4
バリアブル理不尽

#アポカリプスヘル

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アポカリプスヘル


0




●どうやって入ったの
 そこは、かつて隆盛を誇った巨大なホテルの廃墟である。廃墟といっても建造物そのものは運営当時と大差なく、崩落や損壊らしき形跡もない。気になる点としては汚れと築年数くらいだろう。
 そんな頑強な建物は今、オブリビオンの集団によって包囲されていた。鋼鉄の犬の顔から鋼鉄の砲が伸びたような恰好をした、一応戦車のような姿のそれらは、時折その先端部より弾を放ち、攻撃を行っている。
 しかし過酷な環境を耐え抜き、中の人々を暖かく守り続けてきた建物は、老体を以てそれを受け止め、引き続きその任務を果たし続けている。砲煙のおさまった後には、小さな焦げ跡程度しか損傷は見られない。
 この分であれば、内からの攻撃次第では撃退も難しいことではないように見える。事実この元ホテルという拠点に所属するサバイバルガンナーたちの攻撃は、充分に敵へ被害を与え、戦意と戦力を削ぐことに成功していた。

「な、なんだ!? 何してる、やめろ!」

 しかしその希望は、内部からの行動によって打ち砕かれようとしていた。1階ロビーより外へと繋がる大きな扉に厳重に掛けられた鍵をはずし、オブリビオンたちを引き入れようとする者が現れたのだ。他の人間の制止に耳を貸さず、力尽くで引き剥がそうとすればその巨体によって弾き飛ばす。
 ただ不器用にがちゃがちゃと錠の掛かった鎖を外そうとする様子を見ているしかない住人たちの表情は、恐怖と絶望に染まっていた。何もできないままに、ただただ――。

 その無数の砲身の先でがちゃがちゃと鎖を鳴らし、苛立たしげに悪戦苦闘する戦車の姿を見つめていた。

●休むに似たり
「いやロビーに戦車あッたら誰か何か思えよ」
 グリモア猟兵、我妻・惇は溜め息交じりにぼやいた。ここまでの説明によると、堅牢な拠点の内部に潜入したオブリビオンの暴走戦車が、内部より仲間を手引きして人々を窮地に陥れようということらしい。
 何故、気付かれなかったのか。拠点に所属する戦車乗りというのもいるのだし、誰かの乗機であると思い気に留めなかったということも確かにあるかもしれないが…ともあれ大きな不安要素もなく安全だったはずの場所に突然敵が現れたという事実に、住人たちは大いに慌てて対応が遅れ、このままでは合流したオブリビオンの集団によって拠点が制圧されてしまうらしい。
「まァ、なんだ、見たら分かるし…分からなくても分かるだろォし、まずは攻撃してやりゃ反撃してくるし、そのまま潰してやりゃ鍵を開けられる心配もねェ」
 扉を至近距離で撃てば壊せそうなものだが、そうせずにもたもたと鎖を外そうとしていたオブリビオンである。本当に放っておいたら危険だったかどうかは甚だ謎ではあるが、まあ言われるからにはそうなのだろう。検証する必要もなし、倒してしまうのが良い。

「ンで、次はこッちのタイミングで打ッて出てやりゃ良いな。周りも戦車に囲まれてるし、乗り込んでる中にボスもいるらしい」
 男は首を傾げながら言う。いるらしいのだが、どうも疑わしくもあるらしい。というのが。
「いやな、オブリビオン連中が丸ッこくてちッこい犬みてェな戦車に乗ッてるらしくてな?倒せば中身ごとイケるらしいんだけどな?ボスだけはそうじゃなさそうなンだが…あれ、どォやって入ッたンだ…?」
 見えた物があまりに信じられない光景だったようで、話しながらも頻りに首を傾げていた。
 小さな『いぬせんしゃ』に入るには無理があるらしいボスに関する情報を不確定のものとして明言を避けながら、グリモア猟兵は猟兵たちを送り出す準備を始めるのだった。


相良飛蔓
 お世話になっております、相良飛蔓です。今回もお読みいただきありがとうございます。今回はアポカリプスヘルです。

 第1章ボス戦『暴走戦車』、戦える住人が攻撃を防いでくれたりしますので、建物や人への被害は判定には影響しませんので、考えなくても大丈夫です。避難させたら住人の皆さま的には安心でしょうし、砲撃を受け止めたり無力化したりとかしたら士気も上がったりするかもしれません。

 第2章集団戦『いぬせんしゃ』、指揮官機にボスが乗り込んでいる『らしい』です。外見による個体差はなく、区別はできないものとします。指示を出せば戦える住人の方が協力してくれます。猟兵ほど強くはないので決め手になったり無茶をしたりはできません。

 第3章ボス戦、いぬせんしゃを行動不能にしたら、その中から現れます。未確認の疑わしい情報が含まれているため正体は不明とします。

 以上のような感じです、よろしくお願いいたします。
41




第1章 ボス戦 『暴走戦車』

POW   :    オーバーキャノン
自身の【戦車砲のうち1本】を代償に、【ビルを消し飛ばす程の爆発力】を籠めた一撃を放つ。自分にとって戦車砲のうち1本を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    全門発射
【何本もの戦車砲から砲弾の連射】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    セメント弾
【主砲】から【速乾性セメントを詰めた特殊砲弾】を放ち、【空中で炸裂した砲弾から降り注ぐセメント】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

柊・はとり
何だこの現場…
密室殺人…に入るのか?
『事件です、柊はとり。解決しますか?』
…ある意味難事件だな
取り敢えず力を貸せ、コキュートス

初撃でどれだけぶっ壊せるかが肝だ
戦車が解錠に手こずってる間に…
本当頭痛え文脈だな
兎に角容赦なく先制させて貰うぜ
UC【第四の殺人】発動

まず『味方』である俺自身を攻撃
高速の【なぎ払い】で戦車砲を集中攻撃し【鎧砕き】を行う
破壊しきれない分は【氷属性】による【マヒ攻撃】で発射口を凍結させ性能を殺す

備えろ、砲撃が来るぞ!
【恫喝】で住人達に警告
俺か?
柊はとり…『高校生探偵』だ
…この肩書も相当理不尽だな

【かばう】は積極的に
傷ついた分だけ俺の斬撃は速くなる
こんな謎は物理で解決してやるよ



●to solve
 到着した瞬間、大剣を携えた一人の少年が飛び出した。狙うはロビーの正面扉、そこに陣取る巨大な戦車。
「何だこの現場…密室殺人…に入るのか?」
 少年は眉間に皺を寄せ、内心で首を捻る。かつては高校生探偵として名を馳せた彼でも理解に苦しみ、辟易することがあるようだ。原因は、デッドマンとして甦った際に何らかの廉で欠落した推理力のせいだけでは、きっとない。
 小説などの創作においては、完全な密室の構築とその解体はひとつの華であると言えるだろう。『事実は小説より奇なり』とも言うように、作り話のように不可解で、一見すれば実現不可能な事件もしばしば見受けられたりもする。
 だが、推理や解明を目的とした、いわゆる探偵の出番と言える場面において『いかにして犯人は戦車をホテルのロビーに怪しまれることなく持ち込んだか』などという命題が論じられることも、求められることも決してないだろう。

『事件です。解決しますか?』
 悩む様子など一切なく、事務的に淡々と告げるAI・コキュートスの言葉に、少年はどこか恨めしそうに、投げつけるように返事をする。
「取り敢えず力を貸せ、コキュートス」
 応じて、携えた大剣の刀身が、青く眩く輝きだした。

(戦車が解錠に手こずってる間に…本当頭痛え文脈だな)
 頭を痛めつつも考えてしまうのは探偵の悲しさか。もしかしたら深く突き詰め続ければ、行使する能力の効果にも影響するのではないだろうか…そう思える程度には痛む。
 ――第四の殺人『切り裂き城』。猟兵の心身が傷つくごとにその大剣の速さを増すユーベルコード。辛苦によって得られる成果は、辛苦なくして得られない、目明しの宿命とも言えるもの。
 なれば刃は、自らも等しく苛むもの。少年は、脇に携えた輝く刃を内にしたまま引き出して、我が身を裂きつつ前へと取り出し確と正面に構えて見せた。零れる血潮も何するものぞと解錠に夢中の暴走戦車の砲の前へと躍り出て、横一文字に薙ぎ払い、鋼の筒へ青き刃を叩きつけた。

 歪んだ砲身をがたつかせながら、暴走戦車は向き直り、腹立たしげに駆動音を響かせる。もしかしたら衝撃で部品の咬合がずれたのかもしれない。
「構えろ、砲撃が来るぞ!」
 備えもせずに遠巻きに慌てる住人たちへ、少年は声を張り上げ怒号を飛ばして自衛を促す。無尽に振るわれる大剣の、罪科を縛る氷の刃はいくつもの砲身を凍らせ塞ぐが、それでも全てを防ぐには能わない。オブリビオンは、猟兵の宣言通りに多数の砲弾を広いロビーにばらまいた。
 少年は可能な限りをその身と刃で受け止めて、その傷を糧に更に偽神の輝きを増し。背後を振り向けば、人々はなんとか防ぎ、避け、無事に済んでいるようだ。険しい瞳にも僅かに安堵を滲ませた彼に、集まる視線はいまだ焦ったり慌てたり、訝しがるもいくらかある。
『高校生』で『探偵』だ、そんな視線は慣れたもの。だから少年は慣れた通り、いつもの通りに名乗って見せる。

「俺か? 柊はとり…『高校生探偵』だ」

 言ってから、この肩書も相当理不尽だな、と、少年――柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)は苦笑する。住人の依然きょとんとしたままの顔が、その考えを肯定していた。

成功 🔵​🔵​🔴​

エグゼ・シナバーローズ
なんでこんなトコに戦車がいるんだよ!と、到着早々に精霊銃を発砲。
味方戦車乗りのものでは…?とか指摘されるなら
ロビーに置くやつがいるかー!そんな常識外れなのかお前らの味方はー!
と答える。
別に怒ってるわけじゃねえ、ツッコミどころ多すぎて軽く混乱してるだけだ!

そのまま勢いで戦闘に入る。
精霊銃で精霊の力をぶっ放すのが基本。鎖を外そうとしてたって話だから武装を使うより体が動くタイプの可能性を考えて、いつでもアクターを抜けるよう腰に差しておき、近接戦になったら剣戟を行う。
UCは鈴蘭の嵐を使用、花びらに変換するのは風の精霊イルス。
なに、花びらになるのはイヤ?やかましい、お前を頼ってんだから贅沢言わず行けっ!



●to settle
 こちらは無差別に放たれた戦車の砲弾を、精霊銃にて迎撃するエグゼ・シナバーローズ(4色使いの転校生・f10628)。
「なんでこんなトコに戦車がいるんだよ!」
 放たれた当然の疑問に対して、拠点に所属する戦車乗りや、外部より新たに迎え入れた奪還者についてすかさず説明を始める、抜け目なくも呑気な住人が現れ…いや論点はきっとそこじゃない。
「ロビーに置くやつがいるかー!そんな常識外れなのかお前らの味方はー!」
 重ねて猟兵がガーっと言い返すと、幾人かがついっと目を逸らしたのが見えた。もしかしたらいるのかもしれない。そんな常識外れ。
「別に怒ってるわけじゃねえ、ツッコミどころ多すぎて軽く混乱してるだけだ!」
 混乱しつつも丁寧に指摘し、さらに戸惑っているらしい人々へのフォローも忘れていない。苦労の多かろう性質が偲ばれるようだ。

 引き続き様々の指示や指摘を忙しく行いながら、戦車を観察する。もちろん座してそうするわけではなく、勢いを殺さず攻勢を保ったままに、である。
 砲身を多く持ちながらも、それを火砲として活用せずに鎖を外すための腕として使用していたのだから、もしかしたらその機動性によって接近戦を得手とする可能性もあるか――そう考えた彼は、自身の腰に差した装備を確認する。十センチほどの円筒は、自らの魔力を刀身とする、近距離戦用の武器の柄である。咄嗟の対応に使えることを確かめると、今はまだ離れた標的へと改めて意識を傾注する。
猟兵自身が四属性の精霊の力を借りた多様な戦い方を持つために、相手にも多くの手段を想像してしまうのは当然の帰結とも言える。いかにその相手が一見して間抜けであっても、危惧すべき最悪の可能性は考えるべきだろう。
結果としては、その懸念は取り越し苦労となった。精霊銃による射撃を受けたオブリビオンの砲塔は、猟兵を追うように回転しつつも、その場からほとんど動かない。いくらか蓄積されたダメージのせいかもしれないが、旋回速度じたいも遅く、跳べば容易に照準から逃れられる程度のもの。なんというか、不器用なのだ。アドバイスしてやる義理もないが、効率の悪い敵の動きに釈然としないものを感じながらも、少年は着実に攻撃を叩き込んでいく。

 と、被弾し続けたオブリビオンが俄かに砲口を上に向け、猟兵の頭上目掛けて砲弾を撃ち出した。それは上空で拡散し、速乾性のセメントを放つ特殊砲弾であった。受けてしまえば身動きを封じられ、次弾の餌食となるだろう。それに対してエグゼも咄嗟に銃口を向け、精霊の力を借りて――
「なに、花びらになるのはイヤ? やかましい、お前を頼ってんだから贅沢言わず行けっ!」
 外からは聞き取れないが、何やら精霊がごねているらしい。しかしそんな理由で諸共に固められてしまっては目も当てられない、半ば無理やりに力を借りて、少年は風の精霊イルスの力を天井目掛けて撃ち出した。
 それは無数の鈴蘭の花弁になり、風を纏って巻き上がる。巡る嵐に吹き散らされて、戦車の弾が防がれる。それをそのまま目隠しとして、エグゼは矢継ぎ早に銃撃を放ち、可能な限りの被害を与えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

塩崎・曲人
あー、うん
仕事熱心かつ勤勉なオレ様をして、思わず「もう帰っていいかなぁ」とか思わせる辺りこのオブリビオン只者じゃねぇ
いや割とマジで、脱力させる作戦の一貫とかじゃねぇとやるせなさ過ぎる

それはそれとして、建物の中で暴れられると大層ヤベェ
周りからフォローがあるとは言え、自由にさせない方が良いに決まってるわな
「つー訳でまずは攻撃封じるぞ。手枷と猿轡と縄を喰らいな」
…どこにかけりゃ良いかも分からんが。まぁ「正しくかける」は条件じゃねぇし?
どっか引っかかればOKだろ、多分

首尾よくUCを無効化したら
叩いて凹みそうな所をガンガン殴って行こう
転輪とか壊せるとハッピーなんだが、可動部に手を出すのはあぶねぇかなぁ…


大門・有人
不採用含めて全て歓迎だ。

ま、まあ、放ってたら自爆覚悟で砲撃してたかもだしな。
戦えない住民の避難を手伝うぜ。ガンバーバイクで安全な場所まで移動。攻撃せずなら心配ないが、敵にこっちが狙われるなら車体と自分の体を盾に住民を守る。
避難が終われば櫛で髪を整えて戦闘参加だ。戦車の攻略なんて考えた事がねえぞ。
威力重視でUC始動、ガンバーバイクで敵周囲を旋回する。
旋回中は可能なら味方猟兵や建物を守る住民への直撃を防ぐのを優先だ。
基本攻撃は拳銃、隙ができれば突撃。
俺の体は砲弾より痛いぜ。有人キックを食らいやがれ!

少しおマヌケな所は可愛らしいが、見逃す理由にはならねえ。
人々の不安を除く為にも、砕かせて貰うぜ。



●to tarmine
「あー、うん。仕事熱心かつ勤勉なオレ様をして、思わず『もう帰っていいかなぁ』とか思わせる辺りこのオブリビオン只者じゃねぇ」
 軽口を言う塩崎・曲人(正義の在り処・f00257)の口調が、どこか投げやりなのは気のせいではないだろう。
「いや割とマジで、脱力させる作戦の一環とかじゃねぇとやるせなさ過ぎる」
 拠点のピンチではあるのだが、なんともどうにも締まりのない、必死になれない間の抜け方。確かにそれが狙いの策略であれば、恐ろしい相手ではある。言葉を話さず、ギュルギュルと耳障りな駆動音を鳴らすそれの真意は分からない。
「ま、まあ、放ってたら自爆覚悟で砲撃してたかもだしな」
 溜め息交じりの男に対し、大門・有人(ヒーロー・ガンバレイにして怪人・トゲトゲドクロ男・f27748)が最悪の状況でないことを挙げてフォローするが、こちらも共感はできるものらしく、その表情は僅かに苦笑交じりである。
 帰りたくても、敵がヘンでも、それがお仕事ならやるしかあるまい。脱力感をねじ伏せながら、オレンジ頭とリーゼントがそれぞれの方向へ駆けだした。

 猟兵たちとの戦いの最中、オブリビオンが射出した砲弾が流れて、上階へ向かう住民たちの背中を目掛けて飛んで行く。そこに割り入る有人の駆るガンバーバイク、頭上を過ぎんとする弾を、タイヤを浮かせて受け止めて、炸裂させて防いでのける。
 分厚く重い前輪は、その衝撃を余さず抱え、爆ぜる勢いで車体の向きを、避難に走る人々の方へ。引き続き自らを盾として、遅れる者は乗せてやり、上る階段をものともせずに、首尾よく皆を導いていく。
 なおも追い掛けるように砲口を差し向ける戦車に対し、そうはさせじと曲人が立ち塞がる。といっても有人を庇って馬鹿正直に射線に割り込む訳ではない。身体を張って盾になるのは得意な奴のやることだし、守備位置は散らばっていた方が、飛球は抑えやすかろう。
 防げれば良い、当たらなければそれでも良いが、もちろん撃たせないのが一番だ。いかに頑丈な建物とはいえ、言うなれば廃墟、砲弾などという大きなダメージで突然崩れぬ保証はないのだ。
「つー訳で攻撃封じるぞ。手枷と猿轡と縄を喰らいな」
 行使するユーベルコードは咎力封じ、彼の宣言通り、対象に拘束具を放ちその自由を奪うものだ。しかし、縄はともかく、手枷も猿轡も、手や口がある相手を前提としたものである。さて、果たして戦車の手と口とは――
「…まぁ『正しくかける』は条件じゃねぇし?」
 僅かに視線を斜めに逸らした曲人は、その考証からも目を逸らすこととした。
 結果、縄は履帯を絡め、猿轡は砲”口”の一つを塞ぎ、手枷は砲身の2本を繋ぐように結ばれた。鎖を外す試みに使われた手であるという判断であろうか。ともあれどうやらうまくいったようである。
 纏わりつくそれらに発砲を遮られ、機構の空転する厭な音を鳴らしながら、解錠に向かっていた際と同じように懸命な様子のオブリビオンの姿に内心で胸を撫でおろすと、瓦礫の中から目ぼしい長物を拾い上げ、吊り目を獰猛に細めつつ、猟兵は揚々と歩み寄る。

 戦えぬ者を避難させ、階段の上からロビー正面を見た有人の目には、射撃を封じられぎちぎちと歯噛みするような音を鳴らすオブリビオンの姿があった。彼の駆る二輪は大きなものだが、それでも戦車には及ばない。その攻略にどう着手しようかと考えあぐねていたものの、蓋を開ければ雁字搦めの鉄塊である。
「少しおマヌケな所は可愛らしいが、見逃す理由にはならねえ。人々の不安を除く為にも、砕かせて貰うぜ」
 慌てる敵のその様子に僅かに愛着すらも感じながら、男は爆風に乱れたリーゼントを櫛で手際よく整えると。
「怒りに燃える正義の心を、その身に刻め!」
 ガンバーバイクのハンドルを、握るや否や深々と捻り、爆音を上げて階段を駆け下り、そのまま戦車へブッ込んだ。
 廃材から組み上げられたバイクでもって、巨大な戦車へ挑みかかり、その手でもって恐るべき兵器を廃材に。迷惑駐車の撤去作業、あるいは島荒らしへの制裁か。いずれにしても、男たちは穏便に済ませるような風貌でも、意気でもなさそうである。

 大質量のバイクがぶつかり、重さを押しきれず停止すれば、ライダーは笑い跳び上がり、予て備えたユーベルコードで剛力を付したその脚で、力を込めて降り掛かり。
「俺の体は砲弾より痛いぜ。有人キックを食らいやがれ!」
 その言葉の通り、砲弾の発射に耐え得る鋼の砲身を、強烈な蹴りの一撃でひん曲げて見せた。鍛え上げた峻烈な技は、備え持った堅固な外骨格は、いずれもそれを為し得るに足る重要な能力であるだろう。
 しかしそれだけでは済まされない。身に付けるための研鑽と、行使するための伴う苦痛は、並大抵のことではない。それを支えるのはやはりーー燃える正義と、根性か。

 正義。リーゼントの格好の良い啖呵に、曲人の思う所がないわけではない。胸を張って口にしたり、左様でございとキメてみせたり。
 それは自身が眩くも見据える姿であろうか。それとも他の形があろうか。少なくとも、今の自分が名乗るにはーー
「叩いて凹みそうな所はっと…」
 それはともかくやるべきこと、やりたいこと、呼称はどうあれ己の信じる行動を。廃材でもって殴ったり、突いたり、傷やへこみや薄い部分、手当たり次第にどつき回す。
「転輪とか壊せるとハッピーなんだが、可動部に手を出すのはあぶねぇかなぁ…」
 その言葉に、聞こえる駆動音が激しく甲高くなる。もしかしたら人語を理解しているかもしれない。それはともかく、せっかく縄で動けなくなっているのだしと、一点めがけてしつこく狙えば、亀裂が入りがらりと外れた。これで移動は大幅に制限されることだろう。

 それからしばらく、2人の無抵抗な車輌の解体作業は続いた。それはたとえば、何かのボーナスステージのような。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

火土金水・明
「この世界を少しでも平和にするために、こちらも全力で迎え撃ちましょう。」「相手は戦車ですか、確実に潰さないと駄目ですね。」
【WIZ】で攻撃です。
攻撃は、【高速詠唱】で【破魔】と【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【全力魔法】の【新・ウィザード・ミサイル】で、『暴走戦車』を【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【見切り】【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「オブリビオンは、骸の海へ帰りなさい。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。


スリジエ・シエルリュンヌ
……ええっと。さすがの文豪探偵でも、この状況は不可解ですっ!!
何からつっこめばいいのか、本当にわからないです!!

(こほん)と、とりあえず。私は近接攻撃主体ですから、キセルで攻撃しますね!文豪探偵、推して参ります!
…金属ですね、高い音がしますっ!

あ、そうです!新しいUCを作ったので、その試しうちもしましょう。幸いにも、この炎剣は延焼しませんし、室内でも使えます!
…ええ、試しうち会場だと思わないと、どうも身が…。
ついでにセメント弾もこれで防いでしまいましょう。わりと隙間なく展開できますから!



●to decide
「この世界を少しでも平和にするために、こちらも全力で迎え撃ちましょう」
「……ええっと。」
 目の前の状況に対して、淡々と目的の確認を行う火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)とは違い、スリジエ・シエルリュンヌ(桜色の文豪探偵・f27365)は困ったような声を出している。そんなスリジエの困惑をも、明は意に介す様子はない。

「相手は戦車ですか、確実に潰さないと駄目ですね」
 味方がどんなに戸惑っていようと、相手がどんなに間抜けであろうと、敵は人に害なすオブリビオン、そして外にも控える軍勢。出し惜しむ余裕などないし、確実に、全力を以て戦うに値する状況だ。
 枷や縄による拘束を抜け出し、軋みと煙をあげながらこちらに砲塔を向ける戦車を睨み、猟兵は詠唱を継続する。数百もの魔法の矢を周囲に展開するその術式は、恐らく単純で低度のものではない。相応にそれなりの時間が必要なものであろう。オブリビオンはその機を逃さず残存する砲の射角を合わせ――合わせる間に、明の高速の詠唱は完了した。
『全ての属性を収束して、今、放つ!』
 視界を埋め尽くすほどの無数の魔力塊が、戦車に向けて殺到する。もしも操縦者が乗っているのなら、その視覚は数秒間は灼かれ、攻撃の手を止めることになっていただろう。
 自らで動く異形の兵器であるオブリビオンにその心配はなかったが、結果としては同じことであったようだ。魔箭は装甲を何カ所も貫き、差し向けた砲口へ飛び込んでその内部をも破壊した。

 また次の砲を向ける間にも、重なるように展開されていた第二陣の魔法の矢たちが襲い掛かり、さらにその損傷を深刻なものとした。
 装甲に増えた穴から安物の笛のような甲高い音を鳴らしながら、噛み合わない駆動部から嫌な摩擦音と衝突音を響かせながら。必死の継戦、抗戦を試みる戦車。もはや“大破”と呼ぶにふさわしい状態のそれに対しても、明は油断も容赦もなく、再び同様の術式を迅速に展開するのだった。

「さすがの文豪探偵でも、この状況は不可解ですっ!! 何からつっこめばいいのか、本当にわからないです!!」
 終始冷静に対峙する明とは違い、スリジエはオブリビオンの奇行への折り合いを依然つけかねているらしい。それでも戦わないと倒せないし、倒さないと外のオブリビオンたちへの対処もできないわけで……
「と、とりあえず。私は近接攻撃主体ですから、キセルで攻撃しますね!文豪探偵、推して参ります!」
 咳払いひとつ、攻撃開始の台詞をひとつ。気持ちを切り替え戦闘へと切り替える。魔法の矢を浴び狼狽している戦車へと駆けて距離を詰めると、手に持った煙管でもって攻撃を行う。細い煙管の雁首を、所々へこんだ車体に打ち付けると、良く響く小気味の良い音色。

 研究を生業とする者にとっても、執筆を生業とする者にとっても、仮定と実証はとても重要なことである。推測のみによって実験を推し進めることはできないし、予断を逆手に取ったミスディレクションはひとつの手法である。実証が無ければどんな画期的な論も一笑に付されかねないし、考証が正しくなければその文章も軽薄なものとなりかねない。そのために、仮定と実証はとても重要なものである
 しかし、全てにおいて必ずしも重要というわけではなく、それが必要でないこともあり得るわけで――つまるところ。
「…金属ですね、高い音がしますっ!」
 振り向きこの発言をしたスリジエは恐らく、まだ幾分か混乱しているのだろう。幸い、その内容自体は、非常に的確な結論に導かれていた。

「あ、そうです!新しいユーベルコードの試しうちをしましょう!」
 もう一度、切り替える。敵ではなく的だと思えば。倒すことでなく撃つこと、当てることに集中すれば。そう思うことによって緊迫感をぶち壊す脱力感から目を背けることができるのではないか。
「…ええ、試しうち会場だと思わないと、どうも身が…」
 拠点の窮状という強烈な緊張感に苛まれる住人たちには悪いが、どうにも間抜けなのである。周囲から迫る呆気に取られた驚きの目を、視界の外に追い出しながら、小さな声で呟くと。
『ここに、私の力を!』
 ロビーに響き渡る大きな声で。その敵を圧し、人々を鼓舞する力強い声で。ごまかしてるとかでは、ない。
 それはともかく、スリジエの言葉に応え、沢山の桜の花びらが一面に舞い散りはじめた。この世に絶えて久しい桜花が、並み居る人の目を奪い、俄かに赤く燃え上がり、薄暗がりの部屋を照らし。オブリビオンを囲みながら、それは鋭い刃となって、火線が輝く模様を描き。

 煩わしさか危機感からか、戦車は照準を明より外し、花弁の織り成す幾何学模様もろともに、スリジエを撃たんと発射する。先にも使用されたセメント弾は砲口から飛び出して、猟兵を、そしてその背後の住民たちを縫い止めようとするが。
「わりと隙間なく展開できますから!」
 予想通りと言わんばかりに、集めた炎剣で迎え撃つと、砲弾は拡散も許されずに押さえ込まれ、そのまま戦車の程近くへセメントをぶちまけることとなった。

 敵にとっての回生の一手を封じ込めると、明の魔法の矢も射出準備がちょうど調った所である。
「オブリビオンは、骸の海へ帰りなさい」
 三度、密に展開する新・ウィザード・ミサイル。一直線に疾るそれらの間を縫うように、美しい軌跡を描きながら駆ける炎剣。千を数える光の束は、廃車間近の暴走戦車を、正真正銘の廃車に――否、影も残さぬガラクタへと変貌させたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『いぬせんしゃ』

POW   :    きゅらきゅら
【キャタピラを全速力で稼働させた】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【他のいぬせんしゃ】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    むれのきずな
自身が【自身や仲間の危機】を感じると、レベル×1体の【いぬせんしゃ】が召喚される。いぬせんしゃは自身や仲間の危機を与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ   :    いぬせんしゃキャノン
単純で重い【いぬせんしゃキャノン】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「おま…らはー、かんぜんにー、ほういされ……るー」
 ロビーに巣食った身中の甲虫を倒し、鎖された扉を押し開けると、すぐに間延びした声が聞こえて来た。車両のスピーカーから聞こえてくる声は、整備不良のためかいくらか不明瞭なもので、時々ハウリングを起こしている。
「くにのかーちゃんもー、はやくでて……いとー、ないてー……」
 内容から察するに、古い刑事もののドラマ、もしくはコントで聞かれるような“立てこもり犯への説得”の紋切り型の常套句を述べているらしいが…
「おやぶん、おやぶん」
「なんだー、いまいいとこなのにー」
「だってほら、でてきてるよ」
 姿を現した猟兵たちの姿に気付いたようだ。少し気まずい沈黙が流れて、後。
「でてきたときってなんていうんだっけ!?」
「しらないよー、ぼすがやりたいっていったんだよ」
「りーだーがかんがえといてよー、ぼくらにわかるわけないよー」
 ぐっだぐだの内輪の会話が、フルオープンで展開された。通信技術が低いのか、使用者の知能が低いせいかは分からないが、とにかくぐだぐだ、頭目の呼称ですらもぐだぐだである。そしてこんな時だけやたらと明瞭である。
 しばらく言い合い、これでは埒があかないと気付いたらしく、再び呼びかける声が宣言した。
「おまえらはー、かんぜんにー、ほうい――」
 きーーーーん、と、ひと際大きな音が周囲一帯に響き渡り、投降を要請する言葉は中断され――このまま戦闘開始となるようだ。
スリジエ・シエルリュンヌ
アドリブ歓迎。
ぐだぐだは筒抜け。さらにハウリング…しまりませんね!!
でも、今回はまだまとも!!(まともの評価基準が下がってる)

文豪探偵、推して参ります!可愛いですけど、油断はしません。
まだこのUCを試しうちします。
ほら、今回は動く相手ですから、また勝手が違うので。

いぬせんしゃキャノン…撃つんじゃなくて、叩きつけなんですね。砲台の意味とは。
でも、単純だからこそ怖い。察知したら、急いで距離を取りますね!

地形を破壊されようと、舞う炎剣は展開をやめませんから。
地形関係ないですから!!

ところで、リーダーって誰なんでしょうね…?


エグゼ・シナバーローズ
くっそ、ハウリングがムカつく!調整してやりてえ!
だがそんなん敵に塩を送るだけだ、やっちゃいけねー。
ガジェッティア魂をなんとか抑えこんで空へ。目指すは連中の真上だ。
ちょいと危ねーけどホテルに攻撃が当たったら大惨事だからな。

まずはネル(水の精霊)を杖に変化させ水の【全力魔法】をぶっ放す!
ショートしてくれりゃ儲けモンだ。
上空の俺目掛けてキャノンが飛んできたらなんとしてでも避ける、俺に当たらなかったソレを下の連中に当てるのが上空にいる一番の理由だから避けなきゃ始まらねえ。
…まさか砲塔で殴る攻撃じゃねーよな…?

俺が集中していられるほど敵が減ったらUC発動、雷の嵐を呼び制御できる限界の威力で残りを一層だ!



●ぐだぐだのきょーふ
「ぐだぐだは筒抜け。さらにハウリング…しまりませんね!!」
「くっそ、調整してやりてえ!」
 急な騒音に押さえた耳を開放して、スリジエ・シエルリュンヌとエグゼ・シナバーローズがそれぞれに述べる。かたや緊張感のない状況への抗議を、かたや調整不良の機材への不平を。
「でも、今回はまだまとも!!」
 先の暴走戦車と違い、敵はこちらへと油断なく?狙いを定めているし、戦闘に向ける意欲も高いように見受けられる。そういったものが明確に感じられるために、相対的にまともなように思えるのは仕方ないことかもしれないが、勿論あくまで相対的なものである。客観的に見ればやはり、どうにもゆるいし、しまらない。結局のところ、スリジエもその空気感にきっちりと取り込まれているようであった。
 で、あるからして、そんな彼女の発言に対して、エグゼが一瞬だけ見せた『えっ!?』という表情は、誰にも責められるものではないはずだ。ハウリングを防ぐように調整してやったところで敵に塩を送るだけだと自分に言い聞かせてその欲求を抑え込む彼も、それなりには毒されているのかもしれないが……まあ両者とも戦闘を続ける意思はありそうなので、特別大きな問題ではないと言って良いだろう。スリジエは敵集団に向かい真直ぐに、エグゼは白い翼を羽ばたかせて空高く、もって行動を開始する。

 敵集団の真上を陣取って静止した少年は、きょろきょろと砲身を振って周囲を見回すいぬせんしゃたちを見下ろした。目の前で飛び立ったにもかかわらず、その行方を見失った敵がやたらと多いのはもはや驚くべきことではなかろう。
 猟兵は、傍らに現れた、青い尾を持つ小さな金髪の少女へと呼びかけ、杖へと変じたそれを取り、構える。少女の名はネル、エグゼの友たる水の精霊である。
「喰らえー!」
 気合と共に魔力を放てば、大質量の水となり、戦車たちへと降り注ぐ。注ぐというには塊に過ぎ、叩きつけると言うが正しいかもしれない水塊は、不意を突かれたオブリビオンたちを脅かす上で大きな成果を挙げた。
「な、なんだー!?」
「つめたーっ!」
「どこからのこうげきだー?」
 しかし、慌てつつも大きなダメージを被った機体は残念ながら見受けられない。冷感を訴えたものがある以上は僅かな浸水があったのか――あるいは感受性豊かな操縦者が冷たい気がしただけなのかもしれないが――これまた残念ながら、確認は難しそうである。

「うえだ、うえだー!」
 ようやく、本当にようやく気付いた者が声を張り上げると、一斉に全車の緊張感のない顔が上空のエグゼを見上げた。スピーカー越しの声がややぼわぼわしているのは浸水の影響かもしれない。
 当然ながら、向いたのは顔だけではない。そこに備え付けられた砲の先端も、整然とこちらを見つめている。敵意を一身に受け、危険な状況に陥ったはずの猟兵だが、しかしこれこそが彼の狙いであった。
(ちょい危ねーけどホテルに攻撃が当たったら大惨事だからな)
 周辺地形を破壊するいぬせんしゃキャノンが、拠点の建物に当たってしまっては大きな被害が出るかもしれない。それなら自身が注目を引きつけ、彼らの真上で的になれば、流れ弾からホテルを守り、うまく回避すれば重力により落下した砲弾が翻って彼らを襲うだろう。
 ――と、ここでエグゼは先の戦闘を思い返す。鎖をがちゃがちゃと触り、砲を撃たずに解錠を試みた暴走戦車の姿。
「…まさか砲塔で殴る攻撃じゃねーよな…?」
 
●そのまさかなんだよなぁ
「砲台の意味とは。」
 上空に跳ね上げられたいぬせんしゃが、オラトリオの少年にひらりと躱されそのまま地上へと落下し、周辺の地形を破壊し僚機を吹き飛ばしている様子を見て、スリジエが呟いた。確かにその砲身をシーソーのようにして跳び上がらせているし、その砲身を叩きつけることで大きな威力を発生させているが――キャノンとは。いかに暴落中の彼女の“まとも”評価基準をもってしても、これには首を傾げざるを得ないようだ。
「文豪探偵、推して参ります! 可愛いですけど、油断はしません!」
 気を取り直したらしい猟兵が真剣な顔で駆け、寄り集まる敵群の方へ。声に反応してこちらを向くいぬせんしゃたちだったが、その顔はやはりどこか間抜けで…どうにも力が抜けてしまう。
 気を取り直しきれなかったスリジエが減速し足を止めると、こちらに気を取られた敵たちの頭上からいぬせんしゃキャノンがどーん。また数体が吹き飛んだ。
「…ほら、今回は動く相手ですから。また勝手が違うので」
 脱力感の払拭をどこかで諦めた彼女は、試しうちのノリを継続することに決めたのだった。緊張を強いられる状況において、訓練だと思うことで普段のポテンシャルを引き出すという方法もある。この場合は逆に、緊張感がまったくない中で一定の集中力を保つために、というところではあるが――要は、そうでもしないとやってられねーというヤツである。ある意味手強いし、ある意味油断できない。

「地形を破壊されようと、関係ないですから!!」
 ぐだぐだ感に負けず、再び卸したてのユーベルコードをスリジエが展開すると、無数の桜花の炎剣は、無数の標的を目掛けて散開した。一点を目指さぬそれらは、より広範囲により複雑に、美しい模様を描きながら、抉れた地面を盛り上がった土を、器用に避けて、あるいは偶然か故意かに活用して、追い立てるように追い詰めるように縦横無尽に飛翔する。

 そこにさらに気合の声と共に放たれる、エグゼのエレメンタル・ファンタジアによる、雷の嵐。
「キャノンの意味ねーじゃねーか!」
 気合というか、ツッコミである。大集団でボケ倒すオブリビオンたちを投げっぱなしにせずにきちんと指摘する彼は、やはり面倒見が良いのだろう。真面目さと怒りを乗せたその魔力はとても大きな勢力でもって、敵を巻き上げ叩きつける。嵐に弄ばれる標的を追い、より動きを複雑にした炎剣もさらに多様な軌跡を描き、拠点から顔を出す人々の目を楽しませるのだった。

 「ところで、リーダーって誰なんでしょうね…?」
『わー』『にげろー』などという、切迫しながらも切迫感のない叫び声の中、遠い目をしたスリジエの思考は少し外れた別の所にあった。きっと敵の声は聞こえていない。というか意図的に聞いていない。ちょっと要らん事考えてる方が程よく集中できるという、まさにそれ。
 しかし確かに、それは重要な問題でもある。今のところ頭目を捕捉、識別は出来ていない。大きな金色の、メカメカしいオブリビオンであるような気はするが――それはまだ、謎に包まれているのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

柊・はとり
はぁ…犯人扱いされるのは偶にあるが
流石にこのパターンは初だ
何だこいつら。ゆるキャラの生き残りか?
お袋なら俺はもう死んだと思ってる筈だが
何か反論があるなら聞いてやるよ(【殺気】)

間の抜けた空気に惑わされる程のかわいげが無いんでね
UC【第三の殺人】で破壊していく
住民達には身の安全を優先して貰いつつ
離れた位置からの援護射撃等を指示
…足元?に石とか転がしとくだけでも効果あるんじゃないか

キャノンには敢えて偽神兵器の【武器受け】で対処
おい犬、野球やろうぜ
蒼い炎による【氷属性攻撃】で弾を凍らせ
【なぎ払い/カウンター】で打ち返す
上手くいきゃ纏めて吹き飛ばせるかもな

生き残った奴は普通に叩き潰す
理不尽な暴力で悪い


塩崎・曲人
さっきの戦車のほうが強そうな件
いや、こっちは数が多くてうんざりするんだが

見た目は兎も角、群れで戦術取られると面倒くせぇな
こういうのは出鼻をくじくに限る
「こんな所でたむろしてコントかましてんじゃねぇぞボケェ!『何の了見で喧嘩売って来やがったんだコラァァァ!』」(メンチ&腹の底から大声)
『』の質問を鍵に【睨撃粒子砲】を発動
全力で凄んで【威圧】してやれば単純な恐怖に支配されるだろ
質問の答えも忘れてグダグダうろたえるなり、逃げ出そうとするなりしてるれると期待しよう

後は逃げないのは良く訓練された、理論で残ってるのをボコろう
多分その中に指揮官って奴が居るし
現地民さん方はまぁ、自衛しててねって事で



●激しい温度差
「はぁ…」
 と、柊・はとりの大きなため息がひとつ。高校生探偵という役柄上、好むと好まざると事件というものに関わることが多い彼は、遺憾ながらしばしば犯人扱いされることがある。しかしそれでも、拡声器でもって情に訴えるような説得を受けた経験はない。それは探偵ではなく刑事もの、推理よりも人情ものの領分であるし、さらに緊張感のないゆるキャラのまがい物による宣告となればもってのほか、刑事ものより人情ものより、ナンセンスものがふさわしい。

 そして、ため息に含まれたのは呆ればかりではない。いたずらに放たれた説得の言葉に対する、僅かの怒り。
「お袋なら俺はもう死んだと思ってる筈だが…」
 確かに良心の呵責を惹起するその文言は、道を踏み外さんとする若者に対して有効的であるからこそ多用される手法である。しかしだからこそ、慎重に取り扱うべきものとも言えるだろう。
「何か反論があるなら聞いてやるよ」
 冥府の底の凍土が如き、冷たく鋭い殺気の嵐は、軽率な言葉を吐く咎人を、決して逃さじと吹き荒れる。

「こんな所でたむろしてコントかましてんじゃねぇぞボケェ!『何の了見で喧嘩売って来やがったんだコラァァァ!』」
 冷たく切り裂く殺気と反する、熱気に満ちた威圧感を放つのは塩崎・曲人だ。ずかずかと大股で歩み寄りながら怒鳴りつけ、猛獣じみた凄味でもって睨みつける。あたかも格上の獣に目を付けられた小動物のように、完全にビビリちらすいぬせんしゃたちの中に、はとりから許可された反論を述べる気概のあるものはいなさそうである。
 当然ながら、曲人にとっては反論も弁解も悔悟の言葉も必要はない。そんな知恵にも期待はしていないし、ましてや無為に喧嘩を売っているわけでもない。飽くまでその言葉は、烏合の衆を蹴散らすための、ひとつの策に他ならない。
 彼の言葉と視線には、ユーベルコードの力が乗っていた。切った啖呵に交えた問いは、獲物を縛る鎖となる。真を述べればほどけるが、答えぬならば身を苛む。舌を引き抜く閻魔にかわり、咎人殺しの獄吏の裁きは、怯懦に溺れる敵を搦める。

 倒れはせずとも、多くの者がメンチにやられ、動きを鈍らせもがく中、何体かはやはり、無事な個体――つまり、真実を答えたものがいたらしい。たとえば
「りょーけんってなにー? わかんないー」
…とまあ、こういう具合に。これも間違いなく、質問に即した真実である。というか残ったのは、ほとんどがこの手合いである。つまり無事に残ったのは、はえぬきの能天気だった。強面の曲人ですらも一瞬脱力感に襲われるなか、入れ替わりにはとりが前へ。
「間の抜けた空気に惑わされる程のかわいげが無いんでね」
 その言葉通り、彼の表情は真剣なまま。身には蒼い気炎を纏い、周囲に凍気を巡らせる。コキュートスの凍れる大刃を横薙ぎに、無造作に振るえば、せんしゃの一台が弾き飛ばされ、ひしゃげて潰れて骸と帰る。怯えながらも慌てながらもどこか間抜けた雰囲気の敵を、顰めた眼で冷たく睨み
「理不尽な暴力で悪いな」
 皮肉げに、心にもない謝意を述べもう一振り、叩き潰した。

 さらに浮足立って逃げ出そうとするいぬせんしゃたちだが、拠点のガンナーたちによる援護射撃によってその後退が妨げられている。はとりも曲人もそれほどの期待はしておらず、自衛を優先して離れておくように要請していたのだが、なかなかどうして、優秀なものだ。あるいは敵が思いの外にぽんこつなせいかもしれないが。
(…足元?に石とか転がしとくだけでも効果あるんじゃないか)
 そんな風に一瞬思った少年であったが、まさかそこまではと首を振り、小さく息を吐いて薄く笑った。

●ぐだぐだ・りたーんず
 しかし敵もさすがにオブリビオン、必死で走れば剣を振りながら追う猟兵の脚から距離を取ることは不可能ではないらしい。軽快に走る手負いの敵に対し、はとりが呼びかけることには。
「おい犬、野球やろうぜ」
 悲しいかな、さすがにはえぬきの能天気、全てを忘れて振り返ると……
「やるー!」
 ちょいちょいと誘う敵に対し、尻尾があるなら振らんばかりの弾んだ声で、そう答えたのだった。

 ピッチャーを任じられれば、自らの持てる球、即ち砲弾をなんの疑問もなく撃ち出した。ちゃんと撃つこともできるらしい。放ったコントロールばつぐんの剛速球ストレートにはしゃぐ微笑ましい姿に、対するバッター・柊はとりは――獰猛な笑みを浮かべた。
 纏った蒼炎が燃え上がると、それは寄る砲弾に縋りつき、鋼の弾のその速度すらも凍てつかせる。そうして届けられた手頃な弾、絶好球を、満を持したる氷の刃で真芯に捉えて打ち返した!
 再び勢いを取り戻した砲弾は、さらに蒼炎の力を宿し、撃った機体へとぶち当たり
「みごとなぴっちゃーがえしーっ!!」
 その背後に控えた複数の機体ごと、まとめて吹き飛ばすのだった。

●バッター替わりまして塩崎曲人
 試合中の不幸な事故によって再び気勢を削がれたオブリビオンたち、もはや野球どころではない。ずっと野球どころではなかったのだが、彼らにとっては今そうなった。
 しかし、打者はまだいて、勝敗はまだ決していない。それならば、試合が終わる道理はないわけで。
「野球…しようぜ?」
 投手が球を寄越さないので、鉄パイプを構えた打者は自ら転がる瓦礫を投げ上げ、フルスイングで打ち飛ばす。それは車体の背へと当たり、装甲を削って近くに落ちる。男は休まず瓦礫を拾い石を拾い、時々いぬせんしゃの外れた部品を拾い、矢継ぎ早に打ちまくる。穿ち、抉り、跳ね返る射弾たちは、走り惑うオブリビオンたちの足元?に転がり込んでは、時々その機体を横倒しにしたりするのだった。
「ヒャッハー!」
 陽気に吠えながら獲物を追い立てる曲人と、転がったいぬせんしゃを容赦なく淡々と叩き潰すはとり。ぐだぐだを許さず徹底的に圧し潰す男二人には、鬼気迫るものがあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

大門・有人
不採用含めて全て歓迎だ。

国の母ちゃんってのが本当に分かるなら、会わせてもらいたいもんだぜ。
包囲されてるなら陣を乱す。ガンバーバイクで突撃だ。回避行動を取りながら回転弾倉式散弾銃に専用炸裂弾を使用、いぬせんしゃの履帯を狙って機動力を奪う。
接近すればUC始動、ジャンプからの有人チョップで真っ二つにしてやるぜ!(という気持ちで攻撃)

仲間と共闘の場合は拳銃やバイクで敵の注意をそらして援護だ。ボスの乗ってるいぬせんしゃは探す必要はないか?
とにもかくにも破壊を優先、敵戦力の撃破を狙うぜ。

お前らこそ国に帰った方がいいんじゃないか?
骸の海まで送ってやるぜ!(髪を整えつつ)



●いぬせんしゃさいごのひ
 こちらにも、いぬせんしゃたちのぐだぐだ適当な文句に律義に反応する猟兵がひとり。
「国の母ちゃんってのが本当に分かるなら、会わせてもらいたいもんだぜ」
 呆れ混じりに笑う大門・有人は改造人間である。誰により作られたかすら分からないのだから、故郷や母親などはもってのほかである。自身の行動によって泣いてくれる肉親がいるものなら、それは僅かなりとも嬉しい事なのかもしれない。
 而してそれを渇望する程でもなく、顔も知らねば深く想像して感傷に浸れるわけでもない彼は、構うことなく走り出す。先の猟兵たちの攻撃によってなおも浮き足立つ敵部隊の真ん中へ、砂塵を巻き上げ一直線に弾丸のように突っ込んだ。

 重量級の車体でぶちかましながら陣営をかき乱し翻弄するも、数体を轢き飛ばすうちに、立て直したいぬせんしゃたちがきゅらきゅらと音を鳴らしながら、寄り集まって迫ってきた。正面から当たれば、いかなガンバーバイクといえど弾き飛ばされ手痛いダメージとなるだろう。そういうユーベルコードである。
 眼前で急転回してやれば、空転した後輪がさらに激しく砂を蹴り出し煙幕として、いぬせんしゃたちの視界を塞ぐ。その隙に有人は隊列の側面に回り込むと、片手に持った長身の銃の引鉄に力を込めてやる。その口径、その弾倉の大きさからして、使用者の腕にかかる反動は決して小さなものではないことが容易に想像できる。この猟兵の強剛な骨格と強靭な筋肉があってこその得物と言えるだろう。
 回転弾倉式散弾銃に装填され、射出された専用炸裂弾は、オブリビオンの足元、転輪を覆い繋ぐ履帯を目掛けて突き刺さり、その名の通りに炸裂した。履帯は千切れて外れ、正常な走行を不能とする。
 大振りな弾倉を回転させて次弾を用意すると、さらに回り込み次の一体へ。今度はやや狙いが逸れて地面に着弾するが、なにせ少し大きな石を踏んだだけでも転んでしまう相手のことで、その衝撃だけで転倒してしまった。
 最初に較べればすでにだいぶ数を減じていた集団である。機動力を生かして機動力を奪い、翻弄しながら数度リロードし炸裂弾をぶっ放すだけで、もはや指揮や挽回やなんかは望むべくもなく、それどころでもない状況となっている。こうなればもはや、貴重な弾丸を浪費してやる必要もないだろう。

「お前らこそ国に帰った方がいいんじゃないか?」
 愛機に銃を任せ、その背より降りて地へと立ち、風圧と砂埃によって乱れた自慢のリーゼントに櫛を通す。勝利を前に勝鬨をあげるかのような挑発的な態度であるが、それは彼にとっては単純なそれではなく、必要な、大事なことなのだ。そしてそれがいかに気に障るものであったとしても、すぐさま激昂して襲い掛かってくるような気力と機動力を兼ねて残したものはいないようである。
 ガタの来た車体を何とか動かして駆けてくる敵たちの姿に、有人は櫛を仕舞い、自らのグローブを検める。残存敵を一通り確認すると、男は跳んだ。
「骸の海まで送ってやるぜ!」
 今度は回り込みなどせずに真っ向正面に躍り込み、その手刀を一閃する。制御に凄まじい力を必要とするであろうショットガンを、片手で御する強さでもって繰り出されるチョップは、さらにユーベルコードによって力を増した特別製、正義の味方の必殺技というやつだ。
 十全の状態でないいぬせんしゃたちは、試し割りのように次々と容易く叩き割られて行くのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『ドヤガオン・カイザー』

POW   :    超必殺!カイゼル・ドヤ・クラァアーッシュ!!
【超質量超強度の近接攻撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【とどめ(対象の生死は無考慮)のドヤポーズ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    疾風!カイゼル・ドヤ・ブレイド熱血一文字斬り!!
【カイゼル・ドヤ・ブレイド】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
WIZ   :    熱血ドヤカウンター!
【攻撃後、熱血ドヤカウンター・ポーズ】に変形し、自身の【移動速度】を代償に、自身の【熱血電磁塗布装甲で攻撃をいなし、反撃能力】を強化する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠タケミ・トードーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 累々と転がるいぬせんしゃたちの残骸の中で、何者かの高笑いが響き渡った。タメが長くてよく通る、めちゃめちゃ“聞かせてくる”高笑い。
「はーっはっはっ(略)はっはぁ! よくぞここまでこの俺を追い詰めたな、褒めてやるっ!」
 よく通る声だが、なんだか篭っているし、窮屈そうである。どこから聞こえてくるのかと猟兵たちが見回せば、倒れた敵の一機が僅かにかたかたと動き出した。しばらく見ていると、その背の扉が開き、中から何者かが
「はーっは、ちょっと待て、はーっ…これ、引っかかっ…はっは、ここが抜ければ…」
 さらにしばらくもたもたぐだぐだとする様子を眺めていると、突然にその機体から、金色で、硬質のものが『むりゅっ』と言った感じで出て来たのだ。それはやはり窮屈そうに少しずつ、少しずつその姿を機外へと晒し、徐々に形を成し――最終的には、四肢を持ち、翼を持ち、剣を持つ、全身が金色の大型のロボットの姿で拠点の前へと立ち上がったのだ。その表情は、どうしようもないほど、それ以外の表現が思い浮かばない程に、100%間違いなく、ドヤ顔をしていた。
「はっはっはぁ! どうだ驚いたか、この程度の攻撃で傷をつけられるほど、俺の装甲はヤワではない!」
 ヤワではないらしい金属塊らしい装甲のロボが、どうして、どうやって、自らの全高の半分もないいぬせんしゃのコックピットにその身を押し込んでいたのか、甚だ謎である。残念ながら彼の乗機も失われ、それを確かめるすべもない。
「さあ、どこからでもかかってこい!」
 そのオブリビオンが、やたらとパースの利いた立ち姿で剣を構え、やたらとうざったいドヤ顔でもって猟兵たちの攻撃を促してくる。疑問や違和感はどうあれ、とにかく気にせず戦うしかないようだ。
柊・はとり
……

UC【第二の殺人】発動
真犯人は明らかにこいつだが
罪状を口にするにはある種勇気と覚悟がいる…
お前な、何もかも変なんだよ

ノックスの十戒って知ってるか?
難解な科学的説明を要する機械だらけだし
謎を解く手がかりは全て隠滅され
俺の第六感ですら違和感が解決する事はないだろうな…
謎オーバーテクノロジー駆使しやがって

超強化された能力で鈍足化した敵を翻弄
攻撃を【見切り】、【鎧砕き】で奇天烈な装甲を叩き壊す
防御が緩んだ所に【氷属性のなぎ払い】を叩き込み冷凍して【マヒ】させる
凍らせても顔が腹立つぜ

運が悪かったな
探偵を喚んだ罪
探偵にアンフェアを仕掛けた罪
骸の海で後悔しな

解決編は以上だ
渾身の【全力魔法】をぶつけて寝る


大門・有人
不採用含めて全て歓迎だ。

長いな笑い声。
金属か疑わしい登場だ。正々堂々ってのも好感が持てるが、敵なら叩く。

あの装甲を通るか分からないが、自信満々なら好都合だ。小細工不要、行くぜ!
UCを威力重視で発動する。屋外なら邪魔なものもない、ジャンプで高々度から有人キックを食らわせてやる!
問題はあの図体の攻撃だ。やってやれないことはねえ、覚悟に激痛耐性、ガンバレットで武器受け。可能なら味方も守りに入るぞ。

攻撃を上手く止められれば、まあ止められなくても髪を整える。
豪快な高笑いにその自信、ヒーローらしくていいな。
だが大事なものが欠けてるぜ。人様を守るっていう心がな!
悪党なら悪党らしく、正義の怒りで倒れてやがれ!


スリジエ・シエルリュンヌ
(まともの評価基準下限が0に近い)
…………我妻さんか首をかしげた理由、わかりました。探偵でなくてもわかりますね、これ。
攻撃方法はまともなのに、まともなのに…!どうして…!

試しうちのノリを続行しますね。もうこうしないと、攻撃できない気がして…!
文豪探偵、推して参ります!

でもなんか、笑ってたら噎せそうですね、彼(?)
いえ、オブリビオンなので油断はできません…!
攻撃、当たらなければいいんです。避けて避けて、炎剣を展開。
反撃範囲に攻撃者である私がいない場合、どう反応するんでしょうか?ちょっと気になります。
拠点の平和のために、そのまま爆発四散してください……!


塩崎・曲人
この状況でドヤ顔出来るオマエはある意味すげーよ。褒めてやる
じゃあちょっと現実見ようか
「これから全力でボコボコにするんだが、なんか言い遺すことあるか?」
いや、どれがホントの顔かわからねーんだが
3対6個の目ン玉全部ひん剥いて最後の景色を目に焼き付けとけ

硬いんだか柔らかいんだかよく分からんやつだが……
痛がる以上、効いてんだろ
なら死ぬまで殴りゃ良い

反撃で剣振ってくるって話だが
……手足短くて振りづらそうだ
つかそんなミエミエの太刀筋で当たるかよ!

(勝った)
この拠点、今後大丈夫なんかねぇ……
うっかり鍵の閉め忘れで陥落とかしないだろうな?


エグゼ・シナバーローズ
なんなんだお前は!液体金属か!無茶苦茶しやがって!

反射的に言っちまうが、答えを聞いても訳わからんと思うので答えを聞く前に殴る!
実際に殴るわけじゃねーぞ、あんな剣で斬られたらぜってー痛ぇから。

遠くから『精霊のみちしるべ』で火、水、風、地の精霊を呼んでそれぞれ単体の属性で数発ずつ【属性攻撃】してやる。
どーせ やかましい反応するから、その反応を見聞きして一番効いてそうな属性を判断したら
その属性の精霊による【全力魔法】、UCスプライト・マーチを発動!

戦う上で敵と距離をとることを一番重要視するぞ。
遠距離でも攻撃手段はあるかもしれねーが、近距離にいるよりはバリエーションも減るだろう、ってか斬られたくねー。



●ELEMENTARY
「……」
 彫像のように微動だにせず、得意げな表情と構えを維持するオブリビオンと、投げかけるべき言葉や採るべき行動について思案する猟兵たちの間に、たった数秒間の、さりとて非常に長い沈黙が流れた。
 脱力感に支配される者もあり、ツッコミどころの多さに閉口する者もあり、あるいは……極力関わりたくないために誰かが動くのを待っていた者もいたかもしれない。こういう時に割を食うのはやはり
「なんなんだお前は!液体金属か!無茶苦茶しやがって!」
 エグゼ・シナバーローズのようなタイプであろう。静寂を破り、開口一番にそう指摘してしまった。もちろん答えを求めているわけではないし、ましてや言葉を交わしたいわけでもない。いぬせんしゃに搭乗している間も含めてまともなセリフを発していないその敵に対し、意思疎通など求めていないのだ。
「液体金属ではないぞ? というかそもそも液体金属というのは融点が低く常温で
「うるせー!!」
 急にまともな受け答えをしてくるあたりもまた腹立たしい。エグゼはその小さな銃を連射した。勿論腹立ちまぎれの癇癪によるものではなく、きちんと策を立てた上での行動だ。
 “精霊のみちしるべ”に導かれるは、彼の友たる精霊の力。それも単一のものではなく、火、水、風、地の四属性を織り交ぜた巧妙なものである。ただしそれはユーベルコードによるものではなく、大きな威力を発揮するものではない。

「はーっはっはっ熱っはっはっはっ痛っははは熱っ! そんな豆鉄砲が効くと思ったか!」 
 やせ我慢がへたくそ。ご丁寧に熱いって言ってるし。
劇的な効果はエグゼも期待はしておらず、属性の得手不得手を探ろうとした行動であったのだが、それは非常に分かりやすく功を奏したようだ。小さく笑うと、エグゼはさらに構え、遠く離れた金色の巨体に向けて、今度は正真正銘のユーベルコードを放った。
「自然の代行者たちよ、出でよ!」
 呼びかけると、そこに数百もの炎の精霊たちが現れ、次々に飛び出した。発した声からすれば火、あるいは熱を苦手とするらしいオブリビオンはその集団の先陣を横薙ぎに切り払うが、当然ながら連続的に殺到するそのすべてを一撃で除けるはずもなく、そして“カッコよく”振り抜いた刃を戻すまでの間に迫る全てを回避することもできようはずもなく――
 接触の刹那、大音声が響いた。
「熱ぇぇぇっ血! ドヤカウンタぁぁぁぁぁ!」
 次はドヤガオン・カイザーの笑う番であった。無防備に見えるポーズをキメたそのままに、一身に精霊の攻撃を受けながら、しかし小ゆるぎもせずに立つその装甲は、輝きを増し、全ての攻撃を弾き続けていた。
 それは鈍重ながらも巨体の歩幅で迫り、距離を詰め、猟兵へと剣を構えて向かう。エグゼは果たして、退がりながらもオーラを纏って防御を固め、振り下ろされる大剣の、まさかに備えることとなった。

●OVERCOME
 結果として、備えた“まさか”が訪れることはなかった。エグゼが安全圏へ離脱し遂せたわけではなく、そして巨剣が空振ったわけでもなく。
「長いな笑い声」
 金色に輝く熱血の刃は、猟兵を捉えされど切り裂くこともなく、黒く鈍く、クールな男のその拳ひとつによって受け止められていた。
 割って入った大門・有人が受けた刃を弾き返すと、オブリビオンは押し退けられて数歩下がって構え直す。悔しげな様子で警戒を見せるそれとは対照的に、やはり有人の表情は涼しげで、今もまた櫛でリーゼントを整えている。

「豪快な高笑いにその自信、ヒーローらしくていいな。正々堂々ってのも好感が持てる」
 大門・有人はヒーローである。ヒーローとは、職業や役柄の名前ではあるが、もっと言えば、生き方や美学だったりするものだ。そういった意味では、その相手、ドヤガオン・カイザーのようなタイプは嫌いではないのだ。人々を守るヒーローが、人々を不安にさせるのでは仕方ない。ならばいつでも自信満々に笑っている方が良いだろう。男の腕にも、流れた血が滴っている。纏った手甲“ガンバレット”をして、まったくの無傷とは行かなかったようだが、どこ吹く風と余裕の表情。
「はーっはっはっはっは、そうだろうとも! よく分かっているじゃないか!」
 得意げなドヤ顔で嬉しそうに、さらに長々と笑うそいつに、猟兵も小さく息を吐いて笑い。
「自信満々なら好都合だ。小細工不要、行くぜ!」
 宣言してから大地を蹴ると、オブリビオンの巨体を見下ろすほどに、高く高く飛び上がる。暴走戦車の時と違い、今度は屋外、遮蔽物も障害物も、巻き込む住人の一人もない。ユーベルコードの力を享けて足元を抉るほどの跳躍をなし、その脚力でもって、ドヤ顔を忘れて見上げるオブリビオンのその頭部を、有人は猛烈な勢いで踏みつけるようにして蹴り飛ばした。
「ぐぁっ…ふっはは、なかなかやるな…」
 正面からの予告通りの攻撃である。その気迫に避けることができなかったのか、そのヒロイズムのために避けることを自ら許さなかったのか――どちらにしてもその攻撃はドヤガオン・カイザーの頭部に大きなダメージを与え、堪らず再び数歩の後退を余儀なくしたが、それでも倒れることはなく、耐えきった所にやはりドヤ顔で減らず口を叩くのだった。

●HARD punchers
「この状況でドヤ顔出来るオマエはある意味すげーよ。褒めてやる」
 塩崎・曲人も同様に、敵を称賛する言葉を投げる。しかしひねくれ者の彼の場合は、その言葉を素直に受け取るべきではない。
「そうだろうそうだろうとも! いくらでも褒めて敬ってくれても良いぞ!」
 言葉を素直に受け取るべきではないし、不似合いに爽やかで優しい笑顔も当然、素直に受け取るべきではない。
「じゃあちょっと現実見ようか」
「へ?」
 表情をそのままに吐き出された、アンバランスで不穏な言葉こそが、鞘を除いた抜き身である。そうして抜かれ振るわれた刃は、用を終えるまで納められることはない。
「これから全力でボコボコにするんだが、なんか言い遺すことあるか?」
 携えた鉄パイプを軽く抛って持ち直し、未だ疑問符を浮かべるオブリビオンへと無造作に歩み寄る。縦に並んだ顔の、どれと目を合わせてメンチを切れば良いのか僅かばかりの困惑はあるものの、それを表情に出さず。
「目ン玉全部ひん剥いて最後の景色を目に焼き付けとけ」
 その景色には、きっと自身がいるのだろう。全ての顔を変形させるつもりで得物を振り上げ、にぃっと、種類の違う笑みに変え。

 飛び掛かり殴るたびに硬い音を響かせるが、剣で受け止められても、掻い潜りボディを打っても、それほど変わらぬ感触である。敵が防ぎ、声を上げるからには多少なりとも脅威には感じているのだろうが――
 それはともかく、曲人には気になる点がある。防戦のために、そして反撃にあたり両手で持った大きな剣を振るドヤガオン・カイザーであるが……
「……手足短くて振りづらそうだな」
 挑発の意図がないわけではないが、それより何より、単純に気になる。のでツッコんでしまった。
「何をー!? ならば喰らうが良い、疾風!」
 巨体がばばっと忙しくポーズを決めて脇に構え。
「カイゼル・ドヤ・ブレイドぉ、熱ぇっ血、一文字斬りぃぃぃ!!」
 技の名前を叫びながら、猟兵めがけて横一閃にダイナミックに剣を振るう。ちなみに手元を見れば、器用に手首を操って、胴体の突起に阻まれた分の可動域をカバーしていた。存外ダイナミックではない。
 対した男は身を屈めながら踏み込んで、回避しながら距離を詰める。
「そんなミエミエの太刀筋で当たるかよ!」
 構えもアレだし、名前も一文字斬りだし、太刀筋以前にミエミエである。巨体に較べて小さな猟兵に合わせ、低い軌道で剣撃を放つため、その身は前に屈められ、姿勢は低くなっている。
前衛に並び立つ有人も同時に踏み込んで、今は揃って敵の懐に。
「あの装甲を通るか分からないが」
「痛がる以上、効いてんだろ。なら死ぬまで殴りゃ良い」
近く見上げたその頭部へと、二人揃って拳とパイプで渾身の力を篭めてかち上げた。

 機械のくせに脳震盪でも起こしたか、ぐらりと傾き前のめりに倒れるドヤガオン。猟兵ふたりは首尾よく下がってその身を躱している。
呻き身じろぎ、言うことを聞かない身体を起こそうともがく敵に対し、有人はすぐさま攻撃はしない。敵が正々堂々を申し出たのであれば、起き上がるまで待つべきだろうか、との逡巡もあるのだろう。
「お前には、大事なものが欠けてるぜ。人様を守るっていう心がな!」
 異形なれどもヒーローらしい美学や心根を持ち、有人にとっても共感できる部分が多くあるオブリビオン。しかしその一点のみにおいて、“彼”と“それ”とは決定的に相容れぬ、決定的に異なるものだ。
 ――あるいは、そうでなくてはならない。人と裏付ける記憶もなく、人ならざる身を持ち、人を害する衝動を抑えながら、高潔に人らしく生きるには、ただ人が人たるよりも、難しいことかもしれないのだから。

「まだまだ行くぜオラァ!」
 今の曲人には、倒れているからどうこう、無防備だからどうこうということは関係のないことである。敵は巨きく、強く、動いているからには生きている。間違いなく手加減などが適切でないほどの脅威なのだ。それならば、難しく考える事もない。『死ぬまで殴りゃ良い』だけなのだ。
 だから、より安全に確実に迅速に、人々にとっての危険を排除することは、紛れもない正義だろう。それでいい。殴って、殺せば、それでいい。難しいことを考えるのをやめた曲人は、休むことなく勤勉に、こちらもやはり宣言通りに、倒れた敵を引き続きボコボコにしていくのだった。

●細かいことが気になって
「…………我妻さんが首をかしげた理由、わかりました。探偵でなくてもわかりますね、これ」
 次こそはと思い続けながら、最後まで変なオブリビオンしか現れなかったことに、スリジエ・シエルリュンヌが苦しげな表情を浮かべている。
「攻撃方法はまともなのに、まともなのに…! どうして…!」
 使用するたびドヤポーズを必要とするユーベルコード群、言うほどまともではないのだが…すでに彼女のまとも評価基準のハードルは、すり足でもなければ通過できるほどに低くなっているらしい。今後、日常生活に支障をきたすような後遺症が残らなければ良いのだが。
 何度目か気を取り直して、彼女はもう一度敵へと向かう。その目は明らかに疲れを湛えているが、どうやら戦闘で酷使された肉体の疲れではない。完全に精神的なもので、言うなれば『げんなり』している。
「文豪探偵、推して参ります!」
 元気な声と疲れた目で、展開するは先と同じユーベルコード、桜火乱舞。試しうちとして度々放たれたその攻撃である。つまるところスリジエは気を取り直したわけではなく――やけっぱちであった。

 深く考えてしまわぬよう、試しうちのノリを継続…貫徹することに決めたスリジエの思考が、油断はせずとも多少緊張感に欠けるのは無理からぬことだろう。自然、戦闘には関わりのない、余分な考えも浮かんでくるわけで。
「でもなんか、笑ってたら噎せそうですね」
 その言葉に、起き上がろうとするのを待たずに殴られ続けていたドヤガオン・カイザーが突然がばっと立ち上がり、素早くそつなくポーズを定めた。
「はぁーっはっはっはっはぁっ! むせたりなどするものか! 俺のリソースの数十パーセントを割く笑いと決めポーズに、死角などはないっ!!」
 意思に関わりのない自動機構であるかのように、間髪のない完璧な挙動。本当に自動なのかもしれない。何にせよ、すぐさま起き上がったそのタフネスだけをとっても、油断していられる相手でもなさそうだ。『そもそもむせるというのは人間の体の防御機能による反射で…』とかなんとかドヤ顔で垂れているのは聞かないし聞こえない。この上は戯言は気に留めず、ひたすらに当たらず当てるのみである。どうにかいくらかの緊張感と真剣味を取り戻したスリジエは、無数の燃え立つ桜花を従え、眈々とその敵の隙をうかがう。

(反撃範囲に攻撃者である私がいない場合、どう反応するんでしょうか?)
 ふと、今一度の余計な思考。それは確かに、実現不能であれば机上の空論、無用の思考であろう。しかし現状を見れば、敵の正面にて有人と曲人が抑えており、こちらに詰め寄って反撃することも困難に見える。であれば、今の時点でこの疑問には価値があるのではないだろうか。
 どうあれ結局のところ、やることは攻撃であり、反撃があるようなら避けるしかない。そういう意味ではやはり余計なのだろう。なのでスリジエは、疑問をわざわざ振り払うでもなく、踊る桜花を敵へめがけて解き放った。
 桜火は躍ってオブリビオンを取り囲み、今度も美しい文様を描きながら殺到する。剣を振るい、ポーズを決めるとまたも装甲が光を放ち、炎の光を映すが如くにその攻撃を弾いて退ける。
「はーっはっはっは! この俺の熱血ドヤカウンターの前ではどんな攻撃も通用しない!」
 得意満面で反撃のために歩を進めようとすれば、しかし前衛の二人によってその着地点へ先回りされて阻まれるし、装甲に任せて踏み潰そうにも物理法則までは無視できず、一点集中の力技によって弾き返されるのだ。結果、反撃できる距離に辿り着くことなく、桜火乱舞の猛威が収まりしばらく後に、その装甲も輝きを衰えさせたのだった。
「くっ…おのれぇ…!」
 大げさに悔しがるオブリビオンに対し、スリジエは『こんなものか』という感じ。結局どちらも大した被害はないわけで、次を試せば良いのだし、そう気にすることもないだろう。これは――そう、“試しうち”なのだから。

●V. No Ch...
 掛ける言葉に最も長く悩み、その理不尽に最も振り回された少年が、不機嫌顔で敵の眼前へ向かう。その姿は気炎を纏うようにゆらめいて、輪郭をいくらか曖昧にする。
「お前な、何もかも変なんだよ」
 押し殺したような低い声には、感情の制御に掛かる苦心が見受けられる。柊・はとりの行使せんとするユーベルコードは、対象の罪を告発し、その能力を増強するもの。そのための勇気と覚悟をも増強するのだが、それをもってしても、告発が難しいものである
 だって、探偵という役割をもって自らの口から説明するにはあまりにも…なんというか…理不尽で、トンチキなので。
「ノックスの十戒って知ってるか?」
 彼の声が、理性的で、静かだったのはここまでである。増幅された勇気と覚悟とが強く後押しする。
「難解な科学的説明を要する機械だらけだし、謎を解く手掛かりは全て隠滅され、俺の第六感ですら違和感が解決する事はないだろうな…それに謎オーバーテクノロジーまで駆使しやがって」
 推理ものには、一定のルールという物が存在する。必ずしも全てが遵守されるわけではないが、約半数が破られることも滅多にない事であろう。そんな理不尽さ、馬鹿馬鹿しさに、はとりの声は徐々に大きく、纏う揺らぎもさらに大きくなっていく。
 増幅された彼の感情は二つだが、ただいま彼を支配する感情は三つである。“勇気”と“覚悟”と…即ち、憤怒。
「ど、どうしたアルか」
「やかましい」

 コキュートスの権能に己の怒りを乗せて、際限なくその周囲の熱を失わせていくはとり。大気温との隔絶が、そこに揺らぎを生じさせる。それはつまり、抑えきれない怒りの大きさ。それはもはや、無視できないほどの規模。
 間合いが近づくと、はとりは一気に踏み込んで距離を詰める。巨体を押し留める二人の脇をすり抜けて、襲い来る剣をすり抜けて、踏み切り跳ぶとその正面で、大剣を横薙ぎに振り抜いてやる。またも励起されたドヤガオン・カイザーの熱血電磁塗布装甲によって、その斬撃は弾かれて、やはり傷をつけるには能わず。
「効かないと言っている! さあ今度はこちらの……むっ!?」
 ドヤ顔で述べ立てるもしかし、反撃の為に持ち上げようとした大剣は動かない。それどころか、右腕が自由に動かないのだ。見遣ればそこには氷塊が張り付き、見る間に拡大し、その姿勢のままに顔を胴を経由して、左肩まで凍り付いてしまったのだった。攻撃をいなす装甲といえど、覆う氷を弾き飛ばす機構とは当然ながらなりえない。
「凍らせても顔が腹立つぜ」
 もはやドヤ顔かどうかではない。その怒りはこのふざけた敵を打ち倒すまで収まることはないだろう。

 身動きが取れないままにユーベルコードによる装甲の強化が切れれば、猟兵にとっては千載一遇のチャンスと言える。
「いい加減にしとけー!!」
「拠点の平和のために、そのまま爆発四散してください……!」
 桜火と炎精、天地四方の別もなく、隈なく巨体を焼き尽くし、無防備な敵へと重大な損害を与え。
「運が悪かったな。探偵を喚んだ罪、探偵にアンフェアを仕掛けた罪。骸の海で後悔しな」
 増強された能力での全身全霊、全力の氷撃を叩き込み、再び超低温に閉じ込めて。
 連続的で急激な温度変化により、劣化した装甲に対し、一点に集中した鉄パイプによる強烈な突きが叩き込まれ、そして。
「悪党なら悪党らしく、正義の怒りで倒れてやがれ!」
 人々を虐げる者への正義の怒り、探偵による理不尽への怒り、そして余計な疲労感やストレスへの怒り。幾人の猟兵の様々な怒りを追い風に、男が地を蹴った。
跳び上がって太陽を背にした有人の、強烈な蹴りがその機体に叩き込まれる。一気呵成の攻撃により、瞬間的に蓄積されたダメージに耐え切れず装甲板は砕け、その内部へと有人キックが貫通する。
「くくっ…はっはっは…楽しませてくれるじゃない、か…ぐふっ」
 ヒーローの着地と同時に巨体のオブリビオン、ドヤガオン・カイザーは見栄えするポーズを崩さないままにゆっくりと倒れ…地に伏す前に爆散し、跡形もなく敗れ去ったのだった。
 だが、倒れるその瞬間の表情はとても自信に満ちたドヤ顔で――もしかしたら最後まで、負けてないつもりだったのかもしれない。

●LONGSHOT
「解決編は以上だ」
 言いながらはとりの身体がゆらぐ。今度は陽炎のような歪みではなく、本当に彼自身の身体が傾いたのだ。重大な負傷などはないはずだが――
「寝る」
 ユーベルコードの副作用により、その睡魔には抵抗できないのだ。ギリギリの宣言通り、名探偵は終幕と同時に眠りについた。
 程なく拠点の住人たちが次々に外に飛び出して来て、猟兵たちに礼を述べたり喜びのあまり踊りまわったり、眠った少年を拠点内のベッドへと連れて行ったりしている。当面の危険が去っただけで、この地が根本的に危険なことには変わりないのに呑気なものである。
「この拠点、今後大丈夫なんかねぇ……うっかり鍵の閉め忘れで陥落とかしないだろうな?」
 皮肉と冗談を交えながらも、曲人は本気で心配しているものである。安心感からはしゃぐのも分からないでもないのだが……と。
「あっ。」
 騒いでいた住人のひとりが思い出したように気の抜けた声を出し、そのままぱたぱたと拠点の建物の、その裏手へと駆けて行く。それからしばらくして響くのは、重い音。がらがらがらがら…がしゃん、という。
 たとえば――そう、大型車を蔵するガレージのシャッターが閉まるような。

 …とりあえず、理不尽に襲われたひとつの拠点が救われた――のだろう。きっと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月10日


挿絵イラスト