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新鮮な食糧は美味しい!

#アポカリプスヘル

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#アポカリプスヘル


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 パカパカパカリラパカリラと、蹄とホーンの音色が聞えたら気を付けて!
 虹色の山羊に跨って、虹色のモヒカンを靡かせて、アイツらが群れでやってくる。食料を奪いにやってくる。
「ヒャッハー! いい子ちゃんはねんねする時間だ!!」
 大音量で響く子守唄。
 騒音とも呼べるそんな子守唄で眠くなるはずがないのだが、なぜか睡魔に抗えない。
 うとうと重くなる瞼を擦り抵抗しても、それも虚しく気付けば誰もが夢のなか。
 目が覚めたころには、今まで蓄えた食料はすっかりなくなっていることだろう。
 いくら泣いても嘆いても、奪われたものは戻ってこない。――ああ、これが悪夢ならばよかったのに!


「アポカリプスヘルに物資を届けてほしいんだ!」
 用意された食料を前にして、カメリア・ホワイト(ゆびきり・f25766)が告げる。
 アポカリプスヘルではいつだって、食糧不足で喘いでいる。
 それをすこしでも解消するための物資の支援だが、異世界の物資を持ち込みすぎるとオブリビオン・ストームを呼び寄せてしまう。
 だから、慎重に行わねばならない。けれど、今回は運よくオブリビオン・ストームが起きても被害が少ない場所を見つけたそうだ。
「現れるオブリビオンは、煮慈威露愚喪の獏羊族。虹色の山羊に跨った虹色の羊さんだよ」
 猟兵たちの物言いたげな視線を受けて、カメリアはふざけてるわけじゃないんだよ! と慌てて付け加えた。
「いろんなところで悪さをしているらしくて。なんと人を眠らせてその間に物資を奪っちゃうんだって!」
 アポカリプスヘルの治安を考えれば平和な気もするけれど、それはそれ。
 ふかふかもこもこの塊がパカリラパカリラしている姿は可愛い気もするけれど、それはそれ。
 拠点を襲う姿を見てしまった以上は、そのままにするわけにもいかない。
 まずは、拠点を守るためのトラップの設置をしつつ、彼らを誘き寄せるための食糧を運んでほしいのだという。
「現れたら退治して、そのまま焼肉でもしちゃおう。現地調達できれば食べられるお肉も増えるよ」
 アポカリプスヘルで現地調達とは? 猟兵たちからの質問を受けて、カメリアが真面目な面持ちで頷く。
「あの羊さん、美味しいって噂だよ。あくまで噂だけど」
 君は確かめてもいいし、確かめなくてもいい。けれどまずは、物資を運んでオブリビオンを退治だ!


あまのいろは
 ご無沙汰しております、あまのいろはです。

 1章では食材の持ち込み、2章ではオブリビオン退治、3章では近くの拠点へ物資の配給とちょっとした祝賀会です。
 1章でどのような食材を持ち込むか、どのようなトラップを作るかによって、そのあとの内容に変化があるかもしれません。


 1章のプレイングは、オープニング公開と同時に受け付けております。
 1章以降の受け付けは、その都度マスターページでお知らせさせて頂きます。

 それでは、皆様のヒャッハーなプレイングをお待ちしております。
 もちろん、ヒャッハーしてなくてもお待ちしております。
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第1章 冒険 『トラップ設置作業』

POW   :    壊れたトラップを除去していく

SPD   :    壊れたトラップを修理していく

WIZ   :    新しいトラップを設置していく

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ごっそり用意された物資の数々。
 心なしか食材が多いような気がするけれど気にしちゃいけない。
 あちらの箱のなかに見えるのは、オブリビオンを倒したあとの焼肉の材料だ! とか気付いちゃいけない。

 どんなに物資を運び込んだとしても、オブリビオンに奪われてしまったら本末転倒。
 まずは美味しそうな食材――だけでなく、様々な物資を守りきらなければ。
 いろんな思いを胸に猟兵たちが降り立った荒野に、パカリラパカリラと蹄とホーンの音色が近づいていた。
中小路・楓椛
POW
煮慈威露…何ですって?世界を跨いだときの自動翻訳がおかしくなってません?

トラップに関しては設置は本職の方にお任せして私は片付けるだけにしておきますね。

それはそうと…料理する人と食材が無いと困るでしょうから、残りの時間でお手伝いしておきますね。

最近私は粉モノといいますかダゴン焼きの試食始めたのでそちらの鮮魚系の食材も持ち込んでみましょうか。
私の背負っている超時空風呂敷【しゃんたくす】は中身の質量と体積と時間をある程度ごまかせますので、そちらで持ち込みます。
粉と水で嵩増しできますし食べる人が多くても対応できるでしょう…ダゴンって名前借りただけですよ?普通の海で獲れた鮮魚ですよ?




「煮慈威露……何ですって?」
 中小路・楓椛(流しの家事手伝い狐・f29038)が首を傾げるのも無理はない。
 煮慈威露愚喪の獏羊族。
 今回の敵だと告げられたのは、やたらと難しい漢字が当てはめられた名前だった。
「世界を跨いだときの自動翻訳がおかしくなってません?」
 此処がアポカリプスヘルでなければ、自動翻訳がおかしくなっていたのかもしれないが、どうやらこれで正しいらしい。
 文明だとか倫理観だとか、色々と崩壊したヒャッハーな世界がこのアポカリプスヘルなのだ。

 楓椛はかしかしかし、と耳の付け根を掻いてから、きょろりと荒廃した土地を見渡した。
 まずはトラップの設置、と聞いたけれど。楓椛はあまりそちらの知識には明るくない。
 だって、楓椛の本職は料理をつくること。そしてそれを給仕すること。彼女は、パーラーメイドであるのだから。
 パーラーメイドの本領発揮。荒廃した土地すらもちゃちゃっと片付けると、彼女は背負っていた風呂敷を広げる。
「最近私は粉モノといいますか、ダゴン焼きの試食始めたのですよ」
 なんだかちょっぴり見慣れない料理名を告げながら、楓椛は風呂敷から持ち込んだ食材を取り出した。
 どさどさどさ。明らかに風呂敷の許容量を超える食材が次から次へと出てくる出てくる。
 それもそのはず、彼女の背負っている風呂敷はちょっと変わった超時空風呂敷『しゃんたくす』。
 中身の質量と体積、時間すらもある程度誤魔化せちゃう優れモノ。
 おかげで鮮魚系の食材もしっかりばっちり新鮮ぴちぴち。やったね。
 その性能を示すかのように、楓椛の手に握られた鮮魚系の食材は、今もぴちぴちうごうごにゅるにゅる蠢いている。――蠢いている?
「粉と水で嵩増しできますし食べる人が多くても対応できるでしょう」
 どうやら、楓椛が作ろうとしているものは鮮魚系の食材をくるっと丸めて焼いたタコ焼きのようなもの。
 けれど、タコ焼きではなく、――『ダゴン焼き』であるらしい。
 食べたひとたちの視界が七色に輝いてしまいそうだけれど、大丈夫なのかな。
 ちょっと不安ではあるけれど、鮮魚系の食材の正体はタコだと思いたい。だって彼女も言っている。
「……ダゴンって名前借りただけですよ? 普通の海で獲れた鮮魚ですよ?」
 だから、邪神の類ではない。きっと、たぶん。――――えっ、大丈夫だよね?

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
悪党が跋扈するアポカリプスヘルで
命を奪わないだけマシなのかもしれないけど
食糧奪われたら命に関わるしね

缶詰とか乾物とか
塩漬け酢漬け砂糖漬けとか
保存の効く物を持って行くよ
後は純度の高い蒸留酒とかね
飲む以外にも消毒にも使えそうだし
水が無さそうなら水も持って行こうか

さて、持ち込んだ食料を取られない様に
トラップの設置も頑張ろう

通り道になりそうなところで
枯草とか茂みとか見えにくい場所にロープを張ったり
足を取られるサイズの穴をあけたりして落馬?を狙うよ

それで引き返してくれないなら地雷を埋設しておこうか
踏む以外にも遠隔で爆破できるようにしておこう
もちろん物資や拠点に被害が無い位置にするよ

さて上手くいくといいな




 悪党が跋扈するアポカリプスヘルで、命を奪わないというのはまだマシなのかもしれない。
 けれど、と佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は思い直す。
「食糧奪われたら命に関わるしね」
 適当に歩けば食事に在りつける世界ならまだしも、此処はそんな希望すら持てないところだ。
 そう思った晶が持ち込んだのは、缶詰に乾物、塩や砂糖に漬けたものなど保存が効く食料をはじめ、水や純度の高い蒸留酒。
 生きていくための必要最低限のものすらも手に入らない世界なのだから、様々なことに使える物資のほうがいいだろう。
 特に蒸留酒は飲む以外にも消毒に使うこともできる。――まあ、この世界ならどんなに粗悪なものでも喜び勇んでくれそうだけれど。
「さて、持ち込んだ食料を取られない様にトラップの設置も頑張ろう」
 どんなに喜ばれたとしても、奪われてしまっては元も子もない。晶は持ち込んだ物資の数々を置くと、トラップの設置に取り掛かった。

 きょろりと辺りを見回して、トラップ設置に最適な場所を探す。
 ――あった。
 ちょっとした茂みを見付けた晶は、自身のくるぶし程度の高さにぴんとロープを張って、少しでも分かりづらくなるようにと枯草を掛けてロープを隠した。
 これで、トラップのひとつが完成だ。
 よく見れば分かる程度のトラップだが、相手はヒャッハーな羊。盛大に足を引っかけてくれるに違いない。
 ついでに穴も掘っちゃおう。足を取られて落馬してくれるかも。
 トラップの設置は結構な力仕事。可愛らしい少女の姿をした晶がトラップ設置に勤しむ姿は、すこし大変そうに見える。
 けれど、ちょっとしたハプニングからこんな姿になってしまっただけで、実は晶はもともとはごく普通の男性。
 身体だけでなく、人格まで融合した邪神にこれ以上引っ張られたくはない。大変だと音を上げるなんて、なんかちょっとプライドが許さない。
 そんな意地からだろうか。数々のトラップを設置する過程で地雷まで埋設してしまったのは。――転んだり落馬したりを通り越して、たぶんオーバーキルである。
「よし、上手くいくといいな」
 一仕事終えた晶の表情はどこか晴れやかで。
 荒廃した土地の向こうに迫るオブリビオンたちは、殺意高めのトラップが設置されているなんて知るよしもなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シシル・ロッツェル
荷物運びならまかせて。
この前便利な魔法を教えてもらったから。なんでも、古の勇者が使ってた魔法らしい。
それは、袋や箱の中にたくさん物が入れられる魔法。これにポイポイと詰め込んで運ぶよー。
それとは別に油も持っていこうかなー。調理に使えるし、罠にも使えて便利。

拠点周りに罠も敷かなくっちゃ。
この担当区域を縄張りにしよう。
今回の獲物は大事な食材なので、出来るだけ傷付けないで獲らなきゃいけないから、今回はビリビリ電気罠をたくさん使おう。
底にたっぷりとりもちを仕込んだ落とし穴も作ろうかなー。
そうだ、折角だから油も撒いておこうっと。他の罠と組み合わせるとすごいに違いない。つるつる滑ってコンボが狙えるはず……。




「荷物運びならまかせて。この前便利な魔法を教えてもらったから」
 ぴんと立ったシシル・ロッツェル(とれじゃーはんたぁ・f16367)の狐耳が、得意げにぴこりと揺れる。
 彼女が教えてもらったという魔法は、なんでも、古の勇者が使ってた魔法。――袋や箱の中にたくさん物が入れられるというものだ。
 シシルは魔法を展開すると、用意されていた物資を詰め込んでいく。
 お肉にお野菜、それから調味料。ぽいぽいぽいっと詰め込んでもまだまだ入る。
 食べ物以外におやつや飲み物も。ぽいぽいぽいっと詰め込んでもまだまだ入る。
 いっぱいの食糧を詰め込んだシシルは、最後に思い出したように油を手に取った。
「それとは別に油も持っていこうかなー。調理に使えるし、罠にも使えて便利」
 そうして、めいっぱいの物資とともに、シシルはアポカリプスヘルの荒野へと降り立ったのだった。

 さて。物資の準備は万端すぎるほど。残されたのはトラップ設置のお仕事だ。
「よし、罠も敷かなくっちゃ。この担当区域を縄張りにしよう」
 森で狩猟を営むシシルにとって、罠の扱いは朝飯前。
 森とはすこしばかり勝手が違うけれど、トラップについての知識や技術は、考えるまでもなく身体に染みついている。いつも通りにこなせばいい。
 今回の獲物はヒャッハーな羊。難しい罠はいらないだろう。ああ、そうだ。大事な食材なのだから、出来るだけ傷付けないで獲らなくちゃ。
 ならば、と彼女が選んだのは、ビリビリ電気罠と、たっぷりとりもちを仕込んだ落とし穴。
 とりもちは傷付けることなく捕獲出来るし、ビリビリ電気もちょっと焦げることはあるかもしれないけれど、気絶程度で済むだろう。
 生け捕りにしてしっかりと処理を施した獲れたてお肉は、きっとより美味しい。
 トラップの設置を終えたシシルは、仕上げに油を取り出した。
「そうだ、折角だから油も撒いておこうっと。他の罠と組み合わせるとすごいに違いない」
 どばどばと遠慮なく油を撒きながら、滑っていく獲物の姿を想像する。
 つるっと滑って1コンボ、ビリビリ痺れて2コンボ、落とし穴に落ちて3コンボ!
 滑った羊がまた別の羊を巻き込んで――。さあて、どれだけの食材が獲れるかな。シシルの尻尾が楽しそうに揺れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

空露・紫陽
紫雨(f17470)と

物資運びだとよ紫雨
そんで虹色の山羊に跨った虹色の羊だと
美味いらしいぜ?
何なら、俺お勧めの酒も付けてやらんこともない
――行くだろ?
紺色混じりの紫眸は愉しげに笑った

一先ず古いトラップを壊していくかね
直せそうなモンは直しちまった方が再利用も出来そうか
新しいヤツ設置は頼んでイイか?
おい紫雨、返事
誘き寄せる食料ってのは罠の近くにでも置いておけば効率的だろうか
なぁに、
幾ら大食いとは言え獲物を罠に掛ける餌にゃ手は出さねぇさ
紫雨が酒飲もうとしてたら没収な
店長、おいたが過ぎると仕事後の褒美が消えるぞ?

働かざるもの食うべからず
さて、お前さんもきっちり働きな
横暴? 冗談
優しい方だろうさと笑って


鴇刄・紫雨
紫陽(f30642)と

虹色山羊に虹色の羊って
何とも愉快なもんで
……は、食えんの?
羊肉に合う酒とはお目に掛かりたいしなあ
俺の釣り方をよくご存知で。
愉しげに咲う眼前の男に
肩を竦めて

罠なんてあちらさんは引っ掛かってくれんのかね?
設置するトラップを繁々眺めて
…………、え、面倒………嘘だよ、睨むなよ
ハイハイ
紫陽サンの仰せのままに?
確かに食糧の傍なら割と早めに引っ掛かってくれるか、此方としても助かるな
じゃあ俺は大事な食糧が掠め取られちまわないように見張りを。いや、飲まねぇよ、信用無ぇの。
没収の言葉に抗議は忘れずに
はぁ、仕方ねぇなぁ
横暴……じゃない、お優しいお前の褒美とやらを楽しみに
きりきり働きますよって




 ――物資運びだとよ紫雨。そんで虹色の山羊に跨った虹色の羊だと。
 どこか楽しそうに隣に並んだ男にそう告げたのは、空露・紫陽(Indulgence・f30642)。
 ――虹色山羊に虹色の羊って何とも愉快なもんで。
 あまり興味がなさそうに応えたのは、鴇刄・紫雨(月露・f17470)だ。
「美味いらしいぜ?」
「……は、食えんの?」
 話を聞く限り、美味しそうには聞こえないけれど。紫雨は怪訝な視線を紫陽に向ける。
 そんな彼の姿を見て、紫陽はくつくつ笑った。紺色混じりの紫眸が愉しげに揺れる。
「何なら、俺お勧めの酒も付けてやらんこともない」
 ――行くだろ? 紫陽が間髪入れずにそう問えば。
 ぱちり瞬きした紫雨は、羊肉に合う酒とはお目に掛かりたいしなあ、なんて呟いて。
「俺の釣り方をよくご存知で」
 目の前で愉しげに笑う紫陽を見て肩を竦めると、重い腰を上げたのだった。

「一先ず古いトラップを壊していくかね。直せそうなモンは直しちまった方が再利用も出来そうか」
「……罠なんてあちらさんは引っ掛かってくれんのかね?」
 古いトラップを選り分けていく紫陽の横で、紫雨は設置するために用意されたトラップを繁々と眺めていた。
「新しいヤツ設置は頼んでイイか?」
「…………、え、面倒…………――嘘だよ、睨むなよ」
 紫雨の呟きを聞いて、会話を交えながらも手を動かし続けていた紫陽が手を止める。
 目は口ほどになんとやら。何かを言う代わりに紫陽が睨んでくるものだから、それをかわすかのように紫雨はひらひらと手を振った。
「おい紫雨、返事」
「ハイハイ。紫陽サンの仰せのままに?」
 紫雨がふたつ返事で引き受ければ、それ以上言及することはせず、ふたりとも作業へ戻っていく。

「さて、こんなもんかね」
 いくつかのトラップを設置したふたりは、その近くに誘き寄せるための物資を置いていった。
 きっとオブリビオンは物資を狙うだろう。トラップの近くに物資を置けばトラップにも掛かりやすくなるだろうし、獲った獲物を調理をするにも助かる。
 とは言え、トラップと物資が近いぶん、大勢で雪崩込まれたら奪われてしまう危険もあるわけで。
「じゃあ俺は大事な食糧が掠め取られちまわないように見張りを」
 どこかの大食いがつまみ食いをするかもしれないし、と紫雨がどこか茶化すようにぽつりと零せば、紫陽がおや、と笑う。
「なぁに、幾ら大食いとは言え獲物を罠に掛ける餌にゃ手は出さねぇさ。それより紫雨だろう」
「……は、なんで俺が」
「紫雨が酒飲もうとしてたら没収な。店長、おいたが過ぎると仕事後の褒美が消えるぞ?」
「いや、飲まねぇよ、信用無ぇの」
 紫雨はじとりとした視線を紫陽に投げながら。はぁ、とため息交じりで仕方ねぇなぁと続けた。
「働かざるもの食うべからず。さて、お前さんもきっちり働きな」
「横暴……じゃない、お優しいお前の褒美とやらを楽しみに」
 ぼそっと呟いた紫雨の言葉を聞き逃さなかったようで。紫陽はやっぱり愉しげにからから笑うのだった。
「横暴? 冗談。優しい方だろうさ」
 そんな軽口の応酬も、きっとふたりにはいつものことなのだろう。紫雨はあしらうようにハイハイと答えながらも、また新たな物資を運んでいく。
「きりきり働きますよって」
 これだけ働かされたのだから、用意してあるのはそれは上物な酒に違いない。いや、そうでなければ割に合わない。
 そんなことを思いながらちらりと紫陽へ目を向ければ、彼の胸のうちを見透かしたように紫陽がにまりと笑っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

水鏡・怜悧
詠唱:改変、省略可
人格:ロキ
物資を奪う……場合によっては周辺の拠点を巻き込んだ死活問題になりますね。多めに運び入れたいところですがそうもいきませんか。
運搬物資は缶詰やレトルトを中心とした保存食と、葉物野菜を多めに持っていきましょう。後者は山羊や羊なら好むかもしれませんし、肉と一緒に料理しても良いでしょう。UDC液体金属をフックのようにしぶら下げて運搬します(怪力)
トラップは、物資を動かしたら大音響の目覚ましベルが鳴るようにしましょう。金属属性の触手でセンサーや電源を作りメカニック技術で組み立てます。ついでに捕獲できるよう、上から金属網が降る仕掛けを目立たないよう設置しておきます。




「物資を奪う……場合によっては周辺の拠点を巻き込んだ死活問題になりますね」
 緑の瞳をきょろりと動かして。辺りを見渡しながらそう呟いたのは水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)。――正しくは、彼が持つ人格のひとり、ロキだった。
「多めに運び入れたいところですがそうもいきませんか」
 予想以上のオブリビオンが現れて周囲の拠点を襲う、なんてことにはならないと思うが用心するに越したことはない。
 ロキはフックのように形を変えたUDC液体金属に、ぐるりと纏めた物資をぶら下げていた。
 中身は、缶詰やレトルトなどの保存食をはじめ、葉物野菜を多めに。
 新鮮な野菜はポカリプスヘルでは手に入らないということがひとつと、もうひとつは――。
「野菜は山羊や羊なら好むかもしれませんし、肉と一緒に料理しても良いでしょう」
 作戦が半分、好奇心が半分。
 普段は穏やかだが、知的好奇心が勝るとすこしだけ周りが見えなくなることがあるのがロキという人格だった。美味しいと噂のオブリビオンと聞けば、多少なりとも好奇心が刺激される。
 すらりとした体躯からは想像も出来ない力で、いっぱいの物資を運ぶ彼の姿はどこか楽しそうだった。

 猟兵たちとロキが今運んだ物資のおかげで、現地には充分すぎるほどの物資が集まった。
 これなら、いつどこでオブリビオンストームが発生してもおかしくないだろう。
 彼らが現れる前にトラップの設置もしなければ。
 運び込んだ物資は食料ばかりでトラップ設置のための道具は持ち込まなかったけれど。それでも彼は、トラップを作りだす技術を持っていた。――彼の影で、ぬるりと触手がうねる。
「触手ちゃんはこういうことも出来るんですよ?」
 ――ユーベルコード、触手式魔導兵器-シンフォニア。
 それによって呼び出された金属の属性を取り込んだ触手が、ロキの手によって形を変えていく。
「トラップは、物資を動かしたら大音響の目覚ましベルが鳴るようにしましょう」
 目が覚めるようにね、と。ふふっと微笑みながらトラップを作製していたロキは、ふと手を止めて。
「ついでに捕獲できるよう、上から金属網が降る仕掛けも設置しておきましょうか」
 ロキの緑の瞳が無邪気に揺れて、ゆるりと細く弧を描いた。まるで、面白い悪戯を思いついたとでもいうように。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『煮慈威露愚喪の獏羊族』

POW   :    強奪の時間だヒャッハー!
自身が操縦する【山羊】の【突撃威力】と【物資強奪確率】を増強する。
SPD   :    ヒャッハー!突撃だ!!
【トゲ棍棒】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ   :    1ヒャッハー!2ヒャッハー!!3ヒャッハー!!!
【ヒャッハー系歌詞で大音声の羊数え歌】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 パカリラパカリラパカリラ。蹄とホーンの音色が響き渡る。
 荒地を揺らし砂を巻き上げながら、『煮慈威露愚喪の獏羊族』が現れる。
『ヒャッハー! 突撃だ!!』
『強奪の時間だヒャッハー!』
 彼らの狙いはもちろん、猟兵たちが持ち込んだ物資の数々。
 この場に居たのがただのひとであったなら。いつものように眠らせて、物資を奪うことが出来たろう。

 ――けれど、今この場に居るのは猟兵で。
 彼らの手によってトラップも設置されていて。
 迎撃準備もバッチリだということを、彼らは何も知らない。

 眠ることになるのは、どちら?
中小路・楓椛
アドリブ等歓迎
WIZ

【ばーざい】全技能使用、UC【アトラナート】発動。第五元素で超強化した光学視認困難な太さの糸で網を獏より下側に張って機動力を削ぎましょう。
【クロさん】は自律稼働、網や他の方のトラップで動きの鈍くなった個体から上と下を蹴り落して分断します。
此方は【ろいがーのす】【谺(魔笛/鼓)】で身動き取れない下の方を重点的に活締め…もとい無力化します。
他の猟兵の方が多数居られますし上の方の処理はお任せしますね?

ところで皆さん下の方を食べるんですよね?まさか上も…とか言い出しませんよね?
マトンは脂を剥がして酒で洗えば臭いは薄くなりますが…獏の最適な料理法は…流石に私も知りませんよ?




「さてさて」
 楓椛の視線の先には、それはそれは騒がしい『煮慈威露愚喪の獏羊族』の集団。
 その騒がしさは音だけでなく、ギラギラ輝くその毛並みはだいぶ目にも痛い。
 来ましたね、と彼女が呟けば、焜鉾「ばーざい」から、ふわりと魔力のひかりが零れた。
「まずは機動力を削ぎましょう」
 楓椛の詠唱にあわせて、光学視認困難な太さの糸がするりするりと形成されていく。
 彼女が造り出した魔力の糸は、周囲を守るように編まれて次第に網へと形を変える。
『ヒャッハー!! なァに、ブツブツ言ってんだあ!? お前もねんねしてなあ!!!』
「いえ、そうもいかないのですよ」
 楓椛の返事を聞く素振りすら見せず、獏羊族は楓椛に向かって一直線。――そんな、ヒャッハーな彼らが見えない網に気付くはずもなく。
『―――んなァっ!!?』
 突っ込んできた勢いをそのままに、山羊は網に引っ掛かり、乗り物を失った獏羊は空高く放り出されてしまう。
 飛んでいく様を見送りながら、楓椛は網に引っ掛かった山羊へと向かっていく。
「他の猟兵の方が多数居られますし上の方の処理はお任せしますね?」
 ――あちらこちらにトラップもあることですし。
 そんな彼女の読み通り、地面に叩きつけられた獏羊はごろごろと地面を転がると、近くにあった落とし穴のなかへと消えていった。
 残された山羊はぶるんぶるんと首を振り、蹄を鳴らして近付く楓椛を威嚇する。
 もがけばもがくほと、網が絡まるというのに。
 そんな山羊の姿をほんのすこし哀れに思いつつも、楓椛はゆったりと山羊に近付くと――。
「そぉい」
 躊躇いなく、びすっと山羊の身体に何かを突き立てた。山羊は低くひと鳴きするとびくんと跳ねて動かなくなる。
「活締め…もとい無力化しただけですよ」
 彼女の手には、変形合体式大型飛翔十字手裏剣「ろいがーのす」。
 分離させて二振りの鉈になったそれは、山羊を傷つけず無力化するのに丁度よかったらしい。
 ところで、活締め、なんて単語が聞えた気がするのは、聞き返さないほうがいいのかな。
 手際よく山羊たちを無力化しながら、楓椛は首を傾げる。
「ところで皆さん下の方を食べるんですよね? まさか上も……とか言い出しませんよね?」
 マトンは脂を剥がして酒で洗えば臭いは薄くなりますが、と続けた楓椛は困り顔。
「――獏の最適な料理法は……流石に私も知りませんよ?」
 そう、これはただの羊でなくて、煮慈威露愚喪の獏羊族。
 ただの羊じゃないけれど、きっとたぶん大丈夫。美味しいと噂だから。どちらだけとは聞いていないから。
 それに、味がどうであれアポカリプスヘルのひとたちならば新鮮なお肉というだけで、喜んでくれるような気もする。
 でも、噂は噂。――どちらかが美味しいかは、試してみなければ分からない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シシル・ロッツェル
うーるーさーいー。(耳を伏せる)
この騒音で眠くなるとは信じがたい。
ともかく、罠にかかった奴から順番に処理して……、なにあれ。なんかすごい色してる。
地毛かな?地毛ならとても珍しい。ぜひ欲しい。後で状態のいい奴を刈り取ってみよう。

その為にもやっぱり獲物の損傷を抑えないとなー。
油で滑って感電したのは……奴はもう助からん。放っておこう。
とりあえず、とりもちで身動き取れない奴から順番に処理しよう。
ほぼ動いてないから狙うのは簡単だし、距離を取ってれば反撃も怖くない。
狙いは首。内臓は傷付けたくないし、頭みたいに硬い骨もない。

動いてるのがいなくなったら槍で首をぶすっと介錯。
大猟なのは良いけど処理が大変……。


佐伯・晶
あの毛は染めてるのかなぁ
あまり食べる気にならない色だよね

ともあれ食べ物に被害が出る前に倒してしまうよ

罠にかかって落ちたのを
ガトリングガンで掃射しつつ
必要に応じて地雷を点火しよう
もちろん踏んでも爆発するよ

近付かれないように遠くから倒していこう
もし近づかれたならUCで火炎放射器を作って攻撃

何故かアポカリプスヘルに似合うんだよね、この武器
凄く燃えやすような毛を纏ってるから
たぶん効果的なんじゃないかな
阿鼻叫喚の地獄絵図になるのか
バーベキューみたいな匂いがして垂涎の光景になるのか
どっちなんだろうね

火が付いたまま拠点に近づかないように
マヒ攻撃が使える使い魔を後ろに待機させておくよ

さあ、もう少しで終わりだね




『ヒャッハー! 突撃だー!!』
「うーるーさーいー」
 この騒音のなかで眠くなるだなんて信じがたい、とシシルはぺったり耳を伏せる。
 とは言え、現れたすべての獏羊族が未だにパカパカパカリラやっている訳ではない。
 猟兵たちの仕掛けたトラップに見事引っ掛かった獏羊族もいるのだから。
 すっぽり穴にはまったり、ビリビリ痺れて動きが鈍くなってしまったり、投げ出されて荒野をごろんごろんと転がっていったりと、大変な騒ぎである。
 うっかり地雷に突撃をかましてしまった獏羊族は、吹き飛ばされたかと思うともはや動かない。
「ともかく、罠にかかった奴から順番に処理して……」
 それでも騒がしいことには騒がしい。
 すこしでも早く静かにしなくちゃ、とシシルがとりもちに引っ掛かった獏羊族に近づいてその顔を覗き込む。
「……なんかすごい色してる」
「この毛は染めてるのかなぁ。あまり食べる気にならない色だよね」
 シシルの横に並んだ晶も、もちもち暴れる獏羊族をまじまじと観察。とりもちだらけになっても、その毛は光を失うことなくギラギラ光っていた。
「地毛かな? 地毛ならとても珍しい。ぜひ欲しい」
『オレたちのプライドとも言える毛を刈るだと!?』
 獏羊族たちの抗議の声もなんのその。あとで状態のいい奴を刈り取ってみよう、と呟くシシルに晶はくすくす笑って。
「ともあれ食べ物に被害が出る前に倒してしまおうよ」
「うーん。そうだね、騒がしいしね」
 シシルが矢をつがえた横で、晶もガトリングガンを構えた。
 音もなく風を切って飛ぶ矢に並んで、爆発音と共に吐き出された弾丸が獏羊族目掛けて飛んでいく。
 雨あられのように降り注ぐそれらを避ける術を、トラップに掛かった獏羊族たちが持っているわけもなかった。

「毛刈りのためにも、やっぱり獲物の損傷を抑えないとなー」
 ちらり、とシシルが動かなくなった獏羊族を見た。地面に倒れ込んだ彼ら自慢の毛は、砂にまみれてギラギラ三割減だ。
『まだまだいるってェのに、随分甘っちょろいネーチャンだなァー!?』
 トラップを飛び越えた獏羊族が、そのままシシル目掛けて飛んでくる。
 けれど、単純な動きの彼らの攻撃をかわすのはそう難しくはない。シシルがひらりと身を翻すと、獏羊族は――――つるっ。
『なァにィ!!? ――って、あばばばばばばば!!?』
 つるつる滑って、ビリビリトラップへ一直線。こんがり焼けた獏羊族が一丁上がり。
「…………奴はもう助からん。放っておこう」
「じゃあ、他にも助からなそうなのはまとめて片付けちゃおうか」
 晶がぽちりとボタンを押せば、動かずボロボロになっていた獏羊族の山が地雷によってちゅどんと爆ぜた。
 めらめら燃えていくもの、爆発に巻き込まれ自慢の毛を焦がすもの。――うーん、とっても世紀末。
 美味しそうなかおりがして涎のひとつでも出るかと思ったけれど、目の前に展開されているのが阿鼻叫喚の地獄絵図となれば、出そうになった涎も思わず引っ込みそうだ。
「おっと、拠点には近づかせないよ、お願い!」
 晶の声に応えて、彼女の後ろに控えていた使い魔がふわりと躍り出る。
 相手を状態異常にする能力に長けた使い魔は獏羊族に近付くと、獏羊族にぴたりと寄り添う。――すると、どういうことだろう。獏羊族の動きが鈍くなる。どうやら、使い魔の能力で麻痺させたようだ。
 獏羊族が動きを止めたその隙に、晶はユーベルコード、複製創造支援端末を展開。造り出された火炎放射器で逃げ出そうとした獏羊族を燃やしていく。
「……本当に美味しいのかなあ……」
 めらめら燃える様を眺めながらぽつりと呟く晶を見て、トラップに掛かっていた獏羊族を順番に処理してきたシシルも僅かに首を傾げる。
「このすごい色のおかげで、ちょっとだけ食欲が減るね」
 話ながらも、近くに転がる比較的綺麗な獏羊族を槍でぶすっと介錯。仕事をする手は休めない。
「大猟なのは良いけど処理が大変……」
 せっせと獏羊族の処理をするシシルのお手伝いを晶が申し出る。ふたりでせっせと毛を狩り、皮を剥ぎ、肉を捌く。
「内臓は傷付けないように出来る?」
「うん、やってみる。……もう少しで終わりそうだね」
「そうだね、がんばろう」
 ふたりの手で次々に獏羊族が捌かれていく。これだけの食材があれば、このあとお祭り騒ぎをしたとしても拠点のひとたちが暫く食に困ることはないだろう。
 自らの手で獲った肉は、きっと美味しいに違いない。いや、美味しいといいな。そう願わずにはいられなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エリカ・グランドール(サポート)
 サイボーグのシャーマン×電脳魔術士のエリカ・グランドールです。
 戦闘はあまり得意ではありませんが、周囲の状況を観察して違和感のある箇所を発見したり、敵の弱点を推測して隙を作り出すといった行動で皆さんをサポートしたいです。

※セリフ例
「今、何か光りました。ここに何かあるのでは……」
「あの敵の動きには規則性があるわ。うまく狙う事が出来れば……」

 冷静沈着と言う程ではありませんが、ビックリする事はあまりありません。
 あと、笑いのツボが良くわかっておらず「今の、どこがおもしろかったのでしょうか?」と、真面目に聞き返す事もあるようです。

 ユーベルコードは、エレクトロレギオンを好んで使います。


水鏡・怜悧
詠唱:改変・省略可
人格:アノン
ロキのトラップは後回しにして羊を喰うとするか。
UDCを纏って狼耳と尻尾を象る。武装は両手足に纏う狼爪。属性は雷。
「全部喰いてェけど、他のヤツの獲物だってなら我慢してやるよ」
……派手だなコイツら。目立たねェように群れの端に襲い掛かる。棍棒は勘で受け流し磁力で絡め取る。鞍も磁力で捕らえて動けなくしたらそのまま羊に喰らいつくぜ。
ベルが鳴ったらトラップの所に戻る。これだけうるさけりゃ眠気も起きねェな。金属網に捕まってる奴は網に電気を流してマヒさせてから爪で頭を切り落としておくぜ。喰いてぇけど我慢我慢……後でロキのヤツに燻製肉でも作ってもらおう。




 生きているものは食べられる。
 だから、騒音を撒き散らしながらこちらへ向かってくるヤツらも、――食べられる。
 それにしても、ああ、ああ。騒がしい。怜悧の頭にひょっこり生えた狼耳が不機嫌に揺れた。
 今度の人格はアノン。先ほどの人格、ロキとは打って変わって、荒々しい雰囲気は隠しきれない。
 ユーベルコードで形作られた狼の耳と尻尾。それから、両手足は雷を纏った狼の爪。――その見た目も印象を変える一因なのだろう。

 こちらへ突っ込んでくる獏羊族の群れを見たアノンは、にんまり笑ってぺろりと舌を舐める。
「……派手だなコイツら」
 彼は、ロキの仕掛けたトラップも後回し。群れからはぐれそうな獏羊族を狙って飛び掛かり、――その喉笛へと喰らいつく。
 喉を喰い破られ噴き出す血は生ぬるく、べたりと張り付いて不愉快だ。けれどそれすらも気に留めず、アノンは獏羊族のいのちを喰らう。
 暫くすると、アノンはぷっと血を吐き、頬を拭った。満足そうにふうと一息。
「…………全部喰いてェけど、他のヤツの獲物だってなら我慢してやるよ」
 ちらと辺りを見回す。既に食材として加工されつつあるもの、トラップに引っ掛かったもの。様々ではあるが、獏羊族はすっかり数を減らしていて。あちらこちらで、ちのかおりがする。
「大丈夫ですか?」
「んぁ?」
 声を掛けらたアノンが振り向けば、そこにはエリカ・グランドール(サイボーグのシャーマン・f02103)が立っていた。
「怪我をしたのでしょうか」
 口数が少ないながらも気遣う様子のエリカを見て、アノンはひらひらと軽く手を振る。
「この通り、無傷だよ」
「……そうですか。それならよいのですが」
 交わした言葉はひとつふたつ。けれどそれを隙だとでもいうように、獏羊族がふたりへ向かって突っ込んでくる。
『おいおいおいおい!! オレたちの仲間に手を出したくせに随分悠長だなァー!!』
 そんな獏羊族に気付いたエリカは、表情を変えることなく手に持っていた媒介道具をしゃらんと鳴らした。
「流石アポカリプスヘル。随分と無秩序な敵ですね」
 音に呼ばれたように現れたのは、小型の機械兵器。――ユーベルコード、エレクトロレギオン。
 わらわらと現れた機械兵器たちは、突っ込んでくる獏羊族の前に立ちはだかる。
 ひとつ、吹き飛ばされて。ふたつ、砕かれて。みっつ、踏みつけられて。
 それでも小型兵器たちは退くことはせず、次々に現れては獏羊族へ攻撃を仕掛ける。――そうして、ついに小型兵器に纏わりつかれた獏羊族が足を止めた。
「数が多いと言うのなら、同じように数で勝負すればいいのです」
『くっそォ!? こんな、こんなことでェッ!! 止まるオレたちじゃ、あ――……?』
 悔しそうに睨みをきかせる獏羊族だったが、最後まで言い切ることは叶わなかった。
「残念だったなぁ?」
 アノンの狼の爪が、獏羊族の頭をぽんと断ち切ったのだから。ごとんと落ちた顔はやっぱり恨めしそうだったけれど、もうあの騒音は鳴らせない。
「あれだけうるさけりゃ眠気も起きなかっただろ。静かに寝てな」

 ロキが設置したトラップの鳴り響くベルの音を聞きつけたふたりは、そちらへ戻るとトラップに掛かっていた獏羊族を的確に仕留めていった。
「喰いてぇけど我慢我慢……後でロキのヤツに燻製肉でも作ってもらおう」
 網にばちりと電気を流せば獏羊族の毛がいい感じに焼けるものだから、なんだかお腹が空く気がした。
「………美味しいのですか?」
 こんな毒々しい色のものが? とエリカは首を傾げる。彼女にしてはしっかりと、その表情に戸惑いが浮かんでいた。
「あー……。オレは喰えるけど」
 あんたが食うなら、調理してあるほうがいいだろう、とアノンはにんまり笑うのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鴇刄・紫雨
紫陽(f30642)と

あのインパクトで寝れるわけ無ぇな
寧ろ眼が痛いんだが
呆れ顔で肩を竦めて匙投げる彼に同意を返す

――、喰えと云われれば、いや、普通に無理だが?
唯、珍味ほど美味い説も在るからな…
あとはホラ、お前の腕次第なんじゃねぇの。
美味しく料理してくれよ、頼んだぜ
不敵な笑みは隠さずに紫陽の肩をバンバンと叩く

指定UC使用
揺らめく藍の炎で眼くらましと敵の撹乱・誘導を
好きなだけ撃ちな、お前が捕えた獲物は灼き尽くしてやる
ああ、火加減には文句云うなよ

虹色の其れを見遣れば食欲は下がる気はするが
隣の此奴が上手に馳走にしてくれるだろうて
自然咥えた気に入りの煙草は指先で遊ばせて
――勿論、一仕事後の一服は格別だろ


空露・紫陽
紫雨(f17470)と

なぁ、お前さん
眠らせて略奪とか言ってたが…アレ寝れるか?
俺も眼痛えわとぼやきひとつ

――んで、アレ美味そうに見えるか?
因みに俺は見えない
虹色は食欲減退色と認識しつつ
…まあ珍味ほど美味い説は有るか
全くそんな事云われちゃ料理人としては引き下がれねえやな
背への雑な感覚に口も弧を描く

UC『Kugel』使用
好きなだけと云われるなら思う侭
リロードは流れる様に
火加減はお前さんに任せるさ
くれぐれも俺を焼いてくれるなよ?
見切りで不意打ちは避け
生きるか、死ぬか
さぁ、殺り合おうぜ?

さぁて、見た目ごと美味いモンに変えてやれりゃイイんだが
けどその前に、とお気に入りの煙草を咥えて一服を
――なあ、紫雨?




 はあ、と溜め息がふたつ。
 耳にも目にも騒々しい獏羊族を視界に収めた、時雨と紫陽のものだった。
「なぁ、お前さん。眠らせて略奪とか言ってたが……」
 アレ寝れるか、と渇いた笑いを浮かべながら紫陽が問えば。
「あのインパクトで寝れるわけ無ぇな」
 寧ろ眼が痛いんだが、と時雨が肩を竦めながら答える。
 そんな言葉に紫陽は、俺も眼痛えわ、とぼやいてから質問をもうひとつ。
「……――んで、アレ美味そうに見えるか?」
 虹色の毛を持つ獏羊族と乗り物の山羊。自前なのか被り物なのかは分からないが、モヒカンまでもがギラギラ輝く虹色だ。
「因みに俺は見えない」
 虹色は食欲減退色というが、そういう問題でもない気がする。
 そもそも、彼らの名前は『煮慈威露愚喪の獏羊族』。
 『獏』羊族だ。ただの羊でないことはその名前が既に物語っている。
「――――、喰えと云われれば、いや、普通に無理だが?」
 しっかり一呼吸以上の間を置いて時雨がそう答えれば、やっぱりか、とでも言うようにふたりの視線がぶつかった。
「唯、珍味ほど美味い説も在るからな……」
「……まあ、珍味ほど美味い説は有るか」
 確かに、ある。けれど、あるとしても。材料がアレだと知っていたら、誰もが口にするのを拒むのではないだろうか。
 そんなことをぼんやりと考えていた紫陽を見て、時雨はにんまり不敵に笑うと。
「あとはホラ、お前の腕次第なんじゃねぇの。美味しく料理してくれよ」
 時雨は頼んだぜ、とすこし乱暴なくらいに紫陽の背をばんばんと叩く。
 雑な感覚を背に受けた紫陽は、ぱちり、ぱちりと瞬いて。ゆるりと、その口元が弧を描いた。
「……全くそんな事云われちゃ料理人としては引き下がれねえやな」
 ――――嗚呼、ほんとうに。俺の釣り方をよくご存知で。

『ヒャッハー! 突撃だァ!! 轢き殺されたくなかったらさっさと退きなァ!!!』
「……やかましいなぁ」
 露骨に渋い顔をして、面倒そうに時雨が呟く。そんな、余裕綽々といった態度の彼が気に入らなかったのだろう。
 獏羊族の群れが、時雨に向かって真っすぐに駆けてくる。あの数で、あの勢いで、突っ込まれたら怪我では済まないだろうが、時雨はそれでも気にする様子はない。
『さァーって!! ねんねの時間だぜェーッ!!!』
 時雨に飛び掛かろうとした獏羊族の目の前で、ぼっと炎が揺らめいた。
 ゆらゆらゆらりと、炎の華が咲く。時雨のユーベルコード、染花によって咲いた炎の華は、彼らの視界を塞ぎ、山羊の足を止めた。
『あっちィ!! 焦げたらどう落とし前付けてくれるんだァ!?』
「いいんじゃないか、そのほうが美味そうだろう」
『ッんだ、テメエ! コラァ!!』
 ぎゃんぎゃんと騒ぎ立てる獏羊族を、もはや時雨は見ていない。あー、うるさいうるさい、とぼやいて隣に立つ紫陽に視線だけを向ける。
「好きなだけ撃ちな、お前が捕えた獲物は灼き尽くしてやる」
 その言葉を聞いた紫陽が、くっと楽しそうに笑う。――好きなだけと言われるなら思う侭。
「言の葉か、弾か。先に届くのは、さてな」
『――……な、』
「……おや、弾のほうが早かったか?」
 言葉もなく、どさりと獏羊族が山羊の上から落ちる。白銀の弾丸が、その額を撃ち抜いていたのだ。
「生きるか、死ぬか。――さぁ、殺り合おうぜ?」
 ――――此の世の中、殺せば勝ちなのだ。

 流れるようなリロード。次々と撃ち出される白銀の弾丸。
 噎せ返るような硝煙のかおり。血と、いきものが燃えていくにおい。
「ああ、火加減には文句云うなよ」
「なに、お前さんに任せるさ。けど、くれぐれも俺を焼いてくれるなよ?」
 からり笑う。隣に並んだふたりが撃って、燃やして、気付けば。どこからも騒がしいおとは聞えなくなっていた。
 動かなくなった獏羊族に近付いてギラギラ輝くその姿を改めて見れば、やっぱり食欲は下がる気がするけれど。
「お前さんが上手に馳走にしてくれるだろうて」
「さぁて、見た目ごと美味いモンに変えてやれりゃイイんだが」
 どう調理しようかと考えながら煙草を咥えた紫陽を見て、時雨も指先でくるりと遊ばせてから煙草を咥えた。
 折角だから美味しく調理はしたいが、その前にまずは。
 ――なあ、紫雨?
 ――勿論、一仕事後の一服は格別だろ。
 ゆらり揺れる紫煙が、ふたつ並んで静かに昇っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『探せ食の神秘、イン・アポカリプスヘル!』

POW   :    道具など不要也!食材など我が身ひとつで揃えてくれる!

SPD   :    虫取網に釣竿、弓矢に撒き餌。ふふっ、狩猟準備はパーペキねっ!

WIZ   :    周辺の動植物全ての行動パターン把握。各個に見合う罠の設置完了。ふっ、戦わずして全ては決しているのさ!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵たちによって仕留められた『煮慈威露愚喪の獏羊族』。
 戦場となった荒野を見渡せば、あっちでもこっちでももこもこしている。――大猟である。

 守りきった物資と仕留めたオブリビオンで、食材は近くの拠点で分けても余るほど。
 拠点ではちょっとしたお祭り騒ぎになることだろう。
 どんな料理を作るのか、どんな味がするのか。――それは、お祭り騒ぎに参加した猟兵たちにしか分からない。
中小路・楓椛
アドリブ連携歓迎

私はダゴン焼きの【料理】試食の為に来たのですけど…大量に狩られたようですので獏羊?の下処理に廻りましょう。

獏羊?を【クロさん】の手伝いで吊り下げて血抜きし、流れ作業でサクサク皮と脂を剥がします。

このまま野生種の肉の脂を残して加熱すると鍋の周囲で獣臭の地獄絵図が展開されますので確実に取り除いた後に穀物醸造酒で良く洗いましょう。

焼き物料理については私独自ブレンドのクミン塩をケチらず擦り込み、収縮対策に水で溶いた片栗粉を絡めてから加熱工程に廻しましょう。

煮込み料理は…ここ硬水あります?無ければ手持ちのを出しますので、灰汁が出たらしっかり取って下さいね。

獏要素が悪さしなければ良いですね


シシル・ロッツェル
虹色の毛は珍しいけど、これだけたくさんあると珍しいと言えるのか良く解らなくなってきた。
でも二度と手に入らないかもしれないし、貯め込んでおこう。
それに今年の冬はきっと暖かく過ごせるに違いない。

料理はどうしよう?
そうだ。ここにはたくさんの人がいるから、きっと料理の得意な人もいるだろう。なら、その人から貰えば良いのだ。
代わりに持ってきた油や捌いた肉を提供すれば問題なし。テキザイテキショである。

何の料理が出てくるかなー?
ステーキ?唐揚げ?シチューなんかもおいしそう。
お肉自体も美味しいって聞いたし、血や内臓の処理はちゃんとしたから臭みも無いはず。
色々食べたいから、まだ食べてない料理を探して回ろうっと。




 あっちでもこもこ。こっちでもこもこ。
 調理のため、綺麗に刈り取られた虹色の毛がギラギラ輝いている。
「これだけたくさんあると珍しいと言えるのか良く解らなくなってきた」
 いや、珍しいのだけれど。頭では分かっているのだけれど。
 目の前でこれだけもこもこしていると、実はそんなに珍しくはないような気になってくる。シシルはふるりと首を振った。
「でも二度と手に入らないかもしれないし、貯め込んでおこう」
 今年の冬はもこもこ羊毛でぬくぬく暖かく過ごせるに違いない。シシルの尻尾が楽しそうにふるりと揺れる。
「羊毛は貯め込むとして、うーん。料理はどうしよう?」
 狩猟の腕には自信があるけれど。料理が得意かと聞かれたら、首を傾げてしまう。
 どうしようかとシシルがきょろりと辺りを見渡せば、猟兵たちと拠点のひとたちが思い思いに料理をしている様が目に飛び込んでくる。
 じゅうじゅうと油が弾けるおと。ステーキにでもしたのだろうか。あちらの鍋で作っているのは煮込み料理かな。
 いろいろなところから様々な料理のかおりが流れてきて、涎のひとつでも思わず垂らしてしまいそうだ。

 あれもこれも美味しそう、なんて拠点の散策をしていたシシルだが、大きな人だかりを見つけた。
 いったい、どんな料理があるのだろう。その中心を覗き込もうと、シシルが人を掻き分けて進むと――……。
「私はダゴン焼きの料理試食の為に来たのですけど……」
 そんなことを言いながらも、ちゃかちゃか手際よく肉を捌き処理をする楓椛の姿があった。
 料理じゃなかった、とシシルの尻尾と耳がちょっぴり垂れる。そんなシシルを見つけると、楓椛はちょいちょいと彼女を手招きする。
「すみません、すこし手伝ってもらっていいですか」
「うん、どうしたのー?」
「しっかり処理をした食材のほうが美味しいと話題になったようで、思ったより人が集まってしまって……。シシルさんも下処理得意でしたよね」
 そろそろ料理にありつきたかったのが本音ではあるが、乗りかかった舟である。シシルはこくりと頷いた。
「しっかり血や内臓の処理しないと、臭みがすごいもんね」
「鍋の周囲で獣臭の地獄絵図が展開されることになるでしょう……」
 難しい顔の楓椛を見て、シシルも顔を顰める。食材すら少ないこの世界では、食事にありつければ御の字。とりあえず焼くなんてこともあるだろう。
 この世界のひとたちは気にしないかもしれないが、こちらとしては出来ればご遠慮願いたい。
 楓椛のクロムキャバリア、『クロさん』に吊るされ血抜きされた肉から、シシルが油を削いでいく。
 その肉を楓椛が受け取ると、穀物醸造酒でしっかり洗う。
 煮込み料理用の肉は、硬水で煮込みしっかり灰汁を取り除く。
 焼き物料理用の肉は、楓椛独自ブレンドのクミン塩をケチらず擦り込み、水で溶いた片栗粉を絡める。これで肉が固くならなくて済むだろう。
「獏要素が悪さしなければ良いですね」
「大丈夫でしょ、お肉自体も美味しいって聞いたし」
 すっかり人だかりがはけて一息ついていたふたりのもとへ、彼女たちが処理した肉で作った料理を持ったひとびとが集まってくる。
 ――ステーキ、唐揚げ、シチューに角煮。がっつりお肉のフルコース。
 感謝の気持ちがいっぱいに溢れた肉料理の数々を目の前にして、シシルの尻尾がぱたぱた揺れた。
 出来立ての料理を頬張ったシシルが、ぱっと瞳を輝かせて耳をぴんと立てたのは言うまでもない。
「他にも何の料理が出てくるかなー?」
「そろそろ味も変えたい気分ですねえ……。ダゴン焼き、……食べます?」
 わくわくするシシルの隣で、楓椛がいそいそと腕まくりをする。
 楓椛いわく『鮮魚系の食材』を包んで焼いた、ダゴン焼き。
 それがどんな味がしたのか、食べたひとの視界にどんな景色が映ったのか。――それは食べたひとにしか、分からない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

水鏡・怜悧
詠唱:改変、省略可
人格:ロキ
やれやれ、仕方ありません。アノンに頼まれた通りラム肉の燻製を作ります。集落の方に金属加工の道具をお借りし、お礼にドラム缶燻製機を教えつつ作成します
チップは廃材の中で状態の良さそうなものを利用します。本来は木材も肉も事前に乾燥させるものですが、水属性と火属性の触手で今回は時間短縮します。獏の方は念のため毒属性の触手で有毒な物質が無いか確認しましょう。先ほどアノンは食べていましたが、集落の方に無害かはわかりませんからね
スモークの間は解体をお手伝いします。UDC触手は液体金属なので、皮を剥ぐときは便利なのです
私は味覚が無いので、完成したら集落の方に味見していただきましょう


佐伯・晶
とりあえずひと段落かな
拠点に被害は無いとは思うけれど
お祭りの様子を眺めつつ
周囲をぐるっと回ってみようか

みんなお祭りを楽しんでいればよいけど
あと捌いた肉は普通に食べれてるのかな
感想を聞いてみようか

食べられるなら
沢山あるし保存食にするのも良いかもね
干し肉とか塩漬けとか

様子を見終わったら
持ち込んだお酒をちびりちびりやりつつ
のんびりしていよう
持ち込んだ保存食も
つまみに丁度良いしね

見た目はこれだけど
ちゃんと成人しているから
お酒を飲んでも大丈夫だよ

また明日からはこの厳しい世界を
乗り切っていかなきゃいけないんだし
たまには羽目を外すのも大事だと思うよ

そういえばこの拠点の大きさとか
施設とかどんな感じなんだろうね




「やれやれ、仕方ありません」
 アノンに頼まれましたからね、と。渋々といった様子で怜悧の人格のひとり、――ロキが拠点を巡って何やら廃材を集めていた。
『ドラム缶? 大量に煮込み料理でも作るんか?』
「いいえ、でも面白いものが出来ますよ」
 使わないと言った木材も受け取りながら、出来たら食べにきてくださいね、とロキは笑ってみせた。
 集まった素材を前にしてロキがはじめにしたのは、木材を触手の力を借りて乾燥させること。
 そのあとは、肉に有毒な物質がないかの調査。先ほどの戦いでアノンはあの肉に思いきり喰らい付いていたけれど、拠点のひとたちにも無害かどうかは分からない。なんてったって、オブリビオンである。
 大丈夫そうだと確認すると、ドラム缶を加工して作ったもののなかに、砕いた木材を入れて肉を吊るす。
「さて、これで準備は出来ました。完成を待つ間に、解体のお手伝いもしてきましょうか」

 拠点に被害はないだろうか。拠点のひとたちはこのお祭り騒ぎを楽しんでいるだろうか。辺りの様子を伺いながら、晶はぐるりと拠点を巡る。
(とりあえずひと段落かな)
 事前に用意していたトラップはもちろん、現れた煮慈威露愚喪の獏羊族もことごとく返り討ちにしたものだから、拠点への被害はゼロである。
 捌いた肉が普通に食べられているのかも気になってはいたけれど、喜んで食事をするひとたちの姿を見るに、それもどうやら問題なさそうだ。
「感想を聞いてみようか」
 晶は焼かれただけの肉に喰らい付いているひとへ声を掛ける。
 美味しいですか、と聞けば、そのひとはばっと顔を上げた。けれど、何かは言おうとしているのだが、口に肉がいっぱいに詰まっていて何も聞き取れない。
「あの、ちゃんと噛んで飲み込んでからでいいよ?」
 どうどう、と晶が宥めれば、そのひとは肉をしっかり咀嚼し飲み込んだあと、晶に深々と頭を下げた。
『こんな、こんなうまい食事をしたのは、はじめてで……!!』
 何事かとびっくりしている晶に、そのひとが告げたのは感謝の言葉。このままだと地面に頭を擦り付けそうな勢いで頭を下げるそのひとに、顔を上げてと告げて。
「みんなが喜んでくれるなら、なによりだよ」
『なんて慎ましい……!! あんたたちは神様で女神様だ……!!』
 女神様。その単語はちょっとだけ複雑だけれど。 自分たちのしたことでこんなに喜んでもらえることは、やっぱり誇らしくて、ほんのすこしだけ、くすぐったかった。

 ロキがそろそろかなと蓋を開ければ、ぶわりと煙が昇る。
 燻された肉のかおりが広がるものだから、拠点のひとたちもわらわらと集まってきた。
『おっ、こっちはなんだ?』
「どうぞ、美味しいと思いますよ」
 ロキが差し出したのは、獏羊族の肉を使った燻製。
 ロキは廃材を利用して、ドラム缶燻製機とチップを作っていたのだった。
「あ、燻製。保存食にもなるしいいよね」
「晶さんも如何です?」
「ん、じゃあいただきます」
 ひとくち頬張れば口のなかに凝縮された旨味がじゅうっと広がり、言葉もなくす美味しさである。
「持ち込んだ保存食もつまみに丁度良かったけど、やっぱり出来立てだと違うね」
 晶がお酒を取り出してちびちび呑む姿に、拠点のひとたちの視線が注がれる。
「あ。見た目はこれだけど、ちゃんと成人しているからお酒を飲んでも大丈夫だよ」
 どうやら、お酒を飲んでも平気なのかと心配されたようだった。晶の姿は愛らしい少女であるから、拠点のひとたちが心配になるのも仕方がなかったのかもしれない。
「美味しかったようでなによりです。私は味覚が無いので味見が出来ないんですよ」
「へえ?」
 ロキの言葉に、晶が思わず首を傾げる。食べて飲んでの騒ぎのなか、ひとりだけ食べないのはなんとなく辛いんじゃないかな、なんて考えてしまう。
「味がないとやっぱり食べるの辛いかな。あっちで出てたステーキとかも美味しかったんだけど」
「……ありがとう。後でアノンが頂きます」
 ステーキだなんて、きっとアノンなら喜んで食べるに違いない。この燻製も食べさせたいし、もうすこししたらアノンと変わろう、とロキは思う。
「それにしても……。明日が心配になるようなお祭り騒ぎですね」
「そうだねえ。でも、たまには羽目を外すのも大事だと思うよ」
 また明日からはこの厳しい世界を乗り切っていかなきゃいけないんだし、そう言って晶が笑う。
 此処は、生きていくだけでも厳しい世界だ。でも、だからこそ、命の喜びはより輝くのかもしれない。
 ――――食べて呑んでのお祭り騒ぎは、まだまだ終わりそうにない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鴇刄・紫雨
空露・紫陽(f30642)と

料理はてんで不得手なもんで
此処は紫陽に任せて
俺は味見役にでも徹しようかね

慣れた手付きで調理道具を駆使しながら
羊たちを捌いていく様を
興味深く眺めながら
器用なもんだな、と改めて
彼のひとくち、意外と味の保証が出来そうな様子に
何となく安堵はする
………、
その飾りはちっとエグいんだが、紫陽シェフ

完成したものは宛らフルコースのメインディッシュにも
劣らない映えた肉
え、凄くね、めちゃくちゃ美味そうだけど
置かれた極上酒は例の褒美
噫、勝利の美酒ってのはまさに此れ
杯に二人分注いで重ねる労いの音

一頻り舌鼓を打ち
見回す彼に察せば
銀フォークに映るしたり顔
周りの奴らのも奪いにいっちまうかって


空露・紫陽
紫雨(f17470)と

さて、どう料理したもんかね
Messerを手でくるりと回して思案顔
Kochに入れた道具と調味料を一先ず試して
おい紫雨と味見役を呼んで

捌いて焼いて一口
…噫、こりゃ確かに美味い部類の珍味かもな
調味料の配合も中々癖に
料理酒を撒きの焼き加減が見るのさえ楽しく
虹色の毛皮は剥ぎ皿端の飾りにでも
なぁに、素材は無駄にしない主義なモンで?

さて、完成と
どうだ紫雨、見た目はマシになったかい?
とりあえず此れが褒美の酒
置かれた二本の酒瓶は極上の物だと見りゃ解る筈
少し減った片方は料理の中
労りの乾杯を受け、これぞ至極

あ、他の奴らが作ったのも気になるねぇ
辺りを見回し
お裾分け、貰いに行くかい?
紫雨とワルい顔




 紫陽が手のなかで、包丁を弄ぶ。それはくるりと回ってまた彼の手のなかへ収まった。
「さて、どう料理したもんかね」
 綺麗に捌かれた獏羊族の肉。ギラギラした毛がなければ、見た目はただの肉ではあるけれど。
「おい紫雨」
「はいはい、俺は味見役にでも徹しようかね」
 ひらひらと手を振る紫雨を見て、流石に話が早いと紫陽が笑う。
 ついでに、酒ももう少し待ってろよ、と紫雨に視線を投げておいた。返事の代わりに溜め息が聞えたから、きっと伝わったのだろう。

 ずらりと並んだ料理道具に調味料。慣れた手つきで、それを紫陽が扱っている。
(器用なもんだな)
 料理をする彼の姿を眺めながら、紫雨は思う。
 食べたこともない食材の調理だというのに、その流れるような動作には無駄がない。まるで良く知る食材を扱っているかのようだ。
 紫陽はというと、初めての食材の調理を楽しんでいるようだった。
 調味料の配合に焼き加減。捌くときに刃を伝わる感触すら、知っている肉とはすこし違う。
 未知の食材との出会いは、料理を好む彼の心を躍らせるものだったのかもしれない。
 料理をする手を止めて、紫陽は焼いた肉をぱくり、ひとくち。肉の味を確認するように、しっかり味わうと――。
「…………噫、こりゃ確かに美味い部類の珍味かもな」
 その言葉に、紫陽はなんとなく安堵する。彼の舌は信用しているけれど、なんてったって素材はあの毒々しい毛に身を包んでいたヤツなわけで。
 食べてみればわかる、と紫陽は肉の一部を切り分けて紫雨へ差し出した。味については問題ないと判断した紫雨だったけれど。
「……いやちょっと待て」
 お皿の上に飾られた、ギラギラ虹色に輝くそれ。――見間違うことなく、獏羊族の毛である。
「………、……その飾りはちっとエグいんだが、紫陽シェフ」
「なぁに、素材は無駄にしない主義なモンで?」
 紫雨は、そう言って悪戯っぽくくつくつ笑う彼から、無言で皿を受け取るのだった。

「さて、完成と。どうだ紫雨、見た目はマシになったかい?」
「え、凄くね、めちゃくちゃ美味そうだけど」
 皿の上に乗っていたのは、フルコースのメインディッシュにも劣らない映えた肉。
 あの肉と、そう多くもない調味料でよくこれだけのものを作れるものだ。改めて感心してしまう。
「で、この飾りは外せなかったのな」
「そりゃあ、そうだろうよ。さっきも言ったろ、素材は無駄にしない主義だって」
「別の意味でも『映え』そうではあるけどよ」
 けれど、残念ながらそんな趣味はないし、冷めてしまったら折角の美味しい料理が勿体ない。それに、何より。――勝利の美酒も、待っている。
「とりあえず此れが褒美の酒」
 とん、と皿の横に並べられた2本の酒瓶。それが極上のものであることは、言わなくとも見れば分かった。片方は少し減っているけれど、きちんと料理のなかだ。
「噫、勝利の美酒ってのはまさに此れ」
 紫雨がにんまり笑むと、黙ってその酒を杯に注ぐ。ひとつを自分で、もうひとつを紫陽に差し出した。
 杯を持ったふたりは乾杯の言葉もなく、ただ静かに杯を掲げてかつんと鳴らす。がやがや賑やかなお祭り騒ぎのなかに、労いのおとが響いて消えていく。

 ――――紫陽の作った料理は、言うまでもなく美味しかった。
 ひとしきり舌鼓を打ったころ、紫陽が辺りを見回していることに気付く。
「他の料理も気になるか?」
「ああ、他の奴らが作ったのも気になるねぇ」
 時雨は食べかけの肉を口のなかへと放り、ぐいと杯を煽る。皿の上に置かれた銀フォークに映るのは、何か企んでいるようなしたり顔。その顔を見て、紫陽も似た表情で笑った。
「……お裾分け、貰いに行くかい?」
「周りの奴らのも奪いにいっちまうかって」
「こら、俺たちが略奪してどうするよ」
 けれど、そう言う紫陽の声は楽しそうで。杯をすっかり空にすると、ふたりは新たな味を探してお祭り騒ぎの輪に加わる。
 酒も、料理も、時間も、まだまだたっぷりある。自らの腹の限界までは、楽しむことが出来るだろう。

 ――――お祭り騒ぎも、いつかは終わる。
 この世界で食事を味わえるだなんてことは稀で、猟兵たちの協力を仰いでも平穏な時間は長くは続かないかもしれない。けれど、今だけは。そんなことは忘れて楽しんでもいいだろう。
 こうして満腹になるまで食事をし、笑顔でいられるのは、猟兵たちの力があってこそなのだから。
 だから、願わくば。この平穏がすこしでも長く続きますように。そう願わずにはいられなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月02日


挿絵イラスト