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心頭滅却すれば、我慢比べなど何するものぞ

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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 ――それにしても、暑い。
 豆腐小僧は朦朧とする意識に苛まれながら、周囲を見渡した。
 結構な数の妖怪がいる、広い屋内である。立ち込める靄のせいもあるのだが、なにしろ端が見渡せない。こんな建物が村にあっただろうか。あったなら忘れるはずもないのだが。
 ――そもそもオラは、どうやってここに来た?
 茫洋とする頭で記憶を辿っていると、人が集まっているあたりから、わぁーっ、と歓声が上がった。何かの勝負がついたのだろう。
 開催されている種目は、どうやら『我慢比べ』であるらしい。『我慢比べ』であるならば、このあまりに高い室温も理解できる……ような気がした。
「おやおや、豆腐小僧さん。暑そうだね、どうだいひとつ?」
「こりゃすまないね、いただくよ」
 親しげに話しかけてきた砂かけ婆(知らない顔だ)から、ふかふかの毛布を受け取って、豆腐小僧は体に巻き付けた。
 ――それにしても、暑い。こんなんじゃ、豆腐も茹だってしまうよ。


「我慢比べ大会、などという集いが開かれているようです。それもオブリビオンの手によって」
 集った猟兵たちの前で、枦山・涼香(烈華なる黒狐・f01881)が穏やかに語りだす。
「我慢比べとは、暑い最中にどれだけ暑さに耐えられるかを競うレトロな競技だそうです。苦行に身を投じて、悟りでも開こうというのでしょうか。わたしは参加を遠慮しておきたいですが」
 それだけであれば、特色ある大会というだけで終わっていたかもしれない。
「けれど、オブリビオンが関わって何も起きないはずがありません。大会に参加しているものはもちろん、観客さえもが無意識のうちに、より暖を取る行動をとってしまいます。アツアツの汁粉があれば喜んで口にし、炬燵があれば深々と潜り込んで蜜柑を剥き、暖炉があれば薪をくべて安楽椅子で猫を撫でる、といった具合です」
 涼香は妙に具体的な例を引きつつ、オブリビオンが齎す災難について説明していく。
「人間なら熱中症で倒れてしまうところですが、妖怪の方々であれば大丈夫なのかもしれません。しかし、彼らが望んでそのような行動を取っているわけでないことは明らかです。妖怪たちを助けてあげてください」

 大会会場は、ちょっとあり得ないほどに広い屋内であり、ひたすら蒸し暑い。猟兵たちはその一角に転送され、大量の汗をかくことになるだろう。
 最初の試練は、会場にずらっと並んでいる石像だ。この石像、なんと前を通る者の心の動揺を感知して、火を噴きつけてくるのだ。もちろん熱いし、暑い。
 石像の合間には驚かせようと迫る弱い骸魂達がひしめき、喉が渇いた参加者のために、腹の底から温まる生姜湯などが用意されている。その意外な美味しさに心揺らしたら、火を浴びせられることは必定だ。
 休憩スペースには炬燵型のベンチなどもあり、そこには炬燵の魔力に囚われているものたちなど、より暖を取ろうとしてしまう妖怪たちがいるから、ぜひ助けてあげてほしい。

 どうにか石像の並びを抜けて会場の中心に踏み込むと、骸魂に飲み込まれてオブリビオン化した妖怪と、山のように積まれた暖を取るためのアイテムが待ち受けている。また妖気も一層強まり、暖を取らせようとする圧力は猟兵たちの行動を阻害してしまうほど。ここはいっそのこと、『暖を取る』ことに逆らわず、どてらを羽織ったりして戦ったほうが有利に戦えるだろう。

 そして最奥には『我慢比べ大会』の主催者たるオブリビオンがいる。周囲を濃厚に満たす妖気に対しては先ほどと同様、逆らわない手段が有効だろう。しかしあえて妖気に逆らい、圧力と『我慢比べ』して猟兵の矜持を見せつけることもまた一つの在り方には違いない。
「そもそも何故このような大会を開こうと考えたのか、そこはわかりません。しかし、心から楽しんで参加している妖怪はいないでしょう。おそらくは主催者のオブリビオンさえも。みなさま、妖怪の方々をなんとしても救い出してあげてください。お願いいたしますね」


Oh-No
 こんにちは、Oh-Noです。
 シリアスな話にはならないのではないかと思います、たぶん。

 『我慢比べ』に引き寄せられている妖怪につきまして、具体的な妖怪の指定があれば、現地にいたものとして扱います。
 『暖を取る』ほうも同様。激辛カレーがおもむろにあっても無問題です。

 それでは、よろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『誰も驚いてはならぬ』

POW   :    多少驚いても、噴き付けられる火に耐えながら進む

SPD   :    骸魂を逆に驚かせ、石像の噴く火に巻き込む

WIZ   :    心を鎮め、骸魂の妨害をガン無視して進む

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 新たに会場に現れた男を見て、二口女がにやりと笑う。
「こんな熱い場所に我慢比べ大会を見に来るだなんて、あんたも物好きだね。でも、ちょうどよかった。これからまた勝負が始まるところだよ。ほら、ろくろ首の姉ちゃんなんか気合が入りすぎて、絡んだマフラーが解けなくなってるじゃないか!」
 そういう二口女も暑そうなコートを着込み、二つの口を使ってせわしなく煙草を吸っている。
 勝負に参加する者たちが集まっている周囲には、石像がずらりと並んでいた。誰の趣味なのかは知らないが、やたらと肉感的な男性像である。端的に言えば筋肉を見せつけようとするマッチョだ。視界からも暑苦しくさせようとする、ありがたい配慮なのかもしれない。
 ――せめて石像だけでも見目麗しい涼やかな姿であったならと、その男は涙した。
地籠・凌牙
【アドリブ連携諸々歓迎】
湿度がやべえ!!!!!!!(思わず叫ぶ)
おっと、驚いたら火が飛んでくるんだったな……【火炎耐性】あってよかった……
(火を吹きかけられるが真顔で進んでいくだろう)

生姜湯はありがたく頂くか(ごくごく)
うめえなこrあ゛っっ(炎に巻き込まれる)

……き、気を取り直して。
この生姜湯もらっていいか?みんなに配ってやりたいんだ……って感じで説得。
分けてもらえたら渡していくと同時にUC発動だ。
我慢比べをしなきゃいけねえ"不運"を喰ってやれば良い方向に行くんじゃねえかな……

服は多少焦げるだろうが気にせず進んでいこうか……
いや、だってさあ。ツッコミ入れねえとか無理だろこの光景!!!!



「さてどんなもんかねっと、……ぐああああ、湿度がやべぇ!!」
 さんざん熱い暑い会場だと注意され、むしろ興味を抱いて転送されてきた地籠・凌牙(黒き竜の報讐者・f26317)を大歓迎したのは、もわっと広がる会場の空気だった。
 快適なグリモアベースから劣悪な環境に転送されて、そのあまりの落差に凌牙は叫び声を上げずにはいられない。
 ――ブォォォ!
 間髪を入れず、傍らにあったマッチョな石像が凌牙の驚愕を感知して、燃え盛る炎を吹き付けてくる!
 凌牙は反射的に腕を翳して、炎から顔を守った。
「おっと、驚いたら火が飛んでくるんだったな……」
 不意打ちに多少驚きはしたものの、火炎耐性を持つ凌牙にはどうということはない。せいぜい、驚いたせいで何十秒か炎を吹き付けられる時間が伸びた程度だろう。
 炎を吹き付けられながらも大して気に留めず、泰然と通路を進んでいると、給水スペースらしきものが途中にあった。ご自由にどうぞ、と達者な文字で書かれた案内の下に、湯飲みがいくつか置かれている。
「坊やも如何かね?」
 妖怪の婆さんに勧められて、凌牙は湯飲みを手に取った。
 生姜の爽やかな香りと、もうもうと立ち上がる湯気。案の定、熱い。湯飲みを傾ければ、とろりとした水面が揺れる。紛うことなき生姜湯だ。
「……せっかくだからな、ありがたく頂くか」
 明らかな罠だが、いまさら生姜湯を飲まないで済ませたところで何も変わるまい。凌牙は男気を発揮して、ぐいっと生姜湯を呷る。
 さらっとしたとろみが与える舌触り、程よい甘みが疲れた体を癒し、ピリッとした生姜の刺激が後味を引き締める――。これはそこらの安物ではない。間違いなく良いものだ。
「――! うめえなこれ……あ゛っっっっ」
 と目を見開いて感心した瞬間、周囲の石像たちから一斉火炎放射を受けて、凌牙はほんのりと焦げてしまった。実に迂遠な罠である。
「そんなに慌てて飲むから、舌を火傷したんじゃないかい?」
 思わず憮然としていると、妖怪の婆さんが心配そうに声を掛けてきた。それどころの話ではない。ないのだが、気を取り直して凌牙は婆さんに向き直る。
「なあ、この生姜湯もらっていっていいか? いい味だからな、みんなにも飲ませてやりたいんだ」
 ユーベルコードを発動しながら、婆さんの瞳を見つめて真摯に訴えかける。
「ええ、そんなに言うのなら持っていったらいいんじゃないかい? まだまだあるようだし……」
 相手の同意こそが、発動の鍵。嫌な感触を受ける妖気の塊が凌牙に吸い込まれていき……、
「てか、なんであたしゃこんな暑いところで生姜湯なんか飲んでるのかね。坊やも本気で友達にこれを分ける気かい? ま、好きにしな。あたしゃ帰るよ」
 『不運』を喰われた妖怪の婆さんは正気に戻ったようだ。
「冷やせばきっと最高だぜ。――気をつけて帰れよ」
 凌牙は婆さんが見えなくなるまで見送ってから、湯飲みを足元に叩きつけた。
「いや、だってさあ。ツッコミ入れねえとか無理だろこの光景!! 何の意味があるんだよ!!」
 ――灼熱の宴はまだ終わらない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アイラザード・ゲヘナ
判定:WIZ

心頭滅却すれば火もまた涼しとはよく言ったものじゃのぅ。
ふう、暑いのぅ。熱いのぅ…でも厚くはないのじゃ。
しかし、いろんな妖怪がおるのぅ。
あれは小豆洗いじゃの…。
小豆を入れた水がお湯になっとるぞ。
あっちは油すましじゃの。
油に引火せぬとよいが…。
おう、豆腐小僧がお鍋を食っとるぞ。
あの湯豆腐はまさか…。
うむうむ。
まさに百鬼夜行じゃのう。何故か我慢大会じゃがな。
ん、妾も鍋を食えと…はふはふはふ…し、舌が火傷したのじゃ…。
むむむ、ここは一計を計るかのぅ。
(こっそりと『結界術』を展開して部屋熱から逃れる)
うむ、臨兵闘者皆陣列在前。心頭滅却~♪
バレぬうちにさっさと進むのじゃー


アドリブ歓迎じゃの



「『心頭滅却すれば火もまた涼し』とはよく言ったものじゃのう」
 アイラザード・ゲヘナ(セカイの渡り鳥・f18145)はパタパタと袖を振って顔をあおぐが、こうもじっとりとした空気では大して涼しくもない。
「ふう、暑いのう。熱いのう……。でも厚くはないのじゃ」
 厚いとはいったい何の話か。アイラザードの胸板は確かに薄いが。
 ともあれ、高温多湿の環境は身体が痛みそうだけれど、事件解決まで一時の滞在と思えば、過剰な心配をするよりは周囲の環境に興味津々のアイラザードである。なにしろここはカクリヨファンタズム。この我慢比べ大会会場に集いたる衆生は妖怪たちばかり。どこを見ても変わった姿が目に入る。
「あれは小豆洗いじゃの……。小豆を洗う水がお湯になっているではないか」
 しゃらしゃらと軽快な音が鳴り響くほうに目を向ければ、桶の中で小豆をかき回す小柄な姿。と思えばその横を、油瓶を提げた者が危なっかしい歩調で通り過ぎていく。
「あっちは油すましじゃの。油に引火せぬと良いが……」
 ひとまずは火を噴くという石像から離れてほしいと願っているうちに、油すましは雑踏の中へと姿を消した。
 アイラザードには見るものすべてが面白く、不快な暑気も多少は忘れて会場を歩いていると、会場の片隅に設置された炬燵机が目に入った。おまけに卓上では、鍋が湯気を立ててよく煮えている。
「ふむ、豆腐小僧がお鍋を食っとるぞ。どうやら湯豆腐のようじゃが、まさかあの豆腐は……」
 まさに世は百鬼夜行。何故か行われているのは我慢比べ大会で、化かす側が化かされているような状況ではあるのだが。そんなことを頭の片隅で考えながら、アイラザードの視線は豆腐小僧が握る箸先の豆腐に引き付けられていた。
「なんだい、そんなにじっくり見なさって。食べたいのなら、ほら遠慮せずに」
 アイラザードの視線に気づいた豆腐小僧は、豆腐をよそった椀をアイラザードに突き出してきた。
「妾にとな? ありがたくいただこう。……はふはふはふ、っ! し、舌が火傷したのじゃ……」
 一瞬の油断が命取り。豆腐はいい感じに煮えていて、出汁の香りを楽しむどころではなく、口の中が大変なことになってしまった。
 この調子で妖怪たちの誘いに付き合っていたら身が持たぬ。ただでさえ、石像たちが火炎を浴びせようと待ち構えているというのに。
 そこでアイラザードは一計を案じた。なにも素直に状況に付き合う必要はないのだ。
「――臨兵闘者皆陣列在前。心頭滅却~♪」
 物陰で周りから見えぬように作った刀印で、小さく九字を切る。そうやってこっそりと発動させた結界術で身を覆い、不快な環境を遮断するとともに心を静めた。
 この状態なら、まさか骸魂程度に心を乱されはするまい。
「……主催の手の者に見つかると厄介かもしれんのう。名残惜しいが、さっさと往くとするかの」
 アイラザードは豆腐小僧に礼を告げると、周囲に人影がないことを確かめ、せっかく石像の陰から飛び出したのに黙殺されて涙目になる骸魂をその場に打ち捨てて、会場の奥深くを目指し進むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
WIZ
(妖怪の皆さんを助けてあげたい)
その思いと共に戦場へ向かう
聖痕に触れながら落ち着きを持って骸魂の妨害に対応する
笑顔を浮かべ驚かせようとする骸魂へ「ご苦労様です。大変ですね」と逆に労ってあげる
差し出される生姜湯も「ありがとうございます。でも、今はまだ喉も乾いていませんので」と丁寧に断る。
自分の「妖怪さん達を助けたい」という思いに揺らぎはない、揺らがされない
もし、妖怪さん達の元へ辿り着いたら生まれながらの光で妖怪さん達を癒してみる
直接的な効果は今はないかもしれないけれど、心の励みになってくれれば…
(必ず助けますから)



 その地では、妖怪たちが暑い最中にわざわざ暖を取るような行動をさせられているという。しかも、そうすることに何の疑問も抱かず、妖怪たちが自らそうしているのだという。
 鳳凰院・ひりょ(人間の聖者・f27864)はそんな妖怪たちを助けたいと願って、我慢比べ大会会場という戦場へと身を投じたのだ。
 ――其処は熱気が渦巻く異界であった。締め切られた屋内のもったりとした空気を浴びて、ひりょの肌にじんわりと汗がにじむ。目前には、ひりょを招き入れるように並び立つ石像たち。その陰には、……ああ、いるとも。骸魂たちが哀れな犠牲者を驚かせようと、隠れているとも。
 ひりょは己の躰に刻まれた聖痕を指先で触れて、心を鎮めた。この雰囲気に惑わされぬように、焦燥感に呷られることのないように、ゆっくりと、ゆっくりと。
 そして、石像が並ぶ通路へと一歩を踏み出す。
「……わっ!」
 たちどころに驚かそうとしてくる骸魂たちが現れた。急に目前に出てきたかと思えば、別の骸魂がひりょの首筋に冷たい息を吹きかける。
 けれど、ひりょはけっして心を揺らすことなく、あまつさえ笑顔まで見せて、
「ご苦労様です。お役目、大変ですね」
 と骸魂たちを労わってみせた。
「こうも暑いと喉が渇くだろ。ほら水分を取っていきなよ」
「心遣い、ありがとうございます。でも、今はまだ喉が渇いていませんので」
 親切そうな妖怪に手渡されそうになった生姜湯は、礼を失せぬようにと丁重に断った。
 己の根底にある『妖怪さんたちを助けたい』という想いに揺らぎはなく、揺らがされもしないから、どのように働きかけられようとも、ひりょが自分を失うことはない。ただ静かに、会場の奥を目指した。
 その道程で暑気の中でさらに暖を取らされて苦しむ妖怪がいれば、すれ違いざまに穏やかな光を放つ。少しでも楽になってくれれば、あるいは心の励みになってくれれば……。
(「必ず助けますから」)
 積み重なる疲労など気にも留めず、出会う妖怪たちを癒していくその姿は、まさしく聖者の道行きだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月守・咲凛
アドリブ他諸々OK。
我慢大会なのです?負けないのですよ!
既に厚着完了で、シマエナガの着ぐるみを着てその上から武装ユニットを装備しています。
あつい……のです……あつくないのです。
あつい……くないのです。
とりあえず我慢しながら進んでいきますが、生姜湯はお子様的に匂いがアウト、飲みたがりませんが嫌がる感情が感知されて石像に火を吹かれ、瞬時に見切って炎を回避しながらミサイルで石像を破壊します。
生姜湯を渡してくれた妖怪さんには何でこんな事をしているのか尋ねてみましょう。暑いだけなのですよ?
……あれ?
暑いのですよ!
自分の言葉で我慢大会なんかする理由が特にない事に気付いてシマエナガ着ぐるみを脱ぎ捨てます。



 つまり、これは勝負なのだ。
「我慢大会なのです? 負けないのですよ!」
 会場へと姿を見せたときからすでに、月守・咲凛(空戦型カラーひよこ・f06652)は完璧な装備で身を固めていた。ふっくらとした綿毛のようなシマエナガの着ぐるみを一部の隙も無く着こなした上から、ツンツンと尖った武装ユニットを身に着けている。
 その姿はまさに、武装シマエナガ。立ちふさがる敵たちをふわふわとした愛くるしい姿で蕩けさすもよし、身に纏った火力で圧倒するもよし、もはや敵などないはずである。
「あつい……のです……、あつくないのです」
 だが、しかし。あにはからんや、自滅しかかることになろうとは。咲凛を以てしても予測不可能な誤算であった。
「あつい……くないのです」
 暑さにやられて朦朧としながら、酔客のような足取りで道を進む。親切そうなそぶりで差し出された生姜湯さえも何の疑いもなく口にするところだったが、
「ありがとうなのです……、っ、この匂いはだめ、だめなのです!」
 湯飲みから立ち上る生姜の香りが鼻を刺激して、湯飲みを取り落としてしまった。
 ――ぼわーっ!
 それもまた、驚いたことには違いない。周囲に立つ石像たちが抜け目なく驚きを感知して、咲凛へと容赦なく火を吹きかけてくる。
 けれど吹き付けられる火炎という明白な危機が、咲凛の中にあるスイッチを入れたのだ!
「――!」
 先ほどまでふらついていたとは思えない鮮やかなステップを踏んで、シマエナガの毛先が焦げるか焦げないかの間合いでギリギリ炎を躱す。
 その間に開いた肩部のハッチからマイクロミサイルが雨あられと飛び出して、周囲の石像に降り注いでいき――、一拍を置いて爆炎が上がった。
 石像たちは燃え盛る炎に包まれて、傾ぎ、倒れていく。その中を炎に赤々と照らされた武装シマエナガが歩き、倒れた妖怪へと手を差し伸べた。
「大丈夫だったのです? それにしても、どうしてあんなアツアツの生姜湯なんか渡そうとしたんです? 暑いだけなのですよ?」
 それは素朴で率直な疑問だった。そんな虚心からの問いは、時に真実を突く。
「……あれ?」
 自分が発した疑問だったけれど、その疑問自体が自らに突き刺さって……、そうだ!
「暑いのですよ!」
 ついに咲凛は真理へと至った。
 つまり、勝負など受ける必要はないのだ。
 そう思い至った次の瞬間には、すでにシマエナガの着ぐるみを脱ぎ捨てていた。
 ――流れ落ちる、滝のような汗。サウナスーツもかくやという有様だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜霞・刃櫻
【アドリブ・連係歓迎】
こんな大会に参加するのはロックでパンクっすけど、自分の意思でやらないならカラダに毒でやんす!
あっしのパンクなロックンロールを見せてやるでやんす!

ビックリしたら火を浴びる?うるせー逆に驚かせてやるっす!
「目立たず」物陰の「闇に紛れて」「忍び足」で骸魂に近付いてUC【夜霞の溟海】の鯨型の霞に変身して片っ端から「おどろかせ」ます
驚かせる時に霞の鯨が実体化するので、より驚かせる事が出来ると思います

成功しても失敗しても驚かされたら意味がないので、実行後は『ヘイズ・グレネード』で「目潰し」と「時間稼ぎ」を「おどろかせつつ」全力で逃げます!チンピラ特有の「逃げ足」には誰も追いつけまい



「我慢大会たぁロックでパンクっすね! 季節が暑くなっていくというのに、あえて自ら更なる暑さを求めていく反抗心、それは間違いなくパンクを体現してるっす!」
 夜霞・刃櫻(虚ろい易い兇刃・f28223)はカクリヨファンタズムの世界に降り立った瞬間、ステキなパンクファッションで固めた身体を震わせて、思いの丈を漏らした。これがパンク・ロックの精神を宿した参加者たちだけが鎬を削る大会なら、どれほどよかったことか。刃櫻も諸手を挙げて大会に参加していたかもしれない。
「でも自分の意思でやらないのなら、ただカラダに毒なだけでやんす! そんな大会はちっともパンクじゃないっす! いいっすか、あっしのパンクなロックンロールを見て反省するっすよ!」
 パンクを愛する刃櫻にとっては強制された行動など、まさしく忌むべき対象である。刃櫻はひとしきりシャウトし終えたあと、並び立つマッチョな石像たちを白い瞳で睨みつけた。あれらの驚くと火を浴びせる石像の陰には、骸魂どもが驚かせてやろうと手ぐすね引いて隠れているはずだ。
(「ビックリしたら、火を浴びせる? うるせー、逆に驚かせてやるっす!」)
 刃櫻のパンク・ファッションな格好は、妙に郷愁を誘うレトロさのカクリヨファンタズムでは周囲から浮いてしまい、どうしたって衆目を集めてしまう姿だ。だが、刃櫻が闇に紛れようとした瞬間から、違和感が仕事をしなくなる。目立たない物陰を選び、妖怪たちの盲点を突くように闇から闇へと移動して、石像との距離を詰めていく。もちろん、足音で存在を気付かれてしまうなんて下手は打たない。
 やがて道行く妖怪たちにも、もちろん骸魂どもにも悟らせることなく、石像の傍までたどり着いた刃櫻はユーベルコードを発動させた。
(「チビらせてやるっすよ!」)
 石像の陰から通路を伺う骸魂どもは、まさか自分たちが驚かされる側だとなど思ってもみなかったはずだ。
 其処へ唐突に巨大な鯨が確かな実体を伴って現れたのだから、心底肝が冷えただろう。
 ――そして、石像はとても平等だった。敵味方の区別なく、『驚いた』ものたちに火炎を浴びせるのだから。
 立場が逆転し、火に包まれる骸魂たちは狂乱の中にあった。中には鯨の正体に気付く骸魂もいたけれど、
「もう一発おまけして……、あばよでやんす!」
 刃櫻が最期に投げ捨てたスモークグレネードの霞が晴れるころには、もう刃櫻の姿は跡形もなかったのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

煙晶・リリー
我慢大会‥何が楽しいんだろ。修行ごっこ?
ま、私ほどのクール系なら暑さなんて余裕ね


あっっっつ‥‥くないわー、余裕だわー。あっっつ‥くない‥‥
ほら、私カッコいいクール系美少女だからね。むしろ涼しいね
カッコいいからモデルウォークとかしちゃうね(やや錯乱)

【指定UC】で石像の前に壁を置いて火を防ごう
おこたも下から壁ドーンって生やして破壊しておく

いや、私は表情を崩さないクール系美少女だからこれぐらい余裕だけど
全然動揺とかしないからね。むしろ生まれてから動揺した事ないからね
私はいつでもクールだから。わっ、生姜湯?わーなにこれ美味し(ボォオオオオオ)



「我慢大会だって? 何が楽しいんだろ。修行ごっこでもしてるの?」
 煙晶・リリー(クール・スモーキー・ガール・f21371)には、我慢大会を行う意義がちっとも理解できない。やれやれと首をすくめ、クール(だと本人が思っている)な流し目でキメる。
「ま、私ほどのクール系なら暑さなんて余裕なんだけど」
 ふぁさ……。
 じっとりとした多湿の空気のせいか、いつものように気持ちよく髪がかき上げられない。けれど、やり直すのはそれはそれでクールじゃない気がして、再度上がりかけた手を止めた。
 ――じっとりしているのは、会場の空気だけじゃない。すぐにリリーの額にも、汗が噴き出してきた。
「あっっっつ……、くないわー。余裕だわー。あっっつ……くない……、ちっともね」
 つー、とうなじを流れていく汗にも、背中に浮いてきた汗にも負けず、表情はそのままで。
 胸元を開いて風を送り込みたい衝動も、意志の力で押さえつける。だが、このまま何もせずにいるのも限界だ……。
「ほら、私カッコいいクール系美少女だからね。むしろ涼しいね」
 むやみやたらとポーズを決めてみたりもするけれど、それはそれで辛い。
「カッコいいから、モデルウォークとかしちゃうね」
 いっそ動き出してしまったほうが楽だと錯乱気味の思考をして、ついには胸を張って歩き始めた。
 ここは即席の舞台。妖怪たちとそびえ立つ石像の数々が観客だ。ついでに陰に隠れている骸魂どもにも見せつけてやろう。
 彼らが見守る中、リリーは胸を張り、堂々と歩いた。モデルを驚かせようだなんて、なっちゃいない観客の骸魂の前には、ユーベルコードで煙水晶のバリケードを突き立てて押しとどめる。
 モデルになりきって歩くリリーの心は揺れない。モデルだから、どんなに暑くても表情は変わらない。
 そうして石像の間を抜けてたどり着いたランウェイの終端では、炬燵が待ち構えていた。
 ――視界に入った瞬間、煙水晶で下から炬燵を突き上げて見なかったことにする。いや違う、炬燵なんてものは最初からランウェイにあろうはずがないのだ。
 そして煙水晶の壁を背に負うように、リリーは華麗なターンを決めた。雰囲気に飲まれた妖怪たちから、一斉に拍手を送られる中、リリーは胸中で満足げに頷く。
(「いや、私は表情を崩さないクール系美少女だからこれぐらい余裕だけど。全然動揺とかしないからね。むしろ生まれてからこっち、動揺した事なんてないからね」)
 これは決まったんじゃないか? 奇妙な達成感がリリーにはあった。今の私は最高にクールだ、間違いない。
 ――それは油断だった。きっと先ほどまでのリリーなら、差し出された生姜湯をクールに断っていたに違いない。だが一仕事終えた満足感に浸るリリーは疑いもなく生姜湯を受け取り、口をつけてしまう。
「えっ、生姜湯? ふーん、あ、なにこれ美味し……」
 このうだるような暑さの中でさえ生姜湯を美味しく感じたことに、リリーは驚いた。驚いて、しまった。
 ――ぼわーっ!
 石像から炎が情け容赦なく吹き付けられる。
 ……残念ながら、最後の最後までクールを貫くことは難しかったようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
これが苦行という東洋の精神鍛錬……え、違うのですか?

普段着のシスター服で参加してみましたが、これは暑いですね……
上半身は首まできっちり覆われていますし、何よりガントレットとグリーブが金属なので加熱して……
全身汗だくですが、【気合い】【環境耐性】で耐え抜きましょう

カレー、といえばUDCアースの美味しい料理ですよね
いただきま……からいっ!?
吹きかけられる炎は、元より炎熱には強い(トリニティ・エンハンス・火炎耐性・オーラ防御)ので問題はありませんが……
冷たい牛乳……なんてありませんよね(もぐもぐ)

妖怪さんたちに【破魔】【浄化】の力を込めた生姜湯を飲ませて正気に戻す
リタイアするのなら、あちらですよ



 あえて自らを困難な状況に追い込んでいく我慢比べ大会という存在を知ったとき、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は、なるほどと膝を打ったものだ。
「これが苦行という東洋の精神鍛錬なのですか――! ……え、違う? そうですか……」
 けれど即座に勘違いを正されて、オリヴィアは若干の気落ちを感じた。
 東洋の修練法を学ぶ機会とならなかったのは残念だが、それはそれとしてオブリビオンが潜んでいるのなら、その企みは止めなければならない。着慣れたシスター福を身に纏い、オリヴィアは我慢比べ大会会場へと飛び込んだ。
(「これは確かに暑いですね……」)
 首元まできっちりと覆われたシスター福は涼しさと無縁だし、金属製のガントレットとグリーブは容易に温まってしまい、熱いくらいだ。たちまち全身で汗が噴き出してきてしまい、帰還してシャワーでも浴びたい気持ちになるけれど、気合で不快感を抑え込んで、会場の奥へと向かう。

 その道すがらで盛んに毛布や懐炉を勧められたりしたのだが、この会場に渦巻く強制力を理解しているオリヴィアは角が立たないようにすべて断っていた。ただ、それらの中で一つだけ受け取ったものがある。
 それがいまオリヴィアの手の中にある、こんもりとカレーライスが盛られた皿だ。
「カレーと言えば、UDCアースの美味しい料理ですよね。いただきます……、からいっ!?」
 興味に駆られ、ついつい受け取ってしまったのだが、これがまた辛い。むしろ石像から吹きかけられる炎のほうが、ユーベルコードの力と、鍛錬を通して身につけた技能のおかげでぬるいほど。口の中の耐性まではさすがに鍛えていないのだった。
「冷たい牛乳……なんてありませんよね」
 それでも食べる手は止めずに歩いていると、妖怪に呼び止められた。
「姉ちゃん、飲み物がほしいのかい。これでも飲んでくか?」
 残念ながら差し出されたのは熱い生姜湯、オリヴィアが求めていたものではない。だが、そこでオリヴィアは本来の使命を思い出して、一計を案じた。
「わ、ありがとうございます。そうだ、私、もっと美味しくする力を持っているんですよ。お礼代わりに、ちょっと試させていただけませんか?」
「へー、そりゃ面白い。やって見せてくれよ」
 実際にオリヴィアが込めたのは破魔と浄化の力だが、妖怪は何か光ったなくらいの理解でしかない。特に疑うこともなく、妖怪は生姜湯を口にした。
「お、うま、熱っ……。あれ、オレはなんで暑い中でこんなの口にしてんだ?」
「たしかに会場の中は暑いですよね。あちらが出口に近いですよ」
「おう、姉ちゃんありがとよ。あんたも無理すんなよ!」
 正気に返った妖怪を見送って、オリヴィアは再び歩き出した。浴びせられる炎は相変わらず気にも留めず、会場の奥をひたすらに目指して。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『輪入道』

POW   :    燎原火炎陣
【激しく回転しながらの】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【他の輪入道】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    紅蓮疾走
自身に【燃え盛る炎】をまとい、高速移動と【回転する炎の輪】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    ファイアホイールスピニング
【回転速度】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちはそれぞれのやり方で、この奇妙な会場を突破した。
 そしてたどり着いた会場の中心では、暑気の中で暖を取るなどといった行動の果てに、骸魂に飲み込まれた妖怪たちがオブリビオンと化して屯していた。
 オブリビオンの姿は、輪入道。「炎と轢殺」を司る、生首のオブリビオンである。あまりの暑さの果てに、己自身が燃え盛る炎と化したのか。
 もはや輪入道となってしまえば、暑さを厭うこともないのだろう。中に入るべき身体はないが、炬燵を囲み談笑し、あるいは暖炉の中に突っ込んでは自らが火種となって楽しんでいる。
 会場の中心にいることで、強制力は着実に強まっている。猟兵たちも暖を取らねばならないという、強い圧力を感じていた。この圧力を逃れるには、あえて逆らわず暖を取ってしまったほうがいいのかもしれない。幸い周囲には、輪入道たちが楽しんでいたのか、種々の体が温まる食べ物から、暖かな服飾の類、あるいは暖房器具に至るまで、暖を取る選択肢は豊富にある。
 ――如何にして輪入道を突破し、主催者に迫るべきか。猟兵たちは決断を迫られていた。
月守・咲凛
あつい……くないのです。
ヒヨコさんの着ぐるみ(コモン;黄色カラー)
を髪のソラノナミダから取り出して着込んで輪入道達の前に飛来しますが、あついのですよ!と今回はすぐに我に返ります。
暑さのあまり身体を捨ててしまえるのはさすが妖怪さんですけど、かわいそうなので何とかしてあげたいのです。
そのままだと歩くだけでも目が回ってふべんなのですよ!はやく元に戻るのです!と説得?しながら骸魂を払うべく攻撃していきます。
……回ってるだけなのです?
すごい勢いで回り始めた輪入道さん達を空中から眺めてちょっと目が回りつつも、ユーベルコードの水弾で打ち水(物理)して少しでも涼しくしてあげるのです。


地籠・凌牙
【アドリブ連携諸々歓迎】
ド M か !!!!!
(思わず叫ぶ)
こんな暑い中さらに厚着して楽しめとかここのオブリビオンはどんだけマニアックな趣味してんだ!!!

ち、畜生俺はこの流れに乗りたくねえ、乗り、乗りたく……
ぐぐぐぐぐ……

畜生!上等だよやってやるよやってやろうじゃねえかァ!!!(抗い切れず謎の逆ギレ)

【怪力】活かしてどてらを何重も羽織って重たそうな湯たんぽ抱えて【指定UC】!
俺と同じ装備をするなら今着込んだのも反映するハズ!
適当な高台(?)から飛んで【火炎耐性】でゴリ押し【重量攻撃】!
竜と一緒に湯たんぽでぶん殴った後【グラップル】で追い打ちするぜ!

早く終わらせてえこんな我慢比べ!!(切実な顔で



「あつい……くないのです」
 咲凛は『ソラノナミダ』の内在世界に細い手を差し込んで、新たな着ぐるみを引き出した。今度のキグルミは、どこにでもいるような黄色いひよこ。素早く着込んで、再び着ぐるみ姿となった咲凛は地面を強く蹴って、テイクオフ。
 飛べないはずのひよこだけれど、咲凛は力強く飛んだ。飛び始めて間もなく、燃える輪入道たちの姿が大きく目に入る。
 輪入道たちは良く言えばリラックス、率直に言えば少々緩んでいるようにも見えたが、咲凛の飛来に気づいて迎撃体制に移行し始めた。ゆっくりと回っていた炎車が次第に加速して、燃え盛る炎も激しくなっていく。空間自体の気温は、そうして放たれた熱気に加熱されていくばかりだ――!
「やっぱり、あついのですよ!」
 一味違う今回の咲凛は、素直に今の状況を認めた。それは自ら進んで燃え盛っているように見える、輪入道の姿を目にしているからかもしれない。
「ドMか!!」
 輪入道の姿を一瞥した凌牙は、心底からの咆哮を上げる。中枢に近づくにしたがって、体感温度がいっそう上がってきた感がある中で、輪入道たちは暖を取ることを楽しんでいる様子だった。ただでさえクソ暑いのに、だ。
 暑さのあまりに身体を捨てて变化してしまったのは、妖怪ならではだと咲凛は思う。けれど、望んでそうなったわけではないだろう。空間に満ちる妖気にそそのかされて暖を取り、弱りきった挙げ句に骸魂に飲み込まれて変身した姿が輪入道なのだから。
「そんなの、かわいそうなのです。何とかしてあげたいのです! だって、回り続けてたら歩くだけで目が回って、ふべんなのですよ! 早く元に戻るのです!」
 すでに着ぐるみを着込んでいる咲凛は、妖気の影響が軽減されていて自由だ。思うがままに会場を飛び、身につけた武装の数々から攻撃を放つ。
 一方の凌牙は、妖気に囁きに流されることにまだ抵抗があった。
「ち、畜生! 俺はこの流れに乗りたくねえ、乗り、乗りたく……」
 ぐぐぐぐぐ……。歯を食いしばって、『熱くなれよ!』と強いてくる力に抗う。抗うが、このままでは十全な力を発揮できそうにない――。
「……畜生! 上等だよやってやるよやってやろうじゃねえかァ!!」
 腹を決めた凌牙は、息を継ぐ間もなく一息で言い切った。会場に散乱している防寒グッズのなかから何着ものドテラを拾い上げ、重ね着していく。厚く綿を詰め込まれたドテラは、とても暖かい。真冬の最中なら心強い味方のはずだが、いまはその暖かさがひたすら憎い。
 けれど、汗をかくたびに心が軽くなった気がした。会場の悪意を感じずにはいられない、たっぷり満たされた湯が重いホカホカの湯たんぽを抱えれば、重ね着しまくったドテラのせいで見た目は真ん丸なシルエットでも、羽が生えた気にさえなれた。
 そうして凌牙が準備している間、咲凛は砲口の数々から水弾を放ち何重もの弾幕を形成、輪入道たちを牽制し続けていた。
「うう、目が回るのです……!」
 次第に回転速度が上がっていく輪入道の炎車を見ていると、頭がクラクラしてくる。その熱気を鎮めるためにも、打ち水をして少しでも涼しくしてあげるのだと、さらに精力的に水弾を撒いた。
 輪入道や壁、床に着弾した水弾は飛沫を上げて弾ける。元から湿度が飽和しかかっているこの会場では、弾けた飛沫に冷やされた空気が霧を生んで、互いの姿が見えにくくなっていく。
 ――その霧の中に大きく、何故か丸い影が現れた。おまけに何か重そうなものを抱え込んでいる。大きさは、全長3m強といったところ。炎車の回転速度を上げた輪入道は、自らの身体を武器として霧の中へと見える巨体へ突撃していった。
 だが巨体は輪入道の突進を物ともせず、変わらず其処にいた。突撃した輪入道に霧が散らされ、姿を明らかにして。
 それはドテラを何重にも着込んだ黒竜であった。両脇には巨大なサイズの湯たんぽを抱え……、その頭の上には、同じ格好をした凌牙が堂々と立っている。
 凌牙が喰らった穢れより生み出される黒竜は、凌牙の装備を模擬する。すなわち、ドテラを着込んでいれば、そのように。輪入道たちの突撃は巨大化したドテラに阻まれたのだった。
「いくぜぇッ――!」
 飛び上がった凌牙は、輪入道めがけて両手で抱え上げた湯たんぽを振り下ろす。黒竜もまた湯たんぽを振り回し、横を飛ぶ輪入道たちを地面へと叩き落とした。
 ドテラを着て湯たんぽで殴り合う様子はまさに、我慢比べ大会の最中に発生した大乱闘のようである。
「早く終わらせてえ、こんな我慢比べ!!」
 切実な凌牙の願いをよそに、非情な戦いはまだまだ続くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アイラザード・ゲヘナ
※アドリブや他猟兵との連携はOKです

ヤレヤレじゃ。
この暑い空間はいつまで続くのかのぅ。
年寄り(注:稼働年数101年!!)は労わらんかい。

これ以上妾は付き合いきれんのじゃ。
環境耐性の効果を込めた結界術も限界があるしのぅ。

それそこの輪入道。
道を開けい。
UCの弦月を発動じゃ。
「では、(金烏)スケさん。(蟾蜍)カクさん。月に代わってお仕置きじゃ。」
スケさんとカクさんに除霊の効果のある呪詛を加えるのじゃ。
これで輪入道を懲らしめるのじゃ。

妾は後ろで援護じゃの。

降霊術で召喚した雑霊を宿らせた木霊の式神(式神使いの術)の弾幕で妾の方に来た輪入道を迎撃じゃ。
妾が攻撃喰らうとまずいしのぅ。


鳳凰院・ひりょ
WIZ
アドリブ連携歓迎

他の猟兵の皆と自分を戦闘に支障の出ないレベルに生まれながらの光で治療
(なんだ?敵が急に強くなった気がする。こちらの攻撃の通りが悪くなったような)
光陣の呪札で援護している間にふとそう感じる
タイミングとしては敵の車輪の速度が上がってから
(これが車輪の速度の影響だとするなら、あの車輪の回転速度を元に戻してやれば…)

実はいざという時の為の奥の手はある
だが、今は使うタイミングじゃない
まだこの後に主催者のオブリビオンと一戦交えねばならないのだから
退魔刀を車輪の隙間に押し込み強引に速度を落とせないか試みる
無理なら相手のスタミナが尽きるか、あるいはこちらが先か、我慢比べとしよう



「ヤレヤレじゃ。この暑さはいつまで続くかのう。最後までか? 主催者を片付けんと終わらんのかの? まったく年寄りは労らんかい」
 最奥を目指す道すがら、アイラザードは可愛らしい声で毒づく。可憐な見た目からは想像し難いが、稼働年数はかれこれ100年である。
「これ以上、妾は付き合いきれんのじゃ。対環境結界にも限度があるしのう」
 アイラザードはパタパタと自分を仰ぎながら、眉根を寄せた。
「そうだね、俺もエアコンの効いた快適な部屋が恋しくなってきたよ」
 たまたま同道することになったひりょが、苦笑を浮かべてうなずいた。そう言いながらも、ひりょは必要とあれば我慢比べになっても粘る覚悟は決めていたのだが。
 そして二人は、先行した仲間たちと輪入道が戦っている最中へと突入した。
「それそこの輪入道ども、道を開けい」
 アイラザードは敵の射程に入る前に足を止め、樫木の化石で出来た杖を振るって対となる配下を呼び出す。上弦の月に住む金烏スケさんと、下弦の月に住む蟾蜍カクさんのペアである。
「では、スケさん、カクさん。月に代わってお仕置きじゃ」
 黒く、されど輝く金烏は空へと飛び立ち、反して目立たぬ蟾蜍はふてぶてしく地を飛び跳ねて輪入道たちに迫っていく。そんな配下たちへとアイラザードは大きく杖をふるい、敵に対する呪詛を込めた。
「これで輪入道を懲らしめてくるのじゃ」
 アイラザード本人に匹敵する力を持つ配下たちは、主から託された力も加え、輪入道たちと渡り合う。
 一方のひりょは、生まれながらの聖なる光で猟兵たちの傷を癒やし、存分に戦えるように援護を重ねていた。癒やしだけではなく、合間に投げつけた呪札が煌きの束へと変じて、輪入道の炎車を穿った。
 ――けれど、炎車が激しく回転している輪入道ほど、あまり打撃を与えられていないように思える。
(「なんだ? 炎車の速度の影響なのか? そうだとするなら、回転速度を落とすことが出来れば……」)
 観察から導かれる対策と、それを実行するための手段。ひりょは己にどんな手札があるか、考えを巡らせた。実のところ、切り札は秘めている。けれど、今がそれを切るタイミングとは思えない。輪入道は、主催者と刃を交える前の前哨戦でしかない。
 代わりにひりょは退魔刀を逆手に握って、猛る輪入道の前へと飛び出した。目の前を飛んでいく輪入道に取り付き、激しく回る炎車の隙間に刃を差し込む。
 ――ぎちっ、ぎちっ!
 なにかが軋む嫌な音がする。油断すればひりょの身体も投げ出されてしまいそうだ。
「――ッ!」
 ひりょは歯を食いしばって耐えた。いまこの瞬間、炎車の回転は止まっている。しかし回転を止めている間は、ひりょが反撃に移る事はできない。
 だが、心配することはなにもない。ただ一人、孤独に戦っているわけではないのだから。
 動きを止めた輪入道に、揺らめく陽の光のなかに黒点の如く浮かび上がる金烏が、大きく羽ばたいて突撃した。鋭い嘴を突き出して、まさに矢のごとく輪入道に突き刺さり、そして食い破る。
 金烏が派手に動き回る一方で、相方の蟾蜍は召喚の間は戦闘力を失っている主から大きく離れず、油断なく備えていた。
 輪入道たちは次第にその活力を落としている。あと一歩でオブリビオンを倒し、骸魂に飲み込まれた妖怪を救うことができそうだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夜霞・刃櫻
【アドリブ・連係歓迎】SPD
気分はさながら炎の夜っすな!
つまりノリが良い奴が優勝でやんす!

暖を取る衝動は輪入道自体に近付けば大丈夫?暑さは「火炎耐性」「環境耐性」で痩せ我慢
『ヘイズ・グレネード』でスモークを焚いて「目潰し」します
また、「武器改造」で粘着性の物質をばら蒔く弾頭に改造した『グレネード・ランチャー』『ナパーム・ランチャー』で足止め
これらは上手く出来なくても「時間稼ぎ」にはなりそう
油断した所で「闇に紛れて」「忍び足」からのUC【夜霞の仕手】でレベル570の「暗殺」!
頭だけだから頭を「ナイフ」で刺せばいけるいける

バレたら三下特有の「敵を盾にして」「逃げ足」で逃走!
三下だもん許して



「気分はさながら炎の夜っすな! つまりノリが良い奴が優勝でやんす!」
 輪入道が飛び交う中へ姿を見せた刃櫻は、目を見開いて楽しそうに笑った。どんなに異常な光景を目にしたって、それに怯んでしまうほど、内に秘めた反抗心は萎びちゃいない。
 空間に満ちた妖気は、刃櫻にも暖を取れ、熱くなれと迫ってくるが、それに大人しく従う気もさらさらない。
「あれだけ燃え盛ってるんだから、近づけば熱いっすよね! つまり暖を取るのに不足なし!」
 自信満々に言い切って、高速で飛び交う輪入道たちへと向けて煙幕弾をグレネード・ランチャーで乱射する。たちまち周囲は煙に包まれて、視界が急激に悪化していく。猟兵たちを見失った輪入道は速度だけは早いけれど、無闇矢鱈と空間を飛び交っているだけだ。
 混乱をもたらしたところで、今度はトリモチ弾に焼夷弾を交えて戦場をさらなる混乱の中へと突き落とした。くっつきあうネバネバが輪入道の髪を妙な形にセットし、あるいは炎車に巻き込まれて妙な刺激臭を放ち、そこに投入された焼夷弾が会場を火の海に変える。
 ――今や此処は炎熱地獄の底である。暖を取らせようとする妖気も、大満足の結果に違いない。
 そんな燃え盛る火炎の中で、刃櫻はいつの間にか姿を消していた。先程まで景気よく響いていたランチャーの発射音も聞こえない。
 輪入道は炎の中を飛び交うが、刃櫻の姿を見つけられずに動きを止めてしまった。炎は一層激しく燃え盛り、輪入道の炎車と相まって、会場の温度がますます上がっていく。
 そして輪入道の頸に突き立てられる、一振りのナイフ。
「――チンピラなんて所詮は鉄砲玉、これがあっしのお仕事でやんす」
 潜んでいた炎の中から刃櫻が身を現して、へらりと笑った。
 炎に照らしだされた刃櫻の姿は、赤く紅く染まっている。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
あついですね……

これがコタツ……床を掘り下げた中に焼けた炭や石があって、机で覆っているのですね
どうやら今は、輪入道自身が熱源になって更に熱く……
では武装したまま脚を入れて、【環境耐性】で耐えながら暖を取りましょう
熱せられたグリーブが赤くなり……それ以上の出力で炎の魔力を纏い(属性攻撃)、熱を以って輪入道に逆襲する
ただの熱さならともかく、邪悪を焼く聖なる炎の熱ならば効果があるでしょう(破魔)

狂乱して襲い掛かってきたら、【踏みつけ】や【熾天流星脚】でオブリビオン部分のみを【浄化】する
球技のように蹴り飛ばし(吹き飛ばし)、連携を乱して確実に撃破していく



「あついですね……」
 オリヴィアはぼやきながら、戦場に姿を見せた。そのまま堂々とした足取りで刃や魔力が飛び交う戦場を抜け、片隅に設置されたコタツの傍へと寄る。輪入道がなぜか加勢もせず、コタツの前にポツンと浮かんでいたがそちらには目もくれず、オリヴィアは掛布団をぺらりとめくる。
「これがコタツ……。ふむ、掘り下げた床に焼けた炭や石を置き、机で覆っているのですね」
 まさに興味本位といった表情でコタツを覗き込むと、熱源の代わりに鎮座していた輪入道と目があった。
 ――だが、これまた特に驚きもせず、鎧った足をコタツに入れて、掘り炬燵のヘリに腰掛ける。対面には輪入道、足元にも輪入道。無視されて、輪入道たちはなにげに傷ついた。なんとしても、目前に座る女を涙目にしなければならぬ。憤る輪入道たちは、激しく燃え盛った。呑気にコタツに入っている女に参ったと言わせ、我らのコタツから追い出さねばならぬ。
 ――こうなれば勝負でしょう。
 期せずして、我慢比べ大会の幕が上がった。とくにゴングは鳴っていない。
 足下の輪入道は炎車を激しく回転させて熱を生み出し、コタツの温度を上げていく。対面にいる輪入道は熱風をオリヴィアへと浴びせ、コタツから出ていくように仕向けた。なに、我らは燃え盛っているのだから、熱さなど関係がない。有利すぎる勝負だと、驕りきった表情で得意げに笑いながら。
 そして熱せられたオリヴィアのグリーブが赤色を帯びていく。だが、それは輪入道が放った熱よりも、遥かに強いエネルギーで輝いている。オリヴィア自らが、熱を生み出していたのだ。
「なるほど、ただの熱なら平気なのでしょう。……では、邪悪を焼く聖なる炎なら如何です?」
 オリヴィアの眼鏡が煌めいたように見えた次の瞬間、臨界点を超えた熱量は炎となってオリヴィアの両足から吹き出した。それは破邪の炎。妖怪を飲み込んだ骸魂なる存在を、清め焼く炎。
 堪らず足下の輪入道は、頭上の机を跳ね飛ばして飛び上がった。対面にいた輪入道も、聖なる炎に焼かれてはたまらないと、直接的な暴力の行使に出る。
「大会に参加するには、少々我慢が足りないのではありませんか?」
 オリヴィアは予期していたかのように、掘り炬燵の縁に手をかけて身体を回した。炎を纏う踵の先が輪入道の額へと叩き込まれて、輪入道はすぐに沈黙。回転はまだ止まらず、落ちてきた他方の輪入道をトスバッティングのように遠くへと弾き飛ばした。

 ……片隅のコタツで勝負がつくまでの間に、全体の戦闘もカタがついていたようだ。輪入道たちの活動が止まり、これで少しは涼しくなるかと猟兵たちは期待する。
 だが、その期待はすぐに裏切られることとなった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『フェニックスドラゴン』

POW   :    不死鳥再臨
自身が戦闘で瀕死になると【羽が燃え上がり、炎の中から無傷の自分】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    フェニックス・レイ
レベル分の1秒で【灼熱の光線】を発射できる。
WIZ   :    不死鳥の尾
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【炎の羽】で包囲攻撃する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「まったく、輪入道たちったら。ホントだらしないよね」
 輪入道たちがすべて沈黙した直後、燃え盛る炎の羽を周囲に浮かべた少女が奥から姿を表した。彼女が主催者に違いない。あどけない少女の姿をして入るものの、少女から感じる圧力は輪入道とは比べ物にならなかった。
 この少女の姿をしたオブリビオン「フェニックスドラゴン」は竜神の少女が核を成しており、「フェニックス」の骸魂が少女を飲み込んで生まれたものだ。
 不死のはずの不死鳥が死に至り、骸魂となった。納得できぬ不死鳥が、竜神の神力を利用して再び不死であることを証明しようとしている存在、それがこのオブリビオンだ。
「つーかさ、復活するのって熱いわけ。だから、熱いのが嫌で復活できなかったのかなって。でもやっぱり、復活したいじゃん? 復活できない不死鳥とか、笑われちゃうじゃん? そこで私考えたの。じゃあ、みんなと一緒に熱さを我慢したら、復活できるんじゃないかなって。でさ、みんなも復活する時の練習ができて、一石二鳥じゃん? みんな幸せになれるじゃん! ほら、みんなでいっしょに熱くなろうぜ!」
月守・咲凛
守ろうとしている対象がアレなのでテンションは上がりませんけど、我慢大会させられた事には怒ってるので容赦はありません。

でも死んじゃってるのです。
オブリビオンで復活するのはその辺のわんこでもできるからちゃんと復活できてないのです。
子供の残酷さで冷酷な事実を突き付けておきます。
敵の攻撃に対しては射線を見切って、ガトリングで牽制射撃しながらスラスターを噴射して慣性を無視したジグザグ飛行で回避、そのままこちらもユーベルコード発動して一気に攻撃です、ミサイルとガトリングで一斉射撃しながら連結火線砲の収束ビームをチャージして、一気に攻撃です。


アイラザード・ゲヘナ
あえて言おう。
馬鹿であろう主は…。

もうこのまま燃え尽きて灰と成れ、永遠に…(氷点下の視線)

えぇい。この暑い熱いでも厚くはない空間はもうこりごりじゃ。

環境耐性効果のある結界術を展開し続けるのも結構しんどいんじゃぞ!!

愛用の二丁拳銃を構えて、破魔の弾と呪殺弾を装填した二回攻撃で弾幕をはって炎の羽を撃ち落とす。
えぇい。包囲攻撃には包囲攻撃じゃ。
UCの二日月を展開じゃ。
「では、月夜の踊りを魅せるとするのかのぅ。」
いい加減くたばれぇい!!

そして妾はかえって水風呂三昧じゃ。


地籠・凌牙
【ひりょ(f27864)と。アドリブ歓迎】
なあひりょ、お前相当しんどそうだけど大丈夫か……?
(ここでオブリビオンの言い分を聞く)

…………

…………ふっざけんじゃねえぞてめえゴラァ!!?
何がみんなで復活練習だ逆に殺しにきてんじゃねえか!
よくも俺の大事な仲間をこんな目に合わせやがって!!
(※UCでの治療のせいによる為八つ当たり)
熱中症と脱水症状の恐ろしさを知らねえ無知野郎……っ、絶対に焦熱地獄に叩き込んでやる!!!

目には目をだ!
攻撃は【第六感】で回避しつつ【火炎耐性】を利用して【指定UC】で炎を纏ったまま突貫して【怪力】【グラップル】!
ヘッドロックで畳み掛けてやる!

これが!ホントの!灼熱地獄だッ!!


鳳凰院・ひりょ
【凌牙さん(f26317)と連携。アドリブ歓迎】
WIZ
あ、はい…なんとか…。まだあの敵を倒すまでは倒れるわけにはいきませんし…
(ここでオブリビオンの言い分を聞く)
…凌牙さん、これって問答無用でぶん殴っていいパターンですかね、うん
そんな事の為に巻き込まれた妖怪さん達が不憫すぎる
頭にきた!こうなれば全力で行く
凌牙さんの攻撃を光陣の呪札で援護しながら、UC発動の準備
「ここからが勝負だ!」
前哨戦での負傷も含め蓄積負傷を力に変え反撃開始
光陣の呪札の乱れ撃ちで畳みかける
敵の範囲攻撃を間一髪付与された飛行能力で回避、そこから敵の範囲攻撃後の隙を突き頭上より強襲
「俺は、ここだぁぁっ!」
退魔刀で唐竹割


オリヴィア・ローゼンタール
なるほど、竜神の少女が核、と
そちらを傷つけないように気を付けないといけませんね

白い翼の姿に変身(オーラ防御・火炎耐性)
苦手分野に挑戦して克服、という考え自体は良いものではあります
が、他の人を巻き込むのはいけません!

強化された【視力】で炎の羽を【見切り】、飛翔(空中戦)して躱したり、聖槍で斬り裂いたり(武器受け・なぎ払い)
反撃に【属性攻撃】【全力魔法】で【紅炎灼滅砲】
数で劣っても一発当たりの威力と大きさで補う
そも、尋常な生き物は復活したりできません! 大人しく骸の海に還りなさい!


夜霞・刃櫻
【アドリブ・連係歓迎】SPD
ちょーっと何言ってるか分かんないっすね、チンピラでも分かる言語でヨロっす
まー言われても理解するつもりがないでやんすけどね!
三下なんで学がないでやんす!

UC【夜霞の爆窃】で約310体の爆窃団の幽霊を載せた幽霊蒸気機関車を呼び出す
敵UCを幽霊蒸気機関車で妨害し、さらに幽霊で妨害
「武器改造」で消火剤を弾頭に詰めた『ランチャー』と幽霊達の重火器で消火活動!
煙幕っぽくなれば「闇に紛れて」「暗殺」のタイミングも生まれそう
煙幕が足りないなら『ヘイズ・グレネード』でスモークを焚こう

失敗したら他の人に後は任せて「逃げ足」で逃走
三下だもん許して



「なあ、ひりょ。お前相当しんどそうだけど、大丈夫か……?」
 現れた主催者を視界の隅に捉えながら、凌牙はひりょに言葉をかけた。これからここは決戦の場となり、余裕がなくなってしまうだろう。気になることは今のうちに片付けておきたかった。
「あ、はい……。なんとか……。あの敵を倒すまでは、まだ倒れるわけには行きませんし……」
 確かにこれまで使ってきた身を削るユーベルコードによって、ひりょには疲労が積み重なっている。だからと言ってここで撤退してしまえば、せっかく追い詰めた主催者を逃してしまうことになりかねない。
「まったく、輪入道たちったら。ホントだらしないよね」
 そうこうしている間に、悠々と猟兵たちに近づいてきた主催者フェニックスドラゴンが、周囲を見回しながら口を開いた。
 何故、こんな我慢比べ大会を実施したのか、その理由が主催者の口から語られる。それはあまりに自分勝手なもので、それ以前にそもそも理屈が通っていなくて、猟兵たちを唖然とさせた。
 凌牙は知らず識らずのうちに、拳を握りしめていた。聞いているうちにだんだん力が入っていき、最後には手のひらに爪が食い込むほど。
「……ほら、みんなでいっしょに熱くなろうぜ!」
「……ふっざけんじゃねえぞ、てめえゴラァ!? 何がみんなで復活練習だ逆に殺しにきてんじゃねえか! よくも俺の大事な仲間をこんな目に合わせやがって!」
 そんなだから、フェニックスドラゴンが呑気な掛け声と共に拳を突き出したときには、あらん限りの大声で叫びだしていた。ひりょが疲れ果てた姿をしていることも、怒りに油を注いでいるのだろう。ひりょが用いたユーベルコードの副作用だから直接的に主催者が悪いわけではないのだが、因果をたどれば主催者の責に帰せられるものではある。
「熱中症と脱水症状の恐ろしさを知らねえ無知野郎……っ、絶対に焦熱地獄へと叩き込んでやる!」
 健康面への配慮を指摘する辺りに面倒見の良さを垣間みせつつ、凌牙は指先をフェニックスドラゴンへと突きつけた。
「ちょーっと何言ってんのか分かんないっすね。チンピラでもわかる言葉でヨロっす」
 刃櫻はいい加減な印象を与える、へらっとした表情で笑っている。フェニックスドラゴンのあまりの言いように、まともに聞く気なんてとうに失せていた。
「まー、言われても理解するつもりがないでやんすけどね! 三下なんで学がないでやんす!」
 それにどうせ、オブリビオンの繰り言。耳を貸したところで仕方がない。刃櫻は自虐風に学がないというけれど、別に高尚なことをのたまっているわけじゃないという自覚はフェニックスドラゴンにもあったのだろう、煽られたと解したかムッとした様子を垣間見せた。
「あえて言おう。馬鹿であろう、主は……」
 アイラザードもまた、完全に呆れ果てている。もはや、掛ける言葉も見つからない。フェニックスドラゴンのあり方に救いはなく、救う気にも到底なれない。
「もうこのまま燃え尽きて灰となれ、永遠に……」
 アイラザードは冷めた視線を投げかけて、そういい捨てた。
(「えぇい、この暑い熱いでも厚くはない空間はもうこりごりじゃ」)
 此処に至るまで、どれほど苦労させられたと思っているのか。その挙げ句、何故こんな演説を聞かされなければならないのか。
 いや、アイラザードの場合、暑さに付き合ったのはほんの最初だけで、あとは対環境結界で逃れてきてはいるのだが。
(「対環境結界を展開し続けるのも、結構しんどいんじゃぞ!」)
 結界が切れたときには、容赦なくこの暑い空間に放り出されるわけであり、それはあまりにも想像したくない未来である。

「でも死んじゃってるのです」
 フェニックスドラゴンが言った繰り言に、咲凛は真っ向から切り込んだ。幼いが故の容赦の無さで、遠慮会釈もなく言葉を重ねていく。
「オブリビオンで復活するのはその辺のわんこでもできるのです。オブリビオンになっただけじゃ、ちゃんと復活できてないのです」
「バカにしないでよね! そんなの私だってわかってる。だから、復活する練習をしてたんじゃん!」
「我慢比べ大会で暑さに耐えたって、練習になってないと思うのですよ」
 確かに、フェニックスドラゴンは己が『復活した』とは言っていない。これから復活できるようになるのだ、そのために練習を積むのだと主張していた。ただ、そうであったとしても、していることに価値はない。そもそも『熱さに耐えられない』こと自体、それが原因だとフェニックスドラゴンが思いこんでいるだけなのだから、仮に耐えられたとしても本当に復活できるかなど、誰にもわからないのだ。
 冷静に受け答えされて、フェニックスドラゴンは地団駄を踏んだ。
「うるさい、うるさい! もう、怒った! お前ら全員、燃やして炭に変えてやるんだから!」
 そう吠えて、怒りを顕にする。

 ひりょはフェニックスドラゴンが話し始めてからここまで、フリーズしたかのように反応が無くなっていた。よほど呆れているのかと、一通り叫んで少し落ち着いた凌牙が思っていると、フェニックスドラゴンの荒げた声に反応してか再起動したらしいひりょが、凌牙のほうへゆっくりと顔を向けた。
「どうした?」
 薄く笑ってはいるものの、言いしれぬ圧迫感を放つひりょに少々気圧されながら、刃櫻は応じる。
「……凌牙さん、これって問答無用でぶん殴って良いパターンですかね。いや、間違いなくそうですよね、うん」
「……お、おう。そうだな、ひりょ」
 これは呆れを通り越して、相当に怒っているな。凌牙は冷静にというよりは他人事のように考える。
「こんな事のために巻き込まれた、妖怪さんたちが不憫すぎる……。頭にきた! こうなれば全力で行く。凌牙さんもいいですね?」
「ああ、任せろよ」
「では、援護します」
 少々冷えたところで、怒っているのは凌牙も同じ。ひりょが投じた符から放たれる光に紛れて、固めた拳でフェニックスドラゴンへと殴りかかった。

 オリヴィアは白い翼を持った姿へと変じて、大きく翼を広げ飛び立った。フェニックスドラゴンを中心として旋回しながら、少女が炎の羽を飛ばす姿を観察する。
(「竜神の少女を核としているオブリビオンですか……。少女を傷つけないように気をつけないといけませんね」)
 オブリビオンを倒すことで少女を救出することが出来るとはいえ、あまりにやりすぎてしまうと万が一ということがあるかもしれない。無事に救出するために、少女が核となっている事実を意識の片隅に留めておく。
 その間にもフェニックスドラゴンは、空間を炎で染めんとばかりに次々と己の翼から炎の羽を撃ち出していく。
「ほらほら、どうしたの? わたしと一緒に復活の練習しておけば良かったって、後悔しても遅いからね!」
 そして己の言葉に耳を貸さない不遜な猟兵たちを滅ぼそうと、四方八方に飛ばした炎の羽で猟兵たちを追い立てた。
 オリヴィアは仕掛けられた炎の羽から逃れるために、強く翼をはためかせ、一気に加速した。ロールからループに入り、複雑に組み立てたマニューバで追う羽を引き離す。それでもなお追いすがる羽を黄金の穂先を持つ聖槍で打ち払い、攻撃の間隙を縫ってフェニックスドラゴンへ向き直った。
「苦手分野に挑戦して克服、という考え方自体は良いものではあります。……が、他の人を巻き込むのはいけません!」
 槍から離したオリヴィアの右手に、赤い魔力が収束していく――。
「そんなの、知らない――ッ!」
 巨大な魔力の気配を感じ取り、振り返ったフェニックスドラゴンが周囲に浮かぶ炎の羽をオリヴィアへと殺到させた。
 だが、遅い。
「そも、尋常な生き物は復活したり出来ません! 大人しく骸の海に帰りなさい!」
 オリヴィアは、今にも弾けそうな魔力塊を頭上へと高く掲げた。
「猛き炎よ、我が掌中に集い、万象を灰燼と化す破壊の奔流となれ――!」
 詠唱に応じて、魔力塊が一気に膨らんでいく。そして、魔力塊から数百の燃える光束がフェニックスドラゴンをめがけて放たれ、炎の羽を飲み込み空間を紅く染める。
「――熱いの嫌だって言ってるでしょ!」
 光束に焼かれたフェニックスドラゴンは、照準などお構いなしに周囲へと灼熱の光線を連射しはじめた。間隔を置かずに連射される光線は、周囲に転がる暖房グッズの数々にも当たり、それらを燃やす。もはや、会場全体が炎に包まれていった。
 ――ぽっぽー!
 そんな地獄絵図の中、妙な汽笛が響いた。そして汽笛に続き、炎の中から蒸気機関車が実体化して会場へと走り込んできた。客車からは列車に乗り込んだ幽霊たちが、所狭しと身を乗り出して重火器を構えている。
「ここは、あっしの出番でやんすね! パンクでロックにミッション・スタートっす!」
 運転台にいるのは刃櫻だ。景気づけにもう一度鳴らした汽笛を合図に、幽霊たちが一斉に重火器を放つ。
「あっしは知ってるっす。広範囲に広がった火災は、爆風で消化するでやんす! さあ、どんどん撃つでやんす!」
 途切れなく響く発射音が響き、榴弾が炸裂し、ロケット弾が飛んでいく。もうもうと白煙が上がり、状況はどんどん混沌化していった。
(「……なんて派手にやっている間に、大将首を狙ってみるっすよ」)
 いつの間にか運転台から降りていた刃櫻は、煙に紛れてフェニックスドラゴンに接近する。音を消して、抜き足差し足……。これで上手く行ったら大金星だ――。
「いい度胸してるじゃん? 私とこの距離で撃ち合いたいだなんて!」
「やば」
 あと一歩というところで、少女に睨みつけられた刃櫻の背筋が凍る。だが足は止まらずに、真横へと身体を投げ出した。寸前まで刃櫻いた場所は灼熱の光線が通り過ぎて、焦げ臭い匂いが漂う。
「三下の役目はここまでみたいっすね。あとは任せるでやんす――!」
 暗殺が失敗に終わり、刃櫻は未練なく逃げ出した。躊躇なく逃走出来なければ、天寿を全うするだなんて夢の夢だから。
「任されたのです。何より、我慢比べ大会に巻き込まれたお返しが、まだ出来てないのです」
 咲凛は両腕に内蔵されたガトリング砲で火線を張りながら、スラスターを吹かして縦横無尽に戦場を行き来した。
「ちょこまかと動いてくれちゃって……っ」
 その姿を切れ目なく放たれる灼熱の光線が追うが、捉えるには至らない。フェニックスドラゴンは炎の羽へと切り替えるが……、
「妾もおるんじゃがのぅ」
 アイラザードがそれぞれの手に握った2丁拳銃から放たれた雑霊弾に、炎の羽が次々と撃ち落とされていく。
「んー、キリがないのぅ。えぇい、包囲攻撃には包囲攻撃じゃろ!」
 アイラザードは拳銃を連射する手は止めぬままにユーベルコードを発動し、周囲へ放った魔力で空間へと干渉した。炎溢れる暑い世界に、ただ一時の静謐な夜が訪れる。その中にほっそりした二日月が浮かび上がった。
「では、月夜の踊りを魅せるとするのかのぅ」
 準備が整ったところで、2丁拳銃をホルスターに収めて魔力に集中した。すると二日月が幾重にも分裂して、フェニックスドラゴンに向けて放たれた!
「いい加減くたばれぇい!」
 上空では、咲凛がフェニックスドラゴンへの照準を終えていた。すでにすべての砲門がスタンバイを完了しており、あとは発射を待つばかり。
「武装ユニット全開放、撃ちます!」
 そしてガトリング砲が、ミサイルが、咲凛が身にまとうあらゆる武装が放たれた。すべては予め仕込まれたプログラムに基づいて制御されていて、咲凛に負担はかからず余力がまだあった。
「さあ、観念するのですよ!」
 その余力で両手に抱えた大型ライフルの照準を正確に合わせ、トリガを引いた。銃口から放たれた収束ビームが敵の脇腹を穿つ。
「……ぐうっ。ふ、復活を試すなら、今しかないじゃん……!」
 ――フェニックスドラゴンは追い詰められていた。けれど、その手にはまだ最後の切り札が残されている。
「ここからが勝負だ!」
「おうよ! 目には目をでいくぜ!」
 だが、切り札を残しているのはひりょたちも同じ。残されたカードをここで切らずに、いつ切るというのか。
 凌牙はフェニックスドラゴンからの攻撃をスレスレで躱しながら、全力で距離を詰めた。自ら乱暴に剥がした鱗の下からは、憤怒の炎が放たれて凌牙の腕を覆っている。
「てめえが散々苦しめてきた連中の! そして俺の! 怒りをその身に、焼き付けやがれッ!」
「やめてよっ」
 逃れようとするフェニックスドラゴンに掴みかかり、首筋に腕を巻きつけて、一層激しく炎を放つ。
「これが! ホントの! 灼熱地獄だッ!」
 凌牙が掴みかかる間に、ひりょは翼をかたどった黒白のオーラを纏い、高く飛び上がっていた。これまでのダメージを変転させ、己の力へと変える切り札だ。
 直上へと振り上げた刃を、落下とともに振り下ろす。狙いは当然、凌牙に固められて灼かれたフェニックスドラゴンの頭部。
「俺は、ここだぁぁっ!」
 ――気合一閃。
 万感の想いが込められた一撃が、狂った宴の主催者を真っ二つに切り裂いた。

「……うん。特に異常はありません。直に目を覚ますでしょう」
 骸魂から解放された竜神の少女を診ていたオリヴィアから心配ないと報告されて、猟兵たちは胸をなでおろした。輪入道と化していたものたちを含め、この会場に集められていた妖怪たちも、いずれは我に返って解放されていくだろう。
「終わったなら早く帰ろうぞ。妾は水風呂三昧がしたいのじゃ」
 アイラザードは、この会場から一刻も早く去りたい様子である。多かれ少なかれ、その気持ちは皆が抱いているだろう。
 こうして、誰も幸せになれない我慢比べ大会は終わりを告げたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月12日


挿絵イラスト