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癒えぬ痛みが終わりを招く

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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●???
 きっかけは些細な事だった。
 木の枝にでも引っ掛けたのか、いつの間にか出来ていた切り傷。普段であれば気にしないような小さな傷が、いつまで経っても訴えかけていた。流れる血も止まらない、止血の為に巻いた布があっという間に赤く染まってしまう。
 取り替えようと布を外して、まるで殴られたように青く腫れ上がった手を見て腰を抜かした。確かに固く結びはしたが、それだけでここまでになるのは明らかにおかしい。
 医者を呼ぼう、薬を塗ろう、考えは色々と浮かぶがそれが一向に纏まらない。それどころか考えるほどに焦りだけが積み重なり、耐え切れず転げまわるように外に飛び出した。
 外では老いた者が青ざめた顔をして道に倒れていた、若い者達が互いに罵声を浴びせながら取っ組み合いをしていた。全員に共通していることは、まるで大きな戦でもあったかのように傷だらけだという事だ。
 手の傷は止まらない、痛みが脳に突き刺さる。音も無く始まった終焉は、瞬く間に世界を覆い始めていた。

●グリモアベース
「カクリヨファンタズム、不思議と知らない場所とは思えない世界ね」
 どこか懐かしむような眼をしていたアンノット・リアルハート(忘国虚肯のお姫さま・f00851)だが彼女はすぐに真剣な表情となって猟兵達の方に向き直ると、自らの予知した事件を語る。
「その新世界で早速事件よ、内容は至ってシンプル。突如として世界から『癒』が失われたわ」
 身体の傷、心の傷、それらは普段の生活でも気づかない内に付いてしまっているものだが、それほど小さな傷はこれまた気づかない内に癒されている。その形は様々だが癒という概念は命あるものの営みに常に存在しているものと考えていいだろう。
 その癒が失われたカクリヨファンタズムは、いわば壊れやすい硝子の世界だ。ほんの些細な諍いが永久に尾を引く絶交の引き金となり、日々身体に蓄積される小さな傷がやがて死に至る病になる。何より恐ろしいのはそれらの現象が世界規模で確実に引き起こされるということだ、このまま放置すれば小さな傷が世界を覆い世界を崩壊させるだろう。
「もちろん、そんな事はさせません。そのために貴方達にはカクリヨファンタズムに向かって、事件の元凶であるオブリビオンを撃破してほしいの」
 カクリヨファンタズムのオブリビオンは骸魂という存在が妖怪を飲み込んで変身したものだ、その影響か癒を失った世界でも通常通り戦闘を行うことが出来る。だがそれは猟兵が攻撃しても飲み込まれた妖怪を傷つける心配はないということだ、こちらも手加減せずに戦闘をすることが出来るだろう。
 埒外の存在である猟兵もまた世界の影響を受けにくいと考えられるが、確証はない。万全を期すなら普段よりも傷付きやすい状態と考えて行動するのがいいだろう。
「ただ、注意してほしいのはオブリビオンから救出した妖怪は世界の影響を受けるということよ。沢山の敵と救助者が出る集団戦では気を付けて」
 最初に猟兵が戦うことになる迦陵頻伽は一体一体の力は弱いが、数の多いオブリビオンだ。オブリビオンを倒せば当然飲み込まれていた妖怪が現れる為、猟兵は彼らを庇いながらの戦うことになるだろう。
 極楽飛翔は戦場全体に誘眠音波を放つユーベルコード。威力は弱いが、動きを強制的に鈍らせられるため助けた妖怪を逃がすことが難しくなる点に注意が必要だ。
 クレイジーマスカレイドは超高速の連続攻撃。動きが素早く、発動したら途中で止まることはない。回避した攻撃が流れ弾のように救助者に当たらないよう意識を向けなければならない。
 迦陵頻伽の調べは歌声を聴いた対象が迦陵頻伽の傀儡になるよう洗脳するユーベルコード。救助した妖怪がこれを聴いてしまうとオブリビオンを守るよう積極的にその身体を盾にするだろう。この戦闘においては最も厄介な攻撃とも言える。
「難しい任務になるけど、貴方達なら必ずこなせると信じています。誰にも血を流させない、無傷の勝利をしてやりましょう!」


マウス富士山
●マスターコメント
 オープニングをご覧いただきありがとうございます、マスターを勤めさせていただくマウス富士山と申します。やってきました新世界、最初の任務はいきなり世界の危機!癒しの失われた世界での戦いとなります。
 最初の目標は『集団オブリビオン迦陵頻伽の撃破』。呑み込まれた妖怪の救出は必須ではありませんが、プレイングに余裕があれば是非挑戦してみてください。
 妖怪たちの隠れ里での戦い、皆様のプレイングを心からお待ちしております。

●オープニング公開次第、プレイング受付を開始します
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第1章 集団戦 『迦陵頻伽』

POW   :    極楽飛翔
【美しい翼を広げた姿】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【誘眠音波】を放ち続ける。
SPD   :    クレイジーマスカレイド
【美しく舞いながらの格闘攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    迦陵頻伽の調べ
【破滅をもたらす美声】を披露した指定の全対象に【迦陵頻伽に従いたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

パルル・ブラックベリー
なんと!?癒しがない!それは困りましたね!ではこのアイドルであるパルルちゃんがその翼をねじ切り落としてついでに歌って癒しを与えましょう!
オラオラこっちに来やがれ!この総排出腔野郎が!翼を広げた瞬間がチャンス!まずは翼にしがみつく!多分凄い速度で飛んでくるから死んでも離さない!頃合いを見てユーベルコードでこの総排出腔野郎を振り回す!
集団戦だからこのままコイツを振り回して飛び込んでやるぜ!ついでにパルルちゃんの歌を聞いて癒されろ!あー!あー!この世もあの世も果てしねェー!!


レナータ・バルダーヌ
もし傷が治らなければ、わたしなんてとっくに生きてはいませんね。
この世界の皆さんのためは勿論のこと、わたし自身も体に備わっている治癒力にはとってもお世話になっていますから、絶対に元に戻します!

早く敵を倒した方がいいのはわかっていますけど、妖怪さんたちを傷つけさせるわけにはいきません。
皆さんが戦っている間、救助した妖怪さんを【A.F.アルゲジア】とサイキック【オーラで防御】し、攻撃や流れ弾から護ります。
敵の誘眠音波はそこまで強力ではないようなので、痛みを肩代わりしていれば眠ることはないでしょう。
わたし自身は無防備になりますけど、【痛みに耐え】るのは得意なので多少の攻撃なら凌いでみせます。



●三つの翼が向かうのは
 空に蓋をするような巨大な月が昇る夜のカクリヨファンタズム、藁葺き屋根の並ぶ妖怪の村はまだ予知に出たような恐慌は起こっていない。だが村を歩く一人の妖狐が手に作った小さな傷から止め処なく流れる血が、滅びの兆しを静かに表していた。
 ところ変わって村に隣接した山の中。妖怪ですら近づかない暗い森の中で、場違いなほど鮮やかな羽を持つ人鳥達が木々の上から村を見下ろしている。彼らはオブリビオン迦陵頻伽、静まり返った山中で音も立てず村を観察していたが、その静寂は突如として引き裂かれた。
「なんと!?癒しがない!それは困りましたね!」
 そう言いながらもあまり困っているようには見えない自信に満ちた笑みを浮かべながら、パルル・ブラックベリー(腹黒フェアリー・f10498)はその小さな体を迦陵頻伽達の前に曝け出す。一斉に向けられる視線を意に介さず、パルルは空いてる手で鉄砲の形を作るとピンと伸ばした人指し指を空に向ける。
「ではこのアイドルであるパルルちゃんがその翼をねじ切り落としてついでに歌って癒しを与えましょう!」
 笑顔のまま放たれた宣戦布告に、迦陵頻伽達は視線だけでなく身体をパルルに向けて臨戦態勢を取る。彼らは既にパルルを取り囲んでいるが、そんなことは関係ないと言わんばかりにパルルは獰猛な笑みを浮かべる。
「さっさとこっちに来やがれ!この総排出腔野郎が!」
 その挑発を合図に迦陵頻伽達が一斉に翼を広げる。数十の人鳥が一斉に翼を広げる様子はさながら巨大な天蓋が突如として現れたような、威圧的かつ幻想的な光景だ。しかしパルルはそんな景色には目もくれず、手近な迦陵頻伽に突進すると全身でその翼にしがみつく。
 大柄な迦陵頻伽と小さな妖精であるパルルではその差は歴然なように見える。だがは彼女は透明な翅を目で見えなくなるような速さで羽ばたかせると、敵の羽を掴む五指に力を込める。
「あー!あー!この世もあの世も果てしねェー!!」
 声は美しいが、狂ったピアノのような旋律で歌いながらパルルは迦陵頻伽の身体を強引に振り回す。強引な力業に不意をつかれた迦陵頻伽はそのまま味方と衝突し、取り込んだ妖怪を吐き出しながら消滅する。
 だが振り回された慣性は消滅せず、二人の妖怪はそのまま弧を描いて地面に落ちていく。それを見て嘲笑うように目を細めた瞬間、淡い藤色の炎が落下する妖怪の身体を優しく受け止めた。
「この人たちを傷つけさせるわけにはいきません」
 そう言うレナータ・バルダーヌ(護望天・f13031)が背中の炎の翼を振るうと藤色の羽が舞い上がり、パルルの戦闘によって落下してくる妖怪達を次々と受け止める。戦闘はパルル、救助はレナータ、役割を分けたことで彼女たちは迷うこと無く敵を倒し妖怪を救出することができる。
 その様子を見た迦陵頻伽達は味方を盾にパルルの手が届かぬ上空まで飛び上がると、手にした横笛に口を付けた。
「皆さん、できるだけ私の近くに!」
 迦陵頻伽の動きに合わせ、レナータはまだ状況を把握しきれていない妖怪を自身の近くに集めるユーベルコードを発動する。同時に、ガラスを引っ掻くような怪音が彼女の脳内に直接響き渡った。
「っ……!」
 迦陵頻伽の放つ誘眠音波。その一つ一つは弱いものだが、周囲の妖怪が受けるはずだった影響をレナータがその身体一つに集めた結果、意識を強引に刈り取ろうとする攻撃音声にその性質が変わっていた。
「おい、バックダンサー任せてんだ!踞ってる暇はねえ……です、よー!」
 口は悪いがパルルなりの信頼を込めてるのであろう激励を受け、レナータは折れそうになる膝で身体を支えると、新たに降ってきた妖怪を受け止めて気丈な笑顔を浮かべる。
「大丈夫です、耐えるのは慣れてますから……皆さんの戦いが終わるまで凌ぎきります!」
 そういってレナータは羽を広範囲に広げ、一人も取り零さないという決意を示すように真っ直ぐパルルの顔を見る。そんなレナータの表情を見て、パルルもまた迷い無く次の迦陵頻伽に向かって飛び込んでいった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

春霞・遙
傷の癒えない世界か、それは医師としては怖いな。そりゃ傷つかないようにするとか、なかったことにするとか、元に戻すってことはできるかもしれないけれど、それでは成長もしないし。
そもそも処置のために付けた傷が致命傷になるとか恐ろしいですよね。

いまは傷つくのは最低限で良いでしょう。
敵や救った妖怪に「恐怖を与える」ことがないようにハシバミの枝に灯した炎で「催眠術」を行います。【悪霊祓いのまじない】や杖による「なぎ払い」での攻撃や「気絶攻撃」での無力化を図ります。
自分の負った傷は「激痛耐性」で耐える。切り傷は炎で焼いてそれ以上の出血を止めることはできるかもしれないですね。ダメージはかさみそうですけど。


ヒルデガルト・アオスライセン
陰惨な呪いもあったものですね、放った首魁の顔を拝みたい所です
救助対象に治癒が通らないのは厄介なので切り離しましょう

その舞は飽きたわ、泥遊びしましょ
学習力+ダンスで舞踏を見切り
UC中の鳥をグラップルしてUCハイジャンプ、大地に叩き付けます
勢いを殺さずトンネル掘り+拠点防御+結界術でクレーターを利用した簡易シェルター作成
妖怪を送り込みます

災難だったわね
でもあとほんの少しの辛抱よ

風の属性+オーラ防御で真空の壁を作り、音を遮断
飛ぼうが囀ろうが関係ない
私を突破せず、彼らに手出しはさせません

おびき寄せの盾で敵視を集中
接近するマスカレイド鳥達の包囲には残像で同時討ちをさせて
格闘と光波の放出で骸魂退治します



●銀炎、闇を照らせ
「傷の癒えない世界か、それは医師としては怖いな」
 世界の現状を知った春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)は悩ましげに目を細める。そもそも医療とは根本的には生命の持つ自然治癒能力を補助するためのものだ、その土台が崩れてしまえばどれだけ高度な施術もいたずらに人の身体を傷付けるだけになってしまう。
「陰惨な呪いもあったものですね、放った首魁の顔を拝みたい所です」
 遙の隣に立つヒルデガルト・アオスライセン(リベリアス・f15994)は敵意を隠そうともせず上空を飛び回る迦陵頻伽を睨み付け、調子を確かめるように銀の靴を鳴らす。互いにいつでも動くことができる戦闘態勢、ヒルデガルトが手の動きで遙を数歩後ろに下がらせる同時に、人鳥達が一斉に降下を始めた。
 それに対してヒルデガルトはユーベルコードで強化した脚力で地面から飛び上がると、一体のオブリビオンに対して正面から衝突する。
 勢いは殺さない。衝撃を横にずらしたヒルデガルトは迦陵頻伽と組み合ったまま回転し、そのまま地面へと落ちていく。見た目だけならスケートのスピンを思わせる優雅なものだが、その実態はそんな優しいものではない。
「舞は飽きたわ、泥遊びしましょ」
 重量、速度、遠心力、その三つが組合わさった強烈なエネルギーを持ったまま迦陵頻伽は地面に叩きつけられる。だが回転はそれでも止まること無く、オブリビオンの身体と共に地面を削り取っていく。
 山の木々よりも高く舞い上がる土埃。遙は苦笑いを浮かべながらその景色を眺めていたが、その視界の端で迦陵頻伽の真っ赤な爪が自らに向かってくるのが見えた。
 上体を捻り放たれた蹴りを躱すも、続けて放たれた別の迦陵頻伽の蹴りが遙の肌を浅く切り裂く。
「傷は最低限で……」
 自らを囲む敵を見ながらそう呟くと、遙は手にしたハシバミの枝に火を灯す。揺らめく炎を見た迦陵頻伽は次の手に移ろうと大きく口を開こうとするが、それよりも早く遙が動く。
 敵を凪払うように振るわれたハシバミの先端から炎が広がり、波のように迦陵頻伽達に押し寄せる。頬を焼く熱波に彼らは反射的に口を閉じ、炎の届かない上空に逃げるが、遙の攻撃はこれで終わりではない。
 不規則に揺らめく炎、そして距離を取って暖かく感じるようになったその熱。上空からじっと遙を見下ろしていた迦陵頻伽達は手足の先から力が抜け出るような感覚に陥り、やがて滞空することすらできなくなって地面へと降りていく。
 警戒心を解き、脱力を促す催眠術。遙の行ったそれにかかった迦陵頻伽は着地したところを木の杖で頸椎を突かれ、取り込んだ妖怪を残して消滅する。
 妖怪達は取り込まれている間のことを覚えていないのか、目を白黒させて辺りを見回している。一先ず彼らに恐怖を感じさせないように遙がハシバミの火を揺らした瞬間、銀の螺旋が彼女の頭上を駆け抜けた。
 それはヒルデガルトが振るう銀の靴。スラスターが残す光の軌跡と共に放たれた回し蹴りはいつの間にか遙の背後に近づいていた迦陵頻伽に突き刺さり、その身体を水面を切る石のようにバウンドさせ取り込んだ妖怪を吐き出させる。
「災難だったわね、でもあとほんの少しの辛抱よ」
 吐き出された妖怪を空中で抱き止め、遙に渡したヒルデガルトはそれだけ言って再び飛び上がる。呆気に取られる妖怪達だったが、その間に炎を介した催眠術で無意識に警戒心を解かせた遙が一人の妖怪の手を取って立ち上がった。
「見ての通りここは危ないので、あちらに避難しましょう。焦って転んだりしないように気をつけて」
 そう言って遙は地面に空いた大穴──ヒルデガルトが最初の攻撃で作った簡易シェルター──に妖怪達を避難させると、ハシバミの炎で合図を送って入り口を真空の壁で閉じさせる。
 そしてふと敵に切られた白衣の袖を触ると、そこは湿り気を感じるほどに血で濡れていた。しかもまだ血は止まっていない。猟兵である自分でこれだ、ならば影響を完全に受ける妖怪達が傷つけばどうなるか。
 傷を炎で焼き、強引に血を止めた遙は銀光と羽の舞う戦場に自らも飛び込む。
 誰にも手だしはさせず、誰にも血は流させない。猟兵達の胸中には、そんな覚悟が宿っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

黒影・兵庫
【蜂皇族】
カクリヨはUDCアースにとっても重要な世界!
なんとしても世界の危機を防がねばなりません!
(「予想以上に不安定な世界のようね。気をつけなさい」と頭の中の教導虫が話しかける)
了解です!せんせー!
じゃあクロリア踊ろうか!
(クロリアと同じ『ダンス』をしながら『オーラ防御』壁を黒影とクロリアを護る様に展開後『第六感』で攻撃を予知し『衝撃波』で回避と迎撃を行う)
敵の踊りを止めます!
(UC【蟷螂の鋸】を発動し踊る蟷螂を召喚し両腕の回転鋸を敵に向かって一斉投擲させ『念動力』で回転鋸を操作して敵の動きを阻害する)
踊りが止まれば遅くなるはず!
トドメは『衝撃波』を叩きこみます!


播州・クロリア
【蜂皇族】
(黒影の言葉に頷きながら目を閉じ、すっと手を真横にピンと伸ばすと{絢爛の旋律}で『ダンス』を始める)
えぇ、あにさん
何としてもカクリヨの癒しを取り戻さねばなりません
陽光に照らされ若葉萌ゆる大地のように、このリズムで活力を与え
乱を生み出す骸魂を鎮めましょう
(『第六感』で敵の攻撃を予知しダンスで生み出した光を纏わせた『衝撃波』で『属性攻撃』を行う)
数が多い...ならば動きを封じます
(UC【蠱の宴】を発動し黒影とクロリアの攻撃で踊りを止めた敵の動きを制限しようと試みる)
最後まで踊っているのは私たちです
貴方たちは骸の海へ還りなさい



●踊れや踊れ、命のままに
『カクリヨファンタズム、予想以上に不安定な世界のようね……』
「それにここはUDCアースにとっても重要な世界!なんとしても世界の危機を防がねばなりません!」
 脳内に響く先生の声に頷きながら、黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は力強く迦陵頻伽達の前に一歩踏み出す。癒しを失った幽世の世界、その恐ろしさは予知でも語られた通りだが、この場にはその事実を文字通り肌で実感している猟兵が一人いた。
 瞳閉じた播州・クロリア(リアを充足せし者・f23522)は、手を真横にピンと伸ばして世界のリズムを感じとる。
 それは今まで感じたことの無い、途切れ途切れの旋律だった。風は自らの揺らぎに耐えきれず空中で千切れ、大地は踏み締める度に腐肉のように崩れて足に纏わり付く。リズムとは複数の音階から作り出されるものだが、今の世界では一度鳴った音は砕けて二度と鳴ることがないのだ。
「ええ、あにさん。何としてもカクリヨの癒しを取り戻さねばなりません」
 そう静かに、だが確かな決意を込めたクロリアの言葉に兵庫もより一層気合いを入れる。
虫と鳥。自然界では食物連鎖という絶対のルールで結ばれている両者だが、そこにユーベルコードという埒外の要素がその関係に亀裂を入れる。
「じゃあ、踊ろうか!」
 兵庫の宣言と共に、その場に居る全員が一斉に踊り出す。猟兵もオブリビオンも関係なく、クロリアの奏でる活力に満ちたリズムに合わせて舞を始めたのだ。
 無論これはオブリビオンが兵庫達に歩み寄ったわけではなく、彼らは躍りのような連続攻撃をクロリアのリズムに合わせて放っているすぎない。それでも今この瞬間、戦場は巨大なダンスホールとなった。
 迦陵頻伽の放つ掌底を兵庫はオーラを纏わした手で受け止め、ステップを踏みながらクルリと互いの立ち位置を交換する。立て続けに別の迦陵頻伽が兵庫に向かって繰り出す上段蹴りをクロリアの放つ衝撃波が防ぎ、横からの衝撃を受けた迦陵頻伽は片足立ちでスピンを始める。
 まるで相手が目まぐるしく変わるワルツ、だが兵庫とクロリアは敵の多さに押し込まれ徐々に戦場の中央へと移動していく。
 つまりは敵に包囲される形。それを確かめたクロリアは、ステップのリズムを変えた。
 力強さはそのままに、新芽が土を掻き分けて出てくる様を感じさせるゆったりとしたリズム。急な転調に迦陵頻伽の舞はテンポが外れ、同時に兵庫が指を鳴らす。
「伐採兵の皆さん、お願いします!」
 その呼び掛けに応えて現れた無数の蟷螂達が手に付けた回転鋸を射出し、兵庫の念動力によってゆっくりと周囲を旋回し始める。
 それは転調に動きを合わせれば自然と隙間をすり抜けられる軌道だったが、動きを止めることのできない迦陵頻伽達は自ら刃に切り裂かれていく。
「ダンスとは常に同じテンポでいればいいものではありません、それがわからぬようなら……ダラキュです」
 傷つき、踊れなくなった迦陵頻伽の動きをさらにクロリアのユーベルコードが封じ込める。
 もし来世というのがあるのであれば、次は心から躍りを楽しめますように。
 そう願いを込めて兵庫の放った衝撃波が、妖怪達の身体から骸魂を引き剥がした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

歌川・邦絵
※アドリブ歓迎、共闘可

WIZ判定

・行動
『地獄百景絵巻』を纏い自身の回りを結界で囲いつつ
『百鬼夜行銭』で弾幕攻撃する
(スキル「アート、結界術、弾幕、全力魔法」)

・妖怪を逃がすときには
UC【黒縄地獄】で敵の動きとUCを封じ込め
その隙に逃がす

・心情
傷つくってなぁ悪いばかりじゃない
それを踏まえて新たな成長をすることもある
だがな、それもいずれ傷が『癒える』ことを前提にしたもんだ

『癒し』がない世界なんざぁとても生きていけないね
何より『美』が心を癒すことが出来ないのは我慢がならねぇ!
てめぇらは許せねぇ、このアタシがぶっ潰してやらぁ!



●その鳥たちは何処で鳴く
「傷つくってえのが悪いばかりじゃないのは知ってるさ、痛みを知るからこそできる成長ってのもある」
 カラコロと下駄を鳴らしながらやってきた歌川・邦絵(妖怪絵師・f12519)は開口一番手にした銭袋を開くと、高慢に空から地上を見下ろす迦陵頻伽達を睨み付ける。
「けどな、傷は『癒える』からこそ教訓にも笑い話にもできるんだ!傷ができたらはいおしまいなんてまっぴらごめんだね!」
 そう言って邦絵が銭袋を振り回すと、その中から月光に輝く弾幕が放たれる。それは邦絵がかつて封印した百鬼夜行、その力が込められた銭は迦陵頻伽の身体を容赦なく貫き、骸魂を妖怪から引き剥がしていく。
「そして何より、アタシが我慢ならねえことが一つある」
 空中で吐き出され地面に落ちる妖怪達を見て邦絵は腰に下げた巻物の紐を解き、とぐろを巻く蛇のように展開させる。その上に妖怪達が落下すると、不思議と彼らは怪我をすることなく地面に着地することができた。
 自らの張った結界が無事に動いていることを確認した邦絵は、巻物に掛かれた風景──恐ろしくも圧倒される迫力を持った地獄絵図──を指先で撫で、迦陵頻伽に向かって叫ぶ。
「そいつは『美』が心を癒すことができねえってことだ!んな異端邪説な世界にしようって奴はアタシがぶっ潰してやらぁ!」
 大気を振るわせる邦絵の声に妖怪達も腰が抜けそうになるが、振り向く邦絵の視線に促され慌ててその場から逃げ出す。
 飛び交う弾幕の中追いかけるのは難しいと判断したのか迦陵頻伽達は歌を唄おうと大きく口開くが、声が出る前に邦絵の広げた地獄百景絵巻から炎が燃え上がる。
「やらしゃしないよ、大人しくお縄に付きな!」
 炎の中から飛び出すのは真っ赤に焼けた鉄の縄。それは迦陵頻伽の口を塞いだ上で全身を縛り上げると、彼らを空から引き摺り下ろし地面へと叩き付ける。
 迦陵頻伽。伝承によれば彼らは極楽浄土に済み、その声は非常に美しいとされる。それが声を出すことすらできず、地上で地獄の炎に焼かれているのだ。
「まったく、皮肉な話だね」
 そう言って邦絵は燃え盛る迦陵頻伽に向かって手を合わせる、この祈りがせめてもの手向けになるように。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『フェニックスドラゴン』

POW   :    不死鳥再臨
自身が戦闘で瀕死になると【羽が燃え上がり、炎の中から無傷の自分】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    フェニックス・レイ
レベル分の1秒で【灼熱の光線】を発射できる。
WIZ   :    不死鳥の尾
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【炎の羽】で包囲攻撃する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幕間
 配下である迦陵頻伽が全滅したからか、それとも燃え上がる死の国の炎に惹かれたか、巫女装束の少女がふらりと猟兵達の前に現れる。彼女は生気のない瞳で猟兵達をぐるりと見回すと、一転憤怒に満ちた表情で叫び出す。
「何故死なぬ、何故傷付かぬ……不死である我がここまで落ちたというのに、定命の生物如きが!!」
 刹那、少女の身体を紅蓮の炎が溢れ出す。心臓から噴き出すそれはやがて翼を作り、不定形の鳥の姿となって少女の背後に浮かび上がる。それは不死鳥、本来死ぬはずのない存在が幽世に辿り着けず死亡した成れの果て。
 炎に覆われた少女はまだ生きているが、不死鳥は彼女を自分を地上に留めておくための道具程度にしか思っていない。下手に攻撃すれば少女の身体をいたずらに傷つけることになってしまう。
 そしてその身体を酷使していることを示すように、不死に執着した骸魂は少女の喉を通して人のものとは思えぬ慟哭を上げると、猟兵達へと炎を向けた。

●マスターコメント
 プレイングの受付は6/24(水)の午前9:00からです
パルル・ブラックベリー
いやそんなことでキレられても知らねえよ。お前が負け組でパルルちゃんが勝ち組ってだけだろ?
ではパルルちゃんがその心に呼びかけてあげましょう!さぁ歌を聞けコラァ!
って言ってたら炎の羽に囲まれちゃった☆いや普通に死ぬわやべえよ。こうなったら隙間を無理やり縫ってかわして……おっ!なんか適当に歌ったら羽がちょっと凍ってるやん!ラッキー!
接近できたら……しょうがない。この女の顔にグーパンチ!依代だろうが関係ねえ!二度と人前に出るのを躊躇うレベルでグーパンチだ!


春霞・遙
不死鳥……UDCアースの神話にもさまざまな記載がありますね。聖人の出現を伝える瑞鳥だとかその血は霊薬だとか、寿命を迎えると炎に飛び込んで焼かれ蘇るとか。
あなたの姿は見えなくとも、火山の噴火や日の昇り沈みに不死鳥を思い出す人はまだ少なくないですから。次に生まれることがあればどうか幽世に辿り着いてください。

癒やしのない世界で少女を癒やす手立ては思い至りませんが、短期で討ち果たすことでせめて負担を減らせればと思います。
【葬送花】で本体と思われる炎に攻撃、不死鳥の尾は回避する方角の炎の羽に花吹雪を当てて逃げ道を作る。

オブリビオンを転生させるという桜の精がこの世界にもいればよかったのでしょうけれど……。


黒影・兵庫
【蜂皇族】
(「黒影、女の子の救助に気を取られて自身を危険に曝すなんてことは無いようにね」と頭の中の教導虫にくぎを刺される)
了解です!せんせー!
とは言ったもののどうするか...
ん?クロリア?何か策があるの?
じゃあクロリアの策に乗るとしましょう!
(『火炎耐性』を付与した『オーラ防御』壁で黒影とクロリアを護りつつ『衝撃波』で敵の炎を散らせる)
支援兵さん!皆さんの舞で敵の気を惹きつけてください!
(UC【誘煌の蝶々】を発動し黒影の影の中からキラキラと輝き儚く舞う蝶々が舞い上がる)
今だ!クロリア!やっちゃって!


播州・クロリア
【蜂皇族】
他者の意思と体を奪い自らの欲を叶えようとは、外道め
操られている女性を痛めつけるわけにもいきません
ならば貴方の淀み切った精神を上書きしてあげます
えぇ、あにさん
策はあります
まずは敵の気を惹きつけてください
(黒影に護られながら、救いを求めるように天を仰ぎ手を伸ばした後{晩秋の旋律}で『ダンス』を始める)
このリズムは死に損ないの貴方のような
滅びゆくもの達へ捧げるリズムです
憤怒と怨嗟に満ちた炎さえも凍える、冬の訪れを予期させる晩秋のリズムです
(UC【蠱の心】を発動し『第六感』で敵の動きを予知し『呪詛』を込めた『属性攻撃』を一撃入れる)
貴方の精神、貪らせていただきます


レナータ・バルダーヌ
やはりというべきでしょうか、あの女の子の体を気遣っているようには見えませんね。
手を拱いてはいられませんけど、かといって闇雲に攻撃するわけにもいきませんか……。
彼女を、そしてこの世界を護るため……でしたら今こそ、この力を使うときです!

真の姿になることで【∀.A.レパルション】を敵、正確には飲み込まれている少女に放ち、少女の体から骸魂を引き剥がせないか試してみます。
瀕死になると再生するのでしたら、その隙を与えない強力な一撃なら倒せないでしょうか?
護るべき者を傷つけることなく全力を込められるこの技なら、可能性はあると思います。

不死といえどもオブリビオンさんは過去の存在、倒せない道理はないはず……!


歌川・邦絵
WIZ判定

・心情
死んだ不死鳥ってのは皮肉なもんだねぇ
だがまぁ、生まれ変わりに失敗すればそんなこともあるんだろうさ
だからとっととその子を開放して冥界で裁きを受けな
ま、せいぜい来世では長生きするんだね

しかし骸魂+妖怪でフェニックスドラゴンってぇ名なら
その子は龍神の一族なのかね?

・行動
敵の攻撃の軌道を見切り
結界術で防ぎながら近づいたところでUC発動
以降は付かず離れず射程距離を保ちながらフェニックスの魂が弱るを待つ
「生死の理を犯すアンタの罪状は、最も重い地獄へ落ちるのがふさわしい。
さあ、魂を焼き尽くす無限の炎を喰らいな!」


・とどめ
本体の筆で百鬼夜行図に相手の姿を描き上げ
そこに弱った魂を封印、除霊をする


ヒルデガルト・アオスライセン
あなたが首謀者ね
動機なんて聞かないわ
世界の敵と猟兵が揃ったらもうやる事なんて、一つしかないじゃない

剣に光のオーラ防御を展開
水を受ける船底のような流線形にくるくる光を循環させて
逆流する光線に乗らんと試みます

まず光線を大放出して頂く為に
散発では微動だにしない。という印象を付けたい

光弾で牽制しつつ
砂の外套で光線を拡散して減衰
直線しか来ないと考えて前方を重点防御
射線に盾を添えて受け、近寄って挑発
私を黙らせたいなら、今の十倍は欲しかったわ

光の技法で集束を感知したら、剣で滑る様に空中戦
最も得意なUCで骸魂のみを蹴ります
熱傷で直後に倒れようが鴨の水掻きを通します
それが戦士ですので

乗れなかったら普通に叩きます



●その炎は決して消えず
「いやそんなことでキレられても知らねえよ、お前が負け組でパルルちゃんが勝ち組ってだけだろ?」
「そういう言い方はよくないよ。やり方は間違えてるけど、必死で生きようとしているんだ」
 見るからに面倒くさそうな顔でパルル・ブラックベリー(腹黒フェアリー・f10498)を、春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)がやんわりと窘める。
 遠く、忘れられてしまったがゆえに死んでしまった不死の鳥。寿命を迎える際に炎に飛び込み、灰から蘇るという生命の象徴、その姿を火山の噴火や日の浮き沈みに重ねる者は少なくない。
 医者という命に触れる職を生業としている遙もまた、その一人であった。ゆえに多少同情的な思いを抱いてしまったのかもしれない
「死んだ不死鳥なんて皮肉なだけどね。許せない所業をしてるのも確かなんだ、この場は一回冥界の裁きを受けに行ってもらおうじゃあないか」
 パルルと遙の間に入った歌川・邦絵(妖怪絵師・f12519)の言った言葉に、遙はそうですねと頷き杖を構える。次に生まれることがあれば、どうか幽世に辿り着いてください。そう胸の中で祈りながら。
「では話も纏まったところでパルルちゃんがその心に呼びかけてあげましょう!さぁ歌を聞……空気あっっつ!!?」
 マイクを片手に歌唱をしようと大きく息を吸ったパルルの口内をサウナの数十倍はあろう熱気が襲う。気が付けば空には数十の炎の羽が幾何学的模様を描きながら宙を舞っていた。
「蔑むな、命じるな、憐れむな!その感情は我に向けられるものではない!」
 不死鳥は怒号と共に振り上げた手を降ろすと、炎は猟兵達に目掛けて雨のように降り注ぎ始める。無防備なパルルを焼き付くそうと一斉に彼女の方向に向く炎に思わずパルルの表情が強張る、しかし火線を描いて飛んで来た炎は彼女の目の前で突如として飛散した。
『黒影、周りの皆や女の子の救助に気を取られて自身を危険に曝すなんてことは無いようにね』
「了解です!せんせー!」
 衝撃波で敵の炎を弾いた黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)はそのまま周囲を光の壁で囲うと、戦場の中心に敵の攻撃の届かない安全地帯を作り出す。短時間しか持たないが、多少の準備をするくらいはできるだろう。
 落ち着いて戦場や敵の様子を観察できるようになったレナータ・バルダーヌ(護望天・f13031)は、ふと炎を纏う少女の姿を見て顔をしかめる。身に纏った純白の巫女装束、その袖先が不死鳥の放つ炎を受けてか黒く焼け焦げていた。
「やはりというべきでしょうか、あの女の子の体を気遣っているようには見えませんね」
「だからといって、手加減して長々戦ってたらそれこそ手遅れになるわ。やれることは一つよ」
 レナータの言葉にヒルデガルト・アオスライセン(リベリアス・f15994)がぶっきらぼうに返すが、その顔には隠しきれない悩みが浮かんでいる。不死鳥の方に興味はないが、その傀儡として強引に命を燃やされている少女に思うところがあるのだろう。
 レナータも手を拱いてはいられないのはわかっている、少女を傷つけたくないという思いも同じだ。ゆえに彼女は拳を強く握り締め、金色の翼を持つ真の姿を解放する。
「彼女を、そしてこの世界を護るため……でしたら今こそ、この力を使うときです!」
「リア、であれば私にも策があります」
 レナータの声に続けて播州・クロリア(リアを充足せし者・f23522)も少女の姿を見ながら一歩前へと踏み出す。兵庫の作り出した壁ももう持たない、詳しく策をすり合わせることはできないが、傷つけたくないという思いが同じなら問題はないだろう。
 壁が崩れ、せき止められていた炎が猟兵達に向かって一斉に流れ込んでくる。先んじて動いたのは遙だった、杖に桃色の光を宿らせた彼女はその先端を炎に向け、静かに詠唱を唱える。
『風に舞う薄紅の嬰児よ惑う命の導きと成れ』
 刹那、杖から薄桃色の花吹雪が溢れ出し炎の波と正面から衝突する。燃え上がる花弁と火の粉が宙を舞い、花火のように周囲を一瞬照らしては消えていく。
「支援兵さん、惹きつけてください!」
 一瞬遅れて、兵庫の影から飛び出した四百の蝶が輝く鱗粉を落としながら跳び上がる。すると炎の一部が突如としてその軌道を変え、蝶を追いかけるように空中に舞い上がった。
 飛んで火にいる夏の虫という言葉があるが、これではまるで逆。攻撃の一部が誘導されたことで勢いが弱まった隙にレナータは意識を集中し、ユーベルコードの準備を始める。敵が再生できないよう一撃で倒しきる。そのための一瞬の静止を、不死鳥は見逃さなかった。
 音も無く、少女の背後に広がる炎の羽から熱線が放たれる。瞬間的に放たれた攻撃をレナータが認識した時には既に遅く、回避行動に移ることもままならない。ならばダメージは覚悟と彼女が歯を食い縛った時、横から割り込んだ銀の盾が熱線を弾いた。
「猟兵を黙らせたいなら、威力も速度も今の数十倍は必要ね」
 そう言ってヒルデガルトは盾を振るい立ち上る煙を払うと、横目でレナータの無事を確かめる。そして傷もなく、構えたユーベルコードが解けていないことを確かめると不死鳥に向かって一直線に走り出した。
「他者の意思と体を奪い、自らの欲を叶えようとする外道よ。このリズムは死に損ないの貴方のような、滅びゆくもの達へ捧げるリズムです」
 駆け出したのはヒルデガルトだけではない。天を仰ぐように上空に手を伸ばしたクロリアは冷たい瞳で不死鳥を睨み付けると、靴音をリズムに踊りながら敵へ接近する。それは冬の訪れを感じさせる、どこか物悲しい晩秋の旋律。
 それに最も反応したのは不死鳥ではなく、マイクを強く握り締めたパルルであった。
「BGMに、ステージ演出!ここでやんなきゃ何時やるよ!さあ今こそパルルちゃんの歌を、聞けやコラァ!!」
 ハウリングを起こす程の大声量で始まったパルルのオンステージは、その場に居た全員を震え上がらせた。硝子を指で引っ掻いた時に鳴る異音を圧縮し、脳内に直接インストールされたような感覚。埒外の存在である猟兵の歌声はなんと不死鳥と猟兵達の背筋を凍らせるだけではなく、不死鳥の放った炎を物理的に凍り付かせ始めた。
「あっはは!炎も凍る歌声とは恐れ入った!大紅蓮地獄も真っ青だ!」
 その景色を見ながら膝を打って笑う邦絵だったが、目元の涙を拭うと自らの前面に結界を張り、炎氷を砕きながら不死鳥へと走り出す。これで不死鳥へ接近を始めた猟兵は三人。
「支援兵さん、もうちょっと粘ってください!」
 敵の攻撃の勢いは弱まったとはいえ兵庫の支援兵も炎にまかれて少しずつその数を減らしていた、あまり長くは持ちそうにない。
 状況の変化を読んだのか、少女の纏う炎が一層勢いを増す。その中で光の流動を感じ取ったヒルデガルトは即座に剣を引き抜いた。
「来なさい!それともまあ防がるのが怖い!」
 ヒルデガルトの挑発に不死鳥は視線だけをそちらに向けると、先程の数倍の太さの熱線を放つ。迫る輝きを見たヒルデガルトはその場で跳躍すると、剣をサーフボードのように構え熱線の上に飛び乗った。
 膨大な熱と光の本流がヒルデガルトを呑み込もうと暴れ出す。その勢いで浮かぶ汗すら一瞬で蒸発する中、突如として彼女の周囲を絵巻物が包み込んだ。
「失礼、アンタの船を借りるよ」
 剣に飛び乗ってきた邦絵に何か言う前に、二人は背後から飛んできた花吹雪に押され一気に熱線の上を滑り進んでいく。
「これ、ちょっとキツ……」
「手伝います!」
 遙の手の中で激しく震える杖をレナータが共に支える。その視線の先に居るのは、驚愕に目を見開いた少女の姿。
「大丈夫、もうすぐ……」
 邦絵とヒルデガルトが熱線を越え、二人に集中している隙にクロリアも不死鳥の懐に入り込む。三人が攻撃の準備に入る前に、レナータが自らのユーベルコードを発動する。
 それは守護の奇跡を込めたサイキックオーラ―。黄金の輝きを放つそれは少女の身体を突き抜けると、その身から不死鳥の炎を引き剥がした。
「ばっ――!?」
 少女の口から出た言葉は途中で途切れ、彼女は膝を折って地面に倒れ込む。そして取り残された不死鳥の胴体にヒルデガルトとクロリアの蹴りが突き刺さり、邦絵の振り下ろした筆がその頭を割ると、その内側から先程までとは火にならない紅蓮の業火が溢れ出した。
「その精神、貪らさせていただきます」
 しかしそれは一瞬のこと、クロリアの語る言葉の通り不死鳥の炎は激情を無くしたように少しずつその勢いを弱め、気が付けば蝋燭ほどの炎になっていた。
「オブリビオンを転生させるという桜の精が、この世界にもいればよかったのでしょうけれど……」
「……優しいんですね」
 すっかり小さくなった炎を見つめていた遙は、レナータの言葉に少しだけ顔を伏せる。不死鳥のやったことは許されることではないが、死に抗おうとする――生きようとする――その姿に、少し入れ込み過ぎたのかもしれない。
「ちえー、もうちちょっと歌いたかったのに。根性見せろよもっと」
「まあまあ、無事に終わったからいいじゃないですか」
 うりうりと眠る少女の頬に小さな拳を押し付けるパルルを兵庫が止める傍ら、邦絵は広げた絵巻に不死鳥と周囲を囲む凍り付いた炎を描き終えると、静かにそれを閉じる。
「あんたにも色々あったんだろうけど、生死の理を犯した罪とその罰はもう決まってるよ」
 ポツリと呟いたその言葉と共に不死鳥の炎は最後に激しく燃え上がると。絵巻に吸い込まれるようにして消えていく。そうして激情の炎が収まり静けさを取り戻した幽世の山を、東から昇る朝日が暖かく照らし始めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 日常 『決闘ごっこ』

POW   :    力こそパワー! 圧倒的な力技でド派手に勝ちに行く

SPD   :    居合い切りや早撃ちで、一瞬のスリルと勝負を楽しむ

WIZ   :    相手のカッコよさを引き立て、上手に負けを演じて盛り上げる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幕間
 さて、日の出と共に起き出した妖怪達の村はにわかに騒がしくなっていた。
「さあはったはった!東から来るわ怪力自慢の次男坊。金物屋河童の流之介!
 一方西から来るわ根無し草、こんな時だけ帰ってきたぞ。フーテンサトリの正娯郎!」
 どうやらやっているのは街頭試合、二人の妖怪が自慢の力やら妖術やらを駆使して決闘ごっこをしているらしい。この辺りではちょっとした祭りになっているのか、試合を見ている者は多く、入れ替わり立ち代わりに試合は始まりちょっとした賭け事も行われている。
 昨夜まで世界が終わる寸前だったことに気付いていないのか、人々の表情は憂いもなく明るいものだ。だがまあ、これはこれで平和の象徴なのかもしれない。
 そんな村に猟兵が意識を取り戻した少女を含めて助けた妖怪たちを連れて村にやってくれば、当然とこのような話が出てくるだろう。
 貴方達も試合をやってみないか、と。
 また救出した妖怪たちはこの村の住民だったようで、彼らが猟兵達は目の前で骸魂を倒していた話をすれば、如何なる強さを持っているのかと期待の視線が村中からやってくる。
 別に無視しても問題ないがせっかくのお祭りだ、参加してみるのも一興かもしれない。

●マスターコメント
 幕間の公開次第プレイングの受付を開始します。
 決闘の相手はプレイングで妖怪の名前を上げても構いませんし、相談の上猟兵同士で行っても構いません。戦いたい相手と好きなようにどうぞ。特に指定のない場合はマスターの判断で適当な妖怪と試合を組みます。
ヒルデガルト・アオスライセン
おだんごに、干し肉と握り飯包んでください

お祭りに賭博、なら近くに茶屋もあったりするんじゃないかな
旅支度をして喧噪を肴に眺めます

数が減り、狭間に追いやられ
故郷の厭世的な大人みたいに塞ぎ込んでいるかと思いきや
全然へっちゃらですね。心から羨ましく思います

言われてみれば
どの時代でも在野に傑物、なんて例は溢れる程ありましたね
エンパイアには妖怪に師事した将もいたと聞きます
何より彼らは正体不明の方が強い印象がある
妖本来の、未知なる恐怖を味わいに行きましょう

そこにいる方々に適当に喧嘩を売って、ぶっ倒れるまで戦い続けます
子供相手に手を抜かない方が良い

UCで篭手を強化し
相手の得意技を受けてカウンターを狙います



●祭出るなら踊らにゃそんそん
「おだんごに、干し肉と握り飯包んでください」
 文字通りのお祭り騒ぎ、陽気な喧騒の絶えない村の景色を見ながらヒルデガルト・アオスライセン(リベリアス・f15994)は一休みするように茶屋の縁台に腰をかける。
「塞ぎ込んでいるかと思いきや、全然へっちゃらですね」
 きっとそれは、一度多くのものを失ったからこそこれ以上は失うまいと陽気に振る舞う彼らの生き方なのだろう。その前向きな姿を見て、ふとヒルデガルトの脳裏に故郷の厭世的な大人達の姿が浮かぶ。
「心から、羨ましく思います」
 ため息を吐くように呟かれたその言葉は風に消え、誰かの耳に届くわけではない。しかし少しだけ俯いていたヒルデガルトの顔に、ふと光が差した。
「嬢ちゃん、聞いた話によると不死鳥のやつに正面から挑んだらしいじゃねえか。顔は知らねえが同じ火の鳥として黙っちゃいられねえ」
 声をかけてきたのは青白く輝く鳥の鷺の姿をした妖怪。詳細はわからないが本人が言うところには火にまつわる存在なのだろう。
 突然の挑戦にヒルデガルトは少しだけ考え、いいでしょうと縁台から立ち上がる。そうするとあれよあれよと観客が集まり、あっという間に茶屋の店先は決闘の舞台となった。
「子供相手だからといって、手を抜かない方が良いわよ」
「そりゃあ勿論、初手から必殺でいかせてもらうさぁ!」
 そう言うと鷺は天高く飛び上がり、全身を青い炎に変えてヒルデガルトに飛び込んでくる。
 ブレイズキャリバーを連想させる炎の妙技。それを見たヒルデガルトは弓を射るように拳を引いて力を溜めると、鷺と衝突する寸前に前方へと放つ。
 刹那、彼女の身に付けていた銀の籠手がより破壊力を高めた巨大な形状に変わり、圧倒的な拳圧が炎となった妖怪を彼方へと吹き飛ばした。
「在野に傑物、想像よりも高度な技にヒヤリとさせられましたが……花拳繍腿の域は出ませんね」
 花拳繍腿好看無用、すなわち派手なばかりで中身がないという意味。ヒルデガルトの言葉に観客達から次は俺だと次々と挑戦の手が上がる。
その光景を見て、ヒルデガルトはフッと口角を上げる。妖怪とは元々超自然的な存在、エンパイアには妖怪に師事したことが後の武勲に繋がる切っ掛けとなった将も居ると聞く。
 グリモアが相手の情報の大半を事前に予知してしまう猟兵家業において未知なる恐怖を味わえる機会など早々無い。ヒルデガルトは拳を強く握りしめると、意気揚々と祭の渦中に飛び込んでいくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

パルル・ブラックベリー
え?なに?決闘?いやいやパルルちゃん超非力なアイドルですし、喧嘩ごとなんて怖くてできなーい!
……いやオブリビオン倒しただけだよなんで決闘する流れになってんの?いたい!やめて!ひ弱なパルルちゃんをいじめないで!どうしてそんな酷いことするの!やめてくれないとお前を惨たらしい姿にして二度と外を歩けないようにしてやるぞ!おい、やめろ……やめろっつってんだろいい加減にしろボケナスがぁ!!

あー自爆したらスッキリした。次触ったらもう一回自爆したろ



●ブラックベリーオンステージ(強制)
「いや、オブリビオン倒しただけだよなんで決闘する流れになってんの?」
 迷いなく決闘に参加しに行った猟兵を見てパルル・ブラックベリー(腹黒フェアリー・f10498)の口から素の感想が漏れる。愉快な喧騒の中あまり参加する気のないパルルはこっそりと村から抜け出そうとするが……。
「おうそこの娘さんよ、あんたも猟兵ってやつなんだろう?それじゃあアンタも結構な腕っぷしなのかい!?」
 寸前で、やや酒の入ってる雰囲気の妖怪に絡まれる。飛び出しそうになった暴言を抑えたパルルは振り替えるまでのコンマ数秒の間にアイドルとしての完璧な笑顔を作り出し、目の前の妖怪に全力でアピールする。
「いやいやパルルちゃん超非力なアイドルですし、喧嘩ごとなんて怖くてできなーい!」
「やめときな旦那!俺は目の前でこのお嬢さんが自分よりもずっと大きい奴らをぶん投げるのを見たんだ!アンタじゃ敵わねえよ!」
 全力で作ったパルルのアイドルスマイルに暗い影が落ちる。どうやら救出した妖怪の一人がやってきたようで、こちらも回復祝いとばかりに酒を飲んだのか既に顔が赤くなっている。
「おう!?舐めんじゃねえぞ!こちとら枕を返し続けて数十年、人が乗った畳だって楽々ひっくり返してみせらぁ!」
「仕方ねえ……お嬢さん、こうなったらいっちょ格の違いってやつを見せつけてくんなあ!」
「やめて!ひ弱なパルルちゃんをいじめないで!……てかさっきからこっちの行動を勝手に決めてんじゃねえ!?いい加減にしねえと惨たらしい姿にして二度と外を歩けないようにしてやるぞ!」
「惨たらしい姿にしてやるだあ!?言ってくれるじゃねえか!!」
「てめえには言ってねえ!!」
 脅しも交えて全力で拒否を示すパルルだが、酔った男達はそれすらもやる気に変えて彼女を大衆の前に引きずり出す。観客の中にはあまりにも小さいパルルを心配するような顔をする者も何名か居たが、別の妖怪に彼女が猟兵だと耳打ちされるとその表情は期待に満ちたものに変わる。味方などいない。
「おい、やめろ……あっ翅触んな!やめろっつってんだろいい加減にしろボケナスがぁ!!」
 舞台は整い、いよいよ決闘が始まろうとした瞬間、パルルの身体が輝いた。
 膨大なエネルギーの本流が酔っぱらいを吹き飛ばし、巨大な光のドームが辺りを包む。地上に新たな太陽が現れたかのような激しい爆発が収まると、辺りは更地のように変わり果てていた。
「……あー、スッキリした。次触ったらもう一回自爆するからな」
 最後にそれだけいうとパルルは村から飛んで去っていく、戻ってくるのはテレポートが始まってからだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

春霞・遙
「クイックドロウ」の対決ならともかく、私は戦うの得意ではないので。
「医術」を用いて「奉仕」の精神で怪我をした人の手当や喧嘩の仲裁でもしながらみなさんの試合を応援します。
ちちんぷいぷい いたいのいたいのとんでけー

かまって欲しい子供たちでもいればおすもうをとって負けてあげたり、いたずらっこをくすぐりつくして負かしたりというふうに参加しましょうか。
真面目に戦えという人がいれば早撃ちでも射撃対決でも相手になりますよ。


レナータ・バルダーヌ
たしかに、癒しを取り戻したお祝いなら、こういった試合こそ相応しいかもしれませんね。
わたしはあまり得意ではないので参加は控えますけど、せっかくなので観戦していきましょうか。
観客は多いほうが盛り上がると思うので、謎のゴボウ生物の亜種『愉快なゴボウさん』も呼び寄せて、猟兵か妖怪かを問わず試合に出る皆さんを応援します。
ちなみに、ゴボウさんはゴボウであって妖怪ではないです。

『チャンスだ!左が空いてるぜ!気をつけろ!』
「ゴボウさんはどちらを応援してるんですか?」
『俺は両方の味方さ』
「なるほど」

妖怪さんたちも楽しそうですし、元通りになったみたいでよかったです。



●未知の命に境は非ず
「いやあ、元気に怪我しますねえ」
「確かに……でも癒しを取り戻したお祝いなら、こういった試合こそ相応しいかもしれませんね」
「そういうの関係なくやってそうですけどね」
 互いに少し苦笑を浮かべながら、春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)とレナータ・バルダーヌ(護望天・f13031)は決闘ごっこを観戦する。人気なのはやはり猟兵が参加しているもので、埒外の力を存分に振るう派手な戦いに観客は大盛り上がりだ。
だが祭の内容が内容だけに暴れすぎる人は出るもの。
「お医者さん、また怪我人だ」
「ちょいと派手な決闘ごっこにびっくりしてな、ひねっちまったらしい」
「と、わかりました。今見ますね」
 木の根のような姿をした者達に担がれて、脚を腫らした子供の妖狐が遙の下に運び込まれてくる。どれも命に別状のないものではあるが、折角のお祭りを怪我で楽しめないのも寂しいだろう。
「では……ちちんぷいぷい、いたいのいたいのとんでけー」
 遙が古き良き魔法の呪文を唱えると同時に、彼女の手の平から溢れる生まれながらの光が瞬く間に怪我を癒していく。その奇跡のような力を目にした子狐は目を開いて驚くが、同時にどこか気恥ずかしそうに頭をかきはじめる。
「こどもじゃなんだから、そんなんなくても大丈夫だよ!」
「おっ、言ったなー?なら私に勝って大人だと証明してみせろー!」
 そう言って遙は子狐をくすぐるようにしてじゃれつきながら、さりげなく治療を進めていく。そんな彼女の姿は妖怪達の目には天の使いのようにも見えているのか、治療の様子を遠巻きに眺めて手を合わせている者も現れていた。
「わたしも何か手伝いましょうか?」
「ありがとう……と言っても、実はそんなに忙しくはないんだよね。村の人達も手伝ってくれてるし」
 試合のような形式をとってるだけあってか、内容に反して動けなくなるような怪我をする者はいない。また一部の妖怪が患者をこちらに運んで来てくれるため、思ったよりも活動は楽なものだった。
「それじゃ、俺達はまた試合を見てくるか」
「怪我人を見つけたら運んでくるぜ」
「ありがとうございます、楽しんできてくださいね」
 木の根の姿をした妖怪を見送ると、ふと何かに気がついた遙は周囲をぐるりと見回す。ざっと見るだけで数十体、先程怪我人を運んでくれた木の根のような妖怪の姿が見つけることができた。
「……村だけあって、同じような妖怪が集まってるんですかね?」
「ああ、ゴボウさんですか?ゴボウさんはゴボウであって、妖怪ではないですよ」
「なるほ……え?」
 レナータの言葉に遙は思わず目の前の少女の顔とゴボウ達を交互に二度見してしまう。四肢を持ち、人語を話し、自立移動する植物。これが妖怪でなかったら何が妖怪になるのだろうという話だが、遙の怪訝な表情を気にせずにレナータは言葉を続ける。
「観客は沢山いた方が盛り上がると思ったので、私のユーベルコードで来てもらったんです」
 【愉快なゴボウさんフィーバー!】。レナータの使用する支援用のユーベルコードであり、数十体のマンドラゴラの亜種である愉快なゴボウさんを呼び出すことができる。
「チャンスだ!左が空いてるぜ!気をつけろ!」
「ゴボウさんはどちらを応援してるんですか?」
「俺は両方の味方さ」
「なるほど、贔屓は良くないですもんね!」
 楽しげにゴボウさんと会話するレナータを見て、遙はやっぱりそれは妖怪の類じゃないかなと思ったが、そっと胸の内に留めておくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

黒影・兵庫
※アドリブ、連携OK

ついさっきまで怪我一つ負えば致命傷になりかねない恐怖にさらされていたとは思えない明るさですね...
恐怖がなくなった、とかではないですよね?せんせー
(「たぶんねー。元からああいう性格なんだと思う」と頭の中の教導虫が返事する)
やっぱすげぇぜ!カクリヨファンタズム!
んで、力比べですか?ふっふーん!自慢じゃありませんが俺は弱い!
なんで踊って場を盛り上げるとしましょう!
(祭囃子のリズムに合わせて『ダンス』する)
さぁさぁ踊ろ、皆で踊ろ!
踊る世間に福は来るってね!


播州・クロリア
※アドリブ、連携OK

なんともリアなリズムです。いつもこんな感じなのでしょうか?
これなら街中で突然踊っても受け入れてくれそうな気がしますね
(楽しそうに眺めながらふらふら歩いていると筋肉隆々の妖怪に腕相撲を申し込まれる)
え?腕相撲ですか?構いませんが...そうですね
私が勝ったら一緒に宴が終わるまで踊ってくれるならやりますよ?
いいですか?いいんですね?ふふふ
(不敵な笑みを浮かべながら腕を組み開始と同時に『怪力』で完封する)
私の勝ちです、さぁ踊りを...ってなんですか?
え、貴方も腕相撲を?ちょ、ちょっと...私はダンスがしたいんです...
あぁぁぁぁ...
(腕相撲を求める妖怪たちの群衆に飲み込まれる)



●陽気なリズムに乗せられて
「なんともリアなリズムです。いつもこんな感じなのでしょうか?」
 活力に溢れた妖怪達、そしてそこから奏でられる生活のリズムに播州・クロリア(リアを充足せし者・f23522)は思わず身体を揺らしてしまう。一方でそんな村の光景を見ながら、黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は少しだけ心配そうな顔をしていた。
「ついさっきまで、怪我一つ負えば致命傷になりかねない恐怖にさらされていたとは思えない明るさですね……」
 オブリビオンの引き起こしていた世界の終わり。その影響が完全に表面化する前に猟兵達が事件を解決したとは言え、妖怪達の中には戦いを間近で見たものや骸魂に取り込まれていた者もいる。
 にも関わらず、恐ろしいことなど無かったかのように振る舞う彼らに兵庫は少しだけ引っ掛かるものを感じてしまったのだろう。
「恐怖がなくなった、とかではないですよね?せんせー」
『それは違うかな。たぶんねー、元からああいう性格なんだと思う』
 人々から忘れられ、幽世に住むことを余儀なくされた。というとそれは悲劇に聞こえるだろう、しかしそれは裏を返せばこの世界に住む妖怪達は皆自分達が住むことのできる新たな世界を自分達の足で見つけた開拓者達であることの証明でもある。
 その道を支えてきたものの一つが、今兵庫達の目の前で披露している底抜けの明るさだろう。
『もしかすると、世界を渡る事に関しては猟兵達より先輩かもしれないわね』
「おぉ……やっぱすげぇぜ!カクリヨファンタズム!」
 この世界のあり方に感動する兵庫の隣で、クロリアは祭りに釣られるようにしてふらふらと歩き始める。リズムを尊重する彼女にとって、どこに行っても活発な音が響き渡るこの村は遊園地のように見えるのかもしれない。
「お、いたいた……嬢ちゃん嬢ちゃん!アンタ猟兵ってやつだろ!ちょっといいかい?」
「……と、はい猟兵ですが。何かトラブルでも?」
 そんな時に呼びかけられたクロリアが慌てて足を止めると、そこには一人の河童がそこに立っていた。
「いやなに、力比べに付き合ってほしくてな……ちょいと外の人達の力ってのを知りてえのさ」
「ふむ、そうなると……腕相撲、などはどうですか?」
「そいつは単純でいいねえ、早速始めよう!」
 少しだけ考える姿勢は見せたが、快く承諾したクロリアの言葉に河童は早速適当な木箱を積み上げて勝負の舞台を作り始める。
「せっかくの真剣勝負です、少し条件をつけましょう……私が勝ったら一緒に宴が終わるまで踊る」
「ほう、それじゃあ俺が勝ったら他の猟兵さんにも同じように力比べをしてもらえるよう仲介してもらおうか」
「いいでしょう」
 互いに不適な笑みを浮かべ、河童とクロリアは箱の上で腕を組み合う。いつの間にか集まってきた観客達が固唾を飲んで見守るなか、審判が高く上げた手を振り下ろした。
 と同時に、雷が落ちたような音ともに二人が腕を乗せていた箱が粉砕される。突然の事態に場が静まり返るなかで、クロリアは地面にまで押し倒した河童の手を高々と掲げた。
「私の勝ちです、さぁ踊りを……」
 直後、周囲から割れんばかりの歓声と拍手が巻き起こり観客達が押し寄せるようにしてクロリアを取り囲み始める。
「凄えなぁ嬢ちゃん、次は俺とやってくれよ!」
「あ、きたねえぞ!その次は俺な!」
「え、貴方達も腕相撲を?ちょ、ちょっと……」
群衆に飲み込まれ、クロリアの姿はあっという間に見えなくなる。そして猟兵の力に魅せられた妖怪達の流れは様子を見ていた兵庫達のもとへもやって来ていた。
「兄ちゃんも猟兵なんだろう、あそこに混ざらないのかい?」
「ふっふーん!自慢じゃありませんが俺は弱い!なんで、代わりに踊って場を盛り上げるとしましょう!」
「おっ、それはいいねえ!」
 そういうと兵庫と妖怪達は一斉に踊りだし、村は更なる盛り上りを見せ始める。踊る世間に福は来る、全員が全員思い思いに踊るため統一感はないが、それが逆に祭の盛り上りを如実に表していた。
「あぁ、私も……私もダンスがしたいんです……あぁぁぁぁ……!」
 そんな中響くクロリアの叫びを耳にして、先生はやれやれとため息を吐くように呟くのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

歌川・邦絵
WIZ判定

行動

助けた少女(龍神?)に会って絵を描かせてもらう
その後、妖怪たちと猟兵の決闘ごっこを楽しむ姿を一枚の絵に仕上げる

セリフ

やあ、アンタは体はもう大丈夫なのかい
それじゃあ良ければチョイッと絵を描かせてくれないかねぇ
アタシは出会った妖怪たちを描いて
自分だけの「百鬼夜行図」を創ろうとしてるんだよ
(少女をモデルに絵を描く)


(決闘ごっこの絵を描き上げて)
さて、名付けるなら妖猟戯画ってところかねぇ?



●描く先にある未来
「浮世の苦楽は壁一重、切り替えの早さも大事ってやつかね」
 村の様子を眺めながら、茶屋の縁台に腰かけた歌川・邦絵(妖怪絵師・f12519)は白紙の絵巻に筆を走らせる。絵の全体像はまだ見えてこないが、迷いのない筆の動きからみてそう時間は掛からないだろう。
「それで竜神さんよ、体はもう大丈夫なのかい?」
「……おや、私は自分を竜と名乗った覚えはありませんが」
「猟兵には腕のいい占い師が付いてるのよ、人の素性から明日の天気までまるっとお見通しさ」
「あらあら、それは恐ろしい。こんな枯れ木の素性なんて知っても楽しくないでしょうに」
 不死鳥に取り憑かれていた少女、竜神は袖で口元を隠して静かに笑うと髪に隠れた折れた角を見せる。傷口を見るにそれは古くに出来た傷だ、自称する通り少女は見た目よりも多くの経験を積み重ねてるのかもしれない。
「そんなことねえさ。現にアタシは興味津々、良ければチョイッとアンタの絵を描かせてくれないかねぇ」
 だが、その事を知ったとて尻込みする邦絵ではない。むしろ見えざるものを表現するのは絵描きの腕の見せ所、少女の外見に反した大樹のような雰囲気に筆の握る手に力がこもる。
「お好きにどうぞ、貴女の絵が人の目に触れれば少しは力を取り戻せるかもしれませんし」
 少女のその言葉には、少しだけ悔しさが含まれていた。かつて邪神を滅ぼしたとされる竜神の一柱、それが今では魂だけの存在にすら勝てやしない。
 以前の自分が遥か高みに行ってしまった喪失感、それは死を受け入れられなかった不死鳥の姿と似ているようにも感じられた。
「……アタシはさ、出会った妖怪たちを描いて自分だけの百鬼夜行図を創ろうとしてるんだよ」
 少女に話しかけながら筆を動かしているにも関わらず、邦絵の描く線に迷いはない。歪みのない線を引き、白紙の上に新たな世界を作っていく。
 そして最後の一筆を終えた邦絵は、自信に満ちた表情で完成した絵を少女に突き付けた。
「アンタの言ったようになるか、その目で確かめてみな」
 そこに描かれていたのは炎を背負い、龍の角を生やした竜神の姿。それを見た少女は小さく笑みを浮かべると、期待してますよとだけ呟いた。

●エピローグ
 日が傾いた頃。決闘ごっこや踊りやらでかなり体力を使ったはずだが、妖怪達はまるで疲れた様子を見せず夜はこれからと酒盛りの準備をはじめる始末。
 祭はまだまだ続くのだろうが、ここかさら先は彼らだけの時間。猟兵達は帰還が始まり、妖怪達はその様子を名残惜しそうに手を振って見送る。
 こうして幽世で起きた事件は解決し、妖怪達は普段の生活に戻っていく。現世から忘れられた痛みを背負って、幽世の道を前へ前へと。
 ……それはそれとして、この祭の後村の目立つ場所にはとある絵描きが残した絵が飾られていた。
 名付けるのなら妖猟戯画。幽世の妖怪と外から来た猟兵が共に決闘ごっこに興じる姿を描いたその絵は、それが当たり前の風景になるその日まで飾られ続けるのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月01日


挿絵イラスト