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夢誘いの紫陽花迷宮

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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●紫陽花の路
 曇天の空の下、紫陽花が咲いている。
 赤紫、青紫、青に白に桃色に。とりどりの色した紫陽花は、どこまでも――どこまでも広がっていて。
 揺蕩うような花の群れ、立ち込めるは夢色の霧。それは訪れる者を包み込み、優しく優しく夢へと誘うだろう。
 幸せな夢が、見られるだろう。しかしそれに蕩ける者を、狙う影がある。
 馬の如き体躯に、炎のたてがみ。立派な角が天を向き、牙剥く口で嘶くのだ。
 伝承の麒麟のような、幻想的な姿。骸魂取り込んだオブリビオン達は、ただ静かに獲物を待っていた。

●夢誘いの世界へ
「新しい世界――カクリヨファンタズムで、紫陽花が大量発生してるんだ。解決してきてくれるか?」
 求めに応じ集まる猟兵達へ、助かると笑み向けて。クロード・ロラン(黒狼の狩人・f00390)は、視得た出来事を語っていく。
「この紫陽花の大量発生は、オブリビオンの仕業だと思う。こいつは幽世を埋め尽くして、迷宮を作り出しているんだ」
 そしてその中に、幾頭もの麒麟――オブリビオンの姿も確認されている。彼らは周囲を飛び交う無数の骸魂が妖怪を飲み込んだもので、放置すればどんどん増えて行ってしまうだろう。
 阻止するには、これらを倒しながら先に進み、事件を起こしたボスオブリビオンを見つけ出し撃破する必要があるのだと、黒衣のグリモア猟兵は説明した。
「迷宮は道なりにしか進めねえようになってるんだけど、麒麟を倒しながら進めばきっと終着点に辿り着くだろう。ただ――その前に、厄介な罠があって」
 紫陽花の中を漂う、夢色の霧。それは触れる者に必ず『ありえないほどに満たされた、蕩けるように幸せな夢』を見せるのだと言う。
「その人なりの幸せを見せるだろうから、内容は一概には言えねえけど……うっかりすると抜け出せなくなる、危険なものであることは確かだ」
 おいしいものをたくさん食べる、なんてささやかな幸せを見る者もいるだろう。会いたいと願う人に会える者、叶えたい想いが成就した世界を見る者――その夢はきっと、猟兵達の『願望』を映し出すのだ。
 少し浸るくらいならいいけれど、麒麟に見つかれば無防備なままやられてしまう。そうなる前に何とか抜け出してくれと、クロードは猟兵達を見回し告げた。
「カクリヨファンタズムのオブリビオンは、骸魂が妖怪を飲み込んで変身したものだ。倒せば飲み込まれた妖怪は助けられる。麒麟も、ボスも、それは変わらない」
 世界を元に戻すため、妖怪達を救うため。どうか己の願望に打ち勝ち、紫陽花の迷路を攻略してほしい。そう語った黒狼の少年は、掌のグリモアを起動する。
 美しい紫陽花と、魅惑的な夢見せる霧。それがどんなに困難でも、お前達なら大丈夫だろ――信頼の言葉を紡ぎながら、クロードは猟兵達を新たな世界へと送り出した。


真魚
 こんにちは、真魚(まな)です。

●お願い
 プレイングの受付につきましては、マスターページの「お知らせ」ならびにTwitterにて都度ご案内します。
 期間外に届いたプレイングは不採用とさせていただきますので、お知らせをご確認の上ご参加ください。

●シナリオの流れ
 第1章:冒険(やさしくてひどいゆめ)
 第2章:集団戦(麒麟)
 第3章:ボス戦(????)

●第1章について
 夢の中の出来事を描写、最後に目覚める流れでのリプレイを想定しています。
 どんな夢を見るのか、そこからどうやって現実に戻るのか、プレイングをかけてください。
 技能を並べるより、心情などで切り抜ける方が採用率が上がります。
 描写の関係上、基本的にはソロでの描写となります。ペアやグループで参加の場合、同じ夢を見るという形でご参加いただいても構いません。

●戦闘について
 紫陽花が迷宮のようになった場所での戦闘になります。
 紫陽花の高さは低木なりのものですが、不思議な力により飛び越えたり飛行したりできません。道なりに進むことになります。
 道幅は人二人がすれ違える程度。戦闘に支障となるものではありませんが、狭さを活用したプレイングがあれば積極的に描写します。
 ボスは迷宮の先に現れますので、第2章で集団戦に挑みつつ迷宮攻略も考えていただけると、プレイングボーナスがあります。
 また、集団戦・ボス戦共に、飲み込まれた妖怪はオブリビオンを倒すことで救出できます。

●その他
 ・ペアやグループでのご参加の場合は、プレイングの冒頭に【お相手のお名前とID】か【グループ名】をお書き下さい。記載なき場合は迷子になる恐れがあります。プレイング送信日を同日で揃えていただけると助かります。
 ・許容量を超えた場合は早めに締め切る、または不採用とさせていただく場合があります。

 それでは、皆様のご参加、お待ちしております。
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第1章 冒険 『やさしくてひどいゆめ』

POW   :    自分で自分をぶん殴り、正気に戻る

SPD   :    状況のありえなさを見破り、幻覚を打ち破る

WIZ   :    自身の望みと向き合い、受け入れた上で幻覚と決別する

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幸せな、夢を
 猟兵達が降り立った世界は、まさに紫陽花に埋め尽くされていた。
 色とりどりの花が鮮やかに咲き誇る中、ふわふわと夢色の霧が立ち込めている。
 それに包まれれば、いかな猟兵でも抗えない。意識は奪われ、一瞬の内に夢の中。
 見る夢は、人それぞれ。けれどそのどれもが、見る者にとっての『幸せな夢』なのだ。
 ゆえに、抜け出すことは困難だろう。それでも――それに打ち勝つ必要が、猟兵達にはあるのだ。
黒鵺・瑞樹
アドリブOK

紫陽花の迷路か。
事件じゃなきゃ趣もあって楽しい事かもしれなかったな。ちと残念。
敵を倒すだけなら道なりに進むしかないし、迷う事もないからいいだろうけど。

夢か…。ただ一人でもいい、拠り所が欲しいかもしれない。
彼の人がいれば。何があっても立ち上れる、信念の元歩み続けられる。心揺るがない、絶対的な拠り所。
それは俺の全てを捧げても構わない存在かもしれない。

だけど。だけどそれはきっとあり得ない。
どうしたって俺は俺自身を否定してしまう。望みなんて叶うはずがないと自分自身を呪っている。
俺自身が自分を認められない。「誰かの為に」と持ってた信念すら揺らぐ今じゃなおさら。
だからこれは現実じゃない。




 零れんばかりに咲く、紫陽花の迷い路。その美しい光景をぐるり眺めて、黒鵺・瑞樹(f17491)は小さく微笑んだ。
「事件じゃなきゃ趣もあって楽しい事かもしれなかったな。ちと残念」
 これがただの紫陽花の名所であるならば、鑑賞しながら散策と行きたかったけれど。言葉を零しながら、銀髪の青年は先へと進む。敵を倒すだけなら道なりに進むしかないのだし、迷うことはないだろうと。
 瞬間、彼の意識は暗転する。それは突然すぎて、眠ると言うより気を失うような――そして彼の前に現れたのは、一人の『人』。
(「あれは……」)
 その姿を青い瞳で捉えた瞬間、瑞樹は確信した。それは、ただ一人でもいいと欲した『拠り所』だ。
 相手が微笑む。それを見ただけで、瑞樹は自身の中に確固としたものが生まれる感覚を覚える。彼の人がいれば、何があっても立ち上がれる、信念の元歩み続けられる。そんな揺るがぬ心の支えとなる、絶対的な拠り所。
 それは、瑞樹の全てを捧げても構わない存在かもしれない――けれど。
(「……ああ」)
 瑞樹は、目を凝らして相手を見る。しかしどんなに注視しても、その顔は、姿は、霧がかかったようではっきりとしない。だからわかったのだ、この状況はあり得ないのだと。
 瑞樹は、どうしたって自分自身を否定してしまう。望みなんて叶うはずがないと、自分自身を呪っている。
 ――彼自身が、自分を認められていない。『誰かの為に』と持っていた信念すら、今の彼は揺らいでしまっているのだからなおさらのこと。そんな瑞樹の求める『拠り所』もまた、おぼろげなものでしかないのかもしれない。
(「だから、これは現実じゃない」)
 全ては見せられた夢であり。誰かが作り出したものであり。だから構っていられない――そう、思った瞬間。
 気付けば、瑞樹は紫陽花の迷路に立ち尽くしていた。どれだけの時が経っていたのだろう。一瞬のようであり、永遠のようであり――その不思議な感覚振り払おうと軽く頭を振ってから、彼は先を急ぐように歩き出すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リィン・メリア
……パパ、ママ
溢れる涙を拭って、二人の傍へ

会いたかった
ずっと会いたかったの
どうして、ここにいるの?

笑みは向けてくれるが
言葉は話さない

あのね
話したいことがいっぱいあるの

二人の返事も聞かずに話しだそうとする私に
そっと唇に手を当てられた

……ダメなの?

体をくるりと向けられ
そっと背中を押された

…………

もう、パパとママは……
ここは夢の中なのね

寂しいけれど、まだ私が行く場所ではない
全てを受け入れ

ねぇ、
私の手を握ってくれる?
もう少しで去るから

せめてもの我儘を二人に頼む
どんなに辛い世界でも
私はまだそちらに行けないのね
二人の想いを胸に
そっと目を閉じた

起きた先で何が起こっていようと、私は――
一滴の涙が頬を伝っていた




 ふと気付いた時には、リィン・メリア(帰還者・f28265)は紫陽花迷宮とは異なる場所に立っていた。そこがどこかは、はっきりとしない。けれど、そんなこと――目の前に現れた二人に比べれば、些細なことだ。
「……パパ、ママ」
 彼女の瞳は見開かれ、言葉と一緒に涙が零れる。それを慌てて拭って精一杯の笑顔浮かべて、リィンは両親へと駆け寄った。
「会いたかった、ずっと会いたかったの。どうして、ここにいるの?」
 返ってくるのは、優しい笑顔だ。楽しかった日々、幸せだったあの瞬間。その象徴のような、温かい愛情に満ちた表情で。
「あのね、話したいことがいっぱいあるの」
 弾むように言葉紡いで、リィンは二人の返事も聞かずに話し出そうとする。――けれど、その唇に母はそっと手を当てたのだ。
「……ダメなの?」
 リィンの瞳が、不安げに揺れる。そう言えば、二人は一言も喋っていない。この笑顔は、間違いなくパパとママのものなのに。
 戸惑う娘の肩に父の手が触れ、その身をくるりと反転させる。続けて背に触れるのは両親一緒に、そっと前へと押し出す手。
「…………」
 桃色髪の娘は、それだけで理解した。そう、もう彼女のパパとママは――。
「ここは夢の中なのね」
 振り向き小さく呟けば、二人の微笑みに僅かに寂しさが浮かんだようで。でもわかったのだ、寂しいけれど、そこはまだリィンが行く場所ではないのだと。だから全てを受け入れて――リィンも微笑みながら、二人へその手を差し出した。
「ねぇ、私の手を握ってくれる? もう少しで去るから」
 それは、せめてもの我儘。両の手を包み込む優しい温もり、夢だとしても決して忘れないよう覚えて行こうと。
 言葉はなくても、伝わる想い。胸に抱いてそっと目を閉じれば、二人の気配が遠くなる。
(「起きた先で何が起こっていようと、私は――」)
 決意と共に瞳開けば、広がるは紫陽花の迷路。頬を伝う一滴の涙をそっとぬぐって、リィンは次の一歩を踏み出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メルステラ・セレスティアラ
なんてひどい夢、なの
夢なのだとわかっているのに拒めない
これは乗り越えたはずの過去

目の前にいるのは、故郷が炎に包まれたあの日まで共に生きてきた同胞
一緒に育って一緒に学んで、喜びも悲しみも分かち合った私の大切な……

何もかも放り投げて縋り付きたくなる
『もうどこにもいかないで』
縋って、小さな子供のように泣き出してしまいたくなる

ふと自分の手を見る
すべてを失い心を閉ざしていた私に差し伸べられたあたたかなあの手を思い出す
触れた他者の春の陽だまりのようなあたたかさと優しさを思い出す
ぐっと涙を堪えて前を見る

私は何があっても前に進むと決めたの
だから、もう目を覚ます、ね
私はもう大丈夫
また会えて嬉しかったよ




 メルステラ・セレスティアラ(f28228)が淡いピンク色の瞳を開いた時、視界に飛び込んできたのは懐かしい姿だった。
「なんてひどい夢、なの」
 零す言葉で、これは夢なのだと改めて認識する。けれど、わかっているのに拒めない――目の前に突き付けられたのは、乗り越えたはずの過去だから。
 故郷で共に生きていた、彼女の同胞。一緒に育って一緒に学んで、喜びも悲しみも分かち合った大切な存在、思い出達。それらは全て、『あの日』に炎に包まれ消えてしまった。
 こみ上げる感情に、メルステラの顔が歪む。何もかも放り投げて、縋りつきたくなる。
『もうどこにもいかないで』
 そう言って、縋って、小さな子供のように泣き出してしまえば楽だろうか。
 しかし彼女は、ふと自分の手を見た。全てこの手から失って、心を閉ざしていた頃。差し伸べられた、あの手があった。触れた他者は春の陽だまりのようにあたたかくて、優しくて、その体温をわけてくれた。
 それもまた、メルステラには大切な存在で、思い出だ。だから彼女はぐっと涙を堪えて、真っ直ぐに同胞を見つめた。
「私は何があっても前に進むと決めたの。だから、もう目を覚ます、ね」
 私はもう大丈夫。そう言葉を紡げば、同胞の表情が和らいだ気がする。
「また会えて嬉しかったよ」
 今は浮かべられるようになった、笑顔を見せて。過去に別れを告げた彼女は、見せられた夢の世界から抜け出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

尾白・千歳
さっちゃん(f28184)と

すごーい!
どこを見ても紫陽花がいっぱい!
これ、どこまで続いているのかなぁ
私、ちょっと見に行ってくる!
うわっ!?なんか霧が出てきちゃった
あれぇ?さっちゃん、どこー?見えなーい

…はっ!?
私の尻尾、9本になってない?
えぇー!?なんでー?すごーい!
私、『九尾の狐』になれた!やったー!
あ、美味しそうなお稲荷さん!
そうか、これ私が頑張ったご褒美だね
いただきまーす(パクリと頬張り
…あれ?味がなんか違う
もう一口食べてやっぱり違う
…これ夢?
じゃぁ、このさっちゃんも偽物かな?(ペタペタ
私、迷子になんてならないもん!(ムカッ

私も行く~
さっちゃんは何が見たいの?
私、探しに行ってあげるね!


千々波・漣音
ちぃ(f28195)と

ああ、すげー沢山の紫陽花だな
てか、ちぃ、またうろちょろして離れるんじゃねェぞ
このオレ様の傍にいれば安心…って、また勝手に先に!?

気付けば霧が
どうせ言ってもうろちょろするだろうから
ちぃと絶対逸れないよう注意払っとく

おい、少しは警戒しろよな
…とか言いつつ
九尾になったり好物を前に喜ぶちぃ見て、そっか、って気付く
俺の場合は…嬉し気なちぃと一緒なのが、幸せな夢なんだと
…絶っ対言えねェけどっ
って、はァ!?迷子になんねーよう見張ってやってんだ、本物に決まってんだろ!(ぺたぺたされ照れ隠しつつ

…けど
ほら、行くぞ
もっと一緒に見たいもん沢山あるからな
何って…いや、だから先に行くなってばよ!?




 二人同時に降り立てば、視界を紫陽花が埋め尽くす。その鮮やかな光景見て、尾白・千歳(日日是好日・f28195)は翠色の瞳を輝かせた。
「すごーい! どこを見ても紫陽花がいっぱい!」
「ああ、すげー沢山の紫陽花だな」
 相槌打つのは、幼馴染の千々波・漣音(漣明神・f28184)。彼は手にしたバス停を握り締め周囲を警戒する。
「ちぃ、またうろちょろして離れるんじゃねェぞ。このオレ様の傍にいれば安心……」
 言葉紡いで、視線を隣へ戻す。するとそこに先程までいたはずの少女が、いなくなっていた。
「って、また勝手に先に!?」
 慌てて路の先を見れば、狐の耳をぴこぴこさせた千歳が手を振っている。その様子はまるで無防備で、敵地にいることを理解しているのかどうか。
「どこまで続いているのか、私ちょっと見に行ってくる!」
「おい……!」
 離れるのは、危険だ。急ぎ地を蹴り漣音が駆け出せば、周囲に夢色の霧が立ち込める。それは二人を阻むように広がるが、青年は構わず千歳を目指して。
「うわっ!? なんか霧が出てきちゃった。あれぇ? さっちゃん、どこー? 見えなーい」
 姿が見えなくても、賑やかな声があれば大丈夫。霧の先に見えた影に向かい飛び込めば、そこで漣音の意識は奪われた。
 一瞬の暗転。目を開ければ、すぐ目の前に幼馴染。ほっと安堵の息漏らす彼の前で、ぱちくり瞬きした千歳は自分の背後へ手をやって。
「……はっ! 私の尻尾、九本になってない? えぇー!? なんでー? すごーい!」
 くるくる自分の尻尾を追いかけ振り向きながら、きゃっきゃとはしゃぐ。いつかなると夢見ていた、『九尾の狐』。その夢を叶えた姿で、千歳は嬉しそうに飛び跳ねた。
「おい、少しは警戒しろよな」
 不可解な状況に漣音は注意を促すが、彼女はそれを聞き流し、鼻をフンフン、周囲をきょろきょろ。
「あ、美味しそうなお稲荷さん!」
 少女が見つけたのは、山のように盛られた稲荷寿司。言うが早いか駆け出して、千歳はその山に手を伸ばす。
「そうか、これ私が頑張ったご褒美だね! いただきまーす」
 警戒心なんて皆無に、満面の笑みで頬張る。慌てて青年も追いかけ彼女の様子を見守るが、千歳はこてんと首を傾げた。
「……あれ? 味がなんか違う」
 もぐもぐもぐ。……もう一口。しかしやっぱり、大好物のはずのそれは千歳のよく知る味ではなくて。だから、彼女は気付いたのだ。
「……これ夢?」
 声にすれば、彼女の九本の尻尾も悲し気に項垂れる。そんな感情豊かな幼馴染を前に、漣音はそっか、と納得した。
 自分もまた、『幸せな夢』を見ているのだ。九尾になったりたくさんの好物を前にしたり――そんな、喜びに溢れた千歳と一緒にいる、幸せな夢を。
(「……絶っ対言えねェけどっ」)
 想いは胸に秘めたまま、だから彼にとっての幸福が何かなんて、彼女に明かすわけにはいかない。彼女の様子を見守るのだって、隣で盗み見るように。だと言うのに、この無邪気な幼馴染はんん~? なんて怪訝な声上げながら近付いてくるのだ。
「じゃぁ、このさっちゃんも偽物かな?」
「はァ!? 迷子になんねーよう見張ってやってんだ、本物に決まってんだろ!」
 距離が、近い。獣の手でぺたぺた触られれば、その感触が照れ臭くて。隠すように早口でまくしたてると、千歳は頬を膨らませた。
「私、迷子になんてならないもん!」
 ――瞬間、周囲の景色が一変した。どこかわからぬ不思議な場所から、紫陽花彩る迷宮に。それは、夢に気付いた二人がその誘惑から抜け出せたと言うことだ。
 夢と気付けば、そこに留まるつもりはなかった。千歳は好物の味が違うことに落胆していたし、漣音は、夢の中より求める夢があるのだから。
「ほら、行くぞ。もっと一緒に見たいもん沢山あるからな」
 ぶっきらぼうに言葉紡いで、漣音は路を進んでいく。不器用ながら温かい声に、千歳は笑顔浮かべて頷いた。
「私も行く~! さっちゃんは何が見たいの?」
「何って……」
「私、探しに行ってあげるね!」
「いや、だから先に行くなってばよ!?」
 無邪気な少女、慌てて追いかける青年。その光景は、夢の中よりもっと幸せそうに見えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『麒麟』

POW   :    カラミティリベンジ
全身を【災厄のオーラ】で覆い、共に戦う仲間全員が敵から受けた【攻撃】の合計に比例し、自身の攻撃回数を増加する。
SPD   :    因果麒麟光
【身体を包むオーラ】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、身体を包むオーラから何度でも発動できる。
WIZ   :    キリンサンダー
【角を天にかざして招来した落雷】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を災いの雷で包み】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●紫陽花迷宮で待つものは
 夢より目覚めた猟兵達が紫陽花の迷い路を見れば、あちこちに獣――麒麟が現れていた。
 龍に似た頭は周囲を伺い、夢に囚われた獲物を探している。その視界に入り込めば、たちまち襲い掛かってくることだろう。
 路は幅が狭く、敵に気付かれずにすり抜けるのは困難だ。奥へと進むのであれば、このオブリビオンを撃破する必要があるだろう。それに、この敵を倒せば飲み込まれた妖怪を助けることもできる。
 視界の悪さを活かして一体ずつ確実に倒すのもいい。逆にある程度の数を誘い出し、まとめて撃破することも可能だ。
 そうして倒し、路を進み――黒幕の待つ最奥へと辿り着くことが、此度の猟兵達へ与えられた使命なのだった。
黒鵺・瑞樹
アドリブOK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

麒麟か…気分的に戦いにくい相手だな。確か瑞獣だっけな。
このカクリヨじゃまったく違うだろうが。

迷路内での討伐か、特に鼻が利くとかないならこっちに利がある。遮蔽物を利用しての攻撃は得意だしな。
存在感を消し目立たないようにし紫陽花の物陰に身をひそめ、近づいてきた麒麟を死角からUC無射による柳葉飛刀で眉間を狙い確実に倒していく。
初撃さえ気づかれずにUCを放てれば、あとは近接による暗殺攻撃に切り替えれば、UCのコピーは防げると思うし。
そうして一体ずつ倒し迷路の先を少しずつ進んでいく。
倒す際も周囲に注意を払い、近場に他の麒麟がいないか警戒する。




 色とりどりの紫陽花の向こうに、ちらりちらりとたてがみが揺らめいている。
「麒麟か……気分的に戦いにくい相手だな。確か瑞獣だっけな」
 このカクリヨじゃまったく違うだろうが。呟きながら瑞樹は、紫陽花に隠れてオブリビオンが近付くのを待つ。
 迷路内での討伐、鼻が利く敵などでない限り利はこちらにある。遮蔽物を利用しての攻撃は得意だ――思う青年は両手の武器を握り締め、息を殺して機会を伺っていた。
 その時、敵の一体が瑞樹のいる路へ近付いてきた。まだこちらに気付いてはいない、警戒しているが隙はある――銀髪の男は懐から『柳葉飛刀』を取り出し、そのまま素早く投擲した。
「穿つ!」
 短く声発して、放たれるダガーはユーベルコードの力を帯びて。自分に気付いていない敵ならば必ず狙った部位に命中するそれは、まさに此度の局面にうってつけのものだ。
 果たして、刃は見事麒麟の眉間へ深々と突き刺さった。
『――!』
 高く嘶き、棹立ちになる獣。その足元に滑り込み、瑞樹は右手の『胡』を揮ってその命を断ち切る。
(「こうすれば、ユーベルコードのコピーも防げるな」)
 不意打ち、反撃の間も与えず倒し切る。一体一体確実にこれを繰り返せば、危なげなく進むことができるだろう。
 周囲に注意払い、敵の姿ないこと認めて紫陽花の路を駆ける。瑞樹のその暗殺者めいた動きは多くの麒麟を倒し、そして同時に多くの妖怪を助けたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セレシェイラ・フロレセール
人二人がすれ違える程度の広さの道幅、ね
ということは、オブリビオン同士が隣に並んで移動することが不可能な広さということだね
人より大きな体躯だもんね

暫くの間ここから一歩も進まず、麒麟たちの攻撃に耐えることにしよう
【多重詠唱】で防御用の魔法と攻撃用の魔法を同時に詠唱
防御用の魔法には【慰め】の力を乗せる
魔力を込めた桜の硝子ペンで桜の魔法陣を描く
わたしの慰めの桜、優しく花開け
荒ぶる力を静め、災厄からこの身を守れ
詠唱を更に続け、桜の障壁を重ねていこう

攻撃用の魔法の構築完了だ
道なりに進んできた麒麟を一気に片付けよう
魔法が外れた対象には、放ったUCの光で目が眩んでいる間に更に詠唱を重ねていた魔法弾で追撃するよ




 零れんばかりに紫陽花の咲く、迷い路。そこにふわりと舞い降りたのは、季節外れの薄紅の桜だった。
 紫の花達の中、優しい桜色は融けるようで、けれどはっきりそこに在って。花弁も香りも纏う少女――セレシェイラ・フロレセール(桜綴・f25838)は、周囲見回ししばし考えた。
「人二人がすれ違える程度の広さの道幅、ね。ということは、オブリビオン同士が隣に並んで移動することが不可能な広さということだね」
 紫陽花の株が作り出す路は、戦闘するには狭く感じる。けれど、それは敵にとっても同じこと。花々の向こうに見える麒麟の体躯は、セレシェイラのそれより遥かに大きい。彼らであれば一体が通るのでやっとだろうと、考える桜の娘はその場で本を開いた。
 ぱらり、ぱらり。『+romantica+』と名付けた本のページを捲れば、魔力が溢れてくる。その力を手にした桜の硝子ペン『+cerejeira+』に篭めて、セレシェイラは空中にペンを走らせた。桜色のラインが引かれる度、周囲には桜花が美しく舞う。
「わたしの慰めの桜、優しく花開け。荒ぶる力を静め、災厄からこの身を守れ――」
 紡ぐ言葉と共に展開するは、防御用の桜の魔法陣。その淡い光に誘われるように、麒麟が一体、また一体とセレシェイラの前に現れる。
『――!!』
 嘶き、天へ突き出す二本の角が、落雷呼んで少女を襲う。しかしそれは桜の障壁に当たったとこで、優しき光に包まれかき消えた。
 次の雷も、そのまた次も。桜の娘は詠唱を重ね防御を固め、敵の攻撃を防ぎきる。その戦いの光はさらなる麒麟を呼び集めたが――この狭い紫陽花小路に、敵は並ぶ形にしかなれない。
 そうして、多くのオブリビオンを集めたところで――セレシェイラは桜色の髪をふわり揺らして、眼前の敵を真っ直ぐ見つめた。
「攻撃用の魔法の構築完了だ」
 言葉紡ぐと同時、防御の魔法陣のその隣に光り輝く魔法陣がもう一つ展開される。それは、少女が防御の魔法と同時に詠唱していた攻撃魔法。彼女のユーベルコード『桜奏(カノン)』だ。
「桜の魔法を綴る」
 解放の言葉、放たれるは桜色の魔法光線。それは縦に並ぶ麒麟達を貫くように真っ直ぐと、紫陽花の路を走り抜けてその身体を灼いていく。
 大半の敵はそれだけで倒れ伏したが、撃ち漏らしにも詠唱重ねて魔法弾を撃ち出して。周囲の麒麟を一掃したセレシェイラは、舞う桜を風に躍らせながら道を急ぐのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

尾白・千歳
さっちゃん(f28184)と

あれぇ?いつの間にか敵がいるね
うーん、でも私たちもあっち行きたいし
ちゃちゃっとお引き取り願おう!

…ちょっと、なんで私の前を塞ぐの?
もう!さっちゃんってば邪魔!(ぐいっと押しのけ
そこいたら戦いにくいでしょ!
それくらい言わなくても気づいてほしいなー
気が利かない人は困るー(溜息

ガンガン前に出るも特に策もなく
やばっ!?めっちゃ怒ってるかも!どうしよ~
式神の蝶々を駆使して何とか逃げ
さっちゃんの背後に隠れてやり過ごす作戦に変更
…もう大丈夫かな(チラ
え?うん、すごーい(棒読み)
でも、私だってさっちゃんが邪魔しなければ…
えへへ、私も頑張った~
私のおかげ!いっぱい感謝してね!(ドヤッ


千々波・漣音
ちぃ(f28195)と

狭い道なら、ちぃも迷子にならねェだろ…と思いつつ
ああ、さっさと退かして進むぞ

おい、ちぃ。ちゃんとオレ様の後ろに…って、邪魔!?
はァ!?オレはお前を守っ…き、気が利かないって、何その理不尽!?

てか、勝手に前に出るなってばよっ(慌てて追い
ほら、言わんこっちゃねェ…
あたふた俺の背に隠れるちぃに内心、可愛いヤツ、とか思いつつ
オレの後ろにちゃんといろよ!(張り切り
ちぃがうろちょろ敵を引き付けてきたのは好都合
纏めて水竜の矢の包囲攻撃を見舞ってやるぜ
天罰を下す!(UC

ふふん、どうだ、すげーだろ(どや
何その棒読み!?
でもまァ、お前も頑張ったんじゃねーの(頭ぽん
はいはい、感謝感謝
ほら行くぞ




 紫陽花の迷い路を、幼馴染の二人が揃って進んでいく。時に少女が先行し、時に青年が追いつきながら。
(「狭い道なら、ちぃも迷子にならねェだろ……」)
 そう思う漣音は、尻尾をふわふわ揺らし楽し気に進む千歳の背中を見守る。と、その時千歳がぴたりと足を止めた。
「あれぇ? いつの間にか敵がいるね」
 眉辺りに手を添えて、遠くを見るポーズ。後から来た漣音もそちらを覗き込み、共に麒麟の姿を確認する。敵はまだこちらに気付いていないようだが、道なりに進めば鉢合わせを避けることはできないだろう。
「うーん、でも私たちもあっち行きたいし。ちゃちゃっとお引き取り願おう!」
「ああ、さっさと退かして進むぞ」
 交わす言葉、二人の瞳に真剣な光が灯る。
 戦いならば自分の出番であろうと、漣音はバス停を構え前に出て。
「おい、ちぃ。ちゃんとオレ様の後ろに……」
 敵を睨みつつ、背後の少女に声掛ける。けれど、その言葉を最後まで告げる前に彼を妨害する手がひとつ。
「もう! さっちゃんってば邪魔!」
 それは、意外なことに千歳のものだった。ぐい、と服の裾を引っ張るふわふわの手に、竜神の青年は体勢を崩してしまう。
「って、邪魔!?」
「そこいたら戦いにくいでしょ!」
 慌てて後ろを振り返れば、千歳は頬を膨らませて漣音を見上げていた。ぴんと立った耳までもが彼に不満を告げているようだが、青年は想定外のことに驚くばかりで。そんな幼馴染の様子に、少女はわざとらしく大きなため息をついてみせるのだ。
「それくらい言わなくても気づいてほしいなー。気が利かない人は困るー」
「はァ!? オレはお前を守っ……き、気が利かないって、何その理不尽!?」
 言葉を返して気付いた、千歳は自ら前へ出るつもりだったのだ。そして思考がそこに至る頃には、もう遅い。男が混乱している間に、横すり抜けた狐の娘は麒麟目指して真っ直ぐに駆け出していた。
「おい、勝手に前に出るなってばよっ」
 慌てて追いかけるが、敵が千歳に気付く方が早い。麒麟は鋭い瞳で小さな少女を睨み付けると、前足を上げて嘶いた。
『――!!』
 天を衝くようなその声に、周囲の麒麟も振り向きこちらを見ている。それに気付いた千歳は、威嚇してくる獣の前で立ち止まって。
「やばっ!? めっちゃ怒ってるかも! どうしよ~」
 前に出たことに、特に策はなかったらしい。それでも少女は『夢胡蝶』を操り、蝶の式神を敵の眼前に集めて気を逸らす。
「ね、綺麗な蝶々でしょ? でも、今はよそ見してる場合じゃないんじゃない?」
 言葉と共に、繰り出すのは彼女のユーベルコード。胡蝶は主の命のままに、敵を捕縛し動けなくしてしまった。
 その隙にくるり踵返して、千歳は急ぎ漣音の元へ。そうしてこそこそ背中に隠れる狐に、漣音は思わず呆れたように声を漏らした。
「ほら、言わんこっちゃねェ……」
 けれど彼の表情は柔らかい。小動物のように自分の背に身を潜める彼女を、内心では『可愛いヤツ』と思っているのだから。
 頼られることは誇らしく。漣音は今度こそバス停『細波』を前に構えて、少女を庇いながらユーベルコードを発動させる。
「オレの後ろにちゃんといろよ!」
 声上げ、睨むは迫る敵。初めに遭遇した一体のその後ろに、嘶き聞きつけた者達も複数。千歳が引き付けてきたのは好都合と、男は竜神の水の矢を中空に展開した。
「天罰を下す!」
 よく通る声で、高らかに。響かせた音に呼応するように、水の矢は瀑布の如く降り注ぐ。それらは二人を襲う麒麟達全てを射抜いて、そのまま地へと縫い止めた。
「……もう大丈夫かな」
 ちらり。千歳が顔を覗かせる頃には、横たわる麒麟達の姿があるのみで。見上げれば、漣音の顔は得意満面。
「ふふん、どうだ、すげーだろ」
「え? うん、すごーい」
「何その棒読み!?」
 声上げる幼馴染に、思わずふいと視線外し。一撃で敵を全て倒したのは確かにすごいのだけれど、千歳だって。
(「でも、私だってさっちゃんが邪魔しなければ……」)
 もっとできることがあったはずだと、思えば少女の耳がへにょんと垂れる。そんな様見て、漣音は小さく口角上げながらも千歳の頭にぽんと手を置いた。
「でもまァ、お前も頑張ったんじゃねーの」
 言葉は、慰めではなく敬意を伝えるもの。千歳がユーベルコードを駆使しつつ敵を集め、攻撃しやすい状況を作り出したことに間違いはないのだから。
 想いは伝わる。少女はふわりと笑うと、得意げにその頭を漣音の手へと擦りつけた。
「えへへ、私も頑張った~。私のおかげ! いっぱい感謝してね!」
「はいはい、感謝感謝。ほら行くぞ」
 交わす言葉の軽快さは、戦闘の前と変わらずに。二人は紫陽花の迷宮を奥へ奥へと進み、待ち受ける麒麟達も倒していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『口寄せの篝火』

POW   :    甘美な夢現
【対象が魅力的と感じる声で囁く言霊】が命中した対象に対し、高威力高命中の【対象の精神と肉体を浸食する炎】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    怨嗟の輩
【吐き出した妖怪の亡霊】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    蠱惑の怨火
レベル×1個の【口や目】の形をした【魅了効果と狂気属性】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はシエル・マリアージュです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●篝火は雨に濡れても
 襲い来る麒麟達を撃破し、猟兵達は迷宮の奥目指して進んでいく。
 永遠に続くかと思われる、紫陽花の路。いつしか天からは雫が落ち、紫陽花がぽつぽつ雨に濡れ始めた――その時、迷路は突然終わった。
 そこはひとつの部屋程度に、開けた場所。今しがた進んできた路以外は、紫陽花が奇妙なほど生育し、壁を形作っている。
 そのただ中に、ぽつんと立つ人影がひとつ。
 白い着物に黒髪おかっぱ、東方妖怪だろうか。少女の姿するそれは、しかし目を閉じ微動だにしない。代わりに蠢いているのは、少女の足元の赤い物体だ。
 ぼう、ぼうと篝火を放つ赤い球。猟兵達は直感する、こちらこそが撃破対象だと。
 ゆらゆら揺れる不気味な炎は雨でも構わずそこに浮かんでいて、ただ燃やすためだけのものには見えない。もしかしたら先の霧のように、幻影を見せてくるかもしれない。
 油断ならないオブリビオンだけれど、これを倒せば妖怪達を掬うことができるし、この世界のカタストロフも止められる。為すべきことを反芻し、猟兵達は篝火のオブリビオンと対峙する。その肩を叩く雨が、戦闘開始を告げるようにまた強くなった。
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺(本体)の二刀流

目やら口がたくさんあるからどこまで効果があるかわからんが。
雨音に紛れ存在感を消し目立たない様に死角に回り、可能な限りマヒ攻撃を乗せた暗殺のUC剣刃一閃で攻撃。
言霊自体は回避は難しいだろうな。呪詛・火炎耐性で耐えきれるかどうか。

迷うならやめてもいいと、霧の中の人物だと思われる声が聞こえる。
…それはだめだ。俺自身が生まれたのは「誰が為に」だから、迷っても歩き続けないと。戦わないと。

敵の物理攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。それでも喰らってしまうものはオーラ防御、激痛耐性で耐える。




 雨に濡れる銀の前髪を払いながら、瑞樹はオブリビオンを見据える。
 ぎょろりと動く目と、ガチガチ歯を鳴らす口。敵のそれは不気味な赤い球体のあちこちに浮かび上がっていて、どれが本物か――どれもが本物なのか、見ただけではわからない。
(「どこまで効果があるかわからんが」)
 警戒しつつも、ナイフのヤドリガミは濡れた地面を滑るように移動した。足音は雨降る音でかき消して、気配すらも雫に紛れさせれば、球体の目が彼を探してぎょろりぎょろり。その動きが、瑞樹を発見して一点に止まらないうちに――右手の『胡』を振り上げて、彼はユーベルコードを発動する。
「……っ!」
 呼吸と共に、剣刃一閃。複数並ぶ目をなぞるように薙げば、敵は篝火をぽっぽっと吐いて叫んだ。
『――!!』
 伸びる蔦のような部位が、もごもご蠢く。すぐに反撃がくると直感した瑞樹は、とんと地を蹴り距離置いて、水溜まりにも構わず着地する。
 瞬間、脳裏に直接響くような声。くるとわかって備えていても、その声は甘やかに瑞樹の心を撫でてくる。
 ――迷うなら、やめていいんだと。その声の主はきっと、先の霧の中で見た人物だ。
 けれど瑞樹はかぶりを振って、その誘いを跳ね除ける。
「……それはだめだ。俺自身が生まれたのは「誰が為に」だから、迷っても歩き続けないと。戦わないと」
 紡ぐ言葉は彼の決意。そのままヤドリガミの青年は身を屈め、刃の黒いナイフ――『彼自身』を握り締め、弾けるように跳んだ。
 球体が、赤い炎を放ってくる。真っ直ぐに飛んでくるそれは、避けることも容易いだろう。けれど瑞樹は敢えて速度落とさず距離を詰め、燃え盛る炎が眼前に迫るところで『黒鵺』使って叩き落した。
『――!』
 オブリビオンが瞳を見開く、それは決定的な隙。振り切った左手をくるりと返し、戻す動きを力に乗せて。
 瑞樹が振るった黒刃は、赤い球体に深々と突き刺さった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リダン・ムグルエギ(サポート)
「餅は餅屋。後の戦いはお任せするわね
「お、今の映えるわね!ヒュー

キマフュ特有のノリの服飾師

見た人の五感を狂わす「催眠模様」の入り衣装を作って配る事で
仲間や一般人の防御底上げと敵の妨害を実施したり
依頼に即したなんらかのブームを生むことで敵に特定の行動を躊躇させたり
等を得意とする
「戦闘開始前に自分のやるべき仕事の準備を終えている」事が多い純支援キャラ

依頼本編では戦いの様子等を撮影・配信したり
キャーキャー逃げたり
合いの手を入れてたりしています
単独戦闘には不向き

ミシンや針、布等も所持
その場で他依頼参加者に合わせ衣装アレンジも

MSのセンスで自由に動かしてOK
エロだけは厳禁


アーレ・イーナ(サポート)
 サイボーグの戦場傭兵×咎人殺し、20歳の女です。
 普段の口調は「ボクっ娘(ボク、~君、~さん、だね、だよ、~かい?)」、敵には「冷酷(私、てめぇ、だ、だな、だろう、なのか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


エウトティア・ナトゥア(サポート)
※アドリブ・連携歓迎

負け描写、引き立て役OK

キャラを一言で言えば、なんちゃって部族じゃよ。
精霊と祖霊を信仰する部族の巫女をしておる。
自然が好きなお転婆娘じゃ。
あとお肉が大好きじゃよ

活発で単純な性格で事の善悪にはあまり興味はないのう。
自分とその周囲の安寧の為、オブリビオンが害になるから戦っておる。

専ら【巨狼マニトゥ】に騎乗していて、移動や回避・近接戦闘等は狼任せじゃよ。

ボス戦時は、動物や精霊を召喚しての行動(実は未熟ゆえ精霊や動物たちにフォローされている)で数で対抗しつつ、自身は後方で弓矢や術で援護するスタイルじゃ。




 猟兵の攻撃受けて仰け反る敵を前に、リダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)は周囲の仲間を見回した。
(「アタシの仕事は、今のうちに……」)
 思いながら、近付く先には白い巨狼を従えるキマイラの少女。彼女――エウトティア・ナトゥア(緋色線条の巫女姫・f04161)が頭の猫耳をぴんと立ててこちらを見れば、リダンは緩やかに笑って一着の服を取り出した。
「あなた、これを着ていくといいわ」
「ほう、これはなんじゃ?」
 紅い瞳を瞬かせるエウトティアに、手早く纏わせるのは催眠模様入りの服。『GOATia』というブランドのタグついたその服は、見る者の五感を狂わすのだとリダンは言う。
 それはつまり、敵の攻撃を阻害することになり、ひいては猟兵達の身を守る防具となる。
「雨が降っているから、防水加工もしておくわ。……あなたもどうぞ」
「えっ、ボク?」
 デザイナーである彼女が次に手招きしたのは、アーレ・イーナ(機械化歩兵・f17281)だ。きょとんとしながらやってくる彼女の体に軽く触れて、リダンは携帯していた裁縫道具を取り出す。アーレはサイボーグで、身体の様々な部位が機械に置き換わっている。その動きを阻害しないよう仕立て直すのだって、彼女の手ならば一瞬のこと。
「さ、できたわ。餅は餅屋。後の戦いはお任せするわね」
 二人に服着せ、にこりと笑顔。送り出すリダンは、前線に出るのは苦手なのだと言う。
 それが、彼女の戦い方なのだ。理解したアーレは笑顔を浮かべ、ぴょんと飛び跳ね頭を下げた。
「わかったよ、動きやすい服をありがとう!」
 そしてそのまま、敵へと駆け出す。手には処刑具、骸魂を断罪する武器。降りしきる雨にも構わず疾駆して、懐に潜り込むやいなやその手を揮った。
「いくぜ!」
 先程までのボーイッシュな雰囲気とは打って変わって、敵を見据える茶の瞳は冷酷に。渾身の一撃は赤い球体を深く傷つけ、その力を奪っていく。
『――!!』
 球体が大きく震え、伴う東方妖怪の体も揺れる。しかし反撃繰り出そうと動く複数の目は、アーレが纏う催眠模様に釘付けになった。
 その隙に、エウトティアが動く。巨狼マニトゥにひらりと飛び乗り、『ノアの長杖』を翳して声を張り上げる。
「精霊よ! 幻想のおもむくままに歌え!」
 凛と響く声に、風が巻き起こる。それは周囲の雨を巻き込むように渦起こし、水の竜巻を作り出して。
 咆哮するマニトゥ、敵に迫る竜巻。それは雨にも消えない篝火を一瞬で消し去るほどの威力を持っていて。
「お、今の映えるわね! ヒュー」
 歓声上げるリダンは、その戦いを応援している。決して仲間の足手まといにはならぬよう、後方で、敵の炎を的確に避けながら。
 敵を処刑するサイボーグの女性、雨に負けぬ苛烈さで緑縞瑪瑙の矢を降らせるキマイラの少女。二人の奮闘は、それを見守る宇宙山羊族の女性の撮った動画の中にしっかりと記録されるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

セレシェイラ・フロレセール
雨、か……
雨はキライじゃないけれど、天から落ちる雫を見ると『世界』が泣いているように思うんだ
……いや、泣いているのは『世界』でなく『キミ』か、それとも憑かれた妖怪の子か

桜の和傘を開いてくるりと回し、己の本体を握り締め
いくら感傷的になろうとも、わたしのすることは変わらないけどね
骸魂という存在は、いわば世界の迷い子だと思うんだ
目的の地にどれだけ焦がれても終ぞ辿り着くことの出来なかった世界の迷い子
迷い子たるキミを今在るべき場所へと還そう
それが唯一わたしがキミに出来ること、だから

わたしの桜、清麗に舞え
キミのその力をそのまま繰り返そう
狙うは少女の足元、赤い球
少女の方に攻撃が及ぶことがないように留意しよう




 ぱたぱたと、落ちる雨が桜の花弁を叩く。その音聞きながら、セレシェイラは桜色の瞳をそっと伏せた。
「雨、か……」
 雨はキライじゃないけれど、天から落ちる雫を見ると『世界』が泣いているように思うんだ。そう小さく零した少女は、顔上げ眼前のオブリビオンを見つめる。
「……いや、泣いているのは『世界』でなく『キミ』か、それとも憑かれた妖怪の子か」
 ぽつぽつと篝火放つ赤い球体、そして眠るように佇む妖怪の少女。今ふたつは共にオブリビオンであるけれど、その心まで同じではないかもしれない。
 桜の娘が、手にした和傘『+桜綾+』を開き、くるりと回す。ふわり、流れる風は雨と混じって桜の香りを強く届けて。己の本体――桜の硝子ペンを握り締めたセレシェイラは、ユーベルコードの力で桜の花弁を操った。
「いくら感傷的になろうとも、わたしのすることは変わらないけどね」
 紡ぐ言葉と共に、赤い球体へと視線を固定する。妖怪取り込む、骸魂。その存在は、いわば世界の迷い子だとセレシェイラは思う。
 目的の地にどれだけ焦がれても、終ぞ辿り着くことの出来なかった世界の迷い子。願いが叶っていれば、妖怪としてこの世界で生きていただろうに――。
 彼女の視線を感じてか、球体はその複数ある目でぎょろりと少女を見つめ返す。そしてガチガチ鳴らす口から吐き出したのは、傍らの妖怪と瓜二つの人。
『――!』
 声にならぬ声が空間を震わせて、生まれた者が動く。存在の不安定なそれはただの亡霊だ、オブリビオンの意のままにセレシェイラを狙ってくる。
 操る者も、操られる者も。共に助けられればよかったのだけれど。
「迷い子たるキミを今在るべき場所へと還そう。それが唯一わたしがキミに出来ること、だから」
 骸魂へ優しい声で語り掛けて、桜の娘がペンを滑らせる。ぐるりと自身の周囲に桜色のラインを引けば、それを追うように動く花弁達。
「わたしの桜、清麗に舞え」
 取り囲むような、薄紅。それは飛び来る東方妖怪の亡霊を受け止め、それから全く同じものを複製した。傍に舞うは、篝火ではなく雨桜。
「キミのその力をそのまま繰り返そう」
 すい、とセレシェイラが硝子ペンを前へ向ければ、複製の亡霊が進んでいく。狙うは――少女の足元、赤い球。
 その様は、まるで妖怪が自身の力で自分を解放しようとしているようで。桜の力得た方の亡霊は、着物の袖を翻して球体だけを攻撃したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

千々波・漣音
ちぃ(f28195)と

ん、雨か
けどオレは水を司る竜神だからな!(ふふん
むしろ雨は得意…って
隣見れば、げんなりしたちぃの姿
濡れたら確かに尻尾重そうだな…とか思いつつ
んじゃ、さっさと終わらせようぜ!
って、ひとりでかよ!?

ホントやる気ねェな…
じゃあ、大人しくオレの背中に…ん?腕…こうか?
いや、動かさなきゃ戦えねェし!
ったく…これで我慢しろ(上着脱ぎ投げ掛け
てか狐さんもかよ!?

言ったのオレじゃねェから!
現金だな、おい…

あー分かったよ、終わったらオレが特製稲荷寿司作ってやるから
もうちょい頑張れよな

水竜の矢で赤い物体と怨火だけ狙い包囲攻撃
どんだけ炎放っても無駄だぜ?
全部纏めて消し飛ばしてやるからな!(どや


尾白・千歳
さっちゃん(f28184)と

何で雨なの!?
もうっ耳も尻尾も濡れちゃうし…
早く帰りたい(しょぼん
はいはい、さっちゃん一人で頑張って(投げやり

濡れたくない一心でさっちゃんの陰に隠れてやりすごす気満々
ねぇ、もうちょっと腕あげて?
そう、そんな感じ…
あぁー!?何で動かすの(ぷんすか
私が濡れちゃうでしょ!

傘代わりに借りた上着を被り
渋々御狐様を召喚
え?狐さんも濡れるから嫌?
我儘言わない!
ほら、私のお稲荷さんあげるからお手伝いして?

―頑張ればご褒美?
言霊で突然のやる気復活
わかった!
狐さん、一緒に頑張ろう!
ん?今のさっちゃんが言ったんじゃないの?
私のご褒美…(しょぼん

やったーお稲荷さーん♪
さっちゃん早くしてよ!




 猟兵達の度重なる攻撃で、オブリビオンは深手を負っていた。
 赤き球体に張り付く目は、傷付いたものが約半数。目を閉じれば視界だって狭まる、それだけでもだいぶ弱っていることがわかるだろう。
 けれど、撃破し妖怪を掬わないことには油断はできない。愛用のバス停に落ちる雨雫を振り落とし、漣音は篝火を見据えた。
「ん、雨か」
 地に足を擦れば、滑りやすくなっているのを感じる。視界も先程より悪くなり、戦いにくく感じる部分も確かにある。けれど、青年は自信溢れる顔で雨降る世界に立っている。
「オレは水を司る竜神だからな! むしろ雨は得意……」
「何で雨なの!?」
 ――漣音の声は、またしても幼馴染に遮られた。見れば、千歳は隣で耳と尻尾をしきりに気にし、毛づくろいしている。
「もうっ、耳も尻尾も濡れちゃうし……早く帰りたい」
 零れる声に、濡れた耳と尻尾もぺしょんと垂れる。彼女のいつもふわふわの尻尾は、雨水を吸って重そうだ。
 そんな千歳を、励ましたくて。漣音は少女を庇うように一歩前へ出て、言葉を紡いだ。
「んじゃ、さっさと終わらせようぜ!」
「はいはい、さっちゃん一人で頑張って」
「って、ひとりでかよ!?」
 突っ込み後ろを振り返れば千歳は身を屈めて漣音に近付いてきていた。どう見ても、戦いに臨む体勢ではないだろう。
「ホントやる気ねェな……」
 ため息交じりに呟くけれど、少女を拒むつもりはない。背に護りながらいざ戦おうと『細波』振り上げる漣音は、しかし自身の服の裾をちょいちょいと千歳に引っ張られてしまった。
「ねぇ、もうちょっと腕あげて?」
「……ん? 腕……こうか?」
「そう、そんな感じ……」
 持ち上げた腕は、ちょうど千歳の頭の上に。狐の少女はその下でもぞもぞ動いて位置の微調整をしているようだが――その意図はわかりかねて、竜神の青年はバス停を眼前に構えようと、動いて。
「あぁー!? 何で動かすの! 私が濡れちゃうでしょ!」
 またしても理不尽な怒り。感情ぶつけながら腕を引っ張ってくる千歳に、漣音は慌ててバス停を地に置いた。
「いや、動かさなきゃ戦えねェし!」
 それに、突然腕を引かれてバス停を取り落としでもしたら、千歳にも危害が及ぶのだ。それは絶対に回避したくて、青年は自身の上着を脱いで少女に被せてやった。
「ったく……これで我慢しろ」
 ふわり。護るような優しい動作とは、裏腹な言葉で。傘の代わりを提供してくれた幼馴染にそれでも渋々という様子で、千歳はユーベルコードを発動する。
「狐さん、お願いっ!」
 言葉は小さな狐に似た霊獣を呼び寄せて、そのまま敵へと向かうように指示すれば――小狐は千歳の持つ漣音の上着に潜り込んでしまった。
「え? 狐さんも濡れるから嫌?」
「狐さんもかよ!?」
 呆れる青年が見れば、霊獣はいやいやと首を振っている。それに千歳は、頬膨らませて。
「我儘言わない! ほら、私のお稲荷さんあげるからお手伝いして?」
 ――お前が言うか、なんて揶揄はしない。それでも思わず苦笑浮かべた漣音は、その瞬間少女の耳がぴくんと動くのにも気付いた。
「――頑張ればご褒美? わかった! 狐さん、一緒に頑張ろう!」
 何を聞いたのか、突然やる気を見せる千歳と小狐。コーンと小狐が鳴けばオブリビオンの赤い球体付近で爆発が巻き起こり――その体が大きく震えたかと思うと、赤い炎が千歳目掛けて飛んできた。
「危ねえ!」
 慌てて漣音が少女を庇い、炎を消し飛ばす。そして理解した、先程千歳が聞いた様子の声の正体は。
「こいつ、言霊を聞いた相手を狙って攻撃してくるんだな」
「……ん? じゃあ今のさっちゃんが言ったんじゃないの?」
「いや、オレじゃねェから!」
 言葉を交わしながらも、青年は少女を庇い敵を警戒している。けれど、このマイペースな少女にとっては先程聞いた『ご褒美』という魅力的なワードが失われたショックが大きいようで。
 見るからにしょんぼりとしている少女に、漣音は慌てて声をかける。
「あー分かったよ、終わったらオレが特製稲荷寿司作ってやるから。もうちょい頑張れよな」
「えっ! やったーお稲荷さーん♪ さっちゃん早くしてよ!」
 約束があれば、満面の笑み。そんな現金な姿に竜神の青年は苦笑するけれど、千歳が望むならそれに応えるのが漣音なのだ。
 バス停を手に取り、自身の前に置く。そしてユーベルコードを編み上げ水竜の矢を生み出せば、敵も炎を放って攻撃してきた。
 雨に降られても、弱まらない炎。けれど――ユーベルコード同士なら、話は別だ。
「どんだけ炎放っても無駄だぜ? 全部纏めて消し飛ばしてやるからな!」
 声を響かせ、矢を操る。それは幾何学模様を描きながら飛翔して、雨より苛烈にオブリビオンへと降り注いだ。
『――!!』
 声なき声、震える体。漣音の瀑布の如き水矢はあらゆる方向から赤い球体を包み込み――その水が消える頃、敵は完全に力尽きていたのだった。


 オブリビオンを倒せば、飲み込まれた妖怪は掬われる。グリモア猟兵に聞いた通り、その場には東方妖怪の姿だけが残っていた。
 今はまだ眠っているようだが、じきに目覚めるだろう。そして彼女が目覚める頃――世界から、カタストロフは消えているはずだ。
 猟兵達が見上げれば、雨雲は消え、空には虹がかかっていた。
 雨上がりの紫陽花、鮮やかな虹。その美しい光景が見られるのは、この瞬間だけのこと。
 だから猟兵達はその景色に目を奪われて――世界を護れた喜びを分かち合い、笑うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月18日


挿絵イラスト