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カッパと坊主の陸流し

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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「はぁ、水が足りないぜ」
 そいつは泥をぺたぺたと踏みしめるのが嫌いだった。
「水さえありゃーいいのによぉ」
 そいつは肌が乾いてしまうのが嫌だった。
「……だったら海だけありゃいいじゃんか!」
 だからそいつは、大地をすべて消し飛ばしたのだった。

●陸の無い世界
 新たに発見された世界、カクリヨファンタズム。
 UDCアースに隣接する不思議な世界は、現代の時代に忘れられてしまった妖怪達の逃げ場所となっていた。
 しかし、この世界には大きな特徴が存在する。この世界ではオブリビオンの企みによって、世界の終わり……カタストロフのような現象が度々発生しているのだ。
 普段からカタストロフが起こっているこの世界は、いつだって破滅の危機に瀕している、というわけだ。
「そんな不安定な世界なのだから、事件が起こるのは当然ですわよね?」
 エリル・メアリアル(孤城の女王・f03064)はそう、集まった猟兵達に告げた。
「というわけで、幽世の世界に、陸が消えましたわ!」
 猟兵達にそう言うと、エリルは状況の説明を始めるのであった。
「まず、首謀者は『カッパ海坊主』というオブリビオンですわ。カッパの少女を海坊主の骸魂が飲み込んだ姿ですわね」
 この世界では幽世に辿り着けなかった妖怪達が死ぬと、骸魂と呼ばれる存在へと変貌する。骸魂は生前に縁のあった妖怪を飲み込み、オブリビオンとして幽世に出現するのだという。
「海坊主は陸のある世界が嫌だったようですわ。今ではすべての陸は海に沈んでいて、まさに世界の終わり……という風景に感じられますわね」
 足場が一切ないので、オブリビオンと戦うには舟を出したり空を飛んだり――勿論泳いでも構わないのだが――ひと工夫が必要だろう。
 幸い難を逃れた妖怪達から舟を借りることは出来る為、必要とあらば現地調達をしておけば良い。
 続けて、エリルは説明を続ける。
「カッパ海坊主と戦うためには、まず配下のオブリビオンを倒す必要がありますわ」
 エリルがオブリビオンの説明を続ける。
「配下は迦陵頻伽(かりょうびんが)という鳥のオブリビオンですわ。空を飛んでいるから、陸を失った不利は無いまま戦いを挑んできますわよ」
 とはいえ、飲み込んだ妖怪が弱いせいか、あまり強くはない。猟兵なら簡単に蹴散らすことが出来るはずだ。
「迦陵頻伽を倒せば、カッパ海坊主との対決ですわ。無事倒すことが出来れば、世界に陸が戻ってきますわ。さらに、飲み込まれた妖怪も救出できるようですわね」
 これも「妖怪の身体を乗っ取ってオブリビオンに変身する」というカクリヨファンタズムの特徴のようだ。
「それと、その後少し時間があるのだから、皆さんで幽世の世界を楽しんでみてはいかがかしら?」
 今回の戦いが終われば、妖怪たちは大喜びで猟兵達を迎え入れてくれるだろう。
「この世界で人気なのは決闘ごっこ、という遊びらしいですわ。簡単なルールを決めて、色んな方法で勝負をする、というものらしいですわ」
 決闘の方法は指定すれば合わせてくれるらしいが、基本的には土俵の外に出るか、手を地面についたら負け、というような相撲のルールに準拠するようである。
「チャンバラ、水鉄砲……そういう武器を使っての勝負も引き受けてくれるようですわよ」
 助けたカッパとの相撲対決もよし、猟兵同士の対決もよし。妖怪同士の対決を観戦するもよし。これを機に妖怪達と親交を深めるのも良いだろう。
「さぁ、そんなわけでカクリヨファンタズム初の冒険になりますわよ! 皆様、いってらっしゃいませ!!」
 そう言うと、エリルのグリモアが輝き始めた。


G.Y.
 こんにちは。G.Y.です。
 カクリヨファンタズムでの最初の冒険、是非皆様のお力になれれば幸いです。

 今回は『陸』という概念がすべて失われた世界での戦いになります。
 世界全てが海に飲まれていますので、空を飛んだり、舟を借りたり、気合で泳いだり、様々な対策が必要となります。

 第1章は集団戦です。
 敵は空を飛んでいますので、陸の無い世界と含めて工夫して戦いましょう。

 第2章ではボスとの対決となります。純戦です。
 飲み込まれたカッパの少女は、この敵を倒すだけで救出可能です。

 第3章では日常です。
 妖怪達と決闘ごっこをして過ごしましょう。
 妖怪達に招待された場所では、いくつかの土俵があります。
 普通に遊ぶならば相撲での勝負を持ちかけられますが、チャンバラバトル、水鉄砲バトル等で遊ぶことを提案しても構いません。
 ルールも基本的には合わせてくれますが、特に指定がないなら相撲とほぼ同じルールになります。

 また、第3章に限りエリルを呼び出すことも出来ます。あまり対決には興味が無いようですが、お声がけ頂ければ喜んで参加いたします。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております!
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第1章 集団戦 『迦陵頻伽』

POW   :    極楽飛翔
【美しい翼を広げた姿】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【誘眠音波】を放ち続ける。
SPD   :    クレイジーマスカレイド
【美しく舞いながらの格闘攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    迦陵頻伽の調べ
【破滅をもたらす美声】を披露した指定の全対象に【迦陵頻伽に従いたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

テラ・ウィンディア
新しい世界か!
おれにとっては割とUDCっぽいから新鮮だぞ!

そしていきなりカタストロフレベルの大惨事が起きてるんだが!

モードグランディア発動(重力フィールドを纏い飛

空中戦か…割と得意だぞ?

【空中戦・第六感・残像・見切り】で高速で飛び回りながらも敵の猛攻を回避し続ける
最小の動きで避けながら【戦闘知識】でその癖と法則を見切り共闘している仲間がいるならその仲間にも伝え

【属性攻撃】
全身と武器に炎を付与

槍で【串刺し】に
【早業】で剣と太刀に切り替えて切り捨てては遠距離の敵に対しては
グラビティバスターで【一斉放射】
離れれば逃げられると思ったか?
射撃は得意じゃないけど苦手でもないぞ?

そして暴れ続けるエルフだった


枸橘・水織
陸地が無い場所…と聞いて…
みおが力になれるかな?
…と、依頼に参加

戦闘
序盤はオラトリオの姿で【オーラ防御】を展開しつつ…も、回避主体の戦法、ARを装備して魔力弾や魔力の刃を放って攻撃する…が…
同じフィールドじゃ、あっちの方に分があるみたいね…【学習能力・情報収集】

指定UCを使用して、人魚姿となり水中へ
水中なら弱い誘眠音波も届かない…よね?
【オーラ防御】も展開…水中へ飛び込んでくる可能性も考える

水中を移動しつつ、水中から【全力魔法・属性攻撃】で『水の槍』【鎧砕き+串刺し】で翼を狙い、『大きな水の弾』【気絶攻撃】を創成して攻撃(一応、致命傷を避け戦闘力や意識のみを奪う)【スナイパー・視力・見切り】



 突如陸の概念が失われたカクリヨファンタズム。
 水を泳ぐ妖怪達には好評ではあったが、大部分の陸上妖怪達にとっては死活問題である。
 UDCアースの過去に忘れられた風景、昭和の街並みも今や海の底。それはそれでノスタルジックだが、ともあれこのままでは世界が終わってしまう。
「いきなりカタストロフレベルの大惨事が起きてるんだが!?」
 テラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)はそんな光景を見て、驚愕の声を上げた。
 この世界はUDCアースに隣接した世界の為か、かの世界の雰囲気も残っている。その雰囲気がテラにとっては新鮮ではあったが、こんな状況であればもう世界の雰囲気どうこうではない。
「陸地がない世界……みおが力になれるかな?」
 枸橘・水織(オラトリオのウィザード・f11304)は海に満ちた世界を見渡して呟いた。
 誰かを救う魔法使いになることを夢見る彼女は、世界崩壊も近いように感じられるこの世界に対して、そんな思いを胸に秘めて訪れていたのだ。

 そんな時、空から笛の音が響き渡った。
「きたなっ!?」
 それはカッパ海坊主の呼び出した妖怪、迦陵頻伽達である。鳥の下半身を持つこの妖怪達は、翼を羽ばたかせ、空から猟兵達に襲い掛かる。
 迦陵頻伽は大きく翼を広げると、高速で戦場を旋回し始めた。その翼からは不思議な音波が響き渡り、水織とテラの瞼を重くしてしまう。
「くっ……」
 水織は咄嗟にオーラの障壁を展開しながら、杖を振って魔力弾を放つ。
 だが、魔力弾は高速で飛び回る迦陵頻伽達に難なくかわされてしまう。
「同じフィールドじゃ、あっちの方に分があるみたいね……」
 水織は魔法弾を牽制で放ち、相手の情報を収集しつつも、次の手を考える。
「空中戦ならおれも割と得意だぞ?」
 その脇でテラが翔んだ。
「グランディアよ……全ての存在がもつ原初の力よ。我が身に宿り力と成せ……! グラビティフィールド……展開!」
 耳を塞ぎ、迦陵頻伽達へと向かって飛び掛かる。高速で飛び回る本体から誘眠音波が発せられるのならば、音波が届かない場所から近付けば良い。テラは空中を舞う迦陵頻伽達の軌道予測からルートを割り出し、接近してゆく。
 だが、音波をすべて遮断できるわけではない。耳に飛び込んでくる音は、テラの集中力をかき乱し、動きを鈍らせ、槍の一撃も当てることが出来ない。
「くぅっ、眠いぞ……!! この音を聞いたら眠くなっちまう……!」
「音……なら」
 水織は水面をチラリと見る。
「そうだ……!」
 水織が自らの身体に魔法をかける。下半身が魚のヒレのように変化し、人魚の姿へと変貌すると、水中へと身を潜めた。
 水中を泳ぐ水織の耳に響くのは、くぐもった泡と波の音。
(やっぱり……誘眠音波は水中へは届かない……)
 身体が自由になったと確信した水織は、水中から空を飛ぶ迦陵頻伽達を見上げる。
 そして手を組み、魔力を集中させた。

「ね、眠い……っ、けど、負けないっ……!」
 空中のテラは、迦陵頻伽達の音波に翻弄され、意識も徐々にだが薄れ始めていた。
「……!」
 ふっと、身体に力が抜けた。
「しまっ……」
 落ちる――そう覚悟した瞬間であった。
 水中から、水の槍が迦陵頻伽達を貫き始めたのだ。
「これは……」
 続けて水の弾が放たれ、迦陵頻伽達の顔面を覆う。迦陵頻伽達はその攻撃に、たまらず音波を止めてしまった。
 それらは水織が水中から放った魔法であった。骸魂に呑み込まれた妖怪達であることから、急所は外し、意識を奪うにとどめているが、十分すぎるほどの成果を与えていた。
 水中から、水織はテラに向かって合図を送る。
「よし……いまがチャンスだぞ!」
 テラが槍を構えなおし、再び重力フィールドを展開する。
「あれが水の槍なら、こっちは炎の槍だ!」
 全身と武器に炎を纏わせ、迦陵頻伽を貫くテラ。
 この攻撃を境に、状況は一変した。

 迦陵頻伽達はテラから距離を取るべく音波での攻撃を忘れて離れてゆく。だが、テラは見逃しはしない。
「離れれば逃げられると思ったか?」
 テラの手には星霊重力砲が構えられていた。
「グラビティ……バスター!!」
 テラの重力砲が放たれ、迦陵頻伽達を吹き飛ばす。
「射撃は得意じゃないけど……苦手でもないぞ?」
 テラが自信ありげに告げる。そして、テラは逃げ惑う迦陵頻伽達を相手に暴れ続けるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

春霞・遙
待って、海坊主は海が広がるの嬉しいでしょうけどカッパは淡水域に生息してるんじゃないんですか!?
浸透圧で干からびちゃいます、よねぇ……?

舟よりも大きな折り紙で折った二艘舟をユーベルコードで動かしたほうが自在に動くことができて勝手が良さそうなので、足場はそれで。
沈められた時のために帆掛け舟とか舟皿とか予備を作っておきますね。

射撃攻撃で相手の翼を狙って墜落させようとしたり、足場を配置して他の方の援護をしたりします。


デュナ・ヴァーシャ
ここが新たな世界か……頻繁に世界が終わるとは、随分と脆い世界のようだ。
まあ、世界を守るのは猟兵の役目。異なる世界であろうと、神として救ってやらねばな。

陸がないそうだが、海の上を歩けば問題あるまい。ようは、水に沈むより先に次の一歩を踏み出せば良いのだろう? 我にとっては容易い事だ。
戦闘では先手を取らせ、相手の体技をこの身で受け止めるとしよう。この剛健なる肉体をもってすれば、この程度の攻撃など風が撫でるようなものだ。
そして我が権能を発動し、その技をそっくりそのまま返してやるとしよう。無論、我が神力を持ってすればその威力は比べ物になるまい。むしろやりすぎて飲み込まれた妖怪を傷つけぬよう注意せねばな。


歌川・邦絵
※アドリブ歓迎、共闘可

POW判定

・行動
『天狗のポックリ』で宙を歩きながら
近くの敵は『地獄絵巻物』で近づけさせないようにして
『百鬼夜行銭』による弾幕攻撃で敵を倒す

ある程度敵がまとまったらUC発動
足下に針の山を作り出し串刺しにして百舌鳥の早贄にする

・UC演出
妄言にて人を惑わし罪を犯させる、
たとえ歌だろうがそいつは変わらない。
アンタらにふさわしい地獄はこいつだ!

(地獄絵巻を広げると大叫喚地獄が描かれた箇所で止まり、
そこから辺り一面に地獄の風景が広がっていく)

地獄絵図、大叫喚地獄!(その後UC詠唱のセリフへ)



 カクリヨファンタズムの大海原に、三艘の船が走っていた。それは不思議で、巨大な折り紙で作り上げられ、不思議な魔力で海を進んでゆく。
「ここが新たな世界か……頻繁に世界が終わるとは、随分と脆い世界のようだ」
 折り紙の帆掛け船の上に乗るデュナ・ヴァーシャ(極躰の女神・f16786)は陸が消え、大海原となった世界を眺めて呟いた。
 カタストロフのような世界の危機が毎度の如く発生するこの世界は、ヒーローズアースを創世した神の一人であるデュナにとっては脆弱に見えて仕方がないだろう。
「まあ、世界を守るのは猟兵の役目。異なる世界であろうと、神として救ってやらねばな」
 そう言い、遠くに見える迦陵頻伽達を見上げ、全身に力を籠め始めた。
「海坊主は海が広がるの嬉しいでしょうけど……」
 春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)は首を傾げる。
「カッパは淡水域に生息してるんじゃないんですか!? 浸透圧で干からびちゃいます、よねぇ……?」
 今回の事件の首謀者である『カッパ海坊主』という存在が不可解なようであった。
 なお、折り紙の舟を作り上げたのは彼女である。彼女が乗り込んでいるのは二艘船。地元の妖怪に舟を借りるより、ユーベルコードで操るほうが戦う上では都合が良いと判断したのだ。
「一口にカッパと言っても色んな奴がいるんだよ」
 舟皿に乗る歌川・邦絵(妖怪絵師・f12519)は、遥の疑問にあっさりとした口調で答えた。
 妖怪絵師である彼女にとっては、人間の想像の枠に囚われない妖怪の姿など腐るほど見てきたに違いない。
「さぁ、近付いてきたよ。しゃんとしな!」
 邦絵は巨大な筆を肩に担ぎ、ツインテールをなびかせた。
 迦陵頻伽達はもう眼前に迫っていた。

「では、ゆくぞ」
 デュナが折り紙の船から飛び降りた。
 脚が水についた瞬間、もう片足が水面を踏みしめる。足が水に沈む前に、もう一歩。高速で踏みしめるその動作によって、デュナは水に沈むことなく水面を歩き続けていた。
「海の上を歩けば問題あるまい。我にとっては容易いことだ」
 デュナは平然とそう言うと、舟から離れ迦陵頻伽達へと駆けてゆく。
「世話んなったね。こっからはアタシも自分の足で戦わせてもらうよ」
 邦絵は遥に礼を言って宙に跳ね上がると、空中でさらに宙を蹴った。邦絵は履いた『天狗のポックリ』によって、宙を歩くことを可能にしていたのだ。
「援護しますよ」
 一人舟に残る遥は空になった折り紙の舟を自分の舟と並走させながら、拳銃のマガジンを装填した。
「……来ましたよ!」
 遥が叫ぶ。迦陵頻伽達が猟兵に気付いたのだ。
 迦陵頻伽達は翼を羽ばたかせ、急降下のような形で最も接近していたデュナへと迫る。
「先手は譲ろう」
 堂々とデュナが前に出てゆく。迦陵頻伽はきりもみ回転をしながら、その屈強な肉体目掛けて鋭い爪を突き立てた。
 爪はデュナを捉え、その勢いのまま、連続の格闘攻撃を繰り出す。それは舞いにも似た美しい高速の攻撃であったが、デュナはそれを涼しい顔で受け止めていた。
「風が撫でるようなものだ」
 迦陵頻伽の顔が驚愕に染まる。デュナの肉体には傷一つついていなかったのだから。
 デュナは迦陵頻伽の足を掴むと、足に鋭い刃のようなオーラが集まり始める。
「その技、そっくりそのまま返してやるとしよう」
 一蹴り。たったそれだけで迦陵頻伽の身体に深い深い傷が抉られる。そのまま暴力的なまでに美しい『舞い』が迦陵頻伽を襲った。
「我が肉体に際限―再現出来ぬ技―など無い。無論我の技の方が貴様より上だがな」
 拳が迦陵頻伽の顔面を捉え、迦陵頻伽は巨大な水柱を上げて水中へと沈み込む。
「おっと、やりすぎぬよう注意せねばな」
 この世界のオブリビオンは妖怪の身体を骸魂が飲み込んだ状態だ。攻撃をしすぎて肉体が傷ついては助かるハズの命を奪ってしまいかねない。
 デュナが水中に叩き込んだ迦陵頻伽を覗き込むと、浮かび上がってきたのは既に迦陵頻伽から解放された妖怪の姿であった。のびてこそいるが、傷は見当たらない。デュナはほっと安堵した、その時。
「……むっ!」
 仲間を倒された迦陵頻伽達が一斉に襲ってきたのだ。
「危ないっ!」
 銃弾が迦陵頻伽達を貫いた。銃撃を受けた迦陵頻伽は翼の制御を失い、水中へと墜落してゆく。折り紙の舟から撃たれた遥の援護射撃である。
 思わぬ攻撃を受けた迦陵頻伽は、標的を遥へと変えて急速に接近してゆく。
 遥は使い切ったマガジンを捨てて再装填すると、舟へと念を送る。
「命を持たない紙の鳥、散らず褪せない紙の花、くるりくるり、舞い踊れ」
 舟が急速に軌道を変え、迦陵頻伽の爪を避ける。続けて2匹目が遥に襲い掛かるが、冷静に跳躍し、あらかじめ走らせていた別の舟へと飛び移った。
「予備があってよかったですよ」
 迦陵頻伽の爪は誰もいない舟を切り裂き、沈めるだけとなった。そして出来た大きな隙に、遥からの銃弾が浴びせられる。
「まだ来ますよ!」
 倒れた迦陵頻伽達から目を離し、遥が上空を向いて叫ぶ。高速で飛来する迦陵頻伽達の無数の影が猟兵達を取り囲もうと現れたのだ。
「こいつの出番だね!」
 空中を歩く邦絵が持っていた巻物『地獄絵巻物』を紐解く。
 地獄の風景を描いた巻物がまるで生き物のように伸び、迦陵頻伽達に巻き付いてゆく。その隙を突いて、邦絵は『百鬼夜行銭』を弾いた。
「力を貸しな、アタシの妖怪!」
 百鬼夜行銭から邦絵が封印した妖怪達が現われる。それらの放つ弾幕で、次々と迦陵頻伽達が墜落してゆく。
 だが、一部の迦陵頻伽はその弾幕の隙間を縫って邦絵へと接近する。広げた美しい翼から誘眠音波が放たれる。
 その攻撃を受けながらも、邦絵はその瞬間を待つ。
 弾幕によって作られた抜け道の先……迦陵頻伽達が一点に固まるその瞬間を。
「……今だ!」
 地獄絵巻を引き寄せ、邦絵が語る。
「妄言にて人を惑わし罪を犯させる……たとえ歌だろうがそいつは変わらない」
 そして、地獄の絵図を迦陵頻伽達に向けて、大きく広げる。
「アンタらにふさわしい地獄は……こいつだ!」
 描かれていたのは『大叫喚地獄』。絵図は巻物から浮き出るように周囲に染み出し、戦場は地獄の様相となった。
 気が付けば、足元には針の山。
「地獄絵図、大叫喚地獄!!」
 その言葉と共に、迦陵頻伽の身体がガクンと沈み始めた。まるで針の山に吸い寄せられるようである。
「嘘つきは針の山に落とされるんだとさ、アンタはどうなるかねぇ?」
 その結果を知っているかのように邦絵がにたりと笑う。迦陵頻伽達はその言葉通り、針の山へと串刺しになってゆく。
「百舌鳥の早贄の一丁上がりさ」
 得意げに笑うと、邦絵は骸魂を狩り取るのであった。

 迦陵頻伽の数は既にかなり数が減っている様子であった。
 だが首謀者であるカッパ海坊主はまだ現れない。もう少し、この妖怪を相手にする必要がありそうだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

銀龍・仙
「海は広いーなーおーきぃーなー♪最近は、娘君のお世話で、遠出出来んかったから潮風を感じるのは何年ぶりじゃろか?娘君の綿羽が大人の羽に生え変わったら、連れて来てみたいのう」

空を飛んで移動。娘君も成鳥(?)になれば、飛べる。(実際、すでに飛ぶ練習を始めておるし。健やかな成長は良いことじゃの♪)

「海でしか見れぬ景色も有るからのう。ほれ、空を見上げればカモメが飛んで・・・。カモメ、ではないのう?」

「予言に在った迦陵頻伽とは、彼奴らかの?」

答える者は、海風と波の音だけかの?

「とりま、UC龍神飛翔で、強襲を仕掛けながら、雷で撃ち落としていくかの。うぬらは、余の落雷が落ちるより速く飛ぶことが出来るかの?」



 海に覆われたカクリヨファンタズム。
 骸魂に飲み込まれたオブリビオンによって起こされたこのカタストロフのような状況によって陸は失われ、波の音だけが静かに響く。
「ふんふーんふん、ふふふーふん♪」
 銀龍・仙(竜神のパラディン・f28075)は鼻歌を歌いながら、翼を羽ばたかせた。
「最近は娘君のお世話で遠出出来んかったから……潮風を感じるのは何年ぶりじゃろか?」
 仙は、お世話をしている娘のことを思い返していた。
 その娘は主として仕える者の娘であり、実の子ではない。とはいえ、現在まさしく可愛い盛り。その娘の成長を思えば、自然と頬が緩んでしまう。
「娘君の綿羽が大人の羽に生え変わったら、連れて来てみたいのう」
 その時にはカクリヨファンタズムに陸が戻り、平和な時期になっているはずだ。いや、なっていなくてはならない。仙がこの地を訪れた真の目的は、猟兵として世界に平和を取り戻すことなのだから。

 すいすいと空を舞う仙は、ついつい娘のことを考えてしまう。
 先日は自分の羽根をぱたぱたと動かして、飛ぶ練習をしていた。その様子を思い返せば、きっともうしばらくで、自分のように自由に空を飛べるようになるだろうと仙は思った。
「健やかな成長は良いことじゃの♪」
 にやにやと笑みが零れてしまう仙の目に、いくつもの影が空に舞っている様子が入り込んだ。それは鳥のようで、仙は娘を海に連れて行く日のことを想像する。
「海でしか見れぬ景色も有るからのう。ほれ、空を見上げればカモメが飛んで……」
 そうして見上げた仙の瞳に映ったものは、どうみてもカモメではなかった。
「カモメ……ではないのう?」
 カッパ海坊主の配下、迦陵頻伽達である。

「予言に在った迦陵頻伽とは、彼奴らかの?」
 迫ってくる迦陵頻伽達に仙が問う。だが、妖怪達はそれを無視して仙を包囲せんと上空を舞い続ける。
「答えるものは、海風と波の音だけ……よかろう」
 仙はそう言うと、力を籠める。すると、みるみる姿が変わり、仙は『完全竜体』へと変化を遂げた。
 完全竜体となった仙は、迦陵頻伽達の包囲を抜けて、さらに上空へと舞い上がる。
「うぬらは、余の雷が落ちるより速く飛ぶことが出来るかの?」
 天空に黒雲が押し寄せた。仙がその間を縫うように飛ぶと、黒雲がチカチカと雷光を轟かせる。
「降り注げ、天の雷光」
 その言葉に合わせ、雷鳴が響く。雷は迦陵頻伽を次々と撃ち落としてゆくのであった。
「とりま、これで全部やれたじゃろう……残るは、こんな事態を引き起こした奴だけじゃ」
 仙が海に目を落とす。
 強い妖気を放つその水底から、この事件の首謀者『カッパ海坊主』がとうとう顔を出したのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『カッパ海坊主』

POW   :    河童大相撲
【踏み込みからの張り手】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    サゴジョウアーツ
【半月刃の付いた三節棍】で攻撃する。[半月刃の付いた三節棍]に施された【神将沙悟浄】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。
WIZ   :    河童のナイアガラ流し
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【水】属性の【滝】を、レベル×5mの直線上に放つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

歌川・邦絵
※アドリブ歓迎

POW判定

行動
口で挑発しながら骸魂の海坊主と
本体のカッパの間に齟齬が出るように仕向け結びつきが弱くなったところを
一気にヤドリガミ本体の絵筆で真の姿を描き上げてUCを発動する

セリフ
なあ、カッパのアンタ!
陸が無くなって海だけになったらどうやって相撲を取る気なんだい
陸がなくっちゃキュウリだって作れないし
「河の童」と書いてカッパだろう?海に沈みっぱなしで良いのかい
気をしっかり持ってそんな奴の言いなりになるんじゃあないよっ!

・UC演出
(白紙の巻物を取り出すと分身した複数の絵筆が
それぞれ生きているように動いて海坊主の姿を描き上げる)
汝の正体、現われたり
封印、百鬼夜行絵図「海坊主」!(発動)


西院鬼・織久(サポート)
【行動】
オブリビオン狩が最優先で救出行為は二の次
通常「俺」、戦闘中「我等」、あなた、苗字+さん

五感と第六感、野生の勘で状況を把握し危険を察知
罠や逃走する敵の追跡などは戦闘知識の応用で考え対処する

多種多様な武器に変形する「闇器」で場面に応じて武器を変える
武器には「呪詛+武器改造」により「生命力吸収」の効果

機動力と攻撃力に任せての先制攻撃を仕掛け、狭い場所でも縦横無尽に動き回り死角から攻撃
殺気を抑え暗殺を行う事もできるが、大抵は特攻紛いの戦闘を行う
集団にはUCやなぎ払いを範囲攻撃に広げるか、単体を夜砥やUCで拘束して振り回して周囲をなぎ払うなどで牽制。対処が遅れた所を狙って追撃を仕掛ける


デュナ・ヴァーシャ
河童は相撲が得意な妖怪だと聞く。とはいえ、この状況では相撲は取りにくい、まずは権能を発動し、我と河童を囲むように試合場を生成しよう。これで足場の心配もない。

そして中央で堂々と蹲踞し、河童に相撲を挑む。別に元に戻す前から挑んでも構わんだろう?
乗ってくるならよし、乗ってこないなら強引に間合いに踏み込んで四つに組んでやる。

あとは、我が神躰で堂々と、真っ向からねじ伏せにかかる。その身体を全力で押し込み、絞り上げ、そして叩きつけてやる。
相手は四つ腕のようだが、ハンデには丁度良い。滝をぶつけて来ても、仁王立ちで受け止めよう。
肉体の女神の力を、その身に叩き込んでやるとしようではないか。


春霞・遙
カッパも色々いるのなら海坊主も多様なのでしょう。
それでも船幽霊のようなことをしたりと舟を沈める伝承を多く持つようなので注意が必要でしょうか。

いずれにせよ近接攻撃を行うに足る移動手段がないので折り紙の足場を活用しつつ、遠距離から攻撃を加えようと思います。
舟、紙飛行機、亀、鳥、クラゲ。足場にする大きな折り紙と「目立たない」小型の折り紙で様々折りますよ。大小いずれもバランスをとれば立てるでしょうし、「パフォーマンス」にしか見えない折り紙も【紙片鋭刃】を使用すれば攻撃手段になります。

紙って意外とよく切れるし、紙で切るととても痛いんですよね。
張り手で思い切り滑らせたなら、きっと痛いことでしょう。


霧崎・蛇駆(サポート)
『あーあーヤダヤダ、めんどくさいったらありゃしねぇ』
『やるからにはやるさ、給料分はな』
『いいじゃんいいじゃん!楽しくなってきた』
口では面倒くさいと言いつつも仕事はこなす猟兵で、戦闘だとやる気を最初から見せる戦闘バカです。
捜索系ではハッキングを駆使して情報を集めたり、演技で騙したり脅したりします。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使います。正面きって無数のテンタクルによる物量戦も好きですが、触手による立体的な移動からの相手の死角から攻撃も別格です。弱い相手だといたぶる傾向があります。
メインの武器は『テンタクル』です。
基本的な口調は『オレ』です。
あとはおまかせします。よろしくお願いいたします。


紫野崎・結名(サポート)
音は、こころ。こころは、ちから。
今はたぶん、この音が合ってる…と思うから

音によるサポート、妨害、撹乱が好み
攻撃や運動は苦手、特に腕力はほとんど無いです
なので、キーボードも肩にかけます

ピンチは黒い天使、歩くのはセブンリーグブーツ、Float on soundをふわっと浮かべてキーボードを演奏
キーボードはスマホとつないで音源を自由に設定変更できるよ
動物の鳴き声にしたり、管楽器の音にしたり、弦楽器の音にしたり

食は細くてすぐお腹いっぱい
そして人見知り気味

他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません



『あんたらか……この世界を元に戻そうっちゅー奴らはぁ!』
 海の水が突如巨大な柱となり盛り上がる。その頂点から、ざばぁっ、と『カッパ海坊主』が現れ、猟兵達を見下ろした。
 この妖怪はカクリヨファンタズムの世界から『陸』の概念を消し、海だけの世界にした張本人だ。頭の皿は笠で見えず、身体も緑色ではない。しかし、水を自在に操る姿はまさにカッパであり、海坊主であると言えよう。
「来たね、カッパ海坊主」
 邦絵がぺろりと舌で唇を潤した。百鬼夜行を描く絵師として、その姿は是非とも絵に記したいと心が疼く。
「カッパも色々いるのなら、海坊主も多様なのでしょう」
 折り紙で出来た舟が転覆しないよう抑えながら、遥は手早く、新たな折り紙を折ってゆく。この海坊主の戦い方は不明だが、船幽霊のように足場を沈めてくるのであれば、猟兵達にとっては大きな不利となってしまう。
 舟、紙飛行機、亀、鳥、クラゲ。大小様々な折り紙を作っては海へ浮かべ、仲間達への支援となるよう操作する。
 小さなつま先程しかない折り紙ですら、猟兵達にとっては十分な足場だ。
 西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)はそんな小さな一枚の上に立ち、無言でカッパ海坊主を見上げていた。
 彼を突き動かすのは『オブリビオン狩り』。幸い妖怪だらけのこの世界では、人命救助の優先度は低い。ここならば存分に狩ることが出来る。
 対して紫野崎・結名(歪な純白・f19420)は大きめの舟に揺られて、バランスを崩してしまいそうになる。
「わ、わわわ……」
 肩にかけたキーボードの重みもあって、立つのがやっとだ。それでもこのキーボードは大切な力。海に落とすまいと必死に耐える。
「ふむ、河童は相撲が得意な妖怪だと聞くが」
 デュナは変わらず海の上を走りながら、周囲を見渡した。この妖怪がしでかしたことだが、相撲がとれそうな陸などもはや海の底だ。
「そうさ、きれいさっぱり海だけにしちまってさ」
 邦絵はデュナの言葉に頷いた。
『何こそこそ言ってやがんだ! 喰らいなぁ!』
 カッパ海坊主は、しびれを切らしたように水を操り始めた。空中に大きな渦が生まれ、その上を滑るように移動しながら、カッパ海坊主が三節棍を猟兵達に振り下ろす。
「わ、わ……っ!」
 渦に巻かれ、結名がさらにバランスを崩す。その隙をついて、刃が結名に襲い掛かった。
 金属音が激しく響く。結名を狙った刃は……細い触手に阻まれいていた。
「あーあーヤダヤダ。めんどくさいったらありゃしねぇ」
『何ィ!?』
 気怠そうに語るのは、霧崎・蛇駆(ヴィリジアンモンスター・f20261)。彼はテンタクルと呼ばれる触手を操作し三節棍を弾き返すと、遥の折り紙を足場に、高く跳躍する。
「やるからにはやるさ、給料分はな」
 そう言いながらも蛇駆は激しい闘気を放ち、テンタクルを激しく打ち付ける。
「アハハハハハ!!」
『チッ、蛸入道かよ!』
 カッパ海坊主はその触手をいなしながら隙を狙う。だから、水の色に影が混ざっていることに気が付かなかった。
「何人たりとも死の影より逃れる事能わず」
『エッ!?』
 水中の渦から、黒い影がカッパ海坊主に食らいついた。それは織久の闇器より繰り出された影面と呼ばれる禍々しい影であった。
「散れっ!」
『ギャァッ!!』
 纏わりついた影が破裂した。激しい衝撃に、水中に沈むカッパ海坊主を、織久と繋がった影の腕が引き寄せた。
「逃がさない」
『……ヤバイ!』
 咄嗟にカッパ海坊主が張り手を繰り出した。足の踏ん張りこそ効いていないが、その腕力は空気を激しく打ち、衝撃波となって織久に迫る。
 織久は影面を戻し、巨大な大剣に変化させる。その腹を盾に見立て、衝撃に備える。
 どぉん! という音とともに、織久に衝撃が走る。……だが、想像以上に衝撃は軽かった。織久は即座に体勢を立て直し、大剣の重みでカッパ海坊主を両断しようと振り下ろす
『ひぇえっ!!』
 三節棍を投げ捨て、カッパ海坊主が海へと沈み込もうとする。だが、すとん、と足が地についた。
『エッ?』
「……これは」
 織久は、張り手の衝撃が想像よりも軽かった理由を知ることとなる。
「ひらひらと風に飛ぶ薄く弱い刃」
 ふわりと風に乗る紙切れ。その紙切れは水面に浮かんで、一つにまとまり小さな足場を形成していた。
 それは、遥の折り紙であった。これらが張り手の一撃に割って入り、衝撃を受け止めたのだ。さらに、千切れた紙も寄り集まって、水辺に浮かんでいる。
 それは猟兵達にとっては有利な足場であり、水面に潜ることの出来るカッパ海坊主にとっては邪魔な障害物となった。
「鋭く軽く真っ直ぐに裂け!」
 そこに手裏剣状に折られた折り紙がカッパ海坊主に迫った。
「紙って意外とよく切れるし、紙で切るととても痛いんですよね」
 遥の言葉と共に、カッパ海坊主の肌が切り裂かれてゆく。
『く、くっそー!!』
 状況は完全に猟兵優勢であった。カッパ海坊主は致命傷こそ受けていないものの、細かい傷は疲労を蓄積させるには十分な効果を与えていた。
「なぁ、カッパのあんた!」
 そんなカッパ海坊主に、邦絵が呼びかける。
「陸が無くなって海だけになったらどうやって相撲を取る気なんだい!」
『うっ……!?』
 それはデュナも指摘していることであった。河童は相撲を取る妖怪だ。だが、この海だけの世界では、そんな土俵は無い。
『そ、それは……!!』
 カッパ海坊主が戸惑う。これは本来、この妖怪が望んだ世界なのか? と。
 これが邦絵の狙いであった。
(骸魂との結びつきが弱くなってる!)
 そう確信した邦絵は、畳みかけるように呼びかけた。
「陸がなくっちゃキュウリだって作れないし、『河の童』と書いてカッパだろう?海に沈みっぱなしで良いのかい!」
『きゅ、キュウリ……!!』
 カッパ海坊主が頭を押さえる。頭が割れるような痛みに、カッパ海坊主が顔を歪めた。

 ――……♪

 その時、優しくも荘厳なメロディが、戦場に流れ始めた。

「みんなの気持ち、伝わると良いな……」
 結名のキーボードが紡ぐメロディだ。ふわっと浮かぶ『Float on sound』というスピーカーがその音を、猟兵とカッパ海坊主に届ける。
 飲み込まれたカッパを想い、骸魂からの解放を願う。そういうメロディだ。
「気をしっかり持って!」
 邦絵が情感たっぷりに語りかける。
「そんな奴の言いなりになるんじゃあないよっ!」
『うわああああああーーー!!』
 その言葉に、カッパ海坊主が崩れ落ちた……かに思えた。
『ざけんな……俺は、俺は水だけありゃ十分なんだよォ!』
 骸魂である海坊主が、本体のカッパを押さえつけ、強制的に身体の自由を奪ったのだ。
「ちっ、一筋縄じゃいかないねぇ」
 苦々しい顔をする邦絵に、デュナは堂々と笑う。
「ふっ、ならば彼奴の本体を引きずり出せば良いのだろう」
 手を天に伸ばすと、上空から八本の柱が海を貫いた。その柱は大地を作り、そして中央に土俵を作り上げる。
「これで足場の心配もない。さぁ、河童よ! 相撲をとろうではないか!」
 デュナがカッパ海坊主に指を突き付け、挑戦状をたたきつけた。
『だぁれが……やるかよ!』
 カッパ海坊主は、柱が海を貫いた反動で上がった水しぶきを集め、巨大な滝を生み出した。
『流れちまいな!』
 それをデュナに叩きつける……が、デュナは仁王立ちをしたまま、涼しい顔でその滝を受け止める。
『なんだとぉっ!? ……なっ!』
 驚くカッパ海坊主の身体に、蛇駆の触手が巻き付いた。
「お呼びだぜ!!」
 思い切りぶん投げると、カッパ海坊主はデュナの作り出した試合場へと叩きつけられた。
「行司は任せてください」
 遥が手早く、折り紙の行事と軍配を作り上げる。
「こういう、気持ち、かな……?」
 そこに結名の勇壮な音楽が加われば、試合場のテンションは否応にも上がってゆく。
『こ、これは……』
 カッパ海坊主は、真正面の女神を見つめ返す。
 腰を深く落とし、仕切り線に拳をついている。闘気に溢れ、まるで巨大な岩の塊のようだ。
 だが、不思議と胸が躍る。今、ここでその女神と取り組みを行ったならば、どんなに面白いだろうか。
 そう思うからこそ、カッパ海坊主は無意識的に腰を落としていた。
「はっけよい……!」
 折り紙の行司が叫ぶ。
「のこった!」

 力の差は歴然だった。ほんの数秒もしないうちに、カッパ海坊主は天を見上げていた。
 それでも、楽しかった。相撲とはこんなに楽しかったのか。
 河童の魂が、骸魂を拒絶する。この世界は、河童の望む世界ではないと、はっきり気付いたのだ。
「今だ!」
 邦絵が白紙の巻物を取り出し、絵筆を一気に分身させる。
 その白紙に描くのは、相撲を取る海坊主の姿。
「汝の正体、現われたり。封印、百鬼夜行絵図……『海坊主』!」
『ぐ、おぉおおお!!!』
 描かれた海坊主の骸魂が、河童から引きはがされる。
 そして、空に散って、消えるのであった。

 骸魂の消滅と共に、海の水が引き始めた。
 海の底に沈んでいた陸がその形を取り戻し、陸上妖怪達も次々と現れて、感慨深く大地を踏みしめる。
「あ……アタイは……?」
 河童が目を覚ます。その姿はもう、オブリビオンのそれではなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 日常 『決闘ごっこ』

POW   :    力こそパワー! 圧倒的な力技でド派手に勝ちに行く

SPD   :    居合い切りや早撃ちで、一瞬のスリルと勝負を楽しむ

WIZ   :    相手のカッコよさを引き立て、上手に負けを演じて盛り上げる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 陸を取り戻した妖怪達は、早速、宴の準備を始めていた。
 酒に、料理に、歌に。そして一番のお楽しみと言えば、相撲だ。
 縄をまるく囲って簡単な土俵を作り上げると、我こそは、と思う腕自慢が一番乗りで土俵入りする。
 対する相手も土俵入りすれば、周りの妖怪がやんややんやとはやし立て、試合がわっと盛り上がる。

 妖怪達は猟兵達に手招きをして催促を始めた。
 世界を救ったのだから、これくらいは楽しんでもバチは当たらないだろう。
 そうして、猟兵達は輪の中に紛れてゆくのであった。
春霞・遙
さて、どこかの創世神話では原初世界は水に覆われていた、のでしたっけ。天が、大地が、大気が生まれ、生き物が喜び祝う。
海の恵みも良いですが大地の実りを頂けるのは地面があってこそですね。

「クイックドロウ」の対決ならともかく私は戦うの得意ではないので、冷やした野菜でも頂きながら勝負の応援や怪我の手当てをしていますよ。骸魂から解放された方々の様子も確認できるでしょうか。

かまって欲しい子供たちでもいればおすもうをとって負けてあげたり、いたずらっこをくすぐりつくして負かしたりというくらいなら参加しましょう。真面目に戦えというのなら早撃ちでも射撃対決でも相手になりますが、ね。


デュナ・ヴァーシャ
さて、相撲だな。我も当然参加するが……先程のオブリビオンより強い妖怪がいるとも思えんな。
さりとて、こちらが手を抜いて勝負と言うのも無粋だろう。ここはそうだな、稽古をつけるつもりで、一度に複数の妖怪の相手をしてやろう。
力自慢だろうが技自慢だろうが、自信のある者は自由に土俵に上がってくるが良い。

我が肉体を誇示しながら堂々と土俵を踏みしめて仁王立ちし、相手に先制攻撃を許して堂々と受け止める。その上で、相手が張り手なら張り手、投げなら投げを、こちらから手本を見せるように返そう。

我が名はデュナ・ヴァーシャ、肉体を司る異界の神である。その名を、この肉体を、よく覚えておくが良い。



 遥は賑わう宴会の様子を見て回りながら、目を細めた。
「どこかの創世神話では原初世界は水に覆われていた、のでしたっけ」
 空を見上げると、穏やかな風が流れ、踏みしめる大地は濡れてぬかるんでいるが、次第に渇いて新しい葉が芽吹くだろう。
「天が、大地が、大気が生まれ、生き物が喜び祝う……海の恵みも良いですが大地の実りを頂けるのは地面があってこそですね」
 そうして、頂いたきゅうりをぱりっと頬張った。

 どしゃっと地面に妖怪が打ち付けられた。
「どうした、力自慢だろうが技自慢だろうが、自信のある者は自由に土俵に上がってくるが良い」
 土俵の中心で、妖怪を投げ飛ばした張本人であるデュナが堂々と大きな声で告げた。
 肉体を司る神であり、猟兵であるデュナにとって、カッパ海坊主程の強さを持つ者はいない。それでも、手を抜いて勝負をするのは無粋だと考えた彼女は一切手を抜かず、妖怪達を焚きつける。
「おっしゃ、俺が!」
「次はおいらだ!」
 その勝負を買おうと妖怪達が次々と手を上げる。だが、デュナは仁王立ちをしたまま、高らかに言う。
「よい、2人同時にかかってくるが良い」
 デュナの余裕の表情に、妖怪達は顔を見合わせて、二人がデュナの脇に回る。
 舐められたものだという気持ちもこみ上げたが、積みあがった敗北妖怪の山を見れば、この神との力の差ははっきり理解できていた。
 それでも向かってくるのは、妖怪達も楽しみたい一心からであろう。
「はっけよーい! のこった!」
 妖怪達がデュナを挟み撃ちのような形で突進する。デュナは涼しい顔で、仁王立ちの姿勢を崩さない。
 どしんと妖怪が左右からぶち当たる。だが、デュナはピクリとも動かない。まるで地に深々と根を張った大木のようだ。
「うむ、体重の乗せ方は良いぞ」
「うひゃぁあ!!」
 デュナが片手一本で妖怪をむんずと掴み、投げ飛ばした。木の葉のように軽々と舞う妖怪達は、呆然と、何が起こったのかわからないという表情で地面にべしゃりと倒れ込むのであった。
「我が名はデュナ・ヴァーシャ。肉体を司る異界の神である」
 その肉体美を見せつけるよう、デュナはポージングをキメて叫ぶ。
「その名を、この肉体を、よく覚えておくが良い」

「さぁ、これで大丈夫」
「ありがとよっ!」
 遥は相撲で怪我をしてしまった妖怪を診ては、応急処置をして回っていた。
 デュナの相撲は大人気。容赦のない一発ながら、怪我には極力気を配るデュナであっても細かい傷まではどうにもならない。
 それに、土俵は一つではない。たくさんの妖怪達は笑いながら、喧嘩しながら、この時間を楽しんでいる。
「そういえば、骸魂に飲み込まれていた人達はどうしているでしょうか?」
 遥はふと、これまでに戦った妖怪達を思い出す。そこで、彼らの元へと向かうと、カッパをはじめとした、骸魂に囚われた妖怪達はひと固まりで手当てを受けているようだった。
「あっはっはっは!!」
 カッパは相撲の試合を見て元気に笑っていた。
 骸魂に捕らわれた疲れもあって土俵に上がることはしないようだが、先程までの凶悪な気配はさっぱりと消え、気の良い妖怪であったということが手に取るように分かった。
「もう大丈夫そうですね」
「ねぇ、ねーちゃん」
 と、背後から無邪気な声が投げかけられ、遥は振り向く。
 そこには小さな妖怪の子供たちが何人も遥を見上げていた。
「ねーちゃんもすもうとろーぜー!」
「とろーぜー!」
 ぐいぐいと白衣を引っ張る妖怪達に、遥はふっと笑う。
「いいよ。じゃあ一緒にあそぼうか!」
 小さな妖怪達に手を引かれ、遥は笑いながら、輪の中に入っていくのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

歌川・邦絵
※アドリブ歓迎

・行動
海坊主の骸魂から解放されたカッパの子に絵を描かせて欲しいと頼み
広げた巻物に複製した絵筆(ヤドリガミ本体)を使って一気に描き上げる

・セリフ
やあ、アンタも大変だったねぇ、でも何とかなったみたいで良かったよ
それで代わりと言ってはなんだけどさ、
アタシにアンタの絵を描かせてくれないかい

アタシは出会った妖怪たちを絵に描いて
自分だけの百鬼夜行図を作り上げることが夢なんだよ



 妖怪達の相撲は、もう数えきれないほどの勝負を重ねていた。
 邦絵はそんな様子を眺めつつ、宴会場を歩いていた。
「ねえちゃん、一試合どうだい?」
「いや、アタシは遠慮しとくよ」
 そう言う邦絵が持つのは、絵筆と紙。相撲をとらない代わりに、この宴の様子を絵に収めているようだった。
 だが、彼女が本当に絵にしたいものは他にあるようだった。
「お、いたいた」
 それは、骸魂に身体を奪われた反動で疲れ切った身体を休めているカッパであった。
「やぁ、アンタも大変だったねぇ」
「よぉ、姉ちゃん。こちらこそ悪かったね」
 邦絵の言葉に、カッパは軽く手を挙げて挨拶する。
「あぁ、でも、何とかなったみたいで良かったよ」
 言いながら、邦絵はカッパに向かい合ってどしっと座る。
 操られていたのだから全ては水に流そう、と、周りの妖怪達はカッパを迎え入れた。それでもカッパには多少の罪悪感も残っているのだろう。猟兵を前にすると、どこか気後れしている雰囲気が感じ取れた。
 そんなカッパに目線を合わせて、邦絵が笑いかける。
「それで代わりと言ってはなんだけどさ……」
 邦絵は巻物を拡げて、顔を近付ける。
「アタシにアンタの絵を描かせてくれないかい」
 思わぬ申し出に目を丸くしたカッパに夢を語った邦絵の表情はキラキラと自信に満ちていた。
「アタシは出会った妖怪達を絵に描いて、自分だけの百鬼夜行図を作り上げることが夢なんだよ」
「……アタイでいいのかい?」
 その問いに邦絵は迷わず頷くと、カッパはふっと微笑んだ。
「よしきた!」
 絵筆が増えて、空中で踊る。様々な色が白紙の上を滑りながら、目の前のカッパを描いてゆく。
「出来た!」
 邦絵が叫ぶ。あっという間に完成した絵をカッパに見せると、カッパは瞳を輝かせて、その姿に食い入った。
「どうだい?」
「……あぁ、凄いよ。凄いよアンタ」
 カッパは感動に震え、邦絵を賞賛した。満足そうに鼻をすする邦衛。
 彼女の描いたカッパの絵の隣には、カッパのかつての友、海坊主の姿もあった。

 大地は渇き、世界はカタストロフが起きた面影もないほどに回復した。
 それでも、喜びの宴は終わらない。そこで騒ぎまわる妖怪達の最後の一人が疲れ果ててしまうまで、きっと終わらないのだろう。
 世界が救われた喜びは、いつまでも、いつまでも続いていくのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

死絡・送
POW力こそパワー! 圧倒的な力技でド派手に勝ちに行く

相撲に挑むぜ、正式な作法に則り土俵入りで四股を踏みいざ立ち合い!
怪力と気合いで真っ向から相手を受け止めに挑みグラップルで組み合い
此方の決め手を仕掛ける機会をうかがい相手を崩して担ぎ上げて撞木反り
に入る「これで決めるぜ!」と言い撞木反りの型でノーブルフォールを使いド派手に投げ飛ばそうと試みる。

決まったら投げた相手を助け起こしに行きまたやろうぜと声をかける。
妖怪達と相撲に付き合ったりちゃんこ鍋を作って食べる。



 そう、まだ宴は終わらない!!
「力こそパワー! 圧倒的な力技でド派手に勝ちに行くぜ!」
 妖怪達の間に、死絡・送(ノーブルバット・f00528)が名乗りを上げたのだ。
 わぁっ、と妖怪達の歓声が上がると、送は相撲の作法をしっかりと踏んで土俵入りを果たす。
 対する妖怪も、それに合わせて土俵入りすれば、自然と厳かな雰囲気が土俵を中心に渦巻き始めた。
 四股を踏み、拳を付け、見合う。
 周りの観客たちも、その威容にごくりと息を飲んだ。
「のこった!」
 ほぼ同時! 送と妖怪はがっぷり四つに組み合って、一進一退の攻防を繰り広げる。
「うぉおっ……!!」
 互いに組み合った腕はまったく離れない。きっと、ほんの一瞬の隙でこの勝負は決まる。観客は瞬きすら忘れて、二人の取り組みを見守っている。
 そして、その時は唐突にやってきた。
「うぉっ……!?」
 妖怪の体勢が崩れた!
 送はその隙を見逃さず、相手を一気に担ぎ上げる。
「これで決めるぜ!」
 送は撞木反りの型で、相手を投げ飛ばした! 投げ飛ばされた妖怪は土俵の外へと吹き飛び、べしゃりと尻もちをつく。

 文句なしの決まり手であった。観客は互いの健闘を称え、惜しみない拍手を送っている。その拍手の雨の中、送は対戦相手の妖怪へと歩み寄ると、手を差し出した。
「いい勝負だった。またやろうぜ」
 その言葉に、妖怪が手を握り返す。歓声と拍手は、より一層大きく湧き上がるのであった。

 そうして、宴の終わりは近付きつつあった。
 日もとっぷりと暮れた中で、酒に酔ってベロベロになった妖怪達がそこかしこで眠りこけ、相撲をとった者達も流石に疲れて休み始めた。
 そんな彼らの疲れを癒すのは、やはりうまい食事だ。
 ぐつぐつと煮え立つ大きな鍋に、様々な具材がたっぷり入れられたちゃんこ鍋。
 送の作ったそれは皆に好評で、あっという間に空になってしまう。
「こんなに楽しかったのは久しぶりだ」
 妖怪達が口々に笑う。最後に一本で締めて、宴は締めくくられたのであった。

 カクリヨファンタズム。
 常にカタストロフの危機に晒されている世界でありながら、妖怪達は逞しい。それでも、猟兵達の力が無ければいつかは本当に滅んでしまうだろう。
 それを防ぐため、猟兵達は明日も、明後日も、戦うのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月07日


挿絵イラスト