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白黒ひっくり返して(作者 そらばる
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●猟書家は笑う
 あちらこちらに突き出た水晶、白い岩や砂や真っ白な草木や乳白色の泉でできた景色、雪のように降り積もる真っ白な灰、夜空には白い月。
 空は真っ黒、地上は真っ白。そんなメルヘンな不思議の国に、黒づくめの紳士淑女は何の前触れもなく姿を現した。
「出し抜けの訪問を失礼いたします、皆様」
「白き地の静謐な夜をかき乱すことお許しくださいませ」
 周囲の景色に溶け込んでいる不思議の国の住人達に、紳士淑女はにっこり笑って丁寧に丁寧にお辞儀をすると、真っ黒な装丁の一冊の本をどこからともなく取り出した。
 タイトルは『白黒反転』。
「我等は『猟書家(ビブリオマニア)』」
「本日は皆様のために珠玉の一冊をご用意いたしました」
「白と黒が反転した昼の世界の冒険」
「どうぞごゆるりとお楽しみくださいませ」
 『猟書家』達は疑問を差し挟む暇も与えず芝居がかった声を矢継ぎ早に上げると、黒い本を何気なく開いて見せた。
 見開きから溢れ出た黒い放射光が視界をくらませたかと思った瞬間──、
 ──不思議の国の住人達は、全員、瞬時にして見たこともない別の世界に放り込まれていた。
 白い空、黒い大地。元の世界をちょうど白黒ひっくり返したような、それでいてどこか実体を感じない、薄っぺらな昼の世界。
 矢印とページ数が書き込まれた黒い太陽が、この世界の異常性を最も顕著に体現していた。

●グリモアベース:ゲネ
「よく集まってくれた諸君! 今回はアリスラビリンスの一風変わった事案だ」
 ゲネ・ストレイ(フリーダムダイバー・f14843)がホロモニターに映し出したのは、不思議な雰囲気を纏う黒づくめの紳士淑女。
「最近アリスラビリンスに出没している連中だ。自ら『猟書家(ビブリオマニア)』と名乗り、あちこちの不思議の国に前触れなく現れては、住人達を本の中の世界に連れ去ってしまうらしい」
 「猟書家」と「本」、その正体や目的などの一切は不明。現状彼等の動きを阻止するすべは見つかっていない。
「対処療法になってしまうが、とりあえずまずは巻き込まれた住人達の救出が先決だ」
 そう言って、ゲネはモニターに二つの世界を映しだした。
 一つは「白い大地」「黒い空」の実体ある夜の世界。もう一つは、「黒い大地」「白い空」の現実感の薄い昼の世界。夜が元の不思議の国、昼が本の中の世界だ。
 猟書家の本の世界に呑まれた不思議の国は、後から当地を訪問した者も根こそぎ本の中の、住人達が送り込まれたページに転移させられてしまう。
「本の中も、基本的には通常の不思議の国と同様にオウガの支配する世界だが、非常に厄介な特殊性があるので、以下を頭に叩き込んでくれ」
 まず、本の中の白い空に浮かぶ黒い太陽には「矢印」と「ページ数」が書き込まれている。
 本の中に放り込まれたものは、この「矢印の方向を外れてはならない」。なぜなら、矢印と別方向に進むと、急速に生命力を失い「本の世界の住人」になってしまうからだ。
 矢印の方向に進むと、ぐんぐんページ数が進み、情景もどんどん変わっていく。時にはどこからともなく謎のナレーションが聞こえることもあるという。
 ページの先には大量のオウガが待ち構える「戦闘番地」があり、そこを越えてさらに行き着く最終章には最大の障害となる強大なオウガが現れ、住人と猟兵の帰還を妨げるだろう。
「住人達を矢印の差す針路から外れないよう引き連れつつ、襲い来るオウガ達を順次撃退していってくれ。そうしてページの最果てにたどり着けば、帰還の道も拓けるはずだ!」
 ゲネは二枚のモニターを統合し、全面に転送術式を輝かせた。
「『猟書家』とやらの思惑も気になるところだが、今回はとにもかくにも救出に専念してくれ。矢印から外れないことを忘れずに、いざ、アリスラビリンスへ!」





第3章 ボス戦 『ネガ・アリス』

POW ●裏返ったお姫さま(リバースド・プリンセス)
【黒く染まったプリンセスドレス】に変身し、武器「【悪夢童話(ナイトメア・テイル)】」の威力増強と、【歪んだ童話の能力・人物】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
SPD ●歪:茨姫(バロック:スリーピング・ビューティー)
全身を【黒いイバラのツタ】で覆い、自身が敵から受けた【苛立ち】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
WIZ ●歪:親指姫(バロック:サンベリーナ)
【全身を覆うツタ】から【花のつぼみに潜んだ親指大の分身】を放ち、【その可憐な姿で魅了すること】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はヘイヤ・ウェントワースです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●黒ドレスのアリス
『アリスたちは道先案内人たちをすっかり退け、自分の足で目的地へと進みます。
 花園を抜け、小さな観光列車に乗り込んで、ガタガタゴトゴト揺られて。
 ようやくたどり着いたのは、黒いお庭。まるで不思議の国の女王様のお庭のように広くて立派で、黒い茨に白い薔薇の大輪が咲き乱れています。
 お庭の中央には、黒いドレスに赤髪の、可愛らしい少女がティータイムを楽しんでいました。
 もしや、彼女が「オウガに追いかけられなくなる方法」を知っている人物なのでしょうか……?』

「──まだるっこしいっ」
 カシャンッ、とティーカップをソーサーに叩きつけてナレーションを黙らせると、黒ドレスの少女は気の強そうな瞳でアリス達を見回した。
「ようやく来たのねノロマども。……余計なおまけもくっついているってことは、案内人どもは失敗したようね」
 剣呑に細めた目を一度伏せると、黒ドレスの少女はすっくと立ちあがり、つんと顎を上げて、改めて一行を睥睨した。
「ようこそ、アリスたち。アタシは確かに「オウガに追いかけられなくなる方法」を知ってるわ。知りたい? 知りたいわよね? うんと言いなさい楽になれるわよ」
 強引に話を進めて、誰も「うん」と言っていないのに、黒ドレスの少女はにっこりと奇妙に澄んだ笑顔を作った。
「それはね……オウガになってしまえばいいのよ!」
 笑顔にいびつな翳りが射し込む。
 それは、一度絶望の淵に沈んだ者の、暗く歪んだ笑み。
「アリスでなくなってしまえば、オウガになってしまえば、オウガに狙われる道理はなくなる! 実に簡単なことだわ! どうしてみんなこんな単純なことに気づかないのかしらね?」
 黒い少女の周囲を、のたうつ黒い茨が彩っていく。白薔薇の大輪は、彼女の力に侵されて黒薔薇へと反転した。
「さあアタシの傍に来なさい、愚図なアリスたち。アリスの行く末に希望はないわ。吹けば飛ぶような希望を見せて惑わすやつらは、アタシがぜーんぶ遠くに投げ飛ばしてやるから!」

『なんと! 黒い少女の正体は『ネガ・アリス』……かつて白いアリスだった少女が、オウガとなり果て黒く反転した姿でした!
 ネガ・アリスは世界の仕組みをとてもよく理解しています。
 彼女が用があるのはアリスたちだけ。ならば他の邪魔者は、手っ取り早く「正しくない方向」に投げ飛ばして排除してこようとするでしょう。
 正しい方向から外れてしまった人は、たちまち生気を奪われやがてこの物語の住人となってしまうことでしょう。
 しかしこの投げ飛ばしに上手く対抗できれば、逆にそれを利用してネガ・アリスをやり込めることも──!』

「ちょっと! 微妙にメタいしなんで勝手にヒント出してんのよ!? ナレーション遮ったくらいでスネてんじゃないわよっ」
 再び黙るナレーション。
 どことも知れぬ上方をにらみつけていたネガ・アリスは、改めて猟兵の背に庇われているアリス達へと視線を転じた。
「まずはこの邪魔者たちを排除してやるから、その間によーく考えておきなさい。このまま苦しい思いをしてアリスでい続けるのか、オウガになって楽になるのか。──もちろん、おまえたちに選択肢なんてないけれどねッ!!」
 膨れ上がる殺気が大量の黒茨に宿り、戦場をのたうった。
木霊・ウタ
心情
追いかけられなくなるって
やっぱそういうことか

全員でこの世界から脱出するぜ

投げ飛ばし
逆方向へ爆炎噴射しブレーキ
仲間が投げ飛ばされたら
火壁で敵行動を阻害し
爆炎のバーニアで滑るように移動しキャッチ

戦闘
皆を守るのを第一に
火壁で庇う

受傷時
返り血の獄炎を喰らわせる

悪夢は裡から広がる獄炎が燃やし尽くす

剣風に獄炎を纏わせ炎の竜巻とし薙ぎ払う
敵ドレスや武器を燃やし砕く

焔の剣風を連発
飛び回って避けるよな普通
でそっちは矢印以外だぜ

敵急降下に合わせ
爆炎の反動で矢の如く宙へ飛び出し
焔刃一閃

ネガ
希望叶わず絶望に染まっちまったか
辛かったな
救えなくて悪ぃ
もういいんだ
紅蓮に抱かれて休め

事後
鎮魂曲
安らかに

んじゃ脱出といこうぜ


ジュリア・ホワイト
ほう、投げ飛ばす?ボクを?
――面白い冗談だね!

「吹けば飛ぶなんてとんでもない!正義のヒーローが、どんな障害でも打ち砕く存在だということを教えてあげよう!」

射撃武装で動きを牽制しつつ、
【そして、果てなき疾走の果てに】を発動
ネガ・アリスの移動を結界で封じ、器物の姿に変身して突撃だ
人間一人、軽く投げ飛ばす力があっても……
高速で突っ込んでくる機関車、まるまる一両を投げ飛ばせるならやってみるがいいさ!

(激突の寸前)
「ああ、それと一つだけ謝罪を。黒いアリス」
「すまない、キミが心折れる前に助けることが出来なかった」


●諦めたアリスに謝罪と、せめて安らぎを
「追いかけられなくなるってやっぱそういうことか」
 木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)はぼやきつつ腕に獄炎を灯らせた。
「オウガ化なんかやらせてやらねぇよ。全員でこの世界から脱出するぜ」
 ネガ・アリスは剣呑に目を細めて、黒茨に殺意を漲らせる。
「生意気な奴がいるわね……ならまずアンタからこの世界の住人になりなさい!」
 蠢く黒茨が地面をめくりあげる勢いでウタへと殺到する。
 ウタは茨の逆方向へと爆炎を噴射し、一気に加速して黒茨から逃れた。炎の出力を調整して急ブレーキと急加速で茨を器用に避けていく。
「ちょこまかと……そっちがそのつもりならっ」
 ネガ・アリスは視線を素早くウタの後方へと飛ばした。
 と同時、黒茨はウタの間近をすり抜け、アリスの傍でぶるぶると震えている愉快な仲間達へとその触手を伸ばす──
「──させるかよっ!」
 一喝と共にウタは火壁を生じさせて茨の進路を遮った。
 茨の先陣は焼き払われ、火壁を逃れた数本のみが仲間達を取り巻いた。白い子熊や小鹿を捕らえて空中につるし上げ、庭園の外──すなわち矢印から外れた方角へと放り出そうとしなる。
「甘いぜ!」
 新たに生じた火壁が茨の中途を焼き切った。ウタは爆炎のバーニアで滑るように駆け抜け、空中に投げ出された仲間達を次々にキャッチしていく。
「いちいち邪魔ねっ! でも、アタシの茨はそれっぽっちの炎で使えなくなるほどやわじゃないわよ!」
 ネガ・アリスの纏う黒いエプロンドレスがたちまち進化していく。長い引き裾と豪華なレースに彩られた、漆黒のドレスへ。
「この世界はアリスがオウガが反転するまでの物語。エンディングの書き換えは許されない。是が非でも投げ飛ばすわ……!」
 歪んだ童話の筋書きが、アリスに強力な能力を与え、その身を宙へと浮かび上がらせた。
「ほう、投げ飛ばす? ボクを?」
 ふふっ、と失笑のような声が地上で零された。
「――面白い冗談だね!」
 アリスと愉快な仲間達を庇う形で前に踏み出し、ジュリア・ホワイト(白い蒸気と黒い鋼・f17335)は不敵に笑う。
「吹けば飛ぶなんてとんでもない! 正義のヒーローが、どんな障害でも打ち砕く存在だということを教えてあげよう!」
 大量に殺到する黒茨を全身の射撃武装で牽制しつつ、ジュリアは力を解放した。
 どこからともなく現れたのは踏切の遮断機だ。空中に突き立つが如くネガ・アリスを円形に取り囲んでいく。
「なによこれ……!?」
 狼狽し、咄嗟に飛び上がろうとするネガ・アリス。しかし一歩早く、遮断機群から結界の力場が放たれ中央のネガ・アリスを束縛した。鼓膜をつんざく悲鳴。
「人間一人、軽く投げ飛ばす力があっても……」
 ジュリアの姿が本性たる蒸気機関車へと変じ、空中をまっすぐに伸びるレールの上を駆け出した。
「高速で突っ込んでくる機関車、まるまる一両を投げ飛ばせるならやってみるがいいさ!」
 吹き上がる蒸気、黒光りする車体。巨大な質量が茨の波を正面から食い破り、身動きままならぬネガ・アリスへと突撃していく。
 ネガ・アリスは一心不乱に茨を振るって踏切結界を砕こうとするが、結界はびくともせず、加速する機関車は待ってくれない。
「ああ、それと一つだけ謝罪を。黒いアリス」
 機関車の姿のまま空中を駆け上がりながら、ジュリアはぽつりと呟いた。
「すまない、キミが心折れる前に助けることが出来なかった」
 衝突の寸前に零された告解は、ひどく真摯な響きを持ってネガ・アリスの耳に届いた。
 直後、激突。
 結界の砕ける涼やかな音と光、大質量が人体を弾き飛ばす鈍くあっけない音。
 ネガ・アリスは凄まじい速度で空中に吹き飛ばされながら歯を食いしばる。
「……っ、いまさら、なによ……いまさらぁぁぁぁーーーッッッ!」
 全身からあふれ出す黒茨。それはあたかも黒い翼の如く羽ばたき、ネガ・アリスは急速に猟兵陣営へと突進してくる。
 なおも仲間達を狙う黒茨。棘がかすめたウタの傷口から噴き出した返り血が、獄炎となって茨を焼く。
「悪夢は裡から広がる獄炎が燃やし尽くす」
 さらに獄炎は刀身に宿り、剣風に纏わせ薙ぎ払われた。
 息をつかせず連続する焔の剣風、幾度となく巻き起こる炎の竜巻。茨の翼は焼き砕かれ、ドレスにも延焼が広がる。
 急降下するネガ・アリス。その軌道に、ウタは爆炎の反動を得て矢の如く飛び上がる。
「希望叶わず絶望に染まっちまったか。辛かったな」
 ネガ・アリスの目が、大きく見開かれる。
「救えなくて悪ぃ。もういいんだ」
 ウタは柔らかに彼女の苦しみを肯定し、
「紅蓮に抱かれて休め」
 焔刃を一閃させた。
 燃え盛る紅蓮の向こうに轟き渡る絶叫。
 その魂の安らかなることを願って、鎮魂曲は静かに庭園に響いた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

サーシャ・ペンローズ(サポート)
 バーチャルキャラクターの電脳魔術士×バトルゲーマー、18歳の女です。
 普段の口調は「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、敵には「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
エッチな描写もNGです。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


鳩麦・灰色(サポート)
「ウチ、やなくて私も手伝わせてもらうよ」
「アンタ(敵)はそこで黙ってて」

◆特徴
独り言は関西弁
話言葉はほぼ標準語
脱力した口調
『敵さん』の行動の意図を考える傾向があるが内容に関わらず容赦しない

◆行動
【ダッシュ】【クライミング】【地形の利用】で場所を問わず速く動く事が得意

戦闘は速さで回避重視
味方が居れば武器の音で【存在感】を出し率先して狙われにいく

攻撃は主に【衝撃波】を込めた鉄パイプを使用、空砲銃は場合に合わせて使用

◆UC
索敵、回避特化ではUC『三番』
集団戦では『四番』
敵単体では『一番』か『二番』を使用する

◆日常
日常は何かしつつ寝落ちる事が多い


協力絡みセリフ自由
他おまかせ。よろしくおねがいします!


●切り込み隊長と勇者
 燃え盛る炎の向こうに、黒い人影がゆらりと浮かび上がる。
「……許さない……許さない……っ!」
 次の瞬間、黒茨が炎を突き破って乱舞した。
 蠢く茨の中心部に現れたのは、白磁の肌のあちこちを焼け爛れさせたネガ・アリス。
「なかなかしぶといですね……ですが、これ以上の狼藉はさせませんよ!」
 サーシャ・ペンローズ(バーチャルキャラクターの電脳魔術士・f26054)はのたうつ黒茨の周囲に大量のゲームキャラクターを召喚した。古き良きドット絵風の造形の、戦士、武闘家、魔法使い、僧侶などなど。額に『1』の文字を浮かべた、小さな勇者達だ。
「みんな、茨のターゲットを散らしてください! どうにか隙を作って……!」
 サーシャの言葉に応えて勇者達が果敢に茨に挑む。武闘家が前に出て素早く攪乱し、戦士の剣が茨を斬り裂き、魔法使いの炎が茨を焼き、僧侶がパーティの傷を癒していく。勇者達は小さくとも多数。黒茨はその対処にかかりきりになる。
「ちっさな勇者さんら、いい連携だ。助かるよ」
 彼等の作ってくれた隙に飛び込んだのは、鉄パイプを掲げた鳩麦・灰色(音使いおおかみ・f04170)。
「この数の多さなら四番……といきたいところだけど」
 灰色は瞬間的に思考する。敵は飛行能力や強化能力を持っている。全体攻撃で茨を退けることは可能だが、それをすれば上空に逃げられ態勢を立て直される可能性がある。──ならば。
「最適解はこんなところか」
 灰色は自身を狙って襲い来た極太の茨の束を回避すると同時、ドラゴンランスを槍形態に変化させて、茨の先端を突き刺し地面に縫い留めさせた。
 斜めにぴんと張った茨の束の上に、灰色は躊躇なく飛び乗り、一気に敵の元へと駆け上がった。びっしりと生え揃った棘はお手製安全ブーツで蹴散らしていく。これも言うなれば地形の利用というわけだ。
「っ、生意気ね!」
 素早い進撃に咄嗟に対応し、ネガ・アリスは灰色の足場になっている茨を自ら途中で断ち切った。
 しかし距離と速度はすでに十分。灰色はちぎれてしなる茨の反動を利用してネガ・アリスの直上へと大きく跳躍した。
 高々と掲げられた鉄パイプが振動音を上げ、圧倒的存在感を放つ。
「壊せ、"二番"!」
 頭蓋の内側を貫くような強烈な高音が、ネガ・アリスを貫くように通り過ぎる。
「────」
 すれ違いざまのとてつもない衝撃に声も出ないネガ・アリス。
 その瞳に、巨大な、見たこともない物体が映り込む。粗いドット絵が集積し、モザイク画の如き緻密なドット絵へと変貌した勇者の姿。その額には『43』の数字。
 小さなドット絵の勇者達の集合体だ。
 サーシャが叫ぶ。
「勇者様、今です!」
 ドット絵勇者は細かな差分を連続させてぬるぬる動くと、巨大な勇者の剣を鮮やかに振り上げる。
 黒茨を断ち切る一撃が、庭園中に轟音を響かせた。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴