嗚呼、青春の大正冥土給仕録(作者 G.Y.
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●在る昼下がりのこと
「嗚呼どうしてだサチ子」
「御主人様を護るのも、サチ子の務めで御座います」
「駄目だ駄目だ。こんな形でなど、許されることではない」
「御主人様は、この世に幸をもたらすお方で御座います。そんな御主人様のお傍にいられて、サチ子は嬉しゅうございました」
「目を開けろサチ子。嗚呼、誰か、誰かいないか」

「サチ子、サチ子――」

●大正カフェーの危機
「御主人様、お帰りなさいませ」
「ただいま、お茶をご用意いたしますわ」
 サクラミラージュのモダンなカフェーは、いつでもどこでも大賑わい。
 舌がとろけるような甘味に舌鼓を打ちながら、気立ての良いメイドさん達とのひと時は、何物にも代えがたい時間なので御座いました。

 しかし、ここ、人気のメイドが揃った話題のカフェーでは、店長が名簿を眺めては、うんうんと唸っているので御座います。
「嗚呼、困ったことになったぞ」
 ひい、ふう、みい。店長は指折りメイドの数を数えますが、何度数えたって満足のいく数字になりやしません。
 なんと、このカフェーではメイドの人数が不足していたので御座います。
 体調不良や家の都合。理由は様々ながら不幸な偶然が重なって、ぽっかりと勤務表に穴が開いてしまったのです。
「どうしたものか、これでは店が開けない」
 開店の時間は迫ります。店長はカウンターでぐるぐると回るのでした。

●ようこそ大正メイドカフェー
「サクラミラージュにて、影朧を匿う民間人の姿を予知しましたわ」
 グリモアベースにて、エリル・メアリアル(孤城の女王・f03064)が猟兵達にそう告げた。
 サクラミラージュの世界では、オブリビオンを影朧と呼んでいる。また、死者が蘇った存在であるという認識がある為、縁のある民間人が影朧を匿ってしまうことがままあるのだという。
 しかし、影朧はあくまでも『オブリビオン』。放っておけば世界を破壊してしまう存在だ。
「ですから、皆様には影朧を匿う民間人と接触し、影朧の居場所の特定……影朧の撃破をお願いしますわ」
 エリルはそう言って、詳細を語り始める。
「容疑者は持田百貨店という名の店を持つオーナー、持田・百之輔(もちだ・もものすけ)ですわ。年齢は50を過ぎたくらいの、小太りの男性ですわね。立派なお召し物とおヒゲが特徴ですわ」
 持田・百之輔は一代で財を築いた豪商である。幼少は貧乏であったが、大人になるとその商才を発揮。優れた手腕から、持田百貨店を設立。店は連日大賑わいとなっていた。
 性格は温厚で思慮深い。しかし、商品を品定めする時の目つきは鋭く、商談相手は思わず尻込みをしてしまうほどだという。
「そんな持田様ですが、毎日の日課として近所のカフェーで一服してから自分の店へ行くそうなんですの」
 つまり、そのタイミングで彼に接触し、居場所を聞き出せば良いわけだが、ここでエリルが険しい顔をした。
「実は、そのお店……今大変な危機に陥っておりますの!!」
 エリルが叫んだ。そして、口早にまくしてたてゆく。
「そのお店はとっても美味しいコーヒーにあま~いパフェ、それにレベルの高いメイド達が在籍していて、凄く人気のお店なんですのよ!」
 どうやら評判のお店らしい。だが、それが何故危機なのか?
「実はそのカフェー、様々な理由によって大勢のメイドがお店を休んでしまい、お店を運営するのすら危うい状況なんだそうですの」
 なおその理由については今回の影朧の事件とは一切関係がないらしい。だが、これはある意味ではチャンスである。
「皆様には……メイドになって持田様に接触していただきますわ!!」
 エリルは、そう高らかに告げるのであった。

「カフェーの店長には話は通しておきましたわ。制服も各種用意があるから、サイズに合ったものがきっと見つかるはずですわ。もし無い場合も、似た服装くらいはしてくださいましね」
 メイド服は1種類。多少の装飾は許されているので、色々と個性を出すことは出来るだろう。もし自分に合う服が無くても、メイドをする以上はある程度そういう服装が求められる。もちろんそれは、男女ともに、である。
「メイドとして仕事を始めたら、そんなに時間もかからないうちに持田様が来店するはずですわ。給仕をしながら、影朧についての話を聞いてくださいますかしら」
 聞き込みや説得は自ずと店内で行うことになるだろう。その為、あまり荒っぽいことはしないで欲しい、とエリルはお願いした。
「ちなみに、ここでは厨房の調理担当もメイド服で仕事をしているみたいですわね」
 料理を作ってそのまま運んだり……そういうケースも考えてのことだろう。
 なんにしたって、メイドの服になる必要はありそうだ。
「まぁ、折角なのだから、しっかり給仕のお仕事の体験してきたらいかがかしら?」
 そう言って、エリルのグリモアが輝きだした。

 いざ、大正メイドカフェーへ!


G.Y.
 こんにちは。G.Y.です。
 今回はサクラミラージュにて、民間人に匿われた影朧を救済するシナリオになります。

 影朧を匿っている人物は持田・百ノ輔(もちだ・もものすけ)という、百貨店の経営者です。彼はどこかに影朧を一人匿っているようです。
 日課として通っているメイドカフェーで給仕のお手伝いをしながら、影朧の居場所を聞き出しましょう。
 聞き出す方法は様々ですが、メイドとしての振る舞いなんかもありますので、あまり手荒にならないようにすると嬉しいです。

 聞き出してからは影朧までの冒険、そして、最後に影朧との対決となります。
 影朧は転生の余地も残されている存在です。どのようにするかは皆様次第ですが、良い結果となるよう導いていただければ幸いです。

 それでは、皆様のプレイング、お待ちしております!
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第1章 日常 『大正メイド喫茶を救え!』

POWメイドとして接客を行う
SPD調理担当として料理を作る
WIZ裏方として雑用を行う
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


吉岡・紅葉
POW

ランララ~♪今日も良い天気~♪
さてさて、なにやらカフェーが営業の危機らしいじゃないですか。
ここはひとつ、桜學府の精鋭である私の出番ですね!
残念ながらカフェーで働いたことはありませんが、
見事にお給仕をこなしてみせますよ!
お帰りなさいませ、旦那様♪と<元気>を売りに接客しますよ。
<ブームの仕掛け人>として、定番の人気スイーツだけでなく
これからヒットするであろう新作スイーツもちゃっかり
オススメしてみます。
お客様がコーヒーでリラックスしてきたら、厨房に引っ込むフリをして
物陰で<聞き耳>を立てて、情報収集することも忘れません。
壁に耳あり私メアリ~♪
※アドリブ連携なんでもOK


雨咲・ケイ
なるほど、いわゆるメイド喫茶というやつですね。
了解しました。では私もメイド服を着用しましょう。
私は男ですが、性別など些細な問題です、はい。

【POW】で行動します。

メイド服には中華風の装飾を施し、
店のメイドとして持田さんに接触して情報を聞き出します。
性別をツッコまれても誤魔化しますよ。
すんなり話して頂けるとは思えませんので、
サービスと称してアルコール分の強い洋酒入りの
チョコレヱトを提供しましょう。
そして持田さんの気が良くなった所で影朧の情報や
何が起きたのかを聞き出します。
一応最後に車の運転は控えるように注意も促しておきます。

アドリブ等歓迎です。


「ランララ~♪ 今日も良い天気~♪」
 吉岡・紅葉(ハイカラさんが通り過ぎた後・f22838)が上機嫌で街中を自転車でひた走る。
 おひさまの光はぽかぽかと、舞い散る桜の花びらがふんわり良い香りを運んでくる。
「さてさて、なにやらカフェーが営業の危機らしいじゃないですか。ここはひとつ、桜學府の精鋭である私の出番ですね!」
 ぐぐっと握りこぶしを作る紅葉であるが、実際はカフェーで働いた経験はない。
「ですが、見事にお給仕をこなしてみせますよ!」
 高らかに、自信たっぷりにそう告げて、紅葉は問題のお店へと向かうのであった。

「なるほど、いわゆるメイド喫茶というやつですね」
 雨咲・ケイ(人間の學徒兵・f00882)が、支給されたメイド服を前に、冷静に分析していた。
 実際この世界ではパーラーメイドが働くカフェーは多い。しかし、ボーイを一切排除したカフェーというのは、特殊な部類に入るのだろう。
「では、私もメイド服を着用しましょう」
 性別などは些細なものだ。ケイは一切物怖じせずに、更衣室でそのメイド服に袖を通す。
 さらに中華風の装飾を施せば、立派なメイドの完成であった。

「おかえりなさいませ、旦那様♪」
 メイド服に身を包んだ紅葉が、満面の笑顔で客を迎え入れた。元気で笑顔の紅葉は、未経験の壁などなんのその。
「こちら、最近巷で話題のスイーツでございますよ♪」
 それどころか、これから流行るであろう様々なスイーツまでおススメするほどに馴染んでいるのである。
 対するケイもなかなか似合ったもの。丁寧な口調のクールな雰囲気が多くの客を虜にしている。重ねて言うが、性別などは些細なものなのだ。
 その時、しゃらんと店のドアが開く音がした。ケイは振り返り、挨拶がてら一礼をする。
「おかえりなさいませ。……と」
 そこにいたのは、話に聞いていた持田・百之輔であった。
「おや、新人さんですかな?」
 百之輔は帽子を取って扇子をあおぐ。日差しの強い外の空気に、汗をかいている様子であった。
「はい、臨時で出勤しております」
 ケイは百之輔を席に通すと、彼は一言ありがとうと言って、腰掛けた。
「コーヒーを頂けますかな?」
 メニューは見ずにケイに告げると、ケイは一つ礼をして、厨房へと引っ込んでゆく。
 厨房には丁度よく紅葉がいて、既にコーヒーの準備は出来ている様子であった。
「あれが持田さんですね!」
 そう言って紅葉がコーヒーをトレイに乗せてホールへと出る。
「お待たせいたしました、コーヒーです♪」
 百之輔のテーブルにコトリとコーヒー、砂糖ポット、ミルクポットを並べる。百之輔は一口コーヒーに口を付けると、ふぅと人心地着いたようであった。
「それでは、ごゆっくり~♪」
 紅葉が厨房へと帰ってゆく。その入れ替わりでケイが小さな皿を持って出てきた。
「持田様、こちらはサービスでございます」
「おぉ、チョコレヱトですな。これは恐れ入ります」
 皿の上には小粒のチョコレヱトが並べられており、百之輔はそれをひとつつまんで口に運ぶ。
「おっ……これはブランデー入りですな。とても美味しい」
「はい、ですから車の運転は控えて下さい」
 ケイの言葉に、百之輔は笑う。
「ははは、最近はめっきりですよ」
 きっと専属の運転手がいるのだろう。百之輔は上機嫌に笑う。
「ところで……」

「ふふふ、壁に耳あり私メアリ~♪」
 紅葉は厨房の壁から、二人の様子に聞き耳を立てていた。
「もちろん、情報収集も忘れませんよ、精鋭である私なのですからね!」
 誰に言うでもなく、紅葉が様子を見る。
「どれどれ~……?」
「……はは、古い話ですよ。まだ私も若く、店を開く前ぐらいの話です」
 百之輔が語ったのは、過去新聞にも載った、若いメイドの毒殺事件であった。当時百之輔が商人として成り上がり始めた頃、身の回りの世話をしていたメイドが死ぬ事件があったのだという。
 犯人は百之輔を恨んだ商人仲間であった。その頃から習慣となっていたコーヒーに、潜入させていたメイドを使って毒を盛ったのだ。
 それにいち早く気付いたメイドが、百之輔が口にする寸前に、自ら身代わりとなった――。
「あれがあったからでしょうか、余計に毎日のコーヒーが欠かせなくなりました」
 コーヒーを啜り、遠い目をする百之輔。
「ふふーん、匿っているのはそのメイドの影朧、でしょうかね~?」
 紅葉はメモを取りながら、事件のあらまし、そして肝心の居場所についての情報収集を始めるのであった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

シスカ・ブラックウィドー
●アイ・リスパーさんと
「おかえりなさいませ、ご主人様!」
メイド服で接客にまわる。愛想を振りまきながら接客するね。

■相方への感想
「うん、よく似合ってるよ!」
(アイさんメイド服似合ってるなー。胸は無いけど)

時々様子を見に行って、アイさんが何かやらかしたら急いでフォローに回る。
空中でパフェをキャッチ!
アイさんはレジ打ちに回ってもらおう。


アイ・リスパー
シスカさんと

「カフェーでのお手伝い!
仕事が終わったら美味しいパフェ食べ放題ですね!」

こうしてはいられません!
シスカさんと一緒に問題のカフェーに向かいましょう。

「私、計算や暗記は得意ですから、接客はお任せ下さい!」

【チューリングの神託機械】で電脳空間の万能コンピュータに接続。
これでどんな複雑な注文が来ても暗記できますし、お会計の計算も一瞬です!

「いらっしゃいませ、ご主人様……こふっ」(神託機械の副作用で吐血しながら

メイド服に着替えてお店に出ます。

「シスカさん、似合ってます?」

注文されたパフェを運び……

「お待たせ致し……
あっ」

運動音痴のため転んでしまい……
シスカさんにフォローしてもらうのでした。


「「おかえりなさいませ、ご主人様!」」
 アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)とシスカ・ブラックウィドー(魔貌の毒蜘蛛・f13611)が来店した客を笑顔で出迎えた。
 可愛らしい少女の二人組……のように見えるが、シスカは男性である。しかし、そんな風に見えない程、良く似合っていた。

 二人もカフェーをメイド喫茶の危機を聞きつけ、お手伝いにやってきた猟兵である。
「カフェーでのお手伝い! 仕事が終わったら美味しいパフェ食べ放題ですね!」
 アイには他にもこんな目的があるようだが、ともあれこうしてはいられない、とシスカを連れてカフェーへ現れると、意気揚々とメイド服に袖を通すのであった。
「シスカさん、似合ってます?」
 更衣室から出てきたアイが、先に着替えてホールへ来ていたシスカへ聞く。
 くるりと一回転してみせて笑顔を作ると、シスカは優しく微笑み返し、答える。
「うん、よく似合ってるよ!」
 その言葉に嘘偽りはない。シスカは心からアイのメイド服が良く似合っていると思った。
(……胸はないけど)
 しかし加えて、シスカはそんなことを考えてしまう。
「何か言いました?」
 アイがきょとんと首を傾げる様子に、シスカは無言で首を振った。
「張り切ってるね、アイさん」
「だってパフェ食べ放題ですもん!」
 むふーっと鼻息を荒くするアイに、店長は『そんな約束したかなぁ』と首をひねる。と、その時、客からの注文が入った。
「はい、チョコレヱトパフェおひとつですね♪」
 シスカが元気に注文を取ると、厨房側で控えていたアイに目配せをする。
 アイは頷いて、厨房の調理係からパフェを受け取ると、トレーに乗せて客のもとへと向かってゆく。
 両手で持つ手がちょっと震えているように見える。足もなんだかおぼつかない感じで、見ていて危なっかしい。
 そんな周囲の視線に気付かず、アイがパフェを注文した客の前へと到着した。
「お待たせいたし……」
 そう言った瞬間、ぐらりとバランスが崩れた。
「あっ」
 トレーと共に、パフェが宙を舞う。
「アイさんっ!」
 シスカは咄嗟に駆け寄ると、床を蹴って高く跳躍した。
 トレーとパフェを華麗にキャッチすると、こぼれてしまいそうなクリームを立て直し、吹き飛んでしまったさくらんぼを置き直す。
 スタンと着地したシスカの手には、アイのトレーに乗った綺麗に整ったパフェが、何事もなかったかのようにすまして立っていたのであった。
「おぉお~~」
 周囲から歓声が上がる。
「はい、お待たせしました!」
 満面の笑みでシスカが客にパフェを出し、その場は事なきを得るのであった。

「アイさんにはレジ打ちに回ってもらおう」
 一連の事故は『パフォーマンス』で済んだようだが、やはり仕事は適材適所。シスカの提案にアイも元気に応えた。
「私、計算や暗記は得意ですから!」
 アイが電脳空間の万能コンピュータに接続する。これならばどれだけ複雑な計算であろうとソロバンを弾く手間が省ける。
「お会計の計算も一瞬です!」
 その言葉通り、店を出る客に対しての対応は目を見張るものがあった。
「ひやひやしたけれど、これで一安心だね」
 店長はアイの仕事ぶりに安堵した、その時であった。
 カラランと新たなお客さんが現れ、アイが笑顔で出迎える。
「いらっしゃいませ御主人様……こふっ」
 突如、吐血するアイ。
「アイさん!?」
「だ、大丈夫です、大丈夫」
 万能コンピュータに接続した代償である。が、カフェーの見栄え的にはちょっとよろしくなさそうだ。
 慌てて厨房の奥へと戻され、血を拭きとったりした後、接客を再開するのであった。

「サチ子もあのように、一生懸命でした」
 二人の様子を眺めながら、持田・百之輔は遠い目をする。
 彼が匿っているのは、かつて死んだメイドのサチ子であることは、間違いないようであった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

アリス・フォーサイス
よし、メイドさんならまかせてよ。いつもやってるからね。
(イラストの複数ピンナップ、『喫茶レストマギカ』参照)

メイドにコーヒーで毒殺されそうになった人がメイドに入れてもらうコーヒーを習慣にしてるって、逆じゃないのかな?普通なら怖くなりそうだけど。

この店にその匿ってる影朧がいる?いや、それならぼくたち猟兵が気づかないはずがないな。

メイドとして働きながら、百之輔くんのまわりや、メイドとの関係について、店長や元の従業員である名東さんに話を聞こう。


 メイドさん不足の報を聞き、アリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)はそのカフェーを訪れていた。
「よし、メイドさんなら任せてよ。いつもやってるからね」
 普段からカフェでのお仕事には慣れている。普段のお店ではなくとも、そう大きく勝手が違うこともないだろう。
 そんなわけでアリスは今回のカフェーのメイド服に身を包むと、手慣れた様子で給仕を続けている。
 そんなわけで、アリスの関心は今回の事件に集まっていた。
(この店に匿ってる影朧がいる? ……いや、それならぼくたち猟兵が気付かないはずがないな)
 アリスはお店に意識を巡らせるが、やはり影朧の気配は感じられない。この人手不足は当初の予知通り、まったくの偶然のようである。
(なら、百之輔くんのまわり、だよね)
 そう思い、アリスはコーヒーポットを片手に、百之輔へと近付いてゆく。
「おかわりはいかが?」
「あぁ、ありがとう」
 上機嫌な様子で、百之輔はカップを差し出す。
 アリスはカップにコーヒーを継ぎ足すと、それとなく質問をした。
「昔、そんな事件があったのに習慣にしてるの?」
 仲間の猟兵が聞き出した、過去の毒殺事件。百之輔はその事件を機に、かえって習慣化が進んだのだと言っていた。
「普通逆じゃないかな? 普通なら怖くなりそうだけど」
「そうですな……弔い、供養の気持ちと言えばいいでしょうか」
 百之輔はコーヒーをソーサーに置いて、ぽつり、ぽつりと語り始めた。
 かつて彼のメイドであったサチ子は、彼のコーヒーに入った毒に気が付いて、自らが身代わりとなって死んだ。
 それを偲ぶ思いが、未だに百之輔を縛っている、とも言えるのだろ。
「あるいは、私はいつか同じように死んでも良いと思っているのかもしれません」
 百之輔は自嘲気味に笑う。
「そう、あのコーヒーを飲めば、わたしもサチ子と共に……」
 無意識的に呟き、ハッとした表情で百之輔は汗を拭う。
「今のは、忘れてください」
 そう言って、取り繕うように百之輔はコーヒーを啜る。
「ふーん……」
 アリスは小さく唸って、百之輔から離れた。

「店長、百之輔くんはいつから常連なのかな?」
「ん? 確か……あの百貨店が出来てからだよ」
 店長はアリスの質問に答えながら、当時を思い出すように語る。
「大工が毎日何百人もきて、何年かがかりで建てたんだよな。いやぁ、あんなの建てちまうなんて凄い人さ」
 店長は拭いた皿を棚に戻しながら言う。
「地上5階建て、地下2階だなんてこの辺じゃ前代未聞だよ」
 その言葉に、従業員のメイドの一人が疑問の声を上げた。
「店長、あそこ地下は1階だけですわよ」
「あれ? そうだったっけ?」
 頭をぽりぽり掻いて、店長は笑う。
「百貨店……かぁ」
 その一連のやりとりに、アリスはぽつりとつぶやいた。
成功 🔵🔵🔴

国栖ヶ谷・鈴鹿
◎アドリブ等々OKです!

【SPD】

メイドさんの人手が必要?それならぼくに任せて!なんてたって、ぼくの専門だから!

ぼくのUCで、パーフェクトな給仕を見せてあげるよ。

【聞き込みとご注文を】
持田さんにご注文をいただいて、コーヒーにとても良く合うストロープワッフル🧇を。
珈琲の温かさでキャラメルがとろけるまでの間、お話をしながらまずは和やかに。

こうして少し時間をおけば、やわらかく解けていくものもあれば、それによって香り立つものもあるものだからね。

そういえば、お仕事のお帰りはいつもいつくらいに?お仕事終わりの甘いものと珈琲はとても良いものだからね。

(この仕事終わりの時間、影朧に近づくタイミングだよね)


 猟兵の中にはパーラーメイドを生業とする者も多い。国栖ヶ谷・鈴鹿(未来派芸術家&天才パテシエイル・f23254)もその一人である。
「メイドさんの人手が必要? それならボクに任せて! なんたってボクの専門だから!」
 自信たっぷりに笑う鈴鹿であったが、それは自らの実力を自認している証でもある。
「ぼくのパーフェクトな給仕を見せてあげるよ!」
 こうして自称天才、鈴鹿の活躍が幕を開けた。

「コーヒーに合うこちらはどうですか?」
「なら、頂こうかな」
 持田・百之輔のコーヒーのお代わりがてら、鈴鹿はストロープワッフルの注文を取る。
 シロップの塗られたワッフルをコーヒーカップに乗せると、鈴鹿は百之輔へ語る。
「こうして少し時間を置くとキャラメルがとろけるんだよ」
「ほう……それは楽しみです」
 天真爛漫でにこやかな鈴鹿に対しては、自然と百之輔の心も緩んでゆく。それはまるで、コーヒーに乗せられたストロープワッフルのようであった。
「そういえば、お仕事のお帰りはいつもいつくらいに?」
「うむ?」
 ほどよく溶けたワッフルを口にしながら、百之輔が素っ頓狂な声を上げた。
 質問の意味が理解できない、という様子だ。鈴鹿は咄嗟に言葉を続ける。
「お仕事終わりの甘いものと珈琲は、とても良いものだからね」
 鈴鹿が質問した真の意図は、仕事終わりの時間こそ百之輔が影朧に近付くタイミングだかと予測したからである。そんな意図には気付かず、百之輔はにこやかに答えた。
「はは、そうですな。今日は新人さんも多くていつもと雰囲気が違いますし、帰りに寄るのも良いかもしれません」
 臨時のメイドで埋められたお店に、百之輔も当然気付いているようではあった。しかし、これはこれで新鮮だということで、彼は店を気に入ってくれたらしい。
「しかし、最近は……22時くらい、でしょうかね。そんな時間に、お店はやっていますか?」
 思ったよりも遅い時間である。百貨店の閉店時間は20時であり、事後処理もあるとはいえ、やや遅いように思えた。
 鈴鹿はカフェーの店長に目配せすると、店長は無言で首を振った。
「うーん、残念。 このお店もその時間じゃ閉まっちゃうよ」
 そう鈴鹿は笑って見せるのであった。

 後で百貨店に確認したところ、不可解な点もあった。
 百之輔は閉店前には後を任せて店を出ることが多いのだという。

(やっぱり、百貨店の地下に匿われてるってことで間違いなさそうだね!)

 とうとう割れた影朧の居場所。
 百之輔には結局猟兵達の目的を伝えず仕舞いだったが、場所さえわかれば問題はない。
 カフェーの手伝いを終えると、メイド達は百貨店へと向かうのであった。
成功 🔵🔵🔴


第2章 冒険 『百貨店に潜むは……』

POW納品業者などとして入り込み調査。
SPD沢山のお客の中を器用にすり抜けて店内捜索。
WIZ噂や現場の様子から法則などを推理。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 影朧は持田・百之輔の所有する百貨店の地下に匿われている。
 カフェーでの調査によって、それは確定事項となった。

 カフェーでの手伝いを終えた猟兵達は、閉店した百貨店へと潜り込むこととなる。
 まだ店内には事後処理中の店員たちが残っている。怪しまれないように翌日分の納入業者や、今度は清掃係のメイド、百貨店に併設されたレストランのメイドなど、様々な姿を装って潜入するべきだろう。

 目的は、存在しないはずの地下2階の発見。
 店内に残る従業員への聞き込みや、情報からの推測。様々な手法を用いて、隠し部屋を暴き出すため、猟兵達は動き出すのであった。
雨咲・ケイ
今の時間だと持田さんは影朧の所にいるのでしょうか?
二度目の別れになってしまいますが、それでも……
持田さんには受け入れて頂かなければなりませんね。

【WIZ】で行動します。

清掃係のメイドに扮して潜入しましょう。
くどいようですが性別など些細な問題ですよ?

新人メイドを装って
「この百貨店の存在しないはずの地下2階の怪談の
噂を耳にしたのですが……」
と情報収集を行います。
同時に【影の追跡者の召喚】を使用して、
地下に向かう従業員を追跡しましょう。

地下の構造を把握したら、自身もそちらに向かい
【第六感】で当たりを付けて地下2階へ通じる階段を探します。

アドリブ歓迎です。


吉岡・紅葉
はいはい、次は隠し部屋を探せばいいんですね。ここは私にお任せ!先生から習った、盗賊の技術を活用しますよ。せっかく可愛いメイド服を貰ったのですから、清掃係のメイドを装って館内を調べましょう。調査の基本は〈聞き耳〉と〈偵察〉。人が近づいてきたら、口笛を吹きながらお掃除するフリをしてやり過ごしますよ。お店の人々には元気よく挨拶し、好印象を与えて怪しまれないよう「仕事してますアピール」します。情報を引き出すなら、持田さんに近い立場の幹部の人ですよねー。偉いさんぽい人に積極的に話しかけて、情報収集に努めますよ。「次はどこを掃除しようかな~?」とブラブラ歩いて、急に引き留められたりしたらビンゴですかね?


 ――夜8時。
 百貨店の入り口は閉まり、中では従業員たちが一日の締めくくる為、忙しなく作業を続けていた。
 一日中、多くの客を受け入れた床は靴の泥で汚れ、メイド達は明日の朝、新たに来店する客にピカピカの床で迎える為にモップを構えた。
「はいはい、次は隠し部屋を探せばいいんですね。ここは私にお任せ!」
 紅葉は折角のメイド服をそのまま着こなして、掃除のメイドを装うことにした。モップを片手に陽気に練り歩き、百貨店の様子を観察する。
(今の時間だと持田さんは影朧の所にいるのでしょうか?)
 ケイもまた清掃係に扮し、足元を眺めた。
 影朧は以前死別したメイドのサチ子であることはほぼ間違いない。
(二度目の別れになってしまいますが、それでも……持田さんには受け入れて頂かなければなりませんね)
 ケイはバケツに張った水にモップを浸け、掃除を始めるのであった。

「調査の基本は聞き耳、偵察! 先生から習った盗賊の技術を活用しますよ!」
 紅葉はそう意気込んで柱に張り付く。奥から来るメイド達の会話に聞き耳を立てるが、仕事の会話の他には他愛のない世間話ばかりで、実のある情報は得られないようであった。
「うーん、これは直接聞いた方がよさそうですねー」
 そう思う紅葉は、調査の対象を変えるべく怪談を昇ってゆく。
 ケイもまた、直接噂を聞いた方が良いと考え、地下へ向かうメイドの後を追った。
「この百貨店に存在しないはずの地下2階の怪談の噂を耳にしたのですが……」
 地下のメイドに、ケイがそれとなく話しかけた。
「あら、あなた新人さん?」
 メイドはケイに気が付くと、じろじろと全身を見回した。
 ケイはメイド服を身に纏い、よく似合っている。性別は些細なものであり、メイドも彼が男性であるとは思いもしないだろう。
 メイドは小声で耳打ちするようにケイに語り掛ける。
「その話……あんまりしない方がいいわよ?」
「そうなのですか?」
 ケイは素直に聞き返す。
「そうよ、詳しく調べようとしたメイドが何人か、それで辞めさせられてるんだもの」
 その言葉にケイは思案する。やはり百之輔にとって、地下二階には隠したいものがあるのだろう。
「ほんの少しでも、知っていることはありませんか」
 ケイのお願いに、メイドは苦い顔をする。
「私が話したって言っちゃ駄目よ?」
 メイドの念押しに、ケイは無言で頷いた。
「……これくらいの時間、地下の用具倉庫の方にね、オーナーを見かけたって噂があるのよ」

「ぴ~~ぴぴ~♪」
 モップを振りながら、紅葉が床を拭いて回る。近付く者に真面目に掃除をしている風に見せて、怪しまれないようにしているのだ。
「……むむ、あれは」
 そうやって上階の様子を見ると、幹部らしいスーツの男を見つけた。紅葉はすかさず近寄ると、元気に挨拶をする。
「お疲れ様です!」
「あ、ああ。お疲れ様」
 幹部らしい男は紅葉の元気っぷりに多少驚いたようだったが、すぐに警戒を解き、紅葉を労う。元気な挨拶で好印象を与える、紅葉の狙い通りである。
「元気が良いね。頑張りなさい」
「はいっ!」
 びしっと敬礼して、紅葉が笑う。それで話は終わったとばかりに幹部は脇を通り抜けようとしたが、紅葉はすすっと遮るように自然と立ち塞がった。
「オーナーにもご挨拶したいんですが、どちらでしょう!」
「オーナー? もう帰られたよ」
 紅葉の問いに、幹部はさらりと答える。どうやら嘘を言っている様子はない。
「どちらかに立ち寄られる、等は聞いていませんか?」
「いや……知らないなぁ……?」
 少し戸惑うように幹部が答えた。その声色に紅葉は僅かな焦りを感じ取ると、大きく礼をして立ち去る。
(オーナーが帰りにどこかに寄っているっていうのは知っていそうですね!)
 おそらくあまり口外してほしくないとでも頼まれているのだろう。もし影朧を匿っていることまで知っているのならば、オーナーの行動を聞くメイドにもっと警戒をするはずだ。
「次はどこを掃除しようかな~?」
 ここまでに集めた情報で、大方の目星はついていた。わざとらしい口調で地下の用具倉庫付近をうろつく紅葉の背後で、突如声がかけられた。
「ちょっと。あなたも新人さん?」
 それはケイが情報を収集したメイドであった。
「はい! よろしくお願いします!」
 元気に答える紅葉に、メイドははぁとため息をつく。
「そっちは掃除しなくてもいいわよ、用具倉庫はもう一人行ってるし……」
「行ってるし?」
 紅葉の反復に、メイドがたじろいだ。
「……あんまり知らない方がいいわ。訳も分からずクビにはなりたくないでしょ?」
(やはり、ビンゴですね!)
 警告したメイドにもしっかり礼をしつつも、紅葉はちゃっかり用具倉庫へと向かう。どうやら先客がいるようであった。
「紅葉さん」
 それはケイであった。紅葉と同じ結論に辿り着いていた様子である。
「隠し階段、このあたりのようですね」
 紅葉も周囲を見渡し始めた。
 客を入れない廊下は殺風景で薄暗い。人目につき辛いこのあたりならば、隠し階段への仕掛けを施すには絶好の場所だろう。
 長居はすまい。二人は速やかに調査を開始するのであった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

シスカ・ブラックウィドー
引き続きアイさんと行動。
掃除役のメイドとして百貨店に潜入。

アイさんなら普通にしてても騒ぎを起こしてくれるはずだから......
アイさんが囮になってくれてる間に壁をコンコン叩いて空洞になってそうな場所を探して回ろう。

ぬいぐるみ軍団も調査に導入!

(惨状を遠くから見て)やはりアイさんは世界を狙える逸材......!


アイ・リスパー
シスカさんと
「地下二階の探索ですね。
ならばシスカさんと一緒に清掃係のメイドとして潜入して調査しましょう!」

カフェーのメイド服の次は、清掃係としての正統派ヴィクトリアンメイド服です!

「この格好なら怪しまれずに……
はうっ」
(ロングスカートの裾を踏みつけてこけた)

いけません、店員の人たちに怪しまれないようにしないとっ!

「すみませんっ、新入りのメイドでしてっ!
って、ああっ!」

店員さんに向かって頭を下げた拍子に、手に持ってた掃除用のバケツが店員さんの方に飛んでいって!?

「すっ、すみませんっ、いまお拭きしますねっ!」

手にした雑巾で店員さんの顔を拭き――

そうこうしている間に、シスカさんの調査が進むのでした。


 百貨店にないはずの地下二階。そこに持田・百之輔の隠匿した影朧がいる。
 閉店後、客のいない店内ではあったが、従業員たちは明日の為にまだ忙しなく仕事を続けており、とりわけ、すべての階を掃除するメイド達は忙しそうにしていた。
「シスカさん、一緒に清掃係のメイドとして潜入しましょう!」
「カフェーのメイドの次もまたメイドなんだね」
 カフェーのメイド服のままでは目立つだろう、とアイが用意した服は正統派なヴィクトリアンメイド服であった。
 カフェーでは膝丈くらいまでのスカートだったが、今回は足元までぞろりと長い、シックな黒のメイド服だ。
「この格好なら怪しまれずに……はうっ」
 アイが早速、ロングスカートの裾を踏んづけて、躓いてしまった。
「わっ、たっ、とっ……!」
 2、3回トントンと小刻みに跳ねた後、べしゃりと盛大に顔から床に突っ込むアイ。その騒音に、近くのメイド達が心配そうに集まってくる。
「よし、この隙に……」
 シスカはアイに注目が集まっている隙を利用して、その場を離れた。
 隠し階段の場所は地下一階の用具倉庫付近であると、既に仲間の猟兵達の調査によって把握できている。だが、肝心の階段は巧妙に隠されているのか、見つかっていな状態であった。
 シスカは柱の陰に隠れると、誰も見ていないのを確認してから、ぬいぐるみ達を呼び出した。
「ぬいぐるみ軍団、頼んだよ」
 黒猫、かもめ、こうもり、カエル……様々なぬいぐるみ達がひとりでに動き出し、壁をコンコンと叩いて回りはじめた。
「空洞があれば、音が違うはずだからね」
 シスカはそうぬいぐるみ達に指示すると、自らも調査に参加しようと壁を見た――その時であった。

 ――どんがらがっしゃぁぁ~~ん!!

 遠くで盛大な、何かが崩れる音が響いてきたのである。
「……アイさん」
 シスカが、心配と困惑と期待の入り混じった感情で呟いた。

「すみませんっ、新人のメイドでしてっ!」
 アイがぺこぺことメイド達に頭を下げていた。床は大分水で濡れていて、空のバケツが転がっている。どうやら床のバケツをひっくり返してしまったようであった。
 ざわつく様子と、刺すような視線に、アイは己の危機を察知する。
(いけません、店員の人達に怪しまれないようにしないとっ!)
 そう思い、挽回をしようとしたところで、どうしても空回りしてしまうのがアイという人間なのだろう。
「ふぎゅっ」
 まず、こぼれた水をモップで拭こうとして、その水で滑って転んでしまった。それでもなんとか床を拭き終え、溢してしまった分新しくバケツに水を汲んでくるのまでは良かったのだが。
「あぁっ!?」
 またもスカートの裾に足を引っかけてしまうアイ。まるで時間が止まったかのような空間の中で、彼女は宙に浮くバケツを見た。
 バケツがひっくり返り、目の前に立っていたメイドに頭からばしゃーっと水をかけてしまったのだ。
 無言のまま、ぽたぽたと垂れる水滴もそのままに立ち尽くすメイド。
「すっ、すみませんっ、いまお拭きしますねっ!」
 アイは焦り、手に持っていたハンカチをメイドの顔に押しあて――。
「あっ……」
 さぁっとアイの血の気が引いた。
 ハンカチかと思っていたそれは、雑巾だったからである。

「……やはり、アイさんは世界を狙える逸材……!」
 メイドの怒号が響くその向こうで、シスカはそんな様子を陰から見守るのであった……。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

アリス・フォーサイス
カフェーの店長が百貨店に地下2階まであると思ってたのは、大工さんに聞いたんじゃないかな。

当時の大工さんに聞いてみよう。
百之輔くんと通じてる人もいるかもしれないし、猟兵ということは隠して接触するか。

街の歴史を調べてる学生ってことにしようかな。
いろいろ聞いたあとに本題を雑談のように持ち出すよ。
「そういえば、あの百貨店、地下2階まで作ったって聞いたけど、地下1階までしかないよね。なんでだろう。」


 仲間の猟兵達が百貨店を調査している間、アリスは街の中を歩いていた。
「店長が百貨店を地下二階まであると思ってたのは、大工さんに聞いたんじゃないかな」
 そう推理したアリスは、当時施工に携わった大工に直接話を聞きにいくことにしていたのだった。
「うわあ、大きいね」
 訪れた工務店は、夜も遅いというのにまだ灯りがついていた。百貨店の建設に携わるほどなのだ、かなりの規模である。アリスは建物に足を踏み入れると、すぐに店内にいる従業員に声をかけられた。
「こんな時間に子供がなんの用だ?」
 アリスは自らが猟兵であることを告げようとして、ふと思いなおした。
(百之輔くんと通じてる人もいるかもしれないね)
 ならば、猟兵であるということは隠した方が件賢明だ。
「ぼくは――」

「いやぁ、街の歴史について知りたいだなんて、関心関心」
 そう笑う大工に、アリスもにこにことメモを取っている。アリスは街の歴史を調べている学生として、大工に接触したのだ。
 実際の作業員は既に退社してしまっているようだが、現場監督はまだ社内に残っていたことは幸いだった。
「俺ぁこの道20年だけど、大正も30年違えばそりゃー変わるもんでよ」
 上機嫌に当時の事を語る現場監督の話もそこそこに、アリスは本題に入る。
「最近は百貨店を作ったんだよね?」
「そうそう、持田さんとこのな! ありゃ大仕事だった!」
 アリスの質問に、現場監督が当時を思い出しながら語る。話し出すと長そうな人だ。アリスは主導権を握りながら、質問を続けた。
「そういえば、あの百貨店、地下二階まで作ったって聞いたけど、地下1階までしかないよね。なんでだろう」
「あぁあれね、倉庫がこれじゃ足りないって後から持田さんが言い出してさ、あとから用具倉庫の脇にもう一本廊下と階段付けることになったんだよ」
 その時の苦労話を延々と語り始める現場監督の前で、アリスは黙々とメモをとる。
 どうやら、百之輔は大工に倉庫と偽って、地下室を増設させたようだ。カフェーの店長はその時の話を聞いていたのだろう。
(この人は百之輔くんとは関わってないみたいだね)
 あまりにぺらぺらと喋る彼に、アリスはそう結論付けた。
 きっと、全ては百之輔が一人でやったことなのだ。
「ありがとう、勉強になったよ」
 まだ喋りたそうな現場監督にそう言って、アリスは百貨店へと急ぐのだった。
大成功 🔵🔵🔵


第3章 ボス戦 『毒殺ノ冥土』

POW ●危険なティータイム
【猛毒入り紅茶】を給仕している間、戦場にいる猛毒入り紅茶を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
SPD ●毒を食らわば体内まで
【ティーカップ】を向けた対象に、【対して、その体内に猛毒を発生させる事】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ ●アフタヌーン・ポイズン
戦闘中に食べた【毒】の量と質に応じて【、より強力な猛毒を精製する事で】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 百貨店の地下一階。用具倉庫の脇に、不自然に響く壁を猟兵達は見つけた。
 さらに、脇には小さなボタンが隠されており、それを押すと、壁がスライドして隠し通路が現れた。

 どうやらこの仕掛けは百之輔が後から取り付けたもののようである。大工や従業員に知られるのを嫌った故だろう。
 そこまでして、影朧を匿おうとするのか――。それこそが、影朧に魅入られてしまったものの行く末だった。

 影朧はオブリビオンである。
 たとえどんなに大切な人であり、たとえどんなに敵意が薄くとも、彼らは現世の人々に何かしらの影響を与え、じわりじわりと世界を蝕んでゆくのである。

「おかえりなさいませ、ご主人様」
 薄暗い、殺風景な部屋に、丸テーブルが数卓。
 その中央で、メイドのサチ子は猟兵達に笑顔を向けた。
「ここまで……来てしまいましたか」
 テーブルに座る百之輔は、こちらに顔を向けずに呟いた。テーブルにはまだ暖かいコーヒーが一杯。だが、手は付けられていない。
「これを飲めば楽になれる。何度そう思ったことか」
 百之輔は苦しそうに語り始めた。
 影朧として蘇った彼女は、何故か毒入りのコーヒーを淹れるようになっていた。
 自らが死んだことを後悔して誰かを道連れにしたいのか、それとも、そもそも影朧として蘇った時点で、どこかが狂ってしまったのか……それを知る術はない。
「彼女はこんな風になってしまった。それは私の責任です」
 百之輔が静かに語り続ける。
「ですが、蘇った彼女を私は殺すことなど出来ません。帝都桜學府に突き出すことも出来ませんでした」
 百之輔は震える声で、絞り出すように告げる。
「こうなってしまっていても、サチ子はサチ子なのですから……!」
 メイドのサチ子は笑顔で首を傾げた。
 きっとその表情は百之輔の記憶の中のサチ子の笑顔と、まったく同じなのだろう。
 蘇る過去の苦しみと、現在の罪悪感。多くの葛藤の中にありながら、サチ子の淹れたコーヒーで自死する道も選べない。今度は百之輔がサチ子を置き去りにしてしまうと思ったからだ。
「不躾な願いで、非常に申し訳ございません……」
 百之輔が、猟兵達に懇願した。
「どうか、助けてください」

 それならば、ここからは猟兵達の仕事だ。
 猟兵達はサチ子に向かい、武器を取る。
 この儚いティータイムを終わらせるために。
シスカ・ブラックウィドー
アイさんと行動、UCで契約した悪魔ショコラも呼ぼう。

「わらわの力が必要か?坊や」
「やっほー久しぶり。はい、これメイド服。すぐ着替えて! ここドレスコードがあるから!」(勢いでメイド服に着替えさせる)
「なぜわらわが給仕の姿なんぞ......。報酬は弾んでもらうぞ!」
チョコのヴェールの中で着替えさせる。

ああっ!ショコラが着替えてる間にアイさんが、やられてる!?

アイ「ショコラさん、あとは頼みます……」
ショコラ「アイ!?」(顔見知り)

ショコラ!ボクは【毒物】の知識でアイさんを介抱してるから、代わりに戦って!後でケーキバイキングに連れててってあげるから!
君なら毒入りコーヒーでも無害なモカにできるはずだ!


アイ・リスパー
シスカさんと
メイド姿のまま

「影朧化したサチ子さんですか。
持田さん。サチ子さんを鎮めれば転生が可能になるはずです。
ここは我々、猟兵にお任せ下さい!」

影朧として蘇ったサチ子さんが毒入りコーヒーを淹れるようになった……
そこには、彼女の死因など、何かの原因があるのかもしれません。

【チューリングの神託機械】で電脳空間の万能コンピュータに接続。
サチ子さんの様子を分析するなどして、彼女を救う方法を探りましょう!

「分析……完了っ!
サチ子さんは相手に毒を与えることができるようですっ!
がふっ」

神託機械の副作用で毒に弱くなっているところに猛毒を受けて倒れるのでした。

「ショコラさん、あとは頼みます……」(がくっ


 俯く百之輔。微笑み続けるサチ子。
 その二人の間に入るように、アイとシスカが歩み出た。
「持田さん。サチ子さんを鎮めれば、転生が可能になるはずです。ここは我々、猟兵にお任せください!」
 アイの言葉に、百之輔が顔を上げる。
「さぁ、出番だよ」
 シスカが手にしたぬいぐるみのお腹に手を乗せる。
 3人のメイドが向かい合う。スカートがひらりと揺れた。

「電脳空間へ接続。万能コンピュータへログイン」
 アイの周囲に光が収束し、モニターが生まれる。モニターには様々な情報が映し出され、アイはそれらを一つ一つ読み解いてゆく。
「影朧として蘇ったサチ子さんが毒入りコーヒーを淹れるようになった……」
 アイがサチ子の最期を思い返す。彼女は百之輔の商売敵が差し向けたメイドによって淹れられた毒入りコーヒーを身代わりに飲んだことで、その人生を閉じた。
「その死因に、何か原因があるのかもしれません」
 アイが収集した情報の分析を始める。すべてはサチ子を救うために。

『わらわの力が必要か? 坊や』
 シスカのぬいぐるみより、悪魔が現われた。名前は分からないが、シスカはショコラと呼んでいる。
「やっほー、久しぶり」
 フランクな態度で、シスカはショコラに手早く包みを渡す。
「はいこれ」
 包みを受け取ったショコラは、呆気にとられた様子で包みを開くと、両手で広げてみせる。
 ひらひらとしたスカートに、清潔な白のエプロン。包みの中からヘッドドレスがぱさりと落ちた。
『なんじゃこれは』
「メイド服」
 シスカの言葉に、ショコラが大きく口を開ける。
『はぁ?』
「すぐ着替えて! ここドレスコードあるから!」
 有無を言わさぬという具合でメイド服を押し付けると、ショコラは渋々着替えることを承諾したようだ。
「何故わらわが給仕の姿なんぞ……報酬は弾んでもらうぞ!」
 ぶつぶつと文句を言いながら、ショコラは生み出したチョコをベールのように張り巡らせ、簡易更衣室を作り上げた。

「ふむ、こんなもんかの」
 チョコのベールが上がり、メイド服のショコラが現れる。ひらひらと最後の身だしなみをチェックし、少し満足そうな雰囲気だ。
「分析……完了!」
 それとほぼ同時に、アイが叫んだ。
「サチ子さんは相手に毒を与えることが出来るようですっ
 だが、突如。
「……がふっ」
 アイが崩れ落ちた。
「アイさん!?」
 気が付けば、サチ子のティーカップがアイへと向いていた。情報分析の代償に加え、サチ子の毒が回ってしまったのだ。
「ショコラさん……あとは頼みます……」
『アイッ!?』
 ショコラが叫ぶ。咄嗟にシスカが駆け寄り、倒れるアイを抱き寄せる。
「ショコラ! ボクはアイさんを介抱してるから、代わりに戦って!」
 アイの身体を蝕む毒の様子を見ながら、シスカがショコラに叫ぶ。
「後でケーキバイキングに連れてってあげるから!」
 ピクリ、とショコラの耳が動いた。
『……本当じゃな?』
 ショコラのオーラが膨れ上がる。そして腕を上げると、サチ子のコーヒーが変化してゆく。
 その変化に気が付いてサチ子がカップのコーヒーを飲み干すと、はっと顔を変えた。
『その毒入りコーヒーをモカに変えてやった』
 ショコラが自慢げに語る。サチ子は毒を体内に含めば、より強い毒を生み出す力を持っている。毒を封じながら、猟兵達は戦いを優位に進めるのであった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

アリス・フォーサイス
毒で誰かを道連れにしたい?そんなことないよね?
ご主人様を自らかばったサチ子ちゃんがそんなことを望んでるはずないよ。

その魂、沈めて転生させてあげるよ。

転生したらまた新たな出会いがあるよ。またその人にメイドとして使えることになるのか、また別の関係性を持つのかはわからないけど、サチ子ちゃんならいいお話を作るんだろうね。

だから今はおやすみ。この炎で送ってあげる。


雨咲・ケイ
悲劇はここで終わりにしましょう。

【SPD】で行動します。

初手で【退魔集氣法】を使用。
ティーカップを向けられないよう、高速移動で攪乱するように動きます。
手荒な真似はしたくありませんが、破邪の衝撃波で応戦しながら
「嘗ての貴方は持田さんの幸せを願い、命を賭して守ったのでしょう?
その時の想いを思い出して下さい。
このままでは持田さんも貴方もより不幸になるだけです。
貴方も持田さんも罪を背負ってはいけません。
持田さんを想う心が僅かでも残っているのなら転生を受け入れて下さい」
と説得します。
猛毒を受けてしまった場合はスノーホワイトの薔薇の香気で凌ぎます。

アドリブ歓迎です。


吉岡・紅葉
見つけました!
あの人が、サチ子さんですね。
お二人の間にどんな絆があったのかは、部外者の私には
わかりません。だけど、私はこの暗い地下室に
彼女をいつまでも閉じ込めておくのは可哀想だと思います。
さあ、お別れの時間です。
百之輔さん、『彼女』を助けたいと願うのなら…
もうサチ子さんは居ないと、現実を受け止めていただきます。
それでも構いませんか?

彼女のユーベルコードに合わせ、<早業>でスティンガーの矢を放ちけん制。
その隙に<ダッシュ>で近づき、【スキルマスター「スティール」】で
ティーカップを盗み取りますよ。お茶の時間は楽しく幸せなもの。
百之輔さん、そのコーヒーを口にしていないなら、あなたはまだやり直せます。


 仲間の力で毒が浄化されたサチ子であったが、再び体内から毒を生み出し始めていた。
 もはやその宿命は覆すことが出来ない。サチ子が影朧である以上、毒入りのお茶会が続いてしまう。
「毒で誰かを道連れにしたい? そんなことないよね?」
 アリスはそんなサチ子に語り掛ける。
「ご主人を自らかばったサチ子ちゃんがそんなこと望んでるはずないよ」
「悲劇はここで終わりにしましょう」
 ケイも語り掛ける。サチ子は、その言葉を聞いてか聞かずか毒入りのコーヒーをカップに注ぎ始める。
 ごくりと、その毒を口に含む。毒がサチ子の身体を巡り、その身体能力を高めてゆく。
「お二人の間にどんな絆があったのかは、部外者の私にはわかりません」
 紅葉はサチ子と百之輔の間に割って入るように立ち、百之輔を諭すように告げる。
「だけど、私はこの暗い地下室に彼女をいつまでも閉じ込めておくのは可哀想だと思います」
 この部屋は暗い。殺風景な壁に、テーブルが数卓。カフェーというには寂しすぎた。
 その中でサチ子は、主の為に飲めもしないコーヒーを何杯も注いでは、冷めたコーヒーを一人で飲んだ。
「百之輔さん。『彼女』を助けたいと願うなら……もうサチ子さんは居ないと、現実を受け止めて頂きます。それでも構いませんか?」
 百之輔と目を合わせ、紅葉が念を押すように聞く。
 百之輔は少し躊躇うように目を逸らしながら……こくりと頷いた。紅葉は満足そうに頷き返し、サチ子へ目を向ける。
「……さぁ、お別れの時間です」
「その魂、鎮めて転生させてあげるよ」
 アリスがそう言って、静かにウィザードロッドを構えた。

「ティーカップが向けられれば、毒が体内に生まれてしまうようです」
 ケイは仲間にそう警告すると、全身に闘氣を纏わせ始める。
「破邪の闘氣……、その身で味わってみますか?」
 全身に闘氣が巡ると、ケイが走り出す。サチ子も応戦しようと、カップを向けようとするが、縦横無尽に駆け巡る彼をうまく捉えられずにいた。
 サチ子の手にしたカップが揺れる。狙いを定めるため、自然と手が伸びる。
 その瞬間、カップを矢が射貫いた。
「お茶の時間は楽しく幸せなものですよ!」
 それは紅葉のクロスボウから放たれた矢であった。
 紅葉はティーカップが吹き飛んだ瞬間、一直線にサチ子へと駆けると、サチ子よりも早くティーカップを奪い取った。
「……! 返して!」
 手を伸ばすサチ子に、ケイが念を込める。
「手荒な真似はしたくありませんが……!」
 破邪の衝撃波がサチ子を吹き飛ばした。ティーカップは、無事に紅葉の手に収まる。
「あぁ……やっと……終わらせてくれるのですね」
「ううん、始まりだよ」
 百之輔の言葉にアリスが口を挟む。紅葉がさらに続ける。
「百之輔さん。そのコーヒーを口にしていないなら……あなたはまだやり直せます」
 紅葉がカップをぐしゃりと割った。
「始まり……」
「私達が彼女を転生させてみせますから!」
 紅葉が笑いかけ、再びサチ子へと向かってゆく。
「嘗ての貴方は持田さんの幸せを願い、命を賭して守ったのでしょう?」
 ケイはサチ子に語り掛けながら、破邪の力を送り続ける。
「その時の想いを思い出して下さい……このままでは持田さんも貴方もより不幸になるだけです」
「不幸なもの……ですか……」
 サチ子は衝撃波を受けながら、重い口を開いた。
「私は、たとえ御主人様がそれを飲めなくても、コーヒーを淹れ続けることが……幸せなの」
 サチ子が嗚咽交じりで言葉を紡ぐ。
「ここからでも、見守ることが……幸せなの……!!」
 その言葉に、アリスは慰めるような声でサチ子に返す。
「転生したらまた新たな出会いがあるよ」
 背後の百之輔をちらりと見てから、言葉を続ける。
「またその人にメイドとして仕えることになるのか、また別の関係性を持つのかはわからないけど……サチ子ちゃんならいいお話を作るんだろうね」
「……転生しても……私が……?」
 思わぬ言葉に、サチ子が呆然と立ち尽くした。その様子に、ケイが言葉を続ける。
「持田さんを思う心が残っているのなら……転生を受け入れてください」
「お二人の幸せはまだこれからですよ!」
 紅葉がさらに続けた。
「あ……あぁ……」
 カラン、と、トレーが床に転がった。
「だから、今はおやすみ。この炎で送ってあげる」
 アリスの杖から炎の矢が生まれ、サチ子を包み込んだ。

「サチ子……」
「御主人様……」
 百之輔がサチ子に歩み寄る。既に力を失ったサチ子の身体が崩れ、桜の花びらに変わってゆく。
「また会おう。その時は今度こそ、お前のコーヒーが飲みたい」
 百之輔がそう言うと、サチ子は何度も何度も頷きながら、桜の中へと消えていった。

 ――ひらり。桜の花びらが百之輔の手に乗った。
「きっと今度も素敵なメイドに転生しますよ!」
 紅葉が笑って慰める。
「彼女はずっと、あなたの幸せを願っていたのですからね」
 ケイもそう続けた。百之輔は無言で、花びらをぎゅっと握るのであった。

 ――それから数日。
 いつものカフェーに、百之輔の姿があった。
「お帰りなさいませ、ご主人様!」
「いつもの頼むよ」
 そう言って運ばれてくるコーヒーの香りを楽しみながら、彼は窓の外へと目を向けた。
 幻朧桜の花びらが風に舞い、空へと昇ってゆく。
(いつか、きっと――)
 そう想い、百之輔はコーヒーに口をつけた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2020年07月01日
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴