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酒は百毒の長

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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 木造問屋やコンクリート製の店舗が年代バラバラごちゃ混ぜになって並んでいるどこかノスタルジーなのに歪な街。そこで騒ぎは起きていた。
「おい、何だよこれは!」
 激昂する獣耳を生やした男を前に、太った男は口から炎をチラチラと吹き出していた。
「そんなわけがあるか! 俺はここまでちゃんと封も切らずに運んできたぞ!」
「じゃあ、このタプタプに入ってる水は一体何なんだよ!」
 獣耳の男が指差した先には、水が目一杯に入った桐製の酒樽が並べられていた。
「お前、さては俺たちの金を使って酒も造らずに遊んでやがったな!」
「ああ? んなわけねーだろ! うちの酒屋にケチつけるって言うのかよ、ああ!?」
「争っておる場合か!」
 今にも取っ組み合いを超えた大喧嘩を始めそうな様子の2人を、この商店街の長である老人が一喝する。
「しかし、これでは龍神様へのお供え物が……!」
「我が街の神は話せば分かってくださる方じゃ。……それよりも」
 老人は自らの背に生えた黒い翼から羽を一つ毟り取る。
 そしておもむろに柄杓を樽の中から抜くと、そこに入っていた水に羽をつけた。
「どちらでも良い。飲め」
「長、それは……」
 その意味を察した獣耳の男が息を飲む中、太った男は鎮痛な面持ちになって柄杓を受け取り、一息に飲み干した。
 その行為に野次馬から悲鳴があがるが、太った男は怪訝な顔をしてから首を捻る。
「……長……ひょっとして、手品の類でもお使いになられましたか……?」
 いつまで経っても変化が訪れない事態に太った男だけでなく野次馬の間に別の動揺が走る中、獣耳の男は何かに気づき、青ざめた。
「これは……まさか、鴆様……!?」
「『酒は百毒の長』と言う者もおるだろう?」
 人だけでなく妖をも殺す猛毒の羽を持つ妖怪「鴆」は深く頷くと、この事態が起きてしまった原因の予想を告げた。
「この世界から、『毒』が失われておる。だから仕込まれていた酒がただの水になってしまわれたのじゃ」

「……これが、『毒』が失われたことが確認されて最初の事例となったそうです」
 ルウ・アイゼルネ(マイペースな仲介役・f11945)はそう言って本を閉じた。
「調べた結果、現在のカクリヨファンタズムには毒や薬といった存在があらかた全て無い状態となっております」
 この異変を引き起こしたオブリビオンは、楽しみにしていた酒をお預けにされて弱った龍神を飲み込んだことを皮切りに、その商店街に住む多くの妖が無数の骸魂に取り込ませて別のオブリビオンに変貌させてあちこちに散らばらせることで、だんだんと被害範囲を広げているという。
「毒を無くす現象をより早く広げるためか、今回の主犯は高速で動きやすい輪っかのオブリビオン『輪入道』を尖兵として用いています。……そして最初の被害者であり依代としている龍神の住む神社を根城としているようです」
 回転する炎車を携えた「炎と轢殺」を司る生首も、正体不明な主犯も妖を飲み込んで自らの糧にしている。このまま放置しておけば、妖が消化されて消滅してしまうかもしれない。
「今回は神社までの道を塞ぐ輪入道を一掃し、主犯との一騎討ちに持ち込む形が望ましいと考えられます。カクリヨファンタズムに住む方々の生活を取り戻すために、皆様のお力をお貸しください」


平岡祐樹
 擬似カタストロフ勃発! お疲れ様です、平岡祐樹です。

 今案件では「毒」にまつわるあらゆる攻撃・ユーベルコードが全て無効化されている状態となっております。
 酔っ払っていてもこの案件に入った瞬間に酔いが覚め、タバコを吸っても何の味もしなければむせたりもしません。
 当然、第1章・第2章のプレイングにもその異常は作用しております。毒を使用する前提のプレイングの判定は非常に辛くなりますのでご了承ください。
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第1章 集団戦 『輪入道』

POW   :    燎原火炎陣
【激しく回転しながらの】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【他の輪入道】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    紅蓮疾走
自身に【燃え盛る炎】をまとい、高速移動と【回転する炎の輪】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    ファイアホイールスピニング
【回転速度】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

バジル・サラザール
……ほんとだ。毒がまるで使えないわ。心なしか身体もだるいし……

ひとまずは他の手段を使いましょう、主に『属性攻撃』を生かして『ウィザード・ミサイル』で攻撃するわ。弱ってそうな敵を優先、各個撃破を狙いましょう
単純な火力よりも手数と技量で攻めましょう。相手の回転を打ち消すように一点集中を狙うわ
ポーションも……消火には使えるかしら?
それでも止められない敵の攻撃は『野生の勘』も使いつつ、回避や防御、相殺しましょう

毒を無くす……体に悪そうなものが無くなればいいくらいの気持ちでやったのか、毒の功罪も分かった上でやってるのかしら

アドリブ、連携歓迎



「……ほんとだ。毒がまるで使えないわ」
 バジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)は掌を開いたり閉じたりを繰り返す。
「毒を無くす……体に悪そうなものが無くなればいいくらいの気持ちでやったのか、毒の功罪も分かった上でやってるのかしら」
 不愉快を隠そうともしないその表情には隠しきれない辛さが見て取れた。
「心なしか身体もだるいし……」
 体内で毒や薬を調合できるバジルの体にとっては、毒は必要不可欠な形成物質である。それが突然失われてしまえば、調子が崩れるのは当然のことではあった。
 そんな本調子ではないバジルを目敏く見つけた輪入道が転がってきた。
「……ひとまずは他の手段を使いましょう」
 炎の矢を周りに生成させて、一斉に解き放つ。輪入道は回転する速度と炎の勢いを増させると矢を包み込んで同化させた。
「毒だったらもう悶え苦しんでるでしょうに……」
 相手も自分を形成する存在だからこそ何も気にせずに突っ込んでいるのだろう。
 だからこそ単純な火力には頼らず、手数と技量で相手の回転を打ち消すように一点集中を図っていたのだが、相手はパン屑を投げられた鯉のように嬉々としてそれを体内に入れていく。
「まったく……こんなところで体力を使わせないでよ……!」
 バジルは舌打ちしながら、近くにあった凹凸のついた木製の電柱に蛇腹を巻きつけて登った。
 火力をさらに増した輪入道は電柱に体当たりを仕掛ける。しかしあまりに速度を増し過ぎたのか体力が尽きたのか、輪入道は一度ぶつかっただけでその場でひっくり返った。
 上から覗き込んでみれば、目を回しているようでしばらく起きてこなさそうである。だが体に纏われている火の気は収まっていなかった。
 今はまだ何ともないが、もしかしたらこの電柱に引火しかねない。
「ポーションも……消火には使えるかしら?」
 バジルは白衣の中に忍びせたままだったポーションに目を向けた。毒性が抜けているのであれば、これも今やただの水となっているだろう。
「せっかく使った材料が無駄になっちゃったわね……。容器はもったいないけど、私のやつ当たりの犠牲になって」
 そう呟いてバジルは気絶している輪入道目掛けて元ポーション入りの瓶を叩きつけてみた。
 すると火を消された輪入道は簡単に崩れ落ち、飲み込んでいた妖怪と分離した。
「……呆気なさ過ぎるわね」
 バジルは相手のひ弱さと、それに少しでも追い詰められてしまった現状に思わずため息をういた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

シャムロック・ダンタリオン
さて、今回は「毒」が失われたというが…。
まぁわかりやすい毒ならまだしも、「酒」の要素まで奪うことはないだろうに。これではせっかくのワインの味も台無しだ。

さて、まずはこの車輪どもが相手か。もとはこの商店街の住人か。ならばこの街並みも利用させてもらうか。【世界知識・戦闘知識】
【存在感】も見せつけつつ敵を狭い路地に誘い込み、範囲を絞った「氷」の「突風」で片付けてやろう。

で、相手が元の姿に戻ったら、覚えてる限りのいきさつや、黒幕の居場所などを聞き出してみよう。

※アドリブ・連携歓迎



「さて、今回は『毒』が失われたというが……」
 普段は図書館に籠っているシャムロック・ダンタリオン(図書館の悪魔・f28206)は嘆息する。
「まぁわかりやすい毒ならまだしも、『酒』の要素まで奪うことはないだろうに。これではせっかくのワインの味も台無しだ」
 興が乗った時にはグラス片手に探偵小説などを飲むこともあるが故に、失われてしまうことは死活問題ではないが惜しいことである。
 だからこそこうしてわざわざ出向いてきたというわけだが。
「まずはこの車輪どもが相手か。……元はこの商店街の住人か」
 様々な建物が乱立し過ぎて風情も何もあったものではない商店街の道は普段は大勢の客で賑わっていたのだろう。
 しかし今は代わりに大量の輪入道が忙しなく行き交っていた。
「ならばこの街並みも利用させてもらうか」
 シャムロックは逃げも隠れもせず、堂々と商店街に正面から足を踏み入れる。するとその姿を見つけた輪入道達が一斉に襲いかかってきたが、ひらりと初撃を躱すと路地へと流れるように入る。
 避けられた輪入道達も当然その後を追いかける。しかし同時に十何体も入ろうとしても狭い路地は受け付けない。
 お互いにぶつかり合い、譲り合っているうちにシャムロックの準備は出来上がっていた。
「凍え、水に飲まれて逝ね」
 ゾロゾロと縦一列に行進してきた輪入道達を氷の突風が吹き抜ける。
 輪入道達の体にこびりついた氷は炎によって溶かされ、水となり、輪入道達の体を濡らして腐らし、崩していった。
「おい、貴様、起きろ」
 中から出てきた東方妖怪の襟元を掴んで揺らし、強引に起こさせる。そして覚えてる限りのいきさつや、黒幕の居場所などを聞き出した。
「ふむ……飲み薬がただの水だったので、返品しに来たらあれに襲われた、と」
 しかし今回救助出来た者達は皆、酒や薬がただの水だったことに驚き怒って商店街に駆け込んだ者達ばかりで、店主や従業員である者はいなかった。
 しかし龍神を飲み込んだというオブリビオンがいそうな場所は絞れた。
「あそこか」
 シャムロックは腕を組みながら、商店街の建物から頭一つ抜け出している山の頂上に見える赤い鳥居を睨みつけた。

成功 🔵​🔵​🔴​

リコリス・ガレシア
メイン人格は明るく天然な少女。
今回の戦闘人格はクールな鬼の少女。酒好きなので普段より一層不機嫌。

「みんな、お薬やお酒がなくて困っているのです」
「急いで、取り込まれた龍神さん達も助けないとなのです」
鳥居を目指し走る少女
敵が来たら【明鏡止水】を発動。
「っ!?」
攻撃を避けた少女の姿が変化。鮮やかな黒髪に赤眼、頭には帽子の代わりに般若の面を斜めに被り、彼岸花柄の着物を身に纏う。
「先に言っておくが、今の俺は酔いが醒めて機嫌が悪い」
左腕を天叢雲剣へ変化させ右手に持ち、隻腕で構える。
「纏めて来い」
【天候操作】で雨を降らせ炎の輪を弱め【明鏡止水】で動きを見切った相手に【怪力】を乗せた一撃で叩き切る。
「邪魔だ」



「みんな、お薬やお酒がなくて困っているのです」
 リコリス・ガレシア(多重人格者の神器遣い・f28348)はなぜかオブリビオンの姿がない商店街のメイン通りを直走る。
「急いで、取り込まれた龍神さん達も助けないとなのです」
 そこへ警備の穴に気付いた別の輪入道が轟音をたてて迫ってきていた。
「っ!?」
 その音に気づいた時、輪入道の姿はもう目前にあった。徒歩と車ではそもそもの速度が違うのだ。
 素直すぎる直線の攻撃をリコリスは飛び込むようにして避ける。その動きと輪入道の風圧でリコリスの帽子が飛んだ。
 コンクリートの壁にぶつかった輪入道はケタケタと気味の悪い笑みを浮かべながら方向を転換する。
 するとそこにはリコリスの代わりに、鮮やかな黒髪に赤眼、頭に般若の面を斜めに被り、彼岸花柄の着物を身に纏う少女が立ち上がろうとしていた。
「先に言っておくが……今の俺は酔いが醒めて機嫌が悪い」
 少女は左腕に右手を添える。すると左腕が刀へと姿を変わり、肩口から外れた。
 少女は刀を口に挟んで固定し刃を抜くと、残った鞘を路上に吐き捨てる。
「纏めて来い」
 その言葉を理解したのかは定かではないが、輪入道はその場で回って炎の輪を何個も生み出すと一緒に少女へと転がり始めた。
 しかしそこへ突然前触れのない豪雨が襲いかかる。炎の輪は叩きつけるような雨脚の前にあえなく鎮火させられた。
 取り残された形になったが、それでも自力だけでも十分と、輪入道は構わず少女に突っ込んでくる。少女は眉間にシワを寄せた。
「邪魔だ」
 そして車輪の脆い部分へ的確に、撫でるように刀身を押し当てる。
 輪入道の体は巻き込んだ形となった刃を砕くどころか逆に切断されてバラバラと崩れ落ちる。
 そして皮を剥かれたリンゴのようにされた輪入道の口の中から核にされていた妖怪が転がり落ちた。
 少女は鞘に入れた刀を肩に当てて左腕に戻す。そして不機嫌そうに前方を睨みつけながら鳥居に向けて歩き始めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

クトゥルティア・ドラグノフ
※アドリブ共闘大歓迎

お酒かぁ……私未成年だから、まだ飲んだことがないんだよね。
苦いとはよく聞くけど、ちょっと味が気になったり。

でも毒かぁ……私には関係ないかな?
だって、普通に斬ったり投げたり殴ったりするだけだもん!
【戦闘知識】で有利な位置取りを心がけつつ、攻撃のタイミングを【第六感】で【見切り】、【カウンター】で【怪力】のせた剣撃や【切り込み】を浴びせるよ!
隙を見せたら、ひたすら切り刻むってね!
突進してくるなら月腕滅崩撃!
車輪をガッチリ捕まえてジャイアントスイング!一緒に突っ込んでくる他のも巻き込みつつ投げ捨ててあげるよ!



「お酒かぁ……私未成年だから、まだ飲んだことがないんだよね。苦いとはよく聞くけど」
 今年成人を迎えるクトゥルティア・ドラグノフ(無垢なる月光・f14438)にお酒の知識はない。彼女の生まれ育った町や師匠の元にはお屠蘇の文化が無かったのだろう。
 だからこそ、少しだけ興味がある。今の年齢でも飲める世界や国に行くほどの意欲はないけれど。
 しかし少なくともこのままでは、この世界で勝利の美酒とやらを味わうことは叶わないのであろう。
「でも毒かぁ……私には関係ないかな?」
 酒と同じようにこの世界から消えてしまった物に対して思いを馳せていると、単体行動をしていた輪入道達が集まり隊列を成そうとしていた。
 すると互いの身を掛け合わせて回ることで、ただでさえ速かったその勢いを増していった。
 しかしクトゥルティアは不敵な笑みを浮かべると片足を後ろに下げて構えを取った。
「だって、普通に斬ったり投げたり殴ったりするだけだもん!」
 先頭が間合いに入ったところでサイキックエナジーがクトゥルティアの第三・第四の巨大な腕となって顕現し、その一撃を受け止める。
 しかし連なった質量の前にクトゥルティアの体はじりじりと押されていく。だが壁と板挟みにされる前に足を踏ん張らせた。
「うりゃああああ!」
 腰を使って体を捻り、輪入道を力任せに振り回す。
 先頭にいた者が変な形で外されたことにより、連結していた後方の者達も引きずられ、目を見開きながらも抵抗できずにガタガタと倒れていく。
 奥にいたためにその連鎖から逃れた輪入道もいたが、クトゥルティアが持つ輪入道を躱して突進出来るほどの技量はなく口をパクパクさせて見つめるのみ。
 完全に目を回した様子の輪入道から手を離すと、その体はまるでフリスビーのように綺麗に飛んでいき、そんな棒立ちになっていた輪入道にぶつかってお互いに粉砕した。
『これでノックダウンだ!!』
 そして体勢を立て直しきれてない輪入道達に向かって組んだ大腕を振り下ろしていく。
 痛覚を持たない仮初の腕は燃え盛っていた炎を物ともせずにその火元となっていた木材をへし折り、骸魂と妖怪に分離させていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

スコル・カーバイト(サポート)
・敵の数が多い時は【カルバリーエッジ】または【ヴァイオレンスヴォルフ】で敵を一掃。まとめて処理したいときは鎖武器でまとめて拘束するなどの手っ取り早く済ませるような工夫をします。
・森林などの身を隠せるような場所での戦闘は、地形を生かした奇襲戦法を仕掛けます。
・他のキャラと連携できる場合は連係プレイを優先



「はっ、どいつもこいつも楽しそうに暴れてんな!」
 スコル・カーバイト(ひねくれ灰狼・f06122)は牙を剥きながら笑い、屋根の上を渡り走っていた。
 その姿を追い、大量の輪入道達は軍隊の行進のように何重にも横一列になって併走していた。
 複数体が合わさることぇスコルの後には追いつけても壁や段差をよじ登るということは出来ないらしく、この追いかけっこはスコルが飛び移れる屋根が無くなるまで続くと思われた。
 だがそれは、スコルが丸腰である、という条件の話である。
『そらそらっ!!派手に踊りなっ!!』
 一方的に殴れる場所から投じられた、投げ用にしては大きすぎる斧が先頭にいた輪入道の車輪を砕き、バランスを崩されたそれは周囲の者と重なり合って大クラッシュを起こした。
 しかし2番手にいた輪入道は先ほどまでの反省を生かしたのか、先頭が壊れた瞬間に突き飛ばすことで、その巻き添えに合う事を避けつつ進もうとしてきた。
 そんな突き飛ばされたことでバラバラになりながら道に転がった鬼の顔をした核の部分から商店街の住民が吐き出される。
 だが輪入道は突然現れた第三者を気にせずに回る速度を増していく。気を失っている様子の住民に逃げることが出来る訳がなく、その体は輪入道に踏み潰されようとした。
 しかし触れる間際で輪入道の巨体は突然浮いた。
「あっぶねぇな……!」
 歯軋りするニコルの手には鎖が張り詰めており、それは輪入道の車軸の隙間を通りつつ対面にある建物の壁に突き刺さっていた。
 鎖によって宙に浮かばされた輪入道が振り子のように触れる中、後に続いていた輪入道はぶつかることで無理矢理突破しようとする。
 しかし押し切ることは出来ず、重力に従って戻ろうとする仲間の体と衝突し続けて火花を散らしていた。
 ニコルは足元に突き刺した持ち手を足で踏みつけて固定すると、いつの間にか手元に戻っていた斧を構える。
「ここから先は通行止めにさせてもらう、この道を通ることは諦めるんだな!」
 豪快に投じられた一撃は鎖に繋がれていない輪入道のみを的確に狙い、砕き散らせた。

成功 🔵​🔵​🔴​

二天堂・たま(サポート)
ワタシは流血を伴わない攻撃手段が主だ。
武器:ケットシーの肉球による“負の感情浄化”や、UC:常識を覆すピヨの波動によるスタミナ奪取を多用する。

直接触れないような相手(体が火や毒で覆われている等)の場合はUC:アルダワ流錬金術を応用した攻撃が主力だ。
(火に覆われているなら水、毒液で覆われているなら砂嵐等)

しかし実際には直接的な戦闘以外の方が得意だな。
ボビンケースの糸を使った即席の罠の用意、料理や情報収集や掃除。
UC:親指チックで呼びだした相棒による偵察と、同UCによる居場所交代(テレポート)で潜入・解錠して味方の手引きとかな。

もふもふが必要ならなでても構わんぞ。UCで呼んだ相棒達(ひよこ)もな。



「毒が失われた世界、か」
 塀に腰掛けて腕を組む二天堂・たま(神速の料理人・f14723)の脳裏には、フグやウナギ、ジャガイモといった毒を持つ食材が現れては消えていた。
「確かに毒が無くなれば処理が簡単になって助かる物はあるな。……だが」
 しかしそれを料理として活かすには様々な脇役の存在が必要となる。
 それは酒精、辛み、酸味などといった……毒としてまとめて片づけられてしまったそれらである。リスクに対してあまりにリターンが無さすぎる。
「自力で外せる毒のためにこれだけの物が失われるというのは、割に合わんな」
 そう呟いてヒラリと塀の上から降りた二天堂に向けて大口を開けた輪入道達が迫ってきていた。
「団体のお客さんか。……すまないが、今キミに食べさせられる料理は用意出来んのだ」
 轟音に向き直った二天堂は残念そうに首を振る。しかし初めから料理を求めてなどいない輪入道は全く反応せずに突進を続ける。
「……お客さんではなく厄介者であったか。ならば、速やかに退店していただこう」
 二天堂は腰を捻ると、戻す反動に乗せて右腕を突き出した。
『ぐれいとぉ!』
 その動きと勇ましい掛け声とは裏腹に柔らかそうな肉球が輪入道を受け止める。しかしそれだけで輪入道の体は二天堂を吹き飛ばすことも出来ずに崩れ落ちていった。
「……そういえば、ここの世界では骸魂も立派な食材だったな」
 依代にしていた住民を吐き出し、消失していく輪入道の残滓を細目で見守った二天堂はふとこの世界の郷土料理の存在を思い出す。
「余裕があったら、骸魂を採取してみるか。ケーキの材料になるくらいだ、甘いかしょっぱいかのどちらかであろう?」
 そう呟きながら別の輪入道に移された視線は、敵ではなく作業が面倒な食材を前にした時の目に変わっていた。
 食う側から食われる側になったという、生物的恐怖を感じた輪入道達は回れ右をして二天堂から全速力で離れていく。
「おやおや、ちょっとイキが良すぎるな。あれだけで逃げ出すなんて」
 こうしてこの場には目を回して倒れている一人の住民と二天堂だけが取り残されたのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『竜撃大砲』

POW   :    有り余る生命力
自身の【飲み込んだ竜の生命力】を代償に、【大砲から竜の生命力】を籠めた一撃を放つ。自分にとって飲み込んだ竜の生命力を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    強靭な肉体
【竜の肉体】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。
WIZ   :    理解が及ばぬ精神
自身の【飲み込んだ竜の精神】を代償に、【理性を失った竜】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【牙や爪】で戦う。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はサフィリア・ラズワルドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 「それ」は竜を殺すことにのみ特化していた。
 竜を弱らせ、その体に寄生し、その命を用いてより多くの竜を殺し、また新しい体に移る。
 そのサイクルを繰り返すことで「それ」は存在する理由を得ていた。
 しかし竜が世界から逃げたことで「それ」は必要がなくなり、鋳潰されていった。
 赤く発光する熱源に放り込まれる寸前で「それ」は思った。
 竜を殺す機構がもっと強ければ、別の武器として転用されただろうに……と。
 そしてその想いは竜が逃げた先の世界で、発現した。
 竜が好きな存在を消し、精神的に消耗させて乗っ取る機構は……結果として全妖怪を苦しめる機構へと変貌を遂げたのである。
 「それ」は手始めに乗っ取れた龍神の背で静かに座す。好物である酒を取り返すべく、多くの龍神がこの地にやってくるのを待つために……。
シャムロック・ダンタリオン
(龍神の肉体を乗っ取った奇妙な装置を見て)
あの装置で龍神を操ったうえで、「毒」を奪ったというわけか。
装置についてはあとで調べるとして、まずはあれを動かしている骸魂を滅せねばならぬな。

とりあえず、箒を【操縦】しながら敵をけん制しつつ、【選択UC】で動きを封じてみようか。足りぬようなら【エレメンタル・ファンタジア】で「氷」の「突風」でも起こしてやろうか。【属性攻撃】
で、動きが止まったなら魔導銃から【呪殺弾】を放ち、装置を破壊できないか試してみようか。

※アドリブ・連携歓迎



 長い石段を空飛ぶ箒で一息に飛び越えると、木々に囲まれていた境内のど真ん中で鎮座する龍神の姿が見えた。
「あの装置で龍神を操ったうえで、『毒』を奪ったというわけか」
 龍神の肉体の上に乗っかった奇妙な装置を見てシャムロックは眉を潜める。
 あのような巨大な大砲を愛用する龍神はいないわけではない。だがあんな禍々しい雰囲気を持つ大砲を好んで用いる者がいるとは到底思えない。
 そこから、龍神を操っている骸魂があれに込められていると判断した。
「装置についてはあとで調べるとして、まずはあれを動かしている骸魂を滅せねばならぬな」
 そうして箒の出力を最大にして一気に距離を詰めていく。
 しかしそのまま馬鹿正直に正面から突撃するのではなく、器用に魔力を操ることで始動と停止を繰り返すことで龍神の攻撃を空振らせていった。
 シャムロックを逃した龍神の叩きつけで派手に石畳が砕け散る。衝撃で高々と打ち上げられた石礫を避けながらシャムロックは小声で語りかけた。
『来たれ、氷の精。その息吹にてすべてを凍てつかせよ。』
 どこからともなく現れた氷の妖精が極低温の冷気を放ち、深々と地面に刺さった地点から龍神の体を凍らせていく。
 動かせなくなった腕を引き抜こうと龍神は体を捻って体勢を変えると、凍っている箇所に向けて魔力がこもった光弾を放った。
「まだ足りぬか。ならお望み通り加えてやろう」
 爆音と共に砂埃が舞う中、血を撒き散らす腕を振り上げる龍神に向けてシャムロックは氷の魔力を練って、解放する。
 そうして生じた氷の竜巻によって龍神の全身を等しく凍っていった。
 しかし体は凍ってもそれを操る大本の意識は飛んでいないようで、薄い氷の奥で龍神の体が身動ぎしているのが見える。
 一時的な物になりそうだとはいえ、確かに動きを止めた龍神に向けてシャムロックは魔導銃を構える。
「そこら辺の爬虫類なら止まるが、機械はそうはいかぬか。だが、直接体を蝕む呪いならどうだ?」
 毒と呪い、結果は似たような物でもその実体は全く異なる物。背負われた大砲に向けてシャムロックは一切の出し惜しみをせずに、呪力が蓄えられた弾を次々に撃ち込んでいった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リコリス・ガレシア
鬼の少女は暴走する殺戮機械を前に
「竜殺しの絡繰、それが黒幕の正体か」
頭に斜めにかけてある般若の面に指をかけ
「俺の神器も竜神の類に所縁がある」
顔の正面へ移動させ、闘争本能と身体能力を解放する。
「仇討ちだ。その竜神をやらせはしない」

【残像】を伴う高速移動で接敵し、隻腕の右手で天叢雲剣を振るう。
「全力で行って正解だった。流石は竜神の肉体か」
敵の強化した攻撃を【明鏡止水】の見切りと華麗な剣捌きで【怪力】の【武器受け】流し、竜を操る機械へ【カウンター】を叩き込む。
「目障りだ」

神剣に霊気を【魔力貯め】暗雲を呼び
「墜ちろ」
剣を振るうと圧縮された霊気を解き放ち【天候操作】で竜に寄生した機械へ雷撃を叩きつける。



「竜殺しの絡繰、それが黒幕の正体か」
 カランカラン、と音を立て、鮮やかな黒髪の少女は境内に立ち入る。
「俺の神器も竜神の類に所縁がある」
 そして頭に斜めにかけてあった般若の面に指をかけて正面へ移動させ、爛々と輝く赤い瞳を隠した。
「仇討ちだ。その竜神をやらせはしない」
 その行為は縛り付けていた闘争本能と身体能力を解放させた。
 声が聞こえたか否かは定かではないが、体にまとわりついていた氷を振り払って前に出た龍神が大口を開けて咆哮する。
 ピリピリと震える空気や肌を気にすることなく、少女は左腕を刀に変えて右手に取った。
 そして振り上げることで鞘を彼方に飛ばすと、返す刀で振り下ろされてきた龍神の爪を受け止めた。
「全力で行って正解だった。流石は竜神の肉体か」
 あまりの重量にカタカタと震える刀と腕だが、刀が押しのけられることも面の奥にある表情が崩れることもない。しかし受け流すには相手の体はあまりにも大きすぎた。
 お互いに相手の出方を伺い、同じ体勢で睨み合う中で龍神の体から突然力が抜けた。
 それにより龍神の全体重が少女に押し付けられる。だが同じ重量でも意識を持って押し付けられるのと何となく上に乗っかってきた物では対処のし易さが違う。
「……目障りだ」
 戦いの最中で意識を失った相手を不愉快に思いつつ、華麗な剣捌きで龍神の腕を受け流すとそのまま龍神の体のあちこちに残っていた氷を足がかりにして、竜を操っているであろう大砲に肉薄した。
「墜ちろ」
 上空を覆い尽くしていた黒雲から不穏な音が起こる中で少女が刀を振るうと、刃の中で圧縮されていた霊気を解き放たれる。
 すると禍々しい金属目掛けて音もなく稲光が落ち、一拍遅れて凄まじい轟音が鳴り響いた。
 そのショックによって龍神……というよりも骸魂は意識を取り戻したがその時には少女の振るう刃が砲塔を擦れて火花を散らす。
 その痛みで龍神が派手に動いたことで足場を失った少女は素早く龍神の体を蹴り飛ばして宙を舞うと砂利道に滑り込みながら着地した。
「ショック療法は効かず、か。……だがこの程度ならば削り切れる」
 鍔迫り合いで自分の身に一切のダメージが入っていない事実に少女は余裕そうに息を吐いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ギャレット・ディマージオ(サポート)
●設定等
ダークセイヴァー出身の冷静沈着な黒騎士です。
オブリビオンに滅ぼされた都市で自分だけが生き残った過去を悔い、人々を守ることを重視して行動します。

●戦闘において
「及ばずながら、手助けさせて貰おう」
「貴様の相手は、この私だ!」
「なんと強力なユーベルコードだ……! (解説) 直撃すれば一たまりも無いぞ!」

・牽制攻撃
・敵の攻撃から他の猟兵や一般人を守る
・敵の攻撃を回避してカウンター
・ついでに敵の強さを解説する
など、防御的・補助的な行動を得意とします。

メイン武器は「黒剣」です。

他は全てお任せします。
別の猟兵との交流や連携等も自由に行ってください。
どうぞよろしくお願いします。



 ギャレット・ディマージオ(人間の黒騎士・f02429)にとって、オブリビオンに滅ぼされた誰もいない街の光景は忌まわしき記憶として脳裏に焼きついている。
 それに比べれば建物が形を保っている商店街はまだマシな方である。たとえ輪入道に蹂躙され、客も店番もいなかったとしても……目の前にいるこれさえ倒せればすぐに復興が叶うのだから。
「及ばずながら、手助けさせて貰おう」
 凍らされ、受け止められ、痺れさせられた龍神は体勢を低くさせて砲塔を猟兵達がなるべく多く射線に入る位置に向ける。
 そして一切の予備動作もなく、凄まじい光線を解き放った。
 不意の一撃を猟兵達は咄嗟に思い思いの方へ散らばり避ける。すると背後にあった、境内と境外を分ける鳥居が塵も残さずに消し飛ばした。
「あれだけの威力、いったい何を……骸魂もなりふり構わず、と言ったところか」
 ギャレットは避けながらも、龍神の目の色が撃ったと同時に濁った瞬間を見逃さなかった。
「今の一撃、龍神の生命力を光線として撃ち出した物だろう。代わりの肉体の当てが無い今は使うべきではない技のはずだ」
 事実、龍神は撃った後の体勢から動こうとはしているが体が言うことを聞いていない。それは龍神の体が抵抗しているのではなく、平時と同じように動こうとして体が応え切れてない、といった様子だった。
 だがそんなデメリットが大きすぎる奥の手を躊躇せずに切ってきた、という事実は骸魂に余裕がないことを雄弁に示していた。
「その判断、間違いであったと後悔させてやろう」
 ギャレットは細身の黒い剣を振るう。すると硬く真っ直ぐにあり続けるはずの刃はしなりながら伸び、砲塔へ巻きついた。
『我が黒剣の姿は一つではない』
 そして勢いよく引っ張ると同時に、黒剣が巻きついていた砲塔が輪切りとなってヒビだらけになった石畳の上に落ち、転がった。
 大砲と感覚を共にしている龍神が体を反り返しながら雄叫びを上げる。そこに判別可能な単語は含まれていなかったが、伝えようとしている意味は簡単に分かった。
「撃たせ続けていれば勝手に自滅することは分かっている。だが、私達は助けられる者を見捨てることは出来ないのでな」
 大砲に操られているだけの哀れな被害神を一瞥し、ギャレットは腕を振って伸び切った黒剣を元の長さに返した。

成功 🔵​🔵​🔴​

大豪傑・麗刃(サポート)
基本右手サムライブレイド(固定)+左手フライングシャドウor脇差(にしては大きすぎるバスタードソード)。
【スーパー変態人】【2】使用時は右手サムライブレイド+フライングシャドウ、左手バスタードソード+ヒーローソードの四刀流。
上記を装備していない場合は適当に。

で真っ向から行くだけなのだ。

ユーベルコードはMS様にお任せしたいが、決まらなければ下記参照

ネタ可なら
可能な限り【ネタキャラとしての矜持】
精神攻撃より直接ダメージが望ましければ【鬼殺し】【変態的衝動】
変化球なら【ギャグ世界の住人】【自爆スイッチ】【零距離鬼神フラッシュ】

ネタ不可なら【スーパー変態人】【2】
それもネタだというなら【剣刃一閃】



「毒の無くなった世界とな。それは大変なのだ」
 武を極める一団の首領である大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)と毒の間に基本的に縁は無い。お酒も特段好んで飲むわけでもない。風邪もしばらくひいた覚えもない。
 しかし自分のような人々だけではないこともきちんと理解していた。
「何より、放置してたらカタストロフだかなんだとか。ならば行くしかあるまいて」
 そう気軽に呟きながら麗刃は長い石段を進んでいく。
 すると見上げた先にあった鳥居がぶっとい光線に飲まれて消失した。
 頭のはるか上を通り過ぎて消えていった破壊光線に麗刃は思わずポッカリ口を開ける。そしてそのまま回れ右をしたくなる気をぐっと飲み込み、境内に突入した。
 そこでは先程の光線を放ったと見られる砲塔が、鞭のようにしなった黒剣によってちょうど輪切りにされた所だった。
「おお、これはありがたいのだ!」
 あのとんでもない光線が撃たれる心配が無くなったところで麗刃は強気に両の手に刀を構えつつ一気に距離を詰める。
『必殺! 鬼神フラッシュ!』
 しかし放たれたのは鋭い斬撃ではなく、にらめっこなどでよく見るような変顔だった。
 防御の体勢を取ろうとした竜神は、突拍子のない麗刃の行動に目を白黒させる。
『そ、それにしてもいつやってもこのワザは自尊心がズキズキいたむ!』
 相手を倒すためとはいえ、自分の身を削る所業に麗刃は悲鳴をあげる。ならやらなきゃいいのに、という真っ当な指摘はお断りである。
「くらえ、わたしの全身全霊!」
 一旦の躊躇いによって生まれた隙を突いて、竜神の体に突き刺さっていたケーブルが切り飛ばされる。
 張り詰めていた所から取れたケーブルから赤い液体がばら撒かれたが、それが繋がっていた部位は反応せずにダランと垂れ下がっていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

六代目・松座衛門(サポート)
ヤドリガミの人形遣い×UDCメカニック。人形を用いて異形(オブリビオン)を狩る人形操術「鬼猟流」の使い手です。
 ヤドリガミの特徴である本体は、腰に付けている十字形の人形操作板です。
 普段は「自分、~君、~さん、だ、だろう、なのか?)」と砕けた口調で、戦闘中は言い捨てを多用します。

UCは全て人形を介した物で、非常に多数の敵を相手にする場合以外は、人形「暁闇」か、その場にある生物を模った物を操り戦います。

人形「暁闇」:「鬼猟流」に最適化された人形で、自律しません。操作糸を介した操作の他、ワイヤーガンやフレイルのように扱いつつ、UCを発動させます。

機械的な仕掛け(からくり等)に興味があります。



「こんなでっかい龍神様が操り人形になるなんてねぇ」
 六代目・松座衛門(とある人形操術の亡霊・f02931)は石畳に散らばった赤い液体を手で拭い取ると指の平で伸ばした。
「……まぁ、毒も薬もねぇってんなら当然のことながら血だよな」
 理屈は分からないが、ケーブルを繋げている部位の行動権をあの大砲は奪えるらしい。そしてその本数はまだまだ多い。
「なら、一気に削っていくとしますか。最優先目標は頭部のぶっとい奴かね」
 松左衛門は指の先から糸を出すと、後ろに控えていた人形に繋げた。
「では、鬼猟流の特別公演。始めさせてもらう」
 松左衛門が指を動かすと、銀の仮面をした人形が突然中身が入ったかのようにいきいきと動き出し、龍神に向けて一気に距離を詰めていく。
 龍神は体全体を振らすことでついた勢いで力無く浮かび上がった腕で人形を払おうとするが、松左衛門が下ろした両腕を一気に上げることで人形は飛び上がり、逆に足場にしてしまう。
 そして鈎爪をつけた腕を伸ばすと、背中から腹部に向かって伸びていたケーブルを切断した。
 龍神の右へ左へ体を捻る動作が無くなった所で先ほどまでは砲塔によって覆い隠されていた背中に着地すると台座から後頭部にかけて問題のケーブルが伸びているのが分かった。
 人形は4つの腕でケーブルを掴むと、全身を使って引っこ抜こうとする。しかしケーブルはピクリとも動かない。
「そんな簡単には抜けないか……。ならコツコツと断たせてもらう!」
 ならばとまるで爪とぎをする猫のように松左衛門が指と腕を動かせば、人形も忙しなく削り始める。
 一発では削り切れなくても、何度も殴られていては頑丈なケーブルもただでは済まず、赤い液体がいくつも細い筋を描いて噴き出し始めた。
 その一方で大砲も放置していてはマズイと感じたのか、短くなってしまった砲塔に音もなくエネルギーを充填して人形を吹き飛ばそうとしていた。
 しかし人形には遠くから動向を把握してくれる操り主の視点があった。
『叩き込む! 一ノ型 角砕き!』
 突然振り返った人形の右ストレートが砲塔の向きをずらし、明後日の方向へ光線の向きを変える。
 龍神の頭部ごと人形を焼き払おうとした光線は、高く伸びた御神木の枝葉の右半分を吹き飛ばすに留まった。

成功 🔵​🔵​🔴​

バジル・サラザール
なかなかしんどいけど、しっかりしないとね

『医術』を生かして『白蛇の鎖』で自分や仲間の回復を中心に立ち回るわ、薬が使えないのが正直辛いわね
攻撃は『ウィザード・ロッド』『記憶消去銃』等を使って、大砲を狙って攻めましょう
敵の攻撃は『野生の勘』も使って、回避や防御ね
賭けになるけど、龍神を回復すれば、大砲の支配を弱められたりしないかしら

毒は世界に欠かせないもの、身をもって感じてるわ。龍神もきっとそうなのでしょう、どちらもしっかり取り返させてもらうわよ

アドリブ、連携歓迎



「なかなかしんどいけど、しっかりしないとね」
 重い体を引きずりつつ、石段を昇ってきたバジルは大きなため息をつく。
「毒は世界に欠かせないもの、身をもって感じてるわ」
 そう言いながら取り出されたのは白蛇の形をした光の鎖。
「龍神もきっとそうなのでしょう、どちらもしっかり取り返させてもらうわよ」
 鎖はひとりでに伸びて、龍神の体を幾重にも拘束した。
「賭けにはなるけど……どうかしら」
 バジルがさらにしかめ面になる中、鎖は身から発する光を増す。すると千切れてもなお刺されっぱなしだったケーブルが急激に構築され始めた肉に押し出され始めた。
 そんなケーブルへバジルは杖を構え、魔力を練った球を叩き込んだ。
 あくまでも専門は毒、時々炎なバジルの攻撃は龍神の鱗を焦がすことは出来ないがぐらついているケーブルを吹っ飛ばす程度のことは出来る。
 そうして千切れたケーブルが石畳に音を立てて転がり、片側だけ外れてぶら下がり始めた細いケーブルが両の手で数え切れなくなる頃にはついに、意識を失っていた龍神の口から声が漏れ始めた。
「ん……ぐうっ……」
 しかし龍神が体の支配権を奪い返して自ら大砲を叩きつけるまでには至らず、逆に大砲が龍神の頭を勢いよく地面に叩きつけた。
 その一撃で再び龍神は意識を失ったが、すぐに白蛇による治癒が行われる。
 だがその動力源であるバジルは杖に地面につけ、体重の一部をそれに託しながら荒い息を吐いていた。
「ったく……腐っても神様名乗ってるなら少しぐらい抵抗しなさいよ……!」
 疲れからか愚痴を漏らし始めたバジルは銃にくっついているダイアルを最大火力にして大砲に向かって撃ち込む。
 魔法と違い、体への負担は少ない代わりに自分の思い通りに曲げられない光線を大砲に当てるため、壁を作り出すケーブルの排除に走った策は功を奏し、光線は大砲の表層をしっかりと削っていく。
 だがその命中率も次第に下がり始めた。
 細かい動きが出来なくなった大砲が龍神の動きを派手にし始めたのと同時に、鞭を打ち続けていたバジルの体も悲鳴をあげ始めていたのだ。
「ああ、もう、ちゃんと狙いを絞りなさいよ!」
 長期戦が出来ないことを何よりも理解しているバジルは自分自身に喝をいれながら大砲を睨みつけていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

オックスマン・ポジクラーシャ(サポート)
『遅れてすまない。状況は理解した。俺の立ち位置は破壊者だ』
黒い鎧と兜を常に纏ったダンピールの男。
本人はいたって真面目だが何故か行動や発言を不安がられる。
遅れてやってくるのは呪いのようなもの。
彼はすまないと思っているし状況も理解しているのだ。たぶん。

真面目さゆえのボケをかますこともあるが善良かつ誠実。
俺には破壊することしか出来ないと語り、実際その通りだが破壊力とそれを活かすための知力は侮れない。
何かを作る事ができる人を高く評価する。

戦闘では漆黒の剣『エタルゾ』や破壊の魔法を駆使して戦う。
自称知性派なので魔力もすごい。
たまにマンホールを投げたりもする。威力や重さ重視。

口調は『~だ。~なのだな。』



 重い金属が落ちる音と同時に境内に黒い鎧と兜を常に纏った男、オックスマン・ポジクラーシャ(遅れてきた破壊者・f12872)の姿が現れる。
『遅れてすまない。状況は理解した』
 右膝をつけた体勢から立ち上がり、謝罪の言葉を言い終わるや否や、どこからともなく取り出されて投げられていたマンホールの蓋が龍神の下顎に直撃していた。
 怒声混じりの悲鳴が仲間から聞こえる中、先制の一撃に成功したオックスマンは黒い大剣を抜きながらゆっくりと近づいていく。
 まるで終幕へのカウントダウンを刻むように焦らず急がず、一歩一歩前に進むたびに境内に吹き込む風が強くなり、マントがはためく。
 龍神は吠えると先程の衝撃で欠けた歯を見せつけるように大口を開け、オックスマンに噛みつこうと倒れかかりながら迫ってきた。手足を繋ぐケーブルが総じて落とされた今、大砲に出来る接近の仕方がそれだけしか無かったのだろう。
 だがオックスマンは避けようともせずに進む。
「……俺の立ち位置は破壊者だ」
 なぜならその程度ならば「壊せる」という絶対の自信があったからだ。
 牙をへし折られながら転がされたた龍神が手水舎に激突して止まる。
 粉々に砕かれた水盤の中に溜まっていた水が龍神の下半身を濡らす中、オックスマンは唯一残るケーブルを無視し、直接大砲の元へと向かう。
 大砲は最後まで諦めずに龍神からエネルギーを吸い取って吐き出そうとし始めたが半壊しているケーブル1本だけでは溜まるのが明らかに遅い。残された時間で鳥居を吹き飛ばしたあの一撃を装填することは不可能に近いだろう。
 そんな哀れな足掻きが成就する様を見届けることなくオックスマンは無言で剣を横薙ぎに払い、大砲の上部を飛ばした。
 砲塔内に生じていた光が消え、台座からまるで水風船が叩きつけられたかのように大量の血が撒き散らされる。
 しかしオックスマンは避けずに平然とそれを浴びると、月明かりが降る夜空を見上げた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 日常 『おいでませ、妖怪商店街!』

POW   :    なんだか美味しそうな物が売ってる…買い食いしよう!

SPD   :    なんや珍しい物が売ってんなぁ…それなんぼするん?

WIZ   :    何やら妖怪の子供達が遊んでるぞ…混ぜて混ぜて!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 諸悪の根源だった大砲が消滅したことにより、世界に毒は戻り、輪入道の骸魂も逃げ出した。
 龍神に捧げる酒樽も元通りとなり、大砲ごとボコボコにされながらも治療された龍神が自分の情けない様を猟兵に謝り倒す一方で商店街では新しい問題が起きていた。
「うわ、これはもう捨てるしかないな……」
 輪入道に飲まれてから放置されていた生鮮食品「だった」物や輪入道がぶち壊した壁や器材が商店街中に散乱していたのである。
「こりゃしばらく粗食だな……」
 猟兵達はボロボロになった商店街の片付けに加わるも良し、その間の子供達の世話を引き受けるも良し、はたまたのんびり散策しつつ掘り出し物を買い取って資金援助をするも良いだろう。
 迎えが来るまでどのように過ごすか、全ては猟兵達の気分次第である。
大豪傑・麗刃
なるほどこれは大変なのだ。
サポートとはいえ、これも何かの縁。
ここはひとつ協力するのだ。

んで?最初は毒がなくなって?その影響でお酒がなくなって?それをどうにかして?お酒を復活した、という流れなのか。
ならやることはひとつではないか。

飲むのだ。

みんな飲んで忘れるのだ!
今日は戦勝祝いに酒復活した祝い!めでたい時ではないか!
おおいに飲み歌い踊り騒ぐのだ!
街の復興とか問題の解決とかは……その間にまじめな誰かがやってくれることだろう!今日ぐらい(も、の人もいるかも……都合の悪い事は忘れよ!)ハメを外すのだ!
んで酒が売れれば経済も回って復興も早く進むのだたぶん。

(そしてたぶんハメ外しすぎてなんかやらかす)



「えーっと、確認するのだ」
 麗刃は両の人差し指を突き立てると左右に振り始めた。
「最初は毒がなくなって? その影響でお酒がなくなって? それを引き起こした輩をどうにかしたら? お酒が復活した、という流れなのか……」
 ならやることはひとつしかない。
「飲むのだ。みんな飲んで忘れるのだ! 今日は戦勝祝いに酒復活した祝い!めでたい時ではないか! おおいに飲み歌い踊り騒ぐのだ!」
 人は皆楽な方へと流れる生き物である。それは人間の感情を食らう妖怪達も同じ。
 街の復興とか片付けとか粗悪品となってしまった商品に対する賠償などといった様々な問題の解決という面倒くさい、目を逸らしたい物事を直視するのは嫌なのである。
「今日ぐらいハメを外すのだー!」
 麗刃の叫びを号砲とし、あちこちで酒盛りが始まった。
 そして酒を飲むとなったらツマミも欲しくなる物である。
 するとその流れを読んだ商人達が賞味期限が近い食品を特価として出してきた。そしてそれを飲兵衛達は買う。
 そうすればゴミが減ると同時に金の回りも再開され、経済も回って復興も早く進むのだ……たぶん。
「……なんなのだこれは?」
 酒が入り、少しだけ頬を赤らませた麗刃の前に謎の焼けた物体が差し出される。
「これか? これはな、太歳を七輪で焼いたもんだ!」
「タイサイ?」
 色々な世界を旅してきたがそんな名称は一度も聞いたことがない。キョトンとしていると差し出してきた妖怪が皿をぐいぐい押し付けてきた。
「まあまあ、美味しいから食ってみ! 騙されたと思って!」
 薦められる謎の食べ物を断る訳にはいかず、麗刃はそれを箸で取ると恐る恐る口に運んだ。
「……豚バラ肉?」
 塩胡椒の味付けがされたそれは、食べ馴染みのある食品を脳裏にもたらした。しかし、豚バラ肉と違って強い弾力があって中々噛み切れない。
「初めて食う奴はみんなそう言うだ! でも喜びな、豚肉よりも体に良いから!」
「そ、そうか」
 UDCアースにいったら、検索してみよう……と内心決意しながら麗刃は太歳を飲み込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リコリス・ガレシア
鬼の少女は一息ついて
「俺はここまでだ。後は任せた」
元のおっとりとした少女の人格に切り替わり、慌てて帽子をかぶります。
「あ、お疲れ様でした!」

商店街を見て片づけを手伝います。
「わたしもお手伝いさせてください!」
元の人格でも神器を宿した両腕や肉体は怪力を誇っているため、荷物運びや大型のごみを片付けます。
「ふふ、こう見えて力には自信があるんです♪」

片付けの最中や終わった後に酒を見かけると、鬼の少女が語り掛けてきます。
(主よ、あそこに酒がある。しばらく飲めてないからな、ここは……)
「お酒は駄目って前も言ったのです!」
(し、しかし……)
「私はまだ未成年なのです!大人になるまでは禁止です!」
(むぅ……)



 戦いが終わり、黒髪の少女は一息ついて石段に腰掛けていた。
「俺はここまでだ。後は任せた」
 そう言って被っていた面を外し、懐に入れる。すると髪の色が毛の先から一気にピンク色へ戻った。
「ん、ん……あ、お疲れ様でした!」
 目が覚めたリコリスは慌てて帽子をかぶると立ち上がり、石段を駆け下りていった。
 眼下では輪入道によって砕かれた見世棚を片付けたり、腐ってゴミとなってしまった商品を片付ける人々の姿が見える。
 その様子を見てるだけ、というのはリコリスには出来なかったのである。
「おばあちゃん、わたしもお手伝いさせてください!」
「ヒッヒッヒッ嬢ちゃん、こんな老いぼれをからかってはいけないよ……」
 声をかけられた鬼の老婆はリコリスの華奢そうな体を見て笑ったが、自分が引きずっていた大樽を軽々と持ち上げたのを見て言葉を失った。
「ふふ、こう見えて力には自信があるんです♪ どこに持っていけばいいですか?」
「あ、ああ……それはね……」
 老婆の道案内を受け、リコリスは所定のゴミ置き場に大樽を音を立てて置いた。その近くでは麗刃の呼びかけで始まった酒盛りのうちの一つが開かれていた。
 そこから香ってくる酒精の香りと楽しそうな笑い声にかぶせて謎の囁き声も聞こえてきた。
(主よ、あそこに酒がある。しばらく飲めてないからな、ここは……)
「お酒は駄目って前も言ったのです!」
(し、しかし……)
「私はまだ未成年なのです!大人になるまでは禁止です!」
(むぅ……)
「どうしたんだい、嬢ちゃん?」
 寂しそうに唸る仮面の声が聞こえない老婆が首を傾げてリコリスに話しかけてきた。
「あ、いえ、何でもないのです!」
「分かるよ、子供の頃は何で私は飲んじゃダメなんだ、ってねぇ……。手伝ってくれた礼だ、鬼特製の甘酒を振る舞ってやるよ」
「そ、そんなお気遣いなく!」
 慌ててリコリスは手と頭を使って断りを入れたが、老婆はその懐に細い眼差しを送った。
「いいんだよ、鬼は礼節を重んじるんだ。逆に断られたら方が困る。……懐の物もあんたに猛反対してるみたいだしねぇ」
 面白そうに笑う老婆にリコリスは顔を真っ赤にして縮こまる。
「す、すいません……ごちそうになります」
 そんなリコリスを見て老婆は楽しげに引き笑いを発するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャムロック・ダンタリオン
〇SPD

さて、いろいろやらかした部分はあるが、事件はどうにか解決だな。
ワインの味も戻ったことだし、何かつまみになりそうなのを買って――

(と、ここで本屋の店内で何か掘り出し物を見つけたようだ)

――こ、これは…、「レメゲトン」の全巻コンプリート…だと…!?

おい、店主!貴様この書物をどうやって入手したのだ!?

――よし、すぐに購入するぞ。値段は言い値で構わん――あぁ、「ただでいいよ」とか野暮なことは言うんじゃない!

(そして帰宅後、いつも以上に書物を読みふけるシャムロックだった)

※アドリブ・連携歓迎



「さて、いろいろやらかした部分はあるが、事件はどうにか解決だな」
 盃を貸してくれた商店に返し、シャムロックはしっかりとした足取りで帰路に着いていた。
「ワインの味も戻ったことだし、何かつまみになりそうなのを買って――」
 しかし持ち帰れる食べ物を店頭で売っている場所は少ない。当然だ、脚の遅い食品を急いで売る必要はないのだから。
 どうしたものか、と悩みながら進んでいた足はとある店の前で止まった。
「いらっしゃい」
 建て付けの悪い扉の先には沢山の古本が並べられていた。生鮮食品を扱っていなかったが故に、片付け作業からこの店は逃れられたようだ。
 奥のレジ横にある畳敷きの段に座って茶を啜る店主に大した興味を持たずに本棚を物色していると、シャムロックの目に背表紙に何も書かれていない古びた書物が入ってきた。
 何となくそれを引っ張り出してみれば表紙には「γοητεία」という文字が書かれていた。
「こ、これは……」
 支えを失い、横に置かれていた書物が傾いて止まる。その表紙にある「θεουργία」を前にシャムロックは何秒か固まった後に、周囲の本をまとめて抜き出した。
「『レメゲトン』の全巻コンプリート……だと……!?」
 Ars Paulina、Ars Almadel Salomonis、Ars Nova。何度見返しても、目を擦っても文字が欠けることも本が消え失せることもない。
 恐る恐る手に取り、偽物じゃないかと全巻を流し読んだシャムロックは思わず大声を出していた。
「おい、店主! 貴様この書物をどうやって入手したのだ!?」
「それかい? ……それは、どうだったかね? 確か原本では無かったが、そこそこ古い時に写された奴だったと思うぞ」
「よし、すぐに購入するぞ。値段は言い値で構わん」
「あぁ? ただでいいよ。この町を助けてくれた礼だ」
「ただだと!? そんな野暮なことは言うんじゃない!」
 完全に目の色を変えて叫ぶシャムロックに、後頭部が異常に伸びている店主はケラケラと笑うのであった。
 そして帰宅後、いつも以上に書物を読みふけったことで、シャムロックの睡眠時間がガリガリと削られていったことは言うまでもない。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月09日


挿絵イラスト