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雨なき幽世に滅びが迫る

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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 ――事の発端は、ほんの小さな違和感からだった。

「最近、晴れの日がよく続くなあ」
「ぽかぽかあったかくて、いいことじゃないか」

 妖怪たちの暮らす幽世にも、昼と夜の概念はあり、曇りの日もあれば雨の日もある。
 けれどもここ数日の天候は、雲ひとつない晴天。それは大して不思議なことでもない。
 まあ、吸血鬼とかゾンビとか、暗くてじめじめしたところが好きな連中は仏頂面だが。
 そのうちまた雨も降る日も来るだろうと、その時はまだみんな気楽に考えていたのだ。

「今日も晴れか……」
「草木やお花も、なんだか元気がないね」

 数日が一週間になり、二週間、三週間と続くうち、みんながおかしいと気付きだす。
 何度昼夜を繰り返しても空からは一滴の雨も降らず、土は乾き、植物はしおれていく。
 井戸も川も泉もみんな干上がってしまい、カッパの皿まで乾いてしまいそうなくらい。

「変だよ、こんなの……」
「誰かが悪さをしてるんだ!」

 みんなが慌てだした時にはもう遅かった。「雨」の失われた世界に溢れ出すのは骸魂。
 パニックになった妖怪たちを飲み込んだそれは、燃え盛る炎と車輪と生首に姿を変え。
 平和な幽世を、乾きに満ちた『日照の世界』に変えるため、世界を蹂躙し始める――。


「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵たちの前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「新たに発見された世界、カクリヨファンタズムから『雨』が失われ、乾きに満たされた『日照の世界』になってしまったようです」
 UDCアースに隣接する、妖怪たちの住まう異世界『幽世(カクリヨ)』。ここは地球の人々から忘れられてしまったモノが誘われる隠遁の地なのだが、地球と骸の海の狭間にあるという性質ゆえだろうか、頻繁にオブリビオンによる世界規模の異変が発生する。
 今回の事件もそのひとつ。世界中から「雨」という概念そのものが失われ、一滴の雨も降らなくなった大地は干上がり、まるでこの世の終わり(カタストロフ)が訪れたかのような光景が広がっている。

「このままでは雨の恵みを失った妖怪たちは遠からず全滅です。さらに悪いことに、日照の世界と化した幽世には『骸魂』が大量発生し、妖怪をオブリビオン化させています」
 骸魂とは地球から幽世に辿り着くことができず、無念の死を遂げた妖怪の霊魂。彼らは生前に縁のあった妖怪を飲み込むことでオブリビオン化し、世界に害を為すようになる。
「既に多くの妖怪がオブリビオンとなり、各地で暴れまわっています。ですが幸いにも、骸魂に飲み込まれた妖怪はオブリビオンを倒すことで救い出すことができるようです」
 これ以上の被害拡大を防ぐためにも、まずはこのオブリビオン化した妖怪たちを倒し、救出するのが最優先になるだろう。骸魂のオブリビオンの強さは呑み込んだ妖怪の強さに左右されるため、一般妖怪を取り込んだ程度のオブリビオンならば大して強くはない。
「発生しているオブリビオンは『輪入道』。回転する炎車を携えた、『炎と轢殺』を司る生首の妖怪です。単体で苦戦する相手ではないでしょうが、数が多いのでご注意を」
 雨の失われた世界で炎を撒き散らしながら爆走する輪入道は、まさにこの『日照の世界』を象徴するような存在だ。望まずしてオブリビオン化された彼らが他の妖怪たちに危害を及ぼす前に、速やかに撃破してほしいとリミティアは語る。

「皆様が輪入道を撃破していけば、いずれこの事件を起こした元凶も姿を現すでしょう」
 幽世にこれだけの大規模な異常事態を引き起こしたオブリビオンとなれば、その辺の一般妖怪とは違う強力な妖怪を飲み込んでいる可能性が高い。猟兵にとっても油断ならない相手になるだろうが、基本的な対処法自体は同様である。
「元凶であるオブリビオンを倒すことができれば、その骸魂に飲み込まれていた妖怪も助け出せます。そうすれば誰一人犠牲を出すことなく、この事件は解決です」
 無事に幽世に「雨」が戻ってくれば、妖怪たちは猟兵たちに大いに感謝するだろう。もともと彼らは自分たちの姿を見ることのできる猟兵にとても友好的なので、きっと祝いの宴なども催してくれるに違いない。
「事件が終わったら、妖怪たちと一緒に宴を楽しむのも悪くないでしょう。幽世の平和のために、どうか皆様の力をお貸し下さい」
 そう言ってリミティアは手のひらにグリモアを浮かべると、カクリヨファンタズムへの道を開く。「雨」を奪われた日照の世界を、元通りの幽世に戻すための冒険が始まる。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 やってきました新世界。今回の依頼は「雨」の概念が失われたカクリヨファンタズムの異常を解決し、元凶であるオブリビオンを倒すのが目的となります。

 第一章は『日照の世界』と化した幽世を荒らしまわる『輪入道』との集団戦です。
 この世界のオブリビオンは「骸魂が妖怪を飲み込んで変身したもの」なので、オブリビオンを倒せば飲み込まれた妖怪を救出することができます。これ以上被害が出る前に助けてあげてください。

 第二章では今回の事件の元凶であるオブリビオンとのボス戦になります。
 強敵ですがこちらも骸魂が妖怪を飲み込んだもので、倒すことで妖怪を救い出せるのも同様です。

 無事に元凶を倒せば、幽世にはまた雨が降るようになり、世界は元に戻ります。
 第三章では救出された妖怪たちによる祝いの宴が予定されているので、もし興味があればご参加いただければ幸いです。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『輪入道』

POW   :    燎原火炎陣
【激しく回転しながらの】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【他の輪入道】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    紅蓮疾走
自身に【燃え盛る炎】をまとい、高速移動と【回転する炎の輪】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    ファイアホイールスピニング
【回転速度】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アリス・フォーサイス
これがカクリヨファンタズムか。
本当に妖怪しかいないんだね。

あそこで暴れてる妖怪さんたちを倒して元に戻せばいいのかな?

熱っ!これは直撃をもらったら、火傷じゃすまないかもね。
当たらないように避けながら、魔力を高めていくよ。

全力魔法でブーストしたアナロジーメタモルフォーゼで水蒸気を氷に変えて、氷漬けにしちゃうよ。



「これがカクリヨファンタズムか。本当に妖怪しかいないんだね」
 初めて訪れた新たな世界を、物珍しそうに見渡すアリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)。人ではなく、古今東西様々な妖怪たちが集い暮らすこの幽世で、いったいどんな"物語"を味わえるのかと、その内心は興味津々だった。
「あそこで暴れてる妖怪さんたちを倒して元に戻せばいいのかな?」
 見れば、燦々と熱いくらいの日差しが照りつける大地を、我が者顔で駆けまわる妖怪たちがいる。巨大な車輪と生首で構成された炎の妖怪――『骸魂』に取り憑かれた妖怪たちが変化したオブリビオン『輪入道』だ。

「ウオオオォォォぉぉぉぉぉッ!!!!」
 暑苦しい雄叫びを上げて『雨』の失われた世界を爆走する輪入道たちは、アリスの姿を見るなり問答無用で襲い掛かってきた。火の粉を巻き上げて高速回転する車輪による【ファイアホイールスピニング】の体当たりを、情報妖精は辛くも回避する。
「熱っ! これは直撃をもらったら、火傷じゃすまないかもね」
 肌をかすった火の粉をぱたぱたと払いながら表情を引き締める。それが自慢らしいこともあって、なかなか大したスピードと火力だが――大丈夫。このくらいならまだ、落ち着いて対処すれば避けられない攻撃ではない。

「これ以上暑くされる前になんとかしないとね」
 突っ込んでくる炎の車輪をひらりひらりと右に左に躱しながら、アリスは魔力を高めていく。現実という"情報"を操作するその力が臨界に達した瞬間、ウィザードロッド型の情報端末を振り上げて発動するのは【アナロジーメタモルフォーゼ】。
「氷漬けにしちゃうよ」
「ウオォォぉ―――ッ!!??」
 乾いた大気中に残る水蒸気や無機物が物質変換され、辺り一面に氷の塊が発生する。魔力によってブーストされたその威力は、まるで季節が真冬にすり替わったよう。
 いくらスピード自慢の妖怪でも、突然虚空から出現したものを避けられるはずが無い。輪入道たちは驚愕の叫びを上げながら、カチンと氷漬けになって動きを止めた。

「これでいいのかな?」
 アリスが氷の塊を解凍すると、ばったりと倒れた輪入道たちからドロンと煙が上がる。
 その中から出てきたのは骸魂に飲み込まれていた妖怪たち。骸魂を倒すことで、犠牲となった妖怪を救出することができる――それが幽世のオブリビオンの特徴だった。
 勝手を掴んだアリスはその調子で物質変換を操り、暴れるオブリビオンを次々と氷漬けにしていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

サフィリア・ラズワルド
WIZを選択

【瑠璃色の精霊竜】を召喚。
新しい世界、自然が多くて私は好きだなぁ。
精霊竜様?なんだかご機嫌みたいですけど精霊竜様もこの世界が気に入りました?そうですね!早く敵を倒してこの世界を満喫しましょう!

確かこの世界は敵に妖怪が飲み込まれてるんだっけ?じゃあ、出来るだけ穏便に……。
精霊竜様に幻覚で錯乱してもらって大人しくなったところを小突きます。

えいっ……もっと強くした方がいいのかな?えい!……精霊竜様?精霊竜様?!それやり過ぎなんじゃ!なんでそんなに楽しそうなんですか?!

アドリブ協力歓迎です。



「新しい世界、自然が多くて私は好きだなぁ」
 地球から流れついた古きものと豊かな自然が織りなすノスタルジックな情景に、心癒されるサフィリア・ラズワルド(ドラゴン擬き・f08950)。忙しなく変化する現し世と異なって、この幽世はまるで時間がゆっくりと流れているように感じる。
「精霊竜様? なんだかご機嫌みたいですけど精霊竜様もこの世界が気に入りました?」
 その傍らで穏やかに喉を鳴らすのは【瑠璃色の精霊竜】。たとえ言葉で語らずとも、美しいラピスラズリの色をしたその瞳と目を合わせるだけで、サフィリアはかの竜の気持ちを窺い知ることができた。

「そうですね! 早く敵を倒してこの世界を満喫しましょう!」
 晴れやかな笑みで答えながら、胸元のラピスラズリのペンダントを槍に変化させる。
 はじめての幽世観光としゃれこむ前に邪魔になるのは、我が物顔で幽世を爆走する骸魂のオブリビオン『輪入道』の群れ。このまま彼らの好き勝手にさせていては、いつまで経っても幽世に『雨』は戻らず、せっかくの美しい自然も枯れ果ててしまう。
「確かこの世界は敵に妖怪が飲み込まれてるんだっけ? じゃあ、出来るだけ穏便に……お願いします、精霊竜様」
 中にいる妖怪のことを気遣ってサフィリアが願い奉ると、精霊竜はこくりと頷きながら首をもたげ、紫色の吐息をふうと敵陣に向かって吹きかける。それは相手を傷付けるものではなく、幻覚へと誘う竜の御業だ。

「ウオォォぉぉぉぉ……何だァ!?」
 好き勝手に走りまわっていた輪入道たちを包みこんだ紫の吐息は、体感ではなんの影響もないように感じる。しかしその時にはもう、彼らは精霊竜の幻術に掛かっていた。
 雲ひとつない蒼天がにわかにかき曇り、ぽつり、ぽつり、と雨の雫が落ちてくる。またたく間にそれは滝のような豪雨となって、乾いた大地とオブリビオンに降り注いだ。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!!?!」
 炎の妖怪である輪入道にとって、この突然の大雨は堪ったものではない。それまでの威勢はどこへやら、悲鳴を上げてのたうち回るが――実際には雨などまだ一滴も降ってはいない。全ては瑠璃色の精霊竜が見せた、白昼夢の幻である。

「大人しくなりましたね……今のうちですっ」
 まんまと敵が撹乱されている隙に、サフィリアはそうっと気付かれないように近付くと、深蒼に輝くラピスラズリのドラゴンランスで突き掛かる――もとい、突っつく。
「えいっ……もっと強くした方がいいのかな? えい!」
 どのくらい強くすれば敵を倒せるか分からず、かといって強くしすぎれば飲み込まれた妖怪まで傷つけてしまいそうで。心優しいがゆえの少女のためらいは、しかし余り上手いものとは言えず、幻術に囚われていた敵が刺激で目覚めてしまいそうになる。

「……精霊竜様?」
 見かねた瑠璃色の竜がのっそりと近付いてくると、サフィリアを後ろに下がらせて、鞭のようにしなる尾を一振り。バチーンッ! とものすごい音を立てて輪入道のボディが砲弾のように吹っ飛ばされ、悲鳴を上げたきり目を回して動かなくなった。
「グェーッ!?」
 まずは一匹。フンと鼻を鳴らした精霊竜はそのまま周囲にいる輪入道たちを適当になぎ倒していく。特に技や術を使わなくとも、竜の暴力とはそれだけで脅威なのだ。

「精霊竜様?! それやり過ぎなんじゃ! なんでそんなに楽しそうなんですか?!」
 小動物を小突き回す猫のように見えなくもない(実情はもうすこし物騒だが)精霊竜の行為をあたふたと止めようとするサフィリア。だが結果的にはそれで問題はなかったのか、ノックアウトされた輪入道たちはドロンと煙を上げて元の妖怪に戻っていく。
「……えっと、協力感謝します。精霊竜様」
 これでいいのよ、と得意げに目を細める精霊竜に、少女はなんと返せばいいものかと、しばし答えに迷ったという。

成功 🔵​🔵​🔴​

雛菊・璃奈
…なんとなく馴染むね、この世界…。
わたしの世界もUDCアースに比べると古い文明の世界だし、私自身も妖狐だからかな…。
とにかく、みんなを助ける為に倒さないとね…。

「生首!」
「燃えてる!」
「お化け?」

ラン達を連れて参加…。
【unlimited】を展開して【呪詛】で強化…。
黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、なぎ払い、早業】と共に一斉斉射・再展開で一気に広域を殲滅するよ…。
ラン達にも暗器で同時攻撃をお願い…。
倒して妖怪に戻したらラン達に任せて安全なところに退避させていくよ…。

接近してきたのは凶太刀の高速化で回避し、頭部部分を一閃…。

ちょっと手荒になるけど、我慢してね…必ず助け出すから…。



「……なんとなく馴染むね、この世界……」
 現代地球から失われた過去の遺物から組み上げられた、どこかノスタルジックな雰囲気に包まれた幽世の空気。雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)にとってそれは肌に心地のよいものだった。
「わたしの世界もUDCアースに比べると古い文明の世界だし、私自身も妖狐だからかな……」
 時代的にはより新しいものも古いものも混在しているようだが、全体的な雰囲気は彼女の故郷サムライエンパイアとも確かに近い。妖怪たちがあちらこちらを闊歩する風景も、妖狐である彼女にはむしろ親しみを覚えるものだ。

「とにかく、みんなを助ける為に倒さないとね……」
 そんな幽世を襲った異変。『雨』を奪われ、骸魂に飲み込まれた妖怪たちを救うために、璃奈は呪槍・黒桜を構え、無数の魔剣・妖刀の現身を顕現させる。呪われし魔剣を祀る巫女である彼女と共に戦うのは、メイド人形のランたちだ。
「生首!」
「燃えてる!」
「お化け?」
 彼女たちの前に立ちはだかるのは、爆走する炎の車輪の群れ。炎と轢殺を司るという『輪入道』の大群をなんとかしなければ、幽世にさらなる乾きと死が広がってしまう。

「呪われし剣達……わたしに、力を……『unlimited curse blades』……!!」
 璃奈は詠唱に合わせて呪槍をひと薙ぎ。解放された呪力が黒い桜吹雪のように幽世を舞い、展開された無数の魔剣と共に敵に襲い掛かる。呪詛の上乗せで強化されたその一斉斉射の威力は、一般妖怪を取り込んだ程度の骸魂に耐えられるものではなかった。
「ギエエェェぇぇぇぇぇぇぇっ!!!?!」
 目の前が真っ黒になるほどの呪詛と魔剣の嵐に呑まれ、断末魔の悲鳴と共になぎ倒されていく輪入道たち。同時にメイドたちもエプロンドレスに隠し持った暗器を投げつけて、斉射から生き残った敵にトドメを刺していく。

「こ、こいつら、強い……」
 力尽きた輪入道はパタンと地面に倒れ込み、ドロンと上がった煙の中から飲み込まれていた妖怪が出てくる。気を失っているようだが身体には傷ひとつなく、どうやら命に別状はなさそうだ。
「ラン達はあの妖怪達を安全なところに退避させて……」
「「「わかった!」」」
 璃奈はメイドたちに元に戻った妖怪の救助を任せると、自らは【unlimited curse blades】を再展開。新たに顕現した魔剣と妖刀による追撃を叩き込み、一気に広域の敵を殲滅していく。

「グヌヌヌヌ、舐めるなよ!!」
 大量の仲間を一挙に失った輪入道たちは、怒りの【ファイアホイールスピニング】で猛反撃に出る。僅か数十秒間ではあるが車輪の回転速度を増強した彼らのダッシュ力は相当のもので、魔剣の雨をくぐり抜けて一気に此方との距離を詰めてくる。
「轢き潰してやるッ!!」
「遠慮しておく……」
 璃奈は流れるような所作で妖刀・九尾乃凶太刀を抜き放つと、目にも止まらぬ速さで輪入道の突進を躱す。凶太刀に秘められた"高速化"の呪力を受けた彼女のスピードは、車輪妖怪相手にもゆめゆめ劣るものではなかった。

「ちょっと手荒になるけど、我慢してね……必ず助け出すから……」
 疾風の回避から繋げて放つは迅雷の一閃。妖刀に斬り伏せられた輪入道の悲鳴が戦場に響き渡り、真っ二つに割けた頭部から、飲み込まれていた妖怪が転がり出てくる。
 幽世に冴え渡る魔剣の巫女の剣技は、悪しき妖怪の骸魂を順調に鎮めていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

フレミア・レイブラッド
吸血鬼…この世界の吸血鬼はダークセイヴァーの吸血鬼とは別物なのかしら?

「日照りの所為で暑いのー…」

暑いのはアレ(輪入道)の所為もありそうだけどね。

【ブラッディ・フォール】で「闇境の水面」の「蒼竜の異端神ウォルエリス」の力を使用(蒼竜の角や尻尾、翼が生えた姿へ変化)

【「水の巨大竜巻」で攻撃しつつ、その中を泳ぐ】や【天覆い地砕く波濤】で回避する隙を与えない様に一気に敵集団を攻撃し、討ち漏らしや逃した敵を【我こそが水なり】のブレスで殲滅していくわ。

周囲に大量の水も蒔けるし、多少は気温も下がって、少しは潤いも戻るんじゃないかしら

「少し過ごしやすくなった気がするのー」(吹雪で手伝いつつ)



「吸血鬼……この世界の吸血鬼はダークセイヴァーの吸血鬼とは別物なのかしら?」
 ヴァンパイアの血を引くフレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)が興味を抱いたのは、自らの故郷とこの世界にいる吸血鬼の違いについてだった。
 幽世に住まう吸血鬼は、恐怖や愛情といった人間の感情を食糧とする"西洋妖怪"という種族に含まれる。ダークセイヴァーのヴァンパイアも人間の恐怖の対象ではあるが、それが生存活動と結びついている根拠はないため、別種族と考えるべきだろうか。
 実際に西洋妖怪の吸血鬼に会えれば考察も深まるかもしれないが。そのためにはまず、この世界から失われた『雨』を取り戻し、骸魂に囚われた妖怪たちを救わなければ。

「日照りの所為で暑いのー……」
「暑いのはアレの所為もありそうだけどね」
 一緒についてきた雪女見習いの「雪花」にとって、今の幽世はあまり居心地のいいものではなかった。雲ひとつない空からは燦々と日光が照りつけ、地上では炎と轢殺の妖怪『輪入道』の群れが、火の粉を撒き散らしながら駆け回っている。
 熱に弱い眷属の体調を慮る意味もあってか、フレミアはかつて討伐した水神のオブリビオン『蒼竜の異端神ウォルエリス』の力を【ブラッディ・フォール】でその身に纏う。
「骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!」
 蒼き竜の角と尾と翼を生やし、竜神のごとき姿へと変化した吸血姫は、我が物顔で熱気を振り撒く輪入道たちを睨みつけると、徐に【天覆い地砕く波濤】を解き放った。

「ギヒヒヒヒ、燃えろ燃えろ――って、なんだぁっ?!」
 輪入道たちが見たものは、押し寄せる水の大津波。『雨』を失い、乾きに満たされた今の幽世ではありえない莫大な水量に、彼らが愕然とするのは無理もないことだった。
 慌てて車輪を反転させる間もなく、地砕く波濤は一切を呑み込んでいく。単純ゆえに重い水流という名の暴力が通り過ぎたあとの地形は、それまでとは一変していた。
「回避する隙なんて与えないわ」
 さらにフレミアは竜翼を羽ばたかせて津波の中に飛び込むと、地を洗い流す波濤を水の巨大竜巻に変化させる。周囲のものを吸い込みながら天へと昇っていく巨大な渦は、津波に呑まれた輪入道たちをメチャクチャに掻き回す。

「ガボガボガボガボっ!!!?!」
 炎の妖怪の天敵である水の攻撃に溺れ、悶え苦しむ輪入道たち。どんなに必死に車輪を高速回転させても、一度水中に引きずり込まれたが最期、彼らに逃れる術はない。
 やがて車輪の炎も鎮火し、ぷかりと水面に浮かんだ彼らの骸からは、飲み込まれていた妖怪たちが這い出してくる。ちょっと竜巻で目を回したようだが、命に別状はない。
「これは……ぼくたち、助かったの?」
「水だぁ! 水がこんなにいっぱい!」
 状況が分からずに困惑する者、目の前にある大量の水に歓喜する者。反応は様々だが、彼らの表情は安堵と喜び、そして猟兵たちに対する感謝の想いに満ちあふれていた。

「これで多少は気温も下がって、少しは潤いも戻るんじゃないかしら」
 フレミアは水浸しの妖怪たちに手を振りながら【我こそ水なり】を発動し、超圧縮された水の身体から渦巻く海流のブレスを放つ。仲間の被害に恐れをなして逃げようとしていた敵もそれであえなく殲滅され、戦場には大量の水が残されることになる。
「少し過ごしやすくなった気がするのー」
 雪花もすこし元気を取り戻した様子で、吹雪を起こして主人の掃討戦を手伝っている。
 涼をとるための打ち水にしては些か派手ではあったが、日照の世界と化した幽世において、水神となったフレミアの作戦は功を奏したようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
ここはカクリヨファンタズムにある『悩み聞くカレー屋』1号支店。
沢山の妖怪たちが、悩みを話すこともなく、カレーうどんを食べる訳でもなく、暇だからコミュニケーションを取りに来る場所。

「大変、大変だよ!」
常連妖怪がご来店。
「どうしたの。日記に晴れときどきブタと書いたら、本当にブタでも降って来たとか?」
「違う!」
「じゃあ、一体…」
「輪入道がグレてしまったんだ!」

「あらホント。おーい自分の牛車にひき殺された輪入道!悩み聞くよ、カレーあるよ!!」
無意識のうちに煽る煽る。怒った輪入道が向かってくるが…

「よっしゃ、ホームラン」
ハリセンで輪入道をしばきフライアウェイしていく。
そう、ここはカビパンファンタズム。



「今日もカレーうどんの売上はゼロ……」
 スパイスの香りがほのかに薫る店内で、カウンターに突っ伏しだらだらする軍服の女。
 ここはカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)が経営する『悩み聞くカレー屋』カクリヨファンタズム1号支店。新世界に早くも目をつけたカビパンが立ち上げたこの店は、毎日沢山の妖怪たちが、悩みを話すこともなく、カレーうどんを食べる訳でもなく、暇だからコミュニケーションを取りに来る場所となっていた。

「注文が来ないのはいつも通りとして……今日はなんだか客足も少ないような?」
 現在のカレー屋にいるのはカビパンひとり。物珍しさも相まってか日々多くの妖怪がやって来る(売上に貢献するとは言っていない)この店にしては珍しい事態ではある。
 ――と、そこに息せき切って店内に飛び込んできたのは、常連妖怪の油すまし。
「大変、大変だよ!」
「どうしたの。日記に晴れときどきブタと書いたら、本当にブタでも降って来たとか?」
「違う!」
 店長お得意のいつものギャグにも素っ気ない返事しか出来ないほど、何やら切羽詰まった様子である。これまでだらだらする余り幽世の異変に気付いていなかったカビパンも、ようやく何かあったらしいことに気付く。

「じゃあ、一体……」
「輪入道がグレてしまったんだ!」
 油すましが店の戸を大開きにして外を指し示すと、そこには暴走族よろしく火の粉を撒き散らして暴れまわる輪入道の姿が。どうやらこの店の常連である輪入道が、骸魂に取り憑かれてオブリビオン輪入道になってしまったらしい。ややこしい話である。
「あらホント。おーい自分の牛車にひき殺された輪入道! 悩み聞くよ、カレーあるよ!!」
 何か嫌なことでもあったのだろうかと、声を張って呼びかけるカビパン。だがその発言は本人(もとい本妖)が気にしているところを無意識に煽っている。いつもなら顔面に車輪の轍を残すくらいで許されても、今の輪入道はとかくキレやすかった。

「アンだぁテメェ! 馬鹿にしてんのか!!」
 怒りのパワーで【ファイアホイールスピニング】を発動した輪入道が、物凄い速度で店に突っ込んでくる。常連客の油すましは慌てて逃げるが、カビパンは慌てず騒がず、愛用する「女神のハリセン」を振りかぶり――。
「よっしゃ、ホームラン」
 スパーンッ!! といい音を立てて、澄みわたる蒼天にフライアウェイする輪入道。
 この【ハリセンで叩かずにはいられない女】の敷地に一歩車輪を踏み込んだのが運の尽き。絶え間なく店主のギャグが降り注ぐこの空間は、幽世ではなくギャグ世界のルールが働くのだ。

 そう、ここはカビパンファンタズム。
 たとえ世界が日照に悩まされていても、ここだけはいつも通りの日々が流れていく。
 結果的に、それが緊急時の避難所として常連たちに周知され、カレー屋は次第にいつもの賑わいを取り戻すのであった――カレーうどんが売れたかどうかは知らない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジノーヴィー・マルス
アイシャ(f19187)と。


えっと、この世界なんて言ったっけ。かたくりこ?
あ、そうそうカクリヨだ。アイシャは記憶力良くてえらいなぁ。
そうだなぁ、頻繁にヘンな事起こっちゃ落ち着いて寝てもいらんねぇ。
それに毎日こう日が照ってるってのもねぇ。俺は曇ってる方が好きなんだ。

っていうか何…あの車輪……ああいうのがこの世界の敵かぁ。急に目の前現れたら心臓悪いぞ。
まぁともかく、退散願おうか。

Vendettaを用いて「滅多矢鱈に撃ちまくる」
ただし、敵を直接撃つんじゃなく、地面を撃つ。
この手の奴にゃ、荒れた道はツライだろ、ある意味これも【地形の利用】ってこったな。
そうしたら、転んだ奴から撃ちまくっていく。


アイシャ・ラブラドライト
f17484ジノと
口調→華やぐ風
ジノ以外には通常口調

ジノの肩に乗って

かたくりこ…ジノ、惜しい…
大丈夫、大体あってるよ
ここはカクリヨっていうの
頻繁に世界規模の異変が起きるなんて、住むにはちょっと不便かもしれないね
へぇ、ジノって曇りが好きなんだ…どうして?
私はお日様大好きだけど、雨だって大切
はやく世界に雨を取り戻させてあげなくちゃ
それに、敵を倒せば妖怪さんを救うことができるんだよね
もうちょっとだから、待っててくださいね

embraceで盾を作ってジノをサポート
敵をよく見て、回転速度が速くなったら自分もUCを発動させる
敵も私も6倍ならば、帳消しになるはず
攻撃には、自分の歌とmuguetを使う



「えっと、この世界なんて言ったっけ。かたくりこ?」
「かたくりこ……ジノ、惜しい……」
 うだるような暑さの晴天の下を、気怠げに歩くジノーヴィー・マルス(ポケットの中は空虚と紙切れ・f17484)。その肩に乗るフェアリーのアイシャ・ラブラドライト(煌めく風・f19187)は、華やぐ風のようにくすりと微笑みながら訂正を入れる。
「大丈夫、大体あってるよ。ここはカクリヨっていうの」
「あ、そうそうカクリヨだ。アイシャは記憶力良くてえらいなぁ」
 強化人間化の後遺症により物忘れが激しいジノーヴィーは、やはり気怠さを伴った調子で相方を褒めそやす。そう、このカクリヨから『雨』を奪ったオブリビオンを倒し、妖怪たちを救け出す――そのために自分たちは来たのだ。

「頻繁に世界規模の異変が起きるなんて、住むにはちょっと不便かもしれないね」
「そうだなぁ、頻繁にヘンな事起こっちゃ落ち着いて寝てもいらんねぇ」
 日照の世界で好き放題に暴れまわる『輪入道』を射程に捉え、ジノーヴィーは蒸気ガトリングガン「Vendetta」を構える。それに合わせてアイシャは肩に止まったまま、ワンド「muguet」の先端についた鈴蘭型のベルをリン、と鳴らす。
「それに毎日こう日が照ってるってのもねぇ。俺は曇ってる方が好きなんだ」
「へぇ、ジノって曇りが好きなんだ……どうして?」
 青年が妖精の問いに答えようと口を開きかけたところで、地を駆ける車輪の音がそれを遮る。どうやら敵も話し終わるまで悠長に待ってはくれないようだと、ふたりの猟兵は即座に迎撃体勢を取った。

「っていうか何……あの車輪……ああいうのがこの世界の敵かぁ。急に目の前現れたら心臓悪いぞ」
 巨大な生首のくっついた燃える車輪が、激しく回転しながら此方に突進してくる様子は、地球に伝わるホラーや怪談噺そのもの。こういうの苦手なんだよな、と眉をひそめながらも、ジノーヴィーはVendettaを【滅多矢鱈に撃ちまくる】。
「まぁともかく、退散願おうか」
 辺り構わずばら撒かれるガトリングの弾幕。しかしその殆どは敵に命中することなく、ただ地面を撃ち抜くばかり。輪入道たちは「ノーコン野郎め!」とせせら笑いながら突っ込んでいくが――ガクン、と、不意にその走行が蛇行する。

「なッ、何だぁ?!」
「足下注意、ってやつさ」
 ジノーヴィーは最初から敵を撃つのではなく、敢えて地面を狙って撃っていたのだ。弾幕で路面を荒らし凸凹だらけにすることで、車輪の走行能力を阻害するために。
 そうとは知らずに愚直な全力疾走を続けた輪入道たちは、まんまと悪路に嵌まって車輪を取られ、盛大にスピンアウトした。
「この手の奴にゃ、荒れた道はツライだろ」
 ある意味これも地形の利用ってこったな、と面白くもなさそうにそう言いながら、転んだ敵を撃ちまくるジノーヴィー。ついさっきまでノーコンと嘲った弾幕を盛大に浴びた輪入道は、車輪と生首を蜂の巣にされ、二度と起き上がってくることは無かった。

「私はお日様大好きだけど、雨だって大切。はやく世界に雨を取り戻させてあげなくちゃ」
 ジノーヴィーが突進を阻んだ敵に、アイシャはワンドを振って追撃を重ねる。鈴の音に合わせて彼女が歌えば、その歌声は音の衝撃波となって輪入道を吹き飛ばしていく。
「それに、敵を倒せば妖怪さんを救うことができるんだよね」
「そう、だったっけ。たしか……あぁ、ほら」
 妖精の問いかけを受けて青年が指差すと、ふたりの弾幕と衝撃波を受けて力尽きた輪入道はドロンと煙を上げて消えていく。その後から出てきたのは、骸魂に飲み込まれていた妖怪たち――どうやら気を失っているが、大したケガはしていないようだ。

「ぐぬぬぬ、やってくれたな!」
 このままやられてなるものかと、残された輪入道はVendettaに荒らされた地面を迂回して襲い掛かってくる。すかさずアイシャがフィンガーレスグローブ「embrace」をはめた手で敵の来る方向を指差すと、虚空から出現した盾が炎輪の突撃を受け止めた。
「ジノは、私が守るから」
 小さな身体に秘めた"守りたい"という想い。火の粉すらも触れさせまいと堅固に盾を生成する妖精に対し、輪入道も負けじと【ファイアホイールスピニング】を発動する。
「うおおぉぉぉぉぉぉらああぁぁぁぁぁッ!!!」
「行かせ……ませんっ」
 車輪の回転速度が加速するのを見て、アイシャも【Heartache】を発動。必ず目的を達成するという強い意志が彼女の力となり、力強さを増した盾と音の衝撃波が、炎の車輪を弾き飛ばした。

「もうちょっとだから、待っててくださいね」
 穏やかな風のような声色で、敵の中にいる妖怪たちにそっと囁きかけるアイシャ。
 彼らを骸魂から解放するために、ジノーヴィーのガトリングガンが再び咆哮する。
「出血大サービスってね」
「ギャァァァァァッ!!」
 盾と音に弾かれバランスを崩した輪入道を、弾丸の嵐が射抜く。断末魔の絶叫が青空に木霊し、消滅する骸の中から妖怪たちが現れる。かくして青年と妖精の連携は順調に幽世にはびこるオブリビオンを撃退し、罪なき妖怪を救い出していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
(●世界知識に取り込んだ情報を振り返り)
UDCアースにこのような繋がりのある世界があったとは…
『忘れられた者達の安息の地』と言うべきでしょうか

ですが、楽園と言うには些か憂慮すべき環境のようですね

センサーでの●情報収集で攻撃を探知し●見切って躱しつつ脚部スラスターでの●スライディング移動で敵の群れの中心に移動

今、お助けします

UC発動

ワイヤーアンカーを柄尻に接続した剣と、同じく接続した大盾を鞭や鉄球宜しく●怪力の●ロープワークで操り●なぎ払い敵を一掃
予測演算に従い敵の連携を崩すに最適な軌道で攻撃と防御を両立

倒すと本当に妖怪達が助け出せるのですね…

大丈夫ですか?
一先ず、安全そうな場所までお送りします



「UDCアースにこのような繋がりのある世界があったとは……『忘れられた者達の安息の地』と言うべきでしょうか」
 データベースに取り込んだ新たな世界の情報を振り返って、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)はそう語る。過去の遺物によって組み上げられた、ノスタルジックな雰囲気漂うこの世界は、まさにそう評するのに相応しいだろう。
「ですが、楽園と言うには些か憂慮すべき環境のようですね」
 この地に流れ着いた妖怪たちを脅かす異変、そして骸魂より生まれるオブリビオン。たとえ人ならずとも無辜の民草を守るためにこそ、機械仕掛けの騎士の剣はある。

「今、お助けします」
「なんだぁ、テメェ!」
 儀礼剣と大盾を構えて此方に向かってくる騎士を見て、輪入道たちは乱暴な声を上げる。
 炎と轢殺を司る妖怪である彼らは、その荒ぶる本能のままに車輪を激しく回転させ、【燎原火炎陣】を展開した。
「轢き潰してやるッ!!」
 猛然と炎を巻き上げながらの突進攻撃。トリテレイアは機体に搭載されたマルチセンサーによって敵の進路を予測し、脚部スラスターを点火。滑らかなスライディング移動で突撃を躱しながら、敢えて敵陣の中心へと進んでいく。

「馬鹿め! 飛んで火にいるなんとやらだぜ!」
 燎原火炎陣の威力は仲間との連携によって倍増する。まんまと群れのど真ん中にやって来た獲物を嘲笑いながら、輪入道たちは包囲からの一斉突撃で決着をつけんとする。
 だがそれはトリテレイアの方からしても予測できたこと。燃え盛る車輪の包囲網を前にして、彼は【白騎士の背、未だ届かず】を発動する。
「コード入力【ディアブロ】、戦域全体の未来予測演算を開始」
 搭載された電脳と蓄積した戦闘経験が可能とする、僅か8.3秒の未来予測。その演算結果から敵の行動の全てを把握した騎士は、機体から伸ばしたワイヤーアンカーを剣の柄尻と盾に接続し、まるで鞭や鎖鉄球のように力一杯振り回した。

「グゴハァッ!?」
 突進中の輪入道の横合いから勢いよく叩きつけられる剣と盾。ウォーマシンの怪力と装備品の重量に加えて遠心力まで活かしたその一撃は、トリテレイアの周囲にのこのこと近付いてきた連中を纏めて薙ぎ払うのに十分過ぎる威力があった。
「貴方達の行動は全て予測済みです」
 演算結果に従って繰り出される、敵の連携を崩すために最適な軌道に沿った精密攻撃。敵がこちらを倒すために全力を傾けるまさにその瞬間を突くことで、それは敵を一掃する攻防一体の一手となった。

「ぐえぇぇぇぇぇぇ……」
 車輪がへし折れる勢いでなぎ倒された輪入道たちは、断末魔を残すとドロンと煙を上げて消滅する。その後から現れたのは、骸魂に飲み込まれていた一般妖怪たちである。
「倒すと本当に妖怪達が助け出せるのですね……」
 情報として知ってはいても、実際に目にするとなかなか驚く現象である。トリテレイアはワイヤーを巻き上げて剣と盾を回収すると、ともあれ彼らの救助活動にあたることにした。

「大丈夫ですか? 一先ず、安全そうな場所までお送りします」
「うぅ……そういえば私、骸魂に……あなたが助けてくれたの?」
 オブリビオン化していた妖怪たちは、気を失っていたものの特に目立った外傷はなく、命に別状はないようだった。トリテレイアに助け起こされた彼らはすぐに状況を把握し、自分たちを助けてくれた猟兵に感謝を伝える。
「ありがとう! えぇっと……動く鎧の騎士さん!」
「いえ、私はリビングアーマーでは無いのですが……」
 "過去の遺物"が集うこの幽世の住民たちが、はるか未来の文明に相当するスペースシップワールドのウォーマシンについて正しく認識するのは些か難しかったようだ。
 ともあれ、伝えられた感謝の想いは本物。久しぶりの"視える"相手ということもあってやけに歓迎ムードな彼らを連れて、トリテレイアは安全地帯へと移送するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

雨の消えた世界か…生きるために水が必要なのは人間だけでなく妖怪も同じだろう
早急に敵を叩き、恵みの雨を降らせなければな

倒せば救い出せると言うのならば遠慮はいらんな
シガールQ1210で弾丸をばらまき敵に打撃を与え、倒しきれなかった奴らはエギーユ・アメティストでなぎ払う
中距離を保ち敵がこちらを囲うようにおびき寄せる

フン、煽り運転は事故の元だぞ
私が一から交通ルールを叩き込んでやろうか

敵がUCを使用し集団で襲って来たらこちらもUCを発動
強力な蹴りをカウンターで迎え撃ち敵集団を一気に吹き飛ばす
後方からくる敵には回し蹴りで対応する

お前達全員免停だ
これに懲りたら次からは安全運転を心がけるんだな


ヒビキ・ノッカンドゥ
アドリブ等歓迎

さて、石燕の作という知識はあるけれどね
また物騒なのが沢山出てきたものだね

大量殲滅に適したUCを使用、ある程度距離は取るが相手のUCで接近されるはほぼ必定
できるだけ接近されぬよう先頭集団から確実に倒し進路を阻む【時間稼ぎ】【見切り】

バレルが外側に開かれて光る糸のようなビームが豪雨のように撃ち出される

近づかれたら無理もしなければならないねと逃げ足と機動力の為【リミッター解除】【見切り】
大きな得物だがその取り回しは【早業】

輪入道は魂を奪うという性質だけれどその通りになってるね
妖怪の皆からは沢山話を聞きたいんだ
返して貰うよ

日本の古い伝説、説話等の全般が大好きな学生なのでどこかウキウキ



「雨の消えた世界か……生きるために水が必要なのは人間だけでなく妖怪も同じだろう」
 雲ひとつなく乾ききった空を見上げ、そう呟くのはキリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)。あらゆる生物にとっての生命線ともいえる水、その大事な供給源が失われてしまえば、世界は遠からず死の砂漠と化してしまう。
「早急に敵を叩き、恵みの雨を降らせなければな」
「さて、石燕の作という知識はあるけれどね。また物騒なのが沢山出てきたものだね」
 視線を向けた先にいるのは、火の粉を撒き散らす輪入道の群れ。この手の伝承に詳しいヒビキ・ノッカンドゥ(月の響・f17526)はどこかウキウキとした眼差しで彼らを見つめながら、多目的ビーム砲「Howling at the Moon」を担ぎ上げる。

「まだ距離があるし、ここは先手を取らせてもらおうか」
 多勢の敵を相手取るために、ヒビキは大量殲滅に適した【形態・繊月】を起動。長大なバレルが外側に開かれて広域制圧モードに変形し、輪入道の群れに照準を向ける。
 砲身にエネルギーが蓄積され、チャージ完了と同時に発射。光る糸のようなビームが豪雨のように撃ち出され、対象の元に降り注いだ。
「ぐぎゃぁぁぁぁっ!?!!」
 断末魔の悲鳴が戦場に響く。美しい光の軌跡を描きながら拡散・屈折するビームの雨から逃れるのは非常に困難であり、見た目通りのスピード自慢の輪入道でも避けきるのは不可能だった。

「クソッ、やりやがったな!」
 早々に痛手を負った輪入道たちは怒りに震えながら【ファイアホイールスピニング】を発動し、燃える車輪を高速回転させながら【燎原火炎陣】の構えで突撃してくる。
 ヒビキはできるだけ接近されぬように敵の先頭集団にビームを集中させ、確実に撃破することで進路を阻もうとする。そんな彼女を援護するように、キリカも強化型魔導機関拳銃"シガールQ1210"を構え、銃弾の雨を敵陣にばら撒く。
「倒せば救い出せると言うのならば遠慮はいらんな」
 秘術により強化された弾丸は生首付きの車輪をたちまち蜂の巣に変え、勢いを失い倒れた骸の中からは飲み込まれていた妖怪が現れる。骸魂を祓うことでオブリビオン化した妖怪を元に戻すことができる――それはこの世界特有の現象であった。

「怖気付くな! 轢き潰せ!」
 光と鉛の弾幕に次々と仲間を撃ち倒されても、輪入道たちの猛進は止まらない。個々の実力では勝っていても、数に劣る猟兵たちがいずれ接近されるのは必定であった。
 キリカは純白の革鞭「エギーユ・アメティスト」で弾幕を抜けてきた敵をなぎ払い、なるべく中距離を保とうとするが、炎の車輪は次第に彼女らを包囲し始めていた。
「ぎひひひひ、もう逃げられねぇぞぉ」
 舌なめずりをする生首。袋のネズミになった相手をあざ笑うかのように、輪入道たちは砂埃を巻き上げてぐるぐると猟兵たちの周囲を回りながら、集団突撃を仕掛けてくる。

「フン、煽り運転は事故の元だぞ。私が一から交通ルールを叩き込んでやろうか」
 だが、敵が足並みを揃えて一斉に襲ってくるこの瞬間は、キリカにとっても反撃のチャンスだった。炎の車輪に轢き潰される寸前、「アンファントリア・ブーツ」を履いた彼女の脚が唸りを上げる。
「吹き飛べ」
「ごギャッ!?」
 魔法工学により強化された【サバット】の蹴撃が、敵集団をまとめて吹き飛ばす。その威力たるや、衝撃を受け止めた地面が陥没し、大きく地形が変化するほどであった。

「近づかれたら無理もしなければならないね」
 キリカの蹴りが敵の連携を崩した隙を突いて、ヒビキは武装のリミッターを解除。閉じたバレルの周辺にエネルギーを纏わせると、まるで大剣のようにビーム砲を振るう。
「ギエェッ?!」
 光のエネルギーを帯びた斬撃の威力は、敵を両断するのに十分なもの。身の丈にも匹敵する大きな得物ながらも取り回しは軽妙で、重さを感じさせない機動力を見せる。
 身体に馴染んだ武装と戦いの中で身につけた見切りのセンス。そのふたつを兼ね備えたヒビキに、輪入道たちは触れることさえできない。

「輪入道は魂を奪うという性質だけれどその通りになってるね」
 妖怪を飲み込むことでオブリビオン化する骸魂。その特性と伝承との符号はいち学生でもあるヒビキとしては興味深いものだったが、今はそれよりも重要なことがある。
「妖怪の皆からは沢山話を聞きたいんだ。返して貰うよ」
 日本の古い伝説、説話等の全般が大好きな彼女にとって、その当事者から話を聞けるかもしれない機会には心が躍る。再び制圧モードへと変形した「Howling at the Moon」が閃光を放てば、周囲の敵は飲み込んでいた妖怪たちだけを残して消滅した。

「ぐ、グヌヌヌヌ、こんなバカな……!!」
「お前達全員免停だ。これに懲りたら次からは安全運転を心がけるんだな」
 鮮やかなる逆転劇を目の当たりにして歯噛みする輪入道を、キリカの脚が蹴り飛ばす。
 背後から迫る敵にも華麗な回し蹴りで対処と、躍るような戦いぶりに死角も隙もない。
 果たして骸魂となった彼らに"次"があるかは分からないが――彼女らの付近にいた輪入道が一掃されるまで、それから然程の時間はかからなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シェーラ・ミレディ
新たな世界はどうも、非常に不安定なようだ。
骸魂の襲撃を受けるだけで、まさか雨が降らなくなるとは……!
住人の平穏な生活のためにも、一刻も早く制圧せねば。

まずは挑発して敵の軌道を直線的なものに限定し、僕の方へ向かってくるよう誘導するぞ。
「身体がないものは大変だなぁ。補助輪を付けないと動けもしないとは!」
「そんな体たらくで、僕のもとまで辿り着けるのか?」
うまくいったら『艶言浮詞』で精霊を呼び出し、敵に群がらせて回転の勢いを弱めよう。
動きの鈍った敵の急所……眼球や口内、耳の中や首の断面に狙いを定め、4丁の精霊銃で素早く弾丸を叩き込む!
悪いな。お前より、僕の弾丸の方が速かったようだ。

※アドリブ&絡み歓迎


佐伯・晶
ここが新しい世界かな
何か懐かしい感じのする所だね
邪神と敵対していた神様がいるらしいし
元に戻る手掛りが見つからないかな
そのためにもまずは皆と協力して事件の解決を目指すよ

式神白金竜複製模造体で使い魔を召喚
呼び出す数は1体にして
その分超硬装甲の竜体を大きくしよう

融点の高い希少金属でできた装甲だから
輪入道の攻撃でそう簡単には壊れないと思うよ

使い魔に攻撃を防いで貰いつつ
僕もガトリングガンやマヒ攻撃で
時間を稼いで昏睡するまで凌ごう
抜けてきた攻撃は神気で時間を停めて防御

輪入道が昏睡で気を失ったら
無防備な間に骸魂を払って
元に戻せないか試してみよう

物理的なダメージで元に戻せるなら
使い魔の直接攻撃か金属化で行うよ



「新たな世界はどうも、非常に不安定なようだ。骸魂の襲撃を受けるだけで、まさか雨が降らなくなるとは……!」
 照りつける日差しを避けるように手で覆いを作りながら、シェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)は日照の世界と化した幽世を見渡す。元は郷愁を感じさせる町並みも今は骸魂が跳梁跋扈する有様で、これでは住民たちも堪ったものではないだろう。
「ここが新しい世界かな。何か懐かしい感じのする所だね」
 一方の佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)の胸中には、シェーラとは違う考え事があった。
 この世界にはかつて邪神と敵対していた神――竜神がいるらしい。もしかすれば邪神と融合してしまった自分が、元の人間に戻る手掛りが見つかるかもしれない。

「そのためにもまずは事件の解決を目指さないと」
「ああ。住人の平穏な生活のためにも、一刻も早く制圧せねば」
 暴れ回るオブリビオンを放置してはおけないという思いは、晶もシェーラも同じだった。協力して敵の撃破を図るふたりのうち、まずはシェーラが大声で敵の集団に向かって呼びかける。
「身体がないものは大変だなぁ。補助輪を付けないと動けもしないとは!」
「あぁん!? 今なんて言ったぁ!!」
 輪入道の車輪にくっついた生首が、ぐりんとそちらを向いて怒声を上げる。炎と轢殺を司る妖怪というだけあって、彼らは総じて怒りやすく荒っぽい気性をしているようだ。シェーラはそこに目をつけて、敵が自分の方に向かってくるよう挑発する。

「そんな体たらくで、僕のもとまで辿り着けるのか?」
「バカにすんじゃねぇ! そんなに轢き殺されてぇならお望み通りにしてやるよ!」
 売り言葉に買い言葉で、あっさりと怒りが沸点に達した輪入道たちは、後先考えずに【ファイアホイールスピニング】を発動して突っ込んでくる。憤怒のあまり脇目も振らない様子で、描く車輪の軌道はまっすぐ一直線にシェーラの元へと向かう。
 シェーラはまんまと挑発に乗ってきた敵を見てにやりと笑いながら、【彩色銃技・口寄せ・艶言浮詞】を唱え、呼び出した精霊たちを周囲の無機物に憑依させる。
「おいで、僕に手を貸してくれ」
 実体を得た精霊は無邪気にクスクスと笑いながら、戯れるように輪入道たちに群がっていく。一目散に敵を轢き潰すことしか頭になかった連中に、突然現れたそれを避けることなどできよう筈もない。

「なっ、なんだコイツらっ?!」
 群がる精霊たちに進路を妨害され、あるいは組み付かれて、輪入道たちの回転の勢いが弱まる。ひとりひとりは非力な精霊でも、何十人と集まってそれぞれの属性の力を結集すれば、怒れる妖怪を抑え込むのに十分な力になる。
「くそッ、邪魔すんじゃねぇ! まずはテメェらから轢き潰して―――」
 輪入道たちは炎を吹き上げて邪魔者を蹴散らそうとするが、そこに立ちはだかったのは白銀に輝く巨大な影。シェーラが敵の目を引きつけている間に晶が創造した使い魔【式神白金竜複製模造体】である。

「防御と足止め、よろしくね」
「ご褒美くれるなら頑張るのですよー!!」
 晶の指示に、雄々しきプラチナ製のドラゴンから返ってくる声は少女のように愛らしい。異世界で交戦した帝竜の一体をモチーフとしたその使い魔は、全身を融点の高い希少金属で覆った超硬装甲を頼みに、輪入道たちの突進を押さえ込んだ。
「デケェッ?! なんだってドラゴンがこんな所に!」
 呼び出す数を1体に限ったことで、生成のためのリソースをより多く費やした竜体は、敵も眼を見張るほどに大きく。轟々と燃え盛る怒りの炎も、白金に煌めく装甲を融かすことはできなかった。

「――今だ」
 精霊と使い魔の妨害によって敵の動きが鈍った隙を突き、シェーラは目にも止まらぬ早業で4丁の精霊銃を抜くと、一瞥で敵の急所に狙いを定め、素早く弾丸を叩き込んだ。
「ぎゃぁッ!」「ぎぇッ!?」「ぐはッ!!」「ぎゃふッ?!」
 眼球や口内、耳の中や首の断面――それぞれが致命的な箇所に弾痕を刻まれ、4体の輪入道が同時に断末魔を叫ぶ。その鮮やかな銃捌きは、的中する最期の瞬間まで、敵に避ける暇さえ与えなかったほど。
「悪いな。お前より、僕の弾丸の方が速かったようだ」
 不敵な笑みを浮かべながら、なおもトリガーを引くシェーラ。怒りに我を忘れ、まんまと此方の術中に嵌まった連中など、彼にとってはもはやいい的でしかなかった。

「あの中に飲み込まれた妖怪がいるんだよね。ならまずは眠らせようか」
 一方の晶も携行型ガトリングガンと状態異常魔法を駆使して、使い魔の陰から攻撃を仕掛ける。殺傷力よりもストッピングパワーを重視した制圧射撃とマヒ攻撃で、敵を昏睡させるのが狙いだ。
「ぐ、うぐぐ、畜生……」
 ばたんきゅぅ、と弾幕を浴びて輪入道が気を失うと、無防備なうちに邪神の神力を使って骸魂を祓っていく。すると彼らはドロンと煙を上げて、元の妖怪に戻っていった。

「これでよし。でも物理的なダメージでも戻せるみたいだね」
「だったら話は早いのですよー!」
 それまで防御に徹していた晶の使い魔も反撃に転じ、竜の巨体を活かした物理攻撃や希少金属のボディによる金属化攻撃で敵をなぎ払う。物言わぬ金属の像と化し、砕け散った輪入道の中からは、傷一つない一般妖怪が出てきた。
「少し手荒になるが、許せよ!」
 シェーラもまた躍るように銃撃の雨を降らせて、迅速かつ的確に敵を仕留めていく。
 かくして怒れる輪入道の群れは蹴散らされ、骸魂より解放された妖怪たちは無事彼らに保護されたのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

朝沼・狭霧
ベイメリア(f01781)とアドリブ歓迎
【心情】
妖怪になんかようかい?なんちゃって
新しい世界に興味津々。少しハイテンション
何か楽しいものはあるかしら?(わくわく
雨を止める妖怪ね、ずっと晴れだと困るけれど洗濯物がよく乾きそう


「あの妖怪、目が回ったりしないのかしら?」
UCのブラストヴォイスで輪入道を周りの地面ごと攻撃
攻撃と共に地面をぼこぼこにして敵の機動性を奪う

動きが鈍くなった敵からバディペットのフワリちゃんと
骸魂を切り裂き中の妖怪を出す
「ああっ、フワリちゃん遊びに行っちゃダメですよ」
回る敵を追いかけ様とするフワリちゃんをキャッチ
周りの敵が片付いたら
ベイメリアの頭の上にフワリちゃんをのせておきます


ベイメリア・ミハイロフ
狭霧さま(f03862)と
アドリブ歓迎

日照り…でございますか
確かにお洗濯には良うございますね
しかしながら妖怪さんたちは困っていらっしゃるご様子
これは何が何でもお助けしなくては
ところで狭霧さま
新たな世界の冒険でわたくし少し緊張しております

まずは骸魂からお助けせねば、でございますね
激痛耐性・火炎耐性を活用しつつ
第六感にて攻撃を見切り
狭霧さまにお声がけしながら回避を試みます
回避不能な場合は狭霧さまをお守りするようにしながら
オーラ防御を展開

こちらからの攻撃は
属性攻撃にて水属性を付与しつつ
範囲攻撃にて複数を巻き込むようにしながら
高速詠唱からの2回攻撃を狙って
狭霧さまが足止めしてくださっている間に攻撃を



「妖怪になんかようかい? なんちゃって」
 そんなジョークを口ずさみながら、少しハイテンションな様子でスキップする朝沼・狭霧(サギリ先生・f03862)。新しい世界に興味津々な彼女は「何か楽しいものはあるかしら?」と、ノスタルジックな雰囲気に包まれた風景を見回している。
 しかし残念なことに今の幽世はあまり観光向きとは言えない。長く続いた日照のせいで草木や住民たちの元気はなく、おまけに世界のあちらこちらで大量の骸魂が妖怪を飲み込んでオブリビオン化し、好き勝手に暴れまわっているのだから。

「雨を止める妖怪ね、ずっと晴れだと困るけれど洗濯物がよく乾きそう」
「日照り……でございますか。確かにお洗濯には良うございますね」
 からっと乾ききった青空を見上げながら呟く狭霧に、そう応えたのはベイメリア・ミハイロフ(紅い羊・f01781)。好奇心旺盛な相方とは対照的に、こちらは初めて訪れる世界に少々緊張している様子だ。
「しかしながら妖怪さんたちは困っていらっしゃるご様子。これは何が何でもお助けしなくては」
「そうね。それにしてもあの妖怪、目が回ったりしないのかしら?」
 戦いの構えを取るふたりに敵も気付いたようで、火の粉を巻き上げながら此方に近付いてくる。生首の付いた車輪の妖怪、輪入道――首ごと回転しても彼らが平気なのは、それこそ"そういう妖怪だから"としか言いようがない。

「ヒヒヒヒヒッ! 轢き潰してやるぜェ!」
 暑苦しいテンションで【ファイアホイールスピニング】を発動した輪入道たちは、車輪の回転速度を高めて猛然と襲い掛かる。その突進力は猟兵にとっても脅威になり得るものだが、それには構造的な弱点があることを狭霧は見抜いていた。
「貴方の魂を打ち砕く」
「んなっ……ごはぁッ!!?」
 【絶対音響・ブラストヴォイス】――圧縮された歌声の弾丸が敵集団を吹き飛ばす。
 サウンドソルジャーである狭霧の放つ音の力は、敵だけでなく大地さえも抉り、まるで巨人が踏み荒らしたようなでこぼこだらけの地形に変えた。

「これで走り辛くなったでしょう」
 車輪の走行力は路面の状態に影響を受けやすい。地形破壊によって大幅に機動力を奪われた輪入道の中には、凹凸に車輪を取られてスピンアウトする者まで出る始末。その隙を突いて狭霧はバディペットの「フワリちゃん」と共に、翼を広げて急接近する。
「ぐぬぬぬ、調子に乗るなよ……っ?!」
 なんとか迎え撃つ構えを取る輪入道たちだが、そこに降り掛かったのは光の雨。魔導書「紅の聖書」を広げたベイメリアによる、水属性を付与した【ジャッジメント・クルセイド】だ。

「まずは骸魂からお助けせねば、でございますね」
 祝詞のような詠唱から紡がれるベイメリアのユーベルコードは、キラキラと光り輝く天からの雨となって広範囲に降り注ぐ。巻き込まれた連中にとって、炎と相性の悪い水属性の攻撃はまさに天敵だった。
「ぎゃぁぁぁぁぁっ!!?!」
 光の雨に打たれて悲鳴を上げる輪入道たちに、素早く狭霧とフワリちゃんが追撃する。
 音の衝撃と猫の爪が骸魂を切り裂くと、ドロンと煙を上げて生首と車輪は姿を消し、その中から飲み込まれていた妖怪が出てきた。

「ところで狭霧さま、新たな世界の冒険でわたくし少し緊張しております」
「大丈夫ですよベイメリア、一緒なら何が来ても怖くありません」
 それからの2人の猟兵は互いの死角を補いあうように立ち回りながら、巧みな連携で敵を仕留めていく。基本は狭霧がブラストヴォイスを放って牽制し、危ないときはベイメリアがオーラ防御を展開して敵の攻撃を弾く。
「もうこれ以上は、誰も傷つけさせはしません」
 痛みや火炎への耐性を持つベイメリアの張った障壁は硬く、輪入道の突進も炎も通さない。攻撃を弾かれた直後に生じる隙に音波と水光が叩きこまれ、ひとり、またひとりと、骸魂に囚われし妖怪を解放していく。

「みゃ~ん」
「ああっ、フワリちゃん遊びに行っちゃダメですよ」
 そんな戦いの最中、くるくると回る輪入道に好奇心を刺激されたのか、勝手に追いかけに行こうとする白猫のバディペット。慌ててキャッチする狭霧だが、その背後より燃える車輪が迫る。
「狭霧さま!」
 第六感でいち早くそれに気付き、声をかけたのはベイメリア。狭霧は「あら」と小首をかしげると、愛猫を抱っこしたままふわりと翼を羽ばたかせ、間一髪で攻撃を躱す。
「危ないところでした。ありがとうございます」
「いえ、ご無事で何よりです」
 そんなヒヤリとする一幕もあったものの、戦況は彼女たちの優勢のまま終始変わることは無かった。日照の世界を舞う白薔薇と赤薔薇は、華麗に美しく敵を一掃していく。

「これでこの辺りは片付いたでしょうか」
「ええ、そのようです」
 やがて2人の周りにいた輪入道は全滅し、その後には飲み込まれていた妖怪たちだけが残る。ほっと一息ついたベイメリアの頭の上に、もふりと柔らかい何かが乗せられた。
「狭霧さま? 一体何を……」
「ふふ。可愛らしいですよ」
 それは緊張していると言っていた彼女への気遣いだったのかもしれない。フワリちゃんを頭に乗せてきょとんとするベイメリアを慈しむように、狭霧は微笑むのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ルチア・ヴィスコンティ
雨が降らなきゃ水も湧かない、三度の飯とお水大好きな私にとって死活問題ですのよ──!?

さて、一通り慌てた所で戦闘ですがやる事は単純明快。
こちら目掛けて転がってくるなら真正面から【串刺し】にする勢いで【ランスチャージ】ですわ!
そのまま突いて突いて突きまくる!
敵が多いならその分歩法含めた体捌きを頑張って突く!
時には炎の【ブレス攻撃】も織り交ぜて牽制しつつ突く!
骸魂が入ったまま逃げるようならその背目掛けて斧槍を投げる!
斧槍はペットのタマ子が変身したものだから自分で戻ってきますの、安心設計。

入道達もちょっと良い感じの道があると暴走したくなるだけの気の良い奴らですのに……
利用するだなんて許せませんわ!



「雨が降らなきゃ水も湧かない、三度の飯とお水大好きな私にとって死活問題ですのよ──!?」
 あたふたと目を白黒させながら、乾きに満たされた幽世の有様を嘆くルチア・ヴィスコンティ(インフェルノ・ラヴァーズ・f28123)。幽世の住人であり竜神である彼女にとって、このまま日照が終わらないのは由々しき事態であった。
「ですがやる事は単純明快」
 一通り慌てた所で気を取り直した彼女は、我が者顔で暴れまわる輪入道の群れを睨みつける。まずはこいつらをとっちめて、元凶を引っ張り出してそいつもとっちめれば、この異変は万事解決である。

「ヒャッハー! 轢き潰してやるぜェー!」
 炎の轍を大地に刻みながら爆走する輪入道たち。車輪を激しく回転させながら【燎原火炎陣】の構えで突進してくる彼らに対して、ルチアは大型の斧槍に変身した「竜槍タマ子」を突きつけ、自らの足で突っ込んでいく。
「こちら目掛けて転がってくるなら好都合ですわ!」
 真正面から距離を詰め、放つは必殺の【ファヴニル流星アタック】。その名にふさわしく目にも止まらぬ速さで繰り出される連続突きが、先頭の輪入道を串刺しにした。
「グェェーッ!?」
 と、悲鳴を上げてブッ倒れる輩にはもう目もくれず、そのまま突いて突いて突きまくる。腕力だけではなく歩法も含めた巧みな体捌きで間合いをコントロールし、大群相手に一歩も退かず見せつける大立ち回りは、竜神の名に恥じぬ勇姿であった。

「入道達もちょっと良い感じの道があると暴走したくなるだけの気の良い奴らですのに……利用するだなんて許せませんわ!」
 胸の奥で燃えたぎる義憤を口から叫べば、それは炎のブレスとなり。地獄の業火もかくやという灼熱が、炎の妖怪すら怯ませる。その機を逃さずルチアはより激しく、より素早く、彼らをオブリビオン化させている骸魂を穿つ。
「こ、こいつ、ヤベェぞ!?」
 獅子奮迅の戦いぶりに恐れを為した輪入道たちは、くるりと反転して逃げの一手を打とうとするが――そうはさせじと熱血竜神は斧槍を大きく振りかぶって。
「逃しません!」
 ぶぉん、とその背目掛けて投げつけられた槍は狙い過たず、逃げる敵を団子状に串刺しにする。ドロン、と煙を上げて元の一般妖怪に戻った彼らは、それきりもう暴れだすことは無かった。

「ふー……疲れましたわ……」
 全身フルに使った戦いは本人の疲労も大きかったのか、汗だくで額をぬぐうルチア。そこに、斧槍から小さな竜の姿になったペットのタマ子がパタパタと羽ばたいて戻ってくる。雑に投げられても自分で飼い主の元に帰ってくる安心設計である。
「けれどもうひと頑張りですわね!」
 再び槍になったタマ子を握りしめ、ふんっと気合いを入れ直す。輪入道たちを無事救出しても日照はまだ終わらない。幽世を異変から救うための戦いはここからが本番だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『フェニックスドラゴン』

POW   :    不死鳥再臨
自身が戦闘で瀕死になると【羽が燃え上がり、炎の中から無傷の自分】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    フェニックス・レイ
レベル分の1秒で【灼熱の光線】を発射できる。
WIZ   :    不死鳥の尾
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【炎の羽】で包囲攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 『雨』の概念が失われた幽世で暴れまわる輪入道を、各地で撃退する猟兵たち。
 その奮闘の甲斐あって、骸魂に飲み込まれた妖怪も多くを助け出すことができた。
 だが、幽世の異変はまだ続いている。この日照の世界を生み出した元凶はどこに――。

「やってくれるな、猟兵どもめ」

 ――それは、太陽よりも暑い灼熱の羽ばたきと、威厳のある声を伴って舞い降りた。
 翼のように広がる紅蓮の炎に包まれた、巫女姿の竜神の少女。熱波と共に押し寄せる威圧感と鬼気迫る眼光は、彼女が骸魂に取り憑かれた者であることを如実に示す。

「我こそはフェニックス。我が命を脅かす者は誰であろうと許さぬ」

 西洋の伝承に名を刻む炎の不死鳥フェニックス。その骸魂が今回の事件の元凶だった。
 死と復活を繰り返し、永劫に生き続けるはずの彼の霊鳥も、人々からの忘却には耐えられず、幽世へと移り住もうとするも敢え無く骸魂となってしまった。そんな自らの"死"を否定し、再び己の不死を証明することこそが、彼の目的。

「この竜神の娘の神力があれば、我は再び不死となる……誰にも邪魔はさせぬ!」

 世界から『雨』を奪ったのも、己を脅かしうる要因をひとつでも排除するため。
 今度こそ完全無欠の不死鳥として幽世に君臨せんとする、醜悪で憐れな生への執着こそが、このオブリビオンの行動原理であった。

 無論、そんな個人の妄執のために、これ以上幽世を好き勝手させるわけにはいかない。
 竜神を取り込んだ不死鳥――『フェニックスドラゴン』を倒し、再び幽世に雨を降らせるために、猟兵たちは戦闘態勢を取った。
サフィリア・ラズワルド
WIZを選択

私の指示を待たずに精霊竜様が幻覚攻撃を始めた?何故?でも精霊竜様が攻撃に集中するなら私は守りに徹します!竜騎士の槍で炎の羽を払います!

精霊竜様が見せたのは骸魂になる前の不死鳥の姿、そして次に見せたのは飲み込まれた竜神の竜の姿、精霊竜様は竜語で吠えた「両者共、誇りすら忘れそのまま落ちぶれて終わるつもりか」と、何故そんなに怒っているの?今日の精霊竜様なんだかいつもより感情的になってる?

『精霊竜様?あの、あ、はい!続けます!』

守りの手を休めるな、と怒られて再び槍を振るいます。

アドリブ協力歓迎です。



「これ以上あなたの好きにはさせませ……えっ、精霊竜様?」
 最初に戦いの先陣を切ったのは、どの猟兵でも敵でもなく【瑠璃色の精霊竜】だった。
 召喚主であるサフィリアが呼び止める間もなく、ラピスラズリの鱗に覆われた翼を力強く羽ばたかせ。咆哮と共に放たれた幻覚の術が、フェニックスドラゴンを包んだ。

(私の指示を待たずに精霊竜様が幻覚攻撃を始めた? 何故?)
 常ならば自分と足並みを揃えてくれる精霊竜から、激しい怒りの気配を感じる。セフィリアの困惑をよそに戦況は推移し、幻覚に襲われた敵が【不死鳥の尾】を鞭のように振るうと無数の炎の羽が放たれ、複雑な幾何学模様を描いて精霊竜に殺到する。
「燃え尽きよ――」
 竜を焼き尽くさんとする不死鳥の威。それを目の当たりにした瞬間弾かれるようにサフィリアの身体は動いた。瑠璃色に煌めく竜騎士の槍を振るい、飛来する炎の羽を打ち払う。

「精霊竜様が攻撃に集中するなら私は守りに徹します!」
 思わぬことに戸惑いはしたものの、サフィリアの精霊竜への信頼は固い。全ての意識を防御に傾けて炎羽の弾幕をはね除ける彼女を、精霊竜もまた信じて攻撃に徹する。
 竜が見せたのは骸魂になる前の不死鳥の姿。今よりもずっと大きく燃え盛る炎の翼を広げて天を翔ける威容は、人から聖鳥とも讃えられたのも頷ける美しさであった。
「こんなものを見せて……何のつもりだ」
 死せる不死鳥は苛立ちながら尾で地面を叩き、炎の羽で幻覚を焼き払う。しかし精霊竜はすぐさま新たな幻覚を展開し、今度は飲み込まれた竜神の竜の姿を見せた。

『両者共、誇りすら忘れそのまま落ちぶれて終わるつもりか』
 竜語で吠えた精霊竜の叫びを、人語に訳すならばこうなるか。骸魂と成り果てて生き汚くも現世にしがみつく不死鳥に、それに飲み込まれいいように利用される竜神の娘。妖しきものとしての矜持を失ったその両方に、かの竜は怒っていた。
(何故そんなに怒っているの? 今日の精霊竜様なんだかいつもより感情的になってる?)
 竜と心を通わせられるサフィリアにも、憤怒の由来はわからない。誇りを失い零落することは、かの竜にとってそれほどまでに許しがたいことなのか。長く精霊竜と寄り添ってきた彼女から見ても、その怒りは尋常のものではなかった。

「精霊竜様? あの、あ、はい! 続けます!」
 疑問を口にする前に、守りの手を休めるな、と怒られた。慌ててサフィリアは再び槍を振るい、精霊竜は敵に幻覚を見せ続ける。執拗にかつての幻と対面させられるフェニックスドラゴンは、不快感を露わにしてそれをまた焼き尽くそうとするが――。
「―――? なん、だ?」
 突然金縛りにでもかけられたかのように、敵の動きがぴたりと止まる。見れば、虚ろだった少女の顔に生気が戻り、まるで何かに耐えるように歯を食いしばっている。
「……今、です」
 絞り出されたその言葉は、竜神の意思が不死鳥の意思に抗っている証だった。精霊竜が見せた幻と叱咤は、骸魂の中で眠っていた彼女の心を一時的に目覚めさせ、竜神としての誇りを呼び戻したのだ。

「おのれ、憑代ごときが抗うか――!」
 少女の口調はすぐにまた不遜なものに変わり、不死鳥の意思が再び身体の制御を取戻さんとする。しかしその間隙はサフィリアと精霊竜にとって、十分すぎる好機だった。
「今、ですね精霊竜様!」
 竜の咆哮に合わせて竜騎士が駆ける。炎の翼を逆に焼き尽くさんばかりに猛る紫色の炎と、瑠璃色の軌跡を描いた騎士槍の刺突が、フェニックスドラゴンを同時に捉える。
「ぐ、ぁ、ッ!!?!」
 灼かれ貫かれ、吹き飛ばされた敵の口から苦悶が漏れる。かつての誇り高きフェニックスも、今は不死身ではない――サフィリアたちの与えた傷は、その証明であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
多少の同情はするけどね…自身の為に罪の無い妖怪達やその子を犠牲になんて許されないのよ。
その子も可愛いしね♪

【ブラッディ・フォール】で「生み出すことを許さないというならば」の「イーギルシャトー」の力を使用(竜の翼や尾が生えた姿へ変化)
【世界を絶つ氷翼】の「周囲に存在する熱を代償にする」特性で敵の炎や光線の使用に併せて熱を奪い無力化。
氷翼の肉体と精神を斬り裂く刃でその惰弱な精神と肉体を斬り裂き、【白銀の世界に君臨す】の絶対零度ブレスで攻撃。
雪花の【ふぶいてみる】と併せて主従による凍気で周囲を凍てつかせて攻撃と共に自身の領域を生成。
一気に敵を凍結させて仕留めるわ!

貴方の熱は封じたわ。観念なさいな



「多少の同情はするけどね……自身の為に罪の無い妖怪達やその子を犠牲になんて許されないのよ」
 骸魂化によって否定された己の"不死"を今一度証明する――ある意味では生命として普遍的ともいえるフェニックスの願望を、しかしフレミアははっきりと否定する。彼が"死にたくない"と願うように、踏み躙られた妖怪たちにも同じ権利があるのだから。
「その子も可愛いしね♪」
 小悪魔のように悪戯っぽい笑みでそう付け加えつつ、彼女はフェニックスドラゴンと対峙する。どんな経緯で飲み込まれてしまったのかは知らないが、せっかくの美少女をオブリビオンの犠牲になどさせるものか。

「この娘は我が贄である……我が炎を永劫に燃やし続けるための!」
 渡すものかと言うように炎の翼で少女の身体を包みながら、【不死鳥の尾】より炎の羽を放つフェニックスドラゴン。対するフレミアは再び【ブラッディ・フォール】を発動し、白銀の竜の翼と尾をその身に生やす。
「その子は貴方の薪じゃないわ」
 それは氷雪を司る白竜の異端神『イーギルシャトー』の力の顕現。彼女が背中の【世界を絶つ氷翼】を広げると、うだるほどに暑かった周囲の気温が急激に下がっていく。

「なんだと……っ!?」
 日光は今も燦々と照りつけているにも関わらず、戦場の温度は真夏から冬のそれへと変わっていき。幾何学模様を描いて飛来する炎の羽も、熱気を失って消滅していく。
 異端神の氷翼は周囲に存在する熱を代償として力を増す。炎熱を武器とする敵のユーベルコードに併せて使えば、そのまま攻撃を無力化する手段にも使えるというわけだ。
「その惰弱な精神と肉体、斬り裂いてあげるわ」
 鋭い刃と化した氷翼を羽ばたかせ、飛翔するフレミア。驚愕する敵の横腹をかすめるように翔け抜け、すれ違いざまに斬りつければ、火の粉よりも鮮やかな血飛沫が上がる。
 心身を同時に傷つける斬撃はフェニックスの骸魂にも直接ダメージを与え。堪らず怯んだ相手に立ち直る暇を与えず、吸血姫は【白銀の世界に君臨す】を発動する。

「その炎ごと凍りつきなさい」
「舐めるなぁッ!!」
 フレミアの口から放たれた絶対零度のブレスが戦場を凍てつかせていく。炎の大妖怪としての矜持に賭けて、猟兵ごときに凍らされてなるものかと、フェニックスドラゴンは炎の羽を舞い散らせ、手からは灼熱の光線を放って全力で抵抗するが――。
「雪花!」
「はいなのー!」
 そこに雪花が加勢に入り、見習いとはいえ雪女としての力で【ふぶいてみる】と、熱気と冷気の均衡は崩れる。主従による凍気の嵐は息もできないほどの猛吹雪を呼び、大地には氷柱が鋭く突き上がり、全てが白銀に染め上げられていく。

「貴方の熱は封じたわ。観念なさいな」
 今やここは不死鳥が支配する日照の世界ではなく、フレミアが支配する氷雪の領域だった。必死に抵抗したフェニックスドラゴンの身体も、完全に凍結してしまっている。
「誰が……ッ、がはぁっ!!?!」
 それでも不死鳥は熱気を振りしぼって氷の縛めを溶かそうとするが。それよりも速く白銀の翼が閃き、氷の檻ごと敵を斬り捨てる。真っ赤な鮮血が白銀の大地を濡らし、深手を負ったフェニックスドラゴンは、傷口を抑えながらがくりと膝をついた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朝沼・狭霧
ベイメリア(f01781)とアドリブ歓迎
【心情】
正直、なぜ不死になりたいのかまるで理解できないけど
前途のある子は助けてあげないと

敵に対して問いかけます
死ぬのは怖いかしら?

では見せてあげます。貴方が死んだ後の事を

UC魂の先導を使用、この地で亡くなった妖怪、ガシャドクロを召喚
その巨大な体躯で敵に絡みついてもらいます

「その女の子は返してもらうわ、貴方はまたここで死ぬのよ」
空に舞い上がりガシャドクロに絡みつかれた敵を踏みにじりながら
骸球を切り裂かんとします

そうね、忘れ去られておしまいなさい
ベイメリアのセリフが格好よかったので
真似てみます(びしぃ)

(フワリちゃんはいつの間にかおねむ。すやすや寝ています)


ベイメリア・ミハイロフ
狭霧さま(f03862)と


まあ、人々の忘却によって骸魂へと…
少々気の毒には思いますけれど
他の妖怪さん達や竜神の娘さんを
巻き込んでいいという理由にはならないかと

火炎耐性を活用したオーラ防御を
狭霧さまごとお守りするように纏いつつ
赤薔薇の花びらを舞わせお相手の視界を遮って
お相手の攻撃は第六感・野生の勘にて見切り
お声がけしながら回避を試みます

こちらからの攻撃は、属性攻撃にて
水・氷属性を付与し、Red typhoonを
炎の羽もこれで消火できないか試してみます

狭霧さま、あまり懲らしめすぎぬよう
しかしながら、悪さによってでしか
自分の存在を表せないのであれば
残念でございます、そのまま
忘れ去られておしまいなさい



「まあ、人々の忘却によって骸魂へと……少々気の毒には思いますけれど、他の妖怪さん達や竜神の娘さんを巻き込んでいいという理由にはならないかと」
 無念の死を遂げたフェニックスに同情の意を示しながらも、今を生きる妖怪たちのためにベイメリアは戦鎚を取る。彼女の言葉に同意するように微笑みを浮かべながら、白翼を広げて並び立つのは狭霧。
「正直、なぜ不死になりたいのかまるで理解できないけど、前途のある子は助けてあげないと」
 あのまま飲み込まれ続ければ、竜神の娘はいずれ神力を取り尽くされて完全なオブリビオンとなってしまうかもしれない。そうなる前に骸魂を彼女から引き剥がし、この異変に終止符を打つのだ。

「この娘も幽世もすでに我の手に落ちた……邪魔をする者は全て焼き尽くす!!」
 フェニックスドラゴンが【不死鳥の尾】を振るうと、無数の炎の羽が幾何学的な軌跡を描いて2人の猟兵に襲来する。逃げ場のない包囲攻撃に対してベイメリアが咄嗟にオーラの防壁を展開し、自身と狭霧の身を護る。
「さすがに、並みの妖怪さんとは別格の力をお持ちのようですね」
 輪入道の攻撃を防いだ時とは違い、障壁越しにでもじりじりと肌を焼くような熱が伝わってくる。堕ちてなお不死鳥の猛火は凄絶、だが押し切られまいと紅衣のシスターは懸命にオーラを維持しながらユーベルコードの詠唱を紡ぐ。

「紅の聖花の洗礼を受けなさい……!」
 ベイメリアの掲げた戦鎚「† curtana †」が、無数の薔薇の花びらに変化する。聖女の慈悲と裁きの具現たる【Red typhoon】――深紅の洗礼が鮮やかに戦場を舞う。
「こんなもの、全て燃やして―――何っ?!」
 フェニックスドラゴンは火勢を強めて赤薔薇を燃やし尽くそうとするが、このユーベルコードは先刻の輪入道戦のように水属性を付与されている。ベイメリアたちを包囲する炎の羽は逆に消火され、紅蓮の炎に代わって深紅の花弁が戦場を染め上げていく。

「死ぬのは怖いかしら?」
 フェニックスドラゴンの視界が遮られた好機を突いて、狭霧が問いを投げかける。
 薔薇のヴェールの向こうから返ってきたのは沈黙。しかし咄嗟に答えられなかった事自体が、かの不死鳥の"死"に対する強い忌避感と恐怖を表している。
「では見せてあげます。貴方が死んだ後の事を」
 輪入道との戦いの疲れでおねむなのか、すやすや寝ている白猫のフワリちゃんをそっと置くと、代わりに取り出した媒介道具をかざしながら【魂の先導】を発動する。
 召喚されるのは巨大な骸骨――かつてこの地で亡くなった妖怪"ガシャドクロ"。弔われなかった死者の遺骨の集合体とも言われるその異形は、巨躯を以て敵に襲いかかった。

「こやつ……! 放せ、放さぬか!」
 薔薇の目くらましのせいで反応の遅れたフェニックスドラゴンは、あえなくガシャドクロに絡みつかれてしまった。びしりと炎の尾を打ちつけてもがいても、頑丈な骨の身体はびくともせず、そのまま拘束具のように彼女の動きを封じ込める。
「その女の子は返してもらうわ、貴方はまたここで死ぬのよ」
 声が聞こえたのは上からだった。見上げればオラトリオの翼を広げた狭霧が、花吹雪を切り裂きながら急降下してくる。避ける間もなく重力と落下速度の乗った一撃が、容赦なくフェニックスの骸魂を踏み躙り、切り裂いた。

「狭霧さま、あまり懲らしめすぎぬよう」
 後方で深紅の薔薇を操りながら、ベイメリアが声をかける。骸魂に憑かれているとはいえ身体は竜神のものだし、同情の余地がある者を過剰に痛めつけるのも気が引ける。
「しかしながら、悪さによってでしか自分の存在を表せないのであれば……残念でございます、そのまま忘れ去られておしまいなさい」
「そうね、忘れ去られておしまいなさい」
 凛としたベイメリアの台詞が格好よかったからか、真似をしてびしりと指を突きつける狭霧。2人の連携に翻弄される一方の敵は、ガシャドクロに捕まったまま怒りに震える。

「大いなる不死鳥たるこの我が! 二度も忘れ去られてなるものか!」
 激昂と共に尾がしなり、炎の羽が激しく渦を巻く。しかしその攻撃は直感力に秀でたベイメリアが見極め役となってタイミングを計り、回避する瞬間を狭霧に伝えた。
「狭霧さま、油断なさらぬよう」
「もちろん、分かっているわ」
 互いに声をかけあうふたりの密な連携を切り崩すのは、大妖怪といえど至難である。
 水の赤薔薇と空を舞う白薔薇に攻め立てられ、不死鳥の火は徐々に弱まっていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アリス・フォーサイス
水が苦手だから雨が降らないようにしてたんだね。
それなら水で攻めるよ。

灼熱の光線はユーベルコードで避けちゃう。
「それは残像だよ。」

そして水属性の全力魔法だ。
その炎の力、押し流しちゃうんだから。



「水が苦手だから雨が降らないようにしてたんだね」
 ついに異変の元凶と対峙したアリスは、それが幽世から「雨」が消えた理由を察した。
 死を怖れる妖怪が世界を日照にするとは、弱点を自分から暴露しているようなものだ。
「それなら水で攻めるよ」
 取り出すのは容器にたっぷりと入った新鮮な水。情報端末のロッドをひょいと振るうと、封の開いた容器の中から生き物のように水滴が飛び出し、ふわふわと宙を躍る。

「術を使わせる暇など与えぬ……!」
 フェニックスドラゴンも己の弱点については重々承知している。だからこそ水を見せた敵に対する反応も迅速だった。100分の1秒にも満たない早業で炎の魔力を手元に収束させ、放つは【フェニックス・レイ】。
「滅びよ!」
 陽光を束ねたような灼熱の光線が発射され、戦場に一条の閃光の軌跡を残す。
 それは狙い過たず、呪文を唱えるアリスの眉間を射抜いた――はずだった。

「それは残像だよ」
「なにっ?!」
 仕留めた、と確信したフェニックスドラゴンがほくそ笑む間もなく、背後から聞こえてきた少女の声。振り向けばそこには直前と変わらぬ姿のアリスが無傷で立っている。
 【ファデエフ・ポポフゴースト】。情報分析により敵の攻撃を事前に予測し、量子化により回避するアリスのユーベルコード。灼熱の光線が放たれた時にはもう、彼女の身体は量子の世界に渡り、物理次元上ではまったく別の座標に移動していたのだ。

「二度目は撃たせないよ」
 敵が次の光線を発射するよりも速く、アリスは呪文を完成させる。魔力と情報操作によって手持ちの"水"の情報を書き換え、容器一杯分の容量を何十倍にも膨れ上がらせる。電脳魔術士にしてウィザードである彼女ならではの、水属性の全力魔法。
「その炎の力、押し流しちゃうんだから」
 びしりとロッドを突きつけた瞬間、容器からあふれ出した水が津波となって敵に押し寄せる。フェニックスドラゴンは慌てて炎の翼を羽ばたかせ、空に逃れようとするが――膨れ上がった莫大な水量は空中にさえ襲いかかった。

「ぬぐああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……ッ!!!!!!!」
 怒涛の水量に呑み込まれ、悲鳴と共に押し流されていくフェニックスドラゴン。
 世界から雨を奪うほどに水を嫌う不死鳥に、この攻撃はさぞかし堪えるだろう。
 今の彼女は津波の中で、消えてなるものかと必死にもがくので精一杯だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

カビパン・カピパン
「やってくれ「いらっしゃいませ」
スッと椅子を引いて、うやうやしく頭を下げ店内に案内する。
「悩み聞くよ、カレーあるよ」
戸惑いながらも敵意がないため、不死鳥は目的を伝える。
(どうでもいい)カビパンは共感理解した。

美味しそうなカレーうどんが置かれる。
常連客達は「すげー」とか「始めて見た」と大興奮。
しかし食べた瞬間
(こ、これは…匂いはいいのに味は何故こんなに不味いのだ!?)

「歌をお楽しみください」
妖怪たちは我先にと店から逃げ出した。

カビパンリサイタルが始まる。耐えられんと店から出ようする不死鳥だが、店の扉が妖怪たちによって押さえつけられていた。
未来永劫とは何だったのか、と哲学的になり不死鳥はやられた。



「けほっ、ごほっ、ごほっ……」
 猟兵による津波に呑まれながらも、なんとか一命をとりとめたフェニックスドラゴン。
 びしょ濡れになった身体をよたよたと起こすも、その身を包む炎はまだ消えていない。
「おのれ猟兵め……やってくれ「いらっしゃいませ」
 だが、怨嗟を込めて吐き出そうとした言葉は、割り込んできた女の声に遮られる。
 不死鳥が流されてきたのはカビパンの店。ヒマな妖怪たちのたむろする「悩み聞くカレー屋」カクリヨファンタズム支店だったのだ。

「悩み聞くよ、カレーあるよ」
 店主カビパンはうやうやしく頭を下げて、新たな客を店内に案内する。当然フェニックスドラゴンは戸惑うが、彼女からはまったく敵意を感じられない。ひとまず猟兵との戦いで傷ついた身体を休めるために、敢えてその誘いを受けることにする。
「不死身の我に本来このような食物など必要ないが……供物として受け取ってやろう」
 濡れ鼠のくせになんかやたらと態度のでかい客に、カビパンは若干イラッとしたものの表情には出さない。なんと言ったってお客様は神様である――特にこの世界だとそれがたまにシャレにならないから困る。

「我の大願成就まであと一息。あの猟兵共を蹴散らして我は再び不死となるのだ!」
「ほほう。なるほど。ははぁ」
 位の高い妖怪としての性なのか、フェニックスドラゴンは聞いてもいないのに自分の野望をああだこうだと喋りまくる。カビパンは厨房でせっせと料理を作りながら、彼女の目的を(どうでもいい)と共感理解した。
「はい、おまちどう」
 ややあってカウンター席に置かれるのは、できたての美味しそうなカレーうどん。
 周囲にいた常連客は「すげー」とか「始めて見た」と大興奮。一体彼らはここを何の店だと思っていたのか気になるところである。

「ふむ……悪くはないな」
 フェニックスドラゴンはやっぱり偉そうに割り箸を取ると、どれ喰らってやろうと言わんばかりの態度でうどんを口に運ぶ。だがその瞬間、彼女の脳内に電流が走った。
(こ、これは……匂いはいいのに味は何故こんなに不味いのだ!?)
 見た目は普通に良い。食欲をそそる香ばしいスパイスの薫りもしている。だというのに何故、という疑問すら吹き飛ぶほどの味覚への衝撃、いやさ冒涜が彼女を襲う。
 この店主ひょっとして味見とかしてないんじゃないか。いや逆に味見したうえでこんなのを客に出して平然としているのなら大したものだが。そんな思考が脳内を渦巻く。

 そんな客の心の内など露ほども知らぬカビパンは、食事中の余興にと聖杖を持ち。
「歌をお楽しみください」
 それを聞いた瞬間、妖怪たちは我先にと店から逃げ出した。ただひとり、不味いカレーうどんに打ちのめされたフェニックスドラゴンだけが店内に取り残される。
 そして始まる【カビパンリサイタル】。その歌声ときたらカレーうどんに勝るとも劣らぬひどさ。絶望的にあまりにも酷い音痴のくせに、本人はやたらとノリノリで、しかも声が店内に嫌な感じに反響して全方位から襲ってくる。

「わたし↑は↓~癒し系↑↑↑ ~~♪」
「やっ……やめろぉぉぉぉ……!?」
 耳を塞いでも頭にこびりついて離れない嫌死(誤字ではない)のカビパンソング。このままでは死に関わると感じたフェニックスドラゴンは店から逃げ出そうとするが、外に繋がる扉は妖怪たちによって押さえつけられていてビクともしない。
「なっ、なぜ開かぬ?!」
 誰も地獄のリサイタルを聞きたくはないので、音を漏らすまいとこちらも必死である。
 戸板一枚を挟んで押し合いへし合いしている間も、カビパンの歌は容赦なく聞く者の脳味噌を侵す。

(不死とは……未来永劫とは何だったのか……)
 朦朧とする意識の中、そんな哲学的な考えに思いを馳せるフェニックスドラゴン。
 結局、彼女が店から解放されたのは、カビパンリサイタルの終了後だっという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アイシャ・ラブラドライト
f17484ジノと
口調→華やぐ風
ジノ以外には通常口調

ジノ…暑がりさんだね
そうだね、熱中症になったら大変
肩乗ってたら余計に暑いかな…離れたほうがいい?
早く倒してジノを涼しいところに行かせてあげたいな

敵の名前を呼びUCで相手の技を封じる
敵さんの技、強力だね
これは封じ込めてしまうのが一番手っ取り早そう
…ジノにつられて対処法を考えるのが面倒になったわけじゃないよ?
ジノの周りにはembraceで氷の盾を
涼しい中で吸ったほうが煙草も美味しい…かな…?
より没頭できるように

ジノが曇り好きなのって、そういう理由だったんだ
私は曇りってあまり好きじゃなかったけど
ジノを不快なものから守ってくれるなら曇りも悪くないね


ジノーヴィー・マルス
アイシャ(f19187)と

暑いなちくしょう、熱中症にでもなったらどうするってんだオイ。
取り敢えずお前さん倒して、ちゃっちゃと雨を取り戻す。そんで暫く涼しいとこ引きこもる。

しっかしまぁ、敵さんの攻撃…早いね。早撃ちの類は俺も使えるんだが、敵に使われるとこうも厄介とは。
あーこれもうめんどくせぇ。暑いしやる気も出ねえし。UC使お。
怠け者は頑張らないんだよ。だから、お前より早く撃ち込むとかそんな事しません。してやりません。
ダラダラ煙草でも吸いながら光線を遮断して、まぁ……隙が出来たらサッと近づいてダガーで掻っ切る。

ったく、こんなだから曇ってる時の方が好きなんだよ。暑いし眩しいし…。



「暑いなちくしょう、熱中症にでもなったらどうするってんだオイ」
「ジノ……暑がりさんだね」
 めらめら燃える暑苦しい元凶を藪睨みして悪態を吐くジノーヴィー。そんな彼の肩にとまってほんのりと苦笑するアイシャ。生命のやり取りよりもそちらの心配をするほどに、このふたりはいつもと変わらず落ち着いていた。
「肩乗ってたら余計に暑いかな……離れたほうがいい?」
「いんや、それは平気。取り敢えず敵さん倒して、ちゃっちゃと雨を取り戻す。そんで暫く涼しいとこ引きこもる」
 いたわりのこもった妖精の問いかけにすっぱりとそう宣言すると、強化人間の青年はゆらりとダガーを抜く。その所作はひどくやる気なさげだったが、2人とも"負ける"などとは微塵も思っていなかった。

「何人来ようと……我を滅ぼすことはできぬ……!!」
 痩せても枯れても不死鳥の名は伊達ではないか。傷ついたフェニックスドラゴンは旺盛な生命力で再び立ち上がると、手のひらより神速の【フェニックス・レイ】を放つ。
 咄嗟に身を翻したジノーヴィーのすぐ脇を灼熱の光線が貫き、上着に焦げた穴が開く。ほんのすこしでも反応が遅れていたら、それは彼の心臓を射抜いていただろう。
「しっかしまぁ、敵さんの攻撃……早いね。早撃ちの類は俺も使えるんだが、敵に使われるとこうも厄介とは」
 100分の1秒にも満たない速さで放たれる光線の速射。己も"速さ"には多少の自信があるゆえに、今のはそうそう何度も避けられるものではないと、彼は理解していた。

「逃しはせぬぞ!」
 さらにフェニックスドラゴンが【不死鳥の尾】を振るうと、無数の炎の羽が複雑な幾何学模様を描いて飛翔する。これで相手を包囲して、逃げ場がなくなったところをフェニックス・レイで射抜く。二段構えの攻撃だ。
「あーこれもうめんどくせぇ。暑いしやる気も出ねえし。ユーベルコード使お」
 だが、敵の狙いを悟ったジノーヴィーが心底面倒くさそうに呟くと、その身から滲み出る気怠げげな雰囲気が炎の羽を跳ね返す。彼のやる気の無さが極限に達した時、発動するユーベルコードの障壁は外部からのあらゆる攻撃を遮断するのだ。

「なにっ?!」
 必殺の包囲網が弾かれ、目を丸くするフェニックスドラゴン。彼女の動揺をよそにジノーヴィーは煙草を取り出すと、飛んでくる不死鳥の羽で火を付けて吹かし始める。
「怠け者は頑張らないんだよ。だから、お前より早く撃ち込むとかそんな事しません。してやりません」
「暑さのせいで、今日のジノはいつにも増してのんびりさんだね」
 戦闘中とは思えないダラダラとだらけきった態度。本当に暑いのが苦手なんだね――と、肩に乗っているアイシャは肩をすくめながら、彼が少しでも快適でいれるように「embrace」を使って氷の盾を張る。
「涼しい中で吸ったほうが煙草も美味しい……かな……?」
「おう、ありがとなアイシャ」
 献身的な相方にゆるりと礼を言って、のんびりと喫煙だけに没頭するジノーヴィー。
 当然ながらその態度は、敵からすれば此方を舐めきっているようにしか見えなかった。

「バカにしおって……!」
 怒りと共に再度放たれるフェニックス・レイ。だがジノーヴィーのやる気が限りなくゼロに近付いている今、どんな攻撃を仕掛けたところで全て遮断されるだけだった。
 だが効かないといっても攻撃そのものが止んだわけではなく、撒き散らされた炎の羽は完全にジノーヴィーとアイシャを包囲している。一瞬でも【怠け者は頑張らない】が解除されれば、その瞬間に2人は消し炭になるだろう。
(敵さんの技、強力だね。これは封じ込めてしまうのが一番手っ取り早そう)
 燃え盛る炎の渦を見上げながらアイシャは考える。その根底にあるのは(早く倒してジノを涼しいところに行かせてあげたいな)という、大事な相方を第一に気遣う想い。
「……ジノにつられて対処法を考えるのが面倒になったわけじゃないよ?」
 と、誰にともなく言い訳を口にしながら、彼女は炎の向こうにいる敵に声をかける。

「フェニックスさん。あなたの思い通りにはさせません」
 相手の名前を呼ぶ、その声が届いた瞬間に、アイシャのユーベルコードは発動した。
 【Generalpause】――その意味は音楽用語で「総休止」。妖精の言霊を受けたフェニックスドラゴンは不可視の力に捕縛され、ユーベルコードの力を封じられる。
「何……っ?!」
 渦巻く炎の羽が消える。手のひらに溜めていた光と熱のエネルギーも霧散する。
 ――いくら怠惰でも、アイシャの相方はこの好機を見逃すような愚鈍ではない。

「そらよ」
 相手に隙が出来た瞬間、ジノーヴィーは戦場を駆け抜ける。揺らめく煙草の煙のように、音もなく、気配もなく、しかし気がつけば敵の懐にするりと潜り込んでいて。
「―――!!」
 フェニックスドラゴンが驚愕した直後、彼のダガーは標的を掻っ切っていた。
 炎よりも鮮やかな血飛沫が散り、乾いた大地をぽたりぽたりと紅く染めていく。
 その時には青年はとっくにその場を離脱していた。なぜなら近寄ると暑いから。

「ったく、こんなだから曇ってる時の方が好きなんだよ。暑いし眩しいし……」
「ジノが曇り好きなのって、そういう理由だったんだ」
 一瞬の早業で敵に深手を負わせた後、また気怠そうな様子で呟くジノーヴィー。振り落とされないようしがみついていたアイシャは、それで納得がいったと顔を上げる。
「私は曇りってあまり好きじゃなかったけど、ジノを不快なものから守ってくれるなら曇りも悪くないね」
 見上げた空は今だ晴天。けれど「晴れ」以外の天気が戻ってくる時はそう遠くない。
 そうすれば彼の機嫌も良くなるだろうかと、華のように微笑むアイシャであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

フン…死を恐れる不死鳥か
なかなか笑えるジョークだな

シガールQ1210を装備し、デゼス・ポアを宙に浮かせて攻撃
空を飛ぶ敵を銃弾で撃ちつつ、飛来する炎の羽根の動きを見切り、デゼス・ポアの斬撃で叩き切る
常に敵を視界に入れつつUCを放つ機会を伺おう

お前に似合うとっておきの銃弾をくれてやろう
遠慮なく受け取ると良い

敵が不死鳥の尾を繰り出したらこちらもUCを発動
銃身に刻まれた魔術のラインが激しく発光するシガールQ1210の銃口から魔力を帯びた水冷を撃ち出し、敵と炎の羽根にダメージを与える

人々に忘れ去られただけで霧散する不死か…
哀れでもあるが、この世界を害すると言うのであれば一切の容赦はせん



「フン……死を恐れる不死鳥か。なかなか笑えるジョークだな」
「なんだと、貴様……ッ」
 嘲笑の意図を隠そうともせずに唇を歪めるキリカを、手負いの不死鳥が睨め付ける。
 人々から忘れ去られ、骸魂と成り果ててなお"生"にしがみつくフェニックス。その有様は彼女からすれば滑稽ですらあったが、その侮辱を看過できるような敵ではない。
 一度は弱まった炎が再燃し、火の粉を巻き上げて空に舞い上がるフェニックスドラゴン。竜神の神力を我がものとした生命力は、まだ容易には尽きそうもない。

「その侮辱、我が炎に灼かれて後悔するがいい!」
 フェニックスドラゴンが翼を羽ばたかせると、炎の羽が矢のように飛翔する。対するキリカは"シガールQ1210"を構え、オペラマスクを被った呪いの人形を傍らに浮かべる。
「叩き切れ、デゼス・ポア」
 キリカがそう命じると、人形はけたたましく哄笑しながら全身より錆びた刃を放ち、飛来する羽を迎撃する。同時に機関拳銃の銃声が鳴り響き、秘術により強化された弾丸が上空の不死鳥を襲う。

「えぇい、小癪な……」
 空中と地上で繰り広げられる激しい射撃戦。フェニックスドラゴンは颯爽と空を飛び回って銃撃を躱すが、同時に相手をなかなか仕留めきれずに苛立ちも感じていた。
 一方のキリカは冷静であり、常に敵の姿を視界に入れつつユーベルコードを放つ機会を窺っている。相手はこの異変を引き起こした大妖怪、嘲りはしても侮りはすまい。
「……来るか」
 敵が【不死鳥の尾】を振るい、一気に勝負をつけに掛かってきたのをキリカは見た。
 その瞬間に彼女は【アーム・マジーク】を発動。シガールQ1210の銃身に刻まれた魔術のラインが激しく発光し、秘術の力が弾丸に宿る。

「これで終わりだ―――ッ!!」
 複雑な幾何学模様を描き、標的を包囲するように飛翔する無数の炎の羽。
 決して敵を逃さぬ必殺の弾幕に、フェニックスドラゴンは勝利を確信した。
 だが――その早すぎた確信は、冷ややかな水の弾丸によって撃ち抜かれる。
「お前に似合うとっておきの銃弾をくれてやろう。遠慮なく受け取ると良い」
 秘術による弾丸への魔力と属性の付与。輝くシガールの銃口より撃ち出されたのは、敵が最も苦手とする水冷の弾丸だった。それは炎の羽による包囲網をたちまち消し飛ばし、勝機を掴んだと慢心していた敵に浴びせられる。

「ぎいぃぃぃぃぃッ!!?!」
 ただの水ではない、魔力を帯びた水冷弾を全身に受け、金切り声を上げるフェニックスドラゴン。有効打を確認したキリカはそのままトリガーを引き絞り、マガジンが空になるまでありったけの銃弾を叩き込む。
「人々に忘れ去られただけで霧散する不死か……哀れでもあるが、この世界を害すると言うのであれば一切の容赦はせん」
 彼女の生前がいかなる妖怪であったとしても、オブリビオンを討つのは猟兵の使命。
 迷いなく放たれるキリカの水弾幕に炎の翼を撃ち抜かれ、フェニックスドラゴンはふらふらと地上に墜落していった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シェーラ・ミレディ
成程、此度の元凶はフェニックスだったか。
余程雨が嫌いだと見えるが……それが、ヒントだろうか?

『艶言浮詞』で砂の精霊を呼び出し、的を増やして羽を迎撃する。
雨も降らず、乾いた土地ならば変換できそうな無機物など溢れているだろう。羽の動きを見切ってパターンを学習し、砂の精霊をけしかければ炎を無力化できるはず。

敵の本体にも同じことが言える。
フェニックスとは、死してなお炎の中から再び誕生するものだと聞く。
ならばその身に纏う炎を消してしまえば、骸魂を倒せるのでは?
……少女には悪いが、服を砂まみれにしてしまうなぁ。後で謝っておこう。

生と死を繰り返す愚か者に、僕が引導を渡してやろう!

※アドリブ&絡み歓迎



「成程、此度の元凶はフェニックスだったか。余程雨が嫌いだと見えるが……それが、ヒントだろうか?」
 雨という概念そのものを奪ってまで幽世を日照の世界と化した敵の心理を、シェーラは考察する。それほどまでに「雨」を嫌ったのは、自分の「火」を消されることを彼程に恐れたのではないか、と。
「ぐうぅぅぅ……よくも、よくもよくもよくも……っ」
 事実、猟兵から水や冷気にまつわる攻撃を受けるたびにフェニックスドラゴンの火は弱まり、それに伴って力も衰えているように感じる。それでもまだしぶとく生き延びているのは、仮にも不死鳥と呼ばれるだけのことはあるが。

「我は不滅……我は不死……貴様らごときに滅ぼせるものか!!」
 己の劣勢を頑なに否定しながら【不死鳥の尾】を振るうフェニックスドラゴン。
 放たれた炎の羽は幾何学模様の軌跡を描き、猟兵たちを包囲殲滅せんと飛来する。
 対するシェーラは【彩色銃技・口寄せ・艶言浮詞】を再び唱え、精霊を呼び出す。
(雨も降らず、乾いた土地ならば変換できそうな無機物など溢れているだろう)
 ぎらつく陽光に照らされて、乾ききった砂を主な媒介として、大勢の精霊が戦場に溢れかえる。急にこれだけ的が増えれば、敵も狙いを絞るのは難しいだろうと見越しての一手だ。

「小癪な真似を!」
 フェニックスドラゴンは炎の羽を操り、戯れる精霊たち諸共シェーラを焼き尽くさんとするが。彼はひらりひらりと躍るようなステップで弾幕の隙間にすべりこみ、紙一重で攻撃を躱していく。
「お前の攻撃のパターンはもう見切った」
 一見すると複雑な羽の動きには、よく見れば一定の規則性がある。見た目の派手さに騙されずにそれを学習してしまえば、あとは避けながら精霊をけしかけてやればいい。
 焚き火に砂をかけて消すように、砂の精霊と接触した炎の羽が無力化されていく。

「水をかけるだけが炎の消し方ではないからな」
 敵の本体にも同じことが言える。砂塵と共に舞い踊る精霊たちが炎の羽を消し去るのを見て、フェニックスドラゴンが明らかに狼狽したのをシェーラは見逃さなかった。
(フェニックスとは、死してなお炎の中から再び誕生するものだと聞く。ならばその身に纏う炎を消してしまえば、骸魂を倒せるのでは?)
 確証はないが、自信はあった。彼がすっと指を突き付けると、無邪気な笑い声を上げながら砂の精霊が一斉に躍りかかる。相手からすれば、それは生きた砂嵐に襲われるようなものだ。

「……少女には悪いが、服を砂まみれにしてしまうなぁ。後で謝っておこう」
「やめ―――っ!!!」
 何かを言い切る前に砂精霊の大群に呑まれて、フェニックスドラゴンの姿が消える。
 燃料、温度、そして酸素。いずれかひとつを欠くだけでも炎は燃え続けていられなくなる。精霊たちの猛襲は、相手を外気から完全に遮断してしまうものだった。
「生と死を繰り返す愚か者に、僕が引導を渡してやろう!」
 高らかに宣言するシェーラの視線の先で、敵はじたばたと必死にもがいている。だが無邪気ゆえに下限を知らない精霊は、一度捕まえた玩具をそうそう手放しはしない。
 乾きに満たされた世界で、その乾きが生んだ砂が不死鳥の炎を消し止める。それはある種の因果応報とでも言うべき顛末であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
死への無念と己が権能を取り戻さんとする執念
抱くは当然かもしれません

ですが徒に他者を仇成すことは許されません
この世界の雨と竜神の女性を返して頂きます

放つ炎を●盾受けで防ぎ格納銃器の●スナイパー射撃で翼撃ち抜き
落下した敵を近接攻撃で追撃

…傷を癒され千日手ですか!
●環境耐性を持ってしても炎に迂闊に近づけませんが…

『火中の栗を拾う』しかありませんね
寓話では猫が猿にそそのかされて火傷しますが…黒焦げで済むかどうか

私を唆したのは果たして誰なのか
(苦笑し)
いえ、己が良く知っていましたね

UCに合わせ自己●ハッキングしスラスター限界突破炎に飛び込み

返していただくと言った筈!

再生する前の不死鳥の炎を切り裂き



「死への無念と己が権能を取り戻さんとする執念。抱くは当然かもしれません」
 窮地に追い込まれながらも必死にあがき続ける敵を見つめて、トリテレイアが呟く。
 あの不死鳥とて望んで人々に忘れられたわけでも、骸魂になりたかったわけでもない。
 世界の変化に取り残された彼女にとって、復権と復活は当たり前の願いなのだろう。
「ですが徒に他者を仇成すことは許されません」
 不死鳥が"生きたい"と願うように、この幽世に住まう妖怪にも同じ権利がある。
 それを踏み躙らんとする蛮行はここで阻む。それが彼の掲げる騎士道なのだから。

「我は死なぬ……この世界の全てを薪としてでも……我は永劫に生き続ける……!」
 傷ついた身体で砂の山から這い上がったフェニックスドラゴンは、空へ舞い上がると同時に炎を放つ。トリテレイアは重質量大型シールドをかざして火炎を受け止めると、頭部から展開した格納銃器の照準を合わせる。
「この世界の雨と竜神の女性を返して頂きます」
 乾いた銃声が戦場に響き、弾丸が炎の翼を撃ち抜く。バランスを崩した敵はきりきりと宙を舞いながら地上へ落ちていくが、そこには剣を構えた機械騎士が待ち構えている。
 体勢を立て直す間もなく、振り下ろされる追撃。それは竜神を取り込んだ不死鳥の骸魂を斬り裂き、儀礼剣の刃が赤く染まった。

「ぐぎいぃ……っ」
 その一撃がついに致命傷となったのか、断末魔を上げ倒れ伏すフェニックスドラゴン。
 しかし、トリテレイアのセンサーはまだ生体反応と熱源反応をキャッチしていた。
 その直後、まるで爆発したような勢いで、倒れこんだ躰から炎の羽が燃え上がる。
「……!!」
 緊急離脱したトリテレイアの眼の前で、炎に包まれた敵の肉体が再生していく。それはまさしく【不死鳥再臨】――死期を悟ったフェニックスは炎の中で蘇るという、伝承に語られるままのユーベルコードだった。

「……傷を癒され千日手ですか!」
 このままでは何度深手を負わせても、そのたびに敵は無傷で復活してくるだろう。
 勝機があるとすればまさに今、炎の中で傷を癒やしているこの瞬間。だが彼女を包む炎の羽はこれまでにも増して激しく燃え盛っていた。
「環境耐性を持ってしても迂闊に近づけませんが……『火中の栗を拾う』しかありませんね」
 いかに強靭なウォーマシンの機体でも、あの熱量に飛び込めば無事では済まないと分析結果が告げている。それでも騎士には往かねばならない時があった。それが今だ。

「寓話では猫が猿にそそのかされて火傷しますが……黒焦げで済むかどうか」
 せめて熱を受ける面積を少しでも減らすために、盾を構えて身を縮めるトリテレイア。
 脳内ではしきりに危険を告げるアラートが鳴っているが、彼はそれを無視して突撃の構えを取る。無茶であることは重々理解したうえで、一切の迷いもなく。
「私を唆したのは果たして誰なのか……いえ、己が良く知っていましたね」
 苦笑する。彼を非合理的で危険な道へと誘うのは、いつだって彼の理想と騎士道だ。
 だからこそ引き返しはしない。自己の電脳にハッキングを仕掛け、論理的に制止を訴えるアラートを黙らせる。

「御伽噺に謳われる騎士達よ。鋼の我が身、災禍を払う守護の盾と成ることをここに誓う」
 【機械人形は守護騎士たらんと希う】。リミッターの外れたスラスターが炎を噴き上げ、トリテレイアは不死鳥の炎へと猛進する。何ひとつとして怖れるものはない。ここにいるのは論理の破綻した狂気の戦機であり――騎士道に殉じる鋼の騎士だ。
「―――!!」
 灼熱の業火が機体を焼く。盾による防護も慰めにしかならなかった。それでも彼は荒れ狂う紅蓮の中を全速力で駆け抜け、その中にいるターゲットを間合いに捉える。

「なんだと……っ?!」
 まさか、この炎の中を突っ切ってくる者がいるとは――それを可能とする者がいるとは露ほども思っていなかったのだろう。驚愕に凍り付くフェニックスドラゴンの肉体は、今だ再生が完了しきっていない状態だった。
 トリテレイアも無傷ではない。高熱に晒された装甲は交換が必要なものもあるし、各部位が不調をしきりに訴えている。だが、そんなことは今の彼にはどうでもよかった。

「返していただくと言った筈!」
 残された全力を振り絞った儀礼剣の一閃が、不死鳥の炎を切り裂く。
 鮮血のように火の粉が舞い散り、魂からほとばしる絶叫が戦場に轟く。
「ぎいぃぃぃぃぃぃぃやあぁぁぁぁぁぁっ!!!?!」
 再臨は果たされず、炎を断たれた不死鳥がどう、とその場に崩れ落ちる。
 その炎翼に当初のような盛りはなく。戦いの終わりの時が近付いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
【九尾化・魔剣の媛神】封印解放…。
そして、その莫大な呪力を付与し【狐九屠雛】を発動…。
不死鳥の尾による炎の羽を逆に狐九屠雛の霊火で迎撃して凍結させ、逆に敵の動きを封じるよ…。
後は神速で接近し、神太刀の不死を無効化する神殺しで不死性を封じて攻撃…。
追い込んだ後、一つ提案してみるよ…。

…明確に人に害意や敵意があるわけじゃ、ないんだよね?
ちょっと変則的だけど、生きるのだけが目的なら、手はあるよ…。

【共に歩む奇跡】で最適化できれば、再びこの世界で生きる事は可能になる…。
勿論、生きていく中で大人しくはして貰うけど…どうかな…?

…受け入れられなければ、仕方ないけど神太刀でトドメを刺すよ…


佐伯・晶
竜神なら邪神について何か知ってるのかな
まずは皆と協力して救出を目指すよ

使い魔の装甲を盾にして飛んでくる炎の羽を防ぎつつ
ガトリングガンの射撃で応戦するよ
耐熱性の高い装甲だからそう簡単には溶けないし
もしもの時は邪神の涙で冷やす事もできるからね

抜けてきたのは神気で時間を停めて防御
これは僕なりのオーラ防御だよ

使い魔は格闘攻撃しかできないと見せかけつつ
ガトリングガンの射撃に注意を向けさせた上で
使い魔に金属片を射出させ
当たった所から体を金属に変えて動きを封じよう
少ない傷で助けられるならそれに越した事はないからね

少しでも掠れば体が重くなるから
回避し続けるのは難しいと思うよ

動きを封じたら竜神を解放して助けよう



「竜神なら邪神について何か知ってるのかな」
 邪神と融合した身体を元に戻す手がかりを求めて幽世にやってきた晶。今回の異変の元凶が不死鳥の骸魂に飲み込まれた竜神だったのは、彼にとっては幸運とも言える。
 話を聞いてみるためにも、まずは仲間と協力してあの少女を救出しなくては。彼が構えるガトリングの砲口は、今や満身創痍のフェニックスドラゴンに向けられていた。

「わ……我が、負ける……滅ぶ……? そんな……そんな馬鹿な……」
 再臨を妨害された反動で多くの力を消耗したフェニックスは、迫る敗北の2文字を受け入れられない様子だった。そんな彼女を見つめながら、一歩前に進み出たのは璃奈。 
「あなたの願いは、生きること……この幽世を滅ぼすことじゃないんだよね……?」
 澄んだ銀色の瞳に宿るのは敵意ではなく憐憫と同情。幽世を大混乱に陥れた元凶ではあっても、この妖怪は生まれついての邪悪というわけではない――彼女はそう信じていたし、またそれは事実であった。
「そうだ……我はただ、生きたいだけ……それを邪魔する者全てを滅ぼしてでも!」
 だが、骸魂と成り果てたそれが、目的のために"手段"を選ばないのもまた事実。
 翼の折れた不死鳥は、残された【不死鳥の尾】を振るって決死の抵抗を仕掛けた。

「防御よろしく」
「はいなのですよー!」
 ふたりの猟兵をかばうように立ちはだかったのは、輪入道との戦いで晶が召喚した【式神白金竜複製模造体】。竜の姿を模した希少金属の使い魔が、耐熱性の防壁となって炎の羽を阻む。
「めちゃくちゃ熱いのです!」
「ご褒美あげるから、頑張って」
 たちまち赤熱する使い魔を励ましながら、晶はガトリングガンの銃撃で敵に応戦する。
 さらに防御を抜けてきたものは神気のオーラで阻む。邪神の力を浴びた炎の羽は、まるで空中で凍りついたように動きを停めた。
(もしもの時は邪神の涙で冷やす事もできるからね)
 晶の身体に宿るのは静謐と停滞を司る邪神。停めたり凍らせたりといったことは得意分野である。とはいえ、その力の濫用は晶自身の身体にも悪影響を与えるため、可能な限り最小限の行使に留めたいところではあった。

「封印解放……来たれ、魂をも凍てつかせる地獄の霊火……」
 晶が使い魔と共に防衛線を構築している間に、璃奈は【九尾化・魔剣の媛神】の封印を解き、莫大な呪力をその身に纏いながら呪文を紡ぐ。それに呼応して顕れたのは、触れるもの全てを凍らせる絶対零度の炎――九尾炎・最終地獄【狐九屠雛】。
「相手が不死鳥の炎でも、地獄の霊火なら……」
 幾何学模様を描いて飛来する攻撃を迎え撃つように放たれた78個の霊火は、炎の羽を一瞬で凍結させていく。媛神へと覚醒した璃奈の呪力を付与した【狐九屠雛】は、実体なき炎すらも凍らせるほどに強化されていた。

「なに……っ!?」
 炎羽の包囲攻撃の一角が凍結された直後、狐九屠雛の火の手は敵の元にも迫る。慌てて身を翻すフェニックスドラゴンだが、手足をかすめた火の粉が彼女を凍らせていく。
 その機を見逃す猟兵たちではない。璃奈は妖刀を鞘走りながら白金の使い魔の影より飛び出し、晶はガトリングの照準を合わせて弾幕を集中させる。
「このまま追い込む……」
「援護するよ」
「おのれ、ッ!」
 鞭のようにしなる尾で銃弾の雨を払い落とすフェニックスドラゴン。だがそこに神速の歩法で踏み込んだ璃奈が刀を閃かせれば、火の粉と血飛沫が戦場に散った。

「まだだ、まだ、まだ……ッ」
 弾幕と剣戟の連携に追い詰められながらも、不死鳥は必死に抵抗を続ける。だが狐九屠雛に凍結させられた四肢は思うように動かず、体温の低下が彼女の力を奪っていく。
 頃合いとみた晶は、トリガーを引きっ放しにしたまま傍らにいる使い魔に合図を出す。
「今だよ」
「はい!」
 その瞬間、白金の竜の鱗が棘のように逆立ち、金属片の散弾となって発射される。
 これまで防御役に徹してきた使い魔からの遠距離攻撃は、ガトリングと妖刀にばかり注意を向けていた敵の不意を完全に突くものだった。

「ぐあッ?!」
 標的に突き刺さった金属片は、その箇所から肉体を金属に変化させる。ここにきて凍結に加えて金属化の二重苦に晒され、フェニックスドラゴンの動きがガクンと鈍る。
「少しでも掠れば体が重くなるから、回避し続けるのは難しいと思うよ」
「よ、よくも……っ!」
 憎悪の視線で晶を睨みつけてもどうしようもない。重たい金属の身体に引きずられるように体勢を崩すフェニックスドラゴン、その隙を魔剣の媛神は見逃さなかった。
「これで……!」
 神速の早業で放たれた一閃を避けるすべは、もはや無く。妖刀・九尾乃神太刀――神や超常の存在の不死や再生力を封じるそれは、不死鳥の天敵とも言える妖刀だった。

「がは……っ! き、傷が、再生しない……?!」
 がくりと崩れ落ちたフェニックスドラゴンは信じられぬという顔。神太刀により【不死鳥再臨】も叶わず、凍結と金属化により身動きも封じられ、もはや打つ手はない。
 そんな彼女の喉元に妖刀の切っ先を向けながら、璃奈はぽつりと一つの提案をする。
「……明確に人に害意や敵意があるわけじゃ、ないんだよね? ちょっと変則的だけど、生きるのだけが目的なら、手はあるよ……」
「なん、だと……?」
 フェニックスに憑かれた少女の瞳が、これまでとは異なる種類の驚愕に見開かれる。
 璃奈が取り出すのは一枚の呪符。これに込められたユーベルコードには、敵対意思のない者を共存可能な存在へと最適化する力があった。

「【共に歩む奇跡】で最適化できれば、再びこの世界で生きる事は可能になる……。勿論、生きていく中で大人しくはして貰うけど……どうかな……?」
 それは望まずして骸魂となった者への璃奈からの慈悲であり、同時に最後通告だった。
 もしフェニックスがこの提案を受け入れなければ、その時には即座に斬り捨てる。仕方がないと惜しむ気持ちこそあれ、そこで迷うほど彼女は未熟ではない。
「…………………わか、った。敗者たる我は、汝らに従おう……」
 長い沈黙の末にフェニックスは己の敗北を認め、璃奈が差し出した呪符に触れる。
 その骸魂は火の粉と共に吸い込まれていき、後には竜神の少女だけが残された。

「おっと」
 ふらりと力なく倒れ込む竜神の身体を受け止めたのは晶。見たところ気を失っているだけで生命に別状はなく、その身に宿っていた禍々しい存在の気配も消えている。
 オブリビオン"フェニックスドラゴン"はここに討伐され、憑代とされていた竜神の少女は無事に解放された。
「一件落着、かな」
 晶が空を見上げると、先程まであれだけ晴れ渡っていた空が急に曇りはじめる。
 そして、ぽたり、ぽたり、と――数週間ぶりとなる恵みの雨が、幽世に降り注いだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『失われた飯を求めて』

POW   :    陰りの見え始めた比較的最近の料理を食べる

SPD   :    そんなのあったなぁ、という懐かしい料理を食べる

WIZ   :    本当に誰も覚えていない、もしくはマイナー過ぎる料理を食べる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵の活躍により"フェニックスドラゴン"は退治され、幽世には『雨』が戻った。
 これまでの日照の分を取り戻すように、雲で覆われた空から大粒の雨が降り注ぐ。
 枯れかけていた草花は息を吹き返し、乾きに苦しんでいた妖怪たちは喝采を上げる。

「皆様、この度は本当にありがとうございました」

 幽世の住民を代表して感謝を述べたのは、不死鳥の骸魂に飲み込まれていたあの竜神の少女だった。激しい戦いではあったが竜の神力は伊達ではないのか、もうすっかり元気そうに笑顔を見せている。それは輪入道となっていた他の妖怪たちも同じだ。

「幽世を救って下さった皆様のために、ささやかですが宴の席をご用意しました。どうか楽しんでいって貰えると嬉しいです」

 そう言って彼女が案内した宴会場には、山のようなご馳走が用意されていた。
 白いタイヤキ、ティラミス、モツ鍋、タピオカ――「過去の思い出や追憶」で形作られた幽世らしく、そのメニューは地球ではブームになっては廃れた料理が多い。だが味のほうは保障すると、調理担当の妖怪たちが太鼓判を押した。

「もし良ければ外の世界の"今"の話も聞かせてほしいです。みんな興味津々なので」

 地球の人々に忘れ去られ、幽世に移り住んでからも、地球への郷愁を抱く妖怪は少なくないのだろう。久方ぶりに出会えた"見える"人間ということもあって、妖怪たちの猟兵歓迎ムードは凄まじいものがあった。

 かくして『雨』の戻ってきた幽世で、猟兵の勝利を祝う宴が始まる。
 大いに飲み食いするもよし、妖怪たちと交流を深めるもよし。
 乾きに悩まされることのない、平和なひとときを楽しむといいだろう。
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

脅威は去ったか…囚われた者達も無事なようで何よりだな
それでは、宴を楽しむとしよう

白いタイヤキ…私が学生の頃に流行った記憶があるな
確かタピオカの粉を使っているんだったかな?
表面がカリカリで中がモチモチと言う不思議な食感だ
久しぶりに食べるが中々に美味しいな
後は現地の妖怪達と交流をしようか

このタピオカがそうだが…世界から忘れ去られても、新たに人々の口の端に上る物は多々ある
それは妖怪であっても変わらないだろう
世界から忘れ去られようと、また人々が思い出し交流できる日が来るさ
去年は日曜の朝に大人気妖怪アニメもやっていたし、最近だと疫病に聞くと言う事でとある古い妖怪が引っ張りだこだったからな



「脅威は去ったか……囚われた者達も無事なようで何よりだな」
 降りしきる「雨」と、骸魂から解放された妖怪たちの笑顔を見やり、キリカは満足そうな笑みを浮かべる。世界中に広がっていた日照の異変は無事に収まり、幽世は本来あるべき状態に戻ったようだ。
「それでは、宴を楽しむとしよう」
「どうぞどうぞ! めしあがれ!」
 幽世を救った英雄のひとりである彼女にかけられるのは歓迎の言葉。はしゃぎまわる妖怪たちの歓迎の宴席に加わってみれば、すぐに沢山の妖怪とごちそうに囲まれた。

「白いタイヤキ……私が学生の頃に流行った記憶があるな」
 宴席に並べられた「過去の思い出や追憶」の料理の中から、キリカは見覚えのあるものを見つけて手にとってみる。その名前のとおり、雪のように真っ白な生地でできたタイヤキは、今から十年ほど前にUDCアースで流行ったスイーツである。
「確かタピオカの粉を使っているんだったかな? 表面がカリカリで中がモチモチと言う不思議な食感だ」
 一口食べてみると、もっちりとした生地の食感とあんこの甘みが程よく、冷えていても美味しい。クリームやカスタード味などもあるようで、このモチモチ感は妖怪にも好評なようだ。

「久しぶりに食べるが中々に美味しいな」
「でしょー! これボク好きー」
 現地の妖怪たちと一緒に白いタイヤキを味わいながら、キリカは今のUDCアースの様子について語りだす。長く幽世住まいの者たちには、地球に関する情報は流れついた「過去」から断片的に知るほかなく、最新の世情には興味津々のようだった。
「このタピオカがそうだが……世界から忘れ去られても、新たに人々の口の端に上る物は多々ある」
 一時期は爆発的な人気となったものの、すぐに過ぎ去ってしまった白いタイヤキのブーム。しかしそれに使われていたタピオカは十年もの時を経て、今度はドリンクとして新たなブームを引き起こした。形は変われども再び人々に思い出されたのだ。

「それは妖怪であっても変わらないだろう。世界から忘れ去られようと、また人々が思い出し交流できる日が来るさ」
「そう、かなあ……?」
 それを聞いた妖怪たちの反応は、喜びや期待が半分、不安が半分といったところか。
 また、人間たちを驚かせたり、笑わせたりする日々に戻りたい。けれど本当にそんな時が来るのだろうかと聞く彼らに、キリカは「大丈夫さ」と優しい笑みで太鼓判を押す。
「去年は日曜の朝に大人気妖怪アニメもやっていたし、最近だと疫病に聞くと言う事でとある古い妖怪が引っ張りだこだったからな」
「本当!? 向こうでもまだ、ボクたちの仲間が活躍してるの!? わぁい!!」
 たとえ時代が変わっても、見えなくなってしまっても、人は「妖怪」を忘れていない。様々な媒体で活躍する「新しい妖怪」たちの話をしてみれば、彼らの表情が輝いた。
 こんな陽気で愉快な彼らと「向こう」でもこうして交流ができれば、きっと楽しいだろう――そんなことをふと考えながら、キリカは妖怪との宴を楽しむのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
「カレーうどん以外は禁止です、昇格ゥウウウ!!」
この店ではルールに反したり、キチンと働かないと昇格してしまうシステムがあるのだ。
「今日から当支店の店長に任命します。しっかり働きなさい」
竜神の少女は支店長になった。

宴会の輪から抜け出した竜神の少女が呟く。
「…ホント読めない娘」
(竜の神力でも――カビパンのやらかす事だけは分からない)
宴の様子をうかがってみる。
何があったのかは知らないが、カビパンは輪入道にジャイアントスイングをされていた。それを遠くから眺めつつ、真剣な顔でこう言うのだった。
「消そうと思ったけどもう少し見守りましょう」

宴が終わるとカビパンはまたくるよと、幽世に一時の別れを告げ去った。



「カレーうどん以外は禁止です、昇格ゥウウウ!!」
 パシーン!! と響き渡るハリセンの快音と、女教皇カビパンの小気味のいい一喝。
 幽世に「雨」が戻ったことを祝う宴会のなかでも、特にどんちゃん騒ぎが激しいところがここ。「悩み聞くカレー屋」カクリヨファンタズム支店である。
 この店ではルールに反したり、キチンと働かないと昇格してしまうシステムがあるのだ。普通逆では? というツッコミは残念ながらギャグ時空において無効化される。

「今日から当支店の店長に任命します。しっかり働きなさい」
「……え?」
 ぽん、とカビパンに肩を叩かれた相手は、フェニックスの骸魂に取り憑かれていた、あの竜神の少女。その手前の皿に乗っているのはカレーうどんではなくティラミスとマカロン。どうやら甘いものが好きらしい。
「なぜ私が……というか、私の他にもいませんか? カレーうどん以外食べてる人」
「む」
 少女がそう指摘するとカビパンはちょっぴり渋い顔。そう、宴会ムードの現状においても彼女のカレー屋でカレーうどんを頼む妖怪は希少種。だいたい他の所から持ってきたタピオカとかモツ鍋とかを思い思いに食べてる。それはそれでどうなんだという話だが、あのカレーうどんの味を知る少女的には「さもありなん」という感じ。

「店長、水!」
「天ぷらそば!」
「アイスクリーム!」
「よしそこに直りなさい、あなたたちも全員昇格です」
 フリーダムに好き勝手な注文をする常連妖怪たちを一発シバくために、ハリセン片手に腕まくりするカビパン。わーわーぎゃーぎゃーと彼女らが騒いでいる隙に、竜神の少女はこっそり宴会の輪から抜け出した。
「……ホント読めない娘です」
 ぽつりと呟くその表情は、呆れと困惑と感心が複雑な配分で彩られている。彼女も神の端くれであるからには、見た目通りの年齢ではないのだが――その長い生の中でも、カビパンのような人間と出会ったのは初めてだった。

(竜の神力でも――カビパンのやらかす事だけは分からない)
 もう一度ひょこりと宴の様子を覗いてみると、カビパンは輪入道にジャイアントスイングをされていた。一体何があってそうなったのかは分からないし知りたくもない。
 ただ彼女が竜神の想像を超えた何かであることは確かだった。「常識の埒外」という言葉を身をもって理解した少女は、遠くから宴を眺めつつ、真剣な表情でこう言った。
「消そうと思ったけどもう少し見守りましょう」
 その敵意の理由は、あの女教皇に加護を与える"女神"のことだろうか? ――あるいは、そんなに根に持っていたのだろうか。カレーうどんとカビパンリサイタルを。

「また来てねー!」
「ばいばーい」
 やがて宴会もお開きとなり、帰還するカビパンは妖怪たちから盛大な見送りを受ける。
 カオスだったりギャグだったりしながらも、何やかんやで慕われているらしい彼女は、「またくるよ」と手を振って、幽世に一時の別れを告げ去った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サフィリア・ラズワルド
WIZを選択

精霊竜様と共に竜神さんに話しかけます。
私はドラゴニアンです!竜の獣人って言えばわかりやすいかな?UDCアースとは違う世界から来ました、精霊竜様も竜人なんですよ!精霊竜様が首を振り竜語で「だった、が抜けている」と訂正を求めてきたので言い直します。竜人だったんです!
精霊竜様は竜神さんを見てから頷いて「“りゅうじん”だった」と答えます。

生きるために竜になった、一緒に生きるために、そんな私が貴女達に誇りを語る資格などないのに

そう言って竜神さんに御無礼をと頭を下げた精霊竜様『え?!あ、えっと私も強く攻撃しちゃってごめんなさい!』自分も一緒に頭を下げます。

アドリブ歓迎です。



「まだ"向こう"にいる竜神の方とお会いできるなんて、思いもしませんでした」
「いえ、私はドラゴニアンです! 竜の獣人って言えばわかりやすいかな?」
 戦いを終えたサフィリアと【瑠璃色の精霊竜】は、宴席で竜神の少女と話をしていた。
 フェニックスの骸魂に飲み込まれていた時とはうって変わって穏やかな気質の少女は、どうやらサフィリアたちを同族だと思っていたようだが。そうではないと聞いて「まぁ」と驚きと好奇心を示した。

「UDCアースとは違う世界から来ました、精霊竜様も竜人なんですよ!」
 サフィリアがにこにこと楽しそうに自分たちのことを語る一方で、精霊竜は穏やかな態度でゆるりと首を横に振り、「だった、が抜けている」と竜語で訂正を求める。
「竜人だったんです!」
「だった……ですか?」
 言い直したサフィリアに首をかしげて、竜神の少女は精霊竜を見上げる。怒りのおさまった瑠璃色の竜は、戦闘中の荒ぶりようからは見違えるような謙虚な所作で、少女と見つめあい――「"りゅうじん"だった」と静かに頷く。

『生きるために竜になった、一緒に生きるために、そんな私が貴女達に誇りを語る資格などないのに』

 御無礼を――そう言って精霊竜は竜神に頭を下げた。
 思わぬ謝罪に少女が戸惑うのはもちろん、サフィリアも吃驚している。彼女の立場からは、どうして"精霊竜様"がこんなに沈鬱な感情を滲ませているのか分からなかった。
「え?! あ、えっと私も強く攻撃しちゃってごめんなさい!」
 とにかく自分もいっしょに謝るべきだろうと、精霊竜と並んでぺこりと頭を下げる。
 ふたりの謝罪に竜神は困惑していたが、やがて「顔を上げてください」と優しい調子で言った。

「謝られることは何もありません。骸魂に取り込まれ、幽世に災いを為してしまったのは、私の罪。それを止めて下さったお二人や猟兵の皆様には感謝しかありません」
 そう言って竜神の少女は微笑み、精霊竜の瑠璃色の瞳を見つめながらさらに語る。
「あなたの言葉がなければ、私は竜神としての誇りさえ忘れていたでしょう。"あなた"の言葉だからこそ、私の心に響いたのです――ありがとう、誇り高いひと」
 精霊竜が竜神の誇りを思い出させたように、竜神もまた精霊竜の矜持を肯定する。
 誰かと共に生きるため――その優しい願いを、けして卑下する必要はないのだと。

「さあ、今宵は無礼講です。どうかお二人も楽しんでください。あなた方が来た"違う世界"のお話も、よければお聞かせ願えますか?」
「はい、喜んで!」
 顔を上げたサフィリアはぱっと笑顔を見せて、用意されたお菓子を口にしながら、竜神の少女と一緒に宴のひとときを楽しむ。瑠璃色の精霊竜はその様子を静かに――母親のような穏やかで優しい眼差しで、見守り続けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
(雨が蒸発する程に熱せられ、蒸気発しつつ屋外待機)

疑似飲食機能の『口』の開閉機構も歪んでいますね
冷めるまで宴会場も入れませんが

…私にとって『雨』は定時に振るか、若しくは船に設備が無いか、というものでしたね
こうした発展が妖怪達をこの世界に追いやった要因ならば…

権化の私には些か肩身が狭い
冷め次第、グリモアベースに…

ああ、お気を使わせてすみません
(住人に呼び止められ冷めるまでと談笑)

現在、UDC-Pと呼ばれる存在と人との共存が模索されて…

いえ、近い将来、遠い未来
人と彼らが共に暮らすことが出来たなら
貴方達も戻ることが出来るのでは…と

中に入って宜しいですか
飲食は出来ませんが、もう少し話したい気分なのです



「今回も手痛くやられたものです。修理代がかさみますね」
 熱で歪んだ兜の口元に手を当てながら、トリテレイアはしとしとと降りしきる雨に打たれていた。フェニックスドラゴンとの戦いで熱せられた機体は雨粒に触れるたびにジュッと蒸気を発しながら、ゆっくりと冷却されていく。
「疑似飲食機能の『口』の開閉機構も歪んでいますね。冷めるまで宴会場も入れませんが」
 屋内のほうからは妖怪たちの楽しそうな賑わいが聞こえてくる。それは紛れもない猟兵たちが「雨」と共に取り戻したもの――だがその1人であるはずの騎士は、傷ついたまま屋外でひとり待機していた。

「……私にとって『雨』は定時に振るか、若しくは船に設備が無いか、というものでしたね」
 仰ぎ見るのは空を覆う雨雲に、乾いていた幽世を癒やす恵みの雨。宇宙船の中で生活が完結するトリテレイアの故郷では、こうした『気象』とは人の手でコントロールされるものであり、科学技術で再現される事象のひとつとなっていた。
「こうした発展が妖怪達をこの世界に追いやった要因ならば……」
 スペースシップワールドでもUDCアースでも、科学の発展は間違いなく人々の生活を快適にしたが、その快適さの裏で忘れられていったものもある。科学の権化であるウォーマシンの彼には、科学に居場所を奪われた者たちの集うこの世界は、些か肩身が狭かった。

「冷め次第、グリモアベースに……」
「あれー、騎士さん、なんでこんなとこに突っ立ってるの?」
 一足早く帰還を考えはじめたトリテレイアを呼び止めたのは、見覚えのある妖怪だった。輪入道の骸魂に飲み込まれていたところを、騎士に救出された妖怪のひとりだ。
「ああ、お気を使わせてすみません」
「いいよー。中に入れないのなら、いっしょにお話でもしよ?」
 その妖怪は、どうやら久しぶりの雨に打たれていたくて宴会場から抜けてきたらしい。地球でのお話を聞かせてほしいとせがまれ、トリテレイアは機体が冷めるまでと考え、しばしの談笑にふけることにした。

「現在、UDCーPと呼ばれる存在と人との共存が模索されて……」
 機械仕掛けの騎士が語るのは、ここ1年以内のUDCアースの情勢。特に、オブリビオンとしての「破壊の意志」を持たず、シャーマンズゴーストのように人類に友好的なUDCの発見は、彼にとって強く印象に刻まれる出来事だったらしい。
「うーん? なんだか難しそうな話だけど、つまり、どゆこと?」
「いえ、近い将来、遠い未来、人と彼らが共に暮らすことが出来たなら――」
 首を傾げる妖怪を向き合いながら、トリテレイアはこれから先の地球の未来を考える。
 UDCと妖怪は同一の存在とはいえない。しかし人と人ならざるものが共存する体制が整ったとき、人は忘れていたもうひとつの"人ならざるもの"の存在も思い出すかもしれない。もし、そうなれば――。

「貴方達も戻ることが出来るのでは……と」
「ほんと!? ねえ、それっていついつ?!」
 雨雲の切れ間に太陽が覗いたように、ぱぁっと晴れやかな笑顔を浮かべる妖怪の子。
 いつか、という断定まではトリテレイアにはできない。そもそも本当にそんな未来が来るのかも。だが、妖怪たちの期待にあふれる、希望に満ちた表情を見ているうちに――沈みぎみだった彼の心は、少しずつ軽くなっていった。

「あ……湯気、出なくなってるね?」
 話をしているうちに、いつの間にか熱された機体も雨ですっかり冷えたらしい。
 予定では冷却が済み次第、この世界を去るつもりだったトリテレイアだが――。
「中に入って宜しいですか。飲食は出来ませんが、もう少し話したい気分なのです」
「もちろん! あなたのおはなし、いっぱい聞かせて!」
 無邪気に騎士の手を引いて、宴会場の輪の中へと誘う妖怪の子。彼らが喜ぶような話題を考えるトリテレイアの口元――熱で歪んだ装甲は、まるで笑っているようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朝沼・狭霧
ベイメリア(f01781)とアドリブ歓迎
【心情】こういう席ですし久しぶりにお酒飲んじゃいましょうか
私すごく弱いですけど!
かんぱーい

飲んでいけば楽しくて割とすぐにぐにゃぐにゃ
妖怪の皆さんには何か芸を希望
なにか楽しい事をしてほしいです
わたしに振られたら歌っちゃいます

UCのクルドの前奏曲を歌唱
(どんな歌かはお任せで
姿を幼い少女から中学生、高校生、そして今へと移り変えながら
ご機嫌で高らかに歌います
妖怪の皆さんも一緒に歌ったり踊ったりして…
小さくなってから大きくなる時に
服がちょっと肌けちゃったりするかもしれませんが
そこはご愛敬
ベイメリア何とかしてください
なんとかー(ぐにゃぐにゃ
ベイメリアの膝枕でうとうと


ベイメリア・ミハイロフ
狭霧さま(f03862)と
アドリブ歓迎


皆さまご無事で良うございました
懐かしいと言われるお料理を前に
わたくしは、烏龍茶で乾杯を

狭霧さま、ただで芸をしていただく訳には…
そうでございます、こちらがお歌を歌って
それに合わせて何かしていただくのは
いかがでございましょうか

あらあら、こんなに酔われて…
UCをご披露なされた狭霧さまの衣服を整え
お膝枕をしつつ
そういえば、今は
ノンアルコールという
お酒っぽいお飲み物もあるのでございますよ

ティラミスはまだ存在しておりますし
タピオカも、形を変えて再ブームとなっております
人々の服装のトレンドも、昔を取り入れたものが
少し形を変えて再度流行になったりしておりますよ
などとお話を



「皆さまご無事で良うございました」
 宴会の席を囲む妖怪たちの元気な姿を見て、ベイメリアは優しい微笑を浮かべる。
 その隣では、狭霧がなかなか高級そうなお酒を器に注いで、懐かしみにあふれる料理を皿に盛り付けている。
「こういう席ですし久しぶりにお酒飲んじゃいましょうか。私すごく弱いですけど!」
 幽世が救われたせっかくのお祝いなのだ。宴の空気も無礼講。少々羽目を外すつもりでいる白薔薇の相方に、赤薔薇のシスターはくすりと笑いながら烏龍茶で応じる。

「かんぱーい」
「乾杯、です」
「「かんぱいっ!!」」
 狭霧の音頭に合わせて、ベイメリアと妖怪たちの声が唱和する。そこから先は思い思いに飲んで食べて騒いで笑って。宴会場はあっという間にどんちゃん騒ぎになった。
「うにゃ~」
 すごく弱いという申告は事実だったのか、すぐに狭霧はぐにゃぐにゃに。楽しそうに笑いながら結構なハイペースでお酒を傾けつつ、近くにいる妖怪たちに絡んでいる。
「なにか楽しい事をしてほしいです」
「え、ボク? うーん、なにしよう……」
 いきなり芸を要求された妖怪はちょっぴり困惑しているが、酔った狭霧はしつこい。
 ただ、幸いにもここにはストッパーがいる。こうなることも分かってアルコールを控えていたのか、烏龍茶を片手にベイメリアがそっとたしなめに入った。

「狭霧さま、ただで芸をしていただく訳には……そうでございます、こちらがお歌を歌って、それに合わせて何かしていただくのはいかがでございましょうか」
「ん、わたしがやるんですかぁ? それじゃあ歌っちゃいます」
 それまで振り子のようにフラフラと揺れていた狭霧は、ベイメリアの提案を聞くと急にしゃきっとなった。詠唱兵器のマイク「テンペストクィーン」を手に、すうと小さく呼吸を整えて――そして伸びやかに澄んだ声で歌いはじめる。

「それはどこにでもあるおとぎ話、誰もが知る偽りの物語」

 奏でられるは【スクルドの前奏曲】。アップテンポで小気味よいリズムに合わせて紡がれる物語調の歌詞は、妖怪たちの知らないものだったが不思議と心に染みわたる。
 その歌い手である狭霧の姿は、メロディに合わせて幼い少女から中学生、高校生、そして今の姿へ――まるで過去・現在・未来への移り変わりを現すように変化する。
「お姉さん、きれい……」
「よーし、オレもっ!」
 やがて妖怪たちの中からも彼女と一緒に歌いはじめる者が現れ、楽器を持ってきて伴奏したり、踊りを披露する者も出てくる。お世辞にも完璧なコンサートとは言えないが、とても賑やかで、みんな楽しそうで――だから狭霧もご機嫌で高らかに歌う。
「~♫」
 最後の旋律を紡ぎ、元の姿に戻った狭霧がぺこりと一礼すると、宴会場からは妖怪たちからの割れんばかりの拍手と喝采が湧き上がった。

「どうでしたかベイメリア~」
「とても素晴らしかったですよ、狭霧さま」
 一曲披露し終えた狭霧は、それでまた酔いが回ったのかふにゃりとへたりこむ。
 変身するうちに衣服がはだけてしまっているが、それを直す気力もなさそうだ。
「ベイメリア何とかしてください。なんとかー」
「あらあら、こんなに酔われて……」
 ベイメリアはぐにゃぐにゃと駄々をこねる相方の衣服を整え、そっと膝枕をする。
 柔らかなシスターの膝の上で横になった狭霧は、すぐにうとうとしはじめた。

「お歌のお姉さん、寝ちゃった? お酒いっぱい飲んでたものねー」
「ええ……そういえば、今はノンアルコールという、お酒っぽいお飲み物もあるのでございますよ」
 狭霧を寝かしつけながら、ベイメリアは集まってきた妖怪との談笑に花を咲かせる。
 流れついた「過去の思い出や追憶」という形でしか外界の情報を知らない幽世の妖怪たちにとって、彼女が語る地球の物事はとても興味深いものだった。
「ティラミスはまだ存在しておりますし、タピオカも、形を変えて再ブームとなっております」
「へぇー! 今の人間たちも、ボクらとおんなじものを食べてるんだね!」
 宴会場に並べられた過去の料理を頬張りながら、キラキラと目を輝かせる妖怪たち。
 一度は下火になったブームが再燃し、思い出されるというのは"忘れられた存在"である彼らにとって嬉しいことらしい。

「人々の服装のトレンドも、昔を取り入れたものが。少し形を変えて再度流行になったりしておりますよ」
「そうなんだー。ボクたち妖怪のことも、いつかまた流行になったりするかな?」
 期待を込めた妖怪たちの問いかけに、ベイメリアは「ええ、きっと」と笑顔で答える。
 ほんとうの意味で人々が過去を忘れてしまわない限り、それは絶対に失われはしない。
 喜びに湧く幽世の住民を優しく見守る赤薔薇のシスターの膝枕の上では、白薔薇の歌い手が猫のように身体を丸めて、すやすやと心地よさそうに寝息を立てていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリス・フォーサイス
過去の思い出や追憶が詰まった料理か。美味しそうだな。

これは、タピオカにパンナコッタ?
楽しい食感だね。これにハマって、求めていた人たちの記憶が美味しいアンサンブルをかもしだしてるね。

これは、駄菓子みたいだけど、なんだろ?ねるねるねるね?
粉を順番に入れて、水を入れるのか。で、ねると。
あ、こういうふうになるんだ。おもしろーい。
子どもたちの興奮が感じられて、美味しいな。

他にはどんなのがあるの教えて?



「過去の思い出や追憶が詰まった料理か。美味しそうだな」
 ずらりと並んだ宴の料理を前にして、目を輝かせたのはアリス。妖怪たちの糧である「過去」から作られた食物は、「お話」を好物にする彼女にとってもごちそうだ。
「どうぞめしあがれ!」
 料理人である妖怪たちは、幽世に「雨」を取り戻してくれた猟兵たちにお礼も兼ねて、あれもこれもと料理を勧めてくる。もちろんアリスにそれを断る理由はなかった。

「これは、タピオカにパンナコッタ?」
 最初にアリスが手に取ったのは、黒いつぶつぶの入ったドリンクと、白いプリンのような見た目をしたデザート。口に運んでみれば甘みの中にあるつぶつぶ感やつるりとした口当たりが、彼女の舌を楽しませてくれる。
「楽しい食感だね。これにハマって、求めていた人たちの記憶が美味しいアンサンブルをかもしだしてるね」
 時代は違えども一時は大きなブームを巻き起したスイーツの数々。そこに含まれているたくさんの思い出は、単純な味覚以上にアリスにとっては美味なものだった。目を閉じれば当時の活況ぶりと人々の笑顔が、頭に浮かんでくるようだ。

「これは、駄菓子みたいだけど、なんだろ?」
 次にアリスが気になったのは、子ども向けの知育菓子と思しきパッケージ。開封してみると中には2種類の粉が入った袋とトレイと棒、それにトッピングらしいキャンディチップが同梱されている。
「粉を順番に入れて、水を入れるのか。で、ねると」
 トレイに1番目の粉と水を入れて棒でねるねるしてみると、色が青くなる。そこに2番目の粉を加えて更にねるねるすると、今度は徐々に赤紫色になったうえで、もこもこと膨らんできた。
「あ、こういうふうになるんだ。おもしろーい」
 ねればねるほど色が変わって膨らむ不思議なおかし。原理自体は単純な化学反応だが、そんなことを知らない子どもたちからすれば魔法のようなものだろう。意外とやみつきになるもので、アリスも気付けば夢中でねるねるしていた。

「子どもたちの興奮が感じられて、美味しいな」
 クリーム状にねりあがったものに、キャンディチップを絡めてぱくり。味は――まあ正直に言えば、この手の菓子によくあるように、特別美味というわけでもないのだが。しかしこれを楽しんだであろう子どもたちの思い出は、それにも勝る最高のフレーバーだ。
「他にはどんなのがあるの教えて?」
「じゃあ、次はナタデココなんてどうかなっ!」
「マカロンもあるよ!」
「マンゴープリンもどう?」
 その後もアリスが尋ねれば次から次へ、ブームを築いた個性的な料理がずらりと並ぶ。
 そのひとつひとつに込められた「思い出」を味わう情報妖精の表情は、とても満足そうな笑顔に満たされていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
とりあえず無事に終わって良かったよ
宴に参加しつつ色々話を聞いてみようか

そういえば集まってるのはほぼ妖怪ばかり
それもUDCから移り住んだものが多いという事は
見た目に反して飲酒可能な妖怪が多いのかな
こっちも飲める年齢だから
状況次第ではご相伴させて貰うよ

問われれば今のUDCアース
特に日本の事は話せるよ
彼らにとっても故郷であるなら
色々話したり聞いたりしてみたいな

竜神達からは過去の邪神との戦いとか
そもそも邪神って何なのか聞ければいいんだけど

中には僕の気配で察する人もいるかもしれないから
その時は事情を話してみよう

それと頑張ってくれた使い魔にも宴に参加して貰おうか
もちろん超硬装甲は置いておいて人間サイズだよ



「とりあえず無事に終わって良かったよ」
 平穏と「雨」を取り戻した幽世の様子を眺めながら、晶はほっと安堵の息を吐く。
 妖怪たちが無事だったの勿論良いことだが、これでようやく落ち着いて話をすることができる。宴に参加しつつ色々聞いてみようかと、賑やかな輪の中に彼女も混ざる。

「そういえば集まってるのはほぼ妖怪ばかり。それもUDCアースから移り住んだものが多いという事は、見た目に反して飲酒可能な妖怪が多いのかな」
「おうよぉ! 餓鬼みたいだからってバカにすんなよぅ!」
 威勢のいい態度で晶の疑問に答えたのは、手に酒瓶を握りしめ、頭に和傘をかぶった童子姿の妖怪――雨降り小僧。どうも妖怪に外見と実年齢の相関性は薄いらしく、数十年から数百年もの年月を生きた者もざらにいるようだ。
「祝い事に酒がねぇなんてありえねぇ! お前さんもどうだ?」
「じゃあ遠慮なく、ご相伴させて貰うよ」
 晶も邪神との融合により少女の外見になっているものの、実年齢は既に成人済み(ついでに言えば、本当は男性)である。勧められたものを断るのも角が立つだろうと、なみなみ注がれた盃を受け取り、くい、と干す。呑み手と同じくこちらも年季の入った一品なのか、よく熟成されたまろやかな味わいが口に広がった。

「いいお酒だね」
「おう! 嬢ちゃんもいける口じゃねぇか!」
 酒のせいかすこぶる陽気な妖怪たちと宴席を囲み、晶は彼らとの酒と談笑を楽しむ。
 主な話題となるのはUDCアースについて――現在の地球がどうなっているか、妖怪たちが晶に聞きたがるのは勿論、妖怪たちにとっても故郷である地球の思い出話は、晶にとっても興味深い内容が多かった。
(昔話や怪談を、その当事者から直に聞けるなんてね)
 妖怪の視点から語られる新解釈のおとぎ話には、ただ面白いだけではなく異形のもの――今日ではUDC怪物と呼ばれるものも登場する。組織や猟兵として活動するだけでは得られない、貴重な情報だ。

「これもこれもこれも美味しいのですよー!」
 酒の席からすこし離れたところでは、竜型の超硬装甲を置いて人間サイズになった使い魔がスイーツを味わっている。骸魂との戦闘で頑張ったご褒美ということか、過去の地球でブームを起こした甘味の数々を堪能する少女の表情は、とても幸せそうだった。

「楽しそうですね。私も混ぜてもらっていいですか?」
 そこに声をかけてきたのは、紅白の巫女服を纏った黒髪の少女――骸魂『フェニックス』に飲み込まれていた、あの竜神の娘だった。ちょうど彼女にも聞きたいことがあった晶は「どうぞ」と頷きながら場所を開ける。
「ありがとうございます……戦いの時に感じたときは、まさかと思いましたが。あなたの中にいる気配は、邪神のものですね」
 開いたスペースにちょこりと腰を下ろした竜神は、じっと晶を見つめながら単刀直入に話を切り出した。かつて邪神を滅ぼしたという種族の一員である彼女にとって、その気配は馴染みのあるものだったのだろう。

「察してくれるなら、話は早いかな」
 ここで隠し立てする意味は薄いと考えた晶は、自分が抱えている事情を竜神に話す。
 登山中に見つけた不思議な石像、そこに封じられていた邪神の依代にされた結果、人格こそ守ることはできたものの心身は邪神と融合してしまった。この状態を解決し、元の人間に戻る方法を"彼"はずっと探し続けているのだ。
「手がかりを掴むためにも、過去の邪神との戦いとか、そもそも邪神って何なのか聞かせて貰いたいんだけど」
「そうでしたか――お力になりたいのは山々ですが、人から信仰されなくなった我々竜神は、かつての力を喪っています。それは単純な魔力や体力だけでなく、記憶、知識といったものも含めてです」
 骸魂の影響でオブリビオン化していた間はともかく、現在のこの少女は人に化ける以外の神力をほとんど失っている。宿敵である邪神に関する記憶や知識も、断片的にしか思い出せないそうだ。

「ですが、あなたの中から感じられる邪神の気配は強大。力尽くで引き剥がすのは困難を極めるでしょう……あなたが現在も自我を保っていられるのには、封印とは別の要因も絡んでいるのかもしれません」
 憶測を含むことを前置いたうえで、その竜神の少女は自分が覚えている限りの知識を晶に語った。その邪神に、人と交感できるだけの明確な意志と自我があるのなら、あるいはそれが状況を改善する鍵になるやもしれない――とも。
「期待してくださったのに、お力になれず申し訳ありません」
「ううん、ありがとう」
 無収穫とは言わないが、核心に至る情報は得られなかった。しかし晶は(少なくとも表面的には)落胆した様子を見せず、恐縮する竜神の娘に気にしないでと告げた。
 ふと酒盃に視線を落とせば、そこには金髪碧眼の愛らしい少女が映る。どうやらもう暫くの間は、この顔と付き合うことになりそうだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
白タイヤキ、ティラミス、タピオカミルクティー、それにナタデココとかマカロン、天然氷のかき氷、生チョコ…甘味がいっぱいで幸せ…。

「ご主人!」
「やっぱり!」
「食べ過ぎ!」
「……」
(食べながら璃奈に注意するメイド達+最適化され、周囲に迷惑かけた分居心地悪そうな札のフェニックス)

今もUDCアースで見る料理とかも多いけど…ブームが終わるとこっち来ちゃうのかな…?
…?なんだろう、このキャラメル…。
『ジンギスカンキャラメル』…?(ぱく)

…ぱたり…

「「「ご主人!?」」」

…まずい…。何、このお菓子…。なんだか変なのもいっぱいあるよ…。
カレーサイダーとか…。
口直し口直し…(普通のスイーツの方に逃げ帰る)



「甘味がいっぱいで幸せ……」
 幽世の異変を無事解決し、祝いの宴に加わった璃奈。甘いものが大好きな彼女の前にずらりと並ぶのは、古今において地球のブームを彩った菓子やスイーツの数々だった。
 地球から流れてきた思い出や追憶で形作られた、白タイヤキ、ティラミス、タピオカミルクティー、それにナタデココにマカロン、天然氷のかき氷、生チョコ――。

「ご主人!」
「やっぱり!」
「食べ過ぎ!」

 お付きのメイドたちに注意されても、山ほどの甘味を出されて「好きなだけ食べてね!」と妖怪たちに言われてしまっては、璃奈はもう止まらない。いつもは無表情な相好を崩してぱくぱくぱくっと、次から次へと個性豊かな甘味を口に運ぶ。
「美味しいよ……」
「「「美味しいけど!」」」
 メイドたちも注意しつつ一緒に食べているあたり、妖怪の甘味職人の腕は確からしい。あるいは、その甘味の中に含まれた追憶がより美味しく感じさせるのかもしれない。
「…………」
 少女たちがスイーツ天国を満喫している一方で、【共に歩む奇跡】により無事に最適化された元・骸魂のフェニックスは、周囲に迷惑をかけたのが後ろめたいのか、居心地悪そうに札に隠れるのだった。

「今もUDCアースで見る料理とかも多いけど……ブームが終わるとこっち来ちゃうのかな……?」
「ここにあるものは"過去の思い出"だからね」
 甘味を楽しみながら璃奈がふと疑問を口にすると、近くにいた妖怪がそれに答える。
 モノとしての実体が現世に残っていても流行が過ぎれば、それは過去となって幽世に流れつく。言うなればこの世界の妖怪はブームという「時間」を食糧にしているのだ。
「ボクたちは美味しいものが食べられるから、これからも人間たちにはいっぱいブームを生み出してほしいな!」
「ん……そうだね……」
 これからも地球ではたくさんのスイーツが紹介され、ブームが巻き起こり、そして過ぎ去っていくだろう。そのたびに幽世は少しずつ賑やかで豊かになっていくのだ。

「……? なんだろう、このキャラメル……」
 しばし夢中で甘いものを食べ漁っていた璃奈は、縦長のパッケージに山盛りの肉が描かれた奇妙なお菓子を見つける。開封して出てきたものは色も形も普通のキャラメルのように見えるが、箱に書かれた商品名は――。
「『ジンギスカンキャラメル』……?」

 ぱく……ぱたり……。

「「「ご主人!?」」」
 一口するなり突然倒れた璃奈を見て、びっくり仰天したのはメイドたち。すわ毒でも盛られたのかと介抱に駆け寄るが、それは別に身体に有害なものではなく――ただ劇的に不味いだけである。
「……まずい……。何、このお菓子……」
 とある北国の名物料理とキャラメルを組み合わせたこの挑戦的菓子は、とにかくその"個性的"な味わいから評判となったものの、結局は人々の口に上ることもなくなった一品である。べつに"美味しい"ことがブームになる必須条件ではないのだ。

「なんだか変なのもいっぱいあるよ……。カレーサイダーとか……」
 よくよく見れば宴会場に並べられた料理の中には、そういったスイーツの枠から逸脱した――口さがなく言えばゲテモノに類する品も多かった。妖怪たちはそれもまた一興と楽しんでいるようだが、別に璃奈にそこまでのチャレンジ精神はない。
「口直し口直し……」
 交わらないキャラメルとジンギスカンの味わいに青ざめたまま、璃奈は色物感ただようエリアから逃げ帰るように、普通のスイーツの方へと戻っていくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
これが過去にUDCアースで流行った料理なのね。やっぱりUDCアースは(生活環境としては)恵まれた世界よね…。
…ちなみに、わたしは元々UDCアース出身じゃないから、そこまで情勢に詳しくないけど、良いのかしら?

雪花と虜にした座敷童の子を可愛がりつつ、主に助け出した竜神の少女や同じ(?)吸血鬼や女性妖怪陣と交流。

そういえば、忘れ去られたモノがこの世界に辿り着くのよね?
それなら、UDCアースで作られてそのまま忘れられたビンテージもののワインとかウイスキーとかないかしら!(少しわくわく)
おつまみもあると嬉しい…あら?アレ何かしら?

(部屋の隅にあるビンテージもののシュールストレミング)

…アレはダメね、絶対



「これが過去にUDCアースで流行った料理なのね」
 宴会の席を彩る料理の数々を、フレミアはほうと興味深そうに眺める。使用される食材も、調理法も、発祥地も異なる料理がひとつの卓の上に並ぶ光景は、それを生み出した地球の豊かさを端的に現すものだった。
「やっぱりUDCアースは恵まれた世界よね……」
 地球には地球の問題があるのは分かっているが、それでも生活環境としての豊かさは屈指だろう。自分の故郷――ダークセイヴァーもいつかはこの水準に至れるのだろうかと、そんなことを頭の片隅で考えつつも、今はこの宴を素直に楽しむことにする。

「……ちなみに、わたしは元々UDCアース出身じゃないから、そこまで情勢に詳しくないけど、良いのかしら?」
「ええ、構いません。あなたの故郷のお話もぜひ聞いてみたいです」
 フレミアの問いに笑顔で応じたたのは、骸魂から解放された竜神の少女。幽世には流れてこない外界の話や、幽世に「雨」を取り戻した英雄であるフレミア自身の体験談を聞かせてもらおうと、周囲には大勢の妖怪が集まってくる。
(悪い気分はしないわね♪)
 右手には眷属の雪花を、左手には別の依頼で虜にした座敷童の少女を侍らせて可愛がりながら、竜神の少女をはじめとした妖怪たち――"妖怪の"吸血鬼や濡れ女などに、自分が見聞きした現在のUDCアースの事物や、依頼での武勇伝などを語ってみせる。
 見目麗しい女性も多い妖怪たちから純粋な好感と称賛と好奇心を向けられて、吸血姫もご満悦である。

「そういえば、忘れ去られたモノがこの世界に辿り着くのよね? それなら、UDCアースで作られてそのまま忘れられたビンテージもののワインとかウイスキーとかないかしら!」
「そういった品なら何本か心当たりが……私が取ってきましょう」
 妖怪たちともすっかり打ち解けたところで、フレミアは少しウキウキした様子で訪ねてみる。それを聞いた竜神少女が持ってきたのは、いかにも年季の入ったラベルのオールド・ビンテージワインだった。
「えっと……マルゴー、1900年と書いてありますね」
「まあ!」
 ワインの産地として名高いマルゴーでも、1900年は歴史的な「当たり年」として語られる。1世紀もの時を経て熟成された"掘り出し物"に、フレミアが快哉を上げたのも無理からぬこと。

「私がお注ぎしますね」
 ワインの扱いに慣れた妖怪吸血鬼が、一流ソムリエばりの作法でワインをグラスに注ぐ。その瞬間、宴会場に咲き誇る芳醇な香りは、まさに最高級のビンテージのもの。
 フレミアがグラスに口をつけると、爽やかで心地のよい味わいがいっぱいに広がる。各世界の宝物や名物を数多く所蔵する彼女の舌を、十分に満足させる逸品だった。

「おつまみもあると嬉しい……あら? アレ何かしら?」
 後味の余韻を楽しみながら、これにあうつまみはないかと辺りを見回すと、部屋の隅に転がる古びた缶詰がフレミアの目に留まる。いったい何十年の時を経たのか、パンパンに膨らんだその缶にはこう書かれている――『シュールストレミング』と。
「……アレはダメね、絶対」
「おつまみ、あったのー」
 ビンテージを通り越して"触れるな危険"と化したソレからすっと目を逸らし、雪花が持ってきてくれたつまみを口に運ぶ。そんな一幕もあったものの、今回のフレミアの幽世滞在はおおむね実りあり、楽しい思い出として心に刻まれたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アイシャ・ラブラドライト
f17484ジノと
口調→前章と同じ

雨がこんなに美しいものだったなんて
大切なものって、当たり前にあると忘れてしまいがちよね

妖怪さんたちが元に戻れてよかった
ここに来るのは初めてだし
普段の暮らしのこととか、お話し聞いてみたいな
お礼に外の世界の今の話
あそこにある、タピオカ
少し前まで流行っていて
人気のお店は暑い日でも行列ができて
何時間も待つお店も…
私にはストローもタピオカも大きくて
食べたことはないですが
そんなに美味しいんでしょうか?

ジノ、何食べたい?
わけっこして色々食べよう
雨も降ってきて涼しいね
これから暑い季節がやってくるけど
また一緒に出掛けたいなぁ
ジノを扇いであげられるように、うちわでも用意しようかな


ジノーヴィー・マルス
アイシャ(f19187)と

何はともあれ雨が戻って良かった良かった。
暑いままじゃいろいろと生きづらいだろうし、そう考えると雨も必要なんだって実感させられるわ。

この世界は初めてだし、いろいろ見てみたい。洋の東西がごった煮してる感じが何かこう、ちょっと好み。
確かに、妖怪さんらは普段何してんだろうな、気になる。前に夜は墓場で文化祭やってるとか聞いたけど…あれ、違う?
しっかし、タピオカとかあったねー。行列作っちゃってまぁ、とか思ったよ。
俺も飲んだ事ねーから分かんねえや。

俺は何食おうかな。何でも良いっちゃ良いんだけど。
せっかくだし、タピオカ何とかと同じ時期の料理探そう。



「雨がこんなに美しいものだったなんて」
 しとしとと雨の降り続く空を見上げながら、アイシャはうっとりと目を細める。心地のよいリズムを奏でる雨音も、しっとりとした空気の匂いも、冷たくとも肌寒いほどではない気温も――普段気に留めなかったもの全てが、日照りの後では尊く感じる。
「大切なものって、当たり前にあると忘れてしまいがちよね」
「だな。何はともあれ雨が戻って良かった良かった」
 風流に心を踊らせる妖精を肩に乗せて、一件落着とジノーヴィーは煙草を燻らせる。
 うだるような暑さからようやく解放されたためか、相変わらず気怠げだが機嫌は良さそうである――最もそれはアイシャにしか分からないような、微細な変化だったが。
「暑いままじゃいろいろと生きづらいだろうし、そう考えると雨も必要なんだって実感させられるわ」
 ふうと吐いた煙は雨粒の中に溶けて消え。振り返ればそこでは妖怪たちが楽しそうに祝賀の宴を開いている――骸魂に憑かれていた者も、もうすっかり元気そうだ。

「この世界は初めてだし、いろいろ見てみたい。洋の東西がごった煮してる感じが何かこう、ちょっと好み」
 妖怪さんたちが元に戻れてよかった、と微笑むアイシャに同意を返しつつ、ジノーヴィーはふたりで宴に加わる。地球から流れ着いた古代〜現代の様々な文明様式を取り込んだ幽世の宴会は、並んだ料理も飾り付けも参加者も、実に国際色豊かだった。
「私もここに来るのは初めてだし、普段の暮らしのこととか、お話し聞いてみたいな」
「確かに、妖怪さんらは普段何してんだろうな、気になる。前に夜は墓場で文化祭やってるとか聞いたけど……あれ、違う?」
「運動会ならやるよ! あとはのんびりお散歩とか!」
 集まってきた住民たちが語るに曰く、人間のように働かずとも「思い出」の糧さえあればそれなりに生きていけることの多い妖怪は、概ね思い思いに気ままな日々を過ごしているらしい。もちろん、中には妖怪相手の商売や仕事をする者もいるようだが。

「でもやっぱり、張り合いがなくってぼうっとしてるヤツも多いかなー……あっちにいるお歯黒べったりとか、驚かせる人間がいなくてつまらないってさ」
 人間に向けられた感情を食糧とする妖怪たちにとって、人間を驚かせたり怖がらせたりすることは大事な"生き甲斐"だったのだろう。それを失った妖怪の中には、幽世の暮らしに不満――とまではいかずとも、退屈を感じている者もいるようだ。
「そうですか……お話しありがとうございます。お礼に、外の世界の今の話を」
「おっ、いいね! 聞かせて聞かせて!」
 だからこそ、アイシャがUDCアースの現在について語りはじめたときの妖怪たちの反応は好意的だった。今は帰ることのできない故郷が今どうなっているのか、気にならない者は少数派のようだ。

「あそこにある、タピオカ。少し前まで流行っていて、人気のお店は暑い日でも行列ができて、何時間も待つお店も……」
「タピオカとかあったねー。行列作っちゃってまぁ、とか思ったよ」
 カップに入ったストローつきのタピオカミルクティーを指差しながら語るアイシャに、相槌をうつジノーヴィー。一時は専門店まで乱立するほどの爆発的な大ブームの光景は、まだ彼女たちの記憶にも新しい。――その波も今は大分引いてしまったが。
「これって人間たちはそんなに好きだったんだねー。なんでだろ?」
「私にはストローもタピオカも大きくて、食べたことはないですが。そんなに美味しいんでしょうか?」
「俺も飲んだ事ねーから分かんねえや」
 流行には疎い妖怪たちに、アイシャに、ジノーヴィー。そろって首をかしげる三者。
 何が理由でブームが起きるかは、それこそブームになるまで――なった後でさえ分からないことも、ままある。面白ければそれでいい、と言うものもいるだろうが。

「ジノ、何食べたい? わけっこして色々食べよう」
「俺は何食おうかな。何でも良いっちゃ良いんだけど」
 お話ばかりなのも何だしねとアイシャが提案すると、ジノーヴィーは並べられた料理を見回して、ちょうど今話題に上ったばかりのタピオカミルクティーを目に留める。
「せっかくだし、タピオカ何とかと同じ時期の料理探そう」
「それだと、最近見覚えあるやつだよね……何かありますか?」
「あるよあるよー!」
 妖怪たちに訪ねてみれば、チーズタッカルビやバスクチーズケーキなど、およそ1~2年前に流行した料理やスイーツが運ばれてくる。フェアリーのアイシャにも食べやすいよう、小分けにされた皿とおもちゃのフォークとナイフもセットだ。

「しっとりとして美味しいね、このケーキ」
「こっちの何とかカルビ? もいけるわ」
 並んだごちそうをふたりで食べ比べしながら、穏やかに楽しそうに宴を過ごすふたり。
 窓の向こうで降り続く雨が、心地よい雨音のBGMと一緒に涼しい空気を運んでくる。
「雨も降ってきて涼しいね。これから暑い季節がやってくるけど、また一緒に出掛けたいなぁ」
「アイシャと一緒ならそれもいいか。なるべく涼しい日がいいけど」
「なら、ジノを扇いであげられるように、うちわでも用意しようかな」
 賑やかな妖怪たちの宴を眺めながら、これからの2人の未来をいっしょに思い描く。
 きっとこの次もまた、今と同じくらい楽しい時間になる。嬉しそうに微笑むアイシャを見て、ジノーヴィーはすこしだけ表情を緩めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シェーラ・ミレディ
少女は助け出せたようだな。大事ないようでなにより。
砂で汚した件を謝罪しないといけないなぁ。何か、手土産も必要だろうか?

食べ物等を見繕って竜神の少女の所へ。
「骸魂を退治するためとはいえ、砂を浴びせてしまって悪かったな。どこか痛む箇所や不調なところはないか?」
などと話しかけよう。 
骸魂に憑依されたものに攻撃しても、ダメージはすべて骸魂が受けると聞いてはいるが。医術の心得は多少あるし、少女の不安を払拭しておくのもアフターケアのうちだろう。

あとは謝罪の品として、少女に似合いそうな小物をUCで作って贈呈しておく。
これからは笑顔でいて欲しいものだ。

何かあったら、また何時でも呼んでくれ。

※アドリブ&絡み歓迎



「少女は助け出せたようだな。大事ないようでなにより」
 元気な笑顔を見せて宴を楽しんでいる竜神の娘の様子を、シェーラはすこし離れたところから見ていた。なぜ離れて――といえば、それは紳士としての律儀さと負い目ゆえに。
(砂で汚した件を謝罪しないといけないなぁ。何か、手土産も必要だろうか?)
 幽世と少女の命を救うためだ、やむを得ないことだったと笑って済まされるかもしれない。しかしプライドの高い彼はその分アフターケアもしっかりしていた。相手が喜びそうな食べ物等を適当に見繕ってから、身だしなみを整えて話しかける。

「骸魂を退治するためとはいえ、砂を浴びせてしまって悪かったな。どこか痛む箇所や不調なところはないか?」
「あなたは、あの時の。ええ、大事ありません。あなた方が助けてくれたお陰です」
 骸魂に飲み込まれていた時のことは朧げに覚えているらしく、シェーラの顔を見た少女は微笑で応じる。砂をかけられたことを恨んでいる様子などは微塵もなく、身体のことについても強がっている節はなさそうだ。

(骸魂に憑依されたものに攻撃しても、ダメージはすべて骸魂が受けると聞いてはいるが)
 それでも万が一、ということはある。医術に多少心得のあるシェーラはいくつかの問診を重ね、心身の疲れを癒やしリラックスさせる手法をいくつか伝授する。
「例えて言うなら君は病み上がりのようなものだ。無理せずゆっくり休むといい」
「ありがとうございます。そのお心遣いに、なにより癒やされる気持ちです」
 優しげな微笑を浮かべる人形の少年に、ほっとした笑みを浮かべて頭を下げる竜神の少女、シェーラの診察には、この少女の不安を払拭するほどの効き目はあったようだ。

「これもアフターケアのうちだろう。後は謝罪の品として、これを」
 シェーラが取り出したのは【戯作再演・命短し恋せよ戦乙女】で製作した女性向けの小物の複製品。美しく精巧に作られた贈呈品に、少女はまあ、と目を丸くして。
「そんな、お礼をすべきなのはこちらの方なのに、こんなに……」
「何度も言ったとおり、謝罪の気持ちだ。君に似合いそうなものを見繕ってみた」
 どうか受け取ってほしい、とシェーラが微笑すると、少女は恥ずかしげに頬を染めながら、小物を手に取り――そのうちの髪飾りをそっと身に着けてみる。

「ど、どうでしょうか。似合いますか?」
「ああ、とても」
 満足そうにシェーラが太鼓判を押すと、竜神の少女ははにかむように笑った。神とは言えど、見た目相応の乙女でもあるのだろう。骸魂に憑かれていた時とは違い、今の彼女は生き生きとした表情を浮かべている。
(これからは笑顔でいて欲しいものだ)
 この幽世の平和が続く限り、彼女もきっと笑っていられるだろう。少年は心地のよい達成感を味わいながら、自分の務めは果たしたとして、この場を去ることにする。

「何かあったら、また何時でも呼んでくれ」
「はい。此の度は、本当にお世話になりました!」
 大きく手を振る少女に見送られて、カクリヨファンタズムを後にするシェーラ。
 そのとき、ずっと降り続いていた雨が止み、雲の切れ間から太陽と虹が現れる。
 ――澄んだ空にかかる七色の輝きは、世界が猟兵たちを祝福するかのようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月09日


挿絵イラスト