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踏み出す勇気も、引き返す勇気も(作者 地属性
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●気付かれず足蹴にされる芽
「みんなみんなー! 来てくれてありがとーっ! あははっ! どうぞどうぞ座ってくつろいでっ!」
 開口一番けたたましく、高砂・オリフィス(南の園のなんのその・f24667)は人差し指を上げてそう言う。彼女のハッスルした雰囲気に、猟兵たちは気圧されつつも、話を切り出した彼女にその先を促した。なんだかほっとけばいつまでも雑談してそうな、そのまま脱線して戻らなくなりそうな不安感を払拭すべく、オリフィスは肯く。
「オッケー! じゃあ説明するねっ。驚かないで聞いてね。ぼくが伝えたいのはひとつ! 常闇の世界ダークセイヴァー! ここでとある事件が起きる! そんな予感がひしひしとするんだよねっ」
 支配者級のオブリビオンが闊歩し、民を虐げる苦境が日常化してしまっているこの世界。その中であえて支配を敷くものではなく民に紛れることで、その民が苦しむ顔を間近で見つめるオブリビオンが存在していることは想像に難くない。
「事件の解決、そしてその機を生かして潜伏したオブリビオンを発見あーんど討伐っ! それこそが今回のお願いなんだ! うまーくトラブルシューティングしながら、オブリビオンを追い詰めてちょーだい!」

 『闇の救済者(ダークセイヴァー)』という言葉に聞き覚えはあるだろうか?
 100年にも及ぶヴァンパイアの圧政に屈しかけていた人々の中で、反抗勢力としてついに立ち上がった人々の総称である。彼らは圧政の及ばない自然区域や貧民街に拠点を築き、虐げられた民衆を救う活動を行なっている。猟兵の背中に憧れ、そして猟兵たちが名付けた世界の名前そのものを冠する、レジスタンス。それが闇の救済者だ。
「同時多発的に、世界各地で活動が確認されてるんだっ。あははっ。すごいよね! でもね、ここ。ここ! この辺りなんだけど」
 ブリーフィングルームに広がる乾いた紙の匂い。机に広げられた古めかしい地図を、伸ばした指で示す。村、およびその一帯の森や洞窟。そこに大量のバツ印が描かれている。覗き込む猟兵たちの顔を見上げて、背筋をそらした姿勢のままオリフィスは言った。
「ヴァンパイアの謀略だよゼッタイ……! 闇の救済者の拠点が掘り起こされて、組織の人たちはみんな捕縛。しかもしかも処刑されかかってるっ。領主の配下に、じゃないんだよ!? 元からその村や近くに住んでた人たちの手で、ていのいい生贄として差し出されたんだ」
 立ち上がった者の足を掬い……。
 そして、背後から誤射したかのような振る舞い。
 ぽたぽたと地図がにわかに湿気を帯びる。堪えきれなくなったのだろうか。ぼくは悔しいよっ、と、予知した内容を思い返すたびに双眸に涙を浮かべているようだった。
「ぐすっ。どうか無辜の人たちを殺めずに闇の救済者を守って! それが、狙いの外れたオブリビオンがハデに動き出すきっかけになるはずだからっ」

 闇の救済者たちの嫌疑が、すなわち「濡れ衣」が剥がれたとしても、村の中で起きる騒乱は止まらないだろう。そこに潜伏していたオブリビオンが、安寧をよしとはしないからだ。仲間同士で傷つけ合う、内部抗争に発展することは止められない。
「――でも、みんなの力なら、抗争は止められる。だよねっ?」
 例えば、力ずくで、剣を奪い、時には盾になり、人々を庇う。
 例えば、歌や踊り、食事を振る舞い、人々を宴に持ち込む。
 例えば、争いの原因を突き止めて、人々に説得交渉する。
 例えば、暴力に抗い、暴力から隠し、暴力による傷を癒す。
 リンチや私刑が横行すれば、社会性は失われ、守るべきはずの生活は永遠に帰ってはこない。なんとか、この状況下でも無闇に命を奪い取ることなく、事態を決着に導いてほしい。

「残念だけど、オブリビオンの正体はうまく読み取れなかったんだ。けどねっ、内部抗争が決着した頃合いで、あっちから姿を現すよ! 闇の救済者さんたちもみんなの避難誘導はしてくれるから、みんなはこのオブリビオンの討伐に全力を注いでよねっ」
 繰り返しになるが、これはピンチであるとともに潜伏したオブリビオンを炙り出す大いなるチャンスともいえる。
 取り逃すことのないよう、出し惜しみなく討伐に注力してほしい。

「いっこ決断すると、ほかの選択をぜんぶ切っちゃったみたいで、時々すごーく後悔するよねっ。でもだからって、何にも選ばないのは間違ってるってぼくは思うから! みんなの力で、誰が悪いやつなのかびしーっと突き止めてやろうよ! ファイト!」
 目尻を拭って、彼女は笑う。送り出された猟兵たちが顔を上げれば、そこは、埃と黴と、血の臭いが充満する、闇世界の風景が広がることだろう。





第3章 ボス戦 『慈愛の聖女』

POW ●ちをあげるから、かわりにあいをください
【指先から流す血液】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
SPD ●こわいの、こっちにこないで
自身が【殺意】を感じると、レベル×1体の【相手が畏怖する存在】が召喚される。相手が畏怖する存在は殺意を与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ ●たすけて、ぱぱ
無敵の【ぱぱ】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
👑11

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はメルヒェン・クンストです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ぱぱ、ぱぱ!」

 ぴょこりと獣相を体に現出させた少女は、指先から血がどばどばと噴き出るのも構わず、騎士然とした男の太腿に抱きついた。呆然とするミコルには目もくれず、人懐こい笑みを浮かべている。
 ……この子、こんな表情もできたのか、なんて場違いな疑問を呈する。正気に戻った闇の救済者たちが、村人を先導し避難させる。それでも、ミコルだけは膝をついたままだ。

 身構える猟兵に、少女は、笑いかけていた。

 ――自身が怯えれば怯えるほど、闇の救済者にも、村人にも、恐怖を与える存在を生む能力。
 ――自らを負傷しているか弱い存在だと周りに誤認させる、出血を伴う回復能力。
 この二つは大いに村を混乱させてくれた。側から見てとてもおもしろかった。

 そして――数多の人間と、おまけに猟兵たちの思念を読み取り、創造した「ぱぱ」。
 顔にこそ影が差して一見黒いのっぺらぼうのようだが、想像できる限りの剣技や魔法、暴力、何より悪意を募らせた「無敵のぱぱ」!

 たった今、少女は「聖女」と化したのだ。

「みんな、ころして!」

 悪はいる。無邪気に。
 幸せは壊される。無自覚に。