27
幽世かくれんぼ(作者 柳コータ
19


●みつけて、みつけないで
 ――真っ赤な鳥居を四つ越えたら。
 うんとちいさく身体を丸めて、オレンジ色の夕陽に染まる境内の隅に隠れよう。
 ひとりでも、ふたりでもいい。もっとたくさんいてもいい。なるべくなら大きな声で。

「もういいよ」

 そう言ったなら、足元の影が真っ赤に伸びる。
 鳥居は百から千を越え、君が来た道は枯れた花のよに崩れて落ちた。
 オレンジ色の夕陽が照らす真っ赤な社は急に大きくなった気がするのに、あちこち朽ちて、何処が道だかわからない。
 道という道を見失う。――世界の全部が、道を失う。
 道の代わりにそこにあるのは、ぽかりと誰そ彼に浮かぶ、丸い格子窓。
 開けばきっと、君が眠りたい場所がある。隠れたい場所がある。

 いいよ、もうかえるみちはない。
 もういいよ、ずうっとここであそんでいよう。

●もういいかい、もういいよ
「……かくれんぼは、お得意かしら?」
 唐突な問いかけを口にして、宵雛花・千隼(エニグマ・f23049)は猟兵たちを見渡した。
 けれどもすぐに考え直したように、白い髪をふわりと揺らして首を振る。
「いいえ、それはどちらでもいいわ。――アナタたちには、世界の滅亡を止めて貰わないといけないの」
 突然だけれど。そうさらりと付け足して、千隼は怪訝そうな顔をしながらも足を止めてくれた猟兵たちに話を続ける。
「新しい世界――カクリヨファンタズムのことは、もう聞いていると思うのだけれど。早速そこで概念がひとつ失われて、カタストロフが起ころうとしているのだわ」
 しょっちゅうそんな危機が起きるとは聞いたけれど、こんなに気軽に見つかると思わなかったのよと、白い女はそっと息を吐く。
「失われたのは『道』の概念。今あの世界は全ての道が朽ちて、迷子の世界になっているの」
 迷子の世界。確かめるように繰り返した声に、千隼はこくりと頷く。
「気をつけて。アナタたちは、道なき道を進まなければならないわ。起点となっているのはとある神社。時間はずっと夕暮れで、立派で大きな真っ赤な鳥居と社が印象的だけれど、オブリビオンの影響で無限に広がっている。――迷宮化していると言っていいわ。どこに何があっても可笑しくなくて、とてもおかしい」
 そんな場所でオブリビオンを倒しながら進もうとすれば、迷うなんてとても簡単で、はぐれたなら再び出会うのは極めて困難だろう。けれど。

「……けれど。道を消したオブリビオンは『かくれんぼ』が好きなようよ。だから、そのルールに則ってさえいれば、オブリビオンを見つけることも、はぐれた仲間と再び合流することも不可能ではないわ」
 ルールは簡単だ。『もういいかい』と言ってオブリビオンを探すこと。はぐれて誰かに見つけてほしいなら『もういいよ』と言って待つこと。
「オブリビオンも誘き寄せることになるから、『もういいよ』のほうは安全な場所を確保して、充分注意をして使ったほうが良いと思うわ。……最終手段として、覚えておいて頂戴な」
 くれぐれも忘れないで、と念を押すように静かに口にして、千隼はふと僅かに眦を緩めた。
「――隠れんぼ。懐かしい人もいるかしら。したければ、世界滅亡を防いだあとにきっとできるわ。この世界のオブリビオンは元は妖怪たちで、骸魂に呑まれてしまっているだけだから。倒せば、救出もできるのですって。きっと一緒に、楽しんでくれるわ」

 たまには童心に返るのも、悪くないのではないかしら。そう僅かに笑んで、新たな世界へ猟兵たちを送り出すべく、光はゆっくり広がった。


 目を開ける。
 何処か懐かしくて、けれど初めて見るその場所で、まずは雷を聞いた。
 姿は見えぬ。けれども嘶くその声は、まるで雷そのものだ。
 ――夕暮れの中に雄々しく立つ、炎を鬣とするその獣。神々しく見えそうなそれが、毒を吐き散らすように雷を吐き、災いを落とす。
 麒麟。
 呟いたのは誰だったか。瑞獣と知られるその存在たちは、けれども災禍の塊と成って、猟兵たちを夕闇に潜んで待ち構えている。





第3章 日常 『妖怪かくれんぼ』

POW気合いで見つける
SPDいろんな場所を歩く
WIZわざと驚かされる
👑5

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 夜はつるべ落としのように、あっと言う間にやって来た。
 ふと顔を上げれば、夕闇に道を失っていた社は何処かで見たことのあるような、ありふれた社の姿をしていて、大鳥居から境内へ、石畳の道が伸びる。
 ぽかんとした猟兵たちの前に、ふよふよと宙をゆくのは青い狐火。それを思わずじっと見ていれば。
 ――どろん!
『目が合った! 目が合った! お客人! お客人!』
 不思議な音と一緒に現れたのは丸いフォルムのタヌキ――のように見える妖怪。
 嬉しげな声を合図にしたように、石畳の両端にぽんぽんぽんと狐火が並び灯ってゆく。どこからともなく賑やかな声が、わあっと猟兵たちの周りに集う。
『ありがとうありがとう、お客人! やあ、麒麟のお腹は狭くてな!』
『しってるぞしってるぞ、猟兵って言うのだろ、いいなあいいなあ、ちゃあんと見える!』
 タヌキにキツネ、一本傘に喋る雪洞。百鬼夜行もかくやと言った様相で、数多の妖怪たちは猟兵たちを嬉しそうに大歓迎する。それが迷宮と化した社に骸魂に呑まれて囚われていた妖怪たちだと察するのに時間は掛からなかった。
『遊ぼう、遊ぼう! かくれんぼはもう飽きたかい?』
『なら話をしよう、化け術を見ておくれ!』
『かくれんぼだって何だって構わないのさ、遊んでくれる誰かはみぃんな見えなくなってしまったんだもの』
 わいわい、わいわい。あちらこちらから楽しげな声がして、妖怪たちが跳ね回る。

『さあさ、帰るそのまえに!』
『カクリヨを楽しんで行っておくれよ!』