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雨なき幽世に滅びが迫る(作者
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 ――事の発端は、ほんの小さな違和感からだった。

「最近、晴れの日がよく続くなあ」
「ぽかぽかあったかくて、いいことじゃないか」

 妖怪たちの暮らす幽世にも、昼と夜の概念はあり、曇りの日もあれば雨の日もある。
 けれどもここ数日の天候は、雲ひとつない晴天。それは大して不思議なことでもない。
 まあ、吸血鬼とかゾンビとか、暗くてじめじめしたところが好きな連中は仏頂面だが。
 そのうちまた雨も降る日も来るだろうと、その時はまだみんな気楽に考えていたのだ。

「今日も晴れか……」
「草木やお花も、なんだか元気がないね」

 数日が一週間になり、二週間、三週間と続くうち、みんながおかしいと気付きだす。
 何度昼夜を繰り返しても空からは一滴の雨も降らず、土は乾き、植物はしおれていく。
 井戸も川も泉もみんな干上がってしまい、カッパの皿まで乾いてしまいそうなくらい。

「変だよ、こんなの……」
「誰かが悪さをしてるんだ!」

 みんなが慌てだした時にはもう遅かった。「雨」の失われた世界に溢れ出すのは骸魂。
 パニックになった妖怪たちを飲み込んだそれは、燃え盛る炎と車輪と生首に姿を変え。
 平和な幽世を、乾きに満ちた『日照の世界』に変えるため、世界を蹂躙し始める――。


「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵たちの前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「新たに発見された世界、カクリヨファンタズムから『雨』が失われ、乾きに満たされた『日照の世界』になってしまったようです」
 UDCアースに隣接する、妖怪たちの住まう異世界『幽世(カクリヨ)』。ここは地球の人々から忘れられてしまったモノが誘われる隠遁の地なのだが、地球と骸の海の狭間にあるという性質ゆえだろうか、頻繁にオブリビオンによる世界規模の異変が発生する。
 今回の事件もそのひとつ。世界中から「雨」という概念そのものが失われ、一滴の雨も降らなくなった大地は干上がり、まるでこの世の終わり(カタストロフ)が訪れたかのような光景が広がっている。

「このままでは雨の恵みを失った妖怪たちは遠からず全滅です。さらに悪いことに、日照の世界と化した幽世には『骸魂』が大量発生し、妖怪をオブリビオン化させています」
 骸魂とは地球から幽世に辿り着くことができず、無念の死を遂げた妖怪の霊魂。彼らは生前に縁のあった妖怪を飲み込むことでオブリビオン化し、世界に害を為すようになる。
「既に多くの妖怪がオブリビオンとなり、各地で暴れまわっています。ですが幸いにも、骸魂に飲み込まれた妖怪はオブリビオンを倒すことで救い出すことができるようです」
 これ以上の被害拡大を防ぐためにも、まずはこのオブリビオン化した妖怪たちを倒し、救出するのが最優先になるだろう。骸魂のオブリビオンの強さは呑み込んだ妖怪の強さに左右されるため、一般妖怪を取り込んだ程度のオブリビオンならば大して強くはない。
「発生しているオブリビオンは『輪入道』。回転する炎車を携えた、『炎と轢殺』を司る生首の妖怪です。単体で苦戦する相手ではないでしょうが、数が多いのでご注意を」
 雨の失われた世界で炎を撒き散らしながら爆走する輪入道は、まさにこの『日照の世界』を象徴するような存在だ。望まずしてオブリビオン化された彼らが他の妖怪たちに危害を及ぼす前に、速やかに撃破してほしいとリミティアは語る。

「皆様が輪入道を撃破していけば、いずれこの事件を起こした元凶も姿を現すでしょう」
 幽世にこれだけの大規模な異常事態を引き起こしたオブリビオンとなれば、その辺の一般妖怪とは違う強力な妖怪を飲み込んでいる可能性が高い。猟兵にとっても油断ならない相手になるだろうが、基本的な対処法自体は同様である。
「元凶であるオブリビオンを倒すことができれば、その骸魂に飲み込まれていた妖怪も助け出せます。そうすれば誰一人犠牲を出すことなく、この事件は解決です」
 無事に幽世に「雨」が戻ってくれば、妖怪たちは猟兵たちに大いに感謝するだろう。もともと彼らは自分たちの姿を見ることのできる猟兵にとても友好的なので、きっと祝いの宴なども催してくれるに違いない。
「事件が終わったら、妖怪たちと一緒に宴を楽しむのも悪くないでしょう。幽世の平和のために、どうか皆様の力をお貸し下さい」
 そう言ってリミティアは手のひらにグリモアを浮かべると、カクリヨファンタズムへの道を開く。「雨」を奪われた日照の世界を、元通りの幽世に戻すための冒険が始まる。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」





第3章 日常 『失われた飯を求めて』

POW陰りの見え始めた比較的最近の料理を食べる
SPDそんなのあったなぁ、という懐かしい料理を食べる
WIZ本当に誰も覚えていない、もしくはマイナー過ぎる料理を食べる
👑5

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵の活躍により"フェニックスドラゴン"は退治され、幽世には『雨』が戻った。
 これまでの日照の分を取り戻すように、雲で覆われた空から大粒の雨が降り注ぐ。
 枯れかけていた草花は息を吹き返し、乾きに苦しんでいた妖怪たちは喝采を上げる。

「皆様、この度は本当にありがとうございました」

 幽世の住民を代表して感謝を述べたのは、不死鳥の骸魂に飲み込まれていたあの竜神の少女だった。激しい戦いではあったが竜の神力は伊達ではないのか、もうすっかり元気そうに笑顔を見せている。それは輪入道となっていた他の妖怪たちも同じだ。

「幽世を救って下さった皆様のために、ささやかですが宴の席をご用意しました。どうか楽しんでいって貰えると嬉しいです」

 そう言って彼女が案内した宴会場には、山のようなご馳走が用意されていた。
 白いタイヤキ、ティラミス、モツ鍋、タピオカ――「過去の思い出や追憶」で形作られた幽世らしく、そのメニューは地球ではブームになっては廃れた料理が多い。だが味のほうは保障すると、調理担当の妖怪たちが太鼓判を押した。

「もし良ければ外の世界の"今"の話も聞かせてほしいです。みんな興味津々なので」

 地球の人々に忘れ去られ、幽世に移り住んでからも、地球への郷愁を抱く妖怪は少なくないのだろう。久方ぶりに出会えた"見える"人間ということもあって、妖怪たちの猟兵歓迎ムードは凄まじいものがあった。

 かくして『雨』の戻ってきた幽世で、猟兵の勝利を祝う宴が始まる。
 大いに飲み食いするもよし、妖怪たちと交流を深めるもよし。
 乾きに悩まされることのない、平和なひとときを楽しむといいだろう。