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カクリヨレクイエム

#カクリヨファンタズム #鎮魂の儀

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#カクリヨファンタズム
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#鎮魂の儀


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●死と忘却のはざまに
 幽世(カクリヨ)。それは地球と骸の海の境にあって、UDCアースから失われた過去の遺物が流れ着く世界である。
 カクリヨファンタズムの住人は、二十一世紀では忘れられた人外のもの達――妖怪と呼ばれる存在だ。人類が文明を発達させるにつれて居場所をなくした彼らは、地球に隣接する幽世へと移り住んだ。
 しかし、全ての妖怪が幽世に辿り着けるわけではない。世界を渡る旅路の最中に命を落とす妖怪もいる。そういった「どこにも行けなかった」妖怪の成れの果てこそが骸魂(むくろだま)――カクリヨファンタズムの住人をオブリビオンへと化さしめる災厄である。

●いつか花になれたら
「けれど、妖怪の方たち全てが骸魂を恐れているかというと、そうではありません。カクリヨファンタズムに辿り着けず亡くなってしまった同朋を悼む気持ちが強い方々もいらっしゃいますの」
 そう言って、ミレイユ・ダーエ(永遠の森の歌乙女・f01590)は肩越しに振り返った。グリモアベースの壁に映し出されたカクリヨファンタズムの景色は、地球という世界を知らない者にもなぜか懐かしい想いを抱かせる風情を湛えている。
「そういうわけで、この世界では死んで骸魂になってしまった妖怪たちの魂を鎮める儀式が行われることがありますの。儀式が無事に終われば、骸魂は浄化され植物たちの糧となって世界に還るのだそうですが……」
 ミレイユはその鎮魂の儀が失敗することを予知したという。儀式の主祭司たる竜神が強大な骸魂に飲みこまれてしまい、オブリビオンになってしまったのだ。
 このままでは、鎮魂の儀に参列しようとしていた妖怪達が残らず犠牲になってしまう。そうして数を増やしたオブリビオンはさらなる餌食を求めて広がり、いずれは世界そのものを破壊する。
「前置きが長くなってしまいましたが、そういうことですの。皆さんは急ぎカクリヨファンタズムに向かっていただき、オブリビオンを倒して主祭司の方を救出してくださいまし」

●わざわいの森
 鎮魂の儀が行われるはずだった幽世の森は、暴走する骸魂が植物に憑依し生まれたオブリビオンの群れに占領されてしまっている。
 五色のたてがみと角を持ち、鱗に覆われた獣――麒麟。かつての伝承では瑞獣と呼ばれたそれは、オブリビオンと化して災いをもたらす存在へと変貌していた。
「麒麟は反撃能力に長けたオブリビオンですの。無闇に攻撃するだけではいけません。相手の反撃にどう対処するか作戦を立てなければならないでしょう」
 そうミレイユは忠告する。特に、コピーされる可能性があるユーベルコードを使う際には一層の注意が必要だ。生半可な防御策や回避方法ではどうにもならないかもしれない。
「この麒麟たちに限った話ではないのですが、カクリヨファンタズムのオブリビオンの本質は寄る辺のない魂ですの。新しい住みかを探す途中、志半ばで死んでしまった彼らの慰めになるような行動や言葉があれば、凶暴性を抑えられるかもしれませんの」
 どういったものが有効かはわからないが、場合によっては単純に攻撃するよりも説得に注力したほうがよい結果になることもあるだろう。
「カクリヨファンタズムでの戦いはまだ始まったばかりですの。考えついたことはなんでも試してみるのが今後のためになるかもしれませんわね」
 微笑んで、ミレイユはグリモアを乗せた手を猟兵達に向かって差し伸べた。
「それでは、準備ができた方からお送りいたしますの。皆さんの旅路に、朝露と追い風の祝福がありますように」


中村一梟
 猟兵の皆様ごきげんよう、中村一梟でございます。
 今回は新世界カクリヨファンタズムよりシナリオをお届けいたします。

●ギミック
 第1章と第3章が戦闘系フラグメントとなります。これらの章では、プレイングに「骸魂(死んだ妖怪の魂)を慰めるような言動」の記載があるとボーナスとなります。

●第2章
「冒険」フラグメントのシーンです。この章では行く手を阻む「幸せな幻覚」を打破する必要があります。
 幻覚を破る方法はPOW、SPD、WIZのいずれかをご指定いただくだけで十分なので、プレイングにはそれぞれが思い描く「幸せ」の内容を思う存分詳細に書いてください。

 それでは、今回も皆様と良い物語を作れることを楽しみにしております。
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第1章 集団戦 『麒麟』

POW   :    カラミティリベンジ
全身を【災厄のオーラ】で覆い、共に戦う仲間全員が敵から受けた【攻撃】の合計に比例し、自身の攻撃回数を増加する。
SPD   :    因果麒麟光
【身体を包むオーラ】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、身体を包むオーラから何度でも発動できる。
WIZ   :    キリンサンダー
【角を天にかざして招来した落雷】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を災いの雷で包み】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

神賛・ヴァキア
馬にドラゴンの頭をつけた様な奴だ、走る事は好きかもしれない。
競走すれば少しは慰みになるかも知れない。

馬マロンウイナーに騎乗して行動、身振りと言葉でレースを誘ってみよう
お前達走るのは好きか?
勝負してみないか?

勝負に応じずただ襲ってくる様なら、騎乗したまま戦闘に入る
追い抜く「差し」ではなく、武器の「刺し」をくれてやろう。
残念だ、馬を連想する見た目だけに、殺処分は気分の良い物じゃないな
能力のコピーに対しては、此方は騎乗能力の向上に過ぎない、自身が走るものに意味はないだろう



 幽世の森に、麒麟達のいななきがこだまする。
 愛馬マロンウィナーに跨がった神賛・ヴァキア(鞍上大暴走・f27071)は、身振り手振りで禍獣と意思疎通を図る。
(お前達走るのは好きか? 勝負してみないか?)
 無心に体を動かせばその荒ぶる魂も少しは癒されるかもしれない、と考えての行動であったが、返ってくるのは威嚇の眼光と拒絶の唸りのみ。
「全力で追ってやるから行くぞ!」
 突進を躱し、素早く切り返す。木々が生い茂り、そこかしこに根が突き出た競走馬が走るには適さない悪路ではあったが、ヴァキアは超人的な技術を発揮し手綱を捌き、青鹿毛の愛馬を疾駆させる。
 再び、麒麟が高くいなないた。伝承においては一日千里を駆けるとされる駿足で向かってくる。マロンウィナーに鞭を入れ加速させて、ヴァキアは武器を抜いた。
(残念だ、馬を連想する見た目だけに、殺処分は気分の良い物じゃないな)
 駿馬と麒麟がすれ違う。がっ、と鈍い音がして、折れた角が宙を舞った。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴェル・ラルフ
忘れられた、神獣
キミも、誰かへの祈りを捧げるはずだったのかな
それとも──キミ自身が?

初手は投擲用のナイフで2回攻撃
簡単に弾かれそうだけれど、その隙に接近
【残紅】でカウンター
なぎ払って一撃食らわせたら直ぐに後方へ跳んで退避

武器を交えれば解る
キミはこんなにも強く美しく、そして気高い
なのにどうして骸魂に囚われてしまったの?
…人々が、キミを忘れてしまったから?

ならば、少しでもこの気高いキミの心が救われるように
心からの尊敬と、祈りを
キミのような美しい生き物を忘れない
きっとずっと、覚えておくよ

その思いを込めるように【日輪葬送】
さようなら、今はただ
操られて最期を迎えることのないように

★アドリブ歓迎



 ニ本の刃が飛ぶ。煩わしげに頭を振って、オブリビオンはヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)が投げた短剣を叩き落とした。
 その時にはもう、ヴェルは麒麟へと肉薄していた。紅色の棍が横薙ぎの疾風となって走り、禍獣の体を覆っていた鱗が数片弾け飛ぶ。
「キミはこんなにも強く美しく、そして気高い。なのにどうして骸魂に囚われてしまったの?」
 蹄で地を掻く麒麟に向けて、ヴェルは問いを投げる。返ってくるのは低い唸り。だが、その声色の底には澱のように悲しみと絶望がたゆたっていた。
「……人々が、キミを忘れてしまったから?」
 仁徳ではなく、己が利だけを追求するようになった人の世に、もはや瑞獣の居場所はない。本来の役割を失い、彼らは荒ぶる獣と化すしかなかったのだろうか。
「キミのような美しい生き物を忘れない。きっとずっと、覚えておくよ」
 告げて、ヴェルはその身に漆黒の炎をまとった。麒麟がいななく。それは、心無き災禍へと成り果ててしまった自らを討つよう懇願する、悲痛な声のように聞こえた。
 だから。
「赫う鮮緑、貫け肉叢」
 ヴェルは『日輪葬送』の緑の光を放った。麒麟の体を包むオーラが光芒を受け、撃ち返す。
 輝く嵐が辺りを緑色に染め上げる。壮絶な応酬の中、ついに一条の光線が麒麟の額を撃ち抜いた。
「キミも、誰かへの祈りを捧げるはずだったのかな。それとも──キミ自身が?」
 忘れられた神獣は膝を折って、静かに瞼を閉じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アハト・アリスズナンバー
神獣麒麟。そのすさまじい力と神聖さ。
誰かに祈られることもなく、魂の拠り所がないというのなら……私は提供しましょう。
もし私が勝ったなら、新しい貴方の肉体を作りましょう。我が槍に憑くか、私があなたの器になりましょう。どうか力を貸して下さい。
これで負けてしまうようならば、神獣たる貴方にはふさわしくない器だったという事。全力で行きます。

アリスランスで避けられるのを前提に突撃しつつ、躱されるのならそのまま本命のソーシャルレーザーを発射。
カウンターが来そうならば、ユーベルコード起動。
如何に神獣麒麟とて、伝えられてきたデータがあるならば、避け方は導き出せるのです。
さあ、勝負です。

★アドリブ歓迎


ハルピュイア・フォスター(サポート)
絶望を与えるのがわたしの仕事…。
無表情で口調は事実を淡々と告げます

【暗殺】が得意
また【迷彩】【目立たない】【闇に紛れる】【地形の利用】など使用して隠密にまた撹乱しながらサポート行動

Lost memory…ユーベルコードの弱点を指摘し封じ込む

回避は【残像】で、怪我は厭わず積極的に行動

武器;首にマフラーの様に巻いてある武器『零刀(未完)』は基本は両手ナイフだが鞭や大鎌など状況に合わせて形を変貌させ使用

他猟兵に迷惑をかける行為はしないが、デザートは別問題…奪います

後はおまかせでよろしくおねがいします



 骸魂が集う森の中、疾走する麒麟の前にアハト・アリスズナンバー(アリスズナンバー8号・f28285)は立ち塞がった。
(神獣麒麟。そのすさまじい力と神聖さ。
誰かに祈られることもなく、魂の拠り所がないというのなら……)
 槍を握る手に力をこめる。白銀の穂先が狙いを定め、静止。
「私は提供しましょう。もし私が勝ったなら、新しい貴方の肉体を作りましょう。我が槍に憑くか、私があなたの器になりましょう。どうか力を貸して下さい」
 アリスランスと同じ色の瞳を麒麟は見つめ返す。炎の如きたてがみを震わせ、鹿がそうするように頭を下げ角の先端を向ける。
 攻撃体勢を取ったまま、アハトと麒麟はしばし睨み合った。
「これで負けてしまうようならば、神獣たる貴方にはふさわしくない器だったという事。全力で行きます」
 先手を取ったのは、アハト。地を蹴り、まっすぐに槍を突き出す。麒麟の角がその突撃を受ける。四足の蹄が土を抉り踏み締めるや、弾き飛ばされたランスが宙を舞った。
 首を大きく振り上げた姿勢で、麒麟の角が紫電を帯びる。武器を奪われたアハトだが、その場から動かず時が来るのを待つ。
(さあ、勝負です)
 雷の鉄槌が振り下ろされようとした瞬間、風が吹いた。
「絶望を与えるのがわたしの仕事……あなたの夢をいただきます」
 生い茂った枝葉の陰に潜んでいたハルピュイア・フォスター(天獄の凶鳥・f01741)が音もなく舞い降り、両手の短剣を踊らせた。
 悲鳴のようないななきを上げて麒麟がたたらを踏む。苦し紛れに雷撃が放たれるが、着弾地点にもうアハトの姿はない。
「これで、詰みだよ」
 ハルピュイアの斬撃に反撃しながらも、麒麟はじわじわと後退していく。気づけば、眼前に荷電粒子砲を構えたアハトがいた。
「裁判の時間です」
 予想通りのタイミング、計算通りの位置取りから放たれた光の槍が麒麟を刺し貫き、死してなお寄る辺のない骸魂をかりそめの形から解放した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

雫石・凛香(サポート)
○アドリブ・MSさんの解釈による下記に沿わない動きも歓迎

オブリビオンへの恐怖で眠れなくなった姉のため戦う妹キャラ
性格はクール枠。冷静に物事を見て、必要そうな行動をとれます
敵への態度は苛烈。相手にどんな事情があろうと容赦はなし

魔剣【鞘】という凛香の意思に従い姿を変える剣を持っており、形状変化による攻め手の多さとスピードと手数で勝負するタイプ。逆に相手の攻撃を剣で受けるような行為は(子供なので)パワー不足、ほぼできないです

UCは基本的に妖剣解放のみ
高い機動力で相手をかく乱し、衝撃波でまとめて敵を薙いでいくのが主な動き方

動きを封じることで先の展開が有利になれば剣戟結界も使用


春霞・遙(サポート)
UDC組織に所属して、UDC関連の一般病院に勤務している小児科医です。
行動の基本方針は困っている人が居るなら助けたい、人に害をなす存在があるなら退けたい。
戦う力はあまりないですけど、自分が傷を負うとしてもみなさんのお手伝いができれば嬉しいです。

基本的に補助に徹します。
「医術」「援護射撃」「情報収集」から、【仕掛け折り紙】【葬送花】での目くらましや演出、【生まれながらの光】【悪霊祓いのまじない】で照明や目印を付けるなども行えるかと思います。
攻撃は拳銃による射撃か杖術が基本で、その他はUCを使用します。
【悔恨の射手】【未来へ捧ぐ無償の愛】は基本的に使用しません。

シリアス以外ならいたずら好きの面も。


天宮院・雪斗(サポート)
『なせば大抵なんとかなる』
 妖狐の陰陽師×ビーストマスター、7歳の男です。
 普段の口調は「子供(ぼく、相手の名前+ちゃん、だね、だよ、だよね、なのかな? )」、怒った時は「子供(ぼく、呼び捨て、だね、だよ、だよね、なのかな? )」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
  甘えん坊で、頭撫でられるの好き、お姉ちゃんたちに甘えるのも好き。あとはおまかせ(アドリブ・行動OK)です。よろしくおねがいします!



 オブリビオンとの戦いを続ける猟兵達は、ついに森の一角に麒麟達を追い詰めた。生き残った十頭ほどの麒麟が角を掲げ、蹄で地を叩いて威嚇してくる。
「おんきりきりばさらうんばった」
 天宮院・雪斗(妖狐の陰陽師・f00482)が召喚した二匹の妖狐が迫った。麒麟の角が輝くや、災いの雷が落ちてくる。天狐が神通力を発揮。不可視の力に弾き返された落雷が着弾し、背の高い木が真っ二つに折れた。
 倒れかかる幹を蹴って、雫石・凛香(鞘の少女・f02364)が跳躍。空中で抜き放たれた魔剣がぎらりと光る。
「お前はもう、この檻から出られない!」
 斬撃が放たれた。上から下、かと思えば左から右。変幻自在の刃が縦横に駆け抜け、殺意の檻となって麒麟達の駿足を殺す。魔剣は主の意を受けて変形、巨竜の尾の如き長大な鞭となって麒麟の群れを横に薙ぐ。
 オブリビオンがまとうオーラが、凛香の振るう魔剣の形を写し取って反撃してくる。刃が打ち合う音が重なり『剣戟結界』に綻びが生まれた瞬間、再び麒麟の角が輝き雷が放たれた。
「命を持たない紙の鳥、散らず褪せない紙の花、くるりくるり、舞い踊れ」
 しかし、その落雷が猟兵達を傷つけることはない。春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)がユーベルコードで操る折り紙が盾となったのだ。
 不思議な力で強化された紙は強固な守りを見せ、雷撃を通さない。幾重にも重なった紙の盾の表面で弾ける紫電を、雪斗の指示を受けた九尾狐が妖力でもって押し返す。
 雷霆は麒麟達にとっての災厄となった。直撃を受けた何頭かが断末魔を上げて倒れる。稲妻から逃れようとすれば、先回りした凛香の刃がそれを阻む。
 次々と倒れていく麒麟から骸魂が分離し、光の粒となって散った。おそらくあるべき場所――骸の海に還るのだろう。そして原動力を失った肉体は霞となって消えていく。
 居場所を失い、死に切れず彷徨って、果てにはオブリビオンとなって荒れ暴れるしかなかったかつての妖怪達に何らの罪があるわけではない。しかし、彼らにどんな事情があろうと凛香の剣は鈍らない。
 きん、と小さく鍔を鳴らし、凛香は剣を鞘に収めた。腰を落とし、居合い抜きの構え。赤色の瞳が最後の一頭となった麒麟を見据える。
「お前達がいると、姉さんが眠れない。――だから、消えて」
 刃が空を斬る音。そして、再び鍔鳴り。最後の麒麟が倒れて消えて、森の中に静寂が戻る。
「二人とも、よくがんばったね」
 あまり出番のなかった拳銃をホルスターに収め、遙は柔らかく微笑んで雪斗の頭を撫でる。白い耳と尻尾がくすぐったそうに動いた。
 麒麟の群れがいなくなった幽世の森は沈黙を保っている。もう一体、この事件の中核たるオブリビオンが残っているはずだが、近辺にその気配は感じられない。
 どうやら、この森を探索しオブリビオンを探し出すしかなさそうだ。猟兵達は一息つく暇もなく、不気味なほど静まり返った森の中へと足を踏み入れていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『やさしくてひどいゆめ』

POW   :    自分で自分をぶん殴り、正気に戻る

SPD   :    状況のありえなさを見破り、幻覚を打ち破る

WIZ   :    自身の望みと向き合い、受け入れた上で幻覚と決別する

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●「幸福」という名の罠
 それは誰もが望むもの。得られないことに涙し、手が届いた瞬間に笑い、側にあると気づいた時に感謝するもの。
 その姿は人それぞれ。人や、物や、もしかすると形のない概念かもしれない。
 かつてあって今はないかもしれないし、いつか手に入れたいものであるかも、あるいは、今あなたの傍らにあるものかもしれない。
 あなたが望む形が何であっても、それは今目の前にある。優しく、甘く、鮮やかに心を包み、満たしてくれる。
 さあ、あなたの幸せを、教えて?
春霞・遙
もしあの時UDC怪物に遭遇しなければ。あの時、誰かに助けられなければ。私自身の【心をも喰らう触手の群れ】を身に宿すこともなく、オブリビオンとの戦いで傷つくこともなく、多少のUDC事件から身を守れる程度の普通の人として生きてこられたかもしれない

はて、それは果たして幸せなんでしょうか。過去を捨て続けることで進む世界の構造も知らず、他の世界の存在も知らず、傷つき続けている人たちに手を差し伸べることもできず、共に戦う友人と出会うこともなかった。
もしも、なんて今の私には必要ないでしょう。目の前で苦しむ人に気づいてしまった以上、手を差し伸べるだけです
迷いなんて既に喰われてしまったから、この幻想は無意味です



 ■■■■が■■■る■■■■。

 春霞・遙は医者である。仕事は毎日忙しく、身を裂かれるような悲しみに出会うこともないではないが、無事に快復し退院していく子供の笑顔と、両親から贈られる無尽の感謝を思えばなんということはない。
 遙は充実していた。

 ■■■■が■■■る音がする。

 ある日、勤務を終えて帰宅すると一通の葉書がポストに入っていた。差出人は大学時代の友人の名前。裏返すと「子供が生まれました」と喜色の滲んだ文字が大きく書かれていた。添えられた写真には赤子を抱く妻と、それを見守る手をつないだ夫と息子の姿。皆が笑顔だった。

 ■■■■が食われる音がする。

 ベッドに身を投げ出し、遙は考える。喜びに溢れる友人達の肖像と、自分の生活を比べてみる。
 医者として傷や病に苦しむ子供達を治療し、時にはUDC事件に医学者として関わることもある。そんな日々が嫌いではないし、やり甲斐を感じてもいる。
 けれど、それだけが幸せだと決めつけなくともよいはずだ。例えば彼らのように、愛する者と一つ屋根の下で家庭を営む、そういう暮らしも悪くはない。
 そんなことを考えながら、遙は眠りに落ちた。

 幸福な■が食われる音がする。

 はて、それは果たして幸せなんでしょうか。
 オブリビオンとの戦いで傷つくこともなく、多少のUDC事件から身を守れる程度の普通の人として生きる春霞・遙は微睡の中で思う。
 過去を捨て続けることで進む世界の構造も知らず、他の世界の存在も知らず、傷つき続けている人たちに手を差し伸べることもできず、共に戦う友人と出会うこともない人生。それを生きているのは、本当に「春霞・遙」と呼べるのだろうか。
 いいえ。もしも、なんて今の私には必要ないでしょう。
 手を差し伸べると決めたのだ。医者としての自分を超えて、もっと多くの、もっと苦しんでいる人々に向けて。猟兵として。
「迷いなんて既に喰われてしまったから、この幻想は無意味です」
 目覚める寸前、自分の唇がそう呟くのを遙は聞いた。

 幸福な夢が食われる音は、もう聞こえなくなっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アハト・アリスズナンバー
……あれ。確か麒麟を倒して元凶を見つけるために、森に入ったはずですが。此処はカクリヨファンタズムにある私の部屋ではありませんか。酒に酔って夢でも見てましたかね。

手元には酒と御猪口。窓に映るは幽世の桜と、輝く月。
良い物ですね。日常とは。
猟兵となってかつてとは違う平和な日常。散り行く桜にまんまると輝く月を肴に、幽世の日本酒を頂く。幸せなものです。
さて次は何を頂きましょうか。いつものにごり酒?それともワインでも楽しむ?

……うん。つかの間の幸せでしたよ。ここで頬を叩いて正気に戻ります。
いい罠を用意してくれた事は感謝しますが、此処までです。続きは帰ってからするとしましょう。幽世の為にもね。



 煌々と月が輝き、満開の桜がはらはらと薄紅色の雨を降らせる静かな夜。
 アハト・アリスズナンバーは一人、猪口を傾けていた。
 オブリビオンを追って幽世の森を歩いていたような気もしたが、どうやら酒精が見せた一時の幻であったようだ。
 世は並べて事も無し。未来を壊す忘却の骸などというものも、きっと誰かの空想の産物でしかないのだろう。
 だってほら、世界はこんなにも穏やかで、何者に脅かされることもなく未来へ向かっている。
 窓に移る真円の月と、雪のように振り注ぐ桜の花びらと、時折吹き抜ける夜風が奏でる歌と。
 もう数時間もすれば、月は沈み、夜は朝になるだろう。紫と橙と青が入り混じる曙の空は、この夜空と同じくらいに美しいに違いない。
 さて次は何を頂きましょうか。いつものにごり酒? それともワインでも楽しむ?
 美味い酒と美しい景色。それさえあれば、きっと人生は幸福だ。
「……うん。つかの間の幸せでしたよ」
 アハトは自らの頬を張った。
「いい罠を用意してくれた事は感謝しますが、此処までです」
 すると、途端に手にした酒器は霞と消え。夜風が奏でるのは優しげな小夜曲ではなく悲鳴じみた騒音。満開の桜だった木々は白骨のような枯枝を奮わせ、満月は澱んだ赤色の不気味な瞳の如く。
 良き日常の皮を被っていた罠が真実の姿を晒す。その光景を振り返ることもなく、アハトは歩き出した。
「続きは帰ってからするとしましょう。幽世の為にもね」

大成功 🔵​🔵​🔵​

北条・優希斗
【SPD】
【幻覚の内容】
時折夢の向こうに見える、自分の力では救えなかった『者達』を救い、生き残らせることが出来たと言う夢
その人達と自分にどんな因果関係があったのかはよく分からない
けれども嘗てその人達が、『俺』にとって大切な人達だったのは、何となく分かる

【対策】
幻覚の中に出てくる人達を横切り前進
そうして時を消費し前に向かう
人の心の瑕疵はそうして時を消費すれば何時か癒されるものだ
「だから俺はこの有り得ない未来を否定する」
『俺』はきっとそれを引き摺り続けていた
その瑕疵が消えることはないだろうし、これからも時折自らを苛むだろうけれど
「それが俺と、俺の罪ならば…俺は、其れを背負って前に進むと決めたから」



 護り切った――今度こそ成し遂げたという実感と共に、北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)はゆっくりと膝を着いた。
 戦いの疲労が一挙にのしかかってくる。その重みに倒れてしまわないよう身体を支える優希斗の背に、万雷の歓呼が降り注いだ。
 ああ、自分の旅はこのためにあったのだ。全身を包む感謝の声に答えようと、彼は顔を上げる。
 その手で護った人々の姿はひどくおぼろげで、顔どころか男女の別すら判然としない。視界がひどく滲んでいる。疲労感か、それとも別の原因か。
 瞼が重くなってきた。頭がぐらぐらと揺れる。膝を着いていなければ、倒れて危ういことになっていたかもしれない。
 もしかすると、ここが俺の旅路の果てなのかもしれない。だが、それでもいい。大切な人達を護り、生き残らせることができた。その結果だけで十分だ。

 本当に?

 いいや、違う。

 北条・優希斗は目を開けた。喜びの声はもう聞こえない。姿の定まらない人々は沈黙して、そこに佇んでいる。
 いつか、どこかで確かに「大切だ」と感じていた人々の姿。彼らと自分の間にどんな縁があったのか、それさえも不確かなまま、優希斗は立ち上がった。
 鈍い痛みが全身を包む。うっかり瘡蓋を剥がしてしまった時のような、雨の日に古傷が疼くような、ずきずきと、しかし耐えられないほどではない強さで。
「それが俺と、俺の罪ならば……俺は、其れを背負って前に進むと決めたから」
 拳を握り、決然と前だけを見据えて、優希斗は足を進める。かつて確かに触れ合ったはずの人達の前を横切って。
「だから俺はこの有り得ない未来を否定する」
 彼の歩みにと共に、時は進み出す。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴェル・ラルフ
あの懐かしい場所にいる
日の射さぬ世界の貴重な夕暮れ
海のような金色の薄
その真ん中に佇む貴女はそう、いつもそんな笑顔だった
銀薄の髪と薄紅色の瞳
優しく迎え入れてくれる腕
僕の名を呼ぶその声も
──ただいま、

ああなんて
ひどく優しい夢だろう

いやこれは過去のこと
過ぎ去った日々はただあまくて痺れるような気持ちになるだけ

もう、僕は
貴女のいる過去に戻ることではなく
友といる未来を願い始めているのだから

貴女の温もりは覚えておくから
だからどうか
ただ安らかに
そしていつか
この懐かしい地へ帰ることができたら
貴女の元へ、必ず花を届けよう


★アドリブ歓迎



 金色にさざめく海が、目の前に広がっている。
 夕刻。昼と夜の狭間。懐かしい景色と匂い、そして、名前を呼ぶ声。
 銀の髪を微風に揺らし、薄紅の瞳を細めながら、彼女はこちらに向けて手を伸ばす。

 覚えている。貴女の腕の柔らかさを。
 覚えている。貴女の声の優しさを。
 覚えている。貴女の笑顔の輝きを。
 ああ、なんて……。

「ただいま」と言いかけて、ヴェルはは口を閉ざす。これはひどく優しい夢。これは過去のこと。もう戻らない、失われた温もりのかけら。
 過ぎ去った日々を夢見る自分と、胸の中のあまくて痺れるような気持ちだけは現実。

「貴女の温もりは覚えておくから。だからどうか、ただ安らかに。そしていつか、この懐かしい地へ帰ることができたら――」
 ヴェルは彼女に背を向けた。金色の過去から振り返った先には、夜色の現在が広がっている。
「貴女の元へ、必ず花を届けよう」
 ヴェルは歩き出した。望むものは彼女の元にはない。掴み取りたい未来は夜を超えた先に――友のいる場所にある。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『フェニックスドラゴン』

POW   :    不死鳥再臨
自身が戦闘で瀕死になると【羽が燃え上がり、炎の中から無傷の自分】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    フェニックス・レイ
レベル分の1秒で【灼熱の光線】を発射できる。
WIZ   :    不死鳥の尾
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【炎の羽】で包囲攻撃する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●不死鳥はなぜ死んだ
 どうして。
 どうしてあなた達は、幸せを望まないの?
 傷は塞ぐもの。痛みは嫌なもの。死は忌まわしきもの。
 あたしは、死を厭う人々の心が生み出した翼。最も旧き幻想のひとつ。
 不死鳥。それがあたしの名前。
 人々は死を望まない。生き残り、生き延び、命をつなぐことが人の何よりの望み。
 死すらも死する生こそ、最大の幸福。
 だというのに、なぜ。
 どうしてあなた達は、死という結末を迎えざるをえない生を謳歌しようとするの?
 どうして、永遠の命を望まなくなってしまったの?
アハト・アリスズナンバー
POWの判定 アドリブ歓迎
永遠の生など、歪んだ人のエゴが生み出した産物だからですよ不死鳥。
死は受け入れねばなりません。それを今の人々は知っています。

相手の炎の羽や熱線を打たれる前に、【属性攻撃】で変更した氷結弾を【誘導弾】で【制圧射撃】して凍らせましょう。
相手の隙を見て【グラップル】弾を射出。そのまま引っ張り相手の【体勢を崩す】事を狙います。
崩れたなら【ランスチャージ】で羽を狙って突撃。そしてUCを起動をして再臨する前に羽を壊してやりましょう。
相手の攻撃は最大限に【逃げ足】を駆使して避けまわります。


春霞・遙
確かに傷も痛みも病も恐ろしく、死は何にもまして受け入れがたいものです。そして私たちの世界では避けられぬ定めに抗おうと神と科学にすがりつつ、非日常という箱の中に閉じ込めて蓋をして目を背けています。
でも、死なぬ世界で生誕の喜びはいかほどなものでしょうね。不死鳥は死を繰り返す定めを超えて炎の中から再誕する姿こそ力強いと思います。

遠距離では「援護射撃」等を主に、近距離では杖を振るって戦います。攻撃は可能な限り回避し、避けきれないものは木の杖で逸らす。できるだけ距離をとりますね。
瀕死に追い込めたのなら攻撃を当ててからこの戦闘内での再使用を対価に【退魔呪言突き】を使用し、再臨を打ち消します。



 幽世の森にかすかな声がこだまする。
 どうして、と問いかけるその声は、鎮魂の儀式を司る竜神の口を借りて、骸魂となった不死鳥が発するものだった。
「永遠の生など、歪んだ人のエゴが生み出した産物だからですよ不死鳥。死は受け入れねばなりません。それを今の人々は知っています」
 アハトは告げる。死とは理解不能な終焉ではなく、脳や心臓といった種々の臓器が機能を停止した結果もたらされるものに過ぎないのだと。
「確かに傷も痛みも病も恐ろしく、死は何にもまして受け入れがたいものです。そして私たちの世界では避けられぬ定めに抗おうと神と科学にすがりつつ、非日常という箱の中に閉じ込めて蓋をして目を背けています」
 遙は語る。そういう意味では、不死鳥が存在していた時代と現代に確たる違いはないのだと。死という現象を説明する語彙が変化しただけなのだ。
「でも、死なぬ世界で生誕の喜びはいかほどなものでしょうね。不死鳥は死を繰り返す定めを超えて炎の中から再誕する姿こそ力強いと思います」
 少女の姿をした妖怪がまとう炎がゆらめいた。彼女――竜神の身体と不死鳥の骸魂が乖離しかかっている。
「……たすけ――げて」
 少女の口が動く。それは不死鳥の言葉ではない。骸魂が離れかけたことでほんの少しだけ自由を取り戻した竜神の言葉だ。
 アハトと遙は顔を見合わせ、頷いた。骸魂が分離しかかっている今が、絶好の機会。
 二人は同時に銃を構え、引き金を引いた。氷の属性を与えられたレーザーと拳銃弾が飛ぶ。少女の背にある炎の翼が翻り、盾となってそれらを防いだ。
 遙は射撃を続行。安定性を重視した膝立ちの体勢で、続け様にトリガーを引く。炎の翼がことごとくそれを弾くが、それでいい。
 槍を構えたアハトが突進。駆け抜ける途上でビームグラップル弾を発射、フェニックスドラゴンに引き寄せられる勢いも乗せて穂先を突き立てる。
 アリスランスが炎の翼を貫いた。羽のような火の粉が散る。だが、折れた片翼は瞬時に再燃。その炎の中からもう一羽の不死鳥が飛び立とうとする。
「長き刹那の無力を糧に。生者を屍に、祝福を呪いに、強者は地に臥せよ」
 アハトの突撃に乗じて肉薄していた遙が『退魔呪言突き』を放つ。生まれようとする不死鳥のエネルギーが反転。死への志向となって炸裂し、分身の発生を阻止する。
「……けてあげて」
 そんな二人に向けて、少女の唇が小さくそう囁いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

火土金水・明
「今回の事件を終わらせる為に、私はあなたと戦いましょう。」「もちろん、取り込まれた方は助け出します。」「限りある命だからこそ、生きている価値があるのですよ。」
【WIZ】で攻撃です。
攻撃は、【先制攻撃】で【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【銀色の嵐】で、『フェニックスドラゴン』を【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【見切り】【残像】【オーラ防御】【火炎耐性】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでも骸魂にダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。



 不死鳥。その名が示す通り、竜神に取り憑いた骸魂の炎は痛打を受けてもなお燃え上がり、少女を捕らえて離さない。
「今回の事件を終わらせる為に、私はあなたと戦いましょう」
 そう宣言する火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)が掲げた杖の先で、七色の魔力が渦を巻く。
 魔術構築式に導かれた魔力は凝縮し、しろがねの剣の形を取った。ずらりと並ぶ、その数八百余。
「全ての骸魂に、ダメージを……」
 結びの言霊と共に剣が飛翔。幾何学模様を描きつつ、フェニックスドラゴンに殺到。
「たすけて――げて」
 悲痛な声に逆らって、ばさり、と炎の翼が羽ばたいた。千を超える炎の羽が飛び、明の放った剣の群れを迎撃、逆包囲しようとする。
「もちろん、取り込まれた方は助け出します」
 無数の火炎に囲まれつつも、明は逃げようとはしなかった。再び杖を掲げれば、その先端には先と同じ魔術の光。
「限りある命だからこそ、生きている価値があるのですよ」
 二度目の『銀色の嵐』が発動。これで魔法剣と羽の数は互角。
「――駄目……っ!」
 剣と炎がぶつかり合う嵐の中で、少女の声が響いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

北条・優希斗
…死を厭う人々の心が生み出した翼、か
確かにアンタは俺達の願いと望みによって生み出されたのかも知れない
もしかしたら俺も心の何処かで不老不死でありたいと望んでいるのかも、とも
死を厭うのは生命としては当然の事だから
でも、それが何時か訪れることを知っているから、見えるものもある
そう考える人も沢山いる
だから俺は貴女を肯定し、貴女を滅ぼす
それが俺達なりの『贖罪』だ
UCで刀剣類を持つ亡者達による全方位からの範囲攻撃をフェイントに見切り+ダッシュ+残像+カウンターで炎の羽を切り払って懐に潜り
二回攻撃+串刺し+薙ぎ払い+傷口を抉るで彼女を斬り裂く
生き残った亡者達がいれば、彼等と共に全方位からの攻撃で畳みかけるよ



(……死を厭う人々の心が生み出した翼、か)
 優希斗の構える刀の切っ先が揺れる。不死鳥が生まれたのは、確かに誰かの願いと望みの結果であるのだろう。
 その「誰か」の中に、自分自身も含まれているのかもしれない。死を厭うのは生命としては当然の事だから。
「でもそれが何時か訪れることを知っているから、見えるものもある。そう考える人も沢山いる」
 ぴたり、切っ先が静止する。剣を向けるべき先は定まっている。
「だから俺は貴女を肯定し、貴女を滅ぼす。それが俺達なりの『贖罪』だ」
 走り出す優希斗。その頭上、遠く空の上から鬨の声が聞こえてくる。
「罪に溺れし亡霊達よ。汝等の想いと罪を、我が下に」
 ユーベルコード『闇技・罪業蒼贖舞』によって呼び出されたのは、魔剣、魔刃、妖刀、それぞれの贖罪の証を手にした戦士達だった。
 フェニックスドラゴンの翼から炎の羽が放たれる。ひとつひとつが砲弾の如き威力で炸裂するそれは、幽霊達を粉砕して寄せつけない。
 爆炎の中を駆け抜けて、優希斗はフェニックスドラゴンに肉薄する。白刃が閃き、炎の羽を寸断。火炎を斬り裂いてニの太刀が翻る。
「――!」
 翼を貫き、刃金が竜神の胸元を掠めた。ぱっと眩く火の粉が散って、切り落とされた翼が燃え尽きる。
 失われた片翼が再生する前にと、優希斗と亡者達は更なる攻勢をかけた。
「たすけてあげて。おねがい――」
 小さく呟く声が剣戟の音に飲みこまれて、すぐに聞こえなくなった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴェル・ラルフ
かつては誰かの永久の命を望みもした
大切な人との別れを哀しんだから
けれど今は違う
ヒトとの繋がりは教えてくれたから
例え死に別れることがあったとしても
終わりを知るからこそ
僕らは新しい場所へと足を進める
前を向けるのだと

キミとの出会いも間違いなく
僕に教えてくれることがある
甦る美しき伝説
人々の願いの権化
あなたは希望そのものだったはず

復活を繰り返せぬように
体力の消耗を狙う
400もの【赫々天鼠】で撹乱しながら僕自身も体術・棒術で応戦
流れる動作は僕が戦いの中で学んだ無駄を省くための所作
これもまた、出会いのおかげ

続く出会いの連鎖は
必ずや幸福をもたらしてくれること
僕からもあなたに
伝えられたらいい

★アドリブ・連携歓迎



 再生した翼で飛翔し、包囲網を逃れたフェニックスドラゴンは、墜ちるように着地した。少女の体を包む不死鳥の炎の勢いはすっかり弱まり、今にも消えてしまいそうだ。
「おいで、……僕の一部」
 羽音と共に黒炎が舞う。顔を上げた少女の視線の先に『赫々天鼠』を従えたヴェルがいた。
 彼自身、かつて誰かの永久の命を望んだことはある。死の手に攫われてしまった大切な人。その人がいないことへの哀しみは果てのない暗闇のようだった。
 だが。
「例え死に別れることがあったとしても、終わりを知るからこそ僕らは新しい場所へと足を進める。前を向ける」
 運命が異なる道筋を歩んでいたとしたら、ヴェルはここには立っていなかっただろう。それを実感するからこそ、彼は自らの死に背を向けたオブリビオンに拳を向ける。
「あなたは希望そのものだったはず」
「――きぼう」
 小さく呟いた少女の背から炎の幻影が離れる。糸が切れたように頽れる少女を、ヴェルは受け止めた。
「――お願い。私の友達を助けて」
 それだけ言って、少女は気を失った。その体をそっと傍らに横たえ、ヴェルは不死鳥へと向き直る。
「続く出会いの連鎖は、必ずや幸福をもたらしてくれる」
 告げたヴェルを迎え入れるように、不死鳥の骸魂は翼を広げた。頷いて、彼は四百の黒炎蝙蝠と共に炎へと突っこんでいく。
 流れるような連携攻撃――積み重ねてきた戦いの中で掴み取った技――が翼を折り、胴を貫く。
 最期に高く優しく鳴いて、骸魂は正しく死の呼ぶほうへと去っていった。

 しばらく後。目を覚ました竜神の少女は猟兵達に何度も何度も礼を言って、集まってきた妖怪達と共に鎮魂の儀式を無事終わらせた。
 彼女の頬を大粒の涙が流れ落ちるのを皆が目撃したが、何も言うことはなかった。
 濡れた瞳の中には、確かに「希望」の火が灯っていたから。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月21日


挿絵イラスト