感じられ、早速両親に手紙と一緒に送ろうと決意する。
「えーと……」
 書き出しの言葉は、万年筆を取り出したすぐ後に浮かび。さらさらと手慣れた字で、キアラは両親への想いを書き綴っていく。

『拝啓 お父様、お母様

 私は今、日本に来ています。この土地の夏空は、とても綺麗で――』

 これまでの道中で見たもの、そして出会った人々の事。一つ一つの縁を辿り紐解くように、景色や顔を思い描いては書き記す。初夏の風が、キアラの髪を撫でるように舞い込み反対側へと吹き抜けていった。
 書きながら、思う。キアラを送り出した父や母も、若かりし頃は。こんな風に旅をし、様々な想いを経験したのだろうか――と。

『キアラは元気にやっております。だから安心して下さいね。
 どんなに遠く離れても……運命の糸は繋がっている。
 そして貴方達の愛し子は、今日も元気に頑張っておりますっ!』

 手紙を書き終えてあたりを見れば、未だじっと見守るスタッフの笑顔。気付けば、随分な時間が経っていた。
「あっ、自分用のお土産買うのを忘れてましたっ!」
 急ぎ荷物を取りまとめ、工房のスタッフに深くお辞儀をして礼を伝え。
「それでは、良さげな風鈴さん探しに……れっつごー!」
 彼女の社会勉強の旅は、まだ始まったばかり。拳を突き上げたその先も、寄り道、回り道をしては学んでいく。蝙蝠のようにふらり屋台に寄ってはフランクフルトやわた飴を手にして頬張り、そしてヤドリギのように次の居所へと旅立つ。
 キアラが知っている事はこれっぽっち。けれど――少なくとも彼女は、植物の世界を知っていた。

●ほしのいと
 ヤドリギは単独では生きてはいけない。
 空渡る鳥がいて、初めて子孫を成せるのだ。

 いや、ヤドリギだけではない。
 鳥も、猫も、イルカも、微生物に至っても――そしてもちろん、ヒトも。
 皆誰かの存在あって、無自覚に支えられ生きている。

 地球をとりまく無数の見えない繋がりを、古代の人々は『縁』と名付けた。
 またある者は『糸』と呼び、呼び方はどうあれその存在に気付いた。

 鳥よりも高き視座、生命を俯瞰する視点にて、すべての色は合わさり青となる。
 ひとつひとつの鼓動の音が、命の賛歌となり大地を回す。
 
 きみのいろ、きみのおと。
 横に、縦に、糸は縒られて織り重なる。
 今駆け出したばかりの足音が、その中にひとつ混ざった。
 木々も、人も、時に過去よりのものすら懐深く受け止め。

 ――ちりん。
 絶え間なく続く命の歌の中で、ちいさな鈴がひとつ鳴った。
大成功 🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2020年07月26日
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵